(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】コーティングされた表面、コーティング、及びそれらを使用する物品
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C23C26/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577730
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 US2022034155
(87)【国際公開番号】W WO2022266528
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518233394
【氏名又は名称】マックステリアル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MAXTERIAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハグドースト,アチエ
(72)【発明者】
【氏名】カーガー,メディ
(72)【発明者】
【氏名】イルガー,エルサン
(72)【発明者】
【氏名】チャーチ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA02
4K044AB03
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA10
4K044BA18
4K044BB01
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4K044BB04
4K044BC00
4K044BC02
4K044CA04
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4K044CA11
4K044CA13
4K044CA14
4K044CA15
4K044CA18
(57)【要約】
コーティングされた表面及びコーティングが記載される。コーティングされた表面は、合金層を備える表面コーティングを含むことができる。合金層は、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つ以上と組み合わせてモリブデン又はタングステンを含むことができる。表面コーティングを製造するプロセスも記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面コーティングを備えるコーティングされた表面であって、前記表面コーティングが、モリブデン又はタングステンと、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える、コーティングされた表面。
【請求項2】
前記表面コーティングが、露出外層であり、銀若しくは金を含まないか、又は全ての貴金属を含まない、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項3】
前記モリブデン又はタングステンが、前記表面コーティング中に、前記表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下、又は前記表面コーティングの重量に基づいて25重量%以下、又は前記表面コーティングの重量に基づいて15重量%以下で存在する、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項4】
前記モリブデン又はタングステンが、前記合金層中に、前記合金層の重量に基づいて35重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて25重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて15重量%以下で存在する、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項5】
前記モリブデン又はタングステンが、前記表面コーティング中に、前記表面コーティングの重量に基づいて65重量%以上、又は前記表面コーティングの重量に基づいて75重量%以上、又は前記表面コーティングの重量に基づいて85重量%以上で存在する、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項6】
前記モリブデン又はタングステンが、前記合金層中に、前記合金層の重量に基づいて65重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて75重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて85重量%以下で存在する、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項7】
前記合金層が、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、ニッケル及びタングステン、又はニッケル、タングステン モリブデンと、スズ、リン、鉄若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項8】
前記コーティングされた表面が、基材上に存在し、前記基材が、浸炭鋼、窒化鋼、浸炭窒化鋼、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、チタン、銅、銅合金である、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項9】
前記コーティングされた表面が、1ミクロン未満の表面粗さRaを備える、請求項7に記載のコーティングされた表面。
【請求項10】
前記コーティングされた表面が、1ミクロン以上15ミクロン未満の表面粗さRaを備える、請求項7に記載のコーティングされた表面。
【請求項11】
前記合金層が、電着された露出合金層であり、前記電着された露出外層が、(i)モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つのみとから本質的になるか、又は(ii)モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの2つのみとから本質的になるか、又は(iii)モリブデン及びリンの両方と、ニッケル、コバルト、スズ、クロム、タングステン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素の少なくとも1つとから本質的になるか、又は(iv)タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つのみとから本質的になるか、又は(v)タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの2つのみとから本質的になるか、又は(vi)タングステン及びリンの両方と、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、クロム、タングステン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素の少なくとも1つから本質的になる、請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項12】
前記合金層が、電着合金層であり、前記合金層の下に中間層を更に含み、前記中間層が、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、ニッケル-タングステン合金、コバルト合金、ニッケル-リン合金、モリブデン若しくはタングステンの合金、又はその両方のうちの1つ以上と、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄又はホウ素の少なくとも1つとを含む、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項13】
前記合金層上に形成された追加の層を更に備え、前記追加の層が、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル-タングステン合金、コバルト合金、コバルト-リン合金、ニッケル-リン合金、モリブデン合金のうちの1つ以上と、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄又はホウ素、セラミックスの少なくとも1つとを含み、セラミックは、タングステン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、コバルト、モリブデン、ケイ素、ホウ素、金属窒化物、窒化物、金属炭化物、炭化物、ホウ素、タングステン、炭化タングステン、炭化クロム、酸化クロム、酸化アルミニウム、ジルコニア、酸化ジルコニウム、チタニア、炭化ニッケル、酸化ニッケル、ナノ複合材、酸化物複合材、又はこれらの組み合わせの化合物を含む、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項14】
セラミックを含む前記合金層上に形成された追加の層を更に備える、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項15】
前記コーティングされた表面が、1ミクロン未満、又は1ミクロン以上5ミクロン未満、又は5ミクロン以上15ミクロン未満の表面粗さRaを備える、請求項14に記載のコーティングされた表面。
【請求項16】
前記合金層が、固体ナノ粒子、ポリマー粒子、硬質粒子、二酸化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、疎水性粒子、ダイヤモンド粒子、疎水性基で官能化された粒子、固体粒子及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の粒子を更に含む、請求項1又は請求項2に記載のコーティングされた表面。
【請求項17】
前記合金層が、前記表面コーティングの露出外層として存在し、前記露出外層が、電着合金層であり、前記電着合金層が、銀又は金を除外するか、又は全ての貴金属を除外する、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項18】
前記合金層が、粒子を更に含む、請求項17に記載のコーティングされた表面。
【請求項19】
前記表面コーティングが、第1の層及び第2の層を備え、前記第1の層若しくは前記第2の層、又は両方が前記合金層を備える、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項20】
前記合金層が、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、又はニッケル及びタングステンから本質的になるか、又はニッケル、タングステンとスズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる、請求項19に記載のコーティングされた表面。
【請求項21】
前記モリブデン又はタングステンが、前記表面コーティング中に、前記表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下、又は前記表面コーティングの重量に基づいて25重量%以下、又は前記表面コーティングの重量に基づいて15重量%以下で存在する、請求項20に記載のコーティングされた表面。
【請求項22】
前記モリブデン又はタングステンが、前記合金層中に、前記合金層の重量に基づいて65重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて75重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて85重量%以下で存在する、請求項20に記載のコーティングされた表面。
【請求項23】
前記第1の層及び前記第2の層の各々が、前記合金層を備え、各合金層が、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、又はニッケル及びタングステンから本質的になるか、又はニッケル、タングステンとスズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる、請求項19に記載のコーティングされた表面。
【請求項24】
前記第2の層が、前記合金層であり、前記第2の層が、前記表面コーティングの露出外層として存在し、前記露出外層が、電着合金層であり、前記電着合金層が、銀又は金を除外する、請求項19に記載のコーティングされた表面。
【請求項25】
前記第2の層が、前記合金層であり、前記第2の層が、前記表面コーティングの露出外層として存在し、前記露出外層が、電着合金層であり、前記電着合金層が、全ての貴金属を除外する、請求項19に記載のコーティングされた表面。
【請求項26】
前記合金層が、ニッケル及びモリブデンからなる、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項27】
前記合金層が、ニッケル、モリブデン及びリンからなる、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項28】
前記合金層が、ニッケル及びタングステンからなる、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項29】
前記合金層が、ニッケル、タングステン及びリンからなる、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項30】
前記合金層が、テクスチャ加工されている、請求項1に記載のコーティングされた表面。
【請求項31】
コーティングされた表面を有する基材を含む物品であって、前記コーティングされた表面が、表面コーティングを備え、前記表面コーティングが、モリブデン又はタングステンと、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える、物品。
【請求項32】
前記表面コーティングが、露出外層であり、銀若しくは金を含まないか、又は全ての貴金属を含まない、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
前記モリブデン又はタングステンが、前記表面コーティング中に、前記表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下、又は前記表面コーティングの重量に基づいて25重量%以下、又は前記表面コーティングの重量に基づいて15重量%以下で存在する、請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記モリブデン又はタングステンが、前記合金層中に、前記合金層の重量に基づいて35重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて25重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて15重量%以下で存在する、請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項35】
前記モリブデン又はタングステンが、前記表面コーティング中に、前記表面コーティングの重量に基づいて65重量%以上、又は前記表面コーティングの重量に基づいて75重量%以上、又は前記表面コーティングの重量に基づいて85重量%以上で存在する、請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項36】
前記モリブデン又はタングステンが、前記合金層中に、前記合金層の重量に基づいて65重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて75重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて85重量%以下で存在する、請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項37】
前記合金層が、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、ニッケル及びタングステン、又はニッケル、タングステン モリブデンと、スズ、リン、鉄若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項38】
前記基材が、浸炭鋼、窒化鋼、浸炭窒化鋼、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、チタン、銅、銅合金である、請求項31に記載の物品。
【請求項39】
前記物品の前記コーティングされた表面が、1ミクロン未満の表面粗さRaを備える、請求項37に記載の物品。
【請求項40】
前記物品の前記コーティングされた表面が、1ミクロン以上15ミクロン未満の表面粗さRaを備える、請求項37に記載の物品。
【請求項41】
前記合金層が、電着された露出合金層であり、前記電着された露出外層が、(i)モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つのみとから本質的になるか、又は(ii)モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの2つのみとから本質的になるか、又は(iii)モリブデン及びリンの両方と、ニッケル、コバルト、スズ、クロム、タングステン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素の少なくとも1つとから本質的になるか、又は(iv)タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つのみとから本質的になるか、又は(v)タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの2つのみとから本質的になるか、又は(vi)タングステン及びリンの両方と、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、クロム、タングステン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素の少なくとも1つから本質的になる、請求項32に記載の物品。
【請求項42】
前記合金層が、電着合金層であり、前記合金層の下に中間層を更に含み、前記中間層が、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、ニッケル-タングステン合金、コバルト合金、ニッケル-リン合金、モリブデン若しくはタングステンの合金、又はその両方のうちの1つ以上と、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄又はホウ素の少なくとも1つとを含む、請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項43】
前記合金層上に形成された追加の層を更に備え、前記追加の層が、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル-タングステン合金、コバルト合金、コバルト-リン合金、ニッケル-リン合金、モリブデン合金のうちの1つ以上と、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄又はホウ素、セラミックスの少なくとも1つとを含み、セラミックは、タングステン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、コバルト、モリブデン、ケイ素、ホウ素、金属窒化物、窒化物、金属炭化物、炭化物、ホウ素、タングステン、炭化タングステン、炭化クロム、酸化クロム、酸化アルミニウム、ジルコニア、酸化ジルコニウム、チタニア、炭化ニッケル、酸化ニッケル、ナノ複合材、酸化物複合材、又はこれらの組み合わせの化合物を含む、請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項44】
セラミックを含む前記合金層上に形成された追加の層を更に備える、請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項45】
前記コーティングされた表面が、1ミクロン未満、又は1ミクロン以上5ミクロン未満、又は5ミクロン以上15ミクロン未満の表面粗さRaを備える、請求項44に記載の物品。
【請求項46】
前記合金層が、固体ナノ粒子、ポリマー粒子、硬質粒子、二酸化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、疎水性粒子、ダイヤモンド粒子、疎水性基で官能化された粒子、固体粒子及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の粒子を更に含む、請求項31又は請求項32に記載の物品。
【請求項47】
前記合金層が、前記表面コーティングの露出外層として存在し、前記露出外層が、電着合金層であり、前記電着合金層が、銀若しくは金を除外するか、又は全ての貴金属を除外する、請求項31に記載の物品。
【請求項48】
前記合金層が、粒子を更に含む、請求項47に記載の物品。
【請求項49】
前記表面コーティングが、第1の層及び第2の層を備え、前記第1の層若しくは前記第2の層、又は両方が前記合金層を備える、請求項31に記載の物品。
【請求項50】
前記合金層が、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、又はニッケル及びタングステンから本質的になるか、又はニッケル、タングステンとスズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる、請求項49に記載の物品。
【請求項51】
前記モリブデン又はタングステンが、前記表面コーティング中に、前記表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下、又は前記表面コーティングの重量に基づいて25重量%以下、又は前記表面コーティングの重量に基づいて15重量%以下で存在する、請求項50に記載の物品。
【請求項52】
前記モリブデン又はタングステンが、前記合金層中に、前記合金層の重量に基づいて65重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて75重量%以下、又は前記合金層の重量に基づいて85重量%以下で存在する、請求項50に記載の物品。
【請求項53】
前記第1の層及び前記第2の層の各々が、前記合金層を備え、各合金層が、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、又はニッケル及びタングステンから本質的になるか、又はニッケル、タングステンとスズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる、請求項49に記載の物品。
【請求項54】
前記第2の層が、前記合金層であり、前記第2の層が、前記表面コーティングの露出外層として存在し、前記露出外層が、電着合金層であり、前記電着合金層が、銀又は金を除外する、請求項49に記載の物品。
【請求項55】
前記第2の層が、前記合金層であり、前記第2の層が、前記表面コーティングの露出外層として存在し、前記露出外層が、電着合金層であり、前記電着合金層が、全ての貴金属を除外する、請求項49に記載の物品。
【請求項56】
前記合金層が、ニッケル及びモリブデンからなる、請求項31に記載の物品。
【請求項57】
前記合金層が、ニッケル、モリブデン及びリンからなる、請求項31に記載の物品。
【請求項58】
前記合金層が、ニッケル及びタングステンからなる、請求項31に記載の物品。
【請求項59】
前記合金層が、ニッケル、タングステン及びリンからなる、請求項31に記載の物品。
【請求項60】
前記合金層が、テクスチャ加工されている、請求項31に記載の物品。
【請求項61】
コーティングされた表面を有する基材を備える物品であって、前記コーティングされた表面が、表面コーティングを備え、前記表面コーティングが、第1の層及び前記第1の層上の第2の層を備え、前記第1の層若しくは前記第2の層、又は両方が、モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える、物品。
【請求項62】
コーティングされた表面を有する基材を備える物品であって、前記コーティングされた表面が、表面コーティングを備え、前記表面コーティングが、第1の層及び前記第1の層上の第2の層を備え、前記第1の層及び前記第2の層の各々が、モリブデンを含み、前記第1の層、前記第2の層又は両方が、モリブデン又はタングステンと、ニッケル、タングステン コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える、物品。
【請求項63】
コーティングされた表面を有する基材を備える物品であって、前記コーティングされた表面が、表面コーティングを備え、前記表面コーティングが、第1の層及び前記第1の層上の第2の層を備え、前記第1の層若しくは前記第2の層、又は両方が、タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える、物品。
【請求項64】
コーティングされた表面を有する基材を備える物品であって、前記コーティングされた表面が、表面コーティングを備え、前記表面コーティングが、第1の層及び前記第1の層上の第2の層を備え、前記第1の層及び前記第2の層の各々が、モリブデンを含み、前記第1の層、前記第2の層又は両方は、タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える、物品。
【請求項65】
コーティングされた表面を有する基材を備える物品であって、前記コーティングされた表面が、表面コーティングを備え、前記表面コーティングが、電着合金層を備え、前記電着合金層が、前記表面コーティングの露出した外側電着合金層として存在し、前記露出した外側電着合金層が、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つとから本質的になり、前記モリブデンが、前記表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下で前記露出した外側電着層に存在する、物品。
【請求項66】
コーティングされた表面を有する基材を備える物品であって、前記コーティングされた表面が、表面コーティングを備え、前記表面コーティングが、電着合金層を備え、前記電着合金層が、前記表面コーティングの露出した外側電着合金層として存在し、前記露出した外側電着合金層が、ニッケル及びタングステンから本質的になるか、又はニッケル、タングステンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つとから本質的になり、前記タングステンが、前記表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下で前記露出した外側電着層に存在する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権及び関連出願
本出願は、2021年6月18日に出願された米国特許出願第63/212,515号、2021年7月19日に出願された米国特許出願第63/223,497号、及び2021年7月28日に出願された米国特許出願第63/226,649号の各々に関連し、それらの優先権及びそれらの利益を主張する。
【0002】
技術分野
本明細書に記載の特定の構成は、様々な物品に使用することができるコーティング、コーティングされた表面及び表面コーティングに関する。より詳細には、特定の実施形態は、合金層を備える表面コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの異なる物品は、使用中に応力及び環境を受ける構成要素を有する。これらの応力及び環境への曝露は、物品の寿命を低下させる可能性があり、物品の早期摩耗又は故障につながる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
コーティング、コーティングされた表面及びコーティングされた物品の特定の特徴、態様、実施形態及び構成は、以下により詳細に記載される。正確な構成は変化し得るが、コーティングされた表面は、典型的には、合金層を備える表面コーティングを含む。例えば、合金層は、1つ以上の他の材料と組み合わせてモリブデン又はタングステンを含むことができる。物品上の合金層の様々な特定の構成は、以下により詳細に記載される。
【0005】
一態様では、コーティングされた表面は、表面コーティングを含む。表面コーティングは、モリブデン又はタングステンと、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える。
【0006】
特定の実施形態では、表面コーティングは露出外層であり、銀若しくは金を含まないか、又は全ての貴金属を含まない。他の実施形態では、モリブデン又はタングステンは、表面コーティング中に、表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下、又は表面コーティングの重量に基づいて25重量%以下、又は表面コーティングの重量に基づいて15重量%以下で存在する。いくつかの例では、モリブデン又はタングステンは、合金層中に、合金層の重量に基づいて35重量%以下、又は合金層の重量に基づいて25重量%以下、又は合金層の重量に基づいて15重量%以下で存在する。追加の例では、モリブデン又はタングステンは、表面コーティング中に、表面コーティングの重量に基づいて65重量%以上、又は表面コーティングの重量に基づいて75重量%以上、又は表面コーティングの重量に基づいて85重量%以上で存在する。特定の実施形態では、モリブデン又はタングステンは、合金層中に、合金層の重量に基づいて65重量%以下、又は合金層の重量に基づいて75重量%以下、又は合金層の重量に基づいて85重量%以下で存在する。
【0007】
いくつかの構成では、合金層は、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、ニッケル及びタングステン、又はニッケル、タングステン モリブデンと、スズ、リン、鉄若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる。特定の実施形態では、コーティングされた表面は、基材上に存在し、基材は、浸炭鋼、窒化鋼、浸炭窒化鋼、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、チタン、銅、銅合金である。いくつかの例では、コーティングされた表面は、1ミクロン未満の表面粗さRaを備える。特定の例では、コーティングされた表面は、1ミクロン以上15ミクロン未満の表面粗さRaを備える。
【0008】
他の例では、合金層は、電着された露出合金層であり、電着された露出外層は、(i)モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つのみとから本質的になるか、又は(ii)モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの2つのみとから本質的になるか、又は(iii)モリブデン及びリンの両方と、ニッケル、コバルト、スズ、クロム、タングステン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素の少なくとも1つとから本質的になるか、又は(iv)タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つのみとから本質的になるか、又は(v)タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、リン、鉄、クロム、マグネシウム若しくはホウ素のうちの2つのみとから本質的になるか、又は(vi)タングステン及びリンの両方と、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、クロム、タングステン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素の少なくとも1つから本質的になる。
【0009】
いくつかの例では、合金層は電着合金層であり、合金層の下に中間層を更に含み、中間層は、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、ニッケル-タングステン合金、コバルト合金、ニッケル-リン合金、モリブデン若しくはタングステンの合金、又はその両方のうちの1つ以上と、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄又はホウ素の少なくとも1つとを含む。
【0010】
特定の実施形態では、コーティングされた表面は、合金層上に形成された追加の層を備えることができ、追加の層は、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル-タングステン合金、コバルト合金、コバルト-リン合金、ニッケル-リン合金、モリブデン合金のうちの1つ以上と、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄又はホウ素、セラミックスの少なくとも1つとを含み、セラミックは、タングステン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、コバルト、モリブデン、ケイ素、ホウ素、金属窒化物、窒化物、金属炭化物、炭化物、ホウ素、タングステン、炭化タングステン、炭化クロム、酸化クロム、酸化アルミニウム、ジルコニア、酸化ジルコニウム、チタニア、炭化ニッケル、酸化ニッケル、ナノ複合材、酸化物複合材、又はこれらの組み合わせの化合物を含む。いくつかの実施形態では、追加の層は合金層上に形成され、セラミックを含む。いくつかの例では、コーティングされた表面は、1ミクロン未満、又は1ミクロン以上5ミクロン未満、又は5ミクロン以上15ミクロン未満の表面粗さRaを備える。
【0011】
一実施形態では、合金層は、固体ナノ粒子、ポリマー粒子、硬質粒子、二酸化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、疎水性粒子、ダイヤモンド粒子、疎水性基で官能化された粒子、固体粒子及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の粒子を更に含む。いくつかの例では、合金層は表面コーティングの露出外層として存在し、露出外層は電着合金層であり、電着合金層は銀若しくは金を除外するか、又は全ての貴金属を除外する。特定の実施形態では、露出合金層は粒子を更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、表面コーティングは、第1の層及び第2の層を備え、第1の層若しくは第2の層、又は両方は合金層を備える。他の実施形態では、合金層は、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、又はニッケル及びタングステンから本質的になるか、又はニッケル、タングステンとスズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる。
【0013】
いくつかの例では、第1の層及び第2の層の各々は合金層を含み、各合金層は、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になるか、又はニッケル及びタングステンから本質的になるか、又はニッケル、タングステンとスズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つとから本質的になる。特定の実施形態では、第2の層は合金層であり、第2の層は、表面コーティングの露出外層として存在し、露出外層は電着合金層であり、電着合金層は銀又は金を除外する。いくつかの例では、第2の層は合金層であり、第2の層は表面コーティングの露出外層として存在し、露出外層は電着合金層であり、電着合金層は全ての貴金属を除外する。
【0014】
いくつかの実施形態では、合金層は、ニッケルとモリブデンからなるか、又はニッケルとモリブデンとリンとからなるか、又はニッケルとタングステンとからなるか、又はニッケルとタングステンとリンとからなる。
【0015】
いくつかの実施形態では、合金層はテクスチャ加工されている。
別の態様では、物品は、コーティングされた表面を有する基材を含み、コーティングされた表面は、表面コーティングを含む。表面コーティングは、モリブデン又はタングステンと、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える。
【0016】
いくつかの例では、表面コーティングは露出外層であり、銀若しくは金を含まないか、又は全ての貴金属を含まない。いくつかの実施形態では、基材は、浸炭鋼、窒化鋼、浸炭窒化鋼、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、チタン、銅、銅合金である。いくつかの実施形態では、物品のコーティングされた表面は、1ミクロン未満の表面粗さRaを備える。他の実施形態では、物品のコーティングされた表面は、1ミクロン以上15ミクロン未満の表面粗さRaを備える。いくつかの実施形態では、コーティングされた表面は、1ミクロン未満、又は1ミクロン以上5ミクロン未満、又は5ミクロン以上15ミクロン未満の表面粗さRaを備える。
【0017】
別の態様では、物品は、コーティングされた表面を有する基材を備え、コーティングされた表面は、表面コーティングを備え、表面コーティングは、第1の層及び第1の層上の第2の層を備え、第1の層又は第2の層又は両方は、モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える。
【0018】
追加の態様では、物品は、コーティングされた表面を有する基材を備え、コーティングされた表面は、表面コーティングを備え、表面コーティングは、第1の層及び第1の層上の第2の層を備え、第1の層及び第2の層の各々は、モリブデンを含み、第1の層、第2の層又は両方は、モリブデン又はタングステンと、ニッケル、タングステン コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える。
【0019】
別の態様では、物品は、コーティングされた表面を有する基材を備え、コーティングされた表面は、表面コーティングを備え、表面コーティングは、第1の層及び第1の層上の第2の層を備え、第1の層又は第2の層又は両方は、タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える。
【0020】
追加の態様では、物品は、コーティングされた表面を有する基材を備え、コーティングされた表面は、表面コーティングを備え、表面コーティングは、第1の層及び前記第1の層上の第2の層を備え、第1の層及び第2の層の各々は、モリブデンを含み、第1の層、第2の層又は両方は、タングステンと、ニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を備える。
【0021】
別の態様では、物品は、コーティングされた表面を有する基材を備え、コーティングされた表面は、表面コーティングを備え、表面コーティングは、電着合金層を備え、電着合金層は、表面コーティングの露出した外側電着合金層として存在し、露出した外側電着合金層は、ニッケル及びモリブデンから本質的になるか、又はニッケル、モリブデンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つとから本質的になり、モリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下で露出した外側電着層に存在する。
【0022】
別の態様では、物品は、コーティングされた表面を有する基材を備え、コーティングされた表面は、表面コーティングを備え、表面コーティングは、電着合金層を備え、電着合金層は、表面コーティングの露出した外側電着合金層として存在し、露出した外側電着合金層は、ニッケル及びタングステンから本質的になるか、又はニッケル、タングステンと、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つとから本質的になり、タングステンは、表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下で露出した外側電着層に存在する。
【0023】
追加の態様、特徴、実施形態及び例を以下に記載する。
図面のいくつかの観点の簡単な説明
特定の態様、実施形態、及び構成は、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、基材上の表面コーティングを含むデバイスの図である。
【
図2】
図2は、基材上のコーティングに2つの層を備えるデバイスの図である。
【
図3】
図3は、基材上のコーティングに2つの層を備えるデバイスの他の図である。
【
図4A】
図4Aは、テクスチャ加工された表面を備えるデバイスの図である。
【
図4B】
図4Bは、テクスチャ加工された表面を備えるデバイスの図である。
【
図5A】
図5Aは、2つ以上の層を備えるデバイスの図である。
【
図5B】
図5Bは、2つ以上の層を備えるデバイスの図である。
【
図12】
図12は、複数のコーティング層を有するデバイスの図である。
【
図13】
図13は、本明細書に記載のコーティングされた表面を製造するために使用することができるプロセスの図である。
【
図14】
図14は、異なる物品上の2つのコーティングを示す写真である。
【
図15A】
図15Aは、硬質クロムコーティング及び無電解ニッケルコーティングを示す写真である。
【
図15B】
図15Bは、硬質クロムコーティング及び無電解ニッケルコーティングを示す写真である。
【
図16A】
図16Aは、試験されたコーティングに対する塩水噴霧試験の結果を示す写真である。
【
図16B】
図16Bは、試験されたコーティングに対する塩水噴霧試験の結果を示す写真である。
【
図16C】
図16Cは、試験されたコーティングに対する塩水噴霧試験の結果を示す写真である。
【
図16D】
図16Dは、試験されたコーティングに対する塩水噴霧試験の結果を示す写真である。
【
図16E】
図16Eは、試験されたコーティングに対する塩水噴霧試験の結果を示す写真である。
【
図18A】
図18Aは、塩水噴霧試験及び5000時間後のコーティング外観を示す写真である。
【
図18B】
図18Bは、塩水噴霧試験及び5000時間後のコーティング外観を示す写真である。
【
図18C】
図18Cは、塩水噴霧試験及び5000時間後のコーティング外観を示す写真である。
【
図18D】
図18Dは、塩水噴霧試験及び5000時間後のコーティング外観を示す写真である。
【
図18E】
図18Eは、塩水噴霧試験及び5000時間後のコーティング外観を示す写真である。
【
図19】
図19は、コーティングを塗布する前後ノッチ付きバーの画像を示す写真である。
【
図21】
図21は、MaxShield-V1コーティング’の顕微鏡画像である。
【
図22】
図22は、摩擦係数を測定するための装置の図である。
【
図26】
図26は、各研磨ホイールに1kgの荷重を加えることによってコーティングの表面を研磨するために使用される装置の図である。
【
図27】
図27は、異なるコーティングの摩耗指数を比較するグラフである。
【
図29】
図29は、異なるコーティングの腐食速度を示すグラフである。
【
図30A】
図30Aは、めっき及び熱処理されたコーティングとして拡大された画像を示す図である。
【
図30B】
図30Bは、めっき及び熱処理されたコーティングとして拡大された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特定の実施形態では、本明細書に記載の材料及び方法を使用して、物品、デバイス又はシステムに存在する基材の一部にコーティングされた表面を提供することができる。コーティングされた表面は、表面コーティングを含む。表面コーティングは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の層を備えることができる。いくつかの構成では、表面コーティングは、1つの層のみ備えるか、又は2つの層のみを備えるか、又は3つの層のみを備える。以下により詳細に記載されるように、基材は、様々な異なる物品及びデバイスの一部であり得る。参照を容易にするために、より大きなデバイス又は物品の一部である基材の小さな断面が、以下の
図1~
図12を参照して説明される。基材及び/又は他の層を備える特定の物品又はデバイスも記載される。表面コーティング中の正確な1つ以上の材料は変化し得る。いくつかの構成では、表面コーティングは、1つ以上の金属を含む。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、金属合金、例えば2つ以上の金属を含む合金を含んでもよい。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、2つの金属のみを含む金属合金、又は金属と別の材料とを含む。特定の実施形態では、表面コーティングは、3つの金属のみ又は金属と2つの他の材料とを含む金属合金を含む。他の実施形態では、表面コーティングは、基材上に形成された単層のみを備えてもよい。例えば、下にある基材を劣化から保護するために、単層を環境に露出させることができる。場合によっては、表面コーティングは、基材上に形成された第1の層及び第1の層上に形成された第2の層のみを備えてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、合金層は、2つ以上の材料「から本質的になる」場合がある。「から本質的になる(consists essentially of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、指定された材料及び微量不純物のみ、並びに構成の基本的特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさない材料を指すことを意図している。「からなる」という用語は、従来の精製技術によって除去することができない材料及び不純物のみを指す。
【0027】
特定の実施形態では、本明細書に記載の合金層は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛を含む1つ、2つ又はそれ以上のIV族遷移金属を含むことができる。
【0028】
他の構成では、本明細書に記載の合金層は、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀及びカドミウムを含む1つ、2つ又はそれ以上のV族金属を含むことができる。
【0029】
いくつかの構成では、本明細書に記載の合金層は、非放射性ランタニド(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金及び水銀を含む1つ、2つ又はそれ以上のVI族金属を含むことができる。
【0030】
他の実施形態では、本明細書に記載の合金層は、非放射性アクチニド(Th、Pa、U)を含む1つ、2つ又はそれ以上のVII族金属を含むことができる。
【0031】
場合によっては、本明細書に記載の合金層は、IV族金属からの1つ以上の金属と、V族金属又はVI族金属又はVII族金属からの1つ以上の金属とを含むことができる。
【0032】
他の例では、本明細書に記載の合金層は、V族金属からの1つ以上の金属と、VI族金属又はVII族金属からの1つ以上の金属とを含むことができる。
【0033】
他の例では、本明細書に記載の合金層は、第VI族金属からの1つ以上の金属及び第VII族金属からの1つ以上の金属を含むことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、IV族金属からの1つの金属と、V族金属、VI族金属又はVII族金属からの他の金属との2つの金属のみを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、2つの金属のみを含み、一方の金属はV族金属に由来し、他方の金属はVI族金属又はVII族金属に由来する。
【0036】
他の実施形態では、本明細書に記載の合金層は、2つの金属のみを含み、一方の金属はVI族金属に由来し、他方の金属はVII族金属に由来する。
【0037】
いくつかの例では、本明細書に記載の合金層は、2つの金属のみを含み、両方の金属はIV族金属である。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、2つの金属のみを含み、両方の金属はV族金属である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、2つの金属のみを含み、両方の金属はVI族金属である。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、2つの金属のみを含み、両方の金属はVII族金属である。
【0041】
必要に応じて、本明細書に記載の合金層は、他の金属に加えて、又はその代わりに、第II族材料(Li、Be、B及びC)又は第III族材料(Na、Mg、Al、Si、P、S)も含むことができる。これらの材料は、1、2、3又はそれ以上の金属と組み合わせて存在してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、モリブデンと、1つ以上の追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つ以上の追加の金属とを含む。特定の実施形態では、金属合金は、モリブデンと、1つのみの追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つのみの追加の金属とを含む。特定の実施形態では、金属合金は、モリブデンと、2つのみの追加の金属又は材料、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属、VII族金属、II族材料及びIII族材料からなる群から選択される2つのみの追加の金属又は材料とを含む。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、モリブデンと、1つ以上の追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つ以上の追加の金属とを含む。特定の実施形態では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、モリブデンと、1つのみの追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つのみの追加の金属とを含む。いくつかの例では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、モリブデンと、2つのみの追加の金属又は材料、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属、VII族金属、II族材料及びIII族材料からなる群から選択される2つのみの追加の金属又は材料とを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、タングステンと、1つ以上の追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つ以上の追加の金属とを含む。特定の実施形態では、金属合金は、タングステンと、1つのみの追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つのみの追加の金属とを含む。特定の実施形態では、金属合金は、タングステンと、2つのみの追加の金属又は材料、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属、VII族金属、II族材料及びIII族材料からなる群から選択される2つのみの追加の金属又は材料とを含む。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、タングステンと、1つ以上の追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つ以上の追加の金属とを含む。特定の実施形態では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、タングステンと、1つのみの追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つのみの追加の金属とを含む。いくつかの例では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、タングステンと、2つのみの追加の金属又は材料、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属、VII族金属、II族材料及びIII族材料からなる群から選択される2つのみの追加の金属又は材料とを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、ニッケルと、1つ以上の追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つ以上の追加の金属とを含む。特定の実施形態では、金属合金は、ニッケルと、1つのみの追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つのみの追加の金属とを含む。特定の実施形態では、金属合金は、ニッケルと、2つのみの追加の金属又は材料、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属、VII族金属、II族材料及びIII族材料からなる群から選択される2つのみの追加の金属又は材料とを含む。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、ニッケルと、1つ以上の追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つ以上の追加の金属とを含む。特定の実施形態では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、ニッケルと、1つのみの追加の金属、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属及びVII族金属からなる群から選択される1つのみの追加の金属とを含む。いくつかの例では、表面コーティングは、基材上に形成された単層を有し、単層は、ニッケルと、2つのみの追加の金属又は材料、例えば、IV族金属、V族金属、VI族金属、VII族金属、II族材料及びIII族材料からなる群から選択される2つのみの追加の金属又は材料とを含む。
【0045】
特定の構成では、合金層は、(i)モリブデンと、(ii)ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む。特定の実施形態では、合金は貴金属を除外する。
【0046】
特定の構成では、本明細書に記載の合金層は、ニッケル、モリブデン、銅、リン、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、二硫化モリブデン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、粒子、コバルト、タングステン、金、白金、銀のうちの2つ以上、又はそれらの合金若しくは組み合わせを含む。
【0047】
他の実施形態では、本明細書に記載の合金層としては、ニッケル、モリブデン、銅、リン、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、二硫化モリブデン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、粒子、コバルト、タングステン、金、白金、銀のうちの2つ以上、又はそれらの合金若しくは組み合わせが挙げられる。
【0048】
特定の実施形態では、本明細書に記載の合金層は、(i)モリブデン、酸化モリブデン又はモリブデンの他の化合物と、(ii)遷移金属、遷移金属酸化物又は遷移金属の他の化合物との合金を含む。
【0049】
特定の実施形態では、本明細書に記載の合金層は、(i)モリブデン、酸化モリブデン又はモリブデンの他の化合物と、(ii)遷移金属、遷移金属酸化物又は遷移金属の他の化合物からの2つの金属のみを含む。
【0050】
特定の実施形態では、本明細書に記載の層の金属合金は、(i)タングステン、酸化タングステン又はタングステンの他の化合物と、(ii)遷移金属、遷移金属酸化物又は遷移金属の他の化合物からの2つの金属のみを含む。
【0051】
特定の実施形態では、本明細書に記載の合金層は、(i)ニッケル、酸化ニッケル又はニッケルの他の化合物と、(ii)遷移金属、遷移金属酸化物又は遷移金属の他の化合物からの2つの金属のみを含む。いくつかの実施形態では、遷移金属、遷移金属酸化物又は遷移金属の他の化合物は、スカンジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、テクネチウム、銀、カドミウム、ランタン、白金、金、水銀、アクチニウム、及びそれらの組み合わせを含む。例えば、金属合金コーティングは、Ni-Mo合金、Ni-W合金を含むことができ、又はNi-Mo合金若しくはNi-W合金のみを有することができる。
【0052】
特定の実施形態では、合金層は、ASTM B117塩水噴霧腐食試験によるクロムコーティングと比較して少なくとも2倍以上の耐食性を示す。いくつかの実施形態では、金属合金層は、ASTM F519規格によって試験される水素脆化を示さない。
【0053】
合金層がモリブデン、酸化モリブデン又はモリブデンの他の化合物を含む実施形態では、これらの材料は、合金層の重量又は表面コーティングの重量に基づいて35重量%以下(又は25重量%以下)で金属合金コーティング中に存在することができる。金属合金層がモリブデン、酸化モリブデン又はモリブデンの他の化合物を含むいくつかの他の場合では、これらの材料は、合金層又は表面コーティングの重量に基づいて48重量%以下で金属合金コーティング中に存在することができる。
【0054】
場合によっては、合金層は単層からなってもよい。他の構成では、2つ以上の層が表面コーティング中に存在してもよい。本明細書で述べるように、2つの層は同じ又は異なる材料を含んでもよい。材料が同じである場合、材料は2つの層に異なる量で存在してもよく、又は異なるプロセスを使用して異なる層に堆積されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、合金層は、モリブデンの合金、例えば、ニッケル、クロム、炭素、コバルト、スズ、タングステン、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅の1つ以上と組み合わせたモリブデンを含むことができる。例えば、モリブデンは35重量%以下で存在してもよく、他の成分は65重量%以上で存在してもよい。必要に応じて、3つ以上の成分又は金属が存在してもよい。他の実施形態では、表面コーティングは、モリブデンと、1つの他の金属又は材料、例えば、ニッケル、クロム、炭素、コバルト、スズ、タングステン、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅のうちの1つのみと組み合わせたモリブデンの合金を含むことができる。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、モリブデンと2つの他の金属、例えば、ニッケル、クロム、炭素、コバルト、スズ、タングステン、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅のうちの2つのみと組み合わせたモリブデンの合金を含むことができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、合金層は、タングステン、例えば、ニッケル、モリブデン、クロム、炭素、コバルト、スズ、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅のうちの1つ以上と組み合わせたタングステンの合金を含むことができる。他の実施形態では、表面コーティングは、タングステンと、1つの他の金属又は材料、例えば、ニッケル、モリブデン、クロム、炭素、コバルト、スズ、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅のうちの1つのみと組み合わせたタングステンの合金を含むことができる。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、タングステンと、2つの他の金属、例えば、ニッケル、モリブデン、クロム、炭素、コバルト、スズ、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅のうちの2つのみと組み合わせたタングステンの合金を含むことができる。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、タングステンの合金、例えば、クロム、モリブデン、炭素、コバルト、スズ、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅のうちの1つ以上と組み合わせたタングステンを含むことができる。例えば、タングステンは35重量%以下で存在してもよく、他の成分は65重量%以上で存在してもよい。必要に応じて、3つ以上の成分又は金属が存在してもよい。他の実施形態では、表面コーティングは、タングステンと、1つ又は2つの他の金属又は材料、例えば、ニッケル、モリブデン、クロム、炭素、コバルト、スズ、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅のうちの1つのみと組み合わせたタングステンの合金を含むことができる。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、タングステンと、2つの他の金属、例えば、ニッケル、モリブデン、クロム、炭素、コバルト、スズ、アルミニウム、バナジウム、チタン、ニオブ、鉄、ホウ素、リン、マグネシウム又は銅のうちの2つのみと組み合わせたタングステンの合金を含むことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の表面コーティングは、ISO4287及びISO4288の規格に記載されている特定の表面粗さ(Ra)を備えるがこれらに限定されない望ましい性能基準を提供し得る。粗さは、例えば、粗面計を用いて測定することができる。コーティング厚さはまた、磁気測定ツール、XRF等の非破壊技術、又はサンプリング及び断面分析等の破壊技術を使用して測定することができる。正確な表面粗さ(Ra)は、例えば変化してもよく、1ミクロン以下であってもよく、又は0.1ミクロン~1ミクロンの間であってもよい。デバイスはまた、所望の摩擦係数(CoF)を有してもよい。この特性は、一般に、互いに摩耗した表面及びそれらの間に位置する流体の両方に依存する。各表面の粗さ、流体の粘度、及び試験の温度は、摩擦係数測定に影響を与える可能性がある。CoFは、例えば、ASTM G99-17又はASTM G77-17に規定されているようなブロックオンリング試験に従って測定することができる。コーティング、又はコーティングの1つ以上の層は、ASTM E384-17によって試験される特定の硬度を提供することができる。例えば、コーティングは、ASTM E384-17に従って測定して600ビッカースより高い硬度を有してもよい。コーティングが複数の層を備える場合、層のいずれか1つ以上は、ASTM E384-17に従って測定して600ビッカースを超える硬度を有する。いくつかの実施形態では、コーティングの外層は、ASTM E384-17に従って測定して600ビッカースより高い硬度を有し得る。コーティングがASTM E384-17に従って測定して600ビッカース以上の硬度を有する他の実施形態では、層の一方は、単独で存在する場合、ASTM E384-17に従って測定して600ビッカース未満の硬度を有してもよい。
【0058】
様々な層及び基材は、平坦な表面を有するものとして
図1~
図12を参照して以下に説明されるが、平坦な表面は必要ではなく、場合によっては、望ましくないことがある。例えば、基材(又は層のいずれか又は両方)は、粗い表面を有してもよく、又は意図的に粗面化されてもよく、又は所望に応じて意図的に平滑化されてもよい。一例として、基材は、転写テクスチャを含むテクスチャ加工された表面を有してもよく、転写テクスチャの部分的又は完全な複製は、転写テクスチャを有するそのような表面と接触する他の物体に転写されるものとする。一実施形態では、そのような表面は、使用中又は移動中に別の材料と接触する物品又はデバイスの一部であり得る。例えば、加工ロールの表面が圧延プロセス中に鋼板に転写され得る特定の転写テクスチャを有する、冷間圧延プロセスで使用される鋼加工ロール。別の例は、転写テクスチャが放電テクスチャード加工(EDT)を使用して作成される、前述の実施形態で説明した鋼加工ロールである。別の実施形態は、熱間圧延プロセスで使用される加工ロールである。別の実施形態では、転写テクスチャは、テクスチャを別の物体に転写するように設計されたモールドの一部とすることができる。一実施形態では、テクスチャは金属に転写される。一実施形態では、テクスチャはポリマーに転写される。一実施形態では、テクスチャは、後に凝固した溶融金属に転写される。一実施形態では、テクスチャは、後に凝固した液体又は流体に転写される。
【0059】
別の実施形態では、表面は、そのような表面と別の表面又は上部に塗布されたコーティングとの間の接着性を高めるように設計された接着粗さを有してもよい。一実施形態では、接着テクスチャは、基材の溶射コーティングへの接着性を高めるために使用される。別の実施形態では、接着テクスチャは、表面タングステンを含むコーティングの接着性を高めるために使用される。別の実施形態では、接着層は、窒化物、窒化物、金属炭化物、炭化物、ホウ化物、タングステン、炭化タングステン、タングステン合金、タングステン化合物、ステンレス鋼、セラミック、クロム、炭化クロム、酸化クロム、クロム化合物、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、ニッケル、炭化ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル合金、コバルト化合物、コバルト合金、コバルトリン合金、モリブデン、モリブデン化合物、ナノ複合材、酸化物複合材のうちの1つ又は組み合わせと比較してコーティングの接着性を高めるために使用される。
【0060】
別の実施形態では、粗さは、光反射に影響を与えるために追加される。一実施形態では、表面粗さは、より低い粗さを有するように変更される。一実施形態では、表面粗さRaは、1μm未満に変更されてもよい。別の実施形態では、表面粗さは、0.5um未満に変更される。一実施形態では、粗さが変更された表面は、光沢がある。別の実施形態では、粗さが変更された表面が露出され、人間が触れる必要がある。別の実施形態では、表面が反射する光が少なくなり、光沢が少なくなる。一実施形態では、粗さが変更された表面上の水の接触角は、元の表面よりも小さい。
【0061】
特定の実施形態では、粗さは、不規則な形状又はそれぞれのパターンを有してもよい。特定の実施形態では、コーティングを有する表面の粗さRaは1μm未満である。別の実施形態では、コーティングを有する表面の粗さRaは、1μm超10μm未満である。別の実施形態では、コーティングを有する表面の粗さRaは、10μm超100μm未満であり、別の実施形態では、表面のRaは0.7未満である。いくつかの実施形態では、Raは0.5μm未満及び0.05μm超である。別の実施形態では、Raは0.5μm未満である。別の実施形態では、Raは0.4um未満である。別の実施形態では、Raは0.3um未満である。別の実施形態では、Raは0.2um未満である。別の実施形態では、Raは0.1um未満である。別の実施形態では、パターンは、研削、ブラスト、サンドブラスト、研磨ブラスト、サンドブラスト、バニシング、研削、ホーニング、マス仕上げ、タンブリング研磨、バレル研磨、ポリッシング、バフ研磨、ラッピング、電気化学エッチング、化学エッチング、レーザエッチング、レーザパターニング、又は他の方法を使用して作製される。別の方法では、ショットブラスト(SB)、レーザビームテクスチャード加工(LBT)及び放電テクスチャード加工(EDT)を使用して表面にテクスチャ加工を施すか、又は電子ビームテクスチャード加工(EBT)を評価している。放電テクスチャード加工(EDT)を鋼基材に使用してテクスチャを作製することができる。電着技術を使用してテクスチャを形成することができる。テクスチャは、溶射技術を使用して形成することができる。パターンの断面は、長方形、三角形、星形、円、又はそれらの組み合わせ等の特定の幾何学的形状を有することができる。パターンは、リッジ、ピラー、スパイラル、それらの組み合わせ、又は他の形状であってもよい。Raは、100umより大きくてもよい。パターンは、切削、フライス加工、成形、及び又は他の工具を使用して作成することができる。
【0062】
特定の実施形態は、コーティング又は層を参照して以下により詳細に記載される。コーティング又は層は、単一の材料、材料の組み合わせ、合金、複合材、又は本明細書に記載の他の材料及び組成物を含み得る。層が金属合金を指す実施形態では、金属合金は、2つ以上の材料、例えば2つ以上の金属を含むことができる。いくつかの構成では、一方の金属は層中に79重量%以上存在してもよく、他方の材料は層中に21重量%以下存在してもよい。例えば、本明細書に記載の層の1つは、モリブデン合金、タングステン合金又はニッケル合金を含むことができる。一方の材料は、層中に79重量%以上存在してもよく、他方の材料は、層中に21重量%以下存在してもよい。金属合金がモリブデンを含む場合、モリブデンは、層中に21重量%以下又は79重量%以上で存在することができ、他の材料(複数可)が存在してもよく、そのため重量パーセントの合計は100重量パーセントに加算される。あるいは、他の材料(複数可)は、層中に79重量%以上存在することができ、モリブデンは、層中に21重量%以下で存在することができる。1つ又は多くの層は、別の金属又は金属合金を含むこともできる。合金層又は表面コーティング全体に無視できる重量を加える微量の不純物も存在し得る。
【0063】
存在する各材料の正確な量は、所望の性能仕様を有する層又は物品を提供するように選択されてもよい。重量パーセントは、合金層又は表面コーティング全体の重量に基づくことができる。いくつかの実施形態では、層中の1つの金属は、層中に重量で35重量%以下で存在し、例えば、層中又はコーティング中に34重量%、33重量%、32重量%、31重量%、30重量%、29重量%、28重量%、27重量%、26重量%、25重量%、24重量%、23重量%、22重量%、21重量%、20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、15重量%、14重量%、13重量%、12重量%、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%又はそれ以下で存在する。例えば、モリブデン、タングステン又はコバルトのうちの1つ以上は、層又はコーティング中に35重量%以下、例えば、層又はコーティング中に25%、24%、23%、33%、31%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又はそれ以下で存在することができる。他の構成では、1つ以上の層は、層中に65重量%以上で存在する、例えば、層又はコーティング中に65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、85重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%又はそれ以上で存在する金属を含むことができる。例えば、ニッケルは、合金層又は表面コーティングの65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、85重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%以上で層又はコーティング中に存在することができる。代替的には、モリブデンは、合金層又は表面コーティングの65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、85重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%以上で層又はコーティング中に存在することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層は、貴金属なしで存在してもよい。「貴金属」という用語は、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金を指す。例えば、合金層(及び/又は表面コーティング全体)は、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金の各々を含まない(いずれも含まない)ことができる。貴金属を省略することにより、全体的なコストを削減することができる。
【0065】
特定の実施形態では、ニッケルが金属合金層中に存在する場合、ニッケルは、その同じ層中にタングステン又はコバルトなしで存在することができる。例えば、層がニッケル合金を含む場合、層はタングステン又はコバルトのいずれも有さず、例えば、0重量%のコバルト又はタングステンが存在する。この層はまた、0重量%の貴金属を有し得る。
【0066】
特定の例では、合金層は、所望に応じて非金属材料及び添加剤を含むことができる。例えば、粒子、ナノ粒子、ナノ材料、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、SiC、SiO2、ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、ホウ素、ホウ化物、官能化シリコン粒子、フルオロシリコーン、シロキサン、TiO2、ナノチューブ及びナノ構造のうちの1つ以上を含む他の材料が、金属合金層内に存在してもよい。追加の材料は、以下により詳細に記載される。
【0067】
いくつかの例では、本明細書に記載の層の金属の1つはニッケルである。例えば、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル化合物、ニッケル複合材、ニッケル-リン合金、ニッケル-モリブデン合金、ニッケル-モリブデン-リン合金、ニッケル-コバルト合金、ニッケル-タングステン合金、ニッケル-コバルト-リン合金、ニッケル-タングステン-リン合金、ニッケル及びモリブデンのみを含むニッケル合金、少なくともニッケルと遷移金属とを含むニッケル合金、貴金属以外の少なくとも2つの金属を含むニッケル合金、少なくともニッケルと貴金属以外の耐熱金属とを含むニッケル合金、少なくともニッケルと、タングステンを除く耐熱金属とを含むニッケル合金、少なくともニッケルと、タングステン及び任意の貴金属を除く耐熱金属とを含むニッケル合金、少なくともニッケルと、コバルト及び貴金属を除くニッケル合金、ニッケルと粒子とを含有する複合合金、ニッケルとナノ粒子とを含有する複合合金、ニッケルとSiO2、SiC又は他のケイ素化合物とを含む複合合金、ニッケルとホウ化物、窒化臭素又は他のホウ素化合物とを含む複合合金、ニッケルとPTFE又はその他のフッ素化合物とを含む複合合金、ニッケル、モリブデン及びクロムを含む複合合金、炭化クロム、酸化クロム又は他のクロム化合物は、本明細書に記載の1つ以上層に存在してもよい。
【0068】
特定の実施形態では、本明細書に記載の合金層の金属の1つはモリブデンである。例えば、モリブデン、モリブデン合金、モリブデン複合材、モリブデンスズ合金、少なくともモリブデンとニッケルとを含む合金、少なくともモリブデンとスズとを含む合金、少なくともモリブデンとコバルトとを含む合金、少なくともモリブデンとリンとを含有する合金、ニッケルとモリブデンとのみを含有する合金、スズとモリブデンとのみを含有する合金、コバルトとモリブデンとのみを含有する合金、ニッケルとモリブデンとリンとのみを含有する合金、貴金属以外の金属を少なくとも2つ含有するモリブデン合金、少なくともモリブデンと遷移金属とを含有するモリブデン合金、少なくともモリブデンと貴金属以外の遷移金属とを含有するモリブデン合金、欧州法上の懸念が非常に高い物質を除く少なくとも2つの金属を含むモリブデン合金、モリブデンと粒子とを含む複合合金、モリブデンと軟質粒子とを含む複合合金、モリブデンとナノ粒子とを含む複合合金、モリブデンとSiO2、SiC又は他のケイ素化合物とを含有する複合合金、モリブデンとホウ化物、窒化臭素又は他のホウ素化合物とを含有する複合合金、モリブデンとPTFE又は他のフッ素化合物とを含む複合合金、モリブデンとクロム、炭化クロム、酸化クロム又は他のクロム化合物とを含む複合合金が、本明細書に記載の1つ以上の層に存在してもよい。
【0069】
別の実施形態では、本明細書に記載の合金層の金属の1つはコバルトである。例えば、コバルト、コバルト合金、コバルト化合物、コバルト複合材、コバルト-リン合金、コバルト-モリブデン合金、コバルト-モリブデン-リン合金、コバルト-タングステン合金、コバルト-タングステン-リン合金、コバルトとモリブデンとのみを含むコバルト合金、少なくともコバルトと遷移金属とを含有するコバルト合金、貴金属を除く少なくとも2種類の金属を含むコバルト合金、少なくともコバルトと貴金属を除く耐熱金属とを含むコバルト合金、少なくともコバルトとタングステンを除く耐熱金属とを含むコバルト合金、少なくともコバルトと、タングステン及び貴金属を除く耐熱金属とを含むコバルト合金、少なくともコバルトとニッケル及び貴金属を除くコバルト合金、コバルトと粒子とを含有する複合合金、コバルトとナノ粒子とを含有する複合合金、コバルトとSiO2、SiC又は他のケイ素化合物とを含有する複合合金、コバルトとホウ化物、窒化臭素又は他のホウ素化合物とを含有する複合合金、コバルトとPTFE又は他のフッ素化合物とを含有する複合合金、コバルトとモリブデンとクロム、炭化クロム、酸化クロム又は他のクロム化合物とを含有する複合合金。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金層の金属の1つはスズである。例えば、スズ、スズ合金、スズ化合物、スズ複合材、スズ-リン合金、スズ-モリブデン合金、スズ-モリブデン-リン合金、スズ-タングステン合金、スズ-タングステン-リン合金、スズ及びモリブデンのみを含有するスズ合金、少なくともスズと遷移金属とを含むスズ合金、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むスズ合金、少なくともスズと貴金属を除く耐熱金属とを含むスズ合金、少なくともスズと、タングステンを除く耐熱金属とを含むスズ合金、少なくともスズと、タングステン及び貴金属を除く耐熱金属とを含むスズ合金、少なくともスズを含みニッケル及び貴金属を除くスズ合金、スズと粒子とを含有する複合合金、スズとナノ粒子とを含む複合合金、スズとSiO2、SiC又は他のケイ素化合物とを含む複合合金、スズとホウ化物、窒化臭素又は他のホウ素化合物とを含む複合合金、スズとPTFE又はその他のフッ素化合物とを含む複合合金、スズとモリブデンとクロムとを含有する複合合金、炭化クロム、酸化クロム又は他のクロム化合物。
【0071】
別の実施形態では、本明細書に記載の合金層の金属の1つはタングステンである。例えば、タングステン、タングステン合金、タングステン化合物、タングステン複合材、タングステン-リン合金、タングステン-モリブデン合金、タングステン-モリブデン-リン合金、タングステン及びモリブデンのみを含有するタングステン合金、少なくともタングステンと遷移金属とを含むタングステン合金、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むタングステン合金、少なくともタングステンと貴金属を除く耐熱金属とを含むタングステン合金、少なくともタングステンを含みニッケル及び貴金属を除くタングステン合金、タングステン及び粒子を含有する複合合金、タングステン及びナノ粒子を含有する複合合金、タングステン及びSiO2、SiC又は他のケイ素化合物を含有する複合合金、タングステン及びホウ化物、窒化臭素又は他のホウ素化合物を含む複合合金、タングステン及びPTFE又は他のフッ素化合物を含む複合合金、タングステン、モリブデン及びクロム、炭化クロム、酸化クロム又は他のクロム化合物を含む複合合金。
【0072】
特定の実施形態では、本明細書に記載の合金層の1つ以上は、「硬質」層とみなされ得る。硬質層は、典型的には、基材及び/又は任意の下層よりも高いビッカース硬さを有する。必須ではないが、硬質層は通常、外層として存在する。いくつかの実施形態では、硬質層は、窒化物、金属窒化物、炭化物、金属炭化物、ホウ化物、金属ホウ化物、タングステン、炭化タングステン、タングステン合金、タングステン化合物、ステンレス鋼、セラミック、クロム、炭化クロム、酸化クロム、クロム化合物、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、ニッケル、炭化ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル合金、コバルト化合物、コバルト合金、コバルトリン合金、モリブデン、モリブデン化合物、ナノ複合材、酸化物複合材、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。
【0073】
特定の実施形態では、表面コーティングの基材及び合金層の簡略図が
図1に示されている。物品又はデバイス100は、基材105(これは、
図1に断面として示されている)と、基材105の第1の表面106上の第1の層110とを含む。図示されていないが、層又はコーティングはまた、基材105の表面107、108及び109上に存在してもよい。層110は、基材105の表面106にわたって存在する均一な厚さを有する固体層として
図1に示されている。この構成は必要ではなく、層110の異なる領域は、異なる厚さ又は異なる材料さえも含み得る。さらに、表面106の特定の領域は、表面コーティングを全く含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、基材105は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、少なくとも1つの金属を含む他の基材、又は窒化若しくは浸炭された基材を含むがこれらに限定されない金属材料であり得る、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。層110は、典型的には、1つ以上の金属、又は2つ以上の金属、又は3つ以上の金属若しくは材料を含む。例えば、層110は、2つ以上の金属から形成された金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、層110は、2つの金属又は2つの材料のみから形成された合金層である。いくつかの例では、層110は、表面コーティングに存在する唯一の層である。特定の例では、層110は、層が周囲の流体又は他の材料と接触し、下にある基材105及び層110と基材105との間の任意の層を保護することができるように、外層又は露出層である。
【0074】
いくつかの実施形態では、層110中の金属のうちの一方はニッケルである。他の実施形態では、層110中の金属のうちの一方はモリブデンである。他の実施形態では、層110中の金属のうちの一方はタングステンである。他の実施形態では、層110中の金属のうちの一方はコバルトである。追加の実施形態では、層110中の金属のうちの一方は、モリブデン合金の形態のモリブデンである。他の実施形態では、層110は、ニッケル合金、モリブデン合金、コバルト合金、タングステン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、層110はニッケルモリブデン合金であってもよい。特定の構成では、層110は、他の材料が層110内に存在しないニッケルモリブデン合金からなり得る。いくつかの構成では、層110は、ニッケルモリブデンリン合金を含み得る。いくつかの構成では、層110は、他の材料が層110内に存在しないニッケルモリブデンリン合金からなり得る。
【0075】
いくつかの構成では、層110の正確な厚さは、層110が存在するデバイスに応じて1ミクロンから約2mmまで変化し得る。例えば、層110は、約5ミクロン~約1mm又は約7ミクロン~約900ミクロンの厚さを有することができる。表面コーティングに複数の層が存在する場合、各層は1ミクロン~約2mmの厚さを有してもよく、又は全ての層の合計厚さは約1ミクロン~約2mmであってもよい。
【0076】
特定の実施形態では、層110はまた、他の材料、例えば、粒子、繊維、非金属(例えば、リン、ホウ素、窒化ホウ素、二酸化ケイ素等のケイ素化合物、炭化ケイ素等)、酸化アルミニウム、二硫化モリブデン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、コバルト、タングステン、スズ、金、白金、銀及びそれらの組み合わせを含むことができる。粒子は、ポリマー粒子、PTFE粒子、フルオロポリマー、及び他の軟質粒子等の軟質粒子であり得る。粒子は、ダイヤモンド、ホウ素、窒化ホウ素等、二酸化ケイ素等のケイ素化合物、炭化ケイ素等の硬質粒子であり得る。粒子は疎水性又は親水性であり得る。疎水性粒子、例えばPTFE粒子、テフロン(登録商標)粒子、フルオロポリマー、シリコン系粒子、疎水性、親水性又は両方の基で官能化された硬質粒子。例えば、フルオロ化合物で官能化された二酸化ケイ素又は炭化ケイ素、フッ素を含有する分子、ケイ素化合物、ケイ素を含有する分子、及び他のポリマー。二酸化チタン等の他の粒子、及び他の触媒も同様に官能化又はそのまま使用することができる。
【0077】
他の構成では、層110は、ニッケルモリブデン合金、モリブデンの重量パーセントが、35重量%未満であるニッケルモリブデン合金、モリブデンの重量パーセントが35重量%未満であるニッケルモリブデンリン合金、耐熱金属とニッケルとの延性合金、ニッケルとモリブデンとの延性合金、耐熱金属とニッケルとの脆性合金、ニッケルとモリブデンとの延性合金、遷移金属とモリブデンとの脆性合金、遷移金属とモリブデンとの延性合金、1100ビッカース未満かつ500ビッカースを超える硬度を有するニッケルとモリブデンとの合金、1マイクロメートル未満の表面粗さRaを提供するニッケルモリブデン合金、均一及び不均一な粒径を有するニッケルモリブデン合金、平均粒径が2ミクロン未満のニッケルモリブデン合金、コンフォーマルニッケルモリブデン合金、ニッケルとモリブデンとリンとの合金、コバルトとモリブデンとの合金、コバルトとモリブデンとリンとの合金、ニッケルとモリブデンとタングステンとの合金、ニッケルとニッケルよりも低い磁性を有する材料との合金、モリブデンよりも低い硬度を有する材料とモリブデンとの合金、耐熱金属とニッケルとの共形合金、ニッケルモリブデンの延性合金、ニッケルタングステンの延性合金、ニッケルタングステンの脆性合金、ニッケルコバルトの延性合金、ニッケルコバルトの脆性合金、ニッケルとニッケルよりも耐熱性の高い材料との合金、ニッケルモリブデン合金であって、耐熱金属、貴金属、硬質粒子、軟質粒子、疎水性粒子、親水性粒子、触媒作用、ニッケルよりも導電性の材料、モリブデンよりも導電性の材料、ニッケルよりも軟質の材料、ニッケルよりも硬質でモリブデンよりも硬質でない材料、若しくはリン、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化シリコーン、酸化アルミニウム、二硫化モリブデン、750ビッカースを超えるHV硬度を有する硬質粒子、及び/又は1ミクロン未満のサイズを有する硬質粒子等の他の化合物を含むがこれらに限定されない第3の元素を含有する、ニッケルモリブデン合金、耐熱金属、貴金属、硬質粒子、ニッケルよりも導電性の材料、モリブデンよりも導電性の材料、ニッケルよりも軟質の材料、若しくはリン、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化シリコーン、酸化アルミニウム、二硫化モリブデン、HV硬度が750ビッカースを超える硬質粒子、及び/又はサイズが1ミクロン未満の硬質粒子を含むがこれらに限定されない他の化合物を含む第3の元素を含有するニッケルモリブデン合金を含むことができる。
【0078】
場合によっては、基材105上の層110は、これらに限定されないが、耐熱金属、貴金属、硬質粒子、又はリン、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、二硫化モリブデン、HV>750の硬度を有する硬質粒子、サイズが500nm未満の硬質粒子、高導電性粒子、カーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノ粒子等の他の化合物である元素を含む第3の元素を含有する、ニッケルタングステン合金又はニッケルタングステン合金を含むことができる。これらの材料の組み合わせもまた、基材105上の層110内に存在してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、別のデバイスの簡略図が
図2に示されている。この図では、物品又はデバイス200は、層110と下にある基材105との間に中間層210を含む。いくつかの例では、中間層210は、接着性を改善することができ、腐食を改善することができ、コーティング又はそれらの任意の組み合わせを明るくすることができる。例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅合金、ニッケル化合物、ニッケル複合材、ニッケル-リン合金、ニッケル-モリブデン合金、ニッケル-モリブデン-リン合金、ニッケル-コバルト合金、ニッケル-タングステン合金、ニッケル-コバルト-リン合金、銅、ニッケル-タングステン-リン合金銅合金、銅複合材、スズ、スズ合金、スズ複合材、コバルト、コバルト合金、コバルト複合材、コバルト-モリブデン合金、コバルト-タングステン合金、コバルト-モリブデン-リン合金、コバルト-タングステン-リン合金、モリブデン、モリブデン合金、モリブデン複合材、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むニッケル合金、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと遷移金属とを含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと貴金属を除く遷移金属とを含むモリブデン合金、金属タングステン合金、少なくともニッケルと耐熱金属とを含むニッケル合金、少なくともニッケルと耐熱金属(貴金属を除く)とを含むニッケル合金、モリブデン-スズ合金、タングステン合金、タングステン複合材、又は他の材料は、層210と層110との間の接着性を改善するために、層210と基材105との間に層110として存在してもよい。そのような層は、10um、9um、8um、7um、2um、1um、0.75um、0.5um、又は0.25um未満の厚さであり得る。本明細書で述べるように、場合によっては、層210は、基材105と層110との間の接着性を改善するために基材105に追加されたストライク層、例えばニッケル層であってもよい。
【0080】
特定の構成では、層210は、物品又はデバイス200の全体的な光沢のある外観を高めるための光沢剤として機能することができる。光沢層又は半光沢層は、一般に、層110よりも高い割合の光を反射する。例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅合金、ニッケル化合物、ニッケル複合材、ニッケル-リン合金、ニッケル-モリブデン合金、ニッケル-モリブデン-リン合金、ニッケル-コバルト合金、ニッケル-タングステン合金、ニッケル-コバルト-リン合金、銅、ニッケル-タングステン-リン合金銅合金、銅複合材、スズ、スズ合金、スズ複合材、コバルト、コバルト合金、コバルト複合材、コバルト-モリブデン合金、コバルト-タングステン合金、コバルト-モリブデン-リン合金、コバルト-タングステン-リン合金、モリブデン、モリブデン合金、モリブデン複合材、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むニッケル合金、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと遷移金属とを含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと貴金属を除く遷移金属とを含むモリブデン合金、金属タングステン合金、少なくともニッケルと遷移金属とを含むニッケル合金、少なくともニッケルと貴金属を除く耐熱金属とを含むニッケル合金、タングステン合金、タングステン複合材、又は他の材料は、コーティング外観全体を明るくするために、層210と基材105との間に層110として存在してもよい。
【0081】
他の構成では、層210は、物品又はデバイス200の耐食性を高めるように作用することができる。例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅合金、ニッケル化合物、ニッケル複合材、ニッケル-リン合金、ニッケル-モリブデン合金、ニッケル-モリブデン-リン合金、ニッケル-コバルト合金、ニッケル-タングステン合金、ニッケル-コバルト-リン合金、銅、ニッケル-タングステン-リン合金銅合金、銅複合材、スズ、スズ合金、スズ複合材、コバルト、コバルト合金、コバルト複合材、コバルト-モリブデン合金、コバルト-タングステン合金、コバルト-モリブデン-リン合金、コバルト-タングステン-リン合金、モリブデン、モリブデン合金、モリブデン複合体、モリブデン-スズ合金、少なくともモリブデンとニッケルとを含有する合金、少なくともモリブデンとスズとを含有する合金、少なくともモリブデンとコバルトを含有する合金、モリブデンと粒子とを含む複合材、モリブデンと軟質粒子とを含む複合材、モリブデンとナノ粒子とを含む複合材、モリブデンと硬質粒子とを含む複合材、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むニッケル合金、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと遷移金属とを含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと貴金属を除く遷移金属とを含むモリブデン合金、タングステン合金、少なくともニッケルと遷移金属とを含むニッケル合金、少なくともニッケルと貴金属を除く耐熱金属とを含むニッケル合金、少なくともニッケルと、タングステンを除く耐熱金属とを含むニッケル合金、少なくともニッケルと、タングステン及び貴金属を除く耐熱金属とを含むニッケル合金、タングステン合金、タングステン複合材、ニッケルとタングステンの両方を含有する合金を除くタングステン合金、クロム、クロム化合物、又はその他の材料が、耐食性を高めるために、層210と基材105との間に層110として存在してもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、中間層210と共に使用される基材105は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。特定の実施形態では、層210は、第II族材料、第III族材料、第IV族金属、第V族金属、第VI族金属及び第VII族金属からなる群から選択される1つ以上の材料を含むことができる。いくつかの例では、層210は貴金属を含まない。他の例では、層210は単一の金属のみを含むが、他の非金属材料を含んでもよい。
【0083】
特定の実施形態では、中間層210と共に使用される層110は、典型的には、1つ以上の金属又は2つ以上の金属を含む。例えば、中間層210と共に使用される層110は、
図1を参照して説明した材料及び構成のいずれかを含むことができる。層110と共に用いられる層210は、例えば、二種以上の金属からなる金属合金である。いくつかの実施形態では、中間層210と共に使用される層110の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、中間層210と共に使用される層110中の金属のうちの1つはモリブデンである。追加の実施形態では、中間層210と共に使用される層110の金属のうちの1つはタングステンである。追加の実施形態では、中間層210と共に使用される層110の金属のうちの1つはコバルトである。追加の実施形態では、中間層210と共に使用される層110の金属のうちの1つはクロムである。いくつかの実施形態では、層210と共に使用される層110は、2つの金属又は2つの材料又は3つの金属又は3つの材料のみを含むことができる。例えば、層210と共に使用される層110は、ニッケル及びモリブデンのみ、又はニッケル、モリブデン及びリンのみ、又はニッケル及びタングステンのみ、又はニッケル及びコバルトのみ、又はニッケル、リン及び鉄のみ、又はニッケル及びリンのみを含むことができる。
【0084】
他の実施形態では、中間層210と共に使用される層110は、ニッケル合金、モリブデン合金、タングステン合金、コバルト合金、クロム合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、中間層210と共に使用される層110は、ニッケル-コバルト合金、ニッケル-タングステン合金、ニッケル-リン合金、コバルト、コバルト-モリブデン合金、コバルト-タングステン合金、コバルト-リン合金、ニッケル-モリブデン-リン合金、コバルト-モリブデン-リン合金、コバルト-タングステン-リン合金、クロム、クロム合金、モリブデン-スズ合金、クロム化合物であってもよい。特定の構成では、中間層210と共に使用される層110は、層110内に他の材料が存在しないニッケル-モリブデン合金からなってもよい。他の構成では、中間層210と共に使用される層110は、他の材料が層110内に存在しないニッケル-モリブデン-リン合金からなってもよい。他の構成では、中間層210と共に使用される層110は、層110内に他の材料が存在しないコバルト-モリブデン合金からなってもよい。他の構成では、中間層210と共に使用される層110は、他の材料が層110内に存在しないコバルト-モリブデン-リン合金からなってもよい。他の構成では、中間層210と共に使用される層110は、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むニッケル合金からなってもよい。他の構成では、中間層210と共に使用される層110は、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むモリブデン合金からなってもよい。他の構成では、中間層210と共に使用される層110は、少なくともモリブデンと遷移金属とを含むモリブデン合金からなってもよい。他の構成では、中間層210と共に使用される層110は、少なくともモリブデンと貴金属を除く遷移金属とを含むモリブデン合金からなってもよい。中間層210と共に使用される層110の正確な厚さは、層110が存在する物品に応じて、1ミクロンから約2mmまで変化し得る。例えば、層110は、約10ミクロン~約200ミクロンの厚さであってもよい。同様に、中間層210の厚さは、0.1ミクロン~約2mm、例えば、約1ミクロン~約20ミクロンであってもよい。層210の厚さは、層110の厚さよりも小さくてもよく、層110の厚さよりも大きくてもよい。
【0085】
別の構成では、下にある基材上に2つ以上の層が存在してもよい。
図3を参照すると、基材105上に第1の層110及び第2の層320を備える物品又はデバイス300が示されている。層110、320の順序は逆にすることができ、したがって、層320は、必要に応じて基材105により近い。層110、320は、同じ又は異なる材料を含むことができ、あるいは異なる方法又は異なる条件下で堆積された同様の材料を含むことができる。例えば、
図3の層110、320は、独立して、本明細書に記載される材料のいずれか、例えば、
図1又は
図2の層を参照して記載される材料のいずれかであり得る。いくつかの構成では、層110、320はそれぞれ合金層とすることができる。例えば、層110、320の各々は、ニッケル、銅、モリブデン、コバルト、又はタングステンのうちの1つ以上を含むことができる。層は、同様又は異なる方法で形成されてもよい。例えば、層110は塩基性条件下で電着されてもよく、層220は酸性条件下で電着されてもよい。別の例として、層110、320は、それぞれ独立して、ニッケル、銅、モリブデン、コバルト又はタングステンを含むことができるが、層110は、基本条件下で電着されてもよく、層220は、物理蒸着技術、化学蒸着、原子層堆積、溶射技術又は他の方法を使用して堆積されてもよい。層110,320は、銅以外の金属、例えば、ニッケル、モリブデン、コバルト、タングステン、スズ等、又は非金属、又はその両方を含むことができる。異なる条件は、同様の材料が存在しても、層110、320に異なる全体構造を提供することができる。特定の構成では、層110は、層320の接着性を改善することができる。他の構成では、層110はデバイス300の表面を明るく」することができ、その結果、デバイス300はより光沢のある全体的な外観を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、層110、320と共に使用される基材105は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材105は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。層110、320は、典型的には、それぞれ、1つ以上の金属又は2つ以上の金属を含む。例えば、層110、320は、2つ以上の金属から形成された金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、層110、320中の金属のうちの一方はニッケルである。他の実施形態では、層110、320中の金属のうちの一方はモリブデンである。追加の実施形態では、層110、320中の金属のうちの一方はコバルトである。追加の実施形態では、層110、320中の金属のうちの一方はタングステンである。層110、320は同じ金属を有する必要はなく、層110、320中の金属が異なることが望ましい。他の実施形態では、層110、320は、独立して、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、層110、320は、独立して、ニッケル-モリブデン合金、ニッケル-モリブデン-リン合金、タングステン合金、ニッケル-タングステン合金等であってもよい。特定の構成では、層110、320の一方又は両方は、各層に他の材料が存在しないニッケルモリブデン合金からなることができる。特定の構成では、層110、320の一方又は両方は、各層に他の材料が存在しないニッケルモリブデン合金からなってもよい。いくつかの構成では、層110、320の両方は、各層に他の材料が存在しないニッケル-モリブデン-リン合金からなってもよい。他の構成では、層110、320の一方又は両方は、少なくともニッケル及び遷移金属を含むニッケル合金からなってもよい。他の構成では、層110、320の一方又は両方は、少なくともニッケルを含むニッケル合金と、貴金属を除く遷移金属とからなってもよい。他の構成では、層110、320の一方又は両方は、少なくともモリブデンと遷移金属とを含むモリブデン合金からなってもよい。他の構成では、層110、320の一方又は両方は、少なくともモリブデンを含むモリブデン合金と、貴金属を除く遷移金属とからなってもよい。層110,320の正確な厚さは、コーティングが存在するデバイスに応じて0.1ミクロンから約2mmまで変化してもよく、層110、320の厚さは同じである必要はない。層110は、層320より厚くてもよく、層320より薄くてもよい。
【0087】
特定の構成では、第1の層110と第2の層320との間に中間層が存在してもよい。中間層は、例えば、本明細書の層210を参照して説明した材料のいずれかを含むことができる。あるいは、コーティングが第1の層110及び第2の層120を含む場合、基材105と層110との間に中間層が存在してもよい。いくつかの実施形態では、層320は、層110よりも高い硬度を有してもよい。例えば、層320の硬度は、750ビッカースより大きくてもよい。特定の実施形態では、層320は、窒化物、金属窒化物、炭化物、金属炭化物、ホウ化物、金属ホウ化物、タングステン、炭化タングステン、タングステン合金、タングステン化合物、ステンレス鋼、セラミック、クロム、炭化クロム、酸化クロム、クロム化合物、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、ニッケル、炭化ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル合金、コバルト化合物、コバルト合金、コバルトリン合金、モリブデン、モリブデン化合物、ナノ複合材、酸化物複合材、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。
【0088】
他の実施形態では、基材の表面は、処理されてもよく、又は1つ以上他の層でコーティング若しくは処理されている(例えば浸炭、窒化、炭窒化、高周波硬化、時効硬化、析出硬化、ガス窒化、正規化、サブゼロ処理、アニーリング、ショットピーニング、又は化学的、熱的、若しくは物理的、若しくはそれらの組み合わせ)転写された表面を含んでもよい。
図4Aを参照すると、基材105上に転写表面又は処理表面410を備える物品又はデバイス400が示されている。物品又はデバイス400はまた、処理表面410上に層110を備える。層110は、
図1~
図3、
図5A、
図5B及び
図12の層110を参照して本明細書に記載される材料のいずれかとすることができる。所望であれば、
図4Bに示すように、層420は、処理表面410とデバイス450の層110との間に存在することができる。層/処理表面410の厚さは、例えば、約0.1ミクロンから約50ミリメートルまで変化してもよい。処理表面410は、必要に応じて下にある基材105よりも硬くてもよい。例えば、処理表面410は、50~70HRCのケース硬度を有することができる。処理表面/層410が転写された表面である場合、基材は、鋼(低炭素鋼、ステンレス鋼、窒化鋼、合金鋼、低合金鋼等)又は他の金属系材料であり得るが、これらに限定されない。処理の正確な結果は様々であり得、典型的には、接着性を高めるため、表面粗さを変えるため、耐摩耗性を改善するため、内部応力を改善するため、内部応力を低減するため、硬度を変えるため、潤滑性を変えるため、又は他の理由で処理が行われ得る。層110は、腐食、摩耗、熱及び他の衝撃からデバイス450を保護するために使用することができる。場合によっては、処理表面410は、腐食、摩耗、腐食及び摩耗の組み合わせ、熱、熱及び摩耗の組み合わせ、腐食及び熱の組み合わせ、又は他のシナリオに対するデバイス450の抵抗を負に低減することができ、層110は、必要に応じて性能を改善するために使用されてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、
図4A及び4Bの基材105は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材105は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。
図4A及び
図4Bの層110は、典型的には、本明細書の
図1~
図3、
図5A、
図5B及び
図12に関連して述べたように、1つ以上の金属又は2つ以上の金属を含む。例えば、
図4A及び
図4Bの層110は、2つ以上の金属から形成された金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110の金属のうちの1つはモリブデンである。追加の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110の金属のうちの1つはコバルトである。追加の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110の金属のうちの1つはタングステンである。追加の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110の金属のうちの1つはスズである。追加の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110の金属のうちの1つはクロムである。他の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110は、少なくとも2つの金属(任意に、貴金属を除く)を含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと遷移金属とを含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと貴金属を除く遷移金属とを含むモリブデン合金を含むことができる。他の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110は、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むニッケル合金、少なくともニッケル及び耐熱金属を含むニッケル合金、少なくともニッケル及び貴金属を除く耐熱金属を含むニッケル合金を含むことができる。他の例では、
図4A及び
図4Bの層110は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金であってもよい。特定の構成では、
図4A及び
図4Bの層110は、他の材料が層110内に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金からなってもよい。他の構成では、層110は、
図1、
図2、又は
図3を参照して説明した材料及び材料の組み合わせのいずれかを含むことができる。
【0090】
特定の実施形態では、
図4A及び
図4Bの層110の正確な厚さは、層110が存在する物品又はデバイスに応じて1ミクロンから約2mmまで変化してもよく、例えば、厚さは約5ミクロンから約200ミクロンまで変化してもよい。
【0091】
特定の実施形態では、中間層420は、
図4Bに示すように存在する場合、層110と層/表面410との間の接着性を改善することができる。例えば、銅、ニッケル、又は他の材料は、層110と層/表面410との間に、例えば厚さ1ミクロン以下の薄層として存在してもよい。図示されていないが、層/表面410と層110との間に2つ以上の層が存在してもよい。
【0092】
特定の実施形態では、合金層110の上に1つ以上の層が存在してもよい。例えば、金属層、金属合金層、粒子若しくは複合材料を有する層、又は他の材料を有する層が、層110の上に存在してもよい。
図5Aを参照すると、層510が層110の上に存在する物品又はデバイス500が示されている。必要に応じて、
図5Bに示すように、層510と層110との間に追加の層560を存在させることができる。層510、560に存在する正確な材料は、デバイス500の最終用途に応じて変化し得る。
【0093】
特定の実施形態では、
図5A及び5Bの基材105は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材105は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。
図5A及び
図5Bの層110は、典型的には、
図1~
図4B及び
図12に関連して述べたように、1つ以上の金属又は2つ以上の金属を含む。例えば、
図5A及び
図5Bの層110は、2つ以上の金属から形成された金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、
図5A及び
図5Bの層110の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、
図5A及び
図5Bの層110の金属のうちの1つはモリブデンである。追加の実施形態では、
図5A及び
図5Bの層110の金属のうちの1つはタングステンである。追加の実施形態では、
図5A及び
図5Bの層110の金属のうちの1つはコバルトである。追加の実施形態では、
図5A及び
図5Bの層110の金属のうちの1つはクロムである。他の実施形態では、
図5A及び
図5Bの層110は、ニッケル合金、モリブデン合金、コバルト合金、タングステン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、
図5A及び
図5Bの層110は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金であってもよい。特定の構成では、
図5A及び
図5Bの層110は、他の材料が層110内に存在しないニッケル-モリブデン合金、ニッケル-モリブデン-リン合金からなってもよい。他の例では、
図5A及び
図5Bの層110は、ニッケル-モリブデン-リン合金を含んでもよい。他の構成では、
図5A及び
図5Bの層110は、層110中のニッケル-コバルト合金、ニッケル-タングステン合金、ニッケル-リン合金、コバルト、コバルト-モリブデン合金、コバルト-タングステン合金、コバルト-リン合金、ニッケル-モリブデン-リン合金、コバルト-モリブデン-リン合金、コバルト-タングステン-リン合金、クロム、クロム合金、モリブデン-スズ合金、クロム化合物からなってもよい。他の構成では、
図5A及び
図5Bの層110は、少なくとも2つの金属(任意に、貴金属を除く)を含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと遷移金属を含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと貴金属を除く遷移金属とを含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと遷移金属とリンとを含むモリブデン合金、少なくともモリブデンと遷移金属とスズとを含むモリブデン合金、いくつかの粒子及びナノ粒子を含むモリブデン合金複合材からなってもよい。他の構成では、
図5A及び
図5Bの層110は、貴金属を除く少なくとも2つの金属を含むニッケル合金、少なくともニッケル及び耐熱金属を含むニッケル合金、少なくともニッケル及び貴金属を除く耐熱金属を含むニッケル合金からなってもよい。
図5A及び
図5Bにおける層110の正確な厚さは、層110が存在するデバイスに応じて、0.1ミクロンから約2mmまで変化し得る。特定の実施形態では、層510、560は、それぞれ独立して、ニッケル層、ニッケルモリブデン層、金属合金、スズ、クロム、又はこれらの材料の組み合わせであってもよい。特定の実施形態では、層510は、窒化物、金属炭化物、炭化物、ホウ化物、タングステン、炭化タングステン、タングステン合金、タングステン化合物、ステンレス鋼、セラミック、クロム、炭化クロム、酸化クロム、クロム化合物、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、ニッケル、炭化ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル合金、コバルト化合物、コバルト合金、コバルトリン合金、モリブデン、モリブデン化合物、ナノ複合材、酸化物複合材、又はそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、層510は、層110を摩耗から保護することができる。別の実施形態では、層110は、基材105を腐食から保護することができる。別の実施形態では、層110は、層510を層間剥離、チッピングオフ、又は摩耗から保護することができ、別の実施形態では、層110は、層510の基材105への接着性を高めることができる。別の実施形態では、層110は、例えばより多くの光を反射することによって輝度を改善することができる。
【0094】
他の構成では、物品又はデバイスは、外側金属層及び少なくとも1つの下にある合金層を備えることができる。
図6を参照すると、層110、610及び620を含むいくつかの層が示されている。図を簡略化するために、
図6~
図8では基材を意図的に省略している。基材は、典型的には層110に隣接するが、必要に応じて別の層に隣接してもよい。
図6の層110は、典型的には、
図1~
図5B及び
図12を参照して説明したような1つ以上の金属又は2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料を含む。例えば、
図6の層110は、二種以上の金属からなる金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、
図6の層110の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、
図6の層110の金属のうちの1つはモリブデンである。他の実施形態では、
図6の層110は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、
図6の層110は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金であってもよい。特定の構成では、
図6の層110は、他の材料が層110内に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金からなってもよい。
図6の層110の正確な厚さは、層110が存在するデバイスに応じて、1ミクロン~約2mm、例えば約5ミクロン~約200ミクロンで変化し得る。
【0095】
特定の実施形態では、
図6の層610は、典型的には、例えば、ニッケル、銅、モリブデン、ニッケル-モリブデン、ニッケル-モリブデン-リン又はそれらの組み合わせ等の、1つ以上金属又は金属合金を含む。層610の厚さは、典型的には、層110の厚さよりも大きくても小さくてもよい。例えば、層610の厚さは、約0.1ミクロンから約1ミクロンまで変化してもよい。いくつかの実施形態では、層610中の金属は、別の金属との合金の形態で存在してもよい。層620は、典型的には、例えばニッケル、銅、モリブデン、ニッケル-モリブデン、ニッケル-モリブデン-リン又はそれらの組み合わせ等の1つ以上の金属も含む。層620の金属は、合金又は非合金の形態で存在してもよく、層610の厚さよりも高い又は低い厚さで存在することができる。例えば、層620は、約0.1ミクロン~約0.5ミクロンの厚さで存在してもよい。いくつかの実施形態では、層620は、耐摩耗性を高めることができ、導電性を高めることができ、より光沢のある表面等を提供することができる。いくつかの構成では、層610、620は同じ材料を含むことができるが、材料は異なる量で存在してもよい。例えば、層610、620の各々はニッケル-モリブデン合金とすることができるが、層610中のモリブデンの量は、層620中のモリブデンの量とは異なる。
【0096】
特定の実施形態では、
図1~
図6を参照して本明細書で説明される層110は、非相溶性材料がコーティング又はデバイス内に存在することを可能にするために、2つの非相溶性材料の間に存在することができる。「非相溶性」という用語は、一般に、互いに容易に結合若しくは接着しないか、又は非相溶性の物理的特性を有し、それらを一緒に使用するのに適さない材料を指す。層110に金属合金を含めることにより、銅基材を有するデバイスに特定のコーティングを含めることが可能であり得る。例えば、銅基材と他の金属層との間にNi-Mo又はNi-Mo-Pの合金層が存在してもよい。特定の実施形態では、金属層(又は金属合金層)と基材との間に層110を含めることによって、外側金属層の全体的な耐摩耗性も同様に増加させることができる。
【0097】
特定の実施形態では、
図1~
図6に示す1つ以上の層は、スズ(Sn)を含んでもよい。例えば、スズはある程度の耐食性を提供することができる。
図7を参照すると、層110、710及び720を含むいくつかの層が示されている。基材(図示せず)は、通常、層110に隣接しているが、必要に応じて層72に隣接していてもよい。
図7の層110は、典型的には、
図1~
図6及び
図12を参照して説明したような1つ以上の金属又は2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料を含む。例えば、
図7の層110は、二種以上の金属からなる金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、
図7の層110の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、
図7の層110の金属のうちの1つはモリブデンである。他の実施形態では、
図7の層110は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、
図7の層110は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金であってもよい。特定の構成では、
図7の層110は、他の材料が層110内に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金からなってもよい。
図7の層110の正確な厚さは、層110が存在する物品又はデバイスに応じて、1ミクロン~約2mm、例えば約5ミクロン~約200ミクロンで変化し得る。
【0098】
特定の実施形態では、
図7の層710は、典型的には、1つ以上金属若しくは金属合金又はそれらの組み合わせを含む。層710の厚さは、層110の厚さより厚くても薄くてもよい。例えば、層710の厚さは、約0.1ミクロンから約1ミクロンまで変化してもよい。いくつかの実施形態では、層710中の金属は、別の材料、例えば別の金属との合金の形態で存在してもよい。層720は、例えば、スズ又はスズ合金等を含むことができる。層720の正確な厚さは変化してもよく、層710の厚さよりも厚くても薄くてもよい。例えば、層720は、5ミクロンを超える、例えば10~300ミクロン又は10~100ミクロンの厚さで存在してもよい。いくつかの実施形態では、層720は、表面を清浄に保つのを助けるために存在することができ、耐摩耗性を高めることができ、導電性を高めることができ、より光沢のある表面を提供することができ、作動液等に耐えることができる。いくつかの構成では、層710、720は同じ材料を含むことができるが、材料は異なる量で存在してもよい。例えば、層710、720の各々はスズ合金とすることができるが、層710のスズの量は層720のスズの量とは異なる。
【0099】
特定の実施形態では、スズ又はスズ合金層は、
図8に示すように、金属又は金属合金層上に直接存在してもよい。層110及び720を含むいくつかの層が示されている。層110と層720との間には、層は存在しない。基材(図示せず)は、典型的には、層110に取り付けられる。
図8の層110は、典型的には、
図1、
図2又は
図3を参照して説明したような1つ以上の金属又は2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料を含む。例えば、
図8の層110は、二種以上の金属からなる金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、
図8の層110の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、
図8の層110の金属のうちの1つはモリブデンである。他の実施形態では、
図8の層110は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、
図8の層110は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金であってもよい。特定の構成では、
図8の層110は、他の材料が層110内に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデン-リン合金からなってもよい。
図8の層110の正確な厚さは、層110が10ミクロン以下又は5ミクロン以下の範囲の典型的な厚さで存在する物品又はデバイスに応じて、1ミクロン~約2mm、例えば5ミクロン~200ミクロンで変化し得る。層720は、例えば、スズ又はスズ合金等を含むことができる。層720の正確な厚さは変化してもよく、典型的には層710よりも厚い。例えば、層720は、5ミクロンを超える、例えば10~500ミクロン又は10~200ミクロンの厚さで存在してもよい。いくつかの実施形態では、層720は、表面を清浄に保つのを助けるために存在することができ、耐摩耗性を高めることができ、導電性を高めることができ、より光沢のある表面を提供することができる。
【0100】
特定の実施形態では、
図7及び
図8を参照して説明したスズ層をクロム層で置き換えることができる。例えば、クロムを使用して硬度を高めることができ、装飾層に使用して物品又はデバイスの外観を向上させることもできる。層710、720の一方又は両方は、クロム層又はクロムを含む層とすることができる。
【0101】
図9を参照すると、基材905及び第1の層912を含む図が示されている。基材の表面は、例示目的のために粗いものとして示されており、層912は、一般に、表面上の様々な山部及び谷部に適合する。層912の厚さは、同じであってもよく、異なる領域で異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、基材905は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材905は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。例えば、コーティング912は、
図1~
図8及び
図12の層110を参照して説明したような2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料から形成された金属合金であってもよい。いくつかの実施形態では、コーティング912中の金属のうちの一方はニッケルである。他の実施形態では、コーティング912中の金属のうちの一方はモリブデンである。他の例では、コーティング912は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金であってもよい。特定の構成では、コーティング912は、他の材料がコーティング912に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金からなってもよい。コーティング912の正確な厚さは、コーティング912が存在する物品又はデバイスに応じて、1ミクロン~約2mm、例えば約5ミクロン~約200ミクロンで変化し得る。層912の正確な機能は変化し得るが、以下で更に説明するように、層912及び基材905の粗面化された表面は、表面が光を散乱させやすくするか、又は指紋を示しにくくするテクスチャを提供することができる。
【0102】
特定の実施形態では、基材905と層912との間に1つ以上の層が存在してもよい。例えば、基材905と層912との間に、1つ以上の中間層が存在してもよい。場合によっては、中間層は、層912と基材905との間の接着性を改善することができる。例えば、銅、ニッケル、又は他の材料は、コーティング912と基材905との間に、例えば厚さ1ミクロン以下の薄層として存在してもよい。特定の構成では、中間層(複数可)は、物品表面又はデバイス表面の全体的な光沢のある外観を増加させるための光沢剤として機能することができる。他の構成では、中間層は、コーティングの耐食性を高めるように作用することができる。いくつかの実施形態では、中間層と共に使用される基材905は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、プラスチック、ポリマー又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得る、又はそれを含み得る。中間層と共に使用されるコーティング912は、典型的には、1つ以上の金属又は2つ以上の金属を含む。例えば、中間層と共に使用されるコーティング912は、
図1~
図8及び
図12の層110を参照して説明したような2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料から形成された金属合金であり得る。いくつかの実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング912中の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング912中の金属のうちの1つはモリブデンである。他の実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング912は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング912は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金であってもよい。特定の構成では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング912は、他の材料がコーティング912に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金からなってもよい。中間層と共に使用されるコーティング912の正確な厚さは、コーティング912が存在する物品又はデバイスに応じて、1ミクロン~約2mm、例えば約5ミクロン~約200ミクロンで変化し得る。
【0103】
特定の実施形態では、粗面化された表面層を有することが望ましい場合がある。
図10を参照すると、基材105及び粗面化表面層1012を含む物品又はデバイスが示されている。粗面化表面層1012は、層110に関連して説明した材料のいずれかを含むことができる。この図では、基材105は一般に滑らかであり、層1012は、表面層1012を粗面化するために堆積後工程に供されてもよい。層1012の厚さは、異なる領域で異なる。いくつかの実施形態では、
図10に示される基材105は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材105は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。コーティング1012は、典型的には、
図1~
図8及び
図12の層110を参照して説明したような1つ以上の金属又は2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料を含む。例えば、コーティング1012は、2つ以上の金属から形成された金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、コーティング1012中の金属のうちの一方はニッケルである。他の実施形態では、コーティング1012中の金属のうちの一方はモリブデンである。他の実施形態では、コーティング1012は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、コーティング1012は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金であってもよい。特定の構成では、コーティング1012は、他の材料がコーティング1012に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金からなってもよい。コーティング1012の正確な厚さは、コーティング1012が存在する物品又はデバイスに応じて、0.1ミクロン~約2mm、例えば約5ミクロン~約200ミクロンで変化し得る。層1012の正確な機能は様々であり得るが、以下で更に説明するように、層1012は、表面が光を散乱させやすくするか、指紋を示しにくくするテクスチャを提供することができる。
【0104】
特定の実施形態では、基材105と層1012との間に1つ以上の層が存在してもよい。例えば、基材105と層1012との間に、1つ以上の中間層が存在してもよい。場合によっては、中間層は、層1012と基材105との間の接着性を改善することができる。例えば、銅、ニッケル、又は他の材料は、コーティング1012と基材105との間に、例えば厚さ1ミクロン以下の薄層として存在してもよい。特定の構成では、中間層(複数可)は、物品又はデバイスの全体的な光沢のある外観を増加させるための光沢剤として機能することができる。他の構成では、中間層(複数可)は、物品又はデバイスの耐食性を高めるように作用することができる。いくつかの実施形態では、中間層と共に使用される基材105は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材105は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1012は、典型的には、
図1~
図8及び
図12の層110を参照して説明したような1つ以上の金属又は2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料を含む。例えば、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1012は、2つ以上の金属から形成された金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1012中の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1012中の金属のうちの1つはモリブデンである。他の実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1012は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1012は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金であってもよい。特定の構成では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1012は、他の材料がコーティング1012に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金からなってもよい。中間層と共に使用されるコーティング1012の正確な厚さは、コーティング1012が存在する物品又はデバイスに応じて、1ミクロン~約2mm、例えば約10ミクロン~約200ミクロンで変化し得る。
【0105】
特定の実施形態では、表面コーティングを粗面に塗布して、全体的に滑らかな表面を提供することができる。
図11には、粗面化された基材905が、山部及び谷部を埋め、概してより滑らかな外面を提供する層1110を含む図が示されている。表面層1110は、
図1~
図8及び
図12の層110に関連して説明した材料又は本明細書に記載の他の材料のいずれかを含むことができる。この図では、基材905は粗面化プロセスに供されてもよく、層1110は、堆積後に滑らかでない場合に表面層1110を平滑化するために、堆積後ステップ、例えばショットピーニング又は他の工程を受けてもよい。層1110の厚さは、山部と谷部を埋めるために異なる領域で異なる。いくつかの実施形態では、基材905は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材905は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。コーティング1110は、典型的には、層110に関連して本明細書に記載されるように、1つ以上の金属又は2つ以上の金属を含む。例えば、コーティング1110は、2つ以上の金属から形成された金属合金とすることができる。いくつかの実施形態では、コーティング1110中の金属のうちの一方はニッケルである。他の実施形態では、コーティング1110中の金属のうちの一方はモリブデンである。他の実施形態では、コーティング1110は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、コーティング1110は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金であってもよい。特定の構成では、コーティング1110は、他の材料がコーティング1110に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金からなってもよい。コーティング1110の正確な厚さは、コーティング1110が存在する物品又はデバイスに応じて、1ミクロン~約2mm、例えば約5ミクロン~約200ミクロンで変化し得る。層1110の正確な機能は様々であり得るが、以下で更に説明するように、層1110は、より審美的に心地よいより滑らかな又はより光沢のある表面を提供することができる。
【0106】
特定の実施形態では、基材905と層1110との間に1つ以上の層が存在してもよい。例えば、基材905と層1110との間に、1つ以上の中間層が存在してもよい。場合によっては、中間層は、層1110と基材905との間の接着性を改善することができる。例えば、銅、ニッケル、又は他の材料は、コーティング1110と基材905との間に、例えば厚さ1ミクロン以下の薄層として存在してもよい。特定の構成では、中間層(複数可)は、物品又はデバイスの全体的な光沢のある外観を増加させるための光沢剤として機能することができる。他の構成では、中間層は、コーティングの耐食性を高めるように作用することができる。いくつかの実施形態では、中間層と共に使用される基材105は、鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼、合金鋼、低合金鋼等)、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、クロム、クロム合金、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニッケル-クロム超合金、ニッケル-モリブデン合金、真鍮、青銅、超合金、ハステロイ、インコネル、ニクロム、モネル、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない金属材料であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、基材105は多孔質であってもよく、又は非多孔質であってもよい。中間層と共に使用されるコーティング1110は、典型的には、1つ以上の金属又は2つ以上の金属を含む。例えば、中間層と共に使用されるコーティング1110は、
図1~
図8及び
図12の層110を参照して説明したような2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料から形成された金属合金であり得る。いくつかの実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1110中の金属のうちの1つはニッケルである。他の実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1110中の金属のうちの1つはモリブデンである。他の実施形態では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1110は、ニッケル合金、モリブデン合金、又はそれらの組み合わせを含むことができる。他の例では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1110は、ニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金であってもよい。特定の構成では、中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1110は、他の材料がコーティング1012に存在しないニッケル-モリブデン合金又はニッケル-モリブデンリン合金からなってもよい。中間層(複数可)と共に使用されるコーティング1110の正確な厚さは、コーティング1110が存在する物品又はデバイスに応じて、0.1ミクロン~約2mm、例えば約5ミクロン~約200ミクロンで変化し得る。
【0107】
特定の実施形態では、本明細書に記載のデバイス又は物品は、基材の表面上に第1の層、第2の層及び第3の層でコーティングすることを含み得る。
図12を参照すると、物品又はデバイス1200は、基材105と、第1の層110と、第2の層320と、第3の層1230とを備える。層110,320及び1230の各々は、上述の層110,320に関連して説明した材料のいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、層1230は、ポリマーコーティング、又は金属若しくは非金属ベースのコーティングであってもよい。層110は、典型的には、
図1~
図8の層110に関連して述べたような2つ以上の金属又は本明細書に記載の他の材料を含む金属合金層である。
【0108】
特定の構成では、本明細書に記載の物品及びデバイスは、コーティングされた表面を有する基材を含むことができ、コーティングされた表面は表面コーティングを含む。表面コーティングは、2つ以上の層を備えてもよい。例えば、層110に関連して述べたような合金層は、基材105の表面上にあってもよく、第2の層は、合金層110上にあってもよい。いくつかの例では、合金層は、本明細書に記載のモリブデン、例えば、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つ以上と組み合わせたモリブデンを含むことができる。第2の層は、合金層上にあり、セラミック若しくは合金、又はモリブデンを含む下層よりも硬質であり得る何らかの材料を含むことができる。他の例では、モリブデンを含む合金層は、物品又はデバイスの意図される用途に応じて、第2の層よりも硬くてもよい。いくつかの実施形態では、第2の層は、タングステン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、コバルト、モリブデン、ケイ素、ホウ素、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。セラミック複合材は、金属窒化物、窒化物、金属炭化物、炭化物、ホウ化物、タングステン、炭化タングステン、タングステン合金、タングステン化合物、ステンレス鋼、セラミック、クロム、炭化クロム、酸化クロム、クロム化合物、酸化アルミニウム、ジルコニア、酸化ジルコニウム、チタニア、ニッケル、炭化ニッケル、酸化ニッケル、ニッケル合金、コバルト化合物、コバルト合金、コバルトリン合金、モリブデン、モリブデン化合物、ナノ複合材、酸化物複合材、又はそれらの組み合わせを含み得る。場合によっては、第2の層は、600ビッカース以上のビッカース硬さを有してもよい。
【0109】
他の構成では、本明細書に記載の物品又はデバイスは、潤滑合金層を提供する材料を含むことができる。例えば、基材は、滑らかな合金層を有するコーティングされた表面を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金層は、基材上に形成することができ、図の層110に関連して述べたようにモリブデン又は他の材料を含み得る。モリブデン又は他の金属の重量パーセントは、35重量%以下であってもよい。潤滑合金層の表面粗さRaは、1ミクロン未満であってもよい。場合によっては、合金層はまた、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、表面コーティングは、2つ以上の層を備える事ができる。例えば、ベース層は、ベース層に形成又は添加された合金層と共に存在してもよい。ベース層は、基材と合金層との間の中間層であってもよく、又は自己支持性であり、いかなる基材上にも存在しない独立型層であってもよい。いくつかの例では、ベース層は、ニッケル層、銅層、ニッケル-リン層、ニッケル-モリブデン層又は他の材料のうちの1つ以上を含み得る。ベース層上のコーティングは、モリブデン、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つ以上を含み得る。場合によっては、合金層は、露出外層であってもよく、又は貴金属を含まなくてもよい。所望であれば、粒子はまた、1つ以上の層に存在してもよい。例示的な粒子を本明細書に記載する。
【0110】
特定の実施形態では、同じ材料を含む2つ以上の層を備える表面コーティングが、本明細書に記載の物品上に存在してもよい。あるいは、層の1つは、自己支持性であり、いかなる基材上にも存在しない独立型層であってもよい。例えば、ニッケル及びモリブデンを含む第1の合金層は、ニッケル及びモリブデンを含む第2の合金層と組み合わせて存在してもよい。異なる層の材料の量は、異なるものであってもよく、又は異なる層は、異なる添加剤、例えば、異なる粒子又は他の材料を有してもよい。場合によっては、層のうちの1つの材料の量を変更することによって、層のうちの1つを他の層よりも粗くしてもよい。例えば、第2の合金層中のモリブデンの重量パーセントは、30重量%未満であり得、表面コーティング全体の粗さは、1um Ra未満であり得る。2つの層の各々は、独立して、モリブデン、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つ以上を含んでもよい。場合によっては、合金層の1つは貴金属を含まなくてもよい。他の例では、合金層の各々は貴金属を含まない。必要に応じて、粒子はまた、1つ以上の合金層に存在してもよい。例示的な粒子を本明細書に記載する。
【0111】
特定の実施形態では、物品は、合金層の上にクロム層と共に本明細書に記載の合金層を有する表面コーティングを含むことができる。合金層は、モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つ以上とを含むことができる。クロム層は、他の金属又は材料を含む合金であってもよい。いくつかの例では、クロム層は貴金属を含まない。他の例では、合金層及びクロム層の各々は貴金属を含まない。
【0112】
他の構成では、表面コーティングは、ニッケルモリブデンリン(Ni-Mo-P)合金層を含むことができる。場合によっては、1つ以上他の材料がニッケルモリブデンリン合金層に存在してもよい。例えば、タングステン、コバルト、クロム、スズ、鉄、マグネシウム又はホウ素のうちの1つ以上が存在してもよい。所望であれば、粒子も存在し得る。Ni-Mo-P合金層は、合金層中又は表面コーティング中にモリブデンを35重量%以下含有していてもよい。
【0113】
特定の例では、本明細書に記載のコーティング層を、真空蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料(HVOF)コーティング、熱溶射、又は他の適切な方法を含むがこれらに限定されない適切な方法を使用して基材に塗布することができる。
【0114】
特定の例では、1つ以上のコーティング層は、真空蒸着を使用して堆積されてもよい。特定の実施形態では、真空蒸着は、一般に、基材の表面上に材料の層を原子ごと又は分子ごとに堆積させる。真空蒸着プロセスを使用して、1つ以上の原子から数ミリメートルまでの厚さを有する1つ以上の材料を堆積させることができる。
【0115】
特定の実施形態では、真空蒸着の一種である物理蒸着(PVD)を使用して、本明細書に記載の1つ以上のコーティング層を堆積させることができる。PVDは、一般に、基材上に薄いコーティングを生成するために材料の蒸気を使用する。本明細書に記載のコーティングは、例えば、基材の表面上にスパッタリングされてもよく、又は蒸着PVDを使用して基材の表面上に塗布されてもよい。他の実施形態では、1つ以上のコーティング層は、化学蒸着(CVD)を使用して基材上に製造することができる。CVDは、一般に、基材の表面上で反応及び/又は分解して、基材上に所望のコーティング層を提供する1つ以上の材料に基材を曝露することを含む。他の構成では、プラズマ蒸着(PD)、例えばプラズマ加速化学蒸着又はプラズマ支援化学蒸着を使用して、基材上にコーティング層を提供することができる。PDは、一般に、蒸着される材料を含む反応ガスからプラズマ放電を生成すること、及び/又は既に堆積された材料をプラズマガス中のイオンに供してコーティング層を改質することを含む。他の例では、原子層堆積(ALD)を使用して、表面にコーティング層を設けることができる。ALDでは、基材表面は、材料の表面と反応してコーティング層を構築することができる前駆体の反復量に曝露される。
【0116】
他の例では、本明細書に記載の1つ以上コーティング層は、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、電着(例えば、電気めっき、陰極電着、陽極電着等)、無電解めっき、電気コーティング、電気泳動堆積、又は他の技術を使用して基材の表面に堆積させることができる。基材上にコーティング層を堆積させるために電流が使用される場合、電流は、連続、パルス、又は連続電流とパルス電流との組み合わせを使用することができる。特定の電着技術を以下により詳細に説明する。
【0117】
いくつかの構成では、コーティングの1つ以上の層を電着を使用して適用することができる。一般に、電着は、槽内に配置された基材に印加される電圧を使用して、帯電した基材上にコーティングを形成する。例えば、溶液中に存在するイオン種は、基材の表面(又は全ての表面)上に固体形態のイオン種を堆積させるために、印加電圧を使用して減少させることができる。以下でより詳細に述べるように、イオン種は、金属コーティング、金属合金コーティング、又はそれらの組み合わせを提供するために堆積させることができる。使用される正確なイオン種並びに電着条件及び技術に応じて、形成された電着コーティングの得られる特性は、所望の結果を提供するように選択又は調整され得る。
【0118】
電着が使用される特定の実施形態では、イオン種は、水溶液又は水に溶解又は溶媒和されてもよい。水溶液は、基材上のコーティング層(複数可)の電着を促進するために、適切な溶解塩、無機種又は有機種を含んでもよい。電着が使用される他の実施形態では、電着浴で使用される液体は、一般に非水性であってもよく、例えば50%体積を超える非水性種を含んでもよく、炭化水素、アルコール、液化ガス、アミン、芳香族及び他の非水性材料を含んでもよい。
【0119】
一般に、電着浴は、基材上にコーティングとして堆積される種を含む。例えば、ニッケルが基材上に堆積される場合、浴はイオン性ニッケル又は溶媒和ニッケルを含むことができる。モリブデンが基材内に堆積される場合、浴は、イオン性モリブデン又は溶媒和モリブデンを含むことができる。合金が基材上に堆積される場合、浴は複数の種を含むことができ、例えば、浴は、基材上にコーティング層としてニッケル-モリブデン合金を形成するために共電着されるイオン性ニッケル及びイオン性モリブデンを含むことができる。イオン種又は溶媒和種を提供するために浴に添加される材料の正確な形態は変化し得る。例えば、種は、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属塩化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属クロム酸塩、金属二クロム酸塩、金属過マンガン酸塩、金属白金酸塩、金属亜硝酸コバルト、金属ヘキサクロロ白金酸塩、金属クエン酸塩、金属のアンモニウム塩、金属シアン化物、金属酸化物、金属リン酸塩、金属一塩基性リン酸ナトリウム、金属二塩基性リン酸ナトリウム、金属三塩基性リン酸ナトリウム、金属のナトリウム塩、金属のカリウム塩、金属スルファミン酸塩、金属亜硝酸塩、及びそれらの組み合わせとして浴に添加され得る。いくつかの例では、堆積される金属種の両方を含む単一の材料を電着浴に溶解することができ、例えば、金属合金塩を電着前に適切な溶液に溶解することができる。電着浴で使用される特定の材料は、堆積される特定の合金層に依存する。例示的な材料には、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、タングステン酸ナトリウム、塩化タングステン、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、硫酸コバルト、塩化コバルト、硫酸クロム、塩化クロム、クロム酸、硫酸第一スズ、スズ酸ナトリウム、次亜リン酸、硫酸、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸カリウム、水酸化アンモニウム、塩酸又は他の材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
特定の実施形態では、基材上に電着される種の正確な量又は濃度は変化し得る。例えば、種の濃度は、約1グラム/リットルから約400グラム/リットルまで変動し得る。必要に応じて、基材上のコーティングの形成の結果としてイオン種が枯渇するため、追加の材料を浴に添加して、電着に利用可能な種の量を増加させることができる。場合によっては、堆積される種の濃度は、浴に材料を連続的に添加することによって電着中に実質的に一定のレベルに維持され得る。
【0121】
特定の実施形態では、電着浴のpHは、浴中に存在する特定のイオン種に応じて変化し得る。例えば、pHは1から約13まで変動し得るが、特定の場合には、pHは1未満、又は0未満、又は13超、更には14超であってもよい。金属種が金属合金として基材上に堆積される場合、pHは、特定の例では、4~約12の範囲であり得る。しかしながら、pHは、使用のために選択される特定の電圧及び電着条件に応じて変化し得ることが認識されるであろう。いくつかのpH調整剤及び緩衝剤を浴に添加することができる。pH調節剤の例としては、限定されないが、ホウ酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、グリシン、酢酸ナトリウム、緩衝生理食塩水、カコジル酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸-クエン酸緩衝液、バルビタール緩衝液、TRIS緩衝液、グリシン-NaOH緩衝液、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0122】
特定の実施形態では、合金めっきは、錯化剤を使用することができる。例えば、合金堆積プロセスにおける錯化剤の主な役割は、異なる金属イオンの錯化を行うことである。したがって、適切な錯化剤がなければ、ニッケル及びモリブデンの同時堆積及び合金形成は起こらない。錯化剤の例には、ホスフェート、ホスホネート、ポリカルボキシレート、ゼオライト、シトレート、水酸化アンモニウム、アンモニウム塩、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレン-トリアミン五酢酸、アミノポリカルボキシレート、ニトリロ三酢酸、IDS(N-(1,2-ジカルボキシエチル)-D、L-アスパラギン酸(イミノジコハク酸)、DS(ポリアスパラギン酸)、EDDS(N,N’-エチレンジアミンジコハク酸)、GLDA(N,N-ビス(カルボキシルメチル)-L-グルタミン酸)及びMGDA(メチルグリシン二酢酸)、ヘキサミンコバルト(III)クロリド、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’、N’-四酢酸(EGTA)、フェロセン、シクロデキストリン、コール酸、ポリマー、並びにそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
いくつかの例では、本明細書に記載の層(複数可)の基材上への形成を促進するために、電着浴のカソード及びアノードに適切な電圧を印加することができる。いくつかの実施形態では、直流(DC)電圧を使用することができる。他の例では、任意に、電流パルスと組み合わせた交流(AC)を使用して、層を電着させることができる。例えば、AC電着は、一般に正弦波、方形波、三角波等のAC電圧波形で実行することができる。高い電圧及び電流密度を使用して、基材上に形成することができる酸化物ベース層を通る電子のトンネリングを促進することができる。さらに、ベース層はカソードの方向に伝導することができ、これは材料の堆積を促進し、酸化剤の半サイクル中の再酸化を回避する。
【0124】
特定の実施形態では、電着に使用することができる例示的な電流密度範囲は、1mA/cm2 DC~約600mA/cm2 DC、より具体的には約1mA/cm2 DC~約300mA/cm2 DCを含むが、これらに限定されない。いくつかの例では、電流密度は、5mA/cm2 DC~約300mA/cm2 DC、20mA/cm2 DC~約100mA/cm2 DC、100mA/cm2 DC~約400mA/cm2 DC、又はこれらの例示的な範囲内に入る任意の値で変化し得る。電流が印加される正確な時間は、約10秒~数日、より具体的には約40秒~約2時間で変化し得る。必要に応じて、直流電流の代わりにパルス電流を印加することもできる。
【0125】
いくつかの例では、電着は、合金層の電着中のパルス電流又はパルス逆電流を使用することができる。パルス電着(PED)では、2つの異なる値の間で電位又は電流が迅速に交番する。これは、ゼロ電流によって分離された、等しい振幅、持続時間及び極性の一連のパルスをもたらす。各パルスは、電位及び/又は電流が印加されるオン時間(TON)と、ゼロ電流が印加されるオフ時間(TOFF)とからなる。パルス振幅及び幅を調整することによって、堆積された膜の組成及び厚さを原子順に制御することが可能である。それらは、粒子核の開始に有利であり、単位面積当たりの粒子の数を大幅に増加させ、従来のめっきコーティングよりも良好な特性を有するより微細な粒状堆積物をもたらす。
【0126】
コーティングが2つ以上の層を含む例では、コーティングの第1の層及び第2の層は、同じ又は異なる電着浴を使用して塗布されてもよい。例えば、第1の層は、電着浴中で第1の水溶液を使用して塗布することができる。第1の層を堆積させるのに十分な期間にわたって電圧を印加した後、電圧を0に低下させることができ、第1の溶液を浴から除去することができ、異なる材料を含む第2の水溶液を浴に添加することができる。次いで、電圧を再印加して第2の層を電着させることができる。他の例では、2つの別個の浴を使用することができ、例えば、リール-リールプロセスを使用することができ、第1の浴を使用して第1の層を電着し、第2の異なる浴を使用して第2の層を堆積する。
【0127】
場合によっては、個々の物品は、例えばリール間プロセスにおいて、別個の電着浴に順次露出され得るように接続されてもよい。例えば、物品は、共通の導電性基材(例えば、ストリップ)に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、電着浴の各々は、別個のアノードに関連付けられてもよく、相互接続された個々の物品は、カソードに共通に接続されてもよい。
【0128】
電気めっき法で使用される正確な材料は様々であり得るが、例示的な材料は、以下の金属:ニッケル、モリブデン、銅、アルミニウム、コバルト、タングステン、金、白金、パラジウム、銀、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上のカチオンを含む。これらの金属の正確なアニオン形態は、塩化物、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、過マンガン酸塩、白金酸塩、亜硝酸コバルト、ヘキサクロロ白金酸塩、クエン酸塩、シアン化物、酸化物、リン酸塩、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、三塩基性リン酸ナトリウム及びそれらの組み合わせから変化し得る。
【0129】
他の例では、電着プロセスは、モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を適用するように設計することができる。いくつかの実施形態では、得られた合金層は貴金属を含まなくてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、コーティング層110と基材105との間に介在層又は中間層が存在しなくてもよい。例えば、コーティング層110は、それらの間に介在層なしに基材表面105上に直接堆積させることができる。他の例では、コーティング層110と基材105の表面106との間に中間層が存在してもよい。中間層は、コーティング層110を形成するために使用されるのと同じ方法、又はコーティング層110を形成するために使用される異なる方法を使用して形成することができる。いくつかの実施形態では、中間層は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル-リン合金、硬質粒子、又はリン、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、二硫化モリブデン等の他の化合物を含むニッケル-リン合金、HV>1000の硬度を有する硬質粒子、サイズが500nm未満の硬質粒子、高導電性粒子、カーボンナノチューブ及び又はカーボンナノ粒子のうちの1つ以上を含むことができる。他の例では、中間層は、ニッケル単独よりも磁性が低いニッケルの合金を含むことができる。場合によっては、中間層は、コーティング層110よりも実質的に小さくてもよく、コーティング層110の基材105への接着性を強化するために使用することができる。例えば、中間層は、コーティング層110の厚さよりも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%薄くすることができる。特定の実施形態では、基材と合金層との間の層は、電気めっき技術で一般的に知られているように、「ニッケルストライク」層であってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、コーティング層の材料の1つ以上は、可溶性アノードを使用して提供することができる。可溶性アノードは、電着浴中で溶解して、堆積される種を提供することができる。いくつかの実施形態では、可溶性アノードは、ディスク、ロッド、球、材料のストリップの形態又は他の形態をとることができる。可溶性アノードは、電源に結合されたキャリア又はバスケット内に存在することができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のコーティング層は、陽極酸化プロセスを使用して堆積させることができる。陽極酸化は、一般に、基材を電解セルの陽極として使用する。陽極酸化は、表面の微視的な質感及び表面付近に得られる金属コーティングを変化させることができる。例えば、厚いコーティングは多孔質であることが多く、耐食性を高めるためにシールすることができる。陽極酸化は、より硬く、より耐食性の表面をもたらし得る。いくつかの例では、本明細書に記載の物品のコーティング層の1つは、陽極酸化プロセスを使用して製造することができ、別のコーティング層は、非陽極酸化プロセスを使用して製造してもよい。他の例では、物品中の各コーティング層は、陽極酸化プロセスを使用して製造することができる。陽極酸化を使用する正確な材料及びプロセス条件は変化し得る。一般に、陽極酸化層は、堆積される材料を含む電解液に直流電流を印加することによって基材の表面上に成長される。堆積される材料は、マグネシウム、ニオブ、タンタル、亜鉛、ニッケル、モリブデン、銅、アルミニウム、コバルト、タングステン、金、白金、パラジウム、銀、又はそれらの合金若しくは組み合わせを含むことができる。陽極酸化は、典型的には酸性条件下で行われ、クロム酸、硫酸、リン酸、有機酸又は他の酸を含み得る。
【0133】
特定の実施形態では、本明細書に記載のコーティングは、他の添加剤又は薬剤の存在下で適用されてもよい。例えば、湿潤剤、レベリング剤、光沢剤、消泡剤及び/又は乳化剤は、基材表面上に堆積される材料を含む水溶液中に存在することができる。例示的な添加剤及び薬剤としては、限定されないが、チオ尿素、臭化ドミフェン、アセトン、エタノール、カドミウムイオン、塩化物イオン、ステアリン酸、エチレンジアミン二塩酸塩(EDA)、サッカリン、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、サッカリン、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、クマリン、エチルバニリン、アンモニア、エチレンジアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)、ヤヌスグリーンB(JGB)、アゾベンゼン系界面活性剤(AZTAB)、界面活性剤のポリオキシエチレンファミリー、クエン酸ナトリウム、過フッ素化アルキル硫酸塩、添加剤K、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、ホウ酸、ミリスチン酸、塩化コリン、クエン酸、任意のレドックス活性界面活性剤、任意の導電性イオン液体、ポリグリコールエーテル、ポリグリコールアルコール、スルホン化オレイン酸誘導体、第一級アルコールの硫酸塩形態、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、アラルキルスルホネート、サルフェート、ペルフルオロアルキルスルホネート、酸アルキル及びアラルキルリン酸エステル、アルキルポリグリコールエーテル、アルキルポリグリコールリン酸エステル又はそれらの塩、N含有及び任意に置換及び/又は四級化されたポリマー、例えば、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリグリシン、ポリ(アリルアミン)、ポリアニリン(スルホン化)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリ尿素、ポリアクリルアミド、ポリ(メラミン-コ-ホルムアルデヒド)、ポリアルカノールアミン、ポリアミノアミド及びその誘導体、ポリアルカノールアミン及びその誘導体、ポリエチレンイミン及びその誘導体、四級化ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアミン)、ポリアニリン、ポリ尿素、ポリアクリルアミド、ポリ(メラミン-コ-ホルムアルデヒド)、ヒドロキシ-エチル-エチレン-ジアミン三酢酸、2ブチン14ジオール、22アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、ペルフルオロアンモニウム酸、デキストロース、臭化セチルメチルアンモニウム、1ヘキサデシルピリジニウム-クロリド、d-マンニトール、グリシン、ロセル塩、NN’-ジフェニルベンジジン、グリコール酸、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、アミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物、アミンとエピクロロヒドリンとポリアルキレンオキシドとの反応生成物、アミンとポリエポキシド、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン、又はそれらのコポリマーとの反応生成物、ニグロシン、ペンタメチル-パラ-ロアニリン、脂肪、油、長鎖アルコール、又はグリコールのうちの1つ以上、ポリエチレングリコール、Triton等のポリエチレンオキシド、アルキルホスフェート、金属石鹸、特殊シリコーン消泡剤、市販のパーフルオロアルキル変性炭化水素消泡剤及びパーフルオロアルキル置換シリコーン、完全フッ素化アルキルホスホネート、パーフルオロアルキル置換リン酸エステル、カチオン系薬剤、両性系薬剤(amphoteric-based agents)、及びノニオン系剤;キレート剤、例えばクエン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0134】
無電解めっきが使用される実施形態では、浴中での金属カチオンの自己触媒化学還元によって基材上に金属コーティングを製造することができる。電着/電気めっきとは対照的に、無電解めっきでは、外部電流は基材に印加されない。いかなる特定の構成又は例にも束縛されることを望まないが、無電解めっきは、電気めっきと比較して、基材上により均一な材料層を提供することができる。さらに、無電解めっきを使用して、非導電性基材にコーティングを追加することができる。
【0135】
無電解めっきが使用される特定の実施形態では、基材自体が触媒として作用して、イオン性金属を還元し、基材の表面に金属のコーティングを形成することができる。金属合金コーティングを製造することが望ましい場合、基材は、錯化剤を使用して2つ以上の異なるイオン性金属を還元して、2つの異なる金属を含む金属合金を形成するように作用し得る。いくつかの例では、基材自体は触媒として機能しなくてもよいが、触媒材料を基材に添加して、基材上の金属コーティングの形成を促進することができる。基材に添加することができる例示的な触媒材料には、パラジウム、金、銀、チタン、銅、スズ、ニオブ、及びそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0136】
無電解めっき法で使用される正確な材料は様々であり得るが、例示的な材料は、以下のカチオン:マグネシウム、ニオブ、タンタル、亜鉛、ニッケル、モリブデン、銅、アルミニウム、コバルト、タングステン、金、白金、パラジウム、銀、又は合金若しくはそれらの組み合わせの1つ以上を含む。例えば、これらのカチオンのいずれか1つ以上を適切な塩として水溶液に添加することができる。例示的な適切な塩には、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属塩化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属クロム酸塩、金属二クロム酸塩、金属過マンガン酸塩、金属白金酸塩、金属亜硝酸コバルト、金属ヘキサクロロ白金酸塩、金属クエン酸塩、金属シアン化物、金属酸化物、金属リン酸塩、金属一塩基性リン酸ナトリウム、金属二塩基性リン酸ナトリウム、金属三塩基性リン酸ナトリウム及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
特定の実施形態では、本明細書に記載の基材は、コーティングを受ける基材を調製するためにプレコーティングプロセシング工程に供され得る。これらのプロセシング工程は、例えば、洗浄、電気洗浄(陽極又は陰極)、ポリッシング、電解研磨、めっき前処理、熱処理、研磨処理及び化学処理を含むことができる。例えば、基材を、酸、塩基、水、塩溶液、有機溶液、有機溶媒又は他の液体若しくはガスで洗浄することができる。基材は、任意に、電流の存在下で、水、酸若しくは塩基、例えば硫酸、リン酸等、又は他の材料を使用してポリッシングを行うことができる。基材は、基材の表面からの酸素又は他のガスの除去を容易にするために、コーティング層の適用前に1つ以上のガスに曝露されてもよい。基材は、表面から任意の水溶液又は材料を除去するために、コーティングの塗布前に油又は炭化水素流体で洗ってもよく、又はそれに曝露されてもよい。基材は、コーティングの塗布前に表面から液体を除去するためにオーブン内で加熱又は乾燥されてもよい。コーティングの適用前に基材を処理するための他の工程も使用され得る。基材は、コーティングの堆積後又はコーティングの堆積後に加熱することができる。例えば、基材は、例えば100度超、200°C超、500°C超、700°C超又は1000°C超の高温に加熱することができる。同様に、コーティングを含む最終物品は、そのような高温で動作し得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコーティング層を封止に供することができる。コーティングを封止するために使用される正確な条件及び材料は様々であり得るが、封止はコーティングの多孔性を減少させ、それらの硬度を増加させることができる。いくつかの実施形態では、封止は、コーティングを蒸気、有機添加剤、金属、金属塩、金属合金、金属合金塩、又は他の材料に供することによって実施することができる。封止は、室温より高い温度、例えば摂氏30度、摂氏50度、摂氏90度以上、室温又は室温より低い温度、例えば摂氏20度以下で行うことができる。いくつかの例では、基材及びコーティング層を加熱して、コーティング層中の水素又は他のガスを除去することができる。例えば、基材及びコーティングを焼成して、コーティング後1~2時間以内に物品から水素を除去することができる。
【0139】
堆積後プロセシング方法の組み合わせを使用することができることが当業者によって認識されるであろう。例えば、コーティング層を密封し、次いでポリッシングして表面粗さを低減することができる。
【0140】
特定の構成では、電着プロセスのフローチャートが
図13に示されている。工程1310において、コーティングを受ける基材を洗浄することができる。次いで、工程1315で基材をすすぐことができる。次いで、基材を、工程1320において酸処理に供することができる。次いで、酸処理された基材を工程1330ですすぐ。次いで、すすいだ基材は、工程1335においてめっき槽に添加される。めっきされた基材は、任意にすすぐことができる。次いで、コーティングされた表面を有する基材は工程1340においてめっき後プロセスに供され得る。これらの工程の各々は、以下でより詳細に説明される。基材の表面上にニッケル層(又は別の材料の層)を設けるための任意のストライク工程1322は、必要に応じてめっき前に工程1320と1330との間で実行することができる。
【0141】
特定の実施形態では、洗浄工程は、電流の存在下又は非存在下で実行することができる。洗浄は、典型的には、1つ以上の塩及び/又は洗剤若しくは界面活性剤の存在下で行われ、酸性pH又は塩基性pHで行われ得る。洗浄は、一般に、基材の表面から油、炭化水素又は他の材料を除去するために行われる。
【0142】
基材を洗浄した後、基材をすすいで洗浄剤を除去する。すすぎは、典型的には蒸留水中で行われるが、1つ以上の緩衝液を使用して、又は酸性pH若しくは塩基性pHで行われてもよい。すすぎは、1回行ってもよく、多数回行ってもよい。基材は、典型的には、表面上の酸化物形成を最小限に抑えるために、様々な工程の間に湿潤状態に保たれる。表面が清浄である、及び/又は油を含まないことを確認するために、ウォーターブレーク試験を実施することができる。
【0143】
すすぎ後、基材を酸浴に浸漬して、電着のために表面を活性化し、例えば表面を酸洗いすることができる。使用される正確な酸は重要ではない。酸性処理のpHは、必要に応じて0~7又は0未満であってもよい。基材が酸浴中に留まる時間は、例えば、10秒から約10分まで変化し得る。酸性溶液は、必要に応じて基材表面上で撹拌又はポンプ輸送することができ、又は基材を酸洗いプロセス中に酸性タンク内で移動させてもよい。
【0144】
酸洗いプロセスの後、表面をすすいで酸を除去することができる。すすぎは、酸洗した基材をすすぎ浴に浸漬することによって、又はすすぎ剤を表面上に流すことによって、又はその両方によって行われ得る。すすぎは、必要に応じて複数回又は1回行うことができる。
【0145】
酸洗後、基材は、任意にストライクに供され得る。任意の1つの構成に束縛されることを望むものではないが、ストライクは、典型的には堆積される材料と不活性であるか又は反応性が低い材料の薄層を基材に塗布する。不活性基材の例としては、ステンレス鋼、チタン、特定の金属合金及び他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。ストライクプロセスでは、電着を使用して、例えば最大数ミクロンの厚さの材料の薄層が塗布される。
【0146】
次いで、水洗された基材、酸洗された基材、又はストライク層を有する水洗された基材は、上述のように電着プロセスに供されて、基材表面に材料の層を塗布することができる。本明細書で述べるように、電着は、AC電圧又はDC電圧及び様々な波形を使用して実施することができる。使用される正確な電流密度は、最終的に得られるコーティングになる特定の量の元素に有利又は不利になるように変化し得る。例えば、合金層が2つの金属を含む場合、電流密度は、得られる合金層中に一方の金属が他方の金属よりも多く存在するように選択することができる。電着浴のpHはまた、表面コーティング中に存在することが意図されている特定の種に応じて変化し得る。例えば、電着浴及びアノードに存在する材料に応じて、酸性浴(pH=3~5.5)、中性pH浴又は塩基性pH浴(pH9~12)を使用することができる。電着プロセス中に使用される正確な温度は、室温(約25度摂氏)から摂氏約85度まで変化し得る。温度は、電着浴内の水がかなりの程度まで蒸発しないように、摂氏100度未満であることが望ましい。電着浴は、本明細書で述べるように、光沢剤、レベラ、粒子等を含む任意の薬剤と共に堆積される材料を含むことができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、電着浴は光沢剤を含むことができる。様々な有機化合物が光沢剤として使用され、明るく、平らで延性のあるニッケル堆積物を提供する。光沢剤は、一般に2つのクラスに分けることができる。クラスI又は第一級光沢剤には、芳香族又は不飽和脂肪族スルホン酸、スルホンアミド、スルホンイミド、及びスルフィミド等の化合物が含まれる。クラスI光沢剤は、比較的高濃度で使用することができ、金属基材上に濁った又は曇った堆積物を生成することができる。電気めっきプロセス中のクラスI光沢剤の分解は、硫黄を堆積物に取り込ませ、堆積物の引張り応力を低下させる可能性がある。クラスII又は二次光沢剤は、クラスI光沢剤と組み合わせて使用され、完全に明るく平らな堆積物を生成する。クラスII光沢剤は、一般に不飽和有機化合物である。アルコール基、ジオール基、トリオール基、アルデヒド基、オレフィン基、アセチリン基、ニトリル基及びピリジン基等の不飽和官能基を含有する様々な有機化合物をクラスII光沢剤として使用することができる。典型的には、クラスII光沢剤は、アセチレン又はエチレン性アルコール、エトキシル化アセチレン性アルコール、クマリン及びピリジン系化合物から誘導される。このような不飽和化合物とクラスI光沢剤の混合物との混合物を組み合わせて、所与のレベリング速度に対して最大輝度又は延性を得ることができる。様々なアミン化合物を増白剤又はレベリング剤として使用することもできる。非環式アミンは、クラスII光沢剤として使用することができる。レベリング及び低電流密度被覆率を改善するために、アセチレンアミンをアセチレン化合物と組み合わせて使用することができる。
【0148】
特定の実施形態では、合金層中に存在する金属の結果として生じる量は変化し得る。例えば、表面コーティング中に2つの金属が存在する一電着プロセスでは、金属のうちの一方、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約35重量%まで存在してもよい。他の実施形態では、金属のうちの一方、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約20重量%まで存在してもよい。いくつかの例では、金属のうちの1つ、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約16重量%まで存在してもよい。いくつかの例では、金属のうちの1つ、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約10重量%まで存在してもよい。いくつかの例では、金属のうちの1つ、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約6重量%まで存在してもよい。
【0149】
特定の構成では、次いで、表面コーティングを有する基材をすすぐか、又は別の堆積プロセスに供して、形成された第1の層上に第2の層を塗布することができる。第2の堆積プロセスは、例えば、真空蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料(HVOF)コーティング、熱溶射、又は他の適切な方法であり得る。場合によっては、第2の電着工程を使用して、形成された第1の層の上に第2の層を塗布することができる。例えば、第2の層は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の金属又は他の材料を含む電着層とすることができる。必要に応じて、電着又は本明細書に記載の他のプロセスのいずれかを使用して、第2の層上に追加の層を形成することができる。
【0150】
他の構成では、電着プロセスを使用して層を形成する前に、洗浄又は酸洗いした基材上に材料の層を堆積させることができる。例えば、最初に、真空蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料(HVOF)コーティング、熱溶射、又は他の適切な方法を使用して、基材上に1つ以上の層を形成することができる。本明細書に記載の電着プロセスを使用して、第2の層を第1の層上に形成することができる。必要に応じて、第1の層上に第2の層を電着する前に、第1の形成層を酸洗プロセスによって活性化することができる。
【0151】
電着によって基材上に単層が形成される場合、コーティングされた表面を有する基材は、次いで、例えば、すすぎ、ポリッシング、サンディング、加熱、アニーリング、圧密化、エッチング、又はコーティングされた表面を洗浄するか、又はコーティングされた表面の物理的若しくは化学的特性を変更するための他の工程を含む1つ以上のポストプロセシング工程を受けることができる。所望であれば、コーティング中に存在する材料に応じて、酸性溶液又は塩基性溶液を使用してコーティングの一部を除去することができる。
【0152】
特定の実施形態では、基材上に合金層を製造する方法は、基材の表面上に合金層を電着することによって基材上にコーティングされた表面を形成することを含む。電着合金層は、(i)モリブデンと、(ii)ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む。いくつかの例では、方法は、合金層を電着させる前に、基材を洗浄することと、洗浄された基材をすすぐことと、洗浄された基材の表面を活性化して活性化基材を提供することと、活性化基材をすすぐことと、活性化基材上に合金層を電着させることとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、電着合金層を堆積後処理プロセスに供することを含む。追加の実施形態では、堆積後処理プロセスは、すすぎ、ポリッシング、サンディング、加熱、アニーリング、及び圧密化からなる群から選択される。いくつかの例では、方法は、電着合金層上に追加の層を設けることを含む。他の例では、追加の層は、真空蒸着、物理蒸着、化学蒸着、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料コーティング、又は熱溶射のうちの1つを使用して提供される。
【0153】
いくつかの構成では、合金層を電着させる前に、基材と電着合金層との間に材料の中間層を設けることができる。いくつかの例では、中間層は、真空蒸着、物理蒸着、化学蒸着、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料コーティング、又は熱溶射のうちの1つを使用して提供される。特定の実施形態では、電着は可溶性アノードを使用するか、又は不溶性アノードを使用する。場合によっては、可溶性アノードは、ニッケル又は別の金属を含む。
【0154】
特定の例では、本明細書に記載のコーティング層を、真空蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料(HVOF)コーティング、熱溶射、又は他の適切な方法を含むがこれらに限定されない適切な方法を使用して基材に塗布することができる。
【0155】
特定の例では、1つ以上のコーティング層は、真空蒸着を使用して堆積されてもよい。特定の実施形態では、真空蒸着は、一般に、基材の表面上に材料の層を原子ごと又は分子ごとに堆積させる。真空蒸着プロセスを使用して、1つ以上の原子から数ミリメートルまでの厚さを有する1つ以上の材料を堆積させることができる。
【0156】
特定の実施形態では、真空蒸着の一種である物理蒸着(PVD)を使用して、本明細書に記載の1つ以上のコーティング層を堆積させることができる。PVDは、一般に、基材上に薄いコーティングを生成するために材料の蒸気を使用する。本明細書に記載のコーティングは、例えば、基材の表面上にスパッタリングされてもよく、又は蒸着PVDを使用して基材の表面上に塗布されてもよい。他の実施形態では、1つ以上のコーティング層は、化学蒸着(CVD)を使用して基材上に製造することができる。CVDは、一般に、基材の表面上で反応及び/又は分解して、基材上に所望のコーティング層を提供する1つ以上の材料に基材を曝露することを含む。他の構成では、プラズマ蒸着(PD)、例えばプラズマ加速化学蒸着又はプラズマ支援化学蒸着を使用して、基材上にコーティング層を提供することができる。PDは、一般に、蒸着される材料を含む反応ガスからプラズマ放電を生成すること、及び/又は既に堆積された材料をプラズマガス中のイオンに供してコーティング層を改質することを含む。他の例では、原子層堆積(ALD)を使用して、表面にコーティング層を設けることができる。ALDでは、基材表面は、材料の表面と反応してコーティング層を構築することができる前駆体の反復量に曝露される。
【0157】
他の例では、本明細書に記載の1つ以上コーティング層は、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、電着(例えば、電気めっき、陰極電着、陽極電着等)、無電解めっき、電気コーティング、電気泳動堆積、又は他の技術を使用して基材の表面に堆積させることができる。基材上にコーティング層を堆積させるために電流が使用される場合、電流は、連続、パルス、又は連続電流とパルス電流との組み合わせを使用することができる。特定の電着技術を以下により詳細に説明する。
【0158】
いくつかの構成では、コーティングの1つ以上の層を電着を使用して適用することができる。一般に、電着は、槽内に配置された基材に印加される電圧を使用して、帯電した基材上にコーティングを形成する。例えば、溶液中に存在するイオン種は、基材の表面(又は全ての表面)上に固体形態のイオン種を堆積させるために、印加電圧を使用して減少させることができる。以下でより詳細に述べるように、イオン種は、金属コーティング、金属合金コーティング、又はそれらの組み合わせを提供するために堆積させることができる。使用される正確なイオン種並びに電着条件及び技術に応じて、形成された電着コーティングの得られる特性は、所望の結果を提供するように選択又は調整され得る。
【0159】
電着が使用される特定の実施形態では、イオン種は、水溶液又は水に溶解又は溶媒和されてもよい。水溶液は、基材上のコーティング層(複数可)の電着を促進するために、適切な溶解塩、無機種又は有機種を含んでもよい。電着が使用される他の実施形態では、電着浴で使用される液体は、一般に非水性であってもよく、例えば50%体積を超える非水性種を含んでもよく、炭化水素、アルコール、液化ガス、アミン、芳香族及び他の非水性材料を含んでもよい。
【0160】
一般に、電着浴は、基材上にコーティングとして堆積される種を含む。例えば、ニッケルが基材上に堆積される場合、浴はイオン性ニッケル又は溶媒和ニッケルを含むことができる。モリブデンが基材内に堆積される場合、浴は、イオン性モリブデン又は溶媒和モリブデンを含むことができる。合金が基材上に堆積される場合、浴は複数の種を含むことができ、例えば、浴は、基材上にコーティング層としてニッケル-モリブデン合金を形成するために共電着されるイオン性ニッケル及びイオン性モリブデンを含むことができる。イオン種又は溶媒和種を提供するために浴に添加される材料の正確な形態は変化し得る。例えば、種は、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属塩化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属クロム酸塩、金属二クロム酸塩、金属過マンガン酸塩、金属白金酸塩、金属亜硝酸コバルト、金属ヘキサクロロ白金酸塩、金属クエン酸塩、金属のアンモニウム塩、金属シアン化物、金属酸化物、金属リン酸塩、金属一塩基性リン酸ナトリウム、金属二塩基性リン酸ナトリウム、金属三塩基性リン酸ナトリウム、金属のナトリウム塩、金属のカリウム塩、金属スルファミン酸塩、金属亜硝酸塩、及びそれらの組み合わせとして浴に添加され得る。いくつかの例では、堆積される金属種の両方を含む単一の材料を電着浴に溶解することができ、例えば、金属合金塩を電着前に適切な溶液に溶解することができる。電着浴で使用される特定の材料は、堆積される特定の合金層に依存する。例示的な材料には、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、タングステン酸ナトリウム、塩化タングステン、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、硫酸コバルト、塩化コバルト、硫酸クロム、塩化クロム、クロム酸、硫酸第一スズ、スズ酸ナトリウム、次亜リン酸、硫酸、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸カリウム、水酸化アンモニウム、塩酸又は他の材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
特定の実施形態では、基材上に電着される種の正確な量又は濃度は変化し得る。例えば、種の濃度は、約1グラム/リットルから約400グラム/リットルまで変動し得る。必要に応じて、基材上のコーティングの形成の結果としてイオン種が枯渇するため、追加の材料を浴に添加して、電着に利用可能な種の量を増加させることができる。場合によっては、堆積される種の濃度は、浴に材料を連続的に添加することによって電着中に実質的に一定のレベルに維持され得る。
【0162】
特定の実施形態では、電着浴のpHは、浴中に存在する特定のイオン種に応じて変化し得る。例えば、pHは1から約13まで変動し得るが、特定の場合には、pHは1未満、又は0未満、又は13超、更には14超であってもよい。金属種が金属合金として基材上に堆積される場合、pHは、特定の例では、4~約12の範囲であり得る。しかしながら、pHは、使用のために選択される特定の電圧及び電着条件に応じて変化し得ることが認識されるであろう。いくつかのpH調整剤及び緩衝剤を浴に添加することができる。pH調節剤の例としては、限定されないが、ホウ酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、グリシン、酢酸ナトリウム、緩衝生理食塩水、カコジル酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸-クエン酸緩衝液、バルビタール緩衝液、TRIS緩衝液、グリシン-NaOH緩衝液、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0163】
特定の実施形態では、合金めっきは、錯化剤を使用することができる。例えば、合金堆積プロセスにおける錯化剤の主な役割は、異なる金属イオンの錯化を行うことである。したがって、適切な錯化剤がなければ、ニッケル及びモリブデンの同時堆積及び合金形成は起こらない。錯化剤の例には、ホスフェート、ホスホネート、ポリカルボキシレート、ゼオライト、シトレート、水酸化アンモニウム、アンモニウム塩、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレン-トリアミン五酢酸、アミノポリカルボキシレート、ニトリロ三酢酸、IDS(N-(1,2-ジカルボキシエチル)-D、L-アスパラギン酸(イミノジコハク酸)、DS(ポリアスパラギン酸)、EDDS(N,N’-エチレンジアミンジコハク酸)、GLDA(N,N-ビス(カルボキシルメチル)-L-グルタミン酸)及びMGDA(メチルグリシン二酢酸)、ヘキサミンコバルト(III)クロリド、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’、N’-四酢酸(EGTA)、フェロセン、シクロデキストリン、コール酸、ポリマー、並びにそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0164】
いくつかの例では、本明細書に記載の層(複数可)の基材上への形成を促進するために、電着浴のカソード及びアノードに適切な電圧を印加することができる。いくつかの実施形態では、直流(DC)電圧を使用することができる。他の例では、任意に、電流パルスと組み合わせた交流(AC)を使用して、層を電着させることができる。例えば、AC電着は、一般に正弦波、方形波、三角波等のAC電圧波形で実行することができる。高い電圧及び電流密度を使用して、基材上に形成することができる酸化物ベース層を通る電子のトンネリングを促進することができる。さらに、ベース層はカソードの方向に伝導することができ、これは材料の堆積を促進し、酸化剤の半サイクル中の再酸化を回避する。
【0165】
特定の実施形態では、電着に使用することができる例示的な電流密度範囲は、1mA/cm2 DC~約600mA/cm2 DC、より具体的には約1mA/cm2 DC~約300mA/cm2 DCを含むが、これらに限定されない。いくつかの例では、電流密度は、5mA/cm2 DC~約300mA/cm2 DC、20mA/cm2 DC~約100mA/cm2 DC、100mA/cm2 DC~約400mA/cm2 DC、又はこれらの例示的な範囲内に入る任意の値で変化し得る。電流が印加される正確な時間は、約10秒~数日、より具体的には約40秒~約2時間で変化し得る。必要に応じて、直流電流の代わりにパルス電流を印加することもできる。
【0166】
いくつかの例では、電着は、合金層の電着中のパルス電流又はパルス逆電流を使用することができる。パルス電着(PED)では、2つの異なる値の間で電位又は電流が迅速に交番する。これは、ゼロ電流によって分離された、等しい振幅、持続時間及び極性の一連のパルスをもたらす。各パルスは、電位及び/又は電流が印加されるオン時間(TON)と、ゼロ電流が印加されるオフ時間(TOFF)とからなる。パルス振幅及び幅を調整することによって、堆積された膜の組成及び厚さを原子順に制御することが可能である。それらは、粒子核の開始に有利であり、単位面積当たりの粒子の数を大幅に増加させ、従来のめっきコーティングよりも良好な特性を有するより微細な粒状堆積物をもたらす。
【0167】
コーティングが2つ以上の層を含む例では、コーティングの第1の層及び第2の層は、同じ又は異なる電着浴を使用して塗布されてもよい。例えば、第1の層は、電着浴中で第1の水溶液を使用して塗布することができる。第1の層を堆積させるのに十分な期間にわたって電圧を印加した後、電圧を0に低下させることができ、第1の溶液を浴から除去することができ、異なる材料を含む第2の水溶液を浴に添加することができる。次いで、電圧を再印加して第2の層を電着させることができる。他の例では、2つの別個の浴を使用することができ、例えば、リール-リールプロセスを使用することができ、第1の浴を使用して第1の層を電着し、第2の異なる浴を使用して第2の層を堆積する。
【0168】
場合によっては、個々の物品は、例えばリール間プロセスにおいて、別個の電着浴に順次露出され得るように接続されてもよい。例えば、物品は、共通の導電性基材(例えば、ストリップ)に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、電着浴の各々は、別個のアノードに関連付けられてもよく、相互接続された個々の物品は、カソードに共通に接続されてもよい。
【0169】
電気めっき法で使用される正確な材料は様々であり得るが、例示的な材料は、以下の金属:ニッケル、モリブデン、銅、アルミニウム、コバルト、タングステン、金、白金、パラジウム、銀、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上のカチオンを含む。これらの金属の正確なアニオン形態は、塩化物、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、過マンガン酸塩、白金酸塩、亜硝酸コバルト、ヘキサクロロ白金酸塩、クエン酸塩、シアン化物、酸化物、リン酸塩、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、三塩基性リン酸ナトリウム及びそれらの組み合わせから変化し得る。
【0170】
他の例では、電着プロセスは、モリブデンと、ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む合金層を適用するように設計することができる。いくつかの実施形態では、得られた合金層は貴金属を含まなくてもよい。
【0171】
いくつかの実施形態では、コーティング層110と基材105との間に介在層又は中間層が存在しなくてもよい。例えば、コーティング層110は、それらの間に介在層なしに基材表面105上に直接堆積させることができる。他の例では、コーティング層110と基材105の表面106との間に中間層が存在してもよい。中間層は、コーティング層110を形成するために使用されるのと同じ方法、又はコーティング層110を形成するために使用される異なる方法を使用して形成することができる。いくつかの実施形態では、中間層は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル-リン合金、硬質粒子、又はリン、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、二硫化モリブデン等の他の化合物を含むニッケル-リン合金、HV>1000の硬度を有する硬質粒子、サイズが500nm未満の硬質粒子、高導電性粒子、カーボンナノチューブ及び又はカーボンナノ粒子のうちの1つ以上を含むことができる。他の例では、中間層は、ニッケル単独よりも磁性が低いニッケルの合金を含むことができる。場合によっては、中間層は、コーティング層110よりも実質的に小さくてもよく、コーティング層110の基材105への接着性を強化するために使用することができる。例えば、中間層は、コーティング層110の厚さよりも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%薄くすることができる。特定の実施形態では、基材と合金層との間の層は、電気めっき技術で一般的に知られているように、「ニッケルストライク」層であってもよい。
【0172】
いくつかの実施形態では、コーティング層の材料の1つ以上は、可溶性アノードを使用して提供することができる。可溶性アノードは、電着浴中で溶解して、堆積される種を提供することができる。いくつかの実施形態では、可溶性アノードは、ディスク、ロッド、球、材料のストリップの形態又は他の形態をとることができる。可溶性アノードは、電源に結合されたキャリア又はバスケット内に存在することができる。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のコーティング層は、陽極酸化プロセスを使用して堆積させることができる。陽極酸化は、一般に、基材を電解セルの陽極として使用する。陽極酸化は、表面の微視的な質感及び表面付近に得られる金属コーティングを変化させることができる。例えば、厚いコーティングは多孔質であることが多く、耐食性を高めるためにシールすることができる。陽極酸化は、より硬く、より耐食性の表面をもたらし得る。いくつかの例では、本明細書に記載の物品のコーティング層の1つは、陽極酸化プロセスを使用して製造することができ、別のコーティング層は、非陽極酸化プロセスを使用して製造してもよい。他の例では、物品中の各コーティング層は、陽極酸化プロセスを使用して製造することができる。陽極酸化を使用する正確な材料及びプロセス条件は変化し得る。一般に、陽極酸化層は、堆積される材料を含む電解液に直流電流を印加することによって基材の表面上に成長される。堆積される材料は、マグネシウム、ニオブ、タンタル、亜鉛、ニッケル、モリブデン、銅、アルミニウム、コバルト、タングステン、金、白金、パラジウム、銀、又はそれらの合金若しくは組み合わせを含むことができる。陽極酸化は、典型的には酸性条件下で行われ、クロム酸、硫酸、リン酸、有機酸又は他の酸を含み得る。
【0174】
特定の実施形態では、本明細書に記載のコーティングは、他の添加剤又は薬剤の存在下で適用されてもよい。例えば、湿潤剤、レベリング剤、光沢剤、消泡剤及び/又は乳化剤は、基材表面上に堆積される材料を含む水溶液中に存在することができる。例示的な添加剤及び薬剤としては、限定されないが、チオ尿素、臭化ドミフェン、アセトン、エタノール、カドミウムイオン、塩化物イオン、ステアリン酸、エチレンジアミン二塩酸塩(EDA)、サッカリン、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、サッカリン、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、クマリン、エチルバニリン、アンモニア、エチレンジアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)、ヤヌスグリーンB(JGB)、アゾベンゼン系界面活性剤(AZTAB)、界面活性剤のポリオキシエチレンファミリー、クエン酸ナトリウム、過フッ素化アルキル硫酸塩、添加剤K、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、ホウ酸、ミリスチン酸、塩化コリン、クエン酸、任意のレドックス活性界面活性剤、任意の導電性イオン液体、ポリグリコールエーテル、ポリグリコールアルコール、スルホン化オレイン酸誘導体、第一級アルコールの硫酸塩形態、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、アラルキルスルホネート、サルフェート、ペルフルオロアルキルスルホネート、酸アルキル及びアラルキルリン酸エステル、アルキルポリグリコールエーテル、アルキルポリグリコールリン酸エステル又はそれらの塩、N含有及び任意に置換及び/又は四級化されたポリマー、例えば、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリグリシン、ポリ(アリルアミン)、ポリアニリン(スルホン化)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリ尿素、ポリアクリルアミド、ポリ(メラミン-コ-ホルムアルデヒド)、ポリアルカノールアミン、ポリアミノアミド及びその誘導体、ポリアルカノールアミン及びその誘導体、ポリエチレンイミン及びその誘導体、四級化ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアミン)、ポリアニリン、ポリ尿素、ポリアクリルアミド、ポリ(メラミン-コ-ホルムアルデヒド)、ヒドロキシ-エチル-エチレン-ジアミン三酢酸、2ブチン14ジオール、22アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、ペルフルオロアンモニウム酸、デキストロース、臭化セチルメチルアンモニウム、1ヘキサデシルピリジニウム-クロリド、d-マンニトール、グリシン、ロセル塩、NN’-ジフェニルベンジジン、グリコール酸、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、アミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物、アミンとエピクロロヒドリンとポリアルキレンオキシドとの反応生成物、アミンとポリエポキシド、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン、又はそれらのコポリマーとの反応生成物、ニグロシン、ペンタメチル-パラ-ロアニリン、脂肪、油、長鎖アルコール、又はグリコールのうちの1つ以上、ポリエチレングリコール、Triton等のポリエチレンオキシド、アルキルホスフェート、金属石鹸、特殊シリコーン消泡剤、市販のパーフルオロアルキル変性炭化水素消泡剤及びパーフルオロアルキル置換シリコーン、完全フッ素化アルキルホスホネート、パーフルオロアルキル置換リン酸エステル、カチオン系薬剤、両性系薬剤(amphoteric-based agents)、及びノニオン系剤;キレート剤、例えばクエン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0175】
無電解めっきが使用される実施形態では、浴中での金属カチオンの自己触媒化学還元によって基材上に金属コーティングを製造することができる。電着/電気めっきとは対照的に、無電解めっきでは、外部電流は基材に印加されない。いかなる特定の構成又は例にも束縛されることを望まないが、無電解めっきは、電気めっきと比較して、基材上により均一な材料層を提供することができる。さらに、無電解めっきを使用して、非導電性基材にコーティングを追加することができる。
【0176】
無電解めっきが使用される特定の実施形態では、基材自体が触媒として作用して、イオン性金属を還元し、基材の表面に金属のコーティングを形成することができる。金属合金コーティングを製造することが望ましい場合、基材は、錯化剤を使用して2つ以上の異なるイオン性金属を還元して、2つの異なる金属を含む金属合金を形成するように作用し得る。いくつかの例では、基材自体は触媒として機能しなくてもよいが、触媒材料を基材に添加して、基材上の金属コーティングの形成を促進することができる。基材に添加することができる例示的な触媒材料には、パラジウム、金、銀、チタン、銅、スズ、ニオブ、及びそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
無電解めっき法で使用される正確な材料は様々であり得るが、例示的な材料は、以下のカチオン:マグネシウム、ニオブ、タンタル、亜鉛、ニッケル、モリブデン、銅、アルミニウム、コバルト、タングステン、金、白金、パラジウム、銀、又は合金若しくはそれらの組み合わせの1つ以上を含む。例えば、これらのカチオンのいずれか1つ以上を適切な塩として水溶液に添加することができる。例示的な適切な塩には、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属塩化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属クロム酸塩、金属二クロム酸塩、金属過マンガン酸塩、金属白金酸塩、金属亜硝酸コバルト、金属ヘキサクロロ白金酸塩、金属クエン酸塩、金属シアン化物、金属酸化物、金属リン酸塩、金属一塩基性リン酸ナトリウム、金属二塩基性リン酸ナトリウム、金属三塩基性リン酸ナトリウム及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
特定の実施形態では、本明細書に記載の基材は、コーティングを受ける基材を調製するためにプレコーティングプロセシング工程に供され得る。これらのプロセシング工程は、例えば、洗浄、電気洗浄(陽極又は陰極)、ポリッシング、電解研磨、めっき前処理、熱処理、研磨処理及び化学処理を含むことができる。例えば、基材を、酸、塩基、水、塩溶液、有機溶液、有機溶媒又は他の液体若しくはガスで洗浄することができる。基材は、任意に、電流の存在下で、水、酸若しくは塩基、例えば硫酸、リン酸等、又は他の材料を使用してポリッシングを行うことができる。基材は、基材の表面からの酸素又は他のガスの除去を容易にするために、コーティング層の適用前に1つ以上のガスに曝露されてもよい。基材は、表面から任意の水溶液又は材料を除去するために、コーティングの塗布前に油又は炭化水素流体で洗ってもよく、又はそれに曝露されてもよい。基材は、コーティングの塗布前に表面から液体を除去するためにオーブン内で加熱又は乾燥されてもよい。コーティングの適用前に基材を処理するための他の工程も使用され得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコーティング層を封止に供することができる。コーティングを封止するために使用される正確な条件及び材料は様々であり得るが、封止はコーティングの多孔性を減少させ、それらの硬度を増加させることができる。いくつかの実施形態では、封止は、コーティングを蒸気、有機添加剤、金属、金属塩、金属合金、金属合金塩、又は他の材料に供することによって実施することができる。封止は、室温より高い温度、例えば摂氏30度、摂氏50度、摂氏90度以上、室温又は室温より低い温度、例えば摂氏20度以下で行うことができる。いくつかの例では、基材及びコーティング層を加熱して、コーティング層中の水素又は他のガスを除去することができる。例えば、基材及びコーティングを焼成して、コーティング後1~2時間以内に物品から水素を除去することができる。
【0180】
堆積後プロセシング方法の組み合わせを使用することができることが当業者によって認識されるであろう。例えば、コーティング層を密封し、次いでポリッシングして表面粗さを低減することができる。
【0181】
特定の構成では、電着プロセスのフローチャートが
図13に示されている。工程1310において、コーティングを受ける基材を洗浄することができる。次いで、工程1315で基材をすすぐことができる。次いで、基材を、工程1320において酸処理に供することができる。次いで、酸処理された基材を工程1330ですすぐ。次いで、すすいだ基材は、工程1335においてめっき槽に添加される。めっきされた基材は、任意にすすぐことができる。次いで、コーティングされた表面を有する基材は工程1340においてめっき後プロセスに供され得る。これらの工程の各々は、以下でより詳細に説明される。基材の表面上にニッケル層(又は別の材料の層)を設けるための任意のストライク工程1322は、必要に応じてめっき前に工程1320と1330との間で実行することができる。
【0182】
特定の実施形態では、洗浄工程は、電流の存在下又は非存在下で実行することができる。洗浄は、典型的には、1つ以上の塩及び/又は洗剤若しくは界面活性剤の存在下で行われ、酸性pH又は塩基性pHで行われ得る。洗浄は、一般に、基材の表面から油、炭化水素又は他の材料を除去するために行われる。
【0183】
基材を洗浄した後、基材をすすいで洗浄剤を除去する。すすぎは、典型的には蒸留水中で行われるが、1つ以上の緩衝液を使用して、又は酸性pH若しくは塩基性pHで行われてもよい。すすぎは、1回行ってもよく、多数回行ってもよい。基材は、典型的には、表面上の酸化物形成を最小限に抑えるために、様々な工程の間に湿潤状態に保たれる。表面が清浄である、及び/又は油を含まないことを確認するために、ウォーターブレーク試験を実施することができる。
【0184】
すすぎ後、基材を酸浴に浸漬して、電着のために表面を活性化し、例えば表面を酸洗いすることができる。使用される正確な酸は重要ではない。酸性処理のpHは、必要に応じて0~7又は0未満であってもよい。基材が酸浴中に留まる時間は、例えば、10秒から約10分まで変化し得る。酸性溶液は、必要に応じて基材表面上で撹拌又はポンプ輸送することができ、又は基材を酸洗いプロセス中に酸性タンク内で移動させてもよい。
【0185】
酸洗いプロセスの後、表面をすすいで酸を除去することができる。すすぎは、酸洗した基材をすすぎ浴に浸漬することによって、又はすすぎ剤を表面上に流すことによって、又はその両方によって行われ得る。すすぎは、必要に応じて複数回又は1回行うことができる。
【0186】
酸洗後、基材は、任意にストライクに供され得る。任意の1つの構成に束縛されることを望むものではないが、ストライクは、典型的には堆積される材料と不活性であるか又は反応性が低い材料の薄層を基材に塗布する。不活性基材の例としては、ステンレス鋼、チタン、特定の金属合金及び他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。ストライクプロセスでは、電着を使用して、例えば最大数ミクロンの厚さの材料の薄層が塗布される。
【0187】
次いで、水洗された基材、酸洗された基材、又はストライク層を有する水洗された基材は、上述のように電着プロセスに供されて、基材表面に材料の層を塗布することができる。本明細書で述べるように、電着は、AC電圧又はDC電圧及び様々な波形を使用して実施することができる。使用される正確な電流密度は、最終的に得られるコーティングになる特定の量の元素に有利又は不利になるように変化し得る。例えば、合金層が2つの金属を含む場合、電流密度は、得られる合金層中に一方の金属が他方の金属よりも多く存在するように選択することができる。電着浴のpHはまた、表面コーティング中に存在することが意図されている特定の種に応じて変化し得る。例えば、電着浴及びアノードに存在する材料に応じて、酸性浴(pH=3~5.5)、中性pH浴又は塩基性pH浴(pH9~12)を使用することができる。電着プロセス中に使用される正確な温度は、室温(約25度摂氏)から摂氏約85度まで変化し得る。温度は、電着浴内の水がかなりの程度まで蒸発しないように、摂氏100度未満であることが望ましい。電着浴は、本明細書で述べるように、光沢剤、レベラ、粒子等を含む任意の薬剤と共に堆積される材料を含むことができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、電着浴は光沢剤を含むことができる。様々な有機化合物が光沢剤として使用され、明るく、平らで延性のあるニッケル堆積物を提供する。光沢剤は、一般に2つのクラスに分けることができる。クラスI又は第一級光沢剤には、芳香族又は不飽和脂肪族スルホン酸、スルホンアミド、スルホンイミド、及びスルフィミド等の化合物が含まれる。クラスI光沢剤は、比較的高濃度で使用することができ、金属基材上に濁った又は曇った堆積物を生成することができる。電気めっきプロセス中のクラスI光沢剤の分解は、硫黄を堆積物に取り込ませ、堆積物の引張り応力を低下させる可能性がある。クラスII又は二次光沢剤は、クラスI光沢剤と組み合わせて使用され、完全に明るく平らな堆積物を生成する。クラスII光沢剤は、一般に不飽和有機化合物である。アルコール基、ジオール基、トリオール基、アルデヒド基、オレフィン基、アセチリン基、ニトリル基及びピリジン基等の不飽和官能基を含有する様々な有機化合物をクラスII光沢剤として使用することができる。典型的には、クラスII光沢剤は、アセチレン又はエチレン性アルコール、エトキシル化アセチレン性アルコール、クマリン及びピリジン系化合物から誘導される。このような不飽和化合物とクラスI光沢剤の混合物との混合物を組み合わせて、所与のレベリング速度に対して最大輝度又は延性を得ることができる。様々なアミン化合物を増白剤又はレベリング剤として使用することもできる。非環式アミンは、クラスII光沢剤として使用することができる。レベリング及び低電流密度被覆率を改善するために、アセチレンアミンをアセチレン化合物と組み合わせて使用することができる。
【0189】
特定の実施形態では、合金層中に存在する金属の結果として生じる量は変化し得る。例えば、表面コーティング中に2つの金属が存在する一電着プロセスでは、金属のうちの一方、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約35重量%まで存在してもよい。他の実施形態では、金属のうちの一方、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約20重量%まで存在してもよい。いくつかの例では、金属のうちの1つ、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約16重量%まで存在してもよい。いくつかの例では、金属のうちの1つ、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約10重量%まで存在してもよい。いくつかの例では、金属のうちの1つ、例えばモリブデンは、表面コーティングの重量に基づいて約6重量%まで存在してもよい。
【0190】
特定の構成では、次いで、表面コーティングを有する基材をすすぐか、又は別の堆積プロセスに供して、形成された第1の層上に第2の層を塗布することができる。第2の堆積プロセスは、例えば、真空蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料(HVOF)コーティング、熱溶射、又は他の適切な方法であり得る。場合によっては、第2の電着工程を使用して、形成された第1の層の上に第2の層を塗布することができる。例えば、第2の層は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の金属又は他の材料を含む電着層とすることができる。必要に応じて、電着又は本明細書に記載の他のプロセスのいずれかを使用して、第2の層上に追加の層を形成することができる。
【0191】
他の構成では、電着プロセスを使用して層を形成する前に、洗浄又は酸洗いした基材上に材料の層を堆積させることができる。例えば、最初に、真空蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料(HVOF)コーティング、熱溶射、又は他の適切な方法を使用して、基材上に1つ以上の層を形成することができる。本明細書に記載の電着プロセスを使用して、第2の層を第1の層上に形成することができる。必要に応じて、第1の層上に第2の層を電着する前に、第1の形成層を酸洗プロセスによって活性化することができる。
【0192】
電着によって基材上に単層が形成される場合、コーティングされた表面を有する基材は、次いで、例えば、すすぎ、ポリッシング、サンディング、加熱、アニーリング、圧密化、エッチング、又はコーティングされた表面を洗浄するか、又はコーティングされた表面の物理的若しくは化学的特性を変更するための他の工程を含む1つ以上のポストプロセシング工程を受けることができる。所望であれば、コーティング中に存在する材料に応じて、酸性溶液又は塩基性溶液を使用してコーティングの一部を除去することができる。
【0193】
特定の実施形態では、基材上に合金層を製造する方法は、基材の表面上に合金層を電着することによって基材上にコーティングされた表面を形成することを含む。電着合金層は、(i)モリブデンと、(ii)ニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素、又はニッケル、タングステン、コバルト、クロム、スズ、リン、鉄、マグネシウム若しくはホウ素のうちの1つ以上を含む少なくとも1つの化合物とを含む。いくつかの例では、方法は、合金層を電着させる前に、基材を洗浄することと、洗浄された基材をすすぐことと、洗浄された基材の表面を活性化して活性化基材を提供することと、活性化基材をすすぐことと、活性化基材上に合金層を電着させることとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、電着合金層を堆積後処理プロセスに供することを含む。追加の実施形態では、堆積後処理プロセスは、すすぎ、ポリッシング、サンディング、加熱、アニーリング、及び圧密化からなる群から選択される。いくつかの例では、方法は、電着合金層上に追加の層を設けることを含む。他の例では、追加の層は、真空蒸着、物理蒸着、化学蒸着、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料コーティング、又は熱溶射のうちの1つを使用して提供される。
【0194】
いくつかの構成では、合金層を電着させる前に、基材と電着合金層との間に材料の中間層を設けることができる。いくつかの例では、中間層は、真空蒸着、物理蒸着、化学蒸着、プラズマ蒸着、ブラッシング、スピンコーティング、スプレーコーティング、電着/電気めっき、無電解堆積/めっき、高速酸素燃料コーティング、又は熱溶射のうちの1つを使用して提供される。特定の実施形態では、電着は可溶性アノードを使用するか、又は不溶性アノードを使用する。場合によっては、可溶性アノードは、ニッケル又は別の金属を含む。
【0195】
本明細書に記載の技術のより良い理解を容易にするために、特定の具体例が記載されている。
【0196】
実施例1
試験基材(鋼基材)の表面にモリブデン-ニッケル合金(以下、MaxShieldという)を含むコーティングについて、いくつかの試験を行った。MaxShieldの性能に対する厚さ及び熱の影響をよりよく理解するために、3つの異なるバージョンのMaxShieldコーティングを試験した。MaxShield-V1は、20~30μmの間の厚さを有する。さらに、MaxShield-V1も、190°Cで23時間焼付け除去した後(V1-BR)、及び400°Cで2時間熱処理した後(V1-HT)、めっき済で試験した。MaxShield-V2は、70~90μmの間の厚さを有する。MaxShield-V2の製造は、硬度及び摩耗性能を改善するために熱処理プロセスを使用する。MaxShield-V3は、MaxShield-V2と同様であるが、熱処理されていない。
【0197】
MaxShieldの重要なプロセス因子もEHC(硬質クロム電気めっき)と比較した。500 ASFの電流密度では、堆積速度が約0.7mil/時間であるため、EHCプロセスは効率的ではない。MaxShieldの場合、堆積速度は約14倍少ない電流で2倍であるが、より高い堆積速度は、EHCプロセスと比較してMaxShieldプロセスをより効率的にする。
【0198】
実施例2
コーティングの元の外観は、典型的なニッケルコーティングの外観に近い。
図14は、MaxShieldでコーティングされた油圧バーを示し、EHCでコーティングされたものと比較する。MaxShield及びEHCの両方を研削し、めっき後にポリッシングを行った。いくつかの予備試験を通して、コーティングの黒色バージョンを可能にすることができた。コーティングを更にポリッシングして、機械加工して外観を変えることができる。これは共形であり、粗い表面に塗布することができる。
【0199】
実施例3
MaxShieldの最も一般的な厚さは、1ミクロン~75ミクロンの範囲である。0.5 mmより厚いコーティングも作製することができる。コーティングの厚さは、1マイクロメートル未満、必要に応じて1.5mmを超える可能性がある。コーティング厚は、主に堆積時間によって制御される。
【0200】
実施例4
試験機関(NADCAP認証試験施設、Assured Testing Services)を使用して腐食を測定した。試験は、塩霧試験としても知られる標準腐食試験であった。この試験中、コーティングされた試料は、海洋環境の腐食をシミュレートする5%塩化ナトリウムミストに曝露される。試験は、ASTM B117-19に従って試験機関で行った。この試験では、EHCコーティング及び無電解ニッケルコーティングの腐食性能を、塩霧への曝露の5000時間までの本発明者らのコーティングの腐食性能と比較する。Assured Testing Servicesは、ASTM D610 Rust Gradeに従って異なる試料の腐食評点を決定した。この規格は、0~10の間の評点範囲を意味し、10は最良の耐食性に対応し、0はより悪い耐食性に対応する。試験機関はまた、MaxShield-V1コーティングの2つの試料に対して塩水噴霧試験を行った。試験を、MaxShield-V2及びMaxShield-V3コーティングの2つの試料でも行った。本発明者らはまた、対照試料としてEHC及び無電解ニッケルコーティングを試験機関に提供した。Assured Testing Servicesは、1つのMaxShield-V 1コーティングをスクライブし、塩水噴霧チャンバでもそれを試験した。
【0201】
最初の1000時間の結果。
図15A及び
図15Bは、EHC及び無電解ニッケルコーティングでコーティングされた炭素鋼試料を示し、塩霧に1000時間暴露した後のそれぞれの腐食評点は4及び0である。これらの2つの試料はいずれも、独立しためっき部門によって製造された。ASTM D610によれば、1000時間後の無電解ニッケルの腐食速度0は、表面積の50%を超える錆の形成を示す。さらに、EHCコーティングの腐食速度4は、表面積の3~10%が1000時間後に腐食されることを示す。塩水噴霧に1000時間曝露した後の5つ全てのMaxShieldコーティングの画像を
図16A~
図16Eに示す。これらの試料のうちの4つは9の評点を示し、一方、1000時間後のMaxshield-V1試料のうちの1つの腐食評点は10である。腐食速度9は、ASTM D610規格による表面積の0.03%未満での錆の形成を示す。評点10のMaxshield-V1試料は、最初の1000時間では全く錆がなかった。
【0202】
図17は、本発明者らのコーティングの塩水噴霧試験の結果をEHCコーティングの結果と比較する。この図が示すように、EHCコーティングの腐食評点は、塩水噴霧への400時間の曝露後に4まで急激に低下するが、本発明者らのコーティングの腐食速度は、曝露1000時間まで9超のままである。
【0203】
スクライブされたMaxShield-V1コーティングでは、スクライブ領域から遠い領域で9の腐食速度が得られた。ASTM D1654に基づいて、この試料上のスクライブされた領域について8のクリープ測定評点が得られた。スクライブされた表面の予備試験は、MaxShieldが、引っ掻かれ、下の鋼表面が引っ掻かれた場所に露出する場合、加速腐食の重大なリスクを引き起こすとは予想されないことを示している。
【0204】
1000時間後の腐食試験結果:塩水噴霧腐食試験を、1000時間後にMaxShield試料で続けた。塩水噴霧試験の異なる時間における試料の評点及び5000時間後の試料の外観を
図18A~
図18Eに示す。表1に示すように、Maxshield-V2及びMaxShield-V3の評点は、塩水噴霧の最大4000時間まで9のままである。
【0205】
【0206】
MaxShield-V1の3つの試料は、それぞれ7、9、及び8の腐食評点を示す。MaxShield-V1は、Maxshield-V2及びMaxShield-V3と比較して厚さが薄い。より薄いコーティングの場合、腐食媒体がピンホール及びコーティング上の欠陥からベース鋼基材に到達し、腐食をもたらす可能性がより高い。これは、Maxshield-V2及びMaxShield-V3が、腐食性媒体へのこの伸長した曝露においてMaxShield-V1よりも良好に機能する理由であり得る。
図26A~
図26Eの画像に示すように、MaxShieldは、錆と容易に区別することができる緑がかった曇り(tarnish)を作り出す。
【0207】
実施例5
試験機関:NADCAP認証試験施設、Assured Testing Services。手順:3組の試料について試験を行った。各組は、MaxShieldコーティングのバージョンで覆われた4つのノッチ付きバーを含む。コーティングを塗布する前後のこれらのノッチ付きバーの一方の画像を
図19に示す。バーは、ASTM F519-18に従って、試験機関によって、破壊強度の75%の量の200時間の持続荷重で試験した。結果:MaxShield-V 1とMaxShield-V 2の両方の4つのノッチ付きバーは全て試験に合格し、破砕を示さなかった。これらの結果は、MaxShield-V1及びMaxShield-V2コーティングが水素誘発性のクラッキングを引き起こさず、水素脆化に耐えることができることを実証している。MaxShield-V3は、水素脆化に対するより大きな保護を提供するMaxShield-V1のより厚いバージョンであることに言及する価値がある。したがって、MaxShield-V1は試験に合格しているため、MaxShield-V3も試験に合格することが期待される。
【0208】
実施例6
試験機関:Anamet,inc.のA2LA認証試験機関。手順:MaxShield-V1及びMaxShield-V2コーティングの延性は、ASTM E8-21(金属材料の引張試験)に従って試験機関によって決定された。この試験では、コーティングされたTボーン標本を、コーティングが剥がれ落ちてその下の表面が50倍の顕微鏡画像で見えるようになるまで一軸方向に引張試験する。
【0209】
結果:試験は、MaxShield-V1及びMaxShield-V2コーティングの両方が、剥離又は破砕なしに6%超まで伸長できることを示した。6%を超える延性値は、0.1%未満であるEHCコーティングの延性よりも有意に高い(1)。また、無電解ニッケルコーティングの延性よりも高く、1%~1.5%である(2)。これらの結果に基づいて、MaxShieldコーティングは、EHC及び無電解ニッケルコーティングと比較してはるかに成形可能であると結論付けることができる。
図20A及び
図20Bは、6%伸長後のMaxShield-V1(
図20B)及びMaxShield-V2(
図20A)コーティングの画像を示す。MaxShield-V1コーティングの顕微鏡画像を
図21に示す。
図20A~
図21が示すように、コーティングは、いかなる破砕又はブリスターもなく、少なくとも6%の延性を示す。
【0210】
実施例7
試験機関:EP Laboratoriesは、ナノレベル及びマイクロレベルでの機械試験に特化した独立した試験室としてQmedに掲載されている。手順:MaxShield-V2及びMaxShield-V3コーティングの摩擦係数を、EP LaboratoriesによってASTM G99-17仕様に従って測定した。
図22に示すように、試験は、毎分200回転する潤滑コーティング表面に、440Cステンレス鋼製の硬質ボールを通して20Nの力を加えることに関与した。EHCの主な特徴の1つは、低摩擦係数又は潤滑環境での滑り性である。この試験では、EHCの摩擦係数も測定し、MaxShieldコーティングと比較した。
【0211】
結果:EHCコーティング、Maxshield-V2及びMaxShield-V3コーティングについて測定された摩擦係数を表2に示す。この表に示すように、MaxShieldの両方のバージョンの摩擦係数は、EHCコーティングよりもわずかに低い。これらの結果に基づいて、本発明者らは、潤滑摩耗条件におけるMaxShieldコーティングのほぼ同様の性能を予想する。MaxShield-V1が激しい摩耗環境でより低い性能を有することができることは言及する価値があり、これがここでは試験されていない理由である。
【0212】
【0213】
実施例8
試験機関:Iso認証の独立した検査室、EPI Materials Testing Group。手順:硫化水素クラッキング試験を、NACE TM-0284に従ってコーティングされた表面に対して行った。炭素鋼のコーティングされた表面を酸性環境に96時間導入し、その間にH
2Sガス及び窒素パージガスを導入した。コーティングされた表面を金属組織学的にポリッシュして、H
2Sガスによって引き起こされるクラックを強調した。
図23に示されているように、クラックは、規格によって述べられているように測定及び報告される。MaxShield-V1の2つの試料を試験した。
【0214】
結果:第三者試験センターによる報告によれば、目視及び立体検査並びにその後の倒立顕微鏡検査により、本発明者らのコーティングにクラッキングがないことが明らかになった。
図24A及び
図24Bは、試験後(
図24B)及び試験前(
図24A)のMaxShield-V1でコーティングされた2つの炭素鋼バーの画像を示す。
図25の顕微鏡画像に示すように、MaxShield-V1コーティングで覆われた表面は、水素誘発のブリスター又はクラッキングがなかった。MaxShield-V2及びMaxShield-V3は、それらの厚さが大きいため、MaxShield-V1と比較して硫化水素クラッキングの影響を受けにくいことを言及する価値がある。これは、この試験がMaxShield-V1で行われただけの理由である。
【0215】
微小硬度試験
試験機関:以前の微小硬度試験は、Anamet,inc.のA2LA認証試験機関によって実施され、追加の試験がMaxterial Inc.によって実施された。手順:ASTM E384-17規格に従って試験を実施した。Anametによって得られた以前の結果:試験を4つのコーティングされた炭素鋼試料で実施した。試料及びそれらの試験結果の説明は以下の通りである:試料1はMaxShield-V3でコーティングされている。この試料について660のビッカース硬さが得られた。試料2は、MaxShield-V3でコーティングされている。この試料について605のビッカース硬さが得られた。試料3は、MaxShield-V2でコーティングされている。この試料について750の平均ビッカース硬さが得られた。試料4も、MaxShield-V2でコーティングされている。この試料について822の平均ビッカース硬さが得られた。
【0216】
これらの結果は、MaxShield-V2コーティングの硬度の改善に対する熱処理の効果を示している。50μmのMaxShieldコーティングについて、多くの内部硬度試験を行った。これらの結果は、めっき済のMaxShieldのビッカース硬さが630から670の範囲にあることを確認している。この試験で得られた微小硬度値を、文献から得られたいくつかの他の硬質コーティングの値と表3で比較する。表3が示すように、本発明者らのコーティングの全ての微小硬度は、めっきされた無電解ニッケルコーティングの微小硬度よりも良好である。さらに、MaxShield-V2コーティングは、熱処理された無電解ニッケルコーティングよりもわずかに良好なビッカース硬さを示す。無電解ニッケルは、EHCコーティングの代替物の1つとして知られている耐摩耗性コーティングであることは言及する価値がある。MaxShield-V2コーティングの硬度もEHCコーティングの硬度と同等である。さらに、MaxShieldの硬度は、Hastelloy-B2(3)の硬度241よりもはるかに高い。
【0217】
高温性能及びEHCとの比較:表3でも強調されている重要な点は、EHCコーティングの硬度が高温で低下することである(4)。190°Cで23時間の通常の焼付け除去プロセスでは、EHCの硬度は800~1000から700~750の間の値に低下する。さらに、実施例11で論じられる断面画像によって示されるように、熱は、その構造に大きなマクロクラックを生成することによってEHCコーティングの完全性を損なう。したがって、コーティングは、より高い温度でその防食性を失うことが予想される。結果として、環境規制及びEHCコーティングの排除に関する義務にかかわらず、このコーティングは高い動作温度では機能しない。
【0218】
対照的に、MaxShield-V2コーティングの硬度は、高温で増加すると予想される。現実の用途では、いくつかの状況下では、コーティングは熱にさらされる。一例として、クロムとは異なり、試料を研削したり、高摩擦又は高温の環境で使用したりすると、MaxShieldは、これらの環境での硬度が向上することが期待される。
【0219】
【0220】
実施例9テーバー研磨試験
試験施設:Maxterial Inc.手順:標準テーバー研磨試験は、ASTM D4060-19規格に従って当社により実施された。この試験では、
図26に示す研磨機を使用して、各研磨ホイールに1kgの荷重を加えることによってコーティングの表面を研磨する。
【0221】
結果:テーバー摩耗指数は、1000サイクルあたりのミリグラム重量減少である。本発明者らは、最近、MaxShieldの修正版を試験した。試料を調製し、めっき済(MaxShield-V1)及び400°Cで2時間熱処理した後(MaxShield-V2)試験した。MaxShield試料のTWI結果を
図27に示す。この図はまた、めっき済の、熱処理されたEHC及び無電解ニッケルコーティングのTWI値を示す。試験を、各コーティングについて少なくとも3つの異なる試料で行い、無電解ニッケル及びEHCコーティングの結果は文献(2)の結果と一致する。これらの結果は、めっき済のMaxShield及び熱処理されたMaxShieldについてそれぞれ6及び5の平均TWIを示し、これらはEHCについて得られたものに非常に近い。熱処理されたMaxShieldのTWIは、熱処理されたEHCのTWI 6よりも更にわずかに優れている。
【0222】
環境規制によるEHCコーティングの大きな課題を考慮すると、無電解ニッケルコーティングが業界で実行可能な代替物の1つとして受け入れられていることは言及する価値がある。図が示すように、平均TWIが6のめっき済のバージョンのコーティング(MaxShield-V3)は、平均TWIが15のめっき済の無電解ニッケルと比較して、より良好な摩耗性能を示すと予想される。平均TWI 5を有する本発明者らのコーティング(MaxShield-V2)の熱処理バージョンはまた、平均TWI 7を有する熱処理無電解ニッケルと比較して、より良好な摩耗性能を示す。前に説明したように、EHCコーティングの摩耗性能は、熱にさらされた後に低下する。熱処理EHCの平均TWIは6であり、MaxShield-V2コーティングの平均TWI 5よりも大きい。
【0223】
実施例10ブロックオンリング試験
試験施設:Falex Corporation 手順:この試験を実施する際の業界の先駆けの1つであるFalex CorporationによってASTM G-77-17に基づいて試験を実施した。この試験では、試験ブロックに、197rpmで500,000回転する試験リングに対して30ポンドを負荷した。ブロック瘢痕体積をブロック瘢痕幅から計算し、リング瘢痕体積をリング重量損失から計算した。さらに、試験中、摩擦係数(CoF)値を連続的に測定した。試験を、最小厚さ0.006インチのMaxShieldでコーティングされたリング試料で実施した。リングは4620鋼製であった。これを接地し、0.003インチ~0.005インチのコーティング厚及び4~8マイクロインチの表面仕上げまで磨いた。この試験では、ブロックはコーティングされていないPH13-8Mo鋼であった。クロムコーティングリングの試験は進行中であり、結果はすぐに提供される。
【0224】
結果:試験結果を表4に要約する。この表に示すように、本試験におけるMaxShieldでは、0.045のCoFが得られた。この試験でクロムについて文献(5)で報告された0.146のCoFと比較して、MaxShieldのCoFは3倍超低い。
図28は、CoF対サイクルのグラフを示す。この図に示すように、CoFは試験中ほぼ一定のままである。この結果は、MaxShieldコーティングがいかなるガウジング問題も生じないことを意味する。
【0225】
【0226】
実施例11攻撃的な酸性環境での腐食試験。
試験施設:Maxterial Inc.手順:当社が実施する社内試験である。この試験では、コーティングされた炭素鋼試料を濃塩酸(32% HCl)の水溶液に24時間浸漬した。濃HCl溶液への24時間の曝露後のコーティングの重量損失を使用して、腐食速度を計算した。32%HClが負のpHを有する非常に強い酸であることは言及する価値がある。
【0227】
結果:
図29は、改質MaxShield-V1コーティングの腐食速度を、既存のニッケルコーティング、Monel、Inconel及びHastelloyと比較している。
図29のこれらのコーティングについて報告された速度は、少なくとも3つの異なる試料について得られた腐食試験の平均である。この図が示すように、MaxShield-V1コーティング(年間13ミリインチ未満、時には年間1.5ミリインチ未満)の腐食速度は、既存のニッケルコーティング(80ミリインチ/年)(6)の腐食速度よりもはるかに遅い。
図29はまた、文献(7)、(8)で公開されている値に基づいて、濃HCl溶液に対する耐食性バルク材料Hastelloy(登録商標)B2及びInconel(登録商標)の腐食速度を示す。興味深いことに、本発明者らのコーティングは、Hastelloy(登録商標)(年間15ミリインチ)及びInconel(登録商標)(年間39ミリインチ)と比較して、より低い腐食速度を示す。Hastelloy(登録商標)及びInconel(登録商標)は、HCl環境での耐食性が極めて高いことで知られている超合金である。EHCコーティングは10分未満で濃HClに溶解し、その腐食速度はこの図の規模ではない。
【0228】
実施例12形態
試験施設:Maxterial Inc.手順:Maxterialでこの試験を行い、MaxShieldの断面を調査し、厚さを測定し、コーティング構造に対する熱処理の効果を評価した。全ての金属加工は、Maxterialが自社設備を使用して行った。約100μmの厚さを有するEHC試料がクロムめっき部門によって本発明者らに提供された。めっき済の及び熱処理されたEHC及びMaxShield-V1試料の断面を、それぞれ
図30A及び
図30Bに示す。熱処理を400Cで2時間行った。この断面分析を、2021年に改質されたMaxShield-V1に対して実行した。この図に示されているように、めっき済のEHCは断面全体にマイクロクラックを有するが、めっき済のMaxShieldははるかに小さく、クラックが少ない。熱処理後、EHCクラックが発生した。
図30A及び
図30Bに示すように、クラックの一部は、基材から表面に至るまで成長した。コーティング構造にこの種のマクロクラックが存在すると、コーティングの防食性を著しく低下させる可能性がある。他方では、MaxShieldの断面は、熱曝露後も同じままであり、MaxShieldにクラック発生の兆候は観察されなかった。高温でのEHCの機械的特性の低下は、熱曝露中にEHCで起こるこのクラック発生及び成長機構に関連し得る。この減少は、テーバー摩耗試験及びビッカース硬さ試験の結果によってこの報告で以前に示されている。
【0229】
実施例13加熱及び接着曲げ試験の効果
試験施設:Maxterial Inc.手順:熱処理したMaxShield試料に対して接着曲げ試験を行った。ASTM B571-18による接着曲げ試験が常に本発明者らの評価の重要な部分であることは言及する価値がある。その理由は、コーティングが強力な接着性を提供しない場合、摩耗及び腐食保護も提供することができないからである。
【0230】
この試験では、3cm×5cmの露出面積を有する1008炭素鋼(CS)のストリップを、MaxShieldで片面をコーティングした。次いで、コーティングされた試料を空気中700°Cで1時間炉に入れた。接着曲げ試験を、ASTM B571-18に従って試料に対して行った。試験の工程及び結果を
図31A~
図31Dに示す。この試験では、テープ片をコーティング表面に取り付けた。テープの下の領域から気泡が除去されたことから、コーティングとテープとの間に強い接着性があることを確認した。次いで、テープを貼った試料を180度に曲げ、テープをコーティング表面から取り除いた。コーティングが表面から剥がれてテープに転写される場合、試験は失敗する。
【0231】
結果:テープは透明であった。コーティングの剥離は観察されなかった。コーティングは、接着曲げ試験に合格した。CSのコーティングされていない領域は、加熱後に鉄錆スケールで覆われた。これらのコーティングされていない領域を曲げ試験の前にテープで覆って、コーティング表面へのゆるい錆粒子の移動を回避した。
【0232】
実施例14成形性
手順:MaxShield V1で180度曲げ試験を何度も実施し、常に有望な結果を得た。炭素鋼の平坦なシートを厚さ6μmのMaxShieldでコーティングした。コーティングされたシートを成形プロセスに供して部品を製造した。これらのプロセスの間、コーティングは曲げられて形成されなければならない。
【0233】
結果:コーティングは成形後も無傷のままであり、剥がれ又は欠陥は観察されなかった。EHC及び溶射コーティングがこれらの状況下で剥離する可能性が高いことは言及する価値がある。
【0234】
実施例15機械加工
本発明者らは、試料に対して様々な加工作業を行っている。例えば、コーティングされた部品に穴を開けて試験片を調製することもあり、コーティングを磨いて光沢を持たせることもあり、研削して厚さを調整することもある。本発明者らは、これらの機械加工プロセスにおいていかなる問題も経験したことがない。本発明者らのデータは、MaxShieldが接着不良なしに機械加工できることを示している。他方で、クロムの機械加工は、チッピング及び剥離の問題のために問題があることが知られている。本発明者らは、その理由は、MaxshieldがEHCよりもはるかに良好な延性を有するためであると考えている。さらに、MaxShieldはほとんどの基材によく接着する。
【0235】
実施例16プロセス因子の概要
MaxShieldは、通常、典型的な電気めっきプロセスを用いて製造される。プロセスは、基材の適切な洗浄及び活性化に続いて電着を含む。MaxShieldのプロセス要因のいくつかは、以下の通りである:電源:MaxShieldは、DC電流電源を使用する;堆積速度:MaxShieldの典型的な堆積速度(1.5mil/時間)は、EHCの堆積速度(0.7mil/時間)の2倍速い。MaxShieldの堆積速度は、電流密度等の複数の要因に応じて変化し得る;めっき効率:MaxShield(80~90%)のめっき効率は、EHC(10~35%)のめっき効率よりもはるかに高い。ほとんどの場合、EHCのめっき効率は20%未満であることに言及する価値がある。電気めっきプロセス温度:MaxShieldのめっき温度は業界の通常の範囲(140~170F)である。
【0236】
実施例17安全製及び環境コンプライアンス
試験施設:TUV SUD、2021 試験をREACHとRoHSの両方で実施した。
【0237】
結果:MaxShieldは、両方の試験に合格した。MaxShieldコーティング及びLeanXと呼ばれるMaxShieldの製造に使用される化学物質は、非常に懸念の高い物質(SVHC)を含まない。特に、MaxShield及びLeanXの両方は、クロム、カドミウム、シアン化物、鉛、並びにPFOS及びPFAS等のフルオロ化合物を含まない。
【0238】
参考文献
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【国際調査報告】