(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(54)【発明の名称】導電性メンブレン分離のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/46 20060101AFI20240718BHJP
B01D 71/70 20060101ALI20240718BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240718BHJP
B01D 61/54 20060101ALI20240718BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20240718BHJP
B01D 61/50 20060101ALI20240718BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240718BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20240718BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B01D61/46
B01D71/70
B01D69/00
B01D61/54 510
B01D61/44 500
B01D61/50
B01D61/54 500
B01D61/58
C02F1/469
B01D61/00 500
B01D61/46 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522157
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 US2022034343
(87)【国際公開番号】W WO2022271698
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523478573
【氏名又は名称】サイトレーション・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SiTration, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ブレンダン ディ
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘラル,アハメド
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006GA17
4D006HA43
4D006JA09Z
4D006JA14A
4D006JA18A
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4D061EB14
4D061EB18
4D061EB19
4D061FA09
(57)【要約】
本開示は、メンブレンフィルターに電界を発生させること、メンブレンフィルターを一定の電位に保持すること、またはメンブレンフィルターに一定の電流を流すこと;メンブレンナノフィルターシステムを通って混合溶液を供給すること;および混合溶液から透過溶液中に成分を分離することにこと、により、メンブレンナノろ過、電気ろ過、または電気抽出を介して混合溶液から導電性メンブレン分離するためのシステムおよび方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性メンブレン分離のためのメンブレンナノフィルターシステムであって、
ナノ多孔質構造を含むメンブレンフィルター:
メンブレンフィルターと接触する電気コンタクト;および、
メンブレン電極の上面の上方にある対向電極;を含み、
電気コンタクトを介した、メンブレンフィルターと、対向電極とは、メンブレンフィルターと対向電極との間に電界を発生させるように、メンブレンフィルターを一定の電位に保持するように、またはメンブレンフィルターに一定の電流を流すように、構成され、そして、
メンブレンフィルターは、混合溶液から成分を透過溶液に分離するように構成されているシステム。
【請求項2】
混合溶液は、黒色塊浸出液を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
混合溶液の成分は、Co、Ni、Al、Mn、Fe、Li、Cu、Ag、Zn、それらのイオン、またはそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
混合溶液が酸を含み、混合溶液のpHが4.0未満である請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
酸は、H
2SO
4を含む請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
システムは、酸を50%までリサイクルするように構成されている請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
Liは、透過溶液中の成分である請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
透過溶液に含まれない成分は、残留溶液としてシステムから排出される請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
システムは、残留溶液を再利用するように構成されている請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
1つまたはそれ以上の追加のメンブレンフィルターをさらに含み、混合溶液の1つまたはそれ以上の追加の成分を分離するために、残留溶液は、1つまたはそれ以上の追加のメンブレンフィルターを通過する請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
メンブレンフィルターは、シリコンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
メンブレンフィルターは、1nm~1,000nmの範囲の孔径を有する請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
システムは、フロースルーまたはデッドエンド構成である請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
メンブレンフィルターおよび対向電極を収容するように構成された圧力セルをさらに含む請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
圧力セルは、電気コンタクトを受容するように構成された開口部をさらに含む請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
圧力セルは、3000psiまでの圧力で作動可能である請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
システムは電気ろ過用に構成され、電場はメンブレンフィルターと対向電極との間に印加される請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
メンブレンフィルターは、1nm~100nmの孔径を有する請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
システムは、700psiを超える圧力で作動するように構成されている請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
システムは電気抽出用に構成され、メンブレンフィルターは、一定の電位に保持されるか、またはメンブレンフィルターを通して一定の電流が流される請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
メンブレンフィルターは、100nm~1,000nmの孔径を有する請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
システムは、500psi未満の圧力で作動するように構成されている請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
システムは、サイズおよび電荷の選択的ろ過用に構成されている請求項13に記載のシステム。
【請求項24】
システムは、クロスフロー構成である請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
システムは、電気ろ過用に構成され、電場は、メンブレンフィルターと対向電極との間に印加される請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
システムは、サイズおよび電荷の選択ろ過用に構成されている請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
電界強度および極性は、所望の成分を選択するように調節可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
電界を発生させるために、電気コンタクトと対向電極との間に0.1V~5Vを印加する請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
混合溶液から導電性メンブレン分離する方法であって、
メンブレンフィルターの上方または内部に電場を発生させ、メンブレンフィルターを一定電位に保持し、またはメンブレンフィルターに一定電流を流すこと;
混合溶液をメンブレンフィルターに通すこと;および、
混合溶液から透過溶液中に成分を分離すること、を含む方法。
【請求項30】
ナノ多孔質構造を含むメンブレンフィルター;
メンブレンフィルターと接触する電気コンタクト;および、
メンブレン電極の上面の上方にある対向電極;
を含むメンブレンフィルターシステムを提供することをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
電気コンタクトと対向電極に、0.1V~5Vの電圧を印加することをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
混合溶液は、黒色塊浸出液を含む請求項29に記載の方法。
【請求項33】
混合溶液の成分は、Co、Ni、Al、Mn、Fe、Li、Cu、Ag、Znのイオン、それらのイオン、またはそれらの混合物からなる群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項34】
混合溶液は酸を含み、混合溶液のpHは4.0未満である請求項29に記載の方法。
【請求項35】
酸は、H
2SO
4を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
酸を50%までリサイクルすることをさらに含む請求項34に記載の方法。
【請求項37】
Liは、透過溶液中の成分である請求項33に記載の方法。
【請求項38】
透過溶液に含まれない成分を含む残留溶液を除去することをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項39】
電場は、より低い電荷を有する成分を透過溶液に、より高い電荷を有する成分を残留溶液に分離するように構成される請求項38に記載の方法。
【請求項40】
透過溶液は、1+以下のイオン電荷を有する成分を含み、残留溶液は、2+以上のイオン電荷を有する成分を含む請求項39に記載の方法。
【請求項41】
残留溶液を混合溶液にリサイクルすることをさらに含む請求項38に記載の方法。
【請求項42】
リサイクルされた混合溶液から第2の成分を分離することをさらに含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
混合溶液の1つ以上の追加成分を分離するために、1つ以上の追加メンブレンフィルターに残留溶液を通すことをさらに含む請求項38に記載の方法。
【請求項44】
メンブレンフィルターは、シリコンを含む請求項29に記載の方法。
【請求項45】
メンブレンフィルターは、1nm~1,000nmの範囲の孔径を有する請求項44に記載の方法。
【請求項46】
システムは、デッドエンド構成である請求項29に記載の方法。
【請求項47】
成分は、電気ろ過を介して混合溶液から分離され、電場はメンブレンフィルターと対向電極との間に印加される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
成分は電気抽出により混合溶液から分離され、メンブレンフィルターが一定の電位に保持されるか、またはメンブレンフィルターを通して一定の電流が流される請求項46に記載の方法。
【請求項49】
透過溶液にはない混合溶液の1つまたはそれ以上の成分がメンブレンフィルターの孔内に保持される請求項48に記載の方法。
【請求項50】
電位の極性または電流の方向を逆にし、純粋なドロー溶液をメンブレンフィルターに通すことをさらに含む請求項49に記載の方法。
【請求項51】
純粋なドロー溶液は、水または硫酸を含む請求項50に記載の方法。
【請求項52】
メンブレンフィルターに保持された1つまたはそれ以上の成分を、純粋なドロー溶液と1つまたはそれ以上の成分を含む純粋な生成物ストリーム中に浸出することをさらに含む請求項50に記載の方法。
【請求項53】
純粋なドロー溶液は、混合溶液の体積の1%~50%の体積を有する請求項52に記載の方法。
【請求項54】
純粋な生成物ストリームから1つまたはそれ以上の成分を沈殿させることをさらに含む請求項52に記載の方法。
【請求項55】
成分は、サイズおよび電荷的な選択ろ過を介して混合溶液から分離され、電場が0V/mである請求項46に記載の方法。
【請求項56】
システムは、クロスフロー構成である請求項29に記載の方法。
【請求項57】
成分は、電気ろ過を介して混合溶液から分離され、電場はメンブレンフィルターと対向電極の間にある請求項55に記載の方法。
【請求項58】
成分は、サイズおよび電荷的な選択ろ過を介して混合溶液から分離され、電場は0V/mである請求項55に記載の方法。
【請求項59】
所望の成分を選択するために、電界強度または極性を調整することをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項60】
透過溶液から成分を沈殿させることをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項61】
混合溶液から導電性メンブレン分離する方法であって、
メンブレンフィルターを一定の電位に保持するか、またはメンブレンフィルターを通してメンブレンフィルターに一定の電流を流すこと;
メンブレンフィルターを通って混合溶液を供給すること;および、
混合溶液から透過溶液中に成分を分離すること;
を含む方法。
【請求項62】
混合溶液からろ過により導電性メンブレン分離する方法であって、
メンブレンフィルターに直交または垂直な電場を形成すること、
メンブレンを通して混合溶液を供給すること;および、
混合溶液から透過溶液中に成分を分離すること、
を含む方法。
【請求項63】
混合溶液からろ過により導電性メンブレン分離する方法であって、
メンブレンフィルターに直交または垂直な電場を印加すること;
メンブレンを通して混合溶液を供給することであって、混合溶液は1価イオン成分と多価イオン成分とを含むこと;および、
混合溶液から透過溶液中に成分を分離すること、を含み、
1価イオン成分と多価イオン成分は、それらの電荷に基づいて異なるようにろ過される方法。
【請求項64】
混合溶液からろ過により導電性メンブレン分離する方法であって、
メンブレンフィルターに直交または垂直な電場を印加すること;
メンブレンを通して混合溶液を供給することであって、混合溶液は1価イオン成分と多価イオン成分とを含むこと;
混合溶液から透過溶液中に成分を分離することであって、1価イオン成分と多価イオン成分は、それらの電荷に基づいて異なるようにろ過されること、および、
1価イオン成分を分離すること、を含む方法。
【請求項65】
混合溶液からろ過により導電性メンブレン分離する方法であって、
メンブレンフィルターに直交または垂直な電場を印加すること;
メンブレンを通して混合溶液を供給することであって、混合溶液は1価イオン成分と多価イオン成分とを含むこと;
混合溶液から透過溶液中に成分を分離することであって、1価イオン成分と多価イオン成分は、その電荷に基づいて異なるようにろ過されること、および、
多価イオン成分を分離すること、を含む方法。
【請求項66】
混合溶液からろ過により導電性メンブレン分離する方法であって、
メンブレンフィルターに直交または垂直な電場を印加すること;
メンブレンを通して混合溶液を供給することであって、混合溶液は第1の多価イオン成分および第2の多価イオン成分を含み、第1および第2の多価イオン成分は異なる電荷を含むこと;および、
混合溶液から透過溶液中に成分を分離すること、を含み、
第1の多価イオン成分と第2の多価イオン成分は、その電荷に基づいて異なるようにろ過される方法。
【請求項67】
混合溶液からろ過により導電性メンブレン分離する方法であって、
メンブレンフィルターに直交または垂直な電場を印加すること;
メンブレンを通して混合溶液を供給することであって、混合溶液は第1の多価イオン成分および第2の多価イオン成分を含み、第1および第2の多価イオン成分は異なる電荷を含むこと;および、
混合溶液から透過溶液中に成分を分離することであって、第1の多価イオン成分および第2の多価イオン成分は、それらの電荷に基づいて異なるようにろ過されること;および、
第1または第2の多価イオン成分を分離すること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年6月21日に出願された米国仮出願第63/213,085号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、導電性メンブレン分離の分野に関し、より具体的には、導電性メンブレンベースのイオン分離のための新規かつ有用なシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電池技術が現代社会に不可欠なものとなったため、電池、電池部品、および重要な電池材料のリサイクルの必要性が急速に高まっている。特に重要なのは、リチウム(Li)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、およびニッケル(Ni)である。現在の方法には、重要な電池成分(負極や正極など)を粉砕して「黒色塊」にし、強酸(H2SO4やHClなど)にさらして黒色塊を浸出させ、中和剤(炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムなどのナトリウム化合物など)を加えて貴重な物質を沈殿させる方法が一般的である。溶媒抽出と熱結晶化も、重要な物質のさらなる分離と精製を可能にする一般的なプロセス段階である。
【0004】
これらの方法は有用であるが、資本コスト、運転コスト、環境への影響に関しては最適ではない。さらに、化学沈殿技術を使用すると、残留ナトリウムや他の化学物質のために、必ず黒色塊を汚染することになり、リチウムの抽出が困難になる。従って、湿式冶金電池リサイクルの分野では、化学的沈殿、熱結晶化、および溶媒交換を最小限に抑える、低コストで環境的に持続可能な重要物質抽出のための新規かつ有用なシステムおよび方法を創出する必要性がある。本発明は、このような新規かつ有用なシステムおよび方法を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、ナノ多孔質構造からなるメンブレンフィルターと、メンブレンフィルターと接触する電気コンタクトと、メンブレン電極の上面の上にある対向電極と、を含む導電性メンブレン分離のためのシステムである。電気コンタクトを介したメンブレンフィルターと対向電極は、メンブレンフィルターと対向電極の間に電界を発生させ、メンブレンフィルターを一定の電位に保持し、またはメンブレンフィルターに一定の電流を流すように構成されている。メンブレンフィルターは、混合溶液から成分を透過溶液に分離するように構成される。
【0006】
いくつかの態様では、システムは湿式冶金分離プロセスで使用することができる。ある態様では、混合溶液は黒色塊の浸出液を含む。例えば、混合溶液の成分は、Co、Ni、Al、Mn、Fe、Li、Cu、Ag、Zn、それらのイオン、またはそれらの混合物からなる群から選択できる。混合溶液は酸を含み、pHが4.0未満であってもよい。いくつかの例では、酸はH2SO4である。システムは、最大50%の酸をリサイクルするように構成されてもよい。いくつかの態様において、Liは透過溶液中で分離された成分である。ある態様では、透過溶液に含まれない成分は、残留溶液中でシステムから出る。システムは、残留溶液を再利用するように構成されてもよい。他の態様では、残留溶液は、混合溶液の1つ以上の追加成分を分離するために他のメンブレンフィルターを通過してもよい。本開示の一態様において、メンブレンフィルターはシリコンを含む。メンブレンフィルターは、1nm~500nm、1nm~1,000nm、または500nm~1,000nmの範囲の孔径を有してもよい。
【0007】
システムは、クロスフロー構成またはデッドエンド構成のメンブレンフィルターを含むことができる。いくつかの例では、フロースルー構成が電気抽出とともに使用されることがあり、この場合、成分はメンブレン表面で拒絶されない(すなわち、すべてが流れ抜ける)が、標的成分は電気化学的な還元または酸化を介してメンブレンフィルター細孔内に選択的に固定化される。システムは、メンブレンフィルターと対向電極を収容するように構成された圧力セルをさらに含むことができる。圧力セルは、電気コンタクトを受容するように構成された開口部をさらに含むことができる。圧力セルは、3000psiまでの圧力で作動可能である。様々な態様において、システムは、サイズろ過(size filtration)、電荷ろ過(charge filtration)、電気ろ過(electro-filtration)、電気抽出(electro-extraction)、またはそれらの組み合わせのためのモジュールを含むことができる。ある態様では、システムは電気ろ過用に構成され、電場はメンブレンフィルターと対向電極の間に印加される。この態様では、メンブレンフィルターは、1nm~10nm、1nm~100nm、10nm~50nm、または50nm~100nmの孔径を有し、システムは700psiを超える圧力で作動するように構成される。他の態様では、システムは電気抽出用に構成され、メンブレンフィルターは一定の電位に保持されるか、メンブレンフィルターを通して一定の電流が流される。例えば、孔壁が混合溶液中の近接の間の成分(例えばイオン)に電流を供給し、その結果、イオンが還元されてものよい。この態様において、メンブレンフィルターは、50nm~100nm、100nm~500nm、または500nm~1,000nmの孔径を有し、システムは500psi未満の圧力で作動するように構成される。ある態様において、システムは、サイズおよび電荷選択的ろ過のために構成され得る。
【0008】
本開示のいくつかの態様において、システムはクロスフロー構成である。様々な態様において、システムは、サイズろ過、電荷ろ過、電気ろ過、電気抽出、またはそれらの組み合わせのためのモジュールを含み得る。システムは電気ろ過用に構成されてもよく、電場はメンブレンと対向電極の間に印加される。ある態様では、システムはサイズおよび電荷選択ろ過用に構成される。
【0009】
電場は、所望の成分を選択するために調節可能である。例えば、0.1Vから5Vを電気コンタクトと対向電極に印加して、メンブレンフィルターに電場、定電位、または定電流を発生させることができる。
【0010】
本開示のさらなる態様は、メンブレンフィルターの上方または内部に電界を発生させること、メンブレンフィルターを一定電位に保持すること、またはメンブレンフィルターに定電流を流すこと;メンブレンナノフィルターシステムに混合溶液を供給すること;および混合溶液から透過溶液に成分を分離すること;を含む。例えば、メンブレンフィルターを一定の電位に保持すること、またはメンブレンフィルターに一定の電流を流すことは、メンブレンフィルターを通して電気化学的に還元電流または酸化電流を駆動/流すことを含み得る。
【0011】
本方法はさらに、ナノ多孔質構造を含むメンブレンフィルター、メンブレンフィルターと接触する電気コンタクト、およびメンブレン電極の上面の上にある対向電極;を含むメンブレンナノフィルターシステムを提供することを含んでもよい。
【0012】
いくつかの態様では、混合溶液は黒色塊の浸出液を含む。分離される混合溶液の成分は、Co、Ni、Al、Mn、Fe、Li、Cu、Ag、Znのイオン、それらのイオン、またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。混合溶液は酸を含んでもよく、混合溶液は4.0未満のpHを有してもよい。例えば、酸はH2SO4である。いくつかの態様において、本方法はさらに、酸を50%までリサイクルすることを含む。ある態様において、Liは透過溶液中の成分である。
【0013】
様々な態様において、本方法は、透過溶液中に含まれない成分を含む残留溶液を除去することをさらに含んでもよい。電場は、より低い電荷を有する成分を透過溶液に、より高い電荷を有する成分を残留溶液に分離するように構成されてもよい。例えば、透過溶液は1+以下のイオン電荷を有する成分を含み、残留溶液は2+以上のイオン電荷を有する成分を含むことができる。いくつかの態様において、本方法は、残留溶液を浸出工程にリサイクルすることをさらに含んでもよい。さらなる態様において、本方法は、リサイクル混合溶液から第2の成分を分離することをさらに含んでもよい。さらなる態様において、本方法は、混合溶液の1つまたは複数の追加成分を分離するために、1つまたは複数の追加メンブレンフィルターに残留溶液を通すことをさらに含んでもよい。
【0014】
いくつかの態様において、メンブレンフィルターはシリコンを含み、1nm~500nmまたは500nm~1,000nmの範囲の孔径を有することができる。システムは、フロースルー、デッドエンド構成、および/またはクロスフロー構成であってもよい。成分は、電気ろ過によって混合溶液から分離され、電場はメンブレンフィルターの上方にあり、および/または、成分(または追加の成分)は電気抽出によって混合溶液から分離され、電気化学的な酸化/還元電流がメンブレンフィルターを通して導かれて、メンブレンフィルターが一定の電位に保持されるか、またはメンブレンフィルターを通して一定の電流が駆動される。他の態様または追加の態様では、成分は、サイズおよび電荷選択的ろ過を介して混合溶液から分離され、電場は0V/mである。
【0015】
いくつかの態様において、本方法は、所望の成分を選択するために電場を調整することをさらに含んでもよい。例えば、0.1V~5Vをメンブレンフィルターと対向電極に接続された電気コンタクトに印加して、メンブレンフィルターに電場、電位、または電流を発生させることができる。
【0016】
ある態様において、透過溶液に含まれない混合物の1つまたは複数の成分は、電気化学的な酸化または還元、化学的または物理的な親和性、吸着、または吸収によって、メンブレンフィルターの細孔内に保持されてもよい。本方法はさらに、電位の極性または電流の方向を反転させ、純粋なドロー溶液をメンブレンフィルターに通すことを含んでもよい。いくつかの態様において、純粋なドロー溶液は水または硫酸を含む。いくつかの態様において、本方法はさらに、メンブレンフィルターに保持された1つ以上の成分を、純粋なドロー溶液と1つ以上の成分を含む純粋な生成物の流れに浸出することを含む。純粋なドロー溶液は、混合溶液体積の1%~50%の体積を有することができ、1つ以上の成分の濃縮溶液を生成する。
【0017】
いくつかの態様において、本方法は、透過溶液、残留溶液、純粋な生成物の流れ、または純粋なドロー溶液から成分を沈殿させることをさらに含んでもよい。
【0018】
本開示の他の態様は、メンブレンフィルターを一定の電位に保持するか、またはメンブレンフィルターを通して一定の電流を駆動すること;メンブレンフィルターを通して混合溶液を供給すること;および混合溶液から透過溶液に成分を分離することと;を含む、混合溶液からの導電性メンブレン分離方法である。
【0019】
本開示のさらに他の態様は、メンブレンフィルターに直交または垂直な電場を発生させること;メンブレンを通して混合溶液を供給すること;および混合溶液から成分を透過溶液に分離する工程;を含む、混合溶液から導電性メンブレンを分離する方法である。
【0020】
本開示のさらなる態様は、メンブレンフィルターに直交または垂直な電場を印加すること;メンブレンを通して混合溶液を供給すること;および混合溶液から透過溶液に成分を分離すること;を含む、混合溶液からの導電性メンブレン分離方法である。
【0021】
ある態様では、溶液は一価イオン成分と多価イオン成分を含み、一価イオン成分と多価イオン成分はその電荷に基づいて異なるようにろ過される。他の態様では、溶液は第1の多価イオン成分と第2の多価イオン成分を含み、第1の多価イオン成分と第2の多価イオン成分は異なる電荷からなる。この態様では、第1の多価イオン成分と第2の多価イオン成分は、その電荷に基づいて異なるようにろ過される。
【0022】
いくつかの態様において、本方法は、一価イオン成分を単離すること、および/または多価イオン成分を単離することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】デッドエンド構成においてサイズおよび電荷選択ろ過を実施する1つの例示的なシステムの概略図である。
【
図1B】クロスフロー構成でサイズおよび電荷選択ろ過を実施する1つの例示的なシステムの概略図である。
【
図2A】デッドエンド構成で電気ろ過を実施する1つの例示的なシステムの概略図である。
【
図2B】クロスフロー構成で電気ろ過を実施する1つの例示的なシステムの概略図である。
【
図3A】フロースルー構成で電気抽出の第1ステップを実施する1つの例示的なシステムの概略図である。
【
図3B】フロースルー構成で電気抽出の第2ステップを実施する1つの例示的なシステムの概略図である。
【
図4A】圧力セル内の帯電メンブレンフィルターを有する1つの例示的なメンブレンフィルターシステムである。
【
図4B】圧力セル内に帯電メンブレンフィルターを備えたメンブレンフィルターシステムの一例である。
【
図4C】リング端子が対向電極にどのように接続するかを示す一例である。
【
図4D】対向電極とメンブレンフィルターとの間の距離を示す一例である。
【
図4E】例示的なメンブレンフィルターシステムの圧力セルの底部の断面を示す。
【
図4F】例示的なメンブレンフィルターシステムにおける例示的なバネ式電気コンタクトを示す。
【
図4G】組み立てまたは分解される例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図4H】組み立てまたは分解される例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図4I】組み立てまたは分解される例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図5A】ステンレス鋼圧力セル内の帯電メンブレンフィルターを有する例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図5B】ステンレス鋼圧力セル内の帯電メンブレンフィルターを有する例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図5C】ステンレス鋼圧力セル内の帯電メンブレンフィルターを有する例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図5D】ステンレス鋼圧力セル内の帯電メンブレンフィルターを有する例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図5E】ステンレス鋼圧力セル内の帯電メンブレンフィルターを有する例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図5F】ステンレス鋼圧力セル内の帯電メンブレンフィルターを有する例示的なメンブレンフィルターシステムの部分を示す。
【
図5G】ポリカーボネート圧力セル内の帯電メンブレンフィルターを備えた例示的なメンブレンフィルターシステムを示す。
【
図5H】
図5A~5Fの例示的メンブレンフィルターシステムのテストを示す。
【
図6A】例示的なメンブレンモジュールの分解図である。
【
図6B】3つのメンブレンフィルタープレートを備えた例示的なメンブレンモジュールである。
【
図6C】マニホールドに吸い上げられ、複数のメンブレンフィルターに渡って並列に分配され、次いで、モジュールから排出される前に他のマニホールドに収集される供給溶液を示す。
【
図6D】マニホールドに吸い上げられ、複数のメンブレンフィルターに渡って並列に分配され、次いで、モジュールから排出される前に他のマニホールドに収集される供給溶液を示す。
【
図6E】メンブレンフィルターを通過して流路に入り、共通のドレインに回収される円周溝に向かって外側に移動する透過溶液を示す。
【
図6F】メンブレンフィルターを通過して流路に入り、共通のドレインに回収される円周溝に向かって外側に移動する透過溶液を示す。
【
図7A】例示的なメンブレンフィルタープレートの上面を示す。
【
図7B】例示的なメンブレンフィルタープレートの下側を示す。
【
図7C】例示的なメンブレンフィルタープレートの側面図である。
【
図9A】電気ろ過のための代替的な例示的方法のフローチャート表現である。
【
図9B】電気抽出のための代替的な例示的方法のフローチャート表現である。
【
図10】他の例示的方法のプロセスフローチャートである。
【
図11】付加的な例示的方法のプロセスフローチャートである。
【
図12】メンブレンが帯電(1V)している場合と帯電していない(0V)場合の、例示的なメンブレンフィルターを通るイオン種の輸送の違いを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に関する以下の説明は、本発明をこれらの実施形態に限定することを意図するものではなく、むしろ当業者が本発明を製造および使用することを可能にすることを意図するものである。
【0025】
概要
ナノろ過方法のためのシステムおよび方法は、ナノ多孔質構造を含むメンブレンフィルター;およびメンブレンフィルターに電位を印加する、またはメンブレンフィルターに電流を駆動するように構成された1つまたは複数の電極を含む。例えば、システムは、メンブレンフィルターと対向電極とに接触する電気コンタクトを含むことができ、システムは、メンブレンフィルターと対向電極との間に電界を発生させ、メンブレンフィルターを一定の電位に保持し、またはメンブレンフィルターに一定の電流を流すように構成することができる。一例として、システムは、混合溶液のpHが5.0以下の場合に、混合溶液から成分を分離するように操作可能であってもよい。例えば、システムは、pHが2~5、5未満、4未満、3未満、2未満、または1未満で動作可能であってもよい。いくつかの例では、メンブレンフィルターは、メンブレンフィルターの多孔質構造内およびその周囲に機能性コーティングを含む、コーティングをさらに含んでもよい。一実施形態では、システムおよび方法は、メンブレンフィルターを通して混合溶液を供給し、それによって混合溶液から所望の成分(すなわち、化合物/化合物/イオン)を分離することをさらに含む。混合溶液から分離される成分は、Co、Ni、Al、Mn、Fe、Li、Cu、Ag、Zn、それらのイオン、またはそれらの混合物から選択され得る。イオンの非限定的な例としては、Co2+、Co3+、Ni2+、Al3+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Li+、Cu2+、Ag+、Zn2+、およびそれらの組み合わせや変形例が挙げられる。このシステムおよび方法は、サイズ、電荷、および/または化合物とメンブレンの相互作用を利用して、低pHでナノスケールの化合物を分離できるメンブレンフィルターシステムを独自に構築し、採用するように機能する。システムおよび方法は、分離の複数の変形を可能にすることができ、分離の第1の方法では、混合物は、メンブレンフィルターの小さな孔径(例えば、100nm未満)で、高圧下(例えば、供給混合溶液の液圧加圧を介して)でメンブレンシステムを通して駆動することによって分離される。このシステムおよび方法は、濃度勾配(または他のタイプの勾配)によって駆動される、メンブレンを通る、またはメンブレンを横切る拡散によって成分が分離される、異なる形態の分離を可能にすることもできる。一実施形態では、システムおよび方法は、混合溶液から所望の化合物/化合物/イオンを分離するために、帯電メンブレンの高圧および小さな孔径を使用して、電気ろ過を使用して分離を行うことができる。他の実施形態では、システムおよび方法は、混合溶液から所望の化合物/化合物/イオンを分離するために、帯電メンブレンにおける低圧および大きな孔径を使用して、電気めっきを使用して分離を行うことができる。
【0026】
本システムおよび方法は、ナノスケール(またはそれ以上)の分離および/または抽出のあらゆる分野に一般的に適用することができる。
【0027】
本システムおよび方法は、混合物からの小さな荷電イオン、元素、および化合物の抽出に適用可能であり、本システムおよび方法は、より低いpH(すなわち、pH5.0未満)での分子(すなわち、ナノメートルスケール)抽出に特に有用である。本システムおよび方法はさらに、pH2.0未満または1.0未満でのナノスケール抽出を可能にする。本システムおよび方法は、原子スケール(すなわち、オングストロームのオーダー)の抽出(例えば、元素またはイオン抽出)にも適用可能であり、ここで、本システムおよび方法は、低pH(すなわち、pH5.0未満)または超低pH(すなわち、pH2.0未満または1.0未満)での原子抽出に特に有用である。様々な例において、システムは、0~5、0~4、0~3、0~1、0.5~5、0.5~4、0.5~3、0.5~2、0.5~1、0.1~5、0.1~4、0.5~3、0.1~2、0.1~1、1~5、1~4、1~3、1~2、2~4、または2~5の範囲のpHで操作可能である。いくつかの例では、システムは2~5、5未満、4未満、3未満、2未満、または1未満のpHで操作可能であってもよい。この化合物抽出は、化学的沈殿、化学的pH中和技術、液-液抽出(溶媒交換)、熱蒸留、または熱結晶化を必要とすることなく、小さな化合物および元素をろ過および/または抽出することができる湿式冶金の分野で特に有用である。
【0028】
本システムおよび方法は、(例えば、電池リサイクルに適用されるような)電池浸出液からの物質抽出に特に適用される。すなわち、本システムおよび方法は、電池または電池浸出液(例えば、黒色塊の浸出液)からの典型的な電池化合物(例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、酸化マンガン)の抽出に適用することができる。いくつかの例では、主要な黒色塊成分として、Al、Co、Cu、Fe、Li、Ni、Ag、Zn、Mn、グラファイト、F、P、およびこれらのイオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本システムおよび方法は、多くの潜在的な利点を提供し得る。本システムおよび方法は、常にそのような利点を提供することに限定されるものではなく、本システムおよび方法がどのように使用され得るかについての例示的な表現としてのみ提示されている。利点のリストは網羅的であることを意図しておらず、他の利点が追加的または代替的に存在する可能性がある。
【0030】
本システムおよび方法のいくつかの利点には、さらなる困難な処理工程なしに混合溶液の複数の成分を回収できること、および/またはシステムの1つ以上の構成要素を再利用できることによる、システムの複雑さの低減、および/または処理段数/フットプリントの低減が含まれる。これは、資本コストおよび運転コストの削減、並びに化学物質および熱の使用量の削減につながる可能性がある。
【0031】
本システムおよび方法の潜在的な利点の1つは、本システムおよび方法が酸性条件下でのメンブレン分離を可能にすることである。
【0032】
さらに、本システムおよび方法は、複数の形態のメンブレン分離に使用できるという潜在的な利点を提供する。例えば、いくつかの実施態様において、システムおよび方法は、分子/原子/イオンサイズ、電荷、および/またはメンブレン相互作用によって分離するためのメンブレン分離の利用を可能にする。
【0033】
バッテリーリサイクルの実施の一部として、本システムおよび方法は、非常に高い選択性および/または収率で有価金属の分離および抽出を可能にすることができる。これは、電池混合物を汚染し、高い資本コストおよび運用コストを必要とし、それによって抽出を制限することになる現在の化学的沈殿/溶媒抽出/熱結晶化技術に対して、潜在的に大きな利点を提供する。
【0034】
電池リサイクルの実施の一部として、本システムおよび方法は、リチウム抽出のための手段の潜在的な利点をさらに提供できる。現在の電池リサイクルの手段を使用すると、電池混合物は、一般的に、資源と時間の合理的なコストで適用されるほとんどの抽出技術に対して汚染されすぎる。特に、リチウムが唯一の高価値材料であるリチウム-鉄-リン酸塩のような電池化学物質では、リサイクルは経済性の観点から特に困難である。このような場合、本システムおよび方法は特に有益である。
【0035】
システム
低pHが可能なナノろ過のためのシステムは、1ナノメートルのオーダーから1,000ナノメートルのオーダーの範囲の孔径を有する多孔質構造を含むメンブレンフィルターを含む。一実施形態では、システムは、メンブレンフィルターに電流を流す、またはフィルターを一定の電位に保持するように動作可能な少なくとも1つの電極を含む。例えば、システムは、メンブレンフィルターと対向電極との間に電界を発生させ、メンブレンフィルターを一定の電位に保持し、またはメンブレンフィルターに一定の電流を流すように構成することができる。他の実施形態では、メンブレンフィルターは、メンブレンフィルターの多孔質構造内およびその周囲に機能性コーティングを含む、コーティングを含んでもよい。本システムは、低pH(すなわち、pH5.0以下)、または超低pH(すなわち、pH2.0以下)でのナノメートルまたは原子スケール化合物のろ過に特に適したメンブレンとして機能する。様々な例において、システムは、0~5、0~4、0~3、0~1、0.5~5、0.5~4、0.5~3、0.5~2、0.5~1、0.1~5、0.1~4、0.5~3、0.1~2、0.1~1、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、5未満、4未満、3未満、2未満、または1未満の範囲で操作可能である。他の例では、システムは6~8の範囲の中性pHで操作してもよいし、8~14の範囲の塩基性pHで操作してもよい。少なくとも1つの例では、システムは硫酸を含む混合溶液と共に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、システムは、硫酸の少なくとも一部をリサイクルするように操作可能であってもよい。
図1A~3Bに示すように、システムおよび/またはメンブレンフィルターは、複数の変形例を有してよく、サイズ、電荷、および/またはメンブレン/化合物相互作用(例えば、メンブレン吸着、電気化学的還元および/または酸化、または基質結合)を介して分離するように実施されてよい。
図4A~6Cは、例示的なメンブレンナノフィルターシステムを示す。
【0036】
本システムは、電池浸出液からの電池金属および化学物質のろ過に特に有用である(例えば、電池リサイクルのための方法の一部として)。例えば、本システムは、電池溶液(例えば、黒色塊浸出液)からリチウム(Li)を抽出するために実施することができる。所望に応じて、システムは、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)などの他の電池金属または化学物質のろ過のために実施することができる。加えて、または代替的に、本システムは、現在使用されている、または将来の電池で使用される他の化学物質または鉱物のろ過のために実施することができる。
【0037】
本システムはメンブレンフィルターを含むことができる。メンブレンフィルターは一次ろ過体として機能し、メンブレンフィルターは多孔質体を含む。すなわち、メンブレンフィルターは多孔質構造を含み、流体がメンブレンフィルターを通って流れることができ、実施に依存して、流体内の特定の化合物(または元素/イオン)が異なる速度で選択的にメンブレンフィルターを通過する。
【0038】
メンブレンフィルターは、多孔質体として、任意の所望の気孔率で実施することができる。一般的なろ過目的では、メンブレンフィルターは、1%~5%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、または40%~50%の間の所望の気孔率を有するように実施することができる。あるいは、メンブレンフィルターは、提案された範囲未満またはそれ以上の気孔率を有してもよい。例えば、工業的な大流量、高スループットの実施では、メンブレンフィルターは、高い気孔率(例えば、70%の気孔率)を有する厚いカラム(例えば、20μm~1cmの厚さ)から構成されてもよい。
【0039】
メンブレンフィルター内およびメンブレンフィルターを貫通する孔は、実施態様によって異なる場合がある。別段の記載がない限り、本明細書では、説明を簡単にするために、メンブレンフィルター内の孔は比較的円筒形として記載され、孔径は孔のおおよその直径をいう。実際には、メンブレンフィルター内の細孔はどのような形状であってもよく、細孔サイズは、合理的な速度で細孔を通過し得る、ある一般的な非荷電球状分子または球状の非荷電粒子のサイズをいう。いくつかの変形例では、特に大きな分子(例えば、ポリマー)のろ過では、孔の形状は、複雑な形状の分子の形状に一致するように制御することができる。このような変形例では、孔径の議論は無視してもよく、代わりに分子の相対的な透過性を議論する。
【0040】
本メンブレンフィルターは、一般におおむねナノメートル長またはそれ以上の細孔を有することができる。いくつかの例では、細孔は、混合溶液の少なくとも1つの成分がメンブレンフィルターの細孔を上側から下側に通過するための経路が存在するように、メンブレンフィルターを通って延びてよい。様々な実施形態において、メンブレンフィルターの孔径は、およそ1nm~10nm、1nm~100nm、10nm~50nm、10nm~100nm、50nm~100nm、または100nm~500nm、または500nm~1000nmの間であってよい。いくつかの例では、メンブレンフィルターの孔径は、1nm~10nm、10nm~20nm、20nm~30nm、30nm~40nm、40nm~50nm、50nm~60nm、60nm~70nm、70nm~80nm、80nm~90nm、または90nm~100nmである。いくつかの実施形態では、孔径は、100nm未満、50nm未満、または10nm未満であれば小さいと考えられる。他の例では、孔径は、およそ100nm~150nm、150nm~200nm、200nm~250nm、250nm~300nm、300nm~350nm、350nm~400nm、400nm~450nm、450nm~500nm、500nm~550nm、550nm~600nm、600nm~650nm、650nm~700nm、700nm~750nm、750nm~800nm、800nm~850nm、850nm~900nm、900nm~950nm、または950nm~1000nmの間であってもよい。いくつかの実施形態では、孔径が100nmより大きい場合、孔径が大きいとみなすことができる。あるいは、メンブレンフィルターの孔径は大きくても小さくてもよい(例えば、1Å、1μm、10μmなど)。実施に依存して、メンブレンフィルター孔径の分散および分布が制御されてもよい。
【0041】
多くのろ過実施において一般的であるように、孔径は比較的類似していてもよい。すなわち、孔径は分散が小さい場合がある。例えば、孔径の分散は孔径の約1%であってもよい。一般に、孔径のばらつきは任意の範囲であってもよい。例えば、ある実施態様では、孔径の分散は孔径の約1%~5%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約5%~10%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約10%~20%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約20%~30%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約30%~40%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約40%~50%である;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約50%~約60%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約60%~約70%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約70%~約80%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約80%~約90%であり;他の実施態様では、孔径の分散は孔径の約90%~約100%などである。
【0042】
メンブレンフィルターの厚さは様々であってよく、厚さは特定のろ過実施態様を満たすように選択され得る。典型的な実施態様では、メンブレンフィルターは一般に、10μm~50μm、50μm~100μm、100μm~150μm、150μm~200μm、200μm~250μm、250μm~300μm、300μm~350μm、350μm~400μm、400μm~450μm、450μm~500μm、500μm~1000μm、または1000μm~10000μmの範囲の厚さを有することができる。少なくとも1つの例では、メンブレンフィルターは280μmの厚さを有することができる。あるいは、メンブレンフィルターの厚さはそれ以下であってもよい。例えば、一実施態様では、メンブレンフィルターの厚さは約1μmである。一般に、メンブレンフィルターの厚さは、機械的な制約(例えば、メンブレンがろ過中に破損したりねじれたりしないような十分な厚さであること)と、メンブレンの孔径(すなわち、メンブレンの厚さは、所望の孔径、または孔径範囲を組み込むのに十分な大きさであること)および気孔率によってのみ制限される。メンブレンが薄い場合、より大きな孔径を持つ機械的に安定した厚い層で支えることができる。この実施形態では、薄いメンブレンと厚い支持層はモノリシック(連続した材料の一部)であってもよい。いくつかの実施形態では、メンブレンフィルターは、1インチ~1.5インチ、1.5インチ~2インチ、2インチ~2.5インチ、2.5インチ~3インチ、3インチ~3.5インチ、または3.5インチ~4インチの直径を有する平坦なディスクでもよい。少なくとも1つの例では、メンブレンフィルターは、2インチの直径を有してもよい。少なくとも1つの例では、メンブレンフィルターは0.4メートルの直径を有してよい。
【0043】
メンブレンフィルターは、無機元素または化合物(または化合物)で構成されてもよい。)いくつかの実施形態では、メンブレンフィルターは導電性材料で構成される。一変形例では、無機化合物メンブレンフィルターは、主にシリコンで構成された本体を含む。一例では、シリコン本体は、シリコンのモノリシックピース、または代替的にナノポーラスシリコンからなる。例えば、メンブレンフィルターは、1nm~500nm、または1nm~1,000nmの範囲の孔を有するように改質されたシリコンウエハでもよい。あるいは、シリコン本体は、複数の部分(例えば、シリコンの層)を含んでもよい。
【0044】
他の変形例では、メンブレンフィルターは有機化合物(または化合物)で構成される。一変形例では、有機化合物メンブレンフィルターは、ポリマーからなる本体を含む。ポリマー材料の例としては、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、PTFE、および/またはポリイミドを挙げることができる。いくつかの変形例では、メンブレンフィルターは、同じポリマーの複数の層、または異なるポリマーの複数の層の複合体を含んでもよい。この変形例では、導電性材料でメンブレンを官能基化することにより、高分子メンブレンを導電性にすることができる。
【0045】
意図されたシステムの実施に従って、メンブレンフィルターは1つ以上のタイプのろ過を可能にすることができる。実施に依存して、メンブレンフィルターは、サイズ、電荷、電気化学的還元電位および酸化電位に基づいて、および/またはメンブレン/化合物相互作用(複数可)を介してろ過するような構造であってもよい。いくつかの例では、本システムは、サイズおよび電荷選択的ろ過、電気ろ過、または電気抽出のために構成され得る。また、疎水性、キラリティー、溶解度、酸化還元電位、配位数、および/または他の分子/化合物の特性に基づいて、メンブレンフィルターがろ過できるようにしてもよい。
【0046】
いくつかの変形例では、メンブレンフィルターは、サイズろ過を可能にする構造を含んでもよい。このような変形例では、メンブレンフィルターは、1種類以上の化合物/分子/原子/イオンを透過させ、他のすべての種を保持するように「調整」された孔径を含んでもよい。すなわち、メンブレンフィルターは、化合物/分子/原子/イオンのろ過および/または分離を可能にするために、それらの実体の有効サイズに依存する所望の気孔率および所望の孔径で構成される。例えば、黒色塊浸出液の場合、Liはメンブレンフィルターを通過し、Co、Ni、Mnは保持される。このサイズ排除は、原子質量/サイズのみに基づくのではなく、追加の配位効果(例えば、水和およびイオン電荷)にも基づく場合があり、その結果、ろ過された化合物の有効サイズが異なる場合がある。
【0047】
いくつかの変形例では、メンブレンフィルターは、電荷によるろ過を可能にする構造を含んでいてもよい。このような変形例では、メンブレンフィルターは、電荷を運ぶことができる、または導電性である材料(例えば、シリコン)で構成することができる。すなわち、メンブレンフィルターは、有効電荷に依存する化合物/分子/イオンのろ過および/または分離を可能にするために、所望の導電率、または導電率の範囲で構成される。いくつかの例では、メンブレンフィルターは、100Ω・cm~0.001Ω・cm、100Ω・cm~50Ω・cm、50Ω・cm~10Ω・cm、10Ω・cm~1Ω・cm、1Ω・cm~0.1Ω・cm、0.1Ω・cm~0.01Ω・cm、または0.01Ω・cm~0.001Ω・cmの範囲の抵抗率を有することができる。電荷分離のために、システムは、電流源またはソースをさらに含んでもよく、電流シンクまたはシンクを含んでもよく;ここにおいて所望の電流または電流が、メンブレンフィルターを通って、またはメンブレンフィルターの上に形成されて駆動されるか、または一定の電位がメンブレンフィルターに印加される。
【0048】
メンブレンフィルターは、異なる方向の流れで実施することができる。メンブレンを直接通過する流れに加えて、メンブレンフィルターは、メンブレン表面に平行な流れ、および/またはメンブレンに対して斜めの方向の流れでも使用することができる。システムは、フロースルー構成、デッドエンド構成、またはクロスフロー構成にすることができる。フロースルー構成またはデッドエンド構成では、混合溶液はメンブレンフィルターの上側(例えばメンブレンフィルターに対して垂直)を通って下方に供給され、透過溶液はメンブレンフィルターの下側に集められる。
図1A、2Aおよび3Aは、デッドエンド/フロースルー構成の例を示す。クロスフロー構成では、混合溶液はメンブレンフィルターの上側を横切って(例えばメンブレンフィルターと平行に)供給され、透過溶液はメンブレンフィルターの下に集められ、残留溶液はメンブレンフィルターの上に残る。
図1Bおよび
図2Bは、例示的なクロスフロー構成を示す。いくつかの実施形態では、分離は連続モードで操作され、および/または混合溶液の1つ以上の成分の再利用を可能にすることができる。
【0049】
システムは、混合溶液から少なくとも1つの成分を分離するために、サイズろ過、電気ろ過、電気抽出、またはそれらの組み合わせを使用することができる。
図2Aおよび
図2Bに見られるような電気ろ過のようないくつかの実施形態では、電気コンタクトがメンブレンフィルターと電気的に接触するように配置されてもよく、対向電極がメンブレンフィルターの上面の上方に配置されてもよい。一例として、帯電メンブレンフィルターを陰極とし、対向電極を陽極とすることができる。帯電メンブレンフィルターと対向電極の間に電圧を印加すると、メンブレンフィルターの上面の上方に電場が発生し、電場によって電荷の高い成分(化合物/分子/原子/イオン)が細孔を通過するのを防ぐ一方、電荷の低い成分(化合物/分子/原子/イオン)は細孔を通過することができる。言い換えれば、電場は、より低い電荷を持つ成分を透過溶液に、より高い電荷を持つ成分を残留溶液に分離するように構成される。他の例では、電場はメンブレンを通してイオンを「引っ張る」ように作用し、高い電荷の方が透過溶液に引っ張られやすい。いくつかの実施形態では、透過溶液は1+以下のイオン電荷を持つ成分からなり、残留溶液は2+以上のイオン電荷を持つ成分からなる。例えば、黒色塊浸出液の場合、電場によってLiはメンブレンフィルターを通過し、Co、Ni、Mnなどはメンブレンフィルターの上方に保持される。いくつかの実施形態では、混合溶液中の1つの成分の分離および他の成分の保持は、追加の配位効果(例えば、サイズ、極性、水和)にも基づく場合があり、その結果、ろ過された化合物の有効透過率が異なる場合がある。
【0050】
図2Aを参照すると、いくつかの実施形態では、システムは、デッドエンド構成で電気ろ過のために構成され得る。
図2Aは、供給溶液(すなわち混合溶液)が上側からメンブレンフィルターに入り、帯電メンブレンフィルターの上面と対向電極との間の電界を通過する様子を示している。M
xは水溶液中に溶解したイオンを表し、イオン電荷はxである。電荷の低い成分(一般にM
+と表記)は透過溶液としてメンブレンフィルターの孔を通過し、電荷の高い成分(一般にM
2+およびM
3+と表記)はメンブレンフィルター上部の電場に保持される。いくつかの例では、電荷を帯びない成分は細孔を通過して透過溶液になるか、細孔径のサイズ選択によりメンブレンフィルターの上方に保持される。いくつかの実施形態では、電場の強さは、異なる荷電成分を選択するように調整することができる。
【0051】
図2Bに戻ると、いくつかの実施形態では、システムは、クロスフロー構成で電気ろ過のために構成されてもよい。
図2Bは、供給溶液(すなわち混合溶液)がメンブレンフィルターの上面を横切って流れ、帯電メンブレンフィルターの上面と対向電極との間の電界を通過する様子を示している。電荷の低い成分(一般にM
+と表記)は透過溶液としてメンブレンフィルターの孔を通過し、電荷の高い成分(一般にM
2+およびM
3+と表記)はメンブレンフィルター上部の電界に保持され、残留溶液として排出される。いくつかの例では、荷電していない成分は孔を通過して透過溶液に入るか、孔径のサイズ選択によりメンブレンフィルターの上方に保持される。いくつかの実施形態において、電場の強さは、異なる荷電成分を選択するように調整され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、メンブレンフィルターは、メンブレンフィルターの表面での電場による電気ろ過に使用される場合、小さな孔を有していてもよい。例えば、メンブレンフィルターは、電気ろ過で使用される場合、1nm~10nm、10nm~20nm、20nm~30nm、30nm~40nm、40nm~50nm、50nm~60nm、60nm~70nm、70nm~80nm、80nm~90nm、または90nm~100nmの孔径を有することができる。
【0053】
図3Aおよび
図3Bに見られるような電気抽出(例えば電気めっき)のような他の実施形態では、電気コンタクトをメンブレンフィルター上に配置し、対向電極をメンブレンフィルターの上方に配置して、メンブレンフィルターを一定の電位に保持するか、またはメンブレンフィルター内に一定の電流を流して、メンブレンフィルター内の細孔壁が帯電して特定の成分(化合物/分子/原子/イオン)を引き寄せて電気化学的に還元または酸化し、細孔壁に固定する一方、他の成分を通過させるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、電気抽出のために、メンブレンフィルターは一定の電位に保持されるか、またはメンブレンフィルターを通して一定の電流が駆動される。いくつかの例では、電位および/または電流は変動してもよい。従って、本明細書で使用する場合、「一定の」電位または「一定の」電流は、設定されたパラメータの閾値(例えば、所望の一定の電位または一定の電流の±10%)内になるように制御されてもよい。電気抽出は、定流量システムまたはバッチ圧力セルで使用することができる。
【0054】
特定の成分は、メンブレンフィルターの孔壁表面で、またはメンブレン材料内に吸収されて、メンブレンフィルターの孔内に固定することができる。その後、最初の供給溶液(混合溶液)を純粋な溶液(例えば、水または硫酸)で置換し、その中に目的の特定成分を放出させることができる。この例では、メンブレンフィルターに保持された成分の放出を助けるために、電場の極性を逆にしてもよい。この例では、メンブレンを通過した純粋溶液の総量は、成分を抽出した混合溶液の体積よりはるかに少なく(1~50%)、目的成分のより濃縮された溶液が得られる。他の例では、混合溶液がメンブレンフィルターを横切って流れ、複数の成分がメンブレンフィルターを自由に通過するが、混合溶液の1つ(または複数の特定成分)のみがメンブレンフィルターに保持される。その後、純粋な溶液を通過させ(オプションで極性を反転させた電場をかける)、保持されている特定成分をその中に放出させる。メンブレンフィルター内に保持される成分および/またはメンブレンフィルターを通過する成分は、Li、Co、Ni、Al、Mn、Fe、Cu、Al、Ag、Znなどから選択することができる。一例では、
図3Aに見られるように、供給溶液(例えば、電池浸出液)は、Co、Ni、Al、Mn、Fe、Cu、Al、Ag、Znなどの一部の成分(化合物/分子/原子/イオン)がメンブレンフィルターの細孔内に保持される一方で、Liなどの他の成分が細孔を通過するメンブレンフィルターを通過してもよい。いくつかの実施形態では、
図3Bに見られるように、電界の極性を反転させ、純粋なドロー溶液(例えば水)をシステムに通して、メンブレンフィルターの細孔内に捕捉された成分(化合物/分子/原子/イオン)を抽出し、純粋な生成物ストリームとしてシステムを出ることができる。一部の例では、100%または100%に近い除去を達成するために酸洗浄が必要とされる場合がある。
【0055】
いくつかの実施形態では、メンブレンフィルター内部の電場による電気抽出に使用する場合、メンブレンフィルターはより大きな孔を有することがある。例えば、メンブレンフィルターは、電気抽出に使用される場合、100nm~150nm、150nm~200nm、200nm~300nm、300nm~400nm、400nm~500nm、または500nm~1,000nmの孔サイズを有することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、システムは、システムで使用される酸および他の材料のリサイクルのために構成されてもよい。黒色塊に粉砕された電池は、通常、硫酸や塩酸などの酸に溶解して浸出液を形成する。一般的に、FeやAlなどの浸出液中の不要な低価値物質は沈殿し、熱や中和薬品(水酸化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム)の添加も必要となるため、硫酸を回収することができなかった。本発明のシステムとプロセスでは、熱、沈殿、その他の化学薬品の添加を必要としないため、硫酸の少なくとも一部を回収し、浸出システム/プロセスでさらに使用するために再利用することができる。例えば、硫酸の最大10%、最大20%、最大30%、最大40%、または最大50%を回収し、システム/プロセスに再利用することができる。従って、このシステムは硫酸の連続的な再利用を可能にする。
【0057】
追加の実施形態では、プロセスを複数回実行し、異なる成分を選択するように電場を調整することができる。例えば、残留溶液および/または透過溶液を混合溶液として再利用するか、または第2の成分を分離できるように混合溶液中に再利用することができる。他の実施形態では、複数の電気ろ過および/または電気抽出モジュールを直列に組み合わせて、一連の成分を抽出してもよい。
【0058】
図4A~4Iは、電気ろ過または電気抽出に使用され得るシステムの一実施形態を示す。システム100は、メンブレンフィルター104の帯電を可能にし、メンブレンフィルター104の表面に電場101を導入するように動作可能な圧力セル102を含むことができる。実施形態において、圧力セル102は、メンブレンフィルター104、対向電極106、および電気コンタクト134を含むことができる。様々な実施形態において、システムは、多孔性支持片108、入口圧力ポート110、Oリング112、ハウジング114、絶縁ワイヤ(すなわち対向電極リード)116、プラスチックシム118、シム120、クランプ122、エンドキャップ124、スパウト126、プラスチックロッド128、センタリングスペーサ130、および/またはクイックディスコネクト端子132をさらに含んでもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、対向電極106は、すべての化合物/イオンを通過させるために、大きな気孔率を有する導電性メッシュで構成することができる。少なくとも一例では、対向電極106は白金メッシュである。
図4B~4Dはさらに、対向電極106が圧力セル102のハウジング114の長さに延びるロッド128によって支持されてもよいことを示している。いくつかの実施形態において、ロッド128は、少なくとも1つのセンタリングスペーサ130によって支持されてもよい。いくつかの例では、ロッド128はプラスチック材料を含み、センタリングスペーサ130はプラスチック材料またはPTFEを含む。2つのセンタリングスペーサ130は圧力セル102に圧入されてもよい。
図4Gは、ロッド128、対向電極106、絶縁ワイヤ116、および関連要素が、洗浄、修正、または交換のために必要な場合に、圧力セルの底部を通してどのように取り外されるかを示す。
図4Hは、対向電極106が圧力セル102の底部を通して再び取り付けられ、メンブレンフィルター104と多孔性支持片108が取り付けられ、クランプ122が圧力セル102の底部にクランプされる様子を示す。
図4Iは、絶縁ワイヤ116がクイックコネクト/ディスコネクト端子132を使用して蓋パススルー146にどのように接続されるかを示す。
【0060】
絶縁ワイヤ116は、対向電極106に接続された電気リード線であってもよい。
図4Bに見られるように、絶縁ワイヤ116は、クイックディスコネクト端子132を有してもよい。一例では、1/4”クイックディスコネクト端子132であってもよい。絶縁ワイヤ116は、PTFE絶縁ワイヤのようなエポキシワイヤであってもよい。いくつかの例では、
図4Cに見られるように、絶縁ワイヤ116は、金メッキリング端子138を介して対向電極106に接続することができる。リング端子138は、1つ以上のワッシャ140と取り付けネジ142を用いて所定の位置に保持されてもよい。
図4Dを参照すると、対向電極106とメンブレンフィルター104との間の距離144は、取り付けネジ142の下に追加されるワッシャ140の数によって制御されてもよい。対向電極106とメンブレンフィルター104との間の距離144は、0.1mm~10mmの範囲でもよい。いくつかの非限定的な例では、距離144は、0.1mm~0.5mm、0.5mm~1mm、0.5mm~1.5mm、1.25mm、2.5mm、3.75mm、または5mmでもよい。いくつかの実施形態では、ワッシャ140はPTFEワッシャであってもよく、取り付けねじ142はPEEK取り付けねじであってもよい。リング端子138、ワッシャ140、およびねじ142には、この技術分野で知られている他の材料が考えられる。いくつかの例では、ワッシャ140およびねじ142は、非導電性材料で作られてもよい。
【0061】
一実施形態では、電気コンタクト134は、ばね負荷電気コンタクトである。例えば、電気コンタクト134はポゴピンであってもよい。
図4Fに見られるように、電気コンタクト134のための配線/リード138は、絶縁プラスチックチューブ内に配置され、スウェージロック継手を通過する。ハウジング114は、電気コンタクト134を受け入れるように動作可能な開口部136をさらに含むことができる。電気コンタクト134は、メンブレンフィルター104の上側でメンブレンフィルター104に接触することができる。
図5A~5Fは、ハウジング114の側面の開口部136を通して圧力セル102に挿入された電気コンタクト134を有する例示的なシステムを示す。
【0062】
実施形態では、圧力セル102は、例えば
図5A~5Fに見られるようなステンレス鋼製である。いくつかの実施形態では、圧力セル102は、ポリカーボネート、テフロン、PFA、または他の化学的に耐性のある材料で作られる。
図5Gは、例示的なポリカーボネート圧力セル102を示す。圧力セルは、入口圧力ポート110、リリーフバルブ111(60psi)、対向電極リード116、対向電極106、メンブレンフィルター104、および多孔性支持片108を含む。
【0063】
様々な実施例において、圧力セルは、0psi~50psi、50psi~100psi、100psi~200psi、200psi~300psi、300psi~400psi、400psi~500psi、500psi~1000psi、1000psi~1500psi、1500psi~2000psi、2000psi~2500psi、または2500psi~3000psiの範囲の圧力下で動作することができる。システムが電化か非電化であるかにかかわらず、システムは3000psiまでの圧力で作動可能である。いくつかの例では、低圧状態は500psi未満の圧力を指してもよい。他の例では、高圧状態は500psi以上の圧力を指してもよい。ステンレス鋼圧力セルは低圧および高圧の条件の両方で作動させることができ、ポリカーボネートまたはテフロン圧力セルは低圧条件で作動させることができる。一例として、ステンレス鋼圧力セルは、低pH溶液(pH<2)を用いて高圧で作動できるように、耐薬品性ポリマーで内部コーティングされている場合がある。一例として、ステンレス鋼圧力セルは、3000psiまでの圧力に耐えることができる。一実施形態では、孔径が小さい(例えば1nm~100nm)システムは高圧で使用され、孔径が大きい(例えば100nm~1000nm)システムは低圧で使用される。少なくとも1つの例では、孔径10nmのメンブレンフィルターを有するシステムは、700psiを超える圧力で動作する可能性がある。
【0064】
様々な実施形態において、システムは、所望の圧力でシステムを通して混合溶液、透過溶液、および/または逆浸透液を圧送するように動作可能なポンプをさらに含み得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、圧力セルのハウジングは、高分子または他の電気絶縁性コーティングを有することができる。これは、圧力セル全体にわたる電流の伝導を防止し、電流がメンブレンフィルターまたはメンブレンフィルターと対向電極との間に閉じ込められることを可能にする。
【0066】
メンブレンへの電流の印加は、メンブレンを通して特定のイオンを引き込むように作用するのではなく、メンブレンのイオン分離選択性を高めるように作用し、標的物質の分離においてより高い特異性を可能にする。この実施形態では、メンブレンを介した輸送は、濃度勾配または圧力駆動流のいずれかによって行われる。電荷分離の一部として、メンブレンフィルターは、溶液内の複数の化合物/元素の分離を可能にすることができ、異なる電荷の大きさの分子/イオンが、サンプル溶液全体、またはサンプル溶液の一部がメンブレンフィルターを通過する際に、溶液内で位置的に分離されうる。
【0067】
いくつかの変形例では、メンブレンフィルターは、溶液中の分子/化合物/イオンとメンブレンとの相互作用によるろ過を可能にする構造を含んでもよい。このような変形例では、メンブレンフィルターは、特定の分子/イオン/原子、分子の種類との相互作用を可能にする材料で構成される場合がある。いくつかの変形例では、これは、基質がメンブレンに結合して、メンブレンを横切る通過を可能にする/無効にする結合部位を含んでいてもよい。
【0068】
さらに、または代替的に、メンブレンフィルターは、特定のタイプの分子/イオンの通過を許容する一方で、他のタイプの分子/イオンの通過を阻止する半透性メンブレンから構成されてもよい。例えば、ある実施態様では、メンブレンフィルターは、極性分子の通過を許容し、非極性分子の通過を阻止する半透性メンブレンから構成されてもよい。他の変形例では、メンブレンフィルターは、特定の分子または分子の種類とのユニークな相互作用を可能にすることができる。例えば、シリコン系のメンブレンフィルターは、リチウムイオンとのユニークな相互作用を可能にし、リチウムイオンの通過を可能にする一方で、他のイオンや他の分子のメンブレンフィルター通過を阻止することができる。この例では、シリコンメンブレンフィルターの特性を利用して、メンブレンフィルターによるLiの収着を可能にし、その後脱着してLiの放出を可能にすることができる。この例では、導電性シリコンメンブレンに印加される電流を介して、Li、Ni、Co、Al、Fe、Cu、Mn、または他の成分の選択的な酸化または還元を可能にする、または改善するコーティングを、メンブレンの細孔内およびメンブレン表面に施してもよい。
【0069】
いくつかの変形例では、システムは複数のメンブレンフィルターを含んでもよい。複数のメンブレンフィルターは、特定のタイプのろ過の強化、複数のタイプのろ過、および/または他のろ過の有用性を提供するように機能することができる。
【0070】
一実施例では、サイズろ過のために構築された複数のメンブレンフィルターは、サイズろ過を改善するために互いに積層され得る。この例の1つの実施態様では、孔径が減少または増加する複数のメンブレンフィルターを一列に積み重ねて、異なるサイズの複数の化合物のろ過を可能にすることができる。これらの積み重ねられた複数のフィルターは、溶液内に分子サイズ勾配を形成するため、または複数の化合物/イオンをろ過/分離するために、この方法で使用することができる。
【0071】
図6Aは、メンブレンモジュール内に複数のメンブレンフィルターを有するシステムの実施形態を示す。いくつかの実施形態では、メンブレンモジュール210は、トッププレート202、メンブレンフィルター206を支持するように動作可能な1つ以上のメンブレンプレート204、およびベースプレート208を含み得る。いくつかの例では、ベースプレートもメンブレンフィルター206を支持するように動作可能でもよい。複数のメンブレン支持プレート204をトッププレート202とベースプレート208との間に積層して、積層メンブレンモジュール210を形成してもよい。メンブレンモジュール210は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~50、50~100、または多数(>100)のメンブレンプレート204を含んでもよく、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~50、50~100、または多数(>100)のメンブレンフィルター206を含んでもよい。
図6Bは、3枚のメンブレンプレートおよび4枚のメンブレンを有する例示的なメンブレンモジュール210を示す。メンブレンモジュール210は、供給ライン、保持ライン、透過ライン用のポート212、214、224を有することができる。
図6Cおよび
図6Dは、マニホールド/ポート212に送り込まれ、複数のメンブレンフィルター206に並行して分配された混合溶液/濃縮液の流れを示し、その後、モジュールを出る前に他のマニホールド/ポート214に集められる。
図6Eおよび
図6Fは、メンブレンフィルター206を通過し、チャネル216に入り、共通のドレインに収集される円周溝218に向かって外側に移動する透過溶液の流れを示す。
【0072】
図7A~7Cは、例示的なメンブレン支持プレート204の図を示す。
図7Aは、メンブレン支持プレート204の上側を示す。いくつかの実施形態では、メンブレン支持プレート204は、メンブレンフィルター206を支持するための平滑面220または平坦な同位体微細多孔面、残留溶液マニホールド/ポート214の周囲の面シール222、チャネル216透過溶液孔、プレートドレインマニホールド/ポート224、透過溶液用面シール226、円筒形ボス上の残留溶液用二次シール228、供給マニホールド/ポート212の周囲の面シール230、メンブレンフィルター204の位置を特定するための1つまたは複数のPTFEピン232、およびプレート分離溝234を含んでもよい。
図7Bは、メンブレン支持プレート204の底面を示す。いくつかの実施形態では、メンブレン支持プレート204は、面シール用の平滑面236、円周透過溶液収集溝218、クロスフロー出口238、1つ以上のPTFEピン232を受容するように動作可能な1つ以上のクリアランスホール240、二次シール228用の円筒形ボア242、メンブレンフィルター204用の一次面シール244、クロスフロー入口246、およびねじ棒250を受容するように動作可能なクリアランスホール248をさらに含んでもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、メンブレン支持プレート204の高さは、0.5インチ~1インチの範囲であってもよい。例えば、メンブレン支持プレート204の高さは、0.5インチ~0.6インチ、0.6インチ~0.7インチ、0.7インチ~0.8インチ、0.8インチ~0.9インチ、または0.9インチ~1インチの範囲でもよい。少なくとも1つの例では、メンブレン支持プレート204は0.875インチの高さを有することができる。いくつかの実施形態では、トッププレート202の高さは0.5インチ~1インチの範囲でもよい。例えば、トッププレート202の高さは、0.5インチ~0.6インチ、0.6インチ~0.7インチ、0.7インチ~0.8インチ、0.8インチ~0.9インチ、または0.9インチ~1インチの範囲でもよい。少なくとも1つの例では、トッププレート202は約0.875インチの高さを有することができる。いくつかの実施形態では、ベースプレート208の高さは0.5インチ~1インチの範囲でもよい。例えば、ベースプレート208の高さは、0.5インチ~0.6インチ、0.6インチ~0.7インチ、0.7インチ~0.8インチ、0.8インチ~0.9インチ、または0.9インチ~1インチの範囲でもよい。少なくとも1つの例では、ベースプレート208は約0.875インチの高さを有することができる。メンブレン支持モジュール210は、メンブレン支持モジュール210に含まれるメンブレン支持プレート204の数に応じて、1.5インチ~10インチの範囲の高さを有してもよい。一例では、メンブレン支持モジュール210は、3枚のメンブレン支持プレート204および4枚のメンブレンフィルター206を含む場合、約4インチの高さを有することができる。透過溶液、残留溶液、および供給マニホールド/ポートは、システムを通る所望の総流量を収容する大きさであってよい。一部の実施形態では、マニホールドのサイズは、メンブレンモジュール210内のメンブレン支持プレート204が多いほど、またはメンブレンフィルター206あたりの流量が多いほど、大きくすることができる。いくつかの例では、マニホールドは直径0.5~1.0メートルまでであってもよく、高さは必要なメンブレンの数とともに増加する。
【0074】
同じ、または変化する孔径を有する複数のフィルターに類似して、他のタイプのメンブレンフィルター(例えば、電荷/電流、またはメンブレン結合/メンブレンコーティング)も同じ方法で実施することができる。他の例では、電気を通すように構成された複数のメンブレンフィルターを直列に配置する。そして、複数の異なる電荷を帯びた成分が分離され、各成分の大部分がメンブレンフィルターによって空間的に分離されるように、メンブレンに電圧を通すことができる。
【0075】
さらに、または代替的に、システムは、タイプの異なる複数のフィルターを含んでもよい。例えば、1つのシステムは、サイズによってろ過する1つまたは複数のメンブレンフィルターと、所望の化合物/イオンと相互作用する1つまたは複数のメンブレンフィルターとを含むことができる。Liろ過のための1つの実施態様では、システムは、Liを吸着および脱着するシリコンメンブレンフィルターと、孔径によってフィルタリングする他のメンブレンフィルターとを含むことができる。
【0076】
いくつかの変形例では、システムはコーティングを含むことができ、コーティングは、多孔質構造内およびその周囲、ならびにメンブレンフィルターの表面上の機能性コーティングを含む。コーティングの具体的な種類は、システムの実施態様に依存し得る。コーティングは、メンブレンろ過を改善するように機能することができる。さらに、または代替的に、コーティングはメンブレンフィルターの耐久性を向上させることができる(例えば、多孔質構造に増加した構造的支持を提供する)。
【0077】
いくつかの変形例では、コーティングは、メンブレンろ過を改善することができる。例えば、メンブレン相互作用電解抽出プロセスを使用して黒色塊浸出液からLiを分離する実施態様では、コーティングは、水の還元電位未満で(水素および酸素の形成を回避するために)Li(または他の標的物質)の還元を触媒する化合物または複数の化合物を含むことができる。コーティングは、収着/脱着反応(酸化還元反応であってもよい)を触媒してもよい。すなわち、コーティングは、所望の化合物とメンブレンが、メンブレン材料の表面またはバルクから収着または脱離するような反応を触媒することができる。例えば、コーティングは、メンブレンが特定の電荷/極性に調整されるとメンブレンによるLiの吸収を促進し、電荷/極性が除去または切り替えられるとメンブレンからリチウムを放出する。コーティング化合物の例としては、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、その他の酸化物を挙げることができる。これらの化合物は、原子層堆積のようなプロセスによってメンブレン表面および孔に適用することができる。
【0078】
いくつかの変形例では、コーティングは、メンブレンフィルターの構造的完全性を向上させる構造コーティングを含んでもよい。これは、先に説明したコーティングの機能的側面に加えて、またはその代わりになり得る。構造コーティングは、メンブレンフィルター、特に多孔質構造をコンフォーマルに層状化し、追加の構造的支持および/または耐久性を提供する化合物または複数の化合物を含むことができる。さらに、または代替的に、構造コーティングは、メンブレンフィルターの多孔質構造の劣化を防止することができる。構造コーティングの例としては、非反応性金属および金属合金(例えば、アルミニウム、チタン)を挙げることができる。コーティングが機能的側面を提供し得る変形例では、金属コーティングは金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン)でもよい。
【0079】
システムがコーティングを含む変形例では、コーティングは任意の所望の方法で実施することができる。孔構造におけるナノスケールの堆積については、原子層堆積を実施することができる。あるいは、溶液ベースの電気化学的析出を実施してもよい。ナノスケールデポジションは、メンブレンフィルターの多孔質構造内および多孔質構造上へのコーティングの堆積を可能にする。
【0080】
方法
図8に示すように、メンブレンろ過により混合物から物質を抽出するための方法300は、メンブレンナノフィルターシステム302を準備すること;混合物溶液304を得ることであって、混合物溶液は、分離のための所望の成分を含む溶液を含むこと;およびメンブレンナノフィルターシステム306を通して混合物溶液を供給し、それによって、混合物溶液内の所望の成分(例えば、化合物/イオン)を不要な成分(例えば、化合物)から分離すること、を含む。本方法は、所望の成分を他の「望ましくない」成分から分離するように機能する。本方法は、メンブレンフィルターシステムの特性を利用して、サイズ、電荷、メンブレン/化合物相互作用、電気化学的酸化または還元、収着、および/またはそれらの任意の組み合わせによって分離することにより、物質抽出プロセスを実施することができる。さらに、または代替的に、本方法は、化合物の形状、極性、磁化、導電性、および/または他の特性もしくは特性の組み合わせなどの他の分離特性を利用してもよい。
【0081】
一部の変形例では、本方法は、混合溶液の全部または一部をメンブレンナノフィルターシステムに(例えば、圧力駆動流を介して)通すことによって機能し、これにより、混合溶液は、所望の化合物がメンブレンナノフィルターシステムによって特異的に通過を阻止される一方で、混合溶液内の他の化合物がメンブレンナノフィルターシステムを通過することが可能になるように、能動的にろ過される。あるいは、所望の化合物がメンブレンナノフィルターシステムを特異的に通過する一方で、混合物内の他の化合物がナノフィルターシステムを通過するのを阻止される、または妨げられることもある。
【0082】
他のいくつかの変形例では、本方法は、最初に混合物でメンブレンナノフィルターシステムを飽和させ、その後、受動的または能動的に混合物をメンブレンナノフィルターシステムから追い出すことによって機能することができる。従って、このような変形例では、本方法は、混合溶液でメンブレンナノフィルターシステムを飽和させることをさらに含むことができる。実施に依存して、所望の化合物は、メンブレンナノフィルターシステム内に望ましくない化合物が残る(またはメンブレンナノフィルターシステムによってブロックされる)ように、メンブレンナノフィルターシステムから分離されるか、または望ましくない化合物がメンブレンナノフィルターシステムからろ過され、所望の化合物が残る。
【0083】
他の変形例では、本方法は、
図9Aおよび
図9Bに示すように、メンブレンフィルターに電場を発生させて、メンブレンナノフィルターシステムが混合溶液から電荷によって成分を分離することによって機能することができる。一実施形態では、
図9Aの方法400は、メンブレンナノフィルターシステム402を準備すること;混合溶液404を取得すること;メンブレンフィルター406に電場を形成させること;および混合溶液をメンブレンナノフィルターシステム408を通して供給すること;を含んでもよい。他の実施形態では、
図9Bの方法450は、メンブレンナノフィルターシステム452を準備すること;混合溶液454を取得すること;電気化学的に還元電流をメンブレンフィルター456に流すこと;混合溶液をメンブレンナノフィルターシステム458を通して供給すること;純粋なドロー液をメンブレンフィルター460を通して供給すること;電気化学的な酸化のために電流を反転させること462;および純粋な溶液464中の混合溶液の成分を回収すること;を含んでもよい。
【0084】
本方法は、上述のようなシステムを用いて実施することができる。加えてまたは代替的に、本方法は、特に湿式冶金プロセスにおける所望の物質の抽出のための、任意の一般的なメンブレンフィルターシステムを用いて実施することができる。
【0085】
メンブレンナノフィルターシステムを準備することを含むブロック402または452は、メンブレンナノフィルターシステムで所望のタイプのろ過を可能にするように機能する。メンブレンナノフィルターシステム402または452を準備することは、混合物、ろ過する所望の化合物、およびろ過の所望の方法に依存し得る。いくつかの変形例では、メンブレンフィルターはすでに準備されているため、この方法はブロック402または452を必要としない場合がある。
【0086】
いくつかの変形例では、メンブレンナノフィルターシステム402または452を準備することは、メンブレンナノフィルターシステムを構築することを含む場合がある。これは、所望のサイズ、形状、厚さの適切なメンブレンフィルターセットを作製することを含む。ろ過のタイプに応じて、メンブレンナノフィルターシステムの作製は、メンブレン細孔サイズ、細孔密度、電荷容量、導電性、機能的コーティング化学、結合部位の設定などをさらに含むことがある。いくつかの例では、メンブレンフィルターは、米国特許第10,128,341号、米国特許第10,943,982号、または米国特許第11,004,943号に記載されているように準備されてもよく、これらの各特許の内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0087】
メンブレンナノフィルターシステムを構築するための任意の一般的な行程を実施することができるが、本明細書では、単体Siメンブレン、メンブレンナノフィルターシステムを構築するための例を示す。Siメンブレンを構築することは、シリコン供給原料(例えば、シリコンウエハ)を得ること;金属粒子をシリコン表面に堆積させること(例えば、スパッタリング膜堆積を使用すること);およびシリコン供給原料をSiメンブレンに成形すること(例えば、化学エッチング浴中でシリコンウエハを一定時間堆積させることによりシリコン供給原料を化学エッチングすること)を含むことができる。
【0088】
いくつかの変形例では、メンブレンナノフィルターシステム400を準備することは、メンブレンナノフィルターシステムを処理することを含んでもよい。メンブレンナノフィルターシステムの処理は、機能性を向上させるように機能してもよい。例えば、シリコンメンブレンを介したLi/Na分離を改善するために、メンブレンナノフィルターシステムを処理することは、機能性コーティングを適用することを含む。機能性コーティングは、電気化学的にリチウムをリチウム金属に還元する触媒として機能する場合がある。リチウムの還元または酸化は、導電性メンブレンに印加される電圧によって媒介される。一旦還元されると、リチウムはシリコン格子内に拡散し、メンブレンは可逆的なリチウムスポンジとして機能する。コーティングを施すには、原子層堆積法を用いてナノスケールの細孔構造にコーティングを施すか、電気化学的堆積法を用いる。コーティングの例としては、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、および他の酸化物が挙げられる。
【0089】
混合溶液を得ることを含むブロック404または454は、ろ過のための原料を得る際に機能し、混合溶液は、混合溶液から抽出することができるいくつかの所望の化合物を含み、混合溶液は、メンブレンナノフィルターシステムとともに使用するのに適した形態である。いくつかの変形例では、混合溶液404または454を入手することは、単に混合溶液を入手すること(例えば、購入、受領など)を含む場合がある。他の変形例では、混合物を得ることは、リチウムイオン電池を黒色塊に変換すること、およびその黒色塊を強酸(H2SO4またはHCl)で浸出することを含む場合がある。例示的な混合溶液は、1~5wt%のAl、3~33wt%のCo、1~3wt%のCu、0.1~0.3wt%のFe、3.5~4wt%のLi、3~11wt%のMn、約35wt%のグラファイト、2~4wt%のF、および0.5~1wt%のPを含むが、これらに限定されない黒色塊成分を含むことができる。
【0090】
メンブレンナノフィルターシステムで使用する場合、混合溶液は、ろ過できるような形態であってもよい。メンブレンナノフィルターシステムのタイプによって、これは異なる場合がある。一般に、混合溶液は何らかの液体形態である。そうでない場合、混合溶液404または454を得ることは、混合溶液を使用可能な形態に変換することをさらに含む。これには、混合溶液を適切なpHおよび適切な濃度にすることが含まれる。混合溶液は、好ましくは、メンブレンナノフィルターシステムを通って流れることができるように十分に希釈される。これは、ろ過のタイプや混合物の含有量によって大きく異なる可能性がある。一例では、約1kgの黒色塊状粉末を約110kgの硫酸に溶解してもよい。他の例では、約1kgの黒色塊状粉末を約10~20kgの硫酸に溶解してもよい。他の例では、約1kgの黒色塊状粉末を約20~50kgの硫酸に溶解してもよい。他の例では、約1kgの黒色塊状粉末を約50~100kgの硫酸に溶解してもよい。
【0091】
pHは、特定の実施態様ごとに異なり得るが、本方法は、比較的中性または低pH(例えば、pH~1~10)での使用に特に適用され得る。種々の例において、混合溶液のpHは、0~5、0~4、0~3、0~1、0.5~5、0.5~4、0.5~3、0.5~2、0.5~1、0.1~5、0.1~4、0.5~3、0.1~2、0.1~1、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲であってもよい。いくつかの変形例では、pHは非常に酸性であってもよい。ある酸性の例では、pHは約2.0、2.0未満、またはpH1.0とpH2.0の間である。他の酸性例では、pHは約1.0である。他の酸性例では、pHは1.0未満である。あるpH<1.0(例えば、pH~0.1)の実施態様では、システムは、濃硫酸(98%)で最初に実施されてもよい。いくつかの例では、この方法は硫酸の一部をリサイクルすることを含む。所望の結果に応じて、システムはそのpHに維持されるかもしれないし、活動中にpHが上昇するかもしれない(例えば、pHはpH~1.0まで上昇するかもしれない)。他の例では、系は6~8の範囲の中性pHで作動してもよく、または8~14の範囲の塩基性pHで作動してもよい。
【0092】
一般に、湿式冶金の実施態様では、混合溶液404または454を得ることは、固体化合物を消化し、それによってろ過のための液体混合物を生成することを含み得る。例えば、電池リサイクルの実施では、混合溶液404または454を得ることは、電池を「黒色塊」に変換することを含むかもしれない。これには、電池構成要素を物理的に引き離すこと、負極と正極を粉砕すること、酸を用いて粉砕した構成要素を消化すること、中和成分を添加することなどが含まれる。
【0093】
図9Aのブロック406は、メンブレンナノフィルターシステムのメンブレンフィルターに電界を発生させることを含む。電場はメンブレンフィルターに直交または垂直に発生させることができる。電荷ろ過の実施(例えば電気ろ過)の場合、電場406を発生させることは、メンブレンフィルターと対向電極との間に電場を発生させることを含んでもよい(例えば、電気的接触および対向電極を介してメンブレンフィルターに電圧を印加することを通して)。メンブレンフィルターと対向電極に印加される電圧は、両者の間に電界を発生させる。この電場は、混合溶液から成分を分離するための駆動力として作用することがある。電界の強さおよび/または極性は、ろ過中に増加、減少、あるいは方向を変えることもできる。
図9Bの電気抽出の場合、メンブレンフィルター456に電気化学的に還元電流を流すことは、メンブレンフィルターの帯電(例えば、メンブレンフィルターが一定の電位に保持されるか、メンブレンフィルターを通して一定の電流が流される)を含むことができる。いくつかの例では、メンブレンフィルターは一定の電位に保持されるか、または一定の電流がメンブレンフィルターに流れる。帯電メンブレンフィルターは、電気化学的な還元または酸化を介して、標的成分をメンブレンフィルター細孔内に選択的に固定化することができる。
【0094】
電気コンタクトと対向電極には、0.1V~5Vの電圧を印加する。いくつかの例では、0.1V、0.5V、1V、1.5V、2V、2.5V、3V、3.5V、4V、4.5V、または5Vの電圧を電極に印加して電界を発生させてもよい。
【0095】
いくつかの例では、電場はメンブレンフィルターの上面より上方にあり、混合溶液の成分がメンブレンフィルターに到達する前に電場を通過しなければならない。この電気ろ過の例(
図9A)では、電荷の高い一部の成分は電界中に保持され、電荷の低い他の成分は電界を通過してメンブレンフィルターの孔に入ることができる。一部の例では、メンブレンフィルターは、電界を印加するための電流をほとんど流すことなく、一定の電位に保持されることがある。
【0096】
他の例では、メンブレンフィルターは電解抽出構成(
図9B)のために帯電されてもよい。この構成では、一部の成分は帯電したメンブレンフィルターに付着し、その中に保持されるが、他の成分はメンブレンフィルターの孔を通過する。一部の実施形態では、電気抽出構成において、特定の電位での一貫した電流の流れが、標的成分イオンを減少させる可能性がある。
【0097】
他の例では、電荷は適用されず、メンブレンフィルターは、電界を使用することなく、成分のサイズまたは他の特徴によって成分を分離するために使用されてもよい。
【0098】
混合溶液をメンブレンナノフィルターシステムに通すことを含むブロック408または458は、混合溶液のろ過/分離を実施するように機能する。ブロック408または458の実施は、混合溶液の含有量、ろ過に望まれる化合物、および使用されるメンブレンナノフィルターシステムのタイプに大きく依存する可能性がある。メンブレンナノフィルターシステム408を通る混合溶液の駆動は、受動的駆動(例えば、単純拡散、または濃度勾配によるような指向性拡散)または能動的駆動(例えば、流れを発生させるポンプ)のいずれかで構成され得る。能動的駆動の変形例において、混合溶液を駆動することは、流量(例えば、溶液[体積]流量または物質[質量]流量)を設定することからなる場合がある。溶液流量の変形例では、メンブレンを通る溶液流量は0.1~200[L/(m2hr)]の間であってもよい。いくつかの実施態様では、溶液流量はより低くてもよく、あるいはより大きくてもよい。材料流量の変化では、材料流量は1.0~1000[g/(m2hr)]の間である。いくつかの変形例では、材料流量はより低くてもよく、より大きくてもよい。
【0099】
いくつかの変形例では、混合溶液の供給は複数の段階を含むことがある。混合溶液の供給は、混合溶液からの成分の分離を制御するために電場と組み合わせて使用することができる。一実施例では、リチウム(Li)がシリコン(Si)系メンブレンナノフィルターシステムを通してろ過される場合、初期駆動電荷力が開始され、LiがSiメンブレンフィルターの孔を通過できるようにすると同時に、混合溶液の他の成分がSiメンブレンフィルターの表面に引き寄せられる。Liを含む透過溶液が通過すると、供給は純粋なドロー溶液(水または硫酸)に切り替えられ、メンブレンフィルターの極性が変化し、他の成分が放出される。その後、成分はメンブレンフィルターから拡散し、純粋なドロー溶液(水、純粋な酸、または希酸)によって回収されるか、または他の流れ(例えば、ポンプ)によって成分が回収されるように駆動される。他の実施形態では、Liはメンブレンフィルターに保持される成分であり、他の成分はメンブレンフィルターを通過する。
【0100】
本方法の能動ろ過タイプの実施態様では、混合溶液の供給は、混合溶液がメンブレンフィルターを通過または横切るように駆動される一方向の流れを含む場合がある。飽和ろ過の場合、これは一般に当てはまらない。飽和ろ過では、濃度勾配、pH勾配、電荷勾配などの受動的な力(例えば、単純拡散または指向性拡散)がより一般的に実施される場合がある。一般に、能動ろ過および飽和ろ過は、所望に応じて、単一方向、多方向、または非偏向拡散を組み込むことができる。
【0101】
いくつかの変形例では、混合溶液はメンブレンフィルターを通して供給されず、その代わりにメンブレンフィルターに沿って、または部分的にのみメンブレンフィルターに逆らって供給される。すなわち、混合溶液は、平行に、メンブレンに隣接して、あるいは部分的に斜めに供給され、混合溶液がメンブレンフィルターに対して、またメンブレンフィルターに沿って供給される。このような”クロスフロー”変形例では、混合溶液のうちメンブレンを通過できる成分は通過できるが、メンブレンを通過できない成分を含む混合溶液そのものは外に出続ける。クロスフローの変形例は、受動的および/または能動的輸送を実施することができる。純粋に受動的な実施態様の場合、メンブレンナノフィルターシステムは、溶液で予め飽和され、メンブレンの透過溶液側のドロー溶液の向流は、濃度勾配を維持するために使用され得る。
【0102】
一般に、混合溶液408または458の供給は、所望され、実施に適用可能な任意のタイプの駆動力を含むことができる。前述したように、混合溶液408または458の供給は、少なくともいくらかは、ろ過タイプの依存性であってもよい。特定のタイプのろ過については、混合溶液408または458を供給するためのいくつかの好ましい方法が存在し得る。例えば、混合溶液408または458の供給は、pHまたは濃度勾配駆動、または圧力駆動の流れを形成することを含んでもよい。メンブレン相互作用(例えば、選択的吸収、吸着、またはイオン交換)ろ過の場合、混合溶液408または458の供給は、流れを化学的に駆動することを含んでもよい。一つの実施態様では、SiメンブレンとのLi相互作用のために、Li-Si相互作用を改善することによって流れを駆動するために酸化還元反応を開始することができ、それによってLiは孔壁で還元され、バルクSi格子に吸着される。
【0103】
分離プロセスの前に、ろ過メンブレンをまず液体で飽和させることを必要とする変形例については、方法は、メンブレンナノフィルターシステムを混合溶液で飽和させることを含むことができる。メンブレンナノフィルターシステムを混合溶液で飽和させることは、飽和ろ過プロセスを設定するために機能する。メンブレンナノフィルターシステムを混合溶液で飽和させることは、メンブレンナノフィルターシステムを混合溶液または純粋な溶媒(水または純粋な酸溶液)中にある割り当てられた時間放置することを含むことができる。他の例では、純粋な溶媒(水または純粋な酸溶液)は、メンブレンが飽和するまでメンブレンを通して(例えば、圧力駆動流を介して)積極的に駆動される。他の例では、メンブレンの孔径が小さいために表面張力により水溶液で直接飽和させることができない場合、表面張力の低い有機溶媒または超臨界CO2を用いてまず孔構造を飽和させ、次に純粋な水溶液で置換するという逐次的なアプローチを用いることができる。実施方法によっては、飽和度を向上させるために、混合溶液を加熱、混合、または何らかの方法で攪拌することもある。例としては、水の沸点を超える温度で水蒸気をメンブレンに飽和させ、場合によっては加圧下でメンブレンに追い込み、その後温度を下げてメンブレンの孔構造内に純水の沈殿を促進する方法がある。メンブレンナノフィルターシステムが混合溶液内の化合物と反応するいくつかの変形例では、メンブレンの飽和も促進するために、溶液に電荷を流すことができる。
【0104】
図9Bはさらに、純粋なドロー溶液をメンブレンフィルターを通して供給すること460、電気化学的酸化のためにメンブレンフィルターに駆動される電流を反転させること462、および純粋なドロー溶液中の混合溶液の成分を回収すること464を含む。例えば、メンブレンフィルターに保持された1つ以上の成分は、電流が反転された後、純粋なドローストリームによって純粋な生成物ストリームに溶出され得る。いくつかの例では、純粋なドロー溶液は水または硫酸を含むが、これらに限定されない。純粋なドロー溶液は、混合溶液体積の1%~5%、5%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、または40%~50%の体積を有することができる。このように純粋なドロー溶液の体積を減少させることにより、濃縮された純粋な生成物ストリーム(例えば、混合溶液の1つ以上の成分の濃縮溶液)を形成することができる。
【0105】
図10は、リサイクルを含むメンブレンナノフィルターを介した混合溶液からの湿式冶金分離のための例示的な多段階プロセス500を示す。プロセス500は、様々な組み合わせで複数のメンブレンフィルターモジュールを利用することができる。メンブレンフィルターモジュールは、電気ろ過、電気抽出、またはそれらの組み合わせを利用することができる。
【0106】
このプロセス500では、粉砕した電池粉末を硫酸と組み合わせて混合溶液502を取得することができる。次に、混合溶液を粗ろ過504用のメッシュでろ過して、混合溶液から固形物を除去する。その後、混合溶液は濃縮ループ506に入り、そこで混合溶液はリチウム透過メンブレンを含む電気フィルターモジュール508に入ることができる。電気フィルターモジュール508からの透過溶液は、メンブレンフィルターを通過したリチウムを含む。その後、透過溶液は沈殿試薬と混合され、炭酸リチウムまたは水酸化リチウム510を沈殿させることができる。沈殿の後に残った硫酸の少なくとも一部は、プロセスの最初に戻ってリサイクル511することができる。
【0107】
電気フィルターモジュールのメンブレンフィルターを通過しなかった残りの混合溶液は、1つ以上の電気抽出モジュール512に入り、残りの混合溶液の他の成分を除去する。電気抽出モジュール512は、非メッキ/非付着金属を含む第2透過溶液514を回収することにより、メンブレンフィルターにメッキ/付着する可能性のある金属を除去する。その後、第2透過溶液中の成分を精製することができる。メンブレンフィルター上のメッキ金属は、電界の極性を反転させた後、場合によっては溶液中の飽和点と同程度の濃度で、ドロー溶液(水または硫酸)516中に周期的に除去することができる。例えば、電解抽出モジュールは、コバルトとニッケルの電位以下の金属(鉄、銅など)を除去することができる。他の例では、電気抽出モジュールのカスケードが、混合溶液を複数の純粋な溶液に分離するために使用されることがあり、最初の溶液はより低い価値のFe、Mn、Cuを含み、2番目の溶液はCoとNiを含み、3番目の溶液はLiとAlを含む。その後、電気ろ過によってLiの純粋な流れを分離することができる。
【0108】
次に、(電気抽出モジュールで除去されなかった成分を含む)残留溶液は、残留溶液から残りの成分を除去するように構成された追加の電解抽出モジュール518を通過することができる。例えば、追加の電気抽出モジュールは、コバルトおよびニッケルを除去し、第3の透過溶液520で追加の電気抽出モジュールから出るように構成され得る。他の電解抽出モジュールと同様に、電界の極性を反転させた後、めっき金属を周期的に除去するために、電気抽出モジュール522にドロー溶液を通過させてもよい。追加の電気抽出モジュールを出た透過溶液520は、次に沈殿試薬524と混合され、第2の透過溶液中の成分526を沈殿させることができる。例えば、硫酸コバルトと硫酸ニッケルを溶液から沈殿させてもよい。沈殿の後に残った硫酸は、プロセスの開始点に戻してリサイクル528することができる。残った混合溶液は、廃棄物530としてシステムから排出される。
【0109】
図11は、リサイクルを含むメンブレンナノフィルターによる混合溶液からの導電性メンブレンフィルター分離のための例示的なプロセス600を示す。このプロセス600では、粉砕した電池粉末を硫酸と合わせて混合溶液602を得ることができる。次に、混合溶液を粗ろ過用メッシュ604でろ過して、混合溶液から固形物を除去する。混合溶液は、その後、電気抽出モジュール612に入ることができる。電気抽出モジュール612の透過溶液は、メンブレンフィルターを通過した成分(例えば、抽出される所望の金属)を含む。透過溶液516は、飽和に近い、抽出された金属の純粋な溶液であってもよい。次いで、透過溶液を沈殿試薬と混合617して、純粋な固体生成物610を沈殿させることができる。沈殿の後に残った硫酸の少なくとも一部は、プロセスの最初に戻してリサイクルすること611ができる。メンブレンフィルター上のめっき金属は、電界の極性を反転させた後、ドロー溶液(水または硫酸)614中に定期的に除去することができる。残った混合溶液は、プロセスの開始点513にリサイクルすることができる。
【0110】
定義
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所定の値が終点の「少し上」または「少し下」であってもよいことを提供することによって、数値範囲の終点に柔軟性を提供するために使用される。例えば、終点は、記載された値の10%、8%、5%、3%、2%、または1%以内であってもよい。さらに、便宜上および簡略化のために、「約50mg/mL~約80mg/mL」の数値範囲も、「50mg/mL~80mg/mL」の範囲を支持するものと理解されるべきである。終点はまた、FDA、USPなどの適切な規制機関によって許容される変動性に基づいてもよい。
【0111】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(containing)」、および「有する(having)」などは、米国特許法においてそれらに付与される意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することができ、一般にオープンエンドな用語であると解釈される。「からなる(consisting)」または「からなる(consisting of)」という用語は、クローズな用語であり、米国特許法に従ったものだけでなく、当該用語とともに具体的に列挙された構成要素、構造、ステップのみを含む。「から本質的に構成される(consisting essentially of)」または「から本質的に構成される(consists essentially of)」は、米国特許法によって一般的に付与される意味を有する。特に、このような用語は一般的にクローズな用語であり、これに関連して使用される品目の基本的かつ新規な特性または機能に重大な影響を与えない追加的な品目、材料、構成要素、ステップ、または要素の包含を許容することを例外とする。例えば、組成物中に存在するが、組成物の性質または特性に影響を与えない微量要素は、このような用語に続く項目のリストに明示的に記載されていなくても、「本質的に~から構成される(consisting essentially of)」という用語の下で存在する場合は許容される。本明細書において、「~を含む(comprising)」または「~を含む(including)」のようなオープンエンドの用語を使用する場合、「~から本質的になる(consisting essentially of)」言語だけでなく、明示的に記載されているかのような「~からなる(consisting of)」言語にも、直接的なサポートが与えられるべきであり、その逆もまた同様であると理解される。
【0112】
本明細書で使用される場合、第1、第2、第3などは、様々な要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを特徴付け、区別するために使用される。これらの要素、構成要素、領域、層および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。数値用語の使用は、1つの要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを他の要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションから区別するために使用することができる。このような数値用語の使用は、文脈によって明確に示されない限り、順序や順番を意味するものではない。このような数値参照は、本明細書における実施形態および変形例の教示から逸脱することなく、互換的に使用することができる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「メンブレンフィルター」および「ウエハ」という用語は、本明細書に記載されるようなナノ多孔質フィルターを意味するために互換的に使用することができる。
【0114】
本明細書で使用される場合、「電池浸出液」、「黒色塊浸出液」、「混合溶液」および「供給溶液」という用語は、メンブレンフィルターシステムに入る溶液を意味するために互換的に使用される場合がある。
【0115】
本明細書で使用する場合、「化合物」および「成分」という用語は、問題の材料の一般性を損なうことなく、任意のタイプの材料を指すために使用される。すなわち、化合物は、任意の元素、イオン、分子、複合構造、またはそれらの組み合わせ(例えば、金属酸化物、金属硫化物)を指す場合がある。
【0116】
実施例
圧力セル内にシリコンメンブレンフィルターを備えたシステム例を、電気コンタクトからメンブレンフィルターに通過する電流の検証のためにテストした。
図5Hは、圧力セルのポートからポゴピンを挿入してシリコンメンブレンの内面と電気的接触を形成し、セル内に取り付け、メータープローブをシリコンメンブレンの研磨されていない裏面に配置した状態を示している。研磨されていない側の接触抵抗は低いと仮定した。メンブレンフィルターはOリングまでポゴピンに圧縮された。抵抗は0.4’最大圧縮ピンで23~130オーム、0.25’最大圧縮ピンで1103~1771オームで測定された。
【0117】
他の例では、電気コンタクトの抵抗は約1000オームであった。圧力セルを700psiまで加圧し、45分間その圧力を保持したが、ウエハの著しい漏れやクラックは見られなかった。加圧は同じウエハで繰り返され、さらに異なるウエハで3回繰り返された。加圧は約5分間保持された。
【0118】
図12は、電気ろ過の一例の結果を示している。孔径約100nm、低圧(50psi)のシリコンメンブレンフィルターを備えたろ過セルに水を入れた。メンブレンの両側に液橋が形成された後、圧力を止め、MgSO
4をメンブレンの片側に加え、無流動状態での拡散輸送を評価した。その後、メンブレンを横切るMgSO
4の拡散を測定した。
図12は、メンブレンが帯電している(1V)場合と帯電していない(0V)場合の、経時的な導電率測定によるメンブレンを介したMgSO
4の流れの違いを示している。MgSO
4による拡散ベースの(非加圧流)ろ過実験では、電界が印加されると、塩がメンブレンを通過する能力が著しく低下することが示された。
【0119】
当業者であれば、これまでの詳細な説明、ならびに図および特許請求の範囲から認識されるように、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態に修正および変更を加えることができる。
【国際調査報告】