(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】抗体産物のアフコシル化を調節するための方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20240718BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240718BHJP
C12M 3/00 20060101ALN20240718BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C12P21/08
C07K16/00
C12M3/00 Z
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023544456
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021021901
(87)【国際公開番号】W WO2022173455
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523277840
【氏名又は名称】ロンザ ベンド インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA BEND INC.
(71)【出願人】
【識別番号】511193352
【氏名又は名称】ロンザ バイオロジクス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】グラハム, ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B029CC01
4B029DA01
4B029DA07
4B064AG27
4B064CC03
4B064CC12
4B064CD09
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045GA22
4H045GA25
(57)【要約】
本出願は、バイオリアクターにおいて産生される抗体産物のアフコシル化を調節するための方法を対象とする。本方法は、未処理のバイオリアクター産物と比較して、1%以上アフコシル化を増加させることを含む、抗体産物のアフコシル化を制御するための、マンノースのバイオリアクターへの添加を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリアクターにおいて組換え発現される抗体のアフコシル化を増加させるための方法であって、
バイオリアクターにおいて前記抗体を発現する細胞を培養することと、
抗体産生プロセス中に細胞培養物にマンノースを添加することであって、その結果、前記抗体の前記アフコシル化が、マンノースの添加なしでの前記抗体産生プロセスによって産生される同じ抗体と比較して増加する、添加することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記添加されるマンノースの量が、約1g/L~約10g/Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイオリアクターが、少なくとも10Lの体積を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナルIgGである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が、哺乳動物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの前記抗体産生プロセスによって産生される抗体と比較して少なくとも0.5%増加する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体産物のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの前記抗体産生プロセスによって産生される抗体と比較して、少なくとも1%、例えば、少なくとも2%増加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体産生プロセスが、フェドバッチプロセスである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体産生プロセスが、灌流プロセスである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記発現された抗体を単離することと、任意選択で、前記抗体を1つ以上の精製ステップに供することと、を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
組換え産生された抗体のアフコシル化を、同じ抗体について以前に得られた目標アフコシル化パーセンテージと一致させるための方法であって、
バイオリアクターにおいて前記抗体を発現する細胞を培養することと、
前記抗体産生プロセス中に前記バイオリアクターへのマンノースの添加を制御して、前記目標アフコシル化パーセンテージを有する前記発現された抗体を得ることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記発現された抗体のアフコシル化パーセンテージが、前記目標アフコシル化パーセンテージの±0.25%以内である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体産生プロセスが、灌流プロセスである、請求項11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バイオリアクターにおいて産生される抗体産物のアフコシル化を調節するための方法を対象とする。本方法は、未処理のバイオリアクター産物と比較して、1%以上アフコシル化を増加させることを含む、抗体産物のアフコシル化を制御するための、マンノースのバイオリアクターへの添加を含む。
【背景技術】
【0002】
抗体などの、タンパク質産物は、糖部分の結合を含む、細胞からのそれらの発現中に翻訳後修飾を受ける。そのような修飾の1つは、哺乳動物IgG重鎖のCH2ドメインのAsn 297位で生じる免疫グロブリンG(IgG)のN結合グリコシル化である。この特定のN結合グリコシル化は、予め形成されたオリゴ糖の初期添加によって達成され、これは次いで、グルコース及びマンノース残基を除去し、フコース、ガラクトース、シアル酸、及びN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)などの他の糖を添加するその後の修飾に供される。そのようなグリコシル化は、タンパク質の生物学的活性に対して強い効果を有することができる。具体的には、多くの治療用抗体の重要な作用機序である、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)は、抗体のフコシル化レベルに依存する。様々な報告は、低減した量のフコシル化(すなわち、より高いアフコシル化)を有するモノクローナル抗体が、それらのフコシル化された対応物と比較してより高いADCCを示すことを見出した。よって、アフコシル化を増加させることができる抗体産物の産生は、いくつかの治療アプローチについて、特に腫瘍学において有利である。
【0003】
更に、グリコシル化のタイプ及び程度が生物学的活性に影響を及ぼし得るため、治療用抗体のグリカンプロファイルは、規制当局に報告され、一貫して再現されなければならない重要な重要品質特性である。しかしながら、治療用抗体の製造があるプロセスから別のプロセスへ(又は製造部位間でも)移行されるとき、フコシル化などのCQAに変動が生じ得、その産物について以前に得られた範囲のフコシル化レベルを達成するために移行されたプロセスを調整する必要性をもたらし得る。
【0004】
したがって、組換え発現された抗体組成物中のフコシル化レベルを調節して、生物学的活性を増強すること、及び/又はフコシル化レベルを以前の製造プロセスに一致させることができる必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、約1g/Lよりも多い量のマンノースの抗体産生プロセスへの添加は、(マンノースの添加なしでの同じ産生プロセスと比較した場合)抗体産物のアフコシル化における統計的に有意な増加をもたらすことが見出されている。更に、本方法におけるそのような量でのマンノースの添加は、高マンノース種の増加をもたらすようには見えない。これらの結果は、驚くべきものであり、予想外であり、本明細書に記載されるように、本方法は、(i)ADCCを増強し、よって、増強された治療効果を提供することができる治療用抗体を産生するために抗体産物のアフコシル化を調節する手段、及び(ii)これが重要品質特性であることを考慮して一貫したレベルを確保するためにアフコシル化レベルを調整する手段を提供する。本方法は、アフコシル化を増強するために遺伝子操作された細胞株を必要とする他の方法(そのような細胞株を産生及び維持することにおける困難さ)、及び上流バイオプロセシングパラメータへの顕著な操作を必要とする他の方法に対して顕著な利点を有する。
【0006】
したがって、一実施形態では、本発明は、バイオリアクターにおいて組換え発現された抗体のアフコシル化を増加させるための方法であって、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中に細胞培養物にマンノースを添加することであって、その結果、抗体のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される同じ抗体と比較して増加する、添加することと、を含む、方法を提供する。
【0007】
本明細書では、組換え産生された抗体のアフコシル化を、同じ抗体について以前に得られた目標アフコシル化パーセンテージと一致させるための方法であって、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中にバイオリアクターへのマンノースの添加を制御して、目標アフコシル化パーセンテージで発現された抗体を得ることと、を含む、方法も提供される。
【0008】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【0009】
本開示の完全かつ実施可能な開示は、より具体的には、添付の図面への参照を含む、本明細書の残部に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ManNAc及びガラクトースの組み合わせと比較された添加されたマンノースの関数としてのmAb産物のアフコシル化パーセントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び図面における参照文字の反復使用は、本発明の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。
【0012】
本考察は、例示的な実施形態の説明に過ぎず、本開示のより広範な態様を限定することを意図するものではないことが当業者によって理解されるべきである。
【0013】
実施形態では、本明細書において、抗体産物のアフコシル化を調節するための方法が提供され、これは典型的には、(i)抗体の生物学的活性を修飾すること、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を増加させること、又は(ii)以前に得られたレベルに一致させるプロセスにおいてアフコシル化を微調整することを意図している。
【0014】
「フコシル化」、一種のグリコシル化は、抗体(本明細書では「抗体産物」とも呼ばれる)などのタンパク質を含む、分子にフコース糖単位を添加するプロセスである。本明細書で使用される「アフコシル化」は、特定の抗体産物などの、特定の分子上のフコース糖単位の不在を指す。抗体産物の調製において、アフコシル化レベルは、フコース糖単位を欠く抗体分子のパーセンテージである。これは、質量分析及び高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む多数の方法によって決定することができる。使用される方法間にいくらかの変動があり得るため、一実施形態では、パーセンテージは、飛行時間、液体クロマトグラフ質量分析計(TOF LC/MS)システムを使用して測定される。抗体は、還元され、次いでAgilent 6230B TOF LC/MSシステム(PNGase F消化の必要なし)などの、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)に直接装填され、還元された抗体は、飛行時間質量分析計に注入される前に液体クロマトグラフ上の逆相脱塩カラムを通過する。
【0015】
他の好適な方法としては、例えば、Tay and Butler,2015,J.Biol.Methods 2:19 Mishra et al.,2020,J.Biotechnology X 5:100015に記載されるものが挙げられる。これらの記載される方法のうちの1つでは、グリカンは、PNGase Fを使用して除去し、乾燥させることができる。それらは次いで、2-AB標識を使用して標識され、親水性相互作用液体クロマトグラフィー-HPLC(HILIC-HPLC)を使用して分析される。
【0016】
次いで、検出された種は、アフコシル化抗体のパーセンテージを決定するために分析される。測定は、通常、測定精度を改善するために複製される。
【0017】
一実施形態では、フコシル化パーセンテージは、抗体のFcドメインに結合しているN結合グリカン種などの、N結合グリカン種のみに対して計算される。N結合グリカン種としては、G0、G0F、G1F、G2F、G1F+NeuAc、G2F+NeuAc、G2F+2NeuAcが挙げられる。一実施形態では、アフコシル化は、G0/(G0+G0F)に基づくパーセンテージとして測定される。他のアイソフォームは、高マンノース形態と分解又は共溶出することが困難であり得るため、G0及びG0Fに基づく測定が好ましい場合がある。
【0018】
本明細書で使用される場合、「抗体産物」及び「抗体」は、交換可能に使用され、抗体産物は、抗体産生プロセスの結果である。本明細書で使用される場合、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、交換可能に使用することができ、抗原の抗原決定基の特徴に相補的な内面形状及び電荷分布を有する三次元結合空間を有するポリペプチド鎖の折り畳みから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチド又はポリペプチドの群を指す。抗体は、典型的には、各対が1つの「軽」鎖及び1つの「重」鎖を有する、2対のポリペプチド鎖を有する、テトラマー形態を有する。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)、続いて多数の定常ドメイン(CH)を有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)、その他方の末端に定常ドメイン(CL)を有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインとアラインされ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインとアラインされる。軽鎖は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、ラムダ鎖又はカッパ鎖のいずれかとして分類される。
【0019】
免疫グロブリン分子は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、サブイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はアロタイプ(例えば、Gm、例えば、G1m(f、z、a、又はx)、G2m(n)、G3m(g、b、又はc)、Am、Em、及びKm(1、2、又は3))であり得る。免疫グロブリンとしては、モノクローナル抗体(mAb)(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、CDR移植、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、イントラボディ、及び組換え産生された抗体断片を含む、その所望の抗原結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。組換え産生することができる抗体断片の例としては、可変重鎖及び軽鎖ドメインを含む抗体断片、例えば、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗体断片はまた、上記に列挙された抗体のうちのいずれかのエピトープ結合断片又は誘導体を含むことができる。好適な実施形態では、抗体産物は、モノクローナル抗体(mAb)であり、より好適には、治療用抗体産物である。
【0020】
本明細書に記載されるように、抗体産生プロセスは、目的の抗体を発現するプロデューサー細胞の培養に適した容器であるバイオリアクターにおいて好適に実施される。バイオリアクターは、典型的には、産生スケール、又は産生のためにスケールアップされる前にパイロットスケールで使用されるため、産生プロセスにおいて使用されるバイオリアクターは、典型的には、少なくとも10Lの体積を有するが、プロセスを試験するために、より小さなバイオリアクター、例えば、100~250mLの体積を有するAMBR(登録商標)250システムが使用され得る。したがって、例示的な実施形態では、バイオリアクターは、約100mL~約50,000Lの体積を有することができる。非限定的な例としては、100mL、250mL、500mL、750mL、1リットル、2リットル、3リットル、4リットル、5リットル、6リットル、7リットル、8リットル、9リットル、10リットル、15リットル、20リットル、25リットル、30リットル、40リットル、50リットル、60リットル、70リットル、80リットル、90リットル、100リットル、150リットル、200リットル、250リットル、300リットル、350リットル、400リットル、450リットル、500リットル、550リットル、600リットル、650リットル、700リットル、750リットル、800リットル、850リットル、900リットル、950リットル、1000リットル、1500リットル、2000リットル、2500リットル、3000リットル、3500リットル、4000リットル、4500リットル、5000リットル、6000リットル、7000リットル、8000リットル、9000リットル、10,000リットル、15,000リットル、20,000リットル、及び/又は50,000リットルの体積が挙げられる。好適なリアクターは、マルチユース、シングルユース、ディスポーザブル、又は非ディスポーザブルであり得、ステンレス鋼(例えば、316L又は任意の他の好適なステンレス鋼)並びにインコネル、プラスチック、及び/又はガラスなどの金属合金を含む任意の好適な材料から形成することができる。
【0021】
抗体産生プロセスは、所望の抗体の細胞増殖及び産生を支持するために、好適な栄養培地を含む、必要な試薬及びサプリメントを好適に含む、産生培地又は緩衝剤とともに、抗体産物を産生している細胞培養物又は細胞集団を含む。
【0022】
本明細書では「産生プロセス体積」とも呼ばれる、バイオリアクターの総充填体積は、産生プロセス中のバイオリアクターにおける細胞培養物の実際の体積を指す。これは、総バイオリアクター体積よりも小さいが、また典型的には、約10L~約50000Lほどである。よって、バイオリアクター体積について上述された例示的な体積は、充填産生プロセス体積にも適用可能である。
【0023】
本明細書に記載されるように、アフコシル化を調節する方法は、抗体産生プロセス中にある量のマンノースをバイオリアクターに添加することを含む。本明細書で使用される場合、「マンノース」は、炭水化物のアルドヘキソース系の糖モノマーを指し、グルコースのC-2エピマーである。マンノースは、D及びL異性体の両方の形態で存在するが、典型的には、本発明の方法において使用されるD異性体である。
【化1】
【0024】
本明細書に記載される方法は、好適には、抗体産生プロセスが行われているバイオリアクターにマンノースを添加することを含み、よってマンノースは、それ自体が抗体産生プロセスに添加される。添加されるマンノースの量(すなわち、マンノースの重量)は、バイオリアクターの充填体積、よって産生プロセスの体積に対して計算される。したがって、マンノース含有溶液は、細胞培養液中の濃度を所望の値にするために添加される。例えば、1Lの10g/Lのマンノース原料は、1g/Lの最終濃度を達成するように9Lの細胞培養液(培地及び細胞バイオマス)を含有するバイオリアクターに添加され得る。マンノースの添加は、バイオリアクター上の1つ以上のバルブ若しくはポートを介した添加、バイオリアクターの開口部若しくは上部を介したバイオリアクターへの直接のマンノースの添加を含む、任意の好適なプロセスを使用して実施することができ、又はマンノースは、バイオリアクターに添加される溶液に添加することができる。例えば、マンノースは、抗体産生プロセス中に導入される栄養培地溶液に含めることができ、それによってマンノースをプロセスにも添加する。スタンドアローン溶液として、又は多成分培地供給物として添加することができる。本明細書に記載される方法は、細胞増殖を促進するなどのために栄養培地に少量のマンノースを単に含めるのではなく、アフコシル化を増加させる/アフコシル化レベルを制御する目的で、抗体産生プロセスへのマンノースの添加を必要とすることに留意されたい。
【0025】
添加されるマンノースの量は、必要とされるアフコシル化の程度、及びマンノースの添加を許容する細胞の能力に依存するであろう。典型的には、添加されるマンノースの量は、少なくとも1g/L、例えば、約2g/L超、約3g/L超、約4g/L超、約5g/L超、約6g/L超、約7g/L超、約8g/L超、約9g/L超である。添加されるマンノースの量は、典型的には、約20g/L未満、例えば、約15、14、13、12、11、若しくは10g/L未満、又は約9若しくは8g/L未満、又は約7g/L未満である。多過ぎるマンノースを添加することは、高浸透圧をもたらし得、これはひいては細胞成長を低下させ得る。したがって、添加されるマンノースの量は、約1g/L~約20g/L、約1g/L~約15g/L、14g/L、13g/L、12g/L、11g/L、10g/L、9g/L、8g/L、又は7g/L、約2g/L~約15g/L、14g/L、13g/L、12g/L、11g/L、10g/L、9g/L、8g/L、又は7g/L、約3g/L~約15g/L、14g/L、13g/L、12g/L、11g/L、10g/L、9g/L、8g/L、又は7g/Lであり得る。細胞産生性能を考慮して、所望のアフコシル化レベルを達成するために、より多い量又はより少ない量のマンノースを添加することもできる。1g/Lのマンノースは、5.6mMのマンノースに等しい。
【0026】
一実施形態では、最大のフコシル化が望まれる場合、添加されるマンノースの量は、典型的には、上記で概説されたより高いレベルに向かうであろう。別の実施形態では、目標が、アフコシル化を、以前の産生プロセスを参照して抗体の目標レベルに一致させることである場合、マンノースの添加は、上記の範囲のいずれかにあるレベルであり得るか、又はまた産生プロセス中に所望の一致レベルを達成するために変動され得る。
【0027】
抗体産生プロセスへのマンノースの添加のタイミングは、産生されている抗体のタイプ、実施されているプロセスのタイプ、バイオリアクター、プロセスが実施されている産生プラントの要件などに基づいて変動させることができる。抗体産生プロセスは、典型的には、所望の細胞密度/バイオマスを迅速に達成するための成長期と、次いで目的の抗体の高い特定の生産性を促進するための産生期と、を有する。いくつかのプロセスでは、成長期から産生期への移行は、温度シフトを伴う。
【0028】
最終産物のアフコシル化の調節を達成するために、マンノースレベルは、産生期の全部又は一部の間に上昇されるであろう。これは、細胞培養プロセス中の様々な段階でマンノース含有培地を供給することによって達成することができる。典型的には、マンノースは、産生期の全部の間に添加されるが、マンノースはまた、成長期中に供給され得、次いで、更にマンノースを添加することなく、細胞が産生期中に上昇したマンノースレベル下で目的の抗体を産生することを可能にする。
【0029】
産生は、典型的には、当該技術分野で既知の2つの主要な産生プロセス方法:フェドバッチ及び灌流プロセスのうちの1つ、又は2つのハイブリッドである。
【0030】
いくつかの実施形態では、マンノースは、細胞培養プロセスの最初の12~48時間以内(すなわち、その間)、より好適には、最初の12時間、最初の24時間、又は最初の36時間以内を含む、最初の12~36時間以内に添加される。他の実施形態では、マンノースは、成長期の終わりに向かって、例えば、産生期の12~24時間前に添加される。マンノースの添加はまた、細胞培養プロセス全体を通して複数回(成長期及び/又は産生期(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10回など)行われ得、各添加は、添加されるマンノースの最終的な所望の量を達成するような所望の量(すなわち、g/L量)である。
【0031】
一実施形態では、マンノースは、レシピのような、予め定義された戦略に従って固定量で添加される。例えば、マンノースは、標準供給物のうちの1つとともに含まれ、同じタイミングのレジメンを採用し得るか、又は別個の供給物として含まれ得る。
【0032】
別の実施形態では、添加されるマンノースの量は、例えば、それらの測定値が、アフコシル化が所定の目標値から逸脱していることを示す場合、発現された抗体の定期的な測定の結果として調節される。次いで、添加されるマンノースの量は、アフコシル化が減少している場合に増加し、アフコシル化が目標値に対して増加している場合に減少する。アフコシル化の測定は、オフライン又はインラインで行われ得る。
【0033】
所定の値は、プロセスが以前の機会に、例えば、異なるサイズの容器において、異なる部位などで実施されたときに得られたアフコシル化レベルに基づき得る。それはまた、例えば、その産物のバイオシミラーを産生するとき、CQAを規制目的のためにできるだけ厳守することができるように、市販の産物の分析に基づき得る。所定のレベルは、例えば、範囲(4.0~4.5%など)又は許容差を有する中点(4.25%+/0.25%)として表され得る。
【0034】
本明細書に記載されるように、プロセスの目的が、抗体産生プロセスへのマンノースの添加の結果としてアフコシル化を増加させることである場合、抗体産生プロセスによって産生される抗体産物のアフコシル化は、典型的には、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される場合、同じ抗体産物と比較して少なくとも0.5%増加する。すなわち、本明細書に記載される産生方法(マンノースの添加を含む)からの抗体産物が、同じ抗体産生プロセスにおいて、ただし追加のマンノースの添加を含むことなく産生される同じ抗体産物と比較される場合、本明細書に記載される方法で産生される抗体は、少なくとも0.5%増加するアフコシル化を示す。
【0035】
マンノースの添加を含む本方法に従って調製された抗体産物のアフコシル化の増加の量の測定は、マンノースの添加で産生された同じ抗体産物と比較して、液体クロマトグラフィー-質量分析を含む、質量分析などの、当該技術分野で既知の方法、及び他の方法を使用して行われる。また、上述されるように、使用される方法間にいくらかの変形があり得るので、一実施形態では、パーセンテージは、TOF LC/MSシステムを使用して測定され、抗体は、還元され、次いでAgilent 6230B TOF LC/MSシステム(PNGase F消化の必要なし)などの、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)に直接装填され、還元された抗体は、飛行時間質量分析計に注入される前に液体クロマトグラフ上の逆相脱塩カラムを通過する。
【0036】
他の好適な方法としては、例えば、Tay and Butler,2015,J.Biol.Methods 2:19 Mishra et al.,2020,J.Biotechnology X 5:100015)に記載されるものが挙げられる。これらの記載される方法のうちの1つでは、グリカンは、PNGase Fを使用して除去し、乾燥させることができる。それらは次いで、2-AB標識を使用して標識され、親水性相互作用液体クロマトグラフィー-HPLC(HILIC-HPLC)を使用して分析される。
【0037】
あるタンパク質集団からのアフコシル化(又はフコシル化)の量の別のタンパク質集団との比較は、アフコシル化の増加(又はフコシル化の減少)パーセンテージを提供し、一般に抗体の集団に対して提供される。すなわち、別の抗体集団と比較したある抗体集団からのアフコシル化の増加パーセントの測定値は、一般に、個々の抗体に基づいてではなく、約0.5g/L以上ほどである産生される抗体の量に基づいて計算される。好適には、本明細書に記載される方法を使用して産生される抗体の量は、約1g/L以上、好適には5g/L以上、又は約10g/L以上である。よって、少なくとも0.5%のアフコシル化の増加がある本明細書における実施形態では、増加は、約0.5g/L以上である抗体の総量に対して測定される。
【0038】
例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法から得られるアフコシル化の増加の量は、少なくとも0.5%の増加であり、あるいは他の実施形態では、少なくとも0.6%の増加、少なくとも0.7%の増加、少なくとも0.8%の増加、少なくとも0.9%の増加、少なくとも1%の増加、少なくとも1.1%の増加、少なくとも1.2%の増加、少なくとも1.3%の増加、少なくとも1.4%の増加、少なくとも1.5%の増加、少なくとも1.6%の増加、少なくとも1.7%の増加、少なくとも1.8%の増加、少なくとも1.9%の増加、少なくとも2.0%の増加、少なくとも2.1%の増加、少なくとも2.2%の増加、少なくとも2.3%の増加、少なくとも2.4%の増加、少なくとも2.5%の増加、少なくとも2.6%の増加、少なくとも2.7%の増加、少なくとも2.8%の増加、少なくとも2.9%の増加、少なくとも3.0%の増加、又は少なくとも0.5%~約2.0%の増加、約0.5%~約1.5%の増加、若しくは約0.5%~約1.0%の増加である。
【0039】
別の実施形態では、プロセスは、フコシル化レベルを所定のレベル(目標値)と一致させるように制御するために使用される。したがって、一実施形態では、組換え産生された抗体のアフコシル化を、同じ抗体について以前に得られた目標アフコシル化パーセンテージと一致させるための方法であって、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中にバイオリアクターへのマンノースの添加を制御して、目標アフコシル化パーセンテージで発現された抗体を得ることと、を含む、方法が提供される。
【0040】
典型的には、アフコシル化レベルは、所望の目標値の+/-0.25%以内に制御される(目標値が範囲である場合、変動は範囲の中点に対するものである)。例えば、アフコシル化レベルは、+/-0.5%以内に制御される。
【0041】
本明細書に記載される方法において使用される抗体産生プロセスは、哺乳動物細胞において好適に実施されるが、他の実施形態では、細菌又は昆虫細胞はまた、抗体産物を調製するために使用され得る。抗体産生プロセスにおいて使用することができる例示的な哺乳動物細胞としては、ヒト、マウス、ラット、チャイニーズハムスター、シリアハムスター、サル、類人猿、イヌ、ウマ、フェレット、及びネコ細胞が挙げられる。実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。例示的な実施形態では、細胞は、CHO-K1細胞、CHOK1SV(登録商標)細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHO-S、CHO GSノックアウト細胞(グルタチオン合成酵素(GS)遺伝子の全ての内因性コピーが不活性化されたCHO細胞)、CHOK1SV(登録商標)FUT8ノックアウト細胞、CHOZN、又はCHO由来細胞である。例示的なCHO GSノックアウト細胞(例えば、GS-KO細胞)は、CHOK1SV(登録商標)GSノックアウト細胞(GS Xceed(登録商標)細胞-CHOK1SV GS-KO(登録商標)、Lonza Biologics,Inc.など)である。CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えば、Potelligent(登録商標)CHOK1SV(登録商標)FUT8ノックアウト(Lonza Biologics,Inc.)である。他の実施形態では、細胞は、マウス骨髄腫(NSO)細胞株、HT1080、H9、HEK293細胞株、HeLa細胞株、T細胞、又はHepG2、MCF7、MDBK Jurkat、NIH3T3、PC12、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞)、VERO、SP2/0、YB2/0、Y0、C127、L細胞、COSなどのような細胞株に由来し得る。
【0042】
実施形態では、抗体産生プロセスは、フェドバッチバイオリアクターにおいて実施され、フェドバッチ産生プロセスが使用され、栄養培地が抗体産生プロセスに提供され、産物が産生ランの終了までバイオリアクターに残る。そのような実施形態では、マンノースの添加はまた、抗体が産生ランの終了まで除去されないように行われる。
【0043】
追加の実施形態では、抗体産生プロセスは、灌流バイオリアクターにおいて実施される灌流プロセスである。本明細書に記載される方法における使用のための例示的な灌流バイオリアクターは、発酵槽、撹拌タンク反応器、又はウェーブタイプのバイオリアクターを含み得る。いくつかの場合では、灌流バイオリアクターは、流体成長培地内の細胞培養物を受け入れるためのバイオリアクター体積を含む中空容器又は容器を含み得る。いくつかの場合では、灌流バイオリアクターは、細胞培養物を撹拌するために撹拌器に結合した回転可能なシャフトと関連して配置され得る。灌流バイオリアクターは、ステンレス鋼若しくは他の金属、ポリマー(例えば、硬質ポリマー若しくは可撓性ポリマー)、又はそれらの任意の組み合わせなどの、様々な材料から作製することができる。一実施形態では、灌流バイオリアクターは、細胞培養物内での細胞の培養及び増殖を可能にするバッフル、スパージャー、ガス供給、熱交換器などのような、様々な構成要素及び装置を含み得る。灌流反応(及び灌流バイオリアクター)が利用される実施形態では、添加されたマンノースの所望のレベルを維持するために、マンノースは、プロセス全体を通して一貫して添加され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、灌流プロセスは、定常状態灌流産生プロセスであり得る。そのような場合では、灌流バイオリアクターは、少なくとも投入ポートを介して、栄養培地などの投入培地、及び所望に応じてマンノースを連続的に受け入れ得る一方で、流出培地は、少なくとも流出ポートを介して灌流バイオリアクターから連続的に除去され得る。投入培地を介した1つ以上の投入成分の連続的な導入、及び流出培地を介した流出材料又は他の材料の連続的な除去は、バイオリアクター内に含まれる細胞培養物内で定常状態又は擬似定常状態を維持し得る。例えば、定常状態条件は、比較的一定の体積の細胞培養物及び細胞培養物が配置される培地を維持することを伴い得る。一例として、細胞培養物の体積は、例えば、10%、8%、5%、又は3%を超えて変動しないように維持され得る。いくつかの実装では、定常状態灌流産生プロセスは、灌流バイオリアクター内で所望の細胞密度を維持し得る。
【0045】
実施形態では、灌流バイオリアクターは、投入ポート及び流出ポートなどの、1つ以上のポートを含み得る。投入ポートは、1つ以上の投入成分が灌流バイオリアクターに供給されることを可能にするように構成され得る。いくつかの場合では、1つ以上の投入成分(1つ以上の投入材料とも呼ばれる)は、グルコース、ビタミン、脂質、マンノースなどのような、1つ以上の栄養素を含み得る。いくつかの場合では、1つ以上の投入成分は、灌流バイオリアクターに投入する液体又は他の培地を介して灌流バイオリアクターに送達され得、この場合、培地は、投入培地と呼ばれ得る。例えば、投入培地は、灌流バイオリアクター内で成長又は増殖するために細胞によって使用される栄養培地であり得る。一実施形態では、流出ポートは、材料が灌流バイオリアクターから除去されることを可能にするように構成され得る。例えば、除去される材料は、廃棄物、副産物、又は他の使用済み材料(流出材料とも呼ばれる)を含み得る。いくつかの場合では、そのような材料は、灌流バイオリアクターから流出する液体又は他の培地を介して除去され得る。そのような培地は、流出培地と呼ばれ得る。いくつかの実装では、所望の生物産物は、同じ流出ポートを介してバイオリアクターから採集され得るか、又はバイオリアクターは、生物産物の採集のための別のポートを有し得る。
【0046】
更なる実施形態では、本明細書において、mAb抗体産物のアフコシル化を増加させるための方法が提供される。方法は、好適には、バイオリアクターにおいて哺乳動物細胞で実施されるmAb抗体産生プロセスを提供することであって、産生プロセスが、少なくとも50Lの体積を有する、提供することと、mAb抗体産生プロセス中に約5g/Lよりも多い量のマンノースをバイオリアクターに添加することと、抗体産生プロセスを介してmAb抗体産物を産生することであって、mAb抗体産物のアフコシル化が、マンノースの添加なしでのmAb抗体産生プロセスによって産生されるmAb抗体産物と比較して、少なくとも2%増加する、産生することと、を含む。
【0047】
例示的な実施形態では、mAb抗体産生プロセスは、フェドバッチバイオリアクターにおいて実施される。他の実施形態では、抗体産生プロセスは、灌流バイオリアクターにおいて実施される。好適には、抗体産生プロセスは、灌流プロセスである。
【0048】
産生細胞による産物の生合成が満足のいく点に進むと、産物は、例えば、培地を取り除き、上清を細胞及び細胞破片から分離して、採集することができる。産物は、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、及び/又はウイルス不活性化などの、精製産物を得るための1つ以上の精製/処理ステップに供することができる。産物はまた、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と組み合わされ、例えば、緩衝剤、界面活性剤、安定剤(トレハロース、スクロース、グリセロールなど)、アミノ酸(グリシン、ヒスチジン、アルギニンなど)、金属イオン/キレート剤、塩及び/又は防腐剤のうちの1つ以上とともに、製剤化された薬学的組成物などの組成物を産生し得る。
【0049】
実施例-マンノースの添加でのアフコシル化の調節
CHO GS-KO細胞を、異なる濃度の異なる化学物質で補足された化学的に定義された培養培地において培養して、培養物によって産生された産物のN結合グリカンプロファイルに対するそれらの化学物質の影響を試験した。この細胞株によって産生された産物は、モデルIgG抗体であった。
実験の流れ:
1.補足された化学物質を含む培養培地を調製する
2.(1)からの培地において細胞を培養する
3.培養物において産生されたmAbを採集し、精製、還元、及び脱塩mAb産物のグリカンプロファイルを測定する
4.グリカン産物品質に対する化学サプリメントの統計的影響を決定する
【0050】
補足された化学物質を含む培地の調製:
培地に補足された化学物質には、以下が含まれる:
-なし(対照)
-マンノース
-N-アセチルマンノサミン(ManNAc)+ガラクトース
【0051】
マンノース、ManNAc、及びガラクトースの濃縮ストック溶液を調製し、培養培地に添加した。特定の体積のストック溶液を培養培地に補足して、表1における条件を生成した:
【表1】
【0052】
細胞培養:
GS-KO細胞を、表1からの培地を含有する通気性振盪フラスコに、2×105細胞/mLの密度で接種した。培養物を、温度、CO2、及び湿度が制御されたインキュベーターにおいて5日間成長させた。毎日試料を採取して、培養物の健全性をモニターした。
【0053】
産物採集及びグリカン測定:
mAb産物を5日目の振盪フラスコ培養物から採集し、プロテインA捕捉を通して精製した。精製されたmAbを、mAbを還元して重鎖及び軽鎖を分離することによって、グリカン分析のために調製した。還元されたmAbをLC-MSに注入し、還元されたmAbを飛行時間質量分析計(TOF MS)(Agilent 6230B)への注入前にLC上の逆相脱塩カラムを通過することによって脱塩した。技術的複製のために試料当たり3回の注入を実施した。
【0054】
グリカンデータ分析及び統計分析:
タンパク質メトリクスソフトウェアを使用して、得られたLC-MSデータを処理し、各グリカン種の相対的存在量を報告した。処理中に測定されたグリカン種には、以下が含まれる:G0、G0F、G1F、G2F、G1F+NeuAc、G2F+NeuAc、G2F+2NeuAc。アフコシル化mAbパーセントは、アフコシル化種の総量を、アフコシル化種及びフコシル化種の合計で割ること(G0/G0F+G0)によって計算した。GraphPad Prism、Dunnett事後分析を行って、マンノース補足培地又はガラクトース/ManNAc補足培地に供給された培養物において産生されたmAbが、非補足培地(対照)に供給された培養物において産生されたmAbとは有意に異なったかを決定した。
【0055】
結果/考察
ガラクトース及びManNAcではなくマンノースでの培養培地の補足は、アフコシル化mAb%を有意に増加させた(
図1を参照されたい)。マンノースの濃度を増加させることは、直線関係においてアフコシル化種の同時増加を引き起こした。より高い濃度のManNAc(10uM)の補足は、対照と比較して統計的に異なる結果をもたらし、ManNAcがアフコシル化をわずかに減少させた。
【表2】
【0056】
例示的な実施形態
実施形態1は、バイオリアクターにおいて組換え発現された抗体のアフコシル化を増加させるための方法であり、方法は、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中に細胞培養物にマンノースを添加することであって、その結果、抗体のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される同じ抗体と比較して増加する、添加することと、を含む。
実施形態2は、添加されるマンノースの量が、約1g/L~約10g/Lである、実施形態1に記載の方法を含む。
実施形態3は、バイオリアクターが、少なくとも10Lの体積を有する、実施形態1又は2に記載の方法を含む。
実施形態4は、抗体が、モノクローナルIgGである、実施形態1~3のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態5は、細胞が、哺乳動物である、実施形態1~4のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態6は、抗体のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される抗体と比較して少なくとも0.5%増加する、実施形態1~5のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態7は、抗体産物のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される抗体と比較して、少なくとも1%、例えば、少なくとも2%増加する、実施形態6に記載の方法を含む。
実施形態8は、抗体産生プロセスが、フェドバッチプロセスである、実施形態1~7のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態9は、抗体産生プロセスが、灌流プロセスである、実施形態1~7のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態10は、発現された抗体を単離することと、任意選択で、抗体を1つ以上の精製ステップに供することと、を更に含む、実施形態1~9のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態11は、組換え産生された抗体のアフコシル化を、同じ抗体について以前に得られた目標アフコシル化パーセンテージと一致させるための方法であり、方法は、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中にバイオリアクターへのマンノースの添加を制御して、目標アフコシル化パーセンテージで発現された抗体を得ることと、を含む。
実施形態12は、発現された抗体のアフコシル化パーセンテージが、目標アフコシル化パーセンテージの±0.25%以内である、実施形態11に記載の方法を含む。
実施形態13は、抗体産生プロセスが、灌流プロセスである、実施形態11又は12に記載の方法を含む。
【0057】
本発明に対するこれら及び他の修飾及び変形は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的又は部分的に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者は、前述の説明が例としてのみであり、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されるように本発明を限定することを意図しないことを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バイオリアクターにおいて産生される抗体産物のアフコシル化を調節するための方法を対象とする。本方法は、未処理のバイオリアクター産物と比較して、1%以上アフコシル化を増加させることを含む、抗体産物のアフコシル化を制御するための、マンノースのバイオリアクターへの添加を含む。
【背景技術】
【0002】
抗体などの、タンパク質産物は、糖部分の結合を含む、細胞からのそれらの発現中に翻訳後修飾を受ける。そのような修飾の1つは、哺乳動物IgG重鎖のCH2ドメインのAsn 297位で生じる免疫グロブリンG(IgG)のN結合グリコシル化である。この特定のN結合グリコシル化は、予め形成されたオリゴ糖の初期添加によって達成され、これは次いで、グルコース及びマンノース残基を除去し、フコース、ガラクトース、シアル酸、及びN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)などの他の糖を添加するその後の修飾に供される。そのようなグリコシル化は、タンパク質の生物学的活性に対して強い効果を有することができる。具体的には、多くの治療用抗体の重要な作用機序である、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)は、抗体のフコシル化レベルに依存する。様々な報告は、低減した量のフコシル化(すなわち、より高いアフコシル化)を有するモノクローナル抗体が、それらのフコシル化された対応物と比較してより高いADCCを示すことを見出した。よって、アフコシル化を増加させることができる抗体産物の産生は、いくつかの治療アプローチについて、特に腫瘍学において有利である。
【0003】
更に、グリコシル化のタイプ及び程度が生物学的活性に影響を及ぼし得るため、治療用抗体のグリカンプロファイルは、規制当局に報告され、一貫して再現されなければならない重要な重要品質特性である。しかしながら、治療用抗体の製造があるプロセスから別のプロセスへ(又は製造部位間でも)移行されるとき、フコシル化などのCQAに変動が生じ得、その産物について以前に得られた範囲のフコシル化レベルを達成するために移行されたプロセスを調整する必要性をもたらし得る。
【0004】
したがって、組換え発現された抗体組成物中のフコシル化レベルを調節して、生物学的活性を増強すること、及び/又はフコシル化レベルを以前の製造プロセスに一致させることができる必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、約1g/Lよりも多い量のマンノースの抗体産生プロセスへの添加は、(マンノースの添加なしでの同じ産生プロセスと比較した場合)抗体産物のアフコシル化における統計的に有意な増加をもたらすことが見出されている。更に、本方法におけるそのような量でのマンノースの添加は、高マンノース種の増加をもたらすようには見えない。これらの結果は、驚くべきものであり、予想外であり、本明細書に記載されるように、本方法は、(i)ADCCを増強し、よって、増強された治療効果を提供することができる治療用抗体を産生するために抗体産物のアフコシル化を調節する手段、及び(ii)これが重要品質特性であることを考慮して一貫したレベルを確保するためにアフコシル化レベルを調整する手段を提供する。本方法は、アフコシル化を増強するために遺伝子操作された細胞株を必要とする他の方法(そのような細胞株を産生及び維持することにおける困難さ)、及び上流バイオプロセシングパラメータへの顕著な操作を必要とする他の方法に対して顕著な利点を有する。
【0006】
したがって、一実施形態では、本発明は、バイオリアクターにおいて組換え発現された抗体のアフコシル化を増加させるための方法であって、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中に細胞培養物にマンノースを添加することであって、その結果、抗体のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される同じ抗体と比較して増加する、添加することと、を含む、方法を提供する。
【0007】
本明細書では、組換え産生された抗体のアフコシル化を、同じ抗体について以前に得られた目標アフコシル化パーセンテージと一致させるための方法であって、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中にバイオリアクターへのマンノースの添加を制御して、目標アフコシル化パーセンテージで発現された抗体を得ることと、を含む、方法も提供される。
【0008】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本考察は、例示的な実施形態の説明に過ぎず、本開示のより広範な態様を限定することを意図するものではないことが当業者によって理解されるべきである。
【0010】
実施形態では、本明細書において、抗体産物のアフコシル化を調節するための方法が提供され、これは典型的には、(i)抗体の生物学的活性を修飾すること、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を増加させること、又は(ii)以前に得られたレベルに一致させるプロセスにおいてアフコシル化を微調整することを意図している。
【0011】
「フコシル化」、一種のグリコシル化は、抗体(本明細書では「抗体産物」とも呼ばれる)などのタンパク質を含む、分子にフコース糖単位を添加するプロセスである。本明細書で使用される「アフコシル化」は、特定の抗体産物などの、特定の分子上のフコース糖単位の不在を指す。抗体産物の調製において、アフコシル化レベルは、フコース糖単位を欠く抗体分子のパーセンテージである。これは、質量分析及び高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む多数の方法によって決定することができる。使用される方法間にいくらかの変動があり得るため、一実施形態では、パーセンテージは、飛行時間、液体クロマトグラフ質量分析計(TOF LC/MS)システムを使用して測定される。抗体は、還元され、次いでAgilent 6230B TOF LC/MSシステム(PNGase F消化の必要なし)などの、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)に直接装填され、還元された抗体は、飛行時間質量分析計に注入される前に液体クロマトグラフ上の逆相脱塩カラムを通過する。
【0012】
他の好適な方法としては、例えば、Tay and Butler,2015,J.Biol.Methods 2:19 Mishra et al.,2020,J.Biotechnology X 5:100015に記載されるものが挙げられる。これらの記載される方法のうちの1つでは、グリカンは、PNGase Fを使用して除去し、乾燥させることができる。それらは次いで、2-AB標識を使用して標識され、親水性相互作用液体クロマトグラフィー-HPLC(HILIC-HPLC)を使用して分析される。
【0013】
次いで、検出された種は、アフコシル化抗体のパーセンテージを決定するために分析される。測定は、通常、測定精度を改善するために複製される。
【0014】
一実施形態では、フコシル化パーセンテージは、抗体のFcドメインに結合しているN結合グリカン種などの、N結合グリカン種のみに対して計算される。N結合グリカン種としては、G0、G0F、G1F、G2F、G1F+NeuAc、G2F+NeuAc、G2F+2NeuAcが挙げられる。一実施形態では、アフコシル化は、G0/(G0+G0F)に基づくパーセンテージとして測定される。他のアイソフォームは、高マンノース形態と分解又は共溶出することが困難であり得るため、G0及びG0Fに基づく測定が好ましい場合がある。
【0015】
本明細書で使用される場合、「抗体産物」及び「抗体」は、交換可能に使用され、抗体産物は、抗体産生プロセスの結果である。本明細書で使用される場合、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、交換可能に使用することができ、抗原の抗原決定基の特徴に相補的な内面形状及び電荷分布を有する三次元結合空間を有するポリペプチド鎖の折り畳みから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチド又はポリペプチドの群を指す。抗体は、典型的には、各対が1つの「軽」鎖及び1つの「重」鎖を有する、2対のポリペプチド鎖を有する、テトラマー形態を有する。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)、続いて多数の定常ドメイン(CH)を有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)、その他方の末端に定常ドメイン(CL)を有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインとアラインされ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインとアラインされる。軽鎖は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、ラムダ鎖又はカッパ鎖のいずれかとして分類される。
【0016】
免疫グロブリン分子は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、サブイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はアロタイプ(例えば、Gm、例えば、G1m(f、z、a、又はx)、G2m(n)、G3m(g、b、又はc)、Am、Em、及びKm(1、2、又は3))であり得る。免疫グロブリンとしては、モノクローナル抗体(mAb)(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、CDR移植、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、イントラボディ、及び組換え産生された抗体断片を含む、その所望の抗原結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。組換え産生することができる抗体断片の例としては、可変重鎖及び軽鎖ドメインを含む抗体断片、例えば、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗体断片はまた、上記に列挙された抗体のうちのいずれかのエピトープ結合断片又は誘導体を含むことができる。好適な実施形態では、抗体産物は、モノクローナル抗体(mAb)であり、より好適には、治療用抗体産物である。
【0017】
本明細書に記載されるように、抗体産生プロセスは、目的の抗体を発現するプロデューサー細胞の培養に適した容器であるバイオリアクターにおいて好適に実施される。バイオリアクターは、典型的には、産生スケール、又は産生のためにスケールアップされる前にパイロットスケールで使用されるため、産生プロセスにおいて使用されるバイオリアクターは、典型的には、少なくとも10Lの体積を有するが、プロセスを試験するために、より小さなバイオリアクター、例えば、100~250mLの体積を有するAMBR(登録商標)250システムが使用され得る。したがって、例示的な実施形態では、バイオリアクターは、約100mL~約50,000Lの体積を有することができる。非限定的な例としては、100mL、250mL、500mL、750mL、1リットル、2リットル、3リットル、4リットル、5リットル、6リットル、7リットル、8リットル、9リットル、10リットル、15リットル、20リットル、25リットル、30リットル、40リットル、50リットル、60リットル、70リットル、80リットル、90リットル、100リットル、150リットル、200リットル、250リットル、300リットル、350リットル、400リットル、450リットル、500リットル、550リットル、600リットル、650リットル、700リットル、750リットル、800リットル、850リットル、900リットル、950リットル、1000リットル、1500リットル、2000リットル、2500リットル、3000リットル、3500リットル、4000リットル、4500リットル、5000リットル、6000リットル、7000リットル、8000リットル、9000リットル、10,000リットル、15,000リットル、20,000リットル、及び/又は50,000リットルの体積が挙げられる。好適なリアクターは、マルチユース、シングルユース、ディスポーザブル、又は非ディスポーザブルであり得、ステンレス鋼(例えば、316L又は任意の他の好適なステンレス鋼)並びにインコネル、プラスチック、及び/又はガラスなどの金属合金を含む任意の好適な材料から形成することができる。
【0018】
抗体産生プロセスは、所望の抗体の細胞増殖及び産生を支持するために、好適な栄養培地を含む、必要な試薬及びサプリメントを好適に含む、産生培地又は緩衝剤とともに、抗体産物を産生している細胞培養物又は細胞集団を含む。
【0019】
本明細書では「産生プロセス体積」とも呼ばれる、バイオリアクターの総充填体積は、産生プロセス中のバイオリアクターにおける細胞培養物の実際の体積を指す。これは、総バイオリアクター体積よりも小さいが、また典型的には、約10L~約50000Lほどである。よって、バイオリアクター体積について上述された例示的な体積は、充填産生プロセス体積にも適用可能である。
【0020】
本明細書に記載されるように、アフコシル化を調節する方法は、抗体産生プロセス中にある量のマンノースをバイオリアクターに添加することを含む。本明細書で使用される場合、「マンノース」は、炭水化物のアルドヘキソース系の糖モノマーを指し、グルコースのC-2エピマーである。マンノースは、D及びL異性体の両方の形態で存在するが、典型的には、本発明の方法において使用されるD異性体である。
【化1】
【0021】
本明細書に記載される方法は、好適には、抗体産生プロセスが行われているバイオリアクターにマンノースを添加することを含み、よってマンノースは、それ自体が抗体産生プロセスに添加される。添加されるマンノースの量(すなわち、マンノースの重量)は、バイオリアクターの充填体積、よって産生プロセスの体積に対して計算される。したがって、マンノース含有溶液は、細胞培養液中の濃度を所望の値にするために添加される。例えば、1Lの10g/Lのマンノース原料は、1g/Lの最終濃度を達成するように9Lの細胞培養液(培地及び細胞バイオマス)を含有するバイオリアクターに添加され得る。マンノースの添加は、バイオリアクター上の1つ以上のバルブ若しくはポートを介した添加、バイオリアクターの開口部若しくは上部を介したバイオリアクターへの直接のマンノースの添加を含む、任意の好適なプロセスを使用して実施することができ、又はマンノースは、バイオリアクターに添加される溶液に添加することができる。例えば、マンノースは、抗体産生プロセス中に導入される栄養培地溶液に含めることができ、それによってマンノースをプロセスにも添加する。スタンドアローン溶液として、又は多成分培地供給物として添加することができる。本明細書に記載される方法は、細胞増殖を促進するなどのために栄養培地に少量のマンノースを単に含めるのではなく、アフコシル化を増加させる/アフコシル化レベルを制御する目的で、抗体産生プロセスへのマンノースの添加を必要とすることに留意されたい。
【0022】
添加されるマンノースの量は、必要とされるアフコシル化の程度、及びマンノースの添加を許容する細胞の能力に依存するであろう。典型的には、添加されるマンノースの量は、少なくとも1g/L、例えば、約2g/L超、約3g/L超、約4g/L超、約5g/L超、約6g/L超、約7g/L超、約8g/L超、約9g/L超である。添加されるマンノースの量は、典型的には、約20g/L未満、例えば、約15、14、13、12、11、若しくは10g/L未満、又は約9若しくは8g/L未満、又は約7g/L未満である。多過ぎるマンノースを添加することは、高浸透圧をもたらし得、これはひいては細胞成長を低下させ得る。したがって、添加されるマンノースの量は、約1g/L~約20g/L、約1g/L~約15g/L、14g/L、13g/L、12g/L、11g/L、10g/L、9g/L、8g/L、又は7g/L、約2g/L~約15g/L、14g/L、13g/L、12g/L、11g/L、10g/L、9g/L、8g/L、又は7g/L、約3g/L~約15g/L、14g/L、13g/L、12g/L、11g/L、10g/L、9g/L、8g/L、又は7g/Lであり得る。細胞産生性能を考慮して、所望のアフコシル化レベルを達成するために、より多い量又はより少ない量のマンノースを添加することもできる。1g/Lのマンノースは、5.6mMのマンノースに等しい。
【0023】
一実施形態では、最大のフコシル化が望まれる場合、添加されるマンノースの量は、典型的には、上記で概説されたより高いレベルに向かうであろう。別の実施形態では、目標が、アフコシル化を、以前の産生プロセスを参照して抗体の目標レベルに一致させることである場合、マンノースの添加は、上記の範囲のいずれかにあるレベルであり得るか、又はまた産生プロセス中に所望の一致レベルを達成するために変動され得る。
【0024】
抗体産生プロセスへのマンノースの添加のタイミングは、産生されている抗体のタイプ、実施されているプロセスのタイプ、バイオリアクター、プロセスが実施されている産生プラントの要件などに基づいて変動させることができる。抗体産生プロセスは、典型的には、所望の細胞密度/バイオマスを迅速に達成するための成長期と、次いで目的の抗体の高い特定の生産性を促進するための産生期と、を有する。いくつかのプロセスでは、成長期から産生期への移行は、温度シフトを伴う。
【0025】
最終産物のアフコシル化の調節を達成するために、マンノースレベルは、産生期の全部又は一部の間に上昇されるであろう。これは、細胞培養プロセス中の様々な段階でマンノース含有培地を供給することによって達成することができる。典型的には、マンノースは、産生期の全部の間に添加されるが、マンノースはまた、成長期中に供給され得、次いで、更にマンノースを添加することなく、細胞が産生期中に上昇したマンノースレベル下で目的の抗体を産生することを可能にする。
【0026】
産生は、典型的には、当該技術分野で既知の2つの主要な産生プロセス方法:フェドバッチ及び灌流プロセスのうちの1つ、又は2つのハイブリッドである。
【0027】
いくつかの実施形態では、マンノースは、細胞培養プロセスの最初の12~48時間以内(すなわち、その間)、より好適には、最初の12時間、最初の24時間、又は最初の36時間以内を含む、最初の12~36時間以内に添加される。他の実施形態では、マンノースは、成長期の終わりに向かって、例えば、産生期の12~24時間前に添加される。マンノースの添加はまた、細胞培養プロセス全体を通して複数回(成長期及び/又は産生期(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10回など)行われ得、各添加は、添加されるマンノースの最終的な所望の量を達成するような所望の量(すなわち、g/L量)である。
【0028】
一実施形態では、マンノースは、レシピのような、予め定義された戦略に従って固定量で添加される。例えば、マンノースは、標準供給物のうちの1つとともに含まれ、同じタイミングのレジメンを採用し得るか、又は別個の供給物として含まれ得る。
【0029】
別の実施形態では、添加されるマンノースの量は、例えば、それらの測定値が、アフコシル化が所定の目標値から逸脱していることを示す場合、発現された抗体の定期的な測定の結果として調節される。次いで、添加されるマンノースの量は、アフコシル化が減少している場合に増加し、アフコシル化が目標値に対して増加している場合に減少する。アフコシル化の測定は、オフライン又はインラインで行われ得る。
【0030】
所定の値は、プロセスが以前の機会に、例えば、異なるサイズの容器において、異なる部位などで実施されたときに得られたアフコシル化レベルに基づき得る。それはまた、例えば、その産物のバイオシミラーを産生するとき、CQAを規制目的のためにできるだけ厳守することができるように、市販の産物の分析に基づき得る。所定のレベルは、例えば、範囲(4.0~4.5%など)又は許容差を有する中点(4.25%+/0.25%)として表され得る。
【0031】
本明細書に記載されるように、プロセスの目的が、抗体産生プロセスへのマンノースの添加の結果としてアフコシル化を増加させることである場合、抗体産生プロセスによって産生される抗体産物のアフコシル化は、典型的には、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される場合、同じ抗体産物と比較して少なくとも0.5%増加する。すなわち、本明細書に記載される産生方法(マンノースの添加を含む)からの抗体産物が、同じ抗体産生プロセスにおいて、ただし追加のマンノースの添加を含むことなく産生される同じ抗体産物と比較される場合、本明細書に記載される方法で産生される抗体は、少なくとも0.5%増加するアフコシル化を示す。
【0032】
マンノースの添加を含む本方法に従って調製された抗体産物のアフコシル化の増加の量の測定は、マンノースの添加で産生された同じ抗体産物と比較して、液体クロマトグラフィー-質量分析を含む、質量分析などの、当該技術分野で既知の方法、及び他の方法を使用して行われる。また、上述されるように、使用される方法間にいくらかの変形があり得るので、一実施形態では、パーセンテージは、TOF LC/MSシステムを使用して測定され、抗体は、還元され、次いでAgilent 6230B TOF LC/MSシステム(PNGase F消化の必要なし)などの、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)に直接装填され、還元された抗体は、飛行時間質量分析計に注入される前に液体クロマトグラフ上の逆相脱塩カラムを通過する。
【0033】
他の好適な方法としては、例えば、Tay and Butler,2015,J.Biol.Methods 2:19 Mishra et al.,2020,J.Biotechnology X 5:100015)に記載されるものが挙げられる。これらの記載される方法のうちの1つでは、グリカンは、PNGase Fを使用して除去し、乾燥させることができる。それらは次いで、2-AB標識を使用して標識され、親水性相互作用液体クロマトグラフィー-HPLC(HILIC-HPLC)を使用して分析される。
【0034】
あるタンパク質集団からのアフコシル化(又はフコシル化)の量の別のタンパク質集団との比較は、アフコシル化の増加(又はフコシル化の減少)パーセンテージを提供し、一般に抗体の集団に対して提供される。すなわち、別の抗体集団と比較したある抗体集団からのアフコシル化の増加パーセントの測定値は、一般に、個々の抗体に基づいてではなく、約0.5g/L以上ほどである産生される抗体の量に基づいて計算される。好適には、本明細書に記載される方法を使用して産生される抗体の量は、約1g/L以上、好適には5g/L以上、又は約10g/L以上である。よって、少なくとも0.5%のアフコシル化の増加がある本明細書における実施形態では、増加は、約0.5g/L以上である抗体の総量に対して測定される。
【0035】
例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法から得られるアフコシル化の増加の量は、少なくとも0.5%の増加であり、あるいは他の実施形態では、少なくとも0.6%の増加、少なくとも0.7%の増加、少なくとも0.8%の増加、少なくとも0.9%の増加、少なくとも1%の増加、少なくとも1.1%の増加、少なくとも1.2%の増加、少なくとも1.3%の増加、少なくとも1.4%の増加、少なくとも1.5%の増加、少なくとも1.6%の増加、少なくとも1.7%の増加、少なくとも1.8%の増加、少なくとも1.9%の増加、少なくとも2.0%の増加、少なくとも2.1%の増加、少なくとも2.2%の増加、少なくとも2.3%の増加、少なくとも2.4%の増加、少なくとも2.5%の増加、少なくとも2.6%の増加、少なくとも2.7%の増加、少なくとも2.8%の増加、少なくとも2.9%の増加、少なくとも3.0%の増加、又は少なくとも0.5%~約2.0%の増加、約0.5%~約1.5%の増加、若しくは約0.5%~約1.0%の増加である。
【0036】
別の実施形態では、プロセスは、フコシル化レベルを所定のレベル(目標値)と一致させるように制御するために使用される。したがって、一実施形態では、組換え産生された抗体のアフコシル化を、同じ抗体について以前に得られた目標アフコシル化パーセンテージと一致させるための方法であって、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中にバイオリアクターへのマンノースの添加を制御して、目標アフコシル化パーセンテージで発現された抗体を得ることと、を含む、方法が提供される。
【0037】
典型的には、アフコシル化レベルは、所望の目標値の+/-0.25%以内に制御される(目標値が範囲である場合、変動は範囲の中点に対するものである)。例えば、アフコシル化レベルは、+/-0.5%以内に制御される。
【0038】
本明細書に記載される方法において使用される抗体産生プロセスは、哺乳動物細胞において好適に実施されるが、他の実施形態では、細菌又は昆虫細胞はまた、抗体産物を調製するために使用され得る。抗体産生プロセスにおいて使用することができる例示的な哺乳動物細胞としては、ヒト、マウス、ラット、チャイニーズハムスター、シリアハムスター、サル、類人猿、イヌ、ウマ、フェレット、及びネコ細胞が挙げられる。実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。例示的な実施形態では、細胞は、CHO-K1細胞、CHOK1SV(登録商標)細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHO-S、CHO GSノックアウト細胞(グルタチオン合成酵素(GS)遺伝子の全ての内因性コピーが不活性化されたCHO細胞)、CHOK1SV(登録商標)FUT8ノックアウト細胞、CHOZN、又はCHO由来細胞である。例示的なCHO GSノックアウト細胞(例えば、GS-KO細胞)は、CHOK1SV(登録商標)GSノックアウト細胞(GS Xceed(登録商標)細胞-CHOK1SV GS-KO(登録商標)、Lonza Biologics,Inc.など)である。CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えば、Potelligent(登録商標)CHOK1SV(登録商標)FUT8ノックアウト(Lonza Biologics,Inc.)である。他の実施形態では、細胞は、マウス骨髄腫(NSO)細胞株、HT1080、H9、HEK293細胞株、HeLa細胞株、T細胞、又はHepG2、MCF7、MDBK Jurkat、NIH3T3、PC12、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞)、VERO、SP2/0、YB2/0、Y0、C127、L細胞、COSなどのような細胞株に由来し得る。
【0039】
実施形態では、抗体産生プロセスは、フェドバッチバイオリアクターにおいて実施され、フェドバッチ産生プロセスが使用され、栄養培地が抗体産生プロセスに提供され、産物が産生ランの終了までバイオリアクターに残る。そのような実施形態では、マンノースの添加はまた、抗体が産生ランの終了まで除去されないように行われる。
【0040】
追加の実施形態では、抗体産生プロセスは、灌流バイオリアクターにおいて実施される灌流プロセスである。本明細書に記載される方法における使用のための例示的な灌流バイオリアクターは、発酵槽、撹拌タンク反応器、又はウェーブタイプのバイオリアクターを含み得る。いくつかの場合では、灌流バイオリアクターは、流体成長培地内の細胞培養物を受け入れるためのバイオリアクター体積を含む中空容器又は容器を含み得る。いくつかの場合では、灌流バイオリアクターは、細胞培養物を撹拌するために撹拌器に結合した回転可能なシャフトと関連して配置され得る。灌流バイオリアクターは、ステンレス鋼若しくは他の金属、ポリマー(例えば、硬質ポリマー若しくは可撓性ポリマー)、又はそれらの任意の組み合わせなどの、様々な材料から作製することができる。一実施形態では、灌流バイオリアクターは、細胞培養物内での細胞の培養及び増殖を可能にするバッフル、スパージャー、ガス供給、熱交換器などのような、様々な構成要素及び装置を含み得る。灌流反応(及び灌流バイオリアクター)が利用される実施形態では、添加されたマンノースの所望のレベルを維持するために、マンノースは、プロセス全体を通して一貫して添加され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、灌流プロセスは、定常状態灌流産生プロセスであり得る。そのような場合では、灌流バイオリアクターは、少なくとも投入ポートを介して、栄養培地などの投入培地、及び所望に応じてマンノースを連続的に受け入れ得る一方で、流出培地は、少なくとも流出ポートを介して灌流バイオリアクターから連続的に除去され得る。投入培地を介した1つ以上の投入成分の連続的な導入、及び流出培地を介した流出材料又は他の材料の連続的な除去は、バイオリアクター内に含まれる細胞培養物内で定常状態又は擬似定常状態を維持し得る。例えば、定常状態条件は、比較的一定の体積の細胞培養物及び細胞培養物が配置される培地を維持することを伴い得る。一例として、細胞培養物の体積は、例えば、10%、8%、5%、又は3%を超えて変動しないように維持され得る。いくつかの実装では、定常状態灌流産生プロセスは、灌流バイオリアクター内で所望の細胞密度を維持し得る。
【0042】
実施形態では、灌流バイオリアクターは、投入ポート及び流出ポートなどの、1つ以上のポートを含み得る。投入ポートは、1つ以上の投入成分が灌流バイオリアクターに供給されることを可能にするように構成され得る。いくつかの場合では、1つ以上の投入成分(1つ以上の投入材料とも呼ばれる)は、グルコース、ビタミン、脂質、マンノースなどのような、1つ以上の栄養素を含み得る。いくつかの場合では、1つ以上の投入成分は、灌流バイオリアクターに投入する液体又は他の培地を介して灌流バイオリアクターに送達され得、この場合、培地は、投入培地と呼ばれ得る。例えば、投入培地は、灌流バイオリアクター内で成長又は増殖するために細胞によって使用される栄養培地であり得る。一実施形態では、流出ポートは、材料が灌流バイオリアクターから除去されることを可能にするように構成され得る。例えば、除去される材料は、廃棄物、副産物、又は他の使用済み材料(流出材料とも呼ばれる)を含み得る。いくつかの場合では、そのような材料は、灌流バイオリアクターから流出する液体又は他の培地を介して除去され得る。そのような培地は、流出培地と呼ばれ得る。いくつかの実装では、所望の生物産物は、同じ流出ポートを介してバイオリアクターから採集され得るか、又はバイオリアクターは、生物産物の採集のための別のポートを有し得る。
【0043】
更なる実施形態では、本明細書において、mAb抗体産物のアフコシル化を増加させるための方法が提供される。方法は、好適には、バイオリアクターにおいて哺乳動物細胞で実施されるmAb抗体産生プロセスを提供することであって、産生プロセスが、少なくとも50Lの体積を有する、提供することと、mAb抗体産生プロセス中に約5g/Lよりも多い量のマンノースをバイオリアクターに添加することと、抗体産生プロセスを介してmAb抗体産物を産生することであって、mAb抗体産物のアフコシル化が、マンノースの添加なしでのmAb抗体産生プロセスによって産生されるmAb抗体産物と比較して、少なくとも2%増加する、産生することと、を含む。
【0044】
例示的な実施形態では、mAb抗体産生プロセスは、フェドバッチバイオリアクターにおいて実施される。他の実施形態では、抗体産生プロセスは、灌流バイオリアクターにおいて実施される。好適には、抗体産生プロセスは、灌流プロセスである。
【0045】
産生細胞による産物の生合成が満足のいく点に進むと、産物は、例えば、培地を取り除き、上清を細胞及び細胞破片から分離して、採集することができる。産物は、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、及び/又はウイルス不活性化などの、精製産物を得るための1つ以上の精製/処理ステップに供することができる。産物はまた、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と組み合わされ、例えば、緩衝剤、界面活性剤、安定剤(トレハロース、スクロース、グリセロールなど)、アミノ酸(グリシン、ヒスチジン、アルギニンなど)、金属イオン/キレート剤、塩及び/又は防腐剤のうちの1つ以上とともに、製剤化された薬学的組成物などの組成物を産生し得る。
【0046】
実施例-マンノースの添加でのアフコシル化の調節
CHO GS-KO細胞を、異なる濃度の異なる化学物質で補足された化学的に定義された培養培地において培養して、培養物によって産生された産物のN結合グリカンプロファイルに対するそれらの化学物質の影響を試験した。この細胞株によって産生された産物は、モデルIgG抗体であった。
実験の流れ:
1.補足された化学物質を含む培養培地を調製する
2.(1)からの培地において細胞を培養する
3.培養物において産生されたmAbを採集し、精製、還元、及び脱塩mAb産物のグリカンプロファイルを測定する
4.グリカン産物品質に対する化学サプリメントの統計的影響を決定する
【0047】
補足された化学物質を含む培地の調製:
培地に補足された化学物質には、以下が含まれる:
-なし(対照)
-マンノース
-N-アセチルマンノサミン(ManNAc)+ガラクトース
【0048】
マンノース、ManNAc、及びガラクトースの濃縮ストック溶液を調製し、培養培地に添加した。特定の体積のストック溶液を培養培地に補足して、表1における条件を生成した:
【表1】
【0049】
細胞培養:
GS-KO細胞を、表1からの培地を含有する通気性振盪フラスコに、2×105細胞/mLの密度で接種した。培養物を、温度、CO2、及び湿度が制御されたインキュベーターにおいて5日間成長させた。毎日試料を採取して、培養物の健全性をモニターした。
【0050】
産物採集及びグリカン測定:
mAb産物を5日目の振盪フラスコ培養物から採集し、プロテインA捕捉を通して精製した。精製されたmAbを、mAbを還元して重鎖及び軽鎖を分離することによって、グリカン分析のために調製した。還元されたmAbをLC-MSに注入し、還元されたmAbを飛行時間質量分析計(TOF MS)(Agilent 6230B)への注入前にLC上の逆相脱塩カラムを通過することによって脱塩した。技術的複製のために試料当たり3回の注入を実施した。
【0051】
グリカンデータ分析及び統計分析:
タンパク質メトリクスソフトウェアを使用して、得られたLC-MSデータを処理し、各グリカン種の相対的存在量を報告した。処理中に測定されたグリカン種には、以下が含まれる:G0、G0F、G1F、G2F、G1F+NeuAc、G2F+NeuAc、G2F+2NeuAc。アフコシル化mAbパーセントは、アフコシル化種の総量を、アフコシル化種及びフコシル化種の合計で割ること(G0/G0F+G0)によって計算した。GraphPad Prism、Dunnett事後分析を行って、マンノース補足培地又はガラクトース/ManNAc補足培地に供給された培養物において産生されたmAbが、非補足培地(対照)に供給された培養物において産生されたmAbとは有意に異なったかを決定した。
【0052】
結果/考察
ガラクトース及びManNAcではなくマンノースでの培養培地の補足は、アフコシル化mAb%を有意に増加させ
た。マンノースの濃度を増加させることは、直線関係においてアフコシル化種の同時増加を引き起こした。より高い濃度のManNAc(10uM)の補足は、対照と比較して統計的に異なる結果をもたらし、ManNAcがアフコシル化をわずかに減少させた。
【表2】
【0053】
例示的な実施形態
実施形態1は、バイオリアクターにおいて組換え発現された抗体のアフコシル化を増加させるための方法であり、方法は、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中に細胞培養物にマンノースを添加することであって、その結果、抗体のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される同じ抗体と比較して増加する、添加することと、を含む。
実施形態2は、添加されるマンノースの量が、約1g/L~約10g/Lである、実施形態1に記載の方法を含む。
実施形態3は、バイオリアクターが、少なくとも10Lの体積を有する、実施形態1又は2に記載の方法を含む。
実施形態4は、抗体が、モノクローナルIgGである、実施形態1~3のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態5は、細胞が、哺乳動物である、実施形態1~4のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態6は、抗体のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される抗体と比較して少なくとも0.5%増加する、実施形態1~5のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態7は、抗体産物のアフコシル化が、マンノースの添加なしでの抗体産生プロセスによって産生される抗体と比較して、少なくとも1%、例えば、少なくとも2%増加する、実施形態6に記載の方法を含む。
実施形態8は、抗体産生プロセスが、フェドバッチプロセスである、実施形態1~7のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態9は、抗体産生プロセスが、灌流プロセスである、実施形態1~7のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態10は、発現された抗体を単離することと、任意選択で、抗体を1つ以上の精製ステップに供することと、を更に含む、実施形態1~9のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態11は、組換え産生された抗体のアフコシル化を、同じ抗体について以前に得られた目標アフコシル化パーセンテージと一致させるための方法であり、方法は、バイオリアクターにおいて抗体を発現する細胞を培養することと、抗体産生プロセス中にバイオリアクターへのマンノースの添加を制御して、目標アフコシル化パーセンテージで発現された抗体を得ることと、を含む。
実施形態12は、発現された抗体のアフコシル化パーセンテージが、目標アフコシル化パーセンテージの±0.25%以内である、実施形態11に記載の方法を含む。
実施形態13は、抗体産生プロセスが、灌流プロセスである、実施形態11又は12に記載の方法を含む。
【0054】
本発明に対するこれら及び他の修飾及び変形は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的又は部分的に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者は、前述の説明が例としてのみであり、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されるように本発明を限定することを意図しないことを理解するであろう。
【国際調査報告】