(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】最適且つスケーラブルな直交時空間変調方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0413 20170101AFI20240717BHJP
【FI】
H04B7/0413
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504018
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070717
(87)【国際公開番号】W WO2023002059
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021207917.2
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522388073
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートモーティヴ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1, 30175 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダビド ゴンザレス ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】オスバルド ゴンサ
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 寛貴
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ タデウ フレイタス デ アブレウ
(72)【発明者】
【氏名】ヘヨン ソック ロウ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス アンドレ
(57)【要約】
複数の送信アンテナを構成するコンピュータ実装された方法であって、各々が同相空間コンステレーション内の同相空間コンステレーションシンボル及び直交空間コンステレーション内の直交空間コンステレーションシンボルを表すように複数の送信アンテナを構成するステップと、当該複数の送信アンテナにより表される同相空間コンステレーションシンボル及び直交空間コンステレーションシンボルにソースデータをマッピングするステップとを含み、最適且つスケーラブルな直交空間変調方式(OS-QSM)を適用して結果的に得られた直交空間変調の可能な最大の符号化利得が得られる方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを構成するコンピュータ実装された最適且つスケーラブルな直交時空間変調(OS-QSM)方法であって、
各々が同相空間コンステレーション内の同相空間コンステレーションシンボル及び直交空間コンステレーション内の直交空間コンステレーションシンボルを表すように複数の送信アンテナを構成するステップと、
前記複数の送信アンテナにより表される前記同相空間コンステレーションシンボル及び前記直交空間コンステレーションシンボルにソースデータをマッピングするステップとを含み、
最適且つスケーラブルな直交空間変調方式(OS-QSM)を適用して結果的に得られた前記直交空間変調の可能な最大の符号化利得が得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
箱詰、範囲制限、及びハード二値化による反復縮小二値化アルゴリズム(ISTA)を変更することにより特徴付けられる方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
アンテナ指標の位置及びシンボル推定値の箱詰ハード(ISTA)貪欲選択、及び対応するアンテナ変調及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号化を介して前記反復縮小二値化アルゴリズムを遂行することにより特徴付けられる方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、プロセスが前記貪欲検出と並列に動作する状況で、指標ベクトルの所与の有限集合から前記指標ベクトルの有効な推定値が出力として生成されることを保証し、且つ確認された値で干渉相殺を行い、
・前記貪欲選択から取得された指標を追跡しながら、全ての反復の前に、現在復号化されている指標から最終的な確認が計算可能か否かをチェックし、
・不可能な場合、前回の前記貪欲選択による干渉を除去して次の反復を行う方法。
【請求項5】
シンボルの個数P、シンボルスロットの個数T、送信アンテナの個数n
Tを入力として、
第1の計算において、前記T個のスロットが、規則T×T STBCを介して処理され、前記処理の結果及び前記送信アンテナの個数n
Tが分散行列生成を介して結果の集合A及びBを生成し、前記結果集合A及びB並びに指標ベクトルk
l、k
Rが分散行列起動への入力を構築し、前記分散行列起動の結果が、信号行列Xを決定すべくQSM信号構築により処理される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
プロセッサと、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリと、通信チャネルで信号を受信すべく適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信器(R)であって、前記不揮発性メモリが、マイクロプロセッサにより実行されたならば、請求項1~4に記載の方法の1つ以上を実行すべく前記受信器を構成するコンピュータプログラム命令を保存する受信器(R)。
【請求項7】
コンピュータで実行されたならば前記コンピュータに請求項1~4のいずれかに記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項8】
請求項6に記載のコンピュータプログラム製品を保存及び/又は送信するコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
車両に受信器(R)を搭載した通信システムを含む車両ユニットであって、前記システムが請求項1~4のいずれか1項に記載の方法を実行すべく適合されている車両ユニット。
【請求項10】
請求項8に記載の1つ以上の車両ユニットを有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過負荷チャネルにおけるデジタル通信の復号化の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
高度な空間変調(SM)方式では、起動パターンを決定する分散行列を介して、送信アンテナの一部だけがシンボルスロット毎に起動される。この選択は、同時に起動される分散行列の指標に対応する整数値を保持する、いわゆる指標ベクトルにより決定される。指標ベクトルの構築は、最新技術(SotA)までは組み合わせ順序で素朴に行われるが、送信アンテナの割り当てが不均等になり、送信多様性の劣化につながる。
【0003】
空間変調(SM)技術は、MIMOシステムの公知の技術であり、これに本発明はシンボル選択(コンステレーション次元)を介した従来の情報ビットの最上位に送信アンテナ選択(空間次元)を介して追加的な情報ビットを送信する新たな方法を導入する。単一のアンテナだけを選択するためアンテナの合計個数が2のべき乗に制約される従来のSMから、利用可能な送信アンテナのうち複数のアンテナの組み合わせを選択することにより、アンテナが合計何個あってもよい一般化SMが開発された。
【0004】
次いで、時空間符号(STC)の概念をSM-MIMOと組み合わせることにより送信多様性[3]がSMに導入されて、符号設計に複数のシンボル周期を許容することにより時間的次元が追加された。重要な業績として、Sugiuraらによる線形分散(LD)符号に基づく時空間シフトキーイング(STSK)方式、及びSTBC-SM及びSTBC-CSM等の時空間ブロック符号化(STBC)に基づく方式が含まれる。
【0005】
並行して、送信多様性を向上させる対照的な技術が、従来のSMの発想を送信信号の実数及び複素成分の各々に適用する直交空間変調(QSM)方式を介して導入されている。
【0006】
この発想は、多様性実現直交空間変調(DA-QSM)における送信多様性の増大により補強される。最後に、ごく最近では、STBC-SMの発想をDA-QSMに組み込んで、拡張多様性実現直交空間変調(EDA-QSM)が性能面であらゆる先行方式を上回ることが示されている。
【0007】
SotA EDA-QSM方式には以下の制約がある。
・符号化利得が最適でない、
・可能な最大シンボル周期は2に制約される、
・送信アンテナは偶数に制約される、
・スペクトル効率が最適でない。
【0008】
このアプローチを介して、大規模MIMOシステムに関連する膨大な静止ソースを、同様に多数の無線周波数(RF)チェーンコンポーネントを必要とすることなく効率的に利用することができる。このようなRFチェーンの効率的利用により引き続きミリメートル波(mm波)帯を多く用いる第5世代以降(B5G)、及びテラヘルツ帯や可視光通信(VLC)帯をも取り込むと予想される第6世代(6G)ネットワーク[6]等、将来の無線システムにとってSM方式は魅力的になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、初期のSM方式の主な短所は、送信毎に選択されるアンテナは1本だけであるため、実現可能なSEが著しく制約されることである。この制約を回避すべく、送信毎に複数のアンテナが選択される一般化空間変調(GSM)方式が後に開発されてSEの大幅につながった。しかし、GSM方式を含む初期のSM方式の別の短所は、専らSEの向上だけに注力して、例えば送信多様性の活用を介したBERの低減に同程度に注力しなかったことである。この制約は、SMを時空間符号化(STC)と組み合わせるという発想の動機付けとなり、その例として、線形分散(LD)符号化に基づく時空間シフトキーイング(STSK)方式があり、当該方法は時空間ブロック符号化(STBC)と周期的構造を有する空間変調(CSM)を組み込んでいる。
【0010】
この知見に基づいてSM送信器の設計を更に最適化することが進められ、専用の時空間分散行列を介して、SM概念を変調信号の実数及び虚数成分の各々に独立に適用する直交空間変調(QSM)アプローチの発見につながった。この発想は更に分散行列設計が累進的に強化された一連のQSM技術に発展し、これはAlamouti符号を組み込んだ多様性達成直交空間変調(DA-QSM)方式、及び[24]のブロック毎の球復号可能性を有する完全多様性フルレート(FDFR)符号を用いて分散行列が構成された、より最近のスケーリングされた多様性達成直交空間変調(EDA-QSM)方式を含んでいる。上述の全ての方式のうち、EDA-QSM方式がBERとSE性能の両面で現在知られている最良のQSM方式である。
【0011】
このような利点にもかかわらず、EDA-QSM方式、及び結果的に先行するQSM方式には、依然として二つの主な短所がある。第1の短所は、現時点で提案されているQSM方式で使用されている分散行列が2×2のSTBCに基づいているため、当該方法により実現される多様性及び符号化利得の両方が制約されることである。第1の制約に関して、発明者らは本明細書で、nTに比例しないサイズTのSTBCに基づくQSM設計がSEの意味で基本的に最適に達していないことを示す。第2の短所は、現在のQSM検出方式が、網羅的最尤法(ML)又は、高々、球検出器に基づいていることである。ここで、上述の主張に反して、球復号化の平均的な複雑度が、統合復号されたシンボル期間の個数に対して指数関数的に増大することに注目すべきである。この結果は、球検出器の期待される複雑度の3次閉形式式が導出されると共に、格子削減が球検出器の複雑度分布のテール指数を改善しないことが示されたいくつかの知見により裏付けられた。第2の制約に関して、本出願において、MLに基づく、及び球体検出(SD)に基づくQSM受信器の複雑度が実際に共にPを指数としてnTとTに対して幾何学的であるため、これらの技術が基本的にQSMシステムの領域ではスケーリング性が無いことを示す。換言すれば、現在のQSM方式には、具体的にはスケーラブルな送信器及び受信器の設計が存在しないという、重大且つ両方向へのスケーラブルにする課題が存在する。
【0012】
上述の課題に触発されて、本出願は、送信側で任意のブロックサイズにスケーラブルな、すなわちnT、T及びPに制約がない、且つ受信側で多項式時間で復号可能な、すなわち大きなnT、T、及び適度なPで実用的な新たなQSMソリューションを提供する。追加的に、提案するQSM方式にはSE、多様性、符号化利得を最適化するあらゆる可能性があることが分かる。このため、最初にQSM分散行列の設計において最適なFDFRゴールデンSTBC符号を導入する。ゴールデンコードは、最適であることが知られている高速復号可能STBC、すなわちガウシアンコンステレーションに跨って最大符号化利得を有するFDFRであり、任意のブロックサイズに対して一般に構成可能であることが示されている。結果的に得られた最適化されたスケーラブルQSM(OS-QSM)方式が、この特徴を有するこれまでに提案された最初の方式である。
【0013】
新たなOS-QSM設計は、当該方式で採用される分散行列の指標を選択する新たなアルゴリズムにより更に強化されて、全ての送信アンテナが複数のブロックの送信にわたり同じ頻度及び同じ尤度で利用されることが保証され、従って全ての時空間リソースの最適に多様な利用が保証される。最後に、スケーラブルな送信器設計の実現可能な復号可能性を保証すべく、疎復元法に基づく新たな貪欲箱詰反復縮小二値化アルゴリズム(GB-ISTA)QSM検出器を提案する。
【0014】
疎信号処理のアプローチにより、提案する復号方式はブロック対角的な高速復号可能性を必要とする従来の球検出法とは異なり、コア符号設計の制約を一切必要としない。但し追加的且つ最重要な点として、提案する新たなGB-ISTAQSM受信器の主な利点は、ML及び状態コードワードに合致したブロック毎の球復号化(SCMB-SD)とは異なり、大きなコードブック空間での探索を必要としない点である。実際、提案する受信器の複雑度のオーダーは、Tに対して3次、Pに対して2次、nTに対しては線形に過ぎないことが示されている。
【0015】
全般的に、本明細書の寄与度は以下のように要約できる。・スペクトル効率最適性:QSMがSE最適性を実現するのに必要な符号化シンボルの最適化された個数Pの閉形式式が与えられ、STBCのレート最適性条件と組み合わされて、SE最適QSM方式の設計におけるSTBCサイズTのシステマチックなスケーラビリティの重要性が強調される。・最適な多様性及び符号化利得:新たなゴールデンコードに基づく直交空間変調(GQSM)伝送方式が、整数シンボルコンステレーションにわたり最適な符号化利得を実現することが知られている2×2ゴールデンコードに基づく分散行列の設計を介して得られる。・送信器のスケーラビリティ:新たなGQSM設計が、2×2ゴールデンコードを自身のT×TのFDFR STBCバリエーションに拡張することを介して一般化されて、任意のnT、T、Pに適用可能なOS-QSM方式が得られる。
・リソース利用の最適性:方法1では、分散行列指標の最適な組を選択する新たな機構が提供され、多様性利得の最適化で必要とされるように、時間経過に伴い全てのQ空間時間リソースが均等に利用されることを保証する。
・受信器でのスケーラビリティ:GSM方式用に新たな低複雑度の貪欲反復縮小二値化アルゴリズム(ISTA)に基づく復調アルゴリズムが提案され、線形複雑度が高いため巨大なスケールで実現可能であるだけでなく、他のSTBC-QSM方式にも適用可能である。
・受信器の複雑度:提案する受信器の新たな複雑度の数式が導出され、Pを指数としてTとnTに対して幾何学的なML及びSD受信器とは対照的に、Tに対し3次、Pに対して2次、及びnTに対しては線形であることを示す。
【0016】
第5世代以降(B5G)及び第6世代(6G)の将来の無線通信システムで期待される主な事項の一つは、多入力多出力(MIMO)設定において、要件に対応するために送信及び受信アンテナの個数が大幅に増やされることである。
【0017】
問題は、大規模MIMOシステムにおいて全てのアンテナを同時に起動するのは同じ個数のRFチェーンも要求されるため高価なことである。従って、送信方式は性能を著しく低下させることなく一部のアンテナだけを起動できなければならない。
【0018】
上述の問題に対処してSotA方式(EDA-QSM)の制約を除去すべく、最適且つスケーラブルな直交空間変調方式(OS-QSM)を提案する。
【0019】
具体的には、
図1に示すQSM信号生成フロー図/ブロック図の破線で強調表示した部分に関する設計である。
【0020】
OS-QSMは完全多様性フルレート(FDFR)ゴールデンSTC[15]及びそのT×T FDFR完全STC[16]への一般化を利用することによりT=6までの最適符号化利得を実現する。EDA-QSMで利用されているSezginer-Sari-Biglier(SSB)STBCに代えてこれらのSTCを使用し、且つ必要な電力調整及び拡張を適用することにより、QSMの最終的な分散行列を構築する。
【0021】
OS-QSMは、SotAの3個の制約を全て取り除くことができ、時間領域でのスケーラビリティ、及びより高い(可能な最大の)符号化利得をもたらす。
1.ゴールデンSTC及び完全STCを用いることで、結果的に得られる直交空間変調に可能な最大の符号化利得をもたらす。
2.T×T完全STCへの一般化により、OS-QSM方式で任意の連続するT個のシンボル周期を有する符号を設計することができる。
3.Tが2に制約されなくなるため、送信アンテナの個数も2の倍数に制約されなくなり、代わりにTに応じて変化し得る(又は使用可能なアンテナの個数に合わせてTを変更できる)。
最適なスペクトル効率を実現できる。
【0022】
OS-QSMは任意のシステム及び状況において従来のSM方式に代えて等しく使用できる。SMの性質上、アンテナの個数よりも少ないRFチェーンだけに対応できるシステムが特に恩恵を受けるだろう。セルラーネットワークとV2X通信をより良い効率及びデータレートで実行することができる(eMBB)。
【0023】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、図面と共に詳細な説明を考察することにより更に明らかになろう。
【0024】
この問題は、SotAである拡張多様性実現直交空間変調(EDA-QSM)に至る従来のどの空間変調方式でも対処されておらず、従来方式での解決策も見つかっていない。
【0025】
上述の問題に対処してSotA方式(EDA-QSM)の制約を取り除くべく、最適且つスケーラブルな直交空間変調方式(OS-QSM)を提案する。具体的には、設計はQSM信号生成フロー図の強調表示部分に関する。
【0026】
OS-QSMは完全多様性フルレート(FDFR)ゴールデンSTC[15]及びそのT×T FDFR完全STCへの一般化を利用することによりT=6までの最適符号化利得を実現する。EDA-QSMで利用されているSezginer-Sari-Biglier(SSB)STBCに代えてこれらのSTCを使用し、且つ必要な電力調整及び拡張を適用することにより、QSMの最終的な分散行列を構築する。
【0027】
具体的には、
図1に示すQSM信号生成フロー図/ブロック図の破線で強調表示した部分に関する設計である。
【0028】
OS-QSMは任意のシステム及び状況において従来のSM方式に代えて等しく使用できる。SMの性質上、アンテナの個数よりも少ないRFチェーンだけに対応できるシステムが特に恩恵を受けるだろう。セルラーネットワークとV2X通信をより良い効率及びデータレートで実行することができる(eMBB)。
【0029】
複素行列と複素ベクトルを太字の大文字と小文字で表記し、その要素を各々X,x及びx
iのように指標付きの通常の小文字で表記する。複素数xの実部と虚部を各々x
Rとx
Iと表記し、将来の便宜上、複素数ベクトル
x=[x
1,x
2,…,x_
n]
T
付随する分離ベクトル
【数1】
及び対応する求積表現
【数2】
求積演算子
【数3】
はm×n複素行列Xにも適用され,これに対応して2m×2n行列
【数4】
が得られる。次いで、複素共役、転置、エルミート、トレース、ベクトル化、及び対角化演算子が各々(・)
*、(・)
T、(・)
H、tr(・)、vec(・)、及びdiag(・)と表記される一方、n×n単位及びサイズm×nで要素が全てゼロ及び全て1の行列を各々I
n、0
m×n、及びI
m×nと表記する。pノルムp≧0は
【数5】
と表記される。|・|が要素毎の絶対値演算(ベクトルの場合)、又は(集合の)濃度を各々表し、実数、複素数、整数の集合を
【数6】
、及び
【数7】
と表記する。期待値を
【数8】
と表記し、最も近い2のべき乗の床関数を
【数9】
と表記する。左端の最上位二値ベクトルの対応する10進整数への変換演算を[・]
(10)と表記する。二項係数を
【数10】
と表記し、
【数11】
はクロネッカー積を表す。スカラーvの集合Xへの射影をP
X(v)で表し、平均μ及び分散σ
2の複素ガウス分布を~CN(μ,σ
2)で表す。
【0030】
従来の最先端の空間変調(SM)方式は全て、大多数の空間変調(SM)のようにMLを、又は最先端のSM方式EDA-QSMのような修正されて木探索アルゴリズムを使用してSM信号を復号化しており、疎検出や貪欲なアプローチに注目すべき試みは行っていない。
【0031】
木探索アルゴリズムは、SMの高度に組み合わせ的な性質及び、結果的に生じる探索空間の大きさに起因して極めて非現実的である。更に、SMは、復号化された信号の構造に様々な制約を課すため、素朴な複雑度が低い復号化は不可能である。
【0032】
先行技術に付随する問題は、この問題に対する疎検出の解が存在しないことである。他のアプローチを用いる解は実現不可能な複雑度を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
第5世代(B5G)及び第6世代(6G)以降の無線通信における大規模多入力多出力(MIMO)システムでは多数の送受信アンテナの組み込みが期待される。
【0034】
空間変調(SM)及び直交空間変調(QSM)等の変形例の利用は、大規模MIMOシステムの有望な候補の一つである。しかし、システムの規模が大きくなるに従い、SotAが最尤(ML)復号又はMLに基づく木探索アルゴリズムを用いるため、SM方式の古典的な復号の複雑度は実現不可能に(すなわち、複雑度が手に負えなく)なる。
【0035】
【0036】
本方法は、
図5に示すように、送信アンテナの起動の多重度が等しいため送信多様性が最大化することができる集合を構築する。従来のSotAでは、等しい多重度が存在せず、従って使用可能なアンテナの個数から最適でない、すなわち全てのアンテナが同程度に使用される送信多様性が利用されていた。
【0037】
全ての空間変調方式が既に指標ベクトル選択を利用している(又はそのように再定式化できる)ため、既存の全ての空間変調方式が恩恵を受ける。この方式を用いてセルラーネットワーク及びV2X通信(eMBB)においてデータレートを増大させると共に効率を向上させることができる。
【0038】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、図面と共に詳細な説明を考察することにより更に明らかになろう。
【0039】
提案する復号器は既存のMLアルゴリズム及び木探索アルゴリズムに比べて複雑度が顕著に低い。本復号器は送信アンテナの個数に対して2次オーダーの複雑度を有する。
【0040】
更に、提案する復号器はまた、伝送方式にブロック対角性又は直交性等の設計上の制約を必要とせず、空間変調方式に固有の疎性だけを必要とするため、送信器の開発にも大きな自由度を与える。換言すれば、提案する復号器は多くの異なる符号化構造に対応できる(柔軟性)。
【0041】
本復号器は、アンテナの個数が多く、従ってMLアプローチが実行不可能と思われる任意のMIMOシステムで使用できる。
本方式を用いてセルラーネットワーク及びV2X通信(eMBB)の効率を向上できる。
【0042】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、図面と共に詳細な説明を考察することにより更に明らかになろう。
【0043】
複数の送信アンテナを構成するコンピュータ実装された方法の実施形態は、各々が同相空間コンステレーション内の同相空間コンステレーションシンボル及び直交空間コンステレーション内の直交空間コンステレーションシンボルを表すように複数の送信アンテナを構成するステップと、前記複数の送信アンテナにより表される同相空間コンステレーションシンボル及び直交空間コンステレーションシンボルにソースデータをマッピングするステップであり、本方法は最適かつスケーラブルな直交空間変調方式(OS-QSM)を適用して結果的に得られた前記直交空間変調の可能な最大の符号化利得が得られる。
【0044】
コンピュータ実装された復号化方法の別の実施形態は、箱詰、範囲制限及びハード二値化を介した反復縮小二値化アルゴリズム(ISTA)の変更により特徴付けられる。
【0045】
コンピュータ実装された復号化方法の別の実施形態は、箱詰ハード(ISTA)反復縮小二値化アルゴリズム、アンテナ指標とシンボル推定値の位置の貪欲選択、及び対応するアンテナ変調及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号化を進めることにより特徴付けられる。
【0046】
コンピュータ実装された復号化方法の別の実施形態は、プロセスが貪欲検出と並列に動作する状況で、指標ベクトルの所与の有限集合から指標ベクトルの有効な推定値が出力として生成されることを保証し、且つ確認された値で干渉相殺を行なうことにより特徴付けられ、
・貪欲選択から取得された指標を追跡しながら、全ての反復の前に、現在復号化されている指標から最終的な確認が可能か否かをチェックし、
・不可能な場合、前回の貪欲選択による干渉を除去して次の反復を行う。
【0047】
コンピュータに実装された復号化方法の別の実施形態は、シンボルの個数P、シンボルスロットの個数T、及び送信アンテナの個数nTを入力として、
第1の計算において、スロットTは、規則T×T STBCを介して処理され、当該処理の結果及び送信アンテナの個数nTは、分散行列生成を介して出力結果の集合A及びBを生成し、出力結果の集合A及びB並びに指標ベクトルkl、kRが分散行列起動への入力を構築し、分散行列起動の結果は信号行列Xを決定すべくQSM信号構築により処理される。
【0048】
別の実施形態は、プロセッサと、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリと、通信チャネルで信号を受信すべく適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信器(R)であって、不揮発性メモリが、マイクロプロセッサにより実行されたならば、上述の1つ以上の実施形態の復号化方法を実施すべく受信器を構成するコンピュータプログラム命令を保存する受信器(R)により特徴付けられる。
【0049】
別の実施形態は、コンピュータで実行されたならば当該コンピュータに上述の1つ以上の実施形態の復号化方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品による受信器により特徴付けられる。
【0050】
別の実施形態は、上述のコンピュータプログラム製品を保存及び/又は送信するコンピュータ可読媒体により特徴付けられる。
【0051】
別の実施形態は、車両に受信器(R)を搭載した通信システムを含む車両ユニットであって、当該システムが上述の1つ以上の実施形態の1つ以上の復号化方法に従い本方法を実行すべく適合されている車両ユニットにより特徴付けられる。
【0052】
別の実施形態は、上述の1つ以上の車両ユニットを有する車両により特徴付けられる。
【0053】
本出願の全ての態様は、モバイル機器、基地局、無線システム内の要素と一体化できる。上述の要素の全てを車両に組み込むことができる。
【0054】
本発明の本質をより深く理解するために、添付図面と合わせて以下の詳細な説明を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】QSM伝送方式の一般的な構造を描いた模式図である。
【
図2】n
T=8、M=4である所与のシステムにおいてT=2、4、及び8のOS-QSM方式のスペクトル効率である。
【
図3】送信シンボル数とエポックとの最適比P
*/Tに対するTとMの影響である。
【
図4】異なる大きさのTとMについて、フラクショナルピークスペクトル効率の挙動をn
Tの関数として示す。
【
図5】P=3、Q=8のQSMシステムにおいて各指標ベクトルk
nに関連する時空間リソース使用を表す二部グラフであり、k
1、k
37、k
54の特定の例を明示的に示す。
【
図6】[29]によるISTA二値化及びBH-ISTA二値化関数Λ(s;τ)と、式(29)によるΠ(s;τ)の比較である。
【
図7】
図7は、式(28)及び(30)によるu^Π
(η)及びu^Λ
(η)の収束を反復回数ηの関数として示す。
図7aは、様々な閾値での疎性の収束である。
図7bは、最適な閾値でのMSEの収束である。
【
図8】QSM復調用に提案するGB-ISTA受信器の構成を描いた模式図である。
【
図9】
図9は、スケーラブルパラメータがQSM受信器の複雑度に及ぼす影響である。
図9aは、固定P、可変Tをn
Tの関数として示す。
図9bは、固定T、可変Pをn
Tの関数として示す。
図9cは、固定n
T、可変TをPの関数として示す。
【
図10】SEを固定してGB-ISTA検出OS-QSM方式のBER性能に対するスケーラビリティの影響である。
【
図11】GB-ISTA検出OS-QSM方式のBER性能に対するスケーリングPの影響である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
設計された分散パターンに従い、物質内へのnT個の送信から動的に選択された、全てM-ary変調された比較的少ない個数Pのシンボルの送信を組み合わせながら膨大な数のビットを搬送可能な直交空間変調(QSM)方式について考察する。
【0057】
以下は、5Gの要件及びユースケースへの対処を目的とする無線通信ネットワークの多くの態様に関する概念、システム/ネットワークアーキテクチャ、及び詳細設計の詳細な説明である。用語「要件」、「必要性」、又は同様の語句は、特定の実施形態の有利な設計の意味でのシステムの望ましい特徴又は機能を記述するものであって、全ての実施形態の必要又は必須の要素を示すものではないことを理解されたい。従って、以下において、必要とされる、重要である、求められる、又は同様の語句で記述される各要件及び各能力は任意選択的であると理解されたい。
【0058】
以下の説明では、無線機器、無線アクセスネットワーク、及びコアネットワークを含む当該無線通信ネットワークを「NX」と呼ぶ。「NX」という用語は本明細書では便宜上、単なるラベルとして用いられることを理解されたい。本明細書で詳述する特徴の一部又は全部を含む無線機器、無線ネットワーク設備、ネットワークノード、及びネットワークの実装は無論、様々な名称のいずれかで呼ばれる場合がある。5Gの仕様の将来的な開発において、例えば、「New Radio」、「NR」、又は「NRマルチノード」という用語が使用される可能性があり、本明細書においてNXの文脈で記述した特徴の一部又は全部がNRのこれらの仕様に直接適用され得ることが理解されよう。同様に、本明細書に記述する様々な技術及び特徴は「5G」無線通信ネットワークを対象としているが、本明細書で詳述する特徴の一部又は全部を含む無線機器、無線ネットワーク設備、ネットワークノード、及びネットワークの特定の実装方式を用語「5G」で呼ぶことも呼ばないこともある。本発明はNXの全ての個別態様に関するが、NXとの対話及び相互作用において、LTE等他の技術の発展にも関する。更に、このような個々の態様及びそのような個々の発展の各々が本発明の分離可能な実施形態を構成する。
【0059】
図1に、QSM伝送方式の一般的な構造を描いた概略図を示す。
【0060】
A.システムモデル
n
T個の送信アンテナを備えた送信器が、SMを採用するn
R個の受信アンテナを備えた受信器と情報を交換するポイントツーポイント(P2P)MIMO通信システムを考える。チャネルが一定であると仮定されたT個の連続する時間スロットに対応する受信信号は次式のように簡潔に書くことができる。
【数12】
ここで、
【数13】
は各アンテナと時間スロットで受信した信号を集めた行列、
【数14】
はhi,j~CN(0,1)を要素とするフラット減衰チャネル行列、
【数15】
は時空間送信信号、及び
【数16】
は以下を要素とする加法性白色ガウス雑音(AWGN)行列であり、
v
i,j~CN(0,N
0)
ここで、N
0はノイズ分散である。
【0061】
以下では、準静的レイリー減衰チャネル行列Hが受信器では知られているが送信器では知られていないと仮定し、行列エントリ毎のチャネル出力はユニタリであるため、基本信号対雑音比(SNR)は次式で与えられることを述べる。
【数17】
次いで、関連するQSM文献に従い、且つ
図1に示すように、送信信号行列Xが次式のように、ビットシーケンスbの情報を、P個のデジタル変調された信号の形式、及びそのような送信の異なるアンテナ及び時間インスタンスへの割り当ての形式の両方で搬送するように構築される。
【数18】
ここで、
【数19】
であって、p={1,・・・,P}は、カーディナリティ|S|=Mの複素コンステレーションSから選択された送信シンボルである。
【数20】
は集合
【数21】
(但し
【数22】
)に属する分散行列であり、指標
【数23】
は各々指標ベクトルk
Rとk
Iのp番目の要素であり、これらは最適化された指標ベクトルの集合
【数24】
(但し
【数25】
)から選択されている。
【0062】
式(2)に関して、再び
図1を参照しながら、QSM方式ではビットシーケンスbが、長さが
【数26】
のシーケンスb
Sに細分化され、これは長さが次式のS及び共役シーケンスb
R及びB
1から取られたシンボルs={s
1,・・・,s
p}に符号化された情報に対応し、
【数27】
これはKからの分散行列指標ベクトルk
R及びk
1による時空間リソースの選択符号化される情報に対応する。
【0063】
上記に鑑みて、具体的なQSM方式の設計は本質的に、集合A及びB内のQ分散行列Aq及びBqの構築、及び各送信に用いられる分散行列の選択を通知する指標ベクトルkR及びkIを含む集合Kの選択で採用した方法に帰結すると言える。
【0064】
最新の(SotA)QSM方式が式(2)で記述される一般的な枠組みにどのように組み込めるかを示すために、QSM方式を最初に考える。
この場合、分散行列を次式で与えられる分散ベクトル(すなわち、T=1且つQ=nT)に還元する。
Aq=eq且つBq=jeq;(3)
ここで、eqはIQの第q列であり、指標ベクトルkRとkIの指標の選択には特定の設計基準は何ら与えられていない。
【0065】
次いで、DA-QSM方式において、送信多様性を利用すべく2列の分散行列(すなわちT=2且つQ=n
T)が採用され。特に、この方式において、
【数28】
但し
【数29】
であって、ここで、M
nはn×n周期的下位シフト行列であり、M
nは、例えば次式のようにI
nの最下行を最上行に循環的にシフトすることにより得られ、
【数30】
例えばその(q-1)乗を所与の行列に予め乗じることにより後者の下側(q-1)行が最上行にシフトされる。
【0066】
以上から、DA-QSM方式は多様性を追加することにより、すなわち送信インスタンスをT=1からT=2に拡張することにより、QSM方式よりも本質的に向上している。しかし、DA-QSM法の分散行列は、QSM方式の分散行列と同様に依然として実数であり、何ら追加的な多重化能力が集約されず、且つ符号化利得が最適化されていないことを意味する。
【0067】
対照的に、EDA-QSM法は後者よりも両方の面で向上している。特に、この方式では分散行列が
【数31】
のように、より巧緻に設計されている。ここで、e
lは次式の第l列、但し
【数32】
であり、指標i∈{1,・・・,4}及びl∈{1,・・・,L}、並びにコア行列C
i及びD
iは、次式により記述される24のSezginer-Sari-Biglieri(SSB)STBCに基づいている。
【数33】
但し
【数34】
ここで、
【数35】
【0068】
上の簡潔な記述を通して、DA-QSM法とEDA-QSM法の基本的な違いが、EDA-QSM法の分散行列が複素数値であるため、多重化及び符号化利得を享受すべく実数と虚数次元の直交性がより巧みに利用されていることであることが容易に分かる。
【0069】
しかし、これまで提案された全ての既存のSotA QSM方法について実際に我々の知る限りの方式に対してなされ得る二つの公正な批判は、a)任意のT>2に対して、当該方式が空間と時間にわたり同時に系統的にスケーリングされないこと、及びb)実現される符号化利得が最適ではないことである。これら二つの制約を緩和することが次セクションで述べる発明者らの最初の貢献の目的である。
【0070】
III.最適化されたスケーラブルな直交空間変調
送信器設計
A.QSM方式のスペクトル効率最適化
式(2)による各QSM送信シンボルXの送信により搬送されるビット数、及びこのような送信がT回の連続的なチャネル利用が必要であるという事実を前提として、任意のQSM方式のSEζは次式で与えられ、
【数36】
ここで
【数37】
を想起し、PとTが基本的なQSM設計パラメータであると見なされる一方、Mとn
Tはシステム制約と考えられることを強調する表記を採用する。
【0071】
図2に、n
T=8、M=4の所与のシステムにおいて、T=2、4、8のOS-QSM方式のスペクトル効率を示す。
【0072】
式(8)における二項係数
【数38】
の存在は、SE関数ζ(P,T;M,n
T)は、Pが固定されていればTに対して単調減少し、Tが固定されていればP及び比P/Tに対して凹んでいることを示唆している。このことは
図2に示すプロットで良く描かれており、n
T=8且つM=4のシステムにおいて、ζ
*で示す実現可能な最大のSEがT=2,4及び8に対して各々P=11,21及び42の場合に実現される。
【0073】
上の議論に触発されて、発明者らは所与のn
TとMについて、SEを最大化する最適な比P/Tの解析式を求め、これを用いて、大規模システムでT<n
Tを設定してn
T→∞としたときに生じる相対SE現象を判定することができる。この目的のため、二項係数の上界と下界、すなわち
【数39】
ここで、将来的な便宜上、暗黙的に上界関数β(P;Q)を定義した。
【0074】
式(9)を式(8)に代入して次の境界が得られる。
【数40】
後者の式をPについて微分すれば次式が得られ、
【数41】
ここで2番目の行において、P∈Nであってより一般に正の量ε≦1を導入してP=εQで表される制約を緩和する。
【0075】
等式(11)内の式をゼロに等しくすることでQ=Tn
T時空間リソースを有するQSMシステムのSEを最大化する最適なシンボル数P
*を決定することができる以下の解析的陰形式が得られ、M-aryコンステレーション
【数42】
を採用し、ここで、式の右辺の量は、実際には送信シンボル数Pの求める個数であることを強調する。
【0076】
しかし、望まれるP
*が可能な最大値でもあることを想起して、式(12)は次式を示唆し、
【数43】
これは次いで最適なεが次式のようである、
【数44】
すなわち、2次多項式(M-1)ε
2-2Mε+Mの解であり、これにより最終的に単に次式が得られることを示唆し、
【数45】
ここで暗黙的に定義された次式のような最適勾配を導入した。
【数46】
【0077】
式(14)に示すエレガントな結果が任意のQSM方式について一般的であることを強調する。この結果から、QSM方式のSEを最大化する最適比P/Tが送信アンテナ数n
Tに対して線形であることが分かる。換言すれば、任意の所与のMとn
Tに対して、SE最適QSMは、
図3に示すシミュレーション結果により図示及び確認されるようにP/Tがn
Tに対して線形に比例しなければならない。
【0078】
これは、
図3が、送信シンボル数とエポックとの最適比P
*/Tに対するTとMの影響を示していることを意味する。
【0079】
QSM分散行列が一般に、T×T正方符号化行列により特徴付けられるSTBCに基づいて構成されていることも想起されたい。その結果、QSMがSE最適であるためにはPがnTに比例する必要があれば、基盤STBC自体がSE最適性を維持するために符号のサイズTもそうでなければならない。換言すれば、式(14)はまた、SE最適性を実現するには、M-aryシンボルを搬送するQSM方式が、サイズが送信アンテナ数nTに比例する基盤フルレートSTBCを採用しなければならないことを示唆する。
【0080】
T=n
Tを設定することは、送信器を同数のRFチェーンで補強することを示唆し、実現不可能な程度に高価になり得るだけでなく、完全に密な信号が生じ、これもまた実現不可能な程度に複雑なML受信器を必要とするため、スケーラブルな提案ではないことに注意されたい。この考察は、異なるサイズのSTBCを採用したQSM方式により得られるP
*で生じる実現可能な最大スペクトル効率ζ
*の一部を異なるMについてn
Tの関数として示す
図4で与える比較の動機付けとなる。充分に大きいが依然としてn
Tよりも顕著に小さいTでのQSM方式もまた、n
Tが充分に大きければ最適に近いSEを漸近的に実現することがわかる。
【0081】
図4に、異なるサイズのTとMについて、フラクショナルピークスペクトル効率の挙動をn
Tの関数として示す。
【0082】
これらの結果を見て、次セクションでは、任意のサイズの最適なSTBCに基づいてQSM分散行列を構築する仕方の説明と共に、送信中の選択に使用される指標ベクトルの関連付けられた組を取得する新たな体系的な機構の両方を含む新たなQSM送信器設計を紹介する。説明が分かり易いように、最初に簡単な2×2の例を挙げて最適な多様性利得用の分散指標の集合の構築を紹介する。一般化されたTへの当該方式の拡張が後に続く。
【0083】
B.ゴールデン(2×2)分散行列及び最適指標の集合
提案する分散行列の構成について説明する前に、一般性を損なうことなく、且つ既存の方法との比較を容易にすべく、式(2)による送信信号行列Xが、単位平均出力シンボルを有するコンステレーションの下で
【数47】
であるように各能動送信アンテナ毎の単位平均送信出力制約を満足すると仮定する。次いで、4つのシンボル{s1,s2,s3,s4}を行列にコンパクトに符号化する2×2ゴールデンコードを考える。
【数48】
ここで、θ及び
【数49】
は相補ゴールデン数
【数50】
を各々表し、
α=1+j(1-θ)及び
【数51】
はガウス整数コンステレーションの集合の最適化された係数である。
【0084】
後者のゴールデンコードに基づくQSM分散行列の構築は、S
Gを補助行列C
i及びD
iへの分解から続き、これらを用いて、各々の符号化されたi番目のシンボルの実部S
i
Rと虚部S
i
Iを変調し、
【数52】
ここで、
【数53】
但し
【数54】
であり、循環下方シフト行列Mnを所与の行列Xに乗算した結果、Xの列が左へ循環的にシフトすることに注意されたい。上述の補助行列が得られたならば、ゴールデン分散行列は次いで同様の戦略に従いクロネッカー積演算を用いて構築される。すなわち
【数55】
【0085】
式(18)のスケーリング係数に関して、分母1/Sqrt(5)は式(15)及び式(16)と同様にゴールデンコードの係数から引き継がれるのに対し、分子Sqrt(2)は送信出力制約
【数56】
を満たすために必要な出力スケーリングの結果である。より詳細には、式(2)及び式(18)から、
【数57】
は、分散行列が全てのq∈{1,・・・,Q}について
【数58】
を満たす必要があることを示唆しているのに対し、式(17)により補助行列C
i及びD
iの構築から
【数59】
が明らかであるため、C
i及びD
iへの冪乗スケーリングT=2、すなわち、C
i及びD
iへの振幅スケーリング√2が必要である。
【0086】
ゴールデンコードは、EDA-QSM方式で採用されているSSB符号よりも高性能であることが知られている一方、後者に極めて類似した構造を有しているため、上述のように分散行列の構築に利用すること自体が、シミュレーションによる比較を通じて後で示すように、サブセクションII-Bで簡単に述べたQSM方式よりも性能を必然的に向上させる。
【0087】
しかし、STBCを採用したQSM方式の性能を向上させる、すなわち、各々の符号化されたシンボルの実及び虚部にどの分散行列を割り当てるかを決定する
【数60】
の指標ベクトルの選択を最適化する別の機構がある。この理由は、各指標ベクトルk
nが、式(17)及び式(18)によれば、空間的に符号化されたビットの所与の組の送信に際してQSM方式により利用される時空間リソースの異なる部分集合に関連付けられているからである。この問題を説明すべく、全ての別々の
【数61】
指標ベクトルを所与のペア(P,Q)について定義し、P=3且つQ=2n
T=8のケースを表Iにまとめた対応例を考える。
【0088】
また、
【数62】
の送信における各分散行列は、式(17)及び式(18)のように、所与の2対のアンテナと時間スロットを使用し、簡潔のため以降、1つのアンテナと1つの時間スロットの各ペアを単に時空リソースrqと称し、同じく将来の便宜のため、利用可能且つ利用されている各々R
*及びRと表記する全ての時空間リソースの集合を定義する。従って、リソース及び分散行列指標を各々長方形及び円形のノードで表せば、問題のケース(すなわち、P=3及びQ=8)について、円形ノードと矩形ノードを結ぶ辺により対応するリソースが所与の分散行列により使用されていることを示す
図5に示すような二部グラフを構築することができる。
【0089】
図5は、P=3及びQ=8のQSMシステムにおいて各指標ベクトルk
nに関連付けられた時空間リソースの使用を表す二部グラフである。k
1、k
37、k
54の特定の例を明示的に示す。
【0090】
同グラフが示すように、K*からの所与の指標集合knの集合Kへの包含は、対応する指標を囲む枠で挟まれたグラフの辺により識別される特定のリソースの使用に、時には多重度に関連付けられている。従って表記kn⇒rnを用いて指標集合knがリソースrnの使用を示唆し、μkn(rq)を用いて集合k内でのリソースrnの多重度を示す。
【0091】
例えば、リソースr1={2×(1,1),(1,2),(2,1),2×(2,2)}の使用はK内にk1=[1,2,3]を有していることの結果であり、簡潔にk1⇒r1、μk1(1,1)=μk1(2,2)=2書くことができる。同様に、k37=[3,4,5]⇒r37={(1,1),(1,2),(2,1),(2,2),(3,1),(4,2)}、及びk54=[5,6,8]⇒r54={(3,1),2×(3,2),2×(4,1),(4,2)}、μr37(3,2)=μr37(4,1)=2である。
【0092】
上記の全てから明らかなように、時空間リソースの冗長性及び不均一な利用を回避してQSM方式の性能を最適化するには分散行列指標K(対応するリソース集合Rと共に)が以下の条件を満たさなければならない。
a)集合内のどの2つの指標ベクトルkとk
mも等しくなり得ない(すなわちk
n≠k
m,∀n≠m);
b)各指標ベクトルのどの2つの要素も等しくなり得ない(すなわち[k
n]
i≠[k
n]
j,∀k
n、且つi≠j);
c)利用可能な全てのリソースの利用を保証しなければならない(すなわちμ
K(r
q)>0∀r
q∈R);
d)全てのリソースが同じ頻度で利用される(すなわち、μ
K(r
1)=・・・=μ
K(r
Q))、及び最後に
e)コードワード(すなわち、
【数63】
)の符号化を可能にするには集合のカーディナリティは2のべき乗でなければならない。
【0093】
一例として、表Iに指標ベクトルの集合K={k1,k2,k3,k5,・・・,k8,k10,k11,k19,・・・,k23,k26,k27,k28,k35,・・・,k38,k41,k42,k47,k48,k50,・・・,k56}を強調表示する。読者は、このKの選択により、関連付けられた集合Rの多重度が24であることが検証できる。対照的に、表Iの最初の32個の指標ベクトルを素朴に切り捨てた場合、すなわちK={k1,・・・,k32}は、μK(1,1)=μK(2,2)=32,μK(1,2)=μK(2,1)=28,μK(3,1)=μK(4,2)=19及びμK(3,2)=μK(4,1)=17である不均等な利用パターンにつながり、これはアンテナ1と2をアンテナ3と4よりもはるかに頻繁に使用することになるため、明らかに最適に達していない。上で述べて図示したように最適な集合Kを選択する問題は頂点被覆問題として知られる組み合わせグラフ理論における古典的な問題に関連する。しかし、本明細書の文脈では、この問題には、a)問題のグラフが二部グラフである、b)等多重度での被覆が必要である、及びc)部分集合でノードを一度に3つ選択しなければならないという問題がある。
【0094】
【0095】
【0096】
これらの特異性から、この問題自体が知られる限り根源的であってVertex Coverアルゴリズムの既知のバリエーションでは解くことができない。幸いなことに、関連付けられた二部グラフの高対称性構造を利用して手元の選択問題を解く効率的な方法を設計することができる。その目的のため、表記法を若干流用して分散行列指標である集合K内のqの多重度をμ
K(q)として定義する(分散行列指標は単独の数であるのに対し、時空間リソースはペアであるため、リソースの多重度の定義に曖昧さが無いことに注意されたい)。従って、グラフの対称性により、
図5に見られるように、μ
K(1)=・・・=μ
K(Q)である解Kは、各々の時空リソース{(1,1),(1,2),(2,1),(2,2),(3,1),(4,2)}が同じ多重度を有する解Rを意味する。その結果、この問題は、方法1で説明したように、指標の貪欲選択により効率的に解くことができる。
【0097】
C.最適な一般化設計(T×T)
P、T及びnTにおいて一般的である上述の貪欲最適指標ベクトル選択アルゴリズムにより、QSMを任意のTに一般化することを妨げる最後の阻害要因は、任意のサイズのSTBCに基づく分散行列の構築である。この障害は、完全なFDFR STBCに基づくQSM分散行列の設計を考慮することにより解消される。
【0098】
T×T FDFR STBCはT
2のシンボルを符号化して、アンテナ毎に送信される平均エネルギーが単位に正規化され、エネルギー効率化制約が強制され、符号化利得のSE保存下界(別名、非ゼロ化行列式)が最大化されるようにする。最終的に、所与のT∈N+に対して設計は次式で記述される。
【数64】
ここで、s
t=[s
(1+(t-1)T),s
(2+(t-1)T),・・・,s
tT]
Tであり、t={1,・・・,T}は各々がT個の別々の送信シンボルを搬送するベクトルであり、RはT×T最適格子生成行列、J
T,nは同一行列の最後のn個の対角エントリを初等複素数jで代替することにより構築されたT×T行列であり、N
TはT×T周期的上方シフト行列である。(J
T,nは式17で用いたJ
2,1を一般化したものであることに注意)。次いで、M
nとは逆に、N
nはI
nの最上行を最下行へ循環シフトすることで得られる。いくつかの例が
【数65】
であり、後で所与の行列Xに乗算することによりXの列が右にシフトされる。
【0099】
完全FDFR STBCは2×2ゴールデンコードを完全に一般化することに注意されたい。これを見るには、T=2のケースを考えれば充分であり、対応する格子生成行列
【数66】
により、式(19)から次式が得られる。
【数67】
【0100】
上記から、QSMの設計に完全FDFR STBCを採用するには、式(19)のコア符号構造を、対称性により対応する補助分散行列C
i及びD
i、すなわち
【数68】
及びD
i=jC
iに分解すれば充分であり、ここで、一般化された指標i∈{1,・・・,T
2}がt∈{1,・・・,T}及びw∈{1,・・・,T}に構築され、e
tはI
Tのt番目の列である。
【0101】
これに続いて、分散行列の全集合A及びBを次式のように構築することができ、
【数69】
ここで、再び式(21)からq∈{1,・・・,Q}、i∈{1,・・・,T2}、e
lはI
LI番目の列であるが、l∈{1,・・・,L}、
【数70】
であると共に、分散行列のべき乗を調整すべく一般化されたスケーリング係数γが特定のSTBCに応じて
【数71】
のように決定される。
【0102】
次に、サブセクションIII-Bで説明した方法をそのまま一般化して指標ベクトルKの最適な集合の構築に目を向ける。実際、式(21)を調べることにより分かるように、各補助行列Ci及びDiは、RのT個の非ゼロ要素だけを含む対角行列の周期的回転から得られるT×T疎行列である。
【0103】
【0104】
その結果、式(22)から得られる関連付けられた分散行列は全て、使用するT時空リソースに対応する非ゼロ要素だけを有する疎行列である。換言すれば、サブセクションIII-BのゴールデンQSM方式では各分散行列指標qに2つのリソースが関連付けられるのに対し、ここで述べる完全STBCに基づく構築では各指標qはT個のリソースに関連付けられているため、
図5に示す対応する二部グラフは単にT・n
T個の指標(円形)ノード及びT・n
T個の指標(矩形)ノードに拡張され、各リソースノードは指標ノードに接続され、その逆も同様である。その結果、アルゴリズム1が一般的なTに適用できるという事実に証明されるように、先に述べた貪欲戦略は依然として妥当である。読者の便宜のため、方法2において提案する拡張可能なQSM方式の構造を要約する。
【0105】
IV.提案する受信器の設計
A.QSM受信器の疎定式化
上で紹介した方法1及び2は共に、OS-QSM送信器の設計が可能且つ扱いやすいことを示す。しかし、実現可能性無しに真のスケーラビリティはなく、従ってタスクを完了するためには、提案するOS-QSM設計が合理的な複雑度で効果的に復号可能であることを示すことも必要である。
【0106】
この課題は具体的に言えば、所与のP、M、T及びn
T、Q=T・n
Tに対して、ML受信器は、
【数72】
個のシンボルと選択された時空間リソースの組み合わせを介して、
【数73】
ビットを検出しなければならない。これは、たとえT=2、P=2及びM=4の最小設定に対しても、n
T=8の送信アンテナを有するシステムは受信器が対応するlog
2(16.777.216)=24ビットを復号化するために、
【数74】
通りの組み合わせを調べる必要があることを意味する。換言すれば、ML復号化はQSMシステム、特に大規模MIMOシステムにおいて極めて実現不可能である。
【0107】
この課題が、サブセクションIII-BのOS-QSM方式だけでなく、上で挙げた例として後者で用いられるコア符号のサイズであるT=2のように[20]~[23]のような現在のSotA QSM方式にも当てはまることを強調する。更に、大規模なシステムでは木探索アルゴリズムの性質上依然として過大な計算の複雑度を必要とするため、SD受信器の利用がスケーリングされたケースでは不可能なことも強調する。最後に、高速復号可能性及びブロック対角性等の便利な特性は、任意のサイズのSTBCの最適性を犠牲にすることなく保持できないことが知られているため、QSM方式用のスケーラブルな検出器はそのような特徴に依存することはできないことも述べる。
【0108】
上記を踏まえて、以下では、木探索にも、又はSTBCの特定の特性にも依存せず、実現不可能な組み合わせ要素
【数75】
から完全に独立した新たなQSM方式の検出方法を紹介する。更に、符号化構築に関する事前情報があれば、提案する復号器は任意のQSM信号を検出可能である。
【0109】
我々のアプローチの中核をなす考えは、受信器で既知と仮定される、全チャネル(すなわち、利用可能な全ての時空間的リソース)にわたるQSM信号の疎表現を最大限に利用することである。提案する復号化手法は従って、反復縮小二値化アルゴリズム(ISTA)を利用してシンボル及び分散指標推定値を貪欲に抽出し、結果的にML及びSDに基づく方法と比較して顕著に複雑度低減する。そのために、最初に式(1)と式(2)を組み合わせて、QSM受信信号のベクトル化形式
【数76】
を考え、ここでブロック対角チャネル行列Φ
H及びベクトル化ノイズvを暗黙的に定義し、A及びBの分散行列も
【数77】
ベクトル化されて、各々
【数78】
に連結され、
【数79】
(又は
【数80】
)は、次式で設定される自身の指標の要素k
R∈K(又はk
I∈K)を除いて全てゼロに設定される。
【数81】
(又は
【数82】
)
【0110】
式(23)は、組み合わされた実虚部の分離情報及びノイズベクトルを定義することにより、次式のように更に簡略化することができ、
【数83】
並びにa
qとb
qの分離バージョン、すなわち
【数84】
も次式のように単一の分散行列
【数85】
にまとめることができ、
【数86】
従って式(23)のベクトル化されたシステムモデルは次式のように書き直すことができ、
【数87】
ここで、
【数88】
は直交演算されたブロック対角チャネル行列Φ
Hであり、将来の便宜のため、有効チャネル行列
【数89】
と同様にΦ
Hと暗黙的に再ラベル付けした。
【0111】
式(27)を具体的に説明するために、P=3,T=2及びn
T=4であるシステムを考え、特定のビットシーケンスb=[b
R,b
I,b
S]に対して、選択された指標ベクトルはk
R=k
10=[1,3,7]及びk
I=k
47=[4,5,7]で与えられる。従って、対応する結合情報ベクトルは次式になる。
【数90】
uがエントリ
【数91】
内に、b
S部分列に対応するPlog
2Mビットを担持しているのに対し、部分列b
R及びb
Iに対応する2log
2Nビットは、
【数92】
の値に依らずu内の非ゼロ要素の位置だけにより符号化され、これはb
Sの検出がb
R及びb
Iの検出とは別々に行われ得ることを示唆することに注意されたい。
【0112】
原理的に、後者の特徴を用いて、EDA-QSM方式でブロック分離可能性を利用したのと同様に、上で提案したOS-QSM方法用のSD受信器を設計することができる。このアプローチの問題は無論、分離されたシンボルベクトル
【数93】
の2P個の要素をuの2Q個のエントリ内にどのように配置できるかという組み合わせが実現不可能な程度に多いことである。この問題を回避すべく、代替的に、サブセクションIII-Aで提示した事実、すなわち、a)SEを最大化するシンボルの最適な個数P
*は式(12)のように総時空間リソースQ=T・n
Tの分数であり、及びb)n
T>>1である大規模システムにおいてSE最適性を漸近的に実現するには
図4に示すように大幅に小さいブロックサイズTで充分であることの活用を考える。これらの事実が相まって、uの疎性が大規模SE最適QSM方式において益々顕著になり、従って疎復元アルゴリズムが有利になる。また、式(27)を吟味すれば行列Φ
HとΨ
Dは各々圧縮感知(CS)モデルに典型的な検出及び辞書行列であると解釈できるため、疎且つ離散対応受信器の昨今の進歩を活用できる。
【0113】
受信器側で複雑度の抑制につながるスケーラブル性への注目を考慮に入れて、OS-QSM復調への適用に適した二つの候補方法として、一般化近似メッセージ伝搬(GAMP)アルゴリズム、及び反復縮小二値化アルゴリズム(ISTA)があり、その両方が信号ベクトルuのサイズ2TnTの2次オーダーの複雑度を有している。しかし、GAMPアルゴリズムが測定行列の特定の構造、及びQSMの場合は分散行列にSTBCを用いることの直接的結果として一般に仮定できない受信信号の独立性に強く依存していることは公知である。必要な条件が欠けている場合、GAMP受信器の性能が高いSNRSでのエラー床関数により特徴付けられるように低下する。
【0114】
この事実に動機付けられて、続編で記述するQSMシステム用の複雑度が低い復調器の設計におけるISTAに基づくアプローチが従って選択された。特に、二値化関数、及び指標ベクトル推定プロセスの両方に変更を施すISTA専用のバリエーションに基づく、QSM信号を検出する、QSM検出に特化した方法を紹介する。
【0115】
B.貪欲箱詰ISTAに基づくQSM復号器
以下の標準的なISTA再帰を考える。
【数94】
ここで、
【数95】
はuのη番目反復での推定値、α=maxeig(G
TG)は縮小ステップサイズ(実際の用件はα>maxeig(G
TG)であるが、最小ステップサイズを仮定すれば充分である)、λは閾値係数、Λ(s;τ)はソフト二値化関数である。式(28)の標準的なISTA再帰式への最初の有意味な変更は、実数値射影コンステレーションにおけるシンボル
【数96】
が有限であるという事実を考慮することにより、解における疎性の強化に用いる原点の近傍の下限Tに加え、上限max(S
R)を二値化関数に導入することができる。換言すれば、今回のケースではISTAの標準的なソフト二値化関数Λ(s;τ)をハード二値化関数に置き換えることで
図6に示して次式で定義される「箱詰された」ハード二値化関数Π(s;τ)で置き換える。
【数97】
【0116】
図6は、ISTA二値化とBH-ISTA二値化関数Λ(s;τ)、Π(s;τ)の比較である(29)。
【0117】
この変更を組み込むことで箱詰ハードISTA(BH-ISTA)受信器は次式で定義される。
【数98】
【0118】
式30を繰り返し評価する計算コストは、項
【数99】
が支配的であり、従って
【数100】
の非ゼロエントリ(すなわち第l
0ノルム)の個数に対し2次オーダーであるため、
図7に示すように反復ηに従い減少する。
【0119】
図7に、
【数101】
式(28)及び(30)による、の収束を各々反復ηの関数として示す。
【0120】
【0121】
図7(b)は最適な閾値に対するMSEの収束である。
【0122】
特に、
図7(a)は、
【数102】
の収束の比較を、閾値パラメータTの様々な値に対するηの関数として示し、
【数103】
は式(28)と(30)の両方から、すなわち従来型とBH-ISTAの各々を介して得られ、以降便宜的に次のように表記する。
【数104】
【0123】
実際、箱詰とハード二値化の結果として、
【数105】
であることが分かるため、式28の評価に関連付けられた複雑度の期待オーダーが、(30)の評価よりも低く、上下限(O(4P
2)及びO(4Q
2))により上下から抑えることができる。
【0124】
更なる詳細をセクションV~Aで述べる。
図7(b)に、提案するBH-ISTAアプローチで得られた平均二乗誤差(MSE)が、従来のISTAで得られるものよりも良いことを示しており、本明細書でQSM信号の復調用に提案した箱型及びハード二値化変更が有効であることを示す。しかし、分散行列指標{k
R,k
I}∈Kの選択に関連付けられたビットを如何に効率的に検出できるかの対策が残されている。この目的のため、ISTAに基づく疎検出器に別の追加を導入、すなわち、回収された各シンボルに対する貪欲ハード検出プロシージャ、及び付随する式(30)の更新であり、以下のように記述できる。
【0125】
式(30)で表されるBH-ISTA反復を複数回実行し、m回目の実行の前にy、G及びuに変更が加えて、以下のように式(30)を書き換えることにより表すことができるものと考える。
【数106】
ここで、1回目の実行(m=1)でy
1=y、G
1=G及び
【数107】
を設定するものとする。
【0126】
η
*を後者の推定量のm回目の実行の最後の反復とし、その対応する結果を
【数108】
とする。最後に、
【数109】
を
【数110】
のエントリとし、その最大振幅の位置を
【数111】
と表記すると、次式のように書くことができる。
【数112】
ここで、[x]
lは汎用ベクトルの第l要素を表す。式(32)に要約した貪欲プロシージャにおいて、ビットシーケンスb、具体的にはソフト推定
【数113】
すなわち変調シンボル
【数114】
の1つであるソフト推定と、ハード推定
【数115】
すなわち選択された指標集合{k
R,k
I}∈Kに含まれる指標の1つのハード推定が得られることを強調する。このような情報を得て、式(31)で記述されるBH-ISTA再帰の次の実行に必要な変更量を生成すべく以下のステップが実行される。
【0127】
最初に、
【数116】
のハード検出されたバージョンがS
Rへの射影により得られる。すなわち
【数117】
【0128】
次いで、残りの量が
【数118】
に従い更新される。ここで、I
2Qはサイズ2Qの単位行列であり、
【数119】
はその
【数120】
列である。疎ベクトルuの2次分離構造に起因して、全ての奇数指標推定値q^mが変調されたシンボルの実部に対応し、偶数
【数121】
は虚部に対応する。従って、式(31)~(35)が繰り返し評価されるに従い、得られた指標推定値
【数122】
が相応にサブシーケンス
【数123】
に分割されて収集され、ここで、mod(x,2)はxに対するモジュロ2演算を表す。
【0129】
検出プロセス中にエラーが無ければ、丁度m=2P回実行された後で、シーケンス
【数124】
は、特に
【数125】
を介して{k
R,k
I}に完全にマッピングできるためプロシージャは停止する。
【0130】
しかし、より一般に、エラーが発生する可能性があり、例えば
【数126】
のいずれか或いは両方が、カーディナリティPと同等の不正確な指標を含んでいる場合がある。このような場合、プロシージャは、両方のサブシーケンスが分散行列指標ベクトル集合Kに含まれる最初のp組の指標を含むようになるまで継続し、この時点で以下のように記述できる更新式を変更する必要がある。
【0131】
P
K(q)をシーケンスqの集合Kへの射影とすると、Kからのシーケンスをqが含んでいるか否かに応じて、シーケンスk∈K又は空集合φのいずれかが射影により返却される。qの要素の組み合わせに複数の実行可能なk∈Kが存在する場合、貪欲選択の意図が伴うようにq(要素値自体ではなく)内で下位指標を有する実行可能な要素が優先される。従って、式(34)は次式のように展開できる。
【数127】
【0132】
平たく言えば、式(37)は、BH-ISTA検出器のm回目の実行後に、次の実行のための推定ベクトル
【数128】
の初期状態は、
a)
【数129】
のいずれもKに射影できない場合最新の推定シンボルを削除することにより更新され、これが生じるのは、k
R又はk
Iの有効な推定値を決定するには取得された指標の個数が不充分(P個未満)であるか、又はk∈Kの有効な指標の組み合わせをいずれも含んでいない、又は
b)
【数130】
のKへの射影から
【数131】
のハード決定が確認されたならばq∈{1,3,・・・,2Q-3,2Q-1}の全ての奇数エントリをヌルにすることにより更新、これは分離プロシージャ全体を通じて1回しか起こらない、又はc)
【数132】
のKへの射影から
【数133】
のKへのハード決定から確認されたならばq∈{2,4,・・・,2Q-2,2Q}の全ての偶数エントリをヌルにすることにより更新、これも分離プロシージャ全体を通じて1回しか起こらない、又は
c)
【数134】
のKへの射影から
【数135】
のKへのハード決定から確認されたならばq∈{2,4,・・・,2Q-2,2Q}の全ての偶数エントリをヌルにすることにより更新、これも分離プロシージャ全体を通じて1回しか起こらない。
【0133】
明らかに、上以外の他の唯一の代替策は、
【数136】
の両方が取得されていて、その結果シンボル推定値の全体集合
【数137】
も取得されていることであり、その場合プロシージャは停止される。
【0134】
上と同様に、y
mとG
mの更新もまた、ハード決定の
【数138】
への影響を考慮して修正することにより、ハード決定された指標及びシンボルの影響を相殺して、確認された指標に対応するチャネルをヌルにして、次式が各々得られるようにしなければならない。
【数139】
【0135】
図8は、提案するQSM復調用GB-ISTA受信器の構造を示す模式図である。
【0136】
式(31)~(33)及び式(35)~(39)に記述するプロシージャは、先に紹介したGB-ISTA検出器を貪欲に、すなわちシンボルを1つずつ及び指標集合を1つずつ変更するものであり、QSM復調用の貪欲箱詰反復縮小二値化アルゴリズムと呼ばれている。
【0137】
プロセスの終了時点で、選択された分散行列の指標ベクトルの推定値
【数140】
並びに変調されたシンボルのハードデシジョン推定値
【数141】
が得られ、そこから対応する符号化ビットb=[b
R,b
I,b
S]を球検出や網羅的最尤探索の複雑度の何分の一かで取り出すことができることに注意されたい。提案するGB-ISTA QSM受信器を描いた図面を
図8に示し、擬似符号の形式で方法3に要約する。
図8は、QSM復調用に提案するGB-ISTA受信器の構造を示す模式図である。
【0138】
【0139】
V.複雑度及び性能分析
本セクションでは、提案するOS-QSMの性能をコンピュータシミュレーションにより解析する。システムのスケーラビリティに注目しているため、提示する全てのシミュレーション結果が、各々のシミュレーション実験の主な知見を強調するため送信アンテナ数が比較的多く(すなわちnT≧6)、送信スロット数が増加している(すなわちT≧2)、デジタル変調された送信シンボル数P及びケースバイケースで調整された対応するコンステレーションMに関するものである。発明者らの知る限り、このようなパラメータを用いるQSM方式のシミュレーション結果は、既存の受信器の計算の複雑度が高いためにこれまで文献に現れていない。
【0140】
A.複雑度:GB-ISTA対ML及びSCMB-SD受信器
後者の観点から、スケーリングされたQSMシステムの復号化の複雑度を、特に従来のML及びSCMB-SDアプローチ、並びにセクションIVで記述した提案するGB-ISTAアルゴリズムの複雑度のオーダーを導出することにより評価することから始める。
【0141】
任意のn
T、T及びPに対して、力任せ的ML復号器は、s∈SP内のP個のデジタル変調されたシンボルの実部と虚部を送信すべく{k
R,k
I}∈Kに従い独立に選択された全ての可能な
【数142】
アンテナ活性化パターン内での探索と共に、カーディナリティMのコンステレーションSから選択された全ての可能なP組のシンボルの別の探索を必要とする。
理想及び簡素さを求めて,各探索が1回の浮動小数点演算(フロップ)を行うものと仮定すれば、
【数143】
ビットを検索するにはML探索プロセスだけで、
【数144】
を下界とする複雑度のオーダーとなり、これはたとえPとMが適度に小さくても直ちに実行不可能になる。例えば、n
T=6、T=3、P=3及びM=4の比較的小さなシステムで各送信信号の24ビットを検出するためには16.777.216通りの組み合わせの探索が必要である。他のパラメータは変えずに送信アンテナの個数を2倍のn
T=12にするだけで、毎送信30ビットへの緩やかな増加に対してML探索空間の複雑度は既に10
9通りの組み合わせに急増している一方、n
T=6を維持したまま、送信シンボル数をP=6に倍増すると僅か40ビットを検出するために10
12通りの組み合わせの探索が必要になる。各ML探索の実行に要する最も重要な演算を考慮すれば、QSM方式の各ビットを復号化するML受信器の複雑度のオーダーは、高次の項だけを保持し、係数を無視した場合に得られる下界と等しくなる。
【数145】
【0142】
QSMシステムのMLに基づく検出の実際の不可能性を式(40)により明確に強調しており、これは送信シンボルの個数Pが全ての理論的にスケーラブルな量n
T、T及びMの複雑度のオーダーの指数であるという事実を露呈しているからである。次に、この課題がSDアプローチでは満足なレベルまで緩和できないことを示す。そのために、再び理想及び簡素さために、SDが探索半径を単一シンボルまで縮小できるため、式(40)の係数MPは無視できるものと考える。換言すれば、SDに基づくQSM受信器に関連付けられた複雑度のオーダーは高々次式まで下げられることが分かった。
【数146】
【0143】
後者から、スケーラブルQSM方式に関して、SDの唯一の利点は、デジタルコンステレーションカーディナリティMをスケーリング可能することであり、これは対応するBERに悪影響を及ぼすだけでなく、システムのSEを増加させる最重要な要因でもない。その理由はQSM方式が搬送する総ビット数が
【数147】
であるため、適度に大きいn
T、T及びPであっても
【数148】
となるからである。要するに、受信器の観点から、球検出はスペクトル効率に優れたスケーラブルQSMの実現には特に有用ではないと結論付けられる。
【0144】
最後に、提案するGB-ISTAの計算複雑度について述べる。始めに、式(31)~(36)からGB-ISTA受信器が空間的に符号化されたビットbRとbIを探索からではなく、疎復元プロセスから、すなわちu^の非ゼロ要素の値と位置から直接得られる。このような組み合わせ探索を削除した結果として、スケーラブルなパラメータnT、T及びPのGB-ISTAに与える影響は、方法3のステップの以下の複雑度解析に示すように著しく小さい。
【0145】
1)方法3は、式(27)で与えた有効行列Gを入力とし、その構築は、1行当たり2n
T個の非ゼロ要素を含む疎ブロック対角行列
【数149】
と、1列当たりT個の非ゼロ要素を有する行列
【数150】
の積を評価する必要があり、典型的に(スケーリングされたQSM方式で)T<<2n
Tであるため、これには2T(2Tn
R)(2Tn
T)=8T
3n
Tn
Rフロップが必要である。
【0146】
2)次に、GB-ISTA受信器は式(31)の評価を複数回実行し、その最初のステップは
【数151】
を計算することである。方法3の1行目によるαの計算コストは、大規模なシステムでは、最大の固有値GTGは、Gの構造とエネルギーだけに依存する定数にほぼ確実に収束するという主張の下で無視される。
【0147】
この演算の完了には(2Tn
T)(2Tn
R)+(2Tn
R)+(2Tn
R)(2Tn
T)+(2Tn
R)=8T
2n
Tn
R+4Tn
Rフロップを要するが、u^(η)の疎性は
図7(a)に示すように実際の値2Pまで素早く減少するため、このステップの複雑度はより正確には8PTn
R+4Tn
R=4Tn
R(2P+1)フロップと推定される。次いで、箱詰ハード二値化関数Πに必要な2Tn
Tフロップ数を含めるステップとη
*回の反復を記憶するステップが必要であり、式(31)の各評価実行に伴う総コストはη
*(4Tn
R(2P+1)+2Tn
T)フロップと推定される。
3)式(31)の収束後、受信器は疎推定ベクトル
【数152】
を取得し、そこからソフトシンボル推定値
【数153】
が、最大値探索44を介して無視できるコストで、式(32)で表されるように、
【数154】
における
【数155】
の位置で与えられる推定指標
【数156】
と共に抽出される。これらの量を得て、最大√Mフロップを費して、式(33)によりハードシンボル推定値
【数157】
を取得する。
【0148】
4)式(37)~39で表される要素、干渉、列除去のコストが無視できると考えて、受信器の次の重要なコストは取得された指標の検証である。特に、少なくともP回の実行の後で、充分な個数の位置指標
【数158】
が、指標サブシーケンス
【数159】
のいずれか又は両方を構築して、それらを対応する推定指標ベクトル
【数160】
に式3に従いマッピングするために検出されていれば、前記推定値を最適な指標ベクトルの集合Kに対して検証する必要がある。このような演算のコストがオーダーO(1)であると仮定すれば、このステップはPフロップの追加的コストでGB-ISTA検出器の総複雑度に寄与する。
【0149】
5)最後に、アルゴリズム3の11行目に記述されているように、GB-ISTAは推定指標ベクトル
【数161】
のペアの両方、並びにデジタル的に変調されたシンボルベクトル推定値
【数162】
を出力するが、これは推定コストPフロップで実部と虚部のインターカレーションを必要とする。
【0150】
以上から、GB-ISTAの総複雑度オーダーは次式のように推定できる。
【数163】
【0151】
式(40)及び(42)の数式を送信毎に検出されたビット数
【数164】
で除算することにより得られる、ML復号器及び提案するGB-ISTA復号器の1ビット当たりの複雑度のオーダーを、スケーラブルなパラメータn
T、T及びPの観点から様々な設定について
図9で比較している。
【0152】
図9にスケーラブルパラメータがQSM受信器の複雑度に及ぼす影響を示す。
図9(a)に固定P、可変Tをn
Tの関数として示す。
図9(b)に固定T、可変Pをn
Tの関数として示す。
図9(c)に固定n
T、可変TをPの関数として示す。
【0153】
B.提案するOS-QSM方式のBER性能
上で示すように、GB-ISTAの方がML検出よりも複雑度が大幅に軽減されたことに力を得て、GB-ISTAを介して復号化された提案するOS-QSM方式のBER性能を評価する。一般に、発明者らのシミュレーション実験は、提案するOS-QSMが比較的多数の送信アンテナで実現可能であり、送信毎に比較的少ない時空間リソースを用いながらむしろ高いスペクトル効率で、極めて低いBERを極めて低いE/Nb0で実現できることを更に提示することを目的としている。
【0154】
図10は、固定SEを用いたGB-ISTA検出されたOS-QSM方式のBER性能に対するスケーラビリティの影響である。
【0155】
そのため、
図10に示す最初の結果の組は、全ての曲線が同一スペクトル効率を有するシステムに対応するように比P/Tを一定に保ち、且つMを調整して、様々なn
T、T及びPについて提案する方法のBER性能を比較した。T=2の曲線は、SotA EDA-QSM方式に対応する基準とみなすことができるが、図示する結果には、サブセクションIII-Bで説明した機能強化に起因する改善、すなわち、a)ブロック毎の球復号化可能なFDFR-STBCとは対照的に最適ゴールデンコード、及びb)方法1で与えた、指標ベクトル集合Kの最適な構築を使用することが実際に組み込まれていることを述べる。
【0156】
図10の結果から二つの重要な事実を学ぶことができる。一つ目は、受信アンテナの個数がむしろ多い(n
R=12)という事実にかかわらず、スケーリングによりBERが顕著に向上することである。これは、利得がダイバーシティの増加に起因するだけでなく(既に受信多様性が大きいため)、OS-QSM設計で採用した最適なFDFR-STBCの利用から得られる符号化利得にも起因することを示す。二つ目は、図示する結果が、通常のコンピュータを用いて(すなわち、特に強力なマシンを一切必要とせず)、むしろ低いBERまで、且つML又はSDに基づく受信器では事実上シミュレート不可能な設定に対して実際にシミュレートされたことである。後者の点は、提案するGB-ISTA受信器の真の実現可能性を更に強調するn
T=12のシステムの曲線を含む
図10の右側の結果により強調される。
【0157】
しかし
図10の結果について生じ得る一つの批判は、これにより採用されたPの値が、式(14)に従い対応するTとn
Tに対して最適なものではないことである。
図10で用いるパラメータ化は、同一条件下で直接比較できるように全てのシステムが同じSEを有していることを再び明確にし、これはちなみに、全ての曲線がSNRではなくEb/N0に対してプロットされている理由でもある。
【0158】
図11に、GB-ISTA検出されたOS-QSM方式のBER性能に対するPスケーリングの影響を示す。
【0159】
いずれの場合も、提案するOS-QSM設計及び対応するGB-ISTA受信器の、低BERと組み合わされた実現可能且つ最適化されたスペクトル効率を実際に実現する能力に関する疑念を払拭すべく、
図11に式(14)で与える最適値までPを変化させて得られた追加的結果を示す。式8で与える達成可能なSEの式における床関数演算に起因して式(14)で与える値に隣接するPの値、すなわちP
*、も全く同じSEとなるため最適である。例えば、
図10の場合のように、n
T=6、T=2及びM=4に対して式(14)からP
*=8が得られるが、式(8)では値P={7,8,9}は全てζ=16となることを述べる。同様に、P={10,11,12,13}は全て、
図11の場合と同様にn
T=6、T=3及びM=4での最大SEであるζ=17となる。
【0160】
これらを述べた上で、
図11で得られた結果に目を向けると、Pをアップスケーリングした際のBERの劣化が極めて僅かであり、実際のところ
図11に示すようにTが大きいほど小さくなり、システムのスペクトル効率をほぼ2倍にするために支払う代償として小さく且つ公正であることが分かる。比P/TをSEに向けて最適にアップスケーリングした際に観察されるBERの僅かな劣化は、ベクトル化された受信信号の疎性が相応に低下した結果であり、より高い多様性及び符号化利得を有するシステムでは、n
T,T、又はその両方をアップスケーリングした結果として、さほど深刻でなくなる傾向がある。この傾向は、T=2がT=3に増えるに従いBER曲線間の隙間が狭まるため、実際に
図11に見られる。
【0161】
図12は、提案するコンピュータ実装された空間変調に最適な指標ベクトルの選択方法をフロー図として表現している。
【0162】
本方法は、シンボルの個数P、シンボルスロットの個数T、送信アンテナの個数nTを入力として開始する。第1のステップで有効ベクトルの空集合を生成する。第2のステップで無作為なシードベクトルを追加する。その後、集合内で最も使用頻度が少ない指標を見つけるルーティンを実行する。次のステップで指標を有するベクトルを選択して集合に追加する。次いで、当該集合が最大サイズに達しているか否かをチェックする。最大サイズに達していなければ当該集合内で最も使用頻度が少ない指標を見つけるステップに進む。当該集合が最大サイズに達していれば本方法を終了する。
【0163】
更に、提案する復号器はまた、伝送方式にブロック対角性又は直交性等の設計上の制約を必要とせず、空間変調方式に固有の疎性だけを必要とするため、送信器の開発にも大きな自由度を与える。換言すれば、提案する復号器は多くの異なる符号化構造に対応できる(柔軟性)。
【0164】
本復号器は、アンテナの個数が多く、従ってMLアプローチが実行不可能と思われる任意のMIMOシステムで使用できる。本方式を用いてセルラーネットワーク及びV2X通信(eMBB)の効率を向上できる。
【0165】
本出願は、送信アンテナの個数nT、送信インスタンスの個数T及び符号化されたM-aryシンボルの個数Pと共に、提案するSE、多様性及び符号化利得の観点からの性能最適化にもの観点からのスケーラビリティにも注目した、QSM方式の新たな送信器及び受信器の設計である。出願の動機は、SE最適性を実現するために、QSM方式がSotA方式では不可能なnT、T及びPのスケーリングを行う必要があるという事実が提示されたことにある。送信器側で、新たに提案するOS-QSM方式がSotAの代替方式と異なるのは、その分散行列がFDFR STBSに基づいて設計されていること、及び分散行列の指標選択は新たな貪欲アルゴリズムにより実行され、送信器の全ての時空間リソースが複数回の送信にわたり均等に利用されることが保証される。一方、受信器側では、提案する技術は新たなISTAに基づく受信器により寄与し、QSMシグナリングの疎構造に依存することにより、既存のML又はSDに基づくアプローチを組み合わせた性質を排除し、実現可能性の観点からシステムのスケーリングを更に可能にする。実際に、複雑度の解析が行われ、提案するGB-ISTA受信器の複雑度が、Pを指数としてT及びnTに対して幾何学的複雑度を有するためスケーリングされたシナリオでは実現不可能ML及びSD検出器とは対照的に、Tに対して3次、Pに対して2次、nTに対して線形に過ぎないことが示された。関連文献でこれまで示されたことがないスケーリングの設定でのシミュレーション結果により、提案するOS-QSM方式及びGB-ISTA受信器の高い性能及び実現可能性の両方が裏付けられている。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを構成するコンピュータ実装された最適且つスケーラブルな直交時空間変調(OS-QSM)方法であって、
各々が同相空間コンステレーション内の同相空間コンステレーションシンボル及び直交空間コンステレーション内の直交空間コンステレーションシンボルを表すように複数の送信アンテナを構成するステップと、
前記複数の送信アンテナにより表される前記同相空間コンステレーションシンボル及び前記直交空間コンステレーションシンボルにソースデータをマッピングするステップとを含み、
最適且つスケーラブルな直交空間変調方式(OS-QSM)を適用して結果的に得られた前記直交空間変調の可能な最大の符号化利得が得られること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
箱詰、範囲制限、及びハード二値化による反復縮小二値化アルゴリズム(ISTA)を変更することにより特徴付けられる
、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アンテナ指標の位置及びシンボル推定値の箱詰ハード(ISTA)貪欲選択、及び対応するアンテナ変調及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号化を介して前記反復縮小二値化アルゴリズムを遂行することにより特徴付けられる
、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プロセスが前記貪欲検出と並列に動作する状況で、指標ベクトルの所与の有限集合から前記指標ベクトルの有効な推定値が出力として生成されることを保証し、且つ確認された値で干渉相殺を行い、
前記貪欲選択から取得された指標を追跡しながら、全ての反復の前に、現在復号化されている指標から最終的な確認が計算可能か否かをチェックし、
不可能な場合、前回の前記貪欲選択による干渉を除去して次の反復を行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
シンボルの個数P、シンボルスロットの個数T、送信アンテナの個数n
Tを入力として、
第1の計算において、前記T個のスロットが、規則T×T STBCを介して処理され、前記処理の結果及び前記送信アンテナの個数n
Tが分散行列生成を介して結果の集合A及びBを生成し、前記結果集合A及びB並びに指標ベクトルk
l、k
Rが分散行列起動への入力を構築し、前記分散行列起動の結果が、信号行列Xを決定すべくQSM信号構築により処理される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
プロセッサと、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリと、通信チャネルで信号を受信すべく適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信器(R)であって、前記不揮発性メモリが、マイクロプロセッサにより実行されたならば、請求項1~4
のいずれか1項に記載の方法の1つ以上を実行すべく前記受信器を構成するコンピュータプログラム命令を保存する受信器(R)。
【請求項7】
コンピュータで実行されたならば前記コンピュータに請求項1~4のいずれか
1項に記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項8】
請求項6に記載のコンピュータプログラム製品を保存及び/又は送信するコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
車両に受信器(R)を搭載した通信システムを含む車両ユニットであって、前記システムが請求項1~4のいずれか1項に記載の方法を実行すべく適合されている車両ユニット。
【請求項10】
請求項8に記載の1つ以上の車両ユニットを有する車両。
【国際調査報告】