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特表2024-527438パワーオーバーイーサネット(PoE:「イーサネット」は登録商標)給電スマートスピーカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】パワーオーバーイーサネット(PoE:「イーサネット」は登録商標)給電スマートスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240717BHJP
   H04R 1/06 20060101ALI20240717BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/06 310
H04R1/02 101B
H04R1/02 101A
H04R1/02 101F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522718
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 IB2022000019
(87)【国際公開番号】W WO2023275612
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】17/360,501
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509273846
【氏名又は名称】レンブルック インダストリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティドセン,グレゴリー,アール.
(72)【発明者】
【氏名】バートン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ソンダースコフ,イェンス,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】エベリン,ロス,ジー.
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D017AD12
5D017AH06
5D220AA14
5D220AA50
(57)【要約】
ネットワークスピーカ装置は、密閉されたハウジングと、ハウジング内に設けられ、イーサネットケーブルを介してネットワークルータから電力及びオーディオデータを受信するイーサネットポートとを含む。ハウジング内の電源サブシステムは、イーサネットポートで受信した電力を管理する。電源サブシステムから給電されるマイクロプロセッササブシステムは、オーディオデータを受信して処理し、出力オーディオ信号を生成する。電源サブシステムから給電されるデジタルオーディオ増幅器は、出力オーディオ信号を増幅してスピーカドライバを駆動し、オーディオ出力を再生する。更に、本装置は、ハウジング内に設けられ、電源サブシステムによって給電される少なくとも1つのヒータ抵抗器を備える。少なくとも1つのヒータ抵抗器は、マイクロプロセッササブシステムによって制御され、ハウジング内部の温度が所定の温度以下になると、ハウジング内部を自動的に加熱する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークスピーカ装置であって、
密閉されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、イーサネットケーブルに接続され、前記イーサネットケーブルを介して伝送される電力及びオーディオデータを受信するように構成されたイーサネットポートと、
前記ハウジング内に設けられ、前記イーサネットポートで受け取った電力を管理するように構成された電源サブシステムと、
前記ハウジング内に設けられ、前記電源サブシステムによって給電され、オーディオデータを受信して処理し、出力オーディオ信号を生成するように構成されたマイクロプロセッササブシステムと、
前記ハウジング内に設けられた少なくとも1つのスピーカドライバと、
前記ハウジング内に設けられ、前記電源サブシステムによって給電されるデジタルオーディオ増幅器であって、前記マイクロプロセッサシステムから受信した前記出力オーディオ信号を増幅して、少なくとも1つのスピーカドライバを駆動し、オーディオ出力を再生するデジタルオーディオ増幅器と、
前記ハウジング内に設けられ、前記電源サブシステムによって給電される少なくとも1つのヒータ抵抗器であって、前記マイクロプロセッササブシステムによって制御され、前記ハウジング内部の温度が所定の温度以下になると、前記ハウジング内部を自動的に加熱する少なくとも1つのヒータ抵抗器と、
を備える、スピーカ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電力及びオーディオデータは、電源設備から前記イーサネットケーブルを介して受信される、スピーカ装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記電源設備は、パワーオーバーイーサネット対応ネットワークルータを含む、スピーカ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記電源サブシステムは、前記イーサネットケーブルの4対のワイヤペアを介して前記イーサネットポートで受信された電力を受信するように構成されている、スピーカ装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記オーディオデータは、オンライン音楽サービスからの高解像度デジタルオーディオストリームを含む、スピーカ装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記電力は、交流電流として前記イーサネットケーブルを介して前記イーサネットポートに伝送され、前記電源サブシステムは、前記交流電流を直流電流に変換するためのダイオードブリッジ整流器を備える、スピーカ装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記電源サブシステムは、前記イーサネットケーブルに接続されたパワーオーバーイーサネット対応ネットワークルータからの電力の利用可能性について前記イーサネットポートを監視し、前記パワーオーバーイーサネット対応ネットワークルータから利用可能な最大電力を応答可能なように要求するように構成された電源コントローラを含む、スピーカ装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記電源サブシステムは、前記デジタルオーディオ増幅器への直流約26ボルトの出力と、前記マイクロプロセッササブシステムへの直流約5ボルトの出力とを有する、スピーカ装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記電源サブシステムは、さらに、直流26ボルトを直流5ボルトに変換する降圧スイッチモード電源回路を備える、スピーカ装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記マイクロプロセッササブシステムは、少なくとも1GHzのクロック速度を有するプロセッサと、少なくとも256メガバイトのメモリを有するランダムアクセスメモリ(RAM)とを含む、スピーカ装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記オーディオデータは、オンライン音楽サービスからの高解像度デジタルオーディオストリームを含み、前記マイクロプロセッササブシステムは、前記オンライン音楽サービスからのオーディオデータをキャッシングするためのフラッシュメモリを含み、前記オンライン音楽サービスの停止時にも連続的なオーディオ再生を行う、スピーカ装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記デジタルオーディオ増幅器及び前記マイクロプロセッササブシステムは、高解像度デジタルオーディオサンプリングレートをサポートする、スピーカ装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記ネットワークスピーカ装置は、同期してオーディオコンテンツを再生するように構成された複数の他のネットワークスピーカ装置にネットワークを介して接続可能である、スピーカ装置。
【請求項14】
請求項1において、
前記電源サブシステム、前記マイクロプロセッササブシステム、前記デジタルオーディオ増幅器、及び前記少なくとも1つのヒータ抵抗器は、前記ハウジング内の一つ又は複数の回路基板に集積されている、スピーカ装置。
【請求項15】
請求項1において、
前記ハウジングは、ポリプロピレンから形成されている、スピーカ装置。
【請求項16】
請求項1において、
前記密封されたハウジングは、単一の密封された継ぎ目によって一体に連結される2つの成形されたポリプロピレン片からなる、スピーカ装置。
【請求項17】
請求項1において、
前記密封されたハウジングは、約6mm乃至11mmの壁厚を有する、スピーカ装置。
【請求項18】
請求項1において、さらに、
前記イーサネットポートにおいて前記密閉ハウジング内への湿気の侵入を抑制又は防止するゴム製グロメットを備える、スピーカ装置。
【請求項19】
請求項1において、さらに、
前記ハウジング内に音響バスレフポート管を備える、スピーカ装置。
【請求項20】
スピーカシステムにおいて、
(a)インターネットを介してオンライン音楽サービスからオーディオデータを受信するように構成されたパワーオーバーイーサネット対応ネットワークルータと、
(b)イーサネットケーブルによって前記ネットワークルータに接続された複数のスピーカ装置と、を備え、
前記スピーカ装置は、それぞれ、
密閉されたハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記ネットワークルータに接続されたイーサネットケーブルの1つに接続され、前記ネットワークルータから電力及びオーディオデータを受信するように構成されたイーサネットポートと、
前記ハウジング内に設けられ、前記イーサネットポートで受け取った電力を管理するように構成された電源サブシステムと、
前記ハウジング内に設けられ、前記電源サブシステムによって給電され、オーディオデータを受信して処理し、出力オーディオ信号を生成するように構成されたマイクロプロセッササブシステムと、
前記ハウジング内に設けられた少なくとも1つのスピーカドライバと、
前記ハウジング内に設けられ、前記電源サブシステムによって給電されるデジタルオーディオ増幅器であって、前記マイクロプロセッサシステムから受信した前記出力オーディオ信号を増幅して、少なくとも1つのスピーカドライバを駆動し、オーディオ出力を再生するデジタルオーディオ増幅器と、
前記ハウジング内に設けられ、前記電源サブシステムによって給電される少なくとも1つのヒータ抵抗器であって、前記マイクロプロセッササブシステムによって制御され、前記ハウジング内部の温度が所定の温度以下になると、前記ハウジング内部を自動的に加熱する少なくとも1つのヒータ抵抗器と、
を備えるスピーカシステム。
【請求項21】
請求項20において、
前記スピーカ装置のそれぞれの電源サブシステムは、前記イーサネットケーブルの4対のワイヤペアを介して前記イーサネットポートで受信された電力を受信するように構成されている、スピーカシステム。
【請求項22】
請求項20において、
前記オーディオデータは、前記オンライン音楽サービスからの高解像度デジタルオーディオストリームを含む、スピーカシステム。
【請求項23】
請求項20において、
前記スピーカ装置のそれぞれの電源サブシステムは、前記パワーオーバーイーサネット対応ネットワークルータからの電力の利用可能性について前記イーサネットポートを監視し、前記パワーオーバーイーサネット対応ネットワークルータから利用可能な最大電力を応答可能なように要求するように構成された電源コントローラを含む、スピーカシステム。
【請求項24】
請求項20において、
前記オーディオデータは、オンライン音楽サービスからの高解像度デジタルオーディオストリームを含み、前記マイクロプロセッササブシステムは、前記オンライン音楽サービスからのオーディオデータをキャッシングするためのフラッシュメモリを含み、前記オンライン音楽サービスの停止時にも連続的なオーディオ再生を行う、スピーカシステム。
【請求項25】
請求項20において、
前記複数のスピーカ装置は、オーディオコンテンツを同期して再生するように構成されている、スピーカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年6月28日に出願された米国特許出願第17/360,501号の優先権の利益を主張するものであり、この米国特許出願は、その全体が参照によって本願に援用される。
【0002】
背景
本出願は、包括的には、スマートスピーカに関し、詳しくは、パワーオーバーイーサネット(power over Ethernet:PoE)給電スマートスピーカに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一つ又は複数の実施形態に基づくネットワークスピーカ装置は、密閉されたハウジングと、このハウジング内に設けられ、イーサネットケーブルを介してネットワークルータから電力及びオーディオデータを受信するイーサネットポートとを備える。ハウジング内の電源サブシステムは、イーサネットポートで受信した電力を管理する。電源サブシステムから給電されるマイクロプロセッササブシステムは、オーディオデータを受信して処理し、出力オーディオ信号を生成する。電源サブシステムから給電されるデジタルオーディオ増幅器は、出力オーディオ信号を増幅してスピーカドライバを駆動し、オーディオ出力を再生する。更に、本装置は、ハウジング内に設けられ、電源サブシステムによって給電される少なくとも1つのヒータ抵抗器を備える。少なくとも1つのヒータ抵抗器は、マイクロプロセッササブシステムによって制御され、ハウジング内部の温度が所定の温度以下になると、ハウジング内部を自動的に加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】一つ又は複数の実施形態に基づく例示的なPoE給電スマートスピーカを示す図である。
図1B】一つ又は複数の実施形態に基づく例示的なPoE給電スマートスピーカを示す図である。
図2】一つ又は複数の実施形態に基づく複数のスマートスピーカを含む例示的なネットワークを示すブロック図である。
図3】一つ又は複数の実施形態に基づくスマートスピーカの様々な構成要素を示す簡略化されたブロック図である。
図4】一つ又は複数の実施形態に基づくスマートスピーカの背面斜視図である。
図5】一つ又は複数の実施形態に基づくスマートスピーカの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
共通又は類似の要素には、同様又は同一の参照符号を付している。
【0006】
詳細な説明
ここに開示する様々な実施形態は、PoE対応ネットワークスイッチやルータ等の電力供給機器からイーサネットケーブルを介してオーディオデータと電力の両方を受信するスマートスピーカに関する。PoE給電スピーカでは、スピーカに電力を供給するための電気コンセントやプラグなどが不要である。
【0007】
図1A及び図1Bは、一つ又は複数の実施形態に基づく例示的なPoE給電スマートスピーカ100を示している。スマートスピーカ100は、密閉された外側ハウジング102を備える。ハウジング102の後部にあるイーサネットポート106にはイーサネットケーブルを接続でき、これにより、スピーカは、このイーサネットケーブルを介して伝送される電力及びオーディオデータを受信できる。
【0008】
図2に示すように、スマートスピーカ100は、イーサネットケーブル107によってネットワーク内のPoEルータ108に接続される一組のスマートスピーカ100の1つであってもよい。スマートスピーカ100は、PoEルータ108を介してインターネットにアクセスし、オンライン音楽サービス109(例えば、スポティファイ(Spotify:登録商標)、アマゾンミュージック(Amazon Music:登録商標)、コバズ(Qobuz:登録商標)、タイダル(Tidal:登録商標))から音楽ストリームを受信する。
【0009】
図3は、例示的なスマートスピーカ100の様々な構成要素を示す簡略化されたブロック図である。
【0010】
ハウジング102内の入出力(input/output:I/O)バックパネル104は、イーサネットポート106を含む。
【0011】
スマートスピーカ100は、一つ又は複数のスピーカドライバを含む。例示的な実施形態では、スピーカドライバは、ツイータ108とウーファ110を備える。
【0012】
ハウジング102内のホストボード112は、イーサネットポート106で受信した電力を管理するための電源サブシステム114を含む。
【0013】
ホストボード112上のマイクロプロセッササブシステム116は、電源サブシステム114によって給電される。マイクロプロセッササブシステム116は、オーディオデータを受信して処理し、出力オーディオ信号を生成するように構成されている。
【0014】
ホストボード112上のデジタルオーディオ増幅器117は、電源サブシステム114によって給電される。デジタルオーディオ増幅器117は、マイクロプロセッササブシステム116から受信した出力オーディオ信号を増幅し、ツイータ108とウーファ110を駆動してオーディオ出力を再生する。
【0015】
ホストボード112上の一組のヒータ抵抗器118は、電源サブシステム114によって給電される。ヒータ抵抗器118は、マイクロプロセッササブシステム116によって制御され、ハウジング102内の温度が所定の温度以下になると、ハウジング102の内部を加熱する。
【0016】
スマートスピーカ100は、幾つかの進歩的な技術を用いて高音質を実現している。専用の効率的な電源サブシステム114は、スピーカをPoEネットワークルータ108に接続するイーサネットケーブルの4対の銅線を使用することで、イーサネットケーブルからより多くの電力を引き出すことができる。この電源114によって生成される追加的なエネルギによって、スマートスピーカ100は、ネットワーク化されたマイクロプロセッササブシステム116及び高音質デジタルオーディオ増幅器117に電力を供給できる。スマートスピーカの「4対」PoE電源は、イーサネットケーブルの2対の銅線だけで電力供給を行っていた以前のPoEスピーカの電源からの改善点である。2対PoE電源技術では、ネットワーク化されたマイクロプロセッサコアとオーディオ増幅器117に、様々な一般的な音楽サービス109(例えば、スポティファイ(Spotify:登録商標)、アマゾンミュージック(Amazon Music:登録商標)、コバズ(Qobuz:登録商標))からの高解像度(high-resolution:ハイレゾ)デジタルオーディオストリームを再生するために必要な電力を同時に供給することはできない。
【0017】
一つ又は複数の実施形態では、専用のデジタル増幅器117を使用して電力効率を30%向上させ、PoE電源サブシステム114から利用可能な限られたエネルギを最大限に活用する。
【0018】
電源サブシステム114は、IEEE802.3bt PoE規格に基づき、PoE対応ネットワークルータ108からの電力が利用可能かどうか、イーサネットケーブル接続を監視する。電源サブシステム114は、専用のネットワーク電力制御デバイス120でこれを実行する。電力制御デバイス120は、2つの単純な状態信号を通じてマイクロプロセッササブシステム116によって監視されるが、電源コントローラ120は、イーサネットケーブルの4対の銅線から利用可能な電気エネルギを変換するための全ての機能を実装する。ネットワーク電源コントローラ120は、マイクロプロセッササブシステム116で実行される如何なるソフトウェア実装からも独立してこれを実行する。スマートスピーカのネットワークケーブルが接続されると、電源コントローラ120は、802.3bt PoEネットワークスイッチ又はルータから利用可能な最大電力を自動的に要求する。ネットワークケーブルの4対の銅線に電力を供給する前に、PoEネットワークスイッチ又はルータは、一連の連続サイクルを通じて利用可能な電力を示す。イーサネットケーブルを介した4対電力供給に関する802.3bt PoEネットワーク規格に基づき、最大71ワットの電力をスマートスピーカに供給できる。電力は、交流としてケーブル経由で供給されるため、スマートスピーカの電源114は、イーサネットライン電圧を直流(DC)に変換するためのダイオードブリッジ整流器122を含む必要がある。電源サブシステムの主出力は、直流約26ボルトであり、これは、スマートスピーカのオーディオ増幅器117に直接供給するのに適している。マイクロプロセッササブシステム116は、DC5ボルトを必要とするため、電源サブシステム114は、メインのDC26ボルト電圧をDC5ボルトに変換するための独立した「降圧」スイッチモード電源回路を含んでいる。降圧回路は、少なくとも85%の効率で動作するように設計されており、これによりエネルギの浪費を最小限に抑え、マイクロプロセッササブシステム116及び増幅器117が高解像度音楽サービスから音楽を再生するために使用できる電力をできる限り多く確保する。
【0019】
例示的な実施形態では、マイクロプロセッササブシステム116は、1GHzのARM A53処理コア124を含み、最小256メガバイトの高速ランダムアクセスメモリ(RAM)をサポートする。このマイクロプロセッサ124の処理能力は、接続されたPoEネットワークルータ108及びそのインターネット接続を介して、音楽サービス109から受け取った高解像度オーディオデータストリームの処理を実現する。高解像度オーディオは、標準解像度又は「コンパクトディスク」品質のオーディオの4倍もの帯域幅を必要とすることもあるが、この処理能力により、高解像度オーディオが実現される。これには、MQA(登録商標)等の新しい特殊な高解像度オーディオフォーマットも含まれるが、このフォーマットを完全に認証して再生するには、更なる後処理が必要である。
【0020】
マイクロプロセッササブシステムの動作電力バジェットにより、例えば、レンブルック社(Lenbrook)から入手可能なフルスペックのBluOS(登録商標)ネットワークオペレーティングシステム等の高度なオペレーティングシステムを実行できる。BluOSは、BluOSソフトウェアアプリを実行するiOS(登録商標)及びAndroid(登録商標)デバイスへの接続を実現する。このアプリにより、ユーザは、高解像度音楽を簡単に選択して、ネットワークに接続された一つ又は複数のPoEスマートスピーカ100の全体で再生させることができる。マイクロプロセッササブシステム116には、十分な電力が供給されるため、ユーザは、インターネット音楽サービス又はPoEスマートスピーカ100と同じローカルエリアネットワークに接続された専用音楽サーバに保存されたローカル音楽ライブラリーのいずれかから利用可能な何千曲もの楽曲を速やかに検索して選択できる。PoEによってマイクロプロセッササブシステム116に供給される電力によって、フラッシュメモリ、例えば、最大64ギガバイトのフラッシュメモリを効果的に使用できる。フラッシュメモリは、最も人気のある音楽の保存又は「キャッシング」を可能にし、これは、インターネット又は音楽サービスが停止した場合でも継続的な音楽再生を維持しなければならない業務用オーディオ設備(例えば、レストランやホテル)においては不可欠であることがある。実際に、少なくともある商用グレードのインターネットサービスは、法人顧客に保証している音楽の稼働時間仕様(music uptime specifications)を満たすために、認証するスマートスピーカにおいて、メモリキャッシングを要求している。
【0021】
高音質を実現するために、マイクロプロセッサ116及び増幅器117のチップセットは、高解像度又は「HiRes」デジタルオーディオサンプリングレートをサポートするために十分なデジタル容量を有する必要がある。サンプリングレート44.1kHz、サンプルあたり16ビット(「ビット深度」)のコンパクトディスク(CD)品質は、「標準」デジタル解像度とみなされ、これより高い解像度を高解像度と呼ぶ。例示的な実施形態では、マイクロプロセッササブシステム116及びオーディオ増幅器117は、CDの4倍のサンプリングレート(192kHz)と1.3倍のビット深度(24ビット)をサポートする。高精細テレビと同様に、この拡張されたHiResオーディオデータ容量によって、PoEスピーカの出力における広帯域周波数応答が実現され、ダイナミックレンジが拡張される。
【0022】
PoEルータ108は、Wi-Fiネットワーク機能を搭載し、PoEスピーカ100と同じローカルエリアネットワーク(LAN)上で標準的なワイヤレスアクセスを提供できる。ユーザは、iOS又はAndroidモバイルデバイスにBluOSソフトウェアアプリをインストールして、iOS又はAndroidデバイスをこのネットワークにワイヤレスで接続できる。このアプリは、検出ソフトウェアメカニズム(LSDP)を使用してPoEスピーカを自動的に「検出」し、インストールされた一つ又は複数のPoEスピーカをBluOSアプリ内に一覧表示し、これにより、ユーザは、選択された音楽サービスで利用可能な音楽をブラウズし、再生する曲を個別に選択し又はカスタムの音楽プレイリストを作成できる。BluOSアプリ内で、(通常、HiResよりも低い品質で配信される)チューンインラジオ(TuneIn Radio:登録商標)等の一般的なラジオストリームルックアップポータルサービスからの一般的なインターネットラジオストリームを選択し、PoEスピーカから再生することもできる。
【0023】
同じネットワーク上で動作する複数のPoEスピーカ100は、同期して、単一の選択されたオーディオストリームを再生できる。一つ又は複数の実施形態では、これは、ネットワークタイムプロトコル(Network Time Protocol:NTP)を介して各PoEスピーカのリアルタイムクロックを共通のインターネットソースクロックに設定し、各PoEスピーカ100にインストールされているハードウェア水晶クロックソース間の差異を補正することによって実現される。あるPoEスピーカのリアルタイムクロックが他のPoEスピーカ100のものよりも速く進んでいることが測定された場合、マイクロプロセッサの位相同期ループ出力周波数を徐々に調整することによって、そのオーディオクロックレートを相対的に低減できる。
【0024】
外部環境に曝されるスマートスピーカ100の材料及び部品は、過酷な商業用設置環境に耐えるよう、堅牢性を考慮して選択される。一つ又は複数の実施形態では、スマートスピーカ100の外側ハウジング102は、ポリプロピレン材料からなる。ポリプロピレンは、木材、更には、スピーカのハウジングに使用されることが多い耐候性の特殊木材材料よりも利点を有する。ポリプロピレンは、遥かに低コストで、スピーカ筐体全体を構成する2つの単純な部品に成形できる。2つのポリプロピレン製筐体部品は、1つの継ぎ目103を密閉することによって一体化される(図1A)。一方、成形不能な木材材料では、複数のピース(多くの場合、少なくとも6ピース)を連結する必要があり、複数の継ぎ目が生じる。このため、筐体の防塵防滴における共通の故障点が劇的に増加する。ポリプロピレンは、分子レベルで不活性である。したがって、ポリプロピレンは、湿気や紫外線の影響を受けず、新品同様の外観を維持する。また、ポリプロピレンは、広い周囲温度範囲に亘って寸法が安定する。また、ポリプロピレンは、ポリカーボネート等の非木材材料に比べ、断熱性に優れている。これは、寒い屋外環境での使用時にシステムの電子機器を暖かく保つ上で大きな利点となり、後述するサーモスタット加熱回路の電力節約にも役立つ。
【0025】
PoEスピーカのツイータ108及びウーファ110等の部品も外部環境に晒されるため、これらの部品を防水することによって、過酷な設置環境におけるPoEスピーカの耐用年数を延ばすことができる。
【0026】
一つ又は複数の例示的な実施形態では、ポリプロピレンハウジングの厚さは、剛性を高めるために約6~11mmである。また、ポリプロピレンでは、音響振動が速やかに減衰され、歪みが低減される。
【0027】
スピーカハウジング102内のホストボード112上にある一組のヒータ抵抗器118は、十分な熱エネルギを放散し、システム回路全体の温度が摂氏0度以下に下がるのを防ぐ。これにより、PoEスピーカシステムのハードウェアは、寒い天候条件下でも動作できる。ホストボード112上のサーモスタット監視回路124は、加熱回路に供給される電力を調整する。この回路は、マイクロプロセッサソフトウェアによってリアルタイムで監視され、システムの温度が、システムのマイクロプロセッサ及びマイクロチップ用シリコンの最低動作温度である摂氏0度近くになると、自動的にヒータ抵抗器118に電力を供給する。摂氏0度より遥かに低い温度で動作するマイクロチップ用シリコンチップも入手可能ではあるが、この場合、PoEスピーカの電子機器全体の材料コストが大幅に増加して、恒温モニタと抵抗ヒータ回路のコストを超えてしまう。恒温回路とマイクロプロセッサソフトウェアは、システムのオーディオ増幅器117及びマイクロプロセッササブシステム116のための電力をできる限り節約するために、摂氏10度でヒータ抵抗器118への電力を切断する。
【0028】
図4は、スマートスピーカ100の背面斜視図であり、本装置の追加的特徴を示している。スリーピース取付プレート130は、アーチ状の取付バンド132によってスピーカハウジング102に取り付けられている。取付バンド132は、2つのねじ式固定ノブ134によってハウジング102に調整可能に固定されている。ノブ134は、ラチェット歯を有し、これにより、取付バンド132に対するスピーカの前方角度方向が確実に固定される。取付プレート130は、アーチ状の取付バンド132に沿ってどこにでも配置でき、これにより、スピーカの垂直軸の角度を正確に調整できる。また、スリーピース取付プレート130は、スマートスピーカ100の取り付けを容易にする。技術者は、先に軽いプレート130を表面に固定した後に、重いスピーカ100を持ち上げて所定の位置でプレート130に固定することができる。取付プレート130には、安全対策として、スピーカ100を金属製ワイヤで壁面又は天井面に繋ぎ止めるための取付部分136が設けられている。スピーカハウジング102には、ハウジング壁の強度を強化するとともにデザイン性を向上させるリブ138が設けられている。ハウジング102のエッグシェル形状は、有機的なデザインを主張すると共に、圧縮強度を高めている。
【0029】
図5は、本装置の更なる特徴を示すスマートスピーカ100の断面図である。
【0030】
イーサネットポート106に配置された成形リブ付きシリコンゴム製グロメット150は、ハウジング102への湿気の浸入を防止する。グロメット150は、イーサネットケーブルの被覆の周りをスライドさせて取り付けられるように穴あけされている。設置者は、梯子の上に立ったままイーサネットRJ45をケーブル107に取り付ける必要がない。
【0031】
ハウジング102内のケーブルポケット152は、最も一般的なスピーカキャビネットの取付位置でイーサネットケーブル107の周囲に水が溜まらないように角度付けされている。
【0032】
ハウジング102は、音響バスレフポート管(bass reflex port tube)154を有する。この特徴部分は、害虫やその死骸等の侵入を防止又は抑制するために遮蔽されている。音響バスレフポート管154は、最小のスピーカエクスカーション(excursion)で最大の低音出力が得られるように音響的に調整されている。オプションのポートプラグは、代替の音響特性(alternate acoustic characterization)と最大限の耐環境性を提供する。
【0033】
バスドライバーの設計には、接着ではなく圧縮嵌合(compressive assembly)によって固定されたコーン156が含まれている。接着されたコーンは故障しやすいので、この構成の方が信頼性が高い。プラスチック製ドライバーバスケットを使用することによって、スチール製バスケットを使用する場合に比べて重量を軽減できる。
【0034】
ツイータ108に設けられた金属製ヒートシンク158は、大音量時の過熱と永久減磁を抑制又は防止する。
【0035】
以上、幾つかの例示的な実施形態について説明したが、これらの様々な変更、修正、及び改良を容易に想到できることは当業者にとって明らかである。このような変更、修正、及び改良は、本開示の一部を構成するものであり、本開示の思想及び範囲に含まれるとみなされる。本明細書に開示した幾つかの実施例は、機能又は構造要素の特定の組み合わせを含むが、これらの機能及び要素は、同様の目的又は異なる目的を達成するために本開示とは異なる手法で組み合わせてもよい。特に、1つの実施形態に関連して説明した作用、要素、及び特徴は、他の実施形態における類似の役割又は他の役割から除外されるわけではない。
【0036】
更に、本明細書に開示した要素及び構成要素は、追加の構成要素に分割してもよく、あるいは、より少ない構成要素で同じ機能を実行するために一つに統合してもよい。
【0037】
したがって、前述の説明及び添付の図面は、例示のためのものであり、限定を意図するものではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】