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特表2024-527442ゴールデンマナガツオの省エネ急速冷凍方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ゴールデンマナガツオの省エネ急速冷凍方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20240717BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A23L17/00 Z
A23L3/36 A
A23L17/00 B
A23L17/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529860
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 CN2021142044
(87)【国際公開番号】W WO2023010786
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202110876303.X
(32)【優先日】2021-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523054540
【氏名又は名称】広東海洋大学
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG OCEAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.1 Haida Road, Mazhang District Zhanjiang, Guangdong 524000 China
(71)【出願人】
【識別番号】524040720
【氏名又は名称】南方海洋科学与工程広東省実験室(湛江)
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】劉書成
(72)【発明者】
【氏名】楊作苗
(72)【発明者】
【氏名】孫欽秀
(72)【発明者】
【氏名】周結倩
(72)【発明者】
【氏名】魏帥
(72)【発明者】
【氏名】夏秋瑜
(72)【発明者】
【氏名】高加龍
(72)【発明者】
【氏名】鄭欧陽
【テーマコード(参考)】
4B022
4B042
【Fターム(参考)】
4B022LA06
4B022LB01
4B022LF10
4B022LP06
4B022LP10
4B042AC06
4B042AD39
4B042AE03
4B042AG30
4B042AH01
4B042AP18
(57)【要約】
ゴールデンマナガツオの急速冷凍方法であって、キャビティの温度がAの液体窒素急速冷凍機内にゴールデンマナガツオを入れ、魚体の中心温度が-6~-4℃に達すると、液体窒素急速冷凍機をオフにするステップと、液体窒素急速冷凍機のキャビティの温度がBまで上昇すると、液体窒素急速冷凍機を起動し、魚体の中心温度が-19~-17℃に達すると、液体窒素急速冷凍機をオフにするステップと、最後に、ゴールデンマナガツオを取り出して、-19~-17℃で貯蔵するステップと、を含み、ここで、前記Aは、-105~-85℃であり、前記Bは、-95~-65℃であり、且つ、A<Bである。当該ゴールデンマナガツオの急速冷凍方法は、液体窒素の消費量を減らして省エネルギーを実現しただけでなく、ゴールデンマナガツオ筋肉の硬度損失及び蒸し煮損失も減らし、ゴールデンマナガツオの品質を効果的に保証し、ゴールデンマナガツオの保存期間を延長する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティの温度がAの液体窒素急速冷凍機内にゴールデンマナガツオを入れ、魚体の中心温度が-6~-4℃に達すると、液体窒素急速冷凍機をオフにするステップS1と、
液体窒素急速冷凍機のキャビティの温度がBまで上昇すると、液体窒素急速冷凍機を起動し、魚体の中心温度が-19~-17℃に達すると、液体窒素急速冷凍機をオフにするステップS2と、
ゴールデンマナガツオを取り出して、-19~-17℃で貯蔵するステップS3と、を含み、
ここで、前記Aは、-105~-85℃であり、前記Bは、-95~-65℃であり、且つ、A<Bである、
ことを特徴とするゴールデンマナガツオの急速冷凍方法。
【請求項2】
前記Aは、-95℃であることを特徴とする請求項1に記載の急速冷凍方法。
【請求項3】
前記Bは、-75~-65℃であることを特徴とする請求項2に記載の急速冷凍方法。
【請求項4】
ステップS1に記載の魚体の中心温度は-5℃であることを特徴とする請求項1に記載の急速冷凍方法。
【請求項5】
ステップS2に記載の魚体の中心温度は-18℃であることを特徴とする請求項1に記載の急速冷凍方法。
【請求項6】
ステップS3に記載の貯蔵温度は-18℃であることを特徴とする請求項1に記載の急速冷凍方法。
【請求項7】
前記液体窒素急速冷凍機には、噴霧式の液体窒素急速冷凍機、冷気循環式の液体窒素急速冷凍機、浸漬式の液体窒素急速冷凍機が含まれることを特徴とする請求項1に記載の急速冷凍方法。
【請求項8】
前記液体窒素急速冷凍機は、噴霧式の液体窒素急速冷凍機であることを特徴とする請求項7に記載の急速冷凍方法。
【請求項9】
前記噴霧式の液体窒素急速冷凍機には、大型キャビネット式の噴霧液体窒素急速冷凍機、大型トンネル式の液体窒素急速冷凍機、小型キャビネット式の噴霧液体窒素急速冷凍機が含まれることを特徴とする請求項8に記載の急速冷凍方法。
【請求項10】
前記魚体の中心温度は、魚体の幾何学的中心における温度であることを特徴とする請求項1に記載の急速冷凍方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴールデンマナガツオの貯蔵技術の分野に属する。より具体的には、ゴールデンマナガツオの省エネ急速冷凍方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴールデンマナガツオは、学名がマルコバン(Trachinotus ovatus)であり、硬骨魚綱、スズキ目、アジ科、コバンアジ属に属し、中国南部沿海地域の商業的に重要な海産魚類の1つである。ゴールデンマナガツオは、肉が柔らかく、味が美味しくて、栄養価が高く、筋肉に小骨がないため、消費者に愛されている。ゴールデンマナガツオの養殖規模や生産量がますます大きくなるのにつれ、供給が需要より大きくなり、保存期間を延長するための適切な急速冷凍方法を用いるのが非常に重要であるが、現在、市場では、主に活魚及び鮮魚の形で販売されているため、大量のゴールデンマナガツオが腐敗変質してしまい、特に、ゴールデンマナガツオの生産量がピークに達した時、適時に加工しなければ、大量の資源浪費につながる。
【0003】
現在、鞏濤碩らは、プレート凍結、スパイラル式凍結、超低温凍結と冷蔵庫凍結等の4種類のゴールデンマナガツオを冷凍する方法(鞏濤碩、藍蔚青、王蒙、謝晶.ゴールデンマナガツオの水分、組織構造と品質変化に対する異なる凍結方法の影響[J].食品科学,2019,40(23):213-219.)を開示したが、これらの方法によるゴールデンマナガツオの蒸し煮損失率は、いずれも16%以上であり、ある程度の資源浪費があるため、ゴールデンマナガツオの品質を効果的に維持し、蒸し煮損失を減らすことができる方法を探すのは、ゴールデンマナガツオの貯蔵に対して相当に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の既存のゴールデンマナガツオ冷凍方法の欠陥と不足について、ゴールデンマナガツオ筋肉の蒸し煮損失率を低減することにより、ゴールデンマナガツオの品質を保証するために、ゴールデンマナガツオの省エネ急速冷凍方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記の目的は、以下の技術的解決手段により実現される。
【0006】
本発明は、ゴールデンマナガツオの急速冷凍方法を提供し、
キャビティの温度がAの液体窒素急速冷凍機内にゴールデンマナガツオを入れ、魚体の中心温度が-6~-4℃に達すると、液体窒素急速冷凍機をオフにするステップS1と、
液体窒素急速冷凍機のキャビティの温度がBまで上昇すると、液体窒素急速冷凍機を起動し、魚体の中心温度が-19~-17℃に達すると、液体窒素急速冷凍機をオフにするステップS2と、
ゴールデンマナガツオを取り出して、-19~-17℃で貯蔵するステップS3と、を含み、
ここで、前記Aは、-105~-85℃であり、前記Bは、-95~-65℃であり、且つ、A<Bである。
【0007】
本発明は、省エネルギーとゴールデンマナガツオの品質の2つの点から、ゴールデンマナガツオの急速冷凍方法を対象とする研究を行い、1段式液体窒素急速冷凍の急速冷凍方法を2段式液体窒素急速冷凍に創造的に変換し、冷凍温度等のパラメータに対する特定制御及び液体窒素に対する十分な利用により、液体窒素の消費量を減らして省エネルギーを実現しただけでなく、ゴールデンマナガツオの体内に大量の均一な小氷晶が急速に生成されることにも有利であり、魚肉の組織に対する破壊を減らし、ゴールデンマナガツオの冷凍中の硬度損失及び蒸し煮損失を減らし、ゴールデンマナガツオの品質を効果的に保証し、ゴールデンマナガツオの保存期間を延長する。
【0008】
液体窒素急速冷凍は、熱伝達係数が大きく、凍結速度が速く、乾燥消費量が少なく、エネルギー消費量が低く、品質が良い等の利点を有し、低温液体窒素の気化及び後続の降温の過程を通じて、大量の顕熱と潜熱を吸収することにより、ゴールデンマナガツオ筋肉部分をガラス化凍結し、氷晶の筋肉細胞に対する破壊を減らす。
【0009】
ステップS1は、ゴールデンマナガツオ温度の第1段階の(相変化段階)であり、液体窒素急速冷凍機をオフにすると、急速冷凍の残りの冷エネルギーは、ゴールデンマナガツオの第2段階(深冷過程)の冷凍の完了を支援するために十分に利用され、即ちキャビティの温度がAからBまで上昇する間、相変化段階の残りの冷エネルギーは、引き続きゴールデンマナガツオを冷凍し、それにより、液体窒素の消費量を減らし、省エネルギーを実現する。
【0010】
最も好ましくは、前記Aは、-95℃である。
【0011】
さらに好ましくは、前記Bは、-75~-65℃である。
【0012】
最も好ましくは、ステップS1に記載の魚体の中心温度は-5℃である。
【0013】
最も好ましくは、ステップS2に記載の魚体の中心温度は-18℃である。
【0014】
最も好ましくは、ステップS3に記載の貯蔵温度は-18℃である。
【0015】
好ましくは、前記液体窒素急速冷凍機には、噴霧式の液体窒素急速冷凍機、冷気循環式の液体窒素急速冷凍機、浸漬式の液体窒素急速冷凍機が含まれる。
【0016】
さらに好ましくは、前記液体窒素急速冷凍機は、噴霧式の液体窒素急速冷凍機である。
【0017】
液体窒素急速冷凍は、一般的に、冷気循環凍結、浸漬凍結、噴霧凍結の3種類に分類することができ、ここで、噴霧凍結は、液体窒素をノズルから霧状のものに噴射し、凍結対象と直接接触させて凍結を実現し、液体窒素が気化した後、食品を予冷して、凍結効率を向上させることができ、そのため、噴霧凍結は、「魔法凍結」の評判があり、広く使用されている。
【0018】
より好ましくは、前記噴霧式の液体窒素急速冷凍機には、大型キャビネット式の噴霧液体窒素急速冷凍機、大型トンネル式の液体窒素急速冷凍機、小型キャビネット式の噴霧液体窒素急速冷凍機が含まれる。
【0019】
好ましくは、前記魚体の中心温度は、魚体の幾何学的中心における温度である。
【0020】
好ましい実施形態として、ゴールデンマナガツオの急速冷凍方法は、
キャビティの温度が-95℃の噴霧式の液体窒素急速冷凍機内にゴールデンマナガツオを入れ、魚体の中心温度が-5℃に達すると、噴霧式の液体窒素急速冷凍機をオフにするステップS1と、
前記噴霧式の液体窒素急速冷凍機のキャビティの温度が-75~-65℃に上昇すると、噴霧式の液体窒素急速冷凍機を起動し、魚体の中心温度が-18℃に達すると、噴霧式の液体窒素急速冷凍機をオフにするステップS2と、
ゴールデンマナガツオを取り出して-18℃で貯蔵するステップS3とである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
本発明は、省エネルギーとゴールデンマナガツオの品質の2つの点から、ゴールデンマナガツオの急速冷凍方法を対象とする研究を行い、1段式液体窒素急速冷凍の急速冷凍方法を2段式液体窒素急速冷凍に創造的に変換し、冷凍温度等のパラメータに対する特定制御及び液体窒素に対する十分な利用により、液体窒素の消費量を減らして省エネルギーを実現しただけでなく、ゴールデンマナガツオ筋肉の硬度損失及び蒸し煮損失も減らし、ゴールデンマナガツオの品質を効果的に保証し、ゴールデンマナガツオの保存期間を延長する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】空気冷凍群の冷凍曲線である。
図2】1段式液体窒素急速冷凍群の冷凍曲線である。
図3】1段式液体窒素急速冷凍群がゴールデンマナガツオ筋肉の蒸し煮損失率に影響を与えた結果である。
図4】1段式液体窒素急速冷凍群がゴールデンマナガツオ筋肉の硬度に影響を与えた結果である。
図5】2段式液体窒素急速冷凍群の冷凍曲線である。
図6】2段式液体窒素急速冷凍群の液体窒素消費量の結果である。
図7】2段式液体窒素急速冷凍群がゴールデンマナガツオ筋肉の蒸し煮損失率に影響を与えた結果である。
図8】2段式液体窒素急速冷凍群がゴールデンマナガツオ筋肉の硬度に影響を与えた結果である。 ここで、Freshは、新鮮群、即ち4℃の冷蔵庫で温度を24h平衡させた後、何の冷凍処理をせずに実験した群を示し、RFは、空気冷凍を示し、LNFは、液体窒素急速冷凍を示し、 -35℃RFは、-35℃での空気冷凍群を示し、 -35℃LNF群は、-35℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群を示し、-55℃LNF群は、-55℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群を示し、-75℃LNF群は、-75℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群を示し、-85℃LNF群は、-85℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群を示し、-95℃LNF群は、-95℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群を示し、-105℃LNF群は、-105℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群を示し、-115℃LNF群は、-115℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群を示し、 -95℃/-35℃LNF群は、第1段階の温度が-95℃で、第2段階の温度が-35℃の2段式液体窒素急速冷凍群を示し、-95℃/-55℃LNF群は、第1段階の温度が-95℃で、第2段階の温度が-55℃の2段式液体窒素急速冷凍群を示し、-95℃/-65℃LNF群は、第1段階の温度が-95℃で、第2段階の温度が-65℃の2段式液体窒素急速冷凍群を示し、-95℃/-75℃LNF群は、第1段階の温度が-95℃で、第2段階の温度が-75℃の2段式液体窒素急速冷凍群を示し、-95℃/-85℃LNF群は、第1段階の温度が-95℃で、第2段階の温度が-85℃の2段式液体窒素急速冷凍群を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、明細書の図面及び具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、実施例は本発明をいずれの形態で限定するものではない。特に説明しない限り、本発明に用いられる試薬、方法及び機器は当技術分野における通常の試薬、方法及び機器である。
【0024】
特に説明しない限り、以下の実施例に使用される試薬及び材料は、いずれも市場で購入したものである。
【0025】
(1)実験材料
生きているゴールデンマナガツオ(500±50g)は、湛江市東風水産品卸売市場で購入したもので、1時間以内に実験室に運び、氷温で殺して、清水で洗浄して水分を拭き取り、秤量して袋に入れた後、4℃の冷蔵庫で温度を24h平衡させ、使用に備える。
【0026】
(2)実験器具
DJL-QF60キャビネット式の液体窒素急速冷凍機は、深セン市徳捷力冷凍科技有限公司から購入し、TA.XT plusCテクスチャーアナライザーは、英国Stable Micro System社から購入した。
【0027】
(実施例1)
ゴールデンマナガツオを1段式液体窒素急速冷凍処理
(1)空気冷凍処理:
S1において、ゴールデンマナガツオを-35℃の冷蔵庫に入れて冷凍し、ペーパーレスレコーダーのプローブを魚体幾何学的中心に挿入するとともに、USBを挿入して、時間及び温度の変化をリアルタイムで記録し、2秒ごとにデータの変化を記録し、魚体の中心温度が-18℃に達した後、冷凍を終了し、USBを抜き取り、データをoriginソフトウェアに導入して-35℃空気冷凍の冷凍曲線を描き、図1に示すとおりであり、
S2において、冷凍済みのゴールデンマナガツオを-18℃に素早く移して24h貯蔵した後、4℃の冷蔵庫に入れて、魚体の中心温度が4℃になるまで解凍し、その背中の両側の筋肉(長さ*幅*厚さ8cm*3cm*1cm)を取って後の指標測定に使用した。
【0028】
(2)1段式液体窒素急速冷凍処理:
S1において、ゴールデンマナガツオをキャビティの温度が-35℃、-55℃、-75℃、-85℃、-95℃、-105℃、-115℃の液体窒素急速冷凍機のキャビティ内のトレイにそれぞれ置き、ペーパーレスレコーダーのプローブを魚体の幾何学的中心に挿入するとともに、USBを挿入して、時間及び温度の変化をリアルタイムで記録し、2秒ごとにデータの変化を記録し、魚体の中心温度が-18℃に達した後、冷凍を終了し、USBを抜き取り、データをoriginソフトウェアに導入して1段式液体窒素急速冷凍の冷凍曲線を描き、図2に示すとおりであり、
S2において、冷凍済みのゴールデンマナガツオを-18℃に素早く移して24h貯蔵した後、4℃の冷蔵庫に入れて、魚体の中心温度が4℃になるまで解凍し、背中の両側の筋肉(長さ*幅*厚さ8cm*3cm*1cm)を取って後の指標測定に使用した。
【0029】
図1及び2を参照して分かるように、1段式液体窒素急速冷凍処理群の時間は、いずれも空気冷凍処理群より短く、これは、液体窒素急速冷凍の冷凍速度が空気冷凍より有意に速いことを示す。
【0030】
(実施例2)
1段式液体窒素急速冷凍処理群の蒸し煮損失率及び硬度の測定
(1)蒸し煮損失率の測定
実施例1の2つの群の解凍後のサンプル(長さ*幅*厚さ8cm*3cm*1cmの2つの背中筋肉の一方)をそれぞれ秤量(W1)した後、85℃の水浴中で、サンプルの中心温度が75℃に達するまで加熱してから、ろ紙でサンプル表面の水分を吸い取り、サンプルの質量を正確に秤量して、W2とし、式[蒸し煮損失率(%)=(W1-W2)/W1*100%]に従って蒸し煮損失率を計算して、図3を得た。
【0031】
図3から分かるように、新鮮群の蒸し煮損失率が最も低く、約10%であり、空気冷凍群の蒸し煮損失率が最も高く、19.18%であり、-95℃LNF群(-95℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群)は10.48%であり、新鮮群に比べ、有意差がなく、-85℃LNF群(-85℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群)及び-105℃LNF群(-105℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群)の蒸し煮損失率は、いずれも残りの群(-35℃、-55℃、-75℃、-115℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群)より有意に低い。
【0032】
-105~-85℃の温度で液体窒素急速冷凍を行うと、ゴールデンマナガツオ筋肉の蒸し煮損失が少なく、新鮮な状態に近く、特に、-95℃で効果が最もよいことを示す。これは、-105~-85℃の液体窒素急速冷凍の冷凍速度が速く、細かい均一な氷晶を生成して、筋肉に対する破壊が小さいため、蒸し煮損失が少ないからであり、一方、空気冷凍は、冷凍速度が遅いため、大きい氷晶を生成しやすく、筋肉細胞を押圧することにより筋肉細胞に不可逆損傷を与え、それにより筋肉の水分保持力が弱くなり、蒸し煮中に水分と栄養成分をより流失しやすいので、蒸し煮損失が酷くなり、さらに、-115℃LNF群(-115℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群)の蒸し煮損失率は、-95℃LNF群より高く、これは、液体窒素温度が低すぎて、魚肉の部分が低温で断裂することにより、蒸し煮損失が増加することが原因であるかも知れない。
【0033】
(2)硬度の測定
テクスチャーアナライザーのTPA測定モードを用い、テストプローブとしてP10を用いてテストを行い、プローブで3cm*3cm*1cmの魚肉(実施例1の2つの群の別の長さ*幅*厚さ8cm*3cm*1cmの背中筋肉から切り取ったものである)を測定し、テスト前の速度は1mm/sで、テスト速度は1mm/sで、テスト後の速度は5mm/sであり、圧縮変形量は50%であり、測定結果は図4に示すとおりである。
【0034】
図4から分かるように、新鮮群の硬度値が最も大きく、2627.63gであり、空気冷凍群が最も小さく、1256.79gであり、-95℃LNF群が2104.33gで、残りの群(-35℃、-55℃、-75℃、-85℃、-105℃、-115℃で冷凍した1段式液体窒素急速冷凍群)より有意に高く、残りの群の硬度値は、互いに有意差がなく、且ついずれも空気冷凍群より有意に高い。
【0035】
-115~-35℃の温度で液体窒素急速冷凍を行うことは、ゴールデンマナガツオ筋肉の硬度を維持するのに有利であり、特に-95℃で効果が最も優れていることを示す。これは、-115~-35℃の液体窒素急速冷凍の冷凍速度が速く、細かい均一な氷晶を生成して、筋肉に対する破壊が小さいため、筋肉の硬度値の低下を抑制することができるからであり、一方、空気冷凍は、冷凍速度が遅いため、大きい氷晶を生成しやすく、筋肉細胞を押圧することにより筋肉細胞に不可逆損傷を与え、筋肉の水分保持力が弱くなり、それにより筋肉の硬度値が低下する。
【0036】
図3及び図4を総合して分かるように、-105~-85℃の温度で液体窒素急速冷凍を行うと、ゴールデンマナガツオ筋肉の蒸し煮損失及び硬度損失が両方とも少なく、そのため、本発明は、2段式液体窒素急速冷凍処理の第1段階の温度として-105~-85℃を選択し、その最適温度-95℃で後続実験を行った。
【0037】
(実施例3)
ゴールデンマナガツオの2段式液体窒素急速冷凍処理
S1において、ゴールデンマナガツオをキャビティの温度が-95℃の液体窒素急速冷凍機のキャビティ内のトレイに置き、ペーパーレスレコーダーのプローブを魚体の幾何学的中心に素早く挿入するとともに、USBを挿入して、時間及び温度の変化をリアルタイムで記録し、2秒ごとにデータの変化を記録し、急速冷凍機のドアを閉じ、開始ボタンを起動して、魚への液体窒素の噴霧を開始し、魚体の中心の温度が-5℃に達すると、直ちに液体窒素急速冷凍機をオフにして、液体窒素の使用を停止し、
S2において、液体窒素急速冷凍機のキャビティの温度が-95℃から、-35℃、-55℃、-65℃、-75℃、-85℃及び-95℃のそれぞれまで昇温すると、再び液体窒素急速冷凍機を起動し、魚体の中心温度が-18℃に達するまで、引き続き液体窒素の噴霧を行い、液体窒素急速冷凍機をオフにし、冷凍を終了し、USBを抜き取り、データをoriginソフトウェアに導入して2段式液体窒素急速冷凍の冷凍曲線を描き、図5に示すとおりであり、
S3において、冷凍済みのゴールデンマナガツオを-18℃に素早く移して24h貯蔵した後、4℃の冷蔵庫に入れて、魚体の中心温度が4℃に達するまで解凍し、背中の両側の筋肉(長さ*幅*厚さ8cm*3cm*1cm)を取って後の指標測定に使用した。
【0038】
図1及び図5を参照して分かるように、2段式液体窒素急速冷凍処理群の時間は、いずれも空気冷凍処理群より有意に短く、これは、2段式液体窒素急速冷凍の冷凍速度が空気冷凍より有意に速いことを示す。
【0039】
(実施例4)
2段式液体窒素急速冷凍処理群の液体窒素消費量の測定
秤量法で2段式液体窒素急速冷凍処理群の液体窒素消費量を計算し、即ち、液体窒素急速冷凍機の液体窒素タンクの下に秤を置き、液体窒素の噴霧を開始する前に、液体窒素の開始質量m1を記録し、魚体の中心温度が-18℃に達すると、液体窒素の残りの質量m2を記録し、ゴールデンマナガツオの初期質量をm3とし、式[液体窒素消費量[kg(LN2)/kg(fish)]=(m1-m2)/m3]に従って、液体窒素消費量を計算し、図6を得た。
【0040】
図6から、以下のことが分かる。
(1)-95℃LNF群の液体窒素消費量が最も多く、3.38kg(LN2)/kg(fish)であり、
(2)-95℃/-35℃LNF群の液体窒素消費量が最も少なく、1.66kg(LN2)/kg(fish)にすぎず、-95℃LNF群より1.72kg(LN2)/kg(fish)節約して、50.89%節約し、
(3)-95℃/-55℃LNF群の液体窒素消費量は、2.05kg(LN2)/kg(fish)であり、-95℃LNF群より1.33kg(LN2)/kg(fish)節約して、39.35%節約し、
(4)-95℃/-65℃LNF群の液体窒素消費量は、2.33kg(LN2)/kg(fish)であり、-95℃LNF群より1.05kg(LN2)/kg(fish)節約して、31.07%節約し、
(5)-95℃/-75℃LNF群の液体窒素消費量は、2.44kg(LN2)/kg(fish)であり、-95℃LNF群より0.94kg(LN2)/kg(fish)節約して、27.81%節約し、
(6)-95℃/-85℃LNF群の液体窒素消費量は、2.87kg(LN2)/kg(fish)であり、-95℃LNF群より0.51kg(LN2)/kg(fish)節約して、15.10%節約した。
【0041】
上記を纏めて分かるように、ゴールデンマナガツオの2段式液体窒素急速冷凍処理の方がより省エネルギーであり、且つ、第2段階の液体窒素急速冷凍機の温度が高いほど、液体窒素消費量が少なくなり、これは、第1段階の残りの液体窒素の冷エネルギーが、第2段階の冷凍中に異なる程度で十分に利用されるため、液体窒素消費量を減らし、省エネルギーを実現するからである。
【0042】
(実施例5)
2段式液体窒素急速冷凍処理群の蒸し煮損失率及び硬度の測定
(1)蒸し煮損失率の測定
実施例3の解凍後のサンプル(長さ*幅*厚さ8cm*3cm*1cmの2つの背中筋肉の一方)を秤量(W1)した後、85℃の水浴中で、サンプルの中心温度が75℃に達するまで加熱してから、ろ紙でサンプル表面の水分を吸い取り、サンプルの質量を正確に秤量して、W2とし、式[蒸し煮損失率(%)=(W1-W2)/W1*100%]に従って蒸し煮損失率を計算し、実施例2の空気冷凍群の蒸し煮損失率データを流用して、図7を得た。
【0043】
図7から分かるように、新鮮群の蒸し煮損失率が最も低く、9.99%であり、空気冷凍群の蒸し煮損失率が最も高く、19.18%であり、-95℃/-65℃LNF群、-95℃/-75℃LNF群、-95℃/-85℃LNF群、-95℃LNF群の蒸し煮損失率は、それぞれ11.24%、11.21%、10.60%、10.48%で、残りの群(-95℃/-35℃LNF群、-95℃/-55℃LNF群)より有意に低く、この4群は、互に有意差がない。2段式液体窒素急速冷凍処理の第2段階の温度を-95~-65℃に設定すると、ゴールデンマナガツオ筋肉の蒸し煮損失率を効果的に低下させることができることを示す。
【0044】
(2)硬度の測定
テクスチャーアナライザーのTPA測定モードを用い、テストプローブとしてP10を用いてテストを行い、プローブで3cm*3cm*1cmの魚肉(実施例3の別の長さ*幅*厚さ8cm*3cm*1cmの背中筋肉から切り取ったものである)を測定し、テスト前の速度は1mm/sで、テスト速度は1mm/sで、テスト後の速度は5mm/sであり、圧縮変形量は50%であり、実施例2の空気冷凍群の硬度データを流用し、測定結果は図8に示すとおりである。
【0045】
図8から分かるように、新鮮群の硬度値が最も大きく、空気冷凍群の硬度値が最も小さく、1256.79gであり、-95℃LNF群の硬度値が最も大きく、2104.33gで、新鮮群に続くものであり、且つ-95℃/-75℃LNF群(硬度値が1917.95gである)、-95℃/-85℃LNF群(硬度値が2072.92gである)のいずれとも有意差がなく、-95℃/-65℃LNF群(硬度値が1832.11gである)は、-95℃/-75℃LNF群と有意差がなかった。2段式液体窒素急速冷凍処理の第2段階の温度を-95~-65℃に設定すると、ゴールデンマナガツオ筋肉の硬度を効果的に維持できることを示す。
【0046】
図6~8を参照して、省エネルギーとゴールデンマナガツオの品質の2つの角度の総合観点から見ると、-95~-65℃は、2段式液体窒素急速冷凍処理の第2段階の温度の好ましい選択であり、-75~-65℃が最適である。
【0047】
上記を纏めると、本発明は、省エネルギーとゴールデンマナガツオの品質の2つの点から、ゴールデンマナガツオの急速冷凍方法を対象とする研究を行い、1段式液体窒素急速冷凍の急速冷凍方法を2段式液体窒素急速冷凍に創造的に変換し、温度等のパラメータに対する特定制御及び液体窒素に対する十分な利用により、液体窒素消費量を減らして省エネルギーを実現しただけでなく、ゴールデンマナガツオの体内に極めて多い数の均一な小氷晶を生成するのにも有利であり、魚肉に対する破壊も小さく、それにより、ゴールデンマナガツオの冷凍中の硬度損失及び蒸し煮損失を減らし、ゴールデンマナガツオの品質を効果的に保証し、ゴールデンマナガツオの保存期間を延長する。
【0048】
上記の実施例は、本発明の好適な実施形態であるが、本発明の実施形態は、上記の実施例に限定されず、本発明の精神と原理から逸脱することなく行われた他の任意の変更、修飾、代替、組み合わせ、簡略化は、いずれも等価の置換形態であり、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】