(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞、これから分離された細胞外小胞、及びこれらの用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20240718BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240718BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20240718BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240718BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240718BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240718BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240718BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240718BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240718BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240718BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/10
A61K35/35
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/10
A61P17/02
A61P13/10
A61P19/02
A61P37/02
A61P29/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580964
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2022001337
(87)【国際公開番号】W WO2023282423
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088371
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0011024
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会による発表 集会名:KSSCR 2021 Winter Conference 開催日:2021年1月25日 開催場所:WEB開催 主催者(Korean Society for Stem Cell Research)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518056140
【氏名又は名称】コングク ユニバーシティ インダストリアル コーオペレーション コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】524001112
【氏名又は名称】ステメクスワン.,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516286604
【氏名又は名称】コングク ユニバーシティ グローカル インダストリー-アカデミック コラボレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チョ,サン-グ
(72)【発明者】
【氏名】イム,キョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】アブダル デイエム,アーメド
(72)【発明者】
【氏名】イ,ス ビン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユジン
(72)【発明者】
【氏名】カン,グン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,アラム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA10
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4B065BB25
4B065BC09
4B065BC11
4B065BC26
4B065BC46
4B065BD15
4B065BD16
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、間葉系幹細胞、これから分離された細胞外小胞、及びこれらの用途に関する。本発明の間葉系幹細胞は、SPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1から選ばれる1種以上のマーカーの発現量の増加及び/又はPTGS2マーカーの発現量の減少特性を示すことによって、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインの量を著しく減少させるので、多様な炎症疾患の予防、緩和、改善又は治療に効果的である。特に、本発明の間葉系幹細胞、又はこれから分離された幹細胞由来細胞外小胞は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)動物モデルに投与する場合、IC/BPS誘導過程で崩れた膀胱内壁を回復させ、炎症程度を緩和させるので、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に対して優れた治療効能を有する。また、本発明の間葉系幹細胞、又はこれから分離された幹細胞由来細胞外小胞は、創傷治癒効果に優れるので、創傷治癒用として有用に利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)及び(B)から選ばれる1種以上の特性を示す間葉系幹細胞:
(A)SPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1から選ばれる1種以上のマーカーの発現量の増加;及び
(B)PTGS2マーカーの発現量の減少。
【請求項2】
前記間葉系幹細胞は、SPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1マーカーの発現量が増加することを特徴とする、請求項1に記載の間葉系幹細胞。
【請求項3】
前記間葉系幹細胞は、
(1)対象体から分離された全分化能幹細胞を培養することによって胚様体(Embryoid Body、EB)を形成する段階;
(2)前記胚様体を微小重力下の生物反応器で三次元培養することによってスフェロイドを形成する段階;及び
(3)前記スフェロイドを、培養表面に粘着性高分子がコーティングされた培養容器で付着・培養することによって間葉系幹細胞に分化させる段階;を含む方法で製作されたことを特徴とする、請求項1に記載の間葉系幹細胞。
【請求項4】
前記全分化能幹細胞は、胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell、ESC)又は誘導万能幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell、iPSC)であることを特徴とする、請求項3に記載の間葉系幹細胞。
【請求項5】
前記全分化能幹細胞は、誘導万能幹細胞であることを特徴とする、請求項3に記載の間葉系幹細胞。
【請求項6】
前記段階(1)は、前記全分化能幹細胞をマルチウェル培養容器で三次元培養することによって行われることを特徴とする、請求項3に記載の間葉系幹細胞。
【請求項7】
前記段階(1)は、前記三次元培養時、遠心分離を通じて細胞凝集を誘導する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の間葉系幹細胞。
【請求項8】
前記段階(2)の微小重力は、前記生物反応器を回転させることによって、前記生物反応器に加えられる重力を相殺する微小重力シミュレーターによって誘導されることを特徴とする、請求項3に記載の間葉系幹細胞。
【請求項9】
前記段階(2)は、前記微小重力シミュレーターを15rpm乃至80rpmで回転させながら3日乃至8日間培養することによって行われることを特徴とする、請求項8に記載の間葉系幹細胞。
【請求項10】
前記段階(2)は、前記微小重力シミュレーターを、40rpm乃至60rpmから始め、毎日3rpm乃至7rpmずつ増加させながら回転させることによって行われることを特徴とする、請求項9に記載の間葉系幹細胞。
【請求項11】
前記粘着性高分子は、ヒアルロン酸、アルギン酸、ヘパリン、フコイダン、セルロース、デキストラン、キトサン、アルブミン、フィブリン、コラーゲン及びゼラチンから選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項3に記載の間葉系幹細胞。
【請求項12】
前記粘着性高分子はゼラチンであることを特徴とする、請求項11に記載の間葉系幹細胞。
【請求項13】
請求項1の間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効成分として含む炎症性疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項14】
前記炎症疾患又は自己免疫疾患は、膀胱炎、関節リウマチ、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、特発性線維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、限局性強皮症、全身性強皮症、大腸炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群、レイノー現象、ベーチェット病、川岐病、原発性胆汁性硬化症、原発性硬化性胆管炎、潰瘍性大腸炎、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease、GVHD)又はクローン病であることを特徴とする、請求項13に記載の薬学組成物。
【請求項15】
前記膀胱炎は、間質性膀胱炎、慢性膀胱炎及びケタミン誘発性膀胱炎から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項16】
請求項1の間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効成分として含む創傷治癒用薬学組成物。
【請求項17】
請求項1の間葉系幹細胞の炎症疾患又は自己免疫疾患の治療用途。
【請求項18】
請求項1の間葉系幹細胞を、これを必要とする対象体に投与する段階を含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、間葉系幹細胞、これから分離された細胞外小胞、及びこれらの用途に関する。
【0002】
〔背景技術〕
一般に、炎症反応は、生体の細胞や組織に器質的変化をもたらす侵襲による損傷を修復及び再生するための生体防御反応過程であって、この反応過程には、局所の血管、体液の各種の組織細胞及び免疫細胞などが作用する。正常に外部侵入菌によって誘導される炎症反応は、生体を保護するための防御システムである一方で、非正常的に過度な炎症反応が誘導されると多様な疾患が現れるが、これらの疾患を炎症疾患と総称する。前記炎症疾患は、外部刺激によって活性化された標的細胞から分泌される多様な炎症媒介物質が炎症を増幅及び持続させ、人体の生命を脅かす疾患であって、急性炎症、膀胱炎などの膀胱内での疾患、関節リウマチなどの関節内での疾患、乾癬などの形態で現れる皮膚疾患及び気管支喘息などのアレルギー性炎症疾患などを含む。
【0003】
特に、間質性膀胱炎(IC)は、痛症、例えば、骨盤痛の症候、及び下部尿路症状(LUTS)、例えば、増加した頻尿/尿意切迫感を特徴とする、原因が明らかになっていない慢性膀胱疾患である。より最近の用語は、この複合症候を集合的に開示するために、ICと共に、有痛性膀胱症候群(PBS)([MacDiarmid SA et al.Rev Urol 2007;9(1):9-16])又は膀胱痛症候群(BPS)([(van der Merve et al.European Urology 53(2008)60-67])を含むものであって、すなわち、IC/BPS又はIC/PBS/BPSに変化している。
【0004】
IC/PBS/BPSの有病率は、臨床的に確認された疾病を有する100,000人の女性当たり67人乃至230人と多様であり、頻繁に、子宮内膜炎、再発性尿路感染、過敏性膀胱又は外陰部痛と誤って診断されたり低く診断されるので、この数値はさらに高いと見込まれる(Forrest J B et al.Clinical Courier 2006;24(3):1-8)。ICは、人生の質に相当な影響を及ぼし、旅行、家族関係及び活動に影響を及ぼし(Slade D et al.Urol 1997;49(5A Suppl):10-3)、また、うつ病性症候群と関連している(Rothrock NE et al.J Urol 2002;167:1763-1767)。
【0005】
前記IC/PBS/BPSは、単一の病因が確認されておらず、主に痛覚過敏、慢性膀胱痛症及び排尿障害を起こす(Forrest J B et al.Clinical Courier 2006;24(3):1-8)。
【0006】
一方、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell、MSC)は、間葉系組織系統に分化する能力を有する多分化能前駆細胞である。この細胞は、多様な細胞で適応及び先天性免疫反応を調節し、潜在的な免疫調節効果を媒介し得るので、自己免疫疾患を治療するための新しい代案として浮かび上がっている。また、この細胞は、免疫抑制及び抗炎症効果(ヨーロッパ登録特許第02298861号、米国公開特許第2012-0269774号)を有するだけでなく、T細胞の活性化及び増殖を抑制するものとして知られている(Li ZJ et al.,PloS ONE 8(10):77159,2013)。
【0007】
しかし、従来は、MSCの一般的な抗炎症効果のみが公知となっているだけで、炎症関連疾患に対してさらに強力な効果を有するように最適化されたMSC幹細胞治療剤は、未だに開発が不十分な実情である。したがって、炎症性疾患の予防又は治療に適したMSC治療剤の開発が切実に要求されている。
【0008】
そこで、本発明者等は、炎症関連疾患に対してさらに強力な効果を有するように最適化されたMSC幹細胞に対して鋭意研究を繰り返えす中で、間葉系幹細胞(MSC)でSPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1から選ばれる1種以上のマーカーの発現量が増加し、PTGS2マーカーの発現量が減少すると、間質性膀胱炎を含む多様な炎症疾患の予防、緩和、改善又は治療に効果的であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、間質性膀胱炎を含む多様な炎症疾患の予防、緩和、改善又は治療に効果的な間葉系幹細胞を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効成分として含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効成分として含む創傷治癒用組成物を提供することにある。
【0012】
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的を達成するために、本発明は、(A)SPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1から選ばれる1種以上のマーカーの発現量の増加;及び(B)PTGS2マーカーの発現量の減少;から選ばれる1種以上の特性を示す間葉系幹細胞を提供する。
【0013】
本発明の好ましい一実施例によると、前記間葉系幹細胞は、SPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1マーカーの発現量が増加するものであり得る。
【0014】
本発明の好ましい一実施例によると、前記間葉系幹細胞は、(1)対象体から分離された全分化能幹細胞を培養することによって胚様体(Embryoid Body、EB)を形成する段階;(2)前記胚様体を微小重力(microgravity)下の生物反応器(bioreactor)で三次元培養することによってスフェロイド(spheroid)を形成する段階;及び(3)前記スフェロイドを、培養表面に粘着性高分子がコーティングされた培養容器で付着・培養することによって間葉系幹細胞に分化させる段階;を含む方法で製作されたものであり得る。
【0015】
本発明の好ましい一実施例によると、前記全分化能幹細胞は、胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell、ESC)又は誘導万能幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell、iPSC)であり得る。
【0016】
本発明の好ましい一実施例によると、前記全分化能幹細胞は、誘導万能幹細胞であり得る。
【0017】
本発明の好ましい一実施例によると、前記段階(1)は、前記全分化能幹細胞をマルチウェル(multi-well)培養容器で三次元培養することによって行われ得る。
【0018】
本発明の好ましい一実施例によると、前記段階(1)は、前記三次元培養時、遠心分離を通じて細胞凝集を誘導する段階をさらに含むことができる。
【0019】
本発明の好ましい一実施例によると、前記段階(2)の微小重力は、前記生物反応器を回転させることによって、前記生物反応器に加えられる重力を相殺する微小重力シミュレーターによって誘導され得る。
【0020】
本発明の好ましい一実施例によると、前記段階(2)は、前記微小重力シミュレーターを15rpm乃至80rpmで回転させながら3日~8日間培養することによって行われ得る。
【0021】
本発明の好ましい一実施例によると、前記段階(2)は、前記微小重力シミュレーターを、40rpm乃至60rpmから始め、毎日5rpmずつ増加させながら回転させることによって行われ得る。
【0022】
本発明の好ましい一実施例によると、前記粘着性高分子は、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginate)、ヘパリン(heparin)、フコイダン(fucoidan)、セルロース(cellulose)、デキストラン(dextran)、キトサン(chitosan)、アルブミン(albumin)、フィブリン(fibrin)、コラーゲン(collagen)及びゼラチン(gelatin)から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0023】
本発明の好ましい一実施例によると、前記粘着性高分子はゼラチンであり得る。
【0024】
また、本発明の他の目的を達成するために、本発明は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効成分として含む炎症性疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0025】
本発明の好ましい一実施例によると、前記炎症疾患又は自己免疫疾患は、膀胱炎、関節リウマチ、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、特発性線維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、限局性強皮症、全身性強皮症、大腸炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、レイノー現象(Raynaud’s phenomenon)、ベーチェット病(Bechet’s disease)、川岐病(Kawasaki’s disease)、原発性胆汁性硬化症(primary biliary sclerosis)、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative olitis)、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease、GVHD)又はクローン病(Crohn’s disease)であり得る。
【0026】
本発明の好ましい一実施例によると、前記膀胱炎は、間質性膀胱炎(Interstitial Cystitis)、慢性膀胱炎及びケタミン誘発性膀胱炎から選ばれる1種以上であり得る。
【0027】
また、本発明の更に他の目的を達成するために、本発明は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効成分として含む創傷治癒用薬学組成物を提供する。
【0028】
〔発明の効果〕
本発明の間葉系幹細胞は、SPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1から選ばれる1種以上のマーカーの発現量の増加及び/又はPTGS2マーカーの発現量の減少特性を示すことによって、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインの量を著しく減少させるので、多様な炎症疾患の予防、緩和、改善又は治療に効果的である。
【0029】
特に、本発明の間葉系幹細胞、又はこれから分離された幹細胞由来細胞外小胞は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)動物モデルに投与する場合、IC/BPS誘導過程で崩れた膀胱内壁を回復させ、炎症程度を緩和させるので、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に対して優れた治療効能を有する。
【0030】
また、本発明の間葉系幹細胞、又はこれから分離された幹細胞由来細胞外小胞は、創傷治癒効果に優れるので、創傷治癒用として有用に利用され得る。
【0031】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、iPSCからMSCを分化させる本発明のプロトコルを要約した模式図である。
【0032】
図2は、Aggrewell上で形成された胚様体(EB)の形態を示す図である。
【0033】
図3は、微小重力生物培養器であるBAM(Bio Array Matrix)装置を通じて形成されたスフェロイドの形態(上端)と、OCT4及びDAPI抗体を用いた染色結果(下端)とを示す図である。
【0034】
図4は、スフェロイドから由来した間葉系幹細胞の外形を示す図であって、継代後、紡錘(spindle)形態を帯びることを確認した(右側)。
【0035】
図5は、本発明の方法で分化されたiMSCの各継代での外形を示す図である。
【0036】
図6は、本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の累積細胞増殖曲線を示す図であって、各継代別CPD(Cummulative Population Doubling)(
図6a)、倍加時間(Doubling time)(
図6b)、及びLog細胞数(
図6c)をそれぞれ示す。
【0037】
図7は、本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の細胞表面マーカー発現をFACS分析で確認した結果を示す図である。
【0038】
図8は、免疫細胞化学染色を用いて本発明の方法を通じて誘導万能幹細胞が全能性を失い、間葉系幹細胞のマーカーを発現する細胞に分化されたことを確認した結果を示す図である。
【0039】
図9は、LPSを用いた炎症誘導細胞において、本発明の方法で分化された幹細胞の炎症制御効果を確認した実験手順を示す模式図である。
【0040】
図10は、RT-PCRを通じて炎症マーカーの発現を確認した結果を示す図である。
【0041】
図11は、免疫細胞化学染色を用いてLPS処理によって炎症が誘導された細胞をTRAP染色した結果(左側)と、前記TRAP染色された細胞を計数した結果(右側)とを示す図である。
【0042】
図12は、本発明の間葉系幹細胞から分離したエクソソームの大きさ(左側)及び濃度(右側)を測定した結果を示す図である。
【0043】
図13aは、本発明の間葉系幹細胞から分離したエクソソームをスクラッチ(Scrach)したNHDF細胞に処理した後、時間の経過による細胞移動程度を示す写真で、
図13bは、前記細胞移動程度を数値化して示したグラフである。
【0044】
図14aは、本発明の間葉系幹細胞に含有されたそれぞれの上向き調節遺伝子のタンパク質間相互作用(Protein-Protein Interaction)を確認するために、データベース基盤のストリング(String)-dbツール(tool)を用いてネットワーク分析した結果を示し、
図14bは、各下向き調節遺伝子をネットワーク分析した結果を示す図である。
【0045】
図15a乃至
図15dは、本発明の間葉系幹細胞に含まれたそれぞれの上向き調節遺伝子に対してそれぞれDAVID分析を行い、予測される各機能を用いて生成したベンダイアグラムである。
【0046】
図16a乃至
図16dは、本発明の間葉系幹細胞に含まれたそれぞれの下向き調節遺伝子に対してそれぞれDAVID分析を行い、予測される各機能を用いて生成したベンダイアグラムである。
【0047】
図17aは、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいて、本発明の間葉系幹細胞(iMSC)の投与後、膀胱組織の形態及び炎症程度を確認した図である。
図17aは、IC/BPSマウスモデルの膀胱組織をそれぞれH&E染色、マッソン・トリクローム(masson’s trichome)染色及びトルイジンブルー(toluidine blue)染色した結果を示し、
図17bは、前記染色を通じて線維化(Fibrosis)の程度(%)とマスト細胞(Mast cell)の浸透を確認した結果を示したグラフである。
【0048】
図18は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいて、本発明の間葉系幹細胞(iMSC)の投与後、抽出された膀胱組織からmRNAを抽出し、炎症関連サイトカイン(TNFα、IL6)の発現量(
図18a)、尿路上皮マーカー(UPK1A、UPK1B、UPK2)の発現量(
図18b)、及びIC/BPSで発現する遺伝子(KLRB1、PSMB9、ITGAL)の発現量(
図18c)を確認した結果を示す図である。
【0049】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明を詳細に説明する。
【0050】
本発明の一側面は、(A)SPP1(secreted phosphoprotein 1;Osteopontin)、PLAU(Plasminogen Activator、Urokinase)、ITGA6(integrin subunit alpha 6)、CENPI(Centromere Protein I)、及びBUB1(Budding Uninhibited By Benzimidazoles 1 Homolog;Mitotic checkpoint serine/threonine-protein kinase)から選ばれる1種以上のマーカーの発現量の増加;及び(B)PTGS2(Prostaglandin-Endoperoxide Synthase 2、or COX2;)マーカーの発現量の減少;から選ばれる1種以上の特性を有する間葉系幹細胞に関する。
【0051】
本発明において、「発現量の増加」又は「発現量の減少」という用語は、従来の間葉系幹細胞、好ましくは、一般のウォートンゼリー(Wharton’s Jelly)由来間葉系幹細胞(hWJ-MSC)と比較して、間葉系幹細胞が発現する特定のマーカーの発現量が測定可能な程度に有意に増加又は減少したことを意味し、具体的には、発現量が40%以上増加又は減少したことを意味し、より具体的には50%以上増加又は減少したことを意味し、より具体的には60%以上増加又は減少したことを意味し、さらに具体的には80%以上増加又は減少したことを意味し、最も具体的には100%以上増加又は減少したことを意味する。
【0052】
本発明において、「幹細胞(stem cell)」という用語は、組織を構成する各細胞に分化(differentiation)される前の段階の未分化細胞であって、特定の分化刺激(環境)下で特定の細胞に分化できる能力を有する各細胞を総称する。幹細胞は、細胞分裂が停止した分化された細胞とは異なり、細胞分裂によって自分と同一の細胞を生産(self-renewal)することができ、分化刺激が加えられると、刺激の性格によって多様な細胞に分化され得る、分化の柔軟性(plasticity)を有していることを特徴とする。
【0053】
本発明において、「間葉系幹細胞」という用語は、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、神経細胞、心筋細胞への分化が可能な多分化能(multipotency)を有する幹細胞を意味する。間葉系幹細胞は、渦巻き形態と基本的な細胞表面マーカーCD73(+)、CD105(+)、CD34(-)、CD45(-)の発現程度を通じて識別可能であり、多分化能と共に免疫反応を調節する機能も有する。
【0054】
本発明の間葉系幹細胞は、SPP1に対して、従来の間葉系幹細胞、好ましくは、一般のhWJ-MSC(対照群)に比べて少なくとも3倍以上、具体的には3.0倍乃至4.0倍、さらに具体的には3.50倍乃至4.00倍、さらに具体的には3.80倍乃至3.90倍の重量に発現量を上向き調節又は増加させ得る。
【0055】
また、本発明の間葉系幹細胞は、PLAUに対して、従来の間葉系幹細胞、好ましくは、一般のhWJ-MSC(対照群)に比べて少なくとも1.5倍以上、具体的には1.5倍乃至2.2倍、具体的には1.80倍乃至2.10倍、さらに具体的には1.90倍乃至2.00倍の重量に発現量を上向き調節又は増加させ得る。
【0056】
また、本発明の間葉系幹細胞は、ITGA6に対して、従来の間葉系幹細胞、好ましくは、一般のhWJ-MSC(対照群)に比べて少なくとも2.1倍以上、具体的には2.1倍乃至3.0倍、具体的には2.30倍乃至2.60倍、さらに具体的には2.40倍乃至2.50倍の重量に発現量を上向き調節又は増加させ得る。
【0057】
また、本発明の間葉系幹細胞は、CENPIに対して、従来の間葉系幹細胞、好ましくは、一般のhWJ-MSC(対照群)に比べて少なくとも1.5倍以上、具体的には1.5倍乃至2.0倍、具体的には1.60倍乃至1.90倍、さらに具体的には1.70倍乃至1.80倍の重量に発現量を上向き調節又は増加させ得る。
【0058】
また、本発明の間葉系幹細胞は、BUB1に対して、従来の間葉系幹細胞、好ましくは、一般のhWJ-MSC(対照群)に比べて少なくとも1.4倍以上、具体的には1.4倍乃至2.1倍、具体的には1.50倍乃至1.90倍、さらに具体的には1.65倍乃至1.75倍の重量に発現量を上向き調節又は増加させ得る。
【0059】
また、本発明の間葉系幹細胞は、PTGS2に対して、従来の間葉系幹細胞、好ましくは、一般のhWJ-MSC(対照群)に比べて少なくとも2.0倍以上、具体的には2.0倍乃至3.0倍、具体的には2.30倍乃至2.90倍、さらに具体的には2.50倍乃至2.70倍の重量に発現量を下向き調節又は減少させ得る。
【0060】
本発明の間葉系幹細胞は、前記SPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1から選ばれる1種以上のマーカーの発現量の増加;及び/又は前記PTGS2マーカーの発現量の減少特性を有することによって、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインの量を著しく減少させ、多様な炎症疾患、好ましくは、膀胱炎、特に間質性膀胱炎を予防、緩和、改善又は治療することができる。また、本発明の間葉系幹細胞は、細胞の移動(migration)を著しく増加させ、創傷治癒効果に非常に優れる。
【0061】
一具現例において、本発明の間葉系幹細胞は、SPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1マーカーの発現量が増加するものであり得る。
【0062】
一具現例において、本発明の間葉系幹細胞は、(1)対象体から分離された全分化能幹細胞を培養することによって胚様体(Embryoid Body、EB)を形成する段階;(2)前記胚様体を微小重力下の生物反応器で三次元培養することによってスフェロイドを形成する段階;及び(3)前記スフェロイドを、培養表面に粘着性高分子がコーティングされた培養容器で付着・培養することによって間葉系幹細胞に分化させる段階;を含む方法で製作されたものであり得る。
【0063】
本発明において、「全能性幹細胞(pluripotent stem cell)」という用語は、受精卵より発生が進められた状態の細胞であって、内胚葉、間葉及び外胚葉を構成する細胞に全て分化できる幹細胞を意味する。本発明の具体的な具現例によると、本発明で用いられる全能性幹細胞は、胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell、ESC)、胚性生殖細胞(Embryonic Germ Cell)、胚性癌腫細胞(Embryonic Carcinoma Cell)又は誘導万能幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell、iPSC)で、より具体的には胚性幹細胞又は誘導万能幹細胞で、最も具体的には誘導万能幹細胞である。
【0064】
本発明において、「誘導万能幹細胞」という用語は、非全分化能細胞(例えば、体細胞)に未分化又は全分化能表現型と関連した特定の遺伝子を挿入し、人工的に由来した全分化能幹細胞の一つである。誘導万能幹細胞は、幹細胞遺伝子及びタンパク質発現、染色体メチル化、倍加時間、胚様体形成、テラトーマ形成、生存性キメラ形成、交雑性及び分化性を有する点で、当業界では胚性幹細胞などの天然の全分化能幹細胞と同一の表現型、生理学的特性及び発生学的特性を有するものとして見なされている。
【0065】
本発明において、「幹細胞の分化」という用語は、未分化状態の幹細胞から特定の細胞に完全に分化が誘導された場合のみならず、幹細胞から特定の細胞に完全に分化される前の中間段階で形成される前駆体(precursor)細胞の形成も含むものである。
【0066】
一具現例において、前記各段階で使用される細胞培養液は、糖、アミノ酸、各種栄養物質、無機質などのように、細胞の成長及び増殖に必須的な要素を含む、インビトロにおける細胞の成長及び増殖のための混合物である。細胞培養用培地に追加的に含まれ得る成分は、例えば、グリセリン、L-アラニン、L-アルギニン塩酸塩、L-システイン塩酸塩一水和物、L-グルタミン、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、L-リシン塩酸塩、L-メチオニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-バリン、L-アスパラギン一水和物、L-アスパラギン酸、L-シスチン2HCl、L-グルタミン酸、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-チロシン二ナトリウム塩二水和物、i-イノシトール、チアミン塩酸塩、ナイアシンアミド、ピリドキシン塩酸塩、ビオチン、D-パントテン酸カルシウム、葉酸、リボフラビン、ビタミンB12、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH2PO4-H2O)、硫酸銅五水和物(CuSO4-5H2O)、硫酸第二鉄七水和物(FeSO4-7H2O)、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4-7H2O)、D-グルコース(デキストロース)、ピルビン酸ナトリウム、ヒポキサンチンNa、リノレン酸、リポ酸、プトレシン2HCl及びチミジンを含むが、これに制限されるものではない。
【0067】
一具現例において、前記細胞培養用培地は、人為的に製造して使用したり、或いは商業的に市販されるものを購入して使用することができる。商業的に市販されている培養用培地の例は、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、α-MEM(Alpha Modification of Eagle’s Medium)、F12(Nutrient Mixture F-12)、及びDMEM/F12(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12)を含むが、これに制限されるものではない。
【0068】
一具現例において、前記段階(1)は、前記全分化能幹細胞をマルチウェル培養容器で三次元培養することによって行われ得る。
【0069】
本発明において、「三次元培養(3-dimensional culture)」という用語は、二次元培養に相対する概念であって、培養対象細胞を基質(substrate)などに固定せずに培養液内で浮遊(floating)する状態で培養することを言う。したがって、「三次元培養」という用語は、「浮遊培養(suspension culture)」と同一の意味で使用される。付着(adhesion)依存性の幹細胞は、浮遊培養時に細胞凝集を起こし、このような凝集に含まれず、単独で浮遊する細胞は細胞死(apoptosis)を誘発して死滅するので、細胞の付着特性に合う環境が造成されなければならない。本発明によると、複数のウェルを有するマルチウェルで全能性幹細胞を浮遊培養することによって、ウェルの大きさに応じた直径の全能性幹細胞凝集体、すなわち、胚様体(Embryoid Body、EB)がウェルの数に比例して形成される。したがって、本発明の段階(1)では、同一の大きさ及び形状を有する規格化された胚様体を大量に収得することができる。
【0070】
一具現例において、前記マルチウェル培養容器は、1ウェル当たりに350μm×350μm乃至450μm×450μmの大きさを有するマイクロウェルプレートであり得る。
【0071】
一具現例において、前記浮遊培養は、前記マルチウェル培養容器内の1ウェル当たりに0.5×105個乃至1.5×105個、好ましくは0.7×105個乃至1.3×105個、さらに好ましくは約0.9×105個乃至1.1×105個の細胞を分注することによって行われ得る。
【0072】
一具現例において、前記段階(1)は、前記浮遊培養時、遠心分離を通じて細胞凝集を誘導する段階をさらに含むことができる。
【0073】
本発明において、「細胞凝集(aggregation)」という用語は、単一層(monolayer)ではなく、三次元的成長が許容された浮遊培養などの環境で培養された細胞が自己集合(self aggregation)をしながら三次元構造の細胞凝集塊を形成することを意味する。三次元培養の結果として作られた細胞凝集体は、幹細胞から由来した生体内組織と類似する環境を提供し、大きさ及び自己集合された細胞の数によって球形(sphere)であってもよく、球形以外の形態であってもよい。
【0074】
一具現例において、前記段階(2)の微小重力は、前記生物反応器を回転させることによって、前記生物反応器に加えられる重力を相殺する微小重力シミュレーターによって誘導され得る。
【0075】
本発明において、「微小重力(microgravity)」という用語は、重力が存在しないか、測定可能なレベル未満でのみ存在したり、又は、重力による生物学的及び生理学的影響が観測されない程度でのみ存在することを意味し、具体的には1×106g以下の環境を意味する。したがって、「微小重力」という用語は、「無重力」とも表現され得る。
【0076】
本発明において、「微小重力シミュレーター(microgravity simulator)」という用語は、正常重力環境又は有意な重力が存在する環境内で人為的に重力を相殺することによって微小重力環境を誘導する装置を意味する。このような微小重力シミュレーターとしては、例えば、クリノスタット(Clinostat)、RPM(Random positioning machine)、RWV(Rotating wall vessel)などがあるが、これに制限されなく、適切な外力の付加を通じて本発明の生物反応器内の培養環境で指定された時間だけ重力を相殺できる装置であれば制限なく使用され得る。
【0077】
一具現例において、前記微小重力シミュレーターはクリノスタットである。クリノスタットは、生物反応器などの培養容器に結合され、ランダムに或いは指示(入力)されたパターンに従って継続的に方向を変えながら回転し、絶えず三次元姿勢を変えることによって重力方向の継続的な変動をもたらし、これを通じて重力を相殺する装置である。
【0078】
一具現例において、前記段階(2)は、前記微小重力シミュレーターを15rpm乃至80rpm、好ましくは40rpm乃至80rpmで回転させながら3日乃至8日間培養することによって行われ得、より好ましくは4日乃至7日間、さらに好ましくは5日間培養することができる。
【0079】
好ましくは、前記段階(2)は、前記微小重力シミュレーターを、40rpm乃至60rpmから始め、毎日5rpmずつ増加させながら回転させることによって行われ得る。さらに好ましくは、50rpmから始め、毎日5rpmずつ増加させながら5日間培養することができる。
【0080】
本発明において、「生物反応器(bioreactor)」という用語は、生物学的な活性を有する培養環境を造成するための培養空間と、これと連動して作動する一連の機械装置とを含む生物学的試料の培養装置又はシステムを意味する。
【0081】
前記段階(2)では、段階(1)で生成された胚様体を微小重力(micro-gravity)下の生物反応器で三次元培養することによってスフェロイドを形成する。スフェロイドは、球形の細胞凝集体を意味するが、幾何学的に完全な球形である必要はない。
【0082】
前記段階(1)及び段階(2)で2回にわたって三次元浮遊培養を進行した後、これを通じて形成されたスフェロイドを、粘着性高分子がコーティングされた培養容器で付着・培養することによって間葉系幹細胞に分化させることができる。
【0083】
本発明において、「高分子」という用語は、同じ又は異なる種類のモノマーが連続的に結合された合成又は天然ポリマー化合物を称する。よって、高分子は、ホモポリマー(一種類のモノマーが重合化されたポリマー)と、少なくとも2種の異なるモノマーとの重合によって製造されたハイブリッドポリマーを含み、ハイブリッドポリマーは、コポリマー(二種の異なるモノマーから製造されたポリマー)と、2種超過の異なるモノマーから製造されたポリマーの両方を含む。
【0084】
本発明において、「粘着性高分子」という用語は、培養表面と細胞又はその凝集体(例えば、スフェロイド)との間の共有又は非共有結合を通じた架橋を形成し、細胞又はその凝集体が培養容器の底又は側面から離脱せずに付着した状態で培養が進行されることを可能にする天然又は人工高分子を意味する。
【0085】
一具現例において、前記粘着性高分子は、ヒアルロン酸、アルギン酸、ヘパリン、フコイダン、セルロース、デキストラン、キトサン、アルブミン、フィブリン、コラーゲン及びゼラチンから選ばれるいずれか一つであり得、好ましくはゼラチンであり得る。
【0086】
本発明の具体的な一実施例によると、本発明の間葉系幹細胞は、従来の間葉系幹細胞の小胞体、特に、一般のhWJ-MSC(対照群)と比較して遺伝子マーカー発現特性において明確な差を示す。下記の実施例で確認できるように、本発明の間葉系幹細胞は、一般のhWJ-MSC(対照群)に比べてSPP1、PLAU、ITGA6、CENPI及びBUB1から選ばれる1種以上のマーカーの発現量が有意に増加し、前記PTGS2マーカーの発現量が有意に減少する。
【0087】
また、本発明の他の側面は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効成分として含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防又は治療用組成物に関する。
【0088】
本発明の間葉系幹細胞に対しては既に説明したので、過度な重複を避けるために、これについての記載は省略する。
【0089】
本発明において、「細胞外小胞(extracellular vesicle)」という用語は、多様な細胞において多胞体と原形質膜との融合を通じて細胞外環境に分泌される30nm~1,000nm範囲の直径を有する脂質二重膜構造の小胞を意味する。
【0090】
一具現例において、本発明の細胞外小胞は、前記間葉系幹細胞の培養液から複数回の遠心分離を通じて分離されたものであり得る。
【0091】
一具現例において、本発明の細胞外小胞は、100nm~250nmの平均直径を有し、より具体的には150nm~220nm、さらに具体的には180nm~200nm、さらに具体的には185nm~195nmの平均直径を有する。このような範囲の微細直径を有する細胞外小胞をエキソソーム(exosome)という。
【0092】
本発明において、「予防」という用語は、疾患又は疾病を保有していると診断されたことはないが、このような疾患又は疾病にかかる可能性がある対象体における疾患又は疾病の発生を抑制することを意味する。
【0093】
本発明において、「治療」という用語は、(a)疾患、疾病又は症状の発展の抑制;(b)疾患、疾病又は症状の軽減;又は(c)疾患、疾病又は症状を除去することを意味する。本発明の組成物は、T細胞媒介免疫活性を効率的に抑制することによって、過度な又は所望でない免疫反応を原因とする多様な炎症又は自己免疫疾患の症状の発展を抑制したり、これを除去又は軽減させる役割をする。よって、本発明の組成物は、それ自体でこれらの疾患治療の組成物になることもあり、或いは、炎症又は自己免疫疾患に対する治療効果を有する他の薬理成分と共に投与され、前記疾患に対する治療補助剤として適用されることもある。したがって、本明細書における「治療」又は「治療剤」という用語は、「治療補助」又は「治療補助剤」の意味を含む。
【0094】
本発明において、「投与」という用語は、本発明の組成物の治療的有効量を対象体に直接投与することによって、対象体の体内で同じ量が形成されるようにすることを言い、「移植」又は「注入」と同じ意味を有する。
【0095】
本発明において、「治療的有効量」という用語は、本発明の組成物を投与しようとする個体に治療的又は予防的効果を提供するのに十分な程度に含有された組成物の含量を意味し、よって、「予防的有効量」を含む意味である。
【0096】
本発明において、「対象体」という用語は、制限なしに、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ又はアカゲザルを含む。具体的には、本発明の対象体はヒトである。
【0097】
一具現例において、本発明の組成物は、多様な炎症疾患に対して予防又は治療効果を有する。本発明の薬学組成物を適用できる炎症疾患は、当業界で炎症疾患として公知となったものであればよく、特に制限されない。本発明の薬学組成物で予防又は治療される自己免疫疾患又は炎症性疾患は、例えば、関節リウマチ、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、特発性線維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、限局性強皮症、全身性強皮症、大腸炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群、レイノー現象、ベーチェット病、川岐病、原発性胆汁性硬化症、原発性硬化性胆管炎、潰瘍性大腸炎、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease、GVHD)及びクローン病を含むが、これに制限されるものではなく、好ましくは膀胱炎であり得る。
【0098】
一具現例において、本発明の薬学組成物で予防又は治療される膀胱炎は、間質性膀胱炎、慢性膀胱炎及びケタミン誘発性膀胱炎から選ばれる1種以上であり得、好ましくは間質性膀胱炎であり得る。
【0099】
本発明の一実施例では、抗炎症細胞モデルに、本発明の間葉系幹細胞又はその培養液、又はこれから分離された細胞外小胞を投与する場合、TNF-α、IL-6の濃度が著しく減少するので、抗炎症治療効果に優れることを具体的に確認した。
【0100】
また、本発明の一実施例では、インビボ(in vivo)で間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)動物モデルに本発明の間葉系幹細胞を投与する場合、IC/BPS誘導過程で崩れた膀胱内壁が回復され、炎症程度が緩和されるなど、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群に対して優れた治療効能を示すことを具体的に確認した。
【0101】
一具現例において、本発明の薬学組成物は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を単独で含むか、又は、一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含むことができる。
【0102】
薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体をさらに含むことができる。経口投与用担体は、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸などを含むことができる。また、非経口投与用担体は、水、適切なオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含むことができ、安定化剤及び保存剤をさらに含むことができる。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの抗酸化剤がある。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル又はプロピルパラベン及びクロロブタノールがある。本発明の薬学的組成物は、前記各成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤などをさらに含むことができる。その他の薬学的に許容される担体としては、次の文献に記載されているものを参考にすることができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1995)。
【0103】
本発明の組成物は、ヒトを始めとした哺乳動物に如何なる方法でも投与することができ、例えば、経口的又は非経口的に投与することができる。非経口的な投与方法は、これに限定されないが、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、骨髓内投与、硬膜内投与、脈絡膜上腔注入(suprachoroidal injection)、経皮投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、腸管投与、局所投与、舌下投与又は直腸内投与であり得、好ましくは静脈内投与であり得る。
【0104】
本発明の薬学的組成物は、上述した投与経路によって経口投与用又は非経口投与用製剤に剤形化することができる。
【0105】
経口投与用製剤の場合、本発明の組成物は、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液などとして当業界に公知となった方法を用いて剤形化され得る。例えば、経口用製剤は、活性成分を固体賦形剤と配合した後、これを粉砕し、適切な補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することによって錠剤又は糖衣錠剤を収得することができる。適切な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール及びマルチトールなどを含む糖類と、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン及びジャガイモデンプンなどを含むデンプン類と、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを含むセルロース類と、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなどの充填剤とが含まれ得る。また、場合によって、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はナトリウムアルギネートなどを崩壊剤として添加することができる。さらに、本発明の薬学的組成物は、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含むことができる。
【0106】
非経口投与用製剤の場合は、注射剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、オイル剤、ゲル剤、エアロゾル及び鼻腔吸入剤の形態で当業界に公知となった方法を用いて剤形化することができる。これらの剤形は、全ての製薬化学に一般的に公知となった処方書である文献(Remington’s Pharmaceutical Science,15th Edition,1975.Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0107】
好ましくは、本発明の前記薬学的組成物は、経口剤、注射剤、及び軟膏剤で構成された群から選ばれるいずれか一つの形態で製造されるものであり得、さらに好ましくは注射剤であり得る。
【0108】
本発明の薬学組成物は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効量で含むとき、好ましい炎症疾患の予防、改善又は治療効果を提供することができる。本明細書において、「有効量」とは、陰性対照群に比べてそれ以上の反応を示す量を言い、好ましくは、炎症疾患、特に間質性膀胱炎を改善又は治療するのに十分な量を言う。
【0109】
前記間葉系幹細胞は、薬学組成物の総含量に対して5×104cell/ml乃至2×105cell/ml、好ましくは7.5×104cell/ml乃至1.5×105cell/ml、さらに好ましくは8×104cell/ml乃至1.2×105cell/mlで含まれ得る。このとき、前記間葉系幹細胞の含量が前記下限値未満である場合は、細胞生存率には優れるが、炎症疾患の改善又は治療効果が所望の程度に現れないおそれがある。その一方で、前記上限値を超える場合は、濃度が増加する分だけ、炎症疾患の改善又は治療効果が増加しないか又は毒性があり得る。一方、インビトロ実験の結果、本発明の間葉系幹細胞の濃度が前記範囲である場合は、炎症疾患の改善又は治療に対して有意な効果が現れると共に、細胞毒性などの副作用が現れなかった。
【0110】
また、本発明の間葉系幹細胞から分離された細胞外小胞は、5×108particles/ml乃至5×1010particles/ml、好ましくは5×109particles/ml乃至5×1010particles/ml、さらに好ましくは1×1010particles/ml乃至2×1010particles/mlで含まれ得る。このとき、前記幹細胞由来細胞外小胞の含量が前記下限値未満である場合は、細胞生存率には優れるが、炎症疾患の改善又は治療効果が所望の程度に現れないおそれがある。その一方で、前記上限値を超える場合は、濃度が増加する分だけ、炎症疾患の改善又は治療効果が増加しないか又は毒性があり得る。一方、インビトロ実験の結果、本発明の幹細胞由来細胞外小胞の濃度が前記範囲である場合は、炎症疾患の改善又は治療に対して有意な効果が現れると共に、細胞毒性などの副作用が現れなかった。
【0111】
本発明の薬学組成物に含まれる間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞の有効量は、組成物が製剤化される形態などによって変わり得る。
【0112】
本発明の薬学的組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与されてもよく、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与されてもよい。本発明の薬学組成物は、疾患の程度によって有効成分の含量を異ならせることができる。
【0113】
前記薬学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性などの各要因によって多様に処方され得る。本発明の薬学的組成物の好ましい投与量は、成人を基準にして0.001mg/kg乃至100mg/kgの範囲内である。
【0114】
また、本発明の更に他の側面は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を有効成分として含む創傷治癒用組成物に関する。
【0115】
本発明の間葉系幹細胞、これから分離された細胞外小胞、薬学組成物及び有効量に対しては既に説明したので、過度な重複を避けるために、これについての記載は省略する。
【0116】
本発明の一実施例では、創傷を生成した細胞モデルに、本発明の間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を投与する場合、細胞移動が著しく増加することを具体的に確認した(
図13a及び
図13b)。
【0117】
本発明の間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞は、細胞の移動を著しく増加させ、創傷治癒効果に優れるので、創傷治癒用として有用に利用され得る。
【0118】
また、本発明の更に他の側面は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞の治療用途(for use in therapy)に関する。
【0119】
本発明の間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞に対しては既に説明したので、過度な重複を避けるために、これについての記載は省略する。
【0120】
前記治療用途は、炎症疾患又は自己免疫疾患、好ましくは炎症疾患の治療用途であり得る。
【0121】
前記炎症疾患又は自己免疫疾患は、膀胱炎、関節リウマチ、反応性関節炎、1型糖尿病、2型糖尿病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、特発性線維性肺胞炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、限局性強皮症、全身性強皮症、大腸炎、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群、レイノー現象、ベーチェット病、川岐病、原発性胆汁性硬化症、原発性硬化性胆管炎、潰瘍性大腸炎、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease、GVHD)又はクローン病であり得る。
【0122】
前記膀胱炎は、間質性膀胱炎、慢性膀胱炎及びケタミン誘発性膀胱炎から選ばれる1種以上であり得る。
【0123】
また、本発明の更に他の側面は、前記間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞を、これを必要とする対象体(subject)に投与する段階;を含む炎症疾患又は自己免疫疾患の予防、改善又は治療方法に関する。
【0124】
本発明の間葉系幹細胞、又はこれから分離された細胞外小胞に対しては既に説明したので、過度な重複を避けるために、これについての記載は省略する。
【0125】
前記「対象体(subject)」は、予防、改善、治療、観察又は実験の対象である哺乳動物を言い、好ましくは、炎症疾患又は自己免疫疾患の予防、改善及び/又は治療を必要とするヒト又は哺乳動物であり得る。
【0126】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、次の実施例によって本発明が限定されることはない。
【0127】
<実施例>
実験方法
単一コロニーの培養
誘導万能幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell、iPSC)を、マトリゲル(354234、corning、米国)がコーティングされた96ウェルプレートに単一細胞として付着させたiPSC培地で1週間培養し、単一コロニーを生成した。生成された各コロニーは、マトリゲルがコーティングされた24ウェルディッシュ、6ウェルディッシュに順に継代した後、1×10
5程度に細胞数が増加すると、スフェロイド実験に使用した(
図1)。
【0128】
BAMシステムを用いたスフェロイドの生成
iPSCをAggrewellプレート(34460、stemcell、カナダ)に1×10
5程度にシーディングし、300gで5分間遠心分離することによって細胞を凝集させた後、5%CO
2培養器下で24時間培養し、胚様体(Embryoid Body、EB)を生成した。24時間後に生成されたEBは、生物反応器(Bioreactor、CelVivo、デンマーク)内に注意深く移し、生物反応器を微小重力装置であるBAMシステム(CelVivo、デンマーク)に装着してから5日間回転した。回転時、最初は50rpmから始め、毎日5rpmずつ増加させた(
図1)。
【0129】
誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞(iPSC-MSC)の生成
BAMシステムで育てたスフェロイドを、0.1%ゼラチンコーティングされた6-ウェル培養皿に移し、DMEM/F12に10%FBSと1%P/Sを添加した培地で培養し、2日~3日ごとに培地を交換した。コーティングされた底に付着したスフェロイドから細胞が出た後、70%~80%コンフルエントになると、Trypleを用いて継代した。最初の継代をP0と命名し、細胞の形状が均質化(homogenous)するまで継代した。
【0130】
免疫細胞化学(ICC)染色を用いた万能性及び間葉系幹細胞の確認
iPSC段階で生成されたスフェロイドは、生物反応器から一部取り出し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。iPSCのスフェロイドで作られたiPSCMSCは、共焦点ディッシュ(101350、SPL、韓国)に1×105の濃度でシーディングした後、60%~70%コンフルエントになると4%PFAで固定した。固定されたスフェロイド及びiPSC-MSCは、DPBSで5分間3回水洗した後、抗体が良好に透過できるように0.3%Triton X-100で表面を透過させた。その後、DPBSで5分間3回水洗した。水洗されたスフェロイドは、ブロッキングのために3%BSA/PBSで1時間にわたって室温で培養した。1時間後に3%BSA/PSBを除去し、一次抗体(1:200)であるAnti-OCT4、Anti-SSEA4、Anti-PDGFRβを入れた後、冷蔵庫で12時間にわたって反応させた。12時間後に室温で取り出し、DPBSで5分ずつ3回水洗した。
【0131】
水洗後、二次抗体(1:200)であるヤギ抗-マウス488と共に1時間にわたって室温で培養した。1時間後に二次抗体を除去し、核を染色するDAPI又はTopro3で20分間染色した後、DPBSで5分ずつ3回水洗した。水洗した試料に対しては、Antifade Mounting Medium(H-1000、VECTOR LABORATORY、イギリス)を用いて蛍光の消失を防止した。
【0132】
iPSC-MSC継代及び細胞増殖曲線
iPSC-MSCの形状が均質化した継代から細胞形態を記録し、細胞数を計算しながら増殖曲線を描いた。P5からiPSC-MSCを60mmの培養皿に2×105の細胞数でシーディングした後、5日間培養し、5日間1回培地を交換した。細胞増殖は3つの増殖曲線で示した。まず、細胞成長率(Cummulative Population Doubling level:CPD)の細胞数は、「CPD=log(後の細胞数/最初の細胞数)/log(2)」として計算した。次に、細胞が2倍に増殖する時間である倍加時間は、「倍加時間=培養日数×log(2)/(log(後の細胞数)-log(最初の細胞数))」として計算した。その後、継代時の細胞数を計算し、logを取った値である細胞数は、「細胞数=log(細胞数)」として計算した。計算された数値は線グラフで示し、対照群としてAD-MSC(間葉系幹細胞)及びhWJ-MSC(ヒトウォートンゼリー由来間葉系幹細胞)を使用した。
【0133】
フローサイトメトリー(FACS)分析を用いた免疫表現型の検査
培養中の細胞をTrypLETMExpress(10624013、gibco、米国)を用いて分離し、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上清液を除去し、FACS緩衝液(2%FBSが含まれたD-PBS)に浮遊させた後、マウス抗-CD34、マウス抗-CD45、マウス抗-CD73、ヒツジ抗-CD90に一次反応した。これらの一次抗体を1:500に希釈し、細胞に200μlずつ加えた後、4℃で30分間培養した。次に、D-PBSで洗浄し、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上清液を除去し、1:500に希釈した二次抗体であるウサギ抗-マウス488又はドンキー抗-ヒツジPEを200μlずつ添加し、4℃で20分間培養した。その後、染色された細胞をFACS緩衝液500μLに浮遊させ、フローサイトメトリー分析機(FACS Calibur;Becton Dickinson、Heidelberg、ドイツ)でフローサイトメトリー分析を行い、Cell Quest proソフトウェアを用いて分析した。
【0134】
抗炎症細胞モデル
本発明のiPSC-MSCの抗炎症能力を評価するために、炎症細胞モデルに使用する大食細胞(Macrophage)であるRaw 264.7細胞を用いた。Raw 264.7細胞は、10%FBS及び1%P/Sが含有されたα-MEM(Minimum Essential Medium)培地で育てた。まず、培養容器でhWJ-MSC(対照群)又はiPSC-MSC(本発明)を培養した後、50%満ちると、新しい培地を供給した後で48時間培養する。48時間後にコンディション培地を集め、0.20μmの注射器フィルターを用いてろ過した後、4℃冷蔵庫に保管した。
【0135】
Raw 264.7細胞を、1ウェル当たり3.75×10
5の細胞数で6ウェル培養皿に分けて接種した。12時間後に細胞が付着すると、準備したコンディション培地100%と交換した。再度12時間後、
図9に示したように、対照群を除いて、コンディション培地群を含む全ての群にLPS(lipopolysaccharide、Sigma、米国)200ng/mlを処理した。陽性対照群として、DEX(Dexamathasone、Peprotech、米国)1μMを処理した。7時間後に画像を記録し、PFA 4%で細胞を固定した後、免疫細胞化学染色を実施した。
【0136】
トータルRNA分離、RT-PCR
Labo Pass Kit、TRIzol(Cosmogenetech、Seoul、Korea)を使用し、製造業者のマニュアルに従ってRaw264.7細胞のトータルRNAを抽出した。全RNAの濃度は、Nanodrop(ND1000)分光光度計(Nanodrop Technologies Inc.,Wilmington DE,USA)で測定した。トータルRNA 2μg及びM-MLV逆転写酵素(Promega)を使用し、製造業者のマニュアルに従ってcDNAを合成した。RT-PCR反応は、終了後に2%アガロースゲルで分析した。使用したプライマーの配列は表1に羅列した:
【0137】
【0138】
免疫細胞化学染色
前記固定された細胞は、2回PBSで洗浄した。0.3%Triton X-100を使用し、10分間細胞の核内への浸透を実施し、PBSで洗浄した後、非特異的抗体結合を遮断するために、10%正常ヤギ血清と共に1時間にわたって室温で静置した。細胞を一次抗体であるTRAPマウスモノクローナル(mouse monoclonal)抗体(Santacruz.米国)と4℃で12時間にわたって反応させた後、細胞をDPBSで3回洗浄し、二次抗体であるAlexa-488接合ヤギ抗マウス抗体と共に室温で1時間にわたって反応させた。1時間後、DPBSに静置し、細胞核は、染色するためにToPro3(Thermo Fisher Scientific、米国)で15分間室温で反応させた。15分後にDPBSで3回水洗した後、Antifadeマウンティング溶液(H-1000、VECTOR LABORATORY、イギリス)を用いてマウンティングした。
【0139】
エクソソームの分離及びNTA分析
本発明に係るiMSCを5,000cells/cm2でシーディングし、培養した後、70%~80%程度満ちると、新しいDMEM-F12培地(D8437、Sigma)(exosome depletion FBS 10%とP/S 1%を含む)と交換した。48時間後にコンディション培地を50mlチューブに集め、300gで3分間遠心分離した。遠心分離後に新しい50mlチューブ(50050、SPL)に移し、4℃で2,000gで10分間遠心分離した。遠心分離後に新しい50mlチューブに移し、4℃で10,000gで30分間遠心分離した。遠心分離後、新しい50mlチューブに移した。超遠心用チューブ(Ultracentrifuge tube)(344058、Beckman)に32ml~36mlのコンディション培地を移した後、4℃で32,000rpm(187,000g、Beckman、SW 32Ti rotor)で2時間にわたって遠心分離した。遠心分離後、1個の超遠心用チューブに200μlの0.2μmろ過(filtered)(S6534-FMOSK、Sartorious)1X PBS(10010-031、gibco)でエクソソームを収集した。
【0140】
上記で収得したエクソソームを、それぞれ0.2μmろ過1x PBSで500倍乃至2000倍に希釈した後、NTA装備(Zetaview)を用いてエクソソームの大きさ及び濃度(particles/ml)を測定した。
【0141】
創傷治癒能分析
対照群の細胞外小胞(Cont EV)と本発明の間葉系幹細胞由来細胞外小胞(iMSCEV)のNHDF細胞に対する移動効果を確認するために、6ウェルプレート(30006、SPL)にNHDF細胞を2.5E+05cells/wellでシーディングし、約100%のコンフルエントになるようにインキュベート(incubation)した。細胞のコンフルエントが満ちると、DMEM高グルコース(high glucose)(D6429、sigma)に1%ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin streptomycin)(1514-163、gibco)を入れたSFM(Serum free medium)にマイトマイシン(Mitomycin)C(M4287、Sigma-Aldrich)を10μg/mlに希釈した後、1ml/wellで処理した。2時間にわたってインキュベートし、DPBSで洗浄した後、1000μlのピペットチップ(pipet tip)を用いてウェルの縦に細胞を掻いた。DPBSで洗浄し、細胞破片(cell debris)を除去した後、DMEM高SFMに各細胞外小胞を1E+09particles/wellで処理した。前記処理後、0時間、12時間、24時間、48時間ごとに一定の位置で写真を撮ることによって細胞の移動程度を確認した。移動程度の分析は、TScratchソフトウェアを用いて比較した。
【0142】
RNAシーケンス分析
ヒトウォートンゼリー由来間葉系幹細胞(Umbilical Cord-Derived Mesenchymal Stem Cells;UC-MSC)(ATCC:PCS-500-010)と本発明のiMSC細胞をペレット(pellet)状態でLAS(金浦、韓国)に提供することによってRNAを分離し、QCテストを実施した後、マイクロアレイ(Microarray)分析を通じたボルケーノプロット(Vocano plot)資料を受けた。前記ボルケーノプロットを通じて、上向き調節遺伝子が183個で、下向き調節遺伝子が322個であることを確認した。また、それぞれの遺伝子に対して、DA VID分析を通じて遺伝子の主要機能(役割)を予測する資料を受けた。分析された資料は、まず、それぞれの遺伝子のタンパク質間相互作用を確認するために、データベース基盤のストリング-dbツール(https://string-db.org/)を用いてネットワーク分析したものである。前記DAVID分析で予測された遺伝子の主要機能としては、ベンダイアグラム(Venn Diagram)(https://bioinfogp.cnb.csic.es/tools/venny/)を用いて互いに重なった遺伝子の機能を探した。
【0143】
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデル
8週齢のBALB/cAnNCrlOri雌マウス(Female mouse)を受け、2週間の適応期間を置いた。アルファキサンとロンプンを4:1の比率で混ぜ、90μl/Mouseに腹腔注射することによってマウスに麻酔を行った。尿道にカテーテル(382412、BD)を挿入することによって膀胱内部の尿を除去し、PBS 50μlを入れて洗浄した。5mg/mlプロタミン硫酸塩(Protamine sulfate)(P3369、Sigma)を注入し、30分後にPBSで洗浄した。LPS 30μg/ml(L4391、Sigma)を注入し、PBSで洗浄した。ホットプレート(hot plate)でマウスの回復を確認し、一週間飼育した。この過程を4回繰り返し、マウスIC/BPSモデルを誘導した。実験5週目には、同一の方法でマウスに麻酔を行った後、下腹部を切開し、膀胱の表面に本発明のiMSCを1×105細胞数でPBS(10μl)に懸濁して注入した。下腹部を縫合し、麻酔から回復されることを確認した後で飼育した。一週間後、マウスに麻酔を行った後、膀胱を摘出してから実験に使用した。一部の膀胱は、均質化(homogenization)した後でRNAを抽出し、一部は、組織切開(section)及び染色を通じて膀胱の形態及び炎症程度を確認した。
【0144】
qPCR
抽出された膀胱を均質化した後、Labozol試薬(reagent)(CMRZ001、Cosmogenetech)に再懸濁した。クロロホルム(C2432、Sigma)をlabozolと5:1の比率で混ぜてからボルテックスした。13,000rpmで15分間遠心分離し、RNAが溶けている上清液を新しいチューブにゆっくり移し、同量の2-プロパノール(propanol)(64605-0380、junsei、1:1)を入れた。上清液と2-プロパノールがあるチューブを1回~2回反転(inverting)させた後、13,000rpmで15分間遠心分離した。RNAペレットを75%EtoHで洗浄した後、13,000rpmで10分間遠心分離し、DEPCにRNAを再懸濁した。RNAは、rTaq Plus 5x PCR master mix(EBT-1319、ELPISBIO)を用いてcDNAを合成し、HiPi Real-Time PCR 2x Master Mix(SYBR green、ROX)(EBT-1802、ELPISBIO)を用いて遺伝子の発現量を確認した(7500、Amersham Phamacia Biotech)。
【0145】
実験結果
BAMシステムを用いたスフェロイドの生成
Aggrewellプレートに載せたiPSCは、24時間後に形状と大きさが均質な丸いEBを形成することを確認した(
図2)。
【0146】
免疫細胞化学染色によるスフェロイドの万能性細胞の確認
スフェロイドを万能性マーカーであるOCT4で染色したとき、緑色に染色され、核を染色するDAPIで染色したとき、特異的に核部位が緑色と青色に染色されることを確認できた。OCT4が核で発現することが分かり、iPSC由来のスフェロイドが万能性を維持することが分かった(
図3)。
【0147】
iPSC-MSCの生成
0.1%ゼラチンでコーティングされた培養皿において、スフェロイド(黒い矢印)が底に付着し、細胞が突出して出ること(白い矢印)を観察できた。時間が経過するにつれて突出細胞が増加し、70%~80%コンフルエントで継代した。継代を進行するにつれて、細胞の形状は紡錘形(白い点線の矢印)に均質化した(
図4)。
【0148】
iPSC-MSC継代及び細胞増殖曲線
iPSC-MSCは、P5から細胞が紡錘形態を帯び、P13まで継代できた(
図5)。その後、細胞は、貯蔵液を作ってLN
2に貯蔵した。細胞増殖曲線は、対照群であるhWJ-MSC及びAD-MSCと比較し、その結果、AD-MSCは、P9まで細胞数が増加した後で減少し、hWJ-MSCは、P13でも着実に細胞が増殖した。iPSC-MSCは、対照群よりもCPD及び累積細胞数が遥かに高く、倍加時間も対照群より速かった(
図6)。
【0149】
フローサイトメトリー分析(FACS)を用いた免疫表現型の検査
FACS分析の結果、対照群であるAD-MSCと比較して、iPSC-MSCが抗-CD73及び抗-CD90に対して陽性であり、抗-CD34及び抗-CD45は陰性であることを確認した(
図7)。これにより、BAMシステムを通じて作られたiPSC-MSCが間葉系幹細胞の明確な特性を有することが分かった。
【0150】
免疫細胞化学染色によるiPSC-MSCの間葉系幹細胞の確認
iPSC-MSC細胞に対して、万能性マーカーであるOCT4及びSSEA4と、間葉系幹細胞マーカーであるPDGFRβとを用いてICCを進行した。iPSC-MSCでは、緑色に染色されたOCT4及びSSEA4マーカーでは、緑色に染色された細胞が少なく、緑色PDFGRβマーカーでは、緑色に染色された細胞が多く分布した(
図8)。これにより、iPSC-MSCが全分化能を失いながら間葉系幹細胞に転換されたことが分かった。
【0151】
抗炎症細胞モデル
幹細胞の炎症制御効果を確認するための実験手順の模式図によって実験を行った(
図9)。炎症実験の結果、Raw 264.7細胞にLPSを処理し、炎症を誘発したLPS群では巨大な多核細胞を観察できた。そして、LPS処理と共にDEXを処理した陽性対照群(LPS+DEX)、LPS処理と共にそれぞれhWJ-MSCのコンディション培地を処理した試験群(LPS+hWJ-MSCCM)、及びiMSCのコンディション培地を処理した試験群(LPS+iMSC CM)では多核細胞を観察できなかった(
図10)。また、それぞれの実験群に対してRT-PCRを行った結果、IL-6の発現がLPS群で最も高く現れ、LPS処理と共にそれぞれhWJ-MSCのコンディション培地を処理した試験群(LPS+hWJ-MSC CM)及びiMSCのコンディション培地を処理した試験群(LPS+iMSC CM)では、LPS群よりもIL-6の発現が有意に減少したことを確認した(
図10)。一方、LPS処理と共にDEXを処理した陽性対照群(LPS+DEX)では、IL-6の発現が著しく低く現れた。
【0152】
免疫細胞化学染色による多核細胞の有無の確認
前記抗炎症細胞モデルの試験後、それぞれの試験群に対してTRAP抗体を用いた多核細胞の有無を確認した。多核細胞は、炎症反応の進行時、細胞が集まりながら生成されるものであって、多核細胞の存在有無を通じて炎症の有無を確認することができる。実験の結果、LPS群では、TRAP染色された細胞(TRAP Positive)の比率が非常に高く、LPS処理と共にそれぞれhWJ-MSCのコンディション培地を処理した試験群(LPS+hWJ-MSC CM)及びiMSCのコンディション培地を処理した試験群(LPS+iMSC CM)では、前記LPS群に比べてTRAP陽性(positive)細胞が著しく少なかった(
図11)。
【0153】
エクソソームの分離及びNTA分析
NTA装備を用いてエクソソームの大きさ及び濃度(particles/ml)を測定した結果、本発明のiPSC-MSCから分離したエクソソームの粒子(particle)の大きさは約100nmに該当し、WJ-MSCから分離したエクソソームに比べて全体の粒子の数が約4倍ほど多いことを確認した(
図12)。
【0154】
創傷治癒能分析
前記本発明のiPSC-MSCから分離したエクソソームを、スクラッチ(Scratch)された正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF、Normal human dermal fibroblast)に入れ、48時間にわたって観察したとき、48時間後、対照群であるPBS群では50%程度の創傷が治癒されたが、本発明のiPSC-MSCから分離したエクソソームを処理した試験群(Exosome)では、90%以上の創傷が治癒されたことを確認できた(
図13a及び
図13b)。このような結果から、本発明のiPSC-MSCから分離したエクソソームの創傷治癒能は、対照群であるPBSに比べて著しく高いことが分かる。
【0155】
RNAシーケンスの分析
RNAシーケンスデータを用いてボルケーノプロットを描いた結果、上位調節遺伝子183個、下位調節遺伝子322個を探すことができた。これらを用いて、それぞれストリングデータ(String data)及びベンダイアグラムで示した。
【0156】
まず、上位調節遺伝子183個を用いたストリングデータにおいて、発現が増加したマーカー(Up-regulated Genes)であるSPP1(secreted phosphoprotein 1;Osteopontin)、PLAU(Plasminogen Activator、Urokinase)、ITGA6(integrin subunit alpha 6)、CENPI(Centromere Protein I)、BUB1(Budding Uninhibited By Benzimidazoles 1 Homolog;Mitotic checkpoint serine/threonine-protein kinase)などの遺伝子が多く相互作用していることが分かった(
図14a)。これらの遺伝子のボルケーノプロット(volcano plot)の発現差は、次の通りである。SPP1の発現は、対照群(hWJ-MSC)に比べて約3.0倍乃至4.0倍、具体的には3.50倍乃至4.00倍、さらに具体的には3.80倍乃至3.90倍の重量に増加し、PLAUの発現は、約1.5倍乃至2.2倍、具体的には1.80倍乃至2.10倍、さらに具体的には1.90倍乃至2.00倍の重量に増加し、ITGA6の発現は、約2.1倍乃至3.0倍、具体的には2.30倍乃至2.60倍、さらに具体的には2.40倍乃至2.50倍の重量に増加し、CENPIの発現は、約1.5倍乃至2.0倍、具体的には1.60倍乃至1.90倍、さらに具体的には1.70倍乃至1.80倍の重量に増加し、BUB1の発現は、約1.4倍乃至2.1倍、具体的には1.50倍乃至1.90倍、さらに具体的には1.65倍乃至1.75倍の重量に増加した。前記発現が増加した各マーカー(Up-regulated Genes)を用いたボルケーノプロットデータ(vocano plot data)のGOTERMを用いてベンダイアグラムで示した結果、陽性RNA重合プロモーターによる転写調節関連遺伝子と、細胞付着及び増殖関連遺伝子にITGA6遺伝子が重なることを確認できた(
図15a)。SSP1は、骨分化マーカーとして使用するものであって、骨分化が促進されることを見ることができ、PLAUは、小便から分離した酵素で凝固された血液や繊維素によって遮断された静脈路の血流回復のための治療剤として使用することができ、ITGA6は、上皮細胞におけるラミニン(laminin)に対する受容体として、ヘミデスモゾーム(hemidesmosome)で重要な構造的役割をし、CENPIは、卵胞刺激ホルモンに対する生殖腺組織の反応に関与し、BUB1は、有糸分裂紡錘チェックポイント及び染色体凝集の重要な役割をするものとして知られている。
【0157】
次に、下位遺伝子322個を用いたストリングデータにおいて、発現が減少したマーカー(Down-regulated Gene)であるPTGS2(Prostaglandin-Endoperoxide Synthase 2、or COX2;)が多く相互作用していることを確認した(
図14b)。前記PTGS2遺伝子のボルケーノプロットの発現差は、次の通りである。PTGS2の発現は、対照群(hWJ-MSC)に比べて約2.0倍乃至3.0倍、具体的には2.30倍乃至2.90倍、さらに具体的には2.50倍乃至2.70倍の重量に減少した。前記発現が減少したマーカーを用いたボルケーノプロットデータのGOTERMを用いてベンダイアグラムで示した結果、陰性細胞増殖調節関連遺伝子とLPS反応及び炎症関連遺伝子にPTGS2が重なることを確認できた(
図16a)。PTGS2は、炎症反応中にプロスタグランジン(prostaglandin)の生成を担当する酵素である。
【0158】
前記上向き調節遺伝子5個と下向き調節遺伝子1個の相対的発現量の差を数値化し、これらを下記の表2に示した。
【0159】
【0160】
前記表2を検討すると、前記5個の上向き調節遺伝子は、hWJ-MSCに比べて本発明のiMSCで発現が著しく増加し、前記1個の下向き調節遺伝子は、hWJ-MSCに比べて本発明のiMSCで発現が著しく減少したことを確認することができる。
【0161】
このような結果から、本発明のiMSCが従来のhWJ-MSCと差別化された効能を有することは、前記遺伝子発現の差によるものであると類推することができる。
【0162】
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデル
マウスの膀胱組織を切開し、H&E染色をした結果、IC/BPS誘導マウスでは、膀胱内壁が崩れていることを確認し、iMSC及びhWJ-MSCを処理したグループでは、膀胱内壁が回復されたことを確認した。さらに、マッソン・トリクローム染色及びトルイジンブルー染色を通じて線維化の程度(%)とマスト細胞の浸透を確認し、iMSC及びhWJ-MSCを処理したグループで炎症程度が緩和されたことを確認した(
図17a、
図17b)。特に、本発明のiMSCを処理したグループは、hWJ-MSCを処理したグループに比べて線維化の程度(%)とマスト細胞の浸透が約50%レベルに著しく減少することが確認され、本発明のiMSCが、hWJ-MSCに比べて炎症の予防、改善又は治療にさらに効果的であることが分かる。
【0163】
qPCR
IC/BPS誘導マウスの膀胱組織からmRNAを抽出し、炎症関連サイトカイン(IL6、TNF-alpha)、本発明のiMSCを処理した群で発現度が低くなったことを確認した(
図18a)。また、尿路上皮(Urothelial)マーカー(UPK1A、UPK1B、UPK2)の発現を確認した結果、本発明のiMSCを処理した群で発現度が高くなったことを確認した(
図18b)。最後に、本発明者等の先行研究で発見したIC/BPSマーカー(KLRB1、PSMB9、ITGAL)が、本発明のiMSCを処理した群で低く発現することを確認した(
図18c)(韓国公開特許公報第10-2331138号参照)。
【0164】
前記各実験結果から、本発明のiMSCが、間質性膀胱炎(IC)などの膀胱痛症候群(BPS)の治療に有用に利用可能であると類推することができる。
【0165】
本発明は、上記で言及した好ましい実施例として説明したが、発明の要旨と範囲から逸脱しない範囲で多様な修正や変形が可能である。また、添付の特許請求の範囲は、本発明の要旨に属するこのような修正や変形を含む。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【
図1】
図1は、iPSCからMSCを分化させる本発明のプロトコルを要約した模式図である。
【
図2】
図2は、Aggrewell上で形成された胚様体(EB)の形態を示す図である。
【
図3】
図3は、微小重力生物培養器であるBAM(Bio Array Matrix)装置を通じて形成されたスフェロイドの形態(上端)と、OCT4及びDAPI抗体を用いた染色結果(下端)とを示す図である。
【
図4】
図4は、スフェロイドから由来した間葉系幹細胞の外形を示す図であって、継代後、紡錘(spindle)形態を帯びることを確認した(右側)。
【
図5】
図5は、本発明の方法で分化されたiMSCの各継代での外形を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の累積細胞増殖曲線を示す図であって、各継代別CPD(Cummulative Population Doubling)(
図6a)、倍加時間(Doubling time)(
図6b)、及びLog細胞数(
図6c)をそれぞれ示す。
【
図7】
図7は、本発明の方法で分化された間葉系幹細胞の細胞表面マーカー発現をFACS分析で確認した結果を示す図である。
【
図8】
図8は、免疫細胞化学染色を用いて本発明の方法を通じて誘導万能幹細胞が全能性を失い、間葉系幹細胞のマーカーを発現する細胞に分化されたことを確認した結果を示す図である。
【
図9】
図9は、LPSを用いた炎症誘導細胞において、本発明の方法で分化された幹細胞の炎症制御効果を確認した実験手順を示す模式図である。
【
図10】
図10は、RT-PCRを通じて炎症マーカーの発現を確認した結果を示す図である。
【
図11】
図11は、免疫細胞化学染色を用いてLPS処理によって炎症が誘導された細胞をTRAP染色した結果(左側)と、前記TRAP染色された細胞を計数した結果(右側)とを示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の間葉系幹細胞から分離したエクソソームの大きさ(左側)及び濃度(右側)を測定した結果を示す図である。
【
図13】
図13aは、本発明の間葉系幹細胞から分離したエクソソームをスクラッチ(Scrach)したNHDF細胞に処理した後、時間の経過による細胞移動程度を示す写真で、
図13bは、前記細胞移動程度を数値化して示したグラフである。
【
図14】
図14aは、本発明の間葉系幹細胞に含有されたそれぞれの上向き調節遺伝子のタンパク質間相互作用(Protein-Protein Interaction)を確認するために、データベース基盤のストリング(String)-dbツール(tool)を用いてネットワーク分析した結果を示し、
図14bは、各下向き調節遺伝子をネットワーク分析した結果を示す図である。
【
図15】
図15a乃至
図15dは、本発明の間葉系幹細胞に含まれたそれぞれの上向き調節遺伝子に対してそれぞれDAVID分析を行い、予測される各機能を用いて生成したベンダイアグラムである。
【
図16】
図16a乃至
図16dは、本発明の間葉系幹細胞に含まれたそれぞれの下向き調節遺伝子に対してそれぞれDAVID分析を行い、予測される各機能を用いて生成したベンダイアグラムである。
【
図17】
図17aは、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいて、本発明の間葉系幹細胞(iMSC)の投与後、膀胱組織の形態及び炎症程度を確認した図である。
図17aは、IC/BPSマウスモデルの膀胱組織をそれぞれH&E染色、マッソン・トリクローム(masson’s trichome)染色及びトルイジンブルー(toluidine blue)染色した結果を示し、
図17bは、前記染色を通じて線維化(Fibrosis)の程度(%)とマスト細胞(Mast cell)の浸透を確認した結果を示したグラフである。
【
図18】
図18は、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)誘導マウスモデルにおいて、本発明の間葉系幹細胞(iMSC)の投与後、抽出された膀胱組織からmRNAを抽出し、炎症関連サイトカイン(TNFα、IL6)の発現量(
図18a)、尿路上皮マーカー(UPK1A、UPK1B、UPK2)の発現量(
図18b)、及びIC/BPSで発現する遺伝子(KLRB1、PSMB9、ITGAL)の発現量(
図18c)を確認した結果を示す図である。
【配列表】
【国際調査報告】