(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】二量体造影剤の製造
(51)【国際特許分類】
C07F 5/00 20060101AFI20240719BHJP
A61K 49/10 20060101ALI20240719BHJP
C07D 255/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07F5/00 D
A61K49/10
C07D255/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577348
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022070901
(87)【国際公開番号】W WO2023006721
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バニン,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】バラーレ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ボイ,ヴァレリア
(72)【発明者】
【氏名】ガッツェット,ソニア
(72)【発明者】
【氏名】ブオンサンティ,フェデリカ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H048
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085KB12
4C085KB56
4H048AA02
4H048BD70
4H048VA20
4H048VA30
4H048VA32
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、磁気共鳴画像法(MRI)における使用のための二量体造影剤、特に[μ-[1-[ビス[2-(ヒドロキシ-κO)-3-[4,7,10-トリス[(カルボキシ-κO)メチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル-κN1,κN4,κN7,κN10]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトレート(6-)]]ジ-ガドリニウム錯体の製造方法に関し、ワンポットで実施される(得られた中間体の単離を用いることのない)調製工程、および過剰の遊離ガドリニウム金属イオンの少なくとも一部の沈殿を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
で示される二量体錯体化合物5の製造方法であって:
1)有機溶媒中の、式1A
【化2】
で示されるDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの溶液を調製すること;
2)有機溶媒中の、式2
【化3】
で示される化合物の溶液を調製すること;
3)工程1)および2)により調製された溶液を混和し、式3
【化4】
で示される化合物の溶液を得ること;
4)工程3)の溶液から化合物を単離することなく、式3の化合物からtert-ブチル保護基を除去して、式4
【化5】
で示される遊離リガンドの溶液を得ること;
5)式4の遊離リガンドを単離することなく、モル過剰のガドリニウム金属イオンを工程4)の溶液に添加して、式5の二量体錯体の溶液を得ること;
6)式5の二量体錯体の溶液に沈殿剤を添加して、遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させること;および
7)二量体錯体を単離すること
を含み、式3の化合物の調製に続く全ての工程における反応溶媒が水性溶媒である、製造方法。
【請求項2】
工程1)のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの溶液が、DO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩から調製される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程1)が:
i)DO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩を、塩基または塩基性塩と共に、有機溶媒中で懸濁させて、懸濁液を得ること;
ii)懸濁液を濾過すること;および
iii)濾過した懸濁液を回収し、任意で濃縮して、有機溶媒中のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの溶液を得ること
を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程2)が、D-グルカミンとエピクロロヒドリンとを反応させて、有機溶媒中の式2の化合物の溶液を得ることを含み、好ましくは以下の工程:
i)D-グルカミンの水溶液を、有機溶媒中のエピクロロヒドリンの溶液に添加し、水/有機溶媒混合物中の式2の化合物を得;好ましくはエピクロロヒドリンの量が、化学量論的な量を超えるわずかな過剰であること;
ii)混合物から水を除去し、有機溶媒中の式2の化合物の溶液を得ること
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
有機溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMAC)である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
工程3)が、
a.工程2)からの式2の化合物と、工程1)からのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aとを、塩基の存在下で反応させて、有機粗溶液を得ること;
b.得られた有機粗溶液を、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈して、水/有機粗製物を得ること;
c.水/有機粗製物を精製して、水/有機溶媒混合物中の式3の化合物を得ること、および
d.混合物から有機溶媒を除去し、式3の化合物の水溶液を得ること
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程c.の水/有機粗製物の精製が、クロマトグラフィーによって実施される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
工程4)が:
i)工程3)からの式3の化合物の水溶液に、酸、好ましくは1価の負電荷を有する対イオンを含む無機酸を添加し、そのような添加の次におよび/または添加中に、溶液の温度を40℃より高く、好ましくは40℃より高く60℃まで、より好ましくは45~55℃の範囲内の温度に加熱および/または維持し、tert-ブチル保護基を除去して、式4の遊離リガンドの酸性水溶液を得ること;
ii)酸性溶液に塩基を添加し、実質的に中性の遊離リガンドの水溶液を得ること;
iii)得られた中性溶液を精製し、次に任意で濃縮して、式4の遊離リガンドの水溶液を得ること
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程iii)が、
形成されたt-ブタノールを除去するために中性溶液を蒸留すること;および
水溶液を任意で濃縮すること
を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
工程5)において、ガドリニウム金属イオンが、式4の脱保護された二量体リガンドの1モルに対して、2.05モル以上の量で、工程4)の溶液に添加される、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
工程6)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、4.5以上の値に調整および/または維持される、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
工程6)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、4.7以上の値に調整および/または維持される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
工程6)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、4.9以上の値に調整および/または維持される、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
工程6)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、5.5以上の値に調整および/または維持される、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
沈殿剤が、工程5)から得られた式5の二量体錯体の溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、1.1~5モルの量で添加される、請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
沈殿剤が、工程5)から得られた式5の二量体錯体の溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、1.2~3モルの量で添加される、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
沈殿剤が、工程5)から得られた式5の二量体錯体の溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、1.4~2.5モルの量で添加される、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
沈殿剤が、工程5)から得られた式5の二量体錯体の溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、1.4~1.6モルの量で添加される、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
沈殿剤が、リン酸イオン(PO
4
3-)、リン酸一水素イオン(HPO
4
2-)、リン酸二水素イオン(H
2PO
4
-)、オルトリン酸(H
3PO
4)、シュウ酸イオン(C
2O
4
2-)、シュウ酸水素イオン(HC
2O
4
-)、およびシュウ酸(H
2C
2O
4)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
工程6)の後および工程7)の前に、沈殿剤の添加後に得られたガドリニウム錯体5の溶液を濾過し、沈殿した不溶性ガドリニウム塩を前記溶液から除去する工程をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
工程7)が、工程6)から直接回収された溶液を噴霧乾燥することによって、式5の二量体錯体を白色固体として単離することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像法(MRI)における使用のための造影剤の製造に関する。具体的には、本発明は、二量体造影剤、特に[μ-[1-[ビス[2-(ヒドロキシ-κO)-3-[4,7,10-トリス[(カルボキシ-κO)メチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル-κN1,κN4,κN7,κN10]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトレート(6-)]]ジ-ガドリニウム錯体(化合物5)の新規の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法(MRI)は、増え続ける症状に対する臨床診断においてますます使用されている有名な画像診断技術である。
【0003】
MRI画像技術における使用のための造影剤は、典型的には、環式または非環式のキレートリガンド、より典型的にはポリアミノポリカルボン酸キレート剤と錯体を形成する常磁性金属イオンを含む。最も重要な種類のMRI造影剤は、現在、臨床検査の約1/3で使用されているGd(III)キレートに代表される。実際、Gd(III)は、7個の不対電子を備えて高度に常磁性であり、長い電子緩和時間を有し、緩和剤としての優れた候補となっている。しかしながら、ガドリニウム金属イオン[Gd(H2O)8]3+は、低投与量(10~20マイクロモル/kg)であっても生体には有毒である。
【0004】
したがって、潜在的に価値のあるMRI造影剤とされるには、Gd(III)錯体は、有毒な金属イオンの放出を防ぐために、高い熱力学的(場合によっては動態学的)安定性を示さなければならない。その上、Gd(III)錯体を製造するプロセスは、錯体化の工程後に反応混合物に存在する有毒な金属イオンを効果的かつ効率的な除去できると有利である。
【0005】
WO 2017/098044(本出願と同一出願人)は、式
【化1】
で示される、造影剤として、特に磁気共鳴画像法(MRI)に有用な、二量体常磁性錯体、およびその製造のための合成経路を開示している。
【0006】
多数の特定の化合物のうち、この出願は、式
【化2】
で示される、1-[ビス[2-ヒドロキシ-3-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカ-1-イル]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトールリガンドのジ-ガドリニウム錯体を開示している(以下、「二量体錯体化合物5」または、より簡単に「化合物5」と表する)。
【0007】
この錯体化合物は、特に緩和性および認容性に関して興味深い特性を示し、市販の造影剤が必要とする投与量より低い投与量の常磁性錯体で実行されるインビボ(in vivo)画像診断における使用に適したものとなっている。
【0008】
上記国際出願にはさらに、以下の一般的なスキーム1:
【化3】
で示される製造方法が開示されている。
【0009】
開示された合成プロセスの主な工程は:
a)Org.Synth.2008年,85,10に開示のとおり実質的に実行される、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル(化合物1A)の調製および単離;
b)MeOH中50℃で26時間、D-グルカミンを、エピクロロヒドリンでアルキル化する(モル比1:4.95)ことによる中間体2の調製、および粗反応物の溶媒留去による濃縮生成物の単離;
c)DMSOおよびEt3N中、DO3Aトリ-tert-ブチルエステルを中間体2でアルキル化し、溶媒留去およびAmberlite XAD(登録商標)1600による粗残留物の精製により、保護されたリガンド3を得ること;
d)ジクロロメタン中、TFA酸およびTIPSを用いてリガンド3を脱保護し、粗反応物の溶媒留去し、Amberlite XE 750により残留物を精製すること;
e)水中で、塩化ガドリニウム六水和物の化学量論的添加により、リガンド4を錯体化し、溶液の濾過および溶媒留去によって得られた粗生成物を、Amberchrome CG161M樹脂で精製すること
を含む。
【0010】
このプロセスでは個々の中間体それぞれの合成および単離を必要とし、それは溶媒を蒸発させて残留物とすることによって一般的に実行される。このような単離工程は、大規模製造に適さないうえ、プロセスの全般的な収率および効率の低下が避けられない。さらに、先行技術のプロセスには、TFA、TIPSおよびDCMのような取り扱いが困難な危険性の高い物質(harsh material)の使用が含まれ、合成装置の腐食とそれによる摩耗をひき起こす恐れ、および/または作業者の健康にとって安全ではない恐れがあるため、特に大規模での実施(例えば産業プロセス)には適さない。
【0011】
最後に、WO2017/098044に開示された錯体化工程は、錯体化工程の反応物の正確な秤量およびその表題物の正確な決定に依存するため、容易に再現できない。少なくともこの理由のために、WO2017/098044で開示されたプロセスのロバスト性は改善し得る。
【0012】
したがって、WO2017/098044に開示されたGd(III)錯体の、上述の問題を克服する製造方法、特に、再現可能であり、ロバスト性があり、WO2017/098044で開示された二量体常磁性錯体の大規模製造に有利な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、全般的に、二量体錯体化合物5の最適化された製造方法に関し、これはワンポットで実行される、得られた中間体の単離することのない調製工程を含み、これにより時間短縮と全体の収率および効率の改善の両方を可能にすると同時に、有毒な遊離ガドリニウム金属イオンの含量が低い最終生成物が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
より具体的には、本発明は、二量体錯体化合物5
【化4】
の製造方法であって、主要工程として:
1)例えば有機溶媒中で、式1A
【化5】
で示されるDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの溶液を調製すること;
2)例えば有機溶媒中で、式2
【化6】
で示される中間体の溶液を調製すること;
3)工程1)および2)により調製された溶液を混和し、式3
【化7】
で示される保護されたリガンドの溶液を得ること;
4)保護されたリガンドを工程3)の溶液から単離することなく、保護されたリガンドからtert-ブチル保護基を除去して、式4
【化8】
で示される遊離リガンドの溶液を得ることと;
5)得られた溶液から式4の遊離リガンドを単離することなく、モル過剰のガドリニウム金属イオンを工程4)の溶液に添加して、式5の二量体錯体の溶液を得ること;
6)式5の二量体錯体の溶液に沈殿剤を添加して、遊離ガドリニウム金属イオンを、不溶性のガドリニウム塩として沈殿させること;および
7)二量体錯体を単離すること
を含む。
【0015】
興味深いことに、請求項1に記載の製造方法は、先行技術のプロセスで必要とされ、例えば産業プロセスのような大規模で実施する場合に取り扱いが困難な、トリフルオロ酢酸(TFA)などの危険性の高い試薬やジクロロメタンなどの危険性の高い溶媒の使用を、回避するかまたは大きく低減する。
【0016】
さらに、請求項1に記載の製造方法は、ワンポットで実行される工程を含み、大規模での実施に好適であり、調製された前駆物質(1Aなど)または中間体のいずれも単離を必要としない。結果として、反応時間の短縮を促し、上述のように大規模で容易に実装されることに加えて、本製造方法は、プロセスの全体収率の有意な向上、10%(WO2017098044で開示されたプロセスで得られる)~30%超(例えば33%)の収率向上を有利に可能にする。
【0017】
さらに、本発明の製造方法はロバスト性があり、したがって大規模での実施に特に好適である。実際、先行技術の製造法には開示されていなかった、工程5)におけるモル過剰のガドリニウム金属イオンの添加に起因して、錯体化工程の反応物の正確な秤量および表題物の決定という負担は大幅に低減される。
【0018】
さらに、工程6)は、遊離ガドリニウム金属イオンの、沈殿を介した除去をもたらす。この精製工程は、カラムを通した精製による該イオンの除去(上述の先行技術文献で実行された)より負担が少ない。モル過剰のガドリニウム金属イオンを添加することは、化学量論的な量、または化学量論的な量より少ない量のガドリニウム金属イオンの添加と比較して、錯体化後に生じる遊離ガドリニウム金属イオンの量は多くなる;しかし、この遊離ガドリニウム金属イオンは、本発明の沈殿工程6)を実行することによって、すなわち本明細書に開示されるように沈殿剤を用いて、遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させることによって、効果的かつ効率的に除去され得ることが見出された。したがって、工程5)と工程6)を組み合わせることで、ロバスト性がありかつ大規模な製造に好適な方法を介して、式5の二量体錯体の溶液から遊離ガドリニウム金属イオンの特に効果的な除去がもたらされる。
【0019】
本発明の製造方法は、ロバスト性があり、再現性があり効率的(少なくとも収率的に)であるため、二量体錯体5の大規模な製造が容易に実施できる。
【0020】
本製造方法の工程1)は、一般的に、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの溶液の調製を含む。一実施形態では、該溶液は、例えば市販のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル、または公知の合成手順を使用することによって調製されたDO3Aトリ-tert-ブチルエステルを溶媒に可溶化させることによって、有機溶媒中で調製される。
【0021】
好ましい実施形態では、1Aの溶液は、その使用直前に、臭化水素酸塩などのDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの塩を、遊離塩基1Aに変換することによって調製される。典型的には臭化水素酸塩の中和を含む変換は、好ましくは有機溶媒中で、かつ塩基または塩基性塩(塩基性溶液を形成することによって加水分解する、強塩基と弱酸の中和の生成物である塩)の存在下で実行される。次に、形成された塩の除去(および任意で濾過溶液の濃縮)により、有機溶媒中のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの溶液が得られ、これは、該エステルの精製または単離を必要とすることなく、本製造方法の後続の工程においてそのまま使用するのに適している。
【0022】
好適な有機溶媒は、好ましくは、MeCN、炭酸プロピレン、エタノール、t-ブタノール、ヘキサンなどを含む。より好ましくは、有機溶媒はMeCNである。
【0023】
例えば、出発物質の臭化水素酸塩の中和に好適な塩基または塩基性塩は、例えばDiaion PA308、Amberlite IRA 400、KOH、tBuOK、Na2CO3およびK2CO3などの強塩基およびアニオン交換樹脂を含み、後者2つが好ましい。より好ましくは、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の中和は、K2CO3の存在下で実行される。
【0024】
本製造方法の工程2)は、式2の化合物の調製を含み、これは、エピクロロヒドリンを用いるD-グルカミンのアルキル化によって得ることができる。アルキル化は、双極性有機溶媒などの有機溶媒中で、またはこれらの水性混合物中で実行される。好適な有機溶媒は、例えばDMAC、DMF、MeOHなどのアルコール、およびこれらの混合物を含む。より好ましくは、有機溶媒はDMACである。混合物からの水性溶媒および/またはエピクロロヒドリン過剰物の蒸留により、有機溶媒中の式2の化合物の溶液が得られ、これはアルキル化生成物の単離および/またはさらなる精製を用いることなく、本製造方法の次の工程においてそのまま使用するのに適している。
【0025】
本製造方法の工程3)は、本質的に、式2の中間体化合物と、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aとの縮合(または本明細書で互換的に使用されるカップリング)と、式3の保護されたリガンドの形成を含む。縮合反応は、好ましくは、例えば形成されたHClのアクセプタとして作用する塩基の存在下で実行される。好適な塩基としては、例えば、Amberlite GC 400などのアニオン交換樹脂、NMM、tBuOK、Et3N、およびDIPEAなどが挙げられ、Et3NおよびDIPEAが好ましく、DIPEAが特に好ましい。
【0026】
一実施形態では、縮合反応は、塩基および工程1)から直接回収されたDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの有機溶液を、工程2)から回収された化合物2の溶液に添加することによって実行され、有機溶媒混合物中に式3の縮合生成物を含む有機粗溶液を得る。次に、水/有機溶媒混合物中の精製された生成物が得られる有機粗製物の精製、および任意で有機溶媒の最終蒸留により、水性溶媒または水性溶媒混合物中の式3の保護されたリガンドが得られ、これは保護されたリガンドそれ自体の単離および/またはさらなる精製を用いることなく、本製造方法の次工程でそのまま使用され得る。
【0027】
本製造方法の工程4)は、式3の保護されたリガンドからのカルボキシル保護基の除去を実質的に含み、式4の遊離リガンドの水溶液または水性混合物が得られる。tert-ブチル保護基の加水分解による脱保護は、酸性および塩基性の両方の条件下で、当業者に公知の反応物および条件を使用することによって実行され得る。一実施形態では、脱保護は、本製造方法の工程3)から直接回収された、保護されたリガンドの水溶液または水性混合物の酸性化によって実行され、式4の遊離リガンドの酸性溶液が得られる。酸性化は、好ましくは、例えばHCl、H2SO4、およびH3PO4から選択される酸の添加によって実行される。HCl、HBrなどの、1価の負電荷を有する対イオンを含む無機酸が特に好ましい。好ましい実施形態では、脱保護は、HClを使用することによって実施される。特に好ましい実施形態では、脱保護は、酸性反応混合物を、40℃より高く、好ましくは40℃より高く60℃まで、より好ましくは45~55℃の範囲内の温度に加熱および/または維持することによって実行される。次に、酸性溶液の中和、得られた混合物の後続の精製および部分的濃縮により、リガンド4の水溶液または水性混合物が回収され、これは単離を用いることなく、錯体化工程においてそのまま使用される。
【0028】
工程5)は、リガンドとモル過剰のガドリニウム金属イオンとの、所望の二量体錯体5への錯体化を含む。錯体化反応は、好適なGd(III)誘導体、特にGd2O3などの酸化物または可溶性ガドリニウム塩を、リガンドの溶液に添加することによって、好都合に実行され得る。一実施形態では、錯体化反応は、可溶性ガドリニウム塩GdCl3を、本製造方法の工程4)から直接回収されたリガンドの溶液に添加することによって実行される。
【0029】
工程6)は、式5の二量体錯体の溶液に存在する遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させることを含む。これらの遊離イオンは、前工程でモル過剰で添加されたために存在し、場合によっては前工程で添加されたガドリニウムの全てが、リガンド4と反応して所望の二量体錯体5を形成したわけではないためである。沈殿工程6)は、沈殿剤を添加し、遊離ガドリニウム金属イオンを不溶性ガドリニウム塩として沈殿させることによって実行される。好ましい沈殿剤は、リン酸イオン(PO4
3-)、リン酸一水素イオン(HPO4
2-)、リン酸二水素イオン(H2PO4
-)、オルトリン酸(H3PO4)、シュウ酸イオン(C2O4
2-)、シュウ酸水素イオン(HC2O4
-)、およびシュウ酸(H2C2O4)からなる群から選択される。好ましい態様では、沈殿剤は、1モルの量の二量体錯体5に対して、少なくとも1.1モルの量で、好ましくは1.1~5モルの量で添加される。さらに好ましい態様では、工程6)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHは、4.5より高く、好ましくは4.7より高く、場合によっては10.0より低く、好ましくは9.0より低く調整および/または維持される。さらに好ましい態様では、不溶性ガドリニウム塩の沈殿後に、例えば得られた溶液を濾過して、不溶性ガドリニウム塩を溶液から除去し、それによって不溶性ガドリニウム塩がそのような溶液から分離される除去工程が提供される。
【0030】
得られた濾過混合物は、次に、さらに精製され(さらなる精製工程を通して)、濃縮されて、所望の純度を有する所望の二量体錯体5の溶液を得ることができる。
【0031】
工程7)は、所望のガドリニウム錯体5の最終単離を含む。この工程は、公知の手順により好都合に実行され得る。一実施形態では、工程5)から回収された精製錯体の溶液は、噴霧乾燥されて、必要とされる純度規格を満足する白色固体として、所望の生成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において、別途規定されていない限り、用語「中間体」(例えば、D-グルカミンとエピクロロヒドリンのアルキル化反応から生じる式2の化合物、または式3の保護されたリガンドに関して使用される)は、本製造方法の化学合成または調製工程の過程で生成される、それ自体は最終生成物ではないが、本製造方法の最終生成物、すなわち二量体錯体化合物5を得るために、1つ(またはそれ以上)のさらなる反応、例えばアルキル化/脱保護/錯体化反応を必要とする分子をその意味するところに含む。
【0033】
別途規定されていない限り、用語「前駆物質」(例えば、化合物1Aに関して使用される)は、前記前駆物質を含むかまたはそれに由来する別の分子への転換を促す化学反応に関与する分子をその意味するところに含む。
【0034】
本明細書において、用語「水性溶媒」は、水、生理食塩水をその意味するところに含むが、本発明の製造方法は大部分の中間生成物を単離することなく実行され、それによって本製造方法の上流および第1の工程を通して、少量の有機溶媒が存続し得るため、水と混和し得る少量の有機溶媒(例えば10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下の容量百分率の水と混和し得る有機溶媒など)を含む場合がある。好ましくは、水性溶媒は水である。
【0035】
「水/有機溶媒混合物」、またはより簡単に「水性溶媒混合物」という表現は、本明細書で互換的に使用され、互いに全て混和して均質の溶媒混合物となり得る、水と1つまたは複数の有機溶媒との混合物などの水性溶媒を含み、1つまたは複数の有機溶媒の容量百分率が、10%より高く、好ましくは15%より高く、より好ましくは20%より高い、2つ以上の溶媒の混合物をその意味するところに含む。好適な例は、例えば式3の化合物のクロマトグラフィー精製で溶離液として使用される、水とアセトニトリル(もしくは水/MeCN)の混合物、または例えば工程3)の縮合反応から生じる粗混合物の水を用いる希釈後に得られる、水/MeCN/DMACの混合物を含む。本発明の好ましい態様により、水性溶媒混合物(同様に、水性溶媒において、存在する場合)の1つまたは複数の有機溶媒は、危険性の高い溶媒または物質ではなく;実際、水性溶媒混合物は、好ましくは、TFA、TIPSおよび/またはDCMなどの危険性の高い溶媒を含まない。
【0036】
同様に、「水溶液」および「水性混合物」という表現は、それぞれ、水を含有する溶液または混合物をその意味するところに含む。好適な例は、それぞれ、1つまたは複数の化合物、例えば水中(より一般的には、水性混合物中)、または水性溶媒混合物中の試薬、酸、塩基もしくは反応生成物の溶液、および有機溶媒または溶媒混合物中の反応混合物への水または水溶液の添加から生じる水/有機混合物などの混合物を含む。
【0037】
本明細書において、用語「保護基」(例えば、式3の化合物に関して使用される)は、それが結合する基の機能を保持するために適した、保護する基を表す。特に、保護基は、カルボキシル官能基を保持するために使用される。より具体的には、該用語は、tert-ブチルエステルの形成によって、リガンドのカルボキシル基のキレート機能を保持するtert-ブチル基を表す[保護基および脱保護条件に関する一般的参照として、T.W.GreenおよびP. G. M. Wuts;Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley, N.Y. 1999, third editionを参照されたい]。
【0038】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「沈殿剤」は、本発明の製造方法による二量体錯体5の溶液に添加された場合、少なくとも工程6)の条件で、工程6)において添加される、アニオンであるかまたはアニオンを生じる薬剤を指す。そのようなアニオンは、遊離ガドリニウム金属イオンとのイオン結合を通して、本明細書で定義される不溶性ガドリニウム塩を生じることができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「不溶性ガドリニウム塩」は、本明細書で定義される沈殿剤の添加後に生じる塩を指す。不溶性ガドリニウム塩は、カチオンとしてのGd3+、および沈殿剤であるか、または沈殿剤によって生じる対イオンとしてのアニオンを含む。少なくとも、本発明の製造方法の工程6)の条件において、また好ましくは少なくとも濾過工程までの工程6)の下流工程の条件においても、不溶性ガドリニウム塩は、固体および濾過できる物理的形態で反応混合物内に存在し;これらの条件において、1質量部のガドリニウム塩を溶解するのに必要とされる溶媒の質量部は、好ましくは100以上、より好ましくは1,000以上、さらにより好ましくは10,000以上である。不溶性ガドリニウム塩の例は、リン酸ガドリニウムおよびシュウ酸ガドリニウムである。一方、用語「可溶性ガドリニウム塩」は、二量体リガンド4の錯体化を実行し、それによって錯体5を得るために、工程5)中に添加される可溶性ガドリニウム塩(典型的にはGdCl3)を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「遊離ガドリニウム金属イオン」は、溶液中に存在し、二量体リガンドによってキレート化されていない、[Gd(H2O)8]3+などのガドリニウムイオンを指す。
【0041】
本発明の一実施形態は、本質的に、以下の一般的な合成スキーム2
【化9】
に示される、二量体化合物5の製造方法に関し、
この方法は、主要工程として:
1)有機溶媒中のDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩を中和し、有機溶媒中のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの溶液を得ること;
2)D-グルカミンとエピクロロヒドリンとを反応させて、DMACなどの有機溶媒中の式2の化合物の溶液を得て、かつ生成物の単離を用いないこと;
3)工程2)からの式2の化合物と、工程1)からのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aとを、塩基の存在下で反応させ、溶液を任意で濃縮し、有機粗製物を得ることと、有機粗製物を、水、水/有機溶媒混合物および/または任意で水溶液で希釈し、水/有機粗製物を得ることと、水/有機粗製物を精製し、場合により有機溶媒を任意で除去して、式3の保護されたリガンドの水溶液または水性混合物を得;かつ生成物の単離を用いないこと、
4)工程3)からの式3の保護されたリガンドの溶液を、反応混合物の温度を40℃より高い温度まで加熱および/または維持しながら酸性化し、脱保護されたリガンド4の酸性水溶液または水性混合物を得、酸性溶液を中和し、得られた中性溶液を精製して、脱保護されたリガンド4の水溶液または水性混合物を得、かつ後者の単離を用いないこと、
5)モル過剰のガドリニウム金属イオンをリガンド4の溶液に添加し、対応する錯体化合物5の溶液を得ること;
6)対応する錯体化合物5の溶液に沈殿剤を添加して、遊離ガドリニウム金属イオンを不溶性ガドリニウム塩として沈殿させ、それによって対応する錯体化合物5の溶液を得ること;および
7)錯体を単離すること
を含む。
【0042】
工程1
本製造方法の第1の工程は、DO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩を、有機溶媒中で、塩基または塩基性塩の存在下で、遊離塩基に直接変換することによって、MeCNなどの有機溶媒中のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの溶液を調製することを含む。
【0043】
好ましい実施形態では、本製造方法の工程1)は:
i)DO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩を、塩基またはK2CO3などの塩基性塩と共に、MeCNなどの有機溶媒中で懸濁させて、形成された塩を含む懸濁液を得ること;
ii)懸濁液を濾過すること;および
iii)濾過した懸濁液を回収し、任意で濃縮して、後続する縮合反応におけるそのままの使用に好適な、有機溶媒中のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aの溶液を得、該エステルの精製または単離を必要としないこと
を含む。
【0044】
臭化水素酸エステルおよびK2CO3は、好ましくは、有機溶媒中、室温で懸濁させて混合物を得、撹拌下で、20~30℃、好ましくは約25℃の温度で、16~30時間、好ましくは18~20時間の間、維持される。次に、混合物は、好ましくは濾過によって処理し、形成された塩が除去される。
【0045】
好ましい実施形態では、濾過によって得られた溶液は、例えば溶媒の部分蒸留により熱濃縮し、55~65%、好ましくは約60%(w/w)の最終濃度を有するMeCN中のトリ-tert-ブチルエステル1Aの溶液を得、これは本製造方法の後続する縮合工程においてそのまま使用するのに適している。
【0046】
工程2
本工程は、D-グルカミンとエピクロロヒドリンとを反応させることによって、式2の中間体化合物の溶液を調製することを含む。一実施形態では、反応は、溶媒の混合物中で、好ましくは水/DMAC中で、化学量論的な量を超えるわずかな過剰のエピクロロヒドリン、例えば1モルのD-グルカミン当たり、2~3、より好ましくは約2.2モルのエピクロロヒドリンを使用することによって実行される。好ましくは、そのような工程2)の反応は、化学量論的な量を超えるわずかな過剰のエピクロロヒドリン、例えば1モルのD-グルカミン当たり、2~3モル、より好ましくは2.05~2.5モル、さらにより好ましくは約2.2モルのエピクロロヒドリンを使用することによって実行される。
【0047】
好ましい実施形態では、本製造方法の工程2)は:
i)D-グルカミンの水溶液を、DMAC中のエピクロロヒドリンの溶液に添加し、水/DMAC溶媒混合物中の式2の中間体化合物を得ること;および
ii)溶媒混合物から水を除去し、有機溶媒中の式2の化合物の溶液を得ること
を含む。
【0048】
D-グルカミンをエピクロロヒドリンの溶液への添加は、好ましくは室温で、約2時間で実行されて、混合物を得、それは、撹拌下で、15~30℃、好ましくは15~25℃、より好ましくは20~25℃の温度で、16~24時間、好ましくは16~20時間、より好ましくは約17時間の間、保持される。
【0049】
次に、混合物は、水および場合によりエピクロロヒドリン残留物を除去するために蒸留される。蒸留は、好ましくは減圧下で、好ましくは40~65℃の温度で実行され、好ましくは<2%w/wの残留水含有量を有する、DMAC中の式2の所望の中間体化合物の溶液が得られる。次に、得られた溶液は、生成物の単離または精製を必要とすることなく、後続する縮合反応でそのまま使用される。
【0050】
工程3
本工程は、本質的に、Et3N、またはより好ましくはDIPEAなどの塩基の存在下での、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aと中間体2との縮合を含む。縮合は、好ましくは、塩基および工程1)からのMeCN中のエステル1Aの溶液と、工程2)から直接回収されたDMAC中の中間体2の溶液とを混和することによって実行され、MeCN/DMAC有機溶媒の混合物中の式3の保護されたリガンドを含む原溶液(または粗製物)を得、これは次に精製される。
【0051】
一実施形態では、縮合反応から生じる有機粗溶液は、水で希釈されるかまたは部分的に濃縮され、次に水または水性溶媒混合物、好ましくは水/MeCNで希釈され、水/有機粗製物、または本明細書で互換的に使用される水性粗製物が得られる。
【0052】
好ましい実施形態では、このようにして得られた水/有機粗製物、または好ましくは縮合反応から生じる有機粗製物は、DO3Aトリ-tert-ブチルエステル塩酸塩を含む反応塩の沈殿を促す水溶液が添加され、これは次に濾過によって除去され、水/有機濾過溶液が得られる。水/有機粗製物または水/有機濾過溶液は、次に、好ましくはクロマトグラフィーによって精製される。
【0053】
一実施形態では、塩酸塩の沈殿を促すために使用される水溶液は、アンモニア水である。
【0054】
より具体的には、本製造方法の工程3)は、好ましくは:
i)工程2)からの式2の中間体化合物を、塩基、好ましくはDIPEAの存在下で、工程1)からのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aと縮合させ、有機溶媒混合物中の式3の縮合生成物および反応塩を含む有機粗溶液を得ること、ならびに任意で有機粗製物を濃縮すること;
ii)工程i)の有機粗製物を、水または水/有機溶媒混合物、好ましくは水/MeCNで希釈し、水/有機粗製物を得ること;
iii)任意で、水/有機粗製物に、反応塩の沈殿を促す水溶液を添加し、濾過によって沈殿を除去し、水/有機濾過溶液を得ること;または
iv)反応塩の沈殿を促す水溶液で、工程i)の有機粗製物を希釈し、濾過によって沈殿を除去し、水/有機濾過溶液を得ること;
v)工程ii)の水/有機粗製物、または工程iii)もしくはiv)の水/有機濾過溶液を精製し、水/有機溶媒混合物中の式3の保護されたリガンドの溶液を得、これは、保護された生成物の単離またはさらなる精製を必要とすることなく、本製造方法の次の脱保護工程で使用され得ること;および
vi)任意で混合物から有機溶媒を除去し、水中、またはより一般的に水性溶媒中の式3の保護されたリガンドの溶液を得、これは、保護された生成物の単離またはさらなる精製を必要とすることなく、本製造方法の次の脱保護工程で使用されること
を含む。
【0055】
縮合反応は、好ましくは、塩基および本製造方法の工程1)から回収されたMeCN中のエステル1Aの溶液を、工程2)から回収されたDMAC中の式2の中間体化合物の溶液に添加することによって実行される。
【0056】
塩基およびエステル1Aの好適な量は、反応したD-グルカミンの量に対して好都合に決定される。一実施形態では、縮合反応は、反応させる出発物質のD-グルカミンの1モル当たり、1.6~2.4モル、好ましくは約1.8モルのエステル1A、および2~4モル、好ましくは約2.3モルのDIPEAを使用することによって実行される。
【0057】
添加は、好ましくは40~50℃の温度で実施される。次に、縮合反応は、50~80℃、好ましくは65~75℃の温度で、例えば60~80時間、好ましくは70~75時間の間で実行され、MeCN/DMAC溶媒混合物中の所望の式3の縮合生成物および塩酸塩を含む原溶液を得る。
【0058】
一実施形態では、次に、原溶液は水で希釈され、好ましくは、約25~30%、より好ましくは約25%(w/w)の濃度を有する水/有機粗製物を得る。好ましい一実施形態では、水性粗製物は、重量で、混合物中の有機溶媒、特にMeCNの量と少なくとも等しい量の水を含み;より好ましくは、粗製物は、約60:40の水:MeCN比を有する。
【0059】
水/有機粗製物は、次に、好ましくはクロマトグラフィーによって、より好ましくは樹脂で、さらにより好ましくはAmberlite XAD(登録商標)1600などの吸着性樹脂で精製される。好ましい実施形態では、水性粗製物は、Amberlite XAD(登録商標)1600などの吸着性樹脂で、水/MeCN混合物を溶離液として使用することによって精製され、未反応DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aと純粋な縮合生成物の両方を、水/MeCN溶媒混合物中の別々の画分として得ることを可能とする。
【0060】
別の実施形態では、縮合反応から生じる原溶液は、最初に、少なくともMeCNを、例えば蒸留によって除去することによって濃縮される。濃縮された溶液は、次に、水または水:MeCNの混合物で希釈され、上記の水:MeCN比を有する水/有機粗製物を得ることが可能であり、次に、これは上述したようにクロマトグラフィーによって精製される。
【0061】
場合により、上述したように得られた水/有機粗製物は、アンモニア水などの水溶液を添加されてもよく、これは混合物の冷却によって、塩酸塩としての未反応DO3Aトリ-tert-ブチルエステルの沈殿を促し、これを次に濾過によって除去し、再利用してもよい。大部分の塩化物塩を失った濾過溶液は、次に、上述したようにクロマトグラフィーによって、Amberlite XAD(登録商標)1600樹脂などの吸着性樹脂で精製され、残留DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aおよび純粋な縮合生成物を、水/MeCNなどの水/有機物の溶媒混合物中の別々の画分として得る。
【0062】
好ましい実施形態では、例えばアンモニア水を含む水溶液が、縮合反応から生じる有機原溶液に直接添加され、混合物の冷却によって、塩酸塩としての未反応DO3Aトリ-tert-ブチルエステルの沈殿を促し、これを次に濾過によって除去し、再利用してもよい。大部分の塩化物塩を失った濾液は、次に、上述したようにクロマトグラフィーによってAmberlite XAD(登録商標)1600樹脂などの吸着性樹脂で精製され、残留DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aおよび純粋な縮合生成物を、水/MeCNなどの水/有機物の溶媒混合物中の別々の画分として得る。
【0063】
任意で、純粋な画分からの、例えば減圧下での、有機溶媒の最終蒸留により、5~15%(w/w)、好ましくは約10%(w/w)の最終濃度を有する水溶液中の式3の縮合生成物が得られ、これは中間体の単離または追加の精製を必要とすることなく、後続する脱保護工程においてそのまま使用するのに適している。
【0064】
興味深いことに、上記手順の工程は、水性溶媒または水性溶媒混合物中の、保護された縮合生成物3を得ることを可能にし、したがって、唯一のまたは主要な反応溶媒の1つとして、水、およびより一般的に水性溶媒または水性溶媒混合物を使用することによって、その最終錯体5への脱保護および錯体化を実行することを可能にする。水性溶媒中の保護された縮合生成物3は、当業者に公知のさまざまな方法によって得ることができる。例えば、上述のように、例えば、工程2)からの式2の化合物と工程1)からのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを反応させることによって得られる式3の化合物の有機粗溶液は、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈されて、水/有機粗製物を得ることができる。有機溶媒の除去の前に、水/有機粗製物は、クロマトグラフィーを介して、好ましくは樹脂を介して、より好ましくはAmberlite XAD(登録商標)1600などの吸着性樹脂を介して、精製され得る。次に、有機溶媒が除去されて、式3の化合物の水溶液を、例えば蒸留によって、例えば減圧下で得ることができる。また、水性溶媒混合物中の保護された縮合生成物3は、当業者に公知のさまざまな方法によって得ることもできる。例として、例えば工程2)からの式2の化合物と工程1)からのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを反応させることによって得られる式3の化合物の有機粗溶液は、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈されて、水/有機溶液を得て、生成物3の単離を用いることなく、後続工程で使用することができる。
【0065】
したがって、本発明の好ましい態様により、工程3)は、式3の化合物の溶液を、式3の化合物の水溶液に、または水性混合物に変換するさらなる工程をさらに含んでもよい。好ましくは、このさらなる工程は:(i)式3の化合物の溶液を、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈し、水性混合物(または水/有機溶液)を得ること、および(ii)任意で、有機溶媒を、例えば蒸留によって除去し、こうして水溶液を得ることによって実行される。
【0066】
工程4
この工程は、式3の保護されたリガンドの脱保護を含み、カルボキシル保護基を除去することによって、遊離リガンド4の水溶液または水性混合物が得られる。この反応は、好ましくは、本製造方法の工程3)から直接回収された、式3の保護されたリガンドの水溶液または混合物の酸性化によって、さらにより好ましくは、溶液の酸性化中および/または酸性化後に、反応混合物の温度を40℃より高い温度まで加熱および/または維持することによって実行される。
【0067】
一実施形態では、本製造方法の工程4)は:
i)工程3)から回収された式3の化合物の水溶液または水性混合物に酸を添加し、そのような添加の次におよび/または添加中に、溶液の温度を40℃より高く、好ましくは40℃より高く60℃まで、より好ましくは45~55℃の範囲内の温度に加熱および/または維持し、遊離リガンド4の酸性溶液を得ること;
ii)酸性溶液に塩基を添加し、実質的に中和されたリガンド4の溶液を得ること;および
iii)任意で、中和された溶液を精製し(例えば蒸留を介して)、次いで任意で濃縮し、遊離リガンド4の水溶液または水性混合物を得、これはリガンドの単離を必要とすることなく、次の錯体化反応においてそのまま使用するのに適していること
を含む。
【0068】
一実施形態では、式3の保護された化合物の溶液は、酸、好ましくは無機酸、より好ましくは34%のHCl水溶液などの1価の負電荷を有する対イオンを含む無機酸の添加によって酸性化される。1価の負電荷を有する対イオンを含む無機酸は、これらの酸が遊離ガドリニウム金属イオンと相互作用する傾向がないため、かつこれらが下流の、任意で実施される精製プロセス(例えばナノ濾過)中により容易に除去され得るために特に好ましい。
【0069】
この脱保護工程4)は、特に上記の温度範囲内で実行される場合、24時間未満、例えば8~20時間、好ましくは12~18時間の範囲内、より好ましくは16時間の非常に短い脱保護時間、具体的には反応時間を得ることが可能となるため、非常に有利である。
【0070】
その上、この脱保護工程4)は、特に上記の温度範囲内で実行される場合、低量の酸を使用することによって、保護された二量体リガンドの脱保護を提供する。実際、酸性化は、保護された化合物3の1モルに対して、例えば10~45モル、好ましくは10~35モル、より好ましくは15~25モルの量の酸、例えば上記のものなど、好ましくはHClを使用することによって実施される。これは、試薬の節約、同様に脱保護工程中の塩の生成を低減するという利益をもたらす。例えば、溶液を酸性化するためにHClが使用される場合、低量のHClを使用することが、後続して、脱保護された二量体リガンドを中和するためにNaOHが使用される場合に形成されるNaCl塩の量を低減し;同様の例が、また、他の酸および塩基が工程に使用される場合にもたらされ得る。
【0071】
上述のように、酸の添加中および/または好ましくは添加後に、溶液の温度は、好ましくは40℃より高く、より好ましくは40℃より高く60℃まで、さらにより好ましくは45~55℃の範囲内の温度に加熱および/または維持される。次に、得られた溶液は、例えばクロマトグラフィーによるリガンドの脱保護に続いて、撹拌下で、上記の温度範囲内で、24時間未満、例えば8~20時間、好ましくは12~18時間の範囲内、より好ましくは16時間の間、維持される。
【0072】
次に、酸性溶液は冷却(例えば25℃)され、次に、塩基、好ましくはNaOHの添加によって中和され、4~7、好ましくは5~6、より好ましくは5.3~5.7、さらにより好ましくは5.5までの最終pHを有する原溶液が得られ、これは次に精製され得る。
【0073】
本明細書に開示されるように脱保護工程4)を実行することによって、対応する脱保護された二量体リガンド4とアルコール(t-ブタノール)を含む溶液が得られる。したがって、さらに好ましい実施形態によれば、好ましくは錯体化工程5)の前に、tBuOHは、脱保護された二量体リガンド4を含む溶液から、好ましくは溶液の蒸留によって除去される。好ましい実施形態によれば、二量体リガンド4を含む溶液は、二量体リガンド4の最終濃度が、8%~12%(w/w)、より好ましくは9%~11%(w/w)の範囲、さらにより好ましくは10%(w/w)で含まれるまで蒸留される。
【0074】
有利には、上記手順は、水を単独でまたは主要反応溶媒の1つとして使用することを含み、有機溶媒、特に上述の先行技術のプロセスに必要とされるDCMなどの危険性の高い溶媒、ならびにTFAおよびTIPSなどの危険性の高い反応物の使用が回避または低減される。これらの危険性の高い物質は取り扱いが困難であり、したがって大規模製造における使用には適さない。その上、この工程は、水溶液または水性混合物中で所望のリガンドが得られ、単離を必要とすることなく、錯体化反応にそのまま使用できる。
【0075】
工程5
本工程は、ガドリニウムイオンを用いて式4の二量体リガンドを錯体化し、所望のキレート化錯体5の水溶液または水性混合物を得ることを含む。
【0076】
より具体的には、本工程は、好ましくは、GdCl3などのモル過剰の可溶性ガドリニウム塩を、工程4)から回収されたリガンドの溶液に添加して、二量体キレート化錯体5を含む混合物を得ることを含む。
【0077】
式4の脱保護された二量体リガンドは2つのキレート化部分を有し、1つの二量体リガンドは、2個のガドリニウム金属イオンをキレート化することができるので、用語「モル過剰」は、本発明の製造方法の工程5)に言及する場合、式4の二量体リガンドのモル量の2倍より多いガドリニウム金属イオンのモル量を指す。したがって、用語「モル過剰」は、本発明の製造方法の工程5)に言及する場合、1モルの二量体リガンドに対して、2モルを超えるガドリニウム金属イオンを指す。例えば、式4の脱保護された二量体リガンドの1モルに対して、2.05モル以上、好ましくは2.05~2.50モル、より好ましくは2.20モルまで、さらにより好ましくは2.12モルまでのガドリニウム金属イオンが、工程4)の溶液に添加される。
【0078】
この反応は、好ましくは、本製造方法の前工程から回収されたリガンドの溶液に、GdCl3を直接添加することによって実行される。添加は、好ましくは、20~50℃、より好ましくは30~45℃、さらにより好ましくは37~43℃の範囲内の温度で実施される。工程5)によりガドリニウムイオンを添加した後、反応混合物は、好ましくは、後続工程を実行する前に、例えば上に記載した温度範囲で、1~5時間、より好ましくは2~4時間の間、維持される。
【0079】
添加後、得られた混合物のpHは、例えば塩基、好ましくはNaOHの添加によって、例えば上に記載した時間および/または温度で、5.0~7.0、より好ましくは5.0~6.0の範囲の値に調整される。
【0080】
上述のように、工程5)は、モル過剰のガドリニウム金属イオンの添加によって、錯体化工程の反応物の正確な秤量および表題物の決定という負担が大幅に低減され、それによってプロセス全体のロバスト性が改善されるため、特に有利である。本製造方法は、特にロバスト性があり、再現可能かつ効率的であるため、大規模製造においてより容易に実施できる。
【0081】
好ましい実施形態によれば、工程5)の後および場合により工程6)の前に、本発明の製造方法は、式5の二量体錯体の溶液を、好ましくはナノ濾過を介して脱塩するさらなる工程を含む。この脱塩(例えばナノ濾過)工程は、錯体化工程で生成された塩、例えば可溶性ガドリニウム塩の添加後に生じた塩、同様に脱保護工程4)で生じた塩を除去することを可能にする。脱塩工程は、遊離ガドリニウム金属イオンも、モノ-ガドリニウム化錯体も除去するものではなく、沈殿剤を除去するための後続の工程を改善するために、塩を除去するのに有用である。
【0082】
脱塩工程は、溶液の伝導率値が、5.0mS/cm以下、好ましくは1mS/cm以下、さらにより好ましくは0.8mS/cm以下となるまで実行され得る。
【0083】
工程6
本発明の製造方法の工程6)は、前工程の溶液に沈殿剤を添加して、溶液中に存在する遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させる。実際、この工程は、遊離ガドリニウム金属イオン、具体的にはその大部分を沈殿させることを可能にし:以下の実験の項に示されるように、沈殿工程6)は、錯体化工程5)の後に存在する遊離ガドリニウム金属イオンの大部分を沈殿させることを可能にし、それによって、遊離ガドリニウム金属イオンの含有量は、(二量体錯体5の量に対して)およそ数万ppmから、たった100ppmさらには数十ppm程度にまで低減される。具体的には、この工程は、ガドリニウム錯体5の量に対する遊離ガドリニウム金属イオンの量が、350ppm未満、好ましくは150ppm未満、より好ましくは100ppm未満である、二量体錯体5を含む溶液の製造を提供する。本発明によれば、例えば沈殿工程前のppm値のような遊離ガドリニウム金属イオンの高いppm値、または実施例8の酒石酸水素カリウムの添加後、もしくは一般に4000ppm以上のppm値は、キシレノールオレンジの存在下でEDTAを用いる慣用の錯滴定によって決定され、一方、例えば沈殿工程後のppm値のような遊離ガドリニウム金属イオンの低いppm値、または一般に4000ppm未満のppm値は、以下の実験の項に記載する手順5を実行することによって決定される。
【0084】
遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させると同時に、モノ-ガドリニウム化錯体の生成を回避するため、沈殿剤は、好ましくはリン酸イオン(PO4
3-)、リン酸一水素イオン(HPO4
2-)、リン酸二水素イオン(H2PO4
-)、オルトリン酸(H3PO4)、シュウ酸イオン(C2O4
2-)、シュウ酸水素イオン(HC2O4
-)、およびシュウ酸(H2C2O4)からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましくは、沈殿剤は、リン酸イオン(PO4
3-)、シュウ酸イオン(C2O4
2-)、およびリン酸一水素イオン(HPO4
2-)からなる群から選択される少なくとも1つのアニオンであり、より好ましくはリン酸一水素イオン(HPO4
2-)である。
【0085】
モノ-ガドリニウム化錯体は、二量体リガンド5が、ガドリニウムイオンが2個ではなく、1個のみをキレート化しているGd(III)錯体である。これらのモノ-ガドリニウム化錯体は、ジ-ガドリニウム化Gd(III)錯体5の好ましい緩和時間測定の特性を示さない。モノ-ガドリニウム化錯体は、ジ-ガドリニウム化錯体と非常に類似した物理的特徴を有するため、これらのモノ-ガドリニウム化錯体を、錯体化工程から得られた溶液から効率的に除去することは、厄介で困難である。したがって、工程6)の好ましい実施形態は、錯体化工程の間または工程後に、モノ-ガドリニウム化錯体の生成を可能な限り回避する;このことは、より多くのモノ-ガドリニウム化錯体を含む二量体ガドリニウム錯体の溶液を生じる上述の先行技術で開示されるプロセスと比較して、まさにその通りである。
【0086】
工程6)の好ましい実施形態によれば、沈殿剤は、好ましくは、工程5)から得られた式5の二量体錯体の溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンに対して、少なくとも化学量論的な量で添加される。有利なことに、沈殿剤は、工程5)から得られた式5の二量体錯体の溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、少なくとも1.1モルの量で、好ましくは1.1~5モル、より好ましくは1.2~3モル、さらにより好ましくは1.4~2.5モル、最も好ましくは1.4~1.6モルの量で添加される。また実験の項において比較例によっても実証されたように、これらの好ましい量の沈殿剤を添加することで、任意での濾過工程後および任意でのさらなる精製工程前に、低量の遊離ガドリニウム金属イオン(すなわち上で規定されたものより低量の遊離ガドリニウム金属イオン)と、低量のモノ-ガドリニウム化錯体(すなわち550ppmより低量の、好ましくはモノ-ガドリニウム化錯体の量を決定するために使用される方法のLoQより低量(ガドリニウム錯体の量に対して<400ppm)の錯体)の両方を含有する溶液が得られる。反対に、沈殿剤が、工程6)において上記の好ましい量に対してより多量に添加される場合、得られた溶液は、多量のモノ-ガドリニウム化錯体(すなわち600ppmより多量)を含有する場合がある。モノ-ガドリニウム化錯体のこれらのppm値、同様に本発明におけるモノ-ガドリニウム化錯体の全てのppm値は、以下の実験の項に提示される手順6を実行することによって決定される。
【0087】
本発明の製造方法の工程6)が、上で規定された好ましい量の沈殿剤を添加することによって実施される場合、本発明の製造方法は、好ましくは、沈殿剤を添加する前に、工程5)から得られた式5の二量体錯体の溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量を決定するさらなる工程を含み、それによって、上で規定された好ましい量で沈殿剤が添加され得る。この決定工程は、遊離ガドリニウム金属イオンの量を決定するための公知の方法により、例えば本明細書に開示される方法により実施され得る。
【0088】
工程6)は、好ましくは、溶液の温度を15~40℃、より好ましくは20~30℃の範囲内に維持することによって実施される。沈殿剤を添加した後、反応混合物は、好ましくは、任意での後続工程を実施する前に、例えば上記の温度範囲で、1~4時間、好ましくは1.5~3時間、より好ましくは2時間の間、維持される。
【0089】
好ましい実施形態では、工程6)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHは、4.5以上、好ましくは4.7以上、より好ましくは4.9以上、さらにより好ましくは5.5以上の値に、例えば上に記載した時間および/または温度で、調整および/または維持される。好ましくは、このpHは、少なくとも、沈殿した不溶性ガドリニウム塩がガドリニウム錯体の溶液から濾別されるまで維持される。また比較例によって以下の実験の項において実証されたように、出願人は、驚いたことに、pHをこれらの値に調整および/または維持しつつ遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させることにより、任意での濾過工程後および任意でのさらなる精製工程前に、特に低量のモノ-ガドリニウム化錯体を含有する溶液(例えばガドリニウム錯体に対して、550ppmより低量、好ましくは400ppmより低量のモノ-ガドリニウム化錯体を含有する溶液)が得られることを見出した。
【0090】
さらなる好ましい実施形態によれば、工程6)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHは、上に示した値より高く、かつ10.0以下、好ましくは9.0以下、より好ましくは8.5以下、さらにより好ましくは7.5以下、最も好ましくは6.5以下になるように、例えば上に記載した時間および/または温度で、調整および/または維持され得る。好ましくは、このpHは、少なくとも、沈殿した不溶性ガドリニウム塩がガドリニウム錯体の溶液から濾別されるまで維持される。出願人は、驚いたことに、これらのpH値未満で操作することによって、沈殿工程後および任意でのさらなる精製工程前の溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量が、特に低下することを見出した。
【0091】
より好ましい実施形態によれば、工程6)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHは、4.5~9.0、より好ましくは4.7~8.5、さらにより好ましくは4.9~7.3、最も好ましくは6~6.5または5.5~6.5の範囲に、例えば上に記載した時間および/または温度で、調整および/または維持され得る。好ましくは、このpHは、少なくとも、沈殿した不溶性ガドリニウム塩がガドリニウム錯体の溶液から濾別されるまで維持される。出願人は、驚いたことに、上に示した範囲内にpHを調整および/または維持することにより、任意での沈殿工程後および任意でのさらなる精製工程前に、特に低い含有量の遊離ガドリニウム金属イオンおよびモノ-ガドリニウム化錯体を有する溶液(例えば、pHがそのようなpHに調整および/または維持されない同じプロセスと比較して低い含有量を有する溶液)を得ることが可能となることを見出した。
【0092】
pH調整は、例えばHClのような好適な酸、または例えばNaOHのような好適な塩基を溶液に添加することによって行うことができる。この調整は、沈殿剤の添加によって起きる可能性があるpH変化を相殺するのに特に有用である。沈殿剤の添加により、得られた溶液のpHが、上に開示された好ましい範囲から外れるようなpHの変化が起こらない場合(例えば、沈殿剤のpKaが上記の好ましい値内であるため、および/または沈殿剤が低量で添加されることによって、得られた溶液のpHが、上に開示された好ましい範囲から外れないため)には、pH調整は必要とされないことは明らかである。
【0093】
好ましくは、上に開示された好ましい値によるpHは、少なくとも、沈殿した不溶性ガドリニウム塩がガドリニウム錯体の溶液から濾別されるまで維持される。
【0094】
さらに好ましい実施形態では、工程6)の後に、好ましくは工程7)の前に、本発明の製造方法は、沈殿剤の添加後に得られたガドリニウム錯体5の溶液を濾過し、沈殿した不溶性ガドリニウム塩を溶液から除去する工程をさらに含み、それによって沈殿した不溶性ガドリニウム塩はそのような溶液から分離される。この濾過工程は、当技術分野で公知の濾過方法により、例えば医薬用メンブレンフィルターを使用することによって実施され得る。
【0095】
さらに好ましい実施形態では、本発明の製造方法は、工程6)の後に得られたガドリニウム錯体の溶液を処理して、遊離ガドリニウム金属イオンと反応して不溶性ガドリニウム塩を形成しなかった沈殿剤(存在する場合)を除去するためのさらなる工程を含む。この処理工程は、遊離ガドリニウム金属イオンも、モノ-ガドリニウム化錯体も除去しない。
【0096】
この処理工程は、例えば、ガドリニウム錯体の溶液を、少なくとも1つのイオン交換樹脂に、好ましくは1~3BV/時の流速でロードすることによって実施され得る。代替的に、または錯体を少なくとも1つのイオン交換樹脂にロードするとともに、処理工程は、(A)二量体錯体5の溶液に、沈殿剤であるかまたは沈殿剤によって生じるアニオンを沈殿させることが可能なカチオンを添加し、それによって、少なくともそのようなアニオンをそのようなカチオンと共に塩として沈殿させることと、(B)上に開示されたものなどの濾過工程によって、そのように形成された塩を除去することとによって実施され得る。有利なことに、沈殿した不溶性ガドリニウム塩と、沈殿剤および沈殿カチオンによって形成された塩の両方を除去するために、1回のみの濾過工程が実施され得る。
【0097】
一実施形態では、本発明は、工程6)の後に、好ましくは沈殿剤を除去するための処理工程(実施される場合)の後に、少なくとも1つのさらなる精製工程を含む。このさらなる精製工程は、可能な限り低い含有量の遊離ガドリニウム金属イオンを有するガドリニウム錯体の溶液を得るために、工程6)の沈殿後に存在する、遊離ガドリニウム金属イオンの残留量をさらに低減するのに有用である。具体的には、本発明の製造方法のこの実施形態によれば、大部分の遊離ガドリニウム金属イオンが、沈殿工程6)(ここで遊離ガドリニウム金属イオンの量は、ガドリニウム錯体5に対して、数千ppmから数百、またはさらには数十ppmまで低減される)によって除去され、より小部分が、少なくとも1つのさらなる精製工程によって除去される。
【0098】
さらなる精製工程は、好ましくはクロマトグラフィーによって、好ましくは吸着性樹脂などの樹脂で実施される。
【0099】
一実施形態では、さらなる精製工程は、ポリマー樹脂、好ましくはAmberlite XAD(登録商標)1600樹脂での、錯体化反応から生じる混合物の溶離を含む。
【0100】
別の実施形態では、精製は、例えばHi Trap IMAC FF、Lewatit MonoPlus TP 260、Lewatit TP 208、IRC748I、DIAION CR11、SiliaMets AMPAおよびSiliaMets DOTA、好ましくはDiaion CR11およびAmberlite IRC748から選択されるキレート化樹脂での、錯体化反応から生じる混合物の第1の溶離を含み、遊離ガドリニウム含有量を最小限度に抑え、回収された溶離液の、Amberlite XAD(登録商標)1600樹脂などのポリマー樹脂での追加の精製を可能にする。
【0101】
実際の実施では、ほぼ中性のpH値に調整された混合物は、Amberlite XAD(登録商標)1600樹脂での溶離によって適切に精製される。
【0102】
あるいは、より低い値(例えば5~5.6)への溶液pHの調節から生じる混合物は、好ましくはAmberlite IRC748またはDiaion CR11樹脂などのキレート化樹脂で最初に溶離される。回収された溶離液は、次に、好ましくは、約5.5~6のpH値に再調整され、好ましくは真空下で50℃にて濃縮されて、好ましくは約25%(w/w)の濃度を有する二量体錯体の水溶液または水性混合物を得て、これは次にAmberlite XAD(登録商標)1600樹脂で精製される。
【0103】
回収された画分は、次に、活性炭で処理し、濾過してもよい。得られた濾過溶液は、次に、好ましくは、例えば真空下で45~55℃にて蒸留によって濃縮されて、約25%(w/w)の最終濃度を有する二量体錯体5の溶液を得る。
【0104】
工程7
次に、式5の二量体錯体は単離される。錯体は、例えば凍結乾燥によって、または噴霧乾燥によって、工程6)からの水溶液または水性混合物から単離され得る。好ましい一実施形態では、所望の二量体錯体は、本製造方法の工程6から直接回収された溶液を噴霧乾燥することによって、白色固体として得られる。
【0105】
遊離塩基DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aとしての、限定した反応物から決定された本製造方法の全体の収率は、30%より高く、例えば33%などである。
【0106】
興味深いことに、上記方法は、ワンポットで実施される工程を含み、これは大規模での実施に好適であり、調製された前駆物質(式1Aの化合物など)または反応中間体のいずれも単離を必要としない。結果として、本発明の合成手法の目的は、WO2017098044に開示されたプロセスと比較して、全体の収率における>3倍の増加を有する最終生成物を得ることを可能にする。
【0107】
加えて、中間体の単離がないことから、全体のプロセス時間の低減が可能となる。
【0108】
さらに、提案された製造方法は、カップリング生成物3の調製に続く全ての工程において、反応溶媒として水、またはより一般に水性溶媒もしくは水性溶媒混合物の使用を含む。特に、式3の化合物が工程3)で有機溶媒中で調製された場合、例えば、工程2)からの式2の化合物と、工程1)からのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aとを反応させることによって調製される場合、有機溶媒は、当業者に公知の方法によって、水性溶媒または水性混合物に置換し、例えば最初に、式3の化合物の有機溶液を、水、水/有機溶媒混合物、または水溶液で希釈することによって、次に有機溶媒を任意で除去することによって、式3の化合物の水溶液を得る。カップリングの調製に続く全ての工程において、反応溶媒として水性溶媒または水性溶媒混合物を使用することは、特に費用、環境的影響、および産業規模における実施の容易さの観点から非常に有利である。実際、WO2017098044で開示されたプロセスは、DCMなどの溶媒ならびにTFAおよびTIPSなどの物質を使用しており、これらは高価であるうえに、また、特にプロセスを産業規模とする場合に、取り扱いが困難であり、また安全ではない恐れがある。本発明の製造方法は、式3の化合物の調製に続く全ての工程において、水性溶媒または水性溶媒混合物を使用することによって、有機溶媒の使用を回避するかまたは大いに低減するため、大規模で作業するのに、例えば産業プロセスでの実施に関して、後者は好適であり、容易に実施できるため、先行技術の製造法の問題は、本発明によって解決される。その上、本発明の製造方法によって、驚いたことに、式3の化合物の調製に続き、水性溶媒または水性溶媒混合物のみを使用することを含む場合でも、単離された二量体錯体の非常に高い収率、特に、先行技術の製造法の収率より高い収率がもたらされる。
【0109】
また、本発明のプロセス全体は、先行技術WO 2017/098044のプロセスと比較して、よりロバスト性があり、より速く、より安全であり、より高い収率を有し、より純粋な生成物が得られる。
【0110】
上述の全ての利点を考慮すると、本発明の製造方法は、二量体錯体5の大規模合成に容易に実施できることが理解され得る。
【0111】
エピクロロヒドリン、D-グルカミン、およびDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩などの反応物を含む、全ての溶媒および出発物質は、市販されているか、または公知の手順により得ることができる。
【0112】
好ましい実施形態では、エステル1Aの溶液の調製のための出発物質として使用されるDO3Aトリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩は、同時係属中の特許出願EP19215900.2(本出願と同一出願人)に記載される製造方法および本明細書の実験の項において以下に例示される製造方法を使用することによって調製され、使用まで保存される。
【0113】
本発明の範囲を限定することなく、より詳細を例示することを目的として、本発明の製造方法の好ましい実施形態の非限定的な実施例を以下の項に記載する。
【0114】
実験パート
略語および用語の定義
DO3Aトリ-tert-ブチルエステル:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸トリ-tert-ブチル
DO3Aトリ-tert-ブチルエステル-HBr:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸トリ-tert-ブチル臭化水素酸塩
TAZA:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン
tBuOK カリウムtert-ブトキシド
DMAC N,N-ジメチルアセトアミド
DMC ジクロロメタン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
HCl 塩酸
MeCN アセトニトリル
NaOH 水酸化ナトリウム
NH3 アンモニア
MRI 磁気共鳴画像法
MeCN アセトニトリル
NMM N-メチルモルホリン
K2CO3 炭酸カリウム
TFA トリフルオロ酢酸
TIPS トリイソプロピルシラン
FLD 蛍光検出器
UV/Vis 紫外(Unltraviolet)/可視
【0115】
得られた化合物のHPLC特徴付けおよび遊離ガドリニウム金属イオン(遊離-Gd)またはモノ-ガドリニウム化錯体(モノ-Gd)の決定
手順1:DO3A-トリ-tert-ブチルエステルのHPLC特徴付けおよび分析結果の決定
クロマトグラフィー条件
HPLCシステム 溶媒デリバリー系、オートサンプラー、カラム恒温装置、脱ガス装置およびダイオードアレイ検出器もしくは可変波長検出器(または同等のもの)を装備した液体クロマトグラフ(例えばAgilent 1100)。
固定相: Zorbax Eclipse XDB-C8、5μm、150×4.6mm
カラム温度 45℃
移動相: A:0.01MのK2HPO4、0.017MのH3PO4
B:アセトニトリル
溶離:勾配 時間(分) %B
0 5
30 80
35 80
38 5
45 5
流速 1mL/分
温度 45℃
検出 UV、210nm、Bw=8nm;参照 360nm、Bw=100nm
注入容量 10μL
停止時間 35分
参照ピーク DO3A 3tBu
保持時間 DO3A 3tBu 約14~15分
【0116】
手順2:中間体2の形成をモニターするためのHPLC法
この方法は、D-グルカミンのアルキル化の終了時および水の蒸留後に、混合物をモニターするために利用される。
クロマトグラフィー条件
HPLCシステム:溶媒デリバリー系、オートサンプラー、カラム恒温装置、脱ガス装置およびダイオードアレイ検出器もしくは可変波長検出器(または同等のもの)を装備した液体クロマトグラフ(例えばAgilent 1100)
固定相: SeQuant ZIC-cHilic 3μm、150×2.1mm(Merck P.N.1.50658.0001)
カラム温度: 40℃
移動相: 勾配溶離
溶離液A=5mMの酢酸アンモニウム
溶離液B=ACN/MeOH、75/25
溶離:勾配 時間(分) %B
0 97
5 97
30 20
40 20
45 97
60 97
流速: 0.25mL/分
検出: UV、210~240nm
注入容量:10μL
実施時間:60分
希釈溶液 ACN/MeOH、75/25
試料調製:200μLの5mMの酢酸アンモニウム溶液を、75μLの混合物に添加し、希釈溶液で5mLまで希釈する。
【0117】
手順3:中間体3の形成および精製をモニターするためのHPLC法
一般手順
この方法は、中間体3の形成および精製の工程をモニターするために使用される。
分析条件
HPLCシステム 液体クロマトグラフ Agilent 1100
固定相:Gemini、5μm、250×4.6mm(Phenomenex、アイテム 00G-4435-EO)
カラム温度 40℃
移動相:A:移動相A
B:MeCN
溶離:勾配 時間(分) %B
0 40
5 40
30 90
35 90
36 40
45 40
流速 0.7mL/分
検出 UV/210nm
注入容量 10μL
停止時間 45分
INT 2 Rt 21分
【0118】
移動相A
溶液の調製
1000mLのメスフラスコに、2.0gの酢酸アンモニウムを正確に量り取り、次に水で定容まで希釈する。1000mLのメスフラスコに、600mLの酢酸アンモニウム溶液および300mLのメタノールを移す。30分間、超音波処理する。
【0119】
手順4:キレートリガンド4の形成および精製をモニターするためのHPLC法
一般手順
二量体リガンド4の形成および精製を、210nmにおけるUV検出を備える逆相HPLCによってモニターした。
分析条件
HPLCシステム 液体クロマトグラフ Agilent 1260 Infinity
固定相:Synergi Polar-RP、4μm、150×4.6mm (Phenomenex、アイテム00F-4336-EO)
カラム温度 40℃
移動相:A:10mMのKH2PO4
B:メタノール
溶離:勾配 時間(分) %B
0 0
5 0
35 60
40 60
41 80
46 80
47 0
60 0
流速 0.8mL/分
検出 UV/210nm
注入容量 10μL
停止時間 60分
化合物4 Rt 2.4分
【0120】
手順5:遊離ガドリニウム金属イオン(遊離-Gd)量の決定
化合物5の量に対する、遊離ガドリニウム金属イオンの量を、FLD(蛍光検出器)検出を備える逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって決定する。移動相においてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用い、試料中に存在する遊離Gd(III)をGd(EDTA)錯体に形成させる。
クロマトグラフィー条件
器械 溶媒デリバリー系、5℃における冷却オートサンプラー、カラム恒温装置、脱ガス装置および蛍光検出器または同等のものを装備したAgilent 1100液体クロマトグラフ
カラム YMC-PACK ODS-AQ、250×4.6mm、5μmの粒度(YMC、cod.AQ12S05-2546WT)
温度:40℃
移動相:A:CH3COONH4(1.5g/L)、EDTA(0.55g/L)
B:メタノール
流速:1mL/分
検出(FLD):波長励起=275nm
波長発光=314nm
実施時間:25分
取得時間:6分
注入容量:20μL
参照ピーク:Gd(EDTA)
溶離:勾配 時間(分) %B
0 0
5 0
10 50
15 50
16 0
25 0
【0121】
溶液調製
移動相
1000mLのメスフラスコに、1.5gの酢酸アンモニウムを正確に量り取り、精製水で溶解し、0.70gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩無水物を添加し、次に精製水で定容まで希釈する。
希釈溶液
1000mLのメスフラスコに、3gの酢酸アンモニウムを正確に量り取り、精製水で溶解し、1.4gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩無水物を添加し、次に精製水で定容まで希釈する。
ブランク溶液
0.5mLの精製水をバイアルに移し、0.5mLの希釈溶液を添加する。よく混合し、クロマトグラフィー(chromatographyc)システムに直接注入する。
参照溶液
50mLのメスフラスコに、0.32gの酢酸ガドリニウム水和物(無水基準で表示され、使用前に水含有量を決定する)を量り取り(weight)、移動相で定容まで希釈する。ガドリニウムの濃度は3mg/mLである。
0.1mLのこの溶液を100mLのメスフラスコに移し、移動相で定容まで希釈する。ガドリニウムの濃度は0.003mg/mLである。
LOQ溶液
1mLの参照溶液を5mLのメスフラスコに移し、移動相で定容まで希釈する。ガドリニウムの濃度は0.0006mg/mLである。
試験溶液
10mLのメスフラスコに、600mgの被検試料を正確に量り取り(無水基準で表示)、精製水で定容まで希釈する。二量体ガドリニウム錯体5の濃度は、約60mg/mLである。
0.5mLのこの溶液をバイアルに移し、0.5mLの希釈溶液を添加する。試料をよく混合する。希釈したら、試料を即座に冷却オートサンプラー(5~8℃)に入れ、希釈から5分内に試料を注入する。化合物5の最終濃度は、約30mg/mLである。
【0122】
分析シーケンス
ブランク n=1
LOQ溶液 n=1
参照溶液 n=6
試験溶液 n=6
参照溶液 n=1
【0123】
システム適合性試験
本製造方法を適用の際、毎回、システム適合性試験(SST)を実施する。
- クロマトグラフィーシステムを平衡化した後、ブランク溶液を1回注入し、干渉ピークが存在しないことを検証する。
- LOQ溶液を1回注入する
Gd(EDTA)ピークがS/N≧10を有する場合、分析シーケンスの結果は有益である。
- 第1の参照溶液を6回注入し、以下のGd(EDTA)ピークに関する要件が満足されているかどうか検証する:
- 百分率で表示されたGd(EDTA)の面積再現性
相対標準偏差(RSD%、n=6)≦10%
- 百分率で表示されたGd(EDTA)ピークの保持時間再現性
相対標準偏差(RSD%、n=6)≦2%
- Gd(EDTA)ピークに関する対称因子、T、
式1により算出 0.7~2.0
T=w0.05/2f 式1
式中:
w0.05=ピーク高さの20分の1における幅(分)
f=ピーク高さの20分の1における、ピーク最大値から下ろした垂線と、ピーク立ち上がり端との間の距離(分)
【0124】
計算
式2によって、百分率含有量、遊離Gd%を算出する:
遊離Gd%=[(At×WRS×(100-K)×20)/(Astd×w×(100-K1)×50×1000×2.126)]×100
式2
At=試験溶液中の遊離Gdのピーク面積
Astd=SST参照溶液注入(n=6)におけるGd(EDTA)平均面積
WRS=参照溶液中のGdのmg
w=試験溶液を調製するための化合物5試料の重量(mg)
K=酢酸ガドリニウム水和物中のH2O含有量の%
K1=試料中のH2O含有量の%
2.126=酢酸ガドリニウムとガドリニウムとの間の補正係数
遊離Gdに関する定量限界は0.002%(w/w)である。
LOQ限界より低い値は、<LOQまたはn.q.(定量不可能)と表示されなければならない。
上述のように算出された百分率は、そのような百分率×10,000のように乗算することによって、化合物5に対する遊離ガドリニウムのppmに変換することができる。
【0125】
手順6:モノ-ガドリニウム化錯体(モノ-Gd)の量の決定
化合物5の二量体錯体中のモノ-Gd不純物の含有量を、逆相HPLC法によって、いずれかのFLD検出器を使用することによって、同じクロマトグラフィー実施において定量化する。
規定された不純物モノ-Gd(具体的には、1個のみのガドリニウム金属イオンを有するリガンド4のモノ-Gd錯体)の定量化を、ナトリウム塩としての参照試料モノ-Gdを使用することによって、FLD検出によって行う。モノ-Gdナトリウム塩(参照試料)は、化学量論的な量より少ないガドリニウムイオンを用いて二量体リガンド4を錯体化し、モノ-Gdを得て、NaOHで中性pHに調整し、次に残留物まで濃縮することによって単離して得ることができる。
【0126】
クロマトグラフィー条件
機器:溶媒デリバリー系、オートサンプラー、カラム恒温装置、脱ガス装置、UVダイオードアレイ検出器および蛍光検出器 2475 Watersまたは同等のものを装備したHPLC Agilent 1100
カラム:Xselect(登録商標) HSS T3、3.5μm、150×3.0mm(Waters、Part No. 186004781)
温度:40℃
移動相:溶媒A:移動相A(水中の40mMのリン酸カリウム-0.02mMのEDTA、pH6.2)
溶媒B:移動相B(溶媒A/アセトニトリル、60/40v/v)
流速:0.35mL/分
検出(FLD):波長励起(λex)=275nm
波長発光(λem)=314nm
検出(UV):波長=210nm/Bw:8nm;Ref.波長=480nm/Bw:80nm
実施時間分析:50分
取得時間:32分
注入容量:10μL
溶離(Eluition):勾配 時間(分) %B
0 0
4 0
20 15
25 15
30 100
40 100
43 0
50 0
【0127】
溶液調製
移動相A
2000mLのメスフラスコに:
- 8.56gのリン酸二水素カリウム
- 3.97gのリン酸水素二カリウム三水和物
- 0.015gのTitriplex(登録商標)III(EDTA二ナトリウム塩)
を正確に量り取り、次に精製水で定容まで希釈する。0.22μmの膜フィルタを通して濾過する。
移動相B
1000mLのメスフラスコに、600mLの移動相Aを移し、アセトニトリルで定容まで希釈する。よく混合する。
CaCl
2
の溶液
50mLのメスフラスコに、165mgのCaCl2(無水基準で表示)を正確に量り取り、精製水で定容まで希釈する。
濃度は約3.3mg/mLである。
モノ-Gdの保存溶液
50mLのメスフラスコに、25mgのモノ-Gdナトリウム塩(無水基準および純度で表示)を正確に量り取り、精製水で定容まで希釈する。
モノ-Gdの濃度は約0.5mg/mLである。
モノ-Gdの重量=モノ-Gdナトリウム塩の重量×1140.31/1162.29
モノ-Gdの参照溶液
5mLのメスフラスコに、0.45mLのモノ-Gdの保存溶液を正確に移す。1mLのCaCl2溶液を添加し、精製水で定容まで希釈する。標準の濃度は0.045mg/mLである。
モノ-GdのLoQ溶液
5mLのメスフラスコに、0.1mLのモノ-Gdの保存溶液を正確に移す。1mLのCaCl2溶液を添加し、精製水で定容まで希釈する。モノ-Gdの濃度は約0.01mg/mLである。
ブランク溶液
0.8mLの水溶液をバイアルに移し、0.2mLのCaCl2溶液を添加する。よく混合する。
試験溶液
5mLのメスフラスコに、125mgの被検試料(無水基準で表示)を正確に量り取る。1mLのCaCl2溶液を添加し、精製水で定容まで希釈する。化合物5の濃度は約25mg/mLである。
【0128】
分析シーケンス
ブランク n=1
LoQ溶液 n=1
参照溶液 n=6
試験溶液 n=6
参照溶液 n=1
【0129】
計算
モノ-Gd(w/w)の百分率含有量を、FLD取得によって、式3により算出する。
CモノGd%=[(AT×VS×WS×(100-KF)×a×f)/(AR×wT×50×100×(100-KF化合物5))]×100
式3
式中:
AT:試験溶液におけるピーク面積(存在する場合、モノ-Gd-1/2/3/4ピークの面積合計)
AR:参照溶液注入(平均値n=6)におけるピーク面積(モノ-Gd-1/2/3/4ピークの面積合計)
wT:試験溶液中の試料の重量(mg)
VS:参照溶液を調製するために取り出したモノ-Gd保存溶液の容積(mL)
WS:保存溶液を調製するために使用されたモノ-Gdナトリウム塩の重量(mg)
KF:モノ-Gdナトリウム塩中のH2O含有量の%
KF化合物5:化合物5中のH2O含有量の%
a:モノ-Gdナトリウム塩の%分析結果
f:分子量に関する補正係数:0.98
モノ-Gd(4つのピークの合計)に関する定量限界は0.04%(w/w)である。
LOQ限界より低い値は、<LOQまたはn.q.(定量不可能)と表示されなければならない。
上述のように算出された百分率は、そのような百分率×10,000のように乗算することによって、化合物5の錯体に対するモノ-ガドリニウム化錯体のppmに変換することができる。
【実施例】
【0130】
実施例1:DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成
出発物質のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成を、同時係属中の特許出願EP19215900.2(本出願と同一出願人)の手順を使用することによって実施した。具体的には:
DMAC(98.07kg;104.33L)中の市販のTAZA(14.39kg;83.53mol)および酢酸ナトリウム(21.58kg;263.12mol)の懸濁液に、DMAC(50.72kg;53.96L)中のブロモ酢酸tert-ブチル(51.32kg;263.12mol)の溶液を、10℃で2.5時間かけて添加した。次に、温度を25℃まで上昇させ、混合物をこの温度で24時間撹拌した。次に、水(57.56kg)を0.5時間で添加し、2時間後に混合物を遠心分離にかけ、水で洗浄した(57kgで2回)。湿潤固体を真空下で乾燥させ、36.62kg;61.48molのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩(73.6%収率)を得た。生成物のHPLCによって決定した分析結果(標準に対する)は、100%w/wであり;NMRによって決定した分析結果(標準に対する)は、99.86%w/wである。
【0131】
実施例2:二量体化合物5の調製
二量体錯体化合物5を、以下に示す合成手順を使用することによって得る。
【化10】
以下を含む:
a)
DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aを得るための臭化水素酸塩の中和
実施例1に記載のように得たDO3Aトリ-tert-ブチルエステル-HBr(36.60kg;61.4mol)および炭酸カリウム(16.99kg;122.9mol)を、MeCN(72.50kg;91.77L)中で、室温(すなわち25℃)で懸濁させ、混合物を撹拌下で24℃にて19時間保持する。次に、得られた塩を濾別し、濾液を50℃にて真空下で部分的蒸留して、MeCN中のDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1A(31.07kg;60.4mol)の溶液を約56%w/wの最終濃度で得、これをさらに単離することなく次工程で使用する。溶液中の1Aの分析結果は、HPLC-UV法によって決定する。
b)
中間体2の合成
水(15.1kg)中のD-グルカミン(6kg;33.1mol)を、DMAC(6.2kg;6.60L)中のエピクロロヒドリン(6.75kg;73.0mol)の溶液に、室温で2時間滴下する。混合物を、撹拌下で16時間保持する。次に、混合物をDMAC(12.2kg;12.98L)で希釈し、水を55~60℃にて真空下で蒸留して、DMAC中の中間体2の溶液を、残留水含有量<2.0%とし、これを精製することなく次工程で使用する。
c)
保護されたリガンド3を得るためのDO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aによる中間体2のアルキル化
DIPEA(9.80kg;75.8mol)および工程a)から回収された基質1Aの溶液を、50℃に加熱された中間体2の溶液に添加し、次に、得られた混合物を、HPLC-UV法によって変換をモニターしながら、70℃で80時間撹拌する。次に、混合物を60℃にて真空下で部分的に濃縮する。残留物を25℃まで冷却し、予め調製した水(12.2kg)とMeCN(19.0kg;24.05L)の混合物で、次に25%のアンモニア水溶液(21.7kg;24.03L)で希釈して混合物を得、これを撹拌下で15時間保持して塩酸塩の沈殿を得、これを濾過する。次に、濾液を回収し、Amberlite XAD(登録商標)1600(450L;溶離液:水/MeCNの勾配)でのクロマトグラフィーによって精製する。次に、純粋な画分(HPLC面積%≧90)を回収し、有機溶媒を蒸留し、水性残留物を約50℃にて真空下で濃縮し、さらなる単離をすることなく次工程においてそのまま使用するのに好適な、水中の保護されたリガンド3の溶液(約10%w/wの濃度)を得る。
d)
脱保護されたリガンド4を得るための保護されたリガンド3の脱保護
20%(w/w)の濃度の保護された二量体リガンド3の混合物(219kg)に、理論的に計算された水中の生成物、34%w/wの塩酸水溶液(53.3kg、50.0mol、保護されたリガンド3に対して15mol/mol)を、温度を30℃に維持しながら添加する。添加の終了時に、混合物を50℃に加熱し、撹拌下で16時間保持する。完全な脱保護後、30%w/wの水酸化ナトリウム水溶液をpH5.6まで添加し、脱保護されたリガンド4を得る。副生物として形成されたt-ブタノールを、蒸留によって除去する。リガンド4を含有する溶液を、約10%(w/w)の最終濃度まで、50℃にて真空下で蒸留によって濃縮する。
e)
二量体錯体5を得るためのリガンド4の錯体化
前工程d)によって得られた二量体リガンド4の溶液を、第1の反応器に入れ、40℃に加熱する。塩化ガドリニウム溶液(1molのリガンド4に対して2.05mol)を、温度を37~43℃の範囲に維持しながら添加する。添加の終了時に、10%w/wの水酸化ナトリウム水溶液の添加によって、pHを5.5に調整する。混合物を40℃で3時間維持する。ガドリニウム錯体5を含む溶液をこのようにして得て、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の量を測定する。次に、実施例1および錯体化工程で生成した塩をナノ濾過によって除去し;ダイアフィルトレーションを、伝導率値が1.0mS/cmより低くなるまで実施する。ナノ濾過の終了時に、混合物を10÷12%w/wまで濃縮し、遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)に対して1.5mol/molのNa
2HPO
4を溶液に添加する。Na
2HPO
4の添加後、溶液のpHを各試験に関して測定し、以下の表Iで報告する(「pH開始」の列);白色沈殿の形成が観察される。次にpHを、表Iの「pH最後」の列に報告される値に調整する。混合物を、撹拌下で2時間保持する。最後に、懸濁液を濾過し、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の量を測定する。これらの量、同様に錯体化後に得られた量を、以下の表Iに示す。
【表1】
表Iに示された結果に基づき、上に示した試験1~9の全てに関して、遊離Gdの量の顕著な減少を観察することができる。試験1~5および7~11の全ての溶液は、定量化できない量のモノ-Gd、すなわち400ppm未満の量のモノ-Gdを含有し;試験6は、pH4.54において、LoQより高い量のモノGd、すなわち化合物5に対して538ppmの量が存在するを示す。表Iはまた、pHを4.9~8.3の範囲内に維持しながら、LoQより少ない量のモノGdおよび低量の遊離Gdが得られることを示す。
f)
残留ホスフェートの除去
上記工程e)で得られた試験1の溶液は、1~3BV/時の流速でイオン交換樹脂(Diaion PA 308、予め活性化)にロードされる。溶液から大部分の残留ホスフェートがこのように除去される。
g)
二量体ガドリニウム錯体のさらなる精製および単離
上記工程f)の溶液を、第2の反応器に入れ、希HClの添加によって、溶液のpHを5.7~6.3に調整し、ガドリニウム錯体の分析結果が約20~25%w/wとなるまで、水を45~55℃にて真空下で蒸留する。濃縮された溶液は、0.5BV/時の流速で、予め活性化したAmberlite XAD(登録商標)1600(樹脂の量:30mL/1gの生成物)にロードされる。水およびイソプロパノールと水の混合物を用いて、精製を行う。
高純度を有する画分(HPLC-FLD/UVでの評価)を、別の反応器に入れる。予じめ濃縮した後、活性炭を用いた処理を行う。懸濁液を濾過して活性炭を除去し、溶液を45~55℃にて真空下で25%w/wの濃度まで濃縮し、噴霧乾燥によって、ガドリニウム錯体を99%の最終滴定分析結果(w/w%;無水基準で)を有する白色粉末固体として単離する(14.1kg、無水基準で12.7kg、9.83mol)。
DO3Aトリ-tert-ブチルエステル1Aから決定した全体の収率:33%。
【0132】
実施例3:沈殿剤を用いた沈殿のさらなる試験
試験12
上記実施例2の工程a)~d)の手順によって得られた遊離ガドリニウムを含有する、錯体5の10%w/w溶液に対し、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の含有量を測定する。次に、溶液にK
3PO
4を添加する(遊離Gdのモルに対して1.5mol)。
リン酸塩の添加後、pHは5.42から9.00まで上昇し、白色固体の形成が即座に観察される。混合物を、撹拌下で室温において2時間、pH9.00で維持し、次に、固体を濾過して溶液を得る。遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)およびモノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)の含有量を測定し、以下の表IIに示す。
【表2】
表IIに示された結果に基づき、沈殿剤としてホスフェートを用いた沈殿では、遊離Gdの量の顕著な減少を観察することができる。さらに、溶液は、定量化できない量のモノ-Gd、すなわち400ppm未満の量のモノ-Gdを含有する。
【0133】
試験13
上記実施例2の工程a)~d)の手順によって得られた遊離ガドリニウムを含有する、錯体5の10%w/w溶液に対し、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の含有量を測定する。次に、溶液にシュウ酸二ナトリウムを添加する(遊離Gdに対して2.25mol/mol)。
シュウ酸塩の添加後、pHは5.56から7.78まで上昇し、白色固体の形成が即座に観察される。次に、1NのHClを用いて、pHを6.43まで低下させる。混合の終了時に、室温で2時間維持する。
懸濁液を濾過した後、モノ-ガドリニウム化錯体および遊離ガドリニウム金属イオンの含有量を測定する。モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の含有量を、以下の表IIIに示す。
【表3】
表IIIは、上記のとおり試験を実施すると、特に沈殿剤としてシュウ酸塩を好適な量で用いた試験が、非常に低い量の遊離GdおよびLoQより低い量のモノGdを含む溶液が得られることを明らかに示している。
【国際調査報告】