(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】浮体式洋上支持構造体、特に洋上風力タービン用の浮体式洋上支持構造体、同組み立て方法および使用、ならびに前駆体フレーム構造体
(51)【国際特許分類】
B63B 75/00 20200101AFI20240719BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20240719BHJP
F03D 13/10 20160101ALI20240719BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240719BHJP
【FI】
B63B75/00
F03D13/25
F03D13/10
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577360
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 DK2022050157
(87)【国際公開番号】W WO2023284926
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523340513
【氏名又は名称】スティースダル オフショア アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティースダル、ヘンリック
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA26
3H178BB73
3H178BB77
3H178CC22
3H178DD67X
(57)【要約】
浮体式洋上支持構造体(1)の多角形フレーム(19)の頂点(3)の各々には、管状スリーブセグメント(12C)が設けられている。管状接続部材(15)は、スリーブセグメント(12C)を通して挿入され、グラウトなどの注入可能な打設材料(16)の部分(16C)をそれらの間の空隙に充填し、その後硬化させることによって、スリーブセグメント(12C)に固定される。続いて、浮力モジュール(2)が接続部材(15)に固定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体式洋上支持構造体(1)の組み立て方法であって、
前記浮体式洋上支持構造体(1)は、水平面内に多角形として配置された頂点(3)を有する剛性フレーム(19)を形成する相互接続された複数の管(4、6、9、10)を備え、
前記方法は、浮力モジュール(2)を前記フレーム(19)の前記頂点(3)の各々に取り付けるステップを含み、
前記方法は、前記フレーム(19)の前記頂点(3)の各々にスリーブセグメント(12C)を設けるステップと、
前記スリーブセグメント(12C)を通して接続部材(15)を挿入するステップと、
注入可能な打設材料(16)、任意選択でグラウトの部分(16C)を、前記スリーブセグメント(12C)と前記接続部材(15)との間の空隙(24)に充填し、前記部分(16C)を硬化させることによって前記接続部材(15)を前記スリーブセグメント(12C)に固定するステップと、
前記浮力モジュール(2)を前記接続部材(15)の各々に固定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接続部材(15)は、前記スリーブセグメント(12C)よりも長く、前記スリーブセグメント(12C)の第1の端部(18)からある距離だけ延びる第1の自由部分(15A)を有し、
前記方法は、前記部分(16C)を硬化させることによって前記接続部材(15)を前記スリーブセグメント(12C)に固定するステップの後、前記浮力モジュール(2)に取り付けられた別のスリーブセグメント(12A)内に前記接続部材(15)の前記第1の自由部分(15A)を取り込み、注入可能な打設材料(16)の別の部分(16A)を前記別のスリーブセグメント(12A)と前記接続部材(15)の前記第1の自由部分との間の別の空隙に充填し、前記別の部分(16A)を硬化させて前記浮力モジュール(2)を前記自由部分(15A)に固定することによって、前記浮力モジュール(2)を前記第1の自由部分(15A)に取り付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接続部材(15)は、前記スリーブセグメント(12C)の第2の端部(18)からある距離だけ延びる第2の自由部分(15B)を備え、
前記浮力モジュール(2)は、第2の別のスリーブ(12B)が取り付けられた第2の浮力部材(2B)を備え、
前記方法は、前記部分(16C)を硬化させることによって前記接続部材(15)を前記スリーブセグメント(12C)に固定するステップ、および第1の別のスリーブセグメント(12A)内に前記第1の自由部分(15A)を取り込むことによって第1の浮力部材(2A)を前記第1の自由部分(15A)に取り付けるステップの後、第2の別のスリーブセグメント(12B)内に前記第2の自由部分(15B)を取り込み、注入可能な打設材料(16)の別の部分(16A、16B)を前記別のスリーブセグメント(12A、12B)と前記自由部分(15A、15B)との間の空隙(24)に充填し、前記別の部分(16A、16B)を硬化させることによって、前記第2の浮力部材(2B)を前記第2の自由部分(15B)に取り付けるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スリーブセグメント(12C)は、せん断キー(22A、22B)が設けられた内壁を有し、前記接続部材(15)は、他のせん断キー(22A、22B)が設けられた外壁を有し、前記せん断キーおよび前記他のせん断キー(22A、22B)間の空隙(24)に前記打設材料(16)が提供され、硬化した前記打設材料(16)によって前記スリーブ(12)と前記接続部材(15)とを相互に移動しないように固定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
スリーブセグメント(12C)、第1の別のスリーブセグメント(12A)、および/または第2の別のスリーブセグメント(12B)のうちの1つまたは複数は、せん断キー(22A、22B)を備えた内壁を有し、
前記接続部材(15)は、他のせん断キー(22A、22B)を備えた外壁を有し、
前記せん断キーと前記他のせん断キー(22A、22B)との間の空隙(24)に前記打設材料(16)が提供され、硬化した前記打設材料(16)によって前記スリーブセグメント(12A、12B、12C)のいずれかと前記接続部材(15)を相互に移動しないように固定する、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
前記接続部材(15)と前記スリーブセグメント(12C)との間の前記空隙(24)を、充填中に打設材料(16)が前記空隙から漏れることを防ぐために、前記スリーブセグメント(12C)の両端部(18)にあるシール(23)で封止するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
前記接続部材(15)と前記スリーブセグメント(12C)との間の前記空隙(24)を、充填中に打設材料(16)が前記空隙から漏れることを防ぐために、前記スリーブセグメント(12C)の両端部(18)にあるシール(23)で封止するステップと、
前記打設材料の硬化後、前記スリーブセグメント(12C)の両端部(18)で前記シールを維持するステップと、
前記浮力モジュール(2)を前記接続部材(15)に取り付ける際に、別の打設材料用の封止として前記シールのうちの少なくとも1つを使用するステップと
を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、
前記シール(23)を膨張可能なトーラスとして提供するステップと、
前記シール(23)を封止位置で前記接続部材(15)の周囲に配置するステップと、
前記接続部材(15)の周囲を封止して、前記打設材料が1つまたは複数の空隙(24)から流出することを防止するために打設する前に前記シールを膨張させるステップと
を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記スリーブセグメント(12C)および前記接続部材(15)を水平面内で同軸に位置合わせするステップを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
浮体式洋上支持構造体(1)であって、前記浮体式洋上支持構造体(1)は、
水平面内に多角形として配置された頂点(3)を有する剛体フレーム(19)を形成する相互接続された複数の管(4、6、9、10)を備え、
前記フレーム(19)の前記各々の頂点(3)には、浮力モジュール(2)が取り付けられており、
前記フレーム(19)の前記各々の頂点(3)には、管状スリーブセグメント(12C)が設けられ、前記管状スリーブセグメント(12C)には、前記スリーブセグメント(12C)を通って延びる管状接続部材(15)が内部に挿入され、
前記管状接続部材(15)は、前記管状スリーブセグメント(12C)と前記管状接続部材(15)との間の空隙(24)内の注入可能であるが硬化した打設材料(16)の部分(16C)によって前記スリーブセグメント(12C)に固定され、
前記接続部材(15)の各々には、浮力モジュール(2)が固定される、浮体式洋上支持構造体(1)。
【請求項11】
前記接続部材(15)は、前記スリーブセグメント(12C)よりも長く、第1の自由部分(15A)および第2の自由部分(15B)を備え、前記第1の自由部分(15A)および前記第2の自由部分(15B)の各々は、前記スリーブセグメント(12C)の2つの反対側にある端部(18)のうちの一方からある距離だけ延びており、
前記浮力モジュール(2)は、第1の別の管状スリーブ(12A)が取り付けられた第1の浮力部材(2A)と、第2の別の管状スリーブ(12B)が取り付けられた第2の浮力部材(2B)とを備え、
前記第1の浮力部材(2A)は、前記第1の自由部分(15A)を第1の別のスリーブセグメント(12A)内に取り込むことによって前記第1の自由部分(15A)に取り付けられ、前記第2の浮力部材(2B)は、前記第2の自由部分(15B)を第2の別のスリーブセグメント(12B)内に取り込むことによって前記第2の自由部分(15B)に取り付けられ、
前記別の管状スリーブセグメント(12A、12B)と前記自由部分(15A、15B)との間の前記空隙(24)には、注入可能であるが硬化した打設材料(16)の別の部分(16A、16B)が設けられ、
各々のスリーブセグメント(12A、12B、12C)は、せん断キー(22A、22B)が設けられた内壁を有し、前記管状接続部材(15)は、他のせん断キー(22A、22B)が設けられた外壁を有し、
前記せん断キーと前記他のせん断キー(22A、22B)との間の空隙(24)に前記打設材料(16)が提供され、硬化した前記打設材料(16)によって各々のスリーブセグメント(12A、12B、12C)と前記管状接続部材(15)を相互に移動しないように固定する、請求項10に記載の構造体。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって得られる、請求項10または11に記載の構造体。
【請求項13】
風力タービン(21)と、請求項10~12のいずれか一項に記載の浮体式洋上支持構造体(1)とを備える洋上風力タービンシステム。
【請求項14】
風力タービン(21)を支持する洋上支持構造体に対する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項15】
洋上風力タービン用の前駆体フレーム構造体であって、
前記前駆体フレーム構造体は、水平面内で三角形として配置された3つの頂点を有する剛体四面体構造を形成する強固に相互接続された複数の管(4、6、9、10)を備える剛体フレーム(19)と、前記四面体構造の一部として風力タービン(21)のタワーを支持するように構成される支持部材(6)とを備え、
前記頂点(3)の各々は、スリーブセグメント(12C)と、前記スリーブセグメント(12C)を通って延びる接続部材(15)とを備え、
前記接続部材(15)は、前記スリーブセグメント(12C)と前記接続部材(15)との間の空隙(24)内の硬化した打設材料(16)によって前記スリーブセグメント(12C)に固定されており、
前記接続部材(15)は、水平面内で前記スリーブセグメント(12C)と同軸に位置合わせされ、
前記接続部材(15)は、前記スリーブセグメント(12C)よりも長く、前記スリーブセグメント(12C)の端部(18)からある距離だけ延びる自由部分(15A)を有し、浮力モジュール(2)を前記自由部分(15A)に固定し、
前記前駆体フレーム構造体の前記頂点(3)には浮力モジュール(2)が存在せず、
前記3つの接続部材(15)の前記自由部分(15A、15B)は、浮力モジュール(2)を取り付けるために構成され、寸法決めされている、前駆体フレーム構造体。
【請求項16】
前記接続部材(15)は、第1の自由部分(15A)および第2の自由部分(15B)を有し、前記第1の自由部分(15A)および前記第2の自由部分(15B)の各々は、浮力部材(2A、2B)を前記自由部分(15A、15B)の各々に固定するために前記スリーブセグメント(12C)の2つの反対側にある端部(18)のうちの一方からある距離だけ延びている、請求項15に記載の前駆体フレーム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式洋上支持構造体、特に洋上風力タービン用の浮体式洋上支持構造体、その組み立て方法および使用、ならびに前駆体フレーム構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋上風力タービン用の支持構造のうちのいくつかのタイプは、海底の砂に挿入されるモノパイルまたは複数の柱で構成されている。モノパイルと風力タービンのタワーの間、または海底に埋め込まれた複数の柱とタワーの支持フレームの間の典型的な接続は、鉛直に配置された同軸管状部材間のグラウト注入された接続で構成され、グラウトの硬化後の長期にわたる機械的安定性を提供するためにせん断キーが使用される。フレームは多くの場合、格子状に配置された複数の管を備えた溶接構造であり、陸上で組み立ておよび溶接され、その後洋上の場所に輸送される。
【0003】
海底に設置された洋上風力タービンの代替として、浮力モジュールが3つの節点に設けられ、風力タービンのタワーが中央の支柱の上部に配置される、略四面体のフレームで構成されることがよくある浮体式支持構造体が提供される。Stiesdalによる特許文献1に、実施例が開示されている。また、この場合、四面体フレームは陸上で組み立ておよび溶接され、その後洋上の場所に輸送される。
【0004】
しかしながら、浮力タンクを使用した最終的な浮体式支持構造体の組み立ては、タンクが大きく、サイズ、重量、および複雑さが増すため、困難である。したがって、そのような組み立てに有用な方法を見つけることが望まれている。
【0005】
特許文献2には、UHPC管、UHPCボックス、およびUHPCスリーブの3種類のプレハブ部品を含み、接合、溶接、接着によって形成された、組み立てられたUHPC管-ボックス組み合わせ浮体式構造体が記載されている。組み立てられたUHPC管-ボックスを基礎として、海洋操作プラットフォーム、海洋ネットケージ、浅瀬浮橋、水中観光プラットフォーム、海洋レジャープラットフォームなどをさらに構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/157399号
【特許文献2】中国実用新案第212354345号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該技術分野の改善を提供することが目的である。特に、浮体式洋上支持構造体(特に、風力タービン用の浮体式洋上支持構造体)のための代替の改善された構造および組み立て方法を提供することが目的である。これらおよび他の目的は、以下で説明されるように、浮体式洋上支持構造体、その組み立て方法および使用、ならびに前駆体フレーム構造体によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術分野で伝統的に使用されている溶接またはボルト締めによって浮力モジュールを支持フレームに固定するのとは対照的に、本発明によって提供される取り付けは、打設された、特にグラウト注入された接続に基づいており、これにより組み立てが容易になり、その結果、過酷な洋上条件下でも長持ちする接続をもたらす。浮力モジュールを洋上フレームに取り付けるための打設方法、特に細粒グラウトを使用して、多角形フレーム構造体の頂点で水平に位置合わせされた同軸管状部材の間に取り付ける方法は、グラウト注入による接続が鉛直方向の洋上構造体に対して一般的に知られているにもかかわらず、この分野の伝統的な固定方法から逸脱している。
【0009】
本発明によって達成される具体的な利点は、前述のボルト締めおよび溶接による解決策などの全鋼製接続と比較して、頻繁な検査の要件が軽減されることである。本方法の利点は、海深が深い領域における浮体式洋上風力タービンに特に関係がある。
【0010】
浮体式洋上支持構造体は、水平面内に多角形(例えば、3つの頂点を有する三角形)として配置された頂点を有する剛体フレームを形成する相互接続された複数の管を備える。前駆体フレーム構造体を作製した後、浮力モジュールが頂点の各々でフレームに取り付けられる。
【0011】
一例として、前駆体フレーム構造体は、水平面内で三角形として配置された3つの頂点を有する四面体構造を形成する強固に相互接続された複数の管を有する剛体フレームと、四面体構造の一部として風力タービンのタワーを支持するように構成された支持部材とを備え得る。
【0012】
フレームの頂点の各々には、接続部材(好ましくは、管状接続部材)が挿入されるスリーブセグメント(好ましくは、管状スリーブセグメント)が設けられる。接続部材は、スリーブセグメントと接続部材との間の空隙に注入可能な打設材料の一部を充填することによってスリーブセグメントに固定され、その後材料部分は、硬化される。硬化すると、接続部材は、スリーブセグメントに強固に固定される。そして、頂点の接続部材の各々に浮力モジュールを取り付ける準備が整う。
【0013】
可能な打設材料は、非常に細かい砂または他の充填材料を含むが通常は石を含まないグラウトなどのセメントベースの打設材料である。砂を入れていないグラウトは、この目的に適した候補である。代替の打設材料は、長期耐候性硬化ポリマーである。
【0014】
有利には、浮力モジュールと接続部材との間に強固な機械的接続を提供するために、スリーブセグメントは、せん断キーが設けられた内壁を有し、および/または、接続部材は、他のせん断キーが設けられた外壁を有し、硬化した打設材料によってスリーブと接続部材が相互に移動しないように固定するために、せん断キーと他のせん断キーとの間の空隙に打設材料が設けられる。せん断キーは、硬化中に打設材料が収縮する場合に特に役立つ。
【0015】
実際の実施形態では、接続部材は、スリーブセグメントよりも長く、スリーブセグメントの第1の端部からある距離だけ延びる第1の自由部分を有し、浮力モジュールに取り付けられる別のスリーブセグメント内に接続部材の自由部分を取り込むことによって、浮力モジュールがスリーブセグメントに取り付けられる。接続部材をフレームのスリーブセグメントに固定するのと同様に、管状スリーブセグメントは、注入可能な打設材料の別の部分をそれらの間の空隙に充填し、その後硬化させることによって、接続部材の自由部分に固定される。
【0016】
浮力モジュールが複数の浮力部材を備える場合、接続部材は、スリーブセグメントの2つの反対側にある端部のうちの一方からある距離だけ延びる第1の自由部分および第2の自由部分を備える。この場合、第1の別のスリーブセグメントが取り付けられた第1の浮力部材は、第1の自由部分を第1の別のスリーブセグメント内に取り込むことによって第1の自由部分に取り付けられる。同様に、第2の別のスリーブセグメントが取り付けられた第2の浮力部材は、第2の自由部分を第2の別のスリーブセグメント内に取り込むことによって第2の自由部分に取り付けられる。注入可能な打設材料の別の部分が空隙に充填され、別のスリーブセグメントと自由部分との間で硬化される。
【0017】
各々の浮力モジュールが3つ以上の浮力部材を有する場合、接続部材の自由部分の各々に2つ以上の浮力部材を取り付けることも可能である。
【0018】
有利には、浮力部材と接続部材との間に強固な機械的接続を提供するために、各々のスリーブセグメントは、せん断キーが設けられた内壁を有し、スリーブセグメントが取り付けられる各々の自由部分は、他のせん断キーが設けられた外壁を有し、硬化した打設材料によって各々のスリーブセグメントと接続部材とが相互に移動しないように固定するために、打設材料がせん断キーと他のせん断キーとの間に設けられる。
【0019】
打設材料の粘度が比較的低い場合、接続部材とスリーブセグメントとの間の空隙をスリーブセグメントの両端部のシールで封止して、充填中に打設材料が空隙から漏れるのを防ぐことが有利である。これは、同軸配置が水平の長手方向軸を有する場合に特に有用である。同様に、接続部材と別のセグメントとの間の他の空隙への打設材料の適切な充填を確保するためにシールを使用することもできる。
【0020】
例えば、シールは、膨張可能なトーラスであり、接続部材の周囲に配置され、それぞれの空隙に打設材料を充填する前に膨張される。接続部材の周囲およびスリーブセグメントの内側のトーラスの膨張は、セグメントの内側の接続部材の中心合わせおよび同軸の位置合わせ、ならびに浮力モジュールが前駆体フレーム構造体に取り付けられるときの別のセグメントと接続部材との同軸の位置合わせを支援する。
【0021】
洋上風力タービンでは、浮力モジュールを三角形に配置したものがよく使用される。有用な前駆体フレーム構造体は、水平面内で三角形として配置された3つの頂点を有する四面体構造を形成する強固に相互接続された複数の管を有する剛体フレームと、四面体構造の一部として風力タービンのタワーを支持するように構成された支持部材とを備える。頂点の各々は、スリーブセグメントと、スリーブセグメントを通って延びる接続部材とを備える。上でより詳細に説明したように、接続部材は、管状スリーブセグメントと接続部材との間の空隙内の注入可能であるが硬化した打設材料によってスリーブセグメントに固定される。接続部材は、水平面内でスリーブセグメントと同軸に位置合わせされる。接続部材は、スリーブセグメントより長いため、接続部材は、スリーブセグメントの端部(典型的には、スリーブセグメントの両端部)からある距離だけ延びる自由部分を有する。各々の自由部分は、浮力モジュールを固定するように構成されている。しかしながら、輸送と保管を容易にするため、前駆体が洋上の場所に輸送される準備が整うまで、前駆体フレーム構造体の頂点には浮力モジュールが取り付けられていない。その段階で、すでに上で説明したように、3つの接続部材の自由部分に浮力モジュールが取り付けられる。
【0022】
頂点を非三角形の多角形に配置する場合、4つ以上の浮力モジュールが提供され、これらの浮力モジュールのうちの1つが、4つ以上の頂点の各々に対応して取り付けられる。
【0023】
例えば、浮力部材は、浮力柱である。
【0024】
接続部材の典型的な直径は、1~10メートルの範囲内にあり、任意選択で2~6メートルである。
【0025】
典型的には、セグメントは、特にせん断キーを使用する場合に、打設接続の強度を生み出すのに十分な大きな空隙を提供するために、接続部材の直径よりも5~20%大きい直径を有する。
【0026】
例えば、浮体式支持構造体は、風力タービンなどの荷重を支持するように構成された支柱を備え、そこから複数(例えば、3つ)のブレースが多角形フレームの頂点まで放射状に延びる。
【0027】
本発明の実施形態およびさらなる詳細は、図を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】いくつかの頂点を含む浮体式支持構造体を示す。
【
図2A】浮力モジュールを通って断面切断されている、
図1の構造体の図を示す。
【
図3】前駆体フレーム構造体の頂点における接続部の断面の拡大図を示す。
【
図4】浮力部材の取り付け後の頂点における接続部の断面の拡大図を示す。
【
図5】風力タービンを支持する浮体式支持構造体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、典型的には洋上で使用される、浮体支持構造体1の例示的な一実施形態を示す。支持構造体1は、3つの浮力モジュール2を備え、フレーム19の3つのコーナーノード3の各々に1つのモジュール2が含まれる。フレーム19は、3つのコーナーノード3を有するものとして例示されている。あるいはまた、フレーム19は、多角形に配置された4つ以上のノード3を有する。フレーム19は、典型的には、浮力モジュール2が支持構造体1の総浮力を増大させるのを助ける中空鋼管4、6、9で作られている。
【0030】
各々の浮力モジュール2は、2つの浮力部材2A、2Bの対を備えるものとして例示されている。あるいはまた、各々のモジュール2は、1つだけまたは3つ以上の浮力部材を備える。浮力部材2A、2Bは、典型的には、空気が充填された浮力タンクである。以下では、これらは円柱として例示されるが、他の形状であってもよい。
【0031】
フレーム19は、3つの主ブレース4を備え、主ブレース4の各々は、支柱として例示される支持要素6からノード3のただ1つまで延びている。主ブレース4の各々の端部5は、接続部11によって浮力モジュール2に固定されている。本実施形態では、2つの浮力部材2A、2Bは、主ブレース4の対応する端部5の両側に対称的に配置されている。接続部11は、浮力部材2A、2Bの両方を通って、また主ブレース4のうちの1つの端部5を通って水平に延びている。
【0032】
支持構造体1は、
図5に示されるように、洋上風力タービンを支持するのに有用であり、この場合、支持要素6は、風力タービン21のタワーを支持している。
図1の例示的な支持構造1では、異なるサイズを有することができ、
図5に示されるように風力タービン21が構造体1によって支持される場合にも使用できるプラットフォーム20が示されている。
【0033】
支持要素6は、浮力モジュール2の間の中心に配置される可能性がある。しかしながら、これは必須ではなく、
図1の例は、偏心した支持要素6を示す。
【0034】
浮力柱として例示される各々の浮力部材2A、2Bの下端部7には、浮力部材2A、2Bを貫通して長手方向軸線X1に対して横方向に延びる減衰板8が設けられる。
【0035】
フレーム19は、支持要素6と浮力モジュール2との間の剛性を高めるために、いくつかの支持ブレース9、10をさらに備える。四面体フレーム構造体が図示されている。支柱6が中心ではないため、形成される四面体は正四面体ではない。
【0036】
浮力部材2A、2Bを主ブレース4のうちの1つに接続する接続部11は、管状であり、以下でより詳細に説明される。
【0037】
図2Aは、
図1の浮体式支持構造体を示し、接続部11の内部構造を示すために、接続部11および浮力部材2A、2Bを鉛直に断面切断されている。点描四角形で示した部分を拡大して
図2Bに示す。
【0038】
接続部11は、3つのスリーブセグメント、すなわち、第1の浮力柱2Aに固定される(典型的には、溶接される)第1のスリーブセグメント12Aと、第2の浮力部材2Bに固定される第2のスリーブセグメント12Bと、対応する主ブレース4の端部5に固定される第3の中央スリーブセグメント12Cとを有するセグメント化された円筒状管状スリーブ12を備える。ここでは円筒状接続部材15として示されている接続部材は、軸方向に位置合わせされた3つのスリーブセグメント12A、12B、12Cすべてを通って延びている。円筒状接続部材15の外径は、管状スリーブ12の内径よりも小さいため、空間が形成され、そこにグラウト材16が充填される。グラウト材16の3つの部分16A、16B、16C、すなわちセグメント12A、12B、12Cの各々に1つの部分が設けられる。
【0039】
図3は、支持構造体1の組み立てステップを示す。主ブレース4の端部5には、そのスリーブセグメント12Cが設けられており、円筒状接続部材15は、打設材料(特に、グラウト材16)の対応する部分16Cによってスリーブセグメント12Cの内側に固定されている。接続部材15は、スリーブセグメント12Cよりも長いので、自由部分15A、15Bは、スリーブセグメント12Cの両端部18の外側に延びる。
【0040】
グラウト材16は、比較的低い粘度を有し、砂または石が含まれない状態で提供される可能性がある。スリーブセグメント12Cと接続部材15との間の空間にそれを充填するためにシールが使用され、その一例が
図7に示されており、スリーブセグメント12Cの端部18の空隙内の空間を充填するために、接続部材15の周りに配置される。例えば、そのようなシールは、膨張可能なトーラス形のチューブであり、原理的には膨張可能なタイヤチューブと同等であるが、はるかに大きいだけであり、例えば直径が2~6メートルの範囲にある。
【0041】
図3に示される状況では、スリーブセグメント12Cおよび接続部材15は、水平方向に同軸上に位置合わせされている。建造のこの段階では、未完成の支持構造体を前駆体として最終組み立て場所まで輸送することができ、そこで浮力モジュール2が接続部材15の自由部分15A、15Bに固定される。
【0042】
図4では、このようなシールの空間17が、グラウト材16の隣接する部分16B、16Cの間に見られる。このような空間17内の端部18で有用なトロイダルシール23が
図7に示されている。
【0043】
円筒状接続部材15は、主ブレース4の端部5に固定されているので、浮力部材2A、2Bとの組み立てが簡素化される。これらは、別のスリーブセグメント12A、12Bによって、既に固定されている接続部材15の第1および第2の端部15A、15Bに両端から押し付けられる。第3のセグメント12Cが端部5にある主ブレース4に対して浮力部材2A、2Bの向きを位置決めし調整した後、グラウト材の対応する部分16A、16Bが、接続部材とそれぞれのセグメント12A、12Bとの間の空隙に充填される。あるいはまた、第1の浮力部材2Aは、接続部材の第1の端部15Aに位置決めされ調整され、その後、グラウトが第1の別のスリーブセグメント12Aと接続部材15との間の空隙に充填され硬化されて、第1の浮力部材2Aを接続部材15に固定し、その後、同様のステップで第2の浮力部材12Bが取り付けられる。
【0044】
空間17に設けられていたシールは、通常残され、打設材料(特に、グラウト材)が対応する別のセグメント12B、12Cと接続部材15との間の空隙に圧送されるとき、対応するシールがスリーブ12の両端部に設けられる。硬化後、3つのセグメント12A、12B、12Cはすべて、接続部材15に強固に固定される。
【0045】
典型的には、円筒状接続部材15は中空管、有利には鋼管である。中空円筒形接続部材15の端部が締め付けられると、内側空隙が追加の浮力を提供する。
【0046】
典型的には、グラウト材16自体は、スリーブ12と接続部材15との間に十分な回転および軸方向の安定性を提供しない。しかしながら、接続部材15の外側およびスリーブ12のセグメント12A、12B、12Cの内面に設けられたせん断キーを使用することによって、高度の安定性が達成される。これが
図6に図示され、
図6は、原理を説明するための簡略化された断面図である。例えば、接続部材15の周りに部分的または全体的にスリーブ12の内側に沿って延びる第1のせん断キー22Aは、接続部材15に対するスリーブ12のセグメント12A、12B、12Cからの軸方向の変位に対して接続部を固定する。接続部材15の外側およびスリーブ12の内側で接続部材15の軸方向に延びる第2のせん断キー22Bは、回転力に対して接続部11を固定する。通常、せん断キーは、曲がったまたは真っ直ぐな金属プロファイルであり、対応するコンポーネントの鋼表面に溶接され、任意選択でせん断キーグリッドを形成する。
【0047】
図7は、特に
図17に示されるような空間17内のスリーブセグメント12Cの端部18で、接続部材15とスリーブ12との間の空隙24に嵌合するシール23を示す。
【国際調査報告】