(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】物品の腐食に対する保護のための組成物およびその保護方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240719BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20240719BHJP
C09D 123/22 20060101ALI20240719BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/08
C09D123/22
C09D7/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580713
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2022068267
(87)【国際公開番号】W WO2023275358
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523488952
【氏名又は名称】シール フォア ライフ グローバル ダッチ ホールディング ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】SEAL FOR LIFE GLOBAL DUTCH HOLDING B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブローズダー,ヒンドリック ハーム
(72)【発明者】
【氏名】シュッテ,ヤン オットー
(72)【発明者】
【氏名】クディック,ディンコ
(72)【発明者】
【氏名】セールプール,ソマイエ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CB131
4J038CG142
4J038CG172
4J038EA011
4J038HA456
4J038KA08
4J038NA03
4J038NA10
4J038PB05
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、物品の腐食に対する保護のための組成物であって、非晶質ポリマー組成物および吸水性充填剤を含む組成物を提供する。本発明はさらに、本発明の組成物を含むテープおよび当該テープまたは組成物を含む物品を提供する。本発明はまた、物品の腐食に対する保護のための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の腐食に対する保護のための組成物であって、
(i)示差走査熱量測定(DSC)によって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol
-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および
(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、前記吸水性充填剤を含み、
前記組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%の前記非晶質ポリマー組成物を含み、
前記全ての組成物の総重量に対して、
(a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または
(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物の総重量に対して、30~70wt.%の前記非晶質ポリマー組成物を含む、請求項1に記載の腐食に対する保護のための組成物。
【請求項3】
全ての組成物の総重量に対して、約
(a)30~60wt.%の前記非ポリマー吸水性充填剤、および/または
(b)0.1~10wt.%の前記ポリマー吸水性充填剤
を含む、請求項1または2に記載の腐食に対する保護のための組成物。
【請求項4】
23℃で72時間(g/m
2)の吸水率(g/m
2)、w
A(g/m
2)が2000未満であり、w
A(g/m
2)が、
(1)15~25mmの範囲の既知の深さ、および30~50mmの範囲の既知の直径(円形表面)または既知の長さおよび幅(長方形または正方形表面)を有する表面を有するカップを秤量し、質量A(g)を得る工程と、
(2)プラスチックカップに前記組成物を完全に充填し、空気溜まりを回避し、表面を平滑化する工程と、
(3)前記充填したカップを秤量して質量B(g)を得る工程と、
(4)前記充填したカップを、23±1℃の温度に維持された蒸留水の容器に入れ、カップを完全に浸水する工程と、
(5)前記カップを気候キャビネット内に置き、水温を23±1℃に72時間維持する工程と、
(6)72時間後に前記カップを前記容器から取り出し、その表面を乾燥させ、乾燥したカップを秤量して質量C(g)を得る工程と、
(7)g/m2で表される吸水率(g/m2)を以下:
【数1】
のように計算する工程とによって決定される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
70℃で2.4s
-1(Pa.s)の剪断速度での粘度が6000~15000の間であり、前記粘度が規格EN-ISO3219に記載の手順に従って決定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記非晶質ポリマーが、
(a)前記ポリマーの総重量に対して、約50.0重量%~約98重量%のイソブテンおよび約2重量%~約50.0重量%のイソブテン以外のC
2~C
12アルケン、C
4~C
12アルカジエン、またはこれらの混合物を含むポリマー、
(b)前記ポリマーの総重量に対して、約98重量%超~約100重量%のイソブテンを含むポリマー、
(c)前記ポリマーの総重量に対して、約50.0重量%~約99.9重量%のプロペンおよび約0.1%~約50.0%のプロペン以外のC
2~C
12アルケン、C
4~C
12アルカジエン、もしくはこれらの混合物、または約100wt.%のプロペンを含むポリマー、
(d)前記ポリマーの総重量に対して、約0.1重量%~約50.0重量%のエテンおよび約50.0%~約99.9%のエテン以外のC
2~C
12アルケン、C
4~C
12アルカジエン、またはこれらの混合物を含むポリマー、
(e)前記ポリマーの総重量に対して、約0.1重量%~約50.0重量%の2-メチル-1-ペンテンおよび約50.0%~約99.9%の2-メチル-1-ペンテン以外のC
2~C
12アルケン、C
4~C
12アルカジエン、もしくはこれらの混合物、または約100wt.%の2-メチル-1-ペンテンを含むポリマー;ならびに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)の混合物
からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記非晶質ポリマーが、(a)および(b)、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記非ポリマー吸水性充填剤が粘土鉱物を含み、好ましくは前記吸水性充填剤がセメントを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマー吸水性充填剤が、ポリアクリルアミド、好ましくはポリメチルアクリレートを含む、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
酸化防止剤を含む、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の防食組成物を含む層を含むテープ。
【請求項12】
物品であって、
(a)(i)前記物品の表面に請求項1から10のいずれか一項に記載の防食組成物の層、および
(ii)前記防食組成物の前記層を保護するための機械的保護層、または
(b)請求項11に記載のテープ
を含む、物品。
【請求項13】
物品の腐食に対する保護のための方法であって、以下の順序で
(a)請求項1から10のいずれか一項に記載の防食組成物の層または請求項11に記載のテープの適用工程と、
(b)前記防食組成物の層または前記テープの上への機械的保護層の適用工程とを含み、
前記物品が、請求項1から10のいずれか一項に記載の防食組成物の前記層または請求項11に記載のテープの適用中に、乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境および浸水環境に存在する、方法。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物または請求項11に記載のテープの適用が、乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境および浸水環境で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記動作温度範囲が約-50℃~約+100℃である、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の技術分野
本発明は、乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境または浸水環境における物品、特に、油もしくはガス用のパイプまたはライン、ならびに石油掘削および生産リグおよびプラットホームのライザーの腐食に対する保護に関する。本発明は、特に、物品の腐食に対する保護のための組成物に関する。本発明はまた、本発明の組成物を含むテープおよび物品、ならびに当該物品の腐食に対する保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境または浸水環境おける物品、例えば、スウェッティングパイプライン(sweating pipeline)、浸漬した油用のラインまたはパイプ、ガス用のラインまたはパイプ、輸送パイプおよび石油掘削および生産リグまたはプラットホームのライザーおよびプラットホーム脚などは、水道の上、中および下で腐食または劣化を受ける。これらの物品は、水による劣化または損傷、腐食性汚染、湿潤および乾燥のサイクル、凍結および解凍のサイクル、ならびに電気分解を受ける可能性がある。浸食、海洋生物、機械的衝撃、含水量および摩耗はまた、適切に設計された物品であっても早期故障の原因となる場合がある。したがって、そのような物品を損傷および/または劣化から保護することが必要である。
【0003】
これまで行われてきた防食処理は、準手動技法を使用する。最も広く実践されている解決策は、数メートルまたは数十メートルの水の下で、例えば塗料、樹脂または漆喰で処理される要素を手動でコーティングするダイバーのサービスを利用することにある。このような技法は、困難な条件下で実践され、非常に高価で危険であり、有効性の点でかなり不十分であることが多い。
【0004】
腐食による悪影響に加えて、浸水した物品は、例えば重力、波の繰り返しの衝撃、水面下の流れの圧力、または固定点に対する牽引力などの様々な機械的応力の影響を受ける。沖合掘削および生産プラットホームおよびプラットホーム脚、特にライザーは、その構造および天然要素への暴露のために、この点で比較的敏感な構造である。
【0005】
海洋環境における構造体および/または部分的もしくは完全に浸水した構造体の防食保護のための方法は、当技術分野で知られており、硬化性ポリマー組成物などの腐食阻害物質と共にケーシングが使用される。
【0006】
特許文献1は、硬化性二成分ポリマー組成物が注入され、その後ポリマー組成物が硬化されるジャケット構造を開示している。
【0007】
特許文献2は、分岐桁接合部を腐食から保護するためのデバイスを開示している。
【0008】
特許文献3は、ジャケットをパイルの周りに配置し、次いで、空気および予熱ガスを注入してパイルを乾燥させる方法を開示している。次の工程では、ジャケットは、液体化学物質またはエポキシ樹脂から形成された膨張する独立気泡形態で充填される。
【0009】
特許文献4は、好ましくは管状の細長い部材を含む型枠を開示しており、硬化性樹脂材料が、保護される金属物品と型枠の壁との間に存在する環状空間の間に注入される。
【0010】
特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に開示されているような方法の欠点は、硬化した剛性ポリマー組成物が使用され、一般に金属物品の表面に対する粘着性が低いことである。さらに、そのようなポリマー組成物は、機械的応力、例えば波の作用の影響下で分裂したり裂けたりする可能性のある硬質シールをもたらす。例えばエポキシ樹脂を含み得るこれらの材料の別の欠点は、それらが一般に環境に有害であることである。修復、交換または検査を行わなければならない場合には容易な除去が重要であるが、硬化した剛性ポリマーはまた、金属物品から容易に除去されない。腐食または他の種類の損傷からパイプを保護するために使用することができるいくつかの方法は、当技術分野で知られている。
【0011】
特許文献5は、改善された無極性、非熱硬化性の流動性ポリマー組成物を開示している。この組成物は多湿条件下で使用され得るが、当該組成物が適用されている間、保護される物品の表面で結露は生じ得ない。
【0012】
特許文献6は、地中の金属物品を腐食から保護するための非熱硬化性の流動性ポリマー組成物の使用に関し、金属物品は水分と接触している。20℃で60000~1200000cSt(60~1200Pa.s)の粘度を有するポリイソブテンおよび/またはポリ(オキシジメチルシリレン)を含むポリマーが有利に使用される。調製物は、1つまたは複数の充填剤を含有し得る。調製物はまた、石油から直接得られた1つまたは複数の生成物を含有し得る。無極性の非熱硬化性の流動性ポリマー組成物は、海水に浸水した石油掘削プラットホームのライザー、鋼部品およびパイプラインを保護するために使用され得る。しかしながら、組成物の適用中、組成物を表面に十分に粘着させるために、ライザー、鋼部品またはパイプラインの表面が本質的に乾燥していることが必要である。
【0013】
特許文献7は、構造体を密封してカバーするための帯状カバーを開示している。カバーは、ベースと、非極性であり、硬化しない液体ポリマー、例えば石油製品を含み得るペーストなどの混練可能な材料とを含む。好ましくは、20℃で60000~1200000cSt(60~1200Pa.s)の粘度を有するポリイソブテンおよび/またはポリ(オキシジメチルシリレン)を含むポリマーが使用される。生成物は、1つまたは複数の充填剤を含んでもよい。生成物はまた、石油から直接的または間接的に得られる1つまたは複数の生成物、例えば瀝青質生成物、またはワセリンおよびワックスなどのパラフィン様生成物を含んでもよい。このカバーは海洋産業で使用され得るが、カバーの適用中、表面へのカバーの十分な粘着を達成するために、構造体の表面は本質的に乾燥していなければならない。
【0014】
完全に浸水した物品の防食のための当技術分野で一般的に知られている組成物は、通常、ワックス、ワセリンおよびベントナイトを含み、物品が浸水している間に物品の表面に塗布することができる。そのような組成物の欠点は、操作範囲が特定の用途には不十分であることである。そのような組成物の動作温度は、一般に、約-20℃~約35℃の範囲であるが、特定の条件下では、約45℃の最大動作温度を達成することができる。約45℃より高い温度では、組成物はより液体になり、物品の表面に十分に粘着せず、表面から滴り落ちる。さらに、約45℃を超える温度では、相分離が起こり得る。比較的低い最高動作温度のために、当該組成物は、浸水していない物品、例えば、水位より上に位置する部分的に浸水した物品の部分、またはスウェッティングパイプラインの保護には適していない。結果として、部分的に浸水した物品には、以下の2つの異なる防食組成物が必要である:浸水した部分(すなわち、水中に位置する部分)を保護するための組成物および水面上に位置する部分のための異なる組成物。
【0015】
特許文献8は、10~40重量%(wt.%)のポリイソブチレンを含むゴム、10~20wt.%のシリケート、10~60wt.%のベントナイト(当該シリケートおよびベントナイトは充填剤として作用する)、および10~40wt.%の可塑剤を含む水性膨潤止水組成物を開示している。ポリイソブチレンは、好ましくは、約840,000~約2,220,000g mol-1の粘度平均分子量Mvに相当する、70,000~130,000のシュタウディンガー分子量Msを有する。好ましいポリイソブテンは、約750,000~2,350,000g mol-1の粘度平均分子量を有するVistanex(登録商標)L-80、Vistanex(登録商標)L-100およびVistanex(登録商標)L-140である。止水組成物は押し出されて、例えば、継ぎ目の隙間に挿入することができる細長い止水器とされ、その隙間で水を止めることができる。特許文献8は、防食については言及していない。
【0016】
特許文献9は、水に浸漬すると制御された膨潤または体積膨張を示す止水組成物を開示している。例示的な止水組成物は、約10~30wt.%のエラストマーブレンド、約15~30wt.%の充填剤、約20~40重量wt.%の可塑剤、および約25~35wt.%の水膨潤性ベントナイト粘土を含む。エラストマーブレンドは、50~60wt.%の熱可塑性エラストマー(TPE)、10~20wt.%の架橋ブチルゴムおよび20~40wt.%のポリイソブテンを含む。6.10~6.24wt.%のポリイソブテンを含む止水組成物が開示されている。特許文献9は、防食については言及していない。
特許文献10は、湿潤環境における物品の腐食に対する保護のための方法を開示し、湿潤環境における物品の腐食に対する保護のための組成物をさらに開示している。例示的な組成物は、-20℃以下のガラス転移温度を有する非晶質ポリマー組成物、および20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤を含む。組成物は、組成物の総重量に対して、20~80wt.%の非晶質ポリマー組成物を含み、非晶質ポリマーは、1,000~150,000g mol-1の範囲の数平均分子量Mnを有する。特許文献10はまた、当該組成物、ならびに防食組成物の層および機械的保護層を含む物品とを含むテープに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4892410号明細書
【特許文献2】米国特許第5049005号明細書
【特許文献3】米国特許第5226751号明細書
【特許文献4】米国特許第5591265号明細書
【特許文献5】欧州特許第1644433号明細書
【特許文献6】欧州特許第751198号明細書
【特許文献7】欧州特許第826817号明細書
【特許文献8】米国特許第4558875号明細書
【特許文献9】米国特許第5663230号明細書
【特許文献10】欧州特許第2872554号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
当技術分野では、水上および水中で適用することができる腐食から物品を保護するための材料が必要とされている。これは、腐食のリスクを最小限に抑えるために、乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境または浸水環境に適用することができる材料に対する満たされていない必要性があることを意味する。そのような材料は、酸素および水に対する効果的なバリアを形成ものである。さらに、広範囲の動作温度を有する当技術分野で公知の材料よりも高温で使用することができる材料も必要とされている。保護される物品に塗布するのが容易であり、物品が乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境または浸水環境にある間に塗布することができる材料も必要とされている。好ましくは、材料は、保護される物品について広範囲にわたる前処理を必要とせずに、乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境または浸水環境に適用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
3.発明の概要
腐食に対する保護のための組成物、腐食に対する保護のための方法、ならびに本発明の組成物を含む物品およびテープが本明細書に記載されている。
【0020】
第一の態様において、本発明は、物品の腐食に対する保護のための組成物であって、(i)示差走査熱量測定(DSC)によって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含み、腐食に対する保護のための組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%の非晶質ポリマー組成物を含み、腐食に対する保護のための組成物の総重量に対して、(a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、組成物を提供する。
【0021】
第2の態様では、本発明の防食組成物を含む層を含むテープが本明細書で提供される。
【0022】
本発明はまた、物品であって、(a)(i)物品の表面に本発明の防食組成物の層、および(ii)当該防食組成物の当該層を保護するための機械的保護層、または(b)本発明のテープを含む、物品も提供する。
【0023】
本発明はまた、物品の腐食に対する保護のための方法であって、以下の順序で:(a)本発明の防食組成物の層または本発明のテープを適用する工程と、(b)当該防食組成物の層または当該テープの層の上に機械的保護層を適用する工程とを含み、物品が、本発明の防食組成物の層または本発明のテープの適用中に乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境または浸水環境にある、方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、先行技術に関連するすべての問題を解決し、特に、本明細書で提供される組成物が、湿った表面、湿潤表面および乾燥した表面に容易に適用され、吸水特徴の低下および粘度の増加などの改善された物理的特性を有し得ることを示す。さらに、本明細書で提供される組成物は、良好な熱安定性を有する。さらに、本発明の組成物は、陰極防食系との良好な適合性を有し、環境に有害な物質を含まない。組成物はまた、設置、検査および修復が容易である。本発明の組成物は、炭素鋼および合金鋼などの様々な種類の基材、ならびにネオプレン、エポキシ、およびポリオレフィンなどの既存のコーティングに対する優れた粘着性を有する。組成物は、氷点を超えてTmaxまでの範囲の温度で、結露からの非常に純粋な水、真水、および海水などの様々な種類の水で湿潤したまたは浸漬された基材に塗布することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
4.発明の詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲で使用される「含む(to comprise)」という動詞およびその活用形は、その語に続く項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目が除外されないことを意味するために非限定的な意味で使用される。
【0026】
不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」による要素への言及は、文脈が要素の1つおよび1つのみが存在することを明確に要求しない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を除外しない。冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0027】
別個の実施形態として開示されている場合であっても、実施形態のすべての可能な組合せも本明細書に含まれる。
【0028】
本明細書で使用される「平均分子量」という用語は、「数平均分子量(Mn)」、「粘度平均分子量(Mv)」、または「重量平均分子量(Mw)」を指し得る。
【0029】
「ポリマー」という用語は、ホモポリマーおよびコポリマーを含む。
【0030】
「コポリマー」という用語は、2つ以上の異なるモノマーを含むポリマーを含む。
【0031】
「非晶質ポリマー(複数可)」という用語は、ガラス状、硬質、脆性および延性のポリマーを含む広範な材料群を形成するポリマーとして定義される。温度および構造に応じて、非晶質ポリマーは、大きく異なる物理的機械的挙動パターンを示す。一般に、非晶質ポリマーは結晶性のX線回折パターンを示さない(L.H.Sperling.Induction to Physical Polymer Science.2006.John Wiley&Sons,Inc.ISBN 0-471-70606-X;Amorphous Polymers.In:Electron Microscopy of Polymers.Springer Laboratory.2008.Springer,Berlin,Heidelberg)。
【0032】
「非晶質」という用語は、ポリマーの非晶質構造を指す。非晶質形態を有するポリマーは、緩く折り畳まれた鎖に対応するランダムに配列した分子構造でそれらの原子を一緒に保持している。いくつかのポリマーは、同時に非晶質および結晶質の両方で存在し得る(L.H.Sperling.Induction to Physical Polymer Science.2006.John Wiley&Sons,Inc.ISBN 0-471-70606-X)。
【0033】
「ポリアルケン」という用語は、少なくともアルケンモノマーを含むポリマーを指す。
【0034】
一般に、当業者は、イソブテンモノマーを主成分として含み、任意選択的にさらなるモノマー、例えば1-ブテン、2-ブテンおよび/またはブタジエンを含む非晶質ポリマーを指す場合、一般的に「ポリイソブテン」という用語を使用する。これらの非晶質ポリマーは、特にガラス転移温度および表面張力に関して同様の特性を有する。ポリイソブテンの所望の純度に応じて、それらは様々な方法で調製され得る(Ullmanns ”Encyklopadie der technischen Chemie”,4th Ed.,Vol.19,pages 216-223,1980、および Vol.13,pages 621-623,1977を参照されたい)。「ポリイソブテン」という用語は、少なくとも約50wt.%、少なくとも約75wt.%、少なくとも約90wt.%または少なくとも約95wt.%などの量のイソブテンモノマー、ならびにC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーを、ポリイソブテンの総重量に対して計算して、約50wt.%以下、約25wt.%以下、約10wt.%以下または約5wt.%以下などの量で含むポリマーを含む。したがって、一般的な一般的用途によれば、「ポリイソブテン」という用語は、ポリブテンなどのポリマーおよび以下に記載される本質的に非架橋のブチルゴムを包含する。本出願では、「ポリイソブテン」という用語は、上で定義したイソブテンポリマーに使用される。
【0035】
「ポリイソブテンホモポリマー」という用語は、非常に高いイソブテンモノマー含有量を有するポリイソブテンを、例えば上記のより低いイソブテンモノマー含有量を有するポリイソブテン、ならびに以下に記載されるポリブテンおよびブチルゴムから区別するために本明細書で使用される。したがって、「ポリイソブテンホモポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、本質的にイソブテンモノマーからなるポリマー、すなわち、ポリマーの総重量に対して、約98%超~約100%のイソブテン、好ましくは約99%~約100%、より好ましくは約99.5%~約100%、さらにより好ましくは約99.7%~約100%、特に約99.9%~約100%のイソブテン総重量を含むポリマーを指す。
【0036】
本明細書で使用される「ポリブテン」という用語は、石油精製プロセスから得られるC4留分(例えば、1-ブテン、2-ブテン、イソブテンおよび任意選択的にブタジエンを含むC4留分など)から調製されるポリマーを指す。
【0037】
「ブチルゴム」という用語は、ポリマーの総重量に対して、約95wt.%~約98wt.%のイソブテン%および約2wt.%~約5wt.%のイソプレンのポリマーを指す。
【0038】
「吸水性充填剤」という用語は、水を吸収することができ、充填剤材料としての使用に適した材料として定義される。「吸水性充填剤」は、化学的な不可逆的反応または物理的な可逆的反応によって水と結合する全ての充填剤を含む。吸水性充填剤は、ポリマーであっても非ポリマーであってもよい。炭酸カルシウム(CaCO3)は、本発明の定義による吸水性充填剤ではない。
【0039】
「吸水率」(wA)という用語は、材料によって吸収される水の量として定義され、乾燥材料の質量(md)に対する吸収される水の質量(mwg)の比として計算される。結果は、質量割合(%)として表すこともできる。吸水率は、EN-ISO10769:2011に従って決定することができる。簡単に言えば、充填剤試料の乾燥質量に対する吸収された水の量は、自動電子天秤システムによって経時的に決定される。吸水率の値wAは、24時間の試験期間中に決定される。
【0040】
「充填剤の吸水率」または「吸水率」という用語は、特定の時間量で、充填剤の乾燥質量に対して、吸収され、結合し、および/または貯蔵され、物理的な可逆的反応または化学的な不可逆的反応による水の結合を含む、水の量として本明細書で定義される。前者の場合、水は、特定の状況下で再び放出され得るが、後者の場合には、水は恒久的に固定される。吸水率(w
A)は、一定時間内に乾燥充填剤試験片によって吸収された水の質量(m
wg)の充填剤試験片の乾燥質量(m
d)に対する比として表される。吸水率は、質量割合としてwt.%で表される。
【数1】
【0041】
「充填剤」という用語は、本明細書で使用される場合、吸水性および非吸水性(不活性)充填剤を指す。吸水性充填剤は、有機および/または無機の充填剤を含む任意の充填剤であり得る。ポリマー充填剤は、当技術分野で使用される任意の種類のポリマー充填剤であり得る。吸水性充填剤は、膨潤性充填剤、すなわち、湿った時または湿潤時に膨張する充填剤を含んでもよい。
【0042】
「機械的保護層」という用語は、1つまたは複数の下にある層を外部効果から機械的に保護する層を指す。
【0043】
本発明の文脈内で、「保護のための組成物」を構成する全ての成分の合計は常に100%である。防食組成物の全成分の重量百分率の合計は100%になる。
【0044】
4.1非晶質ポリマー
非晶質ポリマーは、炭化水素系ポリマーであることが好ましい。炭化水素系ポリマーは、任意選択的に(部分的に)ハロゲン化されており、好ましくは臭素、塩素またはフッ素によってハロゲン化されている。炭化水素系ポリマーは、その低温流動特性が最適化されるように、本質的に非加硫(非架橋)であることが好ましい。非晶質ポリマーは、1つまたは複数の異なる非晶質ポリマーを含んでもよい。例えば、非晶質ポリマーは、2つ以上の異なる非晶質ポリマーのブレンドであってもよい。
【0045】
非晶質ポリマーは、低分子量のポリマーを含み得る。非晶質ポリマーは、中分子量のポリマーを含み得る。非晶質ポリマーは、高分子量のポリマーを含み得る。数平均分子量および分子量分布は、当技術分野で周知のように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0046】
平均分子量は、数平均分子量(Mn)として示すことができる。一実施形態では、非晶質ポリマーは、1,000~2,000,000g mol-1の数平均分子量Mnを有する。一実施形態では、数平均分子量Mnは、1,050~1,950,000g mol-1の範囲内である。一実施形態では、非晶質ポリマーは、1,500~1,000,000の範囲、より好ましくは2,000~600,000万の範囲、さらにより好ましくは2,500~250,000の範囲、特に15,000~100,000g mol-1の範囲の数平均分子量Mnを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーの数平均分子量Mnは、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、または少なくとも235,000g mol-1である。
【0047】
一実施形態では、非晶質ポリマーは、1,000~2,300g mol-1の数平均分子量Mnを有する。具体的な実施形態では、非晶質ポリマーの数平均分子量Mnは、1,000、1,300、1,500、1,800、または2,300g mol-1である。別の実施形態では、非晶質ポリマーは、16,500、21,000または33,700g mol-1の数平均分子量Mnを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、235,000、437,000、534,000また2,000,000g mol-1の数平均分子量Mnを有する。
【0048】
平均分子量は、粘度平均分子量(Mv)として示すことができる。一実施形態では、非晶質ポリマーは、40,000~2,600,000g mol-1の平均分子量Mvを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、60,000~1,000,000g mol-1の平均分子量Mvを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、70,000~800,000g mol-1の平均分子量Mvを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、85,000~425,000g mol-1の平均分子量Mvを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、40,000~85,000g mol-1の平均分子量Mvを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、50,000~80,000、より好ましくは60,000~70,000g mol-1の平均分子量Mvを有する。具体的な実施形態では、非晶質ポリマーの平均分子量Mvは、40,000、47,000、55,000、65,000、73,000、または85,000g mol-1である。一実施形態では、平均分子量は40,000である。一実施形態では、平均分子量Mvは、約425,000~2,600,000g mol-1である。一実施形態では、平均分子量は、約600,000~2,000,000、より好ましくは約1,000,000~1,500,000g mol-1である。具体的な実施形態では、平均分子量は、約425,000、800,000、1,110,000、または2,600,000g mol-1である。
【0049】
平均分子量は、平均分子量(Mw)(PSの当量で表す)として示すことができる。一実施形態では、非晶質ポリマーは、1,000~3,050,000の平均分子量Mwを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、53,000~3,000,000の平均分子量Mwを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、70,000~1,600,000の平均分子量Mwを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、100,000~1,000,000の平均分子量Mwを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、53,000~108,000の平均分子量Mwを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、53,000、70,000、または108,000の平均分子量Mwを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、565,000~3,050,000の平均分子量Mwを有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、565,000、1,050,000、1,550,000、または3,050,000の平均分子量Mwを有する。
【0050】
上記範囲の数平均分子量(Mn)、粘度平均分子量(Mv)、および/または重量平均分子量(Mw)の任意の組合せによって記載することができる非晶質ポリマーも本発明に包含される。例えば、一実施形態では、非晶質ポリマーは、約1,000~約3,050,000の平均分子量を有する。一実施形態では、非晶質ポリマーは、約1,300~約2,600,000、より好ましくは約1,500~約1,550,000、さらにより好ましくは約2,300~約1,050,000の平均分子量を有する。
【0051】
好ましくは、非晶質ポリマーの分子量分布Mw/Mnは、約1~10、より好ましくは約1~5、さらにより好ましくは約1~4、最も好ましくは約1.5~3.5である。
【0052】
非晶質ポリマーは、約-20℃未満、好ましくは約-30℃未満、より好ましくは約-40℃未満、さらにより好ましくは約-50℃未満、最も好ましくは約-60℃未満のガラス転移温度Tgを有する。非晶質ポリマーは、20℃で約50mN/m未満、好ましくは20℃で約40mN/m未満の表面張力を有することが好ましい。ガラス転移温度は、当技術分野で公知の示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。表面張力は、当技術分野で公知の方法によって決定することができる(S.Wu,J.Colloid.Interface.Sci.31,153,1969;D.G.LeGrand,G.L.Gaines,Jr.,J.Colloid.Interface Sci.31,162,1969を参照されたい)。
【0053】
非晶質ポリマーは、ポリアルケンであることが好ましい。非晶質ポリマーを製造するための好ましいモノマーは、C2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーであり、アルケンおよび/またはアルカジエンは、1つまたは複数の臭素、塩素またはフッ素原子で置換されていてもよい。アルケンは、α-アルケンまたは内部アルケンであり得る。ジエンは、共役していても、非共役であってもよい。
【0054】
好ましくは、C2~C12アルケンは、エテン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン(2-メチルプロペン)、1-ペンテン、1-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
好ましくは、C4~C12アルカジエンは、ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,4-ジメチルブタジエン、ペンタ-1,3-ジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニル-シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、5-ビニル-2-ノルボルネンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
約-20℃未満のガラス転移温度を有する非晶質ポリマーは、当技術分野で周知であり、例えば、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,4th Ed.,Vol.8,pages 905-1093,1993、および4th Ed,Vol.9,pages 1-37,1994、およびthe Polymer Handbook,3rd Ed.,J.Bandrup,E.H.Immergut(Eds.),1989に開示されている。ポリマーハンドブックは、約-20℃未満のガラス転移温度を有する非晶質ポリマーについての多くの例を与える:約-71℃のブチルゴム(非加硫)、約-58℃のポリ(1-ヘキセン)(チーグラー・ナッタ触媒作用により調製される:ref.1072:J.Bourdariat,R.Isnard,J.Odin,J.Polym.Sci.,Polym.Phys.Ed.11,1817-1828,1973を参照されたい)(VI/213頁)、約-24℃のアイソタクチックポリ(1-ブテン)(例えば、R.W.Warfield,R.Brown,J.Polym.Sci.A-2 5,791,1967を参照されたい)(VI/213頁)および約-73℃のポリ(イソブテン)(VI/214頁)。これらのポリマーのいくつかは、重合プロセスで用いられる触媒組成物およびプロセス条件に依存することが多い、(部分的に)結晶性であり得ることがあることに留意されたい。例えば、欧州特許第300638号A2は、高結晶性ポリ(1-ブテン)の調製方法を開示している。しかしながら、例えば、特定のポリイソブテン、特定のポリブテンまたは特定のブチルゴムは、ポリマーハンドブックに列挙されている値とは異なるガラス転移温度を有し得ることが想定され得る。アタクチックポリプロペンのガラス転移温度は約-20℃である(U.Gaur,B.Wunderlich,J.Phys.Chem.Ref.Dta 10,1052-1063,1981を参照されたい)。
【0057】
20℃で約50mN/m未満の表面張力を有する非晶質ポリマーも当技術分野で周知である。The Polymer Handbook,3rd Ed.,J.Bandrup,E.H.Immergut(Eds.),1989は、このような非晶質ポリマーの様々な例を与える:ポリイソブテン(Mn=2300):20℃で33.6mN/m;アタクチックポリプロペン:20℃で29.4mN/m;分岐ポリエチレン(Mn=7000):20℃で35.3mN/m;エテンプロペンコポリマー(Mwが約15,000~約63,000の範囲;約34mol%~約60mol%の範囲のプロペン含有量):20℃で30.7~33.8mN/m;ポリ(4-メチル-1-ペンテン):20℃で25mN/m。分子量が約2000より大きい場合、表面張力は分子量と本質的に無関係であり、その場合、表面張力は、不確定な分子量での値の約1mN/m以内に達することに留意されたい。
【0058】
好ましい実施形態によれば、非晶質ポリマーは、好ましくは、(a)ポリマーの総重量に対して、約50.0重量%~約98重量%のイソブテンおよび約2重量%~約50.0重量%のイソブテン以外のC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、またはこれらの混合物を含むポリマー;(b)ポリマーの総重量に対して、約98重量%超~約100重量%のイソブテンを含むポリマー;(c)ポリマーの総重量に対して、約50.0重量%~約99.9重量%のプロペンおよび約0.1%~約50.0%のプロペン以外のC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、もしくはこれらの混合物、または約100wt.%のプロペンを含むポリマー;(d)ポリマーの総重量に対して、約0.1重量%~約50.0重量%のエテンおよび約50.0%~約99.9%のエテン以外のC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、またはこれらの混合物を含むポリマー;(e)ポリマーの総重量に対して、約0.1重量%~約50.0重量%の2-メチル-1-ペンテンおよび約50.0%~約99.9%の2-メチル-1-ペンテン以外のC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、もしくはこれらの混合物、または約100wt.%の2-メチル-1-ペンテンを含むポリマー;ならびに(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)の混合物からなる群から選択される。
【0059】
群(a)の例としては、「ポリイソブテン」、「ポリブテン」および「ブチルゴム」が挙げられる。群(b)の例としては、「ポリイソブテンホモポリマー」が挙げられる。群(c)の例としては、エテン-プロペンエラストマー、EPDMエラストマーおよびアタクチックポリプロペンが挙げられる。群(d)の例としては、エテンブテンコポリマーが挙げられる。群(e)の例としては、2-メチル-1-ペンテンのホモポリマーが挙げられる。
【0060】
本発明のより好ましい実施形態によれば、非晶質ポリマーは、ポリイソブテン、ポリブテン、ブチルゴム、アタクチックポリプロペン、プロペンとプロペン以外のC2~C12アルケン(任意選択的にジエン)とのコポリマー、エテンとエテン以外のC2~C12アルケン(任意選択的にジエン)とのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、非晶質ポリマーは、エテン-プロペンコポリマー、エテン-ブテンコポリマー、エテン-プロペン-ブテンターポリマー、エテン-プロペン-ジエンコポリマー、ポリイソブテン、ポリブテン、ブチルゴム、アタクチックポリプロペンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、非晶質ポリマーは、ポリイソブテン、ポリブテン、ブチルゴム、アタクチックポリプロペンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、非晶質ポリマーは、(a)、(b)およびこれらの混合物からなる群から選択され、(a)および(b)は上で定義したポリマーである。さらにより好ましくは、非晶質ポリマーは、ポリイソブテン、ポリブテン、ブチルゴムおよびこれらの混合物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、非晶質ポリマーはポリイソブテンであり、好ましくはポリイソブテンはポリイソブテンホモポリマーである。これらのポリマーは全て、上に開示されているように約-20℃未満のガラス転移温度を有する。
【0061】
非晶質ポリマーおよび本明細書に記載の全ての生成物の粘度は、ISO3219に従って決定される。測定は70.0℃で行われる。
【0062】
好ましくは、ポリブテンは、ASTM D 445(例えば、2008年9月のIneosデータシートで使用されるSaybolt Universal Secondsのデータは、ASTM D 2161に従ってmm2.s-1に変換することができる)に従って、約500~約20,000、より好ましくは約1,300~約20,000の数平均分子量Mn、約1.5~約3の分子量分布、約0.90~約0.98g/cm3の密度および100℃で約200cSt(mm2.s-1)~約100,000cSt(mm2.s-1)の動粘度を有する。適切なポリブテンとしては、例えば、Ineos(英国)から入手可能ないくつかのインドポールグレード、Kermat(ベルギー)から入手可能ないくつかのポリブテングレード、JX日鉱日石エネルギー(日本)から入手可能ないくつかのニッセキポリブテングレード、およびKothari Petrochemicals(インド)から入手可能ないくつかのKVISグレードが挙げられる。例えば、Indopol H-300は、ガラス転移温度が約-66.9℃(DSC)、Mnが約1300(GPC)、分子量分布が約1.65(GPC)、密度が約0.904g/cm3、100℃での動粘度が約605~約655cStである(Ineosデータシート、2008年9月)。インドポールH-18000は、約6000のMn(GPC)、約1.70の分子量分布(GPC)、約0.921g/cm3の密度および100℃で約36000~約45000cStの動粘度を有する(Ineosデータシート、2008年9月)。KVIS 30は、約1250~約1350の分子量、100℃で約600~697cStの動粘度、および約0.8910~約0.910g/cm3の密度を有する。
【0063】
ブチルゴムは、好ましくは、約25~約75のムーニー粘度ML 1+8(ASTM D 1646;125℃)および約1.0~約3.0mol%の不飽和レベルを有する。適切な材料としては、0.92g/cm3の密度を有するExxon(商標)ブチルゴムおよび0.92g/cm3 の密度、51±5のムーニー粘度ML 1+8(ASTM D 1646;125℃)および1.75±0.20mol%の不飽和を有するLanxessブチル101-3が挙げられる。
【0064】
ポリ(2-メチル-1-ペンテン)は、好ましくは約1~約250g/分のメルトインデックス(ASTM D 1236、260℃、5kg)、約160°~約200℃の軟化点(Vicat、ASTM D 1525)および25℃で約0.82~約0.95g/cm3の密度を有する。低いガラス転移温度を有する非晶質ポリ(2-メチル-1-ペンテン)は、例えば、Haiyang Gao,Xiaofang Liu,Ying Tang,Jin Pan and Qing Wu,Polym.Chem.2(6),1398-1403,2011に開示されている。
【0065】
エテン-プロペンコポリマー、エテン-ブテンコポリマーおよびエテン-プロペン-ブテンターポリマーは、好ましくは、ASTM D 3236に従って190℃で約300~約200,000mPa.sのブルックフィールド粘度を有する。適切な製品には、Eastman Chemical Companyから入手可能な特定のEastoflexグレード、Rextac LLCのRextac(登録商標)グレードおよびEvonikのVestoplast(登録商標)グレードが含まれる。エテン-プロペンコポリマーEastoflex 1045は、例えば、約4500mPa.sのブルックフィールド粘度(ASTM D 3236)および-22℃のガラス転移温度を有するのに対して、Eastoflex E 1003は、約300mPa.sのブルックフィールド粘度(ASTM D 3236)、-33℃のガラス転移温度を有する(Eastman brochure”Eastoflex(商標)-amorphous polyolefins”,2009を参照されたい)。他の例としては、ガラス転移温度が約-28℃であり、ブルックフィールド粘度が190℃で約2700mPa.sであるVestoplast(登録商標)703、およびガラス転移温度が約-27℃であり、ブルックフィールド粘度が190℃で約120000mPa.sであるVestoplast(登録商標)792が挙げられる(Evonik brochure ”Vestoplast(登録商標)-Amorphous Poly-alfa-olefins”)。このような非晶質プロペンコポリマーおよびターポリマーにおいて、プロペンの量は、アタクチックプロペンコポリマーの総重量に対して、好ましくは少なくとも約50wt.%であり、好ましくは約70~約98wt.%である。
【0066】
アタクチックポリプロペンは、ASTM D 3236に従って、190℃で約200~約10000mPa.sのブルックフィールド粘度を有する。適切な製品としては、Crowley Chemical CompanyのPolytac(商標)グレードのおよびRextac LLCのRextac(登録商標)グレードが挙げられる。Polytac(商標)グレードは、190℃で約500~約2500mPa.sの範囲のブルックフィールド粘度を有し、Rextac(登録商標)2104、2115および2180は、190℃でそれぞれ400、1500および8000mPa.sのブルックフィールド粘度を有する。
【0067】
ポリイソブテンは、上記非晶質ポリマーについて記載した数平均分子量(Mn)、粘度平均分子量(Mv)または重量平均分子量(Mw)を有する。同様に、ポリイソブテンの分子量分布Mw/Mnは、上記の通りである。
【0068】
低分子量、例えば約2,500までのポリイソブテンの数平均分子量M
nは、GPCによって決定される。より高い数平均分子量については、粘度測定(シュタウディンガー指数J
o)によって決定され、シュタウディンガー指数は、ウベローデ粘度計(流動時間を測定するために、希釈されたポリマー溶液が使用される)のキャピラリーlを通る20℃での流動時間から以下の式を使用して計算される:
J
o=η
sp/c(1+0.31×η
sp)[cm
3/g]
η
sp=(t/t
o)-1
式中、tは、Hagenbach-Couette補正による溶液の流動時間であり、t
oは、Hagenbach-Couette補正による溶媒(例えば、イソオクタン)の流動時間であり、cは、溶液のg/cm
3単位の濃度である。次いで、数平均分子量M
nおよび粘度平均分子量M
vは以下のように計算される。
【数2】
【0069】
2021年6月17日にアクセスされた「Glissopal(登録商標)1000、1300、2300」を参照するBASFのウェブサイト(www.basf.com)、および2019年7月のBASFパンフレット「Oppanol(登録商標)Bタイプ」(10N~15N(10 SFN~15 SFN))および2019年7月のBASFパンフレット「Oppanol(登録商標)Nタイプ」(50~150)を参照されたい。
【0070】
本発明の組成物に使用されるポリイソブテンは、好ましくは、20℃で決定される場合に、約1~約1500cm3/g、好ましくは約2~約1000cm3/gのシュタウディンガー指数Joを有する。一実施形態では、ポリイソブテンは、約1~約500cm3/g、好ましくは約2~約300cm3/g、より好ましくは約3~約150cm3/gのシュタウディンガー指数Joを有する。
【0071】
ポリイソブテンは、好ましくは、20℃で約40mN/m未満の表面張力を有する。ポリイソブテンの密度は、好ましくは約0.86~約0.98cm3/gである。
【0072】
ポリイソブテンは、様々な方法で調製することができる。重合は、単段階プロセスまたは多段階プロセスで行われてもよい。重合は、任意選択的に助触媒の存在下で、触媒としてルイス酸、好ましくは三フッ化ホウ素錯体触媒を使用して液相で行われることが好ましい。そのような方法は当技術分野で周知である。
【0073】
好ましいポリイソブテンは、BASFから市販されているGlissopal(登録商標)およびOppanol(登録商標)グレード、特にOppanol(登録商標)グレードBおよびNタイプからのものである。他の好ましいポリイソブテン、特にTetraxグレードは、日本石油から入手可能である。これらのポリイソブテンは、本明細書では「ポリイソブテンホモポリマー」、すなわち、ポリマーの総重量に対して、約98wt.%超えるイソブテンを含むポリマーとして分類される。
【0074】
4.2非晶質ポリマー組成物
非晶質ポリマー組成物は、非晶質ポリマーまたは2つ以上の非晶質ポリマーの混合物を含んでもよい。非晶質ポリマーは、上に開示されているような特性を有する。
【0075】
非晶質ポリマー組成物の非晶質ポリマーは、上記非晶質ポリマーについて記載した数平均分子量(Mn)、粘度平均分子量(Mv)、または重量平均分子量(Mw)を有する。同様に、非晶質ポリマーの分子量分布Mw/Mnは、上記の通りである。
【0076】
非晶質ポリマー組成物は、非晶質ポリマー組成物の総重量に対して、約50~約100wt.%のポリイソブテン、より好ましくは約0~約50wt.%の1種または複数種の他の非晶質ポリマーを含み、1種または複数種の他の非晶質ポリマーが、上に開示されているような非晶質ポリマー(a)~(f)からなる群から選択されることが好ましい。
【0077】
より好ましくは、他の非晶質ポリマーは、ポリブテン、ポリイソブテン、ブチルゴム、エテン-プロペンコポリマー、エテン-ブテンコポリマー、エタン-プロペン-ブテンターポリマー、非晶質プロペンコポリマー、アタクチックポリプロペン、ポリ(2-メチル-1-ペンテン)およびこれらの混合物からなる群から選択される。これらのポリマーは、上に開示されているように、約-20℃未満のガラス転移温度を有する。
【0078】
より好ましくは、非晶質ポリマー組成物は、約70~約100wt.%のポリイソブテン、好ましくはポリイソブテンホモポリマー、および約0~約30wt.%の1種または複数種の他の非晶質ポリマーを含む。さらにより好ましくは、非晶質ポリマー組成物は、約90~約100wt.%のポリイソブテン、好ましくはポリイソブテンホモポリマー、および約0~約10wt.%の1種または複数種の他の非晶質ポリマーを含む。最も好ましくは、非晶質ポリマー組成物は、非晶質ポリマー組成物の総重量に対して、約100wt.%のポリイソブテン、好ましくはポリイソブテンホモポリマーを含む。
【0079】
一実施形態では、非晶質ポリマー組成物は、非晶質ポリマー組成物の総重量に対して、約75~約95wt.%のポリイソブテン、好ましくはポリイソブテンホモポリマー、および約5~約25wt.%の1種または複数種の他の非晶質ポリマーを含む。本発明はまた、非晶質ポリマー組成物の総重量に対して、約80~約90wt.%のポリイソブテンおよび/またはポリイソブテンホモポリマーならびに約10~約20wt.%の1種または複数種の他の非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物に関する。一実施形態では、非晶質ポリマー組成物は、非晶質ポリマー組成物の総重量に対して、約20wt.%、約30wt.%、約40wt.%、約50wt.%、約60wt.%、約70wt.%、約80wt.%、または約90wt.%の1種または複数種の他の非晶質ポリマーを含む。
【0080】
4.3防食組成物
防食組成物は、(i)ガラス転移温度が-20℃以下の非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)吸水性充填剤を含む。当該非晶質ポリマー組成物(i)および当該非晶質ポリマーは、上に詳細に記載されている。吸水性充填剤(ii)の詳細については、後述する(4.4項を参照されたい)。
【0081】
一実施形態では、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%、少なくとも40wt.%、少なくとも50wt.%、少なくとも60wt.%、または少なくとも70wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、約30~約70wt.%、約30~約60wt.%、約40~約50wt.%、約40~約60wt.%、または約40~約70wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、約42wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。
【0082】
防食組成物の非晶質ポリマーは、上記非晶質ポリマーについて記載した数平均分子量(Mn)、粘度平均分子量(Mv)、または重量平均分子量(Mw)を有する。同様に、非晶質ポリマーの分子量分布Mw/Mnは、上記の通りである。
【0083】
一実施形態では、非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物は、DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、上記非晶質ポリマーについて記載した数平均分子量(Mn)、粘度平均分子量(Mv)、または重量平均分子量(Mw)を有する。
【0084】
防食組成物は、好ましくは、組成物の総重量に対して、少なくとも約30wt.%以上の非ポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、約35wt.%以上、約40wt.%以上、約50wt.%以上または約60wt.%の非ポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、約60wt.%以下、約55wt.%以下、約50wt.%以下、または約40wt.%以下の非ポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、約30~70wt.%、約30~60wt.%、約40~60wt.%、または約40~70wt.%の非ポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。
【0085】
一実施形態では、防食組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも約40wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)および少なくとも約30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。一実施形態では、防食組成物は、組成物の総重量に対して、約30~70wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)および約30~70wt.%の非ポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。一実施形態では、防食組成物は、組成物の総重量に対して、約40wt.%~60wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)および約40wt.%~60wt.%の非ポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。
【0086】
一実施形態では、防食組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも約40wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)および少なくとも約0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。一実施形態では、防食組成物は、組成物の総重量に対して、約30~70wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)および約0.1~10wt.%のポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。一実施形態では、防食組成物は、組成物の総重量に対して、約40~60wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)および約0.2~9wt.%のポリマー吸水性充填剤(ii)を含む。
【0087】
一実施形態では、防食組成物は、少なくとも約40wt.%の非晶質ポリマー組成物、少なくとも約0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤、および少なくとも約30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤を含む。一実施形態では、防食組成物は、約30~50wt.%の非晶質ポリマー組成物、約0.3~10wt.%のポリマー吸水性充填剤%、および約30~60wt.%の非ポリマー吸水性充填剤を含む。一実施形態では、防食組成物は、約40~50wt.%の非晶質ポリマー組成物、約0.5~9wt.%のポリマー吸水性充填剤、および約50~60wt.%の非ポリマー吸水性充填剤を含む。一実施形態では、防食組成物は、約42wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。全ての重量パーセンテージは、組成物の総重量に基づく。
【0088】
一実施形態では、組成物は、約30~70wt.%の非晶質ポリマー組成物および少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤および任意選択的に少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む。
【0089】
一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約8wt.%以上の量で存在する。一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約9wt.%以上の量で存在する。一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約10wt.%以上の量で存在する。一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約20wt.%以上の量で存在する。一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約30wt.%以上の量で存在する。一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約40wt.%以上の量で存在する。全ての重量パーセンテージは、組成物の総重量に基づく。
【0090】
一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約8~50wt.%の量で存在する。一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約10~50wt.%の量で存在する。一実施形態では、防食組成物は、化学反応によって水と結合する吸水性充填剤を含み、当該充填剤は約15~45wt.%の量で存在する。全ての重量パーセンテージは、組成物の総重量に基づく。
【0091】
一実施形態では、本発明は、腐食に対する保護のための組成物であって、(i)DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含み、腐食に対する保護のための組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%非晶質ポリマー組成物を含み、全ての組成物の総重量に対して、(a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、組成物に関する。
【0092】
一実施形態では、本発明は、腐食に対する保護のための組成物であって、(i)DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含み、腐食に対する保護のための組成物の総重量に対して、少なくとも40wt.%非晶質ポリマー組成物を含み、全ての組成物の総重量に対して、(a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、組成物に関する。
【0093】
一実施形態では、本発明は、腐食に対する保護のための組成物であって、(i)DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含み、少なくとも40wt.%非晶質ポリマー組成物を含み、全ての組成物の総重量に対して、(a)少なくとも40wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、組成物に関する。
【0094】
好ましい実施形態では、当該非晶質ポリマーは、上で定義した(a)~(f)からなるポリマーの群から選択される。さらに好ましい実施形態では、非晶質ポリマーは、(a)、(b)およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0095】
防食組成物は、1種または複数種の他の添加剤、例えば、追加の充填剤材料および/または酸化防止剤、表面張力調整剤、pH調節剤、着色剤、顔料などをさらに含んでもよい。
【0096】
一実施形態では、本発明の防食組成物は、酸化防止剤(iii)も含む。酸化防止剤(iii)は、以下により詳細に記載される。
【0097】
一実施形態では、本発明の防食組成物は顔料を含む。顔料は、この技術分野で一般的に使用される任意の顔料から選択することができる。防食組成物は、全ての組成物の総重量に対して、0.1wt.%、0.2wt.%、0.3wt.%、0.4wt.%、または0.5wt.%以上の量の含量を含んでもよい。
【0098】
一実施形態では、防食組成物は、組成物の総重量に対して、約30~約60wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)、および約30~約6wt.%の吸水性充填剤(ii)を含む。当該合計が100wt.%に等しくない場合、組成物が追加の成分、例えば追加の充填剤材料、添加剤などを含むことは当業者には明らかであろう。
【0099】
一実施形態では、本発明の防食組成物は、組成物の総重量に対して、約40~約60wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)、および約40~約60wt.%の吸水性充填剤(ii)を含む。一実施形態では、本発明の防食組成物は、組成物の総重量に対して、約40~約50wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)、および約35~約55wt.%の吸水性充填剤(ii)を含む。
【0100】
一実施形態では、防食組成物は、全ての組成物の総重量に対して、(i)-20℃以下のガラス転移温度を有する非晶質ポリマーを含む、約30~約50wt.%の非晶質ポリマー組成物、(ii)約30~約40wt.%の吸水性充填剤、および(iii)約0.05~約5wt.%の酸化防止剤を含む。好ましくは、成分(i)、(ii)および(iii)の合計は100wt.%に等しい。当該合計が100wt.%に等しくない場合、組成物が追加の成分、例えば追加の充填剤材料、添加剤などを含むことは当業者には明らかであろう。
【0101】
したがって、組成物は、任意選択的に、1種もしくは複数種の添加剤(iv)、および/または1種もしくは複数種の追加の充填剤(v)をさらに含む。1種または複数種の添加剤(iv)が存在する場合、1種または複数種の添加剤のそれぞれは、組成物の総重量に対して、約0.01~約10wt.%の量で、好ましくは約0.05~約5wt.%の量で存在することが好ましい。1種または複数種の充填剤(v)が存在する場合、1種または複数種の追加の充填剤の総量は、組成物の総重量に対して、約50~約60wt.%であることが好ましい。好ましくは、成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)および/または(v)の合計は100wt.%に等しい。当該合計が100wt.%に等しくない場合、組成物が追加の成分を含むことは当業者には明らかであろう。
【0102】
1種または複数種の添加剤(iv)が存在する場合、1種または複数種の添加剤は、着色剤およびpH調節剤からなる群から選択されることが好ましい。追加の充填剤(v)については、以下でより詳細に説明する。
【0103】
さらに別の好ましい実施形態では、防食組成物は、全て防食組成物の総重量に対して、約30~約70wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)、約30~約60wt.%の吸水性充填剤(ii)、および約0~約30wt.%の追加の充填剤(v)を含む。より好ましくは、組成物は、全て防食組成物の総重量に対して、約40~約70wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)、約30~60wt.%の吸水性充填剤(ii)、および約3~約20wt.%の追加の充填剤(v)を含む。さらにより好ましくは、組成物は、全て防食組成物の総重量に対して、約40~約60wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)、約30~55wt.%の吸水性充填剤(ii)、および約5~約10wt.%の追加の充填剤(v)を含む。最も好ましくは、組成物は、全て防食組成物の総重量に対して、約40~約45wt.%の非晶質ポリマー組成物(i)、約50~55wt.%の吸水性充填剤(ii)、および約5~約7wt.%の追加の充填剤(v)を含む。
【0104】
本発明の一実施形態では、防食組成物はいずれの可塑剤も含まない。一実施形態では、防食組成物は、ワセリンを含まない。一実施形態では、防食組成物は、ワックスを含まない。一実施形態では、防食組成物は、表面張力調整剤を含まない。一実施形態では、防食組成物は、いずれの上記薬剤の組合せも含まない。
【0105】
本発明の防食組成物の1つの特性は、水を吸収するその能力である。防食組成物は、本発明の防食組成物が物品の表面に迅速に粘着することを可能にするために、保護される当該物品の表面から十分な水を短時間(すなわち、数秒/分~数時間以内)で吸収することができる。
【0106】
本発明の防食組成物の吸水率は、ASTM規格D 570「プラスチックの吸水率の標準試験方法」に基づく浸漬法によって決定される。本方法はさらに適合されており、すなわち、標準の吸水率(wt.%で)および防食組成物の吸水率は、23±1℃の温度で72時間浸漬した蒸留水を使用して、1平方メートル当たりの吸収された水のグラム数(g/m
2)で決定される。実施例に記載されるように、本発明の防食組成物の吸水率(g/m
2)、w
A(g/m
2)の決定は、以下の工程を含む:
(1)15~25mmの範囲の既知の深さ、および30~50mmの範囲の既知の直径(円形表面)または既知の長さおよび幅(長方形または正方形表面)を有する表面を有するカップを秤量して、質量A((グラムで;(g))を得る工程と;
(2)プラスチックカップに当該組成物を完全に充填し、空気溜まりを回避し、表面を平滑化する工程と;
(3)充填されたカップを秤量して質量B((グラムで;(g))を得る工程と;
(4)23±1℃の温度に維持された蒸留水の容器に充填されたカップを置き、カップを完全に沈める工程と;
(5)カップを気候キャビネット内に置き、水温を23±1℃に72時間維持する工程と;
(6)72時間後にカップを容器から取り出し、その表面を乾燥させ、乾燥したカップを秤量して質量Cを得る((グラムで;(g))工程と;
(7)g/m
2で表される吸水率(g/m
2)を以下のように計算する工程:
【数3】
【0107】
防食組成物の層の厚さが特定の最小厚さを超えると、当該層の吸水率はもはや防食組成物の質量に依存せず、むしろ当該層の表面積に依存する。したがって、吸水率は、好ましくは、一定時間内に防食組成物の層の表面積に対して吸収される水の量、すなわち吸水率(g/m2)で表される。
【0108】
吸水を決定する場合に、防食組成物の層が当該最小厚さよりも大きい厚さを有することを確実にし、したがって吸水率(g/m2)に対する層厚さの影響を排除するように注意すべきである。
防食組成物の吸水率(g/m2)が低すぎる場合、組成物は、短時間で保護される物品の表面から十分な水を吸収することができず、組成物が当該物品の表面に充分に迅速に粘着することを可能にする。同様に、防食組成物の吸水率が高すぎると、組成物が弱くなり、粘稠性を失い始め、表面から容易に剥離する可能性がある。
【0109】
一実施形態では、本発明の防食組成物は、約100~約2,500g/m2、約100~約2,000g/m2、約100~約1,600g/m2、約100~約1,400g/m2、約100~約1,200g/m2、または約100~約1,000g/m2の範囲の吸水率を有する。一実施形態では、防食組成物の吸水率は、少なくとも約100g/m2、少なくとも約150g/m2、少なくとも約200g/m2、少なくとも約250g/m2、または少なくとも約300g/m2である。一実施形態では、防食組成物の吸水率は、約1,500g/m2未満、約2,000g/m2未満、約2,200g/m2未満、または約2,500g/m2未満である。
【0110】
本発明の防食組成物の重要な特性は、その粘度の増加である。本発明の組成物の粘度は、上記非晶質ポリマーについて記載したように決定される。一実施形態において、粘度は約15,000未満である。一実施形態において、粘度は約10,000未満である。一実施形態において、粘度は、約4,300超、約4,500超、約5,000超、約6,000超、約7,000超、約8,000超、または約9,000超である。一実施形態では、組成物は、70℃にて2.4s1(Pa.s)の剪断速度で約4,500~約15,000、より好ましくは約6,000~約15,000、さらにより好ましくは約7,000~約15,000の粘度を有する。一実施形態では、組成物の粘度は、約9,000~約11,000である。一実施形態において、組成物の粘度は、約11,000~15,000である。
【0111】
本発明の組成物の別の利点は、組成物が、改善された変形能を含め、保護される物品に関する改善された設定を有することである。また、本発明の組成物は、表面が乾燥しているか、湿っているか、湿潤であるか、浸漬されているか、または浸水しているかにかかわらず、非常に良好な粘着性、すなわち物品の表面に対する非常に良好な粘着力を有する。また、本発明の組成物は、非常に高い粘着性タックを有する。例えば、STOPAQ(登録商標)Subsea Compoundと比較して、保護される表面に対する本発明の組成物の粘着力が改善されるだけでなく、当該表面に対する組成物の最適な粘着は、特に低温で当該組成物の改善された粘着性タックに起因してより短い時間で達成される。
【0112】
本発明の組成物は硬化せず、したがって柔軟なままであり、水、水分、塩などに対して本質的に不透過性であり、孔が密である。一実施形態では、組成物はペーストであるか、またはペースト状の稠度を有する。本発明の防食組成物の追加の非常に重要な特徴は、組成物の保護層が、例えば波の作用によって比較的小さい程度に機械的に変形される場合、損傷が、本発明の組成物の流体様および/または粘弾性の性質のために比較的短期間内に自動的に修復されることである。すなわち、組成物は自己回復特性を有し、任意の変形または損傷は、機械的変形または他の応力によって引き起こされる穴または空洞への組成物の流れの結果として修復される。したがって、本発明の組成物を含む保護層は、適用された場合に滑らかであるだけでなく、窪み、跡、へこみ、空洞などが機械的力によって生じたとしても、それらはやがて消え、保護層の滑らかな表面が再び現れる。この流体様の性質のために、本発明の組成物を含む任意の保護層は、引き裂かれたり破断したりせず、内部応力を蓄積しない。物品の表面の凹凸は、本発明の防食組成物によって完全に充填または包囲されるが、最新技術による材料は、このような状況で問題を引き起こすことが多い。本発明の組成物の流体様および/または粘弾性の性質はまた、当技術分野で公知の保護コーティングおよび硬化性樹脂が一定期間内に適用される必要があるのに対して、ポットライフを有さないことを意味する。
【0113】
本発明の組成物を先行技術から公知のSTOPAQ(登録商標)Subsea Compoundと比較すると、本発明の組成物が、水が保護される表面に到達するのを防ぐだけでなく、当該表面と防食組成物の層との間に存在する空隙も最小限に抑えるという事実により、腐食に対する保護の改善が得られる。したがって、本発明によって解決される問題は、腐食に対する保護のための手段を提供することである。本発明は、例えば、本発明の物品の腐食に対する保護のための組成物を提供することによって問題を解決する。
【0114】
本発明の防食組成物の他の利点は、広いpH範囲にわたる高い化学的安定性および耐性であり、本質的に陰極剥離またはクリープ未満腐食(例えば、水の膜下移動によって引き起こされる)がないことである。
【0115】
本発明の組成物は、非常に良好な熱安定性を有する。本発明によれば、組成物は、約-20℃~約70℃、約-20℃~約90℃、約-30℃~約80℃、約-40℃~約90℃、または約-50℃~約100℃の動作温度範囲内で使用することができる。一実施形態では、組成物は、約-20℃~約70℃の動作温度内で使用される。一般に、最小動作温度はガラス転移温度に依存し、一方、最大動作温度は、例えばTmaxにおける粘着性などの性能要件に依存する。
【0116】
物品が部分的に浸水している場合、例えば石油プラットホームのライザーの場合、水面上の温度は、一般に水面下の温度とは異なる。本発明の防食組成物の広い動作温度範囲により、水面下に位置する物品の部分と水面上の部分の両方に同じ防食組成物を使用することが現在可能である。
【0117】
本発明の防食組成物には、さらなる重要な利点がある。ほとんどの保護系は、これらの系が物品に適用されて十分な粘着を得る前に、特に湿った環境または湿潤環境(浸漬または浸水など)でプライマーの使用を必要とする。プライマーの使用は本発明の組成物では必要とされず、これは、本発明の組成物がより短期間に適用され、それによって動作をより安価にすることができることを意味する。
【0118】
例えば、先行技術のコーティングシステムが適用される場合に生じる問題は、コーティング中に気泡が形成される可能性があり、これが容易に破裂し、それによってコーティング層にピンホールおよび不十分な保護をもたらすことである。本発明者らは、本発明の組成物が使用される場合、物品の表面と本発明の組成物の保護層との間に存在する気泡が、物品の表面から離れて、組成物の保護層内に移動することを見出した。物品が塩、例えば海水と接触している場所では、金属物品の表面に塩結晶が形成され、例えばコーティング系が当該表面に適用される前に、それは徹底的な洗浄を必要とする。対照的に、本発明の組成物は塩結晶を封入し、これらの結晶の除去は必要とされない。先行技術の保護系では、塩結晶を除去しなければならない必要性は、これらの結晶が吸湿性であり、保護層を透過する水を吸収することである。結果として、塩結晶は膨潤し、それによって保護層に亀裂を生じさせ、最終的に保護および腐食の悪化をもたらす。実際には、これらの塩結晶は、物品の動作に重大な問題を引き起こし、最新技術の保護システムを定期的に交換する必要がある。しかしながら、本発明の組成物は、そのような問題に悩まされず、したがってエンドユーザにとってはるかに経済的である。
【0119】
本発明の組成物によって保護される物品は、本発明の組成物の保護層を容易に除去することができ、検査後に再適用することができるので、容易に検査することができる。最新技術によるほとんどの材料は、除去がより困難である。さらに、除去されると、そのような従来技術の材料が再塗布される前に、可能であれば金属物品の表面を完全に洗浄する必要があるが、それは、未硬化状態で塗布される硬化系は再塗布することができないことが当業者には明らかであるためである。結果として、本発明の組成物の保護層もより容易に試験される。
【0120】
4.4充填剤
本発明の組成物は、1種または複数種の充填剤を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、1種または複数種の吸水性充填剤を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、1種または複数種の吸水性充填剤および1種または複数種の不活性充填剤を含む。吸水性充填剤は、2種以上の吸水性充填剤を含んでもよく、有機および/または無機の性質のものであってもよい。有機および/または無機の吸水性充填剤は、1種または複数種のポリマー吸水性充填剤および/または1種または複数種の非ポリマー吸水性充填剤であってもよい。本発明の組成物は、1種または複数種の吸水性充填剤の任意の組合せ、すなわち、非ポリマー吸水性充填剤の任意の組合せ、ポリマー吸水性充填剤の任意の組合せ、および非ポリマー吸水性充填剤とポリマー吸水性充填剤の任意の組合せを含む。
【0121】
充填剤の吸水率は、規格EN-ISO10769:2011に記載の手順に従って決定される。本明細書では、異なる充填剤の吸水率の測定に同じ手順を適用する。EN-ISO10769:2011に従って、吸水性充填剤の吸水率を周囲温度で測定し、試験期間は24時間である。
【0122】
組成物中に存在する吸水性充填剤の量は、とりわけ、当該充填剤の吸水率wAに依存する。より低い吸水率を有する吸水性充填剤が防食組成物中に適用される場合、防食組成物の十分な吸水率を確保するために、組成物中の当該充填剤の量は、一般に、高い吸水率を有する充填剤が適用される場合よりも多い。充填剤の吸水率は、とりわけ、充填剤の比表面、粒径および表面活性に依存する。
【0123】
多種多様な無機および有機の吸水性充填剤が当技術分野で公知であり、例としては、シリカ、酸化カルシウム、粘土鉱物、例えばバーミキュライトおよびスメクタイト、ならびに吸水性ポリマー、例えばポリアクリルアミド、例えばポリメチルアクリレートがそれぞれ挙げられる。当技術分野で公知の吸水性ポリマーは、すなわち、”Modern Superabsorbent Polymer Technology”,F.L.Buchholtz and A.T.Graham,Wiley VCH,1998,pp.71-103にさらに詳細に記載されている。
【0124】
一実施形態では、非ポリマー吸水性充填剤は鉱物粘土を含む。粘土鉱物は、含水フィロケイ酸塩、すなわち、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)または鉄(Fe)、および他のあまり存在しない元素の含水ケイ酸塩である。粘土鉱物は当技術分野で公知であり、Kirk-Othmer,”Encyclopedia of Chemical Technology”,4th Ed.,John Wiley&Sons,New York 1993,Volume 6,pp.383-423により詳細に記載されている。粘土鉱物の例には、バーミキュライト、カオリナイト、ならびにモンモリロナイトおよびベントナイトなどのスメクタイトが含まれる。一実施形態では、吸水性充填剤は、水和ケイ酸アルミニウム結晶性鉱物、好ましくはカオリナイトまたはカオリン(カオリン粘土)を含む。粘土鉱物は、ナトリウムベントナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カリウムベントナイト粘土、カリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムベントナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土、アルミニウムベントナイト粘土、アルミニウムモンモリロナイト粘土、2種以上のベントナイト粘土の組合せ、2種以上のモンモリロナイト粘土の組合せ、または1種または複数種のベントナイト粘土と1種または複数種のモンモリロナイト粘土の組合せをさらに含んでもよい。さらに、ベントナイト粘土および/またはモンモリロナイト粘土は、表面改質ベントナイト粘土を含んでもよい。好ましくは、鉱物粘土はベントナイト粘土、より好ましくはナトリウムベントナイト粘土を含む。例えば、EN-ISO10769:2011によって決定される場合に、ナトリウムベントナイトは、約330wt.%~約400wt.%の範囲の吸水率を有し、カオリンは、約188wt.%~約212wt.%の範囲の吸水率を有する。
【0125】
一実施形態では、吸水性充填剤は、化学反応によって水と結合する充填剤、すなわちセメントを含む。一実施形態において、セメントは、スルホアルミン酸セメントである。例えば、スルホアルミン酸セメントは、EN-ISO10769:2011によって決定される場合に、約280~約298wt.%の範囲の吸水率を有する。一実施形態では、吸水性充填剤は水硬性セメントを含む。水硬性セメントは、水との反応により硬化するセメントである。水硬性セメントの例は、ポルトランドセメントおよびポルトランドセメントブレンド(例えば、ポルトランドブラストファーネスセメントまたはポルトランドフライアッシュセメント)、超硫酸化セメント、アルミン酸カルシウムセメントおよびスルホアルミン酸カルシウムセメントである。
【0126】
一実施形態では、吸水性充填剤は二酸化ケイ素を含む。一実施形態では、吸水性充填剤は、化学反応によって水と結合する充填剤と二酸化ケイ素の両方を含む。
【0127】
一実施形態では、吸水性充填剤は、約20wt.%以上、より好ましくは約25wt.%以上、さらにより好ましくは約30wt.%以上の吸水率を有する。一実施形態では、吸水性充填剤の吸水率は約40wt.%以上、約50wt.%以上または約70wt.%以上である。一実施形態では、吸水性充填剤の吸水率は約100wt.%以上である一実施形態では、吸水性充填剤の吸水率は約150wt.%以上または約200wt.%以上である。一実施形態では、吸水性充填剤は、約20wt.%~400wt.%、約50wt.%~300wt.%、約100wt.%~300wt.%、または約100wt.%~400wt.%の吸水率を有する。
【0128】
好ましくは、防食組成物は、組成物の総重量に対して、非ポリマー吸水性充填剤を少なくとも30wt.%、少なくとも40wt.%、または少なくとも50wt.%の量で含む。一実施形態では、組成物は、全て防食組成物の総重量に対して、約30~60wt.%、より好ましくは約30~55wt.%、さらにより好ましくは約35~55wt.%、最も好ましくは約40~53wt.%の量で非ポリマー吸水性充填剤を含む。
【0129】
一実施形態では、充填剤は有機充填剤を含む。有機性の充填剤は、セルロース、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロペン、ポリイソプレン、ゴム、ポリアミドおよびポリエステルまたはこれらの混合物であり得るが、これらに限定されない。ポリエチレンおよびポリプロペンは、防食組成物の一部である非晶質ポリマー組成物中に存在してもよい。一実施形態では、有機充填剤は高分子充填剤である。当該ポリマーが充填剤材料として適用される場合、例えば、非晶質ポリマー組成物について指定されるガラス転移温度または分子量の要件を満たす必要はない。ガラス転移温度が-20℃を超えるシンジオタクチックポリプロペンを充填剤として使用することができる。
【0130】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも約0.1wt.%、少なくとも約0.2wt.%、少なくとも約0.3wt.%、少なくとも約0.4wt.%、少なくとも約0.5wt.%、少なくとも約0.6wt.%、少なくとも約0.7wt.%、少なくとも約0.8wt.%、少なくとも約0.9wt.%、wt.%、少なくとも約1wt.%、少なくとも約1.5wt.%、または少なくとも約2.0wt.%の量のポリマー充填剤を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、ポリマー吸水性充填剤の約0.1~10.0wt.%、約0.2~8.0wt.%、約0.3~6.0wt.%、約0.4~5.0wt.%または約0.5~2.5wt.%の量でポリマー充填剤を含む。
【0131】
一実施形態では、組成物は、上述の量の少なくとも1種の非ポリマー系吸収性充填剤と、上述の量の少なくとも1種のポリマー系吸水性充填剤との両方を含む。
【0132】
一実施形態では、充填剤は無機充填剤を含む。無機充填剤の例は、無機鉱物、塩および/または酸化物、例えば炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、粉砕石英、ガラス、タルク、スレートおよびカオリンである。一実施形態では、充填剤は炭酸カルシウムを含む。一実施形態では、充填剤はカオリンを含む。一実施形態において、充填剤は、炭酸カルシウムおよびカオリンを含む。一実施形態では、充填剤は、炭酸カルシウム、カオリンおよびアルミン酸スルホセメントを含む。
【0133】
本発明の組成物は、有機、無機または不活性であり得る1種または複数種の追加の充填剤を含んでもよい。一実施形態では、追加の充填剤は有機充填剤である。一実施形態では、追加の充填剤は無機充填剤である。一実施形態では、追加の充填剤は、不活性充填剤、すなわち炭酸カルシウムである。1種または複数種の追加の不活性充填剤は、全て防食組成物の総重量に対して、0~約10wt.%、好ましくは約0.5~約8wt.%、より好ましくは約1~約6wt.%の量で存在し得る。一実施形態では、追加の不活性充填剤は、0.5wt.%以上の、1wt.%以上、または2wt.%以上の量で存在する。
【0134】
防食組成物中に存在する充填剤の総量、すなわち、1種または複数種の吸水性充填剤の総量と必要に応じた1種または複数種の追加の充填剤の量は、全て防食組成物の総重量に対して、35~60wt.%、好ましくは40~59wt.%、より好ましくは45~58wt.%、最も好ましくは50~58wt.%の範囲内にある。一実施形態では、防食組成物中に存在する充填剤の総量は、全て防食組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%、少なくとも40wt.%、または少なくとも50wt.%である。
【0135】
本発明の防食組成物は、好ましくは、全て防食組成物の総重量に対して、約30~約60wt.%の非ポリマー吸水性充填剤および約0wt.%の追加の充填剤、より好ましくは約35~53wt.%の非ポリマー吸水性充填剤および約2~約7wt.%の追加の充填剤、さらにより好ましくは約40~53wt.%の非ポリマー吸水性充填剤および約3~約6wt.%の追加の充填剤、最も好ましくは約非ポリマー性45~53wt.%の吸水性充填剤と、約4~約6wt.%の追加の充填剤を含む。
【0136】
一実施形態では、防食組成物は、全て防食組成物の総重量に対して、約0.1~約10.0wt.%のポリマー吸水性充填剤および約0wt.%の追加の充填剤、より好ましくは約0.2~約8.0wt.%のポリマー吸水性充填剤および約2~約7wt.%の追加の充填剤%、さらにより好ましくは約0.3~約6.0wt.%のポリマー吸水性充填剤、約3~約6wt.%の追加の充填剤、最も好ましくは約0.4~約5.0wt.%のポリマー吸水性充填剤、ならびに約4.0~約6.0wt.%の追加の充填剤を含む。一実施形態では、組成物は、約0.1~10.0wt.%のポリマー吸水性充填剤、好ましくは0.1~8wt.%のポリマー吸水性充填剤、より好ましくは0.1~5wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む。
【0137】
一実施形態では、上述の量のいずれかの上述の充填剤のいずれかの2つ以上の混合物が本発明に包含される。
【0138】
4.5酸化防止剤
一実施形態では、本発明の防食組成物は、酸化防止剤(iii)を含む。酸化防止剤は、一次または二次酸化防止剤、多官能性酸化防止剤(すなわち、一次および二次酸化防止剤機能を組み合わせた酸化防止剤)またはラクトンであり得る。酸化防止剤は、2種以上の酸化防止剤の組み合わせを含んでもよい。一実施形態では、防食組成物は、2種の酸化防止剤を含む。一実施形態では、防食組成物は、3種の酸化防止剤を含む。
【0139】
必要に応じた1種または複数種の酸化防止剤は、本発明の全ての組成物の総重量に対して、約0.05~約5wt.%、好ましくは約0.1~約4wt.%、より好ましくは約0.2~約3wt.%、最も好ましくは約0.3~約2wt.%の量で存在し得る。一実施形態では、1種または複数種の酸化防止剤は、本発明の組成物の総重量に対して、約0.1wt.%、0.2wt.%、0.3wt.%、0.4wt.%、0.5wt.%、0.6wt.%、0.7wt.%、0.8wt.%、0.9wt.%または1wt.%の量で存在する。一実施形態では、1種または複数種の酸化防止剤は、約0.3wt.%の量で存在する。
【0140】
本発明によれば、一次酸化防止剤は、好ましくは、立体障害フェノール化合物、立体障害アルキルチオメチルフェノールまたはアリールチオメチルフェノール化合物、および第二級芳香族アミンからなる群から選択される。そのような化合物は当技術分野で周知であり、立体障害フェノール化合物2、6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、Irganox(登録商標)1330、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)1098、Irganox(登録商標)1076、Irganox(登録商標)245、Irganox(登録商標)259、Irganox(登録商標)1035、Irganox(登録商標)2246、Irganox(登録商標)3114およびIrganox(登録商標)3125、立体障害アルキルチオメチルフェノールIrganox(登録商標)1520、すなわち、2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-メチルフェノール、ならびに(重合した)1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、例えばAgerite(登録商標)MAを含む第二級芳香族系酸化防止剤を含む。
【0141】
本発明によれば、二次酸化防止剤は、好ましくはホスファイトおよびチオエステルからなる群から選択される。適切な二次酸化防止剤は、例えばIrgafos(登録商標)168、Irgafos(登録商標)12およびIrgafos(登録商標)P-EPQ(全てホスファイト)、ならびにLowinox(登録商標)TBM-6、BNX(登録商標)DLTDP(CAS番号123-28-4)およびMorstille 18 DSTDP(全てチオエステル)である。
【0142】
多官能酸化防止剤は、好ましくは、一次および二次酸化防止機能を含む。多官能酸化防止剤の例は、Irganox(登録商標)L 115およびIrganox(登録商標)565である。
【0143】
酸化防止剤として使用することができるラクトンの例は、Irganox(登録商標)HP-136である。
【0144】
本発明によれば、組成物は、好ましくは一次酸化防止剤を含み、一次酸化防止剤は、好ましくは立体障害フェノール化合物および第二級芳香族アミンの群から、最も好ましくは立体障害フェノール化合物の群から選択される。
【0145】
組成物は、二次酸化防止剤を含んでもよく、二次酸化防止剤は、好ましくはホスファイトの群から選択される。
【0146】
一実施形態では、組成物は、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との組合せ、好ましくは相乗効果を有する一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との組合せを含む。適切な組合せは、Irganox(登録商標)1010とIrgafos(登録商標)168である。
【0147】
一実施形態では、組成物は、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤およびラクトンの組合せを含む。一実施形態において、ラクトンはIrganox(登録商標)HP-136である。
【0148】
一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、多官能酸化防止剤およびラクトンのさらなる例は、例えば国際公開第2005/005528号に開示されている。
【0149】
4.6方法
本発明はまた、物品の腐食に対する保護のための方法であって、本発明の防食組成物が物品の表面に適用される、方法に関する。本発明は、例えば、保護される物品の腐食に対する保護のための方法をさらに提供することによって問題を解決する。
【0150】
防食組成物は、フィルム、コーティングまたはカバーとして適用することができる。一実施形態では、防食組成物は、層の形態で適用される。物品は、防食組成物の当該層の適用中に、乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境または浸水環境に存在し得る。一実施形態では、物品は、防食組成物の層の適用中に湿潤環境に存在する。
【0151】
本発明は、物品の腐食に対する保護のための方法であって、以下の順序で:(a)(i)DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含む防食組成物の層の適用工程であって、組成物が、組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%非晶質ポリマー組成物を含み、組成物が、全ての組成物の総重量に対して、(a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、適用工程と、(b)当該防食組成物の当該層の上への機械的保護層の適用工程とを含む、方法に関する。
【0152】
非晶質ポリマーは、上記非晶質ポリマーについて記載した数平均分子量Mn、粘度平均分子量(Mv)または重量平均分子量(Mw)を有する。同様に、非晶質ポリマーの分子量分布Mw/Mnは、上記の通りである。
【0153】
本発明は、物品の腐食に対する保護のための方法であって、以下の順序で:(a)本発明の防食組成物の層の適用工程と、(b)当該防食組成物の層の上への機械的保護層の適用工程とを含み;本発明の防食組成物の層を塗布する間、物品が、乾燥した環境、湿った環境、湿潤環境、浸漬環境または浸水環境にある、方法を提供する。
【0154】
一実施形態では、物品は、方法の工程(a)の間、すなわち当該防食組成物の当該層を物品の表面に適用する間、湿った環境または湿潤環境にある。一実施形態において、物品は、方法の工程(a)の間、乾燥した環境にある。一実施形態では、物品は、浸漬環境または浸水環境にある。防食組成物の層は、当該物品の表面全体、または表面の一部に適用されてもよい。
【0155】
改善された変形、非常に良好な粘着性タックおよび物品の表面への粘着力を含む、保護される物品に対する本発明の防食組成物の改善された設定により、本方法は、物品が湿潤環境、すなわち水面下、スプラッシュゾーンなどにある間に実施することができる。”Corrosion Control of Steel-Fixed Offshore Platforms Associated with Petroleum Production,”NACE Standard RP 0176-03,NACE International,Houston,2003によれば、「スプラッシュゾーン」は、潮汐、波、風、および海の影響を交互に受けるゾーン(例えば、沖合プラットホームのゾーン)として定義される。
【0156】
本発明は、特に、腐食に対する当該物品の保護に関する。結果的に、物品は、金属、特に鋼から本質的に構成されることが好ましい。あるいは、物品の表面は、本質的に金属、特に鋼、またはコンクリートで構成されているが、物品の内部は異なる材料を含んでもよい。本発明の方法は、石油またはガス用のラインまたはパイプ、および石油掘削および生産リグまたはプラットホームのライザーの腐食に対する保護に特に適している。しかしながら、本発明の方法はまた、例えば波動によって引き起こされる振動および衝撃などの機械的外部影響から物品を保護する。
【0157】
本発明の方法によって保護される物品は、湿潤環境または湿った環境、例えば海洋環境にあってもよい。本明細書では、湿潤環境における物品は、物品の表面、もしくはその一部が湿潤している、すなわち、水が物品の表面もしくはその一部に存在する、または物品の表面が水面下に位置する物品として定義される。湿った環境における物品は、物品の表面、またはその一部がわずかにまたは中程度に湿潤している物品として定義される。
【0158】
物品は、完全にまたは部分的に水中に沈められてもよく、例えば、水中の油またはガス用のパイプライン、掘削または生産リグまたはプラットホームのライザー、または(部分的に)水面上に位置するが波または潮汐作用などのために湿潤していてもよいいわゆるスプラッシュゾーンに位置する物品であってもよい。一実施形態では、湿潤環境における物品は、水中物品、例えば水面下に位置する油またはガス用のパイプまたはラインなどである。一実施形態では、湿潤環境における物品は、例えば、海に位置する石油掘削または生産リグまたはプラットホームのライザー、または水面下に部分的に位置する油用のパイプまたはラインなどの部分的に浸水した物品である。別の実施形態では、湿潤環境における物品は、スプラッシュゾーンに位置する物品である。
【0159】
あるいは、物品は、物品の表面上の環境からの結露に起因して湿潤環境にあってもよく、その結果、物品の表面またはその一部に水が存在する。そのような物品の例は、スウェッティングパイプライン、すなわち、環境からの凝縮により水が存在する表面上のパイプライン、または樋である。一実施形態では、湿潤環境における物品は、スウェッティングパイプラインまたは樋である。
【0160】
本発明の方法によって保護される物品は、乾燥した環境にあってもよい。本明細書では、乾燥した環境における物品は、物品として定義され、物品の表面またはその一部は、水中または水面下にないか、液体、特に水を含まないか、または比較的含まない。
【0161】
本発明の方法の第1の工程(a)は、本発明の防食組成物の層を物品の表面に適用することを含む。一実施形態では、防食組成物は、本方法の工程(a)の実行中に、表面またはその一部が湿潤しているかまたは湿っている間、すなわち、水が物品の表面またはその一部に存在している間に当該表面に適用される。一実施形態では、防食組成物は、本方法の工程(a)の実行中に、表面またはその一部が乾燥している間、すなわち、水が物品の表面またはその一部に存在しない間に当該表面に適用される。一実施形態では、防食組成物は、表面またはその一部の湿度が異なる部分で異なる間に当該表面に適用され、すなわち、表面の一部は乾燥していてもよく、表面の他の部分は湿っていてもよいおよび/または湿潤していてもよい。例えば、本発明の防食組成物は、オイルリグまたは石油リグに使用することができる。そのようなリグの部分は、異なる環境条件に暴露される。
【0162】
先行技術から公知の方法とは対照的に、本発明の防食組成物は、物品の表面に直接適用することができる。
【0163】
本発明の方法は、物品が実際に湿った環境または湿潤環境に位置する場合に、物品を当該湿った環境または湿潤環境から隔離する必要なしに、物品に対して実行され得る。一実施形態では、本方法は、浸水した物品を保護するために、水面下で実行される。本方法の工程(a)における本発明の組成物の適用前の物品の表面の乾燥は必要ではない。一実施形態では、本方法は水面上で実行される。一実施形態では、本方法は物品の乾燥表面で実行される。
【0164】
物品の表面の広範な前処理は、一般に、本発明の方法において必要ではない。例えば、浸水した物品などの物品を保護する場合、当技術分野で公知の方法では、物品の周りにケーシングを構築し、ケーシング内に存在する水を除去する必要があることが多い。その後、物品の表面を調製するために、物品の表面に、例えばサンドブラストによる徹底的な前処理を施さなければならないことが多い。これらの時間がかかり高価な工程は、本発明の方法において必要ではなく、表面前処理を最小限にするか、または全く必要としない。
【0165】
本発明の方法の第2の工程(b)は、圧縮および可撓性の機械的保護層の適用を含む。機械的保護層は、本発明の防食組成物の層の上に適用され、当該層を完全にカバーする。防食組成物の層「の上に」機械的保護層を適用することは、機械的保護層が、保護される物品の表面と接触している防食組成物の当該層の側とは反対側の防食組成物の層の側に位置することを意味する。一実施形態では、機械的保護層は、防食組成物の層と直接接触している。一実施形態では、防食組成物の層と機械的保護層との間に追加の断続的な層が存在してもよい。機械的保護層の機能は、本方法の工程(a)で適用される本発明の組成物の層を保護することである。さらに、当該機械的保護層は、最終的に腐食防止層の下に存在する空隙を最小化し、材料にプレストレスを発生させることによって自己修復効果を可能にし、防食組成物が水に過度に暴露されることを防止し、これは経時的な組成物の劣化をもたらし得る。
【0166】
機械的保護層は、テープの形態で適用されてもよい。機械的保護層の例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロペン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ、ポリウレタンまたはアラミドを含むポリマー(多層)フィルムが挙げられる。ポリマーフィルムは、例えばガラス繊維または炭素繊維などの強化繊維と積層されてもよい。適切な保護層は、例えば、高剪断テープによって提供される。高剪断テープは当技術分野で周知であり、例えば米国特許第5817413号明細書および米国特許第6033776号明細書に開示されている。
【0167】
機械的保護層が本発明の組成物の保護層を含む基材に応力を加えられる場合、または機械的保護層が基材、例えばパイプの周りで収縮する場合、自己修復効果を得ることができ、それによって保護層の欠陥が時間の経過と共に修復される。次いで、保護層は、本発明の組成物の層に連続的な応力を及ぼす。保護層がわずかな損傷を受ける場合、この応力は、損傷部位に向かう本発明の組成物の流れを確実にし、下にある基材の任意の露出面のカバーをもたらす。
【0168】
適切な機械的保護層の例は、ガラス繊維強化ポリウレア層である。そのような保護層は、防食組成物の層の剛性の機械的補強として機能し、例えば流木、ボート着地などからの衝撃および窪みから当該層を保護する。好ましい実施形態では、当該機械的保護層の上に水密層が適用される。別の好ましい実施形態では、当該機械的保護層自体が水密層である。別の好ましい実施形態では、2つの異なる層が防食組成物の層の上に適用され、第1の層、すなわち、防食組成物の層と直接接触する層は可撓性テープであり、第2の層、すなわち、当該可撓性テープと直接接触する層は、例えばガラス繊維強化ポリウレアの追加の剛性機械層である。
【0169】
本方法はまた、本発明の防食組成物の層を含む本発明のテープを物品の表面に適用することによって実施されてもよい。したがって、本発明はさらに、工程(a)においてテープが物品の表面に適用され、テープが、本発明の防食組成物を含む層を含む、本発明の方法に関する。本発明の防食組成物は、上に詳細に記載されている。
【0170】
一実施形態では、本方法は、以下の順序で、(a)本発明のテープの適用工程と、(b)当該防食組成物の層の上に機械的保護層の適用工程とを含む。別の実施形態では、本方法は、以下の順序で、(a)本発明のテープの適用工程と、(b)当該防食組成物の層の上への機械的保護層の適用工程とを含み、物品は、テープ(a)または層(b)の適用中に乾燥した環境または湿潤環境にある。
【0171】
本発明の組成物の層を保護するための機械的保護層は、テープに含まれてもよい。その場合には、本発明の方法の工程(b)は、物品の表面への当該テープの適用によっても実行され、したがって、本発明の方法の工程(a)および工程(b)は、その場合には、同時に実行される。
【0172】
4.7テープ
本発明はまた、腐食に対する物品の保護のためのテープであって、本発明の防食組成物を含む層を含む、テープに関する。したがって、本発明はまた、物品の腐食に対する保護のためのテープを提供することによって問題を解決する。
【0173】
防食組成物を含む層を含むテープであって、(i)DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含み、組成物が、組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%非晶質ポリマー組成物を含み、組成物が、組成物の総重量に対して、a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、テープが本明細書で提供される。
【0174】
本発明のテープの好ましい実施形態では、非晶質ポリマーは、
(a)ポリマーの総重量に対して、約50.0重量%~約98重量%のイソブテンおよび約2%~約50.0%のイソブテン以外のC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、またはこれらの混合物を含むポリマー;
(b)ポリマーの総重量に対して、約98重量%超~約100重量%のイソブテンを含むポリマー;
(c)ポリマーの総重量に対して、約50.0重量%~約99.9重量%のプロペンおよび約0.1%~約50.0%のプロペン以外のC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、もしくはこれらの混合物、または約100wt.%のプロペンを含むポリマー;
(d)ポリマーの総重量に対して、約0.1重量%~約50.0重量%のエテンおよび約50.0%~約99.9%のエテン以外のC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、またはこれらの混合物を含むポリマー;
(e)ポリマーの総重量に対して、約0.1重量%~約50.0重量%の2-メチル-1-ペンテンおよび約50.0%~約99.9%の2-メチル-1-ペンテン以外のC2~C12アルケン、C4~C12アルカジエン、もしくはこれらの混合物、または約100wt.%の2-メチル-1-ペンテンを含むポリマー;ならびに
(f)(a)、(b)、(c)、(d)および/または(e)の混合物
からなる群から選択される。
【0175】
好ましい実施形態では、非晶質ポリマーは、(a)および(b)、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0176】
非晶質ポリマーは、上記非晶質ポリマーについて記載した数平均分子量(Mn)、粘度平均分子量Mvまたは重量平均分子量Mwを有する。同様に、非晶質ポリマーの分子量分布Mw/Mnは、上記の通りである。
【0177】
一実施形態では、テープは、物品が乾燥環境にある間に保護される物品に適用される。一実施形態では、テープは、物品が湿潤環境または湿った環境にある間に物品に適用される。換言すれば、テープの適用中に、物品の表面またはその一部が湿潤であるかまたは湿っている間、すなわち、物品の表面またはその一部に水が存在している間に、テープを物品の表面に適用することができる。したがって、テープの適用前に物品の表面を乾燥させる必要はない。テープは、(部分的に)浸水した物品、スプラッシュゾーン内の物品、またはスウェッティングパイプラインなどの物品の表面の水分の結露などに起因して湿潤表面を有する物品に直接適用することができる。保護される物品の表面は、一般に、広範な前処理を必要としない。テープは、本発明の組成物の層を容易に変形させることができるため、腐食に対して保護される物品に容易に適用することができる。さらに、適用された後、テープを容易に除去され得る。凝集破壊により、金属物品の表面にいくらかの残留物が残るが、これらの残留物は、掻き取ることによって容易に除去され得る。本発明のテープは、金属物品の表面がISO規格8501-1に従ってSt-2レベルまで清浄化されていれば、最新技術による何らかの保護材料が既に提供されている損傷または腐食した金属物品を修復するために使用することができる。最後に、上記のように、テープは、本発明の防食組成物の層の流体および/または粘弾性の性質のために自己修復特性を有する。
【0178】
一実施形態において、テープは、物品の部分が湿潤環境または湿った環境にある間であって、物品の他の部分が乾燥した環境にある間に適用されてもよい。
【0179】
一実施形態では、テープは、層(a)を保護するためのさらなる層(b)を含む。さらなる層(b)は、機械的保護層であってもよい。このような保護層(b)が輸送されると、テープをボビンまたはスプールまたは他の適切な手段に容易に巻き付けることができ、テープの層の相互粘着を防止することができる。保護層は、管状物体の基材への組成物の粘着の完了を加速させるが、これは、そのような機械的保護層が張力で包まれるためである。
【0180】
本発明の防食組成物を含むテープが本明細書で提供される。本発明によれば、テープは、(i)DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含む防食組成物を含む第1の層であって、組成物が、組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%非晶質ポリマー組成物を含み、組成物が、組成物の総重量に対して、a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、第1の層、ならびに(b)層(a)を保護するための第2の層を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも40wt.%、少なくとも50wt.%、少なくとも60wt.%、または少なくとも70wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、約30~約70wt.%、約30~約60wt.%、約40~約50wt.%、約40~約60wt.%、または約40~約70wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。
【0181】
非晶質ポリマーは、上記非晶質ポリマーについて記載した数平均分子量(Mn)、粘度平均分子量(Mv)または重量平均分子量(Mw)を有する。同様に、非晶質ポリマーの分子量分布Mw/Mnは、上記の通りである。
【0182】
層(b)は、テープの適用中にテープから除去される剥離ライナーの機能を有してもよい。次いで、層(b)は、剥離ライナー用の任意の適切な材料、例えば紙、C2~C20アルケンポリマーまたはコポリマーなどを含んでもよい。あるいは、層(b)は、シリコン処理された外面を有するポリ塩化ビニルフィルムを含んでもよい。そのような層(b)が存在する場合、追加の剥離ライナーの存在は不要である。さらに、当該層は、適用の容易さを高めるための分離層として、およびその後に適用される機械的保護層の適切な粘着を可能にする層としても機能する。
【0183】
具体的な実施形態では、テープは、さらなる層(c)を含み、層(c)は、以下により詳細に記載されるように、好ましくは、1つもしくは複数のC2~C20α-アルケンおよび/もしくはアルカジエンのポリマーもしくはコポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、または不織ポリエステルクロスを含むフィルムを含む。
【0184】
層(c)は、存在する場合、層(b)が位置する側よりも層(a)の他方の側に位置する。テープ内の層の順序は、(b)-(a)-(c)であり、層(a)は(b)と(c)の間に配置され、層(b)は環境に面する。本発明はまた、(i)DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含む防食組成物を含む第1の層であって、組成物が、組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%非晶質ポリマー組成物を含み、組成物が、組成物の総重量に対して、a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、第1の層、ならびに(b)層(a)を保護するための第2の層、ならびに(c)1つまたは複数のC2~C20α-アルケンおよび/またはアルカジエンのポリマーまたはコポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、または不織ポリエステルクロスを含むフィルムを含む層を含むテープを提供する。層(c)は、適用の容易さを高めるための分離層として機能するが、その後に適用される機械的保護層の適切な粘着を可能にする層としても機能する。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも40wt.%、少なくとも50wt.%、少なくとも60wt.%、または少なくとも70wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、約30~約70wt.%、約30~約60wt.%、約40~約50wt.%、約40~約60wt.%、または約40~約70wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。
【0185】
好ましくは、テープは、層(a)に埋め込まれ、好ましくは2つの直交方向に変形することができる織物、編物またはスプール編物構造を有する補強ネット状構造体を含む成分(d)を有する。補強ネット状構造体は、例えば、ポリエステルから、またはポリオレフィン繊維、例えば、当技術分野で周知のように、エタンホモポリマーもしくはコポリマーまたはプロペンホモポリマーもしくはコポリマーから構成された繊維から製造することができる。本発明はまた、(i)DSCによって決定される場合に、-20℃以下のガラス転移温度を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される場合に、1,000~3,050,000g mol-1の範囲の平均分子量を有する非晶質ポリマーを含む非晶質ポリマー組成物、および(ii)EN-ISO10769:2011規格に記載の手順に従って決定される場合に、20wt.%以上の吸水率を有する吸水性充填剤であって、化学反応によって水と結合する充填剤を含む、吸水性充填剤を含む防食組成物を含む第1の層であって、防食組成物が、防食組成物の総重量に対して、少なくとも30wt.%非晶質ポリマー組成物を含み、防食組成物が、防食組成物の総重量に対して、a)少なくとも30wt.%の非ポリマー吸水性充填剤、および/または(b)少なくとも0.1wt.%のポリマー吸水性充填剤を含む、第1の層、(b)層(a)を保護するための第2の層、(c)任意選択的に、1つまたは複数のC2~C20α-アルケンおよび/またはアルカジエンのポリマーまたはコポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、または不織ポリエステルクロスを含むフィルムを含む層を、ならびに(d)層(a)に埋め込まれた補強ネット状構造体含むテープを提供する。したがって、当該テープにおいて、層は(b)-[(a)+(d)]の順序に位置し、層(b)は環境に面する。したがって、当該記層(c)が存在する場合、テープ内の層の順序は、(b)-[(a)+(d)]-(c)であり、層(b)は環境に面する。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも40wt.%、少なくとも50wt.%、少なくとも60wt.%、または少なくとも70wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、約30~約70wt.%、約30~約60wt.%、約40~約50wt.%、約40~約60wt.%、または約40~約70wt.%の非晶質ポリマー組成物を含む。
【0186】
テープの層(c)は、好ましくは、1つまたは複数のC2~C20-アルケンおよび/またはジアルケンのポリマーまたはコポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、または不織ポリエステルクロスを含むフィルムを含む。そのようなポリマーおよびコポリマーの例は、EP(D)Mエラストマー、エチレンホモポリマー、エチレン-α-アルケンコポリマー、プロピレンホモポリマーおよびプロピレン-α-アルケンコポリマー、特に多量のプロピレン、例えば、コポリマーの総重量に対して、80wt.%プロピレン、または少量のプロピレン、例えば、コポリマーの総重量に対して、20wt.%未満のプロピレンを含有し得るプロピレン-エチレンコポリマーである。コポリマーが本発明の好ましい実施形態であるエチレンコポリマーである場合、C2~C20α-アルケンは、好ましくはC3~C12α-アルケン、特にC3-C8α-アルケンでる。適切なα-アルケンの例は、プロペン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンである。エチレンコポリマーは、好ましくは0.1~30wt.%、特に0.1~20wt.%のα-アルケンを含む。エチレンホモポリマーまたはエチレンポリマーの密度(ASTM D 1248に従って測定)は、好ましくは0.800~0.975g/cm3、特に0.850~0.950g/cm3である。エチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマーのメルトインデックス(ASTM D 1238に従って測定)は、好ましくは0.1~50g/分、特に0.2~20g/分である。テープの層(c)は、好ましくは以下のポリマーのうちの1つまたは複数を含む:低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エテンプロペンコポリマー、エテンプロペンジエンコポリマー。本発明の好ましい実施形態によれば、テープの層(c)は、LDPE、HDPEもしくはLLDPEまたはこれらの組み合わせを含む。層(c)に用いられる材料は、メタロセン触媒重合プロセスで製造されることがさらに好ましい。
【0187】
層(c)は、2つ以上の層を含んでもよく、例えば、LLDPE外層およびHDPE内層を含む多層フィルムであってもよい。そのような多層フィルムは当技術分野で周知である。層(c)は、顔料および充填剤などの異なる添加剤をさらに含んでもよい。
【0188】
上述の層に加えて、本発明のテープは、本発明のテープにさらなる特性を提供し得る1つまたは複数の追加の層を含んでもよい。
【0189】
本発明のテープは、好ましくは約1~約20mm、より好ましくは約1~約15mm、さらにより好ましくは約1~約10mm、最も好ましくは約1~約7mmの総厚さを有する。テープの幅は、明らかに所望に応じてまたは適切に調整することができるが、好ましくは約2.0~約100.0cm、より好ましくは約2.5~約75.0cm、さらにより好ましくは約3.0~約70.0cm、さらにより好ましくは約4.0~約65.0cm、最も好ましくは約5.0~約60.0cmである。テープの長さは、明らかに、所望に応じてまたは適切に調整することもできる。使用前に、例えば数メートルの長さのテープをボビンまたはスプールに巻き付けてもよい。しかし、テープはシート形状であってもよい。当該シートの長さおよび幅は、所望に応じてまたは適切に調整することができる。
【0190】
層(c)の厚さは、好ましくは約10μm~約500μm、より好ましくは約20μm~約300μmである。
【0191】
本発明はまた、本発明のテープを物品の表面に適用する工程を含む、物品の腐食に対する保護のための方法に関する。一実施形態では、テープは、湿った環境または湿潤環境で物品に適用される。一実施形態では、テープは、乾燥した環境で物品に適用される。一実施形態では、テープは、乾燥した湿った環境または湿潤環境で物品に適用される。
【0192】
さらに、本発明は、本発明の組成物がフィルム上に積層され、当該フィルムが、好ましくは、本発明のテープの層(c)について上で定義した1つまたは複数のC2~C20α-アルケンおよび/またはアルカジエンのポリマーまたはコポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、または不織ポリエステルクロスを含む、物品を腐食に対して保護するためのテープの製造方法に関する。
【0193】
当該積層工程の後、層(c)と接触していない層(a)の表面は、好ましくは層(b)によって保護され、層(b)は、例えば、アルケンポリマーまたはコポリマー、紙などを含む任意の適切な材料であり得る。任意選択的に、成分(d)は、上述のように層(a)に埋め込まれて存在する。
【0194】
テープが製造された後、テープは、好ましくは、ボビン、スプール、またはテープが使用される場所への容易な輸送のための同様の適切な手段の周りに巻き付けられる。
【0195】
最後に、本発明者らは、当技術分野で知られているテープでは、異なる巻線間の重複領域で腐食が発生する(「螺旋状腐食」)ことに注目した(これは、重複領域では、かなり硬い巻線が密接に接触せず、水の閉塞が発生することに起因する)。しかしながら、このような問題は、層(a)の流体および/または粘弾性の性質のため、および組成物が水を吸収することができるため、本発明のテープでは起こらない。
【0196】
4.8保護物品
本発明はさらに、本発明の方法によって得ることができる物品に関する。(a)(i)本発明の防食組成物の層、および(ii)当該組成物の当該層を保護するための機械的保護層、または(b)本発明のテープを含む物品が本明細書で提供される。一実施形態では、物品は追加の層を含む。一実施形態では、1つまたは複数の層は水透過性である。一実施形態では、1つまたは複数の層は水密である。一実施形態では、機械的保護層(b)は水密である。
【0197】
機械的保護層(b)は、防食層(a)の層の上に適用され、それを完全にカバーする。機械的保護層(b)は、本発明の物品に別々に適用されてもよい。適切な保護層は、例えば、当技術分野で周知の高剪断テープによって提供される。高剪断テープは、例えば、米国特許第5817413号明細書および米国特許第6033776号明細書に開示されている。
【0198】
本発明の防食組成物の層(a)は、本発明のテープに含まれてもよい。機械的保護層(b)はまた、当該テープに含まれてもよい。一実施形態では、物品は、本発明の1つまたは複数のテープを含む。当該物品において、物品の表面は当該テープによってカバーされている。
【0199】
好ましい実施形態では、物品は、金属、特に鋼、またはコンクリートから本質的に構成される。あるいは、物品の表面は、本質的に金属、特に鋼、またはコンクリートで構成されているが、物品の内部は異なる材料を含んでもよい。物品は、例えば、ガスまたは油用のパイプまたはラインなどの管状物品であってもよい。物品はまた、石油掘削または生産リグまたはプラットホームのライザー、例えば橋梁のピラーファンデーションまたは桟橋、ダムのバットレスファンデーション、コンクリート壁などであってもよい。本発明の特定の実施形態を、以下の実施例によってより完全に説明する。
【実施例】
【0200】
5.実施例
5.1防食組成物
本発明による組成物(表1)を、90℃のパドルミキサーで成分を混合することによって調製した。
【表1】
【0201】
5.2防食組成物の吸水率
防食組成物の吸水率は、防食組成物に適合したASTM D 570による手順を使用して決定する。
【0202】
15~25mmの範囲の既知の深さ、および30~50mmの範囲の既知の直径(円形表面)または既知の長さおよび幅(長方形または正方形表面)を有する表面を有するプラスチックカップを秤量する(質量A)。ここでは、深さ20mm、直径44mmの丸底のカップを使用した。当該カップに、防食組成物を完全に充填し、空気の閉じ込めを回避する。パテナイフを使用して表面を平滑化する。防食組成物を充填したカップを秤量する(質量B)。
【0203】
続いて、充填したカップを、23±1℃の温度に維持された蒸留水の容器に入れる。充填したカップは、完全に浸水されるべきである。次いで、カップを含む容器を気候キャビネットに入れ、水温を23±1℃に72時間維持する。72時間の浸漬後、カップを容器から取り出し、その表面をティッシュペーパーで乾燥させ、乾燥したカップを秤量する(質量C)。
【0204】
吸水率は、wt.%で表され、以下のように計算される:
【数4】
【0205】
吸水率(g/m
2)は、以下のように計算される:
【数5】
【0206】
当業者に知られているように、当該カップの表面を計算する方法は、表面の形状に依存する。円形表面はπr2に等しく、rは円の半径であり、四角形表面はl*wに等しく、lは表面の長さであり、wは表面の幅である。
【0207】
吸水率(g/m2)を決定するために使用されるカップの深さが上記のように最小深さよりも大きい限り、このようにして決定された吸水率(g/m2)は、吸水率(g/m2)の決定に用いられた防食組成物の質量(B-A)とは無関係である。
【0208】
42wt.%のポリイソブテン、6wt.%の非吸水性充填剤(炭酸カルシウム)、20wt.%の可逆的吸水性充填剤、31wt.%の不可逆的な水結合性充填剤、0.3wt.%の酸化防止剤A、0.3wt.%の酸化防止剤B、および0.3wt.%顔料を含む、本発明の例示的な組成物(B)の吸水率(g/m2)、wA(g/m2)を、上記手順に従って決定した。23±1℃の蒸留水に72時間浸漬した後に決定される本発明の組成物の吸水率(g/m2)は、約150~400g/m2の範囲であった(表2を参照されたい)。
【0209】
5.3防食組成物の粘度
42wt.%のポリイソブテン、6wt.%の非吸水性充填剤(炭酸カルシウム)、20wt.%の可逆的な水結合性充填剤、31wt.%の不可逆的吸水性充填剤、0.3wt.%の酸化防止剤A、0.3wt.%の酸化防止剤B、および0.3wt.%の顔料を含む本発明の組成物の70℃で2.4s-1(Pa.s)の剪断速度での粘度をISO3219に記載されているように決定した。
【0210】
本発明の組成物の粘度は、約9000~約11000Pa.sの範囲であった(表2を参照されたい)。
【表2】
本発明の組成物は、70℃で改善された粘度および吸水特性を示した。
【0211】
5.4防食組成物の粘着性
乾燥パイプおよび湿潤パイプの表面に適用したコーティングの粘着性を、ISO21809-3(2016)付属書H、M.3およびIに記載されているような剥離強度試験に従って試験した。剥離強度を測定し、その後、試験片を、凝集破壊(所望の特性)の発生、粘着破壊の非存在、および基材上のフィルムの残存について検査した。生成物を、3%NaCl溶液(表4を参照されたい)に浸漬した乾燥脱錆炭素鋼St2/St3清浄度グレード(表3を参照されたい)または湿式脱錆炭素鋼St2/St3清浄度グレードに適用した。
【表3】
【表4】
表3および表4の結果は、組成物(A)と比較して、乾燥表面および湿潤表面に対する本発明の防食組成物の改善された粘着特性を示す。
【0212】
乾燥および湿潤した既存のネオプレン表面に適用したコーティングの粘着性を、上記の剥離強度試験に従って試験した。剥離強度を測定し、その後、試験片を上記のように検査した。生成物を乾燥した既存のネオプレンコーティング(表5を参照されたい)または湿潤した既存のネオプレンコーティングに適用し、3%NaCl溶液に浸漬した(表6を参照されたい)。
【表5】
【表6】
表5および表6の結果は、乾燥および湿潤した既存のネオプレンコーティングに対する防食組成物の改善された粘着特性を示す。
【0213】
5.5防食組成物の耐ドリップ性
耐ドリップ性試験は、ISO201809-3(2016)付属書Kに従って、様々な高温で試験した。データは、本発明の防食組成物のドリップがT
max+20℃(最低80°)で観察されなかったことを示す。テープ形状の組成物について性能パラメータを試験し、化合物Aとの比較試験の結果を表7に要約する。
【表7】
表7の結果は、本発明の防食組成物が改善された耐ドリップ性を示すことを示している。
【0214】
5.6防食組成物の比電気絶縁抵抗および陰極剥離抵抗
以下に示すように、防食組成物について、比電気絶縁抵抗および陰極剥離抵抗を決定した。防食組成物を最新技術の組成物(A)と比較した。結果を表8にまとめる。
【表8】
表8の結果は、本発明の防食組成物が十分な比電気絶縁抵抗および陰極剥離抵抗を有することを示している。
【国際調査報告】