(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】一価の抗MerTK抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/40 20060101AFI20240718BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240718BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240718BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240718BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240718BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240718BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C07K16/40
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P37/04
A61P1/04
A61P15/00
A61P1/16
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577533
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022033629
(87)【国際公開番号】W WO2022266221
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517041235
【氏名又は名称】アレクトル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】リー スン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ニヴィチャニョン タランスリ
(72)【発明者】
【氏名】ホー ウェイ-シェン
(72)【発明者】
【氏名】リー ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロール マリナ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】リャン スペンサー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB33
4C085BB36
4C085BB37
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は一般に、一価抗体を含む、例えば、MerTKポリペプチド、例えば哺乳類MerTKポリペプチドまたはヒトMerTKポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル一価抗体を含む、組成物、及び治療を必要とする個体の治療におけるかかる組成物の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトMerチロシンキナーゼ(MerTK)に結合する抗体であって、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメイン1つ以下を含む、前記抗体。
【請求項2】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、MerTKタンパク質のIg1ドメインに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号10のアミノ酸配列を含む可変軽鎖とを含む抗体のヒトMerTKへの結合を競合的に阻害する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号10のアミノ酸配列を含む可変軽鎖とを含む抗体と同じ、ヒトMerTKのエピトープに結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸31~35を含むHVR-H1、配列番号9のアミノ酸50~66を含むHVR-H2、配列番号9のアミノ酸99~109を含むHVR-H3、配列番号10のアミノ酸24~34を含むHVR-L1、配列番号10のアミノ酸50~56を含むHVR-L2、及び配列番号10のアミノ酸89~97を含むHVR-L3を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が16.2抗体のHVRを含み、任意で、前記HVRは、Kabatの定義によるHVR、Chothiaの定義によるHVR、AbMの定義によるHVR、またはcontactの定義によるHVRである、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/または配列番号10のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号14のアミノ酸配列を含む可変軽鎖とを含む抗体のヒトMerTKへの結合を競合的に阻害する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項11】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号14のアミノ酸配列を含む可変軽鎖とを含む抗体と同じ、ヒトMerTKのエピトープに結合する、請求項1、2及び10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号13のアミノ酸31~35を含むHVR-H1、配列番号13のアミノ酸50~66を含むHVR-H2、配列番号13のアミノ酸99~108を含むHVR-H3、配列番号14のアミノ酸24~34を含むHVR-L1、配列番号14のアミノ酸50~56を含むHVR-L2、及び配列番号14のアミノ酸89~97を含むHVR-L3を含む、請求項1、2、10、及び11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が13.11抗体のHVRを含み、任意で、前記HVRは、Kabatの定義によるHVR、Chothiaの定義によるHVR、AbMの定義によるHVR、またはcontactの定義によるHVRである、請求項1、2、10、及び11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む、請求項1、2、及び10~13のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインが、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1、2、及び10~14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項16】
前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/または配列番号14のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1、2、及び10~15のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項17】
前記抗体が、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体がIgGクラスのものであり、任意で、前記抗体はIgG1、IgG2、またはIgG4アイソタイプを有する、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
IgG1抗体である、請求項17に記載の抗体。
【請求項20】
IgG4抗体である、請求項17に記載の抗体。
【請求項21】
(a)前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインを一緒に形成する、第1の重鎖またはその断片及び第1の軽鎖またはその断片と、(b)前記ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインを形成しない、第2の重鎖またはその断片及び/あるいは第2の軽鎖またはその断片とを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項22】
前記第2の重鎖またはその断片が、可変重鎖を含まない、請求項21に記載の抗体。
【請求項23】
前記第2の軽鎖またはその断片が、可変軽鎖を含まない、請求項21または22に記載の抗体。
【請求項24】
第2の軽鎖またはその断片を含まない、請求項21~23のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項25】
前記第2の重鎖またはその断片がCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意で、前記第2の重鎖またはその断片がヒンジドメインをさらに含む、請求項21~24のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項26】
第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むFc領域を含み、
(a)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換T366Yを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換Y407Tを含む、
(b)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換T366Wを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換T366S、L368W、及びY407Vを含む、
(c)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換T366Wを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換T366S、L368A、及びY407Vを含む、
(d)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換T366W、及びS354Cを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換T366S、L368A、Y407V、及びY349Cを含む、
(e)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換T350V、L351Y、F405A、Y407Vを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換T350V、T366L、K392L、及びT394Wを含む、
(f)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換K360D、D399M、及びY407Aを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換E345R、Q347R、T366V、及びK409Vを含む、
(g)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換K409D及びK392Dを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換D399K及びE356Kを含む、
(h)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換K360E及びK409Wを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換Q347R、D399V及びF405Tを含む、
(i)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換L360E、K409W、及びY349Cを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換Q347R、D399V、F405T、及びS354Cを含む、または
(j)前記第1のポリペプチドがアミノ酸置換K370E及びK409Wを含み、前記第2のポリペプチドがアミノ酸置換E357N、D399V及びF405Tを含み、
ここで、前記置換はEU番号付けに従っている、請求項1~25のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項27】
ノブ変異及びホール変異を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項28】
前記ノブ変異が、EU番号付けによるアミノ酸置換T366Wを含む、請求項27に記載の抗体。
【請求項29】
前記ホール変異が、EU番号付けによるアミノ酸置換T366S、L368A、及びY407Vを含む、請求項27または28に記載の抗体。
【請求項30】
ヘテロ二量体化を促進するアミノ酸置換、付加、または欠失を含むFc領域を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項31】
1つ以下の軽鎖またはその断片を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項32】
1つ以下の、IgGの単一の重鎖またはその断片とIgGの単一の軽鎖またはその断片とを含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項33】
EU番号付けによるアミノ酸置換S228Pを含む、請求項1~18及び20~32のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項34】
EU番号付けによるアミノ酸置換L234A、L235A、及びP331S(LALAPS)を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項35】
EU番号付けによるアミノ酸置換N325S及びL328F(NSLF)を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項36】
配列番号17のアミノ酸1~449または配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17~19、21~25、31、及び32のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項37】
配列番号18のアミノ酸1~449または配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17~19、21~25、31、32、及び34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項38】
配列番号19のアミノ酸1~449または配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17~19、21~25、31、32、及び35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項39】
配列番号20のアミノ酸1~446または配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17、18、20~25、31、及び32のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項40】
配列番号29のアミノ酸1~453または配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17~19、及び21~31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項41】
配列番号30のアミノ酸1~449または配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17~19、21~31、及び34に記載の抗体。
【請求項42】
配列番号31のアミノ酸1~449または配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17~19、21~31、及び35に記載の抗体。
【請求項43】
配列番号32のアミノ酸1~446または配列番号32のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17、18、及び20~31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項44】
配列番号33のアミノ酸1~447または配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~9、17、18、20~31、及び33のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項45】
配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~9、17~19、及び21~35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項46】
配列番号22のアミノ酸1~448または配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~19、21~25、31、及び32のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項47】
配列番号23のアミノ酸1~448または配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~19、21~25、31、32、,及び34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項48】
配列番号24のアミノ酸1~448または配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~19、21~25、31、32、及び35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項49】
配列番号25のアミノ酸1~445または配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~18、20~25、31、及び32のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項50】
配列番号34のアミノ酸1~448または配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~19、及び21~31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項51】
配列番号35のアミノ酸1~448または配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~19、21~31、及び34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項52】
配列番号36のアミノ酸1~448または配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~19、21~31、及び35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項53】
配列番号37のアミノ酸1~445または配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~18、及び20~31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項54】
配列番号38のアミノ酸1~445または配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1、2、10~18、20~31、及び33のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項55】
配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1、2、10~19、及び21~35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項56】
配列番号40のアミノ酸1~226または配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~19、21~31、34、及び35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項57】
配列番号41のアミノ酸1~226または配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~19、21~31、34、及び35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項58】
配列番号42のアミノ酸1~226または配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~19、21~31、34、及び35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項59】
配列番号43のアミノ酸1~228または配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~18、20~31、34、及び35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項60】
配列番号44のアミノ酸1~228または配列番号44のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~19、21~31、及び33~35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項61】
(i)配列番号29のアミノ酸1~453または配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号40のアミノ酸1~226または配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1~9、17~19、21~31、及び56のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項62】
(i)配列番号30のアミノ酸1~449または配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号41のアミノ酸1~226または配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1~9、17~19、21~31、34、及び57のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項63】
(i)配列番号31のアミノ酸1~449または配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号42のアミノ酸1~226または配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1~9、17~19、21~31、35、及び58のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項64】
(i)配列番号32のアミノ酸1~446または配列番号32のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号43のアミノ酸1~228または配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1~9、17、18、20~31、及び59のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項65】
(i)配列番号33のアミノ酸1~446または配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号44のアミノ酸1~228または配列番号44のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1~9、17、18、20~31、33及び60のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項66】
(i)配列番号34のアミノ酸1~448または配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号40のアミノ酸1~226または配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1、2、10~19、21~31、及び56のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項67】
(i)配列番号35のアミノ酸1~448または配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号41のアミノ酸1~226または配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1、2、10~19、21~31、34、及び57のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項68】
(i)配列番号36のアミノ酸1~448または配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号42のアミノ酸1~226または配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1、2、10~19、21~31、35、及び58のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項69】
(i)配列番号37のアミノ酸1~445または配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号43のアミノ酸1~228または配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1、2、10~18、20~31、及び59のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項70】
(i)配列番号38のアミノ酸1~445または配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号44のアミノ酸1~228または配列番号44のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む、請求項1、2、10~18、20~31、33、及び60のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項71】
蛍光活性化細胞選別法(FACS)によって測定した場合に100nM以下のKdでM2c分化型ヒトマクロファージに結合する、請求項1~70のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項72】
FACSによって測定した場合に10nM以下のKdでM2c分化型ヒトマクロファージに結合する、請求項71に記載の抗体。
【請求項73】
FACSによって測定した場合に50nM以下のKdで、ヒトMerTKを過剰発現するCHO細胞(CHO-huMerTK OE)に結合する、請求項1~72のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項74】
FACSによって測定した場合に10nM以下のKdでCHO-huMerTK OEに結合する、請求項73に記載の抗体。
【請求項75】
食細胞によるエフェロサイトーシスを減少させる、請求項1~74のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項76】
50nM以下のIC50値でエフェロサイトーシスを減少させる、請求項75に記載の抗体。
【請求項77】
約0.13nM~約30nMのIC50値でエフェロサイトーシスを減少させる、請求項75に記載の抗体。
【請求項78】
約4nM~約37nMのIC50値でエフェロサイトーシスを減少させる、請求項75に記載の抗体。
【請求項79】
5nM以下のIC50値でエフェロサイトーシスを減少させる、請求項75に記載の抗体。
【請求項80】
前記食細胞が、マクロファージ、腫瘍関連マクロファージ、または樹状細胞である、請求項75~79のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項81】
前記食細胞がマクロファージである、請求項80に記載の抗体。
【請求項82】
Gas6の存在下でpAKT活性を阻害する、請求項1~81のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項83】
100nM以下のKdで、任意で約50nMのKdでヒトMerTKに結合する、請求項1~82のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項84】
5nM以下のKdで、任意で約2nMのKdでヒトMerTKに結合する、請求項1~83のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項85】
カニクイザルMerTKに結合する、請求項1~84のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項86】
100nM以下のKdで、任意で約60nMのKdでカニクイザルMerTKに結合する、請求項85に記載の抗体。
【請求項87】
5nM以下のKdで、任意で約3nMのKdでカニクイザルMerTKに結合する、請求項85に記載の抗体。
【請求項88】
マウスMerTKに結合する、請求項1~87のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項89】
50nM以下のKdで、任意で約40nMのKdでマウスMerTKに結合する、請求項88に記載の抗体。
【請求項90】
マウスMerTKに結合しない、請求項1~87のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項91】
MerTKへのProSの結合を減少させる、請求項1~90のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項92】
MerTKへのGas6の結合を減少させる、請求項1~91のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項93】
MerTKへのProSの結合を減少させ、かつMerTKへのGas6の結合を減少させる、請求項1~92のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項94】
マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、コンジュゲートされた抗体、またはキメラ抗体である、請求項1~93のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項95】
請求項1~94のいずれか1項に記載の抗体のヒト化形態。
【請求項96】
組換え抗体である、請求項1~95のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項97】
単離抗体である、請求項1~96のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項98】
請求項1~97のいずれか1項に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸。
【請求項99】
請求項98に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項100】
請求項98に記載の核酸または請求項99に記載のベクターを含む、単離宿主細胞。
【請求項101】
(i)請求項1~97のいずれか1項に記載の抗体のVHをコードする核酸配列を含む核酸、及び(ii)前記抗MerTK抗体のVLをコードする核酸配列を含む核酸を含む、単離宿主細胞。
【請求項102】
(i)請求項1~97のいずれか1項に記載の抗体の重鎖をコードする核酸配列を含む核酸、及び(ii)前記抗MerTK抗体の軽鎖をコードする核酸配列を含む核酸を含む、単離宿主細胞。
【請求項103】
重鎖断片をコードする核酸配列を含む核酸をさらに含み、前記重鎖断片が可変重鎖ドメインを含まない、請求項102に記載の単離宿主細胞。
【請求項104】
前記重鎖断片がCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意で、前記第2の重鎖またはその断片がヒンジドメインをさらに含む、請求項103に記載の単離宿主細胞。
【請求項105】
ヒトMerTKに結合する抗体を産生する方法であって、前記抗体が産生されるように請求項100~104のいずれか1項に記載の細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項106】
前記細胞によって産生された前記抗体を回収することをさらに含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
請求項105または106に記載の方法により産生される抗体。
【請求項108】
請求項1~97及び107のいずれか1項に記載の抗体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項109】
抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、または抗PD-1抗体をさらに含む、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項110】
抗PD-L1抗体をさらに含む、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項111】
前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、請求項110に記載の医薬組成物。
【請求項112】
個体におけるがんを治療する方法であって、前記個体に、治療有効量の請求項1~97及び107のいずれか1項に記載の抗体または請求項108~111のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項113】
前記がんが、結腸癌、卵巣癌、肝臓癌、または子宮体癌である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記投与が前記個体において網膜病理を引き起こさない、請求項112または113に記載の方法。
【請求項115】
抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、または抗PD-1抗体を前記個体に投与することをさらに含む、請求項112~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記個体に抗PD-L1抗体を投与することをさらに含む、請求項112~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
試料中のMerTKを検出するための方法であって、前記試料を請求項1~97及び107のいずれか1項に記載の抗体と接触させることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月16日出願の米国仮特許出願第63/211,323号、及び同第63/365,815号の優先権の利益を主張するものであり、それぞれの出願の全容を本明細書に参照によって援用するものである。
【0002】
ASCIIテキストファイルによる配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物、すなわち、配列表のコンピュータ可読形態(CRF)(ファイル名:4503_019PC02_Seqlisting_ST25.txt、サイズ134,183:作成日:2022年6月15日)の全容を参照によって本明細書に援用する。
【0003】
本開示の分野
本開示は、一価の抗MerTK抗体及びかかる抗体の使用(治療的使用)に関する。
【背景技術】
【0004】
Merチロシンキナーゼ(MerTK)は、受容体チロシンキナーゼのTAM(Tyro3、Axl、及びMerTK)ファミリーに属する。MerTKは、2つの免疫グロブリン(Ig)様モチーフと2つのフィブロネクチン(FN)III型モチーフを有する細胞外ドメインを備えたシングルパスタイプ1膜貫通タンパク質である(Graham et al,2014,Nat Rev Cancer,14:769-785(非特許文献1)、Rothlin et al,2015,Annu Rev Immunol,33:355-391(非特許文献2))。
【0005】
MerTKのいくつかのリガンドが同定されており、プロテインS(ProSまたはProS1)、成長停止特異的遺伝子6(Gas6)、Tubby、Tubby様タンパク質1(TULP-1)、及びガレクチン-3が含まれる。MerTKは、リガンド結合後の活性化を介して細胞外空間からシグナルを伝達し、MerTKチロシン自己リン酸化(Cummings et al,2013,Clin Cancer Res,19:5275-5280(非特許文献3)、Verma et al,2011,Mol Cancer Ther,10:1763-1773(非特許文献4))及びその後のERK及びAKT関連シグナル伝達を引き起こす。
【0006】
MerTKは、細胞の生存、遊走、分化などのさまざまな生理学的プロセスを制御している。MerTKのリガンドであるProS及びGas6は、細胞の生存、浸潤、遊走、化学抵抗性、転移などのいくつかの発がんプロセスに寄与しており、その発現はしばしば臨床転帰の不良との相関が見られる。さらに、MerTKは多くのがんに関与しており、MerTKまたはProS欠損は抗腫瘍効果と関連している(Cook et al,2013,J Clin Invest,123:3231-3242(非特許文献5)、Ubil et al,2018,J Clin Invest,128:2356-2369(非特許文献6)、Huey et al,2016,Cancers,8:101(非特許文献7))。しかし、MerTKは網膜色素上皮細胞にも発現しており、眼の脱落した光受容体外節を除去するのに重要な役割を果たす。MerTKの機能喪失型変異は、網膜色素変性症及びその他の網膜ジストロフィーを引き起こす(例えば、Al-khersan et al,Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol,2017,255:1613-1619(非特許文献8)、Lorach et al,Nature Scientific Reports,2018,8:11312(非特許文献9)、Audo et al,Human Mutation,Wiley,2018,39:997-913(非特許文献10)、LaVail et al,Adv Exp Med Biol,2016,854:487-493(非特許文献11)を参照)。
【0007】
MerTKは、食細胞によるアポトーシス細胞の貪食(エフェロサイトーシス)において重要な役割を果たし、M2様マクロファージ極性化、抗炎症性サイトカインの産生、免疫抑制性腫瘍微小環境の促進を引き起こす。食細胞によるエフェロサイトーシスが減少すると、M1様マクロファージの極性化が増加し、炎症誘発性サイトカインの産生及び免疫活性環境がもたらされる。エフェロサイトーシスを調節することによって、抗腫瘍活性の効果的な手段を提供することができる。
【0008】
抗MerTK抗体については、これまでに例えば、国際特許出願公開WO2020/214995(特許文献1)、WO2020/076799(特許文献2)、WO2020/106461(特許文献3)、WO2020/176497(特許文献4)、WO2019/084307(特許文献5)、WO2019/005756(特許文献6)、WO2016/106221(特許文献7)、WO2016/001830(特許文献8)、WO2009/062112(特許文献9)、及びWO2006/058202(特許文献10)、国際特許出願第PCT/US2020/064640号(WO2021/119508)(特許文献11)、ならびに例えば、Dayoub and Brekken,2020,Cell Communications and Signaling,18:29(非特許文献12)、Zhou et al,2020,Immunity,52:1-17(非特許文献13)、Kedage et al,2020,MABS,12:e1685832(非特許文献14)、Cummings et al,2014,Oncotarget,5:10434-10445(非特許文献15)に記載されている。
【0009】
しかしながら、がんなどの状態の治療に有効なアゴニスト活性を有する新規な治療用抗MerTK抗体が必要とされている。
【0010】
特許出願及び公開公報を含む本明細書で引用するすべての参考文献は、参照によって本明細書にそれらの全容を援用するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2020/214995
【特許文献2】WO2020/076799
【特許文献3】WO2020/106461
【特許文献4】WO2020/176497
【特許文献5】WO2019/084307
【特許文献6】WO2019/005756
【特許文献7】WO2016/106221
【特許文献8】WO2016/001830
【特許文献9】WO2009/062112
【特許文献10】WO2006/058202
【特許文献11】第PCT/US2020/064640号(WO2021/119508)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Graham et al,2014,Nat Rev Cancer,14:769-785
【非特許文献2】Rothlin et al,2015,Annu Rev Immunol,33:355-391
【非特許文献3】Cummings et al,2013,Clin Cancer Res,19:5275-5280
【非特許文献4】Verma et al,2011,Mol Cancer Ther,10:1763-1773
【非特許文献5】Cook et al,2013,J Clin Invest,123:3231-3242
【非特許文献6】Ubil et al,2018,J Clin Invest,128:2356-2369
【非特許文献7】Huey et al,2016,Cancers,8:101
【非特許文献8】Al-khersan et al,Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol,2017,255:1613-1619
【非特許文献9】Lorach et al,Nature Scientific Reports,2018,8:11312
【非特許文献10】Audo et al,Human Mutation,Wiley,2018,39:997-913
【非特許文献11】LaVail et al,Adv Exp Med Biol,2016,854:487-493
【非特許文献12】Dayoub and Brekken,2020,Cell Communications and Signaling,18:29
【非特許文献13】Zhou et al,2020,Immunity,52:1-17
【非特許文献14】Kedage et al,2020,MABS,12:e1685832
【非特許文献15】Cummings et al,2014,Oncotarget,5:10434-10445
【発明の概要】
【0013】
二価抗体は、一部において、抗体が細胞表面上で結合する標的受容体の架橋を誘導することによってアゴニスト作用を示し、受容体の活性化を引き起こすことができるが、これは、望ましい治療活性が、少なくとも一部、アンタゴニスト作用によるものである場合には、しばしば望ましくない現象である。FabまたはscFvフラグメントなどの一価形態のアンタゴニスト抗体にはアゴニスト活性がなく、架橋及びその後の活性化を誘導することなく細胞受容体に結合する有用な治療薬となる可能性があるが、その治療用途は短いインビボ半減期のために制限されている。したがって、完全な重鎖と完全な軽鎖を含む一価抗体は、アンタゴニスト作用を有し、それらの対応するFab及びscFv形態と比較してより長いインビボ半減期を有する一価抗体を与えることができる。
【0014】
本開示は、抗腫瘍免疫を媒介する作用を有する一価抗MerTK抗体を提供することにより、がんなどの状態の治療に有効なアゴニスト活性を有する新規な治療用抗MerTK抗体に対するニーズを満たすものである。
【0015】
本明細書に記載されるさまざまな実施形態の特性の1つ、一部、またはすべてを組み合わせることで本開示の他の実施形態を形成し得る点は理解されよう。本開示のこれら及び他の態様は、当業者には明らかとなろう。本開示のこれら及び他の実施形態を、以下の発明を実施するための形態によってさらに説明する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書において、ヒトMerチロシンキナーゼ(MerTK)に結合する抗体であって、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメイン1つ以下を含む抗体が提供される。
【0017】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、MerTKタンパク質のIg1ドメインに結合する。
【0018】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号10のアミノ酸配列を含む可変軽鎖とを含む抗体のヒトMerTKへの結合を競合的に阻害する。
【0019】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号10のアミノ酸配列を含む可変軽鎖とを含む抗体と同じ、ヒトMerTKのエピトープに結合する。
【0020】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸31~35を含むHVR-H1、配列番号9のアミノ酸50~66を含むHVR-H2、配列番号9のアミノ酸99~109を含むHVR-H3、配列番号10のアミノ酸24~34を含むHVR-L1、配列番号10のアミノ酸50~56を含むHVR-L2、及び配列番号10のアミノ酸89~97を含むHVR-L3を含む。
【0021】
いくつかの態様では、抗体は、16.2抗体のHVRを含み、任意で、HVRは、Kabatの定義によるHVR、Chothiaの定義によるHVR、AbMの定義によるHVR、またはcontactの定義によるHVRである。
【0022】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。
【0023】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0024】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/または配列番号10のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0025】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号14のアミノ酸配列を含む可変軽鎖とを含む抗体のヒトMerTKへの結合を競合的に阻害する。
【0026】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号14のアミノ酸配列を含む可変軽鎖とを含む抗体と同じ、ヒトMerTKのエピトープに結合する。
【0027】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号13のアミノ酸31~35を含むHVR-H1、配列番号13のアミノ酸50~66を含むHVR-H2、配列番号13のアミノ酸99~108を含むHVR-H3、配列番号14のアミノ酸24~34を含むHVR-L1、配列番号14のアミノ酸50~56を含むHVR-L2、及び配列番号14のアミノ酸89~97を含むHVR-L3を含む。
【0028】
いくつかの態様では、抗体は、13.11抗体のHVRを含み、任意で、HVRは、Kabatの定義によるHVR、Chothiaの定義によるHVR、AbMの定義によるHVR、またはcontactの定義によるHVRである。
【0029】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む。
【0030】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0031】
いくつかの態様では、ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列を含む可変重鎖及び/または配列番号14のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0032】
いくつかの態様では、抗体は、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである。
【0033】
いくつかの態様では、抗体はIgGクラスのものであり、任意で抗体はIgG1、IgG2、またはIgG4アイソタイプを有する。
【0034】
いくつかの態様では、抗体は、IgG1抗体である。
【0035】
いくつかの態様では、抗体は、IgG4抗体である。
【0036】
いくつかの態様では、抗体は、(a)ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインを一緒に形成する、第1の重鎖またはその断片及び第1の軽鎖またはその断片と、(b)ヒトMerTKに結合する抗原結合ドメインを形成しない、第2の重鎖またはその断片及び/あるいは第2の軽鎖またはその断片とを含む。
【0037】
いくつかの態様では、第2の重鎖またはその断片は、可変重鎖を含まない。
【0038】
いくつかの態様では、第2の軽鎖またはその断片は、可変軽鎖を含まない。
【0039】
いくつかの態様では、抗体は、第2の軽鎖またはその断片を含まない。
【0040】
いくつかの態様では、第2の重鎖またはその断片はCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意で、第2の重鎖またはその断片はヒンジドメインをさらに含む。
【0041】
いくつかの態様では、抗体は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含むFc領域を含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換T366Yを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換Y407Tを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換T366Wを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換T366S、L368W、及びY407Vを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換T366Wを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換T366S、L368A、及びY407Vを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換T366W、及びS354Cを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換T366S、L368A、Y407V、及びY349Cを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換T350V、L351Y、F405A、Y407Vを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換T350V、T366L、K392L、及びT394Wを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換K360D、D399M、及びY407Aを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換E345R、Q347R、T366V、及びK409Vを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換K409D及びK392Dを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換D399K及びE356Kを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換K360E及びK409Wを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換Q347R、D399V及びF405Tを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換L360E、K409W、及びY349Cを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換Q347R、D399V、F405T、及びS354Cを含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチドはアミノ酸置換K370E及びK409Wを含み、第2のポリペプチドはアミノ酸置換E357N、D399V及びF405Tを含む。いくつかの態様では、置換はEU番号付けに従う。
【0042】
いくつかの態様では、抗体はノブ変異及びホール変異を含む。いくつかの態様では、ノブ変異は、EU番号付けによるアミノ酸置換T366Wを含む。いくつかの態様では、ホール変異は、EU番号付けによるアミノ酸置換T366S、L368A、及びY407Vを含む。
【0043】
いくつかの態様では、抗体は、ヘテロ二量体化を促進するアミノ酸置換、付加、または欠失を含むFc領域を含む。
【0044】
いくつかの態様では、抗体は、1つ以下の軽鎖またはその断片を含む。
【0045】
いくつかの態様では、抗体は、1つ以下の、IgGの単一の重鎖またはその断片とIgGの単一の軽鎖またはその断片とを含む。
【0046】
いくつかの態様では、抗体は、EU番号付けによるアミノ酸置換S228Pを含む。
【0047】
いくつかの態様では、抗体は、EU番号付けによるアミノ酸置換L234A、L235A、及びP331S(LALAPS)を含む。
【0048】
いくつかの態様では、抗体は、EU番号付けによるアミノ酸置換N325S及びL328F(NSLF)を含む。
【0049】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号17のアミノ酸1~449または配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0050】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号18のアミノ酸1~449または配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0051】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号19のアミノ酸1~449または配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0052】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号20のアミノ酸1~446または配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0053】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号29のアミノ酸1~453または配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0054】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号30のアミノ酸1~449または配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0055】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号31のアミノ酸1~449または配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0056】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号32のアミノ酸1~446または配列番号32のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0057】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号33のアミノ酸1~447または配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0058】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0059】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号22のアミノ酸1~448または配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0060】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号23のアミノ酸1~448または配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0061】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号24のアミノ酸1~448または配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0062】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号25のアミノ酸1~445または配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0063】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号34のアミノ酸1~448または配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0064】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号35のアミノ酸1~448または配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0065】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号36のアミノ酸1~448または配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0066】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号37のアミノ酸1~445または配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0067】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号38のアミノ酸1~445または配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0068】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0069】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号40のアミノ酸1~226または配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0070】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号41のアミノ酸1~226または配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0071】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号42のアミノ酸1~226または配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0072】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号43のアミノ酸1~228または配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0073】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号44のアミノ酸1~228または配列番号44のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0074】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号29のアミノ酸1~453または配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号40のアミノ酸1~226または配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0075】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号30のアミノ酸1~449または配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号41のアミノ酸1~226または配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0076】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号31のアミノ酸1~449または配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号42のアミノ酸1~226または配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0077】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号32のアミノ酸1~446または配列番号32のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号43のアミノ酸1~228または配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0078】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号33のアミノ酸1~446または配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号44のアミノ酸1~228または配列番号44のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0079】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号34のアミノ酸1~448または配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号40のアミノ酸1~226または配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0080】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号35のアミノ酸1~448または配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号41のアミノ酸1~226または配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0081】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号36のアミノ酸1~448または配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号42のアミノ酸1~226または配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0082】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号37のアミノ酸1~445または配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号43のアミノ酸1~228または配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0083】
いくつかの態様では、抗体は、(i)配列番号38のアミノ酸1~445または配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖と、(iii)配列番号44のアミノ酸1~228または配列番号44のアミノ酸配列を含む重鎖の断片とを含む。
【0084】
いくつかの態様では、抗体は、蛍光活性化細胞選別法(FACS)によって測定した場合に100nM以下のKdでM2c分化型ヒトマクロファージに結合する。
【0085】
いくつかの態様では、抗体は、FACSによって測定した場合に10nM以下のKdでM2c分化型ヒトマクロファージに結合する。
【0086】
いくつかの態様では、抗体は、FACSによって測定した場合に50nM以下のKdで、ヒトMerTKを過剰発現するCHO細胞(CHO-huMerTK OE)に結合する。
【0087】
いくつかの態様では、抗体は、FACSによって測定した場合に10nM以下のKdでCHO-huMerTK OEに結合する。
【0088】
いくつかの態様では、抗体は、食細胞によるエフェロサイトーシスを減少させる。
【0089】
いくつかの態様では、抗体は、50nM以下のIC50値でエフェロサイトーシスを減少させる。
【0090】
いくつかの態様では、抗体は、約0.13nM~約30nMのIC50値でエフェロサイトーシスを減少させる。
【0091】
いくつかの態様では、抗体は、約4nM~約37nMのIC50値でエフェロサイトーシスを減少させる。
【0092】
いくつかの態様では、抗体は、5nM以下のIC50値でエフェロサイトーシスを減少させる。
【0093】
いくつかの態様では、食細胞は、マクロファージ、腫瘍関連マクロファージ、または樹状細胞である。
【0094】
いくつかの態様では、食細胞はマクロファージである。
【0095】
いくつかの態様では、抗体は、Gas6の存在下でpAKT活性を阻害する。
【0096】
いくつかの態様では、抗体は、100nM以下のKdで、任意で約50nMのKdでヒトMerTKに結合する。
【0097】
いくつかの態様では、抗体は、5nM以下のKdで、任意で約2nMのKdでヒトMerTKに結合する。
【0098】
いくつかの態様では、抗体はカニクイザルMerTKに結合する。
【0099】
いくつかの態様では、抗体は、100nM以下のKdで、任意で約60nMのKdでカニクイザルMerTKに結合する。
【0100】
いくつかの態様では、抗体は、5nM以下のKdで、任意で約3nMのKdでカニクイザルMerTKに結合する。
【0101】
いくつかの態様では、抗体はマウスMerTKに結合する。
【0102】
いくつかの態様では、抗体は、50nM以下のKdで、任意で約40nMのKdでマウスMerTKに結合する。
【0103】
いくつかの態様では、抗体はマウスMerTKに結合しない。
【0104】
いくつかの態様では、抗体は、MerTKへのProSの結合を減少させる。
【0105】
いくつかの態様では、抗体は、MerTKへのGas6の結合を減少させる。
【0106】
いくつかの態様では、抗体は、MerTKへのProSの結合を減少させ、かつMerTKへのGas6の結合を減少させる。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、コンジュゲートされた抗体、またはキメラ抗体である。
【0108】
いくつかの態様では、抗体は、本明細書に記載の抗体のヒト化形態である。
【0109】
いくつかの態様では、抗体は組換え抗体である。
【0110】
いくつかの態様では、抗体は、単離抗体である。
【0111】
いくつかの態様では、本明細書において、本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸が提供される。いくつかの態様では、本明細書において、核酸を含むベクターが提供される。いくつかの態様では、本明細書において、核酸またはベクターを含む単離宿主細胞が提供される。
【0112】
いくつかの態様では、単離宿主細胞は、(i)本明細書に記載される抗体のいずれかのVHをコードする核酸配列を含む核酸、及び(ii)抗MerTK抗体のVLをコードする核酸配列を含む核酸を含む。
【0113】
いくつかの態様では、単離宿主細胞は、(i)本明細書に記載される抗体のいずれかの抗体の重鎖をコードする核酸配列を含む核酸、及び(ii)抗MerTK抗体の軽鎖をコードする核酸配列を含む核酸を含む。
【0114】
いくつかの態様では、単離宿主細胞は、重鎖断片をコードする核酸配列を含む核酸をさらに含み、重鎖断片は可変重鎖ドメインを含まない。いくつかの態様では、重鎖断片はCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意で、第2の重鎖またはその断片はヒンジドメインをさらに含む。
【0115】
いくつかの態様では、本明細書において、ヒトMerTKに結合する抗体を産生する方法であって、抗体が産生されるように本明細書に記載される細胞のいずれかを培養することを含む、方法が提供される。いくつかの態様では、方法は、細胞によって産生された抗体を回収することをさらに含む。
【0116】
いくつかの態様では、本明細書において、本明細書に記載の方法によって産生される抗体が提供される。
【0117】
いくつかの態様では、本明細書において、本明細書に記載される抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。いくつかの態様では、医薬組成物は、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、または抗PD-1抗体をさらに含む。
【0118】
いくつかの態様では、医薬組成物は抗PD-L1抗体をさらに含む。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
【0119】
いくつかの態様では、本明細書において、個体のがんを治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の抗体のいずれかまたは本明細書に記載の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの態様では、がんは、結腸癌、卵巣癌、肝臓癌、または子宮体癌である。いくつかの態様では、投与は個体において網膜病理を引き起こさない。
【0120】
いくつかの態様では、方法は、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、または抗PD-1抗体を個体に投与することをさらに含む。いくつかの態様では、方法は、抗PD-L1抗体を個体に投与することをさらに含む。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
【0121】
いくつかの態様では、本明細書において、試料中のMerTKを検出する方法であって、前記試料を本明細書に記載の抗MerTK抗体のいずれかと接触させることを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【
図2】
図2A及び
図2Bは、本開示の一価(モノアーム)抗MerTK抗体のさまざまな細胞タイプへの結合を示すデータを示す。
【
図3】本開示の二価(完全IgG)抗MerTK抗体及び一価(モノアーム)抗MerTK抗体による、食細胞によるエフェロサイトーシスの減少を示すデータを示す。
【
図4】本開示の二価(完全IgG)抗MerTK抗体及び一価(モノアーム)抗MerTK抗体のいずれかで処理した細胞におけるpAKT/tAKTレベルを示すデータを示す。
【
図5】MerTKリガンドhuGas6の非存在下で本開示のさまざまな二価抗MerTK抗体または一価(モノアーム)抗MerTK抗体で処理した細胞におけるpAKT活性の倍率変化を示すデータを示す。
【
図6】二価抗PDL1抗体と二価抗MerTK抗体MTK-16.2または抗MerTK抗体MTK-33.11のいずれかとの組み合わせで処理した動物で観察された腫瘍体積と比較した、二価抗PDL1抗体で処理した動物におけるインビボ腫瘍体積の減少を示すデータを示す。
【
図7】二価抗PDL1抗体と一価(モノアーム)抗MerTK抗体MTK-33.11との組み合わせで処理した動物で観察された腫瘍体積と比較した、二価抗PDL1抗体で処理した動物におけるインビボ腫瘍体積の減少を示すデータを示す。
【
図8A】コントロール抗体を投与した個々のマウスにおける腫瘍体積の変化を示すデータを示す。
【
図8B】二価抗PDL1抗体を投与した個々のマウスにおける腫瘍体積の変化を示すデータを示す。
【
図8C】二価抗PDL1抗体と一価(モノアーム)抗MerTK抗体33.11との組み合わせを投与した個々のマウスにおける腫瘍体積の変化を示すデータを示す。
【
図9】抗PDL1単独で、または一価(モノアーム)抗MerTK抗体MTK-33.11との組み合わせで処理したマウスにおける腫瘍体積の変化を示すデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0123】
本開示の詳細な説明
本開示は、一価の抗MerTK抗体(例えば、モノクローナル抗体)、かかる抗体を製造及び使用する方法、かかる抗体を含む医薬組成物、かかる抗体をコードする核酸、ならびにかかる抗体をコードする核酸を含有する宿主細胞に関する。
【0124】
本明細書で記載または参照される技術及び手順は一般に当業者には十分に理解されているものであり、例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3d edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.,(2003)、Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)に記載される方法などの広く用いられている方法など、当業者によって従来の方法を用いて一般的に用いられているものである。
【0125】
I.定義
「MerTK」または「MerTKポリペプチド」または「MerTKタンパク質」とは、本明細書では互換的に用いられ、特に断らない限り、本明細書では、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル(cyno))及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然MerTKを指す。MerTKは、c-mer、MER、がん原遺伝子c-Mer、受容体チロシンキナーゼMerTK、チロシンプロテインキナーゼMer、STKキナーゼ、RP38、及びMGC133349とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、この用語は、野生型配列と天然に存在するバリアント配列、例えば、スプライスバリアントまたはアレルバリアントの両方を包含する。いくつかの実施形態では、この用語は、「完全長」のプロセシングされていないMerTK、ならびに細胞内でのプロセシングから生じるMerTKの任意の形態を包含する。いくつかの実施形態では、MerTKは、ヒトMerTKである。本明細書で使用する場合、「ヒトMerTK」という用語は、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。
【0126】
「抗MerTK抗体」、「MerTKに結合する抗体」、及び「MerTKに特異的に結合する抗体」という用語は、抗体がMerTKを標的化する際に診断薬及び/または治療薬として有用であるように、十分な親和性でMerTKに結合することができる抗体を指す。一実施形態において、無関係の非MerTKポリペプチドへの抗MerTK抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定した場合に、MerTKへのこの抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、MerTKに結合する抗体は、<1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。特定の実施形態では、抗MerTK抗体は、異なる種由来のMerTK間で保存されているMerTKのエピトープに結合する。
【0127】
抗体の標的分子への結合に関して、「特異的結合」または特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドもしくはエピトープに「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、分子の結合をコントロール分子の結合と比較して決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、標的、例えば、過剰な非標識標的に類似したコントロール分子との競合によって決定され得る。この場合、標識された標的の、プローブへの結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合に、特異的結合が示される。特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」またはそれ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的」であるという用語は、本明細書で使用される場合、例えば、標的に対するKDが、約10-4M以下、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、10-12M以下のいずれかであるか、またはKDが10-4M~10-6Mまたは10-6M~10-10Mまたは10-7M~10-9Mの範囲である分子によって呈され得る。当業者によって認識されるように、親和性とKD値とは反比例する。抗原の高い親和性は、低いKD値によって測定される。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、ある分子がいずれの他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく特定のポリペプチド上の特定のポリペプチドまたはエピトープに結合する結合を指す。
【0128】
「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において、「抗体」と同じ意味で使用される。本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成されるものを含む多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗原結合抗体断片(ただし、所望の生物活性を呈する場合に限る)を特に包含する。
【0129】
「天然抗体」とは、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合によって重鎖に連結するが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的な間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、これにいくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの境界部を形成すると考えられている。
【0130】
異なる抗体クラスの構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Ed.,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994,page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0131】
いずれの脊椎動物種由来の軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)とラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なる型のいずれかに割り当てることができる。重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つのクラスがあり、それぞれ、アルファ(「α」)、デルタ(「δ」)、イプシロン(「ε」)、ガンマ(「γ」)及びミュー(「μ」)と表記される重鎖を有する。γ及びαのクラスは、CH配列及び機能の相対的にわずかな相違に基づいて、サブクラス(アイソタイプ)にさらに分類され、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造及び三次元構成は既知であり、例えば、Abbas et al.,Cellular and Molecular Immunology,4th ed.(W.B.Saunders Co.,2000)に一般的に記載されている。
【0132】
本開示の抗MerTK抗体などの抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」及び「VL」と呼ぶことができる。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含有する。
【0133】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定のセグメントが、本開示の抗MerTK抗体などの抗体間で配列が大幅に異なるという事実を指す。可変ドメインは、抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する、特定の抗体の特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの全範囲にわたって均一に分布していない。むしろ、それは、軽鎖と重鎖との両方の可変ドメイン内にある超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのうちより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。野生型の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFR領域を含み、これらは、主にβシートの構成をとり、3つのHVRで接続され、ループを形成し、βシート構造を接続し、いくつかの場合ではその一部を形成する。各鎖中のHVRは、FR領域によって極めて近接して一緒に保持され、他方の鎖からのHVRと共に、その抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与などのさまざまなエフェクター機能を呈する。
【0134】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体、例えば、本開示の抗MerTKモノクローナル抗体を指す。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る可能性のある天然に存在する変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を標的としている。通常、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンが混入していないハイブリドーマ培養によって合成されるという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の集団から得られたものであるという抗体の特性を示し、いずれかの特定の方法による抗体の産生を要するものとして理解されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、以下の方法、すなわち、1つ以上のDNA(複数可)、ウイルス様粒子、ポリペプチド(複数可)、及び/または細胞(複数可)によるラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター及び/またはニワトリを含む(ただし、これらに限定されない)動物の免疫化法、ハイブリドーマ法、B細胞クローニング法、組換えDNA法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全部を有する動物でヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術のうちの1つ以上を含む(ただし、これらに限定されない)さまざまな技術によって作製することができる。
【0135】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、または「全抗体」という用語は、抗体断片と異なり、実質的にインタクトな形態にある抗MerTK抗体などの抗体を指して互換的に使用される。具体的には、完全長抗体は、2本の軽鎖とFc領域を含む2本の重鎖とを有するものを含む。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒトの天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。場合によっては、無傷の抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0136】
「一価抗体」または「モノアーム抗体」という用語は、標的抗原に特異的な単一の抗原結合認識ドメインを有する抗体を指す(すなわち、抗体は1つ以下の抗原結合ドメインを含む)。いくつかの実施形態では、単一の抗原結合ドメインは、単一の可変領域重鎖ポリペプチドと単一の可変領域軽鎖ポリペプチドとを含む。標的に対して「一価」である抗体は、その標的に対する1つ以下の抗原結合ドメインを含む。
【0137】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、ダイアボディ、線状抗体(米国特許第5641870号、実施例2、Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995)を参照)、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0138】
本明細書で使用する場合、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」、「抗原結合部位」という用語、及び同様の用語は、抗体分子に抗原に対するその特異性を与えるアミノ酸残基を含む抗体分子の部分(例えば、超可変領域(HVR))を指す。
【0139】
本開示の抗MerTK抗体などの抗体のパパイン分解により、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一な抗原結合フラグメントと、容易に結晶化する能力を反映して表記される残りの「Fc」フラグメントとが得られる。Fab断片は、軽鎖全体に加えて、重鎖の可変領域ドメイン(VH)、及び1本の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関しては一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大型F(ab’)2断片をもたらし、これは、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合したFab断片にほぼ対応し、依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む、いくつかのさらなる残基を有することにより、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体断片は、元々、その間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして生成された。抗体フラグメントの他の化学的結合もまた既知である。
【0140】
Fc断片は、ジスルフィドによって互いに保持された2本の重鎖のカルボキシ末端部分両方を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域内の配列によって決定され、この領域はまた、ある特定の型の細胞上に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される。
【0141】
抗体(例えば、本開示の抗MerTK抗体)の「機能性断片」は、インタクト抗体の部分を含み、概して、インタクト抗体の抗原結合領域もしくは可変領域、またはFcR結合能力を保持するか、改変されたFcR結合能力を有する抗体のFc領域を含む。抗体断片の例としては、線形抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0142】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間の可変ドメイン対合が得られ、それによって二価断片、すなわち、2個の抗原結合部位を有する断片が得られるように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10個の残基)を用いてscFv断片を構築することによって作製された小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在している、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。
【0143】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」とは、例えば、本開示のキメラ抗MerTK抗体などの抗体(免疫グロブリン)であって、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、かつ、その鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である抗体、ならびにそのような抗体の断片(ただし、所望の生物活性を呈する場合に限る)を指す。本明細書中で対象とするキメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれ、この場合、その抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルに目的の抗原を免疫することによって産生される抗体に由来する。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして用いられる。
【0144】
本開示の抗MerTK抗体のヒト化形態などの非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体である。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになり、そのHVR(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト抗体のものに対応し、そのFRのすべてまたは実質的にすべてが、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0145】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体(例えば、本開示の抗MerTK抗体)のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製する技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー及び酵母ディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野において既知のさまざまな技術を使用して作製することができる。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性遺伝子座が不能化されているトランスジェニック動物、例えば免疫化xenomouseに抗原を投与することによって調製することができ、また、ヒトB細胞ハイブリドーマ法により作製することができる。
【0146】
本明細書で使用する場合、「超可変領域」、「HVR」または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、及び/または構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域(例えば、本開示の抗MerTK抗体の抗体可変ドメインの領域)を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体では、H3及びL3は、6つのHVRの中で最大の多様性を示し、特にH3は、抗体に好適な特異性を与えることにおいて固有の役割を果たすと考えられる。重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖がない状態で、機能的であり、安定している。
【0147】
多くのHVR描写が用いられており、これらは本明細書に包含される。いくつかの実施形態において、HVRは、配列可変性に基づくKabatによる相補性決定領域(CDR)であり得、最も一般的に使用されている(Kabatら、前掲)。いくつかの実施形態において、HVRは、Chothia CDRであり得る。Chothiaは、むしろ、構造的ループの位置に言及するものである(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。いくつかの実施形態において、HVRは、AbM HVRであり得る。AbM HVRは、Kabat CDRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。いくつかの実施形態において、HVRは、「contact」HVRであり得る。「contact」HVRは、使用可能な複合結晶構造の解析に基づく。これらのHVRのそれぞれに由来する残基を以下に示す。
【0148】
HVRは、次の「伸長HVR」を含み得る:VL中、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)及び89~97または89~96(L3)、ならびにVH中、26~35(H1)、50~65または49~65(好ましい実施形態)(H2)及び93~102、94~102または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの伸長HVR定義の各々に対して、Kabatら(上掲)に従ってナンバリングされる。
【0149】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0150】
本明細書で使用される「アクセプターヒトフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVLフレームワークまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、または既存のアミノ酸配列変化を含み得る。いくつかの実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下である。既存のアミノ酸変化がVHに存在する場合、それらの好ましい変化が位置71H、73H及び78Hのうちの3つ、2つ、または1つにのみ生じ、例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73T、及び/または78Aであり得る。一実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークは、配列において、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0151】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を代表するフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンのVL配列またはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからなされる。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)におけるようなサブグループである。例として、VLに関するものを挙げると、サブグループは、Kabatら(上掲)などのサブグループカッパI、カッパII、カッパIIIまたはカッパIVであり得る。さらに、VHについては、サブグループは、Kabatら(上掲)などのサブグループI、サブグループIIまたはサブグループIIIであり得る。
【0152】
指定位置における「アミノ酸改変」(例えば、本開示の抗MerTK抗体のアミノ酸改変)は、特定残基の置換もしくは欠失、または少なくとも1つのアミノ酸残基の特定残基に隣接する挿入を指す。特定残基に「隣接した」挿入とは、その1~2残基内の挿入を意味する。この挿入は、特定の残基に対しN末端側またはC末端側であり得る。本明細書における好ましいアミノ酸改変は、置換である。
【0153】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが、非共有結合で緊密に結合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(あるいは、抗原に特異的なHVRを3つのみを含むFvの半分)でさえも、親和性は結合部位全体の親和性よりも低いが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0154】
「sFv」または「scFv」と短縮されることもある「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖の状態に連結された、VH及びVL抗体ドメインを含む、抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーにより、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能となっている。
【0155】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に帰属する生物活性を指し、抗体のアイソタイプに応じてさまざまである。
【0156】
本明細書における「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義して使用され、天然配列のFc領域及び変異形Fc領域が含まれる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230からそのカルボキシル末端まで広がると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU付番システムによる残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって除去され得る。したがって、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。本開示の抗体における使用に好適な天然配列Fc領域としては、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が挙げられる。
【0157】
「天然配列Fc領域」は、天然で見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびに天然に発生するそれらの変異型が含まれる。
【0158】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸改変、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)により、天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異型Fc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に約1~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも80%の相同性、最も好ましくは、それらと少なくとも90%の相同性、より好ましくは、それらと少なくとも95%の相同性を保有する。
【0159】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIのサブクラスの受容体(これらの受容体のアレルバリアント及び選択的スプライシング形態を含む)が含まれる。FcγRII受容体には、同様のアミノ酸配列を有し、主にその細胞質ドメインが異なる、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「抑制性受容体」)が含まれる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(「ITAM」)を含む。抑制性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含む。今後特定されるものを含め、他のFcRは、本明細書において「FcR」という用語に包含される。FcRはまた、抗体の血清中半減期を延長し得る。
【0160】
本明細書で使用されるとき、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、配列を整列させ、必要に応じて最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後の、配列同一性の一部としてあらゆる保存的置換を考慮しない、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージを指す。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術範囲内である種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要とされる当該技術分野において既知の任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。
【0161】
「競合する」という用語は、同じエピトープまたは重複するエピトープについて競合する抗体との関連で使用される場合、試験される抗体が、共通の抗原(例えば、MerTKまたはその断片)に対する参照分子(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的結合を阻止または阻害する(例えば、減少させる)アッセイによって決定される抗体間の競合を意味する。抗体が他の抗体と競合するか否かを決定するために多くの種類の競合結合アッセイを使用することができ、例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.,1983,Methods in Enzymology 9:242-253を参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,1986,J. Immunol.137:3614-3619を参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照)、1-125標識を使用した固相直接標識RIA(例えば、Morel et al.,1988,Molec.Immunol.25:7-15)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung,et al., 1990, Virology 176:546-552を参照)、及び直接標識RIA(Moldenhauer et al.,1990,Scand.J.Immunol. 32:77-82を参照)がある。一般にこれらのアッセイは、標識されていない試験抗体及び標識された参照抗体のいずれかを有する固相表面または細胞に結合した精製抗原の使用を伴う。競合阻害は、試験抗体の存在下で固体表面または細胞に結合する標識の量を決定することにより測定される。通常、試験抗体は過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、及び立体障害が生じるうえで参照抗体が結合するエピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。通常、競合抗体が過剰に存在すると、共通抗原に対する参照抗体の特異的結合が少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97.5%、及び/または100%近く阻害される(例えば、減少する)。
【0162】
本明細書で使用されるとき、MerTKポリペプチドと第2のポリペプチドとの間の「相互作用」は、限定するものではないが、タンパク質-タンパク質相互作用、物理的相互作用、化学的相互作用、結合、共有結合及びイオン結合を包含する。本明細書で使用する場合、抗体が2つのポリペプチド間の相互作用を妨害、低減または完全に排除するとき、その抗体は、2つのポリペプチド間の「相互作用を阻害する」。本開示の抗体は、抗体が2つのポリペプチドの一方に結合する場合に2つのポリペプチド間の「相互作用を阻害する」。いくつかの実施形態では、相互作用は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97.5%、及び/または100%近くの少なくともいずれかで阻害され得る。
【0163】
「エピトープ」という用語には、抗体が結合できる任意の決定基が含まれる。エピトープは、その抗原を標的とする抗体が結合する抗原の領域であり、抗原がポリペプチドの場合、抗体と直接接触する特定のアミノ酸を含む。ほとんどの場合、エピトープはポリペプチド上に存在するが、場合によっては、核酸などの他の種類の分子上に存在することもある。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニル基などの化学的に活性な分子の表面基を有してよく、特定の3次元構造特性、及び/または特定の電荷特性を有してよい。一般的に、特定の標的抗原に対して特異的な抗体は、ポリペプチド及び/またはマクロ分子の複雑な混合物中の標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0164】
「単離された」抗体、例えば、本開示の単離された抗MerTK抗体は、その生成環境(例えば、天然または組換え)の成分から同定、分離及び/または回収されたものである。好ましくは、単離された抗体ペプチドは、その産生環境に由来する他のすべての夾雑成分と会合していない。その生成環境に由来する夾雑成分、例えば、組換えトランスフェクション細胞に起因するものなどは、典型的に、抗体の研究上、診断上または治療上での使用を妨げる物質であり、これらには、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。好ましい実施形態において、抗体は、(1)抗体が、例えば、ローリー法によって決定したときに、95重量%超、いくつかの実施形態では99重量%超になるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用により、少なくとも15個のN末端もしくは内部アミノ酸配列の残基を得るのに十分な程度になるまで、または(3)クマシーブルー染色もしくは好ましくはシルバー染色を使用して、非還元条件もしくは還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離抗体には、その抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換えT細胞内のインサイチューの抗体が含まれる。しかしながら、一般的には、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
【0165】
抗体(例えば、本開示の抗MerTK抗体)をコードする「単離された」核酸分子は、その核酸分子が生成された環境において通常会合している少なくとも1つの夾雑核酸分子から同定及び分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、産生環境に関連するすべての成分と会合していない。本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする単離核酸分子は、それが自然界で見出される形態または状況以外での形態である。したがって、単離核酸分子は、細胞内に天然に存在する本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。
【0166】
本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、その核酸分子に連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子のことを指すものとする。1つの種類のベクターとして、さらなるDNAセグメントをライゲートすることができる環状二本鎖DNAのことを指す「プラスミド」がある。別の種類のベクターにはファージベクターがある。別の種類のベクターとして、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲートすることができるウイルスベクターがある。特定のベクターは、ベクターが導入された宿主細胞内で自律的に複製することが可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性の哺乳動物ベクターなど)。他のベクター(例えば非エピソーム性の哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターはベクターが機能的に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技法において有用である発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形態であることから、本明細書では「プラスミド」と「ベクター」とを互換可能に使用する場合がある。
【0167】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変ヌクレオチドもしくは塩基及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼによりまたは合成反応により重合体中に組み込まれ得る任意の基質であり得る。
【0168】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物を組み込むためのベクター(複数可)のレシピエントになり得るか、レシピエントになっている個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、天然、突然、または意図的変異のため、必ずしも元の親細胞と(形態においてまたはゲノムDNA相補体において)完全に同一である必要はない場合がある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(複数可)をインビボでトランスフェクトした細胞が含まれる。
【0169】
本明細書で使用される「担体」には、使用される用量及び濃度で、その担体に曝露される細胞または哺乳動物に対して無毒である、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤が含まれる。
【0170】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、臨床的病理の経過中に治療されている個体の自然経過を改変するように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、進行速度の低減、病的状態の回復または緩和、及び特定の疾患、障害、または状態の寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、特定の疾患、障害、または状態に関連する1つ以上の症状が軽減または消失する場合に個体は効果的に「治療される」。
【0171】
「有効量」という用語は、少なくとも所望の治療結果を得るうえで必要な用量及び期間で効果的な量のことを指す。有効量は、1回以上の投与で与えることができる。有効量はまた、治療の有益な効果が治療のいかなる毒性または有害効果をも上回る量である。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬剤の用量の減少、例えば標的化による別の薬剤の効果の増強、疾患の進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、直接的または間接的に治療的処置を行うのに十分な量である。臨床状況において理解されるように、有効量の薬物、化合物、または薬学的組成物は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成されるか、または達成されないことがある。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療薬の投与との関連で考慮され得、単剤は、1つ以上の他の剤と併せて、望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられると見なされ得る。
【0172】
治療の目的のための「個体」は、ヒト、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、競技用または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含む、哺乳動物に分類される任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
【0173】
本明細書で使用する場合、別の化合物または組成物との「併用」または「組み合わせ」の投与は、同時投与及び/または異なる時点での投与を含む。併用または組み合わせでの投与はまた、合剤としての投与または別個の組成物としての投与を包含し、異なる投与頻度または間隔で、かつ同じ投与経路または異なる投与経路を使用することを含む。いくつかの実施形態では、併用投与は、同じ治療計画の一環としての投与である。
【0174】
本明細書で使用される「約」という用語は、本技術分野の当業者に容易に理解される、各値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0175】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含む。例えば「an antibody」と言う場合には、1つ~モル量のような多数の抗体、及び当業者には周知のその均等物のことを指す、といった具合である。
【0176】
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態を「含む」、態様及び実施形態「からなる」、ならびに態様及び実施形態「から本質的になる」を含むことを理解されたい。
【0177】
II.抗MerTK抗体
本明細書では、一価の抗MerTK抗体が提供される。本明細書で提供される抗体は、例えば、MerTK関連疾患の治療に有用である。
【0178】
一態様では、本開示は、本開示のMerTKタンパク質またはポリペプチド内のエピトープに結合する単離された(例えば、モノクローナル)一価抗体を提供する。本開示のMerTKタンパク質またはポリペプチドには、限定されるものではないが、哺乳動物のMerTKタンパク質またはポリペプチド、ヒトMerTKタンパク質またはポリペプチド、マウス(ネズミ科)MerTKタンパク質またはポリペプチド、及びカニクイザルMerTKタンパク質またはポリペプチドが含まれる。本開示のMerTKタンパク質及びポリペプチドには、MerTKの天然に存在するバリアントが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示のMerTKタンパク質及びポリペプチドは膜に結合している。いくつかの実施形態では、本開示のMerTKタンパク質及びポリペプチドは、MerTKの可溶性細胞外ドメインである。
【0179】
いくつかの実施形態では、MerTKは、細胞で発現される。いくつかの実施形態では、MerTKは、限定されるものではないが、マクロファージ及び樹状細胞を含む食細胞で発現される。いくつかの実施形態では、MerTKは、単球、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、ミクログリア、内皮細胞、巨核球、及び血小板で発現される。いくつかの実施形態では、高レベルのMerTK発現は、卵巣、前立腺、精巣、肺、網膜、及び腎臓でも見られる。さらに、MerTKは、多くのがんにおいて異所性または過剰発現を示す(Linger et al.,2008,Adv Cancer Res,100:35-83)。
【0180】
MerTKの結合パートナー
本開示のMerTKタンパク質は、限定されるものではないが、プロテインS(ProSまたはProS1)、成長停止特異的遺伝子6(Gas6)、タビー、タビー様タンパク質1(TULP-1)、及びガレクチン-3を含む1つ以上のリガンドまたは結合パートナーと相互作用する(例えば、結合する)。本開示の抗MerTK抗体は、MerTKとそのさまざまなリガンド及び結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に影響を及ぼすことができる。特に、国際特許出願第PCT/US2020/064640号(WO2021/119508)に開示されるように、親マウス抗MerTK抗体MTK-16及び親マウス抗MerTK抗体MTK-33は、Gas6リガンド及びProSリガンドの両方のMerTKへの結合を遮断するうえで有効である。
【0181】
pAKT
AKT活性は、MerTK、Axl、またはTyro-3受容体へのGas6の結合の下流の標的である。例えば、MerTKのリガンドであるGas6のMerTKへの結合は、AKTリン酸化(pAKT)を誘導する(例えば、Angelillo-Scherrer et al,2008,J Clin Invest,118:583-596、Moody et al,2016,Int J Cancer,139:1340-1349を参照)。本開示の一価抗MerTK抗体は、ヒトマクロファージ(例えば、M2c分化型ヒトマクロファージ)におけるGas6媒介ホスホAKT(pAKT)活性を用量依存的に低下させるのに有効であった。したがって、本開示の一価抗MerTK抗体は、pAKTレベルの低下によって証明されるように、Gas6媒介MerTKシグナル伝達を低下させるのに有効であった。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、インビトロでGas6媒介pAKT活性を低下させる。
【0182】
細胞内のpAKT活性を低下させる一価抗MerTK抗体の相対的な有効性は、IC50値を測定することによって決定することができる。Gas6媒介pAKT活性の低下に関するIC50値は、以下の実施例13に記載されるような、当業者には周知の方法を使用して決定することができる。
【0183】
エフェロサイトーシス
エフェロサイトーシスとは、死にかけている細胞またはアポトーシス細胞の食作用による除去を指す。エフェロサイトーシスは、プロフェッショナル食細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア)、ノンプロフェッショナル食細胞(例えば、上皮細胞、線維芽細胞、網膜色素上皮細胞)、または特化型食細胞によって行われ得る(Elliott et al,2017,J Immunol,198:1387-1394)。エフェロサイトーシスは、膜の完全性が損なわれて細胞内容物が周囲の組織に漏出する前に死んだ細胞または死にかけの細胞を除去することにより、有毒な酵素、酸化物質、その他の細胞内成分への組織の曝露を防止する。
【0184】
アポトーシス細胞は、その細胞表面に食細胞上の受容体によって認識されるさまざまな分子(「イートミー」シグナル)を露出させる。そのような「イートミー」シグナル伝達分子の1つに、通常は細胞膜の内葉に限定されているホスファチジルセリン(PtdSer)がある。アポトーシスの際、PtdSerは細胞膜の外葉に露出される。MerTKリガンドProS及びGas6は、それらのN末端ドメイン近くにγカルボキシル化グルタミン酸残基を含んでおり、グルタミン酸ドメインのγカルボキシル化により、ホスファチジルセリンへの結合が可能となる。Gas6またはProSはアポトーシス細胞上のPtdSerに結合すると同時に食細胞上のMerTKに結合する。このようなリガンドとMerTKとの結合により、エフェロサイトーシスが活性化される。
【0185】
以下の実施例12に示すように、本開示の一価抗MerTK抗体は、食細胞によるエフェロサイトーシス活性を低下させるうえで有効であった。
【0186】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、食細胞によるエフェロサイトーシスを減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、マクロファージによるエフェロサイトーシスを減少させる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、樹状細胞によるエフェロサイトーシスを減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、骨髄由来マクロファージによるエフェロサイトーシスを減少させる。エフェロサイトーシスの減少は、本明細書の実施例12に記載されているような当業者には周知の標準的な方法を使用して決定することができる。
【0187】
いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、以下の実施例12において本明細書に記載の方法によって評価した場合に、約0.13nM~約30nMの範囲のIC50で食細胞(例えば、ヒトマクロファージ)によるエフェロサイトーシスを減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、約4nM~約37nMの範囲のIC50値で食細胞によるエフェロサイトーシスを減少させる。
【0188】
エフェロサイトーシスを遮断すると、M1様マクロファージの分極が誘導され、その結果、炎症誘発性サイトカイン(TNF、IFN、IL-12など)の産生、及び抗腫瘍免疫を媒介するCD8+T細胞及びナチュラルキラー細胞などの細胞傷害性細胞の動員の増加につながる。したがって、本開示の一価抗MerTK抗体は、食細胞によるエフェロサイトーシスを低減することにより、M1様マクロファージの極性化を増加させるのに有効であり、また、TNF、IFN、IL-6、IL-1、IL-12、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL-1、KC)、単球化学誘引タンパク質-1(MCP1、CCL2)、マクロファージ炎症タンパク質-1-α(MIP-1α、CCL3)、及び/またはマクロファージ炎症性タンパク質-1-ベータ(MIP-1β、CCL4)を含む炎症誘発性サイトカイン/ケモカインの産生、発現、及び/または分泌の増加に有効である。
【0189】
エフェロサイトーシスとがんの進行との関連性がこれまでに記載されている。例えば、PtdSerが食細胞のエフェロサイトーシスマシナリーと相互作用することを阻止するアネキシンVを使用したエフェロサイトーシスの遮断は、腫瘍の進行及び転移を十分に減少させる(Stach et al,2000,Cell Death Diff,7:911、Bondanza et al,2004,J Exp Med,200:1157、Werfel and Cook,2018,Sem Immunopathology,40:545-554)。さらに、MerTKは、そのPtdSer架橋リガンドGas6と同様、多くのヒトのがんにおける予後不良及び低い生存率と相関している(Graham et al,2014,Nat Rev Cancer,14:769、Linger et al,2010,Expert Opin Ther Targets,14:1073-1090、Wang et al,2013,Oncogene,32:872、Jansen et al,2011,J Proteome Res,11:728-735、Tworkoski et al,2011,Mol Cancer Res,p.molcanres-0512、Graham et al,2006,Clin Cancer Res,12:2662-2669、Keating et al,2006,Oncogene,25:6092)。したがって、本開示の一価抗MerTK抗体は、食細胞によるエフェロサイトーシスを減少させることから、腫瘍の進行及び転移を減少させるのに有効である。
【0190】
カニクイザルの研究では、Gas6及びProSの両方との結合を遮断する二価抗MerTK抗体(例えば、抗MerTK抗体MTK-16)は、ProSのMerTKへの結合を遮断するがGas6のMerTKへの結合は遮断しない二価の抗MerTK抗体を投与したカニクイザルで観察されたインビボ毒性と比較して、場合によってはインビボ毒性(例えば、体重減少)がより低いことが示された。したがって、いくつかの実施形態では、Gas6及びProSの両方とMerTKとの結合を遮断する本開示の一価抗MertK抗体は、ProSのMerTKへの結合を遮断するがGas6のMerTKへの結合は遮断しない本開示の抗MerTK抗体と比較してより低い全身性インビボ毒性を示し得る。抗MerTK抗体MTK-16及び抗MerTK抗体MTK-33(両方とも、Gas6とProS両方のMerTKへの結合をブロックする)がMerTKタンパク質のIg1ドメインに結合するのに対して、抗MerTK抗体MTK-15(ProSのMerTKへの結合を遮断するがGas6のMerTKへの結合は遮断しない)は、MerTKタンパク質のIg2及びFN1ドメインの両方に結合する(国際特許出願第PCT/US2020/064640号を参照)(WO2021/119508)。したがって、いくつかの実施形態では、MerTKのIg1ドメインに結合する一価抗MerTK抗体(例えば、一価の抗MerTK抗体MTK-16、MTK-16.2、MTK-33、及びMTK-33.11)は、MerTKのIg2ドメイン及びFN1ドメインの両方に結合する抗MerTK抗体よりも低い全身性のインビボ毒性を示し得る。さらに、いくつかの実施形態では、MerTKのIg1ドメインに結合し、(その一価の形態に一部帰因して)pAKT活性が低い一価の抗MerTK抗体(例えば、一価の抗MerTK抗体MTK-16、MTK-16.2、MTK-33、及びMTK-33.11)は、MerTKのIg2ドメイン及びFN1ドメインの両方に結合する二価の抗MerTK抗体よりも低い全身性のインビボ毒性を示し得る。
【0191】
一価抗体の形態
本開示の一価抗MerTK抗体には、MerTKに特異的に結合する単一の抗原結合ドメインを有する抗MerTK抗体のさまざまな形態が含まれ得る。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、単一のIgG抗体軽鎖ポリペプチドに結合した単一の(すなわち、1つ以下の)IgG抗体重鎖ポリペプチドを含み、これらはMerTKに特異的に結合する単一の抗原結合ドメインを形成する。このような一価の抗MerTK抗体の形態では、重鎖ポリペプチドのIgG Fc領域は第2のIgG Fc領域と二量体化されていない。
【0192】
他の実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、単一のIgG抗体軽鎖ポリペプチドに結合した単一のIgG抗体重鎖ポリペプチドを含み、これらは、MerTKに特異的に結合する単一の抗原結合ドメインを形成し、単一のIgG抗体重鎖ポリペプチドのIgG Fc領域と二量体化された改変IgG Fc領域ポリペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、改変されたIgG Fc領域は、IgG Fc領域のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。
【0193】
ヘテロ二量体Fc領域
いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体の二量体化Fc領域は、異なるFc領域を含む異なるポリペプチド同士が二量体化してヘテロ二量体形態を与えることができるようなヘテロ二量体化を促進するアミノ酸変異、置換、付加、または欠失を含むFc領域同士によって形成される。
【0194】
Fc領域同士のヘテロ二量体化を促進する方法には、例えば、一群の「ノブ・イントゥ・ホール」欠失、付加もしくは置換を含めるか、または異なるポリペプチド鎖間の誘引相互作用に有利に働くFcの静電的な誘導を生じるアミノ酸欠失、付加、または置換を含めることなどによる、Fc領域のアミノ酸配列のアミノ酸欠失、付加、または置換が含まれる。相補的なFcポリペプチド同士のヘテロ二量体化を促進するための方法については、これまでに、例えば、Ridgway et al,1996,Protein Eng,9:617-621、Merchant et al,1998,Nature Biotechnol,16:677-681、Moore et al,2011,MAbs,3:546-557、Von Kreudenstein et al,2013,5:646-654、Gunasekaran et al,2010,J Biol Chem,285:19637-19464、Leaver-Fay et al,2016,Structure,24:641-651、Ha et al,2016,Frontiers in Immunology,7:1、Davis et al,2010,Protein Eng Des Sel,23:195-202、WO1996/027011、WO1998/050431、WO2009/089004、WO2011/143545、WO2014/067011、WO2012/058768、WO2018/027025、US2014/0363426、US2015/0307628、US2018/0016354、US2015/0239991、US2017/0058054、USPN5731168、USPN7183076、USPN9701759、USPN9605084、USPN9650446、USPN8216805、USPN8765412、及びUSPN8258268に記載されている。
【0195】
例えば、いくつかの実施形態では、Fcヘテロ二量体の相補的Fcポリペプチドは、Fc二量体の界面を挟んだ電荷極性を変化させるような変異を含むことで、静電的に一致したFc領域の共発現が有利な誘引相互作用を支持し、それにより所望のFcヘテロ二量体の形成を促進する一方で、不利な反発的電荷相互作用が、望ましくないFcホモ二量体の形成を抑制する(Guneskaran et al.,2010,J Biol Chem,285:19637-19646)。細胞内で共発現される際、ポリペプチド鎖間の会合は可能であるが、鎖が電荷の反発により自己会合することはほとんどない。
【0196】
さらに、Fcヘテロ二量体の相補的Fcポリペプチドは、2個のFcポリペプチド同士のヘテロ二量体化を促進する「ノブ・イントゥ・ホール」構造を含んでいる。「ノブ・イントゥ・ホール」技術については、例えば、米国特許第5,731,168号、同第7,695,936号、同第8,216,805号、同第8,765,412号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)、及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。一般的に、この方法では、第1のポリペプチドの界面に突起(「ノブ」)を、第2のポリペプチドの界面に対応した穴(「ホール」)を導入することで、突起が穴の中に位置してヘテロ二量体の形成を促し、ホモ二量体の形成を妨げることができる。突起は、第1のポリペプチドの界面の小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)に置換することによって形成される。突起と同じ、または似通った大きさの相補的な穴が、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えばアラニンまたはスレオニン)に置換することによって第2のポリペプチドの界面に形成される。突起及び穴は、例えば、部位特異的突然変異誘発またはペプチド合成により、ポリペプチドをコードする核酸を改変することによって形成することができる。特定の実施形態では、ノブ改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの一方にアミノ酸置換T366Wを含み、ホール改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのうちの他方にアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。さらに特定の実施形態では、ノブ改変を含むFcドメインのサブユニットはアミノ酸置換S354Cをさらに含み、ホール改変を含むFcドメインのサブユニットはアミノ酸置換Y349Cをさらに含む。これら2個のシステイン残基の導入により、Fc領域の2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が形成され、二量体がさらに安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。したがって、そのような構成では、第1のFc領域ポリペプチドは「ノブ」を形成するためのアミノ酸改変を含み、第2のFc領域ポリペプチドは「ホール」を形成するためのアミノ酸改変を含み、それにより相補的なFcポリペプチドからなるFcヘテロ二量体を形成する。
【0197】
Fcヘテロ二量体形態の相補的Fcポリペプチドの例示的な対合アミノ酸改変を下記表A(EU番号付け)に示す。
(表A)
【0198】
「ノブ・イントゥ・ホール」形態の特定の一実施形態では、Fcヘテロ二量体構造の第1のFcポリペプチドはT366Yアミノ酸置換を含み、Fcヘテロ二量体構造の第2のFcポリペプチドはY407Tアミノ酸置換を含む(EU番号付け)。「ノブ・イントゥ・ホール」形態の別の特定の一実施形態では、Fcヘテロ二量体構造の第1のFcポリペプチドはT366Wアミノ酸置換を含み、Fcヘテロ二量体構造の第2のFcポリペプチドはT366S、L368A、及びY407Vアミノ酸置換を含む(EU番号付け)。
【0199】
A.例示的な抗体及び特定の他の抗体の実施形態
本開示は、MerTKに特異的に結合する一価抗MerTK抗体を提供する。いくつかの態様では、本開示の一価抗MerTK抗体は、IgGの単一の重鎖及び単一の軽鎖を含むが、二量体化Fc領域を含まない。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、野生型IgG Fcのアミノ酸配列を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、野生型IgG1 Fcのアミノ酸配列を有する野生型IgG1 Fc領域を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、LALAPSアミノ酸置換を有するIgG Fc領域を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、LALAPSアミノ酸置換を有するIgG1 Fc領域を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、LALAPSアミノ酸置換を有するIgG4 Fc領域を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、NSLFアミノ酸置換を有するIgG Fc領域を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、NSLFアミノ酸置換を有するIgG1 Fc領域を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、NSLFアミノ酸置換を有するIgG4 Fc領域を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、上記のアミノ酸置換のいずれかを有するIgG4 Fc領域を含み、さらにS228Pアミノ酸置換を含む抗MerTK抗体重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、または配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、配列番号17のアミノ酸1~449を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号18のアミノ酸1~449を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号19のアミノ酸1~449を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号20のアミノ酸1~446を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号22のアミノ酸1~448を含む重鎖及び配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号23のアミノ酸1~448を含む重鎖及び配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号24のアミノ酸1~448を含む重鎖及び配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、または配列番号25のアミノ酸1~445を含む重鎖及び配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0201】
いくつかの態様では、本開示の一価抗MerTK抗体は、IgGの単一の重鎖及び単一の軽鎖を含み、さらにIgGの二量体化Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号40のアミノ酸配列を含むFc;配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号41のアミノ酸配列を含むFc;配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含むFc;配列番号32のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号43のアミノ酸配列を含むFc;配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含むFc;配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号40のアミノ酸配列を含むFc;配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号41のアミノ酸配列を含むFc;配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含むFc;配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号43のアミノ酸配列を含むFc;または配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含むFcを含む。
【0202】
いくつかの態様では、本開示の一価抗MerTK抗体は、IgGの単一の重鎖及び単一の軽鎖を含み、さらにIgGの二量体化Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、配列番号29のアミノ酸1~454を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号40のアミノ酸1~226を含むFc;配列番号30のアミノ酸1~449を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号41のアミノ酸1~226を含むFc;配列番号31のアミノ酸1~449を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号42のアミノ酸1~226を含むFc;配列番号32のアミノ酸1~446を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号43のアミノ酸1~228を含むFc;配列番号33のアミノ酸1~446を含む重鎖、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号44のアミノ酸1~228を含むFc;配列番号34のアミノ酸1~448を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号40のアミノ酸1~226を含むFc;配列番号35のアミノ酸1~448を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号41のアミノ酸1~226を含むFc;配列番号36のアミノ酸1~448を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号42のアミノ酸1~226を含むFc;配列番号37のアミノ酸1~445を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号43のアミノ酸1~228を含むFc;または配列番号38のアミノ酸1~445を含む重鎖、配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号44のアミノ酸1~228を含むFcを含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、上記の実施形態のいずれかによる一価抗MerTK抗体は、以下のセクション1~7に記載される特徴のうちのいずれかを、単独で、または組み合わせで有することができる。
【0204】
(1)抗MerTK抗体の結合親和性
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。解離定数は、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法(例えば、ForteBioによるOctet Systemを参照)、等温滴定熱量測定(ITC)、示差走査熱量測定(DSC)、円二色性(CD)、ストップト・フロー分析、及び比色分析または蛍光タンパク質融解分析などの生化学的または生物物理学的手法を含む、任意の分析法によって決定することができる。一実施形態では、Kdは、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。いくつかの実施形態では、RIAは、例えば、Chen et al.J.Mol.Biol.293:865-881(1999)に記載されるように、目的とされる抗体のFabバージョン及びその抗原で実行される。いくつかの実施形態では、KDは、BIACORE表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定され、例えば、BIACORE-2000またはBIACORE-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用したアッセイは、約10レスポンスユニット(RU)の固定化抗原CM5チップを用いて25℃で行われる。いくつかの実施形態では、KDは、一価抗体(例えば、Fab)または完全長抗体を使用して決定される。いくつかの実施形態では、KDは、一価形態の完全長抗体を使用して決定される。
【0205】
いくつかの実施形態では、本開示の抗MerTK抗体はヒトMerTKに結合し、ヒトMerTKとの結合のKDは約1.4nM~約81nMである。いくつかの実施形態では、抗MerTK抗体はカニクイザルMerTKに結合し、カニクイザルMerTKとの結合のKDは約1.6nM~約107nMである。いくつかの実施形態では、本開示の抗MerTK抗体はマウスMerTKに結合し、マウスMerTKとの結合のKDは約30nM~約186nMである。
【0206】
(2)抗体断片
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。抗体断片としては、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)2断片、Fv断片、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の概論は、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。scFvフラグメントの概論については、例えばWO93/16185、及び米国特許第5571894号及び同第5587458号を参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5869046号を参照されたい。
【0207】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404097、WO1993/01161、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む、抗体断片である。特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(例えば、米国特許第6248516号を参照されたい)。
【0208】
抗体断片は、本明細書に記載するように、インタクト抗体のタンパク質分解消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)またはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、さまざまな技術によって作製することができる。
【0209】
(3)キメラ及びヒト化抗体
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4816567号に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサル等の非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、それらの抗原結合フラグメントが含まれる。
【0210】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるために、ヒト化される。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化抗体が由来する別の種に由来する抗体と標的に対して実質的に同じ親和性を有する。例えば、米国特許第5530101号、同第5693761号、同第5693762号及び同第5585089号を参照されたい。特定の実施形態では、抗原結合ドメインの天然の親和性を失わせることなく、その免疫原性を低下させながら、改変することができる抗体可変ドメインのアミノ酸が特定される。例えば、米国特許第5766886号及び第5869619号を参照されたい。一般に、ヒト化抗体は、HVR(またはそれらの部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの部分)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)に由来する対応する残基で置換される。
【0211】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro et al.Front.Biosci.13:161 9-1633(2008)に概説されており、例えば米国特許第5821337号、同第7527791号、同第6982321号、及び同第7087409号にさらに記載されている。ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、次のものが含まれるが、これらに限定されない:「最良適合(best-fit)」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の部分集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞株フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)参照)、及びFRライブラリーのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
(4)ヒト抗体
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野では周知の種々の技法を使用して産生することができる。ヒト抗体については、一般に、van Dijk et al. Curr. Opin.Pharmacol. 5:368-74(2001)及びLonberg Curr. Opin.Immunol. 20:450-459(2008)に一般的に記載されている。
【0213】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応じてインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。マウス抗体の非存在下でそのようなマウスがヒト抗体を産生することを期待して、マウス抗体産生が欠損したマウス系統にヒトIg遺伝子座の大きな断片を組み込むことができる。大きなヒトIg断片は、抗体の産生及び発現の適切な制御だけでなく、可変遺伝子の大きな多様性を保存することができる。抗体の多様化と選択のためのマウス機構、及びヒトタンパク質に対する免疫寛容の欠如を利用することにより、これらのマウス系統で再現されたヒト抗体レパートリーは、ヒト抗原を含む任意の目的の抗原に対する高親和性の完全ヒト抗体を与えることができる。ハイブリドーマ技術を使用することで、所望の特異性を備えた抗原特異的ヒトMAbを産生して選択することができる。特定の例示的な方法は、米国特許第5545807号、EP546073、及びEP546073に記載されている。例えば、米国特許第6075181号及び同第6150584号(XENOMOUSE(商標)技術について記載)、米国特許第5770429号(HUMAB(登録商標)技術について記載)、米国特許第7041870号(K-M MOUSE(登録商標)技術について記載)、ならびに米国特許出願公開第2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載)も参照されたい。かかる動物によって産生されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに改変することができる。
【0214】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株について記載されている(例えば、Kozbor J. Immunol.133:3001(1984)及びBoerner et al. J. Immunol.147:86(1991)を参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体についても、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1 03:3557-3562(2006)に記載されている。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株によるモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)に記載されるものがある。ヒトハイブリドーマ技術(Trioma technology)はまた、Vollmers et al,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers et al,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。その後、そのような可変ドメインは、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技法を、以下に記載する。
【0215】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、インビトロ法及び/または所望の活性を有する抗体のコンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって単離されたヒト抗体である。適当な例としては、ファージディスプレイ(CAT、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Symphogen、Alexion(旧Proliferon)、Affimed)リボソームディスプレイ(CAT)、酵母ディスプレイ(Adimab)などが含まれるが、これらに限定されない。特定のファージディスプレイ法では、Winter et al.Ann.Rev.Immunol.12:433-455(1994)に記載されるように、VH及びVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングし、ファージライブラリーでランダムに組み換え、次いでこれを、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてかかるライブラリーをスクリーニングするためのさまざまな方法が、当該技術分野で周知である。Sidhu et al.J.Mol.Biol.338(2):299-310,2004、Lee et al.J.Mol.Biol.340(5):1073-1093,2004、Fellouse Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.J.Immunol.Methods 284(-2):1 19-132(2004)も参照されたい。ファージは通常、抗体断片を一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして提示する。免疫化源由来のライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングすることで、免疫化することなく、広範な非自己抗原及び自己抗原に対する単一源の抗体を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリーは、Hoogenboom et al.J.Mol.Biol.,227:381-388,1992に記載されるように、幹細胞由来の再編成されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用して高度可変HVR3領域をコードし、インビトロで再編成を実現することによって合成によって作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーについて記載した特許公開としては、例えば、米国特許第5750373号、ならびに米国特許出願公開第2007/0292936号及び同第2009/0002360号が挙げられる。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0216】
(5)Fc領域を含む定常領域
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体はFcを含む。いくつかの実施形態では、Fcは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及び/またはIgG4アイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである。
【0217】
本明細書で提供される抗体のいずれかの特定の実施形態では、抗体は、IgG2アイソタイプを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG2定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG2定常領域は、Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体への結合とは独立して、1つ以上のMerTK活性を誘導する。いくつかの実施形態では、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。特定の実施形態では、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-γ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0218】
本明細書で提供される抗体のいずれかの特定の実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプを有する。いくつかの実施形態において、抗体は、マウスIgG1定常領域を含有する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1定常領域は、Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。特定の実施形態において、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-ガンマ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0219】
本明細書で提供される抗体のいずれかの特定の実施形態では、抗体は、IgG4アイソタイプを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG4定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4定常領域は、Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。特定の実施形態では、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-γ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0220】
本明細書で提供される抗体のいずれかの特定の実施形態では、抗体は、ハイブリッドIgG2/4アイソタイプを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG2のアミノ酸118~260(EU番号付けによる)と、ヒトIgG4のアミノ酸261~447(EU番号付けによる)とを含むアミノ酸配列を含む(WO1997/11971、WO2007/106585)。
【0221】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、アミノ酸置換を含まないFc領域を含む対応する抗体と比較して、補体を活性化することなくクラスター化を増加させる。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体が特異的に結合する標的の1つ以上の活性を誘導する。いくつかの実施形態では、抗体はMerTKに結合する。
【0222】
また、抗体のエフェクター機能を改変し、及び/または血清中半減期を延長するために、本開示の抗MerTK抗体を改変することが望ましい場合がある。例えば、定常領域上のFc受容体結合部位を改変または変異させて、特定のFc受容体、例えば、FcγRI、FcγRII、及び/またはFcγRIIIに対する結合親和性を除去または低減して、抗体依存性細胞媒介細胞傷害を低減し得る。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、抗体のFc領域(例えば、IgGのCH2ドメイン内)のN-グリコシル化を除去することによって低下する。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、WO99/58572及びArmour et al.Molecular Immunology 40:585-593(2003)、Reddy et al.,J.Immunology 164:1925-1933(2000)に記載されるように、ヒトIgGの233~236、297及び/または327~331などの領域を改変することによって低下する。他の実施形態において、本開示の抗MerTK抗体を改変してエフェクター機能を改変して、ITIMを含有するFcgRIIb(CD32b)に対する発見選択性を向上させて、抗体依存性細胞媒介細胞傷害及び抗体依存性細胞貪食を含む体液性反応を活性化することなく、隣接細胞上でMerTK抗体のクラスター化を増加させることも所望であり得る。
【0223】
抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国特許第5739277号に記載されるようなサルベージ受容体結合エピトープが抗体(特に、抗体断片)中に組み込まれ得る。本明細書で使用されるとき、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のin vivo血清半減期を延長させるのに貢献するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。他のアミノ酸配列改変。
【0224】
(6)抗体バリアント
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体のアミノ酸配列バリアントが想到される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善させることが望ましい場合がある。
【0225】
(i)置換、挿入、及び欠失バリアント
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な改変を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。かかる改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列中の残基の欠失、及び/またはアミノ酸配列中への残基の挿入、及び/またはアミノ酸配列中の残基の置換が含まれる。
(表A)アミノ酸置換
【0226】
抗体の生物学的性質の大幅な改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくは螺旋コンフォメーション、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さ、の維持に対する置換の影響が大きく異なる置換を選択することにより実現される。天然に存在する残基は、一般的な側鎖特性に従って分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0227】
例えば、非保存的置換は、これらのクラスのいずれかのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを含み得る。このような置換残基は、例えば、非ヒト抗体と相同であるヒト抗体の領域、または分子の非相同領域に導入することができる。
【0228】
本明細書に記載のポリペプチドまたは抗体に変更を加える際、特定の実施形態によれば、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することができる。各アミノ酸には、その疎水性及び電荷特性に基づいてハイドロパシー指数が割り当てられている。それらは以下のとおりである:イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、スレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、アルギニン(-4.5)。
【0229】
タンパク質に相互作用的な生物学的機能を与える際のハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当該技術分野において理解されている(Kyte et al.J.Mol.Biol.,157:105-131(1982))。特定のアミノ酸を、同様のハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸と置換しても、依然として同様の生物学的活性を保持できることが知られている。ハイドロパシー指数に基づいて変更を加える際に、特定の実施形態では、ハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。特定の実施形態では、±1以内のものが含まれ、特定の実施形態では、±0.5以内のものが含まれる。
【0230】
特に、本明細書の場合のように、類似アミノ酸置換によって形成される生物学的に機能するタンパク質またはペプチドが免疫学的実施形態における使用を意図している場合には、その置換を親水性に基づいて効果的に行うことができることも当該技術分野では理解されている。特定の実施形態では、あるタンパク質の最大の局所平均親水性はその隣接アミノ酸の親水性によって決まり、その免疫原性及び抗原性、すなわちそのタンパク質の生物学的特性と相関する。
【0231】
これらのアミノ酸残基には次の親水性値が割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0±1)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)及びトリプトファン(-3.4)。同様の親水性値に基づいて変更を行う場合、特定の実施形態では、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれ、特定の実施形態では、±1以内のアミノ酸の置換が含まれ、特定の実施形態では、±0.5以内のアミノ酸の置換が含まれる。親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを特定することもできる。これらの領域は「エピトープコア領域」とも呼ばれる。
【0232】
上記のバリアントVH配列及びVL配列の特定の実施形態では、各HVRは変化していない。
【0233】
アミノ酸配列の挿入としては、長さが残基1個~100個以上の残基を含むポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合体、ならびに1個または複数のアミノ酸残基からなる配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型バリアントとしては、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPT)またはポリペプチドの、抗体のN末端もしくはC末端への融合体が含まれる。
【0234】
HVRの外側の、抗体の適切なコンフォメーションの維持に関与しない任意のシステイン残基も(一般的にセリンで)置換することができ、分子の酸化的安定性を改善し、異常な架橋を防止することができる。逆に、システイン結合(複数可)を抗体に付加すると、その安定性を改善することができる(具体的には、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
【0235】
(ii)グリコシル化バリアント
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が生成されるか、または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって、簡便に行うことができる。
【0236】
抗体のグリコシル化は典型的には、N結合またはO結合のいずれかである。N結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内にこれらのトリペプチド配列のうちのいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が生成される。O結合グリコシル化とは、糖類であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0237】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N結合型グリコシル化部位の場合)上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含むようにアミノ酸配列を改変することにより簡便に実現される。この改変は、(O結合型グリコシル化部位の場合)元の抗体の配列への1つ以上のセリンまたはスレオニン残基の付加またはそれによる置換によって行うこともできる。
【0238】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物を改変することができる。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのKabat番号付けによるAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。オリゴ糖類には、さまざまな炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖類構造の「ステム」においてGlcNAcに結合したフコースが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、特定の特性の改善を有する抗体バリアントを作製するために行われ得る。
【0239】
一実施形態では、Fc領域に(直接的にまたは間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、米国特許公開第2003/0157108号及び同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例としては、US 2003/0157108、US 2003/0115614、US 2002/0164328、US 2004/0093621、US 2004/0132140、US 2004/0110704、US 2004/0110282、US 2004/0109865、Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLed3 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、US2003/0157108)、及びα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)及びKanda et al.Biotechnol.Bioeng.94(4):680-688(2006))などのノックアウト細胞株が挙げられる。
【0240】
(iii)改変された定常領域
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体Fcは抗体Fcのアイソタイプ及び/または改変体である。いくつかの実施形態では、抗体のFcアイソタイプ及び/または改変体は、Fcγ受容体に結合することができる。
【0241】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、改変抗体Fcは、IgG1改変Fcである。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、1つ以上の改変を含む。例えば、いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、(例えば、同じアイソタイプの野生型Fc領域と比較して)1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、N297A(Bolt S et al.(1993)Eur J Immunol 23:403-411)、D265A(Shields et al.(2001)R.J.Biol.Chem.276,6591-6604)、L234A、L235A(Hutchins et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA,92:11980-11984、Alegre et al.,(1994)Transplantation 57:1537-1543.31、Xu et al.,(2000)Cell Immunol,200:16-26)、G237A(Alegre et al.(1994)Transplantation 57:1537-1543.31、Xu et al.(2000)Cell Immunol,200:16-26)、C226S、C229S、E233P、L234V、L234F、L235E(McEarchern et al.,(2007)Blood,109:1185-1192)、P331S(Sazinsky et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 2008,105:20167-20172)、S267E、L328F、A330L、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択され、ただし、アミノ酸の位置は、EU番号付け規則に従うものである。
【0242】
IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるN297A変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるD265A及びN297A変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるD270A変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによるL234A及びL235A変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるL234A及びG237A変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるL234A、L235A及びG237A変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるP238D、L328E、E233、G237D、H268D、P271G及びA330R変異のうちの1つ以上(すべても含む)を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるS267E/L328F変異のうちの1つ以上を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるP238D、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G及びA330R変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるP238D、L328E、G237D、H268D、P271G及びA330R変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるP238D、S267E、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G及びA330R変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるP238D、S267E、L328E、G237D、H268D、P271G及びA330R変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるC226S、C229S、E233P、L234V、及びL235A変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるL234F、L235E及びP331S変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるS267E及びL328F変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるN325S及びL328F変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるS267E変異を含む。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、IgG1の定常重鎖1(CH1)及びヒンジ領域のCH1による置換、ならびにIgG2のヒンジ領域(EU番号付けによるIgG2のアミノ酸118~230)のカッパ軽鎖による置換を含む。
【0243】
IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、2個以上のアミノ酸置換を含まないFc領域を有する対応する抗体と比較して、補体を活性化することなく抗体のクラスター化を増加させる2個以上のアミノ酸置換を含む。したがって、IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、Fc領域を含む抗体であり、抗体は、EU番号付けに従って、位置E430Gのアミノ酸置換と、L234F、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、A330S、P331S、及びそれらの任意の組み合わせから選択される残基位置でのFc領域の1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによる位置E430G、L243A、L235A、及びP331Sのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによる位置E430G及びP331Sのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによる位置E430G及びK322Aのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによる位置E430G、A330S及びP331Sのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによる位置E430G、K322A、A330S、及びP331Sのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによる位置E430G、K322A及びA330Sのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによる位置E430G、K322A及びP331Sのアミノ酸置換を含む。
【0244】
IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、補体活性化をなくすために、EU番号付け規則による、A330L変異(Lazar et al.,Proc Natl Acad Sci USA,103:4005-4010(2006))またはL234F、L235E及び/またはP331S変異のうちの1つ以上(Sazinsky et al.,Proc Natl Acad Sci USA,105:20167-20172(2008))と組み合わせることができる。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによるA330L、A330S、L234F、L235E、及び/またはP331Sのうちの1つ以上をさらに含み得る。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、ヒト血清中での抗体の半減期を増大させるための1つ以上の変異(例えば、EU番号付け規則による、M252Y、S254T、及びT256E変異のうちの1つ以上(すべても含む))をさらに含み得る。IgG1改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG1改変Fcは、EU番号付けによるE430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345Y、S440Y、及び/またはS440Wのうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0245】
本開示の他の態様は、改変された定常領域(すなわち、Fc領域)を有する抗体に関する。標的受容体を活性化するためにFcgR受容体との結合に依存する抗体は、FcgRへの結合をなくすように操作された場合にそのアゴニスト活性を喪失し得る(例えば、Wilson et al. Cancer Cell 19:101-113(2011)、Armour at al.Immunology 40:585-593(2003)、及びWhite et al.Cancer Cell 27:138-148(2015)を参照)。したがって、抗体がヒトIgG2アイソタイプ(CH1及びヒンジ領域)由来のFcドメイン、または阻害性FcgRIIB r受容体に優先的に結合することができる別のタイプのFcドメイン、またはそのバリアントを有する場合、適正なエピトープ特異性を有する本開示の抗MerTK抗体は、最小限の副作用で標的抗原を活性化できるものと考えられる。
【0246】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、改変抗体Fcは、IgG2改変Fcである。いくつかの実施形態では、IgG2改変Fcは、1つ以上の改変を含む。例えば、いくつかの実施形態では、IgG2改変Fcは、1つ以上のアミノ酸置換を含む(例えば、同じアイソタイプの野生型Fc領域と比較して)。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、EU番号付け規則による、V234A(Alegre et al.,Transplantation 57:1537-1543.31(1994)、Xu et al.,Cell Immunol,200:16-26(2000))、G237A(Cole et al.Transplantation,68:563-571(1999))、H268Q、V309L、A330S、P331S(US2007/0148167、Armour et al.Eur J Immunol 29:2613-2624(1999)、Armour et al.The Haematology Journal 1(Suppl.1):27(2000)、Armour et al.The Haematology Journal 1(Suppl.1):27(2000))、C219S、及び/またはC220S(White et al.Cancer Cell 27,138-148(2015))、S267E、L328F(Chu et al.,Mol Immunol,45:3926-3933(2008))、ならびにM252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択される。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置V234A及びG237Aのアミノ酸置換を含む。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置C219SまたはC220Sのアミノ酸置換を含む。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置A330S及びP331Sのアミノ酸置換を含む。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置S267E及びL328Fのアミノ酸置換を含む。
【0247】
IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付け規則によるC127Sアミノ酸置換を含む(White et al.,(2015)Cancer Cell 27,138-148、Lightle et al.Protein Sci.19:753-762(2010)、及びWO2008/079246)。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、EU番号付け規則によるC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する(White et al.Cancer Cell 27:138-148(2015)、Lightle et al.Protein Sci.19:753-762(2010)、及びWO2008079246)。
【0248】
IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるC220Sアミノ酸置換を含む。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、EU番号付け規則によるC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する。
【0249】
IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるC219Sアミノ酸置換を含む。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、EU番号付け規則によるC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する。
【0250】
IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、IgG2アイソタイプの重鎖定常ドメイン1(CH1)及びヒンジ領域を含む(White et al. Cancer Cell 27:138-148(2015))。IgG2改変Fcの特定のいくつかの実施形態では、IgG2アイソタイプCH1及びヒンジ領域は、EU番号付けによる118~230のアミノ酸配列を含む。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、抗体Fc領域は、EU番号付けによるS267Eアミノ酸置換、L328Fアミノ酸置換もしくはその両方、及び/またはN297AもしくはN297Qアミノ酸置換を有する。
【0251】
IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345Y、S440Y、及びS440Wの1つ以上のアミノ酸置換をさらに含む。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、ヒト血清中での抗体の半減期を増大させるための1つ以上の変異(例えば、EU番号付け規則による、M252Y、S254T、及びT256E変異のうちの1つ以上(すべても含む))をさらに含み得る。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、A330S及びP331Sをさらに含み得る。
【0252】
IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、IgG2/4ハイブリッドFcである。いくつかの実施形態では、IgG2/4ハイブリッドFcは、IgG2のaa118~260及びIgG4のaa261~447を含む。IgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置H268Q、V309L、A330S、及びP331Sの1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0253】
IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるA330L、L234F、L235EまたはP331S、及びこれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上のさらなるアミノ酸置換を含む。
【0254】
IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかの特定の実施形態では、Fcは、EU番号付けによるC127S、L234A、L234F、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、A330S、P331S、E345R、E430G、S440Y、及びこれらの任意の組み合わせから選択される残基位置の1つ以上のアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G、L243A、L235A、及びP331Sのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G及びP331Sのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G及びK322Aのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G、A330S及びP331Sのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G、K322A、A330S、及びP331Sのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G、K322A及びA330Sのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G、K322A及びP331Sのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置S267E及びL328Fのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置C127Sのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E345R、E430G及びS440Yのアミノ酸置換を含む。
【0255】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、改変抗体Fcは、IgG4改変Fcである。いくつかの実施形態では、IgG4改変Fcは、1つ以上の改変を含む。例えば、いくつかの実施形態では、IgG4改変Fcは、1つ以上のアミノ酸置換を含む(例えば、同じアイソタイプの野生型Fc領域と比較して)。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、EU番号付け規則によるL235A、G237A、S229P、L236E(Reddy et al.,J Immunol,164:1925-1933(2000))、S267E、E318A、L328F、M252Y、S254T及び/またはT256Eから選択される。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付け規則によるL235A、G237A、及びE318Aをさらに含み得る。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付け規則によるS228P及びL235Eをさらに含み得る。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG4改変Fcは、EU番号付け規則によるS267E及びL328Fをさらに含み得る。
【0256】
IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG4改変Fcは、抗体の安定化を向上させるために、EU番号付け規則によるS228P変異と組み合わせることができる(Angal et al.,Mol Immunol,30:105-108(1993))及び/または(Peters et al.,J Biol Chem.13;287(29):24525-33(2012)) に記載される1つ以上の変異と組み合わせることができる。
【0257】
IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、IgG4改変Fcは、ヒト血清中での抗体の半減期を増大させるための1つ以上の変異(例えば、EU番号付け規則による、M252Y、S254T、及びT256E変異のうちの1つ以上(すべても含む))をさらに含み得る。
【0258】
IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによるL235E変異を含む。IgG4改変Fcのいずれかの特定の実施形態では、Fcは、EU番号付けによるC127S、F234A、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、E345R、E430G、S440Y、及びこれらの任意の組み合わせから選択される残基位置の1つ以上のアミノ酸置換を含む。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G、L243A、L235A、及びP331Sのアミノ酸置換を含む。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G及びP331Sのアミノ酸置換を含む。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430G及びK322Aのアミノ酸置換を含む。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E430のアミノ酸置換を含む。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fc領域は、EU番号付けによる位置E430G及びK322Aのアミノ酸置換を含む。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置S267E及びL328Fのアミノ酸置換を含む。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置C127Sのアミノ酸置換を含む。IgG4改変Fcのいずれかのいくつかの実施形態では、Fcは、EU番号付けによる位置E345R、E430G、及びS440Yのアミノ酸置換を含む。
【0259】
(7)他の抗体改変
抗体のいずれかのいくつかの実施形態では、本抗体は、誘導体である。「誘導体」という用語は、アミノ酸(または核酸)の挿入、欠失、または置換以外の化学修飾を含む分子を指す。特定の実施形態では、誘導体は、ポリマー、脂質、または他の有機もしくは無機部分との化学結合を含むがこれらに限定されない共有結合修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾された抗原結合タンパク質は、化学修飾されていない抗原結合タンパク質よりも長い循環半減期を有し得る。特定の実施形態では、化学修飾された抗原結合タンパク質は、所望の細胞、組織、及び/または臓器に対する、より高い標的化能力を有し得る。いくつかの実施形態では、誘導体抗原結合タンパク質は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールを含むがこれらに限定されない、1つ以上の水溶性ポリマー結合部を含むように共有結合修飾される。例えば、米国特許第4640835号、同第4496689号、同第4301144号、同第4670417号、同第4791192号、及び同第4179337号を参照されたい。特定の実施形態では、誘導体抗原結合タンパク質は、限定されるものではないが、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、ポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、及びポリビニルアルコール、ならびにこれらのポリマーの混合物を含む、1つ以上のポリマーを含む。
【0260】
特定の実施形態では、誘導体は、ポリエチレングリコール(PEG)サブユニットで共有結合的に修飾される。特定の実施形態では、1つ以上の水溶性ポリマーは、誘導体の1つ以上の特定の位置、例えばアミノ末端に結合される。特定の実施形態では、1つ以上の水溶性ポリマーは、誘導体の1つ以上の側鎖にランダムに結合される。特定の実施形態では、抗原結合タンパク質の治療能力を向上させるためにPEGが使用される。特定の実施形態では、ヒト化抗体の治療能力を向上させるためにPEGが使用される。特定のそのような方法は、例えば、あらゆる目的で本明細書に参照によって援用する米国特許第6133426号に記載されている。
【0261】
ペプチド類似体は一般的に、鋳型ペプチドの特性に類似した特性を有する非ペプチド薬物として製薬産業において使用される。これらの種類の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物」または「ペプチド模倣薬」と呼ばれる(あらゆる目的で本明細書に参照によって援用するFauchere,J.Adv.Drug Res.,15:29(1986)、及びEvans et al.J.Med.Chem.,30:1229(1987))。こうした化合物はしばしば、コンピュータ化分子モデル化の助けを借りて開発される。治療的に有用なペプチドと構造的に類似しているペプチド模倣物を使用して、同様の治療効果を得ることができる。一般に、ペプチド模倣物は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当該技術分野では周知の方法によって1つ以上のペプチド結合が、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シス及びトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、及び-CH2SO-から選択される結合によって任意で置換されている。特定の実施形態では、より安定なペプチドを生成するために、コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の同じ種類のD-アミノ酸への組織的置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を用いることができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異を含む拘束性ペプチドを、当該技術分野で周知の方法により(あらゆる目的で本明細書に参照によって援用するRizo and Gierasch Ann.Rev.Biochem.,61:387(1992))、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成できる内部システイン残基を付加することによって生成することができる。
【0262】
薬物コンジュゲーションは、生物学的活性細胞傷害性(抗がん)ペイロードまたは薬物を、特定の腫瘍マーカー(例えば、理想的には、腫瘍細胞内または腫瘍細胞上にのみ見られるポリペプチド)を特異的に標的とする抗体に結合することを伴う。抗体は、身体内でこれらのタンパク質を見つけ出し、それ自体をがん細胞の表面に結合させる。抗体と標的タンパク質(抗原)との間の生化学反応は腫瘍細胞内でシグナルを誘発し、腫瘍細胞は抗体を細胞毒素と共に吸収または内部移行させる。ADCが内部移行された後、細胞傷害性薬物が放出され、がんを殺す。この標的化のため、薬物は、他の化学療法剤よりも低い副作用を有し、より広い治療ウインドウを提供することが理想的である。抗体を結合する方法は、当該技術分野において開示されており、既知である(例えばJane de Lartigue OncLive July 5, 2012;ADC Review on antibody-drug conjugates、及びDucry et al.Bioconjugate Chemistry 21(1):5-13(2010)を参照)。
【0263】
III.核酸、ベクター及び宿主細胞
本開示の一価抗MerTK抗体は、例えば、米国特許第4816567号に記載されるように、組換え法及び組成物を使用して製造することができる。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体のいずれかをコードするヌクレオチド配列を有する単離された核酸が提供される。かかる核酸は、抗MerTK抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞も提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらで形質導入される)。
【0264】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)VLを含む抗体の軽鎖を含むアミノ酸配列をコードする核酸、及び(2)VHを含む抗体の重鎖を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含み(例えば、それらで形質導入され)、VLとVHとはMerTKに結合する抗原結合ドメインを形成する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)VLを含む抗体の軽鎖を含むアミノ酸配列をコードする核酸、(2)VHを含む抗体の重鎖を含むアミノ酸配列をコードする核酸、及び(3)VHを含まない重鎖の断片(例えば、CH2及びCH3ドメインを含む重鎖の断片)をコードする核酸を含み(例えば、それらで形質導入され)、VLとVHとはMerTKに結合する抗原結合ドメインを形成する。核酸は同じベクター内に存在しても、異なるベクター内に存在してもよい。
【0265】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。本開示の宿主細胞にはまた、限定するものではないが、単離された細胞、インビトロ培養細胞、及びエクスビボ培養細胞が含まれる。
【0266】
本開示の一価抗MerTK抗体の作製方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、一価抗MerTK抗体をコードする核酸を含む本開示の宿主細胞を、抗体の発現に適した条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、その後、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収される。
【0267】
本開示の一価抗MerTK抗体を組換え製造するには、抗MerTK抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞でのさらなるクローニング及び/または発現のために1つ以上のベクターに挿入する。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定することができる。
【0268】
本開示の一価抗MerTK抗体、または細胞表面で発現されるその断片または本明細書に記載のポリペプチド(抗体を含む)のいずれかをコードする核酸配列を含む適当なベクターには、限定するものではないが、クローニングベクター及び発現ベクターが含まれる。適当なクローニングベクターは、標準的技術に従って構築することができ、あるいは当該技術分野において入手可能な多数のクローニングベクターから選択してもよい。選択されるクローニングベクターは、使用される予定の宿主細胞に応じて異なり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製能を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの標的を1つ有することができ、及び/またはベクターを含むクローンの選択に用いることができるマーカーの遺伝子を保有し得る。適当な例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び他の多くのクローニングベクターを、BioRad、Strategene、Invitrogenなどの商業的供給元から販売されている。
【0269】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞には、原核生物細胞または真核生物細胞が含まれる。例えば、本開示の一価抗MerTK抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合には、細菌中で産生させることができる。細菌中での抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5648237号、同第5789199号、及び同第5840523号を参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離することができ、さらに精製することができる。
【0270】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物もまた、抗体をコードするベクターに好適なクローニング宿主または発現宿主であり、これらには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の生成をもたらす、真菌株及び酵母株が含まれる(例えば、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006))。
【0271】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から得ることもできる。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞と共に、特に、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用することができる多くのバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる(例えば、米国特許第5959177号、同第6040498号、同第6420548号、同第7125978号及び同第6417429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載されている))。
【0272】
脊椎動物細胞も宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で成長するように適合された哺乳類細胞株が、有用であり得る。有用な宿主哺乳動物細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(293細胞または例えばGraham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されているような293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ科腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載のTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な宿主哺乳動物細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適な特定の宿主哺乳動物細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0273】
IV.医薬組成物/製剤
本明細書では、本開示の一価抗MerTK抗体と薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物及び/または医薬製剤が提供される。
【0274】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、使用される用量及び濃度においてレシピエントに対して非毒性であることが好ましい。インビボ投与で使用するための医薬組成物及び/または医薬製剤は、無菌とすることができる。これは、無菌濾過膜による濾過により容易に実現される。
【0275】
本明細書で提供される医薬組成物及び/または医薬製剤は、例えばがんを治療するための薬剤として有用である。
【0276】
V.治療用途
本明細書に開示されるように、本開示の一価抗MerTK抗体は、疾患及び障害を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示は、がんを有する個体を治療する方法であって、治療有効量の本開示の一価抗MerTK抗体を個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0277】
MerTKの異所性または発現はさまざまな腫瘍で観察されており、MerTKの過剰発現及び活性化は、リンパ性白血病、リンパ腫、腺腫、黒色腫、胃癌、前立腺癌、乳癌との関連が示されており、MerTKの過剰発現は転移との関連が示されている(Schlegel et al,2013,J Clin Invest,123:2257-2267、Tworkoski et al,2013,Pigment Cell Melanoma,26:527-541、Yi et al,2017,Oncotarget,8:96656-96667、Linger et al,2013,Blood,122:1599-1609、Lee-Sherick et al,2013,Oncogene,32:5359-5368、Brandao et al,2013,Blood Cancer,3:e101、Xie et al,2015,Oncotarget,6:9206-9219、Shi et al,2018,J Hematology & Oncology,11:43)。したがって、本開示の抗MerTK抗体を用いてMerTKの活性を調節することは、がんを治療する有効な手段である。
【0278】
特定の態様では、本明細書において、がんの治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって、本開示の一価抗MerTK抗体、または本開示の一価抗MerTK抗体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、方法が開示される。いくつかの実施形態では、本明細書において、がんの治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって、本開示の一価抗MerTK抗体を対象に投与することを含み、一価抗MerTK抗体は、食細胞によるエフェロサイトーシスを減少させる、方法が提供される。
【0279】
いくつかの実施形態では、がんは、肉腫、膀胱癌、乳癌、結腸癌、子宮体癌、腎臓癌、腎臓癌、白血病、肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、リンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、甲状腺癌、子宮癌、肝臓癌、子宮頸癌、精巣癌、扁平上皮癌、神経膠腫、膠芽腫、腺腫、及び神経芽腫から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、多形神経膠芽腫、膀胱癌、及び食道癌から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、トリプルネガティブ乳癌である。いくつかの実施形態では、がんは、原発性腫瘍であってもよい。いくつかの実施形態では、がんは、上記のタイプのいずれかのがんに由来する第2の部位における転移性腫瘍であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、MerTKを発現するがんの治療を必要とする対象のがんの治療に有用である。
【0280】
いくつかの実施形態では、本開示の一価抗MerTK抗体は、チェックポイント阻害剤として作用する1つ以上の治療薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、方法は、抑制性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1つの抗体を個体に投与すること、及び/または別の標準的もしくは治験中抗がん療法を実施することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子は、PD1、PD-L1、及びPD-L2から選択される。いくつかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1つの抗体は、本開示の一価抗MerTK抗体と組み合わせて投与される。
【0281】
いくつかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1つの抗体は、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、及び抗PD-1抗体から選択される。
【0282】
いくつかの実施形態では、対象または個体は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されるものではないが、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象または個体は、ヒトである。
【0283】
VI.製品
本明細書では、本明細書に記載の一価抗MerTK抗体を含む製品(例えば、キット)が提供される。製品は、本明細書に記載される抗体を含む1つ以上の容器を含み得る。容器は、限定されるものではないが、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性包装(例えば、密封マイラーまたはプラスチックバッグ)を含む任意の適当なパッケージングであってよい。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)、または分割単位用量であってよい。
【0284】
いくつかの実施形態では、キットは、第2の剤を含む。いくつかの実施形態では、第2の剤は、を含む薬学的に許容される緩衝剤または希釈剤である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは薬学的に活性な剤である。
【0285】
製品のいずれかのいくつかの実施形態では、製品は、本開示の方法に従って使用するための説明書をさらに含む。説明書は、一般に、目的の治療のための用量、投与計画及び投与経路に関する情報を含む。いくつかの実施形態では、これらの使用説明書は、本開示の任意の方法に従って例えばがんなどの疾患、障害、または傷害を有する個体を治療するための、本開示の単離抗体(例えば、本明細書に記載の一価抗MerTK抗体)の投与の説明を含む。いくつかの実施形態では、説明書には、抗MerTK抗体及び第2の剤(例えば、第2の薬学的に活性な剤)の使用に関する説明書が含まれる。
【0286】
本開示は、以下の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示全体におけるすべての引用文献は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0287】
実施例1:Hisとコンジュゲートされた及びマウスFcコンジュゲートされた、MerTKポリペプチドの生成
本開示の抗MerTK抗体の作製及び特性評価に使用するための、ポリHisまたはTEVS/トロンビン/マウスIgG2a-Fcタグ付き融合タンパク質を含むヒト、カニクイザル、及びマウスのMerTKポリペプチドを、以下のように作製した。ヒトMerTK(配列番号2)、カニクイザルMerTK(配列番号3)、及びマウスMerTK(配列番号4)の細胞外ドメイン(ECD)をコードする核酸をそれぞれ、異種シグナルペプチドをコードし、PolyHis FcタグまたはTEVS/トロンビン/マウスIgG2a Fcタグのいずれかを含む核酸を含む哺乳類発現ベクターにクローニングした。
【0288】
ヒトMerTK、ヒトMerTK細胞外ドメイン、カニクイザルMerTK細胞外ドメイン、及びマウスMerTK細胞外ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【0289】
ヒトMerTKのアミノ酸配列(配列番号1):
MGPAPLPLLLGLFLPALWRRAITEAREEAKPYPLFPGPFPGSLQTDHTPLLSLPHASGYQPALMFSPTQPGRPHTGNVAIPQVTSVESKPLPPLAFKHTVGHIILSEHKGVKFNCSISVPNIYQDTTISWWKDGKELLGAHHAITQFYPDDEVTAIIASFSITSVQRSDNGSYICKMKINNEEIVSDPIYIEVQGLPHFTKQPESMNVTRNTAFNLTCQAVGPPEPVNIFWVQNSSRVNEQPEKSPSVLTVPGLTEMAVFSCEAHNDKGLTVSKGVQINIKAIPSPPTEVSIRNSTAHSILISWVPGFDGYSPFRNCSIQVKEADPLSNGSVMIFNTSALPHLYQIKQLQALANYSIGVSCMNEIGWSAVSPWILASTTEGAPSVAPLNVTVFLNESSDNVDIRWMKPPTKQQDGELVGYRISHVWQSAGISKELLEEVGQNGSRARISVQVHNATCTVRIAAVTRGGVGPFSDPVKIFIPAHGWVDYAPSSTPAPGNADPVLIIFGCFCGFILIGLILYISLAIRKRVQETKFGNAFTEEDSELVVNYIAKKSFCRRAIELTLHSLGVSEELQNKLEDVVIDRNLLILGKILGEGEFGSVMEGNLKQEDGTSLKVAVKTMKLDNSSQREIEEFLSEAACMKDFSHPNVIRLLGVCIEMSSQGIPKPMVILPFMKYGDLHTYLLYSRLETGPKHIPLQTLLKFMVDIALGMEYLSNRNFLHRDLAARNCMLRDDMTVCVADFGLSKKIYSGDYYRQGRIAKMPVKWIAIESLADRVYTSKSDVWAFGVTMWEIATRGMTPYPGVQNHEMYDYLLHGHRLKQPEDCLDELYEIMYSCWRTDPLDRPTFSVLRLQLEKLLESLPDVRNQADVIYVNTQLLESSEGLAQGSTLAPLDLNIDPDSIIASCTPRAAISVVTAEVHDSKPHEGRYILNGGSEEWEDLTSAPSAAVTAEKNSVLPGERLVRNGVSWSHSSMLPLGSSLPDELLFADDSSEGSEVLM
【0290】
ヒトMerTK ECDのアミノ酸配列(配列番号2):
MGPAPLPLLLGLFLPALWRRAITEAREEAKPYPLFPGPFPGSLQTDHTPLLSLPHASGYQPALMFSPTQPGRPHTGNVAIPQVTSVESKPLPPLAFKHTVGHIILSEHKGVKFNCSISVPNIYQDTTISWWKDGKELLGAHHAITQFYPDDEVTAIIASFSITSVQRSDNGSYICKMKINNEEIVSDPIYIEVQGLPHFTKQPESMNVTRNTAFNLTCQAVGPPEPVNIFWVQNSSRVNEQPEKSPSVLTVPGLTEMAVFSCEAHNDKGLTVSKGVQINIKAIPSPPTEVSIRNSTAHSILISWVPGFDGYSPFRNCSIQVKEADPLSNGSVMIFNTSALPHLYQIKQLQALANYSIGVSCMNEIGWSAVSPWILASTTEGAPSVAPLNVTVFLNESSDNVDIRWMKPPTKQQDGELVGYRISHVWQSAGISKELLEEVGQNGSRARISVQVHNATCTVRIAAVTRGGVGPFSDPVKIFIPAHGWVDYAPSSTPAPGNADPVLII
【0291】
カニクイザルMerTK ECDのアミノ酸配列(配列番号3):
MGLAPLPLPLLLGLFLPALWSRAITEAREEAKPYPLFPGPLPGSLQTDHTSLLSLPHTSGYQPALMFSPTQPGRPYTGNVAIPRVTSAGSKLLPPLAFKHTVGHIILSEHKDVKFNCSISVPNIYQDTTISWWKDGKELLGAHHAITQFYPDDEVTAIIASFSITSVQRSDNGSYICKMKINNEEIVSDPIYIEVQGLPHFTKQPESMNVTRNTAFNLTCQAVGPPEPVNIFWVQNSSRVNEQPEKSPSVLTVPGLTEMAVFSCEAHNDKGLTVSKGVQINIKAIPSPPTEVSIHNSTAHSILISWVPGFDGYSPFRNCSVQVKEVDPLSNGSVMIFNTSASPHMYQIKQLQALANYSIGVSCMNEIGWSAVSPWILASTTEGAPSVAPLNVTVFLNESRDNVDIRWMKPLTKRQAGELVGYRISHVWQSAGISKELLEEVGQNNSRAQISVQVHNATCTVRIAAVTKGGVGPFSDPVKIFIPAHGWVDHAPSSTPAPGNADPVLII
【0292】
マウスMerTK ECDのアミノ酸配列(配列番号4):
MVLAPLLLGLLLLPALWSGGTAEKWEETELDQLFSGPLPGRLPVNHRPFSAPHSSRDQLPPPQTGRSHPAHTAAPQVTSTASKLLPPVAFNHTIGHIVLSEHKNVKFNCSINIPNTYQETAGISWWKDGKELLGAHHSITQFYPDEEGVSIIALFSIASVQRSDNGSYFCKMKVNNREIVSDPIYVEVQGLPYFIKQPESVNVTRNTAFNLTCQAVGPPEPVNIFWVQNSSRVNEKPERSPSVLTVPGLTETAVFSCEAHNDKGLTVSKGVHINIKVIPSPPTEVHILNSTAHSILVSWVPGFDGYSPLQNCSIQVKEADRLSNGSVMVFNTSASPHLYEIQQLQALANYSIAVSCRNEIGWSAVSPWILASTTEGAPSVAPLNITVFLNESNNILDIRWTKPPIKRQDGELVGYRISHVWESAGTYKELSEEVSQNGSWAQIPVQIHNATCTVRIAAITKGGIGPFSEPVNIIIPEHSKVDYAPSSTPAPGNTDSM
【0293】
ヒト、カニクイザル、及びマウスのMerTK核酸融合コンストラクトをHEK293細胞に一過性にトランスフェクトした。組換え融合ポリペプチドを、製造者の指示に従ってMabselect樹脂(GE Healthcare、カタログ番号17519902)を使用して細胞の上清から精製した。さらに、以下に説明するように、市販のDDDDKタグ付きヒトMerTK融合ポリペプチド(Sino Biological、Wayne、PA、カタログ番号10298-HCCH)またはヒトIgG1Fcタグ付きマウスMerTK融合タンパク質(R&D Systems、Minneapolis、MA、カタログ番号591-MR-100))も抗MerTK抗体の特性評価に使用した。
【0294】
実施例2:ヒト及びマウスのMerTKを過剰発現するCHO細胞株の作製
ヒトMerTK及びマウスMerTKを過剰発現するCHO細胞株を以下のように調製した。ヒトMerTKオープンリーディングフレーム(ORF)クローンレンチウイルス粒子(カタログ番号RC215289L4V)及びマウスMerTK ORFクローンレンチウイルス粒子(カタログ番号MR225392L4V)(Origene,Rockville,MD)(いずれもmGFPタグ付けされたもの)を、ヒトMerTKを過剰発現するCHO-K1及びマウスMerTKを過剰発現するCHO-K1安定細胞株のそれぞれの作製に使用した。
【0295】
CHO細胞を、10%FBS(Gibco)を含むF12-K培地(ATCC、カタログ番号ATCC30-2004)中で80%超のコンフルエンスに達するまで培養した。次に細胞をトリプシン緩衝液(0.25%EDTA/トリプシン、Gibco、カタログ番号25200056)で解離させ、ヒトまたはマウスMerTKレンチウイルスコンストラクトのいずれかを形質導入する24時間前に70~80%コンフルエンスで6ウェルプレートに播種した。翌日、細胞をレンチウイルス粒子と4℃で2時間インキュベートした後、プレートを5%CO2中、37℃でインキュベートした。2日後、選択を行うためにピューロマイシン(Invivogen、San Diego、CA、カタログ番号ant-pr-1)を加えた。選択されたピューロマイシン耐性細胞を、その後の使用のためにCell Recovery Freezing Medium(Gibco、カタログ番号12648010)中で凍結した。
【0296】
これらの細胞株のFACS分析を行うため、上記のようにして作製したヒトMerTK過剰発現CHO細胞(CHO-huMerTK OE細胞)及びマウスMerTK過剰発現CHO細胞(CHO-muMerTK OE細胞)を、96ウェルU字底プレートにウェル当たり1~2×105細胞で播種し、市販のマウス抗ヒトMerTKモノクローナル抗体(BioLegend、クローン:590H11G1E3、カタログ番号367608、San Diego、CA)または市販のラット抗マウスMerTKモノクローナル抗体(ThermoFisher、クローン:DS5MMER、カタログ番号12-5751-82)と氷上で30分間インキュベートした。氷冷したFACS緩衝液(2%FBS+PBS)で細胞を2回洗浄した後、APCとコンジュゲートされたヤギ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、カタログ番号115-606-071)またはヤギ抗ラット抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号112-606-071)と氷上で30分間インキュベートした。二次抗体のインキュベーション後、細胞を氷冷したFACS緩衝液で洗浄し、次いで0.25μl/ウェルのヨウ化プロピジウム(BD、カタログ番号556463)を含んだ最終体積50~200μlのFACS緩衝液に再懸濁した。FACS CantoIIシステム(BD Biosciences)を使用して分析を行った。
【0297】
得られたヒトMerTK及びマウスMerTK過剰発現(OE)CHO細胞株を、以下に記載するようにその後の試験で使用して抗MerTK抗体の特性評価を行った。
【0298】
実施例3:抗MerTKハイブリドーマ抗体の作製
抗MerTKハイブリドーマを作製するために、以下の実験を行った。BALB/cマウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)またはMerTKノックアウト(KO)マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,ME)を、アジュバントありまたはアジュバントなしで、ヒト、カニクイザル、及びマウスMerTKの精製した細胞外ドメインポリペプチド(実施例1で上述したようにして得たもの)の皮下または腹腔内注射により週に2回免疫した。4週間にわたって合計8回の注射を実施した。最後の注射の3日後、ハイブリドーマ細胞株作製のためにマウスから脾臓及びリンパ節を採取した。
【0299】
免疫化マウスの脾臓及びリンパ節からリンパ球を単離し、P3X63Ag8.653(CRL-1580、American Type Culture Collection、Rockville、MD)またはSP2/mIL-6(CRL-2016、American Type Culture Collection、Rockville、MD)マウス骨髄腫細胞と電気融合法(Hybrimmune、BTX、Holliston、MA)により融合し、Clonacell-HY培地C(STEMCELL Technologies、Vancouver、BC、Canada、カタログ番号03803)中、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。翌日、融合細胞を遠心分離し、抗マウスIgG Fc-FITC(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)を含んだ10mlのClonaCell-HY培地Cに再懸濁し、次いでHAT成分を含んだ90mlのメチルセルロースベースのClonaCell-HY培地D(STEMCELL Technologies、カタログ番号03804)と穏やかに混合した。細胞をNunc OmniTrays(Thermo Fisher Scientific、Rochester、NY)に播種し、37℃、5%CO2で7日間増殖させた。次いで、蛍光コロニーを選択し、Clonepix 2(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して、Clonacell-HY培地E(STEMCELL Technologies、カタログ番号03805)を含む96ウェルプレートに移した。6日間の培養後、ハイブリドーマからの組織培養上清を、以下に記載するようにしてヒトMerTKまたはマウスMerTKに結合する特異性についてFACS分析によってスクリーニングした。
【0300】
実施例4:FACSによる抗MerTK抗体ハイブリドーマ上清のスクリーニング
上記のように得られたハイブリドーマ培養上清を、ヒトMerTKを安定的に過剰発現するCHO細胞(CHO-huMerTK OE細胞)またはマウスMerTKを安定的に過剰発現するCHO細胞(CHO-muMerTK OE細胞)(上記に記載のようにして作製したもの)、及びCHO親細胞;U937細胞(ATCC CRL-1593.2)、SK-MEL-5細胞(ATCC HTB-70)(ヒトMerTKを内因的に発現する)、J774A.1細胞(ATCC TIB-67)(マウスMerTKを内因的に発現する)、及びA375細胞(ATCC CRL-1619)を含む、さまざまな細胞型でMerTKに結合する能力についてスクリーニングした。MerTKの発現がないかまたは発現が最小であるTHP-1細胞(ATCC TIB-202)を、これらの実験でMerTKを発現しないネガティブコントロール細胞として用いた。
【0301】
ハイブリドーマ細胞培養上清のスクリーニングを行うため、多重化FACS実験計画を用いてこれらの複数の細胞株に対する抗MerTK抗体の結合を調べた。簡単に説明すると、CellTrace細胞増殖色素CFSEとViolet(それぞれThermoFisher、カタログ番号C34554及びカタログ番号34557)のさまざまな濃度及び組み合わせで細胞を染色し、一意的なバーコード付き細胞集団を作製した。各バーコード付き細胞タイプの70,000個の細胞を96ウェルU底プレートに等分し、50μlのハイブリドーマ細胞培養上清または5μg/mlの市販の精製マウス抗ヒトMerTKモノクローナル抗体(BioLegend、カタログ番号367602、ポジティブな抗MerTK抗体として使用)と氷上で30分間インキュベートした。この一次抗MerTKハイブリドーマ上清のさまざまなMerTK発現細胞タイプとのインキュベーション後、各上清を遠心分離によって除去し、細胞を175μlの氷冷したFACS緩衝液(PBS+1%FBS+2mM EDTA)で2回洗浄し、次いで、細胞を抗マウスIgG Fc-アロフィコシアニン(APC)(Jackson Labs、カタログ番号115-136-071)(1:1000に希釈したもの)と氷上で20分間さらにインキュベートした。この二次抗体のインキュベーション後、細胞を氷冷したFACS緩衝液で再び2回洗浄し、次いで0.25μl/ウェルのヨウ化プロピジウム(BD Biosciences、カタログ番号556463)を含んだ最終体積30μlのFACS緩衝液に再懸濁した。細胞上での結合強度を、FACS Cantoシステム(BD Biosciences)を使用し、死(すなわち、ヨウ化プロピジウム陽性)細胞を除外するために描かれたソーティングゲートを用いて分析した。各バーコード付き細胞集団におけるAPC平均蛍光強度(MFI)の比を、試験した各抗MerTKハイブリドーマ上清について求めた。
【0302】
この特異的なハイブリドーマ上清スクリーニングから、親またはネガティブコントロール細胞タイプで観察された結合と比較して、ヒトまたはマウスMerTKを安定的に過剰発現または内因的に発現する細胞との結合において2倍を超える差(MFIによって決定)を示す抗MerTKハイブリドーマのクローンを特定した。このスクリーニングを使用して特定された抗MerTK抗体について、以下に記載するようにさらに特性評価を行った。
【0303】
実施例5:組換えMerTKタンパク質結合アッセイによる抗MerTK抗体ハイブリドーマ上清のスクリーニング
上記のようにして得られたハイブリドーマ培養上清を、無関係なHisタグ付けされたコントロールタンパク質との結合と比較して、ポリHisタグ付けされたヒト、カニクイザル、及びマウスMerTK(実施例1で上記されるように調製されたもの)に結合する能力についてスクリーニングした。簡単に説明すると、96ウェルポリスチレンプレートを、コーティング緩衝液(0.05M炭酸緩衝液、pH9.6、Sigma、カタログ番号C3041)中の1μg/mlのヒト、カニクイザル、またはマウスポリ-Hisタグ付きMerTKポリペプチドで4℃で一晩コーティングした。次いで、コーティングされたプレートをELISA希釈液(PBS+0.5%BSA+0.05%Tween20)で1時間ブロックし、300μlのPBST(PBS+0.05%Tween20、Thermo 28352)で3回洗浄した。ハイブリドーマ細胞培養物の上清または2つの市販の精製マウス抗ヒトMerTKモノクローナル抗体(BioLegendカタログ番号367602、R&Dカタログ番号MAB8912)を各ウェルに加えた(50μl/ウェル)。30分間のインキュベーション(室温で振盪)後、各プレートを300μlのPBSTで3回洗浄した。抗マウスIgG Fc-HRP(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-035-071)二次抗体をELISA希釈液で1:5000に希釈し、50μl/ウェルで各ウェルに加え、振盪しながら室温で30分間インキュベートした。最終セットの洗浄(PBST中3×300μl)後、50μl/ウェルのTMB基質(BioFx、カタログ番号TMBW-1000-01)を各ウェルに加えた。次いで、反応を5~10分後に50μl/ウェルの停止液(BioFx、カタログ番号BSTP-1000-01)でクエンチした。クエンチした反応ウェルを、BioTek Synergy Microplate ReaderでGEN5 2.04ソフトウェアを使用して650nmの吸光度について検出した。このハイブリドーマ上清スクリーニングから、組換えMerTKとの結合についてバックグラウンドと比較して10倍を超える差を示す抗MerTKハイブリドーマクローンが特定された。このスクリーニングを使用して特定された抗MerTK抗体について、以下に記載するようにさらに特性評価を行った。
【0304】
実施例6:抗MerTK抗体の分子クローニング
上記に述べたハイブリドーマからの抗MerTK抗体を以下のようにしてサブクローニングした。5×105ハイブリドーマ細胞を回収し、PBSで洗浄した後、細胞ペレットをドライアイスで瞬間凍結し、-20℃で保存した。RNeasy Mini Kit(QIAGEN、カタログ番号74104)を製造業者のプロトコールに従って使用して全RNAを抽出した。ClontechのSMARTer RACE5’/3’キット(Takara Bio USA、カタログ番号634859)を製造業者のプロトコールに従って使用してcDNAを作製した。可変重鎖及び軽鎖の免疫グロブリン領域を、RACEキットに付属の5’UPMプライマーと、重鎖及び軽鎖定常領域を認識するリバースプライマーとを用いたタッチダウンPCRによって別々にクローニングした。得られたPCR産物を精製し、pCR2.1-TOPOクローニングベクター(TOPO TAクローニングキット、Invitrogenカタログ番号450641)にライゲートし、大腸菌細胞に形質転換した。形質転換されたコロニーを単離し、対応する各ハイブリドーマ細胞株の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)の核酸をシークエンシングした。配列決定後、可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を、エンドヌクレアーゼ制限部位を含むプライマーを使用したPCRによって増幅し、ヒトIgG1-Fc-LALAPS(EU番号付けによるアミノ酸置換L234A、L235A、及びP331Sを含むヒトIgG1 Fc)及びIgGκをコードしたpLEV-123(LakePharma,San Carlos,CA)哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。上記のようにして得られる本開示の抗MerTK抗体には、抗MerTK抗体MTK-16、MTK-33、MTK-15が含まれる。
【0305】
実施例7:マウス抗MERTK抗体のヒト化及び親和性成熟
本開示の特定の親マウス抗MerTK抗体のヒト化バリアントを以下のようにして作製した。
【0306】
非ヒト抗体をヒト化する1つの方法は、非ヒト(例えばマウス)抗体のCDRをヒト抗体アクセプターフレームワークに埋め込むことである。このようなCDRの埋め込みは、そのフレームワークの擾乱により、標的に対するヒト化抗体の親和性が減弱するか完全に失われる可能性がある。そのため、ヒト化の結果として減弱した、または失われた親和性を回復するため、ヒトフレームワーク内の特定のアミノ酸残基をマウス抗体フレームワークの対応する位置のアミノ酸残基で置換する必要が生じ得る(復帰突然変異と呼ばれる)。したがって、選択されたヒト抗体の生殖系列アクセプターフレームワークに関連して置換されるアミノ酸残基は、ヒト化抗体が機能及びパラトープを実質的に維持するように決定する必要がある。さらに、良好な製造性とダウンストリーム開発のためには、熱安定性と溶解性が維持または改善されることが望まれる。
【0307】
簡単に説明すると、ヒト化しようとするマウス抗MerTKモノクローナル抗体のVH及びVLアミノ酸配列を、IMGT(http://www.imgt.org/)から取得したヒトVL、VH、LJ、及びHJの機能的生殖系列アミノ酸配列と比較した。偽遺伝子とオープンリーディングフレームはこれらの分析から除外した。1つのマウスモノクローナル抗体(クエリー)ごとに、最も類似性の高いVH生殖系列アミノ酸配列のうちの1つまたは2つ、及び最も類似性の高いVL生殖系列アミノ酸配列のうちの1つを選択し、最も類似性の高いVJ及びHJ遺伝子と組み合わせることで、1つまたは2つのヒト化アミノ酸配列を作製した。ヒトフレームワークに埋め込むCDRは、AbMの定義に従って定義した。
【0308】
クエリー及びヒト化アミノ酸配列を使用し、BioMOEモジュールまたはMOE(Molecular Operating Environment,Chemical Computing Group,Montreal,Canada)の抗体モデラーモジュールを使用してFv相同性モデルを作成した。AMBER10:EHT力場解析を、抗体相同性モデリングプロセス全体を通じてエネルギーを最小化するために使用した。得られたFv相同性モデルに基づいて、VLとVHとの間の相互作用エネルギー、座標ベースの等電点(3D pI)、疎水性パッチ、荷電表面積などの分子記述子を計算、分析し、MOEにより提供されるスコアリング行列によって分別した。これらの分子記述子を用いて、タンパク質発現、精製、結合親和性試験、及び機能アッセイなどの下流の実験手順用のヒト化モノクローナル抗体の優先順位付けを行った。
【0309】
MOEのBioMOEモジュールは、復帰突然変異の可能性のある残基を視覚化して分類するためのツールとしてのMutation Site Propertiesを提供する。これに関連して、復帰突然変異は、元のクエリーアミノ酸配列に戻すようなアミノ酸置換として定義され、それによりヒト化アミノ酸配列を置き換える。このツールを使用して、元のクエリー(参照)を、一次アミノ酸配列と3D Fv相同性モデルの3D構造の両方について、選択されたヒト化バリアントと個々に比較した。
【0310】
参照(すなわち、親)抗体とヒト化バリアントとの間の変化を、アミノ酸の種類の違い、CDRの残基との相互作用の可能性、VL/VHペアリングに対する影響の可能性、及びCDR内及びその近傍の疎水性及び荷電表面積の潜在的な変化に基づいて分類した。
【0311】
大きな電荷差を有する、または強い水素結合相互作用を含む、CDRまたはVL/VH界面近くの変異を個別に評価し、顕著な破壊的変異を元のクエリー残基に戻した。
【0312】
ヒト化抗MerTK抗体であるMTK-33及びMTK-16の親和性成熟を行った。簡単に説明すると、重鎖または軽鎖の特定のアミノ酸残基を選択的に変異誘発させ、結合性が改善された変異体をさらなる回数のスクリーニングによって選択した。このプロセスにより、特異性、種間交差反応性、及び開発可能性のプロファイルが同時に改善された。本明細書に記載される親和性成熟された抗MerTK抗体の特性評価には、Carterra LSAに対するSPR親和性測定、及びヒトマクロファージに対するエフェロサイトーシスブロッキングアッセイが含まれた。複数回の親和性成熟の後、所望の親和性を有する抗MerTK抗体が得られた。
【0313】
本開示の抗MerTK抗体の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列を下記表1に示す。表1において、親マウス抗MerTK抗体にはMTK-15、MTK-16、及びMTK-33が含まれ、MTK-16及びMTK-33のヒト化バリアント及び親和性成熟バリアントは、それぞれMTK-16.2及びMTK-33.11である(国際特許出願第PCT/US2020/064640号(WO2021/119508)を参照)。表1において、各抗体鎖の超可変領域(HVR)には下線を付している。
【0314】
【0315】
実施例8:さまざまなFc領域を含む本開示の抗MerTK抗体
重鎖抗体可変配列をさまざまなIgGのFc領域、すなわち、野生型ヒトIgG1、LALAPS改変(EU番号付けによるL234A、L235A、P331S)を含むヒトIgG1、NSLF(EU番号付けによるN325S、L328F)を含むヒトIgG1、及び野生型ヒトIgG4のFc領域に導入した。軽鎖抗体可変配列をヒトIgGの軽鎖定常領域に導入した。得られた抗MerTK抗体の配列を下記表2に示す。
【0316】
【0317】
上記表2には、本明細書ではそれぞれヒトIgG1のFc LALAPS及びヒトIgG軽鎖を含む、抗PDL1抗体アテゾリズマブ由来の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗PDL1抗体のアミノ酸配列も含まれる。
【0318】
実施例9:抗MerTK抗体の産生
抗MerTKハイブリドーマクローンを無血清ハイブリドーマ培地で培養し、上清中の抗MerTK抗体をHamilton STARプラットフォーム(Hamilton Company,Reno,NV)でプロテインAチップ(Phynexus Inc,San Jose,CA)を使用して精製した。抗MerTK抗体は、ハイブリドーマから得られた可変遺伝子領域を、ヒトFcドメインを含むキメラ抗体(上記のLALAPSアミノ酸置換を含むヒトIgG1)の産生のための組換え発現プラスミドに、直接クローニングすることによっても産生された。Tuna293(商標)プロセス(LakePharma,San Carlos,CA)を使用して、HEK293細胞を振盪フラスコに播種し、無血清の化学的規定培地を使用して増殖させた。発現プラスミドを細胞に一過的にトランスフェクトし、7日後に培養上清を回収した。遠心分離及び濾過による清澄化の後、上清中の抗MerTK抗体をプロテインAクロマトグラフィーによって精製した。
【0319】
実施例10:一価抗MerTK抗体の配列
表3に、Fc領域のヘテロ二量体化に関連するFc領域内の「ノブ」アミノ酸改変を含む、本開示のさまざまな一価抗MerTK抗体重鎖アミノ酸配列を示す。表3において、「ノブ」形態のIgG1及びIgG4のFc領域の改変は、アミノ酸置換T366W(EU番号付け)を含む。特定のIgG4形態は、Fabアーム交換を防ぐためのアミノ酸置換S228P(EU番号付け)を含むFc領域ヒンジ改変も含む(Silva et al,(2015),J Biol Chem,290:5462-5469を参照)。具体的には、huIgG4の野生型ヒンジ領域がアミノ酸配列
を含むのに対して、IgG4ヒンジ領域のS228Pアミノ酸置換はアミノ酸配列
を含む。
【0320】
【0321】
表4に、本開示の一価抗MerTK抗体に関連するFcのヘテロ二量体化に使用される「ホール」アミノ酸改変を含むさまざまなFc領域を示す。表4において、「ホール」形態のIgG1及びIgG4のFc領域の改変は、アミノ酸置換T366S、L368A、及びY407V(EU番号付け)を含む。特定のIgG4形態は、アミノ酸置換S228P(EU番号付け)を含むFc領域ヒンジ改変も含む。
【0322】
【0323】
実施例11:一価抗MerTK抗体のCHO-ヒトMerTK OE細胞及びヒトマクロファージに対する結合活性
本開示の一価抗MerTK抗体が異なる細胞タイプに結合するかどうかを判定するために、以下の実験を行った。
【0324】
ヒトマクロファージをヒトM-CSFの存在下で7日間ヒト単球から分化させ、M2c分化型ヒトマクロファージを得た。7日後、分化したヒトマクロファージを(掻き取ることにより)回収し、PBSに再懸濁し、96ウェルプレートに播種して使用した。ヒトMerTKを過剰発現するCHO細胞(CHO-huMerTK OE)またはM2c分化型ヒトマクロファージを、Dylight650とコンジュゲートされた一価抗MerTK抗体または二価抗MerTK抗体(すなわち、2本の完全長重鎖と2本の完全長軽鎖を含む抗MerTK抗体)により、氷上で30分間染色した。これらの実験では、広範な抗体濃度を用いて結合曲線を得た。これらの実験で試験したすべての抗体は、LALAPS変異を含むFc領域を有していた。細胞を固定した後、BD FACS Canto IIサイトメーターで取得した。平均蛍光強度(MFI)をFlowJoソフトウェアを使用して計算し、Kd値をPrismソフトウェアを使用して計算した。これらの結果におけるKd値はEC50値と同様であったが、FACS分析によって生成されたデータからPrismソフトウェアによって計算される。Kd値が低いほど、細胞への抗体の結合性がより高いことを反映している。
【0325】
図2Aは、CHO-huPDL1 OEに対する一価(すなわち、モノアーム)抗MerTK抗体MTK-16.2、一価抗MerTK抗体MTK-33.11、二価(すなわち、完全IgG)抗MerTK抗体MTK-16.2、及び二価抗MerTK抗体MTK-33.11の結合曲線を示す。
図2Bは、M2c分化型ヒトマクロファージに対する一価抗MerTK抗体MTK-16.2、一価抗MerTK抗体MTK-33.11、二価抗MerTK抗体MTK-16.2、及び二価抗MerTK抗体MTK-33.11の結合曲線を示す。これらの実験では、一価の抗PDL1抗体(Fc LALAPS)をネガティブコントロールとして使用した。
【0326】
下記表5に、上記のFACS分析から得られたKd値(nM)を要約する。
図2A及び2B及び表5に示されるように、一価抗MerTK抗体MTK-16.2及び二価抗MerTK抗体MTK-16.2は両方とも、約40~43nMの範囲の同様の親和性でCHO-huMerTK OE細胞に対する結合性を示した。一価抗MerTK抗体MTK-16.2及び二価抗MerTK抗体MTK-16.2は、このアッセイで測定した場合にそれぞれ約78nM及び52nMの親和性で、M2c分化型ヒトマクロファージに対する同等の結合性を示した。これらの結果は、抗MerTK抗体MTK-16.2は、抗体が一価であるか二価であるかに関係なく、同様の親和性でMerTKに結合することを示した。
【0327】
二価抗MerTK抗体MTK-33.11は、一価抗MerTK抗体MTK-33.11と比較して、CHO-huMerTK OE細胞及びM2c分化型ヒトマクロファージの両方に対して高い結合親和性を示し、その一価型と比較して、CHO-huMerTK OE細胞に対して約10倍高い親和性を示し、M2c分化型ヒトマクロファージに対して約5倍高い親和性を示した。予想されたように、コントロール抗体の一価抗PDL1は、CHO-huMerTK OE細胞との結合は示さなかったが、M2c分化型ヒトマクロファージには結合した。
【0328】
【0329】
実施例12:一価抗MerTK抗体によるエフェロサイトーシスの低減
本開示の一価抗MerTK抗体が食細胞(例えば、ヒトマクロファージ)によるエフェロサイトーシスを低減する能力を以下のように評価した。上記のようにヒトマクロファージをヒトM-CSFの存在下で7日間ヒト単球から分化させてM2c分化型ヒトマクロファージを得た。7日後、M2c分化型ヒトマクロファージを(掻き取ることにより)回収し、PBSに再懸濁し、96ウェルプレートに播種した。エフェロサイトーシスのIC50の測定では、細胞を1時間飢餓状態にした後、各ウェルに抗MerTK抗体を37℃で30分間添加した。
【0330】
Jurkat細胞を1μMのスタウロスポリン(SigmaAldrich)により37℃で3時間処理し(アポトーシスを誘導するため)、室温で30分間、pHrodo(ThermoFisher)で標識した。PBSで洗浄した後、pHrodo標識したJurkat細胞を、ヒトマクロファージを含む各ウェルに1:4の比率(マクロファージ1個:ジャーカット細胞4個)で1時間加えた。各プレートをPBSで洗浄した後、細胞を暗所の氷上で30分間、APCとコンジュゲートされた抗ヒトCD14で染色した。細胞を固定した後、BD FACS Canto IIサイトメーターで取得した。データをFlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0331】
これらの実験では、pHrodoとCD14の二重陽性細胞を分析ゲートとして設定し、この正確なゲートをすべての試料に適用することにより、エフェロサイトーシス陽性マクロファージを特定した。培地のみで培養したマクロファージを使用してベースラインのエフェロサイトーシスレベルを確立し、これを100%のエフェロサイトーシス活性に設定した。相対的エフェロサイトーシスレベルは、抗MerTK抗体で処理した細胞で観察されたエフェロサイトーシスと比較した、培地のみで処理した細胞で観察されたエフェロサイトーシスの割合(%)として、計算した。これらの試験の結果を
図3及び下記表6に示す。
【0332】
【0333】
表6に示されるように、本開示の一価抗MerTK抗体は、M2c分化型ヒトマクロファージによるエフェロサイトーシスを低減することができ、一価抗MerTK抗体MTK-33.11及びMTK-16.2でIC50は、それぞれ約4.4nM及び37.9nMであった。これらのデータは、一価抗MerTK抗体であるMTK-16.2及びMTK-33.11が、それらの対応する二価抗体と比較して比較的弱いエフェロサイトーシス遮断活性を示すことも示しており、二価の抗MTK-33.11抗体が0.341nMのIC50値を示したのに対して、一価の抗MerTK抗体MTK-33.11は約4.4nMのIC50値を示し、さらに、二価の抗MTK-16.2抗体のIC50値が0.436nMであったのに対して、一価の抗MerTK抗体MTK-16.2のIC50値は37.86nMであった。予想されたとおり、一価抗PDL1抗体はエフェロサイトーシスに対する阻害活性を示さなかった(
図3を参照)。
【0334】
これらのデータは、本開示の一価抗MerTK抗体が、その対応する二価抗体よりもその程度は低いものの、食細胞によるエフェロサイトーシスの低減に有効であることを示した。
【0335】
実施例13:一価抗MerTK抗体のpAKT活性
MerTKリガンドGas6の非存在下または存在下でのpAKT活性に対する本開示の一価抗MerTK抗体の効果を以下のようにして調べた。M2c分化型ヒトマクロファージ(上記のように生成したもの)を抗MerTK抗体(10μg/ml)で37℃で30分間処理し、続いて200nMの組換えヒトGas6またはPBSを加えた。さらに30分間インキュベートした後、細胞を溶解し、均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイを使用して、細胞内のpAKTレベルを総AKTと比較して分析した。pAKTシグナルを総AKTシグナルに対して正規化して最終的なpAKT活性の測定値を定量化した。これらの試験の結果を
図4及び表7に示す。
【0336】
【0337】
図4及び上記の表7に示されるように、一価MerTK抗体MTK-16.2及びMTK-33.11では、対応する二価の抗体と比較して、MerTKリガンドGas6の非存在下でのpAKT/tAKTの倍率変化が低かった。このデータは、本開示の一価抗MerTK抗体が、本開示の二価抗MerTK抗体で観察されたものと比較して、MerTKリガンドGas6の非存在下でヒトマクロファージ中のpAKTレベル(例えば、リガンド非依存性pAKT活性)を増加させる効果がより低いことを示した。抗MerTK抗体MTK-15を、pAKT活性を増加させるのに効果的なポジティブコントロール抗体として用いた。
【0338】
上記に述べたように、Gas6はMerTKのリガンドであり、MerTKと相互作用してpAKTを増加させる。本実験ではまた、MerTKリガンドGas6の存在下におけるpAKTに対する本開示の一価抗MerTK抗体と二価抗MerTK抗体の効果も比較した。下記表8は、本開示の一価及び二価抗MerTK抗体によるhuGas6媒介pAKT減少活性のIC50値を示す。表8に示されるように、一価抗MerTK抗体MTK-16.2及びMTK-33.11は、Gas6の存在下でpAKT活性に影響を与えるうえで二価の対応する抗体よりも高いIC50値を示した。これらのデータは、二価抗MerTK抗体が一価抗MerTK抗体と比較して、Gas6媒介pAKT活性を低下させるうえでより効果的であることを示した。
【0339】
【0340】
実施例14:一価抗MerTK抗体の結合動態
ヒト、カニクイザル、及びマウスMerTKに対する本開示の一価抗MerTK抗体の結合動態を、Carterra LSA機器を使用して評価した。簡単に説明すると、抗MerTK抗体を、10mM酢酸塩、pH4.25(Carterra)中で10μg/mlに希釈することによって調製した。HC30センサーチップ(Carterra)を、シングルチャネルフローセルを使用し、100mMのMES pH5.5、100mMのスルホ-NHS、400mMのEDCの1:1:1混合物(いずれもMES pH5.5で再構成し;アッセイを行う直前に、それぞれ100μlをバイアル中で混合した)を7分間注入して活性化した。マルチチャネルアレイフローセルに切り替えた後、96スポットアレイの活性化チップ上に各抗体を15分間注入した。チップの2番目のブロックに抗体を二重に注入し、前と同様にスポットした。次いで、シングルチャネルフローセルを使用して、1Mエタノールアミン、pH8.5(Carterra)を7分間注入することによって、チップ上の残りの非結合活性基をブロックした。
【0341】
0.5mg/mlのBSA(Sigma)を含むランニングバッファー(HBS-TE、Carterra)でプライミングした後、固定化した抗MerTK抗体を、上記のようにヒト、カニクイザル及びマウスオルソログの細胞外ドメインを含むいくつかの組換えMerTK細胞外ドメインの形態に結合する能力について試験した。シングルチャネルフローセルを使用して抗体アレイ全体に各分析物を注入することによって親和性の推定値を生成した。MerTK分析物の6つの3倍連続希釈液(ヒトMerTKでは1.2mM~4.9nM、カニクイザル及びマウスMerTKでは3~1.2nM)をランニングバッファー中で調製し、最低濃度から最高濃度まで連続して300秒間注入した。解離を300秒間観測し、その後、10mMグリシン、pH2.5の2×30秒間の各注入の後に再生させた。各シリーズ間で3つのバッファーブランクを実行した(シリーズごとに1種)。3種すべてのMerTKのすべての濃度を注射した後、3種すべての各濃度が大きな間隔で2回ずつ注射されるように、2重の注射セットを実行した。NextGenKITハイスループット反応速度解析ソフトウェア(Carterra)を使用してデータを処理及び分析した。二重の注入はすべての試料でほぼ完全に重なっており、実行中に表面が劣化していないことを示した。
【0342】
次いで、本開示の抗MerTK抗体について適合させた結合速度定数及び解離速度定数(k-on及びk-off)から平衡解離定数(KD)を計算した。一般に、抗体の結合プロファイルは複雑であり、1:1モデルに理想的に適合しなかったことから、以下の表9に要約されるKD値は、抗体と抗原との間の比較のための推定値を表す。
【0343】
【0344】
これらの結果は、MerTKへの結合について試験した一価または二価の抗MerTK抗体では有意な親和性の差が観察されないことを示し、本開示の一価及び二価の抗MerTK抗体が一価の結合動態の特徴を示したことを示した。
【0345】
実施例15:MC38モデルマウス腫瘍モデルにおける一価抗MerTK抗体処理の効果
本開示の一価抗MerTK抗体がインビボでMC38腫瘍の増殖を遅らせる能力を以下のように試験した。MC38細胞をhuMerTKノックイン(KI)マウスの皮下に移植した。腫瘍サイズが体積約80~100mm3に達した時点で、マウスを10mg/kgの一価抗MerTK抗体MTK-33.11と3mg/kgの抗PDL1、3mg/kgの抗PDL1単独、または10mg/kgのコントロール抗体で週2回、3週間にわたって処理した。腫瘍体積を週3回測定した。
【0346】
図6は、抗PDL1抗体と二価抗MerTK抗体MTK-16.2または二価抗MerTK抗体MTK-33.11のいずれかとの組み合わせが、抗PDL1抗体単独の投与で観察されたものと比較して腫瘍体積のより大きな減少を示したことを示している。これらのデータは、抗PDL1抗体と本開示の二価抗MerTK抗体との組み合わせの投与が、インビボでの腫瘍体積の減少により大きな効果を示すことを示した。
【0347】
図7は、抗PDL1抗体と一価(すなわち、モノアーム)抗MerTK抗体MTK-33.11抗体との組み合わせが、抗PDL1抗体単独またはコントロール抗体のいずれかで処理したマウスで観察された腫瘍増殖速度と比較して、マウスの腫瘍増殖速度を低下させたことを示している。
図8A、8B、及び8Cは、各群の個々のマウスの腫瘍増殖を示す(それぞれ、コントロール抗体、抗PDL1抗体、抗PLD1抗体+一価抗MerTK抗体MTK-33.11)。抗PDL1抗体と一価抗MerTK抗体MTK-33.11の併用処理では、10匹中5匹のマウスで腫瘍がほぼ完全に退縮したが、抗PDL1抗体単独による処理で腫瘍が完全に退縮したのはマウス10匹中2匹であった。これらの結果は、抗PDL1抗体と組み合わせた本開示の一価抗MerTK抗体が、抗PLD1抗体単独よりも腫瘍増殖の阻害においてより効果的であることを示すものである。さらに、これらの結果は、本開示の一価抗MerTK抗体が、抗PDL1抗体と併用した場合、インビボで腫瘍体積を減少させるうえでそれらの対応する二価抗体と同様に有効であることを示した。
【0348】
実施例16:特定の一価抗MerTK抗体の形態
下記表10及び表11に、二量体化されたFc領域を含まない本開示の特定の一価抗MetTK抗体の形態を示す。
【0349】
【0350】
【0351】
下記表12及び表13に、二量体化されたFc領域を含む本開示の特定の一価抗MetTK抗体の形態を示す。
【0352】
【0353】
【0354】
実施例17:MC38モデルマウス腫瘍モデルにおける一価抗MerTK抗体処理の効果
抗PDL1と組み合わせた一価抗MerTK抗体MTK-33.11の効果について、E0771マウス腫瘍モデルでも評価を行った。huMerTKノックイン(KI)マウスの皮下にE0771細胞を移植した後、MC38モデルにおいて実施例15で上記に述べたようにして抗体で処理した。
【0355】
図9は、一価抗MerTK抗体MTK-33.11と抗PDL1治療との併用により、抗PDL1単独で処理したマウスで観察された腫瘍体積の減少と比較して、動物における腫瘍体積の減少がより大きかったことを示している。
【0356】
これらの結果は、本開示の一価抗MerTK抗体は、抗PDL1抗体と併用した場合に、抗PDL1抗体単独よりも腫瘍増殖の阻害により効果的であることを示すものである。
【配列表】
【国際調査報告】