IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テラパワー, エルエルシーの特許一覧

特表2024-527670ニュートロニクスが改善された、修正された低出力高速スペクトル溶融燃料原子炉設計
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ニュートロニクスが改善された、修正された低出力高速スペクトル溶融燃料原子炉設計
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20240719BHJP
   G21C 1/22 20060101ALI20240719BHJP
   G21C 7/28 20060101ALI20240719BHJP
   G21D 7/04 20060101ALI20240719BHJP
   G21C 15/18 20060101ALI20240719BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G21C5/00 A
G21C1/22
G21C7/28
G21D7/04
G21C15/18 C
G21C13/00 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568693
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2021053750
(87)【国際公開番号】W WO2023009153
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】17/388,824
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シスネロス,アンセルモ,ティー.ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ベルク,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブラトニク,マイケル,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,マイケル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マーカム,グレゴリー,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,ダニエル,ジェイ.
(57)【要約】
反射体材料の大部分が原子炉容器の外側にある単純な原子炉が記載されている。原子炉容器は、燃料塩の全てと、原子炉容器の上部セクションにおける変位コンポーネント(反射体であってもよい)と、を収容する円筒体である。変位コンポーネントとは異なり、半径方向反射体および底部反射体を含む反射体要素は、当該容器の外側に配置されている。塩は、変位コンポーネントの外面の周りを、当該変位コンポーネントの外部と原子炉容器の内面とが定めるダウンカマ熱交換ダクトを通って流れる。この設計によって、半径方向反射体または底部反射体を内部に有する設計と比較して、所与の体積の塩に対する原子炉容器の全体的なサイズが低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融燃料原子炉であって、
内面および外面を有する原子炉容器と、
前記原子炉容器内の変位コンポーネントであって、溶融核燃料を含む場合に臨界を達成できる炉心、中央アップカマダクト、ならびに前記炉心および前記中央アップカマダクトと流体連通するダウンカマダクトを、前記原子炉容器の前記内面と協働して定める前記原子炉容器内の変位コンポーネントと、
前記原子炉容器の周りの半径方向反射体と、
前記原子炉容器と前記半径方向反射体との間の冷却材ダクトと、
を備え、
前記原子炉容器の前記内面が前記ダウンカマダクトと熱連通し、かつ、前記原子炉容器の前記外面が前記冷却材ダクトと熱連通しており、
これにより、前記ダウンカマダクト内の溶融核燃料からの熱は、前記原子炉容器の前記内面から前記外面へ前記原子炉容器を通して伝達され、さらに前記冷却材ダクト内の冷却材へと伝達される、原子炉。
【請求項2】
前記原子炉容器の下方における下部軸方向反射体をさらに備える、請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
前記変位コンポーネントには、前記炉心からの中性子が前記炉心内へ跳ね返るよう、中性子反射材料が組み込まれている、請求項1に記載の原子炉。
【請求項4】
前記ダウンカマダクトは、加熱された溶融燃料を前記炉心における第1位置から受け取り、冷却された溶融燃料を前記第1位置とは異なる前記炉心における第2位置へ放出するように、前記炉心に流体接続されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項5】
前記変位コンポーネントは、前記中央アップカマダクトを定める当該変位コンポーネントを貫通する中央貫通部と、ドラフトチューブと、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項6】
前記原子炉容器の前記内面に沿って溶融核燃料を斜めに方向付ける、前記変位コンポーネントに取り付けられた少なくとも1つのベーンをさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項7】
前記原子炉容器の頂部を密閉する容器ヘッドアセンブリをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項8】
前記半径方向反射体は、
制御ドラムを受け入れるためのドラムウェルと、
中性子吸収材料で少なくとも部分的に覆われた中性子反射材料の本体を含む制御ドラムであって、前記ドラム内に回転可能に配置された制御ドラムと、
をさらに備え、
前記ドラムウェル内における前記制御ドラムの回転によって、前記原子炉の反応度が変化する、請求項1~7のいずれか一項記載の原子炉。
【請求項9】
前記炉心と流体連通する前記容器ヘッドアセンブリにおけるアクセスポートをさらに備える、請求項7に記載の原子炉。
【請求項10】
前記半径方向反射体は、前記原子炉容器に対して移動可能であり、
これにより、前記原子炉の反応度は、前記半径方向反射体を移動させて変化させることができる、請求項1~9のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項11】
前記半径方向反射体は、複数の反射体要素であり、
前記半径方向反射体を移動させることは、複数の前記反射体要素のうちの第1反射体要素を移動させることを含む、請求項10に記載の原子炉。
【請求項12】
インペラであって、前記炉心から当該インペラへ溶融核燃料を引き、当該溶融核燃料を前記ダウンカマダクト内へ駆動するインペラをさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項13】
前記インペラと前記炉心との間における遮蔽体プラグをさらに備える、請求項12に記載の原子炉。
【請求項14】
前記ダウンカマダクトは、加熱された溶融燃料を前記中央アップカマダクトにおける第1位置から受け取り、冷却された溶融燃料を前記炉心における第2位置へ放出するように、前記炉心に流体接続されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項15】
移動させることで前記原子炉の反応度を制御できる、前記冷却材ダクト内における制御要素をさらに備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項16】
前記制御要素は、中性子反射材料および中性子吸収材料のうちのいずれか一方または両方を含み、
前記制御要素は、弧状プレート、平面プレートまたは棒から選択される、請求項15に記載の原子炉。
【請求項17】
前記冷却システムは、
前記冷却材ダクトと、熱交換器と、冷却材ブロワと、を含む一次冷却回路であって、前記冷却材ブロワが、当該一次冷却回路を通じて前記冷却材を循環させるように構成されており、これにより、前記冷却材ダクトからの加熱された冷却材からの熱が、前記熱交換器を介して空気へ伝達される一次冷却回路と、
前記熱交換器を通して周囲雰囲気へのベントへ空気を導く空気ブロワを含む排熱システムと、
をさらに備える、請求項1~16のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項18】
前記溶融核燃料は、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、ThCl、およびUClFから選択される1種または複数種の核分裂性燃料塩を含むとともに、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、およびNdClから選択される1種または複数種の非核分裂性塩を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項19】
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、75~99%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項20】
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、85~95%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項21】
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、88~92%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項22】
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、89~91%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項23】
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、95%未満である、請求項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項24】
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、91%未満である、請求項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項25】
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、約90%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項26】
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、90%未満である、請求項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項27】
原子炉であって、
原子炉容器であって、溶融核燃料を含む場合に臨界を達成できる開空間の形態の炉心を当該原子炉容器の底部に有する原子炉容器と、
前記原子炉容器の外側における半径方向反射体と、
前記炉心の上方における前記原子炉容器内の変位コンポーネントであって、当該変位コンポーネントを貫き前記炉心と流体連通する開チャネルの形態のアップカマダクトを定める変位コンポーネントと、
前記変位コンポーネントと前記原子炉容器との間におけるダウンカマ熱交換ダクトであって、前記アップカマダクトおよび前記炉心と流体連通するダウンカマ熱交換ダクトと、
内面および外面を有する前記原子炉容器であって、前記ダウンカマ熱交換ダクトが前記外面と熱連通するように前記内面が前記ダウンカマ熱交換ダクトと接触している前記原子炉容器と、
第1表面および第2表面を有する熱電発電機であって、前記第1表面と前記第2表面との間の温度差によって発電するように構成された熱電発電機と、
を備え、
前記熱電発電機の前記第1表面は、前記原子炉容器の前記外面と熱連通しており、
前記熱電発電機の前記第2表面は、前記半径方向反射体と前記原子炉容器との間の冷却材ダクトに露出している、原子炉。
【請求項28】
溶融燃料原子炉であって、
溶融核燃料を含む場合に溶融核燃料の質量から臨界を達成できる炉心空間と、
前記炉心空間を含む原子炉容器であって、前記炉心と熱連通する原子炉容器と、
前記原子炉容器から離隔して当該原子炉容器の周りに配置された半径方向反射体と、
前記半径方向反射体と前記原子炉容器との間における冷却材ダクトであって、前記炉心と熱連通する冷却材ダクトと、
を備える、原子炉。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2021年10月6日にPCT国際特許出願として出願されたものであり、2021年7月29日に出願された米国非仮出願第17/388,824号の利益および優先権を主張するものである。当該出願は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
〔イントロダクション〕
出力(動力、パワー)を生成する原子炉において、溶融核燃料(または、単に溶融燃料)を利用することには、固体燃料と比較して著しい利点がある。例えば、溶融核燃料原子炉では、一般に、固体燃料原子炉と比較してより大きな出力密度が得られるとともに、固体燃料の製造コストが相対的に高いため、燃料コストも低減される。
【0003】
他のフッ化物塩と混合した四フッ化ウラン(UF)を用いる、原子炉での使用に適した溶融フッ化物燃料塩が開発されている。溶融フッ化物塩原子炉は、600℃~860℃の平均温度で運転されている。ウランおよびその他の核分裂性元素の二元塩化物燃料塩、三元塩化物燃料塩および四元塩化物燃料塩が、「MOLTEN NUCLEAR FUEL SALTS AND RELATED SYSTEMS AND METHODS」という名称の共譲渡された(co-assigned)米国特許出願第14/981,512号に記載されている。当該出願は、参照によって本明細書に援用される。UCl、UClF、UCl、UClおよびUClFのうちの1種または複数種を含む塩化物燃料塩に加えて、当該出願では、37Clの量が変更された燃料塩、UBrまたはUBr等の臭化物燃料塩、塩化トリウム燃料塩、ならびに溶融燃料原子炉において燃料塩を用いるための方法およびシステムがさらに開示されている。塩化物塩原子炉の平均運転温度は、300℃~800℃であると予想されるが、さらに高くし得るだろう(例えば、>1000℃)。
【0004】
低出力実験炉は、原子炉の設計および運転の様々な側面を調査するのに有用である。多くの出力を生成すること自体は目標ではないため、通常の商業的環境では実現不可能であろう新規な設計が、低出力原子炉に関して追求され得る。
【0005】
〔ニュートロニクスが改善された、修正された低出力高速スペクトル溶融燃料原子炉設計〕
本文献には、溶融塩炉、溶融塩炉の設計および運転の理解を前進させるために使用され得る低出力、高速スペクトルの溶融燃料塩原子炉のための代替的な設計が記載されている。さらに、本明細書に記載されているように、記載された設計は、低重力基地、月面基地、火星基地または宇宙基地の動力生成機として使用されるよう、地球外使用に適合されてもよい。これらの低出力原子炉には、原子炉容器内に収容された軸方向中性子反射体および半径方向中性子反射体によって定められる炉心空間が含まれる。当該原子炉容器において、加熱された燃料塩は、炉心から出て、半径方向中性子反射体と原子炉容器との間のダクトを通り、炉心内に戻るように流れる。炉心内の核分裂によって発生した熱は、溶融燃料から原子炉容器を通じて、実験的設計の場合には冷却材へ、または、地球外設計の場合には直接的に地球外環境へ、伝達される。溶融燃料は、能動的に圧送されてもよく、かつ/または、溶融燃料の流れは、高温溶融燃料と低温溶融燃料との間の密度差が引き起こす自然循環によって駆動されてもよい。
【0006】
実験的使用に適合される場合、これらの低出力原子炉には、例えば以下に挙げる現象を調査できるように設計された原子炉システムが含まれる:遅発中性子先行核移流(delayed neutron precursor advection)および燃料塩中のプルトニウムの存在による、低実効遅発中性子比率(Low effective delayed neutron fraction);負の燃料密度(膨張度)反応度係数(Negative fuel density (expansivity) reactivity coefficient);炉心に入る燃料塩の非対称流および熱分布(速度および温度)に関連する反応度効果(Reactivity effects);流動不安定性(flow instabilities)および/または再循環(recirculations)による、K有効安定性(K-effective stability)(反応度変動(reactivity fluctuations));ならびに、臨界(起動(startup))、反応度制御および停止の手法。
【0007】
地球外使用に適合される場合、設計には、放射線被曝要件の低減および地球外環境がもたらす天然のヒートシンクの利点が利用される。例えば、原子炉容器の外部に取り付けられた熱電発電機を通じて、熱が直接的に寒冷な宇宙に放散されてもよい。
【0008】
本明細書に記載されたシステムおよび方法を特徴付ける、これらの特徴および利点、ならびにその他のさまざまな特徴および利点は、以下の詳細な説明を読み、関連する図面を検討することにより、明らかになるであろう。追加的な特徴は、以下の説明に記載されている。当該追加的な特徴の一部はその説明から明らかとなり、または、当該追加的な特徴は、本技術の実施によって学習され得る。本技術の利点および特徴は、本明細書および特許請求の範囲、ならびに添付の図面において特に示される構成によって、実現および達成されるであろう。
【0009】
前述した全般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものであり、特許請求された発明についてのさらなる説明を提供することを目的とするものであることを理解されたい。
【0010】
〔図面の簡単な説明〕
本出願の一部を形成する以下の図は、記載された技術を例示するものであり、いかなる点でも特許請求された発明の範囲を限定することを意図するものではない。その範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲に基づくものとする。
【0011】
図1は、燃料塩とともに使用するように設計されたプール型原子炉の機能ブロック図を示す。
【0012】
図2は、図1に示す原子炉の、ある1つの可能な物理的実装形態の見取り図を示す。
【0013】
図3A図3Dは、図1の原子炉システムの一実施形態を示す。
【0014】
図4は、図3の原子炉内の燃料塩および流路を示す。
【0015】
図5Aおよび図5Bは、図3の原子炉システムにおいて使用できるであろう反射体アセンブリの一実施形態を示す。
【0016】
図6A図6Dは、制御ドラムの種々の実施形態を示す。
【0017】
図7は、容器ヘッドアセンブリの一実施形態を示す。
【0018】
図8は、原子炉の主要コンポーネントを示す(遮蔽容器を除く)。
【0019】
図9は、燃料ポンプアセンブリの一実施形態を示す。
【0020】
図10は、熱伝達の改善のために、フィンではなくディンプルを外面に備える原子炉容器を示す。
【0021】
図11A図11Fは、低出力原子炉システムの代替的な一実施形態の種々の図である。
【0022】
図12A図12Cは、排熱システムの代わりに代替的な一次冷却システムおよび二次冷却システムを有する原子炉設備の一実施形態を示す。
【0023】
図13は、地球外環境または他の適切に低温の環境において溶融核燃料とともに使用するように設計されたプール型原子炉システムの機能ブロック図を示す。
【0024】
図14A図14Bは、炉心およびポンプ室を通る溶融燃料の流れを除いて、溶融燃料の全ての流路が、原子炉容器の内面と接触しており、かつ、原子炉容器の内面によって定められる、プール型原子炉システムのさらに別の一実施形態を示す。
【0025】
図15は、本明細書に記載された任意の原子炉システム実施形態において用いられ得るであろう、上部溶融燃料出口チャネルおよびポンプのレイアウトの2つの代替的な実施形態を示す。
【0026】
図16は、上部溶融燃料出口チャネル、および当該チャネルを定める半径方向反射体の表面要素のさらに別の一実施形態を示す。
【0027】
図17は、原子炉システムの代替的な一実施形態を示す。
【0028】
図18は、反射体が原子炉容器の外側にある原子炉の代替的な一実施形態を示す。
【0029】
図19A図19Eは、外部半径方向反射体を用いた反応度制御に利用可能な種々の選択肢を示す。
【0030】
図20は、流動遅発中性子先行核に関連する反応度変化を低減するように適合された低出力原子炉設計の一実施形態を示す。
【0031】
図21Aおよび図21Bは、原子炉容器の側方面の内面に沿って燃料塩が流れるように横方向旋回流が誘導される原子炉の一実施形態を示す。
【0032】
図22Aおよび図22Bは、原子炉容器の内面の周りを旋回して燃料塩が流れる原子炉設計の代替的な一実施形態を示す。
【0033】
〔詳細な説明〕
上に導入され以下に詳細に論じられる本技術は、さまざまな溶融核燃料について実施され得るが、本文献における設計は、溶融燃料塩を使用するものとして、より具体的には、塩化ナトリウムおよびプルトニウムの溶融塩化物塩を使用するものとして記載される。しかしながら、現在知られる、または今後開発される、任意の種類の燃料塩が使用されてもよいことが理解され、また、使用される燃料の種類(例えば、U、Pu、Thまたはその他の任意のアクチニドのうちの1種または複数種を有する塩等)にかかわらず、本明細書に記載された技術が等しく適用可能であり得ることが理解されるだろう。なお、原子炉内における燃料の最低運転温度および最高運転温度は、原子炉全体にわたって塩が液相に維持されるように、使用される燃料塩に応じて変化し得ることに留意されたい。最低温度は、300℃~350℃程度の低さであってもよく、最高温度は、1400℃以上程度の高さであってもよい。
【0034】
低出力、高速スペクトルの原子炉の設計および運転コンセプトを開示および記載する前に、本開示は、本明細書に開示された特定の構造、処理工程または物質(材料)に限定されるものではなく、当業者であれば認識するであろうように、その均等物まで包含されるものであることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、原子炉の特定の実施形態を説明する目的のためにのみ使用されており、限定を意図するものではないことも理解されたい。本明細書に使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、別段の定めのない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。そのため、例えば、「水酸化リチウム(a lithium hydroxide)」という言及は、定量的または源限定的(source limiting)なものとして解釈されるべきではなく、「工程(a step)」という言及には複数の工程が含まれてもよく、「生成すること(producing)」または反応の「生成物(products)」という言及は、反応の生成物の全てであると解釈されるべきではなく、「反応すること(reacting)」という言及には、かかる複数の反応工程のうちの1または複数の反応工程の言及が含まれてもよい。したがって、反応の工程は、特定された反応生成物を生成するための、同様の物質の複数回の反応または反応の繰り返しを含み得る。
【0035】
本明細書で使用されるように、熱の形態のエネルギーが2つのコンポーネント間で直接的または間接的に伝達され得る場合、当該2つのコンポーネントは、「熱連通」していると称され得る。例えば、容器の壁は、その壁と接触している材料と熱連通していると言われ得る。同様に、流体が2つのコンポーネント間で伝達される場合、当該2つのコンポーネントは、「流体連通」していると称され得る。例えば、液体が圧縮機から膨張機へと流れる回路では、当該圧縮機と当該膨張機とは流体連通している。したがって、加熱された液体の密閉容器を仮定したとき、その液体はその容器の外部の環境と(その容器の壁を介して)熱連通しているとみなされ得るものの、その液体は、環境内へと自由に流れはしないため、環境と流体連通してはいない。
【0036】
(実験炉設計)
図1は、溶融核燃料とともに使用するように設計されたプール型原子炉100の機能ブロック図を示す。図示の実施形態では、原子炉100は、原子炉システム110と、一次冷却システム112と、排熱(熱廃棄)システム114と、を含む。原子炉システム110は、溶融塩燃料の核分裂を通じて、熱を発生させる。熱は、一次冷却システム112を介して、原子炉システム110から除去される。次いで、この除去された熱は、排熱システム114によって、雰囲気中に排出される。図示の実施形態100は、ウラン、プルトニウム、トリウム等の塩化物燃料塩、または塩化物燃料塩の組み合わせとともに使用するように設計されているが、原子炉の代替的な実施形態は、フッ化物燃料塩およびフッ化物-塩化物燃料塩等の、任意の燃料塩とともに使用するように設計されてもよい。核燃料塩の例には、1種または複数種の核分裂性燃料塩(例えば、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、ThCl、およびUClF等)と、1種または複数種の非核分裂性塩(例えば、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、およびNdCl等)との混合物が含まれる。例えば、PuCl-NaCl塩、UCl-NaCl塩およびUCl-MgCl塩が想定される。
【0037】
原子炉システム110は、炉心102を含む。炉心102は、運転中、高速中性子(0.5MeV以上のエネルギーを有する中性子)の密度が臨界に達するのに十分である量の溶融燃料を含む、中央の開チャネルである。チャネルのサイズおよび形状は、原子炉容器内の中性子反射体アセンブリによって定められる。反射体アセンブリは、炉心102を取り囲んでおり、炉心102内で発生した高速中性子を炉心102内へ跳ね返す(反射して戻す)ように作用することで、高速中性子密度を増大させる。反射体アセンブリについては、後続する図を参照して、より詳細に論じる。
【0038】
炉心102のサイズは、使用される燃料の種類に基づいて選択される。すなわち、その体積は、炉心102内で臨界質量を達成するために必要な量の溶融燃料を保持するのに十分な体積である。一実施形態では、炉心102は運転中に減速されない、すなわち、炉心は、炉心内の高速中性子のエネルギーが低減しないように、減速材棒またはその他の減速材要素を含まない。一実施形態では、炉心102は、溶融燃料のみを含む。炉心102が炉心自体内における溶融燃料から臨界を達成できることは、本明細書における高速炉設計を、熱中性子炉、および、個々の燃料ピンの集まりを使用する高速炉(当該燃料ピンの各々は、運転中に臨界の達成には不十分な少量の溶融燃料を含むが、燃料アセンブリへと十分な数で集められた場合には臨界質量を形成できる)から分かつ一側面である。
【0039】
炉心102および反射体アセンブリは、原子炉容器104によって取り囲まれている。原子炉容器104それ自体は、図示の実施形態では、遮蔽容器116の内部にある。原子炉100は、溶融燃料が原子炉容器104内に収容されることを示すために、プール型と称される。原子炉容器104によって、運転時に液体溶融燃料で満たされるプールが形成される。反射体アセンブリの要素等の中実コンポーネントは、原子炉容器104が形成するプール内にあってもよく、原子炉容器104内の空間の一部を占めてもよい。かかるコンポーネントは、原子炉容器内を燃料が占めるスペースから当該燃料を変位させるため、本明細書では変位要素と称される。一部の変位要素は、原子炉容器内のスペースを占める以外の機能を実行しなくてもよい。反射体アセンブリ等のその他の変位要素は、原子炉容器104内で溶融燃料を変位させる機能に加えて、溶融燃料の循環を方向付けて炉心のニュートロニクス(中性子特性、neutronics)に影響を及ぼす等の機能を果たし得る。
【0040】
一実施形態では、遮蔽容器116は、安全性のレベルを増すものとして炉心の周囲に追加的な中性子遮蔽を提供しており、原子炉容器に破壊が生じた場合には、二次格納容器としての役割も果たし得る。一実施形態では、原子炉容器104および遮蔽容器116は、固体の鋼から作製されている。運転条件に基づいて、任意の適切な高温耐食鋼(例えば、316Hステンレス)、HT-9、モリブデン合金、ジルコニウム合金(例えば、ZIRCALOY(商標))、SiC、グラファイト、ニオブ合金、ニッケルもしくはニッケル合金(例えば、HASTELLOY(商標)N、INCONEL(商標)617、またはINCONEL(商標)625)、または高温のフェライト系鋼、マルテンサイト系鋼、もしくはステンレス鋼等が使用されてもよい。当該運転条件は、少なくとも部分的に、燃料の選択によって規定されることとなる。遮蔽として使用するのに適した材料には、鋼、ホウ素添加鋼、ニッケル合金、MgO、およびグラファイトが含まれる。例えば、一実施形態では、全ての溶融燃料接触(塩濡れ)コンポーネントは、これらのコンポーネントの腐食が低減するように、INCONEL(商標)625(UNS指定No6625)から作製されるか、またはINCONEL(商標)625で被覆されてもよい。
【0041】
図示の実施形態では、溶融燃料を循環させるために、1または複数のポンプ118が設けられている。代替的な一実施形態では、原子炉システム110は、自然循環の下で運転するように設計されており、ポンプは設けられていない。運転中、加熱された燃料は、核分裂熱が発生する炉心102と、燃料が冷却され核分裂熱が除去される原子炉容器104の内面との間で、循環される。
【0042】
原子炉容器104は、一次冷却システム112によって冷却される。定常状態で運転するとき、炉心102内の温度は安定したままであり、核分裂により生み出される余剰熱は、一次冷却システム112によって除去される。一実施形態では、一次冷却システム112は、1または複数の冷却回路(図1では1つの回路のみが示されている)から構成されている。当該1または複数の冷却回路において、各回路は、熱交換器106と、冷却材ブロワ108と、を含む。あるいは、液体冷却材は、液体-空気熱交換器およびポンプとともに使用され得るだろう。冷却材ブロワ108は、原子炉容器104と遮蔽容器116との間に一次冷却材のために設けられたスペースを通じて冷却材を流すことによって、冷えた一次冷却材ガスに原子炉容器104の外面を強制的に通過させる。原子炉容器の外面に沿って一次冷却材を通過させることにより、原子炉容器104から熱が除去される。一部の熱は寄生損失によって失われることがあり得るものの、定常状態では、炉心102で発生した熱の全てではないにせよほとんどが、一次冷却材システム112によって除去される。以下により詳細に論じられるように、熱の伝達を補助するため、フィン、ピン、ディンプルまたはその他の熱伝達要素を容器104の外面上に設けて、一次冷却材に露出する外面の表面積を増大させてもよい。
【0043】
次いで、加熱された一次冷却材は、熱交換器106へと流れる。加熱された一次冷却材ガスは熱交換器106を通過し、熱交換器106において、一次冷却材ガスが冷却され、空気が加熱される。次いで、冷却された一次冷却材が原子炉システム110へ再循環されて、一次冷却材流れ回路が形成される。
【0044】
一実施形態では、一次冷却材ガスとして、不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)が使用される。しかしながら、任意のガスが使用されてもよい。代替的な一実施形態では、原子炉100は、一次冷却材として、気体か液体かのいずれかの任意の流体を使用するように設計されてもよい。
【0045】
排熱システム114は、作動流体として空気を使用する。排熱システム114は、周囲温度および周囲圧力において、周囲空気を取り込む。空気ブロワ128を使用して、周囲空気は熱交換器106を通過させられる。熱交換器106において、周囲空気は熱冷却材から熱を受け取る。次いで、熱交換器106からの加熱された空気は、環境へと排出される。一次冷却システム112と同様に、排熱システム114は、複数の独立した排熱回路を含んでもよい(ここでも、図1では1つの回路のみが示されている)。各排熱回路は、各排熱回路自身に専用される独立して制御可能なブロワ128、空気取入れ口120、加熱空気排出ベント122、および関連する配管系/ダクト系を含んでもよい。
【0046】
一実施形態では、複数の独立した冷却回路および排熱回路が使用されてもよい。例えば、一実施形態では、4個の別個の独立した冷却回路が使用される。加えて、冷却回路ごとに、独立した排熱回路を設けてもよい。他の実施形態では、一次冷却回路/排熱回路の4個の独立した対の代わりに、一次冷却システム112と排熱システム114との2個、3個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の独立した対がある。しかしながら、一次冷却回路を排熱回路に1対1に対応させる必要はない。例えば、一実施形態では、原子炉100は、4個の一次冷却回路を有するが、排熱回路を2個のみ有し、各排熱回路が2個の一次冷却回路のために働いてもよい。その他の構成も可能である。
【0047】
この設計の一側面は、原子炉の低動力出力によって、核分裂由来の余剰熱を環境へと廃棄することが実現可能となることである。図示の実施形態では、一次冷却システム112は、原子炉システム110から一次冷却材回路内への核燃料または核分裂生成物の何らかの放出がある場合に備えて、一次冷却材を収容する安全システムとして設けられている。代替的な設計では、一次冷却材を直接的に環境へと排出することによって、熱が環境へと直接的に廃棄されてもよい。この実施形態では、熱が排熱システム114によって除去されるように、一次冷却システム112は実質的に除去されるが、かかる設計には、安全要件が満たされるように、緊急停止システム等の追加の安全装置が必要であり得る。かかる実施形態では、一次冷却材として空気が使用されてもよい。代替的な一実施形態では、一次冷却材として水が使用されてもよく、加熱された水を環境内へと排出するポンプ128に、ブロワ128を交換してもよい。
【0048】
あるいは、有利には、原子炉から除去された熱は、熱エネルギーがその他のシステムに提供されるように用いられ得るだろう。例えば、一実施形態では、一次冷却材は、原子炉設備内で熱エネルギーとして再利用されるように、熱エネルギーシステムに渡し得るだろう。
【0049】
図2は、図1に示す原子炉の、ある1つの可能な物理的実装形態の見取り図を示す。図2では、システムの物理的コンポーネント(例えば、冷却材ガスブロワ208、空気ブロワ228、燃料塩ポンプアセンブリ218および遮蔽容器216、ならびに、システム間の配管系/ダクト系の一部)が図示されている。
【0050】
図示の物理的実装形態において、原子炉システム210には4つの冷却回路212および4つの排熱回路214が設けられており、各回路のうちの1つの回路のみが図示されている。原子炉システム210は中央室内に設けられており、一次冷却回路212および排熱回路214の各々は、格納(封じ込め)のために、原子炉システム210および他の回路から、壁によって隔てられている。
【0051】
各冷却回路212は、ガス-空気熱交換器230と、冷却材ガスブロワ208と、を含む。冷却材ガスブロワ208は、回路212をめぐるように冷却材ガス流を駆動する。上述したように、回路では、冷却材ガスは、原子炉容器の外面を通過し、当該原子炉容器の外面にて加熱され、次いで、ガス-空気熱交換器230へと至る。当該ガス-空気熱交換器230において、熱は、関連する排熱回路214内の空気へと伝達される。次いで、回路によって、冷却された冷却材ガスが原子炉へと戻り、当該冷却された冷却材ガスが再加熱される。図示の実施形態では、冷却材ガスブロワ208は、回路212における冷却された冷却材の区間内に示されている。代替的な一実施形態では、冷却材ガスブロワ208は、回路212における加熱された冷却材の区間内にあってもよい。
【0052】
各排熱回路214は、空気ブロワ228を含む。空気ブロワ228は、環境から周囲空気を中へもたらし、空気にガス-空気熱交換器230を通過させる。その後、加熱された空気は、環境へと排出される。図示の実施形態では、空気ブロワ228は、回路214における周囲空気の区間内に示されている。代替的な一実施形態では、空気ブロワ228は、回路214における加熱された空気の区間内にあってもよい。
【0053】
図3A図3Dは、図1の原子炉システムの一実施形態を示す。図3Aは、図3Bに示された断面A-Aに沿った切断図である。切断図には、原子炉容器304、および原子炉容器の内部コンポーネントの一部が示されている(遮蔽容器305は、図3Aには示されていない)。図示の実施形態では、原子炉システム300は、核燃料として、溶融塩化物燃料塩を使用する。原子炉システム300は、燃料塩が、中央の炉心302を通り、4個の個々の燃料塩流れ回路内へと循環されるように、単一の溶融塩ポンプアセンブリ318を有する。4個の個々の流れ回路が示されているが、任意の数の燃料塩流れ回路が使用されてもよい。例えば、炉心を出る燃料塩は、原子炉設計者の所望に応じて、2個、3個、4個、5個、6個、8個、または12個の個々の回路に分配されてもよい。
【0054】
ポンプアセンブリ318は、ポンプモータ320を含む。ポンプモータ320は、インペラ324を有するシャフト322を回転させる。インペラ324は、シャフトの先端部に取り付けられている。一実施形態では、インペラ324の回転によって、燃料塩の流れが中央の炉心を通って上方に駆動され、熱伝達セクションにおいて、原子炉容器304の内面に沿って、4個の熱交換ダクト内を下方に駆動される。一方、代替的な一実施形態では、流れは逆であってもよい。ポンプアセンブリ318については、以下により詳細に論じる。
【0055】
原子炉容器304には、図示のように、外面上にフィン326が設けられている。フィン326によって、原子炉容器304から冷却材への熱伝達が補助される。あるいは、フィンの代わりに、またはフィンに加えて、(図10に示すような)ディンプル付きジャケットまたは交互ピン等の、任意の高表面積構成が使用されてもよい。図示の実施形態では、フィン326は、原子炉容器304の側壁の外部の4つのセクション上にある。これらのセクションのみが、原子炉容器304からの放射性熱を除去するセクション(熱伝達領域)となる。フィン326は、下へ流れる燃料塩の流路(熱交換ダクト306)の反対側に配置され、燃料塩と接触しておらずフィンのない原子炉容器304の側壁の部分に配置されている。しかしながら、代替的な一実施形態では、フィン326は、原子炉容器304の熱伝達領域の位置とは無関係に、原子炉容器の縦壁の外面全体上に設けられる。さらに別の一実施形態では、フィンまたはその他の熱伝達要素が、原子炉容器の横表面および底表面の全体の周囲に設けられている。さらに他の実施形態では、熱交換器を介して、燃料塩と一次冷却材との間で熱が伝達されてもよい。
【0056】
側部および底部において炉心を取り囲んでいるのは、中性子反射体アセンブリ330である。反射体アセンブリ330は、炉心302の横方向延在部を定める半径方向反射体332と、炉心302の底部を定める下部軸方向反射体334と、を含む。一実施形態では、中性子反射体アセンブリ330は、反射体材料の容器として機能する反射体構造体内に含まれる反射体材料の圧縮粉末または中実レンガからなる。一態様では、中性子反射体アセンブリ330は、変位空間として機能する大きな容器と見なされ得る。すなわち、中性子反射体アセンブリ330は、原子炉容器内の塩を変位させることで、燃料塩が原子炉容器内に存在し得る場所を定める。中性子反射体アセンブリ330については、以下により詳細に論じる。
【0057】
図示の実施形態では、容器ヘッド340は、いくぶんのさらなる中性子反射をもたらす。代替的な一実施形態では、追加的な反射体材料が、容器ヘッド340内に、または、容器ヘッドと半径方向反射体332との間に、組み込まれてもよい。例えば、一実施形態では、反射体アセンブリ330は、容器ヘッド340と半径方向反射体332との間に、上部軸方向反射体336を含む。同様に、さらなる安全のために、原子炉の周囲に(図3Aには示されていない)外部遮蔽が設けられてもよい。
【0058】
図示の実施形態では、容器ヘッド340は、フランジ344で終端する中空のアップカマ(upcomer)342、メインデッキ346を含む。フランジ344には、ポンプアセンブリ318が取り付けられている。メインヘッドデッキ346は、原子炉容器304を密閉して覆っており、図示の実施形態では、制御ドラムウェル(図7参照)を含んでいる。モータとインペラとの間のシャフト322は、アップカマ342内に収容されている。アップカマ342は、原子炉内の燃料塩と流体連通状態にあるインペラの上方のチャンバを定めている。チャンバは、膨張室348と称される。当該チャンバ内には、原子炉システム300内の燃料塩の自由表面レベル(位置、高さ)349がある。運転中、燃料塩の上方の膨張室348内の上部空間は、不活性カバーガスで満たされている。カバーガス管理システム(図示せず)が設けられており、当該カバーガス管理システムは、膨張室348内のガスの圧力を制御し、さらに必要に応じて、カバーガスをクリーニングする。また、原子炉容器304から液体を送出して除去するために設けられるアクセス/除去ポート(図3A図3Dに示さず)を通じて、原子炉容器304から燃料塩が強制的に出るようにするために、カバーガスにおける圧力が用いられ得る。
【0059】
膨張室348内の燃料塩のレベル349は、燃料塩が(起動中および停止中等に)膨張および収縮するにつれて変化するだろう。当該レベル349は、原子炉システムの現在の運転状態または運転状況のインジケータとして用いられてもよい。運転中の燃料塩の自由表面レベル349の高さを示すモニタリング装置が設けられてもよい。1または複数の流量制限装置360(後述)の開閉、制御ドラム350の回転、または、原子炉システム300への冷却材の流量および/もしくは温度の増減等の制御決定は、部分的にまたは完全に、レベルモニタリング装置の出力に基づいてなされてもよい。例えば、一実施形態では、標準的な動作を示すある範囲の自由表面レベル349を目標に設定してもよく、当該目標の範囲内に燃料塩レベルが保たれるように、上述した1または複数の制御決定が制御装置によって自動的になされてもよい。
【0060】
燃料塩オーバーフロータンク(図示せず)への過剰な燃料塩を除去するために、オーバーフローポート347がアップカマ342に設けられてもよい。
【0061】
未臨界の非核分裂加熱運転の間、原子炉システム300内の燃料塩は、燃料塩融点を上回る温度に維持されてもよい。一実施形態では、容器ヘッド340および/または原子炉容器304の外部に取り付けられた複数の電気ヒータ351を使用することによって、このことが達成されてもよい。例えば、一実施形態では、ヒータ352は、原子炉容器304と遮蔽容器305との間のスペース内において、フィン326とフィン326との間の位置に設けられている。あるいは、ヒータ351は、一次冷却システム内、例えば各々の冷却回路内に含まれてもよく、一次冷却材(気体/液体)を加熱するために使用されてもよいだろう。そして、当該一次冷却材(気体/液体)によって、燃料塩が所望の温度に維持されるように、原子炉システム300が加熱される。言い換えれば、原子炉が未臨界である場合に原子炉システム300を適切な温度に加熱および/または維持するための初期加熱システムとして、一次冷却システムを使用してもよいだろう。
【0062】
原子炉システム300の反応度制御は、独立に回転させられる1または複数の制御ドラム350を介して実現される。図示の実施形態では、4つの制御ドラムが使用されているが、任意の数および構成の制御ドラムが使用されてもよい。制御ドラム350は、反射体材料352の円筒体であり、中性子吸収材から作製された局所面354が設けられている。反射体アセンブリ330には、図示のように、各制御ドラム350のための受け入れスペースが定められており、これによって、炉心302に対して横方向に隣接するように、制御ドラム350を原子炉容器304に挿入することができる。中性子吸収材面354が炉心302に近づきまたは遠ざかるように、制御ドラム350を反射体アセンブリ330内で独立に回転させることができる。これによって、炉心302内へと跳ね返り核分裂に利用可能な高速中性子の量が制御される。吸収材面354が炉心302に近接するように回転するとき、高速中性子は、反射されずに吸収され、原子炉システム300の反応度が低減する。制御ドラムの回転を通じて、原子炉は臨界、未臨界または超臨界の状態に維持され得る。
【0063】
制御ドラム350が図示されているが、代替的な一実施形態では、制御ドラム350の代わりに、または制御ドラム350に加えて、吸収材料または中性子反射体の挿入可能な制御棒または制御スリーブが使用されてもよい。さらに、例えば、緊急時に炉心302自体内へ挿入/落下させ得る吸収材料の1または複数の制御棒を含む、緊急時使用のためのさらなる制御要素が設けられてもよい。
【0064】
さらに、ドラムチャンバまたはドラムウェル356(図7も参照)を実質的に満たす円筒体として制御ドラム350が図示されているものの、制御ドラム350は、任意の形状であってもよいだろう。さらに、制御ドラム350は、ドラムウェル356を完全に満たしていなくてもよい。例えば、一実施形態では、ドラムは、三日月形状の水平断面を有し、この場合には当該三日月形状によって、容器ヘッドのポンプフランジの周りにおいて、より容易に挿入および除去することができる。
【0065】
さらに別の一実施形態では、制御ドラム350は、吸収面354の代わりに、液体吸収材料を挿入および除去するための空間を含んでもよい。この実施形態では、制御ドラム350またはドラムウェル356は、原子炉システム300の反応度を制御するための液体吸収材によって満たされ得る、1または複数の空の空間を備えてもよい。例えば、図6Bに示す制御ドラム350は、静的であってもよく、運転時には、吸収面354の位置は吸収材が空であってもよく、停止時には、反応度が未臨界に低減するように、液体吸収材で満たされてもよい。
【0066】
複数の燃料塩回路のうちの1つの燃料塩回路内の燃料塩の流れを制御する任意選択的な流量制限装置360が、図3および図4に示されている。流量制限装置360は、炉心302と原子炉容器304の原子炉容器内面との間の4つの燃料塩上部流路361のうちの1つの燃料塩上部流路の頂部に配置されている。4つの流れ回路のうちの1つの流れ回路における1つの流量制限装置360のみが図示されているが、代替的な実施形態では、複数の燃料塩流れ回路のうちの他の一部の燃料塩流れ回路または全ての燃料塩流れ回路に、かかる装置が設けられてもよい。溶融塩流量制限装置360(バルブ、ゲートバルブ、スルースゲート、ピンチバルブ等のうちのいずれか1つであってもよいが、ゲートバルブが図示されている)によって、回路を通る燃料塩の流量を制御できる。炉心302に入る流れに非対称性を誘起するために、また、炉心の外部を流れる(移流する)遅発中性子先行核の量を変動させることによって実効遅発中性子比率を変更するために、流量制限装置360が使用されてもよい。これによって、種々の運転シナリオおよび原子炉条件を調査するために、原子炉300の運転を変化させることができるようになる。
【0067】
原子炉システム300の他のカスタム構成は、インペラ324の下方のポンプ吸引領域の設計である。炉心302の中央からインペラ324内へと流れが直接的に流入するようになっているのではなく、インペラ324の直下にあるコンタード(contoured)プラグ362が、インペラ324と炉心302との間に設けられている。一実施形態では、プラグ362は、1または複数の縦部材および/または横部材によって支持されている。プラグ362は、反射体アセンブリ330に組み込まれていてもよく、あるいは、容器ヘッド340またはポンプアセンブリ318の一部であってもよい(図3A図3Dおよび図7に示すように、プラグおよびポンプ室は、容器ヘッド340に組み込まれている)。一実施形態では、プラグ362は、INCONEL(商標)625等の遮蔽体材料から作製されている。代替的な一実施形態では、プラグ362は、例えば半径方向反射体に関して記載した反射性材料から作製されている。炉心302を通って上昇する溶融燃料の流れは、このプラグ362の周りに導かれ、1または複数の環状入口領域を通り、次いで、ポンプインペラ324内へと上昇する。この設計は、複数の目的に役立つ。第1に、プラグ362は、炉心302に対する事実上の上部反射体または上部遮蔽体として働き(かつ、炉心302の頂部を定めるものと見なすことができ)、炉心302の高束領域とポンプのインペラ324との間に放射線遮蔽をもたらす。第2に、このポンプ吸引プラグ362を支持する支持部材は、必要に応じて、ポンプのための最適な入口条件を提供するように調整することができ、これにより、渦が低減または増強され得る。
【0068】
図3Bは、原子炉システム300の頂部の平面図を示す。図示の実施形態では、ポンプおよび容器ヘッドのフランジは、制御ドラム350の位置とわずかに重なり合っている。加えて、図示のように、原子炉容器304の外部上のフィン326は、遮蔽容器305まで延在せず、2つの容器304、305の間の空間は、一次冷却材で満たされた連続的なガス空間である。これは、1つの可能な実施形態に過ぎない。代替的な一実施形態では、フィン326は、遮蔽容器305と接触している。別の実施形態では、4つのフィン付き領域は別個の冷却材流路であり、フィン位置とフィン位置との間の環状空間は、(中性子吸収材材料等の固体材料または不活性ガスで満たされた)静的な空間であるか、または加熱要素を収容し得るかのいずれかである。
【0069】
図3Cは、炉心302の中央を通る原子炉の水平断面図と、原子炉容器304上のフィン326の詳細とを示す。また、図3Cは、熱伝達領域においてフィンの反対側にある原子炉容器の内面上の燃料塩経路を示す。ここでも、制御ドラム350は、最小反応度構成で示されている。
【0070】
さらに、図3Cは、半径方向反射体332の一実施形態のさらなる詳細を示す。図示の実施形態では、半径方向反射体332は、5つの別個のピースから作製されている。当該5つの別個のピースには、中央環状反射体332aが含まれており、中央環状反射体332aは、制御ドラム350を受け入れるための切り抜き部を環の外側上に有する。そして、4つの外側弧状反射体332bが、中央環状反射体332aの外側の周りに配置されている。図示の実施形態では、外側構造体309は、弧状反射体332bの反射体材料を保持している。一設計では、弧状反射体332bは中実であり、他の実施形態では、反射体332bが中実である。
【0071】
さらに、図3Cは、熱交換ダクト306の一実施形態のさらなる詳細を示す。図示の実施形態では、加熱燃料塩ダクト306と半径方向反射体332aとの間に、被覆308が設けられている。これは、図示の実施形態では、反射体構造体309の外部上に示されている。被覆308は、核燃料による腐食に耐える材料から作製されている。
【0072】
図3Dは、原子炉システム300の一実施形態を切断図で示したものであり、遮蔽容器305、原子炉容器304、および原子炉システムの複数の内部コンポーネントの一部が示されている。図示の実施形態では、原子炉容器304は、支持スカート370によって支持されている。さらに、遮蔽容器305と原子炉容器304との間の空間の内および外にある一次冷却材配管系/ダクト系が図示されており、冷却材ガスの流れの方向が示されている。図示の実施形態では、冷えた冷却材が下部冷却材入口ダクト372を通り、遮蔽容器305と原子炉容器304との間の領域を通って上方に、フィン326を越えて流れる。次いで、加熱された冷却材が、冷却材出口ダクト374を介して出ていく。フィン326の各セットについて、別個の冷却材回路が設けられており、出口ダクト374および入口ダクト372は、それぞれフィンのすぐ上方およびすぐ下方に位置している。
【0073】
図3Dは、制御ドラム350の上方の空間が空であることを示す。代替的な一実施形態では、この空間は、炉心に追加的な反射が提供されるように、適切な形状の反射体で満たされてもよい。この反射体は、除去可能であり、ドラムの回転を妨げない。
【0074】
図4は、図3の原子炉300内の燃料塩および流れ回路を示す。図4は、原子炉システム300内に含まれる塩の量全体400を示す。流路に加えて、図4は、(指向(directing)ベーン412の形態の)ポンプステータ、1つの流路内の(ゲートバルブの形態の)流量制限装置360、および(オリフィスリングプレートの形態の)流れ調節装置420の略図を示す。
【0075】
運転中、加熱された燃料塩は、炉心302を通って上方に流れ、インペラチャンバ410内へ流れる。回転インペラ324(図4に示さず)は、ポンプステータの有向ベーン412を通じて(矢印で示される)燃料塩を駆動する。ここで、燃料塩流は、4つの上部加熱燃料塩出口チャネル414のうちの1つの出口チャネル内へ分かれる。出口チャネル414は、半径方向反射体332を越えて熱交換ダクト416へ燃料塩を運ぶ。図示の実施形態では、上部加熱燃料塩出口チャネル414は、ポンプインペラ324に最も近いとこで幅がより狭く、原子炉容器304に近づくにつれて幅広になっていく。
【0076】
熱交換ダクト416は、半径方向反射体332と原子炉容器304の内面との間における、半径方向反射体332の頂部付近から半径方向反射体332のほぼ底部まで延在するチャネルである。一実施形態では、熱交換ダクト416の一方の壁は、原子炉容器304によって形成されているため、熱交換ダクト416を通って下方に流れる燃料が原子炉容器304と直接的に接触した状態にあり、その結果、原子炉容器304の他方の側にある冷却材と熱連通した状態となっている。
【0077】
燃料塩は、下部冷却燃料塩送出チャネル418を介して熱交換ダクト416を出る。下部冷却燃料塩送出チャネル418は、下部軸方向反射体334と半径方向反射体332との間において、反射体アセンブリ330を通るチャネルである。下部冷却燃料塩送出チャネル418は、熱交換ダクト416から炉心302の底部内へ、冷却された燃料塩を送出する。
【0078】
流れ調節装置420は、冷却された燃料塩が下部冷却燃料塩送出チャネル418から炉心302に入る場所に設けられてもよく、またはその場所の付近に設けられてもよい。流れ調節装置420によって、炉心に流入する流れが、ジェット様の挙動または大きな渦もしくは再循環を伴わずに良好に分散されることが保証される。当該流れは、半径方向反射体332の下縁部の内側で角を曲がるからである。図示の実施形態では、流れ調節装置420は、冷却された燃料塩の流れを最適化するように設計されたオリフィスプレートである。代替的な一実施形態では、流れ調節装置420は、指向(directional)バッフル、チューブバンドル、ハニカム、多孔質材料等の代替形態をとってもよい。
【0079】
さらに、図4には、アップカマ342内の膨張室348における燃料塩、および燃料塩の自由表面レベル349がより明確に示されている。膨張室348によって、加熱された燃料塩は、運転中に体積が膨張できるようになっている。
【0080】
図5Aおよび図5Bは、図3の原子炉システムにおいて使用できるであろう反射体アセンブリの一実施形態を示す。中性子反射体アセンブリ500は、下部軸方向反射体502および半径方向反射体504の2つの部分に設けられ、これらの部分は、組み合わせられた場合、複数の機能を実行する統合コンポーネントとして機能する。当該複数の機能には、炉心302の形状およびサイズを定めること;炉心からの高速中性子を炉心内へ跳ね返すこと;ならびに、原子炉容器内に設置される場合に、原子炉容器内の溶融燃料の流れ回路を定めること(図5Aに示す矢印を参照)が含まれる。
【0081】
一実施形態では、反射体アセンブリの個々のコンポーネントには、反射体構造体または容器が含まれる。当該反射体構造体または容器は、外面を形成し、その結果、反射体アセンブリのその部分の形状を形成する。反射体構造体の内部空間には、全体的にまたは部分的に、反射体材料が充填される。例えば、一実施形態では、反射体材料の圧縮粉末および/またはレンガが、反射体構造体内に収容されている。反射体構造体は、原子炉容器に関して上述したように、鋼、またはその他の任意の適切な頑丈さ、耐熱性および耐腐食性を有する材料から作製されてもよい。反射体構造体内の反射体材料は、Pb、Pb-Bi合金、ジルコニウム、鋼、鉄、グラファイト、ベリリウム、炭化タングステン、SiC、BeO、MgO、ZrSiO、PbO、ZrSiおよびAl、またはこれらの任意の組合せであってもよい。
【0082】
例えば、図5Aに示す実施形態では、半径方向反射体504は、反射体材料が充填された(上述した)鋼の外側シェルからなる単一構造であってもよい。一実施形態では、MgOが、レンガ(例えば、焼結レンガ)、圧縮粉末、またはこれら2つの組み合わせの形態の反射体材料として用いられ、反射体構造体自体は、INCONEL(商標)625で被覆された燃料露出表面を有する316Hステンレス鋼から作製されている。
【0083】
反射体アセンブリコンポーネントは、中性子放射および温度の変化に起因する熱膨張の不整合および膨張(swelling)に適応するように設計されている。MgO等の反射体材料の場合、中性子反射体充填材料は、粉末として加工されてもよい。当該粉末は、典型的には、理論密度限界の66~85%の密度を有する。引抜きおよびアニーリングによる面積の低減、ならびに振動圧縮(vibratory compaction)等の二次操作によって、より高い密度をつくり出すことができる。
【0084】
反射体アセンブリコンポーネントを原子炉容器内へ組み付けるための複数の戦略がある。1つの戦略では、反射体構造体は、運転温度において原子炉容器に対して所望の適合状態となるようにサイズ決定される。原子炉容器は、上述した(1以上の)加熱器を用いて予熱され、次いで、反射体アセンブリのコンポーネントが、当該容器に挿入される。挿入時に、当該コンポーネントは、当該容器の温度と同じ温度、または当該容器の温度よりも低い温度であってもよい。次いで、原子炉容器が冷めるようにしてもよい。これによって、原子炉容器と反射体アセンブリとの間の永続的な焼き嵌めと、運転温度における適切な適合状態とがもたらされる。第2の戦略では、反射体構造体は、室温等の所与の温度において原子炉容器に対して滑り嵌めされるようにサイズ決定される。これによって、運転温度における適合状態の軽度の遷移が生み出される。
【0085】
図5Bは、炉心510の形状、加熱燃料塩出口チャネル512、熱交換ダクト514、ならびに、半径方向反射体504および軸方向反射体502の形状によって定められる冷却燃料塩送出チャネル516を示す、反射体アセンブリ500の断面図を示す。
【0086】
図6A図6Bおよび図6Cは、制御ドラムの一実施形態、および反応度制御装置としての制御ドラムの使用を示す。図6Aおよび図6Cに示すように、各制御ドラム600は、収縮回転アーム602を含む。アーム602を操作することによって、ドラム600は、反射体アセンブリ内に設けられたドラム空間内で下降および上昇されてもよい。一実施形態では、ドラム600は、完全に除去されてもよい。さらに、一実施形態では、アーム602によって、両方向に任意の量だけ、ドラムを回転させることができる。
【0087】
図示の実施形態では、ドラムは、上述した反射体材料610から作製されており、吸収材料の面612を備える。一実施形態では、吸収材料はBCであるが、任意の適切な中性子吸収材料が使用されてもよい。他の中性子吸収材料としては、カドミウム、ハフニウム、ガドリニウム、コバルト、サマリウム、チタン、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、モリブデンおよびイッテルビウム、ならびにこれらの合金が含まれる。一部の他の中性子吸収材料は、Mo、二ホウ化ハフニウム、二ホウ化チタン、チタン酸ジスプロシウムおよびチタン酸ガドリニウム等の組み合わせを含む。
【0088】
一実施形態では、中性子反射体の構成と同様に、鋼等の外側構造体または容器を作製し、次いで、適切な部分に適切な材料を充填することによって、ドラムが作製される。例えば、一実施形態では、ドラム構造体には2つの空間が設けられ、一方の空間には、1種または複数種の中性子吸収材料が充填され、他方の空間には、1種または複数種の中性子反射材料が充填される。
【0089】
上述したように、制御ドラムの回転によって、吸収面と炉心との間の距離が変化し、さらに、吸収材料と炉心との間の反射材料の量が変化する。図6Aおよび図6Bは、最も反応度の低い構成の4つの制御ドラム600を示しており、4つのドラムの各ドラムの吸収面612は、炉心に可能な限り接近している。図6Aは、4つのドラムを示す。一方、図6Bは、原子炉システム300の平面図であり、容器ヘッド内の4つのドラム600を示す。これは、炉心内の中性子の密度を最大限低減するのに役立つ。原子炉の設計において、この構成における吸収材料の相対的なサイズ、量および炉心からの距離は、原子炉を未臨界状態とするのに十分である。一実施形態では、制御ドラムは、図6Bに示す位置へ回転した場合に、全ての可能な停止の条件および状態において未臨界状態を維持できるように、サイズ決定されている。
【0090】
図6Dは、吸収面612に関して異なる設計を有する制御ドラムの代替的な一実施形態の2つの図を示す。この実施形態では、吸収面612は、ドラム構造体の内側においてドラム600の周囲略半分に延在する均一な厚さの層であり、当該ドラム構造体のそれ以外の場所には、反射体材料が充填されている。
【0091】
図7は、容器ヘッドの一実施形態を示す。図示の実施形態では、容器ヘッド700は、図示のような単体部材であるか、あるいは、ヘッドプレート702と、反射体アセンブリに挿入される制御ドラムを受け入れるためのウェル704と、原子炉容器の内部にアクセスするための1または複数の開口706(例えば、流量制限装置のための開口が図示されている)と、上述した燃料塩膨張体積のための環状空間をもたらすアップカマ708と、ポンプアセンブリへの接続をもたらすフランジ710と、を含むアセンブリであるか、のいずれかである。加えて、この実施形態では、容器ヘッドの設置時に、半径方向反射体によって形成された中央の開チャネルの頂部内にポンプ室コンポーネント712が嵌められるように、インペラを保護する遮蔽体プラグを含むポンプ室が容器ヘッド700に組み込まれている。容器ヘッド700は、例えば3Dプリンティングもしくは単一の材料片からのミリングによって、単一の要素として作製されてもよく、または、様々な要素から組み立てられ、溶接もしくはその他の方法によって取り付けられてもよい。上述したように、反射体材料が容器ヘッド700に組み込まれてもよく、または、ヘッドプレート702と図5Aおよび図5Bに示す反射体アセンブリとの間に配置されることとなる別個の上部軸方向反射体(図示せず)を設けることができるだろう。
【0092】
図8は、原子炉システムの一実施形態の主要コンポーネントを示す分解図である。図示の実施形態では、原子炉システム800は、原子炉容器804と、反射体アセンブリ802(下部軸方向反射体802aおよび半径方向反射体802bの2つの部分)と、容器ヘッド806と、(1以上の)流量制限装置808と、制御ドラム810と、ポンプアセンブリ812と、を含む。各コンポーネントは、現場外で独立に製造することができ、その後、輸送して、所望の位置で容易に組み立てることができる。原子炉システム800は、低出力原子炉として設計されているので、これらの主要コンポーネントは、製造、輸送、組み立て、保守、および交換が容易となるように、(原子炉としては)比較的小さく保たれ得る。
【0093】
図9は、燃料ポンプアセンブリ900を示す。上述したように、ポンプアセンブリ900は、モータ904と、シャフト908と、インペラ910と、を含む。モータは、シャフト908が通り抜けるモータ支持構造体906によって、炉心から隔てられている。燃料塩ポンプ900は、フランジ902を介して、容器ヘッドに取り付けられる。図示の実施形態では、ポンプアセンブリ900は、フランジ902とインペラ910との間に流体カラム912を含む。設置時に、流体カラム912は、容器ヘッドのアップカマに挿入され、流体カラム912は、膨張室を含む。代替的な一設計では、ハウジングは、ポンプステータの上部部分を提供する支持構造体と取り替えられる。
【0094】
図示のように、このポンプは、カバーガス圧力が制御された一体化された流体カラム912、およびダブルメカニカルシールを有する、(塩濡れベアリングのない)垂直カンチレバーポンプである。図示のポンプアセンブリの実施形態では、インペラ910は、いわゆる「エンドサクション(end suction)」構成において下方を向いている。ポンプが炉心中央部の上方から流れを引き寄せその流れを4つの流路へ放射状に押し出す原子炉システムの設計は、この向き付けによってサポートされる。カラム内の液体に対するカバーガス圧力およびインペラ910の上方の燃料塩からの静水圧を用いて、ポンプに必要な正味吸込ヘッド(net positive suction head:NPSH)をもたらすことができるように、流体カラム912がポンプの吸入側と流体連通するように設けることによって、このインペラの向きが可能となっている。一実施形態では、当該システムは、ポンプの適切な動作が保証されるように、正のカバーガス圧力下において(すなわち、1気圧よりも大きな圧力において)運転されてもよい。
【0095】
ボリュートからのポンプ吐出を導き、1または複数の高アスペクト比チャネル(すなわち、4つの上部加熱燃料塩出口チャネル414)内へそれを拡散させる必要性を考慮すると、ポンプには、流れを円滑に向け直すための湾曲ベーンを有するステータ領域が組み込まれている(図4参照)。これによって、単一ボリュート/単一出口の構成と比較して、効率およびインペラ910の安定性が増大する。
【0096】
図10は、熱伝達の改善のために、フィンではなくディンプル1006を外面に備える原子炉容器1004を示す。上述したように、原子炉容器の外部にわたって冷却材が流される任意の場所における原子炉容器1004と冷却材との間の熱伝達が改善されるように、任意の熱伝達要素が使用されてもよい。図示されていないが、同じことは燃料塩にも当てはまり、溶融燃料と原子炉容器との間の熱伝達が改善されるように、任意の形態の熱伝達要素が原子炉容器の内面上に設けられてもよい。
【0097】
また、原子炉容器は、原子炉容器の内部と冷却材との間の熱伝達が所望されない場所においてより厚く、熱伝達領域においてより薄くなるように、厚さが変化していてもよい。例えば、図3Cを参照すると、フィン326が取り付けられたところの原子炉容器304の厚さは、容器304の他の任意の位置における厚さよりも薄くてもよい。なお、原子炉容器304および/または遮蔽体容器305は、1つの材料(例えば、鋼)の単一の単体構成であってもよく、または多層構成であってもよいことに留意されたい。例えば、原子炉容器は、燃料塩による腐食に対する耐性に基づいて選択される異なる材料の内部被覆を有する構造用鋼層を含んでもよい。
【0098】
図11A図11Gは、低出力原子炉システム1100の代替的な一実施形態の種々の図である。上記のシステムと同様に、原子炉システム1100は、原子炉容器1104を含み、原子炉容器1104は、当該原子炉容器1104内において炉心1102を定める反射体アセンブリ1120を収容している。ここでも、反射体アセンブリ1120は、下部軸方向反射体1122と、上部軸方向反射体1144と、半径方向反射体1124と、を含む。
【0099】
図11Aは、容器ヘッド1106の外部の詳細を示す原子炉システム1100の等角図を示す。図11Bは、原子炉システム1100の平面図である。図11Cは、図11Bにおいて特定される断面A-Aに沿った原子炉システム1100の切断図である。いずれの図でも全ての部材が参照されるわけではない。
【0100】
容器ヘッド1106は、上述したものと同様であり、ポンプアセンブリと接続するためのフランジ1108と、膨張室1114を含むアップカマ1113と、を含む。容器ヘッド1106において、制御ドラムのための制御ドラムウェル1111へのアクセスを与える制御ドラム開口1110が、燃料ポートアクセス開口1112とともに示されている。図示の実施形態では、燃料ポートアクセス開口1112によって、原子炉容器1104に、燃料を充填および排出できるようになる。燃料ポートアクセス開口によって、ディップチューブ1116へのアクセスが提供されている。ディップチューブ1116は、容器ヘッド1106から下部軸方向反射体1122まで延在する。図示の実施形態では、ディップチューブ1116の下端部は、下部軸方向反射体1122が定める収集チャネル1126において終端している。収集チャネル1126は、変位要素で満たされていない、原子炉容器1104における最下点である。ディップチューブ1116を収集チャネル1126に接続することによって、原子炉システム1100のカバーガスを加圧することで原子炉システムから液体を容易に排出し得る。溶融燃料の自由表面レベル1125は、重力によって低下し、溶融燃料がアクセス可能な原子炉システム1100の最下点に集まる。
【0101】
一実施形態では、原子炉システム1100内の燃料塩の自由表面レベル1125は、ディップチューブ1116内のレベルをモニタすることによって、モニタされてもよい。これにより、モニタリング装置をアップカマ1113に組み込む必要がなくなる。レーザレベルモニタ、コンダクタンスモニタ、または当技術分野で知られる他の任意の装置を使用して、測定が行われてもよい。
【0102】
また、ディップチューブ1116を介したアクセスによって、液体吸収材の挿入による反応度制御が可能になる。液体吸収材は、当技術分野において知られており、反応度の低下が所望される状況では、ディップチューブ1116を通じて溶融燃料に追加されてもよい。例えば、リチウムは、吸収材料であり、特定のリチウム塩は、原子炉システム1100に関して想定される運転温度範囲において液体である。
【0103】
図示の実施形態において、原子炉容器の内面のほとんど全てが燃料塩と直接的に接触して熱伝達領域として機能するように、より大きな熱交換ダクト1136を有する点で、原子炉システム1100は、上に示したシステムとは異なる。図11Bの平面図に示すように、原子炉容器1104の外部のフィン1130は、原子炉容器1104の縦壁の全周にわたって延在する。さらに、フィン1130とは反対側の原子炉容器1104の内面のほぼ全体にわたって、加熱された燃料塩が流れる。図示の実施形態では、4つの離隔(スタンドオフ)リッジ1134が、半径方向反射体1124の外部上に示されている。離隔リッジ1134は、原子炉容器に接触し、半径方向反射体を原子炉容器の中央に保ち、4つの熱交換ダクト1136の側方境界を形成する。離隔リッジ1134は、中実かつ連続的であり得、その結果、隣り合う熱交換ダクト1136間で燃料塩の流れを分離する。代替的な一実施形態では、離隔リッジ1134は、不連続的であってもよく、例えば、一連の個々の接触点であってもよく、それ以外の場合に隣り合う燃料塩ダクト1136であるとみなされるものの間を燃料が流れられるようになっている。さらに別の一実施形態では、4つの離隔リッジ1134の代わりに、半径方向反射体1124には、半径方向反射体1124の外面のうちの実質的に全ての上を燃料塩が流れるように、半径方向反射体の外部の周りに間隔を置いて配置されたいくつかの個々の離隔要素が設けられていてもよい。
【0104】
図11Dは、原子炉システム1100の中央を通る断面図であり、エンクロージャコンポーネントの一部をより詳細に示す。図示の実施形態では、原子炉容器1104の縦側面のフィン付き領域は、冷却材が流れるジャケット1140に囲まれている。一実施形態では、ジャケット1140の縦外壁には、さらなる安全のために、反射材料か吸収材料かのいずれかの材料の層1142が設けられている。原子炉システム1100の過充填に備えて、オーバーフローポート1184がアップカマ1113に設けられている。
【0105】
図11Fには、反射体アセンブリ1120が結果として定めるチャネルが容易に分かるように、下部軸方向反射体1122および半径方向反射体1124の頂部等角図と、上部軸方向反射体1144の底部等角図と、が示されている。燃料塩に面する表面は、半径方向反射体1124の頂部の上の加熱燃料塩出口チャネル1180と、原子炉容器1104と接触する位置から炉心1102へ冷却塩を戻す冷却燃料塩送出チャネル1182と、を定めるような外形を有する。図11Eは、図11Cおよび図11Fに示す変位要素の結果としての原子炉容器内の燃料塩の形状を示す。
【0106】
図11Cは、反射体アセンブリコンポーネントの実施形態におけるさらなる詳細を提供する。例えば、半径方向反射体1124は、反射体材料1124bを包含する半径方向反射体シェル1124aとして示されている。一実施形態では、反射体シェル1124aは、INCONEL(商標)625から作製されており、反射体材料1124bは、酸化マグネシウムを含む。同様に、シェル1122a、および反射体材料1122bが充填された内部として、下部軸方向反射体1122が示されている。
【0107】
原子炉システム1100のその他の側面は、上記のシステムについて説明されたものと同様である。例えば、上述したものと同様に機能する4つの制御ドラム1150が、反応度制御のために設けられている。制御ドラム1150の上のバックフィル(backfill)反射体プラグ1152が、図11Cにさらに示されている。
【0108】
インペラと炉心との間における保護プラグ1146の使用を含む全体的なポンプ設計も、上述したものと同様である。図11Cに示す実施形態では、プラグ1146は、遮蔽体材料から作製されており、半径方向反射体1124に組み込まれている。原子炉容器1104の底部を支持する下部スカート1156が設けられている。
【0109】
図12A図12Cは、排熱システムの代わりに代替的な一次冷却システムおよび二次冷却システムを有する原子炉設備1200の一実施形態を示す。図示の実施形態では、原子炉システム1202は、遮蔽体アセンブリ1204によって収容されている。遮蔽体アセンブリ1204は、取り外し可能な頂部プラグ1206を含む。取り外し可能な頂部プラグ1206を通じて、原子炉システム1202にアクセスし得る。図示の実施形態では、遮蔽体アセンブリ1204は、基部1208と、長方形側壁コンポーネント1210と、取り外し可能なプラグ1206を有する頂部1212と、を含む。図示の実施形態では、冷却回路1222の冷却材ダクト1221、溶融塩配管系、ならびにその他の配管系および電気的要素が、様々な場所で遮蔽体アセンブリ1204を貫通している。
【0110】
図12A図12Cは、一次冷却システム1220の代替的な一レイアウトを示す。ここでも、一次冷却システム1220は、4つの独立した冷却回路1222を有するものとして示されている。図示の実施形態では、窒素が一次冷却材であり、各冷却回路1222は、熱交換器1224およびブロワ1226を含む。図示の実施形態では、熱交換器1224は、一次冷却材から設備加熱システム(図示せず)へ、熱を伝達する。あるいは、原子炉システムの熱は、上述したように、環境へと廃棄され得るだろう。
【0111】
カバーガス管理システム1228は、遮蔽体アセンブリ1204の近くに示されている。上述したように、カバーガス管理システム1228は、容器ヘッド内の燃料塩の上方の上部空間におけるカバーガスの圧力を維持し、さらにカバーガスをクリーニングする。システム1228は、圧力制御のためのポンプまたはブロワ1229と、原料ガス貯蔵、汚染物質除去および汚染物質貯蔵のための任意の数の容器と、を含んでもよい。カバーガス管理システムは、当技術分野で知られており、任意の適切な構成または種類が用いられ得る。
【0112】
また、原子炉システム制御装置1230も、遮蔽体アセンブリ1204の近くに図示されている。制御装置1230は、原子炉システム1202の運転をモニタおよび制御する。
【0113】
フラッシュ塩(flush salt)ドレンタンク1240および燃料塩オーバーフロー/ドレンタンク1242が図示されている。フラッシュ塩(例えば、燃料塩との適合性を有する非核塩)を使用して、原子炉システムを燃料塩の受け取りに備えさせてもよい。また、フラッシュ塩を使用して、燃料塩の除去後に原子炉システム1202をフラッシングしてもよい。さらに、フラッシュ塩を使用して燃料塩を希釈し、燃料塩の核分裂性物質密度を低減させて、その結果、その反応度を低減させてもよい。
【0114】
図12Bに示すように、原子炉設備は、原子炉建屋を含む。ここでも、原子炉システム1202、遮蔽体アセンブリ1204、および原子炉室を有するコンポーネントにアクセスするための取り外し可能なアクセスパネルが、図示のように、建屋の頂部に設けられている。
【0115】
図14A図14Bは、プール型原子炉システム1400のさらに別の一実施形態を示す。図14Aは、原子炉容器1404内の溶融燃料体積を示す。上述したシステムと同様に、中央円筒形炉心1402は、原子炉容器1404内の(燃料塩と原子炉容器との間の空き空間としてシルエットで示された)内部半径方向反射体1406であって、原子炉容器1404から離隔して配置された内部半径方向反射体1406によって定められている。ポンプ室1408は、原子炉容器1404の内部に設けられており、外部モータによって回転されるインペラとステータとを含む。
【0116】
しかしながら、図14A図14Cにおける原子炉システム1400では、原子炉容器1404の内部に、上側軸方向反射体または下側軸方向反射体が存在しない。代わりに、炉心1402内またはポンプ室1408内にないとき、溶融燃料の流れは、半径方向反射体1406と原子炉容器1404との間の空間によって定められた1または複数のチャネル1418において、原子炉容器1404の内面を辿る。図示の実施形態では、溶融燃料は、上方に、原子炉1402を通って流れ、ポンプ室1408内へ流れる。インペラの回転によって、溶融燃料は、上方かつ放射状に、原子炉容器1404に向かって放たれ、強制的に原子炉容器1404の内部の頂部に沿って流れるようにされる。次いで、溶融燃料流は、原子炉容器1404の内面を半径方向外側へ辿り、次いで、原子炉容器1404の縦部分の熱伝達領域に沿って下方へ辿る。原子炉容器1404の底部において、容器1404は、容器1404の外径部付近に収集チャネル1410が設けられているような形状を有し、さらに、炉心1402の底部内へ溶融燃料を送出する、流れ制御円錐形状が設けられている。このように、原子炉容器1404の底部内面の形状によって、溶融燃料のための戻り流路が形成されている。
【0117】
例えば図14Bに示すように、内部支持体および流れ制御要素が設けられてもよい。図14Bは、溶融燃料流をポンプ室1408から外へ原子炉容器1404の内面に沿って方向付けるための内部ベーン1412を示す。バッフル、オリフィスプレート、またはベーン等のその他の流れ調節要素が、必要に応じて、溶融燃料流を方向付けおよび制御するように設けられてもよい。さらに、上述したように、原子炉容器1404内で半径方向反射体1406を中央に固定するように、内部支持体が任意の位置に設けられてもよい。また、かかる支持体は、溶融燃料の流れを制御するために使用されてもよい。
【0118】
原子炉システム1400のニュートロニクスを改善するために、原子炉容器の外部に追加の外部反射体を設けてもよい。例えば、原子炉容器1404の下方に、外部下部軸方向反射体を設けてもよい。さらに、原子炉容器1404の上方に、外部上部軸方向反射体を設けてもよい。
【0119】
図15は、本明細書に記載された任意の原子炉システム実施形態において用いられ得るであろう、上部溶融燃料出口チャネルおよびポンプのレイアウトの2つの代替的な実施形態を示す。図15は、原子炉容器1504内において炉心1502を取り囲む半径方向反射体1501の上部分を示す、原子炉システム1500の断面図である。溶融燃料は、上方に、炉心1502から外へ流れ、保護プラグ1506の周りを流れ、ポンプ室1508内へ流れる。ポンプ室内の回転インペラ1510は、溶融燃料を上方かつ放射状に、ポンプ室1508から外へ、原子炉容器1504の頂部の内面に向かって駆動する。次いで、溶融燃料は、原子炉容器1504の頂部の内面の輪郭に沿う加熱溶融燃料出口チャネル1512内へ流れる。上述したように、原子炉容器1504の頂部の内面全体に沿って流れるようにする単一のチャネルとして示されているが、チャネルは、所望に応じて、別個の独立したチャネルに分けることができるだろう。
【0120】
図示の実施形態では、膨張空間1514が、原子炉システム1500の加熱溶融燃料出口チャネル1512内に設けられている。膨張空間1514は、原子炉容器1504の内面と半径方向反射体1401の外部との間の距離が増大し、それによって、加熱溶融燃料出口チャネル1512のその部分を通る溶融燃料の流れが減速し、それによって、燃料回路全体を通る溶融燃料の流れが減速する場所である。膨張空間1514によって、ポンプ室を出る流れがより良好に混合して溶融燃料がより良好に拡散するようになり、その結果、熱交換ダクト1516に入るときの溶融燃料における流れおよび温度がより均一となる。
【0121】
図16は、上部溶融燃料出口チャネル、および当該チャネルを定める半径方向反射体の表面要素のさらに別の一実施形態を示す。図16は、原子炉容器(図示せず)内において炉心1602を取り囲む半径方向反射体1601の上部分を示す、原子炉システム1600の断面図である。溶融燃料は、上方に、炉心1602から外へ流れ、保護プラグ1606の周りを流れ、ポンプ室1608内へ流れる。ポンプ室内の回転インペラ(図示せず)は、溶融燃料を上方かつ放射状に、ポンプ室1608から外へ、原子炉容器の頂部の内面に向かって駆動する。次いで、溶融燃料は、半径方向反射体1601の頂部の内面の輪郭に沿う加熱溶融燃料出口チャネル1612内へ流れる。
【0122】
原子炉システム1600は、4つの別個の加熱溶融燃料出口チャネル1612を有するものとして図示されている。これらのチャネルは一緒になって、単一のマニホルドチャネル1614になる。次いで、単一のマニホルドチャネル1614は、原子炉容器の内面および半径方向反射体1601の外部側方表面の周囲に延在する単一の熱交換ダクト1616内へ、溶融燃料を分配する。マニホルドチャネル1614によって、ポンプ室を出る流れがより良好に混合して溶融燃料がより良好に拡散するようになり、その結果、熱交換ダクト1616に入るときの溶融燃料における流れおよび温度がより均一となる。
【0123】
図17は、原子炉システムの代替的な一実施形態を示す。図17に示す実施形態は、炉心1702およびポンプ室1708を通る溶融燃料流を除いて、溶融燃料の流路が原子炉容器1704の内面と接触しており、かつ原子炉容器1704の内面によって定められている点で、図14A図14Bの実施形態と同様である。
【0124】
図17は、原子炉容器1704内の溶融燃料量を示す。ここで、中央円筒形炉心1702は、原子炉容器1704内の内部半径方向反射体1706であって、原子炉容器1704から離隔して配置された内部半径方向反射体1706によって定められている。反射性プラグ1705によって炉心1702から保護されたポンプ室1708は、原子炉容器1704の内部に設けられており、外部モータによって回転されるインペラ1709を含む。上記の設計と同様に、制御ドラム1750が、反応度制御のために反射体1706内に設けられている。
【0125】
しかしながら、原子炉システム1700において、半径方向反射体1706が炉心1702の頂部上方に上部軸方向コンポーネントを含むと言うことができる一方、下部軸方向反射体は、原子炉容器1704の内部にはない。そうではなく、図示のように、外部下部軸方向反射体1754が設けられている。図示の実施形態では、溶融燃料は、上方に、炉心1702を通って反射性プラグ1705の周りを流れ、ポンプ室1708内へ流れる。インペラ1709の回転によって、溶融燃料は、上方かつ放射状に、原子炉容器1704に向かって放たれ、強制的に原子炉容器1704の内部の頂部に沿って流れるようにされる。次いで、溶融燃料は、原子炉容器1704の内面に沿って半径方向外方に流れ、次いで、熱交換ダクト1712内の原子炉容器1704の縦部分の熱伝達領域に沿って下方に流れる。
【0126】
図17は、原子炉容器1704の壁の厚さが熱伝達領域において、原子炉容器1704のその他の部分よりも薄いことを示している。図17では、原子炉容器1704の頂部の壁厚は、熱伝達領域の側部よりも実質的に大きい。
【0127】
原子炉容器1704の底部において、容器1704は、容器1704の外径部付近に収集チャネル1710が設けられているような形状を有する。収集チャネル1710は、ディップチューブ(図示せず)を介して、原子炉容器1704の頂部のアクセスポート1752と流体連通している。原子炉容器1704の底部には、流れ制御円錐形状1720と、炉心1702の底部内に溶融燃料を送出する流れ制御オリフィスプレート1722とが、さらに設けられている。このように、原子炉容器1704の底部内面の形状によって、溶融燃料のための戻り流路が形成されている。原子炉容器1704には、原子炉設備の床上で原子炉システム1700を支持するための一体化したスカートがさらに設けられている。
【0128】
(地球外原子炉設計)
例えば人工衛星、宇宙船または地球外設備(例えば、有人または無人の月面基地または火星基地等)に動力を供給するように、超低温環境または地球外環境で動作できる動力システムがあれば望ましい。
【0129】
図13は、プール型原子炉システム1300の機能ブロック図を示す。プール型原子炉システム1300は、地球外環境または他の適切に低温の環境において溶融核燃料とともに使用するように設計されている。原子炉システム1300は、原子炉容器の外面から冷却材を用いて熱が除去されるのではなく、原子炉容器の外部に取り付けられたソリッドステートの熱-電気変換システムを通じて外部環境へ熱が放散される点を除いて、上述した原子炉システムと概ね同じ設計である。これは、熱を直接的に電気に変換し、その電気を使用して装置を作動させることができる。
【0130】
図示の実施形態では、原子炉システム1300は、原子炉容器1304に収容された反射体アセンブリ1303によって定められた炉心1302を含む。図示の単純な断面図では、反射体アセンブリ1303は、半径方向反射体1310と、上部軸方向反射体1312と、下部軸方向反射体1314と、を含む。炉心1302の頂部における1または複数の加熱燃料塩出口チャネル1316は、半径方向反射体1310と上部軸方向反射体1312との間に定められている。1または複数の冷却燃料塩戻りチャネル1318は、半径方向反射体1310と下部軸方向反射体1314との間に定められている。1または複数の加熱燃料塩ダクト1320は、原子炉システム内の燃料塩回路が完成するように、加熱燃料塩出口チャネル1316を冷却燃料塩戻りチャネル1318と接続している。
【0131】
燃料塩回路は、加熱された燃料塩を原子炉容器1304の内面に沿って送る。原子炉容器1304の内面において、熱は、容器壁を通じて、ソリッドステートの熱電発電機(thermoelectric generator:TEG)(例えば、熱イオンシステムまたは熱電気システム等)へ伝達される。TEGは、当技術分野において知られており、任意の適切な設計または種類が使用されてもよい。TEGは、温度差(ΔT)を与えることによって、外部回路内に電流を生み出す。ΔTの大きさによって、電圧差(ΔV)の大きさが決定し、熱流の方向によって、電圧極性が決定する。国際特許出願WO2014/114950には、TEGの運転のさらなる説明が提供されている。
【0132】
一実施形態では、TEGは、外部原子炉容器の外面の周りを包むフォールトトレランス構成で配置された個々の熱電(thermoelectric:TE)モジュールの集合からなる。TEモジュールの外面は、周囲環境(例えば、火星もしくは月の大気、または、軌道もしくは深宇宙に配備される際は宇宙空間に直接的に)に露出しており、廃熱を環境に放射することによって、当該廃熱を受動的に廃棄することができる。一実施形態では、炉心内の燃料塩は、500~600℃の温度を維持する。火星の表面が約-65℃で、深宇宙が-270℃であることを仮定すれば、地球外環境においてTEGが利用可能なΔTは、550~800℃以上であり得るだろう。
【0133】
一実施形態では、原子炉システムは、自然循環によって、回路をめぐる燃料塩の流れを駆動する。計算によれば、月の重力下であっても、自然循環によって、毎秒数センチメートルの速度で炉心を通して流れが駆動される。あるいは、ゼロ重力である実施形態に関しては、1または複数の電気ポンプを燃料塩回路内のどこかに設けて、燃料塩の流れを駆動してもよい。当該1または複数のポンプは、TEGによって動力供給されるだろう。
【0134】
一実施形態では、燃料は、NaCl、PuClおよび/またはUClの組み合わせ(例えば、約450℃で溶融する、共晶64NaCl‐36PuCl等)を含む溶融塩燃料混合物である。Puの使用を回避する複数の選択肢が考えられる。しかしながら、それらの選択肢は常に、より大きくかつより大規模な炉心につながり、その結果、地球外配備のコストを増大させる。KClおよびMgClは、原子炉システム1300での使用にも適し得る、代替的なキャリア塩である。
【0135】
ベリリウムおよび酸化ベリリウムが、地球外配備における反射体材料として使用されてもよいが、上述したように、その他のものも可能である。
【0136】
上記の設計とは異なり、反射体以外に、原子炉システム1300は、外部装置(特に、TEG)および人員に対する放射線量を低減する、容器内放射線遮蔽体1322を含む。濃縮BC構造体は、許容可能な重量を有し外部放射線量を数桁低減させる、実用的な一選択肢である。図示の実施形態では、容器内遮蔽体1322は、半径方向反射体1310と加熱燃料塩ダクト1320との間において、半径方向反射体1310の外部上に配置されている。さらなる容器内遮蔽体または容器外遮蔽体が、例えば、上部軸方向反射体1312の上方または下部軸方向反射体1314の下方に設けられてもよい。
【0137】
図示の実施形態では、原子炉容器1304の上壁および側壁の部分上に、内側容器1304aおよび外側容器1304bが設けられており、それらの間において、燃料塩が、加熱燃料塩ダクト1320内を流れる。内側容器1304aは、遮蔽体1322を燃料塩と接触する位置から隔てる。これによって、遮蔽体1322が腐食から保護される。上述した実施形態と同様の代替的な一実施形態では、内側容器1304aが省略される。例えば、遮蔽体1322のための材料と半径方向反射体1310の反射体材料とが、単一の構造体内に収容されており、当該単一の構造体の外側面が、溶融燃料と接触しており、熱交換ダクト1320を定めていてもよい。
【0138】
原子炉システム1300の周りの周囲環境への熱の損失を防止するために、TEGと接触していない原子炉容器の表面は、外部絶縁体によって絶縁されてもよい。一実施形態では、定常状態運転中に炉心によって生成される熱の90%超が、TEGを通じて放散されて、電気を生み出すために使用される。別の一実施形態では、生成される熱の99%超が、TEGを通じて放散される。代替的な一実施形態では、原子炉システム1300の外面全体の全てまたは実質的に全て(例えば、90%超)を、TEGによって覆うことができるだろう。
【0139】
設計計算上は、50~100kWthで運転する自然循環(地球の重力の1/6の重力下であっても)システムを熱電装置に結合させて、120VDCパワーの10~15kWを提供することができるだろう。最小質量のシステムに関してはPuClによる燃料供給が好ましいものの、UCl(または、NaCl、PuClおよびUClの三元混合物)も選択肢の1つである。
【0140】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示はまた、以下の複数の条項によって定められる。
1.
溶融核燃料を含む場合に臨界を達成できる開チャネルの形態の炉心;
前記炉心と流体連通する熱交換ダクト;
前記炉心と、前記熱交換ダクトと、を収容する原子炉容器であって、前記熱交換ダクトと熱連通する内面と、冷却材ダクトと熱連通する外面と、を有する原子炉容器であって、これにより、臨界の間、前記熱交換ダクト内の溶融核燃料からの熱が、前記原子炉容器の前記内面から前記外面へ前記原子炉容器を通して伝達され、さらに前記冷却材ダクト内の冷却材へと伝達される原子炉容器;および、
前記熱交換ダクトと前記炉心との間における前記原子炉容器内の半径方向反射体であって、前記炉心の側方境界を定める半径方向反射体
を含む、溶融燃料原子炉。
2.
前記炉心の底部を定める下部軸方向反射体をさらに含む、条項1に記載の原子炉。
3.
前記炉心の頂部を定める上部軸方向反射体をさらに含む、条項1または2に記載の原子炉。
4.
前記熱交換ダクトは、加熱された溶融燃料を前記炉心における第1位置から受け取り、冷却された溶融燃料を前記第1位置とは異なる前記炉心における第2位置へ放出(排出)するように、前記炉心に流体接続されている、条項1~3のいずれか一項に記載の原子炉。
5.
前記原子炉容器の前記外面上における1または複数の熱伝達要素をさらに含む、条項1~4のいずれか一項に記載の原子炉。
6.
前記外面の熱伝達表面積を増大させるように適合された前記原子炉容器の前記外面上における1または複数のフィン、ピンまたはディンプルをさらに含む、条項1~5のいずれか一項に記載の原子炉。
7.
前記原子炉容器を収容する遮蔽容器をさらに含み、
前記冷却材ダクトは、前記遮蔽容器と前記原子炉容器との間にある、条項1~6のいずれか一項に記載の原子炉。
8.
前記熱交換ダクトを通る溶融核燃料の流れを制御できる少なくとも1つの流量制限装置をさらに含む、条項1~7のいずれか一項に記載の原子炉。
9.
前記原子炉容器の頂部を密閉するように適合された容器ヘッドアセンブリをさらに含む、条項1~8のいずれか一項に記載の原子炉。
10.
前記容器ヘッドアセンブリは、
制御ドラムを受け入れるためのドラムウェル;
流量制限装置を受け入れるための貫通部;
ポンプアセンブリとの接続のためのポンプフランジ;および、
前記炉心と流体連通する前記容器ヘッドアセンブリ内の膨張空間を含むアップカマ
をさらに含む、条項9に記載の原子炉。
11.
中性子吸収材料で少なくとも部分的に覆われた中性子反射材料の本体を含む制御ドラムであって、前記容器ヘッドアセンブリにおける前記ドラムウェル内に回転可能に配置された制御ドラム
をさらに含み、
前記ドラムウェル内における前記制御ドラムの回転によって、前記原子炉の反応度が変化する、条項10に記載の原子炉。
12.
前記容器ヘッドアセンブリの前記ポンプフランジに取り付けられたポンプアセンブリであって、前記炉心からインペラへ溶融核燃料を引き、前記溶融核燃料を前記熱交換ダクトへ駆動する当該インペラを含むポンプアセンブリ
をさらに含む、条項10に記載の原子炉。
13.
前記インペラと前記炉心との間における遮蔽体プラグをさらに含む、条項12に記載の原子炉。
14.
前記遮蔽体プラグは、反射体材料および/または遮蔽体材料を含む、条項13に記載の原子炉。
15.
前記炉心と流体連通する前記容器ヘッドアセンブリにおけるアクセスポートをさらに含む、条項9に記載の原子炉。
16.
前記下部軸方向反射体は、前記炉心と流体連通する前記原子炉容器における最下点である収集チャネルを定める、条項2に記載の原子炉。
17.
前記収集チャネルをアクセスポートと流体接続する少なくとも1つのディップチューブをさらに含む、条項16に記載の原子炉。
18.
前記熱交換ダクトを通る溶融核燃料の流れを制御できる少なくとも1つの流量制限装置をさらに含む、条項1~17のいずれか一項に記載の原子炉。
19.
前記炉心からインペラへ溶融核燃料を引き、前記溶融核燃料を前記熱交換ダクト内へ駆動する当該インペラをさらに含む、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
20.
前記インペラと前記炉心との間における遮蔽体プラグをさらに含む、条項19に記載の原子炉。
21.
前記熱交換ダクトは、加熱された溶融燃料を前記開チャネルにおける第1位置から受け取り、冷却された溶融燃料を前記開チャネルにおける第2位置へ放出するように、前記炉心に流体接続されている、条項1~20のいずれか一項に記載の原子炉。
22.
前記第1位置は、前記炉心の前記頂部の近くにあり、
前記第2位置は、前記炉心の前記底部の近くにある、条項21に記載の原子炉。
23.
前記溶融核燃料から前記原子炉容器を通して前記冷却材が受け取った熱を周囲雰囲気へ伝達できる冷却システムをさらに含む、条項1~22のいずれか一項に記載の原子炉。
24.
前記冷却システムは、
前記冷却材ダクトと、熱交換器と、冷却材ブロワと、を含む一次冷却回路であって、前記冷却材ブロワが、当該一次冷却回路を通じて前記冷却材を循環させるように構成されており、これにより、前記冷却材ダクトからの加熱された冷却材からの熱が、前記熱交換器を介して空気へ伝達される一次冷却回路;および、
前記熱交換器を通して周囲雰囲気へのベントへ空気を導く空気ブロワを含む排熱システム
をさらに含む、条項23に記載の溶融燃料原子炉。
25.
前記原子炉内の溶融核燃料の自由表面の高さをモニタするように構成されたセンサをさらに含む、条項1~24のいずれか一項に記載の原子炉。
26.
前記溶融核燃料は、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、ThCl、およびUClFから選択される1種または複数種の核分裂性燃料塩を含むとともに、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、およびNdClから選択される1種または複数種の非核分裂性塩を含む、条項1に記載の原子炉。
27.
溶融核燃料を含む場合に溶融核燃料の質量から臨界を達成できる開チャネルの形態の炉心;
前記炉心と流体連通する熱交換ダクト;
前記炉心と、前記熱交換ダクトと、を収容する原子炉容器であって、内面と、外面と、を有し、前記内面は、前記熱交換ダクトが前記外面と熱連通するように当該熱交換ダクトと接触している、原子炉容器;および、
第1表面と、第2表面と、を有する熱電発電機であって、前記第1表面と前記第2表面との間の温度差から電気をつくり出し、前記熱電発電機の前記第1表面は、前記原子炉容器の前記外面と熱連通しており、前記熱電発電機の前記第2表面は、周囲環境に露出している、熱電発電機
を含む、原子炉。
28.
前記熱交換ダクトと前記炉心との間における前記原子炉容器内の半径方向反射体であって、前記炉心の側方境界を定める半径方向反射体をさらに含む、条項27に記載の原子炉。
29.
前記炉心の底部を定める下部軸方向反射体をさらに含む、条項27または28に記載の原子炉。
30.
前記炉心の頂部を定める上部軸方向反射体をさらに含む、条項27~29のいずれか一項に記載の原子炉。
31.
前記原子炉容器内における遮蔽体であって、前記半径方向反射体と前記熱交換ダクトとの間にある遮蔽体をさらに含む、条項28に記載の原子炉。
32.
前記熱電発電機によって発電された電気によって動力供給されるポンプであって、前記炉心と前記熱交換ダクトとの間において溶融核燃料を循環させることができる前記原子炉容器におけるインペラを含むポンプをさらに含む、条項27~31のいずれか一項に記載の原子炉。
33.
前記半径方向反射体は、反射材料が充填された鋼製容器である、条項28に記載の原子炉。
34.
前記溶融核燃料は、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、ThCl、およびUClFから選択される1種または複数種の核分裂性燃料塩を含むとともに、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、およびNdClから選択される1種または複数種の非核分裂性塩を含む、条項27~33のいずれか一項に記載の原子炉。
35.
前記炉心において生成された熱エネルギーの90%を超える熱エネルギーが、前記熱電発電機を通じて放散される、条項27~34のいずれか一項に記載の原子炉。
36.
前記原子炉容器の前記外面上における1または複数の絶縁板をさらに含む、条項27~35のいずれか一項に記載の原子炉。
37.
炉心空間であって、溶融核燃料を含む場合に当該炉心空間内における溶融核燃料の質量から臨界を達成できる炉心空間;
前記炉心空間を含む原子炉容器であって、前記炉心と熱連通する原子炉容器;および、
第1表面と、第2表面と、を有する熱電発電機であって、前記第1表面と前記第2表面と間の温度差から電気をつくり出し、前記熱電発電機の前記第1表面は、前記原子炉容器と熱連通しており、前記熱電発電機の前記第2表面は、周囲環境に露出している、熱電発電機
を含む、溶融燃料原子炉。
38.
前記原子炉容器と前記炉心との間における前記原子炉容器内の半径方向反射体であって、前記炉心空間の側方境界を定める半径方向反射体;および、
前記原子炉容器内における熱交換ダクトであって、前記半径方向反射体と前記原子炉容器との間にあり、かつ前記炉心空間と流体連通する、熱交換ダクト
をさらに含む、条項37に記載の原子炉。
39.
前記熱交換ダクトの少なくとも1つの表面は、前記原子炉容器によって形成されている、条項38に記載の原子炉。
40.
前記炉心空間の底部を定める下部軸方向反射体をさらに含む、条項37~39のいずれか一項に記載の原子炉。
41.
前記炉心空間の頂部を定める上部軸方向反射体をさらに含む、条項37~40のいずれか一項に記載の原子炉。
42.
前記原子炉容器内における遮蔽体であって、前記半径方向反射体と前記熱交換ダクトとの間にある遮蔽体をさらに含む、条項37~41のいずれか一項に記載の原子炉。
43.
前記溶融核燃料は、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、ThCl、およびUClFから選択される1種または複数種の核分裂性燃料塩を含むとともに、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、およびNdClから選択される1種または複数種の非核分裂性塩を含む、条項37~42のいずれか一項に記載の原子炉。
44.
原子炉容器;
前記原子炉容器内における半径方向反射体であって、溶融核燃料を含む場合に臨界を達成できる開チャネルの形態の炉心を定める半径方向反射体;および、
前記半径方向反射体と前記原子炉容器との間の熱交換ダクトであって、前記炉心と流体連通する熱交換ダクト
を含む、溶融燃料原子炉であって、
前記原子炉容器は、前記熱交換ダクトと熱連通する内面と、冷却材ダクトと熱連通する外面と、を有し、これにより、臨界の間、前記熱交換ダクト内の溶融核燃料からの熱が、前記原子炉容器の前記内面から前記外面へ前記原子炉容器を通して伝達され、さらに前記冷却材ダクト内の冷却材へと伝達される、溶融燃料原子炉。
45.
前記炉心の底部を定める下部軸方向反射体をさらに含む、条項44に記載の原子炉。
46.
前記炉心の頂部を定める上部軸方向反射体をさらに含む、条項44または45に記載の原子炉。
47.
前記熱交換ダクトは、加熱された溶融燃料を前記炉心における第1位置から受け取り、冷却された溶融燃料を前記第1位置とは異なる前記炉心における第2位置へ放出するように、前記炉心に流体接続されている、条項44~46のいずれか一項に記載の原子炉。
48.
前記原子炉容器の前記外面上における1または複数の熱伝達要素をさらに含む、条項44~47のいずれか一項に記載の原子炉。
49.
前記外面の熱伝達表面積を増大させるように適合された前記原子炉容器の前記外面上における1または複数のフィン、ピンまたはディンプルをさらに含む、条項44~48のいずれか一項に記載の原子炉。
50.
前記原子炉容器を収容する遮蔽容器をさらに含み、
前記冷却材ダクトは、前記遮蔽容器と前記原子炉容器との間にある、条項44~49のいずれか一項に記載の原子炉。
51.
前記熱交換ダクトを通る溶融核燃料の流れを制御できる少なくとも1つの流量制限装置をさらに含む、条項44~50のいずれか一項に記載の原子炉。
52.
前記原子炉容器の頂部を密閉するように適合された容器ヘッドアセンブリをさらに含む、条項44~51のいずれか一項に記載の原子炉。
53.
前記容器ヘッドアセンブリは、
制御ドラムを受け入れるためのドラムウェル;
流量制限装置を受け入れるための貫通部;
ポンプアセンブリとの接続のためのポンプフランジ;および、
前記炉心と流体連通する前記容器ヘッドアセンブリ内の膨張空間を含むアップカマ
をさらに含む、条項52に記載の原子炉。
54.
中性子吸収材料で少なくとも部分的に覆われた中性子反射材料の本体を含む制御ドラムであって、前記容器ヘッドアセンブリにおける前記ドラムウェル内に回転可能に配置された制御ドラム
をさらに含み、
前記ドラムウェル内における前記制御ドラムの回転によって、前記原子炉の反応度が変化する、条項53に記載の原子炉。
55.
前記容器ヘッドアセンブリの前記ポンプフランジに取り付けられたポンプアセンブリであって、前記炉心からインペラへ溶融核燃料を引き、前記溶融核燃料を前記熱交換ダクトへ駆動する当該インペラを含むポンプアセンブリ
をさらに含む、条項53に記載の原子炉。
56.
前記インペラと前記炉心との間における遮蔽体プラグをさらに含む、条項55に記載の原子炉。
57.
前記遮蔽体プラグは、反射体材料および/または遮蔽体材料を含む、条項56に記載の原子炉。
58.
前記炉心と流体連通する前記容器ヘッドアセンブリにおけるアクセスポートをさらに含む、条項52に記載の原子炉。
59.
前記下部軸方向反射体は、前記炉心と流体連通する前記原子炉容器における最下点である収集チャネルを定める、条項45に記載の原子炉。
60.
前記収集チャネルをアクセスポートと流体接続する少なくとも1つのディップチューブをさらに含む、条項59に記載の原子炉。
61.
前記熱交換ダクトを通る溶融核燃料の流れを制御できる少なくとも1つの流量制限装置をさらに含む、条項44~60のいずれか一項に記載の原子炉。
62.
前記炉心からインペラへ溶融核燃料を引き、前記溶融核燃料を前記熱交換ダクト内へ駆動する当該インペラをさらに含む、条項44~61のいずれか一項に記載の原子炉。
63.
前記インペラと前記炉心との間における遮蔽体プラグをさらに含む、条項62に記載の原子炉。
64.
前記熱交換ダクトは、加熱された溶融燃料を前記開チャネルにおける第1位置から受け取り、冷却された溶融燃料を前記開チャネルにおける第2位置へ放出するように、前記炉心に流体接続されている、条項44~63のいずれか一項に記載の原子炉。
65.
前記第1位置は、前記炉心の前記頂部の近くにあり、
前記第2位置は、前記炉心の前記底部の近くにある、条項64に記載の原子炉。
66.
前記溶融核燃料から前記原子炉容器を通して前記冷却材が受け取った熱を周囲雰囲気へ伝達できる冷却システムをさらに含む、条項44~65のいずれか一項に記載の原子炉。
67.
前記冷却システムは、
前記冷却材ダクトと、熱交換器と、冷却材ブロワと、を含む一次冷却回路であって、前記冷却材ブロワが、当該一次冷却回路を通じて前記冷却材を循環させるように構成されており、これにより、前記冷却材ダクトからの加熱された冷却材からの熱が、前記熱交換器を介して空気へ伝達される一次冷却回路;および、
前記熱交換器を通して周囲雰囲気へのベントへ空気を導く空気ブロワを含む排熱システム
をさらに含む、条項66に記載の原子炉。
68.
前記原子炉内の溶融核燃料の自由表面の高さをモニタするように構成されたセンサをさらに含む、条項44~67のいずれか一項に記載の原子炉。
69.
前記溶融核燃料は、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、ThCl、およびUClFから選択される1種または複数種の核分裂性燃料塩を含むとともに、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、およびNdClから選択される1種または複数種の非核分裂性塩を含む、条項44~68のいずれか一項に記載の原子炉。
70.
原子炉容器;
前記原子炉容器内における半径方向反射体であって、溶融核燃料を含む場合に臨界を達成できる開チャネルの形態の炉心を定める半径方向反射体;
前記半径方向反射体と前記原子炉容器との間の熱交換ダクトであって、前記炉心と流体連通する熱交換ダクト;および、
第1表面と、第2表面と、を有する熱電発電機であって、前記第1表面と前記第2表面との間の温度差から発電するように構成されており、前記熱電発電機の前記第1表面は、前記原子炉容器の前記外面と熱連通しており、前記熱電発電機の前記第2表面は、周囲環境に露出している、熱電発電機
を含む、原子炉であって、
前記原子炉容器は、内面と、外面と、を有し、前記内面は、前記熱交換ダクトが前記外面と熱連通するように当該熱交換ダクトと接触している、原子炉。
71.
前記熱交換ダクトと前記炉心との間における前記原子炉容器内の半径方向反射体であって、前記炉心の側方境界を定める半径方向反射体をさらに含む、条項70に記載の原子炉。
72.
前記炉心の底部を定める下部軸方向反射体をさらに含む、条項70または71に記載の原子炉。
73.
前記炉心の頂部を定める上部軸方向反射体をさらに含む、条項70~72のいずれか一項に記載の原子炉。
74.
前記原子炉容器内における遮蔽体であって、前記半径方向反射体と前記熱交換ダクトとの間にある遮蔽体をさらに含む、条項71に記載の原子炉。
75.
前記熱電発電機によって発電された電気によって動力供給されるポンプであって、前記炉心と前記熱交換ダクトとの間において溶融核燃料を循環させることができる前記原子炉容器におけるインペラを含むポンプをさらに含む、条項70~74のいずれか一項に記載の原子炉。
76.
前記半径方向反射体は、反射材料が充填された鋼製容器である、条項71または74に記載の原子炉。
77.
前記溶融核燃料は、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、ThCl、およびUClFから選択される1種または複数種の核分裂性燃料塩を含むとともに、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、およびNdClから選択される1種または複数種の非核分裂性塩を含む、条項70~76のいずれか一項に記載の原子炉。
78.
前記炉心において生成された熱エネルギーの90%を超える熱エネルギーが、前記熱電発電機を通じて放散される、条項70~77のいずれか一項に記載の原子炉。
79.
前記原子炉容器の前記外面上における1または複数の絶縁板をさらに含む、条項70~78のいずれか一項に記載の原子炉。
【0141】
図18は、反射体材料の大部分が原子炉容器1804の外側にある、原子炉1800の代替的な一実施形態を示す。図示の実施形態では、原子炉容器1804は、塩の全てと、原子炉容器1804の上部セクションにおける変位コンポーネント1806(反射体であってもよい)と、を収容する円筒体である。図示の実施形態では、変位コンポーネント1806とは異なり、半径方向反射体1802および底部反射体1803を含む反射体要素は、容器1804の外側に配置されている。上記の設計と同様に、塩は、変位コンポーネント1806の外面の周りを、変位コンポーネント1806の外部と原子炉容器1804の内面とが定めるダウンカマ熱交換ダクト1808を通って流れる。この設計によって、半径方向反射体または底部反射体を内部に有する上述した設計と比較して、所与の体積の塩に対する原子炉容器1804の全体的なサイズが低減する。
【0142】
原子炉容器の底部にある燃料塩の減速されていないプールは、炉心1810として機能する。変位コンポーネント1806は、ドラフトチューブセクション1818を含む。ドラフトチューブセクション1818は、原子炉容器1804のほぼ底部まで延在し、その結果、燃料塩は、炉心1810内へ向け直される前に、原子炉容器1804の内面の大部分に沿って流れざるを得なくされる。炉心1810において起こる核分裂によって加熱された燃料塩は、図示のように、変位コンポーネント1806の中央に設けられたアップカマダクト1812を通って、原子炉容器1804の中央において上昇する。図示の実施形態では、インペラ1814は、燃料塩の流れの駆動が補助されるように、アップカマダクト1812の頂部に配置されている。上述したように、インペラ1814は、原子炉容器1804の外部のモータ1816によって駆動される。インペラ1814を収容するケーシングは、変位コンポーネント1806と原子炉容器1804とによって形成されている。代替的な一実施形態では、原子炉1800は、自然循環で運転するように設計され、ポンプが省略される。
【0143】
ここでも、原子炉1800の冷却は、原子炉容器1804の外面に沿って冷却材ガスまたは冷却材流体を流すことによって行われる。図示の実施形態では、冷却材ダクト1820は、原子炉容器1804の外面と半径方向反射体1802の内面との間の環状領域内に形成されている。図示の実施形態では、冷却材ダクト1820内にフィンが設けられていない。すなわち、冷却材ダクト1820は、冷却材が流れる開チャネルである。この実施形態では、フィンを除去することによって、原子炉の反応度が増大する。炉心内への中性子の跳ね返りがフィンによって妨害されることが確かめられているからである。
【0144】
一実施形態では、冷却材は、燃料塩と並流するように流される。すなわち、冷却材と燃料塩との両方は、原子炉容器1804の側壁の互いに反対の位置にある表面上を、下方に流れる。フィンの使用の有無にかかわらず、並流は、本明細書に記載された原子炉の全ての実施形態に、等しく適用可能である。
【0145】
この実施形態では、原子炉容器1804は、十分な強度を有する材料であって、炉心1810の領域付近に入射する高中性子束に耐えるのに十分な特性を有する材料から作製されている。原子炉容器の外側に反射体を配置することによって、原子炉容器の直径を小さくできる。同じ太さのダウンカマダクト1808を仮定すると、断面流面積が小さくなり、同じ質量流量に対して、ダクト1808を通って移動する燃料塩の速度が、この設計に関して大きくなる。速度が増大すると、熱伝達係数が大きくなると予想される。容器直径が小さくなれば、必要となる構造強度が小さくなり、その結果、必要となる壁厚が小さくなり得る。原子炉容器壁が薄くなれば、ダウンカマ熱交換ダクト1808と冷却材ダクト1820との間の熱伝達特性が改善されることとなる。
【0146】
この設計の他の側面には、原子炉容器1804の頂部とポンプ接続フランジ1824との間における十分に高いライザ1822が含まれる。このライザ1822によって、燃料塩のための膨張空間1826が定められる。原子炉容器の高さ方向側方面を増大または低減させて熱伝達面積を増大させることによって、原子炉容器の壁を通しての熱交換特性を変更することができる。
【0147】
図18に示す原子炉は、上述した要素の一部に関して示されていないが、上述した複数の実施形態における原子炉コンポーネントの任意のコンポーネントおよび全てのコンポーネントが含まれてもよい。例えば、炉心1810内で発生する中性子からインペラを保護するために、アップカマダクト1812内に遮蔽体プラグが設けられてもよい。円錐形状の下部軸方向反射体が、容器1804の底部に設けられてもよい。これは、変位コンポーネント1806に組み込まれてもよく、または別個のコンポーネントであってもよい。上述したように、取り外し可能な容器ヘッドが原子炉容器1804の頂部に設けられてもよく、または、図示のように、当該容器はライザ1822を含む連続的な本体であってもよい。
【0148】
図19A図19Eは、図18に示すような設計で原子炉容器1904の外部に半径方向反射体1902が配置される場合における、反応度制御に利用可能な種々の選択肢を示す。半径方向反射体1902の全てまたは一部を移動させることによって、原子炉1900の反応度が制御されてもよい。図19A図19Cは、原子炉の断面図を示し、各図は、異なる可能な半径方向反射体構成を示す。一実施形態では、図示のように、反射体1902の外部の半径方向吸収材1908または中性子遮蔽体が、反射体1902によって遮断されない中性子を閉じ込めるように設けられてもよい。
【0149】
図19Aでは、外部半径方向反射体1902が、最も反応度が高い配置で示されている。当該配置において、反射体は、原子炉容器1904を完全に取り囲んでいる。この構成では、炉心1906内で発生した側方に進む中性子は、半径方向反射体1902によって、炉心内へ跳ね返される。
【0150】
図19Bは、反応度が低減した構成を示す。当該構成では、図19Aに示すように炉心1906を完全に取り囲むことがないように、半径方向反射体1902が下に下げられている(あるいは、反射体の上部分が除去されている)。この構成では、炉心1906内で発生した中性子の一部が炉心内へ跳ね返らずに脱することで、原子炉の反応度が低下する。この実施形態では、確実に原子炉容器1904の外面に沿って冷却材が流れるように、反射体1902の移動の影響が冷却材ダクト1910に及ばないよう、冷却ジャケット1930が設けられてもよい。
【0151】
図19Cは、さらに別の一実施形態を示す。この実施形態では、半径方向反射体1902の一部分が反応度制御のために移動可能であるが、冷却材ダクト1910のサイズおよび長さは維持される。図19Cでは、反射体の一部分1902aが上に上げられて、炉心1906の周りの反射体材料の全体的な厚さが低減することで、原子炉1900の反応度が低減する。
【0152】
図19Dは、原子炉1900の平面図であり、この設計を用いた反応度制御のさらに別の代替例を示す。図示の実施形態では、制御要素1920が、反射体1902と原子炉容器1904の外面との間に形成された冷却材ダクト1910に挿入されてもよい。制御要素1920は、中性子反射体または中性子吸収材であってもよい。制御棒と同様に、これらの制御要素1920は、冷却材ダクト1910内で上昇または下降させ得る4つの別個の弧状プレートとして示されている。要素1920が吸収材料から作製されている場合、要素1920の挿入の結果、原子炉1900の反応度が低減する。要素が反射体であり、または反射性材料から作製された材料である場合、冷却材ダクト1910への要素1920の挿入によって、原子炉1900の反応度が増大し得、除去によって、原子炉の反応度が低減し得る。4つの弧状プレートとして図示されているが、例えば円筒形棒、または、冷却材ダクトに嵌まるようなサイズの平面プレートを含む、任意の数または形状の要素1920が使用されてもよい。
【0153】
図19Eは、原子炉制御のさらに別の一実施形態を示す。図19Eは、反射体における制御ドラム1922の使用を示す原子炉1900の平面図である。上述した制御ドラムと同様に、制御ドラム1922は、制御ドラム上の吸収面1924または反射面1926が炉心に露出するように、反射体1902に設けられた制御ドラム凹部内で回転し得る。
【0154】
図19A図19Eの原子炉制御の種々の形態は、別々に、または任意の組み合わせにおいて一緒に、用いることができるだろう。例えば、図19Dの弧状制御要素は、図19Aに示す構成から図19Bまたは図19Cに示す構成へ変わり得るであろう分離可能な反射体1902と併せて使用できるだろう。別の実施例として、図19Aの反射体は、図19Eに示すように1または複数の制御ドラムを含んでもよく、さらに、図19Bに示す位置に下げられるようになっていてもよいだろう。あらゆる組み合わせが考えられる。
【0155】
図19A図19Cは、原子炉容器1904に関連するこの設計のさらなる一態様を示す。一実施形態では、原子炉容器1904は、熱膨張に応答してサイズおよび形状が自由に変化するように設計されている。図示の実施形態では、原子炉容器1904は、支持構造体1932またはスタンドによって、下方から支持されている。図19Aに示す実施形態では、支持構造体1932は、下部軸方向反射体1912を含む。原子炉容器1904の側壁は移動が束縛されておらず、原子炉容器の壁の両側にダクトを設けることで、直径を変化させられるようになっている。
【0156】
図示の実施形態では、原子炉容器1904の基部は、ダウンカマダクトから炉心1906の中央内への塩の流れの方向付けが補助されるよう、概ね凸状、円錐状、または円錐台状の形状を備える。この形状には、他の複数の利点がある。当該他の複数の利点には、平坦な表面よりも高い強度をもたらし、平坦な底部よりも良好に熱膨張に適応することが含まれる。代替的な一実施形態(図示せず)では、第2変位コンポーネントが、下部軸方向反射体として容器の底部に設けられてもよく、さらに、当該第2変位コンポーネントによって、燃料塩の流れを方向付けるための凸形状がもたらされてもよい。
【0157】
上述したように、原子炉容器1904の自由な熱膨張が可能となるように、容器1904は、堅固に取り付けられるのとは異なり、単に支持構造体1932によって載せ支えられていてもよい。代替的な一実施形態では、容器1904は、ポンプフランジを介して上方から吊り下げられていてもよい。変位コンポーネント1914は、容器1904の頂部から、容器ヘッドが設けられている場合には容器ヘッドから、またはポンプアセンブリから、吊り下げられていてもよい。代替的な一実施形態では、ダウンカマ壁、1もしくは複数の支柱、または、変位コンポーネント1914が容器に堅固に取り付けられることなく当該変位コンポーネント1914が容器1904内の適切な位置に維持されるように設けられたその他の要素を介して、変位コンポーネント1914が容器1904内に緩く収容され、底部容器1904上に載置されていてもよい。
【0158】
図20は、流動遅発中性子先行核に関連する反応度変化を低減するように適合された低出力原子炉設計の一実施形態を示す。遅発中性子は、生成物核をつくり出した核分裂の後のベータ崩壊の際に、励起核分裂生成物核によって放出される中性子である。典型的には、核分裂後10-14秒より後に発生した中性子が、遅発中性子と見なされる。遅発中性子は、通常、出力を生成するように設計された溶融塩炉における重要な設計基準ではない。通常、出力を生成する設計では、炉心の外側には常に、燃料塩冷却回路を移動し熱交換器を通るかなりの量の燃料塩がある。これらの設計では、遅発中性子は、原子炉の反応度にほとんど影響を及ぼさない。燃料塩が熱交換器を通る回路を終えて炉心へと戻る前に、遅発中性子のほとんどが放出されているからである。実際、(燃料塩が高コストであるため)炉心外の燃料塩の量を最小限にすることが通常、設計基準の1つとなるものの、シェルアンドチューブ熱交換器を通じて燃料塩を循環させる出力生成溶融塩原子炉では、非常に多くの塩が熱伝達の目的のために炉心外にあることが必要となるため、反応度に対する遅発中性子の影響は無視される。
【0159】
しかしながら、本明細書で提案される試験炉設計では、遅発中性子が、原子炉の反応度に著しい影響を及し得るだろう。通常、燃料塩のコストが高いために、原子炉設計の一基準は、炉心外の燃料塩の量を最小限にすることであるが、これらの低出力試験炉設計では、炉心外にある燃料塩体積を、熱伝達の目的のために必要とされ得る量を超えて増大させる必要があり得ることが確かめられている。実質的に、熱伝達の目的に役立たない、炉心外にあるが燃料塩流れ回路内にある燃料塩のリザーバは、単に炉心外における燃料塩回路内の燃料塩の体積を増大させる目的のために設けられている。このリザーバに対する1つの見方は、それが、熱伝達の利点を伴わずに、炉心外における燃料塩回路内の燃料塩の滞在時間を人工的に増大させる、というものである。
【0160】
図20は、炉心2004の外側の燃料塩回路内に遅発中性子リザーバ2002を設ける一実施形態を示す。原子炉2000は、変位コンポーネント2006を包囲する原子炉容器2008と、炉心2004を含む燃料塩で満たされた自由空間と、を有し、図19に示す原子炉と同様である。燃料塩の遅発中性子リザーバ2002は、遅発中性子に関連する反応度を管理するために、変位コンポーネント2006のサイズを変更することによって、炉心2004の外側につくられる。
【0161】
図示の実施形態では、リザーバ2002は、変位コンポーネント2006の上方にある。しかしながら、リザーバ2002は、炉心2004の外側にある燃料塩流路内のいずれの場所にも配置できるだろう。炉心2004の外側の燃料塩の体積を増大させることによって、遅発中性子の大部分について、炉心2004内の核分裂の反応度に影響を及ぼすことを防止できる。
【0162】
一実施形態では、遅発中性子リザーバ2002は、炉心内の塩の体積Vcoreに対する、原子炉容器2008内の塩の総体積Vtotに基づいて、サイズ決定される。この実施形態では、リザーバ2002の体積は、Vcore/Vtotの所望の比が達成されるまで増大される。75~99%のVcore/Vtot(すなわち、Vcore/Vtotが0.75~0.99)の標的比が有益であること、また、85~95%および88~92%および89~91%のVcore/Vtotの比が想定されることが確かめられている。原子炉容器2008内の塩の総体積Vtotが、炉心の体積Vcoreと、リザーバの体積Vresと、燃料塩回路の内にあるが炉心およびリザーバの外にある塩の体積Vcirとから構成されることを考慮する(注:Vcirは、熱伝達ダウンカマダクト2010およびアップカマダクト2012内の塩の体積を含むものの、設計に応じて、ライザ内の膨張空間を含まない。膨張空間は通常、流れ回路の一部ではなく、炉心2004外における燃料塩の滞在時間を変化させないからである)。代替的な一実施形態では、遅発中性子リザーバ2002は、Vcore/Vtotの比が95%未満、91%未満、90%未満、約90%、89%未満、85%未満、または75%未満となるようにサイズ決定されている。一実施形態では、Vcore/Vtotの最小比は、50%である。
【0163】
図21および図22は、燃料塩が原子炉容器の内部を通って循環するときの当該燃料塩の流れを操作するための代替的な設計を示す。燃料塩の流れは概して、上昇する垂直流がアップカマダクトを通り、下降する垂直流がダウンカマダクト内にあるものとして、上述されていた。これは、最も単純な流れの方式であり、ダウンカマ熱交換ダクト内および原子炉容器の表面内の表面付近における燃料塩の滞在時間が最短となる。しかしながら、原子炉の熱伝達の態様を変更するその他の流れの方式も可能である。
【0164】
図21Aおよび図21Bは、一実施形態に係る原子炉2100の2つの図を示す。この実施形態では、(破線によって示される)横方向旋回流は、原子炉容器2102の側方面の内面に沿って燃料塩が流れるように誘導される。図示の実施形態では、ベーン2104は、燃料塩の流れが、真っ直ぐ下方にではなく、原子炉容器の内面に沿って接線方向下方に方向付けられるように、ダウンカマダクト2108において、変位コンポーネント2106の表面上に設けられている。図21Aは、原子炉2100の断面図であり、図21Bは、変位コンポーネント2106上のベーン2104を示す切断図である。
【0165】
図示の実施形態では、変位コンポーネント2106と原子炉容器2102の内面との間のダウンカマダクト2108において、スクリュー上のねじ山に似た一連のベーン2104が設けられている。ベーン2104は、変位コンポーネント2106に取り付けることができ、原子炉容器2102の内面に取り付けることができ、または、両者を組み合わせて取り付けることができるだろう。ベーン2104は、ダウンカマダクト2108の全幅に延在して原子炉容器2104を変位コンポーネント2106と接続してもよく、または、ベーン2104は、ダウンカマダクト2108内へ部分的にのみ延在してもよいだろう。結果的に、旋回流によって、塩が容器の底部に到達し炉心を通って上方へ流れる前に、原子炉容器2102の内面の周りを塩が移動する時間が増大する。モデリングでは、燃料塩が加熱されるにつれて炉心内で旋回運動が継続することが示されている。これによって、炉心を出る燃料塩の加熱の均一性が改善される。
【0166】
図22Aおよび図22Bは、燃料塩が原子炉容器の内面の周りを旋回して流れる原子炉設計の代替的な一実施形態を示す。この実施形態では、燃料塩は、中央出口ポート2204を通じて原子炉容器2202から除去され、原子炉容器2202の側面に対して接線方向にある注入ポート2206を通じて再注入される。図22Aは、誘導される塩の流れを破線で示す原子炉2200の断面図であり、図22Bは、出口ポート2204および注入ポート2206を示す斜視図である。燃料塩の流れを原子炉容器の内面に沿って接線方向に方向付けることによって、燃料塩の旋回流が誘導され得る。
【0167】
代替的な一実施形態では、2つ以上の注入ポート2206が使用されてもよい。注入ポート2206は、わずかに下方に角度付けられていてもよく、または図示のように水平方向にあってもよい。
【0168】
図21A図21B図22Aおよび図22Bは、原子炉容器の内面に沿った燃料塩の旋回流がどのようにして実現され得るかについての実施例を、ほんの2つだけ示したものにすぎない。塩の流れに旋回運動をつくりだすその他の方法(例えば、原子炉容器の内面に沿ってベーンを設ける、または、ポンプの出口内に1もしくは複数の指向ノズルもしくはジェットを設ける等)も考えられる。ここでは、任意の適切な方法が用いられてもよい。
【0169】
本技術の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、具体的な実施例に記載の数値は、可能な限り正確に報告されたものである。しかしながら、任意の数値には、そのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差が本質的に含まれている。
【0170】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示はまた、以下の条項によって定められる。
1.
溶融燃料原子炉であって、
内面および外面を有する原子炉容器と、
前記原子炉容器内の変位コンポーネントであって、溶融核燃料を含む場合に臨界を達成できる炉心、中央アップカマダクト、ならびに前記炉心および前記中央アップカマダクトと流体連通するダウンカマダクトを、前記原子炉容器の前記内面と協働して定める(画定する)前記原子炉容器内の変位コンポーネントと、
前記原子炉容器の周りの半径方向反射体と、
前記原子炉容器と前記半径方向反射体との間の冷却材ダクトと、
を備え、
前記原子炉容器の前記内面が前記ダウンカマダクトと熱連通し、かつ、前記原子炉容器の前記外面が前記冷却材ダクトと熱連通しており、
これにより、前記ダウンカマダクト内の溶融核燃料からの熱は、前記原子炉容器の前記内面から前記外面へ前記原子炉容器を通して伝達され、さらに前記冷却材ダクト内の冷却材へと伝達される、原子炉。
2.
前記原子炉容器の下方における下部軸方向反射体をさらに備える、条項1に記載の原子炉。
3.
前記変位コンポーネントには、前記炉心からの中性子が前記炉心内へ跳ね返るよう、中性子反射材料が組み込まれている、条項1および2に記載の原子炉。
4.
前記ダウンカマダクトは、加熱された溶融燃料を前記炉心における第1位置から受け取り、冷却された溶融燃料を前記第1位置とは異なる前記炉心における第2位置へ放出するように、前記炉心に流体接続されている、条項1~3のいずれか一項に記載の原子炉。
5.
前記変位コンポーネントは、前記中央アップカマダクトを定める当該変位コンポーネントを貫通する中央貫通部と、ドラフトチューブと、を含む、条項1~4のいずれか一項に記載の原子炉。
6.
前記原子炉容器の前記内面に沿って溶融核燃料を斜めに方向付ける、前記変位コンポーネントに取り付けられた少なくとも1つのベーンをさらに備える、条項1~5のいずれか一項に記載の原子炉。
7.
前記原子炉容器の頂部を密閉する容器ヘッドアセンブリをさらに備える、条項1~6のいずれか一項に記載の原子炉。
8.
前記半径方向反射体は、
制御ドラムを受け入れるためのドラムウェルと、
中性子吸収材料で少なくとも部分的に覆われた中性子反射材料の本体を含む制御ドラムであって、前記ドラム内に回転可能に配置された制御ドラムと、
をさらに備え、
前記ドラムウェル内における前記制御ドラムの回転によって、前記原子炉の反応度が変化する、条項1~7のいずれか一項記載の原子炉。
9.
前記炉心と流体連通する前記容器ヘッドアセンブリにおけるアクセスポートをさらに備える、条項7に記載の原子炉。
10.
前記半径方向反射体は、前記原子炉容器に対して移動可能であり、
これにより、前記原子炉の反応度は、前記半径方向反射体を移動させて変化させることができる、条項1~9のいずれか一項に記載の原子炉。
11.
前記半径方向反射体は、複数の反射体要素であり、
前記半径方向反射体を移動させることは、複数の前記反射体要素のうちの第1反射体要素を移動させることを含む、条項10に記載の原子炉。
12.
インペラであって、前記炉心から当該インペラへ溶融核燃料を引き、当該溶融核燃料を前記ダウンカマダクト内へ駆動するインペラをさらに備える、条項1~11のいずれか一項に記載の原子炉。
13.
前記インペラと前記炉心との間における遮蔽体プラグをさらに備える、条項12に記載の原子炉。
14.
前記ダウンカマダクトは、加熱された溶融燃料を前記中央アップカマダクトにおける第1位置から受け取り、冷却された溶融燃料を前記炉心における第2位置へ放出するように、前記炉心に流体接続されている、条項1~13のいずれか一項に記載の原子炉。
15.
移動させることで前記原子炉の反応度を制御できる、前記冷却材ダクト内における制御要素をさらに備える、条項1~14のいずれか一項に記載の原子炉。
16.
前記制御要素は、中性子反射材料および中性子吸収材料のうちのいずれか一方または両方を含み、
前記制御要素は、弧状プレート、平面プレートまたは棒から選択される、条項15に記載の原子炉。
17.
前記冷却システムは、
前記冷却材ダクトと、熱交換器と、冷却材ブロワと、を含む一次冷却回路であって、前記冷却材ブロワが、当該一次冷却回路を通じて前記冷却材を循環させるように構成されており、これにより、前記冷却材ダクトからの加熱された冷却材からの熱が、前記熱交換器を介して空気へ伝達される一次冷却回路と、
前記熱交換器を通して周囲雰囲気へのベントへ空気を導く空気ブロワを含む排熱システムと、
をさらに備える、条項1~16のいずれか一項に記載の原子炉。
18.
前記溶融核燃料は、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、ThCl、およびUClFから選択される1種または複数種の核分裂性燃料塩を含むとともに、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrCl、およびNdClから選択される1種または複数種の非核分裂性塩を含む、条項1~17のいずれか一項に記載の原子炉。
19.
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、75~99%である、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
20.
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、85~95%である、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
21.
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、88~92%である、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
22.
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、89~91%である、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
23.
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、95%未満である、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
24.
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、91%未満である、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
25.
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、約90%である、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
26.
前記原子炉容器内の溶融核燃料の総体積Vtotに対する前記炉心内の溶融核燃料の体積Vcorの比は、90%未満である、条項1~18のいずれか一項に記載の原子炉。
27.
原子炉であって、
原子炉容器であって、溶融核燃料を含む場合に臨界を達成できる開空間の形態の炉心を当該原子炉容器の底部に有する原子炉容器と、
前記原子炉容器の外側における半径方向反射体と、
前記炉心の上方における前記原子炉容器内の変位コンポーネントであって、当該変位コンポーネントを貫き前記炉心と流体連通する開チャネルの形態のアップカマダクトを定める(画定する)変位コンポーネントと、
前記変位コンポーネントと前記原子炉容器との間におけるダウンカマ熱交換ダクトであって、前記アップカマダクトおよび前記炉心と流体連通するダウンカマ熱交換ダクトと、
内面および外面を有する前記原子炉容器であって、前記ダウンカマ熱交換ダクトが前記外面と熱連通するように前記内面が前記ダウンカマ熱交換ダクトと接触している前記原子炉容器と、
第1表面および第2表面を有する熱電発電機であって、前記第1表面と前記第2表面との間の温度差によって発電するように構成された熱電発電機と、
を備え、
前記熱電発電機の前記第1表面は、前記原子炉容器の前記外面と熱連通しており、
前記熱電発電機の前記第2表面は、前記半径方向反射体と前記原子炉容器との間の冷却材ダクトに露出している、原子炉。
28.
溶融燃料原子炉であって、
溶融核燃料を含む場合に溶融核燃料の質量から臨界を達成できる炉心空間と、
前記炉心空間を含む原子炉容器であって、前記炉心と熱連通する原子炉容器と、
前記原子炉容器から離隔して当該原子炉容器の周りに配置された半径方向反射体と、
前記半径方向反射体と前記原子炉容器との間における冷却材ダクトであって、前記炉心と熱連通する冷却材ダクトと、
を備える、原子炉。
【0171】
本明細書に記載されたシステムおよび方法は、記載された目的および利点、ならびに、内在的な目的および利点を達成するように十分に適合されていることは明らかであろう。本明細書内の方法およびシステムは、多数の様態で実装され得るものであり、したがって上述した例示的な実施形態および実施例によって限定されるものではないことを、当業者は認識するであろう。例えば、上記の原子炉システムは炉心、半径方向反射体、および原子炉容器の断面が円形または環状である設計で略円筒形であるように図示されているが、当該断面の形状は、円形、正方形、六角形、五角形、八角形、または任意の多角形を含む、任意の形状であってもよい。加えて、当該断面の形状または直径は、原子炉システムの種々の位置において変化し得るだろう。例えば、炉心は、米国特許出願公開第2017/0216840号に記載されたもののような円錐台形状であってもよい。当該出願は、参照によって本明細書に援用される。この点に関して、本明細書に記載された種々の実施形態の任意の数の構成が、ある1つの単一の実施形態に組み合わせられてもよく、本明細書に記載された複数の構成のうちの全ての構成よりも少数の構成を有する複数の代替実施形態、または、本明細書に記載された複数の構成のうちの全ての構成よりも多数の構成を有する複数の代替実施形態が考えられる。
【0172】
本開示の目的のためにさまざまな実施形態を説明してきたが、さまざまな変更および修正が行われてもよく、これらの変更形態および修正形態は、本開示が想定する範囲内に十分に含まれるものである。当業者に容易に示唆され、かつ本開示の精神に包含される、非常に多くのかかる変更が行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0173】
図1】燃料塩とともに使用するように設計されたプール型原子炉の機能ブロック図を示す。
図2図1に示す原子炉の、ある1つの可能な物理的実装形態の見取り図を示す。
図3A図1の原子炉システムの一実施形態を示す。
図3B図1の原子炉システムの一実施形態を示す。
図3C図1の原子炉システムの一実施形態を示す。
図3D図1の原子炉システムの一実施形態を示す。
図4図3の原子炉内の燃料塩および流路を示す。
図5A図3の原子炉システムにおいて使用できるであろう反射体アセンブリの一実施形態を示す。
図5B図3の原子炉システムにおいて使用できるであろう反射体アセンブリの一実施形態を示す。
図6A】制御ドラムの種々の実施形態を示す。
図6B】制御ドラムの種々の実施形態を示す。
図6C】制御ドラムの種々の実施形態を示す。
図6D】制御ドラムの種々の実施形態を示す。
図7】容器ヘッドアセンブリの一実施形態を示す。
図8】原子炉の主要コンポーネントを示す(遮蔽容器を除く)。
図9】燃料ポンプアセンブリの一実施形態を示す。
図10】熱伝達の改善のために、フィンではなくディンプルを外面に備える原子炉容器を示す。
図11A】低出力原子炉システムの代替的な一実施形態の種々の図である。
図11B】低出力原子炉システムの代替的な一実施形態の種々の図である。
図11C】低出力原子炉システムの代替的な一実施形態の種々の図である。
図11D】低出力原子炉システムの代替的な一実施形態の種々の図である。
図11E】低出力原子炉システムの代替的な一実施形態の種々の図である。
図11F】低出力原子炉システムの代替的な一実施形態の種々の図である。
図12A】排熱システムの代わりに代替的な一次冷却システムおよび二次冷却システムを有する原子炉設備の一実施形態を示す。
図12B】排熱システムの代わりに代替的な一次冷却システムおよび二次冷却システムを有する原子炉設備の一実施形態を示す。
図12C】排熱システムの代わりに代替的な一次冷却システムおよび二次冷却システムを有する原子炉設備の一実施形態を示す。
図13】地球外環境または他の適切に低温の環境において溶融核燃料とともに使用するように設計されたプール型原子炉システムの機能ブロック図を示す。
図14A】炉心およびポンプ室を通る溶融燃料の流れを除いて、溶融燃料の全ての流路が、原子炉容器の内面と接触しており、かつ、原子炉容器の内面によって定められる、プール型原子炉システムのさらに別の一実施形態を示す。
図14B】炉心およびポンプ室を通る溶融燃料の流れを除いて、溶融燃料の全ての流路が、原子炉容器の内面と接触しており、かつ、原子炉容器の内面によって定められる、プール型原子炉システムのさらに別の一実施形態を示す。
図15】本明細書に記載された任意の原子炉システム実施形態において用いられ得るであろう、上部溶融燃料出口チャネルおよびポンプのレイアウトの2つの代替的な実施形態を示す。
図16】上部溶融燃料出口チャネル、および当該チャネルを定める半径方向反射体の表面要素のさらに別の一実施形態を示す。
図17】原子炉システムの代替的な一実施形態を示す。
図18】反射体が原子炉容器の外側にある原子炉の代替的な一実施形態を示す。
図19A】外部半径方向反射体を用いた反応度制御に利用可能な種々の選択肢を示す。
図19B】外部半径方向反射体を用いた反応度制御に利用可能な種々の選択肢を示す。
図19C】外部半径方向反射体を用いた反応度制御に利用可能な種々の選択肢を示す。
図19D】外部半径方向反射体を用いた反応度制御に利用可能な種々の選択肢を示す。
図19E】外部半径方向反射体を用いた反応度制御に利用可能な種々の選択肢を示す。
図20】流動遅発中性子先行核に関連する反応度変化を低減するように適合された低出力原子炉設計の一実施形態を示す。
図21A】原子炉容器の側方面の内面に沿って燃料塩が流れるように横方向旋回流が誘導される原子炉の一実施形態を示す。
図21B】原子炉容器の側方面の内面に沿って燃料塩が流れるように横方向旋回流が誘導される原子炉の一実施形態を示す。
図22A】原子炉容器の内面の周りを旋回して燃料塩が流れる原子炉設計の代替的な一実施形態を示す。
図22B】原子炉容器の内面の周りを旋回して燃料塩が流れる原子炉設計の代替的な一実施形態を示す。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図20
図21A
図21B
図22A
図22B
【国際調査報告】