(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】新規の薬物および薬物標的の同定のためのハイスループットスクリーニングシステム
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240718BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240718BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240718BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240718BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20240718BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240718BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/09
C07K16/28
C40B40/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501129
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 US2022073510
(87)【国際公開番号】W WO2023283599
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524009602
【氏名又は名称】メディック ライフ サイエンシズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ハン,キューホ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ホン-ピョ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、新規の薬物および薬物標的の同定のためのハイスループットスクリーニングシステムおよび方法を提供する。方法は、免疫架橋タンパク質、ガイドRNAのライブラリー、および/または3D腫瘍モデルを使用することにより標的細胞と免疫細胞との同種ペアの間の相互作用の大スケール分析を可能にする。免疫架橋タンパク質は、(a)免疫細胞マーカーに対する、好ましくはCD3またはNKp46のための、scFv、(b)好ましくはB7からの、膜貫通ドメイン、(c)好ましくはB7からの、細胞質ドメイン、および(d)レポータードメイン、好ましくは蛍光タンパク質を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端へ、
a.免疫細胞マーカーに対するscFv、
b.膜貫通ドメイン、
c.細胞質ドメイン、および
d.任意選択的に蛍光タンパク質である、レポータードメイン
を含む、免疫架橋タンパク質。
【請求項2】
前記免疫細胞マーカーがT細胞またはNK細胞の細胞表面タンパク質である、請求項1に記載の免疫架橋タンパク質。
【請求項3】
前記免疫細胞マーカーがCD3である、請求項1に記載の免疫架橋タンパク質。
【請求項4】
前記免疫細胞マーカーがNKp46である、請求項1に記載の免疫架橋タンパク質。
【請求項5】
前記膜貫通ドメインがB7の膜貫通ドメインである、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質。
【請求項6】
前記細胞質ドメインがB7の細胞質ドメインである、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質。
【請求項7】
前記免疫架橋タンパク質の細胞内または細胞外部分中に免疫染色用のエピトープをさらに含み、任意選択的に、前記エピトープがHAエピトープおよびV5エピトープから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質。
【請求項8】
前記免疫架橋タンパク質のN末端におけるシグナルペプチド、任意選択的にH7シグナルペプチドをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質。
【請求項9】
前記免疫架橋タンパク質の細胞外部分中にヒトIgG1のヒンジ-CH
2-CH
3領域をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質をコードする免疫架橋ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫架橋ベクター。
【請求項12】
ウイルスベクターまたはプラスミドである、請求項11に記載の免疫架橋ベクター。
【請求項13】
レンチウイルスベクターである、請求項12に記載の免疫架橋ベクター。
【請求項14】
複数の標的化ライブラリー構築物を含む標的化ライブラリーであって、前記標的化ライブラリー構築物の各々が、複数のゲノム標的部位の1つを標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む、前記標的化ライブラリー。
【請求項15】
各々の標的化ライブラリー構築物がバーコード配列をさらに含む、請求項14に記載の標的化ライブラリー。
【請求項16】
前記複数の標的化ライブラリー構築物が、ヒトゲノム中の10,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む、請求項14または15に記載の標的化ライブラリー。
【請求項17】
前記複数の標的化ライブラリー構築物が、ヒトゲノム中の15,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む、請求項16に記載の標的化ライブラリー。
【請求項18】
前記複数の標的化ライブラリー構築物が、ヒトゲノム中の20,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む、請求項17に記載の標的化ライブラリー。
【請求項19】
前記複数の標的化ライブラリー構築物が、ヒトゲノム中の50,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む、請求項18に記載の標的化ライブラリー。
【請求項20】
前記複数の標的化ライブラリー構築物が、ヒトゲノム中の100,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む、請求項19に記載の標的化ライブラリー。
【請求項21】
各々の標的化ライブラリー構築物が、前記sgRNAコーディング配列と前記バーコード配列との独特のペアを含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の標的化ライブラリー。
【請求項22】
各々の標的化ライブラリー構築物がエンドヌクレアーゼのコーディング配列をさらに含む、請求項14~21のいずれか一項に記載の標的化ライブラリー。
【請求項23】
前記エンドヌクレアーゼが、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、MADエンドヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼ(MN)である、請求項22に記載の標的化ライブラリー。
【請求項24】
前記エンドヌクレアーゼがCAS9である、請求項23に記載の標的化ライブラリー。
【請求項25】
各々の標的化ライブラリー構築物がウイルスベクターまたはプラスミドである、請求項14~24のいずれか一項に記載の標的化ライブラリー。
【請求項26】
各々の標的化ライブラリー構築物がレンチウイルスベクターである、請求項25に記載の標的化ライブラリー。
【請求項27】
細胞の集団であって、前記集団中の少なくとも複数の細胞が、請求項14~26のいずれか一項に記載の標的化ライブラリー構築物を含み、細胞の前記集団が複数のタイプの標的化ライブラリー構築物を全体として含む、細胞の前記集団。
【請求項28】
請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質をさらに含む、請求項27に記載の細胞の集団。
【請求項29】
請求項10に記載の免疫架橋ポリヌクレオチドまたは請求項11~13のいずれか一項に記載の免疫架橋ベクターを含む、請求項27~28のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項30】
前記細胞ががん細胞である、請求項27~29のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項31】
前記細胞が1または2以上のがん細胞株である、請求項30に記載の細胞の集団。
【請求項32】
複数の細胞株を含み、各々の細胞株が、前記標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチド上に独特の細胞株特異的バーコードを含む、請求項31に記載の細胞の集団。
【請求項33】
前記細胞が初代がん細胞である、請求項30に記載の細胞の集団。
【請求項34】
前記細胞が1または2以上のがん患者からの初代がん細胞である、請求項33に記載の細胞の集団。
【請求項35】
複数のがん患者からの初代がん細胞を含み、単一のがん患者からの細胞が、前記標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチド上に独特の患者特異的バーコードを含む、請求項34に記載の細胞の集団。
【請求項36】
前記細胞が固形腫瘍細胞である、請求項30に記載の細胞の集団。
【請求項37】
前記細胞が、請求項10に記載の免疫架橋ポリヌクレオチド、請求項11~13のいずれか一項に記載の免疫架橋ベクター、または請求項14~26のいずれか一項に記載の標的化ライブラリーを用いてトランスフェクトされている、請求項30~36のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項38】
前記細胞が、請求項10に記載の免疫架橋ポリヌクレオチドまたは請求項11~13のいずれか一項に記載の免疫架橋ベクター、および請求項14~26のいずれか一項に記載の標的化ライブラリーを用いてトランスフェクトされている、請求項37に記載の細胞の集団。
【請求項39】
前記標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチドにコードされるマーカータンパク質をさらに含む、請求項27~38のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項40】
前記マーカータンパク質がルシフェラーゼである、請求項39に記載の細胞の集団。
【請求項41】
外因性エンドヌクレアーゼをさらに含む、請求項27~40のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項42】
前記エンドヌクレアーゼが、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、MADエンドヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼ(MN)である、請求項41に記載の細胞の集団。
【請求項43】
前記エンドヌクレアーゼがCAS9である、請求項42に記載の細胞の集団。
【請求項44】
細胞の集団であって、前記集団中の少なくとも複数の細胞が、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫架橋タンパク質を含む、細胞の前記集団。
【請求項45】
請求項27~44のいずれか一項に記載の細胞の集団を被包するマイクロカプセルのプール。
【請求項46】
前記マイクロカプセルの各々が、同じバーコード配列を含む細胞の前記集団のサブセットを被包する、請求項45に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項47】
前記同じバーコード配列が細胞株特異的バーコードまたは患者特異的バーコードの配列である、請求項46に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項48】
前記マイクロカプセルの各々が、同じ対象から得られた細胞の前記集団のサブセットを被包する、請求項45~47のいずれか一項に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項49】
前記マイクロカプセルの各々が、同じがん患者から得られた細胞の前記集団のサブセットを被包する、請求項48に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項50】
前記マイクロカプセルの各々が、単一の細胞株から得られた細胞の前記集団のサブセットを被包する、請求項48に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項51】
前記マイクロカプセルの各々が、2または3以上の異なるバーコード配列を含む細胞の前記集団のサブセットを被包する、請求項45に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項52】
前記2または3以上の異なるバーコード配列が細胞株特異的バーコードまたは患者特異的バーコードの配列である、請求項51に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項53】
前記マイクロカプセルの各々が、2または3以上の対象から得られた細胞の前記集団のサブセットを被包する、請求項45に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項54】
前記マイクロカプセルの各々が、2または3以上のがん患者から得られた細胞の前記集団のサブセットを被包する、請求項45に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項55】
前記マイクロカプセルの各々が、2または3以上の細胞株から得られた細胞の前記集団のサブセットを被包する、請求項45に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項56】
免疫細胞をさらに被包する、請求項45~55のいずれか一項に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項57】
前記免疫細胞がT細胞を含む、請求項56に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項58】
前記免疫細胞がNK細胞を含む、請求項56に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項59】
前記免疫細胞が樹状細胞を含む、請求項56に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項60】
前記免疫細胞がマクロファージを含む、請求項56に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項61】
前記免疫細胞が末梢血単核細胞(PBMC)を含む、請求項56に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項62】
培養培地中でインキュベートされる、請求項45~61のいずれか一項に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項63】
細胞の前記集団が3D腫瘍オルガノイドを形成する、請求項45~62のいずれか一項に記載のマイクロカプセルのプール。
【請求項64】
ハイスループットスクリーニング方法であって、
a.請求項27~43のいずれか一項に記載の細胞の集団を培養するか、または請求項45~63のいずれか一項に記載のマイクロカプセルのプールをインキュベートする工程;および
b.前記培養から得られた細胞を分析する工程
を含む、前記方法。
【請求項65】
分析する前記工程が、前記培養から得られた細胞の標的化ライブラリー構築物をシークエンシングする工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
分析する前記工程が、前記標的化ライブラリー構築物中のバーコード配列をシークエンシングする工程を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
分析する前記工程が、前記標的化ライブラリー構築物中のsgRNAの前記コーディング配列をシークエンシングする工程を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記培養の条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定する工程をさらに含む、請求項64~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
細胞の前記集団が免疫細胞の存在下で培養される、請求項64~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
免疫細胞の非存在下で細胞の異なる集団を培養する工程をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記培養の条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定することにより免疫腫瘍学標的を同定する工程をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
免疫細胞の存在下での前記培養から得られた細胞および免疫細胞の非存在下での前記培養からの細胞を比較する工程をさらに含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定することにより免疫腫瘍学標的を同定する工程をさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記免疫細胞がT細胞を含む、請求項64~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記免疫細胞がNK細胞を含む、請求項64~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記免疫細胞が樹状細胞を含む、請求項64~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記免疫細胞がマクロファージを含む、請求項64~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記免疫細胞が末梢血単核細胞(PBMC)を含む、請求項64~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
細胞の前記集団が1または2以上の薬物の存在下で培養される、請求項64~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
細胞の前記集団がさらに免疫細胞の存在下で培養される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記1または2以上の薬物の非存在下で細胞の異なる集団を培養する工程をさらに含む、請求項79または80に記載の方法。
【請求項82】
1または2以上の薬物の存在下での前記培養から得られた細胞および1または2以上の薬物の非存在下での前記培養から得られた細胞を比較する工程をさらに含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられる薬物を同定することにより有効な薬物を同定する工程をさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定することにより薬物標的を同定する工程をさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
免疫細胞の非存在下で細胞の異なる集団を培養する工程をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項86】
免疫細胞の存在下での前記培養から得られた細胞および免疫細胞の非存在下での前記培養から得られた細胞を比較する工程をさらに含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられる薬物を同定することにより有効な薬物を同定する工程をさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定することにより薬物標的を同定する工程をさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
培養する前記工程が培養皿またはマルチウェルプレート中で行われる、請求項64~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
培養する前記工程が複数のマイクロカプセル中で行われる、請求項64~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
培養する前記工程が3D腫瘍オルガノイド中で行われる、請求項64~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
a.請求項10に記載の免疫架橋ポリヌクレオチド、または請求項11~13のいずれか一項に記載の免疫架橋ベクター、および
b.請求項14~26のいずれか一項に記載の標的化ライブラリー
を含む、ハイスループットスクリーニング用のキット。
【請求項93】
外因性ヌクレアーゼをコードするヌクレアーゼポリヌクレオチドをさらに含む、請求項92に記載のキット。
【請求項94】
前記外因性ヌクレアーゼが、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、MADエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼ(MN)からなる群から選択される、請求項93に記載のキット。
【請求項95】
前記外因性ヌクレアーゼがCAS9である、請求項93~94のいずれか一項に記載のキット。
【請求項96】
マーカータンパク質をコードするマーカーポリヌクレオチドをさらに含む、請求項92~95のいずれか一項に記載のキット。
【請求項97】
前記マーカータンパク質がルシフェラーゼである、請求項96に記載のキット。
【請求項98】
前記ヌクレアーゼポリヌクレオチドまたは前記マーカーポリヌクレオチドが、ウイルスベクター、任意選択的にレンチウイルスベクターである、請求項92~97のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月8日に出願された米国仮出願第63/219,665号の利益および優先権を主張し、該仮出願は参照により全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
免疫療法は、がんの処置のための強力な治療アプローチである。しかしながら、その応用は限られており、その理由は、チェックポイント遮断免疫療法は多くの患者、特には固形腫瘍を有する患者のために機能しないからである。いくつかの内因性および外因性の要因は抵抗性に寄与することが示唆されており、これは、変更されたシグナル伝達経路、免疫抑制性腫瘍微環境、および腫瘍微環境への有効なT細胞の乏しい浸潤を含む。研究者は、がん患者における薬物応答および臨床アウトカムの機序を研究することにより、ならびに既存の免疫療法に対して応答を有しないかまたは低い応答を有する患者のための新規の治療薬を開発することにより限定を克服することを試みてきた。しかしながら、当分野における研究は困難となっており、その理由は、薬物応答および免疫認識をスクリーニングするために伝統的に使用される細胞ベースアッセイシステムは、様々ながんおよび/または免疫エフェクター細胞タイプに対して普遍的に応用可能でないからである。伝統的なハイスループットスクリーニングシステムは大スケールの研究のために最適でなく、その理由は、それらは、遺伝学的に同一の同系マウスモデルから調製される免疫細胞およびがんモデルを要求するからである。さらには、2次元(2D)細胞培養の使用は、腫瘍微環境の再現に失敗しており、その理由は、2D細胞培養は、細胞環境と細胞外環境との間の相互作用の妨害、ならびに細胞形態、極性、および分裂方法における変化を誘導するからである。
【0003】
よって、新規の薬物標的を同定するためおよびより有効な薬物を開発するためのより良好なハイスループットアッセイシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
3.発明の概要
本開示は、新規の薬物標的の同定およびがんまたは免疫障害の処置用の薬物の開発のための細胞ベースハイスループットスクリーニングシステムを提供する。
【0005】
本明細書において提供されるアッセイシステムは、1)特有の免疫エフェクター細胞、例えばT細胞およびNK細胞を動員しかつ活性化させることができる抗原結合性タンパク質(例えば、一本鎖可変断片(scFv))を含む免疫架橋タンパク質、ならびに/または2)RNAガイド型ヌクレアーゼ(例えば、CRISPR)を使用するハイスループットスクリーニングプラットフォームを活用する。
【0006】
免疫架橋タンパク質は、免疫細胞マーカー、例えばT細胞上のCD3またはNK細胞上のNKp46に結合するscFV分子を含有する人工タンパク質である。そのため、免疫架橋タンパク質は、免疫エフェクター細胞と特異的に相互作用することができる。本出願人は、がん細胞上に発現される免疫架橋タンパク質は、免疫エフェクター細胞を動員しかつ活性化させ、それにより、がん細胞の標的化された殺傷をもたらすことができることを実証した。免疫架橋タンパク質と免疫細胞マーカーとの間の相互作用は、免疫細胞とがん細胞との間の特異的かつ選択的な相互作用の再現をそれらの供給源にかかわらず可能とする。よって、がん細胞上に発現される免疫架橋タンパク質は、がん細胞に対する免疫エフェクター細胞の活性化を誘導するためおよび活性化された免疫エフェクター細胞に対するがん細胞の応答を分析するために使用され得る。システムは、活性化された免疫エフェクター細胞に対するがん細胞の応答のモジュレーションに関与し、それにより免疫腫瘍学機能に関わる薬物および/または遺伝子のハイスループットスクリーニングのために使用され得る。
【0007】
本出願人はさらに、ハイスループットスクリーニングシステムを、マイクロカプセルベース区画化技術を使用する3D腫瘍培養システムと組み合わせた。それは、他の試料とのクロストークなしに単一の組織培養容器中での複数のがん試料の3D成長を可能とした。腫瘍試料のバーコード付加はさらに、複数の試料のアイデンティティーの追跡を可能としながら該試料の多重化および逆多重化を可能とする。以前には、大スケールにおける3D培養は、技術的に困難であり、労力を要し、かつ時間を消費するものであった。そのため、ハイスループットスクリーニングにおける3D培養の使用は、伝統的な2Dがんモデルよりも患者の腫瘍のより良好な再現を提供することが予想されるが、限定されていた。本開示は、該制限を克服し、かつ各々のがん試料がバーコード付加されている多重化された腫瘍試料の同時の培養および分析を可能にするマイクロカプセルベース3D培養システムを採用する。
【0008】
3D培養システムにおいて、がん細胞はマイクロカプセル中に被包され、マイクロカプセル中でがん細胞は球状の腫瘍に増殖することができる。マイクロカプセルの別々の集団中に被包された、いくつかのがん試料は、単一の組織培養容器中でプールおよび培養され得る。培養後に、腫瘍試料はマイクロカプセルから収集可能であり、かつそれらのゲノムDNAは、例えば、DNAバーコード、CRISPRシステムの場合のsg RNA配列などをシークエンシングすることにより、培養物中に残存するがん細胞を特徴付けるために抽出および分析され得る。このシステムは、伝統的なシステムの拡張可能性の制限を根本的に解決し、かつ時間を消費しかつ労力を要するプロセスを大きく単純化することにより3D腫瘍における薬物試験およびCRISPR機能的ゲノミクスを可能にする。
【0009】
よって、本開示は、N末端からC末端へ、a.免疫細胞マーカーに対するscFv、b.膜貫通ドメイン、c.細胞質ドメイン、およびd.任意選択的に蛍光タンパク質である、レポータードメインを含む、免疫架橋タンパク質を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、免疫細胞マーカーはT細胞またはNK細胞の細胞表面タンパク質である。いくつかの実施形態では、免疫細胞マーカーはCD3である。いくつかの実施形態では、免疫細胞マーカーはNKp46である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはB7の膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、細胞質ドメインはB7の細胞質ドメインである。
【0011】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は、免疫架橋タンパク質の細胞内または細胞外部分中に免疫染色用のエピトープをさらに含み、任意選択的に、エピトープはHAエピトープおよびV5エピトープから選択される。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は、免疫架橋タンパク質のN末端におけるシグナルペプチド、任意選択的にH7シグナルペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は、免疫架橋タンパク質の細胞外部分中にヒトIgG1のヒンジ-CH2-CH3領域をさらに含む。
【0012】
本開示はまた、本明細書に記載される免疫架橋タンパク質をコードする免疫架橋ポリヌクレオチドを提供する。それはまた、本明細書に記載される免疫架橋タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫架橋ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターまたはプラスミドである。いくつかの実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0013】
1つの態様では、本開示は、複数の標的化ライブラリー構築物を含む標的化ライブラリーであって、標的化ライブラリー構築物の各々が、複数のゲノム標的部位の1つを標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む、標的化ライブラリーを提供する。いくつかの実施形態では、各々の標的化ライブラリー構築物はバーコード配列をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の標的化ライブラリー構築物は、ヒトゲノム中の10,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む。いくつかの実施形態では、複数の標的化ライブラリー構築物は、ヒトゲノム中の15,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む。いくつかの実施形態では、複数の標的化ライブラリー構築物は、ヒトゲノム中の20,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む。いくつかの実施形態では、複数の標的化ライブラリー構築物は、ヒトゲノム中の50,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む。いくつかの実施形態では、複数の標的化ライブラリー構築物は、ヒトゲノム中の100,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、各々の標的化ライブラリー構築物は、sgRNAコーディング配列とバーコード配列との独特のペアを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、各々の標的化ライブラリー構築物はエンドヌクレアーゼのコーディング配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはメガヌクレアーゼ(MN)である。
【0017】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはCAS9である。いくつかの実施形態では、各々の標的化ライブラリー構築物はウイルスベクターまたはプラスミドである。いくつかの実施形態では、各々の標的化ライブラリー構築物はレンチウイルスベクターである。
【0018】
別の態様では、本開示は、細胞の集団であって、集団中の少なくとも複数の細胞が、本明細書に記載される標的化ライブラリー構築物を含み、細胞の集団が複数のタイプの標的化ライブラリー構築物を全体として含む、細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態では、細胞の集団は本開示の免疫架橋タンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は本開示の免疫架橋ポリヌクレオチドまたは免疫架橋ベクターを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、細胞はがん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は1または2以上のがん細胞株である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は複数の細胞株を含み、各々の細胞株は、標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチド上に独特の細胞株特異的バーコードを含む。いくつかの実施形態では、細胞は初代がん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は1または2以上のがん患者からの初代がん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は複数のがん患者からの初代がん細胞を含み、単一のがん患者からの細胞は、標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチド上に独特の患者特異的バーコードを含む。いくつかの実施形態では、細胞は固形腫瘍細胞である。
【0020】
いくつかの実施形態では、細胞は、本開示の免疫架橋ポリヌクレオチド、免疫架橋ベクター、または標的化ライブラリーを用いてトランスフェクトされている。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書において提供される免疫架橋ポリヌクレオチドまたは免疫架橋ベクター、および標的化ライブラリーを用いてトランスフェクトされている。
【0021】
いくつかの実施形態では、細胞の集団は、標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチドにコードされるマーカータンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、マーカータンパク質はルシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、細胞の集団は外因性エンドヌクレアーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはメガヌクレアーゼ(MN)である。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはCAS9である。いくつかの実施形態では、集団中の少なくとも複数の細胞は、本明細書に記載される免疫架橋タンパク質を含む。
【0022】
本開示の1つの態様は、本開示の細胞の集団を被包するマイクロカプセルのプールを提供する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、同じバーコード配列を含む細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、同じバーコード配列は細胞株特異的バーコードまたは患者特異的バーコードの配列である。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、同じ対象から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、同じがん患者から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、単一の細胞株から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。
【0023】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、2または3以上の異なるバーコード配列を含む細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、2または3以上の異なるバーコード配列は細胞株特異的バーコードまたは患者特異的バーコードの配列である。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、2または3以上の対象から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、2または3以上のがん患者から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、2または3以上の細胞株から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。
【0024】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルのプールは免疫細胞をさらに被包する。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞はNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は樹状細胞を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞はマクロファージを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は末梢血単核細胞(PBMC)を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルのプールは培養培地中でインキュベートされる。いくつかの実施形態では、細胞の集団は3D腫瘍オルガノイドを形成する。
【0026】
別の態様では、本開示は、ハイスループットスクリーニング方法であって、a.本開示の細胞の集団を培養するか、または本開示のマイクロカプセルのプールをインキュベートする工程;およびb.培養から得られた細胞を分析する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、分析する工程は、培養から得られた細胞の標的化ライブラリー構築物をシークエンシングする工程を含む。いくつかの実施形態では、分析する工程は、標的化ライブラリー構築物中のバーコード配列をシークエンシングする工程を含む。いくつかの実施形態では、分析する工程は、標的化ライブラリー構築物中のsgRNAのコーディング配列をシークエンシングする工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、培養の条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定する工程をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、細胞の集団は免疫細胞の存在下で培養される。いくつかの実施形態では、方法は、免疫細胞の非存在下で細胞の異なる集団を培養する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、培養の条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定することにより免疫腫瘍学標的を同定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、免疫細胞の存在下での培養から得られた細胞および免疫細胞の非存在下での培養からの細胞を比較する工程をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、方法は、1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定することにより免疫腫瘍学標的を同定する工程をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞はNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は樹状細胞を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞はマクロファージを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は末梢血単核細胞(PBMC)を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、細胞の集団は1または2以上の薬物の存在下で培養される。いくつかの実施形態では、細胞の集団はさらに免疫細胞の存在下で培養される。いくつかの実施形態では、方法は、1または2以上の薬物の非存在下で細胞の異なる集団を培養する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、1または2以上の薬物の存在下での培養から得られた細胞および1または2以上の薬物の非存在下での培養から得られた細胞を比較する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられる薬物を同定することにより有効な薬物を同定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定することにより薬物標的を同定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、免疫細胞の非存在下で細胞の異なる集団を培養する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、免疫細胞の存在下での培養から得られた細胞および免疫細胞の非存在下での培養から得られた細胞を比較する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられる薬物を同定することにより有効な薬物を同定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、1または2以上の培養条件において細胞の生存または死と関連付けられるゲノム部位を同定することにより薬物標的を同定する工程をさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、培養する工程は培養皿またはマルチウェルプレート中で行われる。いくつかの実施形態では、培養する工程は複数のマイクロカプセル中で行われる。いくつかの実施形態では、培養する工程は3D腫瘍オルガノイド中で行われる。
【0032】
さらに別の態様では、本開示は、a.免疫架橋ポリヌクレオチド、または免疫架橋ベクター、およびb.本明細書において提供される標的化ライブラリーを含む、ハイスループットスクリーニング用のキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、外因性ヌクレアーゼをコードするヌクレアーゼポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、外因性ヌクレアーゼは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびメガヌクレアーゼ(MN)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、外因性ヌクレアーゼはCAS9である。いくつかの実施形態では、キットは、マーカータンパク質をコードするマーカーポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、マーカータンパク質はルシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼポリヌクレオチドまたはマーカーポリヌクレオチドは、ウイルスベクター、任意選択的にレンチウイルスベクターである。
【0033】
4.図面のいくつかの表現の簡単な説明
本発明のこれらおよび他の特色、態様、および利点は、以下の記載、および添付の図面に関してより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、実施例1に記載されている免疫架橋タンパク質(pMED178、pMED179、pMED200、およびpMED201)を生成するための構築物の構造を提供する。
【0035】
【
図2A-B】
図2Aおよび
図2Bは、OVAまたはHA抗原を使用する免疫モジュレーターを同定するための伝統的なハイスループットシステム(
図2A)および免疫架橋タンパク質を使用する新規のシステム(
図2B)を比較する。
【0036】
【
図3】
図3は、実施例2に記載されている免疫架橋タンパク質を使用するハイスループットCRISPRスクリーニング手順を図示する。
【0037】
【
図4】
図4は、実施例4に記載されている免疫架橋タンパク質を使用するハイスループット薬物スクリーニングシステムを図示する。
【0038】
【
図5】
図5は、実施例6に記載されている多重化された3D腫瘍モデルを使用するハイスループット薬物スクリーニングシステムを図示する。
【0039】
【
図6A-B】
図6Aは、対照GFP細胞と比較したヒトナイーブT細胞の存在下での免疫架橋タンパク質(pMED178またはpMED200)を発現するがん細胞の相対的な増殖を提供する。
図6Bは、免疫架橋タンパク質(pMED178またはpMED200)を発現するがん細胞による、早期T細胞活性化マーカー、CD69により測定されたT細胞活性化のレベル(%)を示す。
【0040】
【
図7】
図7は、実施例2に記載されるゲノムスケールCRISPRスクリーニングデータのボルカノプロットである。
【0041】
【
図8】
図8は、実施例6に記載されている3D腫瘍モデルにおける多重化されたCRISPR機能的ゲノミクスの図式を提供する。
【0042】
【
図9A-B】
図9Aは、個々に培養されたがん(非混合)試料と、多重化されたがん試料(混合)との間でsgRNAカウントを比較するために行われた実験手順の概要を示す。
図9Bは、混合された試料と混合されていない試料との間のsgRNAカウントのペアワイズ相関を示すヒートマップである。
【0043】
【
図10A-B】
図10Aは、実施例7に記載される3D結腸腫瘍モデル(RKO)からのゲノムスケールCRISPRスクリーニングデータのボルカノプロットである。
図10Bは、実施例7に記載されている3D卵巣腫瘍モデル(OVCAR8)からのゲノムスケールCRISPRスクリーニングデータのボルカノプロットである。
【0044】
【
図11A-B】
図11Aは、細胞分析装置(Bio-Rad ZE5)により測定された場合の指し示される免疫架橋を有するがん細胞に曝露されたPBMC中のCD3+/CD8+およびCD3+/CD4+細胞のパーセンテージを示す。
図11Bは、細胞分析装置(Bio-Rad ZE5)により測定された場合の指し示される免疫架橋を有するがん細胞に曝露されたPBMC中のCD8+/CD25+(CD25+:T細胞活性化マーカー)およびCD4+/CD25+細胞のパーセンテージを示す。
【0045】
【
図12-1】
図12は、Incucyte S3(Sartorius)、生細胞タイムラプス顕微鏡法システムにおける免疫架橋(pMED178、pMED179、pMED200およびpMED201)のGFPシグナルにより測定された腫瘍量を提供する。PBMC+試料とPBMC-試料との間の相対的な腫瘍量を、PBMCを加えた後にプロットした。pMED200は実質的な腫瘍細胞死を一貫して誘導した一方、pMED178は一貫しなかった。pMED179およびpMED201(陰性対照)は、ヒトPBMCを用いて有意な腫瘍細胞死を誘導しない。
【0046】
【
図13】
図13は、pMED200を発現する野生型およびPD-L1 KO細胞はPBMCに対して差次的な感受性を示したことを示す。hPBMCを野生型およびPD-L1 KOトリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞株に加え、相対的な腫瘍量を、腫瘍中で発現されるGFPマーカーによりIncucyte S3において経時的にモニターした。3つの異なるPBMC組合せ(PBMC#1、#2、および#1+2)を使用した。この腫瘍-免疫共培養機能アッセイは、pMED200は、様々な遺伝学的文脈を伴うヒト免疫細胞と腫瘍細胞との間の特異的相互作用を再現するために使用され得ることを明確に証明した。
【0047】
【
図14A-B】
図14Aは、GFPシグナルを伴う腫瘍細胞培養物の画像を提供する。培養物は、hPBMCありおよびなしでのアガロースゲル中に播種された指し示される遺伝子ノックアウトを有するTNBC細胞(TNBC#1)を含む。PD-L1、PTPN2 KOの他にMEDIC_001 KOは、野生型よりも大きいhPBMCによる腫瘍低減を示した。
【0048】
図14Bは、
図14Aに提供される培養物において測定されたPBCM+試料とPBMC-試料との間の相対的な腫瘍量を要約するグラフである。それは、野生型、PD-L1 KO、MEDIC_001 KO、およびPTPN2 KO TNBC#1腫瘍についてのデータを提供する。
【0049】
【
図15】
図15Aは、GFPシグナルを伴う腫瘍細胞培養物の画像を提供する。培養物は、hPBMCありおよびなしでのアガロースゲル中に播種された指し示される遺伝子ノックアウトを有するTNBC細胞(TNBC#2)を含む。PD-L1、PTPN2 KOの他にMEDIC_001 KOは、野生型よりも大きいhPBMCによる腫瘍低減を示した。
【0050】
図15Bは、
図15Aに提供される培養物において測定されたPBCM+試料とPBMC-試料との間の相対的な腫瘍量を要約するグラフである。それは、野生型、PD-L1 KO、MEDIC_001 KO、およびPTPN2 KO TNBC#2腫瘍についてのデータを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
5.発明の詳細な説明
5.1.定義
用語「抗原結合性タンパク質」(ABP)は、抗原またはエピトープに特異的に結合する1または2以上の抗原結合性ドメインを含むタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、抗原結合性ドメインは、天然に存在する抗体の場合に類似した特異性および親和性を有する抗原またはエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、ABPは抗体を含む。いくつかの実施形態では、ABPは抗体からなる。いくつかの実施形態では、ABPは抗体から本質的になる。いくつかの実施形態では、ABPは選択的なスキャフォールドを含む。いくつかの実施形態では、ABPは選択的なスキャフォールドからなる。いくつかの実施形態では、ABPは選択的なスキャフォールドから本質的になる。いくつかの実施形態では、ABPは抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、ABPは抗体断片からなる。いくつかの実施形態では、ABPはscFvである。いくつかの実施形態では、ABPは抗体断片から本質的になる。例えば、「抗CD3 ABP」、または「CD3特異的ABP」は、CD3の抗原に特異的に結合する、本明細書において提供されているABPである。
【0052】
用語「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体断片は、本明細書において使用される場合、単一のポリペプチド鎖中にVHドメインおよびVLドメインを含むポリペプチドを指す。VHおよびVLはペプチドリンカーにより一般に連結される。Pluckthun A.(1994)を参照。いくつかの実施形態では、リンカーは(GGGGS)nである。いくつかの実施形態では、n=1、2、3、4、5、または6である。Antibodies from Escherichia coli.Rosenberg M.&Moore G.P.(Eds.),The Pharmacology of Monoclonal Antibodies vol.113(pp.269-315).Springer-Verlag,New York(参照により全体が組み込まれる)を参照。
【0053】
標的分子へのABPまたはscFvの結合に関して、特定の抗原(例えば、ポリペプチド標的)または特定の抗原上のエピトープに「結合する」、「特異的結合」、「特異的に結合する」、「特異的」、「選択的に結合する」、および「選択的」という用語は、(例えば、非標的分子との)非特異的なまたは非選択的な相互作用から測定できる程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、標的分子に対する結合を測定し、かつそれを非標的分子に対する結合と比較することにより測定され得る。特異的結合はまた、標的分子上で認識されるエピトープを模倣する対照分子との競合により決定され得る。その場合、特異的結合は、標的分子に対するABPの結合が対照分子により競合的に阻害される場合に指し示される。
【0054】
5.2.他の解釈規則
本明細書に記載された範囲は、記載された終点を含む範囲内のすべての値の省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50からなる群からの任意の数、数の組合せ、または部分範囲を含むと理解される。
【0055】
別段示されない限り、1または2以上の立体中心を有する化合物への言及は、その各立体異性体、および立体異性体のすべての組合せを意図する。
【0056】
5.3.免疫架橋タンパク質
本開示は、細胞表面上に発現され、かつ免疫細胞を動員しかつ活性化させることができる免疫架橋タンパク質を提供する。例えば、免疫架橋タンパク質は、がん細胞上に発現され、かつがん細胞を、1または2以上の免疫エフェクター細胞を活性化させることができるようにすることができる。
【0057】
免疫架橋タンパク質は、N末端からC末端へ、免疫細胞マーカーに対する抗原結合性タンパク質(「ABP」)(例えば、scFvまたは他の抗体断片)、および膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は細胞質ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は、任意選択的に蛍光タンパク質である、レポータードメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は免疫染色用のエピトープをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質はシグナルペプチド(例えば、H7)をさらに含む。
【0058】
免疫架橋タンパク質のABPは、動員および活性化されるべき標的免疫細胞に基づいて決定される。免疫細胞は、B細胞、T細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、肥満細胞、NK細胞、樹状細胞またはマクロファージ細胞であることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ABPは、1または2以上の免疫細胞タイプに対して特異的である。いくつかの実施形態では、ABPは、1つより多くのタイプの免疫細胞に対して特異的である。いくつかの実施形態では、ABPは、T細胞および/またはNK細胞に対して特異的である。
【0059】
いくつかの実施形態では、ABPは、標的免疫細胞の表面上に発現される膜タンパク質に対して特異的である。いくつかの実施形態では、ABPは、以下に限定されないが、B細胞、T細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、肥満細胞、NK細胞、樹状細胞またはマクロファージ細胞の細胞表面タンパク質に対して特異的である。
【0060】
いくつかの実施形態では、CD3に特異的なABPが、T細胞を活性化させるために使用される。いくつかの実施形態では、NKp46に特異的なABPが、NK細胞を活性化させるために使用される。いくつかの実施形態では、scFvがABPとして使用される。例えば、ABPは、CD3に特異的なscFv、またはNKp46に特異的なscFvである。いくつかの実施形態では、scFv以外の抗体または抗体断片がABPとして使用される。
【0061】
いくつかの実施形態では、当分野において公知のABPが使用される。例えば、CD3に対するmAb、例えば2C11(Liao and Roffler,Gene Ther.2000;De Jonge et al.,Mol.Immunol.1995を参照)、OKT3(Norman Ther Drug Monit 1995を参照)のscFv、またはNKp46に対するmAb、例えば29A1.4(ThermoFisher Scientificから入手可能)およびVIV-KM1(Invitrogenから入手可能)のscFvが免疫架橋タンパク質のために使用される。
【0062】
免疫架橋タンパク質は膜貫通ドメインをさらに含む。膜貫通ドメインは膜貫通タンパク質の膜貫通部分であることができる。いくつかの実施形態では、マウスB7の膜貫通ドメインが使用される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは配列番号1(NP_001346827.1のアミノ酸249~271)の配列を有する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は細胞質ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質ドメインは膜タンパク質の細胞質部分である。いくつかの実施形態では、B7の細胞質ドメインが使用される。いくつかの実施形態では、細胞質ドメインは配列番号2(NP_001346827.1のアミノ酸272~306)の配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞質ドメインは、配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は、免疫架橋タンパク質の発現の検出用のレポータータンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、レポータータンパク質は蛍光タンパク質である。いくつかの実施形態では、蛍光タンパク質はGFPである。
【0065】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質はヒトIgG1のγ1ドメイン配列(ヒンジ-CH2-CH3領域)をさらに含む。いくつかの実施形態では、γ1ドメインは免疫架橋タンパク質の二量体化を誘導する。いくつかの実施形態では、γ1ドメインはscFvの二量体化を誘導する。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は、免疫架橋タンパク質の二量体化を誘導することができるγ1ドメイン以外のドメインを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質はγ1ドメインを欠いている。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は、免疫架橋タンパク質の二量体化を誘導するドメインを欠いている。
【0067】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質はシグナルペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドはH7シグナルペプチドである。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、免疫架橋タンパク質の標的化およびフォールディングに関与する。免疫架橋タンパク質の標的化および/またはフォールディングを助けることができるH7以外のタンパク質のシグナルペプチドが使用され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質は、免疫架橋タンパク質の免疫染色または精製用のエピトープをさらに含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、免疫架橋タンパク質細胞内部分、細胞外部分、または両方にある。いくつかの実施形態では、エピトープはHAエピトープまたはV5エピトープである。
【0069】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供される免疫架橋タンパク質またはその部分をコードするポリヌクレオチド(免疫架橋ポリヌクレオチド)を提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、真核細胞中での発現のためにコドン最適化されている。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞中での発現のためにコドン最適化されている。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドからの免疫架橋タンパク質の発現を誘導または調節する調節領域に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはバーコード配列をさらに含む。
【0070】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書において提供される免疫架橋タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターまたはプラスミドである。いくつかの実施形態では、ベクターはレンチウイルスまたはrAAVベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは発現ベクターである。
【0071】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはベクターは単離されている。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはベクターは細胞中にある。
【0072】
1つの態様では、本開示は、ポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリヌクレオチドまたはベクターの複製および増幅のために使用され得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリヌクレオチドまたはベクターの製造のために使用される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、免疫架橋タンパク質の製造のために使用される。
【0073】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリヌクレオチドまたはベクターから発現される免疫架橋タンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞または原核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はがん細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はがん細胞株である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、がん患者から得られた初代がん細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、がん動物モデルから得られた初代がん細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、免疫架橋タンパク質の発現に基づいて選別されている。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、細胞から発現される免疫架橋タンパク質の活性に基づいて選別されている。
【0074】
宿主細胞は、1または2以上のベクター、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、核酸-タンパク質複合体、またはその任意の組合せを用いて一過的にまたは非一過的に形質転換され得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノム中に安定的に組み込まれる。
【0075】
別の態様では、本開示は、宿主細胞の集団であって、各々の宿主細胞が、免疫架橋タンパク質および/または免疫架橋タンパク質をコードする免疫架橋ポリヌクレオチドを含む、集団を提供する。いくつかの実施形態では、集団は、複数のドナーまたは細胞株からの細胞を含む。いくつかの実施形態では、集団は、複数のがん患者からの初代がん細胞を含む。
【0076】
5.4.ガイドRNAの標的化ライブラリー
別の態様では、本開示は、複数の標的化ライブラリー構築物を含むライブラリーを提供する。標的化ライブラリー構築物の各々は、ガイドRNAをコードする配列(gRNAコーディング配列)を含む。いくつかの実施形態では、gRNAはシングルガイドRNA(sgRNA)である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは二本鎖であることができる。いくつかの実施形態では、標的化ライブラリー構築物の各々は、1つより多くのgRNAコーディング配列を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、gRNAはゲノム標的部位の1または2以上を標的化する。いくつかの実施形態では、gRNAは複数のゲノム標的部位のうちの1つを標的化する。いくつかの実施形態では、ライブラリー構築物中の各々のgRNAは独特のゲノム標的部位に結合する。いくつかの実施形態では、ライブラリー構築物中のいくつかのgRNAは、オーバーラップするゲノム標的領域に結合する。
【0078】
いくつかの実施形態では、gRNAはガイド配列を含む。ガイド配列は、標的ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズし、かつ標的配列への複合体化した核酸ガイド型ヌクレアーゼの配列特異的結合を指令するために十分な標的配列との相補性を有するポリヌクレオチド配列である。ガイド配列と、その対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされた場合に、約50%もしくは約50%より高い%、約60%もしくは約60%より高い%、約75%もしくは約75%より高い%、約80%もしくは約80%より高い%、約85%もしくは約85%より高い%、約90%もしくは約90%より高い%、約95%もしくは約95%より高い%、約97.5%もしくは約97.5%より高い%、約99%もしくは約99%より高い%、またはそれ以上であることができる。最適なアライメントは、配列をアライメントするための任意の好適なアルゴリズムの使用と共に決定され得る。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約5もしくは約5より多い、約10もしくは約10より多い、約11もしくは約11より多い、約12もしくは約12より多い、約13もしくは約13より多い、約14もしくは約14より多い、約15もしくは約15より多い、約16もしくは約16より多い、約17もしくは約17より多い、約18もしくは約18より多い、約19もしくは約19より多い、約20もしくは約20より多い、約21もしくは約21より多い、約22もしくは約22より多い、約23もしくは約23より多い、約24もしくは約24より多い、約25もしくは約25より多い、約26もしくは約26より多い、約27もしくは約27より多い、約28もしくは約28より多い、約29もしくは約29より多い、約30もしくは約30より多い、約35もしくは約35より多い、約40もしくは約40より多い、約45もしくは約45より多い、約50もしくは約50より多い、約75もしくは約75より多い、またはそれ以上のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約75未満、約50未満、約45未満、約40未満、約35未満、約30未満、約25未満、約20未満のヌクレオチドの長さである。好ましい実施形態では、ガイド配列は10~30ヌクレオチドの長さである。ガイド配列は15~20ヌクレオチドの長さであることができる。ガイド配列は15ヌクレオチドの長さであることができる。ガイド配列は16ヌクレオチドの長さであることができる。ガイド配列は17ヌクレオチドの長さであることができる。ガイド配列は18ヌクレオチドの長さであることができる。ガイド配列は19ヌクレオチドの長さであることができる。ガイド配列は20ヌクレオチドの長さであることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、複数の標的化ライブラリー構築物は、ヒトゲノム中の10,000個より多くの部位を全体として標的化するgRNAをコードするgRNAコーディング配列を含む。いくつかの実施形態では、複数の標的化ライブラリー構築物は、ヒトゲノム中の5,000、10,000、15,000、20,000、50,000、100,000、500,000、または1,000,000個より多くの部位を全体として標的化するsgRNAをコードするsgRNAコーディング配列を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、各々の標的化ライブラリー構築物はバーコード配列をさらに含む。各々の標的化ライブラリー構築物は、gRNAコーディング配列とバーコード配列との独特のペアを含むことができ、かつバーコード配列は、構築物中のgRNAのゲノム標的部位を指し示すことができる。いくつかの実施形態では、バーコード配列は、合成の、非天然ヌクレオチド配列を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、標的化ライブラリー構築物はエンドヌクレアーゼのコーディング配列をさらに含む。エンドヌクレアーゼは、標的化可能なヌクレアーゼ活性を有するリボ核タンパク質粒子(RNP)を形成するために同じ構築物上のgRNAと適合性であることができる。いくつかの実施形態では、gRNAおよびエンドヌクレアーゼは同じ種からのものである。いくつかの実施形態では、gRNAおよびエンドヌクレアーゼは異なる種からのものである。いくつかの実施形態では、gRNAおよび/またはエンドヌクレアーゼは、天然に存在せず、かつ人工的に作出される。
【0082】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、MADヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼ(MN)である。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはCAS9である。
【0083】
いくつかの実施形態では、各々の標的化ライブラリー構築物はウイルスベクターまたはプラスミドである。いくつかの実施形態では、各々の標的化ライブラリー構築物はレンチウイルスベクターまたはrAAVベクターである。
【0084】
5.5.ハイスループット分析用のがん細胞
本開示の1つの態様は、本明細書に記載されるハイスループット分析のための改変された細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態では、集団はがん細胞を含む。がん細胞は、免疫架橋タンパク質を含むように各々が改変された、がん細胞の集団であることができる。がん細胞は、本明細書に記載される標的化ライブラリー構築物を含むように各々が改変された、がん細胞の集団であることができる。いくつかの実施形態では、がん細胞は、免疫架橋タンパク質および標的化ライブラリー構築物の両方を含むように改変されている。細胞の集団は、複数のタイプの標的化ライブラリー構築物を全体として含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、標的細胞のゲノム中の5,000、10,000、15,000、20,000、50,000、100,000、500,000、または1,000,000個より多くの部位を全体として標的化する、複数のタイプの標的化ライブラリー構築物を含むことができる。特定の実施形態では、細胞の集団は、ヒトゲノム中の5,000、10,000、15,000、20,000、50,000、100,000、500,000、または1,000,000個より多くの部位を全体として標的化する、複数のタイプの標的化ライブラリー構築物を含むことができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、がん細胞は、免疫架橋タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを含む。免疫架橋タンパク質を含むがん細胞は、免疫細胞マーカーに結合することにより免疫細胞と相互作用し、かつそれを活性化させることができる。いくつかの実施形態では、がん細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、または他のタイプの免疫細胞を活性化させることができる。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質を含むがん細胞は、1つより多くの細胞タイプを活性化させることができる。例えば、いくつかのがん細胞はT細胞およびNK細胞の両方を活性化させることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、がん細胞は初代がん細胞である。いくつかの実施形態では、がん細胞は、がん患者から得られたがん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、1がん患者の複数の組織からのがん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、1がん患者の組織からのがん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、1がん患者の複数のタイプの腫瘍からのがん細胞である。
【0087】
いくつかの実施形態では、がん細胞は、1より多くのがん患者から得られる。いくつかの実施形態では、がん細胞は、1より多くのがん患者からの同じタイプの組織からのものである。いくつかの実施形態では、がん細胞は、1より多くのがん患者からの同じ腫瘍である。いくつかの実施形態では、がん細胞は、1より多くのがん患者からの複数の腫瘍である。いくつかの実施形態では、がん細胞はがん細胞株である。いくつかの実施形態では、がん細胞は固形腫瘍細胞である。
【0088】
いくつかの実施形態では、がん細胞は肉腫または癌腫である。がん細胞は、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸および直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、口唇がん、肝臓がん、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺がん、非黒色腫皮膚がん、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、肉腫、小細胞肺がん、または甲状腺がん細胞であることができる。いくつかの実施形態では、がん細胞は血液がん細胞である。
【0089】
いくつかの実施形態では、細胞の集団はバーコードを含む。いくつかの実施形態では、バーコードは細胞タイプ特異的である。いくつかの実施形態では、バーコードは細胞株特異的である。いくつかの実施形態では、バーコードは各々のドナーに特異的である。いくつかの実施形態では、バーコードは各々の試料に特異的である。いくつかの実施形態では、バーコードは各々の細胞株に特異的である。いくつかの実施形態では、バーコードは各々の腫瘍タイプに特異的である。
【0090】
いくつかの実施形態では、細胞の集団は複数の細胞株を含み、各々の細胞株は、標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチド上に独特の細胞株特異的バーコードを含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は複数のドナーからの細胞を含み、各々のドナーからの細胞は、標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチド上に独特のドナー特異的バーコードを含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は複数の試料からの細胞を含み、各々の試料からの細胞は、標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチド上に独特の試料特異的バーコードを含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は複数の細胞タイプからの細胞を含み、各々の細胞タイプからの細胞は、標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチド上に独特の細胞タイプ特異的バーコードを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、細胞の集団は、免疫架橋タンパク質または標的化ライブラリー構築物をコードする1または2以上のポリヌクレオチド分子またはベクターを用いてトランスフェクトされている。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、免疫架橋タンパク質および標的化ライブラリー構築物をコードする1または2以上のポリヌクレオチド分子またはベクターを用いてトランスフェクトされている。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、免疫架橋タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド分子および標的化ライブラリー構築物をコードする第2のポリヌクレオチド分子を用いてトランスフェクトされている。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、免疫架橋タンパク質および標的化ライブラリー構築物の両方をコードする単一のポリヌクレオチド分子を用いてトランスフェクトされている。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、免疫架橋タンパク質および/または標的化ライブラリー構築物をコードする安定的に組み込まれたポリヌクレオチドを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、細胞は、標的化ライブラリー構築物または免疫架橋ポリヌクレオチドによりコードされるマーカータンパク質をさらに含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、マーカータンパク質はルシフェラーゼまたは蛍光タンパク質(例えば、GFP、YFP)である。
【0094】
いくつかの実施形態では、細胞は外因性エンドヌクレアーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、MADヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼ(MN)である。いくつかの実施形態では、外因性エンドヌクレアーゼは、標的化ライブラリー構築物によりコードされるgRNAと適合性である。いくつかの実施形態では、外因性エンドヌクレアーゼはCAS9である。
【0095】
いくつかの実施形態では、細胞は、外因性エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドまたはベクターを含む。ポリヌクレオチドまたはベクターはプラスミドまたはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、外因性エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノム中に組み込まれている。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは細胞中にエレクトロポレートされる。
【0096】
5.6.3D腫瘍モデル
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される細胞または細胞の集団の3次元(3D)培養物を提供する。3D細胞培養のための当分野において利用可能な様々な方法が採用および使用され得る。例えば、3D細胞培養システムは、スキャフォールドフリーの方法、例えば超低接着プレート法、ハンギングドロップ法、懸濁培養法、およびスキャフォールドベース技術を使用することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、懸濁培養法が使用される。その場合、本明細書に記載される細胞を被包するマイクロカプセルのプールが懸濁培養において使用され得る。マイクロカプセルは、10μm~10mm、10μm~1mm、50μm~1mm、100μm~1mm、200μm~500μm、または約250μm~500μmの直径を有することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、各々のマイクロカプセルは、本明細書に記載される細胞の集団のサブセットを被包する。マイクロカプセルの各々は、同じバーコード配列を含む細胞を被包することができる。バーコード配列は、細胞株、ドナー(例えば、がん患者)、細胞タイプまたは試料に特異的であることができる。そのため、いくつかの実施形態では、各々のマイクロカプセルは、特異的にバーコード付加された、同じ細胞株の、同じドナーからの、同じ細胞タイプの、または同じ試料からの、細胞を被包する。いくつかの実施形態では、各々のマイクロカプセルは、1つより多くのバーコード配列を全体として含む細胞を被包することができる。いくつかの実施形態では、各々のマイクロカプセル中に被包される細胞は、不均質(例えば、複数の細胞株、複数のドナーからの細胞、複数の細胞タイプまたは試料の細胞)である。
【0099】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、同じ対象から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、同じがん患者から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、単一の細胞株から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。
【0100】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、2または3以上の異なるバーコード配列を含む細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、2または3以上の異なるバーコード配列は、細胞株もしくは細胞タイプ特異的バーコードまたはドナー特異的バーコードに特異的な配列である。
【0101】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、2または3以上の対象から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、3、4、5、6、7、8、または9以上の対象から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、2または3以上のがん患者から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、3、4、5、6、7、8、または9以上のがん患者から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、それらのドナーに特異的にバーコード付加される。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、細胞タイプまたは試料タイプに特異的にバーコード付加される。
【0102】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、2または3以上の細胞株から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの各々は、3、4、5、6、7、8、または9以上の細胞株から得られた細胞の集団のサブセットを被包する。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、細胞株に特異的にバーコード付加される。
【0103】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは免疫細胞をさらに被包する。免疫細胞は、T細胞、NK細胞、B細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、肥満細胞、樹状細胞、またはマクロファージを含むことができる。いくつかの実施形態では、各々のマイクロカプセルは、T細胞、NK細胞、B細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、肥満細胞、樹状細胞、またはマクロファージからなる群から選択される、1つより多くの免疫細胞を被包する。いくつかの実施形態では、免疫細胞は末梢血単核細胞(PBMC)を含む。
【0104】
マイクロカプセルのプールは培養培地中で培養され得る。培養の間に、培養培地は、撹拌器、培養フラスコの回転または当分野において公知の他の方法を使用して撹拌され得る。
【0105】
培養において、細胞の集団は3D腫瘍オルガノイドを形成することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの1つより多くのプールは同じ培地中で培養され得る。例えば、培地は、第1の免疫架橋タンパク質を含む細胞を被包するマイクロカプセルの第1のプール、および第2の免疫架橋タンパク質を含む細胞を被包するマイクロカプセルの第2のプールの両方を培養するために使用され得る。他の実施形態では、マイクロカプセルの第1のプールは、第1の標的化ライブラリーを含む細胞を被包し、かつマイクロカプセルの第2のプールは、第2の標的化ライブラリーを含む細胞を被包する。さらに別の実施形態では、マイクロカプセルの第1のプールは、第1のバーコード配列を含む細胞を被包し、かつマイクロカプセルの第2のプールは、第2のバーコード配列を含む細胞を被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルの第1のプールは、第1の免疫細胞を含む細胞を被包し、かつマイクロカプセルの第2のプールは第2の免疫細胞を被包する。いくつかの実施形態では、2より多く(例えば、3、4、5、または6以上)のマイクロカプセルのプールが一緒に培養される。
【0107】
5.7.ハイスループット分析方法
本開示はまた、本明細書に記載される免疫架橋タンパク質、標的化ライブラリー構築物、細胞の集団、および/またはマイクロカプセルを使用するハイスループット分析方法を提供する。分析方法は、新たな薬物または薬物標的の同定を含むがそれに限定されない様々な目的のために使用され得る。
【0108】
例えば、方法は、がん細胞の免疫応答における増強または低減と関連付けられる遺伝子改変を同定するために使用され得る。特に、免疫細胞の細胞傷害効果を増強または低減させるがん細胞中のゲノム部位または遺伝子が同定され得る。他の場合において、免疫細胞の細胞傷害効果を増強または低減させることができる化合物が同定され得る。いくつかの実施形態では、がん細胞の免疫応答における増強または低減と関連付けられる1または2以上の試験化合物が同定される。同定された遺伝子改変または同定された試験化合物により影響される標的タンパク質は、がんの処置または予防のために使用され得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、同定された化合物は、免疫応答(例えば、細胞傷害性)をモジュレートするために対象患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、同定されたゲノム部位または同定されたゲノム部位によりコードされるタンパク質の活性をモジュレートすることができる剤が、免疫応答(例えば、細胞傷害性)をモジュレートするために対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、同定された化合物、または同定されたゲノム部位もしくは同定されたゲノム部位によりコードされるタンパク質の活性をモジュレートすることができる剤は、投与された場合に患者においてがん細胞の低減または排除を誘導することができる。剤は、ゲノム部位によりコードされるタンパク質、ゲノム部位によりコードされるタンパク質の活性化剤もしくは阻害剤、または同定されたゲノム部位からの配列を含むポリヌクレオチド、ベクターもしくは細胞であることができる。いくつかの実施形態では、剤は、ゲノム部位から発現されるタンパク質に対する抗体である。いくつかの実施形態では、剤は、ゲノム部位から発現される転写物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、剤および同定された化合物は組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、剤および/または同定された化合物は、他の免疫腫瘍学療法の治療効果を増加させるためにがん患者に他の免疫腫瘍学療法と組み合わせて投与され得る。
【0110】
免疫架橋タンパク質を使用するハイスループットスクリーニング
ほとんどのT細胞は、特異的なペプチド抗原を、それらが同系標的細胞からのMHC IまたはMHC II分子により提示された場合にのみ認識する。よって、伝統的なハイスループットスクリーニング方法は、1)特異的な抗原(例えば、OVA:オボアルブミンまたはHA:ヘマグルチニン)を認識するT細胞を産生する特異的なトランスジェニックマウスモデルおよび2)同系マウスモデルに由来するがんモデルを要求する。これは、がんモデルの選択およびそのようなスクリーニング方法の拡張可能性を深刻に限定する。
【0111】
免疫架橋タンパク質を発現するがん細胞は、任意の同種供給源からの免疫細胞を動員/活性化させることができる。免疫架橋システムを用いて、免疫モジュレーターのハイスループットスクリーニングは、様々な免疫細胞を有する同種がんモデルにおいて行われ得る。
【0112】
例えば、免疫架橋タンパク質を発現するがん細胞は免疫細胞と共に培養され、かつ免疫細胞に対するがん細胞の応答が決定され得る。いくつかの実施形態では、細胞傷害効果が決定される。特定のタイプの免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ、末梢血単核細胞)またはその組合せに対するがん細胞の応答が決定され得る。免疫細胞に対して応答性または非応答性のがん細胞が選択または単離され得る。例えば、免疫細胞に対して感受性のがん細胞は排除され、かつ免疫細胞に対してより低い感受性のがん細胞は濃縮される。ある特定のがん細胞の濃縮および脱濃縮は、培養から得られた細胞のポリヌクレオチド(例えば、ゲノムDNA、RNA、バーコード配列)をシークエンシングすることにより決定され得る。いくつかの実施形態では、特徴付けは、培養から得られた細胞のバーコード配列をシークエンシングすることを伴う。いくつかの実施形態では、特徴付けは、遺伝子型特性のシークエンシングおよび同定を伴う。
【0113】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質を発現するがん細胞は、レポーター遺伝子を発現するようにさらに改変される。いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質である。いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子はルシフェラーゼである。レポーター遺伝子は、免疫架橋タンパク質と同じ構築物または異なる構築物によりコードされ得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質を発現するがん細胞の免疫応答は、1または2以上の試験化合物の存在下で試験される。方法は、免疫応答を変更することができる試験化合物またはその組合せを同定するために使用され得る。例えば、がん細胞に対する免疫細胞の細胞傷害効果を増強することができる化合物が同定され得る。いくつかの実施形態では、1または2以上の試験化合物に対して特に応答性のがん細胞が同定および特徴付けされ得る。用語、試験化合物は、小分子(例えば、有機もしくは無機化合物、天然もしくは人工化合物)または生物学的物質(例えば、ワクチン、細胞、血液、血液成分、アレルゲン、遺伝子、組織、もしくはタンパク質)を指すために本明細書において使用される。
【0115】
いくつかの実施形態では、免疫応答は3D腫瘍モデルにおいて試験される。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質を発現するがん細胞および免疫細胞はマイクロカプセル中に一緒に被包される。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質を発現するがん細胞および免疫細胞の両方を各々が被包するマイクロカプセルのプールは、培養培地中で一緒に培養される。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルのプールは、複数のタイプのがん細胞(例えば、複数の細胞株、がんタイプ、複数のドナーからの細胞など)を全体として被包する。いくつかの実施形態では、マイクロカプセル中のがん細胞は、細胞試料、タイプ、ドナーなどに特異的にバーコード付加される。いくつかの実施形態では、マイクロカプセルのプールは、複数のタイプの免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ、および/またはPBMC)を全体として被包する。
【0116】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルのプールは同じ培養培地中で培養され、かつ1または2以上の試験化合物が培養培地に適用される。複数の試験化合物が試験される場合、それらは、個々に、連続的にまたは組み合わせて適用され得る。
【0117】
よって、本明細書において提供される方法は、がん細胞の集団を培養するかまたはマイクロカプセルのプールをインキュベートする工程、および培養から得られた細胞を分析する工程を含むことができる。いくつかの場合において、がん細胞の集団は免疫細胞の存在下で培養される。いくつかの実施形態では、分析する工程は、培養から得られた細胞のポリヌクレオチドをシークエンシングする工程を含む。シークエンシングは、細胞の素性に関する情報を提供することができる。ポリヌクレオチドは、細胞のバーコード配列または内因性(例えば、ゲノム配列もしくはmRNA配列)配列であることができる。
【0118】
様々ながん細胞試料に特異的な複数のバーコードが使用される場合、無薬物および薬物条件下のがん細胞のバーコードが、2つの異なる条件下で存在する細胞タイプを理解するためにシークエンシングおよび比較され得る。いくつかの実施形態では、様々な腫瘍試料を表すバーコードの比が、複数の腫瘍試料にわたり薬物応答を理解するために算出される。
【0119】
いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質を発現し、かつ任意選択的にレポータータンパク質を有するがん細胞は、マルチウェルプレート中で免疫細胞の存在下で培養される。引き続いて、試験化合物は各々のウェルに個々に適用される。試験化合物で処理されたまたは処理されていない細胞の増殖および/または他の物理的もしくは生物学的特性が決定および比較される。いくつかの実施形態では、免疫細胞の存在下または非存在下で培養された細胞の増殖および/または他の物理的もしくは生物学的特性が決定および比較される。
【0120】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の存在下でがん細胞に対する細胞傷害性を増強する試験化合物が同定される。いくつかの実施形態では、免疫細胞の非存在下でがん細胞に対する細胞傷害効果を有する試験化合物が同定される。いくつかの実施形態では、免疫細胞の存在下でがん細胞に対する細胞傷害性を増強するが、非存在下では増強しない試験化合物が選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞の非存在下でがん細胞に対する細胞傷害性を増強するが、存在下では増強しない試験化合物が選択される。いくつかの実施形態では、特定のタイプの免疫細胞のみによるがん細胞に対する細胞傷害性を増強する試験化合物が選択される。いくつかの実施形態では、いくつかのタイプの免疫細胞によるがん細胞に対する細胞傷害性を増強する試験化合物が選択される。
【0121】
ハイスループットエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR)スクリーニング
本明細書に記載される分析システムは、本明細書に記載されるガイドRNAの標的化ライブラリーおよび外因性エンドヌクレアーゼを使用して遺伝子改変されたがん細胞を分析するために使用され得る。がん細胞の免疫応答の変化または遺伝子改変の結果としてもたらされる免疫応答に関しないがん細胞の増殖速度の変化は、本明細書において提供される分析システムを使用して分析され得る。新たな薬物または薬物標的は、遺伝子改変と、免疫応答における変化またはがん内因性増殖速度における変化との関係性を分析することにより同定され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、方法は、外因性エンドヌクレアーゼ、および標的化ライブラリー構築物を含む標的化ライブラリーを含むように改変されたがん細胞を得る工程、ならびにエンドヌクレアーゼおよび標的ライブラリーによる遺伝子改変(例えば、ノックアウト)のための条件においてがん細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの実施形態では、がん細胞は、バーコード配列を含むようにさらに改変される。改変されたがん細胞は、本明細書に記載される3D腫瘍モデル中で(例えば、少なくとも1、2、3、4、または5週にわたり)培養される。培養後のある特定のがん細胞の濃縮および脱濃縮は、がん細胞に特異的なgRNA、バーコード、または他の配列のシークエンシングカウントにより測定され得る。分析から、がん細胞増殖と関連付けられる遺伝子改変が同定され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、方法は、外因性エンドヌクレアーゼ、および標的化ライブラリー構築物を含む標的化ライブラリーを含むように改変されたがん細胞を得る工程、ならびにエンドヌクレアーゼおよび標的ライブラリーによる遺伝子改変(例えば、ノックアウト)のための条件においてがん細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの実施形態では、がん細胞は、バーコード配列を含むようにさらに改変される。改変されたがん細胞は2つの群に分割され、かつ1つの群は1または2以上の試験薬物の存在下で培養され、かつ他の群は1または2以上の試験薬物の非存在下で培養される。がん細胞は、本明細書に記載される3D腫瘍モデル中で(例えば、少なくとも1、2、3、4、または5週にわたり)培養され得る。培養後のある特定のがん細胞の濃縮および脱濃縮は、がん細胞に特異的なgRNA、バーコード、または他の配列のシークエンシングカウントにより測定され得る。分析から、がん細胞増殖および1または2以上の試験薬物に対する応答と関連付けられる遺伝子改変が同定され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、方法は、免疫架橋タンパク質、外因性エンドヌクレアーゼ、および標的化ライブラリー構築物を含む標的化ライブラリーを含むように改変されたがん細胞を得る工程、ならびにエンドヌクレアーゼおよび標的ライブラリーによる遺伝子改変(例えば、ノックアウト)のための条件においてがん細胞をインキュベートする工程を含む。他の実施形態では、方法は、外因性エンドヌクレアーゼおよび標的化ライブラリー構築物を含む標的化ライブラリーを含むように改変されたがん細胞を得る工程、エンドヌクレアーゼおよび標的ライブラリーによる遺伝子改変(例えば、ノックアウト)のための条件においてがん細胞をインキュベートする工程、ならびに免疫架橋タンパク質または免疫架橋タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、改変されたがん細胞に導入する工程を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、gRNAの1つより多くの標的化ライブラリーが使用される。複数のライブラリーの各々は独特にバーコード付加され得る。バーコード付加された標的化ライブラリーは複数の腫瘍試料に別々に導入され得る。腫瘍試料は、マイクロカプセル中に被包され、多重化され、かつ所与のスクリーニング期間にわたり培養され得る。スクリーニングの終わりに、腫瘍細胞のゲノムDNAは抽出され得、かつsgRNAおよび/または関連付けられるバーコードはシークエンシングされ得る。gRNAカウントは、各々の腫瘍試料に独特のバーコードまたはgRNAコーディング配列により脱多重化され得、かつ元々の腫瘍試料にトレースバックされるgRNAカウントは、各々の腫瘍試料中のgRNAにより突然変異の表現型上の効果を決定するために使用される。
【0126】
特定の実施形態において、2つのがん試料(試料1および試料2)は、独特にバーコード付加されたgRNAの標的化ライブラリー(BC1およびBC2)を用いて別々に形質導入される。がん試料は、個々に(混合されていない試料)または混合物(混合された試料)において試験され得る。gRNAは、脱多重化なしに混合されていない試料からカウントされ得る。しかし、混合された試料からのgRNAは脱多重化される必要がある。いくつかの実施形態では、混合された試料からのgRNAはバーコードにより脱多重化される。gRNAは各々の腫瘍試料についてカウントされ得る。
【0127】
多重化および脱多重化工程を伴う方法は、2つのゲノムスケールスクリーニングが、2つの多重化された腫瘍試料において同時に行われることを可能にする。いくつかの実施形態では、3、4、5、または6以上のゲノムスケールスクリーニングが同時に行われ得る。
【0128】
遺伝子改変されたがん細胞は、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞または他の免疫細胞)と共に、免疫細胞ががん細胞と相互作用できる条件においてインキュベートされ得る。免疫細胞を用いた処理の1または複数のパルスを用いて、がん細胞を免疫細胞に対してより感受性とするノックアウトクローンはより有意に低減または排除され、かつがん細胞を免疫細胞に対してより抵抗性とするクローンは濃縮される。そのようながん細胞の濃縮および脱濃縮は、がん細胞に特異的なgRNA、バーコード、または他の配列のシークエンシングカウントにより測定され得る。特に、gRNA、バーコードまたは他の特異的な配列のシークエンシングカウントは、免疫細胞で処理されたがん細胞と、免疫細胞で処理されていないがん細胞との間で比較され得る。gRNA、バーコード、または特異的な配列のカウントは、がん細胞において遺伝子改変、例えば、突然変異の素性および位置ならびにその効果を特徴付けるために使用され得る。
【0129】
分析からの結果は、様々な遺伝子改変の表現型上の効果、特には免疫細胞に対する応答および/または内因性腫瘍成長速度に対する効果を決定するために使用され得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、1または2以上の試験化合物が、遺伝子改変されたがん細胞および免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)の培養物に適用される。1または2以上の試験化合物の適用後に、ある特定のがん細胞の濃縮および脱濃縮は、がん細胞におけるgRNA、バーコードまたは他の特異的な配列のシークエンシングカウントにより測定され得る。免疫細胞の存在または非存在下で1または2以上の試験化合物で処理されたがん細胞と、1または2以上の試験化合物で処理されていないがん細胞との間のgRNA、バーコードまたは他の特異的な配列のシークエンシングカウントの比較は、免疫応答に対する様々な遺伝子改変および/または試験化合物の表現型上の効果を決定するために使用され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、がん細胞および免疫細胞は3D腫瘍モデル中でインキュベートされる。いくつかの実施形態では、がん細胞および免疫細胞はマイクロカプセル中でインキュベートされる。いくつかの実施形態では、gRNAは、バーコードをさらに含む構築物中にクローニングされる。がん細胞中のgRNAのシークエンシングカウントの測定は、バーコード配列をシークエンシングすることにより行われ得る。
【0132】
1つの例示的な実施形態では、Cas9発現がん細胞は、免疫架橋タンパク質をコードする構築物を用いて形質導入される。20,000個のヒト遺伝子を標的化するsgRNAをコードするレンチウイルスの標的化ライブラリーが次にがん細胞に形質導入される。これは、免疫架橋タンパク質を発現する20,000のノックアウトがん細胞のプールを作出する。T細胞またはNK細胞がPBMCから調製され、がん細胞に適用される。免疫細胞処理の複数のパルスを用いて、がん細胞を免疫細胞に対して抵抗性とするノックアウトクローンは濃縮される一方、がん細胞を免疫細胞に対してより感受性とするノックアウトクローンは脱濃縮される。そのようなノックアウトクローンの濃縮および脱濃縮は、免疫細胞で処理されたがん細胞におけるsgRNAのディープシークエンシングカウントを、処理されていないがん細胞におけるsgRNAの場合と比較することにより測定される。
【0133】
自己免疫疾患薬物候補のハイスループットスクリーニング
本明細書に開示されるハイスループットスクリーニング方法およびシステムはまた、非がん細胞を分析するために使用され得る。例えば、それらは、自己免疫疾患の処置のための新たな薬物または薬物標的を同定するために使用され得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患患者から得られた細胞は、免疫架橋タンパク質を発現するように改変され、かつマルチウェルプレート中にプレーティングされる。試験化合物のライブラリーは、免疫細胞の存在または非存在下で該細胞を用いて試験され得る。例えば、試験化合物は、免疫細胞ありまたはなしで免疫架橋タンパク質を発現する細胞を含有するマルチウェルプレートに適用され得る。
【0135】
細胞増殖および他の物理的または生物学的特性が測定され、かつ様々な条件における細胞、例えば、免疫細胞の存在下で薬物化合物で処理された細胞と免疫細胞の非存在下で薬物化合物で処理された細胞、または薬物化合物で処理された細胞と薬物化合物で処理されていない細胞との間で比較され得る。比較から、細胞と免疫細胞との間の相互作用のモジュレーションに関与する試験化合物が同定される。いくつかの実施形態では、異常な免疫応答を低減させるかまたは排除する試験化合物が同定される。
【0136】
本明細書に記載される方法を使用して同定された試験化合物は、自己免疫疾患を処置するために使用され得る。
【0137】
5.8.キット
1つの態様では、本開示は、本明細書において提供されるハイスループット分析および方法のためのキットを提供する。
【0138】
キットは、免疫架橋タンパク質または免疫架橋タンパク質をコードする免疫架橋ポリヌクレオチドもしくはベクターを含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫架橋ポリヌクレオチドまたはベクターは、標的細胞中にトランスフェクトされ、かつ免疫架橋タンパク質の発現を誘導することができる発現ベクターである。
【0139】
いくつかの実施形態では、キットは、免疫架橋タンパク質または免疫架橋ポリヌクレオチドもしくはベクターを含む細胞を含む。いくつかの実施形態では、免疫架橋タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、細胞のゲノム中に安定的に組み込まれる。
【0140】
いくつかの実施形態では、キットはガイドRNAの標的化ライブラリーを含む。いくつかの実施形態では、標的化ライブラリーはgRNAコーディング配列を含む。ライブラリー中のgRNAは、15,000個の部位、20,000個の部位、50,000個の部位、100,000個の部位またはそれ以上の部位より多くを全体として標的化することができる。いくつかの実施形態では、標的化ライブラリーは、gRNAコーディング配列を含む発現ベクターを含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターはバーコード配列をさらに含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、キットは、外因性ヌクレアーゼまたは外因性ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、エキソヌクレアーゼは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、MADヌクレアーゼ、およびメガヌクレアーゼ(MN)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、外因性ヌクレアーゼはCAS9である。
【0142】
いくつかの実施形態では、キットは、マーカータンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、マーカータンパク質はルシフェラーゼまたは他のレポータータンパク質である。
【0143】
いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼポリヌクレオチドまたはマーカーポリヌクレオチドは、ウイルスベクター、任意選択的にレンチウイルスベクター中にある。
【0144】
いくつかの実施形態では、キットは1または2以上のバーコード配列をさらに含む。
【実施例】
【0145】
6.実施例
6.1.実施例1:免疫架橋タンパク質の設計および応用
ハイスループットスクリーニングシステムを開発するために
図1に図示されるようにいくつかの免疫架橋タンパク質を設計および生成した。免疫架橋タンパク質は、免疫細胞マーカー(例えば、CD3、NKp46)に特異的なscFvを含有する。組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドをレンチウイルスベクター中にクローニングし、scFvの安定な膜発現のためにがん細胞中に形質導入した。
【0146】
組換え膜タンパク質ががん細胞上で発現された場合、それらは任意の同種供給源からの免疫細胞を動員/活性化させ得る。
【0147】
例として、pMED178、pMED179、pMED200およびpMED201のための構築物設計が
図1に提供される。構築物は、H7シグナルペプチド;pMED178およびpMED200のためにscFvの二量体化を誘導するためのヒトIgG
1のγ1ドメイン配列(ヒンジ-CH
2-CH
3領域);免疫染色用のV5エピトープ;B7の膜貫通ドメイン(Bリンパ球活性化抗原);scFVの高発現を達成するためのB7の細胞質ドメイン(B7-ct);ならびにEGFP蛍光マーカーを含む。タンパク質は、2つのscFv、すなわち、マウスT細胞を活性化させるためのpMED179およびpMED201のためのマウスCD3に対するscFVならびにヒトT細胞を活性化させるためのpMED178およびpMED200のためのヒトCD3に対するscFVのうちの1つをさらに含む。異なる免疫細胞マーカーを標的化するscFvは、種々の活性化シグナルを有する同じまたは異なるタイプの免疫エフェクター細胞を動員/活性化させるために使用され得る。
【0148】
図1に図示されるように、pMED178構築物は、EF1aプロモーターに続いて、H7シグナルペプチド、HAエピトープ、ヒトCD3scFv、ヒトIgG
1のγ1ドメイン配列(ヒンジ-CH
2-CH
3領域)、V5エピトープ、膜貫通ドメイン、B7の細胞質ドメインおよびレポータータンパク質(EGFP)を含むpMED178免疫架橋タンパク質のコーディング配列を含む。
【0149】
pMED179構築物は、EF1aプロモーターに続いて、H7シグナルペプチド、HAエピトープ、マウスCD3scFv、ヒトIgG1のγ1ドメイン配列(ヒンジ-CH2-CH3領域)、V5エピトープ、膜貫通ドメイン、B7の細胞質ドメインおよびレポータータンパク質(EGFP)を含むpMED179免疫架橋タンパク質のコーディング配列を含む。
【0150】
pMED200構築物は、EF1aプロモーターに続いて、H7シグナルペプチド、HAエピトープ、ヒトCD3scFv、V5エピトープ、膜貫通ドメイン、B7の細胞質ドメインおよびレポータータンパク質(EGFP)を含むpMED200免疫架橋タンパク質のコーディング配列を含む。
【0151】
pMED201構築物は、EF1aプロモーターに続いて、H7シグナルペプチド、HAエピトープ、マウスCD3scFv、V5エピトープ、膜貫通ドメイン、B7の細胞質ドメインおよびレポータータンパク質(EGFP)を含むpMED201免疫架橋タンパク質のコーディング配列を含む。
【0152】
T細胞による選択的な殺傷を誘導する免疫架橋タンパク質の能力を試験するためにpMED178およびpMED200構築物をがん細胞にトランスフェクトした。1)GFP対照、2)pMED178免疫架橋(二量体ヒトCD3 scFV)、または3)pMED200免疫架橋(単量体ヒトCD3 scFV)をコードする構築物を用いてMDA-MB-231細胞(トリプルネガティブ乳がんモデル)への形質導入を行った。トランスフェクトされたMDA-MB-231がん細胞をヒトナイーブT細胞で処理し、MDA-MB-231細胞の増殖を測定した。対照GFP細胞と比較した免疫架橋細胞の相対的な増殖を初期T細胞処理後120時間にかけてプロットし、
図6Aに提供した。データは、T細胞に応答したpMED178およびpMED200がん細胞の選択的な減少を示す。
【0153】
T細胞による免疫架橋細胞の選択的な殺傷は、別々の実験のセットにおいてさらに確認された。特に、免疫架橋構築物(pMED178、pMED179、pMED200およびpMED201)のうちの1つを用いて様々ながん細胞株(H460、A549、RKO、SK-HEP1、HCC1806、HEP3B、およびKNS81)へのトランスフェクトを行い、3Dスフェロイド(腫瘍)として培養した。ヒトPBMC(hPBMC)をがん細胞に加え、Incucyte S3(Sartorius)、生細胞タイムラプス顕微鏡法システムを使用して免疫架橋タンパク質のGFPシグナルにより腫瘍量をモニターした。PBMC+試料とPBMC-試料との間の相対的な腫瘍量を算出し、PBMCを加えた後に経時的に
図12にプロットした。pMED200は実質的な腫瘍細胞死を一貫して誘導した一方、pMED178は一貫しなかった。pMED179およびpMED201(陰性対照)は、ヒトPBMCを用いて有意な腫瘍細胞死を誘導しなかった。
【0154】
CD69、早期T細胞活性化マーカーを使用して各々の条件においてT細胞の活性化も測定した。結果は
図6Bに提供される。それらは、pMED178およびpMED200がん細胞上の免疫架橋タンパク質はPBMC中のナイーブT細胞を活性化させることができることを示す。
【0155】
図11Aに提供されるように、免疫架橋タンパク質をトランスフェクトされたがん細胞はまた、ナイーブヒトPBMC中のヒトCD8+およびCD4+T細胞の拡大増殖を誘導することができた。指し示される免疫架橋タンパク質を有するがん細胞に曝露されたPBMC中のCD3+/CD8+およびCD3+/CD4+細胞のパーセンテージを細胞分析装置(Bio-Rad ZE5)により測定した。pMED200は特に有効であり、統計的に有意なレベルでヒトCD8+およびCD4+T細胞の拡大増殖を誘導した。
【0156】
pMED200をトランスフェクトされたがん細胞をまた、CD25、T細胞活性化マーカーを使用してT細胞の活性化について試験した。
図11Bは、pMED200を発現するがん細胞への曝露後のナイーブヒトPBMC中のヒトCD8+およびCD4+T細胞の増加を示す。
【0157】
pMED179およびpMED201はT細胞における活性化を示さなかった。結果は予想されるものであったが、その理由は、pMED179およびpMED201はマウスCD3にのみ結合し、ヒトCD3に結合しないのでマウスT細胞においてのみ機能するからである。pMED178を発現するがん細胞は、pMED200と比較してT細胞の有意により低い活性化を実証した。理論により縛られることを望まないが、T細胞におけるより低い活性は、pMED178を発現する細胞に対する細胞傷害性に繋がる免疫架橋タンパク質の過度の凝集を誘導したpMED178中のガンマドメイン(γ)と関連付けられると考えられる。pMED200ははるかにより弱いオリゴマー化を示し、これは、過度の凝集および毒性なしにそれに曝露されたT細胞の活性化を増強すると思われる。
【0158】
6.2.実施例2:免疫腫瘍学標的を同定するためのハイスループットCRISPRスクリーニングシステム
Cas9および免疫架橋タンパク質を発現するようにMDA-MB-231がん細胞を改変した。20,000個のヒト遺伝子を標的化するsgRNAレンチウイルスのプールを含有するように細胞をさらに改変した。これらの改変は、膜上に免疫架橋タンパク質を発現する20,000のノックアウトがん細胞のライブラリーを提供した。(
図3(1)および(2)を参照)。
【0159】
T細胞(またはNK細胞)をPBMCから調製し、免疫架橋タンパク質を発現するノックアウトがん細胞に適用した(
図2Bおよび
図3(3)を参照)。免疫細胞処理の複数のパルスを用いて、免疫細胞に耐性のノックアウトがん細胞は濃縮された一方、免疫細胞に感受性のノックアウトクローンは脱濃縮された。免疫細胞処理により濃縮または脱濃縮されたノックアウトクローンを、免疫細胞で処理されたがん細胞ライブラリー中のsgRNAのディープシークエンシングカウントおよび免疫細胞で処理されていない場合を比較することにより決定した。(
図3(5)および(6)を参照)。実験から、免疫腫瘍学薬物標的が同定された(
図7を参照)。負の免疫効果は、遺伝子の欠失がMDA-MB-231がん細胞を免疫細胞攻撃に対してより脆弱とすることを意味する一方、正の免疫効果は、遺伝子の欠失ががん細胞を免疫細胞に対してより抵抗性とすることを意味する。
【0160】
ゲノムスケールCRISPRスクリーニングデータのボルカノプロットが
図7に提供される。それは、MDA-MB-231細胞において発現され、したがって強い負の免疫効果を有することが予測される周知の免疫抑制因子であるPD-L1を含む、いくつかの標的(例えば、PTPN2、IRF1、RELA、PD-L1)を同定した。PD-L1は実際に、負の免疫効果を有する上位ヒットのうちの1つとして同定された。PTPN2、IRF1、およびRELAもまた公知の免疫調節因子であり、それらもまた上位ヒットとして同定された。これらは、本明細書において提供されるハイスループット分析方法は新規の薬物および薬物標的を同定するための有効な仕方であることを実証する。
【0161】
6.3.実施例3:免疫腫瘍学標的の同定および検証のための免疫架橋タンパク質の使用
野生型およびPD-L1 KOトリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞株にpMED200構築物をトランスフェクトしてpMED200免疫架橋タンパク質を発現させた。pMED200を発現する野生型およびPD-L1 KO細胞を培養し、3つの異なるPBMC組合せ(PBMC#1、#2、および#1+2)に曝露した。培養物中の腫瘍量を、腫瘍中で発現されるGFPマーカーによりIncucyte S3において経時的にモニターし、相対的な腫瘍量(PBMC+/PBMC-)を算出し、
図13にプロットした。結果は、pMED200を発現するPD-L1 KO腫瘍細胞はpMED200を発現するWO腫瘍細胞と比較してPBMCに対して有意により感受性であることを示す。この腫瘍-免疫共培養機能アッセイは、pMED200は、様々な遺伝学的文脈を伴うヒト免疫細胞と腫瘍細胞との間の特異的相互作用を再現するために使用され得ること、および新規の免疫腫瘍学標的を同定するために使用され得ることを示す。
【0162】
実施例2に記載される実験から同定された追加の免疫腫瘍学標的(PTPN2およびMEDIC_001)に対して、機能的な腫瘍-免疫共培養アッセイを行った。野生型およびPD-L1、PTPN2またはMEDIC_001 KOトリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞株にpMED200構築物をトランスフェクトし、hPBMCありおよびなしでアガロースゲル中に播種した。Leica Thunder Microscopyにおける腫瘍中のGFPシグナルにより腫瘍成長をモニターし、画像を
図14Aおよび
図15Aに提供している。PBCM+試料とPBMC-試料との間の相対的な腫瘍量を野生型、PD-L1 KO、MEDIC_001 KO、およびPTPN2 KO TNBC#1腫瘍にわたり測定し、
図14Bおよび
図15Bに提供している。結果は、PD-L1、PTPN2 KOの他にMEDIC_001 KOは、野生型よりも大きいhPBMCによる腫瘍低減を示すことにより有意により感受性であったことを示す。
【0163】
6.4.実施例4:免疫腫瘍学薬物候補または自己免疫疾患薬物候補のためのハイスループット薬物化合物スクリーニング
免疫架橋タンパク質およびルシフェラーゼを発現するようにがん細胞を改変し、マルチウェルプレート中にプレーティングした(
図4を参照)。免疫細胞の存在または非存在下で薬物化合物のライブラリーを用いてがん細胞を処理した。細胞増殖を測定し、免疫細胞の存在下で薬物化合物で処理されたがん細胞と免疫細胞の非存在下で薬物化合物で処理されたがん細胞との間で比較した。比較から、がん細胞と免疫細胞との間の相互作用をモジュレートする薬物化合物が同定される。
【0164】
免疫架橋タンパク質およびルシフェラーゼを含むように改変された非がん細胞を用いて類似した実験を行う。細胞をマルチウェルプレート中にプレーティングし、免疫細胞の存在または非存在下で薬物化合物のライブラリーで処理する。細胞増殖および他の物理的または生物学的特性を測定し、免疫細胞の存在下で薬物化合物で処理された細胞と免疫細胞の非存在下で薬物化合物で処理された細胞との間で比較する。比較から、改変された細胞に対する免疫細胞の異常な細胞傷害効果に関与する薬物化合物が同定される。同定された薬物化合物は自己免疫疾患の処置のために使用され得る。
【0165】
6.5.実施例5:3D腫瘍モデルの生成
マイクロカプセル中に腫瘍試料を被包することにより3D腫瘍モデルを生成した。マイクロカプセルは以下に記載されるように生成した。
【0166】
酸化性アルギネート:ナトリウムアルギネートは、以前に記載されたように処理した。簡潔に述べれば、2gのアルギネートを100mlの蒸留水に溶解させた。異なる量のナトリウムペルヨーデートをアルギネート溶液中に加えてアルギネート酸化のパーセンテージをモジュレートし、暗室中で一定の撹拌下で17h、反応を進行させた。異なる量のエチレングリコールを加え、溶液中、室温で30分間撹拌した。得られた溶液を脱イオン水中で3日間透析した(10kDaの分子量カットオフ)。生成物を次に無菌濾過し、凍結させ、凍結乾燥した。
【0167】
溶液および細胞懸濁液の調製:2% wt/volのナトリウムアルギネートをオートクレーブされたDI水中に溶解させることおよび0.5mM SDS界面活性剤を加えることにより外液を調製した。溶液を滅菌し、4℃で貯蔵した。酸化されたアルギネート(3% wt/vol)を増殖培地中に溶解させ、A型ゼラチン溶液と混合した。酵素非含有細胞解離緩衝液(Accutase)を使用して細胞を剥離させ、3000万細胞/mlの最終濃度で無血清DMEM中に再懸濁した。細胞溶液をアルギネート-ゼラチン(またはMatrigel(商標))混合物または任意の代替的なハイドロゲルマトリックス材料、例えばPEGと混合することにより内液(IS)を調製した。
【0168】
被包手順および被包効率の特徴付け:電気的音響的マイクロジェッティングシステム(Bushi、Encapsulator)を用いてマイクロカプセル製造を行った。2つの溶液(外液および内液)を調製してマイクロカプセルを製造し、各々の耐圧瓶に移した。外液および内液の両方を空気圧力により、同心ノズルシステムを含むマイクロカプセル製造ユニットに押し入れた。液体流速および振動周波数をそれぞれモジュレートして、透明なマイクロカプセルチェインを調製した。静電分散ユニットを稼働させることによりマイクロカプセルチェインの液体ジェットを漏斗様マルチラインストリームに転換させた。100mMカルシウムクロライドおよび微量のTween 20界面活性剤を含有する硬化溶液中に入れることにより静電荷の下で分離したカプセルを固体化させた。マイクロカプセルを200μm Cell Strainerで直ちに篩分けし、300mM D-ソルビトール溶液中で洗浄し、15分以内に適切な培養培地に移した。使用後に、マイクロ流体デバイスを殺菌剤、70%エタノールおよび脱イオン水で洗浄した。顕微鏡下で採取された数百のカプセルの画像解析から被包効率を評価する。細胞を含有するマイクロカプセルを約500カプセル/秒の速度で製造し、数分間収集する。
【0169】
6.6.実施例6:多重化された3D腫瘍モデルにおける薬物試験
各々の腫瘍試料に独特なDNAバーコードを含有するレンチウイルスベクターを用いて複数の腫瘍試料への形質導入を行った。(
図5(1))独特のバーコードは、
図5において「BC1」、「BC2」、「BC3」などとして表される。
【0170】
バーコード付加された複数の腫瘍試料を次に、実施例5において上記されるように、そのサイズが100μm~1mmの範囲内であるマイクロカプセル中に被包した。マイクロカプセルの外層は硬質/非柔軟性のアルギネートベースシェルであった一方、内層は、内側の腫瘍細胞の足場非依存性3D増殖を可能とするために分解性の柔軟なハイドロゲルであった。例えば、Matrigel、分解性アルギネートハイドロゲル、分解性PEG、および任意の他のハイドロゲルポリマーが細胞の3D培養のために使用され得る。複数の腫瘍試料を含有するマイクロカプセルを次に、試験薬物の存在または非存在下で培養した。反応後に、腫瘍細胞をマイクロカプセルから抽出し、それらのゲノムDNAをバーコード分析のために腫瘍細胞から調製した(
図5(5)および5(6))。無薬物条件と薬物条件との間のバーコードの比を、複数の腫瘍試料にわたる薬物応答を理解するために算出した。DNAバーコード付加がん試料の多重化は薬物試験のために以前に試みられているが(Yu et al.,2016)、それらは主に、異なるリードアウト(PRISM検出)を伴うin vitro 2Dがんモデル(またはマウスモデル)に限定されている。本明細書に記載される方法は、伝統的な細胞DNAバーコード付加方法をマイクロカプセル被包技術と組み合わせて、腫瘍の間のクロストークなしに多重化された3D腫瘍モデルにおける薬物試験を可能とするという点において新規であり、これは、マルチウェルプレートに基づくより伝統的な仕方と比較して3D腫瘍においてそのような薬物スクリーニングを行うための時間およびコストの有意な低減を可能とする。
【0171】
6.7.実施例7:3D腫瘍モデルにおける多重化されたCRISPR機能的ゲノミクス
3D腫瘍モデルにおける多重化されたCRISPR機能的ゲノミクスの図式が
図8に提供される。1つのゲノムスケールCRISPRライブラリーは、20,000個のヒト遺伝子を標的化する数十万のsgRNAを含有する。ゲノムスケールCRISPRライブラリーの複数のセットを、各々の腫瘍試料に独特のDNA配列を用いて個々にバーコード付加した(例えば、
図8においてBC1およびBC2)。Han,K.et al.(2020)「CRISPR screens in cancer spheroids identify 3D growth-specific vulnerabilities」,Nature,580(7801),pp.136-141に開示されるプロトコールを使用して、バーコード付加されたCRISPRライブラリーを次に腫瘍試料中に別々に形質導入した。腫瘍試料を次に、
図5において上記されるようにマイクロカプセル中に被包した。
【0172】
腫瘍試料の複数のセットを多重化し、培養した。28日間の培養後に、腫瘍細胞を抽出し、ゲノムDNAを腫瘍試料から調製した。ペアードエンドシークエンシングプロトコールを使用してIllumina NGSによりsgRNAおよび関連付けられるDNAバーコードを読み取り、かつカウントし、最後にsgRNAカウントを、各々の腫瘍試料に独特のDNAバーコードにより脱多重化した。元々の腫瘍試料にトレースバックされるsgRNAカウントを使用して、各々の腫瘍試料におけるCRISPR誘導性遺伝子変化を算出した。
【0173】
例として、2つの混合されたがん試料からのsgRNAカウントの脱多重化が
図9Aに図示される。2つのがん試料(試料1および試料2)に、独特にバーコード付加(BC1およびBC2)されたゲノムスケールCRISPRライブラリーを別々に形質導入した。2つのがん試料を個々に培養したか(試料1(非混合)もしくは試料2(非混合))、または組み合わせ、かつ一緒に培養した(試料1&2(混合))(
図9Aを参照)。
【0174】
それらのゲノムDNAを別々に2つのがん試料(非混合試料)から、または2つの混合されたがん試料(混合試料)から抽出した。sgRNAを非混合試料からカウントし、これは脱多重化を要求しなかった。混合された試料からのsgRNAは最初にDNAバーコードにより脱多重化し、各々の腫瘍試料についてカウントした。非混合または混合試料中の試料1および試料2からのsgRNAカウントのペアワイズ相関を比較し、それらのペアワイズ相関値を
図9Bのヒートマップとして提供している。ヒートマップは、混合された試料からの脱多重化されたsgRNAカウントは混合されていない試料中のそれらの元々の対応物に類似していることを明確に示し、試料1(非混合)は試料1(混合)と高い相関(>0.95のピアソン相関)を示す。試料2(非混合)は試料2(混合)とも高い相関を示す。
*で印をした試料は、NGS用のシークエンシングライブラリーを調製するために2工程PCRを用いて調製した一方、すべての他の試料は1工程PCRを用いて調製した。
【0175】
2つのゲノムスケールCRISPRスクリーニングを、
図8に記載されている手順にしたがって2つの多重化された腫瘍試料(RKO(結腸腫瘍)およびOVCAR8(卵巣腫瘍)試料)において同時に行った。sgRNAを上記のように脱多重化およびカウントし、脱多重化されたsgRNAカウントから各々の腫瘍試料についてCRISPR効果を算出した。
図10Aおよび
図10Bは、CRISPR誘導性ノックアウトの増殖への効果(x軸)および信頼度スコア(y軸)に基づくがん細胞増殖に影響した遺伝子をプロットしている。アッセイはいくつかの遺伝子(例えば、UBA6、YPEL5、CDK2、XRN1、SDHA、SLC7A5、PRKRA、CAD)を同定したが、これらはがん細胞増殖と関連付けられることが知られている。
【0176】
7.均等および参照による組込み
好ましい実施形態および様々な選択的な実施形態を参照して本発明が特に示され、記載されたが、形態および詳細における様々な変更が本発明の精神および範囲から離れることなく本発明において為され得ることが当業者により理解されるであろう。
【0177】
本明細書内で参照されるすべての参考文献、交付済み特許および特許出願は、すべての目的のために、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
8.配列表
【表1】
【配列表】
【国際調査報告】