(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】平面生体試料の空間解析
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6837 20180101AFI20240718BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20240718BHJP
【FI】
C12Q1/6837 Z ZNA
C12Q1/6874 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023578165
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 IB2022055849
(87)【国際公開番号】W WO2022269543
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523475147
【氏名又は名称】モールキュレント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,オロフ ジョン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR62
4B063QR66
4B063QR84
4B063QS34
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
本明細書では、とりわけ、平面生体試料を解析するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートを、オリゴヌクレオチド又はコンジュゲートが平面生体試料中又は平面生体試料上の部位に特異的に結合する条件下で、試料と接触させることと、オリゴヌクレオチドを放出及び/又は伸長するための1つ以上の工程をin situで実施して、レポータープローブを生成することと、試料中のレポータープローブの空間関係を保存するように、オリゴヌクレオチドのアレイを含まない平面支持体に試料からレポータープローブを移動させることと、(d)支持体上のレポータープローブを検出することと、を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を解析するための方法であって、
(a)オリゴヌクレオチド又は前記オリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートを、前記オリゴヌクレオチド又は前記コンジュゲートが平面生体試料中又は前記平面生体試料上の部位に特異的に結合する条件下で、前記試料と接触させることと、
(b)前記オリゴヌクレオチド又は前記オリゴヌクレオチドの相補配列を放出及び/又は伸長するための1つ以上の工程をin situで実施して、レポータープローブを生成することと、
(c)前記試料中の前記レポータープローブの空間関係を保存するように、オリゴヌクレオチドのアレイを含まない平面支持体に前記試料からの前記レポータープローブ又は前記レポータープローブの相補配列の全部又は一部を移動させることと、
(d)前記支持体上の前記レポータープローブを検出することと、を含む、方法。
【請求項2】
工程(a)は、オリゴヌクレオチドが前記試料中の内在性RNA又はDNAにハイブリダイズする条件下で、前記オリゴヌクレオチドを前記試料とハイブリダイズさせることを含み、
工程(b)は、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーションを介して、前記RNA又は前記DNA中の隣接部位にハイブリダイズされる任意のオリゴヌクレオチドを一緒に結合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料は、近接ライゲーションアッセイからのライゲーション生成物を含み、
工程(a)は、オリゴヌクレオチドが前記ライゲーション生成物にハイブリダイズする条件下で、前記オリゴヌクレオチドを前記試料とハイブリダイズさせることを含み、
工程(b)は、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーション反応を介して、前記ライゲーション生成物中の隣接部位にハイブリダイズする任意のオリゴヌクレオチドを一緒に結合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドはエキソヌクレアーゼ感受性であるが、前記レポータープローブはエキソヌクレアーゼ耐性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、工程(b)と工程(c)との間にエキソヌクレアーゼで前記試料を処理することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)は、抗体が前記試料中又は前記試料上の部位に結合する条件下で、前記試料を抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートと接触させることを含み、
工程(b)は、コンジュゲート抗体から前記オリゴヌクレオチド又は前記オリゴヌクレオチドの伸長生成物を放出して、前記レポータープローブを生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記レポータープローブは、ライゲーション又はギャップフィル反応を介して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レポータープローブは、プライマー伸長反応を介して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)は、顕微鏡法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記放出することは、工程(a)の後に前記生体試料を前記支持体と接触させ、次いで前記試料を加熱することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)は、1つ以上の標識されたオリゴヌクレオチドを前記レポータープローブに直接的に又は間接的にハイブリダイズさせ、次いで前記標識されたオリゴヌクレオチドの結合パターンを顕微鏡法によって解析することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プローブのセットはハイブリダイズされ、個々のレポーター分子をデコードするために繰り返しサイクルで洗い流され、少なくとも2つ以上のサイクルを使用してデコードされる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記試料は組織切片である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記試料は哺乳動物細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記平面試料は、細胞の懸濁液をフィルタに通すことによって生成され、前記細胞は前記フィルタ上に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
平面生体試料を解析するための方法であって、
(a)前記試料に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、近接アッセイ反応生成物を生成することと、
(b)前記試料中の前記近接アッセイ反応生成物の空間関係を保存するように、前記核酸反応生成物を平面支持上に移動させることと、
(c)前記支持体上の前記近接アッセイ反応生成物を検出することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記近接アッセイは、ライゲーション、プライマー伸長、及び前記結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドを含むギャップフィル/ライゲーション反応の任意の組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(c)は、
(i)前記支持体上の前記近接アッセイ反応生成物を標識することと、
(ii)前記支持体をイメージングして、前記近接アッセイ反応生成物が前記支持体に結合した部位の画像を生成することと、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
工程(b)における前記移動することは、前記試料を前記支持体上に配置し、前記近接アッセイ反応生成物を電気泳動又は拡散によって前記支持体の表面上に移動させることによって行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)は、1つ以上の標識されたオリゴヌクレオチドを直接的に又は間接的に前記核酸反応生成物にハイブリダイズさせることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)では、前記近接アッセイ反応生成物は、所定数のオリゴヌクレオチド及び所定数の標識されたオリゴヌクレオチドから構成される定義された核酸構造へのハイブリダイゼーションによって検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記構造は、前記近接アッセイ反応生成物への少なくとも2つのハイブリダイゼーション事象によって核形成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも2つのハイブリダイゼーション事象は、前記近接アッセイ反応生成物中の第1の配列への第1のハイブリダイゼーション、及び前記近接アッセイ反応生成物中の第2の配列への第2のハイブリダイゼーションを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、工程(a)で生成された前記画像を前記試料の画像と比較することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記試料の前記画像は、顕微鏡的染色で前記試料を染色することによって生成される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(b)と工程(c)との間に前記支持体から前記試料を除去することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記生体試料は組織切片である、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記組織切片は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記支持体はスライドガラスである、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
工程(a)の前記結合剤は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、又はアプタマーである、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
平面生体試料を解析するための方法であって、
(a)レポーターオリゴヌクレオチドを平面生体試料中のRNAにin situでハイブリダイズさせることと、
(b)未結合レポーターオリゴヌクレオチドを洗い流すことと、
(c)前記試料中の前記レポーターオリゴヌクレオチドの空間関係を保存するように、前記レポーターオリゴヌクレオチドを支持体上に移動させることと、
(d)前記レポーターオリゴヌクレオチドへの標識プローブのハイブリダイゼーションによって、前記支持体上の前記レポーターオリゴヌクレオチドを検出することと、を含む、方法。
【請求項32】
平面生体試料を解析するための方法であって、
(a)レポーターオリゴヌクレオチドの複数の対を、平面生体試料中のRNAにin situでハイブリダイズさせることと、
(b)互いに近接する又は隣接する部位にハイブリダイズしているレポーターオリゴヌクレオチドの任意の対をin situで一緒にライゲーションして、レポーター生成物を生成することと、
(c)前記試料中のライゲーション生成物の空間関係を保存するように、前記ライゲーション生成物を支持体上に移動させることと、
(d)前記ライゲーション生成物への標識プローブのハイブリダイゼーションによって、前記支持体上の前記ライゲーション生成物を検出することと、を含む、方法。
【請求項33】
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の一方のメンバーは、反応基を含む末端を有し、他方のメンバーは、エキソヌクレアーゼ耐性結合を有し、
工程(c)では、前記ライゲーション生成物は、前記反応基を介して前記支持体に繋留されるようになり、
工程(d)の前に、前記方法は、エキソヌクレアーゼ処理によって任意のライゲーションされていないレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子を分解することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、前記RNAにハイブリダイズしないテールを有し、工程(d)では、前記標識プローブは、前記ライゲーション生成物中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記生体試料は組織切片である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記標識プローブは、互いにハイブリダイズされた規定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び標識されたオリゴヌクレオチドの複合体を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
工程(d)は、
(i)前記支持体上の前記ライゲーション生成物を第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることであって、前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドは前記ライゲーション生成物中の異なる配列にハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることと、
(ii)前記ライゲーション生成物にハイブリダイズした前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドを、複合体中でハイブリダイズした所定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び標識されたオリゴヌクレオチドから構成される標識複合体とハイブリダイズさせることであって、前記標識複合体は両方の架橋オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることと、
(iii)単一の標識複合体のハイブリダイゼーションを検出することができる分解能で、ハイブリダイズされた前記標識複合体を検出することと、を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドは、前記ライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、
前記標識複合体中の前記非標識のオリゴヌクレオチドの少なくともいくつかは、前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドの両方のテールとハイブリダイズし、
前記複合体は、規定数の標識されたオリゴヌクレオチドを含み、前記標識されたオリゴヌクレオチドは、前記非標識のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の架橋オリゴヌクレオチドは第1の安定化配列を有し、前記第2の架橋オリゴヌクレオチドは第2の安定化配列を有し、前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドがライゲーション生成物にハイブリダイズするとき、前記第1の安定化配列及び前記第2の安定化配列は互いにハイブリダイズする、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記安定化配列は4~10bpの長さであり、一方の安定化は前記第1の架橋オリゴヌクレオチドの3’末端にあり、他方の安定化配列は前記第2の架橋オリゴヌクレオチドの5’末端にある、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
平面生体試料を解析するための方法であって、
(a)平面生体試料を複数のコンジュゲートで標識することであって、前記複数のコンジュゲートはそれぞれ、i.前記試料中の部位又は配列に結合する結合剤、及びii.第1のオリゴヌクレオチドを含む、標識することと、
(b)レポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポーターブローブを生成することであって、前記レポーターオリゴヌクレオチドの結合は、i.互いに近接する第1のオリゴヌクレオチド、又はii.前記第1のオリゴヌクレオチドのライゲーション生成物のいずれか一方によって鋳型化させる、一緒に結合することと、
(c)前記生体試料中の前記近接アッセイ反応生成物の空間関係を保存するように、前記レポータープローブを支持体中又は支持体上に移動させることと、
(d)エキソヌクレアーゼ処理によって、かつ/又は洗浄によって、未反応のレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子を除去することであって、前記除去することはin situで、又は前記支持体上で行われる、除去することと、
(e)前記レポータープローブへの標識プローブのハイブリダイゼーションによって、前記支持体上の前記レポータープローブを検出することと、を含む、方法。
【請求項42】
前記標識プローブは、所定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び標識されたオリゴヌクレオチドから構成される定義された核酸構造を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、前記第1のオリゴヌクレオチド又は前記第1のオリゴヌクレオチドのライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、工程(e)では、前記標識プローブは、前記レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
工程(c)は実行され、
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の一方のメンバーは、反応基を含有する末端を有し、他方のメンバーは、前記第1のオリゴヌクレオチド又は前記第1のオリゴヌクレオチドのライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、
工程(c)では、前記レポータープローブは、前記反応基を介して前記支持体に繋留され、
工程(d)では、前記レポータープローブは、前記レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールへの前記標識プローブのハイブリダイゼーションによってin situで検出される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
工程(b)は、
(i)第1のオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、第1の生成物を生成することと、
(ii)前記第1の生成物を鋳型として使用してレポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポータープローブを生成することと、を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
工程(d)は、エキソヌクレアーゼ処理によって、又はレポータープローブである第1の生成物二本鎖のTmよりも低い温度で洗浄することによって、未反応のレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子を除去することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
(b)(ii)の前記ライゲーション生成物は、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーション反応によって作製される、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
(b)(ii)の前記ライゲーション生成物は、支えられたライゲーション反応を使用して作製される、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
(i)及び(ii)は、別々の反応で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
(i)及び(a)(ii)は、前記レポーターオリゴヌクレオチドが前記第1のオリゴヌクレオチドとプレハイブリダイズされ、前記第1のオリゴヌクレオチドを一緒に結合するためのスプリントとして機能し、前記第1のオリゴヌクレオチドのうちの1つが前記レポーターオリゴヌクレオチドをライゲーションするための鋳型として機能する、同じ反応において行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
工程(a)の前記結合剤は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、又はアプタマーである、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記生体試料は組織切片である、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
平面生体試料を解析するための方法であって、
(a)平面生体試料中で近接アッセイをin situで実施して、近接アッセイ反応生成物を生成することと、
(b)前記試料中の前記近接アッセイ反応生成物の空間関係を保存するように、前記近接アッセイ反応生成物を支持体中又は前記支持体上に移動させることと、
(c)前記支持体上の前記近接アッセイ反応生成物を、
(i)前記近接アッセイ反応生成物を第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることであって、前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドが前記近接アッセイ反応生成物中の異なる配列にハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることと、
(ii)前記近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズした前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドを、複合体中でハイブリダイズした所定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び所定数の標識されたオリゴヌクレオチドから構成される標識複合体とハイブリダイズさせることであって、前記標識複合体は両方の架橋オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることと、によって、標識することと、
(d)単一の標識複合体のハイブリダイゼーションを検出することができる分解能で、ハイブリダイズされた前記標識複合体を検出することと、を含む、方法。
【請求項54】
前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドは、前記近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズしないテールを有し、
前記標識複合体中の前記非標識のオリゴヌクレオチドの少なくともいくつかは、前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドの両方の前記テールとハイブリダイズし、
前記標識複合体は、規定数の標識されたオリゴヌクレオチドを含み、前記標識されたオリゴヌクレオチドは、前記標識オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
標識複合体は、4~20個の標識オリゴヌクレオチド及び8~200個の標識された検出オリゴヌクレオチドを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の架橋オリゴヌクレオチドは第1の安定化配列を有し、前記第2の架橋オリゴヌクレオチドは第2の安定化配列を有し、前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドが前記近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズするとき、前記第1の安定化配列及び前記第2の安定化配列は互いにハイブリダイズする、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記安定化配列は4~10bpの長さであり、一方の安定化は前記第1の架橋オリゴヌクレオチドの3’末端にあり、他方の安定化配列は前記第2の架橋オリゴヌクレオチドの5’末端にある、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記生体試料は組織切片である、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
工程(b)では、前記近接アッセイ反応生成物において前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列は、(a)の前記近接アッセイにおいて単一分子に一緒にされる、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記近接アッセイは、
(i)第1のオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、第1の生成物を生成することであって、一緒に結合された前記第1のオリゴヌクレオチドは、前記試料に結合した結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのそれぞれの部分である、一緒に結合することと、
(ii)前記第1の生成物を鋳型として使用してレポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポータープローブを生成することと、を含み、
工程(c)では、前記第1の架橋オリゴヌクレオチド及び前記第2の架橋オリゴヌクレオチドは前記レポータープローブにハイブリダイズする、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、前記第1の生成物にハイブリダイズしないテールを有し、前記標識複合体は、前記レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
工程(a)と工程(c)との間にエキソヌクレアーゼで前記試料又は前記支持体を処理して、未反応の一本鎖DNA分子を除去することを更に含む、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
工程(a)の前記近接アッセイにおいて使用される前記結合剤は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、又はアプタマーである、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
細胞の懸濁液を解析するための方法であって、
(a)細胞の懸濁液を多孔質キャピラリ膜を通して濾過し、それによって前記膜上に前記細胞を分布させることと、
(b)前記膜の細胞側が平面支持体に面する状態で、前記膜を前記支持体上に配置することと、
(c)前記細胞中の核酸の空間関係を保存するように、前記細胞から前記支持体中又は前記支持体上に前記核酸を移動させることと、
(d)前記多孔質キャピラリ膜及び前記細胞を前記支持体から除去することと、
(e)支持体に移動された前記核酸を空間的に解析することと、を含む、方法。
【請求項65】
前記方法は、工程(a)と工程(c)との間に、前記細胞に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、前記細胞中又は前記細胞上に近接アッセイ反応生成物を生成することを更に含み、
工程(c)で移動され、工程(e)で解析される前記核酸は、前記近接アッセイ反応生成物を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
工程(e)は、
(i)前記支持体中又は前記支持体上の前記移動された近接アッセイ反応生成物を標識することと、
(ii)前記支持体をイメージングして、前記近接アッセイ反応生成物が前記支持体中又は前記支持体上に結合した部位の画像を生成することと、を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記近接アッセイは、ライゲーション、プライマー伸長、及び前記結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドを含むギャップフィル/ライゲーション反応の任意の組み合わせを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
(b)の前記平面支持体は、空間的にバーコード化された捕捉オリゴヌクレオチドのアレイを含み、工程(c)は、移動された前記核酸を空間的にバーコード化された前記捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせることを含み、工程(e)は、移動された前記核酸を鋳型として使用して前記捕捉オリゴヌクレオチドを伸長させ、前記プライマー伸長鋳型のコピーを配列決定して、配列リードを生成することと、を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記配列リード中の空間バーコードを使用して、前記配列リードを前記支持体上の部位にマッピングすることを更に含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記移動させる工程(c)は、電気泳動又は拡散によって行われる、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
前記多孔質キャピラリ膜は、多孔質陽極酸化アルミニウム膜である、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
工程(a)は、
(i)前記細胞の懸濁液を前記多孔質キャピラリ膜上に配置することと、
(ii)前記膜を通して前記懸濁液の液体成分を移動させる力を付与することと、によって行われる、請求項64に記載の方法。
【請求項73】
前記力は、遠心力、負圧及び正圧から選択される能動的な力、又は毛管作用及び蒸発から選択される受動的な力である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
工程(d)と工程(e)との間に前記多孔質キャピラリ膜を洗浄することを更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項75】
前記膜内の細孔の内径は、2nm~500nmの範囲内である、請求項64に記載の方法。
【請求項76】
前記膜内の隣接する細孔の中心間の平均距離は、50nm~1000nmの範囲内である、請求項64に記載の方法。
【請求項77】
前記膜内の隣接する細孔の縁部間の平均距離は、10nm~500nmの範囲内である、請求項64に記載の方法。
【請求項78】
細胞の前記懸濁液は、血液細胞、免疫細胞、トリプシン処理によって互いに分離された単一細胞を含むか、又は細胞は懸濁液として培養されている、請求項64に記載の方法。
【請求項79】
前記結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートはそれぞれ、i.試料中の部位又は配列に結合する結合剤、及びii.第1のオリゴヌクレオチドを含み、
前記近接アッセイは、レポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポータープローブを生成することを含み、前記レポーターオリゴヌクレオチドの結合は、i.互いに近接する第1のオリゴヌクレオチド、又はii.前記第1のオリゴヌクレオチドのライゲーション生成物のいずれか一方によって鋳型化され、
前記レポータープローブは、工程(c)において前記支持体に移動され、
工程(e)は、標識プローブの前記レポータープローブへのハイブリダイゼーションによって、前記支持体上の前記レポータープローブを検出することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項80】
前記方法は、エキソヌクレアーゼ処理によって又は洗浄によって、未反応のレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子を除去することを更に含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、前記第1のオリゴヌクレオチド又は前記第1のオリゴヌクレオチドのライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、工程(e)では、前記標識プローブは、前記レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の一方のメンバーは、反応基を含有する末端を有し、他方のメンバーは、前記第1のオリゴヌクレオチド又は前記第1のオリゴヌクレオチドのライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、
工程(c)では、前記レポータープローブは、前記反応基を介して前記支持体に繋留され、
工程(e)では、前記レポータープローブは、前記レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールへの前記標識プローブのハイブリダイゼーションによって検出される、請求項79に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年6月24日出願の米国仮特許出願第63/214,701号及び2021年10月19日出願の同第63/257,456号の利益を主張し、これらの出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
組織中のタンパク質発現、RNA発現及び生体分子間の相互作用は、様々な方法を用いて調べることができる。例えば、組織切片に対して近接アッセイを行い、生成物をin situで検出することができる(Hegazy et al.(2020),Current Protocols in Cell Biology,89(1):e115)。このような方法では、近位に位置する標的タンパク質又はエピトープは、抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドを一緒にする対応する抗体によって結合される。オリゴヌクレオチドはライゲーションされ、例えば、ローリングサークル増幅(rolling circle amplification、RCA)を用いて増幅される。次いで、増幅生成物は、組織切片において検出され得るか、又は空間バーコードの組み込み後に配列決定され得る。配列決定又は検出に応じて、近位に位置するタンパク質が解読される。空間解析の他の技術は、標識された抗体を使用してその後の免疫組織化学を行うこと、又は蛍光オリゴヌクレオチドの様々な組み合わせ及び設計でRNAを標識すること、を含む。
【0003】
しかしながら、これらの従来の方法は、いくつかの理由で制限される。組織内に存在する分子の検出は、1つの画像内で解像され得る分子の数が制限されるので、光学的クラウディング(optical crowding)の影響を受ける。解析領域に多くの分子が密集していると、検出方法は解像度を失い、それによって、高解像度の画像を作製することが困難になる。
【0004】
更に、増幅に基づく方法は、空間的クラウディングの影響を受け、すなわち、この方法は、1つの領域に物理的に配置され得る分子の数によって制限される。例えば、RCA増幅は、ある領域に集まる大きなDNA増幅生成物を生成し、それらを個々に区別することを困難にする。
【0005】
更に、従来の方法の多くは、反応物が組織切片の内外に拡散し、いわゆるzスタックを使用して組織切片の深さをイメージングするのに時間がかかるため、多くの時間と労力がかかる。例えば、多重アッセイ、例えば、単一分子蛍光in situハイブリダイゼーション(single molecule fluorescence in situ hybridization、smFISH)アッセイなどの多重アッセイは、数日かかり得る(例えば、Shahet al.,Neuron2016 92:342-357を参照されたい)。更に、生体試料は多くの場合、かなりの量のバックグラウンドシグナルを生成するので、従来の方法から得られる画像はあまり鮮明ではないことが多く、標識分子の検出をより困難にする。
【0006】
したがって、従来の方法に関連するこれらの問題を解決する、空間解析のための方法が望まれる。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、とりわけ、平面生体試料を解析するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートを、オリゴヌクレオチド又はコンジュゲートが平面生体試料中又は平面生体試料上の部位に特異的に結合する条件下で、試料と接触させることと、オリゴヌクレオチドを放出及び/又は伸長させるための1つ以上の工程をin situで実施して、レポータープローブを生成することと、試料中のレポータープローブの空間関係を保存するように、オリゴヌクレオチドのアレイを含まない平面支持体に試料からレポータープローブを移動させることと、支持体上のレポータープローブを検出することと、を含み得る。以下でより詳細に記載されるように、本方法は、様々な異なる方法で実施することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本方法は、試料に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、近接アッセイ反応生成物を生成することと、試料中の近接アッセイ反応生成物の空間関係を保存するように、支持体中又は支持体上に核酸反応生成物を移動させることと、支持体中又は支持体上の近接アッセイ反応生成物を検出することと、を含み得る。
【0009】
以下でより詳細に記載されるように、支持体に移動された近接アッセイ反応生成物は、様々な異なる方法で、例えば、オリゴヌクレオチドのうちの1つの配列が別のオリゴヌクレオチド又はそのコピーに共有結合されるように結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチド間でライゲーション、プライマー伸長、ギャップフィル/ライゲーション又はこれらの任意のハイブリッドを行うことと、次いで第1の生成物を支持体に移動させることと、によって生成され得る。あるいは、第1の生成物又はライゲーションされていないオリゴヌクレオチドは、他のオリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションして、第2の生成物を生成するためのスプリントとして役立ち得る。これらの実施形態では、第2の生成物は支持体に移動されてもよい。
【0010】
例えば、1つの非限定的実施形態では、本方法は、試料に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、第1の生成物を生成することと、次いで第1の生成物又は第1の生成物の相補配列を含む第2の生成物(第1の生成物によって支えられるライゲーションを介して作製される)を支持体に移動することと、を含み得る。第1の生成物が支持体に移動される場合、それらは、移動の前に結合剤から切断され得る。
【0011】
結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートによって結合される標的は、タンパク質性、核酸、あるいは小分子であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートされた結合剤(例えば、抗体)から構成され得る。他の実施形態では、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、オリゴヌクレオチドの一部が細胞RNA又は遺伝子中の特定の配列にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドの他の部分がそのRNA又は遺伝子にハイブリダイズしない、オリゴヌクレオチドから構成され得る。使用される結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートに応じて、本方法は、とりわけ、タンパク質発現、翻訳後修飾、RNA発現及びゲノムDNAを試験するために使用され得る。
【0012】
本方法は、それがどのように実施されるかに応じて、従来の方法に伴ういくつかの問題を回避することができる。
【0013】
例えば、核酸反応生成物は支持体に移動された後に解析されるので、バックグラウンドの主要な原因、すなわち、組織切片を回避することができる。
【0014】
場合によっては、高解像度画像は、1つの平面内で試料をイメージングすることによって得ることができる。したがって、いくつかの従来の方法とは異なり、本明細書に開示される実施形態のいくつかは、分子を平面の2D表面に移動させることができるため、検出中に画像のzスタックを取得することを回避する。Zスタックを作製することは、時間がかかり、解析のスループットを低下させる可能性がある。したがって、本明細書に開示される方法は、それがどのように実施されるかに応じて、zスタックをイメージングする必要性を回避し、潜在的に時間及びコストを節約することができる。
【0015】
更に、場合によっては、本方法は、標識検出の反復サイクルを含み得る。移動されたDNA分子は、共有結合性付着を含む非常に安定した化学反応を使用して支持体に付着され得るか、又は例えば、標識及び洗浄の複数サイクル後でさえ一般的に安定しているビオチン-アビジンを使用して支持体に付着され得るので、本方法は、非常に多数のサイクルにわたって分子を連続的かつ組み合わせて検出することを可能にし得る。特に、支持体に付着したDNA分子は、複数回の標識及び洗浄に耐える。これは、組織物質中の分子をイメージングする場合、組織が検出及び洗浄サイクルにわたってゆっくりと崩壊するので、重大な課題であり得る。少数のバーコード又はバーコードの組み合わせのみがサイクルで検出されるので、特定のサイクルで標識される分子は、すべての解析される分子が同じサイクルで検出される場合と比較して、より間隔が離れるため、それによって、光学的クラウディング、すなわち、1つの位置からの複数のシグナルの放出を回避する。したがって、分子がしっかりと固定化されている場合、より多くの検出サイクルを使用する可能性は、より多くの(かつ異なる)標的分子の検出(より高度な多重検出)も可能にする。本明細書に開示される方法は、標識及び検出の複数のサイクルが、異なる結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートにコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドに含まれ得る異なる標的バーコード又はバーコードの組み合わせに向けられ得るので、多重化するのがより簡単である。
【0016】
また、場合によっては、バーコード又はバーコードの組み合わせからのシグナルを増幅し、それによって、より高いシグナル対ノイズ比を提供する、架橋オリゴヌクレオチドが使用される。例えば、本明細書に開示される方法で実施される支持体上の分子の読み取りは、特定の従来の方法では、例えば、特定の増幅に基づく方法で実施される配列決定によって、間接的に行われる分子の読み取りと比較して、高い空間分解能のために有利であり得る。核酸反応生成物を支持体に移動させることによって、バックグラウンド蛍光が高くなり得る組織での解析と比較して、より低いバックグラウンドで単一分子の検出を行うことがより容易になる。
【0017】
増幅に基づく従来の方法では、標的核酸の複数のコピーは、例えば、RCAを介して生成される。同じ核酸標的の複数のコピーの存在により、試験される試料中に核酸の物理的クラウディングが生じる可能性がある。更に、増幅に基づく方法は、通常、標的の可変数のコピーを生成し、これは、その結果、各分子からの可変シグナルをもたらす。しかしながら、本明細書に開示される方法は、規定数の分子を使用して、検出のために各分子標的を標識することができ、各単一分子が所定数の標識を使用して検出され、より均一な検出シグナルをもたらす、実施形態を有する。更に、DNAの大きな束が各検出された分子について作成されるRCAに基づくアプローチと比較して、本方法は、検出のために使用される標識及び標識オリゴヌクレオチドが各検出サイクルの間に完全に洗い流され得、分子間の物理的クラウディングを減少させ、表面に付着したレポーター分子のみを残す、実施形態を有する。したがって、本方法がどのように実施されるかに応じて、本明細書に開示される方法は、試料中の標的核酸の物理的クラウディングの問題を回避することができる。
【0018】
更に、本方法のいくつかの実施形態では、レポータープローブは、鋳型として最初の核酸反応生成物を使用して生成される。レポータープローブを使用する利点は、より短いオリゴヌクレオチドが結合剤にコンジュゲートされ得ることであり、これは、次に、本方法の分解能を増加させ、結合剤の動態及び標的への結合を改善する。長いオリゴヌクレオチドを、例えば、抗体にコンジュゲートすることは、より短いオリゴヌクレオチドよりも組織中のエピトープに効果的に結合する、それらの能力に影響を及ぼすことができる。
【0019】
更に、核酸を含有する支持体は非常に安定しており、関連情報を失うことなく、長期間容易に保存することができる。
【0020】
上記のように、支持体に移動されるレポーター分子は、核酸である。レポーター分子は核酸であるため、1つのプローブをレポーター分子にハイブリダイズさせ、支持体をイメージングし、プローブを脱ハイブリダイズさせ(又は、標識を不活性化し)、次いで異なるプローブをレポーター分子中の異なる部位にハイブリダイズさせることによって、異なる標識プローブを同じ分子にハイブリダイズさせることができる。これらのハイブリダイゼーション/読み取り/不活性化/ハイブリダイゼーション工程は、必要なだけ何度も繰り返すことができる。標識系により単一分子の分解能が可能になるので、画像は点状スポットとして現れ得、各スポットはプローブハイブリダイゼーション事象に対応する。これにより、プローブのハイブリダイゼーションの複数の反復ラウンドを実施し、どのプローブが試料中の特定の部位にハイブリダイズするかを決定することが可能になる。これにより、支持体を多重的に解析することが可能になり(例えば、Goransson(Nucl.Acids Res2009 37 e7)に記載されている「コーディング」系を使用)、それによって、少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1000個、少なくとも10000個の遺伝子又はタンパク質に対応する結合部位をマッピングすることが可能になる。
【0021】
いくつかの実施形態では、平面試料は、細胞の懸濁液をフィルタに通すことによって生成され得、細胞はフィルタ上に保持される。この実施形態は、細胞の懸濁液を解析するために利用することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)細胞の懸濁液を多孔質キャピラリ膜を通して濾過し、それによって膜上に細胞を分布させることと、(b)膜の細胞側が平面支持体に面する状態で、膜を支持体上に配置することと、(c)細胞中の核酸の空間関係を保存するように、細胞から支持体中又は支持体上に核酸を移動させることと、(d)多孔質キャピラリ膜及び細胞を支持体から除去することと、(e)支持体に移動された核酸を空間的に解析することと、を含むことができる。本方法の更なる詳細を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
当業者であれば、下記の図面が例示目的のみであることを理解するだろう。図面は、いかなる方法においても本教示の範囲を限定することを意図するものではない。
【
図2A】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2B】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2C】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2D】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2E】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2F】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2G】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2H】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2I】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2J】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2K】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2L】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図2M】本方法が実施され得る、いくつかのやり方を示す。
【
図3】本方法のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを概略的に示す。
【
図4】本方法のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを示す。
【
図5】架橋プローブ、検出プローブ及び標識プローブを使用して、バーコードが支持体上でどのように検出され得るかを示す。
【
図6A】近接アッセイを行うことができる、例示的な方法を示す。
【
図6B】近接アッセイを行うことができる、例示的な方法を示す。
【
図6C】近接アッセイを行うことができる、例示的な方法を示す。
【
図7】蛍光ビオチン化DNAオリゴの組織(A)からアビジンでコーティングしたガラスカバースリップ(B)への移動。A)オリゴのいくつかが依然として存在する、移動後の組織の蛍光画像。B)いくつかのオリゴが移動した(A)に対応する、移動したカバースリップ。
【
図8】異なる細胞株及び組織型の位置を説明するTMAの図。
【
図9】パネルA:近接ライゲーションアッセイによって作成されたレポーター分子を、機能化カバースリップに移動させた後にHCRによって検出した。パネルB:残りのレポーター分子は組織TMAで発色的に染色され、ここではカラーデコンボリューション後のDAB染色のみを示す。スケールバーは両方の画像で1mmである。
【
図10】暗バックグラウンドの輝スポットとして得られた配列決定画像データを示す。
【
図11】移動されたレポーター分子を示す。各レポーター分子は、単一のドットによって表される。画像の下方の8つの円は、TMAに対応する。
【
図12】環状レポーター分子の検出を示す。検出系は、サイクル2、4、6及び8で使用され、サイクル3、5、7及び9は、ストリッピング又は洗浄サイクルを表す。サイクル1は、任意の検出系の注入前の試料領域を示す。
【
図13D】検出されたレポーター分子を示す。各図は、
図11に示す、より大きいサンプリングされた領域のサブセットである、4-FoV領域を表す。13A)検出系1(L-Probe-7-DetA)を使用して同定されたスポット位置。13B)検出系2(L-Probe-8-DetB)を使用して同定されたスポット位置。13C)検出系1及び2を使用して共検出したスポット/レポーター分子。13D)報告された分子に直接コンジュゲートしたフルオロフォアを使用して同定されたスポット位置。
【
図14】細胞を収集するためにフィルタを使用する方法の原理のいくつかを概略的に示す。
【0023】
定義
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用されている専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものに類似する又はそれらと同等である任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験で使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。
【0024】
本明細書で言及されるそのような特許及び刊行物中に開示されるすべての配列を含むすべての特許及び刊行物は、参照により明示的に組み込まれる。
【0025】
数値範囲は、範囲を定義する数を含む。別途示されない限り、核酸は、左から右に5’から3’の方向で記される。アミノ酸配列は、左から右にそれぞれアミノからカルボキシの方向で記される。
【0026】
本明細書に提示される見出しは、本発明の様々な態様又は実施形態を限定するものではない。したがって、すぐ下に定義されている用語は、明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0027】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、2D ED.、John Wiley and Sons、New York(1994)、及びHale & Markham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY、Harper Perennial、N.Y.(1991)は、本明細書で使用される用語の多くの一般的な意味を当業者に提供する。更に、参照を明確かつ容易にするために、特定の用語が以下で定義される。
【0028】
本明細書で使用する場合、「多重化」という用語は、試料中の目的の複数の生物学的特徴、例えば、タンパク質エピトープを同時に検出及び/又は測定することを指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、本明細書では互換的に使用され、当業者であればよく理解している。これらの用語は、抗原に特異的に結合する1つ以上のポリペプチドからなる、タンパク質を指す。抗体の一形態は、抗体の基本構造単位を構成する。この形態は四量体であり、各対が1つの軽鎖及び1つの重鎖を有する2対の同一の抗体鎖からなる。各対では、軽鎖及び重鎖の可変領域は一緒に抗原への結合に関与し、定常領域は抗体のエフェクター機能に関与する。
【0030】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語には、これらに限定されないが、Fab、Fv、scFv、及びFdの断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、ミニボディ、単鎖抗体、並びに抗体の抗原結合部分及び非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含む、抗原への特異的な結合を保持する任意のアイソタイプの抗体又は免疫グロブリン、並びに抗体の断片が挙げられる。Fab’、Fv、F(ab’)2、及び/又は抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片、並びにモノクローナル抗体もこの用語に包含される。抗体は、例えば、Fv、Fab及び(Fab’)2、並びに二機能性(すなわち、二特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al.,Eur.J.Immunol.17,105(1987))、並びに一本鎖(例えば、Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85,5879-5883(1988)及びBird et al.,Science,242,423-426(1988))を含む、様々な他の形態で存在することができ、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。(一般的に、Hood et al.,「Immunology」,Benjamin,N.Y.,2nd ed.(1984)及びHunkapiller and Hood,Nature,323,15-16(1986)を参照されたい)。
【0031】
「特異的結合」という用語は、異なる分子の均質な混合物中に存在する別の結合メンバーに優先的に結合する、結合メンバーの能力を指す。
【0032】
特定の実施形態では、複合体中で特異的に結合する場合、結合メンバー間の親和性は、10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-9M未満、10-11M未満、又は約10-12M未満又はそれ未満のKD(解離定数)によって特徴付けられる。
【0033】
「複数」には、少なくとも2つのメンバーが含まれる。特定の場合では、複数は、少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも100個、少なくとも1000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも106個、少なくとも107個、少なくとも108個、若しくは少なくとも109個、又はそれ以上のメンバーを有してもよい。特定の場合では、複数は、2~100又は5~100個のメンバーを有し得る。
【0034】
本明細書で使用する場合、「標識する」という用語は、部位の存在及び/又は存在量が、結合剤の存在及び/又は存在量を評価することによって決定することができるように、試料中の特定の部位(例えば、使用される結合剤(例えば、抗体)についてのエピトープを含有する部位)に結合剤を結合させる工程を指す。「標識する」という用語は、必要な標識試料が生成される限り、任意の必要な工程が任意の好都合な順序で実施される標識試料を生成するための方法を指す。例えば、いくつかの実施形態では、以下に例示されるように、試料は、支持体上の核酸の分布を決定するために検出することができる標識プローブを使用して標識することができる。
【0035】
本明細書で使用する場合、「平面生体試料」という用語は、細胞、又はタンパク質、核酸、脂質、オリゴ糖/多糖、生体分子複合体、細胞小器官、細胞残渣若しくは分泌物(エキソソーム、微小胞)のような細胞に由来する生体分子の任意の組み合わせを含む、実質的に平坦な、すなわち、二次元の物質(例えば、ガラス、金属、セラミック、有機ポリマーの表面又はゲル)を指す。平面生体試料は、例えば、平面支持体上で細胞を増殖させることによって、例えば遠心により細胞を平面支持体に堆積させることによって、細胞を含有する三次元の物体を切片に切断し、この切片を平面支持体に載置することによって、すなわち、組織切片を生成し、親和剤(例えば、抗体、ハプテン、核酸プローブ)で官能化されている表面上に細胞成分を吸着させ、生体分子をポリマーゲルに導入するか、あるいはそれらを電気泳動的に若しくは他の手段によりポリマー表面上に移動させることによって、作製することができる。細胞又は生体分子は、ホルマリン、メタノール、パラホルムアルデヒド、メタノール:酢酸、グルタルアルデヒド;ビス(スクシンイミジル)スベレート、ビス(スクシンイミジル)ポリエチレングリコールなどの二官能性架橋剤などの任意の数の試薬を使用して固定することができる。この定義は、細胞試料(例えば、組織切片など)、電気泳動ゲル及びそのブロット、ウエスタンブロット、ドットブロット、ELISA、抗体マイクロアレイ、核酸マイクロアレイなどを包含することが意図される。切片を調製するために使用される特定の技術に応じて、平面生体試料は、20~50nm及び最高5~10μmのいずれかの厚さを有し得る。
【0036】
本明細書で使用する場合、「組織切片」という用語は、対象から得られ、任意選択で固定され、切片化され、平面支持体、例えば、顕微鏡スライドガラスの上に載置された組織片を指す。
【0037】
本明細書で使用する場合、「ホルマリン固定され、パラフィン包埋された(formalin-fixed paraffin embedded、FFPE)組織切片」という用語は、対象から得られ、ホルムアルデヒド(例えば、リン酸緩衝生理食塩水中で3%~5%のホルムアルデヒド)又はブアン液にて固定され、ワックスに包埋され、薄い切片に切断され、次いで顕微鏡スライドガラス上に載置された組織片、例えば、生検試料を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「in situ」という語句は、平面生体試料中の特定の位置又は場所を指す。例えば、「試料にin situ結合している結合剤」は、結合剤が平面生体試料中の特定の位置に結合していることを示す。
【0039】
「診断マーカー」は、疾患を検出するため、疾患の進行若しくは治療の効果を測定するため、又は目的とする過程を測定するために有用となる特定の分子特性を有する、体内の特定の生化学物質である。
【0040】
「病状の指標となる」細胞は、組織に存在する場合、組織が位置する(又は組織が得られる)動物が疾患又は障害に罹患していることを示す細胞である。例として、動物の肺組織に1つ以上の乳腺細胞が存在することは、その動物が転移性乳癌に罹患していることの指標である。
【0041】
「相補的部位」という用語は、抗体若しくはアプタマーのエピトープ、又はオリゴヌクレオチドプローブに対して相補的である配列を有する核酸を指すために使用される。具体的には、結合剤が抗体又はアプタマーである場合、結合剤についての相補的部位は、抗体又はアプタマーが結合する試料中のエピトープである。エピトープは、立体構造エピトープであってもよく、又は例えば、アミノ酸配列から構成される線形エピトープであってもよい。結合剤がオリゴヌクレオチドプローブである場合、結合剤の相補的部位は、相補的核酸(例えば、ゲノム中のRNA又は領域)である。
【0042】
本明細書で使用する場合、「エピトープ」という用語は、抗体又はアプタマーによって結合される抗原分子上の構造、例えば、一続きのアミノ酸として定義される。抗原は、1つ以上のエピトープを有することができる。多くの場合、エピトープは、約5つのアミノ酸又は糖のサイズである。当業者であれば、一般に分子の三次元構造全体又は特定の線形配列が抗原特異性の主な基準であり得ることを理解する。
【0043】
診断又は治療の「対象」は、植物、又はヒトを含む動物である。診断又は治療の非ヒト動物対象には、例えば、家畜及びペットが含まれる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「インキュベートする」という用語は、試料中の分子(例えば、エピトープ又は相補的核酸)に対する結合剤の特異的結合に好適である条件下(この条件には、期間、1つ以上の温度、適切な結合緩衝液及び洗浄が含まれる)で試料及び結合剤を維持することを指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、「結合剤」という用語は、試料中の相補的部位に特異的に結合することができる薬剤を指す。例示的な結合剤としては、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、及びアプタマーが挙げられる。抗体又はアプタマーを使用する場合、多くの場合、それらはタンパク質エピトープに結合してもよい。
【0046】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのポリマーを説明するために本明細書では互換的に使用されており、例えば、約2塩基を超える、約10塩基を超える、約100塩基を超える、約500塩基を超える、1000塩基を超える、最大約10,000塩基の、又はそれ以上の塩基から構成されるヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを指し、それらは、酵素的又は合成的に製造することができ(例えば、米国特許第5,948,902号及びそこで引用された参考文献に記載のPNA)、2つの天然に存在する核酸のものに類似する配列特異的な様式で天然に存在する核酸にハイブリダイズすることができ、例えば、ワトソン-クリック塩基対形成相互作用に関与することができる。天然に存在するヌクレオチドには、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシル(それぞれ、G、C、A、T、及びU)が含まれる。DNA及びRNAは、それぞれ、デオキシリボース及びリボース糖骨格を有し、PNAの骨格は、ペプチド結合によって結合した反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位からなる。PNAでは、種々のプリン及びピリミジン塩基が、メチレンカルボニル結合によりその骨格に結合されている。しばしばアクセス不可能なRNAと称される、ロックド核酸(locked nucleic acid、LNA)は、修飾されたRNAヌクレオチドを含むRNA分子である。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’酸素及び4’炭素を結合する追加の架橋で修飾されている。架橋は、しばしばA型二本鎖に見られる、3’-エンド(North)立体構造においてリボースを「ロック」する。LNAヌクレオチドは、所望であればいつでも、オリゴヌクレオチド中のDNA又はRNA残基と混合することができる。「非構造化核酸」又は「UNA」という用語は、低下した安定性で互いに結合する非天然のヌクレオチドを含有する核酸である。例えば、非構造化核酸は、G’残基及びC’残基を含有し得、これらの残基は、低下した安定性で互いに塩基対形成するが、それぞれ、天然に存在するC及びG残基と塩基対形成する能力を保持する、G及びCの天然に存在しない形態、すなわち、類似体に対応する。非構造化核酸は、US2005/0233340に記載されており、これは、UNAの開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
本明細書で使用する場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、少なくとも10ヌクレオチド、例えば、少なくとも15ヌクレオチド又は少なくとも30ヌクレオチドの多量体を指す。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、15~200ヌクレオチド又はそれ以上の長さの範囲内であってもよい。本明細書で使用される任意のオリゴヌクレオチドは、G、A、T及びC、又は相補的なヌクレオチドと確実に塩基対を形成することができる塩基から構成されてもよい。そのような塩基の例としては、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-グアニン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、2-デアザ-2-チオ-グアノシン、2-チオ-7-デアザ-グアノシン、2-チオ-アデニン、2-チオ-7-デアザ-アデニン、イソグアニン、7-デアザ-グアニン、5,6-ジヒドロウリジン、5,6-ジヒドロチミン、キサンチン、7-デアザ-キサンチン、ヒポキサンチン、7-デアザ-キサンチン、2,6ジアミノ-7-デアザプリン、5-メチル-シトシン、5-プロピニル-ウリジン、5-プロピニル-シチジン、2-チオ-チミン、又は2-チオ-ウリジンが挙げられるが、他にも多くのものが知られている。上記のように、オリゴヌクレオチドは、例えば、LNA、PNA、UNA、又はモルホリノオリゴマーであってもよい。本明細書で使用するオリゴヌクレオチドは、天然若しくは非天然のヌクレオチド、又は結合を含み得る。
【0048】
本明細書で使用する場合、蛍光シグナルを読み取るという文脈では、「読み取る」という用語は、走査又は顕微鏡法によって画像を得ることを指し、この場合、画像は、視野内の蛍光のパターン及び蛍光強度を示す。
【0049】
本明細書で使用する場合、例えば、蛍光ヌクレオチドの付加によって作成される蛍光シグナルを読み取るという文脈では、「によって作成されるシグナル」という用語は、蛍光ヌクレオチドから直接放射されるシグナル、又は別の蛍光ヌクレオチドへのエネルギー移動を介して(すなわち、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって)間接的に放射されるシグナルを指す。
【0050】
本明細書で使用する場合、「切断可能なリンカー」という用語は、特定の刺激、例えば、TCEP又はDTTなどの還元剤によって選択的に切断され得る結合を含有する、リンカーを指す。
【0051】
本明細書で使用する場合、「特異的結合対」という語句は、互いに結合特異性を有する「第1の結合メンバー」及び「第2の結合メンバー」を含む。結合対の結合メンバーは、天然由来であってもよく、又は全体的若しくは部分的に合成的に生成されてもよい。結合メンバーは、結合対の他の結合メンバーの特定の空間及び極性構成に特異的に結合し、したがって相補的である、その表面上の領域又は空洞を有する。特異的結合対の例は、抗原-抗体、ビオチン-アビジン、ホルモン-ホルモン受容体、受容体-リガンド、互いにハイブリダイズする核酸、及び酵素-基質である。
【0052】
本明細書で使用する場合、「結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲート」又は「結合剤コンジュゲート」という用語は、非共有結合的に(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン相互作用を介して)又は共有結合的に(例えば、「クリック」反応(例えば、Evans Aus.J.Chem.2007 60:384-395を参照)などを介して)、結合剤がその結合部位にまだ結合できるように、一本鎖オリゴヌクレオチドに結合している、結合剤、例えば、抗体、アプタマー又はオリゴヌクレオチドプローブを指す。核酸及び結合剤は、システイン反応性マレイミド又はハロゲン含有基を使用する方法を含む、いくつかの異なる方法を介して結合され得る。結合剤及びオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5’末端の近位若しくは5’末端で、オリゴヌクレオチドの3’末端の近位若しくは3’末端で、又はその間の任意の箇所で結合されてもよい。結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲート中の結合剤とオリゴヌクレオチドの間の結合は、核酸反応生成物が切断可能なリンカーの切断を介して対応する結合剤から放出され得るように、切断可能であり得る。以下に例示されるように、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、単一のオリゴヌクレオチドから構成され得、ポリヌクレオチドの1つの領域(15~50塩基長の領域にあり得るオリゴヌクレオチドの「プローブ」部分は、試料中の標的核酸(例えば、RNA)にハイブリダイズし、他の領域は、その標的にハイブリダイズせず、本明細書中に記載される他の反応に自由に関与する。
【0053】
結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲート中の結合剤に結合するオリゴヌクレオチドは、本明細書で「第1のオリゴヌクレオチド」と称され得る。
【0054】
本明細書で使用する場合、「近接アッセイ」という語句は、2つの結合事象が近接する場合にのみ、新しいDNA生成物(例えば、ライゲーション生成物又はプライマー伸長生成物)が生成される、アッセイを指す。近接アッセイでは、オリゴヌクレオチドは、抗体、アプタマー又はオリゴヌクレオチドプローブなどの標的特異的結合剤に結合する。標的分子がDNA又はRNAである場合、オリゴヌクレオチドは、標的核酸に相補的な配列を有することができる。結合剤が試料中の近位にある部位に結合する場合、これらの結合剤にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチド(「第1の」オリゴヌクレオチド)は近接し、これにより、新しいDNA生成物の生成を可能にする。新規のDNA生成物は、様々な異なる方法によって生成され得る。例えば、新規のDNA生成物は、1つの第1のオリゴヌクレオチドと別のオリゴヌクレオチドの間の最初の酵素反応によって(例えば、オリゴヌクレオチドの一端を近傍のオリゴヌクレオチドにライゲーションする反応、近傍のオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してオリゴヌクレオチドの一端を伸長する反応、又は鋳型化されたギャップフィル/ライゲーション反応を介してオリゴヌクレオチドの一端を近傍のオリゴヌクレオチドに結合する反応などによって)生成され得る。2つの第1のオリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションすることを含む例を、
図6Aに示す。他の実施形態では、新規のDNA生成物は、隣接する第1のオリゴヌクレオチドによって鋳型化され得るが、2つの第1のオリゴヌクレオチド間のライゲーションを含まない。例えば、
図6Bを参照されたい。
図6Cは、2つの第1のオリゴヌクレオチド又は近接する2つのオリゴヌクレオチドを一緒に結合することによって生成される最初の生成物(
図6B)によって鋳型化される、別の生成物(「レポータープローブ」と称される)を示す。
図6A~
図6Cでは、ライゲーション結合部はxで示される。核酸反応生成物の検出は、対応する結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートが近接する部位に結合していることを示す。したがって、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを試料に結合させ、次いで、コンジュゲートが試料に結合している間に反応(例えば、ライゲーション、ギャップフィル/ライゲーション及び/又はプライマー伸長反応)を行う。生成物は、2つの結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートが近接する部位に結合した場合にのみ、生成される。近接アッセイの特定の非限定的な例としては、近接伸長アッセイ(proximity extension assay、PEA)及び近接ライゲーションアッセイ(proximity ligation assay、PLA)が挙げられる。明確にするために、近接アッセイは、第1のオリゴヌクレオチド(すなわち、結合剤に付着しているオリゴヌクレオチド)間で起こる最初の酵素反応(例えば、ライゲーションなど)、及び任意選択で、鋳型として最初の反応の生成物を使用して互いに酵素反応する(例えば、互いにライゲーションする)他のオリゴヌクレオチド(例えば、レポーターオリゴヌクレオチド)間で起こる第2の酵素反応を含み得る。あるいは、近接アッセイは、互いに近接する第1のオリゴヌクレオチド、及びスプリントとして作用し得るか又はオーバーハングを提供し得る1つ以上の他のオリゴヌクレオチドによって鋳型化される反応において、互いに酵素反応する(例えば、互いにライゲーションする)他のオリゴヌクレオチド(例えば、レポーターオリゴヌクレオチド)間の最初の酵素反応を含み得る。例が
図6A~
図6Cに示されているが、他の例も明らかであろう。
【0055】
本明細書で使用する場合、「近接アッセイ反応生成物」という語句は、近接アッセイの核酸の生成物を指す。以下に説明されるように、このような生成物は、2つのオリゴヌクレオチド又はそれらの相補配列由来の配列を含み、これらの配列は、近接結合事象の存在下でのみ一緒に結合される。近接アッセイ反応生成物の正確な性質は、アッセイがどのように実施されるかに応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、2つの第1のオリゴヌクレオチドを(ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーション反応によって)一緒に結合する最初の反応の生成物であり得る。これらの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、一緒に結合された2つのオリゴヌクレオチドと同じ配列を含む。他の実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、オリゴヌクレオチドの3’末端を互いに伸長させる最初の反応の生成物であってもよい。これらの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、オリゴヌクレオチドの一方と同じ配列及び他方の相補配列を含む。いくつかの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、最初の生成物のコピーであってもよい。これらの実施形態では、レポーターオリゴヌクレオチドは、
図6B及び
図4に概略的に示されるように、最初の生成物にハイブリダイズされ得、次いで一緒にライゲーションされ得る。他の実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、
図6Cに示されるように、2つの近接する第1のオリゴヌクレオチドによって鋳型化される反応において互いに結合される、2つ又は3つのオリゴヌクレオチドの配列を含み得る。
【0056】
「近接伸長アッセイ」という語句は、一方のオリゴヌクレオチドが他方を鋳型として使用する、プライマー伸長に依存する近接アッセイを指すことが意図される。このアッセイでは、近接する部位に結合している2つの結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートにコンジュゲートされているオリゴヌクレオチドは、3’末端で相補的配列を介して互いにハイブリダイズする。次いで、近接伸長アッセイは、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの3’末端を、例えば、ポリメラーゼを使用して、及びハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して伸長させ、核酸反応生成物を生成することを包含する。得られた核酸反応生成物(又は、それらの相補配列)は、対応する結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートが近接する部位に結合していることを示す。PEAの特定の詳細は、Di Giusto et al.(2005),Nucleic Acids Research,33(6,e64):1-7、Lundberg et al.(2011)and Nucleic Acids Research,Vol.39,No.15、及びGreenwood et al.(2015),Biomolecular Detection and Quantification,Vol.4:10-16に記載されている。
【0057】
「近接ライゲーションアッセイ」又はPLAという語句は、1つのオリゴヌクレオチドが別のオリゴヌクレオチドにライゲーションされる近接アッセイを指すことが意図される。このようなライゲーションは、一本鎖若しくは二本鎖オリゴヌクレオチドの平滑末端ライゲーション、一本鎖オリゴヌクレオチドのスプリント介在ライゲーション、又は相補的オーバーハング、例えば、制限酵素認識部位を含むオーバーハングを有する二本鎖オリゴヌクレオチドのライゲーションを含み得る。特定のスプリント介在ライゲーションでは、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの2つの末端の間にギャップを残すようにスプリントにハイブリダイズする。このような場合、近接ライゲーションアッセイは、「ギャップフィル」反応においてポリメラーゼを使用してギャップを封止し、次いで伸長されたオリゴヌクレオチドの3’末端を他のオリゴヌクレオチドの5’末端にライゲーションすることを含む。オリゴヌクレオチドをライゲーションするために使用される方法にかかわらず、ライゲーションから生じる核酸反応生成物が解析される。得られた核酸反応生成物は、対応する結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートが近接する部位に結合していることを示す。PLAの特定の詳細は、Fredriksson et al.(2002),Nature Biotechnology,20:473-477、Gullberg et al.(2004),PNAS,101(22):8420-8424、Wang et al.(2021),Applied Microbiology and Biotechnology,Vol.105,pages923-935、Greenwood et al.(2015),Biomolecular Detection and Quantification,Vol.4:10-16に記載されている。
【0058】
本明細書で使用する場合、「空間関係を保存する」という語句は、核酸反応生成物が平面生体試料から支持体にどのように移動されるかを特徴付ける。特に、核酸反応生成物が空間関係を保存するように平面生体試料から支持体に移動される場合、平面生体試料中に存在する異なる核酸反応生成物のx-y面における相対位置は、核酸反応生成物が支持体上に移動される場合、実質的に変化しない。例えば、支持体上の異なる核酸反応生成物の相対位置は、移動中の核酸反応生成物の横方向への拡散のために、平面生体試料中の対応する相対位置からわずかにずれる可能性がある。したがって、支持体上の核酸反応生成物の位置は、平面生体試料上の核酸反応生成物の位置を示す。分子(例えば、反応生成物又はレポータープローブ)は、最も一般的には、支持体を試料の上に配置し(又はその逆)、分子を支持体上に指向的に移動させることによって、試料中の分子の空間関係を保存するように、平面試料から平面支持体に移動され、その結果、分子は、試料から(ほぼ)互いに平行に移動して支持体上に移動し、そこで付着する。平面支持体をイメージングする場合、移動した分子は、元の試料と比較して鏡像として位置付けられる。例示的な実施形態では、これは、試料が基材とスライドとの間に挟まれるように、スライド上に載置された試料の上に平面支持体(例えば、カバースリップ又は他のスライド)を配置することによって行うことができる。分子は、例えば、拡散を介して移動することができるが、移動は、静電気力、電気力、磁力又は他の力によって補助することができる。いくつかの実施形態では、小さな間隙(例えば、1mm未満、0.5mm未満、0.2mm未満、100μm未満、50μm未満、10μm未満、5μm未満又は1μm未満)があり得、この間隙は、場合によっては、移動緩衝液(例えば、低塩緩衝液)で充填され得る。間隙はまた、表面間に位置付けられた物理的構造、スペーサ又はビーズを使用して維持されてもよい。
【0059】
別の例示的な実施形態では、平面試料から移動される分子は、平面試料が位置する支持体に移動される。
【0060】
標的部位の位置に関して本明細書で使用する場合、「近位」という用語又は「近位に位置する標的部位」という語句は、標的部位に結合する結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートに付着したオリゴヌクレオチドが、例えば、ハイブリダイゼーション又はライゲーションによって互いに相互作用するように、標的部位が十分に近いことを意味する。標的部位は、同じ分子上、例えば、1つのタンパク質の2つのエピトープ上にあり得る。標的部位はまた、異なる分子上、例えば、2つの異なるタンパク質の2つのエピトープ上にあり得る。標的部位は、異なる種類の分子、例えば、タンパク質、RNA、DNA、脂質、炭水化物などの任意の組み合わせ上にあり得る。「近位に位置する標的部位」と呼ぶことができる部位間の距離は、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートに付着したオリゴヌクレオチドの長さ、及び結合剤とオリゴヌクレオチドの間の任意のリンカーの存在に依存する。通常、近位に位置する標的部位は、50nm未満、例えば、30nm未満、20nm未満、10nm未満、又は5nm未満の距離に位置する。
【0061】
本明細書で使用する場合、「平面支持体」という語句は、解析された平面生体試料からの核酸反応生成物が移動される支持体を指す。多種多様な異なる基材を、平面支持体として使用することができる。平面支持体は、ガラス、変性及び/又は機能化ガラス、ヒドロゲル、フィルム、膜、プラスチック(例えば、アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、Teflon(登録商標)、環状オレフィン、ポリイミドなどを含む)、ナイロン、セラミック、樹脂、Zeonor、シリカ又はシリカ系材料(シリコン、シリコンウェハ及び変性シリコンを含む)、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバー束、並びにポリマー(例えば、ポリスチレン、環状オレフィンコポリマー(cyclic olefin copolymer、COC)、環状オレフィンポリマー(cyclic olefin polymer、COP)、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリカーボネート)などの任意の好適な支持体材料から作製され得る。
【0062】
本明細書で使用する場合、「伸長する」という用語は、ライゲーション反応(別のオリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの末端にライゲーションされる)、プライマー伸長反応(オリゴヌクレオチドがポリメラーゼを使用して伸長される)、ギャップフィル/ライゲーション反応、又はこれらの任意の組み合わせを指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、「放出」という用語は、支持体に繋留されていない溶液中に分子を配置する事象を指す。放出は、共有結合の切断(化学的に誘導され得るか、光により誘導され得るか、又は酵素的に誘導され得る)によって、非共有結合の切断によって、かつ別の分子からの分子の脱ハイブリダイズ(例えば、熱によるか、又は変性剤を使用することによる)によって行われ得る。
【0064】
本明細書で使用する場合、「三次元支持体」という語句は、DNA分子が移動し得る三次元の透過性固体を指すことが意図される。多くの場合、三次元支持体は、架橋マトリックス、例えば、ゲルであり得る。
【0065】
本明細書で使用する場合、「多孔質キャピラリ膜」は、膜の厚さに及ぶ、すなわち、膜の一方の側から他方の側にわたって比較的密に充填された個々のキャピラリを有し、これにより、膜の一方の側から他方の側に液体を通過させるが、粒子は通過させない膜を指す。多孔質キャピラリ膜の例には、例えば、陽極酸化アルミニウム膜(下記参照)、ナノチャネルガラス膜、トラックエッチング膜、及びポリテトラフルオロエチレンが含まれるが、これらに限定されない。ナノチャネルガラス膜はガラス製であり、15マイクロメートル~15ナノメートルの直径を有する高密度の均一なチャネルを有する(例えば、Tonucci et al.,Advances in Nanophotonics II,AIP Conference Proceedings,2007 959:59-71、Pearson et al,Science1995 270:68-70及びTonucci et al.,Science1992 258:783-785,並びに米国特許第5,306,661号;同第5,332,681号;同第5,976,444号;同第6,087,274号;同第6,376,096号;同第6,483,640号及び同第6,599,616号を参照(これらは、参照により組み込まれる))。トラックエッチング膜は、荷電粒子衝撃(又は、照射)及び化学エッチングの組み合わせによって作製された0.01μm~30μmの範囲の直径を有する孔を含有する透明ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、又はポリイミドなど)から作製される。対象の他の多孔質膜としては、非晶質フルオロポリマー、例えば、NAFION(商標)、TEFLON AF(商標)、FEFLON FEIP(商標)、及びCYTOP(商標)(DuPont Fluoroproducts,Fayetteville,NC)挙げられるが、これらに限定されない。認識されるように、多孔質キャピラリ膜は、膜が作製される材料とは異なる表面(例えば、コーティング表面又は化学的に修飾された表面)を有していてもよい。例えば、多孔質キャピラリ膜の表面は、変化した電荷特性、又は変化した疎水性若しくは親水性特性を有していてもよい。いくつかの実施形態では、アミノシラン、ポリ-リジン、又は別の化合物で表面をコーティングして、細胞を表面に保持するのに役立つ正電荷を提供することができる。あるいは又は更に、表面は、その中に堆積した金属(例えば、チタニウム、金)の薄層を有していてもよく、フィルタの表面特性を修飾する他の薬剤に結合され得る。
【0066】
本明細書で使用する場合、「陽極酸化アルミニウム膜」という用語は、特定の酸性媒体中でAlが陽極酸化されるときに生成される、標準的な自己組織化ナノ多孔質膜構造を含む。堆積物の電圧、酸のタイプ、及び他のパラメーターによって、膜中の孔の内部直径、膜中の隣接した孔の中心間の距離、及び膜中の隣接した孔の縁間の距離を、制御することができる。陽極酸化アルミニウム膜は湿潤時には実質的に透明である。陽極酸化アルミニウム膜、その特性、及びそのような膜の作製方法は、これらに限定されないが、Li et al(Chem.Mater1998 10:2470-2480),Santos et al(Trends on Analytical Chemistry2013 44:25-38),Ingham et al(Biotechnology Advances30 2012 1089-1099)及びPoinern et al.(Materials2011 4:487-526(これらは、その教示について参照により本明細書に組み込まれる))を含む様々な刊行物において詳細に概説されている。陽極酸化アルミニウム膜は、例えばSPI Supplies(West Chester,PA)から、また他の販売業者、例えばSykera Technologies Inc.(Longmont,CO)及びSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から、ANOPORE(商標)という商品名で市販されており、支持リングと共に購入することができる。
【0067】
用語の他の定義は、明細書全体を通して現れ得る。
【発明を実施するための形態】
【0068】
一般原理
本明細書では、とりわけ、平面生体試料を解析するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含むコンジュゲート(すなわち、抗体オリゴヌクレオチドコンジュゲートなどのオリゴヌクレオチド)を、オリゴヌクレオチド又はコンジュゲートが試料中又は試料上の部位に特異的に結合する条件下で、平面生体試料と接触させることと、オリゴヌクレオチドをin situで放出及び/又は伸長させ、レポータープローブを生成するための1つ以上の工程を実施することと、試料中のレポータープローブの空間関係を保存するように、オリゴヌクレオチドのアレイを含まない平面支持体に試料からレポータープローブを移動させることと、支持体上のレポータープローブを検出することと、を含み得る。以下でより詳細に記載されるように、本方法は、様々な異なる方法で実施することができる。本方法の一般原理のいくつかを
図1に示す。
【0069】
図2A~
図2Mに示すように、本方法は、いくつかの異なる方法で実施することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチドが試料中の内在性RNA又はDNAにハイブリダイズする条件下で、オリゴヌクレオチドを試料とハイブリダイズさせることと、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーションを介して、RNA又はDNA中の隣接部位にハイブリダイズされる任意のオリゴヌクレオチドを一緒に結合することと、を含み得る。他の実施形態では、試料は、近接ライゲーションアッセイからのライゲーション生成物を含む。他の実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチドがライゲーション生成物にハイブリダイズする条件下で、オリゴヌクレオチドを試料とハイブリダイズさせることと、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーション反応を介して、ライゲーション生成物中の隣接部位にハイブリダイズされる任意のオリゴヌクレオチドを一緒に結合させることと、を含み得る。これらの実施形態のいくつかでは、オリゴヌクレオチドはエキソヌクレアーゼ感受性であってもよいが、レポータープローブは(それらが一緒に結合された後)エキソヌクレアーゼ耐性である。これらの実施形態では、本方法は、試料をエキソヌクレアーゼで処理し、ライゲーションされていないオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖核酸を除去することを更に含む。示されるように、「放出」という用語は、支持体に移動することができるレポータープローブを産生する切断事象又は脱ハイブリダイゼーション事象を指すことが意図される。
【0070】
いくつかの実施形態では、本方法は、抗体が試料中又は試料上の部位に結合する条件下で、組織試料を抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートと接触させることを含んでもよく、本方法は、コンジュゲート抗体からオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの伸長生成物を放出して、レポータープローブを産生することを更に含んでもよい。任意の実施形態では、放出することは、生体試料が支持体に面しながら、生体試料を支持体と接触させることと、次いで試料を加熱することと、によって行われてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、レポータープローブは、ライゲーション、ギャップフィル又はプライマー伸長反応を介して生成される。
【0072】
いくつかの実施形態では、解析工程は、顕微鏡法によって行われてもよい。これらの実施形態では、本方法は、1つ以上の標識されたオリゴヌクレオチドをレポータープローブに直接的に又は間接的にハイブリダイズさせ、次いで標識されたオリゴヌクレオチドの結合パターンを顕微鏡法によって解析することを含み得る。いくつかの実施形態では、標識プローブは、レポータープローブにおけるライゲーション結合部又は伸長結合部にハイブリダイズする。
【0073】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)試料に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、近接アッセイ反応生成物を生成することと、(b)試料中の近接アッセイ反応生成物の空間関係を保存するように、核酸反応生成物を支持体中又は支持体上に移動させることと、(c)支持体中又は支持体上の近接アッセイ反応生成物を検出することと、を含み得る。
【0074】
上記及び下記に示すように、近接アッセイは、ライゲーション、プライマー伸長、ギャップフィル/ライゲーション、又はこれらのハイブリッドを含むことができ、最初の若しくは「第1」の生成物又は第1の生成物の相補配列(最初の生成物を鋳型として使用して、2つのレポーターオリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションすることによって作製することができる)のいずれかを支持体に移動させることができる。例えば、1つの非限定的実施形態では、本方法は、試料に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、第1の生成物を生成することと、第1の生成物を支持体に移動させることと、を含むことができる。第1の生成物は、近接ライゲーションアッセイ又は近接伸長アッセイを介して生成され得る。
【0075】
近接ライゲーションアッセイは、スプリントを使用する結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドの鋳型化ライゲーションを含み得る。ライゲーションは、オリゴヌクレオチドの一方の3’末端を伸長して、それを他方のオリゴヌクレオチドの5’末端に隣接させることを含んでも含まなくてもよい。近接伸長アッセイは、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドの相補的3’末端をハイブリダイズさせることと、他のハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してオリゴヌクレオチドの3’末端を伸長させることと、を含み得る。
【0076】
第1の生成物は、支持体への移動の前に結合剤から放出され得る、例えば、切断され得るか又は脱ハイブリダイズされ得る。
【0077】
場合によっては、本方法は、(i)結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドを一緒にライゲーション及び/又は伸長させて、第1の生成物を生成することと、(ii)第1の生成物を鋳型として使用して一対のテール付加検出オリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションして、第2の生成物を生成することと、を含む工程(a)を含むことができ、(i)及び(ii)は順次又は同じ工程で行われ、工程(b)は、第2の生成物を支持体上に移動させることを含む。
【0078】
本方法の一実施態様の一例を
図3に示す。
図3に示すように、本方法は、組織切片を複数の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートと結合させることと、結合したコンジュゲートに対してin situで近接アッセイを実施することと、を含み得る。示されるように、コンジュゲートの結合剤部分は、抗体であり得る。しかしながら、他の実施形態では、結合剤は、アプタマー又はオリゴヌクレオチドプローブであってもよい。近接アッセイは、様々な異なる方法、例えば、近接ライゲーションアッセイ(近接する部位に結合するコンジュゲート中のオリゴヌクレオチドの末端が互いにライゲーションされる、第1の生成物をもたらす)、又は近接伸長アッセイ(一方又は両方のオリゴヌクレオチドが他方を鋳型として使用して伸長される、第1の生成物をもたらす)を使用して行うことができる。いずれの場合でも、第1の生成物は、それらが繋留されている結合剤から放出され得、次いで、工程(c)では、近接アッセイ反応生成物として支持体に移動され得る。これらの実施形態では、工程(c)で支持体に移動された近接アッセイ反応生成物は、第1の生成物である。他の場合では、第1の生成物をスプリントとして使用して、一対のテール付加検出オリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションし、第2の生成物を作製することができる。これらの実施形態では、工程(c)で支持体に移動された近接アッセイ反応生成物は、第2の生成物である。示されるように、近接アッセイ反応生成物は、x-y面におけるそれらの空間関係を保存するように支持体に移動され、次いで、組織切片は支持体から除去される。この方法では、近接アッセイ反応生成物は支持体に繋留され、次いで、例えば、標識プローブを繋留された近接アッセイ反応生成物に(直接的に又は間接的に)ハイブリダイズさせ、その間にそれらを支持体上に置き、標識パターンを顕微鏡法によって解析することによって、支持体上で検出される。支持体は、スライド(コーティングされていてもよい)などの平面基材、又はゲルなどの三次元基材であってもよい。基材が平面基材である場合、近接アッセイ反応生成物は基材上にある。基材が三次元基材である場合、近接アッセイ反応生成物は基材中にある。
【0079】
図4は、近接アッセイがどのように実行され得るかの例を示す。上記のように、近接アッセイは、多くの異なる方法で行うことができる。示される実施形態では、近位部位に結合される2つの結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドは、一緒にライゲーションされて、第1の生成物を生成し得る。このライゲーション反応は支えられ得るが、そうである必要はない。本方法のこの実施形態は、近接アッセイ反応生成物を生成するための鋳型として第1の生成物を使用して、一対のテール付加レポーターオリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションすることを含んでもよい。これらの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、工程(c)で支持体に移動される。
【0080】
図5は、例示的な検出方法を示し、その詳細は以下でより詳細に提供される。
【0081】
支持体上でシグナルを生成する部位は、平面生体試料中の部位に対応する。したがって、核酸反応生成物が支持体上で結合している部位の解析を、組織試料中の部位にマッピングすることができる。したがって、とりわけ、支持体中又は支持体上の異なる核酸反応生成物の位置を使用して、1)例えば、同じタンパク質上の異なる部位に結合する抗体を使用して、特定の1つ以上のタンパク質が位置する場所を決定することができ、2)例えば、異なるタンパク質に結合する抗体を使用して、タンパク質-タンパク質相互作用が起こる場所を同定することができ、かつ/又は3)例えば、タンパク質中の修飾部位に結合する一方の抗体及びタンパク質中の異なる若しくは非修飾部位に結合する他方の抗体を使用して、翻訳後修飾を決定することができる。他の有用性(例えば、RNAのマッピング、タンパク質-RNA相互作用、タンパク質-DNA相互作用など)は、容易に明らかである。
【0082】
本発明の方法は、いかなる核酸増幅工程(例えば、PCR又はローリングサークル増幅)も含まず、レポータープローブ/反応生成物は、試料の1つの領域から、次いで試料の別の領域などから分子を移動させることなく、試料から支持体にまとめて、すなわち、一緒に同時に移動される。この方法は、配列決定を含まず、空間バーコード、すなわち、x-y面内の座標に対応する配列、又はそのアレイ(アレイの各要素が、アレイ上のその位置を特定する配列を有する)を有するオリゴヌクレオチドを利用しない。移動された分子(支持体又は他のもの)に対して近接アッセイは行われない。むしろ、検出は、移動された分子への標識プローブのハイブリダイゼーション、及び例えば顕微鏡法によるイメージングによって行われる。明確にするために、本方法で使用される平面試料は液体試料ではない。最も一般的には(常にではないが)、試料は組織切片である。レポータープローブ/反応生成物のいずれも環状ではない。むしろ、それらは線形であり、多くの場合、エキソヌクレアーゼ分解から保護され、支持体に付着することができるように、一方の末端に親和性基を有し、他方の末端は保護されている。明確にするために、試料に対して内在性である分子(例えば、RNA)(すなわち、「生物学的分子」)は、支持体に移動されないか、又は支持体上で解析されない。むしろ、合成的に作製された分子(例えば、オリゴヌクレオチド、又はその切断、ライゲーション若しくは伸長生成物)は移動され、解析される。
【0083】
例示的な実施形態では、本方法の最初の工程は、オリゴヌクレオチドの対を一緒に結合し得る。これらの実施形態では、オリゴヌクレオチドの一方は、一方の末端にビオチン基を含み、他方は、他方の末端にエキソヌクレアーゼ耐性にする改変を含む。非ライゲーション形態では、両方のオリゴヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼ感受性である。しかし、それらが一緒にライゲーションされる場合、ライゲーション生成物はエキソヌクレアーゼ耐性である。このライゲーション生成物は、ストレプトアビジン又はアビジンでコーティングされた支持体に移動され、これに生成物が付着する。バックグラウンドを減少させるために、(ライゲーション後)試料を1つ以上のエキソヌクレアーゼで処理してもよく、かつ/又は(生成物が支持体上に移動された後)基材を1つ以上のエキソヌクレアーゼで処理してもよい。
【0084】
任意の実施形態では、本方法は、DNA修飾酵素、例えば、リガーゼ、キナーゼ、エキソヌクレアーゼ、ターミナルトランスフェラーゼ、デアミナーゼ、デグリコシラーゼ、メチラーゼ、ホスファターゼを使用して、オリゴヌクレオチド、その伸長生成物、又はレポーター分子を修飾することと、必要に応じて、移動中若しくは移動後にそれを化学的部分又は結合剤などにin situで結合することと、を更に含み得る。
【0085】
結合剤
結合剤は、抗体又は抗体の抗原結合断片、例えば、Fab、Fv、scFv、F(ab’)2、及びFdであり得る。結合剤はまた、アフィボディ又は類似の親和性タンパク質のような親和性のために発展した足場タンパク質であってもよい。
【0086】
場合によっては、抗原に対する抗体は、モノクローナル抗体である。
【0087】
一実施形態では、抗原に対する抗体は、分割ポリクローナル抗体である。分割ポリクローナル抗体は、抗原に対するポリクローナル抗血清を生じさせ、抗血清を2つの部分に分割することによって生成される。特異的配列を有するオリゴヌクレオチドは、ポリクローナル抗血清の一部分において抗原に対する抗体にコンジュゲートされ、異なる特異的配列を有するオリゴヌクレオチドは、他の部分において抗原に対する抗体にコンジュゲートされる。
【0088】
結合剤はまた、タンパク質、炭水化物、又は小分子に特異的に結合するアプタマーであってもよい。
【0089】
更に、結合剤は、標的配列、例えば、RNA又はDNA中の特定の標的配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチド結合剤は、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、又はリボソームRNA(rRNA)などの標的RNAに特異的に結合することができる。オリゴヌクレオチド結合剤はまた、染色体DNA又は染色体外DNAなどの標的DNAに特異的に結合することができる。染色体外DNAは、ミトコンドリアDNA又は葉緑体DNAなどの細胞小器官DNAであり得る。
【0090】
結合標的部位
結合剤は、タンパク質、RNA、DNA、炭水化物、プロテオグリカン、脂質、及び他の生体分子上の部位などの結合標的部位に特異的に結合することができる。
【0091】
結合剤が結合する部位は、同じタンパク質上にあっても異なるタンパク質上にあってもよい。例えば、結合剤は、同じタンパク質中の異なるエピトープに結合し得る。場合によっては、近接アッセイで使用される結合剤のうちの1つは、翻訳後修飾されていないタンパク質中の部位に結合し得るが、他の結合剤は、翻訳後修飾されている部位の同じタンパク質に特異的に結合し得る。翻訳後修飾は、例えば、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、ニトロシル化、メチル化、アセチル化、及び脂質化であり得るが、多くの他の種類の翻訳後修飾が公知である。
【0092】
上記のように、RNA結合標的は、mRNA、tRNA、非コードRNA、又はrRNAを含む任意の種類のRNAであり得る。
【0093】
また、DNA結合標的は、染色体DNA又は染色体外DNAであり得る。染色体外DNAは、ミトコンドリアDNA又は葉緑体DNAなどの細胞小器官DNAであり得る。
【0094】
場合によっては、オリゴヌクレオチドプローブは、DNAにおける変異を検出するために使用され得る。このような場合、標的DNAは、組織及び他の分子を破壊することなく、一本鎖に変換される。例えば、DNA分子中の特異的標的は、ニッキング酵素又はCRISPRベースのターゲティングを使用することによって一本鎖状態に変換することができる。このようにして生成された一本鎖DNAを、例えば3’又は5’特異的エキソヌクレアーゼを用いて消化して、変異の解析のために標的DNAの一方の鎖のみを残すことができる。
【0095】
標的分子はまた、ウイルス起源又は細菌起源であり得る。
【0096】
近接アッセイ
上記及び下記に示すように、近接アッセイは、様々な異なる方法で行われることができ、その方法は、ライゲーション、伸長、又はギャップフィル/ライゲーションなどを含むことができる。場合によっては(
図4に示すように)、本方法は、(i)結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドを一緒にライゲーション及び/又は伸長させて、第1の生成物を生成することと、(ii)第1の生成物を鋳型として使用して一対のテール付加レポーターオリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションして、近接アッセイ反応生成物を生成することと、を含む工程(a)を含むことができ、(i)及び(ii)は順次又は同じ工程で行われる。他の実施形態では、工程(a)は、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドをライゲーション及び/又は伸長して、近接アッセイ反応生成物を生成することを含み得る。これらの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、支持体への移動の前に結合剤から切断され得る。
【0097】
近接ライゲーションアッセイ
いくつかの実施形態では、工程(a)はPLAを含む。任意の好適な方法を使用して、PLA中の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートにコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドをライゲーションすることができる。例えば、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲート由来のオリゴヌクレオチドは、核酸の一本鎖末端の非鋳型化ライゲーション、核酸の二本鎖末端の非鋳型化ライゲーション、スプリントを使用する鋳型化ライゲーション、又は相補的オーバーハングを使用する二本鎖核酸のオーバーハング介在ライゲーションを介して、一緒にライゲーションされ得る。
【0098】
一実施形態では、PLAは、生体試料を、第1の標的オリゴヌクレオチドを含む第1の標的特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲート及び第2の標的オリゴヌクレオチドを含む第2の標的特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートと接触させることを含む。第1及び第2の標的特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの複数の対はまた、多重反応において使用され得る。
【0099】
一対の標的特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートでは、第1の標的オリゴヌクレオチドは自由3’末端を有し、5’末端から、第1の標的に固有の1つ以上のバーコード及び第1のスプリントハイブリダイゼーション領域を含み、第2の標的オリゴヌクレオチドは自由5’末端を有し、3’末端から、第2の標的に固有の1つ以上のバーコード及び第2のスプリントハイブリダイゼーション領域を含む。
【0100】
対応する標的部位への標的特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの対の結合の際に、生体試料は、第1の標的部位への第1の標的特異的結合剤と第2の標的部位への第2の標的特異的結合剤の結合を介して互いに近接にされる第1及び第2のオリゴヌクレオチドと2つの末端でハイブリダイズするスプリントオリゴヌクレオチドと接触させられる。
【0101】
スプリントオリゴヌクレオチドは、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの5’及び3’末端を一緒にすることができ、この場合、2つのオリゴヌクレオチドをライゲーションして、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドを生成することができる。スプリントオリゴヌクレオチドは、一方のオリゴヌクレオチドの3’末端が他方のオリゴヌクレオチドの5’末端に近接しないように設計することができる。このような場合、3’末端は、例えば、第1のオリゴヌクレオチドの3’末端を第2のオリゴヌクレオチドの5’末端に向かって伸長させるためにポリメラーゼを使用して伸長させることができる。次いで、2つのオリゴヌクレオチドをライゲーションして、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドを生成することができる。
【0102】
したがって、場合によっては、ライゲーションアッセイは、(i)平面生体試料を複数の対の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートで標識することと、(ii)(i)の後にスプリントオリゴヌクレオチドを試料にハイブリダイズさせることであって、スプリントオリゴヌクレオチドは異なるコンジュゲート中のオリゴヌクレオチドの末端とハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることと、(iii)同じスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされたコンジュゲート中の任意のオリゴヌクレオチドの末端を一緒にライゲーションして、核酸反応生成物を生成することと、を含むことができる。
【0103】
いくつの実施形態では、ライゲーションアッセイは、オリゴヌクレオチドの一本鎖末端の鋳型化若しくは非鋳型化ライゲーション、オリゴヌクレオチドの二本鎖末端の非鋳型化ライゲーション、又は相補的オーバーハングを使用する二本鎖オリゴヌクレオチドのオーバーハング媒介ライゲーションを介して、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドをライゲーションすることを含み得る。鋳型化ライゲーションの実施形態は、ライゲーションスプリントを使用して達成され得、スプリントは、第1の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの第1のオリゴヌクレオチドの3’末端が、第2の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの第2のオリゴヌクレオチドの5’末端に隣接するように設計され、本方法は、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの5’末端並びに3’末端をライゲーションすることを含む。
【0104】
オリゴヌクレオチドはまた、ギャップフィル/ライゲーション反応を介して互いに結合され得、2つのオリゴヌクレオチドは、鋳型の対向する末端にハイブリダイズし、間隙は、重合によって充填され、切れ目は、ライゲーションによって封止される。
【0105】
これらのアッセイの多くの変形は、公知である。例えば、いくつかの実施形態では、「アンフォールド」プローブを使用することができる。例えば、Klaessonら(Sci Rep8,5400(2018))を参照されたい。
【0106】
近接伸長アッセイ(PEA)
いくつかの実施形態では、工程(a)はPEAを含む。任意の好適な方法を使用して、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートからのオリゴヌクレオチドから核酸反応生成物を生成することができる。一実施形態では、PEAは、生体試料を、第1のオリゴヌクレオチドを含む第1の標的特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲート及び第2のオリゴヌクレオチドを含む第2の標的特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートと接触させることを含む。第1及び第2の標的特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの複数の対はまた、多重反応において使用され得る。
【0107】
一対の特異的結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートでは、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの自由3’末端は、互いに相補的な配列を有し、したがって、自由端は互いにハイブリダイズする。これらの自由3’末端は、例えば、ポリメラーゼを使用して伸長され、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの両方の配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチドを作成し得る。
【0108】
したがって、場合によっては、PEAは、
(i)平面生体試料を複数対の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートで標識することと、
(ii)オリゴヌクレオチドの相補的3’末端をハイブリダイズさせ、他のハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを鋳型として使用してオリゴヌクレオチドの3’末端を伸長させて、核酸反応生成物を生成することと、を含む。
【0109】
ハイブリッドアッセイ
いくつかの実施形態では、相互作用の複数の組み合わせは、本明細書に開示される方法を使用して解析され、PLA及びPEAの組み合わせは、核酸反応生成物を生成するために使用される。
【0110】
例えば、核酸反応生成物は、PLAを用いた特定の相互作用から生成され、核酸反応生成物は、PEAを用いた特定の他の相互作用から生成される。PLA及びPEAの特定の詳細は上述されており、本明細書において想定されるハイブリッド法において使用することができる。
【0111】
ライゲーションアッセイを用いたRNA検出
場合によっては、本方法は、ライゲーションアッセイを使用してRNAを検出することを含む。特に、レポーターポリヌクレオチドは、標的RNA中の特定の配列とハイブリダイズするように設計することができる。プローブは、バーコードを含有するテールを有し得る。場合によっては、オリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドがRNAヌクレオチドを含むライゲーション部位を除いて、DNAヌクレオチドを含む。したがって、オリゴヌクレオチドプローブは、DNA及びRNAヌクレオチドのハイブリッドであり得る。あるいは、レポーターポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが標的RNAを介して一緒になった際に互いにライゲーションするように、ヘアピン構造を含むことができる。
【0112】
3つ以上の結合剤を用いる近接アッセイ
場合によっては、近接アッセイは、3つ以上の結合剤を用いて行われる。そのようなアッセイの例は、Schallmeineret al.,(2007),Nat.Methods.;4(2):135-7に記載されている。
【0113】
場合によっては、3つの結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートが使用され、第1の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、第1のオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされ、第2の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、第2のオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされ、第3の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、スプリントオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされる。3つのオリゴヌクレオチドが、3つの結合剤の近接結合標的への結合を介して互いに近接される場合、スプリントオリゴヌクレオチドは、第1及び第2のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、これは、ライゲーションされて、核酸反応生成物を生成し得る。したがって、核酸反応生成物の生成は、オリゴヌクレオチドが、近接部位に結合される結合剤にコンジュゲートされることを示す。
【0114】
レポータープローブ
いくつかの実施形態では、第1の生成物、すなわち、最初のプライマー伸長、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーションから生成された核酸は、ライゲーション鋳型又は(「スプリント」)として使用されて、2つ以上の他のオリゴヌクレオチド(本明細書中で「レポーターオリゴヌクレオチド」と称される)を一緒にライゲーションして、レポータープローブを生成し得る。これらの実施形態では、レポータープローブは、基材に移動される近接アッセイ反応生成物である。この実施形態の例を
図4に示す。あるいは、レポータープローブは、第1のオリゴヌクレオチドを一緒に結合することなく、互いに近接するオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって作製され得る(例えば、
図6Bを参照のこと)。
【0115】
これらの実施形態では、第1の生成物は、一対のレポーターオリゴヌクレオチド(「第1の」レポーターオリゴヌクレオチド及び「第2の」レポーターオリゴヌクレオチド)を一緒にライゲーションして、近接アッセイ反応生成物を生成するための鋳型として使用される。示されるように、レポーターオリゴヌクレオチドは、それらが第1の生成物とハイブリダイズする第1の配列及び第1の生成物とハイブリダイズしないテール配列を含むように「テール付加」され得る。示されるように、レポーターオリゴヌクレオチドの一方は5’テールを有し、他方は3’テールを有する。テールは、任意の好適な長さ(例えば、最高20~200)であり得、近接アッセイ反応生成物が支持体に移動された後に検出のために使用され得る。
【0116】
テールの1つ以上は、修飾を含有し得る。例えば、テールは、支持体へのレポータープローブの移動、支持体上若しくは支持体中へのプローブの繋留、若しくはエキソヌクレアーゼ活性からそれを保護するための修飾を容易にする、結合メンバー、反応基又は部分を含有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、レポーターオリゴヌクレオチドの末端の1つは、生成物をスライドガラスなどの基材に結合するための化学的性質を含有し得る。これらの修飾には、ヒドラジド基(I-LINKER(商標))、アミン基(例えば、活性化カルボキシレート基又はスクシンイミジルエステルに共有結合したアミン)、チオール基(例えば、ヨードアセトアミド又はマレイミドなどのアルキル化剤を介して共有結合したチオール基)、チオエーテルを介して結合し得るアクリル基(ACRYDITE(商標))、ジゴキシゲニンNHSエステル基、コレステロール-TEG基、又はビオチンなどが含まれるが、これらに限定されない。このような基は、以下の化学的性質を用いてスライドガラスに繋留され得る:NH2修飾オリゴヌクレオチドは、エポキシシラン又はイソチオシアネートコーティングスライドガラスに結合し、スクシニル化オリゴヌクレオチドは、アミノフェニル又はアミノプロピル誘導体化スライドガラスに結合し、ジスルフィド修飾オリゴヌクレオチドは、メルカプトシラン化スライドガラスに結合し、ヒドラジドオリゴヌクレオチドは、アルデヒド又はエポキシド修飾スライドガラスに結合する。クリック反応基は、いくつかの状況において使用され得る。実施形態では、核酸は、ビオチン-アビジン/ストレプトアビジン/ニュートラアビジン相互作用によって支持体に固定され得、核酸はビオチン部分を含み、支持体はアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンでコーティングされる。
【0117】
明らかなように、レポーターオリゴヌクレオチドは、それらが第1の生成物にハイブリダイズされる場合、それらの末端が隣接するように設計され得る。あるいは、末端は隣接している必要はなく、間隙は充填され、封止され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、レポーターオリゴヌクレオチドは、結合剤にコンジュゲートされ、近接アッセイ中に切断され、一緒にライゲーションされる、オリゴヌクレオチドの一部であってもよい。例えば、結合剤にコンジュゲートされるオリゴヌクレオチドは、反応の間に、レポーターオリゴヌクレオチド及び/又はレポータープローブがそれらのオリゴヌクレオチドから切断されるのを可能にする、より多くのウラシル(又は制限部位)を含有するヘアピン又はループを含有し得る(例えば、Klaessonら(Sci Rep2018 8,5400)を参照されたい)。
【0119】
別の実施形態では、レポーターオリゴヌクレオチドは、結合剤にコンジュゲートされるオリゴヌクレオチドにプレハイブリダイズされ得、これはまた、レポーターオリゴヌクレオチドを別々に添加することを回避する。更に、得られたDNA複合体はまた、スプリント介在ライゲーション又はオーバーハング介在ライゲーションを使用するライゲーションによって結合剤及び/又は検出オリゴヌクレオチドを結合するために使用され得る一本鎖配列を露出させるために切断又は除去され、それによって、結合剤のインキュベーション及び結合の間に一本鎖領域の存在を排除し、また、効率を増加させるために検出オリゴヌクレオチドが各結合剤上に存在することを確実にし得る、領域を有するように設計され得る。2つの別個のオリゴヌクレオチドを使用することは、合成される必要がある各オリゴヌクレオチドの長さを減少させ、特にオリゴヌクレオチドが特定の部位で修飾される場合、長いssDNAの合成上の課題を減少させることによってオリゴヌクレオチド品質を増加させ得る。
【0120】
レポーターポリヌクレオチドを用いたRNA検出
場合によっては、平面生体試料由来のRNA標的は、レポーターポリヌクレオチドを生成するための鋳型として直接使用され、すなわち、近接アッセイは、核酸反応生成物を生成するために行われないが、RNA標的は、レポーターポリヌクレオチドを生成するための鋳型として使用される。例えば、第1のレポータープローブ及び第2のレポータープローブは、RNA標的への結合の際に、第1及び第2のレポータープローブの5’末端及び3’末端が互いに近接するように設計され得、この場合、2つのレポータープローブは、レポーターポリヌクレオチドを生成するためにライゲーションされ得る。
【0121】
第1のレポータープローブ及び第2のレポータープローブはまた、RNA標的への結合の際に、一方のレポータープローブの3’末端が他方のレポータープローブの5’末端に近接しないように、設計され得る。このような場合、3’末端は、例えば、ポリメラーゼを使用して伸長され、第1及び第2のレポータープローブの5’末端及び3’末端を一緒にすることができ、次いで、これをライゲーションしてレポーターポリヌクレオチドを生成することができる。
【0122】
エキソヌクレアーゼ消化
任意の実施形態では、本方法は、ライゲーションされていないレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖核酸を除去するために、1つ以上のエキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼI及びエキソヌクレアーゼIIIの両方であるが、他の1つ以上の他のエキソヌクレアーゼ、例えば、エキソヌクレアーゼT、エキソヌクレアーゼV、エキソヌクレアーゼVII、T5エキソヌクレアーゼ又はT7エキソヌクレアーゼが、場合によっては、代わりに使用され得る)による消化を含み得る。この消化は、最初の近接アッセイ反応生成物が生成された後であればいつでも行うことができる。例えば、消化は、移動工程中又は移動工程後にin situで行うことができる。これらの実施形態では、近接アッセイで使用されるオリゴヌクレオチド(例えば、結合剤に付着される第1のオリゴヌクレオチド、又はレポーターオリゴヌクレオチド)は、エキソヌクレアーゼ耐性生成物を生成するように設計され得、これは、これらの生成物がエキソヌクレアーゼ工程を生き延びるのを可能にする。例えば、レポーターオリゴヌクレオチドが使用される場合、例えば、レポーターオリゴヌクレオチドの一方は保護された3’末端を有してもよく、かつ/又は、例えば、レポーターオリゴヌクレオチドの他方は保護された5’末端を有してもよい。オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合などのエキソヌクレアーゼ耐性結合の付加によってエキソヌクレアーゼ耐性にすることができるが、他の結合を使用することもできる。代替の実施形態では、レポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子は、近接アッセイ反応生成物である鋳型二本鎖のTmより低い温度で洗浄することによって除去され得る。
【0123】
冗長プローブセットを用いたシグナルの増加と、欠陥ライゲーション事象を用いたシグナルの減少
稀な結合事象からより多くのシグナルを生成するために、いくつかの核酸反応生成物は、各結合事象から生成され得る。タンパク質標的について、これは、いくつかのオリゴヌクレオチドにそれぞれコンジュゲートされる結合剤を使用して達成され得る。これは、次に、近接アッセイにおいていくつかのアッセイ生成物を生成する。RNA及びDNA標的について、各標的が多くの核酸反応生成物を生成するように、各RNA分子又はDNA遺伝子座を標的とする複数のプローブセットを、設計することができる。少なくとも2つ以上又は少なくとも5つ以上又は少なくとも10個以上の核酸を、結合剤と直接的に又は間接的に会合した結合剤1つ当たりに使用することができる。少なくとも2つ以上又は少なくとも5つ以上又は少なくとも10個以上又は少なくとも20個以上のプローブ対を使用して、RNA又はDNA配列を標的にすることができる。
【0124】
使用されるプローブセットの数は、異なる標的間で作製されるレポーター分子の数のバランスをとるために、標的分子の発現レベルを使用して較正することができる。また、非常に高い存在量で存在する標的を解析するために設計されたプローブは、欠陥があり、レポーター分子を作製することができないプローブの画分を有するように設計することができる。これを使用すると、例えば、高度に発現されたタンパク質又はRNAからのシグナルを減少させることができ、これを使用しない場合、支持体上で非常に大量の検出領域が必要となる。
【0125】
核酸反応生成物の固体支持体への移動
近接アッセイで、又はレポータープローブを介して生成された核酸反応生成物は、固体支持体に移動され得る。特定の実施形態では、生成された核酸反応生成物は、切断されるか、又は他の方法で対応する結合剤から分離され、次いで支持体に移動される。核酸反応生成物の支持体上への移動は、試料中の核酸反応生成物の空間関係を保存するように行われる。
【0126】
いくつかの実施形態では、特異的結合対の第1の結合メンバーを有する核酸反応生成物が生成され、核酸反応生成物は、特異的結合対の第2の結合メンバーを含む支持体に移動される。したがって、特異的結合対の第1及び第2の結合メンバー間の特異的結合は、核酸反応生成物を支持体上に固定化する。一実施形態では、特異的結合対は、ビオチン及びストレプトアビジンを含む。
【0127】
平面支持体
いくつかの実施形態では、支持体は、平面であり得る。平面支持体は、組織切片が固定化されるのと同じ固体支持体であり得る。この場合、核酸反応生成物と固体支持体との間の結合は、誘導性である。そのような誘導性反応の一例では、共有結合を作成するために銅などの誘導物質を必要とする、クリック化学が使用される。別の例では、核酸反応生成物は、固体支持体上に固定化されたオリゴヌクレオチドにライゲーションされる。このようなライゲーションは、核酸反応生成物の末端と固体支持体に固定されたオリゴヌクレオチドとを一緒にする、鋳型スプリントを用いて行うことができる。
【0128】
あるいは、別の平面支持体を使用して、組織からレポーターポリヌクレオチドを移動させることができる。組織から平面支持体へのレポーターポリヌクレオチドの移動は、電気泳動を用いて加速することができる。いくつかの実施形態では、静電相互作用(例えば、移動される分子と正に荷電した表面との間(ポリリジンでコーティングされたスライドの場合))は、支持体への分子の移動を容易にし得る。いくつかの実施形態では、支持体は、ビオチン化レポーター分子に結合する、アビジン又はストレプトアビジンでコーティングされてもよい。場合によっては、磁性を使用して、レポーター分子と会合した磁性ビーズ又は常磁性ビーズを使用して移動を加速する。
【0129】
一実施形態では、組織からの核酸反応生成物が移動される平面支持体は、それに付着するオリゴヌクレオチドを有さない。したがって、核酸反応生成物は、オリゴヌクレオチドによる以外の手段を介して平面支持体に移動され、平面支持体に付着される。
【0130】
上述したように、オリゴヌクレオチドを用いずに核酸反応生成物を平面支持体に付着させる1つのそのような方法は、特異的結合対の第1の結合メンバーを有するコピーされた核酸反応生成物又はレポーターポリヌクレオチドを生成することを含む。レポーターポリヌクレオチドは、特異的結合対の第2の結合メンバーを含む、平面支持体に移動される。したがって、特異的結合対の第1及び第2の結合メンバー間の特異的結合は、核酸反応生成物を平面支持体上に固定化する。例えば、特異的結合対は、ビオチン及びストレプトアビジンを含む。
【0131】
オリゴヌクレオチドを用いずに核酸反応生成物を平面支持体に付着させる特定の更なる方法は、平面支持体を修飾して、平面支持体上の官能基と反応する他の官能基を含有する核酸反応生成物と反応し、結合を形成する特定の官能基を提供することを含む。
【0132】
オリゴヌクレオチドを用いずに平面支持体に核酸反応生成物を付着させる更なるそのような方法は、エポキシシラン又はイソチオシアネートでコーティングした平面支持体と反応するアミノ基を含有するようにオリゴヌクレオチドを修飾することと、アミノフェニル又はアミノプロピル誘導体化平面支持体と反応するコハク酸基を含有するようにオリゴヌクレオチドを修飾することと、メルカプトシラン化固体支持体と反応するジスルフィド基を含有するようにオリゴヌクレオチドを修飾することと、アルデヒド又はエポキシド基含有固体支持体と反応するヒドラジド基を含有するようにオリゴヌクレオチドを修飾することと、オリゴヌクレオチドをポリリジンを含有する平面支持体に結合させることと、を含む。更に、オリゴヌクレオチドを用いずに核酸反応生成物を平面支持体に付着させるための任意の更なる好適なプロトコルを使用することができる。
【0133】
組織の除去
任意の実施形態では、本明細書に開示される方法は、支持体上又は支持体中に核酸反応生成物を残すために支持体から平面生体試料を除去することを含む(
図1及び
図3)。
【0134】
平面生体試料は、任意の適切なやり方で支持体から除去され得る。例えば、平面生体試料が配置されるスライドガラスなどの基材は、簡単に支持体から移動させることができる。核酸反応生成物は、共有結合又は非共有結合のいずれかで支持体に結合されるので、核酸反応生成物は、支持体に付着したままであるが、残りの組織は支持体から除去される。
【0135】
生体試料のいかなる残留物も、酵素作用によって除去することができる。例えば、ポリヌクレオチド以外の生体分子を分解する酵素で支持体を処理し、それによって核酸以外の生体分子のみを除去することができる。更に、核酸反応生成物がDNAを含む場合、支持体をRNA分解酵素で処理して、混入RNAを除去することができる。
【0136】
標識及び検出
場合によっては、本明細書に開示される方法は、支持体上の核酸反応生成物の位置を、好ましくは個々の分子として検出することを含む。このような検出は、検出可能に標識プローブを支持体上又は支持体中の核酸反応生成物に結合させることと、標識プローブを検出して、支持体上又は支持体中の核酸反応生成物の分布を決定することと、を含む。
【0137】
一実施形態では、支持体上又は支持体中の核酸反応生成物を検出することは、
(i)支持体上又は支持体中の核酸反応生成物を標識することと、
(ii)支持体をイメージングして、核酸反応生成物が支持体に結合した部位の画像を生成することと、を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、所定数のオリゴヌクレオチド及び所定数の標識されたオリゴヌクレオチドから構成される定義された核酸構造へのハイブリダイゼーションによって、支持体中又は支持体上で検出される。これらの実施形態では、構造は、近接アッセイ反応生成物への少なくとも2つのハイブリダイゼーション事象によって核形成され得る。これらの実施形態では、少なくとも2つのハイブリダイゼーション事象は、近接アッセイ反応生成物中の第1の配列への第1のハイブリダイゼーション、及び近接アッセイ反応生成物中の第2の配列への第2のハイブリダイゼーションを含む。一例は、
図5に示されるような核酸構造である。
【0139】
これらの実施形態では、核酸反応生成物を単一分子として定量化するためには、すべての分子から再現可能かつ安定なシグナルを得るために、核酸反応生成物ごとに規定数の検出標識を組み込むことが有利であり得る。RCA又は他のクローン増幅ストラテジーのようなアプローチは、平面支持体上に移動された分子を検出するために使用され得るが、これらは、通常、分子ごとに規定数の標識を組み込まず、異なる分子から不均一なシグナルを作成し得、シグナルが大きい場合、クラウディングを引き起こし、シグナルが弱い場合、検出不能なシグナルを引き起こす。プログラム可能なハイブリダイゼーションを設計することによって、特定の数のハイブリダイゼーション事象は、各検出された標的について起こり、各形成された核酸構造に組み込まれる所定の特定の数のオリゴヌクレオチド及び標識を生じる。これらの構造は、検出される核酸構造の核形成のために、標的に対する2つ以上の最初の独立したハイブリダイゼーション事象が必要とされるように、有利に設計され得る。一旦、核酸反応生成物への最初のハイブリダイゼーションが起こると、これらは、残りのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション及び形成を安定に誘引する。核酸構造を形成するハイブリダイゼーション事象は、場合によっては、すべてのオリゴヌクレオチドが同じ溶液中に存在する場合に構造全体が自発的に形成されないようにオリゴヌクレオチドを設計することが困難であり得るので、有利には、2つ以上の工程に分けられ得る。
【0140】
検出反応はまた、有利には、標識又は標識構造が表面に非特異的に吸着する場合、各工程に存在する単一標識又は標識構造が検出可能なシグナルを作製しないように設計される。
【0141】
任意の実施形態では、支持体に移動される分子は、使用されるプローブ系中の配列に相補的な配列を含有し得る。これらの配列は、(レポータープローブになる)レポーターオリゴヌクレオチドのテールにあってもよく、又は例えば、結合剤にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドに組み込まれてもよい。
【0142】
これらの配列のそれぞれは、プローブ系のための複数の結合部位を有し得、それによって、複数回のハイブリダイゼーション、読み取り、及びシグナル除去によって支持体が調べられるのを可能にする。そのような配列は、本明細書において「バーコード」配列と称され得る。いくつかの実施形態では、支持体中又は支持体上のレポーター分子の同一性は、例えば、Goranssonら(Nucl.Acids Res.2009 37:e7)、Moffittら(Methods Enzymol.2016 572:1-49)及びMoffitら(Proc.Natl.Acad.Sci.2016 113:11046-51)に記載されているように、生成物がプローブのセットの各プローブをハイブリダイズするか又はハイブリダイズしないかに対応するコードを読み取ることによって決定され得る。
【0143】
したがって、場合によっては、本方法は、プローブのどの組み合わせがレポーター分子に結合するかを決定することを含み得る。このような検出は、これらの配列に特異的に結合する特異的検出及び標識プローブによって介在され得る。特定のバーコード配列に結合する標識プローブの設計及び検出は、当技術分野で周知であり、このような実施形態は、本発明の範囲内である。
【0144】
場合によっては、特異的検出プローブを複数サイクルで添加し、各サイクルにおいて異なるバーコード(複数可)を標識し、それによって、各核酸反応生成物中に存在するバーコードのバイナリ列を検出する。各サイクルは、次のサイクルが始まる前に、標識、洗浄、イメージング、及び検出プローブの除去を含むことができる。
【0145】
DNAオリガミ
場合によっては、DNAオリガミを使用して、平面表面上の核酸反応生成物を標識及び検出する。
【0146】
本明細書中で使用する場合、「DNAオリガミ」とは、三次元形状及び三次元形状を作成するためのDNA分子の混合及び配列依存性フォールディングを指す。二次元形状及び三次元形状は、ナノスケールレベルである。形状は、特定のやり方で互いにハイブリダイズして、二次元又は三次元構造を形成する混合DNA分子の配列に基づいて生成される。
【0147】
したがって、場合によっては、架橋プローブ、標識プローブ、及び/又は検出プローブは、一緒に混合された場合、表面上の核酸反応生成物に特異的に結合する二次元又は三次元構造を形成するように生成される。
【0148】
DNAオリガミ構造は、任意選択で別個の最初の工程において導入される2つ以上のシーディングオリゴヌクレオチドのバーコードへのハイブリダイゼーション及び/又はライゲーションによる共局在化が、DNAオリガミ構造の形成を開始して、例えば、オリゴヌクレオチドのバックグラウンド吸着によって作成される非特異的シグナル生成を回避するために必要とされるように、有利に設計することができる。
【0149】
検出系
いくつかの実施形態では、検出系は、各サイクルで、検出系中のオリゴヌクレオチドの対が、移動されたレポーター分子中のそれぞれのバーコード配列に協同的にハイブリダイズするように設計され得る。このような標識及び検出の一例を
図5に示す。この例では、バーコードへの架橋検出プローブのハイブリダイゼーションは、架橋検出プローブの末端における比較的短い(例えば、4~10bpの)相補的配列によって安定化される(
図5)。あるいは、複合体は、架橋プローブの末端を一緒にライゲーションすることによって安定化され得る。
【0150】
図5に示すように、いくつかの実施形態では、本方法は、支持体に繋留された近接アッセイ反応生成物を、第1の架橋プローブ及び第2の架橋を含む一対の架橋プローブとハイブリダイズさせることを含み得、各架橋プローブは、バーコードの一部にハイブリダイズするバーコードハイブリダイゼーション領域を含む。
【0151】
場合によっては、第1の架橋プローブは、第1のバーコードインジケーター領域(すなわち、バーコード配列にハイブリダイズしない領域)を更に含み、第2の架橋プローブは、第2のバーコードインジケーター領域(すなわち、バーコード配列にハイブリダイズしない別の領域)を更に含み、バーコードへの第1及び第2の架橋プローブのハイブリダイゼーションは、第1及び第2のバーコードインジケーター領域を互いに近接させる。
【0152】
これらの実施形態では、架橋プローブがバーコードにハイブリダイズされた後、(
図5に示されるように、標識プローブ及び検出プローブから構成され得る)検出系の残りは、連続的に又は一体として添加され得る。示されるように、検出系は、第1及び第2のインジケーター領域の両方にハイブリダイズする標識プローブ、並びに標識プローブにハイブリダイズする検出プローブを含み得る。検出プローブは標識プローブにプレハイブリダイズすることができるが、これは必須ではない。
図5に示すように、標識プローブは一対の架橋プローブにハイブリダイズする。したがって、場合によっては、バーコードにハイブリダイズした架橋プローブを検出することは、標識プローブをバーコードインジケーター領域にハイブリダイズさせることを含んでもよく、標識プローブは、第1のバーコードインジケーター領域とハイブリダイズする第1の標識領域と、第2のバーコードインジケーター領域とハイブリダイズする第2の標識領域と、を含む。示されるように、(フルオロフォアで標識され得る)検出プローブは、標識プローブとハイブリダイズされる。
【0153】
示されるように、複数の、例えば、5~10個、最大20個以上の検出プローブは、1対の標識プローブにハイブリダイズし得る。1対の架橋プローブが近接アッセイ反応生成物に付着していることを考慮すると、いくつかの検出プローブを1つの標識プローブにハイブリダイズさせて、バックグラウンドに対するシグナルを記録することができる(
図5)。この設計は、シグナル生成特異性が維持され、シグナルがハイブリダイゼーション事象から別の事象まで均一であることを確実にする。個々の架橋プローブは、それらが表面に付着する場合にバックグラウンドを作成せず、個々の標識プローブは、バックグラウンドを超えるシグナルを作成するのに十分なシグナルを作成しない可能性がある。したがって、検出可能なシグナルは、複数の標識プローブが一対の架橋プローブにハイブリダイズされる場合にのみ生成され得る。複数のバーコードを1回の標識サイクルで検出することができるように、異なるフルオロフォアを有する複数の標識を使用することができる。ハイブリダイゼーション化学は、各標的分子に対して規定数のフルオロフォアを有するように設計される。
【0154】
したがって、標識及び検出のサイクルを繰り返すことによって、支持体上の複数のバーコードについて位置を決定することができる。支持体上のバーコードの位置、及びそれらのバーコードを含有するオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされた結合剤に関する既知の情報に基づいて、平面生体試料中の結合標的のマップを作成することができる。
【0155】
核酸反応生成物の平面生体試料へのマッピング
いくつかの実施形態では、バーコードの位置を検出することと、そうして平面生体試料中の結合標的のマップを作成することと、に加えて、本方法は、平面生体試料の光学画像を生成することを更に含む。平面生体試料の光学画像は、顕微鏡的染色で試料を染色することによって生成することができる。次いで、試料の画像を、平面生体試料中の結合標的のマップと比較又はオーバーレイすることができる。このようなオーバーレイは、生体試料の異なる領域内の、特定の生体分子(すなわち、近接アッセイで使用される結合剤の結合標的)の分布を決定する際に有用であり得る。
【0156】
試料は、上記の方法を実施する前又は後に、細胞学的染色を使用して染色してもよい。これらの実施形態では、染色は、例えば、ファロイジン、ガドジアミド、アクリジンオレンジ、ビスマルクブラウン、バーミン、クマシーブルー、ブレシルバイオレット、ブリスタルバイオレット、DAPI、ヘマトキシリン、エオシン、臭化エチジウム、酸性フクシン、ヘマトキシリン、ヘキスト染色、ヨウ素、マラカイトグリーン、メチルグリーン、メチレンブルー、中性赤、ナイルブルー、ナイルレッド、四酸化オスミウム(osmium tetroxide)(正式名称:酸化オスミウム(VIII)(osmium tetraoxide))、ローダミン、サフラニン、リンタングステン酸、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、モリブデン酸アンモニウム、ヨウ化カドミウム、カルボヒドラジド、塩化第二鉄、ヘキサミン、三塩化インジウム、硝酸ランタン、酢酸鉛、クエン酸鉛、硝酸鉛(II)、過ヨウ素酸、リンモリブデン酸、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、ルテニウムレッド、硝酸銀、プロテイン酸銀、塩化金(III)酸ナトリウム、硝酸タリウム、チオセミカルバジド、酢酸ウラニル、硝酸ウラニル、硫酸バナジル、又はこれらの任意の誘導体であってもよい。染色は、目的とする任意の特徴、例えば、単一のタンパク質、又は複数のタンパク質のクラス、リン脂質、DNA(例えば、二本鎖DNA、一本鎖DNA)、RNA、細胞小器官(例えば、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、核エンベロープなど)、細胞コンパートメント(例えば、細胞質ゾル、核分画など)について特異的であってもよい。染色は、細胞内若しくは細胞外構造のコントラスト又はイメージングを向上させ得る。いくつかの実施形態では、試料をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色してもよい。
【0157】
方法の多重化
場合によっては、本明細書に開示される方法を使用して、複数の標的結合部位、例えば、複数のRNA、タンパク質又は複数の分子相互作用を解析することができる。そのような実施形態では、複数の結合剤は、特異的バーコードを有するオリゴヌクレオチドとコンジュゲートされる。複数の結合標的の分布に応じて、特異的バーコードを有するオリゴヌクレオチドを有する異なる結合剤は、他の特異的バーコードを有するオリゴヌクレオチドを有する他の結合剤を一緒にする。
【0158】
支持体上の特定の位置に2つの特異的バーコードの組み合わせを含有する核酸反応生成物の作成及び検出は、2つの特異的バーコードを有する結合剤の結合部位が、平面生体試料中の対応する位置に位置することを示す。
【0159】
いくつかの実施形態では、近接アッセイは、複数対の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲート(例えば、少なくとも4対、少なくとも10対又は少なくとも50対)を使用して行うことができる。近接アッセイは、各コンジュゲートが、1つの他のコンジュゲートとの、すべてではないがいくつかの複数のコンジュゲート、又はすべての他のコンジュゲートとの反応生成物を生成することができるように設計することができる。例えば、ライゲーションスプリントは、例えば、特定のタンパク質若しくは相互作用を調べるために3’及び5’結合剤の特定の対を結合するように設計することができ、例えば、いくつかの成分を有するタンパク質複合体を調べるために3’及び5’結合剤の特定のセットを結合するように設計することができ、又は1つの3’結合剤は、大きなセット若しくはタンパク質との可能な相互作用を調べるためにすべての5’結合剤と反応する可能性を有するように設計することができ、又はタンパク質を他のタンパク質の細胞内局在マーカーとして用いることができる。
【0160】
平面生体試料の多重解析では、タンパク質、炭水化物、DNA、RNA、及び脂質を含む複数の部位に結合する複数の結合剤を設計することができる。したがって、本明細書中に開示される方法による複数の解析は、複数のタンパク質、炭水化物、DNA、RNA、脂質、又はこれらの生体分子の任意の組み合わせを同時に検出するために使用され得る。
【0161】
追加の態様
本明細書に開示される方法の異なる詳細(例えば、使用されるオリゴヌクレオチドの配列又は特異的蛍光標識)を設計する際に、特定の態様が考慮され得、以下で議論される。
【0162】
結合剤に結合されるオリゴヌクレオチドの配列は、それらが「直交」であるように、すなわち、それらが互いに交差ハイブリダイズしないように選択され得る。更に、オリゴヌクレオチドの配列は、試料に対して内在性の他の核酸(例えば、RNA又はDNA)への結合を最小化するように設計されるべきである。
【0163】
いくつかの実施形態では、本方法で使用されるオリゴヌクレオチドは、独立して、8ヌクレオチド長~150ヌクレオチド長までの長さ(例えば、8~100ヌクレオチド長の範囲)であり得る。しかし、多くの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、8~50ヌクレオチド長、例えば、10~30ヌクレオチド長又は11~25ヌクレオチド長であるが、これらの範囲外の長さを有するオリゴヌクレオチドが多くの場合に使用され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、15℃~70℃(例えば、20℃~60℃又は35℃~50℃)の範囲の計算されたTmを有し得る。
【0165】
オリゴヌクレオチドは、任意の都合のよい方法を用いて結合剤に結合することができる(例えば、Gong et al.,Bioconjugate Chem.2016 27:217-225及びKazane et al.Proc Natl Acad Sci2012 109:3731-3736)。例えば、固有のオリゴヌクレオチドが、結合剤上の任意の好適な化学部分(例えば、システイン残基又は操作された部位を介して)を利用して直接結合剤に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、非共有結合相互作用を介して直接的に又は間接的に結合剤に結合され得る。いくつかの実施形態では、結合剤は、オリゴヌクレオチド-マレイミドコンジュゲートを結合剤と反応させ、それによって、それらの分子を一緒に結合することによって、それらのそれぞれのオリゴヌクレオチドに結合され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、本方法は、試料を複数の結合剤で標識することを含み得る。この工程は、結合剤が試料中の相補的部位(例えば、タンパク質エピトープ又はヌクレオチド配列)に結合する条件下で、試料(例えば、顕微鏡スライドのような平面支持体上に載置されたFFPE切片)をすべての結合剤とまとめて接触させることを含み得る。抗体及びアプタマーを試料中の相補的部位に結合させるための方法、並びに核酸プローブを試料にin situでハイブリダイズさせるための方法は、周知である。いくつかの実施形態では、結合剤は試料に架橋されてもよく、それによって、結合剤がその後の工程中に解離するのを防止する。この架橋工程は、アミン-アミン架橋剤を使用して行われてもよいが、所望であれば、結合剤を試料に架橋するために、他の種々の化学物質を使用することができる。いくつかの実施形態では、結合剤は試料に架橋されない。
【0167】
特定の実施形態では、読み取りは、蛍光ベースイメージング(fluorescence-based imaging、FBI)によって行われる。対象のフルオロフォアとしては、キサンテン色素、例えば、フルオレセイン及びローダミン色素、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate、FITC)、6-カルボキシフルオレセイン(一般に、略語FAM及びFで知られる)、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE又はJ)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA又はT)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX又はR)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5又はG5)、6-カルボキシローダミン-6G(R6G6又はG6)、及びローダミン110;シアニン色素、例えば、Cy3、Cy5及びCy7色素;クマリン、例えば、ウンベリフェロン;ベンズイミド染料、例えば、Hoechst33258;フェナントリジン染料、例えば、Texas Red;エチジウム色素;アクリジン染料;カルバゾール色素;フェノキサジン色素;ポルフィリン染料;ポリメチン染料、例えば、BODIPY染料及びキノリン染料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
いくつかの実施形態では、読み取りは、2つ、3つ、又は4つの識別可能なフルオロフォアで標識された試料を検出するためにFBIによって行われ、本方法は、ハイブリダイゼーション及び検出工程を複数回(少なくとも1回又は2回、識別可能なフルオロフォアの数まで)繰り返すことを含み、各回は、異なるバーコードに向けられた異なる架橋オリゴヌクレオチド及び検出プローブを使用し、その後、試料を蛍光顕微鏡法によって読み取って、支持体上の異なる核酸生成物分子の位置を示す画像を生成する。
【0169】
いくつかの実施形態では、反復標識サイクルが行われる。特に、4~5個までのフルオロフォアが各標識サイクルで使用され、数回の標識サイクルが実行される。支持体上の各核酸反応生成物は、各サイクルにおいて1つの標識で標識することができる。あるいは、各核酸反応生成物は、同じサイクルにおいていくつかの蛍光標識で標識され得る。このようなコンビナトリアル標識は、サイクル当たりより多くのバーコードをデコードし、イメージングのための時間を短縮すると考えられる。
【0170】
更なる実施形態では、各核酸反応生成物は、特定の比率の蛍光標識で標識され得る。例えば、核酸反応生成物中に存在するバーコードの組み合わせ及びバーコードの異なる組み合わせに向けられた蛍光標識プローブに応じて、核酸反応生成物は、任意の核酸反応生成物が第1の蛍光の100%であるが第2の蛍光の50%のみで標識され得る一方で、他の核酸反応生成物が第1の蛍光の50%及び第2の蛍光の100%で標識され得るように標識され得る。これは、設定された数のスペクトル的に分解可能な色素による各サイクルで検出される識別可能な分子の数を増加させる。
【0171】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド及び結合剤は、切断可能なリンカーを介して接続される。場合によっては、切断可能なリンカーは、オリゴヌクレオチド中のいかなる結合も破壊することなく、刺激(例えば、化学物質、光、又はその環境の変化)を使用して選択的に切断され得る。切断可能なリンカーは、結合剤から核酸を遊離させ、その結果、結合剤が特異的に結合している標的から核酸を遊離させることによって、支持体上への核酸反応生成物の移動を容易にする。したがって、特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、試料に結合される結合剤の1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、核酸反応生成物を生成する工程(a)の後、かつ試料中の核酸反応生成物の空間関係を保存するように支持体上に核酸反応生成物を移動させる工程(b)の前に、オリゴヌクレオチドと結合剤の間のリンカーを切断する工程を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、結合剤からの核酸成分の切断又は放出を可能にする酵素反応であってもよい。使用され得る好適な切断可能な結合としては、以下:制限酵素消化、ウラシルDNAグリコシラーゼとその後にエンドヌクレアーゼを使用する特異的部位分解、又は酸性若しくは塩基性条件による処理が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
いくつかの実施形態では、切断可能な結合は、還元剤(例えば、β-メルカプトエタノール、TCEPなど)を使用して容易に切断され得るジスルフィド結合であり得る。使用され得る好適な切断可能な結合としては、以下:エステル、特にコハク酸塩(例えば、アンモニア又はトリメチルアミンによって切断可能)、第四級アンモニウム塩(例えば、ジイソプロピルアミンによって切断可能)及びウレタン(水酸化ナトリウム水溶液によって切断可能)などの塩基切断可能部位;ベンジルアルコール誘導体(トリフルオロ酢酸を使用して切断可能)、テイコプラニンアグリコン(トリフルオロ酢酸に続いて塩基によって切断可能)、アセタール及びチオアセタール(同様に、トリフルオロ酢酸によって切断可能)、チオエーテル(例えば、HF又はクレゾールによって切断可能)並びにスルホニル(トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、チオアニソールなどによって切断可能)などの酸切断可能部位;フタルアミド(置換ヒドラジンによって切断可能)、エステル(例えば、三塩化アルミニウムによって切断可能)、及びワインレブアミド(水素化アルミニウムリチウムによって切断可能)などの求核切断可能部位;並びにホスホロチオエート(銀又は水銀イオンによって切断可能)及びジイソプロピルジアルコキシシリル(フッ化物イオンによって切断可能)を含む、他の種類の化学的に切断可能な部位が挙げられるが、これらに限定されない。他の切断可能な結合は当業者に明らかであるか、又は関連する文献及びテキストに記載されている(例えば、Brown(1997)Contemporary Organic Synthesis4(3);216-237)。いくつかの実施形態では、切断可能な結合は、酵素によって切断され得る。特定の実施形態では、光切断可能な(「PC」)リンカー(例えば、UV切断可能なリンカー)が使用されてもよい。使用に好適な光切断可能なリンカーには、Guillierら(Chem Rev.2000 Jun14;100(6):2091-158)に記載されているような、オルト-ニトロベンジル系リンカー、フェナシルリンカー、アルコキシベンゾインリンカー、クロムアレーン錯体リンカー、NpSSMpactリンカー、及びピバロイルグリコールリンカーが挙げられる。本方法で使用することができる例示的な連結基は、上記のGuillierら及びOlejnikら(Methods in Enzymology1998 291:135-154)に記載され、U.S.P.N.6,027,890;Olejnikら(Proc.Natl.Acad Sci,92:7590-94);Ogataら(Anal.Chem.2002 74:4702-4708);Baiら(Nucl.Acids Res.2004 32:535-541);Zhaoら(Anal.Chem.2002 74:4259-4268);及びSanfordら(Chem Mater.1998 10:1510-20)に更に記載され、Ambergen(Boston,MA;NHS-PC-LC-Biotin)、Link Technologies(Bellshill,Scotland)、Fisher Scientific(Pittsburgh,PA)及びCalbiochem-Novabiochem Corp.(La Jolla,CA)から購入可能である。
【0174】
いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、還元剤によって切断可能な結合(例えば、ジスルフィド結合)を含む。これらの実施形態では、標識は、還元剤、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用して除去され得る。
【0175】
試料が蛍光によって読み取られる実施形態では、各読み取り工程は、支持体上に分布した核酸生成物分子の画像を生成し得る。いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも2つの画像を解析すること、比較すること、又はオーバーレイすることを更に含み得る。いくつかの実施形態では、この方法は、すべての画像をオーバーレイして、支持体上の異なる核酸生成物分子の分布パターンを示す画像を生成することを更に含み得る。使用される画像解析モジュールは、各蛍光体からのシグナルを変換して、複数の偽色画像を生成してもよい。画像解析モジュールは、多重化された偽色画像を得るために、複数の偽色画像をオーバーレイする(例えば、各画素に偽色を重ね合わせる)ことができる。例えば、特定の結合剤の結合によって特徴付けられる目的の生物学的特徴を表すために、複数の画像(例えば、重み付けされていない、又は重み付けされた)を単一の偽色に変換してもよい。ユーザからの手動入力に基づいて、偽色を特定の結合剤又は結合剤の組み合わせに割り当てることができる。特定の態様では、画像は、核コンパートメント内など、目的の特徴に関連する標識の強度のみに関連する偽色を含んでもよい。画像解析モジュールは更に、シグナル強度若しくは偽色の強度及び/又はコントラストを調整(例えば、正規化)して、逆重畳演算(強度若しくは偽色のぼかし又はシャープ化など)を実行するように、又は画像の質を高めるために任意の他の適切な操作を実行するように、構成されてもよい。画像解析モジュールは、上記の操作のいずれかを実行して、連続した複数の画像から得られた画素を整列させてもよく、及び/又は連続した複数の画像から得られた画素の強度若しくは偽色をぼかす又は平滑化してもよい。
【0176】
場合によっては、核酸反応生成物は、三次元(3-D)ゲルマトリックスに移動される。ゲルは、組織に結合した核酸反応生成物のみを固定化するが、生体試料からの他の生体分子を固定化しないように、選択することができる。このようなゲルマトリックスの例としては、ポリアクリルアミドゲル及びシリカゲルが挙げられる。タンパク質、RNA、DNA、及びライゲーションされていないオリゴヌクレオチド、並びに他の生体分子を消化し、それによって、ゲル中に核酸反応生成物のみを残すことができる。核酸反応生成物は、エキソヌクレアーゼ保護修飾を用いて酵素消化から保護することができる。したがって、他の生体分子の消化の際に、核酸反応生成物のみがゲル中に残る。核酸反応生成物はまた、それらを3Dゲルマトリックスに架橋し、それによって、ゲルから他の分子が除去された場合の以降の解析のためにそれらをゲル中に空間的に固定化する、機能を備えることができる。
【0177】
代替のin situの実施形態
いくつかの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、それらが作製された部位の組織に残存し得る。これらの実施形態では、近接アッセイ反応生成物は、プログラム可能なハイブリダイゼーションを使用してin situで検出され得る。
【0178】
in situの近接アッセイは、従来、RCA(ローリングサークル増幅)、次いで、例えば、RCA生成物にハイブリダイズする標識プローブへのハイブリダイゼーションによる、RCA生成物のin situでの検出を含んでいた。しかしながら、上記のように、RCA生成物は比較的大きな分子であり、効率的に生成されるために物理的空間を必要とする。多くの場合、RCA生成物は、それらの密度及び長さの両方に関して一貫性なく生成される。結果として、任意の1つの実験では、いくつかのRCA生成物は密に充填され得るが、他のものは疎に充填され得る。同様に、いくつかのRCA生成物は、大きな物理的空間を占有し得るが、他のものは、微小空間を占有し得る。これらの問題は、しばしば結果を混乱させる。
【0179】
本発明の方法のin situでの実施形態では、近接アッセイ反応生成物が標識された後に観察される「スポット」は、明るく一貫したサイズであり、一貫した強度を有するべきである。更に、スポットはRCAベースの方法によって得られるものよりもはるかに小さいので、より多くのスポットを観察することができる。更に、本方法は、RCAベースの方法を使用しては不可能である、多重化されることを可能にする。同じ利点のいくつかは、上記のように、近接アッセイ反応生成物が支持体に移動される実施形態に適用可能であり得る。
【0180】
フィルタの実施形態
任意の実施形態では、平面試料は、細胞の懸濁液をフィルタに通すことによって生成され得、細胞はフィルタ上に保持される。細胞の懸濁液を解析する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)細胞の懸濁液を多孔質キャピラリ膜を通して濾過し、それによって膜上に細胞を分布させることと、(b)膜の細胞側が平面支持体に面する状態で、膜を支持体上に配置することと、(c)細胞中の核酸の空間関係を保存するように、細胞から支持体中又は支持体上に核酸を移動させることと、(d)多孔質キャピラリ膜及び細胞を支持体から除去することと、(e)支持体に移動された核酸を空間的に解析することと、を含むことができる。
【0181】
上記のように、本明細書では、とりわけ、細胞の懸濁液を解析するための方法が提供され、この方法は、(a)細胞の懸濁液を多孔質キャピラリ膜を通して濾過し、それによって膜上に細胞を分布させることと、(b)膜の細胞側が平面支持体に面する状態で、膜を支持体上に配置することと、(c)細胞中の核酸の空間関係を保存するように、細胞から支持体中又は支持体上に核酸を移動させることと、(d)多孔質キャピラリ膜及び細胞を支持体から除去することと、(e)支持体に移動された核酸を空間的に解析することと、を含み得る。この方法のいくつかの原理を
図14に示す。
【0182】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程(c)の前に、例えば、工程(a)と工程(c)との間に、細胞に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、細胞中又は細胞上に近接アッセイ反応生成物を生成することを更に含むことができる。この実施形態のいくつかの原理を、
図14に概略的に示す。これらの実施形態では、工程(c)で移動され、工程(e)で解析される核酸は、近接アッセイ反応生成物を含む。これらの実施形態では、解析工程は、(i)支持体中又は支持体上に移動された近接アッセイ反応生成物を標識することと、(ii)支持体をイメージングして、近接アッセイ反応生成物が支持体中又は支持体上に結合している部位の画像を生成することと、を含み得る。近接アッセイは、ライゲーション、プライマー伸長、及び結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドを含むギャップフィル/ライゲーション反応の任意の組み合わせを含む。そのようなアッセイの例は、本開示の他の箇所に記載されている。
【0183】
場合によっては、RNAを細胞から基材上に移動させることができる。いくつかの実施形態では、支持体は、ポリA+RNAにハイブリダイズするoligod(T)でコーティングされてもよい。他の実施形態では、(b)の平面支持体は、空間的にバーコード化された捕捉オリゴヌクレオチドのアレイを含んでもよく、工程(c)は、移動された核酸を空間的にバーコード化された捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせることを含み、工程(e)は、移動された核酸を鋳型として使用して捕捉オリゴヌクレオチドを伸長させることと、プライマー伸長鋳型のコピーを配列決定して、配列リードを生成することと、を含む。例えば、この方法のいくつかの態様の説明については、Nerurkarら(Cancers(Basel).2020 12:2572)を参照されたい。これらの実施形態では、本方法は、配列リード中の空間バーコードを使用して、配列リードを支持体上の部位にマッピングすることを含み得る。
【0184】
移動工程(c)は、電気泳動又は拡散によって行うことができる。任意の実施形態では、多孔質キャピラリ膜は多孔質陽極酸化アルミニウム(anodic aluminum oxide、AAO)膜であってもよいが、他のフィルタは公知であり、使用することができる。
【0185】
任意の実施形態では、本方法は、(i)細胞の懸濁液を多孔質キャピラリ膜上に配置することと、(ii)膜を通して懸濁液の液体成分を移動させる力を付与することと、を含んでもよい。これらの実施形態では、力は、例えば、遠心力、負圧及び正圧から選択される能動的な力、又は毛管作用及び蒸発から選択される受動的な力であってもよい。
【0186】
上記のように、フィルタは、例えば、静電相互作用を介して、細胞がフィルタに付着するのを可能にする方法でコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、工程(d)と(e)の間に、残った反応物などを除去するために、必要に応じて、多孔質キャピラリ膜を洗浄することを含んでもよい。
【0187】
任意の実施形態では、膜中の細孔の内径は2nm~500nmの範囲内であり、膜中の隣接する細孔の中心間の平均距離は50nm~1000nmの範囲内であり、膜中の隣接する細孔の縁部間の平均距離は10nm~500nmの範囲内である。これらの距離は、必要に応じて調整することができる。
【0188】
任意の実施形態では、細胞の懸濁液は、血液細胞、免疫細胞(例えば、血液から単離された免疫細胞)、トリプシン処理によって互いに分離された単一細胞、又は懸濁液として培養された細胞を含み得る。
【0189】
細胞の懸濁液を表面上に付着させるための従来の方法は、多くの場合、細胞を表面上に堆積させることと、細胞が表面に拡散又は沈降するのを待つことと、を含む。これらの方法はかなりの時間を要し、すべての細胞が表面に到達するわけではない。加えて、細胞はポワソン分布によって決定されるパターンで沈降するので、従来の方法は、かなりの数の重複及び凝集塊をもたらす可能性があり、これは、その後の解析を混乱させる可能性がある。フィルタの使用により、すべての細胞が非常に迅速に表面に到達することが確実になる。更に、細胞は液体の流れの方向に移動するので、細胞は、他の方法よりも均一に(例えば、互いの上ではなく互いに隣接して)広げられるべきである。
【0190】
この方法は、細胞から支持体(例えば、oligod(T)でコーティングされた表面又はオリゴヌクレオチドの空間的にバーコード化されたアレイ)へのRNAの移動、及び支持体(例えば、スライドガラス)への近接アッセイ生成物の移動における使用を見出し、その結果、この生成物は、標識され得、次いで支持体上で解析され得る。いくつかの実施形態は、本方法は、細胞に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、細胞中又は細胞上に近接アッセイ反応生成物を生成することと、近接アッセイ反応生成物を支持体に移動させることと、を含んでもよい。以下でより詳細に記載されるように、支持体に移動された近接アッセイ反応生成物は、様々な異なる方法で、例えば、オリゴヌクレオチドのうちの1つの配列が別のオリゴヌクレオチド又はそのコピーに共有結合されるように結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチド間でライゲーション、プライマー伸長、ギャップフィル/ライゲーション又はこれらの任意のハイブリッドを行うことと、次いで第1の生成物を支持体に移動させることと、によって生成され得る。あるいは、第1の生成物又はライゲーションされていないオリゴヌクレオチドは、他のオリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションして、第2の生成物を生成するためのスプリントとして役立ち得る。これらの実施形態では、第2の生成物は支持体に移動されてもよい。
【0191】
場合によっては、複数の試料は、混合及び解析の前に「ハッシュタグ化」され得る(例えば、Stoeckiusなどを参照のこと。Genome Biology2018 19:224)。これらの実施形態では、細胞を試料バーコーディング親和性試薬(例えば、バーコード化抗体)と混合してもよく、これにより試料を多重化することが可能になる。
【0192】
細胞がフィルタを通過する際、ランダム分布に依存し得る方法とは対照的に、細胞は固相上で別の細胞からより分離されるようになる。これにより、下流工程の多くがより効率的に機能し、より意味のあるデータを収集することが可能になる。以下の説明から明らかなように、細胞はフィルタ上に固定化されてもよく、細胞はフィルタ上にある間に固定され、透過処理されてもよい。フィルタの構造は大きく変化することができる。しかしながら、多くの場合、フィルタは、細胞を規則的なパターンに自己集合させ、それによって、表面積の使用を最大化する要素(物理的構造、例えば、細孔、又は別の表面化学によって媒介される)を有してもよい。
【0193】
いくつかの実施形態では、バーコード化オリゴヌクレオチドに結合された捕捉剤(例えば、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートであって、オリゴヌクレオチドは、抗体とコンジュゲートされる抗原を同定するバーコードを有する)を、細胞中又は細胞上に導入することができる。プローブは、特定の分子、例えば、DNA、RNA又はタンパク質に結合する。未反応プローブを除去した後(例えば、洗浄又は酵素分解などを使用して)、次いで、結合事象は、別の表面に移動(又は「ブロット」)され得るレポーター分子に変換され得る。これらの実施形態では、レポーターは、分子の相対的な空間的位置を保存するように、細胞から支持体(例えば、スライド)の表面に移動される。レポーターは支持体に付着するようになり、光学的単一分子分解能を用いて支持体上で検出することができる。多重解析は、試料がハッシュタグ化されている場合、周期的デコード使用して行うことができ、細胞が由来する試料は、プールする前に添加された試料バーコードの解析によって決定することができる。
【0194】
本方法は、高度に多重化された方法で細胞を解析することを可能にする。フィルタリング工程は、実際に解析される利用可能な細胞の数で高い収率を提供する。表面上の単一分子コンビナトリアル読み出しを使用することは、データ生成のための次世代配列決定機器の使用を潜在的に回避することができ、それによって、解析のコストを低減し、高い空間分解能を提供する。上述したように、ハッシュタグ化により、多くの試料を並行して解析することができ、解析中に試料の同一性をデコードすることができる。
【0195】
本方法の1つの利点は、フィルタの表面上の細胞を光学的に調べることが困難であることである。更に、非多孔質表面上に細胞を固定化することは、非常に遅くかつ非効率的であり得る。
【0196】
以下により詳細に記載されるように、本方法は、細胞に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、細胞中又は細胞上に近接アッセイ反応生成物を生成することと、次いで近接アッセイ反応生成物を支持体に移動させることと、を含んでもよい。これらの実施形態では、結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートはそれぞれ、i.試料中の部位又は配列に結合する結合剤、及びii.第1のオリゴヌクレオチドを含む。場合によっては、近接アッセイは、レポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポータープローブを生成することを含み得、レポーターオリゴヌクレオチドの結合は、i.互いに近接する第1のオリゴヌクレオチド、又はii.そのライゲーション生成物のいずれか一方によって鋳型化される。次にレポータープローブを支持体に移動させ、そこでそれらを検出する。
【0197】
いくつかの実施形態では、近接アッセイは、DNA若しくはRNAを解析するためのライゲーションベースのアッセイ、又はタンパク質、タンパク質間相互作用若しくはタンパク質修飾を解析するためのライゲーションベースの近接アッセイであり得る。場合によっては、本方法は、ライゲーション反応に関与しない末端において保護されている2つの分子のライゲーションによってエキソヌクレアーゼ分解から保護されている、ビオチン化レポーター分子を作成し得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、RNA分子は、例えば、oligod(T)捕捉オリゴヌクレオチドを使用して、受容表面上に移動及び捕捉されてもよい。捕捉されたRNA分子は、その後、基材に共有結合的に固定化され、プローブベースのアプローチを使用して(例えば、単一分子FISH又はパドロックプローブ/RCAベースのアプローチを使用して)基材上で調べられ得る。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを使用して、細胞中又は細胞上のタンパク質の存在を調べることができる。これらの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、抗体が細胞に結合され、洗浄された後に放出され得る。これらの実施形態では、放出されたオリゴヌクレオチドは、受容表面上での捕捉を容易にするために、例えば、ビオチンを有するように設計することができる。ブロッティング中に全体的又は部分的に放出され、例えば、ビオチン部分及びストレプトアビジンでコーティングした捕捉表面を用いて受容表面上に捕捉される、RNA及びDNA解析のためのハイブリダイゼーションプローブを用いることができる。
【0200】
フィルタは、陽極酸化アルミニウム(anodic aluminum oxide、AAO)フィルタ、又は細胞の捕捉及びその後の細胞からの生体分子のブロッティングを可能にする任意のフィルタであり得る。そのようなフィルタは、細胞が細孔の上に位置し、細孔を潜在的に遮断し、それによって他の細胞が同じ区画に位置することを阻害するように、流れを使用して細胞をフィルタ上の異なる位置に方向付ける構造を有する、マイクロ又はナノ構造化透過性表面を有し得る。いくつかの実施形態では、細胞を特定の位置に誘引又は反発するように修飾された表面を使用することができる。場合によっては、一旦細胞が固定化されると、オーバーフロー/過剰細胞を表面から洗い流すことができる。
【0201】
この方法は、血液中の末梢血細胞及び免疫細胞の解析において特に使用される。解析を目的の特定の細胞型に標的化するために、血液細胞を特定のサブタイプについて濃縮することができる。血液細胞は、例えば、免疫応答を解明するための表面受容体、分泌因子又は抗原に対する受容体親和性、核酸で標識された抗体を使用する経路活性化状態の解析などについて調べることができる。また、本方法を使用して、細胞培養物を多重様式で解析するために、例えば、遺伝子発現、タンパク質発現並びにタンパク質相互作用及び修飾に対する効果を解析することと組み合わせて、CRISPR挿入物に関連する発現バーコードを使用するCRISPRスクリーニングの解析を行うこともできる。また、本方法を使用して、組織から得られた分離細胞を多重に解析することができる。
【0202】
場合によっては、細胞は、細胞内RNA及び/又はタンパク質の解析を可能にするために、フィルタリング及び透過処理の前に、例えば、PFAを使用して有利に固定され得る。
【0203】
近接アッセイ法は、細胞を複数の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートと結合させることと、結合したコンジュゲートに対して近接アッセイをin situで実施することと、を含み得る。結合は、細胞がフィルタ上に分布される前又は後に行うことができる。コンジュゲートの結合剤部分は抗体であり得る。しかしながら、他の実施形態では、結合剤は、アプタマー又はオリゴヌクレオチドプローブであってもよい。近接アッセイは、様々な異なる方法、例えば、近接ライゲーションアッセイ(近接部位に結合するコンジュゲート中のオリゴヌクレオチドの末端が互いにライゲーションされる、第1の生成物をもたらす)、又は近接伸長アッセイ(一方又は両方のオリゴヌクレオチドが他方を鋳型として使用して伸長される、第1の生成物をもたらす)を使用して行うことができる。いずれの場合でも、第1の生成物は、それらが繋留されている結合剤から放出され得、次いで、工程(c)では、近接アッセイ反応生成物として支持体に移動され得る。これらの実施形態では、工程(c)で支持体に移動された近接アッセイ反応生成物は、第1の生成物である。他の場合では、第1の生成物をスプリントとして使用して、一対のテール付加検出オリゴヌクレオチドを一緒にライゲーションして、第2の生成物を作製することができる。これらの実施形態では、工程(c)で支持体に移動された近接アッセイ反応生成物は、第2の生成物である。近接アッセイ反応生成物は、x-y面におけるそれらの空間関係を保存するように支持体に移動され得、次いで、フィルタ(及び、それに付着した細胞)は支持体から除去される。この方法では、移動された核酸は支持体に繋留され、次いで、例えば、標識プローブを繋留された近接アッセイ反応生成物に(直接的に又は間接的に)ハイブリダイズさせ、その間にそれらを支持体上に置き、標識パターンを顕微鏡法によって解析することによって、支持体上で検出され得る。支持体は、スライド(コーティングされていてもよい)などの平面基材、又はゲルなどの三次元基材であってもよい。基材が平面基材である場合、近接アッセイ反応生成物は基材上にある。基材が三次元基材である場合、近接アッセイ反応生成物は基材中にある。
【0204】
本方法は、細胞のためのフィルタとして機能することができる任意の種類の捕捉支持体を用いて実施することができる。このようなフィルタは、液体の迅速な流体フロースルーを可能にし、細胞を捕捉するのに十分な孔径を有するべきである。好適な捕捉支持体は、多孔質金属、セラミック、均質フィルム(例えば、ポリマー)及び不均質固体(ポリマー混合物、混合ガラス)などの固体を含む、多孔質有機材料又は無機材料から作製することができる。多孔質セラミック膜は、無機材料(例えば、アルミナ、チタニア、酸化ジルコニア、再結晶炭化ケイ素)から作製することができる。例えば、Pamgene(The Netherlands)によって販売されているPamChip、Wuら,Nucleic Acids Res.2004 32:e123及びAnthonyらBiotechniques.(2003)34:1082-6,1088-9を参照のこと。例示的な多孔質ポリマー膜は、酢酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースエステル(cellulose acetate,nitrocellulose,cellulose esters、CA、CN、及びCE)、ポリスルホン(polysulfone、PS)、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone、PES)、ポリアクリロニトリル(polyacrilonitrile、PAN)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、及びポリプロピレン(polyethylene及びpolypropylene、PE及びPP)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)、及びポリ塩化ビニル(polyvinylchloride、PVC)から作製することができる。
【0205】
任意の実施形態では、キャピラリ膜の細孔は、細胞が細孔を通過するのを防止する大きさであるべきである。例えば、実施形態では、キャピラリ膜の孔径は、細胞のメジアン径の50%以下であってもよく、いくつかの実施形態では、それは、細胞のメジアン径の10%以下であってもよい。したがって、多孔質キャピラリ膜を使用して試料を濾過する際には、細胞は、膜の上に残っているべきであり、細孔の中に入ったり、又は完全に細孔を通過したりしてはならない。
【0206】
特定の実施形態では、多孔質キャピラリ膜は、細胞に結合するコーティング、及び/又は細胞を分離するのを助けるパターン化された表面(例えば、親水性又は疎水性領域のアレイ)を含み得る。
【0207】
膜中の細孔の内径、膜中の隣接した細孔の中心間の距離、及び膜中の隣接した細孔の縁間の距離は、蒸着電圧、酸の種類、及び他のパラメーターによって制御することができる(一般的には、前掲のPoinernを参照)。いくつかの実施形態では、膜中の細孔の内径は、5nm~500nm、例えば、4nm~250nm、4nm~50nm、50nm~100nm、100nm~200nm又は200nm~500nmの範囲内であってもよい。独立して、膜中の隣接する細孔の中心間の平均距離は、50nm~1000nm、例えば、50nm~420nm、50nm~100nm、100nm~250nm、250nm~500nm、又は500nm~1000nmの範囲内であってもよい。膜中の隣接する細孔の縁間の平均距離は、10nm~500nm、10nm~50nm、50nm~200nm、又は200nm~500nmの範囲内であってもよい。本明細書で提供される直径及び細孔間の平均距離の値は例示的なものであり、そのような値は実施形態に基づいて変化し得ることが理解され得る。使用される膜は、所望に応じて、任意の好適な厚さ、例えば、20μm~500μm又は50μm~200μmの範囲内であってもよく、上述したように、使用中に膜の完全性を維持するために、1つ以上の支持構造(例えば、支持リング)を含んでもよい。
【0208】
上述したように、細胞の懸濁液は、血液細胞、免疫細胞、トリプシン処理によって互いに分離された単一細胞、又は懸濁液として培養された細胞などを含み得る。これらの実施形態では、「血液試料」という用語又はその文法的等価物は、全血の試料又は全血中の細胞のサブ集団を指す。全血中の細胞のサブ集団には、血小板、赤血球(red blood cell)(赤血球(erythrocyte))、血小板及び白血球(すなわち、好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球及び単球から構成される末梢血白血球)が含まれる。これらの5つの種類の全血細胞は、顆粒球(多形核白血球としても知られ、好中球、好酸球及び好塩基球を含む)、及び単核白血球(単球及びリンパ球を含む)の2つの群に更に分けることができる。リンパ球は、T細胞、B細胞及びNK細胞に更に分けることができる。末梢血細胞は血液の循環プール中に見出され、リンパ系、脾臓、肝臓又は骨髄内に隔離されない。血液を最初に薬剤と接触させ、次いで血液の試料をアッセイに使用する場合、接触させた血液の一部又は全部をアッセイに使用することができる。血液は、この方法において使用され得る多くの生体試料のうちの1つにすぎない。他の実施形態では、他の組織(例えば、肝臓又は脾臓などの他の軟組織)由来のインタクトな細胞又は組織培養物中で増殖させた細胞が使用され得る。フローサイトメトリーに好適な細胞懸濁液を提供するためにそのような組織を処理する方法は、公知である。一旦生成されると、細胞懸濁物は、以下に記載される方法と同様の方法で使用され得る。細胞の懸濁液は、脳、副腎、皮膚、肺、脾臓、腎臓、肝臓、脾臓、リンパ節、骨髄、膀胱、胃、小腸、大腸又は筋肉などの軟組織、並びに細胞の単層から作製され得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、細胞を試験薬剤とex vivoで接触させてもよいし(すなわち、対象から採取した血液を使用して)、又は(例えば、試験薬剤を哺乳動物に投与することによって)in vivoで接触させてもよく、アッセイからの結果を、細胞の参照試料(例えば、試験薬剤又は異なる量の試験薬剤と接触していない血液細胞)から得られた結果と比較してもよい。
【0210】
フィルタに適用される懸濁液は、少なくとも1,000個、少なくとも104個、少なくとも105個、少なくとも106個の細胞を含有し得る。
【0211】
場合によっては、本明細書に開示される方法は、フィルタ(及び細胞)を支持体から除去して、移動された核酸を支持体上又は支持体中に残すことを含む。
【0212】
フィルタは、任意の好適なやり方で支持体から除去することができる。例えば、平面生体試料が配置されるスライドガラスなどの基材は、簡単に支持体から移動させることができる。核酸反応生成物は、共有結合又は非共有結合のいずれかで支持体に結合されるので、核酸反応生成物は、支持体に付着したままであるが、フィルタは支持体から除去される。
【0213】
生体試料のいかなる残留物も、酵素作用によって除去することができる。例えば、ポリヌクレオチド以外の生体分子を分解する酵素で支持体を処理し、それによって核酸以外の生体分子のみを除去することができる。更に、核酸反応生成物がDNAを含む場合、支持体をRNA分解酵素で処理して、混入RNAを除去することができる。支持体は、例えば、エキソヌクレアーゼのカクテルで処理することができる。
【0214】
キット
本開示により、上記のように本方法を実施するための試薬を含むキットも提供される。キットのこれらの様々な構成要素は、別々の容器中にあっても、同じ容器中で混合されてもよい。
【0215】
キットの様々な構成要素は別々の容器中に存在してもよく、又は、所望に応じて、特定の適合する構成要素を単一の容器中で事前に組み合わせてもよい。
【0216】
上記の構成要素に加えて、本キットは、本方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための説明書を更に含むことができる。
【0217】
有用性
本明細書に記載される方法及び組成物は、平面生体試料の解析のための多種多様な用途において(例えば、組織切片、細胞のシート、又は遠心沈殿した細胞の解析において)一般的な使用を見出す。この方法を使用して、例えば、脂質除去などによって透明化された組織を含む任意の組織を解析することができる。試料は、膨張顕微鏡法(例えば、Chozinski et al.,Nature Methods2016 13:485-488を参照されたい)を使用して調製されてもよく、これは、有機ポリマーと細胞成分との選択的共重合によって作製された生物系のポリマー複製物を作製することを含む。この方法を使用して、例えば、細胞拡散物、エキソソーム、細胞外構造、固体支持体上又はゲル中(Elisa、ウエスタンブロット、ドットブロット)に堆積した生体分子、生物全体、個々の器官、組織、細胞、細胞外成分、細胞小器官、細胞成分、クロマチン及びエピジェネティックマーカー、生体分子及び生体分子複合体を解析することができる。結合剤は、タンパク質、脂質、多糖類、プロテオグリカン、代謝生成物、核酸、又は人工小分子などを含む任意の種類の分子に結合することができる。この方法は、スクリーニング及び創薬などにおいて多くの生物医学的用途を有し得る。更に、この方法は、診断、予後診断、疾患の階層化、個別化医療、臨床試験、及び薬物付随試験を含むがこれらに限定されない、様々な臨床的用途を有する。
【0218】
空間解析技術の分野では、本開示は、タンパク質間相互作用及びタンパク修飾の高度に多重化された読み出しをin situで提供することを目的とする。本開示はまた、タンパク質、タンパク質翻訳後修飾、及びタンパク質相互作用の単一分子解析を可能にする。
【0219】
また、本明細書に開示される方法を使用して、単一のアッセイ形式で、RNA、又はRNAと他の分子(例えば、タンパク質)との間のRNA相互作用を解析することができる。
【0220】
場合によっては、本明細書に開示される方法を使用して、標的RNAを解析することができる。例えば、上記のように、平面生体試料由来のRNA標的は、レポータープローブを使用して、レポーターポリヌクレオチドに直接コピーされ得る。特に、近接アッセイは、核酸反応生成物を生成するために行われないが、RNA標的は、レポーターポリヌクレオチドを生成するための鋳型として使用される。このような工程は、例えば、タンパク質解析に必要とされる抗原賦活化工程がDNAではなく、RNAを損傷し得るので、試料を結合剤と接触させる前に、又は結合剤の核酸を結合することによって作成される第1の生成物にライゲーションする検出オリゴヌクレオチドの導入と同時に行われ得る。
【0221】
更に、本明細書に開示される方法を使用して、RNAと他の生体分子(例えば、RNA、タンパク質、DNA、炭水化物、脂質など)との相互作用を解析することができる。特定のこのような実施形態では、近接アッセイは、RNAを標的化する1つの結合剤、及びタンパク質、炭水化物又は脂質を標的化する別の結合剤を使用して行われ得る。近接アッセイはまた、RNAを標的とする1つの結合剤及び異なるRNAを標的とする別の結合剤を使用して行われ得る。このような実施形態を使用して、標的RNAの、特異的結合剤が利用可能な任意の他の生体分子に対する相互作用を解析することができる。
【0222】
場合によっては、本明細書に開示される方法を使用して、互いに近接して位置する標的部位を同定することができる。例えば、第1の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは第1の部位に結合し、第2の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートは第2の部位に結合する。第1の部位及び第2の部位が近接している場合、オリゴヌクレオチドは互いに接近する。したがって、第1及び第2の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートにコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドからの核酸の生成は、オリゴヌクレオチドが、近接する部位に結合している結合剤にコンジュゲートされていることを示す。
【0223】
したがって、特定の場合では、本明細書に開示される方法を使用して、特定のタンパク質が平面生体試料中のどこに位置するかを決定することができる。これらの実施形態では、結合剤は、同じタンパク質上の異なる部位に結合する。
【0224】
場合によっては、また、本明細書に開示される方法を使用して、タンパク質間相互作用が生じる場所を同定することができる。これらの実施形態では、結合剤は異なるタンパク質に結合する。
【0225】
標的の相対的近接性は絶対濃度に依存し、各相互作用から作成されるシグナルの量は、多重実験内の相対的シグナルを互いに関連付ける結合親和性並びに化学的及び酵素的効率のような更なる効率因子に依存するので、有利である。例えば、参照タンパク質、RNA若しくはDNA標的を使用すること、又は単一の個々のタンパク質からのシグナルをタンパク質の相互作用からのシグナルに関連付けること。シグナルは、例えば、細胞マーカーの存在又は面積によって決定される細胞型について、細胞群の中で細胞ごとに解析することができる。
【0226】
また、場合によっては、本明細書に開示される方法を使用し、タンパク質などの生体分子の翻訳後修飾を決定することができる。特定のそのような実施形態では、一方の結合剤は、翻訳後修飾に、又は翻訳後修飾及び標的タンパク質の両方をカバーするエピトープに結合し、他方の結合剤は、同じタンパク質中の異なる部位に結合する。第1及び第2の結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートにコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドからの核酸の生成は、タンパク質が翻訳後修飾された部位を有することを示す。一般的な翻訳後修飾に特異的な結合剤を使用することによって、多数のタンパク質にわたるそのような修飾の存在を調べることができる。シグナルは、修飾の全体的な存在の効果、タンパク質濃度の影響及びアッセイ効率を正規化するような相対的なやり方で、有利に解析することができる。
【0227】
特定の実施形態では、試料は患者から得られた組織生検の切片であってもよい。対象となる生検には、皮膚(黒色腫、癌腫など)、軟部組織、骨、乳房、結腸、肝臓、腎臓、副腎、消化管、膵臓、胆嚢、唾液腺、頸部、卵巣、子宮、精巣、前立腺、肺、胸腺、甲状腺、副甲状腺、脳下垂体(腺腫など)脳、脊髄、眼球、神経、並びに骨格筋などの腫瘍生検及び非腫瘍生検の両方が含まれる。
【0228】
特定の実施形態では、結合剤は、タンパク質性であり得るがんバイオマーカーを含むバイオマーカーに特異的に結合する。例示的ながんバイオマーカーとしては、癌胎児性抗原(腺癌の特定用)、サイトケラチン(癌腫特定用のものではあるが、一部の肉腫にも発現され得る)、CD15及びCD30(ホジキン病用)、アルファフェトプロテイン(卵黄嚢腫瘍及び肝細胞癌用)、CD117(消化管間質腫瘍用)、CD10(腎細胞癌及び急性リンパ芽球性白血病用)、前立腺特異抗原(前立腺癌用)、エストロゲン及びプロゲステロン(腫瘍の特定用)、CD20(B細胞リンパ腫の特定用)、CD3(T細胞リンパ腫の特定用)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0229】
上記の方法は、対象からの細胞を分析して、例えば、その細胞が正常であるか否かを決定するために、又はその細胞が治療に応答しているかどうかを決定するために、使用することができる。一実施形態では、この方法を用いてがん細胞の形成異常の程度を判定することができる。これらの実施形態では、細胞は、多細胞生物由来の試料であり得る。生物学的試料は、個体から、例えば、軟組織から単離することができる。特定の場合では、本方法は、FFPE試料中の異なる種類のがん細胞を区別するために使用され得る。
【0230】
上記の方法により、各抗体又は抗体対が異なるマーカーを認識する、複数の抗体又は抗体対を使用して試料を検査する際に、特定の有用性が見出される。がんの例、及びそれらのがんを同定するために使用することができるバイオマーカーを以下に示す。これらの実施形態では、診断を下すために以下に列挙されるマーカーのすべてを調べる必要はない。
【0231】
【0232】
いくつかの実施形態では、本方法は、上述のようなデータ(画像)(その電子形態が遠隔地から転送されてもよい)を取得することを含んでもよく、この画像が医師又は他の医療専門家により解析されて、患者が異常細胞(例えば、がん様細胞)を有するかどうか、又はどの型の異常細胞が存在するのかを判定することができる。画像を診断として用いて、対象が疾患又は病態、例えば、がんを有するかどうかを判定することができる。特定の実施形態では、本方法を用いて、例えば、がんのステージを判定し、転移細胞を特定し、又は治療に対する患者の応答を監視することができる。
【0233】
T細胞、B細胞及び好中球のマーカー(例えば、CD3、CD20、CD15など、を含む細胞マーカーも調査することができる。本明細書に記載の組成物及び方法は、疾患を有する患者を診断するために使用することができる。場合によっては、患者の試料中のバイオマーカーの有無は、患者が特定の疾患(例えば、がん)を有することを示し得る。場合によっては、患者由来の試料を健康対照者由来の試料と比較することによって、患者が疾患を有すると診断することができる。この例では、対照に対するバイオマーカーのレベルが測定され得る。対照に対する患者の試料中のバイオマーカーのレベルの差が、疾患の指標となり得る。場合によっては、疾患を有する患者を診断するために、1つ以上のバイオマーカーが解析される。本開示の組成物及び方法は、試料中の複数のバイオマーカーの存在若しくは不存在を同定するために、又はそれらの発現レベルを測定するために、特に適している。
【0234】
場合によっては、本明細書の組成物及び方法は、患者に対する治療計画を決定するために使用することができる。バイオマーカーの存在又は不存在は、患者が特定の療法に対して応答性を示すか、又は難治性であるかを示してもよい。例えば、1つ以上のバイオマーカーの存在又は不存在は、疾患が特定の療法に対して難治性であることを示してもよく、代替的な療法が実施され得る。場合によっては、患者は現在治療を受けており、1つ以上の生体マーカーの存在又は不存在は、その治療がもはや効果的ではないことを示す場合がある。
【0235】
場合によっては、本方法は、疾患若しくは病態の診断又は監視(画像によって疾患又は病態についてのマーカーが特定される)、薬剤標的の探求(画像中のマーカーが薬剤療法のための標的とされてもよい)、薬剤スクリーニング(画像で示されるマーカーによって薬剤の効果が監視される)、薬剤感受性を判定すること(薬剤感受性はマーカーに関連する)、及び基礎研究(試料における細胞間での差異を測定することが望ましい)を含むが、これらに限定されない、種々の診断、創薬、並びに研究応用において利用されてもよい。
【0236】
特定の実施形態では、上記の方法を用いて、2つの異なる試料を比較することができる。異なる試料は、「試験用」試料、すなわち、目的の試料と、試験用試料と比較され得る「対照」試料とから構成され得る。多くの実施形態では、異なる試料は細胞型の対又はその画分であり、一方の細胞型は、目的の細胞型、例えば、異常細胞であり、他方は、対照、例えば、正常細胞である。細胞の2つの画分が比較される場合、その画分は通常2つの細胞のそれぞれからの同じ画分である。しかしながら、特定の実施形態では、同じ細胞の2つの画分が比較されてもよい。例示的な細胞型対としては、例えば、組織生検(例えば、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、皮膚癌などの疾患を有する組織、又は病原体に感染した組織など)から単離された細胞、及び同じ組織、通常は同じ患者由来の正常細胞;不死である(例えば、増殖性突然変異又は不死化導入遺伝子を有する細胞)、病原体に感染している、又は処理されている(例えば、ペプチド、ホルモン、変化した温度、増殖条件、物理的ストレス、細胞形質転換などの環境又は化学薬剤で)組織培養で増殖されている細胞、及び正常細胞(例えば、不死ではない、未感染又は未処理であること以外は実験細胞と同一である細胞);がん、疾患を有する哺乳動物、高齢哺乳動物、又は状態に曝露された哺乳動物から単離された細胞、及び健康又は若齢である同じ種、好ましくは同じ科の哺乳動物由来の細胞;並びに同じ哺乳動物由来の分化細胞及び未分化細胞(例えば、一方の細胞は、例えば、哺乳動物における他方の細胞の前駆体である)が挙げられる。一実施形態では、異なる型の細胞、例えば、神経細胞及び非神経細胞、又は異なる状態の細胞(例えば、細胞への刺激の前及び後)が用いられてもよい。本発明の別の実施形態では、実験材料は、ウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのような病原体による感染に感受性のある細胞を含み、対照材料は、病原体による感染に対して耐性のある細胞を含む。別の実施形態では、試料の対は、未分化細胞、例えば、幹細胞と、分化した細胞とによって表される。
【0237】
本方法によって生成された画像は、並べて見られてもよく、又はいくつかの実施形態では、画像は重ね合わされてもよいか、若しくは結合されてもよい。場合によっては、画像はカラーであってもよく、画像に使用される色は、使用される標識に対応してもよい。
【0238】
任意の生物に由来する細胞、例えば、細菌、酵母、植物、並びに、魚類、鳥類、爬虫類、両生類、及び哺乳動物などの動物に由来する細胞を、本方法に使用することができる。特定の実施形態では、哺乳動物細胞、すなわち、マウス、ウサギ、霊長類若しくはヒトに由来する細胞、又はこれらの培養誘導体が使用されてもよい。
【0239】
実施形態
実施形態F1。試料を解析するための方法であって、
(a)オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含むコンジュゲートを、オリゴヌクレオチド又はコンジュゲートが平面生体試料中又は平面生体試料上の部位に特異的に結合する条件下で、試料と接触させることと、(b)オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの相補配列を放出及び/又は伸長するための1つ以上の工程をin situで実施して、レポータープローブを生成することと、(c)試料中のレポータープローブの空間関係を保存するように、オリゴヌクレオチドのアレイを含まない平面支持体に試料からレポータープローブの全部又は一部を移動させることと、(d)支持体上のレポータープローブを検出することと、を含む、方法。
【0240】
実施形態F2。
工程(a)は、オリゴヌクレオチドが試料中の内在性RNA又はDNAにハイブリダイズする条件下で、オリゴヌクレオチドを試料とハイブリダイズさせることを含み、
工程(b)は、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーションを介して、RNA又はDNA中の隣接部位にハイブリダイズされる任意のオリゴヌクレオチドを一緒に結合することを含む、実施形態F1に記載の方法。
【0241】
実施形態F3。試料は、近接ライゲーションアッセイからのライゲーション生成物を含み、
工程(a)は、オリゴヌクレオチドがライゲーション生成物にハイブリダイズする条件下で、オリゴヌクレオチドを試料とハイブリダイズさせることを含み、
工程(b)は、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーション反応を介して、ライゲーション生成物中の隣接部位にハイブリダイズする任意のオリゴヌクレオチドを一緒に結合することを含む、実施形態F1に記載の方法。
【0242】
実施形態F4。オリゴヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼ感受性であるが、レポータープローブは、エキソヌクレアーゼ耐性である、実施形態F1又はF2に記載の方法。
【0243】
実施形態F5。方法は、工程(b)と工程(c)の間にエキソヌクレアーゼで試料を処理することを更に含む、実施形態F4に記載の方法。
【0244】
実施形態F6。
工程(a)は、抗体が試料中又は試料上の部位に結合する条件下で、組織試料を抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートと接触させることを含み、
工程(b)は、コンジュゲート抗体からオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの伸長生成物を切断し、レポータープローブを生成することを含む、実施形態F1に記載の方法。
【0245】
実施形態F7。レポータープローブは、ライゲーション又はギャップフィル反応を介して生成される、実施形態F1に記載の方法。
【0246】
実施形態F8。レポータープローブは、プライマー伸長反応を介して生成される、実施形態F1に記載の方法。
【0247】
実施形態F9。工程(d)は、顕微鏡法によって行われる、実施形態F1~F8のいずれかに記載の方法。
【0248】
実施形態F10。工程(d)は、標識プローブをレポータープローブにハイブリダイズさせることと、次いでプローブの結合パターンを顕微鏡法によって解析することと、を含む、実施形態F9に記載の方法。
【0249】
実施形態F11。プローブのセットはハイブリダイズされ、個々のレポーター分子をデコードするために繰り返しサイクルで洗い流され、少なくとも2つ以上のサイクルを使用してデコードされる、実施形態F10に記載の方法。
【0250】
実施形態F12。試料は、組織切片である、実施形態F1~F11のいずれかに記載の方法。
【0251】
実施形態F13。試料は、哺乳動物細胞である、実施形態F1~F12のいずれかに記載の方法。
【0252】
実施形態F14。放出することは、生体試料が支持体に面するように工程(a)の後に生体試料を支持体と接触させ、次いで試料を加熱することによって行われる、実施形態F1~F13のいずれかに記載の方法。
【0253】
実施形態A1。平面生体試料を解析するための方法であって、
(a)試料に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、近接アッセイ反応生成物を生成することと、
(b)試料中の近接アッセイ反応生成物の空間関係を保存するように、核酸反応生成物を支持体中又は支持体上に移動させることと、
(c)支持体中又は支持体上の近接アッセイ反応生成物を検出することと、を含む、方法。
【0254】
実施形態A2。近接アッセイは、ライゲーション、プライマー伸長、及び結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドを含むギャップフィル/ライゲーション反応の任意の組み合わせを含む、実施形態A1に記載の方法。
【0255】
実施形態A3。支持体は、平面支持体である、実施形態A1に記載の方法。
【0256】
実施形態A4。支持体は、マトリックスである、実施形態A1に記載の方法。
【0257】
実施形態A5。支持体は、ゲルである、実施形態A1に記載の方法。
【0258】
実施形態A6。工程(c)は、
(b)(i)支持体中又は支持体上の近接アッセイ反応生成物を標識することと、
(ii)支持体をイメージングして、近接アッセイ反応生成物が支持体中又は支持体上に結合した部位の画像を生成することと、を含む、実施形態A1~A5のいずれかに記載の方法。
【0259】
実施形態A7。工程(b)における移動することは、試料を支持体上に配置し、近接アッセイ反応生成物を電気泳動又は拡散によって支持体の表面上に移動させることによって行われる、実施形態A1~A6のいずれかに記載の方法。
【0260】
実施形態A8。工程(c)は、1つ以上の標識されたオリゴヌクレオチドを直接的に又は間接的に核酸反応生成物にハイブリダイズさせることを含む、実施形態A1~A7のいずれかに記載の方法。
【0261】
実施形態A9。工程(c)では、近接アッセイ反応生成物は、所定数のオリゴヌクレオチド及び所定数の標識されたオリゴヌクレオチドから構成される定義された核酸構造へのハイブリダイゼーションによって検出される、実施形態A1~A8のいずれかに記載の方法。
【0262】
実施形態A10。構造は、近接アッセイ反応生成物への少なくとも2つのハイブリダイゼーション事象によって核形成される、実施形態A9に記載の方法。
【0263】
実施形態A11。少なくとも2つのハイブリダイゼーション事象は、近接アッセイ反応生成物中の第1の配列への第1のハイブリダイゼーション、及び近接アッセイ反応生成物中の第2の配列への第2のハイブリダイゼーションを含む、実施形態A10に記載の方法。
【0264】
実施形態A12。方法は、工程(a)で生成された画像を試料の画像と比較することを含む、実施形態A1~A11のいずれかに記載の方法。
【0265】
実施形態A13。試料の画像は、顕微鏡的染色で試料を染色することによって生成される、実施形態A12に記載の方法。
【0266】
実施形態A14。工程(b)と工程(c)との間に支持体から試料を除去することを更に含む、実施形態A1~A13のいずれかに記載の方法。
【0267】
実施形態A15。生体試料は、組織切片である、実施形態A1~A14のいずれかに記載の方法。
【0268】
実施形態A16。組織切片は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片である、実施形態A15に記載の方法。
【0269】
実施形態A17。支持体は、スライドガラスである、実施形態A1~A16のいずれかに記載の方法。
【0270】
実施形態A18。工程(a)の結合剤は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、又はアプタマーである、実施形態A1~A17のいずれかに記載の方法。実施形態B1。生体試料を解析するための方法であって、
(a)レポーターオリゴヌクレオチドの複数の対を、生体試料中のRNAにin situでハイブリダイズさせることと、
(b)互いに隣接する部位にハイブリダイズしているレポーターオリゴヌクレオチドの任意の対をin situで一緒にライゲーションして、ライゲーション生成物を生成することと、
(c)試料中のライゲーション生成物の空間関係を保存するように、ライゲーション生成物を支持体中又は支持体上に移動させることと、
(d)ライゲーション生成物への標識プローブのハイブリダイゼーションによって、支持体上のライゲーション生成物を検出することと、を含む、方法。
【0271】
実施形態B2。
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の一方のメンバーは、反応基を含む末端を有し、他方のメンバーは、エキソヌクレアーゼ耐性結合を有し、
工程(c)では、ライゲーション生成物は、反応基を介して支持体に繋留されるようになり、
工程(d)の前に、方法は、エキソヌクレアーゼ処理によって任意のライゲーションされていないレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子を分解することを含む、実施形態B1に記載の方法。
【0272】
実施形態B3。レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、RNAにハイブリダイズしないテールを有し、工程(d)では、標識プローブは、ライゲーション生成物中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、実施形態B1又はB2に記載の方法。
【0273】
実施形態B4。生体試料は、組織切片である、実施形態B1~B3のいずれかに記載の方法。
【0274】
実施形態B5。標識プローブは、互いにハイブリダイズされた規定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び標識されたオリゴヌクレオチドの複合体を含む、実施形態B1~B4のいずれかに記載の方法。
【0275】
実施形態B6。工程(d)は、
(b)(i)支持体上のライゲーション生成物を第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることであって、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドはライゲーション生成物中の異なる配列にハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることと、
(ii)ライゲーション生成物にハイブリダイズした第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドを、複合体中でハイブリダイズした所定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び標識されたオリゴヌクレオチドから構成される標識複合体とハイブリダイズさせることであって、標識複合体は両方の架橋オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることと、
(iii)単一の標識複合体のハイブリダイゼーションを検出することができる分解能で、ハイブリダイズされた標識複合体を検出することと、を含む、実施形態B1~B5のいずれかに記載の方法。
これらの実施形態では、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドは、架橋オリゴヌクレオチドの一方の5’末端が他方の3’末端に(10ヌクレオチド未満、5又は4、3、2、1若しくは0ヌクレオチド未満の間隙で)隣接している「直接」様式でハイブリダイズし得る。複合体に示されているが、これらの分子は鏡像であり、同じではない。架橋分子は、標識プローブのためのいくつかの結合部位を有し得る。
【0276】
実施形態B7。
第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドは、ライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、
標識複合体中の非標識のオリゴヌクレオチドの少なくともいくつかは、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドの両方のテールとハイブリダイズし、
複合体は、規定数の標識されたオリゴヌクレオチドを含み、標識されたオリゴヌクレオチドは、非標識のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている、実施形態B6に記載の方法。
【0277】
実施形態B8。複合体は、4~20個の非標識のオリゴヌクレオチド及び8~200個の標識されたオリゴヌクレオチドを含む、実施形態B5~B7のいずれかに記載の方法。
【0278】
実施形態B9。第1の架橋オリゴヌクレオチドは第1の安定化配列を有し、第2の架橋オリゴヌクレオチドは第2の安定化配列を有し、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドがライゲーション生成物にハイブリダイズするとき、第1及び第2の安定化配列は互いにハイブリダイズする、実施形態B6~B8のいずれかに記載の方法。
【0279】
実施形態B10。安定化配列は4~10bpの長さであり、一方の安定化は第1の架橋オリゴヌクレオチドの3’末端にあり、他方の安定化配列は第2の架橋オリゴヌクレオチドの5’末端にある、実施形態B9に記載の方法。
【0280】
実施形態C1。生体試料を解析するための方法であって、
(a)生体試料を複数のコンジュゲートで標識することであって、複数のコンジュゲートはそれぞれ、i.試料中の部位又は配列に結合する結合剤、及びii.第1のオリゴヌクレオチドを含む、標識することと、
(b)レポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポーターブローブを生成することであって、レポーターオリゴヌクレオチドの結合は、i.互いに近接する第1のオリゴヌクレオチド、又はii.そのライゲーション生成物のいずれか一方によって鋳型化させる、一緒に結合することと、
(c)任意選択で、生体試料中の近接アッセイ反応生成物の空間関係を保存するように、レポータープローブを支持体中又は支持体上に移動させることと、
(d)エキソヌクレアーゼ処理又は洗浄によって、未反応のレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子を除去することであって、除去することはin situで、又は支持体中若しくは支持体上で行われる、除去することと、
(e)標識プローブのレポータープローブへのハイブリダイゼーションによって、in situで、又は支持体中若しくは支持体上のいずれかでレポータープローブを検出することと、を含む、方法。
【0281】
実施形態C2。標識プローブは、所定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び標識されたオリゴヌクレオチドから構成される定義された核酸構造を含む、実施形態C1に記載の方法。
【0282】
実施形態C3。レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、第1のオリゴヌクレオチド又はそのライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、工程(e)では、標識プローブは、レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、実施形態C1又はC2に記載の方法。
【0283】
実施形態C4。工程(c)が行われず、工程(d)及び工程(e)がin situで行われ、工程(e)では、標識プローブは、レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールにハイブリダイズされる、実施形態C3に記載の方法。
【0284】
実施形態C5。工程(c)は実施され、
レポーターオリゴヌクレオチドの各対の一方のメンバーは、反応基を含有する末端を有し、他方のメンバーは、第1のオリゴヌクレオチド又はそのライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、
工程(c)では、レポータープローブは、反応基を介して支持体に繋留され、
工程(d)では、レポータープローブは、レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールへの標識プローブのハイブリダイゼーションによってin situで検出される、実施形態C3に記載の方法。
【0285】
実施形態C6。工程(b)は、
(b)(i)第1のオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、第1の生成物を生成することと、
(ii)第1の生成物を鋳型として使用してレポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポータープローブを生成することと、を含む、実施形態C1に記載の方法。
【0286】
実施形態C7。工程(d)は、エキソヌクレアーゼ処理によって、又はレポータープローブである第1の生成物二本鎖のTmよりも低い温度で洗浄することによって、未反応のレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子を除去することを含む、実施形態C6に記載の方法。
【0287】
実施形態C8。(b)(ii)のライゲーション生成物は、ライゲーション又はギャップフィル/ライゲーション反応によって作製される、実施形態C1~C7のいずれかに記載の方法。
【0288】
実施形態C9。(b)(ii)のライゲーション生成物は、支えられたライゲーション反応を使用して作製される、実施形態C1~C8のいずれかに記載の方法。
【0289】
実施形態C10。(i)及び(ii)は、別々の反応で行われる、実施形態C6に記載の方法。
【0290】
実施形態C11。(i)及び(a)(ii)は、レポーターオリゴヌクレオチドが第1のオリゴヌクレオチドとプレハイブリダイズされ、第1のオリゴヌクレオチドを一緒に結合するためのスプリントとして機能し、第1のオリゴヌクレオチドのうちの1つがレポーターオリゴヌクレオチドをライゲーションするための鋳型として機能する、同じ反応において行われる、実施形態C6に記載の方法。
【0291】
実施形態C12。工程(a)の結合剤は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、又はアプタマーである、実施形態C1~C11のいずれかに記載の方法。
【0292】
実施形態C13。生体試料は組織切片である、実施形態C1~C12のいずれかに記載の方法。
【0293】
実施形態D1。生体試料を解析するための方法であって、
(a)生体試料中で近接アッセイをin situで実施して、近接アッセイ反応生成物を生成することと、
(b)試料中の近接アッセイ反応生成物の空間関係を保存するように、近接アッセイ反応生成物を支持体中又は支持体上に移動させることと、
(c)支持体上の近接アッセイ反応生成物を、
(i)近接アッセイ反応生成物を第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることであって、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドが近接アッセイ反応生成物中の異なる配列にハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることによって、及び
(ii)近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズした第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドを、複合体中でハイブリダイズした所定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び所定数の標識されたオリゴヌクレオチドから構成される標識複合体とハイブリダイズさせることであって、標識複合体は両方の架橋オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることによって、標識することと、
(d)単一の標識複合体のハイブリダイゼーションを検出することができる分解能で、ハイブリダイズされた標識複合体を検出することと、を含む、方法。
【0294】
実施形態D2。
第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドは、近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズしないテールを有し、
標識複合体中の非標識のオリゴヌクレオチドの少なくともいくつかは、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドの両方のテールとハイブリダイズし、
標識複合体は、規定数の標識されたオリゴヌクレオチドを含み、標識されたオリゴヌクレオチドは、標識オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている、実施形態D1に記載の方法。
【0295】
実施形態D3。標識複合体は、4~20個の標識オリゴヌクレオチド及び8~200個の標識された検出オリゴヌクレオチドを含む、実施形態D1又はD2に記載の方法。
【0296】
実施形態D4。第1の架橋オリゴヌクレオチドは、第1の安定化配列を有し、第2の架橋オリゴヌクレオチドは、第2の安定化配列を有し、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドが近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズするとき、第1及び第2の安定化配列は、互いにハイブリダイズする、実施形態D1~D3のいずれかに記載の方法。
【0297】
実施形態D5。安定化配列は、4~10bpの長さであり、一方の安定化は第1の架橋オリゴヌクレオチドの3’末端にあり、他方の安定化配列は第2の架橋オリゴヌクレオチドの5’末端にある、実施形態D4に記載の方法。
【0298】
実施形態D6。生体試料は、組織切片である、実施形態D1~D5のいずれかに記載の方法。
【0299】
実施形態D7。工程(b)では、近接アッセイ反応生成物において第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列は、(a)の近接アッセイにおいて単一分子に一緒にされる、実施形態D1~D6のいずれかに記載の方法。
【0300】
実施形態D8。近接アッセイは、
(b)(i)第1のオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、第1の生成物を生成することであって、一緒に結合された第1のオリゴヌクレオチドは、試料に結合した結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのそれぞれの部分である、一緒に結合することと、
(ii)第1の生成物を鋳型として使用してレポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポータープローブを生成することと、を含み、
工程(c)では、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドはレポータープローブにハイブリダイズする、実施形態D1~D7のいずれかに記載の方法。
【0301】
実施形態D9。レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、第1の生成物にハイブリダイズしないテールを有し、標識複合体は、レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、実施形態D8に記載の方法。
【0302】
実施形態D10。工程(a)と工程(c)との間にエキソヌクレアーゼで試料又は支持体を処理して、未反応の一本鎖DNA分子を除去することを更に含む、実施形態D1~D9のいずれかに記載の方法。
【0303】
実施形態D11。工程(a)の近接アッセイにおいて使用される結合剤は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、又はアプタマーである、実施形態D1~D10のいずれかに記載の方法。
【0304】
実施形態E1。生体試料を解析するための方法であって、
(a)生体試料中で近接アッセイをin situで実施して、近接アッセイ反応生成物を生成することと、
(b)近接アッセイ反応生成物を、
(i)近接アッセイ反応生成物を第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることであって、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドが近接アッセイ反応生成物中の異なる配列にハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることによって、及び
(ii)近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズした第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドを、複合体中でハイブリダイズした所定数の非標識のオリゴヌクレオチド及び所定数の標識されたオリゴヌクレオチドから構成される標識複合体とハイブリダイズさせることであって、標識複合体は両方の架橋オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、ハイブリダイズさせることによって、in situで標識することと、
(c)単一の標識複合体のハイブリダイゼーションを検出することができる分解能で、ハイブリダイズされた標識複合体を検出することと、を含む、方法。
【0305】
実施形態E2。
第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドは、近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズしないテールを有し、
標識複合体中の非標識のオリゴヌクレオチドの少なくともいくつかは、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドの両方のテールとハイブリダイズし、
標識複合体は、規定数の標識されたオリゴヌクレオチドを含み、標識されたオリゴヌクレオチドは、標識オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている、実施形態E1に記載の方法。
【0306】
実施形態E3。標識複合体は、4~20個の標識オリゴヌクレオチド及び8~200個の標識された検出オリゴヌクレオチドを含む、実施形態E1又はE2に記載の方法。
【0307】
実施形態E4。第1の架橋オリゴヌクレオチドは、第1の安定化配列を有し、第2の架橋オリゴヌクレオチドは、第2の安定化配列を有し、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドが近接アッセイ反応生成物にハイブリダイズするとき、第1及び第2の安定化配列は、互いにハイブリダイズする、実施形態E1~E3のいずれかに記載の方法。
【0308】
実施形態E5。安定化配列は、4~10bpの長さであり、一方の安定化は、第1の架橋オリゴヌクレオチドの3’末端にあり、他方の安定化配列は、第2の架橋オリゴヌクレオチドの5’末端にある、実施形態E4に記載の方法。
【0309】
実施形態E6。生体試料は、組織切片である、実施形態E1~E5のいずれかに記載の方法。
【0310】
実施形態E7。工程(b)では、近接アッセイ反応生成物において第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列は、(a)の近接アッセイにおいて単一分子に一緒にされる、実施形態E1~E6のいずれかに記載の方法。
【0311】
実施形態E8。近接アッセイは、
(b)(i)第1のオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、第1の生成物を生成することであって、一緒に結合された第1のオリゴヌクレオチドは、試料に結合した結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのそれぞれの部分である、一緒に結合することと、
(ii)第1の生成物を鋳型として使用してレポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポータープローブを生成することと、を含み、
工程(b)では、第1の架橋オリゴヌクレオチド及び第2の架橋オリゴヌクレオチドはレポータープローブにハイブリダイズする、実施形態E1~E6のいずれかに記載の方法。
【0312】
実施形態E9。レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、第1の生成物にハイブリダイズしないテールを有し、標識複合体は、レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、実施形態E8に記載の方法。
【0313】
実施形態E10。工程(b)の前にエキソヌクレアーゼで試料を処理し、未反応の一本鎖DNA分子を除去することを更に含む、実施形態E1~E9のいずれかに記載の方法。
【0314】
実施形態E11。工程(a)の近接アッセイにおいて使用される結合剤は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体、又はアプタマーである、実施形態E1~E10のいずれかに記載の方法。
【0315】
A~Gの実施形態では、放出することは、生体試料が支持体に面するように(すなわち、試料を2つの支持体の間に挟むことによって)生体試料を支持体と接触させることと、次いで試料を加熱することと、によって行われてもよい。
【0316】
A~Gのいずれかの実施形態では、平面試料は、細胞の懸濁液をフィルタに通すことによって生成され得、細胞はフィルタ上に保持される。フィルタ上の細胞は、平面支持体である。
【0317】
実施形態G1。細胞の懸濁液を解析するための方法であって、(a)細胞の懸濁液を多孔質キャピラリ膜を通して濾過し、それによって膜上に細胞を分布させることと、(b)膜の細胞側が平面支持体に面する状態で、膜を支持体上に配置することと、(c)細胞中の核酸の空間関係を保存するように、細胞から支持体中又は支持体上に核酸を移動させることと、(d)多孔質キャピラリ膜及び細胞を支持体から除去することと、(e)支持体に移動された核酸を空間的に解析することと、を含む、方法。
【0318】
実施形態G2。工程(a)と工程(c)との間に、細胞に結合している結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの1つ以上の対に対して近接アッセイをin situで実施して、細胞中又は細胞上に近接アッセイ反応生成物を生成することを更に含み、工程(c)で移動されかつ工程(e)で解析される核酸は、近接アッセイ反応生成物を含む、実施形態G1に記載の方法。
【0319】
実施形態G3。工程(e)は、(i)支持体中又は支持体上に移動した近接アッセイ反応生成物を標識することと、(ii)支持体をイメージングして、近接アッセイ反応生成物が支持体中又は支持体上に結合している部位の画像を生成することと、を含む、実施形態G2に記載の方法。
【0320】
実施形態G4。近接アッセイは、ライゲーション、プライマー伸長、及び結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートのオリゴヌクレオチドを含むギャップフィル/ライゲーション反応の任意の組み合わせを含む、実施形態G2又はG3に記載の方法。
【0321】
実施形態G5。(b)の平面支持体は、空間的にバーコード化された捕捉オリゴヌクレオチドのアレイを含み、工程(c)は、移動された核酸を空間的にバーコード化された捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせることを含み、工程(e)は、移動された核酸を鋳型として使用して捕捉オリゴヌクレオチドを伸長させることと、プライマー伸長鋳型のコピーを配列決定して、配列リードを生成することと、を含む、実施形態G1~G4のいずれかに記載の方法。
【0322】
実施形態G6。配列リード中の空間バーコードを使用して、配列リードを支持体上の部位にマッピングすることを更に含む、実施形態G5に記載の方法。
【0323】
実施形態G7。移動させる工程(c)は、電気泳動又は拡散によって行われる、実施形態G1~G6のいずれかに記載の方法。
【0324】
実施形態G8。多孔質キャピラリ膜が多孔質陽極酸化アルミニウム膜である、実施形態G1~G7のいずれかに記載のキット。
【0325】
実施形態G9。工程(a)は、(i)細胞の懸濁液を多孔質毛細管膜上に配置することと、(ii)膜を通して懸濁液の液体成分を移動させる力を付与することと、によって行われる、実施形態G1~G8のいずれかに記載の方法。
【0326】
実施形態G10。力は、遠心力、負圧及び正圧から選択される能動的な力、又は毛管作用及び蒸発から選択される受動的な力である、実施形態G7に記載の方法。
【0327】
実施形態G11。工程(d)と(e)の間に多孔質キャピラリ膜を洗浄することを更に含む、実施形態G1~G10のいずれかに記載の方法。
【0328】
実施形態G13。膜内の細孔の内径は、2nm~500nmの範囲内である、実施形態G1~G12のいずれかに記載の方法。
【0329】
実施形態G14。膜内の隣接する細孔の中心間の平均距離は、50nm~1000nmの範囲内である、実施形態G1~G13のいずれかに記載の方法。
【0330】
実施形態G15。膜内の隣接する細孔の縁部間の平均距離は、10nm~500nmの範囲内である、実施形態G1~G14のいずれかに記載の方法。
【0331】
実施形態G16。細胞の懸濁液は、血液細胞、免疫細胞、トリプシン処理によって互いに分離された単一細胞を含むか、又は細胞は懸濁液として培養されている、実施形態G1~G15のいずれかに記載の方法。
【0332】
実施形態G17。
結合剤-オリゴヌクレオチドコンジュゲートはそれぞれ、i.試料中の部位又は配列に結合する結合剤、及びii.第1のオリゴヌクレオチドを含み、近接アッセイは、レポーターオリゴヌクレオチドの対をin situで一緒に結合して、レポータープローブを生成することを含み、レポーターオリゴヌクレオチドの結合は、i.互いに近接する第1のオリゴヌクレオチド、又はii.そのライゲーション生成物のいずれか一方によって鋳型化され、レポータープローブは、工程(c)で支持体に移動され、工程(e)は、標識プローブのレポータープローブへのハイブリダイゼーションによって、支持体上のレポータープローブを検出することを含む、実施形態G2に記載の方法。
【0333】
実施形態G18。方法は、エキソヌクレアーゼ処理又は洗浄によって、未反応のレポーターオリゴヌクレオチド及び他の一本鎖DNA分子を除去することを更に含む、実施形態G17に記載の方法。
【0334】
実施形態G19。レポーターオリゴヌクレオチドの各対の少なくとも1つのメンバーは、第1のオリゴヌクレオチド又はそのライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、工程(e)では、標識プローブは、レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールとハイブリダイズする、実施形態G17又はG18に記載の方法。
【0335】
実施形態G20。レポーターオリゴヌクレオチドの各対の一方のメンバーは、反応基を含有する末端を有し、他方のメンバーが、第1のオリゴヌクレオチド又はそのライゲーション生成物にハイブリダイズしないテールを有し、工程(c)では、レポータープローブは、反応基を介して支持体に繋留され、工程(e)では、レポータープローブは、レポータープローブ中のレポーターオリゴヌクレオチドのテールへの標識プローブのハイブリダイゼーションによって検出される、実施形態G17~G19のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0336】
本発明のいくつかの実施形態を更に説明するために、以下の特定の実施例が提供されるが、それらは本発明の例を説明するために提供されており、決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきではないということが理解される。
【0337】
実施例1
本実施例は、近接して位置する生体分子についての情報をDNAに変換することと、DNAを平面支持体に移動させることと、を含むアッセイを提供する。平面支持体上のDNAを検出し、近接して位置する生体分子に関する情報を同定するか、又は2つの別個のエピトープ若しくは遺伝子座を標的とする単一の生体分子を検出する。したがって、これらの方法では、近接生体分子に関する情報は、DNA分子に変換され、そのDNA分子が、合理化された多重化フォーマットで解析される。
【0338】
本実施例は、タンパク質情報をDNAに移動させるためにPAを行うことを説明する。例えば、PAを使用することは、特異性、並びにPAから1つのレポーター分子フォーマット(すなわち、DNA)へのRNA分子及びDNA分子の両方の移動を確実にする。この設計により、短いオリゴ体を近接ライゲーションに使用し、PAアッセイにおける緊密な近接性の要件を確実にすることが可能になる。次いで、これらのより短いオリゴヌクレオチドは、第2の工程においてハイブリダイゼーションに基づくバーコード読み取りを可能にするより長いオリゴヌクレオチドに変換される。
【0339】
本実施例では、検出は、規定数の検出フルオロフォアのプログラム可能なカスケードであるように設計される。核酸反応生成物を平面支持体に移動させることによって、バックグラウンド蛍光が高くなる組織での解析と比較して、より低いバックグラウンドで単一分子の検出を行うことがより容易になる。平面表面上の分子をイメージングする場合にzスタックをイメージングする必要がないか、又はその必要性が低減されるので、イメージング時間も短縮される。
【0340】
本実施例では、正確な増幅レベルを制御することが困難であるローリングサークル複製を使用する代わりに、PA中に生成された核酸反応生成物の実際の数が検出される。更に、正確な数のフルオロフォアが各標的分子に付加される制御されたハイブリダイゼーション反応化学は、標的単一分子のより均一な検出をもたらす。したがって、RCAを用いないタンパク質及びタンパク質相互作用の空間的検出は、より高密度のより小さい蛍光分子の解析/検出を可能にする。各検出サイクルの後、標識された検出オリゴヌクレオチドは洗い流され、個々のレポーター分子のみが表面上に残り、表面上の物理的クラウディングを回避する。
【0341】
この実施例では、平面生体試料を解析するために以下のプロトコルに従う。
【0342】
組織切片を固体支持体上に固定化する。タンパク質の位置についての情報は、抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドをライゲーションすることによってDNA分子に変換される。検出された各タンパク質、タンパク質修飾又はタンパク質/タンパク質相互作用について、2つの抗体が使用される。複数対の抗体を含有する抗体混合物をインキュベートして、組織中のそれぞれの標的タンパク質に結合させる。
【0343】
抗体対は、対の一方の抗体にコンジュゲートされた一方のオリゴヌクレオチドが自由3’末端を有し、対の別の抗体にコンジュゲートされた他方のオリゴヌクレオチドが自由5’末端を有するように設計される。未結合の抗体は洗い流され、抗体は、任意選択的に組織に固定される。抗体を組織に固定することは、その後の洗浄及びインキュベーションに耐えるのに役立つ。
【0344】
オリゴヌクレオチドの対に相補的なスプリントを加える。次いで、リガーゼを添加し、対をなす抗体が近接して結合している場合に、対をなす抗体を形成するオリゴヌクレオチドのライゲーションを可能にする。スプリントは、近接して結合した2つの抗体にコンジュゲートされた2つのオリゴヌクレオチドに安定してハイブリダイズするように設計される。
【0345】
特異的な潜在的相互作用又はタンパク質修飾を調べるために、1つの抗体の多くの他の抗体へのコンビナトリアルライゲーションを可能にする、スプリントを加えることもできる。あるいは、すべての3’コンジュゲート抗体をすべての5’コンジュゲート抗体にライゲーションすることができる。しかしながら、多くのタンパク質が、タンパク質間相互作用によってではなく、偶然に近接するので、有意なノイズ/バックグラウンドを得るリスクはより高い。この場合、シグナル対ノイズ比は、異なる細胞集団からのカウントを比較し、細胞集団間の相互作用パターンの統計的に有意な変動を見ることによって決定することができる。同じタンパク質を標的とする2つの結合剤及び同じタンパク質が関与する相互作用を標的とする2つの結合剤を使用する検出からのシグナルを測定して、内部参照として使用することもできる。
【0346】
スプリントを洗い流し、レポータープローブを添加する。レポータープローブは、近接抗体由来のライゲーションされたオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするように設計され得る。RNA標的にハイブリダイズする特定のレポータープローブも、設計することができる。レポータープローブは、それらがハイブリダイズするライゲーションされたオリゴヌクレオチド又は/及びそれらがハイブリダイズするRNA分子に対応する、バーコードを有するレポーターポリヌクレオチドを形成するように設計される。したがって、レポータープローブ及び得られたレポーターポリヌクレオチド中のバーコードの配列は、標的タンパク質及び標的RNAについての情報を含有する。
【0347】
レポータープローブ対は、それぞれ1つのライゲーション可能な末端を有するように設計される。プローブのうちの1つは、親和性部分を備えている。任意選択的に、レポーターポリヌクレオチドのライゲーションされていない末端は、エキソヌクレアーゼに対して耐性になるように修飾され得る。親和性部分は、クリック化学反応基のように有利に誘導性である。親和性部分はまた、特定の配列を使用してライゲーション可能なDNA配列であり得る。親和性部分は、平面支持体上に存在するメンバーに特異的に結合する特異的結合対の結合メンバーであってもよい。
【0348】
組織中のライゲーションされたオリゴヌクレオチド及び/又はRNA分子へのハイブリダイゼーションの際に、レポータープローブは、レポーターポリヌクレオチドの検出によってデコードされるように設計された固有のバーコードを一緒に構成する、バーコードの組み合わせを含有する。
【0349】
スプリント及びレポータープローブをライゲーションする工程は、同じ反応で行うことができる。これは、効率を低下させ得るタンパク質分子のための2つのライゲーション部位を意味するが、他方では、1つのライゲーション工程のみが必要とされ、これは効率を増加させるであろう。ライゲーションはまた、同じ条件下でRNA分子に特異的である必要があろう。
【0350】
過剰のレポータープローブを洗い流す。組織中のレポータープローブを固相に移動させ、レポーターポリヌクレオチド上の親和性部分を使用して付着させる。レポーターポリヌクレオチドの平面支持体への移動を容易にするために、レポーターポリヌクレオチドは、例えば、NaOH、ホルムアミド、尿素、グアニジン又は尿素などの化学物質及び温度による変性条件を用いて、それらの標的から放出され得る。放出はまた、抗体とコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドの間の切断可能なリンカーを切断することによって促進することができる。
【0351】
あるいは、この放出は、RNA標的を分解するためにRNAを使用して酵素的に媒介され得、それによって、RNAに結合したレポータープローブを放出して、ウラシル-DNAグリコシラーゼを使用して分解され得るウラシル塩基を有する抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドを設計する。それぞれの放出化学は、それが、表面上の親和性化学及び表面への移動機構と適合するように選択される。
【0352】
平面支持体は、組織切片が固定化される同じ固体支持体、又は組織の上に設けられる第2の支持体のいずれかであり得る。前者の場合、親和性反応が誘導性である必要があるのは、それがないと、過剰のプローブが添加されるハイブリダイゼーション中にプローブが表面をブロックするであろうからである。このような親和性反応の一例では、共有結合を作成するために銅を必要とするクリック化学が使用される。別の例では、ライゲーションは、鋳型スプリントを使用して、表面上に固定化されたオリゴヌクレオチドに対して行われ、それによって、固体支持体上に固定化されたオリゴヌクレオチドへのレポーターポリヌクレオチドの共有結合ライゲーションを容易にする。
【0353】
あるいは、別の平面支持体を使用し、組織からレポーターポリヌクレオチドを移動させることができる。組織から平面支持体へのレポーターポリヌクレオチドの移動は、電気泳動を用いて加速することができる。
【0354】
一例では、平面固体支持体を使用する代わりに、組織を、レポータープローブのライゲーション後に、クリアリングゲルマトリックス支持体中に固定化する。レポータープローブのうちの1つは、ゲル中にレポーターポリヌクレオチドを固定化する部分を備える。ゲルの重合後、DNAポリヌクレオチドを損傷することなく、組織成分をゲルから除去することができる。
【0355】
次いで、固定化されたレポーターポリヌクレオチドの単一分子同定が行われる。レポーターポリヌクレオチドは、検出されるバーコードの所与のセットを含有する。例えば、検出サイクル当たり2色が解析され、16サイクルが実行される場合、32個の異なるバーコードが読み取られる。バーコードは、各レポーターポリヌクレオチドが32個のバーコードの組み合わせからのバーコードの固有のセットを有するように設計することができる。
【0356】
検出プローブを複数サイクルで添加し、各サイクルにおいて異なるバーコード(複数可)を標識し、それによって、各レポーターオリゴヌクレオチド中に存在するバーコードのバイナリ列を検出する。各サイクルは、次のサイクルが始まる前に、標識、洗浄、イメージング、及び検出プローブの除去を含む。
【0357】
検出スキームは、各サイクルでは、最初に一対の架橋プローブがそれぞれのバーコードにハイブリダイズされ、検出のためのより長いオリゴヌクレオチドに変換するようにバーコードを設計することができる(
図5)。架橋プローブは、弱い相補的ハイブリダイゼーション、スタッキングハイブリダイゼーション又は酵素的ライゲーションによるハイブリダイゼーションの際に互いに安定化するように、及び個々に安定していないように有利に設計することができる。
【0358】
架橋プローブのハイブリダイゼーション後、検出プローブを添加する。検出プローブは、安定的なハイブリダイゼーションを形成するために近接した両方の架橋プローブの存在を必要とする。これは、個々の架橋プローブのバックグラウンド吸着がバックグラウンドを生成しないことを確実にする。この例では、各架橋プローブは、3つの検出プローブにハイブリダイズすることができる。各検出プローブは、複数(例えば、9つ)の標識プローブにハイブリダイズすることができるように設計される。各検出プローブは、バックグラウンドを超えるシグナルを生成するには弱すぎるシグナルを個々に生成するが、9つの標識プローブでそれぞれ標識された3つの検出プローブは、バックグラウンドを超えるシグナルを作成するように設計された合計27個の標識を凝集させる(
図5)。検出プローブ及び標識プローブは、一緒にプレハイブリダイズされ得、同じ工程で添加され得る。
【0359】
1対の架橋プローブが1つのレポーターポリヌクレオチドに付着されることを考慮すると、いくつかの標識プローブにそれぞれハイブリダイズされる複数の検出プローブは、バックグラウンドを超えるシグナルを登録するために、1対の架橋プローブにハイブリダイズされる必要がある。この設計は、シグナル生成特異性が維持されることを確実にする。個々の架橋プローブは、それらが表面に付着する場合にバックグラウンドを生成せず、個々の検出プローブ又は標識プローブは、バックグラウンドを超えるシグナルを生成するのに十分なシグナルを生成しない。複数のバーコードを1回の標識サイクルで検出することができるように、異なるフルオロフォアを有する複数の標識を使用することができる。ハイブリダイゼーション化学は、各標的分子に対して規定数のフルオロフォアを有するように設計される。
【0360】
実施例2
この実施例では、抗体オリゴヌクレオチドコンジュゲートを使用する。オリゴヌクレオチドAを抗体Aにコンジュゲートし、コンジュゲートAを作製する。コンジュゲートAをその標的にコンジュゲートさせる前に、組織オリゴヌクレオチドA’中のタンパク質AをオリゴヌクレオチドAにハイブリダイズさせる。オリゴヌクレオチドA’はまた、5’末端にビオチンを保有し、3’末端のフルオロフォアは、オリゴヌクレオチドAに相補的でない追加の配列A’1を有する。オリゴヌクレオチドA’にハイブリダイズしたコンジュゲートAを、スライドガラス上に固定化されたFFPE組織切片に結合させて、例えば、抗原賦活化及びブロッキングを含む適切な試料調製物を流す。次いで、組織切片を洗浄して、ストレプトアビジンでコーティングされた捕捉平面支持体を組織切片に面して配置する。組織及び平面支持体を有するスライドガラスを適所に保持し、スライドをオーブンに入れて、温度をオリゴヌクレオチドA及びオリゴヌクレオチドA’の融解温度を超えて上昇させる。次いで、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用を使用して、オリゴヌクレオチドA’を平面支持体上に捕捉する。蛍光顕微鏡法を用いてスライドをイメージングし、付着した蛍光分子を用いてオリゴヌクレオチドAを検出することができる。平面支持体上のパターンは、組織の鏡像を表す。
【0361】
実施例3
抗体コンジュゲートからのレポーターオリゴヌクレオチドの移動、及び免疫蛍光を用いた捕捉表面上での検出
抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲーション:ケラチン8(カタログ番号904804、Biolegend)及びケラチン18(カタログ番号628402、Biolegend)に対する抗体を、0.5mLのZeba(商標)スピン脱塩カラム7K MWCOを使用してDPBSに緩衝液交換し、Amicon(登録商標)Ultra-0.5遠心分離フィルタ10K MWCOデバイスを使用して1mg/mLに濃縮した。DBCO-NHS-エステル(カタログ番号761524、Sigma-Aldrich)をDMSOに溶解させ、2mMに希釈した。15倍モル過剰のDBCO-NHSエステルを抗体に添加し、反応物を光から保護して室温で45分間インキュベートした。1Mトリス-HCl(pH8)を30~100mMの最終濃度まで添加し、反応物を室温で5分間インキュベートした。未反応のDBCO-NHSエステルを除去するために、製造者の指示に従って、DPBSに平衡化した0.5mLのZeba(商標)スピン脱塩カラム7K MWCO(Thermo Scientific、カタログ番号89882)を使用した。2.5倍モル過剰のアジド修飾DNAオリゴヌクレオチドを、DBCOで活性化した抗体に加えた。反応物を、冷蔵庫(2~8℃)中で少なくとも60時間インキュベートした。ポリアクリルアミドゲル電気泳動、SYBR Gold核酸ゲル染色剤(S11494、Invitrogen)及びInstantBlue Coomassieタンパク質染色剤(Abcam、ab119211)でコンジュゲートを染色することによって、コンジュゲーションの成功を検証した。抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを、0.1%BSA及び0.02%NaN3を含むDPBS中で0.15μg/μLに希釈した。
【0362】
組織の調製:FFPEブロックからのコアを含む組織マイクロアレイを4μm厚の薄片に切片化し、TOMOスライドガラス(Matsunami)上に配置した。焼成した後、スライドをキシレン中で脱パラフィンし(5分間で2回)、一連の段階的エタノールから脱イオン水中で水和した。内在性ペルオキシダーゼを、PBS中の3%H2O2で室温にて10分間ブロックした。スライドをPBS中で1回すすいだ。抗原賦活化のために、抗原賦活化緩衝液、クエン酸緩衝液、pH6.0[Abcam、ab93678]を98℃で50分間使用した。スライドをPBS中で1回すすいだ。障壁は、ImmEdge(商標)疎水性障壁ペンで描くことによって作成した。最後に、スライドを0.05%Tween-20を含むTBS中ですすいだ。
【0363】
染色:アビジンブロッキング緩衝液を以下のように調製した:1×TBS、0.05%Tween-20、0.25mg/mL BSA、0.5mg/mLサケ精子DNA(Sigma)、アビジン5μg/mL。
【0364】
アビジンブロッキング緩衝液を使用してTMAを覆い、スライドを加湿チャンバ内で室温にて1時間インキュベートした。最後に、0.05%Tween-20を含むTBS中で2分間の洗浄を2回行った。
【0365】
ビオチンブロッキング緩衝液を以下のように調製した:1×TBS、0.05%Tween-20、0.25mg/mL BSA、0.5mg/mLサケ精子DNA(Sigma)、ビオチン12.5μg/mL、10mg/mL硫酸デキストラン。
【0366】
ビオチンブロッキング緩衝液を使用してTMAを覆い、スライドを加湿チャンバ内で室温にて1時間インキュベートした。
【0367】
ケラチン-18抗体を、ビオチンブロッキング溶液中で0.75ng/μLに希釈した。次に、それを使用してTMAを覆い、スライドを加湿チャンバ内で室温にて1時間インキュベートした。最後に、0.05%Tween-20を含むTBS中で45℃にて5分間の洗浄を3回行った。
【0368】
もう1度、ビオチンブロッキング緩衝液を使用してTMAを覆い、スライドを加湿チャンバ内で室温にて1時間インキュベートした。
【0369】
ハイブリダイゼーション緩衝液を以下のように調製した:10mMトリス酢酸、10mM酢酸マグネシウム、50mM酢酸カリウム、0.5mg/mL BSA、250mM NaCl、0.05%Tween-20、最終体積までの水。
【0370】
DNAオリゴ(22bp、ビオチン化され、フルオロフォアを含む)をハイブリダイゼーション緩衝液中で50nMに希釈し、加湿チャンバ内で37℃にて30分間、TMA上でインキュベートした。最後に、0.05%Tween-20を含むTBS中で45℃にて5分間の洗浄を3回行った。
【0371】
ガラスカバースリップのアビジンコーティング:ガラスカバースリップ:200nmビオチン誘導体化直鎖ポリカルボキシレートヒドロゲル、中電荷密度(XanTec bioanalytics GmbH)。
【0372】
カバースリップをPBSで1回すすぎ、0.1mg/mLアビジン(PBS中)中で室温にて1時間インキュベートした。次いで、それをPBS中で3回洗浄した。
【0373】
移動:組織スライド及びカバースリップを、10mMのNaAc(pH5.5)溶液中で15分間インキュベートした。2つのガラスを整列させ、気泡を作成することなく一体にし、次いで、加湿チャンバ内で60℃で75分間インキュベートした。最後に、カバースリップをスライドガラスから注意深く離した。
【0374】
載置:移動したカバースリップを、ビオチン化蛍光1μmビーズと共に室温で5分間インキュベートした(フォーカス目的のため)。次いで、0.05%Tween-20を含むTBS中で2分間、3回洗浄した。最後に、組織スライド及び移動したカバースリップを、EverBrite Hardset載置培地を用いて別々に載置した。
【0375】
イメージング:スライドを、製造業者の説明書に従って3D Histechスライドスキャナーでイメージングした。
【0376】
結果:
アッセイは、FFPE固定細胞株MCF7の1mm形態を有する試料中のケラチン-18を標的とするように設計した。細胞は、元の組織スライド上で可視化することができ(
図7A)、個々の細胞インプリント(ssDNA蛍光オリゴの転移の生成物)も捕捉表面上で可視され(
図7B)、試料の保持された空間分解能を有する移動を実証する。
【0377】
実施例4
移動後の捕捉表面上でのハイブリダイゼーション連鎖反応(hybridization chain reaction、HCR)によるPLA作成レポータープローブの検出
抗体及び組織の調製:上記のとおり。
【0378】
ヒト扁桃腺、ヒト胎盤、MCF7細胞及びMOLT4細胞を含むTMA、並びにFFPE DAUDI細胞及び
図8に記載されるMDA-MB231の0.6mmコア。
【0379】
近接ライゲーションアッセイ(PLA)
組織ブロッキング:アビジンブロッキング緩衝液を以下のように調製した:TBS、0.05%Tween-20、0.25mg/mL BSA、0.5mg/mLサケ精子DNA(Sigma)、アビジン5μg/mL。
【0380】
アビジンブロッキング緩衝液を使用してTMA切片を覆い、スライドを室温にて1時間インキュベートした。最後に、0.05%Tween-20を含むTBS中で2分間の洗浄を2回行った。
【0381】
ビオチンブロッキング緩衝液は以下のように調製した:TBS、0.05%Tween-20、0.25mg/mL BSA、0.5mg/mLサケ精子DNA(Sigma)、ビオチン12.5μg/mL。
【0382】
ビオチンブロッキング緩衝液を使用してTMAを覆い、スライドを室温にて30分間インキュベートした。スライドを、0.05%Tween-20を含むTBS中で1回すすいだ。
【0383】
抗体インキュベーション:一対の抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを、ビオチンブロッキング緩衝液中で各抗体1μg/mLに希釈した。希釈したコンジュゲートをスライドに適用した。スライドを4℃で一晩インキュベートした。スライドを0.05%Tween-20を含むTBS中で5分間、2回洗浄した。
【0384】
ライゲーションされたレポータープローブを作成するための近接連結アッセイ(PLA):2つの標的オリゴヌクレオチドを、125nMスプリント、0.04U/μLのT4 DNAリガーゼ(ThermoScientific)、10mMトリス酢酸、10mM酢酸マグネシウム、50mM酢酸カリウム、0.5mg/mLのBSA、200mM NaCl、及び0.05%Tween-20を添加することによってライゲーションした。反応物を加湿チャンバ内で37℃にて30分間インキュベートした。ライゲーションなしの陰性対照については、このスプリント鋳型ライゲーション工程を省略した。スライドを0.05%Tween-20を含むTBS中で5分間、2回洗浄した。
【0385】
1つはビオチンを含み、1つはAlexa647を含むレポーターオリゴヌクレオチドを、10mMトリス酢酸、10mM酢酸マグネシウム、50mM酢酸カリウム、0.5mg/mLのBSA、250mM NaCl、及び0.05%Tween-20中で33nMに希釈し、次いでスライドに添加して、第1のライゲーション生成物にハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション反応物を、加湿チャンバ内で37℃にて30分間インキュベートした。次いで、スライドを0.05%Tween-20を含むTBS中で5分間、2回洗浄した。次いで、レポーターオリゴヌクレオチドを、0.04U/μLのT4 DNAリガーゼ(ThermoScientific)、10mMトリス酢酸、10mM酢酸マグネシウム、50mM酢酸カリウム、0.5mg/mLのBSA、200mM NaCl、及び0.05%Tween-20を添加することによって、加湿チャンバ内で37℃にて30分間インキュベートする間にライゲーションした。スライドを0.05%Tween-20を含むTBS中で2分間、2回洗浄した。
【0386】
ライゲーションされていないレポーターオリゴヌクレオチドを消化し、ライゲーションされた反応生成物/レポータープローブを、0.01U/μLのUSER(New England Biolabs)、0.1U/μLのラムダエキソヌクレアーゼ(New England Biolabs)、1×rCutSmart緩衝液(New England Biolabs)及び0.05%Tween-20を含有するヌクレアーゼ混合物を用いて放出のために調製した。スライドを0.05%Tween-20を含むTBS中で5分間、2回洗浄した。
【0387】
ガラスカバースリップのコーティング:上記のとおり。
【0388】
移動:組織スライド及びカバースリップを、10mMのNaAc(pH5.5)溶液中で15分間インキュベートした。2つのガラスを整列させ、気泡を作成することなく一体にし、次いで、加湿チャンバ内で60℃で60分間インキュベートした。最後に、カバースリップをスライドガラスから注意深く離した。
【0389】
カバースリップ上のレポーター分子のHCR検出:移動が起こるはずの領域を、ImmEdgeペン(Vector Laboratories)で線引きした。カバースリップを、2×SSC(Sigma)中のビオチン標識微粒子(0.2μM、黄緑色蛍光(505/515))と共に室温で15分間インキュベートした。カバースリップを、0.1%Tween-20を含む2×SSCで2分間、3回洗浄した。反応生成物/レポータープローブを認識するHCRイニシエーター配列を有するプローブを、20%エチレンカーボネート及び0.1%Tween-20を含む4×SSC中で10nMに希釈し、カバースリップに添加した。カバースリップを、加湿チャンバ内で室温にて1時間インキュベートした。カバースリップを、0.1%Tween-20を含む2×SSC中で5分間、2回洗浄した。HCRは、Choi、Beck及びPierce2014(ACS Nano2014,8,5,4284-4294)によって以前に記載されたように行った。簡単に言うと、ATTO565を有するHCRヘアピンプローブを、40μLの5×SSC中で0.5μMに個々に希釈し、95℃で5分間インキュベートし、次いで室温で10分間冷却させた。その後、2つのヘアピンプローブを混合し、0.1%Tween-20を含む5×SSC中で10nMに希釈した。HCRヘアピンプローブ混合物をカバースリップに適用し、反応を、光から保護して加湿チャンバ内で室温にて3時間進行させた。カバースリップを、0.1%Tween-20を含む2×SSCで1回、TBSで1回洗浄した。カバースリップをSlowFade Diamond Antifade Mountant(Invitrogen)及びTOMOスライドガラス(Matsunami)に載置した。
【0390】
イメージング:カバースリップの2.5×2.5mm領域を、落射蛍光顕微鏡法でイメージングした。ビーズを25msの露光時間でFITCでイメージングし(データは示さず)、レポータープローブのHCR検出を1sの露光時間でTRITCでイメージングした(
図9)。
【0391】
結果:PLAアッセイを、ケラチン8を標的とする1つの抗体及びケラチン18を標的とする1つの抗体を使用して行った。このアッセイを使用して、2つが明らかに陽性であることが示された6つの特徴を含む組織マイクロアレイを解析した(
図9)。結果は参考文献と一致する。
【0392】
実施例5
PLAを用いたケラチン8及び18の検出、並びにフローセル単一分子配列決定を用いた捕捉表面へのレポータープローブの移動後の読み出し
抗体及び組織の調製:上記のとおり。
【0393】
ヒト扁桃腺、ヒト胎盤、MCF7細胞及びMOLT4細胞を含むTMA、並びにFFPE DAUDI細胞及び
図8に記載されるMDA-MB231の0.6mmコア。
【0394】
近接ライゲーションアッセイ:上記のとおり。
【0395】
ガラスカバースリップのアビジンコーティング:上記のとおり。
【0396】
移動:組織スライド及びカバースリップを、10mMのNaAc(pH5.5)溶液中で15分間インキュベートした。2つのガラスを整列させ、気泡を作成することなく一体にし、次いで、加湿チャンバ内で60℃で75分間インキュベートした。最後に、カバースリップをスライドガラスから注意深く離した。
【0397】
フローセル載置:カバースリップを超純水で2回すすぎ、次いで、製造業者の指示に従ってBioptechs FCS2チャンバに載置した。
【0398】
配列決定:配列決定は、フローセルを通して標識オリゴヌクレオチドを繰り返し導入することによって行った。本発明の化学は、3つの異なるオリゴ溶液が各サイクルにおいて連続して導入されることを必要とした:架橋プローブ、標識プローブ、続いて蛍光標識検出プローブ。各オリゴ混合物の間に洗浄を行った。配列決定は、各サイクルにおいて約0.5cm2面積をイメージングした。
【0399】
この設定では、Fluigent流体系(Flow EZ(商標)2000)を使用して、フローセル及び移動表面にわたって制御されたやり方で試薬を流した。すべての試薬を、200μL/分の流速で注入した。すべての洗浄工程の流速を、800μL/分に設定した。
【0400】
視野(field-of-view、FOV)アライメントのためのビーズ(ビオチン標識微粒子、0.2μM、黄緑色蛍光(505/515))を、元の1%ストック懸濁液から2×SSC中で1:20,000に希釈し、手動で添加し、流体系を開始する前に少なくとも10分間インキュベートした。
【0401】
ビーズを100msの露光時間でFITC中でイメージングし、レポーター分子を、Alexa647Nで標識されている場合、1000msの露光時間でCy5中でイメージングした。
【0402】
ビーズをイメージングした後、400μLのブロッキング緩衝液(1%ビオチン化ウシ血清アルブミン(biotinylated bovine serum albumin、BSA)、2×SSC)と共に室温で30分間インキュベートすることによって、非特異的結合を最小限にした。過剰のBSAを、連続流を使用して、塩及び界面活性剤を含有する洗浄緩衝液で洗浄することによって除去した。
【0403】
架橋-オリゴ対を、特に明記しない限り、400μLのハイブリダイゼーション緩衝液(4×SSC、0.1%Tween、30%エチレンカーボネート)中にて室温で最低1時間、10nMの最終濃度でインキュベートした。連続流を使用して、塩及び界面活性剤を含有する4mLの洗浄緩衝液で5分間洗浄することによって、ハイブリダイゼーション反応を停止させた。
【0404】
最高5つの標識プローブの混合物を、ハイブリダイゼーション緩衝液(30%エチレンカーボネート、0,1%Tween、4×SSC)中10nMの各プローブの最終濃度で、室温で30分間ハイブリダイズさせた。連続流を使用して、塩及び界面活性剤を含有する4mLの洗浄緩衝液で5分間洗浄することによって、ハイブリダイゼーション反応を停止させた。
【0405】
次に、蛍光標識された検出プローブを、ハイブリダイゼーション緩衝液(30%エチレンカーボネート、0,1%Tween、4×SSC)中、室温で15分間、標識プローブにハイブリダイズさせた。次いで、結合していない/非特異的なオリゴ及びプローブを除去するために、連続流を使用して、塩及び界面活性剤を含有する4mLの洗浄緩衝液で、表面を5分間洗浄した。
【0406】
シグナルは、検出プローブの蛍光に適合するチャネルにおいて表面をイメージングすることによって検出される。
【0407】
シグナル検出後、有機溶媒又はイオン性化合物(例えば、DMSO又はNaOH)を使用して、連続流下で最低10分間、ストリッピングを行った。ストリッピング後、連続流を使用して5分間、塩及び界面活性剤を含有する4mLの洗浄緩衝液で、表面を洗浄した。
【0408】
配列決定ハードウェア:配列決定系は、広視野落射蛍光イメージングのために装備された倒立顕微鏡(Nikon Ti2-E)、及び直列に接続された2つの11ポートロータリーバルブ(Fluigent M-SWITCH)を備えた圧力駆動フロー制御系(Fluigent Flow EZ2000及びFluigent FLOW UNIT L)の周囲に構築された。
【0409】
2つの系は、各系に関連付けられた専用ソフトウェア上で実行されるカスタムスクリプトを使用して制御された。2つの系の同期は、双方向TTLインターフェースを使用して得られた。
【0410】
顕微鏡は、60倍油浸対物レンズ(Nikon CFI Plan Apochromat Lambda D 60X Oil)及びsCMOSカメラ(Hamamatsu ORCA-Flash4.0LT)を備えていた。3つの蛍光フィルタセットを、記載の実験におけるイメージングのために使用した:Alexa 647N及びATTO647NをイメージングするためのSemrock LED-Cy5-A(ここではCy5と呼ぶ)、ATTO 565をイメージングするためのSemrock LED-TRITC-A(ここではTRITCと呼ぶ)、及び基準ビーズをイメージングするためのLED-FITC-A(ここではFITCと呼ぶ)。使用した光源は、CoolLED pE-800であり、TRITCチャネル及びCy5チャネルをそれぞれ用いてイメージングするために550nm及び635nmのLEDを100%オンに切り替え、FITCチャネルを用いて基準ビーズをイメージングするために470nmのLEDを1%オンに切り替えた。
【0411】
画像解析:配列決定画像データは、
図10に示されるように、イメージングのいくつかのサイクルにわたって、暗バックグラウンド上の回折限界輝スポットとして現れる。Cy5、TRITC及びFITCイメージングチャネルに対応する、3組の画像が取得される。Cy5及びTRITCチャネルは配列決定スポットを含み、FITCは画像アラインメントのための参照ビーズを含む。蛍光バーコード情報を検出するための画像解析方法は、いくつかの工程からなっていた。第1に、Cy5及びTRITCチャネルにおけるスポット、並びにFITCチャネルにおけるビーズを検出し、セグメント化する。スポット及びビーズをセグメント化するために、スポットのサイズに調整されたサークル検出アルゴリズムが使用される。すべての異なるサイクルについて検出されたビーズを使用して、サイクルデータを整列させる。スポット画像は、フォアグラウンド照明及びバックグラウンド照明の不均一性を補正するために前処理される。不均一な照明を補正した後、位置、蛍光体数などのスポット特徴が抽出される。ビーズを使用して得られた整列情報は、対応する画像サイクルにおいてスポットを整列させるために使用される。バーコード情報、すなわち、すべての異なるイメージングサイクルにわたる分子のオン又はオフは、位置合わせされたスポットデータによるスポットの近傍検索を使用して検出される。Cy5及びTRITCについてのバーコード情報を組み合わせて、2つのイメージングチャネルにおけるバーコードを得る。バーコード情報は、解析の後半部分で処理されるPandasソフトウェアを使用してフェザーフォーマットでエクスポートされる。バーコード情報に加えて、データの品質をチェックするための他の補助情報及びアライメント品質メトリックなどの解析が取得される。全解析は、Numpy、Scipy、OpenCVなどの画像及びデータ解析ライブラリを使用してPythonソフトウェアで行われる。
【0412】
データ解析:各視野及び各サイクルで同定された蛍光スポットに関する情報を含む、前の工程で得られた要約表(フェザーフォーマットファイル)を、矢印及びデータ・表パッケージを介してRにインポートし、下流解析をR環境内で行った。結果のグラフ表示は、ggplotパッケージを用いて行った。
【0413】
解析は、2つの主要なタスクに分けられた:i)移転されたレポーター分子の同定、及びii)それらのレポーター部位を標的とするプローブを用いたそれらの検出の評価。前者は、各レポーター分子に直接コンジュゲートされたフルオロフォアに対応するスポットの分布を試料領域にわたって可視化することによって実施した(
図11)。
【0414】
解析の第2の部分は、多くのフルオロフォアを保有するオリゴヌクレオチド配列又はプローブのセットを用いて参照レポーター分子を検出することからなり、各レポーター分子は、検出系1及び検出系2のハイブリダイゼーション標的であるヌクレオチドの2つの別個の伸長を別々に保有する。実験は、検出系の注入と、一方の系のプローブを他方の系から添加する前に除去することを目的とした「ストリッピング」サイクルとを交互に行ったので、本発明者らは、レポーター分子のどの標的領域がサイクルごとに検出されたかを可視化することができた(
図12)。
【0415】
レポーター分子の検出を更に調査するために、本発明者らは、試料領域全体を構成する個々の画像の解析を行った。具体的には、本発明者らは、組織試料のうちの1つにオーバーラップする4つの隣接する視野(field-of-view、FoV)のセットに焦点を当てた。これらのFoVにわたって、系1(
図13A;検出率0.166)及び系2(
図13B;検出率0.284)で検出されたスポット、並びに両系で共検出されたスポット(
図13C;検出率0.098)を抽出し、後者を参照レポーター分子のスポット
(
図13D;N=1173)と比較した。
【0416】
結果:上で説明したように、解析の第1の目的は、フルオロフォアを保有する分子を、検出のために使用する表面に移動させることができることを確認することであった。
図11は、レポーター分子が表面に正しく移動し、予想された位置にあったことを明確に示している。第2の目的は、周期的検出系を使用してこれらの分子を検出することができることを実証することであった。
図12は、レポーター分子密度がより高い領域が、検出サイクル(サイクル2、4、6及び8)において検出系からより高いシグナル強度を生成する領域でもあることを示す。加えて、
図13は、検出系1及び検出系2の両方が、それらの標的部位にハイブリダイズすることができること(
図13A~
図13B)、及び2つの間のオーバーラップ(
図13C)が、レポーター分子の大部分が見出され得る場所に特異的に局在化すること(
図13D)を示す。まとめると、これは、i)十分な数の分子が組織から表面に移動されたこと、及びii)このアプローチがこれらの分子の存在を高い信頼度で検出することができることを実証する。
【0417】
実施例6
オリゴヌクレオチドの設計
本方法のいくつかの実施形態では、以下のオリゴヌクレオチドを使用することができる。
【0418】
左標的オリゴヌクレオチド(コンジュゲートアーム):
【0419】
【0420】
右標的オリゴヌクレオチド(コンジュゲートアーム):
【0421】
【0422】
スプリント:
【0423】
【0424】
左レポーターオリゴヌクレオチド:
【0425】
【0426】
右レポーターオリゴヌクレオチド:
【0427】
【0428】
このオリゴヌクレオチドの修飾を以下に記載する。
/5AzideN/: NHSエステルを介して付着したアジド修飾
/5Phos/: リン酸化
U デオキシウリジン
* ホスホロチオエート結合
/3AzideN/ NHSエステルを介して付着したアジド修飾
/3Bio/ ビオチン
【0429】
この実施形態では、左標的オリゴヌクレオチド及び右標的オリゴヌクレオチドは、それらのアジド基を介して抗体に結合され、抗体は試料に結合される。結合後、試料を、リガーゼ及びスプリントオリゴヌクレオチドと共にインキュベートする。近接する標的オリゴヌクレオチドは、スプリントオリゴヌクレオチドによって介在されるライゲーションにおいて互いにライゲーションされるようになる。次の工程では、左及び右レポーターオリゴヌクレオチドは、ライゲーション生成物になおハイブリダイズされたスプリントを有する試料にハイブリダイズされる。左及び右レポーターオリゴヌクレオチドは、スプリントに隣接するライゲーション生成物中の部位にハイブリダイズし、レポーターオリゴヌクレオチドはスプリントにライゲーションされて、レポーター分子を生成する。レポーター分子が生成された後、試料をUDG又はUSERで処理して、ウラシルでライゲーション生成物を切断するか、又はウラシルを除去する。これは、レポーター分子と基礎をなすライゲーション生成物との間の相互作用のTmを低下させ、レポーター分子が容易に放出されるのを可能にする。この実施形態は、
図2Bに示される。
【0430】
前述の発明は、理解を明確にする目的で例示及び実施例によっていくらか詳細に記載されているが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び改変がなされ得ることが、当業者に容易に明らかである。
【配列表】
【国際調査報告】