(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】前駆体および結晶化助剤を用いる金属‐有機フレームワークの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/00 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C07F7/00 A
C07F7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580407
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022034738
(87)【国際公開番号】W WO2023278248
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ エム
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥルカリム,メアリー エス
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN06
4H049VN07
4H049VP10
4H049VQ12
4H049VQ26
4H049VQ92
4H049VW02
(57)【要約】
本明細書中において提供されるのは、プレ配位子を金属源と組み合わせて複数の固体反応物を提供する工程、複数の固体反応物に溶媒を加えて反応混合物を形成する工程、反応混合物を加熱する工程、および反応混合物を冷却して金属‐有機フレームワークを製造する工程を含み、反応混合物の少なくとも50重量%が複数の固体反応物であり、プレ配位子が反応混合物中で配位子に変換され、配位子が金属成分と反応する、金属‐有機フレームワークの製造方法である。本方法論は、反応混合物中にジメチルホルムアミドを含まずに実施される。本方法は、酸化亜鉛などの結晶化助剤を反応混合物に添加する工程を更に含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレ配位子を、金属成分を含む金属源と組み合わせて、複数の固体反応物を提供すること、
複数の固体反応物に溶媒を加えて反応混合物を形成すること、
反応混合物を加熱すること、および
反応混合物を冷却して、不溶性部分と可溶性部分とを生成すること
を含み、
反応混合物の少なくとも50重量%が複数の固体反応物であり、
プレ配位子が反応混合物中で配位子に変換され、配位子が金属成分と反応し、
反応混合物はジメチルホルムアミドを含まず、不溶性部分は複数の金属‐有機フレームワークを含み、各金属‐有機フレームワークは配位子と金属成分とを含む、金属‐有機フレームワークの製造方法。
【請求項2】
前記プレ配位子がフマル酸エステルまたはテレフタル酸エステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレ配位子が、ジメチルフマレート、ジメチルテレフタレート、ジメチル2‐アミノテレフタレート、ジメチル2‐ニトロテレフタレート、ジメチル2‐クロロテレフタレート、ジメチル2‐ブロモテレフタレート、トリメチル1,2,4‐ベンゼントリカルボキシレート、トリメチル1,3,5‐ベンゼントリカルボキシレート、テトラメチル1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属成分が、ジルコニウム、チタン、セリウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される4価の金属であり、好ましくは、金属‐有機フレームワークが、ジルコニウム金属‐有機フレームワークまたはハフニウムを更に含むジルコニウム系の金属‐有機フレームワークである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、モノカルボン酸および/または鉱酸の少なくとも1つ、並びに任意に水を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
モノカルボン酸が、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
鉱酸が、塩酸、臭化水素酸およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
溶媒がモノカルボン酸、特に酢酸を含み、反応混合物中の配位子に対するモノカルボン酸、特に酢酸の量が、モル比として1:1~20:1である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
溶媒を、固体反応物に対して0.1~1.0重量当量の量で反応混合物に添加する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
溶媒と共に結晶化助剤を反応混合物に添加することを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
結晶化助剤が、亜鉛、コバルト、スズ、銅、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される2価の金属である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2価の金属源が、2価の金属酸化物、塩化物、臭化物、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、硫酸塩、および/またはそれらのオキシアニオン塩であり、好ましくは2価の金属酸化物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
反応混合物を約100℃~220℃の間の温度に加熱する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
金属‐有機フレームワークが、Zr‐テレフタレート金属‐有機フレームワークまたはZr‐フマレート金属‐有機フレームワークである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
金属‐有機フレームワークが、UiO‐66、EMM‐71、フマル酸ジルコニウム、MOF‐808、NU‐1000、またはそれらの官能基化誘導体から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
不溶性部分を可溶性部分から分離すること、および/または
不溶性部分を乾燥させて、複数の金属‐有機フレームワークを製造すること
を更に含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
テレフタル酸のエステルから選択されるプレ配位子を、4価の金属成分を含む金属源と組み合わせて、複数の固体反応物を提供する工程、
モノカルボン酸を含む溶媒および2価の金属を含む結晶化助剤を複数の固体に添加して、モノカルボン酸:配位子のモル比が1:1~20:1である反応混合物を形成する工程、
反応混合物を約100℃~約220℃の間の温度に加熱する工程、
反応混合物を冷却して、不溶性部分と可溶性部分とを生成する工程、
不溶性部分を可溶性部分から分離する工程、並びに
不溶性部分を乾燥して複数の金属‐有機フレームワークを生成する工程、
を含み、
反応混合物の少なくとも50重量%が複数の固体反応物であり、
不溶性部分は複数の金属‐有機フレームワークを含み、各金属‐有機フレームワークは配位子と金属成分を含み、
反応混合物がジメチルホルムアミドを含まない、複数の4価のカチオンおよび複数のテレフタレートリンカーを含む金属‐有機フレームワークの製造方法。
【請求項18】
結晶化助剤が酸化亜鉛である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
4価の金属成分が、ジルコニウム、ハフニウムまたはそれらの混合物から成る群から選択される、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
金属‐有機フレームワークが、UiO‐66、EMM‐71、フマル酸ジルコニウム、MOF‐808、NU‐1000、またはそれらの官能基化誘導体から成る群から選択される、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2022年1月4日に出願された米国仮出願第63/296,178号、および2021年6月28日に出願された米国仮出願第63/202,856号の優先権および利益を主張するものであり、これらは参照によりその全体が本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は、ジメチルホルムアミドを使用せずに(即ち、反応混合物中で)金属‐有機フレームワークを製造する方法に向けられており、より詳細には、少なくとも50重量%の固体反応物および低量の溶媒の反応混合物を用いて金属‐有機フレームワークを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属‐有機フレームワークの商業的製造のためのスケールアップは、有毒で高価な有機溶媒の必要性によって挑戦されている。場合によっては、水および/または他の低コストの良性溶媒を利用することができる。しかし、多くの場合、有機配位子の溶解度が低いため、ジメチルホルムアミド(「DMF」)などの極性非プロトン性溶媒を使用しなければならない。このような条件下では、できるだけ反応物の濃度が高い反応混合物で操作することが望ましい。これは、ある種の反応では、生成される材料の結晶性が悪くなったり、高濃度で相特異性が失われたりするため、最終的に材料の応用が制限されるという困難がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書中に提供されるのは、プレ配位子を、金属成分を含む金属源と組み合わせて、複数の固体反応物を提供すること、複数の固体反応物に溶媒を加えて反応混合物を形成すること、反応混合物を加熱すること、および反応混合物を冷却して、不溶性部分と可溶性部分を生成することを含む金属‐有機フレームワークの製造方法である。全反応混合物重量の少なくとも50重量%が複数の固体反応物である。反応混合物が加熱されると、プレ配位子は反応混合物中で配位子に変換され、配位子は金属成分と反応する。不溶性部分は複数の金属‐有機フレームワークを含む。各金属‐有機フレームワークは配位子と金属成分を含む。各方法工程はホルムアミド溶媒を用いずに行われ、特に反応混合物はホルムアミドを含まない、例えばジメチルホルムアミドを含まない。本方法は、溶媒と共に結晶化助剤を反応混合物に添加する工程を更に含んでもよい。
【0005】
また、本明細書中には、複数の4価のカチオンと複数のテレフタレートリンカーとを含む金属‐有機フレームワークを製造する方法が提供され、以下の工程:
テレフタル酸のエステルから選択されるプレ配位子と、4価の金属成分を含む金属源とを組み合わせて、複数の固体反応物を提供する工程;
モノカルボン酸、任意に鉱酸、および任意に2価の金属を含む結晶化助剤を含む溶媒を複数の固体に添加して、モノカルボン酸:(プレ)配位子のモル比が1:1~20:1である反応混合物を形成する工程、
反応混合物を約100℃と約220℃の間の温度に加熱する工程;
反応混合物を冷却して、不溶性部分と可溶性部分とを生成する工程;
不溶性部分を可溶性部分から分離する工程;並びに
不溶性部分を乾燥して複数の金属‐有機フレームワークを生成する工程
を含む。結晶化助剤は2価の金属を含む。不溶部分は、複数の金属‐有機フレームワークを含む。各金属‐有機フレームワークは、配位子と金属成分を含む(反応混合物の加熱中に、プレ配位子が配位子に変換され、配位子が金属成分と反応する)。反応混合物の総重量の少なくとも50重量%が複数の固体反応物である。本方法の各工程はホルムアミド溶媒を用いずに行われ、特に反応混合物はホルムアミドを含まない、例えばジメチルホルムアミドを含まない。
【0006】
本開示の開示された方法のこれらおよび他の特徴および属性、並びにそれらの有利な適用および/または使用は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書中の対象を製造および使用する際に関連技術分野における通常の技術者を支援するために、添付の図面を参照する。
【
図1】実施例1(比較例)および実施例2に記載の試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図2】2グラムの酸化亜鉛および20mLの酢酸を用いて実施例2に記載された方法によって作製された、焼成前(上方の曲線)および焼成後(下方の曲線)のUiO‐66金属‐有機フレームワークの粉末X線回折パターンを示し、矢印は、未焼成の材料に存在する未反応物を指している。
【
図3】テレフタル酸ジメチル由来(「DMT由来」)UiO‐66の、水洗浄および250℃焼成後(最も濃い灰色);実施例2に記載のギ酸塩洗浄および250℃焼成後(中灰色);および実施例1に記載の比較方法(薄い灰色)の等温線である。
【
図4】実施例3に記載されているように、未精製のポストコンシューマーポリエチレンテレフタレート(「PET」)から合成されたUiO‐66の粉末X線回折パターンを示す。
【
図5】実施例4に記載されているように、DMFおよびZnO結晶化助剤の存在なしにジメチルテレフタレート(「DMT」)を用いて製造されたUiO‐66試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図6】実施例5に記載されているように、異なる添加量の酢酸の下で、DMTおよび酸化亜鉛(「ZnO」)を用いて製造されたUiO‐66試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図7】70℃で合成したEMM‐32の粉末X線回折パターンを示す。
【
図8】合成後、溶媒交換および空気乾燥後、70℃および100℃で合成されたEMM‐32の粉末X線回折パターンを示す。
【
図9A】凍結乾燥後、真空下150℃で活性化したEMM‐32の粉末X線回折パターンと、EMM‐32結晶の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図9B】金属‐有機フレームワークをベンゼン凍結乾燥し、150℃で12時間活性化した後のEMM‐32の窒素吸着等温線を示す。
【
図10】約400℃での分解を示すEMM‐32の熱重量分析(「TGA」)曲線である。
【
図11】0.019mol/Lの配位子濃度と100℃で合成を行ったEMM‐32の粉末X線回折パターンである。
【
図12】0.035mol/Lおよび0.060mol/Lの配位子濃度で合成したEMM‐32の粉末X線回折パターンを示す。それぞれの例において、配位子:金属の比は1:1であり、反応温度は100℃であった。
【
図13A】最適化した酢酸/配位子比を用いて0.07mol/Lから0.17mol/Lまでの濃度で合成したEMM‐32試料の粉末X線回折パターンを示す。一番上の曲線に示す0.17mol/Lの条件で合成した試料のシグナル強度が低いことに注意されたい。
【
図13B】0.35mol/Lの配位子濃度で合成したEMM‐32の粉末X線回折パターンを示す。
【
図14】結晶化助剤として酸化亜鉛を用いて合成したEMM‐32の粉末X線回折パターンを示す。
【
図15A】酸化マグネシウムをメディエータとして用いたEMM‐32試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図15B】結晶化助剤として酢酸ナトリウムを用いたEMM‐32試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図16】塩化亜鉛および酢酸亜鉛をメディエータとして用いた0.35mol/LのEMM‐32試料の粉末X線回折パターンを示す。
【
図17】実施例6に記載したように合成したEMM‐71の粉末X線回折パターンを示す。
【
図18】実施例6で合成したEMM‐71について77℃で行った吸着等温線を示す。
【
図19】実施例7に記載のように合成されたEMM‐71の粉末X線回折パターンを示す。
【
図20】実施例8に記載されるように合成されたNH2-EMM‐71の粉末X線回折パターンを示す。
【
図21】実施例9に記載されるように合成されたフマル酸Zrの粉末X線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本化合物、成分、組成物、および/または方法が開示され、記載される前に、特に明記されない限り、本開示は、特定の化合物、成分、組成物、反応物、反応条件、配位子、触媒構造、MOF構造などに限定されないことを理解されたい。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0009】
本明細書中の詳細な説明および特許請求の範囲内のすべての数値は、実験誤差およびばらつきを考慮して、示された値を「約」または「約」で修正する。
【0010】
簡潔にするため、本明細書中では特定の範囲のみを明示的に開示する。しかしながら、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を記載してもよく、同様に、任意の下限値からの範囲を他の任意の下限値と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を記載してもよく、同様に、任意の上限値からの範囲を他の任意の上限値と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を記載してもよい。更に、範囲内には、明示的に記述されていなくても、その端点間のすべての点または個々の値が含まれる。従って、すべての点または個々の値は、他の点または個々の値、あるいは他の下限値または上限値と組み合わされて、それ自体の下限値または上限値として機能し、明示的に規定されていない範囲を示すことができる。
【0011】
本開示では、以下の定義を適用する:
本明細書中で使用される「a」および「the」という用語は、単数形だけでなく複数形も包含すると解される。
【0012】
本明細書中で使用される場合、「金属‐有機フレームワーク」は、国際特許公開第2020/219907号に記載されるような混合金属‐有機フレームワークまたは金属‐有機フレームワーク系または混合金属混合有機フレームワーク系であってもよい。
【0013】
本明細書中で使用される場合、配位子(「リンカー」とも呼ばれる)は、2つ以上の金属(金属ノード)を橋渡しして金属‐有機フレームワークの配位ネットワークを形成する化合物である。配位子のプロトン化状態は、反応の過程で変化する可能性があり、配位子の異なるプロトン化状態は、単一の配位子として総称される。
【0014】
本明細書中において、プレ配位子(pre‐ligand)または前駆体とは、別の化合物および/または配位子が形成される化合物を生成する化学反応に関与する化合物である。
【0015】
本明細書中で使用する場合、「2価」という用語は、2価カチオンの酸化状態を意味し、全体的に荷電した分子の一部であるかどうかは意味しない(例えば、ZnCl2は溶解しており、解離していない)。
【0016】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書中に記載の化合物において、絶対的な立体化学が明示されていない場合、各中心は独立してR‐配座もしくはS‐配座、またはそれらの混合物であってもよいと解される。従って、本明細書中で提供される化合物は、エナンチオマー的に純粋であってもよいし、立体異性体混合物であってもよい。
【0017】
加えて、EまたはZとして定義され得る幾何異性体を生成する1つ以上の二重結合を有する本明細書中に記載の化合物において、各二重結合は独立して、EまたはZであってもよく、またはそれらの混合物であってもよいと解される。同様に、記載される任意の化合物において、全ての互変異性体形態もまた含まれることが意図されると解される。
【0018】
加えて、本明細書中で提供される化合物はまた、そのような化合物を構成する原子の1つ以上に、不自然な割合の原子同位体を含むことができる。例えば、化合物は、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素125(125I)または炭素14(14C)などの放射性同位体で放射性標識されていてもよい。対象化合物のすべての同位体バリエーションは、放射性であるか否かにかかわらず、本開示の範囲内に包含されることが意図される。
【0019】
更に、本明細書中で提供される化合物は、溶液のpHによって異なるプロトン化状態を含むことができる。化合物のすべての共役酸および塩基は、本開示の範囲に包含されることが意図される。
【0020】
金属‐有機フレームワーク(「MOF」)は、金属イオン/金属クラスターと有機配位子の三次元集合体で構築される。高い孔容積、秩序構造、可変性を持つ金属‐有機フレームワークは、光触媒、触媒作用、分離および精製、ガス/エネルギー貯蔵、センシングなど多くの用途に適している。高表面積と高濃度の孤立金属イオンは、ガス貯蔵能力と物質輸送を高める。
【0021】
金属‐有機フレームワークは、配位結合を介して金属ノード(「二次構成単位」または「SBU」と呼ばれる)を橋渡しする有機配位子(「リンカー」と呼ばれることもある)から構成され、自己集合して配位ネットワークを形成することができる。有機配位子/金属ノードの等軸拡張または官能基化により、金属‐有機フレームワークは、吸着および分離への触媒変換から、生物医学的応用に至るまで、様々な異なる用途にカスタマイズ可能である。金属‐有機フレームワークは、ガス吸着、ガス分離、触媒作用、加熱/冷却、電池、ガス貯蔵、センシング、環境浄化などの産業用途に有用な特性を持つ。
【0022】
金属‐有機フレームワーク(「MOF」)の安定性は、カルボン酸塩のような分極率の低いイオンと3価金属との間の強い相互作用に起因する。安定な金属‐有機フレームワークは当初、3価のカチオン、即ちAl3+、Fe3+、Cr3+に由来するフタル酸系のMOFに限られていた。その後、Zr4+、Hf4+、Ti4+などの他の多価カチオンが利用され、更に強固なフレームワークが提供されるようになった。金属‐有機フレームワークUiO‐66は、ジルコニウム塩を直鎖状ジカルボン酸と反応させることによって初めて発見された。Cavka, J. H. et al. (2008) "A New Zirconium Inorganic Building Brick Forming Metal Organic Frameworks with Exceptional Stability", J. Am. Chem. Soc., v. 130(42), pp.13850-13851. EMM‐71は、複数の4価のカチオンとテレフタレートリンカーから構成され、原始立方格子で結晶化し、欠落クラスター/ノード欠陥が多いことを特徴とする金属‐有機フレームワークであり、2021年6月28日に出願された米国仮出願第63/202856号に記載されている。
【0023】
金属‐有機フレームワークでは、有機配位子が配位結合を介して金属ノード(二次構成単位、SBU)を橋渡しし、MOF内では、金属イオンが配位子を結合するノードを形成し、繰り返しカゴ状(cage-like)構造を形成する。結果として生じる中空構造により、MOFは大きな内部表面積を提供する。
【0024】
他の多孔性材料とは対照的に、MOFは更に、均一な孔構造、原子レベルの構造均一性、調整可能な多孔性、広範な種類、ネットワークのトポロジー、形状、寸法、およびフレームワークのトポロジー、多孔性、および機能性の操作を可能にする化学的機能性における柔軟性など、独自の構造多様性を提供する。この調整可能なトポロジーの膨大なカタログは、MOFを高度にカスタマイズ可能にし、吸着および分離への触媒変換から、生物医学的応用まで幅広い応用を可能にしている。
【0025】
MOFは、従来の多孔性材料、例えば純粋な無機ゼオライトでは容易にアクセスできない、剛直な周期網目構造の有機成分と無機成分の両方から構成されている。金属イオンや有機配位子の種類によって、さまざまな構造のMOFを合成することができる。異なる金属原子や配位子のMOFを作ることで、構造内のオーダーメイドのポケットに特定のガスを選択的に吸収する材料を作ることができる。高い孔容積、規則正しい構造、無限の調整可能性を有する金属‐有機フレームワークは、多くの用途に向けた多孔性活性材料の新たなフロンティアとして登場した。しかしMOFは、特に従来の多孔性シリカやアルミナと比較すると、比較的不安定である。
【0026】
そのため、化学的および熱的に安定な金属‐有機フレームワークが、高原子価金属(Al/Cr/Fe3+およびZr/Hf/Ti4+)に基づいて開発されてきた。例えば、ジルコニウム金属‐有機フレームワークUiO‐66は、その合成の容易さ、高い安定性、並びに有機配位子/金属ノードの等網状拡大(isoreticular expansion)または単純な官能基化によって容易に構造を調整できる構造から、広く普及してきた。こうした利点から、研究者たちは、有毒で可燃性の溶媒を必要としない、グリーンでスケーラブルな合成法を考案しようとしてきた。
【0027】
金属‐有機フレームワークであるUiO‐66は、その熱的および化学的安定性から、無数の用途のために幅広く研究され、連続流、メカノケミカル、そして主にソルボサーマルなどの多くの合成経路で合成されてきた。UiO‐66の合成を指示するために予め構築された分子ジルコニウム・クラスターが使用されたいくつかの独立した例以外では、複数の合成条件は、ジルコニウム塩(多くの場合、塩化物またはオキシ塩化物)と直鎖状ジカルボン酸との反応を含む。UiO‐66はUiOファミリー内の原型メンバーで、テレフタル酸から構成され、2008年に発見された。Cavkaを参照。それ以来、何十種類もの官能基化された誘導体や等網状類似体(4,4'‐ビフェニルジカルボン酸などの長い直鎖二酸で構成されるもの)が研究されてきた。合成条件のパンテオンに共通するテーマは、高沸点非プロトン性溶媒の使用であり、その例の大部分は、N,N‐ジメチルホルムアミド(以下、DMF)を利用している。高沸点非プロトン性溶媒の使用と相まって、モノカルボン酸の形態の調整剤が、反応性を高め、得られる物質の結晶性を向上させるために利用される。
【0028】
金属‐有機フレームワークの合成にはジメチルホルムアミド(DMF)のような強力な溶媒が必要なため、広く商業化されるのを妨げてきた。今日まで、この制限を回避するためにいくつかのアプローチが試みられてきた。例えば、別の合成条件として、混合溶媒中のジメチルホルムアミド(DMF)の必要性を軽減するための水希釈の使用がある。他の代替法としては、テレフタル酸配位子に付加して溶解性を向上させることができるアミノ基やカルボキシ基などの可溶化基の使用がある。しかし、この方法は出発原料のコストを上昇させ、結晶性の低下や固有の吸着選択性の低下など、材料の特性を低下させる可能性がある。他の方法としては、毒性の低い溶媒を利用したり、金属‐有機フレームワーク前駆体として生物由来のラクトンを使用したり、配位子源として解重合ポリエチレンテレフタレート(「PET」)を使用したりする方法がある。Zhou, L. et al. (2019) "Direct Synthesis of Robust hcp UiO-66 (Zr) MOF Using Poly(ethylene terephthalate) Waste as Ligand Source," Micro. Meso. Mater., v. 290, pg. 109674; Dyosiba, X. et al. (2019) "Feasibility of Varied Polyethylene Terephthalate Wastes as a Linker Source in Metal-Organic Framework UiO-66 (Zr) Synthesis," Ind. Eng. Chem. Res.、v.58、pp. 17010-17016 を参照。PETは2つの主成分、即ちBDC系の有機金属フレームワークの合成における構成要素であるベンゼンジカルボン酸(BDC)およびエチレングリコールを含む。PETはさまざまな技術で抽出してもよい。PET廃棄物から得られるBDCは、機能性金属‐有機フレームワークのグリーン合成に応用することが可能である。
【0029】
しかし、これらの代替品でさえも、商業的な生産ラインでは溶媒回収システムが必要であるという問題を抱えている。従って、DMFの使用を避ける努力にもかかわらず、金属‐有機フレームワークの合成においてDMFは依然として重要な成分である。
【0030】
Lieb, A.らは、VCl3とトリエチル‐1,3,5‐ベンゼントリカルボキシレートの水中混合物から、低固形分濃度(約20重量%)で大孔径のバナジウム(III)トリメシン酸塩MIL‐100(V)を作製することを開示している。Lieb, A. et al. (2012) "MIL‐100(V) - A Mesoporous Vanadium Metal Organic Framework with Accessible Metal Sites", Micro. Meso. Mater.、v.15、pp.48-23。
【0031】
現在の方法論は、ジルコニウム、チタン、セリウムおよびハフニウムなどの多価カチオン、特に4価カチオンの金属イオンを含む金属‐有機フレームワークの合成におけるDMFの必要性を回避する。本発明の方法論はまた、低容量の溶媒(例えば、水または酢酸、または本明細書中に記載される反応混合物中に液体形態で存在する任意の成分)に対して高い溶解度を有するプレ配位子(例えば、フマル酸エステルまたはテレフタル酸エステル)を利用することによって、大量の溶媒の必要性を回避する。反応条件下で、プレ配位子は配位子(例えば、フマル酸、テレフタル酸またはそれらの誘導体)に変換し、金属成分と反応して金属‐有機フレームワークを形成する。本発明の方法は、モノカルボン酸(例えば、酢酸、およびギ酸、プロピオン酸などの他の類似溶媒)を除き、有機溶媒を一切使用せずに金属‐有機フレームワークを製造することが可能であるという利点を有する。加えて、または代替的に、本発明の方法は鉱酸(例えば、HCl、およびHBrなどの他の類似の酸)を使用してもよい。本発明の方法はまた、金属‐有機フレームワークの合成において使用する溶媒が少ないという利点を有する。特に、従来のZr‐MOF合成で使用される約15~約35重量当量とは対照的に、多くても1重量当量の溶媒(前記酢酸、塩酸等またはそれらの混合物、および任意選択で水を含む)が、複数の固体反応物と組み合わされる。更に、本発明の方法は、高い空間時間収率で操作する能力を提供することができ、例えば、50重量%を超える複数の固体反応物を有する合成において、約0.4kg/リットル/日(~0.4kg/L/日)で操作することができる。本発明の方法では、形成される金属‐有機フレームワークの結晶化度を高めるとともに、側相の存在を制限するために、2価の金属源(例えば、酸化亜鉛)を合成に添加することが可能である。
【0032】
更にわれわれは、本方法論が、許容可能な反応物(プレ配位子)としてポストコンシューマープラスチックを利用できることを発見した。文献によると、これらの反応物はより高密度で低表面積の材料になると報告されていたので、これは驚くべきことであった。しかし、この結果は、先行技術で利用されている高濃度のギ酸や、さらなる有機溶媒(アセトンなど)の含有による可能性が高いことがわかった。
【0033】
従来の合成法
伝統的に、金属‐有機フレームワークは、あらかじめ合成された、あるいは市販されているリンカーと金属イオンとの反応によって作製される。「in situリンカー合成」と呼ばれる別のアプローチでは、出発材料からin situで有機リンカー(リンカー)を反応媒体中で生成することが可能である。
【0034】
金属‐有機フレームワークを合成する際、有機分子は構造指示剤であるだけでなく、フレームワーク構造の一部として組み込まれる反応物でもある。このことを念頭に置いて、従来の合成では一般に高温の反応温度が採用されている。ソルボサーマル反応条件、構造指示剤、無機化剤、更にマイクロ波アシスト合成やスチームアシスト変換も最近導入されている。
【0035】
本明細書中で言及するように、従来の合成は、典型的には、並行反応を伴わない従来の電気加熱によって実施される反応を応用したものである。従来の合成では、反応温度は金属‐有機フレームワークの合成の主要なパラメータであり、通常、ソルボサーマルおよび非ソルボサーマルという2つの温度範囲が区別され、使用される反応セットアップ(または設定;setup)の種類を決定する。ソルボサーマル反応は一般に、密閉容器内で使用する溶媒の沸点程度の自発生圧力(autogenous pressure)下で行われる。非溶媒熱反応は、常圧下で沸点以下または沸点で行われるため、合成の要件が簡素化される。非溶媒熱反応は、更に室温と高温に分類することができる。
【0036】
従来の金属‐有機フレームワークの合成は、溶媒中、室温から約250℃の温度範囲で行われる。熱は高温のソースであるオーブンから対流によって伝えられる。あるいは、電位、電磁放射、機械波(超音波)、機械的にエネルギーを導入することもできる。エネルギー源は、系に導入される時間、圧力、分子あたりのエネルギーと密接な関係があり、これらのパラメータはそれぞれ、形成される金属‐有機フレームワークとその形態に強い影響を与える。従来の合成法については、参照により本明細書中に援用される、McDonald, T. M. et al. (2015) "Cooperative Insertion of CO2 in Diamine Appended Metal-Organic Frameworks," Nature, v.519, pp.303-308や、Shearer, G. C. et al. (2016) "Defect Engineering: Tuning the Porosity and Composition of the Metal-Organic Framework UiO-66 via Modulated Synthesis," Chem. Matter.、v.28、3749-3761頁に記載されている。金属‐有機フレームワークの追加合成については、McDonald, T.M., et al. (2012) "Capture of Carbon Dioxide from Air and Flue Gas in the Alkylamine-Appended Metal-Organic Framework mmen-Mg2(dobpdc)", J. Am. Chem. Soc., v.134, pp.7056-7065; Shearer, G. C. et al. (2014) "Tuned to Perfection: Ironing Out the Defects in Metal-Organic Framework UiO-66," Chem. Matter., v.26, pp.4068-4071; Cavka, J. H. et al. (2008) "A New Zirconium Inorganic Building Brick Forming Metal Organic Frameworks with Exceptional Stability" J. Am. Chem. Soc., v.130, pp.113850-13851; Milner, P.J. et al. (2018) "Overcoming Double-step CO2 Adsorption and Minimizing Water Co-Adsorption in Bulky Diamine-Appended Variants of Mg2(dobpdc)," Chem. Sci.、v.9、pp.160-174;米国特許第8,653,292号、および米国特許公開第2007/0202038号、同第2010/0307336号、および同第2016/0031920号に更に記載されている。
【0037】
プレ配位子を用いた金属有機フレームワークの合成
本明細書中に提供されるのは、以下の工程:(a)プレ配位子を、金属成分を含む金属源と組み合わせて、複数の固体反応物を提供する工程;(b)複数の固体反応物に溶媒を加えて反応混合物を形成する工程であって、反応混合物の少なくとも50重量%が複数の固体反応物である、工程;(c)反応混合物を加熱する工程であって、プレ配位子が反応混合物中で配位子に変換され、配位子が金属成分と反応する、工程;および(d)反応混合物を冷却して、不溶性部分と可溶性部分とを生成する工程;を含む金属‐有機フレームワークの製造方法であって、(a)~(d)の各工程は、ホルムアミド溶媒なしで行われ、特に、反応混合物は、ジメチルホルムアミドなどのホルムアミドを含まず、不溶性部分は、複数の金属‐有機フレームワークを含み、各金属‐有機フレームワークは、配位子と金属成分とを含む。本方法は、溶媒と共に反応混合物に結晶化助剤を添加する工程を更に含んでもよい。
【0038】
また、本明細書中では、複数の4価のカチオンと複数のテレフタレートリンカーとを含む金属‐有機フレームワークを製造する方法であって、以下の工程:(a)テレフタル酸のエステルから選択されるプレ配位子を、4価の金属成分を含む金属源と組み合わせて、複数の固体反応物を提供する工程;(b)モノカルボン酸を含む溶媒と、2価の金属を含む結晶化助剤とを複数の固体に添加して、モノカルボン酸:配位子のモル比が1:1~20:1である反応混合物を形成する工程;(c)反応混合物を約100℃~約220℃の間の温度に加熱する工程;(d)反応混合物を冷却して不溶性部分と可溶性部分とを生成する工程;(e)不溶性部分を可溶性部分から分離する工程;および(f)不溶性部分を乾燥して複数の金属‐有機フレームワークを生成する工程を含む方法が提供される。本方法において、金属源は金属成分を含む。不溶性部分は、複数の金属‐有機フレームワークを含む。各金属‐有機フレームワークは、配位子と金属成分を含む。反応混合物の全重量パーセントの少なくとも50重量%が複数の固体反応物である。
【0039】
本発明の方法論の各工程(即ち、工程(a)~(d)および工程(a)~(f)それぞれ)は、ホルムアミド溶媒、特にジメチルホルムアミドを使用せずに実施される。より詳細には、本方法論で使用される反応混合物は、ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド溶媒を含まない。
【0040】
プレ配位子は、リンカー(または配位子)、例えばフマレート配位子またはテレフタレート配位子の誘導体または前駆体であり、加水分解または酸化などの反応を受けて前記配位子、例えばフマル酸、テレフタル酸またはそれらの誘導体を形成することが可能である。より具体的には、プレ配位子は、テレフタル酸、テレフタル酸の脱プロトン化形態、またはそれらの官能基化誘導体を得るために加水分解反応を受けることが可能であるシアノ基またはエステル基などの基を含む任意の1,4‐置換ベンゼン誘導体であってもよい。より具体的には、プレ配位子は、テレフタル酸エステルまたはその誘導体、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ジメチルテレフタレート、ジメチル2‐アミノテレフタレート、ジメチル2‐ニトロテレフタレート、ジメチル2‐クロロテレフタレート、ジメチル2‐ブロモテレフタレート、トリメチル1,2,4‐ベンゼントリカルボキシレート、トリメチル1,3,5‐ベンゼントリカルボキシレート、および/またはテトラメチル1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボキシレートであってもよい。加えて、または代替的に、プレ配位子は、ジメチルフマレートなどのフマル酸エステルであってもよい。
【0041】
金属源は金属成分を含む。金属成分は、ジルコニウム、セリウム、ハフニウムおよびチタンなどの4価の金属、またはそれらの混合物、好ましくはZrまたはZr/Hfであってもよい。好ましくは、金属源は、金属成分を、特に4価のカチオンとして、溶液中で生成してもよい。金属源の好適な例には、それらに限定されないが、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、硝酸セリウムアンモニウム、硝酸セリウム、四塩化チタン、オキシ硫酸チタン、四塩化ハフニウム、オキシ塩化ハフニウム、オキシ硝酸ハフニウム、またはオキシ硫酸ハフニウムが挙げられる。ある態様において、4価のカチオン:配位子のモル比は、約1.75:1~約1:1.75の間であってもよい。
【0042】
本発明の方法に関連して使用される溶媒は、反応混合物中に液体の形態で存在する任意の成分である(例えば、常圧下室温で)。本発明の方法において、溶媒は、典型的には、モノカルボン酸および/または鉱酸の少なくとも1つ、特に少なくとも1つのモノカルボン酸、および任意に水を含む。モノカルボン酸の好適な例としては、酢酸(例えば、氷酢酸)およびその類似体、例えば、ギ酸、プロピオン酸およびそれらの混合物が挙げられる。鉱酸の好適な例としては、塩酸およびその類似体、例えば臭化水素酸が挙げられる。
【0043】
溶媒は、固体反応物に対して約0.1~約1.0重量当量の間の量で反応混合物に添加してもよい。例えば、溶媒は、固体反応物に対して約0.1~約0.9、約0.1~約0.8、約0.1~約0.7、約0.1~約0.6、約0.1~約0.5、約0.1~約0.4、約0.1~約0.3、または約0.1~約0.2の重量当量で反応混合物に添加される。
【0044】
溶媒がモノカルボン酸を含む場合、反応混合物中のモノカルボン酸:配位子のモル比は、好ましくは1:1~20:1、特に1:1~20:1未満である。この実施形態において、「配位子の量」という表現は、加熱工程中のプレ配位子の変換から生じる配位子の量、例えば、対応するフマル酸エステルまたはテレフタル酸エステル(またはその誘導体)の加水分解から生じるフマル酸またはテレフタル酸(またはその脱プロトン化形態または官能基化誘導体)の量に対応する。より詳細には、モノカルボン酸(例えば、酢酸)の配位子に対する量(モル比として表される)は、約20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1以下であってよく、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1以上であってよい。
【0045】
溶媒が、モノカルボン酸の代わりにまたはモノカルボン酸に加えて鉱酸を含む場合、反応混合物中の鉱酸:配位子のモル比は、好ましくは多くても5:1である。より詳細には、配位子に対する鉱酸(例えば、HCl)の量(モル比として表される)は、1:10~5:1、または1:2~3:1、例えば1:1~2:1の範囲であってよい。
【0046】
結晶化助剤は、2価の金属、特に、亜鉛、コバルト、スズ、銅、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される2価の金属、例えば、亜鉛であってもよい。好ましくは、2価の金属源は、溶液中で2価の金属を、特に2価カチオンとして生成してもよい。好適な2価の金属源としては、2価の金属酸化物、塩化物、臭化物、酢酸塩、ギ酸塩、オキシル酸塩、硝酸塩、硫酸塩、および/またはそれらのオキシアニオン塩、例えば2価の金属酸化物が挙げられる。例えば、2価の金属が亜鉛である場合、2価の金属源は、酸化亜鉛、塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、臭化亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、オキシ硝酸亜鉛、オキシ酸亜鉛、ギ酸亜鉛、およびこれらの混合物から成る群から選択されてもよく、例えば、酸化亜鉛である。1つの態様において、2価カチオン/4価カチオンのモル比は、約0~約5、例えば2以下または1以下、例えば0.5以下、および/または少なくとも0.05、または少なくとも0.1、例えば少なくとも0.15であってよい。
【0047】
加熱工程では、反応混合物を、プレ配位子を配位子に変換し、前記配位子が金属成分と反応するのに十分な温度および時間で加熱する。加熱工程は、密封された反応混合物を静置状態で少なくとも4~6時間加熱することを含んでもよい。加熱工程はまた、密封された反応混合物を動的(例えば、撹拌、振盪、混合、かき混ぜ)条件下で、例えば約24時間まで加熱することを含んでもよい。加熱工程は、密封された反応混合物を、約70℃~約180℃の間の静止オーブンまたは回転オーブン中で加熱することを含んでもよい。加熱はまた、密封せずに、約1バールの圧力下で溶媒を用いて還流しながらMOFを合成して行ってもよい。1つの態様において、反応混合物は一般に、70℃~220℃、100℃~220℃、約70℃~約160℃、100℃~160℃、140℃~160℃、約70℃、約100℃、約130℃、約150℃、または約160℃に、少なくとも4時間~7日間、または6時間~5日間、または12時間~3日間加熱される。
【0048】
例えば室温まで冷却した後、不溶性部分および可溶性部分が生成され、不溶性部分は複数の金属‐有機フレームワークを含む。本方法は、更に、不溶性部分を可溶性部分から分離し、不溶性部分を乾燥して、複数の金属‐有機フレームワークを生成することを含んでもよい。これは、任意の標準的な手段によって行われてもよい。例えば、金属‐有機フレームワークを得るために、反応混合物を遠心分離または濾過してもよい。
【0049】
本発明の方法は、反応混合物から分離された金属‐有機フレームワーク材料を任意の標準的な手段によって洗浄することを更に含んでいてもよく、例えば、金属‐有機フレームワーク材料をDMF、メタノール、エタノール、アセトンおよび/または水などの溶媒によって洗浄し、例えば、過剰の有機配位子を除去してもよい。金属‐有機フレームワーク材料はまた、ペンダント配位子を除去するために、わずかに塩基性の溶液、例えばホウ酸塩またはギ酸塩溶液、例えばホウ酸ホウ素またはギ酸ホウ素で洗浄してもよい。
【0050】
本発明の方法は、ジルコニウム系、チタン系、セリウム系および/またはハフニウム系の金属‐有機フレームワーク、特にZr系(またはZr/Hf系)の金属‐有機フレームワークの作製に特に適している、より詳細には、ポリトピック型カルボキシレートから構築されたZr-(またはZr/Hf-)金属‐有機フレームワーク、更に詳細にはZr-(またはZr/Hf-)テレフタレート金属‐有機フレームワークおよび/またはZr-(またはZr/Hf-)フマレート金属‐有機フレームワークである。例えば、本発明の方法は、UiO‐66、EMM‐71、Zr‐Fumarate、UiO‐67、MOF‐808、NU‐1000、またはそれらの官能基化誘導体から成る群から選択される金属‐有機フレームワークの作製に使用することができる。
【0051】
本発明の方法は、高品質のMOFを得るために必要なコストおよび労力を低減するので有利である。この方法は時間がかからず、より多くの材料を合成できるため、試験や特性評価に利用できる材料も増え、時間も大幅に短縮できるため、経済的にも大きな効果が期待できる。
【0052】
スケールアッププロセスを通じてMOFの品質が犠牲にならないことが不可欠である。以下に詳述するいくつかの特性評価技術は、本明細書中に開示する新規な方法が、従来の合成と比較した場合、同等または優れた品質のMOFを生成することを示している。
【0053】
EMM‐32の合成および特性評価
更に、本明細書中に記載するのは、困難なスケールアップ特性を示す金属‐有機フレームワークであるEMM‐32の製造方法である。最初にMarshall, R. J. et al. "Postsynthetic bromination of UiO-66 analogues: altering linker flexibility and mechanical compliance", Dalton Trans., v.45, 2016, pp. 4132-4135に開示されたEMM‐32は、天然ガス用の高度な吸着剤として発見されたが、その後、潤滑油領域の分子の分離に有利な吸着特性を示すことが発見された。
【0054】
EMM‐32は、市販の4,4'‐スチルベンジカルボン酸(SDC)とジルコニルジクロリドをジメチルホルムアミド中で酢酸(HOAc)を反応調節剤として用いてソルボサーマル反応させることにより合成された。合成の最適化の過程で、EMM‐32は反応条件だけでなく、ワークアップや活性化にも非常に敏感であることがわかった。
【0055】
図7は、わずかな調節剤(HOAc)濃度差を用いたEMM‐32合成のX線回折パターンである。我々は、70℃の合成において、約20:1のHOAc:Lのモル比が最も高い結晶性を生成するのに最適であることを見出した。実際、これを下回ったり上回ったりすると、少量の結晶性EMM‐32しか得られず、多量の非晶質物質が生じた。この比は温度の関数として増加し、100℃では約40/1(40:1)が最適であった。70℃の場合と同様に、この調節剤と配位子の最適な比は、非常に狭いウィンドウの中に存在し、アモルファス物質はその外に存在する。
【0056】
しかし、反応温度を上げることが、活性化に対して安定な物質を作るのに不可欠であることもわかった。
図8は、70℃および100℃で合成したEMM‐32の粉末X線回折パターンを、合成時並びに溶媒交換および風乾後に示したものである。合成直後の試料は、大きなバックグラウンドが観察されるため、保護溶媒に浸したままである。70℃の最適条件下で成長した材料は、溶媒交換と空気乾燥により、その秩序の多くをすぐに失った。EMM‐32は100℃でも合成された。70℃で合成したEMM‐32とは対照的に、100℃で合成したEMM‐32は、1日後でも溶媒交換と風乾により結晶性が維持された。100℃で行った合成では、活性化後も結晶性が維持され、24時間大気中の水分にさらした後も結晶性の多くが維持された。
【0057】
高結晶性と高表面積の試料を得るには、合成条件に加えて、単離方法が重要であることがわかった。アセトンなどの低沸点溶媒で濾過および洗浄した試料は、一般的に結晶性が失われるが、これは表向き、孔構造から溶媒が急速に蒸発するためである。
図9Aは、凍結乾燥後、真空下150℃で活性化したEMM‐32の粉末X線回折パターンである。
図9Bは、ベンゼン凍結乾燥および動的真空下150℃で12時間の活性化後のEMM‐32の窒素吸着等温線を示す。EMM‐32のインデックス付き単位格子について示した予測回折ピーク。非インデックスのピークはすべてCu4331ピークに相関する。
【0058】
経験的に、アセトニトリルのような適度に揮発性のある溶媒と溶媒交換した後、空気乾燥すると、適度に結晶性の材料が得られることが観察された。しかし、これらの物質は乾燥条件下で、理想的には窒素グローブボックス内で保管しなければならない。単位格子の決定とガス吸着研究のために、ベンゼンとの溶媒交換を行った。その後、試料を真空下で150℃まで12時間加熱し、単純EMM‐32を得た。
【0059】
EMM‐32は、粉末X線回折によって決定されたように、30.060Åの単位格子寸法を有する立方晶F432空間群に結晶化し、UiO‐66ファミリーの材料の典型的な八面体の結晶習慣を採用している。
図9Aの対称性は、等構造の類似体であるUiO‐66およびUiO‐67について報告されているもの、並びに外部文献で同時に発見された同一の材料と同一である。例えば、Cavka, J. H. et al. (2008) "A New Zirconium Inorganic Building Brick Forming Metal Organic Frameworks with Exceptional Stability", J. Am. Chem. Soc., v.130(42), pp.13850-13851; Marshall, R. J. et al. (2016) "Postsynthetic Modification of Zirconium Metal-Organic Frameworks," Eur. J. Inorg. Chem. 4310-4331. これは、AuToGraFSに基づいて生成されたUFF4MOF最適化構造から予測された単位格子寸法(30.2Å)とほぼ同じである。
図9Bは、最適に合成され、活性化されたEMM‐32の、77Kで実施された窒素吸着等温線を示す。3122m
2/gの微細孔のBET表面積は、1.178cc/gの微孔容積で観察された。これは、採用したハイスループットシミュレーションシステムから予測された孔容積と一致した。予測された孔容積と実現された孔容積の不一致は、孔容積予測の本質的な不正確さ、および材料の不完全性や欠陥によるものと思われる。ジルコニウム系のUiO型材料は、合成条件に大きく依存するリンカー欠落欠陥およびノード欠落欠陥の両方を提起することが知られている。例えば、Shearer, G.C. et al. (2014) "Tuning to Perfection: Ironing Out the Defects in Metal-Organic Framework UiO-66," Chemistry of Materials, 14, v.26, pp. 4068-4071; Wu, H. et al. (2013) "Unusual and Highly Tunable Missing-Linker Defects in Zirconium Metal-Organic Framework UiO-66 and Their Important Effects on Gas Adsorption," J. Am. Chem. Chem. Soc. 135, v.28, pp.10525-10532; Gutov, O., et al. (2015) "Metal-Organic Framework (MOF) Defects Under Control: Insights into the Missing Linker Sites and Their Implication in the Reactivity of Zirconium Based Frameworks," Inorg. Chem. v.54(17), pg. 8396. 熱重量分析(TGA)は、TGAによる証拠として、リンカーの約40%(40%)が構造から欠落しており、これらの欠陥が実際に広まっていることを示している。
図10は、約400℃での分解を示すEMM‐32の熱重量分析(TGA)曲線である。残存するZrO
2含有量と有機質量損失の相対量は、構造の欠陥の程度を示している。
【0060】
現在の方法論の開発
配位子に対する調節剤のモル比が20を超える標準的な条件下では、EMM‐32は結晶性が低いか、結晶相が異なる。1つの実施形態では、独自の合成レジームでEMM‐32を合成することにより、従来の合成で使用される濃度の5~10倍の濃度で結晶性の試料を得ることが可能であることを発見した。しかし、溶媒1リットル当たり0.17モルの4,4'‐スチルベンジカルボン酸(「SDC」)の濃度を超えると、最適な条件でもスケールアップに適した結晶材料を得ることが可能である。
【0061】
反応混合物中の反応物の高い固形分率を達成するために、反応混合物中の結晶化助剤の量は、高い結晶化度と良好な相選択性を有する材料を提供する。1つの実施形態では、亜鉛化合物は、EMM‐32を含む金属‐有機フレームワークの結晶化を効果的に促進する作用があり、0.52mol/Lまでの(そしておそらくそれを超える)濃度で合成を成功させることを可能にすることを見出した。
【0062】
以下の表1に示すように、以前はEMM‐32は配位子濃度が0.06mol/L以下の希薄条件下で合成されていた。この濃度は溶媒1リットル当たり16グラム、または1.6%の固体反応物(ZrCl
4を加えた場合は3%)に相当する。酢酸、安息香酸、または塩酸を調節剤(Mod.)として使用した。文献で酢酸が使用された場合、酢酸の量は「酢酸」の欄に記載されている。塩酸または安息香酸が使用された場合、調整剤と配位子のモル比は「調整剤:L」列に表される。「Mod:L」列の上付き数字は、使用した調節剤を示す。
【0063】
表1に関して、「D」は日数を表し、「[L]」は溶媒(DMF+酢酸+任意の水)1リットル当たりの配位子(SDC)のモル数としての配位子濃度を表し、「[Zr]」は溶媒(DMF+酢酸+任意の水)1リットル当たりのZrのモル数としてのジルコニウム濃度を表し、「調節剤:L」は配位子(SDC)当たりの調節剤(酢酸または安息香酸)のモル比を表す。
【0064】
合成を検討する中で、固体反応物の量が許容できないほど少なく、溶媒コストが増大する固定バッチ反応器では空間時間収量がほとんど得られないことがわかった。本明細書中で述べるように、高濃度での反応はある点までしか機能しないことがわかった。例えば、最初の合成をSDCとZr濃度0.019mol/Lで操作した場合、結晶試料は、十分に高い調節剤/配位子のモル比(即ち、55と36対27と9)でしか得られなかった。
図11を参照。しかし、SDC濃度が0.035mol/Lまたは0.06mol/Lで、調節剤対配位子のモル比が17.5から56の場合に同様の条件を使用すると、得られた材料は部分的にしか結晶化しないことがわかった。
図12を参照。
【0065】
HOAc:L(酢酸/配位子モル比5.73~13.8)を制限して合成を行った場合、配位子(SDC)濃度が0.14mol/Lと高くても結晶性の試料を得ることができた。
図13Aは、最適化した酢酸/配位子モル比を用い、0.07mol/Lから0.17mol/Lの配位子濃度で合成したEMM‐32試料の粉末X線回折パターンを示す。0.17mol/Lの条件で合成した試料では、低いシグナル強度が得られた。しかし、この比を超えると、部分的にしか結晶性の材料が得られない。
【0066】
通常、結晶化度は調節剤濃度を上げることで改善される。しかし、高濃度の反応物を使用すると、不純物が形成されることがある。
図13Bは、0.35mol/Lの配位子(SDC)濃度で合成したEMM‐32の粉末X線回折パターンを示す。
図13Bに示すように、形成された材料は結晶性が悪かった。酢酸がゼロの場合のみ、半結晶のEMM‐32試料が観察された。それ以上では、不純物相が優勢であった。調節剤を追加しても、これらの材料の結晶性は改善されなかった。
【0067】
このデータを手にして、我々は、ユニークな反応条件が0.14mol/Lという高濃度の反応を達成する道を提供する一方で、更に高濃度の反応を得るためには、結晶化を補助する方法が必要であることを理解した。意外なことに、酸化亜鉛(フレームワーク内で相互作用したり、取り込んだりすることは期待されない)が効果的に結晶化を助け、反応濃度を少なくとも2倍にすることができた。例えば、
図14は、0.17から0.54mol/Lの範囲の配位子濃度で、結晶化助剤として酸化亜鉛を使用して合成したEMM‐32試料の粉末X線回折パターンを示す。反応はすべて10mLスケールで行った(DMFに対して)。各試料中の酢酸の量は独立して最適化した。これらの反応に、異なる量の酸化亜鉛を加えたところ、結晶試料が得られることがわかった。金属を介さない合成と同様に、理想的な酢酸と配位子のモル比は先行技術と比較して低く、濃度が高くなるにつれて低い値に低下した。
【0068】
この結果に驚いた我々は、反応中にZnOとSDCおよび酢酸が反応して生成する亜鉛カチオンの存在の影響を切り離そうと試みた。これを検証するために、EMM‐32の合成における酸化マグネシウムの影響をスクリーニングした。
図15Aに示すように、ZnOで成功したのと同じ0.35mol/Lの反応を等モル量の酸化マグネシウムで試みたところ、結晶性の悪い試料が得られた。同様に、酢酸等量(ZnOと酢酸の反応から生成すると仮定)を加えた場合も、質の悪い材料が観察された。
図15Bを参照。
【0069】
酸化マグネシウムや酢酸ナトリウムのような単純な塩基性酸化物や塩がEMM‐32の結晶化を助けることができないことから、亜鉛カチオン自体が結晶化のメディエータ(または媒体;mediator)の役割を果たしていると考えられる。これをテストするために、酢酸亜鉛または塩化亜鉛をメディエータとして使用した。
図16に見られるように、酢酸亜鉛の添加はEMM‐32の結晶化を助けるのに同様に効果的であるように見えた。また、塩化亜鉛の存在下で作製した材料は、塩の存在なしで作製した試料と比較して、著しく高い結晶化度を示した。更に、本発明の方法で作製した材料は、特別な活性化を行わなくても、元々材料を作製したときに観察されたのと同じ量の感受性を示さない。金属‐有機フレームワークは安定であり、経時的に劣化しないことがわかった。
【0070】
本開示の態様を、具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例示を目的として提供されるものであり、いかなる方法によっても本開示を限定することを意図するものではない。関連技術分野の当業者であれば、様々なパラメータを変更または修正して、本質的に同じ結果を得ることができることを容易に認識する。
【実施例】
【0071】
本開示の特徴は、以下の非限定的な実施例において説明される。
【0072】
これらの実施例において、材料のX線回折(XRD)パターンは、白金ストリップヒーターを備えたAnton Parr HTK‐16N環境ステージを取り付けたPanalytical XPert Pro粉末X線回折装置、またはLynxeye検出器を備えた銅Kα線、Bragg‐Bentanoジオメトリを使用する連続モードのBruker D8 Envdevor装置のいずれかを用いて、2~60°の2θ範囲で記録された。いずれの場合も、面間スペーシング、d‐スペーシングはオングストローム単位で計算した。強度はローレンツ効果と偏光効果を補正していない。2θにおける回折ピークの位置、および線の相対ピーク面積強度I/I(o)(Ioはバックグラウンドより強い線の強度)は、3次多項式バックグラウンドフィットを用いたMDI Jade peak fitting algorithmで決定した。単一の線として記載された回折データは、結晶学的変化の違いなど特定の条件下では、分解または部分的に分解された線として現れる複数の重なり合った線から構成される場合があることを理解すべきである。典型的には、結晶学的変化には、単位格子パラメータの軽微な変化および/または結晶対称性の変化が含まれ、フレームワークの連結性は変化しない。相対強度の変化を含むこれらの軽微な影響は、カチオン含有量、フレームワーク組成、細孔充填の性質と程度、結晶サイズと形状、優先配向、熱および/または水熱履歴の違いの結果として生じることもある。すべての試料は、更に研磨することなく、そのまま分析した。
【0073】
相対強度は、Shearer, G.C. et al., Defect Engineering: Tuning the Porosity and Composition of the Metal-Organic Framework UiO-66 via modulated Synthesis, Chem. Mater., v.28(11), pp.3749-3761, 2016.の方法によって測定される。相対強度は、フレームワーク中の欠陥、特にノード欠陥の程度を特徴である。Shearerらに詳述されているように、ブロードピーク(即ち、3~7°の2θの間)の相対強度は、例えばUiO‐66フレームワークでは、フレームワーク中の欠落クラスター欠陥の集中度を示す定量的な記述子である。相対強度は、ブロードピーク(5°の2θ付近、例えば2~7°の2θの間、即ち本発明における(100)ピークと(110)ピークの総積算強度に対応する)の積算強度を、約7.4、8.5および25.8°の2θのピークにそれぞれ対応する(111)、(200)および(600)ピークの強度の平均で割ったものとして計算される。
【0074】
ピーク幅比は、と、6以下および7.4°の2θで生じる(110)ピークおよび(111)ピークの半値幅の計算値(MDI Jadeピークフィッティングアルゴリズムによって計算される)の比である。
【0075】
合成後の材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、日立4800走査型電子顕微鏡で得られた。
【0076】
材料の全表面積(BET表面積またはSBET)は、S. Brunauer, P.H. Emmett and E. Teller, J. Am. Chem. Chem. Soc., 1938, v.60, pg.309に記載されているように、液体窒素温度での窒素吸着-脱着を用いて測定した。材料の外部表面積(Sext)は、t‐プロット法から得られ、材料の微細孔表面積(Smicro)は、全体のBET表面積(SBET)から外部表面積(Sext)を引くことによって計算された。
【0077】
材料の全孔容積および微孔容積は、関連技術分野で公知の方法を用いて決定することができる。例えば、材料の気孔率は、窒素物理吸着で測定することができ、データは、Lippens, B.C.ら、"Studies on pore system in catalysts: V. t法"、J. Catal.、v.4, pg. 319 (1965)に記載されているt‐プロット法によって分析することができる。
【0078】
熱重量分析(TGA)は、室温から800℃まで空気中で加熱して行った。
【0079】
高圧CH4吸着は、Hidden Volumetric gas adsorption analyzer (Kortunov, et al., 2016)を用いて測定した。
【0080】
実施例1:ナフタレン分離用UiO‐66の合成(比較例)
66.375グラム(400ミリモル(「mmol」)のテレフタル酸および92.25グラム(297mmol)の塩化ジルコニル八水和物(ZrOCl
2・8H
2O)を、937mLのジメチルホルムアミド(DMF)および573mLの氷酢酸(HOAc:L=24.21)とともに丸底フラスコに装填し、120℃に16時間加熱した。得られた生成物を遠心分離し、DMF(各200mL)で3回(「3×」)洗浄し、続いてアセトン(2×200mL)で2回溶媒洗浄した。得られたアセトン湿潤固体を風乾させた。
図1は、この方法で製造した試料のX線回折パターンを示す。
【0081】
実施例2:ジメチルホルムアミド(「DMF」)を使用せずにUiO‐66を形成するためのジメチルテレフタレート(「DMT」)の使用
25グラムのテレフタル酸ジメチル(「DMT」、127mmol)と41.25グラムの塩化ジルコニル八水和物(ZrOCl2・8H2O、128mmol)を125mLのテフロンライニングされたParr社の反応容器に装入した。酸化亜鉛(0~6グラム[0~74ミリモル])を加え、続いて酢酸(モル比HOAc:DMT=2.15~3.30)を16~24mL加えた。反応混合物を手動で混合して均質化し、密封して140℃~160℃に16時間加熱し、冷却した。その後、不溶分を反応器から抽出し、300mLの水に懸濁し、室温から100℃の間で5分から240分間加熱した。金属‐有機フレームワークを単離し、任意で更に水で洗浄した。次に、金属‐有機フレームワークをアセトンなどの低沸点溶媒で溶媒交換した。金属‐有機フレームワークを風乾し、任意に150℃~350℃に焼成した。
【0082】
水洗後、いくつかの不純物ピークがX線回折パターンに観察された。
得られた金属‐有機フレームワークのX線回折パターン(「PXRD」)に、いくつかの不純物ピークが観察される(
図2、上部曲線)。不純物は、焼成によって除去することができる(
図2、下の曲線)。
【0083】
図3に示すように、本実施例により作製した試料(水またはギ酸塩洗浄後、250℃焼成(それぞれ最も濃い灰色および中灰色曲線))のガス吸着量を、比較例1の比較方法により作製した試料(薄い灰色曲線)と比較した。実施例2を経て、かつ0.0001P/P
0で作製した試料では、より顕著な特徴が観察され、次いで0.001~1P/P
0の圧力領域で吸着がより緩やかに増加している。この特徴は、ノードおよび/または配位子の欠陥のレベルが比較的低いことを示している。
【0084】
実施例3:出発材料としてのポストコンシューマーポリマの使用
312ミリグラム(「mg」)のポリエチレンテレフタレート(PET)プラスチックチップ(cm
2)を、298mgの四塩化ジルコニウムとともに23mLのParr社の反応器に添加した。200マイクロリットル(「μL」)の酢酸を加え、反応器を160℃に16時間加熱した。反応器を冷却し、固形物を水、次いでアセトンで洗浄し、風乾した。
図4に示すように、得られた褐色粉末をPXRDで分析したところ、相純UiO‐66であることが判明した。
【0085】
実施例4:DMFまたはZnOを使用せずにUiO‐66を形成するためのDMTの使用
ジメチルテレフタレート(「DMT」)とZrOCl
2水和物を10CCオートクレーブに装填し、酢酸を添加した(0~500μL)。反応混合物を密封し、150℃で一晩加熱した。室温まで冷却した後、試料をX線回折で分析した。
図5に示すように、酢酸が150μL未満の試料は7°の2θに不純物ピークを示したが、酢酸が150μL以上の試料は9.5°の2θに不純物ピークの存在を示した。これらの不純物は水に可溶であり、材料を更に水で洗浄すると除去できるが、その結果、UiO‐66の収量が低下する。
【0086】
実施例5:DMFを使用せず、DMTとZnOを使用して製造したUiO‐66
312mgのテレフタル酸ジメチル(DMT)、414mgの塩化ジルコニルおよび
25~50mgの酸化亜鉛をParr社の25mLオートクレーブに加えた。50~300μLの酢酸を加え、反応を150℃に加熱して12~15時間行った。実施例4と比較して、9.5°の2θでの不純物の形成は、より高い酢酸濃度(例えば、150から300μLのHOAc)では、レシピ中の酸化亜鉛の存在によって効果的に抑制される。
図6を参照。
【0087】
実施例6:DMFを使用せず、DMTとHClを使用したEMM‐71の合成
テレフタル酸ジメチル18gをオキシ塩化ジルコニウム29.64gとともに125mLのオートクレーブに加えた。酢酸14.4mLと塩酸8.64mLを加え、スパチュラで混合した。オートクレーブを密閉し、0~8時間かけて150℃に加熱し、150℃で5~10時間保持した。その後、オートクレーブを冷却した。固形物(反応混合物の不溶性部分)を水に懸濁し、濾過して単離した。次に、不溶性部分を70℃のジメチルホルムアミドで洗浄し、濾過により再び単離した。次いで、これらの固体を80℃で0.25Mのギ酸ナトリウム水溶液で洗浄し、濾過により単離し、フィルターケーキを水、次いでアセトンで洗浄した。
図17は、生成したEMM‐71金属‐有機フレームワークのPXRDパターンを示す。
図18は、合成したEMM‐71について77℃で行った吸着等温線を示す。表面積は1700m
2/gと測定された。
【0088】
実施例7:DMFを使用せず、DMTとHClを用いる低温でのEMM‐71の合成
25gのジメチルテレフタレートを41.17gのオキシ塩化ジルコニウムと共に125mLのオートクレーブに加えた。酢酸20mLと塩酸12mLを加え、スパチュラで混合した。オートクレーブを密閉し、0~8時間かけて120℃に加熱し、120℃で5~10時間保持した。これは任意に、オーブン内でタンブリングしながら行うこともできる。オートクレーブを14~18時間加熱した後、冷却した。固形分(反応混合物の不溶性部分)を水に懸濁し、濾過して単離した。次に、不溶性部分を70℃のジメチルホルムアミドで洗浄し、濾過により再び単離した。次いで、これらの固体を80℃で0.25Mのギ酸ナトリウム水溶液で洗浄し、濾過により単離し、フィルターケーキを水、次いでアセトンで洗浄した。
図19は、この実施例に記載したように合成したEMM‐71の粉末X線回折パターンを示す。
【0089】
実施例8:DMFを使用せず、官能基化NH
2
‐DMTおよびHClを用いたEMM‐71(NH
2
-EMM‐71)の合成
1.45グラムの2-アミノテレフタル酸ジメチル、2.635グラムのオキシ塩化ジルコニウムおよび0.84グラムのオキシ塩化ハフニウムを23mLのオートクレーブに装填した。0.8~1.2mLの酢酸と0.7~1.1mLの濃塩酸を加えた。混合物を均質化してペースト状にし、0~8時間かけて120~150℃に加熱し、120~150℃で5~10時間保持した。その後、固形物を水に懸濁し、濾過または遠心分離により単離した。固形物を任意にジメチルホルムアミドおよび/またはアセトンで洗浄した。固形物を乾燥して黄色のNH
2-EMM‐71を得た。溶媒条件を変えて作製した試料のX線写真を
図20に示す。下から順に試料の相対強度はそれぞれ0.88、1.0、2.5、1.1、1.1である。ピーク幅比は下から順に、2.56、3.02、1.94、2.17、2.47である。
【0090】
実施例9:DMFを使用せず、ジメチルフマレートによるZr‐Fumarateの合成
ジメチルフマレート、オキシ塩化ジルコニウム、およびオキシ塩化ハフニウムの固体混合物(フマル酸ジメチル:ZrOCl
2・8H
2O:HfOCl
2・8H
2Oの重量比=1:1.85:0.48)3.5gを、テフロンで内張りした23mLのオートクレーブに加えた。0.5~1mLの濃塩酸を加え、続いて0.8~1.4mLの酢酸を加えた。反応物を密封し、0~8時間かけて120~150℃に加熱し、その後5~10時間その温度に保持した。その後、固形物を水に懸濁し、濾過または遠心分離により単離した。固形物は任意にジメチルホルムアミドおよび/またはアセトンで洗浄した。固体を乾燥して白色のフマル酸ジルコニウムを得た。実施例9により製造した試料のX線を
図21に示す。この場合、欠陥は形成されず、相対強度およびピーク比の値は計算されない。
【0091】
更に、または代替的に、本発明は以下に関する:
実施形態1
プレ配位子を、金属成分を含む金属源と組み合わせて、複数の固体反応物を提供すること、
複数の固体反応物に溶媒を加えて反応混合物を形成すること、
反応混合物を加熱すること、および
反応混合物を冷却して、不溶性部分と可溶性部分を生成すること
を含み、
反応混合物の少なくとも50重量%が複数の固体反応物であり、
プレ配位子が反応混合物中で配位子に変換され、配位子が金属成分と反応し、
反応混合物はジメチルホルムアミドを含まず、不溶性部分は複数の金属‐有機フレームワークを含み、各金属‐有機フレームワークは配位子と金属成分を含む、金属‐有機フレームワークの製造方法。
【0092】
実施形態2
プレ配位子がフマル酸エステルまたはテレフタル酸エステルである、実施形態1に記載の方法。
【0093】
実施形態3
プレ配位子が、ジメチルフマレート、ジメチルテレフタレート、ジメチル2‐アミノテレフタレート、ジメチル2‐ニトロテレフタレート、ジメチル2‐クロロテレフタレート、ジメチル2‐ブロモテレフタレート、トリメチル1,2,4‐ベンゼントリカルボキシレート、トリメチル1,3,5‐ベンゼントリカルボキシレート、テトラメチル1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの混合物、好ましくはジメチルフマレート、ジメチルテレフタレート、ジメチル2‐アミノテレフタレート、および/またはポリエチレンテレフタレートから成る群から選択される、実施形態2に記載の方法。
【0094】
実施形態4
金属成分が、ジルコニウム、チタン、セリウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される4価の金属であり、好ましくはジルコニウム、またはジルコニウムとハフニウムとの混合物から選択され、より好ましくはジルコニウムである、実施形態1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0095】
実施形態5
金属‐有機フレームワークが、ジルコニウム系の金属‐有機フレームワークまたはハフニウムを更に含むジルコニウム系の金属‐有機フレームワークであり、好ましくはジルコニウム系の金属‐有機フレームワークである、実施形態1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0096】
実施形態6
溶媒が、モノカルボン酸および/または鉱酸の少なくとも1つ、並びに任意に水を含み、好ましくは、溶媒が少なくともモノカルボン酸を含む、実施形態1~5のいずれか1項に記載の方法。
【0097】
実施形態7
モノカルボン酸が、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択され、好ましくは酢酸、より好ましくは氷酢酸である、実施形態6に記載の方法。
【0098】
実施形態8
鉱酸が、塩酸、臭化水素酸、およびそれらの混合物から成る群から選択され、好ましくは塩酸である、実施形態6または7に記載の方法。
【0099】
実施形態9
反応混合物中の配位子に対するモノカルボン酸、特に酢酸の量が、モル比として1:1~20:1である、実施形態6~8のいずれか1項に記載の方法。
【0100】
実施形態10
反応混合物中の配位子に対する鉱酸、特にHClの量が、モル比として、多くとも5:1である、実施形態6~9のいずれか1項に記載の方法。
【0101】
実施形態11
溶媒を、固体反応物に対して0.1~1.0重量当量の量で反応混合物に添加する、実施形態1~10のいずれか1項に記載の方法。
【0102】
実施形態12
溶媒とともに結晶化助剤を反応混合物に添加することを更に含む、実施形態1~11のいずれか1項に記載の方法。
【0103】
実施形態13
結晶化助剤が、亜鉛、コバルト、スズ、銅、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される2価の金属、好ましくは亜鉛である、実施形態12に記載の方法。
【0104】
実施形態14
2価の金属源が、2価の金属酸化物、塩化物、臭化物、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、硫酸塩、および/またはそれらのオキシアニオン塩、好ましくは2価の金属酸化物、特に酸化亜鉛である、実施形態13に記載の方法。
【0105】
実施形態15
反応混合物を約100℃~220℃の間の温度に加熱する、実施形態1~14のいずれか1項に記載の方法。
【0106】
実施形態16
金属‐有機フレームワークが、Zr‐テレフタレート金属‐有機フレームワークまたはZr‐フマレート金属‐有機フレームワークである、実施形態1~15のいずれか1項に記載の方法。
【0107】
実施形態17
金属‐有機フレームワークが、UiO‐66、EMM‐71、フマル酸ジルコニウム、MOF‐808、NU‐1000、またはそれらの官能基化誘導体から選択され、好ましくはUiO‐66、EMM‐71、およびフマル酸ジルコニウムから選択される、実施形態1~16のいずれか1項に記載の方法。
【0108】
実施形態18
不溶性部分を可溶性部分から分離すること、および/または
不溶性部分を乾燥させて、複数の金属‐有機フレームワークを製造すること
を更に含む、実施形態1~17のいずれか1項に記載の方法。
【0109】
実施形態19
テレフタル酸のエステルから選択されるプレ配位子を、4価の金属成分を含む金属源と組み合わせて、複数の固体反応物を提供する工程、
モノカルボン酸を含む溶媒と2価の金属を含む結晶化助剤とを複数の固体に添加して、モノカルボン酸:配位子のモル比が1:1~20:1である反応混合物を形成する工程、
反応混合物を約100℃と約220℃の間の温度に加熱する工程、
反応混合物を冷却して、不溶性部分と可溶性部分とを生成する工程、
不溶性部分を可溶性部分から分離する工程、および
不溶性部分を乾燥して複数の金属‐有機フレームワークを生成する工程、
を含み、
反応混合物の少なくとも50重量%が複数の固体反応物であり、
不溶性部分は複数の金属‐有機フレームワークを含み、各金属‐有機フレームワークは配位子と金属成分を含み、
反応混合物がジメチルホルムアミドを含まない、複数の4価のカチオンおよび複数のテレフタレートリンカーを含む金属‐有機フレームワークの製造方法。
【0110】
実施形態20
プレ配位子が、ジメチルテレフタレート、ジメチル2‐アミノテレフタレート、ジメチル2‐ニトロテレフタレート、ジメチル2‐クロロテレフタレート、ジメチル2‐ブロモテレフタレート、トリメチル1,2,4‐ベンゼントリカルボキシレート、トリメチル1,3,5‐ベンゼントリカルボキシレート、テトラメチル1,2,4,5‐ベンゼンテトラカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート、およびこれらの混合物、好ましくはジメチルテレフタレート、ジメチル2‐アミノテレフタレート、および/またはポリエチレンテレフタレートから成る群から選択される、実施形態19に記載の方法。
【0111】
実施形態21
4価の金属成分が、ジルコニウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、実施形態19または20に記載の方法。
【0112】
実施形態22
モノカルボン酸が、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択され、好ましくは酢酸、より好ましくは氷酢酸である、実施形態19~21のいずれか1項に記載の方法。
【0113】
実施形態23
結晶化助剤が酸化亜鉛である、実施形態19~22のいずれか1項に記載の方法。
【0114】
実施形態24
反応混合物を約100℃と220℃との間の温度に加熱する、実施形態19~23のいずれか1項に記載の方法。
【0115】
実施形態25
金属‐有機フレームワークが、UiO‐66、EMM‐71、フマル酸ジルコニウム、MOF‐808、NU‐1000、またはそれらの官能基化誘導体から選択され、好ましくは、UiO‐66、EMM‐71、およびフマル酸ジルコニウムから選択される、実施形態19~24のいずれか1項に記載の方法。
【0116】
多くの変更、修正および変形は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、前述の説明に照らして当業者に明らかであり、本明細書中において数値下限および数値上限が記載される場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が企図される。
【国際調査報告】