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特表2024-527609哺乳動物でない水生動物の細胞及び抽出物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】哺乳動物でない水生動物の細胞及び抽出物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/075 20100101AFI20240718BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240718BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 5/076 20100101ALI20240718BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20240718BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C12N5/075
A23L33/10
C12N5/02
C12N5/076
A61K8/98
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501742
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 GB2022051823
(87)【国際公開番号】W WO2023285824
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】2110124.1
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2201345.2
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519063808
【氏名又は名称】シャー キャビア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ベニン,ケネス
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C083
【Fターム(参考)】
4B018MD74
4B018MD75
4B018ME02
4B065AA90X
4B065BC03
4B065BD09
4B065CA41
4B065CA50
4C083AA071
4C083CC01
4C083CC02
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、哺乳動物でない水生動物から細胞を培養するインビトロ方法、哺乳動物でない水生動物に由来する細胞、及び哺乳動物でない水生動物に由来する細胞を含有する製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期生殖細胞。
【請求項2】
前記生殖細胞が卵母細胞である、請求項1に記載の単離された第1期生殖細胞。
【請求項3】
哺乳動物でない水生動物由来の不死化生殖細胞。
【請求項4】
前記生殖細胞が卵母細胞である、請求項3に記載の不死化生殖細胞。
【請求項5】
前記生殖細胞が第1期卵母細胞である、請求項3に記載の不死化生殖細胞。
【請求項6】
前記生殖細胞が第2期卵母細胞である、請求項3に記載の不死化生殖細胞。
【請求項7】
前記生殖細胞が、第3期卵母細胞、第4期卵母細胞又は第5期卵母細胞である、請求項3に記載の不死化生殖細胞。
【請求項8】
前記生殖細胞が精子である、請求項3に記載の不死化生殖細胞。
【請求項9】
哺乳動物でない水生動物由来の不死化始原生殖細胞(PGC)。
【請求項10】
前記細胞が浮遊細胞である、請求項1から8のいずれか一項に記載の生殖細胞又は請求項9に記載の不死化PGC。
【請求項11】
請求項1から8若しくは10のいずれか一項に記載の生殖細胞の抽出物又は請求項9若しくは請求項10に記載の不死化PGCの抽出物。
【請求項12】
請求項1から8若しくは10のいずれか一項に記載の生殖細胞、請求項9若しくは請求項10に記載の不死化PGC、又は請求項11に記載の抽出物を含む化粧品。
【請求項13】
請求項1から8若しくは10のいずれか一項に記載の生殖細胞、請求項9若しくは請求項10に記載の不死化PGC、又は請求項11に記載の抽出物を含む栄養製品。
【請求項14】
前記生殖細胞又は不死化PGCの1つ又はそれ以上が無処置である、請求項13に記載の栄養製品。
【請求項15】
前記生殖細胞又は不死化PGCの1つ又はそれ以上が破壊されている、請求項13又は請求項14に記載の栄養製品。
【請求項16】
前記生殖細胞、不死化PGC又は抽出物が糖・塩を加えられている、請求項13から15のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項17】
前記生殖細胞、不死化PGC又は抽出物が塩水中に調合されている、請求項13から16のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項18】
前記生殖細胞、不死化PGC又は抽出物が乾燥されている、請求項13から17のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項19】
前記生殖細胞、不死化PGC又は抽出物が圧縮されている、請求項13から18のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項20】
前記栄養製品が燻製処理されている、請求項13から19のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項21】
前記生殖細胞、不死化PGC又は抽出物がビーズ又は真珠の中にある、請求項13から20のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項22】
前記ビーズ又は真珠がゲルである、請求項21に記載の栄養製品。
【請求項23】
前記ビーズ又は真珠がナトリウムアルギネートを含む、請求項21又は請求項22に記載の栄養製品。
【請求項24】
油、任意で植物油をさらに含む、請求項13から23のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項25】
前記栄養製品が缶に詰められている、請求項13から24のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項26】
前記栄養製品がチューブ内にある、請求項13から24のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項27】
前記栄養製品がスプレッド可能である、請求項13から26のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項28】
前記栄養製品が真空包装されている、請求項13から27のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項29】
前記栄養製品がパン、レモンジュース、ニンニク及びコショウの1つ又はそれ以上を含む、請求項13から28のいずれか一項に記載の栄養製品。
【請求項30】
請求項1から8若しくは10のいずれか一項に記載の生殖細胞、請求項9若しくは請求項10に記載の不死化PGC、又は請求項11に記載の抽出物を含む栄養補助食品。
【請求項31】
塩をさらに含む、請求項11に記載の抽出物、請求項12に記載の化粧品、請求項13から29のいずれか一項に記載の栄養製品、又は請求項30に記載の栄養補助食品。
【請求項32】
哺乳動物でない水生動物から浮遊生殖細胞を生産するインビトロ方法であって、
(a)細胞の混合物が集密状態に達するまで、哺乳動物でない水生動物由来の生殖細胞を含む細胞の混合物を増殖培地中で培養する工程と;
(b)培養された細胞の混合物から浮遊細胞を分離して、浮遊細胞の混合物を提供する工程と;
(c)任意で、浮遊細胞の前記混合物から浮遊生殖細胞を分離する工程と
を含む、方法。
【請求項33】
哺乳動物でない水生動物から浮遊PGCを生産するインビトロ方法であって、
(a)細胞の混合物が集密状態に達するまで、哺乳動物でない水生動物由来のPGCを含む細胞の混合物を増殖培地中で培養する工程と;
(b)培養された細胞の混合物から浮遊細胞を分離して、浮遊細胞の混合物を提供する工程と;
(c)任意で、浮遊細胞の前記混合物から浮遊PGCを分離する工程と
を含む、方法。
【請求項34】
浮遊細胞の前記混合物から浮遊生殖細胞を分離する工程が、遺伝マーカーについてスクリーニングすることを含む、請求項32又は請求項33に記載のインビトロ方法。
【請求項35】
細胞の前記混合物が、哺乳動物でない水生動物由来の生殖細胞の精製された混合物である、請求項32又は請求項34に記載のインビトロ方法。
【請求項36】
エピジェネティック修飾因子の存在下で前記細胞を培養する工程をさらに含み、任意で、前記エピジェネティック修飾因子はバルプロ酸及び酪酸から選択される、請求項32から35のいずれか一項に記載のインビトロ方法。
【請求項37】
前記生殖細胞が、第1期生殖細胞、任意で第1期卵母細胞、及び精子から選択される、請求項32又は34から36のいずれか一項に記載のインビトロ方法。
【請求項38】
哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞を生産するインビトロ方法であって、
(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;任意で、
(b)前記PGCから第1期卵母細胞を分離する工程と
を含む、方法。
【請求項39】
哺乳動物でない水生動物由来の単離された精子を生産するインビトロ方法であって、
(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;任意で、
(b)前記PGCから精子を分離する工程と
を含む、方法。
【請求項40】
哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞の抽出物を生産するインビトロ方法であって、
(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;
(b)任意で、前記PGCから第1期卵母細胞を分離する工程と;
(c)前記卵母細胞を処理して抽出物を提供する工程と
を含む、方法。
【請求項41】
前記生殖細胞が、PGCから卵母細胞を分離する前にPGCから分離される、請求項38から40に記載のインビトロ方法。
【請求項42】
前記PGCが不死化PGCである、請求項38から41のいずれか一項に記載のインビトロ方法。
【請求項43】
哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞を生産するインビトロ方法であって、不死化第1期卵母細胞を培養して第1期卵母細胞の増殖を誘導する工程を含む方法。
【請求項44】
化粧品を製造する方法であって、
(a)請求項1から8若しくは10のいずれか一項に記載の生殖細胞、請求項9若しくは10に記載の不死化PGC、又は請求項11若しくは31に記載の抽出物を、
(b)化粧品用の成分と
組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項45】
栄養製品を製造する方法であって、
(a)請求項1から8若しくは10のいずれか一項に記載の生殖細胞、請求項9若しくは10に記載の不死化PGC、又は請求項11若しくは31に記載の抽出物を、
(b)栄養製品用の成分と
組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項46】
栄養補助食品を製造する方法であって、
(a)請求項1から8若しくは10のいずれか一項に記載の生殖細胞、請求項9若しくは10に記載の不死化PGC、又は請求項11若しくは31に記載の抽出物を、
(b)栄養補助食品用の成分と
組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項47】
前記哺乳動物でない水生動物が魚である、請求項1から46のいずれか一項に記載の単離された第1期生殖細胞、不死化生殖細胞、不死化PGC、抽出物、化粧品、栄養製品、栄養補助食品、インビトロ方法又は製造する方法。
【請求項48】
前記魚が、チョウザメ、サケ、ダンゴウオ、メルルーサ、マス、カラフトシシャモ、スチールヘッド、コクチマス、コイ、ポロック(例えば、スケトウダラ)、ニシン(例えば、タイセイヨウニシン)、トビコ、トビコ模造品、タラ(例えば、タイセイヨウダラ)、マグロ、コクチマス、ナマズ、シャッド、オレンジ・ラッフィー、ボラ、アオザメ、パーチ(例えば、パイクパーチ)、無顎類、甲冑魚、トゲザメ、軟骨魚類、硬骨魚類、条鰭類及び総鰭類からなる群から選択される、請求項47に記載の単離された第1期生殖細胞、不死化生殖細胞、不死化PGC、抽出物、化粧品、栄養製品、栄養補助食品、インビトロ方法又は製造する方法。
【請求項49】
前記魚が、チョウザメ、サケ、ダンゴウオ、マス及びタラ(例えば、タイセイヨウダラ)からなる群から選択される、請求項48に記載の単離された第1期生殖細胞、不死化生殖細胞、不死化PGC、抽出物、化粧品、栄養製品、栄養補助食品、インビトロ方法又は製造する方法。
【請求項50】
前記哺乳動物でない水生動物が棘皮動物であり、任意で前記棘皮動物は、ウニ又はナマコである、請求項1から46のいずれか一項に記載の単離された第1期生殖細胞、不死化生殖細胞、不死化PGC、抽出物、化粧品、栄養製品、栄養補助食品、インビトロ方法又は製造する方法。
【請求項51】
前記哺乳動物でない水生動物が甲殻類であり、任意で、前記甲殻類はカニ又はロブスターである、請求項1から46のいずれか一項に記載の単離された第1期生殖細胞、不死化生殖細胞、不死化PGC、抽出物、化粧品、栄養製品、栄養補助食品、インビトロ方法又は製造する方法。
【請求項52】
任意で、より高い期の卵母細胞が第2期卵母細胞、第3期卵母細胞、第4期卵母細胞又は第5期卵母細胞である、より高いステージの卵母細胞の生産における中間体としての、請求項1から8、10又は47から51のいずれか一項に記載の生殖細胞の使用。
【請求項53】
生殖細胞、任意で卵母細胞、例えば第1期卵母細胞、第2期卵母細胞、第3期卵母細胞、第4期卵母細胞又は第5期卵母細胞の生産における中間体としての、請求項9、10又は47から51のいずれか一項に記載の不死化PGCの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の細胞、特に哺乳動物でない水生動物由来の生殖細胞、特に哺乳動物でない水生動物由来の卵母細胞を培養するインビトロ方法に関する。この方法は、生殖細胞への分化を誘導し、生殖細胞、特に卵母細胞を採取するために、哺乳動物でない水生動物由来の始原生殖細胞(PGC)のインビトロ培養を使用する。本発明は、生殖細胞、特に卵母細胞に分化する能力を増強又は延長するために不死化された、哺乳動物でない水生動物由来のPGCにも関する。哺乳動物でない水生動物由来のこれらの不死化PGCは、生殖細胞、特に卵母細胞を生産するための本発明のインビトロ方法において使用され得る。本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の不死化卵母細胞及び哺乳動物でない水生動物由来の不死化精子にも関する。哺乳動物でない水生動物由来の不死化第1期卵母細胞も、卵母細胞を生産するための本発明のインビトロ方法において使用され得る。本発明は、本発明の方法によって生産される、哺乳動物でない水生動物由来の生殖細胞、特に卵母細胞にも関する。本発明の卵母細胞(本発明の方法によって生産された卵母細胞を含む)は、典型的には「第1期」卵母細胞である。本発明は、本発明の卵母細胞、典型的には本発明の第1期卵母細胞を含む製品、例えば化粧品、栄養製品及び栄養補助食品にも関する。
【0002】
本明細書において、「キャビア」という用語は、フルサイズの「第3期」~「第5期」のチョウザメ卵母細胞である、雌のチョウザメの卵巣由来の塩処理された未受精の卵(卵母細胞)又は魚卵に関する本用語の従来の使用に対応する。本明細書において、「キャビア」という用語は、他の種類の哺乳動物でない水生動物の卵巣由来のフルサイズの卵母細胞も包含する。チョウザメのキャビアと同様に、他の種類の哺乳動物でない水生動物の卵巣に由来するキャビアは、典型的には「フルサイズ」の卵母細胞、典型的には「第3期」~「第5期」の卵母細胞である。
【0003】
哺乳動物でない水生動物には、チョウザメ及び他の種類の魚、例えば、サケ、ダンゴウオ、メルルーサ、マス、カラフトシシャモ(capelin)、スチールヘッド、コクチマス(whitefish)、コイ、ポロック(例えば、スケトウダラ)、ニシン(例えば、タイセイヨウニシン)、トビコ、トビコ模造品、タラ(例えば、タイセイヨウダラ)、マグロ、コクチマス、ナマズ、シャッド(shad)、オレンジ・ラッフィー(orange roughy)、ボラ、アオザメ、パーチ(例えば、パイクパーチ)、無顎類、甲冑魚、トゲザメ(spiny shark)、軟骨魚類、硬骨魚類、条鰭類又は総鰭類が含まれる。哺乳動物でない水生動物には、棘皮動物、例えばウニ又はナマコも含まれる。哺乳動物でない水生動物には、甲殻類、例えばカニ又はロブスターも含まれる。
【0004】
好ましい実施形態では、哺乳動物でない水生動物は魚である。
【0005】
本明細書において、「キャビア」という用語は、典型的には、その卵母細胞がヒトによって摂取される哺乳動物でない水生動物の卵巣由来の卵母細胞を指す。本明細書において、「キャビア」という用語は、その卵母細胞が非ヒト哺乳動物、例えば家庭用ペット、例えばネコ及びイヌによって摂取される哺乳動物でない水生動物の卵巣由来の卵母細胞も包含する。
【背景技術】
【0006】
キャビアは、その生産の困難さ及び傷みやすい性質のために、一般に高級食品と見なされており、風味、形状、色及び食感を含む品質が高く評価されている。
【0007】
最も高く評価されているキャビアは、チョウザメからのものである。チョウザメは、アシペンサー(Acipenser)属、フソ(Huso)属、スカフィリンクス(Scaphirhynchus)属及びシュードスカフィリンクス(Pseudoscaphirhynchus)属を含む、アシペンセリダエ(Acipenseridae)科の多数の魚の種に対する一般名である(さらなる情報については、www.sturgeonweb.co.ukを参照されたい。)。チョウザメのキャビアの文脈では、「キャビア」という用語は、キャビア生産と一般に関連する2つの種、アシペンサー及びフソを指すためにより排他的に使用される。例えば、野生のベルーガチョウザメ(フソ・フソ(Huso huso))に由来するベルーガキャビアは伝統的に高く評価されてきたが、他のチョウザメ種もチョウザメキャビアの生産で周知であり、ますます多く養殖されている。これらには、例えば、現在、Exmoor Caviarによって英国でのチョウザメキャビア生産のために初めて養殖されているシベリアチョウザメ(アシペンサー・バエリイ(Acipenser baerii))及び他のアシペンサー種が含まれる。
【0008】
食品、しばしば高級食品であるのみならず、キャビアは、その栄養学及び美容上の利益に関して広く認められている。キャビアに関連する望ましい特性には、増強された細胞代謝、線維芽細胞によるコラーゲン産生の刺激、酸化ストレスに対する保護(及び付随する、細胞膜の改善された維持)及び皮膚の水分補給が含まれる。キャビアはまた、タンパク質、アミノ酸及び脂肪酸、脂質、ビタミン及びミネラルのその望ましいプロファイルに関しても認められている。キャビアの望ましい特性により、キャビア及びキャビア抽出物は、高級食品を含む食品としてのその従来の使用をはるかに超えて広がる用途で広く使用されている。キャビア及びキャビア抽出物(特に、チョウザメキャビア及びチョウザメキャビア抽出物)が、例えばスキンクリーム中で、並びにペットフード及びウォッカを補うために現在使用されている化粧品及び栄養的用途よりこのことが顕著である分野は存在しない。
【0009】
キャビア及びキャビア抽出物に対するかなりの、増大する需要にもかかわらず、キャビア生産は、特にチョウザメキャビアの場合、労働集約的で遅いままである。
【0010】
例として、チョウザメキャビアの生産における重要な制限要因は、雌のチョウザメが生殖成熟に達するのに何年もかかることである。雌のシベリアチョウザメは、一般に、成熟して産卵するのに8~10年かかり、いくつかの種、例えばベルーガチョウザメの雌は、はるかに長く、例えば約20年又はそれ以上かかる。この時間を短縮するために、いくつかのハイブリッド交雑種が実現しており、例えば、雄のフソ・フソ(Huso huso)チョウザメをより早く成熟する種、例えばアシペンサー・スターレット(Acipenser sterlet)又はバエリイ(baerii)と交配して、養殖用の交配種を提供しているが、ハイブリッド交雑種でさえ、生殖成熟に達するのに数年かかる。
【0011】
チョウザメの養殖は、チョウザメキャビア生産に関して野生のチョウザメに依存するという生態学的問題に対処し、チョウザメキャビア生産をより広く可能にするが、チョウザメキャビアの生産者にとっては、魚卵の劣化を回避するために、一旦抽出されたら魚卵袋(roe sack)を迅速に処理する必要性に加えて、魚卵の採取のタイミング、好ましくは放卵の直前を慎重に図る必要性という問題が残っている。これは依然として、通常は手作業で行われる繊細な作業である。魚卵袋は、通常、ナイロンメッシュ又はステンレス鋼ふるいのいずれかのふるいを横切って穏やかに擦られ、それによって魚卵が魚卵袋の膜から分離され、ふるいを通過して収集される。魚卵の放出及び分離を助けるために、冷たい流水が使用され得る。味のために必要であるため、及び保存を助けるために、分離された魚卵に塩が添加される。安定剤、例えばE285安定剤がさらに添加され得る。ここではチョウザメキャビアである魚卵は、冷蔵貯蔵のために、通常は真空下で気密密封した容器内に詰められる。チョウザメキャビアは、その後、より少量で、再包装され得る。
【0012】
高い世界的な需要は、チョウザメキャビアに限定されない。他の種類の哺乳動物でない水生動物からのキャビアは、化粧品から栄養に及ぶ多種多様な用途にとって非常に望ましい。これらの他の種類のキャビアは、典型的には、チョウザメキャビアよりも安価であるが、それらの収穫によって課される環境的影響は、同じく、河川及び海洋に対して壊滅的であり、例として、1年(2018年)で、ロシアの漁業は、サケ魚卵のみで、22,200メートルトンを収穫した。キャビアへのこのような高い需要は、既に激減している魚の個体群、例えばタラ及びダンゴウオによって、よりいっそう痛切に感じられる。さらに、哺乳動物でない水生動物の屠殺にまつわる倫理的懸念は、チョウザメの場合と全く同じように妥当し、他の種類のキャビアの潜在的市場を同様に制限する。結局のところ、キャビア産業においてなされた進歩にもかかわらず、生産は依然として遅く、キャビアは比較的高価なままである。確立されたキャビア生産方法も、キャビア収穫時に哺乳動物でない水生動物を屠殺する必要性が障壁になっており、キャビア及びキャビア抽出物を含有する製品の潜在的な商業市場を制限する。
【0013】
キャビアに関連する非常に望ましい特性を有するが、生産がより速く、より安価で、より倫理的であり、急速に増加している需要を満たすのに十分な量で生産することができる製品に対する要求が当分野において存在する。キャビアに関連する非常に望ましい特性を有し、魚の個体群、特に既に激減している個体群、例えばタラ及びダンゴウオに対してかかるかなりの圧力を軽減するのに役立つ製品に対する要求が特に存在する。このような製品を生産する方法に対する要求も、当分野において存在する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、食品としての、多くの場合高級食品としてのキャビアに要求されること(例えば、風味、形状、色及び食感)の多くは、他の用途での(例えば、栄養製品又は化粧品での)キャビアの使用にはほとんど無関係であるという驚くべき認識に基づいている。本明細書では、「栄養製品」は、それらの栄養価のために摂取される製品を含むが、伝統的なキャビア(哺乳動物でない水生動物の卵巣からのフルサイズの卵母細胞)は含まない。実際、キャビアの外観及び食感(キャビア愛好家によってそのように望まれる)は、(例えば、栄養製品又は化粧品の)調製中に破壊されることが多く、(例えば、美顔用クリームでは)望ましくない場合さえある。これにもかかわらず、キャビア及びキャビア抽出物は、多くの用途にとってゴールドスタンダードであり続けている。その結果、食品産業、特に高級食品産業によって課される多くの要求は他の用途にとっては無関係であるにもかかわらず、キャビア及びキャビア抽出物を含有する(が、キャビアそのものではない)多くの既存の製品の高いコストの大部分はこのような要求によって引き起こされる。さらに、キャビア及びキャビア抽出物を含有する製品の現在の生産は、通例、倫理的な疑問をもたらし、それらの潜在的な商業市場を制限する哺乳動物でない水生動物、例えば魚の屠殺を必要とする。
【0015】
本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の(キャビアより初期の発生段階にある)「第1期」卵母細胞が、キャビアに固有の非常に望ましい特性(例えば、増強された細胞代謝、線維芽細胞によるコラーゲン産生の刺激、酸化ストレスからの保護(及びそれに伴う改善された細胞膜の維持)及び皮膚の水分補給;並びにタンパク質、アミノ酸及び脂肪酸、脂質、ビタミン及びミネラルの望ましいプロファイル)を有するという驚くべき発見にも基づいている。キャビアと同様に、本発明の第1期卵母細胞も、例えば栄養製品又は化粧品における使用に非常に適している。
【0016】
哺乳動物でない水生動物由来の第1期卵母細胞は、本発明者らの知る限りでは、哺乳動物でない水生動物由来のキャビアに固有の非常に望ましい特性を有するが、哺乳動物でない水生動物由来の第1期卵母細胞は、(キャビアとは異なり)これまで食品として直接摂取されたことはなく、栄養製品又は化粧品において使用されたこともない。実際、哺乳動物でない水生動物由来のキャビアに固有の非常に望ましい特性を提供しようとする場合、市場は依然としてキャビアそのものに焦点を合わせている。
【0017】
本発明の第1期卵母細胞は、最も注目すべきこととして、サイズの点でキャビアとは明らかに異なる。例えば、ほとんどの第1期魚卵母細胞は、典型的には直径が200μM未満であるのに対して、例えば、チョウザメキャビア卵母細胞は、典型的には直径が1000~1200μMであり、ベニザケキャビア卵母細胞は、典型的には直径が約5600μMであり、シロザケキャビア卵母細胞は、典型的には直径が約8300μMである。(魚卵母細胞に限定されない)このサイズ差と一致して、本発明の第1期卵母細胞は、キャビアとは異なる外観及び食感を有し、したがって、例えば、食品としてのキャビア、特に高級食品としてのキャビアの視覚的な及び口当たりの質を欠く。本発明者らは、キャビア(例えば、第3期~第5期の魚卵母細胞;又はその抽出物)への市場の注目が強すぎたために、食品としての、特に高級食品としてのキャビアに課される要求を満たすことができない代替物は検討さえされてこなかったと考える。
【0018】
本発明は、有利に、(A)(例えば、栄養製品及び化粧品において使用するために)キャビアに固有の非常に望ましい特性を、(B)食品としての、特に高級食品としてのキャビアに課される要求から「切り離す」。キャビアとは異なり、哺乳動物でない水生動物由来の第1期卵母細胞はインビトロで生産され得る。キャビアと比較して:
i)本発明の第1期卵母細胞は、キャビアより迅速に生産され得る(卵母細胞が(少なくとも)第3期に達するのを待たないなど、哺乳動物でない水生動物、例えば魚が生殖成熟に達するのを待たない);
ii)本発明の第1期卵母細胞は、より安価に生産され得る(インビトロ生産に伴うコストは、漁獲又は養殖、特にチョウザメの漁獲又は養殖よりもはるかに低い);及び
iii)本発明の第1期卵母細胞は倫理的懸念を回避し、より大きな商業市場を提供する(本発明の第1期卵母細胞の生産には、哺乳動物でない水生動物、例えば魚の関与がない)。
【0019】
哺乳動物でない水生動物から生殖細胞(例えば、魚、例えばチョウザメ由来の生殖細胞)を商業的に実行可能な量で生産するために、本発明者らは、多くの技術的課題を克服した。背景として、1970年代以来、基礎的な生物学的研究のためのモデル生物としてのゼブラフィッシュ(ダニオ・レリオ(Danio rerio))の受精卵母細胞(Streisingerら、1981)から始まって、魚細胞は実験室で操作されてきた。より最近では、絶滅危惧種を保存するための技術を開発する目的で魚の繁殖を研究するために、魚細胞は実験室で培養され、操作されてきた(Wongら、2013)。チョウザメを含むほとんどの魚種では、頭腎は哺乳動物の副腎に類似した器官であり、成長及び発達を制御する重要なホルモンを分泌する(Geven and Klaren、2017)。Cibaら(2008)は、1歳のシベリアチョウザメ(アシペンサー・バエリイ(Acipenser baerii))から採取された頭腎組織から細胞を単離し、細胞を増殖培地中の組織培養容器に移した。頭腎由来の細胞を標準的な増殖培地中で1年間継代することに成功した。回収された卵巣細胞は、生殖系列特異的なタンパク質であるvasaの存在によって生殖細胞であることが確認された。これらの卵巣細胞を「スターレット」チョウザメ(アシペンサー・ルテヌス(Acipenser ruthenus))の幼生の腹腔に移植し、そこで、これらの卵巣細胞は、90日間にわたって10個未満の細胞から100個を超える細胞まで増殖することが観察された。
【0020】
揚子江チョウザメ、長江チョウザメ又は川チョウザメとしても知られているダブリーチョウザメ(アシペンサー・ダブリアヌス(Acipenser dabryanus))は、中国固有のチョウザメである。Xieら(2019)は、2歳のダブリーチョウザメの生殖腺から細胞を回収した。生殖腺由来細胞のうち、非生殖細胞はプラスチック培養フラスコの表面に接着する傾向があり、懸濁液中に残存する生殖細胞の回収を可能にした。生殖細胞を無血清培地中で最長40日間培養し、その期間に細胞数の十倍の増加が観察された。
【0021】
現在、低コストで、1~7日の時間スケールで細胞を多数まで急速に増殖させることを可能にする、哺乳動物でない水生動物、例えば魚由来の細胞の長期培養のための方法は、長期間にわたって細胞の増殖特性を保存する細胞の凍結保存及び凍結再生(cryorevival)の継続的サイクルと併せて、存在しない。
【0022】
本発明より前には、哺乳動物でない水生動物、例えば魚から採取された細胞を不死化し、経時的な細胞数の増大が迅速であり、所望の細胞型に分化するように誘発することができ、凍結保存及び凍結再生の無制限なサイクル全体を通してこれらの特性を保持することができる方法に対する要求が当分野において存在していた。この要求は、哺乳動物でない水生動物からの生殖細胞、特に卵母細胞を生産するためのインビトロ方法を提供する本発明によって満たされる。
【0023】
本発明の生殖細胞(例えば不死化生殖細胞)及びPGC(例えば不死化PGC)は、(例えば、接着性細胞培養又は浮遊細胞培養としての)培養培地中での生産に理想的に適しており、これにより、低コストで効率的な細胞生産が可能になる。予想外にも、本発明は、浮遊細胞培養で増殖する単離された生殖細胞(例えば不死化生殖細胞)及びPGC(例えば不死化PGC)(本明細書では、「浮遊」細胞という。)、並びにそれらを生産するための方法を提供する。浮遊細胞は、大量生産及びバッチ収穫に特に望ましく、産業及び研究用途に特に有利である。接着性細胞と比較して、浮遊細胞は継代がより容易であり、酵素的又は機械的解離を必要とせず、容易に規模が拡大され得る。
【0024】
本発明によれば、哺乳動物でない水生動物、例えば魚からの組織から細胞を採取するために、酵素に基づく細胞分離方法が使用され得る。次いで、所望の細胞型の選別及び単離のための方法、例えば接着/浮遊継代培養、ビーズベースの方法又は蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いる、採取された卵巣由来細胞を液体培養中で拡大させるための手順が適用される。浮遊細胞が特に望ましい。次いで、自発的不死化が観察されるまで、連続的な細胞継代が行われ得る。不死化細胞、例えば不死化魚細胞のクローン由来集団を得るために、限界希釈技術が使用され得る。卵母細胞が望まれる場合、卵母細胞のマーカー及び表現型を有し、迅速な細胞分裂を示すクローンを同定するために、クローン由来集団(「クローン」)はスクリーニングされる。(例えば、人工受精に使用するために)精子が所望される場合、精子のマーカー及び表現型を有し、迅速な細胞分裂を示すクローンを同定するために、クローンはスクリーニングされる。PGCが所望される場合(例えば、魚PGC、例えばチョウザメPGC)、PGCのマーカー及び表現型を有し、迅速な細胞分裂を示すクローンを同定するために、クローンはスクリーニングされる。
【0025】
哺乳動物でない水生動物、例えば魚由来の不死化細胞クローンのマスター細胞バンク及びワーキング細胞バンクを確立し、液体窒素下及び-80℃の冷凍庫ユニット中で保存する。必要とされる特徴、例えば増殖能力の保持について監視しながら、望ましい特性を有するクローンを、典型的には無血清培地に、最終的には化学組成が明らかな培地に馴化させる。その中で卵母細胞の分化及び拡大を指示するための卵巣類似環境が、増殖培地及び組換えタンパク質を含むその成分において確立され得る。
【0026】
卵母細胞のインビトロ分化に有利な増殖培地補充物質としては、例えば、上皮増殖因子(例えば約25ng/mL)、塩基性線維芽細胞増殖因子(例えば約25ng/mL)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(例えば約5IU/mL)、妊馬血清性ゴナドトロピン(例えば約2IU/mL)、グリア細胞株由来神経栄養因子(例えば約25ng/mL)及び白血病抑制因子(例えば約25ng/mL)が挙げられる。
【0027】
本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期生殖細胞を提供する。いくつかの実施形態では、単離された第1期生殖細胞は卵母細胞である。
【0028】
本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の不死化生殖細胞も提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、不死化生殖細胞は卵母細胞である。いくつかの実施形態では、生殖細胞は第1期卵母細胞である。いくつかの実施形態では、生殖細胞は第2期卵母細胞である。いくつかの実施形態では、生殖細胞は、第3期卵母細胞、第4期卵母細胞又は第5期卵母細胞である。
【0030】
いくつかの実施形態では、不死化生殖細胞は精子である。
【0031】
本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の不死化始原生殖細胞(PGC)も提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、生殖細胞は浮遊生殖細胞である。いくつかの実施形態では、不死化生殖細胞は、不死化浮遊生殖細胞である。いくつかの実施形態では、PGCは浮遊PGCである。いくつかの実施形態では、不死化PGCは不死化浮遊PGCである。
【0033】
いくつかの実施形態では、生殖細胞は接着性生殖細胞である。いくつかの実施形態では、不死化生殖細胞は不死化接着性生殖細胞である。いくつかの実施形態では、PGCは接着性PGCである。いくつかの実施形態では、不死化PGCは不死化接着性PGCである。
【0034】
本発明は、より高い期の卵母細胞の生産における中間体としての本発明の生殖細胞(例えば、本発明の不死化生殖細胞)の使用も提供する。したがって、一実施形態では、本発明は、第2期卵母細胞、第3期卵母細胞、第4期卵母細胞又は第5期卵母細胞の生産における中間体としての第1期卵母細胞の使用を提供する。
【0035】
本発明は、生殖細胞、任意で卵母細胞、例えば第1期卵母細胞、第2期卵母細胞、第3期卵母細胞、第4期卵母細胞又は第5期卵母細胞の生産における中間体としての本発明のPGC(例えば、本発明の不死化PGC)の使用も提供する。
【0036】
本発明は、本発明の生殖細胞の抽出物又は本発明の不死化PGCの抽出物も提供する。
【0037】
本発明は、本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC又は本発明の抽出物を含む化粧品も提供する。本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された卵母細胞、例えば第1期卵母細胞、第2期卵母細胞、第3期卵母細胞若しくは第4期卵母細胞又はその抽出物を含む化粧品も提供する。
【0038】
本発明は、本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC又は本発明の抽出物を含む栄養製品も提供する。本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された卵母細胞、例えば第1期卵母細胞、第2期卵母細胞、第3期卵母細胞若しくは第4期卵母細胞又はその抽出物を含む栄養製品も提供する。
【0039】
本発明は、本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC又は本発明の抽出物を含む栄養補助食品も提供する。本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された卵母細胞、例えば第1期卵母細胞、第2期卵母細胞、第3期卵母細胞若しくは第4期卵母細胞又はその抽出物を含む栄養補助食品も提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、抽出物、化粧品又は栄養製品は、塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、塩はナトリウム塩、例えば塩化ナトリウムである。
【0041】
本発明は、哺乳動物でない水生動物から浮遊生殖細胞を生産するインビトロ方法であって、(a)細胞の混合物が集密状態に達するまで、哺乳動物でない水生動物由来の生殖細胞を含む細胞の混合物を増殖培地中で培養する工程と;(b)培養された細胞の混合物から浮遊細胞を分離して、浮遊細胞の混合物を提供する工程と;(c)任意で、浮遊細胞の前記混合物から浮遊生殖細胞を分離する工程とを含む、方法も提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、浮遊生殖細胞を浮遊細胞の混合物から分離する工程は、生殖細胞に対する遺伝マーカーについてスクリーニングすることを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、細胞の混合物は、哺乳動物でない水生動物由来の生殖細胞の精製された混合物である。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、エピジェネティック修飾因子の存在下で生殖細胞を培養する工程をさらに含み、任意で、エピジェネティック修飾因子はバルプロ酸及び酪酸から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本方法は、フィーダー細胞、例えばゼブラフィッシュ肝細胞及び/又はニジマス線維芽細胞の存在下で生殖細胞を培養する工程をさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本方法は、追加の培地補充物質、例えば組換えコイ成長ホルモン、ビテロゲニン、サケゴナドトロピン放出ホルモン(sGnRHa)-(Ovaprim)、黄体形成ホルモン又はゴナドトロピン放出ホルモンの存在下で生殖細胞を培養する工程をさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、本方法は、可溶性チョウザメ卵嚢材料及び/又はチョウザメ血清(血液)の存在下で生殖細胞を培養する工程をさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、生殖細胞は、第1期生殖細胞、任意で第1期卵母細胞、及び精子から選択される。
【0049】
本発明は、哺乳動物でない水生動物から浮遊PGCを生産するインビトロ方法であって、(a)細胞の混合物が集密状態に達するまで、哺乳動物でない水生動物由来のPGCを含む細胞の混合物を増殖培地中で培養する工程と;(b)培養された細胞の混合物から浮遊細胞を分離して、浮遊細胞の混合物を提供する工程と;(c)任意で、浮遊細胞の混合物から浮遊PGCを分離する工程とを含む、方法も提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、浮遊細胞の混合物から浮遊PGCを分離する工程は、PGCに対する遺伝マーカーについてスクリーニングすることを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞の混合物は、哺乳動物でない水生動物由来のPGCの精製された混合物である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本方法は、エピジェネティック修飾因子の存在下でPGCを培養する工程をさらに含み、任意で、エピジェネティック修飾因子はバルプロ酸及び酪酸から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態では、本方法は、フィーダー細胞、例えばゼブラフィッシュ肝細胞及び/又はニジマス線維芽細胞の存在下でPGCを培養する工程をさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、本方法は、追加の培地補充物質、例えば組換えコイ成長ホルモン、ビテロゲニン、サケゴナドトロピン放出ホルモン(sGnRHa)-(Ovaprim)、黄体形成ホルモン又はゴナドトロピン放出ホルモンの存在下でPGCを培養する工程をさらに含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本方法は、可溶性チョウザメ卵嚢材料及び/又はチョウザメ血清(血液)の存在下でPGCを培養する工程をさらに含む。
【0056】
本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞を生産するインビトロ方法であって、(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;任意で、(b)前記PGCから第1期卵母細胞を分離する工程とを含む方法も提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞を生産するインビトロ方法であって、哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞を生産するインビトロ方法であって、(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;(b)前記PGCから第1期卵母細胞を分離する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、単離された第1期卵母細胞を生産する方法は、例えば培養培地を除去するために単離された第1期卵母細胞を洗浄する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、PGCは浮遊PGCである。いくつかの実施形態では、単離された第1期卵母細胞は、単離された浮遊第1期卵母細胞である。
【0057】
本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された精子を生産するインビトロ方法であって、(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;任意で、
(b)前記PGCから精子を分離する工程とを含む、方法も提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された精子を生産するインビトロ方法であって、哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された精子を生産するインビトロ方法であって、(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;(b)前記PGCから精子を分離する工程とを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、単離された精子を生産する方法は、例えば培養培地を除去するために単離された精子を洗浄する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、PGCは浮遊PGCである。いくつかの実施形態では、単離された精子は、単離された浮遊精子である。
【0058】
本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞の抽出物を生産するインビトロ方法であって、(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;(b)任意で、前記PGCから第1期卵母細胞を分離する工程と;(c)前記卵母細胞を処理して抽出物を提供する工程とを含む、方法も提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞の抽出物を生産するインビトロ方法であって、(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;(b)前記卵母細胞を処理して抽出物を提供する工程とを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞の抽出物を生産するインビトロ方法であって、(a)哺乳動物でない水生動物由来のPGCを培養して生殖細胞への分化を誘導する工程と;(b)前記PGCから第1期卵母細胞を分離する工程と;(c)前記卵母細胞を処理して抽出物を提供する工程とを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、単離された第1期卵母細胞の抽出物を生産する方法は、例えば培養培地を除去するために単離された第1期卵母細胞を洗浄する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、PGCは浮遊PGCである。いくつかの実施形態では、単離された第1期卵母細胞は、単離された浮遊第1期卵母細胞である。
【0059】
いくつかの実施形態では、インビトロ方法は、PGCから卵母細胞を分離する前に、哺乳動物でない水生動物由来のPGCから生殖細胞を分離する工程を含む。いくつかの実施形態では、PGCは不死化PGCである。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳動物でない水生動物由来の単離された第1期卵母細胞を生産するインビトロ方法であって、不死化第1期卵母細胞を培養して第1期卵母細胞の増殖を誘導する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、例えば培養培地を除去するために、第1期卵母細胞を洗浄する工程をさらに含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、単離された第1期卵母細胞(例えば不死化第1期卵母細胞)を生産するための方法は、本明細書に記載されている単離された浮遊第1期卵母細胞(例えば不死化浮遊第1期卵母細胞)を生産する工程をさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、PGC(例えば不死化PGC)を生産するための方法は、本明細書に記載されている浮遊PGC(例えば不死化浮遊PGC)を生産する工程をさらに含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、単離された第1期卵母細胞(例えば不死化第1期卵母細胞)を生産するための方法は、本明細書に記載されている単離された接着性第1期卵母細胞(例えば不死化接着性第1期卵母細胞)を生産する工程をさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、PGC(例えば不死化PGC)を生産するための方法は、本明細書に記載されている接着性PGC(例えば不死化接着性PGC)を生産する工程をさらに含む。
【0065】
本発明は、化粧品を製造する方法であって、(a)本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC、又は本発明の抽出物を、(b)化粧品用の成分と組み合わせる工程を含む方法も提供する。
【0066】
本発明は、栄養製品を製造する方法であって、(a)本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC、又は本発明の抽出物を、(b)栄養製品用の成分と組み合わせる工程を含む方法も提供する。
【0067】
本発明は、栄養補助食品を製造する方法であって、(a)本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC、又は本発明の抽出物を、(b)栄養補助食品用の成分と組み合わせる工程を含む方法も提供する。
【0068】
栄養製品
本発明の栄養製品は、本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC、及び/又は本発明の抽出物を含む。本発明の栄養製品は、典型的には食品として摂取される。
【0069】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の1つ又はそれ以上の無処置の生殖細胞を含む。いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の1つ又はそれ以上の無処置の不死化PGCを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の1つ又はそれ以上の破壊された生殖細胞を含む。いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の1つ又はそれ以上の破壊された不死化PGCを含む。破壊は、任意の手段、例えば、機械的(例えば剪断力によって)、加熱(例えば調理中に)及び/又は溶解によるものであり得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、栄養製品は新鮮である。一実施形態では、栄養製品は冷凍される。いくつかの実施形態では、栄養製品は塩水中に調合される。いくつかの実施形態では、栄養製品は燻製処理されるいくつかの実施形態では、栄養製品は缶に詰められている。いくつかの実施形態では、栄養製品はチューブに入れて提供される。いくつかの実施形態では、栄養製品はスプレッド可能(spreadable)である。いくつかの実施形態では、栄養製品は真空包装される。
【0072】
いくつかの実施形態では、栄養製品は密封される。
【0073】
いくつかの実施形態では、栄養製品は着色剤を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、栄養製品は密封され、熱処理される、例えば低温殺菌される。
【0075】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の燻製処理された生殖細胞を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の燻製処理された不死化PGCを含む。いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の燻製処理された抽出物を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の糖・塩を加えられた(sugar-salted)生殖細胞を含む。いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の糖・塩を加えられた不死化PGCを含む。いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の糖・塩を加えられた抽出物を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の乾燥された及び任意で塩を加えられた生殖細胞を含む。いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の乾燥された及び任意で塩を加えられた不死化PGCを含む。いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の乾燥された及び任意で塩を加えられた抽出物を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、油、典型的には植物油を含む。栄養製品は、パン、レモンジュース、ニンニク及びコショウの1つ又はそれ以上をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、栄養製品は、タラモサラタ(taramasalata)である。
【0080】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の糖・塩を加えられた生殖細胞、糖・塩を加えられた不死化PGC及び/又は糖・塩を加えられた抽出物、並びに油、典型的には植物油を含む。栄養製品は、ディル及びジャガイモ粉の1つ又はそれ以上をさらに含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の圧縮された生殖細胞、圧縮された不死化PGC及び/又は圧縮された抽出物を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の乾燥された及び塩を加えられた生殖細胞、乾燥された及び塩を加えられた不死化PGC並びに/又は乾燥された及び塩を加えられた抽出物を含む。いくつかの実施形態では、栄養製品は、本発明の圧縮された、乾燥された及び塩を加えられた生殖細胞、圧縮された、乾燥された及び塩を加えられた不死化PGC並びに/又は圧縮された、乾燥された及び塩を加えられた抽出物を含む。いくつかの実施形態では、蜜蝋の薄層が、本発明の圧縮された、乾燥された及び塩を加えられた生殖細胞に、圧縮された、乾燥された及び塩を加えられた不死化PGCに、並びに/又は圧縮された、乾燥された及び塩を加えられた抽出物に適用される。いくつかの実施形態では、栄養製品は、ボッタルガ(bottarga)又はプタルグ(poutargue)である。
【0083】
いくつかの実施形態では、栄養製品は、ビーズ又は真珠の中に封入された、本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC、及び/又は本発明の抽出物を含む。一実施形態では、ビーズ又は真珠はゲルである。一実施形態では、ビーズ又は真珠はナトリウムアルギネートを含む。
【0084】
ナトリウムアルギネートを含むビーズ又は真珠を製造する方法は、当分野で周知であり、分子ガストロノミーにおいて、しばしば「球状化」方法と呼ばれる。典型的には、ナトリウムアルギネートを含む「アルギネート添加液体(alginated liquid)」を、カルシウム塩、典型的には塩化カルシウム又はカルシウムグルケートラクテートを含む溶液と混合する(典型的には、その中に滴下する)。アルギネート添加液体の各液滴は、典型的には、カルシウム塩を含む溶液中で「球」を形成する。数秒~数分の反応時間中、カルシウム塩を含む溶液中のカルシウムは、アルギネート添加液体の液滴の周りに薄い柔軟な膜又は殻の形成を引き起こす。本発明の一実施形態では、本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC、及び/又は本発明の抽出物は、ナトリウムアルギネートと混合されてアルギネート添加液体を提供し、次いで、カルシウム塩、典型的には塩化カルシウム又はカルシウムラクテートを含む溶液と混合される(典型的には、その中に滴下される)。一実施形態では、アルギネート添加液体は、塩(典型的には1~6%の塩、例えば2~5%、2~4%又は3%の塩)をさらに含む。一実施形態では、アルギネート添加液体は、塩(典型的には1~6%の塩、例えば2~5%、2~4%又は3%の塩)及びE285(ホウ砂)をさらに含む。存在する場合、ホウ砂は、典型的には、0.1~1%、例えば0.2~0.8%、0.3~0.7%又は4%の濃度である。いくつかの実施形態では、アルギネート添加液体は着色剤を含む。
【0085】
一実施形態では、本発明の生殖細胞、本発明の不死化PGC、及び/又は本発明の抽出物は、望ましい稠度を与えるためにナトリウムアルギネート(0.5%)と3分間混合され、次いで、カルシウムラクテート(0.5%)を含有する冷水浴に滴加される。インキュベーション期間は、ビーズ又は真珠の所望の硬度に応じて調整される。いくつかの実施形態では、次いで、塩及び任意でホウ砂が真珠に添加される。
【0086】
主要な用語のまとめ:
「第1期卵母細胞」は、「前卵黄形成期(pre-vitellogenesis stage)」、「初期前卵黄形成性(early previtellogenic)」又は「一次卵母細胞期」卵母細胞としても知られている。第1期卵母細胞は、幹細胞マーカーを失った、例えば魚由来の生殖巣細胞である。第1期卵母細胞は極めて小さく始まり(典型的には7~10μM)、まだ卵黄を含有していない。有糸分裂を通じて数が増加し、この期の終わりに、卵母細胞はそれらのサイズを約200μMに増加させる。
【0087】
「第2期卵母細胞」は、「内因性卵黄形成期」又は「中間前卵黄形成性(mid-previtellogenic)」としても知られている。この期の中で、卵母細胞の卵黄が形成される。この期における卵黄の起源は、卵母細胞自体である。
【0088】
「第3期卵母細胞」は、「外因性卵黄形成」又は「後期前卵黄形成性(late-previtellogenic)」としても知られている。この期の間、卵母細胞は、1000~1200μM(1~1.2mm)のその最終サイズまで増加する。この期の間、卵母細胞における卵黄形成が増加する。大きな核(0.2mm)がはっきりと見える。この期の卵母細胞は「成熟卵」とも呼ばれる。第3期卵母細胞は、環境因子が排卵を誘発するまでこの期に留まる。
【0089】
「第4期卵母細胞」は、「排卵された卵」又は「卵黄形成性」としても知られている。排卵された卵は、卵巣組織から排卵又は遊離される。排卵の間、卵黄は1つの小滴へと蓄積し、卵は透明になり、核は卵の外側(動物極)に完全に移動する。
【0090】
「第5期卵母細胞」は、「閉鎖卵」又は「後卵黄形成性」としても知られている。これらは十分に排卵されず、哺乳動物でない水生動物、例えば魚によって再吸収されるか、又はリサイクルされる。第5期卵母細胞は、それらの「赤みを帯びた(flushy)」外観によって区別される。
【0091】
本明細書において、「単離された」細胞は、その自然環境から単離されている細胞である。
【0092】
本明細書において、「単離された」細胞はまた、非天然プロセスによって生産された細胞、例えば不死化細胞(又は不死化細胞の増殖産物)を指す。
【0093】
本明細書において、PGCから卵母細胞又は精子を「分離する」とは、PGCを含有する培地から卵母細胞又は精子を実質的に抽出することを指す。
【0094】
「生殖細胞」は、卵母細胞又は精子を指す。
【0095】
「始原生殖細胞」(PGC)は、精子又は卵母細胞に分化する一次未分化幹細胞型である。
【0096】
細胞株の確立には、本明細書で使用されるように、哺乳動物でない水生動物から直接得られる1つ又はそれ以上の細胞が最初に必要とされ得ることが理解されるが、「哺乳動物でない水生動物由来の」細胞は、典型的には、哺乳動物でない水生動物から直接得られる細胞に由来する(例えば、それから増殖された)細胞である。
【0097】
「不死化細胞」は、無限に増殖し、したがって長期間培養され得る細胞である。(哺乳動物及び非哺乳動物の)細胞を不死化する方法は当分野で周知であり、遺伝子改変された細胞(「GM」細胞;例えば、外因性hTERT遺伝子を含む細胞)及び(例えば、実施例に記載されているように)非GM技術によって不死化された細胞が含まれる。本発明による使用のためには、非GM技術、例えば「危機」まで(これは、細胞の大部分が死滅するか又は増殖を停止するときである)細胞を継代すること;自然に不死化した増殖している細胞をモニタリングすること;及びそれらの細胞を単離することが好ましい。不死化の非GM方法は、実施例のセクション「魚組織に由来する細胞の不死化」に詳述されている。
【0098】
細胞「抽出物」は細胞抽出エキス(extractives)を含有し、典型的には、賦形剤、例えば水及び/又はグリセリンと共に調合される。いくつかの実施形態では、細胞抽出物はホモジナイズされた細胞を含有する。いくつかの実施形態では、細胞「抽出物」は、細胞画分、例えば可溶性画分又は不溶性画分を含有する。いくつかの実施形態では、可溶性画分は疎水性である。いくつかの実施形態では、可溶性画分は親油性である。いくつかの実施形態では、細胞抽出物は、少なくとも0.01%、少なくとも0.05%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%の細胞抽出エキスを含む溶液である。いくつかの実施形態では、細胞抽出物は、専らホモジナイズされた細胞から形成される。
【0099】
「化粧品」は、クレンジング、美容、魅力の促進、又は外観の変更のために、人体に擦り込まれ、注がれ、振りかけられ、又は人体上に噴霧され、又は人体中に導入され、又はその他の方法で適用されることが意図された製品を指す。この定義には、製品、例えば皮膚保湿剤、香水、口紅、マニキュア、目及び顔用化粧品(eye and facial makeup preparations)、シャンプー、パーマネントウェーブ、ヘアカラー、練り歯磨き及び消臭剤、並びに化粧品の成分として使用することが意図された任意の材料が含まれる。一実施形態では、化粧品は完成した化粧品である。
【0100】
「栄養製品」は、栄養を補足するか、又は1日の栄養必要量の一部若しくは全部を提供する製品を指す。栄養製品には、栄養を提供することができる静脈内又は経口栄養が含まれる。栄養製品は、ヒトが摂取するためのものであり得る。栄養製品は、動物が摂取するためのものであり得る(例えばペットフード)。
【0101】
「栄養補助食品」は、食品中に見出される基本的な栄養価に加えて、追加の健康上の利益を提供する食品源に由来する製品を指す。
【0102】
「浮遊細胞」は、液体培養培地中に浮遊している間に増殖する単一細胞又は細胞の小さな凝集体である。浮遊細胞は、典型的には、撹拌された液体培地中で増殖させる。
【0103】
「接着性細胞」は、表面に付着しながら増殖する単一細胞又は細胞の小さな凝集体である。接着性細胞は、典型的には、静止した液体培地中で増殖させる。接着性細胞は、典型的には、単層を形成するために表面を必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】初代チョウザメ卵巣細胞継代0の形態学的評価。 培養10日後の初代チョウザメ卵巣細胞の顕微鏡分析。細胞培養物は、接着性細胞(白色のアスタリスクで強調されている)と浮遊細胞の混合物を含む。スケールバーは100μmである。
【0105】
図2】初代チョウザメ卵巣細胞継代1の形態学的評価。 一継代後の初代チョウザメ卵巣細胞の顕微鏡分析。細胞の大部分は、小さく、円形の浮遊細胞である。スケールバーは100μmである。
【0106】
図3】初代チョウザメ卵巣細胞継代3の形態学的評価。 三継代後の初代チョウザメ卵巣細胞の顕微鏡分析。細胞培養物は、約6~7μmの直径を有する小さく、円形の浮遊細胞の均一な集団を含有する。スケールバーは100μmである。
【0107】
図4】丸底プレート中の初代チョウザメ卵巣細胞継代3の形態学的評価。 三継代後の初代チョウザメ卵巣細胞の顕微鏡分析。96ウェル丸底プレート中で培養すると、浮遊細胞はプレートの中央に集まり、高度の均一性を示す。スケールバーは100μmである。
【実施例
【0108】
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【0109】
魚組織からの細胞の単離
チョウザメ魚を10℃の平均温度で再循環養殖システムに保持した。4~40歳、平均卵巣重量/体重4.2/910gの雌魚からの生殖腺をすべての処置のために使用する。成熟第II期を示す卵巣を抽出し、5mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(Sigma-Aldrich P4417)、ハンクス平衡塩類溶液(Sigma-Aldrich H6648)、又は様々な濃度のトリプシン(T;Sigma-Aldrich T1426)及びコラゲナーゼ(C;Sigma-Aldrich C0130):(1)0.1% T及び0.1% C、(2)0.3% T、(3)0.1% T、(4)0.3% C又は(5)0.1% Cを含むLeibovitz培地(L-15;Sigma-Aldrich L5520)を含有する15mL Falconチューブに、1.5mL体積の試料で移した。組織を23℃で2時間インキュベートした。培地のオスモル濃度を、使用した魚の血漿のオスモル濃度(平均、238mOsm kg-1)に調整し、pHを8に調整した。得られた浮遊液を50mmフィルター(Partec、ドイツ)で濾過して、より大きな卵母細胞及び破片を収集し、1%ウシ血清卵白(BSA、Sigma-Aldrich A7511)及び40mg mL-1 DNAse(AppliChem A3778)を添加した。卵巣細胞浮遊液を含む15mL Falconチューブを500×gで、4℃で30分間遠心分離した。次いで、酵素を含まない0.3mLの増殖培地に細胞ペレットを再懸濁した。血球計数器(Burkerの細胞計数チャンバ)及びLive/Dead Cell Double Staining Kit(Sigma-Aldrich、04511)によって、各組み合わせから得られた細胞の収量及び生存率をそれぞれ評価した。顕微鏡下(Olympus BH2)で、100倍の倍率で3回繰り返して血球計数器の20個の正方形中の細胞の数を計数した。生存率の決定のために、Olympus IX83顕微鏡を使用して、試料あたり少なくとも500個の細胞を記録した。
【0110】
次いで、PBS中の不連続なPercoll(Sigma-Aldrich P1644)濃度勾配5%、10%、20%、30%、40%、及び50%上に細胞浮遊液をロードし、800×gで30分間遠心分離した。各細胞画分を勾配から取り出し、チューブに移し、PBS 1:10で希釈し、800×gで30分間再度遠心分離した。ペレットをPBSに再懸濁し、免疫蛍光標識を使用して検査した。
【0111】
魚組織から単離された細胞の性質決定及び順位付け
プロテアーゼ阻害剤、100mM PMSF、1mg mLペプスタチンA及び5mg mL-1ロイペプチンを含有する、8M尿素、2Mチオ尿素、4%CHAPS、10%wt/volイソプロパノール、0.1%wt/vol Triton X-100及び100mMジチオスレイトール(DTT)の典型的な構成成分を有する溶解緩衝液を用いて、細胞からタンパク質を抽出した。Bradfordタンパク質アッセイを適用して、試料のタンパク質濃度を決定した。SDS-PAGEのために、試料、レーンあたり25mgのタンパク質を、65mM Tris、10%(v:v)グリセロール、2%(wt/vol)SDS及び5%(v:v)β-メルカプトエタノールを含有する緩衝液に再懸濁し、95℃で3分間沸騰させた。タンパク質を12% SDSゲル上で分離した。電気泳動後、ゲルをポリビニルジフルオリド膜(Bio-Rad、アメリカ)上に置き、電気的に転写した。TBST(0.1% Tween-20、20mM Tris、500mM NaCl、pH7.6)中の5%(wt/vol)スキムミルクと共に20℃で1時間インキュベートすることによって、膜をブロックした。DDX4、生殖系列細胞に対して特異的な一次抗体としてウサギポリクローナル抗体(GTX116575、GeneTex)を含有する5% BSA-TBST中で膜を4℃で12時間インキュベートし、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンG(3% BSA-TBST中1:3000)と共に20℃で1時間インキュベートした。反応したタンパク質を、3,30,5,50-テトラメチルベンジジン液体基質で明らかにした。
【0112】
DDX4は、生殖系列細胞のマーカーである。10%、20%、30%、40%及び50%Percoll溶液から収集されたDDX4抗体陽性細胞のパーセンテージは、それぞれ、卵巣細胞については83.6%、74.6%、54.2%、21.9%及び10.4%であったが、解離された対照体細胞は、DDX4による免疫標識後に蛍光シグナルを示さなかった。さらなる継代のために10%~30%Percoll画分からの細胞溶液を使用して、ポリクローナル魚集団を得た。このようにして、所定の魚から約100万個のDDX4陽性細胞を単離した。DDX4発現の強度に従って順位付けを行う。より高いレベルのDDX4発現は顕著な生殖細胞様特徴に対応するので、より高いレベルのDDX4発現が好ましい(より高い順位)。より低い順位の細胞(より低いDDX4発現レベルを有する)も維持され、卵母細胞への事前の分化について性質決定される。
【0113】
浮遊細胞の生産
初代チョウザメ卵巣細胞の培養物を500×gで5分間、4℃で遠心分離した。上清を捨て、得られた細胞ペレットをPBSに再懸濁し、500×gで5分間、4℃で遠心分離した。得られたペレットを、20%ウシ胎児血清及び10mM HEPES(Gibco、カタログ番号15630106)を補充したLeibovitzのL-15 Medium(Gibco、カタログ番号11415064)を含有する培養培地に再懸濁し、96ウェルプレート中に分配した。加湿雰囲気中、28℃、5%COのインキュベータ内で細胞を培養した。細菌又は真菌の汚染を防止するために、培養増殖の最初の4週間の間、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(Gibcoカタログ番号15140122)、1.25μg/mlアンホテリシンB(Gibcoカタログ番号15290026)及び50μg/mlゲンタマイシン(Gibcoカタログ番号15710064)を培地に添加した。4週間の増殖後、培地は、20%ウシ胎児血清、10mM HEPES(Gibco、カタログ番号15630106)、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン(Gibcoカタログ番号15140122)を補充したLeibovitzのL-15 Medium(Gibco、カタログ番号11415064)を含有した。
【0114】
培養の開始後、以下の培養レジメンを実施した。100μlの培養培地を加えたウェル当たり約100,000の細胞濃度で、細胞を播種した。3日後及び5日後、50μlを培養物に添加した。7日目に、100~150μlの培地を取り出し、50μlの新鮮な培養培地を細胞に添加した。細胞が集密状態に達し、培養物が分割されるまで、この培養手順を実施した。
【0115】
培養物が浮遊細胞と接着性細胞の混合物を含んでいたので、細胞を分割した(図1)。まず、培養培地を再懸濁し、得られた培地/浮遊細胞混合物を2つの新しいウェルに分配した。残りの接着性細胞をPBSで1回洗浄し、次いでトリプシン/EDTA(Gibcoカタログ番号12563011)で剥離した。剥離された細胞を培養培地に再懸濁し、浮遊細胞と合わせた。予想外にも、1回又は2回の継代後に、接着性細胞は見えず、培養物は浮遊細胞のみを含有した(図2)。浮遊培養物を2つの新しいウェルに分割した。
【0116】
上記の培養レジメンを使用した長期培養により、細胞培養物はますます均一になり、大部分の細胞は5~8μmの直径を有する円形の細胞形状を示した(図3)。浮遊細胞がプレートの中央に集まることを可能にする丸底プレート中で浮遊細胞を培養すると、培養物の均一性はさらに顕著になった(図4)。有利なことに、この培養レジメンを使用して、細胞を6ヶ月超拡大させ、15~20の拡大倍数に達した。拡大倍数は、Neubauerチャンバを使用して、細胞数に基づいて決定された。
【0117】
追跡実験では、エピジェネティック修飾因子であるバルプロ酸及び酪酸で浮遊細胞を処理した。バルプロ酸は30μM、100μM、300μM、1mM及び3mMの濃度で使用され、酪酸は1μM、10μM、50μM、100μM及び500μMの濃度で使用された。1週間に1回、浮遊細胞をバルプロ酸又は酪酸のいずれかに曝露した。上記の標準培養物と比較して、両処理において、増殖の増加が予想外に観察された。バルプロ酸については、8の拡大倍数が6週間以内に達成されたのに対して、酪酸については、16の拡大倍数が4週間以内に達成された。
【0118】
10%ウシ胎児血清及び7%エチレングリコール(ThermoFisher、カタログ番号29810)を補充したLeibovitzのL-15 Medium(Gibco、カタログ番号11415064)を含有する凍結保存培地を用いて、拡大された細胞を凍結保存した。凍結保存のために、500×gで、100万個の細胞を5分間4℃でペレット化し、凍結保存培地で再懸濁した。試料の一定した冷却を可能にするMr.Frosty冷却装置内に細胞を入れた。Mr.Frosty冷却装置を-80℃の冷凍庫に一晩入れた後、長期保存のために細胞を液体窒素タンクに入れた。
【0119】
さらなる調査を行った。例えば、細胞外マトリックス分子が浮遊細胞の増殖を支える能力を調べた。コラーゲンが増殖に対して有益な効果を有するかどうかを調べるために、細胞培養皿をラットコラーゲンI型溶液(InSCREENeXカタログ番号INS-SU-1017)でプレコーティングした。この目的のために、コラーゲン溶液をそれぞれのウェルに添加し(96ウェルプレート中50μl/ウェル;24ウェルプレート中200μl/ウェル;12ウェルプレート中400μl/ウェル;6ウェルプレート中600μl/ウェル)、37℃で2時間インキュベートした後、コラーゲン溶液を吸引し、細胞培養容器をPBSで洗浄し、次いで細胞浮遊液をコラーゲン被覆した細胞培養容器に移した。コーティングされた細胞培養容器を浮遊細胞の培養のために使用した場合、コーティングされた細胞培養容器は細胞の接着を支えたが、チョウザメ浮遊細胞の拡大のための培養系を作り出すという目的に対しては反対に作用した。
【0120】
浮遊細胞の増殖を支えるマトリゲルの能力も調査した。マトリゲルは、Engelbreth-Holm-Swarmマウス肉腫細胞によって分泌され、Corning Life Sciencesによって商業的に生産されている可溶化された基底膜マトリックスである。マトリゲルは、典型的には、成体幹細胞、例えばオルガノイドの拡大のために使用される。500×gで、浮遊細胞を5分間4℃で遠心分離し、培養培地と増殖因子が低減されたマトリゲルとの1:1の混合物中に細胞を再懸濁した。次いで、この混合物を24ウェルプレート中でのマトリゲルドームの生成のために使用した。60μlの細胞/培養培地/マトリゲル混合物を24ウェルプレートにピペット操作で加え、28℃、5%COで30分間インキュベータに入れて、マトリゲルの固化及びドームの形成を可能にした。その後、マトリゲルドームをさらに100μlの培養培地で覆った。細胞がマトリゲルドーム内に含有されているので、細胞を乱すことなく、培養培地を容易に吸引し、新しくすることができる。培地を週2回新しいものに交換し、細胞の増殖を顕微鏡でモニターした。予想外なことに、試験したマトリゲルドームのいずれにおいても増殖は検出されなかった(n=5)。
【0121】
魚細胞の凍結保存
種々の量の4つの凍結保護剤:ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール(Gly)、1,2-プロパンジオール(PROH)及びエチレングリコール(EG)を含有する基礎培地(0.13M NaCl、2.5mM、KCl、7.7mM NaHPO、0.7mM KHPO、0.9mM、CaCl、0.5mM MgCl、5.5mM D-グルコース、0.09mMナトリウムピルベート、0.5%ウシ血清アルブミン)中で細胞を凍結保存した。液体窒素中で保存した後、細胞を急速に解凍し、必要であれば0.5%トリプシンで解離させた。トリパンブルー色素を排除する能力によって、凍結/融解されたPGCの生存率を評価した。
【0122】
魚組織に由来する細胞の不死化
37℃で1~3日間インキュベートした後、集密状態の培養物をトリプシン処理し、バイアル当たり2~3×10細胞で凍結させる。細胞株を樹立するために、凍結保存された魚細胞(継代0)を解凍し、増殖培地を含有するT75フラスコに播種する。80%の集密状態で、細胞をトリプシン処理し、増殖培地中、ウェル/フラスコあたり約1×10細胞の密度で6ウェル培養皿又は小型フラスコ(12.5cm)上に再播種する。培養物を標準的な条件下(加湿雰囲気中、37℃、5%CO)に維持し、集密状態に達した時点で、1:3又は1:4の比で連続継代する。次いで、細胞は、大部分の細胞がさらに分裂することを停止するときとして定義される「危機」の段階に達する。3週間の期間中、5~6継代にわたって危機が観察される。危機の間、培養培地は毎日交換される。危機の後、全培養物の95%超が自然に不死化する。
【0123】
クローン由来不死化細胞集団の単離、性質決定及び順位付け
クローン由来不死化細胞集団(CICP)は、細胞のポリクローナル塊から出発してモノクローナル細胞集団を得るための限界希釈によって得られる。その後、浮遊液の一定分量を0.5細胞/ウェルの平均でウェルに分配し、インキュベートすることができるようにするために、親(ポリクローナル)細胞培養物の一連の漸増希釈を行う。
CICPは、i)抗DDX4/Vasa抗体による染色の程度及びii)倍加時間によって特徴付けられる。CICPは、各測定基準によって別々に順位付けされ、最適な増殖及びDDX4/Vasaシグナルを有するCICPの選択が、増殖及び大規模細胞バンキングのために選択される。
【0124】
クローン由来魚細胞集団の卵母細胞/成熟卵母細胞への分化
選択されたCICPは、所定のレベルの粘度を達成するように調合された増殖培地並びにZelazowskaら(2007)によって、初期前卵黄形成性(第1期)、中間前卵黄形成性(第2期)、後期前卵黄形成性(第3期)、卵黄形成性(第4期)及び後卵黄形成性(第5期)として記載されたものと緊密に合致する形態を有する細胞への、CICPのインビトロ分化を有利にする補充物質の存在中で、凍結再生及び培養され、これらの形態的特徴は顕微鏡観察及び染色手順によって評価される。卵母細胞へのインビトロ分化を有利にする増殖培地補充物質としては、上皮増殖因子(25ng/mL)、塩基性線維芽細胞増殖因子(25ng/mL)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(5IU/mL)、妊馬血清性ゴナドトロピン(2IU/mL)、グリア細胞株由来神経栄養因子(25ng/mL)及び白血病抑制因子(25ng/mL)が挙げられる。
【0125】
未成熟卵母細胞から成熟卵母細胞への分化
集密状態に達した時点で、1:3又は1:4の比で、所定の期間、連続的に継代することによって所定のクローン由来不死化細胞集団を培養し、細胞は、分化の中間前卵黄形成性(第2期)、後期前卵黄形成性(第3期)、卵黄形成性(第4期)及び後卵黄形成性(第5期)期を通じた進行に対して、それらのサイズ及び形態に関して定期的にモニターされ、サイズ及び形態は、比較の基準に対して列挙される。第1期から第2期に移行すると、透明な小胞の外観が細胞質中に観察され、細胞の周辺部から細胞中心に侵入する。核小体は、第2期では核周辺に留まる。第2期に移行すると、薄い好酸性の卵膜又は一次エンベロープが見えるようになる。濾胞細胞層も初めて見られる。第2期から第3期に移行すると、卵母細胞の細胞サイズが増加することが観察され、卵黄顆粒が細胞質中の深い好酸性封入体(eosinophilic inclusions)の環として見えるようになる。第3期から第4期に移行すると、卵母細胞はより大きく、より水和し、核は周辺に向かって移動し、崩壊の過程にある傾向がある。第4期から第5期に移行すると、卵母細胞は、卵黄の大きな塊及び水和され、膨潤した外観を包含する。細胞の試料を定期的に取り出し、多能性の生化学的マーカー、例えば高レベルのアルカリホスファターゼ又は遺伝子、例えばdead end、grip2、plk3、gfra1a及びednrbaの発現の喪失について、死亡させて(sacrificially)分析する。
【0126】
参考文献
Ciba P,Schicktanz S,Anders E,Siegl E,Stielow A,Klink E,Kruse C.(2008).Long-term culture of a cell population from Siberian sturgeon(Acipenser baerii)head kidney.Fish Physiol Biochem.34(4):367-72.
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図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】