(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】がん治療薬
(51)【国際特許分類】
C07K 5/023 20060101AFI20240718BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20240718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C07K5/023
A61K38/07
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500634
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022068815
(87)【国際公開番号】W WO2023280960
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524008454
【氏名又は名称】ウニベルシタ デ バルセロナ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アゲル ジャネ,ニエベス
(72)【発明者】
【氏名】ジョモ ピジョアン,モンセラット
(72)【発明者】
【氏名】カボット ロメロ,デボラ
(72)【発明者】
【氏名】ブルン ロサーノ,ソニア
(72)【発明者】
【氏名】アブアサカー,バラー
(72)【発明者】
【氏名】ラバナル アングラーダ,フランセスク
(72)【発明者】
【氏名】パラーラ,キアラ
(72)【発明者】
【氏名】セコ モラル,ヘスース
(72)【発明者】
【氏名】リバス サントス,ジョセップ
(72)【発明者】
【氏名】プラデス コサーノ,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】タラゴ クルア,テレサ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA10
4C084BA15
4C084BA23
4C084NA14
4C084ZB261
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明の治療用化合物は、固相ペプチド合成を用いて調製された式(I)のペプチド模倣薬等のペプチド模倣薬を含む。本発明の治療用化合物は、膵臓がん、肺がんまたは結腸直腸がんの治療等、さらに、膵管腺がんの治療等の、がんの治療において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物およびその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
(S)-N-(3-(((S)-3-アミノ-1-((S)-4-メチル-1-オキソ-1-(ピロリジン-1-イル)ペンタン-2-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)(メチル)アミノ)-3-オキソプロピル)-3-(ビフェニル-4-イル)-2-(2,2-ジフェニルアセトアミド)-N-メチルプロパンアミドの化学名を有する、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項4】
ヒトがんの治療に使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記ヒトがんが、膵臓がん、肺がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記ヒトがんが膵臓がんである、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記膵臓がんが、膵管腺がん、PDACである、請求項6に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年7月7日に出願された欧州特許出願第21382612.6号の優先権を主張する。前述の出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、がん治療に関し、より具体的には、がんの治療のためのペプチド模倣薬を含む新規治療用化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、一般に、身体の他の部分に浸潤または拡散する可能性を有する異常な細胞増殖を伴う疾患の群として定義される。がんは、喫煙、肥満、不十分な食生活、運動不足およびアルコールの過剰摂取等の複数の要因に関連づけられている。他の要因としては、ある種の感染症、電離放射線および環境汚染物質への曝露が挙げられる。ある種のがんは、ヘリコバクター・ピロリ、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス感染症、エプスタイン・バール・ウイルスおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染症に関連づけられている。
【0004】
従来のがん治療は、がん性組織を除去し、それが広がるのを防ぐことを対象とする。そのような治療選択肢には、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的療法および緩和ケアが含まれる。治療は、通常、がんのタイプ、位置およびグレード、ならびに患者の健康および好みに基づいて追求される。がん細胞は、ほとんどの正常細胞よりも速く分裂するため、化学療法薬に敏感であり得る。
【0005】
RAS遺伝子は、細胞増殖プロセスに関連するがん遺伝子のファミリー(HRAS、NRASおよびKRAS)を含む。これらのRAS遺伝子の高度に変異した形態がいくつかのがんで見出されており、変異した形態のKRASはRAS関連がんの約86%で見出され、N-RASは約11%で見出され、最後にHRASは約3%で見出されている。最も致命的ながんのいくつかに関連する変異RAS遺伝子を見出すことが一般的である。これには、約90%の膵臓がん、45%の結腸がんおよび25%の肺がんが含まれる。
【0006】
タンパク質間相互作用(PPI)の調節は、細胞機構に関与する多数のPPIのために、近年科学界で大きな注目を集めている。しかしながら、PPIの調節は、これらの相互作用の性質のために非常に困難である。PPIの調節のための小分子の使用の代替法は、抗体などの生物製剤の使用である。生物製剤は、小分子ではなく大きな構造体と考えられており、大きなタンパク質表面を認識して相互作用する能力を有するが、生物学的障壁を越える能力を有さず、この特性がそれらの治療的使用を制限している。したがって、本発明の1つの目的は、生物学的障壁を越える能力を有しながら、大きなタンパク質表面を認識して相互作用することができるPPIを提供することである。
【0007】
変異RAS遺伝子に関連するものを含むがんを治療する必要があるため、本発明は、治療薬、その医薬組成物、および製造品を使用して、がんなどの疾患を治療する組成物および方法を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載および特許請求される発明は、この簡単な概要に記載または説明または参照されるものを含むが、これらに限定されない多くの属性および実施形態を有する。本明細書に記載され特許請求される発明は、この概要において特定される、限定ではなく例示のみを目的として含まれる、特徴または実施形態に限定されず、またはそれらによって限定されない。
【0009】
本発明の一態様では、患者に投与することができるペプチド模倣薬を含む治療用化合物が提供される。本発明の別の態様では、治療用化合物は、単独で、または1種以上の他の治療用化合物と組み合わせて投与することができる。これらのさらなる治療用化合物としては、
図8に記載の抗体、生物製剤、小分子または他の治療用化合物を挙げることができる。
【0010】
本発明の一態様において、ペプチド模倣薬である治療用化合物が、
図8に記載等の、1種類の、2種類の、3種類の、4種類の、5種類の、6種類の、7種類の、8種類の、9種類の、10種類のまたはそれを超える種類の様々な治療用化合物と共に患者に投与される。
【0011】
本発明の一態様において、治療薬はペプチド模倣薬であり、これはペプチドを模倣するように設計された小さなタンパク質様鎖である。本発明の別の態様において、ペプチド模倣薬は、タンパク質パッチ(酵素経路を引き起こすことを含め、タンパク質が別のタンパク質または分子と相互作用する結合部位または部位)を特定の様式で認識して結合し、生物学的障壁を越えるように適切に作製されている。本発明の一態様において、本発明の治療用化合物は、C47H58N6O5の分子式を有する。これは、(S)-N-(3-(((S)-3-アミノ-1-((S)-4-メチル-1-オキソ-1-(ピロリジン-1-イル)ペンタン-2-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)(メチル)アミノ)-3-オキソプロピル)-3-(ビフェニル-4-イル)-2-(2,2-ジフェニルアセトアミド)-N-メチルプロパンアミドと命名することができる。
【0012】
本発明の一態様では、治療用化合物(I)は、試験管内の細胞内におけるRAS(RAts Sarcomaからの頭字語)とそのエフェクター(RASによって引き起こされるカスケード中の他のタンパク質)との相互作用を効率的に阻害する能力を有し、KRASの発がん形態を発現する膵臓腫瘍細胞等のがん細胞の生存率を低下させる高い選択性を示す。本発明の別の態様では、治療用化合物は、PDAC細胞株の生存を阻害するが、非がん性正常細胞株に対して毒性がない。本発明の一態様では、治療用化合物およびその治療的に許容される塩は、膵臓がん、肺がんまたは結腸直腸がんから選択されるがんであって、膵臓がんがPDACである、がんの治療に有用である。
【0013】
本発明の一態様において、治療戦略は、RASとそのエフェクターとの結合を阻害する抗がん薬の探索を含む。
【0014】
本発明の別の態様は、治療用化合物およびその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物(例えば、医薬品または薬物)、ならびに薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、ヒトがんを含むがんの治療に使用するための治療用化合物およびその薬学的に許容される塩に関する。この態様は、ヒトがんを含むがんを治療するための医薬品の製造における、治療用化合物およびその薬学的に許容される塩の使用を指し得る。あるいは、この態様は、治療有効量の治療用化合物およびその薬学的に許容される塩の投与を含む、がんを治療する方法を指し得る。
【0016】
前の段落で言及された態様の一実施形態では、ヒトがんを含むがんは、膵臓がん、肺がんまたは結腸直腸がんである。他の実施形態では、ヒトがんを含むがんは膵臓がんである。また、他の実施形態では、膵臓がんは、膵管腺がん(PDAC)である。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む」という語およびこの語の変形形態は、他の技術的特徴、要素、限定、添加剤または成分を排除することを意図しない。さらに、「含む」という用語は、「からなる」の場合を包含する。本発明のさらなる目的、利点および特徴は、当業者であれば、説明を検討すれば一目瞭然となり、あるいは本発明の実施によって習得され得る。以下の実施例および図面は例示として提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は、本発明の態様を例示する。そのような図面において、
【0019】
【
図1】は、100μMの式(I)の化合物と2時間インキュベートし、10分間EGF刺激(EGF=上皮成長因子)した後に、HA-KRASG12Vを発現する飢餓HeLa細胞におけるHA-KRASG12VとC-RAFまたはPI3Kとの共免疫沈降の結果を示す図である。抗HA抗体を用いて免疫沈降を行い、結合(BO)画分およびインプット(IN)画分を抗p110αPI3Kおよび抗C-RAFを用いてウエスタンブロットを行った。実験は少なくとも3回繰り返した。
【0020】
【
図2】6つの膵臓腺がんヒト細胞株(すべて発がん性KRAS変異を有する)および非形質転換細胞株(
図2においてRPEとして示されているhTERT-RPE)の細胞生存率(CV)に対する式(I)の化合物の効果を示す図である。10%のFCSで培養した細胞を0μM以上25μM以下の投与量範囲の化合物(I)で処理し、24時間インキュベートし、細胞生存率をMTSアッセイによって測定した。実験は3回繰り返した。一元配置分散分析およびテューキー多重比較検定を用いて差を評価し、p≦0.05の場合に有意と見なした。
【0021】
【
図3】RASがそのタンパク質エフェクターと会合し、下流のタンパク質カスケードを開始することを可能にするグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)タンパク質状態によるRAS GTP結合立体配座へのRASの活性化を示す図である。さらに、活性化RASは、ファルネシルトランスフェラーゼ酵素(FT)によって動員され、細胞膜に達するまで細胞質基質を通過することができる。
【0022】
【
図4】は、GPTアーゼ-RASタンパク質の薬理作用部位(PBD:5P21)を示す図であり、(A)は、RASエフェクタータンパク質内の高度に保存された複合体GTPアーゼ-RAS残基(網掛けの棒で強調されている)を示す図である。RASタンパク質表面は灰色に着色されており、エフェクタータンパク質内の高度に保存された残基との分子間接触に関与する残基が強調されている(Asp33、Glu37、Asp38)および(Tyr64)。(B)ペプチド模倣薬の新しいセットの設計のためのより関連性の高い残基の計算予測を示す。
【0023】
【
図5】合成された治療用化合物IP-14-01(P1)、IP-14-02(P2)IP-14-03(P3)、IP-14-04(P4)、IP-14-07(P7)、IP-14-08(P8)およびIP-14-09(P9)を評価するためのKRASシグナル伝達経路の様々なタンパク質のウエスタンブロットを示す図である。GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP120)をローディングコントロールとして使用した。試験治療用化合物をhTERT-RPE(以下、RPE細胞株ともいう)の血清飢餓細胞培養物(0.5%のFCSで24時間)に加え、2時間後にEGF(50ng/ml)で10分間処理した。ペプチドを希釈するための溶媒和剤はDMSOであった。次いで細胞培地で希釈後、DMSOの最終的な割合は0.5%であった。
【0024】
【
図6】DMSOの代わりにβ-シクロデキストリンを0.5%で使用したことを除いて、
図5のウエスタンブロットの同じ条件下で行われた、化合物IP-14-01(P1)、IP-14-02(P2)IP-14-03(P3)、IP-14-04(P4)、IP-14-07(P7)、IP-14-08(P8)およびIP-14-09(P9)を評価するためのウエスタンブロットを示す図である。
【0025】
【
図7】2018/IP-14-01(P1)およびその誘導されたペプチド模倣薬、例えば、IPR-471(P1.1.)、IPR-472(P1.2)、IPR-473(P1.3)およびIPR-474(P1.4)を評価するためのウエスタンブロットを示す図である。この実験のために、本発明者らは、
図5に示される第一世代のペプチド模倣薬に対して先に行ったWBアッセイに使用したのと同じプロトコル条件に従った。化合物は0.5%のDMSOにおいて50μMでhTERT-RPE細胞の細胞培養物に加え、2時間後に細胞をEGF(50ng/ml)で10分間処理した。これらのペプチド模倣薬を用いた溶解性に何ら問題はなかった。
【0026】
【
図8】がんの治療のための治療用化合物のリストを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本明細書における「一実施形態/態様」または「実施形態/態様」への言及は、実施形態/態様に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態/態様に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における「一実施形態/態様において」または「別の実施形態/態様において」という語句の使用は、必ずしもすべてが同じ実施形態/態様を指しているわけではなく、他の実施形態/態様と相互排他的な別個のまたは代替の実施形態/態様でもない。さらに、一部の実施形態/態様によって示され得るが他の実施形態/態様によって示され得ない、様々な特徴が記載される。同様に、一部の実施形態/態様の要件であり得るが、他の実施形態/態様の要件ではない様々な要件が記載されている。実施形態および態様は、ある場合には交換可能に使用することができる。
【0028】
本明細書で使用される用語は、一般に、本開示の文脈内、および各用語が使用される特定の文脈内で、当技術分野における通常の意味を有する。本開示を説明するために使用される特定の用語は、本開示の説明に関して実務者にさらなるガイダンスを提供するために、以下、または本明細書の他の箇所で説明される。同じことが複数の方法で言えることが理解されよう。
【0029】
したがって、代替の言語および同義語は、本明細書で論じられる一つ以上の用語のために使用され得る。また、用語が本明細書において詳述または議論されているか否かを問わず、特別な意味を持たせてはいない。特定の用語の同義語が提供される。1つ以上の同義語の列挙は、他の同義語の使用を排除しない。本明細書で論じられる用語の例を含む、本明細書のいずれかの個所での例の使用は、例示にすぎず、本開示または例示された用語の範囲および意味をさらに限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0030】
本開示の範囲をさらに限定するという意図は持たずに、本開示の実施形態による機器、装置、方法およびそれらの関連結果の例を以下に示す。なお、本例では、読者の便宜のためにタイトルまたはサブタイトルを使用することがあるが、これにより本開示の範囲を限定することは決してない。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本文書が優先される。
【0031】
適用可能な場合、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される「約」または「一般的に」という用語は、別段の指示がない限り、±20%の余裕を意味する。また、適用可能な場合、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される「実質的に」という用語は、特に明記しない限り、±10%の余裕を意味する。上記の用語のすべての使用が、参照される範囲を適用できるように定量化できるわけではないことを理解されたい。
【0032】
用語「対象」または「患者」は、治療が望まれる任意の単一の動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、および非ヒト霊長類などの非ヒト動物を含む)を指す。最も好ましくは、本明細書の患者はヒトである。一実施形態では、診断または治療の「対象」は、原核細胞または真核細胞、組織培養物、組織または動物、例えばヒトを含む哺乳動物である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、組成物および方法が列挙された要素を含むが、他の列挙されていない要素を除外しないことを意味することを意図している。「から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用される場合、組成物および/または方法の基本的性質を変化させる他の要素を除外するが、他の列挙されていない要素を除外しない。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、微量の要素、例えば、任意の単離および精製方法からの混入物、または薬学的に許容される担体、例えばリン酸緩衝生理食塩水、防腐剤等を排除するものではないが、さらなる不特定のアミノ酸は排除する。「からなる」は、他の成分の微量を超える要素および本明細書に記載の組成物を投与するための実質的な方法工程を除外する。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内であり、本開示で実施される発明の範囲内である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「水和物」という用語は、化学量論量または非化学量論量のいずれかの水が結晶構造に組み込まれた結晶形態を指す。
【0035】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素・炭素二重結合を有する不飽和の直鎖または分岐鎖炭化水素、例えば本明細書で(C2~C8)アルケニルと呼ばれる2~8個の炭素原子の直鎖または分岐鎖の基を指す。例示的なアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2-エチルヘキセニル、2-プロピル-2-ブテニルおよび4-(2-メチル-3-ブテン)-ペンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、酸素に結合したアルキル基(-O-アルキル-)を指す。「アルコキシ」基はまた、酸素に結合したアルケニル基(「アルケニルオキシ」)または酸素に結合したアルキニル基(「アルキニルオキシ」)を含む。例示的なアルコキシ基としては、本明細書で(C1~C8)アルコキシと呼ばれる、1~8個の炭素原子のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を有する基が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルコキシ基としては、メトキシおよびエトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、本明細書で(C1~C8)アルキルと呼ばれる、1~8個の炭素原子の直鎖または分岐鎖の基などの飽和直鎖または分岐鎖の炭化水素を指す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、本明細書で(C2~C8)アルキニルと呼ばれる、2~8個の炭素原子の直鎖または分岐鎖の基などの、少なくとも1つの炭素・炭素三重結合を有する不飽和直鎖または分岐鎖の炭化水素を指す。例示的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4-メチル-1-ブチニル、4-プロピル-2-ペンチニルおよび4-ブチル-2-ヘキシニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される「アミド」という用語は、-NRaC(O)(Rb)-または-C(O)NRbRc(式中、Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよび水素から選択される)の形態を指す。アミドは、炭素、窒素、RbまたはRcを介して別の基に結合することができる。アミドはまた、環状であってもよく、例えば、RbおよびRcは、連結されて3員環~8員環、例えば5員環または6員環を形成してもよい。「アミド」という用語は、スルホンアミド、尿素、ウレイド、カルバメート、カルバミン酸、およびそれらの環状の変形などの基を包含する。「アミド」という用語はまた、カルボキシ基に結合したアミド基、例えば-アミド-COOH、またはカルボキシ基に結合したアミノ基である-アミド-COONaなどの塩(例えば、-アミノ-COOHまたは-アミノ-COONaなどの塩)を包含する。
【0040】
本明細書で使用される「アミン」または「アミノ」という用語は、-NRdReまたは-N(Rd)Re-の形態を指し、式中RdおよびReは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および水素から独立して選択される。アミノは、窒素を介して親分子基に結合することができる。アミノはまた、環状であってもよく、例えば、RdおよびReのいずれか2つが互いに結合して、またはNと結合して3員環~12員環(例えば、モルホリノまたはピペリジニル)を形成してもよい。また、アミノという用語は、任意のアミノ基の対応する第四級アンモニウム塩も含む。例示的なアミノ基には、RdまたはReの少なくとも1つがアルキル基であるアルキルアミノ基が含まれる。一部の実施形態では、RdおよびReはそれぞれ、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、エステルまたはアミノで必要に応じて置換されていてもよい。
【0041】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単環式、二環式、または他の多環式の炭素環式芳香環系を指す。アリール基は、アリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルから選択される1つ以上の環に必要に応じて縮合していてもよい。本開示のアリール基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスファート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンから選択される基で置換することができる。例示的なアリール基としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニルおよびナフチル、ならびにベンゾ縮合炭素環部分、例えば、5,6,7,8-テトラヒドロナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアリール基には、本明細書で「(C6)アリール」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を有する単環式芳香環系も含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される用語「アリールアルキル」は、少なくとも1つのアリール置換基(例えば、-アリール-アルキル-)を有するアルキル基を指す。例示的なアリールアルキル基には、本明細書では「(C6)アリールアルキル」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香族環系を有するアリールアルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、-Rgoc(O)N(Rh)-、-Rgoc(O)N(Rh)Ri-、または-oc(O)NRhRiの形態を指し、式中、Rg、RhおよびRiは、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよび水素から選択される。例示的なカルバメートとしては、アリールカルバメートまたはヘテロアリールカルバメート(例えば、式中、Rg、RhおよびRiの少なくとも1つは、アリールまたはヘテロアリール、例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジンおよびピラジンから独立して選択される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で使用される「カルボキシ」という用語は、-COONまたはその対応するカルボキシレート塩(例えば、-COONa)を指す。カルボキシという用語は、「カルボキシカルボニル」、例えばカルボニル基に結合したカルボキシ基、例えば-C(O)-COOHまたは-C(O)-COONaなどの塩も含む。
【0045】
本明細書で使用される「シアノ」という用語は、-CNを指す。
【0046】
本明細書で使用される「シクロアルコキシ」という用語は、酸素に結合したシクロアルキル基を指す。
【0047】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、シクロアルカンから誘導される、本明細書で「(C3~C8)シクロアルキル」と呼ばれる、3~12個の炭素、または3~8個の炭素の飽和または不飽和の環式、二環式、または架橋二環式炭化水素基を指す。例示的なシクロアルキル基には、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタンおよびシクロペンテンが含まれるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスファート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンで置換されていてもよい。シクロアルキル基は、他のシクロアルキル基、飽和もしくは不飽和のアリール基またはヘテロシクリル基に縮合することができる。
【0048】
本明細書で使用される「ジカルボン酸」という用語は、少なくとも2つのカルボン酸基を含む基,例えば、飽和および不飽和炭化水素ジカルボン酸およびその塩を指す。例示的なジカルボン酸としては、アルキルジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスファート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンで置換されていてもよい。ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、(+)/(-)-リンゴ酸、(+)/(-)酒石酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が挙げられるが、これらに限定されない。ジカルボン酸としては、そのカルボン酸誘導体、例えば、無水物、イミド、ヒドラジド(例えば、無水コハク酸およびスクシンイミド)がさらに挙げられる。
【0049】
「エステル」という用語は、-C(O)O-、-C(O)O-Rj-、-RkC(O)O-Rj-、または-RkC(O)O-の構造を指し、式中、Oは水素に結合しておらず、RjおよびRkは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから独立して選択することができる。Rkは水素とすることができるが、Rjは水素とすることはできない。エステルは環状であってもよく、例えば、炭素原子とRj、酸素原子とRk、またはRjとRkが結合して3員環~12員環を形成してもよい。例示的なエステルには、RjまたはRkの少なくとも1つがアルキル、例えば-O-C(O)-アルキル、-C(O)-O-アルキル-、および-アルキル-C(O)-O-アルキル-であるアルキルエステルが含まれるが、これらに限定されない。例示的なエステルには、アリールエステルまたはヘテロアリールエステルも含まれ、例えば、RjまたはRkの少なくとも1つは、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンおよびピラジンなどのヘテロアリール基、例えばニコチン酸エステルである。例示的なエステルには、酸素が親分子に結合している、-RkC(O)O-構造を有するリバースエステルも含まれる。例示的なリバースエステルとしては、コハク酸エステル、D-アルギニナート、L-アルギニナート、L-リシナートおよびD-リシナートが挙げられる。エステルには、カルボン酸無水物および酸ハロゲン化物も含まれる。
【0050】
本明細書で使用される「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrまたはIを指す。
【0051】
本明細書で使用される「ハロアルキル」という用語は、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。「ハロアルキル」はまた、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルケニル基またはアルキニル基を包含する。
【0052】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、1個以上のヘテロ原子、例えば1~3個のヘテロ原子、例えば窒素、酸素および硫黄を含む単環式、二環式または多環式の芳香族環系を指す。ヘテロアリールは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスファート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトン等の1つ以上の置換基で置換され得る。ヘテロアリールはまた、非芳香族環に縮合していてもよい。ヘテロアリール基の例示的な例としては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3)-および(1,2,4)-トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリル、フェニル、イソオキサゾリルおよびオキサゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なヘテロアリール基としては、本明細書では「(C2~C5)ヘテロアリール」と呼ばれる、2~5個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子が環に含まれる単環式芳香環が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される「複素環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」または「複素環式(heterocyclic)」という用語は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択されるヘテロ原子を1個、2個または3個含む飽和または不飽和の3員環、4員環、5員環、6員環または7員環を指す。複素環は、芳香族(ヘテロアリール)または非芳香族であり得る。複素環は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスファート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトン等の1つ以上の置換基で置換され得る。また複素環としては、上記複素環のいずれかがアリール、シクロアルキルおよび複素環から独立して選択される1つまたは2つの環に縮合している二環式、三環式および四環式の基が挙げられる。例示的な複素環としては、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ビオチニル、シンノリニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、フリル、ホモピペリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリジン-2-オニル、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、キノキサロイル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、チオピラニルおよびトリアゾリルが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」という用語は、-OHを指す。
【0055】
本明細書で使用される「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基に結合したヒドロキシを指す。
【0056】
本明細書で使用される「ヒドロキシアリール」という用語は、アリール基に結合したヒドロキシを指す。
【0057】
本明細書で使用される「ケトン」という用語は、-C(O)-Rn構造(例えば、アセチル、-C(O)CH3)または-Rn-C(O)-Ro-構造を指す。ケトンは、RnまたはRoを介して別の基に結合することができる。RnまたはRoは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリルもしくアリールとすることができ、あるいはRnまたはRoは結合して、3員環~12員環を形成することができる。
【0058】
本明細書で使用される「モノエステル」という用語は、ジカルボン酸の類似体であって、一方のカルボン酸がエステルとして官能化されており、他方のカルボン酸が遊離カルボン酸またはカルボン酸の塩であるものを指す。モノエステルの例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸およびマレイン酸のモノエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「N-保護基」という用語は、合成手順中の望ましくない反応からアミノ基を保護することを意図した基を指す。一般的に使用されるN-保護基は、参照により本明細書に組み込まれるGreene著「Protective Groups in Organic Synthesis」第4版(John Wiley&Sons社、ホーボーケン、ニュージャージー州、2006年)に開示されている。N-保護基としては、アシル、アリールイルまたはカルバミル基、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、2-クロロアセチル、2-ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o-ニトロフェノキシアセチル、a-クロロブチリル、ベンゾイル、4-クロロベンゾイル、4-ブロモベンゾイル、4-ニトロベンゾイル、およびキラル助剤、例えば保護されたまたは保護されていないD、LまたはD、L-アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、フェニルアラニンなど;ベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニル等のスルホニル含有基;カルバメート形成基、例えばベンジルオキシカルボニル、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-ニトロ-4,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5-トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1-(p-ビフェニリル)-1-メチルエトキシカルボニル、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4-ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル-9-メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニル等、アルカリル基、例えばベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル等、シリル基、例えばトリメチルシリル等が挙げられる。好ましいN-保護基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0060】
本明細書で使用される「フェニル」という用語は、6員環の炭素環式芳香環を指す。フェニル基は、シクロヘキサン環またはシクロペンタン環に縮合することもできる。フェニルは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ホスファート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトン等の1つ以上の置換基で置換され得る。
【0061】
本明細書で使用される「チオアルキル」という用語は、硫黄に結合したアルキル基(-S-アルキル-)を指す。
【0062】
「アセチル化」またはIUPAC命名法における「エタノイル化(ethanoylation)」という用語は、アセチル官能基を化合物に導入する反応を指す。対照的に、脱アセチル化はアセチル基の除去を指す。
【0063】
「アルキル」基、「アルケニル」基、「アルキニル」基、「アルコキシ」基、「アミノ」および「アミド」基は、必要に応じて、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボニル、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ホスファート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、チオケトン、ウレイドおよびNからなる群から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよく、またはそれによって中断されていてもよく、またはそれによって分岐していてもよい。置換基は、分岐して置換または非置換複素環またはシクロアルキルを形成していてもよい。
【0064】
本明細書で使用される場合、必要に応じて置換された置換基上の適切な置換は、本開示の化合物の合成的有用性または薬学的有用性またはそれらを調製するのに有用な中間体の合成的有用性または薬学的有用性を無効にしない基を指す。適切な置換の例としては、C1~8のアルキル、アルケニルまたはアルキニル;C1~6アリール、C7~5ヘテロアリール;C3~7シクロアルキル;C1~8アルコキシ;C6アリールオキシ;-CN;-OH;オキソ;ハロ、カルボキシ;アミノ、例えば-NH(C1~8アルキル)、-N(C1~8アルキル)2、-NH((C6)アリール)、または-N((C6)アリール)2;ホルミル;ケトン、例えば-CO(C1~8アルキル)、-CO((C6アリール)、エステル、例えば-CO2(C1~8アルキル)および-CO2(C6アリール)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、本開示の化合物の安定性ならびに薬理学的活性および合成活性に基づいて適切な置換を容易に選択することができる。
【0065】
「活性薬剤(active agent)」または「有効成分(active ingredient)」という用語は、生物学的に活性であるか、そうでなければ投与される対象に対して生物学的または生理学的効果を誘導する物質、化合物または分子を指す。換言すれば、「活性薬剤」または「有効成分」は、組成物の効果の全部または一部が帰属される組成物の一成分または複数の成分を指す。活性薬剤は、一次活性薬剤、または言い換えれば、組成物の効果の全部または一部が帰属される組成物の成分であり得る。活性薬剤は、二次薬剤、または言い換えれば、組成物の追加の部分および/または他の効果が帰属される組成物の成分であり得る。
【0066】
一実施形態では、「医薬組成物」は、インビトロ、インビボまたはエクスビボでの診断的または治療的使用に適した滅菌組成物中の、活性薬剤、例えば本発明の治療用化合物と、不活性または活性な担体との組合せを含むことを意図している。一態様では、医薬組成物は、エンドトキシンを実質的に含まないか、または使用される投与量または濃度でレシピエントに対して無毒である。
【0067】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを指す。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。組成物はまた、補足的、追加的、または増強された治療機能を提供する他の活性化合物を含有し得る。
【0068】
本明細書で使用される「薬学的に許容される組成物」という用語は、1つ以上の薬学的に許容される担体と共に製剤化された本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を含む組成物を指す。
【0069】
本明細書で使用される「薬学的に許容されるプロドラッグ」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応なしにヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に見合っており、それらの意図する使用に有効である本開示の化合物のプロドラッグ、ならびに可能であれば本開示の化合物の双性イオン形態を表す。論考は、Higuchiら、「Prodrugs as Novel Delivery Systems」、ACS Symposium Series、第14巻、およびRoche,E.B.編「Bioreversible Carriers in Drug Design」、American Pharmaceutical AssociationおよびPergamon Press社、1987年に記述されている。いずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本組成物中に使用される化合物に存在し得る酸性または塩基性の基の塩を指す。本質的に塩基性である本組成物に含まれる化合物は、様々な無機酸および有機酸と多種多様な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容され得る酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性の酸付加塩を形成するもの、すなわち、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトアート))塩を含むがこれらに限定されない。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、上記の酸以外にも様々なアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成し得る。本発明の組成物に含まれる酸性の化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと塩基性の塩を形成することができる。そのような塩の例としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウムおよび鉄の塩が挙げられる。
【0071】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含有してもよく、したがって、幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーなどの立体異性体として存在してもよい。本明細書で使用される場合、「立体異性体」という用語は、すべての幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、立体中心炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、記号「R」または「S」で示すことができる。本開示は、これらの化合物の様々な立体異性体およびそれらの混合物を包含する。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物は、命名法において「(±)」で示され得るが、当業者は、構造がキラル中心を暗示し得ることを認識するであろう。
【0072】
本開示の化合物の個々の立体異性体は、不斉中心または立体中心を有する市販の出発物質からの合成によって、またはラセミ混合物の調製とそれに続く当業者に周知の分割方法によって調製することができる。これらの分割方法としては、(1)エナンチオマーの混合物のキラル補助剤への結合、得られたジアステレオマーの混合物の再結晶またはクロマトグラフィーによる分離および補助剤からの光学的に純粋な生成物の遊離、(2)光学活性な分割剤を用いる塩形成、または(3)光学エナンチオマーの混合物のキラルクロマトグラフィーカラムでの直接分離が例示される。立体異性体の混合物は、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、化合物をキラル塩錯体として晶出すること、または化合物をキラル溶媒中で晶出することなどの周知の方法によって、それらの成分の立体異性体に分割することもできる。立体異性体は、立体異性的に純粋な中間体、試薬および触媒から、周知の不斉合成法によって得ることもできる。
【0073】
幾何異性体も本開示の化合物中に存在し得る。本開示は、炭素・炭素二重結合の周りの置換基の配置または炭素環の周りの置換基の配置から生じる様々な幾何異性体およびそれらの混合物を包含する。炭素・炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」または「E」配置にあることが示され、「Z」および「E」という用語はIUPAC標準に従って使用される。別段の定めがない限り、二重結合を示す構造は、E異性体およびZ異性体の両方を包含する。
【0074】
あるいは、炭素・炭素二重結合の周りの置換基は、「シス」または「トランス」と呼ぶことができ、「シス」は二重結合の同じ側の置換基を表し、「トランス」は二重結合の反対側の置換基を表す。炭素環の周りの置換基の配置は、「シス」または「トランス」と呼ばれる。「シス」という用語は、環の平面の同じ側の置換基を表し、「トランス」という用語は、環の平面の反対側の置換基を表す。置換基が環の平面の同じ側と反対側の両方に配置されている化合物の混合物は、「シス/トランス」と呼ばれる。
【0075】
本明細書に開示される化合物は互変異性体として存在することができ、1つの互変異性構造のみが示されているとしても、両方の互変異性形態が本開示の範囲に包含されることが意図される。
【0076】
アミノ酸またはそのフラグメントに言及する場合の「実質的な相同性」または「実質的な類似性」という用語は、別のアミノ酸(またはその相補鎖)を用いて適切なアミノ酸の挿入または欠失により最適にアライメントされた場合、アライメントされた配列の少なくとも約95~99%においてアミノ酸配列同一性があることを示す。好ましくは、相同性は、全長配列またはそのタンパク質、例えば少なくとも8アミノ酸長、もしくはより望ましくは少なくとも15アミノ酸長である封鎖タンパク質、repタンパク質、またはそのフラグメントにわたる。適切なフラグメントの例は本明細書に記載されている。
【0077】
「高度に保存された」という用語は、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは97%を超える同一性を意味する。同一性は、当業者に公知のアルゴリズムおよびコンピュータプログラムを用いることによって、当業者によって容易に決定される。
【0078】
一実施形態では、「有効量」は、所望の治療結果を達成するのに十分な定義された化合物の量を指すが、これに限定されない。一実施形態では、その結果は有効ながん治療であり得る。
【0079】
一実施形態では、本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」などの用語は、非限定的に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するために本明細書で使用される。効果は、障害やその徴候もしくは症状を完全にまたは部分的に未然に防ぐ(preventing)という点で予防的(prophylactic)であり得、ならびに/または、疾患もしくは感染の症状の改善、または障害および/もしくは障害に起因する有害作用の部分的または完全な治癒という点で治療的であり得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「組み換え型」という用語は、天然には存在せず、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを通常一緒には生じない配列で組み合わせることによって作製され得るポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。この用語は、哺乳動物発現系、昆虫細胞発現系、酵母発現系および細菌発現系から選択される生物学的宿主を介して産生されるポリペプチドを指すことができる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、1つ以上の免疫グロブリン可変領域を介して抗原を特異的に認識して結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。認識された免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、これらが順に、免疫グロブリンのクラスである、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEをそれぞれ定義する。一般的には、抗体の抗原結合領域は、結合の特異性および親和性において最も重要であり、可変ドメインによってコードされる。抗体は、全抗体、抗原結合フラグメントまたはその一本鎖であり得る。
【0082】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対は、1本の「軽」鎖(約25kD)および1本の「重」鎖(約50~70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100~110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を定める。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれ軽鎖および重鎖の可変ドメインを指す。
【0083】
抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリンとして、または様々なペプチダーゼによる消化によって産生されるいくつかの十分に特徴づけられたフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合より下方の抗体を消化して、F(ab)’2、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に結合した軽鎖VL-CLであるFabの二量体を生成する。様々な抗体フラグメントがインタクトな抗体の消化に関して定義されているが、当業者は、そのようなフラグメントが化学的にまたは組換えDNA方法論を使用することによってデノボ合成され得ることを理解するであろう。したがって、抗体という用語は、本明細書で使用される場合、全抗体の修飾によって産生された抗体フラグメント、または組換えDNA法を使用してデノボ合成された抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリを使用して同定された抗体フラグメント(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)を参照のこと)も含む。
【0084】
したがって、本発明のいずれかの態様において、抗体という用語は、ミニボディ、scFv、ダイアボディ、トリアボディなども包含する。ScFvおよびダイアボディは、高いアビディティーおよび特異性を有する二価の小さな生物特異的抗体フラグメントである。良好な特異性および速い血中クリアランスに起因して、それらの高いシグナル対ノイズ比は一般的に良好であり、特異的抗原の診断的および治療的標的化の可能性を高める(Sundaresan et al.,J Nucl Med 44:1962-9(2003)。さらに、これらの抗体は、必要に応じて、小さな単鎖Fv(scFv)から様々なアイソフォームを有するインタクトIgGに及ぶ様々な種類の抗体フラグメントとして作製することができるので有利である(Wu&Senter,Nat.Biotechnol.23:1137-1146(2005))。一部の実施形態では、抗体フラグメントは、scFv-scFvまたはダイアボディの一部である。一部の実施形態では、いずれかの態様において、本発明は、本発明に従って使用するための高アビディティー抗体を提供する。
【0085】
「抗体フラグメント」または「抗原結合フラグメント」という用語は、抗体の一部、例えば、Fab’、Fab、Fv、scFvなどに関して使用される。構造の如何にかかわらず、抗体フラグメントは、インタクトな抗体によって認識される同じ抗原と結合する。「抗体フラグメント」という用語はまた、ダイアボディ、および特異的抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する免疫グロブリン可変領域を含む任意の合成されたタンパク質または遺伝子操作されたタンパク質を含む。
【0086】
「抗原結合フラグメント」または「Fab」という用語は、抗原に結合する抗体上の領域を指す。これは、重鎖および軽鎖のそれぞれの1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメイン(すなわち、4つのドメイン:VH、CH1、VLおよびCL1)を含む。可変ドメインは、モノマーのアミノ末端に相補性決定領域のセットを含むパラトープ(抗原結合部位)を含有する。したがって、Yの各アームは抗原上のエピトープに結合する。
【0087】
「Fc領域」または「フラグメント結晶化可能領域」という用語は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体および補体系の一部のタンパク質と相互作用する抗体CH2-CH3の尾部にあたる領域を指す。この「エフェクター機能」により、抗体は免疫系を活性化することができ、細胞障害作用(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、および/または補体依存性細胞傷害作用(CDC)をもたらす。ADCCおよびADCPは、免疫系の細胞の表面上のFc受容体へのFcの結合を介して媒介される。CDCは、Fcと補体系のタンパク質(例えば、C1q)との結合を介して媒介される。
【0088】
IgG、IgAおよびIgD抗体アイソタイプでは、Fc領域は、抗体の2つの重鎖の第2および第3の定常ドメインに由来する2つの同一のタンパク質フラグメントを有する。IgMおよびIgEのFc領域は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を有するが、IgGは2つのCHドメイン、CHドメイン2およびCHドメイン3から構成される。IgGのFc領域は、高度に保存されたN-グリコシル化部位を有する。Fcフラグメントのグリコシル化は、Fc受容体媒介活性に必須である。この部位に結合したN-グリカンは、主に複合型のコアフコシル化二分岐構造である。さらに、これらのN-グリカンの少量は、バイセクト型GlcNAcおよびα-2,6結合シアル酸残基も有する。
【0089】
「scFv」または「scFvフラグメント抗体」という用語は、VL-VHまたはVH-VLのいずれかの構成のVHおよびVLドメインからなり、その間にリンカー領域を有する小分子抗体を指す。scFvフラグメント抗体は、血管壁および固形腫瘍をより容易に貫通することができるため、標的薬の好ましい担体となる。
【0090】
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、GCA、GCC、GCGおよびGCUのコドンはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されるあらゆる位置で、コードされたポリペプチドを改変することなく、記載されたコドンに対応するコドンのいずれかに改変することができる。そのような核酸変異は、保存的に改変された変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列はまた、核酸のすべての可能なサイレント変異を表す。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一の分子を得ることができることを理解するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、発現産物に関しては記載された各配列において潜在的であるが、実際のプローブ配列に関しては潜在的でない。
【0091】
本発明の治療用ペプチドは、アミノ酸の付加、欠失または置換を有し得る。改変アミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸残基の欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換またはそれらの組合せのために、天然アミノ酸配列とは異なる配列である。一実施形態では、改変は点突然変異である。一態様では、改変された治療用ペプチドは、天然に存在する配列を有さない。
【0092】
アミノ酸置換は保存的であっても非保存的であってもよい。本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸残基が類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。最も一般的に生じる交換は、両方向で、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/GluおよびAsp/Glyである。タンパク質またはペプチドの活性を一般に変化させないタンパク質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当技術分野で公知である(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,ニューヨーク,1979年)。
【0093】
「ペプチドの誘導体」という用語は、官能性側鎖基の反応によって化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有するペプチドを指す。そのような誘導体化分子としては、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されてアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成した分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は、誘導体化され、塩、メチルエステルおよびエチルエステルまたは他の種類のエステルまたはヒドラジドを形成することができる。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化され、O-アシル誘導体またはO-アルキル誘導体を形成することができる。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導体化され、N-im-ベンジルヒスチジンを形成することができる。20種の一般的なアミノ酸の1つまたは複数の天然アミノ酸誘導体を含有するペプチドも誘導体として含まれる。例えば、プロリンを4-ヒドロキシプロリンに置き換えてもよく、リジンを5-ヒドロキシリジンに置き換えてもよく、ヒスチジンを3-メチルヒスチジンに置き換えてもよく、セリンをホモセリンに置き換えてもよく、リジンをオルニチンに置き換えてもよい。
【0094】
あるいは、アミノ酸は、修飾アミノ酸残基であってもよく、および/または、翻訳後修飾(例えば、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化または硫酸化)によって修飾されたアミノ酸であってもよい。非天然型アミノ酸は、本発明の治療用化合物に使用することができる「人工的」アミノ酸であり得る。
【0095】
非天然型または異常アミノ酸という用語は、合成ペプチドに組み込まれ得るものを含む。これらには、D-アミノ酸、ホモアミノ酸、β-ホモアミノ酸、N-メチルアミノ酸、α-メチルアミノ酸、非天然型側鎖変異体アミノ酸および他の異常アミノ酸が含まれる。D-アミノ酸は、天然に存在するL-異性体の鏡像を含む。ホモアミノ酸は、アミノ酸のα-炭素へのメチレン(CH2)基の付加を含むアミノ酸である。β-ホモアミノ酸は、酸基の直後に炭素原子を1個挿入することによって炭素骨格が長くなった標準アミノ酸の類似体である。N-メチルアミノ酸は、プロトンの代わりに窒素にメチル基を有するアミノ酸である。α-メチルアミノ酸は、天然型では本来(アミノ基とカルボキシ基との間の)a-炭素原子上のプロトンがメチル基によって置換されている天然アミノ酸変異体である。異常アミノ酸は、微生物のペプチドおよびタンパク質に最も頻繁に存在し、翻訳後に形成される。異常アミノ酸は、これらのペプチドの特別な生物活性に寄与することが多い。さらに、アミノ酸は、合成された非天然型であってもよい。
【0096】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における、「同一(identical)」または「同一性(identity)」パーセントという用語は、2つ以上の配列または部分配列であって、以下に記載されるデフォルトパラメータを用いたBLASTまたはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手作業のアラインメントおよび目視検査によって測定した場合に、同じであるか、または同じアミノ酸残基またはヌクレオチドを指定されたパーセンテージ(すなわち、比較ウィンドウまたは指定領域にわたって最大対応で比較およびアラインメントした場合、指定領域にわたって約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性)を有するものを指す。その場合、そのような配列は「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、試験配列の相補体を指すか、またはそれに適用され得る。この定義には、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列も含まれる。以下に説明するように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを考慮することができる。好ましくは、同一性は、少なくとも約25アミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたって、またはより好ましくは50~100アミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたって存在する。
【0097】
「核酸」は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーならびにそれらの相補体を指す。この用語は、既知のヌクレオチド類似体または修飾骨格残基もしくは結合を含む核酸であって、合成の、天然に存在する、および天然に存在しない、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様の様式で代謝される核酸を包含する。そのような類似体の例としては、ホスホロチオアート、ホスホロアミダート、メチルホスホナート、キラルメチルホスホナート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
別段の指示がない限り、特定の核酸配列は、その保存的に改変された変異体(例えば縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明示的に示された配列も潜在的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91~98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換的に使用される。
【0099】
本明細書で使用される場合、「防止(prevention)」という用語は、疾患の発生を抑制または遅延するすべての作用を意味する。
【0100】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患の症状を緩和、改善または軽減するすべての作用を意味する。本明細書において、「治療」とは、本明細書に開示する抗体を投与することにより、がん、神経変性または感染症の症状が緩和、改善または軽減されることを意味する。
【0101】
「投与」という用語は、ある量の所定の物質を特定の適切な方法によって患者に導入することを指す。本明細書に開示される組成物は、所望の組織に到達することができる限り、一般的な経路のいずれか、例えば、限定されないが、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経口、局所、鼻腔内、肺内、または直腸内投与を介して投与され得る。しかしながら、ペプチドは経口投与時に消化されるので、経口投与用組成物の有効成分は、胃における分解に対する保護のためにコーティングまたは製剤化する必要がある。
【0102】
「対象」という用語は、がん、神経変性または感染性疾患に罹患していると疑われるかまたは診断された者を指す。しかし、本明細書に開示される医薬組成物で治療される任意の対象が制限なく含まれる。本明細書に開示される抗DLL3抗体を含む医薬組成物は、がん、神経変性または感染性疾患に罹患していると疑われる対象に投与される。
【0103】
「がん」という用語は、ヒトがんおよびがん腫、肉腫、腺がんなどを指し、固形腫瘍、腎臓、乳房、肺、腎臓、膀胱、尿路、尿道、陰茎、外陰部、膣、子宮頸部、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、胃、脳、頭頸部、皮膚、子宮、精巣、食道、および肝臓のがんを含む。さらなるがんには、例えば、ホジキン病、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳がん、卵巣がん、肺がん、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺がん、原発性脳腫瘍、胃がん、結腸がん、悪性膵臓インスラノーマ、悪性カルチノイド、前悪性皮膚病変、精巣がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、食道がん、尿生殖路がん、悪性高カルシウム血症、子宮頸がん、子宮内膜がん、および副腎皮質がんが含まれる。
【0104】
上記の実施形態のいずれにおいても、1つまたはそれを超えるがん治療、例えば、化学療法、放射線療法、免疫療法、手術またはホルモン療法がさらに、本発明の抗体と同時投与され得る。
【0105】
一実施形態では、治療用化合物は、アルキル化剤:ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、テトラジン、アジリジン、シスプラチンおよび誘導体、ならびに非古典的アルキル化剤である。ナイトロジェンマスタードとしては、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミドおよびブスルファンが挙げられる。ニトロソ尿素としては、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)およびセムスチン(MeCCNU)、フォテムスチンおよびストレプトゾトシンが挙げられる。テトラジンとしては、ダカルバジン、ミトゾロミドおよびテモゾロミドが挙げられる。アジリジンとしては、チオテパ、マイトマイシンおよびジアジコン(AZQ)が挙げられる。シスプラチンおよび誘導体としては、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンが挙げられる。一実施形態では、化学療法剤は、代謝拮抗剤:葉酸代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート)、フルオロピリミジン(例えば、フルオロウラシルおよびカペシタビン)、デオキシヌクレオシド類似体およびチオプリンである。別の実施形態では、化学療法剤は、微小管阻害薬、例えばビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)およびタキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)である。別の実施形態では、化学療法剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、または細胞傷害性抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、およびマイトマイシンである。
【0106】
別の実施形態では、治療用化合物は、
図8で特定されたものである。
【0107】
患者と治療用化合物との接触は、抗体を患者に静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、または皮内投与することによるものであり得る。一部の実施形態において、治療用化合物は、がん治療剤と同時投与される。
【0108】
本明細書で使用される「製剤」という用語は、本明細書に開示される治療用化合物および賦形剤を一緒に組み合わせたものであって、投与することができ、対応する受容体に結合して所望の活性をもたらすシグナル伝達経路を開始する能力を有するものを指す。製剤は、必要に応じて他の薬剤を含むことができる。
【0109】
範囲を含むすべての数値表示(例えば、pH、温度、時間、濃度および分子量)は、当技術分野における一般的慣行に従って近似値として理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載された量の(+)または(-)1%、5%または10%の変動を文脈に応じて適切に意味し得る。常に明示的に述べられているわけではないが、本明細書に記載の薬剤は単なる例示であり、そのような薬剤の等価物は当技術分野で公知であることを理解されたい。
【0110】
多くの既知の有用な化合物などは、様々なタイプの投与の標準的な参考文献である「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(第13版)、Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルベニア、に記載されている。本明細書で使用される場合、「製剤」という用語は、少なくとも1つの有効成分と、一般に賦形剤とも呼ばれ、独立して活性または不活性であり得る1つ以上の他の成分との組合せを意味する。「製剤」という用語は、ヒトまたは動物への投与のための薬学的に許容される組成物を指す場合も指さない場合もあり、貯蔵または研究目的のための有用な中間体である組成物を含む場合もある。
【0111】
本発明の方法の患者および対象はヒトに加えて獣医学的対象であるので、これらの対象に適した製剤も適切である。そのような対象としては、家畜およびペット、ならびにスポーツ動物、例えば、ウマ、グレイハウンドなどが挙げられる。
【0112】
ヒトおよび動物である対象の治療として使用するために、本発明の治療用化合物は、医薬組成物または獣医用組成物として製剤化することができる。治療される対象、投与様式、および所望の治療の種類(例えば、未然防止(prevention)、予防(prophylaxis)、または治療)に応じて、治療用化合物は、これらのパラメータと調和する方法で製剤化される。そのような技術の概要は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第21版、Lippincott Williams&Wilkins(2005);およびJ.SwarbrickおよびJ.C.Boylan編、「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」、1988-1999,Marcel Dekker,ニューヨークに記載され、それぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
本明細書に記載の治療用化合物は、医薬組成物の総重量に対して総量で1~95重量%存在し得る。医薬組成物は、関節内、経口、非経口(例えば、静脈内、筋肉内)、直腸、皮膚、皮下、外用、経皮、舌下、鼻、膣、小胞内、尿道内、髄腔内、硬膜外腔、耳、もしくは眼内への投与、または注射、吸入、もしくは鼻、泌尿生殖器、胃腸、生殖、もしくは口腔の粘膜との直接接触に適した剤形で提供され得る。したがって、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ヒドロゲルを含むゲル、ペースト、軟膏、クリーム、絆創膏、潅注、浸透圧送達装置、坐剤、浣腸剤、注射剤、インプラント、スプレー、イオン導入送達に適した調製物、またはエアロゾルの形態であり得る。組成物は、従来の製薬の慣行に従って製剤化され得る。
【0114】
詳細な説明
本発明の実施形態は、治療用化合物、その医薬組成物、および製造品を使用して、難治性がんを含むがんを治療、監視、および未然防止する方法を含む。
【0115】
治療方法
本出願の別の態様は、細胞増殖性障害を治療する方法に関する。この方法は、本開示による治療用化合物の有効量を必要とする対象に投与することを含む。別の態様では、細胞増殖性障害を治療する方法は、本開示による治療用化合物の有効量を必要とする対象に投与することを含む。
【0116】
治療的または予防的(prophylactically)に有効な投与量の治療用化合物を患者に提供するために、任意の適切な投与経路または投与様式を使用することができる。例示的な投与経路または投与様式には、非経口{例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内)、経口、局所(経鼻、経皮、皮内または眼内)、粘膜{例えば、鼻、舌下、頬側、直腸、膣内)、吸入、リンパ内、脊髄内、頭蓋内、腹腔内、気管内、膀胱内、髄腔内、経腸、肺内、リンパ内、腔内、眼窩内、嚢内および経尿道、ならびにカテーテルまたはステントによる局所送達が含まれる。
【0117】
本開示による治療用化合物を含む医薬組成物は、任意の薬学的に許容される担体または賦形剤中に製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、生理学的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。医薬組成物は、適切な固体またはゲル相の担体または賦形剤を含むことができる。例示的な担体または賦形剤としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1種以上、およびそれらの組合せが挙げられる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール(例えばマンニトール、ソルビトール)または塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。薬学的に許容される担体はさらに、治療薬の保存可能期間または有効性を高める補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤を少量含むことができる。
【0118】
一実施形態では、治療用化合物は、非経口投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。適切な緩衝液としては、限定されないが、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムが挙げられる。塩化ナトリウムを使用して、0~300mM(最適には液体剤形に対しては150mM)の濃度で溶液の毒性を改変することができる。凍結保護剤は、主に0~10%のスクロース(最適には0.5~1.0%)として凍結乾燥剤形に含めることができる。他の適切な凍結保護剤としては、トレハロースおよびラクトースが挙げられる。増量剤は、主に1~10%のマンニトール(最適には2~4%)として凍結乾燥剤形に含めることができる。安定剤は、主に1~50mM(最適には5~10mM)のL-メチオニンとして液体剤形および凍結乾燥剤形の両方に使用することができる。他の適切な増量剤としては、グリシン、アルギニンが挙げられ、0~0.05%を超えるポリソルベート80(最適には0.005~0.01%)を挙げることができる。さらなる界面活性剤としては、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
治療用化合物を含む医薬組成物を凍結乾燥し、滅菌粉末として、好ましくは真空下で保存した後、注射前に静菌水(例えば、ベンジルアルコール防腐剤を含有する)または滅菌水で再構成することができる。医薬組成物は、注射による、例えばボーラス注射または連続注入による非経口投与のために製剤化することができる。
【0120】
医薬組成物中の治療用化合物は、「治療有効量」または「予防有効量」で製剤化され得る。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するために、必要な期間および投薬において有効な量を指す。組換えベクターの治療有効量は、治療される状態、状態の重症度および経過、投与様式、抗体または薬剤が未然防止目的で投与されるか治療目的で投与されるかどうか、特定の薬剤のバイオアベイラビリティ、個体において所望の応答を誘発する三重特異性抗体の能力、患者の薬歴、年齢、体重および性別、患者の病歴および抗体に対する応答、使用された三重特異性抗体の種類、主治医の裁量などに応じて異なり得る。治療有効量はまた、治療上有益な効果が組換えベクターの毒性または有害作用を凌駕する量である。「予防有効量」とは、所望の予防結果を達成するために、必要な期間および投薬において有効な量を指す。
【0121】
治療用化合物は、単回でまたは一連の治療にわたって患者に適切に投与され、診断以降の任意の時点で患者に投与され得る。治療用化合物は、単独の治療として、または問題の状態を治療するのに有用な他の薬物もしくは療法と組み合わせて投与され得る。
【0122】
一実施形態では、本発明の治療用化合物は、以下の構造:
【化1】
を有する、以下IPR-473とも称する、ペプチド模倣薬P1.3またはP1.3の誘導体を含み、
式中、R1は、以下のうちの1つを含む:
CH3、CH2-CH3、CH2-CH2-CH3、CH2-CH2-CH2-CH3またはCH2-CH2-CH2-ヘキシル;
R2は、以下のうちの1つを含む:
Dab、シクロヘキシルグリシン、Asn、Cys、Gly、Ile、ThrまたはLysに対応する側鎖
R3は、以下のうちの1つを含む:
Leu、Ala、Gly、Phe、Ile、TyrまたはValに対応する側鎖
R4は、以下のうちの1つを含む:
H、CH3またはアルキル基
R5は、以下のうちの1つを含む:
H、CH3またはアルキル基。
【0123】
一実施形態では、本発明の治療用化合物は、以下のペプチド模倣薬の1つを含み、P1.3は上記の構造であり、各ペプチド模倣薬の特異的R1、R2およびR3は以下の表1に示され、特定のペプチド模倣薬の関連するKRAS-GTPアーゼのドッキングスコアは以下の表1に示される(P1.3の140個の変異体を含む):
【表1】
【0124】
P1.3の他の類似体または誘導体には、以下に開示されるFmoc-P1.3が含まれる。
【化2】
R
1=CH
3
R
2=CH
2-NH
2(Dap側鎖)
R
3=CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu側鎖)
【0125】
P1.3のさらなる類似体または誘導体には、以下が含まれる。
式中、R1はCH
3であり、R2は(CH
2)
4NH
2(Lys)であり、R3はCH(CH
3)
2(Val)であり、R5はNCH
3である。
そして、
【化3】
R
1=H
R
2=CH
2-NH
2(Dap側鎖)
R
3=CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu側鎖)
【0126】
P1.3の別の類似体または誘導体は、以下の構造を有する;
【化4】
R
1=-CH
2CH
2-(ピロリジンに包埋)
R
2=CH
2-NH
2(Dap側鎖)
R
3=CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu側鎖)
【化5】
R
1=-CH
2CH
2CH
2-(ピペリジンに包埋)
R
2=CH
2-NH
2(Dap側鎖)
R
3=CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu側鎖)
【化6】
R
1=-H
R
2=CH
2-NH
2(Dap側鎖)
R
3=CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu側鎖)
【0127】
一般的な提案として、治療用化合物の治療有効量または予防有効量は、1回または複数回の投与によるかどうかにかかわらず、約1ng/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内で投与される。特定の実施形態では、治療用化合物は、約1ng/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1ng/kg体重/日から約1mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1ng/kg体重/日から約100g/kg体重/日まで変動する範囲内、約1ng/kg体重/日から約10g/kg体重/日まで変動する範囲内、約1ng/kg体重/日から約1g/kg体重/日まで変動する範囲内、約1ng/kg体重/日から約100ng/kg体重/日まで変動する範囲内、約1ng/kg体重/日から約10ng/kg体重/日まで変動する範囲内、約10ng/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10ng/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10ng/kg体重/日から約1mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10ng/kg体重/日から約100g/kg体重/日まで変動する範囲内、約10ng/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10ng/kg体重/日から約1mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10ng/kg体重/日から約100ng/kg体重/日まで変動する範囲内、約100ng/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約100ng/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約100ng/kg体重/日から約1mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約100ng/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約100ng/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約100ng/kg体重/日から約1mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1mg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1mg/kg体重/日から約1mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1mg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10mg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10mg/kg体重/日から約1mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約100mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約100mg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約100mg/kg体重/日から約1mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約1mg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日まで変動する範囲内、約10mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日まで変動する範囲内で投与される。
【0128】
他の実施形態では、治療用化合物は、3日ごとに500g以上20g以下、または3日ごとに25mg/kg体重の投与量で投与される。
【0129】
他の実施形態において、治療用化合物は、1回投与当たり約10ngから約100ngまで変動する範囲内、1回投与当たり約10ngから約1gまで変動する範囲内、1回投与当たり約10ngから約10gまで変動する範囲内、1回投与当たり約10ngから約100mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10ngから約1mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10ngから約10mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10ngから約100mgまで変動する範囲内、注射1回につき約10ngから約1000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10ngから約10,000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100ngから約1mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100ngから約10mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100ngから約100mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100ngから約1mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100ngから約10mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100ngから約100mgまで変動する範囲内、注射1回につき約100ngから約1000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100ngから約10,000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約10mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約100mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約1mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約10mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約100mgまで変動する範囲内、注射1回につき約1mgから約1000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約10,000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10mgから約100mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10mgから約1mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10mgから約10mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10mgから約100mgまで変動する範囲内、注射1回につき約10mgから約1000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10mgから約10,000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100mgから約1mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100mgから約10mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100mgから約100mgまで変動する範囲内、注射1回につき約100mgから約1000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100mgから約10,000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約10mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約100mgまで変動する範囲内、注射1回につき約1mgから約1000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約1mgから約10,000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10mgから約100mgまで変動する範囲内、注射1回につき約10mgから約1000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約10mgから約10,000mgまで変動する範囲内、注射1回につき約100mgから約1000mgまで変動する範囲内、1回投与当たり約100mgから約10,000mgまで変動する範囲内、および1回投与当たり約1000mgから約10,000mgまで変動する範囲内で投与される。三重特異性抗体は、毎日、隔日、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごともしくは7日ごと、または毎週、2週間ごと、3週間ごともしくは4週間ごとに投与され得る。
【0130】
他の特定の実施形態では、治療用化合物の量は、約0.0006mg/日、0.001mg/日、0.003mg/日、0.006mg/日、0.01mg/日、0.03mg/日、0.06mg/日、0.1mg/日、0.3mg/日、0.6mg/日、1mg/日、3mg/日、6mg/日、10mg/日、30mg/日、60mg/日、100mg/日、300mg/日、600mg/日、1000mg/日、2000mg/日、5000mg/日、または10000mg/日の投与量で投与され得る。予想されるように、投与量は、患者の状態、体格、年齢および病状に依存する。
【0131】
任意の特定の細胞増殖性障害に適したいくつかの当技術分野で認められている動物モデルにおいて、投与量を試験することができる。
【0132】
この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、腫瘍のサイズを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%縮小させる。
【0133】
この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、腫瘍のサイズを、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%縮小させる。
【0134】
この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、腫瘍のサイズを、例えば、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、または95%以下縮小する。
【0135】
この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、腫瘍のサイズを、例えば、約5%以上約100%以下、約10%以上約100%以下、約20%以上約100%以下、約30%以上約100%以下、約40%以上約100%以下、約50%以上約100%以下、約60%以上約100%以下、約70%以上約100%以下、約80%以上約100%以下、約10%以上約90%以下、約20%以上約90%以下、約30%以上約90%以下、約40%以上約90%以下、約50%以上約90%以下、約60%以上約90%以下、約70%以上約90%以下、約10%以上約80%以下、約20%以上約80%以下、約30%以上約80%以下、約40%以上約80%以下、約50%以上約80%以下、約60%以上約80%以下、約10%以上約70%以下、約20%以上約70%以下、約30%以上約70%以下、約40%以上約70%以下、または約50%以上約70%以下縮小する。
【0136】
本明細書に開示される医薬組成物は、個体への慣習的な投与を可能にするのに十分な量である。この実施形態の様々な態様において、本明細書中に開示される医薬組成物は、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも40mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも55mg、少なくとも60mg、少なくとも65mg、少なくとも70mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、または少なくとも100mgの医薬組成物であり得る。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1,000mg、少なくとも1,100mg、少なくとも1,200mg、少なくとも1,300mg、少なくとも1,400mg、または少なくとも1,500mgの医薬組成物であり得る。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、約5mg以上約100mg以下の範囲内、約10mg以上約100mg以下の範囲内、約50mg以上約150mg以下の範囲内、約100mg以上約250mg以下の範囲内、約150mg以上約350mg以下の範囲内、約250mg以上約500mg以下の範囲内、約350mg以上約600mg以下の範囲内、約500mg以上約750mg以下の範囲内、約600mg以上約900mg以下の範囲内、約750mg以上約1,000mg以下の範囲内、約850mg以上約1,200mg以下の範囲内、または約1,000mg以上約1,500mgの範囲内であり得る。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、約10mg以上約250mg以下の範囲内、約10mg以上約500mg以下の範囲内、約10mg以上約750mg以下の範囲内、約10mg以上約1,000mg以下の範囲内、約10mg以上約1,500mg以下の範囲内、約50mg以上約250mg以下の範囲内、約50mg以上約500mg以下の範囲内、約50mg以上約750mg以下の範囲内、約50mg以上約1,000mg以下の範囲内、約50mg以上約1,500mg以下の範囲内、約100mg以上約250mg以下の範囲内、約100mg以上約500mg以下の範囲内、約100mg以上約750mg以下の範囲内、約100mg以上約1,000mg以下の範囲内、約100mg以上約1,500mg以下の範囲内、約200mg以上約500mg以下の範囲内、約200mg以上約750mg以下の範囲内、約200mg以上約1,000mg以下の範囲内、約200mg以上約1,500mg以下の範囲内、約5mg以上約1,500mg以下の範囲内、約5mg以上約1,000mg以下の範囲内、または約5mg以上約250mgの範囲であり得る。
【0137】
本明細書に開示される医薬組成物は、本明細書に開示される医薬組成物を溶解するのに十分な量の溶媒、エマルジョンまたは他の希釈剤を含み得る。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、溶媒、エマルジョンまたは希釈剤を、例えば、約90%(v/v)未満の量、約80%(v/v)未満の量、約70%(v/v)未満の量、約65%(v/v)未満の量、約60%(v/v)未満の量、約55%(v/v)未満の量、約50%(v/v)未満の量、約45%(v/v)未満の量、約40%(v/v)未満の量、約35%(v/v)未満の量、約30%(v/v)未満の量、約25%(v/v)未満の量、約20%(v/v)未満の量、約15%(v/v)未満の量、約10%(v/v)未満の量、約5%(v/v)未満の量、または約1%(v/v)未満の量含み得る。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、溶媒、エマルジョンまたは他の希釈剤を、例えば、約1%(v/v)以上90%(v/v)以下の量、約1%(v/v)以上70%(v/v)以下の量、約1%(v/v)以上60%(v/v)以下の量、約1%(v/v)以上50%(v/v)以下の量、約1%(v/v)以上40%(v/v)以下の量、約1%(v/v)以上30%(v/v)以下の量、約1%(v/v)以上20%(v/v)以下の量、約1%(v/v)以上10%(v/v)以下の量、約2%(v/v)以上50%(v/v)以下の量、約2%(v/v)以上40%(v/v)以下の量、約2%(v/v)以上30%(v/v)以下の量、約2%(v/v)以上20%(v/v)以下の量、約2%(v/v)以上10%(v/v)以下の量、約4%(v/v)以上50%(v/v)以下の量、約4%(v/v)以上40%(v/v)以下の量、約4%(v/v)以上30%(v/v)以下の量、約4%(v/v)以上20%(v/v)以下の量、約4%(v/v)以上10%(v/v)以下の量、約6%(v/v)以上50%(v/v)以下の量、約6%(v/v)以上40%(v/v)以下の量、約6%(v/v)以上30%(v/v)以下の量、約6%(v/v)以上20%(v/v)以下の量、約6%(v/v)以上10%(v/v)以下の量、約8%(v/v)以上50%(v/v)以下の量、約8%(v/v)以上40%(v/v)以下の量、約8%(v/v)以上30%(v/v)以下の量、約8%(v/v)以上20%(v/v)以下の量、約8%(v/v)以上15%(v/v)以下の量、または約8%(v/v)以上12%(v/v)以下の量含み得る。
【0138】
本明細書に開示される医薬組成物中の本明細書に開示される医薬組成物の最終濃度は、所望の任意の濃度であり得る。この実施形態の一態様では、医薬組成物中の医薬組成物の最終濃度は、治療有効量であり得る。この実施形態の他の態様では、医薬組成物中の医薬組成物の最終濃度は、例えば、少なくとも0.00001mg/mL、少なくとも0.0001mg/mL、少なくとも0.001mg/mL、少なくとも0.01mg/mL、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも200mg/mL、または少なくとも500mg/mLであり得る。この実施形態の他の態様では、医薬組成物中の医薬組成物の最終濃度は、例えば、約0.00001mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約0.0001mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約0.01mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約0.1mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約1mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約250mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約500mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約750mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約1,000mg/mLから約3,000mg/mLまで変動する範囲内、約100mg/mLから約2,000mg/mLまで変動する範囲内、約250mg/mLから約2,000mg/mLまで変動する範囲内、約500mg/mLから約2,000mg/mLまで変動する範囲内、約750mg/mLから約2,000mg/mLまで変動する範囲内、約1,000mg/mLから約2,000mg/mLまで変動する範囲内、約100mg/mLから約1,500mg/mLまで変動する範囲内、約250mg/mLから約1,500mg/mLまで変動する範囲内、約500mg/mLから約1,500mg/mLまで変動する範囲内、約750mg/mLから約1,500mg/mLまで変動する範囲内、約1,000mg/mLから約1,500mg/mLまで変動する範囲内、約100mg/mLから約1,200mg/mLまで変動する範囲内、約250mg/mLから約1,200mg/mLまで変動する範囲内、約500mg/mLから約1,200mg/mLまで変動する範囲内、約750mg/mLから約1,200mg/mLまで変動する範囲内、約1000mg/mLから約1,200mg/mLまで変動する範囲内、約100mg/mLから約1,000mg/mLまで変動する範囲内、約250mg/mLから約1,000mg/mLまで変動する範囲内、約500mg/mLから約1,000mg/mLまで変動する範囲内、約750mg/mLから約1,000mg/mLまで変動する範囲内、約100mg/mLから約750mg/mLまで変動する範囲内、約250mg/mLから約750mg/mLまで変動する範囲内、約500mg/mLから約750mg/mLまで変動する範囲内、約100mg/mLから約500mg/mLまで変動する範囲内、約250mg/mLから約500mg/mLまで変動する範囲内、約0.00001mg/mLから約0.0001mg/mLまで変動する範囲内、約0.00001mg/mLから約0.001mg/mLまで変動する範囲内、約0.00001mg/mLから約0.01mg/mLまで変動する範囲内、約0.00001mg/mLから約0.1mg/mLまで変動する範囲内、約0.00001mg/mLから約1mg/mLまで変動する範囲内、約0.001mg/mLから約0.01mg/mLまで変動する範囲内、約0.001mg/mLから約0.1mg/mLまで変動する範囲内、約0.001mg/mLから約1mg/mLまで変動する範囲内、約0.001mg/mLから約10mg/mLまで変動する範囲内、約0.001mg/mLから約100mg/mLまで変動する範囲内であり得る。
【0139】
本明細書の態様は、がんに罹患している個体を治療することを部分的に開示する。本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、個体においてがんの臨床症状を軽減または排除すること、または個体においてがんの臨床症状の発症を遅延もしくは未然防止することを指す。例えば、「治療すること」という用語は、限定するものではないが、腫瘍サイズなどの、がんによって特徴づけられる状態の症状を、例えば、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%軽減することを意味することができる。がんに関連する実際の症状は周知であり、当業者は、がんの位置、がんの原因、がんの重症度、および/またはがんに罹患した組織もしくは器官を含むがこれらに限定されない因子を考慮することによって決定することができる。当業者は、特定の種類のがんに関連づけられる適合症状または指標を知っており、個体が本明細書に開示される治療の候補であるかどうかを決定する方法を知っている。
【0140】
別の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、がんに関連する障害の症状の重症度を低下させる。この実施形態の様々な態様において、本明細書中に開示される医薬組成物は、がんに伴う障害の症状の重症度を、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%軽減させる。この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示される医薬組成物は、がんに関連する障害の症状の重症度を、例えば、約10%以上約100%以下、約20%以上約100%以下、約30%以上約100%以下、約40%以上約100%以下、約50%以上約100%以下、約60%以上約100%以下、約70%以上約100%以下、約80%以上約100%以下、10%以上90%以下、20%以上90%以下、30%以上90%以下、約40%以上約90%以下、約50%以上約90%以下、約60%以上約90%以下、約70%以上約90%以下、約10%以上約80%以下、約20%以上約80%以下、約30%以上約80%以下、約40%以上約80%以下、約50%以上約80%以下、約60%以上約80%以下、約10%以上約70%以下、約20%以上約70%以下、約30%以上約70%以下、約40%以上約70%以下、または約50%以上約70%以下軽減させる。
【0141】
この実施形態の様々な態様において、本明細書中に開示される医薬組成物の治療有効量は、がんに伴う症状を、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%軽減させる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物の治療有効量は、がんに関連する症状を、例えば、最大で10%、最大で15%、最大で20%、最大で25%、最大で30%、最大で35%、最大で40%、最大で45%、最大で50%、最大で55%、最大で60%、最大で65%、最大で70%、最大で75%、最大で80%、最大で85%、最大で90%、最大で95%、または最大で100%軽減する。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物の治療有効量は、がんに関連する症状を、例えば約10%以上約100%以下、約10%以上約90%以下、約10%以上約80%以下、約10%以上約70%以下、約10%以上約60%以下、約10%以上約50%以下、約10%以上約40%以下、約20%以上約100%以下、約20%以上約90%以下、約20%以上約80%以下、約20%以上約20%以下、約20%以上約60%以下、約20%以上約50%以下、約20%以上約40%以下、約30%以上約100%以下、約30%以上約90%以下、約30%以上約80%以下、約30%以上約70%以下、約30%以上約60%、または約30%以上約50%軽減する。
【0142】
この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物の治療有効量は、一般に、約0.001mg/kg以上約100mg/kg以下の範囲内であり、例えば3日ごと、5日ごと、7日ごと、10日ごとまたは14日ごとに投与される。この実施形態の態様では、本明細書に開示される医薬組成物の有効量は、例えば、少なくとも0.001mg/kg、少なくとも0.01mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも1.0mg/kg、少なくとも5.0mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも15mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なくとも25mg/kg、少なくとも30mg/kg、少なくとも35mg/kg、少なくとも40mg/kg、少なくとも45mg/kg、または少なくとも50mg/kgとすることができ、例えば3日ごと、5日ごと、7日ごと、10日ごとまたは14日ごとに投与することができる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物の有効量は、例えば、約0.001mg/kg以上約10mg/kg以下、約0.001mg/kg/日以上約15mg/kg以下、約0.001mg/kg以上約20mg/kg以下、約0.001mg/kg以上約25mg/kg以下、約0.001mg/kg以上約30mg/kg以下、約0.001mg/kg以上約35mg/kg以下、約0.001mg/kg以上約40mg/kg以下、約0.001mg/kg以上約45mg/kg以下、約0.001mg/kg以上約50mg/kg以下、約0.001mg/kg以上約75mg/kg以下、または約0.001mg/kg以上約100mg/kg以下の範囲内であり得、例えば、3日ごと、5日ごと、7日ごと、10日ごとまたは14日ごとに投与することができる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物の有効量は、例えば、約0.01mg/kg以上約10mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約15mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約20mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約25mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約30mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約35mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約40mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約45mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約50mg/kg以下、約0.01mg/kg以上約75mg/kg以下、または約0.01mg/kg以上約100mg/kg以下の範囲内であり得、例えば、3日ごと、5日ごと、7日ごと、10日ごとまたは14日ごとに投与することができる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物の有効量は、例えば、約0.1mg/kg以上約10mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約15mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約20mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約25mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約30mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約35mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約40mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約45mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約50mg/kg以下、約0.1mg/kg以上約75mg/kg以下、または約0.1mg/kg以上約100mg/kg以下の範囲内であり得、例えば、3日ごと、5日ごと、7日ごと、10日ごとまたは14日ごとに投与することができる。
【0143】
液体製剤および半固体製剤において、本明細書に開示される治療用化合物の濃度は、一般的に、約50mg/mL以上約1,000mg/mL以下であり得る。この実施形態の様々な態様において、本明細書中に開示される治療用化合物の治療有効量は、例えば、約50mg/mL以上約100mg/mL以下、約50mg/mL以上約200mg/mL以下、約50mg/mL以上約300mg/mL以下、約50mg/mL以上約400mg/mL以下、約50mg/mL以上約500mg/mL以下、約50mg/mL以上約600mg/mL以下、約50mg/mL以上約700mg/mL以下、約50mg/mL以上約800mg/mL以下、約50mg/mL以上約900mg/mL以下、約50mg/mL以上約1,000mg/mL以下、約100mg/mL以上約200mg/mL以下、約100mg/mL以上約300mg/mL以下、約100mg/mL以上約400mg/mL以下、約100mg/mL以上約500mg/mL以下、約100mg/mL以上約600mg/mL以下、約100mg/mL以上約700mg/mL以下、約100mg/mL以上約800mg/mL以下、約100mg/mL以上約900mg/mL以下、約100mg/mL以上約1,000mg/mL以下、約200mg/mL以上約300mg/mL以下、約200mg/mL以上約400mg/mL以下、約200mg/mL以上約500mg/mL以下、約200mg/mL以上約600mg/mL以下、約200mg/mL以上約700mg/mL以下、約200mg/mL以上約800mg/mL以下、約200mg/mL以上約900mg/mL以下、約200mg/mL以上約1,000mg/mL以下、約300mg/mL以上約400mg/mL以下、約300mg/mL以上約500mg/mL以下、約300mg/mL以上約600mg/mL以下、約300mg/mL以上約700mg/mL以下、約300mg/mL以上約800mg/mL以下、約300mg/mL以上約900mg/mL以下、約300mg/mL以上約1,000mg/mL以下、約400mg/mL以上約500mg/mL以下、約400mg/mL以上約600mg/mL以下、約400mg/mL以上約700mg/mL以下、約400mg/mL以上約800mg/mL以下、約400mg/mL以上約900mg/mL以下、約400mg/mL以上約1,000mg/mL以下、約500mg/mL以上約600mg/mL以下、約500mg/mL以上約700mg/mL以下、約500mg/mL以上約800mg/mL以下、約500mg/mL以上約900mg/mL以下、約500mg/mL以上約1,000mg/mL以下、約600mg/mL以上約700mg/mL以下、約600mg/mL以上約800mg/mL以下、約600mg/mL以上約900mg/mL以下、または約600mg/mL以上約1,000mg/mL以下であり得る。
【0144】
投与は、単回投与または累積(連続投与)であり得、当業者によって容易に決定され得る。例えば、がんの治療は、本明細書中に開示される医薬組成物の有効投与量の1回投与を含み得る。あるいは、がんの治療は、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、数日に1回、または週に1回など、ある範囲の期間にわたって行われる医薬組成物の有効投与量の複数回投与を含み得る。投与のタイミングは、個体の症状の重症度などの要因に応じて、個体ごとに異なり得る。例えば、本明細書中に開示される医薬組成物の有効投与量を、個体に1日1回、不定期間にわたって、または個体がもはや治療を必要としなくなるまで投与することができる。当業者は、個体の状態を治療の経過を通してモニタすることができ、本明細書中に開示される医薬組成物が投与される有効量を状況に応じて調整することができることを認識するであろう。
【0145】
一実施形態では、本明細書に開示される治療用化合物は、がんに罹患している個体のがん細胞の数または腫瘍サイズを、同じ治療を受けていない患者と比較して、例えば少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%軽減させることができる。
【0146】
別の実施形態では、本明細書に開示される治療用化合物は、がんに罹患している個体のがん細胞の数または腫瘍サイズを、同じ治療を受けていない患者と比較して、例えば約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%軽減させることができる。
【0147】
一実施形態では、本明細書に開示される治療用化合物は、がんに罹患している個体のがん細胞の数または腫瘍サイズを、同じ治療を受けていない患者と比較して、例えば10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、75%以下、80%以下、85%以下、90%以下、または95%以下軽減させることができる。この実施形態の他の態様では、治療用化合物は、がんに罹患している個体のがん細胞の数または腫瘍サイズを、同じ治療を受けていない患者と比較して、例えば、約10%以上約100%以下、約20%以上約100%以下、約30%以上約100%以下、約40%以上約100%以下、約50%以上約100%以下、約60%以上約100%以下、約70%以上約100%以下、約80%以上約100%以下、約10%以上約90%以下、約20%以上約90%以下、約30%以上約90%以下、約40%以上約90%以下、約50%以上約90%以下、約60%以上約90%以下、約70%以上約90%以下、約10%以上約80%以下、約20%以上約80%以下、約30%以上約80%以下、約40%以上約80%以下、約50%以上約80%、または約60%以上約80%以下、約10%以上約70%以下、約20%以上約70%以下、約30%以上約70%以下、約40%以上約70%、または約50%以上約70%以下軽減することができる。
【0148】
さらなる実施形態では、治療用化合物およびその誘導体の半減期は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月またはそれ以上である。
【0149】
一実施形態では、治療用化合物の投与期間は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、またはそれ以上である。さらなる実施形態では、投与を停止する期間は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間またはそれ以上である。
【0150】
この実施形態の様々な態様において、本明細書中に開示される治療用化合物の治療有効量は、個体におけるがん細胞集団および/または腫瘍細胞サイズを、例えば、10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%低下させるか、または維持する。
【0151】
この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示される治療用化合物の治療有効量は、個体におけるがん細胞集団および/または腫瘍細胞サイズを、例えば、最大で10%、最大で15%、最大で20%、最大で25%、最大で30%、最大で35%、最大で40%、最大で45%、最大で50%、最大で55%、最大で60%、最大で65%、最大で70%、最大で75%、最大で80%、最大で85%、最大で90%、最大で95%、または最大で100%減少させるか、または維持する。
【0152】
この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、個体におけるがん細胞集団および/または腫瘍細胞サイズを、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%減少させるかまたは維持する。
【0153】
この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される治療用化合物の治療有効量は、個体におけるがん細胞集団および/または腫瘍細胞サイズを、例えば、約10%以上約100%以下、約10%以上約90%以下、約10%以上約80%以下、約10%以上約70%以下、約10%以上約60%以下、約10%以上約50%以下、約10%以上約40%以下、約20%以上約100%以下、約20%以上約90%以下、約20%以上約80%以下、約20%以上約20%以下、約20%以上約60%以下、約20%以上約50%以下、約20%以上約40%以下、約30%以上約100%以下、約30%以上約90%以下、約30%以上約80%以下、約30%以上約70%以下、約30%以上約60%以下、または約30%以上約50%以下減少させるかまたは維持する。
【0154】
医薬組成物または治療用化合物は個体に投与される。個体は、通例は人間であるが、家畜化されているか否かにかかわらず、イヌ、ネコ、鳥類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、爬虫類および他の動物を含むがこれらに限定されない動物であり得る。典型的には、治療の候補である任意の個体は、がんが良性であろうと悪性であろうと、腫瘍であろうと、固形であろうと、そうでなければ、腫瘍または何らかの他の形態のがんに位置しないがんコール(call)を有する候補である。がんの最も一般的なタイプには、膀胱がん、乳がん、結腸および直腸がん、子宮内膜がん、腎臓(kidney)がん、腎(renal)がん、白血病、肺がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、前立腺がん、胃がんおよび甲状腺がんが含まれるが、これらに限定されない。術前評価には、通例、日常的な病歴および診察に加えて、治療に関連するすべてのリスクおよび利益を開示する徹底的なインフォームドコンセントが含まれる。
【0155】
一実施形態において、医薬組成物または治療用化合物は、肉腫を治療するために投与される。一実施形態では、肉腫は、血管肉腫、軟骨肉腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上皮様肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、粘液線維肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、軟部組織肉腫、充実性線維腫瘍、滑膜肉腫および未分化多形性肉腫の1つまたは複数である。別の実施形態では、治療される肉腫は子宮肉腫である。さらなる実施形態では、医薬組成物または治療用化合物は子宮がんを治療するために投与される。子宮がんは、子宮内膜がんまたは子宮肉腫のいずれかである。
【0156】
一態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、がんに関連する障害の症状を軽減する。この実施形態の様々な態様において、本明細書中に開示される医薬組成物は、がんに伴う障害の症状を、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%軽減する。この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示される医薬組成物は、がんに伴う障害の症候を、例えば、約10%以上約100%以下、約20%以上約100%以下、約30%以上約100%以下、約40%以上約100%以下、約50%以上約100%以下、約60%以上約100%以下、約70%以上約100%以下、約80%以上約100%以下、約10%以上約90%以下、約20%以上約90%以下、約30%以上約90%以下、約40%以上約90%以下、約50%以上約90%以下、約60%以上約90%以下、約70%以上約90%以下、約10%以上約80%以下、約20%以上約80%以下、約30%以上約80%以下、約40%以上約80%以下、約50%以上約80%、または約60%以上約80%以下、約10%以上約70%以下、約20%以上約70%以下、約30%以上約70%以下、約40%以上約70%以下、または約50%以上約70%以下軽減する。
【0157】
別の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、所与の期間にわたって罹患したがんに関連する障害の症状の頻度を減少させる。この実施形態の様々な態様において、本明細書中に開示される医薬組成物は、所与の期間にわたって罹患したがんに伴う障害の症候の頻度を、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示される医薬組成物は、所与の期間にわたって罹患したがんに関連する障害の症候の頻度を、例えば、約10%以上約100%以下、約20%以上約100%以下、約30%以上約100%以下、約40%以上約100%以下、約50%以上約100%以下、約60%以上約100%以下、約70%以上約100%以下、約80%以上約100%以下、約10%以上約90%以下、約20%以上約90%以下、約30%以上約90%以下、約40%以上約90%以下、約50%以上約90%以下、約60%以上約90%以下、約70%以上約90%以下、約10%以上約80%以下、約20%以上約80%以下、約30%以上約80%以下、約40%以上約80%以下、約50%以上約80%以下、約60%以上約80%以下、約10%以上約70%以下、約20%以上約70%以下、約30%以上約70%以下、約40%以上約70%以下、または約50%以上約70%以下減少させる。
【0158】
本明細書の治療方法は、治療用化合物を薬学的有効量含む医薬組成物を投与するステップを含み得る。1日当たりの総量は、医師の適切な医学的判断によって決定され、1回または複数回投与されることになる。特定の患者に対する具体的な治療有効投与量レベルは、医学分野で周知の様々な要因、例えば、達成される応答の種類および程度、他の薬剤が併用されるか併用されないかによる医薬組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別および食事、投与の時間および経路、医薬組成物の分泌速度、治療期間、本明細書に開示される医薬組成物と組み合わせてまたは同時に使用される他の薬物、ならびに医学分野で周知の同様の要因等に応じて変化し得る。
【0159】
さらに別の態様では、本明細書は、がん、神経変性または感染症の未然防止または治療のための薬物の調製における治療用化合物およびそれを含む医薬組成物の使用を提供する。
【0160】
一実施形態では、医薬組成物の投与量は、毎日、週に2回、毎週、隔週または毎月投与され得る。治療期間は、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、1年、またはそれ以上であり得る。初期投与量は、持続投与量よりも多くてもよい。
【0161】
一実施形態では、投与量は、毎週の投与量が、0.01mg/kg以上、0.25mg/kg以上、0.3mg/kg以上、0.5mg/kg以上、0.75mg/kg以上、1mg/kg以上、2mg/kg以上、3mg/kg以上、4mg/kg以上、5mg/kg以上、6mg/kg以上、7mg/kg以上、8mg/kg以上、9mg/kg以上、10mg/kg以上、15mg/kg以上、20mg/kg以上、25mg/kg以上、または30mg/kg以上の範囲にわたる。
【0162】
一実施形態では、毎週の投与量は、1.5mg/kg以下、2mg/kg以下、2.5mg/kg以下、3mg/kg以下、4mg/kg以下、5mg/kg以下、6mg/kg以下、7mg/kg以下、8mg/kg以下、9mg/kg以下、10mg/kg以下、15mg/kg以下、20mg/kg以下、25mg/kg以下、または30mg/kg以下であり得る。特定の態様では、毎週の投与量は、5mg/kg以上20mg/kg以下の範囲であり得る。代替の態様では、毎週の投与量は、10mg/kg以上15mg/kg以下の範囲であり得る。
【0163】
本明細書はまた、対象に投与するための医薬組成物を提供する。本明細書に開示される医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、組成物が有害な副作用なしに治療効果を達成するのに十分であり、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康状態、性別、および薬物感受性、投与経路、投与様式、投与頻度、治療期間、本明細書に開示される組成物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医学で公知の他の要因に応じて容易に決定され得ることを意味する。
【0164】
本明細書に開示される治療用化合物を含む医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。経口投与の場合、担体としては、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定剤、懸濁化剤、着色剤および香味料を挙げ得るが、これらに限定されない。注射製剤の場合、担体は、緩衝剤、保存剤、鎮痛剤、可溶化剤、等張剤および安定剤を含み得る。局所投与のための調製物の場合、担体は、基剤、賦形剤、潤滑剤および保存剤を含み得る。
【0165】
開示される医薬組成物は、上述の薬学的に許容される担体と組み合わせて様々な剤形に製剤化され得る。例えば、経口投与の場合、医薬組成物は、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤またはウエハー剤に製剤化され得る。注射製剤の場合、医薬組成物は、単一剤形としてのアンプルまたは複数回投与容器に製剤化され得る。医薬組成物はまた、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤および長時間作用型製剤に製剤化され得る。
【0166】
一方、医薬製剤に適した担体、賦形剤、希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、医薬製剤は、充填剤、抗凝固剤、潤滑剤、保湿剤、香味料、および防腐剤をさらに含んでもよい。
【0167】
さらに、本明細書に開示される医薬組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液、非水溶媒、凍結乾燥製剤および坐剤からなる群から選択される任意の製剤を有し得る。
【0168】
医薬組成物は、患者の身体に適した単一剤形に製剤化されてもよく、好ましくは、経口または非経口経路、例えば、皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄内、脳室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、結腸内、局所、舌下、膣または直腸投与などによって投与されるように、製薬分野における一般的な方法に従ってペプチド模倣薬に有用な製剤に製剤化されるが、これらに限定されない。
【0169】
組成物は、様々な薬学的に許容される担体、例えば、生理食塩水または有機溶媒などと調合することによって使用することができる。安定性または吸収性を高めるために、炭水化物、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストラン、酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸もしくはグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定剤を使用することができる。
【0170】
本明細書に開示される医薬組成物の投与量および投与頻度は、治療される疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重、および疾患重症度などの様々な要因と共に、有効成分の種類によって決定される。
【0171】
本明細書に開示される医薬組成物の総有効投与量は、単回投与量で患者に投与されてもよく、または分割治療プロトコルに従って複数回投与量で長期間投与されてもよい。本明細書に開示される医薬組成物において、有効成分の含有量は、疾患重症度に応じて変化し得る。好ましくは、本明細書中に開示されるペプチド模倣薬の1日当たりの総投与量は、患者の体重1kg当たり約0.0001μg以上500mg以下であり得る。ただし、ペプチド模倣薬の有効投与量は、医薬組成物の投与経路や治療頻度の他、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患重症度、食事、分泌速度等の様々な因子を考慮して決定される。これを考慮して、当業者は、本明細書に開示される医薬組成物の特定の使用に適した有効投与量を容易に決定することができる。本明細書に開示される医薬組成物は、好適な効果を奏する限り、製剤、投与経路および投与形態に特に限定されない。
【0172】
さらに、医薬組成物は、単独で、または予防有効性もしくは治療有効性を示す活性薬剤と共にもしくは活性薬剤内で他の医薬製剤と組み合わせて、または他の医薬製剤と同時投与され得る。
【0173】
さらに別の態様では、本明細書は、がん、感染症または神経変性疾患を未然防止または治療する方法であって、治療用化合物またはそれを含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0174】
本明細書で提供される教示および指針を考慮すると、当業者は、本明細書に記載の製剤が、例示されたものを含む多くの種類のペプチド模倣薬および他の治療用化合物、ならびに当技術分野で公知の他のものに等しく適用可能であり得ることを理解するであろう。本明細書で提供される教示および指針を考慮すると、当業者はまた、例えば、1種以上の賦形剤、界面活性剤および/または任意選択成分の種類もしくは量の選択が、製剤化される生物製剤との化学的混和性および機能的適合性、ならびに/または、投与様式や当技術分野で周知の他の化学的、機能的、生理学的および/もしくは医学的要因に基づいて行われ得ることを理解するであろう。例えば、非還元糖は、ポリペプチド生物製剤と共に使用される場合、還元糖に比べて好ましい賦形剤特性を示す。したがって、例示的な製剤は、様々なペプチド模倣薬を参照して本明細書でさらに例示される。しかしながら、ポリペプチド生物製剤に適用される適用性、化学的および物理的特性、考慮事項および方法論の範囲は、ポリペプチド生物製剤以外の生物製剤にも同様に適用可能であり得る。
【0175】
様々な実施形態では、医薬組成物は、治療用化合物(例えば、本明細書に記載のウイルス、タンパク質、抗体、ペプチドなど)の組合せを医薬組成物中に含むことができるが、これらに限定されない。例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、疾患を含むがこれに限定されない1つまたは複数の状態を治療するための単一の治療用化合物、例えばペプチド模倣薬を含むことができる。本明細書に記載の医薬組成物はまた、一実施形態では、限定されないが、単一または複数の状態に対する2種以上の異なる治療用化合物を含むことができる。製剤における複数の治療用化合物の使用は、例えば、同一または異なる適応症を対象とすることができる。同様に、別の実施形態では、複数の治療用化合物を製剤中で使用して、例えば、病理学的状態および一次治療によって引き起こされる1つ以上の副作用の両方を治療することができる。さらなる実施形態では、例えば、同時治療および病理学的状態の進行の監視を含む異なる医療目的を達成するために、本明細書に記載の医薬組成物に複数の治療用化合物を含めることもできるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、本明細書に例示されるものなどの複数の同時治療、ならびに当技術分野で周知の他の組合せが患者のコンプライアンスに特に有用である。この理由は、提案される治療および/または診断の一部もしくはすべてに対して単一の医薬組成物で十分であり得るためである。当業者であれば、広範囲の併用療法のために混合することができる治療用化合物を知っている。同様に、様々な実施形態において、第1の治療用化合物は、第2の治療用化合物またはさらなる治療用化合物および1種以上の治療用化合物と小分子もしくは抗体医薬等の1種以上の他の治療用化合物との組合せと共に使用することができる。したがって、様々な実施形態において、1種、2種、3種、4種、5種または6種以上の様々な治療用化合物、ならびに1種以上の他の治療用化合物と組み合わせた1種以上の治療用化合物を含有する製剤が提供される。
【0176】
様々な実施形態では、医薬組成物は、当技術分野で公知の1種以上の保存剤および/または添加剤を含むことができる。同様に、医薬組成物は、限定されないが、様々な既知の送達製剤のいずれかにさらに製剤化することができる。例えば、一実施形態では、医薬組成物は、界面活性剤、アジュバント、生分解性ポリマー、ヒドロゲルなどを含むことができ、そのような任意選択成分、それらの化学的および機能的特性は当技術分野で公知である。同様に、投与後の生物活性剤の急速放出、持効性放出または遅延放出を容易にする医薬組成物が当技術分野で公知である。記載された製剤は、当技術分野で公知のこれらまたは他の製剤成分を含むように製造することができる。
【0177】
したがって、医薬組成物は、単回投与量として、または経時的に2回以上の投与量(所望の分子を同じ量で含有してもしなくてもよい)として、または埋め込みデバイスもしくはカテーテルを介した連続注入として投与することができる。適切な投与量のさらなる改良は、当業者によって日常的に行われ、当業者によって日常的に行われる作業の範囲内である。適切な投与量は、適切な用量反応関係データの使用によって確認され得る。様々な実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物中の治療用化合物は、限定されないが、長期間にわたって、例えば、慢性疾患のための長期投与で患者に投与することができる。組成物は、固体、半固体またはエアロゾルであり得、医薬組成物は、錠剤、ゲルタブ、トローチ剤、経口溶解ストリップ、カプセル、シロップ、経口懸濁液、乳剤、顆粒剤、スプリンクル製剤または丸薬として製剤化される。
【0178】
一実施形態では、経口送達製剤、直腸送達製剤、膣送達製剤、非経口送達製剤、肺送達製剤、舌下送達製剤、および/または、鼻腔内送達製剤の場合、錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助成分または添加剤と共に、圧縮または成型によって製造され得る。一実施形態では、圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの自由流動形態の治療用化合物を、必要に応じて、結合剤(例えば、限定されないが、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、限定されないが、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)および/または界面活性剤もしくは分散剤と混合し、例えば、適切な打錠機で圧縮することによって調製される。
【0179】
一実施形態では、成型錠剤は、例えば、限定されないが、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な打錠機で成型することによって製造される。一実施形態では、錠剤は、必要に応じてコーティングまたは割線が付けられてもよく、有効成分の徐放または制御放出を可能にするために、例えば、限定されないが、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して所望の放出プロファイルをもたらすように製剤化されてもよい。一実施形態では、錠剤は、必要に応じてコーティング、限定されないが、例えば、薄膜、糖衣、または胃以外の腸の部分における放出をもたらすための腸溶性コーティングを備えていてもよい。一実施形態では、錠剤およびカプセルの製造のためのプロセス、機器、および委託製造業者は、当技術分野で周知である。
【0180】
一実施形態では、カプセル医薬組成物は、限定されないが、ゼラチンカプセルまたは植物性カプセル、例えばヒドロキシメチルプロピルセルロース(HMPC)から作製されたもの等の硬質または軟質カプセルのいずれかを利用することができる。一実施形態では、カプセルの種類はゼラチンカプセルである。一実施形態では、カプセルは、限定されないが、例えば、Miranda International社などの商業的供給業者から入手可能なカプセル充填機を使用して充填してもよく、または、F.Podczeck and B.Jones「Pharmaceutical Capules」(第2追補版)2004に詳細に記載されているような業界で周知のカプセル製造技術を利用して充填してもよい。一実施形態では、カプセル医薬組成物は、限定されないが、Purdue Research ParkにあるChao Center for Industrial Pharmacy&Contract Manufacturing社などの委託製造センターを利用して調製することができる。
【0181】
投与のための包装および器具は、様々な考慮事項、例えば、限定するものではないが、投与される物質の容積、貯蔵条件、熟練した医療従事者が投与するか否かまたは患者のセルフコンプライアンス、投与レジメン、地政学的環境(例えば、発展途上国の極端な温度条件への曝露)および他の実際的な考慮事項により決定することができる。
【0182】
注射装置には、ペンインジェクタ、自動注射器、安全シリンジ、注入ポンプ、輸液ポンプ、ガラス製のプレフィルドシリンジ、プラスチック製のプレフィルドシリンジ、および無針注射シリンジがあり、液体を予め充填してもよく、または例えば凍結乾燥材料と共に使用するために2室型であってもよい。そのような使用のためのシリンジの例は、Lyo-Ject(商標)であり、これはVetter GmbH(ドイツ、ラーフェンスブルク郡)から入手可能な2室型プレフィルドリオシリンジである。別の例は、LyoTip,Inc.社(アメリカ合衆国カリフォルニア州カマリロ)から入手可能なLyoTipであり、これは凍結乾燥製剤を簡便に送達するために設計されたプレフィルドシリンジである。注射による投与は、限定されないが、適宜、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下とすることができる。非注射経路による投与は、限定されないが、適宜、経鼻、経口、経眼、経皮または経肺であり得る。
【0183】
特定の実施形態では、キットは、本明細書に記載の1種以上の医薬組成物を投与するための単室シリンジまたは多室シリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ)を1本以上含むことができるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、キットは非経口、皮下、筋肉内または静脈内投与用の医薬組成物を、それが部分真空下でバイアルに密封され注射器に装填されて対象に投与する準備ができた形態で含むことができる。これに関して、医薬組成物は、部分真空下でその中に組み入れることができる。これらの実施形態およびその他のすべてにおいて、キットは、前述のいずれかによる1本以上のバイアルを含むことができ、各バイアルは、対象への投与のための単回の単位投与量を含む。
【0184】
キットは、本明細書のように組み入れられた凍結乾燥物であって、再構成されると、それに従って医薬組成物を提供する凍結乾燥物を含むことができる。様々な実施形態において、キットは、凍結乾燥物と、凍結乾燥物を再構成するための滅菌希釈剤とを含むことができる。
【0185】
また、本明細書には、治療を必要とする対象を治療する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法も記載される。医薬組成物製剤の治療有効量または投与量は、対象の疾患または状態および実際の臨床状況に依存する。
【0186】
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、任意の適切な経路、特に(皮下、筋肉内、静脈内および皮内等の)非経口投与によって投与することができる。好ましい経路は、レシピエントの状態および年齢、ならびに治療される疾患によって変わることも理解されよう。最も有効な投与手段および投与量を決定する方法は、当業者に公知であり、限定されないが、治療に使用される医薬組成物、治療の目的、および治療される対象によって異なる。単回投与または複数回投与を行うことができ、限定されないが、投与量レベルおよび投薬パターンは、治療を行う医師が選択する。適切な投与量の医薬組成物および薬剤を投与する方法は、当技術分野で公知である。
【0187】
本明細書に記載の医薬組成物は、医薬品の製造において、ならびに従来の手順による投与によるヒトおよび他の動物の治療に使用することができる。
【0188】
また、本明細書には、アミノ酸の組合せを賦形剤として使用して、適切な医薬組成物を開発するためのコンビナトリアル手法も提供されている。これらの方法は、安定な液体または凍結乾燥医薬組成物、そして特に1種以上の治療用化合物を含む医薬組成物を開発するのに有効である。
【0189】
本明細書に記載の実施形態による組成物は、所望の特性、例えば、所望の溶解性、粘度、シリンジ通過性および安定性を有する。本明細書に記載の実施形態による凍結乾燥物は、所望の回収、安定性および再構成などの所望の特性も有する。
【0190】
一実施形態では、医薬組成物のpHは、約3.5以上、約3.75以上、約4以上、約4.25以上、約4.5以上、約4.75以上、約5以上、約5.25以上、約5.5以上、約5.75以上、約6以上、約6.25以上、約6.5以上、約6.75以上、約7以上、約7.25以上、約7.5以上、約7.75以上、約8以上、約8.25以上、約8.5以上、約8.75以上、または約9以上である。
【0191】
一実施形態において、医薬組成物のpHは、約3以上約9以下、約4以上約19以下、約5以上約9以下、約6以上約8以下、約6以上約7以下、約6以上約9以下、約5以上約6以下、約5以上約7以下、約5以上約8以下、約4以上約9以下、約4以上約8以下、約4以上約7以下、約4以上約6以下、約4以上約5以下、約3以上約8以下、約3以上約7以下、約3以上約6以下、約3以上約5以下、約3以上約4以下、約7以上約8以下、約7以上約9以下、約7以上約10以下である。
【0192】
実施例
本明細書に記載の組成物および方法は、純粋に例示的であることを意図した以下の実施例を参照することによってさらに理解されるであろう。本明細書に記載される組成物および方法は、単一の態様の例示としてのみ意図される例示された実施形態による範囲に限定されない。機能的に等価な任意の方法は、本発明の範囲内である。本明細書に明示的に記載されたものに加えて、本明細書に記載された組成物および方法の様々な変更は、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。このような変更は、本発明の範囲内に含まれる。
実施例1
式(I)の化合物による処理は、発がん性KRASを発現する膵臓腫瘍細胞を選択的に死滅させ、正常細胞では影響は無視できる。
【0193】
図1に示される結果は、式(I)の化合物がPI3Kおよびc-RAF1とKRASとの相互作用を減少させたことを示している。
図2に示される結果は、式(I)の化合物がすべての腫瘍細胞株において約20μMのIC
50で細胞生存率を低下させることができたが、これらの濃度で影響を受けた正常細胞は5%未満のみであったことを示している。したがって、式(I)の化合物は膵臓腫瘍細胞を減少させるが、正常細胞を減少させない。
式(I)の化合物およびその類似化合物の一般的調製方法
【0194】
式(I)の化合物およびそのいくつかの類似化合物(後者は本明細書に開示されていない)を、Fmoc/t-Bu戦略に従って固相ペプチド合成(SPPS)によって調製した。合成は、それぞれ2-クロロトリチル樹脂を固体ポリマー支持体として使用して100μモルスケールで行った。合成は、底部に多孔性ディスクを装着したポリプロピレン製シリンジ中で手作業にて行った。ペプチド模倣薬の鎖を成長中に、試薬の適切な混合を確実にするために間欠的な撹拌を手作業で行った。溶媒および可溶性試薬を吸引によって除去した。アミノ酸カップリング反応進行度を、カイザーテスト(第一級アミン)(E.Kaiser et al.;「Color test for detection of free terminal amino groups in the solid-phase synthesis of peptides」;Anal.Biochem.1970;第34巻;595~598ページを参照)またはクロラニルテスト(第二級アミン)(T.Vojkovsky;「Detection of secondary amines on solid phase」;Pept.Res.1995;第8巻;236~237ページを参照)のいずれかを用いてモニタした。カップリングが完全に達成されなかった場合、標準的なカップリング条件を使用して再カップリング工程を実施した。化合物骨格の選択的N-アルキル化は、S.C.Miller et al.(「Site-selective N-methylation of peptides on solid support」;J.Am.Chem.Soc.1997;第119巻;2301~2302ページを参照)によって記載された方法を使用して行った。
【0195】
2-クロロトリチルクロリド樹脂を、ポリエチレン多孔性ディスクを装着したシリンジ(反応容器)に入れた。樹脂をジクロロメタン(DCM)およびジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄することによって膨潤させた。
【0196】
樹脂の膨潤および調製後、DMF中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)をカップリング剤として使用し、合成されるペプチド模倣薬の第1のFmoc保護アミノ酸の保護形態をそのカルボン酸部分を介して樹脂に結合させた。カップリングを実施するために、0.6当量の保護アミノ酸を数滴のDCMと混合し、樹脂に添加した。その後、5当量のDIEAを2回に分けて添加した。最初に1/3部分を添加し、10分後に残りの2/3を添加した。反応を50分間進行させた。その後、反応混合物にメタノールを(ポリマー支持体1g当たり1mL)注ぐことによって、ポリマー支持体の未反応の活性点を封鎖した。10分後、溶媒および未反応試薬を吸引除去した。次に、20%ピペリジンDMF溶液で樹脂を処理することによってFmoc基を除去した。洗液を回収し、UV分光法によって測定して、ポリマー支持体への第1のアミノ酸の担持量を定量した。
【0197】
ペプチド模倣薬の次のアミノ酸を、4当量のFmoc保護アミノ酸、4当量の2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、8当量のDIEA、および数滴のDMFを使用してカップリングさせ、これをポリマー支持体が入った反応容器に注いだ。この混合物を75分間反応させた。カイザーテストまたはクロラニルテストを用いてカップリング反応進行度をモニタした。カップリングが完了していない場合、同じ条件を用いて反応を繰り返した。カップリング工程中に、DMF(5回×1分)およびDCM(5回×1分)による洗浄を行った。カップリングが完了したら、DMF中にピペリジンを20%含む混合物(樹脂1g当たり4mL、2回×1分および1回×10分)を用いてFmoc基を除去した。Fmoc基の除去はカイザーテストまたはクロラニルテストを用いてモニタした。このテストはポリマー支持体をDMF(5回×1分)およびDCM(5回×1分)で洗浄した後に行った。次のアミノ酸を同じ反応条件を使用してカップリングさせ、標的化合物の配列が完了するまで行った。
【0198】
アミノ酸のN-アルキル化を樹脂上で行った。アミノ酸のN-メチル化のために使用した樹脂上のプロセスは、以下の3工程の方法論であった(これらの工程は、ポリマー支持体上に固定されたペプチド配列上の最後にカップリングされたアミノ酸のFmoc除去後に実施した):
a)o-N-ブロモスクシンイミド(o-NBS)を用いたアミノ基の保護および活性化。
b)ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンおよび硫酸ジメチルを用いた脱プロトン化およびN-メチル化。
c)β-メルカプトエタノールおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを用いたo-NBS除去。
【0199】
ペプチド配列が完了したら、得られたペプチド(依然としてポリマー支持体上に固定されたままである)をDCM(5回×1分)で洗浄し、吸引によって乾燥させた。次いで、5%トリフルオロ酢酸(TFA)のDCM溶液を用いて、樹脂からペプチドを分離した。処理液およびDCM洗液(5回×1分)を回収し合わせて、樹脂から分離したペプチドを得た。次いで、乾くまで、回収した溶媒を真空下で蒸発させた。アセトニトリル(ACN):H2O(50:50)溶液を用いて、粗ペプチドを希釈し、凍結乾燥した。
【0200】
次に、DCMと、ピロリジンと、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)と、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・Cl)との混合物の可能な限り最小体積中にペプチド粉末を希釈することによって、C末端封鎖を付加した。C末端封鎖が完了したら、溶媒を真空下で除去し、次いで、ACN:H2O(50:50)溶液で再び希釈し、凍結乾燥した。
【0201】
側鎖保護基を、(TFAが95%、トリイソプロピルシラン(TIS)が2.5%、H2Oが2.5%)の混合物を1.5時間適用することによって除去した。すべての濾液をプールし、TFAをN2流下で蒸発させた。その後、粗生成物をACN:H2O(50:50)混合物で希釈し、凍結乾燥した。最後に、半分取RP-HPLCを用いて化合物を精製した。目的の画分を回収し、凍結乾燥して、所望の化合物を得た。
式(I)の化合物の具体的な調製
【0202】
支持体およびFmoc保護アミノ酸:2-クロロトリチルクロリド樹脂をポリマー支持体として使用した。使用したアミノ酸は、Fmoc-Bip-OH、Fmoc-Nme-β-Ala-OH、Fmoc-Dap(Boc)-OH、およびFmoc-Leu-OHであった。
【0203】
第1のアミノ酸の固定:2-クロロトリチルクロリド樹脂を最初に洗浄(DCMで5回×1分、DMFで5回×1分およびDMCで1回×5分)してから、第1のアミノ酸を添加した。次いで、0.6当量のアミノ酸を数滴のDCMと混合し、樹脂に添加した。その後、5当量のDIEAを2回に分けて添加し、最初に1/3部分を10分間反応させ、次いで、同じ工程を残りの2/3部分を用いて50分の反応時間で繰り返した。樹脂の未反応の活性点を、メタノールを(ポリマー支持体1g当たり1mL)用いて封鎖した。その後、反応混合物を吸引により除去し、ポリマー支持体をDMFで洗浄した(5回×1分)。次に、20%ピペリジンDMF溶液で樹脂を処理(樹脂1g当たり4mL、2回×1分および1回×10分)することによってFmoc基を除去した。洗液を回収し、UV分光法によって測定して、第1のアミノ酸の担持能力を決定した。
【0204】
ペプチド模倣薬の鎖の伸長:第1のアミノ酸のポリマー支持体へのカップリング後、(4当量のFmoc保護アミノ酸と、4当量のTBTUと、8当量のDIEAと、数滴のDMFとの)事前活性化(3分)混合物を注ぐことによってペプチド模倣鎖を伸長させ、ポリマー支持体を入れた反応容器に注いだ。混合物を断続的に手動で撹拌しながら75分間反応させた。その後、試薬および溶媒を吸引によって除去し、ポリマー支持体をDMF(5回×1分)およびDCM(5回×1分)で洗浄した。カップリングの伸長は、カイザーテスト(第一級アミン上のカップリング)またはクロラニルテスト(第二級アミン上のカップリング)によってモニタした。反応が完了しなかった場合、同じカップリング条件(4当量のFmoc保護アミノ酸、4当量のTBTUおよび8当量のDIEAおよび数滴のDMF、75分間の反応)を用いてカップリング工程を繰り返した。カップリングの完全性を評価した後、20%ピペリジンDMF溶液の処理(樹脂1g当たり4mL、2回×1分および1回×10分)でFmoc基を除去した。Fmoc基の除去をカイザーテストまたはクロラニルテストを用いてモニタした。このテストはポリマー支持体をDMF(5回×1分)およびDCM(5回×1分)で洗浄した後に行った。次のアミノ酸を同じ反応条件を使用してカップリングさせ、標的化合物の配列が完了するまで行った。
【0205】
ジアミノプロピオン酸部分の選択的N-メチル化:選択的N-メチル化を以下のように行った。
a)o-NBSによるアミノ基の保護および活性化:4当量のo-NBS、3当量の2,3,5-コリジン、および数滴のDMFを2回(30分および20分)。
b)脱プロトン化およびN-アルキル化:DMF中3当量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(5分)、および5分後、10当量のジメチル硫酸塩を樹脂に添加した(10分)。この処理を2回繰り返した。
c)o-NBSの除去:10当量のβ-メルカプトエタノール、5当量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンおよび数滴のDMFを2回(10分および40分)。
【0206】
ポリマー支持体からのペプチドの分離:ペプチド-樹脂を5%TFAのDCM溶液(3回×15分、6mL)で処理した。分離混合物およびその後のDCM洗液(5回×1分)を回収し合わせて、樹脂からの分離したペプチドを得た。次いで、乾くまで、回収した混合物から溶媒を真空下で蒸発させた。最後に、得られた粗ペプチドをACN/H2O(50:50)溶液で希釈し、凍結乾燥した。この酸性処理により、ペプチドの保護側鎖基を保持することができた。
【0207】
C末端封鎖:可能な最小体積のDCMで凍結乾燥物粗生成物を希釈し、3当量のピロリジン、3当量のHOAt、および3当量のEDC・Clを添加した。混合物を一定に撹拌しながら室温で3時間反応させた。その後、混合物をNaHCO3の飽和溶液、NH4Clの飽和溶液およびNaClの飽和溶液(それぞれで3回)で洗浄した。有機層を回収し、真空下で乾燥させた。その後、これをACN:H2O(50:50)の混合物で希釈し、凍結乾燥した。
【0208】
側鎖保護基の除去:側鎖保護基は、TFAが95%、TISが2.5%、H2Oが2.5%の酸性混合物を使用した処理(1.5時間)によって除去した。この開裂混合物は、N2流を用いて蒸発させた。その後、粗生成物をACN:H2O(50:50)混合物で希釈し、凍結乾燥した。
【0209】
ペプチド精製:ペプチドを、半分取RP-HPLCを使用して精製した。粗生成物をACN:H2O(できるだけ少ない量のACN:H2Oを使用する)に溶解した。使用したカラムはC18(100mm×30mm、5μm、100Å)であり、20分で0~100%Bの勾配を使用した(A=0.1%TFAのH2O溶液、B=0.1%TFAのACN溶液)。流量=16mL/分。検出波長=220nm。目的の画分を、分析用HPLCとHPLC/MSとを組み合わせて分析し、凍結乾燥した。
【0210】
ペプチドの特性評価:HPLC-MSを用いてペプチドの同一性を確認した。HPLC-MSクロマトグラムは、ウォーターズAlliance2796セパレーションモジュールシステムにウォーターズ2996フォトダイオードアレイ検出器、四重極3100質量検出器およびSunFire C18カラム(2.1×100mm×3.5μm、100Å、ウォーターズ社製)およびMasslynxソフトウェアを装着して記録した。流量:0.3ml/分、移動相:H2O(0.1%ギ酸)およびACN(0.1%ギ酸)。UV検出波長:220nm。純度は分析用HPLCによって定量した。HPLCクロマトグラムは、ウォーターズAlliance2695セパレーションモジュールに2996フォトダイオードアレイ検出器(PDA)およびSunfire C18カラム(100×4.6mm×5μm、100Å、ウォーターズ社製)およびEmpowerソフトウェアを装着して記録した。流量:1.6mL/分、移動相:H2O(0.1%TFA)およびACN(0.1%TFA)。検出は220nmで行った。
・分子式:C47H58N6O5
・算出質量:787.00g/モル
・質量同定:[M+H]+=787.4 Da
・勾配および保持時間(分):3分で0~100%Bの勾配の勾配(A=0.1%TFAのH2O溶液、B=0.1%TFAのACN溶液)、保持時間3.1分;20分で40~100%Bの勾配の勾配(A=H2O中0.1% TFA、B=ACN中0.1% TFA)、保持時間1.9分。
・純度:95%。
【0211】
細胞株および培養
hTERT-RPE(不死化網膜色素上皮ヒト細胞)およびHeLa(類上皮子宮頸がん細胞)は両方ともRAS野生型を発現し、American Tissue and Cell Collection(ATCC)から入手した。MPanc-96、HPAF-II、PA-TU-8902、SW1990、PA-TU 8988TおよびPANC-1 PDAC細胞株(C.Barcelo et al.:「Ribonucleoprotein HNRNPA2B1 interacts with and regulates oncogenic KRAS in pancreatic ductal adenocarcinoma cells」;Gastroenterology 2014 Oct.;147(4):882-892.e8.doi:10.1053/j.gastro.2014.06.041.Epub 2014 Jul 3.PMID:24998203に記載通りに取得)はすべて、発がん性変異KRASG12Vを発現している。
【0212】
HeLaおよびPDAC細胞はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において、hTERT-RPEはDMEM-HAMのF12(1:1)培地中において増殖させ、両方に10%ウシ胎児血清(FBS;Biological Industries社製、イスラエル)、ペニシリン、ストレプトマイシン、および非必須アミノ酸を加えた。
【0213】
薬物治療およびEGF依存性シグナル伝達および活性化
細胞を、10%FBSを含有する培地に24時間播種し、それから24時間血清飢餓にした。その後、細胞を異なる濃度の化合物と2時間インキュベートした。細胞シグナル伝達を活性化するために、EGF(50ng/mL;シグマ・アルドリッチ社製)による10分間の連続処理を行った。
【0214】
細胞トランスフェクションおよびプラスミド
HeLa細胞を、C.Lopez-Alcalaら(「Identification of essential interacting elements in K-Ras/calmodulin binding and its role in K-Ras localization.」;J.Biol.Chem.2008;Apr 18;283(16):10621-31.doi:10.1074/jbc.M706238200.Epub 2008 Jan 8.PMID:18182391)に記載通りにして得たpEF-HA-KRASG12Vプラスミドを用いてトランスフェクションした。リポフェクタミン(登録商標)2000トランスフェクション試薬(Invitrogen社製)を、製造者の説明書に従ってトランスフェクション方法として使用した。
【0215】
SDS-PAGE、ウエスタンブロットおよび抗体
タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、PVDFメンブレン(イモビロン-P、ミリポア社製)上に転写した。メンブレンを室温で1時間、20mMのTris-HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、0.05%のTween 20および5%ウシ血清アルブミンで構成される緩衝液とインキュベートすることによって、抗体の非特異的結合を評価した。タンパク質発現は、指定された抗体:抗c-RAF(BD形質導入610151、1:500);抗ホスホ-c-RAF S338(Cell Signaling社製#9427、1:500);抗PI3Kp110α(Cell Signaling社製#4249、1:1000);抗AKT(Cell Signaling社製#9272、1:1000);抗ホスホ-AKT S473(Cell Signaling社製#4060、1:1000);抗ホスホ-AKT Thr308(Cell Signaling社製#4056、1:1000);抗p44/42 MAPK(ERK1/2)(Cell Signaling社製#9102、1:2000);抗ホスホ-p44/42 MAPK(ERK1/2)T202/Y204(Cell Signaling社製#4370、1:2000);抗GAP120(Santa Cruz社製 SC-63、1:200);抗HA(シグマ・アルドリッチ社製H6908、1:1000);または抗α-チューブリン(シグマ・アルドリッチ社製T9026、1:2000)を用い、4℃で一晩ブロットをプローブすることによって測定した。次に、メンブレンを洗浄した後、それらを対応するHRP結合二次抗体(ヤギ由来抗ウサギ抗体 バイオ・ラッド社製#170-6515またはヤギ由来抗マウス抗体 バイオ・ラッド社製#170-6516、1:3000)と室温で60分間インキュベートし、再び洗浄した。タンパク質検出を、増強された化学発光(EZ-ECL、Biological Industries社製)によって行った。放出光をキャプションし、定量化した(ChemiDoc、バイオ・ラッド社製)。
【0216】
RASシグナル伝達の分析のために、細胞を67mMのTris-HCl(pH6.8)および2%のSDSを含有する緩衝液中で溶解し、次いで試料を97℃で15分間加熱した。この後、溶解物のタンパク質濃度をローリー法を用いて定量した。1試料あたり15μgのタンパク質の一定分量をゲルに入れた。
【0217】
共免疫沈降法(Co-IP)
細胞をpEF-HA-KRASG12Vプラスミドを用いて24時間トランスフェクションし、それから24時間飢餓状態にした後、ペプチドおよびEGFで処理した。次に、アガロースビーズに架橋した抗HA抗体を用いてIPを行った。簡単に言えば、細胞を、20mMのTris-HCl pH7.5、100mMのNaCl、2mMのEDTA、5mMのMgCl2、1%(v/v)のトリトンX-100、10%のグリセロール(v/v)、1mMのジチオスレイトール(DTT)、ならびにプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(150nMのアプロチニン、20μMのロイペプチン、1mMのフェニルメチルスルホニル、5mMのフッ化ナトリウムおよび0.2mMのオルトバナジン酸ナトリウム)で構成される緩衝液を用いて氷上で10分間溶解した。遠心分離による清澄化の後、上清(500μg~2000μg)を、アガロースビーズに架橋した40μL~50μLの抗HAタグ抗体(クローンHA-7、シグマ・アルドリッチ社製A20956)を用いて、回転させながら4℃で3時間インキュベートした。次に、10000×gで4℃で2分間遠心後に得られた免疫複合体を洗浄し、対応する抗体を用いて免疫ブロット法を実施した
【0218】
細胞生存率アッセイ
10%のFBS含有培地50μL中の1万個の細胞を24時間培養し、次いで、96ウェルプレート(最終体積100μL)の各ウェル中でさらに24時間、薬物(最終体積50μL)で処理した。MTS生存率アッセイ(CellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay、プロメガ社製G3580)を製造業者の仕様書に従って実施した。各ウェルの吸光度を、マルチモードプレートリーダー(Spark、テカン社製)を用いて490nmで測定した。細胞生存率のパーセンテージは、各ウェルの吸光度を対照ウェルの平均吸光度(スチューデントのt検定を適用したところ、有意な偏差はなかった)で割ることによって計算した。
【0219】
実施例2
本発明者らは、RASタンパク質の表面上のエフェクター結合部位の予備評価を行ったところ、RASタンパク質とRASエフェクター結合部位で相互作用するタンパク質(RAS活性化後のエフェクター)との相互作用を調節するためのペプチド模倣薬の使用の特定につながった(
図3を参照のこと)。エフェクターは、RAF、RALおよびP13Kを含む。これは、下記のように計算法を使用して行った。
計算ヒット識別
計算法を適用して、強力かつ透過性のペプチド模倣薬を薬物候補として得た。本発明者らのアプローチは、ペプチド模倣薬であって、RASエフェクター結合部位に結合し、RASがエフェクタータンパク質と相互作用する可能性を遮断し、したがってその腫瘍学的活性を低下させるペプチド模倣薬を設計することであった。
【0220】
RAS-エフェクター結合部位の同定は、いくつかのエフェクタータンパク質(例えば、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、Bry2RBD、RalGDS、ホスホリパーゼC、NORE1AおよびRAF)との複合体におけるGTPアーゼ-RASの構造比較および計算標準プロトコルを適用することで行った。
【0221】
1つの芳香族残基および3つの負に荷電した残基(すなわち、Asp33、Glu37、Asp38およびTyr64)の合計が、RASエフェクタータンパク質とのRAS界面上に同定された。本発明者らは、実質的にすべてのエフェクタータンパク質の間で高度に保存されている特定の残基との分子間接触に関与する、RASタンパク質表面上のいくつかの残基、すなわちAsp33、Glu37、Asp38およびTyr64を同定した。本発明者らは、実質的にすべてのRAS結合部位エフェクタータンパク質との相互作用において、これらの残基が保存されていると判断した。本発明者らはまた、これらのRAS結合部位が一般に、Asp33とAsp38との間(
図4、表4)で高度に正電荷を帯び、これが可能性のある結合剤との相互作用を促進すると判断した。
【0222】
RASタンパク質の結晶構造の分析およびMDシミュレーションの両方から得られた結果に基づいて、両方の分析によってAsp33残基およびAsp38残基が同定されたことから、基質結合部位としてこれらの残基を選択した。これらのデータは、その後、推定RAS阻害剤の仮想スクリーニングにおいて、(例えば、ヒット同定工程において)リガンドとして使用されるペプチド模倣薬のライブラリの組成を適合させるために、ならびに(ヒット認識工程およびヒット最適化工程の両方において)ドッキングボックスの位置およびサイズを設定するために使用した。
【0223】
本発明者らは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸の両方によって形成された8万を超えるトリペプチドおよびテトラペプチドの初期ライブラリを作成した。生成されたトリペプチドおよびテトラペプチドは、1ペプチドあたり少なくとも1つの正荷電残基を含有していた。SMINAドッキングプログラムを用いてペプチド模倣薬のスクリーニングを行った。これは、K-RAS GTPアーゼ結晶構造を受容体(PDB 5P21)として使用し、K-RAS GTPアーゼの表面上の負に帯電したホットスポット残基の周りに結合部位を設定することによって達成された。
【0224】
材料および方法
ペプチド模倣薬の合成
すべての化合物は、Fmoc/tBu戦略に従って固相ペプチド合成(SPPS)によって合成した。合成は、100μモルスケールで、それぞれ2-クロロトリチル樹脂を用いて(ただしP1.1にあっては、H-RinkアミドChemmatrixを使用して)行った。合成は、底部に多孔性ディスクを装着したポリプロピレン製シリンジ中で手作業にて行った。ペプチド鎖を成長させている間は、試薬の適切な混合を確実にするために手動で断続的に撹拌した。溶媒および可溶性試薬を吸引によって除去した。4当量のFmoc保護アミノ酸、4当量の2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)および8当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を含むジメチルホルムアミド(DMF)を使用して、アミノ酸カップリング(L-、D-または非天然のいずれか)を行った(1×75分)。反応進行度は、カイザーテスト(第一級アミン)またはクロラニルテスト(第二級アミン)のいずれかを用いてモニタした。カップリングが完全に達成されなかった場合、標準的なカップリング条件を使用して再カップリング工程を実施した。(カップリング反応が問題なく完了した後)、DMF中にピペリジンを20%含む混合物を使用して、Fmoc基をアミノ酸から除去した(2回×1分および1回×10分)。
【0225】
化合物骨格の選択的N-アルキル化は、Millerらによって記載された方法を使用して実施し、この方法は以下の3つのステップに分けられる(これらのステップは、N-アルキル化することになる、樹脂上に固定されたアミノ酸のFmoc除去後に実施される)。
【0226】
オルト-ニトロベンゼンスルホネート(o-NBS)によるアミノ基の保護および活性化:4当量のo-NBS、3当量の2,3,5-コリジンを含むDMF(1回×30分および2回×20分)、2)脱プロトン化およびN-アルキル化:3当量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含むDMFを樹脂に添加し(5分)、その後、10当量の所望のアルキル硫酸塩を樹脂に添加する(10分)。この処理を2回繰り返す。3)o-NBS除去:DMF中に10当量のβ-メルカプトエタノールと5当量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含む混合物を用いて2回の処理(1回×10分および1回×40分)を行う。
【0227】
RAS GTPアーゼタンパク質上の混合溶媒分子動力学(MixMD)シミュレーション
【0228】
RAS GTPアーゼタンパク質(PDBコード5P21)の結晶構造をRCSB PDBデータベース(https://www.rcsb.org/)からダウンロードし、入力構造として使用して、50ns長の明示的な混合溶媒分子動力学(MixMD)シミュレーションを実行した。
【0229】
第1の準備ステップでは、共結晶化GppNHp分子をGTPの元の補助因子で置き換え、そのパラメータファイルをAMBERパラメータデータベース(http://research.bmh.manchester.ac.uk/bryce/amber/)からダウンロードした。これにより、システム全体を適切にプロトン化し、TIP3P水分子と適切に組み合わせたベンゼン、プロパン、エタノール、プロピオン酸およびエチルアミン有機プローブで構成される周期的立方体混合溶媒ボックスに入れた(タンパク質とボックスの縁部との間の最小距離は10Åに設定した)。
【0230】
システムの全体的なプロトン化、溶媒和、およびパラメータ化は、AmberTool16のLeapモジュールを使用し、AMBERのff12力場を使用して行った。
【0231】
以下に詳述するように、二段階共役勾配に基づく最小化を実行した後、4段階平衡化および50ns長のMDシミュレーションはNAMDシミュレーションパッケージ57を使用して実行した。SHAKEアルゴリズムおよび粒子・メッシュ・エバルト(PMD)法を(それぞれ、水素原子へのすべての結合を抑制し、長距離クーロン相互作用を計算するために)すべてのシミュレーションに適用した。2fsの時間ステップおよび12Åの長距離相互作用のカットオフ距離も設定した。
【0232】
したがって、溶媒和系を最初に500サイクル長の無拘束最小化ステップで緩和し、続いてさらに5000サイクルの間、5kcal/(モルÅ2)の力定数を用いて調和拘束をタンパク質の主鎖原子にのみ適用した。その後、ランジュバン動力学モデルを用いて系を0から300Kまで徐々に加熱する4段階プロトコルでタンパク質を平衡化し、初期位置拘束を規則的に緩和した。したがって、100ps長のMDシミュレーションを、NVT条件(すなわち、一定の分子数(N)、体積(V)および温度(T))を使用し、20kcal/(モルÅ2)の調和ポテンシャルを用いて主鎖原子を拘束し、温度を100から300Kに上昇させて実行した。次いで、300Kから600Kまでの120ps長の加熱段階を、NVT条件を使用し,10kcal/(モルÅ2)の調和ポテンシャルを用いて主鎖原子を拘束して実行した。次いで、NVTを使用し、10kcal/(モルÅ2)の調和ポテンシャルを用いて主鎖原子を拘束して、系を600Kから300Kまで120ps間冷却した。最後に、300Kにおける100ps長のシミュレーションを、NPT条件(すなわち、一定の分子数(N)、圧力(P)および温度(T))を使用し、5kcal/(モルÅ2)の調和ポテンシャルを用いて主鎖原子を拘束して実行した。
【0233】
平衡化後、NVT条件で300Kにおける50ns長のシミュレーションを、主鎖原子のみに適用された0.5kcal/(モルÅ2)の弱い調和拘束を使用して実行した。
【0234】
最後に、軌跡中の有機プローブの分布に基づいて、リガンド結合に対する高い傾向を有するタンパク質表面領域は、軌跡を使用して同定した。この理由は、所与の領域におけるプローブ占有の頻度はこの特定の領域に対するそれらの結合親和性に比例するはずだからである。したがって、各有機プローブのシミュレーションの最後の25nsに沿った位置は、AmberTools16のcpptrajモジュールを使用してプローブ占有マップに統合され、最終的に各有機プローブによって最も頻繁にサンプリングされる領域に対応する輪郭面として視覚化される。
【0235】
推定RAS阻害剤の仮想スクリーニング
【0236】
RAS界面の広域計算調査を使用することで、本発明者らは、-8.0kcal/モル(μM-nM予想実験阻害効力範囲スケール)を超える理論的効力で標的結合部位に結合することができるペプチド模倣薬のセットであって、良好なインシリコ透過性プロファイルを示し、その平均極性接近可能表面積(PASA)が150Å2より小さいペプチド模倣薬のセットを生成することができた。これらのパラメータは、設計されたペプチド模倣薬の潜在的な活性および透過性を表している。
【0237】
ドッキング偽陰性を同定する可能性を排除するために、本発明者らは、短い陰的ペプチド結合部位MDシミュレーションを実施して、安定な結合モードを示したペプチド模倣薬を同定した(3Åより小さいRMSDシミュレーション)。この方法は、インシリコ特性およびペプチド構造における結合標的領域を維持しながら、熱力学的観点に基づいてKRAS-GTPアーゼに結合することができる化合物の選択の質を高める。
【0238】
それに続く2つの別個のインシリコ分子ドッキング実験を、ヒット化合物を同定し、最終的に最適化する目的で、推定RASタンパク質阻害剤の2つのデータセットのスクリーニングに適用した。
【0239】
第1の分子ドッキング実験(ヒット同定ステップ)では、天然および非天然アミノ酸を使用して、トリペプチド模倣薬およびテトラペプチド模倣薬のデータセットを構築した。化合物のN末端部分およびC末端部分は、異なるサイズおよび極性プロファイルを有する異なる封鎖部分(例えば、N末端部に対しては、ジフェニル乳酸、2-(4-tert-ブチルフェノキシ)酢酸、フェニル酢酸、9-アントラセン酸または安息香酸;C末端部分に対しては、カルボキサミド、ピロリジン、ピリジンまたは3-アゾピロ[5.5]ウンデカン)によってエンリッチメントした。基質結合部位分析の結果に基づいて、一価の正電荷をもつ化合物のみを選択し、これにより8万個の化合物のライブラリを作成した。
【0240】
分子ドッキング
同じプロトコルを使用して、ヒット同定および最適化ステップの両方で分子ドッキング実験を行った。すべての推定RASタンパク質阻害剤三次元構造を、一次配列から出発して最初から作成し、AmberTool16のLeapモジュールおよびAMBERのff12力場を使用してパラメータ化し、最終的にはNAMDシミュレーションパッケージで最小化した。非天然ペプチドの構成ブロック(存在する場合)および封鎖残基のパラメータライブラリを、AmberTool16モジュールAntechamberおよびLeapを用いて記述した。
【0241】
RAS GTPアーゼタンパク質構造(PDBコード5P21)の1.35Å分解能の結晶構造を受容体として使用して、すべての推定RAS阻害剤をドッキングした。第1の準備ステップでは、共結晶化GppNHpおよび水分子を除去した。これにより、水素原子を添加し、システム全体をデフォルトパラメータでH++ウェブサーバー(http://biophysics.cs.vt.edu/H++)を使用して適切にプロトン化した。
【0242】
すべてのドッキング計算は、AutoDock Vinaドッキングプログラム61のエネルギー最小化最適化フォークであるSMINAを用いて行った。AutoDock Toolsによって提供されるprepare_ligand4.pyおよびprepare_receptor4.pyスクリプトを使用して、すべてのリガンドおよび受容体構造をSMINAに適した入力ファイルに変換した。グリッド空間が0.375Åの60×60×60サイズのほぼ立方体のグリッドボックスをRASエフェクター結合領域において調整し、Asp33残基およびAsp38残基の周りにセンタリングした。網羅性、モード数およびエネルギー範囲を32、100および50にそれぞれ設定した。
【0243】
すべてのドッキングシミュレーションが終了したら、すべての構成ブロックのφ/ψ二面角ラマチャンドラン分布、対応するペプチド結合の幾何学的形状、および分子間接触を、上位を占める20個のドッキングポーズについて計算した。したがって、φ/ψ二面角ラマチャンドラン分布と適合しないドッキング立体配座であって、シスペプチド結合もしくは平面を有さないもの、または分子内接触を有するものは除外した。したがって、各化合物(もしあれば)の上位を占めるドッキングポーズを一緒にマージし、SMINAドッキングエネルギーに従ってソートし、ドッキングエネルギーが-8kcal/モルより低いすべての化合物は除外した。次いで、結合安定性ならびに予測細胞膜透過性フィルタ(詳細は以下を参照)を順次適用し、その後、最も有望な化合物を選択し、目視検査を行った。
【0244】
ペプチド候補の最終的な選択のために、追加の因子(例えば、化学的特性および予測される基質結合部位の位置とのペプチド結合モードコンセンサス、水素結合供与体への正に帯電した残基の密接な配向の欠如、水素結合受容体への負に帯電した残基の密接な配向ならびに高度に疎水性の裂け目への極性残基の挿入)を考慮した。
【0245】
RAS結合安定性評価
NAMDシミュレーションパッケージを使用して、RASタンパク質との複合体中の各化合物のドッキングモデルに、共役勾配最小化、平衡化および3ns長の陰溶媒MDシミュレーションを行った。これにより、最初の準備ステップ、システムの全体的なプロトン化およびパラメータ化は、AmberTool16のLeapモジュールおよびAMBERのff12力場を使用して実行された。次いで、5kcal/(モルÅ2)の力定数で系のすべて(受容体とリガンドの両方)の主鎖原子に調和拘束を適用して、1000サイクル長の最小化で系を緩和した。次いで、系を300Kに徐々に加熱し、タンパク質およびリガンドの主鎖原子にそれぞれ5および2kcal/(モルÅ2)の力定数で調和拘束を適用することによって、200ps長の平衡ステップを実行した。最後に、2kcal/(モルÅ2)の力定数で受容体タンパク質の主鎖原子のみに調和拘束を適用して、3ns長のMDシミュレーションを行った。すべてのシミュレーションにおいて、SHAKE58を適用して水素原子とのすべての結合を拘束し、一方で2fsのシミュレーション時間ステップおよび長距離相互作用の12Åカットオフ距離を設定した。
【0246】
最後に、結合安定性評価を行い、MolSoft ICM Browser(www.molsoft.com)63を使用して、軌跡の最後の1.5nsに沿った各化合物の平均二乗平均平方根偏差(LigRMSDavg)を計算した。3Åより低いLigRMSDavg値を有する化合物を安定な結合剤として予測し、これにより細胞膜透過性評価用に選択した。
【0247】
インシリコ透過性予測
最初の準備ステップでは、各化合物の三次元構造を最初から作成し、AmberTool16のLeapモジュールおよびAMBERのff12力場を使用してパラメータ化した。
【0248】
各化合物について、AMBERのff12力場およびNAMDシミュレーションパッケージを使用して、25個の2ns長のクロロホルム陰溶媒和無拘束分子動力学(MD)シミュレーションのセットを実行した。先に生成された各3D構造を最初に使用して、合計25個の配座異性体を含む小さな立体配座アンサンブルを得た。したがって、各化合物を短い1000ステップの無拘束エネルギー最小化によって緩和し、次いで、システム温度を300Kに設定して、100psにわたって行われた短いMDシミュレーションを行った。最後に、4psごとに1つの軌跡スナップショットを抽出することによって25個の配座異性体を得て、最終的なクロロホルム溶媒和MDシミュレーションの入力として使用した。
【0249】
したがって、各シミュレーションにおいて、系は、最初に5000の共役勾配ステップによってエネルギーを最小化した。次いで、0から300Kまで100psで徐々に加熱しながら、4つのステップに分割された平衡化プロセスを系に行い、加熱中の初期分子幾何学的形状を維持するために、0.5kcal/(モルÅ2)の力定数で調和拘束をすべての重原子に適用した。平衡化中、積分時間ステップを2fsに設定し、非結合カットオフ距離を12Åに設定した。最後に、2nsの間実行され、系の温度を300Kに設定して、無拘束MDシミュレーションからなる生成ステップを実行した。各化合物について、25個の2ns長のMD軌跡をすべて組み合わせ、AmberTools16のcpptrajモジュールを使用して合計12,500個のMDフレームを抽出した。
【0250】
最後に、各化合物について、全体的なシミュレーション中の溶媒への極性原子の平均曝露を、MolSoft ICM Browserを使用してMDフレーム全体の平均極性接近可能溶媒面積値(polASAavg)に関して抽出した。150Å2未満のpolASAavg値を有するペプチドは、受動拡散によって透過性であると予測され、したがって目視検査用に選択された。
【0251】
細胞株および培養
RAS野生型を発現するhTERT-RPE(不死化網膜色素上皮ヒト細胞)は、American Tissue and Cell Collection(ATCC)から入手した。
【0252】
両方とも10%ウシ胎児血清(Biological Industries社製)、ペニシリン、ストレプトマイシン、および非必須アミノ酸を添加した、DMEM-HAMのF12(1:1)培地中のhTERT-RPE。
【0253】
薬物治療およびEGF依存性シグナル伝達活性化
細胞を、10%のFBSを含有する培地に24時間播種し、それから24時間血清飢餓(0.5%)にした。その後、それらを様々な濃度の化合物と2時間インキュベートした。細胞シグナル伝達を活性化するために、EGF(50ng/mL)(シグマ・アルドリッチ社製)を用いて10分間の連続処理を行った。
【0254】
SDS-PAGE、ウエスタンブロットおよび抗体
タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、PVDFメンブレン(イモビロン-P、ミリポア社製)上に転写した。メンブレンを室温で1時間、20mMのTris-HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、0.05%のTween20および5%のウシ血清アルブミンで構成される緩衝液とインキュベートすることによって、抗体の非特異的結合を評価した。タンパク質発現は、指定された抗体:抗c-RAF(BD形質導入610151、1:500);抗ホスホ-c-RAF S338(Cell Signaling社製#9427、1:500);抗PI3Kp110α(Cell Signaling社製#4249、1:1000);抗AKT(Cell Signaling社製#9272、1:1000);抗ホスホ-AKT S473(Cell Signaling社製#4060、1:1000);抗ホスホ-AKT Thr308(Cell Signaling社製#4056、1:1000);抗p44/42 MAPK(ERK1/2)(Cell Signaling社製#9102、1:2000);抗ホスホ-p44/42 MAPK(ERK1/2)T202/Y204(Cell Signaling社製#4370、1:2000);抗GAP120(Santa Cruz社製 SC-63、1:200);抗HA(シグマ・アルドリッチ社製H6908、1:1000);または抗α-チューブリン(シグマ・アルドリッチ社製T9026、1:2000)を用い、4℃で一晩ブロットをプローブすることによって測定した。次に、メンブレンを洗浄した後、それらを対応するHRP結合二次抗体(ヤギ由来抗ウサギ抗体 バイオ・ラッド社製#170-6515またはヤギ由来抗マウス抗体 バイオ・ラッド社製#170-6516、1:3000)と室温で60分間インキュベートし、再び洗浄した。タンパク質検出を、増強された化学発光(EZ-ECL、Biological Industries社製)によって行った。放出光をキャプションし、定量化した(ChemiDoc、バイオ・ラッド社製)。
【0255】
RASシグナル伝達の分析のために、67mMのTris-HCl(pH6.8)および2%のSDSを含有する緩衝液中で細胞を溶解し、次いで、試料を97℃で15分間加熱した。この後、溶解物のタンパク質濃度を、ローリー法を用いて定量した。1試料あたり15μgのタンパク質の一定分量をゲルに入れた。
【0256】
ペプチド模倣薬の分析
【0257】
最終的な目視検査の後、表2に示すように9つのペプチド模倣薬配列を合成のために選択した。9つの配列は、トリペプチド模倣薬およびテトラペプチド模倣薬を含む。これらの配列はすべて、C末端が第二級アミンで封鎖され、N末端が疎水性基で封鎖されている。透過性閾値を170Åに設定し、この閾値未満であったすべてのペプチド模倣薬は透過性であると予測した。
【表2】
【0258】
表2の化学構造の実験的評価
hTERT-RPE細胞におけるRAS-GTPシグナル伝達タンパク質を阻害するペプチド模倣薬の能力を試験することによって、表2のトリペプチド模倣薬およびテトラペプチド模倣薬を評価した。この作業を行うために、本発明者らは細胞を培養プレートに48時間播種した。細胞を24時間血清飢餓(0.5%のFCS)した。その期間後、本発明者らは、EGFを50ng/mLの濃度で10分間細胞に添加した。EGFを培養物に添加して、RASシグナル伝達経路を活性化した。ペプチド模倣薬の活性を評価するために、EGFの添加の2時間前に、本発明者らは、各ペプチド模倣薬が培養プレートにおいて試験されるように、培養プレートにトリペプチド模倣薬またはテトラペプチド模倣薬を(50μM)の濃度で添加した。本発明者らは、2つのRasシグナル伝達経路(Raf/ERKおよびPI3K/AKT)の活性化レベルを検出するためにウエスタンブロット(WB)を行った。GAP120検出を対照として使用した。
【0259】
図5は、RASエフェクターを阻害するための表2の9つのペプチド模倣薬の有効性を評価したウエスタンブロットを示す。GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP120)を対照として使用した。
【0260】
ペプチド模倣薬をポジティブヒットと考えると、2つのタンパク質カスケードの活性を阻害するはずであり、結果として、RAF(P-RAF)、AKT(P-AKT)およびERK(P-ERK)のリン酸化は観察されないはずである。
【0261】
分析を行う際に、本発明者らは、細胞培地に希釈したときに化合物IP-14-05およびIP-14-06が可溶ではないことを見出した。本発明者らはまた、ペプチドIP-14-04が凝集体を形成し、細胞上に沈殿して細胞死を引き起こすことを見出した。結果として、本発明者らは、IP-14-05およびIP-14-06をWBから除外した(
図5)。
【0262】
結果として、最終的に、本発明者らは、RPE細胞において元の9つのペプチド模倣薬のうちの6つのみを評価した。本発明者らが評価した6つのペプチド模倣薬から、本発明者らは、それらのうちの3つ、特にIP-14-01、IP-14-03およびIP-14-08が2つのRASエフェクタータンパク質カスケードを阻害できると判断した。3つのうち、本発明者らは、WBによって分析したところ、IP-14-01が最も強力な阻害剤であることを見出した(
図5)。
【0263】
本発明者らの分析の一部として、IP-14-01、IP-14-03およびIP-14-08ならびにそれらの生物物理学的特性を、5%DMSO水溶液を用いてそれらを研究することによって評価した。本発明者らは、生物学的障壁を介した透過性(PAMPAアッセイ)およびSH-SY5Y細胞におけるそれらの内在化を行った。
【表3】
【0264】
表3に、ペプチド模倣薬の透過性を評価するための細胞内在化率と共に、IP-14-01、IP-14-03およびIP-14-08のPAMPAアッセイ(Pe、輸送率%および保持率%)の結果を示す。使用される方法は周知であり、当業者には公知であろう。対照として、本発明者らは、DMSOを5%含有する水への溶解度を評価して、低い溶解度に関連する可能性のある問題を特定した。データを平均±SDとして表す。
【0265】
5%DMSO水溶液中で溶解度を測定したところ、3つの化合物(IP-14-01、IP-14-03およびIP-14-08)は良好な溶解度を示し、3つの治療用化合物のいずれも溶液から沈殿するリスクなしに、100μMを超える濃度で実験を行うことができるという保証を提供した。PAMPAアッセイの結果は、3つのペプチド模倣薬のそれぞれのPeについて、高い保持率、無視できる輸送率およびゼロ透過性を示した。本発明者らは、IP-14-01をSH-SY5Y細胞と2時間60μMでインキュベートしたところ、ペプチド模倣薬の13.5%が細胞に取り込まれることを見出した。本発明者らは、IP-14-03およびIP-14-08を同じ細胞とインキュベートした場合、同様の結果を見出さなかった。
【0266】
xxxxxさらに、インビトロアッセイ条件で可溶性でなかったか、またはRPE細胞とインキュベートした場合に上記のように凝集体を形成した第1世代からのペプチド模倣薬を再評価するために、さらなる取り組みを行った。これらのペプチド模倣薬について、β-シクロデキストリンを15%含むPBS中でそれらの溶解度を試験した(表5)。
【表4】
【0267】
表4は、これらのペプチド模倣薬のすべてが、β-シクロデキストリンを15%含むPBS(リン酸塩-生理食塩水緩衝液)において1mMに希釈され、可溶性であったことを示す。次いで、本発明者らは、これらのペプチド模倣薬を24時間にわたって一定に撹拌した。その時間の最後に、本発明者らは、各溶液を遠心分離し、次いで、各溶液からの上清をHPLCに通して、この結果をACN/H2O中の各化合物の1mM溶液と比較した。この対照は、β-シクロデキストリンが15%のPBS中の実際の溶解度を測定するために使用した。データを平均±SDとして表す。
【0268】
図6は、本発明者らが行ったRASのウエスタンブロットを示す。この際に本発明者らは、DMSOの代わりに0.5%の濃度のβ-シクロデキストリンを使用したことを除いて、上記と同じ条件下で化合物IP-14-01(P1)、IP-14-02(P2)IP-14-03(P3)、IP-14-04(P4)、IP-14-07(P7)、IP-14-08(P8)およびIP-14-09(P9)の評価を行った。本発明者らは、DMSOを使用して、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP120)を可溶化し、細胞培地に0.5%の濃度に希釈した。
【0269】
RAS-エフェクターシグナル伝達カスケードに対するIP-14-01の阻害効果およびその高い細胞内在化値により、最適化および2回目の計算法に治療用化合物IP-14-01を選択した。
【0270】
実施例3
IP-14-01の化学構造誘導体の評価
IP-14-01に由来する第2世代のペプチド模倣薬を、以前に適用したのと同じインシリコプロトコルに従って設計した。これに関して、本発明者らは、計算研究が完了すると溶出する4つの新しいペプチド模倣薬を調製した。
【0271】
第2の分子ドッキング実験(ヒット最適化ステップ)では、元の化合物の膜透過性および/または受容体結合親和性のいずれかを増加させるために、慎重に選択された特定のアドホックな代替部分と元の構成ブロックとを組み合わせることで、P1一次配列から開始して新しいペプチド模倣薬のデータセットを生成した。
【0272】
本発明者らは、ペプチド模倣薬の主鎖上のアミノ酸の数を増加させるためにIPR-471を設計した。これに基づいて、プロリン+カルボキサミドを封鎖するために使用された第二級アミンを除去することによって、C末端を伸長させた。
【0273】
IPR-472は、IP-14-01とほぼ同じ構造を有していたが、β-アラニンのN-メチルアルキル化は、芳香族基に結合したより長い炭素鎖、プロピルベンゼンで置換されていた。本発明者らは、n-アルキル遮蔽能の増加と共に化合物全体の疎水性を増加させるためにこの変更を行った。本発明者らは、メチルの代わりに炭素数4の鎖が、ある程度の柔軟性をもたらし、炭素数6の芳香環が分子の周りに巻き付くことを可能にすると考えた。これは、水性環境におけるIPR-472の極性を低下させるであろう。これにより、タンパク質表面との接触数が増加すると予想された。
【0274】
アラニンをイソロイシンに置換し、配列骨格の1つのアミド結合にN-メチル化を付加した変更のみであったので、IP-473はIP-14-01由来ペプチド模倣薬の最も保存的なものとして設計された。この新しい分子は、親化合物の結合様式を完全に保存するが、その効力をわずかに最適化するためにさらに数回接触を追加すると予想された。
【0275】
IP-474は、IP-14-01と比較して2つの置換を有していた。これらは、シクロヘキシルグリシンで置換されたアラニン、および極性基を有するアミノ酸を、極性基を有する別のアミノ酸に置換することであった。この場合、新しいアミノ酸はトレオニンであった。
【0276】
最後に、本発明者らは、これらのペプチド模倣薬を3つの同じアミノ酸を同じ順序に保つことによって終わる同じ配列ならびにジフェニルN末端を保存するように設計した(表6)。これらの新規ペプチド模倣薬を表5に特定する。
【表5】
【0277】
表4は、以前に第1回目のペプチド模倣薬のスクリーニングに使用したのと同じドッキング方法を適用して、第2世代の新しい4つのペプチド模倣薬が生成されたことを示す。
【0278】
図7は、本発明者らによるIP-14-01(P1)およびその誘導ペプチド模倣薬、IPR-471(P1.1)、IPR-472(P1.2)、IPR-473(P1.3)およびIPR-474(P1.4)の評価からのRASシグナル伝達のウエスタンブロットである。この実験のために、本発明者らは、本明細書に開示され、以前に記載されたWBアッセイと同じプロトコルおよび条件を使用した(
図5)。より具体的には、本発明者らは、0.5%DMSOに溶解した50μMの濃度の血清飢餓hTERT-RPE細胞を含む培養物中で各ペプチド模倣薬化合物を2時間インキュベートし、次いでEGF(50ng/ml)で10分間処理した。これらの治療用化合物のいずれも溶解性の問題を示さなかった。
【0279】
図7に示されるように、本発明者らは、IPR-471(P1.1)およびIPR-474(P1.4)が、それらが由来するIP-14-01(P1)よりも良くないことを見出した。対照的に、IP-14-02(P1.2)は、RAFおよびAKTを阻害できるがERKを阻害できないことを見出した。さらに、本発明者らは、IP-473(P1.3)が2つの異なるタンパク質カスケード(RAF/ERKおよびPI3K/AKT)すべてをIP-14-01よりも効果的に阻害することができると判断した。
【0280】
図7で評価したペプチド模倣薬化合物のうち、本発明者らは、最も高いRASエフェクターの阻害度を示したのはIPR-473であると判断した。
【0281】
次に、IP-14-01を様々な濃度で異なるがん細胞株および正常細胞株(hTERT-RPE細胞)とインキュベートした。細胞生存率をMTS細胞増殖アッセイによって測定した。親ペプチド模倣薬IP-14-01について同じ実験を行った。任意のインキュベート濃度でがん細胞に対して正常細胞を死滅させるIP-14-01の能力に差はなかった、すなわち親ペプチド模倣薬は細胞株特異性を示さなかった(データは示さず)。
【0282】
次に、本発明者らは、IPR-473を様々な濃度で異なるがん細胞株および正常細胞株(-hTERT-RPE細胞)とインキュベートした。細胞生存率をMTS細胞増殖アッセイによって測定した。
図8は、7つの異なる細胞株の細胞生存率を測定するために使用したMTS生存率アッセイの結果を示す。細胞を、10%FBS(Bilogical Industries社製)含有培地を含有する96ウェルプレート培養物に入れた(1ウェルあたり1万細胞)。次いで、これらの細胞を24時間培養し、次いで、10μM、15μM、20μMおよび25μMの濃度のIPR-473で処理し、さらに24時間インキュベートした。
【0283】
使用した異なる細胞株には、ヒト膵臓がん細胞MPANC-96、ヒト膵臓腺がん細胞HPAF-II、ヒト膵臓グレードII腺がんPA-TU、ヒト膵管腺がんSW1990、ヒト膵臓腺がん8988-Tおよびヒト膵管がんPANC-1が含まれていた。これらの各々は、膵臓腫瘍細胞株を含む。上述の対照はhTERT-RPE細胞であり、がん原性ではない。
【0284】
図8に示されるような細胞生存率アッセイにおいて得られた結果により、IPR-473の潜在的治療活性が確認された。この治療用化合物は、がん性細胞に対して15μMを超える濃度で細胞傷害性である。同時に、hTERT-RPE対照細胞には影響を及ぼさなかった。そのため、本発明者らは、細胞増殖アッセイにおいて、IPR-473が膵臓がん細胞株に対して高い特異性を示すことを見出した。
【0285】
本発明者らに知る本発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の特定の実施形態を本明細書に記載している。当然ながら、前述の説明を読めば、これらの記載された実施形態の変形形態が当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形形態を適切に使用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に列挙された主題のすべての修正および均等物を含む。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、上記の実施形態のすべての可能な変形形態のあらゆる組合せが本発明に包含される。
【0286】
本発明の代替の実施形態、要素、またはステップのグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、または本明細書に開示される他のグループメンバーと任意に組み合わせて参照および特許請求することができる。グループの1つ以上のメンバーは、利便性および/または特許性の理由から、グループに含まれ得るか、またはグループから削除され得ることが予想される。そのような包含または削除が生じる場合、本明細書は、修正されたグループを含み、したがって添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュ群の記載を満たすと見なされる。
【0287】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴、項目、量、パラメータ、特性、用語などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、そのように条件付けられた特徴、項目、量、パラメータ、特性、または用語が、記載された特徴、項目、量、パラメータ、特性、または用語の値の上下プラスマイナス10%の範囲を包含することを意味する。したがって、特段の記載がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、変化し得る近似値である。最低限でも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値表示は、少なくとも報告された有効数字の数に照らして、そして通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲および値は近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において示される数値範囲および値は可能な限り正確に報告してある。しかしながら、任意の数値範囲または値は、それぞれの試験の測定値に見られる標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本質的に含む。本明細書における値の数値範囲の列挙は、単に、その範囲内に入るそれぞれの別個の数値を個別に参照する簡略化した方法として役立つことを意図しているにすぎない。本明細書に別段の指示がない限り、数値範囲の個々の値は、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0288】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)で使用される「一つの(a)」、「一つの(an)」、「前記(the)」という用語および同様の指示対象は、本明細書で特に示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提示されるありとあらゆる例または例示的な文言(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく解明することを意図しているにすぎず、特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0289】
本明細書に開示される特定の実施形態は、文言からなる、または本質的に文言からなることを使用して、特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲で使用される場合、出願時または補正によって追加されたかどうかにかかわらず、「からなる(consisting of)」という移行用語は、特許請求の範囲で指定されていない要素、ステップ、または成分を除外する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行用語は、請求項の範囲を特定の材料またはステップ、ならびに基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。そのように特許請求される本発明の実施形態は、本明細書に本質的にまたは明示的に記載され、有効化される。
【0290】
本発明の代替の実施形態、要素、またはステップのグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、または本明細書に開示される他のグループメンバーと任意に組み合わせて参照および特許請求することができる。グループの1つ以上のメンバーは、利便性および/または特許性の理由から、グループに含まれ得るか、またはグループから削除され得ることが予想される。そのような包含または削除が生じる場合、本明細書は、修正されたグループを含み、したがって添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュ群の記載を満たすと見なされる。
【0291】
本明細書において参照および特定されるすべての特許、特許刊行物、および他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るそのような刊行物に記載されている組成物および方法論を説明および開示する目的で、その全体が参照により個別に明示的に本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためにのみ提供される。この点に関するいかなるものも、本発明者らが先行発明によって、または他の理由でそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。これらの文書の日付に関するすべての記述または内容に関する表現は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
【0292】
最後に、本明細書の態様は特定の実施形態を参照することによって強調されているが、当業者は、これらの開示された実施形態が本明細書に開示された主題の原理の例示にすぎないことを容易に理解するであろうことを理解されたい。したがって、開示された主題は、本明細書に記載された、特定の方法、プロトコル、および/または試薬などに限定されることは決してないことを理解されたい。したがって、本明細書の趣旨から逸脱することなく、本明細書の教示に従って、開示された主題の様々な修正もしくは変更または代替構成を行うことができる。最後に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、正確に図示および説明されたものに限定されない。
【国際調査報告】