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特表2024-527616神経線維腫症2型症候群の予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】神経線維腫症2型症候群の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/06 20060101AFI20240718BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61K 31/4192 20060101ALI20240718BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C07D249/06 CSP
A61P43/00 105
A61P25/00 ZNA
A61K31/4192
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501973
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2022001200
(87)【国際公開番号】W WO2022196927
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0033149
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519379835
【氏名又は名称】ピーアールジー エスアンドテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PRG S&TECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】パク ポムチュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ファヨン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC60
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZB21
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、神経線維腫症2型症候群の予防または治療用組成物に関するものであって、本発明による化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、その立体異性体、またはこれらの組み合わせは、既存のTβR1キナーゼ抑制剤であるTEW7197とは異なって、正常なTGF-β信号は妨害せずとも、TGF-β受容体1(TβR1)媒介RKIP減少を抑制するので、正常なTGF-β信号抑制によって引き起こされる副作用の問題を解決することができる新たな形態の神経線維腫症2型症候群の治療剤として活用されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその立体異性体から選択された化合物:
【化1】
前記化学式1において、
は、NRまたはCNであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、水素または(C1~C4)アルキルであり、
は、ハロ、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、
またはRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、
nは、0~3の整数である。
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物で、Rは、NHまたはNRであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、(C1~C2)アルキルであり、Rは、(C1~C4)アルコキシであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、(C1~C4)アルキルであり、nは、1~2の整数であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物で、Rは、NHであり、Rは、(C1~C2)アルコキシであり、R及びRは、(C1~C2)アルキルであり、nは、1~2の整数であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその立体異性体から選択された化合物を含む、神経線維腫症2型(NF2)症候群の予防または治療用薬学組成物:
【化1】
前記化学式1において、
は、NRまたはCNであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、水素または(C1~C4)アルキルであり、
は、ハロ、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、
またはRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、
nは、0~3の整数である。
【請求項5】
前記化合物は、TGF-β受容体1(TβR1)とRKIPとの相互作用を抑制することを特徴とする、請求項4に記載の神経線維腫症2型症候群の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記化合物は、正常なTGF-β信号は妨害せずとも、TGF-β受容体1(TβR1)媒介RKIP減少を抑制することを特徴とする、請求項4に記載の神経線維腫症2型症候群の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記化合物は、細胞周期を抑制して神経鞘細胞への分化を促進することを特徴とする、請求項4に記載の神経線維腫症2型症候群の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記化合物は、RKIPを誘導して神経鞘腫細胞の幹細胞能を抑制することを特徴とする、請求項4に記載の神経線維腫症2型症候群の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその立体異性体から選択された化合物を含む、神経線維腫症2型(NF2)症候群の予防または改善用健康食品組成物:
【化1】
前記化学式1において、
は、NRまたはCNであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、水素または(C1~C4)アルキルであり、
は、ハロ、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、
またはRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、
nは、0~3の整数である。
【請求項10】
下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、その立体異性体、またはこれらの組み合わせを投与する段階を含む、神経線維腫症2型(NF2)症候群の治療方法:
【化1】
前記化学式1において、
は、NRまたはCNであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、水素または(C1~C4)アルキルであり、
は、ハロ、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、
またはRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、
nは、0~3の整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常なTGF-β信号は妨害せずとも、TGF-β受容体1(TβR1)媒介RKIP減少を抑制する新規な化合物及びそれを含む神経線維腫症2型症候群(neurofibromatosis type 2 syndrome;NF2 syndrome)の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
神経線維腫症(neurofibromatosis;NF)は、骨、軟組織、皮膚及び神経系に影響を及ぼす遺伝疾患であって、神経線維腫症1型(NF1)及び神経線維腫症2型(NF2)に分類される。神経線維腫症2型は、8番目の神経である脳神経(cranial nerve)で発生する良性腫瘍であって、難聴、耳鳴り及び均衡障害の症状が表われる疾患であり、中枢神経系内の神経鞘細胞(schwann cells)内で発生するために、前庭神経鞘腫(vestibular schwannomas)とも呼ばれる。神経線維腫症2型が発病する平均年齢は、18~24歳であり、30歳になれば、ほとんどあらゆる患者に両側性前庭神経鞘腫が発生すると知られている。また、脳神経と末梢神経、髄膜腫、脳室膜細胞腫、そして、非常に珍しく、星状細胞腫のような神経鞘腫が進行しうる。
【0003】
神経線維腫症2型の原因は、染色体22番の長腕(22q12.2)に位置したNF2遺伝子の突然変異によって発生する。NF2遺伝子は、マーリン(merlin)と呼ばれるタンパク質を構成する役割を行うが、マーリンは、神経系内の脳と脊髄の神経細胞とを取り囲んでいる神経鞘細胞から生成される。
【0004】
本発明者の以前の研究で、NF2症候群でNF2とRKIPとの間の関連性を報告し、NF2の損失は、TβR2発現を減少させ、TβR1及びTβR2間の不均衡を引き起こし、増加したTβR1は、RKIPをリン酸化させ、RKIPの不安定性を促進する。
【0005】
代表的なTGF-β抑制剤であるTEW7197は、TβR1キナーゼ活性を抑制してNF2症候群マウスモデルで神経鞘腫を抑制したが(Mol Cancer Ther 17,2271-2284,2018)、平均発病が青少年期またはその以前であり、小児遺伝疾患に分類されるNF2症候群の生理的-病理学的特徴を考慮すれば、標準TGF-βが正常な恒常性及び発達に重要であるために、TEW7197によるTGF-βの抑制は、副作用の問題を引き起こし得る。
【0006】
これにより、副作用のないNF2症候群の治療剤の開発のためには、正常なTGF-β信号を妨害せずとも、TβR1媒介RKIP減少を抑制するNF2症候群の新規な候補物質を掘り出すことが非常に重要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、神経線維腫症2型(neurofibromatosis type 2;NF2)症候群の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、神経線維腫症2型(NF2)症候群の予防または治療用健康食品組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、神経線維腫症2型(NF2)症候群の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を果たすために、本発明は、下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその立体異性体から選択された化合物を提供する:
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1において、Rは、NRまたはCNであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、水素または(C1~C4)アルキルであり、Rは、ハロ、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、nは、0~3の整数である。
【0013】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその立体異性体から選択された化合物を含む神経線維腫症2型(NF2)症候群の予防または治療用薬学組成物、または神経線維腫症2型症候群の予防または改善用健康食品組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、その立体異性体、またはこれらの組み合わせを投与する段階を含む神経線維腫症2型(NF2)症候群の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、その立体異性体、またはこれらの組み合わせは、既存のTβR1キナーゼ抑制剤であるTEW7197とは異なって、正常なTGF-β信号は妨害せずとも、TGF-β受容体1(TβR1)媒介RKIP減少を抑制するので、正常なTGF-β信号抑制によって引き起こされる副作用の問題を解決することができる新たな形態の神経線維腫症2型症候群の治療剤として活用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】NF2症候群細胞でRKIP誘導剤をスクリーニングした結果であって、(A)は、HEI-193細胞で化合物(10μM)を24時間反応させた後、RKIP発現をウェスタンブロット分析したものであり、(B)は、HEI-193細胞またはマウス神経鞘腫細胞で化合物(10μM)を48時間反応させた後、MTT分析を通じて細胞生存率を測定したものである。
図2】NF2症候群細胞で各化合物(10μM)を72時間反応させて14個の化合物(赤色表示)がRKIP発現を誘導するということを確認したものである。
図3】正常線維芽細胞で各化合物(10μM)を48時間反応させた後、MTT分析を通じて細胞生存率を測定したものである。
図4】HEI-193細胞(A)、マウス神経鞘腫細胞(B)または正常線維芽細胞(C)でNf-08001関連39個の誘導体をそれぞれ48時間処理した後、MTT分析を通じて細胞生存率を測定した結果である(TβR1抑制剤-TEW7197、SB431542、LY2157299;mTOR抑制剤-Rad001)。
図5】Nf-08001の最適化を通じた化合物の導出結果であって、(A)は、HEI-193細胞または正常線維芽細胞で表記された濃度の化合物を7日間処理した後、MTT分析を通じて細胞生存率を測定したものであり、(B)は、ビーズ-結合GST RKIP組換えタンパク質をTβR1-形質感染されたHEK293細胞溶出物及び表記された化合物と2時間共培養した後、ウェスタンブロット分析したものであり(+:5μM、++:10μM、SUP:上澄み液)、(C)は、HEI-193細胞で濃度別の化合物を24時間反応させたものであり、(D)は、HEI-193細胞で10μMの化合物を処理し、12時間後、TGF-β1(2ng/ml)を添加し、12時間反応させたウェスタンブロット分析したものであり、(E)は、3TP-ルシフェラーゼベクターをHEK293細胞に形質感染させて3TP-ルシフェラーゼ活性を検討したものであって、24時間後、10μMの化合物を処理し、12時間後、TGF-β1(2ng/ml)を添加し、12時間反応させたものである。
図6】Nf-08001の最適化を通じた化合物の導出関連のさらに他の結果であって、(A)は、HEI-193細胞で定められた化合物を24時間反応させたものであり、(B)は、ビーズ-結合GST RKIP組換えタンパク質をTβR1-形質感染されたHEK293細胞溶出物及び表記された化合物と2時間共培養した後、ウェスタンブロット分析したものであり(SUP:上澄み液)、(C)は、正常線維芽細胞で10μMの化合物を24時間処理した後、免疫ブロットしたものである。
図7】最適化されたNf-08001は、他の信号経路を妨害しないということを確認した結果であって、(A)は、HEI-193細胞で10μMの化合物を反応させ、12時間後、IGF-1(5μg/ml)を添加し、細胞を12時間培養した後、免疫ブロットしたものであり、(B)は、PRG-N-01の分子構造を示したものである。
図8】NF2-欠乏状態でPRG-N-01の選択的効果を示したものであって、(A)は、HEI-193細胞をFLAGタギングされたTβR1発現ベクターで形質感染させ、24時間後、表記された濃度の化合物を処理し、6時間後、細胞を溶出し、IP分析及びウェスタンブロット分析を行った結果であり、(B)は、HEI-193細胞をFLAGタギングされたNF2発現ベクターで形質感染させ、24時間後、定められた濃度の化合物を48時間処理した後、細胞生存率をMTT分析を通じて測定した結果であり、(C)は、HEI-193細胞をFLAGタギングされたNF2発現ベクターで形質感染させ、24時間後、表記された化合物(10μM)を24時間処理した後、免疫ブロット分析を行った結果であり、(D)は、3TP-ルシフェラーゼベクターをHEI-193細胞に形質感染させて3TP-ルシフェラーゼ活性を検討したものであって、24時間後、表記された化合物を処理し、12時間後、TGF-β1(2ng/ml)を添加し、12時間反応させたものであり(TβR1抑制剤-TEW7197、LY2157299)、(E)は、HEI-193細胞及びマウス神経鞘腫細胞を定められた発現ベクター(WT:野生型、TA:T101A突然変異、TD:T101D突然変異)で形質感染させ、24時間後、表記された化合物(10μM)を24時間処理した後、免疫ブロット分析を行った結果である。
図9】PRG-N-01の効果を検討したものであって、(A)は、HEI-193細胞でHAタギングされたRKIP発現ベクターで形質感染させ、24時間後、表記された濃度の化合物を処理し、6時間後、細胞を溶出し、IP分析及びウェスタンブロット分析を行った結果であり、(B)は、細胞にPRG-N-01またはTEW7197を36時間処理した後、免疫ブロットした結果であり、(C)は、マウス神経鞘腫細胞をFLAGタギングされたNF2発現ベクターで形質感染させ、24時間後、定められた化合物(10μM)を24時間処理し、免疫ブロット分析を行った結果であり、(D)は、マウス神経鞘腫細胞をFLAGタギングされたNF2発現ベクターで形質感染させ、定められた濃度の化合物を48時間処理した後、細胞生存率をMTT分析を通じて測定した結果であり、(E)は、HEI-193細胞を表記された発現ベクター(WT:野生型、RKIP T101A:突然変異)で形質感染させ、24時間後、定められた化合物(2μM)を48時間処理した後、TGF-β1(2ng/ml)を12時間さらに反応させ、免疫ブロット分析を行った結果である。
図10】PRG-N-01処理されたNF2症候群細胞での遺伝子発現プロファイルの結果であって、(A)は、HEI-193細胞で表記された濃度のPRG-N-01を表記された時間処理した後、マイクロアレイした結果であり、Cluster Aは、上向き調節遺伝子セットであり、Cluster Bは、下向き調節遺伝子セットであり、(B-C)は、対照群と2μMのPRG-N-01処理HEI-193細胞とで異なって発現される遺伝子のGO term分析結果であり(赤い棒:脂質代謝関連工程;青い棒:細胞周期アレスト関連工程)、(D)は、脂質代謝または細胞周期関連代表的遺伝子を記載した表である。
図11】PRG-N-01処理NF2症候群細胞での遺伝子発現プロファイルのさらに他の結果であって、(A-B)は、対照群と2μMのPRG-N-01を6日間処理されたHEI-193細胞とで異なって発現される遺伝子のGO term分析での細胞成分(CC)または分子機能(MF)を示したものであり、(C-F)は、対照群と1μMのPRG-N-01を6日間処理されたHEI-193細胞とで異なって発現される遺伝子のGO term分析結果を示したものである。
図12】PRG-N-01が細胞周期を抑制し、神経鞘細胞への分化を促進する結果であって、(A)は、HEI-193細胞で10μMのPRG-N-01を4日間処理し、細胞周期分析を行った結果であり、(B)は、HEI-193細胞で10μMのPRG-N-01を表記された時間処理し、細胞をカウンティングした結果であり、(C)は、分化を誘導するために、HEI-193細胞でPRG-N-01を7日間処理するか、FLAGタギングされたNF2発現ベクターで形質感染させたものであり、(D-E)は、定められた化合物で反応させたHEI-193細胞をRT-PCR(D)またはウェスタンブロット分析(E)に適用したものであり(TEW:TEW7197;SB:SB431542)、(F-G)は、HEI-193細胞を抗神経鞘細胞マーカータンパク質抗体で染色し、FACS分析(F)または免疫蛍光分析(G)を行った結果である。
図13】PRG-N-01が細胞周期を抑制し、神経鞘細胞への分化を促進するさらに他の結果であって、(A)は、HEI-193細胞で10μMのPRG-N-01を4日間処理し、細胞周期分析を行った結果であり、(B)は、分化を誘導するために、HEI-193細胞で10μMのPRG-N-01を7日間処理した後、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、ファロイジンで染色したものであり、(C)は、HEI-193細胞で表記された濃度別にPRG-N-01を7日間処理し、神経鞘細胞マーカー(MPZ及びPMP22)を確認したものであり、(D)は、HEI-193細胞で10μMのPRG-N-01を7日間処理し、抗神経鞘細胞マーカータンパク質抗体で染色した結果である。
図14】PRG-N-01がRKIPの発現を誘導して神経鞘腫の幹細胞能を抑制する結果であって、(A)は、HEI-193細胞で定められた濃度のPRG-N-01またはTEW7197を4日間処理した後、ウェスタンブロットした結果であり、(B)は、HEI-193細胞または神経鞘腫細胞をDMEM/F12培地で定められた化合物(10μM)で反応させた後、10日目の腫瘍球イメージをキャプチャーしたものであり、(C-D)は、HEI-193細胞または神経鞘腫細胞をDMEM/F12培地で定められた化合物(10μM)で反応させた後、10日目の腫瘍球を溶解させ、表記された抗体で免疫ブロットした結果であり、(E)は、腫瘍球のウェスタンブロット分析結果であり、(F)は、核流出抑制のために、Leptomycin B(2ng/ml)をHEI-193細胞に処理し、6時間後、10μMの定められた化合物を添加し、24時間培養し、免疫ブロットしたものであり、(G)は、プロテアソーム分解抑制のために、MG132(5μM)をHEI-193細胞に処理し、6時間後、10μMの表記された化合物を添加し、24時間培養し、免疫ブロットしたものである。
図15】PRG-N-01がRKIPを誘導して神経鞘腫の幹細胞能を抑制するさらに他の結果であって、(A)は、HEI-193細胞をDMEM/F12培地で表記された化合物(10μM)で表記された日付間処理した後、4日目の腫瘍球イメージをキャプチャーしたものであり、(B)は、HEI-193細胞をDMEM/F12培地で表記された化合物(10μM)で処理した後、10日目の腫瘍球を溶解させ、表記された抗体で免疫ブロットした結果であり、(C)は、HEI-193細胞で表記された化合物(2μM)を24時間処理し、抗SOX2抗体で染色したものであり、(D)は、HEI-193細胞で表記された化合物(2μM)を24時間処理し、細胞分画化後、ウェスタンブロットした結果であり、(E)は、HEI-193細胞を表記された発現ベクターで(WT:野生型、TA:RKIP T101A突然変異、TD:RKIP T101D突然変異)形質感染させ、24時間後、表記された化合物(10μM)を24時間処理した後、免疫ブロットした結果であり、(F)は、HEI-193細胞を表記されたsiRNAで形質感染させ、24時間後、表記された化合物(2μM)を24時間処理した後、免疫ブロットした結果である。
図16】RKIPが神経鞘腫細胞でSOX2減少及びTGF-β信号に重要な因子であるということを糾明した結果であって、(A)は、HEI-193細胞で10μMのPRG-N-01を処理し、12時間後、TGF-β1(1ng/ml)を添加し、表記された時間反応させ、免疫ブロット分析を行った結果であり、(B)は、HEI-193細胞を4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、抗ホスホ-SMAD2/3抗体で染色したものであり、(C-D)は、HEI-193細胞を表記された発現ベクターで形質感染させ、12時間後、表記された濃度のTGF-β1を添加し、表記された時間反応させ、免疫ブロット分析を行った結果である。
図17】PRG-N-01のin vivo抗癌効果を示したものであって、(A)は、腫瘍体積が300mmに達する時、マウスにキャリアまたはPRG-N-01(20mg/kg)を5週間(週当たり3回)投与し、投与5週の腫瘍イメージを示したものであり、(B)は、投与5週後、マウスを切開し、分離した腫瘍の重量を定量したものであり、(C)は、毎週腫瘍体積を測定したものであり、(D-E)は、分離した腫瘍からタンパク質及びmRNAを抽出して免疫ブロット及びRT-PCRを行った結果である。
図18】PRG-N-01のさらに他のin vivo抗癌効果を示したものであって、(A)は、PRG-N-01投与5週の時、腫瘍移植されたマウスのイメージを示したものであり、(B)は、PRG-N-01の毒性検討のために高濃度のPRG-N-01(200mg/kg)を腹腔投与した後、マウス重量を測定したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、正常なTGF-β信号を妨害せずとも、TβR1媒介RKIP減少を抑制するNF2症候群の治療のための新規な候補物質を掘り出すことを目標として鋭意努力した結果、新たな化合物であるPRG-N-01がNF2症候群細胞の分化を促進し、正常なTGF-β信号の妨害なしに同種移植腫瘍モデルで腫瘍成長を抑制することを確認することにより、本発明を完成した。
【0019】
本発明は、下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその立体異性体から選択された化合物を提供する:
【0020】
【化1】
【0021】
前記化学式1において、
【0022】
は、NRまたはCNであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、水素または(C1~C4)アルキルであり、Rは、ハロ、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C1~C4)アルキルまたは(C1~C4)アルコキシであり、nは、0~3の整数である。
【0023】
望ましくは、前記化学式1で表される化合物で、Rは、NHまたはNRであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、(C1~C2)アルキルであり、Rは、(C1~C4)アルコキシであり、RまたはRは、それぞれ同一または異なり、(C1~C4)アルキルであり、nは、1~2の整数である。
【0024】
より望ましくは、前記化学式1で表される化合物で、Rは、NHであり、Rは、(C1~C2)アルコキシであり、R及びRは、(C1~C2)アルキルであり、nは、1~2の整数である。
【0025】
さらに望ましくは、前記化合物は、次の化学式2の化合物(PRG-N-01)である。
【0026】
【化2】
【0027】
本発明は、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその立体異性体から選択された化合物を含む神経線維腫症2型(NF2)症候群の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0028】
本発明による化合物は、TGF-β受容体1(TβR1)とRKIPとの相互作用を抑制することができ、特に、正常なTGF-β信号は妨害せずとも、TGF-β受容体1(TβR1)媒介RKIP減少を抑制することができる。
【0029】
また、本発明による化合物は、細胞周期を抑制して神経鞘細胞への分化を促進することができ、RKIPを誘導して神経鞘腫細胞の幹細胞能を抑制することができる。
【0030】
本発明において、前記薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、セシウム塩、アミニウム(aminium)塩、アンモニウム塩、トリエチルアミニウム塩、及びピリジニウム塩からなる群から選択された1つ以上の塩基性塩であるが、これに制限されるものではないということを明示する。
【0031】
また、前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸、臭素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、酢酸、マイレン酸、フマル酸、グルコサン、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、酢酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、4-トルエンスルホン酸、ガラクツロン酸、エンボン酸、グルタミン酸、クエン酸、及びアスパラギン酸からなる群から選択された1つ以上の酸性塩であるが、これに制限されるものではないということを明示する。
【0032】
本発明の薬学組成物は、投与のために、前記記載した成分以外に薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含みうる。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が挙げられる。
【0033】
本発明の薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤型、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用することができる。詳細には、剤形化する場合、通常使う充填剤、重量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固型製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などを含むが、これらに限定されるものではない。このような固型製剤は、前記有効成分の以外に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使われる。経口のための液状物、流動パラフィン以外に、さまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを添加して調剤される。非経口投与のための製剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤を含む。非水性溶剤及び懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール、マクロゴール、トウイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使われる。
【0034】
本発明の薬学組成物は、経口型または非経口型製剤で製造することができ、経口、静脈、脳室内、真皮内、筋肉内、腹膜内、鼻腔または硬膜外(eidural)経路で投与することができるが、これに制限されるものではないということを明示する。
【0035】
本発明の薬学組成物の適した投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、時間によって異なるが、当業者によって適切に選択されうるので、前記組成物の一日投与量は、望ましくは、0.01~100mg/kgであり、必要に応じて一日1回ないし数回に分けて投与することができる。
【0036】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその立体異性体から選択された化合物を含む神経線維腫症2型(NF2)症候群の予防または改善用健康食品組成物を提供する。
【0037】
前記健康食品組成物は、さまざまな栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有することができる。その他に天然果汁、合成果汁及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用することができる。また、健康機能食品組成物は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、ガム類、アイスクリーム類、スープ、飲料水、お茶、機能水、ドリンク剤、アルコール及びビタミン複合剤のうち何れか1つの形態である。
【0038】
また、前記健康食品組成物は、食品添加物をさらに含むことができ、食品添加物としての適否は、他の規定がない限り、食品医薬品安全処に承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法などによって当該品目に関する規格及び基準によって判定する。
【0039】
前記食品添加物公典に収載された品目として、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、ケイ皮酸などの化学的合成品、紺色素、甘草抽出物、結晶セルロース、コウリャン色素、グアーガムなどの天然添加物、L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類などが挙げられる。
【0040】
この際、健康食品組成物を製造する過程で食品に添加される本発明による組成物は、必要に応じて、その含量を適切に加減することができる。
【0041】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、その立体異性体、またはこれらの組み合わせを投与する段階を含む神経線維腫症2型(NF2)症候群の治療方法を提供する。
【0042】
以下、実施例及び実験例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例及び実験例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって、本発明の範囲が、これらの実施例及び実験例によって制限されないということは当業者にとって自明である。
【0043】
[反1]
【0044】
合成例1:NF-08001の合成
【0045】
1.2-(4-(2-(ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)アセトニトリル(a)の合成
【0046】
THFに2-(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル(1当量)とPPh(1.3当量)とを混合した溶液にアルゴン大気下でアゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.5当量)と2-(ジエチルアミノ)エタン-1-オル(1.3当量;300mg、2.25mmol)とを0℃で添加した。3時間常温で撹拌した後、水で反応を中止させた後、EtOAcで抽出した。抽出して得られた有機相をMgSOで乾燥し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上フラッシュカラムクロマトグラフィー(MeOH:EtOAc=1:9)によって精製して、黄色オイル化合物a[530mg(99%)]を収得した。
【0047】
2.1-(4-(ベンジルオキシ)ベンジル)-4-(4-(2-(ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-5-アミン(b)の合成
【0048】
DMSOに2-(4-(2-ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)アセトニトリル(a)[1当量;118mg、0.51mmol]と1-(アジドメチル)-4-(ベンジルオキシ)ベンゼン[1当量;98.8mg、0.41mmol]とを混合した溶液にアルゴン大気下に常温でt-BuOK(0.25当量;THFに溶解された1.0M)を添加した。同じ温度で6時間撹拌した後、NHClで反応を中止させた後、EtOAcで抽出した。抽出して得られた有機相をMgSOで乾燥し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上フラッシュカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl=1:10)によって精製して、アイボリー色固体化合物b[1.12g(70%)]を収得した。
【0049】
H NMR(CDCl、400MHz)δ7.54(d、2H、J=8.6Hz)、7.38(m、4H)、7.32(t、1H、J=6.4Hz)、7.20(d、2H、J=8.5Hz)、6.95(m、4H)、5.36(s、2H)、5.03(s、2H)、4.10(t、2H、J=6.1Hz)、3.64(s、2H)、2.93(t、2H、J=6.1Hz)、2.70(q、4H、J=7.2Hz)、1.10(t、6H、7.1Hz);
【0050】
13C NMR(CDCl、100MHz)δ159.0、157.9、136.8、136.7、131.6、128.9、128.7、128.2、127.6、127.2、126.6、124.4、115.6、115.1、70.2、66.2、51.7、50.4、47.8、11.6;HRMS(ESI)m/z:[M+H]calcd.for C2834 472.2707、found 472.2713。
【0051】
3.tert-ブチル(1-(4-(ベンジルオキシ)ベンジル)-4-(4-(2-ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)カーバメート[NF-08001]の合成
【0052】
CHCl(25ml)に1-(4-(ベンジルオキシ)ベンジル)-4-(4-(2-(ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-5-アミン(b)を溶解させた溶液に常温でTEA(73.0μL、0.52mmol)、BocO(60.2μL、0.26mmol)及びDMAP(3.0mg、0.026mmol)を添加した。同じ温度で3日間撹拌した後、水で反応を中止させた後、CHClで抽出した。抽出して得られた有機相をNaSOで乾燥し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上フラッシュカラムクロマトグラフィー(MeOH:EtOAc=1:10)によって精製して、化合物[NF-08001][15.0mg(10%)]を収得した。
【0053】
H NMR(CDCl、500MHz)δ7.61(d、2H、J=8.8Hz)、7.38(m、5H)、7.31(m、1H)、7.26(d、2H、J=8.6Hz)、6.92(m、4H)、5.31(s、2H)、5.02(s、2H)、4.07(t、2H、J=6.2Hz)、2.89(t、2H、J=6.2Hz)、2.66(q、4H、J=7.1Hz)、1.25(s、1H)、1.16(s、9H)、1.07(t、6H、J=7.1Hz);
【0054】
13C NMR(CDCl、125MHz)δ159.1、159.0、148.7、141.0、136.7、131.2、129.8、128.8、128.2、127.5、127.1、126.2、122.6、115.3、115.0、84.7、70.1、66.5、51.6、51.4、47.9、27.6、11.7;HRMS(ESI)m/z:[M+H]calcd.for C3342 572.3231、found 572.3233。
【0055】
合成例2:PRG-N-01の合成
【0056】
4-(4-(2-(ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)-1-(4-エトキシベンジル)-1H-1,2,3-トリアゾール-5-アミノ[PRG-N-01]の合成
【0057】
DMSOに2-(4-(2-ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)アセトニトリル(a)[1当量;659mg、4.04mmol]と1-(アジドメチル)-4-エトキシベンゼン[1当量;864mg、3.72mmol]とを混合した溶液にアルゴン大気下に常温でt-BuOK(0.25当量;THFに溶解された1.0M)を添加した。同じ温度で6時間撹拌した後、NHClで反応を中止させた後、EtOAcで抽出した。抽出して得られた有機相をMgSOで乾燥し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上フラッシュカラムクロマトグラフィー(MeOH:CHCl=1:10)によって精製して、アイボリー色固体化合物[PRG-N-01][1.12g(70%)]を収得した。
【0058】
H NMR(CDCl、400MHz)δ7.53(d、2H、J=8.9Hz)、7.19(d、2H、J=8.4Hz)、6.94(d、2H、J=8.8Hz)、6.87(d、2H、J=8.7Hz)、5.36(s、2H)、4.07(t、2H、J=6.2Hz)、3.77(s、3H)、3.64(s、2H)、2.89(t、2H、J=6.2Hz)、2.66(q、4H、J=7.1Hz)、1.07(t、6H、J=7.2Hz);
【0059】
13C NMR(CDCl、100MHz)δ159.8、158.0、136.7、131.6、128.9、127.2、126.3、124.3、115.1、114.7、66.5、55.4、51.7、50.4、47.9、11.8;HRMS(ESI)m/z:[M+H]calcd.for C2230 396.2394、found 396.2402。
【0060】
実施例1:細胞株及びマウス準備
【0061】
1.細胞株準備
【0062】
HEK293細胞株は、American Type culture collection(ATCC,Manassas,VA)から購入した。ヒト神経鞘腫細胞株であるHEI-193(NF2 deficient)は、Dr.Zadehg(University Health Network,Toronto,Canada)から提供された。NF2floxマウスから由来したマウス神経鞘細胞(Schwann cell,Giovannini et al.,2000)は、in vitro Cre-媒介欠乏に適用した後、細胞を全長マーリンアイソフォーム1(Merlin isoform 1)または空きベクターのうち何れか1つでコーディングされたpMSCV-hygroレトロウイルスrescue構造体で形質導入させた(それぞれMSchw-WTとMschw-KOと名付ける)。このような細胞株は、Drgreer P(Queen’s University,Ontario,CANADA)から提供された。正常線維芽細胞(GM00038、9-year-old female N9)は、Coriell Cell Repositories(Camden,NJ,USA)から提供されて15%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)と抗生剤なしに2mMグルタミンで補強されたEMEM培地(Eagle’s minimal essential medium)で培養された。
【0063】
あらゆる細胞は、37℃で5% CO加湿インキュベーターで保持させた。HEI-193、HEK293及びマウス神経鞘細胞は、10% FBS及び1%抗生剤が含まれた液状DMEM培地を用いて培養した。本実験で用いられたあらゆる細胞の形状と成長特性は、公開された情報と比較して真偽有無を確認した。
【0064】
2.マウス準備
【0065】
動物実験のあらゆる実験手続きは、大韓民国の釜山大学校動物管理委員会の承認を受けた。FVB/NJマウスは、Jackson Laboratoryから提供された。実験前、あらゆるマウスは、温度及び光調節の条件(20-23℃、12時間/12時間の明暗サイクル)下で保持させ、滅菌した食べ物及び水を自在に提供した。
【0066】
実施例2:ベクター及び形質感染(transfection)、siRNA及び抗体準備
【0067】
1.ベクター及び形質感染
【0068】
pCMV RKIP-HAは、Keumg(David Geffen School of Medicine at University of California,Los Angeles,CA,USA)から提供された。pCMV RKIP-T101A-HA及びpCMV RKIP-T101D-HAは、ファン・ジヒ(Pusan National University)博士によって製造された。pcDNA3 NF2-FLAG、pRK5 TGFベータ1型受容体-FLAG及びTGFベータ2型受容体-HAは、Addgene(Cambridge,MA,USA)から提供された。形質感染は、このようなベクターの哺乳類発現のために、Jetpei transfection agent(Polyplus New York,USA)を用いて行った。
【0069】
すなわち、細胞を12ウェルプレート上で2x10細胞/wellの密度で分注し、形質感染前、一晩中培養した。ベクター(1.5μg)を150mM NaCl溶液に溶解された1.5μLのJetpei試薬と混合した。混合物は、室温で15分間反応させた後、細胞に添加した。3時間後、無血清培地を10% FBSが含まれた培地に置き換えた。
【0070】
2.siRNA準備
【0071】
生体外遺伝子ノックダウン(knock down)のために、標的タンパク質に対するsiRNAを製造した(Cosmo Genetech,Seoul,Korea)。si-RKIPの配列は、[CACCAGCATTTCGTGGGATGGTCTTTCAAGAGAAGACCATCCCACGAAATGCTGGTG]であった。siRNAの形質感染のために、INTERFERin(R)形質感染試薬(Polyplus New York,USA)を使用した。すなわち、細胞を12ウェルプレート上で2x10細胞/wellの密度で分注し、形質感染前、一晩中培養した。総1.5pmoleのsiRNA(21ng)二本鎖を血清なしに100μLの培地で4μLのINTERFERin(R)形質感染試薬と混合した。混合物は、室温で15分間反応させてINTERFERin(R)/siRNA複合体を形成した。このような複合体を細胞に添加し、4時間さらに反応させた後、無血清培地を10% FBSが含まれた培地に置き換えた。
【0072】
3.抗体
【0073】
RKIP(1:2000免疫ブロット用途、ab76582)、SOX10(1:1000免疫ブロット用途、1:200免疫染色用途、ab155279)、Myelin PLP(1:500免疫ブロット用途、1:300免疫染色用途、ab155279)、MBP(1:500免疫ブロット用途、1:300免疫染色用途、1:200 FACS用途、ab62631)、MPZ(1:500免疫染色用途、ab31851)、GFAP(1:100 FACS用途、1:300免疫染色用途、ab270270)、TβR1(1:500免疫ブロット用途、ab31013)及びTenascin C(1:1000免疫ブロット用途、ac108930)に対する抗体は、それぞれAbcamから購入した。
【0074】
SOX2(1:1000免疫ブロット用途、1:300免疫染色用途、3579)、Oct-4A(1:1000免疫ブロット用途、2840)、NANOG(1:1000免疫ブロット用途、4903)、c-Myc(1:1000免疫ブロット用途、5605)、p-SMAD2/3(1:1000免疫ブロット用途、8828)、Erk(1:1000免疫ブロット用途、9102)、p-Erk(1:1000免疫ブロット用途、9101)、p-AKT S473(1:1000免疫ブロット用途、9271)、GFAP(1:500免疫ブロット用途、1:300免疫染色用途、3670)は、Cell Signaling Technologyから購入した。Anti-β-Actin(1:3000免疫ブロット用途、66009-1-Ig)とHA(1:1000免疫ブロット用途、51064-2-AP)に対する抗体は、それぞれProteintechから購入した。
【0075】
Anti-FLAG(1:2000、F1804)抗体は、Sigmaから購入し、GST(1:1000免疫ブロット用途、sc-138)特異的抗体は、Santa Cruz Biotechnologyから購入し、Anti-TβR2(1:500免疫ブロット用途、bs-0117R)抗体は、Biossから購入した。
【0076】
4.試薬準備
【0077】
シリカ(Silica、S5631、二酸化ケイ素)、TβR1キナーゼ抑制剤(SB431542及びLY2157299)は、Sigma Aldrich(St,Louis,Mo,USA)から購入した。Procrine TGF-β1は、R&D systems(Minneapolis,MN,USA)から購入した。N-((4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル)-5-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)メチル)-2-フルオロアニリン(TEW7197)は、キム・ソンス博士(CHA University,Sungnam,Seoul,Korea)から提供された。前記TEW7197は、以前の論文(Med Chem.2014 May 22;57(10):4213-38)を参考にして合成された。
【0078】
[TEW7197構造]
【0079】
実施例3:RT-PCR分析
【0080】
RT-PCRのために、総細胞RNAをRNA抽出キット(Qiagen)を用いて抽出した。遺伝子発現分析は、MMLV RT(Invitrogen,Carlsbad,USA)とランダムヘキサマーとを用いて総RNAから合成されたcDNAを用いて行った。ゲノムDNAのPCRは、DiaStar Taq DNA polymerase(SolGent,Daejeon,Korea)を用いて行い、遺伝子発現分析は、次の特異的プリマーを用いて行った:
【0081】
hSOX2(Forward)5’-TCGCAGACCTACATGAACGG-3’
【0082】
hSOX2(Reverse)5’-ACATGTGAAGTCTGCTGGGG-3’
【0083】
hSOX10(Forward)5’-CATGGAGACCTTTGATGTGGC-3’
【0084】
hSOX10(Reverse)5’-TCAGAGTAGTCAAACTGGGGG-3’
【0085】
hMBP(Forward)5’-CAAGTACCATGGACCATGCC-3’
【0086】
hMBP(Reverse)5’-TTTATAGTCGGACGCTCTGCC-3’
【0087】
hMPZ(Forward)5’-CAACCCTACATTGACGAGGTG-3’
【0088】
hMPZ(Reverse)5’-CACTGACAGCTTTGGTGCTTC-3’
【0089】
hPMP22(Forward)5’-GCAATGGACACGCAACTGATC-3’
【0090】
hPMP22(Reverse)5’-CGAAACCGTAGGAGTAATCCG-3’
【0091】
mSOX2(Forward)5’-AGGATAAGTACACGCTTCCCG-3’
【0092】
mSOX2(Reverse)5’-TAGGACATGCTGTAGGTGGG-3’
【0093】
mSOX10(Forward)5’-ACTACAAGTACCAACCTCGGC-3’
【0094】
mSOX10(Reverse)5’-GTTGGACATTACCTCGTGGC-3’
【0095】
mMBP(Forward)5-’TTCTTTAGCGGTGACAGGGG-3’
【0096】
mMBP(Reverse)5’-TAAATCTGCTGAGGGACAGGC-3’
【0097】
mMPZ(Forward)5-’CTGCTCCTTCTGGTCCAGTGAA-3’
【0098】
mMPZ(Reverse)5’-AGGTTGTCCCTTGGCATAGTGG-3’
【0099】
mPMP22(Forward)5’-CGTCCAACACTGCTACTCCTCA-3’
【0100】
mPMP22(Reverse)5’-GCCTTTGGTGAGAGTGAAGAGC-3’
【0101】
実施例4:タンパク質-タンパク質間の相互作用分析
【0102】
タンパク質-タンパク質間の相互作用分析のために、グルタチオンS-トランスフェラーゼ-プルダウン(glutathione S-transferase(GST)-pull dawn)分析を行った。gSTプルダウンのために、アガロースビーズが接合されたGST RKIP組換えタンパク質をPBS緩衝液で4℃で1時間FLAG-タグTβR1-形質感染HEK 293細胞溶出物と反応させた。免疫沈降(IP)分析は、PBS緩衝液でFLAG-タグTβR1-またはHA-タグRKIP-形質感染HEI-193細胞溶出物と反応させた。総溶出物は、4℃で2時間適切な1次抗体と反応させ、2時間アガロスビーズ接合タンパク質A/G(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)と反応させた。遠心分離後、沈殿物をRIPA緩衝液で2回洗浄し、SDS-PAGE及びウェスタンブロット分析に利用した。
【0103】
実施例5:ウェスタンブロット(western blot)分析
【0104】
RIPA緩衝液[50mM Tris-Cl、pH7.5、150mM NaCl、1% NP-40、0.1% SDS及び10%デオキシコール酸ナトリウム(sodium deoxycholate)]を用いて細胞を集め、溶解させて細胞信号を分析した。サンプルでタンパク質の濃度は、Bio-Rad(Hercules,CA,USA)のタンパク質分析キットとBSA標準物とを用いて測定した。サンプル(レーン当たり20μgタンパク質)をSDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophores)で分離した後、Immobilon-PSQ transfer membranes(Millipore Corp.,MA,USA)に移し、3%脱脂乳を含むTBS-T緩衝液(20mM Tris pH7.6、150mM NaCl及び0.05% Tween 20を含むTris-HCl based buffer)で室温1時間培養した後、4℃、一晩中TBS-Tで1次抗体と反応させた。その後、メンブレンを洗浄し、TBS-Tで室温2時間HRPが接合された2次抗体[goat anti-mouse、goat anti-rabbit及びmouse anti-goat抗体(Pierce,Thermo Fisher Scientific,Inc.,Rockford,IL,USA)]と反応させた。ブロッ分析は、ECL kit(Intron,Seoul,Korea)によるHRP-接合2次抗体を用いて検出した。
【0105】
実施例6:免疫蛍光染色(immunofluorescence staining)
【0106】
細胞をカバーグラス(cover glass)に接種し、PBSで洗浄し、室温で30分間4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した後、室温で5分間0.2% Triton X-100で透過化した。ブロッキング緩衝液[PBSで希釈させた3%goat血清]で1時間処理した後、4℃で一晩中ブロッキング緩衝液で指定された抗体で反応させた。最後に、細胞をFITCが接合されるか、ローダミンが接合された2次抗体と共に4℃で7時間反応させた。核は、DAPIで室温で10分間染色した。細胞をPBSで3回洗浄した後、カバーグラスをマウント溶液(H-5501、Vector Laboratories,Cambridgeshire,UK)でマウントさせ、蛍光顕微鏡(Zeiss,Jena,Germany)を通じて免疫蛍光信号を検出した。
【0107】
実施例7:MTT分析法
【0108】
細胞生存率を測定するために、MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide)分析法を利用した。すなわち、細胞を96ウェルプレート上に分注し、定められた時間、指定された化学物質を処理した。培地を除去した後、PBSに溶解させた200μLのMTT溶液(0.5mg/ml)を各ウェルに添加した。その後、プレートを37℃で4時間培養し、MTT溶液を除去し、沈殿された物質を溶液(DMSO:エタノール=1:1)を用いて溶解させた後、形成されたホルマザン染料生成物の量をELISA microplate reader(Thermo Fisher Scientific,MA,USA)を用いて560nmで吸光度を測定して定量化した。
【0109】
実施例8:同種移植腫瘍成長分析、腫瘍球体形成分析及び流細胞分析
【0110】
同種移植のために、FVB/NJマウス(8週齢)の皮下に1~10個のマウス神経鞘腫細胞を接種した。腫瘍を有するマウスに5週間(週当たり3回)腹腔内にキャリア(n=8)またはPRG-N-01(20mg/kg;n=8)を注射した。毎週腫瘍体積と体重とを測定した。各グループの実験終了後、マウスを切開し、腫瘍組織を分離した。
【0111】
腫瘍球体形成分析のために、Hei-193またはマウス神経鞘腫細胞(3x10細胞/プレート)をDMEM/F12培地(2% B27及び40ng/ml bFGFで補強される)で培養し、指定された日の間、コーティングされていないプレートで指定された化学物質を添加した。
【0112】
また、流細胞分析のために、細胞を6ウェルプレートに分注し、DMSO(対照群)、PRG-N-01(5μM)またはTEW7197(5μM)でそれぞれ反応させた。4日後、細胞を70%エタノールで固定し、ヨウ化プロピジウムで標識した。このようなサンプルは、細胞周期分析のために、FACSによって分析した。表記された濃度のDMSO(対照群)、PRG-N-01またはTEW7197処理7日後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、指定された抗体で染色した。Attune NxT Flow cytometer(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Rockford,IL,USA)で最小10,000個の細胞を分析した。
【0113】
実施例9:ルシフェラーゼ分析(luciferase assay)
【0114】
TGF-β信号の転写活性を評価するために、3TP-Lucベクターを細胞内に24時間形質感染させ、細胞を表記された化学物質で処理した。洗浄緩衝液(Promega,Wisconsin,USA)で洗浄した後、細胞を溶出緩衝液(Promega,Wisconsin,USA)で溶解させた。ルシフェラーゼ活性は、luminimeter(MicroDigital,Gyeonggi-do,Korea)を用いて測定した。
【0115】
実施例10:細胞増殖
【0116】
6ウェルプレート上に細胞を2x10cell/wellを分注して細胞成長曲線を分析した。定められた日の後、細胞にトリプシン処理し、単一細胞で解離した。Attune NxT流細胞分析器(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Rockford,IL,USA)を用いて最小10,000個の細胞をカウンティングした。
【0117】
実施例11:マイクロアレイ(microarray)分析
【0118】
総RNA(500ng)をRNAeasy kit(Qiagen)で抽出した。RNA標識、ヒト遺伝子1.0 STアレイ(Affymetrix)で混成化及びデータ分析をDNA Link(Seoul,Korea)によって行った。各細胞株で最小2倍の差を示す遺伝子を以後分析のために選別した。
【0119】
実験例1:NF2症候群細胞株でRKIP誘導化合物のスクリーニング
【0120】
NF2細胞でRKIP減少が明確に知られているために(Mol Cancer Ther 17,2271-2284,2018)、まず、260個の新規な合成化合物を処理した後、ヒトNF2症候群細胞株であるHEI-193でRKIP発現を測定した。ウェスタンブロットを通じて14個の化合物がHEI-193細胞でRKIP発現を誘導することを確認した(図1のA及び図2)。そのうちから、4個の化合物がTβR1キナーゼ抑制剤と知られているTEW7197と類似にHEI-193細胞とマウスNF2症候群細胞とで細胞生存率を抑制した(図1のB)。そして、TβR1とRKIPとの結合抑制の効果を有する化合物でSR08002(Nf-08001と再名付ける)を探した。
【0121】
[SR08002(Nf-08001)構造]
【0122】
実験例2:Nf-08001の最適化
【0123】
RKIP誘導及びNF2症候群細胞で抗増殖効果にも拘らず、図3に示すように、Nf-08001は、正常細胞毒性を示してNf-08001に対する最適化(変形)が必要であった。
【0124】
したがって、Nf-08001に対する39個の誘導体を合成し、NF2症候群細胞及び正常線維芽細胞での細胞増殖効果を検討し(図4)、このような結果から、2個の化合物(PRG-N-01及びNf18011)が正常線維芽細胞で毒性を引き起こせず、NF2症候群細胞に対する明確な抗増殖効果を示すことを確認した(図5のA)。また、これらの化合物は、RKIP発現を誘導し、Erk活性化を抑制した(図6のA)。
【0125】
そして、TβR1及びRKIP間の相互作用に対する効果を検討した結果、PRG-N-01及びNf18011を含む4個の化合物が濃度依存的にTβR1及びRKIP間の相互作用を抑制し(図5のB)、PRG-N-01は、低い濃度でも抑制効果を示した(図6のB)。そして、PRG-N-01は、ヒト及びマウスNF2症候群細胞株でRKIP発現を増加させた(図5のC及び図6のC)。
【0126】
一方、TEW7197は、TGF-β信号抑制によって薬物候補物質から排除されたために、Smad2/3リン酸化及び3TP-ルシフェラーゼ分析を通じてTGF-β信号に対する化合物の効果を検討した。TEW7197とは異なって、本化合物は、TGF-βと反応してSmad2/3リン酸化及びルシフェラーゼ活性の増加を妨害しなかった(図5のD及び図5のE)。また、本化合物は、HEI-193でIGF-1誘導AKT活性化のような他の信号カスケードを変化させなかった(図7のA)。
【0127】
このような化合物スクリーニング及び最適化の結果から、PRG-N-01を以後分析のための候補物質として選択した(図7のB)。
【0128】
実験例3:NF2-欠乏状態でPRG-N-01の効果
【0129】
PRG-N-01の効果を再確認するために、TβR1及びRKIP間の相互作用を検討した。PRG-N-01は、容量依存的にこれらの結合を抑制した(図8のA及び図9のA)。TβR1及びRKIP間の相互作用は、NF2またはTβR2欠乏状態で発生するために、NF2の回復がRKIP誘導、Erk抑制及び抗増殖効果のような化学的効果を無くすと予想し、PRG-N-01によって実際マウス神経鞘腫のみでRKIP誘導及びp-Erk抑制が観察され、正常線維芽細胞では観察されていない(図9のB)。また、図8のBと図8のCとのように、NF2-形質感染HEI-193細胞と、図9のC及び図9のDのように、NF2-形質感染マウス神経鞘腫細胞で化学的効果(抗増殖効果、RKIP誘導及びp-Erk抑制)を観察することができなかった。もちろん、NF2形質感染自体がRKIP発現を増加させた(図8のC及び図9のC)。そして、PRG-N-01は、高濃度でもTGF-β信号を抑制しなかった(図8のD)。
【0130】
PRG-N-01のより詳細な作用機転を調査するために、RKIP突然変異に対するPRG-N-01の効果を検討した。以前の研究でTβR1キナーゼによってスレオニン101部位でのリン酸化がRKIP不安定化を促進すると確認した(Mol Cancer Ther 17,2271-2284,2018)。PRG-N-01は、野生型RKIP発現を誘導するとしても、2種のRKIP突然変異(RKIP T101A;安定した形態、RKIP T101D;不安定な形態)の発現を変化させなかった(図8のE)。このような結果から、PRG-N-01は、TβR1-媒介不安定化からRKIPを保護するということが分かる。
【0131】
実験例4:PRG-N-01処理されたNF2症候群細胞の遺伝子発現プロファイル
【0132】
遺伝子発現プロファイルに対するPRG-N-01の効果を調査するために、PRG-N-01処理されたHEI-193細胞を利用したマイクロアレイ分析を行い(図10のA)、PRG-N-01処理されたHEI-193細胞で対照群と比較して多種の遺伝子が減少(Cluster A)するか、増加した(Cluster B)。クラスターーされた遺伝子の遺伝子オントロジー(GO)分析を通じて「細胞分裂」を含む細胞周期関連工程と、「コレステロール生合成過程」を含む脂質代謝関連工程と、に2個のカテゴリーに分類することができた(図10のB及び図11)。経路分析でも類似している結果、すなわち、細胞周期とステロイド経路とを確認した(図10のC及び図11)。また、PRG-N-01によって大きく上向き調節された遺伝子クラスターは、PNILPRP3、NR4A2、ABCA1のような脂質代謝関連遺伝子を含む一方、PLK1、CENPEのような細胞周期関連遺伝子は、ほとんど下向き調節された遺伝子クラスターで含まれた(図10のD)。そして、大きく上向き調節された遺伝子として標準TGF-β信号判読Tenascin Cが観察されて、PRG-N-01がHEI-193細胞でTGF-β信号活性化を促進するという以前の結果を裏付けた(表1)。
【0133】
【表1】
【0134】
実験例5:PRG-N-01が細胞周期を抑制し、神経鞘細胞への分化を促進する。
【0135】
遺伝子発現プロファイルに基づいて、PRG-N-01の処理後、細胞周期をモニタリングし、G1上で細胞周期アレストを誘導した(図12のA及び図13のA)。PRG-N-01処理は、細胞成長を完全に抑制し(図12のB)、形状変化を誘導した(図12のC及び図13のB)。PRG-N-01による形状変化は、TEW7197処理群またはNF2形質感染されたHEI-193と非常に類似しているために、PRG-N-01は、細胞分化を誘導すると予想された。
【0136】
細胞周期関連遺伝子だけではなく、神経鞘細胞マーカーの発現を検討し、マイクロアレイ分析と同様に細胞周期関連遺伝子(CDK1、CDK4、CCNB1及びPLK4)は、PRG-N-01によって減少し(図12のD)、逆に、神経鞘細胞マーカー(PLP、MBP、GFAPMPZ、PMP22及びSOX10)は、PRG-N-01によって増加した(図12のD及び図13のC)。そして、タンパク質レベルで神経鞘細胞マーカー及びTβR2の増加と幹細胞マーカーであるSOX2の減少とを観察することができた(図12のE)。
【0137】
PRG-N-01が神経鞘細胞への分化を誘導することを再確認するために、FACS分析とIF染色とを通じた分化マーカー発現を再び検討した。FACS分析でPRG-N-01は、TEW7197と比較して明確に神経鞘細胞マーカーを増加させ(図12のF)、IF染色結果でも、類似した結果を得た(図12のG及び図13のD)。このような結果から、PRG-N-01の生理的効果は、細胞周期アレスト及び分化促進剤であることを確認することができた。
【0138】
実験例6:PRG-N-01がRKIPを誘導することにより、神経鞘腫細胞の幹細胞能(stemness)を抑制する。
【0139】
SOX2は、生理学的及び病理学的状態いずれもで幹細胞能を保持させるよく知られた幹細胞因子であり、SOX10は、SOX2を用いて神経鞘細胞の分化を調整すると知られており、NF2-nullマウスモデルで神経鞘細胞は、低いレベルのSOX10を示した。
【0140】
以前の実験を通じてPRG-N-01の処理によってSOX10の誘導及びSOX2の減少を観察した。これにより、PRG-N-01がc-Myc、Nanog及びOct4のような他の幹細胞因子に対する効果を検討し、この因子の発現を変化させなかった(図14のA)。そして、PRG-N-01の抗腫瘍効果を検討するために、腫瘍球形成分析を行った。HEI-193及びマウス神経鞘腫細胞は、容易に腫瘍球を形成し、TEW7197は、このような腫瘍球に対して抑制効果が微弱な一方、PRG-N-01は、腫瘍球形成を明確に抑制した(図15のA及び図14のB)。図14のC及び図14のDによれば、PRG-N-01は、腫瘍球の数だけではなく、腫瘍球のサイズも減少させた。このような状態で、幹細胞因子(SOX2、c-Myc、Nanog及びOct4)の発現は、PRG-N-01の処理によって測定することができない程度に減少した一方、SOX10発現は、明確に増加した(図15のB及び図14のE)。
【0141】
SOX2減少の分子機転を調査するために、IF及び細胞分画化を通じてSOX2の局在化を検討し、核内SOX2は、PRG-N-01及びTEW7197に反応して細胞質に移動したということを確認した(図15のC及び図15のD)。Leptomycin Bまたはプロテアソーム抑制剤(MG312)による核内物質の流出抑制は、PRG-N-01/TEW7197によって誘導されたSOX2減少を遮断することができた(図14のF及び図14のG)。このような結果から、PRG-N-01は、SOX2流出及び分解を促進させるということが分かった。
【0142】
また、SOX2減少及びSOX10誘導に対するRKIPの効果を検討した結果、野生型及び安定化されたRKIP(T101A)の異所性発現は、SOX2発現を減少させ、RKIP T101Aは、SOX10を誘導する一方、RKIP T101Dは、SOX2発現を減少させなかった(図15のE)。そして、si-RKIPは、PRG-N-01誘導SOX2減少及び細胞質局在化を防いだ(図15のF)。このような結果から、RKIPは、PRG-N-01誘導SOX2減少及びSOX10増加に非常に重要なことが分かった。
【0143】
本発明者らは、TGF-β信号の妨害なしにNF2症候群の治療のための新規な薬物候補を開発するために、標準TGF-β信号カスケードに対するPRG-N-01の効果を検討し、HEI-193でPRG-N-01の処理によってSmad2/3リン酸化は延長された(図16のA及び図16のB)。RKIPまたはNF2形質感染されたHEI-193細胞でも、類似している特徴が観察された(図16のC及び図16のD)。このような結果から、TGF-β信号に対するPRG-N-01の効果は、NF2復元誘導特徴と非常に類似したことが分かった。
【0144】
実験例7:PRG-N-01は、in vivoで抗癌効果を示す。
【0145】
PRG-N-01のin vivo効果を検討するために、NF2症候群モデルマウス由来の神経鞘腫細胞を8週齢マウスに同種移植し、PRG-N-01を腹腔内注射(20mg/kg、週3回)で投与した。PRG-N-01の処理は、腫瘍成長を抑制し(図17のA及び図18のA)。腫瘍サイズ及び重量が明確に抑制された(図17のB及び図17のC)。
【0146】
正常マウスに治療容量よりも10倍多くの投与量である200mg/kgのPRG-N-01を注射し、体重変化を引き起こせず(図18のB)、PRG-N-01は、激しい毒性を示さないと確認された。
【0147】
そして、腫瘍でRKIP及び関連遺伝子の発現を分析した結果、PRG-N-01処理腫瘍組織では、タンパク質レベルでRKIP、神経鞘細胞マーカー(PLP、MBP、andMPZ)及びSOX10の誘導が観察された(図17のD)。RT-PCR分析でも、神経鞘細胞マーカーとSOX10の誘導及びSOX2の減少が観察された(図17のE)。
【0148】
以前のin vitro及びin vivo実験の結果を総合すれば、PRG-N-01は、NF2症候群由来の神経鞘腫に対する非常に有望な候補薬物であるということを確認することができた。
【0149】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい具現例に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
【0150】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その均等概念から導出される、あらゆる変更または変形された形態が、本発明の範囲に含まれていると解釈されねばならない。
図1
図2
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図7
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【国際調査報告】