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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】プラスチック由来油の処理
(51)【国際特許分類】
   C10G 25/05 20060101AFI20240718BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20240718BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C10G25/05
C10G47/00
C10G45/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579716
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022035486
(87)【国際公開番号】W WO2023278548
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/217,424
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デル・パッジョ,アラン・アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトコットン,ウェス・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ラウシュ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】サカモト,アレグザンドラ・イオアナ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA22
4H129DA07
4H129DA15
4H129DA21
4H129KA06
4H129KA12
4H129KA19
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC04X
4H129KC09X
4H129KC14X
4H129KC14Y
4H129KC17Y
4H129KC28X
4H129KD03Y
4H129KD24Y
4H129KD28Y
4H129KD30Y
4H129NA01
4H129NA02
4H129NA04
4H129NA07
4H129NA26
(57)【要約】
液体プラスチック由来油の処理のためのシステムであって、1つ以上の汚染物質及び第1の汚染レベルを有する液体プラスチック由来油を受け入れることができる1つ以上の反応器を有する、前処理システムを含む、前処理セクションを有する、システム。1つ以上の反応器は、フォージャサイト(FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるいを有する収着剤材料を含み、収着剤材料が、液体プラスチック由来油から1つ以上の汚染物質の第1の部分を除去し、第1の汚染レベル未満である第2の汚染レベルを有する処理された液体プラスチック由来油を生成することができる。液体プラスチック由来油は、固体プラスチック廃棄物(SPW)に由来し、1つ以上の汚染物質の第1の部分は、ハロゲンを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体プラスチック由来油の処理のためのシステムであって、
1つ以上の汚染物質及び第1の汚染レベルを有する前記液体プラスチック由来油を受け入れるように構成された1つ以上の反応器を有する前処理システムを含む前処理セクションであって、前記1つ以上の反応器が、フォージャサイト(FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるいを含む収着剤材料を含み、前記液体プラスチック由来油から前記1つ以上の汚染物質の第1の部分を除去し、前記第1の汚染レベル未満である第2の汚染レベルを有する処理された液体プラスチック由来油を生成するように構成され、前記液体プラスチック由来油が、固体プラスチック廃棄物(SPW)に由来し、前記1つ以上の汚染物質の前記第1の部分が、ハロゲンを含む、前処理セクションを備える、システム。
【請求項2】
前記前処理セクションの下流に配設され、かつ前記前処理セクションに流体連結された水素化処理セクションを備え、前記水素化処理セクションが、1つ以上の水素化精製触媒を含む水素化精製装置を含み、前記水素化精製装置が、前記処理された液体プラスチック由来油及び水素ガスを受け入れることと、前記処理された液体プラスチック由来油から前記1つ以上の汚染物質の第2の部分を除去することと、前記第2の汚染レベル未満である第3の汚染レベルを有する水素化精製された液体生成物を生成することと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記水素化精製装置が、第2の収着剤材料を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記水素化精製装置の下流の前記水素化処理セクションに配設された水素化分解装置を備え、前記水素化分解装置が、前記水素化精製された液体生成物を受け入れることと、水素化分解された液体生成物を生成することと、を行うように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記前処理システムの下流に配設され、かつ前記前処理システムに流体連結された変換ユニットを備え、前記変換ユニットが、前記処理された液体プラスチック由来油、又は前記水素化分解された液体生成物を受け入れることと、エチレン、プロピレン、ブチレン、及びそれらの組み合わせを生成することと、を行うように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記収着剤材料が、12員環チャネルを含有するゼオライト、10員環チャネルを含有するゼオライト、ドープゼオライト分子ふるい、非ゼオライト分子ふるい、粘土、シリカゲル、アルミナ、アルミン酸ナトリウム、若しくはアンモニウム含有材料、混合金属酸化物、金属有機構造体(MOF)、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記収着剤材料が、およそ200m/g~およそ800m/gの表面積、1%~40%のアルカリ金属含有量、1~5のSi/Al、又はそれらの組み合わせを有し、およそ5ナノメートル(nm)~100ミクロン(μm)の分子ふるい平均結晶子サイズを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上の反応器に流体連結された洗浄システムを備え、前記洗浄システムが、1つ以上の洗浄流体を前記1つ以上の反応器に提供することと、前記収着剤材料を再生成することと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
液体プラスチック由来油の処理のためのプロセスであって、
フォージャサイト(FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるいを含む収着剤材料を有する1つ以上の反応器を含む前処理システムに前記液体プラスチック由来油を供給することであって、前記液体プラスチック由来油が、固体プラスチック廃棄物(SPW)に由来し、1つ以上の汚染物質を含み、第1の汚染レベルを有する、供給することと、
125℃以上の温度で、前記液体プラスチック由来油を前記収着剤材料と接触させることであって、前記収着剤材料が、前記1つ以上の汚染物質の第1の部分を除去することと、前記第1の汚染レベル未満である第2の汚染レベルを有する処理された液体プラスチック由来油を生成することと、を行うように構成され、前記1つ以上の汚染物質の前記第1の部分が、ハロゲンを含む、接触させることと、
前記前処理システムの下流に配設され、かつ前記前処理システムに流体連結された変換ユニットに前記処理された液体プラスチック由来油を供給することであって、前記変換ユニットが、前記処理された液体プラスチック由来油をエチレン、プロピレン、ブチレン、及びそれらの組み合わせへと変換するように構成された1つ以上の反応器を含む、供給することと、を含む、プロセス。
【請求項10】
前記前処理システムと前記変換ユニットとの間に配設された水素化処理システムに前記処理された液体プラスチック由来油を供給することを含み、前記水素化処理システムが、水素化処理触媒を含み、前記変換ユニットに前記処理された液体プラスチック由来油を供給する前に、前記処理された液体プラスチック由来油から前記1つ以上の汚染物質の第2の部分を除去するように構成されている、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水素化処理システムが、水素化精製装置、水素化分解装置、又はその両方を含み、第2の収着剤が、前記水素化精製装置に添加され、前記第2の収着剤が、フォージャサイト(FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるいである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記前処理システム内の圧力が、およそ0barg~およそ17bargである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
前記収着剤材料が、12員環チャネルを含有するゼオライト、10員環チャネルを含有するゼオライト、ドープゼオライト分子ふるい、非ゼオライト分子ふるい、粘土、シリカゲル、アルミナ、アルミン酸ナトリウム、若しくはアンモニウム含有材料、混合金属酸化物、金属有機構造体(MOF)、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項14】
前記収着剤材料が、およそ200m/g~およそ800m/gの表面積、1%~40%のアルカリ金属含有量、1~5のSi/Al、又はそれらの組み合わせを有し、前記収着剤材料が、およそ5ナノメートル(nm)~100ミクロン(μm)の分子ふるい結晶子サイズを有する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項15】
前記1つ以上の反応器に洗浄流体を供給することと、前記収着剤材料を再生成することと、を含む、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年7月1日出願の「TREATMENT OF PLASTIC-DERIVED OIL」と題された米国仮特許出願第63/217,424号の優先権からの利益を享受する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、固体プラスチック廃棄物のケミカルリサイクルに関する。より具体的には、本開示は、プラスチック由来油から汚染物質を除去するための前処理システム及びプロセスに関する。
【0003】
プラスチックは、とりわけ、包装材料、織物、コンシューマ製品、及び電子機器に及ぶ多種多様な製品で使用されている。プラスチックの一般的な群の中には、ポリオレフィンと呼ばれる材料のクラスが存在し、これは、油、天然ガス、及び/又は石炭などの炭化水素に由来する、エチレン及びプロピレンなどの重合モノマーで構成される。これらの材料は容易に分解されず、毎年生産されるプラスチック物品の増大する量の大部分が、経時的に環境に蓄積し得る。したがって、我々の環境に対する固体プラスチック廃棄物(solid plastic waste、SPW)の影響を最小限に抑えるために、SPWをリサイクルし、再使用して、ポストコンシューマ製品を作り出すことができる。
【0004】
SPWリサイクルのためには、2つの一般的な技術:機械的リサイクル及びケミカルリサイクルが存在する。機械的リサイクルは、形状、密度、サイズ、色、及び/又は化学組成に基づいてSPWを分離及び選別することと、洗浄して汚染物質を除去することと、粉砕してサイズを低減することと、配合することと、ペレット化することと、を含む。しかしながら、機械的リサイクルは、ケミカルリサイクルよりも単純であり、多くの場合安価であるが、良好に選別されたSPWの小さなサブセットにのみ適用可能である。更に、プラスチックに使用されるポリマー材料は、再処理(例えば、熱-機械的分解)及び環境要因(例えば、熱、酸素、光、水分など)への長時間の曝露から生じる寿命分解、並びに各機械的リサイクルのサイクルによる不純物濃度の増加に起因して、経時的に分解される。したがって、SPWを機械的にリサイクルすることができる回数は、2~3サイクルに制限され、その後、SPWは、もはや機械的にリサイクルすることができず、代わりに埋め立てられるか、又は焼却される。
【0005】
ケミカルリサイクルは、機械的リサイクルよりも堅牢であり、SPWのケミカルリサイクルから得られる製品は、それらの未使用の製造された対応物と化学的に区別不可能である、新しい商業的に実行可能な製品を製造するために使用することができる。ケミカルリサイクルは、多くの場合、化学組成に基づいてSPWを分離及び選別すること、予洗いして有機汚染物質を除去すること、粉砕してサイズを低減すること、プラスチック由来油を生成するための一次変換工程(限定されないが、熱分解(接触熱分解を含む)、水熱液化(hydrothermal liquefaction、HTL)、水素化分解などの、熱及び/又は接触の)、多くの場合、それに続く二次変換工程(下流ユニットで利用するための液体生成物を準備するための追加の汚染物質除去及び化学変換)を含む。
【0006】
端から端まで、ケミカルリサイクルプロセスは、ポリマーをそれらのそれぞれのモノマー又はオリゴマーへと(例えば、化学プロセスを介して)解重合し、モノマー又はオリゴマーは、次いで、リサイクルされる前の、プラスチックを作製するために使用された元の材料と実質的に同一の特徴、したがって性能を有する、例えば、化学物質、燃料、及び再生プラスチックなどの他の製品を作り出すための石油化学供給原料として使用することができる。したがって、ケミカルリサイクルは、物理的若しくは環境的分解、及び/又は機械的リサイクルにおいて概して生じる化学物質汚染によって制限されることなく、無限回数のサイクルにわたって、再生プラスチックを含む有用な化学製品へとSPWを変換するための多用途プラットフォームの代表である。ポストコンシューマプラスチックの繰り返しリサイクルから生成されるこれらの再生プラスチック及び他の材料は、循環材料と称される場合がある。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、液体プラスチック由来油の処理のためのシステムであって、1つ以上の汚染物質及び第1の汚染レベルを有する液体プラスチック由来油を受け入れることができる1つ以上の反応器を有する、前処理システムを含む、前処理セクションを有する、システム。1つ以上の反応器は、フォージャサイト(faujasite、FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるいを有する収着剤材料を含み、収着剤材料が、液体プラスチック由来油から1つ以上の汚染物質の第1の部分を除去し、第1の汚染レベル未満である第2の汚染レベルを有する処理された液体プラスチック由来油を生成することができる。液体プラスチック由来油は、固体プラスチック廃棄物(SPW)に由来し、1つ以上の汚染物質の第1の部分は、ハロゲンを含む。
【0008】
別の実施形態では、液体プラスチック由来油の処理のためのプロセスは、フォージャサイト(FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるいを含む収着剤材料を有する1つ以上の反応器を含む前処理システムに、液体プラスチック由来油を供給することを含む。液体プラスチック由来油は、固体プラスチック廃棄物(SPW)に由来し、1つ以上の汚染物質を含み、第1の汚染レベルを有する。プロセスはまた、125℃以上の温度で、液体プラスチック由来油を収着剤材料と接触させることを含む。好ましい実施形態では、液体プラスチック由来油は、150℃以上の温度で収着剤材料と接触させられる。収着剤材料は、1つ以上の汚染物質の第1の部分を除去し、第1の汚染レベル未満である第2の汚染レベルを有する処理された液体プラスチック由来油を生成することができ、1つ以上の汚染物質の第1の部分は、ハロゲンを含む。プロセスは、処理された液体プラスチック由来油を、前処理システムの下流に配設され、かつ前処理システムに流体連結された変換ユニットに供給することを更に含む。変換ユニットは、処理された液体プラスチック由来油をエチレン、プロピレン、ブチレン、及びそれらの組み合わせへと変換することができる、1つ以上の反応器を含む。
【0009】
更なる実施形態では、液体プラスチック由来油の処理のためのシステムは、1つ以上の汚染物質及び第1の汚染レベルを有する液体プラスチック由来油を受け入れることができる1つ以上の反応器列を有する前処理システムを有する、前処理セクションを含む。1つ以上の反応器列は、複数の反応器を含み、複数の反応器の各反応器は、フォージャサイト(FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるいを有する収着剤材料を有し、液体プラスチック由来油から1つ以上の汚染物質の第1の部分を除去し、第1の汚染レベル未満である第2の汚染レベルを有する処理された液体プラスチック由来油を生成することができ、液体プラスチック由来油は、固体プラスチック廃棄物(SPW)に由来し、1つ以上の汚染物質の第1の部分は、ハロゲンを含む。システムはまた、前処理セクションの下流に配設された変換ユニットを含む。変換ユニットは、処理された液体プラスチック由来油を受け入れ、処理された液体プラスチック由来油をエチレン、プロピレン、ブチレン、及びそれらの組み合わせへと変換することができる、1つ以上の反応器を含む。
【0010】
本開示の例示的な実装形態の追加の特徴及び利点は、以下の説明に記載され、一部は説明から明らかになるか、又はそのような例示的な実装形態の実施によって習得され得る。そのような実装形態の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される手段及び組み合わせによって実現され、取得され得る。これら及び他の特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、又は以下に記載されるような例示的な実装形態の実施によって習得され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の利点は、以下の詳細な説明を読み、図面を参照することによって明らかになり得る。
図1】本開示の実施形態による、前処理システムを有する二次変換工程を含む、固体プラスチック廃棄物(SPW)のケミカルリサイクルのためのプロセスのフロー図である。
図2】本開示の一実施形態による、図1の二次変換工程で使用される、システムのブロック図であり、システムが、前処理システムを有する前処理セクションと、水素化精製装置及び水素化分解装置を有する水素化処理セクションと、を含む。
図3】本開示の実施形態による、図2の前処理システムのブロック図であり、前処理システムが、複数の反応器列を含み、各反応器列が、各々収着剤を有する、並列に配置された複数の反応器を有する。
図4】本開示の実施形態による、図2の前処理システムのブロック図であり、前処理システムが、複数の反応器列を含み、各反応器列が、各々収着剤を有する、直列に配置された複数の反応器を有する。
図5】本開示の実施形態による、図2の前処理システムのブロック図であり、前処理システムが、複数の反応器列を含み、1つの反応器列が、各々収着剤を有する、直列に配置された複数の反応器を有し、別の反応器列が、各々収着剤を有し、並列に配置された複数の反応器を有する。
図6】本開示の一実施形態による、図2の前処理システムのブロック図であり、前処理システムが、複数の反応器の各々に、収着剤を再生成するための洗浄システムを含む。
図7】本開示の実施形態による、時間数での時間との関数としての、処理された液体プラスチック由来油中の百万分率(parts per million、ppm)での総塩化物のプロットであり、処理された液体プラスチック由来油は、加熱されたプラスチック由来油供給物を様々なタイプの収着剤と接触させることによって生成される。
図8】本開示の実施形態による、時間数での時間との関数としての、処理された液体プラスチック由来油中の百万分率(ppm)での総塩化物のプロットであり、処理された液体プラスチック由来油は、加熱されたプラスチック由来油供給物を様々なタイプのゼオライト又はアルミナ収着剤と接触させることによって生成される。
図9】本開示の実施形態による、時間数での時間との関数としての、処理された液体プラスチック由来油中の百万分率(ppm)での総塩化物のプロットであり、処理された液体プラスチック由来油は、加熱されたプラスチック由来油供給物を様々な温度でゼオライト収着剤と接触させることによって生成される。
図10】本開示の実施形態による、時間数での時間との関数としての、処理された液体プラスチック由来油中の百万分率(ppm)での総塩化物のプロットであり、処理された液体プラスチック由来油は、加熱されたプラスチック由来油供給物を様々な温度でアルミナ収着剤と接触させることによって生成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の1つ以上の特定の実施形態が以下に説明される。記載されるこれらの実施形態は、本開示の技術の例である。更に、これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装形態の全ての特徴を本明細書に記載しなくてもよい。任意のエンジニアリング又は設計プロジェクトにおけるように、任意のそのような実際の実装形態の開発において、実装形態ごとに異なり得る、システム関連及びビジネス関連の制約への準拠など、開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装形態固有の決定が行われることを理解されたい。更に、そのような開発努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって、設計、製作及び製造の日常的な仕事であることを理解されたい。
【0013】
本開示の様々な実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することが意図される。「備える」、「含む」、及び「有する」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。加えて、本開示の「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図しないことを理解されたい。
【0014】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、及び「実質的に」という用語は、依然として所望の機能を果たすか、又は所望の結果を達成する、述べられた量に近い量を表す。例えば、「およそ」、「約」、及び「実質的に」という用語は、述べられた量の10%未満内、5%未満内、1%未満内、0.1%未満内、及び0.01%未満内である量を指し得る。
【0015】
本明細書で使用される「プラスチック由来油」、「液体合成原油」、又は「合成原油」、「熱分解油」、液体熱分解生成物流」などの用語は、固体プラスチック廃棄物(SPW)の熱及び/又は化学変換(例えば、熱分解、水素化熱分解、水熱液化(HTL)、水素化分解など)から誘導される、液相混合物を示すことが意図される。本明細書で使用される「収着剤」及び「収着剤材料」という用語は、限定されないが、ハロゲン、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)、及びそれらの組み合わせなどの種を吸収し、吸着し、かつ/又は種と反応する、多機能性固体材料を示すことが意図される。本明細書で使用される「脱ケイ酸」、「脱ケイ酸化する」などの用語は、ケイ素含有種の除去のためのプロセスを示すことが意図される。
【0016】
SPWは、熱分解又は他の熱的若しくは化学的な一次変換工程、続いてその後の処理工程を介して、オレフィン及び炭化水素燃料を含む高価値な化学物質へと変換され得る。廃棄物プラスチックの一次変換は、主に、広い沸点範囲(例えば、およそ摂氏20度(℃)~750℃)を有する液体生成物流、並びにガス生成物流、及び多くの場合、固体生成物流をもたらす。液体生成物流又はプラスチック由来油は、広い沸点範囲にわたる炭化水素(例えば、ナフサ、ディーゼル、軽油、及びハイドロワックス)を含み得、これは、更に個々の留分へと蒸留され得るか、又は蒸気分解装置、又は水素化分解装置、又は流動接触分解装置(fluid catalytic cracker、FCC)で直接処理されて、高価値な化学物質及び他の炭化水素が生成され得る。例えば、プラスチック由来油は、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレンを生成するために使用され得、これらは、新しいプラスチックのための構築ブロックとして使用することができるモノマーである。しかしながら、プラスチック由来油はまた、プラスチックケミカルリサイクルプロセスの効果及び効率に影響を及ぼす不純物を含有する。例えば、プラスチック由来油は、ハロゲン、金属、及び他の非炭素質分子などの構成成分を含有しており、これらの構成成分は、機器の目詰まり及び腐食を引き起こし得、かつ/又はプロセス全体を通じて使用される触媒を無効にし得る。特に、プラスチック由来油は、SPW中のポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)に由来する塩化物を含有し得る。ある特定の環境では、これらの塩化物は、限定されないが、(水の存在下での)塩化物応力腐食などのメカニズムを通じて、又は塩酸(HCl)の形成を通じて、下流の機器に対して腐食性であり得る。したがって、高レベルの塩化物を含有するプラスチック由来油を処理することは、より高価な合金に変更するための反応器冶金、又はより高価ではない合金機器のより頻繁な閉鎖及び交換を必要とし得、それによって、SPWをケミカルリサイクルする全体的なコストを増加させる。下流の機器のより頻繁な改装又は変更の必要性を回避しながら、プラスチック由来油を処理する際の機器の目詰まり及び腐食を軽減するためには、プラスチック由来油中に存在してもよい塩化物及び他の腐食性構成成分の量には制限が課される。例えば、下流の機器冶金の早期腐食を回避するためには、ケミカルリサイクルプロセスで使用される分解機器に入る供給物の総塩化物は、0.005グラム(gram、g)/リットル(liter、L)(5百万分率(ppm))未満に制限され得る。SPWに由来するプラスチック由来油は、概して、0.005g/L(5ppm)超、ある特定の場合には、最大8g/L(8000ppm)の総塩化物を含有する。塩化物に加えて、プラスチック由来油は、処理中にフッ化水素酸(hydrofluoric acid、HF)又は臭化水素酸(hydrobromic acid、HBr)へと変換され得る他のハロゲン(例えば、フッ素(F)及び臭素(Br))を含有し得、これらは非常に腐食性である。アルカリ金属(例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)など)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)など)、非限定的な例として、電子機器産業の構成要素に由来する多様な遷移金属若しくは貧金属、又は添加剤(例えば、セレニウム(Se)、タリウム(Tl)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、鉛(Pb)など)、窒素(N)、硫黄(S)、酸素(O)、又はリン(P)などの他の非金属、及びケイ素(Si)及びヒ素(As)などの半金属などの他の汚染物質は、プラスチックケミカルリサイクルプロセスで使用される触媒を失活/目詰まりさせ得、かつ/又は望ましくない反応及び副生成物を生じ得、下流の機器を目詰まりさせることに加えて、プロセスの効率及び収率を減少させる。したがって、蒸気分解装置を含む下流のプラスチックケミカルリサイクル機器で処理する前に、プラスチック由来油中に存在する望ましくない汚染物質の量を除去するか、又は減少させることが有利であり得る。
【0017】
プラスチック由来油流から汚染物質を除去するためのある特定の既存の技術は、プラスチック由来油から汚染物質を抽出及び除去する溶剤を使用することを含む。しかしながら、米国特許出願公開第2018/0355256号に開示されているものなどの溶剤抽出技術は、除去される汚染物質(例えば、塩化物)の割合と、元の供給原料(例えば、プラスチック由来油)のうちのどれだけが最終生成物として回収されるかとの間にトレードオフを有する。すなわち、この溶剤抽出技術は、汚染物質(例えば、塩化物)の一部分しか除去しない。したがって、他の汚染物質が、プラスチック由来油中に依然として残留し得、下流プロセスに影響を及ぼし得る(例えば、触媒を失活させ、望ましくない副反応を生じ得る)。更に、溶剤抽出は、塩化物を除去するが、プラスチック由来油中の炭化水素の一部分も、溶剤によって抽出される。その結果、リサイクルプロセスを受けるプラスチック由来油の量が少なくなり、リサイクルプロセスの全体的な収率が減少する。したがって、溶剤抽出技術は、鍵となる汚染物質の大部分を除去せず、炭化水素収率の低減を生じるので、この技術は、SPWのケミカルリサイクルに対する増加している要求を満たすには望ましくない。
【0018】
プラスチック由来油中の汚染物質のレベルを減少させるための別の技術は、プラスチック由来油の一部分を、従来の未使用の原油精製を源とするナフサ又はハイドロワックスとブレンドすることである。この混合物は、分解装置ユニットで同時処理されて、新しい化学物質を形成するために使用されるより小さい分子を生成する。混合物中のプラスチック由来油の量は、混合物中の汚染レベルが、分解装置ユニットの汚染レベル要件内であるような量である。しかしながら、この技術は、分解装置に対する汚染レベル要件を達成するが、この技術は、単にプラスチック由来油をナフサ/ハイドロワックスで希釈するだけである。したがって、少量のみのプラスチック由来油が、所与の時間に分解装置ユニットにおいて処理され得る。しかしながら、プラスチックリサイクルに対する要求が増加するにつれて、ナフサ/ハイドロワックスと混合され得るプラスチック由来油の量が分解装置ユニットの汚染レベル要件に基づいて制限されるので、この技術は非効率的である。他の技術は、汚染物質を除去することなく、プラスチック由来油を水素化精製装置に直接供給することを含む。この技術は、プラスチック由来油中のある特定の汚染物質(例えば、硫黄(S)、窒素(N)、及び酸素(O))を除去するのに好適であるが、水素化精製装置で使用される触媒は、プラスチック由来油中に存在するケイ素(Si)及びリン(P)などの他の汚染物質の存在下で容易に失活する。したがって、触媒は、頻繁に交換され、それによって、この技術の全体的な効率が減少する。加えて、塩化物の存在は、水素化処理ユニット冶金の早期劣化を生じ得る。
【0019】
他の技術は、水素化精製装置の上流又は下流にアミンを注入して、無機塩化物構成成分を、下流の水洗工程を通じて除去することができる塩化アンモニウム塩へと変換することを含む。この技術は、システムに複雑さを導入するだけでなく、プラスチック由来油中に見出される総塩化物のうちの比較的小さい割合(例えば、およそ10%未満)を占める無機塩化物にのみ効果的に対処している。更に、水素化精製装置の下流で注入される場合、プラスチック由来油中のClの存在に起因して、プロセスの初期に形成される遊離HClが、アミンによって変換及び除去される前に機器内に依然として存在するので、水素化精製機器の腐食を軽減しない。したがって、汚染レベルが、プラスチックのケミカルリサイクルで使用される機器に対する汚染レベル要件以下であるように、プラスチック由来油中に存在する様々な汚染物質又は汚染物質のクラスを、理想的には同時に、除去するか又は減少させ、触媒の失活を軽減するための、より効率的な技術を開発する必要性が存在する。
【0020】
したがって、本明細書に開示されるのは、液体プラスチック由来油からハロゲンなどの汚染物質を除去する1つ以上の収着剤を有する1つ以上の反応器を含む、前処理システムである。開示の前処理システムを使用することによって、合成原油中の総塩化物は、下流の水素化処理ユニット又はプラスチックのケミカルリサイクルに使用される他の機器の塩化物汚染レベル制限以下であるレベルまで低減される。驚くべきことに、塩化物を除去することに加えて、前処理システムで使用される開示の収着剤は、液体プラスチック由来油から他のハロゲン汚染物質(例えば、F及びBr)も除去する。炭化水素流(例えば、ナフサ、アルキレート、ラフィネートなど)から塩化物を除去するために収着剤が使用されているが、除去される塩化物は、気相流中の低分子量有機塩化物(例えば、<C)又は塩酸(HCl)の形態の無機塩化物である。対照的に、本明細書に開示の前処理システム及び収着剤は、高い最終沸点(final boiling point、FBP)(例えば、およそ摂氏20度(℃)~750℃の沸点範囲温度)を有し、およそ5ppm~およそ8000ppmである総塩化物濃度を有する複合多構成成分炭化水素プラスチック由来油から、塩化物及び他の汚染物質を効率的かつ効果的に除去する。更に、開示の前処理システムは、任意選択的に、水素を含まない環境において、低温及び穏やかな圧力で液体プラスチック由来油を除染する。例えば、前処理システムは、水素の非存在下のおよそ125℃~およそ300℃の低温及び17barg未満の圧力で動作することができる。好ましい実施形態では、前処理システムの温度は、およそ150℃以上である。水素の存在下で300℃を超える温度及びはるかに高い圧力(例えば、>17barg)を使用するある特定の既存の技術とは異なり、開示のシステム及びプロセスは、水素の非存在下の300℃以下又は250℃以下の温度及び17barg未満の圧力で、プラスチック由来油から汚染物質を効率的かつ効果的に除去し、より低い炭素強度(すなわち、カーボンフットプリント)を有するより単純なシステムを生じる。更に、SPWのケミカルリサイクルで使用される変換ユニットの上流で液体合成原油から腐食性汚染物質を除去することによって、変換ユニットを製造するために使用される材料をアップグレードする必要がなく、それによって、SPWをケミカルリサイクルする全体的なコストを減少させることができる。開示の前処理システムはまた、水素化精製装置、水素化分解装置、又はその両方と組み合わせて使用して、残留する微量レベルのハロゲン、及び追加の汚染物質(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、並びに他の金属及び非金属)を除去し、それによって、プラスチック廃棄物のケミカルリサイクルプロセスの堅牢性を改善することができる。
【0021】
前述のことを念頭に置いて、図1は、一次変換工程16、二次変換工程18、化学物質生成工程20、及び生成物再製造工程24を含む、固体プラスチック廃棄物SPW12のケミカルリサイクルのためのプロセス10のブロック図である。SPW12は、とりわけ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ナイロン、テフロン、ポリエステル、ポリスチレン、及びそれらの組み合わせなどの様々なポリマーから作製されたポストコンシューマ製品を含む。示される実施形態では、SPW12は、SPW12中の固体ポリマーをより短い鎖分子/ポリマー(例えば、オリゴマー)へと変換する一次変換工程16において処理を受け、それによって、液体プラスチック由来油(例えば、熱分解油)が生成される。例えば、一次変換工程16は、SPW12のマクロ構造を解重合又は分解し、軽質ガス(例えば、メタン(CH)、エタン(CHCH)、HS、HO(例えば、水蒸気)など)及び固体残留物とともにプラスチック由来油を生成するための、熱分解、水素化熱分解、水熱液化(HTL)、又は水素化分解プロセスを介して、SPW12を熱的に分解する1つ以上の反応器を含み得る。
【0022】
プラスチック由来油は、ハロゲン(例えば、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br))、アルカリ金属(例えば、リチウム(Li)、カリウム(K)、ナトリウム(Na))、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg))、遷移金属(例えば、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni))、半金属(ヒ素(As)及びケイ素(Si)など)、及び非金属(例えば、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)、及び酸素(O))などの望ましくない構成成分を含み得る。これらの構成成分は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、難燃剤、染料、及びある特定のプラスチックで使用される添加剤から生じ、これらは、一次変換工程16後にプラスチック由来油中に残留する。プラスチック由来油中のこれらの構成成分の存在は、機器冶金の腐食若しくは目詰まり、及び/又は化学物質生成工程20などの下流プロセスで使用される触媒の失活を引き起こし得る。例えば、プラスチック由来油は、少なくとも0.005g/L(5ppm)かつ最大8g/L(8000ppm)の総塩化物を含有し得る。これらの塩化物レベルは、塩酸(HCl)の形成を生じ得る。HClは、ある特定の機器に対して腐食性であり、その場合、機器の交換を必要とし得る。機器は、ある特定のレベルの塩化物を許容することができるが、0.005g/L(5ppm)を上回る塩化物レベルは、関連する動作レジームにおいて、機器の塩化物制限を超える。(例えば、温度、圧力、水素の存在など)。上に論じられるように、一次変換工程16において生成されるプラスチック由来油は、0.005g/L(5ppm)を超えて有し得る。したがって、機器冶金の目詰まりを軽減するためには、塩化物のレベルを0.005g/L(5ppm)未満まで除去及び/又は減少させることが望ましい。
【0023】
加えて、SPW12のケミカルリサイクルプロセスは、多くの場合、プラスチック由来油中の長鎖炭化水素(例えば、>C11であるケロシン、ディーゼル、ハイドロワックス)の分解、及び長鎖炭化水素と比較してより小さい分子(例えば、ナフサ範囲、又は典型的にはC-C11)の形成を促進する、様々な触媒の使用を含む。これらの触媒は、プラスチック由来油中の金属、非金属、及び非炭素分子に感受性であり得る。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、非金属(例えば、Na、K、Si、Pなど)、及び非炭素原子(例えば、S、N、O)は、経時的に触媒を失活させ得る。したがって、触媒を頻繁に交換する必要があり、それによって、効率が減少し、全体的なプロセスのコストを増加させ得る。したがって、これらのプロセスで使用される触媒の失活を軽減するためには、また、二次変換工程18においてこれらの構成成分を除去することが望ましい。
【0024】
本明細書に開示の二次変換工程18は、前処理システムを含み、ある特定の実施形態では、プラスチック由来油中に存在するCl、F、Br、K、Na、P、As、Hg、Pb、及びSi、並びに他の非炭素原子(例えば、N、S、O)などの汚染物質を除去するか又は減少させて、プラスチック由来油中の汚染物質の量未満である汚染物質の量を有する処理された供給物を生成する、水素化処理システムを含む。処理された供給物中の汚染物質の量は、プラスチック由来油中の汚染物質の量よりもおよそ40%~100%少ない場合がある。二次変換工程18においてプラスチック由来油から汚染物質の実質的な部分を除去することによって、生じた処理された供給物中の汚染レベルは、化学物質生成工程20における処理に好適である。以下で更に詳細に論じられるように、本開示の二次変換工程18は、液体プラスチック由来油中の汚染物質を効果的かつ効率的に除去するために、1つ以上の収着剤、水素化処理、又はその両方を使用する。例えば、二次変換工程18は、1つ以上の反応器(固定床、移動床、沸騰床、スラリー反応器など)を有する反応器システムを含み得、各々が、存在する場合には水素化処理、又はFCC、又は化学物質生成工程20における蒸気分解の前に、プラスチック由来油を主に脱ハロゲン化する(例えば、ハロゲンを除去する)だけでなく、潜在的に脱ケイ酸化する(例えば、ケイ素含有種を除去する)かつ/又は脱金属化する(例えば、金属を除去する)などの、1つ以上の収着剤材料を有する。ある特定の実施形態では、反応器は、収着剤材料の1つ以上の床を有し得る。他の実施形態では、反応器は、収着剤材料が固定されておらず、反応器内で動き回る、沸騰床である。反応器システムは、およそ300℃未満、例えば、およそ100℃~およそ300℃、好ましくはおよそ125℃~およそ250℃の温度で動作する。反応器システム内の圧力は、およそ0barg~およそ17bargである。収着剤材料は、ゼオライト分子ふるい、非ゼオライト分子ふるい、支持金属、固体支持アルカリ若しくはアルカリ土類金属、及び/又はそれらの酸化物、粘土、並びにそれらの組み合わせなどの、ハロゲンを除去するための任意の好適な収着剤であり得る。一実施形態では、前処理工程は、反応器システムへの苛性構成成分の添加を含み得る。他の実施形態では、窒素含有構成成分及び/又は硫黄含有構成成分は、反応器システムに添加される苛性構成成分の代わりに又はそれに加えて、反応器システムの上流又は下流で添加され得る。
【0025】
二次変換工程18が水素化処理システムを含む実施形態では、処理されたプラスチック由来油は、化学物質生成工程20の前に水素化処理システムに供給される。水素化処理システムは、水素化精製触媒及び水素の存在下で処理されたプラスチック由来油から微量の残留ハロゲン、N、S、Oなどの追加の構成成分、他の金属、及び非金属を除去して、水素化精製された生成物(HT生成物)又は更に処理された供給物を生成する。ある特定の実施形態では、水素化処理システムは、処理されたプラスチック由来油中に存在するオレフィン及び芳香族を飽和させることができる。以下で更に詳細に論じられるように、水素化処理システムは、水素化精製装置を含む。水素化精製装置は、水素化精製触媒及び水素の存在下で処理されたプラスチック由来油を脱酸素、脱窒、及び脱硫して、水素化精製された合成原油を生成する、1つ以上の反応器を含み得る。水素化精製装置はまた、ケイ素及びリンなどの金属及び非金属の除去を容易にするために1つ以上の反応器又は保護床を使用する、脱金属化工程を含み得る。任意選択的に、一実施形態では、水素化精製装置はまた、オレフィンを飽和させるための選択的水素化ユニットを含み得る。ある特定の実施形態では、水素化精製装置はまた、脱塩素のための収着剤を含み得る。例えば、一実施形態では、前処理システムは、省略される。したがって、水素化精製装置は、プラスチック由来油からハロゲンを除去するための収着剤を含む。別の実施形態では、前処理システムの収着剤材料に加えて、水素化精製装置も、収着剤材料を含み得る。水素化精製装置の収着剤材料は、前処理システムの収着剤材料と同じであっても異なっていてもよい。理解されるであろうように、水素化精製装置は、水素化精製触媒を単独で、又は収着剤材料と組み合わせて含む。非限定的な例として、水素化精製触媒としては、アルミナ又は他の従来のグレーディング材料、アルミナ上に支持されたコバルト/モリブデン(cobalt/molybdenum、CoMo)又はニッケル/モリブデン(nickel/molybdenum、NiMo)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、任意の他の好適な水素化精製触媒が使用される場合がある。
【0026】
水素化精製反応器は、固定床、沸騰床、流動床、移動床、バブリング床、又は任意の他の好適な反応器、及びそれらの組み合わせであり得る。水素化精製装置内の反応器は、およそ125℃~およそ500℃の温度及びおよそ50barg~およそ100bargの圧力で動作することができる。
【0027】
ある特定の実施形態では、水素化処理システムは、水素化分解装置を含む。水素化分解装置は、水素化分解触媒及び水素の存在下で水素化精製されたプラスチック由来油を更に脱酸素、脱窒、及び脱硫し、また炭化水素を分解して水素化精製されたプラスチック由来油の沸点を低減する、1つ以上の反応器を含む。非限定的な例として、水素化分解触媒としては、アルミナ上に支持されたNiMo又はニッケル/タングステン(nickel/tungsten、NiW)、Yゼオライト、非晶質ケイ酸アルミナ、又は任意の他の好適な水素化分解触媒、及びそれらの組み合わせが挙げられる。反応器は、固定床、沸騰床、流動床、移動床、又はバブリング床であり得、およそ300℃及びおよそ500℃の温度並びにおよそ50barg~およそ150bargの圧力で動作する。ある特定の実施形態では、水素化分解装置は、水素化精製装置の温度及び圧力と実質的に等しい温度及び圧力で動作する。ある特定の実施形態では、水素化分解及び水素化精製動作は、同じ反応器内で行われ得る。
【0028】
二次変換工程18に続いて、下流処理に好適な汚染レベルを有する処理された供給物は、化学物質生成工程20で処理された供給物中のポリマー断片/オリゴマーを更に断片化して軽質オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレン)を生成する変換ユニットに供給される。処理された供給物は、変換ユニットに独立して、又は他の好適な炭化水素供給物と組み合わせて(例えば、同時処理)供給され得る。変換ユニットは、蒸気分解装置、流動接触分解装置(FCC)、水素化分解装置、又は処理された供給物(例えば、処理されたプラスチック由来油)中の炭化水素を、最終沸点(FBP)が低減された様々な分子へと断片化する任意の他の好適な変換ユニットであり得る。処理された供給物は、1つ以上の熱交換器、炉、ボイラ、及びそれらの組み合わせを使用して、予熱され、その後分解され得る。予熱に続いて、処理された供給物は、熱的分解条件下で動作する分解ユニットの分解ゾーンに送られて、軽質オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン)及び他のあまり望ましくない副生成物(水素、変換されていない油、ナフサなど)が生成され得る。分解ゾーンは、1つ以上の炉を含み、各々が特定の供給物又は処理された供給物の留分に専用である。分解ゾーンにおける分解は、高温で、好ましくはおよそ650℃~1000℃の温度範囲で、酸素の非存在下で実施される。ある特定の実施形態では、炭化水素分圧を低減し、それによって、軽質オレフィン収率を向上させるための希釈剤として、蒸気が分解ゾーンに添加される。加えて、蒸気はまた、分解ゾーンでの炭素質材料又はコークスの形成及び堆積を低減する。分解装置流出物は、処理された供給物を分解することから得られ、芳香族、軽重量オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン)、水素、水、二酸化炭素(CO)、及び他の炭化水素化合物を含む。分解装置流出物は、生成物製造工程24において新しい化学物質及び生成物を作製するために使用することができる、異なる沸点を有する留分へと分離される。これらの新しいコンシューマ物品が使用され、SPW12(例えば、ポストコンシューマ物品)として廃棄されると、SPW12は、再びリサイクルされ、一次変換工程16で処理を受ける。
【0029】
変換ユニット(例えば、分解装置)における処理された供給物の汚染レベルは、変換ユニットの汚染レベル制限以下であるので、機器冶金の目詰まり、及び化学物質生成工程20で使用される触媒の失活が、軽減される。更に、プラスチック由来油の一部分を希釈又は抽出して汚染レベルを低減するある特定の既存の技術と比較して、化学物質生成工程20において処理することができるプラスチック由来油の量を増加させることができる。したがって、本明細書に開示の前処理プロセスは、SPWリサイクル技術と組み合わせて、SPW12のケミカルリサイクルに対する増大する市場要求を堅牢かつ効率的な様式で満たすことができる。
【0030】
上に論じられるように、一次変換工程16で生成されたプラスチック由来油は、下流の機器冶金における腐食及び触媒の失活を引き起こし得る汚染物質を含む。しかしながら、本明細書に開示の二次変換工程18においてプラスチック由来油を前処理して、化学物質生成工程20に供給されるプラスチック由来油中の汚染物質の量を除去するか又は減少させることは、機器冶金の腐食及び目詰まり、並びに触媒の失活を軽減する。したがって、変換ユニットにおいて処理されるプラスチック由来油の量を増加させることができ、SPWをケミカルリサイクルするための要求を、堅牢かつ効率的な様式で満たすことができる。図2は、本開示の実施形態による、SPW12のリサイクルのための二次変換工程で使用され得るシステム30のブロック図である。システム30は、SPW管理プラント又は精製若しくは化学物質生成プラントの一部であり得る。すなわち、システム30は、新しい若しくは既存のSPW管理プラント、及び/又は化学物質生成プラント、及び/又は精製所複合施設に統合することができる。他の実施形態では、システム30は、SPW管理プラント、及び/又は化学物質生成プラント、及び/又は精製所複合施設から分離した、独立型の位置に存在することができる。システム30は、前処理セクション32、水素化処理セクション36、及び分離セクション38を含む。前処理セクション32は、プラスチック由来油46中に存在する望ましくない構成成分(例えば、汚染物質)の少なくとも一部分を除去する、前処理システム40を含む。例えば、プラスチック由来油46は、一次変換工程(例えば、一次変換工程16)において、熱分解、水素化熱分解、水熱液化、又は水素化分解を受けたSPW(例えば、SPW12)から生成される液体流である。したがって、プラスチック由来油46は、ポリマー断片/オリゴマー(例えば、解重合されたポリマー)と、SPW中に存在する、限定されないが、Cl、Br、F、K、Na、Si、及びPなどの汚染物質との混合物である。プラスチック由来油46はまた、アルカリ金属(例えば、Li)、アルカリ土類金属(例えば、Ca及びMg)、遷移金属(例えば、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni))、並びに硫黄(S)、窒素(N)、及び酸素(O)などの非金属などの他の汚染物質を含み得る。上に論じられるように、これらの汚染物質は、機器冶金の腐食及び/又は下流プロセス(例えば、水素化処理及び分解)で使用される触媒の失活を引き起こし得る。前処理システム40は、プラスチック由来油46からの1つ以上の汚染物質を吸着/吸収するか、又はそれらと反応して、処理された供給物48を生成する1つ以上の収着剤材料を有する、1つ以上の反応器システムを含む。
【0031】
示される実施形態では、プラスチック由来油46は、予熱システム50で加熱され、それによって、前処理システム40に供給される加熱された供給物54が生成される。予熱システム50は、プラスチック由来油46を周囲温度からおよそ125℃~およそ300℃の温度まで加熱する、1つ以上の加熱デバイスを含む。ある特定の実施形態では、予熱システム50の温度は、およそ150℃以上である。非限定的な例として、加熱デバイスは、蒸気熱交換器などの熱交換器、ボイラなど、及びそれらの組み合わせを含む。示される実施形態では、予熱システム50は、前処理システム40から分離されているが、予熱システム50は、前処理システム40に統合されてもよい。他の実施形態では、システム30は、予熱システム50を含まなくてもよい。
【0032】
前処理システム40にある間、加熱された供給物54は、加熱された供給物54を除染(例えば、脱ハロゲン化、及び/又は脱金属化、及び/又は脱ケイ酸化など)する1つ以上の反応器を通って流れて、処理された供給物48が生成される。本実施形態は、固定床反応器の文脈で論じられているが、反応器は、連続撹拌槽反応器(continuous stirred-tank reactor、CSTR)、スラリー槽反応器、沸騰床反応器、移動床反応器、流動床反応器、及びそれらの組み合わせであってもよいことが理解されるべきである。図3図5を参照して以下で更に詳細に論じられるように、反応器は、直列、並列、リード/ラグ、又は加熱された供給物54を所望の仕様に効果的かつ効率的に除染する任意の他の好適な配置で配置することができる。前処理システム40の1つ以上の反応器の各反応器は、プラスチック由来油46などの液相流体から、ハロゲン(例えば、塩素(Cl)、フッ素(Fl)、臭素(Br))、並びにNa、Kなどの潜在的に一価金属、二価金属(例えば、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、亜鉛(Zn2+)、三価金属(例えば、Fe3+)、並びにケイ素(Si)、リン(P)、窒素(N)、硫黄(S)、及び酸素(O)などの非金属を選択的に除去する、1つ以上の収着剤材料(例えば、吸着剤/吸収剤)を含む。収着剤材料としては、限定されないが、ゼオライト分子ふるい、非ゼオライト分子ふるい、支持金属、粘土、及び固体支持アルカリ又はアルカリ土類金属が挙げられる。非限定的な例として、収着剤材料としては、X及びYなどのフォージャサイト(FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるい、限定されないがMOR結晶骨格型ゼオライト分子ふるいなどの他の大細孔ゼオライト分子ふるい(12員環チャネル(12 member ring、12MR)を含有するゼオライトとして定義される)、限定されないがMFI結晶骨格型ゼオライト分子ふるい、又はより具体的にはZSM-5若しくはFER結晶骨格型ゼオライト分子ふるいなどの中細孔ゼオライト分子ふるい(10員環チャネル(10 member ring、10MR)を含有するゼオライトとして定義される)、金属ドープゼオライト分子ふるい、非ゼオライト分子ふるい、シリカゲル、アルミナ、アルミン酸ナトリウム(NaAlO)若しくはアンモニウム(NH )含有材料、酸化アルミニウム(Al)上の酸化ナトリウム(NaO)、酸化アルミニウム(Al)上の炭酸ナトリウム(NaCO)、酸化アルミニウム(Al)上の炭酸ナトリウム(NaCO)若しくは酸化ナトリウム(NaO)プラス酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)上の酸化カルシウム(CaO)プラス酸化亜鉛(ZnO)、並びに酸化ニッケル(NiO)/Alなどの支持金属、酸化銅(CuO)/炭酸銅(CuCO)/Al、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。理論に束縛されるものではないが、収着剤材料の処理性能は、部分的に、結晶含有量の増加、結晶サイズの低減、及び/又は粒径の低減に起因して、正の影響を受けると考えられる。
【0033】
ある特定の実施形態では、加熱された供給物54は、およそ0.150g/L(150ppm)以上の塩化物を有し得る。加熱された供給物54中のこのレベルの塩化物は、下流の機器の腐食を生じ得る。しかしながら、下流の機器(例えば、水素化処理及び変換反応器、容器、交換器など)の腐食を軽減するためには、加熱された供給物54中の塩化物の量は、下流の機器に入る前におよそ0.005g/L(5ppm)以下まで低減されるべきである。処理された供給物48中の塩化物レベルが、プラスチック由来油46中の塩化物レベルと比較して、およそ40%~およそ100%だけ低減されるように、本明細書に開示の前処理システム40は、加熱された供給物54を脱塩素する。したがって、処理された供給物48は、下流の機器冶金の腐食を引き起こさない。例えば、一実施形態では、プラスチック由来油46中の総塩化物レベルは、およそ0.170g/L(170ppm)からおよそ0.005g/L(5ppm)未満に低減された。したがって、本開示の前処理システム40を使用して処理されない供給物流と比較して、塩化物が下流の機器を腐食させるリスクを低減することができる。更に、化学物質生成工程(例えば、変換)の前にプラスチック由来油46中の塩化物レベルを低減することによって、処理された供給物48を変換ユニット内で化石由来ナフサ又はハイドロワックスと同時処理することによって流れを希釈することは、もはや必要ではない。したがって、軽質オレフィンを形成するために変換ユニット内で処理され得る処理された供給物48の量は、生成されたナフサ又はハイドロワックスで希釈されなければならない未処理のプラスチック由来油と比較して、もはや制限されない(例えば、プラスチック由来供給物中の塩化物含有量、及び蒸気分解装置のサイズに応じて、これは、およそ5重量%の範囲にあり得る)。したがって、開示の前処理システム40は、既存の技術と比較して、SPWケミカルリサイクルの全体的な効率を増加させる。
【0034】
注目すべきことに、汚染物質を除去するために使用される収着剤材料の数、タイプ、及び量は、プラスチック由来油46中の初期の汚染レベル、汚染物質のタイプ、及び汚染物質の種、収着剤材料の望ましい交換頻度、処理された供給物48の目的汚染レベル、並びに前処理システム40の反応器のサイズ及び形状に依存し得る。
【0035】
前処理システム40の1つ以上の反応器は、およそ100℃~およそ300℃の温度範囲、及びおよそ0barg~およそ17bargの圧力で動作することができる。具体的には、前処理システム40は、およそ100℃~およそ300℃、好ましくはおよそ125℃~およそ250℃、より好ましくはおよそ150℃~およそ225℃の温度で動作する。反応器は、加熱された供給物54、並びに限定されないが、反応器圧力を維持し、かつ/又は脱塩素を助け、かつ/又は収着剤材料を洗浄及び/若しくは再生成する水、苛性物、ナフサ、未変換油、トルエンなどの他の流体を受け入れるための入口と、処理された供給物、使用済み流体(例えば、収着剤洗浄流体又は再生成流体)、及び前処理システム40で生成された他の流体を排出するための出口と、を含む。したがって、反応器は、窒素ガス(N)、水素ガス(H)、二酸化炭素(CO)、天然ガス、又は他の好適なガス、及びそれらの組み合わせの流れを受け入れて、反応器内の望ましい温度及び/又は圧力を維持することができる。以下で更に詳細に論じられるように、反応器はまた、乾燥流体(例えば、蒸気、空気、CO、N、又は他の好適な流体、及びそれらの組み合わせ)を受け入れて、収着剤材料を洗浄するか、又は収着剤材料を再生成するために調製することができる。一実施形態では、前処理システム40への供給物(例えば、加熱された供給物54)及び/又は処理された供給物48は、存在する場合は塩、及び残留無機塩化物を除去するために、水洗システムを通る経路で送られ得る。ある特定の実施形態では、前処理システム40は、1つ以上の反応器の上流又は下流に水洗又は苛性洗浄システムを含む。前処理システム40はまた、ある特定の実施形態では、1つ以上の床又は反応器の上流又は下流に蒸留ユニットを含み得る。
【0036】
除染に続いて、処理された供給物48は、水素化処理セクション36に供給される。水素化処理セクション36は、水素化精製装置60及び水素化分解装置76を含み得る。水素化精製装置60及び水素化分解装置76は、単一の反応器又は別個の反応器内に存在し得る。処理された供給物48は、水素化精製装置60において、更なる脱ハロゲン化、及び/又は脱金属化、及び/又は脱ケイ酸化、脱酸素化、脱硫、脱窒、及び/又はオレフィン飽和を受ける。すなわち、水素化精製装置60において、残留ハロゲン、金属、並びにN、S、及びOなどの非炭素原子が除去されて、長鎖脂肪族炭化水素(例えば、パラフィン)を有する水素化精製された生成物64が生成される。S、N、及びOなどの汚染物質を除去することに加えて、水素化精製装置60は、アルカリ金属(例えば、Li、Na、及びK)、アルカリ土類金属(例えば、Mg及びCa)、遷移金属(例えば、V、Zn、Fe、及びNi)、残留ハロゲン(例えば、Cl、F、Br)、並びにP及びSiなどの他の非金属汚染物質、並びに部分飽和オレフィンも除去する。したがって、水素化精製装置60では、処理された供給物48は、およそ50barg~およそ150bargの圧力及びおよそ100℃~500℃の範囲の温度で、水素化精製触媒及び水素68の存在下の1つ以上の水素化精製反応器において水素化変換を受ける。示される実施形態では、水素68は、水素製造ユニット(hydrogen manufacturing unit、HMU)70によって提供される。非限定的な例として、HMU70は、蒸気メタン改質器又は任意の他の好適なHMU、又は電解槽であり得る。ある特定の実施形態では、水素68は、SPWリサイクルプロセスの副生成物であり得る。例えば、示される実施形態に示されるように、生成物回収システム86は、水素68を出力する。
【0037】
水素化精製装置60で使用される水素化精製触媒系は、開示の水素化変換プロセスの温度範囲で所望の活性を有する、任意の好適な水素化精製触媒又は水素化精製触媒の組み合わせであり得る。例えば、水素化精製触媒は、金属酸化物上に支持されたNi、Co、Mo、又はWからなる群からの1つ以上の金属を有する硫化触媒から選択される。好適な金属の組み合わせとしては、硫化NiMo、硫化CoMo、硫化NiW、硫化CoW、並びにNi、Co、Mo、W、及び貴金属からなる任意の3つの金属を有する硫化三元金属系が挙げられる。硫化Mo、硫化Ni、及び硫化Wなどの触媒も、使用に好適である。硫化金属触媒の金属酸化物支持体としては、限定されないが、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、並びにシリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、及びセリア-ジルコニアなどの二元酸化物、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい支持体としては、アルミナ、シリカ、及びチタニアが挙げられる。支持体は、任意選択的に、使用済み水素化精製触媒の再生成及び再活性化された微粉(例えば、酸化物支持体上のCoMoの微粉、酸化物支持体上のNiMoの微粉、及び酸化物担体とゼオライトとの混合物上のNiWを含有する水素化分解触媒の微粉)を含有し得る。触媒上の総金属充填量は、およそ5重量%~およそ35重量%の範囲にある(酸化物形態の焼成触媒の重量パーセンテージ、例えば、アルミナ触媒上の焼成酸化NiMo触媒上のニッケル(NiOとして)及びモリブデン(MoOとして)の重量パーセンテージとして表される)。金属の分散を改善するために、リン(P)などの追加の元素が、触媒に組み込まれ得る。金属は、含浸若しくは共混練(co-mulling)、又は両方の技術の組み合わせによって、支持体上に導入され得る。
【0038】
水素化精製に続いて、水素化精製された生成物64は、水素化分解装置76、例えば、緩やかな水素化分解装置に供給される。水素化分解装置76は、水素化分解触媒及び水素68の存在下で水素化精製された生成物64中の炭化水素を分解(break down)して(すなわち、分解(crack)して)、酸素、窒素、硫黄、金属、及びハロゲン、並びにとりわけ、H、CO、及びCOなどのガスを実質的に含まない、より軽質の炭化水素(例えば、ナフサ範囲のC5-炭化水素)の部分が増加した水素化分解された生成物78を形成する。水素化分解装置76は、およそ50barg~およそ150bargの圧力及びおよそ275℃~500℃の範囲の温度で動作する。ある特定の実施形態では、水素化分解装置76内の温度及び圧力は、水素化精製装置60内と実質的に同じである。
【0039】
水素化分解反応器76で使用される水素化分解触媒としては、開示の水素化分解プロセスの温度範囲で所望の活性を有する、任意の好適な水素化分解触媒が挙げられる。例えば、水素化分解触媒は、金属酸化物上に支持されたNi、Co、Mo、又はWからなる群からの1つ以上の金属を有する硫化触媒から選択される。好適な金属の組み合わせとしては、硫化NiMo、硫化CoMo、硫化NiW、硫化CoW、並びにNi、Co、Mo、及びWからなるファミリーからの任意の3つの金属を有する硫化三元金属系が挙げられる。貴金属ゼオライト、硫化Mo、硫化Ni、及び硫化Wなどの触媒も使用に好適である。硫化金属触媒の金属酸化物支持体としては、限定されないが、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、並びに非晶質であるか、又はゼオライトベータ、X、若しくはY、シリカ-チタニア、及びセリア-ジルコニアなどの規定の構造を有するアルミナとシリカとの二元酸化物が挙げられる。好ましい支持体としては、アルミナ、シリカ、及びチタニアが挙げられる。支持体は、任意選択的に、使用済み水素化精製触媒の再生成及び再活性化された微粉(例えば、酸化物支持体上のCoMoの微粉、酸化物支持体上のNiMoの微粉、及び酸化物担体とゼオライトとの混合物上のNiWを含有する水素化分解触媒の微粉)を含有し得る。触媒上の総金属充填量は、およそ5重量%~およそ35重量%の範囲にある(酸化物形態の焼成触媒の重量パーセンテージ、例えば、アルミナ触媒上の焼成酸化NiMo触媒上のニッケル(NiOとして)及びモリブデン(MoOとして)の重量パーセンテージとして表される)。金属の分散を改善するために、リン(P)などの追加の元素が、触媒に組み込まれ得る。金属は、含浸若しくは共混練、又は両方の技術の組み合わせによって、支持体上に導入され得る。
【0040】
示される実施形態では、水素化分解された生成物78は、生成物回収セクション86に供給される。生成物回収セクション86では、液体炭化水素生成物は、蒸留を受けて、水素化分解された生成物78中に含有される炭化水素の沸点の範囲に従って、留分へと分離され得る。例えば、水素化分解された生成物78は、とりわけ、ナフサ範囲の炭化水素94、軽油96、及びハイドロワックス100を含む。ナフサ範囲の炭化水素94及び中間蒸留物範囲の炭化水素96は、例えば、化学物質生成工程20において、それぞれナフサ蒸気分解装置又は流動接触分解装置に供給され得、そこで、新しいコンシューマプラスチック物品の製造で使用される軽量オレフィンへと変換される。また、残りの留分(例えば、ハイドロワックス100)は、重油蒸気分解装置への供給物として化学物質生成工程(例えば、化学物質生成工程20)で、又は燃料及び他の化学物質などの商業的に実行可能な生成物を生成するための他のプロセスで使用することができる。ある特定の実施形態では、中間蒸留物範囲の炭化水素96及びハイドロワックス100は、水素化分解反応器76に再循環させて、追加のナフサ範囲の炭化水素94を生成することができる。任意選択的に、ある特定の実施形態では、ナフサ又はより重質の留分は、前処理装置又は水素化精製装置反応器に再循環され得る。生成物回収セクション86はまた、副生成物として軽質ガス82(例えば、H、C~C、NH、HS、HO(例えば、水蒸気)、CO、及びCO)を生成し得る。
【0041】
ある特定の実施形態では、水素化分解された生成物78は、単一又は複数の工程のいずれかで、水素化分解された生成物78中の炭化水素液体からガス(例えば、H、C~C、NH、HS、HO(例えば、水蒸気)、CO、及びCO)を分離及び除去する気液分離器において、分離プロセスを受ける。炭化水素液体からガスを分離及び除去し、それによって、1つ以上の液相生成物を生成するために、任意の好適な相分離技術が使用され得る。ある特定の実施形態では、ガスは、プロセスの副生成物として、存在する場合、HS、NH、及び微量の有機硫黄含有化合物を除去するガス浄化システムに供給され、それによって、CO、CO、H、及び軽質炭化水素ガスを有する炭化水素流が生成される。炭化水素流は、生成物回収セクション86に送られ得る。生成された水素68は、プロセスにおいて再使用され得る。例えば、水素68は、水素化精製装置60及び/又は水素化分解装置76に再循環され得る。
【0042】
ある特定の実施形態では、水素化精製装置60、水素化分解装置76、又はその両方は、システム30から省略されてもよい。例えば、前処理システム40の加熱された供給物54の処理に続いて、処理された供給物48は、変換ユニット98に供給されてもよい。例えば、変換ユニット98は、統合された水素化精製装置を有する流動接触分解装置(FCC)98であり得る。FCCは、水素化精製装置を含むので、水素化精製装置60で処理された供給物48を処理する必要がない場合がある。水素化精製装置60を含み、水素化分解装置78を含まない実施形態では、水素化精製された生成物64は、変換ユニット98に供給され得る。例えば、変換ユニット98は、水素化精製装置を含まない重油蒸気分解装置又はFCCであり得る。理解されるであろうように、プラスチック由来油46中の汚染物質が、前処理システム40で除去されると、生じる処理された供給物48は、様々な下流プロセスを施されて、これらの下流プロセスで使用される機器及び/又は触媒の腐食のリスクを伴わずに、多数の新しいプラスチック由来化学物質、燃料、及びコンシューマ製品を生成することができる。
【0043】
したがって、本明細書に開示の前処理システム40を使用して、水素化処理セクション36及び/又は化学物質生成プロセス(例えば、化学物質生成工程20)の上流でプラスチック由来油40中の汚染物質を除去することによって、ナフサ範囲の炭化水素94の全体的な品質は、開示の前処理システム40を含まない技術と比較して、改善され得る。更に、システム30におけるプラスチック由来油46の前処理中に塩化物、金属、非金属、硫黄、及び窒素などの汚染物質が除去されるので、下流の機器の腐食及び/又は触媒の失活を軽減することができる。この方式で、SPWのケミカルリサイクルに対する要求は、既存の技術と比較して、SPWのケミカルリサイクルの全体的なコストも減少させながら、堅牢かつ効率的な様式で達成され得る。
【0044】
システム30はまた、システム30の動作を管理するコントローラ102を含み得る。コントローラ102は、センサ、制御弁、ポンプ、及びシステム30全体を通じて他の流れ調整機構と電気的に通信することによって、システム30の動作を独立して制御することができる。コントローラ102は、完全に又は部分的に自動化された分散制御システム(distributed control system、DCS)又は任意のコンピュータベースのワークステーションを含み得る。例えば、コントローラ102は、汎用又は特定用途向けプロセッサ104を採用する任意のデバイスであり得、その両方が、システムパラメータ(例えば、前処理条件、水素化精製条件、水素化分解装置条件、収着剤再生成条件など)などの命令を記憶するためのメモリ回路106を含み得る。プロセッサ104は、1つ以上の処理デバイスを含み得、メモリ回路106は、本明細書に記載の動作を制御するためにプロセッサ104によって実行可能な命令を集合的に記憶する1つ以上の有形非一時的機械可読媒体を含み得る。
【0045】
一実施形態では、コントローラ102は、制御デバイス(例えば、弁、ポンプなど)を動作させて、異なるシステム構成要素間の量及び/又は流れを制御することができる。システム構成要素間の異なる量及び/又は流れを調整するために使用されるシステム30全体を通じて、弁が存在し得ることが留意されるべきである。例えば、コントローラ102はまた、システム30の異なる構成要素に供給されるプラスチック由来油46、加熱された供給物54、処理された供給物48、水素化精製された生成物64、水素化分解された生成物78、及び水素68の量を制御するか、又は流れを調整するために、弁の動作を管理することができる。ある特定の実施形態では、コントローラ102は、入力信号を介して提供される情報を使用して、機械可読記憶媒体又はコンピュータ可読記憶媒体(例えば、メモリ回路106)上に収容される命令又はコードを実行し、システム30全体を通じて流体(例えば、プラスチック由来油46、供給物48、50、生成物64、78、水素68、又は他の好適な流体)の流れを制御するための、様々な制御デバイス(例えば、弁、ポンプなど)への1つ以上の出力信号108を生成することができる。
【0046】
上に論じられるように、前処理システム40は、プラスチック由来油46中に存在し得るハロゲンなどの汚染物質を除去するために、加熱された供給物54を受け入れ、処理する1つ以上の反応器を含む。図3図5は、前処理システム40の反応器の様々な配置を示す。例えば、図3に示される実施形態では、前処理システム40は、第1の反応器列110及び第2の反応器列112を含む。図3図5に示される実施形態の考察を容易にするために、2つの反応器列110、112のみが示されている。しかしながら、前処理システム40は、任意の数の反応器列を有し得る。例えば、前処理システム40は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の反応器列110、112を有し得る。各反応器列110、112は、加熱された供給物54から汚染物質を除去する収着剤材料124を有する、1つ以上の反応器116、118、120を含む。示される実施形態は、3つの反応器116、118、120のみを示しているが、反応器列110、112は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の反応器などの任意の好適な数の反応器を有し得る。反応器列110、112の各々の反応器116、118、120の数は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、第1の反応器列110は、3つの反応器116、118、120を有し得、第2の反応器列112は、反応器116、118、120のうちの1つ又は2つを有し得、逆もまた同様である。示される実施形態では、反応器列110、112は、各々、同じ数の反応器116、118、120を有する。反応器116、118、120は、流動床反応器、沸騰床反応器、固定床反応器、バブリング床反応器、移動床反応器、又は任意の他の好適な反応器、及びそれらの組み合わせであり得る。例えば、一実施形態では、反応器116は、流動床反応器であり得、反応器118、120は、固定床反応器、又は反応器116とは異なる他の反応器であり得る。
【0047】
反応器116、118、120内の収着剤材料124は、ハロゲン(例えば、塩化物、臭素、フッ化物)、金属(例えば、一価、二価、三価金属)、及び非金属(例えば、Si、P、Nなど)を除去するのに好適な任意の収着剤材料であり得る。非限定的な例として、収着剤材料124は、X及びYなどのフォージャサイト(FAU)結晶骨格型ゼオライト分子ふるい、限定されないがMOR結晶骨格型ゼオライト分子ふるいなどの他の大細孔ゼオライト分子ふるい(12員環チャネル(12MR)を含有するゼオライトとして定義される)、限定されないがMFI結晶骨格型ゼオライト分子ふるい、又はより具体的にはZSM-5若しくはFER結晶骨格型ゼオライト分子ふるいなどの中細孔ゼオライト分子ふるい(10員環チャネル(10MR)を含有するゼオライトとして定義される)、ドープゼオライト分子ふるい、非ゼオライト分子ふるい、シリカゲル、粘度、アルミナ、アルミン酸ナトリウム若しくはアンモニウム(NH )含有材料、酸化アルミニウム(Al)上の酸化ナトリウム(NaO)、酸化アルミニウム(Al)上の炭酸ナトリウム(NaCO)、酸化アルミニウム(Al)上の炭酸ナトリウム(NaCO)若しくは酸化ナトリウム(NaO)プラス酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)上の酸化カルシウム(CaO)プラス酸化亜鉛(ZnO)、並びに酸化ニッケル(NiO)/Alなどの支持金属、酸化銅(CuO)/炭酸銅(CuCO)/Al、金属有機構造体(metal-organic framework、MOF)、並びにそれらの組み合わせであり得る。一実施形態では、収着剤材料124は、およそ1重量%~およそ50重量%の元素アルカリ金属(例えば、Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属、又は遷移金属の含有量を有し得る。収着剤材料124は、10未満のSi/Al比、好ましくは、5未満のSi/Al比を有し得る。収着剤材料124の分子ふるい平均結晶子サイズは、レーザ粒子サイジングによって決定して、およそ5ナノメートル(nanometer、nm)~100ミクロン(μm)であり得る。例えば、収着剤材料124の平均結晶子サイズは、およそ5nm~100μm、およそ50nm~50μm、又はおよそ100nm~25μmであり得る。ある特定の実施形態では、収着剤材料124は、t-プロット法決定しておよそ100m/g~およそ800m/gの表面積、好ましくは、t-プロット法決定しておよそ200m/g~およそ800m/gの表面積、又は最も好ましくは、t-プロット法決定しておよそ300m/g~およそ800m/gの表面積を有し得る。
【0048】
一実施形態では、収着剤材料124は、全ての反応器列110、112の各反応器116、118、120において同じである。ある特定の実施形態では、第1の反応器列110の反応器116a、118a、120aは、1つの収着剤材料124を有し、第2の反応器列112の反応器116b、118b、120bは、反応器116a、118a、120aのものとは異なる収着剤材料124を有する。他の実施形態では、反応器列110、112の反応器116、118、120の各々の収着剤材料124は、異なる。すなわち、反応器116a、116bの収着剤材料124は、反応器118a、118b、120a、120bの収着剤材料124とは異なり得る。
【0049】
反応器列110、112の反応器116、118、120は、プラスチック由来油(例えば、プラスチック由来油46)から汚染物質を効果的かつ効率的に除去する任意の好適な様式で配置され得る。例えば、反応器116、118、120は、並列、直列、リード/ラグなどで配置され得る。反応器配置は、前処理システム40の各反応器列110、112で同じであっても異なっていてもよい。例えば、図3では、反応器列110、112は各々、並列に配置された反応器116、118と、反応器116、112に対して直列に配置された反応器120と、を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、反応器116、118、120は、図4に示されるように直列に配置されてもよい。他の実施形態では、反応器116、118、120は、反応器列110、112の各々で異なる配置を有し得る。例えば、図5に示されるように、反応器列110の反応器116a、118a、120aは、直列に配置され、反応器列112の反応器116b、118b、120bは、並列と直列との組み合わせで配置される。
【0050】
前処理システム40は、処理された供給物48を生成するために、加熱された供給物54及び他の流体を前処理システム40全体に送る、様々な導管、流れ制御デバイス(例えば、弁、流れセンサ)を含む。例えば、動作中、前処理システム40は、加熱された供給物を反応器列110、112にそれぞれ供給する導管130、132を介して、加熱された供給物54を受け入れる。示される実施形態では、加熱された供給物54の流れは、制御弁134(例えば、三方弁)によって導管130、132の間で分割される。しかしながら、他の実施形態では、制御弁134は、第1の反応器列110、第2の反応器列112、又はその両方への加熱された供給物54の流れを遮断してもよい。例えば、前処理システム40の動作中、反応器列110、112への流れは、反応器列110、112のメンテナンス若しくは収着剤除染、又は反応器116、118、120のうちの1つにおける収着剤材料124の再生成に起因して、遮断され得る。したがって、前処理システム40は、完全なシステム40を停止することなく、メンテナンスを受けていない反応器列110、112の加熱された供給物54を処理し続けることができる。更に、ある特定の実施形態では、前処理プロセスを受ける加熱された供給物54の量は、複数の反応器列110、112が必要ではないような量である。したがって、制御弁134は、加熱された供給物54を前処理するために必要ではない反応器列110、112への加熱された供給物54の流れを遮断することができる。
【0051】
反応器列110、112に加熱された供給物54が供給されると、加熱された供給物54は、反応器116、118、120のうちの1つ以上に流入する。例えば、図3に示されるように、反応器116、118は、並列に配置される。したがって、加熱された供給物54は、反応器116、118に同時に流入することができる。しかしながら、他の実施形態では、反応器116、118、120は、図4に示されるように、直列に配置される。したがって、この実施形態では、加熱された供給物54は、1つの反応器(例えば、反応器116)に流入し、その反応器の出力物は、続く反応器(例えば、反応器118)に流入する。
【0052】
前処理システム40は、反応器116、118、120、及び/又は反応器列110、112の間の加熱された供給物54の流れを制御することができる、追加の弁を有し得る。例えば、図3に示される実施形態では、導管142、146を介して反応器116、118への加熱された供給物54の流れを制御するために、弁140が使用され得る。反応器116、118内にある間、加熱された供給物54は、収着剤材料124と接触し、加熱された供給物54から汚染物質の一部分が除去される。例えば、上に論じられるように、収着剤材料124は、加熱された供給物54から他のハロゲン(例えば、臭素及びフッ素)を脱塩素及び除去して、加熱された供給物54のハロゲン汚染レベル未満であるハロゲン汚染レベルを有する中間供給物150を生成する。中間供給物150は、反応器120に送られ、そこで供給物150は、収着剤材料124と接触して、任意の残留するハロゲン汚染物質を除去し、処理された供給物48を生成する。
【0053】
反応器列110、112は、システム40の動作中に反応器116、118、120をバイパスするために使用され得る、1つ以上のバイパス弁158を有し得る。例えば、反応器116のメンテナンス及び/又は再生成中に、バイパス弁158は、導管142内の加熱された供給物54の流れを遮断し、バイパスライン160を介して流れを反応器120に送る。同様に、中間供給物150は、反応器120をバイパスしてもよい(例えば、メンテナンス中、収着剤の再生成中、及び/又は反応器120が供給物の処理に必要ではない場合)。ある特定の実施形態では、中間供給物150は、バイパスライン162を介して、反応器列110、112の反応器116、118、120のうちのいずれか1つに供給され得る。
【0054】
図4に示されるように、反応器116、118、120が直列に配置される実施形態では、反応器列110、112は、追加のバイパスライン170、172を含み得る。バイパスライン172は、例えば、反応器118が、メンテナンス、修理、及び/又は収着剤再生成を受けているときに、反応器118をバイパスし、反応器116の出力物を反応器120に供給するために使用され得る。同様に、図5に示されるバイパスライン170は、反応器116がメンテナンス、修理、及び/又は収着剤再生を受けているときに、加熱された供給物54を反応器118に送るために使用され得る。この方式で、前処理システム40は、システム40及び/又は反応器列110、112を停止する必要を伴わずに、それぞれの反応器列110、112、及び反応器116、118、120内の加熱された供給物54を処理し続けることができる。理解されるであろうように、前処理システム40は、加熱された供給物54の処理及びシステム40の動作を容易にし、本開示の範囲から逸脱しない、流れ制御弁、導管、センサ、入口、出口、及び示されていない他の構造構成要素を有し得る。一実施形態では、加熱された供給物54及び/又は前処理反応器生成物(例えば、処理された生成物48又は中間生成物150)は、存在する場合には塩、及び残留無機塩化物を除去するために、水洗システムを通る経路で送られ得る。
【0055】
上に論じられるように、前処理システム40は、収着剤材料124を使用して、加熱された供給物54中に存在する汚染物質の少なくとも一部分を除去する。経時的に、収着剤材料124は、汚染物質及び他の構成成分(例えば、炭化水素及び/又は塩など)で飽和状態になる場合があり、加熱された供給物54から汚染物質を効果的に除去することができない場合がある。したがって、収着剤材料124は、それを再使用することができるように、吸着/吸収された汚染物質を収着剤材料124から取り除くか又は除去するために再生成され得る。例えば、図6に示されるように、システム30は、収着剤材料124を洗浄し、任意選択的に再生成するために使用され得る、洗浄システム180を含む。洗浄システム180は、炭化水素及び/又は汚染物質で飽和した収着剤材料124を有する反応器116、118、120に洗浄流体184(例えば、液体又はガス)を提供する。非限定的な例として、洗浄流体184は、炭化水素、水素、窒素、水、苛性物、塩洗浄液、又は任意の他の好適な流体、並びにそれらの組み合わせであり得、収着剤材料124から吸蔵した炭化水素を取り去るか、収着剤材料124から汚染物質を除去するか、又はその両方を行う。収着剤材料124から汚染物質を除去することによって、収着剤材料124は、再生成され、追加の汚染物質除去サイクルのために再使用され得る。これらの工程は、連続して又は並行して実施され得る。一実施形態では、第1の洗浄流体(例えば、ナフサ)184は、反応器116に供給されて、より重質の炭化水素(例えば、>C7)から収着剤材料124を除染し、任意選択的に、続いて1つ以上の追加の洗浄流体(例えば、H、窒素など)によって、より軽質の炭化水素(例えば、<C)が除染される。極性材料を除去するため及び/又は収着剤材料124の機能性を再生成するために、追加の洗浄流体(例えば、水、苛性物など)が反応器116に供給されてもよい。しかしながら、収着剤材料124上の構成成分が除去される順序は、異なっていてもよい(例えば、炭化水素、塩など)。
【0056】
洗浄及び/又は再生成サイクル中、弁140は、反応器116への加熱された供給物54の流れを遮断し、それによって、反応器116を前処理動作から隔離する。反応器116が隔離されると、反応器116に洗浄流体184が供給されて、収着剤材料124から吸着/吸収された汚染物質が除去され、汚染物質を有する使用済み流体186が生成される。このプロセスは、複数回繰り返してもよい。使用済み流体186は、洗浄システム180の保持タンクに送られ得るか、又は廃棄され得る。一実施形態では、洗浄システム180は、使用済み流体186から汚染物質を除去して、洗浄流体184の少なくとも一部分を生成し得る。ある特定の実施形態では、使用済み流体186は、塩化物構成成分を含有する場合があり、塩化物構成成分を塩酸(HCl)へと変換するシステムに送られ得るか、又は除去される。収着剤124の再生成は、反応器116の文脈で記載されているが、反応器118、120内の収着剤材料124は、同様の様式で再生成されることが理解されるべきである。
【0057】
収着剤再生成サイクル中、コントローラ102は、弁を閉鎖し、反応器116、118、120への供給物54、150の流れを遮断する命令を提供することができる。加えて、コントローラ102はまた、それぞれの反応器116、118、120への洗浄流体184の流れ、及び洗浄システム180又は他の使用済み流体処理システムへの使用済み流体186の流れを選択的に可能にするために、収着剤再生成サイクルの段階に基づいて、弁を選択的に開放する命令を提供してもよい。コントローラ102は、システム40の動作中に、反応器出力物(例えば、中間供給物150及び/又は処理された供給物48)の汚染レベルを監視することができる。反応器出力物の汚染レベルが所定の閾値を上回る場合、コントローラ102は、システム40に収着剤再生成プロセスを開始するように命令する出力信号106を生成する。コントローラ102は、収着剤再生成サイクル中に使用済み流体186中の汚染物質のレベルを監視することができる。使用済み流体186中の汚染物質のレベルが所望の閾値未満、又はほぼ0になると、コントローラ102は、収着剤再生成サイクルを停止し、それぞれの反応器116、118、120内の供給物54、150の前処理を再開するようにシステム40に命令する別の信号106を出力する。
【0058】
実施例
以下に記載されるのは、本明細書に開示の前処理システムで使用され得る市販の収着剤材料の塩化物除去効率を示す実験である。少なくとも24百万分率(ppm)の総塩化物濃度を有する固体プラスチック廃棄物(SPW)に由来する市販のプラスチック由来油を使用して、収着剤材料の塩化物除去効率を試験した。最初にプラスチック由来油を収着剤に所与の比率で添加し、次いで、内容物を撹拌しながら窒素ガス(N)の存在下で、温度をおよそ150℃まで上昇させることによって、(図7図9の実験では)300ミリリットル(milliliter、mL)、又は(図10の実験では)600ミリリットル(mL)バッチのオートクレーブ内で、各実験を実施した。実験全体を通じて、試料を採取し、分析した。各実験の収着剤対油比(S:O)は、(図7に示される実験では)質量で20:80、又は(図8図10に示される実験では)質量で5:95であった。すなわち、反応容器内の収着剤材料の質量は、20%であり、プラスチック由来油の質量は、80%であった。収着剤材料を通過した後のプラスチック由来油、以下、「処理されたプラスチック由来油」中の塩化物(Cl)の量を、ASTM D7536に従って蛍光X線(X-ray fluorescence、XRF)を使用して、時間との関数として決定した。オートクレーブ内容物を周囲温度まで冷却し、収着剤から分離した後、N&SにはASTM D5762に従って誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、ICP)(例えば、Siには直接注入(direct infusion、DI)-ICP、及び残りの特定されていない汚染物質にはICP-発光分光法(optical emission spectroscopy、OES))、Cl及びPにはXRF、F、Brには燃焼イオンクロマトグラフィー(combustion ion chromatography、CIC)、Na、Kにはフレーム原子吸光(Flame Atomic Absorption、FAA)などを使用して、処理されたプラスチック由来油中の他の汚染物質(例えば、N、S、F、Br、K、Na、及びSi)を測定した。しかしながら、任意の他の好適な分析技術を使用して、処理されたプラスチック由来油中に存在する汚染物質の量を測定してもよい。
【0059】
表1に示されるように、プラスチック由来油中のN、S、F、Cl、及びSi汚染物質の量は、収着剤材料に応じて、150℃の温度でおよそ40%~およそ99%だけ低減された。上に論じられるように、塩化物を除去するためのある特定の既存の技術は、塩化物がHClへと変換され、次いでその後の下流工程を通じて除去される、気相動作を必要とする。これらの既存の技術は、通常、300℃を超える温度で、水素の存在下で行われる。しかしながら、表1に示されるように、本明細書に開示の前処理システムは、液相中かつ300℃未満の温度で塩化物を除去する。図7は、様々な収着剤材料についての、時間単位での時間の関数としての、プラスチック由来油中のppmでの総塩化物のプロット200である。試験した全ての収着剤材料は、プラスチック由来油中の総塩化物をおよそ45%~99%だけ低減したが、塩化物除去について最も高い効率を有する収着剤材料は、塩基性Xゼオライト分子ふるい、塩基性Yゼオライト分子ふるい、及び金属支持アルミナ材料Ni/Alであった。驚くべきことに、収着剤材料はまた、前処理前のプラスチック由来油中に存在するN、S、F、及びSiと比較して、Nの量をおよそ76%~およそ99%、Sの量をおよそ78%~およそ92%、Fの量をおよそ86%、及びSiの量をおよそ67%~およそ93%だけ効果的に低減することが可能であった。150℃の5:95のS:O比のメソ細孔アルミナ(Al)、極小細孔Aゼオライト(すなわち、例えば、3Aなどのおよそ3オングストローム(Å)以下の細孔径)、若しくは小細孔Aゼオライト(すなわち、例えば、4Aなどのおよそ3Å超~およそ4Å以下の細孔径)を用いるか、又は室温のXゼオライトを用いる実験では、前処理前のプラスチック由来油中の塩化物の量と比較して、15%未満の塩化物除去が観察された。第2のタイプのプラスチック由来油では、Xゼオライトは、図8に示されるように、大細孔Xゼオライト(すなわち、例えば9Aなどのおよそ5Å超~およそ9Å以下の細孔サイズ)、又は極大細孔Xゼオライト(すなわち、例えば13Xなどのおよそ9Å超の細孔サイズ)を含む。したがって、図8に示されるように、異なるタイプのゼオライト分子ふるいは、骨格タイプに基づいて異なる塩化物除去効率を有する。例えば、FAU型骨格を有するX及びYゼオライトは、LTA型骨格を有するAゼオライトと比較して、より良好な塩化物除去効率を有する。加えて、図9に示されるように、Xゼオライトの塩化物除去効率は、温度に依存する。例えば、100℃未満の温度では、塩化物除去効率は、望ましくない。しかしながら、150℃以上の温度では、Xゼオライトの塩化物除去効率は、望ましいレベルである(例えば、90%超の塩化物が除去され、5ppm未満の処理された供給塩化物濃度を生じる)。更に、図10に示されるように、細孔アルミナ収着剤の塩化物除去効率は、全ての温度にわたってXゼオライトの塩化物除去効率未満である。実際、180℃の温度では、細孔アルミナを収着剤材料として使用した場合、処理された供給物中の塩化物レベルは、10ppmを上回っていた。加えて、220℃での塩化物レベルは、細孔アルミナを用いて5ppm未満まで低減されたが、これらのレベルを達成するための時間量は、同じ温度でのXゼオライトと比較して、3倍長かった(例えば、図9を参照されたい)。
【0060】
【表1】
【0061】
本明細書に開示の前処理システムを使用して固体プラスチック廃棄物(SPW)に由来する液体プラスチック由来油を前処理することの技術的効果は、SPWのケミカルリサイクルを改善し、下流の機器の早期腐食及び目詰まり、並びにSPWのケミカルリサイクルプロセス全体を通じて使用される触媒の失活を軽減する。例えば、SPWのケミカルリサイクルのための既存の技術は、プラスチック由来油の汚染レベルが、機器(例えば、蒸気分解装置)によって許容される、腐食及び目詰まり(例えば、プラスチック由来油中の塩化物によって引き起こされる腐食)をもたらすであろう限界を超えないように、液体プラスチック由来油を化石由来ナフサで希釈する。しかしながら、本明細書に開示の前処理システムを使用することによって、水素化分解又は蒸気分解などの変換工程の前に、腐食、機器の目詰まり、及び/又は触媒の失活を引き起こし得る塩化物及び他の汚染物質は、液体プラスチック由来油から除去される。汚染物質を除去することによって、液体プラスチック由来油の汚染レベルは、図2を参照して上に論じられるように、本明細書に開示の前処理システムを含まない技術と比較して、機器によって許容される汚染レベル限界未満のレベルまで減少する。したがって、これらの変換ユニットの上流で腐食性汚染物質を除去することによって、腐食のリスクが減少するので、SPWをケミカルリサイクルする際に使用される変換ユニットの製造で使用される構築材料をアップグレードする必要がない場合がある。更に、開示の前処理システムは、非水素環境において、塩化物のある濃度を有する高い最終沸点(FBP)を有する液体を処理するために使用することができる。加えて、前処理システムと組み合わせて使用される開示の収着剤材料は、液体プラスチック由来油から塩化物以外の汚染物質を効果的に除去し、それによって、SPWのためのケミカルリサイクルプロセスで使用される触媒の目詰まりを軽減する。したがって、開示のシステムは、SPWのケミカルリサイクルのための効果的、効率的、かつ堅牢な技術を提供する。
【0062】
本開示は、その趣旨又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。説明された実施形態は、全ての点で例示的なものに過ぎず、限定的なものではないと考えられるべきである。したがって、本開示の範囲は、前述の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内に入る全ての変更は、その範囲内に包含されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】