(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】グランザイム活性化可能な膜相互作用ペプチド及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20240718BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240718BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240718BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240718BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20240718BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240718BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K19/00
C12N15/11 Z
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/37
C12Q1/02
A61K51/08 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580524
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022035779
(87)【国際公開番号】W WO2023278737
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クレイク、 チャールズ エス.
(72)【発明者】
【氏名】バルディン、 コナー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス、 マイケル
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR90
4B063QS39
4B063QX07
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C085HH03
4C085HH11
4C085JJ01
4C085KA27
4C085KA29
4C085KB02
4C085KB03
4C085KB05
4C085KB07
4C085KB08
4C085KB09
4C085KB15
4C085KB18
4C085KB19
4C085KB21
4C085KB56
4C085KB82
4C085LL18
4C085LL20
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA41
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、グランザイム活性化可能かつ検出可能な膜相互作用ペプチドであって、活性化後に、細胞膜などのリン脂質二重層と相互作用することができるペプチドを提供する。本開示はまた、そのようなペプチドの使用方法、並びにそのようなペプチドを含む組成物を提供する。本開示のペプチドは、一般構造X
1a-A-X
2-Z-X
1bを有するものであり、式中、Aは、部分Zからの分離後に、リン脂質二重層と相互作用可能な複数の非極性疎水性アミノ酸残基を有する膜相互作用ペプチド領域であり、Zは、部分Aの活性を阻害することができる阻害ペプチド領域であり、X
2は、切断されて切断産物を化合物から放出することができるグランザイム切断可能なリンカーであり、X
1a及びX
1bは、様々なカーゴ部分の化合物へのコンジュゲーションを容易にする任意に存在する化学ハンドルである。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端又はC末端からN末端へ、構造
X
1a-A-X
2-Z-X
1b
を含む、プロ分子であって、
式中、
X
1a及び/又はX
1bは、存在してもよいか若しくは存在しなくてもよく、存在する場合、求核性部分を含み、
Aは、膜相互作用ポリペプチド部分であって、部分Zから分離されたときに、リン脂質二重層に挿入可能なアルファ-ヘリカル構造を含む、膜相互作用ポリペプチド部分であり、
Zは、ポリペプチドであって、部分X
2を介して部分Aに連結されたときに、部分Aとリン脂質二重層との相互作用を阻害するのに有効である、ポリペプチドであり、
X
2は、グランザイム切断可能なリンカーであり、ここで、X
2は、部分Aを部分Zに連結し、かつX
2は、生理学的条件下で切断され得る、プロ分子。
【請求項2】
Zが、アミノ酸配列SFLL(X
z)NPNDKYEPFW(配列番号6)を含むポリペプチドであり、式中、X
zは、R又はQである、請求項1に記載のプロ分子。
【請求項3】
Zが、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFW(配列番号55)を含む、請求項2に記載のプロ分子。
【請求項4】
Zが、アミノ酸配列SFLLQDPNDQYEPFW(配列番号56)を含む、請求項1に記載のプロ分子。
【請求項5】
Zが、アミノ酸配列QDPNDQYEPF(配列番号7)を含む、請求項4に記載のプロ分子。
【請求項6】
部分Zが、共有結合した水溶性ポリマーを含む、請求項1に記載のプロ分子。
【請求項7】
Aが、Temporinファミリーからのタンパク質を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項8】
Aが、アミノ酸配列X
aX
bX
cX
dX
eX
fY
aX
gX
hY
bY
*X
iX
jを含み、式中、X
a、X
b、X
c、X
d、X
e、X
f、X
g、X
h、X
i、及びX
jが、疎水性アミノ酸残基であり、Y
a及びY
bが、親水性アミノ酸残基であり、Y
*が、荷電アミノ酸残基である、請求項7に記載のプロ分子。
【請求項9】
Aが、アミノ酸配列FLP(X
k)IASLL(X
l)KLL(配列番号8)を含み、式中、X
kが、I又はLであり、X
lが、S又はGである、請求項7に記載のプロ分子。
【請求項10】
Aが、アミノ酸配列FVQWFSKFLGRIL(配列番号1)又はFVQWFSKFLGKLL(配列番号2)を含む、請求項7に記載のプロ分子。
【請求項11】
Aが、アミノ酸配列FVQWFSKFLGK(配列番号3)を含む、請求項7に記載のプロ分子。
【請求項12】
X
2が、グランザイムA、B、H、K、又はMによって切断可能なリンカーである、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項13】
X
2が、グランザイムBによって切断可能なリンカーである、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項14】
X
2が、アミノ酸配列X
mX
nPDX
oSX
pX
qを含み、式中、
X
mは、V、L、又はIであり、
X
nは、Eであり、
X
oは、F、S、又はVであり、
X
pは、T又はQであり、
X
qは、Vである、請求項13に記載のプロ分子。
【請求項15】
X
2が、アミノ酸配列IEPDVSQV(配列番号57)、LTYDFWIQ(配列番号65)、PQVDLYDK(配列番号66)、VVQDKHEI(配列番号67)、VYADSSEW(配列番号68)、TMADSQES(配列番号69)、GHIDHMXX(配列番号70)、LEQDVWIA(配列番号71)、LDPDNFKR(配列番号72)、XXPDFYLG(配列番号73)、MGPDAFNL(配列番号74)、LKDDMGXX(配列番号75)、IWFDYTLK(配列番号76)、XIGDNVEW(配列番号77)、XXXDQVNL(配列番号78)、PQADQWXX(配列番号79)、PSVDMXXX(配列番号80)、XNVDWTAP(配列番号81)、YGYDLQTA(配列番号82)、HGFDEAHN(配列番号83)、HSHDSWKA(配列番号84)、KQDDLMSE(配列番号85)、SFGDIMEM(配列番号86)、VNDDVKXX(配列番号87)、XXXDKQFT(配列番号88)、又はNDVDGGXX(配列番号89)を含み、Xは、任意のアミノ酸である、請求項13に記載のプロ分子。
【請求項16】
X
2が、グランザイムKによって切断可能なリンカーである、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項17】
X
2が、アミノ酸配列X
rX
sFRSX
tX
uX
vを含み、式中、
X
rは、E又はWであり、
X
sは、F、Y、又はAであり、
X
tは、F、R、又はIであり、
X
uは、Y、P、又はTであり、
X
vは、W又はHである、請求項16に記載のプロ分子。
【請求項18】
X
2が、アミノ酸配列WAFRSRYH(配列番号58)を含む、請求項17に記載のプロ分子。
【請求項19】
X
1a、X
1b、A、又はZのうちの1つ以上が、D-アミノ酸を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項20】
X
1aが存在し、かつ求核性部分を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項21】
X
1bが存在し、かつ求核性部分を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項22】
X
1a又はX
1bの前記求核性部分が、チオール官能基を含む、請求項20又は21に記載のプロ分子。
【請求項23】
X
1a又はX
1bが、前記求核性部分を含むアミノ酸残基を含む、請求項20又は21に記載のプロ分子。
【請求項24】
前記アミノ酸残基が、システイン残基である、請求項23に記載のプロ分子。
【請求項25】
前記アミノ酸残基が、リジン残基である、請求項23に記載のプロ分子。
【請求項26】
X
1a又はX
1bが、前記求核性部分に共有結合したカーゴ部分を含む、請求項20又は21に記載のプロ分子。
【請求項27】
前記カーゴ部分が、検出可能な部分である、請求項26に記載のプロ分子。
【請求項28】
前記検出可能な部分が、金属キレート部分である、請求項27に記載のプロ分子。
【請求項29】
前記金属キレート部分が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)である、請求項28に記載のプロ分子。
【請求項30】
前記金属キレート部分が、放射性同位体に結合している、請求項29に記載のプロ分子。
【請求項31】
前記検出可能な部分が、放射性同位体を含む、請求項27に記載のプロ分子。
【請求項32】
前記放射性同位体が、アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、臭素-76、臭素-77、カルシウム-47、炭素-11、炭素-14、クロム-51、コバルト-57、コバルト-58、銅-64、エルビウム-169、フッ素-18、ガリウム-67、ガリウム-68、水素-3、インジウム-111、ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、鉄-59、クリプトン-81m、鉛-212、ルテチウム-177、窒素-13、酸素-15、リン-32、ラジウム-223、ラジウム-224、サマリウム-153、セレン-75、ナトリウム-22、ナトリウム-24、ストロンチウム-89、テクネチウム-99m、タリウム-201、トリウム-226、トリウム-227、キセノン-133、又はイットリウム-9である、請求項30又は31に記載のプロ分子。
【請求項33】
前記放射性同位体が、銅-64である、請求項32に記載のプロ分子。
【請求項34】
前記検出可能な部分が、ポジトロン放出断層撮影法(PET)によって検出可能である、請求項27~33のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項35】
前記検出可能な部分が、蛍光部分を含む、請求項27に記載のプロ分子。
【請求項36】
前記蛍光部分が、水溶性蛍光色素である、請求項35に記載のプロ分子。
【請求項37】
前記水溶性蛍光色素が、シアニン色素である、請求項36に記載のプロ分子。
【請求項38】
前記シアニン色素が、Cy7である、請求項37に記載のプロ分子。
【請求項39】
前記プロ分子が、前記グランザイムの活性を阻害しない、請求項1~38のいずれか一項に記載のプロ分子。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか一項に記載のプロ分子をコードする、核酸。
【請求項41】
請求項40に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項42】
請求項40に記載の核酸、又は請求項41に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項43】
組成物であって、
液体媒体中に存在する請求項1~39のいずれか一項に記載のプロ分子を含む、組成物。
【請求項44】
組成物であって、
請求項1~39のいずれか一項に記載のプロ分子と、
薬学的に許容され得る担体と、を含む、組成物。
【請求項45】
前記プロ分子が、請求項28~38のいずれか一項において定義される検出可能な部分を含む、請求項43又は44に記載の組成物。
【請求項46】
キットであって、
請求項45に記載の組成物と、
インビトロ、インビボ、又はエクスビボでグランザイム活性を検出するために前記組成物を使用するための説明書と、を含む、キット。
【請求項47】
グランザイム活性の存在下で細胞のリン脂質二重層を検出可能に標識する方法であって、
請求項27~39のいずれか一項に記載のプロ分子を、前記グランザイム活性に寄与するグランザイムと接触させることを含み、
前記プロ分子の前記切断可能なリンカーが、前記グランザイムによって切断されて、検出可能な部分及び膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、その結果、前記膜相互作用ポリペプチド部分が、前記細胞の前記リン脂質二重層と相互作用し、前記細胞の前記リン脂質二重層をグランザイム活性の存在下で検出可能に標識する、方法。
【請求項48】
前記接触させることが、インビトロ、インビボ、又はエクスビボである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
細胞サンプルにおけるグランザイム活性を評価するための方法であって、
前記サンプルを、請求項27~39のいずれか一項に記載のプロ分子と接触させることであって、前記グランザイム活性の存在下で、前記プロ分子が切断されて、前記検出可能な部分及び前記膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、前記切断産物が、前記グランザイム活性の存在下で、細胞のリン脂質二重層と相互作用する、接触させることと、
前記切断産物の前記検出可能な部分の存在又は非存在について評価することであって、
前記検出可能な部分の前記存在が、前記細胞サンプルにおけるグランザイム活性を示す、評価することと、を含む、方法。
【請求項50】
対象におけるグランザイム活性を評価するための方法であって、
前記対象に、請求項27~39のいずれか一項に記載のプロ分子を投与することであって、前記対象におけるグランザイム活性の部位において、前記プロ分子が、前記グランザイム活性に寄与するグランザイムによって切断されて、前記検出可能な部分及び前記膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、前記切断産物が、前記対象における前記グランザイム活性の部位における細胞のリン脂質二重層と相互作用する、投与することと、
前記切断産物で標識された細胞の存在又は非存在について評価することと、を含み、
ここで、前記切断産物で標識された細胞の存在は、対象におけるグランザイム活性を示す、方法。
【請求項51】
対象における免疫細胞の活性化について評価する方法であって、前記免疫細胞が、前記対象において活性化されるとグランザイムを分泌し、前記方法は、
前記対象に、請求項27~39のいずれか一項に記載のプロ分子を投与することであって、前記対象における活性化された免疫細胞分泌グランザイムの部位において、前記プロ分子が、前記活性化された免疫細胞分泌グランザイムによって切断されて、前記検出可能な部分及び前記膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、前記切断産物が、前記対象における前記活性化された免疫細胞分泌グランザイムの部位において、細胞のリン脂質二重層と相互作用する、投与することと、
前記切断産物で標識された細胞の存在又は非存在について評価することと、を含み、
ここで、前記切断産物で標識された細胞の存在は、前記対象における前記免疫細胞の活性化を示す、方法。
【請求項52】
前記免疫細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記免疫細胞分泌グランザイムが、グランザイムBである、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫細胞分泌グランザイムが、グランザイムKである、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記対象における免疫細胞活性化について生物学的レベルで評価することを含む、請求項51~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象の標的領域内での免疫細胞活性化について評価することを含む、請求項51~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
免疫細胞活性化について評価することが、前記対象における免疫細胞活性化の位置を区別することを含む、請求項51~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
免疫細胞活性化について評価することが、前記対象への前記プロ分子の投与の4時間以上後に行われる、請求項51~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
免疫細胞活性化について評価することが、複数の時点での免疫細胞活性化について評価することを含む、請求項51~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記対象が、免疫調節療法を受けている、請求項51~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記方法が、治療部位において切断産物で標識された細胞の存在又は不在について評価することによって前記免疫調節療法の進行をモニタリングすることを含み、前記切断産物で標識された細胞の存在が、前記治療部位において前記対象における前記免疫細胞の活性化を示す、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記免疫調節療法が、細胞ベースの療法、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路調節、免疫チェックポイント阻害、化学療法、電離放射線、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項64】
前記免疫調節療法が、細胞ベースの療法を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記細胞ベースの療法が、キメラ抗原受容体T細胞(CAR T)療法を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記細胞ベースの療法が、キメラ抗原受容体ナチュラルキラー細胞(CAR NK細胞)療法を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞ベースの療法が、操作されたT細胞受容体(TCR)を含むT細胞の投与を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記免疫調節療法が、前記対象におけるがんを治療するためのものであり、免疫細胞活性化について評価することが、前記免疫調節療法に対する応答性について前記対象における腫瘍を評価することを更に含む、請求項61~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
免疫細胞活性化について評価することが、T細胞疲弊の存在又は非存在について評価することを含む、請求項51~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
免疫細胞活性化について評価することが、前記対象における免疫応答について評価することを含む、請求項51~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
免疫細胞活性化について評価することが、前記対象における感染に対する免疫応答について評価することを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
免疫細胞活性化について評価することが、前記対象におけるウイルス感染に対する免疫応答について評価することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ウイルス感染が、肺炎を引き起こす、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
免疫細胞活性化について評価することが、前記対象における細菌感染に対する免疫応答について評価することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記細菌感染が、Escherichia coli(E.coli)の感染である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記細菌感染が、Staphylococcus aureus(S.aureus)の感染である、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記細菌感染が、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)の感染である、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記細菌感染が、Klebsiella pneumoniae(K.pneumoniae)の感染である、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
正常組織における全身性免疫細胞活性化の存在が、前記対象に免疫関連の有害作用を発症する危険性があることを示す、請求項70に記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、ヒトである、請求項50~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記検出可能な部分が、放射性同位体を含む、請求項47~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記評価することが、前記検出可能な部分をPETによって検出することを含む、請求項47~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
カーゴ部分をリン脂質二重層に送達するのに有用なプロ分子を作製する方法であって、
X
1aが存在する、請求項1~39のいずれか一項に記載のプロ分子を合成することと、
カーゴ部分をX
1aの求核性部分に結合させることと、を含み、
ここで、カーゴ部分のリン脂質二重層への送達に有用なプロ分子が生成される、方法。
【請求項84】
前記合成することが、前記プロ分子をコードする発現構築物を含む組換え宿主細胞を培養することを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記合成することが、化学合成によって行われる、請求項83に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月30日に出願された米国仮特許出願第63/216,890号の利益を主張するものであり、この出願は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金R01 EB025207、R01 CA258297、及びR01 AI161027の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ヒトグランザイムは、宿主防御に関与するリンパ球、すなわち、ナチュラルキラー(NK)及び細胞傷害性T細胞(CTL)の分泌小胞(すなわち、顆粒)内で主に発現される5つのセリンプロテアーゼ(A、B、H、K、M)からなる。これらの細胞型では、グランザイムは、問題のある細胞、例えば、がん細胞又は病原体に感染した細胞に対するプロアポトーシスエフェクターであると最もよく理解されている。細胞傷害性を付与するために、リンパ球は、標的細胞とドッキングした後、顆粒酵素を細胞周囲空間に一過性に放出する。グランザイムと共分泌されるのはパーフォリン分子であり、パーフォリン分子は、標的細胞の形質膜にチャネルを形成して、細胞質へのグランザイム輸送を促進する。その後、グランザイム生化学は、いくつかのメカニズム、例えば、カスパーゼのタンパク質分解活性化又は直接DNA損傷(グランザイムB)、SET媒介DNA切断活性化(グランザイムA)を介して細胞死を引き起こす。しかしながら、グランザイムが主に細胞毒性エフェクターであるという定説は、分泌されたグランザイムが細胞外にも存在することで非細胞毒性シグナル伝達機能を果たすという、より複雑な生物学的モデルによって覆されつつある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一般に、活性化後に細胞膜などのリン脂質二重層と相互作用することができる、グランザイム活性化可能で検出可能な膜相互作用ペプチドを提供する。本開示はまた、そのような化合物の使用方法を提供する。
【0005】
本開示の化合物は、一般構造X1a-A-X2-Z-X1bであり、式中、Aは、部分Zからの分離後にリン脂質二重層と相互作用することができる複数の非極性疎水性アミノ酸残基を有する膜相互作用ペプチド領域であり、Zは、部分Aの活性を阻害することができる阻害ペプチド領域であり、X2は、切断されて切断産物を化合物から放出することができるグランザイム切断可能なリンカーであり、X1a及びX1bは、化合物への様々な部分のコンジュゲーションを容易にする任意に存在する化学ハンドルである。組成物をX2で切断する前に、組成物は、有意な又は検出可能なレベルまでリン脂質二重層と会合しないプロ分子(promolecule)として機能する。切断可能なリンカーX2での切断後、部分Aを含む切断産物は、リン脂質二重層(例えば、細胞膜)と自由に相互作用し、したがって、切断促進環境に関連する部位に蓄積する。膜関連切断産物の検出は、X1a及び/又はX1bを介して結合した部分の検出によって達成することができる。そのような組成物は、例えば、対象内のグランザイム活性を直接イメージングする際の使用を含む、様々な方法で使用することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、N末端からC末端又はC末端からN末端へ、構造X1a-A-X2-Z-X1bを含む、分子であって、式中、X1a及び/又はX1bは、存在してもよいか若しくは存在しなくてもよく、存在する場合、求核性部分を含み、Aは、膜相互作用ポリペプチド部分であって、部分Zから分離されたときに、リン脂質二重層に挿入可能なアルファ-ヘリカル構造を含む、膜相互作用ポリペプチド部分であり、Zは、ポリペプチドであって、部分X2を介して部分Aに連結されたときに、部分Aとリン脂質二重層との相互作用を阻害するのに有効である、ポリペプチドであり、X2は、切断可能なリンカーであり、ここで、X2は、部分Aを部分Zに連結し、かつX2は、生理学的条件下で切断され得る、分子である。いくつかの実施形態では、部分Aは、約5~約30個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、部分Aは、XaXbXcXdXeXfYaXgXhYbY*XiXjを含み、式中、Xa、Xb、Xc、Xd、Xe、Xf、Xg、Xh、Xi、及びXjは、疎水性アミノ酸残基であり、Ya及びYbは、親水性アミノ酸残基であり、Y*は、荷電アミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、部分Aは、アミノ酸配列FVQWFSKFLGRIL(配列番号1)、又はその保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、部分Aは、アミノ酸配列FVQWFSKFLGKLL(配列番号2)、又はその保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、部分Aは、アミノ酸配列FVQWFSKFLGK(配列番号3)、又はその保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、部分Aは、アミノ酸配列FFQWFSKFLGK(配列番号4)、又はその保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、部分Aは、アミノ酸配列ILGTILGLLKGL(配列番号5)を含む。いくつかの実施形態では、部分Aは、ジャポニシン-1のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、部分Aは、5個未満の塩基性アミノ酸残基を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、X2は、グランザイムによって切断可能である。いくつかの実施形態では、X2は、グランザイムBによって切断可能である。いくつかの実施形態では、X2は、グランザイムKによって切断可能である。いくつかの実施形態では、X2は、酵素的に切断可能なリンカーであり、Zは、X2を切断可能なグランザイムのエキソサイト認識配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、部分Zは、共有結合した水溶性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、Zは、アミノ酸配列SFLL(Xa)NPNDKYEPFW(配列番号6)を含み、式中、Xaは、R又はQである。いくつかの実施形態では、Zは、アミノ酸配列QDPNDQYEPF(配列番号7)を含む。いくつかの実施形態では、Zは、グランザイムのエキソサイト認識配列のアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、X1a、X1b、A、又はZのうちの1つ以上は、D-アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、X1aが存在し、かつ求核性部分を含む。いくつかの実施形態では、X1bが存在し、かつ求核性部分を含む。いくつかの実施形態では、X1a又はX1bの求核性部分は、チオール官能基を含む。いくつかの実施形態では、X1a又はX1bは、求核性部分を含むアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基は、システイン残基である。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基は、リジン残基である。
【0010】
いくつかの実施形態では、X1a又はX1bは、求核性部分に共有結合したカーゴ部分を含む。いくつかの実施形態では、カーゴ部分は、検出可能な部分である。いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、蛍光部分を含む。いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、放射性同位体を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、上記の分子をコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、上記の分子と、薬学的に許容され得る担体と、を含む、組成物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、グランザイム活性の存在下でリン脂質二重層を検出可能に標識する方法であって、上記のような分子を、グランザイム活性に寄与するグランザイムと接触させることを含み、ここで、接触させることが、切断可能なリンカーのグランザイム切断に適した条件下にあるとき、分子が切断されて、リン脂質二重層との相互作用のために膜相互作用ポリペプチド部分を放出し、リン脂質二重層を検出可能に標識する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、インビボである。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象におけるグランザイム活性を評価するための方法であって、上記のような分子を対象に投与することであって、上記式中、X2がグランザイムによって切断可能であり、グランザイム活性の存在下で、分子が切断されて、検出可能な部分及び膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、切断産物が、グランザイム酵素活性の領域においてリン脂質二重層と相互作用する、投与することと、切断産物の検出可能な標識の存在又は非存在を検出することと、を含み、ここで、検出可能な標識の存在が、グランザイム酵素活性の領域を示す、方法を提供する。いくつかの実施形態では、評価することは、定性的及び/又は定量的であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における免疫細胞活性化を評価するための方法であって、免疫細胞は、活性化されるとグランザイムを分泌し、該方法は、上記のような分子を対象に投与することであって、上記式中、X2は、グランザイムによって切断可能であり、活性化されたグランザイム分泌免疫細胞の存在下で、分子が切断されて、検出可能な部分及び膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、切断産物が、グランザイム分泌免疫細胞活性化の領域においてリン脂質二重層と相互作用する、投与することと、切断産物の検出可能な標識の存在又は不在を検出することと、を含み、ここで、検出可能な標識の存在が、グランザイム分泌免疫細胞活性化の領域を示す、方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、カーゴ部分をリン脂質二重層に送達するのに有用な分子を作製する方法であって、上記のような分子を合成することであって、上記式中、X1aが存在する、合成することと、カーゴ部分をX1aの求核性部分に結合することと、を含み、ここで、カーゴ部分をリン脂質二重層に送達するのに有用な分子が産生される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、合成することは、分子をコードする発現構築物を含む組換え宿主細胞を培養することを伴う。いくつかの実施形態では、合成することは、化学合成によるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A-1F】イメージングを用いてインビボでGZMBタンパク質分解を測定するための制限付き相互作用ペプチドであるGRIP Bの開発及びインビトロ特性評価。(A)制限付き相互作用ペプチドの一般化された構造、及びインビボの作用機序を示す概略図。専用のエンドプロテアーゼによる全長プロフォームの切断は、近傍のリン脂質膜と不可逆的に相互作用する、タグ付き(例えば、放射性標識された)抗菌ペプチドを遊離する。したがって、注入後の延長された時点でのペプチドの安定した蓄積(すなわち、秒ではなく時間)は、関心領域における酵素活性の相対的な単位を反映することができる。(B)GZMB切断配列を同定するためのMSP-MS研究のワークフローを示す略図。GZMB活性からのタンパク質分解産物を、228個のテトラデカ-ペプチドの物理化学的に多様なライブラリーとともに酵素をインキュベートすることによって産生した。LC-MS/MSによるペプチドシーケンシングは、GZMBが生成した切断の決定を可能にした。(C)ヒトGZMBに対するP4~P4’基質選好性のMSP-MS分析の統合結果を示すiceLogo。(D)IEPDVSVQ(配列番号64)ペプチドのヒトグランザイムBタンパク質分解のミカエリス・メンテン動態を示すプロット。GZMBの非プライム部位及びプライム部位のカバレッジにより、IEPD単独と比較して触媒回転数が約2倍改善された最適化された基質が得られた。(E)GRIP Bの最終アミノ酸配列。膜結合ドメイン(配列番号3)、グランザイムB特異的基質(配列番号57)、ペプチドマスキングドメイン(配列番号7)。(F)トロンビン、カスパーゼ3、カスパーゼ8、グランザイムK、MMP9、及びC1Sと比較した、グランザイムBに対する基質FVQWFSKFLGK(配列番号3)の高い特異性を示すデータ。
【
図2A-2D】インビトロ作用機序の研究及び
64Cu-GRIP Bの合成。(A)GZMBの存在又は非存在下での5FAM-GRIP Bによる細胞標識の程度を示す平均蛍光強度データ。データを、三連でMC28細胞を使用して回収した。*P<0.01。(B)ビヒクル(0.1%DMSO)、全長GRIP Bプロペプチド、及びタンパク質分解的に活性化された切断ペプチドでの処理による赤血球溶解の程度を表す棒グラフ。Triton-Xは陽性対照として含まれている。(C)DOTA-GRIP B前駆体の放射性トレース(青色)とUVトレースとのオーバーレイを示すHPLCトレース。トレースは、反応開始の30分後に回収した。(D)400nMの組換えヒトGZMBで30分間インキュベートした後、
64Cu-GRIP Bが1つの主要産物に変換されることを示す放射性HPLCトレース。
【
図3A-3E】
64Cu-GRIP Bは、免疫チェックポイント阻害によって誘発されるインビボでのT細胞活性化を検出する。(A)皮下CT26腫瘍を有する雄C57Bl6マウスにおける
64Cu-GRIP Bの腎クリアランスを示す時間活性曲線。(B)抗PD1及び抗CTLA4 CPIに曝露したCT26腫瘍における
64Cu-GRIP Bの経時的な蓄積を示す代表的な経軸CT及びPET/CT画像。また、ビヒクルで処理した腫瘍保有マウスにおける
64Cu-GRIP Bの取り込みも示されている。(C)ビヒクル又はCPIで処置したマウス由来のCT26腫瘍における
64Cu-GRIP Bの腫瘍取り込みを示す、動的PET取得からの時間活性曲線。(D)処置したマウス対未処置のマウスにおける臓器当たりの
64Cu-GRIP B取り込みの%変化を示すプロット。(E)ビヒクル又はCPIに曝露したマウスからのCT26腫瘍スライス内のGZMB及びT細胞との
64Cu-GRIP Bの共局在を示すデジタルオートラジオグラフィー及び免疫蛍光。
【
図4A-4F】インビボで
64Cu-GRIP B生体内分布は、GZMBタンパク質分解活性に依存する。(A)GZMB切断部位にD-アミノ酸を有する切断不能な陰性対照トレーサーである
64Cu-GRIP B(又は
64Cu-L-GRIP B)及び
64Cu-D-GRIP Bの腫瘍取り込みに対する処置後の効果を要約する棒グラフ。皮下CT26、MC38、又はEMT6マウスを有するマウスの3つのコホートを研究した。CT26及びMC38を雄C57Bl6マウスに移植し、EMT6を雌Balb/cマウスに移植した。*P<0.05、**P<0.01。(B)ビヒクル又はCPIで処置したマウスにおける
64Cu-L-GRIP B及び
64Cu-D-GRIP Bの腫瘍取り込みを示す、MC38コホートからの代表的な経軸PET/CT及びCT画像。(C)ビヒクル対CPIで処置したマウスにおける
64Cu-GRIP B及び
64Cu-D-GRIP Bの脾臓取り込みに対する処置後の効果を示す棒グラフ。これらのデータは、CT26コホートから取得され、他のマウスコホートで同様の傾向が観察された。*P<0.01(D)脾臓切片における
64Cu-L-GRIP B及び
64Cu-D-GRIP B取り込みの相対強度を示すオートラジオグラフィー及びH&E。(E)ビヒクル又はCPIで処置した生殖細胞系GZMB-/-における
64Cu-GRIP Bの腫瘍及び脾臓取り込みに対する処置後の効果をまとめた棒グラフ。この研究のために、GZMB-/-にCT26腫瘍を接種した。
【
図5A-5B】
64Cu-GRIP Bの腫瘍取り込みにおける処置後の変化は、野生型マウスではCPIに対する体積腫瘍応答の大きさと相関するが、GZMB-/-マウスでは相関しない。(A)11日目から0日目までの腫瘍体積の倍率変化と
64Cu-GRIP B腫瘍取り込み(左)又は腫瘍対血液比(右)との間の相関を示す散布図。データを、CT26腫瘍を有する野生型マウスの2つのコホートから回収した。(B)11日目から0日目までの腫瘍体積の倍率変化と
64Cu-GRIP B腫瘍取り込み(左)又は腫瘍対血液比(右)との間の相関を示す散布図。データを、CT26腫瘍を有するGZMB-/-マウスの2つのコホートから回収した。
【
図6A-6E】
64Cu-GRIP B PETは、エンドトキシン媒介炎症応答によって誘発される分泌GZMBを検出する。(A)0.1mg/kg又は3.0mg/kgのLPSで処置したマウスの肺における放射性トレーサー蓄積が、シャム投与したマウスと比較して高いことを示す、代表的な
64Cu-GRIP B PET/CT研究。(B)右肺葉の関心領域分析では、LPSで処置したマウスの放射性トレーサー取り込みが、シャム処置したマウスに比べて有意に高いことが示される(n=3/アーム)。*P<0.01(C)右肺葉のオートラジオグラフィー、免疫蛍光、及びH&Eは、処置した肺におけるより高いトレーサー蓄積、並びにより高いGZMB及びCD3染色を示す。(D)LPS対シャム処置マウス(n=4/アーム)の間の臓器当たりの放射性トレーサー取り込みのパーセント変化を示す棒グラフ。全ての変化は、統計的に有意であると決定され、P<0.05であった。(E)3.0mg/kgのLPSによる処置に起因するトレーサー生体内分布のシステム全体の変化を示す代表的な最大強度予測。
【
図7A-7B】
64Cu-GRIP B PET/CTは、皮下RAJI腫瘍を有するマウスにおける細胞ベースの療法で使用される活性化CAR T細胞から分泌されるグランザイムを検出する。描写されるデータは、注入から4時間後に集められた画像及び関心領域(ROI)分析を示す。
【
図8A-8C】
64Cu-GRIP B PET/CTは、肝臓に同所性RAJI腫瘍を有するマウスにおける細胞ベースの療法において使用される活性化CAR T細胞から分泌されるグランザイムを検出する。描写されるデータは、注入から4時間後に集められた画像及び関心領域分析を示す。ROI及び死後線量測定は、CD19 CAR Tが、腫瘍を有する肝臓において
64Cu-GRIP B取り込みを誘導することを示す。
【
図9A-9C】
64Cu-GRIP B PETは、肺炎モデルにおける生産的な免疫応答を検出することができる。(A)及び(B)マウスは、ウイルス又はシャムの鼻腔内滴下を受け、感染から10日後(肺へのT細胞のリクルートメントがピークに達する時点)に64Cu-GRIP Bでイメージングした。感染した肺における放射性トレーサー取り込みは非常に高く、放射性トレーサー注入から6時間後の健康な肺とは有意に異なる。(C)臓器当たりの相対的な放射性トレーサー取り込みは、生体分布研究において、ウイルス感染が、脾臓、肝臓、及び血液プールを含む多数の組織においてより高い放射性トレーサー取り込みを誘導することを示した(*P<0.01)。
【
図10A-10B】
64Cu-GRIP Bは、細菌感染と闘おうとする活性化免疫細胞から分泌されるグランザイムBを検出することができる。
【
図11A-11B】生殖細胞系GZMBノックアウトマウスにおけるイメージング研究は、E.Coli膿瘍における放射性トレーサー取り込みがグランザイムBによるものであることを実証する。
【
図12A-12B】生きたE.coli膿瘍は、より大きな放射性トレーサー取り込みを誘導し、エンドトキシンLPSのボーラスよりも有意に免疫刺激性が高い。
【
図13A-13B】S.aureus感染に応答する
64Cu-GRIP Bの蓄積は、E.coli感染で観察されたものと類似している。放射性トレーサー取り込みは、注射後0~6時間から急速に上昇し、6~24時間からプラトーになり、生菌膿瘍における取り込みは、加熱死菌膿瘍における取り込みよりも有意に高かった。
【
図14A-14F】P.aeruginosa及びK.pneumoniaeを用いて行った筋炎研究は、E.coli及びS.aureus感染と同様の所見を示した。
【
図15A-15D】M.marinum及びL.monoctyogenesは、加熱死菌対照と比較して、生菌膿瘍において
64Cu-GRIP B取り込みを誘導しない。
【0016】
定義
本明細書において互換的に使用される「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、遺伝的にコードされたアミノ酸及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化されたアミノ酸、並びに修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。この用語は、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基の有無にかかわらず、異種及び相同のリーダー配列を有する融合タンパク質、免疫学的にタグ付けされたタンパク質などを含むが、これらに限定されない、融合タンパク質を含む。
【0017】
「膜相互作用ペプチド」という用語は、複数の非極性疎水性アミノ酸残基を有するペプチド分子を指し、本明細書に記載の部分Zによる拘束を受けない場合、細胞膜などのリン脂質二重層と相互作用可能なアルファ-ヘリカル構造を含む。そのような二次構造は、膜相互作用ペプチドのリン脂質二重層への挿入前、挿入中、又は挿入後に現れ得る。本明細書に記載の膜相互作用ペプチドの組成物は、非極性疎水性アミノ酸残基に厳密に限定されず、そのようなペプチドは、異なるタイプのアミノ酸残基、例えば、極性非荷電アミノ酸残基、極性塩基性アミノ酸残基、又は極性酸性アミノ酸残基も含み得る。
【0018】
「抗菌ポリペプチド」という用語は、細胞膜と相互作用する能力に基づいて、その天然の形態で抗菌活性を示す天然に存在するペプチドに由来する、膜相互作用ペプチドのタイプを指す。本明細書で使用される「抗菌ポリペプチド」という用語は、そのように記載されているポリペプチドが抗菌活性を有することを必要としたり、暗示したりするものではないことが理解される。リン脂質膜と自発的に相互作用し、リン脂質膜に挿入する可能性があることを示した任意のペプチドが、このカテゴリーに含まれる。例えば、天然に存在する膜貫通タンパク質から膜相互作用ペプチドを自発的に挿入することが適用され得る。抗菌ポリペプチドは、当該技術分野で周知であり、例えば、タンパク質のtemporin(テンポリン)ファミリー内のポリペプチドを含む。
【0019】
本明細書で使用される「プロ分子」という用語は、分子の個々の部分が一緒に連結されているため、その活性が制限され、したがって、個々の部分が互いに連結されていないときに有することができる活性を制限又は限定する分子を指す。プロ分子の個々の部分の活性は、個々の部分を一緒に保持している結合の切断又は破壊時に解放される。本開示のプロ分子は、グランザイムの活性を阻害しない。
【0020】
「酵素活性化」という用語は、その挙動が酵素によって修飾される分子を指す。多くの活性化酵素は、国際生化学分子生物学連合の命名法委員会(NC-IUBMB)において、ヒドラーゼEC3.1~EC3.13又はペプチダーゼEC3.4~3.99のクラスに該当する。例示的な酵素活性としては、エーテル、ペプチド、炭素-窒素、酸無水物、炭素-炭素、ハロゲン化物、リン-窒素、硫黄-窒素、炭素-リン、硫黄-硫黄、炭素-硫黄型の結合に作用するものが挙げられる。
【0021】
「非標準アミノ酸」という用語は、ポリペプチド内の天然に存在するアミノ酸残基の代わりにポリペプチドのペプチド骨格に組み込むことができる天然に存在するアミノ酸分子以外の任意の分子を意味する。そのような非標準アミノ酸の非限定的な例としては、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、又は他のものが挙げられる。
【0022】
「修飾アミノ酸」という用語は、翻訳後修飾などの化学的又は生化学的修飾を受けた任意の天然に存在するアミノ酸を意味する。修飾アミノ酸の非限定的な例としては、メチル化アミノ酸、(例えば、メチルヒスチジン、メチル化リジン)アセチル化アミノ酸、アミド化アミノ酸、ホルミル化アミノ酸、ヒドロキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸、又は他のものが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ホモログ」又は「バリアント」は、それらのアミノ酸配列に基づいて類似しているタンパク質配列を指す。ホモログ及びバリアントには、1つ以上の保存的アミノ酸置換によって天然に存在する配列と異なるタンパク質が含まれる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」という用語は、類似の化学特性を有する別のアミノ酸残基に対するアミノ酸残基の置換を意味する。
【0025】
本明細書で使用される「治療」という用語は、対象を苦しめている疾患又は症状に関連する症候が少なくとも改善されることを意味し、その場合、改善とは、治療されている疾患又は症状に関連するパラメーター、例えば、症候の大きさの少なくとも軽減を指す。したがって、治療には、症状、又は少なくともそれに関連する症候が軽減又は回避される状況が含まれる。
【0026】
本開示全体を通して、一文字又は三文字のコードに従ったアミノ酸への言及がなされることが理解されよう。読者の便宜のために、一文字及び三文字のアミノ酸コードを以下に提供する。加えて、以下に提供するアミノ酸残基は、それらの化学特性に基づいてカテゴリーに分けられる。以下の表に示される見出し(非極性、疎水性;極性、非荷電性;極性、酸性;及び極性、塩基性)は、特定された化学的性質を有するアミノ酸残基を一般に指すために使用される。
【表1】
【0027】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらのアナログを指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、直鎖状及び環状の核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、及びプライマーが挙げられる。
【0028】
「異種」という用語は、異なる供給源に由来し得る構造によって定義される2つの成分を指す。例えば、「異種」がポリペプチドの文脈で使用される場合、該ポリペプチドは、異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドに由来し得る作動可能に連結されたアミノ酸配列(例えば、第1のポリペプチドからの第1のアミノ酸配列及び第2のポリペプチドからの第2のアミノ酸配列)を含む。同様に、キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの文脈における「異種」には、異なる遺伝子に由来し得る作動可能に連結された核酸配列(例えば、本明細書に開示される実施形態によるペプチドの第1の部分をコードする核酸からの第1の成分及び本明細書に開示されるペプチドの第2の部分をコードする核酸からの第2の成分)が含まれる。
【0029】
アミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列(例えば、抗菌ペプチドに由来するポリペプチド)の文脈における「由来」とは、ポリペプチド又は核酸が参照ポリペプチド又は核酸の配列に基づく配列を有することを示すことを意味し、タンパク質又は核酸が作製される供給源又は方法に関して限定することを意味しない。
【0030】
「作動可能に連結された」という用語は、所望の機能を提供するための分子間の機能的連結を指す。例えば、ポリペプチドの文脈における「作動可能に連結された」とは、ポリペプチドの記載された活性を提供するための(例えば、異なるドメインの)アミノ酸配列間の機能的連結を指す。核酸の文脈における「作動可能に連結された」とは、転写、翻訳などの所望の機能を提供するための核酸間の機能的連結、例えば、核酸発現制御配列(例えばプロモーター、シグナル配列、又は転写因子結合部位のアレイ)と第2のポリヌクレオチドとの間の機能的連結であって、発現制御配列が第2のポリヌクレオチドの転写及び/又は翻訳に影響を与える、機能的連結を指す。
【0031】
ポリペプチドの構造の文脈において本明細書で使用される場合、「N末端」及び「C末端」は、それぞれ、ポリペプチドの末端のアミノ末端及びカルボキシル末端を指し、一方、「N末端方向」及び「C末端方向」は、それぞれ、ポリペプチドのアミノ酸配列におけるN末端及びC末端に向かう相対的な位置を指し、それぞれ、N末端及びC末端の残基を含み得る。「隣接N末端」又は「隣接C末端」は、第1及び第2のアミノ酸残基が共有結合して連続したアミノ酸配列を提供する、第2のアミノ酸残基に対する第1のアミノ酸残基の位置を指す。
【0032】
「単離された」とは、天然に存在する場合、それが天然に存在し得る環境とは異なる環境にある、目的のタンパク質(例えば、膜相互作用ペプチド)を指す。「単離された」とは、目的のタンパク質が実質的に濃縮されている、かつ/又は目的のタンパク質が部分的若しくは実質的に精製されているサンプル内のタンパク質を含むことを意味する。タンパク質が天然に存在しない場合、「単離された」とは、タンパク質が、合成又は組換え手段のいずれかによって作製された環境から分離されたことを示す。
【0033】
「濃縮された」とは、サンプルが(例えば、実験者若しくは臨床医によって)非自然的に操作されていることであって、目的のタンパク質が、生物学的サンプル(例えば、そのタンパク質が天然に存在するか、若しくはそれが投与後に存在するサンプル)、又はそのタンパク質が作製されたサンプル(例えば、細菌タンパク質など)などの出発サンプル中のタンパク質の濃度よりも高い濃度で存在することを意味する。
【0034】
「実質的に純粋な」とは、ある実体が組成物の全含有量(例えば、組成物の全タンパク質)の約50%超、又は全タンパク質含有量の約60%超を占めることを示す。例えば、「実質的に純粋な」ペプチドとは、全組成物の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、又はそれ以上が、全タンパク質の目的の実体(例えば、95%、98%、99%、99%超)である組成物を指す。タンパク質は、組成物中の全タンパク質の約90%超、又は約95%超を占めることができる。
【0035】
「結合」という用語は、塩橋及び水橋などの相互作用を含む、共有結合、静電結合、疎水結合、及びイオン結合及び/又は水素結合相互作用による、2つの分子間の直接会合を指す。
【0036】
本明細書で使用される「求核性部分」という用語は、求核性反応性基を含む官能基を指す。求核性反応性基は、求電子剤と反応することができる少なくとも1対の自由電子を含む。求核性部分の例としては、硫黄求核剤、例えばチオール、チオレートアニオン、チオールカルボキシレートのアニオン、ジチオカーボネートのアニオン、及びジチオカルバメートのアニオン;酸素求核剤、例えば水酸化物アニオン、アルコール、アルコキシドアニオン、及びカルボキシレートアニオン;窒素求核剤、例えばアミン、アジド、及び硝酸塩、並びに炭素求核剤、アルキル金属ハロゲン化物及びエノールが挙げられる。
【0037】
本明細書で互換的に使用される「患者」又は「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト動物、例えば、ヒト、霊長類、家畜及び農場動物、並びに動物園、スポーツ、実験室、又はペット動物、例えばウマ、ウシ、イヌ、ネコ、げっ歯類などを含む哺乳動物を指すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の本開示をより詳細に説明する前に、方法及び組成物は、記載された特定の実施形態に限定されず、したがって、当然、そのようなものは変化し得ることを理解されたい。また、方法及び組成物の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0039】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びこの記載の範囲内の任意の他の記載される値又は中間値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、個別により小さい範囲に含まれてもよく、記載の範囲において任意の具体的に除外された限界に従って、同様に本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0040】
本明細書では、数値の前に「約」という用語が付けられて、特定の範囲が提示される。本明細書では、「約」という用語は、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近い、又は近似する数について文字通りの支持を提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか、又は近似するかどうかを判定するとき、その近い又は近似する列挙されない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙されている数の実質的な等価物を提供する数であり得る。
【0041】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の発明と類似又は同等の任意の発明も、本発明の実施又は試験に使用され得るが、代表的な例示的な方法及び材料が、以下に記載される。
【0042】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許は、各個々の刊行物又は特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用する材料及び/又は方法に関連して開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。いずれの刊行物の引用も、出願日以前のその開示に対するものであり、提示された刊行物の日付は、別個に確認する必要があり得る実際の公開日と異なる可能性があるため、本発明がそのような刊行物に先立する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0043】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、あらゆる任意選択的要素を除外するように起草され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」及び「のみ(only)」などの排他的用語の使用のための、又は「消極的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0044】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態では組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴はまた、別個に又は任意の適切なサブコンビネーションで提供され得る。実施形態の全ての組み合わせが本開示によって具体的に包含され、そのような組み合わせが操作可能なプロセス及び/又は組成物を包含する限り、各々及び全ての組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたかのように本明細書に開示される。加えて、そのような可変部を説明する実施形態に列挙されている全てのサブコンビネーションもまた、本発明によって具体的に包含され、各々及び全てのそのようなサブコンビネーションが本明細書に個別にかつ明示的に開示されたかのように本明細書に開示される。
【0045】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明及び例証される個々の実施形態の各々は、本方法の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、又は組み合わせられ得る個別の要素及び特徴を有する。任意の列記された方法は、記載されたイベントの順序で、又は論理的に可能な他の順序で実施され得る。
【0046】
概要
本開示は、一般に、特定の生物学的活性、例えばタンパク質分解に関連する対象の領域を同定するために使用することができる活性化可能で検出可能な膜相互作用ペプチドを提供する。活性化後、本開示のプロ分子は、細胞膜などのリン脂質二重層と相互作用し、リン脂質二重層に挿入するアルファ-ヘリカル構造を形成することができる。本開示はまた、そのような化合物の使用方法を提供する。
【0047】
本開示の化合物は、例えば、グランザイム活性の評価に関する方法で使用される。例えば、酵素グランザイムによって切断可能な部分X2を有する活性化可能な膜相互作用ペプチドを対象に投与することができる。この例では、この分子を対象のグランザイム活性領域に曝露すると、X2での切断が起こり、部分Aを含有する切断産物を生成し、この切断産物はグランザイム活性領域でリン脂質二重層に挿入可能である。リン脂質二重層におけるこの切断産物の検出は、部分X1aを介して部分Aに結合した検出可能な部分をイメージングするために、グランザイム活性に関連していると疑われる組織をイメージングすることによって達成することができる。対象におけるグランザイム活性の存在はまた、部分X1bとして結合した部分によって促進され得る部分Zを含有する切断産物の検出によって、定性的及び/又は定量的に評価することができる。
【0048】
本開示の組成物は、例えば、対象内の活性凝固、感染、又は悪性腫瘍の直接イメージングする際の使用を含む、様々な方法において使用され得る。
【0049】
制限付き相互作用ペプチド
本開示のプロ分子は、N末端からC末端又はC末端からN末端へ、一般構造
A-X2-Z
を有し、
式中、
Aは、複数の非極性疎水性アミノ酸残基を有する膜相互作用ペプチド領域であって、組成物からの切断後に、リン脂質二重層と相互作用可能なアルファ-ヘリカル構造を含む、膜相互作用ペプチド領域であり、
Zは、阻害ペプチド領域であって、部分Aの活性を阻害することができ、いくつかの実施形態では、プロ分子と特定の酵素との標的相互作用を促進することができる、阻害ペプチド領域であり、
X2は、グランザイム切断可能なリンカーであって、化合物から切断産物を放出するために切断することができる、グランザイム切断可能なリンカーである。
【0050】
X
2における組成物のグランザイム媒介切断の前に、組成物は、リン脂質二重層と有意に又は検出可能に会合しないプロ分子として機能する。X
2のグランザイム媒介切断は、部分Aを含む切断産物及び部分Zを含む切断産物の形成をもたらす。X
2のグランザイム媒介切断の後、部分Aを含む切断産物は、今や部分Zによって拘束されず、リン脂質二重層(例えば、細胞膜)と自由に相互作用し、したがって、切断促進環境に関連する部位に蓄積する(
図1のパネルA)。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示のプロ分子は、N末端からC末端又はC末端からN末端へ、一般構造
X1a-A-X2-Z-X1b
を有し、
式中、
A、X2、及びZは、上記のとおりであり、
X1a及びX1bは、様々な部分の化合物へのコンジュゲーションを容易にする任意に存在する化学ハンドルである。
【0052】
部分A又は部分Zを含む切断産物の検出は、化学ハンドルX1a又はX1bを介して結合した検出可能な部分の検出によって、又は他の方法、例えば、切断産物のアミノ酸配列に特異的に結合する抗体を使用した検出によって達成することができる。
【0053】
本開示の化合物及び方法の様々な特徴を以下により詳細に説明する。
【0054】
インタクト構造X1a-A-X2-Z-X1bの全長は、所与の分子を組み立てるために使用される個々の部分のサイズに基づいて変化し得る。いくつかの実施形態では、インタクト構造の全体のサイズは、長さが最大約15個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、インタクト構造の全長は、長さが、最大約20個、最大約30個、最大約40個、最大約50個、最大約60個、最大約70個、最大約80個、最大約90個、最大約100個、又は最大約110個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、インタクト構造の全長は、長さが約15~約20個、約20~約30個、約30~約40個、約40~約50個、約50~約60個、約60~約70個、約70~約80個、約80~約90個、約90~約100個、又は約100~約110個のアミノ酸であり得る。インタクト構造の全長は、約115個以下のアミノ酸の長さである。
【0055】
インタクト構造X1a-A-X2-Z-X1bは、本明細書では「プロ分子」と称されてもよい。プロ分子の部分Aは、プロ分子中に部分Zが存在するため、リン脂質二重層と有意に相互作用しない。理論に縛られることなく、部分Zは、部分Aと部分Zが部分X2によって一緒に連結されるときに、部分Aがアルファ-ヘリカル構造を形成するのを防ぐことによって、部分Aのリン脂質二重層相互作用特性を阻害する。X2の切断後、部分Zは部分Aから分離され、部分Aを含む切断産物が、少なくとも部分Aがアルファ-ヘリカル構造のような規則的な構造を形成することができるようなコンフォーメーション変化を受けることを可能にする。アルファ-ヘリカル構造では、部分Aは、例えば、リン脂質二重層に挿入することによって、リン脂質二重層と自発的に相互作用する。
【0056】
当業者であれば、本開示のプロ分子は、例えば、切断を提供する条件が異なるグランザイム切断可能なリンカーを提供することによって、様々な設定での使用に適合させることができることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、プロ分子は、N末端からC末端又はC末端からN末端の構造であるA-X2-Zを有する。いくつかの実施形態では、プロ分子は、N末端からC末端又はC末端からN末端の構造であるX1a-A-X2-Zを有する。いくつかの実施形態では、プロ分子は、N末端からC末端又はC末端からN末端の構造であるA-X2-Z-X1bを有する。いくつかの実施形態では、プロ分子は、N末端からC末端又はC末端からN末端の構造であるX1a-A-X2-Z-X1bを有する。本明細書に開示されるように、部分X1a、A、X2、Z、及びX1bの様々な実施形態は、上記の特徴のうちのいずれかを有する分子を形成するために自由に交換され得る。いくつかの実施形態では、検出感度又は薬理学的特性を増強するために、X1a又はX1bの複数のコピーを組み込んでもよい。
【0057】
制限付き相互作用ペプチドの特性
上記のように、本開示のプロ分子は、一般構造X1a-A-X2-Z-X1bを有する。膜相互作用部分(部分A)が活性化前に細胞膜と相互作用するのを防止するために、プロ分子は、7以下の等電点(pI)を有するように設計される。等電点とは、ペプチド分子上の正味電荷がゼロであるpHである。本開示の全長プロ分子のpIは、プロ分子を構成する個々の部分X1a、A、X2、Z、若しくはX1bのうちの1つ以上のpIを調整することによって、又は化合物のいずれか若しくは全ての部分を化学修飾することによって(例えば、リン酸化若しくは硫酸化により追加の負電荷を付与することによって)調節され得る。
【0058】
ペプチドのpIは、ペプチドの全体の正味電荷を変化させるために、アミノ酸残基を置換、排除、又は導入することによって調節することができる。ペプチドの正味電荷を減少させると、そのpI値が低下する。例えば、1つ以上の正に荷電したアミノ酸残基(例えば、K、R、若しくはH)を除去したり、又はそのような残基を荷電していない若しくは負に荷電した残基で置き換えたりすると、ペプチドのpI値が低下する。
【0059】
所与のペプチドのpIは、pI推定用のコンピュータアルゴリズム(例えば、Protein Calculator、Scripps Institute)を使用することによって容易に決定することができる。そのようなコンピュータアルゴリズムは、インターネットを介して一般に容易に利用可能であり、そのアミノ酸配列に基づいてペプチドの理論的なpI値を決定することができる。本開示のプロ分子は、7以下の理論上のpI値を有するように設計される。
【0060】
本開示のプロ分子は、一般に、好ましくは、約ゼロ以下の全体の正味電荷を有するように設計される。これは、例えば、部分A若しくは部分Zのポリペプチド配列中の種々のアミノ酸残基を置換、除去、若しくは導入することによって、又は部分Zに荷電部分を導入することによって、プロ分子の全体の電荷を中和することによって達成され得る。他のアミノ酸残基又は化学的部分の電荷を中和するために導入される荷電アミノ酸残基又は部分は、電荷相殺効果を最大にするために、可能な限り互いに近接して、例えば、約40オングストローム以下の距離で配置される。いくつかの実施形態では、本開示のプロ分子は、例えば、リン脂質膜に膜相互作用セグメントが自発的に挿入する傾向が制限されている場合、全体の電荷が約ゼロ以下である必要はない。
【0061】
本開示のプロ分子に任意選択でコンジュゲートされたカーゴ部分は荷電されていてもよく、したがって、プロ分子のpI値及び全体の正味電荷に影響を及ぼし、したがって膜相互作用活性の制限に影響を及ぼすことができる。プロ分子に添加された特定のカーゴ部分上の電荷は、一般に、それがコンジュゲートされるプロ分子の全体の正味電荷を相殺又は中和し、全体のpIを7以下の値に低下させる。例えば、+1の全体の正味電荷を有するプロ分子は、-1の電荷を有する検出可能な部分にコンジュゲートして、ゼロの全体的な正味電荷を有する分子を生成することができる。Cy3、Cy5、及びCy7を含むシアニン色素ファミリーのものなどの水溶性蛍光色素は、2つの負に荷電した硫酸基及び第3級アミン基からの両性イオン性の性質であるために、この点で特に有用である。放射性同位体のガリウム-68又はテクネチウム-99mに結合することができる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)又はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などの金属キレート部分もまた両性イオンであり、複数の正及び負に荷電した部分を有する。DOTA又はDTPAへの金属結合は、アミン基を通して生じ、したがって、これらの実体は最大-4の電荷を付与することを可能にする。
【0062】
部分Aがリン脂質二重層と相互作用するのを阻害又は防止する部分Zの能力は、部分Zの全長を変更することによって調節することもできる。これは、例えば、部分Zにアミノ酸残基を付加することによって、又は部分Zに水溶性ポリマーなどの分子をコンジュゲートすることによって行うことができる。いくつかの実施形態では、負に荷電したアミノ酸又はリン酸塩若しくは硫酸塩部分などの類似の化学的修飾が部分Zに添加される。いくつかの実施形態では、部分Zの長さを増加させ、活性化前に部分Aが細胞膜と相互作用するのを阻害する能力を増強するために、ポリエチレングリコールが部分Zにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、全タンパク質(例えば、アルブミン)が、部分Zにコンジュゲートされてもよい。ある特定の実施形態では、部分Zにコンジュゲートされるポリマー又はタンパク質は、プロ分子の循環半減期を増加させ得る。いくつかの実施形態では、本開示のプロ分子は、分岐、デンドリマー、又はそうでなければ多価アーキテクチャを有するポリマーにコンジュゲートされ得る。
【0063】
部分A-膜相互作用ペプチド
本開示の膜相互作用ペプチドは、例えば、水よりも低い誘電率を有する環境に接触すると、アルファ-ヘリカル構造を形成することができるアミノ酸配列を含む。X2のグランザイム媒介切断後、部分Aを含む切断産物は、切断促進環境の近傍でリン脂質二重層に挿入可能なアルファ-ヘリカル構造を含む。理論に縛られることなく、部分Aのアルファ-ヘリカル構造は、切断前に分子中に存在し得るが、部分Zによる制約のために、リン脂質二重層に挿入することができない。部分A及び/又は部分Zの存在は、部分Aが、リン脂質二重層への有意な又は検出可能な挿入を可能にするのに十分なアルファ-ヘリカル構造を形成しないように、部分Aを拘束する。
【0064】
アルファヘリックスは、タンパク質の二次構造における共通のモチーフであり、一般に、水素結合によって安定化される右利きのコイル状又はらせん状の立体構造を含み、この場合、第1のアミノ酸残基のN-H基が、ポリペプチド鎖内の4残基離れた場所に位置するアミノ酸残基のC=O基と水素結合を形成する。典型的なアルファヘリックスは、ヘリックス1ターン当たり約3.6個のアミノ酸残基を含み、密集した構造をしている。アルファヘリックスを構成するアミノ酸残基の側鎖は、ヘリックスの外側を向いている。異なるアミノ酸配列は、アミノ酸側鎖の異なる化学特性に一部起因して、アルファヘリックスを形成するための異なる傾向を有する。
【0065】
上記のように、本開示のプロ分子は、一般に、膜相互作用ペプチド部分Aを含む。部分Aは、天然に存在するポリペプチドに由来し得るか、又は天然に存在するポリペプチドのバリアントであり得る。部分Aの全長は、例えば、約5~約10個のアミノ酸であり得るか、又は最大約15個、最大約20個、最大約25個、又は最大約30個のアミノ酸であり得る。部分Aのサイズは、長さが約5~約10個のアミノ酸の範囲であり得るか、長さが約10~約15個、約15~約20個、約20~約25個、又は約25~約30個のアミノ酸であり得る。部分Aの長さは約35個以下のアミノ酸残基である。
【0066】
膜相互作用ペプチドは、一般に、複数の非極性疎水性アミノ酸残基(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、又はプロリン)を含むが、極性非荷電性、極性酸性、及び/又は極性塩基性アミノ酸残基などの他のタイプのアミノ酸も含み得る。一般に、本開示の膜相互作用ペプチドは、5個未満の極性塩基性アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、部分Aのアミノ酸配列は、1~2個の連続した極性非荷電性、極性酸性、又は極性塩基性残基の領域が点在する2~3個の連続した非極性疎水性アミノ酸残基の複数の領域を含む。X2の切断後、部分Aは立体構造変化を受け、典型的には、細胞膜(例えば、真核生物、原核生物若しくは古細菌生物の細胞内に存在する膜、又は合成ポリマーを含む様々な組成の界面活性剤ミセル若しくはリポソームの人工膜)と容易に相互作用するアルファ-ヘリカル構造を形成する。
【0067】
抗菌ペプチド
膜相互作用を介してその効果を誘発する抗菌ペプチドは、当該技術分野で周知であり、ヨーロッパアカガエル(Rana temporaria)種に属するカエルの皮膚から天然に得ることができるタンパク質のtemporinファミリーなどの例を含む。抗菌ペプチドは、一般に、約30未満のアミノ酸残基を含み、生理学的条件下で、細胞膜のリン脂質二重層との相互作用を促進する非極性疎水性アミノ酸残基を有するアルファ-ヘリカル構造を含む。そのような相互作用は、一般に、構造化された樽板孔から広範に定義された洗剤様挙動に及ぶタイプを含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、天然に存在する抗菌ペプチドのアミノ酸配列が、膜相互作用ペプチドとして利用される。他の実施形態では、天然に存在する抗菌ペプチドに対する修飾、例えば、1つ以上のアミノ酸残基の除去、導入、若しくは置換、ジスルフィド結合などの化学修飾の付加、又は他の化学修飾(例えば、アミド化)を含む膜相互作用ペプチドが、膜相互作用ペプチドとして利用される。他の実施形態では、ペプチド配列は、自発的な膜相互作用及び/又は挿入が可能であるが、膜破壊活性とは関連していない。
【0068】
抗菌ペプチドの例が以下に提供される。
【0069】
膜相互作用ペプチドへの修飾
抗菌ペプチド又はその一部は、それらの天然に存在する形態で本開示の化合物に組み込まれてもよく、又はそれらの化学特性を変化させ、そのようなものを所望の用途に適合させるために修飾されてもよい。例えば、抗菌ペプチドの膜相互作用能は、例えば、タンパク質配列中の特定のアミノ酸残基を付加、除去、又は置換することによって、強化又は弱化され得る。そのような付加、除去、又は置換は、例えば、荷電アミノ酸残基を導入するため、荷電アミノ酸残基を排除するため、疎水性アミノ酸残基を導入するため、疎水性アミノ酸残基を除去するためなどに行うことができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗菌ペプチド配列は、ジスルフィド結合又は他の化学修飾(例えば、アミド化)でペプチドを化学的に修飾することによって変更され得る。多くの抗菌ペプチドは、リン脂質膜との相互作用の効力及びタンパク質分解に対する耐性を改善するために、そのような修飾を伴って天然に産生される。
【0071】
Temporin
いくつかの実施形態では、部分Aは、Temporinファミリー由来のタンパク質を含む。Temporinファミリーにおけるタンパク質は、一般に、長さが約10個~約14個のアミノ酸の範囲である。各位置に見出される最も豊富なアミノ酸を示すタンパク質のTemporinファミリーのコンセンサス配列は、FLP(I/L)IASLL(S/G)KLL(配列番号8)である。各位置に見出される一般的なアミノ酸タイプを示すタンパク質のTemporinファミリーのコンセンサス配列は、XaXbXcXdXeXfYaXgXhYbY*XiXjであり、式中、Xa、Xb、Xc、Xd、Xe、Xf、Xg、Xh、Xi、及びXjが、疎水性アミノ酸残基であり、Ya及びYbが、親水性アミノ酸残基であり、Y*が、荷電アミノ酸残基である。以下の表は、本開示のプロ分子及び方法に有用ないくつかのTemporin及びTemporin様ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0072】
上記のように、抗菌ペプチド配列は、アミノ酸残基のうちの1つ以上を除去又は置換することによって変更され得る。例えば、いくつかの実施形態では、膜相互作用ペプチドは、アミノ酸配列がFVQWFSKFLGRIL(配列番号1)であるTemporin-Lを含む。他の実施形態では、膜相互作用ペプチドは、アミノ酸配列FVQWFSKFLGKLL(配列番号2)を有するTemporin-Lの誘導体を含み、ここで、Temporin-L配列の11位及び12位のアミノ酸残基R及びIは、それぞれ、アミノ酸残基K及びLで置換されている。いくつかの実施形態では、膜相互作用ペプチドは、アミノ酸配列FVQWFSKFLGK(配列番号3)を有するTemporin-Lの誘導体を含み、ここで、Temporin-L配列の11位のアミノ酸残基Rは、アミノ酸残基Kで置換されており、Temporin-L配列の12位及び13位のアミノ酸残基I及びLは存在しない。
【表2-1】
【表2-2】
【0073】
本開示のいくつかの実施形態では、膜相互作用ペプチドは、表1に列挙されるTemporin若しくはTemporin様ペプチド、又はその保存的アミノ酸置換を含む。本開示のいくつかの実施形態では、膜相互作用ペプチドは、Temporin-L(FVQWFSKFLGRIL;配列番号1)の配列、又はその保存的アミノ酸置換を含む。
【0074】
Protonectin(プロトネクチン)
本開示のいくつかの実施形態では、膜相互作用ペプチドは、アミノ酸配列ILGTILGLLKGL(配列番号5)を有するProtonectin、又はその保存的アミノ酸置換を含む。
【0075】
Japonicin(ジャポニシン)
いくつかの実施形態では、膜相互作用ペプチドは、表2に列挙されるJaponicin若しくはJaponicin様ペプチド、又はその保存的アミノ酸置換を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、膜相互作用ペプチドは、Japonicin-1(FFPIGVFCKIFKTC;配列番号38)の配列、又はその保存的アミノ酸置換を含む。Japonicinは、ニホンアカガエル(Rana japonica)の皮膚から天然に取得することができ、長さは約14~約21個のアミノ酸残基に及ぶ。以下の表は、本開示のプロ分子及び方法に有用ないくつかのJaponicin及びJaponicin様ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【表3】
【0076】
本開示のいくつかの実施形態では、膜相互作用ペプチドは、表2に列挙されるJaponicin若しくはJaponicin様ペプチド、又はその保存的アミノ酸置換を含む。
【0077】
追加のペプチド
上記のペプチドに加えて、本開示のプロ分子は、以下の表に列挙される膜相互作用ペプチド、又はその保存的アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施形態では、以下の表に列挙されるペプチドは、それらの活性を調節し得るN末端及び/又はC末端修飾を含む。
【表4】
【0078】
部分Z-膜相互作用阻害ペプチド
本開示の化合物は、概して、部分Zを含み、これは、部分X2を介して部分Aに連結されたときに、部分Aがリン脂質二重層と相互作用することを阻害又は防止する。いくつかの実施形態では、部分Zはまた、プロ分子と標的酵素との相互作用を促進する。
【0079】
部分Zは、一般に、長さが約2~約15個のアミノ酸残基を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、部分Zは、最大約5個、最大約10個、最大約15個、最大約20個、最大約25個、最大約30個、最大約35個、最大約40個、最大約45個、又は最大約50個のアミノ酸の長さである。いくつかの実施形態では、部分Zは、長さが約2~約5個、約5~約10個、約10~約15個、約15~約20個、約20~約25個、約25~約30個、約30~約35個、約35~約40個、約40~約45個、又は約45~約50個のアミノ酸の範囲である。部分Zは、長さが約55個以下のアミノ酸である。
【0080】
部分Zは、任意のタイプのアミノ酸残基を含み得る。いくつかの実施形態では、部分Zは、任意選択で、X2の切断後の部分Zの検出を容易にするために、検出可能な部分を含んでもよい。
【0081】
認識ドメイン
部分Zは、X2の切断及びその後の部分Aの活性化の調節を補助するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、部分Zは、X2を切断するグランザイムによって結合され得るアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、部分Zにおける特定のアミノ酸配列の認識は、グランザイムがX2を切断し、プロ分子を活性化できるようになる前に必要とされ得る。部分Zにおけるアミノ酸残基のいくつかは、部分Zと標的グランザイムとの間の相互作用の特異性を変えることなく、プロ分子の活性を調節するように調整され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、部分Zは、酵素的グランザイムアクチベーターの天然に存在する生理学的基質に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、部分Zは、酵素的グランザイムアクチベーターの生理学的基質と類似性を共有してもしなくてもよいコンビナトリアルペプチドライブラリーのスクリーニングの分析に由来するアミノ酸配列を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、部分Zは、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFW(配列番号55)を有するプロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)の配列、又はその保存的アミノ酸置換を含む。他の実施形態では、部分Zは、アミノ酸配列SFLLQDPNDQYEPFW(配列番号56)、又はその保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、部分Zは、アミノ酸配列QDPNDQYEPF(配列番号7)、又はその保存的アミノ酸置換を含む。
【0084】
X2-切断可能なリンカー
本開示のプロ分子では、部分Aは、切断可能なリンカーX2を介して部分Zに連結される。いくつかの実施形態では、X2は、単一の化学結合で部分Aを部分Zに連結するリンカーを含む。他の実施形態では、X2は、2つ以上の異なる化学結合を介して部分Aを部分Zに連結するキメラリンカーを含む。
【0085】
X2の切断は、部分Aを含有する第1の切断産物と部分Zを含有する第2の切断産物との2つの切断産物を生成する。一般に、X2は、予め選択された生理学的条件下で切断可能である。X2は、診断又は検出される症状に関連する環境に曝露されたときにプロ分子が選択的に切断されるように選択することができる。
【0086】
X2は、細胞の表面上に見出されるプロテアーゼ若しくは他の酵素によって切断に供されるか、又は診断若しくは検出されるべき症状、そのような免疫系活性化若しくは調節不全、又は他の症状若しくは因子を有する細胞の近くで放出される化学結合を含み得る。
【0087】
X2は、アミノ酸又はペプチドを含み得る。X2がペプチドを含む場合、ペプチドは、例えば、長さが約2~約5個、最大約10個、最大約15個、最大約20個、最大約25個、又は最大約30個のアミノ酸残基などの任意の適切な長さであり得る。いくつかの実施形態では、X2は、長さが約2~約5個、約5~約10個、約10~約15個、約15~約20個、約20~約25個、又は約25~約30個のアミノ酸である。X2は、長さが約35個以下のアミノ酸である。切断可能なペプチドは、プロテアーゼによって認識及び切断されるアミノ酸配列を含んでもよく、その結果、プロテアーゼのタンパク質分解作用がX2を切断する。
【0088】
酵素的に切断可能なリンカー
グランザイム活性の存在などの特定の条件による切断のためのX2の設計は、そのような条件が見出される特定の位置へのプロ分子活性化の標的化を可能にする。したがって、本開示の化合物がグランザイム活性領域又はグランザイム分泌免疫細胞の活性化領域に特異的標的化を提供する1つの方法は、グランザイムによって切断されるリンカー部分X2の設計によるものである。X2のグランザイム媒介切断後、切断産物A及びZが形成され、部分Aは、活性化の近傍で、細胞膜などのリン脂質二重層と自由に相互作用する。
【0089】
X2は、グランザイム切断可能なペプチドである。X2は、目的の任意のグランザイムによって切断可能であり得る。ペプチドが切断可能であり得るグランザイムの非限定的な例としては、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムH、グランザイムK、及びグランザイムMが挙げられる。ある特定の実施形態では、グランザイムは、グランザイムB、例えば、ヒトグランザイムB(UniProtKB-J3KPK2)、マウスグランザイムB(UniProtKB-P04187)などである。いくつかの実施形態では、X2は、アミノ酸配列IEPDVSQV(配列番号57)を有するヒトグランザイムB切断可能なペプチドである。このアミノ酸配列は、ヒト酵素グランザイムBによって特異的に切断される。ある特定の実施形態では、グランザイムは、グランザイムK、例えば、ヒトグランザイムK(UniProtKB-P49863)、マウスグランザイムK(UniProtKB-O35205)などである。いくつかの実施形態では、X2は、アミノ酸配列WAFRSRYH(配列番号58)を有するグランザイムK切断可能なペプチドである。このアミノ酸配列は、ヒト酵素グランザイムKによって特異的に切断される。ある特定の実施形態では、グランザイムは、グランザイムA、例えば、ヒトグランザイムA(UniProtKB-P12544)、マウスグランザイムA(UniProtKB-P11032)などである。ある特定の実施形態では、グランザイムは、グランザイムH、例えば、ヒトグランザイムH(UniProtKB-P20718)、ブタグランザイムH(UniProtKB-B8XTR8)などである。ある特定の実施形態では、グランザイムは、グランザイムM、例えば、ヒトグランザイムM(UniProtKB-P51124)、マウスグランザイムM(UniProtKB-O08643)などである。
【0090】
グランザイムによって切断可能なリンカー
いくつかの実施形態では、X2リンカーは、免疫応答に関与する酵素である酵素グランザイムによる切断を受けやすい。グランザイムは、宿主防御に関与するリンパ球(例えば、ナチュラルキラー細胞及び細胞傷害性Tリンパ球)の分泌小胞(すなわち、顆粒)内で主に発現される。リンパ球が標的細胞とドッキングした後、リンパ球は脱顆粒化し、顆粒酵素を細胞周囲空間に放出する。したがって、グランザイムを使用して、本開示のプロ分子を使用して、X2リンカーを切断し、グランザイム活性の検出又はナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞傷害性Tリンパ球(CTL)などの免疫細胞の活性化を標的化することができる。目的のグランザイムが存在する領域では、X2が切断され、部分Aが部分Zから放出され、部分Aが近傍の細胞膜と相互作用することを可能にする。
【0091】
いくつかの実施形態では、X2リンカーは、グランザイムBによって切断可能である。X2リンカーがグランザイムBによって切断可能である場合、いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列XmXnPDXoSXpXqを含み、式中、Xmは、V、L、又はIであり、Xnは、Eであり、Xoは、F、S、又はVであり、Xpは、T又はQであり、Xqは、Vである。いくつかの実施形態によれば、X2リンカーがグランザイムBによって切断可能である場合、リンカーは、アミノ酸配列IEPDVSQV(配列番号57)、LTYDFWIQ(配列番号65)、PQVDLYDK(配列番号66)、VVQDKHEI(配列番号67)、VYADSSEW(配列番号68)、TMADSQES(配列番号69)、GHIDHMXX(配列番号70)、LEQDVWIA(配列番号71)、LDPDNFKR(配列番号72)、XXPDFYLG(配列番号73)、MGPDAFNL(配列番号74)、LKDDMGXX(配列番号75)、IWFDYTLK(配列番号76)、XIGDNVEW(配列番号77)、XXXDQVNL(配列番号78)、PQADQWXX(配列番号79)、PSVDMXXX(配列番号80)、XNVDWTAP(配列番号81)、YGYDLQTA(配列番号82)、HGFDEAHN(配列番号83)、HSHDSWKA(配列番号84)、KQDDLMSE(配列番号85)、SFGDIMEM(配列番号86)、VNDDVKXX(配列番号87)、XXXDKQFT(配列番号88)、又はNDVDGGXX(配列番号89)を含み、Xは、任意のアミノ酸である。1つの非限定的な例では、グランザイムB切断可能なリンカーは、アミノ酸配列IEPDVSQV(配列番号57)を含む。本開示のプロ分子の切断可能なリンカーに含まれ得るグランザイムB切断可能な配列には、MEROPSデータベースに提供されるものが含まれる。www.ebi.ac.uk/merops/index.shtmlを参照のこと。Rawlings et al.(2018)Nucleic Acids Res 46,D624-D632も参照のこと。
【0092】
いくつかの実施形態では、X2リンカーは、グランザイムKによって切断可能である。X2リンカーがグランザイムKによって切断可能である場合、いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列XrXsFRSXtXuXvを有し、式中、Xrは、E又はWであり、Xsは、F、Y、又はAであり、Xtは、F、R、又はIであり、Xuは、Y、P、又はTであり、Xvは、W又はHである。1つの非限定的な例では、グランザイムK切断可能なリンカーは、アミノ酸配列WAFRSRYH(配列番号58)を含む。本開示のプロ分子の切断可能なリンカーに含まれ得るグランザイムK切断可能な配列には、MEROPSデータベースに提供されるものが含まれる。www.ebi.ac.uk/merops/index.shtmlを参照のこと。Rawlings et al.(2018)Nucleic Acids Res 46,D624-D632も参照のこと。
【0093】
いくつかの実施形態では、X2リンカーは、他のグランザイムによって切断され得る。1つの非限定的な例では、X2リンカーがグランザイムAによって切断可能である場合、リンカーは、アミノ酸配列ASPRAGGK(配列番号59)を含む。別の非限定的な例では、X2リンカーがグランザイムMによって切断可能である場合、リンカーは、アミノ酸配列KEPLSAEA(配列番号60)を含む。本開示のプロ分子の切断可能なリンカーに含まれ得る追加のグランザイム切断可能な配列には、MEROPSデータベースに提供されるものが含まれる。www.ebi.ac.uk/merops/index.shtmlを参照。Rawlings et al.(2018)Nucleic Acids Res 46,D624-D632も参照のこと。
【0094】
複数のリンカーの組み合わせ
いくつかの実施形態では、X2は、(例えば、酵素による)切断を受けやすい2つ以上の部位を提供するアミノ酸配列を含み、これらの部位のうちの少なくとも1つは、グランザイムによる切断を受けやすい。本開示の特徴を有する分子が、複数の切断部位を含むX2リンカーを含む場合、部分Aの部分Zからの分離は、X2リンカー内の複数の結合の切断を必要とし得、これは、同時に又は連続して行われ得る。そのようなX2リンカーは、異なる化学特性又は切断特異性を有する結合を含み得、そのため、部分Aの部分Zからの分離は、活性化が行われる前に、分子が2つ以上の条件又は環境(「細胞外シグナル」)に遭遇することを必要とする。切断部位は、同じであっても異なっていてもよく、異なっている場合は、本明細書では「キメラ」リンカーと称されてもよい。したがって、キメラX2リンカーの切断は、そのような細胞外シグナルの組み合わせの検出器として役立てられる。
【0095】
キメラX2リンカーは、所望の細胞、組織、又は領域に対する部分Aの標的化を更に調節するために使用され得る。細胞外シグナルのブールの組み合わせを使用して、X2の切断が起こる条件を広げたり狭めたりすることができる。キメラX2リンカーが部分Aを部分Zに連結するために使用される場合、キメラリンカー内の異なる化学結合は、並列又は直列に配置され得る。並列に配置された場合、部分Aが部分Zから分離し得る前に各結合が切断されなければならないため、切断条件は狭くなる。キメラリンカー内の化学結合が直列に配置されている場合、化学結合のいずれか1つの切断が部分Aと部分Zとの分離をもたらすため、切断条件は広がる。
【0096】
いくつかの実施形態では、キメラX2リンカーは、グランザイムによる切断を受けやすい部位と、第2のプロテアーゼ又は酵素による切断を受けやすい部位と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の酵素は、同じ又は異なるグランザイムである。
【0097】
いくつかの実施形態では、キメラX2リンカーは、グランザイムによる切断を受けやすい部位と、還元条件下で切断を受けやすい部位と、を含む。還元条件は、酸素濃度が低下した領域(すなわち、低酸素)、例えば、がん細胞及びがん組織を取り囲む領域、梗塞領域、及び他の低酸素領域において見出され得る。低酸素条件下で切断を受けやすい部位の例としては、ジスルフィド結合を含有する部位が挙げられる。低酸素環境では、遊離チオール及び他の還元剤が細胞外で利用可能になり、一方、通常は細胞外環境を酸化状態に維持する酸素が枯渇する。酸化還元バランスのこのシフトは、X2リンカー内のジスルフィド結合の還元及び切断を促進する。チオール-ジスルフィド平衡を利用するジスルフィド結合に加えて、還元環境において切断するように設計されたX2リンカーには、ヒドロキノンに還元されたときに切断されるキノンを含む結合を使用してもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、キメラX2リンカーは、グランザイムによる切断を受けやすい部位と、酸性環境下で切断を受けやすい部位と、を含む。酸性環境は、損傷組織又は低酸素組織の近くの部位に見出され得る。酸性環境で切断されやすい部位を利用して、本開示のプロ分子の酸性領域への活性化を標的化することができる。そのような標的化は、酸不安定性リンカーで達成することができる(例えば、X2にアセタール若しくはビニルエーテル結合、又は酸性条件下で切断される別の結合を含めることによって)。
【0099】
例えば、グランザイム又は低酸素の存在を検出するために(すなわち、グランザイム活性又は低酸素のいずれかの存在下でX2を切断するために)、キメラX2リンカーは、いずれかの結合の切断が部分Aを部分Zから分離するのに十分であるように、グランザイム感受性及び還元感受性化学結合を直列に設計される。
【0100】
代替的に、グランザイム活性及び低酸素の両方の存在を検出するために(すなわち、グランザイム活性及び低酸素の存在下でX2を切断するが、これらの条件のうちの1つのみの存在下では切断しない)、二重X2リンカー、例えば、キメラリンカーは、互いにジスルフィド結合されている少なくとも1対のシステインの間にグランザイム感受性結合を配置するように設計され得る(すなわち、キメラX2リンカー内の化学結合は、並列に配置される)。この場合、部分A及びZの分離を可能にするために、グランザイム切断及びジスルフィド還元の両方が必要である。
【0101】
ある特定の実施形態では、本開示のプロ分子は、以下の式(I)を有し得、式中、部分X
2はデュアルリンカーを含み、これはキメラリンカーであってもよく、かつ環状構造を有する。
【化1】
式中、X
1a、A、Z、及びX
1bは、本明細書に記載のとおりである。上記式(I)中、X
2a及びX
2bは、X
2のアミノ酸であり、X
2a及びX
2bは、独立して、任意のアミノ酸から選択されてもよく、X
2c及びX
2dは、切断可能なリンカー(例えば、酵素的に切断可能なリンカー)を提供するアミノ酸を含み、nは、1つ又は2つであり、m及びoは、少なくとも1つであり、1~30の範囲の整数から独立して選択されてもよく、p及びqは、各々少なくとも2であり、かつ2~30の範囲の整数から独立して選択されてもよく、X
2c及びX
2dによって提供される切断部位は、同じであっても異なっていてもよく、同じ又は異なる条件(例えば、同じ又は異なる酵素)による切断を受けやすくてもよく、例えば、本明細書に記載の切断可能なリンカーのいずれかから独立して選択されてもよい。X
2c及びX
2dは、各々、異なる条件下(例えば、異なる酵素)で切断を受けやすい切断可能なリンカーを定義するが、この分子は、キメラリンカーを含むものとして説明することができる。そのような組み合わせは、同じ又は異なるクラスの酵素を含み得る。
【0102】
式(I)の分子の合成は、標準的なペプチドカップリング化学を用いて行うことができる。例えば、式(I)の化合物の前駆体として、標準ペプチドカップリング化学を使用して、以下の式(II)の化合物を作製することができ、式中、X
2は、アスパラギン酸又はグルタミン酸及びリジン残基を含む。
【化2】
【0103】
ペプチドカップリング反応は、典型的には、従来のペプチドカップリング試薬を採用し、かつ典型的には、エチルジイソプロピルアミン又はジイソプロピルエチルアミン(DIEA)などのトリアルキルアミンの存在下で、従来のカップリング反応条件下で行われる。使用に適したカップリング試薬としては、カルボジイミド、例えば、エチル-3-(3-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)など、及び他の周知のカップリング試薬、例えばN,N’-カルボニルジイミダゾール、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)が挙げられる。任意選択で、周知のカップリングプロモーター、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAT)、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)などを、この反応に採用することができる。典型的には、このカップリング反応は、THF又はDMFなどの不活性希釈剤中で約1~約72時間、約0℃~約60℃の範囲の温度で行われる。
【0104】
化合物の調製のためのプロセスのいずれかの間に、関係する分子のいずれかの感受性基又は反応性基を保護することが必要であり、かつ/又は望ましい場合がある。これは、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”,Fourth edition,Wiley,New York 2006などの標準的な著作物に記載されているように、従来の保護基によって達成することができる。保護基は、当該技術分野で知られている方法を使用して、都合のよい後の段階で除去することができる。例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びリジン残基は、合成プロセス中に様々な保護基で保護することができる。使用される保護基の種類に応じて、脱保護における選択性を合成プロセス中に有利に使用することができる。当業者であれば、合成スキームに適切な保護基の種類を選択することができるであろう。
【0105】
環状構造を有する上記のデュアルリンカーは、アスパラギン酸又はグルタミン酸のカルボキシル側鎖をペプチド骨格のカルボキシルハンドルとして使用し、リジンのアミノ側鎖をペプチド骨格のアミノハンドルとして使用することによって合成することができる。式(I)の合成は、標準的なペプチドカップリング化学を使用して行うことができる。ペプチドカップリング反応は、典型的には、従来のペプチドカップリング試薬を採用し、上記のような従来のカップリング反応条件下で実施される。
【0106】
部分X1A及びX1B
本開示のプロ分子は、存在する場合、求核性部分を含み、プロ分子への1つ以上のカーゴ部分の結合を促進する任意選択の部分X1a及びX1bを含み得る。部分X1a及びX1bの求核性部分は、一般に、求電子剤と反応可能な少なくとも1つの自由電子対を含む求核性反応性基を含む。求核性部分の例としては、硫黄求核剤、例えばチオール、チオレートアニオン、チオールカルボキシレートのアニオン、ジチオカーボネートのアニオン、及びジチオカルバメートのアニオン;酸素求核剤、例えば水酸化物アニオン、アルコール、アルコキシドアニオン、及びカルボキシレートアニオン;窒素求核剤、例えばアミン、アジド、及び硝酸塩、並びに炭素求核剤、アルキル金属ハロゲン化物及びエノールが挙げられる。
【0107】
カーゴ部分は、例えば、様々なイメージングモダリティを介してプロ分子の検出を容易にし得る検出可能な部分であってもよく、又は例えば、疾患若しくは症状の治療を容易にし得る治療剤であってもよい。
【0108】
検出可能な部分の非限定的な例としては、蛍光色素及び放射性同位体が挙げられる。いくつかの実施形態では、2つ以上のカーゴ部分は、同じプロ分子(例えば、蛍光色素及び同じプロ分子に結合した放射性同位体)に結合してもよい。異なるカーゴ部分は、複数のモダリティを使用して同時に検出するために対合され得る。例えば、核イメージング剤を使用した非侵襲的検出を蛍光と組み合わせることで、強化された更に侵襲的(例えば、外科的)な検出のための追跡研究を可能にすることができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、蛍光色素を含み得る。本開示のプロ分子にコンジュゲートされ得る蛍光色素の非限定的な例としては、シアニン色素、例えばフルオレセイン、テトラメトキシルローダミン、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、若しくはCy7、IRdye800cw、又はATTO-TEC(商標)染料、例えばATTO680が挙げられる。適切なカーゴ部分はまた、近赤外線領域においてより長い波長を有する蛍光色素を含む。そのような色素は当該技術分野で知られており、かつ本開示の化合物に容易に組み込むことができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、金属キレート部分を含み得る。金属キレート部分の非限定的な例としては、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、1,4-ビス(カルボキシメチル)-6-[ビス(カルボキシメチル)]アミノ-6-メチル-ペルヒドロ-1,4-ジアゼピン(AAZTA)、デフェロキサミン(DFO)、3,4,3-(LI-1,2-HOPO)(HOPO)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、4,11-ビス-(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]-ヘキサデカン(CB-TE2A)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)が挙げられる。
【0111】
いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、放射性同位体、例えば、金属結合部分を介してキレート化された放射性同位体を含み得る。放射性同位体の非限定的な例としては、アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、臭素-76、臭素-77、カルシウム-47、炭素-11、炭素-14、クロム-51、コバルト-57、コバルト-58、銅-64、エルビウム-169、フッ素-18、ガリウム-67、ガリウム-68、水素-3、インジウム-111、ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、鉄-59、クリプトン-81m、鉛-212、ルテチウム-177、窒素-13、酸素-15、リン-32、ラジウム-223、ラジウム-224、サマリウム-153、セレン-75、ナトリウム-22、ナトリウム-24、ストロンチウム-89、テクネチウム-99m、タリウム-201、トリウム-226、トリウム-227、キセノン-133、又はイットリウム-9が挙げられる。いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、銅-64である。
【0112】
いくつかの実施形態では、検出可能な部分は、金属キレート部分DOTAにコンジュゲートされた放射性同位体の銅-64である。
【0113】
いくつかの実施形態では、カーゴ部分は、放射性同位体である。そのような実施形態では、カーゴ部分は、X線、蛍光透視法、血管造影法、陽電子放出断層撮影法(PET)、又は単一陽電子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)を使用して検出され得、ここで、細胞、組織、又は対象全体が、イメージングモダリティのフィールドに配置され、可視化される。
【0114】
いくつかの実施形態では、切断産物の検出は、生物レベルで行われる。いくつかの実施形態では、検出は、標的領域内で実行される。いくつかの実施形態では、検出は、注射から0.5~24時間後など、投与後の延長された時点(例えば、静脈内投与後などの注射後)で行われる。いくつかの実施形態では、検出は、投与後、例えば、注射後の複数の時点で行われる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示の特徴を有する単一のプロ分子は、2つ以上のカーゴ部分を含んでもよく、その結果、部分Aは、複数の検出可能な部分に連結されてもよく、又は検出可能な部分と治療剤との両方に連結されてもよく、又は複数の治療剤に連結されてもよい。そのような複数の検出可能な部分は、異なるタイプのマーカーを含み、例えば、放射性同位体及び造影剤又は蛍光色素の両方の付着を可能にし、異なるモダリティによるイメージングを可能にし得る。
【0116】
部分X1a又はX1bを介してコンジュゲートされた検出可能な部分を含むプロ分子は、ある特定の条件を有する細胞又は特定の条件を示す領域内の細胞の可視化又は同定に使用することができる。例えば、グランザイム活性又はグランザイムを分泌する免疫細胞の活性化は、部分Aを含む切断産物が、グランザイム活性又は免疫細胞活性化の近傍の細胞膜と相互作用するように、グランザイムBなどの目的のグランザイムによって切断されるX2リンカーを設計することによって可視化され得る。部分Aと細胞膜との相互作用は、領域に放射性同位体又は他のマーカーを送達する。したがって、放射性同位体は、X2の切断時に、特定の領域内の標的細胞膜又はリン脂質二重層構造に送達され得るカーゴ部分の一例である。
【0117】
本開示のプロ分子にコンジュゲートすることができる治療剤の非限定的な例としては、アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、臭素-76、臭素-77、カルシウム-47、炭素-11、炭素-14、クロム-51、コバルト-57、コバルト-58、銅-64、エルビウム-169、フッ素-18、ガリウム-67、ガリウム-68、水素-3、インジウム-111、ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、鉄-59、クリプトン-81m、鉛-212、ルテチウム-177、窒素-13、酸素-15、リン-32、ラジウム-223、ラジウム-224、サマリウム-153、セレン-75、ナトリウム-22、ナトリウム-24、ストロンチウム-89、テクネチウム-99m、タリウム-201、トリウム-226、トリウム-227、キセノン-133、又はイットリウム-9などの放射性同位体が挙げられる。
【0118】
いくつかの実施形態では、特定の部分は、検出可能な部分と治療剤の両方として機能し得る。
【0119】
作製方法
本開示のプロ分子は、組換え及び非組換え(例えば、化学合成)方法を含むが、これらに限定されない、任意の適切な方法によって作製され得る。カーゴ部分は、求核性付加反応を含むが、これに限定されない、任意の適切な方法によってプロ分子にコンジュゲートされ得る。
【0120】
プロ分子の産生
本開示のプロ分子は、組換え及び非組換え方法(例えば、化学合成)を含む任意の適切な方法によって産生され得る。
【0121】
ポリペプチドが化学合成される場合、合成は、液相又は固相を介して進行し得る。固相合成(SPPS)は、非天然アミノ酸、ペプチド/タンパク質骨格修飾の組み込みを可能にする。Fmoc及びBocなどの様々な形態のSPPSは、本開示のペプチドを合成するために利用可能である。化学合成の詳細は、当該技術分野で知られている(例えば、Ganesan A.2006 Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JA et al.2005 Protein Pept Lett.12:723-8)。簡潔に述べると、小さい不溶性の多孔質ビーズは、ペプチド鎖が構築される機能単位で処理される。カップリング/脱保護のサイクルを繰り返した後、固相に結合したペプチド又はアミノ酸の遊離N末端アミンは、単一のN-保護アミノ酸単位にカップリングされる。次いで、この単位は脱保護され、新たなN末端アミンが現れ、そこに更なるアミノ酸が結合してもよい。ペプチドは、固相に固定化されたままであり、切断される前に濾過プロセスを受ける。
【0122】
ポリペプチドが組換え技術を使用して産生される場合、タンパク質は、任意の適切な構築物及び任意の適切な宿主細胞を使用して、細胞内タンパク質として又は分泌タンパク質として産生され得、この宿主細胞は、それぞれ、細菌(例えば、E.coli)又は酵母宿主細胞などの原核又は真核細胞であり得る。
【0123】
宿主細胞として使用することができる真核細胞の他の例としては、昆虫細胞、哺乳動物細胞、及び/又は植物細胞が挙げられる。哺乳動物宿主細胞が使用される場合、細胞は、ヒト細胞(例えば、HeLa、293、H9及びJurkat細胞)、マウス細胞(例えば、X3、NIH3T3、膵管腺がん2.1、L細胞、及びC127細胞)、霊長類細胞(例えば、Cos1、Cos7及びCV1)、並びにハムスター細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)のうちの1つ以上を含み得る。
【0124】
対象のポリペプチドの発現に適した広範囲の宿主ベクター系を、当該技術分野で知られている標準的な手順に従って採用してもよい。例えば、Sambrook et al.1989 Current Protocols in Molecular Biology Cold Spring Harbor Press,New York and Ausubel et al.1995 Current Protocols in Molecular Biology,Eds.Wiley and Sonsを参照のこと。宿主細胞への遺伝物質の導入方法としては、例えば、形質転換、エレクトロポレーション、コンジュゲーション、リン酸カルシウム法などが挙げられる。導入されたポリペプチドをコードする核酸の安定な発現を提供するように、移入方法を選択することができる。ポリペプチドをコードする核酸は、遺伝性エピソーム要素(例えば、プラスミド)として提供され得るか、又はゲノム的に組み込まれ得る。目的のポリペプチドの産生で使用するための様々な適切なベクターが市販されている。
【0125】
ベクターは、宿主細胞における染色体外維持を提供することができるか、又は宿主細胞ゲノムへの組み込みを提供することができる。発現ベクターは、転写及び翻訳調節配列を提供し、かつ誘導性又は構成的発現を提供し得、ここで、コード領域は、転写開始領域、並びに転写及び翻訳終結領域の転写制御下で作動可能に連結される。一般に、転写及び翻訳調節配列は、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列を含み得るが、これらに限定されない。プロモーターは、構成的又は誘導的のいずれかあり得、強力な構成的プロモーター(例えば、T7など)であり得る。発現構築物は、一般に、目的のタンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列の近くに位置する便利な制限部位を有する。発現宿主に作用する選択マーカーは、ベクターを含有する細胞の選択を容易にするために存在し得る。加えて、発現構築物は、追加の要素を含み得る。例えば、発現ベクターは、1つ又は2つの複製系を有してもよく、したがって、例えば、発現のために哺乳動物又は昆虫細胞において、並びにクローニング及び増幅のために原核生物宿主において、生物中でそれを維持することが可能になる。加えて、発現構築物は、形質転換宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含有し得る。選択可能な遺伝子は、当該技術分野で周知であり、使用される宿主細胞によって変化する。
【0126】
タンパク質及び/又は抗体の単離及び精製は、当該技術分野で知られている方法に従って達成することができる。例えば、タンパク質は、一般に、サンプルを抗タンパク質抗体と接触させ、洗浄して非特異的に結合した物質を除去し、特異的に結合したタンパク質を溶出することを伴う、免疫親和性精製によって、タンパク質を構成的に及び/又は誘導時にタンパク質を発現するように遺伝的に修飾された細胞の溶解物から、又は合成反応混合物から単離することができる。単離されたタンパク質は、透析及びタンパク質精製方法で通常採用される他の方法によって更に精製することができる。一実施形態では、タンパク質は、金属キレートクロマトグラフィー法を使用して単離され得る。本開示のタンパク質は、単離を容易にするための修飾を含有してもよい。
【0127】
主題ポリペプチドは、実質的に純粋な形態又は単離された形態で調製され得る(例えば、他のポリペプチドを含まない)。タンパク質は、存在し得る他の成分(例えば、他のポリペプチド又は他の宿主細胞成分)と比較して、ポリペプチドが濃縮された組成物中に存在し得る。精製されたタンパク質は、タンパク質が他の発現タンパク質を実質的に含まない組成物、例えば、組成物の98%未満、95%未満、90%未満、80%未満、60%未満、又は50%未満が他の発現タンパク質で構成される組成物中に存在するように提供されてもよい。
【0128】
カーゴ部分のポリペプチドへのコンジュゲーション
カーゴ部分は、求核性部分を利用する求核性付加反応を含むが、これに限定されない、任意の適切な技術を使用して、本開示のプロ分子にコンジュゲートされ得る。そのような反応の非限定的な例としては、硫黄求核剤、酸素求核剤、炭素求核剤、又は窒素求核剤と、適切な求電子剤との共有結合を形成する反応が挙げられる。
【0129】
任意選択の修飾
本開示のプロ分子は、一般に、例えば、より長い循環半減期、特定の解剖学的区画へのプロ分子の制限(例えば、心臓血管系への制限)、非特異的分解からの保護、及び/又は特定のイメージングモダリティに対する増強された感度を提供するように更に修飾され得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、2つ以上のプロ分子は、当該技術分野で知られている技術を使用して、中心分子、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)分子に連結されて、デンドリマーを形成してもよい。適切なPEG分子は、最大約1,000、最大約5,000、最大約10,000、最大約20,000、最大約30,000、又は最大約40,000ダルトンの分子量を有し得る。2つ以上のプロ分子の中心PEG分子へのコンジュゲーションは、例えば、1つ以上の末端で官能基を有するPEG分子を活性化し、次いで、活性化されたPEG分子を本開示の1つ以上のプロ分子と反応させることによって達成することができる。官能基の選択は、N末端アミン、C末端カルボン酸、又はリジン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、セリン、トレオニン、若しくは他の特定の反応部位などの残基などの、プロ分子上で利用可能な反応性基に依存する。直鎖状の単一アームPEG構造だけでなく、分岐状PEG構造も、そのような技術を使用して作製され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、一般式:X1a-A-X2-Z-X3(式中、X3は、PEG分子であり、X1a、A、X2、及びZは、上記のとおりである)を有する直鎖状の単一アームPEG構造が形成される。他の実施形態では、分岐状PEGデンドリマーは、当該技術分野で知られている技術を使用して形成され、ここで、本開示の2つ以上のプロ分子は、分岐状PEGデンドリマーにコンジュゲートされて、多価PEG構造を形成する。
【0132】
組成物
本開示のプロ分子のいずれかを含む組成物も提供される。この組成物は、本明細書の上記及び以下の実験セクションに記載されるプロ分子のいずれかを含む、本開示のプロ分子のいずれかを含み得る。
【0133】
ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、液体媒体中に存在する本開示のプロ分子のいずれかを含む。液体媒体は、水、緩衝溶液などの水性液体媒体であってもよい。塩(例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4)、緩衝剤(Tris緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス¥[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)など)、可溶化剤、洗剤(例えば、非イオン性洗剤、例えばTween-20など)、ヌクレアーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、グリセロール、キレート剤などの1つ以上の添加剤が、そのような組成物中に存在してもよい。
【0134】
本開示の態様は、医薬組成物を更に含む。本開示のプロ分子は、対象への投与に適切な(例えば、所望の経路による)様々な医薬組成物中に製剤化され得る。本開示のプロ分子を含む組成物は、薬学的に許容され得る医薬品添加剤を含み得、その多様性は、当該技術分野で知られており、本明細書で詳細に論じる必要はない。
【0135】
いくつかの実施形態では、本開示のプロ分子は、対象への非経口投与、例えば、静脈内投与のために製剤化される。薬学的に許容され得る医薬品添加剤は、例えば、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,19th Ed.(1995)、又は最新版,Mack Publishing Co;A.Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,20th edition,Lippincott,Williams,& Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds 7th ed.,Lippincott,Williams,& Wilkins;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assocを含む、多様な刊行物に十分に記載されている。
【0136】
場合によっては、主題医薬組成物は、対象への注射に適しており、例えば、無菌である。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、組成物が無菌であり、検出可能なパイロジェン及び/又は他の毒素を含まない場合、ヒト対象への注射に適している。
【0137】
主題医薬組成物は、他の成分、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩などを含み得る。組成物は、生理学的条件に近似させるために必要な薬学的に許容され得る補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、張性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、塩酸塩、硫酸塩、溶媒和物(例えば、混合イオン塩、水、有機物)、水和物(例えば、水)などを含み得る。
【0138】
本開示のプロ分子は、所定量の本明細書に開示されるプロ分子を含有する単位剤形に製剤化され得る。注射又は静脈内投与に適した単位剤形は、滅菌水、通常の生理食塩水、又は別の薬学的に許容され得る担体中の溶液として、組成物中に本開示のプロ分子を含み得る。
【0139】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒト及び動物対象の単位用量として適切な物理的に離散した単位を指し、各単位は、薬学的に許容され得る希釈剤、担体又はビヒクルと関連して所望の効果を生じるのに十分な量で計算される所定量の本開示のプロ分子を含む。本開示の単位剤形の仕様は、採用される特定のプロ分子及び達成される効果、並びに対象における各プロ分子に関連する薬力学に依存する。
【0140】
ビヒクル、アジュバント、担体、又は希釈剤などの薬学的に許容され得る医薬品添加剤は、一般に容易に入手可能である。更に、pH調整剤及び緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤などの薬学的に許容され得る補助物質は、公に容易に入手可能である。
【0141】
本開示のプロ分子もまた、患者への経口投与のために製剤化され得る。経口製剤については、プロ分子を単独で、又は適切な添加剤と組み合わせて使用して、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン又はジャガイモデンプンなどの従来の添加剤と、結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤と、トウモロコシデンプン、ジャガイモロコシデンプン又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤と、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤と、かつ必要に応じて希釈剤、緩衝剤、保湿剤、防腐剤、及び香味剤と、錠剤を作製することができる。
【0142】
本開示のプロ分子は、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤で利用され得るか、又はジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの許容され得る加圧推進剤に製剤化され得る。
【0143】
更に、本開示のプロ分子は、乳化塩基又は水溶性塩基などの様々な塩基と混合することによって座薬に作製され得る。本発明のプロ分子は、坐剤を介して直腸投与することができる。坐剤には、体温で融解するが、室温で固化するカカオバター、カルボワックス、及びポリエチレングリコールなどのビヒクルが含まれ得る。
【0144】
シロップ剤、エリキシル剤、及び懸濁剤などの経口又は直腸投与のための単位剤形が提供され得、ここで、各投与単位、例えば、小さじ量、大さじ量の錠剤又は坐剤は、所定量の本開示のプロ分子を含有する。同様に、注射又は静脈内投与のための単位剤形は、滅菌水、通常の生理食塩水、又は別の薬学的に許容され得る担体中の溶液として、組成物中に1つ以上のプロ分子を含み得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、本開示のプロ分子は、対象への、例えば、所望の作用部位において、又はその付近での局所投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、本開示のプロ分子は、特定の期間、所定の速度でプロ分子を所定の速度で放出するように設計された持続放出剤形に製剤化される。
【0146】
本開示のプロ分子はまた、対象に投与されたときにプロ分子の薬物動態プロファイルに影響を与える薬剤とともに製剤化されてもよい。そのような薬剤としては、ベラパミル又は他の等価物が挙げられる。
【0147】
投与経路
本開示の方法を実施する際に、投与経路は、送達されるプロ分子の特性、診断、検出、又は治療される症状のタイプ(例えば、凝固の検出)などの様々な要因のいずれかに従って選択され得る。本開示のプロ分子は、血流(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、及び/又は皮下投与などの非経口投与によって)又は特定の組織若しくは臓器(例えば、筋肉組織、心臓組織、血管組織など)へのプロ分子の送達を提供する投与経路によって送達され得る。注射は、非経口投与を達成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、プロ分子は、例えば、標的組織又は臓器への直接注射によって、罹患組織へのプロ分子の直接的な送達を提供する投与経路によって送達される。
【0148】
本開示のプロ分子は、気道を介して投与されてもよい。そのような剤形は、喫煙具、乾燥粉末吸入器、加圧式定量吸入器、ネブライザー、気化器などであり得る。
【0149】
本開示のプロ分子は、対象に、錠剤、粉末、顆粒、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などの適切な嚥下させることによって経口投与され得る。本開示のプロ分子もまた、坐剤の形態で直腸投与され得る。
【0150】
本開示のプロ分子は、皮内、皮下、静脈内、心臓内、筋肉内、骨内、若しくは腹腔内注射を含む、標的組織への、又は血流への直接注射によって投与され得る。本開示のプロ分子は、海綿体内又は硝子体内送達によって臓器若しくは組織に投与され得るか、又は脳内、髄腔内、若しくは硬膜外送達によって中枢神経系の組織に投与され得る。
【0151】
本開示のプロ分子は、局所又は局部投与されてもよい。そのような投与は、適切な製剤を標的組織に直接局所適用することによって達成され得る。前述の投与経路、製剤及び剤形は、単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0152】
投薬量
本開示の方法では、所望の診断、検出、又は治療を達成するのに有効なプロ分子の量が、対象に投与される。
【0153】
投与量は、投与の目的、治療される個体の健康及び身体状態、年齢、所望の分解能の程度、主題組成物の製剤、採用される主題組成物の活性、治療する臨床医の医学的状況の評価、対象の症状、対象の体重、並びに診断、検出、及び/又は治療される疾患、障害、若しくは症状の重症度、並びに他の関連因子に応じて異なる。用量のサイズは、特定の組成物の投与に伴う可能性のある有害な副作用の存在、性質、及び程度によって決定されることになる。
【0154】
その量は、日常的な試験によって決定することができる比較的広い範囲に収まることが予想される。例えば、対象におけるグランザイム活性又はグランザイム分泌免疫細胞の活性化を検出するために採用される本開示のプロ分子の量は、さもなければ対象に対して不可逆的に毒性であり得る量(すなわち、最大耐容量)程度以下である。他の場合には、その量は、毒性閾値の前後、又はそれよりもはるかに低いが、それでも有効濃度範囲内にあり、又は閾値用量と同じくらい低い。いくつかの実施形態では、1~200μg、50~150μg、又は75~125μg(例えば、約100μg)の用量を対象に投与して、グランザイム活性化又はグランザイム分泌免疫細胞の活性化が検出される。
【0155】
ある特定の実施形態では、プロ分子は、PET微量投与試験のためにFDAによって定義された質量用量制限内で静脈内投与される。いくつかの実施形態によれば、制限は、最小薬理学的活性用量の1/100又は100μg未満である。いくつかの例では、ヒトに適用される用量は、動物(例えば、マウス)線量測定データによって決定される。ある特定の実施形態では、プロ分子は、1mCi/注射~20mCi/注射、例えば、5mCi/注射~15mCi/注射の用量で投与される。有効量のプロ分子は、1回以上の投与、例えば、1回以上、2回以上、3回以上、4回以上、又は5回以上の投与で投与され得る。
【0156】
使用方法
本開示は、活性化可能で検出可能な膜相互作用ペプチドを、タンパク質分解などの局在化した生物学的プロセスを一般的に伴う疾患又は症状の診断及び/又は治療のために使用する方法を提供する。例えば、ある特定の場合において、本開示のプロ分子は、療法(例えば、細胞ベースの療法、例えば、CAR T細胞療法などの免疫調節療法)を誘導及び/又はモニタリングする際の診断ツールとして使用される。そのような方法は、一般に、特定の疾患、症状及び/又は免疫応答に関連付けられ得る、タンパク質分解などの生物学的プロセスの検出を伴う。本開示のプロ分子はまた、特定の疾患又は症状の治療、及び患者内の特定の部位又は場所への治療剤の送達を伴う方法にも使用される。
【0157】
一般に、本開示の方法は、診断、検出、又は治療されるべき疾患又は症状に関連する条件下でグランザイムによって切断される切断可能なリンカーX2を含有するプロ分子を選択すること、及び切断促進状態の検出を容易にするか、又は切断促進状態に関連する疾患/症状の治療を容易にするのに十分な量でプロ分子を対象に投与することを含む。投与は、任意の適切な経路によって行うことができ、プロ分子は、診断又は治療される疾患又は症状に従って選択することができる。例えば、対象内のグランザイム活性の検出又はグランザイム分泌免疫細胞の活性化の場合、投与は静脈内であり得る。
【0158】
プロ分子が対象内でグランザイム切断促進条件(例えば、活性化されたグランザイム分泌免疫細胞によるグランザイムの放出)に遭遇すると、プロ分子はグランザイムによって切断され、膜相互作用ペプチドを含有する切断産物は、切断促進環境の近傍の膜に挿入し、検出可能に標識される。この切断産物の検出は、標識された領域内のグランザイム活性の存在を同定する。診断用途及び方法では、グランザイム切断促進状態が存在する対象内の領域の同定は、疾患又は症状の診断を容易にし、次いで、適切な療法を投与及び/又はモニタリングするためのガイダンスを提供し得る。治療用途及び方法では、患者内の標的部位への治療剤の送達が、疾患又は症状の治療を促進する。
【0159】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、グランザイム活性の存在下で細胞のリン脂質二重層を検出可能に標識する方法を提供する。そのような方法は、本開示のプロ分子を、グランザイム活性に寄与するグランザイムと接触させることであって、分子の切断可能なリンカーは、グランザイムによって切断されて、検出可能な部分及び膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、その結果、膜相互作用ポリペプチド部分が、細胞のリン脂質二重層と相互作用し、細胞のリン脂質二重層をグランザイム活性の存在下で検出可能に標識する、接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触させることは、インビトロ、インビボ、又はエクスビボである。
【0160】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、細胞サンプル中のグランザイム活性を評価する方法を提供する。そのような方法は、サンプルを本開示のプロ分子と接触させることであって、グランザイム活性の存在下で、プロ分子が切断されて、検出可能な部分及び膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、切断産物が、グランザイム活性の存在下で、細胞のリン脂質二重層と相互作用する、接触させることを含む。そのような方法は、切断産物の検出可能な部分の存在又は非存在について評価することを更に含み、検出可能な部分の存在は、細胞サンプル中のグランザイム活性を示す。
【0161】
診断用途及び方法
本開示の方法は、一般に、タンパク質分解などの局在化した生物学的プロセスを伴う疾患又は症状の診断及び検出に関する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、特定の症状に関連する1つ以上のグランザイムの活性から生じるタンパク質分解の検出に関する。そのようなグランザイムは、例えば、特定の組織又は臓器に位置する細胞に結合してもよく、又はそれと会合してもよく、そのような細胞の同定は、療法の指導及び/又はモニタリングに有用であり得る。例えば、酵素グランザイムは、グランザイム分泌免疫細胞の活性化に関連しており、そのような部位の同定は、免疫調節療法後の免疫細胞活性化部位を決定するのに有用であり得る。
【0162】
本開示の方法は、療法をモニタリングする方法を提供するように適合され得る。例えば、本開示のプロ分子は、療法前、療法中(例えば、投与間)、及び/又は療法後に対象に投与され得、プロ分子に関連するシグナルは、治療される症状に対する療法の効果を促進するために検出され得る。本開示の非限定的な例示的な方法が以下に提供される。
【0163】
対象におけるグランザイム活性の評価
いくつかの実施形態によれば、本開示は、対象におけるグランザイム活性を評価する方法を提供する。そのような方法は、本開示のプロ分子を投与することであって、対象におけるグランザイム活性の部位において、プロ分子が、グランザイム活性に寄与するグランザイムによって切断され、検出可能な部分及び膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、切断産物が、対象におけるグランザイム活性の部位における細胞のリン脂質二重層と相互作用する、投与することを含む。そのような方法は、切断産物で標識された細胞の存在又は非存在について評価することを更に含み、切断産物で標識された細胞の存在は、対象におけるグランザイム活性を示す。
【0164】
いくつかの実施形態では、プロ分子を対象に投与して、対象におけるグランザイム活性を評価する。例えば、グランザイム切断可能なX2リンカーを有し、それにコンジュゲートされた放射性同位体部分を有するプロ分子を、対象に静脈内投与する。プロ分子が対象におけるグランザイム活性の部位においてグランザイムと接触すると、X2は切断され、部分A及びZを含む切断産物を形成する。部分Aの膜相互作用ペプチドは、次いで、立体構造変化を受けて、グランザイム活性の領域内の細胞膜に挿入するアルファ-ヘリカル構造を形成する。いくつかの実施形態では、プロ分子に結合したカーゴ部分は、放射性同位体である。上記のように、切断産物含有部分Aが、グランザイム活性の領域内の細胞の形質膜に挿入されると、放射性同位体は、適切なイメージングモダリティ、例えば、蛍光透視法、X線法、単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴法(MR)又は陽電子放出断層撮影法(PET)を使用して検出され、グランザイム活性が生じている対象の組織を同定する。いくつかの実施形態では、対象におけるグランザイム活性を評価することは、グランザイム活性が生じる対象の領域を同定することを含む。
【0165】
対象におけるグランザイム分泌免疫細胞活性化の評価
いくつかの実施形態によれば、本開示は、対象における免疫細胞の活性化について評価する方法であって、免疫細胞は、対象において活性化されるとグランザイムを分泌する、方法を提供する。そのような方法は、本開示のプロ分子を対象に投与することをであって、対象における活性化された免疫細胞分泌グランザイムの部位において、分子が、活性化された免疫細胞分泌グランザイムによって切断されて、検出可能な部分及び膜相互作用ポリペプチド部分を含む切断産物を放出し、切断産物が、対象における活性化された免疫細胞分泌グランザイムの部位において細胞のリン脂質二重層と相互作用する、投与することを含む。そのような方法は、切断産物で標識された細胞の存在又は不在について評価することを更に含み、切断産物で標識された細胞の存在は、対象における免疫細胞の活性化を示す。
【0166】
ある特定の実施形態では、プロ分子を対象に投与して、グランザイム分泌免疫細胞活性化を評価する。いくつかの実施形態では、グランザイム分泌免疫細胞は、NK細胞又はCTLである。いくつかの実施形態では、CTLによって分泌されるグランザイムは、グランザイムB又はグランザイムKである。
【0167】
例えば、グランザイム切断可能なX2リンカーを有し、それにコンジュゲートされた放射性同位体部分を有するプロ分子を、対象に静脈内投与する。プロ分子が活性化された免疫細胞によるグランザイム分泌の部位においてグランザイムと接触すると、X2は切断され、部分A及びZを含む切断産物を形成する。部分Aの膜相互作用ペプチドは、次いで、立体構造変化を受けて、グランザイム分泌免疫細胞活性化の領域において細胞膜に挿入するアルファ-ヘリカル構造を形成する。
【0168】
いくつかの実施形態によれば、プロ分子に結合したカーゴ部分は、放射性同位体である。上記のように、切断産物含有部分Aが、グランザイム活性領域内の細胞の形質膜に挿入されると、放射性同位体は、適切なイメージングモダリティ、例えば、蛍光透視法、X線法、単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴法(MR)又は陽電子放出断層撮影法(PET)を使用して検出され、グランザイム分泌免疫細胞活性化が行われている対象における位置及び/又は組織を区別する。
【0169】
ある特定の実施形態では、グランザイム分泌免疫細胞活性化について評価することは、生物レベルで行われる。いくつかの実施形態では、評価することは、標的領域内で行われる。いくつかの実施形態では、検出は、注射から0.5~24時間後など、投与後の延長された時点(例えば、静脈内投与後などの注射後)で行われる。いくつかの実施形態では、検出は、投与後、例えば、注射後の複数の時点で生じる。
【0170】
いくつかの実施形態によれば、グランザイム分泌免疫細胞活性化について評価することは、病原体に対する免疫応答の一部として活性化された免疫細胞について評価することを含む。ある特定の実施形態では、病原体は、対象において疾患を引き起こすことができる微生物である。いくつかの実施形態によれば、対象は、病原体感染を有するか、又はその疑いがある。
【0171】
いくつかの実施形態では、グランザイム分泌免疫細胞活性化について評価することは、ウイルス感染に対する免疫応答の一部として活性化された免疫細胞について評価することを含む。そのようなウイルス感染の例としては、アデノウイルス科(例えば、アデノウイルス)、アレナウイルス科(例えば、マチュポウイルス)、ブニヤウイルス科(例えば、ハンタウイルス又はリフトバレー熱ウイルス)、コロナウイルス科、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス及びマールブルグウイルス)、フラビウイルス科(例えば、日本脳炎ウイルス及び黄熱ウイルス)、ヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス)、パポウイルス科(例えば、乳頭腫ウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプサウイルス、又はパラインフルエンウイルス)、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス)、ポックスウイルス科(例えば、バリオラウイルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(例えば、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス(HTLV)及びヒト免疫不全ウイルス(HIV))、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス)、並びにトガウイルス科(例えば、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、及び風疹ウイルス)による感染が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、ウイルスが肺炎を引き起こす。
【0172】
いくつかの実施形態によれば、グランザイム分泌免疫細胞活性化について評価することは、細菌感染に対する免疫応答の一部として活性化された免疫細胞について評価することを含む。そのような細菌感染の例としては、Bacillus(例えば、B.anthracis)、Enterobacteriaceae(例えば、Salmonella、Escherichia coli、Yersinia pestis、Klebsiella、及びShigella)、Yersinia(例えば、E.pestis又はE.enterocolitica)、Staphylococcus(例えば、S.aureus)、Streptococcus、Gonorrheae、Enterococcus(例えば、E.faecalis)、Listeria(例えば、L.monocytogenes)、Brucella(例えば、B.abortus、B.melitensis、又はB.suis)、Vibrio(例えば、V.cholerae)、Corynebacterium diphtheria、Pseudomonas(例えば、P.pseudomallei又はP.aeruginosa)、Burkholderia(例えば、B.mallei又はB.pseudomallei)、Shigella(例えば、S.dysenteriae)、Rickettsia(例えば、R.rickettsii、R.prowazekii、又はR.typhi)、Francisella tularensis、Chlamydia psittaci、Coxiella burnetii、及びMycoplasma(例えば、M.mycoides)による感染が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、細菌は、Escherichia coli(E.coli)、Staphylococcus aureus(S.aureus)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、又はKlebsiella pneumoniae(K.pneumoniae)である。いくつかの実施形態によれば、細菌はE.coliである。ある特定の実施形態では、細菌はS.aureusである。ある特定の実施形態では、細菌はP.aeruginosaである。いくつかの実施形態によれば、細菌はK.pneumoniaeである。
【0173】
いくつかの実施形態では、グランザイム分泌免疫細胞活性化について評価することは、対象におけるT細胞疲弊の存在又は非存在について評価することを含む。T細胞疲弊は、T細胞の機能(例えば、グランザイム分泌)の劣化及び喪失によって特徴付けられ、T細胞の喪失に至る。例えば、T細胞疲弊の存在又は非存在を経時的にグランザイム分泌免疫細胞の活性化の変化について評価することによって同定するために、本開示のプロ分子を1つ以上の時点(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上の時点)で対象に投与してもよい。上記のように、グランザイムによって切断され、かつ蛍光カーゴ部分又はそれにコンジュゲートされた放射性同位体カーゴ部分を有する切断可能なX2リンカーを有するプロ分子を、対象に静脈内投与する。グランザイム分泌免疫細胞活性化が存在する場合、プロ分子はグランザイムによって切断され、部分Aは立体構造変化を受けてアルファ-ヘリカル構造を形成し、グランザイム分泌免疫細胞活性化の近傍の細胞膜に挿入し、グランザイム分泌免疫細胞の活性化の位置は、蛍光部分又は放射性同位体を可視化することによって検出され得る。複数の時点でのプロ分子の投与及びグランザイム分泌免疫細胞活性化の可視化に続いて、経時的にグランザイム分泌免疫細胞活性化の程度の変化を定性的及び/又は定量的に評価することができる。グランザイム分泌免疫細胞の活性化が存在しないか、又は減少している場合、それぞれ、シグナルは検出されないか、又は減少したシグナルが検出されることになる。グランザイム分泌免疫細胞活性化の程度の減少は、T細胞機能の減少及びT細胞疲弊の存在を示す。
【0174】
いくつかの実施形態では、グランザイム分泌免疫細胞活性化について評価することは、対象における免疫応答について評価することを含む。更なる実施形態では、免疫応答について評価することは、対象が免疫関連の有害作用を発症するリスクを抱えているかどうかを評価することを含む。例えば、本開示のプロ分子は、グランザイム分泌免疫細胞活性化の位置を決定するために、対象に投与される。上記のように、グランザイムによって切断され、かつ蛍光カーゴ部分又はそれにコンジュゲートされた放射性同位体カーゴ部分を有する切断可能なX2リンカーを有するプロ分子を、対象に静脈内投与する。グランザイム分泌免疫細胞活性化が存在する場合、プロ分子はグランザイムによって切断され、部分Aは立体構造変化を受けてアルファ-ヘリカル構造を形成し、グランザイム分泌免疫細胞活性化領域の細胞膜に挿入し、グランザイム分泌免疫細胞活性化領域は、蛍光部分又は放射性同位体を可視化することによって検出され得る。本開示の方法による、正常(例えば、非腫瘍)組織における全身性グランザイム分泌免疫細胞活性化の検出は、免疫関連の有害作用を発症するリスクを抱える対象を同定するのに役立ち得る。
【0175】
対象におけるモニタリング療法
いくつかの実施形態では、本開示のプロ分子は、療法の進行をモニタリングするために、療法中又は療法後に対象に投与される。例えば、免疫調節療法が対象に行われた後、グランザイム分泌免疫細胞の活性化が生じたかどうかと、前述の活性化された免疫細胞の位置を決定するために、本開示のプロ分子を対象に投与してもよい。上記のように、グランザイムによって切断され、かつ蛍光カーゴ部分又はそれにコンジュゲートされた放射性同位体カーゴ部分を有する切断可能なX2リンカーを有するプロ分子を、対象に静脈内投与する。グランザイム分泌免疫細胞の活性化が存在する場合、プロ分子は、免疫細胞活性化の部位においてグランザイムによって切断され、部分Aは立体構造変化を受けてアルファ-ヘリカル構造を形成し、近傍の細胞膜に挿入し、グランザイム分泌免疫細胞の活性化は、蛍光部分又は放射性同位体を可視化することによって検出され得る。グランザイム分泌免疫細胞の活性化が存在しないか、又は減少している場合、それぞれ、治療の部位においてシグナルは検出されないか、又は減少したシグナルが検出されることになる。次いで、この情報は、治療する医師によって、治療努力の進行をモニタリングするために使用され得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、療法の進行をモニタリングすることは、対象における免疫調節療法の進行をモニタリングすることを含む。いくつかの実施形態では、免疫調節療法は、細胞ベースの療法(すなわち、医療目的のための対象への自系若しくは同種異系細胞物質の移入)、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路調節、免疫チェックポイント阻害、化学療法、電離放射線、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、免疫調節療法は、細胞ベースの療法を含む。いくつかの実施形態では、細胞ベースの療法は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法、キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK)療法、又は操作されたT細胞受容体を含むT細胞の投与を含む。いくつかの実施形態では、免疫調節療法は、対象のがんを治療するために使用される。
【0177】
特定の実施形態では、細胞ベースの療法は、受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又は組換えTCRなどのT細胞受容体(TCR))を発現するように操作された細胞(例えば、T細胞、NK細胞など)を投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、細胞がその表面で受容体を発現するように操作される場合、受容体の細胞外結合ドメインは、がん細胞の表面で発現される腫瘍抗原に特異的に結合する。受容体の細胞外結合ドメインが特異的に結合し得る腫瘍抗原の非限定的な例としては、5T4、AXL受容体チロシンキナーゼ(AXL)、B細胞成熟抗原(BCMA)、c-MET、C4.4a、炭酸脱水酵素6(CA6)、炭酸脱水酵素9(CA9)、カドヘリン-6、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD56、CD70、CD74、CD79b、CD123、CD138、がん胎児性(CEA)、cKit、Criptoタンパク質、CS1、デルタ様カノニカルノッチリガンド3(DLL3)、エンドセリン受容体B型(EDNRB)、エフリンA4(EFNA4)、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、エクトヌクレオチドピロファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)、EPH受容体A2(EPHA2)、線維芽細胞成長因子受容体2(FGFR2)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、葉酸受容体1(FOLR1)、GD2ガングリオシド、糖タンパク質非転移性B(GPNMB)、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)、インテグリンアルファ、リソソーム関連膜タンパク質1(LAMP-1)、ルイスY、LIV-1、ロイシンリッチリピート含有15(LRRC15)、メソテリン(MSLN)、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16)、ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2B(NaPi2b)、ネクチン-4、NMB、NOTCH3、p-カドヘリン(p-CAD)、プログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1)、プログラム細胞死受容体リガンド2(PD-L2)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、溶質キャリアファミリー44メンバー4(SLC44A4)、SLIT様ファミリーメンバー6(SLITRK6)、STEAPファミリーメンバー1(STEAP1)、組織因子(TF)、T細胞免疫グロブリン及びムチンタンパク質-1(TIM-1)、Tn抗原、トロホブラスト細胞表面抗原(TROP-2)、ウィルムス腫瘍1(WT1)、及びVEGF-Aが挙げられる。
【0178】
いくつかの実施形態では、がんを治療するための免疫調節療法の進行をモニタリングすることは、免疫調節療法に対する応答性について対象の腫瘍を評価することを含む。例えば、対象ががんの免疫調節療法を受けている間、グランザイム分泌免疫細胞の活性化が腫瘍の近傍で発生したかどうかを決定するために、本開示のプロ分子が対象に投与される。上記のように、グランザイムによって切断され、かつ蛍光カーゴ部分又はそれにコンジュゲートされた放射性同位体カーゴ部分を有する切断可能なX2リンカーを有するプロ分子を、対象に静脈内投与する。腫瘍の近傍にグランザイム分泌免疫細胞活性化が存在する場合、プロ分子はグランザイムによって切断され、部分Aは立体構造変化を受けてアルファ-ヘリカル構造を形成し、腫瘍の近傍の細胞膜に挿入し、腫瘍の近傍のグランザイム分泌免疫細胞の活性化の位置は、蛍光部分又は放射性同位体を可視化することによって検出され得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、免疫調節療法の進行をモニタリングすることは、上記のように、対象におけるT細胞疲弊の存在又は非存在について評価することを含む。例えば、対象が、治療用T細胞の対象への投与を含む免疫調節療法を受けている間、1つ若しくは複数の時点でのグランザイム分泌治療用T細胞の活性化について評価する(例えば、T細胞疲弊の存在若しくは不在、又は程度を同定する)ことによってT細胞疲弊を評価するために、本開示のプロ分子を1つ若しくは複数の時点で対象に投与してもよい。グランザイム分泌免疫細胞活性化の程度の減少は、T細胞機能の減少及びT細胞疲弊の存在を示す。
【0180】
いくつかの実施形態では、免疫調節療法の進行をモニタリングすることは、上記のように、対象における免疫応答をモニタリングすることを含む。更なる実施形態では、免疫応答のモニタリングは、上記のように、対象が免疫関連有害作用を発症するリスクを抱えるかどうかを評価することを含む。例えば、本開示のプロ分子は、上記のように、グランザイム分泌免疫細胞活性化の位置を決定するために、対象に投与される。正常組織(例えば、非腫瘍組織)における全身性グランザイム分泌免疫細胞活性化の検出は、対象が免疫関連有害作用を発症するリスクを抱えることを示す。
【0181】
診断用途における切断産物A及びZの検出方法
切断産物A及びZは、蛍光顕微鏡法、X線法、蛍光透視法、血管造影法、陽電子放出断層撮影法(PET)などを含むがこれらに限定されない、様々なイメージング及び検出モダリティにより検出され得る。検出は、切断産物が位置する細胞又は組織を直接イメージングすることによって、又は切断産物が位置する細胞又は組織を抗体などの二次分子又は試薬と接触させ、続いて二次分子又は試薬をイメージング又は検出することによって達成することができる。
【0182】
いくつかの実施形態では、切断産物のうちの1つ以上は、検出を容易にするカーゴ部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、カーゴ部分は、蛍光色素である。そのような実施形態では、カーゴ部分は、蛍光顕微鏡を使用して直接検出され得、細胞、組織、又は対象全体が蛍光顕微鏡のフィールドに配置され、直接可視化される。
【0183】
いくつかの実施形態では、カーゴ部分は、放射性同位体である。そのような実施形態では、カーゴ部分は、X線法、蛍光透視法、血管造影法、陽電子放出断層撮影法(PET)、又は単一陽電子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)を使用して検出され得、細胞、組織、又は対象全体が、イメージングモダリティのフィールドに配置され、可視化される。
【0184】
いくつかの実施形態では、切断産物は、切断産物に特異的に結合するか、又は切断産物と相互作用する二次分子若しくは試薬、例えば抗体、例えば、切断産物中のアミノ酸配列に特異的に結合する抗体を使用して検出される。そのような実施形態では、切断産物を含有する細胞又は組織を二次分子又は試薬と接触させ、続いて二次分子又は試薬をイメージング又は検出する。
【0185】
いくつかの実施形態では、切断産物の存在の検出及びそれについての評価は、生物レベルで行われる。いくつかの実施形態では、検出及び評価は、標的領域内で実行される。いくつかの実施形態では、検出は、注射から0.5~24時間後など、投与後の延長された時点(例えば、静脈内投与後などの注射後)で行われる。いくつかの実施形態では、検出は、投与後、例えば、注射後の複数の時点で行われる。
【0186】
スクリーニング方法
本開示のプロ分子は、スクリーニング方法、例えば、所望の活性のための候補薬剤のインビトロ又はインビボスクリーニングに使用される。いくつかの実施形態では、本開示は、インビトロで細胞をスクリーニングするための方法、例えば、細胞によって発現されるグランザイムの活性を評価するため、又は細胞内のグランザイム活性を調節する候補薬剤についてスクリーニングするための方法に関する。他の実施形態では、本開示は、例えば、疾患のトランスジェニック動物モデルにおける所望のグランザイム活性について候補薬剤をスクリーニングするために使用することができるインビボスクリーニング方法に関する。
【0187】
いくつかの実施形態では、本開示のスクリーニング方法は、細胞をインビトロで、グランザイムによって切断されるように設計されたX2リンカーを有するプロ分子と接触させることを含む。グランザイム分泌免疫細胞が活性化される場合、プロ分子は切断され、膜相互作用ペプチドを含有する切断産物は立体構造変化を受け、典型的には細胞の近傍のリン脂質二重層と相互作用するアルファ-ヘリカル構造を形成し、それによってグランザイム分泌免疫細胞活性化の近傍の領域を標識する。次いで、膜相互作用ペプチドを含む切断産物にコンジュゲートされた検出可能な部分を検出することができ、これは、グランザイム分泌免疫細胞活性化のスクリーニングを容易にする。したがって、所与の場所又は位置に蓄積する切断産物の量を使用して、所望のグランザイム活性についてスクリーニングすることができる。
【0188】
本開示の方法はまた、所望の活性を有する候補薬剤又は試験化合物、例えば、グランザイム活性又はグランザイム分泌免疫細胞の活性化を調節する候補薬剤を同定するために使用することができるスクリーニング方法に関する。いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、インビトロで細胞を培養し、細胞を候補薬剤又は試験化合物と接触させることを含む。次いで、培養細胞を、目的のグランザイムによって切断される切断可能なリンカーを含む本開示のプロ分子と接触させる。培養細胞内で所望のグランザイム活性を誘発する候補薬剤又は試験化合物は、X2の切断をもたらす切断促進条件の産生を促進する。X2の切断後、膜相互作用ペプチドを含む切断産物は、立体構造変化を受けて、近くのリン脂質二重層に挿入して標識するアルファ-ヘリカル構造を形成する。候補薬剤又は試験化合物の存在下での標識レベルの増加は、候補薬剤又は試験化合物の非存在下での標識レベルと比較して、候補薬剤又は試験化合物が所望の活性を有することを示す。
【0189】
本開示の方法はまた、インビボで細胞をスクリーニングする方法、例えば、所望の活性を有する候補薬剤又は試験化合物、例えば、グランザイム活性又はグランザイム分泌免疫細胞の活性化を調節する候補薬剤を同定する方法に関する。例えば、上述のスクリーニング方法は、目的の特定のグランザイムを発現する(若しくは発現しない)目的の細胞若しくは組織を同定するために、又は候補薬剤若しくは試験化合物に応答してグランザイム発現若しくは活性を調節する細胞若しくは組織を同定するために、動物モデル、例えば、疾患のトランスジェニック動物モデルにおいてインビボで実施され得る。
【0190】
キット
また、本開示によって提供されるのは、本明細書に開示されるプロ分子を使用するための、及び上記の方法を実施するためのキットである。このキットは、疾患又は症状が診断される対象にプロ分子を投与するために提供され得る。本キットは、本明細書に開示されるプロ分子及び/又はカーゴ部分のうちの1つ以上を含み得、これは無菌容器内に提供されてもよく、かつ対象に投与するための適切な薬学的に許容され得る医薬品添加剤とともに製剤で提供されてもよい。プロ分子は、そのまま使用する準備ができている製剤で提供され得るか、又は所望の濃度を有するように再構成され得る。プロ分子がユーザによって再構成されるように提供される場合、キットはまた、対象のプロ分子とは別個にパッケージされた緩衝液、薬学的に許容され得る医薬品添加剤などを提供し得る。
【0191】
上述の構成要素に加えて、キットは、本開示の方法を実践するためにキットの構成要素を使用するための説明書を更に含み得る。主題の方法を実践するための説明書は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙又はプラスチックなどの基材上に印刷され得る。したがって、説明書は、添付文書として、キットの容器又はその構成要素のラベンリング(すなわち、包装又はサブ包装に関連付けられる)などにおいてキットに存在し得る。他の実施形態では、説明書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケットなどに存在する電子記憶データファイルとして存在する。更に他の実施形態では、実際の説明書はキットに存在しないが、例えば、インターネットを介してリモートソースから説明書を入手する手段が提供される。この実施形態の例は、説明書を閲覧することができる、及び/又は説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、これは、説明書を得るための手段が適切な基材上に記録されることを意味する。
【実施例】
【0192】
以下の実施例は、例示として提示されるものであって、限定として提示されるものではない。
【0193】
実験
実施例1-グランザイム切断可能な制限付き相互作用ペプチド(GRIP)の設計及び合成
組換えヒトGZMBに対する質量分析(MSP-MS)を使用したマルチプレックス基質プロファイリングを行って、GZMBを標的とするRIPに組み込む最適な切断配列を同定した。MSP-MSライブラリーには228-14量体ペプチドが含まれており、物理化学的に多様で、配列多様性が最大となるように合理的に設計された基質の集団である(
図1のパネルB)。ほとんどのプロテアーゼは、基質の認識及び切断のために2つの最適に位置決めされたアミノ酸を必要とするという観察に基づいて、全ての隣接(XY)及び近接(X*Y、X**Y)アミノ酸ペアリングを組み込むことによって、ペプチドライブラリー内に物理化学的多様性を生成した。様々な時点での天然GZMBのインキュベーション時に、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LCMS-MS)を介したペプチドシーケンシングによって切断を同定した。続いて、ペプチドライブラリー内の切断位置及び非切断位置の両方を考慮する統計分析を行い、グランザイムB P4~P4’部位にまたがる好ましい基質配列のiceLogo表現を構築した(
図1のパネルC)。
【0194】
iceLogoの結果は、P2=P、P1=D、及びP2’=S(すなわち、XXPDXSXX)の保存された部位を有する4つの配列が等しく特異的で効率的なGZMB基質であることを示唆した。配列IEPDVSQV(配列番号57)が2つの理由により候補に挙げられた。第一に、P4~P1配列は、直交アプローチ、すなわち、位置走査合成コンビナトリアルライブラリーを使用して、GZMBに特異的であることが以前に発見され、この配列は、他のヒトグランザイムと比較して、GZMBにより特異的に認識されることが示された。第二に、IEPDテトラペプチドは、GZMBを標的とする共有結合性可逆性アルデヒド放射性トレーサーの一部としてインビボで研究されており、テトラペプチド-アルデヒドは、GZMBの標識に有効であり、インビボで安定しているように見えた。
【0195】
GZMBによるIEPDVSQV(配列番号57)切断の動態を、蛍光消光ペプチド基質を使用してインビトロでアッセイし、P1’~P4’配列VSVQを組み込むことで、IEPD単独で以前に報告された値と比較して、kcat/Kmが有意に改善された(約8000M
-1秒
-1対約3300M
-1秒
-1、
図1のパネルDを参照のこと)。全長グランザイムB切断可能な制限付き相互作用ペプチド(GRIP B)プローブを生成するために、この配列を、膜相互作用ドメインとしてTemporin L(FVQWFSKFLGK;配列番号3)、及びマスキングドメインとしてPAR1(QDPNDQYEPF;配列番号7)ペプチドを使用して隣接させた(
図1のパネルEを参照のこと)。重要なことに、全長GRIP Bは、組換えヒトGZMBによって効率的に切断され、Temporin Lもマスキングドメインもタンパク質分解を妨げないことが示された。
【0196】
基質配列FVQWFSKFLGK(配列番号3)を、トロンビン、カスパーゼ3、カスパーゼ8、グランザイムK、MMP9、及びC1Sと比較したグランザイムBに対する特異性について、基質を60μM、37℃、PBS、1mM DTT、及びpH7.4の緩衝液とした5nM濃度で評価した。
図1のパネルFに示されるように、基質配列は、試験した他のプロテアーゼと比較して、グランザイムBに対して非常に特異的である。
【0197】
実施例2-
64Cu-GRIP Bのインビトロ機構及び放射性合成
GRIP Bのタンパク質分解的に切断されたバージョンは、膜に効果的に結合することを確認した。N末端に5FAMタグ付きバージョンのGRIP Bを合成し、細胞及び組換えヒトグランザイムB又はビヒクルとインキュベートした。フローサイトメトリーは、インタクトなGRIP Bが細胞膜との相互作用が低いことを示したが、GRIP Bを細胞及び20nMの組換えGZMBと共インキュベートすると、蛍光標識された細胞膜が得られた(
図2のパネルAを参照のこと)。切断されたGRIP Bペプチドの脂質ミセルへの挿入は、トリプトファン蛍光を測定することによって更に確認した。最後に、全長又はタンパク質分解的に切断されたGRIP Bは、インビトロでヒト赤血球に対する毒性を示さないことが示された(
図2のパネルB)。
【0198】
GRIP Bを、放射性標識のためのキレート剤にカップリングするために、ペプチドを、固体支持体上で1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸モノ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(DOTA-NHS-エステル)と反応させ、これを、N末端フェニルアラニン上のアミノ基にライゲーションした。続いて、DOTA-GRIP Bを脱保護し、樹脂から切断し、セミ分取HPLCで精製した。
【0199】
DOTA-GRIP Bは、その半減期(t
1/2~13時間)が、注入後の長い時間ウィンドウで研究を行い、イメージングに最適な時点を同定できるため、次に銅-64で放射性標識した。
64CuCl
2を、HEPES緩衝液中のDOTA-GRIP Bとともに室温で30分間インキュベートした。反応を、本発明の薄層クロマトグラフィーを介して完全性についてモニタリングし、HPLCを使用して精製した(
図2のパネルC)。崩壊補正収率は一貫して>95%であり、純度は>99%であった。比放射能は、3回の放射性合成で約0.4Ci/μmolであった。
64Cu-GRIP BをリコンビナントヒトGZMBとインキュベートすると、30分以内に1つの放射性標識産物に変換され、HPLCで低温で切断されたDOTA-ペプチド断片と一致した(
図2のパネルD)。最後に、血清安定性をマウス血清中でインビトロ試験した。iTLCでは、
64Cu-GRIP Bは、37℃で4時間にわたって>98%安定であることが観察された。
【0200】
実施例3-免疫調節療法はマウス腫瘍モデルにおける
64Cu-GRIP Bの生体内分布における全身の変化を誘導する
トレーサーの薬物動態及び正常組織の生体内分布を理解するために、
64Cu-GRIP Bを最初にC57Bl6/Jマウスに静脈内注射し、続いて60分間の動的PET取得を行った(
図3のパネルA)。関心領域分析は、プローブがt
1/2~8分で血液プールからクリアランスされたことを示した。クリアランスの優勢なモードは腎臓であり、腎臓の外側の唯一の実質的な放射性トレーサーの蓄積が肝臓で観察された。注射後24時間までの正常組織における放射性トレーサーの分布を評価するために、生体内分布研究を行った。生体内分布データは、腎臓及び肝臓における組織関連活性の最高レベルを示す画像所見を裏付けるものであった。
【0201】
次に、免疫調節療法に応答するマウス結腸直腸がん細胞株である皮下CT26腫瘍を有するマウスにおいて、
64Cu-GRIP B生体内分布に及ぼす免疫調節療法の効果を評価した。マウスを、ビヒクル又は抗PD1+抗CTLA4 CPIの3回の腹腔内注入で11日間処理した。放射性トレーサーを14日目に注射し、PETに注射してから24時間後まで、腫瘍取り込みを数時間にわたってモニタリングした。静的PET/CT画像のROI分析は、処置した腫瘍における
64Cu-GRIP Bの取り込みが、注射後0.5時間から2~4時間に着実に上昇したことを示した(
図3のパネルB)。注目すべきことに、放射能は腫瘍に注射後24時間まで持続しており、これは腫瘍に不可逆的な放射性トレーサーが捕捉されるメカニズムと一致している。更に、
64Cu-GRIP Bの腫瘍取り込みは、注射後2時間で、ビヒクル処置群と比較して、CPIにおいて有意に高かった。動的PET取得に由来する時間活性曲線は、CPI処置マウスにおける
64Cu-GRIP Bの腫瘍蓄積が急速であり、注射後10分以内に約5%ID/ccのレベルに達したことを示した(
図3のパネルC)。更に、コンパートメントモデリングにより、k
3>>k
4、及びk
4~0が示され、
64Cu-GRIP Bが、予想どおり腫瘍内で切断され捕捉されることを示唆した。比較すると、ビヒクル腫瘍における放射性トレーサー取り込みは有意に低く、経時的に変化しなかった。
【0202】
注射から2時間後に生体内分布研究を行って、ビヒクル内の組織と、処置した群との間のトレーサー取り込みの相対的変化を決定した。これらのデータは、対照マウスと比較して、処置したマウスからの腫瘍における約50%の放射性トレーサー取り込みの誘導を示した(
図3のパネルD)。脾臓内のトレーサー取り込みの顕著な増加が観察されたが、これは、我々及び他の者が記録してきた全身性免疫チェックポイント阻害剤によるT細胞の刺激と一致している。デジタルオートラジオグラフィー(DAR)は、
64Cu-GRIP Bが、処置した腫瘍において対照腫瘍と比較して有意に高く、放射性トレーサー結合の領域が、GZMB及びT細胞マーカーCD3の発現と一致したことを示した(
図3のパネルE)。
【0203】
実施例4-
64Cu-GRIP Bの処置後変化は、GZMBタンパク質分解活性に起因する
GZMBプロテアーゼ部位(IEPdVSQV;配列番号61)内にD-アスパラギン酸を保有し、GZMBによるタンパク質分解を防止するプローブである
64Cu-D-GRIP Bを調製して、処置後の「フレア効果」が
64Cu-GRIP Bのタンパク質分解を必要とするかどうかを試験した。プローブは、
64Cu-GRIP Bの合成と同様のアプローチを使用して、DOTAで機能化され、Cu-64で放射性標識された。生体内分布研究は、CPI処置が対照と比較して
64Cu-D-GRIP Bの腫瘍取り込みの増加を引き起こさなかったことを示した(
図4のパネルA)。
【0204】
次に、
64Cu-GRIP B及び
64Cu-D-GRIP Bの生体内分布を、MC38(マウス結腸直腸がん)又はEMT6(マウス乳房がん)異種移植片を有するマウスで比較した。マウスを、ビヒクル又は抗PD1及び抗CTLA4 CPIで、CT26コホートに使用したスキーマに従って処置した。生体内分布データは、両方のコホートにおける
64Cu-L-GRIP Bの腫瘍取り込みの顕著な増加を示したが、
64Cu-D-GRIP Bは、予想どおり対照と比較して腫瘍において誘導されなかった(
図4のパネルA)。更に、処置した腫瘍における
64Cu-D-GRIP B取り込みの絶対レベルは低く、未処置の腫瘍における
64Cu-L-GRIP Bのベースライン取り込みと同等であった(
図4のパネルB)。脾臓における基礎的な
64Cu-D-GRIP Bの取り込みも低く、免疫チェックポイント阻害剤による処置の影響を受けなかった(
図4のパネルC及びD)。
【0205】
最後に、GZMBが
64Cu-GRIP B生体内分布における処置後の変化に関与していることを確認するために、生殖細胞系ホモ接合体GZMBノックアウトマウスにCT26腫瘍を接種し、マウスにおける
64Cu-L-GRIP Bの相対的な生体内分布を、ビヒクル又はCPIによる処置後に評価した。腫瘍及び脾臓曝露CPIにおいて、ビヒクルと比較して、放射性トレーサー取り込みにおける処置後の有意な変化は観察されなかった(
図4のパネルE及びF)。
【0206】
実施例5-
64Cu-GRIP Bの腫瘍取り込みにおける処置後の変化は、腫瘍体積の変化と相関する
比較的高いレベルのGZMB活性で濃縮された腫瘍は、GZMB不良腫瘍と比較して、より有意にデバルクすると予想され得る。これを確認するために、
64Cu-GRIP Bの腫瘍取り込みにおける処置後の変化を、抗腫瘍効果との相関について評価した。11日目の
64Cu-GRIP Bの腫瘍取り込みは、0日目と比較して、11日目の腫瘍体積の変化率と有意に相関していた(
図5のパネルA)。
64Cu-GRIP B腫瘍対11日目の血液比もまた、腫瘍体積の変化率と有意に相関した(
図5のパネルB)。対照的に、
64Cu-GRIP Bの腫瘍取り込みも腫瘍対血液比も、GZMBノックアウトマウスバックグラウンドにおける腫瘍体積の変化率と相関しなかった(
図5のパネルC及びD)。
【0207】
実施例6-
64Cu-GRIP B PETを用いた研究は、肺炎における分泌型GZMBの役割を示唆する
明確には定義されていないが、分泌型GZMBに対する非細胞傷害性機能は、いくつかの生理学的過程、例えば、炎症において提案されている。
64Cu-GRIP Bが炎症による分泌GZMBの病原性リザーバを潜在的に局在化できるかどうかを試験するために、リポ多糖(LPS)を気管内滴下した野生型マウスで
64Cu-GRIP B PET/CTを行った。肺へのT細胞のリクルートメントが起こる時点である滴下4日後にPET/CTを行った。ROI分析は、ビヒクルと比較して、低(0.1mg/kg)及び高(3mg/kg)用量のLPSで処置したマウスの肺における有意に高い放射性トレーサーの蓄積を示した(
図6のパネルA及びB)。肺のオートラジオグラフィー及び免疫蛍光は、予想どおり、LPS処置した肺において視覚的により高い放射性トレーサー結合を示し、これはまたGZMB及びCD3染色と共局在した(
図6のパネルC)。3mg/kgのLPSが全身的なT細胞活性化を引き起こす可能性があるため、より多くのマウス臓器で放射性トレーサー取り込みを調べた。エクスビボ生体内分布研究は、
64Cu-GRIP Bが、いずれの用量でも、脾臓及び胸腺などのリンパ系器官を含む多くの組織において、ビヒクルマウスと比べてLPS処置マウスで有利に高かったことを示した(
図6のパネルD)。顕著なことに、LPSの気管内滴下に起因するT細胞活性化に対する全身的な影響も、処置アーム間の最大強度投影を比較することによって視覚的に明らかであった(
図6のパネルE)。
【0208】
実施例7-
64Cu-GRIP B PET/CTによる活性化CAR T細胞から分泌されるグランザイムの検出
皮下RAJI異種移植片を有するマウス及び投与された抗CD19 CAR T細胞を、
64Cu-GRIP B PET/CTを使用してイメージングした。末梢血単核細胞を正常な血液ドナーの白血球減少フィルター(Vitalant Blood Services)から得た。CD4+及びCD8+T細胞を磁気ビーズ選択により単離し、抗CD3/CD28ビーズで活性化し、検証済みの抗CD19 CAR構築物でレンチウイルス形質導入し、IL-2でインビトロ増殖させた。並行して、マウスの右脇腹に1e6 Raji細胞を皮下注射した。約400mm3の腫瘍サイズで、5e6 CAR発現T細胞を各マウスにIV移植した。マウスは、抗CD19 CAR T細胞又は空のCAR Tが投与された。6日後、マウスに
64Cu-GRIP B(約300uCi/マウス)を投与し、注射から0~4時間後にイメージングした。
図7に示されるデータは、注射から4時間後に集められた画像及び関心領域分析を示す。
【0209】
更に、同所性RAJI異種移植片を有し、活性化CAR T細胞ベースの療法で処置したマウスを、64Cu-GRIP B PET/CTを使用してイメージングした。Raji細胞(1e5)を、尾静脈注射を介して同所性投与して、腹部組織における播種を促した。このモデルは、皮下Raji腫瘍が本質的に免疫抑制性であることが知られているため評価した。
【0210】
末梢血単核細胞を正常な血液ドナーの白血球減少フィルター(Vitalant Blood Services)から得た。CD4+及びCD8+T細胞を磁気ビーズ選択により単離し、抗CD3/CD28ビーズで活性化し、検証済みの抗CD19 CAR構築物(Wiita lan、UCSF)でレンチウイルス形質導入し、IL-2でインビトロ増殖させた。Raji細胞を皮下移植した1週間後、5e6 CAR発現T細胞を各マウスにIV移植した。マウスは、抗CD19 CAR T細胞又は空のCAR Tが投与された。2又は6日後、マウスに
64Cu-GRIP B(約300uCi/マウス)を投与し、注射から0~4時間後にイメージングした。
図8に示されるデータは、注射から4時間後に集められた画像及び関心領域分析を示す。
図8のパネルCは、死後肝臓線量測定を示す。まとめると、これらのデータは、
64Cu-GRIP Bが活性化CAR T細胞からグランザイムBの産生を検出することができることを示す。
【0211】
実施例8-
64Cu-GRIP B PETによる肺炎モデルにおける生産的な免疫応答の検出
次に、
64Cu-GRIP B PETが肺炎モデルで生産的な免疫応答を検出できるかどうかを評価した。UCSFのLooney研究室と共同で、マウスにウイルス又はシャムの鼻腔内滴下を受けさせ、感染から10日後(T細胞の肺へのリクルートメントが達する時点)に
64Cu-GRIP Bでイメージングした。
図9に示されるように、感染した肺における放射性トレーサー取り込みは非常に高く、放射性トレーサーの注射から6時間後の健康な肺とは有意に異なる。更に、他の臓器、例えば、肝臓におけるPETには、高いトレーサー取り込みが認められた(*P<0.01)。この予期せぬ発見は、肺及び他の臓器における生体内研究につながった。臓器当たりの相対的な放射性トレーサー取り込みを比較すると、ウイルス感染は、脾臓、肝臓、及び血液プールを含む多くの組織でより高い放射性トレーサー取り込みを誘導することが示された(*P<0.01)。現在、これらの組織におけるグランザイムBの発現は、オートラジオグラフィーとIFを使用して確認されており、病原体によるトレーサーの生体内分布の変化がグランザイムBによるものであることを確認するための対照研究(D-アミノ酸プローブ、生殖細胞系列グランザイムBノックアウトマウスにおけるイメージング)が行われている。
【0212】
実施例9-
64Cu-GRIP B PETによる細菌感染に応答して活性化された免疫細胞から分泌されるグランザイムBの検出
64Cu-GRIP Bはまた、細菌感染と闘おうと試みる活性化された免疫細胞から分泌されるグランザイムBを検出することができるかどうかを調べるために試験された。生きたE.coli又は加熱死菌E.coliを両側三角筋に移植したマウスのコホートを確立し、トレーサー取り込みの動態を試験した(
図10)。急速なトレーサー取り込みが筋炎病変において観察され、これは注射後5時間まで増加し、少なくとも24時間まで持続した。更に、
64Cu-GRIP Bの取り込みは、加熱死菌移植部位と比較して、生きたE.coli膿瘍において有意に高かった。
【0213】
膿瘍における放射性トレーサー取り込みがグランザイムBによるものであることを確認するために、生殖細胞系GZMBノックアウトマウスにおいてイメージング研究を行った。マウスに生きたE.Coliと加熱死菌E.Coliを投与し、野生型マウスと同じプロトコルに従って注射及びイメージングを行った。PET/CT及び生体内分布データは、GZMBノックアウトマウスの感染筋において、野生型と比較して
64Cu-GRIP B取り込みが低かったことを示した(
図11)。更に、ノックアウト株では、正常筋、生きたE.Coliで処理した筋、加熱死菌E.Coliで処置したマウスのトレーサー取り込み量にほとんど差はなかった。
【0214】
次に、生きたE.coliに対するグランザイムB応答と、エンドトキシンLPSのボーラスによる処置とを比較した。移植から3~4時間後に、マウスに
64Cu-GRIP Bを投与し、連続的にイメージングした(
図12)。顕著なことに、生きたE.coli膿瘍はLPSよりも有意に免疫刺激性が高く、注射後6~24時間で放射性トレーサー取り込みの差が検出された。
【0215】
他の細菌株に対するグランザイムB応答も試験している。PETによる免疫応答を理解するために、生死を問わずS.aureusをマウスの三角筋に移植した。
64Cu-GRIP Bの蓄積は、E.coli感染で観察されたものと類似しており、放射性トレーサー取り込みは、注射後0~6時間で急速に上昇し、6~24時間からプラトーになることが見出された(
図13)。更に、大腸菌のデータから予想されるように、生菌膿瘍の放射性トレーサー取り込みは加熱死菌膿瘍よりも有意に高かった。興味深いことに、生菌膿瘍では、E.coliのそれと比較して、より緩やかなグランザイムB応答が検出された。応答の違いの1つの可能性は、グランザイムBが全ての病原体を攻撃するために均一に使用されるわけではなく、免疫細胞は、病原体の特徴に基づいてそれらのグランザイム応答をカスタマイズしている可能性がある。
【0216】
他の細菌株で追加の筋炎研究を行うと、PET上での予期せぬ多様なグランザイム「応答」が得られた。例えば、P.aeruginosa及びK.pneumoniaeの両方が、E.coli及びS.aureusの感染と定性的に類似した所見を示した(
図14)。三角筋の生菌感染における
64Cu-GRIP Bの取り込みは、加熱死菌に曝露した対側の三角筋において観察されたものよりも高かった。両方のマウスコホートにおいて、処置した筋肉における放射性トレーサー取り込みは、正常筋よりも高かった。
【0217】
2つの細菌種は、インビボで
64Cu-GRIP Bの生体内分布に影響を与えなかった(
図15)。M.marinum及びL.monoctyogenesも、加熱死菌対照と比較して、生菌膿瘍において
64Cu-GRIP B取り込みを誘導しなかった。正常筋と比較した場合、放射性トレーサー取り込みの有意な増加が観察されたが、これはおそらく、異物に対する炎症反応を反映している可能性が高い。
【0218】
方法
一般的な方法
全ての試薬を商業的供給源から購入し、更に精製することなく使用した。64Cu-塩酸塩は、ウィスコンシン大学マディソン校から購入した。組換えヒトGZMBは、Sigma Aldrichから購入した。マウスがん細胞株CT26及びEMT6は、ATCCから購入した。MC38は、Kerafastから購入した。抗マウスPD-1(CD279)(BE0146)及び抗マウスCTLA-4(CD152)(BE0164)はBio X Cellから購入し、抗グランザイムB(ab4059)はAbcamから購入し、抗CD3(MCA1477)はBio-Radから購入し、AF488抗ウサギ(A21206)、AF546抗マウス(A111081)及びAF633抗マウス(A21052)二次抗体はInvitrogenから購入した。DAPI(D1306)は、Life Technologies Corporationから購入した。免疫蛍光のための抗体。全ての細胞株を、製造業者の指示に従って培養した。
【0219】
質量分析によるマルチプレックス基質プロファイリング
ヒトGZMB(100nM)を、228個の合成テトラデカペプチド(500nM)を含むライブラリーとともにインキュベートした。アリコート(10μL)を3つの時間間隔で取り出し、続いて10μLの8M塩酸グアニジニウムでクエンチした。次いで、全てのタイムポイントが取られるまで、アリコートをフラッシュ凍結した。質量分析の前に、サンプルをC18 tips(Rainin)を使用して脱塩した。次いで、アリコートを、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)によるペプチド分離のために、10,000psiのnanoACQUITY超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)システム(Waters)に結合したQuadrupole Orbitrap質量分析計(LTQ Orbitrap XL)を使用して、LC-MS/MSシーケンシングにより分析した。EASY-Spray(商標)イオン源に結合したThermo ES901 C18カラム(内径75μm、長さ50cm)でペプチドを分離し、緩衝液B(アセトニトリル、0.5%ギ酸)中で2~50%の65分間の直線勾配で300nL/分の流速を適用することによって溶出した。サーベイスキャンは、325~1500m/zの範囲で記録され、最大3つの最も強力な前駆体イオン(電荷≧2のMS1特徴)が、MS/MSについて、m/z200で30,000の分解能で、より高いエネルギー衝突解離(HCD)のために選択された[CB2]。データはXcaliburソフトウェアを使用して取得し、前述のようにして処理した。簡潔に述べると、生の質量分析データは、MSConvertを使用してピークリストを生成するために処理された。次いで、Protein Prospectorv.6.2.2で、228個のテトラデカペプチドライブラリーからの配列を含む独自のデータベースに対してピークリストを検索した。検索では、前駆体イオンでは20ppm、フラグメントイオンでは30ppmの質量精度公差を使用した。可変的修飾には、グルタミン又はグルタミン酸からのN末端ピログルタミン酸変換、並びにトリプトファン、プロリン、及びチロシンの酸化が含まれた。続いて、検索はMSP-xtractorソフトウェア(http://www.craiklab.ucsf.edu/extractor.html)を使用して処理このソフトウェアは、ペプチドの切断部位と対応する切断産物のスペクトルカウントを抽出する。スペクトルカウントを、ペプチド切断産物の相対定量に使用した。ヒトGZMBサンプルを、各時点につき3つの生物学的複製物として処理し、非酵素対照を各複製物に対して使用して、データ分析から非特異的切断を除去した。
【0220】
Fmoc-固相ペプチド合成
NH2-K(MCA)IEPDVSQVK(DNP)-COOH(配列番号62)配列を合成したクエンチ蛍光発生ペプチドを、Biotage SyroIIペプチド合成機で周囲温度でFmoc固相合成によって合成した。合成スケールは12.5μMであり、DNPクエンチャーがリジンのイプシロン窒素に連結されたプリロードされたリジン(2-ジニトロフェニル)Wang樹脂を使用した。カップリング反応は、500μLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の4.9当量のHCTU(O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ-ホスフェート)、5当量のFmoc-アミノ酸-OH、及び20当量のN-メチルモルホリン(NMM)を用いて8分間振盪しながら行った。各アミノ酸位置をダブルカップリングし、その後のFmoc脱保護を、DMF中40%4-メチルピペラジン500μLで10分間、続いてDMF500μLで3分間、6回洗浄した。最終的なアミノ酸カップリングは、フルオロフォアであるリジン(7-メトキシクマリン-4-酢酸(MCA))を含み、MCAは、リジンのイプシロン窒素に連結されていた。95%トリフルオロ酢酸、2.5%水、及び2.5%トリイソプロピルシランで構成される500μLの溶液振盪しながら1時間かけてWangの樹脂から切断した。次いで、粗ペプチド産物を30mLの冷1:1のジエチルエーテル:ヘキサン中で沈殿させ、次いで、DMSO:水:アセトニトリルの1:1:1の混合物中で溶解した。可溶かした粗製物を、Agilent PrepStar 218シリーズ分取HPLCでAgilent Pursuit 5 C18カラム(5mmビーズサイズ、150×21.2mm)を使用して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。移動相A及びBは、それぞれ、水+0.1%TFA及びアセトニトリル+0.1%TFAであった。精製されたペプチド産物は、減圧雰囲気下で溶媒を除去し、最終濃度が10mMのDMSOストックに可溶化した。純度を液体クロマトグラフィー-質量分析で確認し、原料を-20℃で保存した。蛍光標識された5FAM-GRIP Bを、95~98%の純度でCPC Scientificから購入した。
【0221】
DOTA-GRIP Bの合成
DOTA-GRIP B(Dota-ヘキサン酸-FVQWFSKFLGKIEPDVSQVQDPNDQYEPF-COOH;配列番号63)を、上記の標準固相ペプチド合成条件を使用して最初に合成した。N末端ヘキサン酸を有する樹脂結合ペプチドを、2当量のdota-NHS、5当量のHCTU、及び20当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)と12時間トリプルカップリングした。次いで、DOTA-GRIP Bプローブを切断し、精製し、蛍光性ペプチドについて記載したように分析した。
【0222】
インビトロ動態
動態測定は、コーニングブラック384ウェルフラットボトムプレートで実施し、BioTek H4マルチモードプレートリーダーで読み取った。GZMBによるクエンチされた蛍光性ペプチド(NH2-K(MCA)IEPDVSQVK(DNP)-COOH;配列番号62)のタンパク質分解を、PBS中40nMの最終酵素濃度で行った。動態を37℃で実施し、活性を1時間モニタリングした。Voは、RFU/秒で1分及び30分で計算した。次いで、切断された基質の標準曲線を使用して、初期速度をM/sに変換した。
【0223】
脂質挿入を測定する固有のトリプトファン蛍光分光法
全長及び活性化GRIP B内のトリプトファンの蛍光を、脂質ミセルの存在下又は非存在下で、BioTek H4マルチモードプレートリーダーでモニタリングした。5mg/mL-1ストックとして、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を可溶化した。全長及び活性化GZMB-RIPを、最終ペプチド:脂質モル比が1:40で、PBS中で最終濃度が0.01mg/mL-1になるように可溶化した。ペプチド:脂質懸濁液のトリプトファン放出スペクトルを、295nmの励起波長で、310~450nmのスキャンによって取得した。バンド幅は、励起及び放出の両方について5nmであった。SDS脂質の非存在下でのPBS中のペプチドのスペクトルを、0.01mg/mL-1の同じ濃度で取得した。
【0224】
ヒト赤血球の溶血を測定する毒性アッセイ
健康な匿名ドナーからの血液を、Trima Leukoreduction chambers(Vitalant、San Francisco CA)から採取した。赤血球を、匿名の血液サンプルから単離した。全長GRIP B及び活性化GRIP Bを、健康なヒト赤血球に対するそれらの溶血活性について3連で測定した。ヒト赤血球のアリコートをPBS(pH7.4)中に懸濁し、DMSO中で最初に可溶化した両ペプチドの連続希釈液とともにインキュベートした。DMSO及び1%Triton X-100をそれぞれ陰性及び陽性対照として並行してインキュベートした。インキュベーションは、37℃で1時間であった。インキュベーション後、サンプルを2,000×gで5分間遠心分離し、その上で上清を回収した。BioTek H4マルチモードプレートリーダーを使用して、赤血球によるヘモグロビンの放出について上清を測定し、540nmの波長で上清の光学密度をモニタリングした。
【0225】
5FAM-GRIP Bによるフローサイトメトリー
MC38細胞(2×105/ウェル)を12ウェルプレートに播種し、37℃で48時間インキュベートした。5FAM-GRIP B(200nM)及びGZMB(20nM)をHBSSに溶解させ、37℃で2時間インキュベートした。HBSS(300mL)中の50nmのGZMBを含む/含まない200nMのRIPを、細胞とともにウェルに添加し、続いて37℃で30分間インキュベートした。プローブ溶液を除去し、細胞をPBSで4~5回洗浄した。トリプシン(100mL)を添加し、続いて37℃で3分間インキュベートした。PBSをウェルに加え、全ての細胞を回収し、PBSで1回洗浄した後、PBS(300mL)で更に希釈し、細胞ストレーナーに通した。実験は、BD FACSCanto(商標)II細胞分析装置で行った。データを、FlowJo及びPrism 8.0を使用して分析した。
【0226】
64Cu-GRIP Bの放射性合成及びインビトロでの特徴付け
1.5mLの反応バイアルに、5mCiの64Cu-塩化物(水溶液)を添加し、pHをNa2CO3(2M)で7.0に調整した。DOTA-GRIP B(20μLのDMSO中に50μg)及び0.1MのNH4OAC緩衝液(200μL)の溶液をこの反応バイアルに加えた。反応混合物を50℃で30分間インキュベートした。反応の進行を、Agilent Pursuit分析カラム(C18、200Å、4.6mm×10cm、5μm)又はPhenomenex Luna(登録商標)分析カラム(C18、100Å、4.6mm×250cm、10μm)(70:30 MeOH:H2O~95:5 MeOH:H2O、10分間)を装備した分析HPLCによってモニタリングした。粗反応物を、C18 Sep-Pakカートリッジを使用して精製し、少量のCH3CNで溶出した。次いで、CH3CNを50℃で真空及び穏やかなN2(g)の流れで除去して、純粋な64Cu-GRIP Bを得た。キレート化有効性は、通常、HPLCに基づいて>90%である。更なるマウス研究のために、10%DMSO、10%tween80及び80%生理食塩水を含む製剤を採用した。500uLのPBS中の組換えグランザイムB(10nM)に放射性トレーサー(約200Ci)を添加することによって、グランザイムBによる64Cu-GRIP Bの切断をインビトロで検証した。次いで、バイアルを37℃でインキュベートした。Rad-HPLCを使用して、専用の時点での放射性トレーサーの切断をモニタリングした。
【0227】
動物の研究
全ての動物実験は、UCSFの施設内動物管理使用委員会によって承認された。4~6週齢の雄又は雌のbalb/cマウス及びC57BL6/JマウスをJackson Laboratoryから購入し、水及び餌に自由にアクセスできるように飼育した。全てのマウスに、5×106個のCT26、MC38、又はEMT6細胞を、培地及びMatrigel(Corning)(v/v1:1)の混合物中で左肩に皮下接種した。抗マウスPD-1(CD279)(BE0146)及び抗マウスCTLA-4(CD152)(BE0164)をBio X Cellから購入し、処置研究中に4℃で保管した。腫瘍接種後5日目、8日目、11日目に、皮下腫瘍を有するマウスに、抗マウスCTLA-4(200ug)又は/及び抗マウスPD-1(200ug)、並びに併用療法又はPBSをビヒクルとして投与した。マウスを秤量し、処置当日に腫瘍体積をノギスで測定した。14日目に、全てのマウスをPET/CT又はBioD研究に使用した。
【0228】
小型動物PET/CT
64Cu-L-GRIP B又は64Cu-D-GRIP B(約100μCi/マウス)を生理食塩中100~150μLの100%DMSO及び10%Tween80に溶解し、尾静脈を介して注射した。一定期間の取り込み時間の後、マウスをイソフルラン(約2%)で麻酔し、microPET/CTスキャナ(Inveon、Siemens)でイメージングした。静的イメージングのために、マウスを、PETデータ取得のために30分間、及びCTデータ取得のために10分間スキャンした。動的取得のために、マウスを麻酔し、スキャナベッドに寝かせ、放射性トレーサーを静脈内注射した。動的取得を60分間スキャンし、続いて10分間のCT取得を行った。
【0229】
リストモードのPETデータをヒストグラム化してサイノグラムを作成し、スキャナメーカーによって提供された2D順序付きサブセット期待値最大化アルゴリズムを使用して再構築した。減衰補正は、PETデータ取得直後に取得した共登録CTデータを用いて適用した。CTは、以下の設定を使用して取得した。120ステップの220度の角度カバレッジ、各角度ステップ露光時間が175msに設定された80kVp及び0.5mAで動作するX線管。全ての再構築された3D PET体積画像ボクセルを、事前に較正された定量化係数を使用してBq/mlに較正した。AMIDEソフトウェアを使用して、PET/CTデータの再構築及び画像分析を行った。
【0230】
生体内研究
放射性トレーサー注射後の専用の時点で、マウスをCO2(g)窒息で安楽死させ、血液を直接心臓穿刺によって採取した。組織を採取し、秤量し、ガンマカウンター(Hidex)で計数した。組織中の放射能量は、既知の放射能基準との比較によって決定した。サンプルを減衰補正し、採取された組織の注入用量/重量の割合(%ID/g)として表した。
【0231】
デジタルオートラジオグラフィー
腫瘍又は指定された組織を、ドライアイス中でOCTで瞬間冷凍した。組織をミクロトーム(Leica)で10~20umの厚さのスライスに切片化し、ガラススライド(VWR)に直接取り付けた。GE Storage Phosphor Screenを、放射性組織を有するそのようなスライドに露光した。銅-64の半減期を10回行った後、スクリーンをリンイメージャー(Typhoon9400)で現像した。Fijiソフトウェアを使用して、画像を更に分析した。
【0232】
組織学
H&E染色及びIF染色は、UCSF及びAcepix Biosciences(Hayward,CA)のPathology core facilityによって行われた。免疫蛍光研究のために、腫瘍サンプルをアセトン-20℃で20分間浸漬し、続いてMeOH4℃で10分間浸漬した。抗原取り出しを、クエン酸緩衝液10mM pH=6で行い、サンプルをユニバーサルブロッキング緩衝液+5%ヤギ及びロバ血清でブロックした。一次抗体:抗GZMB(ab4059、Abcam)(1:50)、抗CD3(MCA1477、Bio-Rad)(1:100)をサンプルに添加し、4℃で一晩インキュベートした。そのような一次抗体を、AF488抗ウサギ(A21206、Invitrogen)(1:200)、AF546 AF546抗マウス(A111081、Invitrogen)(1:200)、及びAF633抗マウス(A21052、Invitrogen)(1:200)二次抗体でサンプルとインキュベートすることによって検出した。DAPI核酸染色(D1306、Life Technologies Corporation)を使用して、サンプルとともにインキュベートすることによって核を染色した(室温で10分)。免疫蛍光結果は、グラッドストーン研究所のHistology & Light Microscopy Coreによって行われた。全切片の画像は、Andor Zyla 5.5 sCMOSカメラ(Andor Technologies、Belfast,UK)を装備したVERSA自動スライドスキャナ(Leica Biosystems、Wetzlar,Germany)で取得した。個々の画像を、ImageScopeソフトウェア(Aperio Technologies、Vista,CA)を使用して作成した。
【0233】
統計
PRISM v8.0又はORIGINソフトウェアを使用して、全ての統計分析を行った。統計的に有意な差は、対応のない両側スチューデントT検定によって決定した。95%信頼レベル(P<0.05)での変化のみを統計的に有意であるとみなした。
【0234】
したがって、上記の説明は単に本開示の原理を例示するに過ぎない。当業者は、本明細書に明示的に記載又は示されていないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な配置を考案することができることが理解されるであろう。更に、本明細書に列挙される全ての例及び条件付き言語は、主に、読者が本発明の原理及び当該技術を更に進めるために発明者が寄与する概念を理解するのを助けることを意図しており、そのような具体的に列挙される例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態を記載する、本明細書の全ての記述、並びにそれらの具体例は、それらの構造的及び機能的等価物の両方を包含することが意図されている。追加的に、そのような等価物は、構造に関係なく、現在知られている等価物と、将来開発される等価物との両方、すなわち、同じ機能を実行するように開発された任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、説明された例示的な実施形態に限定されることを意図されていない。
【配列表】
【国際調査報告】