(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】IL-23発現に関連する疾患を予防及び/または治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/12 20060101AFI20240718BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240718BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240718BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240718BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240718BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240718BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240718BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240718BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240718BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240718BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240718BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240718BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240718BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240718BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALN20240718BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
A61K31/12 ZNA
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P37/02
A61P29/00
A61P11/00
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A61P29/00 101
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A61P1/16
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A61P13/12
A61P17/00
A61P7/00
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A61P27/16
A61P37/06
A61P3/10
A61P19/02
A61P17/06
A61P21/00
A61P15/00
C12Q1/6851 Z
C12N15/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502482
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2022069944
(87)【国際公開番号】W WO2023285691
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524020124
【氏名又は名称】オルスピム
【氏名又は名称原語表記】ALLSPIM
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、マリー、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ルイ、リュ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、医薬として使用するための、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物に関する。詳細には、本発明は、がん以外のIL-23/IL-17軸活性化に関連する疾患の予防及び/または治療に使用するための、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-23発現に関連する疾患の予防及び/または治療における使用のための、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物であって、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンがIL-23の遺伝子発現を下方調節し、前記IL-23発現に関連する疾患ががんではない、組成物。
【請求項2】
薬学上許容可能な担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの追加の治療剤をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたは前記その薬学上許容可能な塩が、前記組成物中の唯一の治療剤である、請求項1~2のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、局所、経腸、または非経口経路、好ましくは局所、経口、腹腔内、静脈内、皮内、皮下、関節内、または粘膜経路、より好ましくは経口または腹腔内経路を介して投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が少なくとも1日に1回投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたは前記その薬学上許容可能な塩が、1日に1mg/kg~10mg/kgで構成される用量で投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記IL-23発現に関連する疾患が、自己免疫性疾患、及び/または炎症性疾患(非感染性炎症性呼吸器疾患を含む)、及び/またはアルツハイマー病以外の神経変性疾患から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記自己免疫性疾患が、リウマチ性自己免疫性疾患、胃腸及び肝臓の自己免疫性疾患、血管炎、腎臓の自己免疫性疾患、皮膚の自己免疫性疾患、血液の自己免疫性疾患、アテローム動脈硬化症、ぶどう膜炎、耳の自己免疫性疾患、レイノー症候群、臓器移植に関連する疾患、ならびに自己免疫性内分泌疾患(例えば、糖尿病)から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記炎症性疾患が、関節炎、関節リウマチ、急性痛風関節炎、変形性関節症、炎症性骨疾患;炎症性肺疾患、好ましくは喘息、成人呼吸窮迫症候群、もしくは慢性閉塞性気道疾患;ベーチェット病;眼の炎症性疾患、好ましくは角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ぶどう膜炎、交感神経性眼炎、もしくは眼内炎;歯肉の慢性炎症性疾患、好ましくは歯肉炎もしくは歯周炎;結核;ハンセン病;腎臓の炎症性疾患、好ましくは尿毒症性合併症、糸球体腎炎、もしくはネフローゼ;皮膚の炎症性障害、好ましくは乾癬;神経系の慢性脱髄性疾患;感染性髄膜炎;脳脊髄炎;パーキンソン病;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;免疫複合体血管炎;全身性エリテマトーデス(SLE);心臓の炎症性疾患、好ましくは心筋症、冠動脈血栓症、虚血性心疾患高コレステロール血症、もしくはアテローム動脈硬化症;子癇前症;統合失調症;慢性肝不全、または脳もしくは脊髄の外傷;子宮内膜症から選択される、かつ/あるいは
前記神経変性疾患が、片頭痛、三叉神経痛、重症筋無力症、脱髄性疾患、好ましくは急性横断性脊髄炎;錐体外路及び小脳障害;運動過剰運動障害、好ましくはハンチントン舞踏病もしくは老人性舞踏病;薬物誘発性運動障害、好ましくはCNSドーパミン受容体を遮断する薬物により誘発される障害;運動低下運動障害、好ましくはパーキンソン病;進行性核上性麻痺;小脳の構造的病変;脊髄小脳変性症、好ましくは脊髄性運動失調、フリードライヒ運動失調症、小脳皮質変性症、もしくは多系統変性症;全身性障害、好ましくはレフサム病、無ベータリポ蛋白血症、運動失調、毛細血管拡張症、もしくはミトコンドリア多系統障害;運動単位の障害、好ましくは神経原性筋萎縮症、より好ましくは筋萎縮性側索硬化症;中年期のダウン症候群;びまん性レビー小体病;レビー小体型老人性認知症;ウェルニッケ-コルサコフ症候群;慢性アルコール依存症;クロイツフェルト-ヤコブ病;亜急性硬化性全脳炎、ラスムッセン脳炎、ハンチントン病、ハラーフォルデン-シュパッツ病;ボクサー認知症;神経外傷性損傷;炎症性疼痛;自閉症;うつ病;頭部外傷、脳卒中;認知障害;てんかん;黄斑変性から選択される、かつ/あるいは
前記非感染性炎症性呼吸器疾患が、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺水腫、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アレルギー性肺胞炎、拘束性肺疾患、線維症、エリテマトーデス、全身性強皮症またはサルコイドーシス、及び鼻炎からなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記IL-23発現に関連する疾患が、移植片対宿主病(GvHD)、乾癬、急性痛風関節炎、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、黄斑変性、及び子宮内膜症から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として使用するための、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物に関する。この組成物は、ヒトにおけるIL-23発現に関連する疾患の予防及び/または治療に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
IL-23サイトカインは、サイトカインのIL-12ファミリーのメンバーであり、生物学的に活性のヘテロ二量体は、IL-12と共有するp40サブユニットと、p19サブユニットとから構成されている。IL-23は、主に末梢組織内の活性化マクロファージ及び樹状細胞(DC)から分泌され、いくつかの免疫細胞タイプの発生、維持、及び拡大に関与している。
【0003】
例えば、IL-23は、IL-23受容体(IL-23R;Aggarwal et al.,2003)と結合することにより、ナイーブCD4+T細胞前駆体から分化したTh17細胞の増殖を誘発する。Th17経路は、細胞外細菌、マイコバクテリア、及び真菌の感染(例えば、Candida albicans、Klebsiella pneumoniae、Listeria monocytogenes、及びMycobacterium tuberculosis)に対する防御的役割を果たす(例えば、Hernandez-Santos and Gaffen,2012;Happel et al.,2005;Meeks et al.,2009)。詳細には、Th17細胞は、サイトカイン、例えば、IL-17(具体的にはIL-17A及びIL-17F)、IL-22、ならびに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の産生を介し局所組織の炎症を誘発する。そしてIL-17Aは同族受容体に結合して、NF-kB、AP-1、及びC/EBPにより媒介されるシグナル伝達経路を活性化し、炎症促進性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、及びTNF-α)、ケモカイン、メタロプロテアーゼ、ならびに炎症性メディエーターを含む様々な分子の発現を推進する(Fragoulis et al.,2016)。
【0004】
適応免疫系の分化したTh17細胞に加え、非リンパ組織内にある多くの自然免疫細胞も感染抵抗に重要であり、IL-23によっても刺激される。これらの細胞は「17型」細胞と称され、特にγδT細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、及び自然リンパ球(ILC)のサブセットがこれに含まれ、転写因子のレチノイン酸受容体関連オーファン受容体-γ(RORγt)及びIL-23Rを偏在的に発現する。このように、IL-23は、免疫系の自然免疫及び適応免疫の分岐にまたがる中心的なサイトカインであり、初期の局所免疫応答を促進する。
【0005】
IL-23及びIL-23制御下流経路の調節解除は、IL-23の継続的及び/または不適切な発現を介し、複数の自己免疫性及び炎症性状態、より一般的には炎症プロセスを含む全ての状況において中心的存在である。例えば、非常に多くの研究で、多種多様な慢性炎症性及び自己免疫性疾患(関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、及び強直性脊椎炎を含む)におけるIL-23/IL-17経路の調節解除が実証されている。非限定的な例として、Th17細胞の出現頻度及びTh17関連サイトカインのレベルは、アテローム動脈硬化症の対象で上昇することが見出されており、Th17関連サイトカインは、頸動脈プラーク(Zhang et al.,2013;Liu et al.,2012)、多発性硬化症(Li et al.,2011)、1型糖尿病(Ryba-Stanislawowska et al.,2013)、関節リウマチ(Zizzo et al.,2011)、強直性脊椎炎(Xueyi et al.,2013)、全身性エリテマトーデス(Wong et al.,2008)等の重症度と相関している。
【0006】
したがって、IL-23及び/または下流のIL-17サイトカインの調節は、自己免疫性疾患及び/または炎症状態の治療を改善する上で大きな関心対象となっている。近年、IL-23またはIL-17Aを中和する様々なモノクローナル抗体が、乾癬、関節リウマチ、及びクローン病などのヒトの自己免疫性及び炎症性疾患の治療に有効であることが示されており、このことは、IL-23/IL-17媒介性炎症カスケードが実際にこのような疾患の病因に関連すること、そしてこれらのサイトカインを特異的に標的とする治療法が想定されることを示すものである。一例として、IL-23のp19サブユニットを標的とするいくつかのモノクローナル抗体(グセルクマブ、リサンキズマブ、及びチルドラキズマブを含む)は、中等度~重度の乾癬の治療における第III相臨床試験を完了している(Puig,2019;Haugh et al.,2018;Kolli et al.,2019)。
【0007】
しかし、これらの有効性は証明されているものの、モノクローナル抗体の使用に関連するコストは、特に長期の治療を要する疾患において、依然として大きな問題である。さらに、所与の個体の病歴によってはモノクローナル抗体の投与が推奨されないことがある。例えば、うつ病を患うまたは自殺念慮を有する対象は、IL-17Rアゴニストのブロダルマブの服用を回避することが勧告されている(Foulkes et al.,2019)。また、IL-17アゴニストは、IBDの新規症例の増悪または告示に関連している(Wang et al.,2018)。また、このような抗体の投与には、上咽頭炎、頭痛、上気道感染を含む様々な有害事象も関連しており、そのため全ての対象に適したものとならない。潜伏結核が活性化するリスクの増加についても説明されている。さらに、グセルクマブなどのモノクローナル抗体による治療は、British Association of Dermatologistsが発行した製品リーフレットに詳述されているように、任意のウイルスまたは細菌の生ワクチンを投与する12週間前から中断することとされるため、このような場合、継続的治療は不可能である。また、これらのモノクローナル抗体に対する中和抗体が生成されるリスクも残存しており、このような中和抗体は、モノクローナル抗体の有効性を低減したり、急性輸液反応及び/または免疫複合体形成などの有害事象をもたらしたりする可能性がある。これらの薬剤の長期的安全性については、依然として明らかではない。最後に、留意したい点としては、これらの薬剤は典型的には皮下注射を介し投与されるが、これは全ての対象には適応されず、さらには病院環境で実施する必要があり得ることである(例えば、注射量が多い場合、在宅投与が過少もしくは過剰投与のリスクに関連する場合、または自己投与が保健規制行政に承認されていない場合)。
【0008】
したがって、疾患の予防及び/または治療、特にヒトにおける自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患の予防及び/または治療に使用することができるIL-23と、その結果として下流のIL-23制御経路とを標的とする、新たな製品及び方法が必要とされている。さらに、低コストで入手可能な新たな製品も依然として必要とされている。好ましくは、当該製品及び方法は、長期間(例えば、数週間または数か月)または頻繁な間隔で(例えば、毎日)投与することができ、副作用が少なく、及び/または必ずしも注射によって投与する必要がない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、医薬として使用するための、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコン(「2,4-D」)またはその薬学上許容可能な塩を含む組成物を対象とする。より詳細には、本発明は、がん以外のIL-23発現に関連する疾患の予防及び/または治療に使用するための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物に関する。
【0010】
実際に発明者らは、驚くべきことに、2,4-Dが、IL-23の産生/放出及び下流のIL-23/IL-17経路の活性化を特異的に阻害することを見出した。後述の実施例で特に示すように、2,4-Dは、IL-23遺伝子を発現する細胞株で示すように、IL-23遺伝子発現を驚くほど強力に阻害してIL-23サイトカイン産生を阻害する。さらに、発明者らは、驚くべきことに、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患(例えば、乾癬、関節リウマチ、急性痛風関節炎、移植片拒絶反応、子宮内膜症)ならびに変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症、黄斑変性)の許容された動物モデルにおいて、2,4-Dを投与することで、IL-23発現が阻害され、結果としてこれらの病態の治療が成功することを本明細書で示している。
【0011】
2,4-Dは、好ましくは少なくとも90%のその(E)異性体または薬学上許容可能な塩を含む。より好ましくは、2,4-Dは、その(E)異性体または薬学上許容可能な塩から本質的になる。実際に発明者らは、驚くべきことに、2,4-Dの(E)異性体が(Z)異性体よりも強力にIL-23発現を阻害することを見出した。
【0012】
好ましくは、当該組成物は薬学上許容可能な担体をさらに含む。
【0013】
好ましくは、当該組成物は少なくとも1つの追加の治療剤をさらに含む。代替形態として、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩は、有利には、当該組成物中の唯一の治療剤である。
【0014】
好ましくは、当該組成物は、局所、経腸、または非経口経路を介し、より好ましくは、局所、経口、腹腔内、静脈内、皮内、皮下、関節内、または経粘膜経路を介し、より好ましくは、経口または腹腔内経路を介し投与される。
【0015】
好ましくは、当該組成物は、1日当たり少なくとも1回投与される。
【0016】
好ましくは、2,4-Dまたは当該その薬学上許容可能な塩は、1日当たり1mg/kg~10mg/kgで構成される用量で投与される。
【0017】
好ましくは、本発明は、IL-23発現に関連する疾患の治療に使用するための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物を対象とし、ここで、当該疾患は、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患、アルツハイマー病以外の神経変性疾患から選択される。IL-23発現に関連する当該疾患は、全身性疾患であっても局所性疾患であってもよい。
【0018】
好ましくは、当該自己免疫性疾患は、リウマチ性自己免疫性疾患、胃腸及び肝臓の自己免疫性/炎症性疾患、血管炎、腎臓の自己免疫性疾患、皮膚の自己免疫性疾患、血液の自己免疫性疾患、アテローム動脈硬化症、ぶどう膜炎、耳の自己免疫性疾患、レイノー症候群、臓器移植に関連する疾患、ならびに自己免疫性内分泌疾患(例えば、1型糖尿病)から選択される。
【0019】
好ましくは、IL-23発現に関連する当該疾患は、以下の通りである:
炎症性疾患(当該炎症性疾患は、関節炎、関節リウマチ、急性痛風関節炎(本明細書では「痛風」もしくは「痛風発作」とも称され、すなわち血液中の尿酸の持続的上昇ではない)、変形性関節症、炎症性骨疾患;炎症性肺疾患、好ましくは喘息;ベーチェット病;眼の炎症性疾患、好ましくは炎症プロセスを含む網膜疾患、ぶどう膜炎;歯肉の慢性炎症性疾患、好ましくは歯肉炎もしくは歯周炎;腎臓の炎症性疾患、好ましくは尿毒症性合併症、糸球体腎炎、もしくはネフローゼ;皮膚の炎症性障害;神経系の慢性脱髄性疾患もしくは変性疾患;パーキンソン病;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;免疫複合体血管炎;全身性エリテマトーデス(SLE);心臓の炎症性疾患、好ましくは心筋症、冠動脈血栓症、虚血性心疾患高コレステロール血症、もしくはアテローム動脈硬化症;子癇前症;統合失調症;慢性肝不全、または脳もしくは脊髄の外傷;子宮内膜症から選択される);ならびに/あるいは神経変性疾患(当該神経変性疾患は、片頭痛、三叉神経痛、重症筋無力症、脱髄疾患、好ましくは急性横断性脊髄炎;錐体外路及び小脳障害;運動過剰運動障害、好ましくはハンチントン舞踏病もしくは老人性舞踏病;薬物誘発性運動障害、好ましくはCNSドーパミン受容体を遮断する薬物により誘発される障害;運動低下運動障害、好ましくはパーキンソン病;進行性核上性麻痺;小脳の構造的病変;脊髄小脳変性症、好ましくは脊髄性運動失調、フリードライヒ運動失調症、小脳皮質変性症、もしくは多系統変性症;全身性障害、好ましくはレフサム病、無ベータリポ蛋白血症、運動失調、毛細血管拡張症、もしくはミトコンドリア多系統障害;運動単位の障害、好ましくは神経原性筋萎縮症;中年期のダウン症候群;びまん性レビー小体病;レビー小体型老人性認知症;ウェルニッケ-コルサコフ症候群;慢性アルコール依存症;クロイツフェルト-ヤコブ病;亜急性硬化性全脳炎、ラスムッセン脳炎、ハンチントン病、ハラーフォルデン-シュパッツ病;ボクサー認知症;神経外傷性損傷;炎症性疼痛;自閉症;うつ病;頭部外傷、脳卒中;認知障害;てんかん;及び黄斑変性から選択される);ならびに/あるいは
非感染性炎症性呼吸器疾患であって、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺水腫、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アレルギー性肺胞炎、拘束性肺疾患、線維症、エリテマトーデス、全身性強皮症またはサルコイドーシス、及び鼻炎からなる群より選択される、非感染性炎症性呼吸器疾患。
【0020】
好ましくは、IL-23発現に関連する当該疾患は、移植片対宿主病(GvHD)、乾癬、関節リウマチ、痛風発作、筋萎縮性側索硬化症、黄斑変性、及び子宮内膜症から選択される。
【0021】
本発明の別の態様は、がん以外のIL-23の不適切な発現に関連する疾患の予防及びまたは治療を、それを必要とする対象において行うための方法を提供することであり、この方法は、本明細書で提供する組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、以下の図面によって例示される。
【0023】
【
図1】LPS刺激THP-1細胞培養における2,4-DによるIL-23遺伝子発現の抑制。
【
図2】LPS刺激THP-1細胞培養における2,4-DによるIL-23産生の抑制。
【
図3】LPS刺激THP-1細胞培養における2,4-Dの(E)及び(Z)異性体によるIL-23産生の抑制。
【
図4】LPS刺激THP-1細胞培養における天然または合成2,4-DによるIL-23産生の抑制。
【
図5】LPS刺激THP-1細胞培養におけるIL-23産生の抑制を、2,4-Dによるものと他の化合物によるものとを比較したもの。IBC:イソババカルコン、HMC:4’-ヒドロキシ-2’6’-ジメトキシカルコン、2’-HC:2’-ヒドロキシカルコン、4-HC:4-ヒドロキシカルコン、2’,2-DHC:2’,2-ジヒドロキシカルコン、2’,3-DHC:2’,3-ジヒドロキシカルコン、2’,4-DHC:2’,4-ジヒドロキシカルコン、2’,4’-DHC:2’,4’-ジヒドロキシカルコン、2’,5’-DHC:2’,5’-ジヒドロキシカルコン、及び2’,4’,4-THC:2’,4’,4-トリヒドロキシカルコン、TFM:2-トリフルオロメチル-2’-メトキシカルコン、HYA:ヒドロキシサフロールイエローA。
【
図6】マウスモデルにおける関節リウマチの治療における2,4-Dの使用。(A)濃度を漸増させた2,4-Dを用いた前肢の関節炎症。(B)濃度を漸増させた2,4-Dを用いた後肢の関節炎症。(C)2,4-D処置による経時的な臨床スコア平均。
【
図7】濃度を漸増させた2,4-Dを含む培養物における、関節リウマチを患うヒト対象から採取したヒト滑膜細胞内でのIL-17及びIL-23遺伝子の発現。
【
図8】濃度を漸増させた2,4-Dを含む培養物における、関節リウマチを患うヒト対象から採取したヒト滑膜細胞の上清中に存在する(A)IL-23サイトカイン及び(B)IL-17Aサイトカインのレベル。
【
図9】12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)誘発乾癬マウスモデル(右パネル)で観察された炎症を対照マウス(左パネル)と比較した代表的な例示。
【
図10】TPA誘発乾癬モデルマウスにおいて、濃度を漸増させた2,4-Dが過形成に及ぼす効果。
【0024】
【
図11】TPA誘発乾癬モデルマウスにおいて、濃度を漸増させた2,4-Dが表皮厚に及ぼす効果。
【
図12】Balb/c→C57BL/6皮膚移植片の生存率。経口用2,4-Dによる処置(毎日2、10、または50mg/kgの2,4-D、1日2回)。
【
図13】抗CD3/CD28刺激マウス脾臓細胞におけるIL-17産生のIL-23媒介性阻害。
【
図14】LPS刺激THP-1細胞におけるIL-23産生を2,4-D存在下の場合と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)存在下の場合とを比較したもの。
【
図15】2,4-D、RPM、またはデキサメタゾン(DEX)で処置したLPS刺激TPH-1細胞におけるTNF/IL-17シグナル遺伝子発現の倍数変化。
【
図16】2,4-D、RPM、またはDEXで処置したLPS刺激TPH-1細胞の培養上清におけるTNF/IL-17シグナル伝達サイトカイン及びケモカインの産生。
【
図17】高用量及び低用量の抗炎症薬で処置したマウスにおけるMSU誘発膝関節浮腫の変化。CLC:コルヒチン。
【
図18】異なる抗炎症薬(100mg/kgの2,4-D、1mg/kgのCLC、または0.5mg/kgのDEX)で処置したマウスにおける、膝関節の滑膜腔へのMSU誘発白血球動員の測定。
【
図19】異なる抗炎症薬(100mg/kg 2,4-D、1mg/kg CLC、または0.5mg/kg DEX)で前処置したマウスの膝関節組織におけるMSU誘発炎症促進性サイトカイン。
【
図20】マウスが尾懸垂試験中に股関節伸展を実行できなくなる日齢を推定するカプラン-マイヤー解析(雄SOD1 G93Aビヒクル、n=8;vs雄SOD1 G93A 2,4-D、n=9;マンテル-コックス検定、P<0.05)。
【0025】
【
図21】マウスが尾懸垂試験中に背部伸展を実行できなくなる日齢を推定するカプラン-マイヤー解析(雄SOD1 G93Aビヒクル、n=8;vs雄SOD1 G93A 2,4-D、n=9;マンテル-コックス検定、P<0.05)。
【
図22】マウスの年齢の関数としてのニューロスコア(NS)の進化。NS1は、マウスが後肢の伸展を外側正中線から2秒超保てなくなると達する。NS2は、75cmの間につま先が2回以上下方に丸まると達する。NS3は、懸垂試験または歩行試験において、少なくとも一方の後肢が硬直性麻痺または最小限の関節運動を示すと達する。マウスがNS3に達したら安楽死させる(雄SOD1 G93Aビヒクル、n=8;vs雄SOD1 G93A 2,4-D、n=9;混合効果モデル、P=0.06)。
【
図23】マウスがNS3に達する年齢を推定するカプラン-マイヤー解析(雄SOD1 G93Aビヒクル、n=8;vs雄SOD1 G93A 2,4-D、n=9;マンテル-コックス検定、P<0.05)。
【
図24】異なる処置群における漏出強度のグレーディングによる衝撃の区分(%で表現、ビヒクル群はn=43、TA群はn=53、2,4-D(新規処置(NT))群はn=38);融合した衝撃はグレーディングから除外した。
【
図25】統計解析により、2,4-D(新規処置)が、ビヒクル及びTAの両方と比較して、効果の分類スコアを有意に低下させることが示された。
【
図26】ビヒクル群、TA群、及び2,4-D(新規処置)群におけるCNVのFA画像及び赤外線画像。
【
図27A】2,4-D(新規処置)及びビヒクル群におけるCNVの表面(μm2)(平均±SD)。
【
図27B】レクチン-FITC標識CNV(上のパネル)及びIBA-1染色単球(下のパネル)の代表的な画像。
【
図28】子宮内膜症モデルにおける実験プロトコル。
【
図29】子宮内膜症モデルから採取した無細胞腹膜洗浄液中のサイトカイン濃度測定(EDTなし(白色)、EDT+ビヒクル(薄灰色)、及びEDT+2,4-D(濃灰色))。
【
図30】子宮内膜症モデルから採取した腹腔からの免疫細胞の表現型試験(EDTなし(白)、EDT+ビヒクル(薄灰色)、及びEDT+2,4-D(濃灰色))。
【0026】
【
図31】子宮内膜症モデルから採取した腹腔からの免疫細胞の細胞表面マーカー発現(EDTなし(白)、EDT+ビヒクル(薄灰色)、及びEDT+2,4-D(濃灰色))。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特に例示した態様に限定されるものではなく、当然ながら様々であり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、本発明の特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、こうした用語が限定的であるようには意図されていないことも理解されたい。
【0028】
前述または後述にかかわらず、本明細書で引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0029】
I.組成物
本明細書では、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたはその薬学上許容可能な塩を含む医薬組成物を提供する。本明細書ではさらに、医薬として使用するための、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物を提供する。
【0030】
本発明はさらに、IL-23発現に関連する疾患の予防及び/または治療に使用するための、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物であって、当該組成物が、2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコンまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物を対象とする。有利には、当該組成物はIL-23遺伝子の発現を下方調節(ダウンレギュレート)する。この下方調節は、IL-23 mRNA転写及び下流のタンパク質翻訳を特異的に低減または完全に防止して、IL-23タンパク質の存在に関連する効果(例えば、IL-23/IL-17経路の活性化)を最小化し、消失すらするため、非常に有利である。
【0031】
分子「2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコン」(本明細書では互換的に「2,4-D」とも呼ばれる)のCAS番号は54299-50-2、化学式はC17H16O5である。別段の明示的な指示がない限り、本明細書における「2’,4’-ジヒドロキシ-3’,6’-ジメトキシカルコン」または「2,4-D」は、その任意の薬学上許容可能な塩も指す。2,4-Dは、(E)及び(Z)異性体の混合物から構成されてもよいが、2,4-Dは、好ましくは大半の(E)異性体、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、または90%、より好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、さらに好ましくは少なくとも99%の(E)異性体またはその薬学上許容可能な塩を含む。特に好ましい実施形態によれば、2,4-Dは(E)異性体またはその薬学上許容可能な塩から本質的になる。より詳細には、(E)異性体はCAS番号129724-43-2を有する。実際に発明者らは、驚くべきことに、2,4-Dの(E)異性体が、LPS刺激THP-1細胞株において、(Z)異性体よりも強力にIL-23産生を阻害することを見出した。
【0032】
本明細書で提供する2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物による治療から利益が得られ得る任意の疾患または状態は、「疾患」という用語の意味に含まれる。「IL-23発現に関連する疾患」及び「IL-23関連疾患」という用語は、本明細書では互換的に使用され、IL-23活性が疾患または状態に直接的または間接的に寄与するがん以外の任意の疾患または状態、詳細には、IL-23が異常に発現するがん以外の疾患または状態を指す。
【0033】
本明細書で使用する「IL-23遺伝子」という用語は、IL-23ヘテロ二量体のp19サブユニットをコードする遺伝子を指す。同様に、本明細書で使用する「IL-23タンパク質」という用語は、IL-23ヘテロ二量体のp19サブユニットを指す。実際に、このサブユニットのみがIL-23に特異的である。というのは、p40サブユニットは、IL-12を形成するヘテロ二量体及びIL-23を形成するヘテロ二量体のいずれにも含まれるためである。好ましくは、IL-23タンパク質は配列番号1の配列を有する。好ましくは、IL-23 mRNAは配列番号2の配列を有する。好ましくは、IL-23遺伝子は配列番号3のヌクレオチド配列を有する。場合によっては、IL-23遺伝子またはタンパク質は、代替的に「IL-23A」または「IL23p19」と称されることもある。
【0034】
本明細書で使用する「遺伝子発現を下方調節する」または「遺伝子発現を阻害する」という表現は互換的に使用され、IL-23標的遺伝子から転写されるmRNA産物及び/もしくはmRNA産物の翻訳から生じるタンパク質産物のレベルにおける、または表現型レベルにおける遺伝子発現の測定可能もしくは観察可能な低減、または検出可能な遺伝子発現の完全な消失を指す。遺伝子発現の下方調節は、分子技法を用いたmRNAまたはタンパク質発現の測定(例えば、RNA溶液ハイブリダイゼーション、PCR、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイを用いた遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他の免疫アッセイ、もしくは蛍光活性化細胞分析(FACS))により、または対象の表現型分析(例えば、IL-23関連疾患状態の測定可能または観察可能な低減(例えば、症状の重症度の低減もしくは症状の消失))により、確認することができる。好ましい方法によれば、IL-23の下方調節は、血清中のIL-23タンパク質レベルを測定することにより、より好ましくはELISAにより観察される。有利なことに、IL-23遺伝子発現の下方調節は、IL-23/IL-17生物学的経路を阻害し、場合によってはこれを停止する。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、IL-23遺伝子発現は、抗原提示細胞(APC)、上皮細胞、ケラチノサイト、滑膜細胞、及びポドサイトから選択される少なくとも1つの細胞内で下方調節される。
【0036】
2,4-DがIL-23遺伝子発現に及ぼす下方調節効果は、未治療の疾患対象におけるIL-23遺伝子発現と比較すると、少なくとも30%、40%、50%、60%、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、または少なくとも95%の低減として算出することができる。本発明の文脈において、IL-23遺伝子発現は、好ましくは、健康な対照対象において検出不可能または低レベルである。好ましくは、2,4-DがIL-23遺伝子発現に及ぼす下方調節効果は、健康な対象において検出されるIL-23のレベルと少なくとも同等であるように、またはそれよりも低くなるようにIL-23を低減する。健康な対象において観察されるIL-23遺伝子発現レベルは、疾患対象において観察される発現レベルよりも低い。非限定的な例として、5歳未満の健康な小児における血清IL-23レベルは平均でおよそ14pg/mLであることが示されている(Alyasin et al,2017)。25~47歳の健康な成人における血清IL-23レベルは、Zihni Bilik et al.,2016によれば平均でおよそ15.5pg/mLと報告されているが、別のサンプリングの39.5±12.7歳(範囲:18~65歳)の健康な成人における血清IL-23レベルは、平均で37.7±15.6pg/mlと報告されている(Alsheikh et al.,2019)。したがって、好ましい実施形態によれば、2,4-Dの投与により、血清IL-23レベルは、5歳未満の小児の場合平均14pg/mL以下まで、成人の場合平均38pg/mL以下まで低減される。当然ながら、当業者であれば、任意の特定のコホートについて、健康対疾患患者のIL-23レベルを定量し、疾患対象において、疾患状態が改善するようなIL-23レベル上昇を低減する2,4-Dの効果を評価することができる。
【0037】
さらに、疾患患者において、IL-23レベルが健康な対象で観察されるレベルを上回ったままであっても、このレベルが2,4-Dにより治療する前に存在したIL-23レベルと比較して低下していれば、疾患状態の改善を観察することができる。したがって、好ましい実施形態によれば、2,4-DのIL-23遺伝子発現に対する下方調節効果は、2,4-Dにより治療する前に当該対象で検出されたIL-23レベルよりも低くなるように、対象におけるIL-23レベルを低減する。IL-23遺伝子発現の下方調節または阻害は、当該遺伝子の下方調節または阻害が、細胞の他の遺伝子に著名な影響を及ぼさずに生じる場合、「特異的」である。
【0038】
本明細書で使用する「治療する」または「治療」という用語は、IL-23発現に関連する障害もしくは疾患に関連する症状の緩和、または当該疾患もしくは障害の当該症状のさらなる進行もしくは悪化の阻害を指す。本明細書で使用する「予防(prevention)」という用語は、IL-23発現に関連する疾患または障害の予防(prevention)または予防(prophylaxis)を指す。本明細書で使用する「治療」及び「予防」という用語は、独占的に絶対的な用語であることを意味するものではない。実際に、本明細書で使用する「予防」という用語は、症状の出現の遅延、症状の出現時の重症度の低減、または疾患エピソードの頻度の低減を指すことがある。
【0039】
同様に、2,4-Dなどの治療剤の文脈において本明細書で使用する「有効量」、または2,4-Dなどの治療剤の「治療有効量」という用語は、障害もしくは状態に関連する症状を全体的もしくは部分的に緩和する、またはこれらの症状のさらなる進行もしくは悪化を停止もしくは遅らせる、または障害もしくは状態を予防する、または予防をもたらす薬剤の量を指す。詳細には、「有効量」とは、所望の治療結果を達成するために必要な投与量及び期間における有効な量を指す。治療有効量は、特に1回以上の投与で投与することができる。また治療有効量は、治療的に有益な作用が、本発明の化合物の任意の毒性または有害作用を上回る量でもある。
【0040】
本明細書で使用する「薬学上許容可能な塩」という用語は、このような化合物と有機酸または無機酸との組合せに由来する本発明の化合物の塩を含む。実際において、塩形態の使用は、塩基形態の使用と実質的に同等である。本発明の化合物は、遊離塩基及び塩のいずれの形態でも有用であり、いずれの形態も本発明の範囲内にあるものとみなされる。
【0041】
薬学上許容可能な塩とは、投与される濃度において無毒である塩のことである。このような塩を調製することで、組成物が生理的効果を発揮するのを妨げずに組成物の物理化学的特性を改変することにより、薬理学的使用を容易にすることができる。物理的特性の有用な改変の例としては、経粘膜投与を容易にするための融点の低下、及び高濃度の薬物の投与を容易にするための溶解性の増加が挙げられる。
【0042】
薬学上許容可能な塩としては、酸付加塩、例えば、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、及びキナ酸塩を含む塩が挙げられる。薬学上許容可能な塩は、塩酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、及びキナ酸などの酸から得ることができる。このような塩は、例えば、塩が不溶性の溶媒もしくは媒体中、または水などの溶媒中で、遊離酸または塩基形態の生成物を1当量以上の適切な塩基または酸と反応させ、次いでこれを真空中で除去することにより、または凍結乾燥により、または好適なイオン交換樹脂上で既存の塩のイオンを別のイオンと交換することにより、調製することができる。
【0043】
II.製剤
本発明による組成物または使用のための組成物は、少なくとも1つの薬学上許容可能な担体をさらに含むことができる。「薬学上許容可能な担体」または「薬学上許容可能な担体」という用語は、本明細書では互換的に使用され、組成物と適合性であり、対象において望ましくない副作用を生じず、概して無毒性であると考えられる構成要素または構成要素の組合せを指す。薬学上許容可能な担体は、最も一般的には、組成物の投与を容易にすること、製品の貯蔵寿命もしくは有効性を増加させること、または組成物の溶解性もしくは安定性を改善することに関与する。薬学上許容可能な担体は、概して薬理学的に不活性とみなされる。ただし、場合によっては、賦形剤自体が治療効果、例えば、アジュバント効果を有することもある。
【0044】
薬学上許容可能な担体または賦形剤は従来技術で周知されており、当業者は、これらを組成物の所望のガレノス製剤に基づいて容易に適合させることができる。非限定的な例として、当該薬学上許容可能な担体は、1つ以上の抗酸化剤、緩衝液、増量物質、懸濁化剤、可溶化剤、マトリックス形成添加剤、保湿剤、希釈剤、溶媒、可塑剤、油性/乳化性/水性基剤、ゲル化剤、防腐剤、張度調整剤、ビヒクル、及び安定剤を含むことができる。非限定的な例として、組成物は、生理的条件に近似させるための少なくとも1つの薬学上許容可能な担体(例えば、pH緩衝液)を含むことができる。有用な緩衝液としては、例えば、酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液が挙げられる。所望の等張性は、塩化ナトリウムまたは他の薬学上許容可能な薬剤(例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(例えば、マンニトール及びソルビトール)、または他の無機もしくは有機溶質)を用いて達成することができる。塩化ナトリウムは、特にナトリウムイオンを含む緩衝液の場合に好ましい。ある特定の薬学上許容可能な担体を以下に示す(セクションIIIを参照)。
【0045】
使用のための組成物は、液体、固体、半固体、ゲル、または任意の好適なマトリックスの形態で提供することができる。好ましい実施形態において、当該組成物は、等張緩衝液などの水性担体に懸濁または溶解される。
【0046】
好ましくは、組成物は、通常の滅菌技法により滅菌されるか、または滅菌濾過される。
【0047】
ガレノス製剤、投与方法、及び投与量はさらに、患者の治療を適応させるために広く受け入れられている基準(患者の全体的健康状態、年齢、体重、治療に対する耐性等)に基づいて、必要に応じて決定することができる。これは、疾患の程度、重症度、及びタイプにも依存する。
【0048】
本発明の1つの態様によれば、本明細書で提供する使用のための組成物は、2,4-Dまたは当該その薬学上許容可能な塩を当該組成物中の唯一の活性薬剤として含む。
【0049】
代替的な態様によれば、本明細書で提供する使用のための組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤をさらに含むことができる。本明細書で提供する「治療剤」とは、対象における疾患の予防及び/または治療に有効であり医学的に適応される医薬化合物またはその混合物のことである。非限定的な例として、当該少なくとも1つの治療剤は、TNFアンタゴニスト(例えば、TNF化学物質またはタンパク質アンタゴニスト、TNFモノクローナルもしくはポリクローナル抗体またはフラグメント、可溶性TNF受容体(例えば、p55、p70もしくはp85)またはフラグメント、その融合ポリペプチド、あるいは低分子TNFアンタゴニスト、例えば、TNF結合タンパク質IまたはII(TBP-IまたはTBP-II)、ネレリモンマブ、インフリキシマブ、エテルナセプト(Enbrel(商標))、アダリムラブ(Humira(商標))、CDP-571、CDP-870、アフェリモマブ、レネルセプトなど)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、オーロチオグルコース、アザチオプリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、レフルノミド、スルファサルジン)、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗微生物剤(例えば、アミノグリコシド、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、例えば、抗ウイルスインターフェロン、ケモカイン受容体アンタゴニスト、インテグラーゼ鎖移動阻害剤、NNRTI、NS5A阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、プロテアーゼ阻害剤、またはプリンヌクレオシド、カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、別の抗微生物剤)、乾癬治療剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬剤、ミネラル、栄養剤、フラボノイド、甲状腺剤、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止痢剤、鎮咳剤、制吐剤、抗潰瘍剤、免疫治療剤、緩下剤、抗凝固剤、エリスロポエチン(例えば、エポエチンアルファ)、フィルグラスチム(例えば、G-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)、免疫化剤、免疫グロブリン、免疫抑制剤(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体モジュレーター、散瞳剤、毛様体筋麻痺剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ剤、抗躁剤、抗精神病剤、抗不安剤、催眠剤、交感神経刺激剤、興奮剤、ドネペジル、タクリン、喘息用医薬、ベータアゴニスト、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリンまたはアナログ、ドルナーゼアルファ(Pulmozyme)、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニスト、例えば、IL-17アンタゴニストまたは第2のIL-23アンタゴニスト、及び/あるいはこれらの2つ以上の組合せからなる群より選択される。好ましくは、組成物が2,4-D及び第2のIL-23アンタゴニストを含む場合、当該アンタゴニストは異なる作用機構を有する(例えば、IL-23タンパク質がIL-23R受容体に結合するのを阻害する)。本発明の組成物が特定の疾患の治療に使用される場合、好ましくは、当該疾患を治療するための確立された第一または第二選択療法に従って、上記で示したような1つ以上の分子と組み合わせて投与される。
【0050】
当該治療剤は、2,4-Dを含む組成物と同時に、または別々に、または連続的に投与することができる。したがって、本発明のさらなる目的は、IL-23関連疾患の治療に使用するための、本明細書で提供する2,4-Dを含む組成物であって、少なくとも1つの治療剤と組み合わせて使用される組成物である。好ましくは、2,4-Dは、治療剤と同時に、連続的に、または別々に投与される。医薬として使用するための、好ましくはIL-23関連疾患の治療に使用するための、2,4-Dを含む組成物であって、少なくとも1つの治療剤と組み合わせて使用される組成物は、本明細書に記載及び/または定義する態様の全てを包含する。
【0051】
2,4-D及び少なくとも1つの治療剤の組合せ効果は、治療効果を、相加的または相乗的な方式で有利に改善することができる(すなわち、治療剤の用量を維持した場合に効果の改善(例えば、症状の重症度、症状の数、または再発の頻度の低減)が観察され得る)。有利なことに、治療剤の投与量を、治療効果に悪影響を及ぼさずに低減することができる。したがって、治療剤投与に伴う副作用も低減することができる。有利なことに、治療剤が有効でない、または治療剤の投与用量で副作用に苦しむ新たな集団群は、2,4-Dと併用すると、治療剤をより低用量で投与できるため、このような集団群を治療することができる。場合によっては、治療剤治療の投与頻度を有利に低減することも、中止することさえもできる。特定の例として、治療剤を毎日投与する場合に、2,4-Dを含む組成物も本明細書で提供する様式のいずれかに従って投与する場合、使用頻度を有利に(例えば、1日おきに)低減することができる。
【0052】
III.組成物の投与
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で提供する組成物または使用のための組成物は、局所、経腸、または非経口経路を介し対象に投与される。詳細には、組成物は、局所適用を介し、例えば皮膚及び/または粘膜表面、より詳細には病変部に、手術中の局所注入(例えば移植前の組織または器官の灌流)を介し、または経皮投与を介し、局所投与することができる。
【0053】
自己免疫性皮膚科学的疾患、例えば、乾癬、皮膚炎、または皮膚及び/もしくは粘膜表面の他の局所性炎症反応を治療する場合、局所経路を介した皮膚及び/または粘膜表面への投与が特に好ましい。
【0054】
粘膜表面は、好ましくは鼻、気管、歯肉、咽頭、気管支、直腸、包皮、及び膣の膜から選択される。本明細書の文脈において、粘膜表面は眼の外表面、すなわち眼の粘膜及び周囲の粘膜も含む。気管支、細気管支、気管、咽頭、鼻、口腔、歯肉、包皮、または咽頭の粘膜への投与は、医薬組成物を吸入剤として、スプレーなど(例えば、点鼻スプレー、エアロゾルスプレー、またはポンプスプレーなど)として、溶液として、ゲル等として製剤化することにより、得ることができる。医薬組成物を鼻粘膜、気管、及び細気管支に送達するのに適したネブライザーデバイスが当技術分野で周知されている。本発明の組成物は、パッチ、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、フィルムまたは、膏薬の形態で皮膚及び/または粘膜表面に投与することができる。有利なことに、組成物の粘度または触感は、適用または効力(例えば、接触時間)を改善するために調節される。特定の例として、医薬組成物は、上記の粘膜表面のうちの1つ以上への投与の観点から、溶液、エマルション、マイクロエマルション、水中油型エマルション、無水脂質、及び水中油型エマルション、他のタイプのエマルションを含む群から選択されるビヒクルを含むことができる。
【0055】
本発明の組成物は、より具体的には、溶液、浣腸、泡沫、または座薬として直腸または膣の粘膜に投与することができる。直腸または膣用の送達に好ましいビヒクルとしては、親水性及び疎水性のビヒクル、例えば、エマルションまたはゲル調製物(例えば、油/水型エマルションゲル)の製剤化に一般的に使用されるようなビヒクルが挙げられる。
【0056】
別の態様によれば、組成物は、経口経路を介し経腸投与することができる。本明細書で使用する「経口経路」という用語は、投与が気管、咽頭、食道、胃、十二指腸、または腸に行われる経口胃投与、ならびに頬側、舌下、または唇下投与を含む口腔粘膜投与を含む。
【0057】
消化管への投与は、組成物を水性懸濁液、エリキシル、ロゼンジ、錠剤、シロップ、カプセルもしくはマイクロカプセル、または消化管への投与に適切な他の任意の製剤として製剤化することにより、得ることができる。一例として、経口投与用のマイクロカプセルがPCT出願第WO2007/140613号で開示されている。代替形態として、消化送達は、組成物を摂取用に適切な液体及び/または食品(例えば、飲料、ヨーグルト等)に組み込むことにより、実施してもよい。固形組成物(例えば、錠剤組成物)の場合、薬学上許容可能な担体としては、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。液体の薬学上投与可能な組成物は、例えば、本明細書に記載の2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を薬学上許容可能な担体(例えば、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール)に溶解、分散などして、溶液または懸濁液を形成することにより、調製することができる 。所望に応じて、投与される医薬組成物は、少量の薬学上許容可能な担体、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンアセテート、トリエタノールアミンオレエート等を含むことができる。このような投与形態を調製する方法は、当業者には知られているか、または明らかであろう。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,2012,22nd edition.を参照。
【0058】
経口投与の場合、組成物は、概して錠剤またはカプセルの形態をとり、あるいは水性もしくは非水性溶液、懸濁液、またはシロップであってもよい。錠剤及びカプセルが好ましい経口投与形態である。経口使用用の錠剤及びカプセルは、概して1つ以上の一般的に使用される担体(例えば、ラクトース及びコーンスターチ)を含む。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に加えられる。液体懸濁液を使用する場合、活性薬剤を乳化剤及び懸濁化剤と合わせてもよい。所望に応じて、香味剤、着色剤、及び/または甘味剤を加えてもよい。経口製剤に組み込むための他の薬学上許容可能な担体としては、保存剤、懸濁化剤、増粘剤などが挙げられる。
【0059】
経腸経路は、送達が対象にとって容易かつ好都合であり、また全身効果を誘発するため、特に有利である。
【0060】
別の態様によれば、本明細書で提供する組成物は、非経口経路、例えば、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、動脈内、関節内、心臓内、眼内、骨内、腹腔内(IP)、皮下(SC)、脳内、脳室内、側脳室内、皮内(ID)、上皮内、または髄腔内投与を介し投与される。より好ましくは、組成物は、IM、IV、ID、SC、または関節内経路を介し投与される。このような投与経路は当技術分野で周知されている。一例として、皮内投与は、米国特許第6,933,319号及びPCT出願第WO2004/101025号で開示されているようなニードルデバイス、または適切なニードルフリーデバイスを用いて実施することができる。本発明で有用な化合物は特に、注射、注入、または移植を介した非経口投与用に提供することができる。典型的には、組成物を投与する際に、2,4-Dと相互作用しない材料、または2,4-Dと組み合わせて存在する場合は治療剤と相互作用しない材料が選択される。好ましくは、2,4-Dは選択された材料に吸収されない。
【0061】
1つの態様において、本明細書で提供する組成物は、自己免疫性疾患が発現する部位(またはかつて発現した部位)(例えば、病変またはプラーク)に直接、好ましくは、直接注射(例えば、限局性関節炎を有する疾患を治療する場合の関節内投与)または直接適用(例えば、局所投与)の方法を介し、投与することができる。別の態様において、本明細書で提供する組成物は、中枢神経系に直接、好ましくは脳室内または髄腔内注射を介し、投与することができる。これは、IL-23発現に関連する神経変性疾患の治療に特に有利である。脳室内注射は特に、例えば、リザーバーに取り付けた脳室内カテーテルにより容易にすることができる。
【0062】
好ましくは、本明細書で提供する組成物は、局所、経口、腹腔内、静脈内、皮内、皮下、または関節内の経路を介し投与される。より好ましくは、本明細書で提供する組成物は、経口または腹腔内経路を介し投与され、さらにより好ましくは腹腔内経路を介し投与される。場合によっては、多経路レジメンを用いることが有利であり、例えば、IL-23に関連する2つ以上の異なる疾患を有する対象を治療する場合、または当該組成物が本明細書で提供する治療剤と組み合わせて投与される場合(例えば、本明細書で提供する組成物は、静脈内投与される別の薬剤と組み合わせて経口投与することができる)に有利である。
【0063】
2,4-Dを含む組成物は、好ましくは、正確な投与量の単回投与に適した単位投与形態をとるか、または選択された投与経路のための単位計量能力を有する多回用量容器に入っている。本明細書で提供する組成物はさらに、注入として(すなわち経時的に、例えば、15分、30分、または60分に等しいまたはそれを上回る持続時間)、またはボーラスとして(すなわち、15分、5分、または1分すら下回る持続時間を有する単回投与として)投与することができる。代替形態として、組成物は制御放出製剤で投与してもよい。非限定的な例として、当該制御放出製剤は、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む固体疎水性ポリマーのマトリックスを含むことができ、このマトリックスは、成形品の形態、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態をとる。制御放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、乳酸-グリコール酸コポリマー及びロイプロリド酢酸塩から構成された注射用ミクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。場合によっては、本明細書で提供する組成物は、パルス注入によって投与されることがある。1つの態様において、投与は注射により、最も好ましくは静脈内または皮下注射によりもたらされ、部分的には、投与が短期間か長期間かに依存する。
【0064】
IL-23関連疾患の予防及び/または治療において、本明細書で提供する組成物の適切な投与量は、様々な要因に依存し、例えば、治療対象となる特定の疾患(例えば、本明細書で定義する疾患から選択される疾患)、疾患の重症度及び経過、組成物が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、投与されたことのある過去の治療、薬剤の送達部位、投与方法、対象の臨床歴、対象の組成物に対する応答、対象がヒトでない場合、どの哺乳類が治療されるか、等に依存する。以下に示す有効用量の範囲は、本発明を限定することは意図しておらず、好ましい用量範囲を表すものである。
【0065】
疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1mg/kg~10mg/kg(例えば、1~10mg/kg)の約2,4-Dが、例えば、1回以上の別々の投与によるかにかかわらず、対象に投与するための最初の候補投与量である。典型的な1日投与量は、上述の要因に応じて約1mg/kg~5mg/kgまたはそれ以上の範囲とすることができる。数日間またはそれ以上の期間にわたる反復投与については、状態に応じて、治療は、1つ以上の疾患症状の所望の軽減が生じるまで維持される。ただし、他の投与量レジメンが有用な場合もある。この療法の経過は、従来の技法及びアッセイによって容易にモニターされる。したがって、好ましい実施形態によれば、2,4-Dの1~10mg/kg、より好ましくは1~5mg/kgの2,4-D、またはその薬学上許容可能な塩を含む組成物が、1日当たり1回以上の投与で対象に投与される。
【0066】
いくつかの態様において、本明細書で提供する組成物は、対象に1日1回以上(例えば食前、食中、または食後に、例えば1回、2回、または3回)投与することができ、連続して数日間(例えば1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、もしくはそれ以上)、数週間(例えば1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、もしくはそれ以上)、数か月(例えば1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、もしくはそれ以上)、または数年間投与することができる。必要な場合、組成物は、治療を行う対象の生存期間中投与してもよい。
【0067】
代替形態として、組成物は対象に、当該対象の一生に1回のみ、または当該対象の一生に2回以上、例えば約1日~約1年またはそれ以上の範囲の期間によって隔てられた同じ日または異なる日に投与してもよい。したがって、組成物は、対象に断続的に(例えば、1日おき、2日おき、または必要に応じて)投与しても、周期的に(例えば、数日間連続して投与し、次に投与なし、すなわち「休薬」を数日間行い、その終わりに周期を繰り返す)投与してもよい。場合によっては、組成物は定期的に、例えば、約1日~約1年またはそれ以上の期間、投与してもよい。
【0068】
場合によっては、組成物は、必要に応じて(例えば、IL-23発現に関連する疾患の症状が出現したとき、またはIL-23発現に関連する疾患の症状発現もしくは出現のリスクが増加する前に)投与してもよい。
【0069】
好ましい用量には、限定されるものではないが、1mg/kg~10mg/kgが含まれる。いくつかの実施形態において、用量は、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、または約7mg/kgである。場合によっては、用量は、約1mg/kg/週、約2mg/kg/週、約3mg/kg/週、または約4mg/kg/週である。場合によっては、用量は約1mg/kg/週~約15mg/kg/週の範囲である。
【0070】
組成物の投与の期間及び頻度は、当業者が一般的な知識に基づいて適合させることができる。詳細には、これらのパラメーターの適合は、IL-23発現に関連する疾患の性質に依存する。
【0071】
当然ながら、いかなる投与量を使用するにせよ、既知の方法によって決定され、かつ本明細書に記載のような安全かつ有効な量であるべきである。さらに、当業者も、一般的な知識を踏まえて、所望の生物学的効果を達成するためにヒトに投与されるべき組成物の有効量を決定することができる。
【0072】
本明細書で使用する「患者」または「対象」という用語は、その年齢に関係なく、任意の哺乳類、好ましくは任意の非ヒト動物またはヒト個体を指す。ヒト個体は、特に成人であっても小児であってもよい。本明細書における「成人」という用語は、16歳以上の個体を指す。「小児」とは、0~1歳の乳幼児ならびに1~8歳、8~12歳、及び12~16歳の小児を指す。「小児」という用語はさらに、出生~生後28日の新生児、及び生後28日~364日までの新生児期以降の乳児を含む。組成物は、成人にも新生児を含む小児にも投与することができる。
【0073】
IV.IL-23発現に関連する疾患
本発明によれば、本明細書で提供する組成物は、がん以外のIL-23発現に関連する疾患の予防及び/または治療に使用することができる。発明者らの知る限りでは、カルコンがIL-23産生を制御すると示されたことはない。このような疾患は特に、IL-23自体の発現、及び/またはIL-23により調節される下流サイトカイン(例えば、IL-17)の発現、及び/または分子の組合せ(例えば、炎症促進性分子の組合せ)の発現を引き起こすIL-17/IL-23経路の活性化から生じ得る。この疾患は、慢性障害の場合も急性障害の場合もある。この疾患は、全身性の場合も局所性の場合もある。この疾患は、哺乳類を当該疾患に罹患しやすくする病的状態も含む。このような疾患は、ヒト及び/または動物に存在し得る。非限定的な例として、このような疾患は特に、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患、神経変性疾患、非感染性炎症性呼吸器疾患、免疫学的障害等を含む。所与の疾患はさらに、その特徴に従って1つ以上のカテゴリーに分類することができる(例えば、呼吸器疾患は、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患と考えることもできる)。
【0074】
本発明の文脈において、本明細書で使用する「IL-23発現に関連する疾患」という表現は、上記で定義する通りである。詳細には、この用語は、IL-23発現が健康な対象で標準的な/予想される発現とは定性的及び/または定量的に異なるような病的なIL-23発現に関連する疾患または障害、さらに詳細には、健康な対象と比較して定量的に増加したまたは上回ったまたは過剰なIL-23発現に関連する疾患または障害を指す。
【0075】
本発明のさらなる態様によれば、IL-23発現に関連する当該疾患は、好ましくは、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患、神経変性疾患、ならびに非感染性炎症性呼吸器疾患から選択される。1つの態様において、IL-23発現に関連する当該疾患は、がん以外、詳細には白血病以外、及び/またはアルツハイマー病以外の疾患であり得る。したがって、好ましい態様において、本発明は、IL-23発現に関連する疾患の治療に使用するための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物を対象とし、ここで、当該疾患は、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患、好ましくは、アルツハイマー病以外の神経変性疾患及び非感染性炎症性呼吸器疾患から選択される。別の好ましい態様において、本発明は、IL-23発現に関連する疾患の治療に使用するための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物を対象とし、ここで、当該疾患は、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患、好ましくは、アルツハイマー病以外の神経変性疾患及び非感染性炎症性呼吸器疾患から選択される。別の好ましい態様において、本発明は、IL-23発現に関連する疾患の治療に使用するための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物を対象とし、ここで、当該疾患は、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患、ならびに非感染性炎症性呼吸器疾患から選択される。別の好ましい態様において、本発明は、IL-23発現に関連する疾患の治療に使用するための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物を対象とし、ここで、当該疾患は、自己免疫性疾患及び/または炎症性疾患、ならびに非感染性炎症性呼吸器疾患から選択される。
【0076】
本明細書で使用する「自己免疫性疾患」という用語は、自己組織または組織構成要素に対する免疫応答(自己抗体応答及び細胞媒介性応答の両方を含む)に起因するものを指す。実際に、IL-23が自己免疫性疾患に関連しており、IL-23を標的とすることで自己免疫性疾患が改善することが示されている(例えば、Tang et al.,2012を参照)。1つの実施形態において、「自己免疫性疾患」とは、正常な身体組織及び抗原に反応性である抗体のB細胞による産生から生じる、またはそれにより悪化する状態を指す。他の実施形態において、自己免疫性疾患は、自己抗原(例えば、核抗原)からのエピトープに特異的な自己抗体の分泌を伴う疾患である。本明細書で使用する自己免疫性疾患という用語は、自己免疫応答が単一の組織に対し向けられる臓器特異的自己免疫性疾患と、自己免疫応答が全身のいくつかまたは多くの臓器に存在する構成要素に対し向けられる非臓器特異的自己免疫性疾患とを包含する。自己免疫性疾患としては、特に、リウマチ性自己免疫性疾患、胃腸及び肝臓の自己免疫性疾患、血管炎、腎臓の自己免疫性疾患、皮膚の自己免疫性疾患、血液の自己免疫性疾患、アテローム動脈硬化症、ぶどう膜炎、耳の自己免疫性疾患、レイノー症候群、臓器移植に関連する疾患、ならびに自己免疫性内分泌疾患(例えば、糖尿病)が挙げられる。
【0077】
当該自己免疫性疾患は、好ましくは、リウマチ性自己免疫性疾患、胃腸及び肝臓の自己免疫性疾患、血管炎、腎臓の自己免疫性疾患、皮膚の自己免疫性疾患、血液の自己免疫性疾患、アテローム動脈硬化症、ぶどう膜炎、耳の自己免疫性疾患、レイノー症候群、臓器移植に関連する疾患、ならびに自己免疫性内分泌疾患(例えば、糖尿病)から選択される。
【0078】
リウマチ性自己免疫性疾患は、関節リウマチ、例えば、急性関節炎、慢性関節リウマチ、急性免疫学的関節炎、慢性炎症性関節炎、変性関節炎、II型コラーゲン誘発性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、椎体関節炎、及び若年性関節リウマチ、変形性関節症、慢性進行性(progredien)関節炎、変形性関節炎、慢性原発性多発性関節炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、強皮症、ループス、例えば、SLE及びループス腎炎、多発性筋炎/クリオグロブリン血症皮膚筋炎、抗リン脂質抗体症候群、ならびに乾癬性関節炎を含む。好ましくは、当該自己免疫性疾患は、上記のリウマチ性疾患のうちの1つ以上であり、より好ましくは関節リウマチである。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Dedong et al.,2019を参照)。
【0079】
胃腸及び肝臓の自己免疫性疾患は、自己免疫性胃炎及び悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、及びセリアック病を含む。好ましくは、当該胃腸及び肝臓の自己免疫性疾患は、上記の疾患のうちの1つ以上である。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Aggeletopoulou et al.,2018を参照)。
【0080】
血管炎は、ANCA関連血管炎、Churg-Strauss血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、及び多発性動脈炎を含む。好ましくは、当該自己免疫性疾患は血管炎である。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Nogueira et al.,2010を参照)。
【0081】
腎臓の自己免疫性疾患は、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、ベルジェ病を含む。好ましくは、当該腎臓の自己免疫性疾患は、上記の疾患のうちの1つ以上である。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Paust et al.,2009を参照)。
【0082】
皮膚科学的自己免疫性疾患は、乾癬(例えば、尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、及び爪乾癬)、蕁麻疹(例えば、慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹)、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、エリテマトーデス、炎症性過剰増殖皮膚疾患、アトピー(花粉症及びJob症候群などのアトピー性疾患を含む)、皮膚炎(接触性皮膚炎、慢性接触性皮膚炎、剥離性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎)、湿疹(アレルギー性またはアトピー性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、及び小水疱性掌蹠湿疹を含む)を含む。好ましくは、当該自己免疫性疾患は、上記の皮膚科学的疾患のうちの1つ以上であり、より好ましくは乾癬である。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Di Meglio and Nestle,2010を参照)。
【0083】
血液学的自己免疫性疾患は、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後紫斑病、自己免疫性溶血性貧血を含む。好ましくは、当該自己免疫性疾患は、上記の血液学的疾患のうちの1つ以上である。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Ye et al.,2015を参照)。
【0084】
自己免疫性耳疾患は、内耳疾患及び聴力喪失などの疾患を含む。好ましくは、当該自己免疫性疾患は、上記の自己免疫性耳疾患のうちの1つ以上である。
【0085】
臓器移植に関連する自己免疫性疾患は、移植片拒絶反応及び移植片対宿主病(GvHD)を含む。好ましくは、当該自己免疫性疾患はGvHDである。好ましくは、当該臓器移植は、血液、骨髄、幹細胞、腎臓、膵臓、肝臓、同所性肝臓、肺、心臓、腸、小腸、大腸、胸腺、同種異系移植幹細胞、強度の低い同種異系移植片、骨、腱、角膜、皮膚、心臓弁、静脈、動脈、血管、胃、及び睾丸移植片からなる群より選択される。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Das et al.,2009を参照)。
【0086】
自己免疫性内分泌疾患は、若年発症(1型)糖尿病(小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む)、成人発症糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性糖尿病、及び糖尿病に関連する疾患(例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性大動脈障害)、アジソン病、自己免疫性甲状腺疾患(例えば、バセドウ病、橋本甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症)を含む。好ましくは、当該自己免疫性内分泌疾患は糖尿病であり、より好ましくは1型糖尿病である。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Zheng et al.,2018;Mensah-Brown et al.,2006を参照)。
【0087】
本発明の自己免疫性疾患はさらに、アテローム動脈硬化症、ぶどう膜炎、レイノー症候群等を含む。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Pepple and Lin,2018を参照)。
【0088】
好ましい実施形態によれば、IL-23発現に関連する当該疾患は、上記の自己免疫性疾患から選択される。特に好ましい実施形態によれば、IL-23発現に関連する当該自己免疫性疾患は、GvHD、乾癬、及び関節リウマチから選択される。
【0089】
本明細書で使用する「炎症性疾患」という用語は、体組織の炎症または炎症性構成要素を有することを特徴とする疾患、障害、または状態を指す。炎症は、局所性の場合も全身性の場合もある。炎症性疾患としては、特に、移植片拒絶反応(皮膚移植片拒絶反応を含む);関節の慢性炎症性疾患(関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、急性痛風性関節炎、及び炎症性骨疾患(例えば、骨吸収増加に関連するもの)を含む);炎症性肺疾患(例えば、喘息、成人呼吸窮迫症候群、及び慢性閉塞性気道疾患);ベーチェット病;眼の炎症性疾患(角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ぶどう膜炎、交感神経性眼炎、及び眼内炎を含む);歯肉の慢性炎症性疾患(歯肉炎及び歯周炎を含む);結核;ハンセン病;腎臓の炎症性疾患(尿毒症合併症、糸球体腎炎、及びネフローゼ);皮膚の炎症性障害(強皮症、乾癬、及び湿疹を含む);中枢神経系の炎症性疾患(神経系の慢性脱髄性疾患、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、及びウイルス性または自己免疫性脳炎を含む);自己免疫障害、免疫複合体血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE);ならびに心臓の炎症性疾患(例えば、心筋症、冠動脈血栓症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム動脈硬化症);ならびに顕著な炎症性構成要素を伴う様々な他の疾患(子癇前症、統合失調症、慢性肝不全、脳及び脊髄の外傷、または子宮内膜症を含む)が挙げられる。実際に、IL-23発現はこのような疾患に関連している(例えば、Debnath and Berk,2017を参照)。
【0090】
好ましくは、当該炎症性疾患は、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、急性痛風関節炎、炎症性骨疾患;炎症性肺疾患、好ましくは喘息、成人呼吸窮迫症候群、もしくは慢性閉塞性気道疾患;ベーチェット病;眼の炎症性疾患、好ましくは角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ぶどう膜炎、交感神経性眼炎、もしくは眼内炎;歯肉の慢性炎症性疾患、好ましくは歯肉炎もしくは歯周炎;結核;ハンセン病;腎臓の炎症性疾患、好ましくは尿毒症性合併症、糸球体腎炎、もしくはネフローゼ;皮膚の炎症性障害、好ましくは乾癬;神経系の慢性脱髄性疾患;感染性髄膜炎;脳脊髄炎;パーキンソン病;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;免疫複合体血管炎;全身性エリテマトーデス(SLE);心臓の炎症性疾患、好ましくは心筋症、冠動脈血栓症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、もしくはアテローム動脈硬化症;子癇前症;統合失調症;慢性肝不全、または脳もしくは脊髄の外傷;子宮内膜症から選択される。好ましくは、当該炎症性皮膚疾患は、ざ瘡(例えば、尋常性ざ瘡もしくは集簇性ざ瘡)、酒さ、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、強皮症、脂漏性皮膚炎、せつ、よう、天疱瘡、蜂巣炎、グロヴァー病、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、または本明細書に記載の他の任意の炎症性皮膚疾患から選択される。当該炎症性骨疾患は、好ましくは、骨粗鬆症、歯周病、強直性脊椎炎、変形性関節症、パジェット病、腰椎椎間板ヘルニア(LDH、例えば、膨隆椎間板、突出椎間板、脱出椎間板、及び遊離脱出椎間板を含む)、もしくは関節リウマチ、または炎症が骨喪失を媒介する他の任意の骨疾患、または本明細書に記載の炎症性骨疾患から選択される。
【0091】
本明細書で使用する「神経疾患」という用語は、中枢神経系障害を指す。「神経変性疾患」とは、神経障害または疾患のクラスであり、神経疾患は、緩やかな進行性の神経組織の喪失、及び/または神経機能の改変(例えば、低下)を特徴とする。典型的には、神経機能の低下は、緩やかな進行性の神経組織の喪失の結果である。中枢神経系(CNS)における炎症応答は特に、様々な慢性及び急性の神経変性疾患で観察されており、これらは本発明の範囲に含まれる。
【0092】
当該神経変性疾患は、特に、片頭痛、三叉神経痛、重症筋無力症、脱髄性疾患(例えば、急性横断性脊髄炎);錐体外路及び小脳障害(例えば、皮質脊髄系の病変);基底核の障害;運動過剰運動障害(例えば、ハンチントン舞踏病及び老人性舞踏病);薬物誘発性運動障害(例えば、CNSドーパミン受容体を遮断する薬物によって誘発されるもの);運動低下運動障害(例えば、パーキンソン病);進行性核上性麻痺;小脳の構造的病変;脊髄小脳変性症(例えば、脊髄性運動失調、フリードライヒ失調症、小脳皮質変性症、多系統変性症(Mencel、Dejerine-Thomas、Shi-Drager、及びMachado-Joseph));全身性障害(レフサム病、無ベータリポ蛋白血症、運動失調、毛細血管拡張症、及びミトコンドリア多系統障害);ならびに運動単位の障害(例えば、神経原性筋萎縮症(前角細胞変性症、例えば、筋萎縮性側索硬化症、小児脊髄性筋萎縮症、及び若年性脊髄性筋萎縮症));中年期のダウン症候群;びまん性レビー小体病;レビー小体型老人性認知症;ウェルニッケ-コルサコフ症候群;慢性アルコール依存症;クロイツフェルト-ヤコブ病;亜急性硬化性全脳炎、ラスムッセン脳炎、ハンチントン病、ハラーフォルデン-シュパッツ病;ボクサー認知症;神経外傷性損傷(例えば、脊髄損傷、脳損傷、脳震盪、反復性脳震盪);炎症性疼痛;自閉症;うつ病;頭部外傷、脳卒中;認知障害;てんかん;黄斑変性などからなる群より選択することができる。実際に、IL-23/IL-17発現は神経変性疾患に関連している(例えば、Fiala et al.,2010;Villegas et al.,2019;Li and Zhou et al.,2019を参照)。
【0093】
好ましくは、当該神経変性疾患は、片頭痛、三叉神経痛、重症筋無力症、脱髄性疾患、好ましくは急性横断性脊髄炎;錐体外路及び小脳障害;運動過剰運動障害、好ましくはハンチントン舞踏病もしくは老人性舞踏病;薬物誘発性運動障害、好ましくはCNSドーパミン受容体を遮断する薬物により誘発される障害;運動低下運動障害、好ましくはパーキンソン病;進行性核上性麻痺;小脳の構造的病変;脊髄小脳変性症、好ましくは脊髄性運動失調、フリードライヒ運動失調症、小脳皮質変性症、もしくは多系統変性症;全身性障害、好ましくはレフサム病、無ベータリポ蛋白血症、運動失調、毛細血管拡張症、もしくはミトコンドリア多系統障害;運動単位の障害、好ましくは神経原性筋萎縮症、より好ましくは筋萎縮性側索硬化症;中年期のダウン症候群;びまん性レビー小体病;レビー小体型老人性認知症;ウェルニッケ-コルサコフ症候群;慢性アルコール依存症;クロイツフェルト-ヤコブ病;亜急性硬化性全脳炎、ラスムッセン脳炎、ハンチントン病、ハラーフォルデン-シュパッツ病;ボクサー認知症;神経外傷性損傷;炎症性疼痛;自閉症;うつ病;頭部外傷、脳卒中;認知障害;てんかん;ならびに黄斑変性から選択される。特定の実施形態において、IL-23発現に関連する当該神経変性疾患は、アルツハイマー病以外の疾患である。
【0094】
本明細書で使用する「非感染性炎症性呼吸器疾患」という用語は、微生物感染に起因しない呼吸器の任意の疾患を指す。当該非感染性呼吸器疾患は特に、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺水腫、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アレルギー性肺胞炎、拘束性肺疾患(例えば、職業に関連する有害物質により引き起こされるもの(例えば、石綿肺もしくは珪肺症)、または肺腫瘍(例えば、がん性リンパ管症、気管支肺胞癌、及びリンパ腫)により引き起こされるもの)、線維症、エリテマトーデス、全身性強皮症またはサルコイドーシス、ならびに鼻炎からなる群より選択され得る。実際に、喘息及びアレルギー感作を含む様々な病態における気管支上皮細胞内のIL-23発現が説明されている(Lee et al.,2017)。
【0095】
好ましくは、当該非感染性呼吸器疾患は、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺水腫、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アレルギー性肺胞炎、拘束性肺疾患、線維症、エリテマトーデス、全身性強皮症またはサルコイドーシス、及び鼻炎からなる群より選択される。
【0096】
特に好ましい実施形態によれば、IL-23発現に関連する当該疾患は、GvHD、乾癬、関節リウマチ、急性痛風関節炎、筋萎縮性側索硬化症、黄斑変性、及び子宮内膜症から選択される。
【0097】
より特に好ましい実施形態によれば、IL-23発現に関連する当該疾患は、GvHD、乾癬、関節リウマチ、及び急性痛風関節炎から選択される。
【0098】
有利には、IL-23発現に関連する当該疾患は、自己免疫性炎症性疾患、例えば、上記のように関節リウマチ、乾癬、急性痛風関節炎、歯周炎、ぶどう膜炎、1型糖尿病、自己免疫性肝炎、GvHDなど、神経変性炎症性疾患、例えば、上記のように筋萎縮性側索硬化症、黄斑変性、全身性エリテマトーデス、パーキンソン病、ハンチントン病など、及び他のIL-23関連炎症性疾患、例えば、上記のように子宮内膜症などの群から選択される炎症性疾患である。
【0099】
IL-23発現に関連する炎症性疾患は、呼吸器系炎症性疾患を除き、ウイルス感染により、詳細には慢性ウイルス感染により誘発されることもある。本明細書で使用する「慢性ウイルス感染」という表現は、ヒトまたは他の動物のウイルス感染のうち、当該ヒトまたは他の動物の細胞内で、ウイルスが長期間(通常は数週間、数か月、または数年)にわたり、致死性を伴わずに感染及び複製するウイルス感染を指す。慢性的に感染するウイルスは、がんの発生に関連または相関するウイルスの場合がある。慢性ウイルス感染は、最終的には患者にとって致死性であり得る疾患の誘発につながる可能性がある(例えば、C型肝炎もしくはB型肝炎ウイルスに関連する肝臓癌、または脳組織内で変異した麻疹ウイルスが再活性化した後の亜急性硬化性全脳炎の事例)。非限定的な例として、当該慢性ウイルス感染は、以下のウイルス:単純ヘルペスウイルス(HSV)及び他のタイプのヘルペスウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザ、エプスタインバーウイルス(EBV)、麻疹ウイルス、デングウイルス(DEN)などのうちの1つに起因し得る。実際に、IL-23/IL-17の発現は慢性ウイルス感染に関連している(例えば、Jiang et al.,2018;Mebratu and Tesfaigzi,2018;Wang et al.,2013;Uygun et al.,2019を参照)。本発明は、既に慢性ウイルス感染に感染している患者の治療に適しているだけでなく、ウイルス感染を予防するために予防的に適用することもできる。これは、慢性ウイルス感染のリスクがある対象には特に推奨される。
【0100】
好ましい実施形態によれば、当該慢性ウイルス感染は、ヘルペスウイルス、例えば、HSV、HPV、HBV、HCV、RSV、インフルエンザ、EBV、麻疹ウイルス、及びDENから選択され、より好ましくは、HSV、HBV、及びHCVから選択され、さらに好ましくは、HBV及びHCVから選択される。
【0101】
場合によっては、所与の対象は、本発明の組成物によって予防及び/または治療することができるIL-23発現に関連する2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の疾患のリスクがある、及び/またはそれらの疾患の診断を受けることがある。
【0102】
V.方法
別の態様によれば、本発明は、がん以外のIL-23発現に関連する疾患の予防及び/または治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、本発明による組成物の治療有効量を当該対象に投与することを含む、方法に関する。好ましくは、当該対象はヒト対象である。本明細書に記載の組成物の全ての態様は、IL-23発現に関連する疾患を予防及び/または治療する方法に含まれる。詳細には、当該組成物は、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む。任意で、当該組成物は、本明細書で提供する少なくとも1つの追加の治療剤及び/または少なくとも1つの薬学上許容可能な担体をさらに含むことができる。場合によっては、当該組成物は、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を唯一の治療剤として含むことができる。IL-23発現に関連する当該疾患は、好ましくは、本明細書で提供するもののうちの1つ以上を含む。
【0103】
当該予防及び/または治療は、本明細書で提供するように、局所、経腸、または非経口の投与を介し達成することができる。好ましくは、当該予防及び/または治療は、本明細書で提供するように、局所、経口、腹腔内、静脈内、皮内、皮下、または関節内の経路を介し達成することができる。この方法が、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物と、少なくとも1つの追加の治療剤とを投与することを含む場合、2,4-Dを含む組成物及び少なくとも1つの治療剤は、同時に、別々に、または連続的に投与することができる。一例として、2,4-Dを含む組成物は(例えば、経口薬または栄養補助食品として)経口投与することができ、一方、少なくとも1つの治療剤は局所投与される。代替例として、2,4-Dを含む組成物は(例えば、クリームまたはゲルとして)局所投与され、一方、少なくとも1つの治療剤は経口投与される。本明細書で提供する全ての態様は、当該方法に含まれる。
【0104】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの細胞内でのIL-23発現を阻害する方法を含み、この方法は、当該少なくとも1つの細胞を、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物に接触させることを含む。好ましくは、当該少なくとも1つの細胞は、対象の体内にある。好ましくは、当該対象は非ヒト動物またはヒト対象である。
【0105】
別の態様によれば、本明細書では、対象におけるTリンパ球の活性を減少させる方法を提供し、この方法は、2,4-Dを含む組成物を当該対象に投与することを含み、当該対象におけるTリンパ球の活性が減少する。別の態様によれば、本明細書では、対象におけるTリンパ球の増殖を減少させる方法を提供し、当該方法は、2,4-Dを含む組成物を当該対象に投与することを含み、当該対象におけるTリンパ球の増殖が減少する。好ましくは、当該Tリンパ球はTh17リンパ球である。
【0106】
VI.使用
別の態様によれば、本発明は、がん以外のIL-23発現に関連する疾患を予防及び/または治療するための医薬の製造のための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物の使用に関する。さらなる態様によれば、本発明は、対象におけるIL-23発現を阻害または下方調節することが意図された医薬の製造のための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物の使用であって、当該対象にIL-23発現を下方調節するように投与することを含む、使用に関する。本明細書で提供する全ての態様は、当該使用に含まれる。
【0107】
別の態様によれば、本発明は、がん以外のIL-23発現に関連する疾患を予防及び/または治療するための、2,4-Dまたはその薬学上許容可能な塩を含む組成物の使用に関する。本明細書で提供する全ての態様は、当該使用に含まれる。好ましくは、当該使用は、本明細書に記載の自己免疫性、変性、及び/または炎症性疾患を有する対象を予防及び/または治療するためのものである。
【0108】
VII.キット
別の態様において、本明細書では、上記の疾患の治療に有用な材料を含むキットを提供する。キットは、少なくとも1つの容器を含み得る。具体的には、本明細書では、IL-23発現に関連する疾患の予防及び/または治療を、それを必要とするヒトにおいて行うための医薬キットを提供し、当該キットは、
- 第1の容器内に、上記で定義した2,4-Dを含む組成物と、
- 場合によっては、第2の容器に、上記で定義した少なくとも1つの治療剤と
を含み、
2,4-Dを含む当該組成物と、任意の当該少なくとも1つの治療剤とは、本明細書で提供する態様のいずれかに従って投与するための薬学上許容可能な担体中にある。
別の態様において、
- 上記で定義した2,4-Dを含む組成物と、
- 上記で定義した少なくとも1つの治療剤と
を含む医薬キットを、
IL-23発現に関連する疾患の予防及び/または治療を、それを必要とするヒトにおいて行う、同時に、別々に、または連続的な使用のための組合せ医薬組成物として提供する。
【0109】
好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。好ましくは、第1の容器は、2,4-Dの治療有効量を含む組成物を含む。容器は、状態の治療に有効な組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る。例えば、容器は、静注用溶液バッグであっても、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい。代替形態として、容器はチューブまたはスプレーであってもよい。組成物が所与の疾患の治療用に使用されることを示すラベルをさらに容器に配置しても、容器に関連付けてもよい。キットは、医薬的に許容される緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液)ならびに/または少なくとも1つの追加の治療剤を含む第2の容器をさらに含むことができる。当該キットは、商業的観点及びユーザーの観点から望ましい他の材料、例えば、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書をさらに含むことができる。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれるものである。以下の実施例及び添付の図面に記載するまたは示す全ての主題は、例示として解釈するものとし、限定的な意味では解釈しないものとする。以下の実施例は、当業者によって決定され得る任意の代替形態、等価物、及び改変を含む。
【0111】
以下の実施例に例示するように、IL-23関連疾患は、本発明の2,4-Dを含む組成物を使用することにより、予防及び/または治療することができる。このような組成物は、適切な送達向けに製剤化される。これらは、哺乳類、より詳細にはヒトにおける急性及び慢性のIL-23関連疾患の予防及び/または治療に有用である。
【0112】
実施例1:2,4-DはIL-23発現を阻害する
単球及びマクロファージは、免疫系の生得群の重要な一部となっている。これらの細胞は炎症プロセスに関与しており、炎症促進性及び抗炎症性サイトカインを合成及び分泌する能力が極めて高い。ヒト白血病単球細胞株のTHP-1細胞は、単球及び単球由来マクロファージの免疫応答能力を研究するためのモデルとして広く使用されている。より具体的には、LPS刺激THP-1単球及びマクロファージは、化合物の炎症調節効果を研究するためのツールとして広く使用されている(Chanput et al.,2010)。
【0113】
材料及び方法
2,4-D(純度>98%)をSigmaから購入し、in vivo(胃内投与)試験用は水に、in vitro試験用はBPSに使用直前に溶解した。
【0114】
THP-1細胞株(TIB-202)をAmerican Type Culture Collection(ATCC,USA)から入手し、RPMI1640培養基(10%ウシ胎児血清(Gibco,UK)、50U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)、及び0.05mMの2-メルカプトエタノール(Gibco)を追加)中で培養した。培養した細胞を、適切な体積の培養プレートに500,000細胞/mLの細胞密度でプレーティングした。
【0115】
濃度を漸増させた2,4-Dの存在下または非存在下でLPS(10ng/ml)で刺激した2時間後に、TRIzol試薬(Invitrogen,USA)を用いて各実験条件のTHP-1細胞を直接溶解し、次にメーカーの指示に従ってRNAを抽出した。最後に、RNAを10μLのジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水に溶解し、NanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific Inc.,USA)で定量化し、Super Script III First-Strand Synthesis System for RT-PCR kit(Thermo Scientific,USA)をメーカーの指示に従って用いて逆転写した。
【0116】
PCRを、ABI 7500 Real-Time PCR System(Thermo,USA)においてSYBR Green qPCR master mix(Takara Biomedical Technology Co.,Ltd.,Dalian,China)を用いて二連で実施した。サイクリングプログラムは以下の通り:95℃で15秒間の変性、40サイクルの95℃で15秒間及び60℃で60秒間の伸長、次に融解曲線の作成。ΔΔCT法を使用して、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems,2001)のUser Bulletin #2に記載の通りに相対的mRNAレベルを定量化した。この試験で使用したプライマー配列は、ヒトIL-23p19については5’-GCAGATTCCAAGCCTCAGTC-3’(フォワード)及び5’-TTCAACATATGCAGGTCCCA-3’(リバース)(それぞれ配列番号4及び5)、参照としてのヒトGAPDHについては5’-ACAGTCCATGCCATCACTG-3’(フォワード)及び5’-AGTAGAGGCAGGGATGATG-3’(それぞれ配列番号6及び7)である。
【0117】
培養及び処置から24時間後に上清を収集し、IL-23 Human Uncoated ELISA Kit(ThermoFisher Scientific Inc.,USA)をメーカーの指示に従って用いてIL-23レベルを測定した。Varioskan LUXマイクロプレートリーダー(Thermo Fisher,USA)をアッセイに使用し、4パラメーターロジスティック回帰をデータ解析に使用した。試料ごとに二連で実施し、結果を平均した。
【0118】
結果
図1に示すように、2,4-Dは、IL-23遺伝子を発現するTHP-1細胞株においてIL-23遺伝子の発現を強力に阻害した。この細胞株によるIL-23サイトカイン産生も阻害した(
図2を参照)。IL-23の阻害は用量依存的であり、LPS刺激THP-1細胞培養においては、20μg/mLの2,4-DでIL-23サイトカイン産生の最大阻害が観察された(
図2)。有利なことに、培養上清中で検出されたIL-23は90%超減少しており、このことから2,4-DがIL-23の強力な阻害剤であることが示された。驚くべきことに、LPS刺激THP-1細胞培養物におけるIL-23の阻害は、2,4-Dの(E)異性体の方が(Z)異性体よりも大きかった(
図3)。
【0119】
実施例2:LPS刺激THP-1細胞における2,4-d及び他の分子のIL-23産生阻害におけるIC
50
追加分子(他のカルコンを含む)のパネルに加えて、2,4-D(天然または合成形態)がIL-23産生に及ぼす効果を評価した。
【0120】
材料及び方法
試験対象の分子。Chloranthus spicatusから単離及び精製した天然2,4-D(純度HPLC≧98%、カタログ番号:129742-43-2)をBOC Science(Shirley,NY)から購入した。合成2,4-D(純度HPLC≧98%)をYIWEI Biotech(Shanghai,China)から入手した。2’-ヒドロキシカルコン(2’-HC、純度HPLC≧98%、カタログ番号:42224-53-3)、4-ヒドロキシカルコン(4-HC、純度HPLC≧98%、カタログ番号:20426-12-4)、2’,2-ジヒドロキシカルコン(2’,2-DHC、純度HPLC≧98%、カタログ番号:IDF00045_ALDRICH)、2’,3-ジヒドロキシカルコン(2’,3-DHC、純度HPLC≧98%、カタログ番号:IDF00047_ALDRICH)、2’,4-ジヒドロキシカルコン(2’,4-DHC、純度HPLC≧98%、カタログ番号:PH011685_ALDRICH)、2’,5’-ジヒドロキシカルコン(2’,5’-DHC、純度HPLC≧98%、番号:IDF00046-1G)、及び2’,4’,4-トリヒドロキシカルコン(2’,4’4-THC、純度HPLC≧98%、番号:38986_SIAL)をSigmaから購入した。2’,4’-ジヒドロキシカルコン(2’,4’-DHC、純度HPLC≧98%、カタログ番号AB151736)をabcr GmbH(Karlsruhe,Germany)から購入した。イソババカルコン(IBC)、4’-ヒドロキシ-2’6’-ジメトキシカルコン(HMC)、2-トリフルオロメチル-2’-メトキシカルコン(TFM)、及びヒドロキシサフロールイエローA(HYA)も試験した。
【0121】
細胞培養。THP-1細胞を、RPMI1640培養基(Gibco)(10%ウシ胎児血清(FBS;Gibco,UK)、0.05mMの2-メルカプトエタノール、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを追加)中で培養した。細胞を指数関数成長期に使用し、培養基を実験の1日前に新鮮培地と交換した。翌日、THP-1細胞を細胞密度約800,000細胞/mL、ウェル当たり2mLで24ウェル培養プレートにプレーティングした。10ng/mLのLPSを使用してTHP-1細胞を刺激した。10%FBS及び1%P/Sを含むRPMI1640培地を正常対照(NC)として使用した。化合物のDMSO中10mMストック溶液を、使用直前に完全培養基で20μMに希釈した。実験を四連で実施した。
【0122】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)。24時間後、300gで10分間遠心分離した後、0.5mLの上清を収集し、使用するまで-80℃で保存した。IL-23レベルを、実施例1に記載の通りに培養上清中で測定した。
【0123】
結果
天然単離及び化学合成の両方の2,4-Dが同様のIL-23阻害を示し、IC50はおよそ2.1μMであった(
図4)。
【0124】
2,4-Dとは対照的に、IBC、HMC、及びHYAはIL-23産生を阻害していない。残りの化合物はIL-23阻害を示しているが、2,4-Dは予想外にも、残りの化合物よりも7,5倍~18倍優れたレベルでIL-23阻害を示している(
図5)。このように、2,4-DはIL-23に予想外の効果を及ぼし、この効果は他の化合物(他のカルコンを含む)よりさらに優れている。
【0125】
実施例3:2,4-Dはマウスモデルにおいて首尾よく関節リウマチを処置する
IL-23及びIL-17遺伝子の発現、ならびにこれらの同族サイトカインIL-17及びIL-23の産生は、関節リウマチの病因において重要であることが知られている。さらに、マウスコラーゲン誘発関節炎モデルにおいて、抗マウスIL-17抗体の投与は、対照マウスと比較して症状を低減することが示されている(Bai et al.,2014)。IL-23/p19の欠損も、この同じモデルにおいて保護的であることが示されており(Murphy et al,2003)、よってIL-23アンタゴニストがこの疾患の治療に有益であり得ることが示される。
【0126】
ここでは、関節リウマチのマウスモデルにおける2,4-Dの効果を評価した。
【0127】
材料及び方法
2,4-D:2,4-D(純度>98%)をSigmaから購入し、使用する直前にin vivo(胃内投与)試験用に水に溶解した。
【0128】
経口用2,4-Dで処置したDBA/1マウスにおけるコラーゲン誘発関節炎(CIA)の誘発。40頭のDBA/1マウス(8~12週齢、雄20頭、雌20頭)をCenter for Experimental Animals(Beijing,China)から入手した。CIAモデルを、標準的なHookeプロトコル(https://hookelabs.com/protocols/ciaInduction_DBA1.html)に従って確立した。フロイント完全アジュバント(CFA)及びフロイント不完全アジュバント(IFA)をHooke Laboratoriesから購入した。免疫化から35日後、40頭の免疫マウスをランダムに4群に分けた(10頭は対照、10頭を毎日0.2mgの経口用2,4-Dで処置、10頭を毎日1mgの経口用2,4-Dで処置、15日間)。全ての動物を処置後さらに15日間追跡した。
【0129】
CIAスコア化。以下の基準を用いてCIAを0~16の尺度(各足ごとに0~4、足4本全てのスコアを加算)でスコア化する。
【表1】
【0130】
統計解析。in vivo動物実験におけるデータを平均値±SEMで提示する。統計解析は、スチューデントのt検定(対応のある2標本検定)を用いて実施した。
【0131】
結果
高用量(1日1mg)または低用量(1日0.2mg)いずれかの2,4-Dで処置したCFA/IFA免疫マウスでは、処置の5日後から平均臨床スコア(±SEM)が強力に減少した(対照群と比較すると、高用量及び低用量において、それぞれ2~7倍及び2~3倍の減少、p<0.01)。このCIAの抑制は、高用量の2,4-Dで処置したCFA/IFA免疫マウスでは、処置中止から15日後でも維持された(
図6)。
【0132】
実施例4:2,4-DはRA患者滑膜細胞内でのIL-23及びIL-17の発現をin vitroで濃度依存的に阻害する
材料及び方法
滑液を、20例の関節リウマチ(RA)患者から関節穿刺により新たに採取した。2,4-Dで処置してから(または処置しなかった)2時間後に、RA患者の滑膜細胞をTRIzol試薬(Invitrogen,USA)を用いて直接溶解し、次にメーカーのプロトコルに従ってRNA抽出を行った。最後に、RNAを10μLのDEPC処理水に溶解し、NanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific Inc.,USA)で定量化し、Super Script III First-Strand Synthesis System for RT-PCR kit(Thermo Scientific,USA)をメーカーのプロトコルに従って用いて逆転写した。PCRを、ABI 7500 Real-Time PCR System(Thermo,USA)においてSYBR Green qPCR master mix(Takara Biomedical Technology Co.,Ltd.,Dalian,China)を用いて二連で実施した。サイクリングプログラムは以下の通り:95℃で15秒間の変性、40サイクルの95℃で15秒間及び60℃で60秒間の伸長、次に融解曲線の作成。ΔΔCT法を使用して、上記の実施例1に記載の通りに相対的mRNAレベルを定量化した。ヒトIL-17遺伝子に特異的なプライマー配列(hu-IL-17フォワード:5’-CAACCGATCCACCTCACCTT-3’;hu-IL-17リバース:5’-GGCACTTTGCCTCCCAGAT-3’)(それぞれ、配列番号8及び9)及びIL-23(上記の実施例1を参照)を使用した。
【0133】
結果
図7に示すように、滑液細胞培養におけるIL-17及びIL-23の発現は、1μg/mlの2,4-Dで処置すると、それぞれ23倍及び8倍減少した(p<0.05)。このIL-17及びIL-23発現の阻害は、RA患者の滑膜細胞を5μg/mlの2,4-Dで処置すると、それぞれ60倍及び65倍にも達した(p<0.01)。同様に、培養上清中のIL-17及びIL-23タンパク質の濃度は、2,4-Dの存在により有意に阻害された(
図8、A、B)。
【0134】
実施例5:2,4-Dはマウスモデルにおいて首尾よく乾癬を処置する
乾癬は、ヒトの自己免疫性疾患の中で最も高頻度に見られ、推定で人口の2~4%が罹患している。IL-23が乾癬の病因に機能的に関与することが示されている。また、Th17細胞数が増加している乾癬性皮膚病変においては、IL-23の発現が増加していることも観察されている。さらに、IL-17Aを標的とするモノクローナル抗体(例えば、セクキヌマブ)は、乾癬治療での使用が保健当局に承認されている(例えば、Roman et al.,2015を参照)。また、抗IL-23抗体のグセルクマブも尋常性乾癬の治療向けに承認されている(Yang et al.)。
【0135】
ここでは、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)誘導性乾癬モデルマウスを用いて2,4-Dの抗乾癬効果を評価した。
【0136】
材料及び方法
2,4-D:2,4-D(純度>98%)をSigmaから購入し、使用する直前にin vivo(胃内投与)試験用に水に溶解した。
【0137】
経口用2,4-Dで処置したマウスにおけるTPA誘発乾癬様皮膚過形成の誘発。40頭のマウス(BALB/c)をGuangdong Experimental Animal Centerから購入した。全ての実験は、中国の動物実験に関する立法に従い、Guangzhou University of Chinese Medicineの動物倫理委員会の承認を受けた。8~11週齢のマウス(n=30)に、200μlのアセトン中15μgのTPA(Sigma)の1日局所用量を、1日目及び4日目に剃毛した背部に投与した。この用量は、マウスにおいて最も最適で再現可能な皮膚炎症を引き起こすと経験的に判断されたものである(データは示さない)。対照マウス(n=10)を対照ビヒクルクリーム(Sigma)で同様に処置した。局所用TPAを投与したマウスを対照ビヒクルクリームを投与した対照マウスと比較した例示的例については、
図9を参照。局所用TPAを投与した30頭のマウスのうち、20頭のマウスを6日目まで毎日0.2mg(n=10)または1mg(n=10)の2,4-Dで経口的に処置した。残りの10頭の無処置TPAマウスは疾患対照とした。7日目に背部皮膚を撮影し、10%ホルマリンで固定し、H&E(ヘモトキシリン及びエオジン)で染色した。表皮厚をImage Jソフトウェアにより定量化した。
【0138】
統計解析。in vivo動物実験におけるデータを平均値±SDで提示する。統計解析は、スチューデントのt検定(対応のある2標本検定)を用いて実施した。
【0139】
結果
TPAを毎日投与し、任意選択で0.2mgまたは1mgの2,4-Dを投与したマウスの背部皮膚を
図10に示す。0.2または1mgの2,4-Dを投与したマウスの背部皮膚は、TPAのみを投与したマウスと比較して、用量依存的に改善している。TPA誘発乾癬様背部皮膚過形成の厚さは、毎日0.2mg(n=10;p<0.05)または1mg(n=10;p<0.01)の経口用2,4-Dで処置したマウスの場合、無処置マウスと比較して有意に薄かった。0.2mgの2,4-Dで処置したTPAマウスの背部皮膚の厚さは、対照クリームのみで処置したマウスで観察された正常皮膚よりも有意に厚かったが(p>0.05)、1mgの2,4-Dで処置したTPAマウスの背部皮膚の厚さは、対照マウスで観察された正常皮膚の厚さと同様であった(p>0.05)(
図11)。
【0140】
実施例6:2,4-Dは移植片拒絶反応を首尾よく予防する
移植片対宿主病(GVHD)は、同種異系の細胞及び組織移植に関連する主要な合併症である。IL-23分泌は、臓器特異的な病因における重要な因子として特定されている(Das et al.,2009)。さらに、抗IL-12/23 p40抗体が、実験的慢性移植片対宿主病を減弱させることも示されている(Okamoto et al,2015)。
【0141】
ここでは、マウスモデルにおいて、2,4-Dが移植片拒絶反応に及ぼす効果を評価した。
【0142】
材料及び方法
2,4-D:2,4-D(純度>98%)をSigmaから購入し、使用する直前にin vivo(胃内投与)試験用に水に溶解した。
【0143】
皮膚移植。移植片拒絶反応を試験するためのマウス全層同種異系皮膚移植を、以前に十分説明されているプロトコルに従って行った(Cheng et al,2017)。全ての手順は、National Institute of Health(NIH)の「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」に従って行い、Guangzhou University of Chinese Medicineの動物倫理委員会の承認を受けた。
【0144】
簡潔に説明すると、ドナーマウス(Balb/c)をイソフルランで麻酔した(4%の誘導気化器、マウス錐体を通して1~2%で維持)。足指ピンチ逃避反射を使用して、麻酔の深さをモニタリングした。動物の背部を電気かみそりで剃毛し、10%ポビドンヨードで消毒した。滅菌剪刀、手袋、及び無菌技法を用いて、ドナー背部皮膚を臀部から頸部にかけて、鈍的な剥離により疎性結合組織のレベルで採取した。皮膚移植片を採取した後、動物を頚椎脱臼により安楽死させた。顕微鏡下で、細い腱切除剪刀を用いて、背部皮膚から結合組織、脂肪組織、及び皮筋層を分離した。無菌技法を用いて、10mm×10mm~15mm×15mmの移植床用に背部皮膚から15mm×15mmの移植片を切り取った(1頭のドナーマウスから10個の移植片を得た)。氷上のペトリ皿に入った滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)に浸したガーゼ上で移植片を保存した。
【0145】
レシピエントマウス(C57BL/6)をイソフルランで麻酔した。術後疼痛緩和のためにブプレノルフィン(0.02mg/kg)を投与した。移植片を挿入する動物の背部側面を剃毛し、10%ポビドンヨードで消毒した。10mm×10mm~15mm×15mmの正方形の皮膚を剪刀を用いて横断した。欠損サイズは移植片よりわずかに(10%)大きかった。移植片を、縁に沿ったひだを避けながら移植床に配置した。各縁の角及び中央に8つの縫合を行った。各縫合について、針を移植片に通し、次に周囲のレシピエント皮膚の下にある移植床の皮筋層に通した。次に麻酔マスクを取り外して動物を麻酔から部分的に回復させ、その後に粘着包帯を適用した。レシピエントマウスを、移植片の上に折り畳んだガーゼを載せて粘着包帯でくるんだ。この包帯は、2枚の包帯を組み合わせ、一方の包帯の粘着部分を切断し、2枚の吸収パッドを一緒に設置することにより作製した。感染予防のため、手術後にエンロフロキサシン(5mg/kg)を投与した。移植マウスを、麻酔から完全に回復するまで、清潔なケージ内の電子レンジで加熱可能なパッドの上に置いた。1時間の緊密な術後観察の後、マウスを飼育施設に戻した。手術から7日後、マウスを上記のように麻酔し、包帯の腹部側を切断することにより包帯を取り外した。翌日、移植片のかさぶた、収縮、及び硬さの徴候について観察及び触診した。存在する場合、移植片は適切な脈管形成を達成しなかった可能性があり、技術的失敗とみなした。移植を成功とみなした場合は、拒絶反応の徴候について毎日モニタリングした。移植片組織の90%以上が壊死したら、移植片が拒絶されたものとみなした。動物を30日目に安楽死させて組織を採取した。
【0146】
この皮膚移植モデルを用いて、移植片拒絶反応を予防するためのIL-23/IL17軸を標的とした新規のアプローチを検討した。Balb/c→C57BL/6の皮膚移植片に、移植当日から拒絶反応まで0.2mlの水に溶解した2mg/kg(n=10)、10mg/kg(n=10)、及び50mg/kg(n=10)の2,4-Dを経口投与(胃内、1日2回)した。無処置の移植片10件を対照とした。
【0147】
統計解析。in vivo動物実験におけるデータを平均値±SDで提示する。統計解析は、スチューデントのt検定(対応のある2標本検定)を用いて実施した。
【0148】
結果
完全ミスマッチモデル(Balb/c→C57BL/6)では、全層皮膚移植は通常8~14日で拒絶される。これに対し、同系の全層皮膚移植(Balb/c-Balb/c)では、一貫して30日まで拒絶反応のエビデンスが示されない。この皮膚移植モデルを用いて、2,4-DによりIL-23遺伝子の発現を抑制し、移植片の拒絶反応を予防しやすくするという新規のアプローチを検討した。
【0149】
Balb/cをドナーとして、C57BL/6をレシピエントとして用いる場合、異なる用量の2,4-D(2、10、及び50mg/kg;1日2回)でIL-23遺伝子の発現を阻害すると、結果として移植片の生存率が用量依存的に有意に増加する(p<0.001)ことが観察された(対照群の移植片生存率の中央値10日と比較して、2、10、及び50mg/kgの用量群の移植片生存率の中央値はそれぞれ15、19、24日)(
図12)。
【0150】
実施例7:2,4-Dの抗炎症作用は、IL-23遺伝子発現の下方調節を介して特異的に媒介される
材料及び方法
簡潔に説明すると、実験の前に、48ウェルプレートを150μl/ウェルのハムスター抗マウスCD3(クローン145-2C11,NA/LE,BD PHM,USA)を10μg/mlの濃度でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、C57BL/6マウスを頚椎脱臼により安楽死させ、無菌技法を用いて脾臓を無菌的に切り取った。採取した脾臓を、10mlの氷冷PBS/FBSが入った小さなペトリ皿に入れ、2枚の霜状顕微鏡用スライドを用いて粉砕し、40μmナイロン素材でで濾過して単一細胞懸濁液を得た。その後、脾臓細胞懸濁液をマウスリンパ球分離培地(TBD Science Inc,Tianjin,China)上に注意深く分注し、密度勾配遠心分離後にリンパ球を収集した。洗浄及び細胞計数の後、細胞密度を、RPMI1640(Gibco)ならびに10% FCS+1μg/mLの抗マウスCD28(BD PHM)により100万細胞/mLに調整した。実験設定に従って、所望の濃度の試験化合物(0.1%DMSO最終濃度)またはビヒクル対照を、組換えマウスIL-23(10ng/mL、担体フリー;eBioscience,USA)のありまたはなしで加えた。抗CD3及び抗CD28モノクローナル抗体で72時間刺激した後、培養上清を採取し、IL-17AマウスELISAキット(Thermo Fisher Scientific Inc.)をメーカーの指示に従って用いてIL-17Aを測定した。また、0.4%トリパンブルー(Thermo Fisher Scientific Inc.)染色を用いて細胞数及び生存率も評価した。
【0151】
結果
図13に示すように、抗CD3/CD28で刺激した脾臓細胞は、420pg/mlものIL-17を産生及び放出した。上清中のIL-17の産生及び放出は、1μg/ml及び5μg/ml両方の2,4-Dにより有意に抑制された(p<0.001)。ただし、2,4-D由来の抑制は、組換えマウスIL-23(5ng/ml)を加えることにより完全に逆転した(
図13)。
【0152】
実施例8:2,4-DはNSAIDと比較して強力な抗IL-23剤である
材料及び方法
上記のLPS刺激THP-1細胞培養系(実施例1)において、2,4-Dの抗IL-23活性を商業的に処方された非ステロイド性抗炎症薬(NSAID:ラパマイシン、イブプロフェン、及びアスピリン)と比較した。
【0153】
結果
図14に示すように、2,4-Dは、上清中のIL-23産生/放出を5~10倍阻害し(p<0.001)、一方イブプロフェンは上清中のIL-23放出を20~25%低減するにとどまった(p<0.05)。これに対し、ラパマイシンまたはアスピリンの存在下では、上清中のIL-23産生/放出に有意な変化は観察されなかった(
図14)。
【0154】
実施例9:2,4-DはIL-17/IL-23及びTNF遺伝子シグネチャーの転写ならびに対応するタンパク質放出を抑制する
材料及び方法
試料の収集と調製。ヒト白血病単球由来細胞株のTHP-1細胞は、単球及び単球由来マクロファージの免疫応答の調節及び機能を研究するためのモデルとして広く使用されている。ここでは、リポ多糖(LPS)刺激THP-1細胞を、in vitroでサイトカインストームを研究するためのモデルとして使用した(Chanput et al.,2014)。THP-1細胞(American Type Culture Collection,Rockville,MDから購入)をRPMI1640培養基(Gibco)(10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco,UK)、0.05mMの2-メルカプトエタノール、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を追加)中で、5% CO2中37℃で、加湿インキュベーターで成長させた。培養した細胞を、適切な体積の培養プレートに5×105細胞/mlの細胞密度でプレーティングした。2,4-DをWuhan ChemFaces Biochemical Co,Ltd(Hubei,China)から購入し、市販のMTT細胞増殖及び細胞毒性アッセイキット(Beyotime,Shanghai,China)を用いてTHP-1細胞における細胞毒性を一晩試験した。THP-1細胞をPBS単独(陰性対照(NTC)として)、10ng/mLのLPS単独(Sigma,St.Louis,MO)(in vitroサイトカインストームのモデル(モデル)として)、あるいは10ng/mLのLPS及び5μMもしくは20μMの2,4-D、5μMもしくは20μMのラパマイシン(RPM)(Sigma)、または20ng/μLもしくは80μg/mLのデキサメタゾン(DEX)(Sigma)で処置した。THP-1細胞を0.5~24時間の範囲の異なる時点で採取して遺伝子発現の動態を調べ、一方、無細胞培養上清は収集し-80℃で保存して、記載のように時間依存性サイトカイン分泌を測定した。細胞培養を各実験ごとに四連ウェルで実施した。
【0155】
リアルタイム定量的PCR。リアルタイム定量的PCRを、ABI 7500 Real-Time PCR System(Thermo,USA)においてTB Green qPCR master mix(Takara Biomedical Technology Co.,Ltd.,Dalian,China)を用いて三連で実施した。サイクリングプログラムは以下の通り:95℃で15秒間の変性、40サイクルの95℃で15秒間及び60℃で60秒間の伸長、次に融解曲線の作成。ΔΔCT法を使用して、上記の実施例1に記載の通りに相対的mRNAレベルを定量化した(Applied Biosystems)。データは平均±SDとして表現する。使用したヒト遺伝子に特異的なプライマー配列を以下の表に収載する。
【表2】
【0156】
ELISA。24時間後にTHP-1培養上清を採取した。IL-23 Human Uncoated ELISA Kit(88-7237-86)をThermoFisher (ThermoFisher,Vienna,Austria)から購入した。ヒトIL-1β、IL-6、IL-10、TNF-α、MCP-1、及びMIP-1アルファELISAキットをMabtech(Stockholm,Sweden)から購入した。培養上清をメーカーの指示に従って測定した。Varioskan LUXマイクロプレートリーダー(Thermo Fisher,USA)をアッセイに使用し、4パラメーターロジスティック回帰をデータ解析に使用した。上清を各試料ごとに四連ウェルから採取し、結果を平均した。データは平均±SDとして表現する。
【0157】
統計解析。スチューデントのt検定(対応のある2標本検定)を用いて統計解析実施した。*はp値<0.05、**はp値<0.01に対応する。
【0158】
結果
IL-17/IL-23及びTNFシグナル伝達経路関連サイトカイン遺伝子(Tnf、IL1β、Lif、IL23p19、Cox2)ならびにケモカイン遺伝子(Ccl2/Mcp1,Ccl3/Mip1アルファ(alpha)、Ccl20/Mip3アルファ(alpha)、Cxcl1、及びCxcl2)を、異なる濃度の2,4-D(5~20μM)、RPM(5~20μM)、またはDEX(20~80ng/ml)で2時間処置したTPH-1モデルにおいて比較した。
【0159】
図15に示すように、2,4-Dは、IL-17/IL-23及びTNFシグネチャーの転写を用量依存的に63~143倍抑制し(p<0.01)、一方RPMは、Tnf、Il1β、Ccl2、及びCcl3の転写をわずかに阻害した(すなわち、50倍以下;p<0.01)ものの、Lif、Ii23p19、Cox2、Ccl20、Cxcl1、またはCxcl2の転写は阻害しなかった(変化が観察されない場合データは示さない)。これに対し、DEXは、Ccl3/Mip1アルファ(alpha)のわずかな下方調節を除いて、IL-17/IL-23及びTNFシグネチャーの転写に影響を及ぼさなかった。
【0160】
上清中に放出されたIL-17/IL-23及びTNFシグネチャーサイトカイン(TNF-アルファ、IL-1β、IL-6、LIF、IL-10、及びIL-23)ならびにケモカイン(CCL2/MCP-1、CCL3/MIP-1アルファ、及びCCL20/MIP-3アルファ)の濃度を、上記のように異なる濃度の2,4-D、RPM、及びDEXで24時間処置したTPH-1モデルにおいて比較した。
図16に示すように、2,4-Dは、IL-17/IL-23及びTNFシグネチャーサイトカインならびにケモカインの放出を用量依存的に強力に抑制した(90%超;p<0.01)。これに対し、予想されたように、RPMは、IL-1β、IL-10、TNF-アルファ(alpha)、CCL2/MCP-1、CCL3/MIP-1アルファ(alpha)、及びCCL20/MIP-1アルファ(alpha)の放出をわずかに阻害し(20μMで50%未満;p<0.05)、一方LIF、IL-6、IL-23は変化しないままであった。DEXは、IL-1β、IL-6、及びIL-23の放出を強力に抑制し(80ng/mlで90%超、p<0.01)、IL-10、CCL2/MCP-1、CCL3/MIP-1アルファ(alpha)、及びCCL20/MIP-3アルファ(alpha)の放出を中程度に低減し(50~90%、p<0.01)、一方LIF及びTNF-アルファ(alpha)は変化しないままであった。
【0161】
このように、ここでは、2,4-Dによる処置の結果、in vitroでのIL-17/IL-23及びTNFシグナル伝達経路の転写及び翻訳が直ちに抑制されることが実証された。これらの知見からは、2,4-Dが、IL-17/IL-23及びTNFシグネチャーサイトカイン(IL-1β、IL-23、LIF、TNF、及びCOX-2を含む)ならびにケモカイン(CCL2、CCL3、及びCCL20)の転写及び翻訳を抑制するが、IL-6及びIL-10の放出のみを下方調節することが示される。IL-17/IL-23及びTNFシグナル伝達経路の調節が、2,4-D、RPM、及びDEXの間で異なることを考慮すれば、これらの結果は、IL-17/IL-23及びTNF経路をスイッチオフする上で最も有効であるのは、RPMやDEXではなく2,4-Dであることをさらに示すものである。
【0162】
実施例10:マウスモデルにおいて2,4-Dが急性痛風関節炎に及ぼす効果
痛風は、尿酸の過剰産生によって引き起こされる有痛性の炎症性疾患である。尿酸は、関節組織及び関節周囲組織に沈着物を形成し、尿酸ナトリウム(MSU)結晶として結晶化し、激しい炎症応答を引き起こし、関節への好中球の動員を増加させる。
【0163】
現在、痛風フレアの管理はNSAID、コルヒチン、コルチコイド、または生物学的薬剤の使用に依存している。しかし、これらの薬物の使用は、併存症を伴う患者では安全性に欠け、しばしば重篤な副作用を引き起こし(非ステロイド性抗炎症薬、コルヒチン及びコルチコイド)、高コストを呈し(IL-1阻害剤リロナセプトまたはモノクローナル抗サイトカイン抗体などの生物学的薬剤)、あるいは一部の患者において満足できる鎮痛効果を有しない(Rees et al.,2014;Dalbeth et al.,2016)。
【0164】
ここでは、マウスにおけるMSU誘発痛風モデルにおいて2,4-Dの効果を評価した。
【0165】
材料及び方法
Chloranthus spicatusから単離及び精製した2,4-D(純度≧98%)をBOC Science(Shirley,NY)から購入した。コルヒチン(CLC)(純度≧96%)及びデキサメタゾン(DEX)(純度≧98%)をSigmaから購入した。マウス(群当たり6頭)を、MSU(100μg/10μL、関節内)による関節内刺激の30分前に、2,4-D(100mg/kgもしくは20mg/kg、腹腔内)、CLC(1mg/kgもしくは0.2mg/kg、腹腔内)、DEX(0.5mg/kgもしくは0.1mg/kg、腹腔内)、またはビヒクル(20%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(Tween 80)+PBS)で処置した。PBSのみを関節内に注射した6頭のマウスを陰性対照とした。
【0166】
尿酸ナトリウム結晶(MSU)の調製。MSU結晶を過去に説明されている通りに調製した(Ruiz-Miyazawa et al.,2017)。簡潔に説明すると、800mgの尿酸ナトリウムを、2NのNaOHを含む155mlの煮沸milli-Q水に溶解した。pHを8.9に調整した後、溶液を室温で撹拌することにより徐々に冷却し、4℃で一晩結晶化した。結晶を収集し、4℃、3,000xgで2分間遠心分離した。結晶を蒸発させ、180℃で2時間加熱することにより滅菌し、使用するまで無菌環境で保存した。MSU結晶中に存在するエンドトキシンの負荷を、ToxinSensor(商標) Single Test Kit(GenScript)を用いて定量した。MSUの選択用量及び濃度は、過去に説明されているように、検出可能なエンドトキシンレベルを提示しなかった(Ruiz-Miyazawa et al.,2018)。
【0167】
MSU誘発膝関節炎症の誘発。雄のICR(CD-1)マウス(35~45g、10~12週)をVitalRiver Inc(Beijing,China)から購入し、動物飼育施設で温度21±1℃、湿度、明/暗サイクルの制御下、水及び標準的な実験用飼料に自由にアクセスさせて飼育した。動物飼育及び取扱い手順は、GZUCM(Guangzhou University of Chinese Medicine)の動物倫理委員会の承認を受けた。動物の苦痛を最小限に抑え、使用する動物の数を低減するためのあらゆる努力を講じた。関節炎症は、3%イソフルラン吸入麻酔下、MSU(200μg/20μl)をマウスの左右の膝関節に関節内(i.a.)投与することにより誘発した。対照動物には滅菌PBS(20μL)の注射(i.a.)を投与した。
【0168】
膝関節浮腫の評価。膝関節浮腫の定量を、MSUの関節内注射前(ゼロ時間)及び関節内注射後の指示時間に、ノギス(Mitutoyo)を用いて行った。膝関節浮腫を、各マウスごとに図に示した時点とゼロ時間との差により判定した(Ruiz-Miyazawa et al.,2017)。浮腫の値はΔmm/関節として表す。
【0169】
病理組織学的解析。膝関節をMSU注射の20時間後に収集し、PBS中10%パラホルムアルデヒドで固定し、次にEDTAで10日間脱灰し、パラフィンに包埋して組織学的解析を行った。パラフィン切片をヘマトキシリン・エオジンで染色して、従来の形態学的評価を行った。結果は、滑膜炎の指標となる滑膜腔内の炎症巣で計数された白血球浸潤(細胞/野)として表現する。切片の解析に使用した寸法は1~2mm2、Image Jソフトウェアによる200倍の倍率であった。
【0170】
サイトカイン測定。マウスを麻酔し、屠殺した。膝関節を収集し、液体窒素中で凍結した。次に試料をプロテアーゼ阻害剤を含む500μlの緩衝液でホモジナイズし、遠心分離し(3600rpm、4℃、15分)、上清を使用して、マルチプレックスマイクロアッセイ(Qantibody(登録商標)mouse TH17 Array 1 kit;カタログ番号:QAM-TH17-1;RayBiotech,Norcross,GA)を用いてTh1/Th2/Th17サイトカインレベルを定量した。結果は、サイトカインのピコグラム(pg)/組織のmgとして表現した。
【0171】
統計解析。GraphPad Prism統計ソフトウェア(GraphPad Software,Inc,United States-500.288,version 5.0)を用いてデータを解析した。結果は、群当たり6頭のマウスに対し行った測定値の平均値±SEMまたはSDとして提示し、統計的有意性は、各群を対照(「モデル」)群と比較した二元配置ANOVAにより決定した。in vitro実験については、マイクロアッセイを四連で実施した。p<0.05を有意とみなした(*p<0.05、***p<0.01、***p<0.001)。
【0172】
結果
2,4-Dは、MSU誘発浮腫を用量依存的に阻害する
MSU注射は全ての評価時点で膝関節浮腫を誘発し、20時間時にピークとなった(86%、p<0.001)(
図17)。20時間時までに、2,4-DはMSU誘発膝関節浮腫を20mg/kgの用量では45.3%低減し(p<0.01)、100mg/kgの用量では68.4%低減した(p<0.001)。一方、急性痛風の治療に頻繁に使用される薬物のコルヒチン(CLC)は、MSU注射誘発膝関節浮腫を高用量(1mg/kg)で32.6%低減するにとどまった(p<0.05)。DEXは、MSU誘発膝関節浮腫を0.1mg/kgの用量では16.8%低減し(p<0.05)、0.5mg/kgの用量ではで38.9%低減した(p<0.01)(
図17)。
【0173】
2,4-Dは、膝関節の滑膜腔へのMSU誘発白血球動員を阻害する
最高用量の2,4-D(100mg/kg)、CLC(1mg/kg)、及びDEX(0.5mg/kg)でMSU誘発膝関節浮腫の有意な減少が観察されたため、さらなる検討は、異なる高用量薬物群の比較に焦点を当てた。MSU誘発白血球動員が膝関節の滑膜腔で観察された(データは示さない)。20時間時までに、MSU誘発白血球動員は6.5倍に達した(p<0.001)(
図18)。2,4-Dは、100mg/kgの用量でMSU誘発白血球動員を4.5倍低減した(p<0.001)。しかし、1mg/kgの用量のCLCは、MSU誘発白血球動員をわずかに阻害するにとどまった(1.6倍;p<0.05)。DEXは、0.5mg/kgの用量で膝関節への炎症細胞動員を2.2倍低減した(p<0.01)(
図18)。
【0174】
2,4-Dは膝関節組織内のMSU誘発サイトカイン産生を調節する
18種のTh1/Th2/Th17マウスサイトカイン(IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-17、IL-17F、IL-21、IL-22、IL-23、IL-28、INF-ガンマ、MIP-3a、TGF-ベータ、TNF-アルファ)のうち、7種の炎症促進性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-10、IL-12p70、IL-23、INF-ガンマ、及びTNF-アルファ)がマウス膝関節試料中で検出された。これら7種のサイトカインのうち、4種(IL-1β、IL-6、IL-10、及びTNF-アルファ)のみがMSU投与により上方調節(アップレギュレート)された。2,4-Dは、膝関節組織中のIL-1β、IL-6、IL-10、及びTNF-アルファサイトカインを、それぞれ5.3倍(p<0.01)、7.6倍(p<0.01)、1.7倍(p<0.05)、及び1.9倍(p<0.05)減少させた(
図19)。CLCはIL-10の発現をわずかに増加させ(1.5倍、p<0.05)、他の炎症促進性サイトカインには影響を及ぼさなかった。DEXは、膝関節組織のIL-1β、IL-10、及びTNF-アルファサイトカインをそれぞれ1.9倍(p<0.05)、1.5倍(p<0.05)、及び2.0倍(p<0.05)減少させたが、IL-6には影響を及ぼさなかった。
【0175】
2,4-Dは、MSU誘発痛風関節炎モデルマウスの膝関節(滑膜)組織中のMSU誘発白血球動員及び炎症促進性サイトカイン分泌の抑制において有効である。2,4-Dは、CLCやDEXのいずれよりも大きな程度で、滑膜腔に対するMSU誘発白血球動員を顕著に阻害しした。
【0176】
実施例11:2,4-Dは筋萎縮性側索硬化症(ALS)のマウスモデルの表現型を改善する
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋を制御する運動ニューロンが進行的に喪失する神経変性疾患である。ALSは、最も一般的なタイプの運動ニューロン疾患である。ALSの初期症状としては、筋硬直、筋攣縮、緩やかな脱力増大、及び筋消耗が挙げられる。運動ニューロンの喪失は、食べる能力、話す能力、動く能力、そして最終的には呼吸能力が喪失するまで継続する。ALSには特異的な治療法が存在せず、患者のおよそ半数が、症状開始から3年以内に死亡する(Fernandez-Ruiz,et al.,2021,Br J Pharmacol 178,1253-1256)。ALSのほとんどの症例(約90%~95%)が原因不明であり、孤発性ALSとして知られている。ただし、遺伝的要因及び環境的要因の両方が関与すると考えられている。残りの症例は、家族性ALSとして知られており、遺伝的原因である可能性が高く、これらの症例の約半数において、特に関与する遺伝子(例えばSOD1、下記参照)が特定されている。神経炎症は、おそらくはALS患者における神経変性の主原因ではないものの、ALSに共通する特徴であり、ニューロン死の促進に関与している(McCombe P.A.et al.,2020,Front Neurol 11,279)。最近の研究では、疾患進行中に、末梢ヘルパーT細胞の表現型がTreg細胞から炎症促進性Th1及びTh17細胞に移行し、これらの細胞は、臨床的重症度の増加とともにさらに豊富になることが示されている(Jin,R.et al.,2020,Scientific reports 5941,5941)。
【0177】
ここでは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスにおける2,4-Dの効果を評価した。
【0178】
材料及び方法
動物
ALSモデルマウスはSOD1 G93A(Gurney et al.Science 1994)とする。SOD1遺伝子の変異は、よく知られているヒトALS形態の変異の約20%に相当する。SOD1遺伝子のG93A変異を有する複数のヒト導入遺伝子を有するマウスは、ヒト患者のように進行性の筋麻痺及び脊髄運動ニューロンの喪失を生じる。発明者らは、少なくとも15コピーのヒト導入遺伝子を含む高発現株(Jackson Labs #002726 B6SJL-Tg(SOD1*G93A)1Gur/J)を使用した。SOD1 G93Aの雄をB6/SJLの雌(Janvier Labs #SH-B6SJL-F1;ハイブリッドモデルB6SJLF1/JRj)と交雑させる。ジェノタイピングにより、同腹仔におけるトランスジェニック動物を特定することができる。症状の進行を、Hatzipetros et al.JoVE 2015と同様に神経スコアグリッドを用いて評価する。マウスが神経スコア2から神経スコア3(一方の後肢が完全に麻痺)に移行したら安楽死させる。この移行は、発明者らの飼育条件下及び2,4-D処置の不在下では、生後約120~130日で起こる。非トランスジェニック同腹仔を対照動物として使用した。
【0179】
マウスにおける2,4-Dの長期間投与
2,4-Dは水への溶解度が低いため、この化合物を飲料水に入れて投与することはできない。この薬物を長期間(約100日間)毎日送達する上で、IP注射は、倫理的な考慮及び感染リスクゆえに適合しない。そこで発明者らは、Lei Zhang,Star Protocol 2021から改変した方法を用いて、ゲルによる経口投与に依存する。簡潔に説明すると、ゲルは、2%スクラロース溶液(Myprotein、ゼロカロリー、フレーバーなし)中で食物性ゼラチン(8%、Vahine)を混合し、この混合物を60℃で20~30分間、清澄化するまで加熱することにより生成する。人工フレーバー、例えば、「チーズフレーバー」(Arome Alimentaire Emmental 58 ml Cuisineaddict、2マイクロリットル/ミリリットル)を、粗挽き穀物の粉砕物(飼育施設で通常の食餌に使用しているものと同じ粗挽き穀物)とともにこの調製物に加えて、嗜好性を改善してもよい。次にこの混合物を315マイクロリットルの個別の1日分量に分割する。1~2mgの2,4-D(マウスの体重に依存、マウス体重kg当たり50mgの2,4-D)を、混合物がまだ温かいうちに各分量に加える(無処置動物に投与するビヒクル分量には2,4-Dを加えない)。この混合物は冷却するとゼリー状に凝固する。ゲルは冷蔵庫(4℃)内で6日間保存することができる。発明者らは通常、ケージ当たり4頭のマウス(雄または雌)を飼育する。マウスに2,4-Dを与えるため、通常の粗挽き穀物を除去し(ある4時間前)、ケージの隅に十字型のプレキシグラスを置いて4つの区画に分け、各マウスを物理的に隔離した。1回分量のゼリーを各コンパートメントの底部に、マウスが食べるまで置いておく。3時間後にマウスが全量を食べていない場合は、マウスが摂取した量を評価する。マウスの2,4-Dゼリー給餌は、離乳後(発明者らの動物施設では生後21日)から開始することができる。マウスをより早期に2,4-Dに曝露したい場合は、ゼリーを妊娠中の母親または授乳中の母親に与える。
【0180】
結果
2,4-Dが運動症状の進行に及ぼす効果
SOD1 G93Aマウスに生後21日目から神経スコア3に達する(その時点で安楽死)まで毎日2,4-Dを給餌すると、ビヒクルのみ(2,4-Dなしのゲル)を与えたマウスと比較して、完全な後肢伸展(
図20)及び軸緊張(
図21)を失う時間が有意に延長した。さらに、処置マウスにおいては神経スコアの進行(0→3)が遅くなる傾向があり(
図22)、同じマウスにおいて神経スコア3に到達する時間(生存時間;
図23)も遅れる傾向がある。これらの結果は、2,4-DがSOD1 G93Aマウスの疾患進行を遅らせることを示すものである。
【0181】
実施例12:2,4-Dはヒト滲出型黄斑変性(AMD)モデルラットにおいてグレーディングスコアを低減する
黄斑変性(別名加齢黄斑変性(AMD))は、最終的には視野の中心がぼやけたり見えなくなったりする医学的状態である。この疾患で完全に失明することはないが、中心視野を喪失することで日常生活の活動が顕著に損なわれる。黄斑変性は、典型的には高齢者に発生するが、網膜の黄斑部への損傷に起因するものであり、「萎縮型」及び「湿潤型」に分類される。滲出型AMDの場合、黄斑の下で血管が成長することで、血液及び体液が網膜内に漏出する(Ambati J.et al.,2012,Neuron Jul 12;75:26-39)。滲出型AMDの場合、抗VEGF薬剤の眼内注射か、または比較的一般的ではないものとしてレーザー凝固療法もしくは光線力学的療法により悪化を遅らせることができる。また、多くの研究により、炎症が滲出型ARMDの病因において重要な役割を果たしていることも示されている(Hadziahmetovic M.et al.,2021,Frontiers in Cell and Developmental Biology,8:612812)。
【0182】
ここでは、ラット滲出型黄斑変性モデルにおける2,4-Dの効果を評価した。
【0183】
材料及び方法
動物。全ての実験は、European Communities Council Directive 86/609/EECに従って実施し、地域の倫理委員会の承認を受けた(#2541-2015110210279792 v3)。Janvier Breeding Center(Le Genest-Saint-Isle,France)の6~8週齢の雄Long Evansラットを使用して、ヒトの滲出型黄斑変性のモデルとして使用される脈絡膜血管新生(CNV)のラットモデルを作成した。
【0184】
動物を病原体フリー条件下で食餌、水、及び寝わらを与え、12時間の明/12時間の暗サイクルで飼育した。ケタミン40mg/kg及びキシラジン4mg/kgの筋肉内注射により麻酔を誘導した。動物は、二酸化炭素吸入または頚椎脱臼により屠殺した。
【0185】
レーザー誘発CNV。麻酔及び瞳孔拡張の後、カバーガラスをコンタクトグラスとして角膜上に配置した。ラットに対し、視神経から視神経乳頭直径の2~3倍離れたところにスリットランプ(175mW、0.1秒、及び50μm)に取り付けたアルゴンレーザー(532nm)で6~8回の焼灼を実施した。動物の両眼にレーザー導入を投与した。気泡の存在がブルッフ膜破裂の証拠となり、レーザー衝撃の成功を裏付けた。
【0186】
処置。レーザー光凝固後、ラットを3つの処置群:2,4-Dの硝子体内注射(IVT)(「新規処置」、New Tとして識別);ビヒクル(PBS)のIVT;トリアムシノロンアセトニド(ケナコルト(登録商標)40mg/ml、TA)のIVTに分類した(群当たりn=12のラット)。IVTは、極細(100μl)シリンジに取り付けた31Gの針により、水晶体を避けながら角膜縁の後部に5μl注入することからなるものであった。IVTは、レーザー実施直後に実施した。動物は、7日目(群当たりn=6)及び16日目(群当たりn=6)に屠殺した。
【0187】
フルオレセイン血管造影(FA)。レーザー導入から14日後にFAを実施した。瞳孔を拡張した後、フルオレセイン(食塩水中0.2mLの10%フルオレセイン)を尾部に静脈注射した。初期及び後期の血管造影をフルオレセイン注入からそれぞれ1~3分及び5~7分後に記録した。同時に赤外線画像を取得して、レーザー焼灼の部位及び有効な存在を検出した。各レーザー誘発病変について、フルオレセイン漏出を、初期段階と後期段階との間の色素のサイズ/強度の増加を評価することにより、定性的にグレーディングした。2名の盲検観察者により、血管造影スコアを以下の基準に従って確立した:グレード0、過剰蛍光なし;グレード1、強度もサイズも増加しないわずかな過剰蛍光;グレード2、強度は増加するがサイズは増加しない過剰蛍光;グレード3、強度もサイズも増加する過剰蛍光;グレード4、最初のレーザー焼灼直径の2倍超の過剰蛍光。
【0188】
RPE-脈絡膜フラットマウント及びCNVの定量化。FA試験から2日後(フルオレセイン消失に必要な時間)、眼球を摘出し、4%PFA中で、室温で15分間固定し、角膜縁で切開し、角膜及びレンズは廃棄した。網膜をRPE-脈絡膜複合体から分離した。8つの放射状切開をRPE-脈絡膜に行い、次にこれをフラットマウントし、アセトンで-20℃で15分間後固定した。PBS中0.1%トリトンx100で洗浄した後、FITC-GSL-I-イソレクチンB4(1:200;Vector,AbCys,Paris,France)を-4℃で一晩にわたり適用した。PBSで洗浄した後、RPE-脈絡膜をフラットマウントし、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710;Le Pecq,France)で観察した。CNVの画像を、Olympus蛍光顕微鏡にコンピューターシステムを接続したデジタルビデオカメラで取得した。各レーザースポットでブルッフ破裂が容易に観察できた。各水平方向切片におけるCNV関連蛍光の面積を、ImageJソフトウェアを用いて測定した。
【0189】
RPE-脈絡膜フラットマウントの免疫蛍光。レーザー導入から3日後(マクロファージ浸潤のピーク)、免疫蛍光用のRPE-脈絡膜フラットマウントも調製した。ポリクローナルウサギ抗IBA1抗体(1:400;Wako,Neuss,Germany)を-4℃で一晩にわたり適用した。0.1%トリトンX100/PBSで洗浄した後、フラットマウントをAlexaFluo(登録商標)594ヤギ抗ウサギIgG(1:200;Molecular Probes,Leiden,The Netherlands)とともにインキュベートし、核をDAPIで対比染色した。IBA1陽性マクロファージ/ミクログリアの画像を蛍光顕微鏡で観察し、取得した。
【0190】
結果
14日時点で、フルオレセイン血管造影のグレーディングからは、2,4-D(新規T)群では、ビヒクル処置群及びTA処置群と比較して、強力な漏出(グレード3及び4)を伴う衝撃のパーセンテージの低減が示され(
図24)、ビヒクル群ではグレード3~4の衝撃が68%であったが、これに対し2,4-D(新規処置)群では13%であった。2,4-D(新規処置)群では、0~1とグレーディングされた衝撃のパーセンテージがビヒクル群の2倍(32%に対し68%)認められた。統計解析により、2,4-D(新規処置)が、ビヒクル及びTAの両方と比較して、効果の分類スコアを有意に低下させることが示された(
図25)。群間におけるDunnの多重比較検定:ビヒクルvs TA:ns、ビヒクルvs NT:p=0.0003、TA vs NT:p<0.0001。
【0191】
処置眼のFA画像及び赤外線画像の例を
図26に示す。フラットマウントしたCNVのレクチン陽性標識を測定することによって解析したCNVの表面からは、2,4-D(新規処置)がCNVサイズを有意に低減したことが示された。さらに、2,4-D-(新規処置)処置眼のCNVでは、浸潤IBA-1陽性マクロファージの数の重要な減少が観察された。
【0192】
実施例13:2,4D治療は、子宮内膜症(EDT)により誘発される腹膜炎症を抑制する
子宮内膜症は、通常子宮の内側を覆う組織層である子宮内膜の細胞に類似する細胞が、子宮の外側、多くの場合子宮及び卵巣の周囲の組織内で成長する女性の生殖器系の疾患である。この状態は痛み及び不妊を引き起こす。痛みは慢性的であり得、月経中に生じ、性交中に増悪することがある。子宮内膜症の治療法は存在しないが、鎮痛剤、ホルモン治療(例えば、避妊ピル)、または異所性子宮内膜組織の除去手術といったいくつかの治療が症状を改善し得る。推奨される鎮痛剤は、通常は非ステロイド性抗炎症薬である。子宮内膜症は実際に炎症に関連しており、免疫学的機能の改変及び活性化した腹膜免疫細胞数の増強を特徴とする(Lousse JC et al.,2012,Front Biosci;4:23-40)。調節性T細胞及びTh17細胞の改変/不均衡が、子宮内膜症の病態生理に重要な役割を果たしていると提唱されている(Khan KN et al.,2019,J Clin Endocrinol Metab,104:4715-4729)。IL-23は、Th17の維持及び増殖を制御することから、IL-23を阻害することにより、子宮内膜症関連炎症及び結果として生じる痛みが改善する可能性がある。
【0193】
ここでは、子宮内膜症モデルマウスにおける2,4-Dの効果を評価した。
【0194】
材料及び方法
実験計画。Balb/C雌マウス(10週齢)に、化合物を含むゼリー(EDT+2,4D群)または含まないゼリー(EDTなし群及びEDT+ビヒクル群)を摂取するように3日間習慣化させた。0日目に、EDT+ビヒクル群及びEDT+2,4D群に対し、シンジェニック雌からの子宮内膜組織の腹膜内の外科的移植を実施した。EDTなし群にはシャム手術は行った。次にビヒクルまたは処置薬を6週間の間週に5回(50mg/kg/日)投与した。次にマウスを屠殺し、腹膜炎症を評価した。プロトコルの全ての詳細を
図27に示す。
【0195】
無細胞腹膜洗浄におけるサイトカイン測定。マウスを安楽死させた後、5mLのPBSを腹腔内に注入し、次に細胞を含む希釈腹膜液を回収した。細胞を遠心分離により500xg、4℃でペレット化し、上清(無細胞腹膜液)を-80℃で凍結保存して、後続のELISAによるサイトカイン濃度測定に用いた。腹膜液中のサイトカイン濃度をELISAキット(ThermoFisher,Mouse IL-1β,IL6 and TNFalpha Uncoated ELISA)により評価した。サイトカインの濃度を定量するため、これらのキットは特異的な一次抗体及び二次抗体を使用し、HRP-TMB発色反応により明らかにした。光学密度を、Clariostar Plus Microplate Reader(BMG LABTECH)によりClarioソフトウェアを通じて読み取った。濃度を、メーカーのプロトコルに従って標準曲線から算出した。
【0196】
フローサイトメトリーで評価する腹腔内からの免疫細胞の表現型試験。ペレット状の腹膜細胞をPBS-2%FBSに再懸濁し、計数した。100万個の細胞を、BioLegendから購入した以下のフルオロフォア結合抗体で染色した:CD45 BV510、CD11b APC-Cy7、CD11c PE、F4/80 BV711、CD80 PE Cy5、CD206 AF647、Ly-6C、PE-Cy7、CCR2 BV786及びCXCR4 BV421、CD45R/B220 PE Texas-Red、CD3ε FITC、NK1.1 BV605、ならびにCD69 PerCP-Cy5.5、Zombie-UV。細胞を暗中4℃で20分間インキュベートし、PBS-2%FBSで洗浄し、5mLの丸底ポリスチレンチューブ(Falcon(商標)352054)内でパラホルムアルデヒド4%で固定した。補正はUltracompビーズ(ThermoFisher)で調整した。全ての抗体を1/200で希釈した。全てのデータをLSR Fortessaフローサイトメーター(BD Bioscience,USA)で収集し、FlowJoソフトウェアで解析した。
【0197】
統計解析。平均値から2標準偏差を超えて離れた外れ値は考慮しなかった。クラスカル-ワリスノンパラメトリック検定及びDunnの多重比較検定をサイトカインに対し実施し、一元配置Anova及びチューキー多重比較検定をフローサイトメトリーデータに対し実施した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0198】
結果
子宮内膜症は、炎症促進性サイトカインIL1-βの有意な増加と、他の2つの炎症性サイトカイン(IL-6及びTNF-α)の増加傾向とをもたらした。
図29に示すように、2,4Dはこれらのサイトカインの濃度を正常化する傾向があった。
【0199】
子宮内膜症は、腹膜細胞に含まれるNK細胞の割合を増加させる傾向が見られ、T細胞の割合を増加させた。腹膜細胞の表現型を調べたところ、2,4Dによる処置はNK細胞の割合を有意に低減したが、全体のT細胞の割合には影響を及ぼさなかったことが示された。最も豊富な細胞タイプであるマクロファージの割合は、子宮内膜症または2,4Dによる変化はなかった(
図30)。しかし、細胞表面マクロファージマーカーは改変しており、子宮内膜症は、炎症促進性(PRO)マーカー(CD80及びLy6C)を増加させる傾向が見られ、また抗炎症性マーカーCD206を有意に増加させた。
図31に示すように、2,4D投与は、炎症促進性マーカーLy6Cを減少させる傾向が見られたが、抗(ANTI)炎症マーカーCD206は減少させなかった。走化性にとって重要な表面分子に関しては、2つのケモカイン受容体(CXCR4及びCCR2)を評価した。子宮内膜症はCXCR4を増加させ、CCR2を増加させる傾向が見られた。2,4D処置はCXCR4を減少させる傾向が見られ、CCR2を有意に低減した。
【0200】
全てをまとめると、これらの結果は、2,4D処置による子宮内膜症誘発炎症の制限を強力に裏付けている。
【0201】
結論
本明細書で例示しているように、2,4-Dを含む組成物は、IL-23遺伝子を発現するヒト単球由来細胞株においてIL-23/IL-17軸関連遺伝子の発現を強力に阻害するだけでなく、IL-23/IL-17軸活性化に関連する疾患を各々再現した7つの動物モデルに2,4-Dを投与したところ、当該疾患で観察される症状を首尾よく軽減した。実際に、2,4-Dは、対応するマウスモデルにおいて、乾癬、関節リウマチ、急性痛風関節炎、移植片拒絶反応から、筋萎縮性側索硬化症、黄斑変性、及び子宮内膜症に至るまでの疾患を首尾よく処置することができた。2,4-Dは、これらのモデルの全てにおいて、これらの疾患の各々に関連する主要なサイトカインシグナル伝達経路であるIL-23/IL-17軸を特異的に阻害した。これらの知見は、2,4-DがIL-23/IL-17軸を標的とし、急性及び慢性の自己免疫性疾患、ならびに超炎症性疾患または変性疾患の患者の治療に有益であることを明確に示すものである。理論に束縛されるものではないが、2,4-Dの作用機構を
図32に示す。注目すべきことには、(E)異性体は、驚くべきことに、(Z)異性体よりも5倍高い活性を有する。
【0202】
【配列表】
【国際調査報告】