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特表2024-527531超長時間作用型薬物送達のための、注入可能、生分解性かつ除去可能なポリマー系の薬物懸濁液
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】超長時間作用型薬物送達のための、注入可能、生分解性かつ除去可能なポリマー系の薬物懸濁液
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/10 20060101AFI20240718BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240718BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240718BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240718BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/5365 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/42
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/14
A61K45/00
A61P31/18
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/5365
A61P35/00
A61K31/4985
A61K31/662
A61K31/7068
A61K31/337
A61K49/04 100
A61K31/4439
A61K31/506
A61K31/7076
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579516
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 US2022035713
(87)【国際公開番号】W WO2023278695
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/217,150
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ベンハブール ソウミャ ラヒマ
(72)【発明者】
【氏名】マトゥラヴォングサディット パニータ
(72)【発明者】
【氏名】シュリヴァスタヴァ ルーパリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤング イザベラ シー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB11
4C076BB32
4C076CC30
4C076CC35
4C076DD45M
4C076DD46M
4C076DD55E
4C076DD60E
4C076EE02M
4C076EE09M
4C076EE24M
4C076EE26M
4C076EE30M
4C076EE36M
4C076EE37M
4C076EE41B
4C076EE42M
4C076EE43M
4C076FF31
4C076FF68
4C076GG50
4C084AA17
4C084NA12
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC551
4C084ZC552
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085HH03
4C085JJ03
4C085KB05
4C085KB75
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC42
4C086BC60
4C086CB22
4C086DA38
4C086EA17
4C086EA18
4C086GA03
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA12
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC20
4C086ZC55
4C086ZC75
(57)【要約】
超長時間作用型薬物送達のための、注入可能、生分解性かつ除去可能なポリマー系の薬物懸濁液が、開示される。多くの用途のための多目的予防技術としての、超長時間作用型インサイチュ形成インプラント(ISFI)薬物懸濁液送達システムもまた、提供される。開示された組成物およびISFIを使用した、対象の治療を含む使用方法もまた、提供される。
【選択図】 図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は:
ポリマーを含み、複数のポリマーの組合せおよび/またはポリマー(複数可)と添加剤(複数可)/安定剤(複数可)との組合せを含んでもよく;
溶媒を含み、複数の溶媒の組合せを含んでもよく;
および
懸濁液中に、薬物を含み、1または複数の薬物の組合せを含んでもよい;
懸濁液。
【請求項2】
請求項1に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記薬物は、前記懸濁液中で、プラセボ製剤中の飽和濃度を超える濃度であり;
前記プラセボ製剤は、前記ポリマーと前記溶媒とを含む;
懸濁液。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、対象内に注入可能であり;
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、対象内に注入されるとき、生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)を形成する;
懸濁液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、1または複数の疎水性分子または構成要素、または、疎水性および親水性分子の組合せを含む
懸濁液。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液中のポリマー:溶媒の比は、約1:1~約1:6の範囲であり、
前記ポリマー:溶媒の比は、約1:1、約1:1.25、約1.1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、または約1:6であってもよい、
懸濁液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液中のポリマー:薬物の比は、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、および約1:4.5、約1:5、約1:5.5、または約1:6からの範囲である
懸濁液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記ポリマーは、生分解性ポリマーであって、
前記ポリマーは、ポリエステル、例えば、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA);ポリカプロラクトン(PCL);ポリヒドロキシ酪酸(Poly hydroxyl butyrate)(PHB);ポリエチレングリコール(PEG);イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB);ポリアミド;ポリ無水物;ポリホスファゼン;ポリアクリレート;ポリオルトエステル;ポリアルキルシアノアクリレート;ポリウレタン;ポリ(エステルアミド);ポリ(エステル尿素);ポリ(ホスホエステル);多糖;ヒアルロン酸;キトサン;アルギネート;コラーゲン;アルギニン;アルブミン;デキストラン;ゼラチン;アガロース;カラギーナン;バイオミメティックおよびバイオインスパイアードポリマー、またはそれらの組合せからなる群から選択されてもよい、
懸濁液。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記ポリマーの分子量(MW)は、約5kDa~約100kDaの範囲であり、
前記ポリマーの前記MWは、約10kDaまたは約55kDaであってもよい、
懸濁液。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記溶媒は、水混和性の生体適合性溶媒であって、
前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、安息香酸ベンジル(BB)、トリアセチン(TA)、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい、
懸濁液。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記溶媒は、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、または約1:9 v/vの比で、NMPとDMSOとの混合物を含む
懸濁液。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、1または複数の薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含む
懸濁液。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記薬物は、1または複数の薬物を含み、
前記薬物は、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含んでもよく、
前記薬物は、抗レトロウイルス薬、例えば、カボテグラビル(CAB)、ドルテグラビル(DTG)、ドラビリン(DOR)、ラムビジン(lamuvidine)(3TC)、およびイスラトラビル(EFdA)、エムトリシタビン(FTC)、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、またはテノホビルアラフェナミド(TAF)であってもよく、
前記薬物は、化学療法薬または剤、例えば、パクリタキセル(PTX)およびゲムシタビン(Gem)であってもよい、
懸濁液。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記造影剤は、放射線不透過性で、例えば硫酸バリウムであり;
前記造影剤は、放射性で、例えばヨウ化物、ガドリニウムであってもよく;
前記造影剤は、蛍光色素、例えばフルオレセイン、インドシアニングリーン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、m-cherryであってもよく;
前記造影剤は、生物発光剤、例えばルシフェリンであってもよい;
懸濁液。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液は、前記ポリマーPLGA(例えば、MW10または27kDa)とNMPおよびDMSO溶媒混合物(例えば、1:1 v/v)とを約1:2~約1:6の比で含み、約200mg/g~約600mg/gの濃度で薬物(例えば、CAB)を含む、
懸濁液。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液は、高い薬物負荷容量を有し、任意選択で約600mg/mLまで至ってもよい、
懸濁液。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液は、1または複数の薬物を約5重量%~約85重量%の範囲の濃度で収容するように構成され、治療効果を達成するために必要なヒト用量に換算可能である、
懸濁液。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、約90日以上の超長時間作用型の薬物放出を提供するように構成される
懸濁液。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、拡散および生分解に基づく薬物放出を提供するように構成される
懸濁液。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、低い24時間薬物バースト放出比(例えば、前記懸濁液および/または生分解性ISFI中の全薬物負荷の約5%未満であり、前記懸濁液および/または生分解性ISFI中の全薬物負荷の約1%未満であってもよい)を提供するように構成される
懸濁液。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、注入後に対象から除去可能である
懸濁液。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
ポリマータイプ、ポリマーMW、ポリマー構造、溶媒タイプ、律速添加剤(例えば、プルロニック、SAIB、トレハロース)、安定剤(例えば、Tween 20、Tween 80、ポリソルベート20、マンニトール、ポリエチレングリコール)、ポリマー:薬物の比、ポリマー:溶媒の比、溶媒:薬物の比、ポリマー:溶媒:薬物の比、ポリマー:添加剤の比、および/またはポリマー:安定剤の比は、安定な懸濁液および/または生分解性ISFIを提供するために調整可能である
懸濁液。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液であって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、薬物負荷および放出動態に対する優れた制御で、単一の安定な懸濁製剤において複数の薬物の共送達を提供するように構成される
懸濁液。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される、生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)。
【請求項24】
安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)であって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は:
ポリマーを含み、複数のポリマーの組合せおよび/またはポリマー(複数可)と添加剤(複数可)/安定剤(複数可)との組合せを含んでもよく;
溶媒を含み、複数の溶媒の組合せを含んでもよく;
および
懸濁液中に、薬物を含み、1または複数の薬物の組合せを含んでもよい;
生分解性ISFI。
【請求項25】
請求項24に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記薬物は、前記懸濁液中で、プラセボ製剤中の飽和濃度を超える濃度であり;
前記プラセボ製剤は、前記ポリマーと前記溶媒とを含む;
生分解性ISFI。
【請求項26】
請求項24~25のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、対象内に注入可能であり;
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、対象内に注入されるとき、生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)を形成する;
生分解性ISFI。
【請求項27】
請求項24~26のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、1または複数の疎水性分子または構成要素、または、疎水性および親水性分子の組合せを含む
生分解性ISFI。
【請求項28】
請求項24~27のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液中のポリマー:溶媒の比は、約1:1~約1:6の範囲であり、
前記ポリマー:溶媒の比は、約1:1、約1:1.25、約1.1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、または約1:6であってもよい、
生分解性ISFI。
【請求項29】
請求項24~28のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液中のポリマー:薬物の比は、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、および約1:4.5、約1:5、約1:5.5、または約1:6からの範囲である
生分解性ISFI。
【請求項30】
請求項24~29のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記ポリマーは、生分解性ポリマーであって、
前記ポリマーは、ポリエステル、例えば、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA);ポリカプロラクトン(PCL);ポリヒドロキシ酪酸(Poly hydroxyl butyrate)(PHB);ポリエチレングリコール(PEG);イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB);ポリアミド;ポリ無水物;ポリホスファゼン;ポリアクリレート;ポリオルトエステル;ポリアルキルシアノアクリレート;ポリウレタン;ポリ(エステルアミド);ポリ(エステル尿素);ポリ(ホスホエステル);多糖;ヒアルロン酸;キトサン;アルギネート;コラーゲン;アルギニン;アルブミン;デキストラン;ゼラチン;アガロース;カラギーナン;バイオミメティックおよびバイオインスパイアードポリマー、またはそれらの組合せからなる群から選択されてもよい、
生分解性ISFI。
【請求項31】
請求項24~30のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記ポリマーの分子量(MW)は、約5kDa~約100kDaの範囲であり、
前記ポリマーの前記MWは、約10kDaまたは約55kDaであってもよい、
生分解性ISFI。
【請求項32】
請求項24~31のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記溶媒は、水混和性の生体適合性溶媒であって、
前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、安息香酸ベンジル(BB)、トリアセチン(TA)、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい、
生分解性ISFI。
【請求項33】
請求項24~32のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記溶媒は、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、または約1:9 v/vの比で、NMPとDMSOとの混合物を含む
生分解性ISFI。
【請求項34】
請求項24~33のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、1または複数の薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含む
生分解性ISFI。
【請求項35】
請求項24~34のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記薬物は、1または複数の薬物を含み、
前記薬物は、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含んでもよく、
前記薬物は、抗レトロウイルス薬、例えば、カボテグラビル(CAB)、ドルテグラビル(DTG)、ドラビリン(DOR)、ラムビジン(lamuvidine)(3TC)、およびイスラトラビル(EFdA)、エムトリシタビン(FTC)、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、またはテノホビルアラフェナミド(TAF)であってもよく、
前記薬物は、化学療法薬または剤、例えば、パクリタキセル(PTX)およびゲムシタビン(Gem)であってもよい、
生分解性ISFI。
【請求項36】
請求項24~35のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記造影剤は、放射線不透過性で、例えば硫酸バリウムであり;
前記造影剤は、放射性で、例えばヨウ化物、ガドリニウムであってもよく;
前記造影剤は、蛍光色素、例えばフルオレセイン、インドシアニングリーン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、m-cherryであってもよく;
前記造影剤は、生物発光剤、例えばルシフェリンであってもよい;
生分解性ISFI。
【請求項37】
請求項24~36のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液は、前記ポリマーPLGA(例えば、MW10または27kDa)とNMPおよびDMSO溶媒混合物(例えば、1:1 v/v)とを約1:2~約1:6の比で含み、約200mg/g~約600mg/gの濃度で薬物(例えば、CAB)を含む、
生分解性ISFI。
【請求項38】
請求項24~37のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液は、高い薬物負荷容量を有し、任意選択で約600mg/mLまで至ってもよい、
生分解性ISFI。
【請求項39】
請求項24~38のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液は、1または複数の薬物を約5重量%~約85重量%の範囲の濃度で収容するように構成され、治療効果を達成するために必要なヒト用量に換算可能である、
生分解性ISFI。
【請求項40】
請求項24~39のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、約90日以上の超長時間作用型の薬物放出を提供するように構成される
懸濁液。
【請求項41】
請求項24~40のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、拡散および生分解に基づく薬物放出を提供するように構成される
生分解性ISFI。
【請求項42】
請求項24~41のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、低い24時間薬物バースト放出比(例えば、前記懸濁液および/または生分解性ISFI中の全薬物負荷の約5%未満であり、前記懸濁液および/または生分解性ISFI中の全薬物負荷の約1%未満であってもよい)を提供するように構成される
生分解性ISFI。
【請求項43】
請求項24~42のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、注入後に対象から除去可能である
生分解性ISFI。
【請求項44】
請求項24~43のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
ポリマータイプ、ポリマーMW、ポリマー構造、溶媒タイプ、律速添加剤(例えば、プルロニック、SAIB、トレハロース)、安定剤(例えば、Tween 20、Tween 80、ポリソルベート20、マンニトール、ポリエチレングリコール)、ポリマー:薬物の比、ポリマー:溶媒の比、溶媒:薬物の比、ポリマー:溶媒:薬物の比、ポリマー:添加剤の比、および/またはポリマー:安定剤の比は、安定な懸濁液および/または生分解性ISFIを提供するために調整可能である
生分解性ISFI。
【請求項45】
請求項24~44のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、薬物負荷および放出動態に対する優れた制御で、単一の安定な懸濁製剤において複数の薬物の共送達を提供するように構成される
生分解性ISFI。
【請求項46】
請求項24~45のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記生分解性ISFIは、必要な場合に治療を終了するために、移植後に対象から除去可能であるように構成される
生分解性ISFI。
【請求項47】
請求項24~46のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記生分解性ISFIは、シリンジ可能(syringeable)および/または注入可能である
生分解性ISFI。
【請求項48】
請求項24~47のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記生分解性ISFIは、1または複数の薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を収容するように構成される
生分解性ISFI。
【請求項49】
請求項24~48のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記生分解性ISFIは、高い薬物負荷容量を有し、任意選択で約600mg/mLまで至ってもよい、
生分解性ISFI。
【請求項50】
請求項24~49のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性ISFIであって、
前記生分解性ISFIは、約90日以上の超長時間作用型の薬物放出を提供するように構成される
生分解性ISFI。
【請求項51】
薬物、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を対象へ投与する方法であって、
前記方法は、
請求項1~50のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIを提供するステップ、
および
同じものを、薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を受ける必要がある対象へ投与するステップ、
を含む
方法。
【請求項52】
請求項51に記載された方法であって、
前記対象への投与前に、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIを、1または複数の薬物、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物と共に、装填するステップをさらに含み;
前記1または複数の薬物、活性剤、および/または治療用化合物は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、避妊薬、予防薬、抗炎症剤、抗癌剤、鎮痛剤、ホルモン、ステロイド、オピオイド、およびそれらの組合せを含んでもよい;
方法。
【請求項53】
請求項51~52のいずれか一項に記載された方法であって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIは、注入を介して投与される
方法。
【請求項54】
請求項51~53のいずれか一項に記載された方法であって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIは、治療を終了する必要がある場合に、前記対象から除去可能であるように構成される
方法。
【請求項55】
請求項51~57のいずれか一項に記載された方法であって、
前記対象がヒトの対象である
方法。
【請求項56】
対象を治療する方法であって、
前記方法は、治療を必要とする対象へ、請求項1~50のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIを投与するステップを含み;
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIは、薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含む;
方法。
【請求項57】
請求項56に記載された方法であって、
前記薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、避妊薬、予防薬、抗炎症剤、抗癌剤、鎮痛剤、ホルモン、ステロイド、オピオイド、およびそれらの組合せを含む
方法。
【請求項58】
請求項56~57のいずれか一項に記載された方法であって、
前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIは、注入を介して投与される
方法。
【請求項59】
請求項56~58のいずれか一項に記載された方法であって、
前記対象がヒトの対象である
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる、2021年6月30日出願の米国仮特許出願第63/217,150号の利益を主張する。
【0002】
[助成金声明]
本発明は、米国国立衛生研究所より授与された助成金番号AI162246およびAI131430による政府支援を受けて行われた。政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
[技術分野]
本開示の主題は、超長時間作用型薬物送達のための、注入可能、生分解性かつ除去可能なポリマー系の薬物懸濁液に向けられる。より具体的には、本開示の主題は、多くの用途のための多目的予防技術としての、超長時間作用型インサイチュ形成インプラント(ISFI)薬物懸濁液送達システムに向けられる。
【背景技術】
【0004】
女性を性感染病原体から保護し妊娠を予防するための、多目的予防技術(MPT)は、複数の薬物および送達システムを用いて、奨励および開発が加速されている段階にある。数週間または数カ月にわたる薬物徐放性を提供する、長時間作用型(LA)曝露前予防(PrEP)製剤は、予防療法に対するコンプライアンスを向上させ、新たなHIV感染および計画外の妊娠の発生を減少させる可能性がある。さらに、注入可能な避妊薬の使用はアフリカにおいて非常に受け入れられやすく、過去数十年間で大幅に増加している。HIV感染率が高いアフリカの多くの国において、筋肉内注入可能なプロゲスチンであるデポメドロキシプロゲステロンアセテート(DMPA-IM)が、主に使用されている避妊薬である。ECHO研究の最近の結果は、DMPA-IM、Nexplanon、および銅付加IUDの間でHIVリスクに差はないことを示し、全ての方法が安全かつ非常に効果的であった(Hapgood 2020Tepper, Curtis et al. 2020)。現在、開発中のLA注入用MPT製剤はなく、その主な理由は、カボテグラビルおよびリルピビリン注入用製剤(Cabenuva(登録商標)、Apretude(登録商標))のように、ナノ粒子懸濁液を利用する現在のLA注入用製剤の制限のためである。これらの制限には、2つの薬物を1つの製剤内に結合することができないこと、および重要な点として、一度投与されると、ナノ粒子製剤化されたLA注入用薬物は、ブレークスルー感染、毒性、アレルギー反応、または妊娠の場合に、除去することができないことを含む。これらの制限に対処するために、例えばHIVおよび計画外の妊娠の予防を含む、多くの用途のためのMPTとして、新規の超LAインサイチュ形成インプラント(ISFI)薬物懸濁液送達システムを、開発および実行することに、我々は着手した。いくつかの実施形態において、開示された超LA ISFI製剤は、1)簡単に調製でき、2)最初の目標は約6カ月以上の徐放性である、抗レトロウイルス薬および避妊薬を組込むことができ、および3)毒性、ブレークスルー感染、またはアレルギー反応の場合に除去できる。
【発明の概要】
【0005】
本概要は、本開示の主題のいくつかの実施形態を列挙し、多くの場合、これらの実施形態の変形および順列を列挙する。本概要は、多数かつ様々な実施形態の単なる例示である。所与の実施形態の1または複数の代表的な特徴の言及も、同様に例示的である。そのような実施形態は、典型的には、言及される特徴(複数可)の有無にかかわらず存在しうる;同様に、それらの特徴は、本概要に列挙されているか否かにかかわらず、本開示の主題の他の実施形態に適用されうる。過度の反復を避けるために、本要約では、そのような特徴の全ての可能な組合せを、列挙または示唆するわけではない。
【0006】
いくつかの実施形態において、安定なポリマー系の注入可能な懸濁液が提供され、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は:ポリマーを含み、複数のポリマーの組合せおよび/またはポリマー(複数可)と添加剤(複数可)/安定剤(複数可)との組合せを含んでもよく;溶媒を含み、複数の溶媒の組合せを含んでもよく;および懸濁液中に、薬物を含み、1または複数の薬物の組合せを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記薬物は、前記懸濁液中で、プラセボ製剤中の飽和濃度を超える濃度であり、前記プラセボ製剤は、前記ポリマーと前記溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、対象内に注入可能であり、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、対象内に注入されるとき、生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)を形成する。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、1または複数の疎水性分子または構成要素、または、疎水性および親水性分子の組合せを含む。いくつかの実施形態において、前記懸濁液中のポリマー:溶媒の比は、約1:1~約1:6の範囲であり、前記ポリマー:溶媒の比は、約1:1、約1:1.25、約1.1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、または約1:6であってもよい。いくつかの実施形態において、前記懸濁液中のポリマー:薬物の比は、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、および約1:4.5、約1:5、約1:5.5、または約1:6からの範囲である。いくつかの実施形態において、前記ポリマーは、生分解性ポリマーであって、前記ポリマーは、ポリエステル、例えば、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA);ポリカプロラクトン(PCL);ポリヒドロキシ酪酸(Poly hydroxyl butyrate)(PHB);ポリエチレングリコール(PEG);イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB);ポリアミド;ポリ無水物;ポリホスファゼン;ポリアクリレート;ポリオルトエステル;ポリアルキルシアノアクリレート;ポリウレタン;ポリ(エステルアミド);ポリ(エステル尿素);ポリ(ホスホエステル);多糖;ヒアルロン酸;キトサン;アルギネート;コラーゲン;アルギニン;アルブミン;デキストラン;ゼラチン;アガロース;カラギーナン;バイオミメティックおよびバイオインスパイアードポリマー、またはそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、前記ポリマーの分子量(MW)は、約5kDa~約100kDaの範囲であり、前記ポリマーの前記MWは、約10kDaまたは約55kDaであってもよい。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、水混和性の生体適合性溶媒であって、前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、安息香酸ベンジル(BB)、トリアセチン(TA)、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、または約1:9 v/vの比で、NMPとDMSOとの混合物を含む。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、1または複数の薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含む。いくつかの実施形態において、前記薬物は、1または複数の薬物を含み、前記薬物は、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含んでもよく、前記薬物は、抗レトロウイルス薬、例えば、カボテグラビル(CAB)、ドルテグラビル(DTG)、ドラビリン(DOR)、ラムビジン(lamuvidine)(3TC)、およびイスラトラビル(EFdA)、エムトリシタビン(FTC)、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、またはテノホビルアラフェナミド(TAF)であってもよく、前記薬物は、化学療法薬または剤、例えば、パクリタキセル(PTX)およびゲムシタビン(Gem)であってもよい。いくつかの実施形態において、前記造影剤は、放射線不透過性で、例えば硫酸バリウムであり;前記造影剤は、放射性で、例えばヨウ化物、ガドリニウムであってもよく;前記造影剤は、蛍光色素、例えばフルオレセイン、インドシアニングリーン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、m-cherryであってもよく;前記造影剤は、生物発光剤、例えばルシフェリンであってもよい。いくつかの実施形態において、前記懸濁液は、前記ポリマーPLGA(例えば、MW10または27kDa)とNMPおよびDMSO溶媒混合物(例えば、1:1 v/v)とを約1:2~約1:6の比で含み、約200mg/g~約600mg/gの濃度で薬物(例えば、CAB)を含む。いくつかの実施形態において、前記懸濁液は、高い薬物負荷容量を有し、任意選択で約600mg/mLまで至ってもよい。いくつかの実施形態において、前記懸濁液は、1または複数の薬物を約5重量%~約85重量%の範囲の濃度で収容するように構成され、治療効果を達成するために必要なヒト用量に換算可能である。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、約90日以上の超長時間作用型の薬物放出を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、拡散および生分解に基づく薬物放出を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、低い24時間薬物バースト放出比(例えば、前記懸濁液および/または生分解性ISFI中の全薬物負荷の約5%未満であり、前記懸濁液および/または生分解性ISFI中の全薬物負荷の約1%未満であってもよい)を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、注入後に対象から除去可能である。いくつかの実施形態において、ポリマータイプ、ポリマーMW、ポリマー構造、溶媒タイプ、律速添加剤(例えば、プルロニック、SAIB、トレハロース)、安定剤(例えば、Tween 20、Tween 80、ポリソルベート20、マンニトール、ポリエチレングリコール)、ポリマー:薬物の比、ポリマー:溶媒の比、溶媒:薬物の比、ポリマー:溶媒:薬物の比、ポリマー:添加剤の比、および/またはポリマー:安定剤の比は、安定な懸濁液および/または生分解性ISFIを提供するために調整可能である。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、薬物負荷および放出動態に対する優れた制御で、単一の安定な懸濁製剤において複数の薬物の共送達を提供するように構成される。
【0007】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される、生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、安定なポリマー系の注入可能な懸濁液から作製される生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)が提供され、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は:ポリマーを含み、複数のポリマーの組合せおよび/またはポリマー(複数可)と添加剤(複数可)/安定剤(複数可)との組合せを含んでもよく;溶媒を含み、複数の溶媒の組合せを含んでもよく;および懸濁液中に、薬物を含み、1または複数の薬物の組合せを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記薬物は、前記懸濁液中で、プラセボ製剤中の飽和濃度を超える濃度であり、前記プラセボ製剤は、前記ポリマーと前記溶媒とを含む。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、対象内に注入可能であり、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、対象内に注入されるとき、生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)を形成する。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、1または複数の疎水性分子または構成要素、または、疎水性および親水性分子の組合せを含む。いくつかの実施形態において、前記懸濁液中のポリマー:溶媒の比は、約1:1~約1:6の範囲であり、前記ポリマー:溶媒の比は、約1:1、約1:1.25、約1.1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、または約1:6であってもよい。いくつかの実施形態において、前記懸濁液中のポリマー:薬物の比は、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、および約1:4.5、約1:5、約1:5.5、または約1:6からの範囲である。いくつかの実施形態において、前記ポリマーは、生分解性ポリマーであって、前記ポリマーは、ポリエステル、例えば、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA);ポリカプロラクトン(PCL);ポリヒドロキシ酪酸(Poly hydroxyl butyrate)(PHB);ポリエチレングリコール(PEG);イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB);ポリアミド;ポリ無水物;ポリホスファゼン;ポリアクリレート;ポリオルトエステル;ポリアルキルシアノアクリレート;ポリウレタン;ポリ(エステルアミド);ポリ(エステル尿素);ポリ(ホスホエステル);多糖;ヒアルロン酸;キトサン;アルギネート;コラーゲン;アルギニン;アルブミン;デキストラン;ゼラチン;アガロース;カラギーナン;バイオミメティックおよびバイオインスパイアードポリマー、またはそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、前記ポリマーの分子量(MW)は、約5kDa~約100kDaの範囲であり、前記ポリマーの前記MWは、約10kDaまたは約55kDaであってもよい。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、水混和性の生体適合性溶媒であって、前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、安息香酸ベンジル(BB)、トリアセチン(TA)、およびそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、または約1:9 v/vの比で、NMPとDMSOとの混合物を含む。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液は、1または複数の薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含む。いくつかの実施形態において、前記薬物は、1または複数の薬物を含み、前記薬物は、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含んでもよく、前記薬物は、抗レトロウイルス薬、例えば、カボテグラビル(CAB)、ドルテグラビル(DTG)、ドラビリン(DOR)、ラムビジン(lamuvidine)(3TC)、およびイスラトラビル(EFdA)、エムトリシタビン(FTC)、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、またはテノホビルアラフェナミド(TAF)であってもよく、前記薬物は、化学療法薬または剤、例えば、パクリタキセル(PTX)およびゲムシタビン(Gem)であってもよい。いくつかの実施形態において、前記造影剤は、放射線不透過性で、例えば硫酸バリウムであり;前記造影剤は、放射性で、例えばヨウ化物、ガドリニウムであってもよく;前記造影剤は、蛍光色素、例えばフルオレセイン、インドシアニングリーン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、m-cherryであってもよく;前記造影剤は、生物発光剤、例えばルシフェリンであってもよい。いくつかの実施形態において、前記懸濁液は、前記ポリマーPLGA(例えば、MW10または27kDa)とNMPおよびDMSO溶媒混合物(例えば、1:1 v/v)とを約1:2~約1:6の比で含み、約200mg/g~約600mg/gの濃度で薬物(例えば、CAB)を含む。いくつかの実施形態において、前記懸濁液は、高い薬物負荷容量を有し、任意選択で約600mg/mLまで至ってもよい。いくつかの実施形態において、前記懸濁液は、1または複数の薬物を約5重量%~約85重量%の範囲の濃度で収容するように構成され、治療効果を達成するために必要なヒト用量に換算可能である。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、約90日以上の超長時間作用型の薬物放出を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、拡散および生分解に基づく薬物放出を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、低い24時間薬物バースト放出比(例えば、前記懸濁液および/または生分解性ISFI中の全薬物負荷の約5%未満であり、前記懸濁液および/または生分解性ISFI中の全薬物負荷の約1%未満であってもよい)を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、注入後に対象から除去可能である。いくつかの実施形態において、ポリマータイプ、ポリマーMW、ポリマー構造、溶媒タイプ、律速添加剤(例えば、プルロニック、SAIB、トレハロース)、安定剤(例えば、Tween 20、Tween 80、ポリソルベート20、マンニトール、ポリエチレングリコール)、ポリマー:薬物の比、ポリマー:溶媒の比、溶媒:薬物の比、ポリマー:溶媒:薬物の比、ポリマー:添加剤の比、および/またはポリマー:安定剤の比は、安定な懸濁液および/または生分解性ISFIを提供するために調整可能である。いくつかの実施形態において、前記懸濁液および/またはそれから形成される生分解性ISFIは、薬物負荷および放出動態に対する優れた制御で、単一の安定な懸濁製剤において複数の薬物の共送達を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、前記生分解性ISFIは、必要な場合に治療を終了するために、移植後に対象から除去可能であるように構成される。いくつかの実施形態において、前記生分解性ISFIは、シリンジ可能(syringeable)および/または注入可能である。いくつかの実施形態において、前記生分解性ISFIは、1または複数の薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を収容するように構成される。いくつかの実施形態において、前記生分解性ISFIは、高い薬物負荷容量を有し、任意選択で約600mg/mLまで至ってもよい。いくつかの実施形態において、前記生分解性ISFIは、約90日以上の超長時間作用型の薬物放出を提供するように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態において、薬物、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を対象へ投与する方法が提供され、前記方法は、請求項1~50のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIを提供するステップ、および同じものを、薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を受ける必要がある対象へ投与するステップ、を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記対象への投与前に、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIを、1または複数の薬物、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物と共に、装填するステップをさらに含み、前記1または複数の薬物、活性剤、および/または治療用化合物は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、避妊薬、予防薬、抗炎症剤、抗癌剤、鎮痛剤、ホルモン、ステロイド、オピオイド、およびそれらの組合せを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIは、注入を介して投与される。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIは、治療を終了する必要がある場合に、前記対象から除去可能であるように構成される。いくつかの実施形態において、前記対象がヒトの対象である。
【0009】
いくつかの実施形態において、対象を治療する方法が提供され、前記方法は、治療を必要とする対象へ、請求項1~50のいずれか一項に記載された安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIを投与するステップを含み、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIは、薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物を含む。いくつかの実施形態において、前記薬物、生物製剤、活性剤、造影剤、および/または治療用化合物は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、避妊薬、予防薬、抗炎症剤、抗癌剤、鎮痛剤、ホルモン、ステロイド、オピオイド、およびそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、前記安定なポリマー系の注入可能な懸濁液および/または生分解性ISFIは、注入を介して投与される。いくつかの実施形態において、前記対象がヒトの対象である。
【0010】
これらのおよび他の目的は、本開示の主題によって、全体的にまたは部分的に達成される。さらに、本開示の主題の目的は上記の通りであり、本開示の主題の他の目的および利点は、以下の説明、図面、および実施例の研究後に、当業者に明らかになるであろう。
【0011】
[図面の簡単な説明]
本開示の主題は、以下の図を参照することにより、よりよく理解されうる。図中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本開示の主題の原理を(しばしば模式的に)説明することに重点が置かれている。図において、同じ参照数字は、異なる図を通じて対応する部分を示す。本開示の主題のさらなる理解は、添付図面の図中に記載される実施形態を参照することにより得られうる。図示された実施形態は、本開示の主題を実施するためのシステムの単なる例示であるが、本開示の主題を操作する組織および方法の両方は、一般に、それらのさらなる目的および利点とともに、図面および以下の説明を参照することにより、より容易に理解されうる。図面は、この本開示の主題の範囲を限定することを意図したものではなく、添付されまたはその後に修正された特許請求の範囲において具体的に記載されているが、単に本開示の主題を明確にし例示することを意図したものである。
【0012】
本開示の主題をより完全に理解するために、ここで以下の図面を参照する:
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】1:2 PLGA/(NMP:DMSO)ISFI中に、溶液(CAB 100mg/mL)としてまたは懸濁液(CAB≧200mg/mL)として製剤化された、カボテグラビル。
図2A-2B】三元相図:図2A、CAB ISFI製剤、および図2B、DTG ISFI製剤。溶液(丸)、懸濁液(四角)、および提案(三角)として示される。
図3】単剤でのISFIおよびDTG MPT ISFIの、ISFI微細構造。インビトロでのインキュベーション3日後のDTG、ENG、MPA、DTG/ENG、およびDTG/MPA ISFIの、SEM画像(それぞれ左列から右列へ)。行列内の各列は倍率の増加を表す(それぞれ上から下へ、70倍、100倍、および200倍)。この細孔の増加は、MPAの塩基性pKaが加水分解を介してPLGA分解の速度を増加させるためと考えられる(Holy, Dang et al. 1999Makadia and Siegel 2011)。あるいは、ENG ISFIは、高密度かつ緻密な微細構造を誘発し、これが、約30日後にポリマーのバルク分解が始まるまで、ENGをデポ内部に閉じ込める原因となりうる。この現象は、ENGがDTGと共製剤化された場合には観察されず、DTG/ENG ISFIは、両方の薬物の放出を促進するより多孔性の微細構造を示す。
図4】単剤でのISFIおよびMPT ISFIの、ISFI微細構造。インビトロでのインキュベーション3日後のCAB、ENG、MPA、CAB/MPA、およびCAB/ENG ISFIの、SEM画像(それぞれ左列から右列へ)。行列内の各列は倍率の増加を表す(それぞれ上から下へ、70倍、100倍、および200倍)。スケールバーは100μmを表す。
図5A-5D】CAB ISFIの累積インビトロ放出動態。(図5A)CAB ISFI製剤の累積放出量。(図5B)累積CAB放出量に対する薬物負荷の影響。(図5C)累積CAB放出量に対するPLGA分子量の影響。(図5D)CAB ISFI製剤の放出動態の概要表。溶媒=1:1(w/w)NMP:DMSO。全てのインビトロ放出試験は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4、2%solutol含有)中で、37℃で3回反復して行われた。エラーバーは、n=3試料の標準偏差を表す。
図6A-6B】累積放出%(図6A)および累積放出量(図6B)を含む、CAB放出動態に対する製剤組成の影響。
図7A-7B】PBS中37℃でのISFI懸濁液からの、DORのインビトロ放出。予め決められた時点で試料が採取され、HPLCにより分析されてDOR濃度が定量され(図7A)、経時的な放出動態が決定された(図7B)。
図8A-8E】BALB/cマウスにおける、CAB ISFIのインビボ安全性評価およびインビボ薬物放出。(図8A)注入後3日目、7日目、および30日目に採取され(n=3/時点)H&Eで染色された、切除されたデポおよび周囲の皮下組織の局所炎症。アスタリスクは、CABインプラントを示す。矢印は、浸潤された免疫細胞および炎症の領域を示す。全てのスケールバーは1mmを表す。(図8B)デポ周囲の皮下組織の炎症スコアが、光学顕微鏡を使用して評価され、認定病理医により盲検でスコア化された。黒棒は、各時点での炎症スコアの中央値を表す(各時点n=3)。炎症スコア: 0:炎症細胞は予期される限界以内で存在; 1:最小限の炎症、増加はわずかで、散在した免疫細胞の存在; 2:軽度の炎症、免疫細胞の小さなクラスターが薄いまたは局所的な炎症跡に、またはデポ周囲に拡散した細胞数の軽度の増加; 3:中等度の、より厚い、または複数の炎症跡、またはデポ周囲に拡散した中等度の細胞数; 4:重度の、正常組織構造と置き換わるほど大きい癒合する炎症跡、またはデポ周囲に拡散した重度の細胞数; 5:著しい、正常組織構造の拡大した領域と置き換わる炎症の存在。(図8C)注入後3日目(n=3)、7日目(n=3)、および30日目(n=5)にELISAにより定量された、血漿中のTNF-αの濃度(pg/mL)。(図8D)注入後3日目(n=3)、7日目(n=3)、および30日目(n=5)にELISAにより定量された、血漿中のIL-6の濃度(pg/mL)。(図8E)90日間(各時点n=6~12)の、血漿中(1215mg/kg)のCAB濃度(平均±標準偏差)。1×および4×のPA-IC90値が、CAB(それぞれ166ng/mLおよび664ng/mL)について、点線で示される。
図9A-9D】2つのCAB ISFIで処置されたアカゲザル(rhesus macaques)における、血漿および組織中のカボテグラビル濃度。図9A.血漿中のCAB濃度の長期的評価。2つのCAB ISFIは、12週目にサル(macaque)RH-1097および1093(青および紫の中実円)から除去され、2つのCAB ISFIのうちの1つは、14週目にサルRH-42012(緑の中実円)から除去された。図9B.アスタリスク(*)は、12~14週目にISFIが除去された動物を示す。インプラント除去後のデータは、中央値の計算に含まれない。図9C.4、8、および12週目での血漿、直腸組織、および膣組織中のCAB濃度の中央値。エラーバーは範囲を表す。図9D.膣組織(VT)および直腸組織(RT)中のCAB濃度の、血漿に対する比。
図10A-10D】アカゲザルにおける直腸SHIV感染に対するCAB ISFIの有効性。図10Aおよび10Bでは、CAB ISFIによる短期的な保護。2匹のCAB処置済の(RH-1093およびRH-1097)および1匹の未処置のサル(RH-1092)が、移植後4~8週目の間に、SHIVに曝露された(図10A)。各動物は、毎週2回の直腸SHIV曝露、すなわち合計8回の曝露を受けた(矢印で示される)。処置済動物中のISFIは、12週目に除去され(青および紫の中実円)、動物はリアルタイムPCRによりSHIV感染について毎週モニターされた(図10B)。図10Cおよび図10Dでは、CAB ISFIによる長期的な保護。2匹のCAB処置済の(RH-1048およびRH-1080)および1匹の未処置のサル(RH-1084)が、移植後12~16週目の間に、SHIVに曝露された(図10C)。各動物は、毎週2回の直腸SHIV曝露、すなわち8回の曝露を受けた(矢印で示される)。動物RH-1048は、24~27週目の間に、6回の追加のSHIV曝露を受けた。全ての動物は、リアルタイムPCRによりSHIV感染について毎週モニターされた(図10D)。
図11A-11B】アカゲザルにおけるCAB ISFIインプラントの安全性および忍容性。図11A.インプラント部位での局所皮膚反応のヒートマップ。局所皮膚反応は、Draizeスケール(0-なし~4-重度)を使用してスコア化された。図11B.動物RH-1093、RH-1097、RH-42012から移植部位で採取された皮膚の病理組織診断、および未処置のサルが対照として使用された。全層皮膚パンチ生検では、炎症、感染、または異物(インプラント)材料の存在は認められない(左:H&E、原倍率2倍)。皮膚には、散在する間質性および血管周囲のリンパ球形質細胞浸潤物(矢印)は無いか最小限である(右:H&E、原倍率40倍)。
図12A-12E】BALB/cマウスおよびアカゲザルにおける、CAB ISFIの生分解および残存薬物の定量。(図12A)注入後30、60、および90日目のBALB/cマウスから回収された、CAB ISFIの画像。(図12B)50μLの注入体積(60.75mg)からの最初のISFI質量(0日目)と比較した、マウス(n=3)の注入後90日目のCAB ISFI質量。0日目の質量は、50μLの注入体積に基づいて計算され、製剤の密度(1.215g/mL)を使用して注入時のおおよその質量を決定した。(図12C)きれいな(neat)PLGA(10kDa)と比較した、マウス(各群n=2)の注入後90日目のCAB ISFIにおけるPLGA分解。(図12D)最初の投与量(0日目、50μ注入中に約24.3mg)と比較した、マウス(n=3)の注入後90日目のISFIにおける残存CABの定量。(図12E)注入後84および98日目に3匹のアカゲザルから回収されたインプラント(左右の背中上部に注入)の、残存薬物の定量および1日あたりの推定放出量。
図13A-13B】(図13A)CAB ISFI投入速度(input rate)は、観測された血漿中濃度と、血管外PKプロファイルにより決定された各動物のクリアランスを掛けることにより、推定される。破線および点線の基準線は、それぞれヒトにおける血漿中濃度が4×PA-IC90および1×PA-IC90を超えると予測される、3および0.75mg/日の投入速度を示す。(図13B)本試験で観測されたCAB ISFI投入速度の中央値(IQR)(緑線)を、3mLの注入体積(投入速度は体積に比例して増加すると仮定;紫線)で予想される速度の中央値に、およびPKサンプリング(22)の7および1日前に50mg/kgのCAB LAを筋肉内投与した9匹の参照NHPで推定される速度の中央値に、重ねて示す。
図14A-14D】CAB MPT ISFIのインビトロ放出動態。90日間にわたる単剤およびMPT ISFIの累積インビトロ放出。(図14A)CAB/MPA ISFIおよび単剤ISFI放出。(図14B)CAB/ENG ISFIおよび単剤ISFI放出。(図14C)および(図14D)それぞれ、CAB/MPAおよびCAB/ENGについての放出動態の概要表。n=3試料のエラーバーおよび標準偏差。
図15A-15I】CAB ISFI(500 mg/mL CAB)のBALB/cマウスにおけるインビボPKで、ISFIの除去可能性(図15A~D)、デポ質量の経時変化を介して評価された、ポリマー分解(図15E)、様々な時点で切除されたインプラントから抽出された、残存CAB(図15F)、分子量の経時減少を介して評価された、ポリマー分解(図15G)、LC-MS/MS分析により定量された、残存CAB(図15H)、およびGPC分析により定量された、PLGA MW(図15I)、を評価した。
図16A-16G】血漿中(図16A)、およびISFI除去後(図16B~D)、および組織中(図16E~G)の、CAB ISFIの薬物動態分析。
図17A-17D】MPT ISFIのインビボ安全性評価。(図17A)注入後3、7、30、および90日目に採取され(各群n=3/時点)H&Eで染色された、切除されたデポおよび周囲の皮下組織の局所炎症。アスタリスクは、ISFIデポを示す。矢印は、浸潤された免疫細胞および炎症の領域を示す。全てのスケールバーは、1mmを表す。3日目のCAB/ENG ISFIの拡大画像は、デポ中のCAB結晶を表す(スケールバー=100μm)。(図17B)デポ周囲の皮下組織の炎症スコアが、光学顕微鏡を使用して評価され、認定病理医により盲検でスコア化された。黒棒は、各時点での各群の炎症スコアの中央値を表す(各群n=3/時点)。(図17C)注入後3日目(n=3/群)、7日目(n=3/群)、30日目(n=6/群)、60日目(n=3/群)、および90日目(n=6/群)にELISAにより定量された、血漿中のTNF-αの濃度(pg/mL)。(図17D)注入後3日目(n=3/群)、7日目(n=3/群)、30日目(n=6/群)、60日目(n=3/群)、および90日目(n=6/群)にELISAにより定量された、血漿中のIL-6の濃度(pg/mL)。
図18A-18E】MPT ISFI製剤の血漿中の薬物濃度。(図18A)MPAまたはENGと共に共製剤化された場合の、DTG(278mg/kg、50μL注入)(各群n=6~12/時点)、(図18B)MPAまたはENGと共に共製剤化された場合の、CAB(1215mg/kg、50μL注入)(各群n=6~12/時点)、(図18C)DTGまたはCABと共に共製剤化された場合の、MPA(70~76mg/kg、50μL注入)(各群n=6~12/時点)、および(図18D)DTGまたはCABと共に共製剤化された場合の、ENG(70~151mg/kg、50μL注入)(各群n=6~12/時点)、の血漿中濃度。1×および4×PA-IC90値は、DTG(64ng/mLおよび256ng/mL)およびCAB(166ng/mLおよび664ng/mL)について点線で示される。個々のマウスの血漿試料は、図S9に示される。(図18E)0次、1次、および拡散制御(Higuchi)放出の数学的モデルのR値。
図19A-19D】MPT ISFIの除去および残存薬物の定量。(図19A)注入後30、60、および90日目のマウスから回収された、MPT ISFIデポの画像。(図19B)50μLの注入体積からの最初のISFI質量(0日目)と比較した、マウス(n=3)の注入後90日目のMPT ISFI質量。0日目の質量は、50μLの注入体積に基づいて計算され、製剤の密度(DTG MPT ISFI=1.113g/mLおよびCAB MPT ISFI=1.215g/mL)を使用して注入時のおおよその質量を決定した。(図19C)最初の投与量(0日目)と比較した、注入後90日目のMPT ISFIにおける残存DTG、ENG、およびMPAの定量(各群n=3)(最初の投与量:DTG約5.5mg;それぞれDTGまたはCABと共に製剤化された場合、ENG約1.4mgまたは約3.04mg;それぞれDTGまたはCABと共に製剤化された場合、MPA約1.4mgまたは約1.5mg)。(図19D)最初の投与量(0日目)と比較した、注入後90日目のMPT ISFIにおける残存CABの定量(各群n=3)(最初の投与量:CAB約24.3mg)。
図20A-20C】MPT ISFIのインビボPLGA分解。(図20A)きれいなPLGA(27kDa)と比較した、注入後90日目のDTG/ENGおよびDTG/MPA ISFIのPLGA MW(重量平均)(各群n=2)。(図20B)きれいなPLGA(10kDa)と比較した、注入後90日目のCAB/ENGおよびCAB/MPA ISFIのPLGA MW(重量平均)(各群n=2)。(図20C)MPT ISFIにおけるPLGA MW減少の概要表。
図21A-21C】パクリタキセル(PTX)ISFI製剤のインビトロ放出試験(図21C)。PTX放出動態に対する、薬物負荷およびPLGAタイプ(LA/GA比)の影響(図21Aおよび21B)。
図22A-22B】ゲムシタビン(Gem)ISFI製剤のインビトロ放出試験(図22B)。Gem放出動態に対する、PLGA/溶媒比、律速添加剤(プルロニック61)、および共溶媒(BB)の影響(図22A)。
図23】SOC療法(アブラキサン+ジェムザール)、PTX ISFI、PTX ISFI+FUS(FUS=集束超音波)、およびシャム(Sham)(未処置)で処置された、ヌードマウスのKPC腫瘍増殖。
図24】CAB+BaSO ISFIのインビボX線イメージング試験の画像。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の主題は、ここで以下により詳細に説明されるが、その中で、本開示の主題のいくつかの、しかし全てではない実施形態が、説明される。実際、本開示の主題は、多くの異なる形態で具体化されることができ、本明細書に記載される実施形態に限定して解釈されるべきではなく;むしろこれらの実施形態は、適用される法的要件を本開示が満たすために提供される。
【0015】
[I.定義]
本明細書において使用される用語は、具体的な実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の主題を限定することを意図するものではない。
【0016】
以下の用語は当業者により、よく理解されていると考えられるが、本開示の主題の説明を容易にするために、以下の定義が定められる。
【0017】
本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、以下に別段の定めがない限り、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。本明細書において使用される技術への言及は、当業者には明らかであろうそれらの技術の変形または同等の技術の代替を含め、当該技術分野で一般的に理解される技術を指すことが意図される。以下の用語は当業者により、よく理解されていると考えられるが、本開示の主題の説明を容易にするために、以下の定義が定められる。
【0018】
本開示の主題を説明する際に、多くの技術およびステップが開示されることが理解されよう。これらの各々は、個々の利点を有し、各々がまた、他の開示された技術のうち1または複数、または場合によっては全てと併せて、使用されうる。
【0019】
従って明確さのために、本明細書では、個々のステップの可能な限りの組合せを不必要に繰り返すことを控える。とはいえ、明細書および特許請求の範囲は、そのような組合せが完全に本発明および特許請求の範囲に含まれることを理解した上で読まれるべきである。
【0020】
長年の特許法の慣例に従い、「a」、「an」、および「the」という用語は、特許請求の範囲を含め、本出願で使用される場合、「1または複数」を指す。従って、例えば、「1の細胞」への言及は、そのような複数の細胞などを含む。
【0021】
特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される構成要素の量、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において「約(about)」という用語により修飾されていると理解されたい。従って、特に断りのない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示の主題により得ようとされる所望の特性に応じて変化しうる近似値である。
【0022】
本明細書において使用される場合、「約(about)」という用語は、組成物、質量、重量、温度、時間、体積、濃度、百分率などの値または量を指す場合、開示された方法を行うために、または開示された組成物を使用するために、そのような変動が適切であるように、指定された量から、いくつかの実施形態において±20%、いくつかの実施形態において±10%、いくつかの実施形態において±5%、いくつかの実施形態において±1%、いくつかの実施形態において±0.5%、およびいくつかの実施形態において±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0023】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」「含有する(containing)」または「~によって特徴付けられる(characterized by)」と同義であって、包括的またはオープンエンドであり、追加的な暗黙の要素または方法ステップを除外しない。「含む(comprising)」とは、特許請求の範囲の文言において使用される技術用語であり、指定された要素は必須であるが、他の要素が追加されてもよく、特許請求の範囲内の構成物をなお形成できることを意味する。
【0024】
本明細書において使用される場合、「~からなる(consisting of)」という句は、特許請求の範囲に明記されていないいかなる要素、ステップ、または構成要素をも除外する。「~からなる」という句が、前文の直後ではなく、請求項本文の節にある場合、その節に記載された要素のみを限定し、他の要素は請求項全体から除外されない。
【0025】
本明細書において使用される場合、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という句は、特許請求の範囲を、指定された材料またはステップに加え、請求された主題の基本的かつ新規な特性(複数可)に、実質的に影響を与えないものに限定する。
【0026】
「含む(comprising)」、「含む(comprising)」、および「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語に関して、これら3つの用語のうちの1つが本明細書において使用される場合、本開示の請求される主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を含みうる。
【0027】
本明細書において使用される場合、「および/または(and/or)」という用語は、実体の列挙の文脈において使用される場合、実体が単独でまたは組合せて存在することを指す。従って、例えば、「A、B、C、および/またはD」という句には、A、B、C、およびDを個々に含むだけでなく、A、B、C、およびDのあらゆる組合せおよび部分的組合せをも含む。
【0028】
本明細書において使用される場合、「治療する・処置する(treating)」、「治療・処置(treatment)」、および「治療する・処置する(to treat)」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすこと示すために、例えば、症状を緩和する、または一時的または永続的に疾患または障害の原因を除去する、症状の出現および/または障害の進行を遅らせる、または疾患の進行を予防することなどに、使用される。「治療する・処置する(treat)」または「治療・処置(treatment)」という用語は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方を指し、その目的は、疾患または症状の発生または拡大を、予防しまたは遅らせることである。有益なまたは所望の臨床結果には、症状の緩和、疾患の範囲の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化させないこと)、疾患の進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的か全体的かを問わず)を含むが、これらに限定されない。「治療・処置(treatment)」はまた、治療を受けなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することをも指しうる。
【0029】
「対象(subject)」、「個体(individual)」、および「患者(patient)」という用語は、本明細書において互換的に使用され、本明細書に記載された組成物を用いた治療が提供される動物、具体的には哺乳動物、例えばヒトを指す。「哺乳動物(mammal)」という用語は、単数形の「哺乳動物(mammal)」と複数形の「哺乳動物(mammals)」を包含することを意図しており、以下を含むが、これらに限定されない:ヒト、霊長類、例えば類人猿、サル、オランウータン、およびチンパンジーなど;イヌ科動物、例えばイヌおよびオオカミなど;ネコ科動物、例えばネコ、ライオン、およびトラなど;ウマ科動物、例えばウマ、ロバ、およびシマウマなど;食用動物、例えばウシ、ブタ、およびヒツジなど;有蹄類、例えばシカおよびキリンなど;げっ歯類、例えばマウス、ラット、ハムスター、およびモルモットなど;およびクマ。
【0030】
「長時間作用型(long-acting)」、「超長時間作用型(ultra-long-acting)」、「徐放性(sustained release)」、「遅延放出(delayed release)」などの用語は、本明細書において長期間にわたる薬物放出を指すために使用され、例えば約90日以上を含み、約30日以上、約60日以上、約90日以上、約120日以上、約150日以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月以上などを含んでもよい。
【0031】
[II.生分解性かつ除去可能なインサイチュ形成インプラント(ISFI)のための、ポリマー系の注入可能な懸濁液]
いくつかの実施形態において本明細書で提供されるのは、ポリマー系の注入可能な懸濁液であって、1)注入されるとき生分解性インサイチュ形成インプラント(ISFI)を形成し;2)高い薬物ペイロードを収容することができ(約50%w/wまで至り、約10%~約70%であってもよく、約20%~約60%であってもよく、約30%~約50%であってもよく、約10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上であってもよい);3)複数の薬物、例えば活性薬剤(API)、治療薬、医薬化合物などを収容することができ、例えば1回の注入に2以上の薬物を含み;4)治療を終了する必要がある場合に、安全に除去でき;および5)数ヶ月(例えば約12ヶ月以上まで)を含む、長期間にわたる薬物の超長時間作用型送達を可能にする、懸濁液である。
【0032】
開示されるポリマー系の注入可能な懸濁液の開発中、以下を可能とする組成物を開発することが望まれた:1)例えば抗レトロウイルス薬を含む1または複数の薬物を、ヒト用量に換算可能な濃度で収容し、2)約90日以上の超長時間作用型薬物放出を提供し、および3)体から除去される(有害/アレルギー事象または妊娠の場合)。驚くべきことに、本明細書において開示される結果は、疎水性分子(例えば、ドルテグラビル、カボテグラビル)を用いて、これらの分子がプラセボISFI製剤中の飽和濃度を超える濃度で製剤化される場合に、このタイプの安定な懸濁製剤が達成されうることを示す。
【0033】
本明細書において開示されるポリマー系の注入可能な懸濁液の、いくつかの実施形態のさらなる態様および特徴には、以下を含む:
【0034】
1)ポリマー系の注入可能な懸濁液は、いくつかの実施形態において、従来のインサイチュ形成インプラント溶液、注入可能な薬物ナノ懸濁液(例えば、Elan technology)、および注入可能なナノ粒子製剤と比較して、優れた薬物負荷(約600mg/mLまで)、および薬物放出および持続時間に対する優れた制御を提供しうる。
【0035】
2)製剤組成(ポリマータイプ、ポリマーMW、ポリマー構造、溶媒タイプ、ポリマー:溶媒の比、ポリマー:薬物の比、薬物:溶媒の比、添加剤、および安定剤)は、安定な薬物懸濁液を形成し、薬物負荷を制御するために最適化されることができ、具体的には単剤または併用療法に適用できる放出特性が、現在開発されている他のLA注入用製剤に比べて、著しく効果的となる。
【0036】
3)製剤パラメータは、いくつかの実施形態において、薬物負荷および放出動態に対する優れた制御で、単一の安定な懸濁製剤において複数の薬物の共送達を提供しうる。
【0037】
世界では、3800万人が現在HIVと共に生き、流行の開始以来3600万人がエイズ関連の病気で亡くなっている(UNAIDS)。エムトリシタビン(FTC)を含有しテノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)またはテノホビルアラフェナミド(TAF)と併用した、毎日の経口療法を用いた曝露前予防(PrEP)は、処方通りに服用した場合、HIV感染を予防する上で非常に有効である(Baeten, Donnell et al. 2012、Thigpen, Kebaabetswe et al. 2012)。しかしながら、特に若い女性の間でのアドヒアランスの低さは、経口PrEPの有効性およびその公衆衛生への影響を制限してきた。このため、HIV予防の選択肢のパイプラインは、頻繁な服用を必要とせず、毎日の経口PrEPに関連するアドヒアランス課題のいくつかを克服しうる、長時間作用型(LA)PrEP製品の開発に移行している。
【0038】
インテグラーゼ阻害薬カボテグラビルの注入用長時間作用型製剤(CAB LA)が、2021年末にFDAにより、男女におけるPrEPとして承認された(FDA 2021)。CAB LAの承認は、CAB LAが毎日の経口FTC/TDFよりも安全かつより有効であること示すHPTN083および084試験の結果を受けたものであり、長時間作用型PrEPのアドヒアランス優位性を反映すると考えられる(Landovitz 2021、Landovitz, Donnell et al. 2021、Marzinke, Grinsztejn et al. 2021)。この試験はまた、保護に必要な血漿中CAB濃度を、タンパク質調整90%阻害濃度の4倍以上と定義した(4×PA-IC90,664ng/mL(Trezza, Ford et al. 2015))。CAB LAは、3mLの筋肉内注入で最初は月2回、その後は隔月で投与される。現在では、6カ月毎またはそれ以上のような長期の投与間隔を通じて血漿中保護薬物レベルを維持する、超長時間作用型CAB製剤の開発へと、取り組みが移行している。そのような製剤は、資源の乏しい国でも豊かな国でも、大規模な実施を容易にし、費用対効果および公衆衛生上の利益を最大化する。既存のCAB LAは除去できないため、投与中止後の薬理学的残存期間が長くなり、感染および薬物耐性HIVの選択を予防するために、経口PrEPを補充する必要がある(Landovitz, Li et al. 2020)。本明細書において開示されるように、除去可能な超長時間作用型製剤を設計することが、この重大な制限に対処し、技術を大幅に進歩させる。
【0039】
加えて、計画外の妊娠およびSTIによる感染から女性を保護することは依然として必須であり、MPTへの関心を高めることが不可欠である。近年の臨床試験は、HIV感染予防のための抗レトロウイルス薬(ARV)の予防効果は、アドヒアランスと相関することを示している。数週間または数カ月にわたる薬物徐放性を提供する、長時間作用型(LA)曝露前予防(PrEP)製剤は、予防療法のコンプライアンスを向上させ、新たなHIV感染および計画外の妊娠の発生を減少させる可能性がある。HIV予防薬として近年承認されたLA製剤のうち、カボテグラビル(CAB)およびリルピビリン(RPV)のLA注入用製剤(Cabenuva(登録商標))は、他の方法と比較して使用者の間で高い受容性、およびヒト第3相試験において有望な結果を示しており、HIV治療薬としての近年の承認を裏付けている(Markowitz, Frank et al. 2017、Clement, Kofron et al. 2020)。さらに、HIV感染率が最も高いアフリカでは、注入可能な避妊薬の使用は非常に受け入れられやすく、過去数十年で大幅に増加している。使用者の間での高い受容性にもかかわらず、現在開発中の注入用MPT製剤はない。これは主に、CAB LAおよびDepoProvera(登録商標)のように、ナノ粒子懸濁液を利用する現在の注入用製剤の制限によるものであり、これらは、小さい体積で十分な用量を送達する高濃度薬物負荷の注入を可能にし、持続的な血漿中濃度をもたらす。しかしながら、これらの製剤の製造および安全性には、いくつかの懸念がある。例えば、それらの製造法のため、2つの薬物を1つの製剤内に結合することはできず、別々に注入する必要がある。重要な点として、一度投与されると、ナノ粒子製剤化されたLA注入用薬物は、除去することができない。そのため、ブレークスルー感染、毒性、アレルギー反応、または妊娠の場合に、原因物質を除去できない。Cabenuva(登録商標)については、この注入用製剤を除去できないため、現在の安全性への配慮を満たすために、経口カボテグラビルおよび/またはリルピビリンを使用した4週間の「導入」療法(‘lead-in’ regimen)が必要となる。この技術はまた、単一の注入で2つの薬物を共製剤化することはできず、このことが、CabenuvaがCABおよびRPVの2回の別々の注入として投与される理由である。同様に、除去不可能なLA注入剤の中止を検討する場合、毎日の経口テノホビルジソプロキシルフマル酸塩/エムトリシタビン(TDF/FTC)が、「ウォッシュアウト」期間全体を「カバー」し、セロコンバージョンを防ぐために必要である。理想的には、LA注入用PrEPは、毎日の経口PrEPのアドヒアランス不足を緩和することを目的とするため、これは重要な考慮事項である。
【0040】
多くのLAナノ系製剤が、経口EFV/LPV(NANO-EFV/LPV、第1相)を含むLA HIV PrEP/ARTとして、現在開発中である。しかしながら、これらの製剤に関してなおいくつかの制限があり、投与量が多いこと、治療終了後の薬物残存期間が長いこと、製造工程が複雑であること、単一の注入で2つ以上の薬物を共製剤化できないこと、および、アレルギーまたは有害反応または妊娠の場合に一度投与された注入用量を除去できないことなどを含む。それゆえ、単一の注入で複数の薬物を送達でき、治療を終了するために除去できる代替注入用製剤は、これらの制限をなくす上で大きな期待が持てる。
【0041】
インサイチュ形成インプラント(ISFI)は、超長時間作用型CAB(または他の薬物)製剤のために、投与間隔の長さ、注入体積の少なさ、および回収可能性などを含む、所望の特性を提供しうる。ISFIは、いくつかの実施形態において、疎水性かつ生分解性ポリマー(例えば、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA))、生体適合性の水混和性有機溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはジメチルスルホキシド(DMSO))、および活性医薬成分(API)を含み、これらは均質かつシリンジ可能な液体溶液または懸濁液を生成するために共製剤化される。筋肉内または皮下に注入すると、水混和性有機溶媒が水性環境内に拡散し、その結果、転相が起こり、沈殿したポリマーマトリックス内に封入されたAPIを含む、固体または半固体のデポを生成する(Eliaz and Kost 2000、Agarwal and Rupenthal 2013、Parent, Nouvel et al. 2013、Thakur, McMillan et al. 2014)。APIは、ポリマーマトリックスを通じた拡散を介し、および経時的なポリマーのバルク分解を介し、デポから放出される。
【0042】
本明細書において開示されるように、ポリマー系の生分解性、除去可能なインサイチュ形成インプラント内の薬物懸濁液が、開発された。転相技術によるインサイチュ形成インプラント(ISFI)は、皮下または筋肉内環境への注入後、転相の過程を通じてインサイチュで固体マトリックス内に沈殿する、液体ポリマー製剤として定義される。乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)は、その生分解性、薬物生体適合性、適切な生分解動態、および加工の容易さから、医療用途におけるISFIシステムのための一般的なFDA承認ポリマーである。これらのISFIは、以下の3つの構成要素のみを含む:生分解性ポリマー(例えば、PLGA、PLA、PCLなど)、水混和性の生体適合性溶媒(例えば、NMP、DMSO)、および薬物(複数可)。しかしながら、ISFIシステムを使用するには、なお以下を含むいくつかの制限がある:1)転相中の過度のバースト放出(約20%以上)、2)使用される有機溶媒の固有の毒性による、投与されうる体積の制限;および3)人体への注入許容体積内に装填されうる薬物の量の制限。
【0043】
本明細書において初めて開示されるのは、抗レトロウイルス薬(または他の任意の他の薬物または医薬品)の単独または併用(他のARVまたは避妊薬との)での、高い薬物負荷、最小限のバースト放出(例えば、約5%未満)、および超LA放出を提供しうる、安定なポリマー系の注入可能な薬物懸濁液の開発である。この工程により、最初のバースト放出および薬物放出動態および持続時間に対する優れた制御が可能になる。安定な懸濁液を形成するための重要な基準は、ポリマーと溶媒との間の相分離を生じさせることなく、プラセボISFI製剤(すなわちポリマー/溶媒溶液)中の飽和濃度を超える薬物濃度に押し上げる能力である。場合によっては、例えば親水性分子の場合のように、薬物がポリマーに対して低い親和性を有する場合、ISFI溶液中の飽和溶解度を超えて薬物を製剤化すると、元のプラセボ製剤の相分離を生じ、安定な懸濁液を形成できなくなる。安定性、微細構造、注入可能性、および放出動態は、インビトロおよびインビボで定義された。この製剤は、マウスおよび非ヒト霊長類において安全であることが示されており、およびPrEP保護のためにサルおよびヒトにおいて確立されたベンチマーク(664ng/mLまたは4×PA-IC90)を超えるレベルで、6~11ヵ月間CABを放出することができる。本明細書において開示されるように、CABのISFIからの長期にわたる放出は、CAB LAおよび他の承認された経口PrEP療法の臨床的有効性を予測した、PrEPのサルモデルにおけるSHIV感染に対する長期にわたる保護に関連する。この試験は、ヒトにおけるPrEP保護に関連することが知られるレベルでの、CABの長期にわたる放出のための、新規のプラットフォームを同定する。
【0044】
本明細書において開示されるISFI組成物は、本明細書において開示される1または複数の薬物を含みうる。「薬物(drug)」という用語は、いくつかの実施形態において、生物製剤、活性剤、および/または治療用化合物を指すことができ、他の認識されている専門用語の中で、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、避妊薬、予防薬、抗炎症剤、抗癌剤、鎮痛剤、ホルモン、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。さらに、例示であって限定するものではないが、薬物は、1または複数の薬物を含んでもよく、前記薬物は、生物製剤、活性剤、および/または治療用化合物を含んでもよく、薬物は、抗レトロウイルス薬、例えば、カボテグラビル(CAB)、ドルテグラビル(DTG)、ドラビリン(DOR)、ラムビジン(lamuvidine)(3TC)、およびイスラトラビル(EFdA)、エムトリシタビン(FTC)、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、またはテノホビルアラフェナミド(TAF)であってもよく、薬物は、化学療法薬または剤、例えば、パクリタキセル(PTX)およびゲムシタビン(Gem)であってもよく、薬物は、ステロイド、例えば、デキサメタゾン、コルチゾンであってもよく、薬物は、オピオイド、例えば、オキシコドン、ヒドロコドンであってもよく、薬物は、造影剤、例えば、放射線不透過性薬剤、蛍光剤、放射性薬剤、生物発光剤であってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、薬物、活性剤などは、所望の治療効果を達成するために必要なヒト用量に換算可能な濃度で、ISFI内に含まれうる。いくつかの実施形態において、そのような濃度は約5重量%~約85重量%であってもよく、約10重量%~約75重量%、約15重量%~約70重量%、約20重量%~約65重量%、約25重量%~約60重量%、約30重量%~約55重量%であってもよく、約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、または85重量%であってもよい。「所望の治療効果(desired therapeutic effect)」などは、いくつかの実施形態において、本明細書において定義される「治療する・処置する(treating)」、「治療・処置(treatment)」、および「治療する・処置する(to treat)」と同様に使用されてもよく、および有益なまたは所望の結果をもたらすことを示すために、例えば、症状を緩和する、または一時的または永続的に疾患または障害の原因を除去する、症状の出現および/または障害の進行を遅らせる、または疾患の進行を予防することなどに、使用されてもよい。所望の治療効果は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方を指してもよく、その目的は、疾患または症状の発生または拡大を、予防しまたは遅らせることである。有益なまたは所望の臨床結果には、症状の緩和、疾患の範囲の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化させないこと)、疾患の進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的か全体的かを問わず)を含むが、これらに限定されない。「治療・処置」または「所望の治療効果」はまた、治療を受けなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することをも指しうる。
【0046】
さらに、いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるISFI組成物は、1または複数の造影剤を含んでもよく、放射線不透過性である造影剤、例えば硫酸バリウムを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、そのような造影剤は、放射性物質、例えばヨウ化物、ガドリニウムを含んでもよい。いくつかの実施形態において、そのような造影剤は、蛍光色素、例えばフルオレセイン、インドシアニングリーン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、m-cherryを含んでもよい。いくつかの実施形態において、そのような造影剤は、生物発光剤、例えばルシフェリンを含んでもよい。
【0047】
現在までのところ、ポリマー系の薬物懸濁液を、単一の注入での1または複数の薬物の超長時間作用型送達のために使用したという報告はない。
【実施例
【0048】
以下の実施例は、本開示の主題の様々な実施形態をさらに説明するために含まれる。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示される具体的な実施形態において多くの変更を加えることができ、本開示の主題の精神および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果をなお得ることができることを理解すべきである。
【0049】
[実施例1]
[インサイチュPLGA系薬物懸濁液の調製]
ポリマー系の薬物懸濁液は、以下によって調製された:(1)プラセボ製剤: 50:50のDL-乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、MW10または27kDa、またはポリ(乳酸)(PLA)MW10kDaが、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、またはNMPとDMSOとの組合せ(例えば1:1 v/v)と、様々な重量比のPLGA/溶媒(w/w)で混合され、室温での連続的な混合により溶解させた(プラセボ)。a)薬物負荷容量、b)薬物懸濁液の形成、c)インプラントのマクロ/ミクロ構造、およびd)薬物放出動態に対する、PLGA/溶媒比の影響を評価するために、1:1、1:1.5、1:2、1:3、および1:4 w/wの比のPLGA/溶媒を含有する、プラセボ製剤が調製された。(2)薬物負荷:薬物(または併用薬物)(カボテグラビル(CAB)、ドルテグラビル(DTG)、ラムビジン(lamuvidine)(3TC)、イスラトラビル(EFdA)、ドラビリン(DOR)、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)、エントノゲストレル(entonogestrel)(ENG))が、製剤中の飽和濃度を超えてPLGA/溶媒プラセボ溶液に、続いて加えられ、37℃で一晩撹拌して安定な懸濁液を形成させた。(3)デポ形成:得られた薬物負荷懸濁製剤からの試料(30μL、30±3mg)が、ピペットを使用して200mLの0.01M PBS pH7.4内に注入され、37℃で24時間インキュベートされ、一例として球状インプラントを産生した。薬物負荷容量および放出動態に対する、製剤中の共溶媒の影響を評価するために、1:1 w/wの比のNMP/ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する溶媒が調製され、次に1:1、1:1.5、1:2、1:3または1:4 w/wの比のPLGA/溶媒で、PLGAと混合され、前述の手順に従ってPLGAインプラントを形成した。
【0050】
[実施例2]
[薬物飽和溶解度試験]
様々な溶媒および/または溶媒の組合せ中の各薬物の飽和濃度が、決定された。薬物は次に、例示的な出発点として、1:1、1:1.5、1:2、または1:4 w/wの比のPLGA/溶媒を含有するISFI製剤中に、製剤化された。例えば、DTGの場合、100mgの溶媒またはPLGA/NMPプラセボISFI溶液を含有する個々のバイアルに、25mgのDTGが加えられた。混合物は、数サイクルの短時間加温とともに渦を使用して十分に混合され、室温(RT)で、例えば約20~22℃で、約24~48時間撹拌された。試料はその後、13000rpmで30分間遠心分離され(Eppendorf Centrifuge 5417C、米国)、過剰の未溶解薬物を除去した。試料アリコート(1mg、n=4)が、飽和上澄みから採取され、アセトニトリル(ACN)を用いて希釈された。飽和アリコート中の薬物濃度は、HPLC分析により決定された。
【0051】
逆相HPLC分析は、Photodiode Array(PDA) Plus Detector、オートサンプラー、およびLC Pump Plusを備えた、Finnigan Surveyor HPLCシステム(Thermo Finnigan、サンノゼ(San Jose)、カリフォルニア州、米国)を用いて行われた。分析に使用された固定相は、40℃に保たれたInertsil ODS-3カラム(4μm、4.6Å~150mm、[GL Sciences、トーランス(Torrance)、カリフォルニア州])であった。クロマトグラフィー分離は、水およびACN(HO/ACN 95:5 v/v)中の0.1%トリフルオロ酢酸からなる移動相を使用したグラジエント溶離によって、達成された。流速は1.0mL/分で、総実行時間は、各25μL注入につき25分であった。
【0052】
様々な溶媒/溶媒の組合せ中の薬物飽和溶解度試験。
【0053】
【0054】
[実施例3]
[薬物懸濁製剤の調製および最適化]
薬物(例えば、CAB、DTG、3TC、EFdA、DOR、MPA、ENGであるが、これらに限定されない)は、飽和濃度(C飽和)を超えて、安定かつシリンジ可能な懸濁製剤が得られるまで、PLGA/溶媒プラセボ溶液中に負荷された。試験された3つの例示的な疎水性薬物(DTG、CAB、DOR)は、安定なシリンジ可能な製剤を形成し、37℃で水性放出培地(PBS、pH7.4)内に注入されると、安定なデポを結果として形成した。重要なのは、いかなる具体的な理論および作用機序に限定されないが、安定なポリマー懸濁製剤中の高い薬物負荷を達成し、および溶媒系中の薬物の飽和溶解度に相関する、ポリマー:溶媒:薬物の比である。例えば、NMP:DMSO(1:1 w/w)中のDORの飽和溶解度は、いくつかの実施形態において、CABの飽和溶解度よりも1.6倍高い(表2)。そのため、DORを用いて安定な懸濁製剤を得るためには、薬物:ポリマーおよび薬物:溶媒の比は、安定な懸濁液を得るためのCABのための比よりも約1.7倍低くされる必要があった(表3)(DOR 290mg/mL;CAB 500mg/L)。一方、試験された2つの親水性薬物(3TCおよびEFdA)は、プラセボISFI製剤中に飽和濃度を超えて製剤化されたとき、うまく懸濁液を形成しなかった。これらの結果はまた、EFdAが懸濁液として製剤化されうることを示したが、しかしながら、37℃でPBS中に注入されたとき、製剤は安定な球状のデポを形成しなかった(表4~6)。
【0055】
【0056】
【0057】
[実施例4]
[懸濁液安定性試験]
8つの製剤が調製され、安定性について評価された。製剤は37℃の水浴中に入れられ、一晩振盪され、その後取り出し時に約2分間渦流された。試料アリコート(約1mg、n=4)が、各製剤から採取され、HPLCにより分析され、製剤中の薬物均質性分布を決定した。全ての懸濁製剤は、室温(RT)での懸濁液の安定性を決定するため、室温(RT)で少なくとも24時間保存した後、均質性について再評価された。

【0058】
【0059】

【0060】
【0061】
三元相図。CABおよびDTG ISFI懸濁液について三元相図が作製され、水性培地中への注入時に安定な固体デポを結果として形成しうる、安定な懸濁液の領域を決定した。相図は、既存のデータおよび理論上の仮定に基づく提案されたシナリオに基づいて作製された(図2)。

【0062】

【0063】
【0064】
[実施例5]
[走査型電子顕微鏡(SEM)イメージングおよび分析]
固体インプラントの微細構造が、走査型電子顕微鏡(SEM)により評価された。CABまたはDTGのみを用いて、およびCABまたはDTGと避妊薬(エトノゲストレルまたはデポメドロキシプロゲステロン(DMPA))との組合せを用いて調製されたデポの、薬物分布および微細構造に対する、PLGA/NMP重量比の影響を調べる。DTG(100mg/mL)またはCAB(400mg/mL)を1:4 PLGA/(NMP:DMSO 1:1)(PLGA MW 10kDa)中に含有する製剤懸濁液(25μL)を、200mLのPBS中に注入し、37℃で72時間インキュベートすることにより、デポが調製された。結果として得られた固体デポがPBSから取り出され、液体窒素を用いて瞬間凍結され、その後24時間凍結乾燥された(SP VirTis Advantage XL -70、ウォーミンスター(Warminster)、ペンシルベニア州)。凍結乾燥された試料は、続いて破砕され、カーボンテープを使用してアルミニウムスタブ上に取り付けられ、5nmの金パラジウム合金(60:40)でスパッタコーティングされた(Hummer X Sputter Coater、Anatech USA、ユニオンシティ(Union City)、カリフォルニア州)。加速電圧5kV、開口部30μm、および平均作動距離15mmの、Zeiss Supra 25電界放出型走査電子顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy,LLC、ソーンウッド(Thornwood)、ニューヨーク州)を使用して、コーティングされた試料は画像化された。
【0065】
SEM画像から、薬物結晶をポリマーマトリックスから明確に区別することができる(図3、4)。加えて、CAB ISFI中のより高い薬物濃度のため(図4)、CAB含有インプラントの微細構造は、DTG ISFI(図3)と比較して、より高い結晶(薬物)密度を示す。
【0066】
[実施例6]
[インビトロ薬物放出試験]
固体インプラント(25mg±5mg)をシンク条件下(0.01M PBS pH7.4、2% solutol HS含有)の200mLの放出培地中で、37℃で最長6ヶ月間インキュベートすることにより、様々なインプラント製剤からの薬物放出動態が評価された。試料アリコート(1mL)は、様々な時点で採取され、新鮮な放出培地と交換された。シンク条件を維持するために、放出培地は、1週間ごとに完全に除去され、新鮮な培地と交換された。放出試料中の薬物濃度は、上記の方法を使用してHPLCにより定量された。累積薬物放出量はHPLC分析から算出され、インプラント中の薬物の総質量に対して正規化された。実験は全て、4回反復で行われた。
【0067】
[実施例7]
[インビトロ放出動態に対する薬物負荷の影響]
ISFIは、1:2 w/w PLGA:(NMP/DMPS 1:1)(PLGA MW 27kDa、50:50 LA/GA)で調製された。CABは、プラセボISFI中に100mg/g、200mg/g、または250mg/gで負荷され、CAB負荷の放出動態に対する影響を調べた。結果は、最初の24時間におけるバースト放出は、溶液(100mg/g ISFI)製剤と比較して、薬物懸濁液(200および250mg/g CAB ISFI)の方が有意に低いことを示す(図5B)。結果はまた、CAB 250mg/g、200mg/g、および100mg/gのISFIでは、それぞれ5.31μg/日、2.8μg/日、および1.45μg/日と、薬物負荷が高いほど放出速度が速いことも示した。
【0068】
[実施例8]
[薬物放出動態に対するポリマーMWの影響]
CAB放出動態に対するポリマーMWの影響を調べるために、10kDaおよび27kDaのMWを有するPLGA(50:50 LA/GA)を使用して、2つのCAB懸濁液ISFIが調製された。CABは、1:2 PLGA/溶媒(溶媒=NMP/DMSO 1:1 w/w)中に、安定な懸濁製剤として250mg/gの一定濃度で負荷された。結果は、PLGA MWが最初の24時間以内のCABの最初のバースト放出に対して影響を及ぼさず、両製剤とも約1%の非常に低いバーストを有することを示した(図5C)。結果はまた、PLGA MW 27kDaでは13.53μg/日であるのと比較して、CABがPLGA MW 10kDa中に製剤化された場合、23.55μg/日とより速い放出速度を示すことを示した。興味深いことに、前述の製剤中に400mg/gのより高濃度で製剤化された場合、放出速度は同等であり、統計的な差はなかった(図5C)。
【0069】
[実施例9]
[薬物放出動態に対する製剤組成の影響]
薬物放出動態に対する製剤組成、および星型PLGA(5アーム 50:50 LA/GA PLGA MW 54kDa)のような律速ポリマーの添加の影響もまた、調査された。共溶媒系としてNMP/DMSO(1:1)、PLGA(50:50 LA/GA MW 27kDa)、およびPLGA/星型PLGA(9:1 w/w)ポリマーの組合せを使用して、3つの製剤が調製された。CABは、3つの全ての製剤中に300mg/gの一定濃度で負荷された。結果は、1:2 PLGA/(NMP:DMSO)ISFI中に製剤化された場合、CABは安定な懸濁液を形成したが、しかしこの製剤の粘度は高すぎて、シリンジ不可能な製剤となることを示した(図6Aおよび6B)。結果はまた、星型PLGAと線状PLGAとを9:1の線状/星型PLGAで加えることで、CABを300mg/gで負荷したシリンジ可能な懸濁液ISFIが結果として得られることも示した。これらの結果は、いくつかの実施形態において、星型PLGAが、線状PLGAとの組合せで使用される場合、懸濁液ISFIの粘度を減少させることにより、可塑剤として作用することを示す。加えて、いくつかの実施形態において、溶媒比を1:2から1:4 PLGA/(NMP:DMSO)に増加させると、CABを300mg/gで負荷した注入可能な懸濁液ISFIが結果として得られた。より高い溶媒比を使用すれば、当然、製剤の粘度を減少させる。薬物放出動態に関して結果は、1:2 PLGA/(NMP:DMSO)懸濁液ISFI中で12.28μg/日とより低い放出速度であるのと比較して、より高い溶媒/ポリマー比(1:4 PLGA/(NMP:DMSO))で、CABは21.17μg/日とより高い放出速度を示すことを示す(図6Aおよび6B)。
【0070】
[実施例10]
[DOR ISFIのインビトロ放出]
ドラビリン(DOR、NNRTI)は、安定な懸濁製剤(1:4 PLGA/(NMP:DMSO)、290mg/g)としてうまく製剤化され、インビトロ放出試験は、CABと同様に、DORが非常に低いバースト放出(24時間で<2%)、および最初の1週間にわたる薬物徐放性(分析した最後の時点である3日目で3%)を示すことを示した(図7AおよびB)。これらの結果は、本明細書における他の結果とともに、開示されたISFIが、任意の所望の薬物、医薬品、および活性剤に、特に徐放性が必要な場合に、適することを示す。
【0071】
[実施例11]
[BALB/cマウスにおけるインビボ安全性試験]
CAB ISFI(CABが概念実証として使用されたが、他の薬物/APIも同様に働くことが期待される)の30日間のインビボ安全性試験が、雌のBALB/cマウスを用いて行われ、注入後の局所および全身性炎症を評価した。試験の結果は、CAB ISFIの忍容性は良好で、マウスに明らかな毒性、行動変化、または体重減少の徴候は全く見られないことを示した。切除されたインプラントおよび周囲の皮下組織の病理組織学的分析は、CAB ISFIが、デポの周囲に浸潤した免疫細胞によって示される軽度から中等度の局所炎症を示すことを示した(図8A)。3および7日目での、皮膚顕微鏡炎症スコアの中央値は3(中程度の炎症)であり、おそらく注入に対する初期免疫反応によるものと思われたが、試験した3匹のマウスのうち2匹では30日目までに減少した(図8B)。
【0072】
全身性炎症は、血漿中の炎症性サイトカインTNF-αおよびIL-6を定量する、酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって評価された。結果は、全身性の急性および慢性炎症がないことを示した。TNF-αは0~20pg/mLの範囲であり、無注入対照群と同程度であった(p>0.05)(図8C)。血漿中のIL-6レベルは0~45pg/mLの範囲であり(図8D)、レベルは無注入対照群で見られたレベルと同程度であった[p>0.05(多重比較による二元配置分散分析(ANOVA))]。炎症スコアまたは炎症性サイトカインレベルの変動は、マウスにおける個体間の変動またはホルモン周期変動に起因しうる(LaMarca, Chandler et al. 2007)。全体として、これらの結果は、CAB ISFIは一般的に忍容性が良好で、毒性および慢性炎症の明らかな徴候もなく安全であると考えられることを示した。少なくともこれらの理由から、他の薬物を用いたISFIも、同様に忍容性が良好であると予想される。
【0073】
[実施例12]
[BALB/cマウスにおけるインビボ薬物動態試験]
CAB ISFIのインビボ薬物放出動態を評価するために、雌のBALB/cマウスにおける90日間にわたる薬物動態(PK)試験が行われた。CAB血漿中濃度は、高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析LC/MS-MS法を使用して定量され、90日間にわたってプロットされた(図8E)。さらに、CAB放出動態が、3つの数学的モデル(0次、1次、および拡散制御)に対して評価された(Tiwari et al. 2010)。マウスにおいて観察されたCABのインビボ放出は、90日間のPK試験期間にわたって、0次モデルに最もよく適合する(0次モデルR=0.97;1次モデルR=0.87;拡散制御モデルR=0.86)と決定された。さらに、血漿中のCAB濃度は、90日の全試験期間中、全てのマウスで4×PA-IC90(664ng/mL(Trezza, Ford et al. 2015))よりも3.7~75倍高かった(図8E)。
【0074】
[実施例13]
[CAB ISFIの注入可能性の評価]
BALB/cマウスにおける有望な安全性およびPKデータに基づき、CAB ISFI製剤が、アカゲザルにおける安全性、PKおよび有効性の評価のために選択された。しかしながら、サルのための注入体積(2回の1mL注入)は、マウスのため(50μL)よりもはるかに多くなるため、サル試験にスケールアップする前に、大きな体積の製剤の注入可能性を、インビトロで確認することが不可欠であった。最適化されたCAB ISFI製剤の注入可能性を評価するために、我々はポリアクリルアミドハイドロゲルを使用した(Hernandez, Gawlik et al. 2016)。ポリアクリルアミドハイドロゲルは、注入部位のインビボ皮下組織の機械的特性を模倣し、PBS浴内への直接注入による標準的なインビトロ放出法よりも、ISFIのインビボ放出とのより良い相関を引き出すことが示されている(Hernandez, Gawlik et al. 2016、Manaspon, Hernandez et al. 2017)。CAB ISFI製剤では、注入時の速い転相特性のため、注入可能性の評価が不可欠であったが、これは、有機溶媒の水との混和性が高く、PLGAのMWが低いことに起因する(Parent, Nouvel et al. 2013)。転相が速すぎる場合、製剤がシリンジと針との間で固化し、注入の流れを阻害しうる。
【0075】
そのため、ポリマー対溶媒比およびPLGAのMWを変えたいくつかのプラセボ製剤の、および、最適化されたCAB ISFI製剤(1:4 w/w PLGA(10kDa):溶媒)の、注入可能性が調べられた。製剤のポリアクリルアミドハイドロゲル内への注入可能性が、16ゲージ(G)、18G、および19Gの針を用いて、1mLの注入体積で調べられた。ハイドロゲルマトリックス内への、19G針を用いた、1:4 w/w PLGA(10kDa):溶媒のプラセボまたはCAB ISFI製剤の1mL注入は、急速な転相および速いデポ形成により、針を通る製剤の流れが阻害されたため、成功しなかった。これは、低MW PLGA(10 kDa)と多量の溶媒(1:4 w/w PLGA:溶媒)との組合せに起因すると考えられた。一方、より高いPLGAのMW(27kDa)またはより低い量の溶媒(1:3および1:2 w/w PLGA:溶媒)で調製された、1mLのプラセボISFIは、ハイドロゲルマトリックス内にうまく注入された。加えて、最適化されたCAB ISFI(500mg/mL 1:4 PLGA(10kDa):溶媒)の、ハイドロゲルマトリックス内への1mL注入は、18Gまたは16G針を用いて、うまく達成された。これらの結果に基づき、サル試験におけるCAB ISFI製剤の円滑な投与のために、16G針が使用された。
【0076】
[実施例14]
[アカゲザルにおけるISFIからのCAB放出]
雌のアカゲザル6匹に、CAB ISFIが投与された。全ての動物が2回別々の1mL注入(合計1000mgのCAB)を受けたが、1匹のサル(RH-1080)は例外で、1.0mLおよび0.5mlのISFI、すなわち合計750mgのCABの注入を受けた。体重あたりで、動物は72.8~143.9mg/kgのCAB(中央値=113.8mg/kg)を受けた。サルRH-42012は、別の試験からのSHIV感染しそれ以外は健康な動物であり、PKのみを目的として含まれた。図9Aは、血漿中のCABの長期的濃度を示す。全体として、全てのサルは、4週目までに4×PA-IC90を超える血漿中CAB濃度を達成したが、RH-1073は例外で、24週目に基準濃度(1230ng/ml)を達成した。4、8、および12週目でのCABの血漿中濃度の中央値(範囲)は、それぞれ982[406~1977]、1950[578~5627]、および2127[522~2552]ng/mLであり、すなわち4×PA-IC90の約1.5~3.2倍であった。サルRH-1097およびRH-1093において、12週目に2つのCAB ISFIを除去したところ、結果として72時間後の血漿中CABレベルはそれぞれ7および48倍減少し、除去後2週目には約10~100倍減少した(図9A)。同様に、14週目にサルRH-42012において触知可能であった2つのISFIのうち1つを除去したところ、結果として血漿中CABは1週間以内に約2倍減少した(1550から765ng/mL);CAB濃度は、さらに3週間、4×PA-IC90を上回ったままであった。そのままのCAB ISFIを有する残りの3匹の動物において、16、20、24、および28週目の血漿中CAB濃度の中央値は、それぞれ1923[534~2082]、2227[646~2827]、1230[971~1585]、および886[473~1415]ng/mLであり、すなわち4×PA-IC90の1.3~3.4倍であった(図9B)。注目すべきは、1匹の動物(RH-1048)における血漿中CABレベルが、47週目に4×PA-IC90を超えたままであった(838ng/mL)ことである。全体として、これらの結果は、最適化されたCAB ISFI製剤を2回の1mL注入することで、サルにおいてCABを、最大6~11カ月間、保護の閾値を超えるレベルで放出できることを示す。
【0077】
CAB濃度はまた、4、8、および12週目に、膣および直腸組織中で測定された。図9Cは、CABが両組織中で一貫して検出されたことを示し、唯一の例外はサルRH-1048で、4週目に膣組織中でCABは検出されなかった。直腸組織中のCAB濃度の中央値は、4週~8週目の間に約3倍増加し(それぞれ333から1004ng/g)、12週目までにわずかに減少した(713ng/g)。膣組織中のCAB濃度の中央値もまた、4~8週目に約2.8倍増加し(それぞれ293から849ng/g)、12週目にも823ng/gに留まった。組織対血漿比は経時的に安定なままであり、膣(中央値=0.18(0.15~0.32))および直腸区画(中央値=0.42(0.23~0.43))中で同様であった。
【0078】
[実施例15]
[直腸SHIV感染に対するCAB ISFIの有効性]
ISFIから送達されたCABが直腸保護を与えうるかを調べるため、移植後異なる時に、一連のSHIV曝露実験が行われた。4~8週目の間に週2回曝露された2匹のサル(RH-1093およびRH-1097)において、短期的保護がまず評価された(図10A)。両動物は、同じ期間曝露され1回のSHIV曝露後に感染した未処置のリアルタイム対照(RH-1092)とは対照的に、SHIV感染に対して保護された。12~16週目の間に週2回SHIVに曝露され、合計8回の直腸曝露を受けた2匹の追加のサル(RH-1048およびRH-1080)において、長期的保護が評価された(図10B)。1匹の動物(RH-1048)は、さらに血漿中CABレベルを4×PA-IC90を超えて維持し、24~27週目の間に追加の6回のSHIV曝露を受け、合計14回の直腸SHIV曝露を受けた。CAB処置済の両動物は、感染から保護されたが、一方未処置のリアルタイム対照(RH-1084)は、1回のSHIV曝露後に感染した(図10B)。全体として、1回のISFI処置が、累積38回のSHIV曝露の間、保護を与え、最長27週間持続した。
【0079】
[実施例16]
[アカゲザルにおけるCAB ISFIの安全性および忍容性]
安全性および忍容性を評価するため、インプラント周囲の領域が、最長12週間またはインプラントが除去されるまで、毎週検査された。この評価には、12の移植部位および合計144回の臨床観察の累積分析のため、2回の注入を受けた6匹のサルが含まれた。Draizeスケールに基づくと、全ての移植部位は目立たず、12週の試験期間中、局所皮膚反応の徴候は認められなかった(図11A)。インプラント除去時(移植後12~14週目)に3匹のサルから採取された皮膚生検について、半定量的な病理組織学的評価もまた行われた。皮膚生検は、対照を含む全ての動物に認められた、リンパ球形質細胞浸潤は無いか最小限であり、どの組織切片においても、インプラント、細菌感染、または残存インプラント材料とは関連しない(図11B)。
【0080】
[実施例17]
[BALB/cマウスおよびアカゲザルにおける残存薬物の定量、生分解、および推定放出速度]
インビボ試験後のインプラントの回収可能性を評価するために、投与後30日目(n=3)、60日目(n=3)、および90日目(n=5(n=3インプラントは残存薬物の定量に使用され、n=2インプラントはPLGA分解の決定に使用された))に、安楽死時に皮膚を小さく切開することによって、CAB ISFIがマウスから除去された。ISFIは全ての動物からうまく除去され、デポの周囲に線維化組織はなかった(図12A)。90日目に除去されたデポは、ポリマー分解および残存CAB濃度を評価するために、さらに処理された。これらの分析の結果は、インビボで90日後に、デポの質量が38.9±6.9%減少し(図12B)、PLGA分解が47.2±0.07%であることを示した(図12C)。重要なことは、90日目にマウスから回収されたインプラント中には72.6±8.2%のCABが残存しており、ISFIからのCAB放出が90日を超えても持続しうることを示していることである(図12D)。
【0081】
さらに、2匹のサル(RH-1097およびRH-1093)から注入後84日目に両CAB ISFIが除去され、3匹目のサル(RH-42012)から注入後98日目に1つのISFIが除去された。図12Eに示されるように、デポ除去後、インプラント1つあたり平均48.32±11.44%のCABが残存していた。
【0082】
[実施例18]
[CAB ISFI NHP PKのヒトにおける臨床用量への換算]
個々のCABクリアランス速度は、1.5~2mLのCAB ISFIを皮下投与した6匹の我々のサルについて[中央値(IQR)=15.9(9.1~25.2)mL/(時×kg)]、およびPKサンプリングの7および1日前に50mg/kgのCAB LAを筋肉内投与した9匹の過去の参照サルについて[中央値(IQR)=12.4(11.7~14.3)ml/(時×kg)]、血管外PKプロファイルに基づいて推定された(Spreen, Lowry et al. 2015)。これら2つの長時間作用型製剤についての投入速度は、観測された血漿中濃度に、6匹の我々のISFI処置済サルにおいて投与時の体重で、または過去の参照サルにおいて8kgの仮定体重で補正された、それぞれの動物の推定クリアランス速度を乗ずることにより、導出された(図13)。効果的な臨床用量のための目標投入速度は、公表されているCAB集団PKモデル(CL=151mL/時、V2=5270mL、Q=507mL/時、およびV3=2430mL)(FDA 2021)からの平均パラメータを使用して推定され、様々な静脈内注入速度でのヒト血漿中濃度をシミュレートした。3および0.75mg/日の投入速度で、それぞれ4×PA-IC90および1×PA-IC90を超える血漿中濃度を達成した。我々のサル試験において観測されたCAB ISFI投入速度の中央値は、投与後28日目~140日目まで、この3mg/日の臨床有効性閾値を超えた。投入速度が注入体積に比例して増加すると仮定すると、3mLのCAB ISFI注入により、投与後21日目~168日目まで、すなわち5.6ヵ月まで、この閾値を達成する。6日間隔で2回50mg/kgのCAB LAを筋肉内注入で投与したサルと比較すると、CAB ISFIは97日間延長の中央値で、予測された保護閾値を超える速度を維持した(図13B)。
【0083】
[実施例19]
[CAB MPT ISFIインビトロ放出試験]
CAB MPT ISFI(CAB/ENGおよびCAB/MPA)および単剤ISFI(CAB ISFI、MPA ISFI、およびENG ISFI)を用いたインビトロ放出試験が行われ、(1)ISFI(MPT)中のCABとMPAまたはENGとの共製剤化の実現可能性を評価し、(2)任意の薬物-薬物相互作用を決定し、および(3)目標インビトロ放出速度および目標放出期間(≧90日)を評価した。
【0084】
図14は、CAB/MPA ISFI(図14Aおよび14C)およびCAB/ENG ISFI(図14Bおよび14D)の、累積インビトロ放出動態を示す。薬物-薬物相互作用を評価するために、単剤ISFI対MPT ISFIのインビトロ放出が評価された。全てのISFI液体懸濁液は、安定かつ均質な、誘発された<15%のバースト放出、90日間の徐放性、および目標を超える放出速度であった。単剤負荷ISFIをMPT ISFIと比較した場合、HPLCクロマトグラムにおいて分解ピークは観察されず、薬物-薬物相互作用がないことを示した。
【0085】
CAB放出は、単剤負荷の場合といずれかのホルモンと共製剤化された場合とで、同等である(p>0.05)。しかしながら、MPAの放出においては、単剤ISFIとしてとCABと共製剤化された場合とで、差がある(p<0.05)。MPAは、ポリマーのバルク分解が30日後に始まるまで、デポ内に捕捉されうる。この現象は、MPAの溶媒系(1:1 w/w NMP:DMSO; 33.6±0.9mg/mL)中の溶解度が低いためと説明されうる。ISFI溶媒系中のMPAの溶解度は、DMSOの添加により減少するため、転相中に溶媒とともに拡散する親和性が低く、バルク分解が始まるまでPLGA中に捕捉されたままになる親和性がより高い。あるいは、単剤ISFIとしてとCABと共製剤化された場合とのENGの放出量には、60日まで差がない(p>0.05)。単剤ISFIとしてのENGの放出量は、60日を超えると増加し、CABと共製剤化された場合のENGの放出量と比較して、有意に差がある(p<0.05)。放出60日後では、PLGA分解が薬物放出に影響する主な原動力であり、このことが、CAB/ENG ISFIと比較してポリマー含有量がより高く薬物負荷がより低いため、単剤負荷の場合にENGの放出速度が増加した理由と考えられる。
【0086】
[実施例20]
[CAB ISFI除去可能性、残存CABおよびポリマー分解]
投与後の様々な時点でインプラントを除去する能力を調べるために、CAB ISFI(500mg/mL CAB)が2つの異なる用量(50μL、100μL、2×50μL)でBALB/cマウスに皮下投与され、投与後30日目、60日目、90日目、および180日目にインプラントが除去された。HPLCにより残存薬物を定量し、GPC分析によりPLGA MWを決定するために、インプラントが抽出された。ISFI除去後のCAB残存期間を評価するために、血漿試料がインプラント除去後30日間採取された。結果は、全ての時点(180日目まで)でインプラントがうまく回収され、180日目での残存CABは最初の用量の23~30%であり、PLGA MWは0日目と比較して約85%減少したことを示す(図15H~I)。血漿中PK分析は、CABレベルがISFI除去後に有意に減少し、ISFIがより遅い時点(90日目)で除去された場合には、血漿中CABのより速いクリアランスが観察されることを示した(図16B~D)。これらの結果は、ISFIが投与後の様々な時点でうまく除去されることができ、薬物の血漿中濃度が有意に減少し、より遅い除去時点では短い血漿中残存期間で除去されることを示す。結果はまた、CABがHIV感染に対する保護のための治療レベルで、標的組織(膣および直腸)内に効果的に蓄積することを示す(図16E~G)。
【0087】
より高い用量(CAB 995mg/kg;100μL注入)を、1:4 PLGA/(NMP:DMSO)(PLGA MW 10kDa;CAB 500mg/gmL)懸濁液ISFIと共に投与した場合、血漿中濃度は、投与後少なくとも30日間、CABのタンパク質調整IC90(CAB PA-IC90 166ng/mL)よりも約50倍高いレベルに達した(図16A)。これらのデータはまた、最初の24時間における最小限のバースト放出、および、HIV感染に対する保護のために有効な4×PA-IC90レベルをかなり上回る有意に高いCAB血漿中レベルの、少なくとも30日間の徐放性を示す。
【0088】
[実施例21]
[MPT ISFI製剤のインビボ安全性]
MPT ISFI製剤(DTG/MPA、DTG/ENG、CAB/MPA、およびCAB/ENG)を用いた90日間のインビボ安全性試験が行われ、注入後の局所および全身性炎症を評価した。結果は、全てのISFIの忍容性は良好で、マウスに明らかな毒性、行動変化、または体重減少の徴候は全く見られないことを示した。切除されたインプラントおよび周囲の皮下組織の組織学的染色分析(H&E)は、全てのMPT ISFI製剤が、デポの周囲に浸潤した免疫細胞によって示される軽度から中等度の局所炎症を示すことを示した(図17A)。全てのMPT ISFI群の皮膚顕微鏡炎症スコアの中央値は、最初の注入により3および7日目で、2(軽度)と3(中等度)の間であった。炎症は30日目までに減少し(スコアの中央値は0および2)、90日目までには無視できるほどであり、対照群(無注入)と同程度であった(スコアの中央値は0および1)(図17B)。
【0089】
全身性炎症は、炎症性サイトカインTNF-αおよびIL-6の血漿中レベルを定量する、ELISAによって評価された。結果は、全てのMPT ISFI群で慢性全身性炎症がないことを示した。TNF-αレベルは、90日目まで0~3pg/mLの範囲であり、対照群と同程度であった(p>0.05)(図17C)。同様に、IL-6レベルは、90日目まで0~20pg/mLの範囲であり、対照群と同程度であった(p>0.05)(図17D)。炎症スコアまたは炎症性サイトカインレベルの変動は、マウスにおける個体間の変動に起因しうる。最終的にこれらの結果は、全てのMPT ISFIは忍容性が良好であり安全と考えられることを示し、本明細書に記載された他のデータと合わせると、開示されたISFIは、どの薬物が含まれていても、忍容性が良好であることを示す。
【0090】
[実施例22]
[MPT ISFI製剤のインビボ薬物動態]
MPT ISFI製剤のインビボ薬物放出を評価するために、マウスにおける90日間にわたる薬物動態(PK)試験が行われた。DTG、CAB、ENG、およびMPA血漿中濃度は、高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析LC/MS-MS法を使用して定量され、90日間にわたってプロットされた(図18)。MPT ISFIにおけるDTGおよびCABの血漿中濃度は、90日の試験期間中、全てのマウスにおいて、それぞれの4×PA-IC90値(DTG=256ng/mL(Cottrell, Hadzic et al. 2013)、CAB=664ng/mL(Trezza, Ford et al. 2015))よりもそれぞれ2~68倍および1.3~70倍高かったが、いずれかのホルモンと共製剤化された場合には差は認められなかった(p>0.05)(図18AおよびB)。さらに、MPT ISFIにおけるENGおよびMPAの血漿中濃度は、90日の試験期間中、維持された(図18CおよびD)。
【0091】
さらに、DTG、CAB、MPA、およびENGの放出動態が、3つの数学的モデル(0次、1次、および拡散制御(Higuchi)(Gouda, Baishya et al. 2017))に対して評価された。90日のPK試験期間にわたって、マウスにおいて観察されたDTG、CAB、およびMPAのインビボ放出は、0次放出モデルに最もよく適合し、ENG放出は、拡散制御すなわちHiguchi放出モデルに最もよく適合すると決定された(図18E)。
【0092】
総合するとこれらの結果は、MPT ISFI製剤が全ての薬物の血漿中薬物濃度を90日間維持し、ARV濃度が保護のための確立されたPKベンチマーク(≧4×PA-IC90)を超える能力を示した。
【0093】
[実施例23]
[インビボMPT ISFI残存薬物の定量および生分解]
容易に治療を終了できる能力は、長時間作用型送達システムの、具体的にはHIV予防、および毒性、有害事象、または近い将来に妊娠を望む場合の避妊のための、重要な態様である。そのため、MPT ISFIは様々な時点(30、60、および90日目)で、注入部位で皮膚を小さく切開することによって除去された。MPT ISFIは、デポの周囲に線維化組織がなく、うまく除去された(図19A)。90日目に除去されたデポは、残存薬物およびインビボ分解を評価するために、さらに処理された。
【0094】
DTG MPT ISFIおよびCAB MPT ISFIは、インビボで90日後に、それぞれ約82%および28%の質量減少があった。(図19B)。CAB MPT ISFIは、DTG MPT ISFIと比較して薬物負荷がより高くポリマー含有量がより低いため、質量減少がより少なかったと考えられる。投与後90日目のMPT ISFI中の残存薬物量が、図19CおよびDに示される。DTG MPT ISFIはおおよそ、22%のDTG、14%のMPA、および6%のENGが残存していた。一方CAB MPT ISFIはおおよそ、85%のCAB、70%のMPA、および4%のENGが残存していた。注目すべきは、CAB/MPA ISFIが、同程度の割合の残存薬物を有していたことで、両薬物が同時に100%薬物放出に達しうることを示唆する。最終的に、全てのMPT ISFI製剤は90日後に薬物が残存していたことから、これらの製剤は、特にCAB/DMPAは、より長い間放出しうることを示唆する。ここでは試験しないが、本明細書における例示薬物によって示される他の薬物についても、そのようなことが予想される。
【0095】
さらに、ポリマー分解を評価するために、MPT ISFIからのPLGA分子量(MW)が、GPC分析により注入90日後に定量的に測定され、きれいなPLGAのMW(DTG MPT ISFIでは27kDa PLGA、およびCAB MPT ISFIでは10kDa PLGA)と比較された(図20)。結果は、DTG MPT ISFIおよびCAB MPT ISFIにおいて、それぞれ52~65%および40~51%の間のPLGA MW減少を示した。注目すべきは、MPAを用いたMPT ISFIは、ENGを用いたものよりも、大きいPLGA MW減少を誘発したことである。これは、MPAの塩基性pKaが、PLGA分解の速度を増加させたことに起因しうる(Holy, Dang et al. 1999、Makadia and Siegel 2011)。全体として、これらのデータは、MPT ISFIは必要な場合に容易に除去されうること、デポは注入後90日経過してもそのままで、薬物が残存しており、これらのデポは90日よりも長い間、放出を維持する可能性があることを示していることを示す。
【0096】
[実施例24]
[化学療法薬を用いたISFI]
2つの異なる化学療法薬、パクリタキセル(PTX)およびゲムシタビン(Gem)を用いたISFI製剤が調製され、インビトロ放出動態について(PTXおよびGem ISFI;図21A~21Cおよび22A~22B)、および、インビボ安全性および薬物動態について(PTX ISFI;図23)調査された。結果は、PTX(MW 853.9g/mol;LogP 3.2)およびGem(MW 263.2g/mol;LogP -1.5)の両方が、ISFI中にうまく製剤化され、インビトロで徐放性を示したことを示した。他の疎水性薬物(CAB、DTG、DOR)と同様に、PTXは、より少ないバースト放出(24時間で<2%)、および>60日間の徐放性を示した(図21A~21C)。
【0097】
[実施例25]
[ヌードマウスにおけるPTX ISFIのインビボ安全性およびPK]
KPC腫瘍を有するマウスにPTX ISFIが皮下投与され(50μL;550mg/kg)、シャムおよびSOC(アブラキサン/ジェムザール併用療法)と比較した、ISFIによるPTX投与のPKを決定するために、血漿および腫瘍試料が長期的に採取された。結果は、PTX ISFIを用いて処置されたマウスは、SOC療法の3回投与を受けたマウスと、同等の大きさの腫瘍を有することを示した(図23)。これらの結果は、PTX ISFIが、膵臓がん、および化学療法薬の長時間作用型送達および局所的な持続性送達が有効な他のがんのために、新たな治療オプションを提供できる可能性があることを示す。
【0098】
[実施例26]
[CAB+BaSO ISFIのインビボX線イメージング試験]
全身X線イメージングを使用して、投与後のISFIを非侵襲的に画像化する能力を調べるため、様々な量の硫酸バリウム(BaSO;1%、5%、10%w/w)を含有する放射線不透過性プラセボおよびCAB ISFIが調製され、BALB/cマウス(n=5/群)の脇腹に皮下投与(50μL)された。各マウスは、BaSO含有プラセボISFI(左脇腹)およびBaSO含有CAB ISFI(右脇腹)を受けた。ISFI投与後3日目および7日目に、X線画像が収集され、対照マウス(ISFI無し)から収集された画像と比較された。結果は、5%および10%BaSOを含有する放射線不透過性CAB ISFIがうまく調製され、投与後3日目および7日目に全身X線イメージングを用いてはっきりと可視かつ検出可能であったことを示す(図24)。
【0099】
[参考文献一覧]
全ての特許、特許出願およびそれらの公開、科学雑誌論文、およびデータベースエントリ(例えば、GENBANK(登録商標)データベースエントリおよびそこで利用可能な全ての注釈)を含むがこれらに限定されない、本明細書において列挙される全ての参考文献は、本明細書で使用される方法論、技術、および/または組成物を、補足し、説明し、背景を提供し、または教示する限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
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【0101】
本開示の主題の様々な詳細は、本開示の主題の範囲から逸脱することなく変更されうることが理解されるであろう。さらに、前述の説明は、例示のみを目的とし、限定を目的としない。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A-B】
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図15I
図16A-B】
図16C-D】
図16E-F】
図16G
図17A
図17B-D】
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A-B】
図20C
図21A-B】
図21C
図22A
図22B
図23
図24
【国際調査報告】