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特表2024-527690分割ポリマー・ラビリンスシール組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】分割ポリマー・ラビリンスシール組立体
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/447 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F16J15/447
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577330
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022037631
(87)【国際公開番号】W WO2023003905
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,426
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512115807
【氏名又は名称】エー. ダブリュー. チェスタートン カンパニー
【氏名又は名称原語表記】A.W. CHESTERTON COMPANY
【住所又は居所原語表記】860 Salem Street, Groveland, MA 01834 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】グリマニス, マイケル, ピー.
(72)【発明者】
【氏名】カレシアン, ジョセフ, ケー.
【テーマコード(参考)】
3J042
【Fターム(参考)】
3J042AA04
3J042BA02
3J042CA05
3J042CA10
3J042CA17
(57)【要約】
【要約】
分割静止及び回転密封要素と、分割クランプ機構とを有する分割ラビリンスシール組立体。クランプ機構は、回転要素を回転シャフトに固定するよう構成されている。回転要素は、シャフトの回転に応答して、接触位置と非接触位置との間を移動する一体形成されたバルブ要素を含むこともできる。回転要素とクランプ機構には、これら構成要素を入れ子状態にし易くする表面特徴を関連付けることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと静止装置ハウジングとの間にシールを形成するためのラビリンスシール組立体であって、
前記静止装置ハウジングに結合するよう構成されていると共に、前記シャフトがその内部を延びる空間を画定する環形状を有する静止要素であって、第1静止要素区分と第2静止要素区分とに分割され、前記第1及び第2静止要素区分のそれぞれが、それ自身に関連付けられた第1及び第2非平坦端面を有する、静止要素と、
前記静止要素と前記シャフトとの間の前記空間内に配置されると共に、前記シャフトと共に回転するように前記シャフトに結合された回転要素であって、第1回転要素区分と第2回転要素区分とに分割され、前記第1及び第2回転要素区分のそれぞれは、それらに関連付けられた第1及び第2非平坦端面を有し、軸方向外側に延びるバルブ要素が一体形成された外表面を有する回転要素と、
前記回転要素を前記シャフトに固定するために前記回転要素の周りに配置されたクランプ組立体とを含み、
前記バルブ要素は、組み立てられると前記静止要素と前記回転要素との間に配置され、前記バルブ要素は、シールを選択的に形成するために前記静止要素の一部に対して配置され、前記バルブ要素は、前記シャフトの回転に応答して、接触位置と非接触位置との間を移動可能であり、前記バルブ要素は、前記シャフトが回転を停止すると前記接触位置で前記静止要素に接触して前記シールを形成するよう適合されており、前記バルブ要素は、前記シャフトが回転すると前記非接触位置に配置される、ラビリンスシール組立体。
【請求項2】
前記回転要素は、
内表面と、対向する外表面と、表面特徴が関連付けられている上表面と、前記上表面から軸方向外側に延びるアウトボード部分とを有する本体を含み、
前記クランプ組立体は、前記回転要素の前記上表面の前記表面特徴に形状が補完的な表面特徴が関連付けられている底面を備えた本体を有し、前記クランプ組立体の前記底面の前記表面特徴は、前記回転要素の前記上表面の前記表面特徴に係合接触して配置される、請求項1に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項3】
前記回転要素の前記上表面の前記表面特徴はチャンネルであり、前記クランプ組立体の前記表面特徴は、前記チャンネルに収容されるようサイズ及び寸法決めされた突起を含む、請求項2に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項4】
前記回転要素の前記アウトボード部分は、それに関連付けられた1つ又は複数の表面特徴を有する外表面を含み、前記クランプ組立体の前記本体の内表面には、前記回転要素の前記アウトボード部分の前記表面特徴に形状が補完的な1つ又は複数の表面特徴が関連付けられている、請求項2に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項5】
前記回転要素の前記アウトボード部分の前記外表面の前記表面特徴は、1つ又は複数のチャンネルを含み、前記クランプ組立体の前記本体の前記内表面に関連付けられた前記表面特徴は、前記アウトボード部分の前記チャンネルに少なくとも部分的に収容されるようサイズ及び寸法決めされた1つ又は複数の突出部を含む、請求項4に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項6】
前記第1静止要素区分の前記非平坦端面は切り欠きを含み、前記第2静止要素区分の前記非平坦端面は、前記切り欠きに形状が補完的な突出部を含み、前記切り欠きと前記突出部は、互いに組み付けられると、前記第1及び第2静止要素区分の互いに対する軸方向の移動を防止する、請求項4に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項7】
前記第1回転要素区分の前記非平坦端面は切り欠きを含み、前記第2回転要素区分の前記非平坦端面は、前記切り欠きに形状が補完的な突出部を含み、前記切り欠きと前記突出部は、互いに係合されると、前記第1及び第2回転要素区分の互いに対する軸方向の移動を防止する、請求項6に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項8】
前記第1及び第2静止要素区分並びに前記回転要素区分の前記非平坦端面を形成する前記分割は、互いに係合されると矢印又はシェブロンのプロファイル形状を有する、請求項4に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項9】
前記回転要素の前記上表面の前記表面特徴は、軸方向外側に延びる突起であり、前記クランプ組立体の前記本体の前記底面の前記表面特徴は、チャンネルを含み、前記軸方向外側に延びる突起は、前記クランプ組立体の前記底面に形成された前記チャンネルと係合接触して配置される、請求項4に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項10】
前記回転要素の前記アウトボード部分の前記外表面の前記表面特徴は、1つ又は複数のチャンネルを含み、
前記クランプ組立体の前記本体の前記内表面に関連付けられた前記表面特徴は、前記アウトボード部分の前記チャンネルに少なくとも部分的に収容されるようサイズ及び寸法決めされた1つ又は複数の突出部を含む、請求項9に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項11】
前記第1静止要素区分の前記非平坦端面は切り欠きを含み、前記第2静止要素区分の前記非平坦端面は、前記切り欠きに形状が補完的な突出部を含み、前記切り欠きと前記突出部は、互いに係合されると、前記第1及び第2静止要素区分の互いに対する軸方向の移動を防止する、請求項10に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項12】
前記クランプ組立体は、
第1及び第2末端部分を有する環状本体であって、前記第1末端部分は第1保持機構を含み、前記第2末端部分は第2保持機構を含む環状本体と、
固定組立体であって、
前記第1末端部分の前記第1保持機構内に収容されるようサイズ及び寸法決めされた第1バレルナットと、前記第2末端部分の前記第2保持機構内に収容されるようサイズ及び寸法決めされた第2バレルナットとであって、それぞれには開口部が形成されている第1及び第2バレルナットと、
前記第1及び第2バレルナットの前記開口部内に収容されるようサイズ及び寸法決めされた締結具要素とを含む固定組立体とを含む、請求項1に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項13】
前記第1及び第2保持機構のそれぞれは、第1及び第2ループ要素を含み、前記第1バレルナットは、前記第1保持機構の前記第1及び第2ループ要素内に収容されるようサイズ及び寸法決めされており、前記第2バレルナットは、前記第2保持機構の前記第1及び第2ループ要素内に収容されるようサイズ及び寸法決めされている、請求項12に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項14】
前記回転要素は、内表面と、対向する外表面と、上表面から軸方向外側に延びるアウトボード部分とを備えた本体を有し、前記アウトボード部分の外表面には、前記クランプ機構の前記環状本体を収容するようサイズ及び寸法決めされたチャンネルが形成されている、請求項13に記載のラビリンスシール組立体。
【請求項15】
前記締結具要素は、前記第1及び第2バレルナット内に取り付けられて締め付けられると、前記回転要素を前記シャフトに結合する、請求項14に記載のラビリンスシール組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、引用してその内容を本明細書に援用する、「分割ポリマー・ラビリンスシール組立体」と題した2021年7月19日付けの米国特許仮出願第63/223,426号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、静止ハウジング構成要素に対してシャフト又はロッドをシールするためのシール組立品に関する。本発明は、一般に回転シャフトシールに関する。より詳細には、本発明は、ハウジング内で流体をシールすると共に汚染物質がハウジングに進入するのを防止する助けとなるラビリンスシールに関する。
【0003】
ポリマーとゴムのメカニカルシール組立品は、流体密シールを提供するために、例えば機械装置内などの多種多様な環境及び設定において使用されている。通常、こうした密封組立品は、静止機械ハウジング内に取り付けられ且つそのハウジングから突出する回転シャフト又はロッドの周囲に設けられる。回転シールは一般に、不要な粒子が機械ハウジングに侵入し、その中に含まれる流体を汚染するのを防ぐように構成且つ設計されているが、このシールは、ハウジング内の流体リザーバに通常存在するオイル、プロセス流体又はバリア流体などの流体を保持する必要もある。それゆえ、信頼性への要求と故障に対するペナルティが増大し続ける中、機械の運転寿命を延ばすことが重要である一方で、漏れを最小限に抑える必要性も存在する。
【0004】
通常の技能を備えた当業者であれば、機器の極端なデューティーサイクル、サービス率の減少、特殊なシール設計、及び多くの加工プラントにおける予備の回転機器の不足のため、回転機器の保守が一般的に困難であることを容易に認識するであろう。本発明の技術分野では、シール環境の保全性を保護しようとするため、リップシール、ラビリンスシール、磁気シールなど、様々な形式の従来のシャフト密封装置が利用されてきた。
【0005】
従来のリップシールは、回転するシャフトに接触することによってハウジングからの流体の漏れを防止する助けとなるリップを備えた密封要素を含む。従来のリップシールの欠点は摩耗が速く、時間の経過と共に機能しなくなることがあり、過剰な量の水分及び他の汚染物質の、ハウジングの流体リザーバへの望ましくない移動を許容することも知られている。
【0006】
ラビリンスシールは、使用中に静止部品と回転部品との間に密封接触がないことから、通常、摩擦を含まない非接触型の摩擦なしシールである。ラビリンスシールは、液体や汚染物質が通過するための複雑な経路(すなわち、ラビリンス)を形成することにより、シールを形成し、汚染物質がハウジング内の流体に到達するのを防ぐことが可能であり、したがって、汚染物質がラビリンスを通過又は横断することが困難であるため、シールによって形成されたバリアを越えることが困難になる。この種のシールは様々な場面で使用され、回転したりその他の態様で動いたりする物体に使用することができる。実際、シャフトの回転のような運動は、設計によっては、汚染物質や流体をシール内にさらに捕捉する役目を果たす遠心力を発生させることで、ラビリンスシールの効果をいっそう高めることができる。ラビリンスシールは通常、圧力差に対応するようには設計されていないが、他の多くの種類の重要な環境で使用することができる。
【0007】
従来のラビリンスシールの欠点は、高価であることと、一般的に、厳しい公差を要求される複雑な設計であることである。動作中にシールの部品が既定位置から動くと、流体の漏れが増加し、機械ハウジングへの汚染物質の侵入を防ぐシールの能力が低下する。さらに、従来のラビリンスシールは、一般的に、中実で連続した構造を有しているため、回転機器を分解して取り付ける必要がある。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、流体密封及び破片封じ込めを向上するため、互いに対して容易に位置決めできる回転及び静止シールリング構成要素を用いるラビリンス式シールを提供することである。より重要なことは、これら構成要素は分割されており、分解することなく装置に容易に取り付けできることである。
【0009】
本発明の1つの目的は、非接触位置と接触シール位置との間を選択的に移動可能なシール組立体の一部としてバルブ要素を使用するラビリンス式シールを提供することである。前記バルブは回転シャフトが停止したときに閉じて、汚染物質(例えば、水分)が流体リザーバに入るのを防止する。
【0010】
本発明の前記ラビリンスシール組立体は、分割された静止及び回転密封要素と、分割されたクランプ機構とを有する分割シールに関する。前記クランプ機構は、前記回転要素を回転シャフトに固定するよう構成されている。さらに、前記回転要素は、前記シャフトの回転に応答して、接触位置と非接触位置との間を移動する一体形成されたバルブ要素を含むこともできる。
【0011】
本発明は、シャフトと静止装置ハウジングとの間にシールを形成するためのラビリンスシール組立体に関する。前記分割ラビリンスシール組立体は、静止要素と、回転要素と、クランプ組立体とを含む。前記静止要素は、前記静止装置ハウジングに結合するよう構成されていると共に、前記シャフトがその内部を延びる空間を画定する環形状を有する。前記静止要素は、第1静止要素区分と第2静止要素区分とに分割され、前記第1及び第2静止要素区分のそれぞれが、それ自身に関連付けられた第1及び第2非平坦端面を有する。前記回転要素は、前記静止要素と前記シャフトとの間の前記空間内に配置されると共に、前記シャフトと共に回転するように前記シャフトに結合されている。前記回転要素は、第1回転要素区分と第2回転要素区分とに分割され、前記回転要素区分のそれぞれが、それ自身に関連付けられた第1及び第2非平坦端面を有する。前記回転要素は、さらに、軸方向外側に延びるバルブ要素が一体形成された外表面を有する。前記クランプ組立体は、前記回転要素を前記シャフトに固定するために前記回転要素の周りに配置されている。前記バルブ要素は、組み立てられると、前記静止要素と前記回転要素との間に配置され、前記バルブ要素は、シールを選択的に形成するために前記静止要素の一部に対して配置される。前記バルブ要素は、前記シャフトの回転に応答して、接触位置と非接触位置との間を移動可能であり、前記シャフトが回転を停止すると前記接触位置で前記静止要素に接触して前記シールを形成するよう適合されており、且つ、前記シャフトが回転すると前記非接触位置に配置される。
【0012】
本発明によれば、前記回転要素は、内表面と、対向する外表面と、表面特徴が関連付けられている上表面と、前記上表面から軸方向外側に延びるアウトボード部分とを有する本体を含む。前記クランプ組立体は、前記回転要素の前記上表面の前記表面特徴に形状が補完的な表面特徴が関連付けられている底面を備えた本体を有し、前記クランプ組立体の前記底面の前記表面特徴は、前記回転要素の前記上表面の前記表面特徴に係合接触して配置される。前記回転要素の前記上表面の前記表面特徴は、一実施形態ではチャンネルであり、前記クランプ組立体の前記表面特徴は、前記チャンネルに収容されるようサイズ及び寸法決めされた突起を含む。別の実施形態によれば、前記回転要素の前記アウトボード部分は、それに関連付けられた1つ又は複数の表面特徴を有する外表面を任意で含むことができる。前記クランプ組立体の前記本体の前記内表面は、前記回転要素の前記アウトボード部分の前記表面特徴に形状が補完的な1つ又は複数の表面特徴が関連付けられている。一実施形態によれば、前記回転要素の前記アウトボード部分の前記外表面の前記表面特徴は、1つ又は複数のチャンネルを含み、前記クランプ組立体の前記本体の前記内表面に関連付けられた前記表面特徴は、前記アウトボード部分の前記チャンネルに少なくとも部分的に収容されるようサイズ及び寸法決めされた1つ又は複数の突出部を含む。
【0013】
前記第1静止要素区分の前記非平坦端面は、切り欠きを含むよう構成可能であり、前記第2静止要素区分の前記非平坦端面は、前記切り欠きに形状が補完的な突出部を含むことができる。前記切り欠きと前記突出部は、互いに組み付けられると、前記第1及び第2静止要素区分の互いに対する軸方向の移動を防止する。同様に、前記第1回転要素区分の前記非平坦端面は、切り欠きを含み、前記第2回転要素区分の前記非平坦端面は、前記切り欠きに形状が補完的な突出部を含み、前記切り欠きと前記突出部は、互いに係合されると、前記第1及び第2回転要素区分の互いに対する軸方向の移動を防止する。前記第1及び第2静止要素区分並びに前記回転要素区分の前記非平坦端面を形成する前記分割は、互いに係合されると矢印又はシェブロンのプロファイル形状を有することができる。
【0014】
本開示によれば、前記回転要素の前記上表面の前記表面特徴は、軸方向外側に延びる突起であり、前記クランプ組立体の前記本体の前記底面の前記表面特徴は、チャンネルを含み、前記軸方向外側に延びる突起は、前記クランプ組立体の前記底面に形成された前記チャンネルと係合接触して配置される。前記回転要素の前記アウトボード部分の前記外表面の前記表面特徴は、1つ又は複数のチャンネルを含むことができ、前記クランプ組立体の前記本体の前記内表面に関連付けられた前記表面特徴は、前記アウトボード部分の前記チャンネルに少なくとも部分的に収容されるようサイズ及び寸法決めされた1つ又は複数の突出部を含むことができる。前記第1静止要素区分の前記非平坦端面は、切り欠きを含むことができ、前記第2静止要素区分の前記非平坦端面は、前記切り欠きに形状が補完的な突出部を含む。前記切り欠きと前記突出部は、互いに係合されると、前記第1及び第2静止要素区分の互いに対する軸方向の移動を防止する。
【0015】
本発明の前記クランプ組立体は、第1及び第2末端部分を有する環状本体であって、前記第1末端部分は、第1保持機構を含み、前記第2末端部分は、第2保持機構を含む環状本体とを含むことができ、固定組立体は。前記固定組立体は、第1及び第2バレルナットと締結具とを含むことができる。前記第1バレルナットは、前記第1末端部分の前記第1保持機構内に収容されるようサイズ及び寸法決めすることができ、前記第2バレルナットは、前記第2末端部分の前記第2保持機構内に収容されるようサイズ及び寸法決めすることができ、前記第1及び第2バレルナットそれぞれには開口部が形成されている。前記締結具要素は、前記第1及び第2バレルナットの前記開口部内に収容されるようサイズ及び寸法決めすることができる。
【0016】
前記第1及び第2保持機構は、任意で第1及び第2ループ要素を含むことができる。前記第1バレルナットは、前記第1保持機構の前記第1及び第2ループ要素内に収容されるようサイズ及び寸法決めされており、前記第2バレルナットは、前記第2保持機構の前記第1及び第2ループ要素内に収容されるようサイズ及び寸法決めされている。前記回転要素は、内表面と、対向する外表面と、上表面から軸方向外側に延びるアウトボード部分とを備えた本体を有する。前記アウトボード部分の外表面には、前記クランプ機構の前記環状本体を収容するようサイズ及び寸法決めされたチャンネルが形成されている。前記締結具要素は、前記第1及び第2バレルナット内に取り付けられて締め付けられると、前記回転要素を前記シャフトに結合する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の上記及びその他の特徴及び利点は、次の詳細な説明と添付の図面を参照すればより完全に理解されるはずであり、図面の中の類似した参照記号は、これら複数の異なるすべての図面を通して類似の部材を示す。これら図面は本発明の原理を表すもので、縮尺は一定ではないが、相対的寸法を示す。
図1図1は、本発明の教示によるシャフトの周りに取り付けられ、静止装置ハウジング内に配置されたラビリンスシール組立体の第1実施形態の透視図である。
図2図2は、本発明の教示による図1のラビリンスシール組立体の部分断面透視図である。
図3図3は、本発明の教示によるラビリンスシール組立体の部分断面図である。
図4図4は、シャフトの周りに取り付けられて静止装置内に収容される前の、本発明の組み立てられた分割ラビリンスシール組立体の側面図である。図4は、少なくとも静止要素の直線及びV字組合せ分割も示す。
図5図5は、本発明の組み立てられたラビリンス組立体の側面図であって、静止要素における直線及びV字組合せ分割の別の実施形態を示す。
図6図6は、本発明の組み立てられたラビリンス組立体の透視図であって、回転要素における直線及びV字組合せ分割を示す。
図7図7は、本発明のラビリンスシール組立体の組み立てられたクランプ機構の透視図である。
図8図8は、本発明によるラビリンスシール組立体のクランプ機構の区分の端面図である。
図9図9は、ラビリンスシール組立体の部分断面透視図であって、本発明の教示による静的密封要素なしの静止要素の別の実施形態を示す。
図10図10は、本発明の教示によるラビリンスシール組立体の第2実施形態の部分断面図である。
図11図11は、本発明の教示による図10のラビリンスシール組立体の第2実施形態の部分断面透視図である。
図12図12は、本発明の教示による図10のラビリンスシール組立体のクランプ機構の部分断面図である。
図13図13は、本発明の教示によるラビリンスシール組立体の別の実施形態の透視図である。
図14図14は、本発明の教示による図13のラビリンスシール組立体の部分断面透視図である。
図15図15は、本発明の教示による図13のラビリンスシール組立体の部分断面図である。
図16図16は、本発明の教示による図13のラビリンスシール組立体の回転要素の部分断面図である。
図17図17は、本発明の教示による図13のラビリンスシール組立体の固定組立体なしのクランプ機構の透視図である。
図18図18は、本発明の教示による図13のラビリンスシール組立体のクランプ機構の透視図である。
図19図19は、本発明の教示による図13のラビリンスシール組立体のクランプ機構の部分透視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、回転シャフト又は他の適切な装置における密封を実現するための分割ポリマーラビリンス式のシール組立品を提供する。このラビリンスシール組立体は、ラビリンスすなわち曲がりくねった経路を形成することで、機械ハウジングに入ったり出たりする粒子又は流体の量を減少させる助けにもなる。本発明を、図示した実施形態に関連して以下の記載で説明する。当業者であれば、本発明は、複数の異なる応用例及び実施形態で実現可能であり、その応用例において、本明細書に記載且つ開示した特定の実施形態に特に限定されないことは容易に理解するはずである。本発明の分割ポリマー・ラビリンスシール組立体は、中実で連続した部品のように機器を分解することなくシールを取り付けるための方法とシステムを提供する。
【0019】
本明細書で使用する「メカニカルシール」、「シール組立品」及び「密封組立品」という用語は、例えば、ラビリンスシール、シングルシール、分割シール、同心シール、並びに他のタイプの既知のシール及び密封組立品及び構成品を含む様々なタイプの機械式シール又は密封組立品を含むことを意図している。ここでいう「ラビリンス式シール組立体」、「ラビリンスシール組立体」、及び「ラビリンスシール」という用語は、添付図面に示されたラビリンスシールを指すものとして互換可能に使用されている。
【0020】
「シャフト」という用語は、機械システム内の任意の適切な回転装置であって、シールを取り付けることができ、軸、ロッド、及び他の既知の装置を含む静止装置内に収容されるものを指すことを意図している。
【0021】
ここでいう「軸方向の」及び「軸方向に」という用語は、任意のシャフトの軸に概ね平行な方向を指す。ここでいう「半径方向の」及び「半径方向に」という用語は、任意のシャフトの軸に概ね直角の方向を指す。「流体」及び「複数の流体」という用語は、液体、気体、及びそれらの組み合わせを指す。
【0022】
ここでいう「軸方向内側」という用語は、静止装置及びシール組立品の、このシール組立品を使用する機械システムに隣接して配置された部分を示す。反対に、ここでいう「軸方向外側」という用語は、機械システムに遠位の静止装置及びシール組立品の部分を示す。
【0023】
ここでいう「半径方向内側」という用語は、シール組立品の、任意のシャフトに近位の部分を示す。反対に、ここでいう「半径方向外側」という用語は、シール組立品の、そのシャフトから遠位の部分を示す。
【0024】
ここでいう「機械ハウジング」、「静止装置」、「静止装置ハウジング」及び/又は「静止表面」という用語は、シール組立体が固定若しくは結合されるシャフト又はロッドを収容する任意の適切な静止機械構造体を含むことを意図する。
【0025】
ラビリンスシールは、典型的には複数の部品で製作されている。ステーター又は静止要素として知られる一方の部品が、静止装置ハウジングに取り付けられ、静止状態を維持する。他方の部品は、ローター又は回転要素と呼ばれ、シャフトに取り付けられ、それと共に回転する。静止と回転密封部品は、典型的には摩擦が無く非接触方式で協働することによって、潤滑剤又はプロセス流体を内部に保持する一方で、大部分の汚染物質を効果的にシールアウトする。ラビリンスシールは非接触であり、それは、密封要素の2つの対向する軸方向及び半径方向面が、典型的には使用時に互いに接触しないことを意味する。回転要素と静止要素とが、ラビリンス経路を画定する小さな隙間によって分離されているので、密封部品も摩擦なしと考えられる。ベアリングハウジングに進入しようとするすべての汚染物質が、シール組立体及び静止装置又はハウジングの軸方向内側領域に到達するには、典型的には、ラビリンス経路を形成すると共に組み付けられる際に静止要素及び回転要素によって形成される湾曲部と角部とからなる迷路を越えなければならない。これらすべての湾曲部を通過するラビリンス経路では、粒子は、シャフトの回転運動によって常に遠心力を受け、最終的に非常に少数の粒子のみがシールの全長を通過する。これが、ラビリンスシール組立体の主要な密封機能である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、シャフト12と、関連した静止装置14との間に形成される分割ポリマー・ラビリンスシール組立体10が提供される。例えば図1-3で示したように、本発明の第1実施形態のラビリンスシール組立体10は、静止装置14内に収容された静止要素20と、回転シャフト12に結合された回転要素60と、回転要素60と結合されるか又は一体形成されたバルブ要素であって、静止要素20と作動的に相互作用してそれらの間にシールを形成するよう構成されたバルブ要素と、回転要素60をシャフト12に結合、締め付け、又は固定する役目を果たす分割締め付け機構又は組立体90とを用いる。
【0027】
図示した静止要素20は、分割された環形状を備え、静止装置14に結合してシャフト12がその内部を延びる空間を画定するよう構成されている。静止要素20は、対応する静止要素区分(例えば、密封区分)へと分割されていることが好ましい。静止要素20は、外側の概ね軸方向に延びる表面と、対向する内側の概ね軸方向に延びる表面とを備えた本体22を有している。外表面は、複数の異なる表面を含むことができる。例えば、外表面は、半径方向最外側外表面24と、半径方向内側に階段状の軸方向延伸外表面26とを含むことができる。外表面24と26とは、半径方向に延びる階段状壁表面25によって互いに結合することができる。階段状壁表面25は、静止装置14の対応する半径方向延伸壁14Aに当接して収容されるよう構成されている。本体22の半径方向最内側の外表面26は、比較的平坦でとするか、又は、任意で例えばボス要素26Aなどの1つ又は複数の静的密封表面要素若しくは特徴を含む又は形成することができる。ボス要素26Aは、静止装置14の内表面に沿って形成された対応する溝内に収容され、流体密シールを形成できる。代替的には、静止装置の内表面は溝を含まないようにすることもでき、密封ボス26Aは、対向する軸方向延伸表面に接触することによって流体密シールを形成することができる。ボス要素26Aが無い外表面26の例は、例えば図9に示されている。通常の技能を備えた当業者であれば、外表面26は任意選択された数又は種類の静的密封表面特徴を含むことができ、且つ、これら表面特徴は、任意の選択された形状又はサイズを有することができることを容易に認識するであろう。さらに、外表面26は任意の適切な形状又は設計とすることができ、例えば複数の階段状表面を有することができる。静止要素20の本体22は、静止装置14の半径方向に延びる端部壁面14Bに当接して収容されるよう構成された軸方向最内側の端部壁面28を含むことができる。
【0028】
静止要素は内側延伸面を備える。内側延伸面は、複数の異なる軸方向延伸面によって形成してもよい。例えば、静止要素20は、半径方向に延伸した階段状壁34によって互いに接続された内側軸方向延伸面32A及び32Bによって形成される第1の概ね軸方向に延びる内表面を有する軸方向最外側又はアウトボード端部30を含むことができる。さらに、本体22は、回転要素60のバルブ要素120と共に密封表面を形成するための半径方向に延びる密封表面36を含む。静止要素20は、フランジ部40で終端する、半径方向最内側の軸方向に延びる第2内表面38をさらに含む。フランジ部40は、その間にチャンネル42を形成するように離間した一対の半径方向内側に延伸したフランジ又はリブ要素40A、40Bを含むことができる。フランジ要素40A、40Bは、シャフト12に向かって半径方向内側に延伸している。通常の技能を備えた当業者であれば、静止要素20の内表面を任意の適切な形状及び設計とすることができ、任意の選択された数及び種類の表面特徴を備えることができることは容易に認識するであろう。第2内表面38は、ラビリンス経路形成の助けとなるよう回転要素60上に形成された1つ又は複数の表面特徴と協働するよう配置且つ構成された1つ又は複数のチャンネル又は溝を含むこともできるし、それらチャンネル又は溝を第2内表面に形成してもよい。一実施形態によれば、内表面38は、回転要素60の対応する表面特徴を収容するためのチャンネル44A及び44Bを含むことができる。さらに、回転要素60の表面特徴の形状及び設計は、静止装置表面に対する局所密封力を集中させる助けとなり、固定シールを形成する。さらに、表面特徴は、これらステーター及びローター部品を、それぞれ機器穴及びシャフトに対して定位置に固定する助けとなりうる。ラビリンスシールは、液体や汚染物質が通過する複雑なラビリンス経路を形成することにより、シールを形成し、汚染物質がハウジング内の流体に到達するのを防ぐことができる。したがって、汚染物質は、ラビリンスを通過又は横断することが困難であるため、シールによって形成されたバリアを越えることが困難になる。ラビリンス経路は、回転要素と静止要素との間に形成される空間を含むことができる。
【0029】
図示された回転要素60は、静止装置14と共に取り付けられたときに静止要素20によって画定される空間内に配置され、シャフト12と共に回転するようにクランプ機構90によってシャフトに結合され得る。回転要素60は、シャフトの外表面に接触するための軸方向に延びる内表面64を備えた本体62を有する。回転要素60はまた、上表面66と、概ね軸方向に延びる外表面とを含む。上表面66は、その上に形成された任意の選択された種類の表面特徴を有することができる。例えば、表面特徴は、1つ又は複数の溝、チャンネル、又はくぼみを含むことができ、或いは、1つ又は複数のリブ又は延長部などの任意の選択された種類の突出部を含むことができる。外表面は、第1の軸方向に延びる外表面68と、半径方向内方に段差を有する第2の軸方向に延びる外表面70とを含む。外表面68及び70は、半径方向に延びる階段状壁面72を介して互いに結合されている。第2の外表面70には、静止要素20と回転要素60との間に補助的なシールを提供するためにバルブ要素120が一体的に形成されている。具体的には、バルブ要素120は、半径方向最外端部にフランジ要素122が形成された環状本体を含む。フランジ要素22は、任意の適切な形状及び設計を有することができる。バルブ要素120は、使用時に、汚染物質がハウジング内に侵入するのをさらに防ぐ助けとなる二次的又は補助的な密封機構として機能する。バルブ要素120は、フランジ要素122が静止密封面36に接触する接触位置と、フランジ要素が密封面から離れた位置に配置される非接触位置との間で移動可能である。バルブ要素120は、シャフト12の回転によってこれら2つの位置の間を移動可能である。
【0030】
回転要素60の外表面は、概して軸方向に延びる第3の外表面74をさらに含む。外表面74は、静止要素20の内表面38に関連付けられた表面特徴と位置合わせされ且つ補完的な形状である、この外表面に関連付けられた1つ以上の表面特徴を有することができる。例えば、回転要素の外表面74は、静止要素20の内表面38に形成された溝44A及び44Bと位置合わせされ、任意選択で少なくとも部分的にその中に収まることができるリブ76A及び76Bなどの表面特徴を含むことができる。回転要素60のこれら表面特徴は、任意の選択されたサイズ及び形状を有することができる。代替的な実施形態によれば、回転要素60の外表面74は、1つ又は複数の溝又はチャンネルを含むことができ、静止要素20の内表面38は、1つ又は複数の突出した表面特徴を含むことができる。さらに、外表面74は任意の適切な形状又は設計とすることができ、例えば、複数の階段状表面を有することができる。リブ76A及び76B並びに溝44A及び44Bは、ラビリンス経路の一部を形成する。
【0031】
回転要素60の上表面66には、表面特徴が関連付けられている。この表面特徴は、クランプ組立体90の底面に関連付けられた表面特徴と補完的な形状とすることができる。さらに、図示された回転要素60は、上表面66から軸方向外側に延び、クランプ組立体90と係合するように構成されたアウトボード部分80を含むことができる。具体的には、アウトボード部分80は、それに関連付けられた1つ又は複数の表面特徴を有する外表面82を含むことができる。これら表面特徴は、クランプ組立体90の内表面に沿って形成された表面特徴と補完的な形状とすることができる。一実施形態によれば、上表面66には、クランプ機構の一部を収めるためにチャンネル78が形成されており、アウトボード部分80の外表面82上に形成された表面特徴は、クランプ機構90の表面特徴を収めるための複数のチャンネル84を含むことができる。
【0032】
クランプ組立体90は、図7及び図8に詳細に示されている。クランプ組立体90は、一対のクランプ区分92A、92Bを形成するように任意の選択された方法及び構成で分割される環状本体92を含むことができる。これら区分の各々には、各対向する末端部に、端面に形成された締結具受容開口部94と、締結具110を受容するために本体に形成された適切な切り欠きと、を形成することができる。締結具110は、クランプ区分92A、92Bを互いに固定する。本体92は、半径方向内側に階段状の壁面100を介して結合される第1の外表面96および第2の外表面98を含む概ね軸方向に延びる外表面を含むことができる。本体92はまた、概して軸方向に延びる内表面102を有する。一実施形態によれば、内表面102は、アウトボード部分80の外表面82に形成された表面特徴と相互作用するための1つ又は複数の表面特徴104を含むことができる。表面特徴は、クランプ機構90と回転要素60とが係合して入れ子になることができるように、回転要素60のアウトボード部80の外表面82に形成されたチャンネル84などの表面特徴内に少なくとも部分的に収まるように構成された、リブ104などの1つ又は複数の突出要素を含むことができる。クランプ区分92A、92Bは、締結具110を介して互いに固定することができ、締め付けると、回転要素60をシャフト12に固定することができる。通常の技能を備えた当業者であれば、表面特徴104はどのような種類でもよく、どのようなサイズ又は形状でもよいことを容易に認識するであろう。さらに、任意の選択された数の表面特徴を内面102に設けるか、又は関連付けることができる。外表面98及び内表面102の下側領域によって形成されるクランプ組立体90の軸方向インボード部分は、クランプ組立体の底面(例えば、階段状壁面100)から延びる突起106であって、回転要素60の上表面66に形成されたチャンネル78内に収まるように構成された突起(例えば、表面特徴)を形成する。このように、突起106及びチャンネル78は、これら表面特徴同士が係合し、入れ子になることができるような補完的な形状を有することができる。したがって、突起106は、クランプ組立体90及び回転要素60を互いに固定するための付加的な機構を形成する。
【0033】
回転要素60及び静止要素20は、それぞれが端面を有する一対の区分として形成することができる。例えば、回転シール要素、静止シール要素、及び/又はクランプ区分の端面は、対向する区分の位置合わせされた端面が互いに係合して互いに対する軸方向移動を防止することを可能にする非平坦な表面特徴を有するように構成することができる。したがって、非平坦な表面特徴は、噛み合い機構を形成する。この噛み合い機構は、例えばV字形状、シェブロン形状など、任意の選択されたプロファイル形状を有することができる。
【0034】
図4-6に示すように、静止要素及び回転要素(例えば、シールリング要素)、並びにクランプ区分は、複数の区分に分割して非平坦な噛み合い端面を形成することができる。従来の分割シールリング区分は、比較的滑らかで平坦な軸方向露出端面を備えている。これら軸方向面は平坦なので、互いに対して軸方向及び半径方向に容易に移動してしまう。これによって、取り付け時にシールリング区分を互いに位置合わせすることがしばしば困難になる。本発明によれば、少なくとも静止要素と回転要素はそれぞれ、対向するシールリング区分の対応するシールリング面とかみ合う、軸方向に延びる非平坦な端面を有する一対の分割シールリング区分を含む。本明細書では、「非平坦」という用語は、シールリングの材料の細粒組織の結果として分割表面に形成されうる任意の特徴からは独立した、わずかな量又は程度の表面特徴を上回るリング端面を包含することを意図している。軸方向端面を、軸方向端面の軸方向最外部から軸方向最内表面への軸方向と、端面の半径方向最外部から半径方向最内部表面への半径方向とで見た場合に、自然材料の細粒変動以外の表面特徴が軸方向端面に存在すれば、軸方向端面は非平坦であると考えられる。例えば、端面は、傾斜形状、下方への傾き形状、V字形状、ジグザグ式形状(断面視で)、曲線形状若しくは非線形形状、シェブロンカット、矢印形状カット、チャンネル又は溝、突出部、又は任意の他の適切な非平坦形状を有する表面特徴を組み込むか又はそれを含む場合は、非平坦端面を有するとみなされる本発明では、軸方向端面の表面の上方又は下方(又は両方)で、端面上に複数の表面特徴を形成することも考慮されている。対向するシールリング区分の対向する軸方向端面同士は、互いに対面する関係で配置されると、互いに補完する形状を備えていることが好ましい。これらシールリング区分は、付き合わせると噛み合い、したがって自己位置合わせする。シールリング区分の軸方向シールリング端面のこの非平坦性により、これら区分の互いとの係合を促進する態様でこれら区分が相互干渉する一方で、同時にこれら区分の互いに対する摺動が特に軸方向で減少又は防止される。図4は、シールリング区分20A、20Bを形成するために内部に分割46が形成された静止要素20を示している。この分割46は、各々が一対の非平坦端面を有する静止シールリング区分20A、20Bを形成する。非平坦端面は、好ましくは、非平坦な表面特徴、すなわち、端面を形成する直線状の平坦な断面以外の任意の表面特徴を含む。非平坦な表面特徴は、任意の選択された形状又は構成とすることができる。非平坦端面に形成された図示の非平坦表面特徴は、概して矢印形状を形成する。このように、区分20Aの一方は、端面に形成された切り欠きを含み、他方の区分の端面は、それぞれ補完的な形状の角度付き突出部を含む。別の例として、図5に示すように、シールリング区分20A、20Bの端面に沿って形成された非平坦な分割46Aは、シェブロン形状を有する。図6は、回転要素60も、シールリング区分60A、60Bを形成するための非平坦な分割86を含むことができることを示すラビリンスシール組立体10の透視図である。シール区分60A、60Bはそれぞれ、回転要素区分20A、20Bの端面と同様に、非平坦端面を含む。
【0035】
静止要素及び回転要素は、任意の適切な材料から形成することができ、好ましくは、ゴム、ポリウレタン、シリコン系材料、ポリマー材料、フルオロカーボン材料などのエラストマー材料、プラスチック材料(例えば、ポリウレタン、ナイロン、アセタール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、又は金属材料から形成される。
【0036】
本発明のラビリンスシール組立体10の第2実施形態が、例えば図10-12に示されている。類似の参照数字は、様々な図を通して類似の部品を示す。図示されたラビリンスシール組立体10は、クランプ機構90'によってシャフト12に結合される回転要素60'を含む。静止要素20は、静止装置14内に取り付けられ、回転要素60'の周囲に配置されている。図示された回転要素60'は、上表面66の構成を除いて、回転要素60に類似した構造である。上表面66の表面特徴は、軸方向に延びる突起130という異なる形状の表面特徴に置き換えられている。図示のクランプ機構90'は、底面から延びる底部分又は突起106が、軸方向内側の下端部109(例えば、底面)に形成されたチャンネル108に置き換えられていることを除いて、クランプ機構90と同様の構成である。回転要素60'の突起130は、クランプ機構90'の下端部109に形成されたチャンネル108内に収まり、これと係合するようなサイズ及び形状である。表面特徴は、組み立てられた状態で互いに入れ子になる。当業者であれば、突起130と対応するチャンネル108は、任意の選択されたサイズと形状を有することができることを容易に認識するであろう。
【0037】
図13-19は、本発明のラビリンスシール組立体10の別の実施形態を示す。類似の参照数字は、様々な図を通して類似の部品を示す。図示のラビリンスシール組立体10は、シャフト12と任意の関連付けられた静止装置14との間にシールを形成する。
例えば図13-16に示すように、図示のラビリンスシール組立体10は、静止装置14内に収容される静止要素20と、回転シャフト12に結合される回転要素60"と、回転要素60"と一体形成されるバルブ要素120であって、静止要素20と作動的に相互作用してその間にシールを形成するよう構成されるバルブ要素120と、回転要素60"をシャフト12に締め付ける役割を果たすクランプ機構160とを用いている。静止要素20は、静止装置14に結合され、その中に収容される。回転要素60"は、クランプ機構160によって回転シャフト12に結合されている。回転要素60"は、アウトボード部分140が異なる構成を有することを除いて、図3の回転要素60と同様の構造である。具体的には、アウトボード部分140の外表面142にはチャンネル144が形成されており、クランプ機構160が取り付けられたときにその本体を収容する。このように、チャンネル144は、クランプ機構160の幅を収容するように構成されている。
【0038】
クランプ機構160は、図17-19にさらに詳細に示されている。図示したクランプ機構は、円形又は環状の形状を有する本体162を含み、したがって概してバンドクランプとして構成される。本体162は、互いに隣接して配置される一対の末端部すなわち末端部分164A、164Bを有する。末端部はそれぞれ保持機構を含む。図示の実施形態では、保持機構は、一対のループ要素166、166を含むことができる。通常の技能を備えた当業者であれば、保持機構は、任意の選択された種類及び任意の選択された形状とすることができることは容易に認識するであろう。ループ要素は、固定組立体170の少なくとも一部と係合するように構成されている。固定組立体は、例えば、一対のバレルナット172、172及び締結具要素174を含むことができる。バレルナット172、172は、締結具要素174を収容するためのサイズ及び構成を有する締結具受容開口部を含む。締結具174は、クランプ機構の末端部164A、164Bが互いに近づくように締め付けることができる。端子端164A、164Bの互いへの移動は、回転要素60"をシャフト12に固定するのに役立つ。
【0039】
動作時には、本発明のラビリンスシール組立体10は、静止装置14のハウジング内に取り付けられる。そのためには、静止要素20がハウジング14内に取り付けられる。次に、回転要素60がシャフト12上に取り付けられ、静止要素と回転要素との間に選択された間隙を形成するように静止要素20に対して相対的に位置決めされる。このように配置されると、静止要素と回転要素は非接触の、つまり摩擦のないシール配置を形成する。静止要素と回転要素20、60は、一次密封機構として動作し互いに組み付けられると、アウトボード端部における周囲環境と、通常1つ以上の流体リザーバ及び関連付けられたプロセス流体を含む機械ハウジングの内部空間との間に延びる、曲がりくねった経路(すなわち、ラビリンス経路)を形成する。曲がりくねったラビリンス経路は微粒子をその内部に捕捉し、シール組立体の内部空間、したがって静止装置の内部空間に到達する数を最小化するのに役立つ。さらに、ラビリンスシール組立体10は、ハウジング14内にプロセス流体のような流体を保持するのに役立ちます。
【0040】
バルブ要素120は、回転要素60の第2外面70に一体的に形成されている。バルブ要素120のフランジ要素122は、静止要素20の密封面36に選択的に接触するように構成されている。バルブ要素120は、シャフトが回転していないときにバルブ要素のフランジ要素122が密封面に接触する接触位置と、シャフトが回転しているときにフランジ要素122が密封面36に接触しない(離れて配置される)非接触位置との間で移動可能である。したがって、バルブ要素は、シャフト12の回転によってこれら2つの位置の間を移動可能である。回転要素60は、クランプ機構90によってシャフト12に固定される。クランプ機構90には、回転要素60上に又は回転要素60内に形成された表面特徴と協働するように構成された、又は形状が補完的な表面特徴を形成することができる。クランプ機構60は、一組のクランプ区分として形成することができ、このクランプセグメントは、1つ又は複数の締結具を用いて回転要素60の周りに一緒に固定することができる。クランプ機構は、締め付けられると、回転要素をシャフトに固定する役割を果たす。代替的には、クランプ機構160は、回転要素60を締め付けてシャフト12に固定するための固定機構170を備えたバンドクランプとして構成することもできる。
【0041】
機械装置の始動動作前、したがってシャフト12の回転前では、バルブ要素120は、バルブ要素が静止要素20に接触する接触位置(すなわち遮断位置)に配置されている。具体的には、バルブ要素120は、静止要素と回転要素との間に画定された空間内に配置され、静止要素20の密封面36にシール可能に接触する。このため、密封面は、実質的にバルブ要素120の弁座として機能する。バルブ要素120は、このようにして、静止要素20と回転要素60との間に二次シールを形成するのに役立ち、周囲環境から静止装置14内(その中に含まれる油/潤滑油リザーバ内など)に汚染物質が侵入するのを防止するのに役立つと同時に、内部に流体を保持するのに役立つ。ラビリンスシール組立体10の静止要素20と回転要素60は、静止シール要素と回転シール要素によって形成されるラビリンス(すなわち、曲がりくねった経路)によって、汚染物質がハウジングに侵入し、流体が逃げるのを防ぐのに役立つ一次シール機構を形成する。バルブ要素は、上述のように使用する場合、バルブ要素と静止要素との間の密封係合に基づきシャフトが静止しているときに流体の漏れや汚染物質のハウジングへの侵入をさらに防止することにより、二次的又は補助的な密封機構のような役割を果たす。
【0042】
シャフトが回転し始めると、バルブ要素120は接触位置から非接触位置に移行し、したがって、抵抗を低減すると共に望ましくない熱の発生を防止するように、密封面36から離れる。上述したように、バルブ要素120は非対称設計を有し、フランジ要素122が比較的薄い本体に結合される。シャフトが回転しているときは、シャフトが発生する遠心力は、フランジ要素122が静止要素の密封面136から持ち上げられるように、バルブ要素120の重心にモーメント力を加える。バルブ要素の作動原理は、米国特許第9,366,340号に記載されており、その内容はここに引用して援用する。バルブ要素120が非接触位置に配置されているとき、ラビリンスシール組立体10は、シール構成要素間に形成されている通路の迷路又はラビリンスのため、汚染物質がハウジングに侵入するのを依然として防止する。さらに、シャフト12の回転動作は、回転要素60に接触する流体に遠心力が付与されるため、汚染物質を捕捉しハウジング内に流体を保持する役割を果たす。その後、流体は、静止要素20に形成されたチャンネル(経路)に向かって半径方向外側に流動される。装置の動作中、流体は一般に底部に向かって下方に排出され、最終的にハウジング内に戻る。
【0043】
したがって、本発明は、これまでの記載から明らかとなった目的に含まれる、上述した目的を有効に達成することが分かるはずである。本発明の範囲を逸脱することなく上記の構成に対して一定の変更を施すことが可能であるから、上記の説明に含まれ又は添付の図面に示されたすべての事項は、例示的なものとして解釈すべきであり、限定的な意味で解釈すべきではないことが意図されている。
【0044】
さらに、次の特許請求の範囲は、本明細書に説明された本発明のすべての一般的特徴及び具体的特徴を網羅するものと理解すべきであり、また本発明の範囲に関するすべての言明もその範囲に入ると言うこともできる。
図1
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図5
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【国際調査報告】