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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】操舵感補償方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240719BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240719BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20240719BHJP
   B60W 10/20 20060101ALI20240719BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B60W10/00 134
B60W10/20
B60W10/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573174
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2022121344
(87)【国際公開番号】W WO2023046168
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111133360.5
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】陶文秀
(72)【発明者】
【氏名】童云春
(72)【発明者】
【氏名】王▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】廖▲銀▼生
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC04
3D232CC08
3D232CC50
3D232DA03
3D232DA16
3D232DA23
3D232DA46
3D232DA62
3D232DD08
3D232EB11
3D232EC23
3D232FF08
3D232GG01
3D241BA18
3D241BA51
3D241BA55
3D241BA62
3D241BC01
3D241BC02
3D241CA09
3D241CC03
3D241CC17
3D241DA20Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D333CB02
3D333CB10
3D333CE46
3D333CE49
3D333CE57
(57)【要約】
操舵感補償方法は、マルチモータ駆動車両に適用され、当該マルチモータ駆動車両は、第1モータが車両の左前輪を駆動し、第2モータが車両の右前輪を駆動し、第3モータがステアリングギアを駆動する。当該方法は、車両を操舵する場合、車両の第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、第3モータの補償モーメントの大きさを決定し、車両の走行状態及び操舵状態に基づいて、第3モータの補償方式を決定し、補償方式及び補償モーメントの大きさに基づいて、第3モータを制御し、第3モータの元の出力モーメントに基づいて補償を行って、左右駆動モーメントが異なることによるハンドルの回転モーメントを第3モータにより補償することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモータ駆動車両に適用される操舵感補償方法であって、前記マルチモータ駆動車両は、第1モータ、第2モータ及び第3モータを含み、前記第1モータは、前記車両の左前輪を駆動し、前記第2モータは、前記車両の右前輪を駆動し、前記第3モータは、ステアリングギアを駆動し、前記操舵感補償方法は、
車両の走行状態及び操舵状態を取得して、前記第3モータの補償方式を決定するステップと、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントを取得して、前記第3モータの補償モーメントの大きさを決定するステップと、を含む、操舵感補償方法。
【請求項2】
前記走行状態は、前進状態及び後退状態を含み、前記操舵状態は、左操舵状態及び右操舵状態を含む、請求項1に記載の操舵感補償方法。
【請求項3】
前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が前進状態及び左操舵状態にある場合、前記第3モータが左操舵モーメントを小さくするように補償を行うステップを含む、請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【請求項4】
前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が前進状態及び右操舵状態にある場合、前記第3モータが右操舵モーメントを小さくするように補償を行うステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の操舵感補償方法。
【請求項5】
前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が後退状態及び左操舵状態にある場合、前記第3モータが左操舵モーメントを大きくするように補償を行うステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の操舵感補償方法。
【請求項6】
前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が後退状態及び右操舵状態にある場合、前記第3モータが右操舵モーメントを大きくするように補償を行うステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の操舵感補償方法。
【請求項7】
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントを取得して、前記第3モータの補償モーメントの大きさを決定するステップは、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップであって、前記第3モータの補償モーメントの大きさが前記ハンドルの受力モーメントの大きさに等しいステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の操舵感補償方法。
【請求項8】
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップと、
前記合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップと、
前記ステアリングタイロッドの受力に基づいて、前記ハンドルの受力モーメントを決定するステップと、を含む、請求項1~7いずれか一項に記載の操舵感補償方法。
【請求項9】
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップは、
第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、第1モータの駆動力及び第2モータの駆動力を決定するステップであって、
【数1】
上式において、Ff1は、第1モータの駆動力であり、Tは、第1モータの駆動モーメントであり、dは、左前輪のタイヤ半径であり、
【数2】
上式において、Ff2は、第2モータの駆動力であり、Tは、第2モータの駆動モーメントであり、dは、右前輪のタイヤ半径である、ステップと、
第1モータの駆動力及び第2モータの駆動力に基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップであって、式T=(Ff2-Ff1)×eにおいて、Tは、キングピンの合成回転モーメントであり、eは、キングピン傾角中心オフセットである、ステップと、を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の操舵感補償方法。
【請求項10】
前記合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップは、
式F=T/Hにおいて、Fは、ステアリングタイロッドが受けた力であり、Hは、ステアリングタイロッドの内点から車輪中心までの距離である、ステップを含み、
前記ステアリングタイロッドの受力に基づいて、前記ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、
式T=F×a/(2×π×1000)において、Tは、ハンドルの受力モーメントであり、aは、ステアリングシステムの線角伝達比である、ステップを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の操舵感補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2021年9月27日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202111133360.5で、出願名称が「操舵感補償方法」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、操舵感補償方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術において、車両の動力性能を向上させるために、複数のモータを設けて車輪を独立して制御する。当該独立制御により、ヨーモーメント及び長手方向モーメントに対する制御をより容易に実現することにより、車両の操縦安定性及び走行安全性を向上させる。
【0004】
しかし、車両が操舵動作状況にある場合、左右の車輪を駆動する駆動力が異なるため、ステアリングギアの受力は、平衡ではなくなり、ハンドルは、左右の車輪の駆動力が異なることにより余分な回転モーメントを受けるため、ハンドルがずれたり、手を引きずったりするという現象を引き起こし、操舵感に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示が解決しようとする技術的課題は、従来技術における、車両が操舵動作状況にある場合、左右の車輪の駆動力が異なるため、ハンドルがずれたり、手を引きずったりするという現象を引き起こし、操舵感に影響を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本開示の実施例に係る、マルチモータ駆動車両に適用される操舵感補償方法において、前記マルチモータ駆動車両は、第1モータ、第2モータ及び第3モータを含み、前記第1モータは、前記車両の左前輪を駆動し、前記第2モータは、前記車両の右前輪を駆動し、前記第3モータは、ステアリングギアを駆動し、前記操舵感補償方法は、
車両の走行状態及び操舵状態を取得して、前記第3モータの補償方式を決定するステップと、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントを取得して、前記第3モータの補償モーメントの大きさを決定するステップと、を含む。
【0007】
本開示に係る操舵感補償方法は、車両を操舵する場合、車両の第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、第3モータの補償モーメントの大きさを決定し、車両の走行状態及び操舵状態に基づいて、第3モータの補償方式を決定し、補償方式及び補償モーメントの大きさに基づいて、第3モータを制御し、第3モータの元の出力モーメントに基づいて補償を行って、左右駆動モーメントが異なることによるハンドルの回転モーメントを第3モータにより補償し、それにより、ハンドルの回転モーメントによる、ハンドルがずれたり、手を引きずったりするという現象を回避し、操舵感を保証することができる。
【0008】
一実施例において、前記走行状態は、前進状態及び後退状態を含み、前記操舵状態は、左操舵状態及び右操舵状態を含む。
【0009】
一実施例において、前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が前進状態及び左操舵状態にある場合、前記第3モータが左操舵モーメントを小さくするように補償を行うステップを含む。
【0010】
一実施例において、前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が前進状態及び右操舵状態にある場合、前記第3モータが右操舵モーメントを小さくするように補償を行うステップを含む。
【0011】
一実施例において、前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が後退状態及び左操舵状態にある場合、前記第3モータが左操舵モーメントを大きくするように補償を行うステップを含む。
【0012】
一実施例において、前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が後退状態及び右操舵状態にある場合、前記第3モータが右操舵モーメントを大きくするように補償を行うステップを含む。
【0013】
一実施例において、前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントを取得して、前記第3モータの補償モーメントの大きさを決定するステップは、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップであって、前記第3モータの補償モーメントの大きさが前記ハンドルの受力モーメントの大きさに等しいステップを含む。
【0014】
一実施例において、前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップと、
前記合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップと、
前記ステアリングタイロッドの受力に基づいて、前記ハンドルの受力モーメントを決定するステップと、を含む。
【0015】
一実施例において、前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップは、
第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、第1モータの駆動力及び第2モータの駆動力を決定するステップであって、
【数1】
上式において、Ff1は、第1モータの駆動力であり、Tは、第1モータの駆動モーメントであり、dは、左前輪のタイヤ半径であり、
【数2】
上式において、Ff2は、第2モータの駆動力であり、Tは、第2モータの駆動モーメントであり、dは、右前輪のタイヤ半径である、ステップと、
第1モータの駆動力及び第2モータの駆動力に基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップであって、式T=(Ff2-Ff1)×eにおいて、Tは、キングピンの合成回転モーメントであり、eは、キングピン傾角中心オフセットである、ステップと、を含む。
【0016】
一実施例において、前記合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップは、式F=T/Hにおいて、Fは、ステアリングタイロッドが受けた力であり、Hは、ステアリングタイロッドの内点から車輪中心までの距離である、ステップを含み、
前記ステアリングタイロッドの受力に基づいて、前記ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、式T=F×a/(2×π×1000)において、Tは、ハンドルの受力モーメントであり、aは、ステアリングシステムの線角伝達比である、ステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施例に係る操舵感補償方法のフローチャートである。
図2】本開示の実施例に係る操舵感補償方法を適用する車両の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の解決しようとする技術的課題、技術手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、実施例を参照しながら、本開示をさらに詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施例は、本開示を解釈するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0019】
本開示の実施例に係る、マルチモータ駆動車両に適用される操舵感補償方法は、
車両の走行状態及び操舵状態を取得して、第3モータの補償方式を決定するステップS10と、
第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントを取得して、第3モータの補償モーメントの大きさを決定するステップS20と、を含む。
【0020】
マルチモータ駆動車両は、第1モータ、第2モータ及び第3モータを含み、第1モータは、車両の左前輪を駆動し、第2モータは、車両の右前輪を駆動し、第3モータは、ステアリングギアを駆動する。
【0021】
本開示に係る操舵感補償方法は、車両を操舵する場合、車両の第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、第3モータの補償モーメントの大きさを決定し、車両の走行状態及び操舵状態に基づいて、第3モータの補償方式を決定し、補償方式及び補償モーメントの大きさに基づいて、第3モータを制御し、第3モータの元の出力モーメントに基づいて補償を行って、左右駆動モーメントが異なることによるハンドルの回転モーメントを第3モータにより補償し、それにより、ハンドルの回転モーメントによる、ハンドルがずれたり、手を引きずったりするという現象を回避し、操舵感を保証することができる。
【0022】
他の実施例において、本開示の操舵感補償方法は、
まず、第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントを取得して、第3モータの補償モーメントの大きさを決定し、
次に、車両の走行状態及び操舵状態を取得して、第3モータの補償方式を決定することであってもよい。
【0023】
即ち、第3モータの補償モーメントの大きさの決定と第3モータの補償方式の決定は、順不同で行えばよい。決定された第3モータの補償方式及び補償モーメントの大きさで、第3モータを制御すればよい。
【0024】
具体的には、S10において、車両の走行状態は、前進状態及び後退状態を含み、操舵状態は、左操舵状態及び右操舵状態を含む。このように、異なる車両の走行状態及び操舵状態の組み合わせにより、4種の異なる状態が得られ、それぞれは、前進左操舵状態、前進右操舵状態、後退左操舵状態及び後退右操舵状態である。
【0025】
一実施例において、車両が前進状態及び左操舵状態にある場合、即ち、前進左操舵状態にある場合、第3モータは、左操舵モーメントを小さくするように補償を行い、即ち、第3モータは、左アシストモーメントを基に左操舵モーメントを小さくし、左操舵モーメントが小さくなる割合は、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによりハンドルが受けた受力モーメントである。
【0026】
車両が前進状態及び右操舵状態にある場合、即ち、前進右操舵状態にある場合、第3モータは、右操舵モーメントを小さくするように補償を行い、即ち、第3モータは、右アシストモーメントを基に右操舵モーメントを小さくし、右操舵モーメントが小さくなる割合は、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによりハンドルが受けた受力モーメントである。
【0027】
車両が後退状態及び左操舵状態にある場合、即ち、後退左操舵状態にある場合、第3モータは、左操舵モーメントを大きくするように補償を行い、即ち、第3モータは、左アシストモーメントを基に左操舵モーメントを大きくし、左操舵モーメントが大きくなる割合は、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによりハンドルが受けた受力モーメントである。
【0028】
車両が後退状態及び右操舵状態にある場合、即ち、後退右操舵状態にある場合、第3モータは、右操舵モーメントを大きくするように補償を行い、即ち、第3モータは、右アシストモーメントを基に右操舵モーメントを大きくし、右操舵モーメントが大きくなる割合は、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによりハンドルが受けた受力モーメントである。
【0029】
車両が前進状態で左折する場合、ハンドルは、反時計回りに回転し、右側車輪は、外側車輪であり、右側車輪の駆動力は、左側車輪の駆動力より大きく、右側車輪の駆動モーメントは、左側車輪の駆動モーメントより大きいため、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるハンドルのモーメントは、右側車輪の駆動モーメントの方向と一致し、右側車輪のキングピン点は、車輪の内側であり、右側車輪を駆動して反時計回りに回転させ、即ち、右側車輪の駆動モーメントは、反時計回り方向であり、つまり、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるハンドルのモーメントも反時計回り方向であるため、補償を行う前に、ハンドルが受けたモーメントは、操舵に必要な反時計回りのアシストモーメントと、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによる反時計回りの受力モーメントとを含み、即ち、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるモーメントは、ハンドルのアシストモーメントを大きくし、このように、ハンドルがずれるという現象が発生する。したがって、左操舵モーメントを小さくする必要があり、これにより、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによる干渉を解消して、ハンドルがずれるという現象を回避し、車両の安定性を向上させ、操舵感を保証する。この場合、第3モータが出力したモーメントは、アシストモーメントから受力モーメントを減算して得られるものである。
【0030】
車両が前進状態で右折する場合、ハンドルは、時計回りに回転し、左側車輪は、外側車輪であり、左側車輪の駆動力は、右側車輪の駆動力より大きく、左側車輪の駆動モーメントは、右側車輪の駆動モーメントより大きいため、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるハンドルのモーメントは、左側車輪の駆動モーメントの方向と一致し、左側車輪のキングピン点は、車輪の内側であり、左側車輪を駆動して時計回りに回転させ、即ち、左側車輪の駆動モーメントは、時計回り方向であり、つまり、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるハンドルのモーメントも時計回り方向であるため、補償を行う前に、ハンドルの受力モーメントは、操舵に必要な時計回りのアシストモーメントと、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによる時計回りの受力モーメントとを含み、即ち、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるモーメントは、ハンドルのアシストモーメントを大きくし、このように、ハンドルがずれるという現象が発生する。したがって、右操舵モーメントを小さくする必要があり、これにより、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるモーメントによる干渉を解消して、ハンドルがずれるという現象を回避し、車両の安定性を向上させ、操舵感を保証する。この場合、第3モータが出力したモーメントは、アシストモーメントから受力モーメントを減算して得られるものである。
【0031】
車両が後退状態で左折する場合、ハンドルは、反時計回りに回転し、右側車輪の駆動力は、左側車輪の駆動力より大きく、右側車輪の駆動モーメントは、左側車輪の駆動モーメントより大きいため、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるハンドルのモーメントは、右側車輪の駆動モーメントの方向と一致し、右側車輪のキングピン点は、車輪の内側であり、右側車輪を駆動して時計回りに回転させ、即ち、右側車輪の駆動モーメントは、時計回り方向であり、つまり、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるハンドルのモーメントも時計回り方向であるため、補償を行う前に、ハンドルが受けたモーメントは、操舵に必要な反時計回りの回転モーメントと、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによる時計回りの受力モーメントとを含み、即ち、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるモーメントは、ハンドルのアシストモーメントを小さくし、このように、ハンドルが手を引きずるという現象が発生する。したがって、左操舵モーメントを大きくする必要があり、これにより、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによる干渉を解消して、ハンドルが手を引きずるという現象を回避し、操舵感を保証する。この場合、第3モータが出力したモーメントは、アシストモーメントと受力モーメントとを加算して得られるものである。
【0032】
車両が後退状態で右折する場合、ハンドルは、時計回りに回転し、左側車輪の駆動力は、右側車輪の駆動力より大きく、左側車輪の駆動モーメントは、右側車輪の駆動モーメントより大きいため、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるハンドルのモーメントは、左側車輪の駆動モーメントの方向と一致し、左側車輪のキングピン点は、車輪の内側であり、左側車輪を駆動して反時計回りに回転させ、即ち、左側車輪の駆動モーメントは、反時計回り方向であり、つまり、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるハンドルのモーメントも反時計回り方向であるため、補償を行う前に、ハンドルが受けたモーメントは、操舵に必要な時計回りのアシストモーメントと、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによる反時計回りの受力モーメントとを含み、即ち、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによるモーメントは、ハンドルのアシストモーメントを小さくし、このように、ハンドルが手を引きずるという現象が発生する。したがって、右操舵モーメントを大きくする必要があり、これにより、左側車輪及び右側車輪の駆動力が異なることによる干渉を解消して、ハンドルが手を引きずるという現象を回避し、操舵感を保証する。この場合、第3モータが出力したモーメントは、アシストモーメントと受力モーメントとを加算して得られるものである。
【0033】
S20において、第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントを取得して、第3モータの補償モーメントの大きさを決定するステップは、
第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップであって、第3モータの補償モーメントの大きさがハンドルの受力モーメントの大きさに等しいステップを含む。
【0034】
第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、
第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップと、
合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップと、
ステアリングタイロッドの受力に基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップと、を含む。
【0035】
具体的には、第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップは、
第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、第1モータの駆動力及び第2モータの駆動力を決定するステップであって、
【数3】
上式において、Ff1は、第1モータの駆動力であり、Tは、第1モータの駆動モーメントであり、dは、左前輪のタイヤ半径であり、
【数4】
上式において、Ff2は、第2モータの駆動力であり、Tは、第2モータの駆動モーメントであり、dは、右前輪のタイヤ半径である、ステップと、
第1モータの駆動力及び第2モータの駆動力に基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップであって、式T=(Ff2-Ff1)×eにおいて、Tは、キングピンの合成回転モーメントであり、eは、キングピン傾角中心オフセットである、ステップと、を含む。
【0036】
合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップは、
式F=T/Hにおいて、Fは、ステアリングタイロッドが受けた力であり、Hは、ステアリングタイロッドの内点から車輪中心までの距離である、ステップを含み、
ステアリングタイロッドの受力に基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、
式T=F×a/(2×π×1000)において、Tは、ハンドルの受力モーメントであり、aは、ステアリングシステムの線角伝達比である、ステップを含む。
【0037】
図2に示すように、ステアリングギアは、ステアリングタイロッド20及びラック30を含み、ラック30は、第3モータに接続され、ステアリングタイロッド20は、ラックに接続され、ステアリングタイロッドの外点により、対応する車輪のショックアブソーバーに接続され、キングピン傾角中心オフセットeは、キングピン点Aからタイヤ10の中心面までの距離であり、Hは、ステアリングタイロッドの内点Cから車輪中心までの距離である。
【0038】
以上は、本開示の好ましい実施例に過ぎず、本開示を限定するものではなく、本開示の精神及び原則内で行われた全ての修正、等価置換及び改良などは、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0039】
10 タイヤ
20 ステアリングタイロッド
30 ラック
A キングピン点
B ステアリングタイロッドの外点
C ステアリングタイロッドの内点
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモータ駆動車両に適用される操舵感補償方法であって、前記マルチモータ駆動車両は、第1モータ、第2モータ及び第3モータを含み、前記第1モータは、前記車両の左前輪を駆動し、前記第2モータは、前記車両の右前輪を駆動し、前記第3モータは、ステアリングギアを駆動し、前記操舵感補償方法は、
車両の走行状態及び操舵状態を取得して、前記第3モータの補償方式を決定するステップと、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントを取得して、前記第3モータの補償モーメントの大きさを決定するステップと、を含む、操舵感補償方法。
【請求項2】
前記走行状態は、前進状態及び後退状態を含み、前記操舵状態は、左操舵状態及び右操舵状態を含む、請求項1に記載の操舵感補償方法。
【請求項3】
前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が前進状態及び左操舵状態にある場合、前記第3モータが左操舵モーメントを小さくするように補償を行うステップを含む、請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【請求項4】
前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が前進状態及び右操舵状態にある場合、前記第3モータが右操舵モーメントを小さくするように補償を行うステップを含む、請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【請求項5】
前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が後退状態及び左操舵状態にある場合、前記第3モータが左操舵モーメントを大きくするように補償を行うステップを含む、請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【請求項6】
前記第3モータの補償方式を決定するステップは、
車両が後退状態及び右操舵状態にある場合、前記第3モータが右操舵モーメントを大きくするように補償を行うステップを含む、請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【請求項7】
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントを取得して、前記第3モータの補償モーメントの大きさを決定するステップは、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップであって、前記第3モータの補償モーメントの大きさが前記ハンドルの受力モーメントの大きさに等しいステップを含む、請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【請求項8】
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップと、
前記合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップと、
前記ステアリングタイロッドの受力に基づいて、前記ハンドルの受力モーメントを決定するステップと、を含む、請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【請求項9】
前記第1モータの駆動モーメント及び前記第2モータの駆動モーメントに基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップは、
第1モータの駆動モーメント及び第2モータの駆動モーメントに基づいて、第1モータの駆動力及び第2モータの駆動力を決定するステップであって、
【数1】
上式において、Ff1は、第1モータの駆動力であり、Tは、第1モータの駆動モーメントであり、dは、左前輪のタイヤ半径であり、
【数2】
上式において、Ff2は、第2モータの駆動力であり、Tは、第2モータの駆動モーメントであり、dは、右前輪のタイヤ半径である、ステップと、
第1モータの駆動力及び第2モータの駆動力に基づいて、キングピンの合成回転モーメントを決定するステップであって、式T=(Ff2-Ff1)×eにおいて、Tは、キングピンの合成回転モーメントであり、eは、キングピン傾角中心オフセットである、ステップと、を含む、請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【請求項10】
前記合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップは、
式F=T/Hを用いるステップを含み、上式において、は、ステアリングタイロッドの受力であり、Hは、ステアリングタイロッドの内点から車輪中心までの距離であり、
前記ステアリングタイロッドの受力に基づいて、前記ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、
式T=F×a/(2×π×1000)を用いるステップを含み、上式において、は、ハンドルの受力モーメントであり、aは、ステアリングシステムの線角伝達比である請求項1又は2に記載の操舵感補償方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
一実施例において、前記合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップは、式F=T/Hを用いるステップを含み、上式において、は、ステアリングタイロッドの受力であり、Hは、ステアリングタイロッドの内点から車輪中心までの距離であり、
前記ステアリングタイロッドの受力に基づいて、前記ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、式T=F×a/(2×π×1000)を用いるステップを含み、上式において、は、ハンドルの受力モーメントであり、aは、ステアリングシステムの線角伝達比である
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
合成回転モーメントに基づいて、ステアリングタイロッドの受力を決定するステップは、
式F=T/Hを用いるステップを含み、上式において、は、ステアリングタイロッドの受力であり、Hは、ステアリングタイロッドの内点から車輪中心までの距離であり、
ステアリングタイロッドの受力に基づいて、ハンドルの受力モーメントを決定するステップは、
式T=F×a/(2×π×1000)を用いるステップを含み、上式において、は、ハンドルの受力モーメントであり、aは、ステアリングシステムの線角伝達比である
【国際調査報告】