(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】押出ポリスチレンボードストック及び押出ポリスチレンボードストックを含むルーフ構造
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20240719BHJP
E04C 2/20 20060101ALI20240719BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20240719BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240719BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240719BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B32B5/18
E04C2/20 L
C08J9/04 101
C08J9/04 CET
B32B7/027
B32B27/00 B
F16L59/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578139
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 US2022034231
(87)【国際公開番号】W WO2022271620
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ロフラーノ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ウッドクラフト、バレンティナ
(72)【発明者】
【氏名】デシャノ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】バーガー、マーク
【テーマコード(参考)】
2E162
3H036
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
2E162CD03
3H036AA09
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC01
3H036AD09
4F074AA33
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4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【要約】
逆ルーフ膜アセンブリ(IRMA)は、デッキングと、デッキング上の防水膜と、防水膜上のポリマー発泡体断熱ボード層と、ポリマー発泡体断熱ボード層の上のバラストとを含む。ポリマー発泡体断熱ボードは、アルケニル芳香族ポリマー及び赤外線放射減衰剤を含むポリマー発泡体層と、第1及び第2のフェーサ層とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種若しくは複数種の有機ポリマーを含み、前記有機ポリマーが少なくとも70重量%の1種若しくは複数種のアルケニル芳香族ポリマーを含む発泡ポリマー層において、前記発泡ポリマー層が、対向する第1及び第2の主要表面と、前記対向する主要表面に対して垂直な厚さとを有する、発泡ポリマー層;前記第1の主要表面に密封結合されて第1の外側表面を形成する第1のフェーサ、及び前記第2の主要表面に密封結合されて第2の外側表面を形成する第2のフェーサを含む、ポリマー発泡体断熱ボードであって、
前記発泡ポリマー層が、最大56kg/m
3(立方フィートあたり3.5ポンド)の発泡体密度と、少なくとも0.6cm(0.25インチ)の厚さと、厚さ25.4mmあたり少なくとも0.95K・m
2/WのRSI値(R値5.11F°・ft
2・h/BTU/インチ厚)とを有し、前記発泡ポリマー層の重量に基づいて少なくとも0.25重量パーセントの赤外線減衰添加剤を含み;
前記第1のフェーサが、少なくとも65%の不透明度、最大0.65cc/m
2・日の酸素移動率、最大0.9cc・mil/m
2・日の酸素透過率、及び少なくとも一方向において少なくとも120g/25.4μmのエルメンドルフ引裂強度を有し;
前記第2のフェーサが、最大0.65cc/m
2・日の酸素移動率、最大0.9cc・mil/m
2・日の酸素透過率、及び少なくとも一方向において少なくとも120g/25.4μmのエルメンドルフ引裂強度を有し、及び
前記第1の外側表面が、ASTM C1549に従って測定した場合、少なくとも35%の表面日射反射率を示す、ポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項2】
前記発泡ポリマー層が、21~56kg/m
3の発泡体密度、及び7.62~15.24cmの厚さを有する、請求項1に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項3】
前記アルケニル芳香族重合体が、スチレン-アクリロニトリルコポリマーの重量を基準として10~22.5重量%の重合アクリロニトリル及び5重量%以下のハロゲンを含有するスチレン-アクリロニトリルコポリマーである、請求項1又は2に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項4】
前記発泡ポリマー層が0.25~5重量%の赤外線放射減衰剤を含有し、前記赤外線放射減衰剤が、グラファイト;カーボンブラック;すす;炭化繊維、フレーク又は粉末;カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、酸化グラフェン、又はグラファイトナノプレートレットの1種若しくは複数種である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項5】
前記第1のフェーサが、エチレン-ビニルアルコールコポリマーを含む少なくとも1層の酸素バリア層と、前記酸素バリア層の各側面上に少なくとも1層の水分バリア層とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項6】
前記第1のフェーサが、エチレン-酢酸ビニル重合体を含む内部水分バリア層;エチレン-ビニルアルコールコポリマーを含む酸素バリア層;ポリエチレン、少なくとも1種の反射性フィラー及び/又は少なくとも1種の紫外線吸収剤を含む外部水分バリア層;並びに前記酸素バリア層と前記水分バリア層のそれぞれとの間に配置されたタイ層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項7】
前記外部水分バリアが、二酸化チタン、炭酸カルシウム、又は二酸化チタン及び炭酸カルシウムの両方を含む、請求項6に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項8】
前記第2のフェーサが、エチレン-ビニルアルコールコポリマーを含む少なくとも1層の酸素バリア層と、前記酸素バリア層の両側上に少なくとも1層の水分バリア層とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項9】
前記第2のフェーサが、エチレン-酢酸ビニル重合体を含む内部水分バリア層;エチレン-ビニルアルコールコポリマーを含む酸素バリア層;ポリエチレン、少なくとも1種の反射性フィラー及び/又は少なくとも1種の紫外線吸収剤を含む外部水分バリア層;並びに前記酸素バリア層と前記水分バリア層のそれぞれとの間に配置されたタイ層を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項10】
前記第1及び第2のフェーサが同一である、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項11】
1つ若しくは複数の縁部に沿ってラベット加工が施されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー発泡体断熱ボード。
【請求項12】
A.デッキング、
B.前記デッキングの上に直接又は間接的に取り付けられた防水膜;及び
C.層Bの上に直接又は間接的に取り付けられた、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー発泡体断熱ボードの少なくとも1つの層;及び
D.層Cの上に直接又は間接的に取り付けられたバラスト層
を含む、逆ルーフ膜アセンブリ。
【請求項13】
前記バラストが、砂利、石、土、1種若しくは複数種の舗装材、グリーンルーフ構造若しくはその構成要素、又はブルールーフ構造若しくはその構成要素を含む、請求項12に記載の逆ルーフ膜アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出ポリスチレンボードストック及びルーフ構造、特に押出ポリスチレンボードストックの層を含む、「保護膜ルーフ(protected membrane roofs)」(PMR)としても知られる、逆ルーフ膜アセンブリ(inverted roof membrane assemblies)(IRMA)に関する。
【背景技術】
【0002】
低勾配ルーフは、デッキングの上に断熱層を設置し、断熱層の上に防水膜を設置することによって建造されることが多い。この種の建造物は広く用いられているが、膜が風雨、及び有意な季節的並びに日常的な熱サイクルに曝露されるため、大きな問題がある。膜は、物理的乱用(例えば、パンク、破片の落下、ひょう、氷の落下、氷の堆積)、有害な電磁波(UV、可視光線、赤外線など)、化学的攻撃(例えば、オゾン、二酸化硫黄、酸性雨、鳥の糞などの大気汚染物質から)、並びに大きな温度変化に曝露される。これらは全て、曝露された膜にダメージを与え、耐用年数を短くし、頻繁な補修を必要とさせる可能性がある。
【0003】
これらの問題の多くは、いわゆる、逆ルーフ膜アセンブリ(IRMA)によって解決される。IRMAでは、断熱層は膜の下ではなく上に適用される。膜はほとんどの潜在的な損傷原因から保護されているため、はるかに長い耐用年数を有し、必要とされる修理及びメンテナンスが少ない。適切なメンテナンスによって、IRMAは従来の低勾配膜ルーフの2倍又は3倍持続可能である。IRMAのもう1つの利点は、植生及び貯留水がルーフアセンブリの最上部に配置される、いわゆる、「グリーンルーフ」及び「ブルールーフ」システムの構成要素として有用であることである。
【0004】
押出ポリスチレン(XPS)発泡体は、その良好な機械的特性、良好な断熱値、耐水浸透性及び低コストの組み合わせのため、IRMAの断熱層のための良好な候補である。XPS発泡体は、設置が容易であり、且つ特定のルーフ形状に合わせることが容易であるボードストックとして製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの管轄区域の建築基準法は、ルーフの断熱値の増加を必要とするように修正されている。一般的に断熱値は厚さと共に増加するため、断熱層を厚くすることで原理的には達成可能である。しかし、これを行うには実用的制約がある。多くの場合、垂直空間は他の構造物のために必要とされており、そしてルーフ交換の状況で、周囲の構造物(パラペット、壁の高さなど)が断熱材の厚さ増加を許容しない場合がある。断熱層を厚いほど、プロジェクト費用が高いことも意味する。
【0006】
もちろん、熱抵抗率、又はRSI値が高い場合、より薄い断熱層を使用することもできる。一般的にXPSは、厚さ25.4mmあたり最大約1K・m2/WのRSI値を有し得る。RSI値が高ければ、XPS断熱材のより薄い層を使用することも可能である。これを実現する1つの方法は、グラファイト又はカーボンブラックなどの赤外線減衰剤(infrared attenuator)をXPS発泡体に組み込むことである。しかしながら、赤外線減衰剤を含むXPS断熱材の中には、設置の間に太陽光に曝露されると反りが生じる傾向があるものがあることが判明している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一態様において、1種若しくは複数種の有機ポリマーを含む発泡ポリマー層であって、有機ポリマーが少なくとも70重量%の1種若しくは複数種のアルケニル芳香族ポリマーを含み、発泡ポリマー層が、対向する第1及び第2の主要表面と、対向する主要表面に対して垂直な厚さとを有する、発泡ポリマー層;第1の主要表面に密封結合されて第1の外側表面を形成する第1のフェーサ、及び第2の主要表面に密封結合されて第2の外側表面を形成する第2のフェーサを含むポリマー発泡体断熱ボードであって、
発泡ポリマー層が、最大56kg/m3(立方フィートあたり3.5ポンド)の発泡体密度と、少なくとも0.6cm(0.25インチ)の厚さと、厚さ25.4mmあたり少なくとも0.95K・m2/WのRSI値(R値5.11F°・ft2・h/BTU/厚さインチ)とを有し、発泡ポリマー層の重量に基づいて少なくとも0.25重量パーセントの赤外線減衰添加剤を含み;
第1のフェーサが、少なくとも65%の不透明度、最大0.65cc/m2・日の酸素移動率(酸素透過性)、最大0.9cc・mil/m2・日の酸素透過率、及び少なくとも一方向において少なくとも120g/25.4μmのエルメンドルフ(Elmendorf)引裂強度を有し;
第2のフェーサが、最大0.65cc/m2・日の酸素移動率、最大0.9cc・mil/m2・日の酸素透過率、及び少なくとも一方向において少なくとも120g/25.4μmのエルメンドルフ(Elmendorf)引裂強度を有し、且つ
第1の外側表面が、ASTM C1549に従って測定した場合、少なくとも35%の表面日射反射率を示す、ポリマー発泡体断熱ボードに関する。
【0008】
本発明はまた、
A.デッキング、
B.デッキングの上に直接又は間接的に取り付けられた防水膜;及び
C.層Bの上に直接又は間接的に取り付けられた、本発明のポリマー発泡体断熱ボードの少なくとも1つの層;及び
D.層Cの上に直接又は間接的に取り付けられたバラスト層
を含む、逆ルーフ膜アセンブリにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の逆ルーフ膜アセンブリの一実施形態を部分的に断面で示す等角図である。
【
図2】本発明のポリマー発泡体断熱ボードの断面側面図である。
【
図3】本発明で使用するためのフェーサ層の実施形態の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び
図2を参照すると、逆ルーフ膜アセンブリ11は、デッキング9と、デッキング9の上に取り付けられた防水膜8と、防水膜8の上に取り付けられたポリマー発泡体断熱ボード1と、ポリマー発泡体断熱ボード1の上に取り付けられた任意選択的なフィルター布12と、フィルター布12の上に取り付けられたバラスト10とを含む。ポリマー発泡体断熱ボード1は、発泡ポリマー層2、第1のフェーサ3及び第2のフェーサ4を含む。第1のフェーサ3はポリマー発泡体断熱ボード1の第1の外側表面18を形成し、第2のフェーサ4はポリマー発泡体断熱ボード1の第2の外側表面19を形成する。図示を容易にするために、
図1に示された様々な材料の寸法は縮尺通りではない。特に、第1のフェーサ3及び第2のフェーサ4の厚さは誇張されている。
【0011】
ルーフィング又は他の一般的に水平な設置において使用される場合、第1のフェーサ3及び第2のフェーサ4は、それぞれ、「上部」及び「下部」フェーサと都合よくみなされる。同様に、ポリマー発泡体断熱ボード1の第1の外側表面18及び第2の外側表面19は、そのような場合、それぞれ、「上部」及び「下部」表面と都合よくみなされる。「上部」及び「下部」は、フェーサ又は外側表面に関して使用される場合、逆ルーフ膜アセンブリの設置などの設置時のポリマー発泡体断熱ボード1の向きを指す。第1又は「上部」フェーサは、設置時に外側を向くもの、すなわち、それが適用される構造から離れ、一般に建造物の外側を向くものであり、逆ルーフ構造では、第1又は「上部」フェーサがポリマー発泡体断熱ボードの最外表面を形成する。ルーフ構造に設置される場合、第2又は「下部」フェーサ4は、膜8及びデッキング9に面するポリマー発泡体断熱ボード1の側面上にあり、一方、第1又は「上部」フェーサ3は、ポリマー発泡体断熱ボード1の対向側面上にあり、バラスト及び露出したルーフ面に面し、ポリマー発泡体断熱ボードの最外表面を形成する。
【0012】
発泡ポリマー層2は、1種若しくは複数種のアルケニル芳香族ポリマーを含む、1種若しくは複数種の有機ポリマーを含む。「アルケニル芳香族ポリマー」とは、アルケニル芳香族モノマーのホモポリマー、2種以上のアルケニル芳香族モノマーのコポリマー、又は少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%若しくは少なくとも75重量%の1種若しくは複数種のアルケニル芳香族モノマーと、最大50重量%、好ましくは最大30重量%若しくは最大25重量%のアルケニル芳香族モノマーではない1種若しくは複数種の他のモノマーとのポリマー(ランダム、ブロック及び/又はグラフトコポリマーなど)を意味する。
【0013】
アルケニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、アルファ-メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン及びブロモスチレンが挙げられる。
【0014】
他のモノマーの例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ブタジエンが挙げられる。
【0015】
アルケニル芳香族ポリマーは熱可塑性であり、直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルケニル芳香族ポリマーは、少なくとも40,000g/mol、少なくとも60,000g/mol、又は少なくとも75,000g/molの、線状ポリスチレン標準に対するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量を有する。また、これは、線状ポリスチレン標準に対するGPCによって、例えば最大500,000g/mol、最大300,00g/mol、最大250,000g/mol又は最大150,000g/molの重量平均分子量を有していてもよい。アルケニル芳香族ポリマーは、1~3以上、好ましくは1~2.5の多分散度(重量平均分子量÷数平均分子量)を有し得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、水は、130℃及び101kPaの圧力において、アルケニル芳香族ポリマー1kgあたり0.09~2.2モル(mol/kg)、好ましくは0.15~2.2モル/kgの範囲まで、アルケニル芳香族ポリマー中に可溶性である。
【0017】
特に興味深いアルケニル芳香族ポリマーは、スチレンホモポリマー、並びにスチレンとアクリロニトリルとのランダム及び/又はブロックコポリマーである。特に好ましいアルケニル芳香族ポリマーは、0.1~30重量%の重合アクリロニトリル、70~99.9重量%の重合スチレン、及び0~2重量%の1種若しくは複数種の他のモノマー(他のアルケニル芳香族モノマーなど)を含むランダム及び/又はブロックコポリマーである。このようなスチレン-アクリロニトリルコポリマーは、例えば、少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%の重合アクリロニトリルを含んでもよく、最大25重量%、最大22.5重量%又は最大20重量%の重合アクリロニトリルを含んでもよい。このようなスチレン-アクリロニトリルコポリマーは、(参照により組み込まれる)米国特許第8,324,287号明細書にそれぞれ定義されているように、平均及び中央共重合アクリロニトリル分布の間の正の「スキュー(skew)」、及び/又は正のパーセント差を示し得、代替的に又は追加的に、20重量%以下の平均共重合アクリロニトリル含有量を有し得る。
【0018】
アルケニル芳香族ポリマーは、好ましくは20重量%以下のハロゲンを含有し、より好ましくは10重量%以下のハロゲン又は5重量%以下のハロゲンを含有する。より少ないハロゲンが含まれていてもよく、ハロゲンを含まなくてもよい。
【0019】
2種以上のアルケニル芳香族ポリマーが存在してもよい。さらに、有機ポリマーは、アルケニル芳香族ポリマーではない、1種若しくは複数種の他の有機ポリマーを含んでいてもよい。このような他の有機ポリマーは、存在するとしても、好ましくは全有機ポリマーの総重量の15重量%以下、より好ましくは5重量%以下を構成する。他の有機ポリマーは、アルケニル芳香族ポリマーよりも親水性であってもよい。例えば、水は、130℃及び101kPaの圧力において、2.2モル/kgを超える量で他の有機ポリマー中に溶解し得る。このような他の有機ポリマーの例としては、エチレンと、アクリル酸、メタクリル酸、C1~4ポリカルボン酸及び/又はアクリレートモノマーの1種若しくは複数種とのコポリマー;ポリ酢酸ビニル;及びポリアクリロニトリルが挙げられる。
【0020】
発泡ポリマー層は、発泡ポリマー層の重量に基づいて、少なくとも0.25重量パーセント、少なくとも0.5重量パーセント、又は少なくとも1.0重量パーセントの1種若しくは複数種の赤外線減衰添加剤、すなわちポリマー発泡体を通る赤外線の透過を抑制する添加剤を含む。発泡ポリマー層は、例えば、最大5重量%、最大3重量%、又は最大2重量%の赤外線減衰添加剤を含み得る。有用な赤外線吸収添加剤の中でも、様々な形態の炭素(例えば、グラファイト;カーボンブラック;すす;炭化繊維、フレーク又は粉末;カーボンナノチューブ及びフラーレン、粉末状アモルファスカーボンなどの1種若しくは複数種を含む)、金属フレーク、金属及び半金属酸化物、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化マンガン(IV)、酸化マグネシウム、酸化ビスマス(III)、酸化コバルト、酸化ジルコニウム(IV)、酸化モリブデン(II)、酸化カルシウム及びアルミナボーマイトが挙げられる。好ましいポリマー層は、0.25~5重量%、好ましくは0.25~3重量%の1種若しくは複数種の形態の炭素、特にグラファイト、カーボンブラック又はそれらの混合物を含む。
【0021】
ポリマー発泡体層は、ガス含有セルを含む。いくつかの実施形態において、セル内のガスは、1~4個の炭素原子を有する少なくとも1種のフルオロカーボンを含む。いくつかの実施形態において、フルオロカーボンは塩素を含まない。このようなフルオロカーボンの例としては、フッ化メチル、ペルフルオロメタン、フッ化エチル、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタン、ペルフルオロエタン、2,2-ジフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロシクロブタン、トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、2,2,3、3-テトラフルオロプロペン(1234yf)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225yc)、(Z)-1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(1336mzzm)、並びに他のヒドロフルオロオレフィン(HFO)及び/又はヒドロフルオロクロロオレフィン(HFCO)発泡剤、例えば米国特許出願公開第2007/0100010号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態において、セル内のガスは、二酸化炭素;水;及び/又は1種若しくは複数種のC1~9炭化水素を含む。好ましい実施形態において、セル内のガスは、少なくとも1種のフルオロカーボン、二酸化炭素、水、及び任意選択的に少なくとも1種の炭化水素を含む。
【0023】
発泡体層は、最大56kg/m3(立方フィートあたり3.5ポンド(pcf))の密度を有する。発泡体層の密度は、少なくとも21kg/m3(1.3pcf)、少なくとも28kg/m3(1.75pcf)又は少なくとも32kg/m3(2pcf)であり得、いくつかの実施形態において、最大40kg/m3(2.5pcf)又は最大56kg/m3(3.5pcf)であり得る。
【0024】
ポリマー発泡体層は、発泡体層及び/又は発泡体層の調製において有用な機能を果たす他の材料を含んでもよい。このような他の材料の例としては、例えば、顔料(赤外線減衰添加剤以外)、フィラー、酸化防止剤、押出助剤、細胞核形成剤(赤外線減衰添加剤以外)、帯電防止剤、難燃剤及び/又は防煙剤、酸捕捉剤などが挙げられる。
【0025】
発泡体層は少なくとも0.6cm(0.25インチ)の厚さを有する。発泡体層の厚さは、最大45.7cm(18インチ)、最大30.5cm(12インチ)、最大20.3cm(8インチ)、又は最大15.24cm(6インチ)などのいずれの大きな値であってもよい。本発明の利点は、比較的薄い発泡体層が、発泡体の高いRSI値のため、優れた断熱性を提供することである。特に好ましい厚さは、少なくとも7.62cm(3インチ)又は少なくとも10.16cm(4インチ)であり、最大20.3cm(8インチ)又は最大15.24cm(6インチ)である。
【0026】
発泡体層は、24℃の平均温度でASTM C518-17に従って測定した場合、厚さ25.4mmあたり少なくとも0.95K・m2/WのRSI値を有する。発泡体層のRSI値は、厚さ25.4mmあたり少なくとも1.0、少なくとも1.05、少なくとも1.1、少なくとも1.25又は少なくとも1.4K・m2/Wであってもよい。いくつかの実施形態において、RSI値は、厚さ25.4mmあたり最大2、最大1.75、最大1.6又は最大1.5K・m2/Wである。
【0027】
発泡体層は、好ましくは、熱軟化されたアルケニル芳香族ポリマー、1種若しくは複数種の発泡剤、赤外線吸収添加剤及び他の任意選択的な成分(もしあれば)の加圧混合物を形成すること、次いで加圧混合物を低い圧力及び温度に曝露すると、混合物が膨張し、これが冷却されてセル状発泡体を形成することによって製造される押出発泡体である。このような押出プロセスは周知であり、中でも、例えば、米国特許第5,380,767号明細書、同第8,324,287号明細書及び同第9,051,438号明細書に記載されている。押出プロセスは、加圧混合物を形成するために、一軸又は二軸押出機を使用して好都合に実施され、この混合物は、ダイ、典型的にはドッグボーン型ダイを通って押出機から出て、その後、混合物は膨張し、冷却される。米国公開特許出願第2008-0139682A号明細書に記載されているような蓄積押出(Accumulating extrusion)プロセスも有用である。
【0028】
得られたポリマー発泡体のセル内のガスは、少なくとも最初は、発泡体の製造に使用された発泡剤に対応する。したがって、発泡剤は、例えば、上述したような1~4個の炭素原子を有するフルオロカーボン;二酸化炭素;水;及びC1~9炭化水素の1種若しくは複数種を含み得る。いくつかの実施形態において、発泡剤は、1~4個の炭素原子を有するフルオロカーボン;二酸化炭素及び水を含む混合物であり;このような混合物において、フルオロカーボンは、例えば、アルケニル芳香族ポリマー1kgあたり0.4~2、特に0.5~1.2mol(mol/kg)の量で提供されることが可能であり;二酸化炭素は、例えば、0.1~0.5、特に0.2~0.4mol/kgの量で提供されることが可能であり;そして水は、例えば、0.15~2、特に0.25~1.5mol/kgの量で提供されることが可能であり、発泡剤の総量は0.65~2.5mol/kgである。このような発泡剤混合物は、例えば、米国特許出願公開第2008/140892号明細書に記載されている。
【0029】
第1のフェーサ3はポリマー発泡体層4の1つの主要表面に密封結合され、第2のフェーサ4はポリマー発泡体層2の対向する主要表面に密封結合される。「密封結合」とは、フェーサが適用されたポリマー発泡体層の主要表面中へ又は主要表面からのガスの大量移動に対する機械的バリアを形成するように、フェーサがポリマー発泡体層に結合されることを意味する。したがって、その主要表面を通るガスの移動は、もしあるとしても、フェーサを通してのガスの透過によって生じなければならない。したがって、好ましくは、フェーサは連続的であり、孔及びその他の開口部がなく、それが適用される主要表面全体を実質的に被覆している。各フェーサとポリマー発泡体層との間の結合強度は、250mm/分のクロスヘッド速度で作動させたInstron Universal Testing Machineを使用して、23℃及び50%相対湿度(RH)で試験した場合、少なくとも150グラム力/25.4cmであるべきである。フェーサはポリマー発泡体層に直接結合してもよい。或いは、フェーサは、接着剤層を介してポリマー発泡体層に結合してもよい。
【0030】
各フェーサは、1層又は複数層のフィルム層の形態をとる。フェーサが2層以上のフィルム層によって構成される場合、それらの層はポリマー発泡体層に個々に適用されてもよい。最初に個々の層の一部又は全部を多層構造に組み立て、その後にポリマー発泡体上に適用してもよい。フェーサは好ましくは熱可塑性である。
【0031】
第1のフェーサは、ASTM D1003-13によって測定した場合、少なくとも65%の不透明度を有する。不透明度は、少なくとも70%、少なくとも75%及び最大100%であり得る。積層時に、ポリマー発泡体断熱ボードの第1のフェーサ表面は、ASTM C1549に従って測定した場合、好ましくは少なくとも35%、少なくとも40%又は少なくとも50%の表面日射反射率を示す。表面日射反射率は最大100%のいずれかのより高い値であり得る。第2のフェーサは、これらの特性のいずれか一方又は両方を示してもよいし、示さなくてもよい。いくつかの実施形態において、第2のフェーサは、第1のフェーサの不透明度及び日射反射率の両方の要件を満たし、第1のフェーサと同一材料であってもよい。このような実施形態は、ポリマー発泡体断熱ボードのいずれかの主要表面を上向き(又は外向き)に設置することができるため、設置の観点から有利である。第2のフェーサ層にこれらの不透明性及び反射性の特徴がない場合、ポリマー発泡体断熱ボードは、第1のフェーサ層が上向き又は外向きになるように設置されるべきである。
【0032】
両フェーサは酸素バリア特性を示す。フェーサは、ASTM D3985-17に従って23℃で測定した場合、最大0.65cc/m2・日の酸素移動率(酸素透過性)、最大0.9cc・mil/m2・日の酸素透過率を示す。
【0033】
各フェーサは、23℃、50%RHの条件下でASTM D1922-15に従って測定した場合、少なくとも一方向において少なくとも120g/厚さ1mil(120g/厚さ25.4μm)のエルメンドルフ(Elmendorf)引裂強度を示すべきである。
【0034】
各フェーサは、好ましくは、少なくとも1層の酸素バリアポリマー層(
図3の参照数字5)を含む。酸素バリアポリマー層5は、それ自体で、ASTM D3985-17に従って測定した場合、最大0.9、最大0.5又は最大0.3cc・mil/m
2・日の酸素透過率を示し得る。酸素バリアポリマー層は、例えば1.27~50.8μm(0.05~2mil)、好ましくは2.54~50.8μm(0.1~2mil)、又は5.08~38.1μm(0.2~1.5mil)の厚さを有し得る。このような厚さは、一般に、ポリマー発泡体層のセル中の発泡剤が酸素又は空気によって置き換えられるのを低減するために十分であり、それによってポリマー発泡体層の熱伝導率は長期間にわたって低い値に保持される。
【0035】
有用な酸素バリアポリマーの例としては、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、塩化ビニリデンポリマー及びコポリマー、並びにポリアミドが挙げられる。特にエチレン-ビニルアルコールポリマーが適切である。エチレン-ビニルアルコールポリマーは、例えば10~50モル%、特に15~35モル%のエチレン単位と、それに対応して50~90モル%、特に65~85モル%のビニルアルコール単位とを含み得、エチレン単位及びビニルアルコール単位は好ましくはランダムに分布している。エチレン-ビニルアルコールポリマーは、エチレン及び酢酸ビニルのモノマー混合物を重合し、次いで酢酸基を加水分解してビニルアルコール繰り返し単位を生成することによって調製され得る。
【0036】
各フェーサは、好ましくは、少なくとも1層の水分バリア層(
図3の参照数字6、7で示される)を含む。1層若しくは複数の水分バリア層は、酸素バリアポリマー層5のいずれかの側面上に直接又は間接的に存在してもよい。各水分バリア層は、適切には、38℃で47g/m
2・日(3.0g/100in
2・日)以下の水に対する透過性を示す(ASTME96/E96M-16)。水分バリア層は、例えば、1.27~50.8μm(0.05~2mil)、特に2.54~25.48μm(0.1~1mil)又は2.54~12.7μm(0.1~0.5mil)の厚さを有し得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、水分バリア層は、水分バリア特性を提供する熱可塑性ポリマーを含む。適切な熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレンのいずれか1種若しくは複数種を含む)、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンとエチレンとのコポリマー、エチレン-酢酸ビニルポリマーなどが挙げられる。2種以上のこのようなポリマーのブレンドを用いてもよい。
【0038】
水分バリア層6、7は、それぞれ独立して、熱可塑性ポリマーに加えて、酸化防止剤、フィルム加工助剤(スリップ剤など)、顔料、染料及び/又は他の着色剤などの種々の成分を含むことができる。第1のフェーサ3の水分バリア層(特に
図3の水分バリア層6)は、好ましくは少なくとも1種の反射性フィラーを含む。反射性フィラーは、それ自体、入射可視光(すなわち、400~700nmの波長を有する入射光)の少なくとも80%を反射する材料である。反射性フィラーは、好ましくは、紫外線、特にUVA及びUVB放射線の両方を吸収、散乱又は反射する。二酸化チタン及び炭酸カルシウムは、特に適切な反射性フィラーである。
【0039】
水分バリア層はまた、反射性フィラーではない1種若しくは複数種の紫外線吸収剤を含んでいてもよい。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン、並びに種々のアリールエステル、ベンゾトリアゾール及びホルムアミジンが挙げられてよい。
【0040】
第1のフェーサ又は第2のフェーサはまた、種々の層間、特に水分バリア層と酸素バリアポリマー層との間の接着を促進する1種若しくは複数種のタイ層(
図3の参照数字15、16)を含み得る。タイ層は、例えば、カルボン酸又はカルボン酸無水物などの官能基で変性されたポリオレフィン、特にポリエチレンであってもよい。タイ層は、例えば、1.27~25.4μm(0.05~1mil)、特に2.54~12.7μm(0.1~0.5mil)の厚さを有し得る。
【0041】
特定の実施形態において、第1のフェーサは、エチレン-酢酸ビニルポリマーを含む内部(すなわち、ポリマー発泡体層に面する)水分バリア層7(
図3)(それ自体が多層構造であってもよい);エチレン-ビニルアルコールコポリマーを含む酸素バリアポリマー5層;及びポリエチレン(低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレンのいずれか1種若しくは複数種を含む)を含む外部(すなわち、ポリマー発泡体層から反対側を向く)水分バリア層6を含み得る。外部水分バリア層6は、好ましくは、少なくとも1種の反射性フィラー、少なくとも1種の紫外線吸収剤、又は反射性フィラー及び紫外線吸収剤の両方を含む。
【0042】
別の特定の実施形態において、第2のフェーサは、エチレン-酢酸ビニルポリマーを含む内部(すなわち、ポリマー発泡体層に面する)水分バリア層7(それ自体が多層構造であってもよい);エチレン-ビニルアルコールコポリマーを含む酸素バリアポリマー層5;及びポリエチレン(低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレンのいずれか1種若しくは複数種を含む)を含む外部(すなわち、ポリマー発泡体層から反対側を向く)水分バリア層6を含み得る。このような第2のフェーサの外部水分バリア層6は、少なくとも1種の反射性フィラー、少なくとも1種の紫外線吸収剤、又は反射性フィラー及び紫外線吸収剤の両方を含んでいても含んでいなくてもよいが、前述のように、第1のフェーサ及び第2のフェーサの両方として同一材料を使用することが便利な場合が多く、この場合、外部水分バリア6は、反射性フィラー、紫外線吸収剤、又はその両方を含み得る。
【0043】
第1又は第2のフェーサの全厚さは、例えば1.27~127μm(0.5~5mil)、特に19.05~63.5μm(0.75~2mil)、又は25.4~50.8μm(1~2mil)であってよい。
【0044】
本発明のポリマー発泡体断熱ボードは、0.61メートル(24インチ)~3.66メートル(12フィート)、特に1.83~3.66メートル(6~12フィート)の長さ(最長寸法)、及び0.305メートル(12インチ)~3.66メートル(12フィート)、特に0.46メートル(18インチ)~2.44メートル(8フィート)又は0.61メートル(2フィート)~1.83メートル(6フィート)の(主要表面に沿った長さに対して垂直な)幅を有する長方形又は正方形ボードストックの形態で都合よく提供される。
【0045】
ポリマー発泡体断熱ボードは、設置中にポリマー発泡体断熱ボードの隣接する部分との嵌合を容易にするために、1つ若しくは複数の縁部(好ましくは4つの縁部全て)に沿ってラベット加工が施されていてもよい。
【0046】
デッキング9は、その上の構造物を支える耐荷重層である。これは、コンクリート、鉄筋コンクリート、金属、木材、複合材、有機ポリマー、又は積載重量に耐えることができる他の建築材料であることができる。
【0047】
防水膜8は、一般に、熱可塑性オレフィン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、又はポリ塩化ビニルなどの熱可塑性又は熱硬化性ゴムである。変性ビチューメンスチレン-ブタジエン-スチレンゴム膜のようなビチューメンゴム膜も有用である。ビチューメンゴム膜は、ガラス繊維及び/又はポリマー繊維で補強されてもよい。防水膜8は、例えば、254μm~2.54mm(10~1000mil)、特に635~6350μm(25~250mil)又は635~3810μm(25~150mil)の厚さを有し得る。防水膜8は複数の層から構成されていてもよい。
【0048】
IRMAでは、
図1に示すように、防水膜8をデッキング9の上に直接設置してもよい。或いは、デッキング9と防水膜8との間に1層若しくは複数の任意選択的な層を設置してもよい。このような任意選択的な層の例としては、例えば、排水層又はラフティングシート層が挙げられ得る。このような層は、例えば、それを通してルーフ構造から水を除去することができる1つ若しくは複数の排水構造への水の流れを促進する機能を有する半多孔性布を含んでもよい。このような半多孔性布は、例えば、米国道路交通官協会(American Association of State Highway and Transportation Officials)クラス1又はクラス2のジオテキスタイルであり得る。適切なジオテキスタイルの一例は、Optigreen(登録商標)Separation Fabricとして市販されているものなどの50~500g/m
2の重量のポリプロピレン布である。別の適切な層は、くぼみのあるシート又は布であり、くぼみに水が収集される。このようなくぼみのあるシートは「エッグカートン」構造と呼ばれることがあり、くぼみが埋まったときに過剰量の水を下層に流すか、若しくは排水システムを通って流すことができる開口部を備えていてもよい。
【0049】
同様に、必要であれば、防水膜8とポリマー発泡体断熱ボード3の層の間に、前述のような1層若しくは複数の任意選択的な層をIRMAに設置してもよい。
【0050】
IRMAを組み立てる際、ポリマー発泡体断熱ボード3の層は、従来の発泡体断熱ボードと同様に、防水膜8を被覆し、防水膜8上に断熱及び保護構造を形成するために、ボードストックの個々の部分を互いに隣接して配置することによって設置することができる。ラベット加工を施す場合、ボードストックの個々の部分を嵌合させて、ボードストックの隣接する部分の間にラベット接合部を形成することができる。ボードストックの隣接する部分には、シップラップ加工を施すことが可能であるか、又は隣接するボードストック部分のそれぞれにおいて対応する嵌合ラベットを介してインターロック加工を施すことも可能である。シップラップ加工を施すと、ボードストックの隣接する部分の第1の外側表面間に溝が形成され、これは排水溝又はルーフの縁部に向かって水を流すように機能することができる。
【0051】
ポリマー発泡体断熱ボード層は、下地ルーフ構造に固定されていても、又は固定されていなくてもよい。任意選択的に、接着剤を使用することによって、又はいずれかの適切な機械的固定方法によって固定されてもよい。代わりに、又はそれに加えて、ポリマー発泡体断熱ボード層は少なくとも部分的に緩く配置され、そして少なくとも部分的に、バラスト材、すなわち、重力の力でポリマー発泡体断熱ボード層をその位置に保持する高密度の重質材料によってその位置に保持され、被覆される。バラスト材としては、砂利、石、又は土などの粗粒子又は微粒子材料が含まれ得る。バラストは、グリーンルーフのための植栽培地又は他のグリーンルーフ構造、又はグリーンルーフ構造の構成要素であり得るか、又はそれを含み得る。バラストは、ブルールーフ構造又はその構成要素であり得るか、又はそれを含み得る。他のバラスト材料には、連続層又は不連続層を形成し得る様々な形状及びサイズの舗装材が含まれる。本発明の特定のルーフ構造には、種々のバラスト材料が使用され得る。
【0052】
逆ルーフ膜アセンブリの他の任意選択的な構成要素としては、例えば、1つ若しくは複数の親水性発泡体の層;1つ若しくは複数のフィルター布、排水シート又はラフティングシート良好層;バラストの一部又は全部でない場合、1つ若しくは複数の植生成長培地層;1つ若しくは複数の植生層;1つ若しくは複数のルートバリア;水を通過させる間に植生成長培地が下層に洗い落ちるのを防止するための1つ若しくは複数の分離布;1つ若しくは複数の排水溝、パイプ、トラフ、又は他の流体導管などの排水システムの様々な要素、並びにプラグ、バルブ、ポンプ、流量制御システムなどの関連する流量管理デバイス;水を捕捉して貯留させるための1つ若しくは複数の滞留機構(バラストの一部又は全部でない場合)などが挙げられてよく、これらのいずれか、又は全ては、ポリマー発泡体断熱ボード層3の直接的に又は間接的に上に存在し得る。逆ルーフ膜アセンブリは、植生層を有する「グリーンルーフ」、初期の一時的な水(典型的には降雨又は他の降水)の貯留(植生層を介する以外)を提供し、その後貯留された水を徐々に放出する「ブルールーフ」、及び/又はグリーンルーフ及びブルールーフの両方の特徴を組み合わせた「ブルーグリーン」又は「グリーンブルー」ルーフであり得る。
【0053】
本発明のポリマー発泡体断熱ボードは、特にIRMAにおけるルーフ材用途に適合しているが、従来の断熱ボードと本質的に同様に、他の断熱用途及び/又は保護用途にも有用である。そのような他の用途の例としては、例えば、断熱コンクリート型枠;床暖房用断熱材を含む床材用断熱材;コンクリートチルトアップ壁の断熱;地下室の壁及び/又は床などの階下の石積み構造の断熱;構造用断熱パネル;従来の(すなわち、構造用断熱パネル;従来の(すなわち、非逆)低勾配ルーフ用断熱材;スパ用及び/又はホットタブ用断熱材(スパホットタブカバーを含む);トラック及び鉄道車両などの冷蔵車両用断熱材;地熱用途の断熱材;HVAC断熱材;内蔵型又は独立型の冷蔵庫及び/又は冷凍庫用断熱材;歩道、車道、滑走路及び駐車場などの舗装用断熱材;永久凍土保護;送電鉄塔基地の断熱材などが挙げられる。
【0054】
ポリマー発泡体断熱ボードが入射放射線(特に、可視、UV及び/又は赤外スペクトルの放射線)に曝露されるそのような他の用途では、ポリマー発泡体断熱ボードは、好ましくは、第1の外側(又は「上部」)表面が入射放射線に面し、第2の外側(又は「下部」)表面が、ポリマー発泡体断熱ボードが適用される構造に面するように設置される。ポリマー発泡体断熱ボードが入射放射線に曝露されることが予想されない用途では、第1の外側表面又は第2の外側表面のいずれかを、ポリマー発泡体断熱ボードが取り付けられる下地構造から離れて配置することができる。
【0055】
上記の通り、これらの用途では、ポリマー発泡体断熱ボード層は、従来の発泡体断熱ボードと同様に、ボードストックの個々の部分を互いに隣接させて配置し、下地構造上に断熱層及び保護層を形成することによって設置することができる。ラベット加工を施す場合、ボードストックの個々の部分を嵌合させて、ボードストックの隣接する部分の間にラベット接合及び/又は他のインターロッキング接合を形成することができる。この場合も、上記の通り、ボードストックの隣接する部分の第1の外側表面間のシップラップ加工によるチャネルは、水を排水溝又はボードストック層の端部に向かって流すように機能することができる。
【実施例】
【0056】
第1及び第2のフェーサは、他の利点の中でも、本発明のポリマー発泡体断熱ボードに優れた耐湿性を与える。これを評価するために、米国特許第8,324,287号明細書の第10段に記載されている一般的な方法で、ポリマー100重量部に対してカーボンブラックを4.0重量部添加した押出ポリマー発泡体を調製し、次いで直ちに以下に記載するように第1及び第2のフェーサに積層する。ポリマーは、125,000~150,000g/molの重量平均分子量及び2.25~2.4の多分散度を有する重合アクリロニトリルを15~20重量%含み、約0.9の正の「スキュー」も有するスチレン-アクリロニトリル樹脂である。厚さ1.7cm、幅35cm、密度33.3kg/m3のボードストックが耐湿性評価の目的で調製されるが、一般に本発明の逆ルーフ膜アセンブリにはより厚い発泡体が使用される。
【0057】
多層フェーサは共押出成形により作製する。この実験では、第1及び第2のフェーサは同一である。各フェーサは、内部(発泡体層の隣)から外部に向かって順に、以下の層を含む。数字表記は
図3を参照のこと:
【0058】
層7: 少量のフィルム加工助剤を含む、エチレン-酢酸ビニル(25重量%酢酸ビニル)コポリマー(74~76重量%)及び低密度ポリエチレン(22重量%)のブレンド。層7の厚さは11.81μm(0.465mil)である。
【0059】
層15及び16: 線形低密度ポリエチレン(85重量%)と無水物-変性ポリエチレン(15重量%)とのブレンドである、タイ層。厚さはそれぞれ6.86μm(0.27mil)及び3.05μm(0.12mil)である。
【0060】
層5: タイ層C及びEの間に介在するエチレン-ビニルアルコールコポリマー(15~35重量%のビニルアルコール単位)。厚さは6.86μm(0.27mil)である。
【0061】
層6: ベンゾフェノン、二酸化チタン及び酸化防止剤を含み、少量のフィルム加工助剤を含む、低密度ポリエチレン。厚さは9.53μm(0.375mil)である。
【0062】
各フェーサは、少なくとも65%の不透明度、最大0.65cc/m2・日の酸素移動率、最大0.9cc・mil/m2・日の酸素透過率、及び少なくとも120g/milの機械方向でのエルメンドルフ(Elmendorf)引裂強度を有する。フェーサの幅は40cmである。各フェーサは、発泡体基材への積層時に少なくとも35%の表面反射率を示す。
【0063】
第1及び第2のフェーサは、発泡押出ダイの約5メートル下流に配置された、190℃に設定された二重加熱ロールラミネーターを使用して、発泡ポリマーの主要表面に積層される。積層圧力は40psi(276kPa)であり、ライン速度は約7m/分である。積層された製品の見かけ密度は33.3kg/m3である。
【0064】
この積層発泡体を、その後、21℃、水頭2.5cmの条件下で2ヶ月間、DI水中に浸漬する。2ヵ月後、積層発泡体は0.01体積%の水を吸収する。フェーサ層がない場合、同ポリマー発泡体は、同様の試験条件で約0.5体積%の水を吸収する。
【0065】
ASTMC518に従い、10℃及び24℃の平均温度を用いて、浸水前及び浸水後の積層発泡体の熱伝導率を測定する。10℃の試験温度では、積層発泡体は、浸漬前に厚さ25.4mmあたり1.153K・m2/W(R値6.55F°・ft2・h/BTU/厚さインチ)のRSI値を示し、そして浸漬後に厚さ25.4mmあたり1.051K・m2/W(R値5.97/インチ)のRSI値を示し、すなわち9%未満の損失を示す。24℃の試験温度では、積層発泡体は、浸漬前に厚さ25.4mmあたり1.071K・m2/W(R値6.08/インチ)のRSI値を示し、そして浸漬後に厚さ25.4mmあたり0.983K・m2/W(R値5.58/インチ)のRSI値を示し、すなわち8%強の損失を示す。
【0066】
第2の押出ポリマー発泡体は、米国特許第8,324,287号明細書の第10段に記載されている一般的な方法で、地球温暖化係数が低い発泡剤パッケージを用いて、ポリマー100重量部あたり1.0重量部のグラファイト(Hubron International グラファイトグレードPSB5)を添加して調製され、その直後、上述のように第1及び第2のフェーサに積層する。発泡ポリマーは、125,000~150,000g/molの重量平均分子量、2.25~2.4の多分散度の重合アクリロニトリルを15~20重量%含み、約0.9の正の「スキュー」も有するスチレン-アクリロニトリル樹脂である。発泡剤パッケージは、4.25pphのHFC152a、4.25pphのHFO1234ze、0.9pphのCO2、及び0.9pphのH2Oを含む。発泡体ボードストックは、厚さ1.5cm、幅33cmであり、密度22.4kg/m3を有する。発泡体コアとフェーサとの間の接着強度は1.47N/25.4mm(150グラム力/インチ)であるRSIは、0.97(R5.5/in)のベースライン試料(バリアフェーサなし)のRSIと比較して、1.18(R6.7/in)である。
【国際調査報告】