(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】離型コーティング組成物{RELEASE COATING COMPOSITION}
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20240719BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240719BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240719BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240719BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240719BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D5/02
C09D7/65
C09D7/61
C09D7/63
C09D5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552490
(86)(22)【出願日】2023-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2023008253
(87)【国際公開番号】W WO2024010241
(87)【国際公開日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0083009
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520080171
【氏名又は名称】東レ尖端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INC.
【住所又は居所原語表記】(Imsu-dong)300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ミンウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ジョンウク
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DA162
4J038DL031
4J038GA03
4J038GA04
4J038KA03
4J038KA04
4J038MA10
4J038NA10
4J038PA19
4J038PB09
(57)【要約】
本開示は、離型コーティング組成物に関するものである。本開示の一側面による離型コーティング組成物は、離型フィルムへの製造時に広い範囲の剥離力を実現でき、従来のシリコーン系離型フィルムに比べて優れた経時安定性を示すことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃以下の温度で硬化可能な組成物として、
ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane,PDMS)を含むシリコーンエマルジョン成分(A);
1つの分子内に前記シリコーンエマルジョン成分と縮合反応できる官能基を2つ以上含む成分(B);及び
酸触媒を含む、水系離型コーティング組成物。
【請求項2】
前記成分(B)は、シリコーンエマルジョン成分縮合反応によってSi-O-R-N結合構造(ここで、Rは炭素数1~4のアルキル基)を形成する、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項3】
前記成分(B)に含まれる官能基は、アミン基又はアミン誘導官能基である、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項4】
前記成分(B)は、化学式1のメラミン化合物、そのオリゴマー、その重合体、又は、これらの組合わせであるメラミン成分である、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1のうち、Xは水素原子、-CH
2OH、又は-CH
2-O-Rを示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは、炭素数1~8個のアルキル基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。少なくとも1つのXは-CH
2-O-CH
3である。)
【請求項5】
前記酸触媒は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メラミンヨウ化亜鉛(melamine ZnI
2)、メラミントリスルホン酸(melamine trisulfonic acid;MTSA)、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェートスルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩で構成された群より選択された1つ以上である、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項6】
前記成分(B)と前記酸触媒の重量比が100:5~100:30である、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項7】
組成物全体の総重量を基準に0.2~1.0重量%の成分(B)を含む、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項8】
組成物全体の総重量を基準に0.02~9重量%のシリコーンエマルジョンを含む、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項9】
前記成分(B)及び前記シリコーンエマルジョンの重量比は、固形分基準で100:10~100:900である、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項10】
帯電防止剤、伝導性向上剤、pH調節剤、及び防汚剤のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項11】
帯電防止剤は、PEDOT、PEDOT:PSS、ポリアニリン、ポリピロール、第4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩からなる群より選択された1つ以上である、請求項10に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項12】
pH調節剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及びアンモニア水からなる群より選択された1つ以上である、請求項10に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項13】
組成物全体の総重量を基準に、
0.1~30重量%の帯電防止剤、
0.01~0.3重量%のpH調節剤、及び
0.1~0.3重量%の防汚剤のうちの1つ以上を含む、
請求項10に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項14】
水又は水と有機溶剤の組合わせを含み、
前記水と有機溶剤の組合比は、水:有機溶剤の重量比が50:50以上、60:40以上、70:30以上、80:20以上、90:10以上、95:5以上、又は、99:1以上である、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【請求項15】
粘・接着フィルム又はテープの保護フィルム用離型フィルムの製造、加熱加圧成形工程用離型フィルムの製造、樹脂物を塗工する塗工基材の製造、他基材に塗工された樹脂層を保護するために合紙される合紙ライナーの製造、又は、セラミックグリーンシート製造工程用離型フィルムの製造に用いられるものである、請求項1に記載の水系離型コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は水系離型コーティング組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、通常、粘着剤の皮膜が付着され、粘着成分を大気中の異物又は望まない被着剤から保護するための保護フィルムとして用いられるものであって、ポリエステル基材フィルム上に離型層が設けられた構造を取るのが一般的である。
【0003】
また、離型フィルムは、一般に、粘・接着フィルム又はテープの保護フィルムの用途で付着され、粘・接着剤が用いられる前まで意図しない被着物に被着したり、ホコリ、異物などによる汚染を防止したりする用途で用いられ、更に他の用途としては、プリント配線基板、イン-モールド成形のように加熱加圧成形工程で型と成形物が固着されないようにしたり、セラミックスラリーなど各種の樹脂物を離型フィルムの離型面に塗工する塗工基材としての用途、他基材に塗工された各種の樹脂層を保護するために合紙される用途などの中間材として用いられ得る。特に、離型フィルムは、MLCC(Multi-Layer Ceramic Capacitor,MLCC)を構成するグリーンシートにおいて、セラミックスラリーを薄くて均一に塗布するためのキャリアフィルムの用途で用いられる。MLCCは、電気を蓄積したり、電流を安定させるために用いられるキャパシタの一種として、そのサイズが小さく、静電容量が大きいため、携帯用電子機器に広く用いられており、特に、最近、スマートフォン及びタブレットPCの普及により、その需要が大きく増加している。このようなMLCCは、グリーンシートと内部金属電極を数十又は数百層交互に積層した後、外部電極を連結することによって完成し、そのサイズは1mm以下から数nmまで多様である。
【0004】
MLCCに用いられるグリーンシートは、支持体であるキャリアフィルム上にセラミックスラリーが均一に塗布された後、焼成して形成され、グリーンシートを成形するためのキャリアフィルムは、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格競争力等に優れた2軸延伸ポリエステルフィルムが基材として用いられ、その一面に高分子シリコーン離型層が塗布された離型フィルムが用いられている。
【0005】
最近、MLCCの小型化及び高容量化の傾向に応じてグリーンシートの厚さを更に薄膜化し、セラミックスラリーを更に多層で積層することが要求されているが、MLCCの製造時に用いられる離型フィルムの剥離力が低すぎる場合、セラミックスラリーが離型フィルムから先剥離する問題が発生し得る。反対に、離型フィルムの剥離力が高すぎる場合、セラミックグリーンシートから離型フィルムの除去時、グリーンシートに亀裂、破断などが発生し得る。従って、MLCCに用いられる離型フィルムは、特に適当な剥離力によって剥がされることができる物性が要求される。
【0006】
また、セラミックスラリー製造時に用いられる有機溶媒が十分に揮発できずに離型層に残留する場合、グリーンシートの表面でオレンジピールのようなシミが発生するが、この問題は、粗さ要因以外に、離型層の耐溶剤性が低くてセラミックスラリーの溶媒が離型層内に残留する場合に発生して改善が必要であった。上記のようなグリーンシートの欠陥を未然に防止することがMLCCの信頼性の向上につながるので、MLCCの製造において離型フィルムの機能が非常に重要であると言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は離型コーティング組成物のための技術を提供する。具体的には、前記離型コーティング組成物は、離型フィルムの製造に用いられ得る。
【0008】
本開示は多様な範囲の剥離力を実現できる離型コーティング組成物を提供することを目的とする。
【0009】
本開示はシリコーンエマルジョンを含みながらも、水系システムで低温硬化できる離型コーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、一側面において、離型コーティング組成物を提供することができる。
【0011】
一側面において、離型コーティング組成物は、水系離型コーティング組成物であり得る。
【0012】
一側面において、水系離型コーティング組成物は、150℃以下の温度で硬化可能な組成物として、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane,PDMS)を含むシリコーンエマルジョン成分(A);1つの分子内に前記シリコーンエマルジョン成分と縮合反応できる官能基を2つ以上含む成分(B);及び酸触媒を含み得る。
【0013】
一側面において、前記成分(B)は、シリコーンエマルジョン成分縮合反応によってSi-O-R-N結合構造(ここで、Rは炭素数1~4のアルキル基)を形成し得る。
【0014】
一側面において、前記成分(B)に含まれる官能基は、アミン基又はアミン誘導官能基であり得る。
【0015】
一側面において、前記成分(B)は、化学式1のメラミン化合物、そのオリゴマー、その重合体、又は、これらの組合わせであるメラミン成分であり得る。
【0016】
[化学式1]
【0017】
【0018】
(前記化学式1のうち、Xは水素原子、-CH2OH、又は-CH2-O-Rを示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは、炭素数1~8個のアルキル基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。少なくとも1つのXは-CH2-O-CH3である。)
【0019】
一側面において、酸触媒は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メラミンヨウ化亜鉛(melamine ZnI2)、メラミントリスルホン酸(melamine trisulfonic acid;MTSA)、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェートスルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩で構成された群より選択された1つ以上であり得る。
【0020】
一側面において、成分(B)と酸触媒の重量比が100:5~100:30、100:10~100:20、又は、100:10~100:15であり得る。
【0021】
一側面において、水系離型コーティング組成物は、組成物全体の総重量を基準に0.2~1.0重量%の成分(B)又は組成物全体の総重量を基準に0.02~9重量%のシリコーンエマルジョンを含み得る。
【0022】
一側面において、成分(B)及びシリコーンエマルジョンの重量比は、固形分を基準に100:10~100:900であり得る。
【0023】
一側面において、水系離型コーティング組成物は、帯電防止剤、伝導性向上剤、pH調節剤、及び防汚剤のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0024】
一側面において、帯電防止剤は、PEDOT、PEDOT:PSS、ポリアニリン、ポリピロール、第4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩からなる群より選択された1つ以上であり得る。
【0025】
一側面において、pH調節剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及びアンモニア水からなる群より選択された1つ以上であり得る。
【0026】
一側面において、水系離型コーティング組成物は、組成物全体の総重量を基準に、0.1~30重量%の帯電防止剤、0.01~0.3重量%のpH調節剤、又は、0.1~0.3重量%の防汚剤を含み得る。
【0027】
一側面において、水系離型コーティング組成物は、水又は水と有機溶剤の組合わせを含み、前記水と有機溶剤の組合比は、水:有機溶剤の重量比が50:50以上、60:40以上、70:30以上、80:20以上、90:10以上、95:5以上、又は、99:1以上であり得る。
【0028】
一側面において、水系離型コーティング組成物は、粘・接着フィルム又はテープの保護フィルム用離型フィルムの製造、加熱加圧成形工程用離型フィルムの製造、樹脂物を塗工する塗工基材の製造、他基材に塗工された樹脂層を保護するために合紙される合紙ライナーの製造、又は、セラミックグリーンシート製造工程用離型フィルムの製造に用いられるものであり得る。
【発明の効果】
【0029】
本開示の一側面による離型コーティング組成物は、離型フィルムへの製造時に広い範囲の剥離力を実現でき、優れた経時安定性を示すことができ、このような効果は従来のシリコーン系離型コーティング組成物と比較した時、更に優れたものである。
【0030】
本開示の一側面による離型コーティング組成物は、シリコーンエマルジョンを含みながらも、水系システムで低温硬化でき、このような効果は、従来、高温硬化のみ可能であったシリコーンエマルジョンを含む組成物と比較した時、更に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来のシリコーン系離型コーティング組成物と本発明の一実施例による水系離型コーティング組成物の150℃以下の温度での低温硬化によるフィルム形成を示した模式図である。
【0032】
【
図2】本発明の一実施例による離型フィルムのFT-IRスペクトル測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本文書に記載された多様な側面又は実施例は、本開示の技術的思想を明確に説明する目的で例示されたものであり、これを特定の実施形態に限定しようとするわけではない。本開示の技術的思想は、本文書に記載された各側面又は実施例の多様な変更(modifications)、均等物(equivalents)、代替物(alternatives)及び各側面又は実施例の全部又は一部から選択的に組み合わせられた側面又は実施例を含む。また、本開示の技術的思想の権利範囲は以下に提示される多様な側面又は実施例やこれに関する具体的説明に限定されない。
【0034】
技術的や科学的な用語を含め、本文書で用いられる用語は、特に定義されない限り、本開示の属する技術分野で通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有し得る。
【0035】
1.基材フィルム
【0036】
本開示の一側面において、離型フィルムを構成する基材フィルムは、従来、離型フィルムの分野で広く用いられている公知のフィルムを用いることができ、これに制限されない。
【0037】
一側面において、基材フィルムは、ポリエステル系重合体から形成されたものであり得るが、離型コーティング組成物が塗布される基材フィルムはポリエステル系フィルムに限定されない。具体的には、ポリエステル系重合体は、ポリエチレンテレフタレート重合体、ポリブチレンテレフタレート重合体、ポリエチレンナフタレート重合体、ポリフェニレンサルファイド重合体、ポリエーテルエーテルケトン重合体、ポリフタルアミド重合体、ポリイミド重合体、ポリスルホン重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリエーテルイミド重合体又はこれらの組合わせであり得るが、これに制限されるわけではない。
【0038】
一側面において、ポリエステル系重合体は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールの縮合反応から得られたポリエステルであり得る。一側面において、前記芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P-オキシ安息香酸など)、又は、これらの組合わせであり得るが、これに制限されるわけではない。一側面において、脂肪族グリコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、又は、これらの組合わせであり得るが、これに制限されるわけではない。
【0039】
一側面において、ポリエステル系重合体としては、前記芳香族ジカルボン酸及び脂肪族グリコールのうちの2種以上の物質を併用でき、第三の成分を含有する共重合体も用いることができるが、耐熱性と耐化学性及び機械強度、経済性を考慮する場合、ポリエチレンテレフタレートを用いることが望ましいこともある。一側面において、基材フィルムは、2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが望ましいこともある。
【0040】
一側面において、基材フィルムは、10~200μmの厚さを有し得るが、これに制限されるわけではない。
【0041】
一側面において、離型コーティング組成物は、基材フィルムの少なくとも1面に塗布され、離型層を形成し得る。
【0042】
2.成分(B)
【0043】
本開示の一側面による離型コーティング組成物は、成分(B)を硬化後に離型層を構成する主鎖成分として用い、成分(B)を用いる場合、高い架橋密度によって硬い離型層塗膜を得ることができるようになり、既存のシリコーン系離型コーティング組成物を越える水準の硬化度を達成することができる。MLCCの製造のためのセラミックグリーンシート製造工程用離型フィルムでは、剥離力を所望の水準に調節するために離型層塗膜を硬くさせることが効果的であるためである。
【0044】
既存のシリコーン系離型コーティング組成物は、一般に、シリコーンエマルジョンなどのシリコーン系物質のみを含むが、シリコーンエマルジョンは低温で硬化が難しく、約230℃以上の高温で硬化がよく進み、約150℃の温度ではシリコーンエマルジョンのみを含んだ組成物の使用が難しかった。
図1は、従来のシリコーン系離型コーティング組成物と本発明の一実施例による水系離型コーティング組成物の150℃以下の温度での低温硬化によるフィルム形成を示した模式図である。
図1を参照すると、150℃以下の温度で既存のシリコーン系離型コーティング組成物を用いる場合、基材フィルム(例えば、PETフィルム)との結合力が低いことを確認することができる(左側図面参照)。
【0045】
例えば、フィルムの製造工程は、完成したフィルム生地をアンワインド(unwind)しながらコーティング後に、リワインド(rewind)してフィルムを製造するオフライン工程と、重合体を押し出す工程を通じて、シート化以後のフィルム化する過程で、中間コーティングで重合体をフィルムにするインライン工程に分けられる。この時、オフライン工程での乾燥温度は最大約150℃であり、インライン工程はフィルム延伸工程で約210~240℃の乾燥温度を有し得る。従って、オフライン工程では150℃以下の温度での硬化のために非水系溶剤(即ち、溶剤系溶媒)のみを用いてきた。
【0046】
しかし、環境へのやさしさなどの要求によって前記組成物の溶剤を水系で用いる場合、約150℃以下(例えば、約130℃以下)の温度で硬化が行われなければならず、水系で使用可能な剤形はエマルジョンが適するが、前述した通り、シリコーンエマルジョンを用いる場合、150℃以下の温度で硬化が難しい問題点があった。また、硬化をしても離型フィルムのRub-off特性、基材密着性が低下する問題点があり、これを解決するために界面活性剤を投入する場合、硬化が抑制される問題点があった。
【0047】
本開示の一側面による離型コーティング組成物は、上述した通り、シリコーンエマルジョン成分と縮合反応できる官能基を2つ以上含む成分(B)を含むことによって、150℃以下の温度で高い硬化度を達成しながら、Rub-off特性などの優れた物性を実現することができる。従って、オフライン工程でも水系エマルジョンを使用できる可能性がある。
図1を参照すると、成分(B)(例えば、メラミン成分)を活用して、相分離硬化反応が誘導され、密着力も優れ、硬化度が高いフィルムを実現可能であることを確認することができる(右側図面参照)。
【0048】
一側面において、前記成分(B)は、シリコーンエマルジョン成分縮合反応によってSi-O-R-N結合構造(ここで、Rは炭素数1~4のアルキル基)を形成し得る。
【0049】
例えば、Rは、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、又は-CH2CH2CH2CH2-であり得る。
【0050】
一側面において、前記成分(B)に含まれる官能基は、アミン基又はアミン誘導官能基であり得る。
【0051】
一側面において、成分(B)は、1つの分子内に前記シリコーンエマルジョン成分と縮合反応できる官能基を2つ以上含むものであれば、特に限定されないが、メラミン成分であり得、一般にメラミンとホルムアルデヒドの反応によって製造され、このように生成されたメチロール化メラミンを酸触媒条件で適切な炭素数のアルコールと反応させて得られたアルキルエーテル化メラミン化合物であり得る。
【0052】
一側面において、成分(B)は、下記化学式1の構造を有するメラミン化合物、そのオリゴマー、その重合体及び/又はこれらの組合わせを意味し得る。
【0053】
[化学式1]
【0054】
【0055】
ここで、Xは、水素原子、-CH2OH、又は-CH2-O-Rを示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは、炭素数1~8個のアルキル基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、少なくとも1つのXは-CH2-O-CH3であり得る。
【0056】
一側面において、前記Xは、いずれも-CH2-O-CH3であり得、メラミン化合物はフルエーテル型メチル化メラミン、メラミンオリゴマー及び/又はメラミン重合体であり得る。
【0057】
一側面において、成分(B)として、商業的に入手可能で、広く用いられている多様な製品を用いることができ、例えば、サイメル300、サイメル301、サイメル303LF、サイメル350、又は、サイメル370N(以上、allnex社製品)を用いることができるが、これに制限されない。商業的に入手可能な製品を単独又は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0058】
一側面において、成分(B)の含量は、組成物全体の総重量を基準に約0.2~約1.0重量%であり得、具体的には、約0.2~約0.8重量%、約0.3~約0.7重量%、約0.4~約0.6重量%、又は、約0.5~約0.6重量%であり得る。成分(B)を前記最小値未満で過度に少なく用いる場合、所望の硬化効果、即ち、離型層を硬く維持させて離型フィルムのグリーンシート剥離力を低くする効果が弱くなり、剥離力が所望の通りに調節されないこともある。また、成分(B)の硬化が十分に行われない場合、離型フィルムの経時安定性が減少することがあるので、成分(B)の含量は下記に言及する酸触媒との含量比率を満たすことがよい。
【0059】
一側面において、成分(B)において全酸価は390~780mg KOH/gであり得、具体的には、400 KOH/g以上、450 KOH/g以上、500 KOH/g以上、550 KOH/g以上、600 KOH/g以上、650 KOH/g以上、700 KOH/g以上、又は、750 KOH/g以上であるか、730 KOH/g以下、680 KOH/g以下、630 KOH/g以下、580 KOH/g以下、530 KOH/g以下、480 KOH/g以下、又は、430 KOH/g以下であり得るが、これに制限されるわけではない。
【0060】
3.シリコーンエマルジョン成分
【0061】
本開示の一側面において、シリコーンエマルジョン成分は、離型コーティング組成物でバインダー又は剥離力調節剤として用いられ得る。成分(B)は、単量体の分子量が低いので、硬化後に密な架橋構造を形成し、高い架橋密度を有するようになり、コーティング時に離型層の硬度が高くなるが、離型層の硬度が高くなるほどグリーンシートの剥離力が低くなる問題点がある。これを解決するために、Si-CH3のような離型性を有する作用基を含み、軟らかい(soft)特性を有するシリコーンエマルジョン成分をともに硬化させることによって、硬さが解放され、離型層の軟らかさ(softness)が増加することができる。上述した通り、離型層の軟らかさが増加するに伴い、離型フィルムの剥離力も上昇するようになり、本開示は、成分(B)とシリコーンエマルジョン成分の組合わせにより、広い範囲の剥離力、特に、広い範囲のテープ常温1日剥離力を達成する効果を奏する。
【0062】
シリコーンエマルジョン成分は、成分(B)と縮合反応によるSi-O-N結合構造を形成させることができ、形成された成分(B)-シリコーンエマルジョン成分の共重合体及びこの構造は、離型層の軟らかさを増加させ、経時安定性を増加させることができる。
【0063】
例えば、上述した化学式1のメラミン成分は、最大計6つの官能基を有することができる。この時、前記メラミン成分のうちNX2基がシリコーンエマルジョン成分と縮合反応によるSi-O-N結合構造を形成することができる。
【0064】
通常、シリコーン系離型フィルムでは、シリコーン重合体成分を添加して剥離力を増加させるが、この時、シリコーン重合体成分の含量が組成物全体の総重量を基準に50重量%を超えることになると、経時安定性において深刻な問題が発生する。時間が経つにつれ、離型層の表面に存在すべきシリコーン重合体成分が離型層の内部に含浸するためである。従来のシリコーン系離型フィルムとは異なり、本開示の離型コーティング組成物は、上述したように、成分(B)とシリコーンエマルジョン成分が共重合体になり、架橋網構造を形成するので、離型性を示す作用基が離型層の表面で内部に含浸せずに引き続き維持されることができ、これにより、優れた経時安定性を発揮することができる。
【0065】
一側面において、シリコーンエマルジョン成分は、成分(B)と結合して架橋網構造を形成し、軟らかさを付与できるものであれば、制限されない。例えば、シリコーンエマルジョン成分は、特に制限されないが、主鎖以外に側鎖を含まないことがある。
【0066】
一実施例において、前記シリコーンエマルジョン成分は、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、PEG)を含まないことがある。
【0067】
一実施例において、前記シリコーンエマルジョン成分は、水酸基、ポリエーテル基及びポリエステル基を含まないことがある。
【0068】
一実施例において、前記シリコーンエマルジョン成分は、アルケニル基を含まないことがある。
【0069】
側鎖を含むシリコーンエマルジョンを用いる場合、離型物性が重剥離(TESA7475テープ基準200g以上)のみに限定されなければならず、これを含む組成物を用いたフィルムはMLCCのような重剥離領域でのみ使用が制限され得る。しかし、本開示において、前記シリコーンエマルジョン成分は、上述した通り、主鎖以外にポリアルキレングリコール、水酸基、ポリエーテル基、ポリエステル基、アルケニル基などの側鎖を含まないことによって、成分(B)による硬化を用いても既存のシリコーン系硬化を用いた場合のように、Si-CH3成分で離型層の表面を形成できるので、MLCCのような重剥離用途だけではなく、軽剥離領域などの多様な用途にも活用が可能である。
【0070】
例えば、シリコーンエマルジョン成分は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)であり得るが、これに制限されない。例えば、シリコーンエマルジョン成分は、分岐型(branched)ポリジメチルシロキサンであり得るが、これに制限されない。
【0071】
一実施例において、シリコーンエマルジョン成分のうちSi-Vi対Si-Hの比は1:1.5~1:2.5であり得る。例えば、シリコーンエマルジョン成分のうちSi-Vi対Si-Hの比は1:1.6~1:2.3であり得る。ここで、「Si-Vi」はシリコーン-ビニル基結合を意味し、Si-Hはシリコーン-水素結合を意味する。シリコーンエマルジョン成分のうちSi-Vi:Si-Hiの比が1:1.5未満であれば、組成物の硬化時、硬化が不十分で残留接着率及び基材密着力が不良になり得る。シリコーンエマルジョン成分のうちSi-Vi:Si-Hiの比が1:2.5を超え、Si-Hの含量が過度に多くなる場合、Si-Hが他成分(例えば、水酸基など)と反応して、時間が経つほど剥離力が上がり、経時安定性が低下することがある。
【0072】
一実施例において、シリコーンエマルジョン成分の含量は、組成物全体の総重量を基準に0.02~9重量%、0.02~8重量%、0.03~7重量%、0.04~6重量%、又は、0.05~6重量%であり得る。シリコーンエマルジョン成分を前記最大値を超えて過量に用いる場合、成分(B)が十分に硬化できず、硬化していないシリコーンエマルジョン成分又は成分(B)が離型層の表面に上がってくるようになり、離型フィルムのRub-off特性(即ち、離型層の基材フィルムに対する付着力又は密着力)が不良に示され得る。シリコーンエマルジョン成分を前記最小値未満で過度に少なく用いる場合、硬化反応による架橋網構造が十分に形成されないので、所望の剥離力又は経時安定性を達成できないことがある。
【0073】
一実施例において、シリコーンエマルジョン成分は、金属触媒をさらに含み得る。例えば、前記金属触媒は、アルカリ金属触媒、アルカリ土類金属触媒、又は、希土類金属触媒であり得るが、これに制限されるわけではない。例えば、前記金属触媒は、白金触媒であり得るが、これに制限されるわけではない。
【0074】
一側面において、成分(B)とシリコーンエマルジョンの重量比は、固形分基準で100:10~100:900であり得、前記記載された上限及び下限値の間に存在する重量比であり得る。
【0075】
4.酸触媒
【0076】
一側面において、酸触媒は、成分(B)の架橋反応又は成分(B)とシリコーンエマルジョン成分の架橋反応を触媒するものと知られているものであれば制限されず、これらを適宜選択して用いることができる。例えば、酸触媒は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メラミンヨウ化亜鉛(melamine ZnI2)、メラミントリスルホン酸(melamine trisulfonic acid;MTSA)、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェートなどの有機酸類;スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などの熱酸発生剤を用いることができるが、これに制限されるわけではない。前記酸触媒成分は1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
一側面において、成分(B)と酸触媒の重量比は100:5~100:30、100:10~100:20、又は、100:10~100:15であり得、前記記載された上限及び下限値の間に存在する重量比であり得る。酸触媒の含量が前記重量比の最小値より過度に少なく用いられる場合、硬化反応が十分に起きなくなり、最大値を超えて過量に用いられる場合、過硬化が発生し、2つの場合のいずれも経時安定性が不良になる結果が示され得る。従って、優れた経時安定性を達成するためには、成分(B)と酸触媒の重量比が前記範囲を満たすことがよい。
【0078】
5.溶媒
【0079】
一側面において、離型コーティング組成物は、水系離型コーティング組成物であり得る。一側面において、水系は水溶液又は水分散体を意味し得、組成物の溶媒成分が水単独であるか、下記に記載する水と有機溶剤の組合わせであるものを意味し得る。
【0080】
一側面において、水系離型コーティング組成物は水系ベースであるので、離型層を形成させる場合、揮発性有機化合物(VOC)の排出量を根本的に低減させることができ、環境へのやさしさの要件を満たすことができる。また、水系帯電防止剤のような水系添加剤と混合して簡単に用いられることができ、1液型調液で離型フィルムの帯電防止能と離型性をいずれも実現できる長所がある。
【0081】
一側面において、離型コーティング組成物は、水系溶媒をさらに含み得る。前記水系溶媒は、水又は水と有機溶剤の組合わせであり得る。前記水と有機溶剤の組合比は、水:有機溶剤の重量比が50:50以上、60:40以上、70:30以上、80:20以上、85:15以上、90:10以上、95:5以上、又は、99:1以上であり得る。
【0082】
一側面において、有機溶剤は、離型フィルム分野で広く用いられている公知の有機溶剤であり得、水と相溶性が良い溶媒ならば特に制限されない。例えば、有機溶剤は、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ガンマ-ブチロラクトン、及びこれらの組合わせからなる群より選択された1つ以上であり得るが、これに制限されるわけではない。
【0083】
6.その他成分
【0084】
一側面において、離型コーティング組成物は、達成しようとする離型層の物性(例:枠を変化させない範囲内で帯電防止剤、伝導性向上剤、pH調節剤、界面活性剤、及び防汚剤のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0085】
(1)帯電防止剤及び伝導性向上剤
【0086】
本開示の一側面において、帯電防止剤は、離型層に帯電防止能を付与するだけでなく、異物の吸着を防止する効果を奏することができる。セラミックグリーンシート製造工程ではセラミックグリーンシートを切断及び裁断する工程が存在し、この時、セラミックグリーンシートは粒子の粒のようなビーズが集まっている形態であるので、グリーンシートを切断する過程でビーズ脱落現象が発生する。従って、帯電防止能は、離型フィルムがセラミックグリーンシートとともに切断される過程で静電気によるビーズ脱落現象を防止することができ、これにより、セラミックグリーンシート製造の工程性に寄与することができる。
【0087】
一側面において、帯電防止剤は、離型フィルム分野で広く用いられている公知の帯電防止剤であり得、特に制限されない。例えば、帯電防止剤は、PEDOT(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))、PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)、ポリアニリン、ポリピロール、第4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩からなる群より選択されたものであり得るが、これに制限されるわけではない。
【0088】
一側面において、帯電防止剤は、固形分である帯電防止剤の成分を含有する水溶液の形態で離型コーティング組成物に含まれ得(固形分含量は1.0%~2.0%又は1.5%~2.0%であり得る)、この時、帯電防止剤を含有する水溶液の含量は組成物全体の総重量を基準に約0.1~約30重量%、約1~約25重量%、又は、約5~約20重量%であり得、前記記載された上限値又は下限値の間に存在する含量であり得る。帯電防止剤の含量が前記最大値を超えて過量に用いられる場合、離型層の外観に欠点を誘発し得、このような欠点はブルースポット(bluespot)と見られ得る。
【0089】
一側面において、帯電防止剤は、前記含量で含まれ、離型層に約104~1010ohm/sqの表面抵抗を付与することができる。
【0090】
一側面において、離型コーティング組成物は、伝導性向上剤をさらに含んで所望の水準の表面抵抗、即ち、帯電防止能を達成することができる。このような伝導性向上剤は、帯電防止剤の性能を補助する役割をすることができ、伝導性向上剤を用いるようになれば、さらに少ない量の帯電防止剤を用いても所望の離型層の表面抵抗の水準を達成することができる。
【0091】
一側面において、伝導性向上剤の含量は、組成物全体の総重量を基準に約1~20重量%、約1~15重量%、約1~10重量%、約1~8重量%、約1.5~8重量%、約1.5~6重量%、約2~6重量%、約2.5~6重量%、約3~6重量%、約4~6重量%であり得る。伝導性向上剤の含量が前記最大値を超えて過量に用いられる場合、離型層の硬化を妨げることがあり、離型層の外観及びRub-off特性が所望の水準に達成されないことがあり、伝導性向上剤の含量が前記最小値未満で過度に少なく用いる場合、その効果が不備なこともある。
【0092】
一側面において、伝導性向上剤は、従来、離型フィルム分野で広く用いられている公知の伝導性向上剤であり得、特に制限されない。例えば、伝導性向上剤は、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコール、ブチルグリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ガンマ-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルカーボネート、及びソルビトールからなる群より選択されたものであり得るが、これに制限されるわけではない。
【0093】
(2)pH調節剤
【0094】
本開示の一側面において、pH調節剤は、組成物全体のpHを所望の水準に調節することができる。離型コーティング組成物には酸性を示す帯電防止剤が含まれ得、組成物が酸性を帯びるようになると、界面活性剤又はシリコーンエマルジョン成分のような中性又は塩基性成分が十分に機能できないこともあるので、この場合、pH調節が必要である。離型コーティング組成物全体のpHが調節されない場合、組成物自体の経時安定性が急激に悪くなることがあり、組成物を製造した後、経過時間に応じて離型層の外観が劣悪になる現象が発生し得る。例えば、離型コーティング組成物を製造し、直ちに基材フィルムに塗布して離型層を形成させた場合には、良好であった外観が、製造後約4時間が経過し、離型層を形成させた場合には、離型層の外観がまだらになる現象があらわれることがある。
【0095】
一側面において、pH調節剤は、離型フィルム分野で広く知られている公知のpH調節剤であり得、特に制限されない。例えば、pH調節剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及びアンモニア水からなる群より選択された1つ以上であり得るが、これに制限されない。pH調節剤は、塩基性pH調節剤であり得る。
【0096】
一側面において、pH調節剤の含量は、組成物全体の総重量を基準に0.05~0.3重量%、0.1~0.3重量%、又は、0.15~0.25重量%であり得、前記記載された上限値又は下限値の間に存在する含量であり得る。pH調節剤が前記最大値を超えて過量に用いられる場合、離型層の硬化を妨げることがある。
【0097】
(3)界面活性剤
【0098】
本開示の一側面において、界面活性剤は、離型コーティング組成物のウェティング(wetting)性又は基材フィルムに対する塗布性を向上させ、成分(B)とシリコーンエマルジョン成分の相溶性を向上させるものであり得る。一側面において、水系離型コーティング組成物において水を単独溶媒で用いる場合には、互いに異なる2種以上の界面活性剤を用いることができる。
【0099】
一側面において、界面活性剤は、離型フィルム分野で広く知られている公知の界面活性剤として表面張力を低くすることができる成分であり得、特に制限されない。例えば、界面活性剤は、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、変性シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又は、これらの組合わせであり得るが、これに制限されない。
【0100】
一側面において、カチオン系界面活性剤は、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、又は、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩であり得るが、これに制限されない。
【0101】
一側面において、アニオン系界面活性剤は、例えば、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸エステル塩、アルキルポリオキシエチレンスルホン酸塩、又はモノアルキルリン酸塩類であり得るが、これに制限されない。
【0102】
一側面において、両性界面活性剤は、例えば、アルキルジメチルアミンオキサイド、又は、アルキルカルボキシベタインであり得るが、これに制限されない。
【0103】
一側面において、ノニオン系界面活性剤は、例えば、脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、又は、ポリオキシアルキレン変性シリコーン類であり得るが、これに制限されない。
【0104】
一側面において、シリコーン系界面活性剤は、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、又は、ポリグリセリン変性シリコーンなどであり得るが、これに制限されない。このような変性シリコーンの構造は、側鎖変形型、両末端変成型(ABA型)、片末端変成型(AB型)、両末端側鎖変成型、直鎖ブロック型(ABn型)、分岐型などに分類され得るが、これらのうちどの構造の変性シリコーンでも用いられることができる。
【0105】
一側面において、フッ素系界面活性剤は、フッ素、フッ素基含有シラン系化合物、及びフッ素基含有有機化合物からなる群より選択された1つ以上であり得るが、これに制限されない。
【0106】
一側面において、界面活性剤の含量は、組成物全体の総重量を基準に0.05~0.2重量%、0.1~0.2重量%、又は、0.15~0.2重量%であり得、前記記載された上限値又は下限値の間に存在する含量であり得る。
【0107】
(4)防汚剤
【0108】
本開示の一側面において、防汚剤は、離型層の表面エネルギーを調節し、防汚性を付与することができる。基材フィルムと離型層間の表面エネルギー差が少ない場合、基材フィルムに対する離型層の湿潤性及び剥離性が低下することがあるが、防汚剤は離型層の表面エネルギーを低くしてこれを防止する効果を奏することができる。また、本開示の離型コーティング組成物に含まれる成分(B)は、スリップ性(滑る特性)がほとんどないので、防汚剤は離型層にスリップ性を付与することができる。
【0109】
一側面において、防汚剤は、フッ素、フッ素基含有シラン系化合物、及びフッ素基含有有機化合物からなる群より選択された1つ以上であり得るが、これに制限されない。
【0110】
例えば、前記防汚剤は、自己乳化型シリコーンを含まないことがある。自己乳化型シリコーンは水に十分に溶解しないので、これを含む場合、水系溶剤としての使用が難しく、本開示による離型コーティング組成物は、シリコーンエマルジョン成分を含む代わりに、自己乳化型シリコーンを含まないことがある。
【0111】
一側面において、防汚剤の含量は、組成物全体の総重量を基準に0.1~0.3重量%、0.15~0.25重量%、又は、0.2~0.25重量%であり得、前記記載された上限値又は下限値の間に存在する含量であり得る。防汚剤が前記最小値より過度に少なく用いられる場合、離型フィルムの剥離時にシミ跡が残存する問題が発生し得、離型フィルムをグリーンシートから剥がした後、グリーンシートスラリー粒子が離型層に残存する問題が発生し得る。
【0112】
7.離型フィルムの物性
【0113】
本開示の一側面において、離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも1面に離型コーティング組成物を塗布して離型層を形成させて製造され得、このように製造された離型フィルムは、次の物性を有するものであり得る。下記物性は実験例に記載された方法で測定され得る。
【0114】
一側面において、離型フィルムは、5~32gf/inのテープ即時剥離力を示すものであり得、前記記載された上限及び下限値の間に存在する数値の剥離力を示すものであり得、例えば、7gf/in以上、9gf/in以上、11gf/in以上、13gf/in以上、15gf/in以上、17gf/in以上、19gf/in以上、21gf/in以上、23gf/in以上、25gf/in以上、27gf/in以上、29gf/in以上、又は31gf/in以上であるか、31gf/in以下、29gf/in以下、27gf/in以下、25gf/in以下、23gf/in以下、21gf/in以下、19gf/in以下、17gf/in以下、15gf/in以下、13gf/in以下、11gf/in以下、9gf/in以下、又は、7gf/in以下であり得る。
【0115】
一側面において、離型フィルムは、3~1000gf/inのテープ常温1日剥離力を示すものであり得、前記記載された上限及び下限値の間に存在する数値の剥離力を示すものであり得、例えば、10gf/in以上、50gf/in以上、100gf/in以上、200gf/in以上、300gf/in以上、400gf/in以上、500gf/in以上、600gf/in以上、700gf/in以上、800gf/in以上、又は900gf/in以上であるか、900gf/in以下、800gf/in以下、700gf/in以下、600gf/in以下、500gf/in以下、400gf/in以下、300gf/in以下、200gf/in以下、100gf/in以下、50gf/in以下、又は、20gf/in以下であり得る。このような離型フィルムは、軽剥離、重剥離又は超重剥離離型フィルムの剥離力を満たすものであり、これを要求する分野で多様に使用可能である。一側面において、離型フィルムは、広いテープ常温1日剥離力を示し、このような範囲は従来のシリコーン離型フィルムからは達成できない物性に該当する。
【0116】
一側面において、離型フィルムは、1~3gf/inのグリーンシート剥離力を示すものであり得、前記記載された上限及び下限値の間に存在する数値の剥離力を示すものであり得る。グリーンシート剥離力は実験例1に記載された方法で測定され得、3μm厚さのグリーンシートに対する剥離力を示すものであり得る。
【0117】
従って、本開示の一側面による離型フィルムは、多様なテープ常温1日剥離力水準(grade)を実現しながらも、同時にテープ即時剥離力又はグリーンシート剥離力を基準として一定の範囲の軽剥離力を実現できる長所を有し、これにより、1つの離型フィルムを多様な用途のテープ常温1日剥離力を要求する産業分野で使用可能であり、テープ即時剥離力又はグリーンシート剥離力を基準として軽剥離の剥離力を要求する産業分野でも使用できるので、多様な目的に合わせて使用可能である。
【0118】
一側面において、離型フィルムは、X線蛍光分析器を用いて測定した離型層のシリコーン含量が約0.001~約0.2g/m2であり得る。
【0119】
一側面において、離型フィルムは、約94%、約95%、又は、約96%以上の残留接着率を示すことができ、残留接着率は実験例4に記載された方法で測定され得る。一般に、離型フィルムを剥がす過程で、感圧接着体(pressure sensitive adhesive;PSA)又は光学用透明接着剤(optically clear adhesive;OCA)のような接着剤を離型フィルムの上に付着した後、離型フィルムを剥がす。ただし、このように離型フィルムを剥がす過程で離型フィルムの離型層に存在する未硬化成分が転写して接着剤の接着特性を妨げる問題が発生し得る。本開示の離型フィルムは、約95%以上の残留接着率を満たすので、高い基準が要求される分野でも使用可能な長所がある。
【0120】
一側面において、離型フィルムは、離型層の表面エネルギーが約19~約30dyne/cm又は約19.5~約27dyne/cmであり得、前記記載された上限及び下限値の間に存在する数値の表面エネルギー値を示すものであり得る。離型層の表面エネルギーは、実験例5に記載された方法で測定され得る。
【0121】
一側面において、離型フィルムは、揮発性有機化合物の残留量が約5ppm以下であり得、これにより、環境にやさしい素材として活用が可能である。
【0122】
8.離型フィルムの製造方法
【0123】
本開示の一側面において、離型フィルムの製造方法は、離型コーティング組成物を用いて離型層を形成させるものであれば、特に制限されない。例えば、基材フィルムの少なくとも1面に離型コーティング組成物を塗布し、これを加熱乾燥して離型コーティング組成物に含まれた成分(B)とシリコーンエマルジョン成分を硬化させて離型層を形成し、これにより離型フィルムを得ることが可能である。
【0124】
一側面において、離型コーティング組成物を塗布する方法は、離型フィルム分野で広く用いられている公知の方法であり得、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法、イン-ラインコート法、オフ-ラインコート法などがあり得るが、これに制限されない。
【0125】
一側面において、塗布された離型コーティング組成物は、加熱乾燥によって熱硬化し得、この時、加熱温度は110℃~160℃、120℃~160℃、130℃~160℃、140℃~160℃、150℃~160℃、145℃~155℃又は150℃~155℃であり得、前記記載された範囲内に存在する温度であり得る。一側面において、加熱時間は5秒~60秒、10秒~40秒、15秒~30秒、又は、20秒~25秒であり得、前記記載された範囲内に存在する時間であり得る。
【0126】
一側面において、追加で離型コーティング組成物の加熱乾燥以後、未硬化成分の硬化のために後硬化工程を含み得る。例えば、後硬化工程は、加熱乾燥によって製造された離型フィルムを巻いてロール(roll)形態にした後、40℃~60℃で1日~5日間処理するものであり得る。処理温度は40℃~60℃、45℃~55℃、47℃~53℃、49℃~53℃、50℃~53℃、又は50℃~51℃であり得、処理時間は1日~5日、1.5日~4.5日、2日~4日、2.5日~3.5日、又は、3日~3.5日であり得る。後硬化工程を行う場合、離型フィルムの物性(例:剥離力、残留接着率、又はRub-off特性)において経時安定性が向上し得る。
【0127】
一側面において、離型フィルムの離型層は、乾燥厚さで0.01~2μm、又は50nm~500nmで形成され得る。
【0128】
一側面において、離型フィルムは、粘着剤、半硬化性接着剤、保護フィルム、塗工基材、合紙ライナー、積層セラミックキャパシタ用セラミックシート、印刷回路用半硬化樹脂、又は、プリプレグに用いられ得る。本開示は、前述した側面及び後述する実験例又は実施例を通じて更に明確になる。以下では、本開示の添付の表を参照して記述される実施例を通じて当該業界の通常の技術者が容易に理解して実現できるように詳細に説明する。しかし、これら実験例又は実施例は、本開示を例示的に説明するためのもので、本開示の範囲がこれら実験例又は実施例に限定されるわけではない。
【0129】
[実施例]
【0130】
1.離型コーティング組成物の製造
【0131】
下記成分を混合して離型コーティング組成物を製造した。ただし、シリコーンエマルジョン成分の含量は、表1に従い、成分(B)100重量部に対して互いに異なる含量で製造した。
【0132】
- 成分(B)(メラミン成分)(メーカー:SANWA CHEMICAL、製品名-NIKALAC MW12LF)0.1~3.0重量%
【0133】
- シリコーンエマルジョン成分(PDMS、メーカー:DOW chemical、製品名:Sol-off 7946 Emulsion)0.01~26.4重量%
【0134】
- 酸触媒(メラミン触媒)(メーカー:Allnex社、製品名:Cymel(登録商標)4040 Catalyst)0.1~3.0重量%
【0135】
- 白金触媒(メーカー:Dow chemical、製品名:Syl-off 7924 0.01~24重量%
【0136】
- PEDOT水溶液(メーカー:ヘラウス社、製品名:Clevios PT2)0.5~20重量%
【0137】
- 9%のアンモニア水(メーカー:トクサン薬品工業(株))0.1~0.5重量%
【0138】
- 界面活性剤(メーカー:BYK社、製品名:BYK348)0.01~0.3重量%
【0139】
- 蒸溜水残量
【0140】
2.離型フィルムの製造
【0141】
このように製造した離型コーティング組成物を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(メーカー:東レ尖端素材、製品名:XD500)の少なくとも1面に、バーコータを用いて塗布した後、熱風乾燥器で150℃の温度で30秒間加熱乾燥して硬化させ、基材上に離型層が設けられた離型フィルムを製造した。
【0142】
[比較例]
【0143】
1.離型コーティング組成物の製造
【0144】
実施例と同一に離型コーティング組成物を製造するものの、比較例1の場合、シリコーンエマルジョン成分を除き、比較例2~5の場合、それぞれ実施例1、4、6、7と同一の含量のシリコーンエマルジョン成分を含み、メラミン成分を除いた。比較例6及び7は、シリコーンエマルジョン成分を含む代わりに、PEG系シリコーンエマルジョン成分((メーカー:シリコーンDNA、製品名:SD-3667))を表1に従ってメラミン成分100重量部に対して互いに異なる含量で含んだ。
【0145】
2.離型フィルムの製造
【0146】
前記実施例と同一の方法で比較例の離型コーティング組成物を用いて、離型層が設けられた離型フィルムを製造した。
【0147】
[実験例1]グリーンシート剥離力の測定及び経時安定性の測定
【0148】
チタン酸バリウム(BaTiO3;堺化学工業社製、製品名:BT-03)50質量部、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、製品名:エスレックB・KBM-2)5質量部、及びフタル酸ジオクチル(関東化学社製、製品名:フタル酸ジオクチル鹿1級)2質量部に、トルエン69質量部及びエタノール46質量部を添加し、ボールミルで混合分散させてセラミックスラリーを製造した。
【0149】
実施例及び比較例において、製造後、常温48時間保管した離型フィルムを、離型層の表面にアプリケーターを用いて前記セラミックスラリーを均一に塗工した。その後、乾燥器で80℃で1分間乾燥させた。最終的に、離型フィルム上に厚さが3μmであるセラミックグリーンシートを得、セラミックグリーンシートが付着された離型フィルムを製造した。
【0150】
セラミックグリーンシートが付着された離型フィルムを、室温23℃、湿度50%の条件下で24時間及び90日間保管した。その後、セラミックグリーンシートで離型フィルムとは反対側の面にアクリル粘着テープ(日東電工社製、商品名:31Bテープ)を接着させ、その状態で25mm幅に裁断し、これを測定サンプルにした。
【0151】
このような測定サンプルの粘着テープ側を平板に固定させた後、引張試験機(ChemInstrument社のAR-1000機器)を用いて90°剥離角度、500mm/分の剥離速度でセラミックグリーンシートから剥離フィルムを剥がして、剥離力(gf/25mm)を測定した。5回測定した結果の平均値を表1に示した。
【0152】
[実験例2]テープ剥離力の測定
【0153】
本開示の技術分野で広く用いられている標準テープであるTESA7475テープ(ドイツTESA社製)を用いて、前記実施例及び比較例で製造した離型コーティング組成物を塗布して製造された離型フィルムの剥離力を評価した。
【0154】
2kgローラで離型層の離型コーティング面に標準テープであるTESA7475テープを付着し、常温で20分経過後又は常温で24時間経過後の剥離時の剥離力を測定した。剥離力の測定はChemInstrument社のAR-1000機器を用いて180°剥離角度、12in/分の剥離速度で5回測定してその平均値を求めた。
【0155】
[実験例3]シリコーン含量の測定
【0156】
X線蛍光分析器(XRF)(OXFORD社製、製品名:LAB X-3500)を用いて、前記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの離型層でシリコーン含量を測定した。
【0157】
[実験例4]残留接着率の測定
【0158】
前記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの測定用サンプルを25℃、65%RHで24時間保管後、離型コーティング面に標準テープであるNitto31Bテープを張った後、このサンプルを常温で20g/cm2の荷重で24時間圧着した。離型コーティング面に接着したテープを汚染なく回収後に表面が平坦できれいなポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム面に接着した後、2kgのテープローラで1回往復圧着させた後、剥離力を測定した。
【0159】
比較のため、使用したことのないNitto31Bテープを表面が平坦できれいなPETフィルム面に接着した後、2kgのテープローラで1回往復圧着させた後、剥離力を測定した。
【0160】
剥離力は、下記の通り測定し、それから式1によって残留接着率を算出した。
【0161】
測定機器:ChemInstrument社のAR-1000機器
【0162】
測定方法:180°剥離角度、剥離速度30mm/分
【0163】
<数1>
【0164】
残留接着率(%)=[離型層の表面に接着させた後、剥がした接着テープの剥離力/離型層の表面に接触させなかった接着テープの剥離力]×100
【0165】
[実験例5]表面エネルギーの測定
【0166】
前記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの離型コーティング面に接触角測定機(KRUSS社製、製品名:DSA-100)を用いて蒸溜水及びヨウ化メチレン(diiodomethane)を落としてそれぞれの接触角を測定した後、測定された接触角値をOwens-Wendtモデルに代入して表面エネルギーを計算した。
【0167】
[実験例6]Rub-offテスト
【0168】
親指で力を入れて、前記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの離型層を10回往復してこすった後の離型層の表面が変化する程度を肉眼で観察した。その結果、Rub-off特性を次の通り評価した。
【0169】
◎:評価後に変化がない場合
【0170】
○:微細にこすれるが、使用上の問題はない場合
【0171】
△:離型層の表面が白くなった場合
【0172】
X:離型層が剥がれ落ちた場合
【0173】
前記実験例により得られた結果を下記表1に記載した。
【0174】
【0175】
表1の結果によると、本開示の一側面による離型コーティング組成物を用いて得られた離型フィルムは、比較例を用いた場合に比べて、優れた残留接着率、Rub-off特性を示すと同時に、多様な範囲のテープ常温1日剥離力を達成した。従って、多様な産業分野で活用され得る長所を有することができる。また、優れた残留接着率及びRub-off特性を通じて、低温硬化が可能であることを確認することができる。従来、当該技術分野で用いられるシリコーン系離型コーティング組成物を含む離型フィルムである比較例2~5の場合、残留接着率、表面エネルギーが良くなく、Rub-off特性が非常に劣悪であった。即ち、シリコーンエマルジョンだけでは残留接着率が低く、Rub-off特性が良くないので、低温での硬化が難しかった。一方、実施例では、メラミン成分とシリコーンエマルジョン成分の組合わせを通じて、不十分な硬化力を向上させながらも、シリコーンエマルジョンによって離型性を高めることができるが、これは、シリコーンエマルジョンは分子量が大きく、反応サイトが分子の両末端1つずつを基本として2つ~3つで、低温硬化が難しい一方、メラミンは単量体の分子量が低く、最大6つの反応サイトを有することができるため、反応性が高いので、既存のシリコーン系離型コーティング組成物で達成し難かった優れたRub-off特性を達成することができた。
【0176】
本開示の一側面による実施例は、製造後90日のグリーンシートで剥離力を測定した時にも、製造後1日目とほぼ類似のグリーンシート剥離力を示し、経時安定性に非常に優れた特性を示した。
【0177】
また、本開示の一側面による実施例は、少なくとも94%以上の残留接着率を示すことを確認した。
【0178】
[実験例7]FT-IRスペクトルの測定
【0179】
実施例1の離型コーティング組成物及び従来の自己乳化型シリコーンを含むシリコーン系離型コーティング組成物で製造された離型層でのFT-IRスペクトルを測定した。具体的には、Bruker社のVERTEX70機器を用い、実施例と比較例の離型コーティング組成物をガラス板に塗布し、熱風乾燥器で150℃の温度で30秒間加熱乾燥して硬化させた後、セラミックナイフでコーティング層を0.1g採取して測定機器のATR法でスペクトルを測定した。FT-IRスペクトル測定結果は
図2に示した。
【0180】
図2によると、従来とは異なり、本開示の離型コーティング組成物から製造された離型層は、約1020cm
-1、約1090cm
-1のSi-O伸縮吸収帯と約800cm
-1のSi-C伸縮吸収帯の影響で当該領域帯が高い吸収ピーク強度を示すことを確認することができる。このようなピーク強度を通じて、前記離型層のうちPDMSに由来した成分が含まれたと解釈することができる。
【国際調査報告】