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特表2024-527671セパレータ、その製造方法及びそれに関わる二次電池並びに電力利用装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法及びそれに関わる二次電池並びに電力利用装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20240719BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/494 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20240719BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/429
H01M50/44
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/443 E
H01M50/443 B
H01M50/489
H01M50/494
H01M50/457
H01M50/443 C
H01M50/403 D
H01M50/403 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569722
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2022101261
(87)【国際公開番号】W WO2023245655
(87)【国際公開日】2023-12-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】徐 明
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 建瑞
(72)【発明者】
【氏名】魏 ▲満▼想
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB04
5H021BB09
5H021BB12
5H021CC01
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE10
5H021EE11
5H021EE15
5H021EE17
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE24
5H021EE31
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
5H021HH07
5H021HH10
(57)【要約】
本願は、二次電池用セパレータ及びその製造方法、及び該セパレータを含む二次電池並びに電力利用装置を提供する。本願に係るセパレータは、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一つの表面に設けられるコーティングとを含み、前記コーティングは、スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基中の少なくとも1種を含む変性基を含むナノセルロースを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、
前記多孔質基材の少なくとも一つの表面に設けられるコーティングとを含み、
前記コーティングは、スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基中の少なくとも1種を含む変性基を含むナノセルロースを含む、
ことを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
前記ナノセルロースはヒドロキシ基をさらに含み、前記変性基と前記ヒドロキシ基の含有量比は1:4~4:1であり、選択可能に、2:3~7:3である、
ことを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記ナノセルロースの平均直径は≦40nmであり、選択可能に、10~35nmである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記ナノセルロースの平均長さは100~600nmであり、選択可能に、200~500nmである、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記ナノセルロースのアスペクト比は5~60であり、選択可能に、10~30である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記ナノセルロースの平衡重合度区間は150~300DPであり、選択可能に、200~250DPであり、及び/又は、
前記ナノセルロースの分子量は20000~60000であり、選択可能に、30000~50000である、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記ナノセルロースの形状は、管状、繊維状、棒状から選ばれる1種又は複数種である、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記セパレータが65℃、4.3Vの条件で漏れ電流が現れる時間は≧12日間である、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記ナノセルロースが前記コーティングにおける含有量は≧5wt%であり、選択可能に、10~25wt%である、
ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記コーティングは、無機粒子、有機粒子及び有機-無機ハイブリッド粒子中の少なくとも1種を含むフィラーをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記多孔質基材の厚さは≦12μmであり、選択可能に、≦7μmであり、及び/又は、
前記コーティングの厚さは≦3μmであり、選択可能に、0.5~2μmである、
ことを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記セパレータは下記(1)~(6)中の1つ又は複数を満たす、
ことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載のセパレータ。
(1)前記セパレータが150℃で、1hの熱収縮率は≦5%であり、選択可能に、0.5%~3%であること。
(2)前記セパレータの1minにおける濡れ長さは≧20mmであり、選択可能に、30~80mmであること。
(3)前記セパレータの剥離力は≧0.5N/mであり、選択可能に、0.5~100N/mであること。
(4)前記セパレータの横方向引張強度(MD)は≧2000kg/cmであり、選択可能に、2500~4500kg/cmであること。
(5)前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は≧2000kg/cmであり、選択可能に、2500~4500kg/cmであること。
(6)前記セパレータの通気度は≦300s/100mLであり、選択可能に、100~230s/100mLであること。
【請求項13】
前記コーティングの少なくとも一部の表面に、粒子状の有機粘着剤を含む接着層がさらに設けられており、選択可能に、前記粒子状の有機粘着剤はポリフッ化ビニリデン重合体を含み、さらに選択可能に、前記ポリフッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデンモノマーのホモポリマーを含み、及び/又はフッ化ビニリデンモノマーと他のコモノマーの共重合体を含み、よりさらに選択可能に、前記他のコモノマーは、フッ素含有モノマー及び/又は塩素含有モノマーを含む、
ことを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載のセパレータ。
【請求項14】
1)多孔質基材を提供するステップと、
2)変性されたナノセルロースを所定の割合で溶剤に混合させ、調製されるコーティングのスラリーを提供するステップと、
3)前記コーティングのスラリーを前記基材の少なくとも一つの表面に塗布し、乾燥後、セパレータを得るステップとを含む、セパレータの製造方法であって、
乾燥後に得られた前記セパレータは、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一つの表面に設けられるコーティングとを含み、前記コーティングは、スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の変性基を含む変性されたナノセルロースを含む、
ことを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載のセパレータの製造方法。
【請求項15】
前記変性されたナノセルロースは下記の方法で製造される、
ことを特徴とする請求項14に記載のセパレータの製造方法。
S1:白色度≧85%のセルロース粉末を用意すること。
S2:前記セルロース粉末と酸溶液とを混合し反応させた後、除酸、精製を経て、変性基を有するナノファイバウィスカを得ること。
S3:前記変性基を有するナノファイバウィスカのpHを中性に調整し、研磨、切断を経て、前記変性されたナノセルロースを得ること。
【請求項16】
ステップS1で、前記アルカリ液はNaOH水溶液であり、前記アルカリ液の濃度は4~20wt%であり、選択可能に、5~15wt%であり、及び/又は
ステップS2で、前記酸溶液はHSO水溶液、HBO水溶液、又はHPO水溶液であり、前記酸溶液の濃度は5~80wt%であり、及び/又は
ステップS2で、前記セルロース粉末と酸溶液の質量比は1:2.5~1:50であり、選択可能に、1:5~1:30であり、及び/又は
ステップS2で、前記反応の条件は温度が≦80℃の条件で、0.5~3時間反応させ、選択可能に、1~2.5時間反応させる、
ことを特徴とする請求項15に記載のセパレータの製造方法。
【請求項17】
請求項1~13の何れか1項に記載のセパレータを含むか、又は請求項14~16の何れか1項に記載の方法により製造されたセパレータを含む、
ことを特徴とする二次電池。
【請求項18】
請求項17に記載の二次電池を含む、
ことを特徴とする電力利用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池技術分野に関し、詳しくは、セパレータ、その製造方法及びそれに関わる二次電池並びに電力利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は重量が軽く、汚染がなく、メモリー効果がないという目立つ特徴を有するので、種々の消費類電子製品及び電気自動車に広く用いられている。
【0003】
新エネルギー産業が発展しつつあるに伴い、ユーザは二次電池により高い使用要求を出している。例えば、二次電池の安全性能に対する要求がますます高まっているが、現在電池の安全性能を向上するための方式は電池のエネルギー密度のバランスを取ることに不利である場合が多い。
【0004】
このため、どのように電池に良い安全性能と高いエネルギー密度を同時に両立させることができるかは、本分野の肝心な挑戦となる。
【発明の概要】
【0005】
従来技術に存在する問題に鑑みて、本願はセパレータを提供する。該セパレータは熱的安定性が優れており、イオン導通率が大きく、及び耐外力押圧力が良い等の特徴を有することで、該セパレータを用いた二次電池は良い安全性能と高いエネルギー密度を両立することができる。
【0006】
上記目的を実現するために、本願の第1態様によれば、多孔質基材と、多孔質基材の少なくとも一つの表面に設けられるコーティングとを含み、コーティングは、スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基中の少なくとも1種を含む変性基を含むナノセルロースを含む、セパレータを提供する。
【0007】
従来技術に対して、本願は下記の効果を少なくとも含む。本願に係るセパレータはコーティングに特定の変性基(例えば、スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基中の少なくとも1種)を有するナノセルロースを含有することで、一方では、セパレータの熱的安定性を効果的に向上して、電池の熱的安定性を向上し、電池の使用過程での安全性をさらに向上することができる。他方では、コーティングにおける変性基を有するナノセルロースそれ自体は一定の剛性を有しており、セパレータ基材との間の粘着力を確保すると同時に、さらにイオン導通効率を保証しセパレータの耐外力押圧力を向上することができ、さらに電池のエネルギー密度と熱安定性を向上することができる。同時に、変性基の存在により、原料におけるヒドロキシ基の割合を低減したので、コーティングのスラリーの粘度を低減して、スラリーの塗布難易度を低減し、塗布の均一性を向上し、セパレータの生産効率をさらに向上することができる。
【0008】
本願の任意の実施態様では、前記ナノセルロースはヒドロキシ基をさらに含み、前記変性基と前記ヒドロキシ基の含有量比は1:4~4:1である。例えば、前記変性基と前記ヒドロキシ基の割合は2:3~7:3である。変性基と、ナノセルロースにおける変性されていないヒドロキシ基との割合が上記範囲にある場合、セパレータの熱安定性とイオンに対する導通能力、及び電池の熱的安定性をさらに向上することができる。
【0009】
本願の任意の実施態様では、ナノセルロースの平均直径は≦40nmである。例えば、ナノセルロースの平均直径は10~35nmであってもよい。前記ナノセルロースの平均直径が上記した所定の範囲にある場合、セパレータの熱的安定性をさらに向上し、セパレータの熱収縮率を低減することができる。
【0010】
本願の任意の実施態様では、ナノセルロースの平均長さは100~600nmであってもよい。例えば、ナノセルロースの平均長さは200~500nmであってもよい。ナノセルロースの平均長さが上記した所定の範囲にある場合、セパレータのイオン導通能力をさらに向上することができる。
【0011】
本願の任意の実施態様では、ナノセルロースのアスペクト比は5~60であってもよい。例えば、ナノセルロースのアスペクト比は10~30であってもよい。ナノセルロースのアスペクト比が上記した所定の範囲にある場合、セパレータの熱的安定性と電池の安全性能をさらに向上することができる。
【0012】
本願の任意の実施態様では、ナノセルロースの平衡重合度区間は150~300DPであってもよい。例えば、ナノセルロースの平衡重合度区間は200~250DPである。ナノセルロースの平衡重合度区間が上記した所定の範囲にある場合、ナノセルロース溶液の粘度が合理的区間にあるのにより有利であり、塗布時にスラリーの流動性と含浸性により優れており、さらにコーティングの品質の向上により有利であり、セパレータの熱的安定性とイオン導通能力をさらに向上することができる。
【0013】
本願の任意の実施態様では、ナノセルロースの分子量は20000~60000であってもよい。例えば、ナノセルロースの分子量は30000~50000であってもよい。ナノセルロースの分子量が上記した所定の範囲にある場合、ナノセルロースがセパレータの多孔質チャネル構造を塞ぐことを防止できるだけでなく、ナノセルロース溶液の粘度が合理的区間にあるようにすることもできる。塗布時にスラリーの流動性と含浸性により優れており、さらにコーティングの品質の向上により有利であり、セパレータの熱的安定性とイオン導通能力をさらに向上することができる。
【0014】
本願の任意の実施態様では、ナノセルロースの形状は、管状、繊維状、棒状から選ばれる1種又は複数種である。適当な形状のナノセルロースは、それ自体が、又はコーティングにおける他の成分と安定した空間ネットワーク構造を構築するのにより有利であり、セパレータのイオン導通の経路をさらに増やし、耐外力押圧力を向上することができる。
【0015】
本願の任意の実施態様では、セパレータが65℃、4.3Vの条件で漏れ電流が現れる時間は≧12日間である。上記特性を有するセパレータは、電子がセパレータ端に遮断されることを確保し、破壊点の出現によるショート又はマイクロショート現象を避け、電池の使用過程での安全性をさらに向上することができる。
【0016】
本願の任意の実施態様では、ナノセルロースが前記コーティングにおける含有量は≧5wt%であってもよい。例えば、ナノセルロースが前記コーティングにおける含有量は5~30wt%であってもよく、選択可能に、10~25wt%である。ナノセルロースの前記コーティングにおける含有量が上記した所定の範囲にある場合、該ナノセルロースを含有するコーティングのスラリーがより適切な粘度を有することを確保し、塗布により寄与することができる。ナノセルロースそれ自体が、又はコーティングにおける他の成分と安定した空間ネットワーク構造を構築するのにより有利であり、セパレータのイオン導通の経路をさらに増やし、耐外力押圧力及び耐電圧破壊力を向上することができ、さらに電池の熱的安全性をより向上することができる。
【0017】
本願の任意の実施態様では、前記コーティングは、無機粒子、有機粒子、有機-無機ハイブリッド粒子中の少なくとも1種を含むフィラーをさらに含む。
【0018】
本願の任意の実施態様では、無機粒子は、5又はそれ以上の誘電率を有する無機粒子、活性イオンを伝送する能力を有する無機粒子、電気化学的酸化と還元を発生することが可能な材料中の少なくとも1種であってもよい。
【0019】
本願の任意の実施態様では、5以上の誘電率を有する無機粒子は、ベーム石(γ-AlOOH)、酸化アルミニウム(Al)、硫酸バリウム(BaSO)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、シリコン酸化物SiO(0<x≦2)、二酸化錫(SnO)、酸化チタン(TiO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化セリウム(CeO)、チタン酸ジルコニウム(ZrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、フッ化マグネシウム(MgF)、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0020】
本願の任意の実施態様では、活性イオンを伝送する能力を有する無機粒子は、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸チタンリチウム(LiTi(PO4)、0<x<2、0<y<3)、リン酸チタンアルミニウムリチウム(LiAlTi(PO4)、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)類ガラス(0<x<4、0<y<13)、チタン酸ランタンリチウム(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、チオリン酸ゲルマニウムリチウム(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、窒化リチウム(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS類ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P類ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0021】
本願の任意の実施態様では、電気化学的酸化と還元を発生することが可能な材料は、リチウム含有遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、炭素系材料、ケイ素系材料、錫系材料、リチウムチタン化合物から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0022】
本願の任意の実施態様では、有機粒子は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、メラミン樹脂、ノボラック樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、アクリル酸ブチルとメタクリル酸エチルの共重合体及びその混合物から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0023】
本願の任意の実施態様では、有機-無機ハイブリッド粒子は、金属有機骨格材料、例えばMOFから選ばれてもよい。
【0024】
コーティングにおけるフィラーの存在により、さらにコーティングにおけるナノセルロースと共同で安定した空間ネットワーク構造を構築することができ、イオンの導通経路をさらに増やすことができ、同時にセパレータの熱安定性、酸化防止性、耐突刺力及び耐電圧破壊力をさらに向上し、さらに電池の熱的安定性をより向上することができる。
【0025】
本願の任意の実施態様では、前記フィラーの体積平均粒子径Dv50は≦2.5μmである。例えば、前記フィラーの体積平均粒子径Dv50は、0.3μm~0.7μm、0.7μm~1.5μm、1.5μm~2.5μmであってもよい。フィラーの粒子径が所定の範囲に制御される場合、セパレータの良い安全性能の確保を前提に、電池のエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0026】
本願の任意の実施態様では、前記フィラーの前記コーティングにおける質量割合は≦95wt%(前記コーティングの総質量として)である。例えば、前記フィラーの前記コーティングにおける質量割合は70~95wt%であってもよく、選択可能に、75~90wt%である。フィラーの質量割合が所定の範囲に制御される場合、セパレータの安全性能の確保を前提に、電池のエネルギー密度をさらに向上することできる。
【0027】
本願の任意の実施態様では、前記多孔質基材の厚さは≦12μmであり、選択可能に、多孔質基材の厚さは≦7μmである。基材の厚さが所定の範囲にある場合、電池のエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0028】
本願の任意の実施態様では、前記コーティングの厚さは≦3μmであり、前記コーティングの厚さは、選択可能に、0.5~2μmである。コーティングの厚さが所定の範囲にある場合、電池の安全性能の確保を前提に、エネルギー密度をさらに向上することができる。
【0029】
本願の任意の実施態様では、前記セパレータが150℃で、1hの熱収縮率は≦5%であり、選択可能に、0.5%~3%である。
【0030】
本願の任意の実施態様では、前記セパレータの1minにおける濡れ長さは≧20mmであり、選択可能に、30~80mmである。
【0031】
本願の任意の実施態様では、前記セパレータの剥離力は≧0.5N/mであり、選択可能に、0.5~100N/mである。
【0032】
本願の任意の実施態様では、前記セパレータの横方向引張強度(MD)は≧2000kgf/cmであり、選択可能に、2500~4500kgf/cmである。
【0033】
本願の任意の実施態様では、前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は≧2000kgf/cmであり、選択可能に、2500~4500kgf/cmである。
【0034】
本願の任意の実施態様では、前記セパレータの通気度は≦300s/100mlであり、選択可能に、100s/100ml~230s/100mlである。
【0035】
セパレータの性能が上記条件中の1つ又は複数を満たす場合、電池の安全性能とエネルギー密度を向上することにより寄与する。
【0036】
本願の任意の実施態様では、前記コーティングの少なくとも一部の表面に、粒子状の有機粘着剤を含む接着層がさらに設けられており、選択可能に、前記粒子状の有機粘着剤はポリフッ化ビニリデン重合体を含み、さらに選択可能に、前記ポリフッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデンモノマーのホモポリマーを含み、及び/又はフッ化ビニリデンモノマーと他のコモノマーの共重合体を含み、よりさらに選択可能に、前記他のコモノマーは、フッ素含有モノマー及び/又は塩素含有モノマーを含む。
【0037】
本願の第2態様によれば、1)多孔質基材を提供するステップと、2)変性されたナノセルロースを所定の割合で溶剤に混合させ、調製されるコーティングのスラリーを提供するステップと、3)前記コーティングのスラリーを前記基材の少なくとも一つの表面に塗布し、乾燥後、セパレータを得るステップとを含む、セパレータの製造方法であって、乾燥後に得られたセパレータは、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一つの表面に設けられるコーティングとを含み、前記コーティングは、スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の変性基を含む変性されたナノセルロースを含む、セパレータの製造方法を提供する。
【0038】
本願の任意の実施態様では、前記変性されたナノセルロースは下記の方法で製造される。
【0039】
S1:白色度≧85%のセルロース粉末を用意すること。
S2:ステップS1のセルロース粉末と酸溶液とを混合し反応させた後、除酸、精製を経て、変性基を有するナノファイバウィスカを得ること。
S3:得られた変性基を有するナノファイバウィスカのpHを中性に調整し、研磨、切断を経て、前記変性されたナノセルロースを得ること。
【0040】
本願の任意の実施態様では、ステップS1で、前記セルロース粉末は以下の方式により得ることができる。例えば、サイザル麻繊維、綿花繊維、木質繊維中の1種又は複数種の繊維原料を開繊、スラグ除去を経てから、アルカリ液(例えば、NaOH水溶液であり、その濃度は、4~20wt%であってもよく、選択可能に、5~15wt%である)で蒸煮し、その後洗浄精製した後、順に漂白し(例えば、次亜塩素酸ナトリウム及び/又は過酸化水素水を用いることができる)、酸洗精製し、洗浄精製し、撥水し、気流乾燥し、前記セルロース粉末が得られた。
【0041】
本願の任意の実施態様では、ステップS2で、前記酸溶液は、HSO水溶液、HBO水溶液、又はHPO水溶液であってもよく、前記酸溶液の濃度は、5~80wt%であってもよい。
【0042】
本願の任意の実施態様では、ステップS2で、前記セルロース粉末と酸溶液の質量比は1:2.5~1:50であってもよく、選択可能に、1:5~1:30である。
【0043】
本願の任意の実施態様では、ステップS2で、前記反応は80℃以下の条件で行ってもよい。
【0044】
本願の任意の実施態様では、ステップS2で、前記セルロース粉末と酸溶液の反応時間は0.5~3時間であってもよい。
【0045】
本願の第3態様によれば、本願の第1態様のセパレータ、又は本願の第2態様の製造方法により製造されたセパレータを含む、二次電池を提供する。以上のように、本願に係る二次電池はエネルギー密度と安全性が向上でき、同時に、製造過程がより高い操作性を有し、生産コストが大幅に下がる。
【0046】
本願の第4態様によれば、本願の第3態様が提供する二次電池を含む、電力利用装置を提供する。
【0047】
本願に係るセパレータにおいて、多孔質基材に変性されたナノセルロースのコーティングを塗布することで、一方では、セパレータの熱的安定性を効果的に向上して、電池の使用過程での安全性能を向上することができ、他方では、コーティングにおける特定の変性基を有するナノセルロースは一定の剛性を有し、それが(又はコーティングにおける他の成分、例えばフィラー等と)安定した空間ネットワーク構造を構築することができるので、イオン導通の経路を増やし、耐外力押圧力を向上することができ、さらに電池のエネルギー密度と熱的安全性を向上することができる。また、変性基の存在により、原料におけるヒドロキシ基の割合を低減するので、コーティングのスラリーの粘度を低減して、スラリーの塗布難易度を低減し、セパレータの生産効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本願の技術的手段をより明確に説明するために、以下に本願で用いられる図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は本願の幾つかの実施態様に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力をかけることなく、さらに図面に応じて他の図面を得ることができる。
【0049】
図1】本願に係る一実施態様のセパレータの概略構成図である。
図2】本願に係る一実施態様の二次電池の概略構成図である。
図3図2の分解図である。
図4】本願に係る一実施態様の電池モジュールの概略構成図である。
図5】本願に係る一実施態様の電池パックの概略構成図である。
図6図5の分解図である。
図7】本願に係る一実施態様の二次電池が電源として用いられる装置の模式図である。
図8】本願に係る一実施態様のセパレータの断面の走査電子顕微鏡(SEM)図である。
図9】本願に係る一実施態様のセパレータのコーティングにおけるナノセルロースの走査電子顕微鏡(SEM)図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を適当に参照して、本願に係る二次電池用セパレータ及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに電力利用装置の実施態様を詳しく説明し、具体的に開示する。しかし、不必要な詳説を省略することがある。例えば、周知事項についての詳細な説明、実際に同様な構造の重複説明を省略することがある。これは以下の説明が不必要に長たらしくなるのを回避し、当業者に容易に理解させるためである。また、図面及び以下の説明は当業者に本願を十分に理解させるために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載される主旨を限定することが意図されない。
【0051】
本願に開示される「範囲」は下限と上限の形で限定され、所定の範囲は一つの下限及び一つの上限を選定することにより限定されるものであり、選定される下限及び上限は特別な範囲の境界を限定する。この方法で限定される範囲は、極値を含んでも、又は含まなくてもよく、かつ任意に組合せることができ、即ち、いかなる下限はいかなる上限と組合せて一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120及び80~110の範囲を挙げると、60~110及び80~120の範囲と理解することも予想されている。また、最小範囲値1及び2を挙げると、及び最大範囲値3、4及び5を挙げると、以下の範囲:1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5は全て予想できる。本願において、他に断らない限り、数値範囲「a~b」はaからbまでの任意の実数の組合せの省略表示を示し、なかでも、aとbはともに実数である。例えば、数値範囲「0~5」は本明細書に「0~5」の全ての実数を挙げたことを示しているが、「0~5」はこれらの数値の組合せの省略表示のみである。また、あるパラメータが≧2の整数であることを表記する場合、該パラメータは例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等の整数であることが開示されていることに相当する。
【0052】
特記しない限り、本願の全ての実施態様及び選択可能な実施態様は互いに組合せて新しい技術的手段を形成することができる。
【0053】
特記しない限り、本願の全ての技術特徴及び選択可能な技術特徴は互いに組合せて新しい技術的手段を形成することができる。
【0054】
特記しない限り、本願の全てのステップは順番に行ってもよく、ランダムに行ってもよいが、順番に行うことが好ましい。例えば、前記方法はステップ(a)及び(b)を含むとは、前記方法は、順番に行われるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、順番に行われるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示す。例えば、上述した前記方法はステップ(c)をさらに含んでもよいとは、ステップ(c)は任意の順番で前記方法に加えられ得ることを示し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)等を含んでもよい。
【0055】
特記しない限り、本願で言及される「含む」及び「含める」は、オープン型を示し、クローズド型であってもよい。例えば、前記「含む」及び「含める」とは、挙げられていない他の成分をさらに含んでも又は含めてもよく、挙げられた成分のみを含んでも又は含めてもよいことを示すことができる。
【0056】
特記しない限り、本願において、用語「又は」は包含的なものである。例を挙げると、フレーズ「A又はB」とは、「A、B、又はAとBの両者」を示す。より具体的には、以下の何れかの条件も、条件「A又はB」を満たす。Aは真なものであり(又は存在し)、かつBは偽なものである(又は存在しない)こと。Aは偽なものであり(又は存在せず)、Bは真なものである(又は存在する)こと。又はA及びBはともに真なものである(又は存在する)こと。
【0057】
なお、本明細書の説明において、特に断らない限り、「以上」、「以下」とは該数を含み、「1種又は複数種」中の「複数種」とは2種類及び2種類以上を意味する。
【0058】
特に断らない限り、本願で用いられる用語は、当業者が通常理解する周知の意味を有する。特に断らない限り、本願で言及される各パラメータの数値は、本分野でよく使用される各種の測定方法により測定することができる(例えば、本願の実施例で示される方法に従い試験することができる)。
【0059】
二次電池
二次電池とは、電池が放電後、充電の方式により活性材料を活性化させて使用し続けることができる電池を意味する。前記二次電池は、リチウムイオン二次電池とナトリウムイオン二次電池等を含んでもよい。以下、リチウムイオン二次電池を例に本発明に係る二次電池を詳しく説明する。
【0060】
通常の場合、二次電池は正極板、負極板、セパレータ及び電解質を含む。電池の充放電過程では、活性イオンは正極板と負極板との間で挿入及び脱離を繰り返す。セパレータは正極板と負極板の間に設けられ、隔離する役割を果たす。電解質は正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0061】
[セパレータ]
本願に係る実施例は、多孔質基材と、多孔質基材の少なくとも一つの表面に設けられるコーティングとを含み、コーティングは、スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい変性基を含むナノセルロースを含む、セパレータを提供する。図1に示すように、多孔質基材11の一つの表面にコーティング12が設けられているセパレータの概略構成図が示されている。
【0062】
理論に限られることが望まれないが、発明者は多数研究した結果、セパレータの多孔質基材の少なくとも一つの表面に、特定の変性基(スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基中の少なくとも1種を含む)を有するナノセルロースを含有するコーティングを塗布する場合、セパレータの熱安定性を効果的に向上できる(例えば、電池のホットボックスフェイル温度を著しく向上し、及び/又はセパレータの熱収縮率を著しく低減する)ことが発見された。これにより、該セパレータを用いた二次電池の安全性能を著しく向上することができる。他方、コーティングに特定の変性基を有するナノセルロースを含有する場合、さらにコーティングにおける軟質粘着剤の使用量を効果的に低減できるので、イオン導通の経路を効果的に増やすことができ、さらに電池のサイクル寿命と容量維持性能をより向上することができる。さらには、特定の変性基の存在により、原料におけるヒドロキシ基の割合を低減し、コーティングのスラリーの粘度を低減して、スラリーの塗布難易度を低減し、さらにセパレータの生産効率を向上することができる。
【0063】
ナノセルロース中の変性基の種類は赤外スペクトルを用いて試験することができる。例えば、材料の赤外スペクトルを試験し、それに含まれる特性ピークを決定して、変性基の種類を決定することができる。具体的には、本分野で周知される計器及び方法により、材料に対して赤外スペクトル分析を行い、例えば、赤外分光計、例えば米国nicolet社のIS10型フーリエ変換型赤外分光光度計を用いて、GB/T6040-2002赤外スペクトル分析方法通則に従い試験することができる。
【0064】
本発明者は深く研究した結果、本願に係るセパレータは上記条件を満たしながら、さらに選択可能に下記条件中の一つ又は複数を満たす場合、二次電池の性能をさらに改善できることが発見された。
【0065】
幾つかの実施態様では、前記ナノセルロースはヒドロキシ基をさらに含み、前記変性基と前記ヒドロキシ基の含有量比は1:4~4:1である。例えば、前記変性基と前記ヒドロキシ基の割合は2:3~7:3である。変性基と、ナノセルロースにおける変性されていないヒドロキシ基との割合が上記範囲にある場合、セパレータの熱安定性とイオンに対する導通能力、及び電池の熱的安定性をさらに向上することができる。
【0066】
幾つかの実施態様では、前記ナノセルロースの平均直径は≦40nmである。例えば、ナノセルロースの平均直径は10~35nmであってもよい。前記ナノセルロースの平均直径が上記範囲にある場合、セパレータの熱的安定性をさらに向上し、セパレータの熱収縮率を低減することができる。
【0067】
幾つかの実施態様では、前記ナノセルロースの平均長さは100~600nmであってもよい。例えば、ナノセルロースの平均長さは200~500nmであってもよい。ナノセルロースの平均長さが上記した所定の範囲にある場合、セパレータの熱的安定性とイオン導通能力をさらに向上することができる。
【0068】
幾つかの実施態様では、前記ナノセルロースのアスペクト比は5~60であってもよい。例えば、ナノセルロースのアスペクト比は10~30であってもよい。ナノセルロースのアスペクト比が上記した所定の範囲にある場合、電池のエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0069】
幾つかの実施態様では、前記ナノセルロースの平衡重合度区間は150~300DPであってもよい。例えば、ナノセルロースの平衡重合度区間は200~250DPであってもよい。ナノセルロースの平衡重合度区間が上記した所定の範囲にある場合、ナノセルロース溶液の粘度が合理的区間にあるのにより有利であり、塗布時にスラリーの流動性と含浸性により優れており、さらにコーティングの品質の向上により有利であり、セパレータの熱的安定性とイオン導通能力をさらに向上することができる。
【0070】
幾つかの実施態様では、前記ナノセルロースの分子量は20000~60000であってもよい。例えば、ナノセルロースの分子量は30000~50000であってもよい。ナノセルロースの分子量が上記した所定の範囲にある場合、ナノセルロースがセパレータの多孔質チャネル構造を塞ぐことを防止できるだけでなく、ナノセルロース溶液の粘度が合理的区間にあるようにすることもできる。塗布時にスラリーの流動性と含浸性により優れており、さらにコーティングの品質の向上により有利であり、セパレータの熱的安定性とイオン導通能力をさらに向上することができる。
【0071】
幾つかの実施態様では、前記ナノセルロースの形状は、管状、繊維状、棒状から選ばれる1種又は複数種であってもよい。適当な形状のナノセルロースは、それ自体が、又はコーティングにおける他の成分とともに安定した空間ネットワーク構造を構築するのにより有利であり、イオンの導通経路をさらに増やし、耐外力押圧力を向上することができる。
【0072】
幾つかの実施態様では、前記セパレータが65℃、4.3Vの条件で漏れ電流が現れる時間は≧12日間である。上記特性を有するセパレータは、電子がセパレータ端に遮断されることを確保し、破壊点の出現によるショート又はマイクロショート現象を避け、電池の使用過程での安全性をさらに向上することができる。
【0073】
幾つかの実施態様では、前記ナノセルロースの前記コーティングにおける含有量は≧5wt%であってもよい。例えば、ナノセルロースの前記コーティングにおける含有量は、5~30wt%であってもよく、選択可能に、10~25wt%である。ナノセルロースの前記コーティングにおける含有量が上記した所定の範囲にある場合、該ナノセルロースを含有するコーティングのスラリーがより適切な粘度を有することを確保し、塗布により寄与することができる。それに、ナノセルロースそれ自体が、又はコーティングにおける他の成分と共同で安定した空間ネットワーク構造を構築するのにより有利であり、イオンの導通経路をさらに増やし、耐外力押圧力及び耐電圧破壊力を向上することができ、さらに電池の熱的安全性をより向上することができる。
【0074】
幾つかの実施態様では、前記コーティングは、無機粒子、有機粒子、有機-無機ハイブリッド粒子中の少なくとも1種を含むフィラーをさらに含む。
【0075】
幾つかの実施態様では、無機粒子は、5又はそれ以上の誘電率を有する無機粒子、活性イオンを伝送する能力を有する無機粒子、電気化学的酸化と還元を発生することが可能な材料中の少なくとも1種であってもよい。
【0076】
幾つかの実施態様では、5以上の誘電率を有する無機粒子は、ベーム石(γ-AlOOH)、酸化アルミニウム(Al)、硫酸バリウム(BaSO)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、シリコン酸化物SiO(0<x≦2)、二酸化錫(SnO)、酸化チタン(TiO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化セリウム(CeO)、チタン酸ジルコニウム(ZrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、フッ化マグネシウム(MgF)、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0077】
幾つかの実施態様では、活性イオンを伝送する能力を有する無機粒子は、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸チタンリチウム(LiTi(PO4)、0<x<2、0<y<3)、リン酸チタンアルミニウムリチウム(LiAlTi(PO4)、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)類ガラス(0<x<4、0<y<13)、チタン酸ランタンリチウム(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、チオリン酸ゲルマニウムリチウム(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、窒化リチウム(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS類ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P類ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0078】
幾つかの実施態様では、電気化学的酸化と還元を発生することが可能な材料は、リチウム含有遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、炭素系材料、ケイ素系材料、錫系材料、リチウムチタン化合物から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0079】
幾つかの実施態様では、有機粒子は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、メラミン樹脂、ノボラック樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、アクリル酸ブチルとメタクリル酸エチルの共重合体及びその混合物から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0080】
幾つかの実施態様では、有機-無機ハイブリッド粒子は、金属有機骨格材料、例えばMOFから選ばれてもよい。
【0081】
コーティングにおけるフィラーの存在により、さらにコーティングにおけるナノセルロースと共同で安定した空間ネットワーク構造を構築することができ、イオンの導通経路をさらに増やすことができ、同時に、セパレータの熱安定性、酸化防止性、耐突刺力及び耐電圧破壊力をさらに向上し、さらに電池の安全性能をより向上することができる。
【0082】
幾つかの実施態様では、前記フィラーの体積平均粒子径Dv50は≦2.5μmである。例えば、前記フィラーの体積平均粒子径Dv50は、0.3μm~0.7μm、0.7μm~1.5μm、1.5μm~2.5μmであってもよい。フィラーの粒子径が所定の範囲に制御される場合、セパレータの良い安全性能の確保を前提に、電池のエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0083】
フィラーの体積平均粒子径Dv50は本分野で周知される意味であり、本分野で周知される計器及び方法により測定することができる。例えば、GB/T 19077-2016粒度分布レーザ回折法を参照し、レーザ粒度分析装置(例えば、Master Size 3000)を用いて測定することができる。
【0084】
幾つかの実施態様では、前記フィラーの前記コーティングにおける質量割合は≦95wt%(前記コーティングの総質量として)である。例えば、前記フィラーの前記コーティングにおける質量割合は70~95wt%であってもよく、選択可能に、75~90wt%である。フィラーの質量割合が所定の範囲に制御される場合、セパレータの安全性能の確保を前提に、電池のエネルギー密度をさらに向上することできる。
【0085】
幾つかの実施態様では、前記セパレータが150℃で、1hの熱収縮率は≦5%である。例えば、前記セパレータが150℃で、1hの熱収縮率は、0.5%~3%であってもよい。
【0086】
幾つかの実施態様では、前記セパレータの1minにおける濡れ長さは≧20mmである。例えば、前記セパレータの1minにおける濡れ長さは30~80mmであってもよい。
【0087】
本願において、前記セパレータの1minにおける濡れ長さ(セパレータの電解液に対する含浸性能を反映する)の測定方法は下記の通りである。a)試料の作製:試料切断機でセパレータを幅が5mm、長さが100mmの試料に分断し、平行試料を5つ得、試料の両端を金属フレームに平行して接着した。b)電解液の調製:炭酸エチレン(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)及び炭酸ジエチル(DEC)を質量比3:5:2で均一に混合させ、混合溶剤が得られ、よく乾燥した電解質塩LiPFを上記混合溶剤に溶解させ、電解質塩の濃度は1.0mol/Lであり、均一に混合した後電解液が得られた。c)電解液をビュレットに吸込み、試料片の中央に0.5mgを滴下し、ストップウォッチで計時を開始し、設定時間に達してから1min後、写真を撮り鋼尺で電解液が拡散した長さを測定し、aとしてマークし、5つの試料を測定した数値の平均値を取った。
【0088】
幾つかの実施態様では、前記セパレータの剥離力は≧0.5N/mであり、選択可能に、0.5~100N/mである。
【0089】
幾つかの実施態様では、前記セパレータの横方向引張強度(MD)は≧2000kgf/cmである。例えば、前記セパレータの横方向引張強度は2500~4500kgf/cmであってもよい。
【0090】
幾つかの実施態様では、前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は≧2000kgf/cmである。例えば、前記セパレータの縦方向引張強度は2500~4500kgf/cmであってもよい。
【0091】
幾つかの実施態様では、前記セパレータの通気度は≦300s/100mLである。例えば、前記セパレータの通気度は、100s/100mL~230s/100mLであってもよい。
【0092】
セパレータの剥離力、横方向引張強度(MD)、縦方向引張強度(TD)、通気度は全て本分野で周知される意味を有し、本分野で周知される方法により測定することができる。例えば、規格GB/T 36363-2018を参照して試験することができる。
【0093】
幾つかの実施態様では、前記コーティングの厚さは≦3μmである。例えば、前記コーティングの厚さは0.5μm~1.0μm、1.0μm~1.5μm、1.5μm~2.0μmであってもよい。
【0094】
幾つかの実施態様では、単位面積のセパレータにおけるコーティングの重量は≦3.0g/mである。例えば、単位面積のセパレータにおける単面のコーティングの重量は1.0g/m~1.5g/m、1.5g/m~2.5g/m、2.5g/m~3.0g/mであってもよい。
【0095】
コーティングの厚さ及び/又はコーティングの重量を上記範囲に制御することで、電池の安全性能の確保を前提に、電池のエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0096】
なお、上述したコーティングの厚さとコーティングの重量は全て単面コーティングの制御範囲にある。セパレータの多孔質基材の二つの表面に何れもコーティングを有する場合、何れか一方の面のコーティングは上記範囲を満たせば、本願の範囲にあることとなる。
【0097】
幾つかの実施例によれば、前記コーティングに非粒子状の粘着剤をさらに含んでもよい。本願は上記非粒子状の粘着剤の種類について特に制限がなく、任意の周知の良い改善性能を有する材料を選択して使用することができる。
【0098】
幾つかの実施例によれば、上記非粒子状の粘着剤の前記コーティングにおける質量割合は<1%である。
【0099】
幾つかの実施例で、前記コーティングには、耐熱性を改善する重合体、分散剤、湿潤剤等をさらに含んでもよい。本願は上記物質の種類について特に制限がなく、任意の周知の良い改善性能を有する材料を選択して使用することができる。
【0100】
本願に係る実施例では、前記多孔質基材の材質について特に制限がなく、任意の周知の良い化学的安定性と機械的安定性を有する基材、例えばガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデン中の1種又は複数種を選択して使用することができる。前記多孔質基材は単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよい。前記多孔質基材が多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じであっても、異なってもよい。
【0101】
幾つかの実施態様では、前記多孔質基材の厚さは≦12μmであり、選択可能に、前記多孔質基材の厚さは≦7μmである。例えば、前記多孔質基材の厚さは3μm~5μm、5μm~9μm、9μm~12μmであってもよい。前記基材の厚さが所定の範囲に制御される場合、電池の安全性能の確保を前提に、電池のエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0102】
幾つかの実施態様では、前記多孔質基材の孔隙率は30%~60%であってもよい。前記多孔質基材の孔隙率が上記した所定の範囲に制御される場合、電池の放電倍率を確保し、自己放電を防止することができる。
【0103】
幾つかの実施態様では、前記コーティングの少なくとも一部の表面に、粒子状の有機粘着剤を含む接着層がさらに設けられている。選択可能に、前記粒子状の有機粘着剤は、ポリフッ化ビニリデン重合体(PVDF系重合体)を含んでもよい。
【0104】
幾つかの実施態様では、PVDF系重合体は、フッ化ビニリデンモノマーのホモポリマー、及び/又はフッ化ビニリデンモノマーと他のコモノマーを含む共重合体を含んでもよい。
【0105】
幾つかの実施態様では、他のコモノマーは、フッ素含有モノマー又は塩素含有モノマーを含んでもよい。選択可能に、コモノマーは、ポリフッ化ビニル、トリフルオロエチレン(VF);ヘキサフルオロプロピレン;トリフルオロクロロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、例えばパーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE);パーフルオロ(1,3-ジオキソール);及びパーフルオロ(2,2-ジメチル―1,3-ジオキソール)(PDD)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0106】
本願は、
1)多孔質基材を提供するステップと、
2)変性されたナノセルロースを所定の割合で溶剤に混合させ、調製されるコーティングのスラリーを提供するステップと、
3)前記コーティングのスラリーを前記基材の少なくとも一つの表面に塗布し、乾燥後、セパレータを得るステップとを含む、セパレータの製造方法であって、
乾燥後に得られたセパレータは、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一つの表面に設けられるコーティングとを含み、前記コーティングは、スルホン酸基、ボロン酸基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の変性基を含む変性されたナノセルロースを含む、セパレータの製造方法をさらに提供する。
【0107】
本願に係る実施例では、前記多孔質基材の材質について特に制限がなく、任意の周知の良い化学的安定性と機械的安定性を有する基材、例えばガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデン中の1種又は複数種を選択することができる。前記多孔質基材は単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよい。前記多孔質基材が多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じであっても、異なってもよい。
【0108】
幾つかの実施態様では、ステップ2)で、前記溶剤は水、例えばイオン交換水であってもよい。
【0109】
幾つかの実施態様では、ステップ2)で、前記コーティングのスラリーにフィラーをさらに含む。前記フィラーの種類は上述した通りであり、ここでは省略する。選択可能に、前記フィラーはコーティングのスラリーの乾燥重量の95wt%以下を占める。例えば、70~95wt%、75~90wt%であってもよい。
【0110】
幾つかの実施態様では、ステップ2)で、前記コーティングのスラリーに耐熱性を改善する重合体、分散剤、湿潤剤、エマルジョン状の粘着剤等をさらに含んでもよい。
【0111】
幾つかの実施態様では、ステップ2)で、コーティングのスラリーの固形分含有量は28%~45%に制御されてもよい。例えば、重量として30%~38%であってもよい。コーティングのスラリーの固形分含有量が上記範囲にある場合、コーティングの膜表面問題を効果的に減少し、及び塗布が不均一となる確率を低減して、電池のエネルギー密度と安全性能をさらに改善することができる。
【0112】
幾つかの実施態様では、ステップ2)で、前記変性されたナノセルロースは下記の方法で製造される。
【0113】
S1:白色度≧85%のセルロース粉末を用意すること。
S2:ステップS1のセルロース粉末と酸溶液とを混合し反応させた後、除酸、精製を経て、変性基を有するナノファイバウィスカを得ること。
S3:得られた変性基を有するナノファイバウィスカのpHを中性に調整し、研磨、切断を経て、前記変性されたナノセルロースを得ること。
【0114】
本願の任意の実施態様では、ステップS1で、前記セルロース粉末は市場から購入することで取得することも可能であるし、以下のようにして製造して取得することも可能である。繊維原料を開繊、スラグ除去を経てから、アルカリ溶液(例えば、NaOH水溶液であり、その濃度は、4~20wt%であってもよく、選択可能に、5~15wt%である)で蒸煮し、その後洗浄精製した後、順に漂白し(例えば、次亜塩素酸ナトリウム及び/又は過酸化水素水を用いてもよい)、酸洗精製し、洗浄精製し、撥水し、気流乾燥し、前記セルロース粉末が得られた。
【0115】
本願の任意の実施態様では、前記繊維原料は植物繊維、例えば綿繊維(例えば、綿花繊維、木棉繊維)、アサ繊維(例えば、サイザル麻繊維、カラムシ繊維、ジュート繊維、亜麻繊維、大麻繊維、マニラ麻繊維等)、シュロ繊維、木繊維、竹繊維、草繊維中の少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは綿花繊維である。
【0116】
本願の任意の実施態様では、ステップS2で、前記酸溶液は、HSO水溶液、HBO水溶液、又はHPO水溶液であってもよく、前記酸溶液の濃度は、5~80wt%であってもよい。
【0117】
SO水溶液を選択する場合、前記酸溶液の濃度は40~80wt%であってもよい。
【0118】
BO水溶液を選択する場合、前記酸溶液の濃度は5~10wt%であってもよい。
【0119】
PO水溶液を選択する場合、前記酸溶液の濃度は45~75wt%であってもよい。
【0120】
本願の任意の実施態様では、ステップS2で、前記セルロース粉末と酸溶液の質量比は1:2.5~1:50であってもよく、選択可能に、1:5~1:30である。
【0121】
SO水溶液を選択する場合、前記セルロース粉末と酸溶液の質量比は1:5~1:30であってもよい。
【0122】
BO水溶液を選択する場合、前記セルロース粉末と酸溶液の質量比は1:20~1:50であってもよい。
【0123】
PO水溶液を選択する場合、前記セルロース粉末と酸溶液の質量比は1:5~1:30であってもよい。
【0124】
本願の任意の実施態様では、ステップS2で、前記反応は80℃以下の条件で行ってもよく、選択可能に、30~60℃の条件で行ってもよい。
【0125】
本願の任意の実施態様では、ステップS2で、前記セルロース粉末と酸溶液の反応時間は0.5~3時間であってもよく、選択可能に、1~2.5時間である。
【0126】
幾つかの実施態様では、ステップ3)で、前記塗布は塗布装置を用いて実施する。
【0127】
本願に係る実施例では、塗布装置の型番に特に制限がなく、市販される塗布装置を用いることができる。
【0128】
幾つかの実施態様では、ステップ3)で、前記塗布は、トランスファーコーティング、スピンコーティング、浸漬コーティング等のプロセスを用いることができる。
【0129】
幾つかの実施態様では、前記塗布装置は、コーティングのスラリーを多孔質基材に移させるためのグラビアロールを含む。
【0130】
幾つかの実施態様では、ステップ3)で、前記塗布の速度は30m/min~120m/min、例えば60m/min~90m/minに制御されてもよい。塗布の速度が上記範囲にある場合、コーティングの膜表面問題を効果的に減少し、塗布が不均一となる確率を低減して、電池のエネルギー密度と安全性能をさらに改善することができる。
【0131】
幾つかの実施態様では、ステップ3)で、前記塗布の線速度比は0.8~2.5に制御されてもよく、例えば、0.8~1.5、1.0~1.5であってもよい。
【0132】
幾つかの実施態様では、ステップ3)で、前記乾燥の温度は40℃~70℃であってもよく、例えば、50℃~60℃であってもよい。
【0133】
幾つかの実施態様では、ステップ3)で、前記乾燥の時間は10s~120sであってもよく、例えば、20s~80s、20s~40sであってもよい。
【0134】
上記各プロセスパラメータを所定の範囲に制御することで、本願に係るセパレータの使用性能をさらに改善することができる。当業者は、実際の生産状況に応じて、上記一つ又は複数のプロセスパラメータを選択的に調節することができる。
【0135】
上記多孔質基材、フィラー、セルロース粉末、繊維原料、非粒子状の粘着剤等は全て市場から購入することで取得できる。
【0136】
本願に係る実施例のセパレータ製造方法では、一次塗布によりコーティングが製作され、セパレータの生産プロセスのフローを大幅に簡略化させた。同時に、上記方法により製造されたセパレータを電池に用いることにより、電池のエネルギー密度と電池の熱的安定性を効果的に改善することができる。
【0137】
[正極板]
二次電池において、前記正極板は、通常、正極集電体と、正極集電体に設けられ、正極活性材料を含む正極膜層とを含む。
【0138】
前記正極集電体は、通常の金属箔又は複合集電体を用いることができる(金属材料を高分子基材に設けて複合集電体を形成することができる)。例としては、正極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0139】
前記正極活性材料の具体的な種類は限定されず、本分野で周知される二次電池の正極に用いられ得る活性材料を用いることができる。当業者は、実際の要求に応じて選択することができる。
【0140】
例としては、前記正極活性材料は、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩及びこれらのそれぞれの変性化合物中の1種又は複数種を含んでもよいが、これらに制限されない。リチウム含有遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその変性化合物中の1種又は複数種を含んでもよいが、これらに制限されない。リチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材及びその変性化合物中の1種又は複数種を含んでもよいが、これらに制限されない。これらの材料は全て商業的に取得することができる。
【0141】
上記各材料の変性化合物は材料に対してドープ変性及び/又は表面被覆変性を行ったものであってもよい。
【0142】
前記正極膜層は通常、選択可能に粘着剤、導電剤及び他の選択可能な助剤をさらに含む。
【0143】
例としては、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、Super P(SP)、グラフェン及び炭素ナノファイバ中の1種又は複数種であってもよい。
【0144】
例としては、粘着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)中の1種又は複数種であってもよい。
【0145】
[負極板]
二次電池において、前記負極板は、通常、負極集電体と、負極集電体に設けられ、負極活性材料を含む負極膜層とを含む。
【0146】
前記負極集電体は、通常の金属箔又は複合集電体を用いることができる(例えば、金属材料を高分子基材に設けて複合集電体を形成することができる)。例としては、負極集電体は、銅箔を用いることができる。
【0147】
前記負極活性材料の具体的な種類は限定されず、本分野で周知される二次電池負極に用いられ得る活性材料を用いることができる。当業者は、実際の要求に応じて選択することができる。例としては、前記負極活性材料は人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素系材料及び錫系材料中の1種又は複数種を含んでもよいが、これらに制限されない。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、シリコン酸化物(例えば、一酸化けい素)、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素複合体、ケイ素合金から選ばれる1種又は複数種であってもよい。前記錫系材料は、単体錫、錫酸素化合物、錫合金から選ばれる1種又は複数種であってもよい。これらの材料は全て商業的に取得することができる。
【0148】
幾つかの実施態様では、電池のエネルギー密度をさらに向上するために、前記負極活性材料はケイ素系材料を含んでもよい。
【0149】
前記負極膜層は、通常、選択可能に粘着剤、導電剤及び他の選択可能な助剤をさらに含む。
【0150】
例としては、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及び炭素ナノファイバ中の1種又は複数種であってもよい。
【0151】
例としては、粘着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)中の1種又は複数種であってもよい。
【0152】
例としては、他の選択可能な助剤は、増粘剤及び分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料であってもよい。
【0153】
[電解液]
二次電池は、正極と負極のとの間でイオンを伝導する役割を果たす電解液を含んでもよい。前記電解液は電解質塩と溶剤を含んでもよい。
【0154】
例としては、電解質塩は、六フッ素リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ素ボロン酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ素ヒ酸リチウム(LiAsF6)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルフォン酸リチウム(LiTFS)、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、リチウムビスオキサレートジフルオロホスフェート(LiDFOP)及びリチウムテトラフルオロ(オキサレート)ホスフェート(LiTFOP)から選ばれる1種又は複数種であってもよい。
【0155】
例としては、前記溶剤は、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸ブチレン(BC)、フッ化炭酸エチレン(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4―ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)から選ばれる1種又は複数種であってもよい。
【0156】
幾つかの実施態様では、電解液に添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、電池のある性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤をさらに含んでもよい。
【0157】
幾つかの実施態様では、二次電池はチリウムイオン二次電池又はナトリウムイオン二次電池であってもよい。
【0158】
本願に係る実施例では、二次電池の形状について特に制限がなく、円筒形、角形又は他の任意の形状であってもよい。図2は一例としての角形構造の二次電池5である。
【0159】
幾つかの実施態様では、二次電池は、外部包装を含んでもよい。該外部包装は正極板、負極板及び電解質を密封包装することに用いられる。
【0160】
幾つかの実施態様では、図3を参照して、外部包装は、ケース51と、カバープレート53とを含んでもよい。なかでも、ケース51は、ベースプレートと、ベースプレートに接続される側板を含んでもよく、ベースプレートと側板とが取り囲んで収容キャビティを形成した。ケース51は収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は、前記収容キャビティを閉鎖するように前記開口に被覆設置され得る。
【0161】
正極板、負極板及びセパレータは巻取プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52が前記収容キャビティに密封包装される。電解質は、電極アセンブリ52に含浸させる電解液を用いてもよい。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は一つ又は複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0162】
幾つかの実施態様では、二次電池の外部包装はハードケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケース等であってもよい。二次電池の外部包装は軟包材、例えば袋式軟包材であってもよい。パウチの材質はプラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)中の1種又は複数種を含んでもよい。
【0163】
幾つかの実施態様では、二次電池は電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0164】
図4は一例としての電池モジュール4である。図4を参照して、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長手方向に順番に配列設置されてもよい。もちろん、他の任意の方法に従い配置されてもよい。さらに、締結部材により該複数の二次電池5を固定することができる。
【0165】
電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5が該収容空間に収容される。
【0166】
幾つかの実施態様では、上記電池モジュールはさらに電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0167】
図5及び図6は一例としての電池パック1である。図5及び図6を参照して、電池パック1には、電池筐体と、電池筐体に設けられる複数の電池モジュール4とを含んでもよい。電池筐体は、上筐体2と、下筐体3とを含み、上筐体2が下筐体3に被覆設置され、電池モジュール4を収容するための閉鎖空間を形成することが可能である。複数の電池モジュール4は、任意の方法に従い電池筐体に配置されてもよい。
【0168】
電力利用装置
本願は、前記二次電池、電池モジュール、又は電池パック中の少なくとも1つを含む電力利用装置、をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力利用装置の電源として用いられてもよく、前記電力利用装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力利用装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン)、電気自動車(例えば、バッテリー式電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムであってもよいが、これらに制限されない。
【0169】
前記電力利用装置は、その使用の要求に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0170】
図7は一例としての電力利用装置である。該電力利用装置はバッテリー式電気自動車、ハイブリッド車、又はプラグインハイブリッド車である。該電力利用装置の二次電池の高電力及び高エネルギー密度に対する要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いてもよい。
【0171】
別の例としての電力利用装置は、携帯電話、タブレットPC、ノートパソコンであってもよい。該電力利用装置は通常、軽薄化が求められ、電源として二次電池を用いることができる。
【0172】
以下、実施例を参照しながら、本願の効果をさらに説明する。
【実施例
【0173】
本願に係る実施例が解決する技術的課題、技術的手段及び効果をより明確にするために、以下、実施例及び図面を参照しながら、さらに詳しく説明する。明らかに、説明される実施例は本願の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。以下、少なくとも一つの例示的な実施例に対する説明は実際に説明的なものに過ぎず、本願及びその応用に対するどんな制限も決してしない。本願中の実施例に基づき、当業者が創造的労力をかけることなく得られたあらゆる他の実施例は、何れも本願の保護範囲に属する。
【0174】
一、変性されたナノセルロースの製造
1.酸変性セルロースの製造
S1.セルロース粉末の製造:
綿フロックを開綿機により開繊しスラグ除去した後、5wt%-NaOH水溶液を用いて蒸煮し、順番に3~6回洗浄精製を経て、次亜塩素酸ナトリウムで漂白し、酸洗精製し、洗浄精製し、撥水し、気流乾燥した後、白色度≧85%の綿セルロース粉末が得られた。
【0175】
S2.セルロースのエステル化:
ステップS1で得られた綿セルロース粉末1kgと、硫酸溶液(濃度が60wt%)30kgとを混合させ、温度60℃の条件で、2時間反応させ、反応終了後、水を加えて3回洗浄し、ろ過し、除酸精製し、スルホン化基を有するナノファイバウィスカが得られた。
【0176】
S3.セルロースの中和:
10%NaOH水溶液で、まずスルホン化基で置換されたナノファイバウィスカのpHを中性に調整し、その後研磨機で2.5時間高速処理してそれを分散させ、高圧ホモジナイザー設備でナノオーダーで切断し、スルホン酸基変性基を有するナノセルロースが得られ、研磨機による処理のパラメータ(例えば、研磨回数、表1に示すように)及び高圧ホモジナイザー設備の切断パラメータを調整することで、異なる平均直径、異なる平均長さ、及び異なるアスペクト比を有する変性されたナノセルロースを得ることができ、水を加えて適切な濃度の変性ナノセルロース溶液に配合され、予備用とされた。
【0177】
以上の同様な操作に従い、ボロン酸基、リン酸基、カルボキシル基で変性されたナノセルロース溶液がさらに製造されたが、その中の相違点は、ボロン酸基で変性されたナノセルロースを製造するには、7wt%濃度のボロン酸を選択して酸化し、他の反応条件が変わらず、リン酸基で変性されたナノセルロースを製造するには、70wt%濃度のリン酸を選択して酸化し、他の反応条件が変わらず、カルボキシル基で変性されたナノセルロースを製造するには、60wt%濃度の酢酸を選択して酸化し、他の反応条件が変わらなかったことのみにある。
【0178】
2.アルカリ変性セルロースの製造
S1.セルロース粉末の製造:
綿フロックを開綿機により開繊しスラグ除去した後、5wt% NaOH水溶液を用いて蒸煮し、順番に3回洗浄精製を経て、次亜塩素酸ナトリウムで漂白し、酸洗精製し、洗浄精製し、撥水し、気流乾燥した後、白色度≧85%のセルロース粉末が得られた。10℃の条件で、セルロース粉末20wt%水酸化ナトリウム水溶液を一定の割合で混合させ、2時間撹拌し、2回ろ過水洗した後セルロース粉末が得られた。
【0179】
S2.セルロースカーバメートの製造:
ステップS1で得られたアルカリセルロース粉末50gと、尿素200gとを油水分離器付き三つ口反応器に置いて、137℃まで昇温し、4h撹拌し、尿素が溶解した後、一定量のキシレン5gを入れ、反応終了後、水を加えて3回洗浄し、ろ過し、セルロースカーバメートが得られた。
【0180】
S3.セルロース硫酸塩の中和:
S2で得られたセルロースカーバメートを適切な割合5wt%のNaOH溶液に溶解させ、均一なセルロースカーバメート溶液を得た後、研磨機で2.5時間高速処理してそれを分散させ、高圧ホモジナイザー設備でナノオーダーで切断し、アミノ変性基を有するナノセルロースが得られ、研磨機による処理のパラメータ(例えば、研磨回数、表1に示すように)及び高圧ホモジナイザー設備の切断パラメータを調整することで、異なる平均直径、異なる平均長さ、及び異なるアスペクト比を有する変性されたナノセルロースを得ることができ、水を加えて適切な濃度(例えば、4.5wt%である)の変性ナノセルロース溶液に配合され、予備用とされた。
【0181】
以下の方法により製造された変性基を有するナノセルロースにおける変性基とヒドロキシ基の含有量比を測定した。国際規格GB/T12008.3-2009中の無水フタル酸法に従いそれぞれ試験し、原料のセルロースと変性ナノセルロースのヒドロキシル価(1gあたりの試料におけるヒドロキシ基含有量に相当する水酸化カリウムのミリグラム数)が得られ、得られた数値の単位はmg kOH/gであり、ヒドロキシ基含有量として、mmol/gに変換され得る。原料のセルロースのヒドロキシ基含有量から変性ナノセルロース表面のヒドロキシ基含有量を差し引くと、変性基の含有量(即ち、変性されたヒドロキシ基の含有量)が得られた。
【0182】
二、セパレータの製造
セパレータ1:
1)例えば、基材の厚さが5μm、孔隙率が37%であるPE基材を提供した。
【0183】
2)コーティングのスラリーの調製:フィラーとして酸化アルミニウム(Al)、変性されたナノセルロース、水溶性の非粒子状の粘着剤としてポリアクリレートを、乾燥重量比79.2:20:0.8で適量の溶剤としてイオン交換水に均一に混合させ、コーティングのスラリーが得られた。なかでも、変性されたナノセルロースに含有される変性基の種類、変性基とヒドロキシ基の割合、ナノセルロースの平均直径、平均長さ及び平均アスペクト比は、それぞれ以下の表1に示す通りである。
【0184】
3)ステップ2)で調製されたコーティングのスラリーを塗布装置によりPE基材の2つの表面に塗布し、乾燥、分断工程により、セパレータ1が得られた。なかでも、単面コーティングの厚さは2μmであり、単位面積のセパレータにおける単面コーティングの重量は1.0g/mであった。図8に、製造されたセパレータ1の一部の断面の走査電子顕微鏡(SEM)図が示されており、図9に、製造されたセパレータ1のコーティングにおけるナノセルロースの走査電子顕微鏡(SEM)図が示されており、コーティングにおいてナノセルロースがネットワーク構造を形成したことが見られた。
【0185】
実施例で用いられる材料は全て商業的に購入することで取得することができる。例えば、
【0186】
PE基材はShanghai Energy New Materials Co. Ltd.,から購入することができる。
【0187】
無機粒子はEstone Materials Technology Co., Ltd.,から購入することができる。
【0188】
また、白色度≧85%の未変性セルロース粉末はNORTHERN HUI TIAN CHEMICAL Co., Ltd.,から購入し、又は上記方法により製造されることも可能である。
【0189】
セパレータ2~24とセパレータ1の製造方法は似ているが、相違点は、変性されたナノセルロースに含有される変性基の種類、変性基とヒドロキシ基の含有量の割合、ナノセルロースの平均直径、平均長さ及び平均アスペクト比を調整したことにある。詳しくは表1に示す。
【0190】
以下の方法により、セパレータのコーティングにおける変性ナノセルロースの長さと直径を測定した。ZEISS sigma300走査型電子顕微鏡(SEM)により、コーティング試料中のナノセルロースのミクロ形態構造をプロットし、高真空モードを選択し、動作電圧が3kV、拡大倍数が3万倍であり、SEM走査型電子顕微鏡写真により、5つのデータを選択して平均値を取り、変性ナノセルロースの平均長さを測定した。SEM走査型電子顕微鏡写真により、Nano Measurer粒子径分布統計ソフトウェアで計算し、20つのデータを選択して平均値を取り、変性ナノセルロースの平均直径が得られた。
【0191】
三、二次電池の製造
実施例1
1、正極板の製造
正極活性材料としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、導電剤としてカーボンブラック(Super P)、粘着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比96.2:2.7:1.1で、適量の溶剤としてN-メチルピロリドン(NMP)に均一に混合させ、正極スラリーが得られ、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に塗布し、乾燥、冷間プレス、スリット、カット工程により、正極板が得られた。正極の面密度は0.207mg/mmであり、コンパクト密度は3.5g/cmであった。
【0192】
2、負極板の製造
負極活性材料として人造黒鉛、導電剤としてカーボンブラック(Super P)、粘着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比96.4:0.7:1.8:1.1で、適量の溶剤としてイオン交換水に均一に混合させ、負極スラリーが得られ、負極スラリーを負極集電体の銅箔に塗布し、乾燥、冷間プレス、スリット、カット工程により、負極板が得られた。負極の面密度は0.126mg/mmであり、コンパクト密度は1.7g/cmであった。
【0193】
3、セパレータ
セパレータに上記製造されたセパレータ1を用いた。
【0194】
4、電解液の製造
炭酸エチレン(EC)と炭酸エチルメチル(EMC)を質量比30:70で混合させ、有機溶剤が得られ、よく乾燥した電解質塩LiPFを上記混合溶剤に溶解させ、電解質塩の濃度は1.0mol/Lであり、均一に混合した後電解液が得られた。
【0195】
5、二次電池の製造
正極板、セパレータ、負極板を順番に積み重ね、セパレータが正、負極板の間に置かれて、隔離する役割を果たすようにした後、巻付けて電極アセンブリが得られた。電極アセンブリを外部包装に置き、上記製造された電解液を乾燥後の二次電池に注入し、真空包装、静置、化成、整形工程を経て、二次電池が得られた。
【0196】
実施例2~21と比較例1~3の二次電池と実施例1の二次電池の製造方法は似ているが、相違点は異なるセパレータを用いたことにあり、詳しくは表1に示す(備考:変性ナノセルロースのコーティングにおける含有量を調整する場合、粘着剤の含有量が変化しないまま、同時にフィラーの含有量を調整することができる)。
【0197】
四、セパレータと電池性能の試験
1、セパレータの熱収縮率試験
1)試料の製造:プレス機で幅が50mm、長さが100mmのセパレータ試料をパンチングし、5つの平行試料を取りA4紙に置いて固定し、試料が付いているA4紙を厚さ1~5mmの段ボールに置いた。
【0198】
2)試料の試験:段ボールに置かれたA4紙を温度が150℃にセットされた強制空気ホットボックスに入れ、温度が設定温度に達し30min安定化した後、計時を開始し、設定時間に達した後、セパレータの長さ及び幅を測定し、数値はそれぞれa、bとしてマークされた。
【0199】
3)熱収縮率の計算:
縦方向収縮率A=(100-a)/100*100%;
横方向収縮率B=(50-b)/50*100%;
【0200】
それぞれAとBの値を記録し、5つの試料を測定した数値の平均値を取った。
【0201】
2、セパレータが65℃、4.3Vの条件で漏れ電流が現れる時間の測定
【0202】
1)定電流0.2Cで2.8Vまで放電した。
【0203】
2)30min静置した。
【0204】
3)初期電流0.5Cで、定電流で4.3Vまで充電した後、定電圧で電流が0.05Cまで充電した。
【0205】
4)30min静置した。
【0206】
5)初期電流0.2Cで、定電流で4.3Vまで充電した後、定電圧で電流が0.02Cまで充電した。
【0207】
6)定電圧充電の段階で初期電流を0.02Cにし、電圧を4.3Vに維持し、120日間維持し、漏れ電流が出現するまで電流を監視記録した。
【0208】
7)試験が終了し、セパレータの漏れ電流が現れる時間を記録した。
【0209】
3、セパレータの含浸性能試験
1)試料片の製造:試料切断機で幅が5mm、長さが100mmのセパレータ試料に分断し、平行試料を5つ得、試料の両端を金属フレームに平行して接着した。
【0210】
2)電解液の調製:炭酸エチレン(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)及び炭酸ジエチル(DEC)を質量比3:5:2で混合させ、混合溶剤が得られ、よく乾燥した電解質塩LiPFを上記混合溶剤に溶解させ、電解質塩の濃度は1.0mol/Lであり、均一に混合した後電解液が得られた。
【0211】
3)含浸性試験:調製された電解液0.5mgを取り、金属フレームに固定された試料片の中央に滴下し、計時を開始し、設定時間に達してから1min後、写真を撮り電解液が拡散した長さを測定し、aとしてマークし、5つの試料を測定した結果の平均値を取った。
【0212】
4、二次電池のホットボックス試験
25℃で、実施例と比較例で製造された二次電池を1C倍率で定電流で最大充電電圧4.2Vまで充電し、その後定電圧で電流が≦0.05Cまで充電し、5min静置した。その後DHG-9070A DHGシリーズ高温オーブンで治具をつけて各電池を試験し、5℃/minの速率で室温から80℃±2℃まで昇温し、30min維持した。その後、5℃/minの昇温速度で昇温し、電池がフェイルするまで、5℃昇温するごとに、30min保温した。電池がフェイルを開始する際の温度を記録した。
【0213】
【表1】
【0214】
表1から分かるように、実施例1~21でセパレータのコーティングの一部として特定の変性基を含有するナノセルロースを使用し、比較例1~3に対してセパレータの熱収縮率を顕著に低減できることで、製造されたセパレータが150℃で1hの熱収縮率は3%以下となり、セパレータの電解液に対する含浸性能(試験条件で、セパレータの1minにおける濡れ長さは≧20mmであり、比較例1のセパレータの1minにおける濡れ長さは5mmを超えず、比較例2~3のセパレータの1minにおける濡れ長さは10mmを超えない)を顕著に向上し、セパレータが65℃、4.3Vの条件で漏れ電流が現れる時間を著しく延ばすことができ、さらに、このようなセパレータから製造された二次電池のイオン導通性能と熱的安定性を顕著に改善でき、表1に示すように、実施例1~21で製造された電池のホットボックスフェイル温度は一般的に125℃以上であった。特に変性されたナノセルロースにおける変性基とヒドロキシ基の含有量割合、変性されたナノセルロースの直径、長さ及びアスペクト比、変性ナノセルロースのコーティングにおける含有量等のパラメータをさらに選択することで、セパレータの熱安定性及び電池の熱的安定性をさらに向上することができる。例えば、変性されたナノセルロースにおける変性基とヒドロキシ基の含有量比が2:3~7:3、及び変性ナノセルロースのコーティングにおける含有量が10~25wt%の範囲にある場合、セパレータの150℃で1hの熱収縮率がさらに1.7%以下まで低減され、さらにそれにより製造された二次電池のホットボックスフェイル温度が137℃以上に向上することが可能である。他方、本発明が提供するセパレータは、変性されたナノセルロースを含有するコーティングが優れた熱的安全性とイオンに対する導通能力を有するので、ある程度でセパレータの基材の厚さを低減でき、コーティングの厚さを適切に低減でき、さらに熱安定性を確保しながら、電池のエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0215】
なお、本願は上記実施態様に制限されない。上記実施態様は例に過ぎず、本願の技術的手段の範囲で技術的思想と実質的に同様な構成を有し、同様な作用効果を発揮する実施態様は、全て本願の技術範囲に含まれる。また、本願の主旨の範囲を逸脱することなく、実施態様に対して当業者の想到できる各種の変形を加え、実施態様中の一部の構成要素を組合せて構築する他の方式も本願の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】