(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】微生物汚染物質を死滅させる装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240718BHJP
A61L 2/03 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61B18/14
A61L2/03 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579131
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022067244
(87)【国際公開番号】W WO2022268987
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501442932
【氏名又は名称】ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド・ガルウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】マーキー、リン
(72)【発明者】
【氏名】オマリー、カミール
【テーマコード(参考)】
4C058
4C160
【Fターム(参考)】
4C058AA28
4C058BB02
4C058DD03
4C160KK02
4C160KK12
4C160KK24
4C160KK35
(57)【要約】
本開示は、組織環境から微生物汚染物質を死滅させる装置及び方法に関する。この装置は、パルス電界(PEF(pulsed electric field))信号を微生物汚染物質の近傍の組織表面上に供給するように構成された複数の電極を含む非侵襲性遠位部を備え、PEFは組織表面の下に貫通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物汚染物質を死滅させる装置であって、
パルス電界(PEF(pulsed electric field))信号を前記微生物汚染物質の近傍の組織表面上に供給するように構成された複数の電極を含む遠位部であって、前記PEFは前記組織表面の下に貫通する、遠位部と、
前記複数の電極に電気的に接続され、前記PEF信号を生成するパルス生成器と、
所望の電界を送達するためのPEFパラメータの決定を支援するように構成された少なくとも1つのインピーダンスセンサと、
前記少なくとも1つのインピーダンスセンサがインピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出したことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、前記パルス生成器の動作を制御して、前記微生物汚染物質を死滅させるための前記所望の電界を送達するように構成されたコントローラと、
を備える、
装置。
【請求項2】
前記複数の電極は、水平面に対して、及び/又は、鉛直面に対して軸方向に移動可能である、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記PEFを前記組織の前記表面の下に導くために少なくとも1つの電極の周囲を少なくとも部分的に囲む絶縁材料をさらに備える、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記PEFを前記組織の前記表面の下に導くために複数の電極の周囲を囲む絶縁材料を備える、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の電極は、前記PEFを前記組織の前記表面の下に導く絶縁材料に埋め込まれており、及び/又は、前記複数の電極は、物体(matter)の付着に対する抵抗を与える被覆を備える、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の電極は、物質の付着に対する抵抗を与える被覆を備える、
請求項1から5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記少なくとも1つのインピーダンスセンサによって検出されたインピーダンス値に基づいて組織の電気的特性を判別するように構成されており、及び/又は、前記コントローラは、組織の電気的特性を判別したことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、前記微生物汚染物質を死滅させるための前記所望の電界を送達するように構成されている、
請求項1から6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記微生物汚染物質の近傍において吸引を行う吸引手段をさらに備える、
請求項1から7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記遠位部は、
a.表面に当接したときに少なくとも部分的に密閉された環境を提供するように構成されたボリューム(volume)、又は、
b.表面に当接したときに少なくとも部分的に密閉された環境を提供するように構成されたボリュームであって、少なくとも部分的に弾性材料で形成されている、ボリューム、
をさらに備える、
請求項1から8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の電極は、前記装置ヘッドに対して突出し、及び/若しくは、平坦であり、並びに/又は、平滑表面若しくは凹凸表面を備える、
請求項1から9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
流体を前記微生物汚染物質の近傍に分配するように構成された分配手段をさらに備え、
任意で、前記流体は、導電性流体、及び/又は、生理食塩液などの消毒液である、
請求項1から10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置ヘッドの前記遠位部は、順応性/可撓性材料で少なくとも部分的に形成され、前記複数の電極が押圧されたときに、前記複数の電極それぞれの前記組織係合面が前記組織表面に当接して前記電気的環境を維持するように凸凹なトポグラフィーに適合する、
請求項1から11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置の前記遠位部は、温度、圧力、pH、及び前記複数の電極の位置のうち1つ又は複数の組み合わせを含む前記物理的環境を検出する1つのセンサ又は複数のセンサをさらに備える、
請求項1から12の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
導電性媒体を可変速度で受け取るポンプをさらに備え、任意で、流量の制御のための前記ポンプにモータ/バッテリが接続されており、前記装置が近位部を備える場合、任意で、前記モータ/バッテリは、前記装置の前記近位部から離隔している、
請求項1から13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の電極は、リターン電極と端子電極とを含み、前記コントローラは、前記リターン電極及び前記端子電極の極性を切り替えるように構成されている、
請求項1から14の何れか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記遠位部が取り付けられるシャフトをさらに備え、前記シャフトは、玉継ぎ手によって前記遠位部に接続されている、
請求項1から15の何れか一項に記載の装置。
【請求項17】
微生物汚染物質を死滅させる方法であって、
複数の電極によって、パルス電界(PEF(pulsed electric field))信号を前記微生物汚染物質の近傍の組織表面上に供給するステップであって、前記PEFは前記組織表面の下に貫通する、ステップと、
少なくとも1つのインピーダンスセンサによって、所望の電界を送達するためのPEFパラメータを決定するステップと、
コントローラによって、前記少なくとも1つのインピーダンスセンサによりインピーダンス値又はインピーダンスの変化が検出されたことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを調整し、前記微生物汚染物質を死滅させるための前記所望の電界を送達するステップと、
を含む、
方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのインピーダンスセンサによって検出されたインピーダンス値に基づいて組織の電気的特性を判別するステップをさらに含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
コントローラによって、組織の電気的特性を判別したことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、前記微生物汚染物質を死滅させるための前記所望の電界を送達するステップをさらに含む、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
使用中に一対の前記電極の極性を反転させるステップをさらに含む、
請求項17から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
パルス電界(PEF(pulsed electric field))信号を組織に非侵襲的に導き、成長因子を刺激すると共に、血管新生を促進することによって創傷床を再生し、創傷治癒プロセスを助ける方法であって、PEF信号を前記創傷の近傍に供給するステップを含む、
方法。
【請求項22】
インピーダンスセンサによって、インピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出するステップと、
前記インピーダンス値又は前記インピーダンスの変化を検出したことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを変更するステップと、
をさらに含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
PEF信号を供給し、細胞膜に細孔を形成すると共に、細胞への治療の送達を促進するステップをさらに含む、
請求項21又は22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物汚染物質(microbial cotaminants)を死滅させる装置及び方法に関する。特に、本発明は、哺乳動物組織の存在下での微生物汚染物質の除去に応用される。
【背景技術】
【0002】
微生物汚染物質は、単一の自由浮遊細胞(浮遊性)として、又は、バイオフィルムと呼ばれる密集したコミュニティ内に存在し得る。バイオフィルムは、抗菌処理及び宿主免疫に対して化学的耐性及び物理的耐性を有する。糖尿病性足感染症(骨髄炎に進行するものを含む)、人工関節感染症(PJI(prosthetic joint infections))、骨髄炎、慢性創傷、慢性副鼻腔炎、火傷、手術創、外傷、座瘡などを含む感染症の65%~80%は、バイオフィルムに帰することができる。バイオフィルム内の微生物細胞は、限られた資源しか存在しないため、浮遊性微生物よりも遅いペースで増殖し、従って、増殖阻害を狙う抗生物質の標的に適していない。より重要なことに、バイオフィルム内の微生物は、タンパク質、核酸、及び多糖類で構成された細胞外マトリックス(ECM(extracellular matrix))によって囲まれている。これは、宿主免疫と抗生物質との両方に対する物理的障壁として機能する。
【0003】
現在、治療には2段階のアプローチがとられており、洗浄及びデブリードマン処置を通じて微生物汚染物質を物理的に除去し、適切な抗生物質で残留微生物を処理する。中等度から重度の感染症に対する治療の臨床上のゴールドスタンダードは、壊死組織の手術によるデブリードマン、及び、部位からの微生物汚染物質の物理的除去である。しかし、これらの患者に対する現在の治療法は、全く効果がなく、最近の研究で、典型的な患者は、感染予防のために2回以上の手術を必要とすることが判明した。
【0004】
デブリードマン処置は、通常、物理的及び機械的手段(メス、ブラシなど)と化学薬品(フラッシュ生理食塩水、消毒液、高度洗浄液など)とを使用し、創傷及び失活組織から微生物汚染物質を除去する。より新しい革新的な装置は、圧力を使用して微生物汚染物質を物理的に破壊する。創傷内の圧力を高めると、最初はより多くの微生物汚染物質を除去できるものの、手術の数時間後により高い細菌のリバウンドが起きることから、これによって微生物が組織のさらに奥まで散布されている可能性があることを示唆する証拠がある。さらに、より強力な消毒薬は、生理食塩水と比較して細菌による負担をわずかに減らすことができるものの、宿主組織に炎症を引き起こし、創傷治癒に影響を与えもする。創傷に投与された大量の抗生物質は、創傷治癒を妨げる可能性があると共に、感染空間内の全ての領域には拡散し得ない。
【0005】
糖尿病性足潰瘍(DFU(diabetic foot ulcers))の治療に関連する費用は、米国において90億~130億米ドルである。DFUのごく一部が、医療費の大部分を占めている。費用の74%~84%が入院治療に費やされていると推定されており、DFU患者に占める割合は、わずか9%~20%だった。費用は、入院期間、集中治療、及び外科的処置によって決まる。2010年には、ある研究によって、表在性潰瘍の治療にかかる平均費用は、切断手術に至る潰瘍の場合が10万7900ドルであるのに対し、3096ドルと低いことが示された。
【0006】
微生物汚染物質がバイオフィルムとして存在する場合、微生物は、抗菌薬に対する耐性が浮遊性細菌よりも最大1000倍になる。現在の治療法は、感染創又は手術部位の完全なカバレッジ、表面と表面下との両方、を確保することはできない。さらに、放出された微生物が完全に根絶されないため、未汚染部位に感染が移動するリスクがある。
【0007】
現在、バイオフィルムとして存在する微生物汚染物質を効果的に破壊して除去する、承認された医療機器は存在しない。従って、上述した欠陥の少なくとも一部に対処する解決策が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様では、微生物汚染物質を死滅させる装置が示され、この装置は、パルス電界(PEF(pulsed electric field))信号を微生物汚染物質の近傍の組織表面上に供給するように構成された複数の電極を含む非侵襲性の遠位部を備え、PEFは組織表面の下に貫通する。
【0009】
任意で、複数の電極は、水平面に対して、及び/又は、鉛直面に対して軸方向に移動可能である。これにより、装置ヘッドが、組織環境の表面上の凹凸なトポグラフィーを横切ってより容易に移動できるようになり得る。複数の電極は、信号伝達のために接触している組織の表面との接触を維持する。
【0010】
任意で、装置は、PEFを組織の表面の下に導くために少なくとも1つの電極の周囲を少なくとも部分的に囲む絶縁材料をさらに備える。加えて、又は代替的に、複数の電極は、物質の付着に対する抵抗を与える被覆を備える。
【0011】
任意で、複数の電極は、PEFを組織の表面の下に導く絶縁材料に埋め込まれている。加えて、又は代替的に、複数の電極は、物体(matter)の付着に対する抵抗を与える被覆を備える。
【0012】
任意で、装置は、所望の電界の送達を実現するためのPEFパラメータの決定を支援する少なくとも1つのインピーダンスセンサをさらに備え得る。後でより詳細に説明するように、異なる種類の組織は、異なるインピーダンス値を示し、そのため、治療領域への一定した電界送達を確保するために異なるPEFパラメータを必要とする。
【0013】
任意で、装置は、少なくとも1つのインピーダンスセンサがインピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更するように構成されたコントローラをさらに備え得る。
【0014】
任意で、コントローラは、少なくとも1つのインピーダンスセンサによって検出されたインピーダンス値に基づいて組織の電気的特性を判別するように構成されており、及び/又は、コントローラは、組織の電気的特性を判別したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更するように構成されている。
【0015】
任意で、装置は、微生物汚染物質の近傍において吸引を行う吸引手段をさらに備える。これにより、治療前、治療中、及び/又は、治療後における組織環境の近傍からの破片の除去が容易になり得る。
【0016】
任意で、遠位部は、表面に当接したときに少なくとも部分的に密閉された環境を提供するように構成されたボリューム(volume)をさらに備え得る。上述したような吸引手段を設けることにより、装置が当該ボリュームを備える実施形態において形成される密閉を強化することも可能となり得る。
【0017】
任意で、ボリュームは、少なくとも部分的に弾性材料で形成されている。これにより、組織環境と装置の遠位部との間の表面接触が向上され、形成された密閉がさらに強化され得る。弾性材料は、加えられた力が当該弾性材料から取り除かれると元の形状に戻るため、ボリュームが使用後に元の形状に戻ることを可能にする。さらに、電極が装置ヘッドから突き出して設置されておらず、装置ヘッドの端部と面一でもない実施形態では、ボリュームが、圧力下で電極が移動されて組織表面と接触し得るように弾性であることが有用であり得る。
【0018】
任意で、複数の電極は、装置ヘッドに対して突出し、並びに/若しくは、平坦であり、及び/又は、平滑表面若しくは凹凸表面を備える。
【0019】
任意で、装置は、流体を微生物汚染物質の近傍に分配するように構成された分配手段をさらに備える。流体は、導電性流体、及び/又は、生理食塩液などの消毒液であり得る。導電性流体を供給することにより、治療領域の周囲における電流の分配が促進され得る一方、消毒液は、創傷床へのさらなる潜在的な感染症を除去する上で役立つであろう。
【0020】
任意で、装置ヘッドの遠位部は、凸凹なトポグラフィーに適合するために、順応性/可撓性材料で少なくとも部分的に形成され得る。これは、遠位部と組織環境の表面との間の表面領域接触を促進する上で役立つであろう。
【0021】
任意で、装置の遠位部は、温度、圧力、pH、及び複数の電極の位置の組み合わせを含む物理的環境を検出するセンサを含み得る。
【0022】
任意で、装置は、非侵襲性の遠位部が取り付けられた近位部をさらに備え得る。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、微生物汚染物質を除去する方法が示され、この方法は、パルス電界(PEF)信号を微生物汚染物質の近傍に供給するステップを含む。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、PEF信号を組織に導き、成長因子を刺激すると共に、血管新生を促進することによって創傷床を再生し、創傷治癒プロセスを助ける方法が示され、この方法は、パルス電界(PEF)信号を創傷の近傍に供給するステップを含む。
【0025】
任意で、方法は、
インピーダンスセンサによって、インピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出するステップと、
インピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更するステップと、
をさらに含む。
【0026】
任意で、PEF信号は、少なくとも2つの隣接する電極の間に電流を供給する。加えて、又は代替的に、この方法は、一対の電極の極性を選択的に反転させるステップをさらに含む。システム内の極性の変化は、組織内の細胞成分のより効果的な破壊を可能にし、組織環境内の細菌の低減をより促進し得る。この同一の電極の極性切り替え構成は、電極が別個の端子電極とリターン電極とを含むシステムと比較して簡素化された構成を与える。装置のコントローラは、端子電極及びリターン電極の極性を切り替えるように構成され得る。
【0027】
任意で、方法は、
ボリュームを設け、少なくとも部分的に密閉された環境を促進するステップと、
吸引を行うステップと、
をさらに含む。
【0028】
任意で、方法は、導電性流体を微生物汚染物質の近傍に供給するステップ、又は、消毒液を微生物汚染物質の近傍に供給するステップをさらに含む。
【0029】
任意で、PEF信号は、組織表面上に供給され、PEFは、組織環境との接触を維持するために複数の電極が押圧されたときに組織表面の下に貫通する。
【0030】
任意で、方法は、PEF信号を供給し、細胞膜に細孔を形成すると共に、細胞への治療の送達を促進するステップをさらに含む。
【0031】
任意で、方法は、PEF信号を供給し、成長因子及び/又は血管新生の増加によって創傷再生を促進するステップをさらに含む。
【0032】
本開示のさらなる態様によれば、微生物汚染物質を死滅させる装置が示され、この装置は、
パルス電界(PEF)信号を微生物汚染物質の近傍の組織表面上に供給するように構成された複数の電極を含む遠位部であって、PEFは組織表面の下に貫通する、遠位部と、
複数の電極に電気的に接続され、PEF信号を生成するパルス生成器と、
所望の電界を送達するためのPEFパラメータの決定を支援するように構成された少なくとも1つのインピーダンスセンサと、
少なくとも1つのインピーダンスセンサがインピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、パルス生成器の動作を制御して、微生物汚染物質を死滅させるための所望の電界を送達するように構成されたコントローラと、
を備える。
【0033】
任意で、複数の電極は、水平面に対して、及び/又は、鉛直面に対して軸方向に移動可能である。
【0034】
任意で、絶縁材料が、PEFを組織の表面の下に導くために少なくとも1つの電極の周囲を少なくとも部分的に囲む。
【0035】
任意で、絶縁材料が、PEFを組織の表面の下に導くために複数の電極の周囲を囲む。
【0036】
任意で、複数の電極は、PEFを組織の表面の下に導く絶縁材料に埋め込まれている。
【0037】
任意で、複数の電極は、物体の付着に対する抵抗を与える被覆を備える。
【0038】
任意で、コントローラは、少なくとも1つのインピーダンスセンサによって検出されたインピーダンス値に基づいて組織の電気的特性を判別するように構成されており、及び/又は、コントローラは、組織の電気的特性を判別したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、微生物汚染物質を死滅させるための所望の電界を送達するように構成されている。
【0039】
任意で、装置は、微生物汚染物質の近傍において吸引を行う吸引手段を含む。
【0040】
任意で、遠位部は、
a.表面に当接したときに少なくとも部分的に密閉された環境を提供するように構成されたボリューム、又は、
b.表面に当接したときに少なくとも部分的に密閉された環境を提供するように構成され、少なくとも部分的に弾性材料で形成されたボリューム、
をさらに備える。
【0041】
任意で、複数の電極は、装置ヘッドに対して突出し、並びに/若しくは、平坦であり、及び/又は、平滑表面若しくは凹凸表面を備える。
【0042】
任意で、分配手段が、設けられると共に、流体を微生物汚染物質の近傍に分配するように構成されている。流体は、導電性流体、及び/又は、生理食塩液などの消毒液であり得る。
【0043】
任意で、装置ヘッドの遠位部は、順応性/可撓性材料で少なくとも部分的に形成され、複数の電極が押圧されたときに、複数の電極それぞれの組織係合面が組織表面に当接して電気的環境を維持するように凸凹なトポグラフィーに適合する。
【0044】
任意で、装置の遠位部は、温度、圧力、pH、及び複数の電極の位置のうち1つ又は複数の組み合わせを含む物理的環境を検出する1つのセンサ又は複数のセンサをさらに備える。
【0045】
任意で、装置は、導電性媒体を可変速度で受け取るポンプをさらに備え、任意で、流量の制御のためのポンプにモータ/バッテリが接続されており、装置が近位部を備える場合、任意で、モータ/バッテリは、装置の近位部から離隔している。
【0046】
複数の電極は、リターン電極と端子電極とを含み、コントローラは、リターン電極及び端子電極の極性を切り替えるように構成されている。
【0047】
任意で、装置は、遠位部が取り付けられるシャフトをさらに備え、シャフトは、玉継ぎ手によって遠位部に接続されている。
【0048】
本開示のさらなる態様によれば、微生物汚染物質を死滅させる方法が示され、この方法は、
複数の電極によって、パルス電界(PEF)信号を微生物汚染物質の近傍の組織表面上に供給するステップであって、PEFは組織表面の下に貫通する、ステップと、
少なくとも1つのインピーダンスセンサによって、所望の電界を送達するためのPEFパラメータを決定するステップと、
コントローラによって、少なくとも1つのインピーダンスセンサによりインピーダンス値又はインピーダンスの変化が検出されたことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを調整し、微生物汚染物質を死滅させるための所望の電界を送達するステップと、
を含む。
【0049】
任意で、方法は、少なくとも1つのインピーダンスセンサによって検出されたインピーダンス値に基づいて組織の電気的特性を判別するステップをさらに含む。
【0050】
任意で、方法は、コントローラによって、組織の電気的特性を判別したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、微生物汚染物質を死滅させるための所望の電界を送達するステップをさらに含む。
【0051】
任意で、方法は、使用中に一対の電極の極性を反転させるステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0052】
次に、例として示される以下の図を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0053】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る微生物汚染物質を死滅させるために使用する装置を図示する。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る微生物汚染物質を死滅させるために使用する装置を図示する。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る微生物汚染物質を死滅させるために使用する装置を図示する。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る微生物汚染物質を死滅させる方法を示す。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係るパルス電界の電界強度を調整する例示的なフィードバックシステムのブロック図を示す。
【
図6】
図6は、セットアップであって、当該セットアップにおいて、人間が制御するコンソールが、アクチュエータを介して例示的なシステムを制御するために使用されるセットアップを図示する概略図を示す。
【
図7】
図7は、異なる数の電極を有する2つの異なる実施形態に係る装置ヘッドの図を示し、電極は遠位ヘッドに取り付けられている。
【
図8】
図8は、例示的なシステムの複数の異なる電極構成の候補を図示する。
【
図9A】
図9Aは、近位部を含み、任意で装置ヘッド上にボリュームを含む例示的なシステムの図を示す。
【
図9B】
図9Bは、近位部を含み、任意で装置ヘッド上にボリュームを含む例示的なシステムの図を示す。
【
図10A】
図10Aは、本開示の実施形態に係る近位部を含む例示的なシステムのさらなる図を示す。
【
図10B】
図10Bは、本開示の実施形態に係る近位部を含む例示的なシステムのさらなる図を示す。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係る絶縁材料に埋め込まれた電極の概念図を示す。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係る微生物汚染物質を死滅させるために使用される装置の図示を示す。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に係る微生物汚染物質を死滅させるために使用する装置の遠位部を図示し、この図示は、装置のユーザ又は機構によって、軸に沿って装置の近位端から遠位部へ力が加えられたときの当該遠位端の弾性部の挙動のデモンストレーションを含む。
【
図14】
図14は、微生物汚染物質を死滅させるために使用する装置の遠位端の一部を図示し、当該遠位端を少なくとも部分的に形成する可撓性材料の様々な反り度合いを描写する。
【
図15】
図15は、遠位部が、骨などのオブジェクトであって当該オブジェクトに遠位部が圧入されるオブジェクトの形状に適合するように、少なくとも部分的に非剛性材料で形成される実施形態の概念図を示す。
【
図16】
図16は、絶縁層を有していない装置の遠位部と絶縁層を有する装置の遠位部との間の電界送達の違いを概念的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
次に、微生物汚染物質を除去する例示的な装置及び方法を参照して本教示を説明する。「除去」という用語は、本開示において、単なる移転ではなく、微生物汚染物質の死滅を指すために使用されることが理解されよう。例示的な方法及びシステムは、本教示の理解を助けるために示されるものであり、いかなる形でも限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されよう。例えば、本開示は、微生物/バイオフィルムの死滅に主に焦点を当てている一方、本明細書に記載されたシステム及び方法は、他の潜在的な微生物汚染物質の死滅にも使用され得る。「組織環境」という用語は、筋肉、腱、靱帯、又は骨を含むもののこれらに限定されない、1つ以上の種類の組織を含み得る治療領域に関連して、いくつかの場所で使用されている。さらに、何れか1つの図を参照して説明された要素又は構成要素は、本教示の精神から逸脱することなく、他の図の要素若しくは構成要素又は他の同等の要素と交換され得る。
【0055】
図1を参照すると、遠位部110を備える、微生物汚染物質(図示せず)を死滅させる装置が図示されている。遠位部110は、電磁信号を微生物汚染物質の近傍に供給し、微生物汚染物質と周囲の組織との両方の電気穿孔を促進するように構成された複数の電極120を含む。好ましくは、電極120によって供給される電磁界は、パルス電界(PEF)である。現在の治療法は、微生物汚染物質又はバイオフィルムの細胞外マトリックス(ECM)の構造的一体性を破壊できず、そのため、消毒液は、フィルム内の保護された微生物と相互作用することができない。PEFは、微生物細胞に膜貫通電位を誘導し、この電位は、閾値に達すると、細孔の形成を通じて細胞膜の透過化を誘発し得る。膜貫通電位の強度が、透過性が可逆的であるか不可逆的であるかを決定する。バイオフィルムECMの不活性化は、この透過化、及び/又は、活性酸素種の生成の結果である。PEFは、微生物細胞壁の形態学的変化及び分解をさらに引き起こし、それによって微生物細胞壁の除去を可能にし得る。PEFは、また、細胞膜を横切る電界を生成し、この電界は、細胞膜に不可逆的な細孔を生成して細胞死を引き起し得る。微生物細胞は、通常、哺乳類細胞よりも小さいため、宿主組織への損傷を最小限に抑えつつ微生物細胞を標的にすることができる。膜貫通電位は、生物のサイズに比例するため、宿主組織へのあらゆる損傷を制限する細菌については、より高い電界強度が必要である。神経細胞、血管などのマクロ構造は、PEFによって損傷されない。さらに、装置によって生成された電界は、創傷床の成長及び再生を刺激し得る。
【0056】
各電極は、組織係合面130を画定する。いくつかの実施形態において、組織係合面は、組織表面に適合し、及び/又は、係合状態にあるときに信号を組織の表面の下に非侵襲的に伝送する。例えば、遠位部110が組織などの表面に接触していないとき、電極120の組織係合面130は、平面であってもよい。電極が「組織係合面」を画定する一方、これは、ゲルなどの媒体が組織自体の表面上に配置され、使用中に組織係合面が組織及び/又は媒体と接触することを妨げないことが理解されよう。従って、「非係合状態」及び「係合状態」という用語は、電極と組織表面との間に媒体が位置し得るため、電極が組織表面と直接接触する実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。従来、細菌の非侵襲的治療のための電極構成は、電極間の距離を最小化し、組織を通して電流を導くために組織/皮膚を挟むクランプタイプの、180°向かい合わせ構成であった。これは、皮膚が電極間における配置に対して順応性のある表在性創傷の治療にのみ適用され得る。いくつかの実施形態において、組織係合面130は、水平面に対して軸方向に移動可能であり得、任意で、隣接する一対の電極120の長手軸間の距離が維持、及び/又は、確定され得る。例えば、遠位部110が移動されて組織と接触しているとき、組織係合面130は、組織表面に対して軸方向に移動可能である一方、組織係合面130が移動可能な軸は上下に移動する。組織係合面130をこのように軸方向に移動するように構成することは、例示的な装置が係合状態にある間に凹凸表面上を移動することを助ける。いくつかの実施形態において、組織係合面は、鉛直面に対して軸方向に移動可能であり得る。これにより、組織係合面130と組織との間の表面積接触が増大することによって、ユーザにとっての装置の使いやすさ及びその有効性がさらに改善される。組織係合面130は、軸方向に移動可能となるように様々な異なる方法で構成され得る。様々な実施形態において、電極120は、それぞれ、弾性的に付勢され得る。一実施形態において、電極120は、それぞれ、係合接触する機構によって弾性的に付勢され得る。
【0057】
図1の実施形態において、電極120は、遠位部110の周辺に同心円状に配置された複数の円盤を備える。例示的な実施形態において、電極120は、等間隔で配置されている。ほんの一例として、電極は、互いに0.2cmだけ離間していてもよい。組織係合面130は、それぞれ、湾曲した幾何学的形状を画定し、表面接触を改善し得る。この丸い電極形状は、組織との全表面積接触を可能にし、人体の自然インピーダンスを低減して、より効率的な信号伝達を可能にする。いくつかの実施形態において、組織係合面は、表面積をさらに増大させると共に、電流が組織のより深くに伝達されることを可能にするための窪み(図示せず)を備え得る。いくつかの実施形態において、電極プラットフォームは、順応性があり、治療を意図した1つ以上の創傷領域の形状などの所望の形状に適合される。ある実施形態において、電極120は、物質の付着に対する抵抗を与える被覆、すなわち「非粘着性」被覆を備え、酸化、破片などによって引き起こされる、正しい量の電流を領域に送達する電極120の能力に影響を及ぼす電極上における層の蓄積を防ぎ得る。いくつかの実施形態では、電極が、信号伝達を改善するために被覆されている。被覆は、組織係合面130上に位置し得る。いくつかの実施形態において、電極120は、組織に対する損傷を軽減すると共に、エッジ効果を防止するための滑らかなエッジを有するように設計されている。
【0058】
図1には4つの電極120が図示されているが、他の数も想定される。例えば、1つ、2つ、3つ、4つなどの電極120を使用することが可能であり得る。限定されないものの、
図2に示す、遠位部110上の電極ピンホルダ220に取り付けられた複数の電極ピン210などの電極の代替実施形態が実現可能であるものと想定される。さらに、円盤120が
図1に示されているが、円形、楕円形、長方形、正方形、及び凹凸形状を含むもののこれらに限定されない他の形状の電極120も実現可能である。電極120は、限定されないものの、銅、金、白金、イリジウム、ステンレス鋼、銀、合金、炭素、又はその他の導電性材料などの様々な適切な材料から形成され得る。
図1では、電極が、丸い、又は、突出した形状を有するものとして図示されており、これにより、電極が、装置ヘッドから突き出して設置されることが可能になる。いくつかの実施形態において、電極は、装置ヘッドと並設され得る。他の実施形態において、電極は、信号を組織に導くための形態で装置ヘッド内に設置され得る。
図7の例示的な実施形態は、電極が2つであるパターン及び電極が3つであるパターンの構成における電極120を示す。いくつかの実施形態において、組織係合面の形状は、円形、同心円形状、直線形状、斜め形状、及び/又は、クラウン形状である。円形、楕円形、長方形、正方形、及び凹凸形状を含むもののこれらに限定されない複数の電極形状を有する例示的な構成(
図8)が実現され得る。
【0059】
例示的な実施形態において、電極120は、各電極120の周囲を少なくとも部分的に囲む絶縁材料を備える。いくつかの実施形態において、電極120は、
図11に最も良く示されているように、絶縁材料に埋め込まれている。絶縁材料を使用するこれらの構成は、少なくとも2つの隣接する組織係合面130間に電流が流れるように、電流密度が電極120間に溜まることを防ぐ上で役立ち得る。従って、絶縁材料は、電流を治療領域に導く例示的な装置の能力を改善する。
【0060】
また、
図1では、遠位部110の一端に位置するボリューム140も視認できる。ボリューム140は、表面に当接しているときに少なくとも部分的に密閉された環境を提供することによって、治療領域からの破片、微生物などの拡散を軽減し得る。いくつかの実施形態において、ボリューム140は、表面に圧力が加えられたときにボリューム140が圧力下でわずかに曲がるように、少なくとも部分的に弾性材料で形成される。ボリューム140は、限定されないものの、適切な機械的特性を備えるシリコーン又は様々なポリマーなどの様々な好適な材料で形成され得る。
【0061】
処理が行われると、バイオフィルムのマトリックス構成要素が分解し、創傷内の浮遊性細菌を放出し得る。従って、装置は、吸引手段(図示せず)も備え得、この吸引手段は、ボリューム140と併せて使用された場合、治療領域から破片、微生物などを除去する上で特に効果的である。吸引手段を助けるために、少なくとも1つの開口部が遠位部110に設けられ得る。そして、例えば、
図3に最も良く示されている、遠位部110から離れる方向へ当該開口部から導くアウトポートが設けられ得る。吸引手段は、好適には、所望の圧力まで加圧されて吸引を行い、破片、微生物などの通過を促進し得る。例えば、必要な加圧を提供するために外部のアスピレータ手段又はバキューム手段がアウトポートに接続され得る。さらに、吸引手段は、パルス送達の間、手術部位の安定した引っかかりを維持するように機能することもできる。軽い吸引下、電極120は、使用中に滑ったり、その部位から移動したりしにくい。
【0062】
有利な実施形態において、装置は、流体を微生物汚染物質の近傍に分配するように構成された分配手段をさらに備える。例えば、流体は、導電性媒体、及び/又は、生理食塩液などの消毒液を含み得る。導電性流体をPEFと共に使用することにより、創傷床の各領域への電流の伝達及び貫通がさらに最適化され得、生理食塩水又は他の導電性媒体は、PEF信号を伝播して、より広い表面積をカバーし、及び/又は、領域への信号伝達を改善することができる。任意で、ボリューム140は、導電性媒体を収容する上で役立ち得ると共に、処理された微生物/破片の未汚染部位への拡散を制限する上で役立ち得る。分配手段は、開口部と、流体を開口部へ導くと共に、治療領域上に導く導管と、を備え得る。いくつかの実施形態において、流体は、低圧で装置ヘッドに流れ込み、組織及び電極120に接触し得る。分配手段が装置に含まれている場合、流体の送達と吸引とのそれぞれのために、別個のインポート及びアウトポートが設けられる。いくつかの実施形態において、導電性流体は、信号伝達と並行して送達される。いくつかの実施形態では、領域への信号伝達を改善するために、上述したボリューム140と共に、又は、ボリューム140を伴わずに、導電性ゲルが使用される。いくつかの実施形態において、導電性流体の送達、及び/又は、加圧システムの動作は、自動システムによって制御される。いくつかの実施形態では、治療領域への導電性流体などの導電性媒体の流れを調節するために、ポンプがシステムの一部として存在する。いくつかの実施形態では、流量を調節するためのポンプに接続されたモータ/バッテリがある。モータ/バッテリは、装置の近位部の外部にあってもよい。
【0063】
異なる種類の組織は、異なるインピーダンスの値を有するため、装置の使用中に、所望の電界が微生物汚染物質に送達されることを確保するためにPEF信号の特定のパラメータを調整する必要があり得る。従って、装置は、電界送達の決定を支援するための1つ以上のインピーダンスセンサを備え得る。例えば、インピーダンスセンサ(複数可)は、図に示す電極120などの電極(複数可)を備え得る。装置は、インピーダンスセンサ(複数可)がインピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更するように構成されたコントローラを含み得る。装置、又は、装置がその一部であるシステムは、測定された値又は変化とコントローラが比較し得る、予め定められたインピーダンス値、及び/又は、インピーダンスの予め定められた閾値変化を記憶するメモリを備え得る。メモリは、特定のインピーダンス値に対応するように設定されたPEFパラメータの組も記憶し得、そして、コントローラは、治療を最適化するために、検出された特定のインピーダンス値に基づいて、1つ以上のPEFパラメータを適切に変更し得る。PEFパラメータは、電界電流、電圧、周波数、パルス種別(すなわち、波形の形状)、パルスの数、パルス間隔、及びパルス持続時間の値を含む。いくつかの実施形態において、パルス持続時間は、マイクロ秒のオーダーである。いくつかの実施形態において、パルス持続時間は、ナノ秒のオーダーである。いくつかの実施形態において、パルス間隔は、秒のオーダーである。いくつかの実施形態において、パルス間隔は、ミリ秒のオーダーである。いくつかの実施形態において、パルス種別は、方形波形、及び/又は、指数波形を含み得る。いくつかの実施形態では、電極の極性が、パルスの間で変更される。
【0064】
特定のインピーダンス値は、軟組織、骨組織などの特定の種類の組織に対応し得る。従って、コントローラは、インピーダンスセンサ(複数可)によって検出されたインピーダンス値に基づいて組織のインピーダンスを判別するようにさらに構成され得る。コントローラは、インピーダンスセンサ(複数可)から組織環境のインピーダンスを判別したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更するように構成され得る。従って、メモリは、自然な組織のインピーダンス及びトポグラフィーに基づく電界送達のためのPEFパラメータを用いて予めプログラムされ得る。例えば、メモリは、装置が組織種別Aと係合状態にあると判別されたときに適切になる組織種別Aに関連付けられたインピーダンス値に対応する一組のPEFパラメータで予めプログラムされ得る。
【0065】
図3は、近位部310に取り付けられた
図1及び
図2の装置の図示を示す。近位部310は、ユーザ用のハンドル、及び/又は、組織への取り付け手段として機能し得ると共に、任意で、流体送達と吸引とのそれぞれのための複数のアウトポート、及び/又は、複数のインポートを収容し得る。近位部310は、電極120に電力を供給する電気配線も収容し得る。いくつかの実施形態において、近位部310は、分配手段、及び/又は、PEFの供給を駆動する手段を備え得る。いくつかの実施形態において、アウトポートは、装置の上部に組み付けられ得る。いくつかの実施形態において、近位部310は、装置のハンドリングを助けるための傾斜ハンドルを有する。いくつかの実施形態において、近位部310は、ハンズフリー形式で装置を組織に結合する取り付け部を有し、例えば、ストラップ部を使用して、組織への遠位ヘッドの確実な接触を維持し得る。
【0066】
任意で、近位部310は、マルチルーメンシャフト320を少なくとも部分的に収容し得る。マルチルーメンシャフト320自体は、電気配線と流体送達導管とを収容し得る。
【0067】
遠位部110は、近位部310又はマルチルーメンシャフト320上に移動可能に取り付けられ得る。一実施形態では、玉継ぎ手が使用され得、これにより、遠位部110の円運動での自在な移動が可能になる。これにより、使用中の凹凸表面を横切った装置の移動の容易さがさらに改善される。いくつかの実施形態において、装置は、人間が制御するコンソール620を介して遠隔制御される装置610を図示する
図6に最も良く示されている、ロボット支援動作を提供するロボットシステムに組み込まれている。ロボットシステムは、装置610の動き、及び/又は、位置を制御するように構成された1つ以上のアクチュエータ630の組を含み、ロボット支援移動は、処置が行われる領域640に適合するための追加の制御を提供する。
【0068】
図4は、バイオフィルムなどの微生物汚染物質を除去する例示的な方法を図示する。この方法は、PEF信号を微生物汚染物質の近傍に供給するステップ410を含む。この方法は、任意で、インピーダンスセンサによってインピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出するステップ420を含む。インピーダンス値(又はインピーダンスの変化)がインピーダンスセンサによって検出されると、コントローラが、検出された値を、メモリに記憶されているインピーダンス値(又はインピーダンス値の変化)の組と比較し得る(ステップ430)。検出されたインピーダンス値(又は検出されたインピーダンス値の変化)が、予めプログラムされた、インピーダンス値(又はインピーダンス値の変化)のリスト内の値に厳密に一致していない場合、コントローラは、最近近似を行い得る。コントローラは、最も近い予め定められたインピーダンス値(又は最も近いインピーダンス値の変化)を、それに対応する予め定められたPEFパラメータの組に対応付け、インピーダンス値(又はインピーダンス値の変化)を検出したことに応答してPEF信号の1つ以上のパラメータを変更する(ステップ440)。PEFを微生物汚染物質の近傍に供給した結果として、微生物細胞、及び/又は、バイオフィルムの透過性を変化させる(ステップ450)。いくつかの実施形態において、予め設定されたプログラムは、ユーザ入力(存在する微生物の種類、及び/又は、創傷のサイズ、形状、部位など)と検出センサ(インピーダンス、圧力、温度、pH)とを組み合わせて最適なプログラムを定義する。いくつかの実施形態では、(インピーダンス、圧力、温度、pHなどの)センサからの入力データが、ロボットシステムによる装置の位置決めを支援する。
図6は、人間によって遠隔制御されるロボットシステムを示し、装置の位置決めは、システム上の所定の位置にあるセンサからのリアルタイムデータによって支援される。いくつかの実施形態では、装置の異なるインピーダンスセンサが、同一の組織種別上の異なる位置と、異なる組織種別(複数可)上の異なる位置と、の何れかにおいて、異なるインピーダンス値を検出し得る。従って、装置ヘッドの異なる電極について、上記のように異なるPEFパラメータが選択され得る。例えば、第1の電極Aに対応する第1のインピーダンスセンサAが第1のインピーダンス値Z
Aを検出するとともに、第2の電極Bに対応する第2のインピーダンスセンサBが第2のインピーダンス値Z
Bを検出し得る。これに応答して、第1のインピーダンス値Z
A及び第2のインピーダンス値Z
Bに対応するPEFパラメータの第1の組及び第2の組をそれぞれ第1の電極及び第2の電極のために使用して、それらの種類の組織についての、及び/又は、組織環境内のそれらの位置における一定した電界送達を確保し得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、装置は、インピーダンスの特定の閾値変化がインピーダンスセンサ(複数可)によって検出されるか、及び/又は、組織へのPEFパラメータの送達が行われるまで治療が継続される「ファイア・アンド・フォーゲット」自動フィードバックループを用いて構成され得る。これにより、治療の顕著な効果のための組織環境への電流の完全な送達が確保される。高電圧パルスの送達後のインピーダンスの低下を測定し、組織/骨の特定の領域の治療が完了したことをユーザにフィードバックしてもよい。
【0070】
代替実施形態では、出力プログラムが配信されたこと、及び/又は、インピーダンスの変化が検出されたことを示すために、インターフェイス上の視覚補助が表示される。
【0071】
インピーダンスセンサの設計及びコントローラは、(電極間の距離に基づく)パルス生成器上のパルスパラメータ設定を自動的に供給して、電極120の周囲の組織内に一定した電界信号及び均一な電界分布を送達する。いくつかの実施形態では、インピーダンスセンサが、各電流信号が送達された後のインピーダンスを評価し、一定した電界信号を送達するために生成器上のパルスパラメータ設定を自動的に調整する。
【0072】
上述したように、異なる種類の組織は、異なる値のインピーダンスを有し、そのため、所望の電界が微生物汚染物質に送達されることを確保するために、装置の使用中にPEF信号の特定のパラメータを調整する必要があり得る。特に、一定した電流がいつでも送達されることが望ましい可能性がある。
図5を参照すると、PEFの電界強度を調整する例示的なフィードバックシステム510のブロック図が示されている。広帯域インピーダンス測定値(オーム単位)が、PEF生成器520と自動的にインターフェイスして、部位に送達される電界強度を調整し得る。これにより、例示的な装置が、定電流システムを維持し、治療対象領域にわたって適切な電界強度を送達することが可能になる。
【0073】
有利には、インターフェイスシステムが、装置の送達、位置決め、及び使いやすさを支援するために使用され得る。システムは、遠位部110からのインピーダンス測定値を測定して、使用するための電極120の位置決めを受け入れる/拒否する。
【0074】
コントローラ又は装置若しくはシステムの他の構成要素によって行われる近似は、様々な方法で実行され得ることが理解されよう。例えば、検出された値がその範囲内に収まる単純な予め定められたプラスマイナス値によって、又は、他のより高度な方法によって近似を実行し得る。いくつかの実施形態において、装置は、人工知能(AI(artificial intelligence))を使用して、最適な信号の送達を促進する。いくつかの実施形態において、装置は、治療のライブフィードバックを監視し、及び/又は、設定を変更するパラメータを最適化する、コンピュータに実装されたAIアルゴリズムを含む。AIアルゴリズムは、限定されないもののインピーダンス、温度、圧力、電極間の距離などのリアルタイムデータに基づいて最適な設定を特定する。
【0075】
一実施形態において、方法は、電極120の対の極性を切り替えるステップをさらに含み得る。システム内の極性変更は、組織内の細胞成分のより効果的な破壊を可能にする。バイオフィルムの細胞への電界の方向の変更は、電気穿孔の面積を増加させることによって細胞成分の分解を最大化し得る。
【0076】
図12を参照すると、微生物汚染物質を死滅させる例示的な装置のさらなる実施形態の側面図が示されている。装置は、少なくとも2つの電極120を含む遠位部110を備える。遠位部は、玉継ぎ手1210、1220によってシャフト320に取り付けられている。
図12の実施形態では、電極が半球形状で示されているが、他の形状も可能であると想定される。例えば、
図14及び
図15に見られるように、電極120は、平坦であり、略円盤形状であってもよい。
図12における図示は、装置の追加の構成を排除することを意図したものではなく、例えば、シャフト320は、ON/OFFボタン(複数可)などの1つ以上のボタン、グリップ要素、1つのLED又は複数のLEDなどのライト(複数可)などの、
図12には図示されていない、さらなる構成を含み得る。電気配線が、シャフト320を通って延びたり、シャフト320の側面上に配置されたりし得る。装置は、シャフト320から外に延びる配線を介して外部電源に接続され得、又は、代替的に、装置は、所望に応じて、バッテリ駆動され得る。シャフト320は、組織環境内への装置の位置決めを容易にし、治療のために組織環境と接触している装置の少なくともある程度の安定化を提供することもできる。
【0077】
ここで
図13を参照すると、装置の遠位部110が少なくとも部分的に可撓性材料、展性材料などの非剛性材料で形成される実施形態の2つの図が示されている。非剛性材料は、何ら限定されないものの熱可塑性ポリウレタン(TPU)などの当業者に知られているいくつかの材料のうち1つから選択され得る。矢印1310によって示された、装置の長さに沿って近位端から遠位部へユーザによって加えられた力が、遠位部110の形状を、遠位部110を形成する材料の利点により変化させる。遠位部を
図3、
図9A、
図9B、
図10A、
図10B、及び
図12に図示されたシャフト320などのシャフトに接続する機能を果たし得る玉継ぎ手の玉1220も視認できる。
【0078】
図14は、装置の遠位部110が少なくとも部分的に可撓性材料、展性材料などの非剛性材料で形成される実施形態の3つの図を示す。左側から始まって、遠位部110は、略平坦であり、その形状は変形されていない。中央及び右側の図は、様々な程度に形状を変化させる遠位部110の能力を示している。
図15は、遠位部110が少なくとも部分的に非剛性材料で形成される実施形態のさらなる例示的な例を示す。円筒1510は、骨などの組織表面を表し、遠位部110及び電極120がこの組織表面に接触するように装置のユーザ(図示せず)によって配置され得、これにより遠位部110が変形される。
【0079】
図16を参照すると、絶縁層を有していない微生物汚染物質を死滅させる装置の遠位部110と、絶縁層を有する当該装置の遠位部と、の間の電界送達の差が示されている。装置の長さを遠位部から近位端へ見下ろした上面図が示されている。遠位部の電極の側面図も示されている。本発明者らは、有利には、2つの電極の周囲を少なくとも部分的に囲む絶縁材料を設けると、組織の表面の下における一対の電極間のU字形の信号の生成が促進されることを発見した。これは、2つの電極を備えるが絶縁されていないシステムとの比較であり、このシステムは、表面的効果をもたらす。電極を少なくとも部分的に囲む絶縁材料は、例えば
図8に示された電極構成のうち1つで、2つ以上などの1つより多い数の電極に対して実装され得ることが理解されよう。いくつかの実施形態において、電界は約1000V/cmであり、これにより、信号の深さが表面下約4mmとなる。この深さは、生成された電界の強さに応じて変動する(つまり、電圧が増加すると、深さが増す)。
【0080】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に様々な修正を加え得ることが当業者には理解されよう。装置の動作及びその使用法は、単なる例として示された電圧、周波数、電力などの特定の値を参照して説明されていることが当業者には理解されるであろうし、他の値が使用され得ることが理解されよう。例えば、実験的な設定が本開示の範囲内で拡大縮小又は変更されると、値が変化し得る。さらに、例示的な実施形態に可動部品がないことは、実際には単なる例であることが当業者には理解されよう。このように、本教示は、添付の特許請求の範囲に照らして必要とみなされる限りにおいてのみ限定されるべきであることが理解されよう。
【0081】
同様に、本明細書で使用される場合、「備える/備えている」という用語は、記載された構成体、整数、ステップ、又は構成要素の存在を特定するために使用されるものの、1つ以上の追加の構成体、整数、ステップ、構成要素、又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0082】
バイオフィルムの治療のための装置の例示的な構成を説明してきたものの、そのような構成は、本発明をそのような構成に限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されよう。バイオフィルムの治療のための方法は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせで実装されたコントローラによって制御され得る。一形態において、方法は、実行可能プログラムとしてソフトウェアで実装され、パーソナルコンピュータ(PC;IBM互換、Apple互換、又はその他)、携帯情報端末、ワークステーション、ミニコンピュータ、又はメインフレームコンピュータなどの1つ以上の専用又は汎用のデジタルコンピュータ(複数可)によって実行される。コントローラは、ソフトウェアモジュールが常駐するか、又は、部分的に常駐するサーバ又はコンピュータによって実装され得る。
【0083】
一般に、ハードウェアアーキテクチャに関して、そのようなコンピュータは、当業者にはよく理解されるように、ローカルインターフェイスを介して通信可能に結合されているプロセッサ、メモリ、及び、1つ以上の入力並びに/若しくは出力(I/O(input and/or output))装置(若しくは周辺機器)を含むであろう。ローカルインターフェイスは、例えば、当該技術分野で知られているように、1つ以上のバス、又は他の有線若しくは無線接続であり得るものの、これらに限定されない。ローカルインターフェイスは、通信を可能にするために、コントローラ、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、リピータ、レシーバなどの追加要素を有し得る。さらに、ローカルインターフェイスは、他のコンピュータ構成要素間の適切な通信を可能にするために、アドレス、制御、及び/又は、データ接続を含み得る。
【0084】
プロセッサ(複数可)は、限定されないものの、導電性溶液の供給を駆動すること、PEFの供給を制御すること、PEFパラメータを調整することなどといった、バイオフィルムなどの微生物汚染物質の治療のための方法の機能を実行するようにプログラムされ得る。プロセッサ(複数可)は、ソフトウェア、特にメモリに記憶されたソフトウェアを実行するハードウェアデバイスである。プロセッサ(複数可)は、任意のカスタムメイド若しくは市販のプロセッサ、主処理装置(CPU)、コンピュータに関連付けられたいくつかのプロセッサに含まれる補助プロセッサ、(マイクロチップ又はチップセットの形式の)半導体ベースのマイクロプロセッサ、マクロプロセッサ、又は一般にソフトウェア命令を実行する任意の装置であり得る。
【0085】
メモリは、プロセッサ(複数可)に関連付けられており、揮発性メモリ素子(例えば、(DRAM、SRAM、SDRAMなどの)RAM(random access memory))及び不揮発性メモリ素子(例えば、ROM、ハードドライブ、テープ、CDROMなど)のうち何れか1つ又は複数の組み合わせを含み得る。さらに、メモリは、電子的、磁気的、光学的、及び/又は、他の種類の記憶媒体を内蔵し得る。メモリは、様々な構成要素が互いに離れて配置されているものの、プロセッサ(複数可)によって依然としてアクセスされる分散アーキテクチャを有し得る。
【0086】
メモリ内のソフトウェアは、1つ以上の別個のプログラムを含み得る。別個のプログラムは、モジュールの機能を実装するために論理機能を実装する実行可能命令の順序付きリストを含む。上述した例では、メモリ内のソフトウェアが、方法の1つ以上の構成要素を含み、好適なオペレーティングシステム(O/S(operating system)))上で実行可能である。
【0087】
本開示は、ソースプログラム、実行可能プログラム(オブジェクトコード)、スクリプト、又は、実行されるべき命令の組を含む任意の他のエンティティとして提供された構成要素を含み得る。ソースプログラムの場合、プログラムは、O/Sと連携して適切に動作するように、コンパイラ、アセンブラ、インタプリタなどを介して翻訳される必要があり、このコンパイラ、アセンブラ、インタプリタなどは、メモリ内に含まれていてもよいし含まれていなくてもよい。さらに、本教示に従って実装された方法は、例えば、限定されないものの、C、C++、Pascal、Basic、Fortran、Cobol、Perl、Java、Adaなどの、(a)データ及びメソッドのクラスを有するオブジェクト指向プログラミング言語、又は、(b)ルーチン、サブルーチン、並びに/若しくは、関数を有する手続き型プログラミング言語として表現され得る。
【0088】
方法がソフトウェアで実装される場合、そのようなソフトウェアは、任意のコンピュータ関連システム若しくは方法によって使用されるか、又は、任意のコンピュータ関連システム若しくは方法と連携して使用される、任意のコンピュータ可読媒体上に記憶され得ることに留意されたい。この教示の文脈において、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ関連システム若しくは方法によって使用されるか、又は、コンピュータ関連システム若しくは方法と連携して使用されるコンピュータプログラムを含むか、又は、記憶することができる電子的な装置若しくは手段、磁気的な装置若しくは手段、光学的な装置若しくは手段、又は他の物理的な装置若しくは手段である。このような構成は、コンピュータベースのシステム、プロセッサを含むシステム、又は、命令を命令実行システム、装置、若しくは装置からフェッチし、命令を実行することができる他のシステムなどの命令実行システム、機器、若しくは装置によって使用されるか、又は、命令実行システム、機器、若しくは装置と連携して使用される任意のコンピュータ可読媒体で具現化され得る。本開示の文脈において、「コンピュータ可読媒体」は、命令実行システム、装置、若しくは装置によって使用されるか、又は、命令実行システム、装置、若しくは装置と連携して使用されるプログラムを記憶、通信、伝播、又は伝送できる任意の手段であり得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線式、若しくは半導体式のシステム、機器、装置、若しくは伝播媒体であり得るものの、これらに限定されない。当業者には理解されるように、図中のプロセスの説明又はブロックは、プロセス内の特定の論理機能又はステップを実装するための1つ以上の実行可能命令を含むモジュール、セグメント、又はコードの一部を表すものとして理解されるべきである。
【0089】
本開示の実施形態の上記の詳細な説明は、網羅的であることを意図したものではなく、本開示を開示された形態に厳密に限定することを意図したものでもない。本開示の具体例を説明目的で上述したものの、本開示の範囲内で様々な修正が可能であることが当業者には認識されよう。例えば、プロセス及びブロックは特定の順序で示されているものの、異なる実装では、異なる順序で、ルーチンを実行したり、ブロックを有するシステムを使用したりすることができ、一部のプロセス又はブロックは、削除、補足、追加、移動、分離、結合、及び/又は、修正されて、異なる組み合わせ又はサブコンビネーションを提供し得る。これらのプロセス又はブロックのそれぞれは、様々な代替的方法で実装され得る。また、プロセス又はブロックは、順番に実行されるものとして示される場合があるが、これらのプロセス又はブロックは、代わりに、並行して実行若しくは実装されてもよく、又は、異なる時点で実行されてもよい。スループットを増大させ、処理要件を軽減する方法として、プロセス又はブロックの結果を、非永続ストアに保持することもできる。
【0090】
(付記)
(付記1)
微生物汚染物質を死滅させる装置であって、
パルス電界(PEF(pulsed electric field))信号を前記微生物汚染物質の近傍の組織表面上に供給するように構成された複数の電極を含む遠位部であって、前記PEFは前記組織表面の下に貫通する、遠位部と、
前記複数の電極に電気的に接続され、前記PEF信号を生成するパルス生成器と、
所望の電界を送達するためのPEFパラメータの決定を支援するように構成された少なくとも1つのインピーダンスセンサと、
前記少なくとも1つのインピーダンスセンサがインピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出したことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、前記パルス生成器の動作を制御して、前記微生物汚染物質を死滅させるための前記所望の電界を送達するように構成されたコントローラと、
を備える、
装置。
【0091】
(付記2)
前記複数の電極は、水平面に対して、及び/又は、鉛直面に対して軸方向に移動可能である、
付記1に記載の装置。
【0092】
(付記3)
前記PEFを前記組織の前記表面の下に導くために少なくとも1つの電極の周囲を少なくとも部分的に囲む絶縁材料をさらに備える、
付記1又は2に記載の装置。
【0093】
(付記4)
前記PEFを前記組織の前記表面の下に導くために複数の電極の周囲を囲む絶縁材料を備える、
付記3に記載の装置。
【0094】
(付記5)
前記複数の電極は、前記PEFを前記組織の前記表面の下に導く絶縁材料に埋め込まれており、及び/又は、前記複数の電極は、物体(matter)の付着に対する抵抗を与える被覆を備える、
付記1又は2に記載の装置。
【0095】
(付記6)
前記複数の電極は、物質の付着に対する抵抗を与える被覆を備える、
付記1から5の何れか一つに記載の装置。
【0096】
(付記7)
前記コントローラは、前記少なくとも1つのインピーダンスセンサによって検出されたインピーダンス値に基づいて組織の電気的特性を判別するように構成されており、及び/又は、前記コントローラは、組織の電気的特性を判別したことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、前記微生物汚染物質を死滅させるための前記所望の電界を送達するように構成されている、
付記1から6の何れか一つに記載の装置。
【0097】
(付記8)
前記微生物汚染物質の近傍において吸引を行う吸引手段をさらに備える、
付記1から7の何れか一つに記載の装置。
【0098】
(付記9)
前記遠位部は、
a.表面に当接したときに少なくとも部分的に密閉された環境を提供するように構成されたボリューム(volume)、又は、
b.表面に当接したときに少なくとも部分的に密閉された環境を提供するように構成されたボリュームであって、少なくとも部分的に弾性材料で形成されている、ボリューム、
をさらに備える、
付記1から8の何れか一つに記載の装置。
【0099】
(付記10)
前記複数の電極は、前記装置ヘッドに対して突出し、及び/若しくは、平坦であり、並びに/又は、平滑表面若しくは凹凸表面を備える、
付記1から9の何れか一つに記載の装置。
【0100】
(付記11)
流体を前記微生物汚染物質の近傍に分配するように構成された分配手段をさらに備え、
任意で、前記流体は、導電性流体、及び/又は、生理食塩液などの消毒液である、
付記1から10の何れか一つに記載の装置。
【0101】
(付記12)
前記装置ヘッドの前記遠位部は、順応性/可撓性材料で少なくとも部分的に形成され、前記複数の電極が押圧されたときに、前記複数の電極それぞれの前記組織係合面が前記組織表面に当接して前記電気的環境を維持するように凸凹なトポグラフィーに適合する、
付記1から11の何れか一つに記載の装置。
【0102】
(付記13)
前記装置の前記遠位部は、温度、圧力、pH、及び前記複数の電極の位置のうち1つ又は複数の組み合わせを含む前記物理的環境を検出する1つのセンサ又は複数のセンサをさらに備える、
付記1から12の何れか一つに記載の装置。
【0103】
(付記14)
導電性媒体を可変速度で受け取るポンプをさらに備え、任意で、流量の制御のための前記ポンプにモータ/バッテリが接続されており、前記装置が近位部を備える場合、任意で、前記モータ/バッテリは、前記装置の前記近位部から離隔している、
付記1から13の何れか一つに記載の装置。
【0104】
(付記15)
前記複数の電極は、リターン電極と端子電極とを含み、前記コントローラは、前記リターン電極及び前記端子電極の極性を切り替えるように構成されている、
付記1から14の何れか一つに記載の装置。
【0105】
(付記16)
前記遠位部が取り付けられるシャフトをさらに備え、前記シャフトは、玉継ぎ手によって前記遠位部に接続されている、
付記1から15の何れか一つに記載の装置。
【0106】
(付記17)
微生物汚染物質を死滅させる方法であって、
複数の電極によって、パルス電界(PEF(pulsed electric field))信号を前記微生物汚染物質の近傍の組織表面上に供給するステップであって、前記PEFは前記組織表面の下に貫通する、ステップと、
少なくとも1つのインピーダンスセンサによって、所望の電界を送達するためのPEFパラメータを決定するステップと、
コントローラによって、前記少なくとも1つのインピーダンスセンサによりインピーダンス値又はインピーダンスの変化が検出されたことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを調整し、前記微生物汚染物質を死滅させるための前記所望の電界を送達するステップと、
を含む、
方法。
【0107】
(付記18)
前記少なくとも1つのインピーダンスセンサによって検出されたインピーダンス値に基づいて組織の電気的特性を判別するステップをさらに含む、
付記17に記載の方法。
【0108】
(付記19)
コントローラによって、組織の電気的特性を判別したことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを変更し、前記微生物汚染物質を死滅させるための前記所望の電界を送達するステップをさらに含む、
付記17又は18に記載の方法。
【0109】
(付記20)
使用中に一対の前記電極の極性を反転させるステップをさらに含む、
付記17から19の何れか一つに記載の方法。
【0110】
(付記21)
パルス電界(PEF(pulsed electric field))信号を組織に非侵襲的に導き、成長因子を刺激すると共に、血管新生を促進することによって創傷床を再生し、創傷治癒プロセスを助ける方法であって、PEF信号を前記創傷の近傍に供給するステップを含む、
方法。
【0111】
(付記22)
インピーダンスセンサによって、インピーダンス値又はインピーダンスの変化を検出するステップと、
前記インピーダンス値又は前記インピーダンスの変化を検出したことに応答して前記PEF信号の1つ以上のパラメータを変更するステップと、
をさらに含む、
付記21に記載の方法。
【0112】
(付記23)
PEF信号を供給し、細胞膜に細孔を形成すると共に、細胞への治療の送達を促進するステップをさらに含む、
付記21又は22に記載の方法。
【国際調査報告】