(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ポリメラーゼ変異体、および3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターとの併用
(51)【国際特許分類】
C12N 9/12 20060101AFI20240718BHJP
C12N 15/00 20060101ALI20240718BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240718BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240718BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C12N9/12 ZNA
C12N15/00 100Z
C12Q1/6869 Z
C12N15/54
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576079
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2021070785
(87)【国際公開番号】W WO2023277953
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カユーテ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,コニー
(72)【発明者】
【氏名】ホグレフ,ホーリー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェイドン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS36
(57)【要約】
【課題】可逆的ターミネーターとして機能するように修飾されたヌクレオチドを含む、修飾ヌクレオチドを組み込む機能が改善された、ポリヌクレオチド配列決定および他のバイオテクノロジー用途のためのポリメラーゼを提供する。
【解決手段】3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターを含む修飾ヌクレオチドを組み込む能力が改善された変異体ポリメラーゼ。この変異体ポリメラーゼは、ポリヌクレオチド配列決定、プライマー伸長反応および鋳型非依存性酵素的オリゴヌクレオチド合成などの様々な用途で使用される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターと変異体ポリメラーゼとを含む組成物であって、前記変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置にA486X変異を含み、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記A486X変異がA486F、A486Y、A486N、A486R、またはA486Hである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置にY546H変異をさらに含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置477と機能的に等価な位置にK477W変異をさらに含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置F494と機能的に等価な位置に変異をさらに含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記F494変異がF494C、F494I、F494N、またはF494Tである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記変異体ポリメラーゼが、パイロコッカスポリメラーゼの誘導体である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記変異体ポリメラーゼが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記変異体ポリメラーゼが、サーモコッカスポリメラーゼの誘導体である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
核酸を含むプライミング鎖にヌクレオチドを組み込む方法であって、前記方法は、
組み込み反応に十分な条件下で前記プライミング鎖とヌクレオチドおよび変異体ポリメラーゼとを接触させることを含み、
前記変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む、方法。
【請求項12】
前記ヌクレオチドが3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ポリヌクレオチドを配列決定する方法であって、
(a)鋳型とプライミング鎖とを含む二本鎖を形成し、前記鋳型が、配列決定される標的核酸と、前記プライミング鎖の少なくとも一部に相補的なプライマー結合部位と、を含む、形成することと、
(b)前記プライミング鎖と、可逆的ターミネーターヌクレオチドおよび変異体ポリメラーゼとを組み合わせ、前記変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む、組み合わせることと、
(c)前記プライミング鎖の3’末端に鋳型依存性反応で前記可逆的ターミネーターを組み込むことと、
(d)前記組み込まれた可逆的ターミネーターヌクレオチドを同定し、それによって前記鋳型の配列を決定する、同定することと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記方法が、ステップ(c)および(d)を少なくとも80回繰り返すことをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プライミング鎖、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターと変異体ポリメラーゼとを含む組成物であって、
前記変異体ポリメラーゼが、配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、
前記変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、L409、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497およびE581と機能的に等価な位置に1つまたは複数の変異をさらに含み、
前記変異体ポリメラーゼが、配列番号11のDNAポリメラーゼの組み込み活性より少なくとも4倍高い3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターの組み込み活性を有する、組成物。
【請求項16】
前記アミノ酸配列が、配列番号1と少なくとも85%同一である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記アミノ酸配列が、配列番号1と少なくとも90%同一である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記アミノ酸配列が、配列番号1と少なくとも95%同一である、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置266、267、268、269、329、336、399、400、403、404、407、408、410、411、450、452、455、456、458、459、460、461、462、463、464、465、466、475、477、478、479、480、481、482、483、485、487、488、491、493、495、496、498、499、500、515、522、545、546、577、579、580、582、584、591、595、603、606、607、608、612、613、614、664、665、666、668、669、674、675、および676と機能的に等価な任意の位置に変異を含まない、請求項15~請求項18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記変異体ポリメラーゼがパイロコッカスポリメラーゼの誘導体である、請求項15~請求項19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記変異体ポリメラーゼがサーモコッカスポリメラーゼの誘導体である、請求項15~請求項19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、前記プライミング鎖の少なくとも一部に相補的なプライマー結合部位を含む鋳型をさらに含む、請求項15~請求項21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、546H変位および486X変異をさらに含む、請求項15~請求項22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、前記プライミング鎖に相補的な鋳型を含まない、請求項15~請求項23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターをプライミング鎖に組み込む方法であって、前記方法が、
組み込み反応に十分な条件下でプライミング鎖と3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターおよび変異体ポリメラーゼとを接触させることであって、前記変異体ポリメラーゼが、配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列と、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、L409、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497およびE581と機能的に等価な位置における1つまたは複数の変異とを含む、接触させることと、
前記プライミング鎖の3’末端に前記3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターを組み込むことと、を含む、方法。
【請求項26】
前記3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターが2‐ニトロベンジル修飾ヌクレオチドである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターが、C7‐またはC5‐ヒドロキシメチル‐α‐tert‐ブチル‐2‐ニトロベンジル修飾ヌクレオチドおよびそのα‐チオ誘導体である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置492と機能的に等価な位置に少なくとも1つのアミノ酸変異を含み、前記方法が、前記ターミネーターを選択的に組み込むことを含む、請求項25~請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記変異がN492I、N492V、またはN492Pから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
シトシン塩基を含む3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターが、前記変異体ポリメラーゼによって選択的に組み込まれる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターと、配列番号2と少なくとも96%同一である変異体ポリメラーゼとを含む組成物であって、
Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるY546H変異と、
Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409HまたはL409F変異と、
Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、
を含む、組成物。
【請求項32】
前記組成物が、前記プライミング鎖に相補的な鋳型を含まない、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497およびE581と機能的に等価な位置における1つまたは複数の変異をさらに含む、請求項31または請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記変異体ポリメラーゼが、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項31または請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記変異体ポリメラーゼが、配列番号11のDNAポリメラーゼの組み込み活性より少なくとも2倍高い組み込み活性を有する、請求項31~請求項34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記変異体ポリメラーゼがパイロコッカスポリメラーゼの誘導体である、請求項31~請求項35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記変異体ポリメラーゼが配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項31~請求項36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記変異体ポリメラーゼがサーモコッカスポリメラーゼの誘導体である、請求項31~請求項35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
鋳型非依存性反応でプライミング鎖に単一ヌクレオチドを組み込むための方法であって、前記方法が、
プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターおよび変異体ポリメラーゼとを組み合わせることであって、前記変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であり、
Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるY546H変異と、
Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409HまたはL409F変異と、
Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、
を含む、組み合わせることを含み、
前記ターミネーターの組み込みが、配列番号11の変異体DNAポリメラーゼより少なくとも2倍高い、方法。
【請求項40】
鋳型非依存性オリゴヌクレオチドの合成方法であって、
プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターと、変異体DNAポリメラーゼと、を組み合わせることであって、前記変異体DNAポリメラーゼが、
配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、
Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるヒスチジンへのY546H変異と、
Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409H、またはL409F変異と、
Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、
を含む、組み合わせることと、
前記3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターを前記プライミング鎖に組み込むことと、を含む、方法。
【請求項41】
前記ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497およびE581と機能的に等価な位置における1つまたは複数の変異をさらに含む、請求項39または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターが2‐ニトロベンジル修飾ヌクレオチドである、請求項39~請求項41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターがC7‐またはC5‐ヒドロキシメチル‐α‐tert‐ブチル‐2‐ニトロベンジル修飾ヌクレオチドおよびそのα‐チオ誘導体である、請求項39~請求項41のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異体ポリメラーゼ、ならびにポリヌクレオチド配列決定、プライマー伸長反応、および他の用途のためのこのような変異体ポリメラーゼの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼは、ゲノムを複製し維持するために生体内に自然に存在する。ポリメラーゼは、バイオテクノロジー分野において、PCRおよび配列決定を含む様々な用途で利用されてきた。ポリメラーゼは、ヌクレオチド塩基間の相補性を検出し、および/またはオリゴヌクレオチド鎖の構造的特徴を認識し、かつヌクレオチドと鎖の3’末端との間の反応のための酵素として機能することによってDNAまたはRNAの複製を可能にする。ヌクレオチド、特に核酸の重合において可逆的ターミネーターとして機能するように修飾されたヌクレオチドの組み込みが改善された、様々なバイオテクノロジー用途のためのポリメラーゼの必要性が残っている。
【0003】
Therminator DNAポリメラーゼは、ファミリーBのサーモコッカス(Thermococcus)種9°N‐7 DNAポリメラーゼの誘導体である。Therminatorは、New England Biolabs社(マサチューセッツ州イプスウィッチ)から市販されており、その特性および用途については、最近、非特許文献1においてレビューされている。
【0004】
パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(以下、Pfu)は、もともと、90℃~100℃の温度の地熱で加熱された海洋堆積物から単離された超好熱性古細菌の1種である。パイロコッカス・フリオサスは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および他のバイオテクノロジー用途で使用されてきたファミリーB DNAポリメラーゼを持っている。非特許文献2を参照のこと。
【0005】
多くの野生型および変異体DNAポリメラーゼは、特に修飾ヌクレオチドを組み込む機能を有する場合、様々なバイオテクノロジー用途で使用されるか、または使用できる可能性がある。このようなDNAポリメラーゼは、ポリヌクレオチド配列決定、クローニング、PCRまたは他の増幅、一塩基多型(SNP)検出、全ゲノム増幅(WGA)、合成生物学、分子診断、および他の用途に有用な可能性がある。
【0006】
DNAポリメラーゼの潜在的用途の1つは、酵素を介したオリゴヌクレオチド合成(鋳型非依存性酵素オリゴ合成;TiEOS:Template‐Independent Enzymatic Oligo Synthesis)用である。TiEOSは、天然および修飾ヌクレオチドの両方から長い核酸ポリマーを生成するアプローチである。非特許文献3を参照のこと。
【0007】
現在のアプローチは、鋳型非依存性DNAポリメラーゼと可逆的修飾ターミネーターとを組み合わせて、1サイクルあたり1塩基付加にオリゴヌクレオチドの伸長を制御することである。TiEOSに好ましい酵素は、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)である。ファミリーX DNAポリメラーゼとして分類されるTdTは、哺乳動物における抗原受容体の多様性を高めるために、in vivoで鋳型非依存性にヌクレオチドを付加する。TdTは、100%未満の効率で可逆的ターミネーターを組み込むため、得られる合成オリゴヌクレオチドの長さおよび忠実度が制限される。今日までに酵素的に合成された最も長いオリゴは、操作されたファミリーX DNAポリメラーゼを用いてDNA Script社が報告したものである(段階的収率99.4%で280mer)。非特許文献4を参照のこと。
【0008】
さらに、合成による配列決定に使用するために開発された可逆的ターミネーターの多くは、ヌクレオチドの糖(3’‐OHブロック)または塩基(3’‐OH非ブロック)から終端基が除去された後に傷(scar)または修飾を残す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0228616号明細書
【特許文献2】米国特許第5,789,166号明細書
【特許文献3】米国特許第5,932,419号明細書
【特許文献4】米国特許第5,948,663号明細書
【特許文献5】米国特許第6,183,997号明細書
【特許文献6】米国特許第6,391,548号明細書
【特許文献7】米国特許第6,444,428号明細書
【特許文献8】米国特許第6,734,293号明細書
【特許文献9】米国特許第7,132,265号明細書
【特許文献10】米国特許第7,176,004号明細書
【特許文献11】米国特許第8,969,535号明細書
【特許文献12】米国特許第9,200,319号明細書
【特許文献13】米国特許第10,041,115号明細書
【特許文献14】米国特許第9,273,352号明細書
【特許文献15】米国特許第9,677,057号明細書
【特許文献16】米国特許第9,765,309号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2016/0032377号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2020/0216841号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Gardnerら、「Therminator DNA Polymerase:Modified Nucleotides and Unnatural Substrates」、Front.Mol.Biosci.,2019年4月24日(doi.org/10.3389/fmolb.2019.00028)
【非特許文献2】PfuTurbo DNA Polymerase Instruction Manual、Revision G0、著作権者Agilent Technologies,Inc.2015年、2020年、Elshawadfyら、「DNA polymerase hybrids derived from the family‐B enzymes of Pyrococcus furiosus and Thermococcus kodakarensis:improving performance in the polymerase chain reaction」Front Microbiol.2014年5月27日、第5巻、224ページ.doi:10.3389/fmicb.2014.00224
【非特許文献3】Jensenら、「Template‐Independent Enzymatic Oligonucleotide Synthesis(TiEOS):Its History,Prospects,and Challenges」、(2018年)Biochemistry、第57巻、1821~32ページ
【非特許文献4】Eisenstein(2020年)Nature Biotechnology、第38巻、1113~1115ページ、および米国特許第10,752,887号
【非特許文献5】Weidong Wuら、「Termination of DNA synthesis by N6‐alkylated,not 3′‐O‐alkylated,photocleavable 2′‐deoxyadenosine triphosphates」、Nucleic Acids Research、第35巻、第19号、2007年10月1日、6339~6349ページ
【非特許文献6】Vladislav A.Litoshら、「Improved nucleotide selectivity and termination of 3′‐OH unblocked reversible terminators by molecular tuning of 2‐nitrobenzyl alkylated HOMedU triphosphates」、Nucleic Acids Research、第39巻、第6号、2011年3月1日、e39ページ
【非特許文献7】Brian P.Stupiら、「Stereochemistry of Benzylic Carbon Substitution Coupled with Ring Modification of 2‐Nitrobenzyl Groups as Key Determinants for Fast‐Cleaving Reversible Terminators」、Angew.Chem.Int.2012年(編)、第51巻、1724~1727ページ
【非特許文献8】Andrew F.Gardnerら、「Rapid incorporation kinetics and improved fidelity of a novel class of 3′‐OH unblocked reversible terminators」、Nucleic Acids Research、第40巻、第15号、2012年4月1日、7404~7415ページ
【非特許文献9】Hansenら(2011年)NAR 第39巻、1801~1810ページ
【非特許文献10】Hertzog Dら、「A high‐performance,low‐cost approach to next‐generation sequencing」、BioOptics World、2011年、2011年11月/12月号
【非特許文献11】Ramsay,N.ら(2010年)CyDNA:Synthesis and Replication of Highly Cy‐Dye Substituted DNA by an Evolved Polymerase.J.AM.CHEM.SOC.2010年、第132巻、5096~5104ページ。
【非特許文献12】Cozensら(2012年)A short adaptive path from DNA to RNA polymerases.Proc.Natl.Acad.Sci.第109巻、8067~72ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
可逆的ターミネーターとして機能するように修飾されたヌクレオチドを含む、修飾ヌクレオチドを組み込む機能が改善された、ポリヌクレオチド配列決定および他のバイオテクノロジー用途のためのポリメラーゼが必要とされている。また、高い組み込み効率および終結効率で鋳型非依存的に無傷の(scarless)可逆的ターミネーターを組み込む酵素も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様として、変異体ポリメラーゼが提供される。変異体ポリメラーゼは、配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、さらに、本明細書で同定されるPfuポリメラーゼのアミノ酸位置と機能的に等価な1つまたは複数の位置に少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。
【0013】
いくつかの実施の形態では、ポリメラーゼは、Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置に変異を含み、および/またはPfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置に変異を含み、および/またはPfuポリメラーゼの位置477と機能的に等価な位置に変異を含む。例示的な変異体ポリメラーゼは、配列番号2、配列番号9、配列番号10、配列番号4、または配列番号5のアミノ酸配列を含むものを含む。
【0014】
本発明の別の態様として、本明細書に記載の可逆的ターミネーターと変異体ポリメラーゼとを含む組成物が提供される。いくつかの実施の形態では、可逆的ターミネーターは3’‐OH非修飾可逆的ターミネーター(Lightning Terminatorなど)である。たとえば、非特許文献5、非特許文献6、および非特許文献7、非特許文献8を参照のこと。
【0015】
別の態様として、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターと変異体ポリメラーゼとを含む組成物が提供される。変異体ポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む。
【0016】
別の態様として、核酸を含むプライミング鎖にヌクレオチドを組み込むための方法が提供される。この方法は、組み込み反応に十分な条件下でプライミング鎖とヌクレオチドおよび変異体ポリメラーゼとを接触させる工程を含む。変異体ポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む。
【0017】
本発明の別の態様は、ポリヌクレオチドを配列決定する方法に係るものである。この方法は、(a)鋳型とプライミング鎖とを含む二本鎖を形成する工程であって、鋳型が、配列決定される標的核酸と、プライミング鎖の少なくとも一部に相補的なプライマー結合部位と、を含む、形成する工程と、(b)プライミング鎖と、可逆的ターミネーターヌクレオチドおよび変異体ポリメラーゼとを組み合わせる工程であって、変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む、組み合わせる工程と、(c)プライミング鎖の3’末端に鋳型依存性反応で可逆的ターミネーターを組み込む工程と、(d)組み込まれた可逆的ターミネーターヌクレオチドを同定し、それによって鋳型の配列を決定する、同定する工程と、を含む。
【0018】
本発明の別の態様として、プライミング鎖と、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターと、変異体ポリメラーゼと、を含む組成物が提供される。変異体ポリメラーゼは、配列番号1と少なくとも80%、あるいは、少なくとも85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含む。変異体ポリメラーゼは、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、L409、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497、およびE581と機能的に等価な位置に1つまたは複数の変異をさらに含む。変異体ポリメラーゼは、配列番号11のDNAポリメラーゼの組み込み活性より少なくとも4倍高い組み込み活性を有する。
【0019】
さらに他の態様として、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターをプライミング鎖に組み込む方法が提供される。この方法は、組み込み反応に十分な条件下でプライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターおよび変異体ポリメラーゼとを接触させる工程を含む。変異体ポリメラーゼは、配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列と、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、L409、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497、およびE581と機能的に等価な位置における1つまたは複数の変異と、を含む。この方法はまた、プライミング鎖の3’末端に3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターを組み込む工程を含む。
【0020】
別の態様として、プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターと、変異体ポリメラーゼと、を含む組成物が提供される。変異体ポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも96%同一であり、Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるY546H変異と、Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409HまたはL409F変異と、Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、を含む。
【0021】
本発明の別の態様として、鋳型非依存性反応でプライミング鎖に単一ヌクレオチドを組み込むための方法が提供される。この方法は、プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターおよび変異体ポリメラーゼと、を組み合わせる工程を含む。変異体ポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも96%同一であり、かつ、Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるY546H変異と、Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409HまたはL409F変異と、Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、を含む。ターミネーターの組み込みは、配列番号11の変異体DNAポリメラーゼより少なくとも2倍(あるいは、4倍または10倍)高い。
【0022】
別の態様として、3’‐OH鋳型非依存性オリゴヌクレオチド合成のための方法が提供される。この方法は、プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターと、変異体DNAポリメラーゼと、を組み合わせる工程を含む。変異体DNAポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるヒスチジンへのY546H変異と、Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409H、またはL409F変異と、Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、を含む。この方法はまた、3’‐OH非ブロック非修飾可逆的ターミネーターをプライミング鎖に組み込む工程を含む。
【0023】
本方法および組成物のこれらおよび他の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲とあわせて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1Aは、DNA配列決定に使用される、5‐ヒドロキシルメチルウラシル塩基および結合された色素を含む可逆的(3’‐OH非ブロック)Lightning Terminatorを示す図である。
【
図1B】
図1Bは、3‐OHブロックターミネーターと非修飾3‐OHターミネーター(本開示で使用する)との間の概念の違いを示す図である。
【
図1C】
図1Cは、3‐OHブロックターミネーターと非修飾3‐OHターミネーター(本開示で使用する)との間の概念の違いを示す図である。
【
図1E】
図1Eは、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターを使用するTiEOSに使用される可逆的dATPターミネーターを示す図である。
図1E(「LTA‐1」)は、アデノシンのN6位がニトロベンジル部分で修飾されている。
【
図1F】
図1Fは、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターを使用するTiEOSに使用される可逆的dATPターミネーターを示す図である。
図1F(「LTA‐2」)は、7‐ヒドロキシルメチル‐7‐デアザ‐デオキシアデノシンがα‐tert‐ブチルニトロベンジル部分で修飾されており、任意選択で三リン酸部分にα‐チオ修飾を有する。
【
図2】
図2は、実施例4における、変異体キメラポリメラーゼを用いた配列決定からの配列決定メトリクスを示す図である。Pfu A486L/Y546H DNAポリメラーゼ(「対照」;Pfu 2)の以下のドメインを、9°N DNAポリメラーゼからの対応するセグメント:A‐1~99;B‐100~199;C‐400~449;D‐(500~599にまたがる20~40アミノ酸の4セグメント)で置換した。ドメインDについては、ARLおよびL+Lは、4サブキメラポリメラーゼによって示された平均値で示している。
【
図3】
図3は、Pfuポリメラーゼの位置486に変異を有する変異体ポリメラーゼの、可逆的ターミネーター(LTA)の組み込み活性を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、可逆的ターミネーター(LTA)の組み込みについて実施例5で試験した様々なF494X変異体ポリメラーゼの活性を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、可逆的ターミネーター(LTA)の組み込みについて実施例5で試験した様々なF494X変異体ポリメラーゼの活性を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例6における、天然ヌクレオチドを用いて試験した様々な変異体ポリメラーゼの活性を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例6で試験した様々な変異体ポリメラーゼによる可逆的ターミネーターの相対的組み込みを示す図である。
【
図7A】
図7Aは、実施例6で試験したY546X変異体(A486Lを含まない)による可逆的ターミネーターの組み込みの欠如を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、実施例6で試験したY546X変異体(A486Lを含まない)による可逆的ターミネーターの組み込みの欠如を示す図である。
【
図8】
図8は、変異体ポリメラーゼと修飾ヌクレオチドとの間の相互作用のモデルを示す図である。
【
図9A】
図9Aは、実施例7における、市販のTdT調製物(Promega社)および様々な変異体ポリメラーゼによる天然dATPの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、実施例7における、市販のTdT調製物(Promega社)および様々な変異体ポリメラーゼによる天然dATPの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、実施例7における、市販のTdT調製物(Promega社)および様々な変異体ポリメラーゼによる天然dATPの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、実施例8における、市販のTdT調製物(Promega社)および様々な変異体ポリメラーゼによる、プライミング鎖への可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、実施例8における、市販のTdT調製物(Promega社)および様々な変異体ポリメラーゼによる、プライミング鎖への可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図10C】
図10Cは、実施例8における、市販のTdT調製物(Promega社)および様々な変異体ポリメラーゼによる、プライミング鎖への可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図10D】
図10Dは、実施例8における、市販のTdT調製物(Promega社)および様々な変異体ポリメラーゼによる、プライミング鎖への可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図10E】
図10Eは、実施例8における、市販のTdT調製物(Promega社)および様々な変異体ポリメラーゼによる、プライミング鎖への可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、実施例9における、市販のTdT調製物(Promega社)による可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、実施例9における、市販のTdT調製物(Promega社)による可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図11C】
図11Cは、実施例9における、市販のTdT調製物(Promega社)による可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図11D】
図11Dは、実施例9における、市販のTdT調製物(Promega社)による可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図11E】
図11Eは、実施例9における、市販のTdT調製物(Promega社)による可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図11F】
図11Fは、実施例9における、市販のTdT調製物(Promega社)による可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、実施例9における、変異体ポリメラーゼ(Pfu26)によるプライミング鎖への可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、実施例9における、変異体ポリメラーゼ(Pfu26)によるプライミング鎖への可逆的ターミネーターの鋳型非依存性組み込みの測定値を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、実施例10における、変異体ポリメラーゼ(Pfu26)による3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーター(LTA‐2)の多サイクル付加の測定値を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、実施例10における、変異体ポリメラーゼ(Pfu26)による3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーター(LTA‐2)の多サイクル付加の測定値を示す図である。
【
図13C】
図13Cは、実施例10における、変異体ポリメラーゼ(Pfu26)による3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーター(LTA‐2)の多サイクル付加の測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、添付の図面とともに読めば、以下の詳細な説明から最もよく理解される。特徴は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【0026】
本開示は、Lightning Terminatorなどの3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターヌクレオチドの組み込みの改善のための変異体ポリメラーゼを提供する。本発明者らは、驚くべきことに、可逆的ターミネーターの組み込みの改善を示し、配列決定性能の改善およびDNA結合親和性の低下などの複数の他の関連する利点を有する特定の変異体ポリメラーゼを同定した。
【0027】
本開示はまた、本明細書に記載の変異体ポリメラーゼをコードする核酸分子を提供する。このような核酸分子は、コドンとアミノ酸との公知の対応に基づき、本明細書に開示されているアミノ酸配列に基づいて容易に想定することができる。本開示はまた、このような核酸分子を含む発現ベクターを提供する。本開示はまた、このような発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0028】
本開示はまた、ヌクレオチドの組み込み部位として機能し、その3’末端から伸長することが可能なプライミング鎖に1つまたは複数の可逆的ターミネーターヌクレオチドを組み込むための方法を提供する。この方法は、以下の成分を相互作用させることを含む:(i)本明細書に記載の変異体ポリメラーゼ、(ii)プライミング鎖、および(iii)Lightning Terminatorなどの可逆的ターミネーターを含むヌクレオチド溶液。
【0029】
本開示はまた、本明細書に記載の変異体ポリメラーゼおよびヌクレオチド溶液を含む、ヌクレオチド組み込み反応を実施するためのキットを提供する。いくつかの実施の形態では、ヌクレオチド溶液は3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターを含む。
【0030】
本明細書に記載の変異体ポリメラーゼは、修飾ヌクレオチド、特に3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターの組み込みのために改善されている。本発明者らは、可逆的ターミネーターの組み込みの改善を示し、かつDNA結合親和性の低下と、合成による配列決定反応における配列決定メトリクスの改善とを含む複数の他の関連する利点を有する特定の変異体ポリメラーゼを同定した。結合親和性の低下によって、変異体ポリメラーゼは、伸長した一次鎖と伸長していない一次鎖との間で迅速に循環することが可能となり、より高い親和性を有するポリメラーゼと比較してより高い組み込み効率をもたらすことが期待される。
【0031】
より詳細に以下で説明するように、ポリメラーゼにおける1つまたは複数の残基に対する1つまたは複数の変異は、ターンオーバー速度の大幅増加および加ピロリン酸分解の減少をもたらすことが見いだされた。これらの変異体ポリメラーゼは、DNA合成による配列決定(SBS)における性能の改善を示し、合成による配列決定反応におけるフェージングおよび/またはプレフェージングの減少および全体的な品質メトリクスの改善をもたらす。「フェージング」とは、配列決定サイクル中に、SBS中のクラスター内の一部の鎖におけるヌクレオチドの組み込みの失敗によるそのクラスター内の同期性の喪失を指す。「プレフェージング」とは、有効な3’ターミネーターを持たないヌクレオチドが一部の鎖に組み込まれた場合にクラスターの結果よりも1サイクル先に進む、SBSクラスターの状態を指す。
【0032】
いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、配列番号1と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、この組換えDNAポリメラーゼは、Pfu DNAポリメラーゼアミノ酸配列の特定の位置と機能的に等価な1つまたは複数の位置に少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。野生型Pfu DNAポリメラーゼアミノ酸配列は、配列番号1に示されている。
【0033】
いくつかの実施の形態では、本変異体ポリメラーゼは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、さらに、Pfuポリメラーゼの409、477、486または546の残基のアミノ酸位置と機能的に等価な1つまたは複数の位置に少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。いくつかの実施の形態では、ポリメラーゼは、Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置に変異を含み、かつ、Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置に変異を含んでもよく、さらに、Pfuポリメラーゼの位置477と機能的に等価な位置に変異を含んでいてもよい。いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、配列番号2と少なくとも96%同一であり、変異A486Xであって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸である可能性のある変異A486Xを含む。たとえば、変異体ポリメラーゼは、変異Y546H、K477WおよびA486Xを有する配列番号1のアミノ酸配列であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸である可能性のあるアミノ酸配列を含んでいてもよい。いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、さらに、変異D141AおよびE143Aを含む。
【0034】
いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、Pfuポリメラーゼの位置270、330、332、333、409、451、453、457、476、489、490、492、494、497および581と機能的に等価な位置に1つまたは複数の変異をさらに含む。いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、Pfuポリメラーゼの位置266、267、268、269、329、336、399、400、403、404、407、408、410、411、450、452、455、456、458、459、460、461、462、463、464、465、466、475、477、478、479、480、481、482、483、485、487、488、491、493、495、496、498、499、500、515、522、545、546、577、579、580、582、584、591、595、603、606、607、608、612、613、614、664、665、666、668、669、674、675、および676と機能的に等価な位置に変異を含まない。
【0035】
上記の変異体ポリメラーゼは、3’ブロックヌクレオチドの存在下で、および/またはDNA配列決定用途において、ポリメラーゼ活性の1つまたは複数の態様を増強させることが知られているさらなる変異を含むことができる。
【0036】
いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、野生型ポリメラーゼと比較して低下したエキソヌクレアーゼ活性を含む。たとえば、変異体ポリメラーゼは、9°N DNAポリメラーゼのアミノ酸配列のAsp141および/またはGlu143と機能的に等価な位置に変異を含んでいてもよい。
【0037】
いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、内部メチオニンを除去するために、さらなる変異を含むことができる。たとえば、いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、Pfuおよび9°N DNAポリメラーゼアミノ酸配列のMet129と機能的に等価な位置に、異なるアミノ酸への変異を含む。いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、Pfuおよび9°N DNAポリメラーゼのアミノ酸配列のMet129Alaと機能的に等価な変異を含む。
【0038】
いくつかの実施の形態では、変異は、非極性側鎖を有する残基への変異を含む。非極性側鎖を有するアミノ酸は当分野で周知であり、たとえばアラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびバリンを含む。
【0039】
いくつかの実施の形態では、変異は、極性側鎖を有する残基への変異を含む。極性側鎖を有するアミノ酸は当分野で周知であり、たとえばアルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、セリンおよびスレオニンを含む。
【0040】
いくつかの実施の形態では、変異は、疎水性側鎖を有する残基への変異を含む。疎水性側鎖を有するアミノ酸は当分野で周知であり、たとえばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンを含む。
【0041】
いくつかの実施の形態では、変異は、非荷電側鎖を有する残基への変異を含む。非荷電側鎖を有するアミノ酸は当分野で周知であり、たとえばグリシン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、チロシンおよびスレオニンを含む。
【0042】
いくつかの実施の形態では、変異体ポリメラーゼはDNAポリメラーゼの誘導体である。いくつかの実施の形態では、DNAポリメラーゼは古細菌DNAポリメラーゼである。いくつかの実施の形態では、DNAポリメラーゼはファミリーB DNAポリメラーゼである。ファミリーB古細菌DNAポリメラーゼは、Areziらの開示(特許文献1)で例示されるように、当技術分野で公知である。いくつかの実施の形態では、古細菌DNAポリメラーゼは超好熱性古細菌由来であり、このことは、そのポリメラーゼがしばしば耐熱性であることを意味する。したがって、さらに好ましい実施の形態では、変異体ポリメラーゼは、Vent、Deep Vent、9°NおよびPfuポリメラーゼから選択されるDNAポリメラーゼに由来する。VentおよびDeep Ventは、それぞれ超好熱性古細菌サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)およびパイロコッカス(Pyrococcus)種GB‐Dから単離されたファミリーB DNAポリメラーゼに用いられている商品名である。9°Nポリメラーゼは、ユニークなサーモコッカス種(T.種9°N)からも単離された。上記のように、Pfuポリメラーゼはパイロコッカス・フリオサスから単離された。いくつかの実施の形態では、本変異体ポリメラーゼはパイロコッカスポリメラーゼまたはサーモコッカスポリメラーゼの誘導体である。
【0043】
いくつかの実施の形態では、ファミリーB古細菌DNAポリメラーゼは、たとえばサーモコッカス属、パイロコッカス属またはメタノコッカス(Methanococcus)属などの属由来である。サーモコッカス属のメンバーは、限定されるものではないが、サーモコッカス4557、サーモコッカス・バロフィラス(Thermococcus barophilus)、サーモコッカス・ガンマトレランス(Thermococcus gammatolerans)、サーモコッカス・オンヌリネウス(Thermococcus onnurineus)、サーモコッカス・シビリカス(Thermococcus sibiricus)、サーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)、サーモコッカス・ゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius)を含む。パイロコッカス属のメンバーは、限定されるものではないが、パイロコッカスNA2、パイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)、パイロコッカス・フリオサス、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、パイロコッカス・ヤヤノシイ(Pyrococcus yayanosii)、パイロコッカス・エンデボリ(Pyrococcus endeavori)、パイロコッカス・グリコボランス(Pyrococcus glycovorans)、パイロコッカス・ウォーセイ(Pyrococcus woesei)を含む。メタノコッカス属のメンバーは、限定されるものではないが、メタノコッカス・エオリカス(Methanococcus aeolicus)、メタノコッカス・マリパルディス(Methanococcus maripaludis)、メタノコッカス・バンニエリイ(Methanococcus vannielii)、メタノコッカス・ボルタエ(Methanococcus voltae)、メタノコッカス・サーモリソトロフィカス(Methanococcus thermolithotrophicus)およびメタノコックス・ジャナスシイ(Methanococcus jannaschii)を含む。
【0044】
たとえば、ポリメラーゼはVent、Deep Vent、9°NおよびPfuポリメラーゼからなる群から選択することができる。いくつかの実施の形態では、ファミリーB古細菌DNAポリメラーゼはPfuポリメラーゼである。Pfuポリメラーゼに関する追加情報は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10で得てもよい。株GB‐D株由来の「Deep Vent」(Q51334)およびPwo DNAポリメラーゼなどのパイロコッカス株由来の他のポリメラーゼも使用してもよい。
【0045】
<用語>
本明細書で用いられる用語は、特定の実施の形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。定義された用語は、本開示の技術分野において一般に理解され認められている定義された用語の技術的および科学的意味に追加されるものである。
【0046】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では、たとえばWatson‐Crick塩基対形成相互作用に関与することができる天然に存在する2つの核酸と同様に、天然に存在する核酸と配列特異的にハイブリダイズすることができるヌクレオチド、たとえばデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、または合成的に生成された化合物で構成されるたとえば約10塩基超、約100塩基超、約500塩基超、1000塩基超、約10,000塩基以上までの任意の長さのポリマーを説明するために、同義で使用される。天然に存在するヌクレオチドは、グアニン、シトシン、アデニン、チミンおよびウラシル(それぞれG、C、A、TおよびU)を含む。
【0047】
本明細書で定義される「ヌクレオシド」という用語は、1’位または等価な位置で、糖または糖代替物、たとえば炭素環式または非環式リンカーに連結されたプリン、デアザプリン、またはピリミジン塩基を含む化合物であり、2’‐デオキシおよび2’‐ヒドロキシル体、2’,3’‐ジデオキシ体、ならびに他の置換を含む。
【0048】
本明細書で用いる場合、「ヌクレオシドポリリン酸」という用語は、2つ以上のリン酸基を有するヌクレオシドのリン酸エステルを指す。デオキシアデノシン三リン酸はヌクレオシドポリリン酸の例である。ヌクレオシドポリリン酸は、末端リン酸または内部リン酸に結合した化学基を含んでいてもよい。たとえば、ヌクレオシドポリリン酸は、ポリリン酸鎖の末端リン酸または内部リン酸に結合した電気化学的標識、質量タグ、電荷遮断標識、または発色標識、化学発光標識、蛍光色素、または蛍光消光標識を有する分子を含んでいてもよい。標識として使用してもよい化学基のさらなる例は、発色団、酵素、抗原、重金属、磁気プローブ、燐光基、放射性物質、散乱または蛍光ナノ粒子、ラマン信号発生部位および電気化学的検出部位を含む。さらに、本明細書で用いる場合、「ヌクレオシドポリリン酸」という用語は、リン酸鎖に硫黄原子、イミド基または他の修飾を含んでいてもよいヌクレオシドのリン酸エステルを指す。
【0049】
本明細書で用いる場合、「ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシドのリン酸エステルを指し、そのエステル化部位は、通常、五炭糖または糖代替物のC‐5位に結合したヒドロキシル基に対応する。場合によっては、ヌクレオチドはヌクレオシドポリリン酸を含む。しかしながら、「付加ヌクレオチド」、「組み込まれたヌクレオチド」、「付加されたヌクレオチド」および「組み込み後のヌクレオチド」という用語はすべて、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド鎖の一部であるヌクレオチド残基を指す。
【0050】
「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオシド」および「デオキシヌクレオチド」という用語は、公知のプリンおよびピリミジン塩基だけでなく、修飾された他の複素環式塩基も含む部分を含むことを意図している。このような修飾は、メチル化プリンまたはピリミジン、アシル化プリンまたはピリミジン、アルキル化リボースまたは他の複素環を含む。さらに、「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオシド」および「デオキシヌクレオチド」は、通常のリボースおよびデオキシリボース糖だけでなく、他の糖も含む部分を含む。修飾ヌクレオシド、ヌクレオチド、デオキシヌクレオシドまたはデオキシヌクレオチドは、糖部分の修飾、たとえば、1つまたは複数のヒドロキシル基がハロゲン原子または脂肪族基に置換されている修飾、またはエーテル、アミンなどとして官能化されている修飾も含む。
【0051】
天然に存在するヌクレオチドまたはヌクレオシドは、本明細書において、アデノシン(A)、チミジン(T)、グアノシン(G)、シチジン(C)およびウリジン(U)として定義される。これらのヌクレオチドまたはヌクレオシドの特定の修飾が自然界に存在することは認識されている。しかしながら、水素結合による塩基対形成に影響を与える、自然界に存在するA、T、GおよびCの修飾は天然には起こらないと考えられている。たとえば、2‐アミノアデノシンは自然界に見られるが、本明細書で用いられる用語としての「天然に存在する」ヌクレオチドまたはヌクレオシドではない。塩基対形成に影響を与えず、天然に存在すると考えられる自然界に存在する修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドの他の非限定的な例は、5‐メチルシトシン、3‐メチルアデニン、O(6)‐メチルグアニンおよび8‐オキソグアニンなどである。ヌクレオチドは、天然に存在するものであれ合成のものであれ、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む。
【0052】
「相補的」、「相補鎖」または「相補的な核酸配列」という用語は、Watson‐Crick塩基対形成則による別の核酸鎖の塩基配列に関連している核酸鎖を指す。一般に、一方の配列が、逆平行センス(anti‐parallel sense)にある他方の配列にハイブリダイズすることができる場合、2つの配列は相補的であり、各配列の3’末端は、他方の配列の5’末端にハイブリダイズし、したがって1方の配列の各A、T、GおよびCは、それぞれ他の配列のT、A、CおよびGとアラインする。
【0053】
「二本鎖」という用語は、全部または一部が相補的な少なくとも2つの配列が、そのヌクレオチドのすべて、あるいはそのほとんどの間でWatson‐Crick型塩基対形成が起こり、安定な複合体を形成することを意味する。「アニーリング」および「ハイブリダイゼーション」という用語は、安定な二本鎖の形成を意味するために同義で使用される。
【0054】
「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリッド形成」という用語は、ヌクレオチド配列の文脈において本明細書では同義で使用される。2つのヌクレオチド配列が互いにハイブリダイズする能力は、2つのヌクレオチド配列の相補性の程度に基づいており、一方それはマッチした相補的ヌクレオチド対の割合に基づいている。所与の配列において、他の配列に相補的なヌクレオチドが多ければ多いほど、ハイブリダイゼーションの条件はよりストリンジェントになり、2つの配列のハイブリダイゼーションはより特異的になる。ストリンジェンシーの上昇は、温度を高めること、共溶媒の比率を高めること、塩濃度を低くすることなどによって実現することができる。
【0055】
「プライミング鎖」という用語は、ヌクレオチドの組み込み部位として機能し、その3’末端から伸長することが可能な、酵素的に作製された核酸または合成核酸を意味する。いくつかの実施の形態では、プライミング鎖は、鋳型と二本鎖を形成するプライマーであり、鋳型に相補的なヌクレオチドの組み込みによって、鋳型に沿ってその3’末端から伸長され、伸長プロセス中に付加されるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列によって決定される。いくつかの実施の形態では、プライミング鎖は、一塩基伸長反応、一塩基伸長アッセイ、または鋳型非依存性オリゴヌクレオチド合成のための組み込み部位として機能することが可能な核酸である。プライミング鎖は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のいずれかによって触媒されるヌクレオチド組み込みの開始部位として機能する。プライミング鎖は、長さ2~1000塩基以上であってもよく、たとえば10~500塩基であってもよい。
【0056】
「鋳型」という用語は、Watson‐Crick塩基対形成則に従って鋳型に相補的な核酸分子の合成を指示するために核酸ポリメラーゼが使用することができる核酸分子を意味する。たとえば、DNAポリメラーゼは、DNAを利用して、鋳型DNAの鎖に相補的な配列を有する別のDNA分子を合成する。RNAポリメラーゼは、鋳型としてDNAを利用して、DNA鋳型の鎖に相補的な配列を有するRNAの合成を指示する。DNA逆転写酵素は、RNAを利用して、RNA鋳型の鎖に相補的な配列を有するDNAの合成を指示する。
【0057】
「プライマー伸長条件」という語句は、鋳型として鋳型鎖を用いてプライマー分子の末端にヌクレオチドを付加することによってポリメラーゼ媒介プライマー伸長を可能にする条件を意味する。
【0058】
「一塩基伸長」という語句は、単一の可逆的ターミネーターヌクレオチドがプライミング鎖に組み込まれる手順を指す。本方法および組成物は、核酸に沿った特定の位置でのヌクレオチド塩基の同一性を決定するために用いることができる一塩基伸長アッセイに採用することができる。たとえば、一塩基伸長アッセイは、一塩基多型(SNP)を同定するために、またはDNAメチル化レベルを測定するために用いることができる。
【0059】
プライマーが特定の核酸鋳型「に対応する」か、または特定の核酸鋳型「用」である場合、そのプライマーはその核酸鋳型と塩基対を形成する(すなわち特異的にハイブリダイズする)。より詳細に以下で説明するように、特定の核酸鋳型用のプライマー、および特定の核酸鋳型またはその相補鎖は、通常、配列が同一である連続ヌクレオチドの少なくとも1つの領域を含む。
【0060】
「ターミネーター」および「ターミネーターヌクレオチド」という用語は同義で使用され、ポリメラーゼによるヌクレオチド付加の基質として機能できないか、または伸長を阻害するヌクレオチドを指す。ジデオキシヌクレオチドである3’アジドヌクレオチドおよび3’アミノヌクレオチドはターミネーターヌクレオチドの例であるが、他の多くの例が公知である。他の非限定的な例は、3’‐リン酸標識ヌクレオチド、または仮想ターミネーターヌクレオチドを含む。
【0061】
「可逆的ターミネーター」という用語は、ヌクレオチド付加の基質として機能することができないことを、または伸長に対する阻害を回復させるように構成されているターミネーターヌクレオチドを指す。たとえば、可逆的ターミネーターは、そのヌクレオチドがポリメラーゼの基質として利用可能になるように除去することができるブロック部位を有していてもよい。場合によっては、ブロック部位はヌクレオチドの糖の3’‐OH位にあり、そのヌクレオチドは「3’‐OHブロックヌクレオチド」と呼ばれ、このブロック部位の除去によって3’‐OHが得られる。
【0062】
あるいは、可逆的ターミネーターによっては、糖の3’‐OH位にブロック部位を有さず、このようなターミネーターは、本明細書では3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターと呼ぶ。Lightning Terminatorは、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターの例であり、このヌクレオチドは、リボース部位の遊離3’‐OHとプリン(C7)またはピリミジン(C5)塩基に結合した光分解性ブロック基とを特徴とする。
図1A、
図1Eおよび
図1Fは、Lightning Terminatorの例を示す図である。いくつかの実施の形態では、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターは光分解性ブロック基を含む。これらの可逆的ターミネーターは、鎖に組み込むことができるが、期間中、伸長からブロックされる。ブロック解除後、これらの可逆的ターミネーターはプライマー伸長反応で伸長することができるようになる。光分解性ブロック基を含む3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターは、紫外線への暴露または他の光切断技術によって非ブロック化され、活性化されるまで、PCR増幅に関して実質的に不活性である。特許文献11、特許文献12、および特許文献13に記載されているような、様々な光分解性ブロック基を後段のプライマー(later stage primer)に含むことができる。いくつかの実施の形態では、光分解性ブロック基は約90%~約100%のブロック効率を有する。
【0063】
光分解性ブロック基は、DNA合成を可逆的にブロックして終結させ、次いで紫外線への暴露によって効率的に切断され、それによってプライマーを作動させるように設計される。いくつかの実施の形態では、光分解性ブロック基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル塩基、またはそれらの修飾ピリミジンおよびプリン誘導体、たとえば7‐ヒドロキシル‐7‐デアザ‐アデニン/グアニンなどを含むヌクレオチド化合物の形態である。他の実施の形態では、分解性基は、色素などのレポーターを含むように誘導体化することができる。いくつかの実施の形態では、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル塩基、またはそれらの修飾ピリミジンおよびプリン誘導体は、2‐ニトロベンジル基などの光分解性保護基に共有結合させることができる。いくつかの実施の形態では、2‐ニトロベンジル基は、DNA合成の終結を促進するために誘導体化される。2‐ニトロベンジル基などの光分解性保護基も、いくつかの実施の形態では、光分解性保護基への共有結合によって蛍光色素で誘導体化することができる。
【0064】
いくつかの実施の形態では、光分解性ブロック基は、2‐ニトロベンジル基と共有結合したヌクレオシド塩基を含み、2‐ニトロベンジル基のα炭素位は、アルキル基またはアリール基の1つで置換されていてもよい。他の実施の形態では、2‐ニトロベンジル基は、終結特性、ブロック特性および光触媒による脱保護速度を促進するために官能化される。他の実施の形態では、塩基に結合した2‐ニトロベンジル基およびα炭素置換2‐ニトロベンジル基の終結特性およびブロック特性は、リボース糖の3’‐OH基がブロックされていない場合にも生じる。いくつかの実施の形態では、α炭素置換2‐ニトロベンジル基も、選択された蛍光色素または他のレポーターを含むように誘導体化することができる。
【0065】
「レポーター」という用語は、直接的または間接的に検出可能なシグナルを生じることができる化学部分を指す。レポーターの例は、蛍光色素基、放射性標識、または化学発光もしくは生物発光手段によって信号を生成する基を含む。蛍光色素基の例は、キサンテン、フルオレセイン、ローダミン、BODIPY、シアニン、クマリン、ピレン、フタロシアニン、フィコビリタンパク質、ALEXA FLUOR 350、ALEXA FLUOR 405、ALEXA FLUOR 430、ALEXA FLUOR 488、ALEXA FLUOR 514、ALEXA FLUOR 532、ALEXA FLUOR 546、ALEXA FLUOR 555、ALEXA FLUOR 568、ALEXA FLUOR 568、ALEXA FLUOR 594、ALEXA FLUOR 610、ALEXA FLUOR 633、ALEXA FLUOR 647、ALEXA FLUOR 660、ALEXA FLUOR 680、ALEXA FLUOR 700、ALEXA FLUOR 750、およびスクアライン染料を含む。レポーターとして使用してもよい放射性標識の例は、本発明のいくつかの実施の形態では、当分野で周知の35S、3H、32P、または33Pなどである。
【0066】
「プライマー伸長試薬」という用語は、ポリヌクレオチド標的などのポリヌクレオチド分子にプライマー伸長反応(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)など)を行うのに必要または適した任意の試薬を指す。プライマー伸長試薬は、一般に、プライマー、耐熱性ポリメラーゼまたは逆転写酵素、およびヌクレオチドを、トリス‐HClまたは他の緩衝液などの適切な緩衝液との混合物中に含む。いくつかの実施の形態では、プライマー伸長試薬は、塩またはイオン、界面活性剤、有機溶媒、ポリマーおよび/または他の添加剤も含むことができる。たとえば、プライマー伸長試薬は、イオン(たとえば、Mg2+、Mn2+もしくはK+)またはその塩、Triton X‐100、Tween 20、またはNP40などの界面活性剤、血清、またはウシ血清アルブミン(BSA)などの血清タンパク質成分、グリセロール、マンニトールまたはソルビトールなどのポリオール、および/または還元剤(たとえば,ジチオスレイトール(DTT)またはトリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP))を含んでいてもよい。cDNA合成は、RNA転写物の3’ポリAテール(オリゴ(dT))、またはRNA内の複数の配列特異的部位(ランダマー、標的特異的プライマー)にアニーリングされたリバースプライマーによってプライミングされる。
【0067】
2つ以上のポリメラーゼを比較する文脈において、「機能的に等価」という用語は、ポリメラーゼにおいて、同じ機能的役割を有する他のポリメラーゼのアミノ酸位置に存在すると考えられるアミノ酸を含むポリメラーゼを意味する。例として、Vent DNAポリメラーゼの位置412のチロシンからバリンへの変異(Y412V)は、9°Nポリメラーゼの位置409のチロシンからバリンへの置換(Y409V)と機能的に等価である。一般に、2つ以上の異なるポリメラーゼにおける機能的に等価な変異は、ポリメラーゼのアミノ酸配列の相同なアミノ酸位置に生じる。したがって、「機能的に等価」という用語の本明細書における使用は、変異したアミノ酸の特定の機能が知られているか否かにかかわらず、所与の変異に対して「位置的に等価」または「相同」な変異も含む。配列アラインメントおよび/または分子モデリングに基づいて2つ以上の異なるポリメラーゼのアミノ酸配列における位置的に等価なまたは相同なアミノ酸残基を同定することは可能である。
【0068】
「同一」または「同一性パーセント」という用語は、2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈において、適切な配列比較アルゴリズムの使用または目視検査による測定により比較して最大一致に関してアラインメントしたときに、同じであるか、または同じ指定された割合のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。
【0069】
2つの核酸またはポリペプチド(たとえば、ポリメラーゼをコードするDNA、またはポリメラーゼのアミノ酸配列)の文脈において、「実質的に同一な」という語句は、配列比較アルゴリズムの使用または目視検査による測定により比較して最大一致に関してアラインメントしたとき、少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。このような「実質的に同一な」配列は、通常、実際の祖先を参照することなく、「相同」(homologous)であるとみなされる。好ましくは、「実質的同一性」は、少なくとも長さ約50残基の配列の領域にわたって存在し、より好ましくは、少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、配列は、少なくとも約150残基にわたって、または比較される2つの配列の全長にわたって実質的に同一である。
【0070】
ポリメラーゼおよび/またはアミノ酸配列などのポリペプチドは、それらが共通の祖先タンパク質またはタンパク質配列から天然または人工的に誘導された場合、「相同」である。同様に、ポリヌクレオチドおよび/または核酸配列は、共通の祖先核酸または核酸配列から天然または人工的に誘導された場合、相同である。相同性は、一般に、2つ以上の核酸またはタンパク質(またはその配列)間の配列類似性から推定される。相同性を確認するのに有用な配列間の類似性の正確な割合は、問題となっている核酸およびタンパク質によって異なるが、相同性を確認するために、50、100、150またはそれ以上の残基にわたるわずか25%の配列類似性が日常的に使用されている。より高いレベルの配列類似性、たとえば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上もまた、相同性を確認するために使用することができる。配列類似性の割合を決定するための方法は容易に入手できる。配列同一性パーセントおよび配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの例はBLASTアルゴリズムであり、BLAST分析を実行するためのソフトウェアベースのインターフェースは、アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公開されている。
【0071】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、また、通常の意味に加えて、「実質的な」または「実質的に」という用語は、当業者に許容される限界または程度の範囲内であることを意味する。たとえば、「実質的にキャンセルされる」とは、当業者が、キャンセルが許容されると考えていることを意味する。
【0072】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、また、その通常の意味に加えて、「およそ」および「約」という用語は、当業者に許容される限界または量の範囲内であることを意味する。「約」という用語は、一般に、示された数値の±15%を指す。たとえば、「約10」は、8.5~11.5の範囲を示す場合がある。たとえば、「ほぼ同じ」は、当業者が、比較される品目が同じであると考えることを意味する。
【0073】
本開示では、数値範囲は、その範囲を定義する数値を含む。化学構造および化学式は、例示の目的で引き延ばされたり拡大されたりすることがあることを認識すべきである。
【0074】
別途定義しない限り、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本開示が属する分野で働く人々によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0075】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施の形態を説明するためだけのものであり、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定を意図するものではないことが理解されるべきである。
【0076】
本明細書に開示されているように、多くの値の範囲が提供されている。文脈により明確に否定されない限りは、その範囲の上限と下限の間に、下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されていることは理解されよう。
【0077】
別途定義しない限り、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料もまた、本開示の実施または試験に使用することができるが、次にいくつかの例示的な方法および材料を説明する。
【0078】
本明細書で参照されるすべての特許および刊行物は、参照により明示的に組み込まれる。
【0079】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」という用語は、文脈により明確に否定されない限りは、単数および複数の両方の指示対象を含む。したがって、たとえば、「ある(a)部位」は、1つの部位と複数の部位を含む。
【0080】
<使用方法および用途>
本明細書に提示される変異体ポリメラーゼは、合成による配列決定(SBS)技術などのポリヌクレオチド配列決定に用いることができる。簡潔に言えば、SBSは、相補ストランドの合成のための鋳型として標的核酸を用いることによって行うことができる。プライマーは鋳型に結合し、DNAポリメラーゼの活性によって1つまたは複数の標識ヌクレオチドで伸長される。一次鎖(すなわち、鋳型にハイブリダイズしたプライマー)は、鋳型として標的核酸を用いて伸長され、検出することができる標識ヌクレオチドを組み込む。任意選択で、標識ヌクレオチドは、ヌクレオチドがプライマーに付加されると、それ以上のプライマー伸長を終結させる可逆的ターミネーターにすることができる。たとえば、可逆的ターミネーターは、終結を回復させるために脱保護剤が送達されるまでその後の伸長が起こらないように、プライマーに付加することができる。したがって、可逆的ターミネーターを用いる実施の形態のために、(標識の検出を行う前または後に)脱保護試薬を配列決定装置に送達することができる。
【0081】
可逆的ターミネーター(たとえば、Lightning Terminator)には、DNA合成を終結させるだけでなく迅速に切断するように設計された光分解性ブロック基を有するものがある。Lightning Terminatorは、たとえば、鋳型にアニーリングされた鎖の一塩基伸長によって、あるいは末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)による、鋳型に依存しない一次鎖の一塩基伸長によって、一次鎖の3’末端に結合され、組み込まれる、
いくつかの実施の形態では、本変異体ポリメラーゼは、鋳型非依存性酵素的オリゴ合成(TiEOS)に使用される。いくつかの実施の形態では、本方法は、プライミング鎖と、変異体ポリメラーゼ(Pfu26またはPfu48など)および1つまたは複数の3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターとを接触させることを含む。本方法は、1サイクルあたり一塩基付加でプライミング鎖の3’末端を伸長させることを含むことができる。いくつかの実施の形態では、本変異体ポリメラーゼは、高い組み込み効率および終結効率で鋳型非依存的にプライミング鎖に可逆的ターミネーターを組み込む。
【0082】
<変異体ポリメラーゼをコードする核酸>
さらに、本明細書では、本明細書に提示される変異体ポリメラーゼ酵素をコードする核酸を提示する。本開示によって開示または教示される所与の変異体ポリメラーゼについて、分子生物学の公知の原理に従って変異体ポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列を得ることが可能である。したがって、本開示は、変異体ポリメラーゼそれ自体だけでなく、変異体ポリメラーゼをコードする核酸に関する説明も提供する。
【0083】
本明細書に開示されている組換えポリメラーゼをコードする核酸もまた、本明細書に提示される実施の形態の特徴である。特定のアミノ酸は、複数のコドンによってコードすることができ、特定の翻訳系(たとえば原核細胞または真核細胞)は、しばしばコドンバイアスを示し、たとえば異なる生物は、しばしば、同じアミノ酸をコードするいくつかの同義コドンのうちの1つを好む。このように、本明細書に提示される核酸は任意で「コドン最適化」されており、これは、ポリメラーゼの発現に用いられる特定の翻訳系に好ましいコドンを含むように核酸が合成されることを意味する。たとえば、ポリメラーゼを細菌細胞(またはさらに特定の菌株)中で発現させることが望ましい場合、ポリメラーゼの効率的な発現のために、その細菌細胞のゲノムにおいて最も頻繁に検出されるコドンを含むように核酸を合成することができる。ポリメラーゼを真核細胞で発現することが望ましい場合、同様な戦略を用いることができ、たとえば、核酸は、その真核細胞が好むコドンを含むことができる。
【0084】
様々なタンパク質単離法および検出法が公知であり、たとえば、本明細書に提示される組換えポリメラーゼを発現する細胞の組換え培養物からポリメラーゼを単離するためにそれらを使用することができる。
【0085】
9°Nポリメラーゼをコードする野生型のヌクレオチド配列が公知であることを考慮すれば、標準的な遺伝コードを用いて、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する9°Nの所与の変異バージョンをコードするヌクレオチド配列を導き出すことが可能である。同様に、たとえばVent、Pfu、T.種JDF‐3、Taqなどの他のポリメラーゼの変異バージョンについて、ヌクレオチド配列を容易に導き出すことができる。次いで、当技術分野で公知の標準的な分子生物学的技術を用いて、必要なヌクレオチド配列を有する核酸分子を構築してもよい。
【0086】
本明細書に提示される実施の形態によれば、定義された核酸は、同一の核酸だけでなく、特に、保存的アミノ酸置換における縮重コードによる同義コドン(同じアミノ酸残基を指定する異なるコドン)をもたらす場合の置換を含む任意のマイナーな塩基変異も含む。「核酸配列」という用語は、塩基変異に関して与えられた任意の一本鎖配列に対する相補配列も含む。
【0087】
本明細書に記載の核酸分子は、有利には、適切な宿主においてそれからコードされるポリメラーゼタンパク質を発現する、適切な発現ベクター中に含まれてもよい。その後の該細胞の形質転換およびその後の形質転換細胞の選択のための適切な発現ベクターへのクローン化DNAの組み込みは、Sambrookら、Molecular cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1989年)(その全体が参照により組み込まれる)に示されているように、当業者に周知である。
【0088】
このような発現ベクターは、該DNA断片の発現をもたらすことが可能なプロモーター領域などの調節配列に作動可能に連結された、本明細書に提示される実施の形態による核酸を有するベクターを含む。「作動可能に連結された」という用語は、記載された成分が、意図された方法で機能することを可能にする関係にある並置を指す。このようなベクターは、本明細書に提示される実施の形態によるタンパク質の発現を提供するために、適切な宿主細胞に形質転換されてもよい。
【0089】
核酸分子は、成熟タンパク質をコードしてもよいし、宿主細胞によって切断されて成熟タンパク質を形成するプレタンパク質のリーダー配列をコードする配列を含むプロ配列を有するタンパク質をコードしてもよい。ベクターは、たとえば、複製起点と、任意で該ヌクレオチドの発現のためのプロモーターと、任意でプロモーターのレギュレーターとを備えたプラスミド、ウイルスまたはファージベクターであってもよい。ベクターは、たとえば抗生物質耐性遺伝子などの1つまたは複数の選択マーカーを含んでもよい。
【0090】
発現に必要な調節因子は、RNAポリメラーゼと結合し、適切なレベルの転写開始を指示するプロモーター配列と、リボソーム結合のための翻訳開始配列とを含む。たとえば、細菌発現ベクターは、lacプロモーターなどのプロモーターと、翻訳開始のためのシャイン・ダルガノ配列および開始コドンAUGとを含んでいてもよい。同様に、真核発現ベクターは、RNAポリメラーゼIIの異種または相同プロモーター、下流のポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボソームの解離のための終止コドンを含んでいてもよい。このようなベクターは、商業的に入手してもよく、また当分野で周知の方法で、記載された配列から組み立ててもよい。
【0091】
高等真核生物によるポリメラーゼをコードするDNAの転写は、ベクターにエンハンサー配列を含めることによって最適化してもよい。エンハンサーは、プロモーターに作用して転写レベルを増加させるDNAのシス作用性エレメントである。ベクターは、一般に、選択マーカーに加えて複製起点も含む。
【0092】
本開示に照らして、本開示に従って様々な方法を実施することが可能である。さらに、様々な成分、材料、構造およびパラメータは、例として、かつ例としてのみ含まれ、いかなる限定的な意味においても含まれない。本開示に照らして、本開示は、他の用途において実施することができ、これらの用途を実施するための成分、材料、構造および装置は、添付の特許請求の範囲内に留まりながら決定することができる。
【0093】
<実施例>
実施例の一般的方法および条件
本実施例で使用される実験手順および条件を以下に一般的に述べる。
【0094】
A.変異体ポリメラーゼの作製および産生
このセクションでは、変異体遺伝子配列を作製して本変異体ポリメラーゼを作製し、変異体遺伝子を発現させて、以下の実施例で用いられる様々な変異体ポリメラーゼを得る方法について一般的に説明する。変異体DNAポリメラーゼは、Agilent社製 QuikChange Lightning Multi Site‐Directed Mutagenesis Kitの試薬およびプロトコルを用いて製造した。変異体プラスミドを配列決定し、次いで発現宿主BL21‐Gold(DE3)(Agilent社)に形質転換した。細胞を指数期(OD600~0.4)まで増殖させ、1mM IPTGで誘導した。非特許文献9に記載されているように、熱処理した細菌溶解物および精製されたPfu変異体を調製した。
【0095】
B.変異体ポリメラーゼを用いた配列決定および配列決定メトリクス
このセクションでは、一般に、どのように本変異体ポリメラーゼを合成による配列決定に使用し、どのように配列決定における本変異体ポリメラーゼの性能を測定したかについて説明する。配列決定は、本質的に、非特許文献10に説明されているように,ブレッドボード機器を使用して行われた。
【0096】
<実施例1>
本実施例では、3’‐OH非ブロックターミネーターを用いる配列決定能力を改善するために、配列番号12のDNAポリメラーゼ(Therminator)に変異を導入した。サーモコッカス種9°N DNAポリメラーゼに対するこのような変異は、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17に開示されている。以下の表は、Lightning Terminatorを用いた配列決定メトリクスの要約である。
【0097】
【0098】
本実施例およびそれに続く実施例で用いる場合、「リード+ラグ(Lead+Lag)」とは、合成による配列決定技術における、現在の塩基シグナルに対して、次の塩基シグナルを読み取ること(リード(lead))または前の塩基シグナルを読み取ること(ラグ(lag))によって生じるデフェージング誤差(dephasing error)を指す。このような誤差は、ポリメラーゼによる可逆的ターミネーターの不完全なインコーポレーションによって生じる可能性がある。ポリメラーゼに対するこれらの変異は、Lightning Terminator組み込みに関して、Therminatorに対する平均読み取り長(ARL)の増加が見られないという点で、Therminatorポリメラーゼによる配列決定性能の改善に効果がないことが判明した。これらの結果は、塩基修飾された可逆的ターミネーターの代替ポリメラーゼおよび/または変異の同定における困難さと予測不可能性を示している。
【0099】
<実施例2>
本実施例では、Therminatorに存在する特定の変異(D141A/E143A/A485L)を導入して変異体ポリメラーゼを作製した。この3つの変異は、JDF3(サーモコッカス種JDF3)およびPfu(Pyrococcus furiosus)のDNAポリメラーゼの等価位置に導入した。これらの新しい変異体ポリメラーゼは、次に、上記のようにLightning Terminatorを用いる配列決定においてそれらの性能を評価した。表2は、配列決定メトリクスに対する自然変異の影響を示す結果の要約である。得られたARLはTherminatorと比較して20bpを超えて低く、異なるポリメラーゼ間の変位が、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターを用いる配列決定に大きな影響を与える可能性があることを示している。
【0100】
さらに、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターを用いる配列決定に影響する9°N、JDF3、およびPfu DNAポリメラーゼ間のアミノ酸の違いを同定するために、一連のキメラポリメラーゼおよび単一点変異体を構築した。以下の表は、これらのポリメラーゼに加えた変異と、Lightning Terminatorを用いた配列決定で得られた配列決定メトリクスを示す。配列決定における変異体ポリメラーゼの評価結果も
図2に示す。
【0101】
【0102】
これら3つのポリメラーゼの494および546(Pfuのナンバリング)における自然変異は、配列決定メトリクスに大きな影響を有することが判明した。フェニルアラニン(F;9°NおよびPfuに天然に存在する)をPfuの494と等価な位置にJDF3に導入すると、ARLは17bp改善した(JDF3 A485L/Y493F;実験番号2‐3)。ヒスチジン(H;9°NおよびJDF3に天然に存在する)をPfuのコドン546に導入すると、さらに大きな改善が示された(実験番号2‐5)。実際、Pfu A486L/Y546H(実験番号2‐5)を用いた配列決定メトリクスは、Therminatorとほぼ同じであったが、Pfu A486L/Y546Hは、Therminatorと比較して、リーディング値(leading value)が低く、ラギング値(lagging value)が高かった(下表に示す)。
【0103】
<実施例3>
本実施例では、古細菌ポリメラーゼについて同定された様々な変異を加えることによって、Pfuポリメラーゼから変異体DNAポリメラーゼを誘導した。変異は、研究文献および特許文献に記載されている変異から選択した(以下に示す)。変異は、変異A486LおよびY546Hも持つPfuポリメラーゼに導入した。変異は、様々なポリメラーゼについてそのような変異が議論されている文献とともに以下の表に示す。
【0104】
【0105】
変異体ポリメラーゼは、上記のように配列決定に用いた。Pfuポリメラーゼに付加されたこれらの変異のうちで、K477Wのみが配列メトリクスに大きな影響を与え、特に全長リードの割合が高くなった(実験番号2‐6)。この変異体(Pfu D141A/E143A/K477W/A486L/Y546H)には、Pfu10という任意の名称が付けられた。Pfu10のアミノ酸配列を配列番号2に示す。本実施例は、Pfu10が、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターを用いる合成による配列決定に使用するための改善された配列決定酵素であることを示している。
【0106】
【0107】
本実施例および他の実施例で用いる場合、「FracQ30」は、全配列決定リード中のQスコア30(Q30)を有する配列決定塩基リードの割合を指す。Therminatorの等価な変異は、Therminatorが、Pfu10の位置486、494、および546と等価な位置にそれぞれL、F、およびHを含むにもかかわらず、Lightning Terminatorによる配列決定(実験番号1‐8;K476W参照)を改善することができなかったため、K477WがPfuを改善するという発見は予想外であった。これらの結果は、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターでは、K477Wの利点は、TherminatorよりもPfuに近縁な配列決定ポリメラーゼによって実現される可能性があることを示唆している。BLASTPアラインメントは、Pfu10と9°N DNAポリメラーゼ(Therminatorの親)とのアミノ酸配列同一性パーセントは79.9%であることを示している。
【0108】
<実施例4>
本実施例では、許容される同一性の減少の程度を調べ、L486、F494、H546、およびW477を含む他の変異体Pfuポリメラーゼを同定するために、複数部位変異誘発によってPfu10に、またはドメイン置換によってPfu A486L/Y546Hに、様々な変異を導入した。配列番号3は、古細菌DNAポリメラーゼに現れる15の保存的変異に加え、潜在的翻訳開始部位を除去するM129A置換を有するPfu10変異株(「PFU10‐N12」と呼ぶ)のアミノ酸配列を示す(Pfu10に対する97.9%の同一性)。Pfu10およびPfu10‐N12は、上記のように、Lightning Terminatorを用いた配列決定における性能について評価された。
【0109】
以下の表は、Pfu10変異株の配列決定性能を示す結果の要約である。この変異株(Pfu10‐N12)は、Lightning Terminatorを用いた配列決定において、Pfu10よりわずかによいか、わずかによいとまではいかなくとも同等の性能を示した。
【0110】
【0111】
さらに、任意のドメイン置換を使用して、所望の活性レベルを維持しながら多様性を高めることができる。配列決定メトリクスに対するドメイン置換の影響を
図2に示す。たとえば、Pfu L486L/Y546Hのアミノ酸セグメント1~99、100~199、400~449、および500~599をTherminatorの対応するポリペプチド配列で置換した場合、配列決定メトリクスに対する影響は最小限であり、これは、Pfu10が、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターを組み込む能力を損なうことなく、少なくとも16~29のさらなる変異(96.3~97.9%の変位)を受け入れることができることを示している。
【0112】
<実施例5>
本実施例では、Pfu D141A/E143Aの位置486および494における飽和変異誘発を用いてさらなる変異体ポリメラーゼを作製した。Lightning Terminator‐A(LTA)を用いるプレートベースの一塩基伸長アッセイで細菌抽出物をスクリーニングした。最も高い蛍光シグナルを発する陽性クローンを配列決定し、アミノ酸置換を同定した。
【0113】
図3および
図4に示すように、A486およびF494は非常に変異しやすく、A486F、A486Y、A486N、A486R、A486H、F494C、F494I、F494N、およびF494Tを含む複数の置換が、Lightning Terminatorの組み込みを改善した。スクリーニング結果に基づいて選択された溶解物が配列決定に供され、選択に基づいてアミノ酸の同定が行なわれた。
【0114】
図3は、Pfuポリメラーゼの位置486の飽和を示す。縮重NDTコドンプライマーとともにQuikChangeキットを用いてPfu A486変異体のライブラリーを作成した。NDTコドンは、第1位置にA、C、G、またはT、第2位置にA、G、またはT、第3位置にTを含み、それによってプライマーに変動性を導入する。可能性のある12個のNDTコドンは、12個のアミノ酸(Phe、Leu、Ile、Val、Tyr、His、Asn、Asp、Cys、Arg、Ser、およびGly)を表す。無作為に選択された32のコロニーから加熱清澄抽出物を調製した。抽出物は、固定化dsDNA基質を用いたマイクロタイタープレートアッセイでLTAの組み込みについてスクリーニングした。「A」変異体の蛍光シグナルは、野生型Pfu(コドン486の野生型アラニン)のバックグラウンドに相当する。
【0115】
図4Aおよび
図4Bは、Pfuポリメラーゼの位置494の飽和を示す。2プールの縮重コドンプライマー(A、B)とともにQuikChangeキットを用いて、Pfu F494変異体のライブラリーを作成した。無作為に選択された32のコロニーから加熱清澄抽出物を調製した。抽出物は、固定化DNA基質を用いたマイクロタイタープレートアッセイでLTAの組み込みについてスクリーニングした。「F」変異体の蛍光シグナルは、野生型Pfu(位置494の野生型フェニルアラニン)のバックグラウンドに相当する。
【0116】
<実施例6>
本実施例では、さらなる変異体ポリメラーゼをPfuポリメラーゼから誘導した。変異体を作製するために、QuikChange Lightning Mutagenesisキット、および「NDT」コドンを含むオリゴヌクレオチドを用いてPfu pol B遺伝子の87個のコドンを飽和させ、等しい頻度でR、N、D、C、G、H、I、L、F、S、Y、およびV置換を作製した。場合によっては、NDTライブラリーから欠落した変異体を、残りの変異(A、T、K、Q、E、P、K、W)をコードする変異原性オリゴの等モル混合物を用いて、別のQuikChange反応で調製した。各QuikChangeライブラリー(生成した形質転換細胞がより少なかったT267、Y403、Y410、I475、G499およびK675ライブラリー以外)から32個のクローンを無作為に選択した。細菌溶解物を調製し、固定化プライマー‐鋳型を用いたプレートベースアッセイを用いてLTAおよびLTCの組み込みについてスクリーニングした。限られた数の変異体を、LTGおよびLTUの利用についてもスクリーニングした(同様な傾向;データは示さず)。洗浄し、UV切断(色素の消光効果を最小限に抑えるため)した後、プレートを読み取り、蛍光シグナルをPfu対照と比較した。以下の表は、対照となった4つの変異体Pfuポリメラーゼを同定したものであり、Pfu10(上記)とともに、Pfu5、Pfu1、およびPfu2という任意の名称が与えられた。
【0117】
【0118】
スクリーニング結果に基づいて選択された溶解物を配列決定に供し、選択に基づいてアミノ酸同定を行った。対照抽出物は天然ヌクレオチドで同様な活性(U/ul)を示すが(
図5)、A486Lを含む変異体ポリメラーゼ(Pfu1、Pfu2、Pfu10)のみがLightning Terminatorを利用することができた(
図6)。Y546H単独では、Lightning Terminatorの組み込みができない(
図7A~
図7B)。しかしながら、A486LとY546Hとの組み合わせ(Pfu2およびPfu10における)は、LTCの組み込みを最大化することが見出され(
図6)、これによって、チロシンをヒスチジンに置換することで克服できる、LTCとY546との間の好ましくない相互作用が示唆された。実施例3に示すように、K477Wは、全長リードの割合を増加させることによって配列決定に役立つ。しかしながら、(Pfu10における)K477Wは、LTAおよびLTUの組み込みに悪影響があるため、あるいは結合されたフルオロフォアのトリプトファン(W)消光に起因する最終的な蛍光に対する悪影響があるため、この機構は組み込み効率とは無関係とみられる。
【0119】
以下のコドンが飽和の対象となった:266、267、268、269、270、329、330、332、333、336、399、400、403、404、407、408、409、410、411、450、451、452、453、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、475、476、477、478、479、480、481、482、483、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、515、522、545、546、577、579、580、581、582、584、591、595、603、606、607、608、612、613、614、664、665、666、668、669、674、675、676。スクリーニングした87の位置のうち16を、LTAおよび/またはLTCの組み込みにおいて有意な(野生型Pfuの4倍を超える)改善をもたらすように変異させることができた。以下の表は、LTAおよびLTCの組み込みを改善する変異を示す。4つの位置(L409、A486、F494、Y497)は高度に置換可能であり、特定のアミノ酸置換(L409H、L409F、A486Y、A486R、A486H、A486N、F494C、F494N、F494I、F494T)は、Pfu A486L対照(Pfu10)と比較して高い組み込みシグナルを生じる。
【0120】
【0121】
N492の変位(N492I/V/P)は、LTC組み込みのみに利点があることが観察された。さらに、L409(L409D/C/V/H/F)、A486(A486Y/R/F/I/H/N)、およびY497(Y497H/I)における特定の置換は、LTAよりもLTCの組み込みに大きな影響を与えるとみられる。これらの結果は、Y546およびN492(ヌクレオチドの三リン酸部分と水素結合を形成する)における置換が、結合ポケットにおけるLTCの向きを、そのユニークな塩基、リンカー、および/または色素部分をよりよく収容するように変化させることを示唆する。
【0122】
図8は、9°N DNAポリメラーゼ(5OMV)構造における有益な変異の位置を、iCn3Dウェブベースの構造ビューアを使用して可視化して示す。LTCのみに利点をもたらす変異は、N492およびY546に位置する。LTAよりもLTCを比較的多く組み込む変異は、L409、A486およびY497に位置する。
【0123】
<実施例7>
本実施例は、鋳型非依存性酵素的オリゴヌクレオチド合成における本変異体Pfuポリメラーゼの実施の形態の性能を評価する。本実施例では、ポリメラーゼTdTとPfu26(Pfu10+L409Y)(配列番号4)とPfu48(A486Lの代わりにA486Rを有するPfu26)(配列番号5)とを、鋳型非依存性DNA合成アッセイで比較した。このアッセイは、dATP(
図1D)、LTA‐1(
図1E)、またはLTA‐2(
図1F)を用いて実施した。LTA‐1およびLTA‐2は、分子に結合された任意の色素または他のレポーターを含んでいなかった。
【0124】
鋳型非依存性DNA合成反応は、7.5UのTdT(Promega社)、または180nMの(プライマーの3倍を超える)Pfu26(D141A/E143A/A486L/Y546H/K477W/L409Y)またはPfu48(D141A/E143A/A486R/Y546H/K477W/L409Y)を用いた。CoCl2を含む1倍のTdT緩衝液(Promega社)または1倍のThermoPol緩衝液(NEB社)を含む2連の反応物中の2μM(TdT)または60nM(Pfu)T7 FORプライマー(6’Fam TAATACGACTCACTATAGGG)(配列番号6)に様々な濃度のdATPを添加した。反応物を37℃(TdT)または60℃(Pfu)で30分インキュベートし、次いで加熱(TdT;70℃10分)またはEDTA(500uM EDTA 1ul)で不活化した。反応生成物は、Stratalinker(15ワット電球、365nM、10分)を用いてUV照射した。反応物を水で希釈し(TdT、1:333;Pfu、1:10)、1μl(TdT)または0.5μl(Pfu)のアリコートをHiDI/LIZ 120 Size Standardで10μlにした。生成物を95℃で5分加熱し、氷で2分冷やし、次いでABI 3500キャピラリー電気泳動システム(50cMキャピラリー、フィルターセット#5、アッセイ=GE5 LIZ120)で分析した。
【0125】
ターミナルトランスフェラーゼ活性は、鋳型非依存性dATP付加の数によって測定した。結果は、TdTについて
図9A、Pfu26について
図9B、Pfu48について
図9Cに示す。ターミナルトランスフェラーゼ活性は、dATPまたはプライマー濃度の関数としてそれぞれ増加または減少することが見出された。これらの結果は、L409Yを欠くPfu変異体(たとえばPfu10)が非鋳型dA付加を行うことができないことから、L409Y変異はターミナルトランスフェラーゼ活性を与えることを示している(以下の
図10C参照)。
【0126】
<実施例8>
本実施例では、実施例7に記載されている条件を用い、α‐チオ三リン酸のRp+Spラセミ混合物としてLTA‐2(
図1F)を用いてプライマー伸長法を行った。
図10Aは、4つの異なる濃度のLTA‐2(5μM、10μM、50μM、および100μM)での結果を示す。
図9Aと
図10Aとの比較は、最も高い100μMの濃度でも、TdTはdATPほど効率的にLTA‐2ターミネーターを組み込まなかったことを示している。
【0127】
さらなる実験では、2つの一本鎖オリゴヌクレオチドの等モル混合物(各3uM)を用いて、一塩基伸長反応(10ul)を行った:
CE2:6Fam‐TAATACGACTCACTATAGGGCAGGAAACAGCTATGACCAGGGGATCAGC(配列番号7)
T7:6Fam‐TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号8)
どちらもFamで標識されていたが、キャピラリー電気泳動によってその長さで区別できた。プライマー伸長反応は、18nMのポリメラーゼ濃度で、以下の3つのPfu変異体を用いて行った:
Pfu10:D141A/E143A/A486L/Y546H/K477W変異を有するPfuポリメラーゼ(配列番号2)
Pfu26:D141A/E143A/A486L/Y546H/K477W/L409Y変異を有するPfuポリメラーゼ(配列番号4)
Pfu48:D141A/E143A/A486R/Y546H/K477W/L409Y変異を有するPfuポリメラーゼ(配列番号5)
伸長反応はまた、Rp+Spラセミ混合物中の個々のαS修飾LT(すなわちLTA‐2、LTU‐2、LTG‐2およびLTC‐2)を最終濃度5uMで用いた。LTU‐2、LTG‐2およびLTC‐2は、すべて、アデニンの代わりにウラシル、グアニンおよびシトシンを持つ、LTA‐2と同様なC7またはC5‐ヒドロキシメチル‐α‐tert‐ブチル‐2‐ニトロベンジル修飾可逆的ターミネーターである。これらの実験では、可逆的ターミネーターは色素を含まなかった。反応物をインキュベートし、停止し、UV処理し、実施例7に説明されているように分析した。
【0128】
図10Bは、ポリメラーゼを含まない対照伸長反応をセットアップした結果を示す。
図10Cは、Pfu10ポリメラーゼを用いた場合の伸長反応の結果を示し、
図10Dおよび10Eは、それぞれPfu26ポリメラーゼおよびPfu48ポリメラーゼを用いた結果を示す。
図10Aと、
図10Cから
図10Eまでの図との比較では、L409Yを含むPfu変異体(Pfu26、Pfu48)は、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターLTA‐2、LTU‐2、LTG‐2およびLTC‐2の組み込みにおいて、子牛胸腺ターミナルトランスフェラーゼ(TdT)より優れていることを示している。さらに、予備データは、プライマー伸長効率が、プライマー配列(CE2>P7)および塩基(LTA、LTU>LTG>LTC)の影響を受けることを示している。
【0129】
Pfu26は、特定のオリゴヌクレオチドを直接に末端標識するために使用することもでき(たとえば、特許文献18に開示されているようなin situハイブリダイゼーション用途のため)、これにより5’オーバーハングを有する相補的鋳型の使用(およびその後の除去)が回避される。
【0130】
<実施例9>
本実施例では、一本鎖プライミング鎖の3’末端への3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーター(
図1Eに示すLTA‐1または
図1Fに示すLTA‐2)の付加を試験した。2uMまたは80nMのプライミング鎖および様々な濃度(100/50/10/5/1μM)の可逆的ターミネーターを用いて伸長反応を行った。Pfu26ポリメラーゼの性能をTdTポリメラーゼと比較した。
【0131】
プライマー伸長法は、7.5Uの子牛胸腺TdT、1倍のPromega社のTdT緩衝液(CoCl
2を含む)、様々な濃度のLTA‐1(100uM、50uM、10uM、5uM、または1uM)、および2uM(
図11A~
図11C)または80nM(
図11D~
図11F)のいずれかのプライミング鎖(Fam標識T7 Fプライマー(6Fam TAATACGACTCACTATAGGG)、配列番号8)を含む25ulの2連の反応物中で行った。対照は、ポリメラーゼを加えずに行った。プライマー伸長法は、Pfu26変異体ポリメラーゼ、60nMのプライミング鎖、および様々な濃度(10μMまたは5μMまたは1μM)のLTA‐1またはLTA‐2を含む反応物中でも行った。
【0132】
反応物を37℃で30分インキュベートし、次いで70℃で10分、加熱死滅させた。反応生成物を半分に分け、2分の1を、実施例7に説明されているようにUVで処理した。次いで反応物を水で1:333(2uMのプライマー)または1:13(80nMのプライマー)に希釈し、0.5ul分を、実施例7で示した条件を用いてキャピラリー電気泳動で分析した。
【0133】
【0134】
TiEOSに「無傷の」LTを使用する可能性は、「チューバック(chewback)活性」を除去して切断/終結効率をそれぞれ改善するためにNGSに利用される2‐ニトロベンジル部分のα‐チオ三リン酸およびα‐tert‐ブチル修飾を欠く原型可逆的ターミネーターであるLTA‐1を用いて実証された。
図11A~11Cに示すように、TdTは、より高度に置換されたLTA‐2(
図10A)よりもさらに効率的にLTA‐1を組み込む。しかしながら、終結効率は悪く、1回の合成サイクルで3塩基(2uMのプライマーで)またはそれ以上(80nMのプライマーで)が組み込まれる。
【0135】
TdTと比較して、Pfu26は、1、5、および10uMの濃度で付加された塩基の数に基づいて、LTA‐1の組み込みは効率がよくないとみられる(
図11D~
図11F 対
図12A)。しかしながら、LTA‐2を組み込むことができなかったTdTとは異なり、Pfu26は、1回のインキュベーションステップで効率的な組み込みおよび終結を行った(
図12B参照)。この結果は、天然および非同種核酸ポリマーの、酵素を介した合成をそれぞれ実現するために、専用のPfu変異体と、「無傷の」および修飾された可逆的ターミネーターの両方とを組み合わせて用いることの実現可能性を示している。
【0136】
<実施例10>
本実施例では、Pfu26変異体ポリメラーゼを用いて、一本鎖プライミング鎖の3’末端への3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーター(LTA‐2、
図1Fに示す)の多サイクル付加を試験した。7‐デアザ‐C7ヒドロキシメチル基に結合したα‐tert‐ブチル置換2‐ニトロベンジル終端基を有する修飾LTA‐2を有するPfu26を用いて、実施例7に説明されているように一塩基伸長アッセイを行った。修飾LTA‐2は任意でαS三リン酸修飾を含み、HPLC精製してSp異性体を単離した(
図13Aおよび
図13C)。各組み込みサイクル(3サイクル‐
図13A&13B;6サイクル‐
図13C)において1ulを取り出し、ABI 3500分析用に氷上で保存した。各サイクルにおいて、残りの反応容量をMyOne T1ビオチン化ビーズを用いて以下のように精製した(3サイクル実験の場合)。ビーズ127.5ulを洗浄液1mlで2回洗浄し、洗浄液で元の容量に再懸濁した。スペーサーを含むビオチン化アンチセンスT7(CCC TAT AGT GAG TCG TAT)プライマー(5’‐CCC TAT AGT GAG TCG TAT ACG GAG CAT A‐ビオチン)を、最終濃度180nMで添加した。ビーズとキャプチャーオリゴを室温、300rpmで30分混合し、洗浄液500ulで2回洗浄し、洗浄液150ulに再懸濁した。ビーズ/キャプチャーオリゴミックス10ulを各組み込み反応物9ul(2~6サイクル)に添加し、室温、300rpmで30分インキュベートした。次いで、このミックスを室温で洗浄液500ulで2回洗浄し、Thermopol緩衝液10ulに再懸濁した。Fam‐T7オリゴを外すために、反応物を95℃で5分インキュベートし、速やかに磁石を適用した後、次のラウンドの組み込みのために各溶出液8ulを取り出した。(2~6サイクル)精製後、新鮮な酵素/LTAミックス2ulを添加し、プライマー伸長法を行い、上記のように分析した。
【0137】
その結果(
図13A~
図13Cに示す)、7‐デアザ‐7‐ヒドロキシメチル‐α‐tert‐ブチル‐2‐ニトロベンジル修飾LTAと組み合わせたPfu26は、2~3ラウンドのTiEOS後に、100%の効率で個々の生成物を生成しないことが示された。αS修飾(
図13B)を除去しても、または7‐デアザ‐7‐ヒドロキシメチル‐α‐tert‐ブチル‐2‐ニトロベンジル修飾LTAのキラル的に純粋なαS(Sp異性体)(
図13A、13C)を組み込んでも、二次生成物の問題は克服されなかった。しかしながら、この結果は、長い天然および修飾核ポリマーの酵素的合成を実現するために、本変異体ポリメラーゼの実施の形態と組み合わせて使用することができる「無傷の」非異性体可逆的ターミネーターを設計するための概念実証を示している。
【0138】
<例示的な実施の形態>
様々な実施の形態が記載されているが、本開示の教示は、記載された特定の実施の形態に限定されるものではなく、したがって、もちろん変化できることが理解されるべきである。以下、「実施形態」と称して番号を付す。
【0139】
実施形態1. 3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターと変異体ポリメラーゼとを含む組成物であって、変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む、組成物。
【0140】
実施形態2. 変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置にA486X変異を含み、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸である、実施形態1に記載の組成物。
【0141】
実施形態3. A486X変異がA486F、A486Y、A486N、A486R、またはA486Hである、実施形態2に記載の組成物。
【0142】
実施形態4. 変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置にY546H変異をさらに含む、実施形態1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【0143】
実施形態5. 変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置477と機能的に等価な位置にK477W変異をさらに含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【0144】
実施形態6. 変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置F494と機能的に等価な位置に変異をさらに含む、実施形態1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【0145】
実施形態7. F494変異がF494C、F494I、F494N、またはF494Tである、実施形態6に記載の組成物。
【0146】
実施形態8. 変異体ポリメラーゼが、パイロコッカスポリメラーゼの誘導体である、前述の実施形態のいずれか1項に記載の組成物。
【0147】
実施形態9. 変異体ポリメラーゼが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施形態8に記載の組成物。
【0148】
実施形態10. 変異体ポリメラーゼが、サーモコッカスポリメラーゼの誘導体である、実施形態1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【0149】
実施形態11. 核酸を含むプライミング鎖にヌクレオチドを組み込む方法であって、方法は、
組み込み反応に十分な条件下でプライミング鎖とヌクレオチドおよび変異体ポリメラーゼとを接触させることを含み、
変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む、方法。
【0150】
実施形態12. ヌクレオチドが3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターである、実施形態11に記載の方法。
【0151】
実施形態13. ポリヌクレオチドを配列決定する方法であって、
(a)鋳型とプライミング鎖とを含む二本鎖を形成し、鋳型が、配列決定される標的核酸と、プライミング鎖の少なくとも一部に相補的なプライマー結合部位と、を含む、形成することと、
(b)プライミング鎖と、可逆的ターミネーターヌクレオチドおよび変異体ポリメラーゼとを組み合わせ、変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、PfuポリメラーゼのK477、A486およびY546のアミノ酸位置と機能的に等価な位置におけるアミノ酸変異と、を含む、組み合わせることと、
(c)プライミング鎖の3’末端に鋳型依存性反応で可逆的ターミネーターを組み込むことと、
(d)組み込まれた可逆的ターミネーターヌクレオチドを同定し、それによって鋳型の配列を決定する、同定することと、
を含む、方法。
【0152】
実施形態14. 方法が、ステップ(c)および(d)を少なくとも80回繰り返すことをさらに含む、実施形態13に記載の方法。
【0153】
実施形態15. プライミング鎖、3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターと変異体ポリメラーゼとを含む組成物であって、
変異体ポリメラーゼが、配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、
変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、L409、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497およびE581と機能的に等価な位置に1つまたは複数の変異をさらに含み、
変異体ポリメラーゼが、配列番号11のDNAポリメラーゼの組み込み活性より少なくとも4倍高い3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターの組み込み活性を有する、
組成物。
【0154】
実施形態16. アミノ酸配列が、配列番号1と少なくとも85%同一である、実施形態15に記載の組成物。
【0155】
実施形態17. アミノ酸配列が、配列番号1と少なくとも90%同一である、実施形態15に記載の組成物。
【0156】
実施形態18. アミノ酸配列が、配列番号1と少なくとも95%同一である、実施形態15に記載の組成物。
【0157】
実施形態19. 変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置266、267、268、269、329、336、399、400、403、404、407、408、410、411、450、452、455、456、458、459、460、461、462、463、464、465、466、475、477、478、479、480、481、482、483、485、487、488、491、493、495、496、498、499、500、515、522、545、546、577、579、580、582、584、591、595、603、606、607、608、612、613、614、664、665、666、668、669、674、675、および676と機能的に等価な任意の位置に変異を含まない、実施形態15~18のいずれか1項に記載の組成物。
【0158】
実施形態20. 変異体ポリメラーゼがパイロコッカスポリメラーゼの誘導体である、実施形態15~19のいずれか1項に記載の組成物。
【0159】
実施形態21. 変異体ポリメラーゼがサーモコッカスポリメラーゼの誘導体である、実施形態15~19のいずれか1項に記載の組成物。
【0160】
実施形態22. 組成物が、プライミング鎖の少なくとも一部に相補的なプライマー結合部位を含む鋳型をさらに含む、実施形態15~21のいずれか1項に記載の組成物。
【0161】
実施形態23. 組成物が、546H変位および486X変異をさらに含む、実施形態15~22のいずれか1項に記載の組成物。
【0162】
実施形態24. 組成物が、プライミング鎖に相補的な鋳型を含まない、実施形態15~23のいずれか1項に記載の組成物。
【0163】
実施形態25. 3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターをプライミング鎖に組み込む方法であって、方法が、
組み込み反応に十分な条件下でプライミング鎖と3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターおよび変異体ポリメラーゼとを接触させることであって、変異体ポリメラーゼが、配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列と、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、L409、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497およびE581と機能的に等価な位置における1つまたは複数の変異とを含む、接触させることと、
プライミング鎖の3’末端に3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターを組み込むことと、
を含む、方法。
【0164】
実施形態26. 3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターが2‐ニトロベンジル修飾ヌクレオチドである、実施形態25に記載の方法。
【0165】
実施形態27. 3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターが、C7‐またはC5‐ヒドロキシメチル‐α‐tert‐ブチル‐2‐ニトロベンジル修飾ヌクレオチドおよびそのα‐チオ誘導体である、実施形態25に記載の方法。
【0166】
実施形態28. 変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置492と機能的に等価な位置に少なくとも1つのアミノ酸変異を含み、方法が、ターミネーターを選択的に組み込むことを含む、実施形態25~27のいずれか1項に記載の方法。
【0167】
実施形態29. 変異がN492I、N492V、またはN492Pから選択される、実施形態28に記載の方法。
【0168】
実施形態30. シトシン塩基を含む3’‐OH非ブロック可逆的ターミネーターが、変異体ポリメラーゼによって選択的に組み込まれる、実施形態28に記載の方法。
【0169】
実施形態31. プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターと、配列番号2と少なくとも96%同一である変異体ポリメラーゼとを含む組成物であって、
Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるY546H変異と、
Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409HまたはL409F変異と、
Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、
を含む、組成物。
【0170】
実施形態32. 組成物が、プライミング鎖に相補的な鋳型を含まない、実施形態31に記載の組成物。
【0171】
実施形態33. 変異体ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497およびE581と機能的に等価な位置における1つまたは複数の変異をさらに含む、実施形態31または32に記載の組成物。
【0172】
実施形態34. 変異体ポリメラーゼが、配列番号4または配列番号5のアミノ酸配列を含む、実施形態31または32に記載の組成物。
【0173】
実施形態35. 変異体ポリメラーゼが、配列番号11のDNAポリメラーゼの組み込み活性より少なくとも2倍高い組み込み活性を有する、実施形態31~34のいずれか1項に記載の組成物。
【0174】
実施形態36. 変異体ポリメラーゼがパイロコッカスポリメラーゼの誘導体である、実施形態31~35のいずれか1項に記載の組成物。
【0175】
実施形態37. 変異体ポリメラーゼが配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施形態31~36のいずれか1項に記載の組成物。
【0176】
実施形態38. 変異体ポリメラーゼがサーモコッカスポリメラーゼの誘導体である、実施形態31~35のいずれか1項に記載の組成物。
【0177】
実施形態39. 鋳型非依存性反応でプライミング鎖に単一ヌクレオチドを組み込むための方法であって、方法が、
プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターおよび変異体ポリメラーゼとを組み合わせることであって、変異体ポリメラーゼが、配列番号2と少なくとも96%同一であり、
Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるY546H変異と、
Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409HまたはL409F変異と、
Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、
を含む、組み合わせることを含み、
ターミネーターの組み込みが、配列番号11の変異体DNAポリメラーゼより少なくとも2倍高い、方法。
【0178】
実施形態40. 鋳型非依存性オリゴヌクレオチドの合成方法であって、
プライミング鎖と、3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターと、変異体DNAポリメラーゼと、を組み合わせることであって、変異体DNAポリメラーゼが、
配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列と、
Pfuポリメラーゼの位置546と機能的に等価な位置におけるヒスチジンへのY546H変異と、
Pfuポリメラーゼの位置409と機能的に等価な位置におけるL409Y、L409H、またはL409F変異と、
Pfuポリメラーゼの位置486と機能的に等価な位置におけるA486X変異であって、Xがアラニン以外の任意のアミノ酸であるA486X変異と、
を含む、組み合わせることと、
3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターをプライミング鎖に組み込むことと、
を含む、方法。
【0179】
実施形態41. ポリメラーゼが、Pfuポリメラーゼの位置L270、E330、Q332、L333、P451、L453、L457、E476、L489、L490、N492、F494、Y497およびE581と機能的に等価な位置における1つまたは複数の変異をさらに含む、実施形態39または40に記載の方法。
【0180】
実施形態42. 3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターが2‐ニトロベンジル修飾ヌクレオチドである、実施形態39~41のいずれか1項に記載の方法。
【0181】
実施形態43. 3’‐OH非修飾可逆的ターミネーターがC7‐またはC5‐ヒドロキシメチル‐α‐tert‐ブチル‐2‐ニトロベンジル修飾ヌクレオチドおよびそのα‐チオ誘導体である、実施形態39~41のいずれか1項に記載の方法。
【配列表】
【国際調査報告】