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特表2024-527582融合ポリペプチドを用いるプロテアーゼ媒介性の標的特異的サイトカイン送達
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】融合ポリペプチドを用いるプロテアーゼ媒介性の標的特異的サイトカイン送達
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240718BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240718BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20240718BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240718BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240718BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/24
C07K14/54
C12P21/02 C
C40B40/10
C12N15/62 Z
C12N15/13
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500484
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2022027893
(87)【国際公開番号】W WO2023002952
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021119178
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チチリ ヴィシュヌ ピリヤンカ レディ
(72)【発明者】
【氏名】南部 健
(72)【発明者】
【氏名】井川 智之
(72)【発明者】
【氏名】山本 陽平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元彦
(72)【発明者】
【氏名】廣庭 奈緒香
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG03
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA15
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、リガンド結合ドメイン、プロテアーゼ切断サイト、およびリガンド部分を含む融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質は、リガンド結合ドメイン、リガンド部分、およびプロテアーゼ切断サイトを含み、プロテアーゼによる切断によって活性化された場合に、リガンドの生物学的活性を復元する。本発明はまた、融合タンパク質を製造する方法、それらの使用、および該融合タンパク質を含む薬学的組成物にも関する。本発明はまた、互いからの解離を促進する、リガンド結合ドメイン内の重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)との間の会合を低減させる方法にも関する。本開示は、リガンドが定常領域のC末端、またはリガンド結合ドメインのN末端に融合している、融合タンパク質を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ切断サイトを含む少なくとも1つの抗原結合ドメインを含むポリペプチドであって、
該プロテアーゼ切断サイトでの切断時に、該プロテアーゼ切断サイトに隣接した抗体ドメインが解離し、かつ該解離が、該抗体ドメインと、対応する相互作用するドメインとの境界面で行われる少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進され、
該ポリペプチドが、一価もしくは二価、単一特異性もしくは二重特異性である抗体、またはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG-IgG、IgG-Fab、もしくはCrossMab抗体からなる群より選択されるIgG抗体であるか;あるいは、
該ポリペプチドが抗体断片であり、該抗体断片が、scFv、scFv-Fc、タンデムscFv、Fab、タンデムFab、F(ab')2、Fab2、Fab-scFv-Fc、F(ab')2-scFv2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab2、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、タンデムダイアボディ、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)、バイボディ(bibody)、またはトリボディ(tribody)からなる群から選択される、
前記ポリペプチド。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体可変領域を含み、ならびに任意で、該VHがCH1領域と会合し、および/または該VLがCL領域と会合し、ならびに前記プロテアーゼ切断サイトが、VH領域とCH1領域との境界、またはVL領域とCL領域との境界、またはVHとVLとの境界に位置する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
未切断状態と比較して切断状態でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変が、VHとVLとの境界面で行われ、および該アミノ酸改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換であり、該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
抗原結合ドメインを含む全長IgG抗体を含む二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
該抗原結合ドメインが、可変領域を含み、
該可変領域が、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、かつ(a)その可変領域のVH領域とCH1領域との境界またはVL領域とCL領域との境界のプロテアーゼ切断サイト、および(b)該可変領域に結合するリガンドを含み、ならびに
プロテアーゼ切断時に、(i)VHまたはVLのいずれかが融合タンパク質から解離し、かつ(ii)リガンドが可変領域から解離し、ならびに
(i)に記載される解離が、未切断状態と比較して切断状態でVHとVLとの間の会合を低減させる、VHとVLとの境界面で行われる少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進され、該改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換であり、ならびに
該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質。
【請求項5】
前記少なくとも1つの置換が、VH上のポジション37、39、44、45、47、91、もしくは103、および/またはVL上のポジション38、43、44、46、49、87、もしくは98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、請求項4記載の融合タンパク質。
【請求項6】
各々がN末端からC末端に向かって、一般式(I):
[リガンド結合ドメイン]-[Lx]-[Cx]-[Ly]-[リガンド部分] (I)
によって表される2つのポリペプチドを含む、二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
式中、
Lxが、プロテアーゼ切断サイトを含むペプチドリンカーを表し、
Cxが、第2のペプチドリンカーと、任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基とを含む、定常領域を表し;
Lyが、第3のペプチドリンカーを表し、
ならびに該リガンド結合ドメインが、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに該リガンド結合ドメインが、該プロテアーゼ切断サイトの切断を触媒するプロテアーゼの非存在下(「未切断状態」)と比較して該プロテアーゼの存在下(「切断状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ならびに該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質。
【請求項7】
前記リガンド部分が、IL-12であり、および該IL-12が、IL-12の切断を触媒するプロテアーゼに曝露された場合のタンパク質分解を妨げる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、および該少なくとも1つのアミノ酸改変が、IL-12とリガンド結合ドメインとの境界面で行われる、請求項6記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアミノ酸改変を行った後に、IL-12が、KSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まず、その代わりに(a)~(p)からなる群より選択される改変された配列を含む、請求項7記載の融合タンパク質:
(a)KSHRE(配列番号:1052);
(b)KSHHE(配列番号:1053);
(c)KSHKE(配列番号:1054);
(d)KSHSE(配列番号:1055);
(e)KSKHRE(配列番号:1056);
(f)KSKQRE(配列番号:1057);
(g)KSKERE(配列番号:1058);
(h)KSKPRE(配列番号:1059);
(i)KHKE(配列番号:1060);
(j)KHHE(配列番号:1061);
(k)KHRE(配列番号:1062);
(l)KKHE(配列番号:1063);
(m)KRHE(配列番号:1064);
(n)KRE(配列番号:1065);
(o)KHE(配列番号:1066);および
(p)KKE(配列番号:1067)。
【請求項9】
前記リガンド結合ドメインが、未切断状態でのものと比較して切断状態でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、および該改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換であり、該アミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、請求項8記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記少なくとも1つの置換が、VH上のポジション37、45、91、もしくは103、および/またはVL上のポジション43、46、49、もしくは87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、請求項9記載の融合タンパク質。
【請求項11】
以下の工程:
(a)プロテアーゼ切断サイトを含むペプチドリンカーを導入する工程であって、該ペプチドリンカーが、VH領域をCH1領域に、またはVL領域をCL領域に、またはVHをVLに接続する、工程、
(b)VLからのVHの解離、またはVHからのVLの解離を促進するために、VHとVLとの境界面に存在する少なくとも1つのアミノ酸中に少なくとも1つの置換改変を導入する工程、
(c)工程(b)が、VHおよびVLに対する抗原の結合を破壊しないことを確認する工程、
(d)工程(b)が、プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断時にVHとVLとの会合を低減させることを確認する工程、ならびに
(e)工程(b)から結果として生じた該ポリペプチドまたは該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養し、かつポリペプチドまたは融合タンパク質を宿主細胞から回収する工程
を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド、または請求項4~10のいずれか一項記載の二価ホモ二量体融合タンパク質を製造する方法。
【請求項12】
二価ホモ二量体融合タンパク質をスクリーニングする方法であって、
該融合タンパク質が、プロテアーゼ切断サイトおよびリガンド結合ドメインを含み、
該リガンド結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに
該リガンド結合ドメインが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断前(「未切断状態」)と比較して該切断サイトでのプロテアーゼ切断後(「切断状態」)にVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ならびに
該VHまたはVLが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断後に融合タンパク質から遊離され、ならびに
該方法が、
(a)VHまたはVLの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸改変または少なくとも1つのペアのアミノ酸改変を、VHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸改変を、リガンド部分とリガンド結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(b)未切断状態でのBIACORE表面プラズマ共鳴(SPR)アッセイにおいて、工程(a)の固定化された融合タンパク質の第1の反応単位(RU1)を測定する工程;
(c)切断状態での同じBIACORE表面プラズマ共鳴(SPR)アッセイにおいて、工程(a)の固定化された融合タンパク質の第2の反応単位(RU2)を測定する工程;ならびに
(d)RU1とRU2との間の差のパーセンテージが、1%以下であるか、または5%以下であるか、または10%以下であるか、または15%以下であるか、または20%以下であるか、または30%以下であるか、または40%以下である場合には、工程(a)における改変を選択する工程
を含み、ならびに
反応単位の低減パーセンテージが、融合タンパク質からのVHまたはVLの遊離に起因する分子量の低減パーセンテージに対応する、
前記方法。
【請求項13】
二価ホモ二量体融合タンパク質をスクリーニングする方法であって、
該融合タンパク質が、プロテアーゼ切断サイトおよびリガンド結合ドメインを含み、
該リガンド結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに
該リガンド結合ドメインが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断前(「未切断状態」)と比較して該切断サイトでのプロテアーゼ切断後(「切断状態」)にVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ならびに
該VHまたはVLが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断後に融合タンパク質から遊離され、ならびに
該方法が、
(a)VHまたはVLの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸改変または少なくとも1つのペアのアミノ酸改変を、VHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸改変を、リガンド部分とリガンド結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(b)未切断状態での融合タンパク質の第1のセットを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、ピークA1(第1のピーク)を含む第1のクロマトグラフを得る工程;
(c)切断状態での融合タンパク質の第2のセットをSECに供し、ピークA2(第2のピーク)および追加的なピークA2'(第3のピーク)を含む第2のクロマトグラフを得る工程であって、A2'が、A2のショルダーピークである、工程;
(d)ピークA2'(第3のピーク)の曲線下面積(AUC)割るピークA1(第1のピーク)のAUCから結果として生じたパーセンテージを決定する工程;ならびに
(e)工程(d)において得られたパーセンテージが、1%以下であるか、または5%以下であるか、または10%以下であるか、または15%以下であるか、または20%以下であるか、または30%以下であるか、または40%以下である、工程(a)における改変を選択する工程
を含み、ならびに
工程(d)において決定された低減パーセンテージが、融合タンパク質からのVHまたはVLの遊離に起因する分子量の低減パーセンテージに対応する、
前記方法。
【請求項14】
以下の配列:
(i)配列番号:1084と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1085と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(ii)配列番号:1084と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1086と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(iii)配列番号:1084と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1085と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(iv)配列番号:1084と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1086と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(v)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vi)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vii)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(viii)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ix)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(x)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xi)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xii)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xiii)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xiv)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xv)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xvi)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xvii)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xviii)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xix)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xx)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xxi)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xxii)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xxiii)(i)~(iv)のいずれかに記載される重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインと競合する、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメイン;ならびに
(xxiv)(v)~(xxiii)のいずれかに記載される重鎖および軽鎖と競合する、重鎖および軽鎖
のいずれか1つを含む、IL-12を含む二価ホモ二量体融合タンパク質。
【請求項15】
プロテアーゼ耐性IL-12であって、IL-12が、KSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まず、かつ以下の配列:
(i)配列番号:1068と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xvi)配列番号:1083と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xvii)配列番号:1068と同一であるアミノ酸配列;
(xviii)配列番号:1069と同一であるアミノ酸配列;
(xix)配列番号:1070と同一であるアミノ酸配列;
(xx)配列番号:1071と同一であるアミノ酸配列;
(xxi)配列番号:1072と同一であるアミノ酸配列;
(xxii)配列番号:1073と同一であるアミノ酸配列;
(xxiii)配列番号:1074と同一であるアミノ酸配列;
(xxiv)配列番号:1075と同一であるアミノ酸配列;
(xxv)配列番号:1076と同一であるアミノ酸配列;
(xxvi)配列番号:1077と同一であるアミノ酸配列;
(xxvii)配列番号:1078と同一であるアミノ酸配列;
(xxviii)配列番号:1079と同一であるアミノ酸配列;
(xxix)配列番号:1080と同一であるアミノ酸配列;
(xxx)配列番号:1081と同一であるアミノ酸配列;
(xxxi)配列番号:1082と同一であるアミノ酸配列;および
(xxxii)配列番号:1083と同一であるアミノ酸配列
のいずれかを含む、前記プロテアーゼ耐性IL-12。
【請求項16】
複数の二価ホモ二量体融合タンパク質を含むライブラリであって、該ライブラリ内の各融合タンパク質が、プロテアーゼ切断サイトおよびリガンド結合ドメインを含み、該リガンド結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに該リガンド結合ドメインが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断の前後でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、前記ライブラリ。
【請求項17】
二価ホモ二量体融合タンパク質からVHまたはVLを遊離する方法であって、
該融合タンパク質が、プロテアーゼ切断サイトおよびリガンド結合ドメインを含み、
該リガンド結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに
該リガンド結合ドメインが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断前と比較して、該切断サイトでのプロテアーゼ切断後にVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ならびに
該VHまたはVLが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断後に融合タンパク質から遊離され、
該方法が、少なくとも1つのアミノ酸改変をVHとVLとの境界面に導入する工程を含み、ならびに
該アミノ酸が、フレームワーク領域(FR)中にある、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンド結合ドメインおよびプロテアーゼ切断サイトを有するリガンド結合部分を含む融合タンパク質に関し、これは、プロテアーゼによる切断によって活性化された場合に、リガンドの生物学的活性を復元する。本発明はまた、融合タンパク質を製造する方法、それらの使用、および該融合タンパク質を含む薬学的組成物にも関する。本発明はまた、互いからの解離を促進する、リガンド結合ドメイン内の重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)との間の会合を低減させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
我々の免疫系の生来の能力は、その効力、特異性、および記憶を誇る。これらの特徴によって動機付けられ、免疫療法が、感染症、自己免疫、アレルギー、移植拒絶反応、移植片対宿主病、およびがんを含む、多様な領域において開発されている。炎症および免疫攻撃に対する身体の免疫応答におけるその役割が周知の小さなタンパク質であるサイトカインおよびケモカインが、免疫療法の開発の中心段階にある。
【0003】
しかし、今日まで、サイトカイン媒介性免疫療法には、高い全身毒性および低い~無視できる程度の有効性に関する共通の懸念が残っている。サイトカインは、投与されると全身に曝露され、したがって、全身作用によって毒性を惹起するため、多くの場合、サイトカインは、そのような毒性を回避するために非常に低い用量でのみ投与され得る。これを克服するための魅力的な戦略は、サイトカインを抗体に連結して、腫瘍部位でサイトカイン濃度を局所的に増加させることを含む。イムノサイトカインによって固形がんに送達されたサイトカインは、免疫を活性化し、それによって抗腫瘍効果を発揮する。IL-2、IL-12、およびTNFを含むサイトカインは、強い毒性を有するため、がんに対するこれらのサイトカインの限局性作用が、限局性送達において抗体によって送達された場合に、有害反応を軽減しながら強化され得ることが期待される(非特許文献1~非特許文献3)。しかし、そのようなイムノサイトカインは、体中に拡散し、したがって、特異的な高アフィニティサイトカイン受容体が存在する限り、血液または組織中の任意の細胞に結合することができ、不当な副作用をもたらすことが報告されている。特定の例において、がん抗原に結合する抗体に融合したIL-2は、がん抗原に結合しない抗体に融合したIL-2と同じ抗腫瘍効果を示すことが報告されており、これは、抗体成分ではなくIL-2部分が、その生体内分布を方向付けたことを暗示する(非特許文献4)。
【0004】
他の代替アプローチは、プロテアーゼ切断可能リンカーを介してサイトカインをその受容体に融合させることを含む。プロテアーゼ発現が高い、がん環境などの環境においては、リンカーが切断され、サイトカインがその受容体から遊離される。そのような形式で構成されるイムノサイトカインには、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)によって切断可能なリンカーを介して接続されたTNFαおよびTNF受容体(非特許文献5)、ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼ-2(MMP-2)によって切断可能なIL-2およびIL-2受容体(非特許文献6)が含まれる。しかし、これらの分子におけるサイトカインは、その受容体に融合している間でも活性を有しており、プロテアーゼ切断時に活性化された場合に、活性の改善は限定され、すなわちおよそ10倍である。
【0005】
より最近、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)によって切断可能なIL-2およびIL-12に融合した単鎖断片可変(scFv)(非特許文献6、非特許文献7、特許文献2、特許文献5)ならびに特許文献1、特許文献3、特許文献4、特許文献6、特許文献7、および特許文献8に報告されているようなプロテアーゼ切断可能領域を含む他の融合ポリペプチドを含む、プロテアーゼ切断時に遊離されるサイトカインを含む様々な融合ポリペプチドが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2009/025846
【特許文献2】WO 2011/123683
【特許文献3】WO 2018/097307
【特許文献4】WO 2019/107380
【特許文献5】WO 2019/010219
【特許文献6】WO 2019/010224
【特許文献7】WO 2020/061526
【特許文献8】WO 2021/016640
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cyclophosphamide and tucotuzumab (huKS-IL2) following first-line chemotherapy in responding patients with extensive-disease small-cell lung cancer.Gladkov O, Ramlau R, Serwatowski P, Milanowski J, Tomeczko J, Komarnitsky PB, Kramer D, Krzakowski MJ. Anticancer Drugs. 2015 Nov; 26 (10): 1061-8.
【非特許文献2】Defining the Pharmacodynamic Profile and Therapeutic Index of NHS-IL12 Immunocytokine in Dogs with Malignant Melanoma. Paoloni M, Mazcko C, Selting K, Lana S, Barber L, Phillips J, Skorupski K, Vail D, Wilson H, Biller B, Avery A, Kiupel M, LeBlanc A, Bernhardt A, Brunkhorst B, Tighe R, Khanna C. PLoS One.2015 Jun 19; 10 (6): e0129954.
【非特許文献3】Isolated limb perfusion with the tumor-targeting human monoclonal antibodycytokine fusion protein L19-TNF plus melphalan and mild hyperthermia in patients with locally advanced extremity melanoma. Papadia F, Basso V, Patuzzo R, MaurichiA, Di Florio A, Zardi L, Ventura E, Gonzalez-Iglesias R, Lovato V, Giovannoni L, Tasciotti A, Neri D, Santinami M, Menssen HD, De Cian F. J Surg Oncol. 2013 Feb; 107 (2): 173-9.
【非特許文献4】Antigen specificity can be irrelevant to immunocytokine efficacy and biodistribution. Tzeng A, Kwan BH, Opel CF, Navaratna T, Wittrup KD. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Mar 17; 112 (11): 3320-5.
【非特許文献5】Cancer Immunol Immunother. 2006 Dec; 55 (12): 1590-600. Epub 2006 Apr 25. Target-selective activation of a TNF prodrug by urokinase-type plasminogen activator (uPA) mediated proteolytic processing at the cell surface. Gerspach J1, Nemeth J, Munkel S, Wajant H, Pfizenmaier K.
【非特許文献6】Immunology. 2011 Jun; 133 (2): 206-20. doi:10.1111/j.1365-2567.2011.03428.x. Epub 2011 Mar 23. Development of an attenuated interleukin-2 fusion protein that can be activated by tumor-expressed proteases.Puskas J1, Skrombolas D, Sedlacek A, Lord E, Sullivan M, Frelinger J.
【非特許文献7】Development of an Interleukin-12 Fusion Protein That Is Activated by Cleavage with Matrix Metalloproteinase 9. Skrombolas D, Sullivan M, Frelinger JG. J Interferon Cytokine Res. 2019 Apr; 39(4):233-245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サイトカインは、多くの病変部位にある重要な免疫メディエーターであり、利用される場合にその効果が免疫応答を有意に改善できることが周知である。多くのサイトカイン媒介性免疫療法が開発されているが、高い毒性および低い有効性の問題が、依然として懸念のままである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、部位特異的に活性化されるサイトカインまたはケモカインを高用量で送達する能力により、全身毒性および低い有効性の問題が克服されると考えた。
この目的で、本発明者らは、リガンド結合ドメインおよびプロテアーゼ切断可能サイトを含むリガンド結合部分を含む融合タンパク質であって、第1の状態で、リガンドがリガンド結合ドメインに結合し、かつ結合パートナーに結合するその能力が減弱されており、および第2の状態で、リガンドがリガンド結合ドメインに結合せず、かつ結合パートナーに結合するその能力が、復元されて、その結合時にその生物学的活性を発揮することができる、融合タンパク質を開発した。1つの非排他的な局面において、リガンドは、非切断可能ペプチドリンカーによって融合タンパク質のリガンド結合部分の定常領域のC末端領域に結合しており、プロテアーゼ切断にかかわらず結合したままであり、その結合パートナーと相互作用することができ、その生物学的活性を発揮する。
【0010】
1つの非排他的な局面において、融合タンパク質は、IgG抗体様分子を含み、各々がプロテアーゼ切断サイトを有するリガンド結合ドメインおよびリガンド結合ドメインに結合した1つのリガンドを含む、2つのリガンド結合部分を含む、二価ホモ二量体、リガンド結合融合タンパク質である。そのような融合タンパク質およびその融合タンパク質を含む薬学的組成物は、リガンドによって媒介される疾患の治療において有用である。1つの非排他的な局面において、融合タンパク質およびその融合タンパク質を含む薬学的組成物を、前記リガンドによって媒介される疾患の治療のために投与する方法、または融合タンパク質の製造の方法もまた、含まれる。本発明者らは、融合タンパク質の活性化型が、疾患部位に高濃度で蓄積することができ、天然のリガンドと比較した場合に部位からの速いクリアランスを示すことを見出した。これは、天然のリガンド、および天然のリガンドをその活性化型で送達する先行技術において記載されている他の分子形式と比較した場合に、融合タンパク質を、より高い用量で、より少ない副作用を伴って投与する利点を提供する。
【0011】
例示的な態様
本発明は、そのような知見に基づき、以下に記載される例示的な態様を具体的に含む。
[A-1]各々がN末端からC末端に向かって、一般式(I):
[リガンド結合ドメイン]-[Lx]-[Cx]-[Ly]-[リガンド部分] (I)
によって表される2つのポリペプチドを含む、二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
式中、
Lxが、プロテアーゼ切断サイトを含むペプチドリンカーを表し、
Cxが、第2のペプチドリンカー、および任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、定常領域を表し;
Lyが、第3のペプチドリンカーを表し、
ならびに(a)第1の状態で、リガンド部分がリガンド結合ドメインに結合し、かつリガンド部分の生物学的活性が減弱されており、および第2の状態で、リガンド部分の生物学的活性が復元される、かつ(b)第1の状態での融合タンパク質が、第2の状態よりも長い血中半減期を有する、かつ(c)第1の状態から第2の状態への切り換えが、該プロテアーゼ切断サイトを触媒するプロテアーゼの存在によって媒介される、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質。
[A-2]前記リガンド結合ドメインが、抗体可変領域を含む、[A-1]の融合タンパク質。
[A-3]前記抗体可変領域が、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、[A-2]の融合タンパク質。
[A-4]前記リガンド結合ドメインの重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)が、互いに会合する、[A-3]の融合タンパク質。
[A-5]Cxが、重鎖のCH1領域および軽鎖のCL領域を含む、[A-4]の融合タンパク質。
[A-6]重鎖の220位のCys(C220)と軽鎖の214位のCys(C214)(EUナンバリングに従う)との間のジスルフィド結合形成が促進されるように、前記第2のペプチドリンカーが、ヒンジ領域に位置付けられる、[A-1]~[A-5]のいずれかの融合タンパク質。
[A-7]Cxが、少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ここで、重鎖の220位と軽鎖の214位(EUナンバリングに従う)との間にいかなるジスルフィド結合も形成されないように、重鎖および軽鎖におけるアミノ酸残基が改変されている、[A-1]~[A-5]のいずれかの融合タンパク質。
[A-8]前記軽鎖が、C214S改変を含み、かつ前記重鎖が、C220S改変を含む(EUナンバリングに従う)、[A-7]の融合タンパク質。
[A-9]前記重鎖が、重鎖の131位と軽鎖の214位(EUナンバリングに従う)との間のジスルフィド結合形成を可能にするように改変されている、[A-1]~[A-5]のいずれかの融合タンパク質。
[A-10]前記重鎖が、S131CおよびC220S改変(EUナンバリングに従う)を含む、[A-9]の融合タンパク質。
[A-11]Cxが、配列番号:901(C1)、配列番号:905(C2)、配列番号:908(C3)、配列番号:910(C4)、および配列番号:932(C5)からなる群より選択される配列を含む、[A-1]~[A-10]のいずれかの融合タンパク質。
[A-12]Cxが、配列番号:910(C4)の配列を含む、[A-11]の融合タンパク質。
[A-13]Lyが、グリシン-セリンポリマーを含む、[A-1]~[A-12]のいずれかの融合タンパク質。
[A-14]前記グリシン-セリンポリマーが、(a)~(ee)からなる群より選択される、[A-13]の融合タンパク質:
(a)Ser;
(b)Gly Ser(GS);
(c)Ser Gly(SG);
(d)Gly Gly Ser(GGS);
(e)Gly Ser Gly(GSG);
(f)Ser Gly Gly(SGG);
(g)Gly Ser Ser(GSS);
(h)Ser Ser Gly(SSG);
(i)Ser Gly Ser(SGS);
(j)Gly Gly Gly Ser(GGGS、配列番号:136);
(k)Gly Gly Ser Gly(GGSG、配列番号:137);
(l)Gly Ser Gly Gly(GSGG、配列番号:138);
(m)Ser Gly Gly Gly(SGGG、配列番号:139);
(n)Gly Ser Ser Gly(GSSG、配列番号:140);
(o)Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141);
(p)Gly Gly Gly Ser Gly(GGGSG、配列番号:142);
(q)Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143);
(r)Gly Ser Gly Gly Gly(GSGGG、配列番号:144);
(s)Gly Ser Gly Gly Ser(GSGGS、配列番号:145);
(t)Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146);
(u)Gly Ser Ser Gly Gly(GSSGG、配列番号:147);
(v)Gly Ser Gly Ser Gly(GSGSG、配列番号:148);
(w)Ser Gly Gly Ser Gly(SGGSG、配列番号:149);
(x)Gly Ser Ser Ser Gly(GSSSG、配列番号:150);
(y)Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGS、配列番号:151);
(z)Ser Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGG、配列番号:152);
(aa)Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGGS、配列番号:153);
(bb)Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGGG、配列番号:154);
(cc)(Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141))n;
(dd)(Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146))n;および
(ee)(Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143))n;
ここで、nは1以上の整数である。
[A-15]Lyが、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(配列番号:903)の配列を含む、[A-14]の融合タンパク質。
[A-16]前記リガンド部分が、サイトカインまたはケモカインを含む、[A-1]~[A-15]のいずれかの融合タンパク質。
[A-17]前記リガンド部分が、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIG、I-TAC、RANTES、MIP-1a、MIP-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1RAcP、およびIL-1Raからなる群より選択される、[A-16]の融合タンパク質。
[A-18]前記リガンド部分が、IL-12またはIL-22である、[A-17]の融合タンパク質。
[A-19]前記IL-12が、プロテアーゼに曝露された場合のタンパク質分解を妨げる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、[A-18]の融合タンパク質。
[A-20]前記IL-12が、KSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まない、[A-19]の融合タンパク質。
[A-21]前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、IL-12とリガンド結合ドメインとの境界面で行われる、[A-19]または[A-20]の融合タンパク質。
[A-22]前記少なくとも1つのアミノ酸改変を行った後に、IL-12が、(a)~(p)からなる群より選択される改変された配列を含む、[A-21]の融合タンパク質:
(a)KSHRE(配列番号:1052);
(b)KSHHE(配列番号:1053);
(c)KSHKE(配列番号:1054);
(d)KSHSE(配列番号:1055);
(e)KSKHRE(配列番号:1056);
(f)KSKQRE(配列番号:1057);
(g)KSKERE(配列番号:1058);
(h)KSKPRE(配列番号:1059);
(i)KHKE(配列番号:1060);
(j)KHHE(配列番号:1061);
(k)KHRE(配列番号:1062);
(l)KKHE(配列番号:1063);
(m)KRHE(配列番号:1064);
(n)KRE(配列番号:1065);
(o)KHE(配列番号:1066);および
(p)KKE(配列番号:1067)。
[A-23]前記IL-12が、(i)~(xvi)からなる群より選択される配列を含む、[A-19]~[A-22]のいずれかの融合タンパク質:
(i)配列番号:1068と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列。
[A-24]前記IL-12が、(i)~(xvi)からなる群より選択される配列を含む、[A-23]の融合タンパク質:
(i)配列番号:1068と同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と同一であるアミノ酸配列。
[A-25]前記IL-12が、配列番号:1068、または配列番号:1069、または配列番号:1076、または配列番号:1077、または配列番号:1078、または配列番号:1079、または配列番号:1080から選択される配列を含む、[A-24]の融合タンパク質。
[A-26]前記融合タンパク質が、2つのプロテアーゼ切断サイトを含み、および各プロテアーゼ切断サイトが、標的組織に特異的なプロテアーゼによって独立して切断可能である、[A-1]~[A-25]のいずれかの融合タンパク質。
[A-27]前記標的組織が、がん組織または炎症性組織である、[A-26]の融合タンパク質。
[A-28]各プロテアーゼ切断サイトが、同じプロテアーゼによって切断可能である、[A-1]~[A-27]のいずれかの融合タンパク質。
[A-29]各プロテアーゼ切断サイトが、同じプロテアーゼ切断配列を含む、[A-28]の融合タンパク質。
[A-30]各プロテアーゼ切断サイトが、マトリプターゼ、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)からなる群より選択されるプロテアーゼによって独立して切断可能である、[A-1]~[A-29]のいずれかの融合タンパク質。
[A-31]Lxが、VH領域とCH1領域との境界付近またはVL領域とCL領域との境界付近に位置するプロテアーゼ切断サイトを含む、[A-1]~[A-30]のいずれかの融合タンパク質。
[A-32]前記リガンド結合ドメインが、第1の状態よりも第2の状態でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、[A-1]~[A-31]のいずれかの融合タンパク質。
[A-33]前記改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換であり、および該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、[A-32]の融合タンパク質。
[A-34]前記置換が、VH上のポジション37、45、91、もしくは103、および/またはVL上のポジション43、46、49、もしくは87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[A-33]の融合タンパク質。
[A-34a]前記置換が、VH上のポジションV37、L45、H91、もしくはY91、もしくはW103、および/またはVL上のポジションA43、L46、Y49、もしくはY87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[A-33]の融合タンパク質。
[A-35]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[A-34]または[A-34a]の融合タンパク質。
[A-36]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[A-35]の融合タンパク質:
VH上のV37S、
L45Q、
Y91M、もしくはH91A、
W103I、W103L、もしくはW103M、および/または
VL上のA43Q、
L46Q、
Y49A、もしくは
Y87L。
[A-37]前記置換が、リガンド結合ドメインとリガンド部分との境界面に存在するアミノ酸における少なくとも1つの改変をさらに含み、該改変のためのアミノ酸残基が、相補性決定領域(CDR)中にある、[A-34]~[A-36]のいずれかの融合タンパク質。
[A-38]前記リガンド部分がIL-12であり、前記置換が、VL上のポジション30および/またはVH上のポジション100a(Kabatナンバリングに従う)から選択される少なくとも1つの改変をさらに含む、[A-37]の融合タンパク質。
[A-39]前記改変が、S30Vおよび/またはF100aI(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[A-38]の融合タンパク質。
[A-40]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(z)のいずれか1つからなる群より選択される、[A-34]~[A-39]のいずれかの融合タンパク質:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(c)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(d)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(e)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(f)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(h)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(i)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(j)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(l)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(n)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(o)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(p)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(q)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(s)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(t)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(u)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(v)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(y)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(z)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[A-41]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(g)のいずれか1つからなる群より選択される、[A-40]の融合タンパク質:
(a)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(c)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(d)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(e)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(f)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(g)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[A-42]第2の状態での融合タンパク質の分子量が、第1の状態での融合タンパク質の分子量よりも小さい、[A-1]~[A-41]のいずれかの融合タンパク質。
[A-43]リガンド結合ドメインの一部分が融合タンパク質から遊離されるように、切断サイトが切断される、[A-1]~[A-42]のいずれかの融合タンパク質。
[A-44]融合タンパク質から遊離されるリガンド結合ドメインの一部分の分子量が、26 kDa、または13 kDa、またはそれよりも小さい、[A-43]の融合タンパク質。
[A-45]第1の状態での融合タンパク質の分子量と第2の状態での融合タンパク質の分子量との比が、10:9である、[A-42]~[A-44]のいずれかの融合タンパク質。
[A-46]第2の状態での融合タンパク質の分子量が、第1の状態での融合タンパク質の分子量の9/10である、[A-42]~[A-44]の融合タンパク質。
[A-47]第1の状態での融合タンパク質と比較した第2の状態での融合タンパク質の分子量の低減パーセンテージが、10%である、[A-42]~[A-44]のいずれかの融合タンパク質。
[A-48]融合タンパク質から遊離されるリガンド結合ドメインの一部分が、VLもしくはVHを含み、または好ましくはVLもしくはVHである、[A-43]~[A-47]のいずれかの融合タンパク質。
[A-49]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下であるか、または8%以下であるか、または9%以下であるか、または10%以下であるか、または11%以下であるか、または12%以下であるか、または13%以下であるか、または14%以下であるか、または15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[A-32]~[A-48]のいずれかの融合タンパク質。
[A-50]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[A-32]~[A-49]のいずれかの融合タンパク質。
[A-51]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下であるか、または21%以下であるか、または22%以下であるか、または23%以下であるか、または24%以下であるか、または25%以下であるか、または26%以下であるか、または27%以下であるか、または28%以下であるか、または29%以下であるか、または30%以下であるか、または31%以下であるか、または32%以下であるか、または33%以下であるか、または34%以下であるか、または35%以下であるか、または36%以下であるか、または37%以下であるか、または38%以下であるか、または39%以下であるか、または40%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[A-32]~[A-48]のいずれかの融合タンパク質。
[A-52]SPR条件が、30分の持続時間にわたる、第1の状態での融合タンパク質と400 nMのuPAとの接触持続時間を含む、[A-49]~[A-51]のいずれかの融合タンパク質。
[A-53]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/D (II)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定されるような、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例し、式中、Dは、0.01×それぞれ第1の状態での融合タンパク質の分子量と比較したVHまたはVLの分子量のパーセンテージに対応する、[A-49]~[A-51]のいずれかの融合タンパク質。
[A-54]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II-1):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/10 (II-1)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例する、[A-53]の融合タンパク質。
[A-55]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II-2):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/15.8 (II-2)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例する、[A-53]の融合タンパク質。
[A-56]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、10%以上、または20%以上、または30%以上、または40%以上、または50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または100%以上である、[A-53]~[A-55]のいずれかの融合タンパク質。
[A-57]第1の状態および第2の状態でのリガンド部分が、第3のペプチドリンカーを介して定常領域に結合したままである、[A-1]~[A-56]のいずれかの融合タンパク質。
[B-1]各々が、
(i)リガンド結合ドメインおよび定常領域を含む、リガンド結合部分;
(ii)プロテアーゼ切断サイトを含み、かつリガンド結合ドメインを定常領域に接続する、第1のペプチドリンカー;
(iii)第2のペプチドリンカー、および任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、該定常領域;ならびに
(iv)第3のペプチドリンカーによって定常領域のC末端領域に接続されている、リガンド部分
を含む、2つのポリペプチドを含む二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
(a)第1の状態で、リガンド部分がリガンド結合ドメインに結合し、かつリガンド部分の生物学的活性が減弱されており、および第2の状態で、リガンド部分の生物学的活性が復元される、かつ(b)第1の状態での融合タンパク質が、第2の状態よりも長い血中半減期を有する、かつ(c)第1の状態から第2の状態への切り換えが、該プロテアーゼ切断サイトを触媒するプロテアーゼの存在によって媒介される、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質。
[B-2]前記リガンド結合ドメインが、抗体可変領域を含む、[B-1]の融合タンパク質。
[B-3]前記抗体可変領域が、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、[B-2]の融合タンパク質。
[B-4]前記リガンド結合ドメインの重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)が、互いに会合する、[B-3]の融合タンパク質。
[B-5]前記リガンド結合部分の定常領域が、重鎖および軽鎖を含み、該重鎖がCH1領域を含み、かつ該軽鎖がCL領域を含む、[B-4]の融合タンパク質。
[B-6]重鎖の220位のCys(C220)と軽鎖の214位のCys(C214)(EUナンバリングに従う)との間のジスルフィド結合形成が促進されるように、前記第2のペプチドリンカーが、ヒンジ領域に位置付けられる、[B-1]~[B-5]のいずれかの融合タンパク質。
[B-7]前記定常領域が、少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ここで、重鎖の220位と軽鎖の214位(EUナンバリングに従う)との間にいかなるジスルフィド結合も形成されないように、重鎖および軽鎖におけるアミノ酸残基が改変されている、[B-1]~[B-5]のいずれかの融合タンパク質。
[B-8]前記軽鎖が、C214S改変を含み、かつ前記重鎖が、C220S改変を含む(EUナンバリングに従う)、[B-7]の融合タンパク質。
[B-9]前記重鎖が、重鎖の131位と軽鎖の214位(EUナンバリングに従う)との間のジスルフィド結合形成を可能にするように改変されている、[B-1]~[B-5]のいずれかの融合タンパク質。
[B-10]前記重鎖が、S131CおよびC220S改変(EUナンバリングに従う)を含む、[B-10]の融合タンパク質。
[B-11]前記定常領域が、配列番号:901(C1)、配列番号:905(C2)、配列番号:908(C3)、配列番号:910(C4)、および配列番号:932(C5)からなる群より選択される配列を含む、[B-1]~[B-10]のいずれかの融合タンパク質。
[B-12]前記定常領域が、配列番号:910(C4)の配列を含む、[B-11]の融合タンパク質。
[B-13]前記第3のペプチドリンカーが、グリシン-セリンポリマーを含む、[B-1]~[B-12]のいずれかの融合タンパク質。
[B-14]前記グリシン-セリンポリマーが、(a)~(ee)からなる群より選択される、[B-13]の融合タンパク質:
(a)Ser;
(b)Gly Ser(GS);
(c)Ser Gly(SG);
(d)Gly Gly Ser(GGS);
(e)Gly Ser Gly(GSG);
(f)Ser Gly Gly(SGG);
(g)Gly Ser Ser(GSS);
(h)Ser Ser Gly(SSG);
(i)Ser Gly Ser(SGS);
(j)Gly Gly Gly Ser(GGGS、配列番号:136);
(k)Gly Gly Ser Gly(GGSG、配列番号:137);
(l)Gly Ser Gly Gly(GSGG、配列番号:138);
(m)Ser Gly Gly Gly(SGGG、配列番号:139);
(n)Gly Ser Ser Gly(GSSG、配列番号:140);
(o)Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141);
(p)Gly Gly Gly Ser Gly(GGGSG、配列番号:142);
(q)Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143);
(r)Gly Ser Gly Gly Gly(GSGGG、配列番号:144);
(s)Gly Ser Gly Gly Ser(GSGGS、配列番号:145);
(t)Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146);
(u)Gly Ser Ser Gly Gly(GSSGG、配列番号:147);
(v)Gly Ser Gly Ser Gly(GSGSG、配列番号:148);
(w)Ser Gly Gly Ser Gly(SGGSG、配列番号:149);
(x)Gly Ser Ser Ser Gly(GSSSG、配列番号:150);
(y)Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGS、配列番号:151);
(z)Ser Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGG、配列番号:152);
(aa)Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGGS、配列番号:153);
(bb)Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGGG、配列番号:154);
(cc)(Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141))n;
(dd)(Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146))n;および
(ee)(Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143))n;
ここで、nは1以上の整数である。
[B-15]前記第3のペプチドリンカーが、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(配列番号:903)の配列を含む、[B-14]の融合タンパク質。
[B-16]前記リガンド部分が、サイトカインまたはケモカインを含む、[B-1]~[B-15]のいずれかの融合タンパク質。
[B-17]前記リガンド部分が、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIG、I-TAC、RANTES、MIP-1a、MIP-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1RAcP、およびIL-1Raからなる群より選択される、[B-16]の融合タンパク質。
[B-18]前記リガンド部分が、IL-12またはIL-22である、[B-17]の融合タンパク質。
[B-19]前記IL-12が、プロテアーゼに曝露された場合のタンパク質分解を妨げる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、[B-18]の融合タンパク質。
[B-20]前記IL-12が、KSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まない、[B-19]の融合タンパク質。
[B-21]前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、IL-12とリガンド結合ドメインとの境界面で行われる、[B-19]または[B-20]の融合タンパク質。
[B-22]前記少なくとも1つのアミノ酸改変を行った後に、IL-12が、(a)~(p)からなる群より選択される改変された配列を含む、[B-21]の融合タンパク質:
(a)KSHRE(配列番号:1052);
(b)KSHHE(配列番号:1053);
(c)KSHKE(配列番号:1054);
(d)KSHSE(配列番号:1055);
(e)KSKHRE(配列番号:1056);
(f)KSKQRE(配列番号:1057);
(g)KSKERE(配列番号:1058);
(h)KSKPRE(配列番号:1059);
(i)KHKE(配列番号:1060);
(j)KHHE(配列番号:1061);
(k)KHRE(配列番号:1062);
(l)KKHE(配列番号:1063);
(m)KRHE(配列番号:1064);
(n)KRE(配列番号:1065);
(o)KHE(配列番号:1066);および
(p)KKE(配列番号:1067)。
[B-23]前記IL-12が、(i)~(xvi)からなる群より選択される配列を含む、[B-19]~[B-22]のいずれかの融合タンパク質:
(i)配列番号:1068と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列。
[B-24]前記IL-12が、(i)~(xvi)からなる群より選択される配列を含む、[B-23]の融合タンパク質:
(i)配列番号:1068と同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と同一であるアミノ酸配列。
[B-25]前記IL-12が、配列番号:1068、または配列番号:1069、または配列番号:1076、または配列番号:1077、または配列番号:1078、または配列番号:1079、または配列番号:1080から選択される配列を含む、[B-24]の融合タンパク質。
[B-26]前記融合タンパク質が、2つのプロテアーゼ切断サイトを含み、および各プロテアーゼ切断サイトが、標的組織に特異的なプロテアーゼによって独立して切断可能である、[B-1]~[B-25]のいずれかの融合タンパク質。
[B-27]前記標的組織が、がん組織または炎症性組織である、[B-26]の融合タンパク質。
[B-28]各プロテアーゼ切断サイトが、同じプロテアーゼによって切断可能である、[B-1]~[B-27]のいずれかの融合タンパク質。
[B-29]各プロテアーゼ切断サイトが、同じプロテアーゼ切断配列を含む、[B-28]の融合タンパク質。
[B-30]各プロテアーゼ切断サイトが、マトリプターゼ、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)からなる群より選択されるプロテアーゼによって独立して切断可能である、[B-1]~[B-29]のいずれかの融合タンパク質。
[B-31]前記第1のペプチドリンカーが、VH領域とCH1領域との境界付近またはVL領域とCL領域との境界付近に位置するプロテアーゼ切断サイトを含む、[B-1]~[B-30]のいずれかの融合タンパク質。
[B-32]前記リガンド結合ドメインが、第1の状態よりも第2の状態でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、[B-1]~[B-31]のいずれかの融合タンパク質。
[B-33]前記改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換であり、および該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、[B-32]の融合タンパク質。
[B-34]前記置換が、VH上のポジション37、45、91、もしくは103、および/またはVL上のポジション43、46、49、もしくは87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[B-33]の融合タンパク質。
[B-34a]前記置換が、VH上のポジションV37、L45、H91、もしくはY91、もしくはW103、および/またはVL上のポジションA43、L46、Y49、もしくはY87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[B-33]の融合タンパク質。
[B-35]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[B-34]または[B-34a]の融合タンパク質。
[B-36]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[B-35]の融合タンパク質:
VH上のV37S、
L45Q、
Y91M、もしくはH91A、
W103I、W103L、もしくはW103M、および/または
VL上のA43Q、
L46Q、
Y49A、もしくは
Y87L。
[B-37]前記置換が、リガンド結合ドメインとリガンド部分との境界面に存在するアミノ酸における少なくとも1つの改変をさらに含み、該改変のためのアミノ酸残基が、相補性決定領域(CDR)中にある、[B-34]~[B-36]のいずれかの融合タンパク質。
[B-38]前記リガンド部分がIL-12であり、前記置換が、VL上のポジション30および/またはVH上のポジション100a(Kabatナンバリングに従う)から選択される少なくとも1つの改変をさらに含む、[B-37]の融合タンパク質。
[B-39]前記改変が、S30Vおよび/またはF100aI(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[B-38]の融合タンパク質。
[B-40]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(z)のいずれか1つからなる群より選択される、[B-34]~[B-39]の融合タンパク質:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(c)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(d)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(e)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(f)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(h)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(i)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(j)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(l)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(n)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(o)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(p)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(q)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(s)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(t)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(u)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(v)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(y)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(z)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[B-41]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(g)のいずれか1つからなる以下の群より選択される、[B-40]の融合タンパク質:
(a)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(c)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(d)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(e)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(f)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(g)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[B-42]第2の状態での融合タンパク質の分子量が、第1の状態での融合タンパク質の分子量よりも小さい、[B-1]~[B-41]のいずれかの融合タンパク質。
[B-43]リガンド結合ドメインの一部分が融合タンパク質から遊離されるように、切断サイトが切断される、[B-1]~[B-42]のいずれかの融合タンパク質。
[B-44]融合タンパク質から遊離されるリガンド結合ドメインの一部分の分子量が、26 kDa、または13 kDa、またはそれよりも小さい、[B-43]の融合タンパク質。
[B-45]第1の状態での融合タンパク質の分子量と第2の状態での融合タンパク質の分子量との比が、10:9である、[B-42]~[B-44]のいずれかの融合タンパク質。
[B-46]第2の状態での融合タンパク質の分子量が、第1の状態での融合タンパク質の分子量の9/10である、[B-42]~[B-44]のいずれかの融合タンパク質。
[B-47]第1の状態での融合タンパク質と比較した第2の状態での融合タンパク質の分子量の低減パーセンテージが、10%である、[B-42]~[B-44]のいずれかの融合タンパク質。
[B-48]融合タンパク質から遊離されるリガンド結合ドメインの一部分が、VLもしくはVHを含み、または好ましくはVLもしくはVHである、[B-43]~[B-47]のいずれかの融合タンパク質。
[B-49]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下であるか、または8%以下であるか、または9%以下であるか、または10%以下であるか、または11%以下であるか、または12%以下であるか、または13%以下であるか、または14%以下であるか、または15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[B-32]~[B-48]のいずれかの融合タンパク質。
[B-50]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質のRUを比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下である、反応単位の低減パーセンテージによって表すことができる、[B-32]~[B-49]のいずれかの融合タンパク質。
[B-51]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下であるか、または21%以下であるか、または22%以下であるか、または23%以下であるか、または24%以下であるか、または25%以下であるか、または26%以下であるか、または27%以下であるか、または28%以下であるか、または29%以下であるか、または30%以下であるか、または31%以下であるか、または32%以下であるか、または33%以下であるか、または34%以下であるか、または35%以下であるか、または36%以下であるか、または37%以下であるか、または38%以下であるか、または39%以下であるか、または40%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[B-32]~[B-48]のいずれかの融合タンパク質。
[B-52]SPR条件が、30分の持続時間にわたる、第1の状態での融合タンパク質と400 nMのuPAとの接触持続時間を含む、[B-49]~[B-51]のいずれかの融合タンパク質。
[B-53]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/D (II)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例し、式中、Dは、0.01×それぞれ第1の状態での融合タンパク質の分子量と比較したVHまたはVLの分子量のパーセンテージに対応する、[B-49]~[B-51]のいずれかの融合タンパク質。
[B-54]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II-1):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/10 (II-1)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例する、[B-53]の融合タンパク質。
[B-55]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II-2):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/15.8 (II-2)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例する、[B-53]の融合タンパク質。
[B-56]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、20%以上、または30%以上、または40%以上、または50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または100%以上である、[B-53]~[B-55]のいずれかの融合タンパク質。
[B-57]第1の状態および第2の状態でのリガンド部分が、第3のペプチドリンカーを介して定常領域に結合したままである、[B-1]~[B-56]のいずれかの融合タンパク質。
[C-1]リガンド部分に融合したIgG抗体様ポリペプチドを含む二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
(i)(ia)VH領域とCH1領域、または(ib)VL領域とCL領域の境界の間の、プロテアーゼ切断サイトを含む、第1のペプチドリンカー;
(ii)抗体のCH1領域をFc領域に接続する、および任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、ヒンジ領域に導入された第2のペプチドリンカー;ならびに
(iii)リガンド部分を抗体のFc領域のC末端に接続する、第3のペプチドリンカー
を含み、
(a)第1の状態で、リガンド部分が抗体可変領域に結合し、かつリガンド部分の生物学的活性が減弱されており、および第2の状態で、リガンド部分の生物学的活性が復元される、かつ(b)第1の状態での融合タンパク質が、第2の状態よりも長い血中半減期を有する、かつ(c)第1の状態から第2の状態への切り換えが、該プロテアーゼ切断サイトを触媒するプロテアーゼの存在によって媒介される、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質。
[C-2]重鎖の220位のCys(C220)と軽鎖の214位のCys(C214)(EUナンバリングに従う)との間のジスルフィド結合形成が促進されるように、前記第2のペプチドリンカーが、ヒンジ領域に位置付けられる、[C-1]の融合タンパク質。
[C-3]前記定常領域が、少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ここで、重鎖の220位と軽鎖の214位(EUナンバリングに従う)との間にいかなるジスルフィド結合も形成されないように、重鎖および軽鎖におけるアミノ酸残基が改変されている、[C-1]の融合タンパク質。
[C-4]前記軽鎖が、C214S改変を含み、かつ前記重鎖が、C220S改変を含む(EUナンバリングに従う)、[C-3]の融合タンパク質。
[C-5]前記重鎖が、重鎖の131位と軽鎖の214位(EUナンバリングに従う)との間のジスルフィド結合形成を可能にするように改変されている、[C-1]の融合タンパク質。
[C-6]前記重鎖が、S131CおよびC220S改変(EUナンバリングに従う)を含む、[C-5]の融合タンパク質。
[C-7]前記定常領域が、配列番号:901(C1)、配列番号:905(C2)、配列番号:908(C3)、配列番号:910(C4)、および配列番号:932(C5)からなる群より選択される配列を含む、[C-1]~[C-6]のいずれかの融合タンパク質。
[C-8]前記定常領域が、配列番号:910(C4)の配列を含む、[C-7]の融合タンパク質。
[C-9]前記第3のペプチドリンカーが、グリシン-セリンポリマーを含む、[C-1]~[C-8]のいずれかの融合タンパク質。
[C-10]前記グリシン-セリンポリマーが、(a)~(ee)からなる群より選択される、[C-9]の融合タンパク質:
(a)Ser;
(b)Gly Ser(GS);
(c)Ser Gly(SG);
(d)Gly Gly Ser(GGS);
(e)Gly Ser Gly(GSG);
(f)Ser Gly Gly(SGG);
(g)Gly Ser Ser(GSS);
(h)Ser Ser Gly(SSG);
(i)Ser Gly Ser(SGS);
(j)Gly Gly Gly Ser(GGGS、配列番号:136);
(k)Gly Gly Ser Gly(GGSG、配列番号:137);
(l)Gly Ser Gly Gly(GSGG、配列番号:138);
(m)Ser Gly Gly Gly(SGGG、配列番号:139);
(n)Gly Ser Ser Gly(GSSG、配列番号:140);
(o)Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141);
(p)Gly Gly Gly Ser Gly(GGGSG、配列番号:142);
(q)Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143);
(r)Gly Ser Gly Gly Gly(GSGGG、配列番号:144);
(s)Gly Ser Gly Gly Ser(GSGGS、配列番号:145);
(t)Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146);
(u)Gly Ser Ser Gly Gly(GSSGG、配列番号:147);
(v)Gly Ser Gly Ser Gly(GSGSG、配列番号:148);
(w)Ser Gly Gly Ser Gly(SGGSG、配列番号:149);
(x)Gly Ser Ser Ser Gly(GSSSG、配列番号:150);
(y)Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGS、配列番号:151);
(z)Ser Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGG、配列番号:152);
(aa)Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGGS、配列番号:153);
(bb)Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGGG、配列番号:154);
(cc)(Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141))n;
(dd)(Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146))n;および
(ee)(Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143))n;
ここで、nは1以上の整数である。
[C-11]前記第3のペプチドリンカーが、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(配列番号:903)の配列を含む、[C-10]の融合タンパク質。
[C-12]前記リガンド部分が、サイトカインまたはケモカインを含む、[C-1]~[C-11]のいずれかの融合タンパク質。
[C-13]前記リガンド部分が、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIG、I-TAC、RANTES、MIP-1a、MIP-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1RAcP、およびIL-1Raからなる群より選択される、[C-12]の融合タンパク質。
[C-14]前記リガンド部分が、IL-12またはIL-22である、[C-13]の融合タンパク質。
[C-15]前記IL-12が、プロテアーゼに曝露された場合のタンパク質分解を妨げる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、[C-14]の融合タンパク質。
[C-16]前記IL-12が、KSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まない、[C-15]の融合タンパク質。
[C-17]前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、IL-12と抗体可変領域との境界面で行われる、[C-15]または[C-16]の融合タンパク質。
[C-18]前記少なくとも1つのアミノ酸改変を行った後に、IL-12が、(a)~(p)からなる群より選択される改変された配列を含む、[C-17]の融合タンパク質:
(a)KSHRE(配列番号:1052);
(b)KSHHE(配列番号:1053);
(c)KSHKE(配列番号:1054);
(d)KSHSE(配列番号:1055);
(e)KSKHRE(配列番号:1056);
(f)KSKQRE(配列番号:1057);
(g)KSKERE(配列番号:1058);
(h)KSKPRE(配列番号:1059);
(i)KHKE(配列番号:1060);
(j)KHHE(配列番号:1061);
(k)KHRE(配列番号:1062);
(l)KKHE(配列番号:1063);
(m)KRHE(配列番号:1064);
(n)KRE(配列番号:1065);
(o)KHE(配列番号:1066);および
(p)KKE(配列番号:1067)。
[C-19]前記IL-12が、以下の(i)~(xvi)のいずれかを含む、[C-15]~[C-18]のいずれかの融合タンパク質:
(i)配列番号:1068と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列。
[C-20]前記IL-12が、(i)~(xvi)からなる群より選択される配列を含む、[C-19]の融合タンパク質:
(i)配列番号:1068と同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と同一であるアミノ酸配列。
[C-21]前記IL-12が、配列番号:1068、または配列番号:1069、または配列番号:1076、または配列番号:1077、または配列番号:1078、または配列番号:1079、または配列番号:1080から選択される配列を含む、[C-20]の融合タンパク質。
[C-22]前記融合タンパク質が、2つのプロテアーゼ切断サイトを含み、および各プロテアーゼ切断サイトが、標的組織に特異的なプロテアーゼによって独立して切断可能である、[C-1]~[C-21]のいずれかの融合タンパク質。
[C-23]前記標的組織が、がん組織または炎症性組織である、[C-22]の融合タンパク質。
[C-24]各プロテアーゼ切断サイトが、同じプロテアーゼによって切断可能である、[C-1]~[C-23]のいずれかの融合タンパク質。
[C-25]各プロテアーゼ切断サイトが、同じプロテアーゼ切断配列を含む、[C-24]の融合タンパク質。
[C-26]各プロテアーゼサイトが、マトリプターゼ、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)からなる群より選択されるプロテアーゼによって独立して切断可能である、[C-1]~[C-25]のいずれかの融合タンパク質。
[C-27]前記抗体可変領域が、第1の状態よりも第2の状態でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、[C-1]~[C-26]のいずれかの融合タンパク質。
[C-28]前記改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換であり、および該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、[C-27]の融合タンパク質。
[C-29]前記置換が、VH上のポジション37、45、91、もしくは103、および/またはVL上のポジション43、46、49、もしくは87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[C-28]の融合タンパク質。
[C-29a]前記置換が、VH上のポジションV37、L45、H91、Y91、もしくはW103、および/またはVL上のポジションA43、L46、Y49、もしくはY87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[C-28]の融合タンパク質。
[C-30]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[C-29]または[C-29a]の融合タンパク質。
[C-31]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[C-30]の融合タンパク質:
VH上のV37S、
L45Q、
Y91M、もしくはH91A、
W103I、W103L、もしくはW103M、および/または
VL上のA43Q、
L46Q、
Y49A、もしくは
Y87L。
[C-32]前記置換が、リガンド結合ドメインとリガンド部分との境界面に存在するアミノ酸における少なくとも1つの改変をさらに含み、該改変のためのアミノ酸残基が、相補性決定領域(CDR)中にある、[C-29]~[C-31]のいずれかの融合タンパク質。
[C-33]前記リガンド部分がIL-12であり、前記置換が、VL上のポジション30および/またはVH上のポジション100a(Kabatナンバリングに従う)から選択される少なくとも1つの改変をさらに含む、[C-32]の融合タンパク質。
[C-34]前記改変が、S30Vおよび/またはF100aI(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[C-33]の融合タンパク質。
[C-35]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(z)のいずれか1つからなる群より選択される、[C-29]~[C-34]の融合タンパク質:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(c)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(d)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(e)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(f)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(h)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(i)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(j)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(l)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(n)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(o)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(p)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(q)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(s)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(t)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(u)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(v)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(y)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(z)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[C-36]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(g)のいずれか1つからなる群より選択される、[C-35]の融合タンパク質:
(a)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(c)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(d)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(e)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(f)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(g)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[C-37]第2の状態での融合タンパク質の分子量が、第1の状態での融合タンパク質の分子量よりも小さい、[C-1]~[C-36]のいずれかの融合タンパク質。
[C-38]ポリペプチドの一部分が融合タンパク質から遊離されるように、切断サイトが切断される、[C-1]~[C-37]のいずれかの融合タンパク質。
[C-39]融合タンパク質から遊離される一部分の分子量が、26 kDa、または13 kDa、またはそれよりも小さい、[C-38]の融合タンパク質。
[C-40]第1の状態での融合タンパク質の分子量と第2の状態での融合タンパク質の分子量との比が、10:9である、[C-37]~[C-39]のいずれかの融合タンパク質。
[C-41]第2の状態での融合タンパク質の分子量が、第1の状態での融合タンパク質の分子量の9/10である、[C-37]~[C-39]の融合タンパク質。
[C-42]第1の状態での融合タンパク質と比較した第2の状態での融合タンパク質の分子量の低減パーセンテージが、10%である、[C-37]~[C-39]のいずれかの融合タンパク質。
[C-43]融合タンパク質から遊離される一部分が、VLもしくはVHを含み、または好ましくはVLもしくはVHである、[C-38]~[C-42]のいずれかの融合タンパク質。
[C-44]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下であるか、または8%以下であるか、または9%以下であるか、または10%以下であるか、または11%以下であるか、または12%以下であるか、または13%以下であるか、または14%以下であるか、または15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[C-27]~[C-43]のいずれかの融合タンパク質。
[C-45]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質のRUを比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下である、反応単位の低減パーセンテージによって表すことができる、[C-27]~[C-44]のいずれかの融合タンパク質。
[C-46]第1の状態と比べた第2の状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下であるか、または21%以下であるか、または22%以下であるか、または23%以下であるか、または24%以下であるか、または25%以下であるか、または26%以下であるか、または27%以下であるか、または28%以下であるか、または29%以下であるか、または30%以下であるか、または31%以下であるか、または32%以下であるか、または33%以下であるか、または34%以下であるか、または35%以下であるか、または36%以下であるか、または37%以下であるか、または38%以下であるか、または39%以下であるか、または40%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[C-27]~[C-43]のいずれかの融合タンパク質。
[C-47]SPR条件が、30分の持続時間にわたる、第1の状態での融合タンパク質と400 nMのuPAとの接触持続時間を含む、[C-27]~[C-46]のいずれかの融合タンパク質。
[C-48]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/D (II)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例し、式中、Dは、0.01×それぞれ第1の状態での融合タンパク質の分子量と比較したVHまたはVLの分子量のパーセンテージに対応する、[C-27]~[A-47]のいずれかの融合タンパク質。
[C-49]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II-1):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/10 (II-1)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例する、[C-48]の融合タンパク質。
[C-50]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II-2):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/15.8 (II-2)
に従って、第1の状態と比較した第2の状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例する、[C-48]の融合タンパク質。
[C-51]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、10%以上、または20%以上、または30%以上、または40%以上、または50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または100%以上である、[C-48]~[C-50]のいずれかの融合タンパク質。
[C-52]第1の状態および第2の状態でのリガンド部分が、第3のペプチドリンカーを介して定常領域に結合したままである、[C-1]~[C-51]のいずれかの融合タンパク質。
[D-1]以下の配列(i)~(v)のいずれか1つを含む、IL-12を含む二価ホモ二量体融合タンパク質:
(i)配列番号:1084と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1085と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(ii)配列番号:1084と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1086と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(iii)配列番号:1084と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1085と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(iv)配列番号:1084と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1086と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);ならびに
(v)(i)または(iv)に記載される重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインと競合する、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメイン。
[D-2]以下の配列(i)~(x)のいずれか1つを含む、IL-12を含む二価ホモ二量体融合タンパク質:
(i)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ii)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iii)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iv)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vi)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vii)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(viii)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ix)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに
(x)(i)~(ix)のいずれかに記載される重鎖および軽鎖と競合する、重鎖可変および軽鎖。
[D-3]以下の配列(i)~(x)のいずれか1つを含む、IL-12を含む二価ホモ二量体融合タンパク質:
(i)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ii)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iii)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iv)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vi)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vii)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(viii)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ix)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに
(x)(i)~(ix)のいずれかに記載される重鎖および軽鎖と競合する、重鎖および軽鎖。
[D-4]以下の配列(i)~(iv)のいずれか1つを含む、IL-22を含む二価ホモ二量体融合タンパク質:
(i)配列番号:1095と少なくとも70%、80%、もしくは90%同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1096と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ii)配列番号:1097と少なくとも70%、80%、もしくは90%同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1098と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iii)配列番号:1099と少なくとも70%、80%、もしくは90%同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1100と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに
(iv)(i)~(iii)のいずれかに記載される重鎖および軽鎖と競合する、重鎖および軽鎖。
[D-5]以下の配列(i)~(iii)のいずれか1つを含む、IL-22を含む二価ホモ二量体融合タンパク質:
(i)配列番号:1091と少なくとも70%、80%、もしくは90%同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1092と少なくとも70%、80%、もしくは90%同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(ii)配列番号:1093と少なくとも70%、80%、もしくは90%同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1094と少なくとも70%、80%、もしくは90%同一であるか、または同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);ならびに
(iii)(i)または(ii)に記載される重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインと競合する、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメイン。
[E-1]以下の配列(i)~(ix)のいずれか1つを含む、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、および[C-1]~[C-52]のいずれかの融合タンパク質:
(i)配列番号:1084と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1085と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(ii)配列番号:1084と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1086と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(iii)配列番号:1084と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1085と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(iv)配列番号:1084と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1086と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(v)配列番号:1091と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1092と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(vi)配列番号:1093と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1094と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(vii)配列番号:1091と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1092と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(viii)配列番号:1093と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号:1094と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);ならびに
(ix)(i)~(viii)のいずれかに記載される重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインと競合する、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメイン。
[E-2]以下の配列(i)~(xiii)のいずれか1つを含む、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、および[C-1]~[C-52]のいずれかの融合タンパク質:
(i)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ii)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iii)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iv)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vi)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vii)配列番号:1009と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(viii)配列番号:1016と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ix)配列番号:1017と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(x)配列番号:1095と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1096と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xi)配列番号:1097と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1098と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xii)配列番号:1099と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1100と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xiii)(i)~(xii)のいずれかに記載される重鎖および軽鎖と競合する、重鎖および軽鎖。
[E-3]以下の配列(i)~(xiii)のいずれか1つを含む、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、および[C-1]~[C-52]のいずれかの融合タンパク質:
(i)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ii)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iii)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1012と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(iv)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vi)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1050と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(vii)配列番号:1009と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(viii)配列番号:1016と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(ix)配列番号:1017と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1088と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(x)配列番号:1095と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1096と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xi)配列番号:1097と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1098と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(xii)配列番号:1099と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:1100と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに
(xiii)(i)~(xii)のいずれかに記載される重鎖および軽鎖と競合する、重鎖および軽鎖。
[E-4][A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
[E-5]医薬品としての使用のための、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物。
[E-6]IL-12媒介性疾患または障害における使用のための、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-3]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物。
[E-7]IL-22媒介性疾患または障害における使用のための、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-4]もしくは[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-47]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物。
[E-8]がんの治療における使用のための、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-3]~[E-4]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物。
[E-9]炎症性疾患または障害の治療における使用のための、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物。
[E-10]IL-12媒介性疾患または障害の治療のための医薬品の製造における、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-3]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物の使用。
[E-11]IL-22媒介性疾患または障害の治療のための医薬品の製造における、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-4]もしくは[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-47]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物の使用。
[E-12]がんの治療のための医薬品の製造における、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物の使用。
[E-13]炎症性疾患または障害の治療のための医薬品の製造における、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物の使用。
[E-14]IL-12媒介性疾患または障害を有する個体を治療する方法であって、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-3]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物の有効量を投与する工程を含む、前記方法。
[E-15]IL-22媒介性疾患または障害を有する個体を治療する方法であって、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-4]もしくは[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-47]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物の有効量を投与する工程を含む、前記方法。
[E-16]がんを有する個体を治療する方法であって、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物の有効量を投与する工程を含む、前記方法。
[E-17]炎症性疾患または障害を有する個体を治療する方法であって、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質、または[E-4]の薬学的組成物の有効量を投与する工程を含む、前記方法。
[E-18][A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[E-19][E-18]のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[E-20][E-18]のポリヌクレオチドまたは[E-19]のベクターを含む、宿主細胞。
[E-21][A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]および[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]および[E-1]~[E-3]、ならびに[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質を製造する方法であって、融合タンパク質が製造されるように[E-20]の宿主細胞を培養する工程を含む、前記方法。
[E-22]VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸に置換を導入して、第1の状態と比較して第2の状態でVHとVLとの間の会合を低減させる工程を含み、および該置換のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、[E-21]記載の方法。
[E-23]前記置換のためのアミノ酸ポジションが、VH上のポジション37、45、91、もしくは103、および/またはVL上のポジション43、46、49、もしくは87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[E-22]記載の方法。
[E-23a]前記置換のためのアミノ酸ポジションが、VH上のポジションV37、L45、H91、Y91、もしくはW103、および/またはVL上のポジションA43、L46、Y49、もしくはY87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[E-22]記載の方法。
[E-24]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[E-23]または[E-23a]記載の方法。
[E-25]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[E-24]記載の方法:
VH上のV37S、
L45Q、
Y91M、もしくはH91A、
W103I、W103L、もしくはW103M、および/または
VL上のA43Q、
L46Q、
Y49A、もしくは
Y87L。
[E-26]前記置換が、リガンド結合ドメインとリガンド部分との境界面に存在するアミノ酸における少なくとも1つの置換をさらに含み、該改変のためのアミノ酸残基が、相補性決定領域(CDR)中にある、[E-23]~[E-25]のいずれか記載の方法。
[E-27]前記リガンド部分がIL-12であり、前記置換が、VL上のポジション30および/またはVH上のポジション100a(Kabatナンバリングに従う)から選択される少なくとも1つの置換をさらに含む、[E-26]記載の方法。
[E-28]前記置換が、S30Vおよび/またはF100aI(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[E-27]記載の方法。
[E-29]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(bb)のいずれか1つからなる群より選択される、[E-23]~[E-28]のいずれか記載の方法:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(c)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(d)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(e)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(f)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(h)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(i)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(j)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(l)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(m)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(n)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(o)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(p)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(q)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(r)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(s)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(t)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(u)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(v)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(w)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(x)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(y)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(z)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(aa)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(bb)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[E-30]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(g)のいずれか1つからなる群より選択される、[E-29]記載の方法:
(a)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(c)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(d)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(e)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(f)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(g)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[E-31]宿主細胞から融合タンパク質を回収する工程をさらに含む、[E-30]記載の方法。
[E-32]以下の工程を含む、[E-21]記載の方法:
(a)融合タンパク質からのVHまたはVLの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸改変または少なくとも1つのペアのアミノ酸改変を、前記融合タンパク質におけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸変異を、リガンドとリガンド結合ドメインとの境界面に導入する工程、
(b)工程(a)が、VHおよびVLに対するリガンドの結合を破壊しないことを確認する工程、
(c)工程(a)が、プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断時にVHとVLとの会合を低減させたことを確認する工程、ならびに
(d)工程(a)のVHまたはVLを、プロテアーゼ切断配列を介してIgG重鎖定常領域と連結する工程、
(e)工程(e)の該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得る工程、
(f)工程(e)のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養する工程、ならびに
(g)工程(f)における宿主細胞から融合タンパク質を製造し、回収する工程。
[F-1]プロテアーゼ切断サイトを含む少なくとも1つの抗原結合ドメインを含むポリペプチドであって、該プロテアーゼ切断サイトでの切断時に、該プロテアーゼ切断サイトに隣接した抗体ドメインが解離し、および該解離が、該抗体ドメインと対応する相互作用するドメインとの境界面で行われる少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進される、前記ポリペプチド。
[F-2]抗体または抗体断片である、[F-1]記載のポリペプチド
[F-3]前記抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG-IgG、IgG-Fab、またはCrossMab抗体からなる群より選択されるIgG抗体である、[F-2]記載のポリペプチド。
[F-4]前記抗体が、一価または二価である、[F-3]記載のポリペプチド。
[F-5]前記抗体が、単一特異性または二重特異性である、[F-4]記載のポリペプチド。
[F-6]前記抗体断片が、抗原結合ドメインを含む、[F-5]記載のポリペプチド。
[F-7]前記抗体断片が、scFv、scFv-Fc、タンデムscFv、Fab、タンデムFab、F(ab')2、Fab2、Fab-scFv-Fc、F(ab')2-scFv2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab2、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、タンデムダイアボディ、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)、バイボディ(bibody)、またはトリボディ(tribody)からなる群より選択される、[F-6]記載のポリペプチド。
[F-8]前記抗原結合ドメインが、抗体可変領域を含む、[F-7]記載のポリペプチド。
[F-9]前記抗体可変領域が、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに任意で、該VHがCH1領域と会合し、かつ/または該VLがCL領域と会合する、[F-8]記載のポリペプチド。
[F-10]前記プロテアーゼ切断サイトが、VH領域とCH1領域との境界、またはVL領域とCL領域との境界、またはVHとVLとの境界に位置する、[F-9]記載のポリペプチド。
[F-11]前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、VHとVLとの境界面で行われ、該アミノ酸改変が、未切断状態と比較して切断状態でVHとVLとの間の会合を低減させる、[F-10]記載のポリペプチド。
[F-12]少なくとも1つのペアのアミノ酸改変が、VHとVLとの境界面で行われ、該アミノ酸改変が、未切断状態と比較して切断状態でVHとVLとの間の会合を低減させる、[F-11]記載のポリペプチド。
[F-13]前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換であり、および該置換のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、[F-11]記載のポリペプチド。
[F-14]前記少なくとも1つのペアのアミノ酸改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸ペアの置換である、[F-12]記載のポリペプチド。
[F-15]前記少なくとも1つのアミノ酸置換が、VHとVLとの境界面の対応する相互作用するアミノ酸と同じ電荷または中性の電荷を達成するためのアミノ酸の置換を含む、[F-13]記載のポリペプチド。
[F-16]前記ペアのアミノ酸置換が、同じ電荷または中性の電荷を有するための両方のアミノ酸の置換を含む、[F-14]記載のポリペプチド。
[F-17]前記置換が、VH上のポジション37、39、44、45、47、91、および103、ならびに/またはVL上のポジション38、43、44、46、49、87、および98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[F-11]~[F-16]のいずれか記載のポリペプチド。
[F-17a]前記置換が、VH上のポジションV37、Q39、G44、L45、W47、H91、Y91、およびW103、ならびに/またはVL上のポジションR38、A43、P44、L46、Y49、Y87、およびF98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[F-11]~[F-16]のいずれか記載のポリペプチド。
[F-18]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[F-17]または[F-17a]記載の方法。
[F-19]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[F-18]記載のポリペプチド:
VH上のQ39D、
W47A、W47L、もしくはW47M、
Y91A、Y91L、Y91M、もしくはH91A、
W103A、W103I、W103L、もしくはW103M、
V37S、もしくはV37Q、
G44Q、
L45A、もしくはL45Q、および/または
VL上のR38E、
Y49A、
Y87A、Y87L、もしくはY87M、
F98A、F98L、もしくはF98M、
A43Q、
P44A、P44S、もしくはP44Q、
L46E、もしくはL46Q。
[F-20]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(pp)のいずれか1つからなる群より選択される、[F-19]記載のポリペプチド:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のQ39D、およびVL上のR38E;
(c)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(d)VH上のY91A、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(e)VH上のY91A、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(f)VH上のY91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のY91A、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(h)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(i)VH上のY91M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(j)VH上のY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(l)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(n)VH上のW103L、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(o)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(p)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(q)VH上のW103I、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(s)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(t)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(u)VH上のW103M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(v)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(y)VH上のV37S、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(z)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(aa)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(bb)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(cc)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(dd)VH上のL45Q、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(ee)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(ff)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(gg)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびF98M;
(hh)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、P44A、およびY49A;
(ii)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(jj)VH上のY91M、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(kk)VH上のV37S、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(ll)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(mm)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(nn)VH上のV37SおよびW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(oo)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(pp)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87M。
[F-21][F-1]~[F-20]のいずれかのポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
[F-22]医薬品としての使用のための、[F-21]記載の薬学的組成物または[F-1]~[F-20]のいずれか記載のポリペプチド。
[F-23]疾患または障害における使用のための、[F-21]記載の薬学的組成物または[F-1]~[F-20]のいずれか記載のポリペプチド。
[F-24]疾患または障害の治療のための医薬品の製造における、[F-21]記載の薬学的組成物または[F-1]~[F-20]のいずれか記載のポリペプチドの使用。
[F-25]疾患または障害を有する個体を治療する方法であって、[F-21]記載の薬学的組成物または[F-1]~[F-20]のいずれか記載のポリペプチドの有効量を投与する工程を含む、前記方法。
[F-26][F-1]~[F-20]のいずれか記載のポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[F-27][F-26]のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[F-28][F-26]のポリヌクレオチドまたは[F-27]のベクターを含む、宿主細胞。
[F-29][F-1]~[F-20]のいずれか記載のポリペプチドを製造する方法であって、ポリペプチドが製造されるように[F-28]の宿主細胞を培養する工程を含む、前記方法。
[F-30]以下の工程を含む、[F-29]記載の方法:
(a)プロテアーゼ切断サイトを含むペプチドリンカーを導入する工程であって、該プロテアーゼ切断可能ペプチドリンカーが、VH領域をCH1領域に、またはVL領域をCL領域に、またはVHをVLに接続する、工程、
(b)VLからのVHの解離、またはVHからのVLの解離を促進するために、VHとVLとの境界面に存在する少なくとも1つのアミノ酸中に少なくとも1つの置換変異を導入する工程、
(c)工程(b)が、VHおよびVLに対する抗原の結合を破壊しないことを確認する工程、および
(d)工程(b)が、プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断時にVHとVLとの会合を低減させることを確認する工程、
(e)工程(d)の該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得る工程、
(f)工程(e)のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養する工程、ならびに
(g)工程(f)における宿主細胞から融合タンパク質を製造し、回収する工程。
[F-31]前記置換が、VH上のポジション37、39、44、45、47、91、および103、ならびに/またはVL上のポジション38、43、44、46、49、87、および98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[F-30]記載の方法。
[F-31a]前記置換が、VH上のポジションV37、Q39、G44、L45、W47、H91、Y91、およびW103、ならびに/またはVL上のポジションR38、A43、P44、L46、Y49、Y87、およびF98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[F-30]記載の方法。
[F-32]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[F-31]または[F-31a]記載の方法。
[F-33]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[F-32]記載の方法:
VH上のQ39D、
W47A、W47L、もしくはW47M、
Y91A、Y91L、Y91M、もしくはH91A、
W103A、W103I、W103L、もしくはW103M、
V37S、もしくはV37Q、
G44Q、
L45A、もしくはL45Q、および/または
VL上のR38E、
Y49A、
Y87A、Y87L、もしくはY87M、
F98A、F98L、もしくはF98M、
A43Q、
P44A、P44S、もしくはP44Q、
L46E、もしくはL46Q。
[F-34]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(pp)のいずれか1つからなる群より選択される、[F-33]記載の方法:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のQ39D、およびVL上のR38E;
(c)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(d)VH上のY91A、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(e)VH上のY91A、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(f)VH上のY91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のY91A、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(h)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(i)VH上のY91M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(j)VH上のY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(l)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(n)VH上のW103L、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(o)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(p)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(q)VH上のW103I、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(s)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(t)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(u)VH上のW103M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(v)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(y)VH上のV37S、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(z)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(aa)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(bb)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(cc)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(dd)VH上のL45Q、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(ee)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(ff)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(gg)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびF98M;
(hh)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、P44A、およびY49A;
(ii)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(jj)VH上のY91M、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(kk)VH上のV37S、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(ll)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(mm)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(nn)VH上のV37SおよびW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(oo)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(pp)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87M。
[F-35]宿主細胞からポリペプチドを回収する工程をさらに含む、[F-28]~[F-34]のいずれか記載の方法。
[G-1]抗原結合ドメインを含む全長IgG抗体を含む、二価ホモ二量体融合タンパク質であって、該抗原結合ドメインが、可変領域を含み、該可変領域が、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、かつ(a)その可変領域のVH領域とCH1領域との境界またはVL領域とCL領域との境界のプロテアーゼ切断サイト、および(b)該可変領域に結合するリガンド、を含み、ならびにプロテアーゼ切断時に、(i)VHまたはVLのいずれかが融合タンパク質から解離し、かつ(ii)リガンドが可変領域から解離し、ならびに(i)に記載される解離が、未切断状態と比較して切断状態でVHとVLとの間の会合を低減させる、VHとVLとの境界面で行われる少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進される、前記二価ホモ二量体融合タンパク質。
[G-2]前記全長IgG抗体が、IgG抗体様ポリペプチドである、[G-1]の融合タンパク質。
[G-3]前記改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換である、[G-2]の融合タンパク質。
[G-4]少なくとも1つのペアのアミノ酸置換が、VHとVLとの境界面で行われ、および該置換のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、[G-3]の融合タンパク質。
[G-5]前記ペアのアミノ酸置換が、同じ電荷または中性の電荷を有するための両方のアミノ酸の置換を含む、[G-4]の融合タンパク質。
[G-6]前記置換が、VH上のポジション37、39、44、45、47、91、および103、ならびに/またはVL上のポジション38、43、44、46、49、87、および98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[G-3]~[G-5]の融合タンパク質。
[G-6a]前記置換が、VH上のポジションV37、Q39、G44、L45、W47、H91、Y91、およびW103、ならびに/またはVL上のポジションR38、A43、P44、L46、Y49、Y87、およびF98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[G-3]~[G-5]の融合タンパク質。
[G-7]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[G-6]または[G-6a]の融合タンパク質。
[G-8]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[G-7]の融合タンパク質:
VH上のQ39D、
W47A、W47L、もしくはW47M、
Y91A、Y91L、Y91M、もしくはH91A、
W103A、W103I、W103L、もしくはW103M、
V37S、もしくはV37Q、
G44Q、
L45A、もしくはL45Q、および/または
VL上のR38E、
Y49A、
Y87A、Y87L、もしくはY87M、
F98A、F98L、もしくはF98M、
A43Q、
P44A、P44S、もしくはP44Q、
L46E、もしくはL46Q。
[G-9]前記置換が、可変領域とリガンドとの境界面に存在するアミノ酸における少なくとも1つの改変をさらに含み、該改変のためのアミノ酸残基が、相補性決定領域(CDR)中にある、[G-6]~[G-8]のいずれかの融合タンパク質。
[G-10]前記リガンドがIL-12であり、前記置換が、VL上のポジション30および/またはVH上のポジション100a(Kabatナンバリングに従う)から選択される少なくとも1つの改変をさらに含む、[G-9]の融合タンパク質。
[G-11]前記改変が、S30Vおよび/またはF100aI(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[G-10]の融合タンパク質。
[G-12]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(hhh)のいずれか1つからなる群より選択される、[G-11]の融合タンパク質:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のQ39D、およびVL上のR38E;
(c)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(d)VH上のY91A、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(e)VH上のY91A、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(f)VH上のY91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のY91A、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(h)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(i)VH上のY91M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(j)VH上のY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(l)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(n)VH上のW103L、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(o)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(p)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(q)VH上のW103I、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(s)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(t)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(u)VH上のW103M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(v)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(y)VH上のV37S、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(z)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(aa)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(bb)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(cc)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(dd)VH上のL45Q、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(ee)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(ff)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(gg)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびF98M;
(hh)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(ii)VH上のF100aI、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(jj)VH上のF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(kk)VH上のF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(ll)VH上のF100aI、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(mm)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、P44A、およびY49A;
(nn)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(oo)VH上のY91M、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(pp)VH上のV37S、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(qq)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(rr)VH上のF100aI、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(ss)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(tt)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(uu)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(vv)VH上のV37SおよびW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(ww)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(xx)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(yy)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87M;
(zz)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(aaa)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(bbb)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(ccc)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(ddd)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(eee)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(fff)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(ggg)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(hhh)VH上のV37S、F100aI、W103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[G-13]融合タンパク質の分子量が、プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断後に、該切断前と比較して小さい、[G-1]~[G-12]のいずれかの融合タンパク質。
[G-14]未切断状態と比べた切断状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下であるか、または21%以下であるか、または22%以下であるか、または23%以下であるか、または24%以下であるか、または25%以下であるか、または26%以下であるか、または27%以下であるか、または28%以下であるか、または29%以下であるか、または30%以下であるか、または31%以下であるか、または32%以下であるか、または33%以下であるか、または34%以下であるか、または35%以下であるか、または36%以下であるか、または37%以下であるか、または38%以下であるか、または39%以下であるか、または40%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[G-1]~[G-13]のいずれかの融合タンパク質。
[G-15]未切断状態と比較した切断状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下であるか、または8%以下であるか、または9%以下であるか、または10%以下であるか、または11%以下であるか、または12%以下であるか、または13%以下であるか、または14%以下であるか、または15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[G-1]~[G-13]のいずれかの融合タンパク質。
[G-16]SPR条件が、30分の持続時間にわたる、未切断状態での融合タンパク質と400 nMのuPAとの接触持続時間を含む、[G-14]または[G-15]のいずれかの融合タンパク質。
[G-17]遊離されたVH-リガンドまたはVL-リガンドのパーセンテージが、式(II):
VH-リガンドまたはVL-リガンドの遊離%=RUの低減%×100/D (II)
に従って、未切断状態と比較した切断状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例し、式中、Dは、0.01×それぞれ未切断状態での融合タンパク質の分子量と比較したVH-リガンドまたはVL-リガンドの分子量のパーセンテージに対応する、[G-14]~[G-16]のいずれかの融合タンパク質。
[G-18]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、10%以上、または20%以上、または30%以上、または40%以上、または50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または100%以上である、[G-17]の融合タンパク質。
[G-19][G-1]~[G-18]のいずれかの融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
[G-20]医薬品としての使用のための、[G-19]記載の薬学的組成物または[G-1]~[G-18]のいずれか記載の融合タンパク質。
[G-21]疾患または障害における使用のための、[G-19]記載の薬学的組成物または[G-1]~[G-18]のいずれか記載の融合タンパク質。
[G-22]疾患または障害の治療のための医薬品の製造における、[G-19]記載の薬学的組成物または[G-1]~[G-18]のいずれか記載の融合タンパク質の使用。
[G-23]疾患または障害を有する個体を治療する方法であって、[G-19]記載の薬学的組成物または[G-1]~[G-18]のいずれか記載の融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、前記方法。
[G-24][G-1]~[G-18]のいずれかの融合タンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[G-25][G-24]のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[G-26][G-24]のポリヌクレオチドまたは[G-25]のベクターを含む、宿主細胞。
[G-27][G-1]~[G-24]のいずれかの融合タンパク質を製造する方法であって、[G-26]の宿主細胞を培養する工程を含む、前記方法。
[G-28]以下の工程を含む、[G-27]記載の方法:
(a)融合タンパク質からのVHまたはVLの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸改変または少なくとも1つのペアのアミノ酸改変を、前記融合タンパク質におけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸改変を、リガンドと可変領域との境界面に導入する工程、
(b)工程(a)が、VHおよびVLに対するリガンドの結合を破壊しないことを確認する工程、
(c)工程(a)が、プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断時にVHとVLとの会合を低減させたことを確認する工程、ならびに
(d)工程(a)のVHまたはVLを、プロテアーゼ切断配列を介してIgG重鎖定常領域と連結する工程、
(e)工程(e)の該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得る工程、
(f)工程(e)のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養する工程、ならびに
(g)工程(f)における宿主細胞から融合タンパク質を製造し、回収する工程。
[G-29]前記改変が、置換であり、かつ該置換が、VH上のポジション37、39、44、45、47、91、および103、ならびに/またはVL上のポジション38、43、44、46、49、87、および98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[G-28]記載の方法。
[G-29a]前記置換が、VH上のポジションV37、Q39、G44、L45、W47、H91、Y91、およびW103、ならびに/またはVL上のポジションR38、A43、P44、L46、Y49、Y87、およびF98(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[G-28]の融合タンパク質。
[G-30]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[G-29]または[G-29a]の融合タンパク質。
[G-31]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[G-30]記載の方法:
VH上のQ39D、
W47A、W47L、もしくはW47M、
Y91A、Y91L、Y91M、もしくはH91A、
W103A、W103I、W103L、もしくはW103M、
V37S、もしくはV37Q、
G44Q、
L45A、もしくはL45Q、および/または
VL上のR38E、
Y49A、
Y87A、Y87L、もしくはY87M、
F98A、F98L、もしくはF98M、
A43Q、
P44A、P44S、もしくはP44Q、
L46E、もしくはL46Q。
[G-32]前記置換が、可変領域とリガンドとの境界面に存在するアミノ酸における少なくとも1つの改変をさらに含み、該改変のためのアミノ酸残基が、相補性決定領域(CDR)中にある、[G-28]~[G-31]記載の方法。
[G-33]前記リガンドがIL-12であり、前記置換が、VL上のポジション30および/またはVH上のポジション100a(Kabatナンバリングに従う)から選択される少なくとも1つの改変をさらに含む、[G-32]記載の方法。
[G-34]前記改変が、S30Vおよび/またはF100aI(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[G-33]記載の方法。
[G-35]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(hhh)のいずれか1つからなる群より選択される、[G-34]記載の方法:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のQ39D、およびVL上のR38E;
(c)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(d)VH上のY91A、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(e)VH上のY91A、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(f)VH上のY91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のY91A、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(h)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(i)VH上のY91M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(j)VH上のY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(l)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(n)VH上のW103L、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(o)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(p)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(q)VH上のW103I、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(s)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(t)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(u)VH上のW103M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(v)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(y)VH上のV37S、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(z)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(aa)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(bb)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(cc)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(dd)VH上のL45Q、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(ee)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(ff)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(gg)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびF98M;
(hh)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(ii)VH上のF100aI、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(jj)VH上のF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(kk)VH上のF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(ll)VH上のF100aI、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(mm)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、P44A、およびY49A;
(nn)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(oo)VH上のY91M、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(pp)VH上のV37S、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(qq)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(rr)VH上のF100aI、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(ss)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(tt)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(uu)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(vv)VH上のV37SおよびW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(ww)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(xx)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(yy)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87M;
(zz)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(aaa)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(bbb)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(ccc)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(ddd)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(eee)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(fff)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(ggg)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(hhh)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[G-36]宿主細胞からポリペプチドを回収する工程をさらに含む、[G-27]~[G-35]のいずれか記載の方法。
[H-1]未切断状態または第1の状態と比較して切断状態または第2の状態でVHとVLとの間の会合を低減させる変異を有する、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]、[E-1]~[E-3]、[F-1]~[F-20]、[G-1]~[G-18]、および[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質またはポリペプチドをスクリーニングするための方法であって、表面プラズマ共鳴(SPR)下で、プロテアーゼ切断の前および後で[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]、[E-1]~[E-3]、[F-1]~[F-20]、および[G-1]~[G-18]のいずれかの融合タンパク質またはポリペプチドについて記録された最大反応単位を比較する工程、ならびに、プロテアーゼ切断の前および後で、1%以下、または2%以下、または3%以下、または4%以下、または5%以下、または6%以下、または7%以下、または8%以下、または9%以下、または10%以下、または11%以下、または12%以下、または13%以下、または14%以下、または15%以下、または16%以下、または17%以下、または18%以下、または19%以下、または20%以下、または21%以下、または22%以下、または23%以下、または24%以下、または25%以下、または26%以下、または27%以下、または28%以下、または29%以下、または30%以下、または31%以下、または32%以下、または33%以下、または34%以下、または35%以下、または36%以下、または37%以下、または38%以下、または39%以下、または40%以下の反応単位の低減を結果としてもたらす変異を選択する工程を含む、前記方法。
[H-2]以下の工程を含む、未切断状態または第1の状態と比較して切断状態または第2の状態でVHとVLとの間の会合を低減させる変異を有する、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]、[E-1]~[E-3]、[F-1]~[F-20]、[G-1]~[G-18]、および[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質またはポリペプチドをスクリーニングするための方法:
(a)融合タンパク質またはポリペプチドからのVHドメインまたはVLドメインの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸変異または少なくとも1つのペアのアミノ酸変異を、該融合タンパク質またはポリペプチドにおけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸変異を、リガンドまたは抗原とリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(b)プロテアーゼの非存在下でのBIACORE表面プラズマ共鳴(SPR)アッセイにおいて、工程(a)の固定化された融合タンパク質またはポリペプチドの第1の反応単位(RU1)を測定する工程;
(c)プロテアーゼの存在下での同じBIACORE表面プラズマ共鳴(SPR)アッセイにおいて、工程(a)の固定化された融合タンパク質またはポリペプチドの第2の反応単位(RU2)を測定する工程;
(d)プロテアーゼ切断の前および後で、RU1とRU2との間の差のパーセンテージが、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下であるか、または8%以下であるか、または9%以下であるか、または10%以下であるか、または11%以下であるか、または12%以下であるか、または13%以下であるか、または14%以下であるか、または15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下であるか、または21%以下であるか、または22%以下であるか、または23%以下であるか、または24%以下であるか、または25%以下であるか、または26%以下であるか、または27%以下であるか、または28%以下であるか、または29%以下であるか、または30%以下であるか、または31%以下であるか、または32%以下であるか、または33%以下であるか、または34%以下であるか、または35%以下であるか、または36%以下であるか、または37%以下であるか、または38%以下であるか、または39%以下であるか、または40%以下である場合には、工程(a)における変異を選択する工程。
[H-3]反応単位の低減パーセンテージが、融合タンパク質またはポリペプチドからのVHまたはVLの遊離に起因する分子量の低減パーセンテージに対応する、[H-1]または[H-2]の方法。
[H-4]以下の工程を含む、未切断状態または第1の状態と比較して切断状態または第2の状態でVHとVLとの間の会合を低減させる変異を有する、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]、[E-1]~[E-3]、[F-1]~[F-20]、[G-1]~[G-18]、および[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質またはポリペプチドをスクリーニングするための方法:
(a)融合タンパク質またはポリペプチドからのVHドメインまたはVLドメインの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸変異または少なくとも1つのペアのアミノ酸変異を、該融合タンパク質またはポリペプチドにおけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸変異を、リガンドまたは抗原とリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(b)プロテアーゼ切断前の融合タンパク質またはポリペプチドの第1のセットを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、ピークA1(第1のピーク)を含む第1のクロマトグラフを得る工程;
(c)プロテアーゼ切断後の融合タンパク質またはポリペプチドの第2のセットを、SECに供し、ピークA2(第2のピーク)および追加的なピークA2'(第3のピーク)(A2'は、A2のショルダーピークである)を含む第2のクロマトグラフを得る工程;
(d)ピークA2'(第3のピーク)の曲線下面積(AUC)割るピークA1(第1のピーク)のAUCから結果として生じたパーセンテージを決定する工程;
(e)工程(d)において得られたパーセンテージが、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下であるか、または8%以下であるか、または9%以下であるか、または10%以下であるか、または11%以下であるか、または12%以下であるか、または13%以下であるか、または14%以下であるか、または15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下であるか、または21%以下であるか、または22%以下であるか、または23%以下であるか、または24%以下であるか、または25%以下であるか、または26%以下であるか、または27%以下であるか、または28%以下であるか、または29%以下であるか、または30%以下であるか、または31%以下であるか、または32%以下であるか、または33%以下であるか、または34%以下であるか、または35%以下であるか、または36%以下であるか、または37%以下であるか、または38%以下であるか、または39%以下であるか、または40%以下である場合には、工程(a)における変異を選択する工程。
[H-5](d)において決定されたパーセンテージが、プロテアーゼ切断後に融合タンパク質またはポリペプチドから解離されたVHまたはVLのパーセンテージに対応する、[H-4]の方法。
[H-6][A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]、[E-1]~[E-3]、[F-1]~[F-20]、[G-1]~[G-18]、または[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質をスクリーニングした場合に、前記パーセンテージが、10%以下である、[H-1]~[H-5]のいずれかの方法。
[H-7][A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]、[E-1]~[E-3]、[F-1]~[F-20]、[G-1]~[G-18]、または[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質またはポリペプチドをスクリーニングした場合に、前記パーセンテージが、10%以下であるか、または16%以下であるか、または20%以下であるか、または30%以下であるか、または37%以下である、[H-1]~[H-5]のいずれかの方法。
[H-8]以下の工程をさらに含む、[H-1]~[H-6]のいずれかの方法:
i.プロテアーゼ切断前に、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]、[E-1]~[E-3]、[F-1]~[F-20]、[G-1]~[G-18]、[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を測定する工程;
ii.プロテアーゼ切断後に、工程(i)の融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を測定する工程;
iii.少なくとも1つのアミノ酸改変または少なくとも1つのペアのアミノ酸改変を、工程(i)における融合タンパク質またはポリペプチドにおけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸改変を、リガンドまたは抗原とリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインとの境界面に導入する工程であって、該アミノ酸改変が、プロテアーゼの存在下でのプロテアーゼ切断時に、融合タンパク質またはポリペプチドからのVHまたはVLの解離を促進する、工程;
iv.プロテアーゼ切断前に、工程(iii)における融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を測定する工程;
v.プロテアーゼ切断後に、工程(iii)における融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を測定する工程;ならびに
vi.工程(v)における融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性が、工程(iv)における融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性よりも大きい、アミノ酸改変を選択する工程。
[H-9]以下の工程をさらに含む、[H-8]の方法:
(a)(i)と(ii)との間の融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の差である「V1」、および(iv)と(v)との間の融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の差である「V2」を決定する工程;ならびに
(b)V2の値がV1よりも大きい、アミノ酸改変を選択する工程。
[H-10][H-1]~[H-9]において選択された変異を含む、[A-1]~[A-57]、[B-1]~[B-57]、[C-1]~[C-52]、[D-1]~[D-5]、[E-1]~[E-3]、[F-1]~[F-20]、[G-1]~[G-18]、および[J-1]~[J-55]のいずれかの融合タンパク質またはポリペプチドにおけるVHとVLとの間の会合を低減させる、アミノ酸変異のライブラリ。
[H-11]前記変異が、VH上のポジション37、39、44、45、47、91、および103、ならびに/またはVL上のポジション38、43、44、46、49、87、および98(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[H-10]記載のライブラリ。
[H-11a]前記変異が、VH上のポジションV37、Q39、G44、L45、W47、H91、Y91、およびW103、ならびに/またはVL上のポジションR38、A43、P44、L46、Y49、Y87、およびF98(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[H-10]記載のライブラリ。
[H-12]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[H-11]または[H-11a]記載のライブラリ。
[H-13]前記変異が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[H-12]記載のライブラリ:
VH上のQ39D、
W47A、W47L、もしくはW47M、
Y91A、Y91L、Y91M、もしくはH91A、
W103A、W103L、もしくはW103M、
V37S、もしくはV37Q、
G44Q、
L45A、もしくはL45Q、および/または
VL上のR38E、
Y49A、
Y87A、Y87L、もしくはY87M、
F98A、F98L、もしくはF98M、
A43Q、
P44A、P44S、もしくはP44Q、
L46E、もしくはL46Q。
[H-14]前記変異が、VL上のポジション30またはVH上のポジション100a(Kabatナンバリングに従う)から追加的に選択される、[H-13]記載のライブラリ。
[H-15]前記変異が、S30VまたはF100aI(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[H-14]記載のライブラリ。
[H-16]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(hhh)のいずれか1つからなる群より選択される、[H-15]記載のライブラリ:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のQ39D、およびVL上のR38E;
(c)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(d)VH上のY91A、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(e)VH上のY91A、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(f)VH上のY91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のY91A、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(h)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(i)VH上のY91M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(j)VH上のY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(l)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(n)VH上のW103L、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(o)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(p)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(q)VH上のW103I、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(s)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(t)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(u)VH上のW103M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(v)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(y)VH上のV37S、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(z)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(aa)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(bb)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(cc)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(dd)VH上のL45Q、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(ee)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(ff)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(gg)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびF98M;
(hh)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(ii)VH上のF100aI、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(jj)VH上のF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(kk)VH上のF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(ll)VH上のF100aI、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(mm)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、P44A、およびY49A;
(nn)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(oo)VH上のY91M、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(pp)VH上のV37S、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(qq)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(rr)VH上のF100aI、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(ss)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(tt)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(uu)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(vv)VH上のV37SおよびW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(ww)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(xx)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(yy)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87M;
(zz)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(aaa)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(bbb)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(ccc)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(ddd)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(eee)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(fff)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(ggg)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(hhh)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[I-1]単離されたプロテアーゼ耐性インターロイキン-12(IL-12)。
[I-2]前記プロテアーゼが、マトリプターゼ、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)からなる群より選択される、[I-1]のプロテアーゼ耐性IL-12。
[I-3]前記プロテアーゼが、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)である、[I-2]のプロテアーゼ耐性IL-12。
[I-4]プロテアーゼに曝露された場合のIL-12のタンパク質分解を妨げる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、[I-1]~[I-3]のいずれかのプロテアーゼ耐性IL-12。
[I-5]KSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まない、[I-4]のプロテアーゼ耐性IL-12。
[I-6]前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、IL-12とIL-12のヘパリン結合部位との境界面で行われる、[I-5]のプロテアーゼ耐性IL-12。
[I-7]前記少なくとも1つのアミノ酸改変を行った後に、IL-12が、(a)~(p)からなる群より選択される改変された配列を含む、[I-6]のプロテアーゼ耐性IL-12:
(a)KSHRE(配列番号:1052);
(b)KSHHE(配列番号:1053);
(c)KSHKE(配列番号:1054);
(d)KSHSE(配列番号:1055);
(e)KSKHRE(配列番号:1056);
(f)KSKQRE(配列番号:1057);
(g)KSKERE(配列番号:1058);
(h)KSKPRE(配列番号:1059);
(i)KHKE(配列番号:1060);
(j)KHHE(配列番号:1061);
(k)KHRE(配列番号:1062);
(l)KKHE(配列番号:1063);
(m)KRHE(配列番号:1064);
(n)KRE(配列番号:1065);
(o)KHE(配列番号:1066);および
(p)KKE(配列番号:1067)。
[I-8]前記IL-12が、以下の(i)~(xvi)のいずれかを含む、[I-1]~[I-7]のいずれかのプロテアーゼ耐性IL-12:
(i)配列番号:1068と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列。
[I-9]前記IL-12が、以下の(i)~(xvi)のいずれかを含む、[I-1]~[I-8]のいずれかのプロテアーゼ耐性IL-12:
(i)配列番号:1068と同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と同一であるアミノ酸配列。
[J-1]各々がN末端からC末端に向かって、一般式(I):
[リガンド結合ドメイン]-[Lx]-[Cx]-[Ly]-[リガンド部分] (I)
によって表される2つのポリペプチドを含む、二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
式中、
Lxが、プロテアーゼ切断サイトを含むペプチドリンカーを表し、
Cxが、第2のペプチドリンカー、および任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、定常領域を表し;
Lyが、第3のペプチドリンカーを表し、
ならびに該リガンド結合ドメインが、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに該リガンド結合ドメインが、該プロテアーゼ切断サイトの切断を触媒するプロテアーゼの非存在下(「未切断状態」)と比較して該プロテアーゼの存在下(「切断状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質。
[J-2]前記改変が、VHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換であり、および該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、[J-1]の融合タンパク質。
[J-3]前記置換が、VH上のポジション37、45、91、もしくは103、および/またはVL上のポジション43、46、49、もしくは87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[J-2]の融合タンパク質。
[J-3a]前記置換が、VH上のポジションV37、L45、H91、Y91、もしくはW103、および/またはVL上のポジションA43、L46、Y49、もしくはY87(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[J-2]の融合タンパク質。
[J-4]ポジションの各々が、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYのいずれかに置換される、[J-3]または[J-3a]の融合タンパク質。
[J-5]前記置換が、以下のいずれか1つまたは複数を含むポジション(Kabatナンバリングに従う)から選択される、[J-4]の融合タンパク質:
VH上のV37S、
L45Q、
Y91M、もしくはH91A、
W103I、W103L、もしくはW103M、および/または
VL上のA43Q、
L46Q、
Y49A、もしくは
Y87L。
[J-6]前記置換が、リガンド結合ドメインとリガンドとの境界面に存在するアミノ酸における少なくとも1つの改変をさらに含み、該改変のためのアミノ酸残基が、相補性決定領域(CDR)中にある、[J-5]の融合タンパク質。
[J-7]前記リガンド部分がIL-12であり、前記置換が、VL上のポジション30および/またはVH上のポジション100a(Kabatナンバリングに従う)から選択される少なくとも1つの改変をさらに含む、[J-6]の融合タンパク質。
[J-8]前記改変が、S30Vおよび/またはF100aI(Kabatナンバリングに従う)から選択される置換である、[J-7]の融合タンパク質。
[J-9]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(z)のいずれか1つからなる群より選択される、[J-2]~[J-8]の融合タンパク質:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(c)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(d)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(e)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(f)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(h)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(i)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(j)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(l)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(n)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(o)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(p)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(q)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(s)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(t)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(u)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(v)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;ならびに
(x)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(y)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(z)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[J-10]前記置換が、Kabatナンバリングに従う以下の組み合わせ(a)~(g)のいずれか1つからなる群より選択される、[J-9]の融合タンパク質:
(a)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(c)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(d)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(e)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(f)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(g)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
[J-11]切断状態での融合タンパク質の分子量が、未切断状態での融合タンパク質の分子量よりも小さい、[J-1]~[J-10]のいずれかの融合タンパク質。
[J-12]切断状態では、リガンド結合ドメインの一部分が融合タンパク質から遊離されるように、切断サイトが切断される、[J-1]~[J-11]のいずれかの融合タンパク質。
[J-13]融合タンパク質から遊離されるリガンド結合ドメインの一部分の分子量が、26 kDa、または13 kDa、またはそれよりも小さい、[J-12]の融合タンパク質。
[J-14]切断状態での融合タンパク質の分子量と未切断状態での融合タンパク質の分子量との比が、10:9である、[J-1]~[J-13]のいずれかの融合タンパク質。
[J-15]切断状態での融合タンパク質の分子量が、未切断状態での融合タンパク質の分子量の9/10である、[J-1]~[J-14]の融合タンパク質。
[J-16]未切断状態での融合タンパク質と比較した切断状態での融合タンパク質の分子量の低減パーセンテージが、10%である、[J-1]~[J-15]のいずれかの融合タンパク質。
[J-17]プロテアーゼ切断時に融合タンパク質から遊離されるリガンド結合ドメインの一部分が、VLまたはVHを含む、[J-1]~[J-16]のいずれかの融合タンパク質。
[J-18]未切断状態と比べた切断状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼの非存在下およびプロテアーゼの存在下の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下であるか、または8%以下であるか、または9%以下であるか、または10%以下であるか、または11%以下であるか、または12%以下であるか、または13%以下であるか、または14%以下であるか、または15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[J-1]~[J-17]のいずれかの融合タンパク質。
[J-19]未切断状態と比べた切断状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼの非存在下およびプロテアーゼの存在下の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[J-1]~[J-18]のいずれかの融合タンパク質。
[J-20]未切断状態と比べた切断状態でのVHとVLとの間の会合の低減が、プロテアーゼの非存在下およびプロテアーゼの存在下の融合タンパク質の反応単位(RU)を比較する表面プラズマ共鳴(SPR)下で測定された場合に、15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下であるか、または21%以下であるか、または22%以下であるか、または23%以下であるか、または24%以下であるか、または25%以下であるか、または26%以下であるか、または27%以下であるか、または28%以下であるか、または29%以下であるか、または30%以下であるか、または31%以下であるか、または32%以下であるか、または33%以下であるか、または34%以下であるか、または35%以下であるか、または36%以下であるか、または37%以下であるか、または38%以下であるか、または39%以下であるか、または40%以下である、最大RUの低減パーセンテージによって表すことができる、[J-1]~[J-19]のいずれかの融合タンパク質。
[J-21]SPR条件が、30分の持続時間にわたる、未切断状態での融合タンパク質と400 nMのuPAプロテアーゼとの接触持続時間を含む、[J-1]~[J-20]のいずれかの融合タンパク質。
[J-22]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/D (II)
に従って、未切断状態と比較した切断状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例し、式中、Dは、0.01×それぞれ未切断状態での融合タンパク質の分子量と比較したVHまたはVLの分子量のパーセンテージに対応する、[J-19]~[J-20]のいずれかの融合タンパク質。
[J-23]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II-1):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/10 (II-1)
に従って、未切断状態と比較した切断状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例する、[J-22]の融合タンパク質。
[J-24]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、式(II-2):
VHまたはVLの遊離%=RUの低減%×100/15.8 (II-2)
に従って、未切断状態と比較した切断状態での、SPR下で測定される、融合タンパク質の反応単位(RU)の変化のパーセンテージと正比例する、[J-23]の融合タンパク質。
[J-25]遊離されたVHまたはVLのパーセンテージが、10%以上、または20%以上、または30%以上、または40%以上、または50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または100%以上である、[J-22]~[J-24]のいずれか1つの融合タンパク質。
[J-26]未切断状態および切断状態でのリガンド部分が、第3のペプチドリンカーを介して定常領域に結合したままである、[J-1]~[J-25]のいずれかの融合タンパク質。
[J-27]リガンド部分とリガンド結合ドメインとの間の結合が、未切断状態と比較して切断状態で減弱されている、[J-1]~[J-26]のいずれかの融合タンパク質。
[J-28]未切断状態で、リガンド部分がリガンド結合ドメインに結合し、かつリガンド部分の生物学的活性が減弱されており、および切断状態で、リガンドの生物学的活性が復元される、[J-1]~[J-27]のいずれかの融合タンパク質。
[J-29]Cxが、重鎖のCH1領域および軽鎖のCL領域を含む、[J-1]~[J-28]のいずれかの融合タンパク質。
[J-30]重鎖の220位のCys(C220)と軽鎖の214位のCys(C214)(EUナンバリングに従う)との間のジスルフィド結合形成が促進されるように、第2のペプチドリンカーが、ヒンジ領域に位置付けられる、[J-1]~[J-29]のいずれかの融合タンパク質。
[J-31]Cxが、少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ここで、重鎖の220位と軽鎖の214位(EUナンバリングに従う)との間にいかなるジスルフィド結合も形成されないように、重鎖および軽鎖におけるアミノ酸残基が改変されている、[J-1]~[J-29]のいずれかの融合タンパク質。
[J-32]前記軽鎖が、C214S改変を含み、かつ前記重鎖が、C220S改変を含む(EUナンバリングに従う)、[J-31]の融合タンパク質。
[J-33]前記重鎖が、重鎖の131位と軽鎖の214位(EUナンバリングに従う)との間のジスルフィド結合形成を可能にするように改変されている、[J-1]~[J-29]のいずれかの融合タンパク質。
[J-34]前記重鎖が、S131CおよびC220S改変(EUナンバリングに従う)を含む、[J-33]の融合タンパク質。
[J-35]Cxが、配列番号:901(C1)、配列番号:905(C2)、配列番号:908(C3)、配列番号:910(C4)、および配列番号:932(C5)からなる群より選択される配列を含む、[J-1]~[J-34]のいずれかの融合タンパク質。
[J-36]Cxが、配列番号:910(C4)の配列を含む、[J-35]の融合タンパク質。
[J-37]Lyが、グリシン-セリンポリマーを含む、[J-1]~[J-36]のいずれかの融合タンパク質。
[J-38]前記グリシン-セリンポリマーが、(a)~(ee)からなる群より選択される、[J-37]の融合タンパク質:
(a)Ser;
(b)Gly Ser(GS);
(c)Ser Gly(SG);
(d)Gly Gly Ser(GGS);
(e)Gly Ser Gly(GSG);
(f)Ser Gly Gly(SGG);
(g)Gly Ser Ser(GSS);
(h)Ser Ser Gly(SSG);
(i)Ser Gly Ser(SGS);
(j)Gly Gly Gly Ser(GGGS、配列番号:136);
(k)Gly Gly Ser Gly(GGSG、配列番号:137);
(l)Gly Ser Gly Gly(GSGG、配列番号:138);
(m)Ser Gly Gly Gly(SGGG、配列番号:139);
(n)Gly Ser Ser Gly(GSSG、配列番号:140);
(o)Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141);
(p)Gly Gly Gly Ser Gly(GGGSG、配列番号:142);
(q)Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143);
(r)Gly Ser Gly Gly Gly(GSGGG、配列番号:144);
(s)Gly Ser Gly Gly Ser(GSGGS、配列番号:145);
(t)Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146);
(u)Gly Ser Ser Gly Gly(GSSGG、配列番号:147);
(v)Gly Ser Gly Ser Gly(GSGSG、配列番号:148);
(w)Ser Gly Gly Ser Gly(SGGSG、配列番号:149);
(x)Gly Ser Ser Ser Gly(GSSSG、配列番号:150);
(y)Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGS、配列番号:151);
(z)Ser Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGG、配列番号:152);
(aa)Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGGS、配列番号:153);
(bb)Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGGG、配列番号:154);
(cc)(Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141))n;
(dd)(Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146))n;および
(ee)(Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143))n;
ここで、nは1以上の整数である。
[J-39]Lyが、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(配列番号:903)の配列を含む、[J-38]の融合タンパク質。
[J-40]前記融合タンパク質が、2つのプロテアーゼ切断サイトを含み、および各プロテアーゼ切断サイトが、標的組織に特異的なプロテアーゼによって独立して切断可能である、[J-1]~[J-39]のいずれかの融合タンパク質。
[J-41]前記標的組織が、がん組織または炎症性組織である、[J-40]の融合タンパク質。
[J-42]各プロテアーゼ切断サイトが、同じプロテアーゼによって切断可能である、[J-1]~[J-41]のいずれかの融合タンパク質。
[J-43]各プロテアーゼ切断サイトが、同じプロテアーゼ切断配列を含む、[J-42]の融合タンパク質。
[J-44]各プロテアーゼ切断サイトが、マトリプターゼ、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)からなる群より選択されるプロテアーゼによって独立して切断可能である、[J-1]~[J-43]のいずれかの融合タンパク質。
[J-45]Lxが、VH領域とCH1領域との境界付近またはVL領域とCL領域との境界付近に位置するプロテアーゼ切断サイトを含む、[J-1]~[J-44]のいずれかの融合タンパク質。
[J-46]前記リガンド部分が、サイトカインまたはケモカインを含む、[J-1]~[J-45]のいずれかの融合タンパク質。
[J-47]前記リガンド部分が、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIG、I-TAC、RANTES、MIP-1a、MIP-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1RAcP、およびIL-1Raからなる群より選択される、[J-46]の融合タンパク質。
[J-48]前記リガンド部分が、IL-12である、[J-47]の融合タンパク質。
[J-49]前記IL-12が、IL-12の切断を触媒するプロテアーゼに曝露された場合のタンパク質分解を妨げる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、[J-48]の融合タンパク質。
[J-50]前記IL-12が、KSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まない、[J-49]の融合タンパク質。
[J-51]前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、IL-12とリガンド結合ドメインとの境界面で行われる、[J-49]または[J-50]の融合タンパク質。
[J-52]前記少なくとも1つのアミノ酸改変を行った後に、IL-12が、(a)~(p)からなる群より選択される改変された配列を含む、[J-51]の融合タンパク質:
(a)KSHRE(配列番号:1052);
(b)KSHHE(配列番号:1053);
(c)KSHKE(配列番号:1054);
(d)KSHSE(配列番号:1055);
(e)KSKHRE(配列番号:1056);
(f)KSKQRE(配列番号:1057);
(g)KSKERE(配列番号:1058);
(h)KSKPRE(配列番号:1059);
(i)KHKE(配列番号:1060);
(j)KHHE(配列番号:1061);
(k)KHRE(配列番号:1062);
(l)KKHE(配列番号:1063);
(m)KRHE(配列番号:1064);
(n)KRE(配列番号:1065);
(o)KHE(配列番号:1066);および
(p)KKE(配列番号:1067)。
[J-53]前記IL-12が、(i)~(xvi)からなる群より選択される配列を含む、[J-49]~[J-52]の融合タンパク質:
(i)配列番号:1068と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と少なくとも70%、80%、または90%同一であるアミノ酸配列。
[J-54]前記IL-12が、(i)~(xvi)からなる群より選択される配列を含む、[J-53]の融合タンパク質:
(i)配列番号:1068と同一であるアミノ酸配列;
(ii)配列番号:1069と同一であるアミノ酸配列;
(iii)配列番号:1070と同一であるアミノ酸配列;
(iv)配列番号:1071と同一であるアミノ酸配列;
(v)配列番号:1072と同一であるアミノ酸配列;
(vi)配列番号:1073と同一であるアミノ酸配列;
(vii)配列番号:1074と同一であるアミノ酸配列;
(viii)配列番号:1075と同一であるアミノ酸配列;
(ix)配列番号:1076と同一であるアミノ酸配列;
(x)配列番号:1077と同一であるアミノ酸配列;
(xi)配列番号:1078と同一であるアミノ酸配列;
(xii)配列番号:1079と同一であるアミノ酸配列;
(xiii)配列番号:1080と同一であるアミノ酸配列;
(xiv)配列番号:1081と同一であるアミノ酸配列;
(xv)配列番号:1082と同一であるアミノ酸配列;および
(xvi)配列番号:1083と同一であるアミノ酸配列。
[J-55]前記IL-12が、配列番号:1068、または配列番号:1069、または配列番号:1076、または配列番号:1077、または配列番号:1078、または配列番号:1079、または配列番号:1080から選択される配列を含む、[J-54]の融合タンパク質。
[K-1]前述の態様のいずれかの融合タンパク質を含むライブラリであって、該ライブラリが、プロテアーゼの非存在下と比較してプロテアーゼの存在下でVHとVLとの間の会合を低減させる1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、融合タンパク質をスクリーニングする方法によって得られ、該スクリーニングする方法が、前述の態様のいずれかに例示される通りである、前記ライブラリ。
[K-2]前述の態様のいずれかの融合タンパク質を含むライブラリであって、該ライブラリが、プロテアーゼの非存在下と比較してプロテアーゼの存在下でVHとVLとの間の会合を低減させる1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、融合タンパク質を製造する方法によって得られ、該プロテアーゼの非存在下と比較してプロテアーゼの存在下でVHとVLとの間の会合を低減させる1つまたは複数のアミノ酸改変が、前述の態様のいずれかに例示されるようなスクリーニングする方法によって特定される、前記ライブラリ。
[K-3]前述の態様のいずれかの融合タンパク質、または前述の態様のいずれかのポリペプチドから、VHまたはVLを遊離する方法であって、VHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変をVHとVLとの境界面に導入する工程を含み、および該少なくとも1つのアミノ酸改変が、前述の態様のいずれかに例示されるスクリーニングする方法から選択される、前記方法。
[K-4]複数の二価ホモ二量体融合タンパク質を含むライブラリであって、該ライブラリ内の各融合タンパク質が、プロテアーゼ切断サイトおよびリガンド結合ドメインを含み、該リガンド結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに該リガンド結合ドメインが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断の前後でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、前記ライブラリ。
[K-5]二価ホモ二量体融合タンパク質からVHまたはVLを遊離する方法であって、該融合タンパク質が、プロテアーゼ切断サイトおよびリガンド結合ドメインを含み、該リガンド結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに該リガンド結合ドメインが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断の前と比較して、該切断サイトでのプロテアーゼ切断後にVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ならびに該VHまたはVLが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断後に融合タンパク質から遊離され、該方法が、少なくとも1つのアミノ酸改変をVHとVLとの境界面に導入する工程を含み、ならびに該アミノ酸が、フレームワーク領域(FR)中にある、前記方法。
[K-6]二価ホモ二量体融合タンパク質をスクリーニングする方法であって、該融合タンパク質が、プロテアーゼ切断サイトおよびリガンド結合ドメインを含み、該リガンド結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに該リガンド結合ドメインが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断前(「未切断状態」)と比較して該切断サイトでのプロテアーゼ切断後(「切断状態」)にVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ならびに該VHまたはVLが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断後に融合タンパク質から遊離され、ならびに該方法が、
(a)VHまたはVLの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸改変または少なくとも1つのペアのアミノ酸改変を、VHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸改変を、リガンドとリガンド結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(b)未切断状態でのBIACORE表面プラズマ共鳴(SPR)アッセイにおいて、工程(a)の固定化された融合タンパク質の第1の反応単位(RU1)を測定する工程;
(c)切断状態での同じBIACORE表面プラズマ共鳴(SPR)アッセイにおいて、工程(a)の固定化された融合タンパク質の第2の反応単位(RU2)を測定する工程;ならびに
(d)RU1とRU2との間の差のパーセンテージが、1%以下であるか、または5%以下であるか、または10%以下であるか、または15%以下であるか、または20%以下であるか、または30%以下であるか、または40%以下である場合には、工程(a)における改変を選択する工程
を含み、
ならびに、反応単位の低減パーセンテージが、融合タンパク質からのVHまたはVLの遊離に起因する分子量の低減パーセンテージに対応する、
前記方法。
[K-7]二価ホモ二量体融合タンパク質をスクリーニングする方法であって、該融合タンパク質が、プロテアーゼ切断サイトおよびリガンド結合ドメインを含み、該リガンド結合ドメインが、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに該リガンド結合ドメインが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断前(「未切断状態」)と比較して該切断サイトでのプロテアーゼ切断後(「切断状態」)にVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ならびに該VHまたはVLが、該切断サイトでのプロテアーゼ切断後に融合タンパク質から遊離され、ならびに該方法が、
(a)VHまたはVLの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸改変または少なくとも1つのペアのアミノ酸改変を、VHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸改変を、リガンドとリガンド結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(b)未切断状態での融合タンパク質の第1のセットを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、ピークA1(第1のピーク)を含む第1のクロマトグラフを得る工程;
(c)切断状態での融合タンパク質の第2のセットを、SECに供し、ピークA2(第2のピーク)および追加的なピークA2'(第3のピーク)(A2'は、A2のショルダーピークである)を含む第2のクロマトグラフを得る工程;
(d)ピークA2'(第3のピーク)の曲線下面積(AUC)割るピークA1(第1のピーク)のAUCから結果として生じたパーセンテージを決定する工程;ならびに
(e)工程(d)において得られたパーセンテージが、1%以下であるか、または5%以下であるか、または10%以下であるか、または15%以下であるか、または20%以下であるか、または30%以下であるか、または40%以下である、工程(a)における改変を選択する工程
を含み、
ならびに、工程(d)において決定された低減パーセンテージが、融合タンパク質からのVHまたはVLの遊離に起因する分子量の低減パーセンテージに対応する、
前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】IL-12融合タンパク質の期待されるプロファイル。不活性分子としては、IL-12の生物学的活性が阻害されているべきであり、IL-12融合タンパク質は、長い全身半減期を有するべきである。疾患特異的プロテアーゼによる切断によって、活性化された分子として、IL-12生物学的活性が復元される。加えて、融合タンパク質は、疾患組織において高濃度で保持されるべきであり、かつ短い全身半減期を示すべきである。
図2図2Aは、不活性IL-12融合タンパク質の薬物動態に対するリガンド結合ドメインの効果を評価するために用いた、一価IL-12融合タンパク質の分子形式を示す。図2Bは、腫瘍を有しないマウスにおける不活性IL-12融合タンパク質の薬物動態を示す。上のグラフは、腫瘍を有しないマウス(n=3)における単一静脈内用量後の一価IL-12遊離FP1(黒丸)、FP2(黒三角)、およびFP3(ばつ印)の血漿濃度を示す。下の表は、各融合タンパク質の薬物動態パラメーターを示す。C0:静脈内注射の直後の後方外挿された濃度、t1/2:排出半減期、AUCinf:時間ゼロから無限大まで外挿された血漿濃度-時間曲線下面積、CL:総クリアランス、Vss:定常状態での分布の体積。
図3】IL-12融合タンパク質の様々な形式。図3Aは、切断可能リンカーがVH領域とCH1領域との間のエルボーヒンジ領域中に導入された、IL-12遊離型融合タンパク質を示す。一本鎖IL-12を、切断可能リンカーを介してFcドメインのC末端に付加した。切断可能リンカーの消化は、活性IL-12の遊離を結果としてもたらす。図3Bは、切断可能リンカーがVH領域とCH1領域との間のエルボーヒンジ領域中に導入された、IL-12融合型融合タンパク質を示す。GSリンカーを、ヒンジ領域に挿入し、一本鎖IL-12を、GSリンカーを介してFcドメインのC末端に付加した。切断可能リンカーの消化は、Fcに融合した活性IL-12の遊離を結果としてもたらす。
図4】二価IL-12遊離FP4および二価IL-12融合FP5を、IL-12ルシフェラーゼアッセイに供した。改変体は両方とも、MT-SP1の非存在下ではhIL-12_Hisタグよりも低いIL-12生物活性を示し、IL-12生物活性は、MT-SP1処理時にhIL-12_Hisタグと同じレベルまで復元された。
図5】プロテアーゼ切断時の活性化されたIL-12融合タンパク質の様々な形式。(A)遊離形式において、自由に解離されたIL-12分子は、代表的な活性化された分子、すなわち組換えIL-12である。(B)融合形式において、KLH二価融合FP6は、代表的な活性化された分子である。
図6】合計で6回繰り返された腫瘍内注射後の、ヒトT細胞を注射したLS1034腫瘍を有するマウスモデルにおける組換えIL-12またはKLH-二価IL12融合FP6の腫瘍溶解物および腫瘍間質液中のIL-12濃度。遊離形式および融合形式の活性化型を比較する腫瘍保持レベルは、腫瘍溶解物および間質液の両方において遊離形式よりも融合形式について、より高い保持濃度を示す。
図7】カニクイザルにおける静脈内投与後の血漿KLH-二価IL-12融合FP6濃度のタイムコース。KLH-二価IL-12融合FP6は、急速に排出され、クリアランスは1975 mL/日/kgであり、これは、文献において報告された6.23 mL/時間/kg(150 mL/日/kg)である組換えIL-12のクリアランス(Pharmacology 2010;85:319-327)よりもおよそ13倍速い。
図8】(A)KLH二価融合FP7のタイムコース解析は、SCIDマウスにおいて335 ml/日/kgのクリアランスを示した。(B)IL-12融合タンパク質の不活性型および活性型のタイムコース解析。IL-12融合タンパク質の不活性化型と活性型の間で、クリアランスレベルは類似していた。
図9】(A)活性化されたおよび不活性化されたIL-12融合タンパク質が、図8において類似したクリアランスを示したように、この現象は、VHドメイン、VLドメイン、およびIL-12部分が結合力を示す可能性があり、かつプロテアーゼ切断後に完全に解離しなかったために、潜在的に観察された可能性がある。(B)IL-12融合タンパク質の不活性化型および活性化型の活性は、活性化型が、プロテアーゼ消化後にIL-12受容体に結合することができるままであり、かつ(A)において観察された平均クリアランスとは無関係に、組換えIL-12と同じ程度までIL-12シグナル伝達を活性化することを示す。
図10A】融合タンパク質からのVHの解離パーセンテージを評価するためのBiacoreアッセイの模式的表示。IL-12に結合する抗IL-12抗体について実施したアッセイの表示。
図10B】融合タンパク質からのVHの解離パーセンテージを評価するためのBiacoreアッセイの模式的表示。二価IL-12融合タンパク質について実施したアッセイの表示。
図11A】抗IL-12抗体からのVH解離を促進するためのVH/VL境界面でのアミノ酸改変のスクリーニング。単一アミノ酸改変およびVH解離のパーセンテージの評価。
図11B】抗IL-12抗体からのVH解離を促進するためのVH/VL境界面でのアミノ酸改変のスクリーニング。アミノ酸改変の組み合わせおよびVH解離のパーセンテージの評価。
図12A】二価IL-12融合タンパク質からのVH解離を促進するVH/VL境界面でのアミノ酸改変のスクリーニングおよび評価。
図12B】二価IL-12融合タンパク質からのVH解離を促進するVH/VL境界面でのアミノ酸改変のスクリーニングおよび評価。
図13】SCIDマウスにおけるVH遊離改変を有するIL-12融合タンパク質の血漿濃度のタイムコース。VH/VL境界面の改変を含むことによって、IL-12融合タンパク質の消化産物からのIL-12のより大きな解離がもたらされ、かつVH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-12融合タンパク質の消化産物と比較して、より速いクリアランスがもたらされた。
図14A】CXCL10融合タンパク質のプロファイル。不活性分子としては、CXCL10の生物学的活性が阻害されているべきであり、CXCL10融合タンパク質は、長い全身半減期を有するべきである。疾患特異的プロテアーゼによる切断によって、活性化された分子として、CXCL10生物学的活性が復元される。加えて、融合タンパク質は、疾患組織において高濃度で保持されるべきであり、かつ短い全身半減期を示すべきである。
図14B】融合タンパク質からのVH解離を促進するためのアミノ酸改変の評価。
図15】二価IL-22融合タンパク質からのVH解離を促進するVH/VL境界面でのアミノ酸改変のスクリーニングおよび評価。
図16】MT-SP1消化を伴うおよび伴わないKLH二価融合FP7のタイムコース解析。MT-SP1での消化は、予想外に、KLH二価融合FP7のより遅いクリアランスをもたらした。これは、活性化されたIL12分子のプロファイルに影響を及ぼすことができた。
図17】p40のヘパリン結合領域におけるプロテアーゼ耐性改変を有するKLH二価融合改変体を用いたMT-SP1媒介性消化を示す、SDS-PAGE解析。上のパネルは、未消化のサンプルおよびMT-SP1との1時間インキュベーションで消化されたサンプルを示す。下のパネルは、MT-SP1との4時間インキュベーションおよび24時間インキュベーションで消化されたサンプルを示す。
図18】p40のヘパリン結合領域におけるプロテアーゼ耐性改変を有するKLH二価融合改変体を用いたMT-SP1媒介性消化を示す、SDS-PAGE解析。上のパネルは、未消化のサンプルおよびMT-SP1との1時間インキュベーションで消化されたサンプルを示す。下のパネルは、MT-SP1との4時間インキュベーションおよび24時間インキュベーションで消化されたサンプルを示す。
図19】プロテアーゼ耐性IL-12改変体のIL-12活性を、ルシフェラーゼアッセイを用いて評価した。プロテアーゼ耐性IL-12改変体はすべて、プロテアーゼ処理にかかわらずhIL12_Hisタグに類似した活性を示した。
図20】SCIDマウスにおけるKLH-二価融合物としてのプロテアーゼ耐性IL-12改変体の血漿濃度のタイムコース。プロテアーゼ耐性改変体はすべて、対照(KLH-二価IL12006v1)よりも遅い排出を示した。
図21】二価IL-12融合タンパク質FP8、FP11、およびFP12を、IL-12ルシフェラーゼアッセイに供した。3つの融合タンパク質はすべて、MT-SP1の非存在下でhIL-12_Hisタグよりも低いIL-12生物活性を示し、IL-12生物活性は、MT-SP1処理時にhIL-12_Hisタグと同じレベルまで復元された。
図22A】VH-IL-22が遊離される融合タンパク質「FP14」からのIL-22遊離の模式図。
図22B】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で3つのアッセイプレートをアッセイし、図22Bは、プレート1の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab4H/Ab4L FP14」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図22C】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で3つのアッセイプレートをアッセイし、図22Cは、プレート1の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab4H/Ab4L FP14」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図22D】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で3つのアッセイプレートをアッセイし、図22Dは、プレート2の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab4H/Ab4L FP14」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図22E】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で3つのアッセイプレートをアッセイし、図22Eは、プレート2の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab4H/Ab4L FP14」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図22F】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で3つのアッセイプレートをアッセイし、図22Fは、プレート3の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab4H/Ab4L FP14」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図23A】VL-IL-22が遊離される融合タンパク質「FP15」からのIL-22遊離の模式図。
図23B】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で2つのアッセイプレートをアッセイし、図23Bは、プレート1の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab5H/Ab5L FP15」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図23C】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で2つのアッセイプレートをアッセイし、図23Cは、プレート1の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab5H/Ab5L FP15」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図23D】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で2つのアッセイプレートをアッセイし、図23Dは、プレート2の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab5H/Ab5L FP15」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図23E】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で2つのアッセイプレートをアッセイし、図23Eは、プレート2の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab5H/Ab5L FP15」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、200 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、200 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図24A】VHが遊離される融合タンパク質「FP16」からのIL-22遊離の模式図。
図24B】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で2つのアッセイプレートをアッセイし、図24Bは、プレート1の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab5H/Ab5L FP16」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、300 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、300 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図24C】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で2つのアッセイプレートをアッセイし、図24Cは、プレート1の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab5H/Ab5L FP16」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、300 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、300 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図24D】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で2つのアッセイプレートをアッセイし、図24Dは、プレート2の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab5H/Ab5L FP16」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、300 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、300 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図24E】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性の評価。VH/VL境界面でのアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-22活性を、IL-22に応答して細胞から分泌されるIL-10の濃度を用いてアッセイした。合計で2つのアッセイプレートをアッセイし、図24Eは、プレート2の評価結果に対応する。各アッセイプレートについて、VH/VL境界面にいかなる改変も有しないIL-22融合タンパク質、すなわち対照融合タンパク質(「Ab5H/Ab5L FP16」)を、参照として含めた。IL-22融合タンパク質の間でIL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、300 pg/mLの濃度で設定した。活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、300 pg/mL IL-10を誘導する各IL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。
図25A】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性および組換えIL-22の活性の評価。VH/VL境界面に変異を有しないIL-22融合タンパク質およびFP14について選択されたIL-22融合タンパク質改変体のIL-22活性を、参照対照としての組換えIL-22とともに、uPAプロテアーゼの存在下または非存在下で評価した。IL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、FP14について250 pg/mLの濃度で設定した。各融合タンパク質についての活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、示された量のIL-10を誘導するIL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。3つの選択された融合タンパク質改変体はすべて、uPAの非存在下で組換えヒトIL-22よりも低いIL-22生物活性を示し、IL-22生物活性は、uPAの存在下で組換えヒトIL-22と同じレベルまで復元された。
図25B】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性および組換えIL-22の活性の評価。VH/VL境界面に変異を有しないIL-22融合タンパク質およびFP15について選択されたIL-22融合タンパク質改変体のIL-22活性を、参照対照としての組換えIL-22とともに、uPAプロテアーゼの存在下または非存在下で評価した。IL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、FP15について400 pg/mLの濃度で設定した。各融合タンパク質についての活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、示された量のIL-10を誘導するIL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。3つの選択された融合タンパク質改変体はすべて、uPAの非存在下で組換えヒトIL-22よりも低いIL-22生物活性を示し、IL-22生物活性は、uPAの存在下で組換えヒトIL-22と同じレベルまで復元された。
図25C】プロテアーゼ消化を伴う/伴わないIL-22融合タンパク質の活性および組換えIL-22の活性の評価。VH/VL境界面に変異を有しないIL-22融合タンパク質およびFP16について選択されたIL-22融合タンパク質改変体のIL-22活性を、参照対照としての組換えIL-22とともに、uPAプロテアーゼの存在下または非存在下で評価した。IL-22活性を比較するために、IL-10応答曲線の内挿を、FP16について400 pg/mLの濃度で設定した。各融合タンパク質についての活性ウインドウを、uPAプロテアーゼを伴うおよび伴わない、示された量のIL-10を誘導するIL-22融合タンパク質の濃度の比として計算した。3つの選択された融合タンパク質改変体はすべて、uPAの非存在下で組換えヒトIL-22よりも低いIL-22生物活性を示し、IL-22生物活性は、uPAの存在下で組換えヒトIL-22と同じレベルまで復元された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
態様の説明
一般的な技術
本発明の実施は、別段示さない限り、当技術分野の技能内である、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技術を用いる。そのような技術は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook et al., 1989);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984);Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed., 1987);Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds 1987、および定期更新);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., ed., 1994);A Practical Guide to Molecular Cloning (Perbal Bernard V., 1988);Phage Display: A Laboratory Manual (Barbas et al., 2001)などの文献において完全に説明されている。
【0014】
下記の定義および詳細な説明は、本明細書に示される本開示の理解を容易にするために提供される。本明細書で言及されるすべての参考文献は、参照により具体的に組み入れられる。
【0015】
I.定義
タンパク質/ポリペプチド
本明細書で用いられる場合、用語「ポリペプチド」は、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子のことをいう。用語「ポリペプチド」は通常、およそ4アミノ酸以上の長さを有するペプチドのことをいい、特定の長さの生成物を指さない。本明細書で用いられる場合、用語はまた、ポリペプチドの断片も含む。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2個以上のアミノ酸の鎖を指すために用いられる任意の他の用語が、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれと互換的に用いられ得る。用語「ポリペプチド」はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、または天然に存在しないアミノ酸による改変を非限定的に含む、ポリペプチドの発現後修飾の生成物も指すように意図される。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来し得るか、または組換え技術によって産生され得るが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成を含む任意の様式で生成されてもよい。本明細書に記載されるようなポリペプチドは、約3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、25個以上、50個以上、75個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上、または2,000個以上のアミノ酸のサイズのものであってもよい。ポリペプチドは、定義された三次元構造を有し得るが、必ずしもそのような構造を有しない。定義された三次元構造を有するポリペプチドは、フォールディングされていると称され、定義された三次元構造を持たず、むしろ多数の異なるコンフォメーションを採ることができるポリペプチドは、アンフォールディングされていると称される。
【0016】
アミノ酸
本明細書において、アミノ酸は、例えば、Ala/A、Leu/L、Arg/R、Lys/K、Asn/N、Met/M、Asp/D、Phe/F、Cys/C、Pro/P、Gln/Q、Ser/S、Glu/E、Thr/T、Gly/G、Trp/W、His/H、Tyr/Y、Ile/I、またはVal/Vによって表されるように、1文字コードもしくは3文字コード、またはその両方によって記載される。特定のポジションに位置するアミノ酸を表現するために、特定のポジションを表す数字をアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードと組み合わせて用いる表現を、適宜用いることができる。例えば、抗体の可変領域に含有されるアミノ酸であるアミノ酸37Vは、Kabatナンバリングによって定義されるポジション37に位置するValを表す。
【0017】
アミノ酸改変
本明細書で互換的に用いられる用語「アミノ酸改変(amino acid modification)」、「アミノ酸改変(amino acid alteration)」、または「アミノ酸変異」は、部位特異的変異導入法(Kunkel et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82, 488-492))またはオーバーラップ伸長PCRなどの、適宜採用され得る当技術分野で公知の方法による、タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列におけるアミノ酸の改変のことをいう。天然アミノ酸以外のアミノ酸によってアミノ酸を置換するための改変方法として、当技術分野で公知のいくつかの方法もまた、採用され得る(Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. (2006) 35, 225-249;およびProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2003) 100 (11), 6353-6357)。例えば、終止コドンであるUAGコドン(アンバーコドン)に相補的なアンバーサプレッサーtRNAに結合した天然に存在しないアミノ酸を有するtRNA含有無細胞翻訳系(Clover Direct(Protein Express))がまた、好ましく用いられる。本明細書において、指定されたポジションでのアミノ酸改変の例には、指定された残基の置換もしくは欠失、または指定された残基に隣接した少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入、またはそれらの置換、欠失、および挿入の任意の組み合わせが含まれる。指定された残基に「隣接した」挿入は、その1~2残基以内の挿入を意味する。挿入は、指定された残基に対してN末端またはC末端であり得る。本明細書で好ましいアミノ酸改変は、置換である。
【0018】
置換
「アミノ酸置換」とは、所定のアミノ酸配列中の少なくとも1つの既存のアミノ酸残基の、別の異なる「置き換え」アミノ酸残基での置き換えのことをいう。1つまたは複数の置き換え残基は、「天然に存在するアミノ酸残基」(すなわち、遺伝コードによってコードされる)であってもよく、アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile);ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);スレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)からなる群より選択され得る。好ましくは、置き換え残基は、システインではない。1つまたは複数の天然に存在しないアミノ酸残基での置換もまた、本明細書におけるアミノ酸置換の定義によって包含される。「天然に存在しないアミノ酸残基」とは、ポリペプチド鎖において隣接したアミノ酸残基に共有結合することができる、上に列記した天然に存在するアミノ酸残基以外の残基のことをいう。天然に存在しないアミノ酸残基の例には、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、および他のアミノ酸残基アナログ、例えばEllman et al. Meth. Enzym. 202:301-336 (1991)に記載されているものが含まれる。そのような天然に存在しないアミノ酸残基を生成するために、Noren et al. Science 244:182 (1989)および上記のEllman et al.の手順を用いることができる。簡潔に説明すると、これらの手順は、サプレッサーtRNAを天然に存在しないアミノ酸残基で化学的に活性化すること、それに続くRNAのインビトロ転写および翻訳を含む。
【0019】
挿入
「アミノ酸挿入」とは、所定のアミノ酸配列中への少なくとも1つのアミノ酸の組み込みのことをいう。挿入は通常、1個または2個のアミノ酸残基の挿入からなるが、本願は、より大きな「ペプチド挿入」、例えば、約3個~約5個、またはさらに最大で約10個のアミノ酸残基の挿入を企図する。挿入される残基は、上記で開示されるように、天然に存在してもよく、または天然に存在しなくてもよい。
【0020】
欠失
「アミノ酸欠失」とは、所定のアミノ酸配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基の除去のことをいう。
【0021】
アミノ酸改変の部位のことをいう場合に本明細書で用いられる用語「および/または」は、「および/または」によって適宜表されるあらゆる組み合わせを含む。具体的には、例えば、句「ポジション37、45、および/または47のアミノ酸が置換されている」には、以下のアミノ酸改変のバリエーションが含まれる:(a)ポジション37、(b)ポジション45、(c)ポジション47、(d)ポジション37および45、(e)ポジション37および47、(f)ポジション45および47、ならびに(g)ポジション37、45、および47。
【0022】
本明細書において、改変前および改変後のアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードが、特定のポジションを表す数字の前および次に用いられる表現を、アミノ酸改変を表すために適宜用いることができる。例えば、抗体可変領域に含有されるアミノ酸を置換するために用いられる改変F37VまたはPhe37Valは、Kabatナンバリングによって定義される37位のPheのValによる置換を表す。具体的には、数字は、Kabatナンバリングによって定義されるアミノ酸ポジションを表し;数字の前のアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードは、置換前のアミノ酸を表し;かつ数字の次のアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードは、置換後のアミノ酸を表す。同様に、抗体定常領域に含有されるFc領域中のアミノ酸を置換するために用いられる改変P238AまたはPro238Alaは、EUナンバリングによって定義される238位のProのAlaによる置換を表す。具体的には、数字は、EUナンバリングによって定義されるアミノ酸ポジションを表し;数字の前のアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードは、置換前のアミノ酸を表し;かつ数字の次のアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードは、置換後のアミノ酸を表す。
【0023】
パーセント (%) アミノ酸同一性
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign (DNASTAR) ソフトウェアなどの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のため、アミノ酸配列の同一性の値(%)は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成している。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:分率X/Yの100倍。ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
【0024】
リガンド結合部分/分子
いくつかの態様において、融合タンパク質は、リガンド結合ドメインをさらに含む、リガンド結合部分またはリガンド結合分子を含むポリペプチドである。本明細書で用いられる用語「リガンド結合部分」または「リガンド結合分子」は、リガンドに結合することができる部分または分子のことをいい、および特に、部分または分子が未切断状態にある場合にリガンドに結合する、部分または分子のことをいう。この文脈において、「結合」とは通常、静電力、ファンデルワールス力、または水素結合などの非共有結合に主に基づく相互作用を通した結合のことをいう。リガンド結合部分または分子の結合モードの好ましい例は、これらに限定されるものではないが、抗原結合ドメイン、抗原結合分子、抗体、抗体断片などがそれを通して抗原に結合する、抗原抗体反応を含む。特定の態様において、リガンド結合部分または分子は、これらに限定されるものではないが、抗体断片、抗体、および抗体断片から形成される分子(例えば、ダイアボディ、キメラ抗原受容体(CAR))を、多重特異性結合分子(例えば、二重特異性ダイアボディおよび二重特異性抗体)を含めて、含む。
【0025】
リガンド結合ドメイン
本明細書で用いられる用語「リガンド結合ドメイン」は、リガンド結合部分/分子がリガンドに結合する場合にリガンドの一部分(エピトープ)にのみ結合する、リガンド結合部分または分子の一部分のことをいう。本発明において、リガンド結合ドメインは、リガンド結合部分/分子が未切断状態にある場合にドメインがリガンドに結合するという事実によってのみ限定され、リガンド結合部分/分子が未切断状態にある場合にドメインが目的のリガンドに結合することができる限り、任意の構造を有し得る。リガンド結合ドメインの例は、これらに限定されるものではないが、抗原結合ドメイン、抗体重鎖可変領域(VH)、抗体軽鎖可変領域(VL)、抗体Fv領域、シングルドメイン抗体(sdAb)、スキャフォールドペプチド、ペプチドアプタマー(Reverdatto S. et al., Curr Top Med Chem. 2015; 15(12): 1082-1101)、IL-12受容体、インビボ細胞膜タンパク質アビマー(avimer)に含有されるおよそ35アミノ酸のAドメインと呼ばれるモジュール(WO2004/044011およびWO2005/040229)、細胞膜上に発現される糖タンパク質フィブロネクチンに由来するタンパク質結合ドメインとして働く10Fn3ドメインを含有するアドネクチン(adnectin)(WO2002/032925)、プロテインAの58アミノ酸から構成される3ヘリックスバンドルを構成するIgG結合ドメインスキャフォールドを含有するAffibody(WO1995/001937)、各々が1つのターン、2つの逆平行ヘリックス、および1つのループのサブユニットにフォールディングされる33アミノ酸残基の構造を有する、アンキリンリピート(AR)の分子表面露出領域である、DARPin(designed ankyrin repeat protein)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)などのリポカリン分子で高度に保存されているバレル構造の一端において、中心軸に向かって曲がった8本の逆平行鎖を接続する4つのループ領域を有するanticalin(WO2003/029462)、ならびに、ヤツメウナギまたはヌタウナギなどの無顎脊椎動物の獲得免疫系において見られるような、免疫グロブリン構造を有しない可変リンパ球受容体(VLR)の繰り返されたロイシンリッチリピート(LRR)モジュールから構成される馬蹄形フォールドの内部平行シート構造における陥没領域(WO2008/016854)を含む。
【0026】
抗原結合ドメイン
本明細書で用いられる用語「抗原結合ドメイン」は、抗原に特異的に結合するか、または抗原を部分的に補完する領域のことをいう。本明細書で用いられる場合、抗原結合分子は、抗原結合ドメインを含む。抗原の分子量が大きい場合には、抗原結合ドメインは、抗原の特異的な部分のみに結合することができる。その特異的な部分は、エピトープと呼ばれる。一態様において、抗原結合ドメインは、特定の抗原に結合する抗体断片を含む。抗原結合ドメインは、1つまたは複数の抗体可変ドメインによって提供され得る。非限定的な一態様において、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。そのような抗原結合ドメインの例には、「scFv(単鎖Fv)」、「単鎖抗体(単鎖抗体)」、「Fv」、「scFv2(単鎖Fv2)」、「Fab」、または「F(ab')2」などが含まれる。別の態様において、抗原結合ドメインは、特定の抗原に結合する非抗体タンパク質またはその断片を含む。特定の態様において、抗原結合ドメインはヒンジ領域を含む。いくつかの態様において、抗原はリガンドである。本明細書で用いられる際に、抗原がリガンドである場合、用語「抗原結合ドメイン」および「リガンド結合ドメイン」は、抗原としてのリガンドに特異的にまたは部分的に結合する領域のことをいうために、互換的に用いられてもよい。
【0027】
本明細書で用いられる場合、用語「同じエピトープに結合する」は、2つの抗原結合ドメインが結合するエピトープが、少なくとも部分的にオーバーラップすることを意味する。オーバーラップの程度は、限定されないが、少なくとも10%以上、好ましくは20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、および特に好ましくは90%以上である。最も好ましくは、100%のオーバーラップである。
【0028】
一態様において、本発明の融合タンパク質は、抗原、例えば、インターロイキン-12(IL-12)またはIL-22に結合し得る抗原結合ドメインを含む。用語「IL-12に結合する融合タンパク質」、「IL-12に結合するポリペプチド」、または「IL-12に結合する抗体」もしくは「抗IL-12」抗体は、生物学的分子を含む分子の不均一な集団の存在下で、その抗原、例えばIL-12の存在を決定する、タンパク質または抗体とIL-12との間の測定可能かつ再現可能な相互作用のことをいう。同じことがIL-22などについても当てはまる。融合タンパク質または抗体は、その抗原に、他の抗原に結合するよりも、より大きなアフィニティ、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間で結合する。一態様において、融合タンパク質または抗体の無関連の抗原に対する結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合に、融合タンパク質または抗体の抗原に対する結合の約10%未満である。特定の態様において、抗原/標的に特異的に結合する融合タンパク質または抗体は、1マイクロモル濃度(μM)以下、100 nM以下、10 nM以下、1 nM以下、0.1 nM以下、0.01 nM以下、または0.001 nM以下(例えば、10-8 M以下、例えば、10-8 M~10-13 M、例えば、10-9 M~10-13 M)の解離定数(Kd)を有する。特定の態様において、融合タンパク質または抗体は、異なる種由来のタンパク質の間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の態様において、特異的結合は、排他的結合を含むことができるが、それを必要とはしない。
【0029】
リガンド/抗原
本明細書で用いられる場合、用語「リガンド」(あるいは「リガンド部分」と呼ばれてもよい)および「抗原」は、互換的に用いられてもよく、リガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインが結合するエピトープを含有することによってのみ限定される。用語「リガンド」および「抗原」は、リガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインが特異的に結合することができるすべての分子のことをいう。リガンド/抗原の好ましい例は、これらに限定されるものではないが、動物またはヒト由来のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を含む。標的組織によって引き起される疾患の治療における使用のためのリガンド/抗原の好ましい例は、これらに限定されるものではないが、標的細胞(例えば、がん細胞および炎症性細胞)の表面上に発現される分子、標的細胞を含有する組織における他の細胞の表面上に発現される分子、標的細胞および標的細胞を含有する組織に対して免疫学的役割を有する細胞の表面上に発現される分子、標的細胞を含有する組織の間質中に存在する巨大分子、可溶性分子、例えばサイトカイン、ケモカイン、ポリペプチドホルモン、増殖因子、アポトーシス誘導因子、PAMPs、DAMPs、核酸、およびそれらの断片、または免疫調節プロセスおよび炎症性プロセスに関与する他の分子を含む。リガンドまたは抗原の例には、インターロイキン、インターフェロン、造血因子、TNFスーパーファミリーのメンバー、ケモカイン、細胞増殖因子、TGF-βファミリーのメンバー、マイオカイン、アディポカイン、または神経栄養因子が含まれる。より具体的には、例には、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIG、I-TAC、RANTES、MIP-1a、MIP-1b、IL-1R1(インターロイキン-1受容体、I型)、IL-1R2(インターロイキン-1受容体、II型)、IL-1RAcP(インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質)、またはIL-1Ra(タンパク質アクセッション番号NP_776214、mRNAアクセッション番号NM_173842.2)が含まれる。
【0030】
特異性
本明細書で用いられる場合、用語「特異性」は、特異的に結合する分子のうちの1つが、その1つまたは複数の結合パートナー分子以外の分子に実質的に結合しない特性のことをいう。この用語はまた、抗原結合ドメインが、特定の抗原に含有されるエピトープに対して特異性を有する場合にも用いられる。用語はまた、抗原結合ドメインが、抗原に含有される複数のエピトープの中の特定のエピトープに対して特異性を有する場合にも用いられる。この文脈において、用語「実質的に結合しない」は、結合活性に関するセクションに記載される方法に従って決定され、結合パートナー以外の分子に対する特異的結合分子の結合活性が、結合パートナー分子に対するその結合活性の80%以下、通常は50%以下、好ましくは30%以下、特に好ましくは15%以下であることを意味する。
【0031】
アフィニティ
本明細書で用いられる用語「アフィニティ」は、分子(例えば、リガンド結合分子、リガンド、抗原結合分子、または抗体)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば、リガンド、リガンド受容体、または抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、リガンド結合分子とリガンド、リガンドとリガンド受容体、抗原結合分子と抗原、または抗体と抗原)の間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離速度定数および結合速度定数(それぞれ、KoffおよびKon)の比である、解離定数(Kd)によって表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様は、以下に記載される。
【0032】
抗体および抗体断片
一態様において、本願特許請求の範囲に記載の融合タンパク質のリガンド結合部分は、抗体を含む。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
【0033】
本明細書で用いられる用語「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab’-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0034】
全長抗体/天然抗体
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
【0035】
本明細書で用いられる用語「天然型抗体」は、天然に存在する様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインもしくは重鎖可変ドメイン(VH)、または抗体重鎖可変ドメイン(VH)、または抗体重鎖可変領域(VH)とも呼ばれる可変領域(VH)を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン(VL)もしくは軽鎖可変ドメイン(VL)、または抗体軽鎖可変ドメイン(VH)、または抗体軽鎖可変領域(VH)とも呼ばれる可変領域(VL)を有し、それに定常軽鎖(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの1つに割り当てられてよい。本明細書で用いられる場合、用語「CL」または「CL領域」または「CLドメイン」は、互換的に用いられ、同じことが、他のドメインである「VH」、「VL」、「CH1」、「CH2」、および「CH3」に、これらの用語の各々が言及において「領域」または「ドメイン」とペアになる場合に適用可能である。
【0036】
モノクローナル抗体
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0037】
キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体
本明細書で用いられる用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。
【0038】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
【0039】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
【0040】
ヒトコンセンサスフレームワーク
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
【0041】
アクセプターヒトフレームワーク
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
【0042】
アフィニティ成熟抗体
本明細書で用いられる用語「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
【0043】
抗体クラス
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられてもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
【0044】
IgG抗体様ポリペプチド
本明細書で用いられる用語「IgG抗体様ポリペプチド」または「IgG抗体様分子」は、IgG抗体中のような定常ドメインまたは定常領域に構造が実質的に類似した部分、およびIgG抗体中のような可変ドメインまたは可変領域に構造が実質的に類似した部分を有する、かつIgG抗体のコンフォメーションに実質的に類似したコンフォメーションを有する、ポリペプチドを定義するために用いられる。IgG抗体様分子において、抗体CH1に類似したドメインおよびCLに類似したドメインは、互換的に用いられてもよく;すなわち、IgG抗体のCH1とCLとの間の相互作用に類似した相互作用が、ドメインの間に存在する限り、抗体ヒンジ領域に類似した部分に連結されたドメインは、抗体CH1ドメインまたは抗体CLドメインであってもよい。しかし、本明細書において、「IgG抗体様分子」は、IgG抗体の構造に類似した構造を保持しながら、抗原結合活性を発揮してもよく、または発揮しなくてもよい。本明細書で用いられる、用語「プロテアーゼ切断サイトを含む全長IgG抗体」、またはプロテアーゼ切断サイトを含む全長IgG抗体が本明細書において言及される場合、そのような用語または句は、それが本融合タンパク質の妥当な機能について目的を達成する限り、上述の「IgG抗体様ポリペプチド」または「IgG抗体様分子」のことをいうために、互換的に用いられる。
【0045】
実質的に類似の
本明細書で用いられる用語「実質的に類似の」または「実質的に同じ」は、2つの数値の間(例えば、本発明の抗体に関するものと、参照/比較用抗体に関するものの間)の類似性が、当業者がそれら2つの数値の間の差が該数値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特徴の観点でほとんどまたはまったく生物学的および/または統計学的に有意性がないとみなす程度に、充分高いことをいう。
【0046】
定常領域およびFc領域
本明細書で用いられる用語「定常領域」または「定常ドメイン」は、抗体における可変領域以外の領域またはドメインのことをいう。例えば、IgG抗体は、ジスルフィド結合を通して接続された2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖によって構成される、およそ150,000 Daのヘテロ四量体糖タンパク質である。各重鎖は、N末端からC末端に向かって、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、それにCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含有する重鎖定常領域(CH)が続く。同様に、各軽鎖は、N末端からC末端に向かって、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、それに定常軽鎖(CL)ドメインが続く。自然抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。本明細書で用いられる場合、用語「CH1」、「CH1ドメイン」、「CH1領域」は、互換的に用いられる。本明細書で用いられる場合、用語「CL」、「CLドメイン」、「CL領域」は、互換的に用いられる。
【0047】
本明細書で用いられる用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447) またはグリシン‐リジン(Gly446-Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
【0048】
変異Fc領域
「変異Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つまたは複数のアミノ酸置換によって天然型配列Fc領域のそれと相違するアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異Fc領域は、天然型配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、天然型配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書の変異Fc領域は、好ましくは、天然型配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくはそれらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくはそれらと少なくとも約95%の相同性を備える。
変異定常領域
「変異定常領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つまたは複数のアミノ酸置換によって天然型配列定常領域のそれと相違するアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異定常領域は、天然型配列定常領域または親ポリペプチドの定常領域と比較して、天然型配列定常領域中または親ポリペプチドの定常領域中に少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書の変異定常領域は、好ましくは、天然型配列定常領域および/または親ポリペプチドの定常領域と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくはそれらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくはそれらと少なくとも約95%の相同性を備える。
【0049】
Fc受容体
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体のことをいう。いくつかの態様において、FcRは、天然型ヒトFcRである。いくつかの態様において、FcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングによる形態を含めて、含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは主としてその細胞質ドメインにおいて相違する類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン活性化モチーフ (immunoreceptor tyrosine-based activation motif: ITAM) を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif: ITIM)を含む。(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997) を参照のこと。)FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med 126:330-41 (1995)において総説されている。将来同定されるものを含む他のFcRも、本明細書の用語「FcR」に包含される。
【0050】
用語「Fc受容体」または「FcR」はまた、母体のIgGの胎児への移動(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))ならびに免疫グロブリンのホメオスタシスの調節を担う、新生児型受容体FcRnを含む。FcRnへの結合を測定する方法は公知である(例えば、Ghetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004); WO2004/92219 (Hinton et al.)を参照のこと)。
【0051】
インビボでのヒトFcRnへの結合およびヒトFcRn高アフィニティ結合ポリペプチドの血漿半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトされたヒト細胞株においてまたは変異Fc領域を伴うポリペプチドが投与される霊長類において測定され得る。WO2000/42072 (Presta) は、FcRに対する結合が増加したまたは減少した抗体変異体を記載している。例えば、Shields et al. J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001) も参照のこと。
【0052】
Fc領域含有抗体
用語「Fc領域含有抗体」は、Fc領域を含む抗体のことをいう。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムにしたがえば残基447)またはFc領域のC末端グリシン-リジン(残基446-447)は、例えば抗体の精製の間にまたは抗体をコードする核酸の組み換え操作によって除去され得る。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体を含む組成物は、G446-K447を伴う抗体、G446を伴いK447を伴わない抗体、G446-K447が完全に除去された抗体、または上記3つのタイプの抗体の混合物を含み得る。
【0053】
機能性Fc領域
「機能性Fc領域」は、天然型配列Fc領域の「エフェクター機能」を備える。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;B cell receptor: BCR)の下方制御等を含む。そのようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、そして、例えば本明細書の定義の中で開示される様々な測定法を用いて評価され得る。
【0054】
ヒトエフェクター細胞
「ヒトエフェクター細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、エフェクター機能を発揮する白血球のことをいう。特定の態様において、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cell: PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球を含む。エフェクター細胞は、天然の供給源から、例えば血液から単離され得る。
【0055】
抗体依存性細胞介在性細胞傷害
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」または「ADCC」は、分泌されたIgが特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体 (FcR) に結合しそれによってこれらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原を有する標的細胞に特異的に結合することができそしてその後にその標的細胞を細胞毒によって殺傷することができるようになる、細胞傷害の一形態のことをいう。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現し、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の第464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、インビトロADCC測定法、例えば米国特許第5,500,362号もしくは第5,821,337号または米国特許第6,737,056号 (Presta) に記載のものが実施され得る。そのような測定法に有用なエフェクター細胞は、PBMCおよびNK細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えばClynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示される動物モデルのような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。
【0056】
補体依存性細胞傷害
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解のことをいう。古典的補体経路の活性化は、(適切なサブクラスの)抗体(対応する抗原に結合している)への補体系の第1要素(C1q)の結合によって開始される。補体活性化を評価するため、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996) に記載のCDC測定法が実施され得る。改変されたFc領域アミノ酸配列を伴うポリペプチド変異体(変異Fc領域を伴うポリペプチド)および増加または減少したC1q結合能は、例えば、米国特許第6,194,551号B1およびWO1999/51642に記載されている。例えば、Idusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000) も参照のこと。
【0057】
可変領域
本明細書で用いられる用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。本明細書で用いる場合、「重鎖可変ドメイン(VH)」は、「抗体重鎖可変ドメイン(VH)」または「抗体重鎖可変領域(VH)」または「VH」または「抗体VH」または「VHドメイン」と互換的に用いられ、「軽鎖可変ドメイン(VL)」は、「抗体軽鎖可変ドメイン(VH)」または「抗体軽鎖可変領域(VL)」または「VL」または「抗体VL」または「VLドメイン」と互換的に用いられる。
【0058】
HVRまたはCDR
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
【0059】
フレームワーク
本明細書で用いられる用語「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0060】
単離された抗体
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
【0061】
単離された核酸
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
【0062】
「抗IL-12抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。同じことが抗IL-22抗体などについても当てはまる。
【0063】
「IL-12に結合する融合ポリペプチドをコードする単離された核酸」は、式Iのポリペプチド(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。同じことがIL-22などについても当てはまる。
【0064】
ベクターおよび宿主細胞
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
【0065】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
【0066】
個体/被験体
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または被験体は、ヒトである。
【0067】
薬学的製剤
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。「薬学的製剤」は、代替的に「薬学的組成物」と呼んでもよい。
【0068】
薬学的に許容される担体
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤/組成物中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
【0069】
有効量
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
【0070】
添付文書
用語「添付文書」は、治療用品の商用パッケージに通常含まれ、そのような治療用品の使用に関する、適応症、用法、用量、投与方法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む使用説明書のことをいうために用いられる。
【0071】
治療
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
【0072】
がん
本明細書で用いられる用語「がん」および「がん性」は、調節されない細胞成長/増殖によって典型的に特徴づけられる哺乳動物における生理学的状態のことをいうまたは説明するものである。がんの例は、がん腫、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病を含むが、これらに限定されない。そのようながんのより詳細な例は、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、肺の扁平上皮がん、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がん、膵がん、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺がん、腎がん、肝がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞がん、白血病および他のリンパ球増殖性障害、ならびに様々なタイプの頭頸部がんを含む。
【0073】
細胞増殖性障害
本明細書で用いられる用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、一定程度の異常な細胞増殖に関連する障害のことをいう。一態様において、細胞増殖性障害は、がんである。
【0074】
B細胞新生物/ホジキン病
「B細胞新生物」は、リンパ球優位型ホジキン病 (lymphocyte predominant Hodgkin’s disease: LPHD) を含むホジキン病;非ホジキンリンパ腫 (non-Hodgkin’s lymphoma: NHL);濾胞中心細胞 (follicular center cell: FCC) リンパ腫;急性リンパ球性白血病 (acute lymphocytic leukemia: ALL);慢性リンパ球性白血病 (chronic lymphocytic leukemia: CLL);およびヘアリー細胞白血病を含む。非ホジキンリンパ腫は、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(small lymphocytic: SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、形質細胞様リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む。これらのがんの再発の治療もまた考慮の内である。LPHDは、放射線または化学療法処置を行っても高頻度で再発する傾向があるタイプのホジキン病である。CLLは、4大白血病のタイプの1つである。リンパ球と呼ばれる成熟B細胞のがんであるCLLは、血液、骨髄、およびリンパ組織における細胞の進行性蓄積によって発症する。緩慢性リンパ腫は、平均的な患者が多数の寛解および再発の期間の後に6~10年生存する、ゆっくりと成長する不治の疾患である。
【0075】
乳房腫瘍
用語「乳房腫瘍」または「乳がん」は、例えば、侵襲性または非浸潤性乳管がん、侵襲性または非浸潤性小葉がん、髄様がん、膠様がん、および乳頭がんなどの腺がん;ならびに、葉状嚢肉腫、肉腫、扁平上皮細胞癌およびがん肉腫などのより一般的でない形態を含む、乳房の任意の腫瘍またはがんのことをいう。
【0076】
結腸腫瘍
用語「結腸腫瘍」または「結腸がん」は、結腸(盲腸から直腸までの大腸)の任意の腫瘍またはがんのことをいう。
【0077】
結腸直腸腫瘍
用語「結腸直腸腫瘍」または「結腸直腸がん」は、例えば腺がん、および、リンパ腫および扁平上皮細胞がんなどのより一般的でない形態を含む、結腸(盲腸から直腸までの大腸)および直腸を含む大腸の任意の腫瘍またはがんのことをいう。
【0078】
非ホジキンリンパ腫
本明細書で用いられる用語「非ホジキンリンパ腫」または「NHL」 (non-Hodkin’s lymphoma) は、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系のがんのことをいう。ホジキンリンパ腫は、一般に、ホジキンリンパ腫におけるリード-スタンバーグ細胞の存在および非ホジキンリンパ腫における同細胞の非存在によって、非ホジキンリンパ腫と区別することができる。本明細書で用いられるこの用語に包含される非ホジキンリンパ腫の例は、Color Atlas of Clinical Hematology, Third Edition; A. Victor Hoffbrand and John E. Pettit (eds.) (Harcourt Publishers Limited 2000)(特にFig. 11.57、11.58および/または11.59を参照のこと)に記載されるRevised European-American Lymphoma(REAL)スキームなどの当技術分野で公知の分類スキームにしたがい当業者(例えば、腫瘍学者または病理学者)によってそのように識別されるであろう任意のものを含む。より具体的な例は、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:再発性または難治性NHL、初発性低悪性度NHL、ステージIII/IV NHL、化学療法耐性NHL、前駆Bリンパ芽球性白血病および/またはリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病および/または前リンパ球性白血病および/または小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、免疫細胞腫および/またはリンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、節外性辺縁帯・MALTリンパ腫、節性辺縁帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、形質細胞腫および/または形質細胞性骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫(濾胞性)、中悪性度びまん性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、アグレッシブNHL(アグレッシブ初発性NHLおよびアグレッシブ再発性NHLを含む)、自己幹細胞移植後に再発するまたは自己細胞移植が有効でないNHL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆(末梢)T細胞リンパ芽球性白血病および/またはリンパ腫、成人T細胞リンパ腫および/または白血病、T細胞慢性リンパ球性白血病および/または前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫および/またはセザリー症候群、節外性ナチュラルキラー/T細胞(鼻型)リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、皮膚リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞性リンパ腫、末梢T細胞(非特定型)リンパ腫、ならびに血管免疫芽球性T細胞リンパ腫。
【0079】
卵巣がん
「卵巣がん」は、卵巣由来の悪性腫瘍の混成グループのことをいう。悪性卵巣腫瘍のおよそ90%は、上皮起源であり;残りは胚細胞性および間質性腫瘍である。上皮卵巣腫瘍は、以下の組織学的サブタイプに分類される:漿液性腺がん(上皮卵巣腫瘍の約50%を占める);類内膜腺がん(約20%);粘液腺がん(約10%);明細胞がん(約5~10%);ブレンナー(移行細胞)腫瘍(比較的一般的でない)。女性で6番目に最も多いがんである卵巣がんの予後は、普通不良で、5年生存率は5~30%の範囲である。卵巣がんの総説については、Fox et al. (2002) “Pathology of epithelial ovarian cancer,” in Ovarian Cancer ch. 9 (Jacobs et al., eds., Oxford University Press, New York); Morin et al. (2001) “Ovarian Cancer,” in Encyclopedic Reference of Cancer, pp.654-656 (Schwab, ed., Springer-Verlag, New York) を参照のこと。上記の上皮卵巣腫瘍サブタイプのいずれか、特に漿液性腺がんサブタイプを診断または治療する方法が、本発明の考慮の内である。
【0080】
再発
「再発」は、患者の疾病の、そのかつての疾患状態への回帰、特に明らかな回復または部分回復後の症状の復帰のことをいう。別段示さない限り、再発状態は、先の治療(化学療法および幹細胞移植治療を含むが、これらに限定されない)の前の疾病への復帰プロセスまたは復帰のことをいう。
【0081】
難治性
「難治性」は、治療に対する疾患または状態の抵抗または非応答(例えば、腫瘍性形質細胞の数が、治療が行われた場合ですら増加する)のことをいう。別段示さない限り、用語「難治性」は、任意の先の治療(化学療法および幹細胞移植治療を含むが、これらに限定されない)に対する抵抗または非応答のことをいう。
【0082】
胃腫瘍
本明細書で用いられる用語「胃腫瘍」または「胃がん」は、胃の任意の腫瘍またはがん(例えば腺がん(例えば、びまん型および腸型)ならびにリンパ腫、平滑筋肉腫、および扁平上皮細胞がんなどのより一般的でない形態を含む)のことをいう。
【0083】
腫瘍
本明細書で用いられる用語「腫瘍」は、悪性か良性かによらず、すべての新生物性細胞成長および増殖ならびにすべての前がん性およびがん性細胞および組織のことをいう。用語「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」および「腫瘍」は、本明細書でいう場合、相互に排他的でない。
【0084】
細胞成長または増殖の阻害/細胞成長の抑制
「細胞成長または増殖の阻害」または「細胞成長の抑制」は、細胞の成長または増殖を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%だけ減少させることを意味し、細胞死を誘導することを含む。
【0085】
化学療法剤
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学的化合物のことをいう。化学療法剤の例は、以下を含む:チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ (benzodopa)、カルボコン、メツレドパ (meturedopa)、およびウレドパ (uredopa) などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチロールメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログであるトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標)))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン (scopolectin)、および9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログKW-2189およびCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド (chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの、ナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンなどの、ニトロソ尿素;エンジイン抗生物質{例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1(例えば、Nicolaou et al., Angew. Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994) を参照のこと);経口アルファ-4インテグリン阻害剤である、CDP323;ジネマイシンAを含むジネマイシン;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア}、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射用(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTCL D-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン (quelamycin)、ロドルビシン (rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの、抗生物質;メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU)などの、代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの、葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどの、プリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどの、ピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどの、アンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの、抗副腎物質 (anti-adrenals);フォリン酸などの、葉酸補給物質;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフロルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシンおよびアンサマイトシンなどの、メイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2',2'-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロラムブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、およびカルボプラチンなどの、白金剤;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合による微小管形成を妨げるビンカ類;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluoromethylornithine: DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含むレチノイン酸などの、レチノイド;クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標))などの、ビスホスホネート;トロキサシタビン(a 1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関連するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras、および上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor: EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子療法用ワクチン(例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン)などの、ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリホシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(R11577);ソラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))などの、Bcl-2阻害剤;ピキサントロン;EGFR阻害剤(後述の定義を参照のこと);チロシンキナーゼ阻害剤(後述の定義を参照のこと);ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標))などの、セリン-スレオニンキナーゼ阻害剤;ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))などの、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;ならびに上記の任意のものの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記の2つまたはそれ以上の組み合わせ、例えばシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾロンの併用療法の略称であるCHOP;および5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXANTIN(商標))による処置レジメンの略称であるFOLFOX。
【0086】
本明細書で定義される化学療法剤は、がんの成長を促進し得るホルモンの作用を調節、減少、阻止、または阻害するよう作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌治療剤」を含む。それらは、ホルモンそのものであってもよく、これらに限定されるものではないが以下を含む:タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン、およびSERM3などの選択的エストロゲン受容体調節剤(selective estrogen receptor modulator: SERM)を含む、アゴニスト/アンタゴニスト混合プロフィールを有する抗エストロゲン;フルベストラント(FASLODEX(登録商標))、およびEM800などの、アゴニスト特性を有さない純粋な抗エストロゲン(そのような薬剤はエストロゲン受容体(estrogen receptor: ER)の二量体化を阻止し得、DNAの結合を阻害し得、ERのターンオーバーを増加させ得、および/またはERレベルを抑制し得る);フォルメスタンおよびエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))などのステロイドアロマターゼ阻害剤、ならびに、アナストラゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、およびアミノグルテチミドなどの非ステロイドアロマターゼ阻害剤、ならびに、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、および4(5)-イミダゾールを含む他のアロマターゼ阻害剤を含む、アロマターゼ阻害剤;ロイプロリド(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、ならびにトリプトレリンを含む、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;酢酸メゲストロールおよび酢酸メドロキシプロゲステロンなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロールおよびプレマリンなどのエストロゲン、ならびに、フルオキシメステロン、全トランス型レチノイン酸、およびフェンレチニドなどのアンドロゲン/レチノイドを含む、性ステロイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御剤(estrogen receptor down-regulator: ERD);フルタミド、ニルタミド、およびビカルタミドなどの、抗アンドロゲン;ならびに上記の任意のものの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記の2つまたはそれ以上の組み合わせ。
【0087】
細胞増殖抑制剤/細胞増殖を抑制する剤
本明細書で用いられる用語「細胞増殖抑制剤」または「細胞増殖を抑制する剤」は互換的に、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の増殖を停止させる化合物または組成物のことをいう。したがって、細胞増殖抑制剤は、S期にある細胞の比率を有意に減少させるものであり得る。細胞増殖抑制剤のさらなる例は、G0/G1停止またはM期停止を誘導することによって細胞周期の進行を阻止する剤を含む。ヒト化抗Her2抗体トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))は、G0/G1停止を誘導する細胞増殖抑制剤の例である。古典的なM期阻止剤は、ビンカ類(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、ならびに、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤を含む。G1を停止する特定の剤、例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシルおよびara-CなどのDNAアルキル化剤は、S期停止にも波及する。さらなる情報は、MurakamiらによるMendelsohn and Israel編、The Molecular Basis of Cancer (W.B. Saunders, Philadelphia, 1995)、第1章、表題 "Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs"、例えば、第13頁において見出すことができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、両方ともイチイから得られる抗がん薬である。ヨーロッパイチイから得られるドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成アナログである。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の構築を促進し、脱重合を防止することによって微小管を安定化させ、それによって細胞において有糸分裂を阻害する。
【0088】
自己免疫疾患
「自己免疫疾患」は、その個体自身の組織から生じかつその個体自身の組織に対して向けられる非悪性疾患または障害のことをいう。本明細書で、自己免疫疾患は、悪性またはがん性の疾患または状態を明確に除外するものであり、特にB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病 (acute lymphoblastic leukemia: ALL)、慢性リンパ球性白血病 (chronic lymphocytic leukemia: CLL)、ヘアリー細胞白血病、および慢性骨髄芽球性白血病を除外する。自己免疫疾患または障害の例は、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:乾癬および皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患などの炎症性反応;全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患に関連する反応(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎);呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;adult respiratory distress syndrome: ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;例えば湿疹および喘息ならびにT細胞の浸潤および慢性炎症反応を伴う他の状態などのアレルギー性状態;アテローム硬化;白血球接着不全症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus: SLE) (ループス腎炎、皮膚ループスを含むがこれらに限定されない);糖尿病(例えば、I型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;橋本甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;ならびに典型的に結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、および血管炎において見られるサイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫反応;悪性貧血(アジソン病);白血球の漏出を伴う疾患;中枢神経系 (central nervous system: CNS) 炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症またはクームス陽性貧血を含むがこれらに限定されない);重症筋無力症;抗原‐抗体複合体介在性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート‐イートン筋無力症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞性動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性ニューロパシー;免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura: ITP)または自己免疫性血小板減少症。
【0089】
免疫抑制剤/抗炎症剤
本明細書で補助療法に関して用いられる用語「免疫抑制剤」は、治療される哺乳動物の免疫系を抑制または遮蔽する作用をする物質のことをいう。これは、サイトカインの産生を抑制する、自己抗原の発現を下方制御もしくは抑制する、またはMHC抗原を遮蔽する物質を含む。そのような薬剤の例は、以下を含む:2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン(米国特許第4,665,077号を参照のこと);非ステロイド抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug: NSAID);ガンシクロビル、タクロリムス、グルココルチコイド(例えばコルチゾールまたはアルドステロン)、抗炎症剤(例えばシクロオキシゲナーゼ阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、またはロイコトリエン受容体アンタゴニスト);アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチル(MMF)などの、プリンアンタゴニスト;シクロホスファミドなどの、アルキル化剤;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド(米国特許第4,120,649号に記載されるようにMHC抗原を遮蔽する);MHC抗原およびMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;コルチコステロイドまたはグルココルチコステロイドまたはグルココルチコイドアナログ(例えば、プレドニゾン、SOLU-MEDROL(登録商標)コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムを含むメチルプレドニゾロン、およびデキサメタゾン)などの、ステロイド;メトトレキサート(経口または皮下)などの、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤;クロロキンおよびヒドロキシクロロキンなどの、抗マラリア剤;スルファサラジン;レフルノミド;抗インターフェロン-アルファ、-ベータまたは-ガンマ抗体、抗腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF)-アルファ抗体(インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))もしくはアダリムマブ)、抗TNF-アルファイムノアドヘシン(エタネルセプト)、抗TNF-ベータ抗体、抗インターロイキン-2(IL-2)抗体および抗IL-2受容体抗体、ならびに抗インターロイキン-6(IL-6)受容体抗体およびアンタゴニスト(例えば、ACTEMRA(商標)(トシリズマブ))を含む、サイトカインまたはサイトカイン受容体抗体;抗CD11aおよび抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗L3T4抗体;異種抗リンパ球グロブリン;汎T抗体(pan-T antibody)、好ましくは抗CD3または抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開のWO90/08187);ストレプトキナーゼ;形質転換成長因子ベータ(transforming growth factor-beta: TGF-ベータ);ストレプトドルナーゼ;宿主由来のRNAまたはDNA;FK506;RS-61443;クロラムブシル;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞受容体(Cohen et al., 米国特許第5,114,721号);T細胞受容体断片(Offner et al., Science, 251: 430-432 (1991);WO90/11294;Ianeway, Nature, 341: 482 (1989);およびWO91/01133);BAFF抗体およびBR3抗体およびzTNF4アンタゴニストなどの、BAFFアンタゴニスト(総説についてはMackay and Mackay, Trends Immunol., 23:113-5 (2002)を参照のこと、また後述の定義も参照のこと);CD40-CD40リガンドに対する阻止抗体(例えば、Durie et al., Science, 261: 1328-30 (1993); Mohan et al., J. Immunol., 154: 1470-80 (1995))およびCTLA4-Ig(Finck et al., Science, 265: 1225-7 (1994))を含む、抗CD40受容体または抗CD40リガンド(CD154)などの、T細胞のヘルパーシグナルと干渉する生物剤;ならびに、T10B9などの、T細胞受容体抗体(EP340,109)。本明細書のいくつかの好ましい免疫抑制剤は、シクロホスファミド、クロラムブシル、アザチオプリン、レフルノミド、MMF、またはメトトレキサートを含む。
【0090】
II.本発明の例示的な態様
一態様において、本発明は、抗体可変領域を含むリガンド結合ドメインを含む少なくとも1つのリガンド結合部分、プロテアーゼ切断サイト、および非切断可能ペプチドリンカーによってリガンド結合部分のC末端領域に接続されている少なくとも1つのリガンドを含むポリペプチドを含む、融合タンパク質であって、(a)第1の状態で、リガンドがリガンド結合ドメインに結合し、かつリガンドの生物学的活性が減弱されており、および第2の状態で、リガンドの生物学的活性が復元される、かつ(b)第1の状態での融合タンパク質が、第2の状態よりも長い血中半減期を有する、かつ(c)第1の状態から第2の状態への切り換えが、プロテアーゼの存在によって媒介される、前記融合タンパク質に関する。
【0091】
「第1の状態」と「第2の状態」との間の差は、プロテアーゼ切断の非存在/存在であり得る。句「第1の状態で」は、「プロテアーゼ切断サイトがプロテアーゼによって切断される前」、または「プロテアーゼ切断サイトがプロテアーゼによって未切断である時」、または「未切断状態」と言い換えられ得る。句「第2の状態で」は、「プロテアーゼ切断サイトがプロテアーゼによって切断された後」、または「プロテアーゼ切断サイトがプロテアーゼによって切断される時」、または「切断状態」と言い換えられ得る。同じことが、本明細書に記載される他の態様にも当てはまる。
【0092】
一態様において、本発明は、各々が、
(i)リガンド結合ドメインおよび定常領域を含む、リガンド結合部分、
(ii)プロテアーゼ切断サイトを含み、かつリガンド結合ドメインを定常領域に接続する、第1のペプチドリンカー、
(iii)第2のペプチドリンカー、および任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、該定常領域、
(iv)第3のペプチドリンカーによって定常領域のC末端領域に接続されている、リガンド部分
を含む、2つのポリペプチドを含む二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
(a)第1の状態で、リガンド部分がリガンド結合ドメインに結合し、かつリガンドの生物学的活性が減弱されており、および第2の状態で、リガンドの生物学的活性が復元される、かつ(b)第1の状態での融合タンパク質が、第2の状態よりも長い血中半減期を有する、かつ(c)第1の状態から第2の状態への切り換えが、プロテアーゼの存在によって媒介される、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質に関する。
【0093】
一態様において、本発明は、リガンド部分に融合したIgG抗体様ポリペプチドを含む二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
(i)(ia)VHとCH1、または(ib)VLとCLの境界の間の、プロテアーゼ切断サイトを含む、第1のペプチドリンカー、
(ii)抗体のCH1領域をFc領域に接続する、および任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、ヒンジ領域に導入された第2のペプチドリンカー、ならびに
(iii)リガンド部分を抗体のFc領域のC末端に接続する、第3のペプチドリンカー
を含み、
(a)第1の状態で、リガンド部分が抗体可変領域に結合し、かつリガンドの生物学的活性が減弱されており、および第2の状態で、リガンドの生物学的活性が復元される、かつ(b)第1の状態での融合タンパク質が、第2の状態よりも長い血中半減期を有する、かつ(c)第1の状態から第2の状態への切り換えが、プロテアーゼの存在によって媒介される、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質に関する。
【0094】
一態様において、本発明は、各々がN末端からC末端に向かって、一般式(I):
[リガンド結合ドメイン]-[Lx]-[Cx]-[Ly]-[リガンド部分] (I)
によって表される2つのポリペプチドを含む、二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
式中、
Lxが、プロテアーゼ切断サイトを含むペプチドリンカーを表し、
Cxが、第2のペプチドリンカー、および任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、定常領域を表し;
Lyが、第3のペプチドリンカーを表し、
ならびに(a)第1の状態で、リガンド部分がリガンド結合ドメインに結合し、かつリガンド部分の生物学的活性が減弱されており、および第2の状態で、リガンドの生物学的活性が復元される、かつ(b)第1の状態での融合タンパク質が、第2の状態よりも長い血中半減期を有する、かつ(c)第1の状態から第2の状態への切り換えが、プロテアーゼの存在によって媒介される、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質に関する。
【0095】
一態様において、本発明は、抗原結合ドメインを含む全長IgG抗体を含む二価ホモ二量体融合タンパク質であって、該抗原結合ドメインが、可変領域を含み、該可変領域が、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、かつ(a)可変領域のVHとCH1との境界またはVLとCLとの境界のプロテアーゼ切断サイト、および(b)可変領域に結合するリガンド部分、を含み、ならびに(a)第1の状態で、リガンド部分が可変領域に結合し、かつリガンド部分の生物学的活性が減弱されており、および第2の状態で、リガンド部分の生物学的活性が復元される、かつ(b)第1の状態での融合タンパク質が、第2の状態よりも長い血中半減期を有する、かつ(c)第1の状態から第2の状態への切り換えが、プロテアーゼの存在によって媒介される、前記二価ホモ二量体融合タンパク質に関する。本明細書で用いられる場合、全長IgG抗体は、本明細書に記載されるようなIgG抗体様ポリペプチドを含む。
一態様において、本発明は、抗原結合ドメインを含むIgG抗体様ポリペプチドを含む二価ホモ二量体融合タンパク質であって、該抗原結合ドメインが、可変領域を含み、該可変領域が、互いに会合する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、かつ(a)可変領域のVHとCH1との境界またはVLとCLとの境界のプロテアーゼ切断サイト、および(b)該可変領域に結合するリガンド、を含み、ならびにプロテアーゼ切断時に、(i)VHまたはVLのいずれかが融合タンパク質から解離し、かつ(ii)リガンドが可変領域から解離し、ならびに(i)に記載される解離が、未切断状態と比較して切断状態でVHとVLとの間の会合を低減させる、VHとVLとの境界面で行われる少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進され、ならびに該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、前記二価ホモ二量体融合タンパク質に関する。
一態様において、本発明は、各々がN末端からC末端に向かって、一般式(I):
[リガンド結合ドメイン]-[Lx]-[Cx]-[Ly]-[リガンド部分] (I)
によって表される2つのポリペプチドを含む、二価ホモ二量体融合タンパク質であって、
式中、
Lxが、プロテアーゼ切断サイトを含むペプチドリンカーを表し、
Cxが、第2のペプチドリンカー、および任意で、システインからまたはシステインへ改変される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、定常領域を表し;
Lyが、第3のペプチドリンカーを表し、
ならびに該リガンド結合ドメインが、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ならびに該リガンド結合ドメインが、該プロテアーゼ切断サイトの切断を触媒するプロテアーゼの非存在下(「未切断状態」)と比較して該プロテアーゼの存在下(「切断状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、ならびに該改変のためのアミノ酸残基が、フレームワーク領域(FR)中にある、
前記二価ホモ二量体融合タンパク質に関する。
【0096】
一態様において、本発明は、プロテアーゼ切断サイトを含む少なくとも1つの抗原結合ドメインを含むポリペプチドまたは抗体であって、該プロテアーゼ切断サイトでの切断時に、該プロテアーゼ切断サイトに隣接した抗体ドメインが解離する、前記ポリペプチドまたは抗体に関する。本明細書で用いられる場合、用語「抗体ドメイン」は、完全抗体以外の分子、すなわち、これらに限定されるものではないが、VH、VL、VHH、CH1、CH2、CH3、CL、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、scFvなどのような抗体断片を含む、抗体の一部分のことをいう。
【0097】
一態様において、プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断時に、ポリペプチドもしくは抗体の一部分またはその抗体ドメインは、ポリペプチドまたは抗体の残りの部分から解離する。解離は、該一部分またはドメインと、対応する相互作用する一部分またはドメインとの境界面で行われた少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進される。例えば、抗体ドメインがVHである場合、その対応する相互作用するドメインはVLであり、および抗体ドメインがVLである場合、その対応する相互作用するドメインはVHである。
【0098】
本明細書において、いくつかの分子形式が含まれる。本明細書で用いられる場合、用語「リガンド」および「抗原」は、互換的に用いられ、広く、リガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインが特異的に結合することができるすべての分子のことをいう。用語「リガンド結合ドメイン」および「抗原結合ドメイン」は、それぞれリガンドまたは抗原に結合することができる分子のことをいう。リガンド結合ドメインが、リガンドに結合して、リガンドの生物学的活性を中和することができるその抗体断片を含む場合には、リガンド結合ドメインは、抗原結合ドメインと互換的に用いられ得る。
【0099】
プロテアーゼ切断サイト
本発明において、リガンド結合ドメイン/部分/分子は、少なくとも1つのプロテアーゼ切断サイトを含む。プロテアーゼ切断サイトは、プロテアーゼ切断時に、リガンドがリガンド結合ドメインから遊離されるか、結合しないようになり、その結合パートナーに結合するリガンドの生物学的活性が復元される限り、リガンド結合ドメイン/部分/分子内の任意の場所に配置され得る。本明細書で用いられる場合、句「リガンド部分/分子を遊離する/遊離すること」または「リガンド部分/分子が遊離される」は、リガンド部分/分子が、未切断のリガンド結合ドメイン/部分/分子と結合したリガンド部分/分子の生物学的活性と比較して、その結合パートナーと相互作用することを通して、その生物学的活性を発揮および/または増加できるようになることを意味するが、遊離の任意の特定のレベルまたはリガンド部分/分子が遊離される作用の任意の特定のモードのことをいわず、またはそれについて制限を提起しない。
【0100】
例えば、プロテアーゼ切断サイトは、リガンド結合部分/分子におけるリガンド結合ドメイン付近に、またはさらにリガンド結合ドメイン内に配置され得る。プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断は、部分/分子が結合することができるリガンドの生物学的活性に影響を及ぼすことができ、例えば、それを復元することができる。本明細書で用いられる場合、例えば、句「生物学的活性が復元される」は、リガンドが、未切断状態でリガンド結合部分/分子に結合し、結合パートナーと相互作用することができない時である(第1の)状態(すなわち、相互作用の非存在のために生物学的活性が減弱されている)から、切断状態でリガンド結合ドメインに結合せず、結合パートナーと相互作用して、その生物学的活性を発揮することができる時である(第2の)状態に移行する状態のことをいう。その結合パートナーに結合するリガンドの生理活性は、リガンド結合ドメインが結合している時である第1の状態で減弱されており、およびプロテアーゼの存在下でリガンド結合ドメインが結合していない時である第2の状態で復元される。
【0101】
いくつかの態様において、プロテアーゼの存在下で、リガンド結合部分/分子に連結されたかまたはそれが結合したリガンド部分/分子は、リガンド結合部分/分子におけるリガンド結合ドメイン内にまたはその付近に配置されたプロテアーゼ切断サイトでの切断のために、リガンド結合部分/分子におけるリガンド結合ドメインから遊離され得る。いくつかの態様において、切断後でさえも、リガンド部分/分子は、リガンド結合部分/分子のC末端領域(例えば、Fc領域/ドメイン)に依然として連結され得る。いくつかの態様において、プロテアーゼの存在下で、リガンド部分/分子は、リガンド部分/分子とリガンド結合部分/分子のC末端領域(例えば、Fc領域/ドメイン)との間に配置されたプロテアーゼ切断サイトでの切断のために、リガンド結合部分/分子から完全に遊離され得る。いくつかの態様において、切断後に、リガンド部分/分子は、リガンド結合部分/分子のC末端領域(例えば、Fc領域/ドメイン)にもはや連結されない。
【0102】
一態様において、リガンド結合部分/分子は、未切断状態と比較して切断状態で、リガンド部分/分子により弱く結合する(すなわち、リガンド結合が減弱される)。別の態様において、リガンド結合部分/分子は、未切断状態と比較して切断状態で、リガンドまたはリガンド部分に結合しない(すなわち、リガンド結合が無効にされる)。リガンド結合部分/分子が抗原抗体反応によってリガンド部分/分子に結合する態様において、リガンド結合の減弱またはその欠如は、リガンド結合部分/分子の生物学的活性に基づいて評価することができる。
【0103】
一態様において、抗原結合ドメインは、未切断状態と比較して切断状態で、リガンド部分/分子により弱く結合する(すなわち、リガンド結合が減弱される)。別の態様において、抗原結合ドメインは、未切断状態と比較して切断状態で、リガンドまたはリガンド部分に結合しない(すなわち、リガンド結合が無効にされる)。この場合に、抗原結合ドメインは、抗原抗体反応によってリガンド部分/分子に結合し、リガンド結合の減弱またはその欠如は、リガンド結合部分/分子の生物学的活性に基づいて評価することができる。
【0104】
句「リガンド結合が減弱される」は、リガンドに結合した被験リガンド結合分子の量が、上記の測定法に基づいて、リガンドに結合した対照リガンド結合分子の量の、例えば、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、好ましくは45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、20%以下、または15%以下、特に好ましくは10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下であることを意味する。結合活性についての指標として、所望の指標が適宜用いられてもよい。例えば、解離定数(KD)が用いられてもよい。結合活性を評価するための指標として解離定数(KD)を用いる場合、対照リガンド結合分子のリガンドに対するものよりも大きい、被験リガンド結合分子のリガンドに対する解離定数(KD)は、被験リガンド結合分子が、対照リガンド結合分子のものよりも弱い、リガンドに対する結合活性を有することを意味する。句「リガンド結合機能が減弱される」は、被験リガンド結合分子のリガンドに対する解離定数(KD)が、対照リガンド結合分子のリガンドに対する解離定数(KD)の、例えば、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍または少なくとも10倍、特に好ましくは少なくとも100倍であることを意味する。
対照リガンド結合分子の例には、未切断型のリガンド結合部分/分子または未切断型の抗体もしくは抗体断片が含まれる。
【0105】
本発明のいくつかの態様において、リガンド部分/分子の生物学的活性は、未切断のリガンド結合部分/分子のリガンド結合ドメインに結合することによって減弱される。リガンドの生物学的活性が減弱される態様の例は、これらに限定されるものではないが、未切断のリガンド結合部分/分子のリガンド結合ドメインに対するリガンド部分/分子の結合が、その結合パートナーに対するリガンドの結合を実質的にまたは有意に干渉するか、またはそれと競合する態様を含む。リガンド結合部分/分子としてリガンド中和活性を有する抗体またはその断片を用いる場合には、リガンドと結合したリガンド結合部分/分子は、その中和活性を発揮することによって、リガンドの生物学的活性を減弱させることができ、およびより大きい程度まで減弱させることができ、すなわち阻害することができる。
【0106】
本発明のいくつかの態様において、リガンド部分/分子の生物学的活性は、抗体の抗原結合ドメインに結合することによって減弱される。リガンドの生物学的活性が減弱される態様の例は、これらに限定されるものではないが、未切断の抗体の抗原結合ドメインに対するリガンドの結合が、その結合パートナーに対するリガンドの結合を実質的にまたは有意に干渉するか、またはそれと競合する態様を含む。抗原結合ドメインに対するリガンドの結合は、抗原抗体結合相互作用を介して中和活性を発揮することによって、リガンドの生物学的活性を減弱させるかまたは阻害する。
【0107】
本発明の一態様において、好ましくは、未切断のリガンド結合部分/分子は、リガンド部分に結合することによって、リガンド部分の生物学的活性を十分に中和することができる。具体的には、未切断のリガンド結合部分/分子と結合した場合のリガンド部分/分子の生物学的活性は、好ましくは、未切断のリガンド結合部分/分子と結合していない場合のリガンド部分/分子のものよりも低い。未切断のリガンド結合分子と結合した場合のリガンドの生物学的活性は、これらに限定されるものではないが、未切断のリガンド結合分子と結合していない場合のリガンドの生物学的活性の、例えば、90%以下、好ましくは80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、または30%以下、特に好ましくは20%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下であることができる。リガンドの生物学的活性を十分に中和するリガンド結合部分/分子の投与は、リガンドが標的組織に到着する前にその生物学的活性を発揮するのを阻止することが期待され得る。
【0108】
本発明の別の態様において、好ましくは、未切断の抗原結合ドメインは、リガンド部分に結合することによって、リガンド部分の生物学的活性を十分に中和することができる。具体的には、未切断の抗原結合ドメインと結合した場合のリガンド部分/分子の生物学的活性は、好ましくは、未切断の抗原結合ドメインと結合していない場合のリガンド部分/分子のものよりも低い。未切断の抗原結合ドメインと結合した場合のリガンドの生物学的活性は、これらに限定されるものではないが、未切断の抗原結合ドメインと結合していない場合のリガンドの生物学的活性の、例えば、90%以下、好ましくは80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、または30%以下、特に好ましくは20%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下であることができる。リガンドの生物学的活性を十分に中和する抗原結合ドメインの投与は、リガンドが標的組織に到着する前にその生物学的活性を発揮するのを阻止することが期待され得る。
【0109】
あるいは、本発明は、リガンドの生物活性を中和する方法を提供する。本発明の方法は、本発明のリガンド結合分子を、その生物活性が中和されるべきリガンドと接触させる工程、および2つの分子の結合の産物を収集する工程を含む。収集された結合産物におけるリガンド結合分子の切断により、中和されたリガンドの生物活性を復元することができる。したがって、本発明によるリガンドの生物活性を中和する方法は、リガンドおよびリガンド結合分子からなる結合産物におけるリガンド結合分子を切断すること(換言すると、リガンド結合分子の中和活性を解消すること)によって、リガンドの生物活性を復元する工程をさらに含んでもよい。
【0110】
本発明の一態様において、切断されたリガンド結合部分または分子のリガンド部分または分子に対する結合活性は、好ましくは、インビボでの天然のリガンド結合パートナー(例えば、リガンドに対する天然の受容体)のリガンドに対する結合活性よりも低い。切断されたリガンド結合部分/分子のリガンド部分/分子に対する結合活性は、これに限定されないが、インビボでの天然の結合パートナーに結合したリガンドの量(単位結合パートナーあたり)の、例えば、90%以下、好ましくは80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、または30%以下、特に好ましくは20%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下を示す。結合活性についての指標として、所望の指標が適宜用いられてもよい。例えば、解離定数(KD)が用いられてもよい。結合活性を評価するための指標として解離定数(KD)を用いる場合、インビボでの天然のリガンド結合パートナーのリガンドに対するものよりも大きい、切断されたリガンド結合部分/分子のリガンドに対する解離定数(KD)は、切断されたリガンド結合分子が、インビボでの天然の結合パートナーのものよりも弱い、リガンドに対する結合活性を有することを意味する。切断されたリガンド結合分子のリガンドに対する解離定数(KD)は、インビボでの天然のリガンド結合パートナーのリガンドに対する解離定数(KD)の、例えば、少なくとも1.1倍、好ましくは少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍、特に好ましくは少なくとも100倍である。切断後にリガンドに対して低い結合活性しか有さない、またはリガンドに対して結合活性をほとんど有さないリガンド結合分子により、リガンド結合分子の切断によってリガンドが遊離されることが保証され、かつ別のリガンド分子に再び結合するのが阻止されることが期待され得る。
【0111】
リガンドは、望ましくは、リガンド結合分子の切断後に、抑制された生物活性を復元する。望ましくは、切断されたリガンド結合分子のリガンド結合は、リガンド結合分子のリガンド生物活性阻害機能も減弱されるように、減弱される。当業者は、公知の方法、例えば、本明細書に開示するようなリガンドのその結合パートナーに対する結合を検出する方法によって、リガンドの生物活性を確認することができる。
【0112】
本明細書において、リガンドのその結合パートナーに対する結合活性に言及する場合に本明細書で用いられる句「減弱された結合活性」は、融合ポリペプチドの未切断状態でのリガンドの結合活性と比較した場合に低減または減少した結合活性のことをいい、低減または減少の程度は、限定されず、活性の完全な無効化を含む。同様に、句「抑制された生物学的活性」および「リガンドの生物学的活性を中和すること」は、プロテアーゼ切断前にリガンドが融合ポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合している時のリガンドのその結合パートナーに対する結合活性の低減を、完全な排除を含めて、かつこれに限定されずに示すように、本明細書において互換的に用いられ得る。
【0113】
本明細書において、句「生物学的活性が復元される」は、リガンドが、未切断状態でリガンド結合部分に結合し、結合パートナーと相互作用することができない時である(第1の)状態から、切断状態でリガンド結合部分に結合せず、結合パートナーと相互作用して、その生物学的活性を発揮することができる時である(第2の)状態に移行する状態のことをいう。用語「復元される」は、結合パートナーと相互作用して、その生物学的活性を発揮するリガンドの能力の復帰のことをいい、この能力は、未切断状態でリガンドがリガンド結合ドメインに結合していた時には阻害されていた。それは、結合時にその生物学的活性を発揮するのに十分な、結合パートナーとの任意の程度の相互作用または増加した相互作用を含む。いくつかの態様において、リガンド結合部分/分子は、リガンド結合部分におけるリガンド結合ドメイン内にまたはその付近に配置されたプロテアーゼ切断サイトを含む。プロテアーゼの存在下で、リガンドは、リガンド結合部分に結合しないようになり、自由に結合パートナーと相互作用して、その生物学的活性を発揮する。いくつかの態様において、リガンドのその生物学的活性を発揮するための結合パートナーに対する相互作用は、リガンドが、非切断可能ペプチドリンカーによってリガンド結合部分のFc領域のC末端に結合したままである間に生じる。本明細書で用いられる用語「生物学的活性」は、これに限定されるものではないが、リガンドの生理活性(例えば、リガンド受容体などのその天然の結合パートナーとのリガンド相互作用)を含む。
【0114】
そのリガンド結合パートナーに結合するリガンドの生物活性は、FACS、ELISA、ALPHA(ALPHA(増幅発光近接ホモジニアスアッセイ)スクリーンもしくは表面プラズモン共鳴(SPR)現象を用いたBIACORE、またはBLI(バイオレイヤー干渉法)(Octet)等の周知の方法によって確認することができる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。ALPHAスクリーンは、ドナーおよびアクセプターの2つのビーズを用いてALPHAテクノロジーに従って、以下の原理に基づいて実施される。ドナービーズに結合した分子とアクセプタービーズに結合した分子との間の相互作用を通して、これらの2つのビーズが近接して位置する時にのみ、発光シグナルが検出される。レーザーによって励起されたドナービーズ中のフォトセンシタイザーは、周辺の酸素を励起状態の一重項酸素に変換する。一重項酸素が、ドナービーズ周囲に拡散し、近接して位置するアクセプタービーズに到達して、それによりビーズにおける化学発光反応を引き起こし、これが最終的に光を放出する。ドナービーズに結合した分子とアクセプタービーズに結合した分子との間の相互作用の非存在下では、ドナービーズによって産生される一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は起きない。
【0115】
例えば、ビオチン標識されたリガンド結合パートナーを、ドナービーズに結合させ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)でタグ付けされたリガンドを、アクセプタービーズに結合させる。タグ付けされていない競合リガンド結合パートナーの非存在下では、リガンド結合パートナーはリガンドと相互作用して、520~620 nmのシグナルを生成する。タグ付けされていないリガンド結合パートナーは、リガンドとの相互作用について、タグ付けされたリガンド結合パートナーと競合する。競合から結果として生じる蛍光の減少を定量して、相対的な結合アフィニティを決定することができる。スルホ-NHS-ビオチン等を用いた抗体等のリガンド結合パートナーのビオチン化は、当技術分野で公知である。リガンドにGSTをタグ付けする方法として、例えば、リガンドをコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドとをインフレームで融合させる工程;結果として生じた融合遺伝子の発現を可能にするベクターを保有する細胞等から、GST融合リガンドを発現させる工程;およびグルタチオンカラムを用いてGST融合リガンドを精製する工程を含む方法を、適宜採用することができる。得られたシグナルは、好ましくは、例えば、ソフトウェアGRAPHPAD PRISM(GraphPad Software, Inc., San Diego)を用いて、非線形回帰解析に基づく一部位競合(one-site competition)モデルに適合させて解析される。
【0116】
その間の相互作用を観察することになる物質の一方(リガンド)を、センサーチップの金薄膜上に固定化する。金薄膜とガラスとの境界面で全反射が起こるように、センサーチップの裏側から光を当てる。結果として、反射強度が低下した部位(SPRシグナル)が、反射光の一部分に形成される。その間の相互作用を観察することになる物質の他方(アナライト)を、センサーチップの表面に流して、リガンドに結合させると、固定化されているリガンド分子の質量が増加して、センサーチップ表面上の溶媒の屈折率が変化する。この屈折率の変化により、SPRシグナルの位置がシフトする(逆に、結合した分子の解離により、シグナルは元の位置に戻る)。Biacoreシステムは、シフトの量、すなわち、センサーチップ表面上の質量の変化を縦軸にプロットし、質量の経時変化をアッセイデータとして表示する(センサーグラム)。カイネティクス:結合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)は、センサーグラムのカーブから決定され、解離定数(KD)は、これらの定数間の比から決定される。阻害アッセイまたは平衡解析もまた、BIACORE法において好ましく用いられる。阻害アッセイの例は、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103 (11), 4005-4010に記載され、平衡解析の例は、Methods Enzymol. 2000; 323: 325-40に記載されている。
【0117】
本明細書で用いられる句「生物学的活性が復元される」は、結合に起因する生物学的活性が、上記のものなどの任意の測定法において観察される限り、リガンドのその結合パートナーに対する結合の程度に制限を課さない。それは、切断状態および未切断状態でリガンドを比較した場合に、リガンドとその結合パートナーとの間の相互作用における1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上の増加を含むことができる。結合活性についての指標として、所望の指標が適宜用いられてもよい。例えば、結合速度定数(Kon)が用いられてもよい。結合定数(Kon)を用いる場合、対照リガンド(すなわち、未切断状態のリガンド)のものよりも大きい、被験リガンド(すなわち、切断状態の復元されたリガンド)に対するリガンド結合パートナーの結合定数は、対照リガンドのものよりも強い、リガンド結合パートナーに対する被験リガンドのリガンド結合活性を意味する。いくつかの態様において、結合定数は、リガンド結合パートナーに対する対照リガンドのものの、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、または少なくとも10倍、特に好ましくは少なくとも100倍である。
【0118】
例えば、Octetを用いてリガンドの生物学的活性を検出する場合には、リガンドを認識するリガンド検出用抗体をビオチン化し、バイオセンサーと接触させる。次いで、サンプル中のリガンドに対する結合を測定して、リガンド結合活性の復元を検出することができる。具体的には、リガンドの量を、プロテアーゼ処理前またはプロテアーゼ処理後のリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプルにおいて、リガンド検出用抗体を用いて測定する。サンプル中に検出されたリガンドの量を、プロテアーゼ処理前とプロテアーゼ処理後の間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。あるいは、リガンドの量を、プロテアーゼとリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプル、およびプロテアーゼを含有せずにリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプルにおいて、リガンド検出用抗体を用いて測定する。サンプル中に検出されたリガンドの量を、プロテアーゼの有無の間で比較して、リガンド部分のリガンド結合能力の復元を判定することができる。リガンド結合分子がリガンドと融合して融合タンパク質を形成している場合は、リガンドの量を、プロテアーゼ処理前またはプロテアーゼ処理後の融合タンパク質を含有するサンプルにおいて、リガンド検出用抗体を用いて測定する。サンプル中に検出されたリガンドの量を、プロテアーゼ処理前とプロテアーゼ処理後の間で比較して、リガンドのリガンド結合能力の復元を判定することができる。あるいは、リガンドの量を、プロテアーゼと融合タンパク質とを含有するサンプル、およびプロテアーゼを含有せずに融合タンパク質を含有するサンプルにおいて、リガンド検出用抗体を用いて測定する。サンプル中に検出されたリガンドの量を、プロテアーゼの有無の間で比較して、リガンドのリガンド結合能力の復元を判定することができる。より具体的には、本願の実施例に記載される方法によって、リガンドのリガンド結合活性の復元を検出することができる。
【0119】
いくつかの態様において、リガンドの生理活性(すなわち、リガンド受容体などのその天然の結合パートナーとのリガンド相互作用)は、リガンド結合ドメインに対する結合時に減弱されており、このリガンドの生理活性の復元は、サンプル中のリガンドの生理活性を測定する方法によって検出することができる。具体的には、リガンドの生理活性を、プロテアーゼ処理前またはプロテアーゼ処理後のリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプルにおいて測定し、プロテアーゼ処理前とプロテアーゼ処理後の間で比較して、その結合能力の復元を検出することができる。あるいは、リガンドの生理活性を、プロテアーゼとリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプル、およびプロテアーゼを含有せずにリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプルにおいて測定し、これらのサンプルの間で比較して、リガンドの結合能力の復元を検出することができる。リガンド結合分子がリガンドと融合して融合タンパク質を形成している場合は、リガンドの生理活性を、プロテアーゼ処理前またはプロテアーゼ処理後の融合タンパク質を含有するサンプルにおいて測定し、プロテアーゼ処理前とプロテアーゼ処理後の間で比較して、その結合能力の復元を検出することができる。あるいは、リガンドの生理活性を、プロテアーゼと融合タンパク質とを含有するサンプル、およびプロテアーゼを含有せずに融合タンパク質を含有するサンプルにおいて測定し、これらのサンプルの間で比較して、その結合能力の復元を検出することができる。
【0120】
本発明のいくつかの態様において、未切断のリガンド結合分子は、抗原抗体結合を通してリガンドと複合体を形成する。より具体的な態様において、リガンド結合分子とリガンドとの複合体は、非共有結合、例えば、リガンド結合分子とリガンドとの間の抗原抗体結合を通して形成される。
【0121】
いくつかの態様において、融合タンパク質を形成するように、未切断のリガンド結合分子をリガンド分子と融合させる。融合タンパク質中のリガンド結合部分のリガンド結合ドメインとリガンド部分とは、抗原抗体結合を通してさらに互いに相互作用する。リガンド結合分子とリガンドとは、ペプチドリンカーを介して融合させることができる。融合タンパク質中のリガンド結合分子とリガンドとが、ペプチドリンカーを介して融合している場合であっても、リガンド結合部分のリガンド結合ドメインとリガンド部分との間には、非共有結合が依然として存在する。換言すると、リガンド結合分子がリガンドと融合している態様においても、リガンド結合部分のリガンド結合ドメインとリガンド部分との間の非共有結合は、リガンド結合分子がリガンドと融合していない場合と類似している。非共有結合は、リガンド結合部分/分子の切断によって減弱される。要するに、リガンド結合部分/分子のリガンド結合が減弱される。
【0122】
いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質において、リガンド部分または分子は、ペプチドリンカーを介してリガンド結合部分または分子のC末端領域に接続されている。本明細書で用いられる場合、用語「C末端領域」は、ポリペプチド中の内部アミノ酸残基からポリペプチドのC末端アミノ酸残基まで延びる、ポリペプチドの領域のことをいう。リガンド結合部分/分子が、例えば、抗体の形態にあるかまたはFc領域を含有する抗体断片の形態にある、ある特定の態様において、リガンド結合部分/分子のC末端領域は、典型的には、該リガンド結合部分/分子のC末端から1~250番目のアミノ酸残基の領域のことをいう。好ましい態様において、リガンド部分/分子は、ペプチドリンカーを介してリガンド結合部分/分子のC末端アミノ酸残基に接続されている。ペプチドリンカーは、ペプチド結合等の任意の共有結合によって、リガンド部分/分子に、およびリガンド結合部分/分子のC末端領域に付加されていてもよい。ペプチドリンカーの長さは、リガンド部分/分子をリガンド結合部分/分子中のリガンド結合ドメインに結合させる限り、特に限定されない。上述のペプチドリンカーは、プロテアーゼ切断サイトを含有してもよく、または含有しなくてもよい。好ましい態様において、上述のペプチドリンカーはプロテアーゼ切断サイトを含有しない。
【0123】
いくつかの局面において、本発明のリガンド部分/分子はIL-12である。一態様において、本発明のリガンド部分/分子はIL-12であり、該IL-12は、IL-12のp35サブユニットまたはIL-12のp40サブユニットに付加されたペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分/分子のC末端アミノ酸残基に接続されている。
一態様において、本発明のリガンド部分/分子はIL-12であり、該IL-12は、IL-12のp35サブユニットまたはIL-12のp40サブユニットのN末端に付加されたペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分/分子のC末端アミノ酸残基に接続されている。いくつかの局面において、本発明のリガンド部分/分子はIL-22である。一態様において、本発明のリガンド部分/分子はIL-22であり、該IL-22は、IL-22に付加されたペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分/分子のC末端アミノ酸残基に接続されている。一態様において、本発明のリガンド部分/分子はIL-22であり、該IL-22は、IL-22のN末端に付加されたペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分/分子のC末端アミノ酸残基に接続されている。一態様において、本発明のリガンド結合ドメインは、ペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分に含まれるヒンジ領域に接続されている。好ましい態様において、本発明のリガンド結合部分は、ペプチドリンカーを介してヒンジ領域に接続されているCH1領域をさらに含んでもよい。ペプチドリンカーは、リンカーの両側でCH1とヒンジとの間に挿入することができる。いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質(またはリガンド結合部分)は、ペプチドリンカーを含む定常領域を含む。いくつかの態様において、定常領域は、ペプチドリンカーを含むヒンジ領域を含む。ペプチドリンカーは、ヒンジ領域前/内の任意の位置に含まれてもよい。ペプチドリンカーは、CH1とヒンジ領域との間、すなわち、ヒンジ領域中のアミノ酸配列EPKSC(配列番号:936)の前に含まれてもよい(注記:最初の残基(E)は216位(EUナンバリング)である)。ペプチドリンカーは、ヒンジ領域中のアミノ酸配列EPKSC(配列番号:936)の後に含まれてもよい。ペプチドリンカーの位置の例には、以下が含まれるが、それらに限定されない:
[ペプチドリンカー]EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号:901参照;例は「C1」タイプを含む);
EPKSC[ペプチドリンカー]DKTHTCPPCP(配列番号:905参照;例は「C2」タイプを含む);ならびに
[ペプチドリンカー]EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号:908および910参照;例は「C3」および「C4」タイプを含む);ならびに
EPKSCDKTHT[ペプチドリンカー]CPPCP(配列番号:932参照;例は「C5」タイプを含む)。
いくつかの態様において、ペプチドリンカー(上記で示される[ペプチドリンカー])は、本明細書で述べられるGSリンカー、例えば、(GS)2、(GGGGS:配列番号:141)2である。
上記の好適なペプチドリンカーは、容易に選択され得、好ましくは、4アミノ酸~100アミノ酸、5アミノ酸~100アミノ酸、5アミノ酸~50アミノ酸、5アミノ酸~30アミノ酸、5アミノ酸~25アミノ酸、もしくは5アミノ酸~20アミノ酸を含む、1アミノ酸(Gly等)~300アミノ酸、2アミノ酸~200アミノ酸、または3アミノ酸~100アミノ酸等の様々な長さの中から選択することができる。
ペプチドリンカーの例には、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GGGGS:配列番号:141)n、および(GGGS:配列番号:136)nを含み、nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および従来の技法において周知の他の可動リンカーが含まれるが、それらに限定されない。
ペプチドリンカーの例には、
Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141)
(Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141))n
Gly Gly Gly Gly Ala(GGGGA、配列番号:893)
Gly Gly Gly Gly Glu(GGGGE、配列番号:894)
Gly Gly Gly Ser(GGGS、配列番号:136)
(Gly Gly Gly Ser(GGGS、配列番号:136))n
Gly Gly Gly Ala(GGGA、配列番号:895)
Gly Gly Gly Glu(GGGE、配列番号:896)
Gln Gln Gln Gly(QQQG、配列番号:897)
Gln Gln Gln Gln Gly(QQQQG、配列番号:898)
Ser Ser Ser Gly(SSSG、配列番号:899)
Ser Ser Ser Ser Gly(SSSSG、配列番号:900)
(nは1以上の整数である)
が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0124】
しかし、ペプチドリンカーの長さおよび配列は、目的に応じて当業者が適宜選択することができる。FabとFcとの間のヒンジ領域中のリンカー(GSリンカー等)の存在は、HC(重鎖定常領域)とLC(軽鎖定常領域)との間のジスルフィド結合形成においてヘテロジェニティーを結果としてもたらし得る。いくつかの態様において、本発明の融合タンパク質は、軽鎖と重鎖とのホモ二量体である。重鎖は、重鎖可変領域と定常領域1(「C1」、例えば、配列番号:901)との間のエルボーヒンジ領域中に導入された、切断可能リンカー等のリンカー(「L1」、例えば、配列番号:873)を含む。一本鎖リガンド(IL-12またはIL-22等)が、GSリンカー等のリンカー(「L4」、例えば、配列番号:903)を介して、FcドメインのC末端に付加されてもよい;あるいは、リンカーは、切断可能リンカー(「L3」、例えば、配列番号:879)であってもよい。
【0125】
このタイプの融合タンパク質は、「C1」改変体と呼ばれ得る。いくつかの態様において、改変体は、配列番号:876の軽鎖および配列番号:885の重鎖を含むホモ二量体である、Ab1-L1-C1-L4-IL12(二価IL-12融合Ab1)である。ホモジェニティーを促進するために、改善された形態(さらなる改変体)が、以下のように生成され得る。
【0126】
いくつかの態様において、「C2」改変体が用いられる。この改変体の重鎖は、重鎖可変領域と定常領域2(「C2」、例えば、配列番号:905)との間のエルボーヒンジ領域中に導入された、切断可能リンカー等のリンカー(「L1」、例えば、配列番号:873)を含んでもよい。定常領域2において、リンカー(例えば、ヒンジ領域中に存在するGSリンカー(GGGGSGGGGS(配列番号:141)2))の位置シフトの非限定的な例を、以下に示す:
[GGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCP](配列番号:937)から
[EPKSCGGGGSGGGGSDKTHTCPPCP](配列番号:935)へ(最初の残基(E)は216位(EUナンバリング)である)。
リンカーのシフトした位置は、目的に応じて、すなわち、ホモジェニティーを促進するために、当業者が適宜選択または設計することができる。リンカーの位置シフトは、重鎖の220位のCys(C220)(EUナンバリング)と軽鎖の214位のCys(C214)(EUナンバリング)との間のジスルフィド(システイン-システイン(Cys-Cys))結合形成を促進または助長することができる。一本鎖リガンド(IL-12またはIL-22等)が、GSリンカー等のリンカー(「L4」、例えば、配列番号:903)を介して、FcドメインのC末端に付加されてもよい;あるいは、リンカーは、切断可能リンカー(「L3」、例えば、配列番号:879)であってもよい。
いくつかの態様において、改変体は、配列番号:876の軽鎖および配列番号:904の重鎖を含むホモ二量体である、Ab1-L1-C2-L4-IL12である。
【0127】
いくつかの態様において、「C3」改変体が用いられる。この改変体において、軽鎖はC214S(EUナンバリング)改変を含んでもよく、重鎖はC220S(EUナンバリング)改変を含んでもよく、これは、重鎖と軽鎖との間、すなわち、重鎖の220位(EUナンバリング)と軽鎖の214位(EUナンバリング)との間にいかなるジスルフィド結合形成も結果としてもたらさない。この改変体の重鎖は、重鎖可変領域と定常領域3(「C3」、例えば、配列番号:908)との間のエルボーヒンジ領域中に導入された、切断可能リンカー等のリンカー(「L1」、例えば、配列番号:873)を含んでもよい。一本鎖リガンド(IL-12およびIL-22等)が、GSリンカー等のリンカー(「L4」、例えば、配列番号:903)を介して、FcドメインのC末端に付加されてもよい;あるいは、リンカーは、切断可能リンカー(「L3」、例えば、配列番号:879)であってもよい。
いくつかの態様において、改変体は、配列番号:906の軽鎖および配列番号:907の重鎖を含むホモ二量体である、Ab1-L1-C3-L4-IL12である。
【0128】
いくつかの態様において、「C4」改変体が用いられる。この改変体において、軽鎖は上述の改変を含まなくてもよく、他方、重鎖はS131C(EUナンバリング)およびC220S(EUナンバリング)改変を含んでもよく、これは、重鎖と軽鎖との間、すなわち、重鎖の131位のCys(C131)(EUナンバリング)と軽鎖の214位のCys(C214)(EUナンバリング)との間のジスルフィド結合形成を結果としてもたらす。この改変体の重鎖は、重鎖可変領域と定常領域4(「C4」、例えば、配列番号:910)との間のエルボーヒンジ領域中に導入された、切断可能リンカー等のリンカー(「L1」、例えば、配列番号:873)を含んでもよい。一本鎖リガンド(IL-12またはIL-22等)が、GSリンカー等のリンカー(L4、例えば、配列番号:903)を介して、FcドメインのC末端に付加されてもよい;あるいは、リンカーは、切断可能リンカー(「L3」、例えば、配列番号:879)であってもよい。
いくつかの態様において、改変体は、配列番号:876の軽鎖および配列番号:909の重鎖を含むホモ二量体である、Ab1-L1-C4-L4-IL12である。
【0129】
いくつかの態様において、「C5」改変体が用いられる。この改変体の重鎖は、重鎖可変領域と定常領域5(「C5」、例えば、配列番号:932)との間のエルボーヒンジ領域中に導入された、切断可能リンカー等のリンカー(「L1」、例えば、配列番号:873)を含んでもよい。定常領域5において、リンカー(例えば、ヒンジ領域中に存在するGSリンカー(GGGGSGGGGS(配列番号:141)2))の位置シフトの非限定的な例を、以下に示す:
[GGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCP](配列番号:937)から
[EPKSCDKTHTGGGGSGGGGSCPPCP](配列番号:938)へ(最初の残基(E)は216位(EUナンバリング)である)。リンカーのシフトした位置は、目的に応じて、すなわち、ホモジェニティーを促進するために、当業者が適宜選択または設計することができる。リンカーの位置シフトは、重鎖の220位のCys(C220)(EUナンバリング)と軽鎖の214位のCys(C214)(EUナンバリング)との間のジスルフィド(システイン-システイン(Cys-Cys))結合形成を促進または助長することができる。一本鎖リガンド(IL-12またはIL-22等)が、GSリンカー等のリンカー(「L5」、例えば、配列番号:927)を介して、FcドメインのC末端に付加されてもよい。
【0130】
一態様において、融合タンパク質は、2セット(例えば、2つの同一のセット)のリガンド結合ドメイン、リガンド部分、切断可能ペプチドリンカー、定常(またはFc)領域、および非切断可能ペプチドリンカーを含む、二価リガンド結合融合タンパク質である。融合タンパク質が2つのFc領域を含む場合、領域は互いと二量体化してリガンド結合部分を形成する。この場合に、いくつかの態様において、融合タンパク質は、IgG型タンパク質、例えば、二量体化する2つのFc領域を含むIgG型抗体であってもよい。
【0131】
本発明の一態様において、リガンド部分は、融合タンパク質のプロテアーゼ切断によって、リガンド結合部分のリガンド結合ドメインから遊離される。この文脈において、リガンド部分が、プロテアーゼ切断サイトを有するペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分のC末端またはN末端領域に接続されている場合、リガンド部分は、融合タンパク質から完全に遊離され得る。本明細書において、このタイプの融合タンパク質を「遊離型」という(例えば、図3A参照)。他方、リガンド部分が、いかなるプロテアーゼ切断サイトも有さないペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分のC末端領域に接続されている場合、リガンド部分は、ペプチドリンカーを介してリガンド結合部分のC末端領域に融合したままでありながら、リガンド結合ドメインから遊離され得る。本明細書において、このタイプの融合タンパク質を「融合型」という(例えば、図3B参照)。
【0132】
プロテアーゼ切断サイトの切断によるリガンド結合ドメインからのリガンド部分または分子の遊離を検出する方法には、例えば、リガンドを認識するリガンド検出用抗体を用いて、リガンドを検出する方法が含まれる。リガンド結合部分/分子が抗体断片である場合、リガンド検出用抗体は、好ましくは、リガンド結合ドメイン用と同じエピトープに結合する。リガンド検出用抗体を用いて検出されるリガンドは、FACS、ELISAフォーマット、ALPHA(増幅発光近接ホモジニアスアッセイ)スクリーンもしくは表面プラズモン共鳴(SPR)現象を用いたBIACORE法、またはBLI(バイオレイヤー干渉法)(Octet)等の周知の方法によって確認することができる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。
【0133】
例えば、Octetを用いてリガンドの遊離を検出する場合には、リガンドを認識するリガンド検出用抗体をビオチン化し、バイオセンサーと接触させる。次いで、サンプル中のリガンドに対する結合を測定して、リガンドの遊離を検出することができる。具体的には、リガンドの量を、プロテアーゼ処理前またはプロテアーゼ処理後のリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプルにおいて、リガンド検出用抗体を用いて測定する。サンプル中に検出されたリガンドの量を、プロテアーゼ処理前とプロテアーゼ処理後の間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。あるいは、リガンドの量を、プロテアーゼとリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプル、およびプロテアーゼを含有せずにリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプルにおいて、リガンド検出用抗体を用いて測定する。サンプル中に検出されたリガンドの量を、プロテアーゼの有無の間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。より具体的には、本願の実施例に記載される方法によって、リガンドの遊離を検出することができる。リガンド結合分子がリガンドと融合して融合タンパク質を形成している場合は、リガンドの量を、プロテアーゼ処理前またはプロテアーゼ処理後の融合タンパク質を含有するサンプルにおいて、リガンド検出用抗体を用いて測定する。サンプル中に検出されたリガンドの量を、プロテアーゼ処理前とプロテアーゼ処理後の間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。あるいは、リガンドの量を、プロテアーゼと融合タンパク質とを含有するサンプル、およびプロテアーゼを含有せずに融合タンパク質を含有するサンプルにおいて、リガンド検出用抗体を用いて測定する。サンプル中に検出されたリガンドの量を、プロテアーゼの有無の間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。より具体的には、本願の実施例に記載される方法によって、リガンドの遊離を検出することができる。
【0134】
リガンド結合ドメインに対する結合時にリガンドの生理活性が減弱される態様において、リガンド結合分子からの遊離は、サンプル中のリガンドの生理活性を測定する方法によって検出することができる。具体的には、リガンドの生理活性を、プロテアーゼ処理前またはプロテアーゼ処理後のリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプルにおいて測定し、プロテアーゼ処理前とプロテアーゼ処理後の間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。あるいは、リガンドの生理活性を、プロテアーゼとリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプル、およびプロテアーゼを含有せずにリガンド結合分子とリガンドとを含有するサンプルにおいて測定し、これらのサンプルの間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。リガンド結合分子がリガンドと融合して融合タンパク質を形成している場合は、リガンドの生理活性を、プロテアーゼ処理前またはプロテアーゼ処理後の融合タンパク質を含有するサンプルにおいて測定し、プロテアーゼ処理前とプロテアーゼ処理後の間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。あるいは、リガンドの生理活性を、プロテアーゼと融合タンパク質とを含有するサンプル、およびプロテアーゼを含有せずに融合タンパク質を含有するサンプルにおいて測定し、これらのサンプルの間で比較して、リガンドの遊離を検出することができる。
【0135】
いくつかの態様において、融合タンパク質は、プロテアーゼ切断配列を含むプロテアーゼ切断部位を含み、プロテアーゼによって切断可能である。本発明の融合タンパク質が複数のプロテアーゼ切断サイトを有するある特定の態様において、それらのプロテアーゼ切断サイトは、同じプロテアーゼ切断配列を有してもよく、または異なるプロテアーゼ切断配列を有してもよい。プロテアーゼ切断サイトが異なるプロテアーゼ切断配列を有する場合、それらの異なるプロテアーゼ配列は、同じプロテアーゼによって切断されてもよく、または異なるプロテアーゼによって切断されてもよい。本発明のいくつかの態様において、プロテアーゼ切断サイトはまた、プロテアーゼ切断配列の一端または両端に1個または複数個のアミノ酸残基を、それらの残基がプロテアーゼによるプロテアーゼ切断配列の認識および切断を阻害しない限り含んでもよい。
【0136】
プロテアーゼ
本明細書において、用語「プロテアーゼ」は、ペプチド結合を加水分解するエンドペプチダーゼまたはエキソペプチダーゼ等の酵素のことをいい、典型的には、エンドペプチダーゼのことをいう。本発明に用いられるプロテアーゼは、プロテアーゼ切断配列を切断できることのみによって制限され、任意の特定のタイプのプロテアーゼに限定されない。いくつかの態様において、標的組織特異的プロテアーゼが用いられる。標的組織特異的プロテアーゼは、例えば、
(1)標的組織において正常組織よりも高いレベルで発現しているプロテアーゼ、
(2)標的組織において正常組織よりも高い活性を有するプロテアーゼ、
(3)標的細胞において正常細胞よりも高いレベルで発現しているプロテアーゼ、
(4)標的細胞において正常細胞よりも高い活性を有するプロテアーゼ、
のいずれかを指すことができる。
より具体的な態様において、がん組織特異的プロテアーゼまたは炎症組織特異的プロテアーゼが用いられる。
【0137】
本明細書において、用語「標的組織」は、少なくとも1つの標的細胞を含有する組織を意味する。本発明のいくつかの態様において、標的組織はがん組織である。本発明のいくつかの態様において、標的組織は炎症組織である。
【0138】
用語「がん組織」は、少なくとも1つのがん細胞を含有する組織を意味する。したがって、例えば、がん組織ががん細胞および血管を含有していることを考慮すると、がん細胞および内皮細胞を含有する腫瘤(tumour mass)の形成に寄与するすべての細胞型が、本発明の範囲に含まれる。本明細書において、腫瘤とは、腫瘍組織巣(foci of tumour tissue)のことをいう。用語「腫瘍」は、一般的に、良性新生物または悪性新生物を意味するために用いられる。
【0139】
本明細書において、「炎症組織」の例には、以下が含まれる:
関節リウマチまたは変形性関節症における関節組織、
気管支喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)における肺(肺胞)組織、
炎症性腸疾患、クローン病、または潰瘍性大腸炎における消化器官組織、
肝臓、腎臓、または肺における線維症の線維性組織、
臓器移植の拒絶反応が起こっている組織、
動脈硬化または心不全における血管または心臓(心筋)組織、
メタボリック症候群における内臓脂肪組織、
アトピー性皮膚炎および他の皮膚炎における皮膚組織、
椎間板ヘルニアまたは慢性腰痛における脊髄神経組織、および
免疫細胞が浸潤している任意の組織。
【0140】
特異的に発現するかもしくは特異的に活性化されるプロテアーゼ、または標的組織の疾患状態に関連すると考えられるプロテアーゼ(標的組織特異的プロテアーゼ)が、いくつかのタイプの標的組織について公知である。例えば、国際公開番号WO2013/128194、WO2010/081173、およびWO2009/025846は、がん組織において特異的に発現するプロテアーゼを開示している。また、J Inflamm (Lond). 2010; 7: 45、Nat Rev Immunol. 2006 Jul; 6 (7): 541-50、Nat Rev Drug Discov. 2014 Dec; 13 (12): 904-27、Respir Res. 2016 Mar 4; 17: 23、Dis Model Mech. 2014 Feb; 7 (2): 193-203、およびBiochim Biophys Acta. 2012 Jan; 1824 (1): 133-45は、炎症に関連すると考えられるプロテアーゼを開示している。
【0141】
標的組織において特異的に発現するプロテアーゼに加えて、標的組織において特異的に活性化されるプロテアーゼも存在する。例えば、プロテアーゼは、不活性型で発現し、次いで活性型に変換されることがある。多くの組織は、活性プロテアーゼを阻害する物質を含有し、活性化のプロセスおよび阻害剤の存在によって活性を制御する(Nat Rev Cancer. 2003 Jul; 3 (7): 489-501)。標的組織において、活性プロテアーゼは、阻害から逃れることによって特異的に活性化され得る。
活性プロテアーゼは、活性プロテアーゼを認識する抗体を用いる方法(PNAS 2013 Jan 2; 110 (1): 93-98)、またはプロテアーゼが認識可能なペプチドを蛍光標識し、蛍光が切断前は消光しているが、切断後に放出されるようにする方法(Nat Rev Drug Discov. 2010 Sep; 9 (9): 690-701. doi: 10.1038/nrd3053)の使用によって測定することができる。
【0142】
1つの視点から、用語「標的組織特異的プロテアーゼ」は、
(i)標的組織において正常組織よりも高いレベルで発現しているプロテアーゼ、
(ii)標的組織において正常組織よりも高い活性を有するプロテアーゼ、
(iii)標的細胞において正常細胞よりも高いレベルで発現しているプロテアーゼ、および
(iv)標的細胞において正常細胞よりも高い活性を有するプロテアーゼ、
のいずれかを指すことができる。
【0143】
プロテアーゼの具体例には、システインプロテアーゼ(カテプシンファミリーB、L、S等を含む)、アスパルチルプロテアーゼ(カテプシンD、E、K、O等)、セリンプロテアーゼ(マトリプターゼ(MT-SP1を含む)、カテプシンAおよびG、トロンビン、プラスミン、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、エラスターゼ、プロテイナーゼ3、トロンビン、カリクレイン、トリプターゼ、およびキマーゼを含む)、メタロプロテイナーゼ(膜結合型(MMP14-17およびMMP24-25)ならびに分泌型(MMP1-13、MMP18-23、およびMMP26-28)の両方を含むメタロプロテイナーゼ(MMP1-28)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ(A disintegrin and metalloproteinase)(ADAM)、トロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ(ADAMTS)、メプリン(メプリンαおよびメプリンβ)、CD10(CALLA)、前立腺特異的抗原(PSA)、レグマイン、TMPRSS3、TMPRSS4、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)、ベータセクレターゼ(BACE)、線維芽細胞活性化蛋白質アルファ(FAP)、グランザイムB、 グアニジノベンゾアターゼ(GB)、ヘプシン、ネプリライシン、NS3/4A、HCV-NS3/4、カルパイン、ADAMDEC1、レニン、カテプシンC、カテプシンV/L2、カテプシン X/Z/P、クルジパイン、オツバイン2、カリクレイン関連ペプチダーゼ(KLKs(KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK7、KLK8、KLK10、KLK11、KLK13、およびKLK14))、骨形成タンパク質1(BMP-1)、活性化プロテインC、血液凝固関連プロテアーゼ(第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、および第XIIa因子)、HtrA1、ラクトフェリン、マラプシン、PACE4、DESC1、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)、TMPRSS2、カテプシンF、カテプシンH、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、グランザイムA、Gepsinカルパイン2、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ2、AMSH様プロテアーゼ、AMSH、ガンマセクレターゼ、抗プラスミン切断酵素(APCE)、decysin 1、N-アセチル化α結合酸性ジペプチダーゼ様1(NAALADL1)、ならびにフーリン(furin)が含まれるが、それらに限定されない。
【0144】
別の視点から、標的組織特異的プロテアーゼは、がん組織特異的プロテアーゼまたは炎症組織特異的プロテアーゼを指すことができる。
【0145】
がん組織特異的プロテアーゼの例には、国際公開番号WO2013/128194、WO2010/081173、およびWO2009/025846に開示されている、がん組織において特異的に発現するプロテアーゼが含まれる。
【0146】
がん組織特異的プロテアーゼのタイプについて、治療されるべきがん組織においてより高い発現特異性を有するプロテアーゼは、有害反応を低減させるのにより有効である。好ましいがん組織特異的プロテアーゼは、正常組織におけるその濃度よりも少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、さらに好ましくは少なくとも100倍、特に好ましくは少なくとも500倍、最も好ましくは少なくとも1000倍高い、がん組織における濃度を有する。また、好ましいがん組織特異的プロテアーゼは、正常組織におけるその活性よりも少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍、さらに好ましくは少なくとも100倍、特に好ましくは少なくとも500倍、最も好ましくは少なくとも1000倍高い、がん組織における活性を有する。
【0147】
がん組織特異的プロテアーゼは、がん細胞膜に結合した形態であってもよく、または細胞膜に結合することなく細胞外に分泌される形態であってもよい。がん組織特異的プロテアーゼががん細胞膜に結合していない場合、がん組織特異的プロテアーゼは、がん組織内またはがん組織の近傍に存在するものであることが好ましい。本明細書において、「がん組織の近傍」とは、リガンド結合活性を低減させる効果が発揮されるように、がん組織に特異的なプロテアーゼ切断配列が切断される場所の範囲内であることを意味する。
【0148】
代替的な視点から、がん組織特異的プロテアーゼは、
(i)がん組織において正常組織よりも高いレベルで発現しているプロテアーゼ、
(ii)がん組織において正常組織よりも高い活性を有するプロテアーゼ、
(iii)がん細胞において正常細胞よりも高いレベルで発現しているプロテアーゼ、および
(iv)がん細胞において正常細胞よりも高い活性を有するプロテアーゼ、
のいずれかである。
1タイプのがん組織特異的プロテアーゼが単独で用いられてもよく、または2タイプ以上のがん組織特異的プロテアーゼが組み合わせられてもよい。がん組織特異的プロテアーゼのタイプ数は、治療されるべきがんのタイプを考慮して、当業者が適宜設定することができる。
【0149】
これらの視点から、がん組織特異的プロテアーゼは、好ましくは、セリンプロテアーゼまたはメタロプロテアーゼ、より好ましくは、マトリプターゼ(MT-SP1を含む)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、またはメタロプロテアーゼ、さらに好ましくは、上に列記したプロテアーゼの中でもMT-SP1、uPA、MMP-2、またはMMP-9、特に好ましくは、上に列記したプロテアーゼの中でもMMP-2またはMMP-9である。
【0150】
炎症組織特異的プロテアーゼのタイプについて、治療されるべき炎症組織においてより高い発現特異性を有するプロテアーゼは、有害反応を低減させるのにより有効である。好ましい炎症組織特異的プロテアーゼは、正常組織におけるその濃度よりも少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、さらに好ましくは少なくとも100倍、特に好ましくは少なくとも500倍、最も好ましくは少なくとも1000倍高い、炎症組織における濃度を有する。また、好ましい炎症組織特異的プロテアーゼは、正常組織におけるその活性よりも少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍、さらに好ましくは少なくとも100倍、特に好ましくは少なくとも500倍、最も好ましくは少なくとも1000倍高い、炎症組織における活性を有する。
【0151】
炎症組織特異的プロテアーゼは、炎症細胞膜に結合した形態であってもよく、または細胞膜に結合することなく細胞外に分泌される形態であってもよい。炎症組織特異的プロテアーゼが炎症細胞膜に結合していない場合、炎症組織特異的プロテアーゼは、炎症組織内または炎症組織の近傍に存在するものであることが好ましい。本明細書において、「炎症組織の近傍」とは、リガンド結合活性を低減させる効果が発揮されるように、炎症組織に特異的なプロテアーゼ切断配列が切断される場所の範囲内であることを意味する。
【0152】
代替的な視点から、炎症組織特異的プロテアーゼは、
(i)炎症組織において正常組織よりも高いレベルで発現しているプロテアーゼ、
(ii)炎症組織において正常組織よりも高い活性を有するプロテアーゼ、
(iii)炎症細胞において正常細胞よりも高いレベルで発現しているプロテアーゼ、および
(iv)炎症細胞において正常細胞よりも高い活性を有するプロテアーゼ、
のいずれかである。
1タイプの炎症組織特異的プロテアーゼが単独で用いられてもよく、または2タイプ以上の炎症組織特異的プロテアーゼが組み合わせられてもよい。炎症組織特異的プロテアーゼのタイプ数は、治療されるべき病態を考慮して、当業者が適宜設定することができる。
【0153】
これらの視点から、炎症組織特異的プロテアーゼは、好ましくは、上に列記したプロテアーゼの中でもメタロプロテアーゼである。メタロプロテアーゼは、より好ましくは、ADAMTS5、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-9、MMP11、またはMMP-13である。
【0154】
プロテアーゼ切断配列
プロテアーゼ切断配列は、ポリペプチドが水溶液中で標的組織特異的プロテアーゼによって加水分解される時に、標的組織特異的プロテアーゼによって特異的に認識される特定のアミノ酸配列である。プロテアーゼ切断配列は、有害反応の低減の視点から、好ましくは、治療されるべき標的組織もしくは細胞においてより特異的に発現する、または治療されるべき標的組織/細胞においてより特異的に活性化される標的組織特異的プロテアーゼによって、高い特異性で加水分解されるアミノ酸配列である。
プロテアーゼ切断配列の具体例には、国際公開番号WO2013/128194、WO2010/081173、およびWO2009/025846に開示されている、がん組織において特異的に発現する上に列記したプロテアーゼ、炎症組織特異的プロテアーゼ等によって特異的に加水分解される標的配列が含まれる。例えば、公知のプロテアーゼによって特異的に加水分解される標的配列にアミノ酸変異を適宜導入することによって人工的に改変された配列もまた、用いることができる。あるいは、Nature Biotechnology 19, 661-667 (2001)に記載されているような当業者に公知の方法によって特定されたプロテアーゼ切断配列が、用いられてもよい。
【0155】
さらに、天然に存在するプロテアーゼ切断配列が用いられてもよい。例えば、TGFβは、プロテアーゼ切断によって潜在型に変換される。同様に、プロテアーゼ切断によってその分子形態を変化させるタンパク質中のプロテアーゼ切断配列もまた、用いることができる。
【0156】
用いることができるプロテアーゼ切断配列の例には、WO2015/116933、WO2015/048329、WO2016/118629、WO2016/179257、WO2016/179285、WO2016/179335、WO2016/179003、WO2016/046778、WO2016/014974、米国特許出願公開第2016/0289324号、米国特許出願公開第2016/0311903号、PNAS (2000) 97: 7754-7759、Biochemical Journal (2010) 426: 219-228、およびBeilstein J Nanotechnol. (2016) 7: 364-373に開示されている配列が含まれるが、それらに限定されない。
【0157】
プロテアーゼ切断配列は、より好ましくは、上述のような好適な標的組織特異的プロテアーゼによって特異的に加水分解されるアミノ酸配列である。標的組織特異的プロテアーゼによって特異的に加水分解されるアミノ酸配列は、好ましくは、以下のアミノ酸配列のいずれかである:
LSGRSDNH(配列番号:2、MT-SP1またはuPAにより切断可能)、
PLGLAG(配列番号:3、MMP-2またはMMP-9により切断可能)、および
VPLSLTMG(配列番号:4、MMP-7により切断可能)。
【0158】
以下の配列のいずれかもまた、プロテアーゼ切断配列として用いることができる。
TSTSGRSANPRG(配列番号:5、MT-SP1またはuPAにより切断可能)、
ISSGLLSGRSDNH(配列番号:6、MT-SP1またはuPAにより切断可能)、
AVGLLAPPGGLSGRSDNH(配列番号:7、MT-SP1またはuPAにより切断可能)、
GAGVPMSMRGGAG(配列番号:8、MMP-1により切断可能)、
GAGIPVSLRSGAG(配列番号:9、MMP-2により切断可能)、
GPLGIAGQ(配列番号:10、MMP-2により切断可能)、
GGPLGMLSQS(配列番号:11、MMP-2により切断可能)、
PLGLWA(配列番号:12、MMP-2により切断可能)、
GAGRPFSMIMGAG(配列番号:13、MMP-3により切断可能)、
GAGVPLSLTMGAG(配列番号:14、MMP-7により切断可能)、
GAGVPLSLYSGAG(配列番号:15、MMP-9により切断可能)、
AANLRN(配列番号:16、MMP-11により切断可能)、
AQAYVK(配列番号:17、MMP-11により切断可能)、
AANYMR(配列番号:18、MMP-11により切断可能)、
AAALTR(配列番号:19、MMP-11により切断可能)、
AQNLMR(配列番号:20、MMP-11により切断可能)、
AANYTK(配列番号:21、MMP-11により切断可能)、
GAGPQGLAGQRGIVAG(配列番号:22、MMP-13により切断可能)、
PRFKIIGG(配列番号:23、プロウロキナーゼにより切断可能)、
PRFRIIGG(配列番号:24、プロウロキナーゼにより切断可能)、
GAGSGRSAG(配列番号:25、uPAにより切断可能)、
SGRSA(配列番号:26、uPAにより切断可能)、
GSGRSA(配列番号:27、uPAにより切断可能)、
SGKSA(配列番号:28、uPAにより切断可能)、
SGRSS(配列番号:29、uPAにより切断可能)、
SGRRA(配列番号:30、uPAにより切断可能)、
SGRNA(配列番号:31、uPAにより切断可能)、
SGRKA(配列番号:32、uPAにより切断可能)、
QRGRSA(配列番号:33、tPAにより切断可能)、
GAGSLLKSRMVPNFNAG(配列番号:34、カテプシンBにより切断可能)、
TQGAAA(配列番号:35、カテプシンBにより切断可能)、,
GAAAAA(配列番号:36、カテプシンBにより切断可能)、,
GAGAAG(配列番号:37、カテプシンBにより切断可能)、,
AAAAAG(配列番号:38、カテプシンBにより切断可能)、,
LCGAAI(配列番号:39、カテプシンBにより切断可能)、,
FAQALG(配列番号:40、カテプシンBにより切断可能)、,
LLQANP(配列番号:41、カテプシンBにより切断可能)、,
LAAANP(配列番号:42、カテプシンBにより切断可能)、,
LYGAQF(配列番号:43、カテプシンBにより切断可能)、,
LSQAQG(配列番号:44、カテプシンBにより切断可能)、,
ASAASG(配列番号:45、カテプシンBにより切断可能)、,
FLGASL(配列番号:46、カテプシンBにより切断可能)、,
AYGATG(配列番号:47、カテプシンBにより切断可能)、,
LAQATG(配列番号:48、カテプシンBにより切断可能)、,
GAGSGVVIATVIVITAG(配列番号:49、カテプシンLにより切断可能)、
APMAEGGG(配列番号:50、メプリンαまたはメプリンβにより切断可能)、
EAQGDKII(配列番号:51、メプリンαまたはメプリンβにより切断可能)、
LAFSDAGP(配列番号:52、メプリンαまたはメプリンβにより切断可能)、
YVADAPK(配列番号:53、メプリンαまたはメプリンβにより切断可能)、
RRRRR(配列番号:54、フリンにより切断可能)、
RRRRRR(配列番号:55、フリンにより切断可能)、
GQSSRHRRAL(配列番号:56、フリンにより切断可能)、
SSRHRRALD(配列番号:57)、
RKSSIIIRMRDVVL(配列番号:58、プラスミノゲンにより切断可能)、
SSSFDKGKYKKGDDA(配列番号:59、スタフィロキナーゼにより切断可能)、
SSSFDKGKYKRGDDA(配列番号:60、スタフィロキナーゼにより切断可能)、
IEGR(配列番号:61、第IXa因子により切断可能)、
IDGR(配列番号:62、第IXa因子により切断可能)、
GGSIDGR(配列番号:63、第IXa因子により切断可能)、
GPQGIAGQ(配列番号:64、コラーゲンにより切断可能)、
GPQGLLGA(配列番号:65、コラーゲンにより切断可能)、
GIAGQ(配列番号:66、コラーゲンにより切断可能)、
GPLGIAG(配列番号:67、コラーゲンにより切断可能)、
GPEGLRVG(配列番号:68、コラーゲンにより切断可能)、
YGAGLGVV(配列番号:69、コラーゲンにより切断可能)、
AGLGVVER(配列番号:70、コラーゲンにより切断可能)、
AGLGISST(配列番号:71、コラーゲンにより切断可能)、
EPQALAMS(配列番号:72、コラーゲンにより切断可能)、
QALAMSAI(配列番号:73、コラーゲンにより切断可能)、
AAYHLVSQ(配列番号:74、コラーゲンにより切断可能)、
MDAFLESS(配列番号:75、コラーゲンにより切断可能)、
ESLPVVAV(配列番号:76、コラーゲンにより切断可能)、
SAPAVESE(配列番号:77、コラーゲンにより切断可能)、
DVAQFVLT(配列番号:78、コラーゲンにより切断可能)、
VAQFVLTE(配列番号:79、コラーゲンにより切断可能)、
AQFVLTEG(配列番号:80、コラーゲンにより切断可能)、
PVQPIGPQ(配列番号:81、コラーゲンにより切断可能)、
LVPRGS(配列番号:82、トロンビンにより切断可能)、
TSTSGRSANPRG(配列番号:83)、
TSTSGRSANPRG(配列番号:84)、
TSGSGRSANARG(配列番号:85)、
TSQSGRSANQRG(配列番号:86)、
TSPSGRSAYPRG(配列番号:87)、
TSGSGRSATPRG(配列番号:88)、
TSQSGRSATPRG(配列番号:89)、
TSASGRSATPRG(配列番号:90)、
TSYSGRSAVPRG(配列番号:91)、
TSYSGRSANFRG(配列番号:92)、
TSSSGRSATPRG(配列番号:93)、
TSTTGRSASPRG(配列番号:94)、
TSTSGRSANPRG(配列番号:95)。
【0159】
表1に示す配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい。
【0160】
(表1)プロテアーゼ切断配列(uPAおよびMT-SP1により切断可能)
【0161】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:96)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;かつX8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0162】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:97)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、E、F、G、H、K、M、N、P、Q、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0163】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:98)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、F、L、M、P、Q、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0164】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:99)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0165】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:100)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0166】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:101)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、E、F、K、M、N、P、Q、R、S、およびWから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0167】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:102)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、F、G、L、M、P、Q、V、およびWから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0168】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:103)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、I、K、N、T、およびWから選択されるアミノ酸である。
【0169】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:104)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、G、I、P、Q、S、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、KまたはTから選択されるアミノ酸であり;X3はGであり;X4はRであり;X5はSであり;X6はAであり;X7は、H、I、およびVから選択されるアミノ酸であり;X8は、H、V、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0170】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:105)
配列中、X1からX8は各々、単一のアミノ酸を表し、X1はYであり;X2は、SおよびTから選択されるアミノ酸であり;X3はGであり;X4はRであり;X5はSであり;X6は、AおよびEから選択されるアミノ酸であり;X7は、NおよびVから選択されるアミノ酸であり;X8は、H、P、V、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0171】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:106)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0172】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:107)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、E、F、G、H、K、M、N、P、Q、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0173】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:108)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、F、L、M、P、Q、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0174】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:109)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0175】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:110)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0176】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:111)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、E、F、K、M、N、P、Q、R、S、およびWから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0177】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:112)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、F、G、L、M、P、Q、V、およびWから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0178】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:113)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、I、K、N、T、およびWから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0179】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:114)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1は、A、G、I、P、Q、S、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、KまたはTから選択されるアミノ酸であり;X3はGであり;X4はRであり;X5はSであり;X6はAであり;X7は、H、I、およびVから選択されるアミノ酸であり;X8は、H、V、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0180】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:115)
配列中、X1からX9は各々、単一のアミノ酸を表し、X1はYであり;X2は、SおよびTから選択されるアミノ酸であり;X3はGであり;X4はRであり;X5はSであり;X6は、AおよびEから選択されるアミノ酸であり;X7は、NおよびVから選択されるアミノ酸であり;X8は、H、P、V、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0181】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:116)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0182】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:117)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、E、F、G、H、K、M、N、P、Q、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0183】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:118)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、F、L、M、P、Q、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0184】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:119)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0185】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:120)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0186】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:121)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、E、F、K、M、N、P、Q、R、S、およびWから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0187】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:122)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、F、G、L、M、P、Q、V、およびWから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0188】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:123)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、I、K、N、T、およびWから選択されるアミノ酸である。
【0189】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:124)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、G、I、P、Q、S、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、KまたはTから選択されるアミノ酸であり;X3はGであり;X4はRであり;X5はSであり;X6はAであり;X7は、H、I、およびVから選択されるアミノ酸であり;X8は、H、V、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0190】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号:125)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1はYであり;X2は、SおよびTから選択されるアミノ酸であり;X3はGであり;X4はRであり;X5はSであり;X6は、AおよびEから選択されるアミノ酸であり;X7は、NおよびVから選択されるアミノ酸であり;X8は、H、P、V、およびYから選択されるアミノ酸である。
【0191】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:126)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0192】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:127)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、E、F、G、H、K、M、N、P、Q、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0193】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:128)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、F、L、M、P、Q、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0194】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:129)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0195】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:130)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0196】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:131)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、E、F、K、M、N、P、Q、R、S、およびWから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0197】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:132)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、F、G、L、M、P、Q、V、およびWから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0198】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:133)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、S、T、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、A、D、E、F、H、K、L、M、P、Q、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X3は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X4はRであり;X5は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X6は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X7は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYから選択されるアミノ酸であり;X8は、A、D、E、F、G、I、K、N、T、およびWから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0199】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:134)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1は、A、G、I、P、Q、S、およびYから選択されるアミノ酸であり;X2は、KまたはTから選択されるアミノ酸であり;X3はGであり;X4はRであり;X5はSであり;X6はAであり;X7は、H、I、およびVから選択されるアミノ酸であり;X8は、H、V、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0200】
以下の配列もまた、プロテアーゼ切断配列として用いられてもよい:
X10-X11-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9(配列番号:135)
配列中、X1からX11は各々、単一のアミノ酸を表し、X10は、I、T、およびYから選択されるアミノ酸であり;X11はSであり;X1はYであり;X2は、SおよびTから選択されるアミノ酸であり;X3はGであり;X4はRであり;X5はSであり;X6は、AおよびEから選択されるアミノ酸であり;X7は、NおよびVから選択されるアミノ酸であり;X8は、H、P、V、およびYから選択されるアミノ酸であり;X9は、A、G、H、I、L、およびRから選択されるアミノ酸である。
【0201】
上述のプロテアーゼ切断配列を用いることに加えて、スクリーニングによって新規のプロテアーゼ切断配列もまた取得してもよい。例えば、公知のプロテアーゼ切断配列の結晶構造解析の結果に基づいて、切断配列と酵素の活性残基/認識残基の相互作用を変化させることによって、新規のプロテアーゼ切断配列を探索することができる。新規のプロテアーゼ切断解列はまた、公知のプロテアーゼ切断配列中のアミノ酸を改変すること、および改変された配列とプロテアーゼとの間の相互作用を調べることによっても探索することができる。別の例として、プロテアーゼと、ファージディスプレイおよびリボソームディスプレイ等のインビトロディスプレイ法を用いてディスプレイされたペプチドのライブラリ、またはチップもしくはビーズ上に固定化されたペプチドのアレイとの相互作用を調べることによって、プロテアーゼ切断配列を探索することができる。
プロテアーゼ切断配列とプロテアーゼとの間の相互作用は、インビトロまたはインビボでプロテアーゼによる配列の切断を試験することによって調べることができる。
【0202】
プロテアーゼ切断配列、プロテアーゼの活性、およびプロテアーゼ切断配列が導入されている分子の切断率を評価するために、プロテアーゼ処理後の切断断片を、SDS-PAGE等の電気泳動によって分離し、定量することができる。プロテアーゼ切断配列が導入されている分子の切断率を評価する方法の非限定的な態様には、以下の方法が含まれる。例えば、プロテアーゼ切断配列が導入されている抗体改変体の切断率を、組換えヒトu-プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ(ヒトuPA、huPA)(R&D Systems;1310-SE-010)または組換えヒトマトリプターゼ/ST14触媒ドメイン(ヒトMT-SP1、hMT-SP1)(R&D Systems; 3946-SE-010)を用いて評価する場合は、100マイクログラム/mLの抗体改変体を、40 nMのhuPAまたは3 nMのhMT-SP1と、PBSにおいて37℃で1時間反応させ、次いで、キャピラリー電気泳動イムノアッセイに供する。キャピラリー電気泳動イムノアッセイは、Wes(Protein Simple)を用いて行うことができるが、本方法は、それに限定されない。キャピラリー電気泳動イムノアッセイに対する代替として、分離のためにSDS-PAGE等を行い、続いてウエスタンブロッティングでの検出を行ってもよい。本方法は、これらの方法に限定されない。切断の前後に、抗ヒトλ鎖HRP標識抗体(abcam; ab9007)を用いて軽鎖を検出することができるが、切断断片を検出することができる任意の抗体を用いてもよい。プロテアーゼ処理後に得られた各ピークの面積を、Wes用のソフトウェア(Compass for SW; Protein Simple)を用いて出力し、抗体改変体の切断率(%)を、以下の式で決定することができる。
(切断された軽鎖のピーク面積)×100/(切断された軽鎖のピーク面積+未切断の軽鎖のピーク面積)
切断率は、プロテアーゼ処理の前後にタンパク質断片が検出可能であれば、決定することができる。切断率は、抗体改変体についてだけではなく、プロテアーゼ切断配列が導入されている種々のタンパク質分子についても決定することができる。
【0203】
プロテアーゼ切断配列が導入されている分子のインビボ切断率は、分子を動物に投与すること、および血液サンプル中の投与された分子を検出することによって決定することができる。例えば、プロテアーゼ切断配列が導入されている抗体改変体を、マウスに投与し、それらの血液サンプルから血漿を収集する。Dynabeads Protein A(Thermo; 10001D)を用いて当業者に公知の方法により血漿から抗体を精製し、次いで、キャピラリー電気泳動イムノアッセイに供して、抗体改変体のプロテアーゼ切断率を評価する。キャピラリー電気泳動イムノアッセイは、Wes(Protein Simple)を用いて行うことができるが、本方法は、それに限定されない。キャピラリー電気泳動イムノアッセイに対する代替として、分離のためにSDS-PAGE等を行い、続いてウエスタンブロッティングでの検出を行ってもよい。本方法は、これらの方法に限定されない。抗ヒトλ鎖HRP標識抗体(abcam; ab9007)を用いて、マウスから収集された抗体改変体の軽鎖を検出することができるが、切断断片を検出することができる任意の抗体を用いてもよい。キャピラリー電気泳動イムノアッセイによって得られた各ピークの面積を、ひとたびWes用のソフトウェア(Compass for SW; Protein Simple)を用いて出力すると、残った軽鎖の比率を[軽鎖のピーク面積]/[重鎖のピーク面積]として算出して、マウスの体において切断されないままである全長軽鎖の比率を決定することができる。インビボ切断効率は、生体から収集されたタンパク質断片が検出可能であれば、決定することができる。切断率は、抗体改変体についてだけではなく、プロテアーゼ切断配列が導入されている種々のタンパク質分子についても決定することができる。上述の方法による切断率の算出によって、例えば、異なる切断配列が導入されている抗体改変体のインビボ切断率の比較、および正常マウスモデルと腫瘍移植マウスモデル等の異なる動物モデル間での単一抗体改変体の切断率の比較が可能である。
【0204】
例えば、表1に示すプロテアーゼ切断配列はすべて、WO2019/107384に開示されている。これらのプロテアーゼ切断配列を含有するポリペプチドはすべて、プロテアーゼの作用によって加水分解されるプロテアーゼ基質として有用である。したがって、本発明は、上記の配列番号:96~135など本明細書に記載する配列から選択される配列、および表1に列記する配列を含むプロテアーゼ基質を提供する。本発明のプロテアーゼ基質は、例えば、リガンド結合部分または分子中に組み込むために、目的に適した性状を有するものをそれから選択することができるライブラリとして活用することができる。具体的には、病巣に局在するプロテアーゼによってリガンド結合部分/分子を選択的に切断するために、そのプロテアーゼに対する感受性について基質を評価することができる。リガンド部分/分子に接続されたリガンド結合部分/分子がインビボ投与された時に、分子は、病巣に到達する前に種々のプロテアーゼと接触することがある。したがって、分子は、好ましくは、病巣に局在するプロテアーゼに対して感受性を有し、かつまた他のプロテアーゼ対してはできるだけ高い耐性を有する。目的に応じて望ましいプロテアーゼ切断配列を選択するために、予め種々のプロテアーゼに対する感受性について網羅的に各プロテアーゼ基質を解析して、そのプロテアーゼ耐性を見出すことができる。得られたプロテアーゼ耐性スペクトルに基づいて、必要な感受性および耐性を有するプロテアーゼ切断配列を見出すことが可能である。あるいは、プロテアーゼ切断配列が組み込まれているリガンド結合分子は、病巣に送達する前に、プロテアーゼによる酵素作用だけではなく、pHの変化、温度、および酸化/還元ストレス等の種々の環境ストレスを受ける。これらの外部要因に対する耐性もまた、プロテアーゼ基質の間で比較することができ、この比較情報を用いて、目的に応じた望ましい性状を有するプロテアーゼ切断配列を選択することができる。
【0205】
ペプチドリンカー
本発明の一態様において、各プロテアーゼ切断サイトの一端または両端に、可動リンカーがさらに付加されている。第1のプロテアーゼ切断サイトの一端に付加された可動リンカーを、「第1の可動リンカー」といい、他端に付加された可動リンカーを、「第2の可動リンカー」という。本発明の融合タンパク質が、2つ以上のプロテアーゼ切断サイトを含有する場合は、同様に、第2のプロテアーゼ切断サイトに付加された可動リンカーを、「第3の可動リンカー」および「第4の可動リンカー」といい、第3のプロテアーゼ切断サイトに付加された可動リンカーを、「第5の可動リンカー」および「第6の可動リンカー」という、等々である。下記の説明は、第1のプロテアーゼ切断サイトに付加された第1のおよび第2の可動リンカーを説明するために提供されるが、また同様に、第2のおよび後続のプロテアーゼ切断サイトに付加された第3のおよび後続の可動リンカーにも当てはまる。
【0206】
特定の態様において、プロテアーゼ切断サイトおよび可動リンカーは、以下の式のいずれかを含む:
(プロテアーゼ切断配列)、
(第1の可動リンカー)-(プロテアーゼ切断サイト)、
(プロテアーゼ切断サイト)-(第2の可動リンカー)、および
(第1の可動リンカー)-(プロテアーゼ切断サイト)-(第2の可動リンカー)。
本態様による可動リンカーは、好ましくはペプチドリンカーである。第1の可動リンカーおよび第2の可動リンカーは各々、独立的かつ任意的に存在し、少なくとも1つのフレキシブルアミノ酸(Gly等)を各々が含有する同一のまたは異なる可動リンカーである。可動リンカーは、例えば、プロテアーゼ切断配列が所望のプロテアーゼアクセス性を得るのに十分な数の残基(Arg、Ile、Gln、Glu、Cys、Tyr、Trp、Thr、Val、His、Phe、Pro、Met、Lys、Gly、Ser、Asp、Asn、Ala等から任意に選択されるアミノ酸、特にGly、Ser、Asp、Asn、およびAla、とりわけGlyおよびSer、特にGly等)を含有する。
【0207】
プロテアーゼ切断配列の両端での使用に好適な可動リンカーは、通常、プロテアーゼ切断配列に対するプロテアーゼのアクセスを改善し、プロテアーゼの切断効率を上昇させる可動リンカーである。好適な可動リンカーは、容易に選択され得、好ましくは、1アミノ酸(Gly等)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、または、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、もしくは7アミノ酸~8アミノ酸を含む3アミノ酸~12アミノ酸等の様々な長さの中から選択することができる。本発明のいくつかの態様において、可動リンカーは、1~7アミノ酸のペプチドリンカーである。
【0208】
可動リンカーの例には、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS:配列番号:145)n、および(GGGS:配列番号:136)nを含み、nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および従来の技法において周知の他の可動リンカーが含まれるが、それらに限定されない。
それらの中で、グリシンポリマーおよびグリシン-セリンポリマーが注目されており、それは、これらのアミノ酸が、比較的構造化されておらず、成分間の中性テザーとして容易に機能するためである。
グリシン-セリンポリマーからなる可動リンカーの例には、
Ser
Gly Ser(GS)
Ser Gly(SG)
Gly Ser(GGS)
Gly Ser Gly(GSG)
Ser Gly Gly(SGG)
Gly Ser Ser(GSS)
Ser Ser Gly(SSG)
Ser Gly Ser(SGS)
Gly Gly Gly Ser(GGGS、配列番号:136)
Gly Gly Ser Gly(GGSG、配列番号:137)
Gly Ser Gly Gly(GSGG、配列番号:138)
Ser Gly Gly Gly(SGGG、配列番号:139)
Gly Ser Ser Gly(GSSG、配列番号:140)
Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141)
Gly Gly Gly Ser Gly(GGGSG、配列番号:142)
Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143)
Gly Ser Gly Gly Gly(GSGGG、配列番号:144)
Gly Ser Gly Gly Ser(GSGGS、配列番号:145)
Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146)
Gly Ser Ser Gly Gly(GSSGG、配列番号:147)
Gly Ser Gly Ser Gly(GSGSG、配列番号:148)
Ser Gly Gly Ser Gly(SGGSG、配列番号:149)
Gly Ser Ser Ser Gly(GSSSG、配列番号:150)
Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGS、配列番号:151)
Ser Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGG、配列番号:152)
Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGGS、配列番号:153)
Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGGG、配列番号:154)
(Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141))n
(Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146))n
(Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143))n
(nは1以上の整数である)
が含まれ得るが、それらに限定されない。
しかし、ペプチドリンカーの長さおよび配列は、目的に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0209】
本発明のいくつかの態様において、リガンド結合部分または分子は、抗体VHおよび抗体VLを含むリガンド結合ドメイン含む。VHおよびVLを含むリガンド結合部分/分子の例には、Fv、scFv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、および全長抗体が含まれるが、それらに限定されない。
【0210】
本発明のいくつかの態様において、リガンド結合部分または分子は、Fc領域を含有する。IgG抗体のFc領域を用いる場合、そのタイプは限定されず、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域を用いてもよい。例えば、配列番号:155、156、157、および158によって表されるアミノ酸配列から選択される1つの配列を含有するFc領域、またはFc領域に改変を加えることによって調製されたFc領域変異体を用いてもよい。本発明のいくつかの態様において、リガンド結合部分/分子は、抗体定常領域を含む。例として、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4の重鎖定常領域は、それぞれ、配列番号:155~158に示される。例として、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4のFc領域は、配列番号:155~158の部分配列として示される。
【0211】
本発明のいくつかのより具体的な態様において、リガンド結合部分または分子は、抗体である。リガンド結合部分/分子として抗体を用いる場合、リガンドに対する結合は、可変領域によって達成される。いくつかのさらに具体的な態様において、リガンド結合部分/分子は、IgG抗体である。リガンド結合部分/分子としてIgG抗体を用いる場合、そのタイプは限定されず、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等を用いることができる。リガンド結合部分/分子としてIgG抗体を用いる場合、リガンドに対する結合はまた、可変領域によって達成される。IgG抗体の2つの可変領域の一方または両方が、リガンドに対する結合を達成することができる。上述の態様において、本発明の融合タンパク質は、好ましくは、1つまたは2つのペプチドリンカーを介して抗体部分のC末端領域に接続されている、1つのリガンド部分(一価)または2つのリガンド部分(二価)を含む。抗体が、2つの可変領域のうちの1つのみが目的のリガンドに結合する二重特異性抗体であるいくつかの態様において、融合タンパク質は、好ましくは、1つのリガンド部分のみを含む。
【0212】
本発明のいくつかの態様において、リガンド結合部分/分子中のプロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列の切断によって、リガンド結合活性を有するドメインがリガンド結合部分/分子から分離され、そのためリガンドに対する結合が減弱または無効にされる。リガンド結合部分/分子としてIgG抗体を用いる態様において、例えば、抗体の可変領域のうちの1つは、プロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列を伴って提供され、そのため切断状態では抗体が全長抗体可変領域を形成することができず、それによりリガンドに対する結合が減弱または無効にされる。
【0213】
本発明のいくつかの態様において、融合タンパク質は、プロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列が、抗体VHおよび抗体VLを含むリガンド結合ドメインを含むリガンド結合部分または分子において提供され、Fab構造中の2つのペプチドが、切断前に互いとの完全な重鎖-軽鎖相互作用を有するのに対して、プロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列の切断が、VH(またはVHの一部分)を含有するペプチドとVL(またはVLの一部分)を含有するペプチドとの間の相互作用の減弱または無効化を結果としてもたらし、VHとVLとの間の結合を低減するかまたは無効にするように、設計される。
【0214】
VHおよびVLドメイン
本明細書において、本明細書で用いる用語「会合」または「相互作用」とは、例えば、2つ以上のポリペプチド領域が互いに会合または相互作用する状態を指すことができる。一般的に、疎水結合、水素結合、イオン結合等が、意図されたポリペプチド領域の間に形成されて、会合体を形成する。一般的な会合の一例として、天然型抗体に代表される抗体は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とのペア構造を、それらの間の非共有結合等を通して保持していることが公知である。
【0215】
本発明のいくつかの態様において、リガンド結合ドメインに含有されるVHとVLとは、互いに会合する。抗体VHと抗体VLとの間の会合は、例えば、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列での切断によって無効にされ得る。会合の無効化は、例えば、2つ以上のポリペプチド領域が互いに相互作用する状態の全体的なまたは部分的な無効化と互換的に用いることができる。VHとVLとの間の会合の無効化については、VHとVLとの間の相互作用が、完全に無効にされてもよく、またはVHとのVLとの間の相互作用が、部分的に無効にされてもよい。いくつかの態様において、リガンド結合ドメインは、抗体VLまたはその一部分と抗体VHまたはその一部分との間の会合が、プロテアーゼ切断サイトでの切断によって無効にされるか、またはプロテアーゼ切断配列の切断によって無効にされるリガンド結合部分または分子を包含する。
いくつかの態様において、プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断後の(「第2の状態での」)融合タンパク質の分子量は、プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断前の(「第1の状態での」)融合タンパク質の分子量よりも小さい。いくつかの態様において、プロテアーゼ切断配列での切断時に遊離されたリガンド結合ドメインのVH、VL、または一部分の分子量は、およそ26 kDa、または13 kDa、またはそれよりも小さい。いくつかの態様において、VHまたはVLは、プロテアーゼ切断サイトでの切断時に遊離され、遊離されたVHまたはVLの分子量は、およそ26 kDa、すなわち全長VHおよびVLである。いくつかの態様において、第1の状態での融合タンパク質の分子量と第2の状態での融合タンパク質の分子量との比は、10:9であり、または第2の状態での融合タンパク質の分子量は、第1の状態での融合タンパク質の分子量の9/10であり、または第1の状態での融合タンパク質と比較した第2の状態での融合タンパク質の分子量の低減パーセンテージは、10%である。
【0216】
本明細書で用いられる用語「解離」は、上述の相互作用の全体的なまたは部分的な無効化のことをいうことができる。いくつかの態様において、用語「低減したVHとVLとの間の会合」または「低減したVHとVLとの間の相互作用」はまた、VH(またはVHの一部分)を含有するペプチドとVL(またはVLの一部分)を含有するペプチドとの間の会合の全体的なまたは部分的な無効化または減弱のことをいうために、互換的に用いられ得る。さらなる態様において、会合または相互作用を低減させることが完了し、VHとVLとの間の任意の会合または相互作用の無効化をもたらす。そのような場合には、VHまたはVLは、互いから完全に解離し、これはまた、本明細書で「VH遊離」または「VL遊離」と称される。本明細書で用いられる場合、「VH遊離」および「VL遊離」とは、それぞれ、抗体VH、またはその断片、またはVHもしくはその断片を含む切断されたタンパク質の断片の遊離、および抗体VL、またはその断片、またはVLもしくはその断片を含む切断されたタンパク質の断片の遊離のことをいう。
【0217】
本発明のいくつかの態様において、リガンド結合部分/分子は、抗体VHおよび抗体VLを含むリガンド結合ドメインを含み、リガンド結合部分/分子における抗体VHおよび抗体VLは、リガンド結合部分/分子のプロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列が未切断である状態では、互いに会合しているのに対して、リガンド結合部分/分子における抗体VHと抗体VLとの間の会合は、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列での切断によって無効にされる。リガンド結合部分/分子における切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、リガンド結合部分/分子のリガンド結合能力が、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列の切断によって減弱されるかまたは無効にされることができる限り、リガンド結合部分/分子中の任意のポジションに配置され得る。
いくつかの態様において、リガンドは、抗体VHに融合しており、この融合は、プロテアーゼ切断時に遊離される(「VH-リガンド遊離」)。いくつかの態様において、リガンドは、抗体VLに融合しており、この融合は、プロテアーゼ切断時に遊離される(「VL-リガンド遊離」)。
【0218】
いくつかの態様において、本発明はまた、その可変領域のVHとCH1との境界またはVLとCLとの境界にプロテアーゼ切断サイトを含む全長IgG抗体、および該可変領域に結合するリガンドを含む、二価ホモ二量体融合タンパク質も含む。プロテアーゼ切断時に、VHまたはVLのいずれかは、融合タンパク質から解離し、リガンドは、可変領域から解離する。VHまたはVLは、融合タンパク質から解離し、VLまたはその一部分とVHまたはその一部分との間の会合は、プロテアーゼ切断サイトでの切断によって無効にされるか、またはプロテアーゼ切断配列の切断によって無効にされる。
いくつかの態様において、本発明はまた、その可変領域のVHとCH1との境界またはVLとCLとの境界にプロテアーゼ切断サイトを含むIgG抗体様ポリペプチド、および該可変領域に結合するリガンドを含む、二価ホモ二量体融合タンパク質も含む。プロテアーゼ切断時に、VHまたはVLのいずれかは、融合タンパク質から解離し、リガンドは、可変領域から解離する。VHまたはVLは、融合タンパク質から解離し、VLまたはその一部分とVHまたはその一部分との間の会合は、プロテアーゼ切断サイトでの切断によって無効にされるか、またはプロテアーゼ切断配列の切断によって無効にされる。
【0219】
さらなる局面において、本発明はまた、プロテアーゼ切断サイトを含む少なくとも1つの抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含み、該プロテアーゼ切断サイトでの切断時に、該プロテアーゼ切断サイトに隣接したドメインが解離し、かつ該解離が、該ドメインと対応する相互作用するドメインとの境界面で行われた少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進される。いくつかの態様において、ポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG-IgG、IgG-Fab、またはCrossMab抗体などの抗体である。さらなる態様において、ポリペプチドは、一価または二価であってもよく、かつ単一特異性または二重特異性であってもよい。いくつかの態様において、ポリペプチドは、抗体断片、例えば、scFv、scFv-Fc、タンデムscFv、Fab、タンデムFab、F(ab')2、Fab2、Fab-scFv-Fc、F(ab')2-scFv2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab2、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、タンデムダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、バイボディ、もしくはトリボディ、またはVLドメインと会合したVHドメインを含む任意の他の断片である。一態様において、抗体断片は、抗体重鎖可変領域VH、または抗体軽鎖可変領域VLを含む、抗原結合ドメインを含む。
【0220】
一態様において、ポリペプチドは、互いに会合する抗体重鎖可変領域VHおよび抗体軽鎖可変領域VLを含む抗原結合ドメイン、ならびに、例えば、scFv、scFv-Fc、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディにおける抗体VHと抗体VLとの境界付近に位置するプロテアーゼ切断サイト、または、例えば、Fab、F(ab')2、Fab2における抗体VHと隣接するCH1との境界付近もしくは抗体VLと隣接するCLとの境界付近に位置するプロテアーゼ切断サイトを有する、抗体断片を含む。プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断時に、VHまたはVLは、互いから解離し、抗体VHまたはその一部分と抗体VLまたはその一部分との間の会合は、プロテアーゼ切断配列の切断によって無効にされる。
【0221】
一態様において、ポリペプチドは、互いに会合する抗体重鎖可変領域VHおよび抗体軽鎖可変領域VLを含む抗原結合ドメイン、ならびに、抗体VHと隣接する抗体CH1との境界付近または抗体VLと隣接する抗体CLとの境界付近に位置するプロテアーゼ切断サイトを有する、抗体を含む。プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断時に、VHまたはVLは、ポリペプチドから解離し、抗体VLまたはその一部分と抗体VHまたはその一部分との間の会合は、プロテアーゼ切断サイトでの切断によって無効にされるか、またはプロテアーゼ切断配列の切断によって無効にされる。
【0222】
一態様において、ポリペプチドは、互いに会合する抗体重鎖可変領域VHおよび抗体軽鎖可変領域VLを含む抗原結合ドメイン、ならびに、抗体VHと隣接する抗体CH1との境界付近または抗体VLと隣接する抗体CLとの境界付近に位置するプロテアーゼ切断サイトを有する、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG-IgG、IgG-Fab、またはCrossMab抗体からなる群より選択されるIgG抗体を含む。プロテアーゼ切断サイトでのプロテアーゼ切断時に、VHまたはVLは、ポリペプチドから解離し、抗体VLまたはその一部分と抗体VHまたはその一部分との間の会合は、プロテアーゼ切断サイトでの切断によって無効にされるか、またはプロテアーゼ切断配列の切断によって無効にされる。
【0223】
本発明のいくつかの態様において、リガンド結合部分または分子は、抗体VH、抗体VL、および抗体定常領域を含むリガンド結合ドメインを含む。本発明のいくつかの態様において、部分または分子の可変領域は、抗体VH、抗体VL、および抗体定常領域を含む抗原結合ドメインを含む。本発明のいくつかの態様において、抗体は、抗体VH、抗体VL、および抗体定常領域を含む抗原結合ドメインを含む。本発明の他の態様において、抗体断片は、抗体VHおよび抗体VLを含む抗原結合ドメインを含む。Rothlisbergerら(J Mol Biol. 2005 Apr 8; 347 (4): 773-89)によって述べられているように、抗体のVHドメインとVLドメイン、またはCHドメインとCLドメインは、多くのアミノ酸側鎖を介して互いに相互作用していることが公知である。VH-CH1とVL-CLとは、Fabドメインとして安定な構造を形成できることが公知である。以前に報告されているように、VHとVLとの間で、アミノ酸側鎖は一般的に相互作用し、解離定数は10-5 M~10-8 Mの範囲である。VHドメインとVLドメインのみが存在する場合には、少ない割合しか会合状態を形成し得ない。
【0224】
本発明の一態様において、プロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体定常領域内に位置する。より具体的な態様において、プロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体重鎖定常領域中のアミノ酸140位(EUナンバリング)に対して可変領域側に、好ましくは、抗体重鎖定常領域中のアミノ酸122位(EUナンバリング)に対して可変領域側に位置する。いくつかの具体的な態様において、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体重鎖定常領域のアミノ酸118位(EUナンバリング)から抗体重鎖定常領域のアミノ酸140位(EUナンバリング)までの配列中の任意の位置に導入される。別のより具体的な態様において、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体軽鎖定常領域中のアミノ酸130位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング130位)に対して可変領域側に、好ましくは、抗体軽鎖定常領域中のアミノ酸113位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング113位)に対して可変領域側に、または抗体軽鎖定常領域中のアミノ酸112位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング112位)に対して可変領域側に位置する。いくつかの具体的な態様において、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体軽鎖定常領域のアミノ酸108位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング108位)から抗体軽鎖定常領域のアミノ酸131位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング131位)までの配列中の任意の位置に導入される。
【0225】
本発明の一態様において、プロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体VH内または抗体VL内に位置する。より具体的な態様において、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体VHのアミノ酸7位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に、好ましくは、抗体VHのアミノ酸40位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に、より好ましくは、抗体VHのアミノ酸101位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に、さらに好ましくは、抗体VHのアミノ酸109位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に、または抗体VHのアミノ酸111位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に位置する。より具体的な態様において、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体VLのアミノ酸7位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に、好ましくは、抗体VLのアミノ酸39位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に、より好ましくは、抗体VLのアミノ酸96位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に、さらに好ましくは、抗体VLのアミノ酸104位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に、または抗体VLのアミノ酸105位(Kabatナンバリング)に対して抗体定常領域側に位置する。
いくつかのより具体的な態様において、プロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体VHまたは抗体VL中のループ構造を構成する残基、およびループ構造に近い残基の位置に導入される。抗体VHまたは抗体VL中のループ構造とは、抗体VHまたは抗体VLにおける、α-へリックスまたはβ-シート等の二次構造を形成しない部分のことをいう。具体的には、ループ構造を構成する残基およびループ構造に近い残基の位置とは、抗体VHのアミノ酸7位(Kabatナンバリング)~アミノ酸16位(Kabatナンバリング)、アミノ酸40位(Kabatナンバリング)~アミノ酸47位(Kabatナンバリング)、アミノ酸55位(Kabatナンバリング)~アミノ酸69位(Kabatナンバリング)、アミノ酸73位(Kabatナンバリング)~アミノ酸79位(Kabatナンバリング)、アミノ酸83位(Kabatナンバリング)~アミノ酸89位(Kabatナンバリング)、アミノ酸95位(Kabatナンバリング)~アミノ酸99位(Kabatナンバリング)、もしくはアミノ酸101位(Kabatナンバリング)~アミノ酸113位(Kabatナンバリング)、または抗体VLのアミノ酸7位(Kabatナンバリング)~アミノ酸19位(Kabatナンバリング)、アミノ酸39位(Kabatナンバリング)~アミノ酸46位(Kabatナンバリング)、アミノ酸49位(Kabatナンバリング)~アミノ酸62位(Kabatナンバリング)、もしくはアミノ酸96位(Kabatナンバリング)~アミノ酸107位(Kabatナンバリング)の範囲を指すことができる。
いくつかのより具体的な態様において、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体VHのアミノ酸7位(Kabatナンバリング)~アミノ酸16位(Kabatナンバリング)、アミノ酸40位(Kabatナンバリング)~アミノ酸47位(Kabatナンバリング)、アミノ酸55位(Kabatナンバリング)~アミノ酸69位(Kabatナンバリング)、アミノ酸73位(Kabatナンバリング)~アミノ酸79位(Kabatナンバリング)、アミノ酸83位(Kabatナンバリング)~アミノ酸89位(Kabatナンバリング)、アミノ酸95位(Kabatナンバリング)~アミノ酸99位(Kabatナンバリング)、またはアミノ酸101位(Kabatナンバリング)~アミノ酸113位(Kabatナンバリング)の配列中の任意の位置に導入される。
いくつかのより具体的な態様において、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体VLのアミノ酸7位(Kabatナンバリング)~アミノ酸19位(Kabatナンバリング)、アミノ酸39位(Kabatナンバリング)~アミノ酸46位(Kabatナンバリング)、アミノ酸49位(Kabatナンバリング)~アミノ酸62位(Kabatナンバリング)、またはアミノ酸96位(Kabatナンバリング)~アミノ酸107位(Kabatナンバリング)の配列中の任意の位置に導入される。
【0226】
本発明の一態様において、プロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体VHと抗体定常領域との境界付近に位置する。句「抗体VHと抗体重鎖定常領域との境界付近」は、抗体VHのアミノ酸101位(Kabatナンバリング)と抗体重鎖定常領域のアミノ酸140位(EUナンバリング)との間を指すことができ、好ましくは、抗体VHのアミノ酸109位(Kabatナンバリング)と抗体重鎖定常領域のアミノ酸122位(EUナンバリング)との間、または抗体VHのアミノ酸111位(Kabatナンバリング)と抗体重鎖定常領域のアミノ酸122位(EUナンバリング)との間を指すことができる。抗体VHが抗体軽鎖定常領域と融合している場合、句「抗体VHと抗体軽鎖定常領域との境界付近」は、抗体VHのアミノ酸101位(Kabatナンバリング)と抗体軽鎖定常領域のアミノ酸130位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング130位)との間を指すことができ、好ましくは、抗体VHのアミノ酸109位(Kabatナンバリング)と抗体軽鎖定常領域のアミノ酸113位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング113位)との間、または抗体VHのアミノ酸111位(Kabatナンバリング)と抗体軽鎖定常領域のアミノ酸112位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング112位)との間を指すことができる。
【0227】
一態様において、切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列は、抗体VLと抗体定常領域との境界付近に位置する。句「抗体VLと抗体軽鎖定常領域との境界付近」は、抗体VLのアミノ酸96位(Kabatナンバリング)と抗体軽鎖定常領域のアミノ酸130位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング130位)との間を指すことができ、好ましくは、抗体VLのアミノ酸104位(Kabatナンバリング)と抗体軽鎖定常領域のアミノ酸113位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング113位)との間、または抗体VLのアミノ酸105位(Kabatナンバリング)と抗体軽鎖定常領域のアミノ酸112位(EUナンバリング)(Kabatナンバリング112位)との間を指すことができる。抗体VLが抗体重鎖定常領域と融合している場合、句「抗体VLと抗体重鎖定常領域との境界付近」は、抗体VLのアミノ酸96位(Kabatナンバリング)と抗体重鎖定常領域のアミノ酸140位(EUナンバリング)との間を指すことができ、好ましくは、抗体VLのアミノ酸104位(Kabatナンバリング)と抗体重鎖定常領域のアミノ酸122位(EUナンバリング)との間、または抗体VLのアミノ酸105位(Kabatナンバリング)と抗体重鎖定常領域のアミノ酸122位(EUナンバリング)との間を指すことができる。
【0228】
融合タンパク質などの本発明のリガンド結合部分/分子は、例えば、抗体定常領域内、抗体VH内、抗体VL内、抗体VHと抗体定常領域との境界付近、抗体VLと抗体定常領域との境界付近、および抗体VHと抗体VLとの間の境界付近から選択される複数のポジションにプロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列を伴って提供されることができる。他の態様において、融合タンパク質などの本発明のリガンド結合部分/分子の抗体可変領域または抗原結合ドメインは、例えば、抗体定常領域内、抗体VH内、抗体VL内、抗体VHと抗体定常領域との境界付近、抗体VLと抗体定常領域との境界付近、および抗体VHと抗体VLとの境界付近から選択される複数のポジションにプロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列を伴って提供されることができる。他の態様において、抗体の抗体可変領域または抗原結合ドメインは、例えば、抗体定常領域内、抗体VH内、抗体VL内、抗体VHと抗体定常領域との境界付近、抗体VLと抗体定常領域との境界付近、および抗体VHと抗体VLとの境界付近から選択される複数のポジションにプロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列を伴って提供されることができる。他の態様において、抗体断片の抗原結合ドメインは、例えば、抗体定常領域内、抗体VH内、または抗体VL内から選択される複数のポジションにプロテアーゼ切断サイトまたはプロテアーゼ切断配列を伴って提供されることができる。本発明に関連する当業者は、例えば、抗体VHと抗体VLとをスワッピングすることによって、抗体VH、抗体VL、および抗体定常領域を含む分子の形態を変更することができる。そのような分子形態もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0229】
いくつかの態様において、融合タンパク質などの本発明のリガンド結合部分/分子は、未切断状態(「第1の状態」)よりも切断状態(「第2の状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変、特にVHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の改変をさらに含む、リガンド結合ドメインを含む。本明細書の別の態様において、融合タンパク質などの部分/分子は、未切断状態(「第1の状態」)よりも切断状態(「第2の状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変、特にVHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の改変をさらに含む、リガンドに結合する抗原結合ドメインを有するIgG抗体を含む。本明細書の別の態様において、ポリペプチドまたは抗体は、未切断状態(「第1の状態」)よりも切断状態(「第2の状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変、特にVHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の改変をさらに含む、抗原結合ドメインを含む。本明細書の別の態様において、抗体断片は、未切断状態(「第1の状態」)よりも切断状態(「第2の状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させる少なくとも1つのアミノ酸改変、特にVHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の改変をさらに含む、抗原結合ドメインを含む。
【0230】
前述の態様の各々において、融合タンパク質もしくはポリペプチドからのVHおよびVLの解離、または該融合タンパク質もしくはポリペプチド内に含まれるVHもしくはその一部分とVLもしくはその一部分との間の会合の低減は、未切断状態(「第1の状態」)よりも切断状態(「第2の状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させるか、またはVHとVLとの相互作用を低減させる、VHとVLとの境界面で行われた少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進される。さらに他の上述の態様に関して、抗体もしくは抗体断片からのVHおよびVLの解離、または該抗体もしくはその抗体断片内に含まれるVHもしくはその一部分とVLもしくはその一部分との間の会合の低減は、未切断状態(「第1の状態」)よりも切断状態(「第2の状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させるか、またはVHとVLとの相互作用を低減させる、VHとVLとの境界面で行われた少なくとも1つのアミノ酸改変によって促進される。前述の態様のいくつかにおいて、VH-リガンドおよびVL-リガンドは、未切断状態(「第1の状態」)よりも切断状態(「第2の状態」)でVHとVLとの間の会合を低減させるか、またはVHとVLとの相互作用を低減させるアミノ酸改変が、VHとVLとの境界面で行われた場合の融合タンパク質からの解離時に、融合タンパク質から遊離される。
【0231】
本明細書で用いられる用語「境界面」は、(アミノ酸残基の)2つの領域が互いに会合するかまたは相互作用する、面のことをいう。境界面を形成するアミノ酸残基は、通常、会合および解離に供される各ポリペプチド領域に含有されるアミノ酸残基のうちの1つまたは複数であり、より好ましくは、会合時に互いに接近するかまたは解離中に互いから離れ、相互作用に関与するアミノ酸残基のことをいう。具体的には、相互作用には、会合時に互いに接近するかまたは解離中に互いから離れるアミノ酸残基の間の、水素結合、静電相互作用、または塩架橋形成などの非共有結合が含まれる。
【0232】
本明細書で用いられる句「境界面を形成するアミノ酸残基」は、具体的には、境界面を構成するポリペプチド領域中に含有されるアミノ酸残基のことをいう。一例として、境界面を構成するポリペプチド領域とは、抗体、リガンド、受容体、基質などにおいて分子内または分子間の選択的結合を担うポリペプチド領域のことをいう。抗体におけるそのようなポリペプチド領域の具体例は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むことができる。本発明のいくつかの態様において、そのようなポリペプチド領域の例には、VHおよびVL領域、特に、VHおよびVL領域内のフレームワーク領域(FR)が含まれる。境界面を形成するアミノ酸残基の例には、会合時に互いに接近するかまたは解離中に互いから離れるアミノ酸残基が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアミノ酸残基は、例えば、ポリペプチドのコンフォメーションを解析すること、およびポリペプチドの会合もしくは解離時に境界面を形成するポリペプチド領域のアミノ酸配列を調べることによって、特定することができる。
【0233】
いくつかの態様において、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との解離を促進するため、またはその間の相互作用もしくは会合を低減させるために、境界面を形成するアミノ酸残基を改変することができる。さらなる具体的な態様において、融合タンパク質のリガンド結合ドメインまたは抗体もしくは抗体断片の抗原結合ドメイン内の重鎖可変領域上のVHと軽鎖可変領域上のVLとの間の境界面を形成するアミノ酸残基を、改変することができる。好ましい態様において、境界面を形成する2つ以上のアミノ酸残基が同じ電荷を有するように、境界面アミノ酸残基に変異を導入する方法によって、境界面を形成するアミノ酸残基を改変することができる。同じ電荷を結果としてもたらすアミノ酸残基の改変には、正に荷電したアミノ酸残基の負に荷電したアミノ酸残基または荷電していないアミノ酸残基への改変、負に荷電したアミノ酸残基の正に荷電したアミノ酸残基または荷電していないアミノ酸残基への改変、および荷電していないアミノ酸残基の正または負に荷電したアミノ酸残基への改変が含まれる。そのようなアミノ酸改変は、解離を促進するかまたは相互作用もしくは会合を低減させる目的で行われ、解離を促進するかまたは相互作用を低減させる目的が達成され得る限り、アミノ酸改変のポジションまたはアミノ酸のタイプによって限定されない。改変の例には、置換が含まれるが、これに限定されない。
【0234】
本明細書において、上記のようなVHとVLとの解離を促進するため、またはその間の相互作用もしくは会合を低減させるために改変され得るアミノ酸残基ポジションは、VHとVLとの間の会合に非常に重要である1つまたは複数のアミノ酸から選択され得る。可変ドメイン、VHおよびVLは、2つのβシートからなる保存されたβバレルフレームワークを含み、1つは4本の鎖(A、B、D、E)を有し、もう1つは6本の鎖(A'、G、F、C、C'、C'')を有しており、鎖GFC'Cが、VHとVLとの境界面(「VH/VL境界面」)を形成する。VH/VLパッキングジオメトリの研究により、境界面残基の75%はフレームワークβシートによって、および25%はCDRによって構成されていることが明らかである(それぞれ、GF、BC、およびC'C''の間の鎖間連結)。したがって、VHおよびVLのVH/VL複合体、すなわちFvへの妥当な会合に非常に重要であるアミノ酸残基の大多数は、フレームワークβシート内にある。ヒト、マウス、ウシ、ラクダ、ラマ、マカク、およびニワトリなどの様々な種の2000よりも多いVクラス配列を含む、すべての可能なポジションの残基間の共変動を調べる複数配列アライメントにより、最も強く保存されたアミノ酸の大多数は、VH/VL境界面に位置付けられることが明らかになった。高度に保存された残基は、VLについて、アミノ酸ポジションY36、Q37、P44、A43、L46、Y49、Y87、およびF98、ならびにVHについて、アミノ酸V37、R38、G44、L45、E46、W47、Y91、H91、およびW103を含む。特定されたポジションは、VH/VL境界面内に存在し、主としてVHとVLとの間の会合を改変する。保存されたアミノ酸ポジションの1つまたは複数で行われた変異は、VH/VL複合体の安定性に影響を及ぼし、さらにVH/VL複合体の抗原結合能に影響を及ぼしたことが実証されている(Sci Reports. (2017) 7, 12276)。VHおよびVLのFvへの会合に重大に関与するアミノ酸ポジションは、主としてフレームワークβシート内にあり、かつこれらの同じポジションは、抗体のV領域にわたって高度に保存されているため、これらの選択されたアミノ酸ポジションでの改変は、リガンドまたは抗原の同一性にかかわらず、現在記載している融合タンパク質またはIgG抗体様ポリペプチドのリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインにおいてVHとVLとの間のアフィニティを変えることが期待される。VHとVLとの間の会合を低減させようとする当業者は、特定されたアミノ酸ポジションにおいて容易に改変を開始し、VH遊離、VH-リガンド遊離、VL遊離、またはVL-リガンド遊離を促進する成功を合理的に期待するであろう。それに限定されることを望まず、例として、様々な標的に結合する以下の抗体は、VL上のY36、Q37、P44、A43、L46、Y49、Y87、およびF98の特定されたポジション、ならびに/またはVH上のV37、R38、G44、L45、E46、W47、Y91、H91、およびW103のアミノ酸ポジションで高度に保存されたアミノ酸を実証し、該抗体には、リツキシマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、オファツムマブ、イピリムマブ、ペルツズマブ、オビヌツズマブ、ラムシルマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ジノツキシマブ(dinotuximab)、ダラツムマブ、ネシツムマブ、エロツズマブ、アテゾリズマブ、オララツマブ、アベルマブ、およびデュラブルマブ(duravlumab)が含まれる(Frontiers in Immunology. (2018) 8, 1751)。
【0235】
VHとVLとの間の会合を低減させ、本明細書の融合タンパク質またはIgG抗体様ポリペプチドからのVH遊離、VH-リガンド遊離、VL遊離、またはVL-リガンド遊離を促進するために、当業者は、VHとVLとの境界面の前述のアミノ酸ポジションの1つまたは複数で容易に改変を行うであろう。本明細書において、VHとVLとの境界面を形成するアミノ酸残基には、ポジション36、37、38、44、45、46、47、49、87、91、98、および103のアミノ酸残基が含まれるが、これらに限定されない(J. Mol. Biol. (2005) 350, 112-125、Sci Reports. (2017) 7, 12276)。VHとVLとの境界面を形成するアミノ酸残基を変えること、特に、アミノ酸残基の置換は、VHとVLとの解離を促進するか、またはその間の相互作用もしくは会合を低減させることができる。置換について改変可能なアミノ酸ポジションの例には、VH上の37、38、39、44、45、46、47、91、および103、ならびにVL上の36、37、38、43、44、46、49、87、および98(Kabatナンバリングに従う)が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアミノ酸置換の例には、VH上のV37、R38、Q39、G44、L45、E46、W47、H91、Y91、およびW103、ならびにVL上のY36、Q37、R38、A43、P44、L46、Y49、Y87、およびF98(Kabatナンバリングに従う)が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアミノ酸置換の例には、VH上のQ39D、W47A、W47L、W47M、Y91A、Y91L、Y91M、H91A、W103A、W103I、W103L、W103M、V37S、V37Q、G44Q、L45A、およびL45Q、またはVL上のR38E、Y49A、Y87A、Y87L、Y87M、F98A、F98L、F98M、A43Q、P44A、P44S、P44Q、L46E、およびL46Q(Kabatナンバリングに従う)が含まれるが、これらに限定されない。各々の改変可能なアミノ酸ポジションについて、当業者は、該アミノ酸ポジションを、VHとVLとの間の会合を低減させる目的を達成する、結果的なアミノ酸に変えることになり、例えば、それに限定されるものではなく、ポジションW47が選択される場合、当業者は、A、L、またはMのいずれかを選択し得る。アミノ酸残基の改変は、VHまたはVLのもう一方からの解離を促進する目的が達成され得る限り、VHまたはVLのみに限定されず、VHおよびVLの両方上の改変もまた含む。アミノ酸残基の改変は、それが、融合ポリペプチドのリガンド結合ドメインに対するリガンドの結合、またはポリペプチド、抗体、もしくは抗体断片の抗原結合ドメインに対する抗原の結合を破壊しない限り、VHとVLとの境界面を形成する任意のポジションで行うことができる。さらに、アミノ酸残基の改変は、改変が、融合タンパク質またはポリペプチドに対するリガンドまたは抗原の結合活性を破壊することなく、VHとVLとの間の会合を低減させる限り、ペアで行われなくてもよい。つまり、アミノ酸残基の改変は、必ずしもペアでの改変に限定せず、アミノ酸改変の任意の組み合わせ、例えば、VL上の2つのアミノ酸改変と組み合わせされたVH上の1つのみのアミノ酸改変、またはVL上の3つのアミノ酸改変と組み合わされたVH上の2つのアミノ酸改変を含む。アミノ酸残基の改変はまた、改変が、VHとVLとの間の会合を低減させることができるだけであるが、融合タンパク質またはポリペプチドに対するリガンドまたは抗原の結合活性を破壊しない限り、VHまたはVL上の単一のアミノ酸改変であることもできる。疑いの回避のためにいうと、アミノ酸改変が少なくともペアでVHおよびVLの両方上で行われる場合、VH上で行われるアミノ酸改変およびVL上で行われるアミノ酸改変は、改変が、VHとVLとの間の会合を低減させることができるが、融合タンパク質またはポリペプチドに対するリガンドまたは抗原の結合活性を破壊しない限り、必ずしも同一ではなく、かつ必ずしも異なっていない。VHとVLとの境界面内の選択されたポジションに導入されるアミノ酸改変が、融合ポリペプチドのリガンド結合ドメインに対するリガンドの結合、またはポリペプチドもしくは抗体の抗原結合ドメインに対する抗原の結合を破壊しないという確認は、本明細書に記載される一般的な方法のいずれかによって、または当業者に公知の通りに実施され得る。
【0236】
一態様において、アミノ酸改変は、FR領域内のVHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換の組み合わせである。好ましい態様において、組み合わせの置換は、以下の群(a)~(pp)から選択される:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のQ39D、およびVL上のR38E;
(c)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(d)VH上のY91A、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(e)VH上のY91A、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(f)VH上のY91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のY91A、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(h)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(i)VH上のY91M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(j)VH上のY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(k)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(l)VH上のY91M、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(m)VH上のW103L、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(n)VH上のW103L、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(o)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(p)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(q)VH上のW103I、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(r)VH上のW103I、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(s)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(t)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(u)VH上のW103M、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(v)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(w)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(y)VH上のV37S、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(z)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(aa)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(bb)VH上のV37S、ならびにVL上のY49AおよびF98L;
(cc)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(dd)VH上のL45Q、ならびにVL上のP44AおよびY49A;
(ee)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(ff)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(gg)VH上のL45Q、ならびにVL上のY49AおよびF98M;
(hh)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、P44A、およびY49A;
(ii)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(jj)VH上のY91M、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(kk)VH上のV37S、ならびにVL上のL46Q、Y49A、およびY87M;
(ll)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(mm)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(nn)VH上のV37SおよびW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(oo)VH上のV37SおよびY91M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(pp)VH上のV37SおよびL45Q、ならびにVL上のY49AおよびY87M。
【0237】
一態様において、アミノ酸改変は、FR領域内のVHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換である。好ましい態様において、置換は、VH上のポジション37、45、91、および103、ならびにVL上のポジション43、46、49、および87から選択され、特に、置換は、VH上のV37S、L45Q、Y91M、Y91A、H91A、W103L、W103I、およびW103M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、Y49A、およびY87L(Kabatナンバリングに従う)である。
【0238】
本明細書に記載されるように、主にフレームワーク領域(FR)中にあるVHとVLとの会合に関与するアミノ酸残基ポジションは、当技術分野で公知であり、例えば、IgGクラスの抗体内など、抗体にわたって相対的に保存されていると考えられる。これらの領域における改変は、VHとVLとの会合を変えることが、当業者によって合理的に期待される。当業者は、例えば、VHとVLとの会合を低減させるためなどに、これらの選択された残基ポジションで1つまたは複数のアミノ酸改変を行うことによって、VHとVLとの会合を容易に増加または減少させることができ、当業者は、疎水性残基を親水性領域中に導入するか、または親水性残基を疎水性ポケット中に導入するか、または疎水性/親水性残基を中性である残基に改変することができる。これらのポジションのアミノ酸残基は、高度に保存されているため、選択されたポジションでの改変体アミノ酸の導入は、概して、その標的抗原にかかわらず、前記FRを含む抗体におけるVH/VL会合に影響を及ぼす。
【0239】
一態様において、VHとVLとの間の会合を維持するのに非常に重要であるアミノ酸残基のおよそ25%が、CDR内にあるため、リガンド結合ドメインとリガンドとの境界面、または抗原結合ドメインと抗原との境界面にある、すなわち、CDR内にあるアミノ酸残基が、VHとVLとの解離を促進するため、またはその間の相互作用もしくは会合を低減させるために、追加的に変えられる。リガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインに対するリガンドまたは抗原の結合を保存するために、改変用に選択されるアミノ酸ポジションは、リガンドまたは抗原の生物学的活性が減弱される、すなわち、プロテアーゼの非存在下ではその生物学的活性を発揮することができないように、リガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインに対するリガンドまたは抗原の結合を破壊してはいけない。上記のような改変のためのCDR内の好適なアミノ酸ポジションのスクリーニングは、本明細書に記載される一般的な方法のいずれかによって、または当業者に公知の通りに実施することができる。いくつかの態様において、アミノ酸改変は、リガンド結合ドメインとリガンドとの境界面または抗原結合ドメインと抗原との境界面に存在する少なくとも1つのアミノ酸の置換を含む。好ましい態様において、少なくとも1つの置換は、ポジション30および100aを含み、特に、置換は、S30VおよびF100aIから選択される。
【0240】
一態様において、アミノ酸改変は、FR領域内、および任意でCDR領域内のVHとVLとの境界面に存在するアミノ酸の置換の組み合わせである。好ましい態様において、組み合わせの置換は、以下の群(a)~(cc)から選択される:
(a)VL上のL46QおよびY49A;
(b)VH上のY91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(c)VH上のY91M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(d)VH上のY91M、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(e)VH上のH91A、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(f)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(g)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(h)VH上のW103M、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(i)VH上のW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(j)VH上のV37S、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(k)VH上のV37S、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(l)VH上のL45Q、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(m)VH上のL45Q、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(n)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43QおよびY49A;
(o)VH上のF100aI、ならびにVL上のA43Q、L46Q、およびY49A;
(p)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(q)VH上のW103M、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(r)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、A43Q、およびY49A;
(s)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、L46Q、およびY49A;
(t)VH上のW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(u)VH上のW103I、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(v)VH上のW103M、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(w)VH上のW103L、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(x)VH上のW103L、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(y)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のL46QおよびY49A;
(z)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のY49AおよびY87L;
(aa)VH上のV37SおよびF100aI、ならびにVL上のS30V、Y49A、およびY87L;
(bb)VH上のV37S、F100aI、およびW103M、ならびにVL上のL46QおよびY49A;ならびに
(cc)VH上のV37S、F100aI、およびW103L、ならびにVL上のL46QおよびY49A。
【0241】
本明細書において、上記で特定されたような、VHとVLとの境界面で行われる、または任意で、リガンド結合ドメインとリガンドとの境界面または抗原結合ドメインと抗原との境界面で行われる改変を含む、1つまたは複数のアミノ酸改変は、VHとVLとの間の会合を低減させることができ、かつVHもしくはVL、またはVH-リガンドもしくはVL-リガンドの、本明細書のリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質または抗原結合ドメインを含むIgG抗体様ポリペプチドからの解離を促進し、ここで、該融合タンパク質またはIgG様ポリペプチドは、プロテアーゼの存在下で切断可能なプロテアーゼ切断サイトを含む。本明細書は、本明細書における態様のいずれかに記載されるようなIL-12およびIL-22二価融合タンパク質、ならびにまた、以下の特許出願:WO2018097307、WO2018097308、WO2019107380、WO2019107384、WO2019230866、WO2019230867、WO2019230868、WO2020116498、およびWO2021149697に記載されているような他の二価融合タンパク質も含む。理論に束縛されることを望まず、本明細書に記載されるようなアミノ酸改変は、特に、IgG抗体様ポリペプチドまたは融合タンパク質が、本明細書のIgG抗体様ポリペプチドまたは融合タンパク質と同じかまたは類似したフレームワーク領域を含む場合に、主にFRに存在する特定されたアミノ酸ポジションの高度に保存された性質のために、抗原またはリガンドの同一性とは無関係に、本明細書の抗原結合ドメインを含むIgG抗体様ポリペプチドまたはリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質におけるVH/VL会合に影響を及ぼすであろう。VHとVLとの境界面の1つまたは複数のアミノ酸改変、および追加的に、リガンド結合ドメインとリガンドとの境界面または抗原結合ドメインと抗原との境界面で行われた改変が、互いからの解離を促進し、かつその標的抗原またはリガンドに対する結合をまだ維持できるのに十分であるかどうかを識別するために、当業者は、当技術分野で公知の、または本明細書に記載されるような任意の方法を用いてもよい。
【0242】
VHとVLとの境界面内の選択されたポジションに導入されたアミノ酸改変は、VHとVLとの間の会合を、互いからの解離を促進するのに十分なレベルまで低減させることを、当業者に公知の方法を用いて検証することができる。融合タンパク質または抗体または抗体断片からのVHまたはVLの遊離を検出する方法は、SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、またはSPRを用いたBIACOREなどの周知の方法を用いて、プロテアーゼ切断の前および後の融合タンパク質、抗体、または抗体断片の分子量を比較することによって、VHまたはVLの放出を検出する方法を含む。BIACOREを用いるアッセイにおいては、融合タンパク質、抗体、または抗体断片を、供給元の指示に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化されるバイオセンサーチップである、R-プロテインA結合カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM4-ProA/G、BIACORE, Inc.)上に固定化する。400 nMの濃度のウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)などのプロテアーゼを、アッセイ緩衝液(HBS-EP+、Cytiva)において2マイクロリットル/分の流速、37℃で、1800秒の結合時間および10秒の解離時間にわたって注入する。プロテアーゼ注入の前および後に捕捉された反応単位(RU)を比較する。プロテアーゼ切断の前および後の、1%以下、または2%以下、または3%以下、または4%以下、または5%以下、または6%以下、または7%以下、または8%以下、または9%以下、または10%以下、または11%以下、または12%以下、または13%以下、または14%以下、または15%以下、または16%以下、または17%以下、または18%以下、または19%以下、または20%以下、または21%以下、または22%以下、または23%以下、または24%以下、または25%以下、または26%以下、または27%以下、または28%以下、または29%以下、または30%以下、または31%以下、または32%以下、または33%以下、または34%以下、または35%以下、または36%以下、または37%以下、または38%以下、または39%以下、または40%以下の反応単位の低減パーセンテージは、融合タンパク質、抗体、または抗体断片からの断片の解離を示す。好ましい態様において、10%以下の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替の態様において、20%以下の解離は、本発明のIgG様抗体分子またはIgG抗体からのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替の態様において、15.8%以下の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替の態様において、36.8%以下の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVH-リガンドまたはVL-リガンドの完全な解離を示す。代替の態様において、30%以下の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVH-リガンドまたはVL-リガンドの完全な解離を示す。
【0243】
理論に束縛されることを望まず、前述のVHとVLとの境界面のアミノ酸改変は、VLと会合するVHを含む任意の分子形態において、VLからのVHの解離、またはその逆を促進することが期待される。この目的で、記載されるVHとVLとの境界面のアミノ酸改変は、上記のリガンド結合ドメインを含む二価ホモ二量体融合タンパク質、抗原結合ドメインを含むIgG抗体様ポリペプチドを含む二価ホモ二量体融合タンパク質、抗原結合ドメインを含む全長IgG抗体を含む二価ホモ二量体融合タンパク質、抗原結合ドメインを含むポリペプチド、抗原結合ドメインを含む抗体、および抗原結合ドメインを含む抗体断片に適用可能である。
【0244】
リガンド結合ドメインを含む二価ホモ二量体融合タンパク質の例において、プロテアーゼ切断時に、VHの遊離は、リガンド結合部分/分子のリガンド結合ドメインに対するリガンドの結合を破壊して、リガンドが自由に解離してその受容体に結合することを可能にし、それによって受容体シグナル伝達を活性化する。抗原結合ドメインを含むIgG抗体様ポリペプチドを含む二価ホモ二量体融合タンパク質の例において、プロテアーゼ切断時に、VHの遊離は、抗原可変領域の抗原結合ドメインに対するリガンドの結合を破壊して、リガンドが自由に解離してその受容体に結合することを可能にし、それによって受容体シグナル伝達を活性化する。上記の例のいくつかの態様において、リガンドは、リガンド結合部分/分子のC末端Fc領域または抗体定常領域に結合しながら、自由に受容体に結合する。抗原結合ドメインを含む全長IgG抗体を含む二価ホモ二量体融合タンパク質、抗原結合ドメインを含むポリペプチド、または抗原結合ドメインを含む抗体の例において、プロテアーゼ切断時に、VHの遊離は、可変領域に対するリガンドの結合を破壊して、リガンドが自由に解離してその受容体に結合することを可能にし、それによって受容体シグナル伝達を活性化する。抗原結合ドメインを含む抗体断片の例において、プロテアーゼ切断時に、VHの一部分とVLの一部分との間の会合の低減があり、VHとVLとの完全な解離を結果としてもたらす。この解離は、抗体断片の抗原結合ドメインに対するリガンドの結合を破壊して、リガンドが自由に解離してその受容体に結合することを可能にし、それによって受容体シグナル伝達を活性化する。いくつかの態様において、プロテアーゼ切断時に、リガンドは、抗原結合ドメインまたは可変領域から解離し、N末端可変ドメイン、VHまたはVLのいずれかに結合しながら、自由にその受容体に結合する。いくつかの態様において、プロテアーゼ切断時に、リガンドは、リガンド結合ドメインから解離し、リガンド結合部分/分子のC末端Fc領域または定常領域に結合しながら、自由にその受容体に結合する。抗体断片を含む任意の分子形態における、上記のVHとVLとの境界の間のアミノ酸改変は、該分子形態が、互いに会合するVHおよびVLを含む限り、一方の他方からの解離を促進することが、さらに企図される。したがって、本発明は、そのようなアミノ酸改変を含む分子形態を製造する方法、およびそのVHとVLとの解離を促進する方法における上述の分子形態のいずれかの使用を含む。さらに、本発明に関連する当業者は、例えば、抗体VHと抗体VLとをスワッピングすることによって、抗体VH、抗体VL、および任意で抗体定常領域を含む分子の形態を変更することができる。そのような分子形態は、本発明の範囲から逸脱しない。
【0245】
スクリーニングする方法
本発明はまた、リガンド結合ドメインを含む二価ホモ二量体融合タンパク質、抗原結合ドメインを含むIgG抗体様ポリペプチドを含む二価ホモ二量体融合タンパク質、抗原結合ドメインを含む全長IgG抗体を含む二価ホモ二量体融合タンパク質、抗原結合ドメインを含むポリペプチド、抗体、または抗体断片を含む、上記の分子形態におけるアミノ酸改変を特定するためにスクリーニングする方法を含み、本方法は以下の工程:
(a)融合タンパク質またはポリペプチドからのVHドメインまたはVLドメインの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸変異または少なくとも1つのペアのアミノ酸変異を、該融合タンパク質またはポリペプチドにおけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸変異を、リガンドまたは抗原とリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(b)プロテアーゼの非存在下でのBIACORE表面プラズマ共鳴(SPR)アッセイにおいて、工程(a)の固定化された融合タンパク質またはポリペプチドの第1の反応単位(RU1)を測定する工程;
(b)プロテアーゼの存在下での同じBIACORE表面プラズマ共鳴(SPR)アッセイにおいて、工程(a)の固定化された融合タンパク質またはポリペプチドの第2の反応単位(RU2)を測定する工程;
(c)プロテアーゼ切断の前および後で、RU1とRU2との間の差のパーセンテージが、1%以下であるか、または2%以下であるか、または3%以下であるか、または4%以下であるか、または5%以下であるか、または6%以下であるか、または7%以下であるか、または8%以下であるか、または9%以下であるか、または10%以下であるか、または11%以下であるか、または12%以下であるか、または13%以下であるか、または14%以下であるか、または15%以下であるか、または16%以下であるか、または17%以下であるか、または18%以下であるか、または19%以下であるか、または20%以下であるか、または21%以下であるか、または22%以下であるか、または23%以下であるか、または24%以下であるか、または25%以下であるか、または26%以下であるか、または27%以下であるか、または28%以下であるか、または29%以下であるか、または30%以下であるか、または31%以下であるか、または32%以下であるか、または33%以下であるか、または34%以下であるか、または35%以下であるか、または36%以下であるか、または37%以下であるか、または38%以下であるか、または39%以下であるか、または40%以下である場合には、工程(a)における変異を選択する工程
を含み、
反応単位(RU)の低減パーセンテージが、融合タンパク質またはポリペプチドからのVHまたはVLの遊離に起因する分子量の低減パーセンテージに対応する。
【0246】
本発明はまた、VHとVLとの間の会合を低減させる変異を有する、上記態様のいずれかに記載されるような融合タンパク質、ポリペプチド、抗体、または抗体断片をスクリーニングする方法も含み、本方法は、表面プラズマ共鳴(SPR)下で、プロテアーゼ切断の前および後で上記融合タンパク質のいずれかについて記録された最大反応単位を比較する工程、ならびに、プロテアーゼ切断の前および後で、1%以下、または2%以下、または3%以下、または4%以下、または5%以下、または6%以下、または7%以下、または8%以下、または9%以下、または10%以下、または11%以下、または12%以下、または13%以下、または14%以下、または15%以下、または16%以下、または17%以下、または18%以下、または19%以下、または20%以下、または21%以下、または22%以下、または23%以下、または24%以下、または25%以下、または26%以下、または27%以下、または28%以下、または29%以下、または30%以下、または31%以下、または32%以下、または33%以下、または34%以下、または35%以下、または36%以下、または37%以下、または38%以下、または39%以下、または40%以下の反応単位の低減を結果としてもたらす変異を選択する工程を含む。
【0247】
いくつかの態様において、1%以下、または2%以下、または3%以下、または4%以下、または5%以下、または6%以下、または7%以下、または8%以下、または9%以下、または10%以下に対応する反応単位の低減パーセンテージは、上記態様のいずれかに記載されるような融合タンパク質、ポリペプチド、抗体、または抗体断片からのVHまたはVLの解離に対応する。いくつかの態様において、1%以下、または2%以下、または3%以下、または4%以下、または5%以下、または6%以下、または7%以下、または8%以下、または9%以下、または10%以下、または11%以下、または12%以下、または13%以下、または14%以下、または15%以下、または16%以下、または17%以下、または18%以下、または19%以下、または20%以下に対応する反応単位の低減パーセンテージは、上記態様のいずれかに記載されるような融合タンパク質、ポリペプチド、抗体、または抗体断片からのVHまたはVLの解離に対応する。好ましい態様において、10%以下の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替の態様において、20%以下の解離は、本発明のIgG様抗体分子またはIgG抗体からのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替において、15.8%以下の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替の態様において、36.8%以下の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVH-リガンドまたはVL-リガンドの完全な解離を示す。代替の態様において、30%以下の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVH-リガンドまたはVL-リガンドの完全な解離を示す。
【0248】
本発明はまた、VHとVLとの間の会合を低減させる変異を有する、上記態様のいずれかに記載されるような融合タンパク質、ポリペプチド、抗体、または抗体断片をスクリーニングする方法も含み、本方法は、以下の工程:
(a)融合タンパク質またはポリペプチドからのVHドメインまたはVLドメインの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸変異または少なくとも1つのペアのアミノ酸変異を、該融合タンパク質またはポリペプチドにおけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸変異を、リガンドまたは抗原とリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(b)プロテアーゼ切断前の融合タンパク質またはポリペプチドの第1のセットを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、ピークA1(第1のピーク)を含む第1のクロマトグラフを得る工程;
(c)プロテアーゼ切断後の融合タンパク質またはポリペプチドの第2のセットを、SECに供し、ピークA2(第2のピーク)および追加的なピークA2'(第3のピーク)(A2'は、A2のショルダーピークである)を含む第2のクロマトグラフを得る工程;
(d)ピークA2'(第3のピーク)の曲線下面積(AUC)割るピークA1(第1のピーク)のAUCから結果として生じたパーセンテージを決定する工程;
(e)工程(d)において得られたパーセンテージが、1%以下、または2%以下、または3%以下、または4%以下、または5%以下、または6%以下、または7%以下、または8%以下、または9%以下、または10%以下、または11%以下、または12%以下、または13%以下、または14%以下、または15%以下、または16%以下、または17%以下、または18%以下、または19%以下、または20%以下、または21%以下、または22%以下、または23%以下、または24%以下、または25%以下、または26%以下、または27%以下、または28%以下、または29%以下、または30%以下、または31%以下、または32%以下、または33%以下、または34%以下、または35%以下、または36%以下、または37%以下、または38%以下、または39%以下、または40%以下に対応する、工程(a)における変異を選択する工程
を含み、
(d)において決定されたパーセンテージが、プロテアーゼ切断後に融合タンパク質またはポリペプチドから解離されたVHドメインまたはVLドメインのパーセンテージに対応する。
【0249】
いくつかの態様において、1%以下、または2%以下、または3%以下、または4%以下、または5%以下、または6%以下、または7%以下、または8%以下、または9%以下、または10%以下に対応する、工程(d)において決定された反応単位のパーセンテージは、上記態様のいずれかに記載されるような融合タンパク質、ポリペプチド、抗体、または抗体断片からのVHまたはVLの解離に対応する。いくつかの態様において、1%以下、または2%以下、または3%以下、または4%以下、または5%以下、または6%以下、または7%以下、または8%以下、または9%以下、または10%以下、または11%以下、または12%以下、または13%以下、または14%以下、または15%以下、または16%以下、または17%以下、または18%以下、または19%以下、または20%以下、または21%以下、または22%以下、または23%以下、または24%以下、または25%以下、または26%以下、または27%以下、または28%以下、または29%以下、または30%以下、または31%以下、または32%以下、または33%以下、または34%以下、または35%以下に対応する、工程(d)において決定された反応単位のパーセンテージは、上記態様のいずれかに記載されるような融合タンパク質、ポリペプチド、抗体、または抗体断片からのVHまたはVLの解離に対応する。好ましい態様において、10%以下または約10%の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替の態様において、20%以下または約20%の解離は、本発明のIgG様抗体分子またはIgG抗体からのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替の態様において、15.8%以下または約15.8%の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVHまたはVLの完全な解離を示す。代替の態様において、36.8%以下または約36.8%の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVH-リガンドまたはVL-リガンドの完全な解離を示す。代替の態様において、30%以下または約30%の解離は、本発明の二価融合ポリペプチドからのVH-リガンドまたはVL-リガンドの完全な解離を示す。
【0250】
本明細書に記載されるスクリーニングする方法は、第1の状態および第2の状態での、すなわち、プロテアーゼ切断の前および後での、本明細書の融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の検証の工程をさらに含む。生物学的活性の検証の工程は、プロテアーゼ切断の前および後でリガンドまたは抗原の生物学的活性を評価するための、本明細書に記載されるか、または実施例に詳述されるか、または当業者によって好適に用いられる生物学的アッセイを含む。
【0251】
本明細書に記載されるスクリーニングする方法は、以下の工程をさらに含む:
リガンドまたは抗原の所与の濃度、およびリガンドまたは抗原の該濃度に対応する本明細書の融合タンパク質またはポリペプチドの濃度について;
I.プロテアーゼ切断前に、融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を測定する工程;
II.プロテアーゼ切断後に、工程Iにおける融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を測定する工程;
III.少なくとも1つのアミノ酸改変または少なくとも1つのペアのアミノ酸改変を、工程Iにおける融合タンパク質またはポリペプチドにおけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸改変を、リガンドまたは抗原とリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインとの境界面に導入する工程であって、該アミノ酸改変が、プロテアーゼの存在下でのプロテアーゼ切断時に、融合タンパク質またはポリペプチドからのVHドメインまたはVLドメインの解離を促進する、工程;
IV.プロテアーゼ切断前に、工程IIIにおける融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を測定する工程;
V.プロテアーゼ切断後に、工程IIIにおける融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を測定する工程;
VI.工程(IV)の融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性が、工程(V)の融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性よりも低い、アミノ酸改変を選択する工程;
VII.工程(V)における融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性が、工程(IV)における融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性よりも高い、アミノ酸改変を選択する工程、ならびに/あるいは
VIII.(I)と(II)との間の融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の生物学的活性差である「V1」、および(IV)と(V)との間の融合タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の生物学的活性差である「V2」を決定する工程;ならびに
IX.V2の値がV1よりも高い、アミノ酸改変を選択する工程。
疑いの回避のためにいうと、工程IIIにおいて導入されることができるアミノ酸改変は、上記態様のいずれかに記載されるような、または上記に示される工程(a)、および/もしくは(b)、および/もしくは(c)、および/もしくは(d)、および/もしくは(e)に従って派生される、融合タンパク質、IgG抗体様ポリペプチド、抗体、または抗体断片においてVHとVLとの間の会合を低減させる改変のいずれかを含む。さらに、リガンドまたは抗原の所与の濃度、および本明細書の融合タンパク質またはIgG抗体様ポリペプチドの濃度が、その対応するリガンドまたは抗原のものと同じ濃度に対応するかどうかの判定は、実施例に詳述されるようにまたは上記態様のいずれかに記載されるように、融合タンパク質またはIgG抗体様ポリペプチドの生物学的活性を評価する好適な生物学的アッセイを行うことによって、容易に判定することができる。
【0252】
本発明は、VHとVLとの境界面のアミノ酸改変を含む、上記態様のいずれかに記載されるような融合タンパク質、ポリペプチド、抗体、または抗体断片においてVHとVLとの間の会合を低減させる、アミノ酸改変のライブラリをさらに含む。ライブラリは、VH上のポジションQ39D、W47A、W47L、W47M、Y91A、Y91L、Y91M、H91A、W103A、W103L、W103M、V37S、V37Q、G44Q、L45A、およびL45Q、またはVL上のポジションR38E、Y49A、Y87A、Y87L、Y87M、F98A、F98L、F98M、A43Q、P44A、P44S、P44Q、L46E、およびL46Q(Kabatナンバリングに従う)から選択されるアミノ酸置換のいずれかを含む。ライブラリは、VH上のポジションQ39D、W47A、W47L、W47M、Y91A、Y91L、Y91M、H91A、W103A、W103L、W103M、V37S、V37Q、G44Q、L45A、およびL45Qから選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つなどのアミノ酸置換、ならびに/またはVL上のポジションR38E、Y49A、Y87A、Y87L、Y87M、F98A、F98L、F98M、A43Q、P44A、P44S、P44Q、L46E、およびL46Q(Kabatナンバリングに従う)から選択される対応する少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つなどのアミノ酸置換の選択群を含むことができる。本発明のさらなる局面において、ライブラリは、ポジション30および100a(Kabatナンバリングに従う)から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。さらなる局面において、置換は、S30VおよびF100aIから選択される。ライブラリは、前述の置換に限定されないが、本明細書に、例えば、本明細書のこの「スクリーニングする方法」のセクションに記載されるスクリーニングする方法において示される工程に従って派生され得る任意の置換を、非限定的に含むことが注目されるべきである。
【0253】
リガンド
本明細書において、用語「リガンド部分」または「リガンド分子」は、生物活性を有する部分または分子のことをいう。本明細書において、「リガンド部分」および「リガンド分子」は、単に「リガンド」といってもよい。生物活性を有する分子は、通常、細胞表面上の受容体と相互作用し、それにより生物学的な刺激、阻害、または他の様式での調節を行うことによって機能する。これらの機能は、通常、受容体を保有する細胞の細胞内シグナル伝達経路に関与すると考えられる。
【0254】
本明細書において、リガンドには、本明細書において「結合パートナー」とも称される生体分子との相互作用を通して生物活性を発揮する所望の分子が包含される。例えば、リガンドは、受容体と相互作用する分子を意味するだけではなく、分子との相互作用を通して生物活性を発揮する分子、例えば、分子と相互作用する受容体、またはその結合断片も含む。例えば、受容体として公知のタンパク質のリガンド結合部位、および受容体の別の分子との相互作用部位を含有するタンパク質は、本発明によるリガンドに含まれる。具体的には、例えば、可溶性受容体、受容体の可溶性断片、膜貫通受容体の細胞外ドメイン、およびそれらを含有するポリペプチドは、本発明によるリガンドに含まれる。
【0255】
本発明のリガンドは、通常、1つまたは複数の結合パートナーに対する結合によって、望ましい生物活性を発揮することができる。リガンドの結合パートナーは、細胞外、細胞内、または膜貫通タンパク質であることができる。一態様において、リガンドの結合パートナーは、細胞外タンパク質、例えば、可溶性受容体である。別の態様において、リガンドの結合パートナーは、膜結合型受容体である。本発明のリガンドは、10マイクロモル濃度(μM)、1マイクロモル濃度、100 nM、50 nM、10 nM、5 nM、1 nM、500 pM、400 pM、350 pM、300 pM、250 pM、200 pM、150 pM、100 pM、50 pM、25 pM、10 pM、5 pM、1 pM、0.5 pM、もしくは0.1 pM、またはそれよりも小さい解離定数(KD)で、結合パートナーに特異的に結合することができる。
【0256】
生物活性を有する分子の例には、サイトカイン、ケモカイン、ポリペプチドホルモン、成長因子、アポトーシス誘導因子、PAMPs、DAMPs、核酸、およびその断片が含まれるが、それらに限定されない。具体的な態様において、インターロイキン、インターフェロン、造血因子、TNFスーパーファミリーのメンバー、ケモカイン、細胞増殖因子、TGF-βファミリーのメンバー、マイオカイン、アディポカイン、または神経栄養因子を、リガンドとして用いることができる。より具体的な態様において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IFN-α、IFN-β、IFN-g、MIG、I-TAC、RANTES、MIP-1a、MIP-1b、IL-1R1(インターロイキン-1受容体、I型)、IL-1R2(インターロイキン-1受容体、II型)、IL-1RAcP(インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質)、またはIL-1Ra(タンパク質アクセッション番号NP_776214、mRNAアクセッション番号NM_173842.2)を、リガンドとして用いることができる。本開示において用いられるリガンドについて、制限はない。いくつかの態様において、リガンドは、野生型(または天然に存在する)リガンドであってもよく、または任意の変異を有する変異体リガンドであってもよい。ヘテロ二量体サイトカインであるIL-12またはIL-22の場合には、いくつかの態様において、リガンドIL-12は、野生型(または天然に存在する)IL-12もしくはIL-22であってもよく、または任意の変異を有する変異体IL-12もしくはIL-22であってもよい。いくつかの態様において、IL-12は、p35とp40とが連結されて一本鎖に含まれている、一本鎖IL-12であってもよい。
【0257】
本発明のいくつかの態様において、リガンドは、サイトカインである。
サイトカインは、免疫調節プロセスおよび炎症プロセスに関与する分泌型細胞シグナル伝達タンパク質のファミリーである。これらのサイトカインは、神経系のグリア細胞によって、および免疫系の多くの細胞によって分泌される。サイトカインは、タンパク質、ペプチド、および糖タンパク質に分類することができ、大きな多様な調節因子ファミリーを包含する。
サイトカインは、その細胞表面受容体に対する結合を通して細胞内シグナル伝達を誘導し、それにより、酵素活性の調節、いくつかの遺伝子およびその転写因子の上方制御もしくは下方制御、またはフィードバック阻害等を引き起こすことができる。
いくつかの態様において、本発明のサイトカインには、インターロイキン(IL)およびインターフェロン(IFN)等の免疫調節因子が含まれる。好適なサイトカインには、以下のタイプの1つまたは複数に由来するタンパク質が含有され得る:4つのα-ヘリックスバンドルファミリー(IL-2サブファミリー、IFNサブファミリー、およびIL-10サブファミリーを含む);IL-1ファミリー(IL-1およびIL-8を含む);ならびにIL-17ファミリー。サイトカインにはまた、細胞性免疫応答を増強する1型サイトカイン(例えば、IFN-γおよびTGF-β)、または抗体反応に有利に働く2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-10、およびIL-13)に分類されるものが含まれ得る。
【0258】
インターロイキン12(IL-12)は、ジスルフィド結合された30 kDと40 kDのグリコシル化ポリペプチド鎖からなるヘテロ二量体のサイトカインである(アクセッション番号NP_000873.2、P29459、およびアクセッション番号NP_002178.2、P29460)。サイトカインは、樹状細胞、単球、マクロファージ、B細胞、ランゲルハンス細胞、および角化細胞、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞を含む抗原提示細胞によって合成され、次いで分泌される。IL-12は、種々の生物学的プロセスを媒介し、NK細胞刺激因子(NKSF)、T細胞刺激因子、細胞傷害性Tリンパ球成熟因子、およびEBVにより形質転換されたB細胞株因子として述べられている。
【0259】
インターロイキン12は、細胞(例えば、T細胞およびNK細胞)の細胞質膜上に発現したIL-12受容体に結合し、それにより生物学的プロセスを変更する(例えば、開始するかまたは遮断する)ことができる。例えば、IL-12受容体に対するIL-12の結合は、予め活性化されたT細胞およびNK細胞の増殖を刺激し、細胞傷害性T細胞(CTL)、NK細胞、およびLAK(リンホカイン活性化キラー)細胞の細胞溶解活性を促進し、T細胞およびNK細胞によるγインターフェロン(IFNγ)の産生を誘導し、かつナイーブなTh0細胞のIFNγおよびIL-2を産生すTh1細胞への分化を誘導する。特に、IL-12は、細胞溶解細胞(例えば、NKおよびCTL)の産生および細胞性免疫応答(例えば、Th1細胞媒介性免疫応答)を設定するのに絶対に必要である。したがって、IL-12は、防御免疫(例えば、感染症の根絶)および病理学的免疫応答(例えば、自己免疫)の両方を生成する、および調節するのに絶対に必要である。
【0260】
IL-12の生理活性を測定する方法の例には、IL-12の細胞増殖活性を測定する方法、STAT4 レポーターアッセイ、IL-12による細胞活性化(細胞表面マーカー発現、サイトカイン産生等)を測定する方法、およびIL-12による細胞分化の促進を測定する方法が含まれる。
【0261】
インターロイキン22(IL-22)(アクセッション番号NP_065386.1、Q9GZX6)は、サイトカインのIL-10ファミリーのメンバーである。これは、T細胞、NKT細胞、3型自然リンパ球(ILC3)等の免疫細胞によって、ならびにより少ない程度であるが好中球およびマクロファージによって分泌される。IL-22は、IL-22R1およびIL-10R2から構成されるヘテロ二量体である、その受容体IL-22Rに結合する。IL-22Rは主に、上皮細胞および間質細胞等の非造血細胞上に発現している。IL-22活性は、IL-22R1に対して高い構造的相同性を有する分泌タンパク質であるIL-22結合タンパク質(IL-22BP;IL-22RA2としても知られる)によって調節される。IL-22BPは、高いアフィニティでIL-22に結合し、IL-22がIL-22R1と相互作用するのを遮断する。
【0262】
IL-22受容体に対するIL-22の結合は、JAK1およびTYK2キナーゼの活性化をもたらし、これは次に、STAT3シグナル伝達の活性化をもたらす。IL-22は、上皮細胞機能において重要な役割を果たす。例えば、腸管において、IL-22は、腸管上皮細胞の増殖、粘液分泌、および抗微生物ペプチド分泌を刺激することによって、腸のバリアの完全性を促進する。肝臓において、IL-22は、肝損傷中の肝細胞に対して生存因子として作用し、かつまた、肝再生のために増殖するように肝細胞を刺激する。
【0263】
IL-22の生理活性を測定する方法の例には、IL-22の細胞増殖活性を測定する方法、STAT3 レポーターアッセイ、およびIL-22による細胞活性化(細胞表面マーカー発現、サイトカイン産生等)を測定する方法が含まれる。
【0264】
インターロイキン2(IL-2)は、単量体サイトカインであり、主に、活性化されたCD4 T細胞およびCD8 T細胞によって分泌される。IL-2は、α、β、およびγの3つのサブユニットからなる、その受容体(IL-2R)に結合する。IL-2Rβおよびγは、シグナル伝達に関与し、IL-2Rαおよびβは、結合に関与する。3つのサブユニットすべてが、高アフィニティのサイトカイン-受容体複合体に重要である。IL-2は、エフェクターT細胞および制御性T細胞の両方に結合して活性化するため、免疫応答の促進および調節の両方のために不可欠である。
IL-2の生理活性を測定する方法の例には、IL-2の細胞増殖活性を測定する方法、IL-2による細胞活性化(細胞表面マーカー発現、サイトカイン産生等)を測定する方法、およびIL-2による細胞分化の促進を測定する方法が含まれる。
【0265】
本発明のいくつかの態様において、リガンドは、ケモカインである。ケモカインは一般的に、免疫エフェクター細胞をケモカイン発現部位に動員する化学誘引物質として作用する。これは、他の免疫系成分を治療部位に動員する目的で、特定のケモカイン遺伝子を、例えば、サイトカイン遺伝子と共に発現させるために有益と考えられる。そのようなケモカインには、CXCL10、RANTES、MCAF、MIP1-α、およびMIP1-βが含まれる。当業者は、ある特定のサイトカインもまた、化学誘引作用を有することを承知しており、そのようなサイトカインが、「ケモカイン」という用語によって分類され得ることを認めるはずである。
【0266】
ケモカインは、白血球の遊走を誘導するその能力を元々特徴とする、7~16 kDaの均質な血清タンパク質のファミリーである。ケモカインの大部分は、4つの特徴的なシステイン(Cys)を有し、最初の2つのシステインによって形成されるモチーフに従って、CXCまたはアルファ、CCまたはベータ、Cまたはガンマ、およびCX3Cまたはデルタのケモカインクラスに分類される。2つのジスルフィド結合が、第1と第3のシステインの間、および第2と第4のシステインの間に形成される。一般的に、ジスルフィド架橋は、必要であると考えられている。Clark-Lewisおよび共同研究者らは、少なくともCXCL10のケモカイン活性について、ジスルフィド結合が非常に重要であることを報告している(Clark-Lewis et al., J. Biol. Chem. 269: 16075-16081, 1994)。4つのシステインを有することに対する唯一の例外は、2つのシステイン残基のみを有するリンホタクチンである。したがって、リンホタクチンは、唯一のジスルフィド結合によって、その機能的構造をなんとか維持している。CXCまたはアルファのサブファミリーは、第1のシステインに先行するELRモチーフ(Glu-Leu-Arg)の存在に従って、2つの群:ELR-CXCケモカインおよび非ELR-CXCケモカインにさらに分類される(例えば、Clark-Lewis、上記;およびBelperio et al., "CXC Chemokines in Angiogenesis", J. Leukoc. Biol. 68: 1-8, 2000参照)。
【0267】
インターフェロン誘導性タンパク質-10(IP-10またはCXCL10)(アクセッション番号NP_001556.2、P02778)は、インターフェロン-γおよびTNF-αによって誘導され、角化細胞、内皮細胞、線維芽細胞、および単球によって産生される。IP-10は、組織の炎症部位への活性化T細胞の動員において役割を果たすと考えられている(Dufour, et al., "IFN-gamma-inducible protein 10 (IP-10; CXCL10)-deficient mice reveal a role for IP-10 in effector T cell generation and trafficking", J Immunol., 168: 3195-204, 2002)。さらに、IP-10は、過敏反応において役割を果たす可能性がある。IP-10はまた、炎症性脱髄性ニューロパチーの発生においても役割を果たす可能性がある(Kieseier, et al., "Chemokines and chemokine receptors in inflammatory demyelinating neuropathies: a central role for IP-10", Brain 125: 823-34, 2002)。
【0268】
研究により、IP-10が、移植に続く幹細胞の生着(Nagasawa, T., Int. J. Hematol. 72: 408-11, 2000)、幹細胞の動員(Gazitt, Y., J. Hematother Stem Cell Res 10: 229-36, 2001;およびHattori et al., Blood 97: 3354-59, 2001)ならびに抗腫瘍超免疫性(hyperimmunity)(Nomura et al., Int. J. Cancer 91: 597-606, 2001;およびMach and Dranoff, Curr. Opin. Immunol. 12:571-75, 2000)において有用である可能性が示されている。例えば、当業者に公知の以前の報告では、ケモカインの生物活性が議論されている(Bruce, L. et al., "Radiolabeled Chemokine binding assays", Methods in Molecular Biology (2000) vol. 138, pp. 129-134;Raphaele, B. et al. "Calcium Mobilization", Methods in Molecular Biology (2000) vol. 138, pp. 143-148;およびPaul D. Ponath et al., "Transwell Chemotaxis", Methods in Molecular Biology (2000) vol. 138, pp. 113-120 Humana Press. Totowa, New Jersey)。
【0269】
CXCL10の生物活性の例には、CXCL10受容体(CXCR3)に対する結合、CXCL10により誘導されるカルシウム流、CXCL10により誘導される細胞走化性、グリコサミノグリカンに対するCXCL10の結合、およびCXCL10オリゴマー化が含まれる。CXCL10の生理活性を測定する方法の例には、CXCL10の細胞走化活性を測定する方法、CXCR3を安定に発現する細胞株を用いたレポーターアッセイ(PLoS One. 2010 Sep 13; 5(9): e12700参照)、およびGPCRシグナル伝達の初期に誘導されるB-アレスチン漸増を用いたPathHunter(商標) β-アレスチン漸増アッセイが含まれる。
【0270】
プログラム細胞死1(PD-1)タンパク質は、CD28ファミリーの受容体の抑制性メンバーである。CD28ファミリーには、CD28、CTLA-4、ICOS、およびBTLAもまた含まれる。PD-1は、活性化されたB細胞、T細胞、および骨髄細胞上で発現する(Okazaki et al., (2002) Curr. Opin. Immunol. 14: 391779-82;およびBennett et al., (2003) J Immunol 170: 711-8)。ファミリーの最初のメンバーであるCD28およびICOSは、モノクローナル抗体添加後のT細胞増殖の上昇に対する機能的影響に基づいて発見された(Hutloff et al., (1999) Nature 397: 263-266;およびHansen et al., (1980) Immunogenics 10: 247-260)。PD-1は、アポトーシス細胞における差次的発現のスクリーニングによって発見された(Ishida et al., (1992) EMBO J 11: 3887-95)。ファミリーの他のメンバーであるCTLA-4およびBTLAは、それぞれ、細胞傷害性Tリンパ球およびTH1細胞における差次的発現のスクリーニングによって発見された。CD28、ICOS、およびCTLA-4はすべて、ホモ二量体化を可能にする、対になっていないシステイン残基を有する。対照的に、PD-1は、単量体として存在すると考えられており、CD28ファミリーの他のメンバーに特徴的な対になっていないシステイン残基が欠如している。
【0271】
PD-1遺伝子は、Igスーパーファミリーの一部である55 kDaのI型膜貫通タンパク質をコードする。PD-1は、膜近位免疫受容体チロシン抑制モチーフ(ITIM)および膜遠位チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含有する。PD-1は、構造的にCTLA-4に類似しているが、B7-1およびB7-2結合に重要なMYPPPYモチーフ(配列番号:159)が欠如している。PD-1に対する2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2が同定されており、PD-1に対する結合時にT細胞活性化を負に調節することが示されている(Freeman et al., (2000) J Exp Med 192: 1027-34;Latchman et al., (2001) Nat Immunol 2: 261-8;およびCarter et al., (2002) Eur J Immunol 32: 634-43)。PD-L1およびPD-L2は両方とも、PD-1に結合するが、CD28ファミリーの他のメンバーには結合しないB7ホモログである。PD-1リガンドの1つであるPD-L1は、種々のヒトがんにおいて豊富である(Dong et al., (2002) Nat. Med. 8: 787-9)。PD-1とPD-L1との間の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介性増殖の低減、およびがん性細胞による免疫回避を結果としてもたらす(Dong et al., (2003) J. Mol. Med. 81: 281-7;Blank et al., (2005) Cancer Immunol. Immunother. 54: 307-314;およびKonishi et al., (2004) Clin. Cancer Res. 10: 5094-100)。免疫抑制は、PD-1とPD-L1との局所的相互作用の阻害によって逆転させることができ、この効果は、PD-2とPD-L2との相互作用もまた阻害される時に相加的である(Iwai et al., (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 12293-7;およびBrown et al., (2003) J. Immunol. 170: 1257-66)。
【0272】
PD-1は、活性化されたB細胞、T細胞、および骨髄細胞上で発現するCD28ファミリーの抑制性メンバーである。PD-1が欠損した動物は、自己免疫性心筋症、ならびに関節炎および腎炎を伴うループス様症候群を含む、種々の自己免疫性表現型を発症する(Nishimura et al., (1999) Immunity 11: 141-51;およびNishimura et al., (2001) Science 291: 319-22)。PD-1は、さらに、自己免疫性脳脊髄炎、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病(GVHD)、I型真性糖尿病、および関節リウマチにおいて重要な役割を果たすことが見出されている(Salama et al., (2003) J Exp Med 198: 71-78;Prokunia and Alarcon-Riquelme (2004) Hum Mol Genet 13: R143;およびNielsen et al., (2004) Lupus 13: 510)。マウスB細胞腫瘍株において、PD-1のITSMは、BCR媒介性のCa2+流および下流エフェクター分子のチロシンリン酸化を阻害するのに不可欠であることが示されている(Okazaki et al., (2001) PNAS 98: 13866-71)。
【0273】
いくつかの態様において、リガンドは、野生型(または天然に存在する)リガンドであってもよく、または任意の変異を有する変異体リガンドであってもよい。ヘテロ二量体サイトカインであるIL-12の場合には、いくつかの態様において、リガンドIL-12は、野生型(または天然に存在する)IL-12であってもよく、または任意の変異を有する変異体IL-12であってもよい。いくつかの態様において、IL-12は、p35とp40とが連結されて一本鎖に含まれている、一本鎖IL-12であってもよい。特定の態様において、本発明のリガンド部分/分子はIL-12であり、IL-12は、IL-12のp35サブユニットまたはIL-12のp40サブユニットに付加されたペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分/分子のC末端アミノ酸残基と接続されている。一態様において、本発明のリガンド部分/分子はIL-12であり、IL-12は、IL-12のp35サブユニットまたはIL-12のp40サブユニットのN末端に付加されたペプチドリンカーを介して、リガンド結合部分/分子のC末端アミノ酸残基と接続されている。同じことが、IL-22などを含む、一般的なまたは本明細書に記載されるような任意のリガンドに当てはまる。
【0274】
本発明のいくつかの態様において、サイトカイン改変体、ケモカイン改変体等(例えば、Annu Rev Immunol. 2015; 33: 139-67)、または改変体を含有する融合タンパク質(例えば、Stem Cells Transl Med. 2015 Jan; 4 (1): 66-73)を、リガンドとして用いることができる。
【0275】
本発明のいくつかの態様において、リガンドは、CXCL9、CXCL10、CXCL11、PD-1、IL-2、IL-12、IL-22、IL-6R、IL-1R1、IL-1R2、IL-1RAcP、およびIL-1Raから選択される。CXCL10、PD-1、IL-2、IL-12、IL-22、IL-6R、IL-1R1、IL-1R2、IL-1RAcP、およびIL-1Raは、それぞれ、天然に存在するCXCL10、PD-1、IL-2、IL-12、IL-22、IL-6R、IL-1R1、IL-1R2、IL-1RAcP、およびIL-1Raと同じ配列を有していてもよく、または、天然に存在するCXCL9、CXCL10、CXCL11、PD-1、IL-2、IL-12、IL-22、IL-6R、IL-1R1、IL-1R2、IL-1RAcP、およびIL-1Raとは配列が異なるが、対応する天然リガンドの生理活性を保持しているリガンド改変体であってもよい。リガンド改変体を得るために、種々の目的でリガンド配列に改変を人工的に加えてもよい。好ましくは、リガンド改変体を得るために、プロテアーゼ切断に耐性を示す改変(プロテアーゼ耐性改変)を加える。
【0276】
いくつかの態様において、リガンド結合部分または分子とリガンド部分または分子とを、ペプチドリンカーを介して融合させる。いくつかの態様において、抗原結合ドメインまたは可変領域のVHまたはVLとリガンド部分または分子とを、ペプチドリンカーを介して融合させる。例えば、遺伝子工学によって導入することができる任意のペプチドリンカー、または合成化合物リンカーとして開示されるリンカー(例えば、Protein Engineering, 9 (3), 299-305, 1996参照)を、リガンド結合分子とリガンドとの融合におけるリンカーとして用いることができる。ペプチドリンカーの長さは、特に限定されず、目的に応じて当業者が適宜選択してもよい。ペプチドリンカーの例には、
Ser
Gly Ser(GS)
Ser Gly(SG)
Gly Gly Ser(GGS)
Gly Ser Gly(GSG)
Ser Gly Gly(SGG)
Gly Ser Ser(GSS)
Ser Ser Gly(SSG)
Ser Gly Ser(SGS)
Gly Gly Gly Ser(GGGS、配列番号:136)
Gly Gly Ser Gly(GGSG、配列番号:137)
Gly Ser Gly Gly(GSGG、配列番号:138)
Ser Gly Gly Gly(SGGG、配列番号:139)
Gly Ser Ser Gly(GSSG、配列番号:140)
Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141)
Gly Gly Gly Ser Gly(GGGSG、配列番号:142)
Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143)
Gly Ser Gly Gly Gly(GSGGG、配列番号:144)
Gly Ser Gly Gly Ser(GSGGS、配列番号:145)
Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146)
Gly Ser Ser Gly Gly(GSSGG、配列番号:147)
Gly Ser Gly Ser Gly(GSGSG、配列番号:148)
Ser Gly Gly Ser Gly(SGGSG、配列番号:149)
Gly Ser Ser Ser Gly(GSSSG、配列番号:150)
Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGS、配列番号:151)
Ser Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGG、配列番号:152)
Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGGGS、配列番号:153)
Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly(SGGGGGG、配列番号:154)
(Gly Gly Gly Gly Ser(GGGGS、配列番号:141))n
(Ser Gly Gly Gly Gly(SGGGG、配列番号:146))n
(Gly Gly Ser Gly Gly(GGSGG、配列番号:143))n
(nは1以上の整数である)
が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0277】
しかし、ペプチドリンカーの長さおよび配列は、目的に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0278】
合成化合物リンカー(化学架橋剤)は、ペプチド架橋に通常用いられる架橋剤、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベラート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオナート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオナート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシナート)(スルホ-EGS)、ジスクシンイミジルタルトラート(DST)、ジスルホスクシンイミジルタルトラート(スルホ-DST)、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、またはビス[2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ-BSOCOES)である。
これらの架橋剤は、市販されている。
【0279】
リガンド結合部分/分子
本発明のさらなる局面において、融合タンパク質などのリガンド結合部分/分子は、その中和活性を発揮することによってリガンド部分/分子の生物学的活性を阻害することができるリガンド中和活性を有する、抗体またはその断片を含む。いくつかの態様において、融合ポリペプチドは、リガンド部分/分子に結合することができる抗体またはその断片(すなわち、抗リガンド抗体)を含む。上記態様のいずれかによる抗体またはその断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一態様において、抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab'、scFv、ダイアボディ、またはF(ab')2断片である。別の態様において、抗体は、全長抗体、例えば、完全IgG1抗体、または本明細書で定義されるような他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。一態様において、抗体またはその断片は、IgG抗体中のような定常ドメインまたは定常領域に構造が実質的に類似した部分、およびIgG抗体中のような可変ドメインまたは可変領域に構造が実質的に類似した部分を有する、かつIgG抗体のコンフォメーションに実質的に類似したコンフォメーションを有する、IgG抗体様ポリペプチドである。
【0280】
さらなる局面において、上記態様のいずれかによる融合タンパク質または抗体または抗体様ポリペプチドまたはその抗体断片などのリガンド結合部分/分子は、以下のセクションに記載されるような特徴のいずれかを、単独でまたは組み合わせで組み入れ得る。
【0281】
本明細書における開示、例えば、以下の節は、一部、「抗体」に言及するか、またはそれに焦点を合わせ得る。しかし、リガンド/抗原結合活性などの本明細書に記載される抗体(様)の機能または特徴が、備えられるかまたは保持される限り、本開示は、本明細書に記載される態様のいずれかによる、任意の融合タンパク質/ポリペプチドまたは抗体または抗体様ポリペプチドまたはその抗体断片などの、リガンド/抗原結合部分/分子の任意のタイプまたは形式に好適に適用可能である。
【0282】
抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
【0283】
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体、例えば抗リガンド抗体のFabバージョンおよびそのリガンドを用いて実施される。例えば、リガンドに対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識リガンドの漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識リガンドによりFabを平衡化させ、次いで結合したリガンドを抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
【0284】
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIAcore, Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE, Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N’- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。リガンドは、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。リガンドの注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。カイネティクスの測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM~500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度のリガンドの存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗リガンド抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定され得る。したがって、当業者は、他のリガンド結合分子、抗原結合分子、または抗体について、様々な種類のリガンド、リガンド受容体、および抗原に対する親和性を測定する他の一般的な方法を用いて、親和性測定を実施することができる。
【0285】
抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0286】
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。本明細書において、ダイアボディはまた、二価または二重特異性であってもよい2つのリガンド結合ドメインを有する抗体断片を指す。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
【0287】
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1参照)。
【0288】
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
【0289】
キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
【0290】
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
【0291】
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「リサーフェイシング」を記載); Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載) において、さらに記載されている。
【0292】
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) および Presta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
【0293】
ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
【0294】
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
【0295】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
【0296】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
【0297】
ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特性を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載されている。
【0298】
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
【0299】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
【0300】
多重特異性抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の1つは、抗原に対するものであり、もう1つは他の任意の抗原へのものである。特定の態様において、二重特異性抗体は、抗原の異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、抗原を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
【0301】
いくつかの態様において、二重特異性抗体の結合特異性のうちの1つは、1つのリガンドに対するものであり、もう1つは、他の任意のリガンドに対するものである。さらに、二重特異性抗体は、リガンドの異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、リガンド受容体を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
【0302】
多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991) 参照)、およびknob-in-hole技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effects) を操作すること (WO2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (scFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。
【0303】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号A1参照)。本明細書で抗体または断片は、抗原と別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。本明細書において、改変抗体には、3つ以上の機能的リガンド結合ドメインを伴う抗体、およびリガンドと別の異なるリガンドとに結合し得るリガンド結合ドメインを含む抗体またはその断片が含まれる。
【0304】
抗体変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが、望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性またはリガンド結合性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
【0305】
a)置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換的変異導入の目的部位は、HVRおよびFRを含む。保存的置換を、表2の「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表2の「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的の抗体に導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、または改善したADCCまたはCDCなどの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
【0306】
(表2)
【0307】
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのものに交換することをいう。
【0308】
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。通常、その結果として生じ、さらなる研究のために選ばれた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加したアフィニティ、減少した免疫原性)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、アフィニティ成熟抗体であり、これは、例えばファージディスプレイベースのアフィニティ成熟技術(例えば本明細書に記載されるもの)を用いて適宜作製され得る。簡潔に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、そして変異抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合アフィニティ)に関してスクリーニングを行う。
【0309】
改変(例えば、置換)は、例えば抗体のアフィニティを改善するために、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008) を参照のこと)および/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異VHまたはVLが結合アフィニティに関して試験され得る。二次ライブラリからの構築および再選択によるアフィニティ成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)) に記載されている。アフィニティ成熟のいくつかの態様において、多様性は、任意の様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向変異導入)によって成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリは、所望のアフィニティを有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)を無作為化するHVR指向アプローチを含む。抗原結合またはリガンド結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入またはモデリングを用いて、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的化される。
【0310】
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原またはリガンドに結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数のHVR内で行われ得る。例えば、結合アフィニティを実質的に減少させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、例えば、HVRの抗原またはリガンド接触残基の外側であり得る。上記の変異VHおよびVL配列の特定の態様において、各HVRは改変されていないか、わずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含む。
【0311】
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085によって記載される、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれるものである。この方法において、一残基または一群の標的残基(例えば、荷電残基、例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、およびグルタミン酸)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンもしくはポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原またはリガンドの相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。この初期置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に、さらなる置換が導入され得る。あるいはまたは加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析してもよい。また、リガンド-リガンド結合ドメイン複合体の結晶構造を解析して、リガンド結合ドメインとリガンドとの接触点を特定してもよいことも、本明細書に含まれる。そのような接触残基および近隣の残基を、置換候補として標的化してもよく、または置換候補から除外してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0312】
アミノ酸配列の挿入は、配列内部への単一または複数のアミノ酸残基の挿入と同様、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における1残基から100残基以上を含むポリペプチドの長さの範囲での融合も含む。末端の挿入の例は、N末端にメチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN-またはC-末端に、酵素(例えば、ADEPTのための)または抗体の血漿半減期を増加させるポリペプチドを融合させたものを含む。
【0313】
b)グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
【0314】
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
【0315】
一態様において、Fc領域に(直接的または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるようにMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付加されたすべての糖構造体(例えば、複合、ハイブリッド、および高マンノース構造体)の和に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位のあたりに位置するアスパラギン残基を表す(Fc領域残基のEUナンバリング)。しかし、複数の抗体間のわずかな配列の多様性に起因して、Asn297は、297位の±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位~300位の間に位置することもあり得る。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta, L.) ;第2004/0093621号 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd) を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例は、US2003/0157108; WO2000/61739; WO2001/29246; US2003/0115614; US2002/0164328; US2004/0093621; US2004/0132140; US2004/0110704; US2004/0110282; US2004/0109865; WO2003/085119; WO2003/084570; WO2005/035586; WO2005/035778; WO2005/053742; WO2002/031140; Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004) を含む。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質のフコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第US2003/0157108号A1、Presta, L;およびWO2004/056312A1、Adams et al.、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);およびWO2003/085107を参照のこと)を含む。
【0316】
例えば抗体のFc領域に付加された二分枝型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878 (Jean-Mairet et al.) ;米国特許第6,602,684号 (Umana et al.);およびUS2005/0123546 (Umana et al.) に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、WO1997/30087 (Patel et al.);WO1998/58964 (Raju, S.); およびWO1999/22764 (Raju, S.) に記載されている。
【0317】
c)Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0318】
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性の減少/欠乏を確認するために、インビトロおよび/またはインビボの細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を欠く(よってADCC活性を欠く蓋然性が高い)一方でFcRn結合能を維持することを確かめるために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロ測定法(アッセイ)の非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、 Hellstrom, I. et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性の測定法を用いてもよい(例えば、ACT1(商標)non-radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry (CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays 法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このような測定法に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (Natural Killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびインビボでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova, S.B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
【0319】
減少したエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329の1つまたは複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を伴ういわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸ポジション265、269、270、297、および327の2つ以上の置換を伴うFc変異体を含む。
【0320】
FcRsへの増加または減少した結合性を伴う特定の抗体変異体が、記述されている。(米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001) を参照のこと。)
【0321】
特定の態様において、抗体変異体は、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換(例えば、Fc領域のポジション298、333、および/または334(EUナンバリングでの残基)のところでの置換)を伴うFc領域を含む。
【0322】
いくつかの態様において、例えば米国特許第6,194,551号、WO99/51642、およびIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000) に記載されるように、改変された(つまり、増加したか減少したかのいずれかである)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害 (CDC) をもたらす改変が、Fc領域においてなされる。
【0323】
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する増加した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を増加する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
【0324】
Fc領域変異体の他の例については、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照のこと。
【0325】
d)システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAbs」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
【0326】
抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ1,3ジオキソラン、ポリ1,3,6,トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、1つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
【0327】
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
【0328】
組み換えの方法および構成
例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるとおり、抗体は組み換えの方法や構成を用いて製造することができる。一態様において、本明細書に記載の抗リガンド抗体をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる態様において、このような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような態様の1つでは、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または、(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は、真核性である(例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞)またはリンパ系の細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0細胞))。一態様において、抗体の発現に好適な条件下で、上述のとおり当該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および任意で、当該抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することを含む、抗リガンド抗体を作製する方法が提供される。
【0329】
抗リガンド抗体の組み換え製造のために、(例えば、上述したものなどの)抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定されるだろう(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)。
【0330】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
【0331】
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
【0332】
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
【0333】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
【0334】
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR- CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
【0335】
イムノコンジュゲート
本発明はまた、1つまたは複数の細胞傷害剤(例えば化学療法剤または化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物もしくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、もしくはそれらの断片)または放射性同位体)にコンジュゲートされた本明細書の抗リガンド抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0336】
一態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が、これらに限定されるものではないが以下を含む1つまたは複数の薬剤にコンジュゲートされた、抗体-薬剤コンジュゲート (antibody-drug conjugate: ADC) である:メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、および欧州特許第0,425,235号B1参照);例えばモノメチルオーリスタチン薬剤部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号および第5,780,588号および第7,498,298号参照)などのオーリスタチン;ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、および第5,877,296号;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);ならびにLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998) 参照);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);および米国特許第6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065。
【0337】
別の態様において、イムノコンジュゲートは、これらに限定されるものではないが以下を含む酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗体を含む:ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) 由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ (Aleurites fordii) タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ (Phytolacca americana) タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ツルレイシ (momordica charantia) 阻害剤、クルシン (curcin)、クロチン、サボンソウ (saponaria officinalis) 阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン (mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセン。
【0338】
別の態様において、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲートの製造に利用可能である。例は、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212PbおよびLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートを検出のために使用する場合、放射性コンジュゲートは、シンチグラフィー検査用の放射性原子(例えばTc-99mもしくは123I)、または、核磁気共鳴 (NMR) イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)用のスピン標識(例えばここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄)を含み得る。
【0339】
抗体および細胞傷害剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質連結剤を用いて作製され得る。例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (SMCC)、イミノチオラン (IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)である。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987) に記載されるようにして調製され得る。炭素-14標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸 (MX-DTPA) は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害薬の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0340】
本明細書のイムノコンジュゲートまたはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に考慮するが、これらに限定されない。
【0341】
測定法(アッセイ)
いくつかの態様では、融合ポリペプチドは、抗体またはその断片を含むリガンド結合部分/分子を含み、ここで、抗体は、リガンドに結合する完全長抗体またはIgG抗体様ポリペプチド、すなわち抗リガンド抗体である。本明細書で提供されるそのような抗リガンド抗体は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
【0342】
結合測定法およびその他の測定法
一局面において、本発明の抗体(すなわち、抗リガンド抗体)は、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、そのリガンド結合活性に関して試験される。
【0343】
別の局面において、リガンドへの結合に関して他のリガンド結合分子と競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体は、リガンド結合分子によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
【0344】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたリガンドは、リガンドに結合する第1の標識された抗体(例えば、抗リガンド抗体またはリガンド結合分子)およびリガンドへの結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたリガンドが、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のリガンドに対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたリガンドに結合した標識の量が測定される。固定化されたリガンドに結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がリガンドへの結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbour, NY) を参照のこと。
【0345】
活性測定法
一局面において、生物学的活性を有する抗リガンド抗体のそれを同定するための測定法が提供される。生物学的活性は、例えば、リガンド受容体への結合またはリガンドシグナル伝達の活性化を含んでよい。また、このような生物学的活性をインビボおよび/またはインビトロで有する抗体が、提供される。
【0346】
特定の態様において、本発明の抗体は、このような生物学的活性について試験される。インビトロでのリガンド活性化は、リガンドルシフェラーゼアッセイを実施することによって、確認することができる。簡潔に説明すると、リガンド受容体を発現する細胞を培養した。次いで、抗リガンド抗体を、細胞表面上に発現されるリガンド受容体に対する抗体の結合を許容する条件下でインキュベートした。対照として、リガンドを、細胞表面上に発現されるリガンド受容体に対する結合のために被験抗リガンド抗体と同じ条件下でインキュベートする。次いで、ルシフェラーゼ活性を、Bio-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega, G7940)などの適切なアッセイシステムを用いて、製造業者の説明書に従って検出する。発光は、GloMax(登録商標)Explorer System(Promega #GM3500)を用いて、製造業者の説明書に従って検出することができる。抗リガンド抗体およびリガンドについて匹敵するレベルの活性が検出される場合には、抗リガンド抗体は、リガンド受容体に結合して、そのリガンドシグナル伝達を活性化できることが実証される。
【0347】
例示的なIL-12融合ポリペプチド
本発明のいくつかの態様において、リガンド部分は、IL-12を含み、リガンド結合部分/分子は、抗体またはその断片を含み、ここで、抗体は、IL-12に結合する全長抗体またはIgG抗体様ポリペプチド、すなわち抗IL-12抗体である。
【0348】
本願のいくつかの態様において、リガンド部分は、IL-12を含み、融合タンパク質は、(i)~(vi)からなる群より選択される重鎖および軽鎖の任意の組み合わせを含む:
(i)配列番号:1009と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖;
(ii)配列番号:1016と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖;
(iii)配列番号:1017と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖;
(iv)配列番号:1012と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)配列番号:1050と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;および
(vi)配列番号:1088と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖。
【0349】
本願のいくつかの態様において、融合タンパク質は、以下の(i)~(iii)から選択される重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の組み合わせのいずれか1つを含む、IL-12結合部分を含む:
(i)配列番号:1084と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
(ii)配列番号:1085と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);および
(iii)配列番号:1086と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)。
【0350】
別の局面において、IL-12に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、配列番号:1084のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む融合タンパク質のリガンド結合ドメインは、IL-12に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個~10個のアミノ酸が、配列番号:1084において置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で行われる。任意で、IL-12に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、配列番号:1084におけるVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0351】
別の局面において、IL-12に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質が提供され、ここで、抗体は、配列番号:1085または1086のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む融合タンパク質のリガンド結合ドメインは、IL-12に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個~10個のアミノ酸が、配列番号:1085または1086において置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で行われる。任意で、IL-12に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、配列番号:1085 または1086におけるVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0352】
別の局面において、IL-12に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質が提供され、ここで、IL-12に結合するリガンド結合ドメインは、上記で提供される態様のいずれかにおけるようなVH、および上記で提供される態様のいずれかにおけるようなVLを含む。一態様において、IL-12に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、それぞれ、配列番号:1012または1050、および配列番号:1009、1016、または1017におけるVH配列およびVL配列を、それらの配列の翻訳後修飾を含めて、含む。好ましい態様において、IL-12に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、それぞれ、配列番号:1012および配列番号:1009におけるVH配列およびVL配列、それぞれ、配列番号:1050および配列番号:1016におけるVH配列およびVL配列、それぞれ、配列番号:1050および配列番号:1017におけるVH配列およびVL配列を、それらの配列の翻訳後修飾を含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0353】
例示的なIL-22融合ポリペプチド
本発明のいくつかの態様において、リガンド部分は、IL-22を含み、リガンド結合部分/分子は、抗体またはその断片を含み、ここで、抗体は、IL-22に結合する全長抗体またはIgG抗体様ポリペプチド、すなわち抗IL-22抗体である。
【0354】
本願のいくつかの態様において、リガンド部分は、IL-22を含み、融合タンパク質は、以下からなる群より選択される重鎖および軽鎖の任意の組み合わせを含む:
(i)配列番号:1095と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖;
(ii)配列番号:1097と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖;および
(iii)配列番号:1099と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖。
【0355】
本願のいくつかの態様において、融合タンパク質は、以下から選択される重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の組み合わせのいずれか1つを含む、IL-22結合部分を含む:
(i)配列番号:1091と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
(ii)配列番号:1092と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);および
(iii)配列番号:1093と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
(iv)配列番号:1094と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)。
【0356】
別の局面において、IL-22に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、配列番号:1091または1093のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む融合タンパク質のリガンド結合ドメインは、IL-22に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個~10個のアミノ酸が、配列番号:1091または1093において置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で行われる。任意で、IL-22に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、配列番号:1091または1093におけるVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0357】
別の局面において、IL-22に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質が提供され、ここで、抗体は、配列番号:1092または1094のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む融合タンパク質のリガンド結合ドメインは、IL-22に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個~10個のアミノ酸が、配列番号:1092または1094において置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で行われる。任意で、IL-22に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、配列番号:1092 または1094におけるVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0358】
別の局面において、IL-22に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質が提供され、ここで、IL-22に結合するリガンド結合ドメインは、上記で提供される態様のいずれかにおけるようなVH、および上記で提供される態様のいずれかにおけるようなVLを含む。一態様において、IL-22に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、それぞれ、配列番号:1091または1093、および配列番号:1092または1094におけるVH配列およびVL配列を、それらの配列の翻訳後修飾を含めて、含む。好ましい態様において、IL-22に結合するリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質は、それぞれ、配列番号:1091および配列番号:1092におけるVH配列およびVL配列、それぞれ、配列番号:1093および配列番号:1094におけるVH配列およびVL配列を、それらの配列の翻訳後修飾を含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0359】
特定の態様において、本発明は、インターロイキン-12(IL-12)であるリガンドを含む融合タンパク質を提供し、該IL-12は、プロテアーゼに曝露された場合のそのタンパク質分解を妨げるように改変されており、すなわち、プロテアーゼ耐性IL-12である。改変は、プロテアーゼの存在下でタンパク質分解を妨げる、IL-12に導入されるアミノ酸改変を含み、特に、改変は、IL-12融合タンパク質の可変領域のエピトープに極めて近接している、ヘパリン結合部位で行われる。
IL-12は、ヒトマトリプターゼ/ST14触媒ドメイン(MT-SP1)などのプロテアーゼによって切断され得るヘパリン結合部位を含む。IL-12融合タンパク質の特定の場合に、ヘパリン結合部位は、IL-12融合タンパク質の可変領域のエピトープに極めて近接していることがある。ヘパリン結合部位でのプロテアーゼ切断は、活性化されたIL-12融合タンパク質のクリアランスに影響を及ぼし得る。したがって、いくつかの態様において、ヘパリン結合部位でのIL-12の意図的ではない切断を妨げるが、IL-12融合タンパク質のエピトープの能力を保存するために、少なくとも1つのアミノ酸改変が、IL-12のヘパリン結合部位中に導入されてもよい。
本明細書で用いられる用語「プロテアーゼ耐性の」または「プロテアーゼ耐性」は、プロテアーゼの存在下でそのペプチド結合の1つまたは複数の加水分解性切断を妨げる、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質などのペプチド結合を含む分子の能力のことをいう。プロテアーゼ耐性の程度は、加水分解性切断が評価される同じ条件下で同じ量のプロテアーゼの存在下に供された場合に、加水分解性切断にあまり耐えることができない同じ正体の別の分子との比較によって、測定され得る。プロテアーゼ切断は、元の未切断の親分子よりも低い分子量の切断された断片が得られた場合に、確認することができる。親分子のプロテアーゼ切断に由来する低い分子量の断片の検出が可能である当業者に公知の任意の方法が、プロテアーゼ耐性を評価するために用いられ得る。実施例は、プロテアーゼ耐性被験改変体およびプロテアーゼ耐性がより低い対照を、pH、温度、および持続時間を含む、同じ条件下で、同じ濃度のプロテアーゼに供することを含む。続いて、タンパク質分解性切断に由来する、より低い分子量の断片の有無が、処理された被験サンプルおよび対照サンプルを還元SDS-PAGEに供することによって観察され得る。
【0360】
好ましい態様において、組換えヒトマトリプターゼ/ST14触媒ドメイン(MT-SP1)(R&D Systems, Inc., 3926-SE-010)を、プロテアーゼとして用いた。75 nMのプロテアーゼおよび750 nMのプロテアーゼ耐性IL-12を含む融合タンパク質を、PBSにおいて37摂氏度(℃)の条件下で1、4、および24時間インキュベートした。続いて、プロテアーゼインキュベーション、すなわちプロテアーゼ切断後の親よりも低い分子量の断片の存在を、還元SDS-PAGEによって評価した。プロテアーゼ耐性改変体は、消化された分子が、上述の条件下で少なくとも4時間、最大で24時間のタンパク質分解性消化に供された後に、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%よりも多く、または100%完全なままである場合に選択される。完全なままである分子のパーセンテージの評価は、例えば、元の親分子と比較した消化後の親分子に由来する、より低い分子量の断片(またはなし)のSDS-PAGE濃度測定を含む、種々の分子生物学技術による方法において評価され得る。
【0361】
いくつかの態様において、アミノ酸改変は、MT-SP1を含むプロテアーゼによって切断されやすいIL-12のヘパリン結合領域に導入される。切断は、IL-12のp40サブユニットのK260とR261との間のヘパリン結合領域において生じることができる。さらなる態様において、アミノ酸改変は、IL-12の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのポジションの改変を含む。本明細書に含まれる改変または改変の組み合わせは、該改変または改変の組み合わせを含むIL-12改変体が、IL-12シグナル伝達を活性化するかまたは開始するためにIL-12結合パートナー、例えば、IL-12Rb1、IL-12Rb2、およびSTAT4との結合能力を保持する限り、以下のリストに限定されない。好ましい態様において、IL-12に対して改変が行われた後に、IL-12(例えば、IL-12のヘパリン結合領域)は、以下の群(a)~(p)から選択される改変された配列を含み得る:
(a)KSHRE(配列番号:1052);
(b)KSHHE(配列番号:1053);
(c)KSHKE(配列番号:1054);
(d)KSHSE(配列番号:1055);
(e)KSKHRE(配列番号:1056);
(f)KSKQRE(配列番号:1057);
(g)KSKERE(配列番号:1058);
(h)KSKPRE(配列番号:1059);
(i)KHKE(配列番号:1060);
(j)KHHE(配列番号:1061);
(k)KHRE(配列番号:1062);
(l)KKHE(配列番号:1063);
(m)KRHE(配列番号:1064);
(n)KRE(配列番号:1065);
(o)KHE(配列番号:1066);および
(p)KKE(配列番号:1067)。
【0362】
本願のいくつかの態様において、プロテアーゼ耐性IL-12は、配列番号:1068~配列番号:1083と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、プロテアーゼ耐性IL-12は、配列番号:1068~配列番号:1083と少なくとも70%、80%、90%、または100%同一であるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。好ましい態様において、プロテアーゼ耐性IL-12は、配列番号:1068、配列番号:1069、または配列番号:1076、または配列番号:1077、または配列番号:1078、または配列番号:1079、または配列番号:1080と少なくとも70%、80%、90%、または100%同一であるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。さらに別の好ましい態様において、プロテアーゼ耐性IL-12は、配列番号:1068、配列番号:1069、または配列番号:1076、または配列番号:1077、または配列番号:1078、または配列番号:1079、または配列番号:1080と同一であるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、プロテアーゼ耐性IL-12は、天然型プロテアーゼ切断配列であるKSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まない。
いくつかの態様において、プロテアーゼ耐性IL-12は、(i)配列番号:1068~配列番号:1083からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ(ii)配列番号:1052~配列番号:1067からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、プロテアーゼ耐性IL-12は、(i)配列番号:1068~配列番号:1083からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ(ii)KSKREK(配列番号:1102)のアミノ酸配列を含まない。
一局面において、前述の態様のいずれかの融合タンパク質を含むライブラリが、本明細書に含まれ、ここで、該ライブラリは、プロテアーゼの非存在下と比較してプロテアーゼの存在下でVHとVLとの間の会合を低減させる1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、融合タンパク質をスクリーニングする方法によって得られ、該スクリーニングする方法は、前述の態様のいずれかに例示される通りである。
一局面において、前述の態様のいずれかの融合タンパク質を含むライブラリが、本明細書に含まれ、ここで、該ライブラリは、プロテアーゼの非存在下と比較してプロテアーゼの存在下でVHとVLとの間の会合を低減させる1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、融合タンパク質を製造する方法によって得られ、該プロテアーゼの非存在下と比較してプロテアーゼの存在下でVHとVLとの間の会合を低減させる1つまたは複数のアミノ酸改変は、前述の態様のいずれかに例示されるようなスクリーニングする方法によって特定される。
【0363】
III.診断および検出のための方法および組成物
いくつかの態様において、融合タンパク質は、抗体またはその断片を含むリガンド結合部分/分子を含み、ここで、抗体は、リガンドに結合する全長抗体またはIgG抗体様ポリペプチド、すなわち抗リガンド抗体である。本明細書で提供されるように、融合タンパク質または抗リガンド抗体は、生物学的サンプルにおけるリガンド受容体などのリガンド結合パートナーの存在を検出するのに有用である。本明細書で用いられる用語「検出」は、定量的または定性的な検出を包含する。特定の態様において、生物学的サンプルは、細胞または組織、例えば、リガンド受容体を発現するがん細胞もしくは組織、またはリガンド受容体を発現する炎症性細胞もしくは組織、または任意のリガンド受容体を発現する細胞もしくは組織を含む。
【0364】
一態様において、診断方法または検出方法において使用するための融合タンパク質または抗リガンド抗体が提供される。さらなる局面において、生物学的サンプルにおけるリガンド受容体などのリガンド結合パートナーの存在を検出する方法が提供される。特定の態様において、方法は、リガンドに対する融合タンパク質または抗リガンド抗体の結合を許容する条件下で、生物学的サンプルを、本明細書に記載されるような融合タンパク質または抗リガンド抗体と接触させること、および融合タンパク質または抗リガンド抗体とリガンドとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することを含む。そのような方法は、インビトロの方法またはインビボの方法であり得る。一態様において、融合タンパク質または抗リガンド抗体は、例えば、リガンドが患者を選択するためのバイオマーカーである場合、抗リガンド抗体での治療に適合する被験体を選択するために使用される。
【0365】
特定の態様において、標識された抗リガンド抗体が提供される。標識は、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)ならびに、例えば酵素反応または分子間相互作用を通じて間接的に検出される部分(例えば酵素またはリガンド)を含むが、これらに限定されない。例示的な標識は、これらに限定されるものではないが、以下を含む:放射性同位体32P、14C、125I、3Hおよび131I、希土類キレートなどの発蛍光団またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)などのルシフェラーゼ、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ (horseradish peroxidase: HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、単糖オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環オキシダーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼ)と連結されたもの、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル類、ならびにこれらに類するもの。
【0366】
IV. 医薬組成物/製剤
本発明の医薬組成物は、当業者に公知の方法の使用によって製剤化することができる。例えば、医薬組成物は、水または他の薬学的に許容される液体の任意を伴う無菌の溶液または懸濁液の注射形態で、非経口的に使用することができる。医薬組成物は、例えば、ペプチドを、薬理学的に許容される担体または媒体、具体的には、滅菌水または生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせること、およびそれらを混合して、一般的に認められた製薬実施に要求される単位剤形にすることによって、製剤化することができる。これらの製剤における有効成分の量は、処方された範囲で適切な体積をもたらすように設定される。
【0367】
注射のための無菌組成物は、注射用蒸留水等のビヒクルを用いて、通常の製剤実施に従って製剤化することができる。注射用の水溶液の例には、生理食塩水、ブドウ糖、または他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、および塩化ナトリウム)を含有する等張液が含まれる。水溶液は、適切な溶解補助剤、例えば、アルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、または非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80(商標)、HCO-50等)と組み合わせて用いることができる。
【0368】
油剤の例には、ゴマ油および大豆油が含まれる。油剤はまた、溶解補助剤としての安息香酸ベンジルおよび/またはベンジルアルコールと組み合わせて用いることもできる。油剤には、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液および酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩酸プロカイン)、安定剤(例えば、ベンジルアルコールおよびフェノール)、ならびに酸化防止剤を補給することができる。調製された注射液は、通常、適切なアンプルに充填される。
【0369】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、非経口経路を通して投与される。例えば、注射剤形、経鼻剤形、経肺剤形、または経皮剤形を有する組成物が投与される。医薬組成物は、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または皮下注射によって、全身にまたは局部的に投与され得る。
【0370】
投与方法は、患者の年齢および症状に従って適宜選択することができる。リガンド結合分子を含有する医薬組成物の投与量は、例えば、1投与量につき体重1 kgあたり0.0001 mg~1000 mgの範囲に設定することができる。あるいは、ポリペプチドを含有する医薬組成物の投与量は、例えば、患者あたり0.001~100000 mgの投与量に設定することができる。しかし、本発明は、これらの数値によって必ずしも制限されない。投与量および投与方法は、患者の体重、年齢、症状等に応じて変動するが、当業者は、これらの条件を考慮して適切な投与量および投与方法を設定することができる。
【0371】
本明細書に記載の本発明の薬学的製剤/組成物は、所望の純度を有する融合タンパク質または抗体を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、可溶性中性活性型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質 (sHASEGP)(例えば、rHuPH20 (HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.) などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質)などの間質性薬剤分散剤を含む。特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は(rHuPH20を含む)、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0372】
例示的な凍結乾燥製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液製剤は、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝液を含んでいる。
【0373】
本明細書の組成物/製剤は、治療される特定の適応症のために必要であれば1つより多くの有効成分を含んでもよい。互いに悪影響を与えあわない相補的な活性を伴うものが好ましい。このような有効成分は、意図された目的のために有効である量で、好適に組み合わせられて存在する。
【0374】
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
【0375】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、融合タンパク質または抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
【0376】
生体内 (in vivo) 投与のために使用される組成物/製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
[0][0][0][0][0]
【0377】
V. 治療方法および組成物
本発明はまた、本発明の融合タンパク質または抗体と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物にも関する。ある特定の態様において、本開示の医薬組成物は、細胞増殖抑制剤である。ある特定の態様において、本開示の医薬組成物は、がんまたは悪性腫瘍の治療および/または予防のために使用される医薬組成物である。
【0378】
ある特定の態様において、本開示の医薬組成物は、炎症性疾患の治療および/または予防のために使用される医薬組成物である。ある特定の態様において、本開示の医薬組成物は、腸および肝臓の炎症性疾患の治療および/または予防のために使用される医薬組成物である。ある特定の態様において、本開示の医薬組成物は、炎症性腸疾患、アルコール性脂肪肝疾患、または非アルコール性脂肪肝疾患の治療および/または予防のために使用される医薬組成物である。ある特定の態様において、本開示の医薬組成物は、潰瘍性大腸炎またはクローン病の治療および/または予防のために使用される医薬組成物である。
【0379】
ある特定の態様において、本開示の医薬組成物は、自己免疫疾患の治療および/または予防のために使用される医薬組成物である。ある特定の態様において、本開示の医薬組成物は、関節リウマチ、1型糖尿病、およびSLEの治療および/または予防のために使用される医薬組成物である。
【0380】
本明細書で用いられる「治療」(およびその文法上の派生語、例えば、「治療する」および「治療すること」)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためおよび臨床的病態の経過の間の両方に実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の防止、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態からの回復またはその緩和、および寛解または改善された予後が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、本発明のリガンド結合分子は、リガンドの生物活性を制御することができ、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅らせるために用いられる。
【0381】
本発明において、医薬組成物とは、通常、疾患の治療もしくは予防のため、または検査もしくは診断のための医薬品のことをいう。
【0382】
本発明において、用語「融合タンパク質を含む医薬組成物」は、「治療されるべき対象に融合タンパク質を投与する工程を含む、疾患を治療する方法」と互換的に用いられてもよく、かつ「疾患の治療用の医薬品の製造のための融合タンパク質の使用」と互換的に用いられてもよい。また、用語「融合タンパク質を含む医薬組成物」は、「疾患を治療するための融合タンパク質の使用」と互換的に用いられてもよい。
【0383】
本発明において、用語「抗体を含む医薬組成物」は、「治療されるべき対象に抗体を投与する工程を含む、疾患を治療する方法」と互換的に用いられてもよく、かつ「疾患の治療用の医薬品の製造のための抗体の使用」と互換的に用いられてもよい。また、用語「抗体を含む医薬組成物」は、「疾患を治療するための抗体の使用」と互換的に用いられてもよい。
【0384】
本発明のいくつかの態様において、本発明の融合タンパク質または抗体を、個体に投与することができる。リガンド結合部分/分子のリガンド結合ドメインとリガンド部分との間には、非共有結合が依然として存在する。
【0385】
本発明の融合タンパク質を個体に投与した場合、融合タンパク質は、インビボで運搬される。融合タンパク質中のリガンド結合部分は、標的組織において切断され、そのためにリガンドに対するリガンド結合分子/部分のリガンド結合ドメインの非共有結合が減弱されて、リガンドおよびリガンド結合分子の一部分を融合タンパク質から遊離させる。遊離されたリガンドおよび遊離されたリガンド結合分子の一部分は、標的組織においてリガンドの生物活性を発揮し、標的組織によって引き起こされる疾患を治療することができる。リガンド結合ドメインがリガンドに結合している場合には、リガンド結合部分がリガンド部分の生物活性を抑制し、リガンド結合部分が標的組織において特異的に切断される態様において、融合タンパク質中のリガンドは、運搬中には生物活性を発揮せず、融合タンパク質が標的組織において切断された時のみに生物活性を発揮する。
結果として、全身有害反応がより少ない状態で、疾患を治療することができる。
【0386】
一局面において、リガンド部分は、IL-12またはIL-22であり、融合タンパク質または抗リガンド抗体は、IL-12またはIL-22に結合する。この局面において、医薬品としての使用のための、IL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体が提供される。さらなる局面において、IL-12またはIL-22媒介性疾患の治療における使用のための、IL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体が提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための、IL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体が提供される。特定の態様において、本発明は、IL-12もしくはIL-22媒介性疾患、またはがん、または悪性腫瘍、または炎症性疾患、または自己免疫疾患を有する個体を治療する方法であって、該個体にIL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、IL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体を提供する。1つのそのような態様において、方法は、個体に、例えば下記のような、少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。さらなる態様において、本発明は、個体におけるIL-12またはIL-22シグナル伝達の調節における使用のための、IL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体におけるIL-12またはIL-22シグナル伝達の調節の方法であって、IL-12もしくはIL-22媒介性疾患、またはがん、または悪性腫瘍、または炎症性疾患、または自己免疫疾患を治療するために、該個体にIL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、IL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体を提供する。上記態様のいずれかによる「個体」は、好ましくはヒトである。
【0387】
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製におけるIL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体の使用を提供する。一態様において、医薬品は、IL-12もしくはIL-22媒介性疾患、またはがん、または悪性腫瘍、または炎症性疾患、または自己免疫疾患の治療のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、IL-12またはIL-22媒介性疾患を治療する方法であって、IL-12もしくはIL-22媒介性疾患、またはがん、または悪性腫瘍、または炎症性疾患、または自己免疫疾患を有する個体に、医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。1つのそのような態様において、方法は、個体に、例えば下記のような、少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。さらなる態様において、医薬品は、個体におけるIL-12またはIL-22シグナル伝達の調節のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体におけるIL-12またはIL-22シグナル伝達の調節の方法であって、IL-12もしくはIL-22媒介性疾患、またはがん、または悪性腫瘍、または炎症性疾患、または自己免疫疾患を治療するために、該個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0388】
さらなる局面において、本発明は、IL-12もしくはIL-22媒介性疾患、またはがん、または悪性腫瘍、または炎症性疾患、または自己免疫疾患を治療する方法を提供する。一態様において、方法は、そのようなIL-12もしくはIL-22媒介性疾患、またはがん、または悪性腫瘍、または炎症性疾患、または自己免疫疾患を有する個体に、IL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体の有効量を投与する工程を含む。1つのそのような態様において、方法は、個体に、例えば下記のような、少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。上記態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0389】
さらなる局面において、本発明は、個体におけるIL-12またはIL-22シグナル伝達の調節のための方法を提供する。一態様において、方法は、IL-12またはIL-22シグナル伝達を調節するために、個体にIL-12もしくはIL-22融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体の有効量を投与する工程を含む。一態様において、「個体」は、ヒトである。
【0390】
前述のように、IL-12またはIL-22媒介性疾患の治療とは、IL-12またはIL-22シグナル伝達の増加または増強によって改善または予防されやすい任意の疾患、障害、または状態の治療のことをいう。本発明は、IL-12またはIL-22シグナル伝達の増加または増強によって改善または予防されやすい任意の疾患、障害、または状態の治療における使用のための、本明細書に記載される融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体の使用を含む。さらなる局面において、本発明は、IL-12またはIL-22シグナル伝達の増加または増強によって改善または予防されやすい任意の疾患、障害、または状態の治療のための医薬品の製造における、本明細書に記載される融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体の使用を含む。またさらなる局面において、本発明は、IL-12またはIL-22シグナル伝達の増加または増強によって改善または予防されやすい任意の疾患、障害、または状態を治療する方法における、本明細書に記載される融合タンパク質または抗IL-12もしくは抗IL-22抗体を含む。さらなる局面において、IL-12またはIL-22シグナル伝達の調節は、IL-12またはIL-22シグナル伝達の増加または増強によって改善または予防されやすい疾患、障害、または状態の治療を改善または予防する、該IL-12またはIL-22シグナル伝達の増加または増強である。
【0391】
一態様において、好ましい細胞型は、腫瘍微小環境内のIL-12またはIL-22リガンド受容体発現細胞である。好ましい態様において、本発明は、がんまたは悪性腫瘍を治療する方法を提供し、本方法は、例えば、胃がん、頭頸部がん(H&N)、食道がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、筋肉腫瘍、膵臓がん、前立腺がん、精巣がん、子宮がん、胆管がん、メルケル細胞がん、膀胱がん 甲状腺がん、神経鞘腫、副腎がん(副腎)、肛門がん、中枢神経系腫瘍、神経内分泌組織腫瘍、陰茎がん、胸膜腫瘍、唾液腺腫瘍、外陰がん、胸腺腫、ならびに小児がん(ウィルムス腫瘍、神経芽腫、肉腫、肝芽腫、および胚細胞腫瘍)を含むがこれらに限定されない、がんを有する個体に投与する工程を含む。さらにより好ましいがんタイプには、胃がん、頭頸部がん(H&N)、食道がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、乳がん、結腸がん、腎臓がん、皮膚がん、筋肉腫瘍、膵臓がん、前立腺がん、精巣がん、および子宮がんが含まれるが、これらに限定されない(Tumori. (2012) 98, 478-484;Tumor Biol. (2015) 36, 4671-4679;Am J Clin Pathol (2008) 130, 224-230;Adv Anat Pathol (2014) 21, 450-460;Med Oncol (2012) 29, 663-669;Clinical Cancer Research (2004) 10, 6612-6621;Appl Immunohistochem Mol Morphol (2009) 17, 40-46;Eur J Pediatr Surg (2015) 25, 138-144;J Clin Pathol (2011) 64, 587-591;Am J Surg Pathol (2006) 30, 1570-1575;Oncology (2007) 73, 389-394;Diagnostic Pathology (2010) 64, 1-6;Diagnostic Pathology (2015) 34, 1-6;Am J Clin Pathol (2008) 129, 899-906;Virchows Arch (2015) 466, 67-76)。
【0392】
いくつかの態様において、個体は、上記の融合タンパク質もしくは抗体、または、および/またはある種の抗がん剤での治療を、融合タンパク質または抗体および追加治療剤を用いる併用療法に先立って受けたことがある患者である。いくつかの態様において、患者は、標準療法を受けることができないか、または標準療法が無効である患者である。いくつかの態様において、患者が有するがんは、早期または末期である。
【0393】
本明細書で用いられる場合、「がん」とは、卵巣がんまたは胃がんなどの上皮性悪性腫瘍だけではなく、慢性リンパ性白血病またはホジキンリンパ腫などの造血系腫瘍を含む非上皮性悪性腫瘍のこともいう。本明細書において、用語「がん」、「がん腫」、「腫瘍」、「新生物」などは、互いに区別されず、相互に交換可能である。
【0394】
さらなる局面において、本発明は、例えば、上記治療的方法のいずれかにおける使用のための、本明細書で提供される融合タンパク質または抗体のいずれかを含む、薬学的組成物/製剤を提供する。一態様において、薬学的組成物/製剤は、本明細書で提供される融合タンパク質または抗体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的組成物/製剤は、本明細書で提供される融合タンパク質または抗体のいずれかと、例えば、下記のような、少なくとも1つの追加治療剤とを含む。
【0395】
本発明の融合タンパク質または抗体は、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の融合タンパク質または抗体は、少なくとも1つの追加治療剤と同時投与されてもよい。特定の態様において、追加治療剤は、細胞増殖抑制剤、化学療法剤、または免疫抑制剤であってもよい。一態様において、追加治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0396】
上述したような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同じまたは別々の製剤に含まれる)、および個別投与を包含し、個別投与の場合、本発明の抗体の投与が追加治療剤の投与に先立って、と同時に、および/または、続いて、行われ得る。一態様において、融合タンパク質または抗体の投与および追加治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、または約1、2、または3週間以内、または約1、2、3、4、5、または6日以内に行われる。本発明の融合タンパク質または抗体は、放射線療法と組み合わせて使用されることもできる。
【0397】
本発明の非限定的な態様において、本発明の薬学的組成物(併用療法)は、免疫チェックポイント阻害剤での治療に対して難治性であるがんを有する患者を治療するために使用され得る。例えば、免疫チェックポイント阻害剤の投与が、所望の薬物有効性を達成することができなかった、リガンドに関連したがんを有する患者を、本発明の薬学的組成物(併用療法)で治療することができる。換言すると、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法で既に治療されているリガンドに関連したがんを、本発明の薬学的組成物(併用療法)で治療することができる。薬学的組成物に含まれる追加治療剤の好ましい例には、免疫チェックポイント阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0398】
本発明の非限定的な態様において、本発明の薬学的組成物(併用療法)は、本発明の融合タンパク質または抗体での治療に対して難治性であるがんを有する患者を治療するために使用され得る。例えば、そのがんが、本発明の融合タンパク質もしくは抗体の投与後に該タンパク質もしくは抗体に対して抵抗性になっているか、または本発明のタンパク質もしくは抗体の投与が、所望の薬物有効性を達成することができなかった、リガンドに関連したがんを有する患者を、本発明の薬学的組成物(併用療法)で治療することができる。換言すると、本発明の融合タンパク質または抗体を用いた療法で既に治療されているリガンドに関連したがんを、本発明の薬学的組成物(併用療法)で治療することができる。薬学的組成物に含まれる追加治療剤の好ましい例には、免疫チェックポイント阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0399】
本発明の融合タンパク質または抗体(および、任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、および経鼻投与、また局所的処置のために望まれる場合は病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。投薬は、投与が短期か長期かに一部応じて、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるなど、任意の好適な経路によってなされ得る。これらに限定されるものではないが、単回投与または種々の時点にわたる反復投与、ボーラス投与、および、パルス注入を含む、種々の投薬スケジュールが本明細書の考慮の内である。
【0400】
本発明の融合タンパク質または抗体は、優良医療規範 (good medical practice) に一致したやり方で、製剤化され、投薬され、また投与される。この観点から考慮されるべきファクターは、治療されているその特定の障害、治療されているその特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、剤を送達する部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に公知の他のファクターを含む。融合タンパク質または抗体は、必ずしもそうでなくてもよいが、任意で、問題の障害を予防するまたは治療するために現に使用されている1つまたは複数の剤とともに、製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する融合タンパク質または抗体の量、障害または治療のタイプ、および上で論じた他のファクターに依存する。これらは通常、本明細書で述べたのと同じ用量および投与経路で、または本明細書で述べた用量の約1から99%で、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の経路で、使用される。
【0401】
疾患の予防または治療のために、本発明の融合タンパク質または抗体の適切な用量(単独で用いられるときまたは1つまたは複数の他の追加治療剤とともに用いられるとき)は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、融合タンパク質または抗体が予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、薬歴、患者の臨床歴および融合タンパク質または抗体に対する応答、ならびに、主治医の裁量に依存するだろう。融合タンパク質または抗体は、患者に対して、1回で、または一連の処置にわたって、好適に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるにしても連続注入によるにしても、約1μg/kgから15 mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の融合タンパク質または抗体が、患者に対する投与のための最初の候補用量とされ得る。1つの典型的な1日用量は、上述したファクターに依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上まで、幅があってもよい。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与の場合、状況に応じて、治療は通常疾患症状の所望の抑制が起きるまで維持される。融合タンパク質または抗体の1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg から約 10mg/kgの範囲内である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは 10mg/kgの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与されてもよい。このような用量は、断続的に、例えば1週間毎にまたは3週間毎に(例えば、患者が約2から約20、または例えば約6用量の融合タンパク質または抗体を受けるように)、投与されてもよい。高い初回負荷用量の後に、1回または複数回の低用量が投与されてもよい。この療法の経過は、従来の手法および測定法によって、容易にモニタリングされる。
【0402】
上述の製剤または治療的方法のいずれについても、融合タンパク質または抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施してもよいことが、理解されよう。
【0403】
VI.製品
本発明の別の局面において、上述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な器材を含んだ製品が、提供される。製品は、容器、および当該容器上のラベルまたは当該容器に付属する添付文書を含む。好ましい容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器類は、ガラスやプラスチックなどの、様々な材料から形成されていてよい。容器は組成物を単体で保持してもよいし、症状の治療、予防、および/または診断のために有効な別の組成物と組み合わせて保持してもよく、また、無菌的なアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有する静脈内投与用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効成分は、本発明の融合タンパク質または抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選ばれた症状を治療するために使用されるものであることを示す。さらに製品は、(a)第一の容器であって、その中に収められた本発明の融合タンパク質または抗体を含む組成物を伴う、第一の容器;および、(b)第二の容器であって、その中に収められたさらなる細胞傷害剤またはそれ以外で治療的な剤を含む組成物を伴う、第二の容器を含んでもよい。本発明のこの態様における製品は、さらに、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す、添付文書を含んでもよい。あるいはまたは加えて、製品はさらに、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第二の(または第三の)容器を含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、他の商業的観点またはユーザの立場から望ましい器材をさらに含んでもよい。
【0404】
上述の製品のいずれについても、融合タンパク質または抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを含んでもよいことが、理解されよう。
【0405】
VII.本発明を用いる方法
本発明はまた、本発明の融合タンパク質を製造する方法に関する。一態様において、本発明は、融合タンパク質を製造する方法であって、
(a)リガンド結合ドメインおよびプロテアーゼ切断サイトを含むリガンド結合部分、
(b)リガンド分子、および
(c)非切断可能ペプチドリンカー
を提供する工程;ならびに
非切断可能ペプチドリンカーを介して、リガンド分子をリガンド結合分子のC末端領域またはリガンド結合ドメインのN末端領域に接続する工程
を含む、前記方法を提供する。
【0406】
好ましい態様において、本発明は、2つのリガンド結合部分を含む二価融合タンパク質を製造する方法であって、
各リガンド結合部分について
(a)リガンド結合ドメインおよびプロテアーゼ切断サイトを含むリガンド結合分子、
(b)リガンド分子、および
(c)非切断可能ペプチドリンカー
を提供する工程;ならびに
各リガンド結合部分において、非切断可能ペプチドリンカーを介して、リガンド分子をリガンド結合分子のC末端領域またはリガンド結合ドメインのN末端領域に接続する工程
を含む、前記方法を提供する。
【0407】
本発明の一態様において、2つのリガンド結合部分を含む二価融合タンパク質を製造する方法は、以下の工程を含む製造方法である:
(a)標的リガンドに結合する可変領域を含む抗体を得る工程;
(b)プロテアーゼ切断配列を、VHまたはVLと定常領域との境界付近に導入する工程;
(c)第1の可動リンカーを、可変領域とFcとの間のヒンジ領域に導入する工程;
(d)融合タンパク質またはポリペプチドからのVHドメインまたはVLドメインの解離を促進する、少なくとも1つのアミノ酸変異または少なくとも1つのペアのアミノ酸変異を、該融合タンパク質またはポリペプチドにおけるVHとVLとの境界面に導入し、かつ任意で、少なくとも1つのアミノ酸変異を、リガンドまたは抗原とリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインとの境界面に導入する工程;
(e)工程(d)において得られた分子を、標的リガンドと連結する工程。
【0408】
本発明の一態様において、二価融合タンパク質を製造する方法は、以下の工程をさらに含む:
(f)融合タンパク質が未切断状態にある場合に、融合タンパク質中に組み込まれたリガンドが、その結合パートナーに対して減弱された結合活性を有することを確認する工程。
【0409】
本発明の一態様において、二価融合タンパク質を製造する方法は、以下の工程をさらに含む:
(g)融合タンパク質が切断状態にある場合に、融合タンパク質中に組み込まれたリガンドが、その結合パートナーに対して復元された結合活性を有することを確認する工程。
【0410】
本発明の一態様において、二価融合タンパク質を製造する方法は、以下の工程をさらに含む:
(h)工程(d)において導入されたアミノ酸改変が、工程(a)の可変領域に対するリガンドの結合を破壊しないことを確認する工程、
(i)工程(d)において導入されたアミノ酸改変が、第1の状態よりも第2の状態でVHとVLとの間の会合を低減させることを確認する工程。
【0411】
リガンドに結合することができる分子中にプロテアーゼ切断配列を導入する方法の例には、リガンドに結合することができるポリペプチドのアミノ酸配列中にプロテアーゼ切断配列を挿入する方法、およびリガンドに結合することができるポリペプチドのアミノ酸配列の一部分をプロテアーゼ切断配列で置き換える方法が含まれる。
【0412】
アミノ酸配列Aをアミノ酸配列B中に「挿入する」ことは、アミノ酸配列Bを、欠失を伴わない2つのパートに分割すること、および該2つのパートをアミノ酸配列Aで連結すること(すなわち、「アミノ酸配列Bの前半-アミノ酸配列A-アミノ酸配列Bの後半」のようなアミノ酸配列を製造すること)をいう。アミノ酸配列Aをアミノ酸配列B中に「導入する」ことは、アミノ酸配列Bを2つのパートに分割すること、および該2つのパートの間をアミノ酸配列Aで連結することをいう。これは、上述のようにアミノ酸配列Aをアミノ酸配列B中に「挿入すること」だけではなく、アミノ酸配列Aに隣接するアミノ酸残基を含むアミノ酸配列Bの1個または複数個のアミノ酸残基を欠失させた後に、アミノ酸配列Aで2つのパートを連結すること(すなわち、アミノ酸配列Bの一部分をアミノ酸配列Aで置き換えること)も包含する。
【0413】
リガンドに結合することができる分子を取得する方法の例には、リガンドに結合する能力を有するリガンド結合ドメインを取得する方法が含まれる。リガンド結合ドメインは、例えば、当技術分野で公知の抗体調製法を用いた方法によって取得される。
調製法によって得られた抗体は、融合タンパク質において直接用いられてもよく、または得られた抗体におけるFv領域のみが用いられてもよい。一本鎖(「sc」ともいう)形態のFv領域が、リガンドを認識することができる場合には、該一本鎖が用いられてもよい。あるいは、Fv領域を含有するFab領域が用いられてもよい。
【0414】
所望の結合活性を有する抗体または抗体断片を調製する方法は、当業者に公知である。以下、IL-12またはIL-22に結合する抗体(抗IL-12または抗IL-22抗体)を調製する方法を、例として示す。IL-12またはIL-22以外の抗原に結合する抗体もまた、以下に示される例に従って適宜調製することができる。したがって、以下に例として記載される方法を適宜適応させることによって、IL-12もしくはIL-22またはIL-12もしくはIL-22以外の抗原に対して所望の結合活性を有するIgG抗体様ポリペプチドおよび/またはその抗体断片を調製することは、当業者の専門技術および知識の範囲内である。
【0415】
抗IL-12または抗IL-22抗体は、当技術分野で公知のアプローチの使用によって、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975))または組換え法(米国特許第4,816,567号)によって製造されてもよい。あるいは、モノクローナル抗体は、ファージディスプレイ抗体ライブラリから単離されてもよい(Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991);およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991))。また、モノクローナル抗体は、単一B細胞クローンから単離されてもよい(N. Biotechnol. 28(5): 253-457 (2011))。
【0416】
哺乳動物由来のモノクローナル抗体を、好ましくは、抗IL-12または抗IL-22抗体として調製することができる。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマによって産生されるもの、および遺伝子工学アプローチによって抗体遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換された宿主細胞によって産生されるものを含む。本願に記載される抗体は、「ヒト化抗体」および「キメラ抗体」を含む。
【0417】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも呼ばれる。具体的には、例えば、非ヒト動物(例えば、マウス)抗体のCDRが移植されたヒト抗体からなるヒト化抗体が、当技術分野で公知である。ヒト化抗体を取得するための一般的な遺伝子組換えアプローチもまた、公知である。具体的には、マウス抗体のCDRをヒトFRに移植するための方法として、例えば、オーバーラップ伸長PCRが公知である。
【0418】
連結された3つのCDRおよび4つのFRを含有する抗体可変領域をコードするDNAと、ヒト抗体定常領域をコードするDNAとを、これらのDNAがインフレームで融合するように発現ベクター中に挿入して、ヒト化抗体発現用ベクターを調製することができる。挿入物を有するベクターを、宿主中にトランスフェクトして、組換え細胞を樹立する。次いで、ヒト化抗体をコードするDNAの発現のために組換え細胞を培養して、ヒト化抗体を培養細胞の培養物中に産生させる(欧州特許公開第239400号および国際公開番号WO1996/002576参照)。
【0419】
必要な場合には、再構成ヒト抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように、FRのアミノ酸残基が置換されてもよい。例えば、マウスCDRのヒトFRへの移植に用いられるPCR法の応用によって、FRのアミノ酸配列に変異を導入することができる。
【0420】
ヒト抗体遺伝子のすべてのレパートリーを有するトランスジェニック動物(国際公開番号WO1993/012227、WO1992/003918、WO1994/002602、WO1994/025585、WO1996/034096、およびWO1996/033735参照)を免疫動物として用いたDNA免疫によって、所望のヒト抗体を取得することができる。
【0421】
加えて、ヒト抗体ライブラリを用いたパニングによってヒト抗体を取得する技法もまた、公知である。例えば、ヒト抗体Fv領域を、一本鎖抗体(「scFv」ともいう)として、ファージディスプレイ法によってファージの表面上に発現させる。抗原結合scFvを発現するファージを、選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析して、抗原結合ヒト抗体のFv領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原結合scFvのDNA配列の決定後に、Fv領域配列を、所望のヒト抗体C領域の配列とインフレームで融合させ、次いで、適切な発現ベクター中に挿入して、発現ベクターを調製することができる。ヒト抗体をコードする遺伝子の発現のために、発現ベクターを上に列記した好ましい発現細胞中にトランスフェクトして、ヒト抗体を取得する。これらの方法は、当技術分野で既知である(国際公開番号WO1992/001047、WO1992/020791、WO1993/006213、WO1993/011236、WO1993/019172、WO1995/001438、およびWO1995/015388参照)。
【0422】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、当技術分野で公知の技法の使用により、例えば、以下のように調製することができる:通常の免疫方法に従って、IL-12またはIL-22タンパク質を感作抗原として用いて、哺乳動物を免疫する。このようにして得られた免疫細胞を、通常の細胞融合法によって、当技術分野で公知の親細胞と融合させる。次に、モノクローナル抗体を産生する細胞を、通常のスクリーニング法によってスクリーニングして、抗IL-12または抗IL-22抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
【0423】
具体的には、モノクローナル抗体は、例えば、以下のように調製する:まず、IL-12またはIL-22遺伝子を発現させて、抗体取得のための感作抗原として用いられるIL-12またはIL-22タンパク質を取得することができる。具体的には、IL-12またはIL-22をコードする遺伝子配列を、当技術分野で公知の発現ベクター中に挿入し、次いで、適切な宿主細胞をそれで形質転換させる。所望のヒトIL-12またはIL-22タンパク質を、当技術分野で公知の方法によって、宿主細胞からまたはその培養上清中から精製する。培養上清から可溶型IL-12またはIL-22を取得するためには、例えば、Jayanthi et al. (Protein Expr Purif. 2014 Oct; 102: 76-84)によって記載されているような可溶型IL-12またはIL-22を発現させる。あるいは、精製された天然のIL-12またはIL-22タンパク質もまた、感作抗原として用いることができる。
【0424】
精製されたIL-12またはIL-22タンパク質を、哺乳動物の免疫における使用のための感作抗原として用いることができる。IL-12またはIL-22の部分ペプチドもまた、感作抗原として用いることができる。この部分ペプチドは、ヒトIL-12またはIL-22のアミノ酸配列から化学合成によって取得され得る。あるいは、部分ペプチドは、IL-12またはIL-22遺伝子の一部分の発現ベクターへの組込み、およびそれに続くその発現によって取得され得る。さらに、部分ペプチドはまた、タンパク質分解酵素でのIL-12またはIL-22タンパク質の分解によっても取得することができる。そのような部分ペプチドとしての使用のためのIL-12またはIL-22ペプチドの領域およびサイズは、具体的な態様により特に限定されない。感作抗原としてのペプチドを構成するアミノ酸の数は、好ましくは、少なくとも5個以上、例えば、6個以上または7個以上である。より具体的には、8~50、好ましくは10~30残基のペプチドを、感作抗原として用いることができる。
【0425】
また、異なるポリペプチドと融合した、IL-12またはIL-22タンパク質の所望の部分ポリペプチドまたはペプチドの融合タンパク質を、感作抗原として用いることもできる。例えば、抗体Fc断片またはペプチドタグを、感作抗原としての使用のために融合タンパク質を作製するために好ましく用いることができる。融合タンパク質の発現のためのベクターは、2タイプ以上の所望のポリペプチド断片をコードする遺伝子をインフレームで融合させること、および融合遺伝子を上記のように発現ベクター中に挿入することによって、調製することができる。融合タンパク質を調製する方法は、Molecular Cloning 2nd ed.(Sambrook, J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58 (1989), Cold Spring Harbor Lab. Press)に記載されている。感作抗原としての使用のためのIL-12を取得する方法およびこの感作抗原を用いた免疫方法はまた、WO2003/000883、WO2004/022754、WO2006/006693等にも具体的に記載されている。
【0426】
感作抗原で免疫される哺乳動物は、特定の動物に限定されない。免疫される哺乳動物は、好ましくは、細胞融合における使用のための親細胞との適合性を考慮して選択される。一般的には、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、およびハムスター)、ウサギ、サル等が、好ましく用いられる。
【0427】
これらの動物は、当技術分野で公知の方法に従って、感作抗原で免疫される。例えば、一般的な免疫方法は、腹腔内注射または皮下注射によって感作抗原を哺乳動物に投与することを含む。具体的には、PBS(リン酸緩衝食塩水)、生理食塩水等により適切な希釈率で希釈した感作抗原を、所望の場合には、通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントと混合して、乳化させる。次いで、結果として生じた感作抗原を、4から21日の間隔で数回、哺乳動物に投与する。また、感作抗原での免疫において、適切な担体を用いることができる。特に、分子量の小さい部分ペプチドを感作抗原として用いる場合には、アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニン等の担体タンパク質に結合した感作抗原ペプチドでの免疫が、場合によっては望ましい可能性がある。
【0428】
あるいは、所望の抗体を産生するハイブリドーマはまた、DNA免疫の使用によって、下記のように調製することもできる。DNA免疫は、免疫動物中で抗原タンパク質をコードする遺伝子を発現させることができる形態で構築されているベクターDNAを与えた免疫動物において感作抗原をインビボで発現させることによって、免疫動物を免疫刺激することを含む、免疫方法である。DNA免疫は、以下のように、免疫される動物に対するタンパク質抗原の投与を用いた一般的な免疫方法よりも優れていると期待することができる:
- DNA免疫は、膜タンパク質(例えば、IL-12またはIL-22)の構造を維持した免疫刺激を提供することができ;かつ
- DNA免疫は、免疫抗原を精製する必要を排除する。
【0429】
DNA免疫によって本発明のモノクローナル抗体を取得するために、まず、IL-12またはIL-22タンパク質発現のためのDNAを、免疫されるべき動物に投与する。IL-12またはIL-22をコードするDNAは、PCR等の当技術分野で公知の方法によって合成することができる。得られたDNAを、適切な発現ベクター中に挿入し、次いで、免疫されるべき動物に投与する。例えば、pcDNA3.1等の市販の発現ベクターを、発現ベクターとして好ましく用いることができる。ベクターは、一般的に用いられている方法によって、生物に投与することができる。例えば、発現ベクターがその上に吸着した金粒子を、遺伝子銃を用いて動物個体の細胞中に導入することによって、当該動物個体をDNA免疫する。さらに、IL-12またはIL-22を認識する抗体はまた、WO2003/104453に記載されている方法の使用によっても調製することができる。
【0430】
このようにして免疫された哺乳動物の血清において、IL-12またはIL-22に結合する抗体の力価の上昇を確認する。次いで、哺乳動物から免疫細胞を収集し、細胞融合に供する。特に、脾細胞を、好ましい免疫細胞として用いることができる。
【0431】
哺乳動物ミエローマ細胞を、免疫細胞との細胞融合において用いる。ミエローマ細胞は、好ましくは、スクリーニングのための適切な選択マーカーを有する。選択マーカーとは、特定の培養条件下で生存できる(または生存できない)形質のことをいう。例えば、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損(以下、HGPRT欠損という)またはチミジンキナーゼ欠損(以下、TK欠損という)が、選択マーカーとして当技術分野で公知である。HGPRT欠損またはTK欠損を有する細胞は、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジンに対して感受性である(以下、HAT感受性という)。HAT感受性細胞は、HAT選択培地において、DNAを合成できないために死滅する。対照的に、これらの細胞は、正常細胞と融合すると、融合細胞が正常細胞のサルベージ経路の使用によりDNA合成を継続することができるため、HAT選択培地においても増殖できるようになる。
【0432】
HGPRT欠損またはTK欠損を有する細胞は、HGPRT欠損については6-チオグアニンもしくは8-アザグアニン(以下、8AGと省略する)、またはTK欠損については5'-ブロモデオキシウリジンを含有する培地において選択することができる。正常細胞は、これらのピリミジンアナログをそのDNA中に取り込むことによって死滅する。対照的に、これらの酵素を欠損した細胞は、ピリミジンアナログをその中に取り込めないために選択培地において生存することができる。加えて、G418耐性と呼ばれる選択マーカーは、ネオマイシン耐性遺伝子によって2-デオキシストレプタミン抗生物質(ゲンタマイシンアナログ)に対する耐性を与える。細胞融合に好適な種々のミエローマ細胞が、当技術分野で公知である。
【0433】
例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immunol. (1979)123 (4), 1548-1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7)、NS-1(C. Eur. J. Immunol. (1976)6 (7), 511-519)、MPC-11(Cell (1976)8 (3), 405-415)、SP2/0(Nature (1978)276 (5685), 269-270)、FO(J. Immunol. Methods (1980)35 (1-2), 1-21)、S194/5.XX0.BU.1(J. Exp. Med. (1978)148 (1), 313-323)、およびR210(Nature (1979)277 (5692), 131-133)を、好ましくは、そのようなミエローマ細胞として用いることができる。
【0434】
基本的には、当技術分野で公知の方法、例えば、Kohler and Milstein et al. (Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46)の方法に従って、免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合が行われる。より具体的には、細胞融合は、例えば、細胞融合促進剤の存在下で通常の栄養培地において実施することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはセンダイウイルス(HVJ)が、融合促進剤として用いられる。加えて、所望の場合には、融合効率を高めるため、ジメチルスルホキシド等の補助剤が、使用のためにそれに添加される。
【0435】
用いられる免疫細胞とミエローマ細胞との比率は、任意に設定することができる。例えば、免疫細胞の量は、好ましくは、ミエローマ細胞の量の1から10倍に設定される。例えば、ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培地またはMEM培地、ならびにこの種の細胞培養における使用のための通常の培地が、細胞融合において培地として用いられる。好ましくは、血清(例えば、ウシ胎児血清(FCS))を補給した溶液を、培地にさらに添加することができる。
【0436】
細胞融合のためには、免疫細胞とミエローマ細胞とを、予め決められた量で培地においてよく混合する。およそ37℃に予め加温されたPEG溶液(例えば、1000から6000程度の平均分子量のPEG)を、通常、30から60%(w/v)の濃度でそれに添加する。所望の融合細胞(ハイブリドーマ)が形成されるように、混合溶液を緩やかに混合する。その後、上記に挙げた適切な培地を、細胞培養物に逐次添加し、遠心分離によってその上清を除去する。ハイブリドーマの増殖に好ましくない細胞融合剤等を除去するために、この操作を繰り返することができる。
【0437】
このようにして得られたハイブリドーマを、選択のために、通常の選択培地、例えば、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する培地)中で培養することができる。所望のハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、十分な時間は、数日から数週間である)、HAT培地を用いた培養を継続することができる。その後、所望の抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、通常の限界希釈法によってシングルセルクローニングする。
【0438】
このようにして得られたハイブリドーマを、細胞融合に用いられたミエローマ細胞の選択マーカーに適切な選択培地の使用によって選択することができる。例えば、HGPRT欠損またはTK欠損を有する細胞は、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する培地)中での培養によって選択することができる。具体的には、HAT感受性のミエローマ細胞を細胞融合に用いた場合、正常細胞との融合に成功した細胞のみが、HAT培地中で選択的に増殖することができる。所望のハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、HAT培地を用いた培養を継続する。具体的には、所望のハイブリドーマを選択するために、培養を一般的に、数日から数週間行うことができる。その後、所望の抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、通常の限界希釈法によってシングルセルクローニングすることができる。
【0439】
所望の抗体のスクリーニングおよびシングルセルクローニングは、好ましくは、当技術分野で公知の抗原抗体反応に基づくスクリーニング法によって実施することができる。例えば、IL-12またはIL-22に結合するモノクローナル抗体は、細胞表面上に発現したIL-12またはIL-22に結合することができる。そのようなモノクローナル抗体は、例えば、FACS(蛍光活性化細胞選別)によってスクリーニングすることができる。FACSは、蛍光抗体と接触させた細胞を、レーザー光を用いて解析し、個々の細胞が発する蛍光を測定することによって、細胞表面に対する抗体の結合を測定することができるシステムである。
【0440】
FACSによって目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングするためには、まず、IL-12またはIL-22発現細胞を調製する。スクリーニングのための好ましい細胞は、IL-12またはIL-22を強制発現させた哺乳動物細胞である。形質転換されていない宿主哺乳動物細胞を対照として用いて、細胞表面上のIL-12またはIL-22に対する抗体の結合活性を選択的に検出することができる。具体的には、対照宿主細胞には結合しないが、IL-12またはIL-22を強制発現させた細胞に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択して、IL-12またはIL-22に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得する。
【0441】
あるいは、ELISAの原理に基づいて、抗体を、固定化されたIL-12またはIL-22発現細胞に対するその結合活性について評価することができる。IL-12またはIL-22発現細胞を、例えば、ELISAプレートの各ウェル上に固定化させる。ハイブリドーマの培養上清を、ウェル中の固定化細胞と接触させて、固定化細胞に結合する抗体を検出する。モノクローナル抗体がマウス由来である場合は、細胞に結合した抗体を、抗マウス免疫グロブリン抗体を用いて検出することができる。これらのスクリーニング法によって選択された、抗原に結合することができる所望の抗体を産生するハイブリドーマは、限界希釈法または他の方法によってクローニングすることができる。
【0442】
このようにして調製されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培地中で継代培養することができる。ハイブリドーマはまた、液体窒素中で長期間にわたって保存することもできる。
【0443】
ハイブリドーマを通常の方法に従って培養し、その培養上清から、所望のモノクローナル抗体を取得することができる。あるいは、ハイブリドーマを、それと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させてもよく、その腹水からモノクローナル抗体を取得することができる。
前者の方法は、高純度の抗体を取得するのに好適である。
【0444】
ハイブリドーマ等の抗体産生細胞からクローニングされた抗体遺伝子によってコードされる抗体もまた、好ましく用いることができる。クローニングされた抗体遺伝子を適切なベクターに組み込み、次いでこれを、遺伝子によってコードされる抗体が発現するように宿主中にトランスフェクトする。抗体遺伝子の単離、ベクターへの組込み、および宿主細胞の形質転換のための方法は、例えば、Vandammeらによって既に確立されている(Eur.J. Biochem. (1990) 192 (3), 767-775)。下記で述べるような組換え抗体を作製する方法もまた、当技術分野で公知である。
【0445】
例えば、抗IL-12または抗IL-22抗体を産生するハイブリドーマ細胞から、抗IL-12または抗IL-22抗体の可変領域(V領域)をコードするcDNAを取得する。この目的で、通常、まずハイブリドーマから全RNAを抽出する。例えば、以下の方法のいずれかを用いて、mRNAを細胞から抽出することができる:
- グアニジン超遠心法(Biochemistry (1979) 18 (24), 5294-5299)、および
- AGPC法(Anal. Biochem. (1987) 162 (1), 156-159)。
【0446】
抽出されたmRNAを、mRNA Purification Kit(GE Healthcare Bio-Sciences Corp.製)等を用いて精製することができる。あるいは、QuickPrep mRNA Purification Kit(GE Healthcare Bio-Sciences Corp.製)等の、細胞から直接全mRNAを抽出するためのキットもまた市販されている。そのようなキットを用いて、mRNAをハイブリドーマから取得することができる。得られたmRNAから、抗体V領域をコードするcDNAを、逆転写酵素を用いて合成することができる。cDNAは、例えば、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(Seikagaku Corp.製)を用いて合成することができる。あるいは、cDNAの合成および増幅のために、SMART RACE cDNA増幅キット(Clontech Laboratories, Inc.製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85 (23), 8998-9002;およびNucleic Acids Res. (1989) 17 (8), 2919-2932)を適宜用いることができる。そのようなcDNA合成の過程において、後述する適切な制限酵素サイトを、cDNAの両端にさらに導入することができる。
【0447】
得られたPCR産物から目的のcDNA断片を精製し、その後、ベクターDNAとライゲーションする。このようにして調製された組換えベクターを、大腸菌(E.coli)等にトランスフェクトする。コロニー選択の後に、該コロニーを形成した大腸菌から所望の組換えベクターを調製することができる。次いで、組換えベクターが目的のcDNAのヌクレオチド配列を有しているか否かを、当技術分野で公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法によって確認する。
【0448】
可変領域をコードする遺伝子を取得するためには、可変領域遺伝子増幅用のプライマーを用いた5'-RACE法が便利に用いられる。まず、5'-RACE cDNAライブラリを、ハイブリドーマ細胞から抽出されたRNAを鋳型としたcDNA合成によって取得する。SMART RACE cDNA増幅キット等の市販のキットを、5'-RACE cDNAライブラリの合成に適宜用いる。
【0449】
得られた5'-RACE cDNAライブラリを鋳型としたPCRによって、抗体遺伝子を増幅させる。マウス抗体遺伝子増幅用のプライマーは、当技術分野で公知の抗体遺伝子配列を元に設計することができる。これらのプライマーは、免疫グロブリンのサブクラスに応じて異なるヌクレオチド配列を有する。したがって、サブクラスを、望ましくは、Iso Stripマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Roche Diagnostics K.K.)等の市販のキットを用いて予め決定する。
【0450】
具体的には、例えば、マウスIgGをコードする遺伝子を取得する目的で、γ1、γ2a、γ2b、およびγ3重鎖、ならびにκおよびλ軽鎖をコードする遺伝子を増幅することができるプライマーを、用いることができる。IgG可変領域遺伝子を増幅するためには、可変領域に近い定常領域に対応する部分にアニールするプライマーを、3'プライマーとして一般的に用いる。他方、5' RACE cDNAライブラリ調製キットに付属するプライマーを、5'プライマーとして用いる。
【0451】
このようにして増幅により得られたPCR産物を用いて、重鎖と軽鎖との組み合せからなる免疫グロブリンを再構築することができる。所望の抗体を取得するために、再構築された免疫グロブリンを、IL-12またはIL-22に対する結合活性についてスクリーニングすることができる。より好ましくは、例えば、IL-12またはIL-22に対する抗体を取得する目的で、IL-12またはIL-22に対する抗体の結合は特異的である。IL-12またはIL-22に結合する抗体は、例えば、以下の工程によってスクリーニングすることができる:
(1)ハイブリドーマから得られたcDNAによってコードされるV領域を含有する抗体を、IL-12またはIL-22発現細胞と接触させる工程;
(2)IL-12またはIL-22発現細胞に対する抗体の結合を検出する工程;および
(3)IL-12またはIL-22発現細胞に結合する抗体を選択する工程。
【0452】
IL-12またはIL-22発現細胞に対する抗体の結合を検出する方法は、当技術分野で公知である。具体的には、IL-12またはIL-22発現細胞に対する抗体の結合を、上記で述べたFACS等のアプローチによって検出することができる。抗体の結合活性を評価するために、IL-12またはIL-22発現細胞の固定標本を適宜用いることができる。
【0453】
ファージベクターを用いるパニング法もまた、結合活性を指標とした抗体のスクリーニングのための方法として好ましく用いられる。抗体遺伝子を、ポリクローナル抗体を発現する細胞集団から重鎖および軽鎖のサブクラスのライブラリとして取得した場合には、ファージベクターを用いるスクリーニング法が有利である。重鎖および軽鎖の可変領域をコードする遺伝子は、一本鎖Fv(scFv)をコードする遺伝子を形成するように、適切なリンカー配列を介して連結させることができる。scFvをコードする遺伝子をファージベクター中に挿入して、scFvをその表面上に発現するファージを取得することができる。ファージと所望の抗原との接触の後に、抗原に結合したファージを回収して、目的の結合活性を有するscFvをコードするDNAを回収することができる。所望の結合活性を有するscFvを濃縮するために、必要な場合には、この操作を繰り返すことができる。
【0454】
目的の抗IL-12または抗IL-22抗体のV領域をコードするcDNAの取得後に、このcDNAを、cDNAの両端に挿入された制限酵素サイトを認識する制限酵素で消化する。制限酵素は、好ましくは、抗体遺伝子を構成するヌクレオチド配列に低頻度で出現するヌクレオチド配列を認識して消化する。付着末端を提供する制限酵素のサイトの挿入が、1コピーの消化断片をベクター中に正しい方向で挿入するために好ましい。このようにして消化された抗IL-12または抗IL-22抗体のV領域をコードするcDNAを、適切な発現ベクター中に挿入して、抗体発現ベクターを取得することができる。この場合に、キメラ抗体を取得するためには、抗体定常領域(C領域)をコードする遺伝子とV領域をコードする遺伝子とをインフレームで融合させる。この文脈において、「キメラ抗体」は、異なる起源の定常領域および可変領域を有する抗体のことをいう。したがって、異種(例えば、マウス-ヒト)キメラ抗体に加えてヒト-ヒト同種キメラ抗体もまた、本発明によるキメラ抗体に含まれる。キメラ抗体発現ベクターを構築するために、V領域遺伝子を、予め定常領域遺伝子を有する発現ベクター中に挿入することができる。具体的には、例えば、V領域遺伝子を消化する制限酵素の認識配列を、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを保有する発現ベクターの5'側に適宜配置することができる。
C領域遺伝子およびV領域遺伝子を有するこの発現ベクターを、同じ組み合わせの制限酵素で消化し、インフレームで融合させて、キメラ抗体発現ベクターを構築する。
【0455】
抗IL-12または抗IL-22モノクローナル抗体を作製するために、抗体遺伝子が発現制御領域の制御の下で発現するように、該抗体遺伝子を発現ベクターに組み込む。抗体発現のための発現制御領域には、例えば、エンハンサーおよびプロモーターが含まれる。また、発現した抗体が細胞外に分泌されるように、適切なシグナル配列をアミノ末端に付加することができる。例えば、アミノ酸配列MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:1)を有するペプチドを、シグナル配列として用いることができる。他の好適なシグナル配列のいずれかを、それに付加してもよい。発現したポリペプチドは、この配列のカルボキシル末端部分で切断される。切断されたポリペプチドは、成熟ポリペプチドとして細胞外に分泌され得る。その後、適切な宿主細胞をこの発現ベクターで形質転換して、抗IL-12または抗IL-22抗体をコードするDNAを発現する組換え細胞を取得することができる。
【0456】
リガンドに結合することができる分子中にプロテアーゼ切断配列を持つ分子は、本発明におけるリガンド結合部分または分子として働く。リガンド結合部分/分子が、プロテアーゼ切断配列に適切なプロテアーゼでの処理によって切断されるかどうかを、任意で確認することができる。例えば、プロテアーゼを、リガンドに結合することができる分子中にプロテアーゼ切断配列を持つ分子と接触させること、およびプロテアーゼ処理産物の分子量を、SDS-PAGE等の電気泳動法により確認することによって、プロテアーゼ切断配列の切断の有無を確認することができる。
【0457】
さらに、プロテアーゼの活性、およびプロテアーゼ切断配列が導入されている分子の切断率を評価するために、プロテアーゼ処理後の切断断片を、SDS-PAGE等の電気泳動によって分離し、定量することができる。プロテアーゼ切断配列が導入されている分子の切断率を評価する方法の非限定的な態様には、以下の方法が含まれる。例えば、プロテアーゼ切断配列が導入されている抗体改変体の切断率を、組換えヒトu-プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ(ヒトuPA、huPA)(R&D Systems;1310-SE-010)または組換えヒトマトリプターゼ/ST14触媒ドメイン(ヒトMT-SP1、hMT-SP1)(R&D Systems; 3946-SE-010)を用いて評価する場合は、100マイクログラム/mLの抗体改変体を、40 nMのhuPAまたは3 nMのhMT-SP1と、PBSにおいて37℃で1時間反応させ、次いで、キャピラリー電気泳動イムノアッセイに供する。キャピラリー電気泳動イムノアッセイは、Wes(Protein Simple)を用いて行うことができるが、本方法は、それに限定されない。キャピラリー電気泳動イムノアッセイに対する代替として、分離のためにSDS-PAGE等を行い、続いてウエスタンブロッティングでの検出を行ってもよい。本方法は、これらの方法に限定されない。切断の前後に、抗ヒトλ鎖HRP標識抗体(abcam; ab9007)を用いて軽鎖を検出することができるが、切断断片を検出することができる任意の抗体を用いてもよい。プロテアーゼ処理後に得られた各ピークの面積を、Wes用のソフトウェア(Compass for SW; Protein Simple)を用いて出力し、抗体改変体の切断率(%)を、以下の式で決定することができる。
(切断された軽鎖のピーク面積)×100/(切断された軽鎖のピーク面積+未切断の軽鎖のピーク面積)
切断率は、プロテアーゼ処理の前後にタンパク質断片を検出することができれば、決定することができる。したがって、切断率は、抗体改変体についてだけではなく、プロテアーゼ切断配列が導入されている種々のタンパク質分子についても決定することができる。
【0458】
プロテアーゼ切断配列が導入されている分子のインビボ切断率は、分子を動物に投与すること、および血液サンプル中の投与された分子を検出することによって決定することができる。例えば、プロテアーゼ切断配列が導入されている抗体改変体を、マウスに投与し、それらの血液サンプルから血漿を収集する。Dynabeads Protein A(Thermo; 10001D)を用いて当業者に公知の方法により血漿から抗体を精製し、次いで、キャピラリー電気泳動イムノアッセイに供して、抗体改変体のプロテアーゼ切断率を評価する。キャピラリー電気泳動イムノアッセイは、Wes(Protein Simple)を用いて行うことができるが、本方法は、それに限定されない。キャピラリー電気泳動イムノアッセイに対する代替として、分離のためにSDS-PAGE等を行い、続いてウエスタンブロッティングでの検出を行ってもよい。本方法は、これらの方法に限定されない。抗ヒトλ鎖HRP標識抗体(abcam; ab9007)を用いて、マウスから収集された抗体改変体の軽鎖を検出することができるが、切断断片を検出することができる任意の抗体を用いてもよい。キャピラリー電気泳動イムノアッセイによって得られた各ピークの面積を、ひとたびWes用のソフトウェア(Compass for SW; Protein Simple)を用いて出力すると、残った軽鎖の比率を[軽鎖のピーク面積]/[重鎖のピーク面積]として算出して、マウスの体において切断されないままである全長軽鎖の比率を決定することができる。インビボ切断効率は、生体から収集されたタンパク質断片が検出可能であれば、決定することができる。したがって、切断率は、抗体改変体についてだけではなく、プロテアーゼ切断配列が導入されている種々のタンパク質分子についても決定することができる。上述の方法による切断率の算出によって、例えば、異なる切断配列が導入されている抗体改変体のインビボ切断率の比較、および正常マウスモデルと腫瘍移植マウスモデル等の異なる動物モデル間での単一抗体改変体の切断率の比較が可能である。
【0459】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにも関する。
【0460】
本発明によるポリヌクレオチドは、通常、適切なベクターによって保有され(それに挿入され)、宿主細胞中にトランスフェクトされる。ベクターは、該ベクターが挿入された核酸を安定に保持することができる限り、特に限定されない。例えば、宿主として大腸菌が用いられる場合、pBluescriptベクター(Stratagene Corp.製)等が、クローニング用ベクターとして好ましい。種々の市販されているベクターを、用いることができる。本発明の融合タンパク質を製造する目的でベクターを用いる場合には、発現ベクターが特に有用である。発現ベクターは、インビトロでの、大腸菌における、培養細胞における、または生物個体における融合タンパク質の発現を該ベクターが可能にする限り、特に限定されない。発現ベクターは、好ましくは、例えば、インビトロ発現用のpBESTベクター(Promega Corp.製)、大腸菌用のpETベクター(Invitrogen Corp.製)、培養細胞用のpME18S-FL3ベクター(GenBankアクセッション番号AB009864)、および生物個体用のpME18Sベクター(Mol Cell Biol. 8: 466-472 (1988))である。本発明のDNAのベクター中への挿入は、常法、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応によって行うことができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons. Section 11.4-11.11)。
【0461】
宿主細胞は、特に限定されず、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。融合タンパク質を発現させるための細胞の例には、細菌細胞(例えば、連鎖球菌属(Streptococcus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、大腸菌、ストレプトマイセス属(Streptmyces)、および枯草菌(Bacillus subtilis))、真菌細胞(例えば、酵母およびアスペルギルス属(Aspergillus))、昆虫細胞(例えば、ショウジョウバエ属(Drosophila)S2およびスポドプテラ属(Spodoptera)SF9)、動物細胞(例えば、CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、およびBowes メラノーマ細胞)、ならびに植物細胞が含まれ得る。宿主細胞へのベクターのトランスフェクションは、当技術分野で公知の方法、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、エレクトロポレーション法(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、Lipofectamine法(GIBCO-BRL/Thermo Fisher Scientific Inc.製)、またはマイクロインジェクション法によって行われてもよい。
【0462】
宿主細胞において発現した融合タンパク質を、小胞体の内腔、細胞周辺腔、または細胞外環境に分泌させるために、適切な分泌シグナルを、目的の融合タンパク質中に組み込むことができる。シグナルは、目的の融合タンパク質に対して内因性であってもよく、または異種シグナルであってもよい。
【0463】
本発明の融合タンパク質が培地中に分泌される場合、製造方法における融合タンパク質の回収は、培地の回収によって行われる。本発明の融合タンパク質が細胞中に産生される場合は、細胞をまず溶解し、続いて融合タンパク質を回収する。
【0464】
本発明の融合タンパク質を組換え細胞培養物から回収し、精製するために、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む当技術分野で公知の方法を用いることができる。
【0465】
本明細書に記載される1つまたは複数の態様の任意の組み合わせもまた、当業者の技術常識に基づいて技術的矛盾がない限り、本発明に含まれることが、当業者によって理解されるべきである。また、本明細書に記載される1つまたは複数の態様の任意の組み合わせを除外した本発明も、当業者の技術常識に基づいて技術的矛盾がない限り、本明細書において意図され、記載される発明とみなされるべきである。
【0466】
以下、本発明の方法および組成物の実施例を記載する。種々の他の態様が、上述の一般的な説明に照らして実施され得ることが、理解されるであろう。
【実施例
【0467】
実施例1:IL-12融合タンパク質は、プロテアーゼ切断前に長い全身半減期を有する
インターロイキン-12(IL-12)などのサイトカインを、高用量で、低いかまたは無視できる全身毒性を伴って送達するために、本発明者らは、プロテアーゼ切断可能リンカーを有するIL-12融合タンパク質を開発した。IL-12融合タンパク質は、タンパク質内のプロテアーゼ切断サイトを切断することによってタンパク質を活性化する、高濃度のプロテアーゼを伴う環境に曝露されない限り、不活性化状態のままである。ひとたび切断されると、IL-12は、もはやタンパク質に結合せず、その受容体に結合するその生理活性を復元して、IL-12受容体シグナル伝達を活性化するその生物学的活性を発揮できるようになる。現在記載しているIL-12融合タンパク質は、特定の環境、例えば、腫瘍または炎症性組織における天然で高い濃度のプロテアーゼを利用する、標的部位特異的活性化を可能にする。未切断状態での(不活性の)現在記載しているIL-12融合タンパク質は、組換えIL-12単独と比較して、長い全身半減期を有する。IL-12は、およそ5~10時間という非常に短い半減期を有すると知られていることが、報告されている(AACR Journals. 1999 Jan; 5(1): 9-16)。しかし、切断された(活性の)場合、IL-12融合タンパク質は、組換えIL-12よりも速い半減期を示すことになる(図1)。
【0468】
1-1 IL-12融合タンパク質の調製‐一価遊離型
p40(配列番号:939)およびp35(配列番号:940)サブユニットを含むIL-12分子を、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して、IL-12に結合するIgG様ポリペプチドと融合させることによって、いくつかのIL-12融合タンパク質を構築した。用いたIL-12結合ポリペプチドは、Ab1(WO2010017598)、Ab2(WO2002012500)、およびAb3(WO2000056772)を組み込んでいる。さらに、別段注記しない限り、FcγR結合を無効にする改変を、前記タンパク質のFc領域において行い、これは、EUナンバリングに従うアミノ酸変異L235R/G236Rを含んでいた。
【0469】
3つのIL-12融合タンパク質は、以下のように、各々が、IL-12結合ドメインを含むポリペプチド(抗IL-12)およびKLH結合ドメインを含むポリペプチド(抗KLH)の一価ヘテロ二量体を含む。
(a)一価IL-12遊離FP1は、軽鎖1(配列番号:944)/重鎖1(配列番号:949)および軽鎖2(配列番号:950)/重鎖2(配列番号:951)のペアのヘテロ二量体である。重鎖1(配列番号:949)において、切断可能リンカー(配列番号:941)を、FP1 VH(配列番号:946)とCH1ドメインとの間のエルボーヒンジ領域中に導入し、切断可能リンカー(配列番号:947)を、Fcと一本鎖IL-12(配列番号:962)との間に導入した。
(b)一価IL12遊離FP2は、軽鎖1(配列番号:955)/重鎖1(配列番号:999)および軽鎖2(配列番号:950)/重鎖2(配列番号:951)のペアのヘテロ二量体である。重鎖1(配列番号:999)において、切断可能リンカー(配列番号:941)を、FP2 VH(配列番号:957)とCH1ドメインとの間のエルボーヒンジ領域中に導入し、切断可能リンカー(配列番号:947)を、Fcと一本鎖IL-12(配列番号:962)との間に導入した。
(c)一価IL12遊離FP3は、軽鎖1(配列番号:958)/重鎖1(配列番号:1000)および軽鎖2(配列番号:950)/重鎖2(配列番号:951)のペアのヘテロ二量体である。重鎖1(配列番号:1000)において、切断可能リンカー(配列番号:941)を、FP3 VH(配列番号:960)とCH1ドメインとの間のエルボーヒンジ領域中に導入し、切断可能リンカー(配列番号:1051)を、Fcと一本鎖IL-12(配列番号:962)との間に導入した。
【0470】
上記の各々について、ヘテロ二量体化および重鎖と軽鎖との正確な会合を促進するために、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)変異(Nat. Biotechnol, 1998, 16, 677-681)を、重鎖CH3ドメインに導入し、重鎖2および軽鎖2において、CrossMab技術(PNAS, 2011, 108, 11187-11192)を用いた。重鎖1および重鎖2は、それぞれ、ノブ変異(Y349C/T366W)およびホール変異(E356C/T366S/L368A/Y407V)を含有する。軽鎖2は、ヒトκ定常領域を伴う抗KLHのVHドメインから構成された。重鎖2は、抗KLHのVLドメインおよび改変されたIgG1 Fc領域から構成された。ひとたび切断可能リンカーがプロテアーゼによって消化されると、活性IL-12が、自由に融合ポリペプチドから解離して、その受容体に結合する(図2A)。
【0471】
各鎖の発現ベクターを、表3に示されるような各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。融合タンパク質の精製は、MabSelect SuRe(カタログ番号:17-5438-01、GE Healthcare)によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。アフィニティクロマトグラフィーからの溶出液中に存在する任意の凝集物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0472】
(表3)遊離形式の一価IL-12融合タンパク質および各鎖の配列番号
【0473】
1-2 未切断のIL-12融合タンパク質の長い全身半減期
本発明において、本発明者らは、プロテアーゼ消化前の未切断(不活性)状態で長い全身半減期を示すが、切断(活性)状態では短い全身半減期を示すIL-12融合タンパク質を得ようとした。未切断のIL-12融合タンパク質が、抗IL-12抗体などのIL-12結合分子について通常観察される即時のヘパリン媒介性排出に供されないことを確実にするために、IL-12に結合する種々のリガンド結合ドメインを含む融合タンパク質を、以下のようにスクリーニングした。
【0474】
5 mg/kgの上記の表3に記載されるような一価IL-12遊離FP1~FP3を、6週齢のCB17/Icr-Prkdcscid/CrlCrlj雌マウス(Charles River Laboratories、日本)の尾静脈中に静脈内投与し、その血漿を、以下の時点:投与の5分後、1時間後、7時間後、1日後、4日後、および7日後に、頚静脈から続けて収集した。マウス血漿中の融合タンパク質の総濃度を、LC/ESI-MS/MSによって測定した。較正標準を、マウス血漿における連続希釈によって調製した。較正標準濃度は、0.195、0.391、0.781、1.56、3.13、6.25、12.5、25、および50マイクログラム(μg)/mLであった。3マイクロリットル(μL)の較正標準および血漿サンプルを、50μLの抗ヒトFc領域抗体(インハウス)でコーティングされた磁気ビーズと混合した。ビーズを、0.05% Tween-20含有PBSで3回、およびPBSで1回洗浄した後に、サンプルを、25μLの混合試薬(50 mmol/L重炭酸アンモニウム中、8 mmol/Lジチオスレイトール、7.5 mol/L尿素、および99 ng/mLリゾチーム(ニワトリ卵白))と混合し、およそ45分間、56℃でインキュベートした。次いで、2μLの500 mmol/Lヨードアセトアミドを添加し、およそ30分間、37℃、暗所でインキュベートした。次に、160μLの50 mmol/L重炭酸アンモニウム中0.621μg/mLシーケンシンググレード改変トリプシン(カタログ番号:V5117、Promega)を添加し、37℃で一晩インキュベートした。最後に、5μLの10%トリフルオロ酢酸を添加して、任意の残存トリプシンを非活性化した。消化サンプルの80μLのアリコートを、LC/ESI-MS/MSによる解析に供した。
LC/ESI-MS/MSは、Acquity I-class 2D高速液体クロマトグラフィーシステム(Waters)を装備したXevo TQ-Sトリプル四重極機器(Waters)を用いて行った。抗体由来のトリプシンペプチド(TLTIQVK)を、選択反応モニタリング(SRM)によってモニターした。SRMトランジションは、m/z 401.755 >588.372であった。抗体の較正曲線は、それぞれ濃度に対してプロットしたピーク面積を用いて、加重(1/x2)線形回帰によって構築した。マウス血漿中の濃度は、解析ソフトウェアMasslynx Ver.4.1(Waters)を用いて較正曲線から計算した。
各抗体の濃度を、較正サンプルにおけるモニターされたペプチドのピーク面積に基づいて、較正曲線によって決定した。薬物動態パラメーターを、Phoenix WinNonlin version 8.0(Certara USA inc.)を用いてノンコンパートメント解析によって計算した。3匹の動物の平均された血漿濃度およびパラメーターを、その標準偏差とともに図2Bに示す。
【0475】
一価IL-12遊離FP1は、他の2つの融合タンパク質、すなわち、同じ一価ヘテロ二量体融合タンパク質形式のFP2(34.1 ml/日/kg)およびFP3(35.3 ml/日/kg)よりも、およそ3倍低い血漿クリアランス(9.8 ml/日/kg)を示した。上記の結果は、未切断の(「不活性の」)一価IL-12遊離FP1におけるIL-12のヘパリン結合領域が、ヘパリン結合媒介性排出を妨げるほど十分にマスクされていたことを示唆する。
【0476】
1-3 遊離形式および融合形式の二価IL-12融合タンパク質の調製
二価IL-12遊離FP4は、軽鎖(配列番号:944)および重鎖(配列番号:948)のペアのホモ二量体である。配列番号:944は、改変を伴わない軽鎖として用いた。重鎖において、切断可能リンカーを、FP1 VH(配列番号:946)とCH1ドメインとの間のエルボーヒンジ領域中に導入した。GSリンカー(配列番号:1001)を、ヒンジ領域に挿入し、一本鎖IL-12(配列番号:962)を、切断可能リンカー(配列番号:947)を介してFcドメインのC末端に付加した。ひとたびこれらの切断可能リンカーがプロテアーゼによって消化されると、活性IL-12分子が遊離される(図3A)。
【0477】
二価IL-12融合FP5は、軽鎖(配列番号:944)および重鎖(配列番号:953)のホモ二量体である。FP1VL-k0(配列番号:944)は、改変を伴わない軽鎖として用いた。重鎖において、切断可能リンカー(配列番号:941)を、FP1 VH(配列番号:946)とCH1ドメインとの間のエルボーヒンジ領域中に導入した。GSリンカー(配列番号:1001)を、ヒンジ領域に挿入し、一本鎖IL-12(配列番号:962)を、GSリンカー(配列番号:963)を介してFcドメインのC末端に付加した。ひとたび切断可能リンカーがプロテアーゼによって消化されると、Fc領域のC末端に融合したままである活性IL-12分子が、融合タンパク質のリガンド結合ドメインから解離して、その受容体に結合する(図3B)。
【0478】
各鎖の発現ベクターを、表4に示されるような各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。融合タンパク質の精製は、MabSelect SuRe(カタログ番号:17-5438-01、GE Healthcare)によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。アフィニティクロマトグラフィーからの溶出液中に存在する任意の凝集物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0479】
(表4)遊離形式および融合形式の二価IL-12融合タンパク質および各鎖の配列番号
【0480】
1-4 遊離形式および融合形式の二価IL-12融合タンパク質の活性の評価
C末端に融合した(His)6タグが続くTEV部位を有する、p40(配列番号:939)およびp35(配列番号:940)を発現するベクターの共発現によって、IL-12を精製した。各鎖の発現ベクターを、各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。タンパク質の精製は、Ni Sepharose excel(カタログ番号:17-3712-02、GE Healthcare)によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。アフィニティクロマトグラフィーからの溶出液中に存在する任意の凝集物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0481】
MT-SP1プロテアーゼ処理を伴ってまたは伴わずに、遊離形式および融合形式の二価IL-12融合タンパク質のIL-12生物活性を評価するために、IL-12ルシフェラーゼアッセイを実施した。簡潔に説明すると、2.5×104細胞/ウェルの、ヒトIL-12Rb1、IL-12Rb2、およびSTAT4を発現するIL-12バイオアッセイ細胞(Promega、カタログ番号CS2018A02A)を、96ウェルプレートにプレーティングして、一晩インキュベートした。対照として、IL-12を利用した。遊離形式および融合形式両方の二価IL-12融合タンパク質を、培養プレートに添加して、18時間インキュベートした。プロテアーゼ処理サンプルについては、IL-12ならびに遊離形式および融合形式両方の二価IL-12融合タンパク質を、等モル濃度のMT-SP1で4時間処理して、連続希釈物を調製した。ルシフェラーゼ活性を、Bio-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、G7940)で、製造業者の説明書に従って検出した。発光を、GloMax(登録商標) Explorer System(Promega #GM3500)を用いて検出した。データ解析を、Microsoft(登録商標) Excel(登録商標) 2013によって行い、解析されたデータを、GraphPad Prism 7を用いてプロットした。
【0482】
二価IL-12遊離FP4、および二価IL-12融合FP5を、IL-12ルシフェラーゼアッセイに供した。改変体は両方とも、MT-SP1の非存在下でhIL-12_Hisタグよりも低いIL-12生物活性を示し、IL-12生物活性は、MT-SP1処理時にhIL-12_Hisタグと同じレベルまで回復された(図4Aおよび4B)。
【0483】
上記に基づいて、遊離形式および融合形式両方の二価IL-12融合タンパク質は、そのリガンド受容体、すなわちIL-12受容体に結合するその能力を失う(すなわち、能力が減弱された)こと、およびこの結合が未切断(不活性)状態で阻害されたことが実証された。しかし、ひとたびプロテアーゼの存在下で切断されると(活性状態)、リガンドの生物学的活性は復元され、すなわち、IL-12は、そのリガンド受容体、すなわちIL-12受容体に結合することができた。
【0484】
実施例2:融合形式は、遊離形式よりも、腫瘍内により高い濃度で蓄積し、より速いクリアランスを示す
不活性化状態でのIL-12融合タンパク質は、IL-12に結合し、IL-12のその受容体に結合する能力を阻害する。プロテアーゼ、例えば、腫瘍特異的プロテアーゼに曝露されると、IL-12融合タンパク質は活性化され、IL-12のその受容体に結合する能力が復元される。実施例1に記載されるように、それらの別々のプロテアーゼ活性化形態において、Fc領域とIL-12との間の追加の切断サイトにより、IL-12の完全な遊離が可能になり(遊離形式)、他方、追加の切断サイトがないと、IL-12は、Fc領域のC末端に融合したままである(融合形式)。腫瘍蓄積およびクリアランスの研究を、遊離形式IL-12融合タンパク質の活性化型および融合形式IL-12融合タンパク質の活性化型から生じた組換えIL-12を用いて行った(図5)。
【0485】
2-1 遊離型および融合型のIL-12融合タンパク質の活性型の調製
各々がTEVプロテアーゼ認識サイト(配列番号:1003)およびFLAGタグ(配列番号:1004)を含む、p40サブユニット(配列番号:939)およびp35サブユニット(配列番号:1002)を含むIL-12ヘテロ二量体タンパク質を調製した。加えて、軽鎖(配列番号:986)および重鎖(配列番号:1005)のホモ二量体を含む、KLH二価IL-12融合FP6を調製する。配列番号:986は、改変を伴わない軽鎖として用いた。重鎖(配列番号:1005)において、KLH VH(配列番号:994)は定常領域(配列番号:1006)に融合しており、GSリンカー(配列番号:963)を介してFcのC末端に付加された一本鎖IL12(配列番号:962)がそれに続く。
【0486】
軽鎖(配列番号:986)および重鎖(配列番号:1007)のホモ二量体を含む、KLH二価IL-12融合FP7を調製する。配列番号:986は、改変を伴わない軽鎖として用いた。重鎖(配列番号:1007)において、KLH VH(配列番号:994)は定常領域C6(配列番号:1006)に融合しており、GSリンカー(配列番号:963)を介してFcのC末端に付加された一本鎖IL12(配列番号:1008)がそれに続く。
【0487】
各鎖の発現ベクターを、表5に示されるような各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。IL-12の精製は、Anti-FLAG M2樹脂によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。融合タンパク質の精製は、MabSelect SuRe(カタログ番号:17-5438-01、GE Healthcare)によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。アフィニティクロマトグラフィーからの溶出液中に存在する任意の凝集物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0488】
(表5)活性化された融合形式の二価IL-12融合タンパク質および各鎖の配列番号
【0489】
2-2 腫瘍を有するマウスを用いたインビボでの二価IL-12融合タンパク質の腫瘍蓄積の評価
2-2-1 ヒトT細胞を注射した腫瘍を有するマウスモデルを用いたインビボ試験
LS1034ヒト結腸直腸がん細胞株を、American Type Culture Collectionから入手した。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS;Nichirei Biosciences)を含むRPMI-1640培地(SIGMA)+0.45% D-グルコース(SIGMA)、10 mM HEPES(SIGMA)、1 mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)において培養した。6週齢のNOD/ShiJic-scidJcl雌マウスを、CLEA Japan, Incから購入し、接種前に2週間順化させた。対数期増殖中のLS1034細胞を、採集してハンクス平衡塩類溶液(HBSS;SIGMA)で洗浄し、5×107細胞/mLの濃度で50% HBSSおよび50% Matrigel(CORNING)に再懸濁した。マウスに、200μLのHBSS:Matrigel(1:1)中の1×107個のLS1034細胞を皮下接種した。平均腫瘍体積が約100~300 mm3に到達した時(接種の7日後)に、腫瘍体積および体重に基づいて、マウスを無作為に群分けした。腫瘍体積を、キャリパーで測定し、1/2×l ×w2、l=長さ、w=幅として腫瘍体積を計算した。無作為化の1日後に、マウスに、3×107個のヒトT細胞を接種した。T細胞接種後に、11.3 pmolのIL-12または11.3 pmolのKLH-二価IL-12融合FP6を、2週間にわたって週に3回、腫瘍内投与した。腫瘍を、最初の処置後12および13日目に切除した。
【0490】
2-2-2 腫瘍溶解物および腫瘍間質液の調製
腫瘍切片の4分の1を、メッシュを有するチューブ上に置き、400×g、4℃で10分間遠心分離した。収集した液体サンプルを、10,000×g、4℃で10分間、再度遠心分離し、次いで上清を、腫瘍間質液として保存した。重量の9倍の溶解緩衝液(プロテアーゼ阻害剤カクテルを含むpH 8.0の50 mMトリス、150 mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、2% NP-40)を、残りの腫瘍切片中に添加して、TissueLyser II(Qiagen)によってホモジナイズした。ホモジネートを、14,000 rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を、10%腫瘍溶解物として保存した。
【0491】
2-2-3 電気化学発光(ECL)による腫瘍溶解物および腫瘍間質液中のIL-12濃度の測定
腫瘍溶解物および腫瘍間質液中のIL-12の濃度を、電気化学発光(ECL)によって測定した。MSD GOLD 96-well Streptavidin SECTOR Plates (Meso Scale Discovery)を、アッセイ緩衝液(それぞれRocheおよびSigma由来の、PBS-T+1% BSA)で1時間、室温でブロッキングした。ブロッキングしたプレート上にビオチン化抗IL-12ポリクローナル抗体(R&D Systems)を分配し、アッセイ緩衝液中で1時間、室温でインキュベートすることによって、抗IL-12固定化プレートを調製した。IL-12およびKLH-二価IL-12融合FP6の較正曲線サンプル、腫瘍溶解物サンプル、および腫瘍間質液サンプルを、連続希釈によって調製し、100倍以上を調製した。続いて、サンプルを、抗IL-12固定化プレート上に添加して、室温で1時間結合させ、その後洗浄した。次に、SULFO TAG標識抗IL-12抗体(U-CyTech biosciences、MSD GOLD SULFO-TAG NHS-Esterを用いてSULFO TAG標識化)を添加して、プレートを室温で1時間インキュベートし、その後洗浄した。リード緩衝液T(×4)(Meso Scale Discovery)を、直ちにプレートに添加して、SECTOR Imager 2400(Meso Scale Discovery)によってシグナルを検出した。組換えIL-12またはKLH-二価IL-12融合タンパク質の濃度は、解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて較正曲線の応答に基づいて計算した。この方法によって測定した組換えIL-12およびKLH-二価IL-12融合FP6の腫瘍溶解物および腫瘍間質液の濃度を、図6に示す。
【0492】
2-2-4 腫瘍内注射後のマウスにおけるIL-12およびKLH-二価IL-12融合FP6の腫瘍保持
腫瘍内注射後の腫瘍保持を評価した。KLH-二価IL-12融合FP6は、投与前および最後の投与の1日後に、腫瘍溶解物および間質液の両方において、組換えIL-12よりも高い濃度を示した。図6は、合計で6回繰り返された腫瘍内注射後の、ヒトT細胞を注射したLS1034腫瘍を有するマウスモデルにおける、組換えIL-12またはKLH-二価IL-12融合FP6の腫瘍溶解物および腫瘍間質液中のIL-12濃度を示す。
【0493】
2-3 カニクイザルにおける二価IL-12融合タンパク質の薬物動態の評価
2-3-1 ELISAによるカニクイザル血漿中のKLH-二価IL-12融合FP6濃度の測定
カニクイザルに由来する血漿中のKLH-二価IL-12融合FP6の濃度を、IL-12 High Sensitivity Human ELISAキット(Abcam)によって、製造業者の説明書に従って測定した。KLH-二価IL-12融合FP6濃度は、解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて較正曲線の応答に基づいて計算した。この方法によって測定した血漿中のKLH-二価IL-12融合FP6濃度のタイムコースを、図7に示す。
【0494】
2-3-2 カニクイザルを用いたインビボ試験
KLH-二価IL-12融合FP6の薬物動態を、カニクイザルにおいて評価した(図7)。KLH-二価IL-12融合FP6(0.48 mg/mL)を、前腕の橈側皮静脈中に2.5 mL/kgの単一用量で投与した。血液を、投与の5分後、2時間後、および7時間後に収集した。収集した血液を、直ちに1700×g、4℃で5分間遠心分離して、血漿を分離した。分離した血漿を、測定まで-70℃未満で保管した。
【0495】
2-3-3 カニクイザルにおけるKLH-二価IL-12融合FP6の薬物動態
カニクイザルにおけるKLH-二価IL-12融合FP6の薬物動態プロファイルを評価した。図7は、カニクイザルにおける静脈内投与後の、血漿KLH-二価IL-12融合FP6濃度のタイムコースを示す。KLH-二価IL-12融合FP6は、急速に排出され、クリアランスは1975 mL/日/kgであり、これは、6.23 mL/時間/kg(150 mL/日/kg)である文献において報告された組換えIL-12クリアランスよりも13倍速い(Pharmacology 2010;85:319-327)。
【0496】
腫瘍を有するマウスモデルにおいて実証されたように、遊離形式IL-12融合タンパク質の組換えIL-12と比較した場合に、より高い濃度の融合形式IL-12融合タンパク質の活性型が検出された(図6)。より高い濃度が腫瘍微小環境内に蓄積したにもかかわらず、融合形式IL-12融合タンパク質の活性化型は、組換えIL-12よりもかなりずっと速いクリアランスを示した(図7)。したがって、融合形式IL-12融合タンパク質は、遊離形式IL-12融合タンパク質と比較して、より低い全身毒性を示すことが想像される。
【0497】
実施例3:操作されたVH/VL境界面は、プロテアーゼ切断時のVH/VLおよびIL-12の解離を促進する
IL-12リガンドは、その不活性化型において、融合タンパク質のリガンド結合ドメインに結合し、すなわち、IL-12リガンドは、融合タンパク質の可変領域に結合して、リガンドのそのリガンド受容体に結合する生物学的活性が、阻害される。特定の例において、標的組織環境におけるプロテアーゼによる切断時に、VHとCH1との境界付近のプロテアーゼ切断サイトが破壊され、VHの遊離を結果としてもたらす。VHの遊離は、次に、IL-12と融合タンパク質のリガンド結合ドメインとの間の結合を破壊し、したがって、IL-12を遊離する。カニクイザルにおける急速な排出の本発明者らの観察(実施例2)に類似して、KLH二価融合FP7は、SCIDマウスにおいて335 ml/日/kgのクリアランスを示した(図8A)。一方で、IL-12融合タンパク質の活性化型は、その不活性型に匹敵するクリアランスを有していたことが観察された(図8B)。潜在的に、VHドメイン、VLドメイン、およびIL-12部分は、結合力を示すことができ、プロテアーゼ切断後に完全には解離せず(図9A)、これが、続いて、IL-12融合タンパク質の薬物動態に影響を及ぼし、より高いクリアランスレベルを示さなかったために、この現象が観察されたことが仮定された。ヘパリン結合領域が、活性化された融合タンパク質の速いクリアランスに寄与するため、これは妥当と思われる。FP2およびFP3を除く現在記載している融合タンパク質の可変領域の特定の場合には、ヘパリン結合領域は、IL-12結合エピトープと極めて近接しており、したがって、不完全な遊離のためにIL-12が結合したままである時に、タンパク質のクリアランスはそれほど速くない可能性がある。一方で、IL-12融合タンパク質の活性化型の活性は、IL-12受容体に結合することができるままであり、組換えIL-12と同じ程度までIL-12シグナル伝達を活性化する(図9B)。
【0498】
IL-12の遊離に影響を及ぼし得るVHドメインとVLドメインとの間の任意の残った結合力を壊すために、VHとVLとの境界面の操作を、VHとVLとの間の会合を低減させるように行った。主として、VH/VL境界面を作り上げるFR領域中のアミノ酸が、プロテアーゼ切断後にVH遊離傾向を増加させるように改変されている。さらに、本発明者らはまた、CDR領域内のアミノ酸を追加的に改変することが、IL-12融合タンパク質の可変領域に対するIL-12結合を破壊することなく、VHの解離を促進できたことも発見した。
【0499】
融合タンパク質からのVHまたはVLの解離(その他VH遊離またはVH解離とも称される)を促進するアミノ酸改変のスクリーニングを、実施例1および2に記載される、VHとCH1との境界付近にプロテアーゼ切断サイトを有するIgG抗体を含む二価融合タンパク質において最初に(図10A)、続いて、二価融合タンパク質融合形式において(図10B)行った。プロテアーゼ切断後にVH遊離を改善するアミノ酸改変の効果を、インビトロで評価した。インビトロVH遊離アッセイを、Biacore T200機器(Cytiva)を用いて実施した(図10Aおよび10B)。捕捉分子を、最初に、アミンカップリングキット(Cytiva)を用いてセンサーチップのすべてのフローセル(FC)上に固定化した。次に、上述のプロテアーゼ切断可能IgG抗体または上記のプロテアーゼ切断可能二価融合タンパク質のいずれかを、捕捉タンパク質を介してセンサー表面のフローセル上に捕捉させた。これに続いて、組換えヒトu-プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ(ヒトuPA、huPA)(R&D Systems;1310-SE-010)または緩衝液をフローセルにわたって注入した。さらに、VH遊離を改善するために行われたアミノ酸改変が、抗原結合ドメインまたはリガンド結合ドメインのリガンドを中和する能力に影響を及ぼさなかったことを確実にするために、リガンドと抗原結合ドメインまたはリガンド結合ドメインとの結合アフィニティを評価した。最終的に、VH遊離を改善するためのアミノ酸改変を含むプロテアーゼで活性化された二価融合タンパク質のクリアランスレベルを評価した。
【0500】
3-1 VH/VL境界面内に改変を含む抗IL-12抗体の調製
抗IL-12抗体Ab1(Ab101H-12aa-C8/Ab102L-SK1)は、軽鎖(配列番号:1009)および重鎖(配列番号:1010)で構成されるホモ二量体である。重鎖(配列番号:1010)において、VHであるAb101H(配列番号:1011)は、切断可能リンカー12aa(配列番号:941)を介して、定常領域C8(配列番号:1087)に融合している。VH遊離を促進するアミノ酸改変を、Ab101H VHのV37、G44、L45、W47、Y91、W103、ならびにAb102 VLのA43、P44、L46、Y49、Y87、およびF98のいずれかの1つまたは複数の部位で行った。いくつかの例において、アミノ酸改変をまた、VH/VL境界面内に存在するCDR部位、例えば、100aにおいて行った。
【0501】
各鎖の発現ベクターを、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させ、ProA精製法によって精製した。
【0502】
(表6)抗IL-12抗体および各鎖の配列番号
【0503】
3-2 抗IL-12抗体(Ab1)改変体を用いたVH遊離アミノ酸改変のスクリーニング
3-2-1 単一変異体についてのVH遊離の評価
単一のアミノ酸改変(「単一変異体」)を、抗IL-12抗体Ab1のVH/VL境界面に導入し、VH遊離傾向を測定した。単一変異体についてのVH遊離を、Biacore T200機器(Cytiva)を用いて37℃で判定した。抗ヒトFc抗体(Cytiva)を、アミンカップリングキット(Cytiva)を用いてCM4センサーチップのすべてのフローセル(FC)上に固定化した。すべての抗体を、HBS-EP+緩衝液において調製した。各抗体を、抗ヒトFc抗体によってセンサー表面上に捕捉させた。抗体を、フローセルFC2、FC3、またはFC4に200 RUのレベルまで捕捉させ、次いで、すべてのFCにわたって500 nMの組換えヒトu-プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ(ヒトuPA、huPA)(R&D Systems;1310-SE-010)または緩衝液の300秒の注入を行った。センサー表面を、各サイクルに3M MgCl2で再生させた。フローセルFC2、FC3、またはFC4上へのサンプル注入が終わる10秒前のRU値を、各抗体についての最終反応として採用した。RUの低減パーセンテージを、以下の式を用いて計算した。
【0504】
VHは、IgG分子の分子量の20%に対応するため、20%の反応の低減は、100%のVHが遊離されたことを示唆する。
VH遊離%=RUの低減%×100/20
【0505】
VH/VL境界面における多くの単一変異は、改変なしと比較して、VH遊離傾向の増加をもたらした(図11A、表7)。
【0506】
(表7)Ab1の単一変異体についてのVH遊離%
【0507】
3-2-2 組み合わせ変異体についてのVH遊離の評価
IL-12に対する単一変異体の結合カイネティクスに基づいて、いくつかの変異を選択し(表9)、選択した変異の組み合わせを行った(「組み合わせ変異体」)。変異が、IL-12に対する抗体の結合カイネティクスに影響を及ぼさないことを確実にするために、単一変異体および組み合わせ変異体の結合カイネティクスを評価した(実施例3-3)。組み合わせ変異体についてのVH遊離を、Biacore T200機器(Cytiva)を用いて37℃で判定した。プロテインA/G(PIERCE)を、アミンカップリングキット(Cytiva)を用いてCM4センサーチップのすべてのフローセル(FC)上に固定化した。すべての抗体およびアナライトを、HBS-EP+緩衝液において調製した。各抗体を、プロテインA/Gによってセンサー表面上に捕捉させた。抗体を、フローセルFC2、FC3、またはFC4に200 RUのレベルまで捕捉させ、次いで、すべてのFCにわたって1 uMの組換えヒトuPAまたは緩衝液の300秒の注入を行った。センサー表面を、各サイクルに10 mMグリシン-HCl、pH 1.5で再生させた。フローセルFC2、FC3、またはFC4上へのサンプル注入が終わる5秒前のRU値を、各抗体についての最終反応として採用した。RUの低減パーセンテージを、以下の式を用いて計算した。
【0508】
VHは、IgG分子の分子量の20%に対応するため、20%の反応の低減は、100%のVHが遊離されたことを示唆する。
VH遊離%=RUの低減%×100/20
【0509】
VH-VL境界面変異の多くの組み合わせは、改変なしと比較して、VH遊離傾向の増加を示した(図11B、表8)。
【0510】
(表8)Ab1の組み合わせ変異体についてのVH遊離%
【0511】
3-3 単一変異および組み合わせ変異は、抗IL-12抗体とIL-12との間の結合カイネティクスに影響を及ぼさない
pH 7.4でのヒトIL-12に結合する抗IL-12抗体のアフィニティを、Biacore T200機器(Cytiva)を用いて37℃で決定した。抗ヒトFc抗体(Cytiva)を、アミンカップリングキット(Cytiva)を用いてCM4センサーチップのすべてのフローセル(FC)上に固定化した。すべての抗体およびアナライトを、20 mM ACES、150 mM NaCl、0.05% Tween 20、0.005% NaN3を含有するACES、pH 7.4において調製した。各抗体を、抗ヒトFc抗体によってセンサー表面上に捕捉させた。抗体捕捉レベルは、50反応単位(RU)を目指した。5 nMのヒトIL-12を、アナライトとして注入し、続いて解離させた。センサー表面を、各サイクルに3M MgCl2で再生させた。Biacore T200 Evaluation software(Cytiva)を用いて、データを加工処理して1:1結合モデルにフィッティングすることによって、結合アフィニティを決定した。表9は、VH解離を促進するための少なくとも1つのアミノ酸改変を含む単一変異体および組み合わせ変異体の、IL-12に対する結合カイネティクスを示す。表9における結果に基づいて、IL-12に対する抗IL-12抗体Ab1改変体の結合カイネティクスは、対照(-/-)と比較して激しくは変化しなかったことが観察される。
【0512】
(表9)IL-12に対するAb1改変体の単一変異体および組み合わせ変異体の結合カイネティクス
【0513】
3-4 VH/VL境界面内に改変を含むIL-12融合タンパク質の調製
二価IL-12融合タンパク質FP8(Ab101H-12aa-C4-L4-IL12006/Ab102L-SK1)は、軽鎖(配列番号:1009)および重鎖(配列番号:1012)で構成されるホモ二量体である。重鎖(配列番号:1012)において、VHであるAb101H(配列番号:1011)は、切断可能リンカー12aa(配列番号:941)を介して、定常領域C4(配列番号:970)のN末端に融合しており、一本鎖IL-12であるIL12006(配列番号:1008)は、GSリンカー(配列番号:963)によって定常領域のC末端に融合している。VH/VL境界面で少なくとも1つのアミノ酸改変を行うことによって、および追加的にCDR領域中の改変を伴ってまたは伴わずに、重鎖(配列番号:1012)および軽鎖(配列番号:1009)を、VH/VL境界面でさらに改変した。上記の実施例3-2および3-3に示される、高いパーセンテージのVH遊離傾向と、結合カイネティクスの最小の変化があったかまたはいかなる変化もなかったこととが実証された改変を、選択した。FP8およびVH/VL境界面における改変を含むいくつかの融合タンパク質(「単一変異体」または「組み合わせ変異体」)を、表11Aに示されるように検討した。
二価IL-12融合タンパク質FP13(Ab101H-N0222-C4-L4-IL12v1.KHKE/Ab102L-SK1)は、軽鎖(配列番号:1009)および重鎖(配列番号:1088)で構成されるホモ二量体である。重鎖(配列番号:1088)において、VHであるAb101H(配列番号:1011)は、切断可能リンカーN0222(配列番号:1089)を介して、定常領域C4(配列番号:970)のN末端に融合しており、一本鎖IL-12であるIL12v1.KHKE(配列番号:1090)は、GSリンカー(配列番号:963)によって定常領域のC末端に融合している。VH/VL境界面で少なくとも1つのアミノ酸改変を行うことによって、および追加的にCDR領域中の改変を伴ってまたは伴わずに、重鎖(配列番号:1088)および軽鎖(配列番号:1009)を、VH/VL境界面でさらに改変した。VH/VL境界面における改変を伴うFP13のいくつかの融合タンパク質を、表11Bに示されるように検討した。
【0514】
各鎖の発現ベクターを、表10に示されるような各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。融合タンパク質の精製は、MabSelect SuRe(カタログ番号:17-5438-01、GE Healthcare)によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。アフィニティクロマトグラフィーからの溶出液中に存在する任意の凝集物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0515】
(表10)二価IL-12融合タンパク質および各鎖の配列番号
【0516】
3-5 二価IL-12融合タンパク質(FP8)改変体を用いたVH遊離アミノ酸改変のスクリーニング
二価IL-12融合タンパク質についてのVH遊離を、Biacore T200機器(Cytiva)を用いて37℃で判定した。プロテインA/G(PIERCE)を、アミンカップリングキット(Cytiva)を用いてCM4センサーチップのすべてのフローセル(FC)上に固定化した。すべてのタンパク質およびアナライトを、HBS-EP+緩衝液において調製した。各タンパク質を、フローセルFC2、FC3、またはFC4に捕捉されたプロテインA/Gによって、500 RUのレベルまでセンサー表面上に捕捉させ、次いで、すべてのFCにわたって400 nMの組換えヒトuPAまたは緩衝液の1800秒の注入を行った。センサー表面を、各サイクル後に10 mMグリシン-HCl、pH 1.5で再生させた。フローセルFC2、FC3、またはFC4上へのサンプル注入が終わる10秒前のRU値を、各抗体についての最終反応として採用した。RUの低減パーセンテージを、以下の式を用いて計算した。
【0517】
VHは、二価IL-12融合タンパク質の分子量の10%に対応するため、10%の反応の低減は、100%のVHが遊離されたことを示唆する。
VH遊離%=RUの低減%×100/10
【0518】
表11Aおよび11Bならびに図12Aおよび12Bに示されるように、試験された改変体はすべて、改善されたVH遊離傾向を示した。
【0519】
(表11A)VH遊離変異を有する二価IL-12融合タンパク質およびVH遊離%
(表11B)VH遊離変異を有する二価IL-12融合タンパク質FP13およびVH遊離%
【0520】
3-6 VH/VL境界面にアミノ酸改変を含む活性化された二価IL-12融合タンパク質の調製
表11Aに記載されるような、VH解離を促進するVH/VL境界面のアミノ酸改変を含む二価IL-12融合タンパク質を、調製し、追加的にプロテアーゼ処理に供した。組換えヒトu-プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ(uPA)(R&D Systems, Inc., 1310-SE-010)を、プロテアーゼとして用いた。プロテアーゼおよび各二価IL-12融合タンパク質を、PBSにおいて37℃の条件下で4時間、1:1の比で反応させた。Ni Sepharose excel樹脂(カタログ番号:17371201、Cytiva)を用いたプルダウンによって、プロテアーゼを、消化混合物から除去した。表12は、改変体、VHおよびVLの変異、ならびに配列番号のリストを示す。
【0521】
(表12)プロテアーゼ消化に供された、VH遊離変異を有する二価IL-12融合タンパク質、各鎖の配列番号
【0522】
3-7 VH/VL境界面にアミノ酸改変を含む活性化された二価IL-12融合タンパク質の薬物動態
3-7-1 SCIDマウスを用いたインビボ試験
VH遊離改変体(表12)の薬物動態を、SCIDマウスにおいて評価した。VH遊離改変体(0.04 mg/mL)を、10 mL/kgの単回静脈内投与で投与した。血液を、投与の5分後、4時間後、1日後、2日後、3日後、7日後、14日後、21日後、および28日後に収集した。収集した血液を、直ちに14000 rpm、4℃で10分間遠心分離して、血漿を分離した。分離した血漿を、測定まで-20℃未満で保管した。
【0523】
3-7-2 ELISAによるSCIDマウス血漿中のVH遊離改変体の測定
SCID血漿中のVH遊離改変体の濃度を、IL-12 High Sensitivity Human ELISAキット(Abcam)によって、製造業者の説明書に従って測定した。VH遊離改変体の濃度は、解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて較正曲線の応答に基づいて計算した。この方法によって測定した血漿VH遊離改変体濃度のタイムコースを、図13に示す。
【0524】
3-7-3 SCIDマウスにおけるVH遊離改変体の薬物動態
SCIDマウスにおけるVH遊離改変体の薬物動態プロファイルを評価した。図13は、SCIDマウスにおける静脈内投与後のVH遊離改変体の血漿濃度のタイムコースを示す。未切断の二価IL-12融合タンパク質であるAb101H12/Ab102L103およびAb101H89/Ab102L103のクリアランスは、それぞれ、26.6および13.9 mL/日/kgであった。未切断の融合タンパク質と比較して、VH遊離改変体はすべて、より高いクリアランスレベルを有し、特に、消化されたAb101H89/Ab102L69および消化されたAb101H89/Ab102L103は、これらの改変体の中で最も高いクリアランスを有し、それぞれ、599および615 mL/日/kgであった(表13、図13)。これらの結果により、VH遊離改変体は、その切断可能リンカーのプロテアーゼ消化を介して活性化される、融合タンパク質からのVH解離を促進したことが示される。これにより、そうでなければ融合タンパク質のリガンド結合ドメインが結合している時にマスクされていた、IL-12上の2つのヘパリン結合部位が露出される。VH解離を促進するために行われたアミノ酸改変の結果として、細胞外マトリックスへの素早い取り込みがあり、これが、急速な排出をもたらす。
【0525】
(表13)VH/VL境界面にアミノ酸改変を含む活性化された二価IL-12融合タンパク質の薬物動態パラメーター(ml/日/kg)
【0526】
3-8 二価CXCL10融合タンパク質の調製
VH遊離変異の有効性をまた、別の抗体-抗原の組み合わせであるCXCL10および抗CXCL10抗体で検証した。IL-12と同様に、文献において報告されているように、CXCL10は、非常に短い半減期を有する(9.83 h;http://www.ectrx.org/detail/current/2020/18/3/0/368/0)。上記のように、未切断(「不活性」)状態で、二価CXCL10融合タンパク質は、CXCL10が抗CXCL10抗体の抗原結合ドメインに結合している時のGAG結合部位のマスキングのために、より長い半減期を有するであろう。プロテアーゼ切断による活性化時に、CXCL10は、抗原結合ドメインから遊離され、切断(「活性」)状態分子は、急速に排出される(図14A)。
【0527】
二価CXCL10融合タンパク質を、CXCL10分子(hCXCL10R75A.0041、配列番号:1020)と抗CXCL10抗体とを切断可能リンカーを介して融合させることによって構築した。別段注記しない限り、Fc領域は、FcγR結合を無効にするための変異(EUナンバリングでL235R/G236R/A327G/A330S/P331S)を含有する改変されたIgG1領域である。
【0528】
二価CXCL10融合タンパク質FP9(hCXCL10R75A.0041-L7-HFR0039H-12aa0054-C7/L-LT0)は、軽鎖(配列番号:1021)および重鎖(配列番号:1022)で構成されるホモ二量体である。重鎖(配列番号:1022)において、hCXCL10R75A.0041は、GSリンカー(L7、配列番号:1025)を介してVH領域(HFR0039H、配列番号:1024)に融合しており、VH領域は、切断可能リンカー(配列番号:1027)を介して定常領域(C7、配列番号:1026)に融合している。表15に記載されるようなVH/VL境界面におけるさらなる改変を伴って、配列番号:1023を軽鎖として用い、配列番号:1028を重鎖として用いた。
【0529】
各鎖の発現ベクターを、表14に示されるような各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。融合タンパク質の精製は、MABSELECT SURE LX(カタログ番号:17547402、GE Healthcare)によるアフィニティ精製を用いて行った。
【0530】
(表14)二価CXCL10融合タンパク質および各鎖の配列番号
【0531】
3-9 二価CXCL10融合タンパク質を用いたVH遊離アミノ酸改変のスクリーニング
CXCL10融合タンパク質から遊離されたVHのパーセンテージを、(i)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および(ii)表面プラズモン共鳴(SPR)の2つの方法を用いて評価した。
【0532】
(i)SEC法:CXCL10融合タンパク質を、TSKgel G3000SWXLカラム(カタログ番号:000854、Tosoh)にアプライし、改変された移動相(50 mM NaPB、750 mM アルギニン-HCl)を用いることによって分離した。ピークを、蛍光(励起280 nm、蛍光330 nm)によって検出した。プロテアーゼ処理サンプルについては、0.18 mg/mLのCXCL10融合タンパク質を、70 nM uPA(カタログ番号:755304、Biolegend)で1.5時間処理した。VH遊離のパーセンテージを、蛍光ピーク面積から計算することはできないが、VH/VL境界面における電荷変異が、改変なしと比較してリガンド遊離の傾向を増加させることが観察された(図14B)。
(ii)Biacore法:CXCL10融合タンパク質についてのVH遊離を、Biacore T200機器(GE Healthcare)を用いて判定した。Sure Protein A(カタログ番号:28-4018-60、GE Healthcare)を、CM3センサーチップ(カタログ番号:BR100536、GE Healthcare)のすべてのフローセル(FC)上に固定化した。すべてのタンパク質およびアナライトを、改変されたランニング緩衝液(pH 7.4/10 mM HEPES/500 mM NaCl/0.005% SurfactantP20/3 mM EDTA)において調製した。各タンパク質を、フローセルに捕捉されたプロテインAによってセンサー表面上に捕捉させた。これに続いて、すべてのFCにわたって200 nM uPA(カタログ番号:755304、Biolegend)または緩衝液を注入した。センサー表面を、各サイクル後に再生させた。フローセル上へのサンプル注入が終わる5秒前のRU値を、各タンパク質についての最終反応として採用した。RUの低減パーセンテージを、以下の式を用いて計算した。
【0533】
CXCL10-VHは、IgG分子の分子量の30%に対応するため、30%の反応の低減は、100%のCXCL10-VH領域が遊離されたことを示唆する。
VH遊離%=RUの低減%×100/30
【0534】
VH/VL境界面における電荷変異は、改変なしと比較してCXCL10-VH遊離傾向の増加をもたらした(表15)。
【0535】
(表15)VH遊離変異を有するCXCL10融合抗体、各鎖の配列番号、およびVH遊離%
【0536】
VHとVLとの境界面にあるアミノ酸の改変を介してVH/VL境界面で行われた操作は、VHとVLとの間の会合を低減させ、本発明の二価融合タンパク質からのVHの解離を促進した。例として、2つの分子形式および2つのリガンド/抗原を含む融合タンパク質、すなわち、二価IL-12融合タンパク質および二価CXCL10融合タンパク質を評価した。両方の例において、VHとVLとの境界面でのアミノ酸改変は、分子形式またはリガンド/抗原同一性とは無関係に、二価融合タンパク質からのVHの解離を促進した。各場合に、VHの遊離は、リガンド結合ドメインに対するリガンドの結合または抗原結合ドメインに対する抗原の結合を破壊し、それらが、そのそれぞれの受容体または結合パートナーに結合して、その生物学的活性を発揮することを可能にする。さらに、本発明者らはまた、CDR領域中にあるアミノ酸を追加的に改変することもまた、リガンド/抗原とそのリガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインとの結合カイネティクスに対していかなる有意な変化も伴わずに、VH解離およびその後の融合タンパク質からのリガンド/抗原の遊離を促進するのに有効であったことも発見した。実際に、フレームワーク領域およびCDR領域におけるVHとVLとの境界面にある改変の組み合わせは、フレームワーク領域のみにおいて行われた改変と比較して、優れたVH遊離傾向を示した(28.1%のVH遊離を示したAb101H17/Ab102L69対56%のVH遊離を示したAb101H89/Ab102L69)。
【0537】
3-10 二価IL-22融合タンパク質の調製
各々が異なる分子形式である、3つのIL-22融合タンパク質FP14、FP15、およびFP16を設計した(図22A、23A、および24A)。図22Aに示されるように、プロテアーゼ切断時に、FP14からVH-IL-22が遊離され(「VH-リガンド遊離」)、図23Aに示されるように、FP15からVL-IL-22が遊離され(「VL-リガンド遊離」)、および図24Aに示されるように、FP16からVHが遊離される(「VH-リガンド遊離」)。二価インターロイキン-22(IL-22)融合タンパク質を、IL-22分子(配列番号:971)と抗IL-22抗体とを切断可能リンカーを介して融合させることによって構築した。二価IL-22融合タンパク質FP14(IL22-GS-Ab4H-12aa-C6/Ab4L-LT0)は、重鎖(配列番号:1095)および軽鎖(配列番号:1096)で構成されるホモ二量体である。重鎖(配列番号:1095)において、IL-22(配列番号:971)は、GSリンカー(配列番号:1001)を介して、VHであるAb4H(配列番号:1091)のN末端に融合している。Ab4H(配列番号:1091)は、切断可能リンカー12aa(配列番号:941)を介して定常領域C6(配列番号:1006)のN末端に融合している。VH/VL境界面で少なくとも1つのアミノ酸改変を行うことによって、重鎖(配列番号:1095)および軽鎖(配列番号:1096)を、VH/VL境界面でさらに改変した。Ab4Lは、VLである(配列番号:1092)。
【0538】
二価IL-22融合タンパク質FP15(Ab5H-C6/IL22-GS-Ab5L-12aa-LT0)は、重鎖(配列番号:1097)および軽鎖(配列番号:1098)で構成されるホモ二量体である。軽鎖(配列番号:1098)において、IL-22(配列番号:971)は、GSリンカー(配列番号:1001)を介して、VLであるAb5L(配列番号:1094)のN末端に融合している。Ab5L(配列番号:1094)は、切断可能リンカー12aa(配列番号:941)を介して定常領域C9(配列番号:1101)のN末端に融合している。VH/VL境界面で少なくとも1つのアミノ酸改変を行うことによって、重鎖(配列番号:1097)および軽鎖(配列番号:1098)を、VH/VL境界面でさらに改変した。
【0539】
二価IL-22融合タンパク質FP16(Ab5H-12aa-C4-L4-IL22/Ab5L-LT0)は、重鎖(配列番号:1099)および軽鎖(配列番号:1100)で構成されるホモ二量体である。重鎖(配列番号:1099)において、VHであるAb5H(配列番号:1093)は、切断可能リンカー12aa(配列番号:941)を介して定常領域C4(配列番号:970)のN末端に融合している。C4は、GSリンカーL4(配列番号:963)を介してIL-22(配列番号:971)に接続されている。VH/VL境界面で少なくとも1つのアミノ酸改変を行うことによって、重鎖(配列番号:1099)および軽鎖(配列番号:1100)を、VH/VL境界面でさらに改変した。
【0540】
FP14、FP15、およびFP16、ならびにVH/VL境界面における改変を含むいくつかの融合タンパク質(「単一変異体」または「組み合わせ変異体」)を、それぞれ、表17A、17B、および17Cに示されるように検討した。
【0541】
各鎖の発現ベクターを、表16に示されるような各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。融合タンパク質(FP)14、15、および16の精製は、MabSelect SuRe(カタログ番号:17-5438-01、GE Healthcare)によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。アフィニティクロマトグラフィーからの溶出液中に存在する任意の凝集物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0542】
(表16)二価IL-22融合タンパク質FP14、FP15、およびFP16、ならびに各鎖の配列番号
【0543】
3-11 IL-22融合タンパク質(FP14、15、および16)改変体を用いたVH、VH-リガンド、またはVL-リガンド遊離アミノ酸改変のスクリーニング
それぞれ、IL-22融合タンパク質FP14およびFP15から遊離されたVH-リガンドまたはVL-リガンドのパーセンテージを評価した。二価IL-22融合タンパク質についてのVH-リガンドまたはVL-リガンドの遊離を、Biacore T200機器(Cytiva)を用いて37℃で判定した。プロテインA/G(PIERCE)を、アミンカップリングキット(Cytiva)を用いてCM4センサーチップのすべてのフローセル(FC)上に固定化した。すべてのタンパク質およびアナライトを、HBS-EP+緩衝液において調製した。各タンパク質を、フローセルFC2、FC3、またはFC4に捕捉されたプロテインA/Gによって、500 RUのレベルまでセンサー表面上に捕捉させ、次いで、すべてのFCにわたって400 nMの組換えヒトuPAまたは緩衝液の1800秒の注入を行った。センサー表面を、各サイクル後に10 mMグリシン-HCl、pH 1.5で再生させた。フローセルFC2、FC3、またはFC4上へのサンプル注入が終わる10秒前のRU値を、各抗体についての最終反応として採用した。RUの低減パーセンテージを、以下の式を用いて計算した。
IL-22-VH(「VH-リガンド」)は、IL22融合タンパク質の分子量の分子量の36.8%に対応するため、36.8%の反応の低減は、100%のIL-22-VHが遊離されたことを示唆する。
VH遊離%=RUの低減%×100/36.8
IL-22-VL(「VL-リガンド」)は、IgG分子の分子量の分子量の36.8%に対応するため、36.8%の反応の低減は、100%のIL-22-VLが遊離されたことを示唆する。
VL遊離%=RUの低減%×100/36.8
表17Aおよび17B、ならびに図15に示されるように、試験された改変体はすべて、改変なしと比較して改善されたVH-リガンドまたはVL-リガンドの遊離傾向を示した。
【0544】
(表17A)VH-リガンド遊離変異を有する二価IL-22融合タンパク質FP14およびVH-リガンド遊離%
【0545】
(表17B)VL遊離変異を有する二価IL-22融合タンパク質FP15およびVL-リガンド遊離%
【0546】
それぞれ、IL-22融合タンパク質FP16から遊離されたVHのパーセンテージを評価した。二価IL-22融合タンパク質についてのVH遊離を、Biacore T200機器(Cytiva)を用いて37℃で判定した。プロテインA/G(PIERCE)を、アミンカップリングキット(Cytiva)を用いてCM4センサーチップのすべてのフローセル(FC)上に固定化した。すべてのタンパク質およびアナライトを、HBS-EP+緩衝液において調製した。各タンパク質を、フローセルFC2、FC3、またはFC4に捕捉されたプロテインA/Gによって、500 RUのレベルまでセンサー表面上に捕捉させ、次いで、すべてのFCにわたって400 nMの組換えヒトuPAまたは緩衝液の1800秒の注入を行った。センサー表面を、各サイクル後に10 mMグリシン-HCl、pH 1.5で再生させた。フローセルFC2、FC3、またはFC4上へのサンプル注入が終わる10秒前のRU値を、各抗体についての最終反応として採用した。RUの低減パーセンテージを、以下の式を用いて計算した。
VHは、二価IL-22融合タンパク質の分子量の15.8%に対応するため、15.8%の反応の低減は、100%のVHが遊離されたことを示唆する。
VH遊離%=RUの低減%×100/15.8
【0547】
表17Cおよび図15に示されるように、試験された改変体はすべて、改善されたVH遊離傾向を示した。
【0548】
(表17C)VH遊離変異を有する二価IL-22融合タンパク質FP16およびVH遊離%
【0549】
リガンドIL-12およびCXCL10に加えて、IL-22二価融合タンパク質を、FP14で例示されるVH-IL-22遊離(「VH-リガンド遊離」)、FP15において例示されるVL-IL-22遊離(「VL-リガンド遊離」)、およびFP16で例示されるVH遊離の3つの異なる分子形式で生成させた。この実施例において、VH/VL境界面で行われたアミノ酸改変が、二価融合タンパク質からのVH遊離を促進するだけではなく、VL遊離も促進し、リガンド/抗原同一性とは無関係であることが示される。VHまたはVLの遊離は、それらが、そのそれぞれの受容体または結合パートナーに結合して、その生物学的活性を発揮することを可能にする。
【0550】
実施例4:プロテアーゼ耐性IL-12
一本鎖IL-12(配列番号:962)は、GSリンカー(配列番号:1029)によってp35(配列番号:940)に融合したp40(配列番号:939)で構成されている。IL-12のp40サブユニットは、腫瘍特異的プロテアーゼ、特に、ヒトマトリプターゼ/ST14触媒ドメイン(MT-SP1)による切断を受けやすいヘパリン結合部位を含むことが公知である。切断は、p40のK260とR261との間のヘパリン結合領域(配列番号:1030)において起こり得る。追加的に、MT-SP1切断は、一本鎖IL-12(配列番号:962)内のGSリンカー(配列番号:1029)がそれに続くp35(配列番号:1031)のN末端のアルギニン(R)ポジションで起こり得る。二価IL-12融合タンパク質FP8の特定の場合に、IL-12のヘパリン結合部位は、IL-12融合タンパク質(配列番号:1012)の可変領域のエピトープに極めて近接している。ヘパリン結合部位でのプロテアーゼ切断は、活性化された融合形式のIL-12融合タンパク質の速いクリアランスに影響を及ぼす(図16)。ヘパリン結合部位でのIL-12の意図的ではない切断を妨いだが、IL-12融合タンパク質のエピトープを保存して、IL-12融合タンパク質の不活性状態でIL-12に結合するその能力を維持した、選択的改変を行った。KLH二価IL-12融合FP7を利用して、そのような改変をスクリーニングした。
【0551】
4-1 KLH二価IL-12融合タンパク質の調製
KLH二価IL-12融合FP10(KLH-二価IL12006v1)は、軽鎖(配列番号:986)および重鎖(配列番号:1032)で構成されるホモ二量体である。配列番号:986は、改変を伴わない軽鎖として用いた。重鎖(配列番号:1032)において、KLH VH(配列番号:994)は、GSリンカー(配列番号:963)を介してFcのC末端に付加された一本鎖IL-12(配列番号:1033)がそれに続く、定常領域(配列番号:1006)に融合している。FP10(KLH-二価IL12006v1)およびIL-12改変体(「IL-12改変体」)を含むいくつかの他の融合タンパク質を、表19に示されるように検討した。
【0552】
各鎖の発現ベクターを、表18に示されるような各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。タンパク質の精製は、MabSelect SuRe(カタログ番号:17-5438-01、GE Healthcare)によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。アフィニティクロマトグラフィーからの溶出液中に存在する任意の凝集物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0553】
(表18)二価KLH融合タンパク質および各鎖の配列番号
【0554】
(表19)プロテアーゼ耐性IL-12変異を有するKLH-二価IL-12融合タンパク質、IL-12改変体
【0555】
4-2 KLH-二価IL-12融合タンパク質のプロテアーゼ消化
組換えヒトマトリプターゼ/ST14触媒ドメイン(MT-SP1)(R&D Systems, Inc.、3946-SE-010)を、プロテアーゼとして用いた。75 nMのプロテアーゼおよび750 nMの各融合タンパク質を、PBSにおいて37℃の条件下で1、4、および24時間反応させた。次いで、プロテアーゼによる切断を、還元SDS-PAGEによって評価した。結果を、図17および18に示す。1時間および4時間のプロテアーゼ消化後に、表19に列記される変異を含む融合タンパク質のほとんどの重鎖の分子量において、いかなる変化もないことが注目される。これは、ほとんどの上記のIL-12改変体が、対照(レーン1)とは異なり、プロテアーゼ消化に対して安定かつ耐性であったことを意味する。1時間および4時間の消化後の結果は、本発明の二価IL-12融合タンパク質の活性化型の期待される半減期を表すと考えられるが、最悪の場合として、最大で24時間のIL-12改変体のプロテアーゼ消化も行った。示されるように、これらの改変体(「24時間消化」)のいくつかは、依然として、インキュベーションの開始(「未消化」)に匹敵する分子量を示し、プロテアーゼとの長いインキュベーションにかかわらず安定のままである。
【0556】
4-3 改善されたプロテアーゼ耐性を有するIL-12改変体のインビトロ活性の評価
プロテアーゼ耐性改変が、プロテアーゼ処理を伴うおよび伴わないIL-12改変体の活性に影響を及ぼすかどうかを評価するために、IL-12ルシフェラーゼアッセイを実施した。簡潔に説明すると、2.5×104細胞/ウェルの、ヒトIL-12Rb1、IL-12Rb2、およびSTAT4を発現するIL-12バイオアッセイ細胞(Promega、カタログ番号CS2018A02A)を、96ウェルプレートにプレーティングして、一晩インキュベートした。次いで、IL-12、または実施例4-2から選択されたプロテアーゼ耐性IL-12を含むKLH-二価IL-12融合タンパク質(「IL-12改変体」)を、培養プレートに添加して、18時間インキュベートした。融合タンパク質のリストは、以下の表20に列記されている。プロテアーゼ処理サンプルについては、IL-12またはIL-12改変体を、等モル濃度のMT-SP1で4時間処理して、連続希釈物を調製した。ルシフェラーゼ活性を、Bio-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、G7940)で、製造業者の説明書に従って検出した。発光を、GloMax(登録商標) Explorer System(Promega #GM3500)を用いて検出した。データ解析を、Microsoft(登録商標) Excel(登録商標) 2013によって行い、解析されたデータを、GraphPad Prism 8.4.3を用いてプロットした。
プロテアーゼ耐性IL-12改変体のIL-12活性を、ルシフェラーゼアッセイによって評価した。プロテアーゼ耐性IL-12改変体はすべて、プロテアーゼ処理にかかわらず、hIL12_Hisタグと類似した活性を示した(図19)。
【0557】
(表20)薬物動態解析のために選択されたIL-12改変体
【0558】
4-4 改善されたプロテアーゼ耐性を有するIL-12改変体の薬物動態の評価
プロテアーゼ耐性改変体の薬物動態を、SCIDマウスにおいて評価した(図20)。プロテアーゼ耐性改変体(0.04 mg/mL)を、10 mL/kgの単回静脈内投与で投与した。血液を、投与の5分後、2時間後、4時間後、1日後、2日後、3日後、7日後、14日後、21日後、および28日後に収集した。収集した血液を、直ちに14000 rpm、4℃で10分間遠心分離して、血漿を分離した。分離した血漿を、測定まで-20℃未満で保管した。表20に示される以下のプロテアーゼ耐性改変体を、試験した。
【0559】
4-4-1 ELISAによるSCIDマウス血漿中のプロテアーゼ耐性改変体の測定
SCID血漿中のプロテアーゼ耐性改変体の濃度を、IL-12 High Sensitivity Human ELISAキット(Abcam)によって、説明書に従って測定した。プロテアーゼ耐性改変体の濃度は、解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて較正曲線の応答に基づいて計算した。この方法によって測定した血漿プロテアーゼ耐性改変体濃度のタイムコースを、図20に示す。
【0560】
4-4-2 SCIDマウスにおけるプロテアーゼ耐性改変体の薬物動態
SCIDマウスにおけるプロテアーゼ耐性改変体の薬物動態プロファイルを評価した。図20は、SCIDマウスにおける静脈内投与後のプロテアーゼ耐性IL-12改変体の血漿濃度のタイムコースを示す。図20および表21を参照すると、プロテアーゼ耐性改変体はすべて、376 mL/日/kgのクリアランスレベルを有する対照(KLH-二価IL12006v1)よりも遅い排出を示した。これらの中で、融合タンパク質改変体KLH-二価IL12006v1.KHKEおよびKLH-二価IL12006v1.KRHE は、それぞれ、241および206 mL/日/kgという最も高いクリアランスレベルを示した。これらの改変体は、高いクリアランスレベルを保持しながらプロテアーゼ耐性があることを両方とも実証する、薬物動態プロファイルを例示した。
【0561】
(表21)プロテアーゼ耐性変異を含む活性化された二価KLH融合タンパク質の薬物動態パラメーター(ml/日/kg)
【0562】
実施例5:プロテアーゼ活性化時に復元されるIL-12およびIL-22融合タンパク質の生物学的活性
5-1 VH/VL境界面での選択されたアミノ酸改変およびプロテアーゼ耐性IL-12改変を有するIL-12融合タンパク質の調製
本発明の融合タンパク質の実施例3において得られたリガンド結合ドメインに結合する、実施例4において得られたIL-12の能力を評価した。二価IL-12融合タンパク質FP8(Ab101H-12aa-C4-L4-IL12006/Ab102L-SK1)は、軽鎖(配列番号:1009)および重鎖(配列番号:1012)で構成されるホモ二量体である。配列番号:1009は、VH/VL境界面における改変を有する軽鎖として用いた。重鎖(配列番号:1012)において、VHであるAb101H(配列番号:1011)は、切断可能リンカー12aa(配列番号:941)を介して定常領域C4(配列番号:970)のN末端に融合しており、一本鎖IL-12であるIL12006(配列番号:1008)は、GSリンカー(配列番号:963)によって定常領域のC末端に融合している。実施例3においてプロテアーゼ切断後に融合タンパク質からの改善されたVH解離を示したリガンド結合ドメイン(Ab101H89/Ab102L69およびAb101H89/Ab102L103)を、選択した。実施例4において得られた一本鎖IL-12改変体を、GSリンカー(L4、配列番号:963)を介してFcドメインのC末端に付加した。実施例4から選択されたプロテアーゼ耐性IL-12改変体を有する/有しない、FP8~12を含むいくつかの融合タンパク質を製造した(表22)。
【0563】
各鎖の発現ベクターを、表22に示されるような各鎖を組み合わせることによって、当業者に公知の方法によって調製し、Expi293(Life Technologies Corp.)を用いて発現させた。タンパク質の精製は、MabSelect SuRe(カタログ番号:17-5438-01、GE Healthcare)によるアフィニティ精製、それに続くSuperdex 200ゲル濾過カラム(カタログ番号:28-9893-35、GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。アフィニティクロマトグラフィーからの溶出液中に存在する任意の凝集物を、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて除去した。
【0564】
(表22)プロテアーゼ耐性IL-12改変体を有するIL-12融合タンパク質
【0565】
5-2 プロテアーゼ耐性IL-12を有するIL-12融合型融合タンパク質のインビトロ活性の評価
プロテアーゼ耐性改変が、本発明のIL-12融合タンパク質に対するIL-12の結合に影響を及ぼすかどうかを評価するために、IL-12ルシフェラーゼアッセイを実施した。簡潔に説明すると、2.5×104細胞/ウェルの、ヒトIL-12Rb1、IL-12Rb2、およびSTAT4を発現するIL-12バイオアッセイ細胞(Promega、カタログ番号CS2018A02A)を、96ウェルプレート(#Corning、#3917)にプレーティングした。次いで、IL-12融合タンパク質を、培養プレートに添加して、18時間インキュベートした。プロテアーゼ処理サンプルについては、融合タンパク質を、等モル濃度のMT-SP1で4時間処理して、連続希釈物を調製した。ルシフェラーゼ活性を、Bio-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、G7940)で、製造業者の説明書に従って検出した。発光を、GloMax(登録商標) Explorer System(Promega #GM3500)を用いて検出した。データ解析を、Microsoft(登録商標) Excel(登録商標) 2013によって行い、解析されたデータを、GraphPad Prism ver. 9.0.2を用いてプロットした。
【0566】
二価IL-12融合タンパク質FP8、FP11、およびFP12を、IL-12ルシフェラーゼアッセイに供した。3つの融合タンパク質はすべて、MT-SP1の非存在下で、hIL-12_Hisタグよりも低いIL-12生物活性を示し、IL-12生物活性は、MT-SP1処理時に、hIL-12_Hisタグと同じレベルまで復元された(図21)。
【0567】
5-3 プロテアーゼ消化を伴うおよび伴わない、IL-22融合タンパク質のインビトロ活性の評価
VHとVLとの境界面にあるアミノ酸の改変が、IL-22の遊離を促進したかどうかを評価するために、IL-10を分泌することによってIL-22に応答するCOLO205結腸がん細胞(カタログ番号:CCL-222、ATCC)を用いて、活性アッセイを実施した(Int Immunopharmacol. 2004 May;4(5):679-91)。
【0568】
IL-22融合タンパク質および組換えヒトuPAプロテアーゼを各々、50μM HEPES(Gibco)を含有する無血清RPMI培地(Gibco)において1400 nM濃度に希釈し、次いで、700 nM抗体および700 nM uPAプロテアーゼの最終濃度に到達するように等体積で混合した。uPA処理なしについては、融合タンパク質サンプルを、無血清RPMI培地およびHEPESと混合した。リンカーの切断およびIL-22の遊離を可能にするように、サンプルを、Thermocycler(2720 Applied Biosystems)において4時間、37℃でインキュベートした。陽性対照として、HEK293由来の組換えヒトIL-22(カタログ番号:Z03081-50、Genscript)を、uPAとインキュベートした。
【0569】
COLO205細胞を、0.25%トリプシン(Gibco)でのトリプシン処理によって収集し、続いて、70マイクロメートルセルストレーナー(Corning)を通して濾過して、細胞塊を除去した。Luna Dual Fluorescence Cell Counter(Logos Biosystem)を用いて細胞計数を行い、50μL中の3E4細胞を、NUNC Edge 96ウェル平底プレートの各ウェル中に播種した。滅菌PBSを、NUNC Edgeプレートの周縁のウェルに添加して、端に沿ったウェルからの蒸発を低減させた。細胞を、5% CO2インキュベーターにおいて最低でも4時間、37℃でインキュベートして、細胞をプレートに付着させた。uPAを伴っておよび伴わずにインキュベートしたIL-22融合タンパク質を、最終所望濃度の6倍まで段階希釈し、60μLの最終アッセイ体積に対して10μLを、細胞に添加した。アッセイプレートを、さらに、5% CO2インキュベーターにおいて一晩、37℃でインキュベートした。一晩のインキュベーション後に、アッセイプレートを、300 gで3分間、25℃で遠心分離した。細胞上清サンプルを収集して、Human IL-10 DuoSet ELISA(R&D Systems)を用いて、COLO205細胞によって産生されたIL-10の量を定量した。Human IL-10 ELISAについての手順は、IL-10標準およびサンプルの調製を除いて、製造業者の推奨に従って行った。より感度の高いIL-10検出のために、細胞上清サンプルを希釈せずにアッセイできるように、IL-10標準を、10%ウシ胎児血清(Sigma)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を含有するRPMI1640培地(Gibco)であるCOLO205培養培地において希釈した。サンプルの吸光度を、MultiSkan GOプレートリーダー(Thermo Scientific)を用いて、450 nmおよび595 nmで測定した。データ解析を、Microsoft(登録商標) Excel(登録商標)によって行い、解析されたデータを、GraphPad Prismを用いてプロットした。
【0570】
各構築物におけるプロテアーゼ消化後に遊離された活性IL-22の相対量を比較するために、本発明者らは、グラフを内挿して、COLO205細胞が固定量のIL-10を培養上清に分泌するのに必要とされるIL-22のモル濃度を決定した。特に、プロテアーゼを伴っておよび伴わずに遊離された活性IL-22の量の差を、各構築物間で比較した。これを、活性ウインドウとして報告する。
【0571】
図22(B~F)に示されるように、いかなる変異も有しないIL-22融合タンパク質FP14(Ab4H/Ab4L)についての活性ウインドウ(「(-)uPA」/「(+)uPA」)は、異なるアッセイプレートにわたっておよそ13~16の範囲であった。しかし、活性ウインドウは、VH/VL境界面における変異を保有するいくつかの構築物について増加した。図23(B~E)において、いかなる変異も有しないIL-22融合タンパク質FP15(Ab4H/Ab4L)についての活性ウインドウは、異なるアッセイプレートにわたっておよそ3倍であり、VH/VL境界面における変異を保有するいくつかの構築物について増加した。同様に、図24(B~E)に示されるように、同じ傾向のIL-22融合タンパク質FP16の活性ウインドウの増加が、VH/VL境界面変異が適用された場合に見られた。図22~24においては、プロテアーゼを伴っておよび伴わずに各抗体を評価する要件と連結した、評価されるべき抗体の大きなパネルのために、各抗体を、いかなる複製も伴わずに単一のウェルにおいて評価した。組換えIL-22と比べて遊離されたIL-22の活性を示すために、本発明者らは、各融合タンパク質から1つのVH/VL境界面改変体を選択して、それを、いかなるVH/VL境界面変異も有しない親融合タンパク質に対して、および組換えIL-22に対して比較し、ここでは、各抗体を二連で評価した。図25に示されるように、選択された改変体における遊離されたIL-22の活性は、組換えIL-22の活性に近く、これは、VH/VL境界面での改変が、遊離されたリガンドの活性に寄与し得ることを実証する。
【0572】
二価IL-22融合タンパク質FP14、FP15、およびFP16を、上記のような活性アッセイに供した。試験された融合タンパク質のすべては、uPAの非存在下で、より低いIL-22生物活性を示し、IL-22生物活性は、uPA消化時に増加した。
【0573】
本発明者らは、不活性の時に長い半減期を有し、かつ活性の時に短い半減期を有する、特異的プロテアーゼ切断によって活性化可能である二価融合タンパク質の製造に成功した。
【0574】
本明細書に開示される特徴のすべては、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書に開示される各特徴は、同じ、等価の、または類似の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられてもよい。したがって、別段明示的に述べない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の等価または類似の特徴の例に過ぎない。
【0575】
上記の説明から、当業者は、本開示の本質的な特性を容易に把握することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本開示を種々の用法および条件に適合させるために、本開示の種々の変更および改変を行うことができる。したがって、他の態様もまた、特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図25A
図25B
図25C
【配列表】
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【国際調査報告】