(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】水域にエネルギーを貯蔵するためのエネルギー貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
F03B 13/06 20060101AFI20240719BHJP
F03B 7/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F03B13/06
F03B7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579571
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 NL2022050362
(87)【国際公開番号】W WO2023277682
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523483957
【氏名又は名称】オーシャン グレイザー ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】Ocean Grazer B.V.
【住所又は居所原語表記】Stationsweg 3 b 9726 AC Groningen The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ブリーク, フレデリック ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ダースマ, アンネ マックス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ローイ, マライン
【テーマコード(参考)】
3H072
3H074
【Fターム(参考)】
3H072AA17
3H072AA26
3H072BB40
3H072CC99
3H074AA20
3H074BB07
3H074CC11
3H074CC50
(57)【要約】
本発明は、海、海洋、水路などの水域(2)にエネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵システム(1)を提供する。当該エネルギー貯蔵システムは、作動液体(7)用のリザーバ構造(8A、8B、8C、9A、9B、9C)と、エネルギー貯蔵回収サブシステム(10A、10B)とを備える。リザーバ構造内の作動液体(7)は、水域の水(6)から完全に分離されている。リザーバ構造は、変形可能な加圧サブリザーバ(8A)を有する。加圧サブリザーバ(8A)は、水域に延在し、液体不透過性の変形可能な壁構造(18)を持つ。リザーバ構造はさらに、水域地下(5)の鉛直柱の下に埋設された人工構造物である埋設減圧サブリザーバ(9A)を持つ。当該エネルギー貯蔵システムによれば、特に、エネルギー貯蔵容量が向上し、信頼性が向上し、運用コストが削減され、環境への悪影響を減らすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域(2)にエネルギーを貯蔵するためのエネルギー貯蔵システム(1)であって、前記水域は、水面(3)および底面(4)を有し、前記底面は、前記水域(2)の下方の水域地下(5)との境界であり、
リザーバ構造(8A、8B、8C、9A、9B、9C)と、
エネルギー貯蔵回収サブシステム(10A、10B、10C、10D)とを備え、
前記リザーバ構造は加圧リザーバ(8A,8B,8C)および減圧リザーバ(9A,9B,9C)を有し、前記加圧リザーバおよび前記減圧リザーバはそれぞれ、前記水域の前記水面(3)の下方に作動流体(7)を、前記水域の水(6)とは別個に、前記加圧リザーバ(8A,8B、8C)および前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)内の前記作動液(7)と、前記水域(2)の前記水(6)とが、混ざり合わないように、保持するよう構成されており、
前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)のうち少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)は、少なくとも部分的に前記水域(2)内に延在しており、液体不透過性の変形可能な壁構造(18)を有しており、前記変形可能な壁構造(18)に前記水域(2)の前記水(6)の静水圧が作用して前記変形可能な壁構造(18)が変形することで、前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)内に収容された前記作動液体(7)を加圧するように構成されており、
前記減圧リザーバ(9A、9B,9C)は、前記水域(2)の前記水(6)の静水圧で加圧されないよう、前記減圧リザーバ内の前記作動液体(7)を保護するように配置および構成されており、
前記エネルギー貯蔵回収サブシステムは、
前記作動液体(7)が前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)から前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)へ、且つ、逆へ流れるように誘導するよう構成され、
前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)から前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)に前記作動液体の一部を押しのけることで前記リザーバ構造内の前記作動液体(7)の位置エネルギーを増大させることによってエネルギーを蓄積して、前記変形可能な壁構造(18)を変形させて、前記少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)を、前記水域(2)の前記水(6)の静水圧の作用に抗して膨張させるよう構成され、
前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)から前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)へ流れるように前記作動液体(7)の一部を放出することで、前記リザーバ構造内の前記作動液体の位置エネルギーを減少させて、蓄積されたエネルギーを回収して、前記変形可能な壁構造(18)を変形させて、前記少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)を、前記水域(2)の前記水(6)の静水圧が作用することで収縮させるよう構成され、
前記エネルギー貯蔵システム(1)は、
前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)の少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)は、人工構造物であり、前記水域地下(5)の鉛直柱の下に埋設されており、前記鉛直柱は高さが少なくとも5メートルで、
前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)は、前記少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)よりも少なくとも5メートル低い位置に配置され、前記少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)は、前記水域(2)内に延在しており、前記エネルギー貯蔵システム(1)の運転時において、前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)内の前記作動液体(7)が、前記少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)内の前記作動液体(7)よりも少なくとも5メートル低くなる
ことを特徴とする、エネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項2】
シャフト構造(11)をさらに備え、
前記シャフト構造(11)は、少なくとも前記水域(2)の前記底面(4)から下方に、前記水域地下(5)を通って延びており、
前記加圧リザーバのうち少なくとも1つの下降加圧サブリザーバ(8B)が、前記シャフト構造(11)内または前記シャフト構造(11)に延在しており、前記シャフト構造(11)に沿って下方に延びており、
前記エネルギー貯蔵回収サブシステムは少なくとも一部が、
前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)から前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)に前記作動液体(7)の一部を押しのけることと、
前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)から前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)へと流れるよう前記作動液体の一部を放出することとが
前記シャフト構造(11)内または前記シャフト構造(11)で、前記少なくとも1つの下降加圧サブリザーバ(8B)を介して行われるよう
前記シャフト構造(11)内または前記シャフト構造(11)に配置されている、
請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項3】
前記エネルギー貯蔵回収サブシステム(10A、10B、10C、10D)は、前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)から前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)へと前記作動液体(7)の一部を押しのけるための少なくとも1つのポンプを有する、請求項1または2に記載のエネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項4】
前記エネルギー貯蔵回収サブシステム(10A、10B、10C、10D)は、前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)から前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)へと流れるよう前記作動液体(7)の一部を放出するための少なくとも1つのタービンを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵回収サブシステム(10A、10B、10C、10D)は、タービン発電機としてもまた逆に電動機駆動ポンプとしても動作可能な少なくとも1つのリバーシブル水力タービンを有し、前記少なくとも1つのリバーシブル水力タービンは、前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)から前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)へと前記作動液体(7)の一部を押しのけるとともに、前記加圧リザーバ(8A、8B、8C)から前記減圧リザーバ(9A、9B、9C)へと流れるよう前記作動液体(7)の一部を放出する、請求項1から4のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項6】
前記鉛直柱は、高さが少なくとも10メートルであり、
前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)は、前記少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)よりも少なくとも10メートル低い位置に配置され、前記少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)は前記水域(2)内に延在しており、前記エネルギー貯蔵システム(1)の運転時において、前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)内の前記作動液体(7)が、前記少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ(8A)内の前記作動液体(7)よりも少なくとも10メートル低い位置にある、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)の水平平坦比が少なくとも2.0であり、
前記水平平坦比は、分子および分母を有する商として定義され、
前記分子は、水平基準平面の投影面の表面積の平方根であり、前記投影面は、前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)を前記水平基準面に垂直に投影することによって得られ、
前記分母は、前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)の全体の鉛直高さである
請求項1から6のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)の前記水平平坦比が少なくとも4.0である、請求項7に記載のエネルギー貯蔵システム(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ(9A)の前記水平平坦比が少なくとも8.0である、請求項8に記載のエネルギー貯蔵システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水域にエネルギーを貯蔵するためのエネルギー貯蔵システムに関する。水域は、水面と底面とを有し、底面は、水域の下方にある水域地下との境界である。エネルギー貯蔵システムは、
水域の水面の下に、各々が水域の水とは別個に作動液体を保持するように構成されている加圧リザーバおよび減圧リザーバを有するリザーバ構造と、
エネルギー貯蔵回収サブシステムと
を備える。
加圧リザーバのうち少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバは、少なくとも部分的に水域内に延在している。当該加圧サブリザーバは、変形可能な壁構造を有し、変形可能な壁構造に水域の水の静水圧が作用することで変形可能な壁構造が変形することによって、加圧リザーバ内に収容された作動液体を加圧するように構成されている。
減圧リザーバは、水域の水の静水圧で加圧されないよう、減圧リザーバ内の作動液体を保護するように配置および構成されている。
エネルギー貯蔵回収サブシステムは以下のように構成されている。
加圧リザーバから減圧リザーバに、またその逆方向に、作動液体が流れるように誘導するよう構成されている。
作動液体の一部を減圧リザーバから加圧リザーバに押しのけることで、リザーバ構造内の作動液体の位置エネルギーを増加させて、エネルギーを蓄積するよう構成されている。
作動液体の一部を加圧リザーバから減圧リザーバに放出することで、リザーバ構造内の作動液体の位置エネルギーを減少させて、蓄積されたエネルギーを回収するよう構成されている。
【背景技術】
【0002】
上記のようなタイプのエネルギー貯蔵システムは、WO2019/117711A1から公知である。
【0003】
本明細書で使用される「水域」という用語は、本願において、海、海洋、水路、その他の同様の広い水域を指すものと承知されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、少なくとも公知のエネルギー貯蔵システムを改善した代替エネルギー貯蔵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を実現するため、本発明は、冒頭で紹介したものと同種のエネルギー貯蔵システムを提供する。当該エネルギー貯蔵システムはさらに、
減圧リザーバのうち少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバは、水域地下の鉛直柱の下に埋設され、鉛直柱は高さが少なくとも5メートルであり、
少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバは、水域内に延在している少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバよりも少なくとも5メートル低い位置に配置され、エネルギー貯蔵システムの運転時において、少なくとも1つの埋設型減圧サブリザーバ内の作動液体が、少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ内の作動液体よりも少なくとも5メートル低い位置にある
ことを特徴とする。
【0006】
より明確に述べると、本発明は、添付の独立請求項1に係るエネルギー貯蔵システムを提供する。本発明の好ましい実施形態は、添付の従属請求項2から9により提供される。
【0007】
上述したWO2019/117711A1の
図1または
図2から公知のエネルギー貯蔵システムと比較して、本発明によるエネルギー貯蔵システムは、リザーバ構造が異なる。
【0008】
主な違いは以下の通りである。WO2019/117711A1の
図1の左側には、変形可能な壁構造17Aを有する加圧リザーバ7Aと、剛性の壁構造18Aを有する減圧リザーバ8Aとが示されている。リザーバ7Aおよび8Aはどちらにも、作動液体9が入っている。減圧リザーバ8Aは、水域地下の鉛直柱の下に埋設されているわけでも、加圧リザーバ7Aより少なくとも5メートル低い位置に配置されているわけでもないことがわかる。
【0009】
本発明に係るエネルギー貯蔵システムは、WO2019/117711A1から公知のエネルギー貯蔵システムに比べて、リザーバ構造が異なることでさまざまな利点が得られる。利点は以下で説明する。
【0010】
本発明は、少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバが、(i)水域に延在している少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバよりも実質的に低い位置に配置され、(ii)前述のように埋設されている、という2つの特徴により差別化され、揚程(ヘッド)が増加するので、リザーバ構造の単位体積当たりのエネルギー貯蔵容量が高くなる。このように揚程が増加するのは、作動液体が減圧リザーバから加圧リザーバに押しのけられてエネルギーを貯蔵し、且つ、逆方向に流れるように放出されてエネルギーを回収する作動液体交換位置で優勢な静水圧は、水域の水面から下方に向かい作動液体交換位置までの距離として測定される、水域内の水と加圧リザーバ内の作動液体との合計の総鉛直高さが増加すると、増加するためである。このように揚程が増加すると、結果として圧力が高くなるがそれに抗して、減圧リザーバから加圧リザーバへ作動液体の一部を押しのけることによって、エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵回収サブシステムが供給する必要のあるエネルギーが大きくなる。同様に、このように揚程が増加するとさらに、圧力が高くなった状態で作動液体の一部を放出して加圧リザーバから減圧リザーバに流入させることにより貯蔵されたエネルギーを回収する際に、エネルギー貯蔵回収サブシステムが受け取るエネルギー収率が高くなる。
【0011】
本発明を差別化する2つの特徴によれば、上記で説明したようにリザーバ構造の単位体積当たりのエネルギー貯蔵容量が高くなるという利点に加えて、さらに重要な利点がある。さらなる利点を説明するために、WO2019/117711A1で公知のリザーバ構造は空のときに浮力を有することに留意されたい。一方、本発明によれば、少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバは、水域地下の鉛直柱の下に埋設されることにより、水域地下に対して自動的にバラストされる。さらに、本発明に係る一部埋設リザーバ構造は、水域の底部(例えば、海底)におけるリザーバ構造の露出が最小限に抑えられるので、信頼性が高くなり、リザーバ構造に作用する潮流および波からの力が小さくなり、洗掘防止のためのコストが減る。リザーバ構造またはその一部を将来廃止する場合、少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバは埋設したままとすることができ、廃止のコストが減り、海底の混乱を最小限に抑えることができる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、エネルギー貯蔵システムはさらに、シャフト構造をさらに備える。
シャフト構造は、少なくとも水域(2)の底面から下方に、水域地下を通って延びている。
加圧リザーバのうち少なくとも1つの下降加圧サブリザーバが、シャフト構造内またはシャフト構造で、シャフト構造に沿って下方に延びている。
エネルギー貯蔵回収サブシステムは、以下の動作が実施できるよう、少なくとも一部がシャフト構造内またはシャフト構造に配置されている。
減圧リザーバから加圧リザーバへの作動液体の一部の押しのけ、および
加圧リザーバから減圧リザーバに流入するように作動液体の一部の放出を
シャフト構造内またはシャフト構造で、少なくとも1つの下降加圧サブリザーバを介して行う。
【0013】
本発明の別の好ましい実施形態、または上述の好ましい実施形態において、エネルギー貯蔵回収サブシステムは、減圧リザーバから加圧リザーバへの作動液体の一部の押しのけを実行するべく、少なくとも1つのポンプを有する。
【0014】
本発明のさらに別の好ましい実施形態、または上述の好ましい実施形態のいずれか1つでは、エネルギー貯蔵回収サブシステムは、加圧リザーバから減圧リザーバに流入するように作動液体の一部の放出を実行するべく、少なくとも1つのタービンを有する。
【0015】
本発明のさらに別の好ましい実施形態、または上述の好ましい実施形態のいずれか1つでは、エネルギー貯蔵回収サブシステムは、少なくとも1つのリバーシブル水力発電タービンを有する。この水力発電タービンは、減圧リザーバから加圧リザーバへの作動液体の一部の押しのけ、および、加圧リザーバから減圧リザーバに流入するように作動液体の一部の放出を実行するべく、タービン発電機として、および、逆に電動機駆動ポンプとして動作することができる。
【0016】
本発明のさらに別の好ましい実施形態、または上述の好ましい実施形態のいずれか1つでは、
鉛直柱は高さが少なくとも10メートルであり、
少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバは、少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバよりも少なくとも10メートル低い位置に配置されており、少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバは、水域内に延在しており、エネルギー貯蔵システムの運転時において、少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバ内の作動液体が、少なくとも1つの変形可能な加圧サブリザーバ内の作動液体よりも少なくとも10メートル低い位置にある。
【0017】
本発明のさらに別の好ましい実施形態、または上述の好ましい実施形態のいずれか1つでは、
少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバの水平平坦比は、少なくとも2.0、好ましくは少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも8.0であり、
水平平坦比は、分子および分母を有する商として定義され、
分子は、水平基準平面への投影面の表面積の平方根であり、投影面は少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバを水平基準平面に垂直に投影することによって得られ、
分母は、少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバの全体の鉛直高さである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下に記載する実施形態は例に過ぎずこれらに限定されるものではない。本発明の上述の態様および他の態様は、以下の実施形態および添付図面の概略図を参照することで明らかになるであろう。
【
図1】本発明に係るエネルギー貯蔵システムの一実施形態の一例を示す垂直断面図である。
【
図2】
図1の例を示す別の垂直断面図であるが、
図2では、リザーバ構造内の作動液体の位置エネルギーは、
図1よりも小さくなっている。
【
図3】本発明によるエネルギー貯蔵システムの別の実施形態の一例を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず
図1および
図2の実施形態を参照する。
図1および
図2の実施形態で使用されている参照記号は、以下の通り、本発明の上記の記載および態様、ならびに関連する記載および態様を指す。
1 エネルギー貯蔵システム
2 水域
3 水域の水面
4 水域の底面
5 水域地下
6 水域の水
8A、8B、8C 加圧リザーバ
8A・・・変形可能な加圧サブリザーバ
8B・・・下降加圧サブリザーバ
8C・・・筒状連結加圧サブリザーバ
9A、9B、9C・・・減圧リザーバ
9A・・・埋設減圧サブリザーバ
9B・・・シャフト一体型減圧サブリザーバ
9C・・・筒状連結加圧サブリザーバ
10A、10B、10C、10D・・・エネルギー蓄積回収サブシステム
10A・・・第1のポンプ、タービンまたはリバーシブル水力タービン
10B・・・第2のポンプ、タービンまたはリバーシブル水力タービン
10C・・・ポンプ、タービン等用の減圧側接続部
10D・・・ポンプ、タービン等用の加圧側接続部
11・・・シャフト構造
18・・・変形可能な壁構造
【0020】
図面の簡単な説明を含め、概要を説明し、図面で用いられている参照番号を説明したが、上記の説明を参照すれば、
図1および
図2に示す例はその大部分が容易に自明である。以下は追加の説明である。
【0021】
エネルギー貯蔵システム1のリザーバ構造の加圧リザーバ8A、8B、8Cは、変形可能な壁構造18を有する変形可能な加圧サブリザーバ8Aと、シャフト構造11内の下降加圧サブリザーバ8Bと、変形可能な加圧サブリザーバ8Aと下降加圧サブリザーバ8Bとを連結する管状の連結加圧サブリザーバ8Cとを含む。
【0022】
図示した例では、変形可能な壁構造18はブラダー(bladder)型である。変形可能な加圧サブリザーバ8Aの変形可能な壁構造18を除き、加圧リザーバ8A、8B、8Cの壁構造は全て、図示の例では、剛性が高い。
【0023】
さらに、変形可能な加圧サブリザーバ8Aの下面の少なくとも一部は、好ましくは、地下5に対して、例えば地下5内で、および/または、地下5で、および/または、地下5の上方で、固着および/またはその他の方法で固定され得る。
【0024】
エネルギー貯蔵システム1のリザーバ構造の減圧リザーバ9A、9B、8Cは、埋設減圧サブリザーバ9Aと、シャフト構造11と一体化されているシャフト一体化減圧サブリザーバ9Bと、埋設減圧サブリザーバ9Aとシャフト一体化減圧サブリザーバ9Bとを連結する管状の連結減圧サブリザーバ9Cとを含む。図示した例では、減圧リザーバ9A、9B、9Cの壁構造は剛性が高い。
【0025】
エネルギー貯蔵システム1のエネルギー蓄積回収サブシステム10A、10B、10C、10Dは、図示のユニット10A、10Bを有する。一例として、
図1および
図2において、ユニット10Aはポンプであり、ユニット10Bはタービンであると考える。
【0026】
ポンプ10Aは、シャフト一体型減圧サブリザーバ9Bから下降加圧サブリザーバ8Bに作動液体7の一部を圧送するように構成されている。このように作動液体7を圧送する場合には、下降加圧サブリザーバ8Bの底部に作用する作動液体7の静水圧の作用に抗して行われなければならない。下降加圧サブリザーバ8Bの底部における作動液体7の静水圧は、水域2の水面3から下方に下降加圧サブリザーバ8Bの底部までの距離として測定される、水域2内の水6および加圧リザーバ8A、8B、8C内の作動液体7を合計した総鉛直高さに応じて決まる。
【0027】
タービン10Bは、下降加圧サブリザーバ8Bからシャフト一体型減圧サブリザーバ9Bに作動液体7の一部を放出するように構成されている。このように作動液体7を流入させる場合には、下降加圧サブリザーバ8Bの底部に作用する作動液体7の静水圧を発生させることで実質的にその作用を利用して行う。タービン10Bは、このように作動液体7が流れることで、電気エネルギーを生成する役割を果たす。
【0028】
ユニット10Aをポンプとし、ユニット10Bをタービンとする代わりに、これらのユニット10Aおよび10Bの各々をリバーシブル水力発電タービンとしてもよい。さらに、このようにユニット10Aおよび10Bの2つを有する代わりに、エネルギー貯蔵システム1のエネルギー貯蔵回収サブシステムが有する当該ユニットは、1つだけとしてもよいし、2つ以上としてもよい。これを模式的に説明するために、
図1および
図2は、減圧サブリザーバ9Bの減圧側接続部10Cと、シャフト一体型減圧サブリザーバ8Bの加圧側接続部10Dとを示している。これらの接続部10Cおよび10Dを介して、追加のポンプおよび/またはタービンおよび/またはリバーシブル水力発電タービンを取り付けることができる。
【0029】
図1に示す状況では、変形可能な加圧サブリザーバ8Aは相対的に膨張した状態を示しているが、
図2の状況では、変形可能な加圧サブリザーバ8Aは相対的に収縮した状態を示している。これに対応して、加圧リザーバ8A、8B、8Cは、
図1の状況では
図2の状況よりも多量の作動液体7を含み、減圧リザーバ9A、9B、9Cは、
図1の状況では
図2の状況よりも含んでいる作動液体7が少ない。したがって、
図2では、リザーバ構造内の作動液体7の位置エネルギーは、
図1よりも小さくなっている。
【0030】
図示した例では、減圧リザーバ9A、9B、9Cは、シャフト構造11の内部との間、および/または、外部の大気環境との間で必ずしも空気の流通があるわけではない。減圧リザーバ9A、9B、9C内の空気圧は、非常に低い気圧、例えば、実質的に真空圧レベルに保つとしてもよい。しかし、減圧リザーバ9A、9B、9Cが、例えば、空気ダクト構造を介して、例えば外部の大気環境との間で空気の流通がある実施形態も原理的には可能である。そのような空気ダクト構造は、シャフト構造11に沿って上方に延び、シャフト構造11から水面3に向かって水6を通って延びる可撓性ホースからなり、当該ホースの端部は、ブイによって浮いた状態に保たれる。
【0031】
図3に示す他の実施形態を説明する。
図3の実施形態では、水域、水面、底面、水域地下、および水域の水に対して、
図1および
図2で使用したものと同じ参照番号2、3、4、5、6がそれぞれ使用されている。
【0032】
図3は、本発明によるエネルギー貯蔵システム101を示す。エネルギー貯蔵システム101は以下を備える。
図1および
図2の加圧リザーバ8A、8B、8Cと同様である第1、第2、第3および第4の加圧リザーバ
図1および
図2の減圧リザーバ9A、9B、9Cと同様である第1、第2、第3および第4の減圧リザーバ
図1および
図2のエネルギー貯蔵回収サブシステム10A、10B、10C、10Dと同様である第1、第2、第3および第4のエネルギー貯蔵回収サブシステム
【0033】
図3において、
図1および
図2と同様の第1、第2、第3および第4のリザーバ/サブシステムのうち見える部分は、
図1および
図2の実施形態と同じ参照符号で示されているが、
図3では、第1、第2、第3および第4のリザーバ/サブシステムのそれぞれについて、
図1および
図2で使用した参照番号に100、200、300および400を足した参照番号を使用しているものと理解されたい。
【0034】
図3において、
図1および
図2と同様の第1、第2、第3および第4のリザーバ/サブシステムは全て、1つのシャフト構造111に相互に結合されていることがわかる。
【0035】
図3ではさらに、埋設減圧サブリザーバ109A、209A、309A、409Aのそれぞれが、ある程度の「水平平坦度」で延在していることがわかる。すなわち、埋設減圧サブリザーバの平坦度は水平方向であり、例えば細長い埋設減圧サブリザーバの長手方向が垂直方向に延びる場合とは対照的である。本明細書の冒頭では、「水平平坦比」が定義されているが、少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバの水平平坦比は、好ましくは少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも4.0、さらに好ましくは少なくとも8.0であるべきであると述べられている。少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバの水平平坦比は、好ましい値として挙げたこれらの最小値を取る場合、有益な結果が得られるのはいくつか理由がある。
【0036】
利点の1つは、水平平坦度が上記の値を取る場合、減圧リザーバから加圧リザーバへと作動液体の一部を押しのける際、および、加圧リザーバから減圧リザーバへと流入するように作動液体の一部を放出する際に、エネルギー貯蔵回収サブシステムのポンプおよび/またはタービンおよび/または同様の構成要素に対する静水圧負荷の制御を最適化できることである。すなわち、静水圧負荷は、ポンプおよび/またはタービン等の効率を最適化するべく、最適値に到達するよう制御することができる。
【0037】
もう1つの利点は、水平平坦度が上記の値を取ることで、ポンプおよび/またはタービン等に対する静水圧負荷の制御の最適化に影響を及ぼすことなく、少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバの貯蔵容量を水平方向に容易に大きくできることである。このように水平方向で大きくする場合、少なくとも1つの埋設減圧サブリザーバの全高に影響を与えることはない。
【0038】
以上の説明および図面において本発明を詳細に説明および図示したが、このような説明および図示は例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。本発明は、開示した実施形態に限定されない。
【0039】
例えば、図示した例では、加圧リザーバの変形可能な壁構造は、ブラダー型である。しかしながら、このような加圧リザーバの変形可能な壁構造には他の多くの様々な構成を適用することができ、例えば、入れ子式に伸縮可能な構成の変形可能な壁構造を適用することができる。
【0040】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、明細書、および添付の特許請求の範囲を検討することによって、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解および実現され得る。特許請求の範囲において、「備える」という語は他の構成要素または工程を排除するものではなく、数を明記しない記載は複数を排除しない。単一の部品が、特許請求の範囲に記載されたいくつかの要素の機能を果たしてもよい。明瞭且つ簡潔に説明することを目的として、同じまたは別個の実施形態の一部としてそれぞれの特徴を本明細書に開示するが、開示した特徴の全てまたは一部の組み合わせを有する実施形態が本発明の範囲には含まれ得るものと理解されたい。特定の手段が互いに異なる従属項に列挙されているというだけで、これらの手段を組み合わせて利用した場合に有益な点がないと示唆しているわけではない。請求項中の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】