(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】水素及び二酸化炭素の電気化学的生成のための高速流体速度セル設計
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240718BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240718BHJP
C25B 1/01 20210101ALI20240718BHJP
C25B 15/031 20210101ALI20240718BHJP
C25B 15/033 20210101ALI20240718BHJP
C25B 9/21 20210101ALI20240718BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20240718BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20240718BHJP
C25B 11/077 20210101ALI20240718BHJP
C25B 11/075 20210101ALI20240718BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B1/01 Z
C25B15/031
C25B15/033
C25B9/21
C25B11/052
C25B11/081
C25B11/077
C25B11/075
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577244
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 US2022028750
(87)【国際公開番号】W WO2022240974
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】リーシアン リャン
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ピー デュークス
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン サッターフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ザッカー カシム フェティグ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA30
4K011AA31
4K011AA33
4K011AA34
4K011AA49
4K011DA01
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021BA03
4K021BB02
4K021BB05
4K021CA10
4K021DB06
4K021DB31
4K021DC03
(57)【要約】
炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するための装置が開示される。この装置は、アノード区画の第1の側に配置されたアノードを有するアノード区画と、カソード区画の第1の側に配置されたカソードを有するカソード区画と、を含む。装置はさらに、アノード区画の第2の側に配置された第1の陽イオン透過性流体セパレータと、陽イオン区画の第2の側に配置された第2の陽イオン透過性流体セパレータと、を含む。中心区画は、第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定される。装置はさらに、アノード区画、カソード区画、および中心区画のそれぞれを通る水の流れを独立して制御するように構成された流れ制御システムを含む。この装置を使用して海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するための装置であって、
陽極コンパートメント、
陽極区画の第1の側に配置された陽極、
陰極コンパートメント、
陰極コンパートメントの第1の側に配置された陰極、
アノード区画の第2の側に配置された第1のカチオン透過性流体セパレータ、
カチオン性区画の第2の側に配置された第2のカチオン透過性流体セパレータ、
第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定された中央区画と、アノード区画、カソード区画、および中央区画のそれぞれを通る水の流れを独立して制御するように構成された流れ制御システムと、を含む装置。
【請求項2】
前記アノード区画、前記陰極区画、および前記中央区画の各々に流体的に接続可能な水源をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中央区画の下流側に配置され、前記中央区画からの流出物のpHを測定するように構成されたpHセンサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記pHセンサから前記中央区画から前記流出液のpHの測定値を受け取り、前記中央区画を通る前記水の流量または前記アノードおよびカソードを横切って印加される電流の一方または両方を調整して、前記中央区画からの前記流出液のpHを所定のレベルに維持するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記所定レベルは、前記中央区画からの前記流出物中の炭酸塩種の大部分がH
2CO
3として存在する水準で請求項4に記載の機器。
【請求項6】
前記コントローラは、前記中央区画からの前記流出物のpHを約2.5~約6.5の範囲内に維持するように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記陽極区画、前記陰極区画、および前記中央区画からの1つまたは複数の流出物の導電率を測定するように構成された導電率センサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記導電率センサからの導電率測定値に応答して、前記カソードコンパートメントを通る前記水の流量を調整するようにさらに構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記導電率センサからの導電率測定値に応答して、前記アノード区画から前記陰極区画への流出物の流量を調整するようにさらに構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記陰極区画を通る前記水の流量を、前記陰極上にスケールの形成をもたらさない流量に調整するようにさらに構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記導電率センサからの導電率測定値に応答して、前記アノード区画を通る前記水の流量を調整するようにさらに構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記アノードのブラインドをもたらさない流量まで、前記アノード区画を通る前記水の流量を最小化するようにさらに構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記アノード区画からの流出物の少なくとも一部を前記アノード区画の入口に再循環させるように構成された再循環線をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記カソード区画からの流出物の少なくとも一部を前記カソード区画の入口に再循環させるように構成された再循環線をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記アノード区画からの流出物の少なくとも一部を前記陰極区画の前記入口に再循環させるように構成された第2の再循環線をさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記中央コンパートメントから前記中央コンパートメントの入口への流出物の少なくとも一部を再循環するように構成された再循環線をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記中央区画からの流出物の少なくとも一部を、前記アノード区画の入口および前記陰極区画の入口の一方または両方に再循環させるように構成された再循環線をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記アノード区画、前記カソード区画、または前記中央区画のうちの1つまたは複数から、水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つまたは複数を除去するように構成されたガス回収システムをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記ガス回収システムが、1つ以上の真空ストリッパを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記アノードが、亜酸化イリジウム、マグネリ相二酸化チタン、ステンレス鋼、イリジウム-コバルト(Ir-Co)、イリジウム-タンタル(Ir-Ta)、または他のイリジウムもしくはタンタル種のうちの1つを含む酸素発生コーティングを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法であって、
アノード区画、陰極区画、および電解セルの中央区画のそれぞれに海水を導入する工程であって、
陽極、
陰極、
アノードから離間され、アノードコンパートメントを画定する第1のカチオン透過性流体セパレータ、
陰極から離間され、陰極コンパートメントを画定する第2のカチオン透過性流体セパレータ、
第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定される中心区画と、アノード区画、陰極区画、および中心区画のそれぞれを通る海水の流れを独立して制御するように構成される流量制御システムと、を含む、システム、
中央区画を通る流量または陽極およびカソードを横切る電流の一方または両方を、所定の範囲内のpHを示す中央区画からの流出物をもたらすレベルに維持することと、カソード上のスケールの形成を軽減するレベルでカソード区画を通る流量を維持することとのうちの1つまたは両方を行うこと、
陽極区画、中央区画、またはカソード区画のうちの1つまたは複数からの流出物から、それぞれ、陽極のブラインドを緩和するレベルで、陽極区画を通る流量を維持すること、および、水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つまたは複数を除去することからなる方法。
【請求項22】
前記陰極区画を通る前記流量を、前記陰極上のスケールの形成を緩和する最低レベルに維持することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記陽極区画を通る前記流量を、前記陽極のブラインドを緩和する最低レベルに維持することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記アノード区画に導入された海水と共に、前記アノード区画からの流出物の一部を前記アノード区画の入口に導入することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アノード区画に導入された海水と共に、前記アノード区画からの流出物の一部を前記陰極区画の入口に導入することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記アノード区画に導入された海水と共に、前記アノード区画からの流出物の一部を前記アノード区画の入口に導入することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記中央コンパートメントからの前記流出物の一部を、前記中央コンパートメントの入口に導入することをさらに含み、前記海水が前記中央コンパートメントに導入される、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記アノード区画、前記カソード区画、または前記中央区画のうちの少なくとも1つを通る前記流量を、前記アノード区画、前記カソード区画、または前記中央区画のうちの少なくとも1つの他のものとは異なるレベルに維持することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記カソード区画を通る前記流量を、前記中央区画を通る前記流量よりも高い流量に維持することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は35U.S.C§119(e)に基づく優先権を主張し、2021年5月11日に出願された「HIGH FLUID VELOCITY CELL DESIGN FOR THE ELECTROCHEMICAL GENERATION OF HYDROGEN AND CARBON DIOXIDE」と題された米国仮出願第63/186,905号および2021年5月12日に出願された「METHOD OF OPERATING ELECTROCHEMICAL HYDROGEN AND CARBON DIOXIDE GENERATOR」と題された米国仮出願第63/187,519号に対する優先権を主張する。これらの出願の各々は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書に開示される態様および実施形態は、二酸化炭素(CO2)および水素(H2)を生成および捕捉するために海水を酸性化するための装置および方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
一態様によれば、炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するための装置が提供される。装置は、アノード区画の第1の側に配置されたアノードを有するアノード区画と、陰極区画の第1の側に配置された陰極を有する陰極区画とを含むことができる。装置は、アノード区画の第2の側に配置された第1のカチオン透過性流体セパレータを含むことができる。装置はさらに、陰極区画の第2の側に配置された第2のカチオン透過性流体セパレータを含む。装置は、第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定された中心区画をさらに含み得る。装置はさらに、アノード区画、陰極区画、および中央区画のそれぞれを通る水の流れを独立して制御するように構成された流れ制御システムを含むことができる。
【0004】
さらなる実施形態では、装置がアノード区画、陰極区画、および中央区画のそれぞれに流体的に接続可能な水源、例えば、海水を含んでもよい。
【0005】
さらなる実施形態では、装置が中央区画の下流側に配置され、中央区画からの流出物のpHを測定するように構成されたpHセンサを含むことができる。特定の実施形態では、装置がpHセンサから中央区画から流出液のpHの測定値を受け取り、中央区画を通る水の流量または陽極および陰極にわたって印加される電流の一方または両方を調整して、中央区画からの流出液のpHを所定のレベルに維持するように構成されたコントローラを含むことができる。所定レベルは、中央区画からの流出物中の炭酸塩種の大部分が炭酸、すなわちH2CO3として存在する水準である。
【0006】
いくつかの実施形態では、制御部が中央区画からの流出物のpHを約2.5~約6.5の範囲内に維持するように構成されてもよい。
【0007】
さらなる実施形態では、装置がアノード、カソード、および中央区画からの1つまたは複数の流出物の導電率を測定するように構築および配置された導電率センサをさらに含むことができる。さらなる実施形態では、制御部が導電率センサからの導電率測定値に応答して、カソード区画を通る水の流量を調整するように構成され得る。さらなる実施形態では、制御部が導電率センサからの導電率測定に応答して、アノード区画からカソード区画への流出物の流量を調整するように構成されてもよい。さらなる実施形態では、制御部が陰極区画を通る水の流量を、陰極上にスケールの形成をもたらさない流量に調整するように構成されてもよい。さらなる実施形態では、制御部が導電率センサからの導電率測定値に応答して、アノード区画を通る水の流量を調整するように構成され得る。さらなる実施形態では、制御部がアノードのブラインドをもたらさない流量まで、アノード区画を通る水の流量を最小化するように構成されてもよい。
【0008】
さらなる実施形態では、装置がアノード区画からの流出物の少なくとも一部をアノード区画の入口に再循環させるように構成された再循環線を含むことができる。
【0009】
さらなる実施形態では、装置がカソード区画からの流出物の少なくとも一部をカソード区画の入口に再循環させるように構成された再循環線を含むことができる。さらなる実施形態では、装置がアノード区画からカソード区画の入口への流出物の少なくとも一部を再循環させるように構成された第2の再循環線を含むことができる。
【0010】
さらなる実施形態では、装置が中央区画から中央区画の入口まで流出物の少なくとも一部を再循環させるように構成された再循環線を含むことができる。さらなる実施形態では、装置が中央区画からの流出物の少なくとも一部を、アノード区画および陰極区画の一方または両方の入口に再循環するように構成された再循環線を含んでもよい。
【0011】
さらなる実施形態では、装置がアノード区画、陰極区画、または中央区画のうちの1つまたは複数からの流出物のうちの1つまたは複数から、水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つまたは複数を除去するように構成されたガス回収システムを含み得る。いくつかの実施形態では、ガス回収システムが1つまたは複数の真空ストリッパを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、アノードが酸化イリジウムまたはマグネリ相チタン亜酸化物のうちの1つを含む酸素発生コーティングを含む。いくつかの実施形態では、アノードがステンレス鋼、イリジウム-コバルト(Ir-Co)、イリジウム-タンタル(Ir-Ta)、または他のイリジウム種もしくはタンタル種のうちの1つを含む合金を含んでもよい。
【0013】
一態様によれば、海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法が提供される。本方法は、アノード区画、陰極区画、および電解セルの中央区画のそれぞれに海水を導入することを含み得る。本方法は、中央区画を通る流量、または陽極およびカソードを横切る電流の一方または両方を、所定の範囲内のpHを示す中央区画からの流出物をもたらすレベルに維持することを含み得る。本方法は、陰極区画を通る流量を、陰極上のスケールの形成を軽減するレベルに維持することをさらに含み得る。本方法は、陽極区画を通る流量を、陽極のブラインドを軽減するレベルに維持することをさらに含み得る。この方法はアノード区画、中央区画、またはカソード区画のうちの1つまたは複数から、それぞれ、流出物から水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つまたは複数を除去することをさらに含み得る。電解セルは陽極と、カソードと、陽極から離間し、陽極区画を画定する第1のカチオン透過性流体セパレータと、カソードから離間し、カソード区画を画定する第2のカチオン透過性流体セパレータと、第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定される中心区画と、陽極区画、カソード区画、および中心区画の各々を通る海水の流れを独立して制御するように構成される流量制御システムとを含み得る。
【0014】
さらなる実施形態では、本方法が陰極区画を通る流量を、陰極上のスケールの形成を軽減する最低レベルに維持することを含んでもよい。
【0015】
さらなる実施形態では、本方法が陽極コンパートメントを通る流量を、陽極のブラインドを軽減する最低レベルに維持することを含んでもよい。
【0016】
さらなる実施形態では、本方法が海水がアノード区画に導入された状態で、アノード区画からの流出物の一部をアノード区画の入口に導入することを含んでもよい。
【0017】
さらなる実施形態では、本方法が海水がアノード区画に導入された状態で、アノード区画からの流出物の一部を陰極区画の入口に導入することを含んでもよい。
【0018】
さらなる実施形態では、本方法が海水が中央区画に導入された状態で、中央区画からの流出物の一部を中央区画の入口に導入することを含むことができる。
【0019】
さらなる実施形態では、方法がアノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの少なくとも1つを通る流量を、アノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの少なくとも1つの他のものとは異なるレベルに維持することを含み得る。
【0020】
さらなる実施形態では、本方法がカソード区画を通る流量を、中央区画を通る流量よりも高い流量に維持することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
添付の図面は、一定の縮尺で描かれていない。図面では、様々な図に示されている各同一またはほぼ同一の構成要素が同様の符号によって表されている。明確にするために、すべての構成要素がすべての図面においてラベル付けされているわけではない。
【
図1】炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するためのイオン交換媒体を含有する既存の電気化学セルを示す図である。
【
図2】一実施形態による、炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するための装置を図示する図である。
【
図3】代替実施形態による、炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するための装置を図示する図である。
【
図4】
図4A~4Cは、異なる実施形態による、装置のための陽極および陰極構成を図示する。
図4Aは、平行板配置を示す。
図4Bは、同心管配置を示す。
図4Cは、螺旋状に巻かれた構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
世界の海洋の総炭素含有量は、約38,000ギガトン(GT)である。この炭素の95%の世界の海洋の総炭素含有量は、約38,000ギガトン(GT)である。この炭素の95%以上が溶解した重炭酸イオン(HCO3は、以下参照)の形態である。この重炭酸イオンは炭酸イオン(CO3
2-)と共に、海洋深さの最初の100メートル未満で比較的一定である海洋のpHを緩衝し、維持する役割を果たす。海洋中に存在する溶存重炭酸イオンおよび炭酸イオンは効果的に結合したCO2であり、これらの種の濃度の合計は溶存気体CO2とともに、海水の総二酸化炭素濃度[CO2]Tを表す。
【0023】
錯体炭酸水素塩-炭酸塩緩衝系によって比較的一定に保たれた典型的な海洋pH7.8では、[CO2]Tは地表付近で約2000μモル/kgであり、300メートル未満の深さで約2400μモル/kgである。これは、約100mg/Lの[CO2]Tに相当する。海洋中の合計CO2のうち、約2~3%が溶解気体CO2であり、約1%が溶解炭酸イオンとして存在し、残りの約96%が溶解炭酸水素イオンとして存在する。CO2とその種々のイオン形態を含む水の平衡状態と濃度は、水のpHに依存することが知られている。例えば、海水pH4.5では、海水中の全炭酸塩種の99%が炭酸H2CO3として存在する。したがって、HCO3をH2CO3に変換するために、海水のpHを低下させることができる。
【0024】
水中に溶解したCO2は、式1に示すようにH2CO3と平衡状態にある。
CO2+H2O⇔H2CO3(1)
【0025】
世界の海洋の総炭素含有量は、約38,000ギガトン(GT)である。この炭素の95%水和平衡定数は1.70×10?3である。これは、H2CO3が水中で安定ではなく、気体CO2がpH4.5で容易に解離し、海水が酸性化されると、CO2を脱気またはストリッピングによって容易に除去して、不安定なH2CO3が主な炭酸塩種に脱プロトン化されることを確実にすることを示す。
【0026】
電気化学セルは、海洋、沖合、地方自治体、工業、および商業的な実施において使用される。電気化学セルの設計パラメータ、例えば、電極間隔、電極の厚さおよびコーティング密度、電極面積、電気的接続の方法などは、異なる実施態様のために選択することができる。本明細書に開示される態様および実施形態は、電極の数、電極間の空間、電極材料、電極間の任意のスペーサの材料、電気化学セル内のパスの数、または電極コーティング材料に限定されない。
【0027】
膜によって囲まれた区画内にイオン交換媒体を含む電気化学セルは、
図1に示される既存の電気化学セルなどの炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するために使用されてきた。作動中、水中に存在するナトリウムイオンは通電されると、水がカチオン交換樹脂を含有する区画を形成する2つのカチオン交換膜を通過するときに、水素イオンと交換される。電気化学セルのカソード側は水酸化ナトリウムおよび水素ガスを生成し、アノード側は、酸素ガスを生成する。カチオン交換膜のイオン移動効率を改善し、海水の酸性化を引き起こすために、不活性媒体、例えばセラミック粒子を含む電気化学セルの中央区画に入る水素イオンである。
【0028】
本開示は電気化学セルおよび電気化学素子の様々な実施形態を説明するが、本開示は電気化学セルまたはデバイスに限定されず、本明細書に開示される態様および実施形態は複数の目的のうちのいずれか1つに使用される電解セルおよび電気化学セルに適用可能である。
【0029】
特定の非限定的な実施形態では、本開示が炭酸塩種を有する水の連続酸性化、および連続水素ガス生成による溶解二酸化炭素の回収のための電気化学セルを記載する。電気化学セルのための流入物は酸性化の前に水中の塩などの種の濃度を低減するための上流処理を必要とせずに、炭酸塩種、例えば、塩水、例えば、海水、汽水、またはプロセス水を有する水である。本明細書で使用するとき、「生理食塩水」は高濃度の溶解した固体又は塩、例えば、約500ppm~約35,000ppmの溶解した塩の濃度を含有する水である。本開示に記載の電気化学セルは、アノード区画の第1の側に配置されたアノードを有するアノード区画と、陰極区画の第1の側に配置された陰極を有する陰極区画とを含む。陽極コンパートメントおよび陰極コンパートメントは、電解質および媒体を含まず、コンパートメントを通る炭酸塩種を有する水のより高い流れを可能にする。区画を通る炭酸塩種を有する水の流速が大きいほど、アノードおよび陰極などの区画の構造要素上でのスケール形成の可能性が低減される。本明細書で使用される場合、流速は、1つまたは複数の区画の入口に向けられた水が単位時間当たりの距離として測定される、どのくらい速く移動するかの尺度である。流量は、単位時間当たりに送出される水の量の尺度である。炭酸塩種を含む水の流速は一般に、透過性セパレータを横切るイオンの分配、すなわち、水の酸性化、および装置からのO2、H2、およびCO2の生成を制御する。一般に、流量、異なる装置構成要素のアスペクト比、および処理される水と異なる装置構成要素との間の摩擦係数など、測定または定量化され得る他の変数は、装置の区画を通る水の流速に影響を及ぼす。
【0030】
電気化学セルは、アノード区画の第2の側に配置された第1のカチオン透過性流体セパレータと、カソード区画の第2の側に配置された第2のカチオン透過性流体セパレータとを含む。中心区画は、第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定される。中央区画は、媒体を含まなくてもよい。電気化学セルは、アノード区画、カソード区画、および中央区画のそれぞれを通る炭酸塩種を有する水の流れを独立して制御するように構築および配置される流れ制御システムを含む装置の一部であってもよい。
【0031】
運転中、流入物として炭酸塩種を有する水を用いて装置に印加される電流はカソード区画内に水素ガス(H2)を生成し、いずれかの区画内に存在する任意の媒体、例えばイオン交換樹脂を必要とすることなく、水分解を介してアノード区画内に水素イオン(H+)を生成する。H+イオンは第1のカチオン透過性流体セパレータを通過して中央区画に入り、その中を流れる炭酸塩種を有する水中のpHを低下させる。中心区画は装置を通る炭酸塩種を有する水の流速がスケーリングを低減し、性能が減少するのに十分であるので、第1のカチオン透過性流体セパレータまたは第2のカチオン透過性流体セパレータのイオン移動能力または性能を高めるために、セラミック粒子などの不活性媒体の使用を必要としない。炭酸塩種を有する水のpHのこの低下は式(1)で定義された均衡によって支配されるように、炭酸塩種を有する水中に存在する炭酸塩(CO3
2-)および重炭酸塩(HCO3
-)イオンの二酸化炭素(CO2)気体への転化をもたらす。炭酸塩種を含む水分のpHを減少、CO2を生成するために、電流または電力またはイオン交換媒体を追加する必要はない。
【0032】
陽極コンパートメント、陰極コンパートメント、および中央コンパートメント内で起こる反応は、それぞれ式(2)~(4)を含む。
2H2O→4H++O2+4e ̄ (2)
4H2O+4Na++4e ̄→4NaOH+2H2 (3)
4NaHCO3+4H+→4Na++4H2CO3 (4)
【0033】
したがって、装置のための全体的な反応(式5)は、
2H2O+4NaHCO3→4CO2+4NaOH+8H2+O2 (5)である。
【0034】
式(1)の平衡を受ける中央区画にCO2が形成され、NaOHおよびH2がカソード区画に形成され、O2がアノード区画に形成される。これらの反応生成物は捕捉されるか、または他の方法で収集され、エネルギー生成、有機合成、および水の酸素化(例えば、水生用途)などの関連プロセスのための供給原料として使用され得る。
【0035】
二酸化炭素塩種源を有する水から二酸化炭素および水素を生成するための装置の一実施形態を
図2に示す。
図2において、装置100は、アノード区画102の第1の側に配置されたアノード102aを有するアノード区画102と、陰極区画の第1の側に配置された陰極104aを有する陰極区画104とを含む。第1のカチオン透過性流体セパレータ106はアノードコンパートメント102の第2の側に配置され、第2のカチオン透過性流体セパレータ108はカソードコンパートメント104の第2の側に配置される。装置100は、第1のカチオン透過性流体セパレータ106と第2のカチオン透過性流体セパレータ108との間に画定された中央区画110を含む。
【0036】
アノードおよびカソードは本明細書で使用される場合、一般に、1つ以上の金属、例えば、チタン、アルミニウム、ニッケル、他の金属、またはそれらの合金から形成される、それらを含む、またはそれらからなる電極を指すと理解される。いくつかの実施形態では、アノードおよび/またはカソードが異なる金属の複数の層を含むことができる。本明細書に開示される実施形態のうちの任意の1つまたは複数において利用される金属電極は、炭酸塩種を層水分による化学的侵食に対して高い耐性を層金属または金属酸化物で被覆された、高導電性金属、例えば銅またはアルミニウムのコア、例えばチタン、白金、混合金属酸化物(MMO)、マグネタイト相チタン、例えばTi4O7、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、タンタル、パラジウム、イリジウム、銀、金、または他の被覆材料を含んでもよい。アノードまたはカソードは例えば、白金、MMO、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、タンタル、パラジウム、イリジウム、銀、金、または他のコーティング材料でコーティングされ得るが、これらに限定されない。本明細書に開示される実施形態において利用される混合金属酸化物は、ルテニウム、ロジウム、タンタル(任意選択でアンチモンおよび/またはマンガンと合金化された)、チタン、イリジウム、亜鉛、スズ、アンチモン、チタン-ニッケル合金、チタン-銅合金、チタン-鉄合金、チタン-コバルト合金、または他の適切な金属もしくは合金のうちの1つまたは複数の酸化物または酸化物を含み得る。
【0037】
本明細書に開示される実施形態で利用されるアノードは、白金および/またはイリジウム、ルテニウム、スズ、ロジウム、またはタンタルのうちの1つ以上の酸化物または酸化物(任意選択でアンチモンおよび/またはマンガンと合金化される)で被覆されてもよい。本明細書に開示される実施形態において利用されるカソードは白金および/またはイリジウム、例えば、IrO2、ルテニウム、およびチタン、例えば、マグネリ相チタン、例えば、Ti4O7のうちの1つ以上の酸化物または酸化物で被覆されてもよい。本明細書に開示される電気化学セルの実施形態のいずれかにおいて利用される電極は、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、および/またはシリコンのうちの1つまたは複数のベースを含み得る。本明細書に開示される装置内の電気化学セルのいずれかのための電極は、プレート、シート、箔、押出物、および/または焼結物として、またはそれらから形成することができる。アノードおよびカソードは、固体電極、メッシュ電極、またはパターン電極であってもよい。
【0038】
引き続き
図2を参照すると、陽極102aおよびカソード104aは、装置100内の任意の適切な配置とすることができる。例えば、陽極102aおよびカソード104aは、それぞれ、
図4A~
図4Cに示される、プレートおよびフレーム構成、同心管構成、または螺旋巻き構成で配置され得る。
図4Aのプレートおよびフレーム構成は電気的に並列に接続された各端部に電極のセットを含み、一方のセットはDC電源からの正の出力に接続され、他方のセットは負の出力に接続される。間の電極は双極性である。
図4Bの同心管構成は活性領域を通過する炭酸塩種を有する水の実質的にすべてまたはすべてを、活性領域を実質的にまたは完全に軸方向に通過する方向に、アノードと陰極との間の間隙を通るように構成および配置されたアノードおよび陰極(またはアノード-陰極一対)を含む。活性領域を通る実質的にまたは完全に軸方向の方向は、電気化学セルおよび/またはアノードおよび陰極(またはアノード-陰極一対)の中心軸に平行または実質的に平行であり得る。陽極102aおよびカソード104aの活性領域を通過して流れる炭酸塩種を有する水は、たとえ炭酸塩種を有する水の流れが活性領域を通る流れの間に乱流および/または渦を示すとしても、活性領域を実質的にまたは完全に軸方向に流れると考えることができる。
【0039】
第1のカチオン透過性流体セパレータ106および第2のカチオン透過性流体セパレータ108は、装置100の使用中の高い流量および圧力に対して所望のイオン伝達および物理的特性を提供することができる任意の適切な分離媒体であり得る。例えば、第1のカチオン透過性流体セパレータ106および第2のカチオン透過性流体セパレータ108の一方または両方を作製するために使用される材料は高い耐摩耗性、柔軟性、および選択的イオン交換のために選択され得、流体セパレータを作製するために使用される材料は1つまたは複数の異なる材料を組み込み得る。高い耐摩耗性はセラミックまたは酸化物材料を組み込むことによって付与され得、柔軟性はポリマー種を組み込むことによって付与され得、選択的イオン交換は特定の化学官能化によって達成され得る。いくつかの実施形態では、カチオン透過性流体セパレータ106および第2のカチオン透過性流体セパレータ108の一方または両方がカチオン交換膜であり得る。
【0040】
これらのプロセスを用いて製造された流体セパレータは炭酸塩種を有する水の酸性化および生成ガス発生のための装置効率を改善するために、機能的表面積対体積の比を変化させる幾何学的形状に形成することができる。
【0041】
装置100は、アノード区画102、陰極区画104、および中央区画110のそれぞれを通る炭酸塩種を有する水の流れを独立して制御するように構築および配置された流れ制御システム101をさらに含む。流量制御システム101は、装置100の全体にわたって配置されたポンプ105または弁などの流体の流れを制御するために使用される要素に動作可能に結合され得る。装置100は、流量制御システムに動作可能に結合された、アノード区画102、陰極区画104、および中央区画110の上流または下流の一方または両方に配置された流量計または流量センサ111を含む。図示のように、流量計または流量センサ111はアノードコンパートメント102、カソードコンパートメント104、および中央コンパートメント110の上流に配置されるが、本開示はアノードコンパートメント102、カソードコンパートメント104、および中央コンパートメント110の下流側に配置される実質的に同等の流量計または流量センサを企図する。
【0042】
引き続き
図2を参照すると、装置100はアノード区画102、陰極区画104、および中央区画110のそれぞれへの流入として、炭酸塩種、例えば、生理食塩水、例えば、海水、汽水、処理水保持液、またはプロセス水を有する水源に接続可能である。炭酸塩種を有する水源は、アノード区画102、陰極区画104、および中央区画110にそれぞれ接続可能な水源107a、107b、または107cであってもよい。あるいは、アノード区画102、陰極区画104、および中央区画110はそれぞれ、炭酸塩種を有する水の単一の供給源に接続可能であってもよく、その場合、供給源107a、107b、および107cはそれぞれ、炭酸塩種を有する水の同じ供給源であってもよい。
【0043】
装置100は、炭酸塩種流入物107a、107b、または107cおよび/または流出物109a、109b、および109cを有する水の1つまたは複数のパラメータを測定するように構築および配置された、アノードコンパートメント、カソードコンパートメント、および中央コンパートメントの上流または下流に配置された1つまたは複数のセンサを含む。1つまたは複数のセンサは例えば、流量計、水位センサ、導電率計、抵抗率計、化学濃度計、濁度監視、化学種比濃度センサ、温度センサ、pHセンサ、酸化還元電位(ORP)センサ、圧力センサ、または任意の他のセンサ、プローブ、またはアノード、カソード、および中央区画のうちの任意の1つまたは複数を出る炭酸塩種を有する水の所望の特性またはパラメータの指標を提供するために有用な科学的機器を含み得る。
図2に示すように、装置100は、中央区画110の下流に配置され、中央区画110からの流出物109cのpHを測定するように構成されたpHセンサ120を含む。pHセンサ120は、任意のタイプの適切なpHセンサである。装置100は、陽極102aとカソード104aとの間の導電性を測定するように構成され配置された導電性センサ122をさらに含む。
【0044】
引き続き
図2を参照すると、装置100は一般に、装置100の動作を制御するように構成され配置された制御部103を含む。いくつかの実施形態では、制御部103がpHセンサ120から中央区画110から流出物109cのpHの測定値を受け取るように構成される。制御部103は中央区画110を通る中央区画用の炭酸塩種107c、または陽極102aおよびカソード104aにわたって印加される電流を有する水源からの炭酸塩種を有する水の流量の一方または両方を、例えば、流量制御システム101と通信することによって調整して、中央区画110からの流出物109cのpHを所定のレベルに維持するように構成される。この所定のpHレベルは典型的には約2.5~約6.5、例えば、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、または約6.5である。炭酸塩種流出物109a、109b、および109cを有する水分は炭酸塩種を含み、所定レベルは式1に示されるように、中央区画110からの流出物109c中の炭酸塩種の大部分が、CO
2およびH
2Oと平衡状態にある炭酸H
2CO
3として存在する水位である。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、アノード区画内の水素イオンの製造および中央区画内の水素イオンの消費はそれぞれの区画を通る水の流れと相関する。したがって、これらの区画を通る水の流れの制御は、中央区画の流出物109cのpHを制御することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、導電率センサ122からの出力が制御部103に送信され、装置100を通る炭酸塩種の流量を有する1つまたは複数の水を調整するかどうかを決定するために制御部103によって使用される。装置100内外への炭酸塩種を有する水の流量の調整は中央区画110を通る炭酸塩種を有する酸性化水の製造、すなわちpHを調整し、装置100の効率を改善し、装置100のエネルギー消費を低減し、保守停止時間を低減することができる。いくつかの実施形態では、制御部103が導電率センサ122からの導電率測定値に応答して、カソード区画104を通るカソード流入107bからの炭酸塩種を有する水の流量を調整するように構成される。
【0046】
いくつかの実施形態では、制御部103がアノード区画、陰極区画、および中央区画からの流出物109a、109b、および109cのうちの1つまたは複数の流出物の導電率をそれぞれ測定するように配置された1つまたは複数の導電率センサから導電率測定値を受信し得る。アノード区画、陰極区画、および中央区画からのそれぞれの流出物109a、109b、および109cからの導電率の測定値は制御部103が中央区画内の水の酸性化およびCO2の生成を制御するために、それぞれの区画を個々に、または個々の区画の組合せを通して、水の流れを調整する方法を決定するために使用することができる。
【0047】
導電率センサ122からの測定値は陰極104a上のイオンスケールの形成を示し、陰極区画104を通る流量を増加させると、陰極104a上のさらなるスケーリングの可能性が減少する。いくつかの実施形態では、制御部103が導電率センサ120からの導電率測定値に応答して、アノード区画102からカソード区画104への流出物109aの流量を調整するように構成される。導電率センサ122からの測定値は陰極104a上のイオンスケールの形成を示し、アノード区画102から陰極区画104への流出物109aの流量を増加させると、陰極104a上のさらなるスケーリングの可能性が減少する。また、式2-4に示すように、陰極区画104内の化学反応は腐食性であり、第2のカチオン透過性流体セパレータ108の劣化または陰極104aの劣化を引き起こす可能性があるNaOHを生成する。リサイクル線118から陰極コンパートメント104へのリサイクル水はその中のNaOH濃度を低減し、陰極104a上のスケールを低減し、装置100の寿命を延ばす。いくつかの実施形態では、制御部103が陰極区画104を通る陰極流入物107bから陰極上にスケールが形成されない流量までの炭酸塩種を有する水の流量を最小化するように構成される。本開示の文脈において使用されるように、陰極上のスケールは一般に、処理中に水のpHが変化することにつれて形成される沈降炭酸塩および酸化物などの、沈降種から形成される電極上の任意のコーティングを含むことができる。陰極上でのスケールの形成は陰極の活性領域の表面積を低下させることができ、水分還元によるH2気体の形成のための陰極の有効性を低下させる。陰極区画を通る水の流速および/または流速は陰極上に吸着装置スケールの析出を低減するのに充分な流れを維持しながら、H2の形成と、続いて中央区画内のCO2気体とを均衡させる速度に調整、すなわち、低下させることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、制御部103が導電率センサ120からの導電率測定値に応答して、アノード流入物107aからアノード区画102を通る炭酸塩種を有する水の流量を調整するように構成される。いくつかの実施形態では、制御部103がアノード流入物107aからアノード区画102を通る炭酸塩種を有する水の流量を、ガス、例えば、アノード102aで生成されたO2によるアノード102aのブラインドをもたらさない流量まで最小限にするように構成される。本明細書で使用するとき、電極上のブラインドは一般に、活性領域に付着したガスの気泡を有する活性領域の一部を有する電極、例えばアノードの活性領域を指し、通電されたときのさらなるガス生成のための効率を低下させる。陽極盲検化は一般に、電気化学プロセスから生成されるガスの体積を測定し、測定された体積を、関連する半反応に基づいて理論的に予測されるものと比較することによって、または陽極/陰極一対にわたる伝導度を測定することによって、評価することができる。アノード区画を通る水の流速および/または流速はO2気体の形成と、続いて、アノード上に吸着し得る気泡の形成を低減するために装置を通る充分な流れを維持しながら、中心区画内のCO2気体の形成とのバランスをとる速度に調整、すなわち、低下させることができる。
【0049】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、流速の増加は一般に、陰極区画内に炭酸塩種を有する水の滞留時間を短縮し、したがって、炭酸塩種を有する水中のイオンが陰極の帯電表面に接触している時間の量を短縮する。これは、陽極区画を通る滞留時間の減少が陽極上のO2の生成を減少させるので、陽極にも当てはまる。例えば、装置を通る炭酸塩種を有する水の流量は約0.1m/s~約10m/s、例えば、約0.1m/s~約10m/s、約0.5m/s~約9m/s、約1m/s~約8m/s、約2m/s~約7m/s、約3m/s~約6m/s、または約4m/s~約5m/s、例えば、約0.1m/s、約0.5m/s、約1m/s、約1.5m/s、約1.5m/s、約2m/s、約2.5m/s、約3m/s、約3.5m/s、約4m/s、約4.5m/s、約6m/s、約6.5m/s、約7m/s、約7.5m/s、約8m/s、約8.5m/s、約9m/s、約9.5m/s、または約10m/sである。特定の実施形態では、装置を通る炭酸塩種を有する水の流量が約2m/s~3m/sであってもよい。
【0050】
制御部103は、1つまたは複数のコンピュータシステムを使用して実装され得る。コンピュータシステムは例えば、Intel CORE(登録商標)タイプのプロセッサ、Intel XEON(登録商標)タイプのプロセッサ、Intel CELERON(登録商標)タイプのプロセッサ、AMD FXタイプのプロセッサ、AMD RYZEN(登録商標)タイプのプロセッサ、AMD EPYC(登録商標)タイプのプロセッサ、およびAMD RシリーズまたはGシリーズのプロセッサである。あるいは、コンピュータシステムがプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特別にプログラムされた専用ハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、または分析システム用のコントローラを含むことができる。いくつかの実施形態では、制御部103がユーザまたはオペレータが装置100の関連する動作パラメータを見ること、前記動作パラメータを調整すること、および/または必要に応じて装置100の動作を停止することを可能にするように構築および構成されたユーザインターフェースに動作可能に接続されるか、または接続可能であり得る。ユーザインターフェースは、ユーザまたはサービスプロバイダによって対話され、装置100の状況情報を出力するように構成された表示装置を含むグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含み得る。
【0051】
制御部103は例えば、ディスクドライブメモリ、フラッシュ記憶装置、RAMメモリデバイス、またはデータを記憶するための他のデバイスのうちの任意の1つまたは複数を備えることができる、1つまたは複数のメモリデバイスに通常接続される1つまたは複数のプロセッサを含むことができる。1つまたは複数のメモリデバイスは、装置100の動作中にプログラムおよびデータを記憶するために使用され得る。例えば、メモリデバイスは、ある期間にわたってパラメータに関する履歴データを記憶するために使用され得る。本発明の実施形態を実装するプログラミングコードを含むソフトウェアはコンピュータ可読および/または書き込み可能な不揮発性記録媒体に記憶され、次いで、典型的には1つまたは複数のメモリデバイスにコピーされ、次いで、1つまたは複数のプロセッサによって実行され得る。そのようなプログラムコードは複数のプログラミング言語、例えば、ラダーロジック、Python、Java、Swift、Rust、C、C#、またはC++、G、Eiffel、VBA、またはそれらの様々な組合せのいずれかで書かれ得る。
【0052】
引き続き
図2を参照すると、装置100は、アノード流出物109a、カソード流出物109b、および中心流出物109cのうちの1つまたは複数からの流出物の一部を、アノード区画102、カソード区画104、および/または中心区画110の1つまたは複数の入口に戻すように構築および配置された1つまたは複数のリサイクル線を含む。いくつかの実施形態では、装置100がアノード区画102からアノード区画102の入口まで流出物109aの少なくとも一部を再循環するように構成された再循環線112を含む。
図3に示されるような代替の実施形態では、中央区画110からの流出物109cの一部が導管115bを介して、導管115aおよび陰極区画104を介して、アノード区画102の両方のうちの一方の入口に向けられてもよい。中央区画110からの流出物109cを使用して、流入物のpHをアノード区画102に低下させることができ、したがって、アノード区画102内の酸素発生の有効性、例えば、H+利用の改善を改善することができる。中央区画110からの流出物109cを使用して、陰極区画104中の総炭酸塩種濃度を低下させることができ、したがって、陰極104a上のスケール形成を減少させることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、装置100がカソード区画104からカソード区画104の入口まで流出物109bの少なくとも一部を再循環するように構成された再循環線114を含む。カソードコンパートメント104からカソードコンパートメント104の入口までの流出物109bからのリサイクル線114は、カソードコンパートメント流出物109b中に存在する二価種の濃度を低減するためのイン線処理システム124をさらに含むことができる。例えば、インライン処理システム124はナノ濾過、逆浸透、イオン交換処理、ナノビーズ処理、電気脱イオン化、および静電脱イオン化のうちの1つまたは複数を含み得るが、これらに限定されない。陰極区画104を通る高い水速度がスケーリング電位を十分に低下させることができないと判定された場合、インライン処理システムを使用して、陰極104aのスケーリング電位を低下させることができる。いくつかの実施形態では、装置100がアノード区画から陰極区画104の入口まで流出物109aの少なくとも一部をリサイクルするように構成された第2のリサイクル線116を含む。いくつかの実施形態では、装置100が中央区画109cから中央区画110の入口まで流出物の少なくとも一部を再循環させるように構成された再循環線117を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、装置100がアノード区画102、カソード区画104、または中央区画110のうちの1つまたは複数からの流出物から1つまたは複数の溶解ガスを除去するように構築および配置されたガス回収システム113a、113b、113cを含む。
図2に示すように、アノード区画102、カソード区画104、または中央区画110からの流出物109a、109b、および109cは、ガス回収システム113a、113b、および113cを有する。あるいは、装置100がそれぞれアノード区画102、陰極区画104、または中央区画110からの流出物109a、109b、および109cのための出口の各々に接続可能な1つのガス回収システムを含むことができる。ガス回収システム113a、113b、113cは限定はしないが、強制通風脱気装置、ブレークタンク、真空ストリッパ、空気ストリッパ、または膜脱気装置を含む、水から溶解ガスを除去することができる任意の適切なシステムであり得る。特定の実施形態では、ガス回収システムが1つ以上の真空ストリッパを含む。ガス回収系はアノード区画102、カソード区画104、および/または中央区画110からの流出物109a、109b、109cのうちの1つまたは複数から、H
2、CO
2、およびO
2のうちの1つまたは複数を除去するように構築および配置される。ガス回収系はアノード区画102、カソード区画104、または中央区画110のうちの1つまたは複数から、流出物109a、109b、109cのうちの1つまたは複数から、H
2、CO
2、および/またはO2の少なくとも80%を除去するように構成され得る。特定の実施形態では、ガス回収系がH
2、CO
2、およびO
2の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、99.999%、または100%を、1つまたは複数の流出物109a、109b、109cから、アノード区画102、陰極区画104、または中央区画110の1つまたは複数から除去するように構成され得る。
【0055】
一態様によれば、海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法が提供される。本方法は、アノード区画、陰極区画、および電解セルの中央区画のそれぞれに海水を導入することを含み得る。本方法は、中央区画を通る流量、または陽極およびカソードを横切る電流の一方または両方を、所定の範囲内のpHを示す中央区画からの流出物をもたらすレベルに維持することを含み得る。本方法は、陰極上のスケールの形成を軽減するレベルで陰極区画を通る流量を維持することをさらに含み得る。本方法は、陽極区画を通る流量を、陽極のブラインドを軽減するレベルに維持することをさらに含み得る。この方法はアノード区画、中央区画、またはカソード区画のうちの1つまたは複数から、それぞれ、流出物から水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つまたは複数を除去することをさらに含み得る。電解セルは陽極と、カソードと、陽極から離間し、陽極区画を画定する第1のカチオン透過性流体セパレータと、カソードから離間し、カソード区画を画定する第2のカチオン透過性流体セパレータと、第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定される中心区画と、陽極区画、カソード区画、および中心区画の各々を通る海水の流れを独立して制御するように構成される流量制御システムとを含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本方法が陰極区画を通る流量を、陰極上のスケールの形成を軽減する最低レベルに維持することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本方法がアノードのガスブラインドを軽減する最低レベルでアノード区画を通る流量を維持することをさらに含み得る。
【0057】
海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法はガスの生成および発生したガスによる陽極のブラインドを低減するために、海水が陽極区画に導入された状態で、陽極区画からの流出物の一部を陽極区画の入口に導入することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、方法がアノード区画からの流出物の一部をカソード区画の入口に導入し、海水をアノード区画に導入して、カソード区画で生成される腐食種の濃度を低減することを含み得る。いくつかの実施形態では本方法が陰極コンパートメントからの流出物の一部を陰極コンパートメントの入口に導入することをさらに含むことができ、海水は陰極コンパートメントに導入されて、陰極上のスケールの形成を低減する。いくつかの実施形態では、本方法が中央コンパートメントからの流出物の一部を中央コンパートメントの入口に導入することをさらに含んでもよく、海水は中央コンパートメントに導入されて、均衡をCO2気体の発生に向かって移動させる。
【0058】
海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法は、アノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの少なくとも1つを通る流量を、アノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの少なくとも1つの他のものとは異なるレベルに維持することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法が陰極コンパートメントを通る流量を中央コンパートメントを通る流量よりも高い流量に維持して、陰極上のスケールを減少し、陰極コンパートメント内に形成される腐食性種、例えば、NaOHの濃度を減少することをさらに含み得る。
【0059】
本明細書で使用される表現および用語は説明を目的とするものであり、限定するものとみなされるべきではない。本明細書で使用するとき、用語「複数」は、2つ以上のアイテム又は構成要素を指す。「含む(comprising)」、「含む(including)」、「運ぶ(carrying)」、「持つ(having)」、「含む(containing)」、及び「関与する(involving)」という用語は明細書又は請求項等のいずれにおいても、開放された用語、すなわち「含むが、これに限定されない」を意味するものであり、従って、そのような用語の使用はその後に列挙される項目、及びその等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。「からなる」および「から本質的になる」という移行句のみが、特許請求の範囲に関して、それぞれ、閉じたまたは半閉じた移行句である。請求項要素を修正するためのクレームにおける「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用はそれ自体ではある請求項要素の優先順位、優先順位、又は順序が別の請求項要素、又は方法の動作が実行される時間的順序よりも重要であることを意味するものではなく、単に、請求項要素を区別するために、特定の名称を有する1つの請求項要素を、同じ名称を有する別の要素から区別するための(ただし、序数用語の使用のための)標識として使用される。
【0060】
このように少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明してきたが、当業者には様々な変更、修正、および改良が容易に思い浮かぼうことを理解されたい。任意の実施形態に記載された任意の特徴は、任意の他の実施形態の任意の特徴に含まれてもよく、またはそれらに代えてもよい。そのような変更、修正、および改良は、本開示の一部であることが意図され、本発明の範囲内であることが意図される。従って、前述の記載及び図面は例示の目的のみである。
【0061】
当業者は本明細書に記載されるパラメータおよび構成が例示的であり、実際のパラメータおよび/または構成が、開示される方法および材料が使用される特定用途に依存することを理解すべきである。当業者はまた、日常的な実験のみを用いて、開示された特定の実施形態に対する等価物を認識するか、または確認することができるはずである。
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-02-08
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張し、2021年5月11日に出願された「HIGH FLUID VELOCITY CELL DESIGN FOR THE ELECTROCHEMICAL GENERATION OF HYDROGEN AND CARBON DIOXIDE」と題された米国仮出願第63/186,905号及び2021年5月12日に出願された「METHOD OF OPERATING ELECTROCHEMICAL HYDROGEN AND CARBON DIOXIDE GENERATOR」と題された米国仮出願第63/187,519号に対する優先権を主張する。これらの出願の各々は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に開示される態様および実施形態は、海水を酸性化して二酸化炭素(CO2)及び水素(H2)を生成及び捕捉する装置及び方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
一態様によれば、炭酸塩種を有する水から二酸化炭素及び水素を生成するための装置が提供される。装置は、アノード区画の第1の側に配置されたアノードを有するアノード区画と、カソード区画の第1の側に配置されたカソードを有するカソード区画とを含み得る。装置は、アノード区画の第2の側に配置された第1のカチオン透過性流体セパレータを含み得る。装置は、カソード区画の第2の側に配置された第2のカチオン透過性流体セパレータをさらに含み得る。装置は、第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定された中央区画をさらに含み得る。装置はさらに、アノード区画、カソード区画、及び中央区画のそれぞれを通る水の流れを独立して制御するように構成されたフロー制御システムをさらに含み得る。
【0004】
さらなる実施形態では、装置は、アノード区画、カソード区画、及び中央区画のそれぞれに流体的に接続可能な水源、例えば、海水を含み得る。
【0005】
さらなる実施形態では、装置は、中央区画の下流側に配置され、中央区画からの流出物のpHを測定するように構成されたpHセンサを含み得る。特定の実施形態では、装置は、pHセンサから中央区画からの流出物のpHの測定値を受け取り、また中央区画を通る水の流量またはアノード及びカソードにわたって印加される電流の一方または両方を調整して、中央区画からの流出物のpHを所定のレベルに維持するように構成されたコントローラを含み得る。所定レベルとは、中央区画からの流出物中の炭酸塩種の大部分が炭酸、すなわちH2CO3として存在するレベルである。
【0006】
いくつかの実施形態では、コントローラは、中央区画からの流出物のpHを約2.5~約6.5の範囲内に維持するように構成され得る。
【0007】
さらなる実施形態では、装置は、アノード、カソード、及び中央区画からの1つ以上の流出物の導電率を測定するように構築及び配置された導電率センサをさらに含み得る。さらなる実施形態では、コントローラは、導電率センサからの導電率測定値に応答して、カソード区画を通る水の流量を調整するように構成され得る。さらなる実施形態では、コントローラは、導電率センサからの導電率測定値に応答して、アノード区画からカソード区画への流出物の流量を調整するように構成され得る。さらなる実施形態では、コントローラは、カソード区画を通る水の流量を、カソード上にスケールの形成をもたらさない流量に調整するように構成され得る。さらなる実施形態では、コントローラは、導電率センサからの導電率測定値に応答して、アノード区画を通る水の流量を調整するように構成され得る。さらなる実施形態では、コントローラは、アノードの目詰まり(blinding)を生じない流量まで、アノード区画を通る水の流量を最小化するように構成され得る。
【0008】
さらなる実施形態では、装置は、アノード区画からの流出物の少なくとも一部をアノード区画の入口に再循環させるように構成された再循環ラインを含み得る。
【0009】
さらなる実施形態では、装置は、カソード区画からの流出物の少なくとも一部をカソード区画の入口に再循環させるように構成された再循環ラインを含み得る。さらなる実施形態では、装置は、アノード区画からの流出物の少なくとも一部をカソード区画の入口に再循環させるように構成された第2の再循環ラインを含み得る。
【0010】
さらなる実施形態では、装置は、中央区画からの流出物の少なくとも一部を中央区画の入口に再循環させるように構成された再循環ラインを含み得る。さらなる実施形態では、装置は、中央区画からの流出物の少なくとも一部をアノード区画及びカソード区画の一方または両方の入口に再循環させるように構成された再循環ラインを含み得る。
【0011】
さらなる実施形態では、装置は、アノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの1つ以上からの流出物のうちの1つ以上から、水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つ以上を除去するように構成されたガス回収システムを含み得る。いくつかの実施形態では、ガス回収システムは1つ以上の真空ストリッパを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、アノードは、酸化イリジウムまたはマグネリ相チタン亜酸化物のうちの1つを含む酸素発生コーティングを備える。いくつかの実施形態では、アノードは、ステンレス鋼、イリジウム-コバルト(Ir-Co)、イリジウム-タンタル(Ir-Ta)、または他のイリジウム種もしくはタンタル種のうちの1つを含む合金を含んでもよい。
【0013】
一態様によれば、海水から水素、二酸化炭素、及び酸素を生成する方法が提供される。方法は、電解セルのアノード区画、カソード区画、及び中央区画のそれぞれに海水を導入するステップを含み得る。方法は、中央区画を通る流量、またはアノード及びカソードをわたる電流の一方または両方を、所定の範囲内のpHを示す中央区画から流出物をもたらすレベルに維持するステップを含み得る。方法は、カソード区画を通る流量を、カソード上のスケールの形成を軽減するレベルに維持することをさらに含み得る。方法は、アノード区画を通る流量を、アノードの目詰まりを軽減するレベルに維持するステップをさらに含み得る。方法は、アノード区画、中央区画、またはカソード区画のうちの1つ以上から、それぞれの流出物から水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つ以上を除去するステップをさらに含み得る。電解セルは、アノードと、カソードと、該アノードから離間し、かつアノード区画を画定する第1のカチオン透過性流体セパレータと、該カソードから離間し、かつカソード区画を画定する第2のカチオン透過性流体セパレータと、該第1のカチオン透過性流体セパレータと該第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定される中央区画と、該アノード区画、該カソード区画、及び該中央区画の各々を通る海水の流れを独立して制御するように構成されるフロー制御システムと、を含み得る。
【0014】
さらなる実施形態では、方法は、カソード区画を通る流量を、カソード上のスケールの形成を軽減する最低レベルに維持するステップを含み得る。
【0015】
さらなる実施形態では、方法は、アノード区画を通る流量を、アノードの目詰まりを軽減する最低レベルに維持するステップを含み得る。
【0016】
さらなる実施形態では、方法は、アノード区画に導入された海水と一緒に、アノード区画からの流出物の一部をアノード区画の入口に導入するステップを含み得る。
【0017】
さらなる実施形態では、方法は、アノード区画に導入された海水と一緒に、アノード区画からの流出物の一部をカソード区画の入口に導入するステップを含み得る。
【0018】
さらなる実施形態では、方法は、中央区画に導入された海水と一緒に、中央区画からの流出物の一部を中央区画の入口に導入するステップを含み得る。
【0019】
さらなる実施形態では、方法は、アノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの少なくとも1つを通る流量を、アノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの少なくとも1つの他のものとは異なるレベルに維持するステップを含み得る。
【0020】
さらなる実施形態では、方法は、カソード区画を通る流量を、中央区画を通る流量よりも高い流量に維持するステップを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
添付の図面は、一定の縮尺で描かれていない。図面では、様々な図に示されている各同一またはほぼ同一の構成要素が同様の符号によって表されている。明確にするために、すべての構成要素がすべての図面において符号付けされているわけではない。
【
図1】炭酸塩種を有する水から二酸化炭素及び水素を生成するためのイオン交換媒体を含有する既存の電気化学セルを図示する図である。
【
図2】一実施形態による、炭酸塩種を有する水から二酸化炭素及び水素を生成するための装置を図示する図である。
【
図3】代替実施形態による、炭酸塩種を有する水から二酸化炭素及び水素を生成するための装置を図示する図である。
【
図4A】
図4A~
図4Cは、異なる実施形態による、装置のためのアノード及びカソード構成を図示し、
図4Aは、平行板配置を示す。
【
図4B】
図4A~
図4Cは、異なる実施形態による、装置のためのアノード及びカソード構成を図示し、
図4Bは、同心管配置を示す。
【
図4C】
図4A~
図4Cは、異なる実施形態による、装置のためのアノード及びカソード構成を図示し、
図4Cは、螺旋状に巻かれた構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
世界の海洋の総炭素含有量は、約38,000ギガトン(GT)である。この炭素の95%以上は溶存した重炭酸イオン(HCO3
-)の形態である。この重炭酸イオンは炭酸イオン(CO3
2-)と共に、海洋深さの最初の100メートル未満で比較的一定である海洋のpHを緩衝(中和)し、維持する役割を果たす。海洋中に存在する溶存重炭酸イオン及び炭酸イオンは効果的に結合したCO2であり、これらの種の濃度の合計は溶存気体CO2とともに、海水の総二酸化炭素濃度[CO2]Tを表す。
【0023】
複雑な重炭酸塩-炭酸塩緩衝系によって比較的一定に保たれた典型的な海洋pH7.8では、[CO2]Tは表面付近で約2000μモル/kgであり、300メートル未満の深さで約2400μモル/kgである。これは、約100mg/Lの[CO2]Tに相当する。海洋中の合計CO2のうち、約2~3%が溶存気体CO2であり、約1%が溶存炭酸イオンとして存在し、残りの約96%が溶存重炭酸イオンとして存在する。CO2とその種々のイオン形態を含有する水の平衡状態及び濃度は、水のpHに依存することが知られている。例えば、海水pH4.5では、海水中の全炭酸塩種の99%が炭酸、H2CO3として存在する。したがって、HCO3
-をH2CO3に変換するために、海水のpHを低下させ得る。
【0024】
水中に溶存したCO2は、式(1)に示すようにH2CO3と平衡状態にある。
CO2+H2O ⇔ H2CO3 (1)
【0025】
水和平衡定数は1.70×10-3である。これは、H2CO3は水中で安定ではなく、気体CO2はpH4.5で容易に解離し、それによって海水が酸性化されると、CO2は脱気またはストリッピングによって容易に除去され、不安定なH2CO3は確実に主な炭酸塩種に脱プロトン化されることを示す。
【0026】
電気化学セルは、海洋、沖合、地方自治体、工業、及び商品化において使用される。電気化学セルの設計パラメータ、例えば、電極間隔、電極の厚さ及びコーティング密度、電極面積、電気的接続の方法などは、異なる実装に対して選択することができる。本明細書に開示される態様および実施形態は、電極の数、電極間の空間、電極材料、電極間の任意のスペーサの材料、電気化学セル内のパスの数、または電極コーティング材料に限定されない。
【0027】
膜によって囲まれた区画内にイオン交換媒体を含む電気化学セルは、
図1に示される既存の電気化学セルなど、炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するために使用されてきた。作動中、通電されると、水中に存在するナトリウムイオンは、水がカチオン(陽[正]イオン)交換樹脂を含有する区画を形成する2つのカチオン交換膜を通過するときに、水素イオンと交換される。電気化学セルのカソード側では、水酸化ナトリウム及び水素ガスが生成され、アノード側では、酸素ガスが生成される。水素イオンは、不活性媒体、例えばセラミック粒子を含む電気化学セルの中央区画に入り、カチオン交換膜のイオン移動効率を改善し、海水の酸性化を引き起こす。
【0028】
本開示は電気化学セル及び電気化学デバイスの様々な実施形態を説明するが、本開示は電気化学セルまたはデバイスに限定されず、本明細書に開示される態様および実施形態は複数の目的のうちのいずれか1つに使用される電解セルおよび電気化学セルに適用可能である。
【0029】
特定の非限定的な実施形態では、本開示は、炭酸塩種を有する水の連続酸性化、および連続水素ガス生成による溶存二酸化炭素の回収のための電気化学セルを記載する。電気化学セルへの流入物は、酸性化の前に水中の塩などの種の濃度を低減するための上流処理を必要とせずに、炭酸塩種を有する水、例えば、塩水、例えば、海水、汽水、またはプロセス水である。本明細書で使用するとき、「生理食塩水(saline)」とは、高濃度の溶解した固体または塩、例えば、約500ppm~約35,000ppmの溶解した塩の濃度を含有する水である。本開示に記載の電気化学セルは、アノード区画の第1の側に配置されたアノードを有するアノード区画と、カソード区画の第1の側に配置されたカソードを有するカソード区画とを含む。アノード区画及びカソード区画は、電解質も媒体も含まず、該区画を通る炭酸塩種を有する水のより高い流れを可能にする。炭酸塩種を有する水の、区画を通る流速が大きいほど、アノードおよびカソードなどの区画の構造要素上でのスケール形成の可能性が低減される。本明細書で使用される場合、流速は、1つ以上の区画の入口に向けられた水がどのくらい速く移動するかについて単位時間当たりの距離として測定された尺度である。流量は、単位時間当たりに送出される水の量の尺度である。炭酸塩種を含む水の流速は一般に、透過性セパレータを渡るイオンの分配、すなわち、水の酸性化、および装置からのO2、H2、およびCO2の生成を制御する。一般に、流量、さまざまな装置構成要素のアスペクト比、および処理される水とさまざまな装置構成要素との間の摩擦係数など、測定または定量化され得る他の変数は、装置の区画を通る水の流速に影響を及ぼす。
【0030】
電気化学セルは、アノード区画の第2の側に配置された第1のカチオン透過性流体セパレータと、カソード区画の第2の側に配置された第2のカチオン透過性流体セパレータとを含む。中央区画は、第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定される。中央区画は、媒体を含まなくてもよい。電気化学セルは、アノード区画、カソード区画、および中央区画のそれぞれを通る炭酸塩種を有する水の流れを独立して制御するように構築および配置されたフロー制御システムを含む装置の一部であり得る。
【0031】
動作中、流入物として炭酸塩種を有する水を用いて装置に印加される電流が、カソード区画内に水素ガス(H2)を生成し、またいずれかの区画内に存在する任意の媒体、例えばイオン交換樹脂を必要とすることなく、水分解を介してアノード区画内に水素イオン(H+)を生成する。H+イオンは、第1のカチオン透過性流体セパレータを通過して中央区画に入り、その中を流れる炭酸塩種を有する水のpHを低下させる。中央区画は、装置を通る炭酸塩種を有する水の流速がスケーリング(スケール形成)及び性能低下を低減するのに十分であるので、第1のカチオン透過性流体セパレータまたは第2のカチオン透過性流体セパレータのイオン移動能力または性能を高めるために、セラミック粒子などの不活性媒体を使用する必要がない。炭酸塩種を有する水のpHのこの低下により、式(1)で定義された平衡によって規定されるように、炭酸塩種を有する水中に存在する炭酸塩(CO3
2-)および重炭酸塩(HCO3
-)イオンの二酸化炭素(CO2)気体への転化へとつながる。炭酸塩種を含む水のpHを減少させ、またCO2を生成するために、電流もしくは電力またはイオン交換媒体を追加する必要はない。
【0032】
アノード区画、カソード区画、および中央区画内で起こる反応は、それぞれ式(2)~(4)を含む:
2H2O → 4H++O2+4e ̄ (2)
4H2O+4Na++4e ̄ → 4NaOH+2H2 (3)
4NaHCO3+4H+ → 4Na++4H2CO3 (4)
したがって、装置について全体的な反応(式5)は、
2H2O+4NaHCO3 → 4CO2+4NaOH+8H2+O2 (5)
となる。
ここで、CO2は式(1)の平衡に従って中央区画内で形成され、NaOHおよびH2はカソード区画に形成され、O2はアノード区画に形成される。これらの反応生成物は捕捉されるか、または他の方法で収集され、エネルギー生成、有機合成、および水の酸素化(例えば、水産用途)などの関連プロセスのための供給原料として使用できる。
【0033】
炭酸塩種源を有する水から二酸化炭素および水素を生成するための装置の一実施形態を
図2に示す。
図2において、装置100は、アノード区画102の第1の側に配置されたアノード102aを有するアノード区画102と、カソード区画の第1の側に配置されたカソード104aを有するカソード区画104とを含む。第1のカチオン透過性流体セパレータ106はアノード区画102の第2の側に配置され、第2のカチオン透過性流体セパレータ108はカソード区画104の第2の側に配置される。装置100は、第1のカチオン透過性流体セパレータ106と第2のカチオン透過性流体セパレータ108との間に画定された中央区画110を含む。
【0034】
アノードおよびカソードは本明細書で使用される場合、一般に、1つ以上の金属、例えば、チタン、アルミニウム、ニッケル、他の金属、またはそれらの合金から形成される、それらを含む、またはそれらからなる電極を指すと理解される。いくつかの実施形態では、アノードおよび/またはカソードは、異なる金属の複数の層を含み得る。本明細書に開示される実施形態のうちの任意の1つ以上において利用される金属電極は、炭酸塩種を有する水による化学的侵食に対して高い耐性を有する金属または金属酸化物でコーティングされた、高導電性金属、例えば銅またはアルミニウムのコア、例えばチタン、白金、混合金属酸化物(MMO)、マグネタイト相チタン(例えばTi4O7)、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、タンタル、パラジウム、イリジウム、銀、金、または他のコーティング材料を含み得る。アノードまたはカソードは例えば、白金、MMO、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、タンタル、パラジウム、イリジウム、銀、金、または他のコーティング材料などの耐酸化性コーティングでコーティングされてもよいが、これらに限定されない。本明細書に開示される実施形態において利用される混合金属酸化物は、ルテニウム、ロジウム、タンタル(任意でアンチモンおよび/もしくはマンガンと合金化されたもの)、チタン、イリジウム、亜鉛、スズ、アンチモン、チタン-ニッケル合金、チタン-銅合金、チタン-鉄合金、チタン-コバルト合金、または他の適切な金属もしくは合金のうちの1つ以上の酸化物を含み得る。
【0035】
本明細書に開示される実施形態で利用されるアノードは、白金および/もしくはイリジウム、ルテニウム、スズ、ロジウム、またはタンタルのうちの1つ以上の酸化物(任意でアンチモンおよび/もしくはマンガンと合金化されるもの)でコーティングされてもよい。本明細書に開示される実施形態において利用されるカソードは、白金および/もしくはイリジウム(例えば、IrO2)、ルテニウム、並びにチタン、例えば、マグネリ相チタン(例えば、Ti4O7)のうちの1つ以上の酸化物でコーティングされてもよい。本明細書に開示される電気化学セルの実施形態のいずれかにおいて利用される電極は、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、および/またはシリコンのうちの1つ以上の基材を含み得る。本明細書に開示される装置内の電気化学セルのいずれかの電極は、プレート、シート、箔、押出物、および/または焼結物として、またはそれらから形成することができる。アノードおよびカソードは、固体電極、メッシュ電極、またはパターン電極であり得る。
【0036】
続けて
図2を参照すると、アノード102aおよびカソード104aは、装置100内の任意の適切な配置とすることができる。例えば、アノード102aおよびカソード104aは、それぞれ、
図4A~
図4Cに示されるように、プレートおよびフレーム構成、同心管配置、または螺旋巻き配置で配備され得る。
図4Aのプレートおよびフレーム構成は、電気的に並列に接続された各端部に電極のセットを含み、一方のセットはDC電源からの正の出力に接続され、他方のセットは負の出力に接続される。間の電極は双極性である。
図4Bの同心管配置は、アノードおよびカソード(またはアノード-カソード一対)を含み、これらは、アノードとカソードとの間の有効領域またはギャップを通過する炭酸塩種を有する水の実質的にすべてまたはすべてを、有効領域をほぼまたは完全に軸線方向に通過する方向に導くように構築および配置される。有効領域を通るほぼまたは完全に軸線方向となる方向は、電気化学セルおよび/またはアノードおよびカソード(またはアノード-カソード一対)の中心軸線に平行またはほぼ平行であり得る。アノード102aおよびカソード104aの有効領域を通過して流れる炭酸塩種を有する水は、たとえ炭酸塩種を有する水の流れが有効領域を通る間に乱流および/または渦を示すとしてもなお、有効領域をほぼまたは完全に軸線方向に流れると考えることができる。
【0037】
第1のカチオン透過性流体セパレータ106および第2のカチオン透過性流体セパレータ108は、装置100の使用中の高い流量および圧力に対して所望のイオン伝達および物理的特性を提供することができる任意の適切な分離媒体であり得る。例えば、第1のカチオン透過性流体セパレータ106および第2のカチオン透過性流体セパレータ108の一方または両方を作製するために使用される材料は、高い耐摩耗性、柔軟性、および選択的イオン交換のために選択されてもよく、また流体セパレータを作製するために使用される材料は、1つ以上の異なる材料を組み込んでもよい。高い耐摩耗性はセラミックまたは酸化物材料を組み込むことによって付与され得、柔軟性はポリマー種を組み込むことによって付与され得、また、選択的イオン交換は特定の化学官能化によって達成され得る。いくつかの実施形態では、カチオン透過性流体セパレータ106および第2のカチオン透過性流体セパレータ108の一方または両方は、カチオン交換膜であり得る。あるいは、カチオン透過性流体セパレータ106および第2のカチオン透過性流体セパレータ108の一方または両方は、低温水熱液相緻密化などのプロセスを使用して製造された硬質セラミックセパレータであり得る。これらのプロセスを用いて製造された流体セパレータは、炭酸塩種を有する水の酸性化および生成ガス発生のための装置効率を改善するために、機能的表面積対体積の比を変化させる幾何学的形状に形成することができる。
【0038】
装置100は、アノード区画102、カソード区画104、および中央区画110のそれぞれを通る炭酸塩種を有する水の流れを独立して制御するように構築および配置されたフロー制御システム101をさらに含む。フロー制御システム101は、装置100の全体にわたって配置されたポンプ105または弁などの流体の流れを制御するために使用される要素に動作可能に結合され得る。装置100は、フロー制御システムに動作可能に結合された、アノード区画102、カソード区画104、および中央区画110の上流側または下流側の一方または双方に配置された流量計または流量センサ111を含む。図示のように、流量計または流量センサ111は、アノード区画102、カソード区画104、および中央区画110の上流側に配置されるが、本開示は、アノード区画102、カソード区画104、および中央区画110の下流側に配置されたほぼ同等の流量計または流量センサも想定している。
【0039】
続けて
図2を参照すると、装置100は、アノード区画102、カソード区画104、および中央区画110のそれぞれへの流入物として、炭酸塩種を有する水源、例えば、生理食塩水、例えば、海水、汽水、処理水保持液、またはプロセス水に接続可能である。炭酸塩種を有する水源は、アノード区画102、カソード区画104、および中央区画110にそれぞれ接続可能な独立した水源107a、107b、または107cであり得る。あるいは、アノード区画102、カソード区画104、および中央区画110はそれぞれ、炭酸塩種を有する単一の水源に接続可能であってもよく、その場合、水源107a、107b、および107cはそれぞれ、炭酸塩種を有する同じ水源であってもよい。
【0040】
装置100は、炭酸塩種流入物107a、107b、もしくは107c並びに/または流出物109a、109b、および109cを有する水の1つ以上のパラメータを測定するように構築および配置された、アノード区画、カソード区画、および中央区画の上流側または下流側に配置された1つ以上のセンサを含む。1つ以上のセンサは例えば、流量計、水位センサ、導電率計、抵抗率計、化学濃度計、濁度モニター、化学種比濃度センサ、温度センサ、pHセンサ、酸化還元電位(ORP)センサ、圧力センサ、もしくは任意の他のセンサ、プローブ、またはアノード、カソード、および中央区画のうちの任意の1つ以上に入る炭酸塩種を有する水、またはそれらから出る流出物を有する水の所望の特性またはパラメータの指標を提供するために有用な科学的機器を含み得る。
図2に示すように、装置100は、中央区画110の下流側に配置され、中央区画110からの流出物109cのpHを測定するように構成されたpHセンサ120を含む。pHセンサ120は、任意のタイプの適切なpHセンサである。装置100は、アノード102aとカソード104aとの間の導電率を測定するように構築及び配置された導電率センサ122をさらに含む。
【0041】
続けて
図2を参照すると、装置100は、装置100の動作を制御するように一般に構築及び配置されたコントローラ103を含む。いくつかの実施形態では、コントローラ103は、pHセンサ120から、中央区画110からの流出物109cのpHの測定値を受け取るように構成される。コントローラ103は、中央区画110を通る中央区画用の炭酸塩種107cを有する水源からの炭酸塩種を有する水の流量、またはアノード102aおよびカソード104aにわたって印加される電流の一方または両方を、例えば、フロー制御システム101と通信することによって調整して、中央区画110からの流出物109cのpHを所定のレベルに維持するように構成される。この所定のpHレベルは、典型的には約2.5~約6.5、例えば、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、または約6.5である。炭酸塩種流出物109a、109b、および109cを有する水は、炭酸塩種を含み、その所定レベルは、式(1)に示されるように、中央区画110からの流出物109c中の炭酸塩種の大部分がCO
2およびH
2Oと平衡状態にある炭酸H
2CO
3として存在するレベルである。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、アノード区画内の水素イオンの生成および中央区画内の水素イオンの消費は、それぞれの区画を通る水の流れと相関する。したがって、これらの区画を通る水の流れを制御することで、中央区画の流出物109cのpHを制御することが可能となる。
【0042】
いくつかの実施形態では、導電率センサ122からの出力は、コントローラ103に送信され、また、装置100を通る炭酸塩種を有する1つ以上の水の流量を調整するかどうかを決定するためにコントローラ103によって使用される。装置100内外への炭酸塩種を有する水の流量を調整することで、中央区画110を通る炭酸塩種を有する酸性化水の生成、すなわちpHを調整し、装置100の効率を改善し、装置100のエネルギー消費を低減し、メンテナンスのダウンタイムを低減することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ103は、導電率センサ122からの導電率測定値に応答して、カソード区画104を通るカソード流入物107bからの炭酸塩種を有する水の流量を調整するように構成される。
【0043】
いくつかの実施形態では、コントローラ103は、各々、アノード区画、カソード区画、および中央区画からの流出物109a、109b、および109cのうちの1つ以上の流出物の導電率を測定するように配置された1つ以上の導電率センサから導電率測定値を受信し得る。アノード区画、カソード区画、および中央区画からのそれぞれの流出物109a、109b、および109cからの導電率測定値がコントローラ103によって用いられることで、中央区画内の水の酸性化およびCO2の生成を制御するために、それぞれの区画を個々に、または個々の区画の組合せを通じて、水の流れを調整する方法が決定され得る。
【0044】
導電率センサ122からの測定値は、カソード104a上のイオンスケールの形成の指標となり、カソード区画104を通る流量を増加させると、カソード104a上のさらなるスケーリングの可能性を減少させる。いくつかの実施形態では、コントローラ103は、導電率センサ120からの導電率測定値に応答して、アノード区画102からカソード区画104への流出物109aの流量を調整するように構成される。導電率センサ122からの測定値は、カソード104a上のイオンスケールの形成の指標となり、アノード区画102からカソード区画104への流出物109aの流量を増加させると、カソード104a上のさらなるスケーリングの可能性を減少させる。加えて、式(2)~(4)に示すように、カソード区画104内の化学反応はNaOHを生成し、これが苛性であり、第2のカチオン透過性流体セパレータ108の劣化またはカソード104aの劣化を引き起こすおそれがある。再循環ライン118からカソード区画104への再循環水は、その中のNaOH濃度を低減し、カソード104a上のスケールを減少させ、装置100の寿命を延ばす。いくつかの実施形態では、コントローラ103は、カソード区画104を通るカソード流入物107bからの炭酸塩種を有する水の流量を、カソード上にスケールが形成されない流量まで最小化するように構成される。本開示の文脈において使用されるように、カソード上のスケールは一般に、処理中に水のpHが変化することにつれて形成される沈降炭酸塩および酸化物などの沈降種から形成される電極上の任意のコーティングを含むことができる。カソード上にスケールが形成されると、カソードの有効領域の表面積が低下し、水の還元によるH2気体の形成に対するカソードの効率が低下し得る。カソード区画を通る水の流量および/または流速は、カソード上に吸着し得るスケールの析出を低減するために装置を通る充分な流れを維持しながら、中央区画内のH2の形成、とそれに続くCO2気体の生成とのバランスを取る流量に調整、すなわち、低下させることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、コントローラ103は、導電率センサ120からの導電率測定値に応答して、アノード流入物107aからアノード区画102を通る炭酸塩種を有する水の流量を調整するように構成される。いくつかの実施形態では、コントローラ103は、アノード流入物107aからアノード区画102を通る炭酸塩種を有する水の流量を、ガス、例えば、アノード102aで生成されたO2によるアノード102aの目詰まりをもたらさない流量まで最小限にするように構成される。本明細書で使用するとき、電極上の目詰まりとは一般に、電極の有効領域、例えばアノードの有効領域の一部にガスの気泡が付着し、通電されたときのさらなるガス生成効率が低下することを指す。アノードの目詰まりは一般に、電気化学プロセスから生成されるガスの体積を測定し、その測定された体積を、関連する半反応に基づいて理論的に予測されるものと比較することによって、またはアノード/カソード対をわたるコンダクタンス(伝導率)を測定することによって評価することができる。アノード区画を通る水の流速および/または流速は、装置を通る充分な流れを維持して、アノード上に吸着し得る気泡の形成を低減しながら、中央区画内でのO2気体の形成と、それに続いくCO2気体の形成とのバランスをとる流量に調整、すなわち、低下させることができる。
【0046】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、流量の増加は一般に、カソード区画内での炭酸塩種を有する水の滞留時間を短縮し、それにより、炭酸塩種を有する水中のイオンがカソードの帯電表面に接触している時間を短縮する。このことは、アノード区画を通る滞留時間の減少によりアノード上のO2の生成を減少させるため、アノードにも当てはまる。例えば、装置を通る炭酸塩種を有する水の流量は、約0.1m/s~約10m/s、例えば、約0.1m/s~約10m/s、約0.5m/s~約9m/s、約1m/s~約8m/s、約2m/s~約7m/s、約3m/s~約6m/s、または約4m/s~約5m/s、例えば、約0.1m/s、約0.5m/s、約1m/s、約1.5m/s、約2m/s、約2.5m/s、約3m/s、約3.5m/s、約4m/s、約4.5m/s、約5m/s、約5.5m/s、約6m/s、約6.5m/s、約7m/s、約7.5m/s、約8m/s、約8.5m/s、約9m/s、約9.5m/s、または約10m/sであり得る。特定の実施形態では、装置を通る炭酸塩種を有する水の流量は、約2m/s~3m/sであってもよい。
【0047】
コントローラ103は、1つ以上のコンピュータシステムを使用して実装され得る。コンピュータシステムは例えば、Intel CORE(登録商標)タイプのプロセッサ、Intel XEON(登録商標)タイプのプロセッサ、Intel CELERON(登録商標)タイプのプロセッサ、AMD FXタイプのプロセッサ、AMD RYZEN(登録商標)タイプのプロセッサ、AMD EPYC(登録商標)タイプのプロセッサ、およびAMD RシリーズもしくはGシリーズのプロセッサ、もしくは他のタイプのプロセッサ、またはそれらの組み合わせに基づくコンピュータなどの汎用コンピュータであり得る。あるいは、コンピュータシステムは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特別にプログラムされた専用ハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、または分析システム用のコントローラを含み得る。いくつかの実施形態では、コントローラ103は、ユーザまたはオペレータが装置100の関連する動作パラメータを閲覧し、前記動作パラメータを調整し、および/または必要に応じて装置100の動作を停止することを可能にするように構築および配置されたユーザインターフェースに操作可能に接続されるか、または接続可能であり得る。ユーザインターフェースは、ユーザまたはサービスプロバイダによって対話され、装置100のステータス情報を出力するように構成されたディスプレイを含むグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含み得る。
【0048】
コントローラ103は、例えば、ディスクドライブメモリ、1つ以上のメモリデバイスに通常接続される1つ以上のプロセッサを含むことができ、メモリデバイスは例えば、ディスクドライブメモリ、フラッシュメモリデバイス、RAMメモリデバイス、またはデータを記憶するための他のデバイスのうちの任意の1つ以上を備えることができる。1つ以上のメモリデバイスは、装置100の動作中にプログラムおよびデータを記憶するために使用され得る。例えば、メモリデバイスは、ある期間にわたるパラメータに関する履歴データを記憶するために使用され得る。本発明の実施形態を実装するプログラミングコードを含むソフトウェアは、コンピュータ可読および/または書き込み可能な不揮発性記録媒体に記憶され、次いで、典型的には1つ以上のメモリデバイスにコピーされ、1つ以上のプロセッサによって実行され得る。そのようなプログラムコードは複数のプログラミング言語、例えば、ラダーロジック、Python、Java、Swift、Rust、C、C#、もしくはC++、G、Eiffel、VBA、またはそれらの様々な組合せのいずれかで記述され得る。
【0049】
続けて
図2を参照すると、装置100は、アノード流出物109a、カソード流出物109b、および中央流出物109cのうちの1つ以上からの流出物の一部を、アノード区画102、カソード区画104、および/または中央区画110の1つ以上の入口に戻すように構築および配置された1つ以上の再循環ラインを含む。いくつかの実施形態では、装置100は、アノード区画102からアノード区画102の入口まで流出物109aの少なくとも一部を再循環するように構成された再循環ライン112を含む。代替の実施形態では、
図3に示されるように、中央区画110からの流出物109cの一部は、導管115aを介してアノード区画102および導管115bを介してカソード区画104の両方のうちの一方の入口に導かれ得る。中央区画110からの流出物109cを使用して、アノード区画102への流入物のpHを低下させることができ、これにより、アノード区画102内の酸素発生の効率、例えば、H+利用性を改善することができる。中央区画110からの流出物109cを使用して、カソード区画104中の全炭酸塩種濃度を低下させることができ、これにより、カソード104a上のスケール形成を減少させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、装置100は、カソード区画104からの流出物109bの少なくとも一部をカソード区画104の入口まで再循環するように構成された再循環ライン114を含む。カソード区画104からの流出物109bからカソード区画104の入口までの再循環ライン114は、カソード区画流出物109b中に存在する二価種の濃度を低減するためのインライン処理システム124をさらに含み得る。例えば、インライン処理システム124は、ナノ濾過、逆浸透、イオン交換処理、ナノビーズ処理、電気脱イオン化、および静電脱イオン化のうちの1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。カソード区画104を通る高い水速度がスケーリングの潜在性を十分に低下させることができないと判断された場合、インライン処理システムを使用して、カソード104aのスケーリングの潜在性を低下させ得る。いくつかの実施形態では、装置100は、アノード区画からの流出物109aの少なくとも一部をカソード区画104の入口まで再循環するように構成された第2の再循環ライン116を含む。いくつかの実施形態では、装置100は、中央区画109cからの流出物の少なくとも一部を中央区画110の入口まで再循環させるように構成された再循環ライン117を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、装置100は、アノード区画102、カソード区画104、または中央区画110のうちの1つ以上からの流出物から1つ以上の溶存ガスを除去するように構築および配置されたガス回収システム113a、113b、113cを含む。
図2に示すように、アノード区画102、カソード区画104、または中央区画110からの流出物109a、109b、および109cは、ガス回収システム113a、113b、および113cを有する。あるいは、装置100は、アノード区画102、カソード区画104、または中央区画110それぞれからの流出物109a、109b、および109cのための出口の各々に接続可能な1つのガス回収システムを含み得る。ガス回収システム113a、113b、113cは、水から溶存ガスを除去することができる任意の適切なシステムとすることができ、強制通風脱気装置、遮断タンク、真空ストリッパ、空気ストリッパ、または膜脱気装置が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ガス回収システムは、1つ以上の真空ストリッパを含む。ガス回収システムは、アノード区画102、カソード区画104、および/または中央区画110からの流出物109a、109b、109cのうちの1つ以上から、H
2、CO
2、およびO
2のうちの1つ以上を除去するように構築および配置される。ガス回収システムは、アノード区画102、カソード区画104、または中央区画110のうちの1つ以上からの流出物109a、109b、109cのうちの1つ以上から、H
2、CO
2、および/またはO
2の少なくとも80%を除去するように構成され得る。特定の実施形態では、ガス回収システムは、アノード区画102、カソード区画104、または中央区画110の1つ以上からの流出物109a、109b、109cのうちの1つ以上から、H
2、CO
2、およびO
2の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、99.999%、または100%を除去するように構成され得る。
【0052】
一態様によれば、海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法が提供される。方法は、電解セルのアノード区画、カソード区画、および中央区画のそれぞれに海水を導入するステップを含み得る。方法は、中央区画を通る流量、またはアノードおよびカソードをわたる電流の一方または両方を、中央区画からの流出物を所定の範囲内のpHを示すレベルに維持するステップを含み得る。方法は、カソード区画を通る流量を、カソード上のスケールの形成を軽減するレベルに維持するステップをさらに含み得る。方法は、アノード区画を通る流量を、アノードの目詰まりを軽減するレベルに維持するステップをさらに含み得る。方法は、アノード区画、中央区画、またはカソード区画のうちの1つ以上のそれぞれからの流出物から、水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つ以上を除去することをさらに含み得る。電解セルは、アノードと、カソードと、アノードから離間しアノード区画を画定する第1のカチオン透過性流体セパレータと、カソードから離間しカソード区画を画定する第2のカチオン透過性流体セパレータと、第1のカチオン透過性流体セパレータと第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定される中央区画と、ならびに、アノード区画、カソード区画、および中央区画の各々を通る海水の流れを独立して制御するように構成されるフロー制御システムとを含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、方法は、カソード区画を通る流量を、カソード上のスケールの形成を軽減する最低レベルに維持するステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、アノード区画を通る流量をアノードのガス目詰まりを軽減する最低レベルに維持するステップをさらに含み得る。
【0054】
海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法は、ガスの生成および発生したガスによるアノードの目詰まりを低減するために、アノード区画に導入された海水と一緒に、アノード区画からの流出物の一部をアノード区画の入口に導入するステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、カソード区画で生成される苛性種の濃度を低減するために、アノード区画に導入された海水と一緒に、アノード区画からの流出物の一部をカソード区画の入口に導入するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、カソード上のスケールの形成を低減するために、カソード区画に導入された海水と一緒に、カソード区画からの流出物の一部をカソード区画の入口に導入するステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、中央区画に導入された海水と一緒に、中央区画からの流出物の一部を中央区画の入口に導入して、平衡をCO2気体の発生方向にシフトさせるステップをさらに含み得る。
【0055】
海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法は、アノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの少なくとも1つを通る流量を、アノード区画、カソード区画、または中央区画のうちの少なくとも1つの他のものとは異なるレベルに維持するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、カソード区画を通る流量を中央区画を通る流量よりも高い流量に維持して、カソード上のスケールを低減し、カソード区画内に形成される苛性種、例えば、NaOHの濃度を減少するステップをさらに含み得る。
【0056】
本明細書で使用される表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定するものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、用語「複数」は、2つ以上のアイテムまたは構成要素を指す。「備える/含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、及び「包含する(involving)」という用語は、明細書又は請求項等のいずれにおいても、開放された(open-ended)用語、すなわち「含むが、これに限定されない」を意味するものである。従って、そのような用語の使用は、その後に列挙される項目、及びその等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。「からなる」および「本質的にからなる」という移行句のみが、それぞれ、特許請求の範囲に関して、閉じた(closed)または半閉じた(semi-closed)移行句である。請求項要素を修正するための請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用それ自体は、ある請求項要素の別の請求項要素に対する優先順位、上位、もしくは順序、または方法の動作が実施される時間的順序を意味するものではなく、別の請求項要素、又は方法の動作が実行される時間的順序よりも重要であることを意味するものではなく、単に、請求項要素を区別するために、特定の名称を有する1つの請求項要素を、同じ名称(ただし、序数用語の使用のための)を有する別の要素から区別するための標識として使用される。
【0057】
このように少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明してきたが、当業者には様々な変更、修正、および改良が容易に思い浮かぶであろうことを理解されたい。任意の実施形態に記載された任意の特徴は、任意の他の実施形態の任意の特徴に含まれてもよく、またはそれら任意の特徴と代えてもよい。そのような変更、修正、および改良は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の範囲内であることが意図される。従って、前述の記載及び図面は例示の目的のみである。
【0058】
当業者であれば、本明細書に記載のパラメータおよび構成が例示的であり、実際のパラメータおよび/または構成は、開示される方法および材料が使用される特定用途に依存することを理解すべきである。当業者はまた、日常的な実験のみを用いて、開示された特定の実施形態と同等のものを認識するか、または確認することができるはずである。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸塩種を有する水から二酸化炭素および水素を生成するための装置であって、
アノード区画と、
前記アノード区画の第1の側に配置されたアノードと、
カソード区画と、
前記カソード区画の第1の側に配置されたカソードと、
前記アノード区画の第2の側に配置された第1のカチオン透過性流体セパレータと、
カチオン性区画の第2の側に配置された第2のカチオン透過性流体セパレータと、
前記第1のカチオン透過性流体セパレータと前記第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定された中央区画と、
前記アノード区画、前記カソード区画、および前記中央区画のそれぞれを通る前記水の流れを独立して制御するように構成されたフロー制御システムと、
を備える装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記アノード区画、前記カソード区画、および前記中央区画の各々に流体的に接続可能な水源を備える、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記中央区画の下流側に配置され、該中央区画からの流出物のpHを測定するように構成されたpHセンサを備える、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、さらに、前記pHセンサから、前記中央区画からの前記流出物のpH測定値を受け取り、また、該中央区画を通る前記水の流量または前記アノードおよびカソードをわたって印加される電流の一方または両方を調整して、該中央区画からの該流出物のpHを所定のレベルに維持するように構成されたコントローラを備える、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、前記所定のレベルは、前記中央区画からの前記流出物中の炭酸塩種の大部分がH
2CO
3として存在するレベルである、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、前記コントローラは、前記中央区画からの前記流出物のpHを約2.5~約6.5の範囲内に維持するように構成されている、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記アノード、前記カソード、および前記中央区画からの1つ以上の流出物の導電率を測定するように構成された導電率センサを備える、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、前記コントローラは、さらに、前記導電率センサからの導電率測定値に応答して、前記カソード区画を通る前記水の流量を調整するように構成されている、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、前記コントローラは、さらに、前記導電率センサからの導電率測定値に応答して、前記アノード区画から前記カソード区画への流出物の流量を調整するように構成されている、装置。
【請求項10】
請求項7に記載の装置において、前記コントローラは、さらに、前記カソード区画を通る前記水の流量を、前記カソード上にスケールの形成をもたらさない流量に調整するように構成されている、装置。
【請求項11】
請求項7に記載の装置において、前記コントローラは、さらに、前記導電率センサからの導電率測定値に応答して、前記アノード区画を通る前記水の流量を調整するようにさらに構成されている、装置。
【請求項12】
請求項7に記載の装置において、前記コントローラは、さらに、前記アノード区画を通る前記水の流量を、前記アノードの目詰まりをもたらさない流量に最小化するように構成されている、装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記アノード区画からの流出物の少なくとも一部を該アノード区画の入口に再循環させるように構成された再循環ラインを備える、装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記カソード区画からの流出物の少なくとも一部を該カソード区画の入口に再循環させるように構成された再循環ラインを備える、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、さらに、前記アノード区画からの流出物の少なくとも一部を前記カソード区画の前記入口に再循環させるように構成された第2の再循環ラインを備える、装置。
【請求項16】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記中央区画からの流出物の少なくとも一部を該中央区画の入口に再循環させるように構成された再循環ラインを備える、装置。
【請求項17】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記中央区画からの流出物の少なくとも一部を、前記アノード区画の入口および前記カソード区画の入口の一方または両方に再循環させるように構成された再循環ラインを備える、装置。
【請求項18】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記アノード区画、前記カソード区画、または前記中央区画のうちの1つ以上の前記流出液から、水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つ以上を除去するように構成されたガス回収システムを備える、装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、前記ガス回収システムは、1つ以上の真空ストリッパを含む、装置。
【請求項20】
請求項1に記載の装置において、前記アノードは、亜酸化イリジウム、マグネリ相二酸化チタン、ステンレス鋼、イリジウム-コバルト(Ir-Co)、イリジウム-タンタル(Ir-Ta)、または他のイリジウムもしくはタンタル種のうちの1つを含む酸素発生コーティングを含む、装置。
【請求項21】
海水から水素、二酸化炭素、および酸素を生成する方法であって、
電解セルのアノード区画、カソード区画、および中央区画のそれぞれに海水を導入するステップであり、前記電解セルは、
アノードと、
カソードと、
前記アノードから離間され、アノード区画を画定する第1のカチオン透過性流体セパレータと、
前記カソードから離間され、カソード区画を画定する第2のカチオン透過性流体セパレータと、
前記第1のカチオン透過性流体セパレータと前記第2のカチオン透過性流体セパレータとの間に画定された中央区画と、及び
前記アノード区画、前記カソード区画、および前記中央区画のそれぞれを通る前記海水の流れを独立して制御するように構成されたフロー制御システムと、
を含むものである、該海水を導入するステップと、
前記中央区画を通る流量、または前記アノードおよび前記カソードをわたる電流の一方または両方を、該中央区画からの流出物が所定の範囲内のpHを示すレベルに維持するステップと、
前記カソード区画を通る流量を前記カソード上のスケールの形成を軽減するレベルに維持するステップと、
前記アノード区画を通る流量を、前記アノードの目詰まりを軽減するレベルに維持するステップと、
前記アノード区画、前記中央区画、または前記カソード区画のうちの1つ以上からの流出物からそれぞれ、水素、二酸化炭素、または酸素のうちの1つ以上を除去するステップと、
を備える、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、さらに、前記カソード区画を通る前記流量を、前記カソード上のスケールの形成を軽減する最低レベルに維持するステップを備える、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、さらに、前記アノード区画を通る前記流量を、前記アノードの目詰まりを軽減する最低レベルに維持するステップを備える、方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、さらに、前記アノード区画に導入された前記海水と一緒に、該アノード区画からの流出物の一部を該アノード区画の入口に導入するステップを備える、方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、さらに、前記アノード区画に導入された前記海水と一緒に、該アノード区画からの流出物の一部を前記カソード区画の入口に導入するステップを備える、方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法であって、さらに、前記アノード区画に導入された前記海水と一緒に、該アノード区画からの流出物の一部を該アノード区画の入口に導入するステップを備える、方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法であって、さらに、前記中央区画に導入された前記海水と一緒に、該中央区画からの前記流出物の一部を該中央区画の入口に導入するステップを備える、方法。
【請求項28】
請求項21に記載の方法であって、さらに、前記アノード区画、前記カソード区画、または前記中央区画のうちの少なくとも1つを通る前記流量を、該アノード区画、該カソード区画、または該中央区画のうちの少なくとも1つの他のものとは異なるレベルに維持するステップを備える、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、さらに、前記カソード区画を通る前記流量を、前記中央区画を通る前記流量よりも高い流量に維持するステップを備える、方法。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正4】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正5】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正6】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【国際調査報告】