IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デュポン テイジン フィルムス ユーエス リミテッド パートナーシップの特許一覧

特表2024-527668金属イオン電池のセパレータとして使用するためのコポリエステルフィルム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】金属イオン電池のセパレータとして使用するためのコポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/414 20210101AFI20240719BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/437 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/497 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240719BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240719BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240719BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240719BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20240719BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240719BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240719BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240719BHJP
   H01M 50/406 20210101ALI20240719BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M50/414
H01M50/489
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/437
H01M50/497
H01M4/485
H01M4/48
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0525
H01M50/46
H01M10/0562
H01M4/66 A
H01M10/058
H01M50/406
C08J5/18 CFD
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023567056
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 GB2022052005
(87)【国際公開番号】W WO2023007180
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】2110926.9
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519399763
【氏名又は名称】マイラー スペシャルティ フィルムス ユーエス リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】サンキー スティーヴン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ショセラー ルーシャン
(72)【発明者】
【氏名】トッド メーガン アリシア
(72)【発明者】
【氏名】ターナー デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4F071
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4F071AA45X
4F071AA51X
4F071AB13
4F071AB15
4F071AB16
4F071AB17
4F071AB18
4F071AB19
4F071AB20
4F071AB21
4F071AB24
4F071AB25
4F071AB26
4F071AB27
4F071AB29
4F071AC05
4F071AC09
4F071AE05
4F071AF37
4F071AG28
4F071AG34
4F071AG36
4F071AH15
4F071BA01
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
5H017AA03
5H017AA04
5H017CC01
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE07
5H017HH03
5H017HH05
5H021BB04
5H021BB05
5H021CC03
5H021EE08
5H021EE17
5H021EE20
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE30
5H021EE31
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH07
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL07
5H029AM12
5H029AM16
5H029DJ04
5H029EJ08
5H029EJ12
5H029HJ04
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB08
5H050DA19
5H050HA04
(57)【要約】
ジオール、ジカルボン酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを含むコポリエステルフィルムであって、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分をさらに含み、導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加の金属イオンをさらに含み得る、コポリエステルフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオール、ジカルボン酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを含むコポリエステルフィルムであって、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分をさらに含み、前記導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加の金属イオンをさらに含み得る、前記コポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記フィルムは、200μm以下、好ましくは150μm以下、好ましくは100μm以下、好ましくは85μm以下、好ましくは70μm以下、好ましくは50μm以下、及び好ましくは35μm以下の厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムは、5μm以上、好ましくは10μm以上、好ましくは15μm以上、及び好ましくは20μm以上の厚さを有する、請求項1または2のいずれかに記載のフィルム。
【請求項4】
前記コポリエステルは、ジカルボン酸及び脂肪族ジオールから誘導される半結晶性セグメント、ならびにポリ(アルキレンオキシド)から誘導される非晶質セグメントを含む、請求項1~3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記ポリ(アルキレンオキシド)は、前記コポリエステルの総重量の、0.1~80重量%、好ましくは約5~約78重量%、好ましくは約10~約75重量%、好ましくは約12~約65重量%、好ましくは約15~約60重量%、好ましくは約16~約55重量%を構成する、請求項1~4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記ジオールは、C2、C3、またはC4脂肪族ジオールから選択され、好ましくは前記脂肪族ジオールは、エチレングリコールである、請求項1~5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
前記ジカルボン酸は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びテレフタル酸から選択される芳香族ジカルボン酸である、請求項1~6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
前記ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、C2-C15、好ましくはC2-C10、好ましくはC2-C6アルキレン鎖、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(PTMO)、好ましくはPEG及びPPGから選択され、好ましくは前記ポリ(アルキレンオキシド)はPEGである、請求項1~7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
前記ポリ(アルキレンオキシド)の数平均分子量は、約200~約20000g/mol、好ましくは約400~約3500g/mol、好ましくは約500~約3500g/molである、請求項1~8のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムは、前記第1の金属イオン含有成分及び前記追加の金属イオンを含む、請求項1~9のいずれかに記載のフィルム。
【請求項11】
前記追加の金属イオンは、好ましくは金属塩から選択される第2の金属イオン成分の形態である、請求項1~10のいずれかに記載のフィルム。
【請求項12】
前記第1の金属イオン含有成分の金属は、前記追加の金属イオンの金属と同一である、請求項1~11のいずれかに記載のフィルム。
【請求項13】
前記金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウムから選択され、好ましくはリチウム、ナトリウム、マグネシウム、及びアルミニウムから選択され、好ましくはリチウム及びナトリウムから選択され、好ましくはリチウムである、請求項1~12のいずれかに記載のフィルム。
【請求項14】
前記金属はリチウムであり、前記リチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、リチウムイオン含有導電性ガラスセラミック粒子材料などのNASICON型セラミック粒子材料;LISICON型セラミック粒子材料;ペロブスカイト型酸化物セラミックス粒子材料;ガーネット型酸化物セラミックス粒子材料;酸窒化リチウムリン(LIPON)型セラミック粒子材料;及びケイ酸アルミニウムリチウム(LAS)セラミック粒子材料から選択される、請求項1~13のいずれかに記載のフィルム。
【請求項15】
前記金属はリチウムであり、前記リチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、
一般式LiMy(PO43を有するNASICON型材料(式中、Mは、例えば、Al、Si、Ti、Zr、Ge、Sn、及びHfのうちの1つ以上の多価金属イオンを示す);
一般式Li1+xxTi2-x(PO43(LATP)を有するNASICON型材料(式中、Mは、Al、Sc、Y、及びLaのうちの1つ以上から選択される3価のカチオンを示す);
一般式Li1+xAlxGe2-x(PO43(LAGP)を有するNASICON型材料;
Li1+x+yAlxTi2-xSiy3-y12の結晶相及びLi2O-Al23-SiO2-P25-TiO2の組成を有する材料;
Li1+x+yAlx(Ti,Ge)2-xSiy3-y12の主結晶相及びLi2O-Al23-SiO2-P25-TiO2-GeO2の組成を有する材料;
一般式Li2+2xZn1-xGeO4を有するLISICON型材料(任意選択で、Li2+2xZn1-xGe416、Li14ZnGe416、Li(3+x)Gex(1-x)4、Li(4-x)Si(1-x)x4など、前記Li、Zn及び/またはGeを置き換えることが可能な他の元素(典型的には、等価元素));
Li(4-x)Ge(1-x)x4Li10GeP212などのチオLISICON型材料;
Li3xLa(2/3)-xTiO3(LLTO)、Li3xLa1/3-xTaO3などのペロブスカイト型酸化物材料;
Li5La3212(式中、MはNb及び/またはTaを表す)、Li6ALa2212(式中、AはCa、Sr、及び/またはBaを表し、MはNbまたはTaを表す)、またはLi6.5La2.5Ba0.5ZrTaO12など、一般式Li7-3y-xLa3Zr2-xM1yM2x12(式中、M1はAl及びGaなどの3価のカチオンを表し、M2はNb及びTaなどの5価のカチオンを表し、x≧0及びy≦2である)を有するガーネット型酸化物材料;
Li2PO2Nなど、一般式LixPOyzを有するLIPON型材料;及び
AlLiO6Si2などのLAS型材料から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項16】
前記金属は、ナトリウムであり、ナトリウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、導電性ガラスセラミック粒子材料、ベータ-アルミナ及びベータ’’-アルミナ相Na2O・nAl23(式中、5≦n≦11)、希土類ケイ酸ナトリウム、及びナトリウムイオン伝導性オキシハロゲン化物ガラスなどのNASICON型材料;好ましくは、一般式Na3Zr2Si2PO12、NaTi2(PO43、NaGe2(PO43、またはNa1+x[SnxGe2-x(PO43]を有するNASICON構造酸化物、一般式Na5MSi412を有する希土類ケイ酸ナトリウム(式中、Mは、Y、Sc、Lu、及び/または任意の三価希土類カチオンである)、及びNaI-NaCl-Na2O-B23などのナトリウムイオン伝導性オキシハロゲン化物ガラスから選択される、請求項1~14のいずれかに記載のフィルム。
【請求項17】
前記コポリエステルフィルム中に存在する前記金属イオン含有導電性セラミック粒子材料の量は、前記コポリエステルフィルムの総重量の、0.1重量%~60重量%、好ましくは5重量%~50重量%、好ましくは8重量%~35重量%、好ましくは10重量%~20重量%である、請求項1~16のいずれかに記載のフィルム。
【請求項18】
前記追加の金属イオンは、
(i)芳香族カルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸またはイソフタル酸;
(ii)脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪族カルボン酸、好ましくは酢酸、グリコール酸、またはコハク酸;
(iii)炭酸;
(iv)フェノール酸、好ましくはサリチル酸;
(v)過塩素酸またはリン酸、特にリン酸などの鉱酸;及び
(vi)ホウ酸、好ましくはビス(シュウ酸)ホウ酸から構成される塩から選択される金属塩の形態である、請求項1~17のいずれかに記載のフィルム。
【請求項19】
前記追加の金属イオンは、有機酸の金属塩の形態であり、好ましくは前記コポリエステルが誘導される前記芳香族ジカルボン酸の塩である、請求項1~18のいずれかに記載のフィルム。
【請求項20】
前記追加の金属イオンは、前記酸、好ましくは前記カルボン酸、好ましくは前記ジカルボン酸、好ましくは前記芳香族ジカルボン酸、好ましくは前記テレフタル酸のアルコキシレートエステルから選択される金属塩の形態であり、前記アルコキシレートエステルは、好ましくは前記脂肪族ジオール、好ましくはC2-10脂肪族ジオール、好ましくはC2-6脂肪族ジオール、好ましくはC2、C3、またはC4脂肪族ジオール、より好ましくはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオール、より好ましくはエチレングリコールから誘導される金属塩の形態である、請求項18または19に記載のフィルム。
【請求項21】
前記追加の金属イオンは、リチウムイオンであり、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、チオシアン酸リチウム(LiSCN)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)リチウム(LiN(CF3SO22)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドリチウム(LiC(CF3SO23)、オルトケイ酸リチウム、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCF3CO2)、及びビス(フルオロ亜硫酸)アミドリチウム(LiN(FO2S)2)、テレフタル酸ジリチウム(DLTA)、イソフタル酸ジリチウム、グリコール酸リチウム、安息香酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、過塩素酸リチウム、オルトケイ酸リチウム、リン酸リチウム、サリチル酸リチウム、コハク酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及び二リチウムビスヒドロキシエチルテレフタレート(DL-BHET)から選択されるリチウム塩の形態である、請求項1~20のいずれかに記載のフィルム。
【請求項22】
前記追加の金属イオンは、リチウムイオンであり、テレフタル酸ジリチウム(DLTA)、イソフタル酸ジリチウム、二リチウムビスヒドロキシエチルテレフタレート(DL-BHET)、及びLiCF3SO3から選択されるリチウム塩の形態である、請求項1~21のいずれかに記載のフィルム。
【請求項23】
前記追加の金属塩は、ナトリウムイオンであり、硝酸ナトリウム(NaNO3)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(NaTFSI)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドナトリウム(Na[N(CF3SO22])、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム(V)(NaAsF6)、ビス(オキサラトホウ酸)ナトリウム(「NaBOB」)、ハロゲン化ナトリウム(NaX)(式中、Xは、Cl、Br、またはIである)、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、ペンタシアノプロペニドナトリウム(NaPCPI)、テトラシアノピロレートナトリウム(NaTCP)、及びトリシアノイミダゾレートナトリウム(NaTIM)から選択されるナトリウム塩の形態である、請求項1~19のいずれかに記載のフィルム。
【請求項24】
前記追加の金属イオンは、前記金属カチオンと前記コポリエステルの負に荷電した酸素原子との間、好ましくは少なくともポリアルキレンオキシド単位の酸素原子との間の相互作用によって、前記フィルムのポリマーマトリックス中に存在し、かつ保持される、請求項1~23のいずれかに記載のフィルム。
【請求項25】
前記追加の金属イオンは金属塩の形態であり、前記金属カチオンと、前記コポリエステルに共有結合していない前記金属塩のアニオンとの間の相互作用によって、前記フィルムのポリマーマトリックス内に保持される、請求項1~23のいずれかに記載のフィルム。
【請求項26】
前記フィルムの前記追加の金属イオンの量は、5:1~1:50、好ましくは約4:1~約1:50、好ましくは約3:1~約1:50、好ましくは約2:1~約1:50、好ましくは約1:1~約1:40、好ましくは約1:2~約1:30、好ましくは約1:4~約1:25のモル比の金属:Oを供するのに効果的であり、前記比率におけるO原子の数は、前記ポリ(アルキレンオキシド)残基のO原子の数として定義され、前記比率における金属原子の数は、前記追加の金属イオンによって提供される金属原子の数として定義される、請求項1~25のいずれかに記載のフィルム。
【請求項27】
前記追加の金属イオンは、前記コポリエステルフィルムの総重量の、0.1重量%~40重量%、好ましくは1重量%~10重量%の量で存在する第2の金属イオン成分(好ましくは金属塩)の形態である、請求項1~26のいずれかに記載のフィルム。
【請求項28】
前記コポリエステル、前記第1の金属イオン含有成分、及び存在する場合、前記追加の金属イオンを含む第2の金属イオン成分は、前記フィルムの主成分であり、好ましくは、前記コポリエステルフィルムの総重量の、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約95重量%、及び好ましくは少なくとも約98重量%を構成する、請求項1~27のいずれかに記載のフィルム。
【請求項29】
酸化防止剤をさらに含む、請求項1~28のいずれかに記載のフィルム。
【請求項30】
アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、タルク及びシリカなどの半金属酸化物;焼成陶土;カルシウム及びバリウムの炭酸塩及び硫酸塩などのアルカリ金属塩;及び非導電性セラミック粒子材料から選択される無機粒子充填剤をさらに含み、前記無機粒子充填剤は、前記第1の金属イオン含有成分及び前記第2の金属イオン含有成分とは異なる別体であり、前記第1の金属イオン含有成分または前記第2の金属イオン含有成分の前記金属イオンを含まず、前記無機粒子充填剤は、前記コポリエステルフィルムの総重量に対して5重量%~20重量%の量で存在する、請求項1~29のいずれかに記載のフィルム。
【請求項31】
25℃で測定して少なくとも約10-7S/cm、好ましくは少なくとも約10-6S/cmの伝導率、及び/または60℃で測定して少なくとも約10-6S/cm、好ましくは少なくとも約10-5S/cmの伝導率を示す、請求項1~30のいずれかに記載のフィルム。
【請求項32】
自立して存在する二軸配向フィルムである、請求項1~31のいずれかに記載のフィルム。
【請求項33】
請求項1~32のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法であって、
(i)前記ジオールを、前記ジカルボン酸またはそのエステル(好適には低級アルキル(C1-4)エステル、好ましくは前記ジメチルエステル)と反応させて前記ジカルボン酸のビス(ヒドロキシアルキル)-エステルを形成するステップ;
(ii)ポリ(アルキレンオキシド)の存在下で前記ジカルボン酸の前記ビス(ヒドロキシアルキル)-エステルを重縮合反応で重合させてコポリエステルを形成するステップ;
(iii)ステップ(i)及び/またはステップ(ii)における前記コポリエステルの合成中、及び/またはそれに続く別途の配合または混合ステップ中に、導電性セラミック粒子材料から選択される前記第1の金属イオン含有成分、及び、任意選択で、前記導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの前記追加の金属イオンを導入して、コポリエステル組成物を形成するステップ;及び
(iv)好ましくは前記組成物を溶融押出することにより、または前記コポリエステル組成物を含む分散液もしくは溶液を溶媒キャストすることにより、前記コポリエステル組成物からコポリエステルフィルムを形成するステップを含む、前記方法。
【請求項34】
ステップ(ii)の前記反応生成物を固相重合させる、請求項33に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項35】
前記フィルムは、それ自体が、固体電池、好ましくは電極の構成要素である支持ベース上にキャストされる、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
請求項33~35のいずれか1項に記載の方法により得られるフィルム。
【請求項37】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間のセパレータを含み、前記セパレータが請求項1~32または36のいずれかに記載のフィルムである金属イオン電池。
【請求項38】
前記金属イオン電池は固体電池である、請求項37に記載の金属イオン電池。
【請求項39】
前記金属イオン電池の前記金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウムから選択され、好ましくはリチウム、ナトリウム、マグネシウム、及びアルミニウムから選択され、好ましくはリチウム及びナトリウムから選択され、好ましくはリチウムである、請求項37または38に記載の金属イオン電池。
【請求項40】
前記アノードは、グラファイト及びチタン酸リチウム(LTO)アノードから選択され、及び/または前記カソードは、リチウム、またはリチウムと他の金属(複数可)との混合酸化物、特にチタン酸リチウム、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、及び/またはリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(LiNiMnCoO2)から作製される、請求項37、38、または39に記載の金属イオン電池。
【請求項41】
前記金属イオン電池は、前記アノードの表面上に配置されたアノード集電体と、前記カソードの表面上に配置されたカソード集電体とをさらに含み、前記層の順序は、アノード集電体/アノード/セパレータ/カソード/カソード集電体となる、請求項37~40のいずれかに記載の金属イオン電池。
【請求項42】
前記アノード集電体及び/または前記カソード集電体は、二軸配向ポリエステル基材層と、前記ポリエステル基材層側上の第1の金属層とを含む集電体から独立して選択され、前記ポリエステル基材層は、200℃、空気中で、横方向(TD)及び縦方向(MD)のそれぞれに正の熱膨張を示し、前記ポリエステル基材層は、12μm以下の厚さを有し、前記第1の金属層は、50~1000nmの厚さを有し、及び好ましくは前記集電体は、50~1000nmの厚さを有する第2の金属層をさらに含み、前記第1の金属層及び前記第2の金属層は、前記ポリエステル基材層の互いに反対となる側上に配置され、好ましくは前記第1の金属層、及び存在する場合、前記第2の金属層は、それぞれ独立して、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル-銅合金、またはアルミニウム-ジルコニウム合金のうちの少なくとも1つを含み、ならびに好ましくは、前記第1及び第2の金属層は同じ材料から選択され、ならびに好ましくは、前記第1及び第2の金属層は両方ともアルミニウムまたは銅である、請求項37~41のいずれかに記載の金属イオン電池。
【請求項43】
金属イオン電池におけるセパレータとしての、請求項1~32または36のいずれかに定義されるフィルムの使用であって、好ましくは、前記電池は、請求項37~42のいずれかに定義された通りである、前記使用。
【請求項44】
請求項1~32または36のいずれかに定義されるコポリエステルフィルムを含む、請求項37~42のいずれかに定義される金属イオン電池の製造方法であって、
(a)請求項1~32または36のいずれかに定義されるコポリエステルフィルムを提供するステップ;及び
(b)前記金属イオン電池を組み立てるステップであって、前記電池がアノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間のセパレータを含み、前記セパレータがステップ(a)で得られた前記コポリエステルフィルムである、前記ステップ、
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コポリエステルフィルム及びそれから製造される他の物品、ならびにそれらの合成方法に関する。特に、本発明は、金属イオン電池、特にリチウムイオン電池のセパレータとして使用するのに必要な特性を示すコポリエステルフィルムに関する。
【0002】
リチウムイオン電池は、家電及び再生可能エネルギーの貯蔵装置の需要が増大していることが一因となり、予見可能な将来にわたって継続的に成長すると見込まれる充電式電池の分野において、広く使用される。電池の動作の間(すなわち、充放電の間)に、リチウムイオンは、陰極と陽極との間を移動する。市販のリチウムイオン電池は、通常、リチウム塩を含有する液体もしくはゲル電解質、ならびに微多孔性セパレータを含む湿式セル電池として提供される。微多孔性セパレータは、2つの活性固体電極の間に、それらと接して配置される。一般的に、リチウムイオン電池用の微多孔性セパレータは、約20μm~約25μmの厚さを有し、延伸されたポリオレフィンフィルム(特に、ポリエチレン及びポリプロピレン)がベースである。セパレータは、その孔を介する液体またはゲル電解質の移動を可能にすることで、リチウムイオンの移動を可能にする一方、電池中の陰極と陽極との直接的な電気接触を防止する。しかしながら、発火あるいは破裂さえあることが知られている湿式セルリチウムイオン電池の安全性については懸念が残る。多孔性網状構造により、陰極と陽極との間でリチウムデンドライトの成長を導くことができ、その結果、電池の短絡、熱暴走、及び引火性を生じさせ得る。引火性リスクは、ポリオレフィンの相対的に低いガラス転移温度及び溶融温度によって悪化する。セパレータとしてのポリオレフィンフィルムのさらなる欠点は、相対的に低い機械的強度、特に、相対的に低い二軸配向フィルムの横方向における引張強度である。
【0003】
上記の安全性への懸念のうちのいくつかを低減させる乾電池が開発されてきた。これらの乾電池は、陽極と陰極との間に固体セパレータを含み、これが、電極間の接触を防止し、デンドライトの成長に対する物理的障壁となる。乾電池では、潜在的に可燃性の液体電解質は排除される。したがって、セパレータは、セパレータ及び電解質の両方として効果的に機能しなければならないため、リチウムイオン電池の場合、セパレータは、その構造内のリチウムイオンの移動を可能としなければならない。そのようなリチウム導電性固体セパレータは、大きく2つの群に分類できる。
【0004】
第1の群は、LiPON(リチウムリン酸窒化物、Li2PO2N)、LLTO(リチウムランタンチタン酸化物)、またはLGPS(Li10GeP212)などのセラミックがベースの、無機リチウムイオン導電体の使用に焦点を置く。典型的には、セラミックセパレータでは、最大10-1Scm-1の導電率が可能である。そのような無機リチウムイオン導電体は、薄いフィルムとして供され、一般的にスパッタリング法を使用して堆積される。しかしながら、堆積速度が遅く、処理は表面積の小さなコイン電池に限定される。さらに、電池の動作中に、陰極及び陽極の体積が変化するので、セパレータは、体積のこれらの変動に対応する必要がある。セパレータが堅すぎる場合、それが充放電サイクル中に損傷するか、またはサイクル性能が限定的になる可能性がある。これは、特に堅固なセラミックセパレータの場合に特に問題となる。セラミックセパレータの堅固でかつ脆い性質により、セラミックフィルムでは亀裂が生じやすいため、セパレータの製造時、及びセルの巻き取りや電池の組立時に問題を引き起こす可能性もある。
【0005】
第2の群は、ポリマーマトリックス及びLiClO4などのリチウム塩を含むポリマーフィルムの使用に焦点を置く。WO2019/186173では、脂肪族ジオール、芳香族ジカルボン酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含んだコポリエステルを含む薄いポリマーフィルムであって、リチウム塩から誘導されるリチウムイオンをさらに含むポリマーフィルムが開示されている。室温におけるこのようなセパレータの導電率は、一般にセラミック導電体よりも低い。
【0006】
本発明は、前述の問題の1つ以上に対処することを目的とする。特に、本発明の目的は、金属イオン固体電池、すなわち上記の乾電池構成、または液体もしくはゲル電解質を含む金属イオン電池のセパレータとして使用するための改良されたフィルムを提供することである。特に、金属イオン固体電池のセパレータとして使用するための改良されたフィルムを提供することが目的である。特に、既存の金属導電性セパレータの導電率を少なくとも維持し、好ましくは向上すると同時に、セラミックセパレータと比較して良好な機械的強度、特に脆性の低減及び/または柔軟性の向上を示すフィルムを提供することが目的である。特に、本発明は、既存の金属導電性セパレータの導電率を少なくとも維持し、好ましくは向上するフィルムであって、セラミックセパレータと比較して良好な機械的強度、特に脆性の低減及び/または柔軟性の向上を示すと同時に、フィルム形成の容易性を確保し、製造の効率及び経済性を向上させる当該フィルムを提供することが目的である。本発明はさらに、少なくとも機械的性能を維持すると同時に、その厚さ及び/または重量を低減し得ることで、電池の体積及び/または重量を低減し得るフィルムセパレータを提供することが目的である。フィルムセパレータは、脆性がなく、柔軟性を示すことが望ましい。
【0007】
本発明は、特に、リチウムイオン電池に関する。したがって、先行段落及び以下の対応する文脈で使用される場合、「金属イオン」、「金属」、「金属導電性セパレータ」、及び「金属イオン電池」という用語は、好ましくは、それぞれ「リチウムイオン」、「リチウム」、「リチウム導電性セパレータ」、及び「リチウムイオン電池」を指す。ただし、本発明は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム、特にナトリウム、マグネシウム、及びアルミニウム、ならびに、特にナトリウムを含む他の充電式金属イオン電池にも適用可能である。
【0008】
第1の態様によると、ジオール、ジカルボン酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを含むコポリエステルフィルムであって、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分をさらに含み、上記の導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加の金属イオンをさらに含み得る、当該コポリエステルフィルムを提供する。
【0009】
金属イオン電池に使用するための、当該フィルムの第1の金属イオン含有成分の金属は、好ましくは当該追加の金属イオンの金属(以下、第2の金属イオン含有成分とも称する)と同様のものであることが理解されるであろう。
【0010】
好ましくは、当該第1の金属イオン含有成分は、第1のリチウムイオン含有成分であり、その場合、当該追加の金属イオンは、好ましくは追加のリチウムイオンである。あるいは、当該第1の金属イオン含有成分は、第1のナトリウムイオン含有成分であり、その場合、当該追加の金属イオンは、好ましくは追加のナトリウムイオンである。
【0011】
好ましくは、コポリエステルフィルムは、当該追加の金属イオンを含む。存在する場合、当該追加の金属イオンは、好ましくは金属塩から選択され、好ましくはリチウム塩またはナトリウム塩から選択され、好ましくはリチウム塩から選択される、第2の金属イオン含有成分の形態で存在することが好ましい。
【0012】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の第1の態様は、当該コポリエステル、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分、及び金属塩から選択される第2の金属イオン含有成分を含むコポリエステルフィルムを提供する。当該第1及び第2の金属イオン含有成分は、互いに異なることが理解されるであろう。
【0013】
特に好ましい実施形態において、本発明の第1の態様は、当該コポリエステル、導電性セラミック粒子材料から選択される第1のリチウムイオン含有成分、及びリチウム塩から選択される第2のリチウム塩イオン含有成分を含むコポリエステルフィルムを提供する。当該第1及び第2のリチウムイオン含有成分は、互いに異なることが理解されるであろう。
【0014】
代替の実施形態において、本発明の第1の態様は、当該コポリエステル、導電性セラミック粒子材料から選択される第1のナトリウムイオン含有成分、及びナトリウム塩から選択される第2のナトリウムイオン含有成分を含むコポリエステルフィルムを提供する。当該第1及び第2のナトリウムイオン含有成分は、互いに異なることが理解されるであろう。
【0015】
本発明のコポリエステルフィルムは、セパレータとして好適であり、特に固体電解質として好適である。したがって、コポリエステルフィルムは、単なる表面の導電性ではなく、体積導電性を示す。本発明者は、驚くべきことに、本発明のフィルムが、良好な導電率及び高い機械的強度(特に低減された脆性及び/または向上した柔軟性)の優れた組み合わせを示す固体セパレータとして好適である一方で、比較的薄い厚さでそのような性能を達成し、効率的かつ信頼性の高い製造が可能であることを見出した。このようなセパレータは、特に高温で優れた寸法安定性を示し、通常の電池サイクル中の電極の体積変動を許容し得る。
【0016】
本明細書で使用する場合、「コポリエステル」という用語は、エステル結合を含み、3種以上のコモノマーから誘導されるポリマーを指す。本明細書に記載のコポリエステルは、熱可塑性である。
【0017】
コポリエステルに好適なジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びナフタレンジカルボン酸(2,5-、2,6-、または2,7-ナフタレンジカルボン酸など)などの芳香族ジカルボン酸、ならびにコハク酸、セバシン酸、アジピン酸、及びアゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、脂環式ジカルボン酸も使用し得る。他の好適なジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルジカルボン酸及びヘキサヒドロ-テレフタル酸が挙げられる。好ましくは、本発明で使用されるジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸またはイソフタル酸、好ましくはテレフタル酸である。
【0018】
コポリエステルは、好ましくは、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸またはナフタレンジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸またはイソフタル酸、及び好ましくはテレフタル酸を含む。最も好ましい第1の実施形態において、ジカルボン酸成分は、単に1種の芳香族ジカルボン酸を含む。第2の実施形態において、ジカルボン酸成分は、第1の芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸またはイソフタル酸、好ましくはテレフタル酸)及び第2のジカルボン酸を含む。第2のジカルボン酸は、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、またはアゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸から選択されてもよく、一実施形態において、第2のジカルボン酸は、アゼライン酸である。
【0019】
コポリエステルに好適なジオールとしては、非環式、脂環式、及び芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。好ましいジオールは、2~15の炭素原子を有し、エチレン、プロピレン、イソブチレン、テトラメチレン、1,4-ペンタメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレングリコール及びデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、及び1,5-ジヒドロキシナフタレンが含まれる。脂肪族ジオールが好ましく、特に2~8個の炭素原子を含む非環式脂肪族ジオールが好ましく、特に2~4個の炭素原子を含む脂肪族ジオールが好ましい。非分岐脂肪族ジオールが好ましい。ジオールは、好ましくはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオールから選択され、より好ましくはエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールから選択され、最も好ましくはエチレングリコールである。1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)などの脂環式(脂環族)グリコールも使用し得る。ジオールと均等なエステル形成誘導体を、ジオールの代わりに使用し得る。コポリエステルは、好ましくは、単に1種のジオール残基を含む。一実施形態において、当該ジオール画分の少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%、好ましくは少なくとも98モル%、及び好ましくは少なくとも99モル%が、1種のジオールで構成される。
【0020】
コポリエステルに好適なポリ(アルキレンオキシド)は、好ましくはC2-C15、好ましくはC2-C10、好ましくはC2-C6アルキレン鎖から選択される。ポリ(アルキレンオキシド)は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(PTMO)、好ましくはポリエチレングリコールから選択されてもよい。エチレンオキシド末端ポリ(プロピレンオキシド)セグメントも使用し得る。一実施形態において、コポリエステルは、単に1種のポリ(アルキレンオキシド)残基を含む。代替の実施形態において、コポリエステルは、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール(PPG)の混合物など、2種以上のポリ(アルキレンオキシド)残基を含む。
【0021】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量(MN)は、好ましくは約200g/mol~20000g/mol、好ましくは約200g/mol~約6000g/mol、好ましくは約200g/mol~約5000g/mol、好ましくは約5000g/mol以下、好ましくは約4000g/mol以下、好ましくは約400g/mol~約3900g/mol、好ましくは少なくとも約500g/mol、好ましくは約500g/mol~約3800g/mol、最も好ましくは約500g/mol~約3700g/mol、好ましくは約800g/mol~約3600g/mol、好ましくは約1000g/mol~約3600g/mol、好ましくは約2000g/mol~約3500g/mol、及び好ましくは約3350~約3450g/mol、ならびに好ましくは約3350または約3450g/molである。ポリ(アルキレンオキシド)の数平均分子量(MN)は、好ましくは少なくとも約200g/mol、好ましくは少なくとも約400g/mol、好ましくは少なくとも約500g/mol、及び好ましくは少なくとも約800g/molであり、例えば少なくとも約1000g/molである。ポリ(アルキレンオキシド)の数平均分子量(MN)は、好ましくは約20000g/mol以下、好ましくは約5000g/mol以下、好ましくは約4000g/mol以下、及び好ましくは約3800g/mol以下であり、例えば約3700g/mol以下である。
【0022】
ポリ(アルキレンオキシド)の分子量が高すぎる場合、ジカルボン酸及び脂肪族ジオールと共重合して、確実なフィルム形成のための、特に溶融押出工程において十分に高い溶融粘度を有するコポリエステルを形成することがより困難になることが見出された。また、ポリ(アルキレンオキシド)の分子量が高すぎる場合、導電性が低下され得る。
【0023】
文脈上別段の指示がない限り、本明細書で使用する場合の分子量という用語は、本明細書に記載の方法により測定される数平均分子量(MN)を指す。
【0024】
多分散指数PDI(または、分散度D)は、MW/MNとして定義される。ここにおいて、MWは、重量平均分子量である多分散指数は、ポリマー(異なる大きさの巨大分子の混合物)を含む異なる巨大分子の大きさの均一性(または不均一性)を測定したことである。多分散指数が1の組成物(すなわち、単分散である)は、その各々が同じサイズを有する巨大分子(デンドリマーなど)からなる。巨大分子の単分散組成物は、典型的には、非重合プロセスにより作製され、典型的には、ポリマーとは称されない。
【0025】
コポリエステルのポリ(アルキレンオキシド)は、好ましくは1以上、好ましくは少なくとも約1.01、好ましくは少なくとも約1.1、好ましくは少なくとも約1.2、ならびに好ましくは約2.0以下、好ましくは約1.8以下、好ましくは約1.6以下、ならびに好ましくは約1.01~約2.0、好ましくは約1.1~約1.8、及び好ましくは約1.2~約1.6の多分散指数を有する。
【0026】
コポリエステルは、エステル結合により結び付いた交互に繰り返すランダム長配列を含むブロック(セグメント化)コポリマーであってもよい。そのようなコポリエステルは、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールから誘導される半結晶性(またはハード)セグメント、ならびにポリ(アルキレンオキシド)から誘導される非晶質(またはソフト)セグメントを示す。ハードセグメントは、[R1-O-C(=O)-A-C(=O)-O]の繰り返し単位から構成され、式中、R1は、脂肪族ジオールから誘導され、Aは、上記で定義された芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香環(好ましくは、フェニルまたはナフチル)である。ソフトセグメントは、[R-O]の繰り返し単位から構成され、式中、Rは、ポリ(アルキレンオキシド)のアルキレン鎖である。ソフトセグメントは、エステル結合を介し、当該芳香族ジカルボン酸で末端修飾されてもよい。
【0027】
さらなる実施形態において、コポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、及びポリ(アルキレンオキシド)単位が、コポリエステル主鎖中にランダムな配列で配置されているランダムコポリマーである。
【0028】
ランダムコポリマー及びブロックコポリマーのこれらの両極端の間には、本明細書において「ブロック様」コポリマーと呼ばれるコポリエステルが存在する。ブロック様コポリマーでは、ポリ(アルキレンオキシド)単位が、芳香族ジカルボン酸単位の間にブロックコポリマーよりもかなりの程度で点在し、その結果、上述の結晶性(またはハード)セグメントは、平均して、ブロックコポリマーよりも著しく短い。コポリマー鎖中のコモノマー単位の配列、すなわちコポリエステルのランダム性の程度は、当該技術分野において公知の従来技術を使用し、好ましくは本明細書に記載の13C NMRスペクトル分析により測定され得る。コポリエステルは、ベルヌーイモデルにより定義されるように、純粋なブロックコポリマーを表す0の値及び統計的にランダムコポリマーを表す1の値を用いてランダム性の程度Bを定量化することにより、ブロック、ブロック様、またはランダムコポリエステルとして特徴付けられ得る。
【0029】
好ましくは、Bは、約0.1~1.0、好ましくは約0.2~約0.95、好ましくは約0.3~約0.9、好ましくは約0.4~約0.8、例えば約0.5~約0.7の範囲内である。コポリエステルは、好ましくは、少なくとも約0.1、好ましくは少なくとも約0.2、好ましくは少なくとも約0.3、及び好ましくは少なくとも約0.4、例えば少なくとも約0.5のBの値を有する。コポリエステルは、好ましくは、1.0以下、好ましくは約0.95以下、好ましくは約0.9以下、好ましくは約0.8以下、及び好ましくは約0.7以下のBの値を有する。
【0030】
好ましくは、本発明のコポリマーは、「ブロック様」コポリエステルまたはランダムコポリエステルである。
【0031】
より好ましくは、本発明のコポリマーは、「ブロック様」コポリエステルであり、本明細書に記載のポリ(アルキレンオキシド)の分子量を選択することにより得られる。
【0032】
ポリ(アルキレンオキシド)の分子量は、コポリマー中のコモノマーの配列、及びブロック、ブロック様、またはランダムコポリマーとしてのコポリマーの特徴付けに対して著しい影響を与えることが見出されている。したがって、低分子量ポリ(アルキレンオキシド)は、ランダムコポリマーの形成を促進し、高分子量ポリ(アルキレンオキシド)は、ブロックコポリマーの形成を促進する。ブロックコポリマーは、典型的には、対応するランダムコポリマーに対して、より結晶化しやすい傾向、及びより高い溶融温度を示す。ブロックコポリマーには、より高い加工温度が必要とされるが、分解のリスクがより高くなるため、本発明では、より高い溶融温度は避けることが好ましい。また、純粋なブロックコポリマーが結晶化する傾向の増加により、コポリマーの構造内における金属イオンの移動が妨害され、その導電性が低減する場合があるため、本発明では、これを避けることが好ましい。
【0033】
ポリ(アルキレンオキシド)は、好ましくは、コポリエステルの総重量の、約0.1~約80重量%、好ましくは約5~約78重量%、好ましくは約10~約75重量%、好ましくは約12~約65重量%、好ましくは約15~約60重量%、好ましくは約16~約55重量%を構成する。
【0034】
好ましくは、ポリ(アルキレンオキシド)は、コポリエステルの総重量の、少なくとも約0.1重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約12重量%、好ましくは少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約16重量%、好ましくは約80重量%以下、好ましくは約78重量%以下、好ましくは約75重量%以下、好ましくは約65重量%以下、好ましくは約60重量%以下、好ましくは約55重量%以下を構成する。
【0035】
コポリエステルがジオール(好ましくはエチレングリコール)、テレフタル酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含む場合、ポリ(アルキレンオキシド)は、好ましくは、コポリエステルの総重量の、約5~約30重量%、好ましくは約10~約25重量%、好ましくは約15~約20重量%の量で存在する。
【0036】
コポリエステルがジオール(好ましくはエチレングリコール)、イソフタル酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含む場合、ポリ(アルキレンオキシド)は、好ましくは、コポリエステルの総重量の、約35~約65重量%、好ましくは約40~約60重量%、好ましくは約45~約55重量%の量で存在する。
【0037】
コポリエステルフィルム中に存在するコポリエステルの量は、コポリエステルフィルムの総重量の、好ましくは約99.9重量%以下、好ましくは約95重量%以下、好ましくは約92重量%以下、好ましくは約90重量%以下である。好ましくは、コポリエステルフィルム中に存在するコポリエステルの量は、コポリエステルフィルムの総重量の、少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約65重量%、好ましくは少なくとも約80重量%である。したがって、コポリエステルが存在する量は、コポリエステルフィルムの総重量の、好ましくは約40重量%~約99.9重量%、好ましくは約50重量%~約95重量%、好ましくは約65重量%~約92重量%、好ましくは約80重量%~約90重量%である。
【0038】
当該コポリエステルは、好ましくは、フィルム中に存在する唯一のポリエステルである。
【0039】
本発明のコポリエステルフィルムは、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分を含む。好ましくは、本発明のコポリエステルフィルムは、導電性セラミック粒子材料から選択される第1のリチウムイオン含有成分を含む。1つ以上の導電性セラミック粒子材料が存在してもよい。
【0040】
当業者であれば、セラミック材料が、高温で加熱することによって形成されるかまたは緻密化される、金属元素及び非金属元素の両方を含む無機非金属固体であることが理解されるであろう。セラミック材料は、通常、剛性、脆性、耐食性があり、化学反応性が低く、融点が高い。本明細書で言及されるセラミック材料は、結晶質またはガラス質であり得る。本発明で使用されるセラミック粒子材料は、導電性である。以下に、本発明を主にリチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料に関して説明するが、技術原理は、一般に、他の金属イオン含有導電性セラミック粒子材料にも適用可能である。
【0041】
任意の好適なリチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料を使用することが可能であり、特に、NASICON型セラミック粒子材料(リチウムイオン含有導電性ガラスセラミック粒子材料など)、LISICON型セラミック粒子材料、ペロブスカイト型酸化物セラミック粒子材料、ガーネット型酸化物セラミック粒子材料、オキシ窒化リン酸リチウム(LIPON)型セラミック粒子材料、及びリチウムアルミニウムケイ酸塩(LAS)セラミック粒子材料が使用可能である。
【0042】
当該技術分野で知られているように、NASICON(ナトリウム超イオン伝導体)材料は、化学式Na1+xZr2Six3-x12(0<x<3)を有する固体群、ならびにNa、Zr及び/またはSiが等価元素で置き換えられる類似化合物を指し、したがって、本発明の最も好ましい態様に関連して、ナトリウムは、リチウムで置き換えられる。特に好適なリチウム含有NASICON型セラミック粒子材料は、一般式LiMy(PO43を有してよく、式中、Mは多価金属イオンを表す。例えば、Mは、Al、Si、Ti、Zr、Ge、Sn、及びHfのうちの1つ以上から選択され得る。他の好適なリチウム含有NASICON型セラミック粒子材料は、一般式Li1+xxTi2-x(PO43(LATP)を有してよく、式中、Mは、Al、Sc、Y、及びLaのうちの1つ以上から選択される3価のカチオンを表す。他の好適なリチウム含有NASICON型セラミック粒子材料は、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO43(LAGP)を有してよく、例えば、式中、xは0.5である。
【0043】
特に好適なものは、NASICON構造を有するリチウムイオン含有導電性ガラスセラミック粒子材料である。好ましい粒子材料は、Ohara Inc.から商品名「LICGC」で市販されているものである。好ましい粒子材料は、Ohara Inc.からLICGC(商標)PW-01粉末として市販されているものであり、これは、Li1+x+yAlxTi2-xSiy3-y12の主結晶相及びLi2O-Al23-SiO2-P25-TiO2の組成を有するものとして理解されている。さらに好ましい粒子材料は、Ohara Inc.からLICGC(商標)AG-01として市販されているものであり、これは、Li1+x+yAlx(Ti,Ge)2-xSiy3-y12の主結晶相及びLi2O-Al23-SiO2-P25-TiO2-GeO2の組成を有するものとして理解されている。
【0044】
当該技術分野で公知のように、LISICON(リチウム超イオン伝導体)材料は、化学式Li2+2xZn1-xGeO4を有する固体群を指す。NASICON型材料と同様に、他の元素(通常は等価元素)と、Li、Zn、及び/またはGeとが置き換えられ得る。好適なLISICON型粒子材料は、Li2+2xZn1-xGe416、Li14ZnGe416、Li(3+x)Gex(1-x)4、Li(4-x)Si(1-x)x4、及び式Li(4-x)Ge(1-x)x4Li10GeP212を有するものなどのチオ-LISICONから選択され得、式中xは0~1である。
【0045】
好適なペロブスカイト型酸化物粒子材料は、Li3xLa(2/3)-xTiO3(LLTO)及びLi3xLa1/3-xTaO3から選択し得る。
【0046】
好適なガーネット型酸化物粒子材料は、一般式Li7-3y-xLa3Zr2-xM1yM2x12(式中、M1はAl及びGaなどの3価のカチオンを表し、M2はNb及びTaなどの5価のカチオンを表し、x≧0及びy≦2である);Li5La3212(式中、MはNb及び/またはTaを表す);Li6ALa2212(式中、AはCa、Sr、及び/またはBaを表し、MはNbまたはTaを表す);またはLi6.5La2.5Ba0.5ZrTaO12を有し得る。
【0047】
好適なLIPON型セラミック粒子材料は、Li2PO2Nなどの一般式LixPOyzを有し得る。
【0048】
好適なLASセラミック粒子材料は、AlLiO6Si2から選択され得る。
【0049】
ナトリウムイオン含有セラミック粒子材料に関して、特に好適なものは、NASICON型セラミック粒子材料(ナトリウムイオン含有導電性ガラスセラミック粒子材料など)、ベータ-アルミナ及びベータ’’-アルミナ相Na2O・nAl23(式中、5≦n≦11)、希土類ケイ酸ナトリウム、及びNaイオン伝導性オキシハロゲン化物ガラスである。好適なNASICON型セラミック粒子材料は、一般式Na3Zr2Si2PO12、NaTi2(PO43、NaGe2(PO43、またはNa1+x[SnxGe2-x(PO43]を有し得るNASICON構造酸化物である。好適な希土類ケイ酸ナトリウムは、一般式Na5MSi412を有し、式中、MはY、Sc、Lu、及び/または任意の3価希土類カチオンである。好適なNaイオン伝導性オキシハロゲン化物ガラスは、NaI-NaCl-Na2O-B23であり得る。
【0050】
好ましくは、導電性セラミック粒子材料の体積分布中央粒径(全ての粒子の体積の50%に相当する球相当径であり、粒子の体積%対径に関する累積分布曲線上で読み取る-大抵は「Dv50」または「D50」値と称される)は、0.01~5μm、好ましくは0.05~3μm、好ましくは0.1~2μm、好ましくは0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmの範囲にある。粒径は、レーザー光回折(好ましくはフラウンホーファー回折)によって測定し得る。特に好ましい方法は、Malvernから入手可能なMastersizer(例えば、3000)である。中央粒子サイズは、選択された粒子サイズを下回る粒子体積のパーセンテージを表す累積分布曲線をプロットし、50パーセンタイルを測定することによって決定してもよい。
【0051】
コポリエステルフィルム中に存在する当該金属イオン含有導電性セラミック粒子材料の量は、コポリエステルフィルムの総重量の、好ましくは約60重量%以下、好ましくは約50重量%以下、好ましくは約35重量%以下、好ましくは約20重量%以下、及び好ましくは少なくとも約0.1重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約8重量%、好ましくは少なくとも約10重量%である。したがって、導電性セラミック粒子材料が存在する量は、コポリエステルフィルムの総重量の、好ましくは約0.1重量%~約60重量%、好ましくは約5重量%~約50重量%、好ましくは約8重量%~約35重量%、好ましくは約10重量%~約20重量%である。
【0052】
当該金属イオン含有導電性セラミック粒子材料は、フィルムのポリマーマトリックス内に保持される。
【0053】
上述のように、本発明のコポリエステルフィルムは、好ましくは、当該導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加の金属イオンを含む。導電性セラミック粒子材料がリチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料である場合、コポリエステルフィルムは、好ましくは、当該導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加のリチウムイオンを含む。導電性セラミック粒子材料がナトリウムイオン含有導電性セラミック粒子材料である場合、コポリエステルフィルムは、好ましくは、当該導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加のナトリウムイオンを含む。これらの追加の金属イオンは、本明細書では、第2の金属イオン成分、例えば第2のリチウムイオン成分または第2のナトリウムイオン成分と称される。当該第1の金属イオン含有成分及び当該第2の金属イオン成分は、互いに異なることが理解されるであろう。第2の金属イオン成分は、金属塩から選択される金属イオン含有成分であることが好ましい。以下に、本発明を主にリチウム塩に関して説明するが、技術原理は、一般に、他の金属塩材料にも適用可能である。
【0054】
任意の好適なリチウム塩を使用し得る。1種以上の異なる種類のリチウム塩を使用し得る。好ましくは、リチウム塩は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、チオシアン酸リチウム(LiSCN)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)リチウム(LiN(CF3SO22)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドリチウム(LiC(CF3SO23)、オルトケイ酸リチウム、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCF3CO2)、及びビス(フルオロ亜硫酸)アミドリチウム(LiN(FO2S)2)などのリチウムイオン電池での使用に好適なリチウム塩から選択される。
【0055】
溶媒キャスト手法を用いてコポリエステルフィルムを形成する場合、金属イオンは、溶媒再キャストステップで使用される溶媒に高い溶解度を有する金属塩から誘導されることが好ましい。したがって、リチウムイオン電池の場合、特に好ましいリチウム塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)である。
【0056】
金属塩(好ましいリチウム塩を含む)は、
(i)芳香族カルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸またはイソフタル酸;
(ii)脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪族カルボン酸、好ましくは酢酸、グリコール酸、またはコハク酸;
(iii)炭酸;
(iv)フェノール酸、好ましくはサリチル酸;
(v)過塩素酸またはリン酸、特にリン酸などの鉱酸;及び
(vi)ホウ酸、好ましくはビス(シュウ酸)ホウ酸から選択し得る。
【0057】
任意選択で、金属塩は、上記で提供される(i)~(v)の金属塩から選択される。
【0058】
したがって、好適なリチウム塩としては、テレフタル酸二リチウム(DLTA)、イソフタル酸二リチウム、グリコール酸リチウム、安息香酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、過塩素酸リチウム、オルトケイ酸リチウム、リン酸リチウム、サリチル酸リチウム、コハク酸リチウム、及びビス(オキサラト)ホウ酸リチウムが挙げられる。
【0059】
好ましくは、金属塩は有機金属塩である。
【0060】
好ましい実施形態において、金属塩は、コポリエステルが誘導される芳香族ジカルボン酸の塩である。したがって、好ましいコポリエステルがテレフタル酸から誘導される場合、リチウム塩は、好ましくはテレフタル酸一リチウムまたは二リチウムから選択され、好ましくはテレフタル酸二リチウムである。本発明者らは、熱安定性及びコスト上の理由で、テレフタル酸二リチウムが特に好ましいことを見出した。好ましいコポリエステルがイソフタル酸から誘導される場合、リチウム塩は、好ましくはイソフタル酸一リチウムまたはイソフタル酸二リチウムから選択され、好ましくはイソフタル酸二リチウムである。
【0061】
他の好ましい金属塩は、前述の酸、特にカルボン酸、特にジカルボン酸、特に芳香族ジカルボン酸、特にテレフタル酸のアルコキシレートエステルから選択し得る。そのようなアルコキシレートエステルは、好ましくは脂肪族ジオールから、好ましくはC2-10脂肪族ジオールから、好ましくはC2-6脂肪族ジオールから、好ましくはC2、C3、またはC4脂肪族ジオールから、より好ましくはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオールから、より好ましくはエチレングリコールから誘導される。
【0062】
特に好適なリチウム塩は、以下の式(I)を有し、本明細書では二リチウムビスヒドロキシエチルテレフタレート(DL-BHET)と称する。
【化1】
【0063】
好ましくは、リチウム塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テレフタル酸二リチウム、または二リチウムビスヒドロキシエチルテレフタレートから選択される。好ましくは、リチウム塩は、テレフタル酸二リチウムから選択される。
【0064】
本発明のナトリウム含有実施形態に関しては、任意の好適なナトリウム塩を使用し得る。1種以上の異なる種類のナトリウム塩を使用し得る。リチウム塩に関して記載された優先事項及び要素は、リチウムイオンがナトリウムイオンに置き換えられること以外に、ナトリウム塩にも同等に適用されることが理解されるであろう。好ましくは、ナトリウム塩は、硝酸ナトリウム(NaNO3)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(NaTFSI)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドナトリウム(Na[N(CF3SO22])、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム(V)(NaAsF6)、ビス(オキサラトホウ酸)ナトリウム(「NaBOB」)、ハロゲン化ナトリウム(NaX)(式中、Xは、Cl、Br、またはIである)、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、ペンタシアノプロペニドナトリウム(NaPCPI)、テトラシアノピロレートナトリウム(NaTCP)、及びトリシアノイミダゾレートナトリウム(NaTIM)から選択される。
【0065】
一実施形態において、当該第2の金属イオン成分の金属イオンは、金属カチオンと、コポリエステルの分極性電気陰性酸素原子、好ましくは少なくともポリアルキレンオキシド単位の電気陰性酸素原子との間の相互作用によってフィルムのポリマーマトリックス内に存在し、保持される。
【0066】
好ましい実施形態において、当該第2の金属イオン成分の金属イオンは、金属カチオンと金属塩のアニオンとの間の相互作用によってフィルムのポリマーマトリックス内に保持される。したがって、本実施形態において、コポリエステルフィルムは、金属塩を含む。当該第2の金属イオン成分の、好ましくは少なくとも一部、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%、及び好ましくは実質的に全ての金属イオンは、金属塩の形態である。金属塩は、好ましくは、金属イオンが誘導される金属塩である。金属塩は、上記の金属塩から選択され、上記の優先事項がここで適用される。したがって、この好ましい実施形態において、金属塩は、ポリマーマトリックス内に保持される。本実施形態において、金属塩は、ポリマー主鎖の一部ではなく、すなわち、コポリエステルへと重合されていない。言い換えれば、この好ましい実施形態において、金属塩のアニオンは、コポリエステルに共有結合されていない。金属塩が、コポリエステルが誘導される同じ芳香族ジカルボン酸の塩である上記の好ましい実施形態において、本明細書に記載の金属含有コポリエステルフィルムは、優れた熱安定性を示し、これは、コポリエステルの形態と、金属塩の形態との整合からもたらされると考えられる。
【0067】
コポリエステルフィルム中の当該第2の金属イオン成分の金属イオンの量は、好ましくは、約5:1~約1:50、好ましくは約4:1~約1:50、好ましくは約3:1~約1:50、好ましくは約2:1~約1:50、好ましくは約1:1~約1:40、好ましくは約1:2~約1:30、好ましくは約1:4~約1:25のモル比の金属:Oを供するのに効果的であり、この比率におけるO原子の数は、ポリ(アルキレンオキシド)残基のO原子の数として定義され、この比率における金属原子の数は、当該追加の金属イオン(すなわち、当該第2の金属イオン成分、当該第1の金属イオン含有成分を除く)によって提供される金属原子の数として定義される。
【0068】
好ましくは、第2の金属イオン成分(すなわち、好ましくは当該金属塩)の量は、コポリエステルフィルムの総重量の、約40重量%以下、好ましくは約10重量%以下、及び好ましくは少なくとも約0.1%、好ましくは少なくとも約1%、ならびに好ましくは約0.1重量%~約40重量%、好ましくは約1重量%~約10重量%である。
【0069】
本発明のコポリエステルフィルムが、当該第2の金属イオン成分を含む場合、第1の金属イオン含有成分と第2の金属イオン成分との合計量は、コポリエステルフィルムの総重量の、好ましくは約60重量%以下、好ましくは約50重量%以下、好ましくは約35重量%以下、好ましくは約20重量%以下、及び好ましくは少なくとも約0.1重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約8重量%、好ましくは少なくとも約10重量%である。したがって、第1の金属イオン含有成分と第2の金属イオン成分とが存在する合計量は、コポリエステルフィルムの総重量の、好ましくは約0.1重量%~約60重量%、好ましくは約5重量%~約50重量%、好ましくは約8重量%~約35重量%、好ましくは約10重量%~約20重量%である。
【0070】
コポリエステル、第1の金属イオン含有成分、及び存在する場合、第2の金属イオン成分は、当該フィルムの主成分であり、当該フィルムの総重量の、好ましくは少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約95重量%、及び好ましくは少なくとも約98重量%を構成する。
【0071】
本発明のコポリエステルフィルムは、従来、ポリエステルフィルムの製造に使用されている任意の他の添加剤をさらに含み得る。したがって、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、架橋剤、染料、充填剤、顔料、ボイド形成剤、潤滑剤、ラジカル捕捉剤、熱安定剤、燃焼遅延剤及び抑制剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ助剤、光沢向上剤、分解促進剤、粘度調整剤、ならびに分散安定剤などのものが、必要に応じて取り込まれてもよい。そのような添加剤は、従来の方式でコポリエステル組成物へと導入され得る。例えば、添加剤(複数可)は、フィルム形成コポリエステル組成物が誘導されるモノマー反応体と混合することにより導入されるか、または添加剤(複数可)は、コポリエステル組成物と、転動または乾式混合することにより、もしくは押出機中で配合することにより混合されてもよく、その後、冷却され、通常は顆粒またはチップへと粉砕される。マスターバッチ技術を使用してもよい。
【0072】
好ましい実施形態において、フィルムは酸化防止剤を含む。ラジカルを捕捉することにより、または過酸化物を分解することにより機能する酸化防止剤などの、様々な酸化防止剤が使用され得る。好適なラジカルを捕捉する酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、第2級芳香族アミン、及びTinuvin(商標) 770(Ciba-Geigy)などのヒンダードアミンを含む。好適な過酸化物分解酸化防止剤としては、ホスホニト、ホスファイト(例えば、トリフェニルホスフェート及びトリアルキルホスファイト)、ならびにチオ相乗剤(例えば、チオジプロピオン酸ジラウリルなどのチオジプロピオン酸のエステル)などの三価リン化合物が挙げられる。ヒンダードフェノール酸化防止剤が好ましい。特に好ましいヒンダードフェノールは、テトラキス-(メチレン3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニルプロピオネート)メタンであり、これは、Irganox(商標) 1010(Ciba-Geigy)で市販されている。他の好適な市販のヒンダードフェノールとしては、Irganox(商標) 1035、1076、1098、及び1330(Ciba-Geigy)、Santanox(商標) R(Monsanto)、Cyanox(商標)酸化防止剤(American Cyanamid)、ならびにGoodrite(商標)酸化防止剤(BF Goodrich)が挙げられる。フィルム中に存在する酸化防止剤の濃度は、コポリエステルの重量を基準として、好ましくは50ppm~5000ppmの範囲、より好ましくは300ppm~1500ppmの範囲、特に400ppm~1200ppmの範囲、及び特に450ppm~600ppmの範囲内である。1つよりも多くの酸化防止剤の混合物を使用してもよく、その場合、混合物の全体濃度は、好ましくは前述の範囲内である。コポリエステルへの酸化防止剤の取り込みは、従来手法によって達成してもよく、好ましくは、重縮合の前に、特に直接エステル化またはエステル交換反応の最後に、コポリエステルが誘導されるモノマー反応体と混合することによって行ってもよい。
【0073】
さらに好ましい実施形態において、フィルムは、好ましくは半金属酸化物(アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、タルク及びシリカなど)、焼成陶土、アルカリ金属塩(カルシウム及びバリウムの炭酸塩及び硫酸塩など)及び非導電性セラミック粒子材料から選択される無機粒子充填剤を含む。無機充填剤は、フィルムの厚さよりも小さい粒径を有するべきであり、好ましくは、粒径は、10μm以下、好ましくは約5μm以下、好ましくは約2μm以下であり、好ましくは約0.5μm~約2.0μmの範囲内である。当該無機粒子充填剤(または実際には上記の他の任意の従来の添加剤)は、上述の第1または第2の金属イオン含有成分とは固有の特性が異なる別体であることが理解されるであろう。特に、当該無機粒子充填剤(または上記の他の任意の従来の添加剤)は、上述の第1または第2の金属イオン含有成分の金属イオンを含まない。そのため、本明細書では、金属イオンを直接に輸送できないことから、当該無機粒子充填剤を「受動的充填剤」と称する。それにもかかわらず、そのような受動的充填剤は、驚くべきことに、当該第1または第2の金属イオン含有成分によって生成されるイオン伝導性を高めることが明らかになった。
【0074】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、ジオール、ジカルボン酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを含むコポリエステルフィルムであって、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分をさらに含み、受動的充填剤をさらに含む、当該コポリエステルフィルムが提供される。
【0075】
また、本発明の第1の態様のさらに好ましい実施形態では、ジオール、ジカルボン酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを含むコポリエステルフィルムであって、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分をさらに含み、受動的充填剤をさらに含み、導電性セラミック粒子材料及び受動的充填剤以外に、1つ以上の供給源からの追加の金属イオンをさらに含む、当該コポリエステルフィルムが提供される。
【0076】
無機粒子充填剤は、製造時及び下流工程での取り扱い性及び巻き取り性を改善するために、常にポリエステルフィルムに添加されており、そのような目的で、充填剤は、通常、比較的少量で使用され、充填剤の総重量は、一般に、コポリエステルフィルムの総重量を基準として、約2.5重量%以下、好ましくは約2.0重量%以下、好ましくは約1.0重量%以下、より典型的には約0.6重量%以下、好ましくは約0.3重量%以下である。ただ、本発明では、受動的充填剤は、好ましくは、コポリエステルフィルムの総重量の、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも約7重量%、好ましくは少なくとも約10重量%、ならびに好ましくは約5重量%~約20重量%、好ましくは約7重量%~約20重量%、好ましくは約7重量%~約15重量%の量で使用される。
【0077】
フィルムが溶融押出によって形成される場合、フィルムが得られる金属イオン含有コポリエステルの溶融粘度は、所望の加工温度で、好ましくは100Pa・s、好ましくは約1000Pa・s以下、好ましくは約500Pa・s以下、好ましくは約300Pa・s以下、好ましくは約250Pa・s以下、及び好ましくは約150Pa・sである。コポリエステルがそのような溶融粘度を示すべき典型的な加工温度は、本明細書に記載のフィルムの製造に使用される温度であり、好ましくは200℃~290℃、特に220℃~280℃、好ましくは275℃の範囲であり、及び/またはコポリエステルは、TM~TM+10℃(TMは、コポリエステルの結晶溶融温度である)の範囲内の温度でそのような溶融粘度を示す。高すぎる溶融粘度は、フィルム製造に困難を引き起こし、及び/または最終的なコポリエステルの分子量を減少させ、及び/または例えば特殊なフィルム形成装置を用いる必要性があることから、フィルム製造のコストを増加させる可能性がある。また、高すぎる溶融粘度は、安定したフィルム生産を達成するために、押出機の生産速度を低下させる必要があり、それにより製造の効率及び経済性が低下するか、または溶融物の粘度を低下させるために押出温度を増大させる必要がある(これらは、順に、ポリマーの熱分解及び関連する特性の喪失をもたらす可能性がある)。溶融粘度が低すぎると、信頼性の高いフィルム形成及び延伸が困難になる可能性がある。
【0078】
本明細書に記載のコポリエステルフィルムは、好ましくは配向コポリエステルフィルム、好ましくは二軸配向コポリエステルフィルムである。
【0079】
本明細書に記載のフィルムは、好ましくは自立フィルムであり、すなわち、支持ベースが存在しない状態で自立して存在することが可能である。
【0080】
フィルムの厚さは、好ましくは少なくとも約5μm、好ましくは少なくとも約10μm、好ましくは少なくとも約15μm、及び好ましくは少なくとも約20μmである。フィルムの厚さは、好ましくは約200μm以下、好ましくは約150μm以下、好ましくは約100μm以下、好ましくは約85μm以下、好ましくは約70μm以下、好ましくは約50μm以下、好ましくは約35μm以下である。したがって、フィルムの厚さは、好ましくは約5μm~約200μm、好ましくは約5μm~約150μm、好ましくは約10μm~約100μm、好ましくは約10μm~約85μm、好ましくは約15μm~約70μm、好ましくは約15μm~約50μm、及び好ましくは約20μm~約35μmである。
【0081】
好ましくは、フィルムのフィルム貫通イオン伝導率は、25℃で測定して少なくとも約10-7S/cm、好ましくは少なくとも約10-6S/cmである。
【0082】
好ましくは、フィルムのフィルム貫通イオン伝導率は、60℃で測定して少なくとも約10-7S/cm、好ましくは少なくとも約10-6S/cm、好ましくは少なくとも約10-5S/cmである。
【0083】
フィルムは、30分後に、100℃で、好ましくは20%未満、好ましくは15%未満、好ましくは10%未満の低収縮率を有すべきである。好ましくは、低収縮率の値は、フィルムの両方(直交する)の寸法(すなわち、縦方向及び横方向の寸法)で示される。
【0084】
好ましくは、フィルムの結晶融点(Tm)は、175℃よりも高く、好ましくは200℃よりも高く、好ましくは210℃よりも高く、好ましくは220℃よりも高い。これらの温度は、PETベースのコポリエステルにとって特に好ましい。比較して、リチウムイオン電池のための微多孔性セパレータとして一般的に使用されるポリオレフィンフィルムは、典型的には、約130℃~150℃の結晶融点(Tm)を有する。したがって、本明細書に記載のフィルムがより高い動作温度を必要とする用途に好適であるので、Tmのこの相対的増加は有利である。好ましくは、フィルムの結晶融点(Tm)は、270℃以下である。
【0085】
好ましくは、本発明のフィルムは、約50℃以下、好ましくは約45℃以下、好ましくは約40℃以下のガラス転移温度(Tg)を示す。本発明において、より低いTgは、本明細書に記載される好ましい最終用途におけるフィルムの動作温度でより高い導電性を促進するため、好ましい。本発明のフィルムは、典型的には、少なくとも約-50℃、好ましくは少なくとも約-30℃、及び好ましくは少なくとも約-10℃のTgを示す。
【0086】
本明細書に記載のフィルムは、特に、金属イオン充電式電池、特に乾電池(本明細書では固体電池とも称する)中の固体セパレータとして好適である。
【0087】
本発明の第2の態様によると、本明細書の第1の態様で定義したポリエステルフィルムを製造する方法であって、
(i)ジオールを、ジカルボン酸またはそのエステル(好適には低級アルキル(C1-4)エステル、好ましくはジメチルエステル)と反応させてジカルボン酸のビス(ヒドロキシアルキル)-エステルを形成するステップ;
(ii)ポリ(アルキレンオキシド)の存在下でジカルボン酸のビス(ヒドロキシアルキル)-エステルを重縮合反応で重合させてコポリエステルを形成するステップ;
(iii)ステップ(i)及び/またはステップ(ii)におけるコポリエステルの合成中、及び/またはそれに続く別途の配合または混合ステップ中に、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分、及び、任意選択で、導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加の金属イオンを導入して、コポリエステル組成物を形成するステップ;及び
(iv)好ましくは組成物を溶融押出することにより、またはコポリエステル組成物を含む分散液もしくは溶液を溶媒キャストすることにより、コポリエステル組成物からコポリエステルフィルムを形成するステップを含む当該方法が提供される。
【0088】
本明細書に記載のコポリエステルは、ポリエステル材料を製造するための従来の手法にしたがって合成することができる。したがって、コポリエステルは、第1ステップの直接エステル化またはエステル交換と、それに続く第2ステップの重縮合によって作製し得る。直接エステル化の実施形態において、ジオール及びジカルボン酸を、典型的には高温(典型的には、約150℃~260℃)及び圧力(典型的には、約40psi)下で、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)の存在下で直接反応させ、直接エステル化反応の副生成物である水を留去して、ビス(ヒドロキシアルキル)カルボキシレートを形成する。直接エステル化反応が完了すると、安定剤(例えば、リン酸)を添加して塩基を中和する。代替の一実施形態において、コポリエステルは、エステル交換反応経路により調製され、この経路は、好ましくは、ジカルボン酸のエステル(好適には、低級アルキル(C1-4)エステル、好ましくはジメチルエステル)を、モル過剰のジオールと共に、高温(典型的には、約150℃~260℃の範囲)で、塩基性エステル化触媒(例えば、酢酸マンガン(II)四水和物、Mn(OAc)2・4H2O)の存在下で加熱し、エステル交換反応の副生成物であるメタノールを留去して、ビス(ヒドロキシアルキル)カルボキシレートを形成することを含む。重合は、適正触媒、通常は三酸化アンチモンを使用して、高温(典型的には、約290℃)で、典型的には減圧(例えば、約1mmHg)下で、副生成物(複数可)を連続蒸留することにより実施される重縮合ステップで行われる。ポリ(アルキレンオキシド)は、合成手順の開始後に存在することがあるが、これは、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステル出発材料が、典型的には、特にポリ(アルキレンオキシド)の分子量が増加するにつれて、ポリ(アルキレンオキシド)よりもむしろジオールと選択的に反応するためである。しかしながら、好ましくは、ポリ(アルキレンオキシド)が、重縮合ステップの開始後に添加される。
【0089】
好ましくは、合成手順は、コポリエステルの分子量を増加させ、コポリエステルへのポリ(アルキレンオキシド)の重合を増加及び/または完了させるための固相重合(SSP)ステップをさらに含む。
【0090】
したがって、重縮合反応(ステップ(II))の生成物は、好ましくは、SSPのステップを受ける。固相重合は、例えば窒素で流動化される流動層で、または回転真空乾燥器を使用する真空流動層で実施され得る。好適な固相重合技術は、例えばEP-A-0419400に開示され、この文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、SSPは、典型的には、ポリマーの結晶融点(TM)よりも10℃~50℃低いが、ガラス転移温度(Tg)よりも高い(または、コポリエステルが複数のガラス転移温度を示す場合、最も高いガラス転移温度よりも高い)温度で実施される。乾燥窒素の不活性雰囲気または真空を、分解防止のために使用する。好ましい実施形態において、固相重合は、220℃、真空下、16時間にわたって実施される。
【0091】
第1の金属イオン含有成分、及び任意選択の第2の金属イオン含有成分は、独立してまたは一緒にコポリエステル中に導入され得る。独立して導入される場合、第1の金属イオン含有成分及び第2の金属イオン含有成分は、同時に導入されてもよく、順次導入されてもよい。第1及び第2の金属イオン含有成分(複数可)のいずれか一方または両方が複数の異なる化合物を含む場合、複数の化合物は、独立してまたは一緒にコポリエステルに導入されてもよく、独立して導入される場合、同時に導入されてもよく、順次導入されてもよい。
【0092】
本明細書で実施形態A1と称される一実施形態において、第1及び第2の金属イオン含有成分は、ステップ(i)及び/または(ii)におけるコポリエステルの合成中に、コポリエステルへ導入される。好ましくは、第1及び第2の金属イオン含有成分は、合成手順の開始後に、1つ以上の反応物(複数可)または反応混合物に添加される。あるいは、第1及び第2の金属イオン含有成分は、重合段階(ii)の前に、直接エステル化またはエステル交換ステップ(i)の反応生成物に添加される。
【0093】
本明細書で実施形態A2と称される第2の実施形態において、第1及び第2の金属イオン含有成分は、別途の配合または混合ステップ中に、コポリエステルに導入される。
【0094】
本明細書で実施形態A3と称される第3の実施形態において、第1及び第2の金属イオン含有成分が、異なるステップ中にコポリエステルに導入される。例えば、第2の金属イオン含有成分は、ステップ(i)及び/または(ii)におけるコポリエステルの合成中に導入され(好ましくは、合成の開始後に、1つ以上の反応物(複数可)または反応混合物に添加され)、第1の金属イオン含有成分は、別途の配合または混合ステップ中に導入される。
【0095】
フィルムの形成は、当該技術分野で周知の従来の溶融押出技術によって行ってもよい。一般的に言えば、この工程は、ポリマーの溶融温度に適した範囲内の温度、例えば約250℃~約300℃の範囲(または、典型的には約10℃以下であり、ポリマーの結晶融点よりも高い)でポリマー層を押出するステップと、押出物をクエンチするステップと、好ましくはクエンチした押出物を配向させるステップとを含む。
【0096】
配向は、配向フィルムを製造するための当該技術分野で知られている任意の工程、例えばインフレーションまたはフラットフィルム工程によって行ってもよい。二軸配向は、機械的特性及び物理的特性の満足のいく組み合わせを達成するために、フィルムの面内で互いに直交する2つの方向で延伸させて行う。二軸配向は、同時配向で行ってもよく、逐次配向で行ってもよい。好ましくは、同時配向で行われる。
【0097】
同時二軸配向は、例えば、インフレーション工程において、熱可塑性ポリエステルチューブを押出し、その後にクエンチし、再加熱し、その後内部のガス圧力により膨張させて、横方向の配向を誘導し、長手方向の配向を誘導する速度で引き出すことにより行ってもよい。特に好適な同時二軸配向工程は、EP-2108673-A、及びUS-2009/0117362-A1に開示され、その工程の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
他の好ましい手法は、フィルム形成ポリエステルを、スロットダイを介して押出し、冷やしたキャスティングドラム上で急速にクエンチし、ポリエステルが非晶質状態へとクエンチされることを保証するフラットフィルム工程である。その後、配向は、少なくとも1つの方向で、ポリエステルのガラス転移温度(複数可)以上の温度で、クエンチされた押出品を延伸することにより行われる。逐次配向は、平坦なクエンチされた押出品を初めに、1つの方向、通常は縦方向に、すなわちフィルム延伸機を介して前方向に延伸し、その後、横方向に延伸することにより行ってもよい。押出品の前方向の延伸は、便利なことに、1組の回転ロール上、または2対のニップロール間で行われ、横方向の延伸は、幅出装置で行われる。
【0099】
延伸は、一般に、配向フィルムの寸法が、延伸の方向または各方向の原寸の2~7倍、好ましくは2~5倍、より好ましくは2.5~4.5倍、より好ましくは3.0~4.5倍、より好ましくは3.5~4.5倍となるように行われる。延伸は、従来、コポリエステル組成物のTgよりも高い温度、好ましくはTgよりも少なくとも約5℃高い温度、好ましくは少なくとも約15℃高い温度、及び好ましくは約Tg+5℃~約Tg+75℃、好ましくは約Tg+5℃~約Tg+30℃の範囲の温度で行われる。典型的には、延伸は、約5℃~約155℃、好ましくは約5℃~約110℃の範囲の温度で行われる。単に1つの方向の配向が必要とされる場合、より大きな延伸比(例えば、最大約8倍)が使用されてもよい。これは、バランスのとれた特性が所望である場合には好ましいが、縦方向及び横方向に同等に延伸される必要はない。
【0100】
同時二軸延伸工程を使用することが好ましく、それは特に、本発明の薄いフィルムを作製するために有利である。
【0101】
延伸されたフィルムは、コポリエステルの所望の結晶度を誘導するために、コポリエステルのガラス転移温度(複数可)以上であるがその溶融温度(TM)以下の温度で、寸法支持体の下で、加熱硬化することにより寸法安定化されてもよく、好ましくは寸法安定化される。加熱硬化中に、少量の寸法緩和が、横方向(TD)及び/または縦方向(MD)に実施されてもよい。寸法緩和は、最大10%、より典型的には最大に約8%である。横方向の寸法緩和は、当該技術分野で「トーイン(toe-in)」と呼ばれ、典型的には、最大約5%、典型的には約2~約4%の寸法収縮を伴う。縦方向の寸法緩和は、従来技術により行ってもよいが、低い線張力が特に逐次配向工程において必要とされるため、達成するには比較的より困難な工程である。このような理由で、同時配向工程が、好ましくはMD緩和が所望な場合に使用され、本実施形態では、典型的には、MD及びTDの同時緩和が行われる。実際の加熱硬化温度及び時間は、フィルムの組成及びその所望の最終的な熱収縮に応じて変わることとなるが、引裂き抵抗などのフィルムの靱性特性を本質的に劣化させるように選択されるべきではない。これらの制約の範囲内で、好ましいフィルムは、フィルムの溶融温度よりも約80℃低い温度(すなわち、TM-80℃)~TMよりも約10℃低い温度(すなわち、TM-10℃)、好ましくは約TM-70℃~約TM-20℃で加熱硬化される。したがって、加熱硬化温度は、好適には、約130℃~約245℃の範囲、好ましくは約150℃~約245℃の範囲、及び好ましくは少なくとも180℃の範囲、好ましくは190℃~230℃の範囲内である。加熱硬化後、フィルムは、典型的には、コポリエステルの所望の結晶度を誘導するために急速にクエンチされる。
【0102】
特にフィルムが逐次配向工程で配向されている場合、フィルムは、インライン緩和段階を用いることによってさらに安定化され得る。代替的に、緩和処理は、オフラインで実施できる。フィルムの緩和は、0%~10%、好ましくは5%である。この付加的ステップにおいて、フィルムは、加熱硬化段階の温度よりも低い温度で、MD及びTD張力をはるかに低下させた状態で加熱される。フィルムスピードを制御する緩和プロセスに関して、フィルム感度の低下(したがって、歪み緩和)は、典型的には、0~2.5%、好ましくは0.5~2.0%の範囲内である。熱安定化ステップ中、フィルムの横方向の寸法は増加しない。熱安定化ステップで使用される温度は、最終フィルムからの特性の所望の組み合わせに応じて変えてもよく、温度を高くするほど、良好になり、すなわち、より低い残留収縮特性が得られる。135℃~250℃の温度が一般に望ましく、好ましくは150℃~230℃、より好ましくは170℃~200℃である。加熱の継続時間は、使用される温度次第であるが、典型的には10~40秒の範囲内であり、20~30秒の継続時間が好ましい。この熱安定化工程は、水平型及び垂直型の構成を含む多様な方法によって、ならびに別途の工程のステップとしての「オフライン」、またはフィルム製造工程の継続としての「インライン」のいずれかで実施することができる。そうして加工されたフィルムは、そのような加熱硬化後の緩和がない状況で作製されたものよりも少ない熱収縮を示すであろう。
【0103】
有利には、フィルムは、空気中で製造されてもよく、かつそうすることが好ましい。すなわち、フィルムは、不活性ガス(窒素またはアルゴンなどの貴ガスなど)の雰囲気下で製造されない(押出、キャスティング、及び延伸するステップを含む)。したがって、本明細書に記載のコポリエステル組成物及びコポリエステルフィルムは、驚くほど熱安定的であり、製造または保存の際に、特別な操作条件(特に、不活性雰囲気)を必要としない。
【0104】
コポリエステルフィルムは、溶融押出によってフィルムを形成する代わりに、当該技術分野で周知の従来の溶媒キャスト手法によって形成することができる。一般的に言えば、この工程は、コポリエステル、第1の金属イオン含有成分、任意の第2の金属イオン含有成分、及び溶媒を含む分散液からフィルムを形成することを含む。好適な溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトニトリル(ACN)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメトキシエタン(DME)、ギ酸メチル(MF)、ニトロメタン(NM)、ジエチレンカーボネート(DEC)、トルエン、水、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エチルアルコール、及び酢酸エチルが挙げられる。
【0105】
混合容器の種類、分散ステップの継続時間、及び分散ステップの温度は、使用するコポリエステル及び溶媒の種類に応じて変化するだろう。使用する温度は、典型的には、約22℃~約100℃である。分散工程の継続時間は、典型的には、数時間、例えば約6時間~48時間、約10時間~30時間、約12時間~24時間であるだろう。
【0106】
第1の金属イオン含有成分及び任意の第2の金属イオン含有成分は、溶媒と接触して分散液を形成するコポリエステル中にすでに存在していてもよい。あるいは、第1及び第2の金属イオン含有成分をコポリエステル分散液と混合してもよく、本実施形態では、第1及び第2の金属イオン含有成分を独立してまたは一緒に分散液に導入してもよい。独立して導入される場合、第1及び第2の金属イオン含有成分は、同時にまたは順次に導入され得る。第1及び第2の金属イオン含有成分の一方または両方が複数の異なる化合物を含む場合、複数の化合物は、独立してまたは一緒に導入されてもよく、独立して導入される場合は、同時にまたは順次に導入され得る。
【0107】
次いで、分散液を支持ベース上でフィルムにキャストする。次いで、残留溶媒を除去するために、キャストフィルムを適切に乾燥させる。キャストフィルムは、典型的には、約50℃~約170℃、好ましくは約80℃~160℃の温度で乾燥される。乾燥ステップは、残留溶媒の量を減らすために、異なる温度帯にわたる複数の(例えば、少なくとも2つの)乾燥ステップを含んでもよいことが理解されるであろう。乾燥すると、キャストされたコポリエステルフィルムは、例えばセパレータとして電池に組み込まれるなどの後続の処理のために支持ベースから除去され得る。
【0108】
必要に応じて、溶媒キャストによって作製されたフィルムは、上記のように配向及び寸法安定化を受けてもよい。
【0109】
フィルム製造の他の方法において、フィルム形成コポリエステル組成物は、それ自体が、電池、特に電極の構成要素である支持ベース上にキャストされ、すなわち、キャストフィルムは、電池製造中にin situで形成される。この製造方法は、溶媒キャスト法において特に有用であるが、これに限定されなく、押出成膜法にも使用し得る。したがって、本実施形態において、電池のセパレータは、電池の製造中にコポリエステルフィルムを電極上にキャストすることによってin situで形成される。その場合、電極及びキャストコポリエステルフィルムの複合構造は、電池を製造するための後続の処理を受ける。
【0110】
第1の態様に関して説明した優先事項及び要素は、第2の態様にも等しく適用されることが理解されるであろう。
【0111】
本発明はさらに、第2の態様の方法によって製造されたフィルムを提供する。
【0112】
第3の態様によると、本明細書に記載のコポリエステルフィルムを含む金属イオン電池(特にリチウムイオン電池)であって、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間のセパレータを含み、当該セパレータが、本明細書に記載のコポリエステルフィルムである、当該金属イオン電池が提供される。
【0113】
電池の使用及び動作中、コポリエステルフィルム中に存在する金属イオンは移動しやすく、これにより、セパレータは、電極間に必要なイオン伝導性を示すことが可能である。
【0114】
好ましくは、金属イオン電池は、固体電池(本明細書では乾電池とも称する)である。あるいは、金属イオン電池は、液体またはゲル電解質をさらに含み、当該技術分野において、典型的には、湿式セル電池と称される。金属イオン電池が充電式電池であることは当業者には理解されるであろう。
【0115】
好ましくは、金属イオン電池は、アノード集電体及びカソード集電体をさらに含む。
【0116】
当技術分野で常用の、任意の好適なアノード、アノード集電体、カソード、及びカソード集電体を使用し得る。
【0117】
好適なアノードとしは、グラファイト及び/またはチタン酸リチウム(LTO)が挙げられる。
【0118】
好適なカソードとしては、リチウム、またはリチウムと他の金属(複数可)との混合酸化物、特にチタン酸リチウム(LTO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4、LFPとしても知られている)、及び/またはリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(LiNiMnCoO2、NMCとしても知られている)が挙げられる。
【0119】
好適なアノード及び/またはカソード集電体は、例えば、英国特許出願第2106834.1に開示されており、この文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。特に、アノード集電体及び/またはカソード集電体は、二軸配向ポリマー基材層(好ましくは、ポリマー基材層はポリエステルであり、好ましくはPETまたはPENである)と、ポリマー基材層側上の第1の金属層とを含む集電体から独立して選択され得、ポリマー基材層は、200℃、空気中で、横方向(TD)及び縦方向(MD)のそれぞれに正の熱膨張(好ましくは0%超~3.0%以下、好ましくは0.1%~2.0%、好ましくは0.2%~1.5%)を示し、ポリマー基材層は、12μm以下(好ましくは1.0~12.0μm、好ましくは2.0~8.0μm、好ましくは4.0~8.0μm、好ましくは4.0~6.0μm)の厚さを有し、第1の金属層は、1000nm以下の厚さを有し、好ましくは集電体は、第2の金属層をさらに含み、第1の金属層及び第2の金属層は、ポリマー基材層の反対側に配置され、第2の金属層は、独立して1000nm以下の厚さを有する。好ましくは、第1の金属層、及び存在する場合に第2の金属層の厚さは、それぞれ独立して、50nm~1000nm、好ましくは100nm~1000nm、好ましくは100nm~800nm、好ましくは150nm~700nmである。第1の金属層、及び存在する場合に第2の金属層は、好適にはそれぞれ独立して、200℃、空気中で、0%超~1.0%以下、好ましくは0.25%~0.75%、好ましくは0.3%~0.5%の等方性熱膨張を示し、好ましくは、第1の金属層及び第2の金属層は、200℃で、互いに同一の熱膨張を示す。第1の金属層、及び存在する場合に第2の金属層は、それぞれ独立して、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル-銅合金、またはアルミニウム-ジルコニウム合金のうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、第1及び第2の金属層は、これらは同じ材料から選択され、好ましくは、第1および第2の金属層は、両方ともアルミニウムまたは銅のいずれかである。このような集電体は、以下の特性の1つ以上を示すことが好ましい。
(i)少なくとも600g/25mm、好ましくは少なくとも約700g/25mm、好ましくは少なくとも約800g/25mmの、金属層とポリマー基材層との間の接着強度。
(ii)0.01Ωsq-1~2.0Ωsq-1、好ましくは0.02Ωsq-1~2.5Ωsq-1、好ましくは0.02Ωsq-1~2.0Ωsq-1、好ましくは0.02Ωsq-1~1.5Ωsq-1、好ましくは0.05Ωsq-1~1.0Ωsq-1のシート抵抗。
(iii)約30A以下のブレークダウン電流及び/または約300℃以下のブレークダウン温度。
【0120】
このような好ましい集電体は、(I)二軸配向ポリマー基材層を形成するステップと、(II)当該基材層の一面または両面に金属を堆積させて金属層を形成するステップ(好ましくは、熱蒸着、電子ビーム蒸着、または仮想カソード堆積)とを含む方法で作製し得る。ステップ(I)は、
(1)溶融ポリマー層を押出し、ポリマーのガラス転移温度(複数可)を超える温度で押出物を二軸延伸することであって、好ましくは、二軸延伸が同時二軸延伸であり、好ましくは、延伸は、配向フィルムの寸法が各延伸方向で元の寸法の2~5倍になるように行われる段階;
(2)ポリマーのガラス転移温度(複数可)よりも高いがその溶融温度(TM)よりも低い温度で、寸法支持体の下でアニーリングすることにより、二軸延伸フィルムを寸法安定化することであって、好ましくは、アニーリング温度は、TM-80℃~TM-10℃の範囲、好ましくは200℃~245℃の範囲、好ましくは220℃~240℃の範囲である段階;
(3)アニールした二軸延伸フィルムに寸法緩和、好ましくは横方向及び縦方向の両方での同時寸法緩和を施すことであって、緩和度は、横方向及び縦方向のそれぞれにおいて、0.5~5.0%、好ましくは1.0~4.0%、好ましくは1.0~3.0%、好ましくは1.0~2.0%であり、好ましくは、縦方向及び横方向における緩和度が同一であり、好ましくは、緩和ステップの温度は、先行のアニーリングステップの温度以下であり、好ましく200℃~240℃、好ましくは210℃~230℃、好ましくは215℃~230℃は以下である段階;
(4)任意選択で、先行の緩和ステップよりも低い温度、好ましくは少なくとも5℃低く、好ましくは195℃~230℃の範囲、好ましくは195℃~220℃の範囲の温度で行われる第2の緩和ステップ;及び
(5)任意選択で、ポリマー基材層の露出面に、表面改質処理を施すことであって、当該処理ステップは、ステップ(I)の後、そしてステップ(II)の前に行われ、好ましくは、当該処理は、ポリマー基材層の露出面にプラズマ処理、好ましくはコロナ放電を施すことを含む段階を順番に含むことが好ましい。
【0121】
好ましい集電体の金属層における「金属」という用語は、本開示の残りの部分でセパレータ及び電池と関連して使用される「金属」という用語の使用とは別個で独立した観点で使用されることが理解されるであろう。特に、集電体の金属層が有する固有の特性は、セパレータ内の金属イオンの固有の特性及び金属イオン電池の固有の特性(すなわち、金属イオン電池がリチウムイオン電池であるか、またはナトリウムイオンであるか)とは独立している。
【0122】
第1及び第2の態様に関して説明した優先事項及び要素は、第3の態様にも同様に適用される。
【0123】
第4の態様によると、電池、好ましくは金属イオン電池、好ましくはリチウムイオン電池におけるセパレータとしての、本明細書に記載のコポリエステルフィルムの使用が提供される。
【0124】
第1~第3の態様に関して説明した優先事項及び要素は、第4の態様にも同様に適用される。
【0125】
本発明の第5の態様によると、本明細書に記載のコポリエステルフィルムを含む金属イオン電池の製造方法であって、
(a)本明細書に記載のコポリエステルフィルムを提供するステップ;及び
(b)金属イオン電池を組み立てるステップであって、当該電池がアノード、カソード、及びアノードとカソードとの間のセパレータを含み、当該セパレータがステップ(a)で得られたコポリエステルフィルムである、当該ステップを含む当該方法が提供される。
【0126】
第1~第4の態様に関して説明した優先事項及び要素は、第5の態様にも同様に適用される。
【0127】
特性測定
以下の試験方法は、本明細書に記載のコポリエステルフィルム、セパレータ、及び電池の特性を特徴付けるために使用された。
(i)ガラス転移温度(Tg)、結晶温度(Tc)、結晶融点(Tm)
これらの熱パラメータは、PerkinElmer HyperDSC 8500を使用した示差走査熱量測定(DSC)によって測定された。特に明記されていない限り、測定は、以下の標準試験方法に従い、ASTM E1356-98に記載の方法に基づいて行われた。試料は、走査の継続時間の間に、乾燥窒素雰囲気下に維持された。20ml分-1の流量及びAl皿が使用された。試料(5mg)は、以前の熱履歴を消去するために、最初に、20℃分-1で、20℃から350℃まで加熱された(第1の加熱走査)。350℃で、2分間一定温度で維持した後、試料は、20℃分-1で、20℃まで冷却された(第1の冷却走査)。その後、試料は、20℃分-1で、350℃まで再加熱された(第2の加熱走査)。Tg及びTMの値は、第2の加熱走査から得られた。周知のように、ポリマーのガラス転移温度は、ガラス質の脆い状態から可塑性のゴム状態まで変化する温度である。Tgの値は、ASTM E1356-98に記載されているように、DSC走査(温度(℃)に対する熱流(W/g))で観察されたガラス転移の推定開始温度として決定された。本発明のコポリエステルは、2つのTg値を伴う場合があり、一方はソフトセグメントのTgであり、他方はハードセグメントのTgであることが理解されるであろう。Tc及びTmの値は、DSC走査から、遷移のピーク発熱または吸熱として決定された。
(ii)溶融粘度
本明細書で使用する場合、「溶融粘度」という用語は、特定の溶融温度及び特定の発振周波数で測定されたポリマーの複素粘度を意味する。複素粘度は、以下の試験方法にしたがって、TA Instruments DHR-1を使用する回転レオロジー試験により測定された。ポリマー試料(2.5g)は、動的真空下、140℃で、16時間乾燥された。次いで、試料は、2×25mm径平行板の間で保持され、窒素雰囲気下、要求される温度まで加熱された。温度傾斜法によりポリマーの複素粘度の分析を行い、これによって、試料を4℃分-1の速度、定歪(5%)、及び角周波数(10rad秒-1)で加熱した。
(iii)フィルム貫通イオン導電率(ドライセル(固体状態)設定)
電解質が追加的に存在していない、すなわちドライセル(固体状態)の設定において、フィルム試料のフィルム貫通イオン導電率は、電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって決定された。直径12mmの乾式コイン電池を構築した。直径12mmの乾式コイン電池を構築した。1×1mmのスペーサーを備えた対称Al/Al乾式コイン電池を、アルゴングローブボックス内で、40℃未満の露点で構築した。ACインピーダンススペクトルは、AutoLabユニットを使用して、10mVの摂動電圧を加えた後、電池動作温度(特に明記しない限り、約25℃~約75℃の範囲内及び周囲温度(25℃))で、100mHz~1MHzのAC周波数範囲の開回路電圧(OCV)下で取得した。ナイキストインピーダンスプロットが生成され、x軸切片を使用してコイン電池成分の抵抗R1(オーム単位)及びセパレータのバルク抵抗R2に対する抵抗値(オーム単位)を計算した(ナイキストプロットから生成された2つの値のうち、セパレータが有する抵抗値は比較的に高いことが理解されるであろう)。フィルムセパレータのフィルム貫通イオン伝導率(σ)は、次の式を用いて、バルク抵抗R2から計算された。
【数1】
式中、dは、フィルム試料の厚さ(cm単位)であり、Aは、電極と接触するフィルムの面積(cm2単位)である。フィルムの面積は、フィルムの総面積、すなわち、Al電極に接触するフィルムの両側の総面積を指すことが理解されるであろう。イオン伝導率は、ジーメンス/cmで表され、通常は、対数(底10)の形態で表される。
(iv)分子量(Mn)
GPC測定は、Agilent PL HFIPgel guardカラム、加えて2×30cm PL HFIPgelカラムを使用して、Malvern/Viscotek TDA 301で実施した。25mMのNaTFAcを含むHFIPの溶液は、0.8mL分-1の公称流量で、溶離液として使用された。全ての実験の実行は、屈折率検出器を利用して40℃で実施した。分子量は、ポリメチルメタクリレート校正物を参照する。データ収集及びそれに続くデータ分析は、Omnisecソフトウェアを使用して実施した。試料は、10mLの溶離液に溶解した20mgの試料を用いて、2mg mL-1の濃度で調製された。これらの溶液を室温で24時間撹拌し、その後、ポリマーを完全に溶解させるために、40℃で30分間加温した。各試料は、注射前に、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン膜を介して濾過された。MWは、そのような測定を使用して決定されてもよい。MW及びMNの値が分かると、PDIを決定し得る。
(v)熱収縮
収縮は、フィルムの縦方向及び横方向に対して特定方向で切断されたフィルム試料(好ましくは、200mm×10mmの寸法を有する)に対して評価され、目視測定のために印を付けた。試料の長い方の寸法(すなわち、200mmでの寸法)は、収縮試験の対象、すなわち縦方向での収縮を評価するためのフィルム方向に相当し、試験試料の長い方の寸法は、フィルムの縦方向に沿って配向される。試料を所定温度まで加熱(その温度で加熱したオーブンに置くことによる)し、かつ所定間隔で保持した後、それを室温まで冷却し、寸法を再度手作業で測定した。熱収縮は、元の長さのパーセンテージとして計算して表した。
(vi)コポリエステル中のポリ(アルキレンオキシド)のレベル
1H NMR分光法を使用し、残留溶媒(d2-TCE(1,1,2,2-テトラクロロエタン))の共鳴を参照して80℃でECS400分光計を使用することで、コポリエステル中のポリ(アルキレンオキシド)のレベルを決定した。
(vii)(好ましい集電体の)二軸配向ポリマー層の膨張
5mm×8mmの寸法を有する好ましい集電体の二軸配向ポリマー層の試料を対象に、熱機械分析装置(TMA Q400、TA Instruments Inc.製)を使用して熱機械分析を実施した。試料の長い方の寸法(すなわち、8mmの寸法)は、膨張試験の対象となる試料の方向に相当する。試料を装置に取り付け、試料の縦方向(MD)または横方向(TD)に、32℃から220℃まで10℃/分の昇温速度で、1N/mm2の荷重を加えた。温度200℃における空気中の熱膨張を測定した。200℃における空気中の熱膨張は、所与の方向(すなわち、MDまたはTD)におけるフィルムの寸法の変化%として定義され、(L1-L0)/L0×100として計算され、式中、L0は、32℃での寸法であり、L1は、200℃での寸法である。当業者であれば、負の熱膨張は熱収縮を示すことが理解されるであろう。
(viii)(好ましい集電体の)シート抵抗
好ましい集電体の導電層のシート抵抗は、ASTM F390-98(2003)にしたがって線形4点プローブ(Jandel Model RM2)を使用して測定された。
(ix)ブレークダウン電流及びブレークダウン時の温度(好ましい集電体に含まれる)
寸法50mm×10mmを有する集電体試料のそれぞれの両端を、一対の導電性クランプの間に保持した。試料のそれぞれの端における10mm2となるところがクランプ内に保持されるように試料をクランプした。ブレークダウンが観察されるまで、2A/分の傾斜率で試料に電流を流した。ブレークダウン時の温度を決定するために、試験全体にわたって試料の温度プロファイルを熱画像カメラを使用してモニタリングした。
(x)(好ましい集電体の)接着強度
25μmの厚さを有するEAA(エチレンアクリル酸フィルム)(UCB Sidac Divisionより市販されたVistafix(TP))に対する金属化ポリマー基材の接着強度を以下のように評価した。集電体試料とEAAフィルム試料を、金属化ポリマー基材層の外面がEAAフィルムの表面と接触するように一緒に配置した。試料は、Sentinel Model 12(Packaging Industries Group Inc)機械を使用し、50psiの圧力下、105℃(上部ジョー)及び25℃(下部ジョー)で10秒間の条件下でヒートシールした。封止された試料を幅25mmのストリップに切断し、Instron Model 4464を使用して接着強度を測定した。ジョーは50mm間隔で設定された。上部ジョーは、封止された試料のEAA片を保持し、300mm/分の速度で上向きに移動する一方、下部ジョーは、封止された試料の集電体片を保持して静止していた。平均剥離力を測定し、5つの結果の平均値として報告した。接着不良面も観察された。金属層とポリマー基材層との間の接着強度が、金属層とEEAフィルムとの間の接着強度(約800g/25mm)よりも低い場合、試験試料は、金属層とポリマー基材層との界面に沿って薄い層に裂けた。このとき、平均剥離力は、金属層とポリマー基材層との間の接着強度を表す。金属層とポリマー基材層との間の接着強度が、金属層とEEAフィルムとの間の接着強度(800 g/25mm)よりも高い場合、試験試料は、金属層とEEAフィルムとの界面に沿って薄い層に裂けた。さらなる面における不良は、金属化層自体内でのコヒーレント不良であり、これはまた、金属層とポリマー基材層との間の接着強度が、コヒーレント不良を引き起こすために必要な力よりも大きい(したがって、典型的には、金属層とポリマー基材層との間の接着強度は、約800g/25mmよりも大きい)ことも示している。
(xi)機械的特性
極限引張強さ(UTS)、破断伸び(ETB)、及びF5値(5%伸長時の応力)は、試験方法ASTM D882にしたがって測定される。直定規及び較正試料切断装置(10mm+/-0.5mm)を使用し、フィルムの細片5個(長さ100mm)を縦方向に沿って切り取る。各試料は、Instron試験機を使用して、ゴム製ジョー面を有する空気圧作用グリップを用いて試験する。テストは周囲環境条件で行われる。クロスヘッド速度(分離率)は25mm・分-1である。歪み率は50%である。破断伸び(ΕB(%))は、次のように定義される。
ΕB(%)=(破断時点での伸長/L0)×100
式中、L0は、グリップ間の試料の元の長さである。
フィルムの脆性は、主にETB値によって測定され、ETB値が比較的高いほど脆性が比較的低いことを意味する。当業者であれば理解するように、比較的高いETB値は、フィルムセパレータが比較的高い面内柔軟性(すなわち、フィルムの面内柔軟性)を示し、したがって、上述の通りにアノード及びカソードの潜在的な寸法変化に対する耐性が向上していることも示す。
(xii)屈曲亀裂
屈曲亀裂は、フィルムを繰り返し曲げ(所与の角度及び支点付近)により、フィルムへの亀裂の発生有無を目で評価することで定性的に評価可能である。屈曲亀裂の程度が比較的低いということは、セルの巻き取りや電池の組立時にフィルムがさらされる条件に必要な、より高い面外柔軟性(つまり、曲げ性)をフィルムが有していることを意味する。
【0128】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して、さらに説明される
【実施例
【0129】
以下の説明において、「LICGC」とは、商品名LICGC(商標)PW-01としてOharaから市販されているリチウムイオン伝導性ガラスセラミック粉末を指し、「PEG3350」とは、3350の数平均分子量(MN)を有するポリエチレングリコールを指す。
【0130】
実験1
エチレングリコール、テレフタル酸、及びポリエチレングリコール(PEG3350)を使用して、コポリエステル(P1)を作製した。PEG3350は、コポリエステルの16.4重量%のレベルで存在した。
【0131】
5551gのテレフタル酸、2664gのエチレングリコール、及び2006gのPEG3350を、酸化防止剤(Irganox(登録商標)1010、7g)の添加と共に、加圧下(約40psi)、高温(約255℃)で反応させてコポリエステルを作製した。少量の水酸化ナトリウム(0.35g)を添加して、不要な副生成物の形成を防止し、エステル化反応を、触媒を必要とせずに進行させた。反応物から水を留去し、90%の理論上の重量の水を反応物から集めた時点で、反応を停止させた。次いで、材料のキャリーオーバーを最小限に抑えるために、消泡剤(Xiameter(商標)DC 1510-US、0.35g)を添加した。次いで、チタンベースの触媒系(Tyzor(登録商標)TnBT、2g、及びTyzor(登録商標)AC422、7.1g)を用いて約275℃で重縮合を行った。このとき、溶融物上の圧力は、1mmHg未満に低下させた。重縮合反応が進行するにつれて、バッチの粘度が増加し、適切な粘度(好適には約50~約100Pa・S)に達したら、容器内の圧力を大気圧に戻すことによって重合反応を停止させた。次いで、コポリエステルを、レースのように押出し、水浴に入れ、乾燥させてペレット化した。
【0132】
コポリエステルP1をベースにし、かつ表1に示すような様々な添加剤を含む一連のコポリエステルフィルムを作成した(表1には、最終フィルムの厚さ、イオン伝導率、内部抵抗(R1)、及びバルク抵抗(R2)も示されている)。
【0133】
コポリエステルP1を溶融押出し、キャストして、キャストコポリエステルフィルムを形成することによりフィルムを調製し、その後、これを前方向及び横方向同時延伸比3.5を使用して二軸延伸した。
【0134】
比較例2のフィルムをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解/分散させた後、溶媒キャスト手法によって比較例3及び実施例1を作製した。具体的には、表1に示す成分を5mLのNMPに分散し、160℃のオートクレーブ中で24時間十分に混合した。次いで、得られたコポリエステル組成物をアルミニウムディスク(すなわち、試験セル内の電極)の表面上にキャストし、60℃で24時間加熱して乾燥させた。次いで、乾燥したコポリエステルを60℃で24時間真空乾燥させて、コポリエステルフィルムを得た。
【0135】
LICGCを含むさらなる比較フィルム(比較例1)を、
商品名LICGC(商標)AG-01としてOharaから入手した。
【0136】
【表1】
実施例1と比較例2及び3との比較から、セラミック粒子材料を添加することで、ポリエステルフィルムのイオン伝導率が著しく改善されることが実証される。実際に、実施例1のフィルムは、比較例1のセラミックセパレータに相当するイオン伝導率を提供し、さらに、著しく薄いという利点を有する。さらに、実施例1のフィルムは、非常に脆いために製造が難しく、使用中に破損しやすい比較例1と比較して、有利な柔軟性を示した。したがって、実施例1のフィルムは、製造の容易さを維持しながら、固体電池のセパレータとして使用するための、イオン伝導性、柔軟性、及び薄い厚さの有利な組み合わせを示した。
【0137】
実験2
コポリエステルは、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソフタレート(BHEI)及びポリエチレングリコール(PEG3350)を使用して作製された。PEG3350は、コポリエステルの50重量%のレベルで存在した。49.82gのBHEI及び50.18kgのPEG3350を、酸化防止剤(Irganox(登録商標)1010、2.95g)の添加と共に反応させることによって、コポリエステルを作製した。三酸化アンチモン触媒(0.20g)を用いて約280℃~290℃で重縮合を行った。このとき、溶融物上の圧力は5mmHg未満に低下させた。重縮合反応が進行するにつれて、バッチの粘度が増加し、所定の粘度に達したら、容器内の圧力を大気圧に戻すことによって重合反応を停止させた。次いで、コポリエステルを、レースのように押出し、水浴に入れ、乾燥させた。
【0138】
次いで、コポリエステルP2を使用して、表2に示すような様々な添加剤を含有する一連の溶剤キャストコポリエステルフィルム(比較例4、5、及び実施例2)を調製した。コポリエステルをNMPに溶解し、表2に示す他の成分をビーカー中に導入して分散させ、25℃で12時間、NMPと完全に混合した。比較例4では10mLのNMPを使用し、比較例5では0.5mLのNMPを使用したが、実施例2では5mLのNMPを使用した。得られたコポリエステル組成物をアルミニウム面上に溶剤キャストすることによってフィルムを作製し、60℃で24時間加熱して乾燥し、次いで60℃でさらに24時間真空乾燥してコポリエステルフィルムを得た。表2に、最終フィルムの厚さ、イオン伝導率、内部抵抗(R1)、及びバルク抵抗(R2)を示す。
【0139】
【表2】
実施例2と比較例4及び5との比較から、セラミック粒子材料を添加することで、ポリエステルフィルムのイオン伝導率が著しく改善されることが実証される。実施例2のセパレータは、比較例1のセラミックセパレータに近いイオン伝導率を提供し、さらに、著しく薄く、有利な機械的特性、特に脆性のない柔軟性を示すという利点を有する。
【0140】
実験3
また、比較例3及び5、ならびに実施例1及び2のフィルムのイオン伝導率を40℃及び60℃で測定し、その結果を25℃でのイオン伝導率と共に表3に示す。
【0141】
【表3】
表3の結果から、セラミック粒子材料の添加により、試験した全ての温度でポリエステルフィルムのイオン伝導率が著しく改善され、かつ商業的に有用なイオン伝導率レベルまで改善されることが実証される。さらに、表3の結果から、高温でもイオン伝導率を確実に増加できることが実証される。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオール、ジカルボン酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを含むコポリエステルフィルムであって、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分をさらに含み、前記第1の金属イオン含有成分は、リチウムイオン含有成分またはナトリウムイオン含有成分であり、前記導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加の金属イオンをさらに含み得、及び存在する場合、前記追加の金属イオンの金属は、前記第1の金属イオン含有成分の金属と同一である、前記コポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記フィルムは、200μm以下、好ましくは150μm以下、好ましくは100μm以下、好ましくは85μm以下、好ましくは70μm以下、好ましくは50μm以下、及び好ましくは35μm以下の厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムは、5μm以上、好ましくは10μm以上、好ましくは15μm以上、及び好ましくは20μm以上の厚さを有する、請求項に記載のフィルム。
【請求項4】
前記コポリエステルは、ジカルボン酸及び脂肪族ジオールから誘導される半結晶性セグメント、ならびにポリ(アルキレンオキシド)から誘導される非晶質セグメントを含む、請求項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記ポリ(アルキレンオキシド)は、前記コポリエステルの総重量の、0.1~80重量%、好ましくは約5~約78重量%、好ましくは約10~約75重量%、好ましくは約12~約65重量%、好ましくは約15~約60重量%、好ましくは約16~約55重量%を構成する、請求項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記ジオールは、C2、C3、またはC4脂肪族ジオールから選択され、好ましくは前記脂肪族ジオールは、エチレングリコールである、請求項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記ジカルボン酸は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びテレフタル酸から選択される芳香族ジカルボン酸である、請求項に記載のフィルム。
【請求項8】
前記ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、C2-C15、好ましくはC2-C10、好ましくはC2-C6アルキレン鎖、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(PTMO)、好ましくはPEG及びPPGから選択され、好ましくは前記ポリ(アルキレンオキシド)はPEGである、請求項に記載のフィルム。
【請求項9】
前記ポリ(アルキレンオキシド)の数平均分子量は、約200~約20000g/mol、好ましくは約400~約3500g/mol、好ましくは約500~約3500g/molである、請求項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムは、前記第1の金属イオン含有成分及び前記追加の金属イオンを含む、請求項に記載のフィルム。
【請求項11】
前記追加の金属イオンは、好ましくは金属塩から選択される第2の金属イオン成分の形態である、請求項に記載のフィルム。
【請求項12】
前記金属は、リチウムである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
前記金属はリチウムであり、前記リチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、リチウムイオン含有導電性ガラスセラミック粒子材料などのNASICON型セラミック粒子材料;LISICON型セラミック粒子材料;ペロブスカイト型酸化物セラミックス粒子材料;ガーネット型酸化物セラミックス粒子材料;酸窒化リチウムリン(LIPON)型セラミック粒子材料;及びケイ酸アルミニウムリチウム(LAS)セラミック粒子材料から選択される、請求項に記載のフィルム。
【請求項14】
前記金属はリチウムであり、前記リチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、
一般式LiMy(PO43を有するNASICON型材料(式中、Mは、例えば、Al、Si、Ti、Zr、Ge、Sn、及びHfのうちの1つ以上の多価金属イオンを示す);
一般式Li1+xxTi2-x(PO43(LATP)を有するNASICON型材料(式中、Mは、Al、Sc、Y、及びLaのうちの1つ以上から選択される3価のカチオンを示す);
一般式Li1+xAlxGe2-x(PO43(LAGP)を有するNASICON型材料;
Li1+x+yAlxTi2-xSiy3-y12の結晶相及びLi2O-Al23-SiO2-P25-TiO2の組成を有する材料;
Li1+x+yAlx(Ti,Ge)2-xSiy3-y12の主結晶相及びLi2O-Al23-SiO2-P25-TiO2-GeO2の組成を有する材料;
一般式Li2+2xZn1-xGeO4を有するLISICON型材料(任意選択で、他の元素(典型的には、等価元素)が前記Li、Zn及び/又はGeと置き換えられてもよい。Li2+2xZn1-xGe416、Li14ZnGe416、Li(3+x)Gex(1-x)4、Li(4-x)Si(1-x)x4など);
Li(4-x)Ge(1-x)x4Li10GeP212などのチオLISICON型材料;
Li3xLa(2/3)-xTiO3(LLTO)、Li3xLa1/3-xTaO3などのペロブスカイト型酸化物材料;
Li5La3212(式中、MはNb及び/またはTaを表す)、Li6ALa2212(式中、AはCa、Sr、及び/またはBaを表し、MはNbまたはTaを表す)、またはLi6.5La2.5Ba0.5ZrTaO12など、一般式Li7-3y-xLa3Zr2-xM1yM2x12(式中、M1はAl及びGaなどの3価のカチオンを表し、M2はNb及びTaなどの5価のカチオンを表し、x≧0及びy≦2である)を有するガーネット型酸化物材料;
Li2PO2Nなど、一般式LixPOyzを有するLIPON型材料;及び
AlLiO6Si2などのLAS型材料から選択される、請求項に記載のフィルム。
【請求項15】
前記金属は、ナトリウムであり、ナトリウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、導電性ガラスセラミック粒子材料、ベータ-アルミナ及びベータ’’-アルミナ相Na2O・nAl23(式中、5≦n≦11)、希土類ケイ酸ナトリウム、及びナトリウムイオン伝導性オキシハロゲン化物ガラスなどのNASICON型材料;好ましくは、一般式Na3Zr2Si2PO12、NaTi2(PO43、NaGe2(PO43、またはNa1+x[SnxGe2-x(PO43]を有するNASICON構造酸化物、一般式Na5MSi412を有する希土類ケイ酸ナトリウム(式中、Mは、Y、Sc、Lu、及び/または任意の三価希土類カチオンである)、及びNaI-NaCl-Na2O-B23などのナトリウムイオン伝導性オキシハロゲン化物ガラスから選択される、請求項に記載のフィルム。
【請求項16】
前記コポリエステルフィルム中に存在する前記金属イオン含有導電性セラミック粒子材料の量は、前記コポリエステルフィルムの総重量の、0.1重量%~60重量%、好ましくは5重量%~50重量%、好ましくは8重量%~35重量%、好ましくは10重量%~20重量%である、請求項に記載のフィルム。
【請求項17】
前記追加の金属イオンは、
(i)芳香族カルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸またはイソフタル酸;
(ii)脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪族カルボン酸、好ましくは酢酸、グリコール酸、またはコハク酸;
(iii)炭酸;
(iv)フェノール酸、好ましくはサリチル酸;
(v)過塩素酸またはリン酸、特にリン酸などの鉱酸;及び
(vi)ホウ酸、好ましくはビス(シュウ酸)ホウ酸から構成される塩から選択される金属塩の形態である、請求項に記載のフィルム。
【請求項18】
前記追加の金属イオンは、有機酸の金属塩の形態であり、好ましくは前記コポリエステルが誘導される前記芳香族ジカルボン酸の塩である、請求項に記載のフィルム。
【請求項19】
前記追加の金属イオンは、前記酸、好ましくは前記カルボン酸、好ましくは前記ジカルボン酸、好ましくは前記芳香族ジカルボン酸、好ましくは前記テレフタル酸のアルコキシレートエステルから選択される金属塩の形態であり、前記アルコキシレートエステルは、好ましくは前記脂肪族ジオール、好ましくはC2-10脂肪族ジオール、好ましくはC2-6脂肪族ジオール、好ましくはC2、C3、またはC4脂肪族ジオール、より好ましくはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオール、より好ましくはエチレングリコールから誘導され、請求項17に記載のフィルム。
【請求項20】
前記追加の金属イオンは、リチウムイオンであり、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、チオシアン酸リチウム(LiSCN)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)リチウム(LiN(CF3SO22)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドリチウム(LiC(CF3SO23)、オルトケイ酸リチウム、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCF3CO2)、ス(フルオロ亜硫酸)アミドリチウム(LiN(FO2S)2)、テレフタル酸ジリチウム(DLTA)、イソフタル酸ジリチウム、グリコール酸リチウム、安息香酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、過塩素酸リチウム、オルトケイ酸リチウム、リン酸リチウム、サリチル酸リチウム、コハク酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及び二リチウムビスヒドロキシエチルテレフタレート(DL-BHET)から選択されるリチウム塩の形態である、請求項に記載のフィルム。
【請求項21】
前記追加の金属イオンは、リチウムイオンであり、テレフタル酸ジリチウム(DLTA)、イソフタル酸ジリチウム、二リチウムビスヒドロキシエチルテレフタレート(DL-BHET)、及びLiCF3SO3から選択されるリチウム塩の形態である、請求項に記載のフィルム。
【請求項22】
前記追加の金属塩は、ナトリウムイオンであり、硝酸ナトリウム(NaNO3)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(NaTFSI)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドナトリウム(Na[N(CF3SO22])、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム(V)(NaAsF6)、ビス(オキサラトホウ酸)ナトリウム(「NaBOB」)、ハロゲン化ナトリウム(NaX)(式中、Xは、Cl、Br、またはIである)、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、ペンタシアノプロペニドナトリウム(NaPCPI)、テトラシアノピロレートナトリウム(NaTCP)、及びトリシアノイミダゾレートナトリウム(NaTIM)から選択されるナトリウム塩の形態である、請求項に記載のフィルム。
【請求項23】
前記追加の金属イオンは、前記金属カチオンと前記コポリエステルの負に荷電した酸素原子との間、好ましくは少なくともポリアルキレンオキシド単位の酸素原子との間の相互作用によって、前記フィルムのポリマーマトリックス中に存在し、かつ保持される、請求項に記載のフィルム。
【請求項24】
前記追加の金属イオンは金属塩の形態であり、前記金属カチオンと、前記コポリエステルに共有結合していない前記金属塩のアニオンとの間の相互作用によって、前記フィルムのポリマーマトリックス内に保持される、請求項に記載のフィルム。
【請求項25】
前記フィルムの前記追加の金属イオンの量は、5:1~1:50、好ましくは約4:1~約1:50、好ましくは約3:1~約1:50、好ましくは約2:1~約1:50、好ましくは約1:1~約1:40、好ましくは約1:2~約1:30、好ましくは約1:4~約1:25のモル比の金属:Oを供するのに効果的であり、前記比率におけるO原子の数は、前記ポリ(アルキレンオキシド)残基のO原子の数として定義され、前記比率における金属原子の数は、前記追加の金属イオンによって提供される金属原子の数として定義される、請求項に記載のフィルム。
【請求項26】
前記追加の金属イオンは、前記コポリエステルフィルムの総重量の、0.1重量%~40重量%、好ましくは1重量%~10重量%の量で存在する第2の金属イオン成分(好ましくは金属塩)の形態である、請求項に記載のフィルム。
【請求項27】
前記コポリエステル、前記第1の金属イオン含有成分、及び存在する場合、前記追加の金属イオンを含む第2の金属イオン成分は、前記フィルムの主成分であり、好ましくは、前記コポリエステルフィルムの総重量の、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約95重量%、及び好ましくは少なくとも約98重量%を構成する、請求項に記載のフィルム。
【請求項28】
酸化防止剤をさらに含む、請求項に記載のフィルム。
【請求項29】
アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、タルク及びシリカなどの半金属酸化物;焼成陶土;カルシウム及びバリウムの炭酸塩及び硫酸塩などのアルカリ金属塩;及び非導電性セラミック粒子材料から選択される無機粒子充填剤をさらに含み、前記無機粒子充填剤は、前記第1の金属イオン含有成分及び前記第2の金属イオン含有成分とは異なる別体であり、前記第1の金属イオン含有成分または前記第2の金属イオン含有成分の前記金属イオンを含まず、好ましくは前記無機粒子充填剤は、前記コポリエステルフィルムの総重量に対して5重量%~20重量%の量で存在する、請求項に記載のフィルム。
【請求項30】
25℃で測定して少なくとも約10-7S/cm、好ましくは少なくとも約10-6S/cmの伝導率、及び/または60℃で測定して少なくとも約10-6S/cm、好ましくは少なくとも約10-5S/cmの伝導率を示す、請求項に記載のフィルム。
【請求項31】
自立して存在する二軸配向フィルムである、請求項に記載のフィルム。
【請求項32】
請求項1~31のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法であって、
(i)前記ジオールを、前記ジカルボン酸またはそのエステル(好適には低級アルキル(C1-4)エステル、好ましくは前記ジメチルエステル)と反応させて前記ジカルボン酸のビス(ヒドロキシアルキル)-エステルを形成するステップ;
(ii)ポリ(アルキレンオキシド)の存在下で前記ジカルボン酸の前記ビス(ヒドロキシアルキル)-エステルを重縮合反応で重合させてコポリエステルを形成するステップ;
(iii)ステップ(i)及び/またはステップ(ii)における前記コポリエステルの合成中、及び/またはそれに続く別途の配合または混合ステップ中に、導電性セラミック粒子材料から選択される前記第1の金属イオン含有成分、及び、任意選択で、前記導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの前記追加の金属イオンを導入して、コポリエステル組成物を形成するステップ;及び
(iv)前記コポリエステル組成物からコポリエステルフィルムを形成するステップ、好ましくは前記組成物を溶融押出することにより、または前記コポリエステル組成物を含む分散液もしくは溶液を溶媒キャストすることにより、前記コポリエステル組成物からコポリエステルフィルムを形成するステップを含む、前記方法。
【請求項33】
ステップ(ii)の前記反応生成物を固相重合させる、請求項32に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項34】
前記フィルムは、それ自体が、固体電池、好ましくは電極の構成要素である支持ベース上にキャストされる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法により得られるフィルム。
【請求項36】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間のセパレータを含み、前記セパレータが請求項1~31のいずれかに記載のフィルムである金属イオン電池。
【請求項37】
前記金属イオン電池は固体電池である、請求項36に記載の金属イオン電池。
【請求項38】
前記金属イオン電池の前記金属は、リチウムから選択される、請求項36に記載の金属イオン電池。
【請求項39】
前記アノードは、グラファイト及びチタン酸リチウム(LTO)アノードから選択され、及び/または前記カソードは、リチウム、またはリチウムと他の金属(複数可)との混合酸化物、特にチタン酸リチウム、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、及び/またはリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(LiNiMnCoO2)から作製される、請求項36に記載の金属イオン電池。
【請求項40】
前記金属イオン電池は、前記アノードの表面上に配置されたアノード集電体と、前記カソードの表面上に配置されたカソード集電体とをさらに含み、前記層の順序は、アノード集電体/アノード/セパレータ/カソード/カソード集電体となる、請求項36に記載の金属イオン電池。
【請求項41】
前記アノード集電体及び/または前記カソード集電体は、二軸配向ポリエステル基材層と、前記ポリエステル基材層側上の第1の金属層とを含む集電体から独立して選択され、前記ポリエステル基材層は、200℃、空気中で、横方向(TD)及び縦方向(MD)のそれぞれに正の熱膨張を示し、前記ポリエステル基材層は、12μm以下の厚さを有し、前記第1の金属層は、50~1000nmの厚さを有し、及び好ましくは前記集電体は、50~1000nmの厚さを有する第2の金属層をさらに含み、前記第1の金属層及び前記第2の金属層は、前記ポリエステル基材層の互いに反対となる側上に配置され、好ましくは前記第1の金属層、及び存在する場合、前記第2の金属層は、それぞれ独立して、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル-銅合金、またはアルミニウム-ジルコニウム合金のうちの少なくとも1つを含み、ならびに好ましくは、前記第1及び第2の金属層は同じ材料から選択され、ならびに好ましくは、前記第1及び第2の金属層は両方ともアルミニウムまたは銅である、請求項36に記載の金属イオン電池。
【請求項42】
金属イオン電池におけるセパレータとしての、請求項1~31のいずれかに定義されるフィルムの使用
【請求項43】
請求項1~31のいずれかに定義されるコポリエステルフィルムを含む、請求項36に定義される金属イオン電池の製造方法であって、
(a)請求項1~31のいずれかに定義されるコポリエステルフィルムを提供するステップ;及び
(b)前記金属イオン電池を組み立てるステップであって、前記電池がアノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間のセパレータを含み、前記セパレータがステップ(a)で得られた前記コポリエステルフィルムである、前記ステップ、
を含む前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
【表3】
表3の結果から、セラミック粒子材料の添加により、試験した全ての温度でポリエステルフィルムのイオン伝導率が著しく改善され、かつ商業的に有用なイオン伝導率レベルまで改善されることが実証される。さらに、表3の結果から、高温でもイオン伝導率を確実に増加できることが実証される。
本開示は以下の実施形態を含む。
<実施形態1>
ジオール、ジカルボン酸、及びポリ(アルキレンオキシド)から誘導される繰り返し単位を含むコポリエステルを含むコポリエステルフィルムであって、導電性セラミック粒子材料から選択される第1の金属イオン含有成分をさらに含み、前記導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの追加の金属イオンをさらに含み得る、前記コポリエステルフィルム。
<実施形態2>
前記フィルムは、200μm以下、好ましくは150μm以下、好ましくは100μm以下、好ましくは85μm以下、好ましくは70μm以下、好ましくは50μm以下、及び好ましくは35μm以下の厚さを有する、実施形態1に記載のフィルム。
<実施形態3>
前記フィルムは、5μm以上、好ましくは10μm以上、好ましくは15μm以上、及び好ましくは20μm以上の厚さを有する、実施形態1または2のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態4>
前記コポリエステルは、ジカルボン酸及び脂肪族ジオールから誘導される半結晶性セグメント、ならびにポリ(アルキレンオキシド)から誘導される非晶質セグメントを含む、実施形態1~3のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態5>
前記ポリ(アルキレンオキシド)は、前記コポリエステルの総重量の、0.1~80重量%、好ましくは約5~約78重量%、好ましくは約10~約75重量%、好ましくは約12~約65重量%、好ましくは約15~約60重量%、好ましくは約16~約55重量%を構成する、実施形態1~4のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態6>
前記ジオールは、C 2 、C 3 、またはC 4 脂肪族ジオールから選択され、好ましくは前記脂肪族ジオールは、エチレングリコールである、実施形態1~5のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態7>
前記ジカルボン酸は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びテレフタル酸から選択される芳香族ジカルボン酸である、実施形態1~6のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態8>
前記ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、C 2 -C 15 、好ましくはC 2 -C 10 、好ましくはC 2 -C 6 アルキレン鎖、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(PTMO)、好ましくはPEG及びPPGから選択され、好ましくは前記ポリ(アルキレンオキシド)はPEGである、実施形態1~7のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態9>
前記ポリ(アルキレンオキシド)の数平均分子量は、約200~約20000g/mol、好ましくは約400~約3500g/mol、好ましくは約500~約3500g/molである、実施形態1~8のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態10>
前記フィルムは、前記第1の金属イオン含有成分及び前記追加の金属イオンを含む、実施形態1~9のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態11>
前記追加の金属イオンは、好ましくは金属塩から選択される第2の金属イオン成分の形態である、実施形態1~10のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態12>
前記第1の金属イオン含有成分の金属は、前記追加の金属イオンの金属と同一である、実施形態1~11のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態13>
前記金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウムから選択され、好ましくはリチウム、ナトリウム、マグネシウム、及びアルミニウムから選択され、好ましくはリチウム及びナトリウムから選択され、好ましくはリチウムである、実施形態1~12のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態14>
前記金属はリチウムであり、前記リチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、リチウムイオン含有導電性ガラスセラミック粒子材料などのNASICON型セラミック粒子材料;LISICON型セラミック粒子材料;ペロブスカイト型酸化物セラミックス粒子材料;ガーネット型酸化物セラミックス粒子材料;酸窒化リチウムリン(LIPON)型セラミック粒子材料;及びケイ酸アルミニウムリチウム(LAS)セラミック粒子材料から選択される、実施形態1~13のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態15>
前記金属はリチウムであり、前記リチウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、
一般式LiM y (PO 4 3 を有するNASICON型材料(式中、Mは、例えば、Al、Si、Ti、Zr、Ge、Sn、及びHfのうちの1つ以上の多価金属イオンを示す);
一般式Li 1+x x Ti 2-x (PO 4 3 (LATP)を有するNASICON型材料(式中、Mは、Al、Sc、Y、及びLaのうちの1つ以上から選択される3価のカチオンを示す);
一般式Li 1+x Al x Ge 2-x (PO 4 3 (LAGP)を有するNASICON型材料;
Li 1+x+y Al x Ti 2-x Si y 3-y 12 の結晶相及びLi 2 O-Al 2 3 -SiO 2 -P 2 5 -TiO 2 の組成を有する材料;
Li 1+x+y Al x (Ti,Ge) 2-x Si y 3-y 12 の主結晶相及びLi 2 O-Al 2 3 -SiO 2 -P 2 5 -TiO 2 -GeO 2 の組成を有する材料;
一般式Li 2+2x Zn 1-x GeO 4 を有するLISICON型材料(任意選択で、Li 2+2x Zn 1-x Ge 4 16 、Li 14 ZnGe 4 16 、Li (3+x) Ge x (1-x) 4 、Li (4-x) Si (1-x) x 4 など、前記Li、Zn及び/またはGeを置き換えることが可能な他の元素(典型的には、等価元素));
Li (4-x) Ge (1-x) x 4 Li 10 GeP 2 12 などのチオLISICON型材料;
Li 3x La (2/3)-x TiO 3 (LLTO)、Li 3x La 1/3-x TaO 3 などのペロブスカイト型酸化物材料;
Li 5 La 3 2 12 (式中、MはNb及び/またはTaを表す)、Li 6 ALa 2 2 12 (式中、AはCa、Sr、及び/またはBaを表し、MはNbまたはTaを表す)、またはLi 6.5 La 2.5 Ba 0.5 ZrTaO 12 など、一般式Li 7-3y-x La 3 Zr 2-x M1 y M2 x 12 (式中、M1はAl及びGaなどの3価のカチオンを表し、M2はNb及びTaなどの5価のカチオンを表し、x≧0及びy≦2である)を有するガーネット型酸化物材料;
Li 2 PO 2 Nなど、一般式Li x PO y z を有するLIPON型材料;及び
AlLiO 6 Si 2 などのLAS型材料から選択される、実施形態1~14のいずれか1項に記載のフィルム。
<実施形態16>
前記金属は、ナトリウムであり、ナトリウムイオン含有導電性セラミック粒子材料は、導電性ガラスセラミック粒子材料、ベータ-アルミナ及びベータ’’-アルミナ相Na 2 O・nAl 2 3 (式中、5≦n≦11)、希土類ケイ酸ナトリウム、及びナトリウムイオン伝導性オキシハロゲン化物ガラスなどのNASICON型材料;好ましくは、一般式Na 3 Zr 2 Si 2 PO 12 、NaTi 2 (PO 4 3 、NaGe 2 (PO 4 3 、またはNa 1+x [Sn x Ge 2-x (PO 4 3 ]を有するNASICON構造酸化物、一般式Na 5 MSi 4 12 を有する希土類ケイ酸ナトリウム(式中、Mは、Y、Sc、Lu、及び/または任意の三価希土類カチオンである)、及びNaI-NaCl-Na 2 O-B 2 3 などのナトリウムイオン伝導性オキシハロゲン化物ガラスから選択される、実施形態1~14のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態17>
前記コポリエステルフィルム中に存在する前記金属イオン含有導電性セラミック粒子材料の量は、前記コポリエステルフィルムの総重量の、0.1重量%~60重量%、好ましくは5重量%~50重量%、好ましくは8重量%~35重量%、好ましくは10重量%~20重量%である、実施形態1~16のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態18>
前記追加の金属イオンは、
(i)芳香族カルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸またはイソフタル酸;
(ii)脂肪族ジカルボン酸を含む脂肪族カルボン酸、好ましくは酢酸、グリコール酸、またはコハク酸;
(iii)炭酸;
(iv)フェノール酸、好ましくはサリチル酸;
(v)過塩素酸またはリン酸、特にリン酸などの鉱酸;及び
(vi)ホウ酸、好ましくはビス(シュウ酸)ホウ酸から構成される塩から選択される金属塩の形態である、実施形態1~17のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態19>
前記追加の金属イオンは、有機酸の金属塩の形態であり、好ましくは前記コポリエステルが誘導される前記芳香族ジカルボン酸の塩である、実施形態1~18のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態20>
前記追加の金属イオンは、前記酸、好ましくは前記カルボン酸、好ましくは前記ジカルボン酸、好ましくは前記芳香族ジカルボン酸、好ましくは前記テレフタル酸のアルコキシレートエステルから選択される金属塩の形態であり、前記アルコキシレートエステルは、好ましくは前記脂肪族ジオール、好ましくはC 2-10 脂肪族ジオール、好ましくはC 2-6 脂肪族ジオール、好ましくはC 2 、C 3 、またはC 4 脂肪族ジオール、より好ましくはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオール、より好ましくはエチレングリコールから誘導される金属塩の形態である、実施形態18または19に記載のフィルム。
<実施形態21>
前記追加の金属イオンは、リチウムイオンであり、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF 6 )、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF 4 )、チオシアン酸リチウム(LiSCN)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF 6 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF 3 SO 3 )、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)リチウム(LiN(CF 3 SO 2 2 )、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドリチウム(LiC(CF 3 SO 2 3 )、オルトケイ酸リチウム、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCF 3 CO 2 )、及びビス(フルオロ亜硫酸)アミドリチウム(LiN(FO 2 S) 2 )、テレフタル酸ジリチウム(DLTA)、イソフタル酸ジリチウム、グリコール酸リチウム、安息香酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、過塩素酸リチウム、オルトケイ酸リチウム、リン酸リチウム、サリチル酸リチウム、コハク酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及び二リチウムビスヒドロキシエチルテレフタレート(DL-BHET)から選択されるリチウム塩の形態である、実施形態1~20のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態22>
前記追加の金属イオンは、リチウムイオンであり、テレフタル酸ジリチウム(DLTA)、イソフタル酸ジリチウム、二リチウムビスヒドロキシエチルテレフタレート(DL-BHET)、及びLiCF 3 SO 3 から選択されるリチウム塩の形態である、実施形態1~21のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態23>
前記追加の金属塩は、ナトリウムイオンであり、硝酸ナトリウム(NaNO 3 )、過塩素酸ナトリウム(NaClO 4 )、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF 4 )、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF 6 )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(NaTFSI)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドナトリウム(Na[N(CF 3 SO 2 2 ])、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム(V)(NaAsF 6 )、ビス(オキサラトホウ酸)ナトリウム(「NaBOB」)、ハロゲン化ナトリウム(NaX)(式中、Xは、Cl、Br、またはIである)、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、ペンタシアノプロペニドナトリウム(NaPCPI)、テトラシアノピロレートナトリウム(NaTCP)、及びトリシアノイミダゾレートナトリウム(NaTIM)から選択されるナトリウム塩の形態である、実施形態1~19のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態24>
前記追加の金属イオンは、前記金属カチオンと前記コポリエステルの負に荷電した酸素原子との間、好ましくは少なくともポリアルキレンオキシド単位の酸素原子との間の相互作用によって、前記フィルムのポリマーマトリックス中に存在し、かつ保持される、実施形態1~23のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態25>
前記追加の金属イオンは金属塩の形態であり、前記金属カチオンと、前記コポリエステルに共有結合していない前記金属塩のアニオンとの間の相互作用によって、前記フィルムのポリマーマトリックス内に保持される、実施形態1~23のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態26>
前記フィルムの前記追加の金属イオンの量は、5:1~1:50、好ましくは約4:1~約1:50、好ましくは約3:1~約1:50、好ましくは約2:1~約1:50、好ましくは約1:1~約1:40、好ましくは約1:2~約1:30、好ましくは約1:4~約1:25のモル比の金属:Oを供するのに効果的であり、前記比率におけるO原子の数は、前記ポリ(アルキレンオキシド)残基のO原子の数として定義され、前記比率における金属原子の数は、前記追加の金属イオンによって提供される金属原子の数として定義される、実施形態1~25のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態27>
前記追加の金属イオンは、前記コポリエステルフィルムの総重量の、0.1重量%~40重量%、好ましくは1重量%~10重量%の量で存在する第2の金属イオン成分(好ましくは金属塩)の形態である、実施形態1~26のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態28>
前記コポリエステル、前記第1の金属イオン含有成分、及び存在する場合、前記追加の金属イオンを含む第2の金属イオン成分は、前記フィルムの主成分であり、好ましくは、前記コポリエステルフィルムの総重量の、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約95重量%、及び好ましくは少なくとも約98重量%を構成する、実施形態1~27のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態29>
酸化防止剤をさらに含む、実施形態1~28のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態30>
アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、タルク及びシリカなどの半金属酸化物;焼成陶土;カルシウム及びバリウムの炭酸塩及び硫酸塩などのアルカリ金属塩;及び非導電性セラミック粒子材料から選択される無機粒子充填剤をさらに含み、前記無機粒子充填剤は、前記第1の金属イオン含有成分及び前記第2の金属イオン含有成分とは異なる別体であり、前記第1の金属イオン含有成分または前記第2の金属イオン含有成分の前記金属イオンを含まず、前記無機粒子充填剤は、前記コポリエステルフィルムの総重量に対して5重量%~20重量%の量で存在する、実施形態1~29のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態31>
25℃で測定して少なくとも約10 -7 S/cm、好ましくは少なくとも約10 -6 S/cmの伝導率、及び/または60℃で測定して少なくとも約10 -6 S/cm、好ましくは少なくとも約10 -5 S/cmの伝導率を示す、実施形態1~30のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態32>
自立して存在する二軸配向フィルムである、実施形態1~31のいずれかに記載のフィルム。
<実施形態33>
実施形態1~32のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法であって、
(i)前記ジオールを、前記ジカルボン酸またはそのエステル(好適には低級アルキル(C 1-4 )エステル、好ましくは前記ジメチルエステル)と反応させて前記ジカルボン酸のビス(ヒドロキシアルキル)-エステルを形成するステップ;
(ii)ポリ(アルキレンオキシド)の存在下で前記ジカルボン酸の前記ビス(ヒドロキシアルキル)-エステルを重縮合反応で重合させてコポリエステルを形成するステップ;
(iii)ステップ(i)及び/またはステップ(ii)における前記コポリエステルの合成中、及び/またはそれに続く別途の配合または混合ステップ中に、導電性セラミック粒子材料から選択される前記第1の金属イオン含有成分、及び、任意選択で、前記導電性セラミック粒子材料以外の1つ以上の供給源からの前記追加の金属イオンを導入して、コポリエステル組成物を形成するステップ;及び
(iv)好ましくは前記組成物を溶融押出することにより、または前記コポリエステル組成物を含む分散液もしくは溶液を溶媒キャストすることにより、前記コポリエステル組成物からコポリエステルフィルムを形成するステップを含む、前記方法。
<実施形態34>
ステップ(ii)の前記反応生成物を固相重合させる、実施形態33に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<実施形態35>
前記フィルムは、それ自体が、固体電池、好ましくは電極の構成要素である支持ベース上にキャストされる、実施形態33または34に記載の方法。
<実施形態36>
実施形態33~35のいずれか1項に記載の方法により得られるフィルム。
<実施形態37>
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間のセパレータを含み、前記セパレータが実施形態1~32または36のいずれかに記載のフィルムである金属イオン電池。
<実施形態38>
前記金属イオン電池は固体電池である、実施形態37に記載の金属イオン電池。
<実施形態39>
前記金属イオン電池の前記金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウムから選択され、好ましくはリチウム、ナトリウム、マグネシウム、及びアルミニウムから選択され、好ましくはリチウム及びナトリウムから選択され、好ましくはリチウムである、実施形態37または38に記載の金属イオン電池。
<実施形態40>
前記アノードは、グラファイト及びチタン酸リチウム(LTO)アノードから選択され、及び/または前記カソードは、リチウム、またはリチウムと他の金属(複数可)との混合酸化物、特にチタン酸リチウム、リン酸鉄リチウム(LiFePO 4 )、及び/またはリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(LiNiMnCoO 2 )から作製される、実施形態37、38、または39に記載の金属イオン電池。
<実施形態41>
前記金属イオン電池は、前記アノードの表面上に配置されたアノード集電体と、前記カソードの表面上に配置されたカソード集電体とをさらに含み、前記層の順序は、アノード集電体/アノード/セパレータ/カソード/カソード集電体となる、実施形態37~40のいずれかに記載の金属イオン電池。
<実施形態42>
前記アノード集電体及び/または前記カソード集電体は、二軸配向ポリエステル基材層と、前記ポリエステル基材層側上の第1の金属層とを含む集電体から独立して選択され、前記ポリエステル基材層は、200℃、空気中で、横方向(TD)及び縦方向(MD)のそれぞれに正の熱膨張を示し、前記ポリエステル基材層は、12μm以下の厚さを有し、前記第1の金属層は、50~1000nmの厚さを有し、及び好ましくは前記集電体は、50~1000nmの厚さを有する第2の金属層をさらに含み、前記第1の金属層及び前記第2の金属層は、前記ポリエステル基材層の互いに反対となる側上に配置され、好ましくは前記第1の金属層、及び存在する場合、前記第2の金属層は、それぞれ独立して、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル-銅合金、またはアルミニウム-ジルコニウム合金のうちの少なくとも1つを含み、ならびに好ましくは、前記第1及び第2の金属層は同じ材料から選択され、ならびに好ましくは、前記第1及び第2の金属層は両方ともアルミニウムまたは銅である、実施形態37~41のいずれかに記載の金属イオン電池。
<実施形態43>
金属イオン電池におけるセパレータとしての、実施形態1~32または36のいずれかに定義されるフィルムの使用であって、好ましくは、前記電池は、実施形態37~42のいずれかに定義された通りである、前記使用。
<実施形態44>
実施形態1~32または36のいずれかに定義されるコポリエステルフィルムを含む、実施形態37~42のいずれかに定義される金属イオン電池の製造方法であって、
(a)実施形態1~32または36のいずれかに定義されるコポリエステルフィルムを提供するステップ;及び
(b)前記金属イオン電池を組み立てるステップであって、前記電池がアノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間のセパレータを含み、前記セパレータがステップ(a)で得られた前記コポリエステルフィルムである、前記ステップ、
を含む前記方法。
【国際調査報告】