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特表2024-527712黒鉛のシートを備える腫瘍治療電場(TTFields)を印加するための電極アセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】黒鉛のシートを備える腫瘍治療電場(TTFields)を印加するための電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/40 20060101AFI20240719BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61N1/40
A61N1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579833
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2022057234
(87)【国際公開番号】W WO2023012708
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/230,438
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/275,841
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/275,843
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨラム・ワッサーマン
(72)【発明者】
【氏名】スタス・オブチョフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリヤ・クプレニク
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・シャピロ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB04
4C053BB05
4C053BB06
4C053BB34
4C053LL20
(57)【要約】
交流電場(たとえば、TTFields)が、黒鉛のシートと、黒鉛のシートの前面に配設された導電性材料の少なくとも1つの層と、黒鉛のシートの後に配設された電極素子とを含む1つまたは複数の電極アセンブリを使用して被験体の身体に印加され得る。電極素子は、黒鉛のシートの後面と電気的に接触するように配設された前面を有する。黒鉛のシートは、シートの前面に平行な方向に熱および電流の両方を拡散して、電極アセンブリ上のホットスポットをなくすか、または少なくとも最小にする。これは、延いては、温度安全閾値(たとえば、41℃)を超えることなく電流を増大させることを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電場を被験体の身体に印加するための装置であって、
前面と後面とを有する黒鉛のシートと、
前記シートの前面に配設された少なくとも1つの導電性材料層であって、生体適合性の前面を有する少なくとも1つの導電性材料層と、
前記シートの後に位置決めされた第1の電極素子であって、前記シートの後面と電気的に接触するように配設された第1の前面を有する第1の電極素子と、を備える装置。
【請求項2】
前記第1の電極素子は、前面および後面を有する第1の誘電性材料層と、前記第1の誘電性材料層の後面に配設された第1の金属層とを備え、
前記第1の誘電性材料層の前面は、前記第1の電極素子の第1の前面であり、
前記第1の電極素子の第1の前面と前記シートの後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層をさらに含み、前記第1の導電性材料後部層は、前記第1の電極素子の第1の前面と前記シートの後面との間の電気的接触を促進する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シートの後に位置決めされた第2の電極素子をさらに備え、前記第2の電極素子は前記シートの後面と電気的に接触するように配設された第2の前面を有し、
前記第2の電極素子は、前面および後面を有する第2の誘電性材料層と、前記第2の誘電性材料層の後面に配設された第2の金属層と、を備え、
前記第2の誘電性材料層の前面は、前記第2の電極素子の第2の前面であり、
前記第1の導電性材料後部層は、前記第2の電極素子の第2の前面と前記シートの後面との間に位置決めされ、前記第1の導電性材料後部層は、前記第2の電極素子の第2の前面と前記シートの後面との間の電気的接触を促進する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記シートの後に位置決めされた第2の電極素子をさらに備え、前記第2の電極素子は前記シートの後面と電気的に接触するように配設された第2の前面を有し、
前記第2の電極素子は、前面および後面を有する誘電性材料の第2の誘電性材料層と、前記第2の誘電性材料層の後面に配設された第2の金属層と、を備え、
前記第2の誘電性材料層の前面は、前記第2の電極素子の第2の前面であり、
前記第2の電極素子の第2の前面と前記シートの後面との間に位置決めされた第2の導電性材料後部層をさらに含み、前記第2の導電性材料後部層は、前記第2の電極素子の第2の前面と前記シートの後面との間の電気的接触を促進する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の導電性材料後部層は、導電性ヒドロゲルを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の導電性材料後部層は、導電性接着剤を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記導電性接着剤は、
接着性ポリマーと、
カーボンの粉末、粒子、繊維、薄片、またはナノチューブと、を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記導電性接着剤は、10から2000μmの間の厚さを有する、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の電極素子は、前面を有する金属片を含み、
前記金属片の前面は、前記第1の電極素子の第1の前面である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の電極素子の第1の前面と前記シートの後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層をさらに含み、
前記第1の導電性材料後部層は、前記第1の電極素子の第1の前面と前記シートの後面との間の電気的接触を促進する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の電極素子の第1の前面は、前記シートの後面と直接接触して位置決めされる、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記黒鉛のシートは、熱分解黒鉛のシートである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記黒鉛のシートは、高純度圧縮剥離鉱物黒鉛製の黒鉛箔、または黒鉛化ポリマーフィルムのシートである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの導電性材料層は、ヒドロゲルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの導電性材料層は、50から2000μmの間の厚さを有するヒドロゲルの層を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの導電性材料層は、導電性接着剤を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記導電性接着剤は、接着性ポリマーと、カーボンの粉末、粒子、繊維、薄片、またはナノチューブとを含む請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記導電性接着剤は、10から2000μmの間の厚さを有する、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記シート、前記第1の電極素子、および前記少なくとも1つの導電性材料層を支持するように構成された可撓性自己粘着性バッキングをさらに備え、該可撓性自己粘着性バッキングによって前記少なくとも1つの導電性材料層の前面が被験体の皮膚に当たって位置決めされる、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記第1の電極素子に電気的に接続されるリードをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項21】
交流電場を被験体の身体の標的領域に印加する方法であって、
前記被験体の身体上または体内の第1の位置に第1の電極アセンブリを位置決めするステップであって、前記第1の電極アセンブリは、第1の前面および第1の後面を有する黒鉛の第1のシートを含み、前記第1の電極アセンブリは、前記第1のシートの第1の前面が前記標的領域に面するように位置決めされる、ステップと、
前記被験体の身体上または体内の第2の位置に第2の電極アセンブリを位置決めするステップであって、前記第2の電極アセンブリは、第2の前面および第2の後面を有する黒鉛の第2のシートを含み、前記第2の電極アセンブリは、前記第2のシートの第2の前面が前記標的領域に面するように位置決めされる、ステップと、
前記第1の電極アセンブリと前記第2の電極アセンブリとの間に交流電圧を印加する印加ステップと、を含み、
前記印加ステップは、前記第1の電極アセンブリと前記第2の電極アセンブリとを位置決めした後に実行される、方法。
【請求項22】
前記印加ステップは、前記第1の後面と電気的に接触して配設された第1の電極素子と、前記第2の後面と電気的に接触して配設された第2の電極素子との間に交流電圧を印加することによって実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の電極素子の第1の温度を測定するステップと、
前記第2の電極素子の第2の温度を測定するステップと、
前記第1の温度および前記第2の温度に基づき前記印加ステップを制御するステップと、をさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の電極アセンブリは、前記第1の前面上に配設された第1の導電性接着剤層をさらに含み、
前記第2の電極アセンブリは、前記第2の前面上に配設された第2の導電性接着剤層をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記黒鉛の第1のシートおよび前記黒鉛の第2のシートの各々は、熱分解黒鉛のシートである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記黒鉛の第1のシートおよび前記黒鉛の第2のシートの各々は、高純度圧縮剥離鉱物黒鉛製の黒鉛箔、または黒鉛化ポリマーフィルムのシートである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれている、米国仮出願第63/230438号(2021年8月6日出願)、米国仮出願第63/275841号(2021年11月4日出願)、および米国仮出願第63/275843号(2021年11月4日出願)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療電場(TTFields)療法は、たとえば、100~500kHzなど、50kHzから1MHzの間の周波数の交流電場を使用して腫瘍を治療するための実績のあるアプローチである。交流電場は、被験体の身体の反対側に留置された電極アセンブリ(たとえば、トランスデューサアレイとも呼ばれる、容量結合電極のアレイ)によって誘導される。対向する電極アセンブリの間にAC電圧が印加されたときに、AC電流が電極アセンブリを通って被験体の身体に結合される。そして、より高い電流は、より高い治療効果と強く相関している。
【0003】
図1Aは、X1~X9とラベル付けされている、9つの従来技術の電極素子を含む従来技術の電極アセンブリ40の概略図である。図1Bは、図1Aの破線に沿って取られた、電極アセンブリ40の電極素子X7~X9の断面概略図である。
【0004】
図1Bに示されているように、電極素子X7(例として取られている)は、金属層(斜めのハッチングで示されている)とセラミック(誘電性材料)層とを含む。導電性ヒドロゲルの各層が、各セラミック層と被験体の皮膚との間には設けられ、電極素子の身体との良好な電気的接触を確保する。AC電圧発生器(図示せず)からのAC電圧が、対向する電極アセンブリの電極素子の金属層に印加され、被験体の身体にTTFieldsを発生させる。
【0005】
使用中、ヒドロゲルおよび電極素子の下の皮膚はだんだん熱くなるので、安全性を考慮して、皮膚温度が安全閾値(たとえば、41℃)未満に保たれることを必要とする。熱の大部分は(図1Cに示されているように)電極素子X1~X9の真下に現れるので、従来技術の電極アセンブリは、電極素子の真下にホットスポットを有し、電極素子の間に位置する低温領域が位置決めされる。そして、それらのホットスポットは、従来技術の電極アセンブリを通して供給され得る電流の量を制限する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、交流電場を被験体の身体に印加するための第1の装置に向けられている。第1の装置は、前面と後面とを有する黒鉛のシートと、シートの前面に配設された少なくとも1つの導電性材料層であって、少なくとも1つの導電性材料層は生体適合性の前面を有する、層と、シートの後に位置決めされた第1の電極素子とを備える。第1の電極素子は、シートの後面と電気的に接触するように配設された第1の前面を有する。
【0007】
第1の装置のいくつかの実施形態において、第1の電極素子は、(i)前面および後面を有する第1の誘電性材料層と、(ii)第1の誘電性材料層の後面に配設された第1の金属層とを備える。これらの実施形態において、第1の誘電性材料層の前面は、第1の電極素子の第1の前面である。これらの実施形態は、第1の電極素子の第1の前面とシートの後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層(リア層)をさらに含む。第1の導電性材料後部層は、第1の電極素子の第1の前面とシートの後面との間の電気的接触を促進する。
【0008】
第1の装置のいくつかの実施形態は、シートの後に位置決めされた第2の電極素子をさらに備える。第2の電極素子は、シートの後面と電気的に接触するように配設された第2の前面を有する。これらの実施形態において、第2の電極素子は、(i)前面および後面を有する第2の誘電性材料層と、(ii)第2の誘電性材料層の後面に配設された第2の金属層とを備える。第2の誘電性材料層の前面は、第2の電極素子の第2の前面である。第1の導電性材料後部層は、第2の電極素子の第2の前面とシートの後面との間に位置決めされる。第1の導電性材料後部層は、第2の電極素子の第2の前面とシートの後面との間の電気的接触を促進する。
【0009】
第1の装置のいくつかの実施形態は、シートの後に位置決めされた第2の電極素子をさらに備える。第2の電極素子は、シートの後面と電気的に接触するように配設された第2の前面を有する。第2の電極素子は、(i)前面および後面を有する第2の誘電性材料層と、(ii)第2の誘電性材料層の後面に配設された第2の金属層とを備える。第2の誘電性材料層の前面は、第2の電極素子の第2の前面である。これらの実施形態において、装置は、第2の電極素子の第2の前面とシートの後面との間に位置決めされた第2の導電性材料後部層をさらに含む。第2の導電性材料後部層は、第2の電極素子の第2の前面とシートの後面との間の電気的接触を促進する。
【0010】
第1の装置のいくつかの実施形態において、第1の導電性材料後部層は、導電性ヒドロゲルを含む。第1の装置のいくつかの実施形態において、第1の導電性材料後部層は、導電性接着剤を含む。第1の装置のいくつかの実施形態において、第1の導電性材料層は、接着性ポリマーと、カーボンの粉末、粒子、繊維、薄片、またはナノチューブとを含む導電性接着剤を含む。第1の装置のいくつかの実施形態において、第1の導電性材料層は、10から2000μmの間の厚さを有する導電性接着剤を含む。
【0011】
第1の装置のいくつかの実施形態において、第1の電極素子は、前面を有する金属片を含み、金属片の前面は、第1の電極素子の第1の前面である。
【0012】
第1の装置のいくつかの実施形態において、第1の電極素子は、前面を有する金属片を含み、金属片の前面は、第1の電極素子の第1の前面である。これらの実施形態は、第1の電極素子の第1の前面とシートの後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層をさらに含む。第1の導電性材料後部層は、第1の電極素子の第1の前面とシートの後面との間の電気的接触を促進する。
【0013】
第1の装置のいくつかの実施形態において、第1の電極素子は、前面を有する金属片を含み、金属片の前面は、第1の電極素子の第1の前面である。これらの実施形態において、第1の電極素子の第1の前面は、シートの後面と直接接触して位置決めされる。
【0014】
第1の装置のいくつかの実施形態において、黒鉛のシートは、熱分解黒鉛のシートである。第1の装置のいくつかの実施形態では、黒鉛のシートは、高純度圧縮剥離鉱物黒鉛製の黒鉛箔または黒鉛化ポリマーフィルムのシートである。
【0015】
第1の装置のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層は、ヒドロゲルを含む。第1の装置のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層は、50から2000μmの間の厚さを有するヒドロゲルの層を含む。第1の装置のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層は、導電性接着剤を含む。第1の装置のいくつかの実施形態において、生体適合性導電性材料の前層は、導電性接着剤を含み、導電性接着剤は、接着性ポリマーと、カーボンの粉末、粒子、繊維、薄片、またはナノチューブとを含む。第1の装置のいくつかの実施形態において、生体適合性導電性材料の前層は、10から2000μmの間の厚さを有する導電性接着剤を含む。
【0016】
第1の装置のいくつかの実施形態は、シート、第1の電極素子、および少なくとも1つの導電性材料層を支持するように構成された可撓性自己粘着性バッキングをさらに備え、それにより少なくとも1つの導電性材料層の前面が被験体の皮膚に当たって位置決めされ得る。第1の装置のいくつかの実施形態は、第1の電極素子に電気的に接続されるリードをさらに備える。
【0017】
本発明の別の態様は、交流電場を被験体の体内の標的領域に印加する第1の方法に向けられている。第1の方法は、被験体の身体上または体内の第1の位置に第1の電極アセンブリを位置決めすることを含む。第1の電極アセンブリは、第1の前面および第1の後面を有する黒鉛の第1のシートを含み、第1の電極アセンブリは、第1のシートの第1の前面が標的領域に面するように位置決めされる。第1の方法は、被験体の身体上または体内の第2の位置に第2の電極アセンブリを位置決めすることも含む。第2の電極アセンブリは、第2の前面および第2の後面を有する黒鉛の第2のシートを含み、第2の電極アセンブリは、第2のシートの第2の前面が標的領域に面するように位置決めされる。第1の方法は、第1の電極アセンブリと第2の電極アセンブリとの間に交流電圧を印加することも含む。この印加は、第1の電極アセンブリと第2の電極アセンブリとを位置決めした後に実行される。
【0018】
第1の方法のいくつかの事例において、印加することは、(i)第1の後面と電気的に接触して配設された第1の電極素子と、(ii)第2の後面と電気的に接触して配設された第2の電極素子との間に交流電圧を印加することによって実施される。任意選択で、これらの事例は、第1の電極素子の第1の温度を測定することと、第2の電極素子の第2の温度を測定することと、第1の温度および第2の温度に基づき印加することを制御することとをさらに含み得る。
【0019】
第1の方法のいくつかの事例において、第1の電極アセンブリは、第1の前面上に配設された第1の導電性接着剤層をさらに含み、第2の電極アセンブリは、第2の前面上に配設された第2の導電性接着剤層をさらに含む。
【0020】
第1の方法のいくつかの事例において、黒鉛の第1および第2のシートの各々は、熱分解黒鉛のシートである。第1の方法のいくつかの事例では、黒鉛の第1および第2のシートの各々は、高純度圧縮剥離鉱物黒鉛製の黒鉛箔のシート、または黒鉛化ポリマーフィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】従来技術の電極アセンブリの概略図である。
図1B図1Aの破線に沿って取られた、従来技術の電極アセンブリの電極素子の断面図である。
図1C】従来技術の電極素子の発熱特性を示す断面図である。
図1D図1Bの電極素子に仮説的な修正を加えた素子の発熱特性を示す断面図である。
図2】TTFieldsを被験体の身体に印加するために使用される電極素子を備える電極アセンブリの平面概略図である。
図3A図2の破線に沿って取られた、電極素子E1、E2を含む第1の実施形態の断面図である。
図3B図3Aの実施形態の発熱特性を示す断面図である。
図4A】従来技術の電極アセンブリの熱画像である。
図4B図3Aの実施形態に対応する電極アセンブリの熱画像である。
図4C図3Aの実施形態を伴う従来技術の電極アセンブリの熱特性を比較するグラフである。
図4D】金属(アルミニウム)シートを使用して構築されるシミュレートされた電極アレイのサーマルカメラ画像を示す図である。
図4E】熱分解黒鉛のシートを使用して構築されるシミュレートされた電極アレイのサーマルカメラ画像を示す図である。
図4F】黒鉛のシートありおよびなしの電極アレイがTTFieldsをラットの胴体に印加するために使用されたときの実験結果を示す図である。
図5図2の破線に沿って取られた、電極素子E1、E2を含む第2の実施形態の断面図である。
図6】単一の電極素子E1を含む第3の実施形態の断面図である。
図7】単一の電極素子E1を含む第4の実施形態の断面図である。
図8】単一の電極素子E1を含む第5の実施形態の断面図である。
図9】TTFieldsを被験体の身体に印加するために使用される2つの電極アセンブリを組み込んだシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では添付図面を参照しつつ様々な実施形態が詳細に説明されており、類似の参照番号は、類似の要素を表す。
【0023】
本出願は、たとえば、被験体の身体にTTFieldsを送達し、被験体の体内に配置されている1つまたは複数の癌または腫瘍を治療するために使用され得る例示的な電極アセンブリを説明する。
【0024】
TTFieldsが被験体の身体に印加されたときに、被験体の身体の温度は、誘導電場に比例して上昇し得る。レギュレーションが、トランスデューサアレイを通して駆動できる電流の量を被験体の身体上の配置における測定された温度を温度閾値より低く保つ量に制限する。当技術分野で実施されているように、被験体の身体上のトランスデューサアレイの配置における温度は、トランスデューサアレイによって駆動される動作電流を減少させ、結果として得られるTTFieldsの強度を弱めることによって温度閾値より低くなるように制御される。このことは、次いで、腫瘍を治療するために使用され得るTTFieldsの強度に対する決定的制限となる。したがって、被験体の皮膚における温度閾値を超えることなくより高いTTFields強度に安全にアクセスできることが当技術分野において必要とされている。
【0025】
複数の電極素子を備えるトランスデューサアレイでは、電極素子の真下に位置決めされるトランスデューサアレイの部分は、電極素子の間に位置決めされるトランスデューサアレイの部分よりも高温になる。さらに、複数の電極素子を備えるトランスデューサアレイでは、アレイの中央部に配置される電極素子に比べて、より大きな電流がアレイのエッジに沿って配置される電極素子に流れる。なおもさらに、アレイのエッジの角または同様の鋭い曲がり部分に配置される電極素子は、アレイのエッジに沿っておよび中心付近において他の電極素子よりも大きな電流を有する。アレイのエッジに沿って、特に角に、配置される電極素子により高い電流を流すトランスデューサアレイの傾向は、本明細書では「エッジ効果」と称される。
【0026】
電極素子の分布またはエッジ効果のいずれかに起因するトランスデューサアレイを通る電流の不均一な分布は、たとえば、トランスデューサアレイの角またはエッジにおいて、より高い温度ゾーン(または「ホットスポット」)を生じさせ得る。これらのホットスポットは、最初に閾値温度に達する配置であり、したがって電流を下げる要件を制御する。そのようなものとして、ホットスポットの発生は、トランスデューサアレイによって駆動され得る最大動作電流、および結果として生じるTTFieldsの強度を制限する。
【0027】
本発明者らは、電流の不均一な分布を低減するかまたは最小限度に抑え、それによってより大きい動作電流の印加を可能にするトランスデューサアレイに対する必要性が存在することを現在認識している。大電流で動作するトランスデューサアレイは、被験体の体内でより強いTTFieldsを誘導することができ、最終的によりよい患者転帰をもたらし得る。本明細書において開示される電極アセンブリは、電流および熱がアレイの上に均一に拡散されることを可能にし、それによってホットスポットを最小にするかまたは排除する。
【0028】
本明細書において説明されている実施形態は、以下で説明されているように、黒鉛のシートを電極アセンブリ内に組み込んだものである。これは、電極アセンブリに所与の交流電圧が印加されたときに(上で説明されている従来技術の構成と比較して)ホットスポットの温度を下げ、より冷たい領域の温度を上昇させる。したがって、電流は、被験体の皮膚のどの点においても安全温度閾値を超えることなく増大させられ得る(それによって治療効果を高める)。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、黒鉛のシートは、熱分解黒鉛のシートである。特に、黒鉛は非金属であるので、これは、有利には、被験体の体内へのイオンの移動を妨げる。
【0030】
本発明は、次の詳細な説明、例、図面、および請求項、ならびにそれらの前後の説明を参照することによってより容易に理解され得る。しかしながら、本発明は、別段の指定のない限り、開示された特定の装置、デバイス、システム、および/または方法に限定されず、そのようなものとして、当然、変化し得ることは理解されるべきである。
【0031】
見出しは、便宜上用意されており、いかなる形でも本発明を制限するものと解釈されるべきでない。本開示の任意の見出しまたは任意の部分において例示される実施形態は、本開示の同じ見出しもしくは他の見出しまたは他の部分の下で例示される実施形態と組み合わされ得る。
【0032】
本明細書において説明されている要素の任意の組合せおよびそのすべての可能な変形は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0033】
本明細書および付属の請求項で使用されているように、「1つの」および「その」(英語原文の冠詞「a」、「an」、および「the」に対応する)で示される単数形は、文脈上明らかにそうでないことを示していない限り、複数形を含む。
【0034】
図2は、TTFieldsを被験体の身体に印加するために使用される電極素子を備える一実施形態の電極アセンブリ50の概略図である。図2では、E1およびE2とラベル付けされた2つの電極素子のみが示されているが、追加の電極素子が、電極アセンブリ50に含まれてもよい。代替的実施形態において、電極アセンブリ50は、単一の電極素子のみを含む。特に、図2は、電極アセンブリ50を一般的に描いており、それらの電極アセンブリE1およびE2は、(たとえば、図3A図8に関連して以下で説明されるように)異なる構成を有することができる。
【0035】
図3Aは、図2の破線に沿って取られた、電極素子E1、E2を含む電極アセンブリ50aの第1の実施形態の断面図である。
【0036】
図3Aの実施形態では、電極アセンブリ50aは、前面(図3Aでは被験体の皮膚の方を向いている)と後面とを有する熱分解黒鉛のシート70を含む。黒鉛の好適な形態の例は、熱分解黒鉛(限定はしないが、大阪府門真市所在のパナソニック・インダストリー社から入手可能な熱分解黒鉛シート(PGS)を含む)などの合成黒鉛、限定はしないが、高純度圧縮剥離鉱物黒鉛製の黒鉛箔(限定はしないが、米国アリゾナ州ツーソン所在のMineral Seal Corp.から入手可能なMinGraph(登録商標)2010A Flexible Graphiteによって供給されるものを含む)を含む、合成黒鉛の他の形態、または黒鉛化ポリマーフィルム、たとえば黒鉛化ポリイミドフィルム(限定はしないが、栃木県真岡市所在の栃木カネカ株式会社によって供給されるものを含む)などの合成黒鉛を含む。
【0037】
電極アセンブリ50aは、シート70の前面に配設された少なくとも1つの導電性材料層60をさらに含み、少なくとも1つの導電性材料層60は、生体適合性の前面を有する。図3に示されている実施形態では、単一の導電性材料層60のみがあり、その単一の層は生体適合性であることに留意されたい。しかし、代替的実施形態(図示せず)では、複数の層があり得、その場合、前層のみが生体適合性でなければならない。少なくとも1つの材料層60は、デバイスと身体との間の良好な電気的接触を確実にするように構成される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの材料層60は、熱分解黒鉛のシート70の前面全体を覆うべきである。少なくとも1つの材料層60は、熱分解黒鉛のシート70と同じサイズまたはそれより大きくてもよい。いくつかの実施形態において(そして図3Aに示されているように)、少なくとも1つの導電性材料層60は、ヒドロゲルの単一の層を含む。これらの実施形態において、ヒドロゲルは、100から1000μm、またはさらには300から500μmなど、50から2000μmまでの間の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層60は、非ヒドロゲル生体適合性導電性接着剤の単一の層である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層60は、米国マサチューセッツ州スペンサー所在のFLEXcon社からの開発製品FLX068983 - FLEXcon(登録商標)OMNI-WAVE(商標) TT 200 BLACK H-502 150 POLY H-9 44PP-8、もしくはFLEXcon社からの他のそのようなOMNI-WAVE製品、またはAdhesives Research, Inc.(米国ペンシルバニア州グレンロック所在)によって製造され販売されているARcare(登録商標)8006導電性接着剤組成物などの非ヒドロゲル生体適合性導電性接着剤の単一の層である。非ヒドロゲル導電性接着剤は、接着特性を有する無水ポリマー、およびカーボンの粒子、粉末、繊維、薄片、またはナノチューブを含み得る。接着性ポリマーは、たとえば、アクリルポリマー、シリコーンポリマー、またはそれらの組合せであってよく、これはアクリル系またはシリコーン系の炭素充填接着テープとして入手可能であり得る。接着材は、それに加えて、1つまたは複数の導電性ポリマー(たとえば、ポリアニリン(PANI)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、または当技術分野で知られている他のものなど)を含んでもよい。少なくとも1つの導電性材料層60中の導電性充填剤は、非金属であるべきである。これらの実施形態では、生体適合性導電性接着剤は、20から1000μm、またはさらには30から400μmなど、10から2000μmまでの間の厚さを有し得る。
【0038】
電極アセンブリ50aは、シート70の後に位置決めされた第1の電極素子E1をさらに含む。第1の電極素子E1は、シート70の後面と電気的に接触するように配設された第1の前面を有する。図3Aの実施形態において、第1の電極素子E1は、前面および後面を有する第1の誘電性(たとえば、セラミック)材料層310と、第1の誘電性材料層310の後面に配設された第1の金属層320とを備える。第1の誘電性材料層310の前面は、第1の電極素子E1の第1の前面である。図(たとえば、図3A)は誘電性材料310を「セラミック」として描いているが、セラミック材料の代わりに他の様々な好適な誘電性材料も使用され得ることに留意されたい。例は、少なくとも10の誘電定数を有するポリマー層、または少なくとも10の誘電定数を有する別の材料を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、誘電性材料層310は、10から50,000の範囲の誘電定数(比誘電率)を有することができる。いくつかの実施形態において、誘電性材料層310は、ポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン)および/またはポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-1-クロロフルオロエチレン)などの高誘電性ポリマー材料を含む。それら2つのポリマーは、本明細書において、それぞれ「ポリ(VDF-TrFE-CTFE)」および「ポリ(VDF-TrFE-CFE)」と略称される。これらの実施形態は、これらの材料の誘電定数が40のオーダーであるので、特に有利である。いくつかの実施形態において、ポリマー層は、ポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン)または「ポリ(VDF-TrFE-CTFE-CFE)」であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、誘電性材料層310は、VDF、TrFE、CFEおよび/またはCTFEなどのモノマーの重合単位を任意の好適なモル比で含むターポリマーを含む。好適なターポリマーは、たとえば、30から80モル%のVDF、5から60モル%のTrFEを有し、CFEおよび/またはCTFEがターポリマーの残りのモル%を構成するものを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、シート70は重心を有し、第1の電極素子E1の第1の前面の重心は、シート70の重心から3cm未満離れて位置決めされる。いくつかの実施形態において、シート70は、重心と、シート70の後面に平行な寸法(たとえば、長さまたは幅)とを有し、第1の電極素子E1の第1の前面の重心は、シート70の重心から、この寸法の30%未満、または10%未満だけ離れて位置決めされる。
【0042】
電極アセンブリ50aは、第1の電極素子E1の第1の前面(すなわち、第1の誘電性材料層310の前面)とシート70の後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層80をさらに含む。第1の導電性材料後部層80は、第1の電極素子E1の第1の前面とシート70の後面との間の電気的接触を促進する。いくつかの実施形態において、導電性材料の後部層80は、ヒドロゲルの層である。しかし、代替的実施形態では、異なる導電性材料(たとえば、導電性グリース、導電性接着剤、導電性テープ、導電性複合材料など)が使用されることもあり得る。いくつかの実施形態において、導電性材料80は、上で説明されているような非ヒドロゲル導電性接着剤であり得る。
【0043】
電極アセンブリ50aは、任意選択で、1つまたは複数の追加の電極素子を含み得る。例示されている実施形態において、電極アセンブリ50aは、シート70の後に位置決めされた第2の電極素子E2を含む。第2の電極素子E2は、シート70の後面と電気的に接触するように配設された第2の前面を有する。図3Aの2つの電極素子E1、E2は同一の構造を有する。したがって、第2の電極素子E2は、前面および後面を有する第2の誘電性(たとえば、セラミック)材料層310と、第2の誘電性材料層310の後面に配設された第2の金属層320とを備える。第2の誘電性材料層310の前面は、第2の電極素子E2の第2の前面である。いくつかの実施形態において、すべての電極素子の集合面積は、シート70の面積未満、シート70の面積の半分未満、シート70の面積の1/4未満、またはシート70の面積の1/10未満である。
【0044】
第1の導電性材料後部層80は、第2の電極素子E2の第2の前面(すなわち、第2の誘電性材料層310の前面)とシート70の後面との間に位置決めされる。第1の導電性材料後部層80は、第2の電極素子E2の第2の前面とシート70の後面との間の電気的接触を促進する。E1について説明されているように、また図3Aに示されているように、導電性材料80は、ヒドロゲルの層であり得るが、代替的実施形態では、異なる導電性材料も使用され得る(たとえば、導電性グリース、上で説明されている非ヒドロゲル導電性接着剤を含む導電性接着剤、導電性テープ、導電性複合材料など)。
【0045】
電極素子のすべて(すなわち、例示されている実施形態におけるE1およびE2)の金属層320は、リード90に(たとえば、電線、フレックス回路上のトレースなどを使用して)一緒に配線され得る。リード90は、電極アセンブリ50aが治療のために被験体の身体に貼り付けられたときにTTFieldsを生成するためにAC電圧発生器(図示せず)から電極素子にAC電圧を供給する。
【0046】
任意選択で、電極アセンブリ50aは、シート70、第1の電極素子E1(および電極アセンブリ内に存在する他の電極素子)、および少なくとも1つの導電性材料層60を支持し、少なくとも1つの導電性材料層60が被験体の皮膚に対して位置決めされ得るように構成された可撓性自己粘着性バッキング55を含む。
【0047】
上述のように、図2は、電極素子E1、E2を含む電極アセンブリ50の平面概略図である。図2のこの図(縮尺なし)は、また、シート70の面積が、電極素子E1、E2の組み合わされた面積よりも広い(たとえば、少なくとも2倍広い、少なくとも4倍広い、または少なくとも10倍広い)ことを示している。AC電圧が電極素子E1、E2に印加されたときに、熱がシート70全体に拡散し、ホットスポットを最小にするかまたは排除する。
【0048】
ホットスポットのこのような減少は(従来技術と比較して)、図1C図3Bとを比較するとより明らかになる。より具体的には、図1Cは、従来技術の電極素子に対する電流分布および発熱を示し、その各々は電極素子とほぼ同じ面積を覆う導電性ヒドロゲル層上に位置決めされている。図1Cに示されているように、すべての電流が電極素子の真下にあるヒドロゲル層を通過し、その結果電極素子の真下にホットスポットが生じる。
【0049】
この問題は、ヒドロゲルの面積を大きくして、電極素子の間のすべての領域を覆うことによって(すなわち、電極素子の面積に比べてx-y平面内で著しく広い面積を覆うことによって)解決され得ると最初は考えることもあり得る。しかし、これはそうではない。より具体的には、図1Dは、この仮説的電極アセンブリに対する電流分布および発熱を示している。図1Dに示されているように、すべての電流がそのまま電極素子の真下にあるヒドロゲル層を通過し、その結果電極素子の真下にホットスポットが生じる。
【0050】
対照的に、図3Bは、図3Aの実施形態に対する電流分布を示している。図3Bに示されているように、電流は依然として電極素子の下の領域においてのみ後導電性材料層(たとえば、図3Bの80)内に分布している。しかしながら、熱分解黒鉛のシート70は、水平方向の熱伝導率が高いので、その領域全体に熱を拡散する。熱を拡散することに加えて、水平方向におけるシート70の低い電気抵抗は、電流をシート70全体にわたって外向きに拡散し、この拡散した電流分布は、導電性材料層60内で続き、そこから被験体の皮膚に至る。この実施形態では電流および熱の両方が導電性材料層60のより広い面積に拡散するので、ホットスポットがなくなる(または少なくとも最小にされる)。これは、所与の印加AC電圧に対して、図3A/Bの実施形態の電極アセンブリの下の最も熱い点は、図1の従来技術の例の電極アセンブリの下の最も熱い点よりも低い温度を有することを意味する。したがって、電流は、図3Aの実施形態の電極アセンブリの下の任意の点における安全温度閾値を超えることなく(従来技術の電流に関して)増大され得る。そして、電流のこの増大は、有利には、TTFields治療の有効性を高める。類似の結果は、ヒドロゲルが導電性接着複合材料で置き換えられるときにも達成され得る。
【0051】
図3Aの実施形態の優れた性能は、図4A図4B、および図4Cにおいて実証されている。図4Aは、2つの電極素子と、電極素子の前面に配設されたヒドロゲルの層とを含む従来技術の電極アセンブリの熱画像である。電極素子の前面とヒドロゲルの層の後面との間には黒鉛のシートがない。使用時、ヒドロゲルの層の前面は、被験体の皮膚上に位置決めされる。図4Aは、電極素子に対応する領域内に発生したホットスポットを示している。
【0052】
図4Bは、熱分解黒鉛70が電極素子E1、E2の前面と導電層60の後面との間に位置決めされ、導電層60がヒドロゲル製であった図3Aの実施形態に対応する電極アセンブリの熱画像である。図4Bは、従来技術の電極アセンブリで発生したようなホットスポットが最小にされていること、および最高温度が低下していることを示している。図4Cは、同じ印加電流(500mA)について図3Aの実施形態(熱分解黒鉛を用いる)と従来技術(黒鉛なし)との熱性能の比較を示すグラフである。特に、従来技術の電極アセンブリの最も熱い部分は41℃であった。しかし、同じ500mAの電流が図3Aの実施形態において印加されたときに、電極アセンブリの最も熱い部分は32℃にすぎなかった。類似の実験が、高純度圧縮剥離鉱物黒鉛製の黒鉛箔を利用して実行されたが、類似の結果が得られた。
【0053】
関係する実験において、最適化された従来のアレイ(黒鉛シートなし)は、2Aの印加電流を伴ったときに、最高40℃の平均温度まで上昇したが、これはそれによって制限された。熱分解黒鉛シートが追加された同じタイプのアレイ(図3Aの実施形態の方式において)は、増大した電力レベル(3Aの印加電流)で稼動することができ、温度閾値限界より2~3℃低い38℃の平均温度で稼動した。この結果は、本明細書において説明されている本発明の装置および方法が、より高い印加電流で動作することによってより有益な治療結果を達成できるであろうことを示唆している。
【0054】
体内の標的配置を治療するための電極の実験シミュレーションでは、黒鉛シートを使用して得られた熱分布と金属シートを使用して得られた熱分布とを比較した。実験の半分では、ファントムゲルが、金属(アルミニウム)の2枚のシートの間に挟装して留置され、電圧が、2枚の金属シートの間に印加された(シートの中心に直接)。実験のもう半分では、ファントムゲルが熱分解黒鉛の2枚のシートの間に挟装されて留置され、電圧が、2枚の熱分解黒鉛シートの間に印加された(シートの中心に直接)。電圧が金属シート(アルミニウム)の対の間に印加されたときに、シートのエッジで電流密度が高くなり、その結果異なる領域の加熱が不均等になる。対照的に、2枚の黒鉛シートの間に電圧を印加した結果、有利には、シートの中心部およびエッジにおける電流密度がかなり均一になり、シートの温度プロファイルがより均一になる。
【0055】
図4Dおよび図4Eは、それぞれ、金属(アルミニウム)シートを使用したシミュレート済み電極アレイ、および熱分解黒鉛のシートを使用したシミュレート済み電極アレイのサーマルカメラ画像を示している。アルミニウムシートは結果として、不均一な熱分布図をもたらし、これにより外側エッジが最初に閾値温度に達し、したがって電流を下げるように要件を制御する。対照的に、熱分解黒鉛のシートは、シート全体にわたって非常に均一な熱分布をもたらす。
【0056】
図4Fは、黒鉛のシートありおよびなしの電極アレイがTTFieldsをラットの胴体に印加するために使用されたときの実験結果を示す図である(小動物アレイを使用する)。2つの下側のトレースは、図1A/1Bに描かれた従来技術の電極アレイが使用されたときの2匹のラットに対する測定電流を示しており、2つの上側のトレースは、図3Aに描かれた電極素子(黒鉛のシートを使用する)が使用されたときの2匹のラットに対する測定電流を示している。温度設定点は、すべての実施について同一であった。特に、黒鉛のシートが含まれたときに、黒鉛に帰すべき熱および電流分布の改善の結果、同じ温度設定点で抵抗は20%低く、電流は50%高くなった。そして、より高い電流は改善された結果と関連しているので、これらの実験は、電極アレイに黒鉛の層を組み込むことが改善された結果につながり得ることを示している。
【0057】
図5は、図2の破線に沿って取られた、電極素子E1、E2を含む電極アセンブリ50bの第2の実施形態の断面図である。図5の実施形態は、以下の点を除くすべての点(図のラベル付けを含む)において図3Aの実施形態に類似している。図3Aの実施形態は、シート70と第1および第2の電極素子E1およびE2の両方の前面との間に位置決めされた導電性材料(たとえば、ヒドロゲル)の広い後部層80を含む。対照的に、図5の実施形態は、各個別の電極素子に対する導電性材料の別個の領域380を含む。したがって、図5の実施形態は、第1の電極素子E1の第1の前面とシート70の後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層380を含み、また第2の電極素子E2の第2の前面とシート70の後面との間に位置決めされた第2の導電性材料後部層380を含む。導電性材料の第1および第2の後部層380は、それぞれの電極の前面とシート70の後面との間の電気的接触を促進する。いくつかの実施形態において、導電性材料の後部層380は、ヒドロゲルの層である。しかし、代替的実施形態では、異なる導電性材料(たとえば、導電性グリース、上で説明されている非ヒドロゲル導電性接着剤を含む導電性接着剤、導電性テープ、導電性複合材料など)が使用されることもあり得る。いくつかの実施形態において、すべての電極素子の集合面積は、シート70の面積未満、シート70の面積の半分未満、シート70の面積の1/4未満、またはシート70の面積の1/10未満である。
【0058】
図3Aの実施形態と同様に、図5の実施形態における電流は、依然として、電極素子の下の領域においてのみ、導電性材料の後部層380に集中する。熱分解黒鉛のシート70は、図3Aの実施形態に関連して上で説明されているように、熱および電流を拡散し、これはホットスポットをなくすか、または少なくとも最小にする。これは、所与の印加AC電圧に対して、図5の実施形態の電極アセンブリの下の最も熱い点は、図1の従来技術の例の電極アセンブリの下の最も熱い点よりも低い温度にあることを意味する。したがって、電流は、図5の実施形態の電極アセンブリの下の任意の点における安全温度閾値を超えることなく(従来技術の電流に関して)増大され得る。そして、電流のこの増大は、有利には、TTFields治療の有効性を高める。
【0059】
図6は、単一の電極素子E1を含む電極アセンブリ50cの第3の実施形態の断面図である。図6の実施形態は、図6の実施形態が誘電性材料の層を含まないことを除いて図3Aの実施形態と同様である。図6の実施形態では、電極アセンブリ50cは、前面(図6では被験体の皮膚の方を向いている)と後面とを有する熱分解黒鉛のシート70を含む。このシート70は、図3Aに関連して上で説明されているシート70に類似している。
【0060】
電極アセンブリ50cは、シート70の前面に配設された少なくとも1つの導電性材料層60をさらに含み、少なくとも1つの導電性材料層60は、生体適合性の前面を有する。図6に示されている実施形態では、導電性材料の単一の層60のみがあり、その単一の層は生体適合性であることに留意されたい。しかし、代替的実施形態(図示せず)では、複数の層があり得、その場合、前層のみが生体適合性でなければならない。少なくとも1つの導電性材料層60は、デバイスと身体との間の良好な電気的接触を確実にするように構成される。好ましい一実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層60は、熱分解黒鉛のシート70の前面全体を覆うべきである。少なくとも1つの導電性材料層60は、熱分解黒鉛のシート70と同じサイズであるか、またはそれより大きくてもよい(すなわち、同じまたはそれ以上の面積を覆う)。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層60は、ヒドロゲルの単一の層を含む。これらの実施形態において、ヒドロゲルは、100から1000μm、またはさらには300から500μmなど、50から2000μmまでの間の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層60は、上で説明されているような非ヒドロゲル生体適合性導電性接着剤の単一の層である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの導電性材料層60は、上で説明されているような、FLEXcon社のOMNI-WAVE製品、またはAdhesives Research, Inc.社のARcare(登録商標)製品などの非ヒドロゲル生体適合性導電性接着剤の単一の層である。非ヒドロゲル導電性接着剤は、接着特性を有する無水ポリマー(たとえば、アクリルポリマー、もしくはシリコーンポリマー、またはそれらの組合せ)および導電性充填剤を含み得る。少なくとも1つの導電性材料層60中の導電性充填剤は、非金属であるべきである。これらの実施形態では、生体適合性導電性接着剤は、20から1000μm、またはさらには30から400μmなど、10から2000μmまでの間の厚さを有し得る。
【0061】
電極アセンブリ50cは、シート70の後に位置決めされた第1の電極素子E1をさらに含む。第1の電極素子E1は、シート70の後面と電気的に接触するように配設された前面を有する金属片500を含む。図6の実施形態では、金属片500の前面は、第1の電極素子E1の第1の前面である。したがって、図6の実施形態は、誘電性材料の層を欠いている点で、図3Aまたは図5の実施形態と異なる。この図6の実施形態における第1の電極素子E1とシート70との間の位置関係は、図3Aに関連して上で説明されているようなものとしてよい。
【0062】
電極アセンブリ50cは、第1の電極素子E1の第1の前面(すなわち、金属片500の前面)とシート70の後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層80をさらに含む。第1の導電性材料後部層80は、第1の電極素子E1の第1の前面とシート70の後面との間の電気的接触を促進する。いくつかの実施形態において、導電性材料の後部層80は、ヒドロゲルの層である。しかし、代替的実施形態では、異なる導電性材料(たとえば、導電性グリース、上で説明されている非ヒドロゲル導電性接着剤を含む導電性接着剤、導電性テープ、導電性複合材料など)が使用されることもあり得る。
【0063】
電極素子E1の金属片500は、リード90に配線され(たとえば、電線、フレックス回路上のトレースなどを使用して)、これは、電極アセンブリ50cが治療のために被験体の身体に貼り付けられたときにTTFieldsを発生するためにAC電圧発生器(図示せず)から電極素子にAC電圧を供給する。
【0064】
電極アセンブリ50cは、任意選択で、電極素子E1と同一の構造を有し、同一の機能を有するように位置決めされた1つまたは複数の追加の電極素子(図示せず)を備え得る。そのような場合、すべての電極素子の金属片500は、リード90に(たとえば、電線、フレックス回路上のトレースなどを使用して)一緒に配線され得る。
【0065】
単一の電極素子E1のみを含むいくつかの実施形態において、シート70の面積は、電極素子E1の面積よりも広い(たとえば、少なくとも2倍広い、少なくとも4倍広い、または少なくとも10倍広い)。複数の電極素子(図示せず)を含むいくつかの実施形態において、シート70の面積は、電極素子のすべての集合面積よりも広い(たとえば、少なくとも2、4、または10倍広い)。AC電圧が電極素子に印加されたときに、熱がシート70全体に拡散し、ホットスポットを最小にするかまたは排除する。
【0066】
図3Aの実施形態と同様に、図6の実施形態における熱分解黒鉛のシート70は、図3Aの実施形態に関連して上で説明されているように、熱および電流を拡散し、これはホットスポットをなくすか、または少なくとも最小にする。これは、所与の印加AC電圧に対して、図6の実施形態の電極アセンブリの下の最も熱い点は、図1の従来技術の例の電極アセンブリの下の最も熱い点よりも低い温度を有することを意味する。したがって、電流は、図6の実施形態の電極アセンブリの下の任意の点における安全温度閾値を超えることなく(従来技術の電流に関して)増大され得る。そして、電流のこの増大は、有利には、TTFields治療の有効性を高める。
【0067】
図7は、単一の電極素子E1を含む電極アセンブリ50dの第4の実施形態の断面図である。図7の実施形態は、第1の電極素子E1の第1の前面(すなわち、金属片600の前面)が(導電性材料の介在層を介して電気的に接続される代わりに)シート70の後面と直接接触して位置決めされることを除き図6の実施形態に類似している。
【0068】
図6の実施形態と同様に、図7の実施形態における熱分解黒鉛のシート70は、図3Aの実施形態に関連して上で説明されているように、熱および電流を拡散し、これはホットスポットをなくすか、または少なくとも最小にする。これは、所与の印加AC電圧に対して、図7の実施形態の電極アセンブリの下の最も熱い点は、図1の従来技術の例の電極アセンブリの下の最も熱い点よりも低い温度を有することを意味する。したがって、電流は、図7の実施形態の電極アセンブリの下の任意の点における安全温度閾値を超えることなく(従来技術の電流に関して)増大され得る。そして、電流のこの増大は、有利には、TTFields治療の有効性を高める。
【0069】
図8は、単一の電極素子E1を含む電極アセンブリ50eの第5の実施形態の断面図である。図8の実施形態は、図7の実施形態に類似しているが、金属片600と直列に、その後で接続されたコンデンサ700を追加している。金属片600と直列に、金属片600の後で接続されたコンデンサ700の同様の追加も、図6の実施形態について企図されることも可能であろう。
【0070】
図9は、図3Aの電極アセンブリ50aの対が、被験体の体内の標的領域に交流電場を印加するためにどのように使用されるかを示している。被験体は、ヒト、または限定はしないがラットおよびマウスを含む他の哺乳類であり得る。(ここで示されている図3Aの電極アセンブリ50aの代わりに、図5図8に関連して上で説明されている電極アセンブリのいずれも使用され得ることに留意されたい)。
【0071】
この方法は、被験体の身体上または体内の第1の位置に第1の電極アセンブリ50aを位置決めすることを含む。(図9に描かれた例では、第1の電極アセンブリ50aは、標的領域、たとえば腫瘍に面した被験体の頭部の右側で被験体の皮膚上に位置決めされる)。第1の電極アセンブリ50aは、本明細書で前述したように構成され得る。図9の実施形態において、第1の電極アセンブリ50aは、第1の前面および第1の後面を有する熱分解黒鉛70の第1のシート70を含む。使用時に、第1の電極アセンブリ50aは、第1のシート70の第1の前面が標的領域に面するように位置決めされる。
【0072】
この方法は、被験体の体内または身体上の第2の位置に第2の電極アセンブリ50aを位置決めすることも含む。(図9に描かれた例では、第2の電極アセンブリ50aは、標的領域に面した被験体の頭部の左側で被験体の皮膚上に位置決めされる)。第2の電極アセンブリ50aは、本明細書で前述したように構成され得る。図9の実施形態において、第2の電極アセンブリ50aは、第2の前面および第2の後面を有する熱分解黒鉛70の第2のシート70を含む。使用時に、第2の電極アセンブリ50aは、第2のシート70の第2の前面が標的領域に面するように位置決めされる。
【0073】
この方法は、第1の電極アセンブリ50aと第2の電極アセンブリ50aとの間に交流電圧を印加することをさらに含む。この印加は、第1の電極アセンブリ50aと第2の電極アセンブリ50aとを位置決めした後に実行される。印加することは、(i)第1のシート70の第1の後面と電気的に接触して配設された第1の電極素子と、(ii)第2のシート70の第2の後面と電気的に接触して配設された第2の電極素子との間に交流電圧を印加することによって実施され得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、第1の電極アセンブリ50aは、第1のシート70の第1の前面上に配設された生体適合性導電性材料60の第1の層をさらに含む。それに対応して、第2の電極アセンブリは、第2のシート70の第2の前面上に配設された生体適合性導電性材料60の第2の層をさらに含む。上で説明されているように、生体適合性導電性材料60はヒドロゲルであり得るか、または導電性グリース、上で説明されている非ヒドロゲル導電性接着剤を含む導電性接着剤、導電性テープ、導電性複合材料などであり得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、第1の電極アセンブリ50aは、第1の電極アセンブリ50aの第1の電極素子の第1の前面と第1のシート70の第1の後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層80(上で説明されているような)をさらに含む。それに対応して、第2の電極アセンブリは、第2の電極アセンブリの第2の電極素子の第2の前面と第2のシート70の第2の後面との間に位置決めされた第2の導電性材料後部層80(上で説明されているような)とをさらに含む。
【0076】
第1の電極アセンブリと第2の電極アセンブリとの間の交流電圧は、交流電圧発生器820によって印加され得る。いくつかの実施形態では、交流電圧の周波数は、50kHzから1MHzまでの間、または100kHzから500kHzまでの間である。例示されている例では、AC電圧発生器は、コントローラ822によって制御される。コントローラ822は、温度を安全閾値(たとえば、41℃)未満に維持するために温度測定値を使用して、第1および第2の電極アセンブリ50aを介して供給される電流の振幅を制御し得る。これは、たとえば、以下で説明されるように、第1の電極素子の第1の温度を測定し、第2の電極素子の第2の温度を測定し、第1の温度および第2の温度に基づき交流電圧の印加を制御することによって達成され得る。
【0077】
図9は、この目的に適したハードウェアの一例を示している。より具体的には、温度センサー800(たとえば、サーミスタ)は、電極アセンブリ50aの各々の中のそれぞれの電極素子310/320と熱的に接触するように位置決めされる。温度センサー800は、それぞれの第1および第2の温度(たとえば、それぞれ第1の電極アセンブリおよび第2の電極アセンブリ内の第1および第2の電極素子において)を測定し、コントローラ822は、これらの温度に基づきAC電圧発生器820の出力を制御する。
【0078】
第1の電極アセンブリ50aおよび第2の電極アセンブリ50aのいずれか一方または両方の代わりに、電極アセンブリ50a~eのいずれか、またはそれらの組合せを利用する類似の実施形態および方法が企図される。
【0079】
図2図9に関連して上で説明されている実施形態では、シート70は、熱分解黒鉛製である。しかし、代替的実施形態では、シート70は、限定はしないが、高純度圧縮剥離鉱物黒鉛(限定はしないが、米国アリゾナ州ツーソン所在のMineral Seal Corp社から入手可能なMinGraph(登録商標)2010A Flexible Graphiteを含む)製の黒鉛箔、等方性黒鉛(限定はしないが、英国オールドベリー所在のTokai Carbon Europe社から入手可能な等方性黒鉛グレードG330、米国ニューハンプシャー州ハンプトン所在のThermo Fisher Scientific社から入手可能な走査型電子顕微鏡用両面カーボンテープを含む)などの他の合成黒鉛を含む他の種類の黒鉛製であり得る。
【0080】
本発明は、いくつかの実施形態を参照しつつ開示されているが、付属の請求項において定義されているように、本発明の領域および範囲から逸脱することなく、説明されている実施形態に対する多数の修正、改変、および変更が可能である。したがって、本発明は、説明されている実施形態に限定されるべきでなく、次の請求項の文言およびその等価物によって定義される全範囲を有することが意図されている。
【符号の説明】
【0081】
50 電極アセンブリ
50a 電極アセンブリ、第1の電極アセンブリ、第2の電極アセンブリ
50b 電極アセンブリ
50c 電極アセンブリ
50d 電極アセンブリ
50e 電極アセンブリ
60 層、導電層
70 シート、熱分解黒鉛、第1のシート、第2のシート
80 第1の導電性材料後部層
310 第1の誘電性材料層
320 第1の金属層
380 導電性材料の別個の領域
500 金属片
600 金属片
700 コンデンサ
800 温度センサー
820 交流電圧発生器
822 コントローラ
図1A-1B】
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電場を被験体の身体に印加するための装置であって、
前面と後面とを有する黒鉛のシートと、
前記シートの前面に配設された少なくとも1つの導電性材料層であって、生体適合性の前面を有する少なくとも1つの導電性材料層と、
前記シートの後に位置決めされた第1の電極素子であって、前記シートの後面と電気的に接触するように配設された第1の前面を有する第1の電極素子と、を備える装置。
【請求項2】
前記第1の電極素子は、前面および後面を有する第1の誘電性材料層と、前記第1の誘電性材料層の後面に配設された第1の金属層とを備え、
前記第1の誘電性材料層の前面は、前記第1の電極素子の第1の前面であり、
前記第1の電極素子の第1の前面と前記シートの後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層をさらに含み、前記第1の導電性材料後部層は、前記第1の電極素子の第1の前面と前記シートの後面との間の電気的接触を促進する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シートの後に位置決めされた第2の電極素子をさらに備え、前記第2の電極素子は前記シートの後面と電気的に接触するように配設された第2の前面を有し、
前記第2の電極素子は、前面および後面を有する第2の誘電性材料層と、前記第2の誘電性材料層の後面に配設された第2の金属層と、を備え、
前記第2の誘電性材料層の前面は、前記第2の電極素子の第2の前面であり、
前記第1の導電性材料後部層は、前記第2の電極素子の第2の前面と前記シートの後面との間に位置決めされ、前記第1の導電性材料後部層は、前記第2の電極素子の第2の前面と前記シートの後面との間の電気的接触を促進する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記シートの後に位置決めされた第2の電極素子をさらに備え、前記第2の電極素子は前記シートの後面と電気的に接触するように配設された第2の前面を有し、
前記第2の電極素子は、前面および後面を有する誘電性材料の第2の誘電性材料層と、前記第2の誘電性材料層の後面に配設された第2の金属層と、を備え、
前記第2の誘電性材料層の前面は、前記第2の電極素子の第2の前面であり、
前記第2の電極素子の第2の前面と前記シートの後面との間に位置決めされた第2の導電性材料後部層をさらに含み、前記第2の導電性材料後部層は、前記第2の電極素子の第2の前面と前記シートの後面との間の電気的接触を促進する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の導電性材料後部層は、導電性ヒドロゲルを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の導電性材料後部層は、導電性接着剤を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記導電性接着剤は、
接着性ポリマーと、
カーボンの粉末、粒子、繊維、薄片、またはナノチューブと、を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記導電性接着剤は、10から2000μmの間の厚さを有する、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の電極素子は、前面を有する金属片を含み、
前記金属片の前面は、前記第1の電極素子の第1の前面である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の電極素子の第1の前面と前記シートの後面との間に位置決めされた第1の導電性材料後部層をさらに含み、
前記第1の導電性材料後部層は、前記第1の電極素子の第1の前面と前記シートの後面との間の電気的接触を促進する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の電極素子の第1の前面は、前記シートの後面と直接接触して位置決めされる、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記黒鉛のシートは、熱分解黒鉛のシートである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記黒鉛のシートは、高純度圧縮剥離鉱物黒鉛製の黒鉛箔、または黒鉛化ポリマーフィルムのシートである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの導電性材料層は、ヒドロゲルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの導電性材料層は、50から2000μmの間の厚さを有するヒドロゲルの層を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの導電性材料層は、導電性接着剤を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記導電性接着剤は、接着性ポリマーと、カーボンの粉末、粒子、繊維、薄片、またはナノチューブとを含む請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記導電性接着剤は、10から2000μmの間の厚さを有する、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記シート、前記第1の電極素子、および前記少なくとも1つの導電性材料層を支持するように構成された可撓性自己粘着性バッキングをさらに備え、該可撓性自己粘着性バッキングによって前記少なくとも1つの導電性材料層の前面が被験体の皮膚に当たって位置決めされる、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記第1の電極素子に電気的に接続されるリードをさらに備える請求項1に記載の装置。
【国際調査報告】