(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物、特にイヌ科動物における心臓疾患の予防及び/又は治療のためのSGLT-2阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/351 20060101AFI20240717BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240717BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/382 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/7042 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/7034 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61K31/351
A61K45/00
A61P9/04
A61P9/00
A61K31/381
A61K31/382
A61K31/7004
A61K31/7042
A61K31/7034
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504495
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022070898
(87)【国際公開番号】W WO2023006718
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】クロー カーラ
(72)【発明者】
【氏名】ラング インゴ ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】マターロ ホセ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA52
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZC611
4C084ZC612
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086BB01
4C086BB02
4C086BB03
4C086EA08
4C086EA11
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZC61
(57)【要約】
本発明は、ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患の予防法及び/又は治療のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態の使用を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する方法における使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項2】
1種又は複数の心臓疾患が、心不全;うっ血性心不全;無症候性/臨床前/潜在性心不全;(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]に起因する心不全;(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]に起因するうっ血性心不全;(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]に起因する無症候性/臨床前/潜在性心不全;(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];臨床的に明白な(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];無症候性/臨床前/潜在性(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];拡張型心筋症(DCM)に起因する心不全;拡張型心筋症(DCM)に起因するうっ血性心不全;拡張型心筋症(DCM)に起因する無症候性/臨床前/潜在性心不全;拡張型心筋症(DCM);臨床的に明白な拡張型心筋症(DCM);無症候性/臨床前/潜在性拡張型心筋症(DCM);大動脈狭窄(心臓弁膜、弁上及び/又は弁下)からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項3】
1種又は複数の心臓疾患が、(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];臨床的に明白な(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];無症候性/臨床前/潜在性(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];拡張型心筋症(DCM);臨床的に明白な拡張型心筋症(DCM);無症候性/臨床前/潜在性拡張型心筋症(DCM)からなる群から選択される、請求項2に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項4】
1種又は複数の心臓疾患が、(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];臨床的に明白な(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];無症候性/臨床前/潜在性(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]からなる群から選択される、請求項2に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項5】
1種又は複数のSGLT-2阻害剤がグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項6】
1種又は複数のSGLT-2阻害剤が、
(1)式(1)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体
【化1】
(式中、R
1はシアノ、Cl又はメチル(最も好ましくはシアノ)を表し;
R
2は、H、メチル、メトキシ又はヒドロキシ(最も好ましくはH)を表し、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又はシアノを表し、
R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)
又はその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基は、(C
1-
18-アルキル)カルボニル、(C
1-
18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-
3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
(2)式(2)で表されるベラグリフロジン:
【化2】
(3)式(3)で表されるダパグリフロジン:
【化3】
(4)式(4)で表されるカナグリフロジン:
【化4】
(5)式(5)で表されるエンパグリフロジン:
【化5】
(6)式(6)で表されるルセオグリフロジン:
【化6】
(7)式(7)で表されるトホグリフロジン:
【化7】
(8)式(8)で表されるイプラグリフロジン:
【化8】
(9)式(9)で表されるエルツグリフロジン:
【化9】
(10)式(10)で表されるアチグリフロジン:
【化10】
(11)式(11)で表されるレモグリフロジン:
【化11】
(11A)式(11A)で表されるレモグリフロジンエタボネート:
【化12】
(12)式(12)のチオフェン誘導体
【化13】
(式中、Rはメトキシ又はトリフルオロメトキシを表す)
(13)式(13)で表される1-(β-D-グルコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン;
【化14】
(14)式(14)のスピロケタール誘導体:
【化15】
(式中、Rはメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピル又はtert-ブチルを表す);
(15)式(15)のピラゾール-O-グルコシド誘導体
【化16】
(式中、
R
1はC
1-3-アルコキシを表し、
L
1、L
2は互いに独立して、H又はFを表し、
R
6は、H、(C
1-3-アルキル)カルボニル、(C
1-6-アルキル)オキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル又はベンジルを表す);
(16)式(16)で表されるソタグリフロジン:
【化17】
(17)式(17)で表されるセルグリフロジン:
【化18】
(18)式(18)で表される化合物:
【化19】
(式中
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又はシアノを表し、R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)、
又はその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基は、(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
(19)式(19)で表されるベキサグリフロジン:
【化20】
(20)式(20)で表されるジャナグリフロジン:
【化21】
(21)式(21)で表されるレモグリフロジン:
【化22】
(22)ワンパグリフロジン
からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項7】
その薬学的に許容される形態が、1種又は複数のSGLT2阻害剤と、1種又は複数のアミノ酸、好ましくはプロリン、より好ましくはL-プロリンとの結晶性複合体であり、最も好ましくは1種又は複数のSGLT2阻害剤、L-プロリン及び結晶水の共結晶である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項8】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物、特にイヌ科動物が、そのような予防及び/又は治療を必要とするネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物、特にそのような予防及び/又は治療を必要とする患蓄であるイヌ科動物であり、好ましくはそのような予防及び/又は治療を必要とするイヌ、より好ましくはそのような予防及び/又は治療を必要とする非糖尿病性イヌである、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項9】
1種又は複数のSGLT-2阻害剤が、経口的、非経口的、静脈内、皮下、又は筋肉内に、好ましくは経口的に投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項10】
1種又は複数のSGLT-2阻害剤が、1日当たり0.01mg/kg体重~10mg/kg体重の用量で、好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~5mg/kg体重の用量で、より好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~4mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~3mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~2mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~0.5mg/kg体重の用量で、最も好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~0.3mg/kg体重の用量で投与されるものである、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項11】
そのような1種若しくは複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態が1日当たり1回又は1日当たり2回投与されるものである、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項12】
1種又は複数のSGLT-2阻害剤がベラグリフロジンであり、ベラグリフロジンが、単一のSGLT-2阻害剤として、好ましくは経口的に、より好ましくは1日当たり1回又は2回、0.01mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~0.5mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~0.3mg/kg体重の用量で、最も好ましくは1日1回0.05mg/kg体重の用量で投与されるものである、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項13】
ベラグリフロジンが、単一のSGLT-2阻害剤として、1日1回0.01mg/kg体重~0.3mg/kg体重の用量で、好ましくは0.05mg/kg体重の用量で経口投与されるものである、請求項12に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項14】
1種又は複数のSGLT-2阻害剤が、1種又は複数の他の活性医薬成分、好ましくは、別のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態、1種若しくは複数の利尿剤、例えば、フロセミド、トラセミド若しくはスピロノラクトン;1種若しくは複数のβ遮断剤、例えば、アテノロール若しくはプロプラノロール;1種若しくは複数のカルシウム-チャネル遮断剤、例えば、アムロジピン及びジルチアゼム;1種若しくは複数のACE阻害剤、例えば、ベナゼプリル、ラミプリル若しくはエナラプリル;1種若しくは複数のアンジオテンシン受容体遮断剤、例えば、テルミサルタン;1種若しくは複数の抗不整脈剤、例えば、フレカイニド;1種若しくは複数の血小板凝集阻害剤、例えば、クロピドグレル;1種若しくは複数の非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えば、アスピリン;1種若しくは複数の抗凝血剤、例えば、クマリン(ビタミンKアンタゴニスト)、(低分子量)ヘパリン、第Xa因子の合成五糖阻害剤、並びに直接第Xa因子阻害剤及び/又は直接トロンビン阻害剤;並びに/又は1種若しくは複数のカルシウム-チャネル増感剤及び/又は陽性変力物質、例えば、ピモベンダン及び/若しくはジギタリスアルカロイドからなる群から選択される1種又は複数の他の活性医薬成分の投与前、投与後又は投与と同時に投与されるものである、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項15】
予防的及び/又は治療効果が、以下の臨床的及び/又は生化学的パラメーターのうちの1種又は複数:
- [心拍出量/消費された代謝基質]の比の増加を特徴とする、及び/又は[心拍出量/消費された酸素]の比の増加を特徴とする、改善された心血管代謝性効率;
- 3-ヒドロキシ酪酸及び/又は対応するアシルカルニチン、すなわちヒドロキシブチリルカルニチンの血漿レベルの増加、並びに分枝鎖のアミノ酸(バリン、ロイシン及びイソロイシン)のうちの1種又は複数の血漿レベルの増加を特徴とする、肝臓におけるケトン体産生の増加;
- 前負荷及び/又は後負荷の減少を達成し、動脈壁構造機能を改善することによる心機能の改善;
- 心臓超音波パラメーターの改善、例えば、LAの低減(右傍胸骨短軸として測定される左心房の寸法)、LA/Ao(左心房対大動脈の比;Ao=大動脈根の直径)、IVSd(心室中隔末端の心臓拡張期の寸法、すなわち心室中隔の厚さ)、及び/又はLAD(右傍胸骨長軸として測定される左心房)、及び改善された心臓バイオマーカー、例えば、NT-proBNPの低減(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)及び/又はcTnIの低減(心臓トロポニンI)及び/又はエリスロポエチン濃度の増加、並びに心雑音の改善;
- 異なる表現型の心臓疾患、例えば、(M)MVD及び/若しくはDCMの開始の遅延、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い遅延、又はさらには、異なる表現型の心臓疾患、例えば、(M)MVD及び/若しくはDCMの進行の停止;
- 生存時間の延長、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い生存時間の延長、及び/又は心不全の次の症状の発現の遅延、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い遅延、及び/又はより低いレベルの心臓の死亡率及び/又は罹患率;
- 改善された臨床徴候、例えば、息切れ又は呼吸困難、咳、うつ病、運動耐容能低下、食欲不振、失神、腹部膨張及び/又は多飲の減少;
- 事象(例えば心不全、心臓の死亡、臨床徴候の開始、追加の併用薬の必要性、併用療法-利尿剤の用量の増加)までの時間の延長;
- より高い生活の質
を特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための1種若しくは複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の使用のための請求項1~15のいずれか1項に記載の1種若しくは複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬の分野、特に獣医学的薬の分野に関する。本発明は、ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物、特にイヌ科動物の心臓疾患の予防及び/又は治療におけるSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イヌ科動物の(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]及び拡張型心筋症(DCM)は、イヌにおける最も一般的な心血管状態であり、イヌ科動物の心不全の最も頻繁な原因である。さらに、大動脈狭窄は、通常大動脈下領域内の線維性組織の隆起又は環により引き起こされるが(大動脈下狭窄)、これは大型犬の一般的な先天性欠陥である。これらの状態は、特定の病態生理を有するが、ポンプ能力の低下、筋の労力の増加及びエネルギーの不均衡を特徴とし、最後に心不全をもたらす。人々において、SGLT2阻害剤の使用下で有益な心血管作用が観察されてきた。しかし、心臓に対する直接的作用は不明のままである。また、ヒトの心臓疾患の病理(冠疾患、脳卒中、梗塞)は、イヌにおいて観察される病態[(M)MVD、DCM]とは有意に異なる。米国獣医内科学学会(The American College of Veterinary Internal Medicine(ACVIM))コンセンサスステートメントは、(M)MVDに対する特定の分類及び治療の基準を提供している。ガイドラインは(M)MVDを標的としているが、分類は一般的にDCMなど他の心臓疾患に対して使用される。基準はイヌ科動物の心臓疾患の異なるステージを以下の通り定義する:
- ステージA:イヌの心不全を発症する危険性は平均より高いが、検査時にはいずれかの明らかな構造的異常はない(すなわち、可聴心雑音なし)。
- ステージB:ステージBのイヌは構造的異常があるが[例えば、(M)MVDの存在]、これらの疾患に関連する心不全の臨床徴候があったことはない。ステージBは、以下に分割される:
- ステージB1:イヌの(M)MVDに応答した心臓リモデリングの放射線写真又は心臓超音波の証拠がなく、リモデリング変化は存在するが、治療の開始が保証されることを決定するために使用されてきた現在の治験基準を満たすほど十分重度ではない無症候性のイヌについて描いている。
ステージB2:血行動態的に重度で、長期にわたる、さらに進行した僧帽弁逆流を有する無症候性のイヌを指し、この状態は、心不全の開始を遅らせるための薬理学的治療を開始することによって明確に恩恵を受けるはずのイヌを特定するために使用されている治験基準を満たす左心房及び心室の拡大の放射線写真及び心臓超音波による知見を得るのに十分である。
- ステージC:イヌは、現在又は過去の心不全の臨床徴候を引き起こすのに十分重度な(M)MVDを有する。ステージCは、臨床的心不全の症状の発現を経験し、標準的な心不全治療に無反応である(M)MVDを有するすべてのイヌを含む。これらの患者は、標準的治療によるこれらの臨床徴候の改善又は完全な回復後でも継続してステージCとして分類される。僧帽弁修復手術に成功したという例外的ケースでは、ステージBへの再分類が保証されている。
- ステージD:末期(M)MVDを有するイヌを指し、この場合心不全の臨床徴候が標準的治療(このコンセンサスステートメントにおいて後で定義されている)に無反応である。そのような患蓄は、これらの疾患があっても依然として臨床的に快適であるためには高度な又は特化した治療戦略を必要とし、ある時点において、弁の手術による修復なしでは治療努力は無駄となる。ステージCと同様に、パネルは、急性の、入院ベースの治療を必要とするステージDのイヌと、外来患蓄として対処することができるイヌとを識別している。
【0003】
標準的治療は普通、疾患の進行を遅くするためにステージB1において推奨され、臨床的治療はステージB2において明確に必要とされる。心不全の対処は、症状緩和であり、浮腫及び空洞滲出液の存在に関係した臨床徴候を制御することを目標にしている。これらは、利尿剤及び血管拡張剤により前負荷及び/又は後負荷を減少させること、心臓性能を改善すること(陽性変力物質、陽性ルシトロープ、抗不整脈)、及び神経ホルモンモジュレーター(ACE阻害剤、及び潜在的にβ遮断剤、アルドステロンアンタゴニスト、及びアンジオテンシンII受容体遮断剤)を使用することを介して達成する。
【0004】
SGLT2阻害剤は、II型糖尿病を有するヒト患者において、心不全のための入院の危険性及び心不全事象の新規開始の危険性を減少させることが示されている。糖尿病とは無関係な心疾患を有するヒト患者においてエンパグリフロジンが良好な作用を示すかどうか調べるためのEMPERORと呼ばれるプログラムが最近開始された。EMPERORプログラムの一部としてのEMPEROR-Reduced治験III相において、糖尿病の有無に関わらず、心不全及び低い駆出率を有する成人において、エンパグリフロジンが、心不全による心血管系死亡又は入院の複合的エンドポイントに対する危険性を減少させたことが示されたことが最近発表された。しかし、イヌにおける心臓疾患の病理は、ヒトにおいて観察された病理とは有意に異なり、例えば、アテローム性動脈硬化症はイヌにおいて報告されていないことが重大な懸案事項である。
【0005】
最新技術の治療介入は、心臓疾患により誘発される2次的状態の対症治療のための独特な経路に対する特定の作用、例えば、陽性変力作用(収縮の改善)、ACE阻害剤(高い血圧を低下させる)、及び利尿剤(流体排出の増加)に基づく。
Lin Y et al.(J Am Heart Assoc 2021, 10:e019274)は、ダパグリフロジンが心臓の血流力学を改善し、僧帽弁逆流誘発性心筋機能障害における不整脈原源性を緩和することを開示している。
Matsumura K et al.(Cardiovascular Ultrasound 2019, 17(1): 26)は、心機能及び心血管結果に対するSGLT-2阻害剤の作用を開示している。
Nishinarity R et al.(J Am Heart Assoc 2021, 10:e017483)は、カナグリフロジンがイヌ科動物の心房細動モデルにおいて心房リモデリングを抑制することを開示している。
Santos-Gallego CG et al.(J American College Cardiol 2019, 73(15): 1931-1944)は、エンパグリフロジンが心筋エネルギーを促進することにより、非糖尿病性心不全における有害な左室リモデリングを改善させることを開示している。
Silva Custodio Jr J et al.(Heart Failure Reviews 2018, 23(3): 409-418)は、SGLT-2阻害及び心不全の現在の概念を開示している。
米国特許出願公開第2011/098240号は、SGLT2阻害剤を、DPP IV阻害剤と組み合わせて含む医薬組成物を開示しており、この医薬組成物は、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害及び高血糖から選択される1種又は複数の状態の治療又は予防に適切である。
【0006】
US2015/164856は、ネコ科動物において代謝障害の治療及び/又は予防に使用するための1種又は複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態を開示しており、好ましくは、代謝障害は、ケトアシドーシス、糖尿病予備軍、真性糖尿病1型又は2型、インスリン抵抗性、肥満、高血糖、耐糖能障害、高インスリン血症、脂質異常症、脂質動態異常症、無症候性炎症、全身性炎症、低悪性度全身性炎症、肝リピドーシス、アテローム動脈硬化症、膵臓の炎症、ニューロパシー及び/若しくは症候群X(メタボリックシンドローム)及び/若しくは膵ベータ細胞機能の損失からなる群から選択される1種又は複数であり、並びに/又は代謝障害の緩解、好ましくは糖尿病性緩解が達成され、及び/若しくは維持されている。
US2016/000816は、例えば、1型又は2型糖尿病を有するヒト患者において酸化ストレスを治療する及び/又は予防するためのある特定のSGLT-2阻害剤、並びに患者、例えば1型又は2型糖尿病患者のヒト患者において、心血管疾患の治療及び/又は予防にそのようなSGLT-2阻害剤を使用することを開示している。
【0007】
US2017/266152は、保存された又は減少した駆出率を有するヒト患者において、エンパグリフロジンを患者に投与することにより、急性又は慢性心不全を予防又は治療するための、並びに心不全及び他の状態に対する心血管系死亡、入院の危険性を減少させるための方法を開示している。
米国特許出願公開第2019/076395号は、2型糖尿病若しくは1型糖尿病を有さない動物において、又は糖尿病予備軍の動物において、又は2型糖尿病若しくは1型糖尿病若しくは糖尿病予備軍の動物において、心不全、心筋梗塞、心血管疾患若しくは心血管系死亡を治療する、心不全、心筋梗塞、心血管疾患若しくは心血管系死亡の危険性を減少させる及び/又は心不全、心筋梗塞、心血管疾患若しくは心血管系死亡を予防するための、ある特定のSGLT-2阻害剤、例えば、エルツグリフロジン又はその薬学的に許容される塩若しくは共結晶の使用を開示している。
【0008】
米国特許第10,537,570号は、僧帽弁疾患による無症候性(潜在性、臨床前)心不全を患っている患者において、心臓サイズを減少させる及び/又は臨床症候の開始を遅らせる方法におけるピモベンダンの使用を開示している。
WO2021/092341は、伴侶動物における慢性腎臓疾患、高血圧及び心不全に対処するためのナトリウム-グルコースに結合したトランスポーター阻害剤を開示している。
上記文献の開示にもかかわらず、ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物(患蓄)、特にイヌ科動物(患蓄)において、心臓疾患の予防及び/又は治療に対する医学的必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する方法における使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0010】
一態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数の心臓疾患が、心不全;うっ血性心不全;無症候性/臨床前/潜在性心不全;(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]に起因する心不全;(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]に起因するうっ血性心不全;(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]に起因する無症候性/臨床前/潜在性心不全;(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];臨床的に明白な(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];無症候性/臨床前/潜在性(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD];拡張型心筋症(DCM)に起因する心不全;拡張型心筋症(DCM)に起因するうっ血性心不全;拡張型心筋症(DCM)に起因する無症候性/臨床前/潜在性心不全;拡張型心筋症(DCM);臨床的に明白な拡張型心筋症(DCM);無症候性/臨床前/潜在性拡張型心筋症(DCM);大動脈狭窄(心臓弁膜、弁上及び/又は弁下)からなる群から選択される、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0011】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0012】
一態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数の心臓疾患が、(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]、臨床的に明白な(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]、無症候性/臨床前/潜在性(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]、拡張型心筋症(DCM)、臨床的に明白な拡張型心筋症(DCM)、無症候性/臨床前/潜在性拡張型心筋症(DCM)からなる群から選択される、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0013】
一態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数の心臓疾患が、(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]、臨床的に明白な(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]、無症候性/臨床前/潜在性(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]からなる群から選択される、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0014】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0015】
別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数のSGLT-2阻害剤がグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0016】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0017】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数のSGLT-2阻害剤が、
(1)式(1)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体
【化1】
(式中、R
1は、シアノ、Cl又はメチル(最も好ましくはシアノ)を表し、
R
2はH、メチル、メトキシ又はヒドロキシ(最も好ましくはH)を表し、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル(methlysulfonyl)、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又はシアノを表し、
R
3は、シクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから好ましくは選択され、最も好ましくは、R
3はシクロプロピルである)
又はその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基が(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
【0018】
(2)式(2)で表されるベラグリフロジン:
【化2】
(3)式(3)で表されるダパグリフロジン:
【化3】
【0019】
(4)式(4)で表されるカナグリフロジン:
【化4】
(5)式(5)で表されるエンパグリフロジン:
【化5】
【0020】
(6)式(6)で表されるルセオグリフロジン:
【化6】
(7)式(7)で表されるトホグリフロジン:
【化7】
【0021】
(8)式(8)で表されるイプラグリフロジン:
【化8】
(9)式(9)で表されるエルツグリフロジン:
【化9】
【0022】
(10)式(10)で表されるアチグリフロジン:
【化10】
(11)式(11)で表されるレモグリフロジン:
【化11】
【0023】
(11A)式(11A)で表されるレモグリフロジンエタボネート:
【化12】
【0024】
(12)式(12)のチオフェン誘導体
【化13】
(式中、Rはメトキシ又はトリフルオロメトキシを表す)
(13)式(13)で表される1-(β-D-グルコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン:
【化14】
【0025】
(14)式(14)のスピロケタール誘導体:
【化15】
(式中、Rはメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピル又はtert-ブチルを表す)
【0026】
(15)式(15)のピラゾール-O-グルコシド誘導体
【化16】
(式中、
R
1はC
1-3-アルコキシを表し、
L
1、L
2は、互いに独立して、H又はFを表し、
R
6は、H、(C
1-3-アルキル)カルボニル、(C
1-6-アルキル)オキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル又はベンジルカルボニルを表す)
【0027】
(16)式(16)で表されるソタグリフロジン:
【化17】
【0028】
(17)式(17)で表されるセルグリフロジン:
【化18】
【0029】
(18)式(18)で表される化合物:
【化19】
(式中、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又はシアノを表し、R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)、
又はその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基が(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの、
【0030】
(19)式(19)で表されるベキサグリフロジン:
【化20】
【0031】
(20)式(20)で表されるジャナグリフロジン:
【化21】
(21)式(21)で表されるレモグリフロジン(Rongliflozin):
【化22】
(22)ワンパグリフロジン(Wanpagliflozin)
からなる群から選択される、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0032】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
さらに別の態様では、本発明はまた本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、その薬学的に許容される形態が、1種又は複数のSGLT2阻害剤と、1種又は複数のアミノ酸、好ましくはプロリン、より好ましくはL-プロリンとの結晶性複合体であり、最も好ましくは1種又は複数のSGLT2阻害剤、L-プロリン及び結晶水の共結晶である、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0033】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0034】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄が、そのような予防及び/又は治療を必要とする患蓄であり、好ましくはそのような予防及び/又は治療を必要とするイヌであり、より好ましくはそのような予防及び/又は治療を必要とする非糖尿病性イヌである、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0035】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数のSGLT-2阻害剤が経口的、非経口的、静脈内、皮下又は筋肉内に、好ましくは経口的に投与される、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0036】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0037】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数のSGLT-2阻害剤が、1日当たり0.01mg/kg体重~10mg/kg体重の用量で、好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~5mg/kg体重の用量で、より好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~4mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~3mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~2mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~0.5mg/kg体重の用量で、最も好ましくは1日当たり0.01mg/kg体重~0.3mg/kg体重の用量で投与されるものである、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0038】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0039】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、そのような1種又は複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態が1日当たり1回又は2回投与されるものである、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0040】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0041】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数のSGLT-2阻害剤がベラグリフロジンであり、ベラグリフロジンが、単一のSGLT-2阻害剤として、好ましくは経口的に、より好ましくは1日当たり1回又は2回、0.01mg/kg体重~1mg/kg体重の用量で、さらにより好ましくは0.01mg/kg体重~0.5mg/kg体重の用量で、さらにより好ましく0.01mg/kg体重~0.3mg/kg体重の用量で、最も好ましくは1日1回、0.05mg/kg体重の用量で投与されるものである、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0042】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、単一のSGLT-2阻害剤としてのベラグリフロジンが1日1回0.01mg/kg体重~0.3mg/kg体重の用量で、好ましくは1日1回0.05mg/kg体重の用量で経口投与されるものである、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0043】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、1種又は複数のSGLT-2阻害剤が、1種又は複数の他の活性医薬成分、好ましくは、別のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態、1種若しくは複数の利尿剤、例えば、フロセミド、トラセミド若しくはスピロノラクトン;1種若しくは複数のβ遮断剤、例えば、アテノロール若しくはプロプラノロール;1種若しくは複数のカルシウム-チャネル遮断剤、例えば、アムロジピン及びジルチアゼム;1種若しくは複数のACE阻害剤、例えば、ベナゼプリル、ラミプリル若しくはエナラプリル;1種若しくは複数のアンジオテンシン受容体遮断剤、例えば、テルミサルタン;1種若しくは複数の抗不整脈剤、例えば、フレカイニド;1種若しくは複数の血小板凝集阻害剤、例えば、クロピドグレル;1種若しくは複数の非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えば、アスピリン;1種若しくは複数の抗凝血剤、例えば、クマリン(ビタミンKアンタゴニスト)、(低分子量)ヘパリン、第Xa因子の合成五糖阻害剤、並びに直接第Xa因子阻害剤及び/又は直接トロンビン阻害剤;並びに/又は1種若しくは複数のカルシウム-チャネル増感剤及び/又は陽性変力物質、例えば、ピモベンダン及び/若しくはジギタリスアルカロイドからなる群から選択される1種又は複数の他の活性医薬成分の投与前、投与後又は投与と同時に投与されるものである、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0044】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0045】
さらに別の態様では、本発明はまた、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用のための、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態であって、予防的及び/又は治療効果が、以下の臨床的及び/又は生化学的パラメーターのうちの1種又は複数:
- [心拍出量/消費された代謝基質]の比の増加を特徴とする、及び/又は[心拍出量/消費された酸素]の比の増加を特徴とする、改善された心血管代謝性効率;
- 3-ヒドロキシ酪酸及び/又は対応するアシルカルニチン、すなわちヒドロキシブチリルカルニチンの血漿レベルの増加、並びに分枝鎖のアミノ酸(バリン、ロイシン及びイソロイシン)のうちの1種又は複数の血漿レベルの増加を特徴とする、肝臓におけるケトン体産生の増加;
- 前負荷及び/又は後負荷の減少を達成し、動脈壁構造機能を改善することによる心機能の改善;
- 心臓超音波パラメーターの改善、例えば、LAの低減(右傍胸骨短軸として測定される左心房の寸法)、LA/Ao(左心房対大動脈の比;Ao=大動脈根の直径)、IVSd(心室中隔末端の心臓拡張期の寸法、すなわち心室中隔の厚さ)、及び/又はLAD(右傍胸骨長軸として測定される左心房)、及び改善された心臓バイオマーカー、例えば、NT-proBNPの低減(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)及び/又はcTnIの低減(心臓トロポニンI)及び/又はエリスロポエチン濃度の増加、並びに心雑音の改善;
- 異なる表現型の心臓疾患、例えば、(M)MVD及び/若しくはDCMの開始の遅延、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い遅延、又はさらには、異なる表現型の心臓疾患、例えば、(M)MVD及び/若しくはDCMの進行の停止;
- より長い生存時間、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い生存時間、並びに/又は心不全の次の症状の発現の遅延、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い遅延、及び/又はより低いレベルの心臓の死亡率及び/若しくは罹患率;
- 改善された臨床徴候、例えば、息切れ又は呼吸困難、咳、うつ病、運動耐容能低下、食欲不振、失神、腹部膨張及び/又は多飲の減少;
- 事象(例えば心不全、心臓の死亡、臨床徴候の開始、追加の併用薬の必要性、併用療法-利尿剤の用量の増加)までの時間の延長;
- より高い生活の質
を特徴とする、1種若しくは複数のSGLT-2阻害剤又はその薬学的に許容される形態に関する。
【0046】
ネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療する対応する方法であって、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種又は複数のSGLT-2阻害剤を、ネコ科動物を除くそのような非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄に投与することを含む方法、並びにネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物/非ヒト哺乳動物患蓄、特にイヌ科動物/イヌ科動物患蓄における、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような、1種又は複数の心臓疾患を予防及び/又は治療するための医薬の調製のための、1種又は複数のSGLT-2阻害剤の対応する使用もまた本発明に含まれることを意図する。
【0047】
本発明は、本明細書で開示及び/又は特許請求された使用/方法のための、本明細書で開示及び/又は特許請求されたような1種若しくは複数のSGLT2阻害剤又はその薬学的に許容される形態を含む、医薬組成物にさらに関する。
【0048】
本発明による利点は、以下のうちの1つ又は複数である:
- [心拍出量/消費された代謝基質]の比の増加を特徴とする、及び/又は[心拍出量/消費された酸素]の比の増加を特徴とする、改善された心血管代謝性効率;
- 3-ヒドロキシ酪酸及び/又は対応するアシルカルニチン、すなわちヒドロキシブチリルカルニチンの血漿レベルの増加、並びに分枝鎖のアミノ酸(バリン、ロイシン及びイソロイシン)のうちの1種又は複数の血漿レベルの増加を特徴とする、肝臓におけるケトン体産生の増加;
- 前負荷及び/又は後負荷の減少を達成し、動脈壁構造機能を改善することによる心機能の改善;
- 心臓超音波パラメーターの改善、例えば、LAの低減(右傍胸骨短軸として測定される左心房の寸法)、LA/Ao(左心房対大動脈の比;Ao=大動脈根の直径)、IVSd(心室中隔末端の心臓拡張期の寸法、すなわち心室中隔の厚さ)、及び/又はLAD(右傍胸骨長軸として測定される左心房)、及び改善された心臓バイオマーカー、例えば、NT-proBNPの低減(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)及び/又はcTnIの低減(心臓トロポニンI)及び/又はエリスロポエチン濃度の増加、並びに心雑音の改善;
- 異なる表現型の心臓疾患、例えば、(M)MVD及び/若しくはDCMの開始の遅延、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い遅延、又はさらには、異なる表現型の心臓疾患、例えば、(M)MVD及び/若しくはDCMの進行の停止;
- 生存時間の延長、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い生存時間の延長、及び/又は心不全の次の症状の発現の遅延、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15カ月若しくはこれよりも長い遅延、及び/又はより低いレベルの心臓の死亡率及び/又は罹患率;
- 改善された臨床徴候、例えば、息切れ又は呼吸困難、咳、うつ病、運動耐容能低下、食欲不振、失神、腹部膨張及び/又は多飲の減少;
- 事象(例えば心不全、心臓の死亡、臨床徴候の開始、追加の併用薬の必要性、併用療法-利尿剤の用量の増加)までの時間の延長;
- 心臓疾患、例えば、(M)MVD及び/又はDCMを有するイヌのより高い生活の質。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の実施形態がさらに詳細に記載される前に、本明細書で使用される場合及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他を明確に指示していない限り、複数の参照を含むことに注目されたい。
他に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。すべての付与された範囲及び値は、当業者により他に示されていない限り又は他が公知でない限り、1~5%変動してもよく、したがって、「約」という用語は通常、説明及び特許請求の範囲から省略された。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法、デバイス、及び材料はここに記載されている。本明細書に記述されているすべての刊行物は、本発明に関連して使用され得る刊行物に報告されているような、物質、賦形剤、担体、及び方法論を記載及び開示する目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書におけるいかなるものであっても、本発明が以前の発明によって、そのような開示に先行する権利がないと同意したと解釈されることはない。
本発明の過程で、「心疾患」という用語は、「心臓疾患」と同じ意味であり、心臓それ自体の任意の障害及び変形を指し、心臓の構造及び機能に影響を与える。異なる部分の器官に影響を与え、先天性心疾患(例えば中隔欠陥、閉塞欠陥)、不整脈(例えば頻拍、徐脈及び細動)及び心筋症を含めて、異なる方式で生じる多くの種類の心疾患が存在する。
【0050】
本発明の過程で、「心不全」という用語はまたうっ血性心不全及びうっ血性心不全としても公知であり、末梢組織及び器官の代謝必要条件(酸素及び基質)を満たすよう、身体を介して血流を維持するのに十分な血流を心臓がポンプで送り込むことができない病態生理学的プロセスを指す。また、心臓の異常な構造又は機能に基づき、運動耐容能低下、呼吸困難、疲労、流体の滞留及び寿命の減少のような症状を特徴とする複雑な臨床的症候群としても定義することができる。これは、収縮期における心臓からの血液の排出が影響を受ける心臓収縮期の不全と、心臓が心臓拡張期の間、心室の空洞内に低圧で十分な血液を受け取ることができない心臓拡張期の不全とに分割することができる。その大半は、心臓の慢性的作業過負荷に起因する、又は流体過負荷、心臓弁膜機能障害若しくは心筋梗塞による急性の血流力学的ストレス後に発生する慢性疾患である。
【0051】
本発明の過程で、「(原始間葉状)僧帽弁疾患」[(M)MVD]という用語は、イヌにおいて最も一般的な心血管状態及び(うっ血性)心不全の最も頻繁な原因を指し、これは5才を超える年齢の小型犬に根本的に影響を与える。(原始間葉状)僧帽弁疾患の病態生理は、僧帽弁の変性変化及び不全から生じる左心室及び左心房の進行性の拡大を特徴とする。弁欠陥は、血液の逆流及び駆出率の減少をもたらし、これは、左心室の拡大を引き起こす心臓への追加の負担を提示し、未処置のままでは、心臓は弱まり、うっ血性心不全(CHF)が生じる。
【0052】
本発明の過程で、「拡張型心筋症」(DCM)という用語は、イヌにおいて2番目に一般的な心血管状態を指し、これは根本的にすべての年齢の大型犬に影響を与え、全体的発症率は8%である。DCMは心筋細胞の疾患であり、左心室及び左心房の拡大又はすべての心臓心室の拡大をそれ自体提示し、多くの場合、心臓の筋肉の壁は正常よりずっと薄い。その結果、心室のポンプ能力は減少し、血流は損なわれ、血流のうっ滞をもたらす。疾患が進行するにつれて、これはうっ血性心不全(CHF)を引き起こす。
本発明の過程で、「無症候性(潜在性、臨床前)(原始間葉状)僧帽弁疾患[(M)MVD]」という用語は、(M)MVDによる/(M)MVDに続発するあらゆる心臓の収縮性障害又は疾患に関する。ただし、(うっ血性)心不全のいずれかの臨床症候はない。特に、(M)MVDは、ISACHCクラスI(クラスIA及び/又はクラスIB)、NYHAクラスI及びACVIMステージB2の(M)MVDに起因する心不全に関する。
【0053】
本発明の過程で、「無症候性(潜在性、臨床前)(原始間葉状)拡張型心筋症(DCM)」という用語は、DCMによる/DCMに続発するあらゆる心臓の収縮性障害又は疾患に関する。ただし、いずれの(うっ血性)心不全の臨床症候はない。特に、DCMはISACHCクラスIのDCMに起因する心不全に関する。
本発明の過程で、「イヌ科動物(canine animal)」又は「イヌ科(canine)」という用語はイヌ科(canidae)(すなわちイヌ科イヌ属(canid)の動物)のあらゆるメンバーを指す。よって、これは、サブファミリーであるイヌ科又はサブファミリーであるイヌ科イヌ属のいずれかに属することができる。イヌ科の動物という用語は、イヌという用語、例えば、イエイヌ(domestic dog)を包含する。イエイヌという用語は、カニス・ファミリアス(Canis familiaris)又はカニス・ループス・ファミリアリス(Canis lupus familiaris)という用語を包含する。最も好ましくは、イヌ科の動物又はイヌ科動物は、イヌ、特にイエイヌである。
【0054】
好ましい実施形態では、「非ヒト哺乳動物」は、ウシ属(bovine)、イヌ科、ヤギ属(caprine)、ウマ科(equine)、ウサギ目(lagomorphs)、ヒツジ属(ovine)、ブタ(porcine)、げっ歯類(rodent)からなる群から選択され、より好ましくはウシ(cattle)、雌ウシ(cow)、イヌ、ヤギ、ウマ、ポニー、ロバ、ヒツジ、ブタ(pig)、ウサギ、ラット、マウスからなる群から選択され、さらにより好ましくはイヌ科動物からなる群から選択され、最も好ましくはイヌからなる群から選択される。
本発明による使用のためのSGLT-2阻害剤として、これらに限定されないが、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、例えば、WO01/27128、WO03/099836、WO2005/092877、WO2006/034489、WO2006/064033、WO2006/117359、WO2006/117360、WO2007/025943、WO2007/028814、WO2007/031548、WO2007/093610、WO2007/128749、WO2008/049923、WO2008/055870、WO2008/055940、WO2009/022020又はWO2009/022008に記載されているグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体が挙げられる。
【0055】
さらに、本発明による使用のための1種又は複数のSGLT-2阻害剤は、以下の化合物又はその薬学的に許容される形態からなる群から選択することができる:
(1)式(1)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体
【化23】
(式中、R
1はシアノ、Cl又はメチル(最も好ましくはシアノ)を表し、
R
2は、H、メチル、メトキシ又はヒドロキシ(最も好ましくはH)を表し、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又はシアノを表し、
R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、最も好ましくは、R
3はシクロプロピルである)
又はその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基は、(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
【0056】
(2)式(2)で表されるベラグリフロジン:
【化24】
(3)式(3)で表されるダパグリフロジン:
【化25】
【0057】
(4)式(4)で表されるカナグリフロジン:
【化26】
(5)式(5)で表されるエンパグリフロジン:
【化27】
【0058】
(6)式(6)で表されるルセオグリフロジン:
【化28】
【0059】
(7)式(7)で表されるトホグリフロジン:
【化29】
【0060】
(8)式(8)で表されるイプラグリフロジン:
【化30】
(9)式(9)で表されるエルツグリフロジン:
【化31】
【0061】
(10)式(10)で表されるアチグリフロジン:
【化32】
【0062】
(11)式(11)で表されるレモグリフロジン:
【化33】
(11A)式(11A)で表されるレモグリフロジンエタボネート:
【化34】
【0063】
(12)式(12)のチオフェン誘導体
【化35】
(式中、Rはメトキシ又はトリフルオロメトキシを表す);
【0064】
(13)式(13)で表される1-(β-D-グルコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン;
【化36】
【0065】
(14)式(14)のスピロケタール誘導体:
【化37】
(式中、Rはメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピル又はtert-ブチルを表す)
【0066】
(15)式(15)のピラゾール-O-グルコシド誘導体
【化38】
(式中、
R
1はC
1-
3-アルコキシを表し、
L
1、L
2は、互いに独立して、H又はFを表し、
R
6は、H、(C
1-3-アルキル)カルボニル、(C
1-6-アルキル)オキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル又はベンジルカルボニルを表す);
【0067】
(16)式(16)で表されるソタグリフロジン:
【化39】
(17)式(17)で表されるセルグリフロジン:
【化40】
【0068】
(18)式(18)で表される化合物:
【化41】
(式中、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又はシアノを表し、R
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)、
又はその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基は(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されているもの;
【0069】
(19)式(19)で表されるベキサグリフロジン:
【化42】
(20)式(20)で表されるジャナグリフロジン:
【化43】
(21)式(21)で表されるレモグリフロジン:
【化44】
(22)ワンパグリフロジン。
【0070】
「ベラグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のベラグリフロジン並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物、その合成方法及びその共結晶は、例えばWO2007/128749、WO2014/016381及びWO2019/121509に記載されている。
「ダパグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のダパグリフロジン並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えばWO03/099836に記載されている。好ましい水和物、溶媒和物及び結晶形態は、例えば特許出願WO2008/116179及びWO2008/002824に記載されている。
「カナグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のカナグリフロジン、並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えばWO2005/012326及びWO2009/035969に記載されている。好ましい水和物、溶媒和物及び結晶形態は、例えば特許出願WO2008/069327に記載されている。
【0071】
「エンパグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のエンパグリフロジン、並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えばWO2005/092877、WO2006/120208及びWO2011/039108に記載されている。好ましい結晶形態は、例えば特許出願WO2006/117359及びWO2011/039107に記載されている。
「アチグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のアチグリフロジン、並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えばWO2004/007517に記載されている。
【0072】
「イプラグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のイプラグリフロジン、並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えばWO2004/080990、WO2005/012326及びWO2007/114475に記載されている。
「トホグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のトホグリフロジン、並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物及びその合成方法は、例えばWO2007/140191及びWO2008/013280に記載されている。
「ルセオグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のルセオグリフロジン、並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。
【0073】
「エルツグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のエルツグリフロジン、並びにその水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。化合物は、例えばWO2010/023594に記載されている。
「レモグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のレモグリフロジン、並びにレモグリフロジンのプロドラッグ、特にレモグリフロジンエタボネートを含む、その水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。その合成方法は、例えば特許出願EP1213296及びEP1354888に記載されている。
「セルグリフロジン」という用語は、本明細書で利用する場合、上記構造のセルグリフロジン、並びにセルグリフロジンのプロドラッグ、特にセルグリフロジンエタボネートを含む、その水和物及び溶媒和物、及びその結晶形態を含む、その薬学的に許容される形態を指す。その製造方法は、例えば特許出願EP1344780及びEP1489089に記載されている。
【0074】
上記式(16)の化合物、すなわちソタグリフロジン、及びその製造は、例えばWO2008/042688又はWO2009/014970に記載されている。
好ましいSGLT-2阻害剤はグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である。任意に、グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基は、そのような1つ又は複数のSGLT-2阻害剤において、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されていてもよい。
【0075】
さらに好ましいのは本明細書で上記に開示されている式(1)のグルコピラノシル置換ベンゾニトリル誘導体である。しかしさらに好ましいのは、式(18)のグルコピラノシル置換ベンゾニトリル誘導体:
【化45】
(式中、
R
3は、シクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、エチルスルフィニル、エチルスルホニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又はシアノを表し、R
3は好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R
3は最も好ましくはシクロプロピルである)、
又はその誘導体であり、β-D-グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基が(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されている。
【0076】
好ましくは、そのようなSGLT-2阻害剤は式(2)に示されているようなベラグリフロジン(velaglifozin)である。任意に、ベラグリフロジンのβ-D-グルコピラノシル基の1つ又は複数のヒドロキシル基は、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化されていてもよい。
よって、好ましい実施形態では、本発明による少なくとも1種のSGLT-2阻害剤はグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体のSGLT-2阻害剤、好ましくは式(1)のSGLT-2阻害剤、より好ましくは式(18)のSGLT-2阻害剤であり、又はより好ましくは式(2)のSGLT-2阻害剤、すなわちベラグリフロジンであり、いずれの場合も本明細書の上記定義された通りである。
【0077】
本明細書で、本発明によるSGLT-2阻害剤及び/又はこれらの使用についての言及は、特に述べられていない限り、薬学的に許容される形態のSGLT-2阻害剤を包含する。
本発明によると、任意の薬学的に許容される形態のSGLT-2阻害剤、例えば式(1)、好ましくは式(18)、より好ましくは式(2)を使用することができる。例えば、結晶形態を使用することができる。プロドラッグ形態もまた本発明に包含される。
プロドラッグ形態は、例えば、エステル及び/又は水和物を含むことができる。「プロドラッグ」という用語はまた、プロドラッグが哺乳動物の対象に投与された場合、本発明の活性化合物をin vivoで放出する任意の共有結合した担体を含むことも意図する。本発明の化合物中に存在する官能基を修飾して、この修飾が所定の操作により又はin vivoで開裂されて、本発明の親化合物となるように、本発明の化合物のプロドラッグを調製することができる。
【0078】
本発明による使用のための結晶形態は、SGLT-2阻害剤と1種又は複数のアミノ酸との複合体(例えばWO2014/016381を参照されたい)-いわゆる共結晶を含む。そのような使用のためのアミノ酸は天然アミノ酸であってよい。アミノ酸はタンパク新生アミノ酸(L-ヒドロキシプロリンを含む)又は非タンパク新生アミノ酸であってもよい。アミノ酸はDアミノ酸又はLアミノ酸であってよい。一部の好ましい実施形態では、アミノ酸はプロリン(Lプロリン及び/又はDプロリン、好ましくはLプロリン)である。例えば、ベラグリフロジンとプロリン(例えばLプロリン)及び結晶水の結晶性複合体/共結晶が好ましい。
よって、1種又は複数の天然アミノ酸と、SGLT-2阻害剤との結晶性複合体/共結晶、例えば、1種又は複数の天然アミノ酸とグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体SGLT-2阻害剤、好ましくは式(1)のSGLT-2阻害剤、より好ましくは式(18)のSGLT-2阻害剤、又はより好ましくは式(2)のSGLT-2阻害剤(ベラグリフロジン)との結晶性複合体/共結晶が本明細書で開示される。
【0079】
ある特定の医薬活性は、それが市販の医薬として承認される以前に薬学的活性のある薬剤により満たされるべき基本的必要条件である。しかし、薬学的活性のある薬剤が従わなければならない様々な追加の必要条件が存在する。これら必要条件は様々なパラメーターに基づき、これらパラメーターは活性物質それ自体の性質に関連している。限定的ではないが、これらパラメーターの例は、様々な環境条件下での活性剤の安定性、医薬製剤の生産中のその安定性、及び最終医薬組成物における活性剤の安定性である。医薬組成物を調製するために使用される医薬有効物質はできるだけ純粋であるべきであり、長期的貯蔵におけるその安定性は様々な環境条件下で保証されなければならない。これは、実際の活性物質に加えて、例えば、その分解生成物を含有する医薬組成物の使用を阻止するために必要不可欠である。そのような場合、医薬における活性物質の含有量は特定されたものよりも少なくなり得る。
製剤における医薬の均一な分布は、特に医薬が低用量で付与されなければならない場合、重大な要素である。均一な分布を確実にするため、活性物質の粒径は、例えば粉砕により適切なレベルまで減少させることができる。プロセス中には硬質な状態が必要とされるにもかかわらず、粉砕(又は微粉化)の副作用としての医薬有効物質の分解はできるだけ回避しなければならないので、活性物質が粉砕プロセス全体にわたり極めて安定していることが絶対必要とされる。活性物質が粉砕プロセス中に十分に安定している場合に限り、均質な医薬製剤を生成することが可能であり、均質な医薬製剤は常に特定された量の活性物質を再現可能な方式で含有する。
【0080】
所望の医薬製剤を調製するための粉砕プロセスに生じ得る別の問題は、このプロセスにより引き起こされるエネルギーの入力及び結晶の表面上の応力である。これはある特定の状況において、多形の、非晶質化への変化又は結晶格子における変化をもたらし得る。医薬製剤の薬学的品質は、活性物質が同じ結晶形態を常に有することを必要とするので、結晶性の活性物質の安定性及び特性は、同様にこの観点からも厳格な必要条件の対象となる。
医薬有効物質の安定性もまた、特定の医薬の貯蔵寿命を判定するために医薬組成物において重要である;貯蔵寿命は医薬が任意の危険性なしに投与され得る間の時間の長さである。したがって、様々な貯蔵条件下での上記の医薬組成物における医薬の高い安定性は、患蓄と製造業者の両方にとって追加の利点である。
水分の吸収は、水の取り込みにより引き起こされる質量の増加により、医薬有効物質の含有量を減少させる。水分を吸収する傾向のある医薬組成物は、貯蔵中、例えば、適切な乾燥剤の添加により、又はそれが水分から保護される環境に薬物を保管することにより、水分から保護しなければならない。したがって、好ましくは、医薬有効物質はよくてもわずかな吸湿性を有する程度であるべきである。
【0081】
さらに、明確な結晶形態の入手の可能性は、再結晶化による原薬の精製を可能にする。
上で示された必要条件とは別に、一般的に心に留めておくべきことは、医薬組成物の固体状態に対する任意の変化は、その物理的及び化学的安定性を改善することが可能であり、同じ医薬の安定性の低い形態よりも著しい利点をもたらすことである。
天然アミノ酸とSGLT-2阻害剤(例えばグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、又は式(1)若しくは式(18)のSGLT-2阻害剤、又は、特に式(2)のSGLT-2阻害剤、すなわちベラグリフロジン)との結晶性複合体/共結晶は、本明細書でこれより以前に記述されている重要な必要条件を満たす。
本発明による使用のためのSGLT-2阻害剤は、医薬組成物として調製することができる。これらは固体製剤又は液体製剤として調製することができる。どちらの場合にも、これらは経口投与、好ましくは経口投与のための液体形態で(例えばWO2017/032799)好ましくは調製される。しかし、SGLT-2阻害剤はまた、例えば、非経口投与に対しても調製することができる。固体製剤は、錠剤、顆粒状形態、及び他の固体形態、例えば、坐剤を含む。固体製剤の中でも、錠剤及び顆粒状形態が好ましい。
【0082】
本発明の意図内での医薬組成物は、本発明によるSGLT-2阻害剤及び1種又は複数の賦形剤を含んでもよい。意図した医学的作用を可能にする又は支持する任意の賦形剤を使用することができる。そのような賦形剤は当業者に対して利用可能である。有用な賦形剤は、例えば、粘着防止剤(粉末(粒剤)とパンチ面との間の接着を減少させ、よって錠剤パンチへの固着を阻止するために使用される)、結合剤(成分を一緒に保持する溶液結合剤又は乾式結合剤)、コーティング(空気中の水分による劣化から錠剤成分を保護し、大きな又は不快な味の錠剤を飲み込みやすくする)、崩壊剤(希釈による錠剤の粉砕を可能にする)、充填剤、希釈剤、香味料、色、流動促進剤(流れ調整剤-粒子間摩擦及び接着を減少させることで粉末の流れを促進する)、滑沢剤(成分が一緒に群がり、錠剤パンチ又はカプセル充填機に固着するのを阻止する)、保存剤、吸着剤、甘味剤などである。
本発明による製剤、例えば固体製剤は、糖及び糖アルコール、例えばマンニトール、ラクトース、デンプン、セルロース、微結晶性セルロース及びセルロース誘導体、例えばメチルセルロースなどの群から選択される担体及び/又は崩壊剤を含み得る。
【0083】
イヌ科動物に適した製剤に対する製造手順は当業者には公知であり、固体製剤に対して、例えば、直圧縮、乾式造粒及び湿式造粒法を含む。直圧縮プロセスでは、活性成分及びすべての他の賦形剤は圧縮装置内に一緒に配置し、これに圧縮装置を直接適用して、この材料をプレスして錠剤を得ることができる。生成した錠剤は、その後コーティングして、例えば、最新技術から公知の材料により、これらを物理的に及び/又は化学的に保護してもよい。
例えば単回液体用量などの投与のための単位、又は固体製剤の単位、例えば錠剤は、本発明による使用のために、0.1mg~10mg、又は例えば、0.3mg~1mg、1mg~3mg、3mg~10mg;又は5~2500mg、又は例えば、5~2000mg、5mg~1500mg、10mg~1500mg、10mg~1000mg、又は10~500mgのSGLT-2阻害剤を含んでもよい。当業者が理解しているように、イヌ科動物への投与のための、本明細書で開示されている固体製剤、又は任意の製剤中のSGLT-2阻害剤の含有量は、必要に応じて、治療すべきイヌ科動物の体重に比例して増加又は低減させることができる。
一実施形態では、本発明による使用のための医薬組成物は、経口又は非経口投与に対して、好ましくは経口投与に対して設計されている。特に経口投与は、賦形剤により改善され、賦形剤は、例えば、記載されているような意図した患蓄に対して、医薬組成物の臭い及び/又は触覚特性を改変する。
【0084】
本発明による使用のためのSGLT-2阻害剤が経口投与に対して製剤化される場合、賦形剤が、例えば、イヌ科動物への投与に適した製剤をもたらす嗜好性及び/又は噛み応えの特性を付与することが好ましい。
液体製剤もまた好ましい。液体製剤は、例えば、溶剤、シロップ剤又は懸濁剤であってよい。これらはイヌ科動物に直接投与してもよいし、又はイヌ科動物の飼料及び/又は飲料(例えば飲料水など)と混合してもよい。液体製剤の1つの利点(顆粒状形態の製剤と類似する)は、そのような剤形は正確な投薬を可能にすることである。例えば、SGLT-2阻害剤は、イヌ科動物の体質量に比例して正確に投薬することができる。液体製剤の典型的な組成物は当業者には公知である。
当技術分野の熟練した医師は、本発明の使用に適した用量を決定することができる。好ましい単位の投薬単位は、mg/kg体重、すなわちネコ科動物を除く非ヒト哺乳動物、特にイヌ科の動物の体質量当たりのSGLT-2阻害剤(単位:mg)を含む。本発明のSGLT-2阻害剤は、例えば、1日当たり0.01~10mg/kg体重の用量、例えば1日当たり0.01~5mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~4mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~3mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~2mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~1.5mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~1mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~0.75mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~0.5mg/kg体重、例えば1日当たり0.01~0.4mg/kg体重;又は1日当たり0.1~3.0mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.2~2.0mg/kg体重、より好ましくは1日当たり0.1~1mg/kg体重、又は1日当たり0.5~1mg/kg体重の用量で投与されてもよい。別の好ましい実施形態では、用量は1日当たり0.01~1mg/kg体重、好ましくは、1日当たり0.01~0.5mg/kg体重、より好ましくは1日当たり0.02~0.4mg/kg体重、例えば、1日当たり0.03~0.3mg/kg体重である。
当技術分野で熟練した医師は、所望の用量による投与に対する本発明のSGLT-2阻害剤を調製することができる。
【実施例】
【0085】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する役目を果たすが、これは、本明細書で開示されている本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0086】
(実施例1)
探索的臨床フィールド実験「DCM」-概要
健康診断及び心エコー検査を介してDCMと診断された(改変されたNYHAクラス2及び3)、顧客が所有するイヌの患蓄(1才より上)を、経口的に及び1日1回0.3mg/kg体重の用量のベラグリフロジンで処置した。実験期間の間、体重、ボディコンディションスコア、血圧及び循環器を、臨検中、研究者によりその場で定期的に試験する。さらに、胸部放射線写真(右側面及び背腹視野)、心エコー検査(IVSd、LA直径、Ao直径、LVIDd、LVWd、LVWs、IVSd、LVPWd、EDV、ESV、EF、%FS、滲出液の存在)及び心電図記録法を実施する。できるだけ完全な概観を得るために、定期的な血液試験は、完全な血液学(白血球(WBC)、白血球百分率、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、ハインツ小体、血小板カウント数)、生化学パネル(全タンパク質、アルブミン、グロブリン、アルカリホスファターゼ(ALP)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、全ビリルビン、クレアチニン、血液ウレア窒素又はウレア(BUN)、カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、リン、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、フルクトサミン)、total T4、ケトン体及び心臓のバイオマーカーの測定(血漿NT-proBNP、心臓トロポニンI)を含む。
【0087】
目的とする変数は、心臓の死亡、心臓に関連した安楽死及び心臓疾患ステージの進行並びに事象までの時間(イヌ患蓄の生存時間)として定義される事象の数である。探索的臨床フィールド実験の結果は、生存時間及び事象までの時間(事象は心不全による全体的死亡、心血管系死亡又は入院と定義された)の臨床的に関連する延長を示している。さらに、臨床的パラメーター(例えば食欲、活動レベル及び呼吸)は有意に改善している。
【0088】
(実施例2)
探索的実験室試験「MVD」-概要
身体検査及び心エコー検査(ACVIMガイドラインに従い、ステージB2及びC)を介して僧帽弁疾患と診断された実験動物(1才より上)は、経口的に及び1日1回0.3mg/kg体重の用量のベラグリフロジンで処置する。実験期間の間、体重、ボディコンディションスコア、血圧及び循環器を、臨検中、研究者によりその場で定期的に試験する。さらに、胸部放射線写真(右側面及び背腹の視野)、心エコー検査(IVSd、LA直径、Ao直径、LVIDd、LVWd、LVWs、IVSd、LVPWd、EDV、ESV、EF、%FS、滲出の存在)及び心電図記録法を実施する。できるだけ完全な概要を得るために、定期的な血液試験は、完全な血液学(白血球(WBC)、WBC百分率、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、ハインツ小体、血小板カウント数)、生化学パネル(全タンパク質、アルブミン、グロブリン、アルカリホスファターゼ(ALP)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、総ビリルビン、クレアチニン、血液ウレア窒素又はウレア(BUN)、カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、リン、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、フルクトサミン)、総T4の測定、ケトン体及び心臓バイオマーカー(血漿NT-proBNP、心臓トロポニンI)を含む。
【0089】
目的とする変数は、心臓の死亡、心臓に関連した安楽死及び心臓の疾患ステージの進行及び事象までの時間(イヌ患蓄の生存時間)として定義される事象の数である。探索的実験室試験の結果は、生存時間及び事象までの時間(事象は心不全、肺浮腫のための死亡又は入院として定義された)の臨床的に関連のある延長を示す。さらに、臨床的パラメーター(例えば食欲、活動レベル及び呼吸)は有意に改善している。
【0090】
(実施例3)
臨床前(潜在性)又は臨床的(明白な)拡張型心筋症(DCM)を有するイヌにおける探索的臨床フィールド実験
臨床研究を2匹の小型動物クリニックにおいて行った。全部で9匹のイヌを適格性についてスクリーニングし、これらを試験に含めた。心臓病学的検査のスクリーニングは、それぞれの実験場所の心臓専門医により実施した。心疾患をJohn D. Bonagura et al. (JVC 2022)により公開されたガイドラインに従い、臨床前(潜在性)又は臨床的(明白な)拡張型心筋症(DCM)に分類した。DCMの診断及びステージ分けは独立した心臓専門医により確認された。2匹のイヌが潜在性DCM(ケース100-001及びケース100-004;NYHAクラス2/B2;Gerhard Wess JVC 2022)及び2匹のイヌが明白なDCM(ケース100-006及びケース100-007;NYHAクラス3/ステージC;Gerhard Wess JVC 2022)と分類された。残りの5匹のイヌは様々な他の心臓障害を患い、したがって実験分析からは除外された。
【0091】
DCMを有するイヌにおける典型的な心臓超音波の知見は、左心室の心臓収縮期及び拡張終期寸法の増加、短縮率の低減、及びE点-心室中隔間距離の増加を含む。心臓拡張期の左心室充填は、パルス化印可ドップラー心エコー検査により非侵襲的に評価することができる。経僧帽弁血流(TMF)パターンは、拘束型又は非拘束型(正常なTMF、損なわれたリラクゼーション、及び偽正常パターン)のいずれかと分類される。人々及びイヌにおいて、拘束型TMFパターンは、高い左心室充填圧及び悪い予後と高く相関する(Michele Borgarelli et al; JVIM 2006)。Borgarelliらは、アンジオテンシン-変換酵素阻害剤(ACE-I)、フロセミド、及びジゴキシンで最適に処置した場合の、明白なDCM(NYHA3/ステージC)及び80日間の拘束型TMFパターン(95%CI 42~193日)を有するイヌにおける平均生存時間を報告した。加えて、心臓のバイオマーカー、例えば、N末端pro-B型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)及び心臓トロポニンI(cTnI)をDCMスクリーニングに対して使用することができる(John D. Bonagura et al.; JVC 2022; Gerhard Wess JVC 2022)。
【0092】
潜在性DCM(ケース100-001及びケース100-004)を有すると分類された2匹のイヌを、D180までのみベラグリフロジン(0.05mg/kg体重/日の経口投与)で処置し、心臓超音波値は変化しなかった。さらに、両方のイヌは、180日の実験期間の間、有害事象を発症せず、血液値(血液学及び生化学)は正常のままであった。過去の公開されたデータ(Michele Borgarelli et al; JVIM 2006)と一致して、実験終了の時点で両方のイヌとも依然として生きていた。
【0093】
ケース100-006は、明白なDCM及びうっ血性心不全の第1の開始時期と診断された、年齢10才、無処置の雄、25.8kg、雑種のイヌであった。飼い主によると、全身症状及び運動耐容能は悪かった。スクリーニング時には、イヌはいかなる薬物の投与も受けなかった。ケース100-006はD45までベラグリフロジン(0.05mg/kg体重/日の経口投与)のみで処置した。心臓疾患の自然の進行により、D45において、非常に低い用量(用量0.08mg/kg/日-製造業者により推奨される最小量の用量:0.13mg/kg体重/日)を使用して、トラセミド(利尿剤)を加えた。心臓障害はさらに進行し、イヌは加えて心房細動を発症した。68日の治療期間後、有害事象(激しい衰弱、頻呼吸、潅流の減少、心房細動の発症、及び腹水による腹部膨満)が生じ、心疾患の進行によりこのイヌの実験は終結した。続いて、69日目にイヌを安楽死させた。臨床徴候、心臓バイオマーカー(cTnI及びNT-proBNP)、並びに心臓超音波測定(重度の左心房の及び左心室の拡大、収縮の軽度の低減、及び拘束型TMFパターン)は、実験参加時には疾患のステージがかなり進行していたことを示した。患蓄は69日後に実験終了に到達し、これは標準的治療を受けたDCMイヌの報告された生存時間と一致している。ケース100-006はいかなる心臓保護的治療(例えば、ACE阻害剤)も、陽性変力作用のサポート(例えば、ジゴキシン又はピモベンダン)も受けず、非常に低い用量の利尿剤の投与のみを受けたという事実にもかかわらず、このような結果となった。血糖及び電解質(Na及びK)は全実験期間中、正常な限界内に留まった。クレアチニンは軽度の増加を示し、ウレアは中程度の増加を示した。これらの変化は、ベラグリフロジンのわずかな利尿剤作用、DCMによる心拍出量の低減、又はこれら2種の因子の組合せが原因であり得る。実験の最初の45日の間NT-proBNPは正常化され、これは左心室の充填圧の低減を示すものである。この発見は、正常化された左心室の内部心臓拡張期の直径(LVIDDN)における低減により支持される。疾患の進行が進んだ結果として、心臓TnIは実験期間中に増加した。体重はいかなる有意な変化も示さなかった。
【0094】
【表1】
N末端pro-B-型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)及び心臓トロポニンI(cTnI)
【0095】
【表2】
LA (右傍胸骨短軸として測定される左心房の寸法); Ao (大動脈根の直径); LA/Ao, 左心房対大動脈の比; LVIDD (心臓拡張期終期の左心室内径); N 体表及び体重による正規化値; EDVI 体表面積に対して指標化された左心室(LV)拡張末期容積 ; ESVI 体表面積に対して指標化された左心室(LV)収縮末期容積 ; EPSS (E点-心室中隔間距離); FS (短縮率)
【0096】
ケース100-007は、明白なDCM及びうっ血性心不全の第1の開始と診断された、年齢7才、無処置の雄、26kg、雑種のイヌである。飼い主によると、全身症状及び運動耐容能は悪かった。スクリーニング時にはイヌはいかなる薬物の投与も受けなかった。
【0097】
ケース100-007は、D45(43日)までベラグリフロジン(0.05mg/kg体重/日の経口投与)のみで処置した。心臓疾患の自然の進行により、D45において、トラセミド(利尿剤)(用量:0.48mg/kg体重/日)を加えた。臨床徴候、心臓バイオマーカー(cTnI)、並びに心臓超音波測定(重度の左心房の及び左心室の拡大、収縮の低減、及び拘束型TMFパターン)がかなり進行した疾患のステージを示した。患蓄は有害事象を発症することなく定期的なD90臨検に到達した。ケース100-007は、いかなる心臓保護的治療(例えば、ACE阻害剤)も、陽性変力作用のサポート(例えば、ジゴキシン又はピモベンダン)も受けなかったという事実にもかかわらず、このような結果となった。D101において、イヌの状態が悪化したことを飼い主が報告した。計画していなかった臨検は、腹水の発症と共にDCMの進行を示した。続いて、スピロノラクトンを現在の治療に加えて、利尿を促進した。スピロノラクトンは実験プロトコルにおいて禁止された治療と分類された。したがって、ケース100-007はD101において実験の終わりに到達した。実験薬物の開始後、血糖は正常化した。電解質(Na及びK)及びNT-proBNPは、D90臨検まで、及びD90臨検を含めて、正常な限界内に留まった。実験の終わりD101において、クレアチニン及びウレアは軽度の増加を示した。これらの変化は、ベラグリフロジンのわずかな利尿剤作用、DCMによる心拍出量の低減、利尿剤治療(トラセミド)の追加、又はこれら3種の因子の組合せが原因となり得る。心臓のTnIはD45において有意に低減し、心筋細胞の損失の減弱を示している。その後、cTnIは、疾患の進行が進んだ結果、D90においてやや増加した。実験の終わりに、NT-proBNPは疾患の進行により上昇した。左心房サイズ並びに左心室心臓拡張期及び心臓収縮期寸法は実験の最初の90日間にわたり次第に低減した。実験の最初の42日の間、TMFパターンは拘束型から非拘束型パターンに変換し、これは左心室の心臓拡張期の充填圧の低減を示している。D90臨検における、早期及び後期の心臓拡張期の経僧帽弁血流の融合により、TMFパターンを決定することはできなかった。FS%、EPSS、及びESVIにより決定される左心室の運動低下は、DCMの進行及び薬理学的な陽性変力作用のサポートの欠如により、実験の最初の90日間にわたり悪化した。体重はいかなる有意な変化も示さなかった。
【0098】
【表3】
N末端pro-B-型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)及び心臓トロポニンI(cTnI)
【0099】
【表4】
LA (右傍胸骨短軸として測定される左心房の寸法); Ao (大動脈根の直径); LA/Ao, 左心房対大動脈の比; LVIDD (心臓拡張期終期の左心室内径); N 体表及び体重による正規化値; EDVI 体表面積に対して指標化された左心室(LV)拡張末期容積; ESVI 体表面積に対して指標化された左心室(LV)収縮末期容積; EPSS (E点-心室中隔間距離); FS (短縮率)
【0100】
総括:
臨床前(潜在性)DCMと分類された2匹のイヌは、D180までベラグリフロジンのみで処置し、心臓超音波値は変化しなかった。さらに、両方のイヌとも180日の実験期間中有害事象を発症せず、これらの血液値は正常値のままであった。
【0101】
明白なDCMを有する2匹のイヌは、D45まで、ベラグリフロジンのみで処置した。D45において、両方のイヌとも左心房の及び左心室のサイズの改善、及び心臓バイオマーカーのうちの1つの改善を示した。あらゆる心臓保護又は陽性変力治療を差し控えたことから、これらの知見は予想外である。ケース100-007は加えて、TMFパターンの拘束型から非拘束型(MVE/A-比率)への改善を示し、左心室の充填圧の低減(左心室の充填圧の上昇はヒト及びイヌにおける予後の重要な負の指標である)を実証している。イヌはいかなる陽性変力薬物の投与を受けなかったので、左心室の収縮は弱いままであった。両方のイヌとも軽度のクレアチニン及びウレアの増加を示したが、これは臨床的に関連性のある増加ではなかった。ケース100-007ではこの増加は一時的なものであった。腎臓パラメーターの増加は、実験薬物のわずかな利尿剤作用、DCMによる心拍出量の低減、又はこれら2種の因子の組合せが原因となり得る。また、両方のイヌはウレア及びクレアチニンの増加を悪化させる、いくらかの加齢に伴う腎臓の変化を有する可能性がある。これらのイヌの心臓疾患のステージはかなり進行し、ベラグリフロジン及び後にはトラセミドのみの投与を受けていたにもかかわらず、明白なDCMを有するイヌは両方とも疾患の標準的過程を示し、生存時間に関しては、ベラグリフロジンの高い有効性を示した。ケース100-006が非常に低い用量のトラセミドのみを投与を受けていたが、このような結果が得られた。
【0102】
結論:
臨床前(潜在性)DCMと分類され、ベラグリフロジで処置した2匹のイヌの場合、疾患進行は観察されなかった。これらのイヌが標準的ケア処置を受けなかったという事実にもかかわらず、明白なDCMと分類され、ベラグリフロジンで処置したイヌは両方とも、標準的ケア処置を受けたイヌと同等の生存時間を示した。これはまた心臓のサイズ(LA/AO比、LVIDDN、及びLVEDI)及び心臓バイオマーカーの改善も伴った。これらの知見は、治療結果及び生存時間に関するベラグリフロジンの高い有効性を明確に実証している。
【0103】
(実施例4)
無症候性/臨床前原始間葉状僧帽弁疾患(MMVD)を有するイヌにおける実験室での探索的研究
原始間葉状僧帽弁疾患(MMVD)はイヌにおいて最も一般的な後天性心臓障害であり、イヌの心疾患の症例のおよそ75%を占めている(Buchanan JW., Adv Vet Sci Comp Med. 1977; 21: 75-106)。MMVDの分類のため、米国獣医内科学学会(American College of Veterinary Internal Medicine(ACVIM))のガイドラインが一般的に使用されている(Keene BW et al., J Vet Intern Med. 2019; 33: 1127- 1140)。うっ血性心不全の徴候をまだ発症していない、心臓拡大を有するイヌが無症候性/臨床前ACVIMステージB2にあると考えられる。
【0104】
MMVDステージB2を有するイヌにおける心臓超音波知見は、変性的心臓弁膜の変化、左心房の寸法の増加(LA/AO-比率≧1.6)、及び体重に対して正規化された左心室の拡張終期寸法の増加(LVIDDN≧1.7)を含む(Keene et al., 2019)。生存時間の評価のため、上記心臓超音波変数に基づく重症度スコア(MINEスコア)、心臓収縮(短縮率、FS%)、及びピークE波伝搬速度を開始した(Vezzosi T et al., J Vet Intern Med. 2021, 35(3):1238-1244)。MINEスコアは生存時間と関連があり、よって予後の情報を提供する。
【0105】
ステージB2のイヌは、治療から実質的に恩恵を受ける可能性が高いので特に興味深い。今までのところ、ピモベンダンのみが臨床前期間の延長を実証した(Boswood A et al., J Vet Intern Med. 2016; 30: 1765-1779)。
この実験の目的は、無症候性/臨床前ACVIMステージB2MMVDを有するイヌのための治療としてのベラグリフロジン、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害剤を評価することであった。獣医学の心臓専門医により以前この状態と診断された3匹のビーグル犬が実験に含まれた。
ベースライン評価は、体重測定、獣医学的検査、心エコー検査、尿検査、血液学、生化学、BHB、NT-proBNP、cTnI、及びエリスロポエチン分析のための血液採取並びに心臓サイズ、肺浮腫、及びうっ血を評価するための放射線写真を含んだ。実験0日目に、1日1回のベラグリフロジン(0.05mg/kg体重)経口投与を開始した。上述されたパラメーターの分析のための獣医学的検査、尿検査、及び血液採取を32日目、59日目、及び91日目に繰り返した。心エコー検査を23日目、58日目、及び93日目に繰り返した。全般的な健康状態の観察を毎日2回行い、およそ3週ごとに体重を測定する。
【0106】
心エコー検査データ:
94日間のベラグリフロジン治療期間にわたり、MMVD重症度及び進行を評価するのに一般的に使用されている2つの心エコー検査パラメーター:左心房対大動脈の比(LA/Ao)及び体重に対して正規化された心臓拡張期の左心室の内径(LVIDDN)において改善(すなわち、低減)が観察された。
最初のイヌ(Azul)は、58日目にLA/Ao比においてベースラインからの17.3%低減を示した。93日目に増加が観察されたが、イヌの値はベースラインの1.08%未満のままであった。第2の対象(Birdie)は93日目にベースラインからの12.73%の減少を示した。第3の対象(Shelby)はLA/Ao比においてベースラインからの減少を示さなかった。
58日目、Azulに対して LVIDDNが3.56%減少した。しかし、93日目にはベースラインレベル(+0.81%)のすぐ上に戻った。BirdieもShelbyも23日目、58日目、及び93日目においてベースラインから減少したLVIDDN値を示し、93日目の値はそれぞれ5.25%及び3.54%減少した。体重の変化がLVIDDNに影響を与えることに注目されたい。すべての対象が23日目のエコー測定以前に体重の低減を経験したため、この時間点での値は慎重に解釈されるべきである。
【0107】
さらに、イヌにおける原始間葉状僧帽弁疾患(MMVD)の重症度の分類である、「僧帽弁不全症心臓超音波」スコア(MINEスコア)を計算した(Vezzosi et al., 2021)。このスコアは、MMVDの重症度の簡単に使用できる心臓超音波の分類として、規定通りに取得した心臓超音波変数に基づく。仮説は、MINEスコアは動物の平均生存時間に関連するので、臨床的に有効であるというものであった(以下の表5及び6を参照されたい)。
【0108】
【0109】
【0110】
血液検査:血液学、生化学、BHB、NT-proBNP、cTnI、及びEPO:
血液学、生化学、又はエリスロポエチンパラメーターにおいて、臨床的に有意な変化はこれまで観察されなかった。cTnIにおける変化はまた、臨床的に有意義な傾向を示すようには見えず、これは、cTnIでは、MMVDのステージを識別する能力が低いこと、及びうっ血性心不全の危険性を判定するための適中率が低いことを示した過去の実験と一致する。
1匹の対象において(Shelby)、NT-proBNPはとりわけベースラインから開始して、基準範囲の上に上昇した。治療期の間、ShelbyのNT-proBNP値は各測定時間点において常に低減した。依然として基準範囲の上ではあるが、91日までに、Shelbyの値はベースラインから45.6%減少した。AzulのNT-proBNP値は基準範囲内に留まったが、59日目にはベースラインから下向き傾向を示し(76.3%減少)、91日目にわずかに増加した(ベースラインからの45.8%減少)。59日目に、2匹の対象(Azul及びBirdie)において、BHBは10×減少したが、91日目にはベースラインレベルに戻った。
【0111】
有害事象:
治療開始後、最も頻繁な異常な観察は嘔吐であり、住居囲いの内に見出された。動物はグループで飼育されていたので、個々の対象に対する発生頻度は決定することができない。試験生成物に対する嘔吐との関係は不明である。しかし、ベースラインにおいて観察された住居囲い内の嘔吐の事例が1つあった。嘔吐に対処するための同時発生的な治療介入は必要とされていない。
口唇を動かす運動/なめる運動、頭振り、しかめ面、及び唾液の分泌が投薬後に観察された。このような観察は、カプセル剤内に含有されない液体製品の経口投与に起因する可能性があり、意図した用量の容積の滞留を妨げるものではなかった。
1匹の動物は治療の間膀胱炎を発症した(Azul)。動物は地域の獣医の裁量で処置され、いずれのさらなる問題もなく回復した。膀胱炎は、ヒトにおけるSGLT2治療の一般的な有害事象として報告されている。さらに、AzulはD93において収縮FS%の増加及び心拍数の上昇を示した。両方とも膀胱炎により引き起こされる不快感/腹痛により説明することができる。
本実験中血糖値及び腎臓値並びに泌尿器の比重は影響を受けず、実験薬ベラグリフロジンの安全性プロファイルを実証していることに気付くことが重要である。
【0112】
総括:
D94における中間分析まで、無症候性/臨床前MMVD ACVIMステージB2を有する3匹のイヌはすべて、1日1回のみの0.05mg/kg体重ベラグリフロジンで経口的に処置した。D94まで、実験イヌのいずれもうっ血性心不全(CHF)を発症しなかった。軽度の消化管徴候(嘔吐、唾液の分泌、唇を動かす運動など)は別として、1匹の動物が糖尿により細菌性膀胱炎を発症した(Azul)。糖尿は3匹イヌすべてに観察され、実験薬物ベラグリフロジンの薬力学的有効性を実証した。しかし、いかなる動物において、いかなる時にも、血中グルコース、腎機能、又は血清電解質には変化が観察されなかった。
【0113】
今までのところ、3匹のイヌはすべて疾患の標準の過程を示し、中間分析の時点で依然として生存していた。
左心房サイズに関して、AzulはLA/AO比におけるいかなる変化も示さず、Birdieは左心房のサイズの正常化を示し、ShelbyはLA/AO比のわずかな増加(悪化)を実証した。Visserら(J Vet Intern Med. 2019; 33: 1909- 1920)により報告された、LA/AO比に対する毎日の観測者間の再現性は、対象の変動係数11.0%及び95%再現性係数の0.44の中にあることを示した。したがって、Azul及びShelbyに対する変化は日ごとのばらつきによるものであった。Birdieの左心房サイズの変化はこのばらつきを超えた改善を示し、臨床的に関連性のある回復を示した。
【0114】
正常化した左心室の内径(LVIDDN)に関して、AzulはLVIDDNにおいて変化を示さなかったのに対して、Birdie及びShelbyはわずかな低減を実証した(改善)。Visserら(J Vet Intern Med. 2019; 33: 1909-1920)による、LVIDDNに対して報告された毎日の観測者間の再現性は、対象の変動係数5.9%及び95%再現性係数0.23の中にあったことを示した。したがって、3匹のイヌすべてに対する変化は日ごとのばらつきによるものであった。
MINEスコアに反映されているように、Birdieはベースライン及びD93において軽度の疾患ステージを示し、Shelbyはベースライン及びD93において中程度のステージを示し、Azulはベースラインにおいて中程度のステージ及びD93において重度のステージを示した。AzulにおけるMINEスコアの悪化は短縮率FS%の増加によるものであった。Frank Starlingの法則によると、FS%は前負荷により、又は交感神経のトーンの変化により影響され得る。前負荷は左心房のサイズにより評価することができる。LA/AO比が変わらないことから、前負荷における変化は、FSの増加の原因として除外することができる。その時点でAzulは細菌性膀胱炎を示していた。一般的な膀胱炎は普通腹部の不快感及び疼痛を伴い、したがって交感神経のトーンを上昇させた。D93にAzulはベースラインの心拍数よりわずかに高い心拍数を示したが、これは、交感神経のトーンの増加の存在がMINEスコアの悪化の有力な原因であることを支持するものであった。
【0115】
結論:
無症候性/臨床前MMVD ACVIMステージB2を有するすべての3匹のイヌの、D94の中間分析までの、0.05mg/kg体重ベラグリフロジンによる1日1回のみの経口投与の間、実験したイヌのいずれもうっ血性心不全(CHF)を発症しなかった。全体的には、測定したデータは安定した疾患状態を実証し、MMVDを評価するのに使用されている主要な診断用パラメーターのうちのいくつかには改善の徴候がある。
【0116】
【国際調査報告】