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特表2024-527612高い炭素およびエネルギー効率での燃料および化学物質の産生のためのカルボン酸プラットフォーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】高い炭素およびエネルギー効率での燃料および化学物質の産生のためのカルボン酸プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20240718BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240718BHJP
   C12P 7/00 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20240718BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240718BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20240718BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20240718BHJP
   C12N 15/60 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P7/00
C12N15/53
C12N15/54
C12N15/52 Z
C12N15/55
C12N15/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501841
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2022036856
(87)【国際公開番号】W WO2023287814
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,927
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】524014802
【氏名又は名称】モジア バイオテック ピーティーイー.リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス,ラモン
(72)【発明者】
【氏名】コロンバーグ,ジェームズ マカリスター
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ファーイン
(72)【発明者】
【氏名】リー,スン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ネザミラド,モハマドレザ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC00
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB02
4B065BB04
4B065BB06
4B065BB07
4B065BB08
4B065BB15
4B065BC12
4B065CA10
4B065CA54
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、直交する自然に対して新規な炭素およびエネルギー変換経路が、遺伝子的に改変された微生物により誘導されるカルボン酸中間体(CAi)からの燃料および化学物質の合成を容易にする、新規の概念的な枠組みを提供する。これは、発酵性代謝の確立された高い生成物およびエネルギー効率を保持しながら、CAiプラットフォームが、≧100%炭素収率で多様な生成物を生成することを可能にする。別の態様において、高炭素およびエネルギー効率での燃料および化学的生成物のためのカルボン酸プラットフォームも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸を生成物に変換する遺伝子的に改変された微生物であって、
a. 該カルボン酸を対応するアシル-CoA中間体に活性化するための酵素をコードする第1の組の核酸;
b. 該アシル-CoA中間体を生成物に変換するための酵素をコードする第2の組の核酸;および
c. 外的に供給されたエネルギー源から還元同等物およびATPを生成するための酵素をコードする第3の組の核酸
を含む、微生物。
【請求項2】
該第1の組の代謝酵素が、アシル-CoAシンテターゼ、またはアシル-CoAトランスフェラーゼ、またはカルボキシレートキナーゼおよびホスホトランスアシラーゼ、またはカルボン酸レダクターゼおよびアシル-CoAレダクターゼ、またはアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび該カルボン酸を対応するアシル-CoA中間体に変換するアシル-CoAレダクターゼを含む、請求項1記載の微生物。
【請求項3】
該第2の組の代謝酵素が、該アシル-CoAをアルデヒドに変換するアルデヒド形成アシル-CoAレダクターゼを含む、請求項1記載の微生物。
【請求項4】
該カルボン酸が2-ヒドロキシ酸であり、該アルデヒドが2-ヒドロキシアルデヒドである、請求項3記載の微生物。
【請求項5】
該第2の組の代謝酵素が、アルデヒド形成アシル-CoAレダクターゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼ、または該アシル-CoAをアルコールに変換するアルコール形成アシル-CoAレダクターゼを含む、請求項1記載の微生物。
【請求項6】
該カルボン酸が2-ヒドロキシ酸であり、該アルコールが1,2-ジオールである、請求項5記載の微生物。
【請求項7】
該第2の組の代謝酵素が、該1,2-ジオールをケトンに変換するジオールデヒドラターゼをさらに含む、請求項6記載の微生物。
【請求項8】
該第2の組の代謝酵素が、該1,2-ジオールをアルデヒドに変換するジオールデヒドラターゼをさらに含む、請求項6記載の微生物。
【請求項9】
該第2の組の代謝酵素が、該アルデヒドを第一級アルコールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項8記載の微生物。
【請求項10】
該第2の組の代謝酵素が、該アルデヒドをアシル-CoAに変換するアシル化アルデヒドデヒドロゲナーゼおよびチオエステラーゼ、またはアシル-CoAトランスフェラーゼ、またはホスホトランスアシラーゼおよび該アシル-CoAをカルボン酸に変換するカルボキシレートキナーゼをさらに含む、請求項8記載の微生物。
【請求項11】
該第2の組の代謝酵素が、一炭素基質をホルミル-CoAに変換する酵素および2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼまたは該アルデヒドと該ホルミル-CoAを縮合させて該アルデヒドよりも一炭素長い2-ヒドロキシアシル-CoAを形成するオキサリル-CoAデカルボキシラーゼをさらに含む、請求項3記載の微生物。
【請求項12】
該第2の組の代謝酵素が、チオエステラーゼ、またはアシル-CoAトランスフェラーゼ、またはホスホトランスアシラーゼおよび該2-ヒドロキシアシル-CoAを2-ヒドロキシ酸に変換するカルボキシレートキナーゼをさらに含む、請求項11記載の微生物。
【請求項13】
該第2の組の代謝酵素が、該2-ヒドロキシアシル-CoAを2-ヒドロキシアルデヒドに変換するアシル-CoAレダクターゼをさらに含む、請求項11記載の微生物。
【請求項14】
該第2の組の代謝酵素が、該2-ヒドロキシアルデヒドを1,2-ジオールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項13記載の微生物。
【請求項15】
該第2の組の代謝酵素が、該2-ヒドロキシアシル-CoAを1,2-ジオールに変換するアルコール-形成アシル-CoAレダクターゼをさらに含む、請求項11記載の微生物。
【請求項16】
該第2の組の代謝酵素が、該1,2-ジオールをアルデヒドに変換するジオールデヒドラターゼをさらに含む、請求項14または15記載の微生物。
【請求項17】
該第2の組の代謝酵素が、該アルデヒドを第一級アルコールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項16記載の微生物。
【請求項18】
該第2の組の代謝酵素が、一炭素基質をホルミル-CoAに変換するための酵素および2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼまたは該2-ヒドロキシアルデヒドと該ホルミル-CoAを縮合させて該2-ヒドロキシアルデヒドよりも一炭素長い2,3-ジヒドロキシアシル-CoAを形成するオキサリル-CoAデカルボキシラーゼをさらに含む、請求項4記載の微生物。
【請求項19】
該第2の組の代謝酵素が、チオエステラーゼ、またはアシル-CoAトランスフェラーゼ、またはホスホトランスアシラーゼおよび該2,3-ジヒドロキシアシル-CoAを2,3-ジヒドロキシ酸に変換するカルボキシレートキナーゼをさらに含む、請求項18記載の微生物。
【請求項20】
該第2の組の代謝酵素が、該2,3-ジヒドロキシアシル-CoAを2,3-ジヒドロキシアルデヒドに変換するアシル-CoAレダクターゼをさらに含む、請求項18記載の微生物。
【請求項21】
該第2の組の代謝酵素が、該2,3-ジヒドロキシアシル-CoAを1,2,3-トリオールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項20記載の微生物。
【請求項22】
該第2の組の代謝酵素が、該2-ヒドロキシアシル-CoAを1,2-ジオールに変換するアルコール-形成アシル-CoAレダクターゼをさらに含む、請求項18記載の微生物。
【請求項23】
該第2の組の代謝酵素が、該1,2,3-トリオールを3-ヒドロキシアルデヒドに変換するジオールデヒドラターゼをさらに含む、請求項21または22記載の微生物。
【請求項24】
該第2の組の代謝酵素が、該3-ヒドロキシアルデヒドを1,3-ジオールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項23記載の微生物。
【請求項25】
該第2の組の代謝酵素が、一炭素基質をホルミル-CoAに変換するための酵素および2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼまたは該ケトンと該ホルミル-CoAを縮合させて該ケトンよりも一炭素長い2-メチル-2-ヒドロキシアシル-CoAを形成するオキサリル-CoAデカルボキシラーゼをさらに含む、請求項7記載の微生物。
【請求項26】
該第2の組の代謝酵素が、チオエステラーゼ、またはアシル-CoAトランスフェラーゼ、またはホスホトランスアシラーゼおよび該2-メチル-2-ヒドロキシアシル-CoAを2-メチル-2-ヒドロキシ酸に変換するカルボキシレートキナーゼをさらに含む、請求項25記載の微生物。
【請求項27】
該第2の組の代謝酵素が、該2-メチル-2-ヒドロキシアシル-CoAを2-メチル-2-ヒドロキシアルデヒドに変換するアシル-CoAレダクターゼをさらに含む、請求項25記載の微生物。
【請求項28】
該第2の組の代謝酵素が、該2-メチル-2-ヒドロキシアルデヒドを2-メチル-1,2-ジオールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項27記載の微生物。
【請求項29】
該第2の組の代謝酵素が、該2-メチル-2-ヒドロキシアシル-CoAを2-メチル-1,2-ジオールに変換するアルコール-形成アシル-CoAレダクターゼをさらに含む、請求項25記載の微生物。
【請求項30】
該第2の組の代謝酵素が、該2-メチル-1,2-ジオールを2-メチル-アルデヒドに変換するジオールデヒドラターゼをさらに含む、請求項28または29記載の微生物。
【請求項31】
該第2の組の代謝酵素が、該2-メチル-アルデヒドを2-メチル第一級アルコールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項30記載の微生物。
【請求項32】
該第2の組の代謝酵素が、一炭素基質をホルミル-CoAに変換するための酵素および2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼまたは該アルデヒドと該ホルミル-CoAを縮合させて該アルデヒドよりも一炭素長い2-ヒドロキシアシル-CoAを形成するオキサリル-CoAデカルボキシラーゼをさらに含む、請求項8記載の微生物。
【請求項33】
該第2の組の代謝酵素が、チオエステラーゼ、またはアシル-CoAトランスフェラーゼ、またはホスホトランスアシラーゼおよび該2-ヒドロキシアシル-CoAを2-ヒドロキシ酸に変換するカルボキシレートキナーゼをさらに含む、請求項32記載の微生物。
【請求項34】
該第2の組の代謝酵素が、該2-ヒドロキシアシル-CoAを2-ヒドロキシアルデヒドに変換するアシル-CoAレダクターゼをさらに含む、請求項32記載の微生物。
【請求項35】
該第2の組の代謝酵素が、該2-ヒドロキシアルデヒドを1,2-ジオールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項34記載の微生物。
【請求項36】
該第2の組の代謝酵素が、該2-ヒドロキシアシル-CoAを1,2-ジオールに変換するアルコール-形成アシル-CoAレダクターゼをさらに含む、請求項32記載の微生物。
【請求項37】
該第2の組の代謝酵素が、該1,2-ジオールをアルデヒドに変換するジオールデヒドラターゼをさらに含む、請求項35または36記載の微生物。
【請求項38】
該第2の組の代謝酵素が、該アルデヒドを第一級アルコールに変換するアルコールデヒドロゲナーゼをさらに含む、請求項37記載の微生物。
【請求項39】
一炭素基質をホルミル-CoAに変換するための該酵素が、メタノールをホルムアルデヒドに変換するメタノールデヒドロゲナーゼおよびホルムアルデヒドをホルミル-CoAに変換するアシル-CoAレダクターゼを含み、該一炭素基質がメタノールである、請求項11~38いずれか記載の微生物。
【請求項40】
一炭素基質をホルミル-CoAに変換するための該酵素が、ホルムアルデヒドをホルミル-CoAに変換するアシル-CoAレダクターゼを含み、該一炭素基質がホルムアルデヒドである、請求項11~38いずれか記載の微生物。
【請求項41】
一炭素基質をホルミル-CoAに変換するための該酵素が、アシル-CoAシンテターゼ、またはアシル-CoAトランスフェラーゼ、またはカルボキシレートキナーゼおよびホスホトランスアシラーゼ、またはカルボン酸レダクターゼおよびアシル-CoAレダクターゼ、またはアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびホルメートをホルミル-CoAに変換するアシル-CoAレダクターゼを含み、該一炭素基質がホルメートである、請求項11~38いずれか記載の微生物。
【請求項42】
該外的に供給されるエネルギー源が還元一炭素基質である、請求項1記載の微生物。
【請求項43】
該還元一炭素基質がメタノールである、請求項42記載の微生物。
【請求項44】
該第3の組の代謝酵素が、メタノールをホルムアルデヒドに変換するメタノールデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドをホルメートに変換するホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびホルメートをCO2に変換するホルメートデヒドロゲナーゼを含む、請求項43記載の微生物。
【請求項45】
該還元一炭素基質がホルムアルデヒドである、請求項42記載の微生物。
【請求項46】
該第3の組の代謝酵素が、ホルムアルデヒドをホルメートに変換するホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびホルメートをCO2に変換するホルメートデヒドロゲナーゼを含む、請求項45記載の微生物。
【請求項47】
該第3の組の代謝酵素が、ホルムアルデヒドをホルミル-CoAに変換するアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホルミル-CoAをホルミル-ホスフェートに変換するホスフェートホルミルトランスフェラーゼ、およびホルミル-ホスフェートをホルメートに変換するホルメートキナーゼをさらに含む、請求項42~46いずれか記載の微生物。
【請求項48】
該第3の組の代謝酵素が、NADHからATPを生成する酵素をさらに含む、請求項42~47いずれか記載の微生物。
【請求項49】
炭素供給原料からのカルボン酸の生成を可能にする代謝酵素をさらに含む、前記請求項いずれか記載の微生物。
【請求項50】
該炭素供給原料が、グルコース、キシロース、アラビノース、グリセロール、メタン、CO2、メタノール、ホルメート、ホルムアルデヒドおよび同様の物質からなる群より選択される、請求項49記載の微生物。
【請求項51】
細菌または酵母である、前記請求項いずれか記載の微生物。
【請求項52】
微生物と、カルボン酸および外部エネルギー源とを、カルボン酸が目的の還元生成物に変換されるような適切な条件下でインキュベートする工程を含む、前記請求項いずれか記載の微生物を培養する方法。
【請求項53】
微生物と、炭素供給原料および外部エネルギー源とを、炭素供給原料が目的の還元生成物に変換されるような適切な条件下でインキュベートする工程を含む、前記請求項いずれか記載の微生物を培養する方法。
【請求項54】
微生物培養物から目的の生成物を単離する工程をさらに含む、請求項52または53記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、2021年7月12日に出願された米国仮特許出願第63/220,927号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府に支援された研究に関する陳述
本発明は、エネルギー省により与えられた授与番号DE-AR0001508およびDE-EE0008499の下、政府支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表についての参照
N/A
【背景技術】
【0004】
背景
発酵性の代謝は、C保存およびCO2放出経路の両方を介して、高い生成物流動およびエネルギー効率を提供する。炭素およびエネルギーの唯一の供給源として糖を用いると、中性または酸化された生成物(例えばカルボン酸)の合成のためにC保存経路が使用されるが、CO2放出経路は、還元された生成物のほとんどの工業的化学物質および燃料(例えばアルコール)を含む還元された生成物のために使用される。しかしながら、電気/外部還元同等物(external reducing equivalent)の利用可能性に伴って、代謝によりしばしば必要とされるE保存とは反対のC保存に焦点を当てるためのパラダイムシフトが必要である。糖の変換のための炭素最適化発酵系を開発するために、エネルギー保存のその進歩した優先化に対して、炭素保存に焦点を当てるように、細胞代謝を再度工学的に作り変えなければならない。
【0005】
この領域における現在の努力は、CO2-排出経路から損失した炭素を回収することまたは炭素を保存するためおよびCO2の形態の炭素損失を防ぐために中心代謝を配線しなおすことのいずれかに焦点を当てている(Bogorad, I., et al. Nature 502:693-697 (2013);Lin, P., et al. Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 115:3538-3546 (2018);Schuchmann, K., Muller, V. Appl. Environ. Microbiol. 82:4056-4069 (2016);Wang, Q., et al. Metab. Eng. 51: 79-87 (2019);Mainguet, S., et al. Metab. Eng. 19:116-127 (2013);Yu, H., et al. Nat. Commun. 9:10 (2018);Francois, J., et al. Front. Bioeng. Biotechnol. 7:16 (2020))。これらのアプローチは、宿主の代謝ネットワークに対する大きな改変および本来の規制を回避するような広範囲の工学的作り変えを必要とし、高い糖分解流動を活用し、生成物を効率的に作製する能力を制限する。
【0006】
本来の代謝を改変することとは反対に、本発明者らは、直交する自然に対して新規な炭素およびエネルギー変換経路が、外的に供給された電子供与体により誘導されるカルボン酸中間体(CAi)からの燃料および化学物質の合成を容易にする、新規の概念的な枠組みを提唱する。これは、発酵性の代謝の確立された高い生成物およびエネルギー効率を維持しながら、CAiプラットフォームが≧100%の炭素収率で多様な生成物を作製することを可能にする。さらに、CAiプラットフォームは、自然において遍在的である酵素および経路を活用するので、工業的有機体におけるその実行を可能にする。
【発明の概要】
【0007】
概要
本明細書に開示されるように、カルボン酸中間体(CAi)プラットフォームは、自然に対して新規な炭素変換およびエネルギー生成経路が、≧100%の炭素収集率で多様な還元生成物の合成を支持する新規の概念的枠組みである。中心の代謝を配線しなおすことに頼る炭素最適化発酵についての現在のアプローチとは反対に、CAiプラットフォームは、宿主代謝に対するこれらの経路の直交性を強化する。これは、外的に供給された還元同等物を介する炭素保存CAiからの下流の生成物合成を駆動しながら、発酵性の代謝の確立された高い生成物流動およびエネルギー効率を保持することを可能にする。100%の炭素効率で作製される乳酸などのCAiは、炭素保存または炭素消費様式において、ある範囲の生成物の作製を容易にする新規の生化学に基づいて、上流の経路と生成物合成経路を結びつける。
【0008】
乳酸をラクトイル-CoAに変換することなどのCAi(1つまたは複数)の活性化により開始され、下流の経路は、生成物合成のための直接還元反応またはアシロイン凝縮を介した一炭素(C1)付加のための前駆体としての分子の作製などの種々の新規の生化学に基づく。これらの反応を駆動するために必要なエネルギーは、(基質レベルリン酸化を介する)NADHおよびATPの作製または可溶性ヒドロゲナーゼを介するNADH作製のためのH2の作製を可能にする合成C1生体改質経路を介して、還元されたC1化合物に由来する。発酵性代謝の偏在ならびにCAi炭素およびエネルギー変換経路の直交性により、還元生成物合成の間の炭素損失を回避する炭素最適化発酵系を開発するための、種々の工業的宿主における実行が容易になる。
【0009】
そのため、炭素消失なくカルボン酸中間体から還元生成物を自然には作製し得ないが、それができるように遺伝子工学で作り変えられた微生物が本明細書に開示される。これらの生物を遺伝子工学で作り変えることは、CA中間体(1つまたは複数)を対応するアシル-CoAに活性化するための第1の組の代謝酵素、アシル-CoA中間体を生成物に変換する第2の組の代謝酵素、外的に供給されたエネルギー源(例えば還元された一炭素化合物および/またはH2)から還元同等物(例えばNADH)およびATPを生成するための第3の組の代謝酵素の細胞系を提供すること、ならびに該系に、代謝酵素が最初のCA中間体よりも還元される生成物を作製するために適切な条件下で、CA中間体またはCA中間体(例えばグルコース)に変換され得る炭素源および外的に供給されるエネルギー源を供給することを含む。
【0010】
本発明の1つ以上の態様の詳細を、以下の添付の図面および説明に記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明および図面からならびに特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
図1図1. カルボン酸プラットフォームに必要とされるエネルギー(酸化還元およびATP)およびホルミル-CoA作製のための酵素経路。
図2図2A~2D. ホルメートからのホルミル-CoA作製。A) 共基質としてホルムアルデヒドを用いたホルメートからのホルミル-CoA作製のためのFAEプラットフォームをスクリーニングする経路;B) 休止細胞を使用したホルムアルデヒドおよびホルメートによるFAE候補のスクリーニング結果;C) 共基質としてアセトンを用いたホルメートからのホルミル-CoA作製のためのFAEプラットフォームをスクリーニングする経路;D) 増殖培養物を使用して、アセトンおよびホルメートを使用したFAE候補のスクリーニング結果。
図3図3A~3B. アシル-CoAレダクターゼを使用したホルムアルデヒドからのホルミル-CoAの作製。ホルムアルデヒドおよびホルミル-CoAの縮合を介したグリコリル-CoA-由来グリコレートの合成は、経路流動の代用として使用した。(a)ACRがACR1およびACR2の両方として働き得るホルムアルデヒドからグリコレートへの流動を示す経路。(b)種々のACR1/ACR2候補のスクリーニング結果。
図4図4A~4B. LmACRと共に異なるメタノールデヒドロゲナーゼ(MDH)を使用した、メタノール由来ホルムアルデヒドからのホルミル-CoAの作製。ホルムアルデヒドおよびホルミル-CoAの縮合を介したグリコリル-CoA-由来グリコレートの合成は、経路流動の代用として使用した。(a)エネルギー(酸化還元)生成(NADHの形態)およびその後グリコレート合成に供給されるホルミル-CoAを示す完全経路。太字の酵素は、パネル(b)および(c)における実験のために過剰発現される。(b)MDHの種々の候補を用いたメタノールのグリコレートへの休止細胞生物変換。(c)メタノールの、エネルギー(細胞バイオマスにより示される)およびホルミル-CoA(グリコレート作製により示される)への増殖細胞生物変換。
図5図5. 開始カルボン酸としてホルメートを使用するカルボン酸プラットフォーム。
図6図6. C1伸長のための中間体アルデヒドとしてホルムアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム。
図7図7A~7B. ホルメートのエチレングリコールへの変換。A) ホルメートのエチレングリコールへの変換のための経路;B) 精製された酵素を使用するホルメートのエチレングリコールへのインビトロ変換。
図8図8A~8D. (a)C1伸長酵素(HACS)およびホルメート活性化酵素(FAE;この例においてAbfT)をスクリーニングするためのハイスループット休止細胞生物変換プラットフォーム。(b)ホルムアルデヒド(5mM)およびホルメート(20mM)の一緒の供給からのグリコレート作製。(c)HACSおよびFAE(AbfT)の発現は、誘導性プロモーター(IPTGおよびキュメート(cumate))により独立して制御される。(d)グリコレート生産性により示されるC1-C1縮合反応についてのHACSスクリーニング結果。
図9図9A~9B. 代用としてホルムアルデヒドから開始する完全α-還元経路の細胞非含有経路プロトタイピング(prototyping)。(a)α-還元を介するC2アルデヒド、アセトアルデヒドへの完全反復および細胞非含有プロトタイピングのために使用される関連のある酵素。(b)反応混合物に添加する酵素の異なる組み合わせを用いた基質および生成物濃度の経時的な変化。
図10図10A~10B. (a)C1-C1縮合、その後のCoA加水分解の代用としてのグリコレートからのグリシンの合成。グリシンを合成できない大腸菌株を構築した。この株は、グリシンを補充するかまたはグリシンを合成するのに適切な酵素と共に代替的な基質(グリコレート)を提供するかのいずれかの場合にのみに成長し得る。(b)株は、グリコレート濃度の増加に伴ってより高い成長速度を示すグリコレート補充によってのみ成長できる。
図11図11. C1伸長のための中間体(置換)アルデヒドとしてホルムアミドを使用するカルボン酸プラットフォーム。
図12図12. 発現ベクター(pCDFDuet-1)中T7lacプロモーターの制御下のホルムアミダーゼ(MmFmdA)。
図13図13. 基質としてC2+カルボン酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図14-1】図14A~4B. (a)基質として酢酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図14-2】(b)乳酸生産性により表されるアセトアルデヒド-C1縮合反応についてのHACSスクリーニング結果。
図15図15A~15B. (a)C1伸長酵素(HACS)をスクリーニングするためのハイスループット休止細胞生物変換プラットフォーム。(b)HACSおよびFAE(AbfT)の発現は、誘導性プロモーター(IPTGおよびキュメート)により独立して制御される。
図16-1】図16A~16B. (a)基質としてプロピオン酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図16-2】(b)2-ヒドロキシ酪酸生産性により表されるプロピオンアルデヒド-C1縮合反応についてのHACSスクリーニング結果。
図17図17. 基質として酪酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図18-1】図18A~18B. (a)基質としてグリコール酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図18-2】(b)グリセリン酸生産性により表されるグリコールアルデヒド-C1縮合反応についてのHACSスクリーニング結果。
図19図19. 基質として乳酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図20図20. 基質としてグリセリン酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図21図21. 基質として3-ヒドロキシプロピオン酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図22図22A~22B. (a)基質としてシュウ酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。(b)タルトロン酸生産性により表されるグリオキシル酸-C1縮合反応についてのHACSスクリーニング結果。
図23図23. 基質としてマロン酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図24図24. 基質としてコハク酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図25図25. 基質としてイソ酪酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図26図26. 基質としてイソ吉草酸を使用するカルボン酸プラットフォーム。
図27図27. カルボン酸-由来ケトンおよびホルミル-CoAの縮合からの2-ヒドロキシ酸、3-ヒドロキシ酸、アルコール、1,2-ジオールおよびα,β-不飽和酸の作製。
図28図28. 乳酸由来アセトンおよびホルミル-CoAの縮合からの2-ヒドロキシイソ酪酸、3-ヒドロキシイソ酪酸、イソブタノール、イソブテングリコールおよびメタクリル酸の作製。
図29図29. 2-ヒドロキシブタン酸由来ブタノンおよびホルミル-CoAの縮合からの2-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸、2-メチルブタン-1-オール、2-メチルブタン-1,2-ジオールおよび2-メチルブト-2-エン酸の作製。
図30図30. 2-ヒドロキシペンタン酸由来ペンタノンおよびホルミル-CoAの縮合からの2-ヒドロキシ-2-メチルペンタン酸、3-ヒドロキシ-2-メチルペンタン酸、2-メチルペンタン-1-オール、2-メチルペンタン-1,2-ジオールおよび2-メチルペント(methylpen)-2-エン酸の作製。
図31図31. 2-ヒドロキシヘプタン酸由来ヘプタノンおよびホルミル-CoAの縮合からの2-ヒドロキシ-2-メチルヘプタン酸、3-ヒドロキシ-2-メチルヘプタン酸、2-メチルヘプタン-1-オール、2-メチルヘプタン-1,2-ジオールおよび2-メチルヘプト-2-エン酸の作製。
図32図32. 2,3-ヒドロキシプロパン酸由来ヒドロキシアセトンおよびホルミル-CoAの縮合からの2,3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸(metylproptanoic acid)、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチルプロパン-1,2,3-トリオールおよび3-ヒドロキシ-2-メチルアクリル酸の作製。
図33図33. 2-ヒドロキシ-3メチルブタン酸由来3-メチル-2-ブタノンおよびホルミル-CoAの縮合からの2-ヒドロキシ-2,3-ジメチルブタン酸、3-ヒドロキシ-2,3-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン-1-オール、2,3-ジメチルブタン-1,2-ジオールおよび2,3-ジメチルブト-2-エン酸の作製。
図34図34. 2-ヒドロキシ-3-オキソプロパン酸由来メチルグリオキサールおよびホルミル-CoAの縮合からの2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソプロパン酸、2-メチルプロパン-1,3-ジオールおよび2-メチルヘプタン-1,2,3-トリオールの作製。
図35図35. 2-ヒドロキシ-4-オキソペンタン酸由来ペンタン-2,4-ジオンおよびホルミル-CoAの縮合からの2-ヒドロキシ-2-メチル-4-オキソペンタン酸、3-ヒドロキシ-2-メチル-4-オキソペンタン酸、5-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン、4,5-ジヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンおよび2-メチル-4-オキソペント-2-エン酸の作製。
図36図36A~36B. 精製した酵素を使用するホルミル-CoAを用いた縮合のための基質としてのメチルケトン。A) ホルメートから2-ヒドロキシ-2-メチル酸へのメチルケトンおよびホルミル-CoAの縮合の経路;B) 異なるメチルケトンおよびホルメートを用いたインビトロアッセイのGC-MS結果。所望の生成物を青色の矢印で指し示す。
図37図37A~37B. 増殖している培養物を使用するホルミル-CoAを用いた縮合のための基質としてのアセトン。A) ホルメートから2HIBへのアセトンおよびホルミル-CoAの縮合の経路;B) アセトンからの2HIBの作製および大腸菌内での形成。
図38図38は、炭素損失なしの還元生成物合成のための一般化されたカルボン酸(CA)プラットフォームを図示する。カルボン酸は、対応するアシル-CoAに活性化され、これは種々の生成物に還元され得、その多くは一炭素(C1)伸長のための中間体としても働き得る。生成物合成に必要な還元同等物およびATPは、還元C1化合物またはH2を介して作製される。例示的な生成物を示し、潜在的な生成物のサブセットのみを表す。
図39図39は、炭素源としてバイオマス由来の糖を使用した場合の、炭素損失なしの還元生成物合成のための一般化されたカルボン酸(CA)プラットフォームを図示する。カルボン酸は、供給された糖(1つまたは複数)から作製され、次いで対応するアシル-CoAへと活性化され、これは種々の生成物に還元され得、その多くは一炭素伸長のための中間体としても働き得る。生成物合成に必要な還元同等物およびATPは、還元C1化合物またはH2を介して作製される。例示的な生成物を示し、潜在的な生成物のサブセットのみを表す。
図40図40は、供給されたカルボン酸から還元生成物を作製するための活性化、生成物合成およびエネルギー生成経路を示す。
図41図41は、供給された2-ヒドロキシカルボン酸から還元生成物を作製するための活性化、生成物合成およびエネルギー生成経路を示す。
図42図42は、一炭素伸長のためのホルミル-CoA伸長経路を図示する。メタノールなどの還元一炭素基質は、ホルミル-CoA、種々の酸化還元反応を介するC1伸長単位に活性化される。ホルミル-CoAは、HACLにより触媒される反応におけるカルボニル含有化合物を伸長するように働き、2-ヒドロキシアシル-CoAの作製を生じる。2-ヒドロキシアシル-CoAはさらに、2-ヒドロキシアルデヒドに還元され得る。2-ヒドロキシアルデヒドは、1,2-ジオールに還元され得、アルデヒドへと脱水され得る。これらの伸長経路の種々の中間体は、2-ヒドロキシ酸、ジオール、ポリオールおよびアルコールなどの所望の化学生成物に変換され得る。略語:MDH:メタノールデヒドロゲナーゼ;ACR:アシル-CoAレダクターゼ;HACL:2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼ(lyase);ADH:アルコールデヒドロゲナーゼ;DDR:ジオールデヒドラターゼ;TES:チオエステラーゼ。C1伸長の中間体として働く、カルボン酸活性化および還元から作製される化合物の例(アセトン、プロピオンアルデヒド、ラクトアルデヒド)を示す。これらの例示的化合物に由来し得る生成物も、示される作製された濃度と共に示す。
図43図43は、生成物合成経路を駆動するために必要な還元同等物(NADH)およびATP合成のためのエネルギー生成経路を図示する。還元された一炭素化合物(例えばメタノール)およびH2からの経路を示す。
図44図44は、活性化、生成物合成およびエネルギー生成経路によるカルボン酸中間体としての糖からの乳酸作製の具体例を示す。例示的な生成物を示し、潜在的な生成物のサブセットのみを表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本開示をより詳細に記載する前に、本開示は記載される特定の態様に限定されず、当然のことながらそのように変化し得ることが理解される。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲のみにより限定されるために、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明する目的のみのものであり、限定を意図しないことも理解される。
【0013】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確にそうではないことを示さない限りは下限の単位の10分の1まで、該範囲の上限と下限のおよび任意の記述される他のものまたは記述される範囲内の間にある値の間のそれぞれの間にある値が本開示に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は独立して、より小さな範囲に含まれ得、本開示にも包含され得、記述される範囲内の任意の具体的に排除される限度に従属し得る。記述される範囲が限度の1つまたは両方を含む場合、これらの含まれる限度のいずれかまたは両方を排除する範囲も、本開示に含まれる。
【0014】
そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料も本開示の実施または試験において使用し得るが、好ましい方法および材料が本明細書に記載される。
【0015】
本明細書に引用される全ての文献および特許は、それぞれの個々の文献または特許が、参照により援用されるように具体的および個々に示されるように参照により本明細書に援用され、文献が引用される方法および/または材料を開示および記載するように、参照により本明細書に援用される。任意の文献の引用は、出願日以前のその開示についてのものであり、本開示が、以前の開示によりかかる文献より前に権利を与えられないことの容認として解釈されるべきではない。
【0016】
さらに、提供される公開の日付は、独立して確認される必要があり得る実際の公開日とは異なり得る。
【0017】
本開示を読む際に当業者に明らかであるように、本明細書に記載および図示される個々の態様のそれぞれは、本開示の範囲または精神を逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかの特徴と容易に分離または組み合され得る別個の構成要素および特徴を有する。任意の記載される方法は、記載される事象の順序でまたは論理的に可能である任意の他の順序で実行され得る。
【0018】
本開示の態様は、そうではないと示されない限り、当該分野の技術の範囲内にある化学、生物学等の技術を使用する。
【0019】
以下の実施例は、当業者に、本明細書において開示され、特許請求される方法をどのように実施するかおよびプローブをどのように使用するかについての完全な開示および記載を提供するように記載される。数字(例えば量、温度等)に関する精度を確実にするための努力がなされているが、いくらかの誤りおよび誤差は相殺されるべきである。そうではないと示されない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、圧力は大気またはその付近のものである。標準的な温度および圧力は、20℃および1気圧と定義される。
【0020】
本開示の態様が詳細に記載される前に、そうではないと示されない限り、本開示は、変化し得るように、特定の材料、試薬、反応材料、製造プロセス等に限定されないことが理解される。本明細書において使用される用語は、特定の態様を説明する目的のみのものであり、限定であることは意図されないことも理解される。本開示において、工程を、これが論理的に可能である異なる流れで実行し得ることも可能である。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうではないことを明確に示さない限り、複数の指示対象を含むことが注意されなければならない。
【0022】
本明細書で定義される場合、句「組換え宿主微生物」、「遺伝子的に作り変えられた宿主微生物」、「遺伝子工学で作り変えられた宿主微生物」および「遺伝子的に改変された宿主微生物」は、交換可能に使用され得、(a)1つ以上の外因性のポリヌクレオチドを発現するように、(b)1つ以上の内因性および/または1つ以上の外因性のポリヌクレオチド、例えばベクターに含まれるか、もしくは内因性遺伝子の発現の改変を有するものを過剰発現するように、あるいは(c)内因性の遺伝子をノックアウトまたは下方制御するように遺伝子的に改変された宿主微生物をいい得る。また、特定の遺伝子は、ゲノムから物理的に除去され得る(例えばノックアウト)か、またはそれらは、低減、改変もしくは高められた活性を有するように遺伝子工学で作り変えられ得る。
【0023】
用語「作り変える(engineer)」、「遺伝子的に作り変える」または「遺伝子的に改変する」は、微生物中の検出可能な変化を生じる微生物の任意の操作をいい、ここで該操作としては、限定されないが、異種(外因性)ポリヌクレオチドを介して非天然の代謝機能を導入することまたはポリヌクレオチド欠失、突然変異もしくはノックアウトを介して天然の機能を除去することが挙げられる。用語「代謝的に作り変えられる」は一般的に、所望の代謝産物の作製のための合理的な経路設計ならびに生合成遺伝子(またはORF)、オペロンに関連する遺伝子およびかかるポリヌクレオチドの制御因子の集合を含む。「代謝的に作り変えられる」はさらに、所望の経路に導く中間体と競合する競合代謝経路の低減、破壊またはノックアウトなどの遺伝子的作り変えおよび適切な培養条件を使用する、転写、翻訳、タンパク質安定性およびタンパク質機能の制御および最適化による代謝流動の最適化を含み得る。
【0024】
句「代謝的に作り変えられる微生物」および「改変される微生物」は、本明細書において交換可能に使用され、特定の目的の宿主細胞のみではなく、かかる細胞の子孫または潜在的な子孫をいう。特定の改変は、突然変異または環境的影響のいずれかのために連続した世代に生じ得るので、かかる子孫は実際には、親細胞とは同一でないことがあるが、依然として、本明細書で使用される用語の範囲に含まれる。
【0025】
用語「突然変異」は、本明細書で使用する場合、(すなわち野生型核酸またはポリペプチド配列に対して)変化した核酸またはポリペプチドを生じる核酸および/またはポリペプチドの任意の改変を示す。突然変異としては、例えば遺伝子のタンパク質コード領域内に生じる改変およびタンパク質コード配列の外部の領域、例えば限定されないが制御またはプロモーター配列における改変を含む、ポリヌクレオチド(またはコードされるポリペプチド)における単一もしくは複数の残基の点突然変異、置換、欠失または挿入が挙げられる。遺伝子改変は、任意の種類の突然変異であり得る。例えば、突然変異は、遺伝子の一部または全部の点突然変異、フレームシフト突然変異、挿入または欠失を構成し得る。特定の態様において、遺伝子的に改変される微生物のゲノムの一部は、1つ以上の異種(外因性)ポリヌクレオチドで置き換えられ得る。いくつかの態様において、突然変異は天然に生じる。他の態様において、突然変異は、人工的な選択圧力の結果である。さらに他の態様において、微生物ゲノム中の突然変異は、遺伝子作り変えの結果である。
【0026】
用語「発現」または「発現される」は、遺伝子配列、ORF配列またはポリヌクレオチド配列に関して、遺伝子、ORFまたはポリヌクレオチドの転写および適切な場合は得られたmRNA転写産物のタンパク質への翻訳をいう。したがって、文脈から明らかなように、タンパク質の発現は、オープンリーディングフレーム配列の転写および翻訳により生じる。宿主微生物中の所望の生成物の発現のレベルは、宿主中に存在する対応するmRNAの量または選択された配列によりコードされる所望の生成物の量のいずれかに基づいて決定され得る。例えば、選択される配列から転写されるmRNAは、PCRまたはノーザンハイブリダイゼーションにより定量化され得る(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989参照)。選択される配列によりコードされるタンパク質は、種々の方法により(例えばELISAにより、タンパク質の生物学的活性についてのアッセイによりまたは反応するタンパク質を認識およびそれに結合する抗体を使用するウエスタンブロッティングもしくはラジオイムノアッセイなどの、かかる活性とは独立するアッセイを使用することにより)定量化され得る。
【0027】
用語「内因性」は、ポリヌクレオチド(およびその中にコードされるポリペプチド)に関して本明細書で使用する場合、それらが生じる生物において発現されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドを示す(すなわち、それらは生物に対して先天的である)。対照的に、用語「異種」および「外因性」は、交換可能に使用され、ポリヌクレオチド(およびその中にコードされるポリペプチド)に関して本明細書で定義される場合、それら(すなわちポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列)が生じるかまたはそれらが由来する生物以外の生物において発現されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドを示す。
【0028】
用語「供給原料」は、他の生成物が作製され得る微生物または発酵プロセスに供給される原料または原料の混合物として定義される。例えば、本発明において記載される場合、グルコース炭素源またはキシロース炭素源は、単独または組み合わせのいずれかで、発酵プロセスにおいてバイオ燃料または生物系化学物質を生じる微生物についてのバイオマス由来供給原料である。しかしながら、本発明の供給原料(例えばグルコース基質)に加えて、発酵培地は、培養物の増殖および多炭素化合物作製に必要な酵素経路の促進に適切な、当業者に公知の適切な鉱物、塩、補因子、バッファおよび他の構成成分を含む。
【0029】
用語「基質」は、酵素の作用により別の化合物に変換されるかまたは変換されることを意図する任意の物質または化合物をいう。該用語は、単一の化合物だけでなく、化合物の組合せ、例えば溶液、混合物および少なくとも1つの基質またはその誘導体を含む他の材料も含む。さらに、用語「基質」は、開始材料としての使用に適切な炭素源(例えばメタン)を提供する化合物だけでなく、本明細書に記載される代謝的に作り変えられた微生物に関連する経路において使用される中間体および最終生成物代謝産物も包含する。
【0030】
用語「発酵」または「発酵プロセス」は、宿主微生物が、供給原料および栄養素などの原料を含む培養培地中で培養されるプロセスとして定義され、ここで該微生物は、供給原料などの原料を生成物に変換する。
【0031】
用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と本明細書において交換可能に使用され、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはそれらのアナログ、例えば限定されないが、任意の長さの一本鎖または二本鎖、センスまたはアンチセンスデオキシリボ核酸(DNA)および適切な場合は、siRNAを含む任意の長さの一本鎖または二本鎖、センスまたはアンチセンスリボ核酸(RNA)を含む2つ以上のモノマーで構成される有機ポリマーをいう。用語「ヌクレオチド」は、プリンまたはピリミジン塩基におよびリン酸基に連結されるリボースまたはデオキシリボース糖からなり、核酸の基本構造単位であるいくつかの化合物のいずれかをいう。用語「ヌクレオシド」は、デオキシリボースまたはリボースと結合されるプリンまたはピリミジン塩基からなり、特に核酸内に見られる化合物(グアノシンまたはアデノシンなど)をいう。用語「ヌクレオチドアナログ」または「ヌクレオシドアナログ」はそれぞれ、1つ以上の個々の原子が異なる原子または異なる官能基で置き換えられたヌクレオチドまたはヌクレオシドをいう。したがって、用語ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、ORF、それらのアナログおよび断片などの任意の長さの核酸を含む。
【0032】
本明細書で定義される場合、用語「オープンリーディングフレーム」(以降「ORF」)は、(天然に生じるか、天然に生じないかまたは合成のいずれにせよ)
(i)開始コドン、(ii)アミノ酸を表す一連の2つ(2)以上(of more)のコドン、および(iii)終止コドンからなる中断されないリーディングフレームを含む核酸または核酸配列を意味し、ORFは、5'~3'方向で読まれる(翻訳される)。
【0033】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドは「遺伝子」を含むこと、および本明細書に記載される核酸分子は「ベクター」または「プラスミド」を含むことが理解される。
【0034】
したがって、用語「遺伝子」は、1つ以上のタンパク質または酵素の全てまたは一部を含むアミノ酸の特定の配列をコードするポリヌクレオチドをいい、例えば遺伝子が発現される条件を決定するプロモーター配列などの制御(非転写)DNA配列を含み得る。遺伝子の転写される領域は、イントロン、5'-非翻訳領域(UTR)および3'-UTRおよびコーディング配列などの非翻訳領域を含み得る。
【0035】
用語「プロモーター」は、コーディング配列または機能性RNAの発現を制御し得る核酸配列をいう。一般に、コーディング配列は、プロモーター配列の3'に配置される。プロモーターは、天然の遺伝子からそれらの全体において駆動され得るかまたは天然に見られる異なるプロモーター由来の異なる因子で構成され得るか、またはさらに合成核酸セグメントを含み得る。異なるプロモーターは、異なる組織もしくは細胞型においてまたは異なる発生段階でまたは異なる環境もしくは生理学的条件に応答して遺伝子の発現を誘導し得ることが当業者に理解される。ほとんどの細胞型においてほとんどの時間で遺伝子を発現させるプロモーターは、通常「構成的プロモーター」と称される。ほとんどの場合において制御配列の正確な境界は完全には画定されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることがさらに理解される。
【0036】
用語「操作可能に連結される」は、1つの機能が他のものにより影響を受けるような、単一の核酸断片上の核酸配列の関係をいう。例えば、プロモーターは、コーディング配列の発現に影響し得る場合に、コーディング配列と操作可能に連結される(すなわち該コーディング配列はプロモーターの転写制御下にある)。コーディング配列は、センスまたはアンチセンスの方向で制御配列に操作可能に連結され得る。
【0037】
用語「コドン最適化」は、それが種々の宿主の形質転換について遺伝子または核酸分子のコーディング領域(またはORF)に言及する場合、DNAにコードされるポリペプチドを改変させることなく、宿主生物の典型的なコドン使用率を反映するような遺伝子または核酸分子のコーディング領域中のコドンの改変をいう。
【0038】
用語「オペロン」は、共通のプロモーターから単一の転写単位として転写される2つ以上の遺伝子をいう。特定の態様において、オペロンを含む遺伝子、ポリヌクレオチドまたはORFは連続的な遺伝子である。全オペロンの転写は、共通のプロモーターを改変することにより改変され得る(すなわち増加、減少または排除される)ことが理解される。代替的に、オペロン中の任意の遺伝子、ポリヌクレオチドもしくはORFまたはその任意の組合せは、コードされるポリペプチドの機能または活性を改変させるように改変され得る。改変は、コードされるポリペプチドの活性または機能の増加または減少を生じ得る。さらに、改変は、コードされるポリペプチドに新規の活性を付与し得る。
【0039】
「ベクター」は、核酸が増殖および/または生物、細胞もしくは細胞性構成要素間で輸送され得る任意の手段である。ベクターとしては、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、プラスミド、ファージミド、トランスポゾン、ならびにYAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌性人工染色体)およびPLAC(植物人工染色体)などの人工染色体等が挙げられ、自立的に複製するかまたは宿主微生物の染色体と一体化し得る「エピソーム」である。ベクターはまた、天然においてエピソーム性ではないネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同じ鎖内でDNAおよびRNAの両方で構成されるポリヌクレオチド、ポリリジンコンジュゲートDNAもしくはRNA、ペプチドコンジュゲートDNAもしくはRNA、リポソームコンジュゲートDNA等であり得るか、またはアグロバクテリウムもしくは細菌などの上述のポリヌクレオチド構築物の1つ以上を含む生物であり得る。
【0040】
用語「ホモログ」は、第1のファミリーまたは種の元の酵素、ポリペプチド、遺伝子またはポリヌクレオチド(または同じものをコードするORF)に関して使用する場合、機能的、構造的またはゲノム的分析により第1のファミリーまたは種の元の酵素または遺伝子に対応する第2のファミリーまたは種の酵素、遺伝子またはポリヌクレオチドであると決定される、第2のファミリーまたは種の別個の酵素、遺伝子またはポリヌクレオチドをいう。最もしばしば、「ホモログ」は、機能的、構造的またはゲノム的類似性を有する。酵素、遺伝子またはポリヌクレオチドのホモログを遺伝子プローブおよびPCRを使用して容易にクローニングし得る技術は公知である。「ホモログ」としてのクローニングされた配列の同一性は、機能的アッセイを使用しておよび/または遺伝子のゲノムマッピングにより確認され得る。
【0041】
ポリペプチド(またはタンパク質または酵素)は、該ポリペプチドをコードする核酸配列が第2のポリペプチドをコードする核酸配列と同様の配列を有する場合、第2のポリペプチドに対して「相同性」を有するかまたは「相同」である。
【0042】
代替的に、2つのタンパク質が「類似の」アミノ酸配列を有する場合、ポリペプチドは、第2のポリペプチドに対して相同性を有する。したがって、用語「相同タンパク質」または「相同ポリペプチド」は、2つのポリペプチドが類似のアミノ酸配列を有することを意味するように定義される。本発明の特定の態様において、表1に記載される1つ以上のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドに相同であるポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、配列分析および比較のための当該技術分野で公知の方法を使用して、容易に同定され得る。
【0043】
本発明の相同なポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列はまた、BLAST分析(Basic Local Alignment Search Tool)またはクエリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を公知の配列のデータベースと比較する同様のバイオインフォマティックツールにより決定または同定され得る。例えば、検索分析は、以前に公開された配列に対する配列同一性または類似性を決定するためにBLASTを使用してなされ得、配列がまだ公開されていない場合は、DNAまたはタンパク質配列の機能についての関連のある調査を与え得る。
【0044】
種々の態様において、本発明は、カルボン酸(CA)化合物を直接、または生物のための炭素源として働くバイオマス由来糖(1つまたは複数)などの化合物から作製されるかのいずれかで提供する。このCA中間体は、多様な還元生成物を生じるように遺伝子工学で作り変えられた複数のC保存またはC固定下流生成物合成経路により、対応するアシル-CoA中間体に活性化される。これらの反応を駆動し、CO2放出を回避するために必要とされるエネルギー生成のために、還元一炭素(C1)分子(例えばメタノール)または水素(H2)などの化合物は、NADHおよびATPを作製するためにこれらの化合物を利用する合成経路により、生物のためのエネルギー源として働く。一緒に、これらは、開示される系が炭素損失なく還元化合物を作製することを可能にする。
【0045】
いくつかの態様において、カルボン酸(CA)分子は、唯一供給される炭素源である。いくつかの態様において、グルコースなどの糖は、唯一供給される炭素源であり得、活性化の前にカルボン酸(CA)分子に変換される。これらの状況において、A3分子は最初に、適切なアシル-CoAシンテターゼ、またはアシル-CoAトランスフェラーゼ、またはカルボキシレートキナーゼおよびホスホトランスアシラーゼ、またはカルボン酸レダクターゼおよびアシル-CoAレダクターゼ、またはアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびアシル-CoAレダクターゼにより、対応するアシル-CoAに活性化される。
【0046】
アシル-CoAは、生成物合成経路を開始して、さらなる生化学的反応がある範囲の生成物および伸長に従順な標的中間体を作製することを可能にする。例えば、C1単位(ホルミル-CoA)は、2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼを介してアルデヒドおよびケトンに付加され得る。これらの反応およびその組合せは、達成可能な生成物の範囲を有意に拡大するさらなる生化学的反応に従順である中間体を生じる。
【0047】
これらの反応を駆動し、CO2放出を回避するために必要とされるエネルギー生成について、NAD(P)Hの形態の還元同等物およびATPは、外的に供給されるエネルギー源から作製される。いくつかの態様において、還元一炭素(C1)分子、例えばメタノールは、エネルギー源として供給される。これらの状況において、C1分子は、NADHの同時生成を伴って適切な酵素によりCO2に酸化される。例えば、メタノールは、メタノールをホルムアルデヒドに変換するメタノールデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドをホルメートに変換するホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびホルメートをCO2に変換するホルメートデヒドロゲナーゼを介してCO2に酸化され得る。いくつかの態様において、還元一炭素(C1)は、NAD(P)HおよびATPの両方を作製する適切な酵素を使用して酸化される。例えば、メタノールは、メタノールをホルムアルデヒドに変換するメタノールデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドをホルミル-CoAに変換するアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホルミル-CoAをホルミル-ホスフェートに変換するホスフェートホルミルトランスフェラーゼ、ホルミル-ホスフェートをホルメートに変換するホルメートキナーゼおよびホルメートをCO2に変換するホルメートデヒドロゲナーゼを介してCO2に酸化され得る。いくつかの態様において、水素(H2)はエネルギー源として供給される。これらの状況において、H2は、適切なNAD+-還元ヒドロゲナーゼを介してNAD(P)Hに変換される。
【0048】
そのため、炭素損失なくCA中間体からの還元生成物の作製を可能にするための方法が本明細書に開示され、該方法は、CA中間体を対応するアシル-CoA中間体に活性化する第1の組の代謝酵素、該アシル-CoA中間体を生成物に変換する第2の組の代謝酵素、外的に供給されたエネルギー源から還元同等物およびATPを作製する第3の組の代謝酵素を含む細胞系を含み、所望の還元化合物を作製するための代謝酵素に適切な条件下で、該系に、CA中間体またはCA中間体が作製され得る炭素源および外部エネルギー源を供給する。
【0049】
開示される系および方法における第1の工程は、CA中間体(例えば乳酸)の対応するアシル-CoA(例えばラクトイル-CoA)への変換である。この工程は、本明細書においてCA活性化と称される。一般的に、CA活性化は、カルボン酸基のCoAチオエステルへの変換を含み、以下の工程:(1)アシル-CoAシンテターゼまたはアシル-CoAトランスフェラーゼにより、カルボン酸を対応するアシル-CoAに直接変換する工程、(2)カルボキシレートキナーゼにより、カルボン酸をホスフェート中間体に変換し、次いでホスホトランスアシラーゼによりこれを対応するアシル-CoAに変換する工程、(3)カルボン酸レダクターゼにより、カルボン酸を最初に対応するアルデヒドに還元し、次いでアシル-CoAレダクターゼによりこれを対応するアシル-CoAに変換する工程、または(4)アルデヒドデヒドロゲナーゼにより、カルボン酸を最初に対応するアルデヒドに還元し、次いでアシル-CoAレダクターゼによりこれを対応するアシル-CoAに変換する工程の少なくとも1つを必要とする。
【0050】
開示される系および方法における第2の工程は、アシル-CoAの所望の還元生成物(1つまたは複数)への変換である。この工程は、本明細書において生成物合成と称される。一般的に、異なる官能基および鎖の長さを有する多様な還元生成物は、アシル-CoA中間体から合成され得る。例えば、アシル-CoAレダクターゼによるアシル-CoAの還元は、アルデヒドを生じ得る。このアルデヒドは、アルコールデヒドロゲナーゼによりn-アルコールにさらに還元され得るか、または2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼ(HACL)もしくはオキサリル-CoAデカルボキシラーゼ(OXC)により触媒される反応においてC1構築ブロックとしてホルミル-CoAを使用して、ホルミル-CoA伸長のための前駆体として働き得る。これらの酵素は、ホルミル-CoAと、アルデヒドおよびケトンなどの広範囲の鎖の長さおよび機能性を有する種々のカルボニル含有受容体を連結し得る。いくつかの態様において、最初のカルボン酸および対応するアシル-CoAは、第2の炭素(2-ヒドロキシアシル-CoA)でヒドロキシ(-OH)基を含む。これらの状況において、アシル-CoAレダクターゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼによるCoA基の還元は、1,2-ジオールの形成を生じ、これはさらに、ジオールデヒドラターゼにより対応するケトンまたはアルデヒドに脱水され得る。このケトンまたはアルデヒドはまた、C1構築ブロックとしてホルミル-CoAを使用するホルミル-CoA伸長のための前駆体として働き得る。
【0051】
いくつかの態様において、ホルミル-CoAのアルデヒドまたはケトンへの付加により形成される2-ヒドロキシアシル-CoAは、アシル-CoAレダクターゼ(ACR;E.C. 1.2.1.-、例えば1.2.1.10、1.2.1.76、1.2.1.84)により2-ヒドロキシアルデヒドに還元される。1,2-ジオールを与える2-ヒドロキシアルデヒドのさらなる還元は、適切な1,2-ジオールオキシドレダクターゼ(DOR;E.C. 1.1.1.77)またはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH;E.C. 1.1.1.71)により可能である。1,2-ジオールの脱水は、ジオールデヒドラターゼ(DDR;E.C. 4.2.1.28)の活性により触媒されてアルデヒドを与え得、これはさらに、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH;E.C. 1.1.1.71)によりアルコールに還元され得る。
【0052】
いくつかの態様において、上述の経路の組合せは、いくつかの分子について、アシル-CoAと同じ鎖の長さの生成物が形成されるように同時に実行され得、他の分子については伸長が起こる。両方の経路は同時に、同じ系において同時に存在し得る。
【0053】
いくつかの態様において、目的の生成物は、上述の反応の生成物である。これらの生成物の例としては、限定されないが、アルコール、例えばエタノール、プロパノールおよびブタノール;ジオール、例えば1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオールおよび1,3-ブタンジオール;トリオール、例えば1,2,3-ブタントリオール;ヒドロキシカルボン酸、例えばラクテート、2-ヒドロキシブチレートおよび2,3-ジヒドロキシブチレート;ならびにケトン、例えばアセトンが挙げられる。
【0054】
開示される系および方法における第3の工程は、外部エネルギー源からの還元同等物およびATPの作製である。この工程は、本明細書においてエネルギー生成と称される。一般的に、エネルギー生成は、還元同等物およびATPの作製を生じる供給される外部エネルギー源の酸化を含む。いくつかの態様において、還元一炭素(C1)分子、例えばメタノールが、エネルギー源として供給される。これらの状況において、C1分子は、NADHの作製と同時に適切な酵素によりCO2に酸化される。例えば、メタノールは、メタノールをホルムアルデヒドに変換するメタノールデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドをホルメートに変換するホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびホルメートをCO2に変換するホルメートデヒドロゲナーゼを介してCO2に酸化され得る。いくつかの態様において、還元一炭素(C1)は、NAD(P)HおよびATPの両方を作製する適切な酵素を使用して酸化される。例えば、メタノールは、メタノールをホルムアルデヒドに変換するメタノールデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドをホルミル-CoAに変換するアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホルミル-CoAをホルミル-ホスフェートに変換するホスフェートホルミルトランスフェラーゼ、ホルミル-ホスフェートをホルメートに変換するホルメートキナーゼおよびホルメートをCO2に変換するホルメートデヒドロゲナーゼを介してCO2に酸化され得る。いくつかの態様において、水素(H2)がエネルギー源として供給される。これらの状況において、H2は、適切なNAD+-還元ヒドロゲナーゼによりNAD(P)Hに変換される。
【0055】
いくつかの態様において、記載される経路は、微生物宿主に関して提供される。いくつかの態様において、微生物宿主は、所望の生成物を生じる発酵系において培養される。他の態様において、微生物系は、酵素を生じるように使用され、これは次いで、細胞非含有系における使用のために微生物から抽出される。他の態様において、酵素は、別々に作製されて、系に個々に添加される。
【0056】
生体系における経路は、一般的に1つ以上の酵素をコードする遺伝子を含む1つ以上の発現ベクター(1つまたは複数)により微生物を形質転換することにより作製されるが、遺伝子は、組換え遺伝子工学、相同組換え、遺伝子編集および同様の技術により染色体にも付加され得る。必要なタンパク質が内因性である場合、いくつかの例における場合と同様に、タンパク質は十分であり得るが、通常はより良い機能性および活性酵素のレベルを超える制御のために過剰発現される。いくつかの態様において、1つ以上または全てのかかる遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下にある。
【0057】
酵素は、ゲノムに付加され得るかまたは所望の場合は発現ベクターを介し得る。好ましくは、複数の酵素が1つのベクター内で発現されるか、または複数の酵素は、コーディング領域の間に必要なシグナルを追加することによりオペロンに組み合わされ得る。酵素の1つ以上またはさらには全てを過剰発現することにより、例えばプラスミドもしくは他のベクターを介して過剰なコピーを細胞に付加することにより、さらなる向上がなされ得る。最初の実験は、便利さのために3以上のORFを有する発現プラスミドを使用し得るが、安定性の理由のためにオペロンまたは個々の遺伝子をゲノムに挿入することが好ましくあり得る。
【0058】
収率におけるさらなる向上は、例えばアセテート、ホルメート、エタノールおよびラクテートを作製するためのこれらの経路などの競合経路を低減することによりなされ得、これらの経路をどのように低減またはノックアウトするかは当該技術分野においてすでに周知である。例えば、全ての目的でその全体において参照によりそれぞれ援用される米国特許第7,569,380号、第7,262,046号、第8,962,272号、第8,795,991号、第8,129,157号および第8,691,552号参照。多くの他のものもこの分野でなされている。
【0059】
遺伝子工学で作り変えられた経路を含む適切な株の構築の後、開発された株の培養が実行されて、その意図される目標-カルボン酸中間体よりも還元される生成物の作製で、経路の有効性が評価され得る。生物は、適切な培養培地中で培養され得、カルボン酸基質からの生成物形成について評価され得、ここでカルボン酸は、炭素源として供給されるかまたは異なる供給された炭素源(例えばグルコース)から作製される。生物により作製される生成物の量は、UPLCまたはGCにより測定され得、成長速度、生産性、力価、収率または炭素有効性などの性能の指標が決定され得る。
【0060】
経路酵素と、互いとのおよび宿主系との相互作用のさらなる評価は、経路性能の最適化および有害効果の最小化を可能にし得る。経路は、生物の天然に生じる制御機構ではなく、合成制御下にあるので、経路の発現は通常、細胞増殖または作製を遅延する起こり得る問題を回避して、所望の化合物の作製を最適化するために手動で調整される。
【0061】
さらに、相対的な酵素活性の不均衡は、経路を介する全体的な炭素流動を制限し得、最適以下の作製速度および経路中間体の構築をもたらし、経路酵素を阻害し得るかまたはそれを毒性にし得る。HPLCまたはGCによる細胞培養の分析は、構築された株により作製される代謝中間体を明らかにし得る。この情報は、潜在的な経路の問題を指摘し得る。
【0062】
経路のインビボ発現の代替物として、細胞非含有インビトロバージョンの経路を構築し得る。それぞれの反応工程について関連のある酵素を精製することにより、必要な酵素を反応混合物中で合わせることにより全体的な経路を集合し得る。関連のある補因子および基質の添加により、経路を、宿主とは独立してその性能について評価し得る。
【0063】
遺伝子合成およびDNAクローニングならびにベクターおよびプラスミド構築のための一般的な方法は、当該技術分野で周知であり、いくつかの刊行物に記載される。より具体的に、消化およびライゲーション系クローニングならびにインビトロおよびインビボ組換え方法などの技術は、基質を、適切なベクターへの生成物変換を触媒するポリペプチドをコードするDNA断片を集合させるために使用され得る。これらの方法としては、制限消化クローニング、配列およびライゲーション独立クローニング(SLIC)、ゴールデンゲートクローニング、Gibsonアセンブリ等が挙げられる。これらの方法のいくつかは、ハイスループット適用のために自動化および小型化され得る。
【0064】
宿主微生物において遺伝子工学で作り変えられた代謝経路を発現するための遺伝子カセットは、当該技術分野において公知である。カセットは、導入された経路の酵素、オペロン内の下流のORF(1つまたは複数)の転写を方向づけるためのプロモーター、個々のORF(1つまたは複数)によりコードされるmRNAの翻訳を方向づけるためのリボソーム結合部位および転写終止配列をコードする1つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)を含み得る。発現カセットの種々の構成要素のモジュール性質のために、1つ以上の位置で異なる構成要素を置換することにより、これらの整列の組合せの順列が作成され得る。1つ以上のORFの方向を逆して、これらの代替の方向のいずれかが生成物収率を向上するかどうかを決定もし得る。
【0065】
いくつかの態様において、代謝経路遺伝子を発現するための宿主微生物は、コンジュゲーションを介してこれらの生物に移動される代謝経路発現カセットを有するプラスミドベクター(1つまたは複数)を含む。
【0066】
微生物宿主内で代謝経路遺伝子を発現するための代替的な方法において、生合成経路遺伝子は、染色体に直接挿入され得る。染色体改変のための方法は、標的化されないおよび標的化された欠失および挿入の両方を含む。
【0067】
いくつかの態様において、開示される系および方法はまた、発酵培養液由来の所望の生成物を回収および精製することを含む。使用される方法は、生成物の物理化学的性質ならびに発酵培地および細胞の性質および組成に依存する。例えば米国特許第8,101,808号には、連続フラッシュ蒸発および相分離処理を使用して発酵培養液からC3-C6アルコールを回収するための方法が記載される。いくつかの態様において、固体は、遠心分離、濾過およびデカンテーションにより発酵培地から除去され得る。いくつかの態様において、多炭素化合物は、蒸留、共沸蒸留、液体-液体抽出、吸着、気体ストリッピング、膜蒸発またはパーベーパレーションなどの方法を使用して、発酵培地から単離される。
【0068】
本明細書に開示される系、方法および組成物のいくつかの例示的で非限定的な態様が本明細書に開示される。「A、BおよびCの少なくとも1つ等」に類似する慣例が使用されるこれらの例において、一般的にかかる構築物は、当業者が該慣例を理解する意味において意図される(例えば「A、BおよびCの少なくとも1つを有する系」は、限定されないが、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、および/またはA、BおよびCを一緒に有する系を含む)。2つ以上の代替的な用語を表す事実上任意の離接的な単語および/または句は、明細書または図面中のいずれにせよ、該用語の1つ、該用語のいずれかまたは該用語の両方を含む可能性を企図することが理解されるべきであることが当業者によりさらに理解される。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「Bまたは「AおよびB」の可能性を含むように理解される。
【0069】
例えばいくつかの態様において、微生物は、図1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、13、14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37に示されるように、触媒性反応の原因となる1つ以上の酵素を発現するように改変される。適切に、微生物は、2つ以上の酵素、3つ以上の酵素、4つ以上の酵素、5つ以上の酵素を発現するように改変され、図に示されて、本明細書に記載される実施例により限定されない経路から決定され得る。さらに、当業者は、炭素源を所望の化学的結果に改変し得る遺伝子的に改変された生物を作製するように、微生物に導入される酵素の組合せを選択し得る。
【0070】
いくつかの態様において、微生物は、エネルギー、酸化還元およびATPならびにホルミル-CoA生成の原因となる酵素により改変される。いずれかおよび全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXyBZCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMCH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbA1d、EcMhpF、PsDmpF、EcFrmA、PpFdhA、CcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、ArACS、CaAbft、OfFrc、PsFdhおよび/またはCbFdhの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0071】
いくつかの態様において、微生物は、C1伸長のための中間体アルデヒドとしてホルムアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばCcPta-A ck、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、ArACS、CaAbfT、OfFrc、LmACE、RuHACL、BsmHACL、AcHACK、MeOXC4、LmACR、StPduP、EcAldA、EcfucO、KoPddABC、EcAdhE、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcYciA、EcGlcD、MtAld、BsAld、ALAT1、aldH1、dhaS、EcSerC、GOT1および/またはEcYdfGの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0072】
いくつかの態様において、微生物は、C1伸長の中間体アルデヒドとしてホルムアミドを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばMmFmdA、RuHACL、BsmHACL、AcHACL、MeOXC4、LmACR、EcAldA、EcfucO、KoPddA BC、EcAdhE、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcYciA、EcGlcD、MtAld、BsAld、ALA T1、aldH1、dhaS、EcSerC、GOT1、EcYdfGおよび/またはEcGldAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0073】
いくつかの態様において、微生物は、エネルギー(酸化還元およびATP)およびホルミル-CoA生成経路の原因となる酵素を発現するように改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoB、mdh2、adh、frmA、LmACR、mhpF、dmpF、eutE、CcPta-AcK、EcPta-AcK、EcACS、StACSstabm MhACS、ArACS、abfT、frcおよび/またはfdhの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0074】
いくつかの態様において、微生物は、活性化-還元およびC1伸長経路の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばackA、tdcD、buk1、pta、ptb、yfaC、prpE、IvaE、AAE3、sucC、sucD、cat1、scoC、cat3、yfdE、pct、eutE、pduP、adhE2、sucD、RuHACL、MeOXC4、JGI15、ydiF、tesA、ldh、ald、pdh、pduP、yahK、pduC、pduD、pduE、pddA、pddB、pddC、PiDD、yahk、lcdAB、acuN、gbuF、acuK、crt、lvaC、acuK、tesB、pcs、bcd、fade、pduPおよび/またはaldの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0075】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路についてメチルケトンを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0076】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路についてアセトンを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0077】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路についてブタノンを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0078】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路についてペンタノンを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0079】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路についてヘプタノンを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、これらの酵素は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される微生物の少なくとも1つを含む。
【0080】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路についてヒドロキシアセトンを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0081】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路について3-メチル-2-ブタノンを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0082】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路についてメチルグリオキサールを使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0083】
いくつかの態様において、微生物は、C-1伸長経路についてアセチルアセトン(ペンタン-2,4-dジオン)を使用するカルボン酸プラットフォームの原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、微生物は、以下の酵素、例えばmmoXYBDCD、pmoA1A2B1B2、BmMDH2、CnMDH2、BsMDH、LmACR、StEutE、CbAld、EcMhpF、PsDmpF、pduP、AtAdhE、EcMhpF、CcPta-Ack、EcPta-Ack、EcACS、StACSstab、MhACS、arACS、RuHACS、BsmHACS、DbhACS、AcHACS、EcFrmA、PpFdhA、fucO、gldA、rhaZ、yahK、adhA、yjgB、yqhD、pduq、YLL056C、RiDD、pduCDE、pddABC、BpCaiD_2、CdHadBC、EcPaaZ、AtACX4、EgTER、CaCRT、PfECH、CaHbd、EcAldA、CaAbfT、OfFrc、PsFdh、CbFdhおよび/またはEcYciAの少なくとも1つなどの1つ以上を含むように改変される。
【0084】
特定の態様において、微生物は、ホルメートからのホルミル-CoAの生成の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、これらの酵素としては、例えばAbfT、CcPta-Ack、CaAbfT、OfFrc、EcACS、MhACS、MhACS3、ArACS、StACS6および/またはStACSの少なくとも1つが挙げられる。
【0085】
特定の態様において、微生物は、アシル-CoAレダクターゼを使用するホルムアルデヒドからのホルミル-CoAの生成の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、これらの酵素としては、例えばLmACR、StEutE、EcmhpFおよび/またはPsDmpFの少なくとも1つが挙げられる。
【0086】
特定の態様において、微生物は、LmACRに関して異なるメタノールデヒドロゲナーゼを使用するメタノール由来ホルムアルデヒド(formaldeyde)からのホルミル-CoAの生成の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、これらの酵素としては、例えばBmMDH、CnMdh、RuHACLおよび/またはEcAldAの少なくとも1つが挙げられる。
【0087】
特定の態様において、微生物は、ホルメートのエチレングリコールへの変換の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、これらの酵素としては、例えばLmACR、OfFrcおよび/またはHACSの少なくとも1つが挙げられる。
【0088】
特定の態様において、微生物は、グリコレート作製の変換の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、これらの酵素としては、例えばAbfT、HACS、RuHACL、BsmHACL、MeOXC4および/またはAcHACLの少なくとも1つが挙げられる。
【0089】
具体的な態様は、開始基質としてホルムアルデヒドについてC1伸長経路をプロトタイピングするための細胞非含有方法を示し、これは、カルボン酸、ホルメートの活性化および還元により作製され得る。任意および全ての組合せにおいて、酵素としては、LcACR、RuHACL、EcFucOおよび/またはKoPddABCが挙げられ得る。
【0090】
特定の態様において、微生物は、グリコレートからのグリシンの合成の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、これらの酵素としては、例えばAbfT、HACS、RuHACL、BsmHACL、MeOXC4および/またはAcHACLの少なくとも1つが挙げられる。
【0091】
特定の態様において、微生物は、C1伸長経路によるCA中間体として酢酸(R=H)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、酵素としては、例えばJGI15、RuHACLおよび/またはMeOXC4が挙げられ得る。
【0092】
特定の態様において、微生物は、C1伸長経路によるCA中間体としてプロピオン酸(R=CH3)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、酵素としては、例えばJGI15、RuHACLおよび/またはAcHACLが挙げられ得る。
【0093】
特定の態様において、微生物は、C1伸長経路によるCA中間体としてグリコール酸(R=OH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、酵素としては、例えばJGI15、RuHACLおよび/またはAcHACLが挙げられ得る。
【0094】
特定の態様において、微生物は、C1伸長経路によるCA中間体としてシュウ酸(R=OOH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、酵素としては、例えばJGI15および/またはRuHACLが挙げられ得る。
【0095】
特定の態様において、微生物は、精製された酵素を使用するホルミル-CoAによるメチルケトンの縮合の原因となる酵素により改変される。任意および全ての組合せにおいて、酵素としては、例えばCaAbfTおよび/またはBsmHACSが挙げられ得る。
【0096】
特定の態様において、微生物は、インビボで増殖している細胞を使用して、ホルミル-CoAによるメチルケトンの縮合(ホルメートからの生成)の実行の原因となる酵素により改変され、代表的なメチルケトンとしてアセトンが使用される。任意および全ての組合せにおいて、酵素としては、例えばBsmHACSおよび/またはAcHCSが挙げられ得る。
【0097】
本発明のいくつかの態様が記載されている。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解される。したがって、他の態様は以下の特許請求の範囲内にある。
【実施例
【0098】
実施例
実施例1:
この実施例には、CA中間体として乳酸(ラクテート)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行が示される。ラクテートは、炭素源として供給され得るかまたはグルコースおよび/または他のバイオマス由来糖などの炭素源から作製され得る。糖のラクテートへの変換は、発酵代謝、すなわち(L-またはD-)乳酸発酵の効率を強化し得、これは、高い力価(>200g/L)、速度(>3g/L/h)および収率(1g/gのほぼ理論的最大)で働き、工業的規模で多くの微生物において示されている(Rawoof, S., et al. Environ. Chem. Lett. 19: 539-556 (2021);Mora-Villalobos, J.A., et al. Fermentation 6:21 (2020);de Oliveira, R.A., et al. Biochem. Eng. J. 133:219-239 (2018))。この例において、大腸菌における高い力価、速度および収率のD-およびL-ラクテート産生についての確率された知識(Mazumdar, S., et al. Microb. Cell Fact. 12:7 (2013);Mazumdar, S., et al. Appl. Environ. Microbiol. 76:4327-4336 (2010);Zhu, Y., et al. Appl. Environ. Microbiol. 73:456-464 (2007);Zhao, J.F., et al. Microb. Cell Fact. 12: (2013))ならびにラクテート作製についてザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)株を遺伝子工学で作り変えることに対する以前の研究(Liu, Y., et al. Metab. Eng. 61:261-274 (2020))が、糖からのD-またはL-ホモラクテート発酵のための宿主株を作製するために活用される。他の微生物宿主は、カルボン酸の直接供給および変換または糖などの他の炭素源からのカルボン酸の生成に適していることが当業者に理解される。
【0099】
ラクテートのラクトイル-CoAへの活性化は、サーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)由来のアシル-CoAシンテターゼを利用し(Awano, T., et al. J. Bacteriol. 196:140-147 (2014))、その後の生成物合成経路は、宿主株において異なる機能性および鎖の長さを有する生成物を作製するように遺伝子工学で作り変えられる。
【0100】
ラクトイル-CoAのラクトアルデヒドへの還元は、サルモネラ・エンテリカ由来のCoA-依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼPduPにより進行する(Niu, W. and Guo, J., ACS Syn. Biol. 4:378-382 (2015))。次いでラクテートのエナンチオマーにより決定される特定のラクトアルデヒドエナンチオマーは、大腸菌由来のラクトアルデヒドレダクターゼYahKの作用により対応する1,2-プロパンジオールエナンチオマーに還元される(Niu, W. and Guo, J., ACS Syn. Biol. 4:378-382 (2015))。次いで1,2-PDOは、使用される1,2-PDOエナンチオマーおよびジオールデヒドラターゼに依存して、プロパナールまたはアセトンのいずれかに脱水される。ロゼブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)(LaMattina, J.W., et al. J. Biol. Chem. 291:15515-15526 (2016)) およびクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(Tobimatsu, T., et al. Arch. Biochem. Biophys. 347:132-40 (1997))由来のものなどのジオールデヒドラターゼは、この変換に使用される。次いでプロパナールはさらに、サルモネラ・エンテリカ由来のPduQなどのアルコールデヒドロゲナーゼにより1-プロパノールに還元される(Cheng, S., et al. PLoS ONE 7:e47144 (2012))。代替的に、アセトンが1,2-PDO脱水から形成される場合、トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis)由来の二次的なアルコールデヒドロゲナーゼなどのアルコールデヒドロゲナーゼによるさらなる還元は、2-プロパノールを生じる(Sutak, R., et al. FEBS J. 279:2768-2780 (2012))。
【0101】
還元生成物合成に必要な還元同等物およびATPを作製するために、メタノールは、外部エネルギー源として供給される。メタノール酸化は、バチルス・メタノリクス(Bacillus methanolicus)由来のNADH-依存的メタノールデヒドロゲナーゼ2により進行して(Roth, T.B., et al. ACS Syn. Biol. 8:796-806 (2019))、ホルムアルデヒドを形成し、NADHを作製する。提供されるC1からの直接のATP作製を可能にするために、CoAアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホスフェートホルミルトランスフェラーゼおよびホルメートキナーゼを使用して、ホルミル-CoAおよびホルミル-ホスフェート中間体を介してホルムアルデヒドをホルメートに変換する。ここでリステリア菌由来のCoAアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Chou, A., et al. Nat. Chem. Biol. 15:900-906 (2019))ならびにクロストリジウム・シリンドロスポラム(Clostridium cylindrosporum)由来のホスフェートホルミルトランスフェラーゼおよびホルメートキナーゼ酵素(Sly, W. S. and Stadtman, E. R. J. Biol. Chem. 238:2639-2647 (1963))を使用して、この変換の間にさらなるNADHおよびATPを作製する。シュードモナス属(株101)由来のNADH-依存性ホルメートデヒドロゲナーゼによるCO2へのホルメート酸化を使用して、さらなるNADHを作製する(Tishkov, V.I., et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 192:976-81 (1993))。
【0102】
過剰発現のための遺伝子は、適切なベクターにクローニングされるかまたはM1-93などの強い合成構成性プロモーターにより染色体に挿入されるかのいずれかである。ベクターにクローニングされる場合、これらの遺伝子は、例えばPhusionポリメラーゼ(Thermo Scientific, Waltham, MA)によるベクター骨格への組み換えのためにそれぞれの末端に相同性を追加するための適切なプライマーを使用してPCRにより増幅されて、遺伝子挿入物として働く。プラスミドは、適切な制限酵素(New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)により直線化され、In-Fusion HD Eco-Dryクローニングシステムを使用して、遺伝子挿入物により組み替えられる。その後混合物をStellarコンピテント細胞に形質転換する。適切な抗生物質を補充された固体培地(LB+寒天)上で成長する形質転換体は、単離され、PCRにより遺伝子挿入物についてスクリーニングされる。検証された形質転換体由来のプラスミドは単離され、遺伝子挿入物の配列はDNA配列決定によりさらに確認される。次いで、配列が確認されたプラスミドは、エレクトロポレーションを介して宿主株に導入される。
【0103】
染色体に挿入される場合、CRISPRが使用され、tesBおよびadhEの遺伝子部位は適切な座にあるが、他のものが使用され得る。CRISPR法は、Jiang et al.により開発された方法(Jiang, Y., et al. Appl. Environ. Microbiol. 81:2506-2514 (2015))に基づく。最初に、宿主株を、プラスミドpCasならびにCas9およびλ-redリコンビナーゼの発現のためのベクターで形質転換する。得られた株を、λ-redリコンビナーゼ発現の誘導のためにL-アラビノースと共に30℃で増殖させ、ODが約0.6に達する場合、コンピテント細胞を調製して、sgRNAおよび座を標的化するN20スペーサーおよび標的遺伝子の挿入の鋳型を発現するpTargetF (AddGene 62226)で形質転換する。鋳型は、挿入された遺伝子+挿入座の上流および下流と約500bp配列相同であるM1-93プロモーターであり、Phusionポリメラーゼを使用するオーバーラップPCRにより構築されるかまたはGenScript (Piscataway, NJ)もしくはGeneArt(登録商標)(Life Technologies, Carlsbad, CA)により合成される。pTargetFプラスミドのN20スペーサーを交換するための方法は、Phusionポリメラーゼを使用するプライマーの5'末端で吊り下がる改変されたN20配列を用いた逆PCRならびにその後T4 DNAリガーゼおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)を使用する自己ライゲーションである。スペクチノマイシンおよびカナマイシン(または他の適切な抗生物質)を補充した固体培地(LB+寒天)上30℃未満で増殖する形質転換体を単離し、PCRにより染色体遺伝子挿入物についてスクリーニングする。Phusionポリメラーゼを使用するPCRによりゲノムDNAから増殖される遺伝子挿入物の配列は、DNA配列決定によりさらに確認される。次いで、pTargetFはIPTG誘導により回復され(cured)得、pCasは37~42℃などのより高い温度での増殖により回復され得る。
【0104】
全ての分子生物学技術は、標準的な方法(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989).)を用いてまたは製造業者のプロトコルにより実施される。株を、グリセロールストック中-80℃で保存する。1.5%寒天を含むLB培地を使用してプレートを調製し、適切な抗生物質を、以下の濃度:アンピシリン(100μg/mL)、カナマイシン(50μg/mL)、スペクチノマイシン(50μg/mL)およびクロラムフェニコール(12.5μg/mL)で含ませる。
【0105】
125mM MOPS、およびK2HPO4 (2.8mM)の代わりにNa2HPO4を有し、20g/Lグルコース、10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、100μM FeSO4、5mM (NH4)2SO4および30mM NH4Clを補充したMOPS最小培地(Neidhardt et al. J. Bacteriol.119736-47 (1974))を発酵に使用する。必要な場合は、pHバッファとして55g/LのCaCO3も補充する。細胞内で合成されず、実験に必要とされる場合は20mM乳酸を補充する。500mMメタノールも補充する。適切な場合は抗生物質(50μg/mLカルベニシリン、50μg/mLスペクチノマイシンおよび50μg/mLカナマイシン)を含ませる。全ての化学物質はFisher Scientific Co. (Pittsburg, PA)およびSigma-Aldrich Co. (St. Louis, MO)から得られる。
【0106】
適切な体積の発酵培地を充填して、首を充填するフォームプラグで密封した25mL Pyrex Erlenmeyerフラスコ(狭い口/丈夫な縁、Corning Inc., Corning, NY)中で発酵を行う。嫌気性条件について、17.5mL Hungateチューブに発酵培地を完全に充填して、ゴム(tubber)隔膜で密封する。所望の株の単一のコロニーを、適切な抗生物質を有するLB培地中で一晩(14~16時間)培養して、約0.05の初期OD600を有する接種物として使用する。接種後、フラスコを、NBS I24ベンチトップインキュベーター振盪器(New Brunswick Scientific Co., Inc., Edison, NJ)中200rpm、37℃または30℃でインキュベートする。光学密度(550nm、OD550)が約0.3~0.5に達した場合、適切な濃度のイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)(または他の適切な誘導物)を、プラスミド遺伝子誘導のために添加する。さらなる発酵は、2N L/hrの流速の空気またはアルゴン、温度の独立制御(37℃)、pH(NaOHおよびH2SO4により7.0に制御される)および適切な攪拌機速度でSixFors複数発酵システム(Infors HT, Bottmingen, Switzerland)中で行う。前培養物を、上述の25mL Pyrex Erlenmeyerフラスコ中で増殖させ、誘導後4時間インキュベートする。適切な量のこの前培養物を遠心分離し、新鮮な培地で2回洗浄し、接種のために使用する(400mL初期体積)。バイオリアクター中の発酵は、40g/Lグルコースおよび適切なIPTGおよび抗生物質を有する記載される発酵培地を使用する。必要な場合、乳酸(20mM)を0、24および48時間で添加する。
【0107】
発酵後、2mL培養物のOptima L-80XP Ultracentrifuge (Beckman-Coulter, Schaumburg, IL)中の5000g、5分の遠心分離により得られた上清を、GC-FID/GC-MS分析のために調製する。2mLの上清アリコートを5mLのガラスバイアルに移す(Fisher Scientific Co., Pittsburgh, PA)。次いで、有機溶媒(典型的に酢酸エチル)を1:1の比で、抽出のために発酵培養液試料に添加する(例えば2mL水溶液について2mL)。適切な抽出の後(試料を15秒間ボルテックス、60rpmで2時間の回転機上でのスピン、再度15秒間ボルテックス)、1mLの有機相を除去する。次いで50μLのピリジンおよび50uL BSTFAを誘導体化のために1mLの有機相に添加し、70℃で30分間反応を進行させる。室温に冷却した後、この混合物をGC分析に使用する。
【0108】
GC分析は、5977B Inert Plus Mass Selective Detector Turbo EI Bundle(同定のため)またはFlame Ionization Detector(定量化のため)およびAgilent HP-5キャピラリーカラム(0.25mm内径、0.25μmフィルム厚さ、30m長さ)を備えたAgilent Intuvo 9000 Series Customガスクロマトグラフィーシステムで行う。その後の温度プロフィールは、1.5mL/分の流速で担体気体としてヘリウムを用いて使用する:初期50℃(3分保持);20℃/分で270℃までの傾斜(6分保持)。注入器および検出器温度はそれぞれ250℃および350℃である。1uLの試料を、20:1の分離比で注入する。
【0109】
実施例2:
この実施例には、C1伸長経路によるCA中間体として乳酸(ラクテート)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行が示される。上述のように、ラクテートは、炭素源として供給され得るか、またはグルコースなどの炭素源および/または他のバイオマス由来糖から作製され得る。ラクテートの活性化およびラクトアルデヒド、アセトンまたはプロパナールなどの種々の化合物への還元は、上述の反応および関連のある酵素により進行する。
【0110】
C1伸長のために、経路は、プロパナール、ラクトアルデヒドおよびアセトンなどのカルボニル含有化合物とホルミル-CoAを縮合させる2-ヒドロキシアシル-CoA(HACL)酵素に基づく(Chou, A., et al. Nat. Chem. Biol. 15:900-906 (2019))。ここでこれらの中間体は、ラクテート還元により選択的に作製され、C1付加のための基質として働き、得られる2-ヒドロキシアシル-CoAは種々の生成物に変換される。ホルミル-CoAは、リステリア菌由来のCoAアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼによりホルムアルデヒドから作製される(Chou, A., et al. Nat. Chem. Biol. 15:900-906 (2019))。
【0111】
ラクトアルデヒドがラクトイル-CoAから作製される場合、ロドスピリルム目細菌URHD0017由来のHACLを使用して、ラクトアルデヒドとホルミル-CoAを縮合させ、2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAを形成する。次いで、このC4中間体は種々の生成物に変換され得る。2,3-ジヒドロキシ酪酸は、大腸菌またはシュードモナス・プチダ由来のTesBなどのチオエステラーゼの作用により2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAから作製される(McMahon, M.D. and Prather, K.L.J. Appl. Environ. Microbiol. 80:1042-1050 (2014))。代替的に、2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAは、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinckii)ALDなどのアシル-CoAレダクターゼにより2,3-ジヒドロキシブチルアルデヒドに還元され得る(Kim, S., et al. J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 42:465-475 (2015))。2,3-ジヒドロキシブチルアルデヒドはさらに、大腸菌FucO、AdhPまたはYqhDなどの適切なアルコールデヒドロゲナーゼにより1,2,3-ブタントリオールに還元され得る(Kim, S., et al. J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 42:465-475 (2015))。
【0112】
1,2,3-ブタントリオールの3-ヒドロキシブチルアルデヒドへの脱水は、K.オキシトカジオールデヒドラターゼにより触媒される(Yamanishi, M., et al. FEBS J. 279: 793-804 (2012))。大腸菌FucO、AdhPまたはYqhDなどの適切なアルコールデヒドロゲナーゼの作用による3-ヒドロキシブチルアルデヒドのさらなる還元(Kim, S., et al. J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 42:465-475 (2015))は、1,3-ブタンジオールの作製を生じる。
【0113】
ラクトイル-CoAからアセトンが作製される場合、ロドスピリルム目細菌URHD0017由来のHACLを使用して、アセトンとホルミル-CoAを縮合させ、2-ヒドロキシイソブチリル-CoAを形成する。次いでこのC4中間体は、適切な酵素を使用する上述の経路により、2-ヒドロキシイソ酪酸、2-ヒドロキシイソブチルアルデヒド2-メチル-1,2-プロパンジオール、イソブチルアルデヒドおよびイソブタノールなどの種々の生成物に変換され得る。
【0114】
ラクトイル-CoAからプロパナールが作製される場合、ロドスピリルム目細菌URHD0017由来のHACLを使用して、プロパナールとホルミル-CoAを縮合させ、2-ヒドロキシブチリル-CoAを形成する。次いでこのC4中間体は、適切な酵素を使用する上述の経路により、2-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシブチルアルデヒド1,2-ブタンジオール、ブチルアルデヒドおよびn-ブタノールなどの種々の生成物に変換され得る。
【0115】
還元生成物合成に必要とされる還元同等物およびATPを作製するために、メタノールを外部エネルギー源として供給する。メタノール酸化は、バチルス・メタノリクス由来のNADH依存性メタノールデヒドロゲナーゼ2により進行して(Roth, T.B., et al. ACS Syn. Biol. 8:796-806 (2019))、ホルムアルデヒドを形成し、NADHを作製する。提供されるC1からの直接のATP作製を可能にするために、CoAアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホスフェートホルミルトランスフェラーゼおよびホルメートキナーゼを使用して、ホルミル-CoAおよびホルミル-ホスフェート中間体を介して、ホルムアルデヒドをホルメートに変換する。ここでリステリア菌由来のCoAアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Chou, A., et al. Nat. Chem. Biol. 15:900-906 (2019))ならびにクロストリジウム・シリンドロスポラム由来のホスフェートホルミルトランスフェラーゼおよびホルメートキナーゼ酵素(Sly, W. S. and Stadtman, E. R. J. Biol. Chem. 238:2639-2647 (1963))を使用して、この変換の間にさらなるNADHおよびATPを作製する。シュードモナス属(株101)由来のNADH依存性ホルメートデヒドロゲナーゼによるCO2へのホルメート酸化を使用して、さらなるNADHを作製する(Tishkov, V.I., et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 192:976-81 (1993))。
【0116】
実施例3:エネルギー(酸化還元およびATP)およびホルミル-COA生成を触媒する酵素の概観
この実施例の目的は、一炭素(C1)分子の相互変換に関与する例示的な遺伝子、酵素および経路を提供して、エネルギー(NADHおよびATPに関して)およびC1伸長反応に必要とされるホルミル-CoAを提供することである。
【0117】
本発明の好ましい態様を提供するが、これらは、本開示と組み合わせて当業者がさらなる改変を行うことを可能にする例示として提供される。実施例は、微生物に、特定の経路設計、該経路を構築するために必要とされる遺伝子/酵素、クローニングおよび形質転換のための方法、生成物形成のモニタリングおよび作製のための遺伝子工学で作り変えられた微生物の使用などの該能力をどのように付与するかを教示する。実施例には改変された大腸菌株が示されるが、これらの改変は、同じファミリーの腸内細菌科ならびに他の細菌種ならびに酵母および真菌の他の微生物において容易に実行され得る。
【0118】
メタンは、天然ガス、埋め立てごみおよび農業由来の容易に入手可能なC1源である。メタンのメタノールへの生物学的酸化は、メタンモノオキシゲナーゼにより触媒される。メチロコッカス・カプスラトゥス(Methylococcus capsulatus)由来の可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)の機能的な発現は、宿主としての大腸菌において示される(bioRxiv 2021. 08.05.455234)(図1および表1)。メタノールのホルムアルデヒドへのその後の酸化は、NAD+依存性メタノールデヒドロゲナーゼ(MDH)により触媒され得る。バチルス・メタノリクスMGA3 (BmMDH)、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)(BsMDH) (Metab. Eng. 39:49-59, 2017)およびカプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)(Appl. Microbiol. Biotechnol. 100:4969-4983, 2016)由来のMDHを大腸菌内で発現して、特徴付ける(図1および表1)。ホルムアルデヒドは、大腸菌ホルムアルデヒド解毒系(frmA)により触媒されて、蟻酸に直接酸化され得る。代替的に、ホルミル-CoAへのホルムアルデヒド酸化は、種々のアシル化アルデヒドデヒドロゲナーゼ候補により触媒され得る(Nat. Chem. Biol. 15:900-906, 2019) (図1および表1)。ホルミル-CoAは、C1伸長プラットフォームに供給されるかまたはエネルギーを産生するためにさらに変換されるかのいずれかであり得る。ホルメートへのホルミル-CoA加水分解は、2つの異なるファミリーの酵素により触媒され得る。アシル-CoAトランスフェラーゼ(ACT)は、グリコリル-CoA、アセチル-CoAまたはスクシニル-CoAなどの種々のCoA供与体からホルメートへの可逆的なCoA遷移を触媒し得る。ホスホトランスアシラーゼ-ホルメートキナーゼ(PTA-FOK)ペアは、ホルミル-CoAのホルミル-ホスフェートへの可逆的なリン酸化、次いでホルメートへの脱リン酸化を触媒して1つのATPを生じる。これらの2つの反応は十分に可逆的であると考えられるが、AMP-形成アシル-CoAシンテターゼは、ホルミル-CoAへのホルメート活性化に対して好ましい。最終的に、ホルメートは、可溶性ホルメートデヒドロゲナーゼにより触媒されてCO2にさらに酸化され、NADHを生じ得るか、または同じ酵素を使用して、ホルミル-CoA作製のためにCO2をホルメートに還元し得る(図1および表1)。
【表1】
【0119】
実施例4:蟻酸からのホルミル-COA作製
この実施例の目的は、休止細胞および増殖している培養物の両方を使用して、インビボでのホルメートからのホルミル-CoAの作製に属する本発明の局面を説明することである。ホルメート活性化酵素(FAE)により作製されたホルミル-CoAはさらに、ホルムアルデヒドと縮合されてグリコール酸を作製する。本発明者らは、FAEと共にビーチサンドメタゲノム(beach sand metagenome)から供給されるBsmHACS (UniProtアクセッション:A0A3C0TX30)の発現を独立して制御するようにベクターを遺伝子工学で作り変えた。BsmHACSはpCDFduet-1内のIPTG-誘導性T7プロモーターの制御下にあり、FAEはpETDuet-1内のキュメート-誘導性T5プロモーターの制御下にある(図2A)。FAEは、アシル-CoAシンターゼACS(ニトロソプミルス・マリティムス(Nitrosopumilus maritimus)由来のNmar0206およびEcACS)、アシル-CoAトランスフェラーゼACT(クロストリジウム・アミノブチリカム(Clostridium aminobutyricum)由来のAbfT)およびホスホトランスアシラーゼ(PTA)-FOK (クロストリジウム・シリンドロスポラム由来のCcPta+CcAck)を含む3つの主要なホルメート活性化経路を表すように選択された。これらのベクターのための宿主として、本発明者らは、本発明者らが、本発明者らの経路の分析と競合または干渉し得ると予想した、ホルムアルデヒド(ΔfrmA)およびホルメート(ΔfdhF ΔfdnG ΔfdoG)酸化についてならびにグリコレート利用についてのノックアウト(ΔglcD)を有するMG1655(DE3)に基づいて大腸菌の遺伝子工学で作り変えられた株を使用した。
【0120】
次いで上記の前培養由来の細胞を、遠心分離し(5000×g、22℃)、炭素源を有さない上記の最小培地で2回洗浄し、光学密度約10まで再懸濁した。5mLのこの細胞懸濁物および示される量の炭素源(例えばホルムアルデヒド)を25mL Pyrex Erlenmeyerフラスコ(Corning Inc., Corning, NY)に添加して、首を充填するフォームプラグで密封した。10mMホルムアルデヒドおよび50mMホルメートを0時間で添加した。フラスコを、NBS I24ベンチトップインキュベーター振盪器(New Brunswick Scientific Co., Inc., Edison, NJ)中30℃および200rpmでインキュベートした。30℃で24時間のインキュベーション後、細胞を20817×gで15分間遠心分離して、上清を、下記のようにHPLCにより分析した。
【0121】
生成物および基質濃度(蟻酸、ホルムアルデヒドおよびグリコール酸)の定量化は、屈折率検出器およびピーク分離(0.3ml/分流速、30mM H2SO4移動相、カラム温度42℃)を最適化するための操作条件を有するHPX-87H有機酸カラム(Bio-Rad, Hercules, CA)を備えたShimadzu Prominence SIL 20システム(Shimadzu Scientific Instruments, Inc., Columbia, MD)を使用してHPLCにより決定した。化合物同定および分析は、5977B Inert Plus Mass Selective Detector Turbo EI Bundle (同定のため)およびAgilent HP-5-ms キャピラリーカラム(0.25mm内径、0.25μmフィルム厚さ、30mの長さ)を備えるAgilent 7890B Series Customガスクロマトグラフィーシステムを使用してGC-MSにより実施した。
【0122】
予想される生成物グリコール酸は、培地中で検出され、対応するホルメート活性化酵素の性能を示す。試験されたホルメートCoAトランスフェラーゼの内、CaAbfTは最良の性能を有する(図2B)。
【0123】
ホルメート活性化はホルメート利用のために必要とされる工程であるので、本発明者らは、この反応を触媒する酵素をさらに評価した。アシル-CoAシンテターゼ(ACS)酵素は、ホルメート活性化のための3つの調べられた経路の1つであり、2ATP同等物を消費してホルメートからホルミル-CoAを直接作製し得る(ATPはAMPに変換される)。休止細胞を使用して評価されたACSは、上記のように比較的乏しい活性を示し、これは休止細胞実験におけるATPの制限された利用可能性のためであり得る。そのため、ACSバリアントを、BsmHACS過剰発現を有する新規の確立された増殖している細胞プラットフォームを使用してさらに評価した。このプラットフォームにおいて、ホルメート活性化酵素により作製されるホルミル-CoAはさらに、非毒性基質アセトンと縮合されて、2-ヒドロキシイソブチレート(2HIB)を作製する(図2C)。
【0124】
活発に増殖している細胞中のホルメート活性化酵素のより大きな群のスクリーニングは、6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2、15μMチアミン-HCl、10g/Lトリプトンおよび5g/L酵母抽出物を含み、Neidhardt68の微量元素溶液をさらに補充したM9-LB培地を使用して行った。所望の株の単一のコロニーを、適切な抗生物質を有するLB培地中で一晩(14~16時間)培養し、5mLのM9-LB培地を含む50mL遠心分離チューブへの接種物(1%)として使用した。適切な場合に抗生物質(100μg/mLカルベニシリン、100μg/mLスペクチノマイシン)を含ませた。次いで培養物を、約0.4のOD550に達するまで、Lab Companion SI-600回転振盪器(Jeio Tech, Seoul, South Korea)中、30℃、250rpmでインキュベートし、その時点で適切な量の誘導物質(1つまたは複数)(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドおよびキュメート)および基質(100mMアセトンおよび20mMホルメート)を添加した。チューブを締めて、接種後合計で48時間インキュベートした。遠心分離により細胞をペレット化し、上清を、下記のようにHPLCにより分析した。予想される生成物2-ヒドロキシイソ酪酸は培地中で検出され、対応するホルメート活性化酵素の性能を示す。
【0125】
生成物および基質濃度(蟻酸、アセトンおよび2HIB)の定量化は、ピーク分離を最適化する操作条件(0.3ml/分流速、30mM H2SO4移動相、カラム温度42℃)で、屈折率検出器およびHPX-87H有機酸カラム(Bio-Rad, Hercules, CA)を備えるShimadzu Prominence SIL 20システム(Shimadzu Scientific Instruments, Inc., Columbia, MD)を使用してHPLCにより決定した。化合物同定および分析は、5977B Inert Plus Mass Selective Detector Turbo EI Bundle (同定のため)およびAgilent HP-5-msキャピラリーカラム(0.25mm内径、0.25μmフィルム厚さ、30mの長さ)を備えたAgilent 7890B Series Customガスクロマトグラフィーシステムを使用してGC-MSにより実行した。
【0126】
ACS活性を試験するために、陽性対照として働くようにホルメート活性化に対して良好な性能を有する2つのCoAトランスフェラーゼも含めた。活発に増殖する細胞におけるFAEのより大きな群をスクリーニングすることにより、CoAトランスフェラーゼ(CaAbfTおよびOfFrc)は、ホルメート活性化に対して他の試験したホルメート活性化酵素よりも良好な性能を有する。試験したACSのうち、StACSは最良の性能を有し、その活性はCoAトランスフェラーゼと同等である(図2D)。
【0127】
実施例5:ホルムアルデヒドからのホルミル-COA作製
この実施例の目的は、ホルムアルデヒドとホルミル-CoAの間の相互変換を触媒する種々のアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ/アシル-CoAレダクターゼ(ACR1)の使用を説明することである。本発明者らは、異なるACR1候補と共にロドスピリルム目細菌URHD0017由来のHACL(RuHACL)である活性の2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼを添加することにより、グリコール酸(グリコレート)作製を代用として使用した(図3A)。
【0128】
経路プロトタイピングのための細胞非含有反応は、50mM KPi pH7.4、4mM MgCl2、0.1mM TPP、2.5mM CoASH、5mM NAD+および50mMホルムアルデヒドを含んだ。個々の細胞抽出物負荷は、約4.4g/Lタンパク質(反応体積の1/8)であり、それぞれの反応に添加されるタンパク質の量を、約26g/Lタンパク質(反応体積の3/4)までBL21 (DE3)により標準化した。そうではないと特定されない限り、反応は室温で1時間インキュベートした。1%硫酸で酸性化された飽和硫酸アンモニウムの反応体積の1/4を添加して、反応を終結させた。試料を20817×gで15分間遠心分離し、上清を下記のようにHPLCまたはGC-MSにより分析した。
【0129】
生成物および基質濃度(蟻酸、ホルムアルデヒドおよびグリコール酸)の定量化は、ピーク分離を最適化する操作条件(0.3ml/分流速、30mM H2SO4移動相、カラム温度42℃)で、屈折率検出器およびHPX-87H有機酸カラム(Bio-Rad, Hercules, CA)を備えるShimadzu Prominence SIL 20システム(Shimadzu Scientific Instruments, Inc., Columbia, MD)を使用して、HPLCにより決定した。化合物同定および分析は、5977B Inert Plus Mass Selective Detector Turbo EI Bundle(同定のため)およびAgilent HP-5-msキャピラリーカラム(0.25mm内径、0.25μmフィルム厚さ、30mの長さ)を備えるAgilent 7890B Series Customガスクロマトグラフィーシステムを使用して、GC-MSにより実行した。
【0130】
本発明者らは、RuHACLおよびACR1バリアントを発現する以前の実施例(1つまたは複数)に記載されるように調製した大腸菌の抽出物を合わせ、最良の性能組合せについて迅速にスクリーニングした。試験したACRのうち、リステリア菌由来のバリアント(LmACR)は、経路を可能にするために最良に適合された。LmACRおよびRuHACLの組合せは、1時間で6.2±0.6mMグリコール酸の作製を可能にした(図3B)。
【0131】
実施例6:酸化還元(NADH)およびホルミルCOA生成のための源としてのメタノール
この実施例の目的は、休止細胞および増殖している培養物の両方を用いてインビボで示されるNADHおよびホルミル-CoA作製のための源としてのメタノールの利用を説明することである。NAD+-依存性メタノールデヒドロゲナーゼにより触媒されるホルムアルデヒドへのメタノール酸化は、経路のための還元力または酸化リン酸化と連結される場合にATPの形態のエネルギーとして使用され得るNADHを作製する。同様に、ホルミル-CoAへのホルムアルデヒド酸化も1つのNADHを生じる。ロドスピリルム目細菌URHD0017由来のHACL (RuHACL)と合わされたこれら2つの酵素は、内因的に発現されるチオエステラーゼによりグリコレートに容易に加水分解される、グリコリル-CoAへのメタノールを触媒する(図4A)。
【0132】
インビトロでメタノール利用経路を実行するために、本発明者らは、RuHACLおよびリステリア菌由来のアシル-CoAレダクターゼ(LmACR)および種々のメタノールデヒドロゲナーゼ(MDH)候補を発現するようにベクターを遺伝子工学で作り変えた。これらのベクターのための宿主として、本発明者らは、本発明者らが、本発明者らの経路の分析と競合または干渉し得ると予想した、ホルムアルデヒド(ΔfrmA)およびホルメート(ΔfdhF ΔfdnG ΔfdoG)酸化についてならびにグリコレート利用(ΔglcD)についてのノックアウトを有するMG1655(DE3)に基づいて、大腸菌の遺伝子工学で作り変えらえた株を使用した。
【0133】
休止細胞プロトタイピングは、そうではないと記述されない限り、M9最小培地(6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2および15μMチアミン-HCl)を使用して行った。細胞は最初に、25mLの上述の培地を含み、さらに20g/Lグリセロール、10g/Lトリプトンおよび5g/L酵母抽出物を補充された125mLのバッフルフラスコ(Wheaton, Millville, NJ)内で増殖させた。所望の株の単一のコロニーを、適切な抗生物質を有するLB培地中で一晩(14~16時間)培養し、接種物(1%)として使用した。適切な場合に抗生物質(50μg/mLカルベニシリン、50μg/mLスペクチノマイシン)を含ませた。次いで培養物を、約0.4のOD550に達するまでLab Companion SI-600回転振盪器(Jeio Tech, Seoul, South Korea)中30℃、250rpmでインキュベートし、その時点で、適切な量の誘導物質(1つまたは複数)(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドおよびキュメート)を添加した。接種後フラスコを合計で24時間インキュベートした。
【0134】
次いで上述の前培養由来の細胞を遠心分離し(5000×g、22℃)、炭素源を有さない上記の最小培地で2回洗浄し、約10の光学密度まで再懸濁した。5mLのこの細胞の懸濁物および示される量の炭素源(例えばホルムアルデヒド)を、25mL Pyrex Erlenmeyerフラスコ(Corning Inc., Corning, NY)に添加し、首を充填するフォームプラグで密封した。25mMアセトンおよび5mMホルムアルデヒドを0時間で添加し、さらに5mMホルムアルデヒドを1、2および3時間で添加し、フラスコを、NBS I24ベンチトップインキュベーター振盪器(New Brunswick Scientific Co., Inc., Edison, NJ)中、30℃、200rpmでインキュベートした。30℃で24時間のインキュベーション後、遠心分離により細胞をペレット化し、培地を分析した。予想される生成物グリコール酸は培地中で検出され、遺伝子工学で作り変えられた生物による作製が示された。
【0135】
増殖細胞実験について、使用した増殖培地は500mMメタノール、10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物およびNeidhardtらの微量元素要素がさらに補充されたM9 (6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2および15μMチアミン-HCl)であった。それぞれの株の一晩LB培養を使用して、適切な抗生物質(50μg/mLカルベニシリン、50μg/mLスペクチノマイシン)をさらに補充された5mLの上述の培地を含む50mLの閉鎖キャップ円錐チューブ(Genesee Scientific Co.)に接種した(1%)。約3時間後、0.04mMイソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)および0.04mM キュメートを添加して遺伝子発現を誘導した。チューブをNBS I24ベンチトップインキュベーター振盪器(New Brunswick Scientific Co.)中、30℃、200rpmでインキュベートした。以前に記載されるようなOD600測定およびHPLC分析について、試料(100μL)は、接種後24、48、72および96時間毎に得た。
【0136】
休止細胞実験は、種々のMDHおよびLmACRの組合せが、代用としてのグリコレート産生により示されるようにホルミル-CoAを生じることを示す。試験したバリアントのうち、BmMDHMGA3は50mg/Lまでの最良のグリコレート産生を与え、休止細胞形式下の30mg/LのCnMDHCT4-1が続いた(図4B)。
【0137】
最良の2つの酵素の候補を増殖細胞実験下で試験した。メタノール消費と細胞増殖の間の相関は、過剰なNADH生成の呼吸を介するエネルギー(ATP)の源としてのメタノールの利用を示す。グリコレート作製による結果を休止細胞実験からの結果と整列するが、CnMDHCT4-1は、メタノールのより速い消費およびホルメートの蓄積を示す(図4C)。そのため、BmMDHMGA3はホルミル-CoA作製についてより良い選択であり、CnMDHCT4-1はエネルギー生成についてより良い酵素である。
【0138】
実施例7:蟻酸を使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例には、C1伸長経路によるCAとして蟻酸(ホルメート)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を示す。ホルメートは、酵素ピルビン酸ホルメートリアーゼ(例えばコナミドリムシ由来のPFL1、クロストリジウム・パストゥリアヌム(Clostridium pasteurianum)由来のpfl、大腸菌由来のpflBおよびtdcE、ミュータレンサ球菌由来のpfl:Nucleic Acids Research 42(1):D459-D471, 2014)により細胞により内部的に作製され、CO2の電気化学的または酵素的還元から作製される炭素源として供給され得る。ホルメートの活性化および還元またはアミノ化は、ホルミル-CoAとの縮合反応の基質として働く(置換された)C1アルデヒドを与える。得られる2-ヒドロキシアシル-CoAは、対応する酸に加水分解され得、これは次いでアミノ化されてアミノ酸を形成し得る。アミノ酸のアルデヒドへの還元は、2-アミノアルデヒドを与え、これはその後アミノ化されて、ジアミンを形成し得る(ジアミンデヒドロゲナーゼまたはトランスアミナーゼにより触媒される)かまたはさらに還元されて、アルカノアミン(2-アミノアルコール)を形成し得る(アルコールデヒドロゲナーゼにより触媒される)。代替的に、それらはα-還元サイクルを通って、1,2-ジオールおよびアルコールを作製し得る(図5)。
【0139】
ホルメートのホルミル-CoAへの活性化は、種々の天然および遺伝子工学で作り変えられたアシル-CoAシンテターゼ(Synth. Biol. 6:1-14, 2021)、CoAトランスフェラーゼ(J. Biol. Chem. 283: 6519-6529, 2008;ACS Catal. 11:5396-5404, 2021;Nat. Metab. 3:1385-1399, 2021)およびカルボン酸キナーゼ-ホスホトランスアシラーゼ(J. Biol. Chem. 238:2639-2647, 1963)を使用して示される。ホルミル-CoAのホルムアルデヒドへのさらなる還元は、CoAアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(例えばリステリア菌由来: Synth. Biol. 6:1-14, 2021; Nat. Metab. 3:1385-1399, 2021)により触媒される。
【0140】
ホルミル-CoAからホルムアルデヒドが作製される場合、ロドスピリルム目細菌URHD0017由来のHACLは、ホルムアルデヒドとホルミル-CoAを縮合して、グリコリル-CoAを形成するように使用され得る。グリコリル-CoAは、クロストリジウム・アミノブチリカム由来のAbfTを使用して示されるようなホルメートの活性化のためのCoA供与体として使用され得るか、または大腸菌由来のYciAなどのチオエステラーゼ(ACS Catal. 11:5396-5404, 2021)の作用により加水分解されてグリコール酸(グリコレート)を生じ得る。また、大腸菌PtaおよびAckまたは同等の酵素により触媒されるホスフェート中間体を介した蟻酸活性化と同様に、それは、グリコレートおよびATPを作製するようにグリコリル-ホスフェート中間体を経験し得る。グリコレートはさらに、大腸菌由来のGlcDを介してグリコキシレートに変換され得、次いでアラニンデヒドロゲナーゼ反応により、生きた生物の必須アミノ酸の1つであるグリシンを作製する。複数のアラニンデヒドロゲナーゼは、グリオキシレート(glyoxylate)がグリシンを生じる活性を有する(J. Bacteriol. 194:1045-1054, 2012;Biochemistry 20:5650-5655, 1981)。グリシンは、種々のアルデヒドデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼにより触媒されるアミノアセトアルデヒドに還元され得る。得られるアミノアセトアルデヒドはさらに、ジアミンデヒドロゲナーゼまたはトランスアミナーゼ活性によりさらにアミン化されてエチレンジアミンを形成し得るか、または還元されてエタノールアミンを形成し得る。
【0141】
グリコリル-CoAは、アシル-CoAレダクターゼを介してグリコールアルデヒドにさらに還元され得る。この場合に、ホルミル-CoAのホルムアルデヒドへの還元に使用される同じ酵素(LmACR)がグリコリル-CoAのグリコールアルデヒドへの還元を触媒し得る(Nat. Metab. 3:1385-1399 (2021))。エチレングリコールへのグリコールアルデヒド還元は、大腸菌fucOにより触媒される。エチレングリコールの脱水は、クレブシエラ・オキシトカ由来のPddABCにより触媒されるアセトアルデヒドを与える。得られるアセトアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るかまたは大腸菌adhEにより触媒されるエタノールに還元され得る(図6および表2)。
【表2】
【0142】
実施例8:ホルメートのエチレングリコールへの変換
この実施例には、C1伸長経路によりCA中間体として蟻酸(ホルメート)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行が示される。ホルメートのホルミル-CoAへの活性化は、種々の天然および遺伝子工学で作り変えられたアシル-CoAシンテターゼ(Synth. Biol. 6:1-14, 2021)およびCoAトランスフェラーゼ(J. Biol. Chem. 283: 6519-6529, 2008;ACS Catal. 11:5396-5404, 2021;Nat. Metab. 3:1385-1399, 2021)を使用して示される。ホルミル-CoAのホルムアルデヒドへのさらなる還元は、CoAアシル化ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(例えばリステリア菌由来:Synth. Biol. 6:1-14, 2021; Nat. Metab. 3:1385-1399, 2021)により触媒される。
【0143】
ホルミル-CoAからホルムアルデヒドが作製される場合、ロドスピリルム目細菌URHD0017由来のHACL (RuHACL)またはビーチサンドメタゲノムBsmHACS (UniProtアクセッション:A0A3C0TX30)を使用して、ホルムアルデヒドとホルミル-CoAが縮合されて、グリコリル-CoAが形成される。グリコリル-CoAは、アシル-CoAレダクターゼを介してグリコールアルデヒドにさらに還元され得る。この場合、ホルミル-CoAのホルムアルデヒドへの還元に使用される同じ酵素(LmACR)は、グリコリル-CoAのグリコールアルデヒドへの還元を触媒し得る(Nat. Metab. 3:1385-1399, 2021)。エチレングリコールへのグリコールアルデヒド還元は、大腸菌fucOにより触媒される(図7A)。
【0144】
選択される酵素バリアントの発現は、所望の遺伝子(1つまたは複数)を、適切な制限酵素で消化されたpETDuet-1またはpCDFDuet-1 (Novagen, Darmstadt, Germany)にクローニングすることによりおよびIn-Fusionクローニング技術(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を利用することによりプラスミド系遺伝子発現を使用して達成された。挿入のための線形DNA断片は、目的のオープンリーディングフレーム(大腸菌について天然の遺伝子について)のPCRを介して、またはコドン最適化遺伝子の遺伝子合成により作製された。遺伝子はGeneArt (Life Technologies, Carlsbad, CA)により合成された。得られたIn-Fusion反応生成物を使用して、大腸菌Stellar細胞を形質転換し(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)、PCRスクリーニングにより同定されたクローンは、DNA配列決定によりさらに確認された。
【0145】
発現株の一晩の培養物は、LB中で増殖され、これを使用して、250mLバッフルフラスコ内の25mL TB培地に1%で接種した。OD550が0.4~0.6に達するまで、培養物を回転式振盪器中30℃、250rpmで増殖させ、この時点で0.1mM IPTGにより発現を誘導した。接種の24時間後、遠心分離により細胞を回収した。細胞ペレットを冷9g/L NaCl溶液で1回洗浄し、必要になるまで-80℃で保存した。適切な場合は以下の濃度で抗生物質を含めた:アンピシリン(100μg/mL)、カルベニシリン(50μg/mL)およびスペクチノマイシン(50μg/mL)。
【0146】
タンパク質精製について、所望のhis-タグ付加酵素を発現する大腸菌細胞ペレットを上述の通りに調製した。凍結した細胞ペレットを、冷溶解バッファ(50mM NaPi pH7.4、300mM NaCl、10mMイミダゾール、0.1% Triton-X 100)中、40のおよそのOD550まで再懸濁し、これに1mg/mLのリゾチームおよび250UのBenzonaseヌクレアーゼを添加した。Branson Sonifier 250を使用した氷上の超音波処理(25%義務サイクルおよび出力制御を3に設定で5分)により混合物をさらに処理し、7500×g、15分間、4℃で遠心分離した。上清を、1mL TALON金属親和性樹脂(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を含むクロマトグラフィーカラムに適用し、溶解バッファで前平衡化した。次いでカラムを最初に10mLの溶解バッファで、次いで20mLの洗浄バッファ(50mM NaPi pH7.4、300mM NaCl、20mMイミダゾール)で2回洗浄した。目的のhis-タグ付加タンパク質を、4mL溶出バッファ(50mM NaPi pH7.4、300mM NaCl、250mMイミダゾール)の1~2回の適用により溶出した。溶出物を回収して、10,000 MWCO Amicon限外濾過遠心分離デバイス(Millipore, Billerica, MA)に適用し、濃縮物(約100μL)を脱塩のために4mLの50mM KPi pH7.4で2回洗浄した。Bradford法によりタンパク質濃度を推定した。必要になるまで、精製したタンパク質を20μLアリコート中-80℃で保存した。
【0147】
SDSランニングバッファを有するNuPAGE 12% Bis-Tris Protein Gelsを使用してSDS-PAGEを実行し、製造業者のプロトコルに従ってSimplyBlue SafeStain(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)により染色した。
【0148】
単一の炭素源としてのホルメート由来の生成物についてのインビトロで精製された酵素反応物は、200mM KPi pH8.0、5mM MgCl2、0.2mM TPP、6mM NADH、2mM スクシニル-CoA、2μM BsmHACLまたはRuHACLG390N、2μM OfFrc、4μM LmACR、2μM FucOおよび50mM蟻酸ナトリウムで構成された。そうではないと特定されない限り、反応物は30℃で24時間インキュベートした。10M NaOH溶液の反応体積の1/20を添加して、反応を終結させた。加水分解の30分後、10N H2SO4の反応体積の1/20を添加してpHを中和した。試料を20817×gで15分間遠心分離して、上清を、下記のようにHPLCまたはGC-MSにより分析した。
【0149】
生成物および基質濃度(蟻酸、ホルムアルデヒド、グリコール酸およびエチレングリコール)の定量化は、ピーク分離を最適化する操作条件(0.3ml/分流速、30mM H2SO4移動相、カラム温度42℃)で、屈折率検出器およびHPX-87H有機酸カラム(Bio-Rad, Hercules, CA)を備えたShimadzu Prominence SIL 20システム(Shimadzu Scientific Instruments, Inc., Columbia, MD)を使用して、HPLCにより行った。化合物同定および分析は、5977B Inert Plus Mass Selective Detector(同定のため)およびAgilent HP-INNOWax Columns (0.25mm内径、0.25μmフィルム厚さ、30mの長さ)を備えたAgilent 7890B Series Customガスクロマトグラフィーシステムを使用して、GC-MSにより行った。
【0150】
最良に同定されたACR酵素LmACR*を使用することにより、エチレングリコール力価は、野生型(wide type)LmACRと比較して85%向上した。より多くのLmACR*を添加することにより、より多くの還元同等物NADHおよびより多くのCoA供与体が提供され、エチレングリコール力価はさらに145.8mg/Lまで増加した(図7)。インビトロ実験により、LmACRおよびNADH/還元同等物がエチレングリコールへのホルメート変換に対して有意な影響を有することが示される(図7B)。
【0151】
実施例9:インビボにおけるホルムアルデヒド-ホルミル-COA縮合
この実施例の目的は、インビボにおける生成物合成のためのC1-C1(ホルムアルデヒド-ホルミル-CoA)縮合に属する本発明の局面を説明することである。インビボにおけるグリコレート作製のためのC1伸長経路を実行するために、本発明者らは、種々のHACS候補およびクロストリジウム・アミノブチリカム由来のアシル-CoAトランスフェラーゼ(CaAbfT)の発現を独立して制御するようにベクターを遺伝子工学で作り変え、HACSはpETDuet-1内のIPTG-誘導性T7プロモーターの制御下にあり、CaAbfTはpCDFDuet-1内のキュメート-誘導性T5プロモーターの制御下にあった(図8C)。これらのベクターのための宿主として、本発明者らは、本発明者らが、本発明者らの経路の分析と競合または干渉し得ると予想した、ホルムアルデヒド(ΔfrmA)およびホルメート(ΔfdhF ΔfdnG ΔfdoG)酸化についてならびにグリコレート利用(ΔglcD)についてのノックアウトを有するMG1655(DE3)に基づいて大腸菌の遺伝子工学で作り変えられた株を使用した(図8B)。
【0152】
インビボ生成物合成は、そうではないと記述されない限り、M9最小培地(6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2および15μMチアミン-HCl)を使用して行った。細胞を最初に、20g/Lグリセロール、10g/Lトリプトンおよび5g/L酵母抽出物をさらに補充された0.2mLの上述の培地を含む96深ウェルプレート(USA Scientific, Ocala, FL)中で増殖させた。所望の株の単一のコロニーを、適切な抗生物質を有するLB培地中一晩(14~16時間)培養し、接種物(1%)として使用した。適切な場合は抗生物質(100μg/mLカルベニシリン、100μg/mLスペクチノマイシン)を含ませた。次いで、培養物を、約0.4のOD600が達成されるまで、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中、30℃、1000rpmでインキュベートし、その時点で適切な量の誘導物質(1つまたは複数)(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドおよびキュメート)を添加した。プレートを、接種後合計で24時間インキュベートした。
【0153】
次いで、上述の前培養由来の細胞を遠心分離し(4000rpm、22℃)、炭素源を有さない上記の最小培地で洗浄し、示される量の炭素源を含む1mLの上述の細胞培地で再懸濁した。5mMホルムアルデヒドおよび20mMホルメートを0時間で添加し、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中30℃、1000rpmでインキュベートした。30℃で3時間のインキュベーション後、遠心分離により細胞をペレット化し、培地を分析した(図8A)。
【0154】
結果は、RuHACLおよびBsmHACLがOD600当たり80μM/hまで達する所定の実験的条件下で2つの最良の候補であることを示す。
【0155】
実施例10:開始基質としてホルムアルデヒドを使用する細胞非含有経路プロトタイピング
この実施例の目的は、カルボン酸、ホルメートの活性化および還元により作製され得る開始基質としてのホルムアルデヒドについてのC1伸長経路をプロトタイピングするための細胞非含有方法を説明することである。本発明者らは、唯一の炭素源としてホルムアルデヒドを使用するC1基質の多炭素生成物への変換のための合成経路の一部として、以前の実施例において同定された酵素の使用をプロトタイピングした(図9A)。該経路の最も即時の2炭素ライゲーション生成物は、内因的に発現されるチオエステラーゼによりグリコリル-CoAから容易に加水分解され得るグリコール酸である。したがって、HACLを使用したホルムアルデヒドからのグリコール酸の合成は、アシル-CoAレダクターゼ(ACR)の使用により達成され得るホルミル-CoAのさらなる作製のみを必要とする。
【0156】
経路プロトタイピングのための細胞非含有反応は、50mM KPi pH7.4、4mM MgCl2、0.1mM TPP、2.5mM CoASH、5mM NAD+および50mMホルムアルデヒドを含んだ。時間経過実験について、0.1mM補酵素B12を添加した。個々の細胞抽出物負荷は、約4.4g/Lタンパク質(反応体積の1/8)であり、それぞれの反応に添加されたタンパク質の量は、BL21(DE3)抽出物により、約26g/Lタンパク質(反応体積の3/4)まで標準化された。そうではないと特定されない限り、反応は室温で1時間インキュベートした。1%硫酸で酸性化した飽和硫酸アンモニウム溶液の反応体積の1/4を添加して、反応を終結させた。試料を20817×gで15分間遠心分離して、以前に記載されるように上清をHPLCまたはGC-MSにより分析した。
【0157】
得られた2-ヒドロキシアシル-CoA生成物から異なる化学的機能性を生じるためのHACL-触媒伸長反応の有用性を示すために、本発明者らは、LmACR+RuHACL経路を延長するための酵素を含んだ(図9B)。アシル-CoAレダクターゼは、グリコリル-CoAをグリコールアルデヒドに還元するために必要とされ、グリコールアルデヒドに対する活性について同じ組のACRをスクリーニングする際に、本発明者らは、LmACRもグリコールアルデヒドに対して作用し得ることを見出した。遺伝子工学で作り変えられた系の複雑さを最小化するために、本発明者らは、ホルムアルデヒドのホルミル-CoAへの酸化およびグリコリル-CoAのグリコールアルデヒドへの還元の両方を触媒する二機能性の役割のLmACRを使用した。図9Bに示されるように、LmACRは単独で、ホルムアルデヒドのホルメートへの変換のみを生じた。RuHACLを含むことにより、グリコレートが観察された。しかしながら、グリコールアルデヒドは、おそらくはグリコールアルデヒドのグリコール酸への酸化またはより低い程度でエチレングリコールへの還元を触媒する、細胞抽出物系における内因性のオキシドレダクターゼの存在のために、生成物として有意に検出されなかった。
【0158】
次の還元生成物、エチレングリコールの合成は、大腸菌FucO、1,2-ジオールオキシドレダクターゼを過剰発現する大腸菌の細胞抽出物の添加により有意に増加した(1.37±0.1mMから2.73±0.03mMまで2倍増加)(図9B)。エチレングリコールは、ジオールデヒドラターゼにより、アセトアルデヒドまでさらに脱水され得る。クレブシエラ・オキシトカ由来のジオールデヒドラターゼ(DDR)を発現する大腸菌細胞抽出物の添加の際に、エチレングリコールの対応する低下と共に、内因性アルデヒドレダクターゼによるアセトアルデヒドの還元の生成物であるエタノールが検出された(1時間で1.90±0.03mM:図9B)。これらの異なる生成物(すなわちグリコレート、エチレングリコール、エタノール)の合成は、異なるレベルの還元、鎖の長さおよび機能性で生成物を容易に作製するための2-ヒドロキシアシル-CoAノード(node)の使用を示す。
【0159】
実施例11:グリシン栄養素要求株におけるグリコレートからのグリシンの作製
この実施例には、開始カルボン酸としてホルメートが使用される場合のアミノ酸作製への2-ヒドロキシ酸の代替的な経路が示される。グリシンへのグリコレート変換の説明は、グリシンへのグリオキシレート還元を触媒するアラニンデヒドロゲナーゼのための2つの候補の増殖連結選択によりなされた(図10A)。選択プラットフォームについての宿主として、本発明者らは、グリシン作製および利用についてのノックアウト(ΔaceA Δkbl ΔltaE ΔglyA)を有するMG1655(DE3)に基づいて大腸菌のグリシン栄養素要求株を遺伝子工学で作り変え、株をグリシン補充のみにおいて成長させた(図10A)。
【0160】
遺伝子欠失について、Appl. Environ. Microbiol. 81:2506-2514, 2015)において開発された方法に基づいてCRISPRを使用する。第1に、宿主株を、プラスミドpCas、Cas9およびλ-redリコンビナーゼの発現のためのベクターで形質転換する。得られた株を、λ-redリコンビナーゼ発現の誘導のためにL-アラビノースと共に30℃未満で増殖させ、ODが約0.6に達する場合に、コンピテント細胞を調製して、座および標的遺伝子の挿入の鋳型を標的化するsgRNAおよびN20スペーサーを発現するpTargetF (AddGene 62226)で形質転換する。鋳型は、Phusionポリメラーゼを用いたオーバーラップPCRにより構築されるかまたはGenScript (Piscataway, NJ)により合成される、挿入座の上流および下流と相同な約500bp配列を有する欠失した遺伝子である。pTargetFプラスミドのN20スペーサーを交換するための方法は、Phusionポリメラーゼを使用するプライマーの5'末端で吊り下がる改変されたN20スペーサーを用いた逆PCR、次いでT4 DNAリガーゼおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)を使用する自己連結である。スペクチノマイシンおよびカナマイシン(または他の適切な抗生物質)を補充された固形培地(LB+寒天)上、30℃未満で増殖する形質転換体を単離して、PCRにより染色体遺伝子挿入物についてスクリーニングする。Phusionポリメラーゼを使用するPCRによりゲノムDNAから増幅される遺伝子挿入物の配列を、DNA配列決定によりさらに確認する。次いで、pTargetFはIPTG誘導により回復され得、pCasは37~42℃などのより高温での増殖により回復され得る。
【0161】
得られるグリシン栄養素要求株を、ヒト結核菌由来(MtAld)または枯草菌由来(BsAld)のアラニンデヒドロゲナーゼを構成的に発現するベクターで形質転換した。2つの候補のうち、BsAldを有する株は、グリシン補充の代わりにグリコレートにより増殖を開始し(図10B)、天然のglcDおよび異種的に発現されたBsAld遺伝子によりグリコレートが成功裡にグリシンに変換されることを示す。
【0162】
実施例12:ホルミル-COAとの縮合の基質としてのホルムアミド
この実施例には、C1伸長経路によるCA中間体として蟻酸(ホルメート)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行が示される。ホルムアミダーゼにより触媒されるホルメートのアミノ化は、ホルムアミドを生じ、これは2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)反応のための置換されたC1アルデヒド基質としても使用され得る。メチロフィルス・メチロトロフス(Methylophilus methylotrophus)由来のホルムアミダーゼの機能的発現および特徴付けは文献(Eur. J. Biochem. 240:314-322 (1996))に示される。
【0163】
HACSにより触媒されるホルムアミドのその後のC1伸長は、2-アミノラクトイル-CoAを形成する。2-アミノラクトイル-CoAは、クロストリジウム・アミノブチリカム由来のAbfTなどのCoAトランスフェラーゼを使用するホルメートの活性化についてのCoA供与体として利用され得るかまたは大腸菌由来のYciAなどのチオエステラーゼの作用を介して加水分解されて、2-ヒドロキシグリシンを生じ得る。また、これは、大腸菌PtaおよびAckまたは同等の酵素により触媒されるホスフェート中間体を介した蟻酸活性化と同様に、2-アミノラクトイル-ホスフェート中間体を経験して2-ヒドロキシグリシンおよびATPを生じ得る。2-ヒドロキシグリシンはさらに、大腸菌由来のGlcDまたは同様の酵素、次いでアミノ酸デヒドロゲナーゼ反応を介してオキサミン酸に変換されてジアミノ酢酸を生じ得る。ジアミノ酢酸は、種々のアルデヒドデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼにより触媒されるジアミノエタナールに還元され得る。得られるジアミノエタナールはさらにジアミンデヒドロゲナーゼまたはトランスアミナーゼ活性を介してアミン化されて1,1,2-エタントリアミンを形成し得るか、または還元されて2,2-ジアミノエタノールを形成し得る。
【0164】
2-アミノラクトイル-CoAは、アシル-CoAレダクターゼ活性を介して2-アミノラクトアルデヒドにさらに還元され得る。グリコールアミンへの2-アミノラクトアルデヒド還元は、大腸菌fucOまたは同様の酵素により触媒される。グリコールアミンの脱水は、ジオールデヒドラターゼにより触媒される2-アミノアセトアルデヒドを生じる。得られる2-アミノアセトアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るかまたはアルコールデヒドロゲナーゼにより触媒されるエタノールアミンに還元され得る(図11および表3)。
【表3】
【0165】
実施例13:ホルムアミダーゼ発現ベクターの構築
この実施例には、メチロフィルス・メチロトロフスホルムアミダーゼ(FmdA)の発現に使用されるベクターの設計および構築が説明される。
【0166】
FmdA遺伝子は、コドン最適化され、Twist Biosciencesにより合成される。次いで、該遺伝子を適切なプライマーを使用したPCRにより増幅して、遺伝子挿入物として働くように、例えばPhusionポリメラーゼ(Thermo Scientific, Waltham, MA)によるベクター骨格への組み換えのためにそれぞれの末端に相同性を追加する。プラスミドは、適切な制限酵素(New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)により線形化され、In-Fusion HD Eco-Dryクローニングシステムを使用して遺伝子挿入物と組み替えられる。その後、混合物をStellarコンピテント細胞に形質転換する。適切な抗生物質を補充された固体培地(LB+寒天)上で増殖する形質転換体を単離して、PCRにより遺伝子挿入物についてスクリーニングする。検証された形質転換体由来のプラスミドを単離して、遺伝子挿入物の配列をDNA配列決定によりさらに確認する。次いで配列が確認されたプラスミドを、エレクトロポレーションにより宿主株に導入する(図12)。
【0167】
実施例14:C1伸長経路によるCA中間体としてC2+カルボン酸を使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例には、C1伸長経路によるCA中間体としてC2+カルボン酸を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行が説明される。炭素源としてC2+カルボン酸が供給され得る。活性化および還元C2+カルボン酸は、ホルミル-CoAとの縮合反応のための基質として働くC2+アルデヒドを生じる。得られる2-ヒドロキシアシル-CoAは、対応する2-ヒドロキシ酸に加水分解され得、これは次いでアミン化されて、2-アミノ酸、アルカノールアミンおよびジアミンを形成し得る。代替的に、2-ヒドロキシ酸は、α-還元サイクルを通って、1,2-ジオール、メチルケトン、アルコール、3-ヒドロキシ酸およびα,β-不飽和酸を生じ得る(図13)。
【表4】
【表5-1】
【表5-2】
【0168】
実施例15:ホルミル-COAとの縮合のための基質として酢酸由来アセトアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体として酢酸(R=H)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図14A)。炭素源としてアセテートを供給し得るか、または電気化学的還元もしくは炭素源としてCO2を使用するアセトジェン性(acetogenic)細菌からの微生物変換からアセテートを作製し得る。CO2のアセテートへの変換は、57%までの炭素選択性を有するCO2電気分解システムを使用して説明された(Hann et al. Nat. Food 3:461-471 (2022))。
【0169】
酢酸のアセチル-CoAへの活性化および次いでアセトアルデヒドへの還元は、文献において十分に試験されている。酢酸は、アセチル-ホスフェートを介してアセチル-CoAに活性化され得る。第1に、酢酸は、大腸菌由来のアセテートキナーゼによりアセチルホスフェートにリン酸化され(Skarstedt et al. J Biol Chem. 251(21):6775-6783 (1976))、次いで大腸菌由来のホスフェートアセチルトランスフェラーゼによりアセチル-CoAに変換される(Campos-Bermudez et al. FEBS J. 277(8):1957-1966 (2010))。酢酸を活性化するための他の経路は、大腸菌由来のアセチル-CoAシンテターゼ(Biochem Biophys Res Commun. 449(3):272-277 (2014))またはクロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)由来のスクシニル-CoAトランスフェラーゼ(Soehling et al. Eur J Biochem. 212(1):121-127 (1993))である。最終的に、アセチル-CoAは、大腸菌由来のアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼによりアセトアルデヒドに還元される(Song et al. Metab Eng. 35:38-45 (2016))。
【0170】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、アセトアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合して、ラクトイル-CoAを作製する。ラクトイル-CoAは、メガスファエラ・エルスデニイ(Megasphaera elsdenii)由来のラクトイル-CoAトランスフェラーゼにより乳酸に変換される(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382 (2015))。
【0171】
乳酸はさらに、ラクチカゼイバチルス・カゼイ由来のラクテートデヒドロゲナーゼによりピルビン酸に酸化され得る(Gordon et al. Eur J Biochem. 67(2):543-555 (1976))。ピルビン酸は、枯草菌由来のアラニンデヒドロゲナーゼによりアラニンに還元される(Yoshida et al. Methods in enzymology 17:176-181 (1970))。
【0172】
縮合の生成物としてのラクトイル-CoAは、1,2-プロパンジオール(1,2-PDO)、アセトンおよび1-プロパノールに還元され得る。第1に、ラクトイル-CoAは、サルモネラ・エンテリカ由来のラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼによりラクトアルデヒドに還元され(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382 (2015))、これはさらに、大腸菌由来のラクトアルデヒドレダクターゼにより1,2-PDOに還元され得る(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382 (2015))。ロゼブリア・イヌリニボランス由来のプロパンジオールデヒドラターゼによる1,2-PDOの脱水(LaMattina et al. J Biol Chem. 291(30):15515-15526 (2016))はアセトンを生じる。さらに、サルモネラ・エンテリカ由来のジオールデヒドラターゼによる1,2-PDOの脱水(Bibok et al. J Bacteriol. 179(21):6633-6639(1997))はプロピオンアルデヒドを生じる。得られるプロピオンアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、または大腸菌由来のアルデヒドレダクターゼにより1-プロパノールに還元され得る(Pick et al. Appl Microbiol Biotechnol. 97(13):5815-5824(2013))。
【0173】
ラクトイル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。ラクトイル-CoAは、アナエロチグヌム・プロピオニクム(Anaerotignum propionicum)由来のラクトイル-CoAデヒドラターゼによりアクリロイル-CoAに脱水される(Kandasamy et al. Appl Microbiol Biotechnol. 97(3):1191-1200(2013))。アクリロイル-CoAは、ハロモナス属HTNK1由来のCoAトランスフェラーゼによりアクリル酸に変換される(Todd et al. Environ Microbiol. 12(2):327-343 (2010))。さらに、アクリロイル-CoAは、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAに加水分解されて、さらにハロモナス属HTNK1由来のアクリロイル-CoAヒドラターゼにより3-ヒドロキシプロピオン酸に酸化され得る(Todd et al. Environ Microbiol. 12(2):327-343 (2010))。アクリロイル-CoAについての別の経路は、クロロフレクサス・オーランティアクス(Chloroflexus aurantiacus)由来のプロピオニル-CoAシンターゼによりプロピオニル-CoAに変換される(Alber et al. J Biol Chem. 277(14):12137-12143 (2002))。プロピオニル-CoAはさらに、サルモネラ・エンテリカ由来のプロパナールデヒドロゲナーゼによりプロピオンアルデヒドに還元される(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382 (2015))。
【0174】
インビボにおける乳酸作製についてのC1伸長経路を実行するために、本発明者らは、種々のHACS候補およびクロストリジウム・アミノブチリカム由来のアシル-CoAトランスフェラーゼ(CaAbfT)の発現を独立して制御するように、ベクターを遺伝子工学で作り変えて、HACSはpCDFDuet-1内のIPTG-誘導性T7プロモーターの制御下にあり、CaAbfTはpETDuet-1内のキュメート-誘導性T5プロモーターの制御下にあった(図15B)。これらのベクターの宿主として、本発明者らは、ホルムアルデヒド(ΔfrmA)およびホルメート(ΔfdhFΔfdnGΔfdoG)酸化についてならびにグリコレート利用(ΔglcD)についてのノックアウトを有するMG1655(DE3)に基づいて大腸菌の遺伝子工学で作り変えられた株を使用した。
【0175】
インビボ生成物合成は、そうではないと記述されない限り、M9最小培地(6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2および15μMチアミン-HCl)を使用して実行された。細胞を最初に、0.2mLの上記の培地を含み、さらに20g/Lグリセロール、10g/Lトリプトンおよび5g/L酵母抽出物を補充された96深ウェルプレート(USA Scientific, Ocala, FL)中で増殖された。所望の株の単一のコロニーは、適切な抗生物質を有するLB培地中で一晩(14~16時間)培養され、接種物(1%)として使用された。適切な場合に抗生物質(100μg/mLカルベニシリン、100μg/mLスペクチノマイシン)を含ませた。次いで培養物を、約0.4OのD600が達成されるまでDigital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中30℃、1000rpmでインキュベートし、その時点で適切な量の誘導物質(1つまたは複数)(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドおよびキュメート)を添加した。プレートを、接種後合計24時間インキュベートした。
【0176】
次いで、上記の前培養からの細胞を遠心分離し(4000rpm、22℃)、炭素源を有さない上記の最小培地で洗浄し、示された量の炭素源を含む1mLの上記の最小培地で再懸濁した。5mMアセトアルデヒドおよび20mMホルメートを0時間で添加して、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中、30℃、1000rpmでインキュベートした。30℃で1時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離によりペレット化し、HPLCを使用して培地を分析した(図15A)。
【0177】
結果は、BsmHACSが、所定の実験条件下でOD600当たり95μM/hrまで達し、最良の候補であることを示す(図14B)。
【0178】
実施例16:ホルミル-COAとの縮合のための基質としてプロピオン酸由来プロピオンアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体としてプロピオン酸(R=CH3)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図16A)。
【0179】
プロピオニル-CoAへのプロピオン酸の活性化および次いでプロピオンアルデヒドへの還元は、文献において十分に試験された。プロピオン酸は、プロピオニル-ホスフェートを介してプロピオニル-CoAに活性化され得る。第1に、プロピオン酸は、大腸菌由来のプロピオネートキナーゼによりプロピオニル-ホスフェートにリン酸化され(Hesslinger et al. Mol Microbiol. 27(2):477-492(1998))、次いで大腸菌由来のホスフェートアセチルトランスフェラーゼによりプロピオニル-CoAに変換される(Hesslinger et al. Mol Microbiol. 27(2):477-492(1998))。プロピオン酸を活性化するための他の経路は、大腸菌由来のプロピオニル-CoAシンテターゼ(Guo et al. Prikl Biokhim Mikrobiol. 48(3):289-293(2012))または大腸菌由来のスクシニル-CoAトランスフェラーゼ(Haller et al. Biochemistry. 39(16):4622-4629(2000))である。最終的に、プロピオニル-CoAは、サルモネラ・エンテリカ由来のプロパナールデヒドロゲナーゼによりプロピオンアルデヒドに還元される(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382(2015))。
【0180】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、プロピオンアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、2-ヒドロキシブチリル-CoAを作製する。2-ヒドロキシブチリル-CoAは、大腸菌由来のアシル-CoAチオエステラーゼにより2-ヒドロキシ酪酸に変換される(Lee et al. Biochem Biophys Res Commun. 231(2):452-456(1997))。
【0181】
2-ヒドロキシ酪酸はさらに、デスルホビブリオ・ブルガリス(Desulfovibrio vulgaris)由来のラクテートデヒドロゲナーゼにより2-オキソ酪酸に酸化され得る(Ogata et al. J Biochem. 89(5):1423-1431 (1981))。2-オキソ酪酸は、サーモアクチノミセス・インテルメディウス(Thermoactinomyces intermedius)由来のフェニルアラニンデヒドロゲナーゼにより2-アミノ酪酸に還元される(Kataoka et al. J Biochem. 116(4):931-936 (1994))。
【0182】
縮合の生成物としての2-ヒドロキシブチリル-CoAは、1,2-ブタンジオール(1,2-BDO)、2-ブタノンおよび1-ブタノールに還元され得る。第1に、2-ヒドロキシブチリル-CoAは、サルモネラ・エンテリカ由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼにより2-ヒドロキシブチルアルデヒドに還元され(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382 (2015))、これはさらに大腸菌由来のアルデヒドレダクターゼにより1,2-BDOに還元され得る(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382 (2015))。ジオールデヒドラターゼによる1,2-BDOの脱水は2-ブタノンを生じる。さらに、クレブシエラ・オキシトカ由来のジオールデヒドラターゼによる1,2-BDOの脱水(Toraya et al. J Biochem. 144(4):437-446 (2008))は、ブチルアルデヒドを生じる。得られるブチルアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、または大腸菌由来のアルデヒドレダクターゼにより1-ブタノールに還元され得る(Pick et al. Appl Microbiol Biotechnol. 97(13):5815-5824(2013))。
【0183】
2-ヒドロキシブチリル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。2-ヒドロキシブチリル-CoAは、アナエロチグヌム・プロピオニクム由来のアシル-CoAデヒドラターゼによりクロトニル-CoAに脱水される(Kandasamy et al. Appl Microbiol Biotechnol. 97(3):1191-1200(2013))。クロトニル-CoAは、エメルゲンシア・チモネンシス(Emergencia timonensis)由来のクロトニル-CoAチオエステラーゼによりクロトン酸に変換される(Buffa et al. Nat Microbiol. 7(1):73-86 (2022))。さらに、クロトニル-CoAは、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)由来のアシル-CoAデヒドラターゼにより3-ヒドロキシブチリル-CoAに加水分解され得(Waterson et al. Methods Enzymol. 71 Pt C:421-430 (1981))、さらに大腸菌由来のアシル-CoAチオエステラーゼにより3-ヒドロキシ酪酸に酸化され得る(Tseng et al. Appl Environ Microbiol. 75(10):3137-3145 (2009))。クロトニル-CoAについての別の経路は、クロストリジウム・クルイベリ由来のブチリル-CoAデヒドロゲナーゼによりブチリル-CoAに変換されることである(Li et al. J Bacteriol. 190(3):843-850 (2008))。ブチリル-CoAはさらに、クロストリジウム・ベイジェリンキイ由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼによりブチルアルデヒドに還元される(Yan et al. Appl Environ Microbiol. 56(9):2591-2599 (1990))。
【0184】
インビボにおいて2-ヒドロキシ酪酸作製のためのC1伸長経路を実行するために、本発明者らは、種々のHACS候補およびクロストリジウム・アミノブチリカム由来のアシル-CoAトランスフェラーゼの発現を独立して制御するためのベクターを遺伝子工学で作り変え(CaAbfT)、HACSはpCDFDuet-1内のIPTG-誘導性T7プロモーターの制御下にあり、CaAbfTはpETDuet-1内のキュメート-誘導性T5プロモーターの制御下にあった(図15B)。これらのベクターについての宿主として、本発明者らは、ホルムアルデヒド(ΔfrmA)およびホルメート(ΔfdhF ΔfdnG ΔfdoG)酸化についてならびにグリコレートの利用について(ΔglcD)のノックアウトを有するMG1655(DE3)に基づいて、大腸菌の遺伝子工学で作り変えられた株を使用した。
【0185】
インビボ生成物合成は、そうではないと記述されない限り、M9最小培地(6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2および15μMチアミン-HCl)を使用して行った。細胞を最初に、20g/Lグリセロール、10g/Lトリプトンおよび5g/L酵母抽出物がさらに補充された0.2mLの上述の培地を含む96-深ウェルプレート(USA Scientific, Ocala, FL)内で増殖させた。所望の株の単一コロニーを、適切な抗生物質を有するLB培地中で一晩(14~16時間)培養し、接種物(1%)として使用した。適切な場合に抗生物質(100μg/mLカルベニシリン、100μg/mLスペクチノマイシン)を含ませた。次いで培養を、約0.4のOD600が達成されるまで、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中、30℃、1000rpmでインキュベートし、その時点で適切な量の誘導物質(1つまたは複数)(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドおよびキュメート)を添加した。接種後、プレートを合計で24時間インキュベートした。
【0186】
次いで、上述の前培養からの細胞を遠心分離し(4000rpm、22℃)、炭素源を有さない上述の最小培地で洗浄し、示される量の炭素源を含む1mLの上記の最小培地で再懸濁した。5mMプロピオンアルデヒドおよび20mMホルメートを0時間で添加し、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中、30℃、1000rpmでインキュベートした。30℃で1時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離によりペレット化し、HPLCを使用して培地を分析した(図15A)。
【0187】
結果は、BsmHACSが、OD600当たり20μM/hrまでを達成して、所定の実験条件下で最良の候補であることを示す(図16B)。
【0188】
実施例17:ホルミル-COAとの縮合のための基質として酪酸由来ブチルアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体として酪酸(R=CH2CH3)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図17)。
【0189】
酪酸のブチリル-CoAへの活性化および次いでブチルアルデヒドへの還元は、文献において十分に試験された。酪酸は、ブチリル-ホスフェートを介してブチリル-CoAに活性化され得る。第1に、酪酸は、クロストリジウム・アセトブチリクム由来のブチレートキナーゼによりブチリル-ホスフェートにリン酸化され(Cary et al. J Bacteriol. 170(10):4613-4618 (1988))、次いでクロストリジウム・アセトブチリクム由来のホスホトランスブチリラーゼによりブチリル-CoAに変換される(Wiesenborn et al. Appl Environ Microbiol. 55(2):317-322 (1989))。酪酸を活性化するための他の経路は、シュードモナス・プチダ由来のCoAシンテターゼ(Rand et al. Nat Microbiol. 2(12):1624-1634 (2017))またはクロストリジウム・クルイベリ由来のCoAトランスフェラーゼ(Seedorf et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 105(6):2128-2133 (2008))である。最終的に、ブチリル-CoAは、クロストリジウム・アセトブチリクム由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼによりブチルアルデヒドに還元される(Fontaine et al. J Bacteriol. 184(3):821-830 (2002))。
【0190】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、ブチルアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、2-ヒドロキシペンタノイル-CoAを作製する。2-ヒドロキシペンタノイル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼにより2-ヒドロキシ吉草酸に変換される。
【0191】
2-ヒドロキシ吉草酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼにより2-オキソ吉草酸に酸化され得る。2-オキソ吉草酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼにより2-アミノ吉草酸に還元される。
【0192】
縮合の生成物としての2-ヒドロキシペンタノイル-CoAは、1,2-ペンタンジオール、2-ペンタノンおよびバレルアルデヒドに還元され得る。第1に、2-ヒドロキシペンタノイル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼを介して2-ヒドロキシペンタナールに還元され、さらにアルデヒドレダクターゼにより1,2-ペンタンジオールに還元され得る。ジオールデヒドラターゼによる1,2-ペンタンジオールの脱水は、2-ペンタノンを生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによる1,2-ペンタンジオールの脱水は、バレルアルデヒドを生じる。得られるバレルアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼにより1-ペンタノールに還元され得る。
【0193】
2-ヒドロキシペンタノイル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。2-ヒドロキシペンタノイル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより2-ペンタノイル-CoAに脱水される。2-ペンタノイル-CoAは、CoAチオエステラーゼにより2-ペンテン酸に変換される。さらに、2-ペンタノイル-CoAは、シュードモナス・プチダ由来のアシル-CoAデヒドラターゼにより3-ヒドロキシペンタノイル-CoAに加水分解され得(Rand et al. Nat Microbiol. 2(12):1624-1634 (2017))、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより3-ヒドロキシ吉草酸に酸化され得る。2-ペンタノイル-CoAについての別の経路は、大腸菌由来のアシル-CoAデヒドロゲナーゼによりペンタノイル-CoAに変換されることである(Campbell et al. J Bacteriol. 184(13):3759-3764 (2002))。ペンタノイル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼによりバレルアルデヒドに還元される。
【0194】
実施例18:ホルミル-COAとの縮合のための基質としてグリコール酸由来グリコールアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体としてグリコール酸(R=OH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図18A)。
【0195】
グリコール酸は、グリコリル-ホスフェートを介してグリコリル-CoAに活性化され得る。第1に、グリコール酸は、キナーゼによりグリコリル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼによりグリコリル-CoAに変換される。グリコール酸を活性化するための他の経路は、CoAシンテターゼまたはCoAトランスフェラーゼである。最終的に、グリコリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼによりグリコールアルデヒドに還元される。
【0196】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、グリコールアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、グリセリル-CoAを作製する。グリセリル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼによりグリセリン酸に変換される。
【0197】
グリセリン酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼによりヒドロキシピルビン酸に酸化され得る。ヒドロキシピルビン酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼによりセリンに還元される。セリンの脱水により、2-アミノ-3-ヒドロキシプロパナールが生じ、これはさらに、セリノールに還元され得るかまたは2,3-ジアミノ-1-プロパノールにアミノ化され得る。
【0198】
縮合の生成物としてのグリセリル-CoAは、グリセロール、ヒドロキシアセトンおよび1,3-プロパンジオールに還元され得る。第1に、グリセリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより2,3-ジヒドロキシプロピオンアルデヒドに還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼによりグリセロールに還元され得る。ジオールデヒドラターゼによるグリセロールの脱水は、ヒドロキシアセトンを生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによるグリセロールの脱水は、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドを生じる。得られる3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼにより1,3-プロパンジオールに還元され得る。
【0199】
グリセリル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。グリセリル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3-ヒドロキシアクリロイル-CoAに脱水される。3-ヒドロキシアクリロイル-CoAは、CoAチオエステラーゼにより3-ヒドロキシアクリル酸に変換される。さらに、3-ヒドロキシアクリロイル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3,3-ジヒドロキシプロピオニル-CoAに加水分解され得、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより3,3-ジヒドロキシプロピオン酸に酸化され得る。3-ヒドロキシアクリロイル-CoAについての別の経路は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼにより3-ヒドロキシプロピオニル-CoAに変換されることである。3-ヒドロキシプロピオニル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドに還元される。
【0200】
インビボにおけるグリセリン酸作製についてのC1伸長経路を実行するために、本発明者らは、種々のHACS候補およびクロストリジウム・アミノブチリカム由来のアシル-CoAトランスフェラーゼ(CaAbfT)の発現を独立して制御するためのベクターを遺伝子工学で作り変え、HACSはpCDFDuet-1内のIPTG-誘導性T7プロモーターの制御下にあり、CaAbfTはpETDuet-1内のキュメート-誘導性T5プロモーターの制御下にあった(図15B)。これらのベクターについての宿主として、本発明者らは、ホルムアルデヒド(ΔfrmA)およびホルメート(ΔfdhF ΔfdnG ΔfdoG)酸化についてならびにグリコレート利用について(ΔglcD)ノックアウトを有するMG1655(DE3)に基づいて、大腸菌の遺伝子工学で作り変えられた株を使用した。
【0201】
そうではないと記述されない限り、インビボ生成物合成は、M9最小培地(6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2および15μMチアミン-HCl)を使用して行った。細胞を最初に、20g/Lグリセロール、10g/Lトリプトンおよび5g/L酵母抽出物がさらに補充された0.2mLの上記の培地を含む96-深ウェルプレート(USA Scientific, Ocala, FL)中で増殖させた。所望の株の単一コロニーを、適切な抗生物質を有するLB培地中で一晩(14~16時間)培養し、接種物(1%)として使用した。適切な場合に抗生物質(100μg/mLカルベニシリン、100μg/mLスペクチノマイシン)を含ませた。次いで約0.4のOD600が達成されるまで、培養を、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中、30℃、1000rpmでインキュベートし、その時点で適切な量の誘導物質(1つまたは複数)(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドおよびキュメート)を添加した。接種後、プレートを合計24時間インキュベートした。
【0202】
次いで、上記の前培養からの細胞を遠心分離し(4000rpm、22℃)、炭素源を有さない上記の最小培地で洗浄し、示される量の炭素源を含む1mLの上記の最小培地で再懸濁した。5mMグリコールアルデヒドおよび20mMホルメートを0時間で添加し、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中、30℃、1000rpmでインキュベートした。30℃で1時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離によりペレット化し、HPLCを使用して培地を分析した(図15A)。
【0203】
結果は、JGI15が、OD600当たり39μM/hrまでを達成し、所定の実験条件下で最良の候補であることを示す(図18B)。
【0204】
実施例19:ホルミル-COAとの縮合のための基質として乳酸由来ラクトアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体として乳酸(R=CH3OH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図19)。
【0205】
乳酸は、ラクトイル-ホスフェートを介してラクトイル-CoAに活性化され得る。第1に、乳酸は、キナーゼによりラクトイル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼによりラクトイル-CoAに変換される。乳酸を活性化するための他の経路は、CoAシンテターゼまたはメガスファエラ・エルスデニイ由来のCoAトランスフェラーゼ(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382 (2015))である。最終的に、ラクトイル-CoAは、サルモネラ・エンテリカ由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼによりラクトアルデヒドに還元される(Niu et al. ACS Synth Biol. 4(4):378-382 (2015))。
【0206】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、ラクトアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAを生じる。2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼにより2,3-ジヒドロキシ酪酸に変換される。
【0207】
2,3-ジヒドロキシ酪酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼにより2-オキソ-3-ヒドロキシ酪酸に酸化され得る。2-オキソ-3-ヒドロキシ酪酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼにより2-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸に還元される。2-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸の脱水は、2-アミノ-3-ヒドロキシブタナールを生じ、これはさらに、2-アミノ-1,3-ブタンジオールに還元され得るかまたは3,4-ジアミノ-2-ブタノールにアミノ化され得る。
【0208】
縮合の生成物としての2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAは、1,2,3-ブタントリオール、アセチオン(acetion)および1,3-ブタンジオールに還元され得る。第1に、2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより2,3-ジヒドロキシブチルアルデヒドに還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼにより1,2,3-ブタントリオールに還元され得る。ジオールデヒドラターゼによる1,2,3-ブタントリオールの脱水は、アセチオンを生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによる1,2,3-ブタントリオールの脱水は、3-ヒドロキシブチルアルデヒドを生じる。得られる3-ヒドロキシブチルアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼにより1,3-ブタンジオールに還元され得る。
【0209】
2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。2,3-ジヒドロキシブチリル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3-ヒドロキシクロトニル-CoAに脱水される。3-ヒドロキシクロトニル-CoAは、CoAチオエステラーゼにより3-ヒドロキシクロトン酸に変換される。さらに、3-ヒドロキシクロトニル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3,3-ジヒドロキシブチリル-CoAに加水分解され得、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより3,3-ジヒドロキシ酪酸に酸化され得る。3-ヒドロキシクロトニル-CoAについての別の経路は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼにより3-ヒドロキシブチリル-CoAに変換されることである。3-ヒドロキシブチリル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより3-ヒドロキシブチルアルデヒドに還元される。
【0210】
実施例20:ホルミル-COAとの縮合のための基質としてグリセリン酸由来グリセルアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体としてグリセリン酸(R=OHCH2OH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図20)。
【0211】
グリセリン酸は、グリセリル-ホスフェートを介してグリセリル-CoAに活性化され得る。第1に、グリセリン酸は、キナーゼによりグリセリル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼによりグリセリル-CoAに変換される。グリセリン酸を活性化するための他の経路は、CoAシンテターゼまたはCoAトランスフェラーゼである。最終的に、グリセリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼによりグリセルアルデヒドに還元される。
【0212】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、グリセルアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、2,3,4-トリヒドロキシブチリル-CoAを生じる。2,3,4-トリヒドロキシブチリル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼにより2,3,4-トリヒドロキシ酪酸に変換される。
【0213】
2,3,4-トリヒドロキシ酪酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼにより2-オキソ-3,4-ジヒドロキシ酪酸に酸化され得る。2-オキソ-3,4-ジヒドロキシ酪酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼにより2-アミノ-3,4-ジヒドロキシ酪酸に還元される。2-アミノ-3,4-ジヒドロキシ酪酸の脱水は、2-アミノ-3,4-ジヒドロキシブタナールを生じ、これはさらに、3-アミノ-1,2,4-ブタントリオールに還元され得るかまたは3,4-ジアミノ-1,2-ブタンジオールにアミノ化され得る。
【0214】
縮合の生成物としての2,3,4-トリヒドロキシブチリル-CoAは、トレイトール、3,4-ジヒドロキシ-2-ブタノンおよび1,2,4-ブタントリオールに還元され得る。第1に、2,3,4-トリヒドロキシブチリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより2,3,4-トリヒドロキシブチルアルデヒドに還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼによりトレイトールに還元され得る。ジオールデヒドラターゼによるトレイトールの脱水は、3,4-ジヒドロキシ-2-ブタノンを生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによるトレイトールの脱水は、3,4-ジヒドロキシブチルアルデヒドを生じる。得られる3,4-ジヒドロキシブチルアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼにより1,2,4-ブタントリオールに還元され得る。
【0215】
2,3,4-トリヒドロキシブチリル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。2,3,4-トリヒドロキシブチリル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3,4-ジヒドロキシクロトニル-CoAに脱水される。3,4-ジヒドロキシクロトニル-CoAは、CoAチオエステラーゼにより3,4-ジヒドロキシクロトン酸に変換される。さらに、3,4-ジヒドロキシクロトニル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3,3,4-トリヒドロキシブチリル-CoAに加水分解され得、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより3,3,4-トリヒドロキシ酪酸に酸化され得る。3,4-ジヒドロキシクロトニル-CoAについての別の経路は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼにより3,4-ジヒドロキシブチリル-CoAに変換される。3,4-ジヒドロキシブチリル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより3,4-ジヒドロキシブチルアルデヒドに還元される。
【0216】
実施例21:ホルミル-COAとの縮合のための基質として3-ヒドロキシプロピオン酸由来3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体として3-ヒドロキシプロピオン酸(R=CH2OH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図21)。
【0217】
3-ヒドロキシプロピオン酸は、3-ヒドロキシプロピオニル-ホスフェートを介して3-ヒドロキシプロピオニル-CoAに活性化され得る。第1に、3-ヒドロキシプロピオン酸は、キナーゼにより3-ヒドロキシプロピオニル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼにより3-ヒドロキシプロピオニル-CoAに変換される。3-ヒドロキシプロピオン酸を活性化するための他の経路は、CoAシンテターゼまたはCoAトランスフェラーゼである。最終的に、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドに還元される。
【0218】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、2,4-ジヒドロキシブチリル-CoAを生じる。2,4-ジヒドロキシブチリル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼにより2,4-ジヒドロキシ酪酸に変換される。
【0219】
2,4-ジヒドロキシ酪酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼにより2-オキソ-4-ヒドロキシ酪酸に酸化され得る。2-オキソ-4-ヒドロキシ酪酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼにより2-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸に還元される。2-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸の脱水は、2-アミノ-4-ヒドロキシブタナールを生じ、これはさらに、2-アミノ-1,4-ブタンジオールに還元され得るかまたは3,4-ジアミノ-1-ブタノールにアミノ化され得る。
【0220】
縮合の生成物としての2,4-ジヒドロキシブチリル-CoAは、1,2,4-ブタントリオール、4-ヒドロキシ-2-ブタノンおよび1,4-ブタンジオールに還元され得る。第1に、2,4-ジヒドロキシブチリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより2,4-ジヒドロキシブチルアルデヒドに還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼにより1,2,4-ブタントリオールに還元され得る。ジオールデヒドラターゼによる1,2,4-ブタントリオールの脱水は、4-ヒドロキシ-2-ブタノンを生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによる1,2,4-ブタントリオールの脱水は、4-ヒドロキシブチルアルデヒドを生じる。得られる4-ヒドロキシブチルアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼにより1,4-ブタンジオールに還元され得る。
【0221】
2,4-ジヒドロキシブチリル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。2,4-ジヒドロキシブチリル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより4-ヒドロキシクロトニル-CoAに脱水される。4-ヒドロキシクロトニル-CoAは、CoAチオエステラーゼにより4-ヒドロキシクロトン酸に変換される。さらに、4-ヒドロキシクロトニル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3,4-ジヒドロキシブチリル-CoAに加水分解され得、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより3,4-ジヒドロキシ酪酸に酸化され得る。4-ヒドロキシクロトニル-CoAについての別の経路は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼにより4-ヒドロキシブチリル-CoAに変換されることである。4-ヒドロキシブチリル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより4-ヒドロキシブチルアルデヒドに還元される。
【0222】
実施例22:ホルミル-COAとの縮合のための基質としてシュウ酸由来シュウ酸セミアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体としてシュウ酸(R=OOH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図22A)。
【0223】
シュウ酸は、オキサリル-ホスフェートを介してオキサリル-CoAに活性化され得る。第1に、シュウ酸は、キナーゼによりオキサリル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼによりオキサリル-CoAに変換される。シュウ酸を活性化するための他の経路は、シロイヌナズナ由来のオキサレート-CoAリガーゼ(Foster et al. Plant Cell. 24(3):1217-1229 (2012))または大腸菌由来のCoAトランスフェラーゼ(Mullins et al. PLoS One. 8(7):e67901 (2013))である。最終的に、オキサリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼによりグリオキシル酸に還元される。
【0224】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、グリオキシル酸およびホルミル-CoAを縮合させて、タルトロニル-CoAを生じる。タルトロニル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼによりタルトロン酸に変換される。
【0225】
タルトロン酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼによりメソシュウ酸に酸化され得る。メソシュウ酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼによりアスパラギン酸に還元される。アミノマロン酸の脱水は、2-アミノ-3-オキソプロピオン酸を生じ、これはさらに、セリンに還元され得るかまたは3-アミノアラニンにアミノ化され得る。
【0226】
縮合の生成物としてのタルトロニル-CoAは、グリセリン酸、ピルビン酸および3-ヒドロキシプロピオン酸に還元され得る。第1に、タルトロニル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより2-ヒドロキシ-3-オキソプロピオン酸に還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼによりグリセリン酸に還元され得る。ジオールデヒドラターゼによるグリセリン酸の脱水は、ピルビン酸を生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによるグリセリン酸の脱水は、3-オキソプロピオン酸を生じる。得られる3-オキソプロピオン酸は、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼにより3-ヒドロキシプロピオン酸に還元され得る。
【0227】
インビボにおけるタルトロン酸作製についてのC1伸長経路を実行するために、本発明者らは、種々のHACS候補およびクロストリジウム・アミノブチリカム由来のアシル-CoAトランスフェラーゼ(CaAbfT)の発現を独立して制御するためのベクターを遺伝子工学で作り変え、HACSはpCDFDuet-1内のIPTG-誘導性T7プロモーターの制御下にあり、CaAbfTはpETDuet-1内のキュメート-誘導性T5プロモーターの制御下にあった(図15B)。これらのベクターについての宿主として、本発明者らは、ホルムアルデヒド(ΔfrmA)およびホルメート(ΔfdhFΔfdnGΔfdoG)酸化についてならびにグリコレート利用(ΔglcD)についてのノックアウトを有するMG1655(DE3)に基づいて大腸菌の遺伝子工学で作り変えられた株を使用した。
【0228】
そうではないと記述されない限り、インビボ生成物合成は、M9最小培地(6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2および15μMチアミン-HCl)を使用して行った。細胞を最初に、20g/Lグリセロール、10g/Lトリプトンおよび5g/L酵母抽出物がさらに補充された0.2mLの上記の培地を含む96-深ウェルプレート(USA Scientific, Ocala, FL)中で増殖させた。所望の株の単一コロニーを、適切な抗生物質を有するLB培地中で一晩(14~16時間)培養し、接種物(1%)として使用した。適切な場合に抗生物質(100μg/mLカルベニシリン、100μg/mLスペクチノマイシン)を含ませた。次いで培養物を、約0.4のOD600が達成されるまで、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中、30℃、1000rpmでインキュベートし、その時点で適切な量の誘導物質(1つまたは複数)(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドおよびキュメート)を添加した。接種後、プレートを合計24時間インキュベートした。
【0229】
次いで、上記の前培養からの細胞を遠心分離し(4000rpm、22℃)、炭素源を有さない上記の最小培地で洗浄し、示される量の炭素源を含む1mLの上記の最小培地で再懸濁した。5mMグリオキシル酸および20mMホルメートを0時間で添加し、Digital Microplate Shaker (Fisher Scientific)中、30℃、1000rpmでインキュベートした。30℃で1時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離によりペレット化し、HPLCを使用して培地を分析した(図15A)。
【0230】
結果は、OD600当たり13μM/hrまでを達成する所定の実験的条件下で、RuHACLが最良の候補であることを示す(図22B)。
【0231】
実施例23:ホルミル-COAとの縮合のための基質としてマロン酸由来マロン酸セミアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体としてマロン酸(R=COOH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図23)。
【0232】
マロン酸は、マロニル-ホスフェートを介してマロニル-CoAに活性化され得る。第1に、マロン酸は、キナーゼによりマロニル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼによりマロニル-CoAに変換される。マロン酸を活性化するための他の経路は、CoAシンテターゼまたはCoAトランスフェラーゼである。最終的に、マロニル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼによりマロン酸セミアルデヒドに還元される。
【0233】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、マロン酸セミアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、マリル-CoAを生じる。マリル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼによりリンゴ酸に変換される。
【0234】
リンゴ酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼにより2-オキソコハク酸(オキサル酢酸)に酸化され得る。2-オキソコハク酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼによりアスパラギン酸に還元される。アスパラギン酸の脱水は、3-アミノ-4-オキソ酪酸を生じ、これはさらに3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸に還元され得るかまたは3,4-ジアミノ酪酸にアミノ化され得る。
【0235】
縮合の生成物としてのマリル-CoAは、3,4-ジヒドロキシ酪酸、アセト酢酸および4-ヒドロキシ酪酸に還元され得る。第1に、マリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより3-ヒドロキシ-4-オキソ酪酸に還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼにより3,4-ジヒドロキシ酪酸に還元され得る。ジオールデヒドラターゼによる3,4-ジヒドロキシ酪酸の脱水は、アセト酢酸を生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによる3,4-ジヒドロキシ酪酸の脱水は、4-オキソ酪酸を生じる。得られる4-オキソ酪酸は、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼにより4-ヒドロキシ酪酸に還元され得る。
【0236】
マリル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。マリル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより、フマリル-CoAに脱水される。フマリル-CoAは、CoAチオエステラーゼによりフマル酸に変換される。さらに、フマリル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより2-ヒドロキシスクシニル-CoAに加水分解され得、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより2-ヒドロキシコハク酸に酸化され得る。フマリル-CoAについての別の経路は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼによりスクシニル-CoAに変換されることである。スクシニル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより4-オキソ酪酸に還元される。
【0237】
実施例24:ホルミル-COAとの縮合のための基質としてコハク酸由来コハク酸セミアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体としてコハク酸(R=CH2COOH)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図24)。
【0238】
コハク酸のスクシニル-CoAへの活性化および次いでコハク酸セミアルデヒドへの還元は、文献において十分に試験された。コハク酸は、スクシニル-ホスフェートを介してスクシニル-CoAに活性化され得る。第1に、コハク酸は、キナーゼによりスクシニル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼによりスクシニル-CoAに変換される。コハク酸を活性化するための他の経路は、大腸菌由来のCoAシンテターゼ(Yim et al. Nat Chem Biol. 7(7):445-452 (2011))またはCoAトランスフェラーゼである。最終的に、スクシニル-CoAは、クロストリジウム・クルイベリ由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼによりコハク酸セミアルデヒドに還元される(Schwander et al. Science. 354(6314):900-904 (2016))。
【0239】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、コハク酸セミアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、2-ヒドロキシグルタリル-CoAを生じる。2-ヒドロキシグルタリル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼにより2-ヒドロキシグルタル酸に変換される。
【0240】
2-ヒドロキシグルタル酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼにより2-オキソグルタル酸に酸化され得る。2-オキソグルタル酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼによりグルタミン酸に還元される。グルタミン酸の脱水は、4-アミノ-5-オキソペンタン酸を生じ、これはさらに、4-アミノ-5-ヒドロキシペンタン酸に還元され得るかまたは4,5-ジアミノペンタン酸にアミノ化され得る。
【0241】
縮合の生成物としての2-ヒドロキシグルタリル-CoAは、4,5-ジヒドロキシペンタン酸、レブリン酸および5-ヒドロキシペンタン酸に還元され得る。第1に、2-ヒドロキシグルタリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより4-ヒドロキシ-5-オキソペンタン酸に還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼにより4,5-ジヒドロキシペンタン酸に還元され得る。ジオールデヒドラターゼによる4,5-ジヒドロキシペンタン酸の脱水は、レブリン酸を生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによる4,5-ジヒドロキシペンタン酸の脱水は、5-オキソペンタン酸を生じる。得られる5-オキソペンタン酸は、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼにより5-ヒドロキシペンタン酸に還元され得る。
【0242】
2-ヒドロキシグルタリル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。2-ヒドロキシグルタリル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼによりグルタコニル-CoAに脱水される。グルタコニル-CoAは、CoAチオエステラーゼによりグルタコン酸に変換される。さらに、グルタコニル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3-ヒドロキシグルタリル-CoAに加水分解され得、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより3-ヒドロキシグルタル酸に酸化され得る。グルタコニル-CoAについての別の経路は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼによりグルタリル-CoAに変換されることである。グルタリル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより5-オキソペンタン酸に還元される。
【0243】
実施例25:ホルミル-COAとの縮合のための基質としてイソ酪酸由来イソブチルアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体としてイソ酪酸(R=CH3CH3)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図25)。
【0244】
イソ酪酸は、イソブチリル-ホスフェートを介してイソブチリル-CoAに活性化され得る。第1に、イソ酪酸は、キナーゼによりイソブチリル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼによりイソブチリル-CoAに変換される。イソ酪酸を活性化するための他の経路は、CoAシンテターゼまたはCoAトランスフェラーゼである。最終的に、イソブチリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼによりイソブチルアルデヒドに還元される。
【0245】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、イソブチルアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、2-ヒドロキシ-3-メチルブチリル-CoAを生じる。2-ヒドロキシ-3-メチルブチリル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼにより2-ヒドロキシイソ吉草酸に変換される。
【0246】
2-ヒドロキシイソ吉草酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼにより2-オキソイソ吉草酸に酸化され得る。2-オキソイソ吉草酸は、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼによりバリンに還元される。バリンの脱水は、2-アミノ-3-メチルブタナールを生じ、これはさらに、バリノールに還元され得るかまたは3-メチルブタン-1,2-ジアミンにアミノ化され得る。
【0247】
縮合の生成物としての2-ヒドロキシ-3-メチルブチリル-CoAは、3-メチルブタン-1,2-ジオール、3-メチル-2-ブタノンおよびイソアミルアルコールに還元され得る。第1に、2-ヒドロキシ-3-メチルブチリル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより2-ヒドロキシ-3-メチルブタナールに還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼにより3-メチルブタン-1,2-ジオールに還元され得る。ジオールデヒドラターゼによる3-メチルブタン-1,2-ジオールの脱水は、3-メチル-2-ブタノンを生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによる3-メチルブタン-1,2-ジオールの脱水は、イソバレルアルデヒドを生じる。得られるイソバレルアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼによりイソアミルアルコールに還元され得る。
【0248】
2-ヒドロキシ-3-メチルブチリル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。2-ヒドロキシ-3-メチルブチリル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3-メチルクロトニル-CoAに脱水される。3-メチルクロトニル-CoAは、CoAチオエステラーゼにより3-メチルクロトン酸に変換される。さらに、3-メチルクロトニル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3-ヒドロキシ-3-メチルブチリル-CoAに加水分解され得、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより3-ヒドロキシイソ吉草酸に酸化され得る。3-メチルクロトニル-CoAについての別の経路は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼにより3-メチルブチリル-CoAに変換されることである。3-メチルブチリル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼによりイソバレルアルデヒドに還元される。
【0249】
実施例26:ホルミル-COAとの縮合のための基質としてイソ吉草酸由来イソバレルアルデヒドを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例の目的は、C1伸長経路によるCA中間体としてイソ吉草酸(R=CHCH3CH3)を使用するカルボン酸(CA)プラットフォームの実行を説明することである(図26)。
【0250】
イソ吉草酸は、イソペンタノイル-ホスフェートを介してイソペンタノイル-CoAに活性化され得る。第1に、イソ吉草酸は、キナーゼによりイソペンタノイル-ホスフェートにリン酸化され、次いでホスホトランスアシラーゼによりイソペンタノイル-CoAに変換される。イソ吉草酸を活性化するための他の経路は、CoAシンテターゼまたはCoAトランスフェラーゼである。最終的に、イソペンタノイル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼによりイソバレルアルデヒドに還元される。
【0251】
C1伸長は、エネルギーおよびホルミル-CoA生成工程によるホルミル-CoA作製により開始される。2-ヒドロキシアシル-CoAシンターゼ(HACS)は、イソバレルアルデヒドおよびホルミル-CoAを縮合させて、2-ヒドロキシ-4-メチルペンタノイル-CoAを生じる。2-ヒドロキシ-4-メチルペンタノイル-CoAは、アシル-CoAチオエステラーゼによりロイシン酸に変換される。
【0252】
ロイシン酸はさらに、2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼによりケトロイシンに酸化され得る。ケトロイシンは、アミノデヒドロゲナーゼ/トランスアミナーゼによりロイシンに還元される。ロイシンの脱水は、2-アミノ-4-メチルペンタナールを生じ、これはさらに、ロイシノールに還元され得るかまたは4-メチルペンタン-1,2-ジアミンにアミノ化され得る。
【0253】
縮合の生成物としての2-ヒドロキシ-4-メチルペンタノイル-CoAは、4-メチルペンタン-1,2-ジオール、4-メチル-2-ペンタノンおよびイソヘキサノールに還元され得る。第1に、2-ヒドロキシ-4-メチルペンタノイル-CoAは、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより2-ヒドロキシ-4-メチルペンタナールに還元され、これはさらに、アルデヒドレダクターゼにより4-メチルペンタン-1,2-ジオールに還元され得る。ジオールデヒドラターゼによる4-メチルペンタン-1,2-ジオールの脱水は、4-メチル-2-ペンタノンを生じる。さらに、ジオールデヒドラターゼによる4-メチルペンタン-1,2-ジオールの脱水は、4-メチルバレルアルデヒドを生じる。得られる4-メチルバレルアルデヒドは、C1伸長のその後の反復に供給され得るか、またはアルデヒドレダクターゼによりイソヘキサノールに還元され得る。
【0254】
2-ヒドロキシ-4-メチルペンタノイル-CoAを使用して、不飽和酸が作製され得る。2-ヒドロキシ-4-メチルペンタノイル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより4-メチル-2-ペンタノイル-CoAに脱水される。4-メチル-2-ペンタノイル-CoAは、CoAチオエステラーゼにより4-メチル-2-ペンタン酸に変換される。さらに、4-メチル-2-ペンタノイル-CoAは、アシル-CoAデヒドラターゼにより3-ヒドロキシ-4-メチルペンタノイル-CoAに加水分解され得、さらにアシル-CoAチオエステラーゼにより3-ヒドロキシ-4-メチルペンタン酸に酸化され得る。4-メチル-2-ペンタノイル-CoAについての別の経路は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼにより4-メチルペンタノイル-CoAに変換されることである。4-メチルペンタノイル-CoAはさらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより4-メチルバレルアルデヒドに還元される。
【0255】
実施例27:ホルミル-COAとの縮合のための基質として2-ヒドロキシ酸由来メチルケトンを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例には、精製された酵素を使用するメチルケトンとホルミル-CoAとの縮合の実行が示される。CoAトランスフェラーゼにより触媒されるホルミル-CoAの作製およびHACSにより触媒される縮合は、上記の実施例と同一である。メチルケトンは、上記の2-ヒドロキシ酸から作製され得るかまたは文献(Appl Environ Microbiol 78:70-80, 2012; Metab Eng 62:84-94, 2020)に示される脂肪酸合成およびβ-酸化経路を介して作製され得る。
【0256】
酵素アシル-CoAトランスフェラーゼおよびHACSは、上記のように過剰発現されて精製された。メチルケトンおよびホルミル-CoAの縮合のためのインビトロで精製された酵素反応は、100mM KPi pH6.9、10mM MgCl2、0.15mM TPP、2mMアセチル-CoA、1μM BsmHACL、2μM CaAbfT、20mMホルメートおよび50mMの試験されたメチルケトンで構成された。反応は、そうではないと特定されない限り、30℃で24時間インキュベートされた。
【0257】
この分析について、アシル-CoAを含む試料は最初に、10M NaOH溶液の反応体積の1/20で処理され、添加されて、反応を終結させた。加水分解の30分後、10N H2SO4の反応体積の1/20を添加して、酸抽出の効率を向上させた。得られた試料は、90秒間激しくボルテックスにかけることにより4mL酢酸エチルに抽出された。有機相を分離して、窒素の流れの下、乾燥まで蒸発させた。残渣を50μLピリジンおよび50μL N,O-Bis(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)に溶解して、60℃で15分間インキュベートした。化合物同定および分析は、5977B Inert Plus Mass Selective Detector Turbo EI Bundle (同定のため)およびAgilent HP-5-ms キャピラリーカラム(0.25mm内径、0.25μmフィルム厚さ、30mの長さ)を備えたAgilent 7890B Series Customガスクロマトグラフィーシステムを使用して、GC-MSにより行った。試料は、1.5mL/分の流速でヘリウムを担体ガスとして使用してGC(20:1の分離比を有する1μLの注射)および以下の温度プロフィールにより分析した:開始、90℃で3分;15℃/分で170℃まで傾斜;20℃/分で300℃まで傾斜および8分間維持。注射器および検出器温度はそれぞれ250℃および350℃であった。
【0258】
ホルミル-CoAとのアシロイン縮合反応のための良好なカルボニル含有基質であるメチルケトンとしては、限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン(例としてCn-ケトン、n>3、ブタノン、ペンタノンおよびヘプタノン)、ヒドロキシル化ケトン(ヒドロキシアセトン)および他の機能性ケトン(アセチルアセトン、分岐鎖ケトン、メチルグリオキサール)等が挙げられる。BsmHACSは、図36Bに示されるように、全ての試験されたケトンとホルミル-CoAの縮合を触媒し得た。
【0259】
実施例28:ホルミル-COAとの縮合のための基質として乳酸由来アセトンを使用するカルボン酸プラットフォーム
この実施例には、インビボでの増殖している細胞を使用するメチルケトンとホルミル-CoA(ホルメートから作製)の縮合の実行が示され、アセトンを代表的なメチルケトンとして使用した。上記のように、このプロセスは、2つの酵素、ホルミル-CoA作製酵素(FAE)および縮合酵素(HACS)のみを必要とする。BsmHACSはpCDFduet-1内のIPTG-誘導性T7プロモーターの制御下でクローニングされ、FAEはpETDuet-1内のキュメート-誘導性T5プロモーターの制御下でクローニングされた。一方で、アクチノミセトスポラ・チアングマイエンシス(Actinomycetospora chiangmaiensis)DSM 45062において最近同定されたHACLバリアント(Frontiers in microbiology 11:691, 2020)も含めて、AcHACLと称された。
【0260】
活発に増殖している細胞中のアセトンとホルメート由来のホルミル-CoAの縮合は、6.78g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、1g/L NH4Cl、0.5g/L NaCl、2mM MgSO4、100μM CaCl2、15μMチアミン-HCl、10g/Lトリプトンおよび5g/L酵母抽出物を含み、さらにNeidhardt68の微量元素溶液が補充されたM9-LB培地を使用して行った。所望の株の単一コロニーを、適切な抗生物質を有するLB培地中で一晩(14~16時間)培養し、5mLのM9-LB培地を含む50mL遠心分離チューブへの接種物(1%)として使用した。適切な場合に抗生物質(100μg/mLカルベニシリン、100μg/mLスペクチノマイシン)を含ませた。次いで培養物を、約0.4のOD550に達するまで、Lab Companion SI-600回転振盪器(Jeio Tech, Seoul, South Korea)中、30℃、250rpmでインキュベートし、その時点で適切な量の誘導物質(1つまたは複数)(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドおよびキュメート)および基質(アセトンおよびホルメート)を添加した。チューブを締めて、接種後合計で48時間インキュベートした。遠心分離により細胞をペレット化して、上記のようにHPLCまたはGC-MSにより培地を分析した。
【0261】
増殖細胞実験は、HACSが、アセトンおよびホルミル-CoAの縮合を触媒したが、BsmHACSが、発酵の2日後に作製された2.8mM(291mg/L)までの2HIBを伴ってより良い性能を示したことを示す(図37B)。
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【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
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【表18-1】
【表18-2】
【0262】
実験方法は上述の実施例に記載されるものと同様である。
【0263】
そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的な用語は、開示される発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用される文献およびそれらが引用される材料は、参照により具体的に援用される。
【0264】
当業者は、常套的なもの以下の実験を使用して、本明細書に記載される発明の特定の態様についての多くの同等物を認識するかまたは確実にし得る。かかる同等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
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【国際調査報告】