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特表2024-527514TREM-1抗原結合タンパク質での循環器疾患の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】TREM-1抗原結合タンパク質での循環器疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240718BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
A61K39/395 N
C07K16/28 ZNA
A61P43/00 121
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P1/16
A61P3/04
A61P9/10
A61K39/395 D
A61K45/00
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578758
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 US2022034834
(87)【国際公開番号】W WO2022272018
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/215,260
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/353,223
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェタリー,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,サイモン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZC202
4C084ZC332
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、概して、TREM-1に結合する抗原結合タンパク質及びその組成物を使用して、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞などの循環器疾患を治療する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環器疾患を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の、骨髄系細胞上で発現されるTrIgGering受容体1(TREM-1)に結合する抗原結合タンパク質を投与することを含み、前記抗原結合タンパク質が、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号10、30、50、70、90、110、130、150、170、190、210、230、250、270及び544から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
ii.配列番号11、31、51、71、91、111、131、151、171、191、211、231、251、271及び545から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
iii.配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、192、212、232、252、272及び546から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、176、196、216、236、256、276及び550から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
ii.配列番号17、37、57、77、97、117、137、157、177、197、217、237、257、277、297及び551から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
iii.配列番号18、38、58、78、98、118、138、158、178、198、218、238、258、278、298及び552から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む、方法。
【請求項2】
前記抗原結合タンパク質が、
a.配列番号10、30、50、90、130、150又は270で示される軽鎖CDR1配列と;
b.配列番号11、31、51、91、131、151又は271で示される軽鎖CDR2配列と;
c.配列番号12、32、52、92、132、152又は272で示される軽鎖CDR3配列と;
d.配列番号16、36、56、96、136、156及び276で示される重鎖CDR1配列と;
e.配列番号17、37、57、97、137、157及び277で示される重鎖CDR2配列と;
f.配列番号18、38、58、98、138及び278で示される重鎖CDR3配列と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原結合タンパク質が、
a.配列番号30又は90で示される軽鎖CDR1配列と;
b.配列番号31又は91で示される軽鎖CDR2配列と;
c.配列番号32又は92で示される軽鎖CDR3配列と;
d.配列番号36又は96で示される重鎖CDR1配列と;
e.配列番号37又は97で示される重鎖CDR2配列と;
f.配列番号38又は98で示される重鎖CDR3配列と
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原結合タンパク質が、
i)配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)、配列番号12(LCDR3)、配列番号16(HCDR1)、配列番号17(HCDR2)及び配列番号18(HCDR3);
ii)配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)、配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3);
iii)配列番号50(LCDR1)、配列番号51(LCDR2)、配列番号52(LCDR3)、配列番号56(HCDR1)、配列番号57(HCDR2)及び配列番号58(HCDR3);
iv)配列番号70(LCDR1)、配列番号71(LCDR2)、配列番号72(LCDR3)、配列番号76(HCDR1)、配列番号77(HCDR2)及び配列番号78(HCDR3);
v)配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)、配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3);
vi)配列番号110(LCDR1)、配列番号111(LCDR2)、配列番号112(LCDR3)、配列番号116(HCDR1)、配列番号117(HCDR2)及び配列番号118(HCDR3);
vii)配列番号130(LCDR1)、配列番号131(LCDR2)、配列番号132(LCDR3)、配列番号136(HCDR1)、配列番号137(HCDR2)及び配列番号138(HCDR3);
viii)配列番号150(LCDR1)、配列番号151(LCDR2)、配列番号152(LCDR3)、配列番号156(HCDR1)、配列番号157(HCDR2)及び配列番号158(HCDR3);
ix)配列番号170(LCDR1)、配列番号171(LCDR2)、配列番号172(LCDR3)、配列番号176(HCDR1)、配列番号177(HCDR2)及び配列番号178(HCDR3);
x)配列番号190(LCDR1)、配列番号191(LCDR2)、配列番号192(LCDR3)、配列番号196(HCDR1)、配列番号197(HCDR2)及び配列番号198(HCDR3);
xi)配列番号210(LCDR1)、配列番号211(LCDR2)、配列番号212(LCDR3)、配列番号216(HCDR1)、配列番号217(HCDR2)及び配列番号218(HCDR3);
xii)配列番号230(LCDR1)、配列番号231(LCDR2)、配列番号232(LCDR3)、配列番号236(HCDR1)、配列番号237(HCDR2)及び配列番号238(HCDR3);
xiii)配列番号250(LCDR1)、配列番号251(LCDR2)、配列番号252(LCDR3)、配列番号256(HCDR1)、配列番号257(HCDR2)及び配列番号258(HCDR3);
xiv)配列番号270(LCDR1)、配列番号271(LCDR2)、配列番号272(LCDR3)、配列番号276(HCDR1)、配列番号277(HCDR2)及び配列番号278(HCDR3);又は
xv)配列番号544(LCDR1)、配列番号545(LCDR2)、配列番号546(LCDR3)、配列番号550(HCDR1)、配列番号551(HCDR2)及び配列番号552(HCDR3)
を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗原結合タンパク質が、
i)配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)、配列番号12(LCDR3)、配列番号16(HCDR1)、配列番号17(HCDR2)及び配列番号18(HCDR3);
ii)配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)、配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3);
iii)配列番号50(LCDR1)、配列番号51(LCDR2)、配列番号52(LCDR3)、配列番号56(HCDR1)、配列番号57(HCDR2)及び配列番号58(HCDR3);
iv)配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)、配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3);
v)配列番号130(LCDR1)、配列番号131(LCDR2)、配列番号132(LCDR3)、配列番号136(HCDR1)、配列番号137(HCDR2)及び配列番号138(HCDR3);
vi)配列番号150(LCDR1)、配列番号151(LCDR2)、配列番号152(LCDR3)、配列番号156(HCDR1)、配列番号157(HCDR2)及び配列番号158(HCDR3);又は
vii)配列番号270(LCDR1)、配列番号271(LCDR2)、配列番号272(LCDR3)、配列番号276(HCDR1)、配列番号277(HCDR2)及び配列番号278(HCDR3)
から選択されるCDRのセットを含む、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原結合タンパク質が、
a.アミノ酸配列配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)を含む軽鎖並びにアミノ酸配列配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3)を含む重鎖;又は
b.アミノ酸配列配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)を含む軽鎖並びにアミノ酸配列配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3)を含む重鎖
を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗原結合タンパク質が、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;又は
iii.配列番号19、39、59、79、99、119、139、159、179、199、219、239、259、279及び537から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;又は
iii.配列番号20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280及び2184から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと
を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540からなる群から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号22、42、62、102、142、162及び282からなる群から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号42及び102からなる群から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539からなる群から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号21、41、61、101、141、161及び281からなる群から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号41及び101からなる群から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗原結合タンパク質が、
i)配列番号21で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号22で示される重鎖可変ドメイン配列;
ii)配列番号41で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号42で示される重鎖可変ドメイン配列;
iii)配列番号61で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号62で示される重鎖可変ドメイン配列;
iv)配列番号81で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号82で示される重鎖可変ドメイン配列;
v)配列番号101で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号102で示される重鎖可変ドメイン配列;
vi)配列番号121で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号122で示される重鎖可変ドメイン配列;
vii)配列番号141で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号142で示される重鎖可変ドメイン配列;
viii)配列番号161で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号162で示される重鎖可変ドメイン配列;
ix)配列番号181で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号182で示される重鎖可変ドメイン配列;
x)配列番号201で示される軽鎖可変ドメイン及び配列番号202で示される重鎖可変ドメイン;
xi)配列番号221で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号222で示される重鎖可変ドメイン配列;
xii)配列番号241で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号242で示される重鎖可変ドメイン配列;
xiii)配列番号261で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号262で示される重鎖可変ドメイン配列;
xiv)配列番号281で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号282で示される重鎖可変ドメイン配列;又は
xv)配列番号539で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号540で示される重鎖可変ドメイン配列
を含む、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原結合タンパク質が、
i)配列番号21で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号22で示される重鎖可変ドメイン;
ii)配列番号41で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号42で示される重鎖可変ドメイン配列;
iii)配列番号61で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号62で示される重鎖可変ドメイン配列;
iv)配列番号101で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号82で示される重鎖可変ドメイン配列;
v)配列番号141で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号142で示される重鎖可変ドメイン配列;
vi)配列番号161で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号162で示される重鎖可変ドメイン配列;
vii)配列番号281で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号282で示される重鎖可変ドメイン配列
を含む、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号41で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号42で示される重鎖可変ドメイン配列;又は配列番号101で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号102で示される重鎖可変ドメイン配列を含む、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗原結合タンパク質の1つ以上の重鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換される、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗原結合タンパク質の1つ以上の軽鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換される、請求項1~17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記重鎖は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの重鎖定常領域、それらの断片、それらの組み合わせ及び1~10個の重鎖フレームワークアミノ酸が別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換されるそれらの修飾物から選択される定常領域を含む、請求項1~18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
循環器疾患を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の、請求項1~19の何れか一項に記載の抗原結合タンパク質とTREM-1への結合について競合する抗原結合タンパク質を投与することを含む方法。
【請求項21】
前記抗原結合タンパク質が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組み換え抗体、Fab、F(ab’)2、Fab2、一価IgG、scFv、scFv-Fc、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される、請求項1~20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗原結合タンパク質が、IgG1抗体である、請求項1~21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗原結合タンパク質が、一価IgGである、請求項1~22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗原結合タンパク質が、ヒト抗体である、請求項1~23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540から選択される配列と少なくとも90%同一である重鎖アミノ酸配列と、配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539から選択される配列と少なくとも90%同一である軽鎖アミノ酸配列とを含む、請求項1~24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540から選択される重鎖アミノ酸配列と、配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539から選択される軽鎖アミノ酸配列とを有する、請求項1~25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号22、42、62、102、142、162及び282から選択される重鎖アミノ酸配列を有する、請求項1~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号42及び102から選択される重鎖アミノ酸配列を有する、請求項1~27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号21、41、61、81、101、141、161及び281から選択される軽鎖アミノ酸配列を有する、請求項1~27の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号41及び101から選択される軽鎖アミノ酸配列を有する、請求項1~27の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗原結合タンパク質が、薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1~30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記循環器疾患が、心筋梗塞、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、心不全、卒中発作(虚血性及び出血性)、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患)、不安定プラーク、急性冠症候群、脳血管疾患、脳血管アテローム性動脈硬化症及び肥満からなる群から選択される、請求項1~31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記循環器疾患が、アテローム性動脈硬化症である、請求項1~32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記循環器疾患が、心筋梗塞である、請求項1~32の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記治療が、静脈内又は皮下に投与される、請求項1~34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記治療が、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、3か月に1回、6か月に1回又は1年に1回投与される、請求項1~35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
1つ又は2つの追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記追加の治療剤が、1つ以上のコレステロール低下剤、LDLRの発現を増加させる薬剤、スタチン(アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、PCSK9阻害剤(Repatha(登録商標)、Praluent(登録商標)、Leqvio(登録商標))、ニコチン酸(ナイアシン)(NIACOR(登録商標)、NIASPAN(登録商標)(徐放性ナイアシン)、SLO-NIACIN(登録商標)(徐放性ナイアシン))、フィブリン酸(LOPID(登録商標)(ゲムフィブロジル)、TRICOR(登録商標)(フェノフィブレート))、胆汁酸吸着剤(QUESTRAN(登録商標)(コレスチラミン)、コレセベラム(WELCHOL(登録商標))、COLESTID(登録商標)(コレスチポール))、コレステロール吸収阻害剤(Zetia(エゼチミブ))、ニコチン酸とスタチンとの組み合わせ(ADVICOR(登録商標)(ロバスタチン及びNIASPAN(登録商標)))、スタチンと吸収阻害剤との組み合わせ(VYTORIN(ZOCOR(登録商標)及びZETIA(登録商標)))及び/又はPCSK9阻害剤のような脂質修飾剤、PPARガンマアゴニスト、PPARアルファ/ガンマアゴニスト、スクアレンシンターゼ阻害剤、コレステリルエステル転移タンパク質(CETP)阻害剤、降圧剤、抗血栓薬(アスピリン)、抗糖尿病薬(スルホニル尿素、インスリン、GLP-1類似体、DDPIV阻害剤、SGL2阻害剤など)、ApoB修飾薬、MTP阻害剤、Corlanor(登録商標)(イバブラジン)I(f)電流阻害剤、オメカムチブメカルビル心筋ミオシン活性化因子、リポタンパク質(a)を低下させるOLPASIRAN(AMG890)(siRNA)、AMG594心筋トロポニン活性化因子、AMG609、AMG171(成長分化因子15(GDF15)類似体)、AMG133(胃抑制ポリペプチド受容体(GIPR)アンタゴニスト及びグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト)並びに/又は閉塞性動脈硬化症治療からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記TREM-1が、配列番号2で示されるヒトTREM-1である、請求項1~38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記投与が、損傷部位への炎症性細胞遊走、心臓組織への骨髄系細胞の浸潤、微小環境における炎症性サイトカイン、組織損傷、泡沫細胞形成の減少、壊死コアサイズの減少、瘢痕形成の減少、内皮細胞機能不全の減少及び/又は血栓形成の減少からなる群から選択される循環器疾患の1つ以上の症状を軽減する、請求項1~39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
循環器疾患の治療における使用のための、骨髄系細胞上で発現されるTrIgGering受容体1(TREM-1)に結合する抗原結合タンパク質を含む組成物であって、前記抗原結合タンパク質が、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号10、30、50、70、90、110、130、150、170、190、210、230、250、270及び544から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
ii.配列番号11、31、51、71、91、111、131、151、171、191、211、231、251、271及び545から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
iii.配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、192、212、232、252、272及び546から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、176、196、216、236、256、276及び550から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
ii.配列番号17、37、57、77、97、117、137、157、177、197、217、237、257、277及び551から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
iii.配列番号18、38、58、78、98、118、138、158、178、198、218、238、258、278及び552から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む、組成物。
【請求項42】
循環器疾患を治療するための薬剤の調製における、骨髄系細胞上で発現されるTrIgGering受容体1(TREM-1)に結合する抗原結合タンパク質を含む組成物の使用であって、前記抗原結合タンパク質が、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号10、30、50、70、90、110、130、150、170、190、210、230、250、270及び544から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
ii.配列番号11、31、51、71、91、111、131、151、171、191、211、231、251、271及び545から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
iii.配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、192、212、232、252、272及び546から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、176、196、216、236、256、276及び550から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
ii.配列番号17、37、57、77、97、117、137、157、177、197、217、237、257、277及び551から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
iii.配列番号18、38、58、78、98、118、138、158、178、198、218、238、258、278及び552から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む、使用。
【請求項43】
前記循環器疾患が、心筋梗塞、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、心不全、卒中発作(虚血性及び出血性)、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患)、不安定プラーク、急性冠症候群、脳血管疾患、脳血管アテローム性動脈硬化症及び肥満からなる群から選択される、請求項41又は42に記載の使用。
【請求項44】
循環器疾患を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の、骨髄系細胞上で発現されるTrIgGering受容体1(TREM-1)に結合する抗原結合タンパク質を投与することを含み、前記抗原結合タンパク質が、a.軽鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列XASQSXNLA(配列番号553)(ここで、Xは、R又はQであり、Xは、V又はIであり、Xは、N又はSであり、Xは、S、H、I、V又はAである)を含む軽鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列GAXRAT(配列番号554)(ここで、Xは、S又はYであり、Xは、T又はIである)を含む軽鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列QXPXT(配列番号555)(ここで、Xは、Q、H又はEであり、Xは、F又はYであり、Xは、K、Y又はIであり、Xは、N、T、L、I又はMであり;Xは、W、F、H又はYであり、Xは、非存在又はPであり;Xは、W、N、Y、H又はLである)を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列XMX(配列番号556)(ここで、Xは、A、R、T又はSであり、Xは、Y又はNであり、Xは、A又はWであり、Xは、S又はNである)を含む重鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列XYYX101112VKG(配列番号559)(ここで、Xは、T、E又はSであり、Xは、非存在であるか、又はM、V若しくはIであり、Xは、S、R又はKであり、Xは、G又はQであり、Xは、S、D又はHであり、Xは、G、S、L又はAであり、Xは、S、G又はRであり、Xは、T、S、P又はEであり、Xは、T又はIであり、X10は、A又はVであり、X11は、D又はEであり、X12は、S又はAである)を含む重鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列XFXYYX(配列番号557)(ここで、Xは、V、E、A又はGであり、Xは、A、F、Y又はGであり、Xは、G、S、Y又はWであり、Xは、S又はRであり、Xは、非存在であるか又はNであり、Xは、F、S、Y又は非存在であり、Xは、L若しくはF又は非存在であり、Xは、D又はEであり、Xは、Y、H又はSである)を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む、方法。
【請求項45】
前記抗原結合タンパク質が、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列RASQSVNSNLA(配列番号556)を含む軽鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列GASTRAT(配列番号573)を含む軽鎖CDR2;
iii.アミノ酸配列QQFKNWPPT(配列番号576)を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列AYAMS(配列番号581)を含む重鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列TSGSGSTTYYADSVKG(配列番号584)を含む重鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列VAGSNFLFDY(配列番号842)を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
循環器疾患を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の、骨髄系細胞上で発現されるTrIgGering受容体1(TREM-1)に結合する抗原結合タンパク質を投与することを含み、前記抗原結合タンパク質が、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列QASXDIXLN(配列番号558)(ここで、Xは、R又はQであり、Xは、R、S、N又はFであり、Xは、K又はNであり、Xは、H、Y又はDである)を含む軽鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列XLET(配列番号560)(ここで、Xは、D、G又はHであり、Xは、A、V又はTであり、Xは、S、A又はYであり、Xは、T又はNである)を含む軽鎖CDR2;
iii.アミノ酸配列QXYXPXT(配列番号561)(ここで、Xは、Q又はHであり、Xは、D、A又はGであり、Xは、N又はKであり;Xは、L又はIであり、Xは、I又はLである)を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列XYDIN(配列番号563)(ここで、Xは、R又はSである)を含む重鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列XNPXGXGX10FX1112(配列番号564)(ここで、Xは、W又はRであり、Xは、M又はLであり、Xは、N、Q又はKであり、Xは、S、A又はRであり、Xは、N又はQであり、Xは、S、A又はTであり、Xは、S、Q又はYであり、Xは、V又はTであり、Xは、Q又はKであり、X10は、K又はNであり、X11は、R又はQであり、X12は、G又はDである)を含む重鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列X101112FX1314(配列番号565)(ここで、Xは、G、L又はRであり、Xは、G、I又はRであり、Xは、Y、R、I、G又はAであり、Xは、T、S、Y又はVであり、Xは、S又はYであり、Xは、S、A、I又はRであり、Xは、W、A又はSであり、Xは、非存在であるか又はSであり、Xは、非存在であるか、又はF、W若しくはYであり、X10は、R、S、H、K又はEであり、X11は、W、H、Y又はFであり、X12は、Y、V、A又はSであり、X13は、D又はQであり、X14は、L、Y、I又はHである)を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む、方法。
【請求項47】
前記抗原結合タンパク質が、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列QASQDIRKHLN(配列番号567)を含む軽鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列DASNLET(配列番号574)を含む軽鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列QHYDNLPIT(配列番号577)を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列RYDIN(配列番号582)を含む重鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列WMNPNSGNSSVQKFRG(配列番号585)を含む重鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列GGYTSSWRWYFDL(配列番号843)又はGGYTSSWSRWYFDL(配列番号844)を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第63/215,260号明細書(2021年6月25日出願)及び同第63/353,223号明細書(2022年6月17日出願)の優先権の利益を主張し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞(MI)などの循環器系状態の治療のための、骨髄系細胞上で発現されるTrIgGering受容体1(TREM-1)に特異的な抗原結合部分及びその組成物に関する。
【0003】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本開示の一部である配列表は、テキストファイルとして本明細書と同時に提出される。配列表を含むテキストファイルの名称は、「56967P2_Seqlisting.txt」であり、これは、2022年6月17日に作成され、1368364バイトのサイズである。配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
骨髄系細胞上で発現されるトリガー受容体1(TREM1、TREM-1、CD354)は、好中球、単球及びマクロファージ細胞において発現されるIgファミリーメンバーである。TREM-1は、骨髄系細胞免疫反応のメディエーターであり、TREM-1を通した活性化は、IL-8、MCP/CCL2及び腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を含む炎症性サイトカインを誘導する。TREM-1に対するリガンドとしてPGLYRP1(ペプチドグリカン認識タンパク質1)が最近報告されており(Read,J.Immunol.194:1417-1421,2015)、可能性のある他のリガンドは、依然として特定されていない。TREM-1は、敗血症における炎症反応の上方制御に関連しており(Ford et al.Curr Op Immunol.2009;21:38-46)、TREM-1-Fc又は拮抗性ペプチド(例えば、LP17)によるTREM-1活性の遮断により、敗血症動物における内毒素作用が低下した(Ford、前出、Qian et al.,J.Int J Clin Exp Med.2014 7(7):1650-8)。TREM-1ノックアウトマウスは、生存可能であり、DSS大腸炎及びT細胞移入大腸炎が防がれる(Weber,PLoS Pathog,10(1):1003900,2014)。
【0005】
TREM-1-Fc融合物による治療により、マウスにおけるLPS負荷後、生存が改善され、TNFα誘導が低下した(Bouchon,Nature,410:1103-7,2001)。抗TREM-1抗体は、TREM-1アゴニストPGLYRP-1/ペプチドグリカンにより刺激されるIBD患者から単離された固有層細胞からの炎症性サイトカインの分泌を減少させることが報告された(Brynjolfsson et al.,Inflamm Bowel Dis 22(8):1803-11,2016)。さらに、タンパク質TREM様転写産物‐1(TLT‐1)由来の化学的に合成された12個のL-アミノ酸ペプチドであるナンギボチドは、敗血性ショックに対する治療として研究されてきた(Cuvier et al.,Br J Clin Pharmacol.2018 Oct;84(10):2270-2279)。TREM-1は、単球/マクロファージ及び好中球上で主に発現される一方、炎症中、これは、気管支、角膜、胃上皮細胞及び肝臓内皮細胞上でも見られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Read,J.Immunol.194:1417-1421,2015
【非特許文献2】Ford et al.Curr Op Immunol.2009;21:38-46
【非特許文献3】Ford,Qian et al.,J.Int J Clin Exp Med.2014 7(7):1650-8
【非特許文献4】Weber,PLoS Pathog,10(1):1003900,2014
【非特許文献5】Bouchon,Nature,410:1103-7,2001
【非特許文献6】Brynjolfsson et al.,Inflamm Bowel Dis 22(8):1803-11,2016
【非特許文献7】Cuvier et al.,Br J Clin Pharmacol.2018 Oct;84(10):2270-2279
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、骨髄系細胞上で発現されるヒトTrIgGering受容体1(TREM-1)に特異的な抗原結合タンパク質を提供し、循環器系疾患の治療において有用である。
【0008】
循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の、骨髄系細胞上で発現されるTrIgGering受容体1(TREM-1)に結合する抗原結合タンパク質を投与することを含む方法が本明細書で提供され、この抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号10、30、50、70、90、110、130、150、170、190、210、230、250、270及び544から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
ii.配列番号11、31、51、71、91、111、131、151、171、191、211、231、251、271及び545から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
iii.配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、192、212、232、252、272及び546から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、176、196、216、236、256、276及び550から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
ii.配列番号17、37、57、77、97、117、137、157、177、197、217、237、257、277及び551から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
iii.配列番号18、38、58、78、98、118、138、158、178、198、218、238、258、278及び552から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0009】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、
a.配列番号10、30、50、90、130、150又は270で示される軽鎖CDR1配列;
b.配列番号11、31、51、91、131、151又は271で示される軽鎖CDR2配列;
c.配列番号12、32、52、92、132、152又は272で示される軽鎖CDR3配列;
d.配列番号16、36、56、96、136、156又は276で示される重鎖CDR1配列;
e.配列番号17、37、57、97、137、157又は277で示される重鎖CDR2配列;及び
f.配列番号18、38、58、98、138、158又は278で示される重鎖CDR3配列
を含む。
【0010】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、
a.配列番号30又は90で示される軽鎖CDR1配列;
b.配列番号31又は91で示される軽鎖CDR2配列;
c.配列番号32又は92で示される軽鎖CDR3配列;
d.配列番号36又は096で示される重鎖CDR1配列;
e.配列番号37又は97で示される重鎖CDR2配列;及び
f.配列番号38又は98で示される重鎖CDR3配列
を含む。
【0011】
本明細書で開示されるTREM-1抗体/抗原結合タンパク質重鎖及び軽鎖CDR及び/又は可変領域配列のコンセンサス配列も企図される。例えば、様々な実施形態では、TREM-1抗体は、
ASQSXNLA(配列番号553)(ここで、Xは、R又はQであり、Xは、V又はIであり、Xは、N又はSであり、Xは、S、H、I、V又はAである);
QASXDIXLN(配列番号558)(ここで、Xは、R又はQであり、Xは、R、S、N又はFであり、Xは、K又はNであり、Xは、H、Y又はDである);
RASQSVNSNLA(配列番号566);
QASQDIRKHLN(配列番号567);
RASQDISSNLN(配列番号568);
QASQDIHLN(配列番号569);
RASQGIRKWLA(配列番号570)
RASQSVNSNLA(配列番号571)、及び
SGDKLGERVS(配列番号572)
からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0012】
様々な実施形態では、TREM-1抗原結合タンパク質は、
GAXRAT(配列番号554)(ここで、Xは、S又はYであり、Xは、T又はIである);
LET(配列番号560)(ここで、Xは、D、G又はHであり、Xは、A、V又はTであり、Xは、S、A又はYであり、Xは、T又はNである);
GASTRAT(配列番号573);
DASNLET(配列番号574);及び
AASRLQS(配列番号575)
からなる群から選択されるLCDR2アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0013】
様々な実施形態では、TREM-1抗原結合タンパク質は、
QXPXT(配列番号555)(ここで、Xは、Q、H又はEであり、Xは、F又はYであり、Xは、K、Y又はIであり、Xは、N、T、L、I又はMであり;Xは、W、F、H又はYであり、Xは、非存在又はPであり;Xは、W、N、Y、H又はLである);
QXYXPXT(配列番号561)(ここで、Xは、Q又はHであり、Xは、D、A又はGであり、Xは、N又はKであり;Xは、L又はIであり、Xは、I又はLである);
QQFKNWPPT(配列番号576);
QHYDNLPIT(配列番号577);
LQAHGFPWT(配列番号578);
QQYDNLPLT(配列番号579)、及び
QFWPPWT(配列番号580)
からなる群から選択されるLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0014】
様々な実施形態では、TREM-1抗原結合タンパク質は、
MX(配列番号556)(ここで、Xは、A、R、T又はSであり、Xは、Y又はNであり、Xは、A又はWであり、Xは、S又はNである);
YDIN(配列番号563)(ここで、Xは、R又はSである);GYYXH(ここで、Xは、M又はIである);
AYAMS(配列番号581);
RYDIN(配列番号582);及び
SYWMS(配列番号583)
からなる群から選択されるHCDR1アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0015】
様々な実施形態では、TREM-1抗原結合タンパク質は、
YYX101112VKG(配列番号559)(ここで、Xは、T、E又はSであり、Xは、非存在であるか、又はM、V若しくはIであり、Xは、S、R又はKであり、Xは、G又はQであり、Xは、S、D又はHであり、Xは、G、S、L又はAであり、Xは、S、G又はRであり、Xは、T、S、P又はEであり、Xは、T又はIであり、X10は、A又はVであり、X11は、D又はEであり、X12は、S又はAである);
NPXGXGX10FX1112(配列番号564)(ここで、Xは、W又はRであり、Xは、M又はLであり、Xは、N、Q又はKであり、Xは、S、A又はRであり、Xは、N又はQであり、Xは、S、A又はTであり、Xは、S、Q又はYであり、Xは、V又はTであり、Xは、Q又はKであり、X10は、K又はNであり、X11は、R又はQであり、X12は、G又はDである);
TSGSGSTTYYADSVKG(配列番号584);
WMNPNSGNSSVQKFRG(配列番号585);
NIKQDGSEEYYVDSVKG(配列番号586);及び
TSGSGTYYADSVKG(配列番号841)
からなる群から選択されるHCDR2アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0016】
様々な実施形態では、TREM-1抗原結合タンパク質は、
FXYYX(配列番号557)(ここで、Xは、V、E、A又はGであり、Xは、A、F、Y又はGであり、Xは、G、S、Y又はWであり、Xは、S又はRであり、Xは、非存在であるか又はNであり、Xは、F、S、Y又は非存在であり、Xは、L若しくはF又は非存在であり、Xは、D又はEであり、Xは、Y、H又はSである);
101112FX1314(配列番号565)(ここで、Xは、G、L又はRであり、Xは、G、I又はRであり、Xは、Y、R、I、G又はAであり、Xは、T、S、Y又はVであり、Xは、S又はYであり、Xは、S、A、I又はRであり、Xは、W、A又はSであり、Xは、非存在であるか又はSであり、Xは、非存在であるか、又はF、W若しくはYであり、X10は、R、S、H、K又はEであり、X11は、W、H、Y又はFであり、X12は、Y、V、A又はSであり、X13は、D又はQであり、X14は、L、Y、I又はHである);
VAGSNFLFDY(配列番号842);
GGYTSSWRWYFDL(配列番号843);
GGYTSSWSRWYFDL(配列番号844);及び
DYGDSFDY(配列番号845)
からなる群から選択されるHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0017】
様々な実施形態では、単離された抗原結合タンパク質が本明細書で提供され、この抗原結合タンパク質は、
a.抗体又は抗体断片であり;
b.配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するヒトTREM-1に結合し;
c.軽鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列XASQSXNLA(配列番号553)(ここで、Xは、R又はQであり、Xは、V又はIであり、Xは、N又はSであり、Xは、S、H、I、V又はAである)を含む軽鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列GAXRAT(配列番号554)(ここで、Xは、S又はYであり、Xは、T又はIである)を含む軽鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列QXPXT(配列番号555)(ここで、Xは、Q、H又はEであり、Xは、F又はYであり、Xは、K、Y又はIであり、Xは、N、T、L、I又はMであり;Xは、W、F、H又はYであり、Xは、非存在又はPであり;Xは、W、N、Y、H又はLである)を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインを含み、
d.重鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列XMX(配列番号556)(ここで、Xは、A、R、T又はSであり、Xは、Y又はNであり、Xは、A又はWであり、Xは、S又はNである)を含む重鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列XYYX101112VKG(配列番号559)(ここで、Xは、T、E又はSであり、Xは、非存在であるか、又はM、V若しくはIであり、Xは、S、R又はKであり、Xは、G又はQであり、Xは、S、D又はHであり、Xは、G、S、L又はAであり、Xは、S、G又はRであり、Xは、T、S、P又はEであり、Xは、T又はIであり、X10は、A又はVであり、X11は、D又はEであり、X12は、S又はAである)を含む重鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列XFXYYX(配列番号557)(ここで、Xは、V、E、A又はGであり、Xは、A、F、Y又はGであり、Xは、G、S、Y又はWであり、Xは、S又はRであり、Xは、非存在であるか又はNであり、Xは、F、S、Y又は非存在であり、Xは、L若しくはF又は非存在であり、Xは、D又はEであり、Xは、Y、H又はSである)を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0018】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列RASQSVNSNLA(配列番号556)を含む軽鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列GASTRAT(配列番号573)を含む軽鎖CDR2;
iii.アミノ酸配列QQFKNWPPT(配列番号576)を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列AYAMS(配列番号581)を含む重鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列TSGSGSTTYYADSVKG(配列番号584)を含む重鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列VAGSNFLFDY(配列番号842)を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0019】
様々な実施形態では、本開示は、単離された抗原結合タンパク質を提供し、この抗原結合タンパク質は、
a.抗体又は抗体断片であり;
b.配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するヒトTREM-1に結合し;
c.軽鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列QASXDIXLN(配列番号558)(ここで、Xは、R又はQであり、Xは、R、S、N又はFであり、Xは、K又はNであり、Xは、H、Y又はDである)を含む軽鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列XLET(配列番号560)(ここで、Xは、D、G又はHであり、Xは、A、V又はTであり、Xは、S、A又はYであり、Xは、T又はNである)を含む軽鎖CDR2;
iii.アミノ酸配列QXYXPXT(配列番号561)(ここで、Xは、Q又はHであり、Xは、D、A又はGであり、Xは、N又はKであり;Xは、L又はIであり、Xは、I又はLである)を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインを含み、
d.重鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列XYDIN(配列番号563)(ここで、Xは、R又はSである)を含む重鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列XNPXGXGX10FX1112(配列番号564)(ここで、Xは、W又はRであり、Xは、M又はLであり、Xは、N、Q又はKであり、Xは、S、A又はRであり、Xは、N又はQであり、Xは、S、A又はTであり、Xは、S、Q又はYであり、Xは、V又はTであり、Xは、Q又はKであり、X10は、K又はNであり、X11は、R又はQであり、X12は、G又はDである)を含む重鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列X101112FX1314(配列番号565)(ここで、Xは、G、L又はRであり、Xは、G、I又はRであり、Xは、Y、R、I、G又はAであり、Xは、T、S、Y又はVであり、Xは、S又はYであり、Xは、S、A、I又はRであり、Xは、W、A又はSであり、Xは、非存在であるか又はSであり、Xは、非存在であるか、又はF、W若しくはYであり、X10は、R、S、H、K又はEであり、X11は、W、H、Y又はFであり、X12は、Y、V、A又はSであり、X13は、D又はQであり、X14は、L、Y、I又はHである)を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0020】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列QASQDIRKHLN(配列番号567)を含む軽鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列DASNLET(配列番号574)を含む軽鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列QHYDNLPIT(配列番号577)を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.アミノ酸配列RYDIN(配列番号582)を含む重鎖CDR1;
ii.アミノ酸配列WMNPNSGNSSVQKFRG(配列番号585)を含む重鎖CDR2;及び
iii.アミノ酸配列GGYTSSWRWYFDL(配列番号843)又はGGYTSSWSRWYFDL(配列番号844)を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0021】
様々な実施形態では、本開示は、抗原結合タンパク質を投与することを含む、循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)を治療する方法を提供し、この抗原結合タンパク質は、
a.抗体又は抗体断片であり;
b.配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する、骨髄系細胞上で発現されるヒトTrIgGering受容体1(TREM-1)に結合し;
c.CDR配列のセットであって、
i)配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)、配列番号12(LCDR3)、配列番号16(HCDR1)、配列番号17(HCDR2)及び配列番号18(HCDR3);
ii)配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)、配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3);
iii)配列番号50(LCDR1)、配列番号51(LCDR2)、配列番号52(LCDR3)、配列番号56(HCDR1)、配列番号57(HCDR2)及び配列番号58(HCDR3);
iv)配列番号70(LCDR1)、配列番号71(LCDR2)、配列番号72(LCDR3)、配列番号76(HCDR1)、配列番号77(HCDR2)及び配列番号78(HCDR3);
v)配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)、配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3);
vi)配列番号110(LCDR1)、配列番号111(LCDR2)、配列番号112(LCDR3)、配列番号116(HCDR1)、配列番号117(HCDR2)及び配列番号118(HCDR3);
vii)配列番号130(LCDR1)、配列番号131(LCDR2)、配列番号132(LCDR3)、配列番号136(HCDR1)、配列番号137(HCDR2)及び配列番号138(HCDR3);
viii)配列番号150(LCDR1)、配列番号151(LCDR2)、配列番号152(LCDR3)、配列番号156(HCDR1)、配列番号157(HCDR2)及び配列番号158(HCDR3);
ix)配列番号170(LCDR1)、配列番号171(LCDR2)、配列番号172(LCDR3)、配列番号176(HCDR1)、配列番号177(HCDR2)及び配列番号178(HCDR3);
x)配列番号190(LCDR1)、配列番号191(LCDR2)、配列番号192(LCDR3)、配列番号196(HCDR1)、配列番号197(HCDR2)及び配列番号198(HCDR3);
xi)配列番号210(LCDR1)、配列番号211(LCDR2)、配列番号212(LCDR3)、配列番号216(HCDR1)、配列番号217(HCDR2)及び配列番号218(HCDR3);
xii)配列番号230(LCDR1)、配列番号231(LCDR2)、配列番号232(LCDR3)、配列番号236(HCDR1)、配列番号237(HCDR2)及び配列番号238(HCDR3);
xiii)配列番号250(LCDR1)、配列番号251(LCDR2)、配列番号252(LCDR3)、配列番号256(HCDR1)、配列番号257(HCDR2)及び配列番号258(HCDR3);
ix)配列番号270(LCDR1)、配列番号271(LCDR2)、配列番号272(LCDR3)、配列番号276(HCDR1)、配列番号277(HCDR2)及び配列番号278(HCDR3);及び
xv)配列番号544(LCDR1)、配列番号545(LCDR2)、配列番号546(LCDR3)、配列番号547(HCDR1)、配列番号548(HCDR2)及び配列番号549(HCDR3)
から選択されるCDR配列のセットを含む。
【0022】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
i)配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)、配列番号12(LCDR3)、配列番号16(HCDR1)、配列番号17(HCDR2)及び配列番号18(HCDR3);
ii)配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)、配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3);
iii)配列番号50(LCDR1)、配列番号51(LCDR2)、配列番号52(LCDR3)、配列番号56(HCDR1)、配列番号57(HCDR2)及び配列番号58(HCDR3);
iv)配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)、配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3);
v)配列番号130(LCDR1)、配列番号131(LCDR2)、配列番号132(LCDR3)、配列番号136(HCDR1)、配列番号137(HCDR2)及び配列番号138(HCDR3);
vi)配列番号150(LCDR1)、配列番号151(LCDR2)、配列番号152(LCDR3)、配列番号156(HCDR1)、配列番号157(HCDR2)及び配列番号158(HCDR3);又は
vii)配列番号270(LCDR1)、配列番号271(LCDR2)、配列番号272(LCDR3)、配列番号276(HCDR1)、配列番号277(HCDR2)及び配列番号278(HCDR3)
から選択されるCDR配列のセットを含む。
【0023】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)、配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3;又は配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)、配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3)から選択されるCDR配列のセットを含む。
【0024】
様々な実施形態では、本開示は、抗TREM-1抗原結合タンパク質を投与することを含む、循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)を治療する方法を提供し、この抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号19、39、59、79、99、119、139、159、179、199、219、239、259、279及び537から選択される核酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号19、39、59、79、99、119、139、159、179、199、219、239、259、279及び537から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280及び2184から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされる配列;iii.配列番号20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280及び538から選択される核酸配列からなるポリペプチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0025】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号21、41、61、101、141、161及び281から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号19、39、59、99、139、159及び279から選択される核酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号19、39、59、99、139、159及び279から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号22、42、62、102、142、162及び282から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号20、40、60、100、140、160及び280から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号20、40、60、100、140、160及び280から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0026】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号41及び101から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号39及び99から選択される核酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号39及び99から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号42及び102から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号40及び100から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号40及び100から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0027】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
i)配列番号21で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号22で示される重鎖可変ドメイン配列;
i)配列番号41で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号42で示される重鎖可変ドメイン配列;
ii)配列番号61で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号62で示される重鎖可変ドメイン配列;
iii)配列番号81で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号82で示される重鎖可変ドメイン配列;
iv)配列番号101で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号102で示される重鎖可変ドメイン配列;
v)配列番号121で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号122で示される重鎖可変ドメイン配列;
vi)配列番号161で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号162で示される重鎖可変ドメイン配列;
vii)配列番号181で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号182で示される重鎖可変ドメイン;
viii)配列番号201で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号202で示される重鎖可変ドメイン;
x)配列番号221で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号222で示される重鎖可変ドメイン配列;
xi)配列番号241で示される軽鎖可変ドメイン及び配列番号242で示される重鎖可変ドメイン;
xii)配列番号261で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号262で示される重鎖可変ドメイン配列;
xiii)配列番号281で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号282で示される重鎖可変ドメイン配列;及び
xv)配列番号539で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号540で示される重鎖可変ドメイン配列
を含む。
【0028】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
i)配列番号21で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号22で示される重鎖可変ドメイン配列;
ii)配列番号41で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号42で示される重鎖可変ドメイン配列;
iii)配列番号61で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号62で示される重鎖可変ドメイン配列;
iv)配列番号101で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号102で示される重鎖可変ドメイン配列;
v)配列番号141で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号142で示される重鎖可変ドメイン配列;
vi)配列番号161で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号162で示される重鎖可変ドメイン配列;又は
vii)配列番号281で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号282で示される重鎖可変ドメイン
を含む。
【0029】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、配列番号4で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号42で示される重鎖可変ドメイン配列;又は配列番号101で示される軽鎖可変ドメイン配列及び配列番号102で示される重鎖可変ドメイン配列を含む。
【0030】
様々な実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540並びに配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539と、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。
【0031】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539で示される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0032】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号22、42、62、102、142、162及び282から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号21、41、61、101、141、161及び281から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0033】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号42及び102から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号41及び101から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0034】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質の1つ以上の重鎖フレームワークアミノ酸は、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換される。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質の1つ以上の軽鎖フレームワークアミノ酸は、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換される。
【0035】
いくつかの例において、本明細書で開示される配列は、組み換え産生に有用なN末端シグナル配列を含有し得る。シグナル配列を欠く抗TREM-1抗体の配列が本明細書で企図される。代表的なシグナル配列は、MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC;MAWALLLLTLLTQGTGSWASYEL及びこのようなシグナル配列をコードする核酸を含む。
【0036】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、前記軽鎖可変領域に連結されたヒト軽鎖定常領域をさらに含む。
【0037】
様々な実施形態では、重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの重鎖定常領域、それらの断片、それらの組み合わせ及び1~10個の重鎖フレームワークアミノ酸が別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換されるそれらの修飾物から選択される。
【0038】
様々な実施形態では、本明細書に記載の抗TREM-1抗原結合タンパク質は、TREM-1へのTREM-1リガンドの結合を阻害する。
【0039】
配列番号2の配列を有するヒトTREM-1タンパク質への結合について、本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質と競合する抗原結合タンパク質も企図される。
【0040】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組み換え抗体、Fab、F(ab’)2、Fab2、一価IgG、scFv、scFv-Fc、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、IgG2抗体である。様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、IgG1抗体である。様々な実施形態では、IgG1抗体は、IGg1z又はIgG1z-SEFL2抗体である。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、一価IgGである。
【0041】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、ヒト抗体である。
【0042】
本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子、本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子並びに本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質の重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も提供される。
【0043】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280及び538から選択される重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号19、39、59、79、99、119、139、159、179、199、219、239、259、279及び537で示される軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0044】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号20、40、60、100、140、160及び280から選択される重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号19、39、59、99、139、159及び279から選択される軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0045】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号40及び100から選択される重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号39及び99から選択される軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0046】
発現制御配列に操作可能に連結された本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質重鎖及び/又は軽鎖の核酸分子を含む発現ベクターがさらに企図される。
【0047】
本開示は、本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質又は抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子;又は本明細書に記載のような抗TREM-1抗体の軽鎖をコードする核酸分子;又は本明細書に記載のような抗TREM-1抗体の重鎖及び軽鎖核酸分子をコードする核酸分子;又は本明細書に記載のような抗TREM-1抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を含むベクターを含む組み換え宿主細胞を提供する。様々な実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。様々な実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0048】
宿主細胞を培養し、前記抗原結合タンパク質を回収することを含む、宿主細胞を使用して抗原結合タンパク質を作製する方法及び本方法によって作製される抗原結合タンパク質がさらに提供される。
【0049】
本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む滅菌医薬組成物も提供される。
【0050】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、抗原結合タンパク質の前記重鎖可変領域に連結されたヒト重鎖定常領域をさらに含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、抗体の前記軽鎖可変領域に連結されたヒト軽鎖定常領域をさらに含む。
【0051】
様々な実施形態では、抗原結合部分は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組み換え抗体、Fab、F(ab’)2、Fab2、一価IgG、scFv、scFv-Fc、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。様々な実施形態では、抗原結合部分は、IgGである。様々な実施形態では、抗原結合部分は、IgG2抗体である。様々な実施形態では、抗原結合部分は、IgG1抗体である。抗原結合タンパク質の様々な実施形態では、抗体は、IgG1z又はIgG1z-SEFL2抗体である。様々な実施形態では、抗原結合部分は、一価IgGである。様々な実施形態では、抗原結合部分の重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの重鎖定常領域、その断片、それらの組み合わせ及び1~10個の重鎖フレームワークアミノ酸が別のヒト抗体定常領域からの対応するアミノ酸で置換されるそれらの修飾物から選択される。
【0052】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、表7~8、表11及び表12に示されるような重鎖及び軽鎖対を有する。
【0053】
TREM-1バリアント抗体重鎖可変領域の核酸配列は、配列番号284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386、388、390、392、394、396、398、400、402、404、406及び408で示され、配列番号412、414、416、418、420、422、424、426、428、430、432、434、436、438、440、442、444、446、448、450、452、454、456、458、460、462、464、466、468、470、472、474、476、478、480、482、484、486、488、490、492、494、496、498、500、502、504、506、508、510、512、514、516、518、520、522、524、526、528、530、532、534及び536でも示され;TREM-1バリアント抗体軽鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号778、779、780、781、782、783、784、785、786、787、788、789、790、791、792、793、794、795、796、797、798、799、800、801、802、803、804、805、806、807、808、809、810、811、812、813、814、815、816、817、818、819、820、821、822、823、824、825、826、827、828、829、830、831、832、833、834、835、836、837、838、839、840で示され、配列番号588、590、592、594、596、598、600、602、604、606、608、610、612、614、61、618、620、622、624、626、628、630、632、634、636、638、640、642、644、646、648、650、652、654、656、658、660、662、664、666、668、670、672、674、676、678、680、682、684、686、688、690、692、694、696、698、700、702、704、706、708、710及び712でも示される。
【0054】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質の1つ以上の重鎖フレームワークアミノ酸は、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換される。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質の1つ以上の軽鎖フレームワークアミノ酸は、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換される。
【0055】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、前記軽鎖可変領域に連結されたヒト軽鎖定常領域をさらに含む。
【0056】
様々な実施形態では、TREM-1抗体重鎖及び/又は軽鎖可変領域のバリアントが本明細書で提供される。TREM-1抗体重鎖可変領域バリアント配列は、配列番号283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、381、383、385、387、389、391、393、395、397、399、401、403、405、407、409、411、413、415、417、419、421、423、425、427、429、431、433、435、437、439、441、443、445、447、449、451、453、455、457、459、461、463、465、467、469、471、473、475、477、479、481、483、485、487、489、491、493、495、497、499、501、503、505、507、509、511、513、515、517、519、521、523、525、527、529、531、533、535、表7~8、表11及び表12に示される。
【0057】
TREM-1抗体軽鎖可変領域バリアント配列は、配列番号715~777、587、589、591、593、595、597、599、601、603、605、607、609、611、613、615、617、619、621、623、625、627、629、631、633、635、637、639、641、643、645、647、649、651、653、655、657、659、661、663、665、667、669、671、673、675、677、679、681、683、685、687、689、691、693、695、697、699、701、703、705、707、709、711、表7~8、表11及び表12に示される。
【0058】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、ヒト抗体である。
【0059】
本明細書に記載のような抗原結合タンパク質の重鎖領域をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子、本明細書に記載のような抗原結合タンパク質の軽鎖領域をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子も提供される。
【0060】
本開示は、核酸分子又は発現制御配列に操作可能に連結された本明細書に記載の抗原結合タンパク質をコードする分子を含む1つ又は複数の発現ベクターを提供する。
【0061】
本明細書に記載のような抗原結合タンパク質を含む核酸分子又は前記核酸を含むベクターを含む組み換え宿主細胞も企図される。様々な実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。様々な実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。本開示は、宿主細胞を培養し、前記抗体を回収することを含む、本明細書に記載の宿主細胞を使用して抗原結合タンパク質を作製する方法を提供し、本方法によって作製される抗原結合タンパク質を提供する。
【0062】
本開示は、本明細書に記載の抗TREM-1抗原結合タンパク質又は抗原結合断片を含む医薬組成物を投与することを含む治療の方法を企図する。
【0063】
関連する態様では、本開示は、本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質又は本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質を含む組成物を投与することを含む、循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)の治療を必要とする対象において循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)を治療する方法を提供する。
【0064】
循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)の治療での使用のための本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質又は抗原結合断片を含む組成物も企図される。様々な実施形態では、本開示は、循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)を治療するための薬剤の調製における、本明細書に記載のような抗TREM-1抗原結合タンパク質又は抗原結合断片を含む組成物の使用を提供する。
【0065】
様々な実施形態では、循環器疾患は、心筋梗塞、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、心不全、卒中発作(例えば、虚血性、出血性)、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患)、不安定プラーク、急性冠症候群、脳血管疾患、脳血管アテローム性動脈硬化症及び肥満からなる群から選択される。様々な実施形態では、循環器疾患は、心筋梗塞である。様々な実施形態では、循環器疾患は、卒中発作(虚血性及び/又は出血性)である。様々な実施形態では、循環器疾患は、アテローム性動脈硬化症である。様々な実施形態では、循環器疾患は、NAFLD又はNASHである。様々な実施形態では、循環器疾患は、心不全である。様々な実施形態では、循環器疾患は、冠動脈疾患である。様々な実施形態では、循環器疾患は、末梢血管疾患である。様々な実施形態では、循環器疾患は、末梢動脈疾患である。様々な実施形態では、循環器疾患は、不安定プラークである。様々な実施形態では、循環器疾患は、急性冠症候群である。様々な実施形態では、循環器疾患は、脳血管疾患である。様々な実施形態では、循環器疾患は、脳血管アテローム性動脈硬化症である。様々な実施形態では、炎症性疾患は、肥満である。
【0066】
様々な実施形態では、治療は、静脈内又は皮下に投与される。様々な実施形態では、治療は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、3か月に1回又は6か月に1回又は1年に1回投与される。
【0067】
様々な実施形態では、TREM-1は、配列番号2で示されるヒトTREM-1である。
【0068】
様々な実施形態では、投与は、損傷部位への炎症性細胞遊走、心臓組織への骨髄系細胞の浸潤、微小環境における炎症性サイトカイン、組織損傷、泡沫細胞形成の減少、壊死コアサイズの減少、瘢痕形成の減少、内皮細胞機能不全の減少及び/又は血栓形成の減少からなる群から選択される循環器疾患の1つ以上の症状を軽減する。
【0069】
様々な実施形態では、本方法は、1つ又は2つの追加の治療剤を投与することを含む。様々な実施形態では、追加の治療剤は、コルチコステロイド、NSAID、鎮痛薬、免疫抑制剤、抗炎症薬、TNFα阻害剤、IL-12/IL-23阻害剤、IL-17及びIFN-γから選択される。(本抗原結合タンパク質を別として)循環器疾患において有用な治療剤としては、少なくとも1つのコレステロール低下(血清及び/又は全身コレステロール)剤又は薬剤が挙げられるが、限定されない。いくつかの実施形態では、LDLRの発現を増加させる薬剤は、血清HDLレベルを上昇させるか、LDLレベルを低下させるか、又はトリグリセリドレベルを低下させることが観察されている。代表的な薬剤としては、スタチン(アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、PCSK9阻害剤(Repatha(登録商標)、Praluent(登録商標)、Leqvio(登録商標))、ニコチン酸(ナイアシン)(NIACOR(登録商標)、NIASPAN(登録商標)(徐放性ナイアシン)、SLO-NIACIN(登録商標)(徐放性ナイアシン))、フィブリン酸(LOPID(登録商標)(ゲムフィブロジル)、TRICOR(登録商標)(フェノフィブレート))、胆汁酸吸着剤(QUESTRAN(登録商標)(コレスチラミン)、コレセベラム(WELCHOL(登録商標))、COLESTID(登録商標)(コレスチポール))、コレステロール吸収阻害剤(Zetia(エゼチミブ))、ニコチン酸とスタチンとの組み合わせ(ADVICOR(登録商標)(ロバスタチン及びNIASPAN(登録商標)))、スタチンと吸収阻害剤との組み合わせ(VYTORIN(登録商標)(ZOCOR(登録商標)及びZETIA(登録商標)))及び/又はPCSK9阻害剤のような脂質修飾剤が挙げられるが、限定されない。いくつかの実施形態では、本抗原結合タンパク質は、PPARガンマアゴニスト、PPARアルファ/ガンマアゴニスト、スクアレンシンターゼ阻害剤、コレステリルエステル転移タンパク質(CETP)阻害剤、降圧剤、抗血栓薬(アスピリン)抗糖尿病薬(スルホニル尿素、インスリン、GLP-1類似体、DDPIV阻害剤、SGL2阻害剤など)、ApoB修飾薬、MTP阻害剤、Corlanor(登録商標)(イバブラジン)I(f)電流阻害剤、オメカムチブメカルビル心筋ミオシン活性化因子、リポタンパク質(a)を低下させるOLPASIRAN(AMG890)(siRNA)、AMG594心筋トロポニン活性化因子及び/又は動脈硬化症閉塞性治療と組み合わせられる。パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質3(PNPLA3 I148M)のバリアントを標的とするAMG609、低分子干渉RNA(siRNA)との組み合わせ治療も企図される。本抗原結合タンパク質は、他の抗炎症剤とも組み合わせられ得る。
【0070】
様々な実施形態では、追加の治療剤は、1つ以上のコレステロール低下剤、LDLRの発現を増加させる薬剤、スタチン(アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、PCSK9阻害剤(Repatha(登録商標)、Praluent(登録商標)、Leqvio(登録商標))、ニコチン酸(ナイアシン)(NIACOR(登録商標)、NIASPAN(登録商標)(徐放性ナイアシン)、SLO-NIACIN(登録商標)(徐放性ナイアシン))、フィブリン酸(LOPID(登録商標)(ゲムフィブロジル)、TRICOR(登録商標)(フェノフィブレート))、胆汁酸吸着剤(QUESTRAN(登録商標)(コレスチラミン)、コレセベラム(WELCHOL(登録商標))、COLESTID(登録商標)(コレスチポール))、コレステロール吸収阻害剤(Zetia(エゼチミブ))、ニコチン酸とスタチンとの組み合わせ(ADVICOR(登録商標)(ロバスタチン及びNIASPAN(登録商標)))、スタチンと吸収阻害剤との組み合わせ(VYTORIN(ZOCOR(登録商標)及びZETIA(登録商標)))及び/又はPCSK9阻害剤のような脂質修飾剤、PPARガンマアゴニスト、PPARアルファ/ガンマアゴニスト、スクアレンシンターゼ阻害剤、コレステリルエステル転移タンパク質(CETP)阻害剤、降圧剤、抗血栓薬(アスピリン)抗糖尿病薬(スルホニル尿素、インスリン、GLP-1類似体、GIPRアンタゴニスト、DDPIV阻害剤、SGL2阻害剤など)、ApoB修飾薬、MTP阻害剤、Corlanor(登録商標)(イバブラジン)I(f)電流阻害剤、オメカムチブメカルビル心筋ミオシン活性化因子、リポタンパク質(a)を低下させるOLPASIRAN(AMG890)(siRNA)、AMG594心筋トロポニン活性化因子、AMG609、AMG171(成長分化因子15(GDF15)類似体)、AMG133(胃抑制ポリペプチド受容体(GIPR)アンタゴニスト及びグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト)並びに/又は閉塞性動脈硬化症治療からなる群から選択される。
【0071】
本明細書に記載のそれぞれの特性若しくは実施形態又は組み合わせは、本発明の態様の何れかの非限定的な、例示的な例であり、従って、本明細書に記載の何れかの他の特性若しくは実施形態又は組み合わせと組み合わせることが可能であると意図されることが理解される。例えば、特性が「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「特定の実施形態」、「さらなる実施形態」、「特定の例示的な実施形態」及び/又は「別の実施形態」などの用語を用いて記載される場合、これらのタイプの実施形態のそれぞれは、あらゆる可能な組み合わせを列挙することなく、本明細書に記載の何れかの他の特性又は特性の組み合わせと組み合わせることが意図される特性の非限定的な例である。このような特性又は特性の組み合わせは、本発明の態様の何れかに適用される。範囲内に含まれる値の例が開示される場合、これらの例の何れもが範囲の可能な端点として企図され、このような端点間のあらゆる数値が企図され、上端点及び下端点のあらゆる組み合わせが想定される。
【0072】
本明細書における見出しは、読者の便宜のためのものであり、限定することを意図するものではない。本発明のさらなる態様、実施形態及び変形形態は、詳細な説明、及び/又は図面、及び/又は特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1A】TNFα放出によって測定した場合の、ヒト(図1C~1D)又はカニクイザル(図1A~1B)PBMCにおける抗ヒトTREM-1抗体によるリガンド(PGLYRP1/PGN)介在性TREM-1シグナル伝達の阻害を示す。
図1B】TNFα放出によって測定した場合の、ヒト(図1C~1D)又はカニクイザル(図1A~1B)PBMCにおける抗ヒトTREM-1抗体によるリガンド(PGLYRP1/PGN)介在性TREM-1シグナル伝達の阻害を示す。
図1C】TNFα放出によって測定した場合の、ヒト(図1C~1D)又はカニクイザル(図1A~1B)PBMCにおける抗ヒトTREM-1抗体によるリガンド(PGLYRP1/PGN)介在性TREM-1シグナル伝達の阻害を示す。
図1D】TNFα放出によって測定した場合の、ヒト(図1C~1D)又はカニクイザル(図1A~1B)PBMCにおける抗ヒトTREM-1抗体によるリガンド(PGLYRP1/PGN)介在性TREM-1シグナル伝達の阻害を示す。
図2】脾臓チロシンキナーゼ(pSYK)のリン酸化によって測定した場合の、ヒトTREM-1/DAP12を過剰発現する細胞株におけるリガンド(PGLYRP1/PGN)介在性シグナル伝達の抗ヒトTREM-1 Fabによる阻害を示す。
図3】LPS注射後の野生型及びTREM-1ノックアウトマウスにおけるPGLYRP1のレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本開示は、受容体へのTREM-1リガンドの結合を阻止するTREM-1抗体を提供する。本開示による抗体は、免疫細胞に対する標的化及びアテローム性動脈硬化症、卒中発作又は心筋梗塞などの循環器系疾患を治療するために有用な細胞活性及びサイトカイン応答の調整を示す。
【0075】
定義
「ポリペプチド結合剤」又は「抗原結合タンパク質」という用語は、抗原、例えば標的又はそのシグナル伝達パートナーに特異的に結合することが可能であるか、又は測定可能な結合親和性で抗原に結合することが可能であるポリペプチドを指す。ポリペプチド結合剤の例としては、他のペプチド部分又は非ペプチド性部分に任意選択的に複合化された抗体、ペプチボディー、ポリペプチド及びペプチドが挙げられる。ポリペプチド結合剤が結合し得る抗原は、抗体応答を引き起こすことが可能であるか、又は非特異的結合より高い検出可能な結合親和性でポリペプチド結合剤に結合することが可能である、あらゆるタンパク質又は非タンパク質分子を含む。調節ポリペプチド結合剤が結合する抗原は、標的、標的のシグナル伝達パートナー及び/又は標的及びそのシグナル伝達パートナーを含む複合体を含み得る。
【0076】
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、完全に組み立てられた抗体、四量体抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原に結合し得る抗体断片(例えば、Fab’、F’(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディ)及びそれらが所望の生物学的活性を示す限り上記のものを含む組み換えペプチドを含む。「免疫グロブリン」又は「四量体抗体」は、可変領域及び定常領域をそれぞれ含む、2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる四量体糖タンパク質である。抗原結合部分は、組み換えDNA技術又はインタクト抗体を酵素的若しくは化学的に切断することによって作製され得る。抗体断片又は抗原結合部分としては、特に、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、CDR移植抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、線状抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ若しくはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小型モジュラー免疫医薬品(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体又はそれらのバリアント若しくは誘導体及び抗体が所望の生物学的活性を保持する限り、1、2、3、4、5又は6個のCDR配列など、ポリペプチドに結合する特異的抗原を与えるのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが挙げられる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「一価IgG」という用語は、単一の抗原結合断片(Fab)が、Fc内のC3ドメインにおける突然変異を通してヘテロ二量体化するように改変された完全な定常ドメイン断片(Fc)に融合されるIgGを指す。一価IgGは、「ワンアームド」抗体としても知られている。
【0078】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然の突然変異を除いて同一である。
【0079】
本明細書において使用される場合の「抗体バリアント」は、天然抗体可変領域ドメインの可変領域に少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失又は挿入を含有する抗体ポリペプチド配列を指す。バリアントは、非修飾抗体に実質的に相同又は実質的に同一であり得る。
【0080】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から同定及び分離及び取り出されたものである。その天然環境の汚染物質構成成分は、抗体に対する診断又は治療的使用を妨げ得る物質であり、酵素、ホルモン及び他のタンパク質又は非タンパク質溶質を含み得る。好ましい実施形態では、抗体は、(1)ローリー法によって決定される場合に95重量%超の抗体、最も好ましくは、99重量%超まで、(2)スピニングカップシーケネーターの使用により、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)クマシーブルー若しくは好ましくは銀染色又はHPLC法を用いて、還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによって均質になるまで精製される。単離された抗体には、その抗体の天然環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないため、組み換え細胞内にインサイチューで存在する抗体が含まれる。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製段階によって調製される。
【0081】
「重鎖可変領域」は、本明細書で使用される場合、前記抗体重鎖可変ドメインの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、抗体分子の領域を指す。重鎖可変領域は、前記抗体重鎖の1、2又は3個のCDRを含有し得る。
【0082】
「軽鎖可変領域」は、本明細書で使用される場合、前記抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、抗体分子の領域を指す。軽鎖可変領域は、前記抗体軽鎖の1、2又は3個のCDRを含有し得、これは、抗体に依存してカッパ又はラムダ軽鎖の何れかであり得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」が「抗原特異的」であるか、抗原標的「に対して特異的」であるか、又は抗原と「免疫反応性」である抗体は、同様の配列の他の抗原より高い親和性で抗原に結合する本発明の抗体又はポリペプチド結合剤を指す。一態様では、本発明の抗原結合タンパク質又はその断片、バリアント若しくは誘導体は、他の、即ち非ヒト種の同様の抗原へのその結合親和性と比較してより高い親和性でヒト抗原に結合するが、標的のオルソログを認識し、結合するポリペプチド結合剤は、本発明の範囲内にある。
【0084】
「エピトープ」という用語は、抗原結合領域の1つ以上で選択的結合剤によって認識され、結合されることが可能な任意の分子のその部分を指す。エピトープは通常、アミノ酸又は炭水化物側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、特定の三次元構造の特徴並びに特定の電荷の特徴を有する。本明細書において使用される場合のエピトープは、連続的又は非連続的であり得る。
【0085】
本発明のポリペプチド結合剤及びポリペプチドに関連して使用される場合の「誘導体」という用語は、ユビキチン化、治療薬又は診断薬への複合化、標識(例えば、放射性核種又は様々な酵素を用いて)、PEG化(ポリエチレングリコールを用いた誘導体化)などの共有結合ポリマー結合及びヒトタンパク質において通常起こらない、オルニチンなどのアミノ酸の化学合成による挿入又は置換などの技術によって化学修飾されたポリペプチドを指す。誘導体は、本発明の非誘導体化分子の結合特性を保持する。
【0086】
「リンカー」は、本明細書で使用される場合、2つのポリペプチドを連結するペプチドを指す。リンカーは、1~80アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、2~40、3~40、3~30又は3~20アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4又は3アミノ酸長のペプチドであり得る。他の実施形態では、リンカーは、3~25、3~18、5~20、6~18又は10~20アミノ酸長であり得る。他の実施形態では、リンカーは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30アミノ酸長であり得る。多くの場合、リンカーは、遊離システイン残基を欠き(即ち及び従ってジスルフィド結合に関与しない)、N-グリコシル化部位も含有しない(即ちAsn-Xxx-Ser/Thr、ここで、Xは、プロリンを除いた何れかのアミノ酸であり得る)。特定の実施形態では、配列G3SG2又はG4Sを有するペプチドは、抗TREM-1抗原結合タンパク質とIL-10突然変異タンパク質との間のリンカーである。他の適切なリンカーの例としては、とりわけ、G2、G3、G3S、G3P、G3Q及びG5が挙げられる。上記のリンカー中の各頭文字は、アミノ酸に対する従来の一文字コードを指し、各数字は、リンカー中のアミノ酸のタンデムリピートの数を指す。例えば、「G3SG2」は、配列Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Glyを有するリンカーを指す。「G4S」は、配列Gly-Gly-Gly-Gly-Serを有するリンカーを指す。
【0087】
疾患を治療するために使用される薬物の「治療有効量」は、疾患の重症度を低下させ、疾患若しくはその治療に関連する1つ以上の症状の重症度を低下させるか、又は状態の治療後に一定の頻度で起こり得るより深刻な症状若しくはより深刻な疾患の発生を遅らせ得る量である。
【0088】
本明細書において言及される何れかの疾患の「治療」は、疾患の少なくとも1つの症状の緩和、疾患の重症度の低下又はいくつかの場合には疾患に伴い得るか若しくは少なくとも1つの他の疾患を引き起こし得るより深刻な症状への疾患の進行の遅延若しくは防止を包含する。治療は、疾患が全治されることを意味する必要はない。有用な治療剤は、疾患の重症度を低下させ、疾患若しくはその治療に関連する1つ以上の症状の重症度を低下させるか、又は状態の治療後に一定の頻度で起こり得るより深刻な症状若しくはより深刻な疾患の発生を遅らせることのみを必要とする。
【0089】
「対象」は、哺乳動物及び非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、哺乳動物クラスのあらゆるメンバーが挙げられるが、限定されない:ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種など;家畜、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど;家養動物、例えばウサギ、イヌ及びネコなど;げっ歯類、例えばラット、マウス及びモルモットなどを含む実験動物。非哺乳動物の例としては、鳥類、魚類などが挙げられるが、限定されない。この用語は、特定の年齢又は性別を示さない。
【0090】
本明細書で使用される場合、「骨髄系細胞」は、骨髄系細胞系列の血液前駆細胞に由来する免疫細胞のサブグループを指し、顆粒球、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)を含む。骨髄系細胞は、多くの場合、食細胞及び抗原提示細胞(APC)機能を有する、防御免疫における重要な機能を果たす。例えば、de Kleer et al.,Front.Immunol.,5:423,2014を参照されたい。
【0091】
抗原結合タンパク質及び抗体
免疫グロブリン可変ドメインは、3つの超可変領域又はCDRによって連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を呈する。N末端からC末端に、軽鎖及び重鎖は、両方ともドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987及び1991))又はChothia&Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917,1987;Chothia et al.,Nature 342:878-883,1989の定義に従う。
【0092】
抗体の超可変領域は、抗原結合に関与する抗体のCDRアミノ酸残基を指す。超可変領域は、CDRからのアミノ酸残基[例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)により記載されるような軽鎖可変ドメインの残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)並びに重鎖可変ドメインの31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)]及び/又は[Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)]により記載されるような、超可変ループからの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26~32(L1)、50~52(L2)及び91~96(L3)並びに重鎖可変ドメインの26~32(H1)、53~55(H2)及び96~101(H3))を含む。CDRも同定され、ImMunoGenTics(IMGT)番号付けに従って番号付けされた(以下のような軽鎖及び重鎖可変ドメインにおけるCDRの位置を記載するLefranc,M.-P.,The Immunologist,7,132-136(1999);Lefranc,M.-P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003):CDR1、およそ残基27~38;CDR2、およそ残基56~65;及びCDR3、およそ残基105~116(生殖系列)又は残基105~117(再編成))。一実施形態では、CDRは、本明細書で開示されるものとほぼ同様の長さの抗体重鎖又は軽鎖の、軽鎖可変ドメイン中のおよそ残基26~31(L1)、49~51(L2)及び88~98(L3)並びに重鎖可変ドメイン中のおよそ残基26~33(H1)、51~58(H2)及び97~110(H3)に位置すると考えられる。しかしながら、当業者は、特定の抗体の配列が同定される場合、CDR残基の実際の位置が、上記の予想される残基と異なり得ることを理解する。本明細書で開示される配列識別子が割り当てられるCDRは、Kabat法(Kabat and Wu,1991)に従って定められ、Amgen参照番号付けを使用して番号付けされる。Amgen参照番号付けは、Honegger and Pluckthun(J Mol Biol.309(3):657-70、2001)に記載される抗体可変領域のためのHonegger and Plueckthun番号付けシステムにおいて構築された、構造に基づく番号付けシステムである。様々な実施形態では、改変IgG1抗体が企図される。様々な実施形態では、本抗体は、本明細書に記載のようなIgG1z又はIgG1z-SEFL2抗体である。
【0093】
さらに、CDRは、Kabat and Chothia,AbM,Contact,North,Martinの両方の蓄積及び/若しくはコンフォメーションによる定義又は当技術分野で周知のCDRを決定する何れかの方法に従って定められ得る。CDRのAbMによる定義は、KabatとChothiaとの折衷案であり、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェア(Accelrys(登録商標))を使用する。CDRの「接触」の定義は、MacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.,262:732-745に示される、観察される抗原接触に基づく。CDRの「立体構造」の定義は、抗原結合に対するエンタルピー的な寄与を生じさせる残基に基づく(例えば、Makabe et al.,2008,J.Biol.Chem.,283:1156-1166を参照されたい)。Northは、異なる好ましいCDR定義のセットを用いて、カノニカルなCDR立体構造を同定した(North et al.,2011,J.Mol.Biol.406:228-256)。本明細書でCDRの「立体構造定義」と呼ばれる別のアプローチにおいて、CDRの位置は、抗原結合に対するエンタルピー的な寄与を生じさせる残基として同定され得る(Makabe et al.,2008,J Biol.Chem.283:1156-1166)。Martinの定義(enhanced Chothia定義とも呼ばれる)は、Kabat及びChothiaの定義を組み合わせており、重鎖においてのみそれらと異なり、CDR-H1はKabat及びChothiaの全ての残基を含む一方、CDR-H2は、Kabatにより定義されるものよりも7残基短い(Martin,Bioinformatics tools for antibody engineering.Handbook of Therapeutic Antibodies.Weinheim:Wiley-VCH Verlag GmbH;(2008).p.95-117;Institute of Structural and Molecular Biology at the University College London,http://www.bioinf.org.uk/abs/#cdridにより維持されるデータベースも参照されたい)。CDR境界のさらに他の定義は、上記のアプローチの1つに厳密には従わない場合があるが、それでもなおKabat CDRの少なくとも一部と重なるものの、これらは、特定の残基若しくは残基群又は全CDRさえも抗原結合にさほど影響を及ぼさないという予測又は実験結果を踏まえて短縮又は伸長され得る。例えば、「合わせた」CDRも使用され得る。本明細書で使用される場合、CDRは、これらのアプローチの組み合わせを含む、当技術分野で公知の何れかのアプローチにより定められるCDRを指し得る。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチの何れかに従って定められるCDRを利用し得る。複数のCDRを含有する何れかの一定の実施形態に対して、CDR(又は抗体の他の残基)は、Kabat、Chothia、North、AbM、Contact、IMGT、Martin、Kabat及びChothiaの組み合わせ及び/又は立体構造定義の何れかに従って定められ得る。
【0094】
例えば、以下の表は、CDRのいくつかの一般的に使用される定義を示す(便宜上、Amgen参照番号付けの代わりにKabat番号付けに従って残基を番号付け)。
【0095】
【表1】
【0096】
フレームワーク領域(又はFR)残基は、超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0097】
後述されるように、本明細書において企図される、本明細書に記載のモノクローナル、ヒト、ヒト化及び他の抗体を含む抗体は、典型的に、組み換え的に又は遺伝子コードをインビトロ若しくはインビボで操作する他の方法を通して作製され、従って、必ずしも、自然界に見られる特定の抗体を反映する必要はない。
【0098】
抗TREM-1抗原結合タンパク質
TREM-1シグナル伝達を特性評価するための過去の研究は、受容体のリガンド活性化を模倣するためにTREM-1のアゴニスト抗体を用いた(Tessarz et al.,Immunol Lett 116(2):111-6,2008;Vandestienne et al.,J Clin Invest 131(2):e142468,2021)。デコイペプチドも、TREM-1活性を調節するために試みられた(例えば、国際公開第2014037565A号パンフレットを参照されたい)。
【0099】
本開示は、標的特異的抗体をコードするアミノ酸分子の使用を包含する。本明細書に記載の抗TREM-1抗原結合タンパク質は、ヒトTREM-1及びそのリガンドの相互作用を異なって調節する。
【0100】
いくつかの実施形態では、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540で示される重鎖可変領域と少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上同一であるアミノ酸配列及び/又は配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539で示される軽鎖可変領域と少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む抗原結合タンパク質が提供され、抗体は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2又はLCDR3の少なくとも1、2、3、4、5つ又は全てをさらに含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域との同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列は、軽鎖CDRの1、2又は3つを含み得る。他の実施形態では、重鎖可変領域との同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列は、重鎖CDRの1、2又は3つを含み得る。
【0101】
別の実施形態では、抗原結合タンパク質は、上に示される抗体配列の重鎖可変領域における全ての3つのHCDR又はCDR:配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、176、196、216、236、256、276及び550で示される重鎖CDR1配列;配列番号17、37、57、77、97、117、137、157、177、197、217、237、257、277及び551で示される重鎖CDR2配列;及び配列番号18、38、58、78、98、118、138、158、178、198、218、238、258、278及び552で示される重鎖CDR3配列と少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0102】
関連する実施形態では、上に示される抗体配列の軽鎖可変領域の全ての3つのLCDR又はCDR:配列番号10、30、50、70、90、110、130、150、170、190、210、230、250、270及び544で示される軽鎖CDR1配列;配列番号11、31、51、71、91、111、131、151、171、191、211、231、251、271及び545で示される軽鎖CDR2配列;配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、192、212、232、252、272及び546で示される軽鎖CDR3配列と、少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0103】
本開示の抗体は、抗体のCDR領域中の1つ又は2つ以上のアミノ酸置換、例えば非保存的又は保存的置換を有し得ることが企図される。本明細書に開示されるTREM-1抗体重鎖及び軽鎖CDR及び/又は可変領域配列のコンセンサス配列も企図される。例えば、TREM-1抗体は、以下の配列を含み得る。様々な実施形態では、TREM-1抗体は、XASQSXNLA(配列番号553)(ここで、Xは、R又はQであり、Xは、V又はIであり、Xは、N又はSであり、Xは、S、H、I、V又はAである);QASXDIXLN(配列番号558)(ここで、Xは、R又はQであり、Xは、R、S、N又はFであり、Xは、K又はNであり、Xは、H、Y又はDである);RASQSVNSNLA(配列番号566);QASQDIRKHLN(配列番号567);RASQDISSNLN(配列番号568);QASQDIHLN(配列番号569);RASQGIRKWLA(配列番号570)又はRASQSVNSNLA(配列番号571)及びSGDKLGERVS(配列番号572)からなる群から選択されるLCDR1アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0104】
様々な実施形態では、TREM-1抗体は、GAXRAT(配列番号554)(ここで、Xは、S又はYであり、Xは、T又はIである);アミノ酸配列XLET(配列番号560)(ここで、Xは、D、G又はHであり、Xは、A、V又はTであり、Xは、S、A又はYであり、Xは、T又はNである);GASTRAT(配列番号573);DASNLET(配列番号574);及びAASRLQS(配列番号575)からなる群から選択されるLCDR2アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0105】
様々な実施形態では、TREM-1抗体は、QXPXT(配列番号555)(ここで、Xは、Q、H又はEであり、Xは、F又はYであり、Xは、K、Y又はIであり、Xは、N、T、L、I又はMであり;Xは、W、F、H又はYであり、Xは、非存在又はPであり;Xは、W、N、Y、H又はLである);QXYXPXT(配列番号561)(ここで、Xは、Q又はHであり、Xは、D、A又はGであり、Xは、N又はKであり;Xは、L又はIであり、Xは、I又はLである);QQFKNWPPT(配列番号576);QHYDNLPIT(配列番号577);LQAHGFPWT(配列番号578);QQYDNLPLT(配列番号579)及びQFWPPWT(配列番号580)からなる群から選択されるLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0106】
様々な実施形態では、TREM-1抗体は、XMX(配列番号556)(ここで、Xは、A、R、T又はSであり、Xは、Y又はNであり、Xは、A又はWであり、Xは、S又はNである);配列XYDIN(配列番号563)(ここで、Xは、R又はSである);GYYXH(ここで、Xは、M又はIである);AYAMS(配列番号581);RYDIN(配列番号582);及びSYWMS(配列番号583)からなる群から選択されるHCDR1アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0107】
様々な実施形態では、TREM-1抗体は、XYYX101112VKG(配列番号559)(ここで、Xは、T、E又はSであり、Xは、非存在であるか、又はM、V若しくはIであり、Xは、S、R又はKであり、Xは、G又はQであり、Xは、S、D又はHであり、Xは、G、S、L又はAであり、Xは、S、G又はRであり、Xは、T、S、P又はEであり、Xは、T又はIであり、X10は、A又はVであり、X11は、D又はEであり、X12は、S又はAである);XNPXGXGX10FX1112(配列番号564)(ここで、Xは、W又はRであり、Xは、M又はLであり、Xは、N、Q又はKであり、Xは、S、A又はRであり、Xは、N又はQであり、Xは、S、A又はTであり、Xは、S、Q又はYであり、Xは、V又はTであり、Xは、Q又はKであり、X10は、K又はNであり、X11は、R又はQであり、X12は、G又はDである);TSGSGSTTYYADSVKG(配列番号584);WMNPNSGNSSVQKFRG(配列番号585);NIKQDGSEEYYVDSVKG(配列番号586);及びTSGSGTYYADSVKG(配列番号841)からなる群から選択されるHCDR2アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0108】
様々な実施形態では、TREM-1抗体は、XFXYYX(配列番号557)(ここで、Xは、V、E、A又はGであり、Xは、A、F、Y又はGであり、Xは、G、S、Y又はWであり、Xは、S又はRであり、Xは、非存在であるか又はNであり、Xは、F、S、Y又は非存在であり、Xは、L若しくはF又は非存在であり、Xは、D又はEであり、Xは、Y、H又はSである);X101112FX1314(配列番号565)(ここで、Xは、G、L又はRであり、Xは、G、IはRであり、Xは、Y、R、I、G又はAであり、Xは、T、S、Y又はVであり、Xは、S又はYであり、Xは、S、A、I又はRであり、Xは、W、A又はSであり、Xは、非存在であるか又はSであり、Xは、非存在であるか、又はF、W若しくはYであり、X10は、R、S、H、K又はEであり、X11は、W、H、Y又はFであり、X12は、Y、V、A又はSであり、X13は、D又はQであり、X14は、L、Y、I又はHである);VAGSNFLFDY(配列番号842);GGYTSSWRWYFDL(配列番号843);GGYTSSWSRWYFDL(配列番号844);及びDYGDSFDY(配列番号845)からなる群から選択されるHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する配列を含む抗原結合ドメインを含む。
【0109】
関連する実施形態では、フレームワークの残基が改変される。改変され得る重鎖フレームワーク領域は、重鎖CDR残基を囲む、H-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4と呼ばれる領域内にあり、改変され得る軽鎖フレームワーク領域の残基は、軽鎖CDR残基を囲む、L-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4と呼ばれる領域内にある。フレームワーク領域内のアミノ酸は、例えば、ヒトフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークにおいて同定される何れかの適切なアミノ酸で置換され得る。フレームワーク領域が改変され得るが、本明細書に記載の抗原結合タンパク質又は抗体は、親抗体のCDR、LCDR1~3及び/又はHCDR-3を保持することがさらに企図される。
【0110】
抗体断片は、無傷の完全長抗体、好ましくは、無傷の抗体の抗原結合又は可変領域の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcab及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);二重特異性、三重特異性抗体などの多重特異性抗体断片(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ);ミニボディ;キレート化組み換え抗体;トリボディ又はバイボディ;イントラボディ;ナノボディ;結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;VHH含有抗体;及び抗体断片から形成される他のポリペプチドが挙げられる。例えばHolliger&Hudson,2005 Nat.Biotech.23:1126-36;Eyer&Hruska,Veterinarni Medicina 57:439-513,2012を参照されたい。
【0111】
本開示の抗原結合化合物は、好ましくは、表面プラズモン共鳴又はKinexAによって測定した場合、TREM-1に対する10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、10-14、10-15M以下の結合親和性を保持する。本開示の抗原結合化合物は、10-9~10-12又は10-10~10-13又は10-10~10-15MのTREM-1からの結合親和性を有する。SPRアッセイは、例えば25℃(室温)で標準的な方法を使用して行われる。
【0112】
様々な実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。特定の実施形態では、抗体は、IgG1z抗体である。
【0113】
配列番号6、26、46、66、86、106、126、146、166、186、206、226、246、266及び540で示される重鎖アミノ酸配列と;配列番号5、25、45、65、85、105、125、145、165、185、205、225、245、265及び539で示される軽鎖アミノ酸配列とを有する、TREM-1に結合する全長抗体の例が本明細書で提供される。
【0114】
様々な実施形態では、TREM-1抗原結合タンパク質は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組み換え抗体、Fab、F(ab’)2、Fab2、一価IgG、scFv、scFv-Fc、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。様々な実施形態では、抗原結合部分は、IgGである。様々な実施形態では、抗原結合部分は、IgG2抗体である。様々な実施形態では、抗原結合部分は、IgG1抗体である。様々な実施形態では、抗体は、IgG1z抗体である。様々な実施形態では、抗原結合部分は、一価IgGである。様々な実施形態では、抗原結合部分の重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの重鎖定常領域、その断片、それらの組み合わせ及び1~10個の重鎖フレームワークアミノ酸が別のヒト抗体定常領域からの対応するアミノ酸で置換されたそれらの修飾物から選択される。
【0115】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、10-8M~10-15M又は10-8M~10-12M又は10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M、10-14M又は10-15Mの結合親和性でその抗原に結合する。
【0116】
様々な実施形態では、本抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号10、30、50、70、90、110、130、150、170、190、210、230、250、270及び544から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
ii.配列番号11、31、51、71、91、111、131、151、171、191、211、231、251、271及び545から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
iii.配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、192、212、232、252、272及び546から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、176、196、216、236、256、276及び550から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
ii.配列番号17、37、57、77、97、117、137、157、177、197、217、237、257、277及び551から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び
iii.配列番号18、38、58、78、98、118、138、158、178、198、218、238、258、278及び552から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3
を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0117】
抗原結合タンパク質の様々な実施形態では、
a.軽鎖CDR1配列は、配列番号10、30、50、90、130、150又は270で示され;
b.軽鎖CDR2配列は、配列番号11、31、51、91、131、151又は271で示され;
c.軽鎖CDR3配列は、配列番号12、32、52、92、132、152又は272で示され、
d.重鎖CDR1配列は、配列番号16、36、56、96、136、156又は276で示され;
e.重鎖CDR2配列は、配列番号17、37、57、97、137、157又は277で示され;
f.重鎖CDR3配列は、配列番号18、38、58、98、138、158又は278で示される。
【0118】
抗原結合タンパク質の様々な実施形態では、
a.軽鎖CDR1配列は、配列番号30又は90で示され;
b.軽鎖CDR2配列は、配列番号31又は91で示され;
c.軽鎖CDR3配列は、配列番号32又は92で示され;
d.重鎖CDR1配列は、配列番号36又は096で示され;
e.重鎖CDR2配列は、配列番号37又は97で示され;
f.重鎖CDR3配列は、配列番号38又は98で示される。
【0119】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、配列番号22の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号21の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0120】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号42の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号41の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0121】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号62の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号61の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0122】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号82の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号81の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0123】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号102の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号101の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0124】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号122の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号121の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0125】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号142の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号141の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0126】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号162の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号161の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0127】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号182の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号181の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0128】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号202の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号201の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0129】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号222の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号221の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0130】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号242の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号241の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0131】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号262の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号261の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0132】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号282の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号281の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0133】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号540の重鎖(HC)CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と、配列番号539の軽鎖(LC)CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3とを含む。代表的な実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、contact又はIMGTに従って定められる。
【0134】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号19、39、59、79、99、119、139、159、179、199、219、239、259、279及び537から選択される核酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号19、39、59、79、99、119、139、159、179、199、219、239、259、279及び537から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280及び538から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;及び
iii.配列番号20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280及び538から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0135】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号21、41、61、101、141、161及び281から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号19、39、59、99、139、159及び279から選択される核酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号19、39、59、99、139、159及び279から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号22、42、62、102、142、162及び282から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号20、40、60、100、140、160及び280から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号20、40、60、100、140、160及び280から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0136】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
a.軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号41及び101から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号39及び99から選択される核酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号39及び99から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、
b.重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号42及び102から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列;
ii.配列番号40及び100から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる配列;
iii.配列番号40及び100から選択される核酸配列からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと
を含む。
【0137】
様々な実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539及び配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540と、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。
【0138】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0139】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539から選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0140】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号22、42、62、102、142、162及び282から選択される配列と少なくとも90%同一である重鎖アミノ酸配列と、配列番号21、41、61、101、141、161及び281から選択される配列と少なくとも90%同一である軽鎖アミノ酸配列とを含む。
【0141】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、配列番号4及び102から選択される配列と少なくとも90%同一である重鎖アミノ酸配列と、配列番号41及び101から選択される配列と少なくとも90%同一である軽鎖アミノ酸配列とを含む。
【0142】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号22の3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号21における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号22における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号21における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号22における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号21における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。パーセント同一性は、一緒に3個のCDR配列を組み合わせた場合の、全体的なパーセント同一性により決定され、本明細書で開示される配列に対してそれらをアラインさせる。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0143】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号42における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号41における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号42における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号41における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号42における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号41における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0144】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号62における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号61における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号62における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組みわせて配列番号61における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号62における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号61における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0145】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号82における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号81における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号82における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと、組み合わせて配列番号81における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号82における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号81における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0146】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号102における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号101における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号102における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号101における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号102における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号101における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0147】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号122における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号121における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号122における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号121における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号122における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号121における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0148】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号122における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号121における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号122における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号121における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号122における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号121における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0149】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号142における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号141における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号142における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号141における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号142における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号141における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0150】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号162における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号161における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号162における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号161における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号162における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号161における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0151】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号182における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号181における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号182における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号181における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号182における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号181における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0152】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号202における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号201における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号202における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号201における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号202における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号201における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0153】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号222における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号221における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号222における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号221における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号222における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号221における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0154】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号242における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号241における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号242における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号241における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号242における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号241における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0155】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号262における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号261における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号262における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号261における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号262における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号261における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0156】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号282における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号281における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号282における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号281における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号282における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号281における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0157】
様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号540における3個の重鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と;組み合わせて配列番号539における3個の軽鎖CDRと少なくとも85%同一である3個のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号540における3個の重鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号539における3個の軽鎖CDRと少なくとも90%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。様々な実施形態では、本抗原結合タンパク質は、組み合わせて配列番号540における3個の重鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVHと;組み合わせて配列番号539における3個の軽鎖CDRと少なくとも95%同一である3個のCDRを含むVLとを含む。本抗原結合タンパク質は、100nM以下のKD値又は50nM以下のKD値でその標的(TREM-1)にさらに結合し得る。
【0158】
様々な実施形態では、本開示は、抗原結合タンパク質を投与することを含む、循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)を治療する方法を提供し、この抗原結合タンパク質は、骨髄系細胞上で発現されるヒトTrIgGering受容体1(TREM-1)に結合し、
i)配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)、配列番号12(LCDR3)、配列番号16(HCDR1)、配列番号17(HCDR2)及び配列番号18(HCDR3);
ii)配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)、配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3);
iii)配列番号50(LCDR1)、配列番号51(LCDR2)、配列番号52(LCDR3)、配列番号56(HCDR1)、配列番号57(HCDR2)及び配列番号58(HCDR3);
iv)配列番号70(LCDR1)、配列番号71(LCDR2)、配列番号72(LCDR3)、配列番号76(HCDR1)、配列番号77(HCDR2)及び配列番号78(HCDR3);
v)配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)、配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3);
vi)配列番号110(LCDR1)、配列番号111(LCDR2)、配列番号112(LCDR3)、配列番号116(HCDR1)、配列番号117(HCDR2)及び配列番号118(HCDR3);
vii)配列番号130(LCDR1)、配列番号131(LCDR2)、配列番号132(LCDR3)、配列番号136(HCDR1)、配列番号137(HCDR2)及び配列番号138(HCDR3);
viii)配列番号150(LCDR1)、配列番号151(LCDR2)、配列番号152(LCDR3)、配列番号156(HCDR1)、配列番号157(HCDR2)及び配列番号158(HCDR3);
ix)配列番号170(LCDR1)、配列番号171(LCDR2)、配列番号172(LCDR3)、配列番号176(HCDR1)、配列番号177(HCDR2)及び配列番号178(HCDR3);
x)配列番号190(LCDR1)、配列番号191(LCDR2)、配列番号192(LCDR3)、配列番号196(HCDR1)、配列番号197(HCDR2)及び配列番号198(HCDR3);
xi)配列番号210(LCDR1)、配列番号211(LCDR2)、配列番号212(LCDR3)、配列番号216(HCDR1)、配列番号217(HCDR2)及び配列番号218(HCDR3);
xii)配列番号230(LCDR1)、配列番号231(LCDR2)、配列番号232(LCDR3)、配列番号236(HCDR1)、配列番号237(HCDR2)及び配列番号238(HCDR3);
xiii)配列番号250(LCDR1)、配列番号251(LCDR2)、配列番号252(LCDR3)、配列番号256(HCDR1)、配列番号257(HCDR2)及び配列番号258(HCDR3);
ix)配列番号270(LCDR1)、配列番号271(LCDR2)、配列番号272(LCDR3)、配列番号276(HCDR1)、配列番号277(HCDR2)及び配列番号278(HCDR3);及び
xv)配列番号544(LCDR1)、配列番号545(LCDR2)、配列番号546(LCDR3)、配列番号547(HCDR1)、配列番号548(HCDR2)及び配列番号549(HCDR3)
から選択されるCDR配列のセットを含む。
【0159】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、
i)配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)、配列番号12(LCDR3)、配列番号16(HCDR1)、配列番号17(HCDR2)及び配列番号18(HCDR3);
ii)配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)、配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3);
iii)配列番号50(LCDR1)、配列番号51(LCDR2)、配列番号52(LCDR3)、配列番号56(HCDR1)、配列番号57(HCDR2)及び配列番号58(HCDR3);
iv)配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)、配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3);
v)配列番号130(LCDR1)、配列番号131(LCDR2)、配列番号132(LCDR3)、配列番号136(HCDR1)、配列番号137(HCDR2)及び配列番号138(HCDR3);
vi)配列番号150(LCDR1)、配列番号151(LCDR2)、配列番号152(LCDR3)、配列番号156(HCDR1)、配列番号157(HCDR2)及び配列番号158(HCDR3);又は
vii)配列番号270(LCDR1)、配列番号271(LCDR2)、配列番号272(LCDR3)、配列番号276(HCDR1)、配列番号277(HCDR2)及び配列番号278(HCDR3)
から選択されるCDR配列のセットを含む。
【0160】
様々な実施形態では、抗TREM-1抗原結合タンパク質は、配列番号30(LCDR1)、配列番号31(LCDR2)、配列番号32(LCDR3)、配列番号36(HCDR1)、配列番号37(HCDR2)及び配列番号38(HCDR3);又は配列番号90(LCDR1)、配列番号91(LCDR2)、配列番号92(LCDR3)、配列番号96(HCDR1)、配列番号97(HCDR2)及び配列番号98(HCDR3)から選択されるCDR配列のセットを含む。
【0161】
TREM-1抗原結合タンパク質の結合親和性は、KDにより評価され得る。KDは、平衡解離定数、抗原結合タンパク質とその標的又は抗原との間のkoff/konの比である。KDとKAは反比例する。KD値は、本抗体の濃度(特定の実験に必要な抗体の量)に関連し、従って、KD値が低いほど(必要とされる濃度が低いほど)、本抗体の親和性が高い。代表的な態様では、TREM-1抗原結合タンパク質のその標的に対するKD値は、約10-1M以下、約10-2M以下、約10-3M以下、約10-4M以下、約10-5M以下、約10-6M以下、約10-7M以下、約10-8M以下、約10-9M以下、約10-10M以下、約10-11M以下、約10-12M以下、約10-13M以下、約10-14M以下、約10-5M~約10-15M、約10-6M~約10-15M、約10-7M~約10-15M、約10-8M~約10-15M、約10-9M~約10-15M、約10-10M~約10-15M、約10-5M~約10-14M、約10-6M~約10-14M、約10-7M~約10-14M、約10-8M~約10-14M、約10-9M~約10-14M、約10-10M~約10-14M、約10-5M~約10-13M、約10-6M~約10-13M、約10-7M~約10-13M、約10-8M~約10-13M、約10-9M~約10-13M又は約10-10M~約10-13Mである。
【0162】
代表的な態様では、その標的に対するTREM-1抗原結合タンパク質のKD値は、マイクロモル、ナノモル、ピコモル又はフェムトモルである。例示的な態様では、KDは、10-4~10-6M又は10-7~10-9M又は10-10~10-12M又は10-13~10-15Mの範囲内である。代表的な態様では、TREM-1抗原結合タンパク質は、約1uM以下、約900nM以下、約800nM以下、約700nM以下、約600nM以下、約500nM以下、約400nM以下、約300nM以下、約200nM以下、約100nM以下、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約5nM以下、約2nM以下、約1nM以下、約900pM以下、約800pM以下、約700pM以下、約600pM以下、約500pM以下、約400pM以下、約300pM以下、約250pM以下、約200pM以下、約150pM以下、約100pM以下、約50pM以下、約40pM以下、約30pM以下、約25pM以下、約20pM以下、約15pM以下、約10pM以下、約5pM以下又は約1pM以下のKD値でその標的に結合する。
【0163】
KD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定され得る。KDを測定するための代表的な1つの方法は、当技術分野で周知の方法である表面プラズモン共鳴(SPR)である(例えば、Nguyen et al.Sensors(Basel).2015 May 5;15(5):10481-510)。KD値は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用するSPRによって測定され得る。BIAcore動態分析は、その表面上で分子(例えば、エピトープ結合ドメインを含む分子)が固定化されたチップからの抗原の結合及び解離を分析することを含む。タンパク質のKDを決定するための当技術分野で周知の別の方法は、Bio-Layer Interferometry(例えば、Shah et al.J Vis Exp.2014;(84):51383)を使用することによる。KD値は、OCTET(登録商標)技術(Octet QKe system,ForteBio)を使用して、Bio-Layer Interferometryにより測定され得る。代わりに又はさらに、Sapidyne Instruments(Boise,Id.)から入手可能なKinExA(登録商標)(結合平衡除外法)アッセイも使用され得る。2つの結合パートナー間の結合親和性を評価するための当技術分野で公知のあらゆる方法が本明細書に包含される。
【0164】
いくつかの態様では、KD値は、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される。抗原(TREM-1)は、例えば固体表面上に固定され得る。本抗原は、チップに、例えば共有カップリング(アミンカップリングなど)により固定され得る。このチップはCM5センサーチップであり得る。検体がリガンドに結合するため、センサー面上のタンパク質の蓄積は、屈折率の上昇を引き起こす。この屈折率の変化は、リアルタイムで測定され(0.1sごとに動態分析実験における試験採取が行われる)、結果が時間に対する反応単位(RU)としてプロットされる(センサーグラムと呼ばれる)。応答(バックグラウンド応答)は、ランニング及び試料緩衝液の屈折率において相違がある場合にも生じる。実際の結合応答を得るために、このバックグラウンド応答をセンサーグラムから差し引かれなければならない。バックグラウンド応答は、センサー面に固定されるリガンドがないか又は無関係のリガンドがある対照又は参照フローセルを通して検体を注入することにより記録される。結合相互作用の会合及び解離のリアルタイム測定により、会合及び解離速度定数及び対応する親和性定数の計算が可能になる。1RUは、1pgのタンパク質/平方mmの結合を表す。50pg超/平方mmの検体結合は一般に、良好な再現性のある応答を生成させるために実際に必要とされる。
【0165】
本抗原からの抗原結合タンパク質の解離を約3600秒間、監視し得る。約15℃~約37℃でSPR分析を行い、データを回収し得る。約25℃~約37℃でSPR分析を行い、データを回収し得る。約37℃でSPR分析を行い、データを回収し得る。37℃でSPR分析を行い、データを回収し得る。K値は、BIAcore T200装置を使用してSPRにより測定され得る。SPR比率及び親和性は、BIAcore T200 Evaluationソフトウェアバージョン1.0において、1:1モデルに対して得られたセンサーグラムデータをフィットさせることによって決定され得る。回収速度は約1Hzであり得る。
【0166】
抗体のKDを決定するための別の方法は、一般的にはOCTET(登録商標)技術(Octet QKeシステム、ForteBio)を使用する、Bio-Layer Interferometry(BLI)の使用による。いくつかの実施形態では、バイオセンサー分析が使用される。一般的には、1つの反応対は、バイオセンサーの表面に固定され(「リガンド」、例えば抗原結合タンパク質など)、他方は、溶液中に残る(「検体」、例えば抗原など)。本アッセイは、アッセイ緩衝液を使用して、初めのベースライン又は平衡段階で始まる。次に、リガンド(抗原結合タンパク質など)は、直接固定又は捕捉に基づく方法の何れかにより、バイオセンサーの表面に固定(ローディング)される。リガンド固定後、ベースライン段階のためにバイオセンサーを緩衝溶液中に浸し、アッセイドリフトを評価し、リガンドのローディングレベルを決定する。ベースライン段階後、バイオセンサーをリガンドの結合パートナー、検体(会合)を含有する溶液に浸す。この段階において、固定されたリガンドへの検体の結合相互作用を測定する。検体会合後、バイオセンサーを検体なしの緩衝溶液に浸し、結合された検体をリガンドから剥がすことが可能になる(解離)。次に、試験されている各検体に対して、一連のアッセイ段階を新しいか又は再生されたバイオセンサー上で反復する。各結合反応を測定し、センサーグラムトレース上においてリアルタイムで報告する。この機器は、Octet QKeシステム、Octet RED96システム、Octet QK384システム又はRED384システムであり得る。
【0167】
核酸分子
本開示は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質をコードする単離核酸も提供し、これは、例えば、抗原結合タンパク質軽鎖、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、抗原結合タンパク質重鎖、重鎖可変領域、重鎖定常領域、リンカー、融合タンパク質及びあらゆる構成成分及びそれらの組み合わせを含む。本発明の核酸は、本発明の核酸との、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の相同性を有する核酸を含む。特定の配列を指す場合、「類似性パーセント」、「同一性パーセント」及び「相同性パーセント」という用語は、University of Wisconsin GCG(登録商標)ソフトウェアプログラムに記載されるように使用される。本開示の核酸は、相補的核酸も含む。ある場合には、配列は、アラインされた際に完全に相補的であろう(ミスマッチなし)。他の例では、配列中に約20%までのミスマッチが存在し得る。本発明のいくつかの実施形態では、本開示の抗体の重鎖及び軽鎖の両方をコードする核酸が提供される。
【0168】
本開示の核酸は、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工染色体(BAC、YAC)又はウイルスなどのベクターにクローニングされ得、その中に別の遺伝子配列又は要素(DNA又はRNAの何れか)が結合された配列又は要素の複製をもたらすように挿入され得る。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、構成的に活性なプロモーターセグメント(CMV、SV40、伸長因子若しくはLTR配列などであるが、限定されない)又は誘導性プロモーター配列、例えばステロイド誘導性pINDベクター(Invitrogen)を含有し、核酸の発現が調節され得る。本発明の発現ベクターは、調節配列、例えば、内部リボソーム侵入部位をさらに含み得る。発現ベクターは、例えば遺伝子移入によって細胞に導入され得る。
【0169】
以下の操作可能に連結されたエレメント;転写プロモーター;本開示の抗原結合タンパク質、抗体又は抗原結合断片の重鎖をコードする第1の核酸分子;本開示の抗原結合タンパク質、抗体又は抗原結合断片の軽鎖をコードする第2の核酸分子;及び転写ターミネーターを含む発現ベクターも提供される。別の実施形態では、本開示は、以下の操作可能に連結されたエレメント;第1の転写プロモーター;本開示の抗原結合タンパク質、抗体又は抗原結合断片の重鎖をコードする第1の核酸分子;第1の転写ターミネーター;第2の転写プロモーター、任意選択的に本開示の抗原結合タンパク質、抗体又は抗原結合断片の軽鎖をコードする第2の核酸分子;及び第2の転写ターミネーターを含む発現ベクターを提供する。
【0170】
分泌シグナルペプチド配列も任意選択的に発現ベクターによってコードされ得、必要に応じて、細胞から目的のポリペプチドをより容易に単離するために、組み換え宿主細胞によって発現ポリペプチドを分泌し得るように目的のコード配列に操作可能に連結され得る。例えば、いくつかの実施形態では、シグナルペプチド配列は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質、抗体又はそれらの抗原結合断片ポリペプチド配列の何れかのアミノ末端に付加/融合され得る。
【0171】
このようなベクターを含み、本抗原結合タンパク質重鎖及び軽鎖を発現する組み換え宿主細胞も提供される。組み換え宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)細胞又は真核細胞、例えば哺乳動物細胞又は酵母細胞であり得る。酵母細胞としては、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞が挙げられる。哺乳動物細胞としては、VERO、HeLa、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、W138、ベビーハムスター腎臓(BHK)、COS-7、MDCK、ヒト胎児腎臓細胞株293、正常イヌ腎臓細胞株、正常ネコ腎臓細胞株、サル腎臓細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、COS細胞及び非腫瘍性マウス筋芽細胞G8細胞、線維芽細胞株、骨髄腫細胞株、マウスNIH/3T3細胞、LMTK31細胞、マウスセルトリ細胞、ヒト子宮頸癌細胞、バッファローラット肝細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝細胞、マウス乳腺腫瘍細胞、TRI細胞、MRC5細胞及びFS4細胞が挙げられる。本開示の組み換えタンパク質産生細胞は、例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞などの公知のあらゆる昆虫発現細胞株も含む。一実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、CHO細胞である。
【0172】
特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、HEK293細胞である。
【0173】
タンパク質精製方法は、当技術分野で公知であり、細胞培養培地からの組み換えタンパク質の回収のために本明細書において用いられる。例えば、タンパク質及び抗体精製の方法は、当技術分野において公知であり、本開示の抗体の産生に用いられ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質及び抗体精製の方法は、ろ過、アフィニティカラムクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー及び濃縮を含む。ろ過段階は、限外ろ過、任意選択的に限外ろ過及び透析ろ過を含み得る。ろ過は、好ましくは、少なくとも約5~50回、より好ましくは、10~30回、最も好ましくは、14~27回行われる。アフィニティカラムクロマトグラフィーは、例えば、PROSEP(登録商標)アフィニティクロマトグラフィー(Millipore,Billerica,Mass)を用いて行われ得る。様々な実施形態では、アフィニティクロマトグラフィー段階は、PROSEP(登録商標)-vAカラムクロマトグラフィーを含む。溶出液は、溶媒洗浄剤中で洗浄され得る。陽イオン交換クロマトグラフィーには、例えば、SP-セファロース陽イオン交換クロマトグラフィーが含まれ得る。陰イオン交換クロマトグラフィーには、例えば、Q-セファロースFast Flow陰イオン交換が含まれ得るが、限定されない。陰イオン交換段階は、好ましくは、非結合であり、これによりDNA及びBSAを含む汚染物質の除去が可能になる。抗体産物は、好ましくは、例えばPall DV 20ナノフィルターを用いてナノ濾過される。抗体産物は、例えば、限外濾過及び透析濾過を使用して濃縮され得る。この方法は、凝集体を除去するためにサイズ排除クロマトグラフィーの段階をさらに含み得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、異なる核酸分子は、標的特異的抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする。他の実施形態では、同じ核酸分子は、標的特異的抗体の重鎖及び軽鎖可変領域をコードする。一実施形態では、核酸は、本開示の標的特異的抗体並びに本明細書に記載の核酸によってコードされるポリペプチドの何れかをコードする。
【0175】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540で示されるVHアミノ酸配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるVHアミノ酸配列をコードする。本開示の核酸分子は、配列番号22、42、62、82、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282及び540の重鎖可変領域アミノ酸配列をコードする核酸配列又は配列番号20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280及び538の何れか1つの重鎖可変領域核酸配列を有する核酸配列と、非常にストリンジェンシーが高い条件下、例えば本明細書に記載の条件などでハイブリダイズする核酸をさらに含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、本核酸分子は、配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539で示されるVLアミノ酸配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるVLアミノ酸配列をコードする。本開示の核酸分子は、配列番号21、41、61、81、101、121、141、161、181、201、221、241、261、281及び539の軽鎖可変領域アミノ酸配列をコードする核酸配列又は配列番号19、39、59、79、99、119、139、159、179、199、219、239、259、279及び537の何れか1つの軽鎖可変領域核酸配列を有する核酸配列と、ストリンジェンシーが高い条件下、例えば本明細書に記載の条件などでハイブリダイズする核酸をさらに含む。
【0177】
一態様では、本明細書で企図される核酸分子は、本明細書に記載の抗TREM-1抗原結合タンパク質又はその一部のVLアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。関連する態様では、VLアミノ酸配列は、コンセンサス配列である。いくつかの実施形態では、核酸は、前記抗体の軽鎖CDRのアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、前記部分は、LCDR1~CDR3を含む連続部分である。関連する態様では、LCDR1~3アミノ酸配列は、コンセンサス配列である。一実施形態では、前記部分は、任意選択的に、異なるヒト又はヒトコンセンサスフレームワークを伴い、且つ任意選択的に集合的な3個のCDRにおける1つ、又は最大で2つ、又は最大で3つの突然変異を伴う、軽鎖CDR1、CDR2又はCDR3領域の少なくとも1つ、2つ又は3つを含む。
【0178】
一態様では、本開示の核酸分子は、本明細書に記載の抗TREM-1抗原結合タンパク質又はその一部のVHアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。関連する態様では、VHアミノ酸配列は、コンセンサス配列である。いくつかの実施形態では、核酸は、前記抗体の重鎖CDRのアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、前記部分は、HCDR1~CDR3を含む連続部分である。関連する態様では、HCDR1~3アミノ酸配列は、コンセンサス配列である。一実施形態では、前記部分は、任意選択的に、異なるヒト又はヒトコンセンサスフレームワークを伴い、且つ任意選択的に集合的な3個のCDRにおける1つ、又は最大で2つ、又は最大で3つの突然変異を伴う、重鎖CDR1、CDR2又はCDR3領域の少なくとも1つ、2つ又は3つを含む。
【0179】
例示的な実施形態では、本開示の抗体は、それに由来するヒトカッパ(κ)若しくはヒトラムダ(λ)軽鎖若しくはアミノ酸配列又はそれに由来するヒト重鎖若しくは配列或いは1本鎖、二量体、四量体又は他の形態で重鎖及び軽鎖の両方を一緒に含む。
【0180】
誘導体
適切な検出可能な分子は、本開示の抗原結合タンパク質に直接又は間接的に連結され得る。適切な検出可能分子は、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光マーカー、化学発光マーカー、磁性粒子などを含む。検出可能又は細胞毒性分子の間接的な結合のために、検出可能又は細胞毒性分子は、補体/抗補体対のメンバーと複合化され得、ここで、他のメンバーは、結合ポリペプチド又は抗体部分に結合される。これらの目的のために、ビオチン/ストレプトアビジンは、例示的な補体/抗補体対である。
【0181】
本開示の抗原結合タンパク質は、例えば、共有結合が抗体のそのエピトープへの結合を妨げないように、抗体への何れかのタイプの分子の共有結合により修飾される誘導体も含む。適切な誘導体の例としては、フコシル化、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化又はアミド化される誘導体が挙げられるが、限定されない。本開示の抗原結合タンパク質は、それ自身、既知の保護基/ブロッキング基、タンパク質分解性切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などにより誘導体化され得る。本開示のいくつかの実施形態では、本抗原結合タンパク質の少なくとも1つの重鎖はPEG化される。いくつかの実施形態では、PEG化は、N結合されるか、又はアミノ酸(例えば、リジン)の側鎖を通して連結される。
【0182】
グリコシル化は、抗体、特にIgG1抗体のエフェクター機能に寄与し得る。従って、いくつかの実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、結合タンパク質のグリコシル化のレベル又はタイプに影響する1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。ポリペプチドのグリコシル化は通常、N結合又はO結合の何れかである。N結合は、炭水化物部分のアスパラギン残基側鎖への結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列の何れかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生成する。O結合型グリコシル化は、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースの1つの糖の、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの連結を指すものの、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0183】
特定の実施形態では、1つ以上のグリコシル化部位を例えば結合タンパク質のFc領域に付加することにより、本明細書に記載の抗原結合タンパク質のグリコシル化を増加させる。抗原結合タンパク質へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列の1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって都合よく達成され得る(N結合型グリコシル化部位の場合)。改変は、1つ以上のセリン残基若しくはスレオニン残基の開始配列への付加又はこれによる開始配列への置換によってもなされ得る(O結合型グリコシル化部位に対して)。容易にするために、抗原結合タンパク質のアミノ酸配列は、DNAレベルでの変化により、特に、所望のアミノ酸に翻訳されることとなるコドンが生成されるように、標的ポリペプチドをコードするDNAを、予め選択された塩基で変異させることによって改変され得る。
【0184】
本開示は、エフェクター活性の変化をもたらす改変炭水化物構造を有する抗原結合タンパク質、例えば、ADCC活性の向上を示すフコシル化が存在しないか又は減少した抗原結合タンパク質などの作製も包含する。フコシル化を減少させるか又は排除するために様々な方法が当技術分野で公知である。例えば、ADCCエフェクター活性には、抗体分子のFcγRIII受容体への結合が介在し、これは、CH2ドメインのN297残基でのN結合型グリコシル化の炭水化物構造に依存することが示されている。非フコシル化抗体は、高い親和性でこの受容体に結合し、FcγRIII介在性エフェクター機能を天然のフコシル化抗体よりも効率的に誘発する。例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素がノックアウトされているCHO細胞における非フコシル化抗体の組み換え産生により、ADCC活性が100倍増大した抗体が生じる(Yamane-Ohnuki et al.,Biotechnol Bioeng.87(5):614-22,2004を参照されたい)。同様の効果は、フコシル化経路におけるアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素又は他の酵素の活性を低下させることにより、例えばsiRNA若しくはアンチセンスRNA処理、酵素をノックアウトするような細胞株の操作又は選択的グリコシル化阻害剤を用いる培養により達成され得る(Rothman et al.,Mol Immunol.26(12):1113-23,1989を参照されたい)。いくつかの宿主細胞株、例えばLec13又はラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、フコシル化レベルがより低い抗体を天然に産生する(Shields et al.,J Biol Chem.277(30):26733-40,2002及びShinkawa et al.,J Biol Chem.278(5):3466-73,2003を参照されたい)。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞において抗体を組み換え産生することによる、バイセクト型炭水化物レベルの上昇もADCC活性を向上させることが判明している(Umana et al.,Nat Biotechnol.17(2):176-80,1999を参照されたい)。
【0185】
他の実施形態では、1つ以上のグリコシル化部位を、例えば結合タンパク質のFc領域から除くことにより、本明細書に記載の抗原結合タンパク質のグリコシル化を減少させるか又は排除する。N結合型グリコシル化部位を排除又は改変するアミノ酸置換により、抗原結合タンパク質のN結合型グリコシル化を減少させ得るか又は排除し得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の二重特異性抗原結合タンパク質は、N297Q、N297A又はN297GなどのN297位(EU番号付け)での突然変異を含む。特定の一実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、N297G突然変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。N297突然変異を含む分子の安定性を向上させるために、分子のFc領域をさらに改変し得る。例えば、いくつかの実施形態では、二量体状態でジスルフィド結合形成を促進するために、Fc領域における1つ以上のアミノ酸をシステインで置換する。従って、IgG1 Fc領域のV259、A287、R292、V302、L306、V323又はI332(EU番号付け)に対応する残基は、システインで置換され得る。一実施形態では、残基の特定の対が互いにジスルフィド結合を優先的に形成するようにシステインで置換され、それによってジスルフィド結合のスクランブルを制限又は防止する。特定の実施形態では、対としては、A287C及びL306C、V259C及びL306C、R292C及びV302C並びにV323C及びI332Cが挙げられるが、限定されない。特定の実施形態では、本明細書に記載の二重特異性抗原結合タンパク質は、R292C及びV302Cでの突然変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。このような実施形態では、Fc領域は、N297G突然変異も含み得る。
【0186】
例えば、サルベージ受容体結合エピトープの組み込み又は付加(例えば、適切な領域の変異によるか、又はエピトープをペプチドタグに組み込み、続いて例えばDNA若しくはペプチド合成により、何れかの末端又は中央で抗原結合タンパク質に融合されることによる;例えば、国際公開第96/32478号パンフレットを参照されたい)又はPEG若しくは他の水溶性ポリマー、例えば多糖ポリマーなどの分子の付加による血清半減期を延長させるための本開示の抗原結合タンパク質の修飾も望ましいものであり得る。サルベージ受容体結合エピトープは、好ましくは、Fc領域の1つ又は2つのループ由来の何れか1つ以上のアミノ酸残基が抗原結合タンパク質中の類似の位置に移される領域を構成する。一実施形態では、Fc領域の1つ又は2つのループ由来の3つ以上の残基が転移される。一実施形態では、エピトープがFc領域(例えば、IgG Fc領域)のCH2ドメインからとられ、抗原結合タンパク質のCH1、CH3若しくはVH領域又は2つ以上のそのような領域に移される。代わりに、エピトープがFc領域のCH2ドメインからとられ、抗原結合タンパク質のCL領域若しくはVL領域又はその両方に移される。Fcバリアント及びそのサルベージ受容体との相互作用の説明については、国際公開第97/34631号パンフレット及び国際公開第96/32478号パンフレットを参照されたい。
【0187】
本抗原結合タンパク質は、その生物学的特性を保持する、1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、付加又は置換を有するバリアントを含む。当業者は、単一若しくは複数のアミノ酸置換、欠失、付加又は置換を有するバリアントを作製し得る。これらのバリアントは、とりわけ以下を含み得る:(a)1つ以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸で置換されているバリアント、(b)1つ以上のアミノ酸がポリペプチドに付加されるか又はポリペプチドから欠失しているバリアント、(c)1つ以上のアミノ酸が置換基を含むバリアント及び(d)ポリペプチドが、別のペプチド又はポリペプチド、例えば融合パートナー、タンパク質タグ又はポリペプチドに有用な特性を与え得る他の化学部分、例えば抗体のためのエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分などに融合されているバリアント。本発明の抗体及び二重特異性抗体は、1つの種からのアミノ酸残基が、保存的又は非保存的位置の何れかにおいて、別の種における対応する残基に置換されている変異体を含み得る。別の実施形態では、非保存的位置におけるアミノ酸残基は、保存的又は非保存的残基で置換される。遺伝的(抑制、欠失、突然変異など)、化学的及び酵素的技術を含む、これらのバリアントを得るための技術は、当業者にとって公知である。
【0188】
治療の方法
TREM-1は、循環器系適応症に関わる。TREM-1は、ヒトアテロームにおいて発現されることが示されており、Apoe-/-マウスモデルにおける循環及び病変部浸潤骨髄系細胞上で、脂質異常状態下で上方制御される。Trem1-/-Apoe-/-マウスは、食餌誘導性アテローム発生の減弱を呈することが明らかになった。(Zysset et al.,Nat.Commun.7:1-16,2016)。Boufenzer et al.(Circ.Res.2015,116:1772-1782)は、TREM1欠損が、梗塞心筋への炎症性細胞の動員及び活性化を阻害することを示し、これにより、短いペプチドを使用したTREM-1の阻害又は遺伝子ノックアウトが、好中球の心筋浸潤を減少させ、マウス及びラットでのMI後の心臓機能及び生存を改善することが明らかになった。ヒトにおいて、MI後のsTREM-1レベル上昇により明らかにされるようなTREM-1活性化は、死亡の予測因子である(Boufenzer et al.,前出)。
【0189】
Lui et al.(Nat.Immunol 20:1023-1034.,2019)は、末梢骨髄系細胞がTREM1の活性化を介して卒中発作損傷を拡大させることを示した。脳に浸潤する好中球及びマクロファージは、Trem1を高発現し、免疫原性細胞構成成分、例えばデンジャー/ダメージ関連分子パターン(DAMP)(MCAoマウスモデル)(Colonna,M.Trends in Immun.2019;40:781-783)により活性化される。デコイペプチド又はTrem-1ノックアウトによるTrem1阻害により、損傷部位への好中球/マクロファージの浸潤が減少し、梗塞巣体積がより小さくなり、神経学的スコアが改善し、生存能が上昇した(Lui et al,前出;Colonna,前出)。
【0190】
TREM-1は、NAFLD/NASHの発症にも関わる。Rao et al.,(J Cell Biochem 120:11867-11877,2019)は、マウス肝細胞におけるTrem1の過剰発現の結果、脂質蓄積が増加し、Trem1が過剰発現された場合に脂質取り込みに関与する遺伝子(eg ldlr、msr1)が上方制御されたことを示した。さらに、Trem1が過剰発現されたときにコレステロール排出に関与する遺伝子(例えば、abca1、abcg1)が下方制御された。Trem1を過剰発現する肝細胞(HepG2、PMH)のオレイン酸処理の結果、炎症性サイトカインの発現が上昇した。shRNAを用いたTREM-1のノックダウンにより、高脂肪餌を与えられているマウスにおいて脂質蓄積が減少した。
【0191】
肥満は、慢性の全身性炎症を特徴とし(より高いTNFα、IL6及びhsCRP)、TREM-1は、肥満患者において上昇することが示されている。本明細書では、任意選択的に抗肥満薬と組み合わせた抗TREM1での治療は、全身性炎症の大幅な軽減につながると仮定される。
【0192】
本明細書で開示されるTREM-1に特異的な抗原結合タンパク質は、循環器系疾患を治療するために有用であることが本明細書で企図される。代表的な循環器系疾患としては、心筋梗塞、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、心不全、卒中発作(虚血性及び出血性)、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患)、不安定プラーク、急性冠症候群、脳血管疾患、脳血管アテローム性動脈硬化症及び肥満が挙げられる。
【0193】
特定の実施形態では、TNF-α抑制の測定は、単離されたPBMCを用いて行われる。PBMCは、対象(ヒト、マウス、ラット、カニクイザルなど)の血液から単離され、LPS又はTREM-1リガンド(細菌ペプチドグリカンと複合化されたペプチドグリカン認識タンパク質)によりインビトロで刺激され、刺激前後及び異なる試験分子の存在下でのTNFαのレベルが、例えば、ELISA、ALPHALISA又はMSD Vplex TNFα検出キットを用いて決定される。
【0194】
一実施形態では、本開示は、このような治療を必要とする哺乳動物における炎症性サイトカイン、例えばTNFαの1つ以上を阻害する方法であって、このような治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の抗原結合タンパク質又は抗体を投与することを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、対象は、哺乳動物である。一実施形態では、対象は、ヒトである。本方法は、TNFαの発現又は活性の上昇を特徴とする障害を治療するために使用され得る。本開示の抗原結合タンパク質又は抗体は、同じ処方物中又は個別の何れかで別の医薬製剤と共に投与され得る。
【0195】
企図されるさらなるアッセイは、高感度C-反応性タンパク質の濃度、可溶性TREM-1の濃度を測定すること、単離PBMCにおけるリン酸化脾臓チロシンキナーゼのエクスビボ分析及び骨髄系細胞サブセットの分析を含む。
【0196】
治療により、対象におけるTNF-α及びIL-6などの炎症性サイトカインのレベルが低下することが企図される。
【0197】
抗TREM-1結合タンパク質を含む本開示の抗TREM-1抗原結合タンパク質による治療が炎症性細胞でのTREM-1の発現を低下させることが企図される。
【0198】
投与及び投薬
本開示の方法は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質を含む医薬組成物を投与する段階を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、滅菌組成物である。
【0199】
所与の投与量中の治療用組成物の量は、治療が施されている個体のサイズ並びに治療されている障害の特徴に応じて変化し得る。
【0200】
本開示は、本開示の抗原結合タンパク質又は抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物を提供する。本開示の抗原結合タンパク質又は抗体を含む医薬組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するために既知の方法に従って処方され得、それにより、治療抗体が、薬学的に許容可能な担体と混合物中で合わせられる。組成物は、その投与がレシピエント患者によって忍容され得る場合、「薬学的に許容可能な担体」を含むと言われる。滅菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に許容される担体の一例である。他の適切な担体は、当業者に周知である。例えば、Getman,ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Edition,Mack Publishing Company(1995)を参照されたい。
【0201】
医薬品用途のために、本開示のポリペプチドは、従来の方法に従う非経口、特に、静脈内又は皮下送達のために処方される。静脈内投与は、ボーラス注入法、制御放出により、例えばミニポンプ又は他の適切な技術を用いて又は1時間~数時間の典型的な期間にわたる注入によって行われ得る。一般に、医薬処方物は、食塩水、緩衝食塩水、水中の5%デキストロースなどの薬学的に許容可能な担体と組み合わせて、本開示の抗原結合タンパク質又は抗体を含む。処方物は、1つ以上の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面などでのタンパク質損失を防ぐためのアルブミンをさらに含み得る。このような組み合わせ療法を利用する場合、本開示の抗原結合タンパク質又は抗体は、単一の処方物中で組み合わされ得るか、又は別個の処方物中で投与され得る。処方の方法は、当技術分野で周知であり、例えば参照により本明細書に組み込まれるGennaro,ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton Pa.(1990)で開示される。治療用量は、一般に、1日当たり0.1~100mg/kg患者体重、好ましくは、1日当たり0.5~20mg/kgの範囲であり、正確な用量は、治療しようとする状態の性質及び重症度、患者の体質などを考慮して、認められている基準に従って臨床医によって決定される。用量の決定は、当技術分野の通常の技術の範囲内である。より一般的に、本抗体は、1週間又はそれ以下にわたって、多くの場合、1~3日間の期間にわたって投与される。一般に、投与される抗体の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身病状及び以前の病歴などの要因に応じて変化する。典型的に、約1pg/kg~10mg/kg(薬剤の量/患者体重)の範囲である抗体の投与量をレシピエントに提供することが望ましいが、より少ない又はより多い投与量も状況に応じて投与され得る。
【0202】
対象への本開示の抗原結合タンパク質又は抗体の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、くも膜下腔内、局所のカテーテルを通した灌流又は直接的な病巣内注射によるものであり得る。様々な実施形態では、投与は、静脈内又は皮下投与である。注射により抗原結合タンパク質を投与する場合、投与は、持続点滴又は単回若しくは複数回ボーラスによるものであり得る。
【0203】
さらなる投与経路は、経口、粘膜、肺及び経皮を含む。経口送達は、ポリエステルミクロスフェア、ゼインミクロスフェア、プロテイノイドミクロスフェア、ポリシアノアクリレートミクロスフェア及び脂質ベース系に適切である(例えば、DiBase et al.,”Oral Delivery of Microencapsulated Proteins”,in Sanders et al.,eds.,Protein Delivery:Physical Systems,pp.255-288,Plenum Press(1997)を参照されたい)。鼻腔内送達の実現可能性は、インスリン投与のような方法によって例示される(例えば、Hinchcliffe et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.,35:199(1999)を参照されたい)。本発明の抗体を含む乾燥又は液体粒子は、乾燥粉末分散器、液体エアロゾル発生器又は噴霧器を用いて調製され、吸入され得る(例えば、Pettit et al.,TIBTECH,16:343(1998);Patton et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.,35:235(1999))。このアプローチは、エアロゾル化インスリンを肺に送達させる携帯型電子式吸入器であるAERX(登録商標)糖尿病管理システムによって例示される。研究は、48,000kDaもの大きさのタンパク質が、低周波超音波を用いて治療濃度で皮膚にわたって送達されたことを示しており、これは、経皮投与の実現可能性を示す(Mitragotri et al.,Science,269:850(1995))。
【0204】
治療の目的のために、本開示の抗原結合タンパク質又は抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物は、治療有効量で患者に投与される。本開示の抗原結合タンパク質又は抗体及び薬学的に許容可能な担体の組み合わせは、投与される量が生理学的に有意義である場合、「治療有効量」で投与されると言われる。薬剤は、その存在がレシピエント患者の生理学の検出可能な変化をもたらす場合、生理学的に意義がある。例えば、炎症を治療するために使用される薬剤は、その存在が炎症反応を軽減する場合、生理学的に意義がある。有効な治療は、様々な方法で評価され得る。一実施形態では、有効な治療は、炎症の軽減によって判断される。他の実施形態では、有効な治療は、炎症の阻害を特徴とする。さらに他の実施形態では、有効な治療は、体重増加、体力回復、疼痛の軽減、良好な発育及びより良好な健康の患者からの主観的指標のような徴候を含む、患者の健康の向上によって測定される。
【0205】
例えば抗TREM-1抗体配列を含む、抗原結合タンパク質は、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、200mg、250mg、300mg又はそれ以上の用量で投与されることが企図される。様々な実施形態では、例えば、抗TREM-1抗体配列を含む抗原結合タンパク質は、約0.05mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.25mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg又は5mg/kgの用量で投与される。
【0206】
本明細書に記載の組成物は、週1回、週2回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、3か月に1回、6か月に1回又は1年に1回投与される。
【0207】
本開示の抗原結合タンパク質又は抗体を含む医薬組成物は、液体形態、エアロゾル又は固形の形態で提供され得る。液体形態は、注射可能な溶液及び経口懸濁液によって例示される。例示的な固体形態としては、カプセル剤、錠剤及び制御放出形態が挙げられる。後者の形態は、ミニ浸透圧ポンプ及び植え込み物により例示される(Bremer et al.,Pharm.Biotechnol.,10:239(1997);Ranade,“Implants in Drug Delivery”,Ranade et al.,eds.,Drug Delivery Systems,pp.95-123,CRC Press(1995)において;Bremer et al.,“Protein Delivery with Infusion Pumps”,Sanders et al.,eds.,Protein Delivery:Physical Systems,pp.239-254,Plenum Press(1997)において;Yewey et al.,“Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant”,Sanders et al.,eds.,Protein Delivery:Physical Systems,pp.93-117,Plenum Press(1997)において)。
【0208】
本処方物は、治療されている特定の適応症に必要である場合、2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を与えない補完的な活性を有するものも含有し得る。代わりに又は加えて、本組成物は、例えば、細胞毒性剤、サイトカイン、化学療法剤又は増殖阻害剤など、その機能を強化する薬剤を含み得る。このような分子は、意図される目的のために有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0209】
一実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質又は抗体は、組み合わせ療法において、即ち他の薬剤、例えば循環器系疾患などの病的状態又は障害を治療するために有用である治療剤と組み合わせて投与される。これに関する「組み合わせて」という用語は、薬剤が同時に又は連続しての何れかで、実質的に同時期に投与されることを意味する。連続して投与される場合、第2の化合物の投与の開始時、2つの化合物の1つ目が好ましくは治療の部位に有効濃度で依然として検出可能である。
【0210】
本開示の治療剤は、同じ処方物中で同時に投与され得ることが企図される。薬剤が別個の処方物中で投与され、同時に投与されることがさらに企図され、同時には、薬剤が互いに30分以内に投与されることを意味する。第2の薬剤が同時に投与され得ることがさらに企図される。
【0211】
別の態様では、本明細書に記載のような抗原結合タンパク質は、第2の組成物の投与前に投与される。事前投与は、他の薬剤による治療の1週間前から、他の薬剤の投与の30分前までの範囲内の薬剤の投与を指す。薬剤が別の組成物又は薬剤の投与後に投与されることがさらに企図される。その後の投与とは、抗体治療の30分後から抗体投与の1週間後まで、例えば30分後、1時間後、2時間後、4時間後、1日後、2日後などの投与を表すことを意味する。これは、第2のものがさらに企図される。
【0212】
例えば、組み合わせ療法は、1つ以上の追加の治療剤、例えば、1つ以上のコレステロール低下(血清及び/又は全身コレステロール)剤、LDLRの発現を増加させる薬剤、スタチン(アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、PCSK9阻害剤(Repatha(登録商標)、Praluent(登録商標)、Leqvio(登録商標))、ニコチン酸(ナイアシン)(NIACOR(登録商標)、NIASPAN(登録商標)(徐放性ナイアシン)、SLO-NIACIN(登録商標)(徐放性ナイアシン))、フィブリン酸(LOPID(登録商標)(ゲムフィブロジル)、TRICOR(登録商標)(フェノフィブレート))、胆汁酸吸着剤(QUESTRAN(登録商標)(コレスチラミン)、コレセベラム(WELCHOL(登録商標))、COLESTID(登録商標)(コレスチポール))、コレステロール吸収阻害剤(Zetia(エゼチミブ))、ニコチン酸とスタチンとの組み合わせ(ADVICOR(登録商標)(ロバスタチン及びNIASPAN(登録商標)))、スタチンと吸収阻害剤との組み合わせ(VYTORIN(ZOCOR(登録商標)及びZETIA(登録商標)))及び/又はPCSK9阻害剤のような脂質修飾剤、PPARガンマアゴニスト、PPARアルファ/ガンマアゴニスト、スクアレンシンターゼ阻害剤、コレステリルエステル転移タンパク質(CETP)阻害剤、降圧剤、抗血栓薬(アスピリン)抗糖尿病薬(スルホニル尿素、インスリン、GLP-1類似体、DDPIV阻害剤、SGL2阻害剤など)、ApoB修飾薬、MTP阻害剤、Corlanor(登録商標)(イバブラジン)I(f)電流阻害剤、オメカムチブメカルビル心筋ミオシン活性化因子、リポタンパク質(a)を低下させるOLPASIRAN(AMG890)(siRNA)、AMG594心筋トロポニン活性化因子、AMG609、AMG171(成長分化因子15(GDF15)類似体)、AMG133(胃抑制ポリペプチド受容体(GIPR)アンタゴニスト及びグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト)並びに/又は閉塞性動脈硬化症治療と同時処方される及び/又は同時投与される、1つ以上の本開示の抗原結合タンパク質又は抗体を含み得る。
【0213】
本開示の抗原結合タンパク質又は抗体と組み合わせて使用される治療剤は、炎症反応に異なるステージで介入する薬剤を含む。一実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質又は抗体は、1つ以上のさらなる薬剤、例えば他のサイトカイン又は増殖因子アンタゴニスト(例えば、可溶性受容体、ペプチド阻害剤、低分子、リガンド融合物);又は他の標的に結合する抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、他のサイトカイン又は増殖因子、それらの受容体又は他の細胞表面分子に結合する抗体);及び抗炎症性サイトカイン又はそのアゴニストと同時処方及び/又は同時投与され得る。本明細書に記載の抗体と組み合わせて使用され得る薬剤の非限定的な例としては、1つ以上のインターロイキン(IL)又はそれらの受容体のアンタゴニスト、例えばIL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL17A-F、IL-18、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-25、IL-31、IL-32、IL-33のアンタゴニスト;サイトカイン若しくは増殖因子又はそれらの受容体、例えばLT、EMAP-II、GM-CSF、FGF及びPDGFのアンタゴニストが挙げられるが、限定されない。本発明の抗体は、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD20などの細胞表面分子に対する抗体の阻害剤(例えば、CD20阻害剤リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90若しくはそれらのリガンド(CD154(gp39若しくはCD40L)又はLFA-1/ICAM-1及びVLA-4/VCAM-1を含む)とも組み合わせられ得る(Yusuf-Makagiansar et al.,Med.Res.Rev.,22:146-167(2002))。組み合わせて使用され得る例示的なアンタゴニストとしては、IL-1、IL-6、IL-12、TNFα、IL-15、IL-18、IL-20、IL-22、IL-23及びIL-31のアンタゴニストが挙げられる。
【0214】
他の実施形態では、1つ以上の本開示の抗原結合タンパク質は、1つ以上の抗炎症薬、免疫抑制剤又は代謝若しくは酵素阻害剤と同時処方及び/又は同時投与され得る。本明細書に記載の抗体と組み合わせて使用され得る薬物又は阻害剤の非限定例としては、以下の1つ以上が挙げられるが、限定されない:非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばイブプロフェン、テニダップ、ナプロキセン、メロキシカム、ピロキシカム、ジクロフェナク及びインドメタシン;スルファサラジン;プレドニゾロンなどのコルチコステロイド;サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);ヌクレオチド生合成の阻害剤、例えばプリン生合成の阻害剤、葉酸アンタゴニスト(例えば、メトトレキサート(N-[4-[[(2,4-ジアミノ-6-プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]-グルタミン酸);及びピリミジン生合成の阻害剤、例えばジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)阻害剤。本発明の1つ以上の抗体、例えば二重特異性抗体と組み合わせて使用するための好ましい治療剤としては、NSAID、CSAID、(DHODH)阻害剤(例えば、レフルノミド)及び葉酸アンタゴニスト(例えば、メトトレキサート)が挙げられる。
【0215】
さらなる阻害剤としては、以下の1つ以上が挙げられる:コルチコステロイド(経口、吸入及び局所注入);免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス(FK-506);及びmTOR阻害剤、例えばシロリムス(ラパマイシン--RAPAMUNE(登録商標))又はラパマイシン誘導体、例えば可溶性ラパマイシン誘導体(例えば、エステルラパマイシン誘導体、例えばCCI-779);IL-1などの炎症促進性サイトカインによるシグナル伝達を妨げる薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤);COX2阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ及びその変異体;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えばR973401(ホスホジエステラーゼIV型阻害剤);ホスホリパーゼ阻害剤、例えば細胞質ホスホリパーゼ2(cPLA2)の阻害剤(例えば、トリフルオロメチルケトン類似体);血管内皮細胞増殖因子又は増殖因子受容体の阻害剤、例えばVEGF阻害剤及び/又はVEGF-R阻害剤;及び血管新生の阻害剤。本開示の抗原結合タンパク質又は抗体と組み合わせた使用のための好ましい治療剤は、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス(FK-506);mTOR阻害剤、例えばシロリムス(ラパマイシン)又はラパマイシン誘導体、例えば可溶性ラパマイシン誘導体(例えば、エステルラパマイシン誘導体、例えばCCI-779);COX2阻害剤、例えばセレコキシブ及びそのバリアント;及びホスホリパーゼ阻害剤、例えば細胞質ホスホリパーゼ2(cPLA2)の阻害剤、例えばトリフルオロメチルケトン類似体である。
【0216】
キット
本開示は、最適には薬学的に許容可能な担体又は組成物中に本開示の抗原結合タンパク質又は抗体を含む1つ以上の容器を含むキットも企図する。本開示の抗原結合タンパク質又は抗体は、単回若しくは複数回投与のための注射可能な溶液の形態において、単位用量として又は注射前に再構成される滅菌粉末として提供され得る。代わりに、このようなキットは、乾燥粉末分散器、液体エアロゾル発生器又は治療剤の投与のための噴霧器を含み得る。このようなキットは、適応症及び医薬組成物の使用に関する指示及び書面情報をさらに含み得る。
【0217】
任意選択的に適切な使用説明書と共に、上記の抗原結合タンパク質又は組成物の何れかを含む、シリンジ、例えば使い捨て又はプレフィルドシリンジ、滅菌密封容器、例えばバイアル、ボトル、容器及び/又はキット又はパッケージも企図される。
【0218】
さらなる実施形態では、本発明は、(a)本開示の抗原結合タンパク質又は抗体を含む組成物;(b)前記組成物を含有する容器;及び(c)免疫関連疾患の治療での前記抗体の使用に関する、前記容器に固定されるラベル又前記容器に含まれる添付文書を含む、製造品又は単位用量形態を提供する。
【0219】
別の態様では、本組成物又はキットは、さらなる有効成分を含み、これは、例えば、さらなる抗体又は抗炎症剤、細胞毒性剤又は本明細書に記載の他の薬剤であり得る。好ましくは、本組成物は、滅菌されている。
【実施例
【0220】
実施例1 - 抗TREM-1抗体
高親和性抗TREM-1モノクローナル抗体を作製し、免疫細胞に標的化し、TREM-1とそのリガンドとの間のシグナル伝達を調整する能力について評価した。
【0221】
XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスに免疫付与することにより、ヒトTREM-1に対する完全ヒト抗体を作製した。例えば、米国特許第6,114,598号明細書;同第6,162,963号明細書;同第6,833,268号明細書、同第7,049,426号明細書及び同第7,064,244号明細書を参照されたい。
【0222】
ヒト及び/又はカニクイザルTREM1タンパク質、TREM1発現ベクター及び/又はTREM1発現CHO細胞を用いてマウスに対して免疫付与を行った。遺伝学的免疫付与のために、製造業者の説明書(BioRad,Hercules,California)に従って、HELIOS(登録商標)Gene Gunシステムを用いて、8週間にわたって16回、マウスに対して免疫付与を行った。簡潔に述べると、ヒトTREM-1及びDAP12又はカニクイザルTREM-1及びDAP12の何れかをコードする発現ベクターをプールし、1.6umの金ビーズ(BioRad,Hercules,California)を2μgのトータルDNAでコーティングし、剃毛したマウス腹部の表皮に送達させた。可溶性タンパク質免疫付与のために、N末端細胞外ドメインに相当するヒト又はカニクイザルTREM-1組み換えタンパク質を用いてマウスに対して免疫付与を行った。動物に対して、Alum及びCpG-ODN又はSigma Adjuvant Systemの何れかで賦活化した組み換えタンパク質で、尾の付け根及び肩甲下領域に位置するマウスの背側正中線に沿って2カ所で送達される皮下注射を用いて、10~12週間にわたって14~17回免疫付与を行った。最初の可溶性タンパク質免疫付与は、10μgを送達し、その後の追加接種は5μgであった。細胞免疫付与のために、Alum及びCpG-ODNで賦活化したヒトTREM-1又はカニクイザルTREM-1の何れかを一過性に発現する200~400万個のCHO-S細胞を用いてマウスに対して免疫付与を行った。動物に対して、腹腔内及び尾の付け根における皮下注射を交互に行って10週間にわたって合計13回、週に1回又は2回、免疫付与を行った。4週間~10週間の範囲の免疫付与試験中、様々な時点で、動物から採血し、血漿を採取して、TREM1特異的力価について評価した。一過性に遺伝子移入された293T細胞を用いて、ACCURI(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences)における肝細胞FACS分析によってTREM1特異的血漿力価を監視した。ヒト及びカニクイザルTREM1に対する最も高い抗原特異的血漿力価を有する動物を屠殺し、ハイブリドーマ作製のために使用した(Kohler and Milstein,1975)。
【0223】
ハイブリドーマの作製:適切な抗原特異的血清力価を示す動物を同定し、選択されたマウスからの脾臓及び/又は流入領域リンパ節を各採取物からプールした。適切な培地中で破砕するか、又はGENTLEMACS(商標)Dissociator(Miltenyi Biotec)半自動組織解離機器を用いることにより、脾細胞及びリンパ球をリンパ系組織から解離させた。IgG発現B細胞を単離し、標準的な方法を用いて増殖させ、適切な細胞融合パートナーと融合させた。CELLINSIGHT(商標)によってHEK293細胞上で一過性に発現されるヒトTREM-1への結合について、ハイブリドーマ上清を試験した。簡潔に述べると、製造業者のプロトコールに従って、293Fectin(Invitrogen)を用いて、ヒトTREM-1及びDAP12又はモックベクター及びDAP12単独をコードする哺乳動物発現コンストラクトを1:1の比率で用いて、HEK293細胞に対して一過性同時遺伝子移入を行った。翌日、遺伝子移入されたHEK293細胞の15,000個の細胞/ウェルを、等体積の使用されたハイブリドーマ培地試験試料及び15μg/mLの最終濃度の核染色Hoechst33342(Pierce)と、384ウェルFMATプレート(Corning)中30μL/ウェルの総体積で、組み合わせた。室温で1時間の温置後、AQUAMAX(登録商標)プレートウォッシャーを用いて上清を吸引し、50μL/ウェルのFACS緩衝液(PBS(Hyclone)、AquaMaxにおいて各サイクルで2%のFBS(Sigma))を用いて、2サイクルにわたってウェルを洗浄した。5μg/mLのAlexa Fluor 488ヤギ抗ヒトIgG Fc(Jackson ImmunoResearch)二次抗体で細胞を染色し、Big Bearプレートシェーカー上で振盪し、室温で20分間温置した。AQUAMAX(登録商標)プレートウォッシャーを用いて上清を吸引し、50μL/ウェルのFACS緩衝液を用いて2サイクルにわたって再度ウェルを洗浄し、マルチドロップ機器を用いて各ウェルに30μLのFACS緩衝液を添加した。Big Bear Plateシェーカーにプレートを置いて、細胞をウェル中に均等に分配し、次に、Cell Health Profiling Bio-Appを用いて、CELLINSIGHT(商標)CX7プラットフォームにおいて読み取りを行った。
【0224】
カニクイザルTREM-1との交差反応性並びにDAP12に対する特異性ではなくTREM-1に対する特異性について、一次スクリーニングにおいて同定されたTREM-1特異的抗体を評価した。FACS(採取物1~6)又はCELLINSIGHT(商標)(採取物8~9)により、HEK293細胞上で一過性に発現されるヒト又はカニクイザルTREM-1への結合について、TREM-1ハイブリドーマ上清を試験した。採取物1~6からのTREM1抗体について、293Fectinを用いて、ヒトTREM-1及びDAP12、カニクイザルTREM-1及びDAP12又はモックベクター及びヒトDAP12をコードする哺乳動物発現コンストラクトを1:1の比率で用いて、HEK293細胞に対して一過性同時遺伝子移入を行った。翌日、遺伝子移入したHEK293細胞を50,000個の細胞/ウェルで96ウェルFACSプレートに移し、4℃において1時間、2.5μg/mLの最終濃度で正規化されたハイブリドーマ上清と共に温置した。次に、遠心分離により細胞をペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、200μL/ウェルのFACS緩衝液でウェルを2回洗浄した。5μg/mL ALEXA FLUOR(登録商標)647ヤギ抗ヒトIgG Fc(Jackson ImmunoResearch)二次検出抗体及び2.5μg/mL 7-アミノアクチノマイシン-D(Sigma)生存能染色を4℃で15分間にわたり細胞と共に温置した。遠心分離により細胞をペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、200μL/ウェルのFACS緩衝液でウェルをもう1回洗浄した。Intellicytオートサンプラーを備えたBD ACCURI(商標)C6フローサイトメーターにおいてFACSにより、ヒトTREM-1-又はカニクイザルTREM-1特異的結合を示すTREM-1ハイブリドーマ上清を検出した。非関連対照抗体結合を超える幾何平均(GM)倍数としてデータを報告した。特定の抗TREM-1抗体についての結合の結果を表1に示す。
【0225】
【表2】
【0226】
HEK293細胞上で一過性に発現されるヒトTREM1/DAP12にリガンドPGLYRP1が結合するのを阻止する能力について、高品質のTREM1特異的結合及びヒト/カニクイザル交差反応性を示すTREM1抗体を評価した。簡潔に述べると、293Fectinを使用して、ヒトTREM1及びDAP12又はモックベクター及びヒトDAP12をコードする哺乳動物発現コンストラクトを1:1の比率で用いて、HEK293細胞に対して一過性同時遺伝子移入を行った。翌日、遺伝子移入したHEK293細胞を50,000個の細胞/ウェルで96ウェルFACSプレートに移し、4℃において1時間、2.5μg/mLの最終濃度で正規化されたハイブリドーマ上清と共に温置した。ヒトPGLYRP1-His(R&D Systems)をPGN-ECndss(ペプチドグリカン、InvivoGen)と組み合わせ、室温で15分間温置し、次いで7.5μg/mL PGLYRP1及び30μg/mL PGNの最終濃度でウェルに添加した。次にプレートを振盪し、4℃で15分間温置した。次に遠心分離によって細胞をペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、200μLのFACS緩衝液でウェルを洗浄した。5μg/mL ALEXA FLUOR(登録商標)647ヒト抗His二次検出抗体及び2.5μg/mL 7-アミノアクチノマイシン-D(Sigma)生存能染色液を細胞に添加し、振盪し、4℃で15分間温置した。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、遠心分離によってペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、FACS緩衝液でもう1回洗浄した。次に、Intellicyt HYPERCYT(登録商標)オートサンプラーを備えたBD ACCURI(商標)C6フローサイトメーターにおいて細胞を操作した。合計で518のTREM1抗体が所望の特異的なPGLYRP1阻止活性を示した。選択されたTREM-1モノクローナル抗体についての受容体-リガンド阻害を表2に要約する。
【0227】
【表3】
【0228】
制限抗原アッセイによるTREM-1抗体相対親和性ランキング:FACSでのLUMAVIDIN(登録商標)ビーズ(Luminex)を用いた制限抗原アッセイにおける可溶性TREM-1に対するそれらの結合動態により、TREM1ハイブリドーマ上清をパネル内で親和性についてランク付けした。簡潔に述べると、社内のビオチン化ヒトTREM-1-His抗原(b-huTREM-1-His)をFACS緩衝液中で連続希釈し、等体積のLUMAVIDIN(登録商標)ビーズ(各抗原濃度について異なる独自にバーコード化されたビーズ)と組み合わせて、30ng/mLの最終的なb-huTREM-1-His抗原濃度から開始する5点2倍連続希釈系列を得た。抗原-ビーズ混合物を96ウェルFACSプレートにおいて3つのウェルにわたってプレーティングし、次に、光から保護しながら、室温で30分間温置した。次に、ビーズを遠心分離によってペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、ウェルを200μL/ウェルのFACS緩衝液で2回洗浄した。次に、異なるビーズを再度懸濁し、プールし、STABILGUARD(登録商標)免疫アッセイStabilizer(SurModics)中で希釈して、非特異的結合を遮断した。FACSプレート中で、0.5μLのビーズ/ウェルに対して5μg/mLの試験抗体の最終濃度で正規化されたTREM-1ハイブリドーマ上清を等体積のビーズ混合物と組み合わせた。次に、プレートを振盪し、室温で約18時間にわたって一晩温置した。次に、遠心分離によってビーズをペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、200μL/ウェルのFACS緩衝液で2回、ウェルを洗浄した。ALEXA FLUOR(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG Fc二次検出抗体(Jackson ImmunoResearch)を5μg/mLでプレートに添加し、振盪し、光から保護しながら室温で15分間温置した。ビーズをFACS緩衝液で洗浄し、遠心分離によってペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、FACS緩衝液でもう1回洗浄した。次に、ビーズを再度懸濁し、Intellicyt HYPERCYT(登録商標)オートサンプラーを備えたBD ACCURI(商標)C6フローサイトメーターにおいて操作した。
【0229】
対照IgG抗体試料より少なくとも2倍以上高いシグナルを示すTREM-1ハイブリドーマ試料は、TREM-1特異的結合プロファイルを示していると見なした。抗体結合シグナルは、抗体親和性と相関し;標的抗原TREM-1への抗体結合の程度は、測定された蛍光強度と相関し、従って、パネルにわたって親和性の相対比較が可能になる。制限抗原スクリーンにおいてベンチマーク抗体1B2より良好な結合を有するTREM-1抗体を軽鎖シーケンシング及びヒト/カニクイザル親和性ギャップ分析に進めた。表3は、機器シグナル検出の線形範囲内に含まれた代表的な抗原コーティング濃度を用いた、選択TREM-1抗体についての抗体結合データを示す。
【0230】
【表4】
【0231】
TREM1相対的エピトープ結合/プロファイリング:パネルにおける様々な相対的な固有エピトープビンを決定するために、FACS上でLUMAVIDIN(登録商標)ビーズ(Luminex)を用いて、エピトープビニングアッセイ(改変された抗体-抗体競合アッセイ)によってTREM1ハイブリドーマ上清を評価した。簡潔に述べると、一連の15の異なる独自にバーコード化されたLUMAVIDIN(登録商標)ビーズをそれぞれ、100ng/mLの最終濃度において、FACS緩衝液中で希釈された等体積の社内のビオチン化ヒトTREM-1-His抗原と組み合わせた。抗原-ビーズ混合物を、96ウェルFACSプレートにおいて3つのウェルにわたってプレーティングし、次に、光から保護しながら室温で30分間温置した。次に、遠心分離によってビーズをペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、ウェルを200μL/ウェルのFACS緩衝液で2回洗浄した。ビーズをプレコーティングするための参照抗体として、制限抗原アッセイにおいて良好な結合を示した、多様なVDJ再編成及び良好な定量を有する15種類の異なるTREM-1抗体を選択した。FACS緩衝液中で5μg/mLの飽和濃度でこれらの15種類の抗体を調製し、光から保護しながら、室温で1時間にわたって、15種類の異なるLUMAVIDIN(登録商標)ビーズと共に温置した。遠心分離によってビーズをペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、ウェルを200μL/ウェルのFACS緩衝液で3回洗浄した。次に、異なるビーズを再懸濁し、プールし、STABILGUARD(登録商標)Immunoassay Stabilizer(SurModics)中で希釈して、非特異的結合を遮断した。FACSプレート中で、0.5μLのビーズ/ウェルに対して5μg/mLの試験抗体の最終濃度で正規化されたTREM-1ハイブリドーマ上清(試験抗体)を等体積のビーズ混合物と組み合わせた。次に、プレートを振盪し、光から保護しながら室温で1時間温置した。次に、ビーズを遠心分離によってペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、200μL/ウェルのFACS緩衝液でウェルを2回洗浄した。ALEXA FLUOR(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG Fc二次検出抗体(Jackson ImmunoResearch)を5μg/mLでプレートに添加し、振盪し、光から保護しながら室温で15分間温置した。ビーズをFACS緩衝液で洗浄し、遠心分離によってペレット化し、軽く叩くことによって上清を除去し、FACS緩衝液でもう1回洗浄した。次に、ビーズを再度懸濁し、Intellicyt HYPERCYT(登録商標)オートサンプラーを備えたBD ACCURI(商標)C6フローサイトメーターにおいて操作した。
【0232】
参照抗体としてTREM-1抗原上の同様のエピトープと競合する試験抗体は、結合が防止される一方、非競合抗体は、結合して、参照抗体と共にさらなるシグナルを生じさせ得る。次に、全結合抗体が二次抗体により検出される。個々の試験抗体の抗体競合/結合プロファイルを決定するために、参照のみの抗体結合シグナルを各競合/結合反応についての参照プラス試験抗体シグナル(即ち全参照抗体セットにわたって)から差し引いた。選択TREM-1抗体についての相対ピトープビニングの要約を以下の表4に示す。
【0233】
【表5】
【0234】
TREM1抗体ヒト/カニクイザル親和性ギャップ決定:ベンチマーク抗体よりも制限抗原スクリーニングにおいて良好な結合も示した特有のCDR3配列があるTREM-1抗体を、ヒト及びカニクイザルTREM-1に対するそれらの親和性について分析した。OCTET(登録商標)HTX機器(Fortebio)を用いて、114 TREM-1抗体のパネルにおいて、結合親和性K(M)、結合速度定数k(M-1-1-)及び解離速度定数k(s-1)を決定した。簡潔に述べると、DMEMヌル培地中の10μg/mLに対して正規化されたTREM-1ハイブリドーマ上清を、1μg/mLの最終的な試験濃度になるまでOCTET(登録商標)アッセイ緩衝液(10mM Tris、0.1%Triton X-100、150mM NaCl、1mM CaCl、0.1mg/mL BSA、pH7.6)中で1:10に希釈することによって調製した。使用前に室温で最低10分間にわたって、アミン反応性第2世代AR2Gバイオセンサー(Molecular Devices)を200μLのナノポア(nanopore)水中で予備温置した。次に、ナノポア水中で10mMのNHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミド)(ForteBio)と予め混合された20mMのEDC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)(ForteBio)の溶液中で5分間、AR2Gバイオセンサーを活性化した。5分間にわたってpH5の10mM酢酸ナトリウム緩衝液中で、社内で作製されたマウス抗ヒトFcモノクローナル抗体を10μg/mLでAR2Gバイオセンサーにカップリングし、5分間、pH8.5の1Mのエタノールアミンでクエンチし、次に、それを用いて溶液から抗体を捕捉した。TREM-1試験抗体を5分間にわたってバイオセンサーに充填し、ベースライン測定を1分間行った。次に、450nM~1.85nM又は150nM~0.62nMの6点をカバーする3倍希釈系列で抗体を負荷したバイオセンサーに、組み換え可溶性ヒトTREM-1-Hisタンパク質を結合させた。抗体が負荷されたセンサーとの組み換えヒトTREM-1の会合を5分間測定した後、OCTET(登録商標)緩衝液中で解離を10分間測定した。次に、pH1.7の10mMのグリシンでバイオセンサーを再生し、5分間にわたって同じセンサーにおいて同じTREM-1抗体を再負荷し、同じ方法を用いて、カニクイザルTREM-1-Hisタンパク質の結合及び解離を測定した。0nMの分析物参照センサーを用いてデータを参照した。Genedata Screenerソフトウェアにおいて質量移動と共に1:1のLangmuirモデルを用いて動態解析を行った。設計目標を満たし、ヒト及びカニクイザルTREM-1間で10倍未満の親和性の相違を示したTREM-1抗体を同定し、それらの結合親和性を表5に示す。
【0235】
【表6】
【0236】
ヒト又はカニクイザルTREM-1への結合、TREM2への結合の欠如及びTREM-1へのPGLYRP1の結合を阻止するそれらの能力に基づいて抗体を選択した。表6に記載されるように、さらなる試験のために14種類の抗体を選択した。
【0237】
【表7】
【0238】
【表8】
【0239】
【表9】
【0240】
【表10】
【0241】
【表11】
【0242】
実施例2 - 抗TREM-1抗体の再フォーマット
カッパ軽鎖のVLドメインをCKドメインに、λ軽鎖のVLドメインをCLドメインに、且つVHドメインをCH1-CH2-CH3(221~447)配列に融合させることにより、XenoMouse(登録商標)キャンペーンからのリード抗TREM-1抗体をIgG1zサブタイプの抗体フォーマットに変換した。この抗体アイソタイプのCH2ドメインは、N297G突然変異を組み込むことによるエフェクター機能低下のために及び改変されたジスルフィド結合(R292C、V302C)を通した熱安定性改善のために改変されており;この抗体アイソタイプは、IgG1z SEFL2と呼ばれる。「ホットスポット」又は分子の発現、精製、熱安定性、コロイド安定性、長期の貯蔵安定性、インビボ薬物動態及び/又は免疫原性に悪影響を与えることが計算的に予測されたか若しくは経験的に決定された残基を除去するように、リード抗TREM-1抗体をさらに改変した。保存、共変動、化学的類似性、構造モデリングからの予測及び他の抗体改変キャンペーンからの予備知識に基づいて、これらのホットスポットにおける様々なアミノ酸突然変異を設計した。単一の突然変異及び突然変異の組み合わせの両方を含んだ、合理的に設計された改変抗体の小さいパネルを設計した。
【0243】
1)抗体可変ドメインを含む合成DNA断片、2)必要な定常ドメイン(即ちCK又はCL、CH1-CH2-CH3(118~447)(R292C、N297G、V302C))を含有する予めクローニングされた「部分ベクター」及び3)哺乳動物発現ベクター骨格を組み立てるために、Golden Gateクローニングを用いて、ホットスポット改変バリアントの合理的に設計されたパネルのための組み換え発現コンストラクトを作製した。ピューロマイシン選択カセットを伴うベクター骨格に重鎖(HC)を組み立て、ハイグロマイシン選択カセットを伴うベクター骨格に軽鎖(LC)を組み立てた。Lipofectamine LTX(Gibco)を用いてCHO-K1細胞内で、1:1の比率を用いてHC及びLC発現ベクターに対して同時遺伝子移入を行い、細胞生存が>90%になるまで(Vi-CELL BLU、Beckman Coulter)、10ug/mLのピューロマイシン及び500ug/mLのハイグロマイシンの存在下で2~3日ごとに継代することによって安定したプールを作製した。培養物1mL当たり2e6個の生存細胞で産生培地に安定したプールを播種し、6日間にわたり36℃において5%COで温置した。遠心分離によって細胞上清を回収し、AmMag(商標)プロテインA磁気ビーズ(GenScript)又はMAG SEPHAROSE(商標)PrismA(Cytiva)を用いて、磁気ビーズアフィニティクロマトグラフィーによって抗体を精製した。インタクト質量分析法によって各バリアントの同一性を確認した。各バリアントについて、プロテインAセンサーを用いてForteBio OCTET(登録商標)(Pall Life Sciences)によって馴化培地における発現力価を測定した。分析的サイズ排除クロマトグラフィーによってプロテインAアフィニティクロマトグラフィー後に存在する高分子量(%HMW)物質のパーセントを測定し、LabChip(登録商標)GXII(Perkin Elmer)を用いて、非還元性マイクロキャピラリー電気泳動(MCE NR)により、%標的タンパク質純度を測定した。この工程により調製されるバリアントに対するデータを表11に表す。
【0244】
【表12】
【0245】
【表13】
【0246】
【表14】
【0247】
【表15】
【0248】
XENOMOUSE(登録商標)キャンペーンからの3つの抗TREM-1リード抗体のサブセット(30H2(19330)、49A2(19333)及び46H7(19332))も、TREM-1への結合が保持された製造可能性改善のために酵母ディスプレイを通して改変した。各抗体について、縮重NNKコドンの使用を通して全ての6つのCDRにおける残基のあらゆる可能な隣接対が全ての可能なアミノ酸に同時に突然変異されたライブラリを作製した。ライブラリは、BJ5464の酵母誘導体の表面に提示され、ここで、Fdドメインがアルファ-凝集素のN末端に融合され、LCは酵母表面に融合されなかった。ALEXA FLUOR(登録商標)647複合化抗Fab抗体の結合によってディスプレイの効率を測定した。二次蛍光としてストレプトアビジンPEを用いて、ビオチン複合化組み換えTREM-1 ECD)への高い結合について蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いてライブラリを選別した。選別された結合/ディスプレイ二重陽性プール及びディスプレイ陽性プール中に存在する可変ドメインを、フレームワーク1(FW1)及びHC及びLCのFW4ドメインに特異的なプライマーにより増幅し、2x300bpの実行についてIllumina MiSeqにおいてNGS解析に供した。一般的な周波数解析を通してデータを処理した後に突然変異を選択し、ここで、陽性結合アミノ酸頻度の比率を、陽性ディスプレイアミノ酸頻度で除し、次に、それを親配列比に対して正規化する。濃縮値が親配列以上であった配列は、有益であるか又は許容される多様性であると見なされ、親和性成熟後、さらなる合理的な抗体改変のために使用された。
【0249】
トップディスプレイ改変可変ドメインをIgG1z SEFL2アイソタイプに変換し、1)抗体可変ドメインを含む合成DNA断片、2)必要な定常ドメイン(即ちCK又はCL、CH1-CH2-CH3(118~447)を含有する予めクローニングされた「部分ベクター」(R292C、N297G、V302C))及び3)哺乳動物発現ベクター骨格を組み立てるために、Golden Gateクローニングを用いてクローニングした。重鎖(HC)を、ピューロマイシン選択カセットを伴うベクター骨格に組み立て、軽鎖(LC)を、ハイグロマイシン選択カセットを伴うベクター骨格に組み立てた。Lipofectamine LTX(Gibco)を用いて、CHO-K1細胞において1:1の比率で、HC及びLC発現ベクターに対して同時遺伝子移入を行い、細胞生存が>90%になるまで(Vi-CELL BLU、Beckman Coulter)、10ug/mLのピューロマイシン及び500ug/mLのハイグロマイシンの存在下で2~3日ごとに継代することによって安定したプールを作製した。培養物1mL当たり2e6個の生存細胞で産生培地に安定したプールを播種し、6日間にわたって5%CO、36℃で温置した。AMMAG(商標)プロテインA磁気ビーズ(GenScript)を用いて、磁気ビーズアフィニティクロマトグラフィーによって抗体を精製した。各分子の同一性をインタクト質量分析法によって確認した。プロテインAアフィニティクロマトグラフィー後に存在する高分子量(%HMW)物質のパーセントを分析的サイズ排除クロマトグラフィーによって測定し、LabChip(登録商標)GXII(Perkin Elmer)を用いて、非還元性マイクロキャピラリー電気泳動(MCE NR)によって%標的タンパク質純度を測定した。酵母ディスプレイホットスポット改変によって調製されたバリアントについてのデータを表12に示す。
【0250】
【表16】
【0251】
【表17】
【0252】
【表18】
【0253】
【表19】
【0254】
p-Syk ALPHALISA(登録商標)(Perkin-Elmer)を用いて、細胞におけるSykキナーゼのリン酸化レベルの分析により、TREM-1/DAP12を発現するHEK293細胞における二価及び一価抗TREM-1 mAbの比較を行った。簡潔に述べると、37℃/5%COで10%透析済みFBS(Gibco)、2mM GlutaMAX(Gibco)、2mM L-グルタミン(Sigma)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)及び0.1mg/mLのゼオシン(zeocin)(Gibco)が補充されたDMEM/F12Ham培地(Corning)中でヒトTREM1及びDAP12を安定して発現するHEK293細胞を培養した。実験の1日前に、トリプシン-EDTAを用いて細胞を剥離し、5分間にわたって400xgで遠心分離した。5分間にわたる400xgでの2回目の遠心分離前に完全培地中で細胞ペレットを再懸濁した。遠心分離後、1x10個の細胞/mLの濃度において、完全培地中で細胞を再懸濁し、100μL/ウェルの最終体積又は50,000個の細胞/ウェルでCELLBIND(登録商標)96ウェル透明平底ポリスチレンプレート(Corning)に播種した。18~24時間にわたって一晩、37℃/5%COで播種したプレートを温置した。実験の当日に、70μLの培地を各ウェルから取り出した。アッセイ培地(10%熱不活性化FBSが補充されたDMEM/F12HAM培地)中での4倍連続希釈で、TREM1抗体を最高最終濃度の3倍に希釈した。アッセイ培地を用いて架橋試薬プロテインG(Sigma)を最終濃度の3倍で調製した。滴定されたTREM1抗体をプロテインG又はアッセイ培地の何れかと1対1で混合し、細胞を含有する各ウェルに60μLの各TREM1抗体+/-架橋試薬を添加した。これらのプレートを室温で1時間温置した後、全ての培地をウェルから除去し、次に25μL/ウェルの溶解緩衝液(M-Per哺乳動物タンパク質抽出試薬及び1xHaltプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤)を用いて細胞を溶解させた。1時間にわたって氷上で溶解緩衝液と共に細胞を温置した後、AlphaLISA(登録商標)アクセプターカクテル(1xAlphaLISA(登録商標)免疫アッセイ緩衝液(PerkinElmer)中の1nMの抗pSyk、ウサギIgG(抗ホスホSyk(Tyr525/526)(クローンC87C1))(Cell Signaling Technology)、1nMビオチン-抗Syk、マウスIgG(クローン4D10)(BD Biosciences)、10μg/mLの抗ウサギ-IgG AlphaLISA(登録商標)アクセプタービーズ(PerkinElmer)及び1xHalt阻害剤))を含有する384ウェル白色プレート(PerkinElmer)の各ウェルに5μLの細胞溶解物を移した。2時間にわたって氷上でプレートをさらに温置した後、5μLのAlphaLISA(登録商標)ドナーカクテル(1x免疫アッセイ緩衝液中のストレプトアビジン-アルファ-ドナービーズ(PerkinElmer))を40μg/mLの最終濃度で添加し、1時間にわたって暗所において室温で温置した。温置後、ENVISION(登録商標)プレートリーダー(PerkinElmer)を用いて、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)によってホスホ-Syk(pSyk)シグナルを検出した。試料pSykシグナル/基底pSykシグナルの比率によって結果を計算し、ここで、効力及び最大シグナルを各抗体の変化の間で比較した。二価抗TREM-1 mAb処理単独は、TREM-1/DAP12発現細胞中で弱いシグナルを誘導する。一価抗TREM-1 mAbでは、pSykシグナルは観察されず、プロテインGによる架橋二価及び一価抗TREM-1 mAbは、pSyk誘導をもたらす。
【0255】
抗体配列のクレイディング及びアライメント:インプット抗体配列のVH及びVLドメインを抽出し、Honegger及びPluckthun(J Mol Biol.309(3):657-70、2001)に基づき、構造に基づくIgG番号付けシステムに対してアラインした。非補正モデルを用いて複合複数配列アライメントから距離行列を生成させ、ここで、2つの配列間の距離は、VH及びVLドメインの両方におけるミスマッチの割合である。最終的に、距離行列を使用して、UPGMA(算術平均を伴う非加重結合法)法(Sokal及びMichener,University of Kansas Science Bulletin.38:1409-1438,1958)を介してツリーを構築し、0.2の分枝横断限界に基づいて関連配列を群分けした。アミノ酸の化学的類似性に基づいて手作業でアライメントを精密化して、表13に示される配列をもたらす各分岐群についてのコンセンサスCDR配列を生成させた。
【0256】
【表20】
【0257】
【表21】
【0258】
実施例3 - ヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるTREM-1抗体ブロッキングリガンド介在性シグナル伝達の有効性
ヒトPBMCにおけるTREM-1受容体へのリガンド結合の阻害により、シグナル伝達を阻止する能力についてTREM-1抗体を試験した。凍結されたヒトPBMC(IQ Biosciences)を解凍し、洗浄し、完全細胞培養培地(RPMI/10%FBS/2mMのGlutaMax/1mMピルビン酸ナトリウム/44uM β-メルカプトエタノール/1xDNAse I)中で再懸濁した。96ウェル細胞培養プレート中で100K/ウェルでPBMCを播種し、37℃で少なくとも30分間平衡化させた。RPMI/10%FBS中で13種類の抗TREM-1抗体を希釈して(3X連続希釈)、0.000017nM~3nMの範囲の最終抗体濃度を得た。より高い濃度の抗体を用いたこのアッセイの以前の反復において、シグナル伝達の任意の阻害を実証することができなかったため、抗体57F5をこの分析から除外した。TREM-1リガンドの付加前に30分間にわたってPBMCと共に抗体を予め温置した。ペプチドグリカン(PGN)と複合体形成されたペプチドグリカン認識タンパク質1(PGLYRP1)は、いくつかの記載されるTREM-1リガンドの1つであり、TREM-1受容体とのその会合が炎症性サイトカイン(例えば、TNFα)の産生を引き起こし、これらのアッセイにおいて使用された。タンパク質を複合体化するために、ヒトPGLYRP1(R&D Systems)を大腸菌(E.coli)由来の可溶性PGN(InvivoGen)と1.25:2の比率で組み合わせ、37℃で45分間温置した。複合体化したPGLYRP1/PGNをPBMC/抗体に添加し、37℃で一晩温置した。翌日、細胞培地を回収し、ヒトTNFα AlphaLISA proximity assay(Perkin Elmer)によってTNFαについてアッセイした。Envision 2103マルチラベルプレートリーダーにおいて615nmにおける発光を測定した。GraphPad Prism(v8.4.3)を用いてIC50値を計算し、以下の表14において2つの別個のアッセイのために提供した。
【0259】
【表22】
【0260】
これらの結果は、TREM-1抗体がヒトTREM-1に結合し、重要なことに、ヒト初代細胞(PBMC)におけるリガンド誘導性TREM-1活性化の阻害を実証することを示す。
【0261】
実施例4 - カニクイザル末梢血単核細胞(PBMC)におけるTREM-1抗体ブロッキングリガンド介在性シグナル伝達の有効性
カニクイザルPBMCにおいてTREM-1受容体へのリガンド結合の阻害によってシグナル伝達を阻止することについて、TREM-1抗体をアッセイした。凍結カニクイザルPBMC(IQ Biosciences)を解凍し、洗浄し、完全細胞培養培地(RPMI/10%FBS/2mM GlutaMax/1mMピルビン酸ナトリウム/44uM β-メルカプトエタノール/1xDNAseI)中で再懸濁した。100K/ウェルでPBMCを96ウェル細胞培養プレートに播種し、37℃で少なくとも30分間平衡化させた。RPMI/10%FBS中で14種類の抗TREM-1抗体を希釈し(3X連続希釈)、0.00017nM~30nMの範囲の最終抗体濃度を生成させた。TREM-1リガンドの付加前に30分間にわたってPBMCと共に抗体を予め温置した。ペプチドグリカン(PGN)と複合体形成されたペプチドグリカン認識タンパク質1(PGLYRP1)は、いくつかの記載されるTREM-1リガンドの1つであり、TREM-1受容体とのその結合が炎症性サイトカイン(例えば、TNFα)の産生を引き起こし、このアッセイにおいて使用した。タンパク質を複合化するために、1.25:2の比で大腸菌(E.coli)由来の可溶性PGN(InvivoGen)とカニクイザルPGLYRP1(Creative Biomart)を合わせ、37℃で45分間温置した。複合体化させたPGLYRP1/PGNをPBMC/抗体に添加し、37℃で一晩温置した。翌日、細胞培地を回収し、カニクイザルTNFα Alphalisa proximity assay(Perkin Elmer)によってTNFαについてアッセイした。Envision 2103マルチラベルプレートリーダーにおいて615nmでの発光を測定した。GraphPad Prism(v8.4.3)を用いてIC50値を計算し、表15において2つの別個のアッセイのために提供した。
【0262】
【表23】
【0263】
これらの結果は、TREM-1抗体がカニクイザルTREM-1に結合し、重要なことに、カニクイザル初代細胞(PBMC)におけるリガンド誘導性TREM-1活性化を阻害することを示す。さらに、図1は、カニクイザル及びヒトPBMCの両方におけるPGLYRP1/PGN介在性TREM1シグナル伝達のTREM1抗体阻害を示す。
【0264】
実施例5 - ヒトTREM-1/Dap12-HEK293過剰発現細胞株におけるTREM-1 Fabブロッキング脾臓チロシンキナーゼ(SYK)リン酸化の有効性
ヒトTREM-1/Dap12を過剰発現する細胞株におけるTREM-1受容体へのリガンド結合の阻害によってシグナル伝達を阻止する能力についてTREM-1 Fabをアッセイし、IC50を決定した。脾臓チロシンキナーゼ(SYK)のリン酸化は、TREM-1シグナル伝達カスケードの初期の過程であり、このアッセイにおいて、TREM-1シグナル伝達の尺度として使用される。12kDa(Dap12)のヒトTREM-1及びその必須のアダプタータンパク質DNAX活性化タンパク質を過剰発現するHEK293細胞を、完全培地(DMEM/10%のFBS)中、50K/ウェルでCellBINDプレート(Corning)に播種し、一晩付着させた。二価TREM-1抗体は、この系においてシグナル伝達を阻害することができなかったが、これは、これらの細胞における多量のTREM-1受容体の技術的なアーチファクト及び二価抗体がそれらを架橋してリガンドとは無関係の受容体アゴニズムをもたらす能力に起因すると思われる。従って、一価Fabをこのアッセイにおいて完全抗体の代用物として使用した。0.00017nM~30nMの範囲の最終的な抗体濃度を生成させるために、完全培地中で14種類の抗TREM-1 Fabを希釈した(3倍連続希釈)。TREM-1リガンド複合体化ヒトPGLYRP1(R&D Systems)及び大腸菌(E.coli)に由来する可溶性PGN(InvivoGen)の付加前に30分間にわたって、TREM-1/Dap12-HEK293と共にFabを予備温置した。PGLYRP1及びPGNを複合体化するために、タンパク質を1:2の比率で組み合わせて、37℃で45分間温置した後、細胞/Fabに添加した。室温での1時間の温置後、細胞を溶解させ、pSYK ALPHLISA(登録商標)SUREFIRE(登録商標)Ultra(商標)p-SYK(Tyr525/526)アッセイ(Perkin Elmer)を用いて細胞溶解物中のリン酸化SYKの量を測定した。Envision 2103マルチラベルプレートリーダーにおいて615nmにおける発光を測定した。GraphPad Prism(v8.4.3)を用いてIC50値を計算し、表16に示されるように、2つの別個のアッセイに供する。
【0265】
【表24】
【0266】
図2は、抗TREM1 FabがTREM1/DAP12-HEK293細胞においてPGLYRP1/PGN介在性SYKリン酸化を阻害することを示すグラフである。
【0267】
実施例6 - 循環器疾患におけるTREM-1抗体のインビボ評価
TREM-1介在性シグナル伝達の阻止が炎症促進性サイトカイン/ケモカイン放出(急性反応)を軽減し、その結果、アテローム性動脈硬化症(Ath)及び心筋梗塞(MI)に対する疾患アウトカムの改善が起こることを裏付けるために、急性及び疾患モデルの両方を使用する。
【0268】
急性モデル:
リポ多糖(LPS)誘導性炎症モデル
マウスTREM-1細胞外ドメイン/Fc(muTREM1-Fc)によるTREM-1の遮断の結果、リポ多糖(LPS)を用いて全身的に試験負荷されたマウスにおいて炎症性サイトカインの放出が減少するか否かを決定するために、LPS誘導性炎症モデルを使用する。簡潔に述べると、雌C57Bl/6マウス(10~12週間)をランダムに群分けし(n=6匹マウス/治療)、3、10又は30mg/kg(mpk)のmuTREM1-Fc又は30mpkのmuIgG1(対照)の何れかで腹腔内(i.p.)治療する。1時間後、大腸菌(E.coli)からの100μg/動物のLPS(055:B5)をマウスに投与(i.p.)する。0、1、3、6及び24時間で血液試料を回収する。V-PLEX炎症促進パネル1マウスキット(Meso Scale Discovery)を使用して、炎症促進性サイトカイン及びケモカイン(IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12p70、KC/GRO、TNF-α)の血清レベルを測定する。可溶性TREM-1(sTREM-1)レベルをELISA(R&D Systems)により測定する。このモデルにおけるmuTREM1-Fc分析に加えて、抗マウスTREM-1抗体の特徴を調べ得る。
【0269】
TREM-1リガンド介在性炎症モデル
ペプチドグリカン認識タンパク質1(PGLYRP1)がTREM-1リガンドとして同定された(Read et al.,2015)。PGLYRP1単独又はその内因性結合標的(細菌性ペプチドグリカン-PGN)と複合体化されたPGLYRP1を使用して、0.5~3mpk(PGLYRP1)及び0.5~5mpk(PGN)の用量範囲でC57Bl/6マウスにおいて炎症反応を惹起する。PGLYRP1又はPGLYRP1/PGNの投与前に、抗マウスTREM-1抗体、対照抗体又はmuTREM1-Fc(用量範囲1~30mpk)でマウスを治療する。マウスにおけるTREM-1の比較的低い発現を考慮して、LPS、TREM-1の発現を上方制御することが知られるトール様受容体4リガンド(Zeng et al.,2007)を抗体/TREM1-Fc及びTREM-1リガンドでの治療の24時間前に投与し得る。0、1、3、6及び24時間で血液試料を回収する。V-PLEX炎症促進性パネル1マウスキット(Meso Scale Discovery)を使用して炎症促進性サイトカイン及びケモカイン(IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12p70、KC/GRO、TNF-α)の血清レベルを測定する。sTREM-1レベルは、ELISA(R&D Systems)により測定する。
【0270】
NSGヒト化マウスモデル
NOD scidガンマ(NSG)マウス(Jackson Labs)は、ヒト造血性幹細胞を容易に移植し得る重度の免疫不全マウスであり、マウスモデルでの機能的なヒト化免疫系の確立を可能にする。このヒト化マウスモデルを利用して、上記のような、LPS治療、TREM-1リガンド治療の何れか又は両方で炎症反応を開始させる。炎症反応開始前に、抗ヒトTREM-1又はアイソタイプ対照抗体(用量範囲1~30mpk)の何れかでマウスを治療する。0、1、3、6及び24時間で血液試料を回収する。V-PLEX炎症促進性パネル1ヒトキット(Meso Scale Discovery)を使用して、炎症促進性サイトカイン及びケモカイン(IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、TNF-α)の血清レベルを測定する。ELISA(R&D Systems)によってsTREM-1レベルを測定する。
【0271】
カニクイザルモデル
LPS負荷試験モデルにおいて抗ヒト(カニクイザルと交差反応)TREM-1抗体でカニクイ(マカカ・ファスシキュラリス(Macaca fascicularis))ザルを治療する。成体雄カニクイザルをランダムに群分けして、LPSのi.v.ボーラス(10ug/kg体重)の投与後、TREM-1抗体(用量範囲1~30mpk)又はアイソタイプ対照の何れかの静脈内(i.v.)又は皮下(s.c.)用量を与える。サルのさらなる対照群はビヒクルのみを与える(抗体なし/LPSなし)。バイタルサインを監視し、臨床化学、白血球数、凝固パラメーター、可溶性TREM-1及びサイトカイン血漿濃度のために、0、1、2、4及び8時間で血液試料を回収する。
【0272】
疾患モデル:
ApoE-/-、LDLR-/-、A20ハプロ不全/ApoE-/-
アテローム性動脈硬化症のマウスモデル(例えば、高コレステロール高脂肪餌を12~16週間与えられたApoE-/-又はLDLR-/-マウス)を使用して、抗マウスTREM-1抗体での治療により疾患アウトカムが変化するか否かを判定する。マウスをランダムに群分けし、高コレステロール餌給餌期の間毎週、対照抗体又は抗マウスTREM-1抗体の何れかのs.c.用量(1~30mpkの範囲)をコホートに投与する。様々な時点で血液を回収し、サイトカイン/ケモカインレベル、可溶性TREM-1レベル及び骨髄系細胞サブセットについて分析する。実験の最後に大動脈全体を回収し、オイルレッドO又はスーダンIVを使用したen face染色によって表面の病変領域を定量する。さらに、大動脈基部での切片を得て、オイルレッドOで染色し、病変領域を定量し、抗CD68抗体で染色してマクロファージ含量を定量し、抗平滑筋アクチン(SMA)抗体で染色して平滑筋細胞含量を定量し、他の染色も行った。別の有用なモデルは、NF-kbにより推進されるプロアテローム動脈硬化/炎症促進性標的遺伝子のレベル上昇の結果、アテローム性動脈硬化症になり易くなることを示す、A20ハプロ不全/ApoE-/-マウスである(Wolfrum et al.,2007)。適切な抗マウスTREM-1サロゲート抗体が同定されていない場合、ApoE-/-バックグラウンドにおけるヒトTREM-1ノックインマウスを作製する。これにより、アテローム性動脈硬化症のマウスモデルにおける抗ヒトTREM-1抗体の試験が可能になる。
【0273】
NSGヒト化マウスモデル
NSGマウスが急性設定で有用であることを証明する場合、これは、ApoE、Ldlr又は両方のsiRNAノックダウンによる疾患モデルに進展させ得る。高コレステロール餌給餌期の間毎週、12~16週間にわたり高脂肪高コレステロール餌が与えられたNSG/siRNA治療マウスのランダム化コホートに対照抗体又は抗ヒトTREM-1抗体の何れかのs.c.用量(1~30mpkの範囲)を投与する。血液を様々な時点で回収し、サイトカイン/ケモカインレベル、可溶性TREM-1レベル及び骨髄系細胞サブセットについて分析する。実験の最後に、大動脈全体を回収し、上記のように染色されるen face染色及び大動脈基部切片によって表面の病変領域を定量する。
【0274】
げっ歯類急性心筋梗塞(AMI)モデル
MIのげっ歯類モデルは、抗マウスTREM-1抗体及び/又はmuTREM1-Fcを試験するために有用である。簡潔に述べると、左前下行冠動脈(LAD)の永久的な結紮によってマウス又はラットの何れかにおいてAMIが誘発される。この手順後、げっ歯類(ラット=Sprague Dawley、マウス=C57Bl/6)をランダムに群分けして、結紮手術後2~8週間、毎週、抗マウスTREM-1又はアイソタイプ対照抗体の何れかのs.c.用量(1~30mpk)を投与する。心機能(例えば、駆出率、拡張終期容積、収縮終期容積及び心拍出量)を試験期間全体にわたり定められた時間で非侵襲的心エコーにより評価する。圧力・容積ループで末期的心機能及び収縮力を測定する。定期的な間隔で血液試料を採取して、血液細胞数、肝臓及び腎臓酵素、トロポニン、可溶性TREM-1及び炎症性マーカー(サイトカイン、hsCRP)を測定する。試験の最後に、げっ歯類を安楽死させ、エクスビボ組織染色により、リスク領域に対する梗塞サイズ比(IS/AAR)を決定する。90分間LADの結紮を行い、その後に結紮を除去する、所謂虚血/再灌流(I/R)モデルである同様の試験を行い得る。治療スキーム及び分析は、上記と同じである。
【0275】
ミニブタMIモデル
ブタTREM-1と交差反応し得る抗体をミニブタAMIモデルにおいて試験する。簡潔に述べると、1時間にわたる近位左前下行動脈(LAD)における血管形成術バルーンの膨張によってミニブタ(サス・スクロファ・ドメスティク(Sus scrofa domestic))においてAMIを誘導する。動物をランダムに群分けして、術後2~4週間にわたり毎週、TREM-1又はアイソタイプ対照抗体の何れかのs.c.用量(1~30mpk)を与える。手術時、抗体の最初の用量の投与後、血管形成術バルーンをしぼませる。試験期間全体を通して、心拍、平均動脈圧、平均肺動脈圧、心拍出量、心係数及び混合静脈酸素飽和を含む血行動態パラメーターを監視する。試験期間全体を通して、左心室の拡張終期及び収縮終期容積、駆出率、心室圧の一次導関数の最大及び最小値(dP/dtmax、dP/dtmin)、左心室圧減衰の時間定数及び1回仕事量を含む血圧-コンダクタンスカテーテルに基づくパラメーターを定期的に監視する。収縮終期及び拡張終期圧力体積関係、最大心室エラスタンス、動脈エラスタンス、拡張終期容積関係に対するdp/dtmax、予め負荷される補充可能な1回仕事量及び圧力容積面積を含め、大静脈閉塞を伴う圧力/容積データも回収する。定期的な間隔で血液試料を採取し、血液ガス、血液細胞数、血中乳酸、肝臓及び肝臓酵素、トロポニン、可溶性TREM-1及び炎症性マーカー(サイトカイン、hsCRP)を測定する。試験終了時にブタを安楽死させ、エクスビボ組織染色によってリスク領域に対する梗塞サイズ比(IS/AAR)を決定する。
【0276】
受容体を通してシグナル伝達を遮断するTREM-1抗体の投与が、心モデルにおいて炎症反応を下方制御し、循環器疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症又は心筋梗塞)の1つ以上の症状、例えば損傷部位への炎症性細胞遊走、心臓組織への骨髄系細胞の浸潤、微小環境における炎症性サイトカイン、組織損傷、泡沫細胞形成の減少、壊死コアサイズの減少、瘢痕形成の減少、内皮細胞機能不全の減少及び/又は血栓形成の減少などを軽減することにより、循環器疾患を治療するという仮説が立てられる。
【0277】
実施例7 - TREM-1の遺伝子破壊の結果、LPS刺激後の血清ペプチドグリカン認識タンパク質1(PGLYRP1)のレベル低下が起こった。
TREM-1ノックアウト(C57Bl/6バックグラウンド)及び週齢/バックグラウンドが一致したマウス(n=6)に、100μg/動物の、大腸菌(E.Coli)からのリポ多糖(LPS)(O55:B5)(Sigma-Aldrich)を注射(腹腔内)した。LPS投与後0、1、3、6及び24時間に、20マイクロリットルの全血を採取した。2つの治療群(WT、TREM-1 KO)からの血清を各時点でプールし、ELISA(LSBio)によってPGLYRP1濃度を測定した。Molecular Devices SpectraMax Plus384 Spectrophotometer上で450nmでの光学密度を測定した。
【0278】
図3は、LPS投与後、野生型でTREM-1リガンドPGLYRP1において1時間でスパイクを示すグラフであるが、TREM-1ノックアウトマウスではスパイクがない。このデータは、TREM-1がPGLYRP1の調節に関与すること及びTREM-1を標的とする抗体が受容体へのリガンド結合及びPGLYRP1リガンドのその後の利用可能性の両方を阻止し得ることを示唆する。TREM-1抗体を用いてPYGLYRP1の上昇を阻止することは、その後のPYGLRP1介在性炎症及び循環器系の事象を防ぎ得る。
【0279】
本明細書における何れかの単一の実施形態に対して、本明細書における何れか1つ以上の他の実施形態からの1つ以上の要素が追加され得る。
【0280】
従って、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲;上記の説明;以下の番号付けされた段落によって規定され、且つ/又は添付の図面に示されるような本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更形態を包含することが意図されることが理解される。
【0281】
上記の例示的な実施例に示されるような、本発明の多数の修正形態及び変形形態が当業者に想起されると予想される。従って、添付の特許請求の範囲に示されるような限定のみが本発明に課されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
【配列表】
2024527514000001.app
【国際調査報告】