(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】治療モニタリングおよび試験設計のための方法とシステム
(51)【国際特許分類】
G16B 40/00 20190101AFI20240718BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALN20240718BHJP
【FI】
G16B40/00
C12Q1/6837 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579441
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2022034375
(87)【国際公開番号】W WO2022271724
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523482086
【氏名又は名称】サイファー メディシン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアシアン,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】アクマエフ,ヴャチェスラフ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイタロフ,アイヴァン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
疾患を患う対象の疾患遺伝子発現シグネチャーを、非疾患発現シグネチャー(例えば、非疾患対象の遺伝子発現)に戻すように決定された疾患遺伝子発現シグネチャーを同定するための方法およびシステムが記載されている。さらに、非疾患対象の遺伝子発現に向かった疾患遺伝子発現シグネチャーの定量可能な変化を示す疾患を有する対象を同定する工程を含む、試験(例えば、臨床試験)を設計する方法が本明細書に提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患、障害、または疾病を患う対象の治療に対する応答性を定量化するために疾患遺伝子発現シグネチャーを決定する方法であって、前記方法が、
同じ前記疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを受信する工程と、
前記対象のコホートを、前記遺伝子発現データに少なくとも部分的に基づいて2つ以上の群に層別化する工程と、
対象の前記2つ以上の群と非疾患対象の群との間の遺伝子発現における差を算出する工程と、
前記対象の2つ以上の群と前記非疾患対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択する工程と、
前記疾患候補遺伝子を含む疾患遺伝子のセットをコンパイルする工程と
前記疾患遺伝子発現シグネチャーを決定するために、前記疾患遺伝子のセットの少なくともサブセットを選択する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記疾患候補遺伝子を生物学的ネットワーク上へマッピングする工程と、互いにまたは前記疾患候補遺伝子と有意な関連性を有する、前記生物学的ネットワーク上の隣接する遺伝子を選択する工程とをさらに含み、前記疾患遺伝子のセットが、前記疾患候補遺伝子および前記隣接する遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的ネットワークがヒトインタラクトームを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記隣接する遺伝子が、互いにまたは前記疾患候補遺伝子と有意なサブネットワークを形成する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記隣接する遺伝子が、機械学習アルゴリズムによって同定される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記機械学習アルゴリズムがランダムウォークを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患、障害、または疾病が、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、ギラン・バレー症候群、シェーグレン症候群、強皮症、白斑、双極性障害、グレーブス病、統合失調症、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、またはそれらの組合せを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患、障害、または疾病が、潰瘍性大腸炎を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患、障害、または疾病が、関節リウマチを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患、障害、または疾病が、アルツハイマー病を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患、障害、または疾病が、多発性硬化症を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程が、ランダムであるか、または以前の対象が前記治療に対して応答するかどうかに少なくとも部分的に基づいている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記治療が、表1から選択されるメンバーを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療が抗TNF治療を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象のコホートが、治療応答性について評価されている対象と同じ前記疾患、障害、または疾病を患っている、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記層別化する工程が、同様の遺伝子発現を有する同じコホートの対象をグループ化することをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
機械学習分類器を訓練するために前記疾患遺伝子発現シグネチャーを使用する工程をさらに含み、訓練された機械学習分類器が、前記疾患、障害、または疾病を患う試験対象の前記治療に対する応答性もしくは非応答性を、前記試験対象の遺伝子発現データの分析に少なくとも部分的に基づいて予測するように構成される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の精度で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の感度で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の特異度で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の陽性的中率で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の陰性的中率で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の真陽性率で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の真陰性率で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の曲線下面積(AUC)で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記訓練された機械学習分類器が、前記治療に対する前記試験対象の応答性を予測するとき、前記試験対象に、前記治療を治療有効量で投与する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記訓練された機械学習分類器が、前記治療に対する前記試験対象の非応答性を予測するとき、前記試験対象に、前記治療とは異なる第2の治療を治療有効量で投与する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
試験対象に、(i)治療に対する前記試験対象の応答性を予測するために疾患遺伝子発現シグネチャーを分析する、訓練された機械学習分類器に少なくとも部分的に基づいた、治療、または、(ii)前記治療とは異なる第2の治療であって、前記治療に対する前記試験対象の非応答性を予測するために前記疾患遺伝子発現シグネチャーを分析する、前記訓練された機械学習分類器に少なくとも部分的に基づいた、治療を治療有効量で投与する工程を含む方法であって、
前記疾患遺伝子発現シグネチャーが、
疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートからの遺伝子発現データを受信することと、
前記対象のコホートを、前記遺伝子発現データに少なくとも部分的に基づいて2つ以上の群に層別化することと、
対象の前記2つ以上の群と非疾患対象の群との間の遺伝子発現における差を算出することと、
前記対象の2つ以上の群と前記非疾患対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することと、
前記疾患候補遺伝子を含む疾患遺伝子のセットをコンパイルすることと、
前記疾患遺伝子発現シグネチャーを決定するために、前記疾患遺伝子のセットの少なくともサブセットを選択することと
によって少なくとも部分的に決定される、方法。
【請求項29】
前記疾患遺伝子発現シグネチャーが、さらに、前記疾患候補遺伝子を生物学的ネットワーク上へマッピングすることと、互いにまたは前記疾患候補遺伝子と有意な関連性を有する、前記生物学的ネットワーク上の隣接する遺伝子を選択することとによって少なくとも部分的に決定され、前記疾患遺伝子のセットが、前記疾患候補遺伝子および前記隣接する遺伝子を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記生物学的ネットワークがヒトインタラクトームを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記隣接する遺伝子が、互いにまたは前記疾患候補遺伝子と有意なサブネットワークを形成する、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記隣接する遺伝子が、機械学習アルゴリズムによって同定される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記機械学習アルゴリズムがランダムウォークを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患、障害、または疾病が、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、ギラン・バレー症候群、シェーグレン症候群、強皮症、白斑、双極性障害、グレーブス病、統合失調症、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、またはそれらの組合せを含む、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患、障害、または疾病が、潰瘍性大腸炎を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患、障害、または疾病が、関節リウマチを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患、障害、または疾病が、アルツハイマー病を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患、障害、または疾病が、多発性硬化症を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程が、ランダムであるか、または以前の対象が前記治療に対して応答するかどうかに少なくとも部分的に基づいている、請求項28~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記治療が、表1から選択されるメンバーを含む、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療が抗TNF治療を含む、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記層別化する工程が、同様の遺伝子発現を有する同じコホートの対象をグループ化することをさらに含む、請求項28~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の精度で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項28に記載の方法。
【請求項44】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の感度で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項28に記載の方法。
【請求項45】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の特異度で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項28に記載の方法。
【請求項46】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の陽性的中率で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項28に記載の方法。
【請求項47】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の陰性的中率で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項28に記載の方法。
【請求項48】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の真陽性率で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項28に記載の方法。
【請求項49】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の真陰性率で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項28に記載の方法。
【請求項50】
前記訓練された機械学習分類器が、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の曲線下面積(AUC)で、前記試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される、請求項28に記載の方法。
【請求項51】
疾患、障害、または疾病を患う対象のための治療に対する応答を検証する方法であって、前記方法が、
前記治療の投与後の前記対象の疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を分析する工程であって、前記疾患遺伝子発現シグネチャーが、前記治療に対する応答性を定量化するために決定される、工程
を含む、方法。
【請求項52】
前記疾患遺伝子発現シグネチャーが、
前記疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートからの遺伝子発現データを受信することと、
前記対象のコホートを、前記遺伝子発現データに少なくとも部分的に基づいて2つ以上の群に層別化することと、
対象の前記2つ以上の群と非疾患対象の群との間の遺伝子発現における差を算出することと、
前記対象の2つ以上の群と前記非疾患対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することと、
前記疾患候補遺伝子を含む疾患遺伝子のセットをコンパイルすることと、
前記疾患遺伝子発現シグネチャーを決定するために、前記疾患遺伝子のセットの少なくともサブセットを選択することと
によって少なくとも部分的に決定される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
疾患、障害、または疾病を患う対象の治療有効性をモニタリングする方法であって、前記方法が、治療の投与後の疾患遺伝子発現シグネチャーの変化をモニタリングする工程を含み、前記疾患遺伝子発現シグネチャーが、
前記対象と同じ疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを分析することと、
前記対象のコホートを、前記遺伝子発現データに基づいて2つ以上の群に層別化することと、
対象の前記2つ以上の群と非疾患対象の群との間の遺伝子発現における差を決定することと、
前記対象の2つ以上の群と前記非疾患対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することと、
前記疾患候補遺伝子を含む疾患遺伝子のセットをコンパイルすることと、
前記疾患遺伝子発現シグネチャーを決定するために、前記疾患遺伝子のセットの少なくともサブセットを選択することと
によって少なくとも部分的に決定される、方法。
【請求項54】
前記疾患遺伝子発現シグネチャーが、さらに、前記疾患候補遺伝子を生物学的ネットワーク上へマッピングすることと、互いにまたは前記疾患候補遺伝子と有意な関連性を有する、前記生物学的ネットワーク上の隣接する遺伝子を選択することとによって少なくとも部分的に決定され、前記疾患遺伝子のセットが、前記疾患候補遺伝子および前記隣接する遺伝子を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記生物学的ネットワークがヒトインタラクトームを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記隣接する遺伝子が、互いにまたは前記疾患候補遺伝子と有意なサブネットワークを形成する、請求項53または54に記載の方法。
【請求項57】
前記隣接する遺伝子が、機械学習プロセスによって選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記疾患、障害、または疾病が、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、ギラン・バレー症候群、シェーグレン症候群、強皮症、白斑、双極性障害、グレーブス病、統合失調症、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、またはそれらの組合せを含む、請求項53~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程が、ランダムであるか、または以前の対象が前記治療に対して応答するかどうかに少なくとも部分的に基づいている、請求項53~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記治療が、表1から選択されるメンバーを含む、請求項53~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記治療が抗TNF治療を含む、請求項53~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記層別化する工程が、同様の遺伝子発現を有する同じコホートの対象をグループ化することをさらに含む、請求項53~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
臨床試験のための試験対象を、前記試験対象の前記疾患遺伝子発現シグネチャーが、非疾患対象の疾患遺伝子発現シグネチャーに向かった定量可能な変化を示すかどうかに少なくとも部分的に基づいて、選択する工程をさらに含む、請求項51~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
臨床試験のための対象を同定および選択する方法であって、
対象のコホートの遺伝子発現データを受信する工程と、
疾患遺伝子発現シグネチャーの存在を検出するために前記遺伝子発現データを分析する工程と、
前記対象のコホートに、治療を少なくとも1回用量投与する工程と、
非疾患対象の遺伝子発現に対する前記疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を同定する工程と、
健康な対象の遺伝子発現に向かった前記疾患遺伝子発現シグネチャーの定量可能な変化を示す、前記臨床試験のための対象を選択する工程であって、前記疾患遺伝子発現シグネチャーが、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法によって決定される、工程と
を含む、方法。
【請求項65】
コンピューティングデバイスのプロセッサと、
命令が記憶されたメモリであって、前記命令が、前記プロセッサによって実行されると、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法を前記プロセッサに実施させる、メモリと
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年6月22日に出願された米国仮特許出願第63/213,431号と、2022年4月8日に出願された米国仮特許出願第63/329,008号の利益を主張するものであり、これらはそれぞれ全体として参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
多くの複雑な疾患に対する治療応答は、研究者や医療関係者にとって不明な点が多いままであり得る。単一の層別化因子またはバイオマーカーは、ある治療が特定の患者を処置することにおいて有効かどうかを判定するのに不十分な場合がある。むしろ、自己免疫疾患、癌などの多くの疾患が、多数の生物学的サブシステムに影響を及ぼす。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、Frohlich et al,BMC Med,16,150:1122-1127(2018)を参照)。患者のための処置の同定に対する応答性アプローチ(例えば、試行錯誤アプローチ)は高価であり得、かつ有害な副作用、潜在的な疾患進行、および適切な処置の遅延の危険性を招き得る。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、Mathur&Sutton,Biomed.Rep.,7:3-5(2017)を参照)。
【0003】
さらに、臨床試験において個別応答対治療有効性を判定できないことは、治療から利益を得られずに単に危険な副作用にさらされる対象にとっては高価かつ危険であり得る。対象が個体ベースの特定の治療に対する非レスポンダーであると判定されると、臨床試験から除外することができるが、そのような除外の遅延によって、試験責任者の時間および費用の損失と同様に重度の副作用の危険性を増大させる場合がある。どの対象が臨床試験で早期に応答性または非応答性であり得るかを予測することは、利用可能な予測バイオマーカーがない場合、困難であり得るか、または必ずしも可能ではない場合がある。代わりに、臨床的特徴の変化が、対象が治療に対して応答しているかどうかを判定するために使用されてもよいが、そのような変化は時間がかかることがあり、特に個々の対象の自己申告によって記録される変化については、本質的に主観的になることがある。
【発明の概要】
【0004】
現在まで、特定の対象の治療の適切性を決定することに対する多くのアプローチは、多重療法を試み、臨床的特徴の評価により患者応答を測定しようとする応答性アプローチに依存している場合がある。これらのアプローチは必要な処置を遅延させる場合があり、応答の臨床的特徴を検査のみすることにより、患者に対する治療の実際の応答性を誤って特徴付ける場合がある。したがって、治療に対する応答性を確実に定量化する、患者に対して個別化された処置を提供する方法およびシステムが必要とされている。
【0005】
本開示は、患者を分子レベルで処置すること、例えば、疾患対象の遺伝子発現プロファイルのサブセットを、健康な対象の遺伝子発現プロファイルに類似するように、先見的に変換する治療を提供することが、応答性アプローチによる、または単独で汎用的なバイオマーカーを探し求めることよりも、薬物の分子応答の評価および有効な治療の同定のためのより良い測定基準であり得るという洞察を包含する方法およびシステムを提供する。提供される技術は、特に、提供者が、その特定の患者のために働き得る特定の方法および処置の様式を同定することを可能にし、かつ提供者が、臨床的特徴または患者の自己申告などの主観的な尺度に依存せずに、疾患進行および処置応答をモニタリングできるようになる。いくつかの実施形態では、疾患を有する患者の特定の遺伝子発現パターンの変化は、治療に対する応答を示し、疾患を有する患者におけるこの遺伝子発現パターンの遺伝子発現の逆転は、疾患対象の健康の改善を示す(「疾患遺伝子発現シグネチャー」)。そのようなアプローチは、患者が、治療に対する応答を示すバイオマーカーまたは発現プロファイルを有しているかどうかを、そうでない他の患者と比較して同定するために、疾患を患う患者間の遺伝子発現の差異を比較する他の方法(例えば、コホート内検査)とは異なっている。
【0006】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーにおけるいくつかの遺伝子またはすべての遺伝子の遺伝子発現の逆転は、疾患対象の遺伝子発現が、健康な対照の対象の遺伝子発現に類似するようにさせ得る。疾患遺伝子発現シグネチャー内の遺伝子の遺伝子発現のいくつかまたはすべて(例えば、すべてまたは実質的にすべて)の逆転は、疾患の退縮、および対象が健康な状態に戻り得ることを示すことがある。いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーの逆転は、疾患遺伝子発現シグネチャーの1つ以上の遺伝子を調節する治療によって達成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、疾患対象と、疾患対象のサブセットと、健康な対象との間で差次的に発現された遺伝子を同定する機械学習アルゴリズムを使用して有意に同定される。さらに、本開示は、疾患対象の遺伝子発現プロファイル内の特定の遺伝子が、健康な対象の遺伝子発現プロファイルと比較した場合に、健康な対象と比較して疾患対象の差次的発現遺伝子とは異なる、治療の潜在的標的をもたらすという洞察を包含する方法およびシステムを提供する。すなわち、他の方法は、疾患対象対健康な対象の差次的発現遺伝子に焦点を当てているが、代わりに、本開示の方法およびシステムは、これらの差次的発現遺伝子との有意な関連性を有する(したがって影響を及ぼす)が、疾患対象と健康な対象との間ではそれら自体が差次的に発現され得ない治療の標的を同定し得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療の投与後の疾患遺伝子発現シグネチャーの遺伝子発現の変化の分析によって、疾患を患う対象を、特定の治療に対するレスポンダーまたは非レスポンダーとして層別化することができるという洞察を包含する方法およびシステムを提供する。そのような変化は、治療に対する応答性を判定するために使用され得る臨床的特徴における変化よりも早く観察可能であり得る(例えば、非レスポンダーは、時間とコストがあまり失われないうちに、治療を中止または臨床試験から除外できる)。
【0009】
一態様では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療に対する応答性を定量化するために疾患遺伝子発現シグネチャーを判定する方法を提供し、上記方法は、同じ疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを受信する工程と、対象のコホートを、遺伝子発現データに少なくとも部分的に基づいて2つ以上の群に層別化する工程と、2つ以上の対象の群と非疾患対象の群との間の遺伝子発現における差を算出する工程と、2つ以上の対象の群と非疾患対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択する工程と、疾患候補遺伝子を含む疾患遺伝子のセットをコンパイルする工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーを決定するために、少なくとも疾患遺伝子のセットのサブセットを選択する工程とを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法は、生物学的ネットワーク上へ疾患候補遺伝子をマッピングする工程と、互いにまたは疾患候補遺伝子と有意な関連性を有する、生物学的ネットワーク上の隣接する遺伝子を選択する工程とをさらに含み、疾患遺伝子のセットは、疾患候補遺伝子および隣接する遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、生物学的ネットワークはヒトインタラクトームを含む。いくつかの実施形態では、隣接する遺伝子は、互いにまたは疾患候補遺伝子と有意なサブネットワークを形成する。いくつかの実施形態では、隣接する遺伝子は、機械学習アルゴリズムを介して同定される。いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムはランダムウォークを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、ギラン・バレー症候群、シェーグレン症候群、強皮症、白斑、双極性障害、グレーブス病、統合失調症、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎を含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、関節リウマチを含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、アルツハイマー病を含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、多発性硬化症を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程は、無作為であるか、または先の対象が治療に対して応答するかどうかに少なくとも部分的に基づいている。いくつかの実施形態では、治療は、表1から選択されるメンバーを含む。いくつかの実施形態では、治療は抗TNF治療を含む。いくつかの実施形態では、対象のコホートは、治療応答性について評価されている対象と同じ疾患、障害、または疾病を患っている。いくつかの実施形態では、層別化する工程は、同様の遺伝子発現を有する同じコホートの対象をグループ化することをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、方法は、機械学習分類器を訓練するために疾患遺伝子発現シグネチャーを使用する工程をさらに含み、訓練された機械学習分類器は、疾患、障害、または疾病を患う試験対象の治療に対する応答性もしくは非応答性を、試験対象の遺伝子発現データの分析に少なくとも部分的に基づいて、予測するように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の精度で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の感度で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の特異度で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の陽性的中率で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の陰性的中率で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の真陽性率で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の真陰性率で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の曲線下面積(AUC)で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、訓練された機械学習分類器が、治療に対する試験対象の応答性を予測するとき、試験対象に治療を治療有効量で投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、訓練された機械学習分類器が、治療に対する試験対象の非応答性を予測するとき、試験対象に、上記治療とは異なる第2の治療を治療有効量で投与する工程をさらに含む。
【0016】
別の態様では、本開示は、試験対象に、(i)治療であって、治療に対する試験対象の応答性を予測するために、疾患遺伝子発現シグネチャーを分析する訓練された機械学習分類器に少なくとも部分的に基づいた、治療、または(ii)上記治療とは異なる第2の治療であって、治療に対する試験対象の非応答性を予測するために疾患遺伝子発現シグネチャーを分析する訓練された機械学習分類器に少なくとも部分的に基づいた、治療を治療有効量で投与する工程を含む方法を提供し、疾患遺伝子発現シグネチャーは、疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを受信することと、対象のコホートを、遺伝子発現データに少なくとも部分的に基づいて2つ以上の群に層別化することと、2つ以上の対象の群と非疾患対象の群との間の遺伝子発現の差を算出することと、2つ以上の対象の群と非疾患対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することと、疾患候補遺伝子を含む疾患遺伝子のセットをコンパイルすることと、疾患遺伝子発現シグネチャーを判定するために、少なくとも疾患遺伝子のセットのサブセットを選択することとによって部分的に判定される。
【0017】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、さらに生物学的ネットワーク上に疾患候補遺伝子をマッピングすることと、互いにまたは疾患候補遺伝子と有意な関連性を有する、生物学的ネットワーク上の隣接する遺伝子を選択することとによって少なくとも部分的に判定され、疾患遺伝子のセットは、疾患候補遺伝子および隣接する遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、生物学的ネットワークはヒトインタラクトームを含む。いくつかの実施形態では、隣接する遺伝子は、互いに、または疾患候補遺伝子と有意なサブネットワークを形成する。いくつかの実施形態では、隣接する遺伝子は、機械学習アルゴリズムを介して同定される。いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムはランダムウォークを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、ギラン・バレー症候群、シェーグレン症候群、強皮症、白斑、双極性障害、グレーブス病、統合失調症、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎を含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、関節リウマチを含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、アルツハイマー病を含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、多発性硬化症を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程は、無作為であるか、または先の対象が治療に対して応答するかどうかに少なくとも部分的に基づいている。いくつかの実施形態では、治療は、表1から選択されるメンバーを含む。いくつかの実施形態では、治療は抗TNF治療を含む。いくつかの実施形態では、層別化する工程は、同様の遺伝子発現を有する同じコホートの対象をグループ化することをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の精度で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の感度で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の特異度で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の陽性的中率で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の陰性的中率で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の真陽性率で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の真陰性率で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習分類器は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の曲線下面積(AUC)で、試験対象の応答性または非応答性を予測するように構成される。
【0021】
別の態様では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療に対する応答を検証する方法を提供し、上記方法は、治療の投与後の対象の疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を分析する工程を含み、疾患遺伝子発現シグネチャーは、治療に対する応答性を定量化するために決定される。
【0022】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを受信することと、対象のコホートを、遺伝子発現データに少なくとも部分的に基づいて2つ以上の群に層別化することと、2つ以上の対象の群と非疾患対象の群との間の遺伝子発現の差を算出することと、2つ以上の対象の群と非疾患対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することと、疾患候補遺伝子を含む疾患遺伝子のセットをコンパイルすることと、疾患遺伝子発現シグネチャーを決定するために、少なくとも疾患遺伝子のセットのサブセットを選択することとによって少なくとも部分的に決定される。
【0023】
別の態様では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療有効性をモニタリングする方法を提供し、上記方法は、治療の投与後の疾患遺伝子発現シグネチャーの変化をモニタリングする工程を含み、疾患遺伝子発現シグネチャーは、対象と同じ疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを分析することと、対象のコホートを、遺伝子発現データに基づいて2つ以上の群に層別化することと、2つ以上の対象の群と非疾患対象の群との間の遺伝子発現の差を判定することと、2つ以上の対象の群と非疾患対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することと、疾患候補遺伝子を含む疾患遺伝子のセットをコンパイルすることと、疾患遺伝子発現シグネチャーを判定するために、少なくとも疾患遺伝子のセットのサブセットを選択することとによって少なくとも部分的に決定される。
【0024】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、さらに生物学的ネットワーク上へ疾患候補遺伝子をマッピングすることと、互いにまたは疾患候補遺伝子と有意な関連性を有する、生物学的ネットワーク上の隣接する遺伝子を選択することとによって少なくとも部分的に決定され、疾患遺伝子のセットは、疾患候補遺伝子および隣接する遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、生物学的ネットワークはヒトインタラクトームを含む。いくつかの実施形態では、隣接する遺伝子は、互いにまたは疾患候補遺伝子と有意なサブネットワークを形成する。いくつかの実施形態では、隣接する遺伝子は、機械学習プロセスによって選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、ギラン・バレー症候群、シェーグレン症候群、強皮症、白斑、双極性障害、グレーブス病、統合失調症、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎を含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、関節リウマチを含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、アルツハイマー病を含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、多発性硬化症を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程は、無作為であるか、または先の対象が治療に対して応答するかどうかに少なくとも部分的に基づいている。いくつかの実施形態では、治療は、表1から選択されるメンバーを含む。いくつかの実施形態では、治療は抗TNF治療を含む。いくつかの実施形態では、層別化する工程は、同様の遺伝子発現を有する同じコホートの対象をグループ化することをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、方法は、臨床試験のための試験対象を、試験対象の疾患遺伝子発現シグネチャーが、非疾患対象の疾患遺伝子発現シグネチャーに向かった定量可能な変化を示すかどうかに少なくとも部分的に基づいて、選択する工程をさらに含む。
【0028】
別の態様では、本開示は、対象のコホートの遺伝子発現データを受信する工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーの存在を検出するために遺伝子発現データを分析する工程と、対象のコホートに、治療を少なくとも1回用量投与する工程と、非疾患対象の遺伝子発現に対する疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を同定する工程と、健康な対象の遺伝子発現に向かった疾患遺伝子発現シグネチャーの定量可能な変化を示す、臨床試験のための対象を選択する工程であって、疾患遺伝子発現シグネチャーが、本明細書で提供される方法のいずれか1つによって判定される、工程とを含む、臨床試験のための対象を同定および選択する方法を提供する。
【0029】
別の態様では、本開示は、コンピューティングデバイスのプロセッサと、命令が記憶されたメモリであって、命令が、プロセッサによって実行されると、本明細書で提供される方法のいずれかをプロセッサに実施させる、メモリとを含むシステムを提供する。
【0030】
別の態様では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療に対する応答性を定量化するために疾患の遺伝子発現シグネチャーを決定する方法を提供し、上記方法は、同じ疾患、障害、または疾病を患っている対象(例えば、治療応答性について評価されている対象と同じ疾患、障害、または疾病を患っている)のコホートの遺伝子発現データを受信する工程と、遺伝子発現データに基づいて対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程(例えば、同様の遺伝子発現を有するコホートの対象をグループ化すること)と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現の差を算出する工程と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択する工程と、生物学的なネットワーク(例えば、ヒトインタラクトーム)上に疾患候補遺伝子をマッピングする工程と、互いに有意な関連性(例えば、有意なサブネットワークを形成する)、または疾患候補遺伝子に有意な関連性を有する隣接する遺伝子(例えば、隣接ノード上、例えば、ヒトインタラクトームマップ上の遺伝子)を選択する工程と、疾患候補遺伝子および隣接する遺伝子を含む疾患遺伝子のリストをコンパイルする工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供するために、疾患遺伝子のリストからいくつかの遺伝子またはすべての遺伝子を選択する工程とを含む、方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態では、隣接する遺伝子は、機械学習アルゴリズムを介して同定される。
【0032】
いくつかの実施形態では、機械学習プロセスはランダムウォークを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、ギラン・バレー症候群、シェーグレン症候群、強皮症、白斑、双極性障害、グレーブス病、統合失調症、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、またはそれらの組合せを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程は、無作為であるか、または先の対象が治療に対して応答するかどうかに少なくとも部分的に基づいている。
【0035】
いくつかの実施形態では、治療は、表1から選択されるメンバーを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、治療は抗TNF治療を含む。
【0037】
別の態様では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療に対する応答を検証する方法を提供し、上記方法は、治療の投与後の対象の疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を分析する工程であって、疾患遺伝子発現シグネチャーが、治療に対する応答性を定量化するために決定される、工程を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、対象と同じ疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを受信する工程と、遺伝子発現データに基づいて対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程(例えば、同様の遺伝子発現を有するコホートの対象をある群にグループ化すること)と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現の差を算出する工程と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択する工程と、生物学的なネットワーク(例えば、ヒトインタラクトーム)上に疾患候補遺伝子をマッピングする工程と、疾患候補遺伝子と有意な関連性を有する隣接する遺伝子(例えば、隣接ノード上、例えば、ヒトインタラクトームマップ上の遺伝子)を選択する工程と、疾患候補遺伝子および隣接する遺伝子を含む疾患遺伝子のリストをコンパイルする工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供するために、疾患遺伝子のリストからいくつかの遺伝子またはすべての遺伝子を選択する工程とによって部分的に導出される。
【0039】
別の態様では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療有効性をモニタリングする方法提供し、上記方法は、治療の投与後の疾患遺伝子発現シグネチャーの変化をモニタリングする工程を含み、疾患遺伝子発現シグネチャーは、対象と同じ疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを分析する工程と、遺伝子発現データに基づいて対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程(例えば、同様の遺伝子発現を有するコホートの対象をある群にグループ化すること)と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現の差を判定する工程と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択する工程と、生物学的なネットワーク(例えば、ヒトインタラクトーム)上に疾患候補遺伝子をマッピングする工程と、疾患候補遺伝子と有意な関連性を有する隣接する遺伝子(例えば、隣接ノード上、例えば、ヒトインタラクトームマップ上の遺伝子)を選択する工程と、疾患候補遺伝子および隣接する遺伝子を含む疾患遺伝子のリストをコンパイルする工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供するために、疾患遺伝子のリストからいくつかの遺伝子またはすべての遺伝子を選択する工程とを含むプロセスによって部分的に導出される。
【0040】
いくつかの実施形態では、隣接する遺伝子は、機械学習アルゴリズムによって選択される。
【0041】
いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、ギラン・バレー症候群、シェーグレン症候群、強皮症、白斑、双極性障害、グレーブス病、統合失調症、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、またはそれらの組合せを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程は、無作為であるか、または先のの対象が治療に対して応答するかどうかに少なくとも部分的に基づいている。
【0043】
いくつかの実施形態では、治療は、表1から選択されるメンバーを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、治療は抗TNF治療を含む。
【0045】
別の態様では、本開示は、コホート対象の遺伝子発現データを受信する工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーの存在を検出するために遺伝子発現データを分析する工程と、対象に、治療を少なくとも1回用量投与する工程と、健康な対象の遺伝子発現に対する疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を同定する工程と、健康な対象の遺伝子発現に向かった疾患遺伝子発現シグネチャーの定量可能な変化を示す、臨床試験のための対象を選択する工程とを含む、臨床試験のための対象を同定および選択する方法を提供し、疾患遺伝子発現シグネチャーは、本明細書に記載される方法によって決定される。
【0046】
別の態様では、本開示は、疾患を患う対象の治療に対する応答性を判定または検証するためのシステムを提供し、上記システムは、コンピューティングデバイスのプロセッサと、命令が記憶されたメモリであって、命令が、プロセッサによって実行されると、本明細書に記載されるいずれかの方法の操作をプロセッサに実施させる、メモリとを含む。
【0047】
本開示の別の態様は、1つ以上のコンピュータプロセッサによる実行に際し、上記または本明細書の他の場所に記載の方法のいずれかを実行する、機械実行可能コードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【0048】
本開示の別の態様は、1つ以上のコンピュータプロセッサと、それに連結されたコンピュータメモリとを備えたシステムを提供する。このコンピュータメモリは、1つ以上のコンピュータプロセッサによる実行に際して、上記または本明細書中の他の場所に記載される方法のいずれかを実行する機械実行可能コードを含む。
【0049】
本開示のさらなる態様および利点は、以下の詳細な説明から当業者に容易に明白となり、ここでは、本開示の例示的な実施形態のみが示され、説明されている。理解されるように、本開示は、他の実施形態および異なる実施形態においても可能であり、その様々な詳細は、そのすべてが本開示から逸脱することなく様々な明白な点で修正することができる。したがって、図面および説明は本来、例示的なものとしてみなされ、限定的なものであるとはみなされない。
【0050】
参照による援用
本明細書で言及される刊行物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ参照により援用されるように具体的かつ個々に示されるのと同じ程度にまで、参照により本明細書に援用される。参照により援用される出版物および特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示に矛盾する程度まで、本明細書は、そのような矛盾のある題材に取って代わること、または上記題材よりも優先することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】疾患発現シグネチャーを同定するための例示的ワークフローを描く。
【
図2】健康な対照と同様に、ベースラインの、および処置後の処置に対するレスポンダーおよび非レスポンダーの遺伝子発現プロファイルの二次元的表現を説明するプロットを描く。
【
図3A】非レスポンダーのバイオマーカーセットが、レスポンダーのバイオマーカーセット内にほとんど完全に含有されており、各試験コホートについてレスポンダーのバイオマーカーセットが、非レスポンダーのバイオマーカーセットより概して2倍大きかったことを説明する、一連の重複グラフである(
図3Aは、実施例1の試験1を表し、
図3Bは、実施例1の試験2を表す)。
【
図3B】非レスポンダーのバイオマーカーセットが、レスポンダーのバイオマーカーセット内にほとんど完全に含有されており、各試験コホートについてレスポンダーのバイオマーカーセットが、非レスポンダーのバイオマーカーセットより概して2倍大きかったことを説明する、一連の重複グラフである(
図3Aは、実施例1の試験1を表し、
図3Bは、実施例1の試験2を表す)。
【
図4】様々な実施形態で使用するための例示的なネットワーク環境およびコンピューティングデバイスである。は様々な実施形態において例ネットワーク環境および使用用コンピューティングデバイスである。
【
図5】本明細書で提供される様々な技術を実装するために使用され得るコンピューティングデバイス(500)およびモバイルコンピューティングデバイス(550)の一例を描く。
【
図6】生物学的ネットワーク(例えば、ヒトインタラクトームマップ)上でクラスタリングおよび接続された、抗TNF処置に応答してアップレギュレートおよびダウンレギュレートされたノードを説明するプロットを描く。
【
図7】モジュールトライアッドのフレームワークの概略を描く。(a)ヒトインタラクトーム上のUCモジュールトライアッドの発見のパイプライン:応答モジュール(Response module)は、TNFi治療(インフリキシマブおよびゴリムマブ)に対して応答した、活動性UC患者における処置前後の差次的発現遺伝子に由来し、遺伝子型モジュール(Genotype module)は、ヒトインタラクトーム上のUCに関連した遺伝子のマッピングによって導出され、処置モジュール(Treatment module)は、HT29細胞株における実験データを使用する応答モジュール遺伝子の遺伝子発現の変化をもたらす小分子化合物の選択、およびそれらのタンパク質標的への化合物のマッピングにより導出される。発見されたモジュールトライアッドに基づいた標的の優先順位:(b)、(d)遺伝子型モジュールとのノードのトポロジー的関連性が、すべての遺伝子型モジュールノードに対するノードの平均最短経路長を算出して、それを、zスコア(近接性)を使用して遺伝子型モジュールと同じサイズのランダム化された関連サブネットワークへの最短経路長の平均経験分布と比較することによって測定され、(c)、(e)処置モジュールに対するノードの機能的類似性は、全ての処置モジュールノードに対するノードの平均拡散状態距離(Diffusion state distance、DSD)を算出し、それを、Zスコア(選択性)を使用して処置モジュールと同じサイズの無作為化された関連サブネットワークに対する平均DSDの経験分布と比較することによって測定される。全てのノードは、近接性および選択性に基づいてランク付けされ、それらのランクは、最終目標ランク付けを得るためにランクプロダクト(rank product)を使用して組み合わせられる。
【
図8】TNFi治療前後の正常組織対照およびUC活動性患者の遺伝子発現プロファイルを描く。遺伝子発現プロファイルのUMAP埋込みの最初の2つの座標は、(a)インフリキシマブTNFi処置、(b)ゴリムマブTNFi処置についての活動性UC患者と正常対照との間の545個の差次的発現遺伝子のセットに基づく。
【
図9】拡散状態距離(DSD)に基づいた4つの複雑な疾患について承認された標的の回復を描く。(a)アルツハイマー病、(b)潰瘍性大腸炎、(c)関節リウマチ、(d)多発性硬化症の処置のための、既知の承認された標的の回復についての受信者動作特性(receiver operator characteristic:ROC)曲線。個々のROC曲線は、既知の承認された標的およびそのDSDから残りのHIノードに与えられた、承認された標的の回復を示す。赤色の線は、個々のROC曲線にわたって平均することにより得られた平均ROC曲線を表し、曲線下面積(AUC)は平均のROC曲線について報告される。
【
図10】モジュールトライアッド標的優先順位のインシリコ検証を描く。(a)強調された、UC処置について承認された23個の標的を用いたHIノードの選択性-近接性散布図。より選択的かつより近位の標的は、散布図の左下に向かって位置する。(b)遺伝子型モジュールへの近接性、処置モジュールへの選択性、その両方の組合せ、および曲線下の対応する面積(AUC)を伴う、応答モジュールに対するローカルラディアリティ(local radiality)を使用して、承認されたUC標的の回復についての受信者動作特性(ROC)曲線。(c)UCのために開始された標的と、UCのための前臨床および臨床試験開発段階にある標的との組み合わせた選択性-近接性ランクのバイオリンプロット。
【
図11】DE分析の概略を描く。(a)レスポンダー、非レスポンダー、および正常対照の異なる対の状態を比較することによって得られた差次的発現遺伝子セットの概略図であって、DE遺伝子セット名は、明記された論文全体を通して使用される、(B):インフリキシマブおよびゴリムマブ試験におけるR、NR、およびRBAセットのベン図、(C):試験にわたるR、NR、およびRBAセットの相互重複。
【
図12】健康対照に対してベースラインでレスポンダーおよび非レスポンダー中で差次的に発現された遺伝子についてのKEGG経路濃縮分析を描く。(a)インフリキシマブベースおよびゴリムマブベースのコホートを併合した後の健康対照に対する、ベースラインでレスポンダー(R)および非レスポンダー(NR)の差次的発現遺伝子のベン図。(b)KEGG内の同じ遺伝子セットのベン図を示す経路データベース。(c)KEGG経路は、R排除遺伝子よりも有意に多くのNR排除遺伝子も有するNR遺伝子セットで有意に濃縮された。
【
図13】薬物当たりの標的の数を描く。UC処置のために承認または開発されている薬物の大部分は、最大4つの同時標的を有する。本発明者らは、分析において4つより多くの標的で薬物を取り除いた。
【
図14】様々な方法の分析または操作を実行するようにプログラムされるか、あるいは構成されるコンピュータシステム(1401)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の様々な実施形態が本明細書中に示され、記載されてきたが、そのような実施形態が一例として提供されているにすぎないことは当業者に明らかであろう。多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に想到されることもある。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、利用されることもあることを理解されたい。
【0053】
例えば、治療に対する応答の決定および検証のための有益なシステムおよび方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本開示は、健康な対象と比較して、差次的に発現されたときに治療に対する応答を示す、遺伝子のセットを同定するためのシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、臨床的特徴の変化に依存せずに、分子レベルで治療に対するレスポンダーおよび非レスポンダーを同定するための(例えば、臨床試験中の)患者層別化のためのシステムおよび方法を提供する。
【0054】
定義
投与:本明細書で使用されるとき、「投与」という用語は、概して、例えば、組成物である、または組成物に含まれる、または組成物によって他の方法で送達される、薬剤の送達を達成するための、対象または系への組成物の投与を指す。
【0055】
薬剤:本明細書で使用されるとき、「薬剤」という用語は、概して、実体(例えば、脂質、金属、核酸、ポリペプチド、多糖類、低分子など、またはそれらの複合体、組合せ、混合物、あるいは系[例えば、細胞、組織、生物])、または現象(例えば、熱、電流または電場、磁力または磁場など)を指す。
【0056】
アミノ酸:本明細書で使用されるとき、「アミノ酸」という用語は、概して、例えば、1つ以上のペプチド結合の形成を通じて、ポリペプチド鎖に組み込むことができる任意の化合物または物質を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、自然発生のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、D-アミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、L-アミノ酸である。本明細書で使用されるとき、「標準アミノ酸」という用語は、自然発生ペプチドに一般的に見られる20種のL-アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸」とは、それが天然供給源に存在するか、または見ることができるかどうかに関係なく、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中のカルボキシ末端アミノ酸またはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸は、上記の一般構造と比較して、構造修飾を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般構造と比較して、メチル化、アミド化、アセチル化、ペグ化、グリコシル化、リン酸化、または置換(例えば、アミノ基、カルボン酸基、1つ以上のプロトン、または水酸基の)により修飾されていてもよい。いくつかの実施形態では、そのような修飾は、例えば、他の同一の非修飾アミノ酸を含むものと比較して、修飾アミノ酸を含むポリペプチドの安定性または循環半減期を変化させることができる。いくつかの実施形態では、そのような修飾は、他の同一の非修飾アミノ酸を含むものと比較して、修飾アミノ酸を含むポリペプチドの関連する活性を有意に変化させない。いくつかの実施形態では、「アミノ酸」という用語は、遊離アミノ酸を指すのに使用されてもよく、いくつかの実施形態では、それは、ポリペプチドのアミノ酸残基、例えば、ポリペプチド内のアミノ酸残基を指すために使用されてもよい。
【0057】
アナログ:本明細書で使用されるとき、「アナログ」という用語は、概して、参照物質と1つ以上の特定の構造的特徴、要素、成分、または部分を共有する物質を意味する。いくつかの実施形態では、「アナログ」は、例えば、コアまたはコンセンサス構造を共有する参照物質と著しい構造的類似性を示すが、特定の離散的な方法においても異なる。いくつかの実施形態では、アナログは、例えば、参照物質の化学的操作によって、参照物質から生成することができる物質である。いくつかの実施形態では、アナログは、参照物質を生成する合成プロセスと実質的に類似する(例えば、複数の働きを共有する)合成プロセスの実行を介して生成することができる物質である。いくつかの実施形態では、アナログは、基準物質を生成するために使用される合成プロセスとは異なる合成プロセスの実行を介して、生成されるか、または生成することができる。
【0058】
アンタゴニスト:本明細書で使用されるとき、「アンタゴニスト」という用語は、概して、その存在、レベル、程度、タイプ、または形態が、標的のレベルまたは活性の低下に関連付けられる薬剤または状態を指す。アンタゴニストは、例えば、低分子、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、金属、または関連する阻害活性を示す任意の他の実体を含む任意の化学クラスの薬剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、アンタゴニストは、その標的に直接結合するという意味で、「直接アンタゴニスト」であってよく、いくつかの実施形態では、アンタゴニストは、それがその標的に直接結合すること以外の機構によってその影響を及ぼすという点で「間接アンタゴニスト」であってもよく、例えば、標的の調節因子と相互に作用することによって、標的のレベルまたは活性が変化する。いくつかの実施形態では、「アンタゴニスト」は「阻害剤」と呼ばれることがある。
【0059】
抗体:本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、概して、特定の標的抗原に対する特異的な結合をもたらすのに十分な正規の免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドを指す。自然界で産生されるインタクトな抗体は、「Y字」構造と一般に呼ばれるものに互いに会合している、2つの同一の重鎖ポリペプチド(それぞれ約50kD)と2つの同一の軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kD)で構成される約150kDの四量体作用物質である。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(それぞれ約110アミノ酸長)-アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)、次いでCH1、CH2、およびカルボキシ末端CH3(Yのステムの基部に位置する)の3つの定常ドメインから構成される。短い領域または「スイッチ」は、重鎖可変領域と定常領域を接続している。「ヒンジ」はCH2およびCH3ドメインと抗体の残りの部分を接続する。このヒンジ領域の2つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体において2つの重鎖ポリペプチドを互いに接続させる。それぞれの軽鎖は、2つのドメイン-アミノ末端可変(VL)ドメインと、それに付随する、別の「スイッチ」によって互いに隔てられたカルボキシ末端定常(CL)ドメインとで構成される。インタクトな抗体の四量体は、重鎖と軽鎖が1つのジスルフィド結合によって互いに結合している2つの重鎖-軽鎖二量体で構成され、2つの別のジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を接続させ、その結果、二量体は互いに連結され、四量体が形成される。自然産生抗体も、CH2ドメイン上などでグリコシル化されている。天然抗体の各ドメインは、圧縮された逆平行βバレルで互いに対して詰め込まれた2つのβシート(例えば、3本鎖、4本鎖、または5本鎖のシート)から形成された「免疫グロブリンフォールド」によって特徴づけられる構造を有する。各可変ドメインは、3つの超可変ループ(「相補性決定領域」)(CDR1、CDR2、およびCDR3)と、4つのある程度不変の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含有する。天然抗体が折り畳まれるとき、FR領域はドメインの構造的フレームワークを提供するβシートを形成し、重鎖と軽鎖の両方のCDRループ領域は3次元空間で一緒になり、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位を形成する。自然発生抗体のFc領域は補体系の要素に結合し、例えば、細胞傷害を媒介するエフェクター細胞を含むエフェクター細胞上の受容体にも結合する。Fc受容体に対するFc領域の親和性または他の結合特性は、グリコシル化または他の修飾によって調節することができる。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生または利用される抗体としては、修飾または操作されたそのようなグリコシル化を有するFcドメインを含む、グリコシル化Fcドメインが挙げられる。本開示の目的のために、特定の実施形態では、天然抗体に見られるような十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチド複合体は、そのようなポリペプチドが天然産生であるか(例えば、抗原に応答する生物によって生成される)、または組換え工学、化学合成、あるいは他の人工システムもしくは方法によって生成されるかどうかにかかわらず、「抗体」と呼ばれるか、または「抗体」として使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒトの抗体に特徴的な定常領域配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体配列要素は、ヒト化、霊長類化、キメラなどである。さらに、本明細書で使用されるような「抗体」という用語は、適切な実施形態では、(他に記載がないか、文脈から明らかでない限り)代替提示における抗体構造的および機能的な特徴を利用するための開発された構築物またはフォーマットのいずれかを指すことができる。例えば、実施形態では、本開示に従って利用される抗体としては、限定されないが、インタクトなIgA、IgG、IgE、またはIgM抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など)、抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fd’フラグメント、Fdフラグメント、および単離CDRまたはそれらのセット、単鎖Fv、ポリペプチド-Fc融合体、単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはそのフラグメントなどのサメ単一ドメイン抗体)、カメレオン抗体、マスク抗体(例えば、Probodies(登録商標)、小モジュール免疫医薬品(「SMIPs(商標)」)、単鎖またはタンデムジアボディ(TandAb(登録商標)、VHH、アンチカリン(Anticalins(登録商標))、ナノボディ(Nanobodies(登録商標))ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標)、Avimers(登録商標)、DART、TCR様抗体、Adnectins(登録商標)、アフィリン(Affilins(登録商標))、トランス-ボディ(Trans-bodies(登録商標))、アフィボディ(Affibodies(登録商標))、トリマー(Trimer)X(登録商標)、マイクロプロテイン、Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、および、KALBITOR(登録商標)から選択されるフォーマットである。いくつかの実施形態では、抗体は、天然に産生される場合に有し得る共有結合修飾(例えば、糖鎖の結合)を欠くこともある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合修飾(例えば、糖鎖、ペイロード[例えば、検出可能な部分、治療的部分、触媒的部分など]、または他のペンダント基[例えば、ポリ-エチレングリコールなど]の結合)を含んでもよい。
【0060】
関連付け:本明細書で使用されるとき、2つの事象または実体は、概して、一方の存在、レベル、程度、タイプ、または形態が他方のそれと相関する場合、この用語が本明細書で用いられるように、互いに「関連付け」られる。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝的シグネチャー、代謝物、微生物など)は、その存在、レベル、または形態が、(例えば、関連集団にわたって)特定の疾患、障害、または疾病の発生率または感受性と相関する場合、その疾患、障害、または疾病に関連付けられると考えられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の実体は、それらが互いに物理的に近接し、および/または、近接したままとなるように、直接的または間接的に相互作用する場合、互いに物理的に「関連付け」られる。いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連付けられた2つ以上の実体は、互いに共有結合しており、いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連付けられる2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、およびそれらの組合せによって非共有結合的に関連付けられる。
【0061】
生物学的試料:本明細書で使用されるとき、「生物学的試料」という用語は、概して、本明細書に記載されるように、関心対象の生体源(例えば、組織または生物または細胞培養物)から得られたまたは由来する試料を指す。いくつかの実施形態では、関心対象の源は、動物またはヒトなどの生物を含んでいる。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、生物学的組織または流体であるか、あるいは生物学的組織または流体を含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、骨髄、血液、血液細胞、腹水、組織または細針生検試料、細胞含有体液、遊離浮遊核酸、痰、唾液、尿、脳脊髄液、腹水、胸水、糞便、リンパ液、婦人科液、皮膚スワブ、膣スワブ、経口スワブ、鼻腔スワブ、洗液または洗浄液、例えば、管洗浄液または気管支肺胞洗浄液、吸引液、擦過物、骨髄検体、組織生検材料、手術検体、糞便、他の体液、分泌物、または排泄物、またはそれらからの細胞などであってもよく、またはこれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、個体から得られた細胞であるか、または上記細胞を含む。いくつかの実施形態では、得られた細胞は、試料が得られた個体からの細胞であるか、または上記細胞を含む。いくつかの実施形態では、試料は、任意の適切な方法によって関心対象の源から直接得られた「一次試料」である。例えば、いくつかの実施形態では、一次生物学的試料は、生検(例えば、細針吸引または組織生検)、外科手術、体液など(例えば血液、リンパ、糞便など)の採取からなる群から選択される方法によって得られる。いくつかの実施形態では、用語「試料」は、一次試料を処理することによって(例えば、1つ以上の成分を除去することまたは1つ以上の薬剤を添加することによって)得られる調製物を指す。例えば、半透膜を用いた濾過である。このような「処理された試料」は、例えば、試料から抽出された、あるいは一次試料をmRNAの増幅または逆転写、特定の成分の単離、または精製などの技術に供することによって得られた、核酸またはタンパク質を含んでもよい。
【0062】
生物学的ネットワーク:本明細書で使用されるとき、用語「生物学的ネットワーク」は、概して、ウェブ全体にリンクされる種単位等の全体にリンクされるサブユニット(例えば、「ノード」)を有する、生物学的システムに適用される任意のネットワークを指す。いくつかの実施形態では、生物学的ネットワークは、タンパク質間相互作用ネットワーク(PPI)であり、タンパク質がノードであり、それらの相互作用はエッジである、細胞内に存在するタンパク質間の相互作用を表す。いくつかの実施形態では、PPI中のノード間の接続は実験的に証明される。いくつかの実施形態では、ノード間の接続は、実験的に検証され、数学的に計算された組合せである。いくつかの実施形態では、生物学的ネットワークはヒトインタラクトーム(タンパク質相互作用情報ならびに遺伝子発現および共発現、タンパク質の細胞共局在化、遺伝情報、代謝経路およびシグナル伝達経路などを含む、ヒト細胞において生じる実験的に誘導された相互作用のネットワーク)である。いくつかの実施形態では、生物学的ネットワークは、遺伝子調節ネットワーク、遺伝子共発現ネットワーク、代謝ネットワーク、またはシグナル伝達ネットワークである。
【0063】
併用療法:本明細書で使用されるとき、「併用療法」という用語は、概して、対象が2つ以上の治療レジメン(例えば、2つ以上の治療剤)に同時に曝露される臨床介入を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療レジメンは同時に施されてもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療レジメンは、順次施されてもよい(例えば、第2のレジメンの任意の用量の投与前に第1のレジメンが投与される)。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療レジメンは、重複する投薬レジメンで施される。いくつかの実施形態では、併用療法の投与は、他の薬剤またはモダリティを受ける対象への1つ以上の治療薬またはモダリティの投与を含むことができる。いくつかの実施形態では、併用療法は、必ずしも個々の薬剤が単一の組成物において一緒に投与されること(または、必ずしも同時に投与されること)を必要としない。いくつかの実施形態では、併用療法の2つ以上の治療剤またはモダリティは、例えば、別々の組成物において、別々の投与経路(例えば、1つの薬剤は経口的に、別の薬剤は静脈内に)、または異なる時点で、対象に別々に投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療剤は、組合せ組成物中で、または組合せ化合物中でさえ(例えば、単一の化学複合体または共有結合実体の一部として)、同じ投与経路を介して、または同時に投与され得る。
【0064】
比較可能:本明細書で使用されるとき、「比較可能」という用語は、概して、互いに同一ではないかもしれないが、当業者が、観察された差異または類似性に基づいて合理的に結論を導き出すことができると理解するように、比較を可能にするほどに十分類似している2つ以上の薬剤、実体、状況、条件のセットなどを指す。いくつかの実施形態では、条件、状況、個体、または集団の比較可能なセットは、複数の実質的に同一の特徴および1つまたは少数の変化した特徴によって特徴付けられる。様々な手法では、2つ以上のそのようなエージェント、エンティティ、状況、条件のセットなどが同等であると見なされるために、任意の所与の状況において異なる程度の同一性が必要とされ得る。例えば、様々な手法では、状況、個体、または集団の異なるセットの下で、またはと共に得られた結果または観察された現象の違いは、変化したそれらの特徴の変動に起因するかまたはそれを示しているという妥当な結論を保証するのに十分な数および種類の実質的に同一の特徴によって特徴づけられるとき、状況、個体、または集団のセットは互いに比較可能であると理解する。
【0065】
~に対応する:本明細書で使用されるとき、「~に対応する」という表現は、概して、「対応する」属性が明らかになるように、合理的に比較できるほどの十分な特徴を共有する2つの実体、事象、または現象間の関係を指す。例えば、いくつかの実施形態では、この用語は、適切な参照化合物または組成物との比較を通じて、化合物または組成物中の構造要素の位置または同一性を指定するために、化合物または組成物を参照して使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー中の単量体残基(例えば、ポリペプチド中のアミノ酸残基またはポリヌクレオチド中の核酸残基)は、適切な参照ポリマー中の残基に「対応する」ものとして同定されてもよい。例えば、当業者は、単純化のために、ポリペプチド中の残基は、しばしば、参照関連ポリペプチドに基づく正準番号付けシステムを用いて指定され、そのため、例えば、190位置の残基に「対応する」アミノ酸は、実際には特定のアミノ酸鎖の190番目のアミノ酸でなくてもよく、むしろ参照ポリペプチド中の190位置で見られる残基に対応するを理解し、様々な手法は「対応する」アミノ酸を同定するために使用されてもよい。例えば、様々な手法は、例えば、本開示に従って、ポリペプチドまたは核酸中の「対応」残基を同定するために利用することができる、ソフトウエアプログラム、例えば、BLAST、CS-BLAST、CUSASW++、DIAMOND、FASTA、GGSEARCH/GLSEARCH、Genoogle、HMMER、HHpred/HHsearch、IDF、Infernal、KLAST、USEARCH、parasail、PSI-BLAST、PSI-Search、ScalaBLAST、Sequilab、SAM、SSEARCH、SWAPHI、SWAPHI-LS、SWIMM、またはSWIPEなどを含む、異なる配列アライメント戦略を使用してもよい。
【0066】
投薬レジメンまたは治療レジメン:「投薬レジメン」および「治療レジメン」という用語は、概して、期間によって分離され得る、個々に対象に投与される単位用量のセット(例えば、複数の)を指すために使用され得る。いくつかの実施形態では、所定の治療薬は、1つ以上の用量を含むことができる推奨される投薬レジメンを有する。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、それぞれが他の用量から時間的に分けられた、複数の用量を含む。いくつかの実施形態では、個々の用量は、同じ長さの時間によって互いに分けられており、いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数の用量と、個々の用量をわける少なくとも2つの異なる期間とを含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメン内の全ての用量は、同じ単位投与量である。いくつかの実施形態では、投薬レジメン内の異なる用量は、異なる量である。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、第1投与量の第1用量と、その後の、第1投与量とは異なる第2の投与量の1つ以上の追加の用量とを含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、第1の投与量の第1の用量と、その後の第1の投与量と同じ第2の投与量の1つ以上の追加の用量とを含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、関連する集団にわたって投与された場合、有益な結果と相関する(例えば、治療用投薬レジメンである)。
【0067】
改善した、増加した、または減少した:本明細書で使用されるとき、「改善した」、「増加した」、または「減少した」という用語、あるいは文法的に比較可能なその比較用語は、概して、比較可能な基準測定値に対する相対的な値を示す。例えば、いくつかの実施形態では、関心対象の薬剤で達成された評価値は、比較可能な基準薬剤で得られた評価値と比較して「改善」される場合がある。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、関心対象の対象またはシステムにおいて達成された評価値は、異なる条件下(例えば、関心対象の薬剤の投与などのイベントの前または後)で同じ対象またはシステムにおいて、あるいは異なる比較可能な対象において(例えば、関心対象の特定の疾患、障害、または疾病の1つ以上の指標の存在下において、あるいはある条件または薬剤への事前の曝露において、関心対象の対象またはシステムとは異なる比較可能な対象またはシステムにおいて)得られたものに対して「改善」されてもよい。
【0068】
患者または対象:本明細書で使用されるとき、「患者」または「対象」という用語は、概して、提供される組成物が、例えば、実験目的、診断目的、予防目的、美容目的、または治療目的のために投与されるかまたは投与され得る任意の生物を指す。一部の患者または対象は、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、またはヒトなどの哺乳動物)を含む。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。患者または対象は、1つ以上の障害または疾病を患っているか、または罹患しやすい。いくつかの実施形態では、患者または対象は、障害または疾病の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者または対象は、1つ以上の障害または疾病と診断されている。いくつかの実施形態では、患者または対象は、疾患、障害、または疾病を診断または処置するための特定の治療を受けているか、または受けたことがある。
【0069】
医薬組成物:本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」という用語は、概して、1つ以上の薬学的に許容可能な担体とともに製剤化された活性薬剤を指す。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、関連する対象への治療レジメンにおける投与に適切な単位投与量(例えば、投与した場合に所定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示すことが実証されている量)において、または異なる比較可能な対象(例えば、関心対象の特定の疾患、障害、または疾病の1つ以上の指標の存在下において、あるいはある条件または薬剤への事前の曝露において、関心対象の対象またはシステムとは異なる比較可能な対象またはシステムにおいて)において存在する。いくつかの実施形態では、比較用語は、統計的に関連する差異(例えば、統計的関連性を達成するのに十分な有病率または大きさであること)を指す。所与の状況において、そのような統計的有意性を達成するのに必要または十分な差異の程度または有病率を決定するために、様々なアプローチが使用されてもよい。
【0070】
薬学的に許容可能な:本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容可能な」という句は、概して、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題あるいは合併症なく、人間と動物の組織との接触使用に適していて、合理的なベネフィット・リスク比と釣り合っている、こうした化合物、材料、組成物、または剤形を指す。
【0071】
予防する、または予防:本明細書で使用されるとき、「予防する」または「予防」という用語は、疾患、障害、または疾病の発生と関連して使用される場合、概して、疾患、障害、または疾病を発症するリスクを低減させること、または疾患、障害、または疾病の1つ以上の特徴または症状の発症を遅延させることを指す。予防は、疾患、障害、または疾病の発症が所定の期間遅延した場合に完了したとみなしてもよい。
【0072】
参照:本明細書で使用されるとき、「参照」という用語は、概して、比較が行われる基準または対照を示す。例えば、いくつかの実施形態では、関心対象の薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、または値は、参照または対照の薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、または値と比較される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、関心対象の試験または判定と実質的に同時に試験または判定される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、歴史的な参照または対照であり、任意選択で有形の媒体で具現化される。参照または対照は、評価中の条件または状況に匹敵する条件または状況下で決定または特徴付けされる。特定の考えられる参照または対照への信頼あるいは当該参照または対照との比較を正当化するのに十分な類似性が存在する。
【0073】
治療剤:本明細書で使用されるとき、「治療剤」という語句は、概して、生物に投与された場合に薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、薬剤は、適切な集団にわたって統計的に有意な効果を示す場合、治療剤であると考えられる。いくつかの実施形態では、適切な集団は、モデル生物の集団であり得る。いくつかの実施形態では、適切な集団は、特定の年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床状態などの様々な基準によって定義され得る。いくつかの実施形態では、治療剤は、疾患、障害、または疾病の1つ以上の症状または特徴を緩和する、改善する、軽減する、阻害する、予防する、その発症を遅延させる、その重症度を低下させる、またはその発生率を低下させるために使用することができる物質である。いくつかの実施形態では、「治療剤」は、ヒトへの投与のために販売され得る前に政府機関によって承認されたか、または承認が必要とされる薬剤である。いくつかの実施形態では、「治療剤」は、ヒトへの投与のために医学的処方箋が必要とされる薬剤である。
【0074】
治療有効量:本明細書で使用されるとき、「治療有効量」という用語は、概して、治療レジメンの一部として投与されたときに、生物学的応答を誘発する物質(例えば、治療薬、組成物、または製剤)の量を指す。いくつかの実施形態では、治療有効量の物質は、疾患、障害、または疾病を患っている、あるいは罹患しやすい対象に投与された場合に、疾患、障害、または疾病を処置する、診断する、予防する、または発症を遅らせるのに十分な量である。物質の有効量は、生物学的エンドポイント、送達される物質、標的細胞または組織などの因子に応じて変化し得る。例えば、疾患、障害、または疾病を処置するための製剤中の化合物の有効量は、疾患、障害、または疾病の1つ以上の症状または特徴を緩和する、改善する、軽減する、阻害する、予防する、その発症を遅らせる、その重症度を低下させる、またはその発生率を低下させる量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、単回用量で投与され、いくつかの実施形態では、治療有効量を送達するために、複数回単位用量が必要とされる。
【0075】
処置する:本明細書で使用されるとき、「処置する」、「処置」、または、「処置すること」という用語は、概して、疾患、障害、または疾病の1つ以上の症状または特徴を部分的または完全に緩和する、改善する、軽減する、阻害する、予防する、その発症を遅延させる、その重症度を低下させる、またはその発生率を低下させるために使用される任意の方法を指す。処置は、疾患、障害、または疾病の徴候を示さない対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、処置は、例えば、疾患、障害、または疾病に関連する病態を発症するリスクを低下させる目的で、疾患、障害、または疾病の早期徴候を示す対象に投与され得る。
【0076】
バリアント:本明細書で使用されるとき、「バリアント」という用語は、概して、基準実体と有意な構造的同一性を示すが、基準実体と比較して1つ以上の化学部分の存在またはレベルにおいて基準実体と構造的に異なる実体を指す。多くの実施形態では、バリアントはその基準実体と機能的にも異なる。特定の実体が基準実体の「バリアント」であると適切に考えられるかどうかは、基準実体との構造的同一性の程度に基づき得る。任意の生物学的または化学的基準実体が、特定の特徴的な構造要素を有する。バリアントとは、定義によれば、1つ以上のそのような特徴的な構造要素を共有する別個の化学的実体である。少し例を挙げると、低分子は特徴的なコア構造要素(例えば、大環状コア)または1つ以上の特徴的な張り出している(pendent)部分を有してもよく、その結果、小分子のバリアントは、コア構造要素および特徴的な張り出している部分を共有するが、他の張り出している部分または存在する結合の種類(単対二重、E対Zなど)で異なるものであり、ポリペプチドは、線状空間または三次元空間において互いに相対的な位置を指定された複数のアミノ酸残基で構成される特徴的な配列要素を有するか、または特定の生物学的機能に寄与し、核酸は、線状空間または三次元空間において互いに相対的な位置を指定された複数のヌクレオチド残基で構成される特徴的な配列要素を有していてもよい。例えば、バリアントポリペプチドは、アミノ酸配列における1つ以上の差、またはポリペプチド骨格に共有結合した化学部分(例えば、炭水化物、脂質など)における1つ以上の差の結果として、基準ポリペプチドと異なってもよい。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または99%である基準ポリペプチドとの全体配列同一性を示す。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、基準ポリペプチドと少なくとも1つの特徴的な配列要素を共有しない。いくつかの実施形態では、基準ポリペプチドは、1つ以上の生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、基準ポリペプチドの生物学的活性の1つ以上を共有する。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、基準ポリペプチドの生物学的活性の1つ以上を欠く。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、基準ポリペプチドと比較して、1つ以上の生物学的活性の低下したレベルを示す。多くの実施形態では、関心対象のポリペプチドは、関心対象のポリペプチドが、特定の位置における少数の配列変化を除いて親のものと同一であるアミノ酸配列を有する場合、親または基準ポリペプチドの「バリアント」であると考えられる。いくつかの実施形態では、親と比較して、バリアント中の残基の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満が置換されている。いくつかの実施形態では、バリアントは、親と比較して、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個の置換された残基を有する。しばしば、バリアントは、非常に少数(例えば、5、4、3、2、または1未満)の置換された機能的残基(例えば、特定の生物学的活性に関与する残基)の数を有する。さらに、バリアントは、親と比較して、5、4、3、2、または1以下の付加または欠失を有することがあり、しばしば、付加または欠失を有しない。さらに、任意の付加または欠失は、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6未満であり得、一般的には、約5、約4、約3、または約2未満の残基である。いくつかの実施形態では、親ポリペプチドまたは参照ポリペプチドは、自然界に見られるものである。
【0077】
疾患遺伝子発現シグネチャー(応答モジュール)
本開示は、とりわけ、逆転した場合(全てまたは実質的な部分において、例えば、1回以上の用量の治療の投与後)、対象が治療に応答していることを示す疾患遺伝子発現シグネチャーを提供する。本明細書に記載される方法は、臨床的特徴の変化を観察することに頼る代わりに、分子レベルでの応答の定量化を可能にするので、このような手法は、他の方法と比較して好ましい。実際に、本開示は、特定の分子シグネチャー、例えば、特定の遺伝子の発現が、健康な対象に類似するように調節された場合に、疾患対象が治療に応答していることを示すという洞察を包含する方法およびシステムを提供する。いくつかの実施形態では、疾患発現シグネチャーは、健康な対象と比較して疾患対象において差次的に発現される遺伝子のパターンである。本明細書に記載される疾患発現シグネチャーは、分子レベルでの疾患対象と健康な対象との間の微妙な差異を説明する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療に対する応答を示す遺伝子発現が、同じ疾患を患う対象のサブグループ間で必ずしも導出されないという洞察を包含する方法およびシステムを提供する。すなわち、例えば、疾患を患う対象のコホート内で、本開示は、対象のコホートの1つ以上のサブグループ間の遺伝子発現差異を分析することは、対象が治療に応答し得るかそうか、またはそうでなければ疾患、障害、もしくは疾病から回復し始めるかどうかを示す遺伝子発現パターンをもたらさない場合があることを認識している。代わりに、いくつかの実施形態では、本開示は、同様の遺伝子発現パターンを有する疾患対象のサブグループと健康な対象のサブグループとの間の遺伝子発現を分析する。疾患対象と健康な対象との間の差異を分析することによって、および健康な対象とは異なる、疾患対象において重要な遺伝子発現標的を同定することによって、そしてまた、応答の駆動において重要な役割を果たすことによって、(理論に束縛されることなく)重要な差次的発現遺伝子を調節することによって、疾患対象の遺伝子発現パターンは、健康な対象の遺伝子発現パターンに類似する場合があり、それにより疾患の退行をもたらすことが理解される。
【0079】
疾患遺伝子発現シグネチャーを同定するための例示的なワークフローは、
図1に見られる。いくつかの実施形態では、疾患を患う対象のセットの遺伝子発現データのコホートが分析される(101)。その後、コホート内の対象はそれぞれ特定のメトリックに従って層別化される(102)。例えば、いくつかの実施形態では、コホート内の対象は、特定の治療(例えば、抗TNF治療)に対するレスポンダーであるか非レスポンダーであるかに従って層別化される。いくつかの実施形態では、コホート内の対象は、教師ありまたは教師なしクラスタリングアルゴリズムを使用して層別化される。いくつかの実施形態では、コホート内の対象は、教師ありクラスタリングアルゴリズムを使用して層別化される。いくつかの実施形態では、コホート内の対象は、教師なしクラスタリングアルゴリズムを使用して層別化される。いくつかの実施形態では、対象のコホートを先の対象の2つ以上の群に層別化する工程は、先の対象が特定の治療に対して応答するかどうかに基づいている。本明細書で使用されるとき、「治療」は、本明細書で定義される治療剤、遺伝子ノックアウト(例えば、対象の1つ以上の特定の遺伝子を手術不能にすること)、または遺伝子過剰発現(例えば、対象における1つ以上の特定の遺伝子の正常量を超えて発現を増加させる)を指す。
【0080】
いくつかの実施形態では、クラスター内のサブグループのベースライン発現プロファイルが分析され、1人以上の健康な対照の対象と比較される(103)。「疾患候補遺伝子」と称される、差次的に発現される遺伝子が同定される。いくつかの実施形態では、差次的に発現される特定の遺伝子は「疾患候補遺伝子」として選択される。いくつかの実施形態では、有意に差次的に発現される遺伝子は、疾患候補遺伝子であるように選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現の有意差は、0.05以下のp値および0.5以上の絶対倍数変化によって測定される。
【0081】
いくつかの実施形態では、疾患発現シグネチャーは、同定された疾患候補遺伝子の全て、実質的に全て、またはサブセットを含む。いくつかの実施形態では、疾患候補遺伝子は、任意選択で、生物学的ネットワーク上にマッピングされる(104)。理論に束縛されるものではないが、疾患候補遺伝子内の遺伝子の関連性を理解することにより、関連性が最も高い遺伝子の同定が可能になり、特定の疾患について対象を処置するときに応答の影響の大部分を有さない可能性がある遺伝子が選別されることが理解される。例えば、いくつかの実施形態では、生物学的ネットワークは、ヒトインタラクトームマップである。いくつかの実施形態では、疾患候補遺伝子のセットから、ヒトインタラクトームマップ上で有意に関連しているか、または別様にクラスタリングされる遺伝子が、疾患遺伝子発現シグネチャーであるように選択される。いくつかの実施形態では、疾患候補遺伝子のすべて、実質的にすべて、またはサブセットは、ヒトインタラクトームマップ上でクラスタリングするか、または有意に関連している。いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、生物学的ネットワーク(例えば、ヒトインタラクトームマップ)上にクラスタリングする疾患候補遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、生物学的ネットワーク(例えば、ヒトインタラクトームマップ)上で互いに有意に連結された疾患候補遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、疾患候補遺伝子は、疾患遺伝子発現シグネチャーへの取込みの前に生体ネットワーク上にマッピングされる。
【0082】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、対象と同じ疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを分析することと、対象のコホートを、遺伝子発現データに対象基づいて、先の対象の2つ以上の群に層別化することと、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供するために、先の対象の2つ以上の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(例えば、「疾患候補遺伝子」)を選択することとによって決定される。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「健康遺伝子発現シグネチャー」は、健康な対照の対象(例えば、本明細書に記載されるように処置される対象のように疾患、障害、または疾病を患っていない対象)における応答遺伝子の遺伝子発現を指す。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療に対する応答性を定量化するために疾患の遺伝子発現シグネチャーを決定する方法を提供し、上記方法は、同じ疾患、障害、または疾病を患っている対象(例えば、治療応答性について評価されている対象と同じ疾患、障害、または疾病を患っている)のコホートの遺伝子発現データを受信する工程と、遺伝子発現データに基づいて対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程(例えば、同様の遺伝子発現を有するコホートの対象をグループ化すること)と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現の差を算出する工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供するために、先の対象の2つ以上の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択する工程とを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、疾患候補遺伝子は、疾患遺伝子発現シグネチャーへの組込みの前に、生物学的ネットワーク(例えば、ヒトインタラクトーム)上にマッピングされる。
【0086】
いくつかの実施形態では、生物学的ネットワーク上で近位または空間的関係を有する遺伝子のサブセットは、疾患遺伝子発現シグネチャーに組み込むための疾患候補遺伝子から選択される。いくつかの実施形態では、生物学的ネットワーク上に近位または空間的関係を有する遺伝子のサブセットは、例えば、ヒトインタラクトームマップ上に近接した遺伝子であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、2つ以上のノードに接続される生物学的ネットワーク上のノードによって表される遺伝子が選択され、それによって、異常値ノードを排除する。
【0087】
いくつかの実施形態では、疾患候補遺伝子の中で有意な関連性を有する遺伝子のサブセットが、疾患遺伝子発現シグネチャーに組み込むために選択される。例えば、いくつかの実施形態では、スコアは、疾患候補遺伝子内の各ノード間の各連結に割り当てられる。疾患候補遺伝子はスコアに基づいてランク付けすることができ、最も高いランクの疾患候補遺伝子のみが選択される(例えば、疾患候補遺伝子からの遺伝子の上位10、20、30、40、50、60、70、80、または90%)。
【0088】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療に対する応答性を定量化するために疾患の遺伝子発現シグネチャーを決定する方法を提供し、上記方法は、同じ疾患、障害、または疾病を患っている対象(例えば、治療応答性について評価されている対象と同じ疾患、障害、または疾病を患っている)のコホートの遺伝子発現データを受信する工程と、遺伝子発現データに基づいて対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程(例えば、同様の遺伝子発現を有するコホートの対象をグループ化すること)と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現の差を算出する工程と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間で遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択する工程と、生物学的ネットワーク(例えば、ヒトインタラクトーム)上に疾患候補遺伝子をマッピングする工程と、疾患候補遺伝子と有意な関係がある隣接する遺伝子(例えば、隣接ノード上、例えば、ヒトインタラクトームマップ上の遺伝子)を選択する工程と、疾患候補遺伝子および隣接する遺伝子を含む疾患遺伝子のリストをコンパイルする工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供するために、疾患遺伝子のリストからいくつかの遺伝子またはすべての遺伝子を選択する工程とを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子のリストからの遺伝子のいくつかまたは全ては、生物学的ネットワーク上の他のノードへの結合の強さに従ってランク付けすることによって、疾患遺伝子発現シグネチャーに組み込むために選択される。いくつかの実施形態では、疾患遺伝子のリストからの遺伝子の上位10、20、30、40、50、60、70、80、または90%は、疾患遺伝子発現シグネチャーへの組込みのために選択される。
【0090】
本明細書に記載されるとき、対象の遺伝子は、マイクロアレイ、RNA配列決定、リアルタイム定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、ビーズアレイ、ELISA、およびタンパク質発現のうちの少なくとも1つによって測定される。いくつかの実施形態では、対象の遺伝子発現は、バックグラウンドデータを減算し、バッチ効果を補正し、ハウスキーピング遺伝子の平均発現で割ることによって測定される。(あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、Eisenberg&Levanon,“Human housekeeping genes,revisited,”Trends in Genetics,29(10):569-574(October 2013)を参照)。マイクロアレイデータ分析の文脈において、バックグラウンド減算は、任意のmRNA配列に相補的でないチップ上のプローブ特徴から生じる平均蛍光シグナル、例えば、非特異的結合から生じるシグナルを、各プローブ特徴の蛍光シグナル強度から減算することを指す。バックグラウンド減算は、Affymetrix(商標)Gene Expression Consoleなどの異なるソフトウェアパッケージを用いて行うことができる。ハウスキーピング遺伝子は、基本的な細胞維持に関与し、したがって、すべての細胞および条件において一定の発現レベルを維持すると予想される。対象の遺伝子、例えば応答シグネチャー中の遺伝子の発現レベルは、発現レベルを選択されたハウスキーピング遺伝子の群にわたる平均発現レベルで割ることによって正規化することができる。このハウスキーピング遺伝子正規化手順は、実験変動性について遺伝子発現レベルを較正する。さらに、マイクロアレイの異なるバッチにわたる変動性を補正するロバストマルチアレイ平均(「RMA」)などの正規化方法は、Illumina(商標)またはAffymetrix(商標)マイクロアレイプラットフォームのいずれかによって推奨されるRパッケージにおいて利用可能である。正規化したデータを対数変換し、試料全体の検出率が低いプローブを除去する。さらに、利用可能な遺伝子記号またはEntrez IDを有さないプローブは、分析から除去される。
【0091】
処置および治療モニタリングの方法
とりわけ、本開示は、疾患遺伝子発現シグネチャー内の遺伝子発現の変化を評価することを含む、疾患、障害、または疾病を患う対象の処置方法および治療をモニタリングする方法を提供する。例えば、本開示は、健康な対象の(全てまたは部分的に)遺伝子発現に類似する疾患遺伝子発現シグネチャー内の特定の遺伝子の発現における分子レベルでの変化が、対象が治療に応答していること、または疾患が退行していることを示すという洞察を包含する方法およびシステムを提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、疾患遺伝子発現シグネチャーを示す対象を処置する方法を提供し、上記方法は、疾患遺伝子発現シグネチャーを戻す(または逆転させる、または別様に変化させる)と決定された治療を、健康な遺伝子発現シグネチャーに類似するように投与する工程を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療に対する応答を検証するための技術であって、治療の投与後の対象における疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を分析することを含み、疾患遺伝子発現シグネチャーが、治療に対する応答性を定量化するために決定される、技術を提供する。
【0093】
さらに、本開示は、所与の対象または対象のコホートの治療をモニタリングするための技術を提供する。対象の遺伝子発現レベルは、経時的に変化し得るため、場合によっては、1つ以上の時点で、例えば、指定および/または周期的間隔で、対象を評価することが必要または望ましくあり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、経時的な反復モニタリングは、進行中の処置レジメンに影響を与え得る対象の遺伝子発現プロファイルまたは特徴における1つ以上の変化の検出を可能にするかまたは達成する。いくつかの実施形態では、変化は、対象に投与される特定の治療が継続されるか、変更されるか、または中断されるかに応じて検出される。いくつかの実施形態では、治療は、例えば、対象が既に処置されている1つ以上の薬剤または処置の投与の頻度もしくは量を増加または減少させることによって変更されてもよい。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、治療は、1つ以上の新たな薬剤または処置を用いる治療の追加によって変更されてもよい。いくつかの実施形態では、治療は、1つ以上の特定の薬剤または処置の中断または停止によって変更されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、モニタリングは、疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を定量化または分析することを含む。いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、対象と同じ疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを分析することと、対象のコホートを、遺伝子発現データに基づいて、先の対象の2つ以上の群に層別化することと、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供するために、先の対象の2つ以上の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することとによって決定される。
【0096】
いくつかの実施形態では、本開示は、疾患、障害、または疾病を患う対象の治療有効性をモニタリングする方法を提供し、上記方法は、治療投与後の疾患遺伝子発現シグネチャーの変化をモニタリングする工程を含み、疾患遺伝子発現シグネチャーは、対象と同じ疾患、障害、または疾病を患う対象のコホートの遺伝子発現データを分析することと、遺伝子発現データに基づいて対象のコホートを2つ以上の群に層別化すること(例えば、同様の遺伝子発現を有するコホートの対象をある群にグループ化すること)と、2つ以上の対象の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現の差を判定することと、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供するために、先の対象の2つ以上の群と健康な対象の群との間の遺伝子発現において有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することとを含むプロセスに由来する。
【0097】
いくつかの実施形態では、先の対象のコホートを2つ以上の群に層別化する工程は、先の対象が特定の治療(例えば、抗TNF治療、または表1から選択される治療)に対するレスポンダーであるか非レスポンダーであるかに基づいて対象を層別化することを含む。いくつかの実施形態では、対象は無作為で層別化される。いくつかの実施形態では、先の対象は遺伝子発現に基づく類似性によって層別化される。実施形態では、先の対象における遺伝子発現に基づく類似性は、機械学習プロセスによって分析される。いくつかの実施形態では、治療は表1から選択される。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
いくつかの実施形態では、治療は抗TNF治療である。いくつかの実施形態では、抗TNF治療は、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリルマブ、およびそれらのバイオシミラーから選択される。いくつかの実施形態では、抗TNF治療はインフリキシマブである。いくつかの実施形態では、抗TNF治療はエタネルセプトである。いくつかの実施形態では、抗TNF治療はアダリムマブである。いくつかの実施形態では、抗TNF治療はセルトリズマブペゴルである。いくつかの実施形態では、抗TNF治療はゴリムマブである。いくつかの実施形態では、抗TNF治療は、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、またはゴリムマブのバイオシミラーである。
【0103】
いくつかの実施形態では、治療は、リツキシマブ、サリルマブ、クエン酸トファシチニブ、レフノミド、ベドリズマブ、トシリズマブ、アナキンラ、およびアバタセプトから選択される。いくつかの実施形態では、治療はリツキシマブである。いくつかの実施形態では、治療はサリルマブである。いくつかの実施形態では、治療はクエン酸トファシチニブである。いくつかの実施形態では、治療はレフノミドである。いくつかの実施形態では、治療はベドリズマブである。いくつかの実施形態では、治療はトシリズマブである。いくつかの実施形態では、治療はアナキンラである。いくつかの実施形態では、治療はアバタセプトである。
【0104】
いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、プラーク乾癬、または強直性脊椎炎を含む。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、クローン病である。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、関節リウマチである。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または疾病は、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、プラーク乾癬、または強直性脊椎炎を含む。
【0105】
患者層別化および試験設計
本開示は、分子レベルでの遺伝子発現の変化が、治療を受けた対象における臨床的特徴の変化と比較して、より速く生じ得、容易に定量化可能であるという洞察を包含する方法およびシステムをさらに提供する。例えば、本開示は、治療に対する患者の応答性が投与レジメンの早期に定量化され得るという洞察を包含する方法およびシステムを提供し、従事者が個々の対象における処置コースを変更すること、またはそうでなければ、例えば臨床試験における大規模研究を含む対象のための処置を中断することを可能にする。そのような尺度は、研究設計者が、個々の生物学に基づいてどの対象が治療に応答していないかを同定し、それらを研究から除外することを可能にし、任意の非応答対象に対する潜在的な害のリスクを防止し、ならびに試験設計者のための時間および資源を節約する。
【0106】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、コホート対象の遺伝子発現データを受信する工程と、疾患遺伝子発現シグネチャーの存在を検出するために遺伝子発現データを分析する工程と、対象に、治療を少なくとも1回用量投与する工程と、健康な対象の遺伝子発現に対する疾患遺伝子発現シグネチャーの変化を同定する工程と、健康な対象の遺伝子発現に向かった疾患遺伝子発現シグネチャーの定量可能な変化を示す、臨床試験のための対象を選択する工程とを含む、臨床試験のための対象を同定および選択する方法を包含する方法およびシステムを提供する。
【0107】
システムおよびアーキテクチャ
対象に対し個別化された治療を設計するための方法であって、応答遺伝子のセットを含む疾患遺伝子発現シグネチャーを受け取るかまたは生成する工程と、コンピューティングデバイスの、1つ以上の応答遺伝子の発現を変化させる1つ以上の可能な治療のセットを受け取るかまたは生成する工程と、1つ以上の候補治療のセットを提供するために、1つ以上の可能な治療のセットをそれぞれ、1つ以上の応答遺伝子の変化の有意性に従ってランク付けする工程と、任意選択で、1つ以上の可能な標的を生物学的ネットワーク上にマッピングすることによって、1つ以上の候補治療のセットによって直接調節される1つ以上の可能な標的を決定する工程と、1つ以上の可能な標的の各々と応答遺伝子のセットとの間の関連性の有意性をランク付けする工程と、1つ以上の可能な標的から処置のための標的を選択する工程と、処置の標的を調節する個別化された治療を選択する工程とを含む、方法が、本明細書にさらに記載される。
【0108】
いくつかの実施形態では、疾患遺伝子発現シグネチャーは、対象と同じ疾患、障害、または疾病に罹患している対象のコホートから遺伝子発現データを受け取るかまたは生成すること、遺伝子発現データに基づいて、対象のコホートを、以前の対象の2つ以上の群に層別化すること、および以前の対象の2つ以上の群と健康な対象の群との間で遺伝子発現に有意差を有する1つ以上の遺伝子(「疾患候補遺伝子」)を選択することであって、これにより、疾患遺伝子発現シグネチャーを提供する、選択することによって決定される。
【0109】
いくつかの実施形態では、疾患候補遺伝子は、疾患遺伝子発現シグネチャーの一部であるように選択される前に、生物学的ネットワーク上にマッピングされる。
【0110】
いくつかの実施形態では、1つ以上の可能な標的を決定することは、1つ以上の候補治療の標的を生物学的ネットワーク上にマッピングすること、および生物学的ネットワークによって提供されるトポロジー的情報に基づいて可能な標的を選択することをさらに含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、1つ以上の可能な治療の各々のランク付けは、1つ以上の可能な治療による処置前の応答遺伝子のセットに対する、1つ以上の可能な治療による処置後の応答遺伝子のセットの発現レベルの差異を算出すること、および1つ以上の可能な治療の各々についてp値を算出することを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、可能な標的は、機械学習プロセスによって同定される。
【0113】
いくつかの実施形態では、機械学習プロセスは、ランダムウォークを含む。
【0114】
図4に示されるように、本明細書に記載されるシステム、方法、およびアーキテクチャを提供する際に使用するためのネットワーク環境400の実装形態が、示され、説明される。簡潔に概説すると、
図4において、例示的なクラウドコンピューティング環境400のブロック図が示され、説明される。クラウドコンピューティング環境400は、1つ以上のリソースプロバイダ402a、402b、402c(総じて、402)を含んでもよい。各リソースプロバイダ402は、コンピューティングリソースを含み得る。いくつかの実装形態では、コンピューティングリソースは、データを処理するために使用される任意のハードウェアまたはソフトウェアを含み得る。例えば、コンピューティングリソースは、アルゴリズム、コンピュータプログラム、またはコンピュータアプリケーションを実行することが可能なハードウェアまたはソフトウェアを含んでもよい。いくつかの実装形態では、例示的コンピューティングリソースは、記憶および検索能力を伴うアプリケーションサーバまたはデータベースを含んでもよい。各リソースプロバイダ402は、クラウドコンピューティング環境400内の任意の他のリソースプロバイダ402に接続され得る。いくつかの実装形態では、リソースプロバイダ402は、コンピュータネットワーク408を介して接続され得る。各リソースプロバイダ402は、コンピュータネットワーク408を介して1つ以上のコンピューティングデバイス404a、404b、404c(総じて、404)に接続され得る。
【0115】
クラウドコンピューティング環境400は、リソースマネージャ406を含み得る。リソースマネージャ406は、コンピュータネットワーク408を介してリソースプロバイダ402およびコンピューティングデバイス404に接続され得る。いくつかの実装形態では、リソースマネージャ406は、1つ以上のリソースプロバイダ402による1つ以上のコンピューティングデバイス404へのコンピューティングリソースのプロビジョニングを容易にすることができる。リソースマネージャ406は、特定のコンピューティングデバイス404からコンピューティングリソースの要求を受け取ることができる。リソースマネージャ406は、コンピューティングデバイス404によって要求されたコンピューティングリソースを提供することができる1つ以上のリソースプロバイダ402を同定することができる。リソースマネージャ406は、コンピューティングリソースを提供するリソースプロバイダ402を選択することができる。リソースマネージャ406は、リソースプロバイダ402と特定のコンピューティングデバイス404との間の接続を容易にすることができる。いくつかの実装形態では、リソースマネージャ406は、特定のリソースプロバイダ402と特定のコンピューティングデバイス404との間の接続を確立し得る。いくつかの実装形態では、リソースマネージャ406は、特定のコンピューティングデバイス404を、要求されたコンピューティングリソースを有する特定のリソースプロバイダ402にリダイレクトすることができる。
【0116】
図5は、本明細書に記載される技術を実装するために使用され得るコンピューティングデバイス500およびモバイルコンピューティングデバイス550の一例を示す。コンピューティングデバイス500は、ラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、携帯情報端末、サーバ、ブレードサーバ、メインフレーム、および他の適切なコンピュータなど、様々な形態のデジタルコンピュータを表すことが意図されている。モバイルコンピューティングデバイス550は、携帯情報端末、携帯電話、スマートフォン、および他の同様のコンピューティングデバイスなど、様々な形態のモバイルデバイスを表すことが意図されている。ここで示される構成要素、それらの接続および関係、ならびにそれらの機能は、単なる例であることを意味し、限定することを意味しない。
【0117】
コンピューティングデバイス500は、プロセッサ502と、メモリ504と、ストレージデバイス506と、メモリ504および複数の高速拡張ポート510に接続する高速インターフェース508と、低速拡張ポート514およびストレージデバイス506に接続する低速インターフェース512とを含む。プロセッサ502、メモリ504、ストレージデバイス506、高速インターフェース508、高速拡張ポート510、および低速インターフェース512はそれぞれ、様々なバスを使用して相互接続され、共通のマザーボード上に、または必要に応じて他の方法で実装され得る。プロセッサ502は、高速インターフェース508に結合されたディスプレイ516などの外部入力/出力デバイス上にGUIのためのグラフィカル情報を表示するために、メモリ504またはストレージデバイス506に記憶された命令を含む、コンピューティングデバイス500内で実行するための命令を処理することができる。他の実装形態では、複数のプロセッサまたは複数のバスが、必要に応じて、複数のメモリおよびメモリのタイプとともに使用され得る。また、複数のコンピューティングデバイスが接続されてもよく、各デバイスは、必要な動作(例えば、サーババンクとして、ブレードサーバのグループとして、またはマルチプロセッサシステムとして)の部分を提供する。したがって、この用語が本明細書で使用され、複数の機能が「プロセッサ」によって実行されるものとして説明される場合、これは、複数の機能が任意の数のコンピューティングデバイス(1つ以上)の任意の数のプロセッサ(1つ以上)によって実行される実施形態を包含する。さらに、機能が「プロセッサ」によって実行されるものとして説明される場合、これは、機能が任意の数のコンピューティングデバイス(1つ以上)の任意の数のプロセッサ(1つ以上)によって(例えば、分散コンピューティングシステムにおいて)実行される実施形態を包含する。
【0118】
メモリ504は、コンピューティングデバイス500内に情報を記憶する。いくつかの実装形態では、メモリ504は、1つ以上の揮発性メモリユニットである。いくつかの実装形態では、メモリ504は、1つ以上の不揮発性メモリユニットである。メモリ504はまた、磁気ディスクまたは光ディスクなどの別の形態のコンピュータ可読媒体であり得る。
【0119】
ストレージデバイス506は、コンピューティングデバイス500のための大容量ストレージを提供することができる。いくつかの実装形態では、ストレージデバイス506は、フロッピー(登録商標)ディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、もしくはテープデバイスなどのコンピュータ可読媒体、フラッシュメモリもしくは他の同様のソリッドステートメモリデバイス、またはストレージエリアネットワークもしくは他の構成中のデバイスを含むデバイスのアレイであり得るか、またはそれらを含み得る。命令は、情報担体に格納することができる。命令は、1つ以上の処理デバイス(たとえば、プロセッサ502)によって実行されると、上記で説明したものなどの1つ以上の方法を実行する。命令は、コンピュータ可読媒体または機械可読媒体(例えば、メモリ504、記憶装置506、またはプロセッサ502上のメモリである)などの1つ以上の記憶デバイスによって記憶することもできる。
【0120】
高速インターフェース508は、コンピューティングデバイス500のための帯域幅を集中的に使うオペレーション(bandwidth-intensive operations)を管理し、低速インターフェース512は、より低い帯域幅を集中的に使うオペレーションを管理する。このような機能の割り当ては単なる一例である。いくつかの実装形態では、高速インターフェース508は、メモリ504、ディスプレイ516(例えば、グラフィックスプロセッサまたはアクセラレータを介する)、および様々な拡張カード(図示しない)を受け入れ得る高速拡張ポート510に結合される。この実装形態では、低速インターフェース512は、ストレージデバイス506および低速拡張ポート514に結合される。様々な通信ポート(例えば、USB、Bluetooth(登録商標)、イーサネット(登録商標)、無線イーサネット(登録商標)である)を含み得る低速拡張ポート514は、例えばネットワークアダプタを介して、キーボード、ポインティングデバイス、スキャナ、またはスイッチもしくはルータなどのネットワーキングデバイスなどの1つ以上の入力/出力デバイスに結合され得る。
【0121】
コンピューティングデバイス500は、図に示すように、いくつかの異なる形態で実装され得る。例えば、標準サーバ520として、またはそのようなサーバのグループにおいて複数回実装されてもよい。加えて、コンピューティングデバイス500は、ラップトップコンピュータ522などのパーソナルコンピュータにおいて実装され得る。コンピューティングデバイス500はまた、ラックサーバシステム524の一部として実装されてもよい。代替的には、コンピューティングデバイス500からの構成要素は、モバイルコンピューティングデバイス550などのモバイルデバイス(図示しない)内の他の構成要素と組み合わせられ得る。そのようなデバイスはそれぞれ、コンピューティングデバイス500およびモバイルコンピューティングデバイス550のうちの1つ以上を含み得、システム全体は、互いに通信する複数のコンピューティングデバイスから構築され得る。
【0122】
モバイルコンピューティングデバイス550は、とりわけ、プロセッサ552と、メモリ564と、ディスプレイ554などの入出力デバイスと、通信インターフェース566と、トランシーバ568とを含む。モバイルコンピューティングデバイス550はまた、追加のストレージを提供するために、マイクロドライブまたは他のデバイスなどのストレージデバイスを備え得る。プロセッサ552、メモリ564、ディスプレイ554、通信インターフェース566、およびトランシーバ568はそれぞれ、様々なバスを使用して相互接続され、構成要素のうちのいくつかは、共通のマザーボード上に、または必要に応じて他の方法で実装され得る。
【0123】
プロセッサ552は、メモリ564に記憶された命令を含む、モバイルコンピューティングデバイス550内の命令を実行することができる。プロセッサ552は、別個の複数のアナログおよびデジタルプロセッサを含むチップのチップセットとして実装され得る。プロセッサ552は、例えば、ユーザインターフェースの制御、モバイルコンピューティングデバイス550によって実行されるアプリケーション、およびモバイルコンピューティングデバイス550によるワイヤレス通信など、モバイルコンピューティングデバイス550の他の構成要素の調整を提供し得る。
【0124】
プロセッサ552は、ディスプレイ554に結合された制御インターフェース558およびディスプレイインターフェース556を通じてユーザと通信することができる。ディスプレイ554は、例えば、TFT(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)ディスプレイまたはOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ、あるいは他の適切なディスプレイ技術であってもよい。ディスプレイインターフェース556は、グラフィカル情報および他の情報をユーザに提示するようにディスプレイ554を駆動するための適切な回路を備え得る。制御インターフェース558は、ユーザからコマンドを受信し、それらをプロセッサ552に提出するために変換し得る。加えて、外部インターフェース562は、モバイルコンピューティングデバイス550と他のデバイスとの近距離通信を可能にするように、プロセッサ552との通信を提供し得る。外部インターフェース562は、例えば、いくつかの実装形態では、有線通信のために、または他の実装形態ではワイヤレス通信のために提供することができ、複数のインターフェースも使用され得る。
【0125】
メモリ564は、モバイルコンピューティングデバイス550内に情報を記憶する。メモリ564は、1つ以上のコンピュータ可読媒体、1つ以上の揮発性メモリユニット、または1つ以上の不揮発性メモリユニットのうちの1つ以上として実装され得る。拡張メモリ574がさらに設けられ、例えばSIMM(シングルインラインメモリモジュール)カードインターフェースを含み得る拡張インターフェース572を介してモバイルコンピューティングデバイス550に接続され得る。拡張メモリ574は、モバイルコンピューティングデバイス550のための余分な記憶空間を提供してもよく、またはモバイルコンピューティングデバイス550のためのアプリケーションまたは他の情報を記憶してもよい。具体的には、拡張メモリ574は、上記で説明したプロセスを実行または補足するための命令を含み得、セキュア情報も含み得る。したがって、例えば、拡張メモリ574は、モバイルコンピューティングデバイス550のためのセキュリティモジュールとして提供され得、モバイルコンピューティングデバイス550の安全な使用を可能にする命令でプログラムされ得る。さらに、ハッキング不可能な方法でSIMMカード上に識別情報を配置するなど、追加の情報とともに、セキュアアプリケーションがSIMMカードを介して提供され得る。
【0126】
メモリは、以下で説明するように、例えば、フラッシュメモリまたはNVRAMメモリ(不揮発性ランダムアクセスメモリ)を含み得る。いくつかの実装形態では、命令は情報キャリアに記憶され、命令は、1つ以上の処理デバイス(例えば、プロセッサ552)によって実行されると、上記で説明したものなどの1つ以上の方法を実行する。命令は、1つ以上のコンピュータ可読媒体または機械可読媒体(例えば、メモリ564、拡張メモリ574、またはプロセッサ552上のメモリである)などの1つ以上の記憶デバイスによって記憶することもできる。いくつかの実装形態では、命令は、例えば、トランシーバ568または外部インターフェース562を介して、伝搬信号中で受け取られ得る。
【0127】
モバイルコンピューティングデバイス550は、必要に応じてデジタル信号処理回路を含み得る通信インターフェース566を介してワイヤレスに通信し得る。通信インターフェース566は、GSM(登録商標)音声呼(Global S ystem for Mobile communications)、SMS(Short Message Service)、EMS(Enhanced Messaging Service)、またはMMSメッセージング(Multimedia Messaging Service)、CDMA(code division multiple access)、TDMA(time division multiple access)、PDC(Personal Digital Cellular)、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、CDMA2000、またはGPRS(General Packet Radio Service)など様々なモードまたはプロトコルの下での通信を提供し得る。そのような通信は、例えば、無線周波数を使用してトランシーバ568を通じて行われ得る。さらに、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、または他のそのようなトランシーバ(図示しない)などを使用して、短距離通信が行われ得る。加えて、GPS(全地球測位システム)受信機モジュール570は、モバイルコンピューティングデバイス550に追加のナビゲーション関連および位置関連のワイヤレスデータを提供し得、それは、モバイルコンピューティングデバイス550上で実行されるアプリケーションによって適宜使用され得る。
【0128】
モバイルコンピューティングデバイス550はまた、音声コーデック560を使用して音声で通信し得、音声コーデックは、ユーザから発話された情報を受信し、それを使用可能なデジタル情報に変換し得る。オーディオコーデック560は、同様に、たとえばモバイルコンピューティングデバイス550のハンドセット内のスピーカなどを通じて、ユーザのために可聴音を生成し得る。そのような音は、音声電話通話からの音を含んでもよく、録音された音(例えば、音声メッセージ、音楽ファイルなど)を含んでもよく、また、モバイルコンピューティングデバイス550上で動作するアプリケーションによって生成された音を含んでもよい。
【0129】
モバイルコンピューティングデバイス550は、図に示すように、いくつかの異なる形態で実装され得る。例えば、携帯電話580として実装されてもよい。これはまた、スマートフォン582、携帯情報端末、または他の同様のモバイルデバイスの一部として実装され得る。
【0130】
本明細書に記載されるシステムおよび技術の様々な実装は、デジタル電子回路、集積回路、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの組合せで実現することができる。これらの様々な実装形態は、記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信し、記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスにデータおよび命令を送信するように結合された、専用または汎用であり得る少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能または解釈可能である1つ以上のコンピュータプログラムにおける実装形態を含むことができる。
【0131】
これらのコンピュータプログラム(例えば、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーションまたはコードとして)は、プログラマブルプロセッサのための機械命令を含み、高水準手続型もしくはオブジェクト指向プログラミング言語で、またはアセンブリ/機械言語で実装することができる。本明細書で使用されるように、機械可読媒体およびコンピュータ可読媒体という用語は、機械可読信号として機械命令を受信する機械可読媒体を含む、機械命令またはデータをプログラマブルプロセッサに提供するために使用される任意のコンピュータプログラム製品、装置、またはデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラマブルロジックデバイス(PLD))を指す。機械可読信号という用語は、機械命令またはデータをプログラマブルプロセッサに提供するために使用される任意の信号を指す。
【0132】
ユーザとの相互作用を提供するために、本明細書に記載されるシステムおよび技術は、情報をユーザに表示するためのディスプレイデバイス(例えば、CRT(cathode Ray tube)やLCD(liquid Crystal Display)モニタである)と、ユーザが入力をコンピュータに提供することができるキーボードおよびポインティングデバイス(例えば、マウスまたはトラックボール)とを有するコンピュータ上で実装することができる。他の種類のデバイスを使用して、ユーザとの相互作用を提供することもできる、例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバック)であり得るか、またはユーザからの入力は、音響、音声、または触覚入力を含む、任意の形態で受信することができる。
【0133】
本明細書に記載されるシステムおよび技術は、バックエンド構成要素(例えば、データサーバとして)を含むか、またはミドルウェア構成要素(例えば、アプリケーションサーバ)を含むか、またはフロントエンド構成要素(例えば、グラフィカルユーザインターフェースもしくはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータであって、それを通してユーザが本明細書に記載されるシステムおよび技術の実装と相互作用することができる、クライアントコンピュータ)を含むか、またはそのようなバックエンド、ミドルウェア、もしくはフロントエンド構成要素の任意の組合せを含む、コンピューティングシステムにおいて実装されることができる。システムの構成要素は、デジタルデータ通信(例えば、通信ネットワーク)の任意の形態または媒体によって相互接続することができる。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、およびインターネットを含む。
【0134】
コンピューティングシステムは、クライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは、互いに離れていてもよく、通信ネットワークを介して相互作用してもよい。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、互いにクライアント-サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。
【0135】
いくつかの実装形態では、本明細書に記載されるモジュールは、単一のモジュールまたは組み合わされたモジュールに分離するか、組み合わせるか、または組み込むことができる。図に示されるモジュールは、本明細書に記載されるシステムを図に示されるソフトウェアアーキテクチャに限定することを意図するものではない。
【0136】
本明細書に記載される異なる実装形態の要素は、上記で具体的に説明されない他の実装形態を形成するように組み合わせられてもよい。要素は、本明細書に記載されるプロセス、コンピュータプログラム、データベースなどから、それらの動作に悪影響を及ぼすことなく、除外されてもよい。加えて、図に示されるロジックフローは、所望の結果を達成するために、示される特定の順序または連続順序を必要としない。本明細書に記載される機能を実行するために、様々な別個の要素を1つ以上の個々の要素に組み合わせることができる。本明細書に記載されるシステムおよび方法の構造、機能、および装置を考慮して、いくつかの実装形態では、システムおよび方法の構造、機能、および装置を考慮する。
【0137】
本開示は、本開示の方法を実施するようにプログラムされたコンピュータシステムを提供する。
図14は、さまざまな方法の分析または動作を実行するようにプログラムされるか、そうでなければ構成されるコンピュータシステム1401を示す。コンピュータシステム1401は、例えば、アルゴリズムを実行するか、データを分析するか、またはアルゴリズムの結果を出力するなど、本開示の方法およびシステムの様々な態様を調整することができる。コンピュータシステム1401は、ユーザの電子デバイス、または電子デバイスに対して遠隔に位置するコンピュータシステムであり得る。電子デバイスは、モバイル電子デバイスであり得る。
【0138】
コンピュータシステム1401は、中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」および「コンピュータプロセッサ」とも称される)1405を備えており、シングルコアもしくはマルチコアプロセッサ、または並列処理用の複数のプロセッサとすることができる。コンピュータシステム1401はまた、メモリまたはメモリ位置1410(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶装置1415(例えば、ハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース1420(例えば、ネットワークアダプタ)、ならびにキャッシュ、他のメモリ、データ記憶、および/または電子ディスプレイアダプタなどの周辺デバイス1425を備える。メモリ1410、記憶装置1415、インターフェース1420、および周辺デバイス1425は、マザーボードなどの通信バス(実線)を経由してCPU1405と通信する。記憶装置1415は、データを記憶するためのデータ記憶装置(またはデータリポジトリ)とすることができる。コンピュータシステム1401は、通信インターフェース1420の補助によってコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)1430に動作可能に結合させることができる。ネットワーク1430は、インターネット、インターネットおよび/もしくはエクストラネット、またはインターネットと通信するイントラネットおよび/もしくはエクストラネットとすることができる。ネットワーク1430は、場合によっては、電気通信ネットワークおよび/またはデータネットワークである。ネットワーク1430は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にすることができる、1つ以上のコンピュータサーバを備え得る。ネットワーク1430は、場合によってはコンピュータシステム1401の補助により、コンピュータシステム1401に結合されたデバイスがクライアントまたはサーバとして挙動するのを可能にし得るピアツーピアネットワークを実装することができる。
【0139】
CPU1405は、プログラムまたはソフトウェアに具体化することができる、機械可読命令のシーケンスを実行できる。この命令は、メモリ1410などのメモリ位置に記憶され得る。命令はCPU1405に向けることができるので、続いてCPU1405が本開示の方法を実施するようにプログラムまたは構成することができる。CPU1405が実行する動作の例には、フェッチ、デコード、実行、およびライトバックを挙げることができる。
【0140】
CPU1405は、集積回路などの回路の一部とすることができる。システム1401の1つ以上の他のコンポーネントを回路に含めることができる。場合によっては、回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0141】
記憶装置1415は、ドライバ、ライブラリ、および保存プログラムなどのファイルを記憶できる。記憶ユニット1415は、ユーザデータ、例えば、ユーザの嗜好性およびユーザプログラムを記憶できる。コンピュータシステム1401は、場合によっては、イントラネットまたはインターネットを介してコンピュータシステム1401と通信するリモートサーバ上に位置付けられるなど、コンピュータシステム1401の外部にある1つ以上の追加のデータ記憶装置を備えることができる。
【0142】
コンピュータシステム1401は、ネットワーク1430を経由して1つ以上のリモートコンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム1401は、ユーザ(例えば、医療従事者または患者)のリモートコンピュータシステムと通信することができる。リモートコンピュータシステムの例には、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレートもしくはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android対応デバイス、Blackberry(登録商標))、または携帯情報端末が挙げられる。ユーザは、ネットワーク1430を経由してコンピュータシステム1401にアクセスできる。
【0143】
本明細書に記載される方法は、例えば、メモリ1410または電子記憶装置1415など、コンピュータシステム1401の電子記憶位置に記憶された機械(例えば、コンピュータプロセッサ)実行可能コードによって、実装することができる。機械実行可能コードまたは機械可読コードは、ソフトウェアの形で設けることができる。使用中、コードはプロセッサ1405によって実行され得る。場合によっては、コードは、記憶装置1415から検索して、プロセッサ1405が容易にアクセスするためにメモリ1410に記憶することができる。いくつかの状況では、電子記憶装置1415は除外することができ、機械実行可能命令がメモリ1410に記憶される。
【0144】
コードは、コードを実行するように適合されたプロセッサを有するマシンとともに使用するために事前にコンパイルして構成することができるか、または実行時間中にコンパイルすることができる。コードは、コードが事前にコンパイルまたはコンパイルされたまま(as-compiled)の形で実行されるのを可能にするように選択できるプログラミング言語で、供給することができる。
【0145】
コンピュータシステム1401など、本明細書で提供されるシステムおよび方法の態様は、プログラミングにおいて具現化することができる。本技術の様々な態様は、典型的には機械(またはプロセッサ)実行可能コードの形にある「製品」もしくは「製造品」、および/または、一種類の機械可読媒体上で搬送されるか、もしくはその中で具現化される関連データとみなされる場合がある。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)やハードディスクなどの電子記憶ユニットに記憶することができる。「記憶」タイプの媒体には、コンピュータやプロセッサなどの有形メモリ、または種々の半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなど、その関連モジュールのいずれか、またはすべてを挙げることができ、これらはソフトウェアのプログラミング用に常に非一時的な記憶を提供し得る。ソフトウェアのすべてまたは一部は、時に、インターネットまたは他の種々の電気通信ネットワークを経由して通信され得る。かかる通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサへの、例えば管理サーバまたはホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへの、ソフトウェアのロードを可能にし得る。このため、ソフトウェア要素を担持し得る別のタイプの媒体は、ローカルデバイス間の物理的インターフェースにわたって、有線および光固定ネットワーク(optical landline networks)を介して、ならびに種々のエアリンク上で使用されるものなどの、光波、電波、および電磁波を含む。有線または無線リンクや光リンクなど、このような波を搬送する物理的要素も、ソフトウェアを担持する媒体と考慮され得る。本明細書で使用される場合、非一時的で有形の「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータまたは機械「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を与えることに関与するいずれかの媒体を指す。
【0146】
したがって、コンピュータ実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体、または物理伝送媒体を含むがこれらに限定されない、多くの形態を呈し得る。不揮発性記憶媒体には、例えば、図面に示されるデータベースなどを実装するのに使用され得るものなど、いずれかのコンピュータなどにおける記憶デバイスのうちのいずれかといった、光ディスクまたは磁気ディスクが挙げられる。揮発性記憶媒体には、かかるコンピュータプラットフォームのメインメモリなどのダイナミックメモリが挙げられる。有形伝送媒体には、同軸ケーブルや、コンピュータシステム内のバスを構築するワイヤを含む銅ワイヤおよび光ファイバが挙げられる。搬送波伝送媒体は、電気もしくは電磁信号、または無線周波数(RF)および赤外線(IR)データ通信中に生成されるものなどの音波もしくは光波の形態を呈し得る。そのため、コンピュータ可読媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他のあらゆる磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、他のあらゆる光学媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを有する他のあらゆる物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM、およびEPROM、FLASH-EPROM、他のあらゆるメモリチップもしくはカートリッジ、データもしくは命令を搬送する搬送波、かかる搬送波を運ぶケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングコードおよび/もしくはデータを読み取り得る他のあらゆる媒体が挙げられる。これらの形態のコンピュータ可読媒体の多くは、実行のために1つ以上の命令からなる1つ以上のシーケンスをプロセッサに搬送することに関与し得る。
【0147】
コンピュータシステム1401は、例えば、アルゴリズムに関する、データの入力もしくは出力、または視覚出力を提供するためのユーザインターフェース(UI)1440を備えた電子ディスプレイ1435を備えるか、またはそれと通信することができる。UIの例には、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)やウェブベースのユーザインターフェースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
本開示の方法およびシステムは、1つ以上のアルゴリズムによって実装することができる。アルゴリズムは、中央処理装置1405による実行時に、ソフトウェアによって実装することができる。アルゴリズムは、例えば、本開示の方法の分析または動作を行うことができる。
【実施例】
【0149】
以下の非制限的な例は、本明細書に記載される主題の様々な実施形態を示すように意図される。
【0150】
実施例1-潰瘍性大腸炎の全身バイオインフォマティクスおよびネットワークベース分析
抗TNF治療を経た8つの潰瘍性大腸炎(UC)患者コホートの遺伝子発現データをダウンロードし、2つの別個のバッチ(試験1および試験2はそれぞれ、表2および表3に記載される)で試験した。
【0151】
【0152】
【0153】
ベースラインおよび処置後における処置に対するレスポンダーおよび非レスポンダーの遺伝子発現プロファイルを、互いにおよび健康な対照と比較した(
図2)。分析は、処置に対するレスポンダー(処置後)の分子シグネチャーが健康な対照に類似することを示す。
【0154】
特定の疾患部分母集団の分子差は軽微である。UCレスポンダーおよび非レスポンダーのベースライン発現プロファイルを比較することは、いかなる有意に分化された遺伝子も明らかにしない。代わりに、患者部分母集団の分子差は、健康な対照と比較してより有意である。
【0155】
非レスポンダーの遺伝子発現を、非レスポンダーのベースライン発現プロファイルを健康な対照と比較することによって得た。その逆(例えば、レスポンダーのベースライン発現プロファイルを健康な対照と比較する)も行った。両試験は、レスポンダーバイオマーカーセットが非レスポンダーのバイオマーカーセット内にほぼ完全に含有され、非レスポンダーバイオマーカーセットがレスポンダーバイオマーカーセットより概して2倍大きいことを示し、非レスポンダーについてより重篤な疾患状態を潜在的に示唆した(
図3Aおよび
図3B)。
【0156】
標的発見パイプライン
図1は、疾患遺伝子発現シグネチャー(本明細書では応答モジュールとも称される)の同定のための例示的なワークフローを示す。
【0157】
例えば、いくつかの実施形態では、応答モジュール発見において、特定の患者部分母集団に関連するバイオマーカーは、健康な対照と比較されて同定される。分子寛解を達成するために、例えば、患者のトランスクリプトミクスを健康な対照に類似させるために、所望の下流効果が同定され、応答モジュール遺伝子が逆転される。
【0158】
対象を、教師ありおよび教師なしクラスタリングアルゴリズムの両方を使用して層別化した。対象部分母集団バイオマーカーを同定するために、異なる患者部分母集団のベースライン発現プロファイルを健康な対照と比較した。次いで、これらのバイオマーカーを、ヒトインタラクトームのマップ上にマッピングした。同定されたバイオマーカーは、ネットワーク上で有意なクラスターを形成し、例えば、ノードは散在せず、代わりに、互いに有意に相互作用し、部分母集団に特異的なバイオマーカー(応答モジュール)からなるサブネットワークを形成することが見出された。処置に応答した患者の処置後の発現プロファイルは健康な対照に類似しており、したがって、処置に対する応答は、応答モジュール遺伝子を戻して健康な対照に類似させることに翻訳され得ることも発見された。
【0159】
実施例2-潰瘍性大腸炎における新規薬物標的を同定するための検証されたシステムベースマルチオミックデータ分析プラットフォーム
【0160】
腫瘍壊死因子-α阻害剤(TNFi)は、20年近くにわたって潰瘍性大腸炎(UC)の標準的な処置である。しかし、すべての患者がTNFi治療に応答するわけではなく、代替的なUC処置の開発が求められる。UC処置のタンパク質標的の優先順位付けのためのマルチオミックネットワーク生物学的方法が本明細書に開示される。開示される方法は、UC化傾向に寄与する遺伝子(遺伝子型モジュール)、低疾患活性を達成するためにその発現が変化させられ得る遺伝子(応答モジュール)、およびその摂動が好都合な方向に応答モジュール遺伝子の発現を変化させ得るタンパク質(処置モジュール)を含むヒトインタラクトーム上のネットワークモジュールを同定し得る。標的は、遺伝子型モジュールに対するそれらのトポロジー的関連性および処置モジュールに対する機能的類似性に基づいて優先順位付けされ得る。例えば、UCにおいて本明細書に記載される方法は、UC処置のための既存の薬物および開発中の薬物と関連するタンパク質標的を効率的に回収し得る。UCおよび他の複雑な疾患における新規のリパーパシングにおける治療機会を見出すための手段が可能となり得る。
【0161】
序論
潰瘍性大腸炎(UC)は、慢性腸炎症を特徴とする複合疾患であり、遺伝的に罹患しやすい患者における腸内微生物叢(intestinal microbiota)に対する異常な免疫応答によって引き起こされると考えられている(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、C.Abraham et al.,“Inflammatory Bowel Disease,”New England Journal of Medicine 361,2066(2009)を参照)。UCの処置は、アミノサリチレートおよびステロイドを含み得、低疾患活性が達成されない場合、腫瘍壊死因子α阻害剤(TNFi)などの生物学的製剤が推奨され得る(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、S.C.Park et al.,“Current and emerging biologics for ulcerative colitis,”Gut and liver 9,18(2015)、K.Hazel et al.,Emerging treatments for inflammatory bowel disease,“Therapeutic advances in chronic disease.”11,2040622319899297(2020)を参照)。それにもかかわらず、約40%の患者がTNFi処置に応答しない可能性があり、10%までの初期レスポンダーが毎年TNFi処置に対する応答を失う可能性がある(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、S.C.Park et al.、P.Rutgeerts et al.,“Infliximab for induction and maintenance therapy for ulcerative colitis,”New England Journal of Medicine 353,2462(2005)を参照)。金銭的なインセンティブとともに、TNFi治療に関する困難は、代替的な治療手法、例えば、JAK阻害剤、IL-12/IL-23阻害剤、SIP受容体モジュレーター、抗インテグリン剤、または新規のTNFi化合物の研究および開発につながった(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、E.Troncone et al.,“Novel therapeutic options for people with ulcerative colitis:an update on recent developments with Janus kinase(JAK)inhibitors,”Clinical and Experimental Gastroenterology 13,131(2020)、A.Kashani et al.,“The Expanding Role of Anti-IL-12 and/or Anti-IL-23 Antibodies in the Treatment of Inflammatory Bowel Disease,”Gastroenterology&Hepatology 15,255(2019)、S.Danese et al.,“Targeting S1P in inflammatory bowel disease:new avenues for modulating intestinal leukocyte migration,”Journal of Crohn’s and Colitis 12,S678(2018)、S.C.Park et al.,“Anti-integrin therapy for inflammatory bowel disease,”World journal of gastroenterology 24,1868(2018)、K.Hazel et al.を参照)。いくつかの手法は、異常な免疫応答に寄与する生物学的機構を標的とし、UC病因(pathogenesis)についての詳細な知識を必要とし得る。しかし、注射による薬物送達の免疫原性および不便さに関する懸念により、さらなる経口投与される小分子薬物の開発への関心が高まっている。
【0162】
新規薬物の開発は、その調節が低疾患活性または寛解につながり得る分子標的の同定を必要とし得る。マルチオミックデータの急増に伴い、機械学習(ML)および人工知能(AI)は、標的優先順位付け、薬物設計、薬物標的相互作用予測、または小分子最適化などの治療における多くのタスクのために広く使用されるようになった(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、J.Vamathevan et al.,“Applications of machine learning in drug discovery and development”,Nature reviews Drug discovery 18,463(2019)を参照)。標的優先順位付けのための現在のML/AI手法は、所与の疾患に関与する遺伝子の検索に焦点を当て得る。遺伝子は、例えば、疾患特異的遺伝子発現および突然変異データから構築された特徴を、関連するタンパク質間、代謝、もしくは転写相互作用に関する情報と共に使用して分類器を訓練することによって、または自然言語処理(NLP)法を使用して疾患-遺伝子関連性について既存のテキストデータベースもしくは研究文献を分析することによって推論され得る(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、P.R.Costa et al.,in BMC Genomics,Vol.11(Springer,2010)pp.1-15、J.Jeon et al.,“A systematic approach to identify novel cancer drug targets using machine learning,inhibitor design and high-throughput screening,”Genome medicine 6,1(2014)、E.Ferrero et al.,“In silico prediction of novel therapeutic targets using gene-disease association data,”Journal of translational medicine 15,1(2017)、P.Mamoshina et al.,“Machine learning on human muscle transcriptomic data for biomarker discovery and tissue-specific drug target identification,”Frontiers in genetics 9,242(2018)、A.Bravo et al.,“Extraction of relations between genes and diseases from text and large-scale data analysis:implications for translational research,”BMC Bioinformatics 16,1(2015)、J.Kim et al.,“An analysis of disease-gene relationship from Medline abstracts by DigSee,”Scientific Reports 7,1(2017)を参照)。
【0163】
しかし、多くのML/AI手法は、探索バイアスまたはデータ不完全性に悩まされ得る(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、T.Rolland et al.,“A proteome-scale map of the human interactome network,”Cell 159,1212(2014)、J.Menche et al.,“Uncovering disease-disease relationships through the incomplete interactome,”Science 347,1257601(2015)を参照)。さらに、系統的な分析は、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された薬物が、疾患関連遺伝子のタンパク質産物を直接標的としない可能性があることを実証した(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、M.A.Yildirim et al.,“Drug-target network,”Nature biotechnology 25,1119(2007)、E.Guney et al.,“Network-based in silico drug efficacy screening,”Nature communications 7,1(2016)を参照)。ネットワークベース標的優先順位付け方法は、プロテオミクス相互作用、メタボロミクス相互作用、およびトランスクリプトーム相互作用、ならびに薬物、疾患、および遺伝子の間の関連性をネットワークの形態で集約することによって、ならびに不偏かつ教師なしの様式で実現可能な標的を区別するネットワークベース特徴を導出することによって、これらの問題に対処し得る(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、S.Zhao et al.,“Network-based relating pharmacological and genomic spaces for drug target identification,”PloS one 5,e11764(2010)、Z.Isik et al.,“Drug target prioritization by perturbed gene expression and network information,”Scientific reports 5,1(2015)、T.Katsila et al.,“Computational approaches in target identification and drug discovery,”Computational and structural biotechnology journal 14,177(2016)、E.Guney et al.を参照)。それにもかかわらず、新規の可能な標的を同定する方法として、疾患形成と処置の成功との間の関係を同時に捕捉するネットワークベースフレームワークはまだ存在しない。
【0164】
少なくともこれらの問題に対処するために、ヒト細胞におけるタンパク質間相互作用のネットワーク-モジュールトライアッドと称される、ヒトインタラクトーム(HI)の3つのネットワーク領域(モジュール)を利用するUCの標的優先順位付けのためのネットワークベース方法であって、
1.遺伝子型モジュール-UCの遺伝的素因に関連する遺伝子のセットと、
2.応答モジュール-低疾患活性を達成するために発現を変化させる必要がある遺伝子のセットと、
3.処置モジュール-低疾患活性を達成するために好ましい方向に応答モジュール遺伝子の発現を変化させるために標的化される必要があるタンパク質のセットと
を含む、ネットワークベース方法が本明細書に開示される。
【0165】
実現可能な標的は、同時に(a)遺伝子型モジュールにトポロジー的に関連し得、例えば、特定の疾患に関連する遺伝子のネットワーク近傍にあり得、および(b)処置モジュールに機能的に類似し得、例えば、それらの摂動時に処置モジュールタンパク質のものと同様のトランスクリプトーム下流効果を有し得る(例えば、E.Guney et al.を参照)。本明細書に開示される方法は、UCに承認された既知の標的を効率的に回復し、ネットワーク由来のランキングに基づいて、UCについて異なる発症段階にある標的を区別することによって、例としてUCを使用して、提案されるフレームワークの有用性を実証し得る。モジュールトライアッドフレームワークは、複雑な疾患の発症の根底にある生物学的メカニズムと、その処置ダイナミクスとをネットワークの観点から結び付ける最初の試みであり得る。モジュールトライアッドフレームワークは、既知の遺伝子-疾患関連性、処置前後の患者の利用可能な遺伝子発現データ、および適切な細胞株における摂動実験を有する他の複雑な疾患に直接拡張可能であり得る。
【0166】
モジュールトライアッド標的優先順位付けフレームワークの概要
モジュールトライアッドフレームワークは、
図7に図示される、(1)所与の疾患に対するモジュールトライアッドの発見、(2)同定されたモジュールトライアッドに基づく新規標的発見を含む。
【0167】
モジュールトライアッドの発見のために、各モジュールは、補助疾患固有情報を使用してHIにマッピングされ得る。遺伝子型モジュールは、遺伝子-疾患関連データベースを分析して、その突然変異が疾患表現型の形成を予め決定し得る遺伝子の位置を特定することによって構築され得る。応答モジュールは、低疾患活性を達成した患者における処置後に有意にダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションされ得る遺伝子を含む。処置モジュールの構築は、(1)処置後に応答モジュール遺伝子について観察されたものと同様の遺伝子発現プロファイルをもたらす小分子化合物を同定するために、統合ネットワークベース細胞シグネチャーライブラリー(LINCS)L1000摂動データベースを使用すること、(2)これらの化合物によって標的とされるタンパク質のセットを抽出するために、DrugBankおよびRepurposing Hubデータベースを使用することを含み、これらのタンパク質は、HIにマッピングされ、処置モジュールをもたらす(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、A.Subramanian et al.,“A next generation connectivity map:L1000 platform and the first 1,000,000 profiles,”Cell 171,1437(2017)、C.Knox et al.,“DrugBank 3.0:a comprehensive resource for ‘omics’ research on drugs,”Nucleic acids research 39,D1035(2010)、S.M.Corsello et al.,“The Drug Repurposing Hub:a next-generation drug library and information resource,”Nature medicine 23,405(2017)を参照)。
【0168】
HIの少なくともいくつかのタンパク質(ノード)は、構築された遺伝子型および処置モジュールに少なくとも部分的に基づいてランク付けされる。各ノードについて、そのノードから遺伝子型モジュールノードまでの平均最短距離に基づいて算出されるその近接性に基づいて、遺伝子型モジュールに対するそのトポロジー的関連性が評価される(例えば、E.Guney et al.を参照)。処置モジュールに対するノードの機能的類似性は、処置モジュールノードに対するノードの平均拡散状態距離(DSD)に基づいて算出される選択性を使用して評価される(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、M.Cao et al.,“Going the distance for protein function prediction:a new distance metric for protein interaction networks,”PloS one 8,e76339(2013)を参照)。近接性および選択性の算出に関する詳細については、
図7および方法(本明細書の他の箇所に記載)を参照されたい。HIノードは、それらの近接性および選択性スコアに基づいてランク付けされ得、これらの2つのランク付けは、ランクプロダクトを使用して単一の組み合わされたランクにマージされ得る(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、R.Breitling et al.,“Rank products:a simple,yet powerful,new method to detect differentially regulated genes in replicated microarray experiments,”FEBS letters 573,83(2004)を参照)。
【0169】
UC遺伝子型モジュール
疾患に関連する遺伝子のタンパク質産物は、通常、HI上に無作為に散在するのではなく、疾患形成の背後にある根幹的な生物学的機構の存在を反映する相互接続されたノードのクラスターを形成する(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、J.Xu et al.,Discovering disease-genes by topological features in human protein-protein interaction network,”Bioinformatics 22,2800(2006)、K.-I.Goh et al.,“The human disease network,”Proceedings of the National Academy of Sciences 104,8685(2007)、T.Ideker et al.,“Protein networks in disease,”Genome research 18,644(2008)、A.-L.Barabasi et al.,“Network medicine:a network-based approach to human disease,”Nature reviews genetics 12,56(2011)を参照)。これらの相互接続されたクラスターのネットワーク特性を研究することは、疾患分子機構、標的発見、および薬物のリパーパシングの理解を進めてきた(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、J.Menche et al.、A.Sharma et al.,“A disease module in the interactome explains disease heterogeneity,drug response and captures novel pathways and genes in asthma,”Human molecular genetics 24,3005(2015)、E.Guney et al.、F.Cheng et al.,“Network-based approach to prediction and population-based validation of in silico drug repurposing,”Nature communications 9,1(2018)を参照)。
【0170】
モジュールトライアッドフレームワークにおけるUC遺伝子関連の概念を含めるために、GWASカタログ、ClinVar、またはMalaCardsデータベースを使用して、UCとの関連性を有すると報告された遺伝子を抽出することができる(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)(例えば、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される、A.Buniello et al.,“The NHGRI-EBI GWAS Catalog of published genome-wide association studies,targeted arrays and summary statistics 2019,”Nucleic acids research 47,D1005(2019)、M.J.Landrum et al.,“ClinVar:improving access to variant interpretations and supporting evidence,”Nucleic acids research 46,D1062(2018)、N.Rappaport et al.,“MalaCards: an integrated compendium for diseases and their annotation,”Database 2013(2013)を参照)。合計194個の遺伝子が、UCに関連するものとして3つのデータベースの少なくとも1つに報告され、そのうちの174(89.7%)は、HIにおけるそれらの対応するタンパク質産物にマッピングされる。タンパク質産物は、ネットワーク上に無作為に散在しておらず、64.9%(113/174)のタンパク質が相互連結され、無作為(例えば、Zスコア=4.82、p<10-4)に予想されるよりも有意に大きい最大連結成分(LCC)を形成する。本明細書に記載の方法は、このLCCを、UCに対する遺伝的素因を表す遺伝子型モジュールと定義する。実現可能な標的は、遺伝子型モジュールのトポロジー的近傍に位置し得る(例えば、E.Guney et al.を参照)。
【0171】
好結果のUC処置はトランスクリプトームレベルで反映される
UCに対する素因をもたらす遺伝子にトポロジー的に近いことに加えて、実現可能な標的はまた、UCの処置に機能的に関連し得る。例えば、UC処置ダイナミクスはトランスクリプトームレベルで反映され得、実現可能な標的を乱すことは、好結果のUC処置時に観察される転写変化と同様の転写変化をもたらし得る。
【0172】
UC処置は、いくつかの試験から、正常組織対照およびインフリキシマブまたはゴリムマブのいずれかのTNFi薬物による処置を受けている活動性UCを有する患者の遺伝子発現データにおいてトランスクリプトームレベルで反映され得る。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、I.Arijs et al.,“Mucosal gene expression of antimicrobial peptides in inflammatory bowel disease before and after first infliximab treatment,”PloS one 4,e7984(2009)、G.Toedter et al.,“Gene expression profiling and response signatures associated with differential responses to infliximab treatment in ulcerative colitis,”Official journal of the American College of Gastroenterology-ACG 106,1272(2011)、S.Pavlidis et al.,“I MDS:an inflammatory bowel disease molecular activity score to classify patients with differing disease-driving pathways and therapeutic response to anti-TNF treatment,”PLoS Computational Biology 15,e1006951(2019)、N.Planell et al,“Transcriptional analysis of the intestinal mucosa of patients with ulcerative colitis in remission reveals lasting epithelial cell alterations,”Gut 62,967(2013)、T.Montero-Melendez et al.,“Identification of novel predictor classifiers for inflammatory bowel disease by gene expression profiling,”PloS one 8,e76235(2013)、J.T.Bjerrum et al.,“Transcriptional analysis of left-sided colitis,pancolitis,and ulcerative colitis-associated dysplasia,”Inflammatory bowel diseases 20,2340(2014)、S.E.Telesco,et al.,“Gene expression signature for prediction of golimumab response in a phase 2a open-label trial of patients with ulcerative colitis,”Gastroenterology 155,1008(2018)を参照)。表4は、UC患者応答の分子シグネチャーを同定するために使用したTNFi処置試験を要約する。
【0173】
【0174】
活動性UCを有する患者と正常対照との間で差次的に発現される545個の遺伝子のセットを同定してもよい。これらの遺伝子は、処置前および処置後の正常対照およびUC患者の遺伝子発現プロファイルのユニフォームマニフォールド近似および投影(Uniform Manifold Approximation and Projection:UMAP)埋込みのための特徴として使用され、処置後に低い疾患活動性を達成した患者(レスポンダー)と、達成しなかった患者(非レスポンダー)との2つの群に分割され得る(
図8を参照)。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、L.McInnes et al.,“Umap:Uniform manifold approximation and projection for dimension reduction,”arXiv preprint arXiv:1802.03426 (2018)を参照)。
【0175】
UMAP埋込みから、インフリキシマブまたはゴリムマブに対するレスポンダーおよび非レスポンダーの処置前遺伝子発現プロファイルの間で明らかな差異が観察されない場合がある。さらに、差次的発現遺伝子が、レスポンダーおよび非レスポンダーの処置前遺伝子発現プロファイルの間で見出されない場合がある(本明細書の他の箇所に記載される、「TNFi治療に対するレスポンダーおよび非レスポンダーの差次的遺伝子発現の分析」を参照)。逆に、レスポンダーの処置後遺伝子発現プロファイルは正常対照のものと密接にクラスタリングされるが、インフリキシマブまたはゴリムマブに対する非レスポンダーの処置後プロファイルは正常対照のものとは別個にクラスタリングされ、これにより、正常対照のものと高い類似性を有する遺伝子発現プロファイルがUC処置の成功を反映し得ることが示される。これらの観察が動機となり、本発明者らは、UC処置に対する「分子応答」を、正常対照の遺伝子発現プロファイルに類似する処置時のUC患者の遺伝子発現プロファイルの逆転と定義する。
【0176】
UC応答モジュール
どのような転写変化によりレスポンダーの遺伝子発現プロファイルが正常対照のものとさらに類似するようになり得るかをさらに理解するために、レスポンダーの処置前および処置後の遺伝子発現プロファイルの差次的発現の分析を行った。正常対照に関して、処置前にレスポンダーにおいて調節不全にされた遺伝子の小部分は、処置後の発現の有意な変化を示す(本明細書の他の箇所に記載される「TNFi治療に対するレスポンダーおよび非レスポンダーの差次的遺伝子発現の分析」を参照)。これらの遺伝子の発現は処置時にレスポンダーにおいて逆転され得、例えば、正常対照に関して、処置前にレスポンダーにおいてダウンレギュレートされた遺伝子は処置後にアップレギュレートされ得、逆もまた同様である。しかし、これらの転写変化は、
図8に示されるプロファイル埋込みに基づいてレスポンダーおよび正常対照の遺伝子発現プロファイルを類似させるのに十分であり得、処置後に低い疾患活動性を達成した患者を示す。UC処置に対する分子応答を示すこの遺伝子セットは、RBA(レスポンダー前後(responder before-after))セットと呼ばれ得る。UCのTNFi処置に特異的なRBAセットは、インフリキシマブおよびゴリムマブを用いた試験から判定されたRBA遺伝子の和集合をとることによって構築され得る。(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)。
【0177】
RBAセットに属する遺伝子は、その適切な機能がTNF-αの阻害によって回復され得る1つ以上の生物学的経路を介して互いに関連し、したがって互いに近接して位置し得る。これを試験するために、TNFi RBA遺伝子をHI上にマッピングして、RBA遺伝子に対応するノードで構成されるサブネットワーク構築してもよい。RBAセットは、保存された次数配列(Zスコア=9.24、p<10-4)を有する無作為に選択されたノードのセットと比較して、HI上に有意なLCC(271個のノードのうち91個、34%)HI上でを形成する。RBA LCCにおけるこの洗練された遺伝子におけるセットは、応答モジュール、例えば、UC患者が治療的介入に応答して低い疾患活動性を達成するときに転写により改変されたHIの領域として定義される。
【0178】
UC処置モジュール
UCの処置に成功するには、TNFi治療を受けているUC患者の遺伝子発現プロファイルを試験することによって、応答モジュールノードの発現プロファイルを戻すことが必要であり得る。TNF-αの阻害は、応答モジュール遺伝子において所定のトランスクリプトーム効果を達成する唯一の方法ではない場合があり、他のタンパク質の摂動によって、同様の下流効果が達成される場合がある。
【0179】
実験により検証される代替的な摂動を分析して、TNFi治療の成功時に観察されるものと同様の分子応答が得られる場合がある。差次的遺伝子発現効果(シグネチャー)は、LINCS L1000データベースから得られた小分子化合物によるヒト細胞株の摂動から生じ得る(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、A.Subramanian et al.,“A next generation connectivity map:L1000 platform and the first 1,000,000 profiles,”Cell 171,1437(2017)を参照)。摂動シグネチャーは、HT29細胞株(例えば、ヒト大腸腺癌細胞株)に対する14,513例の化合物実験における遺伝子発現の変化の規模および方向を示す遺伝子ごとのZスコアを含む、LINCS L1000レベル5のデータから導出され得る。UCに罹患した組織(結腸)に関連し、かつ小分子化合物の適用範囲が比較的広いことから、HT29細胞株に対する摂動実験が考慮され得る。
【0180】
応答モジュール遺伝子の発現を逆転させる化合物および対応する標的タンパク質を見出すために、LINCS L1000実験は、各HT29細胞株に対する実験における遺伝子的摂動Zスコアを使用して、応答モジュールにおけるアップレギュレートおよびダウンレギュレートされた遺伝子に関する重み付き接続性スコア(WTCS)を計算することによって評価され得る(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、A.Subramanian et al.,“A next generation connectivity map:L1000 platform and the first 1,000,000 profiles,”Cell 171,1437(2017)を参照)。所与の実験におけるWTCSの統計的有意性を評価するために、アップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子のエンリッチメントスコアに関連するp値の対、pupおよびpdownを割り当てるランダム化手順を使用することができる(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)。pup≧0.05およびpdown≧0.05、ならびにWTCS≧0の化合物実験は除外される。このフィルタリングは、応答モジュール遺伝子の発現を戻すという点で、正の有意な治療効果を有する化合物に対する考慮を確実とする。HT29細胞株に対して実施した14,513例の化合物実験のうち68例の実験は、統計的に有意なWTCSを呈し、-0.642~-0.480の範囲である。DrugBank(商標)およびRepurposing Hub(商標)データベースに従って、これら68例の実験で評価した25個の固有の化合物のうち少なくとも1つに対する標的として69個のタンパク質が明らかとなる。2個のタンパク質はHI(例えば、それらは既知のタンパク質相互作用パートナーを有していない)にマッピングされなくてもよく、残り67個のタンパク質のうちの43個(64%)は、有意なサイズ(Zスコア=3.39、p<10-4)のLCCを形成する。このLCCは処置モジュールと呼ばれる。
【0181】
処置モジュールに属する標的の1つはTNF-αである。さらに、構築により、処置モジュールに属する標的タンパク質は、TNFi治療の成功時に観察されるものと同様の転写変化を応答モジュール内でもたらし得る。したがって、処置モジュールに属するタンパク質は、UC患者を処置するための介入機会を提供し得る。
【0182】
標的のランク付け
処置モジュールノードから直接示唆される潜在的な介入機会に加えて、遺伝子型および処置モジュールは、HI内の全てのノードを、それらがUC処置の標的となる可能性について教師なしで優先順位付けするために使用することができる。実現可能な標的は、以下のネットワーク特性を同時に満たすことができる。実現可能な標的は、UC(遺伝子型モジュール)に対する遺伝的素因に関連するHIノードにトポロジー的に近接し得る。疾患モジュールに対するノードのネットワーク近接性に基づく標的の優先順位付けは、複数の疾患にわたる既知の標的を有する薬物の治療効果を予測する(例えば、E.Guney et al.を参照)。したがって、UC遺伝子型モジュールに対する所与のHIノードのトポロジー的関連性を定量化するために、遺伝子型モジュールに対するその近接性は、遺伝子型モジュールに対するノードの平均ネットワーク最短経路に基づいて算出され得る(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)。
【0183】
また、適した標的の標的化は、UC処置の成功時に観察されるものと同様の転写変化を引き起こし得る。処置モジュールは、摂動時に、応答モジュール遺伝子の望ましい転写変化をもたらし得るノードからなるネットワーク領域を定義する。したがって、処置モジュールタンパク質と機能的に類似するタンパク質も有望な標的であり得る。しかし、そのような標的を見出すために、方法論は、網目構造に基づいたHIノードの下流転写効果の類似性を定量化し得る。このために、拡散状態距離(DSD)、すなわち、ネットワーク内のノードの各対間の伝搬ベースのトポロジー的類似性を捕捉するように設計されたネットワークランダムウォークに基づくメトリックが、その優れた性能のためにタンパク質機能的注釈を予測する際に使用され得る。(例えば、M.Cao et al.を参照)。
【0184】
DSDが、異なるタンパク質間の下流転写効果の類似性を反映するかどうかを評価するために、4つの複雑な疾患に対して承認された薬物の回復が、HIノード間のDSDに基づいて分析され得る(例えば、アルツハイマー病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、および多発性硬化症)(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)。承認された薬物それぞれの標的は、所与の疾患を処置する同様の治療効果をもたらし得る。したがって、承認された標的を効率的に回復することは、1つの薬物標的および他のHIノードへのそのDSDを知ることによって可能となり得る。そのような標的回復は、承認された標的および複雑な疾患ごとに別々に実施され、
図9に示されるような受信者動作特性(ROC)曲線を導出してもよい。承認された薬物標的からHIの残りのノードまでのDSDを知ることは、複雑な疾患それぞれにおける既知の承認された標的の残りを回復するのに十分であり得る。
【0185】
さらに、処置モジュールに対して低いDSDを有するノードは、HIにおいて等しい大きさの他の無作為に選択されたモジュールに等しく近くてもよい。これを説明するために、HIノードと処置モジュールとの間の機能的類似性は、選択性、例えば、ノードと所与のネットワークモジュールとの間のDSDの統計的有意性を考慮するDSDに基づくネットワークベースの尺度を使用して定量化され得る(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)。
【0186】
最後に、すべてのHIノードは、遺伝子型モジュールに対するそれらの近接性および処置モジュールに対する選択性に基づいてランク付けされてもよく、ランクプロダクトは、ノードの最終的な組合せランク付けを判定するために使用され得る(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)(例えば、R.Breitling et al.を参照)。
【0187】
モジュールトライアッド標的優先順位付けのインシリコ検証
提案された標的ランク付けが有意義な結果をもたらすかどうかを試験するために、UC処置について承認された薬物標的をPharmalntelligence(商標)Citelineデータベースから得た(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)。得られたリストは、HI上にマッピングされた23個の標的を含む。承認された標的は、
図10、パネル(a)に示されるように、残りのHIノードと比較して、同時に、遺伝子型モジュールに非常に近接し、かつ処置モジュールに選択的である。
図10、パネル(b)に示されるように、近接性および選択性の両方は、既知の承認された標的を単独で効率的に回復するが、両方の組合せは、より良好に機能し、標的優先順位付けのためのこれらのネットワーク尺度の相乗効果を示唆する。標的優先順位付けのための提案されたネットワーク尺度に加えて、ネットワークおよび遺伝子発現データの組合せに基づく別の尺度である、既知の薬物標的を回復する際に高い性能を示したローカルラディアリティがチェックされ得る。(例えば、Z.Isik et al.を参照)。ローカルラディアリティは、標的を優先順位付けするためにトポロジーデータおよび遺伝子発現データの両方を使用するという点で、本明細書に記載されるモジュールトライアッド優先順位付け方法と類似している。主な違いは、ローカルラディアリティが、標的の摂動によって影響を受けるHIノード(下流ノード)が標的のネットワーク近傍にあり得ると仮定していることである。本明細書で説明される方法を使用して、標的は、所定の下流効果を反映する応答モジュールノードに対するそれらのローカルラディアリティに基づいて優先順位付けされることができる(本明細書の他の箇所に記載される方法を参照)。ローカルラディアリティはまた、本明細書で説明されるモジュールトライアッド優先順位付け方法よりも効率的ではないにもかかわらず、承認されたUC標的を効率的に回復し得る。すべての試験された方法についての承認されたUC標的回復に対応する感度が表5に報告されており、これは、選択性、近接性、組み合わさった近接性および選択性、ならびに応答モジュールに対するローカルラディアリティによってランク付けされた上位K個のタンパク質中のUC処置のための回復された承認された標的の画分を示す。
【0188】
【0189】
最後に、UC処置として検討されている薬物(例えば、臨床および前臨床試験において試験されている)は、UC用に既に開始されている標的と比較したとき、近接性および選択性に基づいてより低い組合せランク付けを有するノードを標的とし得る。これは、開始された標的は、UC患者における疾患活動性を改善するそれらの能力について臨床段階を通して既に評価されているが、まだ開始されていない標的は、UCの処置に必ずしも有効ではない可能性があるためである。組合せランクの分布は、臨床試験(第I相、II相、III相)または
図10、パネル(c)に示されるような前臨床試験において開始される薬物の標的について比較され得る。開始された薬物に対応する標的の組合せランク付けの中央値はより高く、臨床試験におけるものが続き、前臨床試験におけるものが続く。
【0190】
考察
例示的な疾患としてUCを使用する複雑な疾患のための新規治療としてタンパク質標的を優先順位付けするためのネットワークベースのフレームワークおよび方法が、本明細書に記載される。モジュールトライアッドフレームワークは、複雑な疾患形成および処置の背後にある機構が、遺伝的素因、転写変化、およびHI上の薬物のタンパク質標的の3つのネットワークモジュール間の相互作用によって捕捉され得ると仮定して、ネットワークレベルで疾患の形成および処置の成功の両方を捕捉する第1の試みである。本明細書に記載の方法において、疾患表現型の形成は、遺伝子型モジュールと呼ばれるHI領域に局在する遺伝子の集合における遺伝子変異によって予め決定される。遺伝子型モジュール内のこれらの遺伝子変化は、活動性UC患者における遺伝子発現変化に現れた。TNFi治療時に低い疾患活動性を達成した患者において発現レベルが有意に変化した遺伝子を追跡することによって、処置に対する陽性応答を達成するために転写的に改変され得る遺伝子の集合が導出され得る。これらの遺伝子は、応答モジュールと呼ばれるHIの局在領域を占有する。
【0191】
TNFi治療の成功時に達成されるのと同様の転写摂動プロファイルをもたらすタンパク質標的化を同定することができる。本明細書に記載される方法は、ヒト細胞を摂動させる小分子化合物の実験データを走査し、化合物の摂動後の応答プロファイルを、処置の成功時に達成されるプロファイルと照合することによって行われ得る。遺伝子発現の所定の下流変化を達成する化合物標的の集合はまた、HIにおける局在領域を占有し、処置モジュールと呼ばれる。所定のトランスクリプトーム下流効果に適合する同定された化合物は、表6(これは、処置モジュールに属するタンパク質標的にマッピングされた薬物およびそれらの既知の作用機序を示す)に示すように、異なるように見えるが、それらの標的は、HIの局在化領域に属し、UCの処置の背後にある共通の基礎をなす生物学を反映し、処置モジュールノードに機能的に類似している他のタンパク質標的が、UC処置のための有望な標的であることを示唆する。遺伝子型モジュールに対するそれらの近接性および処置モジュールに対する選択性に基づいてHIノードをランク付けすることによって、本明細書に開示される方法は、UC表現型の形成に関連する遺伝子にトポロジー的に同時に関連し、標的とされるときに所望の処置下流効果を有するタンパク質に機能的に類似するHIタンパク質を優先順位付けし得る。
【0192】
【0193】
遺伝子型モジュールに対する標的のトポロジー的関連性を定量化するために使用される近接性は、様々な薬物および疾患にわたる治療効果の偏りのない尺度を提供し、有効な処置を緩和処置と区別することを示した。(例えば、E.Guney et al.を参照)。その標的が疾患に関連する遺伝子に近接している薬物は、より離れた薬物よりも有効である可能性が高い可能性がある(例えば、E.Guney et al.を参照)。本明細書に記載される方法では、HI内のノードの所与の対を摂動させることから生じる下流効果間の類似性を測定するためのプロキシとしてDSDを使用した。ノード対間のDSDは、これらのノードから始まるランダムウォーク間の類似性に基づく。ノードあたりのランダムウォークの訪問頻度は、癌に関連する遺伝子(例えば、単一ヌクレオチド変異および挿入/欠失変異)における基本変異から生じる摂動パターンを評価するために成功裏に使用された(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、M.D.Leiserson et al.,“Pan-cancer network analysis identifies combinations of rare somatic mutations across pathways and protein complexes,”Nature genetics 47,106(2015)を参照)。所与のノードから始まるランダムウォークの訪問頻度は、このノードがネットワークの残りに課す摂動の量に対応し得、下流摂動効果は、所与のノードから始まるランダムウォークの訪問頻度のベクトルに反映される。DSDは、ランダムウォークの訪問頻度のベクトル間の距離を測定するので(本明細書の他の箇所で説明される方法を参照)、小さいDSDを有するノードのペアは、同様の下流摂動効果を有するノードに対応する。DSDは、実際に、DSDに基づいて、UCを含む4つの複雑な疾患について既知の承認された標的を回復することによって、異なる標的の治療効果間の類似性を反映する。
【0194】
本明細書に開示されるモジュールトライアッドフレームワークおよび方法は、TNFi治療時に低疾患活動性を達成した活動性UC患者の処置ダイナミクスについての知識を利用し得る。しかし、TNFi治療に対して十分な応答を示さない患者は、疾患集団の大部分を占め、潜在的に、その根底にある生物学において異なるUCサブタイプを患っている可能性があるか、または正常な細胞プロセスをより深刻に破壊する。(本明細書の他の箇所に記載される「TNFi治療に対するレスポンダーおよび非レスポンダーにおける差次的発現遺伝子の経路濃縮分析」を参照)(例えば、P.Rutgeertsを参照)。本明細書に記載される方法を使用して同定される新規標的は、TNFi非レスポンダーに好適な治療を見出すのに役立ち得るが、TNFi治療に対する不十分な応答の背後にある正確な生物学の試験が依然として必要とされ得る。
【0195】
患者のゲノムデータおよびトランスクリプトームデータを利用する本明細書に記載されるモジュールトライアッドフレームワークおよび方法は、複雑な疾患の形成および処置ダイナミクスに関する全体的なネットワークベースの見解を提供し得、新たな標的同定への偏りのないアプローチを提供し得る。本明細書に開示される方法は、利用可能な遺伝子-疾患関連データ、処置前後の患者のトランスクリプトームデータ、および適切な細胞株における摂動実験を有する任意の複雑な疾患に一般化することができる。標的優先順位付けに加えて、本明細書に開示される方法は、処置モジュールに属する標的に基づいて、再浄化機会を提案することができる。モジュールトライアッド法は、それらの標的に対する薬物のアゴニストまたはアンタゴニスト作用に関する情報を含む、単一遺伝子過剰発現およびノックダウンなどの利用可能な摂動実験を考慮することによって、またはそれらの毒性および薬物耐性を考慮して優先順位をつけた標的のリストをさらに洗練することによって増強することができる。
【0196】
方法
ヒトインタラクトーム。実験的に誘導されたタンパク質間相互作用のHIマップは、公開データベースから組み立てられる(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、T.Mellors et al.,“Clinical validation of a blood-based predictive test for stratification of response to tumor necrosis factor inhibitor therapies in rheumatoid arthritis patients,”Network and Systems Medicine 3,91(2020)を参照)。本明細書で使用されるHIは、例えば、2021年3月時点のデータベースバージョンを使用して組み立てられる。
【0197】
UC遺伝子型モジュールの構築。UCに関連する遺伝子は、(1)GWASカタログ、(2)ClinVarデータベース、具体的には、「病原性」、「見かけ上病原性」、および病原性の「競合する解釈(conflicting interpretations)」として示される遺伝子、および、(3)MalaCardsデータベース(例えば、A.Buniello et al.、M.J.Landrum et al.、N.Rappaport et al.を参照)によって示されるように同定される。遺伝子は、例えば、2021年9月時点のデータベースから収集される。3つのデータベースの少なくとも1つにおいて言及される遺伝子はすべて保持されてもよく、HIネットワークの一部ではない遺伝子はフィルタリングされて除外されてもよい。残りの遺伝子を使用して、サブネットワークを構築し、その最大連結成分(LCC)を抽出することができる。
【0198】
LCCサイズの有意性は、元のサブネットワークにおけるような次数シーケンスを有するサブネットワークを無作為にサンプリングすることによって評価され得る。10,000個のサブネットワークを繰り返しサンプリングすることによって、無作為にサンプリングされたサブネットワークのLCCサイズの経験分布を、その平均μLCCおよび標準偏差σLCCとともに見出すことができる。本明細書に開示される方法は、LCC Zスコアを以下のように定義する:
【0199】
【数1】
ここで、S
LCCは元のサブネットワークのLCCサイズである。本明細書に開示される方法はまた、観察されたS
LCCの経験的p値を、S
LCCを超えるLCCサイズを有する無作為にサンプリングされたサブネットワークの割合として定義する。
【0200】
活動性UC症例および正常対照についての遺伝子発現データ処理。組織粘膜試料を、表4に示すように、Gene Expression Omnibus(GEO)より正常対照および中程度~重度の活動性UC患者から収集した(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、T.Barrett et al.,“NCBI GEO:archive for functional genomics data sets-update,”Nucleic acids research 41,D991(2012)を参照)。3つの試験は、処置後の患者の応答状態を報告し、応答は、内視鏡的および組織学的所見またはMayoスコアによって決定される。応答定義、例えば、特定のUC患者の応答ラベルを有するコホートにわたるTNFi応答の定義に関する詳細については表7を参照されたい。本明細書に開示される方法は、例えば、GeneVesti gator(登録商標)データベースから各試験内の正規化データを得た(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、T.Hruz et al.,“Genevestigator v3:a reference expression database for the meta-analysis of transcriptomes,”Advances in bioinformatics 2008(2008)を参照)。
【0201】
【0202】
本明細書に開示される方法は、6つのインフリキシマブ試験からの発現データを統合し得る。Com Batの統計的方法を用いて、異なる試験間のバッチ効果が補正される(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、J.T.Leek et al.,“sva:Surrogate Variable Analysis R package version 3.10.0,”DOI 10,B9(2014)を参照)。いくつかの試験は、ベースライン試料および経過観察訪問時に収集された試料を含む。長期相関試料(longitudinal correlated samples)の分析によって導入される過小評価分散を回避するために、本明細書に開示される方法は、Com Batの統計的方法をベースライン試料に適用して、個々の試験のための補正係数を導出し、応答および健康状態を共変量として処置し得る。補正係数は、ベースラインおよびフォローアップ訪問試料に対して実施される。
【0203】
クラスタリングおよび差次的遺伝子発現の分析。遺伝子発現データの次元性を低減するために、本明細書に開示される方法は、正常対照とUC活動性試料との間で有意に差次的に発現される遺伝子特徴のサブセットを選択し得る。倍数変化(FC)がFC>2.5であり、調整されたp値がpadj.<0.05である(Benjamini-Hochberg補正)遺伝子を抽出することができる(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、Y.Benjamini et al.,“Controlling the false discovery rate:a practical and powerful approach to multiple testing,”Journal of the Royal statistical society:series B(Methodological)57,289(1995)を参照)。クラスタリング分析のために、本明細書に開示される方法は、UMAPを使用して、同定された差次的発現遺伝子の遺伝子発現ベクターを8次元空間に埋め込むことができる(例えば、L.McInnes et al.を参照)。
【0204】
活動性UC患者の処置前および処置後の遺伝子発現プロファイルを比較すると、差次的発現遺伝子を同定するために、FC>1.8およびpadj.<0.05の閾値が使用され得る。負の対数倍数変化を有する差次的発現遺伝子は、有意にダウンレギュレートされると考えられるが、正の対数倍数変化を有する遺伝子は、有意にアップレギュレートされると考えられる。差次的発現遺伝子の対合分析に関するさらなる詳細については、本明細書の他の箇所に記載される「TNFi治療に対するレスポンダーおよび非レスポンダーの差次的遺伝子発現の解析」を参照されたい。
【0205】
UC応答モジュールの構築。TNFi治療に対する応答を示す遺伝子を同定するために、本明細書に開示される方法は、インフリキシマブおよびゴリムマブに対してレスポンダーにおいて有意に差次的に発現される遺伝子を抽出し、上記の処置前後のそれらの遺伝子発現プロファイルを比較し得る。2つのRBA遺伝子セットは、インフリキシマブおよびゴリムマブベースの試験(本明細書の他の箇所に記載される「TNFi治療に対するレスポンダーおよび非レスポンダーの異なる遺伝子発現の分析」を参照)から得てもよく、これらの2つのセットの和集合は、考えられる薬物特異的遺伝子発現変化を説明するために使用され得る。得られたマージされたRBA遺伝子セットおよびHIに基づくサブネットワークを構築することができる。得られたサブネットワークのLCCは、UC応答モジュールとして識別され得、遺伝子型モジュールと同様にそのサイズの有意性が評価され得る。
【0206】
LINCS L1000摂動プロファイルの分析。本明細書に開示される方法は、重み付け接続スコア(WTCS)を使用して、種々の化合物を使用したHT29細胞の摂動時の差次的遺伝子発現プロファイルと、アップレギュレートおよびダウンレギュレートされたサブセットに分割される応答モジュールに属する遺伝子との間の一致を評価し得る(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、A.Subramanian et al.,”A next generation connectivity map:L1000 platform and the first 1,000,000 profiles,”Cell 171,1437(2017)を参照)。WTCSは、本明細書ではアップクエリおよびダウンクエリと称される、アップレギュレートされた遺伝子セットおよびダウンレギュレートされた遺伝子セットの所与の対を有する遺伝子のランク付けされたリストの濃縮スコアESを測定する(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、A.Subramanian et al.,“Gene set enrichment analysis:a knowledge-based approach for interpreting genome-wide expression profiles,”Proceedings of the National Academy of Sciences 102,15545(2005)を参照)。WTCSは、アップクエリ(ESup)およびダウンクエリ(ESdown)のためのESを単一のスコアに組み合わせる。正のWTCSは、摂動が、応答モジュールクエリセットと整列する遺伝子発現変化をもたらしたことを示し、例えば、アップクエリ遺伝子はまた、所与の摂動において主にアップレギュレートされるが、ダウンクエリ遺伝子は、所与の摂動において主にダウンレギュレートされる。逆に、負のWTCSは、ダウンクエリ遺伝子が所与の実験においてアップレギュレートされるが、アップクエリ遺伝子はダウンレギュレートされることを示した。本発明者らは、応答モジュール遺伝子の発現パターンを戻すことに関心があるので、負のWTCSを用いた実験を探す。以下はこのスコアを計算し、その統計的有意性を評価するために使用される手順の簡単な概要である。
【0207】
LINCS L1000レベル5のデータは、対照に対する遺伝子の発現レベルの変化を示す遺伝子特異的Zスコアに関して差次的な遺伝子発現プロファイルを保存する。大きな正のZスコアは、遺伝子が摂動時に有意にアップレギュレートされることを示すが、大きな負のZスコアは、遺伝子が摂動時に有意にダウンレギュレートされることを示す。差次的発現パターンが高い忠実度で推論される遺伝子は、最良推測遺伝子(Best INferred Genes;BING)のセットに属し、WTCS計算に使用される(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、A.Subramanian et al.,”A next generation connectivity map:L1000 platform and the first 1,000,000 profiles,”Cell 171,1437(2017)を参照)。応答モジュールにおいて観察される、BINGセットの一部でもあるアップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子は、ここではそれぞれsupおよびSdownとして表す。各セットについて、本明細書に開示される方法は、濃縮スコア(ESupおよびESdown)を計算することができ、WTCSは、これらの2つのスコアの組合せである:
【0208】
【0209】
濃縮スコアの有意性を評価するために、BING遺伝子から、サイズ│sup│、│sup│の遺伝子セットを均一にサンプリングすることができる。サンプリング手順を1,000回繰り返すことによって、無作為サンプルからのアップおよびダウン濃縮スコアの経験分布pup(ES)、pdown(ES)を得ることができる。得られた分布は、観察されたESupおよびESdownと比較してもよく、観察されたESupが正の場合、より大きいか、または等しい濃縮スコアを有する無作為サンプルの画分が、p値pupとして選択され、また、それが負の場合、より小さいか、または等しい濃縮スコアを有する無作為サンプルの画分が、p値pupとして選択される。pdownは同様の方法で計算される。WTCS、pup、およびpdownは各摂動実験のために得られ、関連する摂動をフィルタリングするためにそれらを使用することができる。
【0210】
UC処置モジュールの構築。LINCS L1000データを使用して、本明細書に開示される方法は、応答モジュールノードおいて観察される発現パターンを元に戻すことができる化合物を同定し得る。関連する実験は、上記のWTCS<0およびpup<0.05、pdown<0.05のフィルタを使用して抽出することができる。濾過後に残った化合物のタンパク質標的を、DrugBankおよびRepurposing Hubデータベースを使用して同定する。次いで、本発明者らは、得られたタンパク質標的のセットをHI上にマッピングし、それに基づいてサブネットワークを、応答および遺伝子型モジュールの構築と同様に構築する。処置モジュールは、このサブネットワークのLCCである。
【0211】
拡散状態距離
。拡散状態距離(DSD)は、タンパク質相互作用ネットワークにおけるタンパク質の機能を予測するために最初に設計されたネットワークノード上で定義されるメトリックである。(例えば、M.Cao et al.を参照)。DSDは、ランダムウォークが2つの異なるノードから開始するとき、ネットワークの最終状態間の類似性を捕捉する。DSDを定義するために、まず、ノードvで始まり、k回の動作を進めるとノードvjで終わるランダムウォーク(RW)の予想回数-He(vi,vj)を定義した。次いで、ノードviについてベクトル
【0212】
【数3】
を定義する。
次に、ノードv
iとノードv
jとの間のDSDは、
【0213】
【数4】
として定義され、
ここで、||...||
1はL
1ノルムを表す。任意の固定kについて、DSDはメトリックであり、k→∞となるにつれて収束する。(例えば、M.Cao et al.を参照)。
【0214】
DSDは、標的タンパク質間の治療的類似性の尺度である。タンパク質間の治療効果の類似性の尺度としてDSDの関連性を定量化するために、複雑な疾患のセットおよびそれらの承認された標的を、所与の疾患について承認された既知の標的の各々について、その標的とHI中の残りの節との間のDSDを計算すること、DSDに基づいてノードの残りを既知の標的にランク付けし、そのランク付けに基づいて、所与の疾患について承認された標的の残りの回復に対応する受信者動作特性(ROC)曲線を構築することによって分析することができる。全ての既知の承認された標的にわたって反復することによって、個々のROC曲線のセットが、複雑な疾患のそれぞれについて得られる。補間を使用して、個々の曲線を平均し、平均ROC曲線を取得し、その下の面積を計算し、単一の承認された標的および残りのネットワークノードに対するそのDSDについての知識が与えられると、承認された標的を見つける可能性を定量化することができる。
【0215】
UC遺伝子型モジュールに対する近接性。遺伝子型モジュールに対するノードの近接性の計算は、所与のノードから遺伝子型モジュールのノードまでの平均最短経路長
【0216】
【数5】
を計算すること、遺伝子型モジュールまでの平均最短経路長を、同じサイズの無作為化されたネットワークモジュールまでの平均最短経路距離と比較することによって、遺伝子型モジュールに対するノードの近接性の統計的有意性を評価することを含む。具体的には、本明細書に開示される方法は、遺伝子型モジュールと同じサイズの接続されたモジュールを500回サンプリングし(サンプリングの詳細については以下を参照)、無作為化されたモジュールまでの平均最短経路距離の経験分布を構築し、μ
pはこの分布の平均であり、σ
pは標準偏差である。最後に、ノードの近接性は、この分布に関する、ノードから遺伝子型モジュールまでの平均最短経路距離のZスコアとして定義される:
【0217】
【0218】
UC処置モジュールに対する選択性。処置モジュールに対するノードの選択性の計算は、処置モジュールのノードに対するノードの平均DSD
【0219】
【数7】
を計算すること、および近接計算と同様に、処置モジュールと同じサイズの500個の無作為化ネットワークモジュールをサンプリングすることによって、観察されたDSDの統計的有意性を評価することを含む近接性の計算と同様である。しかしながら、平均最短経路距離の代わりに、各無作為化モジュールに対するノードの平均DSDを計算し、無作為化モジュールに対する平均DSDの経験分布を構築し、ここで、μ
sはこの分布の平均であり、σ
sは標準偏差である。本発明者らは、選択性を以下のように定義する:
【0220】
【0221】
ネットワークモジュール無作為化。近接性計算および選択性計算の両方は、HI上の無作為化されたモジュールのサンプリングを必要とし得る。構築によって、遺伝子型モジュールと処置モジュールの両方が接続されたサブネットワークであるので、接続されたサブネットワークを固定HIネットワークから均一にサンプリングすることは、サブネットワークの接続性に対する平均最短経路長またはDSDのあらゆる可能な偏りを回避することができる。ネイバーリザーバーサンプリング(Neighbor Reservoir Sampling;NRS)アルゴリズムは、接続された固定サイズのサブネットワークを均一にサンプリングするために使用され得る。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、X.Lu et al.,“International Conference on Scientific and Statistical Database Management”,Springer,(2012)pp.195-212を参照)。
【0222】
近接性および選択性に基づくノードランク付け。遺伝子型および処置モジュールを前提として、本発明者らは、HIにおける全てのノードの近接性および選択性スコアを計算し、それらの対応するランク、それぞれrpおよびrsを導出する。各ノードについて単一の結合ランクrを得るために、以下のように定義されるランクプロダクトを使用した:
【0223】
【0224】
応答モジュールに関するローカルラディアリティ。応答モジュールに対するノードiのローカルラディアリティは、以下の式:
【0225】
【数10】
を使用して決定することができ、ここで、RMは応答モジュールノードのセットであり、Gはヒトインタラクトームネットワークであり、spl(i,g,G)はノードiからノードgまでの最短経路の長さを測定する関数である。
【0226】
UCの承認された標的。提案された標的優先順位付けフレームワークの検証のために、UC処置のために承認された標的のリストは、例えば、2022年2月時点のPharmalntelligence(商標)Citelineデータベースを使用して、UCのために発売されたまたは開発中のステータスを有する全ての薬物のリストを検索することによってコンパイルされ得る。UCのために発売される全ての薬物は、承認された薬物と見なされる。さらに、臨床試験(第I相、II相およびIII相)および前臨床試験においてUCについて試験されている薬物を考慮し、それらの組合せランク付けを承認された薬物のランク付けと比較する。各薬物について、その既知の標的を、例えば、Pharmalntelligence(商標)Citelineデータベース、Repurposing Hubデータベース、およびDrugBankデータベースから抽出する。標的は、いくつかの薬物にマッピングされ得るため、マッピングされる薬物の状態に基づいて、最高到達状態を標的に割り当てる。例えば、標的が2つの薬物にマッピングされ、そのうちの1つは第II相臨床試験にあり、そのうちの1つは前臨床試験にある場合、標的は臨床試験標的として標識される。さらに、高い薬物無差別性(drug promiscuity)のために潜在的に多くのオフターゲットを有し得る薬物を回避するために、
図13に示すように、4つを超えるターゲットを有する2つの薬物(スルファサラジンおよびメサラジン)をフィルタ除外する(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、V.J.Haupt et al.,“Drug promiscuity in PDB:protein binding site similarity is key,”PLoS one 8,e65894(2013)を参照)。これら2つの薬物以外では、UC処置のために開発されている他のすべての薬物は、同時に4つ以下の標的を有する。さらに、テトラコサクチドは、UCについてのあいまいな徴候のためにフィルタ除外される。
【0227】
モジュールトライアッドのさらなる説明
TNFi治療に対するレスポンダーおよび非レスポンダーの差次的遺伝子発現分析。TNFi治療に対するレスポンダーおよび非レスポンダーが処置前の遺伝子発現プロファイルに基づいて層別化され得るかどうかを評価するために、本明細書に開示される方法は、それらの完全な遺伝子発現プロファイルを使用して差次的遺伝子発現分析を実施し得る。有意差は、FC=1.8の倍数変化(FC)およびp<0.05の調整されたp値(Benjamini-Hochberg補正)では見出されない場合がある。したがって、UMAP埋込み空間にも、実際の完全な遺伝子発現プロファイル空間にも、処置前のレスポンダーと非レスポンダーとの間に明らかな差異は存在しない可能性がある。
【0228】
処置前にUC活動性患者の遺伝子発現プロファイルがレスポンダーを非レスポンダーから区別するのに十分ではないという事実によって動機付けられ、本明細書に開示される方法は、正常組織対照を、レスポンダーと非レスポンダーとの間の遺伝子発現プロファイルにおけるより明白な差異を導き出すための比較参照とみなし得る。異なる群の患者および正常対照を比較する、以下の4つの差次的発現遺伝子のセットを構築することができる(セットの説明については
図11を参照):
1.レスポンダー前後セット(RBA):処置前と処置後との間のレスポンダーにおける差次的発現遺伝子、
2.非レスポンダー前後セット(NRBA):処置前と処置後との間の非レスポンダーにおける差次的発現遺伝子、
3.レスポンダーセット(R):ベースラインレスポンダーと正常対照との間の差次的発現遺伝子、
4.非レスポンダーセット(NR):ベースライン非レスポンダーと正常対照との間の差次的発現遺伝子。
これらの対の状態のそれぞれを、インフリキシマブおよびゴリムマブに基づく試験において別々に測定する。
【0229】
非レスポンダーは、処置時に遺伝子発現プロファイルの有意な変化を示さない場合があり、したがって、NRBAは、有意に差次的に発現される遺伝子を全く含まない場合がある。R、NR、およびRBAセットは、
図11のパネル(b)に示されるように、インフリキシマブおよびゴリムマブの両方の試験について、非常に一致しており、有意な交差サイズを有し得る。ペアワイズ超幾何学的検定は、それぞれインフリキシマブおよびゴリムマブ試験において、NRセットとRセットとの間の交差についてp=9・10
-910および5・10
-1249、NRセットとRBAセットとの間の交差についてp=4・10
-64および8・10
-91、RセットとRBAセットとの間の交差についてp=2・10
-226および1・10
-103をもたらす。
【0230】
さらに、大部分のRBA遺伝子は、正常対照と比較してベースラインレスポンダー試料において差次的に発現され、TNFiを用いた処置がR遺伝子の小サブセットの発現の復帰をもたらし得ることを示す。対照的に、NRセット内に含まれるRBA遺伝子の有意な画分にもかかわらず、これらの遺伝子は、TNFiでの処置後に非レスポンダーにおいて有意に変化しない。
【0231】
RBA遺伝子セットは、RおよびNRセット内に含まれる遺伝子からほぼ排他的に構成される。さらに、
図8に示されるUMAPプロットによって示唆されるように、処置後のレスポンダーの遺伝子発現プロファイルは、正常対照の遺伝子発現プロファイルに近く、一方、処置後の非レスポンダーは、UMAP空間におけるそれらの初期処置前位置に近づいたままである。これは、レスポンダー中で低い疾患活動性を達成するために、TNFi処置は、RBAセットを構成する差次的発現遺伝子のサブセットの発現プロファイルを戻すのに十分であり得ることを示唆する。
【0232】
TNFi治療へのレスポンダーと非レスポンダーにおける差動的発現遺伝子の経路濃縮分析。非応答の根底にある分子機構をよりよく理解するために、本明細書に開示される方法は、RおよびNRセットに対して経路濃縮分析を実施し得る。KEGG経路の各々について、R遺伝子セットおよびNR遺伝子セットの一部であるノードの割合は、
図12に示すように決定することができる(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、M.Kanehisa et al.,“KEGG:kyoto encyclopedia of genes and genomes,”Nucleic acids research 28,27(2000)を参照)。RおよびNRセットからの少なくとも1つの遺伝子を含む282個のKEGG経路のうち、40個の経路がNR遺伝子で有意に濃縮されている(例えば、超幾何学的検定、p<0.05)。これらの経路における遺伝子の大部分は、NRおよびRセットに共通である。NR排他的遺伝子においてより濃縮される経路を同定するために、本明細書に開示される方法は、経路内のNR排他的遺伝子の数とR排他的遺伝子の数との間の差異の有意性を評価するために、ランダムサンプリングに基づいて統計的検定を実施し得る。40個の経路から、28個は、
図12、パネル(c)に示されるように、保持されるR排他的遺伝子よりも有意に多くのNR排除遺伝子を有する(p<0.05)。UCに関連する経路、例えば、「炎症性腸疾患」、「TNFシグナル伝達経路」、「IgA産生のための腸免疫ネットワーク」、「関節リウマチ」、「細胞接着分子」、または「IL-17シグナル伝達経路」は、非レスポンダーにおいて有意により破壊される(disrupted)。この観察は、別の経路濃縮分析によって支持される。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、M.V.Kuleshov et al.,“Enrichr:a comprehensive gene set enrichment analysis web server 2016 update,”Nucleic acids research 44,W90(2016)を参照)。濃縮された生物学的経路のほぼ同一のリストが、R遺伝子セットとNR遺伝子セットとの間に存在し得るが、個々の経路は、NR遺伝子セットについてより多数の遺伝子、p値、およびq値を有する傾向がある。これらの経路の中で非レスポンダーに特有の差次的発現遺伝子は、サイトカインシグナル伝達(例えば、IL6、OSM、ILIA、IL1R1、IL11、CXCL8/IL8、又はIL21R)、受容体媒介(例えば、トール様受容体、TLR1、TLR2、またはTLR8)およびシグナル伝達(例えば、Src様キナーゼ:HCKまたはFYN)に関与する遺伝子を含み得る。
【0233】
UC関連KEGG経路は、
図12、パネル(c)に示されるように、レスポンダーのものよりもNR排除遺伝子においてより濃縮されている。これは、例えば、関節リウマチおよび糖尿病などの他の炎症状態を含み、これらの状態に共通する全般的な免疫系障害を表し得る。自己免疫疾患を有する患者の推定25~35%は、1つ以上のさらなる自己免疫障害を発症し得る。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、M.Cojocaru et al.,“Multiple autoimmune syndrome,”Maedica 5,132(2010)、J.-M.Anaya et al.,“The autoimmune tautology:from polyautoimmunity and familial autoimmunity to the autoimmune genes,”Autoimmune diseases 2012(2012)を参照)。他の濃縮経路は、潰瘍性大腸炎における腸内マイクロバイオームの役割を強調した。腸の免疫ネットワークにおいてIgA産生について注釈された遺伝子は、非レスポンダーの間で濃縮されている。IgA抗体は、主要な分泌免疫グロブリンであり、炎症性細菌分類群は、健康な対照よりも炎症性腸疾患患者においてIgAで有意にコーティングされ得る。例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、J.M.Shapiro et al.,“Immunoglobulin A targets a unique subset of the microbiota in inflammatory bowel disease,”Cell Host&Microbe 29,83(2021)を参照)。具体的には、黄色ブドウ球菌感染は、1つの濃縮細菌KEGG経路である。黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌はマクロファージからのTNF-α分泌を誘導し、TNF-αは好中球媒介性細菌死滅を増強する。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、K.P.van Kessel et al.,“Neutrophil-mediated phagocytosis of Staphylococcus aureus,”Frontiers in immunology 5,467(2014)を参照)。TNF-αの撹乱は、黄色ブドウ球菌感染を制御する免疫系の能力に影響を及ぼし、TNFi処置後の感染のリスクの上昇をもたらす。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、S.Bassetti et al.,“Staphylococcus aureus in patients with rheumatoid arthritis under conventional and anti-tumor necrosis factor-alpha treatment,”The Journal of rheumatology 32,2125(2005)を参照)。先天性免疫は、TLRおよびNOD様シグナル伝達KEGG経路によって強調されるように、腸の恒常性の維持において重要な役割を果たす。TLRパターン認識受容体は、腸内微生物叢の構造を含む微生物の保存された構造を検出し、活性化時に炎症性シグナル伝達経路を誘導し、抗体産生B細胞応答を調節する。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、L.A.O’neill et al.,“The history of Toll-like receptors-redefining innate immunity,”Nature Reviews Immunology 13,453(2013)、Z.Hua et al.,“TLR signaling in B-cell development and activation,”Cellular&molecular immunology 10,103(2013)を参照)。TLR2、4、8、および9は、休止状態のUCまたは健康な対照試料と比較して、活動性UC患者の結腸粘膜においてアップレギュレートされる。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、 F Sanchez-Munoz et al.,“Transcript levels of Toll-Like Receptors 5, 8 and 9 correlate with inflammatory activity in Ulcerative Colitis,”BMC gastroenterology 11,1(2011)を参照)。TNF-αおよびIL-17経路を含むサイトカインシグナル伝達は、非レスポンダー間で濃縮される。IL-17シグナル伝達は、TNF-αおよびIL-16シグナル伝達を増幅する強力な炎症誘発性サイトカインであることに加えて、好中球を動員および活性化する遺伝子を誘導し、上皮バリア遺伝子の発現を促進する。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、T.Kinugasa et al.,“Claudins regulate the intestinal barrier in response to immune mediators,”Gastroenterology 118,1001(2000)、K.Maloy et al.,“IL-23 and Th17 cytokines in intestinal homeostasis,”Mucosal immunology 1, 339(2008)を参照)。非レスポンダーにおける結腸上皮バリア完全性のさらなる破壊は、細胞接着分子および流体剪断応力KEGG経路における遺伝子の濃縮によって強調される。障壁完全性の喪失は、上皮障壁を横切る栄養素、水、細菌毒素、および病原体の透過性を増加させる。(例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、S.C.Bischoff et al.,“Intestinal permeability-a new target for disease prevention and therapy,”BMC gastroenterology 14,1(2014)を参照)。全体として、より有意に濃縮された経路は、UC疾患生物学、例えば、炎症、バリア完全性、およびマイクロバイオーム不均衡が、TNFi非レスポンダーの間でより広く破壊されることを示唆する。
【0234】
非レスポンダーの遺伝子発現プロファイルが、種々の経路に関するレスポンダーのものと比較して、より重度に調節不全であるかどうかを決定するために、本明細書に開示される方法は、Kyoto(登録商標)Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)データベースからのシグナル伝達経路の濃縮分析を実施し得る。非レスポンダーの差次的発現遺伝子で有意に濃縮される経路は、有意閾値padj.<0.05(Benjamini-Hochberg補正を用いた超幾何学的検定)を用いて選択される。各選択された経路では、RおよびNR遺伝子セットから排他的に来る遺伝子が同定される。これらのR排他的遺伝子およびNR排他的遺伝子の数の間の差は、残りの遺伝子上のR排他的標識およびNR排他的標識のランダム順列を使用してその有意性を評価するために計算される。NR排他的遺伝子の数とR排他的遺伝子の数との間に有意差がある経路が保持される(padj.<0.05、Benjamini-Hochberg補正を用いたランダム置換試験)。
【0235】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され、記載されてきたが、こうした実施形態がほんの一例として提供されているに過ぎないということは当業者にとって明白である。本発明が明細書内で提供される特定の例によって制限されることは意図されていない。本発明は前述の明細書に関して記載されているが、本明細書中の実施形態の記載および例示は、限定的な意味で解釈されることを意味するものではない。当業者であれば、多くの変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく思い浮かぶであろう。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書で説明された特定の描写、構成、または相対的な比率に限定されないことが理解されよう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替案が、本発明の実施に際して利用され得ることを理解されたい。それゆえ、本発明は、任意のそのような代替物、修正物、変形物、または同等物にも及ぶものと企図される。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、この特許請求の範囲内の方法および構造体、ならびにその均等物がそれによって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】