(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 13/14 20060101AFI20240719BHJP
C09K 21/08 20060101ALI20240719BHJP
A62D 1/08 20060101ALI20240719BHJP
A62D 1/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B01J13/14
C09K21/08 ZAB
A62D1/08
A62D1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549951
(86)(22)【出願日】2023-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2023095702
(87)【国際公開番号】W WO2023241316
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】202210673236.6
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523311960
【氏名又は名称】浙江銘諾新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】茆涵
(72)【発明者】
【氏名】陳虹
(72)【発明者】
【氏名】呉景遠
【テーマコード(参考)】
2E191
4G005
4H028
【Fターム(参考)】
2E191AA01
2E191AB11
2E191AB22
2E191AB32
2E191AB36
2E191AB59
4G005AA01
4G005BA02
4G005BA03
4G005DA16W
4G005DB06Y
4G005DB06Z
4G005DC12X
4G005DC12Y
4G005DC12Z
4G005DC61X
4G005DD38Y
4G005DD38Z
4G005EA10
4H028AA37
4H028AB04
4H028BA03
(57)【要約】
本発明は、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火材料及びその製造方法を提供し
、消火剤応用の技術分野に属する。ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルは、芯壁率
が高く、補助材/充填材などでペルフルオロヘキサノンを吸着することや高沸点溶剤でペ
ルフルオロヘキサノンを溶解することを必要としないものである。マイクロカプセルシェ
ルに高分子二次被覆を施すことにより、マイクロカプセルシェルの強度を向上させ、ペル
フルオロヘキサノンの揮発損失を低減させ、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル材
料の保存時間が短いという難題を解決し、商業的応用価値をペルフルオロヘキサノンマイ
クロカプセル材料に持たせる。ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルをさらに各種材
料及び界面と複合化することにより、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを主成分
とする各種消火材料を得ることができる。このような消火材料は、ペルフルオロヘキサノ
ンマイクロカプセル乾燥粉末であるか、様々な厚さの消火ステッカー、消火ブランケット
、消火服など、様々な表面に適合する形態とすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火トリガ温度が80~130℃であるペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルであっ
て、
ペルフルオロヘキサノンを含むカプセルコアと、
内側から外側へ少なくとも第1シェル層と第2シェル層とを含み、第1シェル層と第2シ
ェル層がそれぞれ高分子材料を含むカプセルシェルと、を含み、
前記ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル中のペルフルオロヘキサノンとカプセルシ
ェルは、乾燥重量で、質量比が5:1~9:1であり、
前記ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの直径が20~400μmの範囲であり、
前記カプセルシェルは、ナノ酸化物をさらに含み、
前記ナノ酸化物は、ナノシリカ及びナノ金属酸化物を含み、
前記ナノシリカとナノ金属酸化物との質量比が1:2.5~5であり、
前記高分子材料は、天然高分子、半合成高分子、合成高分子から選ばれる1種又は複数種
である、ことを特徴とするペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル。
【請求項2】
前記高分子材料は、硬化後の軟化点が80~130℃、通気性が700mL/(cm
2・
h)未満、硬化後の収縮率が5%以内、吸水率が5%以内、引張強度が10MPaを超え
て80MPa未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のペルフルオロヘキサノンマ
イクロカプセル。
【請求項3】
前記天然高分子は、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、植物性ガムから選ばれる1種又
は複数種であり、
前記半合成高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルグアーガムナトリウム、
オクテニルコハク酸エステル化デンプン、ローメトキシペクチンから選ばれる1種又は複
数種であり、
前記合成高分子は、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アクリ
ル樹脂、フラン樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド
樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、尿素ホルムアルデヒド樹脂から選ばれる1種又
は複数種である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のペルフルオロヘキサノンマイ
クロカプセル。
【請求項4】
前記第2シェル層の外に第3シェル層をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載
のペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル。
【請求項5】
前記カプセルシェルは紫外線防止剤を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のペルフル
オロヘキサノンマイクロカプセル。
【請求項6】
前記ナノ酸化物は第1シェル層中に含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のペルフ
ルオロヘキサノンマイクロカプセル。
【請求項7】
前記紫外線防止剤は、サリチル酸エステル類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類
から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項5に記載のペルフルオロヘ
キサノンマイクロカプセル。
【請求項8】
前記ナノ金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム
、酸化カルシウムから選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載
のペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル。
【請求項9】
前記第1シェル層に含まれる高分子材料は、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、キトサン
、アラビアガム、ポリグルタミン酸、β-シクロデキストリン、カルボキシメチルセルロ
ースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、オクテニルコハク酸エステル化
デンプンから選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項2に記載のペルフ
ルオロヘキサノンマイクロカプセル。
【請求項10】
前記第2シェル層に含まれる高分子材料は、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アミノ樹脂、
フェノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、キシ
レン・ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、尿素ホルムアルデヒド
樹脂から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項2に記載のペルフルオ
ロヘキサノンマイクロカプセル。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを乾燥
して得られるペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火剤応用の技術分野に属し、具体的には、ペルフルオロヘキサノンマイクロ
カプセル消火材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロヘキサノン(CAS番号756-13-8)は環境に優しい新規な消火剤で
ある。ペルフルオロヘキサノンは、常温で液体で、その蒸発熱が水の1/25だけで、蒸
発圧が水の25倍であり、これらの性質のため、気化しやすく、熱を速やかに吸収して消
火の効果を達成することができる。ペルフルオロヘキサノンは、オゾン破壊係数(ODP
)が0であり、地球温暖化係数(GWP)が1であり、大気寿命(年)が0.014(5
日)であり、ハロン系消火剤の長期耐久性のある代替品として使用可能である。しかし、
ペルフルオロヘキサノンの沸点が49℃と低いため、消火剤としての用途にはまだ一定の
限界があり、現在、通常、ハロン消火器の代替品として、又はクラスB防火のためのトー
タルフラッディングシステム及び局所適用システムとして一般的に使用されている。実際
の応用では、通常、消火タンクに保管したり、専用の消火システムを必要としたりするた
め、消火に不便である。
【0003】
各種の防火・消火の場面により好適に適用するために、消火剤を芯材としてマイクロカプ
セル化することができる。従来技術、例えば、授権番号CN103370104Bである
中国発明特許は、ハロゲン化炭化水素を芯材とするマイクロカプセル消火剤を開示してい
る。しかし、ペルフルオロヘキサノンは、ハロゲン化炭化水素に比べて、沸点が低く、3
0℃から顕著に揮発するため、ペルフルオロヘキサノンを芯材とするマイクロカプセルは
、製造と寿命の面で大きな障害がある。従来技術には、マイクロカプセル消火剤及びその
製造方法、消火複合材料及び消火塗料を開示する出願番号RU2011125756のロ
シア特許があり、この消火剤は、90~270℃の範囲で破裂して、内容物の消火剤材料
を放出し消火することができる。従来技術、例えば公開番号CN109420281Aの
中国発明特許では、ペルフルオロヘキサノンの揮発性を低減するために、高分子樹脂、繊
維、無機充填材などの補助材を添加してペルフルオロヘキサノンを吸着又は溶解する。し
かし、通常、これらの補助材は、消火性能がないか消火性能が低く、しかも、マイクロカ
プセル中の消火剤芯材の比率を下げるため、消火効果が制限されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする第1技術的課題は、上記従来技術の現状に対して、専用の保管
及びトリガ設備を必要とせず、応用場面がより広範であるペルフルオロヘキサノン消火材
料を提供することであり、このような材料は、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル
を主成分とし、その最終的な形態には、消火マイクロカプセル粉末、消火マイクロカプセ
ルスラリー、消火ステッカー、難燃布、防火塗料等が含まれる。ペルフルオロヘキサノン
マイクロカプセルは、直径が20~400μmで調整可能であり、マイクロカプセルの芯
壁比が5:1~9:1の好ましい範囲で調整可能であり、消火材料中、消火マイクロカプ
セルの質量百分率は通常30~100%(100%の場合は純マイクロカプセル粉末)で
あり、消火材料全体中のペルフルオロヘキサノンの質量百分率は25~80%である。消
火材料は、従来の様々な環境(明らかな高温熱源や直火なし)で安定した状態を維持する
ことができる。その消火トリガ温度はマイクロカプセルの壁材の種類、厚さ及び結合高分
子の種類によって調節され、本発明に採用された高分子材料は、通常、軟化点が80~1
30℃、通気性が700mL/(cm2・h)未満、硬化後の収縮率が5%以内、吸水率
が5%以内、引張強度が10MPaを超えて80MPa未満であり、マイクロカプセルは
、80~130℃や直火に遭遇したとき、軟化して破裂し、ペルフルオロヘキサノンを放
出し、消火機能を自発的にトリガすることができる。
【0005】
本発明の他の目的は、例示のみによって与えられる以下の説明から明らかになる。
【0006】
上記の重要な技術的課題を解決するために本発明が採用した技術案は、ペルフルオロヘキ
サノンを芯材とする消火マイクロカプセル(以下、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプ
セルと略称する)を製造し、マイクロカプセルに高分子二次被覆を施した後、各種材料及
び界面と複合化し、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを主成分とする、例えば消
火マイクロカプセル粉末、消火マイクロカプセルスラリー、消火ステッカー、難燃布、防
火塗料など、各種消火材料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様において、本発明は、消火トリガ温度が80~130℃であるペルフルオロヘキ
サノンマイクロカプセルであって、
ペルフルオロヘキサノンを含むカプセルコアと、
内側から外側へ少なくとも第1シェル層と第2シェル層とを含み、第1シェル層と第2シ
ェル層がそれぞれ高分子材料を含むカプセルシェルと、を含み、
ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル中のペルフルオロヘキサノンとカプセルシェル
とは、乾燥重量で、質量比が1:1~10:1(好ましくは3:1~9:1、より好まし
くは5:1~9:1)であってもよく、
ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルは、好ましくは、直径が20~400μm(例
えば、20~100μm、50~200μm、100~150μm、150~300μm
、250~400μm)の範囲の寸法を有する、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセ
ルを提供する。マイクロカプセルの寸法分布は、狭く、広く、又はマルチモードであって
もよい。既存のマイクロカプセル消火剤に関する特許と比較して、本発明は、環境に優し
い新規なペルフルオロヘキサノンを消火剤として、ペルフルオロヘキサノンの吸着を充填
材で補助することを必要とせず、芯壁比が高く(ペルフルオロヘキサノン:壁材は9:1
)、壁材は入手しやすく、揮発しやすく保管しにくいというペルフルオロヘキサノンの性
質を改善し、製造された消火マイクロカプセルは、広い温度・湿度範囲内で、消火性能を
明らかな減衰なく維持することができ、保管時間や耐用年数が長い。ペルフルオロヘキサ
ノンマイクロカプセルを主成分とするこのような消火材料は、乾燥粉末状や、消火ステッ
カー、消火ブランケット、消火服等の各種表面に適合する形態に製造することができる。
より広範な適用場面に対応するために、塗工性を持ち、自分で施工することが可能で、マ
イクロスケールからマクロスケールの様々な防火・消火環境に適用し得るペルフルオロヘ
キサノンマイクロカプセルスラリー半製品として製造することも可能である。また、この
マイクロカプセルを水性塗料に添加して防火塗料を製造することもできる。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1シェル層及び第2シェル層に含まれる高分子材料は、それ
ぞれ独立して、天然高分子、半合成高分子、合成高分子から選ばれる1種又は複数種であ
る。好ましくは、高分子材料は、未硬化架橋前の軟化点が30~100℃、硬化後の軟化
点が80~150℃、通気性が700ml/(cm2・h)未満、硬化後の収縮率が5%
以内、吸水率が5%以内であり、引張強度が10MPaを超えて80MPa未満である。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記天然高分子は、ゼラチン、アルギン酸塩、アラビアガム、
キトサン、ポリグルタミン酸、β-シクロデキストリンから選ばれる1種又は複数種であ
る。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記半合成高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム
、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、オクテニルコハク酸エステル化デンプンから選
ばれる1種又は複数種である。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記合成高分子は、ポリメタクリレート、エポキシ樹脂、ポリ
ウレタン、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂、レゾルシン・ホル
ムアルデヒド樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド
、尿素ホルムアルデヒド樹脂から選ばれる1種又は複数種である。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記カプセルシェルは、紫外線防止剤をさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記カプセルシェルは、ナノ酸化物をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ又はナノ金属酸化物を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ及びナノ金属酸化物を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1シェル層に含まれる高分子材料は、ゼラチン、アルギン酸
塩、アラビアガム、キトサン、ポリグルタミン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウ
ム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、β-シクロデキストリン、オクテニルコハク
酸エステル化デンプンから選ばれる1種又は複数種である。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2シェル層に含まれる高分子材料は、ポリメタクリレート、
エポキシ樹脂、ポリウレタン、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂
、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエ
ステル、ポリイミド、尿素ホルムアルデヒド樹脂から選ばれる1種又は複数種である。
【0018】
第2態様において、本発明は、上記ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを乾燥して
得られるペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末を提供する。
【0019】
第3態様において、本発明は、上記ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを高分子溶
液と混合し、均一に分散させて得られるペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルスラリ
ーを提供する。
【0020】
第4態様において、本発明は、ペルフルオロヘキサノンをカプセル化した第1シェル層を
形成し、単層シェルペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを得るステップと、第1シ
ェル層の上に第2シェル層を被覆してペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを得るス
テップと、を含む、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの製造方法を提供する。
【0021】
第5態様において、本発明は、上記記製造方法により直接製造されたペルフルオロヘキサ
ノンマイクロカプセルを提供する。
【0022】
第6態様において、本発明は、上記ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを低温乾燥
して得られるペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末を提供する。
【0023】
第7態様において、本発明は、
防火及び/又は消火製品の製造における使用、又は
防火及び/又は消火関連製品の製造における使用、又は
防火における使用を含む、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの使用を提供する。
【0024】
第8態様において、本発明は、
上記ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末と、
少なくとも1種の基質と、を含む、防火及び/又は消火材料を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記基質は、ポリマー、水性塗料、コーティング又は成形品を
含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記基質は、金属、木材、織物、ポリマー材料から選ばれる1
種又は複数種を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記基質は、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを含む
マトリックス材料で塗布される。
【0028】
いくつかの実施形態では、上記基質は、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを含む
製造品である。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルは、コーティン
グ中に配置される。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記コーティングは、ポリマーコーティング又は水性塗料を含
む。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記製造品には、床面、紡績品、織物、フロアカバー、枕、担
架パッド、シートカバー、粘着テープ、衣類、ワイピングクロス、家具、搬送装置、配送
トラック、配送軽自動車、工具、包装、容器、機械ハウジング、機械カバー、電子デバイ
ス、電子デバイスキャリア、ウエハプレート、ウエハタンク、バッテリー、アンテナ、ト
ランジスタ、プリンタアセンブリ、燃料ポンプ、燃料ポンプハンドル、ホース、ホースカ
バー、燃料ポンプ付属品、燃料ポンプノズル、燃料配管、自動車用シートトリム、外装パ
ネル、内装パネル、車両コンソール部品、ガスケット、シール、Oリング、ダイヤフラム
、ギア、バルブ、ブッシング、ショックアブソーバー、グロメット、ストップ、ベローズ
、プラグ、ショックマウント、ステアリングギア、ウェザーストリップ、ローラー、チュ
ーブコネクタ、コンピュータケース、回路基板、回路基板用ビアのメッキ層、マイクロプ
ロセッサ、ランダムクセスメモリコンポーネント、読み取り専用メモリコンポーネント、
ディスクドライブ、電極、又はフォトリソグラフィレジストが含まれるが、これらに限定
されない。
【0032】
第9態様において、本発明は、上記ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末と、マ
トリックス材料と、を含む、消火用シートを提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記消火用シートの消火層の表面に保護フィルムがさらに被覆
されている。消火材料の表面に保護フィルムを被覆することにより、消火材料の安定性を
さらに向上させることができる。保護フィルムの形成には、消火層の表面を高分子ポリマ
ーで塗布する方法が使用され得る。消火層の表面に特定の高分子フィルムをスプレーコー
トすることにより、消火マイクロカプセル層の表面に被覆された保護フィルムが形成され
、この保護フィルムは、空気や水分のバリア、老化防止、酸・アルカリミスト防止、紫外
線防止、適度な湿度を維持するとともに、一定条件で自己修復機能を有する。高分子ポリ
マーは、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂
、ポリウレア樹脂、高分子ケイ素、天然由来高分子、アクリル樹脂、エポキシ樹脂から選
ばれる1種又は複数種である。好ましくは、上記記保護フィルムの厚さが50~200μ
mである。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記消火用シートの製造方法は、ペルフルオロヘキサノンマイ
クロカプセル粉末をマトリックス材料と混合して均一に分散させた後、型内に投入し、硬
化させて乾燥し、消火層の表面に高分子ポリマーをスプレーコートして、消火用シートを
得るステップを含む。ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末は消火用シート中に
40~80質量%含有され、防火・消火布は、消火時間が20秒以下、くすぶり時間が0
秒、延焼時間が0秒であり、溶融滴下がなく、60℃の送風乾燥機で8時間後の重量損失
率が5%以下である。
【0035】
第10態様において、本発明は、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末と、マト
リックス材料と、基質布と、を含み、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末が基
質布の表面のコーティングに配置される、防火・消火布を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記基質布は難燃布である。難燃布の例としては、ガラス繊維
布、玄武岩繊維防火布、アクリル綿繊維防火布、Nomex防火布、SM防火布、青色ガ
ラス繊維防火布、又はアルミニウム箔防火布が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態では、上記コーティングの表面には保護フィルムがさらに被覆されて
いる。コーティングの表面に保護フィルムを被覆することにより、防火・消火材料の安定
性をさらに向上させることができる。保護フィルムの形成には、コーティングの表面に高
分子ポリマーを塗布する方法が使用され得る。消火層の表面に特定の高分子膜をスプレー
コートすることにより、消火マイクロカプセル層の表面に被覆された保護フィルムが形成
され、この保護フィルムは、空気や水分のバリア、老化防止、酸・アルカリミスト防止、
紫外線防止、適度な湿度を維持するとともに、一定条件で自己修復機能を有する。高分子
ポリマーは、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド
樹脂、ポリウレア樹脂、高分子ケイ素、天然由来高分子、アクリル樹脂、エポキシ樹脂か
ら選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、上記保護フィルムの厚さが50~200
μmである。好ましくは、上記コーティングの厚さが0.5~3mmである。
【0038】
いくつかの実施形態では、上記防火・消火布の製造方法は、ペルフルオロヘキサノンマイ
クロカプセル粉末をマトリックス材料と混合して均一に分散させ、塗工性を有するスラリ
ーを調製し、基質の表面にブラシ塗布及び/又はブレード塗布によりコーティングを形成
し、硬化させて乾燥し、コーティングの表面に高分子ポリマーをスプレーコートして、防
火・消火布を得るステップを含み、前記マトリックス材料は高分子溶液である。ペルフル
オロヘキサノンマイクロカプセル粉末は防火・消火布中に40~80質量%含有され、防
火・消火布は、消火時間が20秒以下、くすぶり時間が0秒、延焼時間が0秒であり、溶
融滴下がなく、60℃の送風乾燥機で8時間後の重量損失率が5%以下である。
【発明の効果】
【0039】
本発明のペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルは、以下の多くの利点及び効果がある
。
1)ペルフルオロヘキサノンをマイクロカプセル化して各種消火材料に製造することによ
り、液体のペルフルオロヘキサノン消火剤と比較して、特別な保管容器やトリガ装置を必
要とせず、手動スプレーも必要としない。マイクロカプセル消火材料は、一定温度又は直
火の条件では、マイクロカプセル壁が破裂し、ペルフルオロヘキサノンが放出され、これ
により、降温・消火を自発的に達成させる。
【0040】
2)本発明のマイクロカプセルは、消火剤として環境に優しい新規なペルフルオロヘキサ
ノンを使用しており、ペルフルオロヘキサノンの吸着を充填材で補助する必要がなく、芯
壁比が高く(ペルフルオロヘキサノンとカプセルシェルの質量比は9:1)、カプセルシ
ェルは、強度がより高く、ペルフルオロヘキサノンの透過性が低く、通常の環境ではマイ
クロカプセルのペルフルオロヘキサノンがガス化して損失されることを大幅に減少させ、
耐用年数を延ばす。本消火材料は、現在中国国内で初めて開発された製品で、防火、降温
、消火及び火災予防に対して重要な役割を果たすことが期待される。
【0041】
3)消火用乾燥粉末、消火ステッカー、消火コーティングなど、マイクロスケールからマ
クロスケールの消火材料を製造することができ、様々な環境要求に適している。各種バッ
テリー、配電盤、高速鉄道、航空宇宙、電気設備、消防などの生活で防火処理が必要な場
面である。ペルフルオロヘキサノンは、消火後速やかにガス化し、電気を通さず、保護対
象物を汚染せず、財務、ファイル資料や精密施設を破壊することがなく、火災による損失
をできるだけ少なく抑えることができる。本発明の消火材料は、消火時間が通常20s以
下であり、くすぶり時間が0s、延焼時間が0sであり、溶融滴下がなく、60℃の送風
乾燥箱で8時間後の重量損失率が5%以下であり、消火材料中のマイクロカプセルが全て
消費されない限り、繰り返して使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の実施例1における二次被覆後のペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの顕微鏡画像である。
【
図2】本発明の実施形態1におけるペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの乾燥中の顕微鏡画像である。
【
図3】本発明の実施例1における完全乾燥後のペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの顕微鏡画像である。
【
図4】本発明の実施例1におけるペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火ステッカーである。
【
図5】本発明の実施例4におけるペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火布である。
【
図6】本発明の試験例1における消火ステッカーの熱重量分析曲線である。
【
図7】本発明の試験例2における消火ステッカーの保存過程における保持率である。
【
図8】本発明の試験例3における消火ステッカーの60℃での保持率である。
【
図9】本発明の試験例3における消火ステッカーの100℃での保持率である。
【
図10】本発明の試験例4における消火ステッカーの消火性能をテストする装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書において、外部の情報ソース(特許明細書及び他の文献を含む)を参照する場合
に、本発明の特徴を説明するための背景を提供する目的で行われることが多い。特に明記
されていない限り、そのような情報ソースを参照することは、いかなる司法管轄下におい
ても、そのような情報源が従来技術又は当業者の技術常識の一部であることを認めるもの
とは解釈されない。
【0044】
本明細書に開示されている値及び寸法は、記載されている正確な値に厳密に限定されるも
のとは理解されない。むしろ、特に詳細に説明されない限り、そのような値の各々は、記
載された値と、その値の近傍にあって機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図
されている。例えば、「50%」として開示されている値は、「約50%」を意味するこ
とを意図している。
【0045】
本明細書における用語「カプセル」、「ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル」、及
び「マイクロカプセル」は、交換して使用され得る。
【0046】
本明細書で使用される任意の量又は範囲の上限又は下限は、独立して組み合わされ得るこ
とが理解されるべきである。
【0047】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、以下の記載において説明される。本発明の他
の特徴、目的、及び利点は、明細書及び特許請求の範囲から明らかになる。
発明の詳細
【0048】
マイクロカプセルは、カプセルコアと、カプセルコアをカプセル化したカプセルシェルと
を含む。カプセルカプセルのカプセルコアはペルフルオロヘキサノンを含有する。ペルフ
ルオロヘキサノンは、環境にやさしい新規な消火剤であり、常温で液体で、蒸発熱が水の
4%だけで、蒸気圧が水の2500%であるため、非常に気化しやすく、そして熱を速や
かに吸収して温度を下げる効果が得られる。ペルフルオロヘキサノンは、オゾン損失係数
が0、地球温暖化係数が1、大気寿命が0.014年(5日)であるため、ハロン系消火
剤の長期耐久性のある代替品として使用可能であるが、残念ながら、その沸点が49℃と
低いため、消火剤としての用途にはまだ一定の限界がある。出願番号CN2019213
773896の実用新案では、感温ガラスカラムが熱を受けて破裂すると、封止シートが
排出口から外れ、タンク内のペルフルオロヘキサノンが火元に噴射される、タンクを含む
吊り下げ式ペルフルオロヘキサノン消火装置が開示されている。このような消火装置はペ
ルフルオロヘキサノンをタンクに充填する必要があり、その明らかな欠点はタンクが比較
的に大きい体積を占め、精密機器や固体材料に応用することが難しく、移動しにくく、し
かも手動操作がなければ消火を行うことができないことである。また、出願番号CN20
1710786020Xの発明特許は、メラミン及び/又は尿素アルデヒドとホルムアル
デヒドとを反応させて形成した樹脂シェルで主消火材料を封入してマイクロカプセル自発
型消火剤を製造したが、主消火材料の質量百分率が35~60%であり、芯壁比が低く、
消火効果が低く、しかも、その製造過程において、プレポリマー、主消火材料及び水を乳
化してモノマーエマルジョンを得、40~80℃まで昇温し、被覆材料を完全に反応させ
てマイクロカプセル懸濁液を得るが、この温度範囲内では、主消火材料が気化して損失さ
れるため、マイクロカプセルの最終収率が極めて低く、かつそのトリガ温度が96℃と高
いので、その方案には、あまり利用価値がない。したがって、本発明のカプセルシェルは
、カプセルコアに接触してカプセルコアをカプセル化する第1シェル層と、第1シェル層
を包み込み、第1シェル層に接触する第2シェル層とを少なくとも有する。本発明のカプ
セルシェルの構造は、消火剤としてのマイクロカプセルの構造的安定性を確保し、常温常
圧では消火材料が揮発しやすく保管しにくいという従来の使用時の欠点を克服し、消火剤
マイクロカプセルは、高温の発熱源や直火のない通常の環境では、その性状及び構造的安
定性を維持し、長期間保管しても消火性能が減衰しない。さらに、マイクロカプセルの消
火応答温度が80℃まで下がり、マイクロカプセルが熱を受けて消火応答温度に達したと
き又は直火に遭遇したとき、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルのシェルが破裂し
、ペルフルオロヘキサノンが放出されて気化し、熱を速やかに吸収して空気をバリアし、
温度を火炎点温度以下まで下げて、自発的な消火を実現する。本発明によるペルフルオロ
ヘキサノンマイクロカプセルは、温度トリガ式降温材料、防火材料、消火材料として有用
であり、マイクロカプセル壁材を侵食しない種々の材料、界面と複合化して、種々の降温
製品、防火製品、消火製品を製造することができる。
【0049】
第1シェル層及び第2シェル層は、それぞれ1種又は複数種の高分子材料を含む。ペルフ
ルオロヘキサノンマイクロカプセル中のペルフルオロヘキサノンとカプセルシェルは、乾
燥重量で、質量比が5:1~9:1であってもよい。この割合では、ペルフルオロヘキサ
ノンマイクロカプセルの有効消火成分の含有量が多く、このため、消火効果が良好である
。
【0050】
ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルは、直径が20~400μm(例えば、20~
100μm、50~200μm、100~150μm、150~300μm、250~4
00μm)の範囲の寸法を有する。マイクロカプセルの寸法分布は、狭く、広く、又はマ
ルチモードであってもよい。最適なマイクロカプセルの寸法範囲と寸法分布は、期待され
る使用に依存して選択される。この範囲では、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル
は、例えば消火用乾燥粉末、消火ステッカー、消火コーティングなど、マイクロスケール
からマクロスケールの消火材料を製造することができ、様々な環境要求に適しており、応
用範囲が広い。
【0051】
第1シェル層及び第2シェル層に含まれる高分子材料は、それぞれ独立して、天然高分子
、半合成高分子、合成高分子から選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、高分子材
料は、未硬化架橋前の軟化点が30~100℃、硬化後の軟化点が80~150℃、通気
性が700ml/(cm2・h)未満、硬化後の収縮率が5%以内、吸水率が5%以内、
引張強度が10MPaを超えて80MPa未満であるという特性を持ち、形成されたマイ
クロカプセルは、80~130℃や直火に遭遇したとき、軟化して破裂し、ペルフルオロ
ヘキサノンを放出し、消火機能を自発的にトリガすることができる。
【0052】
上記構成によれば、本発明のペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルは、消火材料とし
て高い安定性を示す。マイクロカプセル壁材は、強度が高く、マイクロカプセル中のペル
フルオロヘキサノンのガス化による流失を遅らせ、広い温度・湿度範囲で消火性能を顕著
な減衰なく維持することができ、保管時間や耐用年数が長いので、本発明のペルフルオロ
ヘキサノンマイクロカプセルは、消火材料として有用であり、種々の材料や界面と安定し
て複合化して、防火・消火製品を製造することができる。
【0053】
上記高分子材料の物性に関して、本実施形態のペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル
の安定性は単一の物性ではなく、これらの物性が複合的に関与しているものである。した
がって、特に上記物性については、そのうちの1つの物性が上記範囲内であっても、他の
物性が上記範囲外であると、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル全体の安定性が低
下する。
【0054】
GB/T 12007.6-1989に準拠して軟化点のテストを行った結果、上記本実
施形態における高分子材料の硬化架橋前の軟化点及び硬化後の軟化点が上記所定の範囲で
あれば、80~130℃や直火に遭遇したとき、消火機能を自発的にトリガするため、優
れた消火性能が得られる。硬化架橋前の軟化点及び硬化後の軟化点が上記範囲よりも低け
れば、保管環境が制限され、高温環境で保管されると放出されたペルフルオロヘキサノン
が漏れてしまい、経済性の観点から好ましくない。一方、硬化架橋前の軟化点及び硬化後
の軟化点が上記の範囲よりも高ければ、迅速かつ効果的な消火には不利である。したがっ
て、本実施形態における高分子材料の軟化点は、硬化架橋前には30~100℃、硬化後
には80~150℃である。
【0055】
GB/T 7755.1-2018に準拠して通気性のテストを行った結果、上記高分子
材料の硬化後の通気性がカプセルシェルの緻密性に関係していたことが判明した。通気性
が上記の範囲よりも大きければ、カプセルシェルの緻密性が低下し、ペルフルオロヘキサ
ノンマイクロカプセルのガス化脱出が生じやすくなり、保存安定性が低下する。
【0056】
HG/T 2625-1994に準拠して収縮率のテストを行った結果、上記高分子材料
の硬化後の収縮率はペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの寸法安定性に関係してい
る。収縮率が上記の範囲よりも大きければ、製造中にペルフルオロヘキサノンマイクロカ
プセルの構造及び寸法が不安定であり、製造されたペルフルオロヘキサノンマイクロカプ
セルの寸法が制御不能であり、安定性が低下し、材料又は界面と複合化して製造された物
品の構造及び/又は寸法安定性が低下する。
【0057】
GB/T 8810-1988に準拠して吸水率のテストを行った結果、上記高分子材料
の硬化後の吸水率はカプセルシェルの浸透性に関係している。吸水率が上記の範囲よりも
大きければ、カプセルシェルの透過性は上昇し、取り扱いや保管中に含水環境に影響され
やすく、ペルフルオロヘキサノンの漏れを引き起こし、安定性を低下させる。
【0058】
GB/T 30776-2014に準拠して引張強度のテストを行った結果、上記高分子
材料の硬化後の引張強度はカプセルシェルの機械的安定性に関係している。引張強度が上
記の範囲よりも小さければ、カプセルは損傷又は破壊しやすく、ペルフルオロヘキサノン
マイクロカプセルがカプセルシェルから流出し、安定性が低下し、防火及び/又は消火製
品の製造におけるその応用範囲が縮小し、引張強度が上記範囲よりも大きければ、カプセ
ル内のペルフルオロヘキサノンの流出が妨げられ、消火効果が低下する。
【0059】
いくつかの実施形態では、上記カプセルシェルは、紫外線防止剤をさらに含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、上記カプセルシェルは、ナノ酸化物をさらに含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ又はナノ金属酸化物を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ及びナノ金属酸化物を含む。
【0063】
好ましくは、上記ナノ金属酸化物は、水への分散性が良好であり、上記ナノ金属酸化物は
、ナノ二酸化チタン、ナノ酸化亜鉛、ナノ酸化アルミニウム、ナノ酸化マグネシウム、ナ
ノ酸化カルシウムから選ばれる1種又は複数種である。上記ナノ酸化物はペルフルオロヘ
キサノンマイクロカプセルに必要な効果を提供する。例えば、消火剤マイクロカプセルの
形成、消火及び保管において、高温応答により正常に破裂するほかに、カプセルシェルが
温度・湿度、酸化、光照射、振動などの外界の要素によって破損し、ペルフルオロヘキサ
ノンが漏れることもあり、また、マイクロカプセルの製造過程に少量の水分がマイクロカ
プセルに入り、これによりペルフルオロヘキサノンが部分的に加水分解し、加水分解産物
の一つであるフッ化水素酸がマイクロカプセルシェルを腐食し、完全なマイクロカプセル
の構造を破壊し、マイクロカプセルシェルが不完全で内容物が漏洩してしまうことが発生
し、ペルフルオロヘキサノンがゆっくり揮発し、マイクロカプセルの消火効果が低下する
。出願人は多くの試験研究により、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを製造する
過程において、高分子溶液にナノ酸化ケイ素、ナノ金属酸化物を添加することにより、ペ
ルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの保存安定性を著しく向上できることを発見した
。消火過程において、ペルフルオロヘキサノンが容易に加水分解することは当業者によく
知られており、加水分解によりフッ化水素酸が形成され、壁材が侵食され、ペルフルオロ
ヘキサノンが漏れてしまい、その耐用年数が短縮され、一方、ナノ金属酸化物は、消火材
料の加水分解生成物を吸着し、フッ化水素酸と反応して、イオン化しにくいフッ化物を形
成し、これにより、フッ化水素酸の残留を減少させ、マイクロカプセルの壁材に対する侵
食を回避し、破裂していないマイクロカプセルに固有の形態を維持し、マイクロカプセル
の保存安定性を著しく高め、完成品の耐用年数が大幅に長くなり、消火回数が増える。
【0064】
いくつかの実施形態では、天然高分子の例としては、ゼラチン、アルギン酸塩、アラビア
ガム、キトサン、ポリグルタミン酸、β-シクロデキストリン、又はこれらの組み合わせ
が含まれるが、これらに限定されない。半合成高分子の例としては、カルボキシメチルセ
ルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、オクテニルコハク酸エステ
ル化デンプン、又はこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。合成高分
子の例としては、ポリメタクリレート、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アミノ樹脂、フェ
ノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、キシレン
・ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、尿素ホルムアルデヒド樹脂
、又はこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
いくつかの実施形態では、第1シェル層に含まれる高分子材料は水溶性ポリマーであり、
水不溶性又は難溶性の芯材との混合系に他の成分を加えたり、温度などの特定の条件を変
更したりすることにより、相分離が生じて、これらの他の成分が芯材の周囲に被覆され、
カプセルが形成される。好ましくは、高分子材料は、ゼラチン、アルギン酸塩、アラビア
ガム、キトサン、ポリグルタミン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル
メチルセルロース、β-シクロデキストリン、オクテニルコハク酸エステル化デンプンか
らなる群から選ばれる1種又は複数種である。
【0066】
いくつかの実施形態では、上記第2シェル層に含まれる高分子材料は成膜性を有し、好ま
しくは、上記高分子材料は、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロ
ースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、アラビアガム、ポリ
グルタミン酸、β-シクロデキストリン、オクテニルコハク酸エステル化デンプン、ポリ
メチルメタクリレート、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ア
クリル樹脂、フラン樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、キシレン・ホルムアルデ
ヒド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、尿素ホルムアルデヒド樹脂から選ばれる1
種又は複数種である。
【0067】
好ましくは、第1シェル層と第2シェル層とに含まれる高分子材料が異なる。
【0068】
[第1シェル層]
いくつかの実施形態では、第1シェル層は、ゼラチンを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1シェル層は、ポリメチルメタクリレート又はポリエチルメ
タクリレートなどのポリアクリレートを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、上記第1シェル層は、紫外線防止剤を含む。好ましくは、紫外
線防止剤は、サリチル酸エステル類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類から選ば
れる1種又は複数種である。
【0071】
いくつかの実施形態では、上記第1シェル層は、ナノ酸化物をさらに含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ又はナノ金属酸化物を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ及びナノ金属酸化物を含む。
【0074】
好ましくは、上記ナノ金属酸化物は、水への分散性が良好であり、二酸化チタン、酸化亜
鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムから選ばれる1種又は複数種
である。好ましくは、上記ナノ金属酸化物は、ナノ酸化亜鉛及び/又はナノ二酸化チタン
である。
【0075】
単層シェルマイクロカプセルは、液体コア材料を液滴中に乳化し、液滴の周囲に第1シェ
ル層を形成することにより形成することができる。液体コア材料のマイクロ封入(マイク
ロカプセル化)は、コアセルベーション法、insitu重合法、及び界面重合法を含む
、当業者に知られている種々の方法を用いて行うことができる。このような技術は当業者
に知られている。
【0076】
いくつかの実施形態では、マイクロカプセルは、水中油型乳化と、その後の硬化剤又は架
橋剤による硬化とを含む凝固法によって製造される。このようなプロセスは、当業者に知
られており、カプセルコアを形成し得る非水相、コアセルベーション層を形成し得る壁材
の水相、壁材を硬化させる硬化剤又は架橋剤を使用することを含む。非水相と水相とを乳
化して、連続した水相中に分散させた非水相の液滴を含む水中油型エマルジョンを形成し
た後、硬化剤又は架橋剤を添加することにより、ペルフルオロヘキサノンの周囲で高分子
材料を硬化・架橋させてペルフルオロヘキサノンを封入する。
【0077】
従って、単層シェルマイクロカプセルは、カプセルコアを形成し得るペルフルオロヘキサ
ノンの非水相を提供し、コアセルベーション層を形成し得る壁材の水相を提供し、非水相
と水相とを乳化して、水相中に分散させた非水相液を含むエマルジョンを形成し、そして
、壁材を硬化させて、カプセルコアを含む液滴の周囲に壁材を沈殿させ、ペルフルオロヘ
キサノンを封入することによって製造される。
【0078】
いくつかの実施形態では、上記水相は、紫外線防止剤を含む。好ましくは、紫外線防止剤
は、サリチル酸エステル類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類から選ばれる1種
又は複数種である。好ましくは、上記紫外線防止剤は、サリチル酸フェニル及び/又はサ
リチル酸オクチルである。さらに好ましくは、紫外線防止剤の添加量は高分子材料の質量
に対して0.05~0.2%である。
【0079】
いくつかの実施形態では、上記水相は、ナノ酸化物をさらに含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ又はナノ金属酸化物を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ及びナノ金属酸化物を含む。
【0082】
好ましくは、上記ナノ金属酸化物は、水への分散性が良好であり、上記ナノ金属酸化物は
、ナノ二酸化チタン、ナノ酸化亜鉛、ナノ酸化アルミニウム、ナノ酸化マグネシウム、ナ
ノ酸化カルシウムから選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、上記ナノ金属酸化物
は、ナノ酸化亜鉛及び/又はナノ二酸化チタンである。
【0083】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物は、ナノシリカ、ナノ二酸化チタン、及びナノ
酸化亜鉛である。
【0084】
いくつかの実施形態では、上記ナノ酸化物の添加量は、壁材の乾燥質量に対して0.05
~0.2%である。また、ナノシリカとナノ金属酸化物の添加量の質量比が1:2.5~
5である。
【0085】
いくつかの実施形態では、上記乳化工程の温度が0~40℃であり、撹拌速度が300~
3000rpm/minである。
【0086】
いくつかの実施形態では、上記単層シェルカプセルは、単一コアセルベーション法を用い
て製造され、壁材は、ゼラチン、アルギン酸塩、アラビアガム、キトサン、ポリグルタミ
ン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルグアーガムナトリウム、β-シク
ロデキストリン、オクテニルコハク酸エステル化デンプンから選ばれる1種である。
【0087】
いくつかの実施形態では、上記単層シェルカプセルは、コンプレックスコアセルベーショ
ン法を用いて製造され、壁材は、ゼラチンと、ゼラチンとは逆電荷を有するポリマーとを
含む。好ましくは、上記ポリマーは、アラビアガム、キトサン、アルギン酸塩、カルボキ
シメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は複数種である。
【0088】
いくつかの実施形態では、壁材が単一の種類である場合、第1シェル層を形成する典型的
な方法は単一コアセルベーション法であり、具体的な製造方法は、濃度5~30質量%の
壁材水溶液を調製し、紫外線防止剤、ナノ酸化物を添加して均一に混合するステップと、
ペルフルオロヘキサノンを壁材溶液に加え、撹拌し、乳化してマイクロカプセルエマルシ
ョンを形成し、ペルフルオロヘキサノンをマイクロカプセルシェルに封入するステップと
、硬化剤を加えて、マイクロカプセルの壁材を硬化させた後、洗浄して分離し、単層シェ
ルペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを得るステップと、を含む。ペルフルオロヘ
キサノンの添加量は、壁材の乾燥質量に対して1~9倍、好ましくは5~9倍である。
【0089】
いくつかの実施形態では、硬化剤は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルア
ルデヒド、グリオキサアルデヒドから選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、上記
硬化剤はホルムアルデヒド及び/又はグルタルアルデヒドであり、硬化剤の添加量は、上
記壁材の乾燥質量に対して0.1~10%である。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1シェル層は、界面重合プロセスによって形成される。例え
ば、第1シェル層は、ペルフルオロヘキサノン及び1種又は複数種の油溶性モノマーを含
む非水相と、1種又は複数種の水溶性モノマー及び乳化剤を含む水相を使用することを含
む界面重合プロセスによって製造することができる。非水相と水相とを乳化して、水相中
に分散させた非水相の液滴を含むエマルジョンを形成する。その後、通常は加熱によりモ
ノマーを重合させ、なお、重合は、非水相と水相との界面で行われる。
【0091】
いくつかの実施形態では、第1シェル層は、insitu重合プロセスによって製造され
る。このようなプロセスは、当技術分野で知られており、通常、重合によりポリマーシェ
ルを形成可能な前駆体材料を含む連続相中に分散された液体コア材料の液滴を含むエマル
ジョンを製造するステップと、前駆体材料を重合させてポリマー壁材を形成し、それによ
って液滴を封入するステップと、を含む。
【0092】
本明細書に記載の乳化プロセスの各々において、当該分野で知られている任意の適切な混
合装置を使用して乳化することができる。例えば、ホモジナイザー、コロイドミル、超音
波分散装置、又は超音波乳化器を使用することができる。ホモジナイザーを用いることが
好ましい。
【0093】
マイクロカプセルの寸法は、マイクロ封入プロセスの乳化ステップ中に使用される撹拌機
又は均質混合機の撹拌翼やロータブレードの撹拌速度及び形状などのいくつかの要素を変
更することによって、又は高分子材料の重合条件(反応温度及び時間など)を変更して反
応速度を調整することによって制御することができる。特に、マイクロカプセルの寸法は
、撹拌速度を調整して、エマルション中の液体コア材料の液滴の寸法を調整することによ
り制御することができる。
【0094】
マイクロカプセル内のカプセルコアとカプセルシェルの質量比は、ペルフルオロヘキサノ
ンと高分子材料の質量比などの特定の要素を変化させることにより制御する。
【0095】
[第2シェル層]
いくつかの実施形態では、第2シェル層は、第1シェル層とは異なる高分子材料を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、第2シェル層に含まれる高分子材料は、ゼラチン、アルギン酸
塩、アラビアガム、キトサン、ポリグルタミン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウ
ム、β-シクロデキストリン、オクテニルコハク酸エステル化デンプンから選ばれる1種
又は複数種である。
【0097】
好ましくは、第1シェル層の製造方法は、単層シェルペルフルオロヘキサノンマイクロカ
プセルを高分子材料溶液中に分散させて、60min以上撹拌し、高分子材料自体の成膜
能力に応じて、成膜を促進する硬化剤又は沈殿剤を添加するか否かを決定し、ろ過して洗
浄し、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを得るステップを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2シェル層に含まれる高分子材料は、エポキシ樹脂、ポリウ
レタン、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂、レゾルシン・ホルム
アルデヒド樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、
尿素ホルムアルデヒド樹脂から選ばれる1種又は複数種である。
【0099】
いくつかの実施形態では、第2シェル層の製造方法は、重合によりポリマーシェルを形成
可能な前駆体材料を含む連続相中に分散された予備的なペルフルオロヘキサノンマイクロ
カプセルを含むエマルジョンを製造するステップと、前駆体材料を重合させて第2シェル
層を形成し、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを得るステップと、を含む。単層
シェルペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを、重合により第2シェル層を形成可能
な前駆体材料を含む溶液に加えて分散させ、60min以上撹拌し、ろ過して洗浄し、ペ
ルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを得る。
【0100】
[任意の第3シェル層]
いくつかの実施形態では、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの第2シェル層の外
に第3シェル層がさらに被覆されている。好ましくは、第3シェル層の材料は、多糖類を
含む。
【0101】
多糖類ポリマーは当業者に周知である。好ましい非イオン性多糖類は、ローカストビーン
ガム、キシログルカン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピ
ルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、及びこれらの混合物
から選ばれる。
【0102】
[マイクロカプセル送達システム]
本発明のマイクロカプセルは、製品で使用されるカプセル送達システム(例えば、マイク
ロカプセル組成物)として配合してもよい。
【0103】
(i)スラリー
マイクロカプセル送達システムを高分子溶液と複合化して、マイクロカプセル送達システ
ムの重量の10~80%(好ましくは1~65%、より好ましくは5~55%)のレベル
でマイクロカプセルを含むスラリーを形成してもよい。
【0104】
(ii)粉末
マイクロカプセルは例えば低温乾燥することができる。マイクロカプセルを低温乾燥する
ことにより、マイクロカプセルを粉末として供給することができ、ペルフルオロヘキサノ
ンマイクロカプセル粉末を、水又は極性溶媒、例えばエタノールなどのアルコールに分散
させることができ、水中及びエタノール中で2ヶ月以上保存することができ、安定性が高
い。
【0105】
[使用]
本発明のマイクロカプセル及び送達システムは、防火及び/又は消火製品の製造における
使用、防火及び/又は消火関連製品の製造における使用、及び防火における使用に好適で
あるが、これらに限定されるものではない。特に各種バッテリー、配電盤、高速鉄道、航
空・宇宙、電気設備、消防などの生活で防火処理が必要な場面に用いられる。
【0106】
[製品]
ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル又はペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル
粉末と、少なくとも1つの基質と、を含む防火及び/又は消火材料
【0107】
いくつかの実施形態では、上記マイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末を含むマトリ
ックス材料、及びこれらのマイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末をマトリックス材
料に組み込む方法に関する。いくつかの実施形態では、上記の各実施形態のマイクロカプ
セル粉末を含むコーティング及び他の加工物に関する。理論に縛られることは望ましくな
いが、上記マイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末を含有するポリマーなどのマトリ
ックス材料は、高耐火性、高難燃性、高消火性を有し、塗布用ポリマーの化学構造は、マ
トリックス材料の特性を一定に維持するために実質的に変化しなくてもよい。マトリック
ス材料は、基質用コーティングを作製するために使用され得る。マトリックス材料は、独
立した形状の製造品を作製し、それを種々の表面に適合した形態を有する防火及び/又は
消火製品に製造するために使用され得る。
【0108】
マトリックス材料は、上記実施形態のマイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末を添加
してもよいポリマーや水性塗料などの任意の材料であってもよい。各実施形態の基質は、
例えば、金属、木材、織物、コンクリート、粒状板、ポリマー材料、又はこれらの組合せ
であってもよい。いくつかの実施形態では、基質を重合させるポリマーマトリックス材料
は、ポリオレフィン、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、又はこれ
らの組合せであってもよい。マトリックス材料中に組み込まれ、又は塗布基質としてのマ
トリックス材料を含む本発明のマイクロカプセルの製造品は任意のものであってもよく、
いくつかの実施形態では、熱にさらされ、及び/又は発火しやすいものであってもよい。
製造品の例としては、床面、紡績品、織物、フロアカバー、枕、担架パッド、シートカバ
ー、粘着テープ、衣類、ワイピングクロス、家具、搬送装置、配送トラック、配送軽自動
車、工具、包装、容器、機械ハウジング、機械カバー、電子デバイス、電子デバイスキャ
リア、ウエハプレート、ウエハタンク、バッテリー、アンテナ、トランジスタ、プリンタ
アセンブリ、燃料ポンプ、燃料ポンプハンドル、ホース、ホースカバー、燃料ポンプ付属
品、燃料ポンプノズル、燃料配管、自動車用シートトリム、外装パネル、内装パネル、車
両コンソール部品、ガスケット、シール、Oリング、ダイヤフラム、ギア、バルブ、ブッ
シング、ショックアブソーバー、グロメット、ストップ、ベローズ、プラグ、ショックマ
ウント、ステアリングギア、ウェザーストリップ、ローラー、チューブコネクタ、コンピ
ュータケース、回路基板、回路基板用ビアのメッキ層、マイクロプロセッサ、ランダムク
セスメモリコンポーネント、読み取り専用メモリコンポーネント、ディスクドライブ、電
極、又はフォトリソグラフィレジストが含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
マトリックス材料に組み込まれたマイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末が、熱を受
けてある温度に達したとき、又は直火に遭遇したとき、破裂してペルフルオロヘキサノン
を放出し、熱を速やかに吸収して空気をバリアし、温度を火炎点温度以下に下げて自発的
な消火を実現し、マトリックス材料への破壊を低減させ、防火又は消火の目的を達成する
。例えば、マイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末に組み込まれたポリマー構成を有
する製造品は、防火性、耐火性及び/又は消火性であってもよく、熱を受けてある温度に
達したとき、又は直火に遭遇したとき、マイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末が破
裂し、ペルフルオロヘキサノンを放出し、熱を速やかに吸収して空気をバリアし、温度を
火炎点温度以下に下げて、マイクロカプセル又はマイクロカプセル粉末近傍の環境、マト
リックス材料上のいかなる火も消滅させる。ペルフルオロヘキサノンは、消火後速やかに
気化し、電気を通さず、被保護対象を汚染せず、財務、ファイル資料や精密施設を破壊す
ることがなく、火災による損失をできるだけ少なく抑えることができる。例えば、ポリマ
ー中のマイクロカプセル粉末が破裂することにより、マイクロカプセル粉末を含むポリマ
ーで被覆された布へのダメージが低減され、火が消火され、布基質への炎の蔓延が防止さ
れ、構造への破壊が低減される。
【0110】
本発明のカプセルを含む例示的な製品は、消火用シート及び防火・消火布を含むが、これ
らに限定されない。
【0111】
本発明は、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末と、マトリックス材料と、を含
む、消火用シートに関する。
【0112】
いくつかの実施形態では、上記消火用シートの消火層の表面に保護フィルムがさらに被覆
されている。消火材料の表面に保護フィルムを被覆することにより、消火材料の安定性を
さらに向上させることができる。保護フィルムの形成には、消火層の表面を高分子ポリマ
ーで塗布する方法が使用され得る。消火層の表面に特定の高分子膜をスプレーコートする
ことにより、消火マイクロカプセル層の表面に被覆された保護フィルムが形成され、この
保護フィルムは、空気や水分のバリア、老化防止、酸・アルカリミスト防止、紫外線防止
、適度な湿度を維持するとともに、一定条件で自己修復機能を有する。高分子ポリマーは
、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリ
ウレア樹脂、高分子ケイ素、天然由来高分子、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、又はこれら
の組み合わせを含むが、これらに限定されない。好ましくは、上記保護フィルムの厚さが
50~200μmである。
【0113】
いくつかの実施形態では、上記マトリックス材料は、好ましくはメラミン-ホルムアルデ
ヒド樹脂である高分子バインダを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、上記消化用シートの製造方法は、ペルフルオロヘキサノンマイ
クロカプセル粉末をマトリックス材料と混合して均一に分散させた後、型内に導入し、硬
化させて乾燥し、消火層の表面に高分子ポリマーをスプレーコートして、消火用シートを
得るステップを含む。ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末は消火用シート中に
40~80質量%含有され、消火用シートは、消火時間が20s以下、くすぶり時間が0
s以下、延焼時間が0s以下、溶融滴下がなく、60℃の送風乾燥機で8時間後の重量損
失率が5%以下である。
【0115】
本発明は、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末と、マトリックス材料と、基質
布と、を含み、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末が基質布の表面のコーティ
ングに配置される防火・消火布に関する。
【0116】
いくつかの実施形態では、上記基質布は難燃布である。難燃布の例としては、ガラス繊維
布、玄武岩繊維防火布、アクリル綿繊維防火布、Nomex防火布、SM防火布、青色ガ
ラス繊維防火布、又はアルミニウム箔防火布が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
いくつかの実施形態では、上記コーティングの表面には保護フィルムがさらに被覆されて
いる。コーティングの表面に保護フィルムを被覆することにより、防火・消火材料の安定
性をさらに向上させることができる。保護フィルムの形成には、コーティングの表面に高
分子ポリマーを塗布する方法が使用され得る。消火層の表面に特定の高分子膜をスプレー
コートすることにより、消火マイクロカプセル層の表面に被覆された保護フィルムが形成
され、この保護フィルムは、空気や水分のバリア、老化防止、酸・アルカリミスト防止、
紫外線防止、適度な湿度を維持するとともに、一定条件で自己修復機能を有する。高分子
ポリマーは、疎水性、成膜性、好適な軟化点及びガラス転移温度を有し、ポリエステル類
、ポリウレタン類、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレア樹脂、高分
子ケイ素、天然由来高分子、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、又はこれらの組み合わせを含
むが、これらに限定されない。好ましくは、上記保護フィルムの厚さが50~200μm
。好ましくは、上記コーティングの厚さが0.5~3mmである。
【0118】
いくつかの実施形態では、上記マトリックス材料は、ペルフルオロヘキサノンマイクロカ
プセル半製品スラリーの製造助剤である特定の高分子材料であり、安定化及び粘度制御用
のハイドロコロイドであり、通常、ハイドロコロイドは、コアセルベーション、沈殿及び
乳化に対するスラリーのコロイド安定性を改善するために使用される。「ハイドロコロイ
ド」という用語は、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性の特性を持つ広義なタ
イプの水溶性又は水分散性ポリマーを指す。好ましくは、上記製剤助剤がポリエステルで
ある。
【0119】
いくつかの実施形態では、上記防火・消火布の製造方法は、ペルフルオロヘキサノンマイ
クロカプセル粉末を製剤助剤溶液と混合して均一に分散させ、塗工性を有するペルフルオ
ロヘキサノンマイクロカプセル半製品スラリーを調製し、基質の表面にブラシ塗布及び/
又はブレード塗布によりコーティングを形成し、硬化させて乾燥し、コーティングの表面
に高分子ポリマーをスプレーコートして、防火・消火布を得るステップを含む。上記ペル
フルオロヘキサノンマイクロカプセル粉末は、防火・消火布のコーティング中に40~8
0質量%含有され、防火・消火布は、消火時間が20秒以下、くすぶり時間が0秒、延焼
時間が0秒であり、溶融滴下がなく、60℃の送風乾燥機で8時間後の重量損失率が5%
以下である。
【0120】
以下、実施例を用いて本発明についてさらに説明する。なお、保護を請求する本発明は如
何なる態様においてもこれらの実施例によって限定されることを意図しない。
【0121】
実施例1:消火ステッカー
ゼラチン12.5g、サリチル酸エステル0.01g、ナノシリカ粉末0.003g、ナ
ノ酸化亜鉛粉末0.01gを含む壁材溶液100gを調製し、60℃で撹拌して溶解し、
撹拌して均一に分散させた。
【0122】
壁材溶液にペルフルオロヘキサノン90gを加え、35℃、2000rpmで60分間撹
拌すると、ゼラチンを壁材とし、ペルフルオロヘキサノンを包埋したマイクロカプセルエ
マルジョンを形成した。
【0123】
20wt%グルタルアルデヒド2mLを加え、30分間撹拌した。反応終了後、マイクロ
カプセルを濾取し、脱イオン水で2回洗浄し、マイクロカプセル予備生成物90gを得た
。
【0124】
マイクロカプセル90gをレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー溶液100g
に加え、撹拌して分散させ、2時間撹拌した後、濾過して洗浄し、ペルフルオロヘキサノ
ンマイクロカプセルを得、このペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを低温乾燥して
、マイクロカプセル粉末85gを得た。ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの顕微
鏡画像を
図1に、その乾燥中の顕微鏡画像を
図2に、完全乾燥後の顕微鏡画像を
図3に示
す。
【0125】
得られたマイクロカプセル粉末80gを水溶性メラミン・ホルムアルデヒド樹脂76gに
加え、10分間撹拌した後、型に流し込み、40℃で乾燥成形して、ペルフルオロヘキサ
ノン消火用シートを得た。消火用シートの表面に約50μmのポリ尿素をブレード塗布し
、消火用シートの裏面に両面粘着テープを貼り付け、ペルフルオロヘキサノンマイクロカ
プセル消火ステッカーを作製した。ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの消火ステ
ッカーを
図4に示す。
【0126】
実施例2:消火ステッカー
ゼラチン10g、サリチル酸エステル0.01g、ナノシリカ粉末0.005g、ナノ酸
化亜鉛粉末0.015gを含む壁材溶液100gを調製し、60℃で撹拌して溶解し、撹
拌して均一に分散させた。
【0127】
壁材溶液にペルフルオロヘキサノン85gを加え、35℃、2000rpmで60分間撹
拌すると、ゼラチンを壁材とし、ペルフルオロヘキサノンを包埋したマイクロカプセルエ
マルジョンを形成した。
【0128】
20wt%グルタルアルデヒド3mLを加え、30分間撹拌した。反応終了後、マイクロ
カプセルを濾取し、脱イオン水で2回洗浄し、マイクロカプセル予備生成物85gを得た
。
【0129】
マイクロカプセル85gにレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー溶液100g
に加え、撹拌して分散させ、2時間撹拌した後、濾過して洗浄し、ペルフルオロヘキサノ
ンマイクロカプセルを得、このペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを低温乾燥して
、マイクロカプセル粉末82gを得た。
【0130】
マイクロカプセル粉末80gを水溶性メラミン・ホルムアルデヒド樹脂76gに加え、1
0分間撹拌した後、型に流し込み、40℃で乾燥成形して、ペルフルオロヘキサノン消火
用シートを得た。消火用シートの表面に約50μmのポリ尿素をブレード塗布し、消火用
シートの裏面に両面粘着テープを貼り付け、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消
火ステッカーを作製した。
【0131】
実施例3
ゼラチン15g、サリチル酸エステル0.02g、ナノシリカ粉末0.008g、ナノ酸
化亜鉛粉末0.024gを含む壁材溶液100gを調製し、60℃で撹拌して溶解し、撹
拌して均一に分散させた。
【0132】
壁材溶液にペルフルオロヘキサノン92gを加え、35℃、2000rpmで60分間撹
拌すると、ゼラチンを壁材とし、ペルフルオロヘキサノンを包埋したマイクロカプセルエ
マルジョンを形成した。
【0133】
20wt%グルタルアルデヒド3mLを加え、30分間撹拌した。反応終了後、マイクロ
カプセルを濾取し、脱イオン水で2回洗浄し、マイクロカプセル予備生成物94gを得た
。
【0134】
マイクロカプセル94gをレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー溶液105g
に加え、撹拌して分散させ、2時間撹拌した後、濾過して洗浄し、ペルフルオロヘキサノ
ンマイクロカプセルを得、このペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルを低温乾燥して
、マイクロカプセル粉末90gを得た。
【0135】
マイクロカプセル粉末80gを水溶性メラミン・ホルムアルデヒド樹脂76gに加え、1
0分間撹拌した後、型に流し込み、40℃で乾燥成形して、ペルフルオロヘキサノン消火
用シートを得た。消火用シートの表面に約50μmのポリ尿素をブレード塗布し、消火用
シートの裏面に両面粘着テープを貼り付け、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消
火ステッカーを作製した。
【0136】
実施例4:消火布
ゼラチン10g、サリチル酸エステル0.01g、ナノシリカ粉末0.004g、ナノア
ルミナ粉末0.012gを含む壁材溶液100gを調製し、60℃で溶解、分散するまで
撹拌した。
【0137】
ペルフルオロヘキサノン50gを加え、25℃で40分間撹拌し、10wt%ホルムアル
デヒド溶液2mLをゆっくりと加え、30分間撹拌し、分離してろ過し、マイクロカプセ
ル55gを得た。
【0138】
マイクロカプセル55gを1wt%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液100g
に加え、1時間撹拌し、濾過して洗浄し、低温乾燥して、マイクロカプセル粉末54gを
得た。
【0139】
得られたマイクロカプセル粉末54gをポリエステル溶液45gに加え、10分間撹拌し
て得られたマイクロカプセルスラリーを、ドクターブレード塗布法により難燃布に塗布し
、ドクターブレードにより厚さを1mmに制御した。乾燥後、50μmの高分子ポリエス
テル自己修復材をマイクロカプセルコーティングの表面にスプレーコート塗布し、乾燥し
、安定性の高いペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火布を得た。ペルフルオロヘ
キサノンマイクロカプセル消火布を
図5に示し、その中の右上の白い部分は難燃性基布で
ある。
【0140】
試験例1:TG特徴付け
実施例1で製造されたペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火ステッカーについて
熱重量分析法で熱安定性テストを行った。消火ステッカーの熱重量分析曲線を
図6に示す
。
図6より、40~90℃では、マイクロカプセルの僅かが熱により破裂するが、110
℃に達すると、マイクロカプセル壁が著しく破裂し始め、その消火応答温度は約110℃
であることが分かった。なお、熱重量分析工程はプログラム昇温であり、この工程では、
マイクロカプセルがすべて破裂することはないので、重量損失率が実際に含まれるペルフ
ルオロヘキサノン質量と等しくない。
【0141】
試験例2:保存安定性分析
ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火用ステッカーの保存安定性は消火用ステッ
カーの使用に重要である。本試験では、実施例1で製造された消火ステッカーを室内環境
(温度25℃±2℃、相対湿度60%±5%)で静置し、ペルフルオロヘキサノンマイク
ロカプセル消火ステッカーの保持率の変化からその保存安定性を検討した。消火ステッカ
ーの保持率は、次のように計算される。
消火ステッカー保管中の保持率を
図7に示す。消火ステッカーの前期の質量変化は消火ス
テッカー中のわずかな残留水分の揮発とマイクロカプセルの破裂によるものであり、水分
の流失に伴い、後期、特に20日後に、重量損失が緩慢になり、ペルフルオロヘキサノン
マイクロカプセルが消火ステッカー中に安定して存在することが明らかになり、室内環境
で2ケ月静置した後の残部乾燥重量の質量百分率は約95%であり、比較的に良い保存安
定性を示し、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルが静置時間の延長に伴って持続的
に破裂することがなく、マイクロカプセル中のペルフルオロヘキサノンの保持と消火性能
の維持に有利であることが明らかになった。
【0142】
試験例3:耐熱性分析
1.ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火ステッカーの耐熱性は高温環境でのそ
の使用に重要な影響を与える。そこで、本試験では、実施例1で製造された消火ステッカ
ーを60℃のオーブンに置き、ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火ステッカー
の保持率の変化からペルフルオロヘキサノンマイクロカプセルの耐熱性を分析し、また、
ロシアのPYCINTEX消火ステッカーを用いて比較を行った。消火ステッカーの60
℃での保持率を
図8に示す。
図8より、本実施で製造された消火ステッカーは、ロシア製
の同種消火ステッカーに比べて、60℃で8時間ベークしたときの保持率が高く、より高
い熱安定性を有することが分かった。
【0143】
2.ペルフルオロヘキサノンマイクロカプセル消火ステッカーの耐熱性をさらに観察する
ために、本実験では、オーブンの温度を100℃まで上げ、実施例1で製造されたペルフ
ルオロヘキサノンマイクロカプセル消火ステッカーの保持率の変化からペルフルオロヘキ
サノンマイクロカプセルの耐熱性を分析し、消火ステッカーの100℃での保持率を
図9
に示す。
図9より、本実験における消火ステッカーの重量損失率は、100℃の高温で2
0日間ベークした後で、約30%であることが分かった。また、装置10を用いて消火実
験を行った。その結果、初期消火時間は2.7sで、消火期間中の赤外線検出温度は40
℃以内であった。100℃で20日間ベークした後にも、依然として消火効果があり、消
火時間は6s、消火期間中の赤外線検出温度は44℃以内であった。
【0144】
試験例4:消火ステッカーの性能
約800℃の炎を火元とし、赤外線温度計で温度を測定し、ストップウォッチで消火時間
を測定し、プレス鋼板の表面にシート材を固定し、シート材を炎の外炎から1.5cmに
下を向けて置き、消火時間及びシート材の上部の消火前後の温度差を測定し、消火時間及
び温度差により防火及び/又は消火効果を特徴付けることを含む防火及び/又は消火材料
の防火及び/又は消火効果のテスト方法である。
【0145】
上記の方法に基づいて、実験室で小規模消火実験を行って、消火ステッカーの消火性能を
検証し、試験装置を
図10に示し、ボッシュ社製の赤外線温度計GIS 500を用いて
、サンプルから10cm離れて温度を測定し、炎の大きさ、サンプルの高さを一定にして
、サンプルをプレス鋼板に貼り付け、炎の外炎から1.5cmに下を向けて置き、炎を炎
の温度約800℃の最小のものとし、設備は500℃以内でしかもサンプルから一定の距
離だけ離れなければ測定できないため、サンプル又は炎から10cmのところの温度を測
定し、このため、高温の部分は低く示された。サンプルとして実施例1及び実施例2の消
火ステッカーサンプルを使用し、また、ロシアPYCINTEX消火ステッカーを用いて
比較を行った。サンプルごとに複数の部位を選択し、同じ位置で繰り返し試験を行い、消
火に要する時間を観察した。ロシアのサンプルはこの火元では消火できず、点火7s後に
消火ステッカーが燃焼し、温度が130℃まで上昇した。実施例1、実施例2で製造され
た消火ステッカーをそれぞれ部位10個ずつ選択して、テストし、その結果を表1に示す
。
【0146】
表1 消火ステッカーの消火性能
表1から分かるように、本願の実施例1及び実施例2で製造された消火ステッカーのサン
プルは、いずれも、3s以内に消火することができ、しかも、消火中の温度はわずかに上
昇しただけであり、最高40℃を超えないことから、塗膜が直火を速やかに消すことがで
き、消火部位の温度はわずかに上昇しただけであり、能動消火性能に優れており、塗膜が
塗布された物品を確実に保護できることを示している。比較分析の結果、ロシアのPYC
INTEX消火ステッカーは、能動消火ができず、しかも、サンプルは7s後に燃焼し、
裏部の温度は130℃まで上昇し、防火、消火の役割を果たせなかった。
【0147】
実施例5:消火ステッカー
マイクロカプセルの予備硬化時にナノシリカ粉末を添加せず、ナノ酸化亜鉛粉末0.02
4gのみを添加した以外、実施例3と同様な製造方法で、実施例3と同様の他のパラメー
タとステップに従って消火ステッカーを製造した。
【0148】
実施例6:消火ステッカー
マイクロカプセルの予備硬化時にナノ酸化亜鉛粉末を添加せず、ナノシリカ粉末0.00
8gのみを添加した以外、実施例3と同様な製造方法で、実施例2と同様の他のパラメー
タとステップに従って消火ステッカーを製造した。
【0149】
実施例7:消火ステッカー
マイクロカプセルの予備硬化時にナノシリカ粉末とナノ酸化亜鉛粉末の重量配合比が実施
例3と異なる以外、実施例3と同様な製造方法で、ナノシリカ粉末とナノ酸化亜鉛粉末の
重量比に基づいて一連の塗膜を得て、消火ステッカーを製造した。重量比は、それぞれ1
:6、1:4、1:2.5、1:1、3:1、6:1、9:1である。
【0150】
実施例8:消火ステッカー
マイクロカプセルの予備硬化時にナノ酸化亜鉛粉末及びナノシリカ粉末が添加されていな
い以外、実施例3と同様な製造方法で、実施例3と同様の他のパラメータ及びステップに
従って消火ステッカーを製造した。
【0151】
試験例5:消火ステッカー
試験例4の方法により実施例3及び実施例5~8(それぞれ、サンプル3、サンプル5、
サンプル6、サンプル群7、サンプル8と表記)で製造された消火ステッカーの数回消火
後の消火性能の減衰を、ボッシュ社製の赤外線温度計GIS 500でテストし、器具は
サンプルから10cmで温度を測定し、炎の大きさ、サンプルの高さを一定にし、テスト
装置は
図10に示される通りである。サンプルをプレス鋼板に貼り付け、炎の外炎から1
.5cmのところに置き、炎を炎の温度約800℃の最小のものとした。それぞれの消火
応答時間をテストし、その結果を表2に示す。
【0152】
表2 消火時間
注:「/」は7s以内に消火が完了しなかったことを意味し、「//」は前回の結果が「
/」であるので、今回はテストが行われなかったことを意味する。
【0153】
表2から分かるように、サンプル8は、4回目では、炎を消すことができず、サンプル5
とサンプル6に比べて、その消火効果がある程度低下したことが示唆され、ナノ酸化物の
添加は消火作用の繰り返しと長期効果の発揮に有利であることが示唆された。サンプル5
とサンプル6の部位では、4回目の消火時に炎を消すことができない状況が存在し、サン
プル3と比べて、その消火効果がある程度低下したことが示唆され、ナノシリカとナノ金
属酸化物のいずれかだけを添加した場合、消火作用の繰り返しと長期効果の発揮が両者の
同時添加の場合の効果に劣ることが示唆され、同様に、サンプル群7中の多種のサンプル
にも、4回目に消火ができないことが存在し、しかも、サンプル群7中の多種のサンプル
と実施例3のデータを比較すると、ナノシリカとナノ金属酸化物が1:2.5~5の重量
比にある場合にのみ、優れた繰り返し消火作用を発揮することができ、しかも、この場合
はその通常の応用環境での保存安定性に有利であることがわかった。
【0154】
試験例6:実施例4で製造された消火布の消火性能分析
試験例4の方法により実施例4で製造された消火布の消火性能をテストし、実験室で小規
模消火実験を行い、試験装置は
図10に示され、ボッシュ社製の赤外線温度計GIS 5
00でテストし、器具はサンプルから10cmに温度を測定し、炎の大きさ、サンプルの
高さを一定にし、サンプルのマイクロカプセル層をプレス鋼板に貼り付け、炎の外炎から
1.5cmのところに置き、炎を炎の温度約800℃の最小のものとした。サンプルとし
て実施例4の消火布サンプルを使用し、また、実施例4の消火布の基布、すなわちマイク
ロカプセルコーティングを施していない難燃布を選択して、比較を行った。同じ位置につ
いて試験を繰り返し、消火に要する時間を観察した。その結果、難燃布は自発的な消火が
できず、サンプルは12s後に背部の温度が200℃まで上昇し、消火と降温の役割を果
たせなかった。一方、消火布は15s以内に消火を達成させ、しかも、その間の温度は4
0℃以下であった。
【0155】
上記実施例における従来技術は、当業者に周知の従来技術であるため、ここでは詳細に説
明しない。
【0156】
上記の実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではな
く、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形
を行うこともできる。したがって、すべての同等の技術案もまた、本発明の範囲に属し、
本発明の特許保護の範囲は請求項によって限定されるべきである。
【国際調査報告】