(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ウイルス捕捉の方法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/02 20060101AFI20240719BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240719BHJP
B03C 1/01 20060101ALI20240719BHJP
B03C 1/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12N7/02
B03C1/00 B
B03C1/00 H
B03C1/01
B03C1/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500387
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2022066849
(87)【国際公開番号】W WO2023280562
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュク・マロイセル
(72)【発明者】
【氏名】オラ・リンド
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ビューストレーム
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BD14
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、ウイルス捕捉又は分離の方法に関する。より詳細には、本発明は、磁気ビーズを用いた直接的なインフルエンザ及びアデノウイルス捕捉の方法に関する。本方法は、迅速な方式による未精製細胞ライセートからの直接分離を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス精製の方法であって、
a)標的ウイルスを含む未精製細胞ライセート懸濁液に磁気ビーズを添加する工程と、
b)前記未精製細胞ライセート懸濁液をホモジナイズ及びインキュベートして前記標的ウイルスを前記磁気ビーズ上のリガンドに結合させる工程と、
c)前記磁気ビーズを捕捉する工程と、
d)前記磁気ビーズから上清を除去する工程と、
e)洗浄し、工程c)~工程d)を繰り返す工程と、
f)溶出バッファーを添加し、標的ウイルスを含有する溶出液を収集する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記磁気ビーズは、1μm~5μmの磁鉄鉱粒子が埋め込まれているアガロースビーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁気ビーズは、最大120μm、好ましくは最大100μm、例えば0~40μm若しくは40~100μm、又は例えば0~37μm若しくは37~100μmの平均径を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁気ビーズは、2%~6%アガロース、好ましくは3%~5%アガロース、最も好ましくは4%アガロースを含む、請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記リガンドは、第四級トリメチルアミン(Q)及び/又は硫酸デキストラン(DxS)である、請求項1から4のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項6】
前記リガンドは、デキストランエキステンダー上に備わっている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記標的ウイルスはアデノウイルスであり、かつ前記リガンドはQ-リガンドである、請求項1から6のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的ウイルスはインフルエンザウイルスであり、かつ前記リガンドはS-リガンドである、請求項1から7のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項9】
標的ウイルスをリガンドに結合させる前記工程は、30分以内、例えば15分又は5分又は1分以内に生じる、請求項1から8のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項10】
前記磁気ビーズは、4%アガロースを含むとともに、0~37μmの平均径を有する、請求項1から9のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項11】
工程e)は、最大5回繰り返される、請求項1から10のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス捕捉又は分離の方法に関する。より詳細には、本発明は、磁気ビーズを用いた直接的なインフルエンザ及びアデノウイルス捕捉の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品、例えば、遺伝子療法に用いられるウイルスベクター及び免疫療法に用いられるモノクローナル抗体等に対する需要が増してきている。この需要増加は、がん等の疾患の治療におけるバイオ医薬品の可能性が見出されたことに起因する。
【0003】
旧来の製造プロセスは、上流、中流及び下流段階からなる。上流とは、標的生体分子を担持する細胞を拡大培養して最終的に収穫するまでの段階をいい、これに対して下流とは、該標的分子を許容される純度及び品質に加工する段階である。中流とは、上流と下流との間の境界に位置する段階であり、収穫物からバルク不純物を除去し、カラムクロマトグラフィー精製に供する試料を調製することを目的としている。
【0004】
アデノウイルス精製プロセスは、捕捉工程及び最終精製(polishing)工程からなる。捕捉工程は、標的分子を高能率で単離することを目的としており、これに対して最終精製工程は、残存不純物を除去し、最終的な高レベルの純度を達成することを目的としている。最終精製工程は、2つのウイルスプロセス両方に用いられるフロースルークロマトグラフィーであり、残存不純物を捕捉することを目的としている一方で、標的ウイルスは結合することなくカラムを通過していく。ウイルス精製における残存不純物は、主に、上流の細胞培養物由来の残存する宿主細胞タンパク質(HCP)及び細胞DNAに関連したものである。
【0005】
従来のカラムクロマトグラフィーでは、カラムを閉塞させるおそれがあることから、溶液に固体粒子が含まれていないことが決定的に重要である。これが製造プロセスの中流部の主要な目的である。固体不純物はカラムを詰まらせるので、ろ過等により除去される必要がある。しかし、ろ過は、時間がかかり且つ高価なプロセスである。更に、インフルエンザ及びアデノウイルスは凝集してフィルター孔を通過できなくなりがちであり、そのことがウイルス収率を大きく低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ウイルスを発現している未精製細胞ライセート懸濁液から標的分子を直接捕捉するプロセスであって、高い選択性、能率性及び強い親和性を有し、且つ、中流段階でのろ過及びカラムクロマトグラフィーを用いる旧来のプロセスに取って代わるだけ十分な成果を挙げられるプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、迅速且つ効率的なウイルス精製の方法であって、
a)標的ウイルスを含む未精製細胞ライセート懸濁液(crude cell lysate suspension)に磁気ビーズを添加する工程と、
b)前記懸濁液をホモジナイズ及びインキュベートして前記標的ウイルスを前記磁気ビーズ上のリガンドに結合させる工程と、
c)前記磁気ビーズを捕捉する工程と、
d)前記磁気ビーズから上清を除去する工程と、
e)洗浄し、工程c)~工程d)を繰り返す工程と、
f)溶出バッファーを添加し、標的ウイルスを含有する溶出液を収集する工程と
を含む方法を提供する。
【0008】
好ましくは、磁気ビーズは、1~5μmの磁鉄鉱粒子が埋め込まれているアガロースビーズである。
【0009】
好ましくは、磁気ビーズは、最大120μm、好ましくは最大100μm、例えば0~40μm若しくは40~100μm、又は例えば0~37μm若しくは37~100μmの平均径を有する。磁気ビーズは、2~6%アガロース、好ましくは3~5%アガロース、最も好ましくは4%アガロースを含む。
【0010】
好ましい実施形態において、磁気ビーズは、4%アガロースを含み、且つ、0~37μmの平均径を有する。
【0011】
リガンドは第四級トリメチルアミン(Q)及び/又はサルフェート(S)であり、好ましくは、少なくともサルフェートリガンドは、ビーズ表面から出ている表面エキステンダー、例えばデキストランエキステンダー上に備わっている。
【0012】
標的ウイルスがアデノウイルスである場合にはリガンドはQ-リガンドであり、標的ウイルスがインフルエンザウイルスである場合にはリガンドはS-リガンドである。
【0013】
本発明の方法は、先行技術の方法と比較して、標的ウイルスのリガンドへの結合が未精製細胞ライセートから直接実施可能であり、且つ、30分以内、例えば15分又は5分又は1分以内というきわめて短い時間内に標的ウイルスの最大90%を結合させるという点で、いくつかの利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のDxQプロトタイプごとの、アデノウイルスを結合させた場合の最大容量及び解離定数を示す棒グラフである。
【
図2】本発明のDxQプロトタイプを用いた場合の時間の経過に伴うアデノウイルス捕捉率を示すグラフである。
【
図3】本発明のDxSプロトタイプごとのインフルエンザ結合容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面及びいくつかの非限定的な例と対応付けながら、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
標的分子の容量及び解離定数を増加させる、アデノウイルス及びインフルエンザウイルスのバッチ吸着に用いる新規のフェリ磁性クロマトグラフィー樹脂が提供される。
【0017】
本発明は、MagSepharoseプロトタイプ(以下に記載するように、磁鉄鉱粒子を有するアガロースビーズである)の官能化及びこれをバッチ吸着方式でのアデノウイルス及びインフルエンザウイルスの直接捕捉に使用する方法に関する。ビーズは、陰イオン交換によるアデノウイルス結合用には第四級トリメチルアミン(Q)で、一方、アフィニティー捕捉によるインフルエンザウイルス結合用には硫酸デキストラン(DxS)で、官能化される。
【0018】
本発明において使用されるウイルスは、H1N1インフルエンザAウイルスソロモン諸島/03/06(H1N1 Influenza-A Virus Solomon Island/03/06)及びアデノウイルス5型緑色蛍光タグ化タンパク質(AdV 5-GFP、Adenovirus type 5 Green Florescence Tagged Protein)である。以下の説明において「アデノウイルス」及び「インフルエンザウイルス」に言及する場合、これらの用語は、上記の特定のウイルスを指す。
【0019】
中流段階でのろ過の代わりに、標的ウイルスに対して結合する特異的親和性を有する磁気ビーズを用いたバッチ吸着を用いることにより、標的分子は細胞ライセートから直接捕捉される。磁気ビーズは高度に選択的であり、且つ、高い容量を有する。
【0020】
磁気ビーズは、標的分子を担持している間に、磁石によって捕捉される。ビーズを溶液から分離することにより、可溶性不純物は除去される。標的分子は、バッファー組成(pH、塩)を変化させることで溶出され、収集される。
【0021】
本発明では、フェリ磁性体である磁鉄鉱(Fe3O4)が用いられる。磁鉄鉱は自発磁化性を有する(全てのフェリ磁性体と同様に)が、磁鉄鉱の粒径が小さくなると、「常磁性の性質」、すなわち、磁鉄鉱構造における磁気記憶は小さいが磁場に対しては良好な応答を示す性質を持つようになる。本発明のプロトタイプに組み込まれた磁鉄鉱粒子は1~5μmであり、この大きさであれば磁気記憶及び磁場は無視できるものとなる。こうした特性は、バッチ吸着の目的においては磁気ビーズが永続的に凝集して互いに悪影響を及ぼすことを防ぎつつも、磁場に対しては良好な応答を保ち続けさせることになろう。
【0022】
磁鉄鉱粒子は、乳化中にアガロースビーズに組み込まれ又は埋め込まれ、その結果、磁鉄鉱コアを有するアガロースビーズが得られる。
【0023】
アデノウイルス及びインフルエンザウイルスはどちらも高分子(70~120nm)であり、ビーズは、拡散が樹脂の内容積を利用して行われるようにするだけ十分に大きい細孔を有さなければならない。しかし、修飾及び相互作用させる目的で入手可能な材料には多孔度がきわめて高い材料は少なく、そのような材料では結合容量が低くなるおそれがある。本発明では、表面エキステンダー、好ましくは、長鎖多糖であるデキストランを用いることでこの問題を解決する。デキストランは、利用可能なリガンドカップリングポイントを増加させ、且つ、標的分子が結合するための三次元構造を創出するものであり、磁鉄鉱ビーズ上にカップリングさせることが可能である。
【0024】
アデノウイルス結合用にはトリメチルアミン(Q)リガンドを選択した。まず、デキストランをビーズ上にカップリングさせて、リガンドカップリングのための表面積(ひいてはウイルス結合部位)を増加させ、その後、Qで官能化させた。この複合体をDxQと略称する。デキストラン自体は、アデノウイルスに対しての結合特性を有さない。
【0025】
しかし、デキストランポリマーは、インフルエンザウイルス結合に際しては能動的な役割を持ち、インフルエンザウイルスとの相互作用ポイントを複数持つことが可能である。したがって、硫酸デキストランは大きなリガンドであると見なすことができる。硫酸デキストラン複合体をDxSと略称する。以下にリガンドDxQ(a)及びDxS(b)の構造を示す。Q及びSリガンドは、デキストラン鎖上にランダムにカップリングされる。
【0026】
【0027】
磁鉄鉱ビーズを用いてウイルス分子を結合する好ましい方法は、以下の工程に分けられる:
1)標的分子を含有する試料にMagSepharoseを添加する工程。
2)ホモジナイズ及びインキュベートする工程。
3)磁気ラックによりMagSepharoseを捕捉する工程。
4)上清を除去する工程。
5)洗浄バッファーを添加し、続いて工程2~工程4を行う工程。
6)任意選択で、最大約5回、工程5を最初から行う工程。
7)溶出バッファーを添加し、続いて工程2及び工程3を行う工程。
8)標的分子を含有する溶出液を収集する工程。
【0028】
プロトタイプ
堆積した状態で1.4Lの4%及び2%アガロースビーズに約100gの磁鉄鉱を封入することにより、プロトタイプ作製のための出発材料として使用する4%及び2% MagSepharose樹脂(1~5μmの磁鉄鉱粒子が埋め込まれているアガロース樹脂)を形成した。ビーズ径は、以下に記載するように、DxQ及びDxS官能化プロトタイプの各プロトタイプ名の後に表示する。
4% MagSepharoseの多孔性については、110KDaのデキストランに対するKdは0.64である。
2% MagSepharoseの多孔性については、110KDaのデキストランに対するKdは約0.8である。
【0029】
1. DxQ官能化MagSepharose
DxQ官能化を、4種類の異なるMagSepharoseプロトタイプ樹脂に対して行った:
1) 4% MagSepharose 0~37μm、
2) 4% MagSepharose 37~100μm、
3) 2% MagSepharose 0~37μm、及び
4) 2% MagSepharose 37~100μm。
【0030】
DxQプロトタイプの作製に用いた反応は、ゲルのエポキシ活性化及びデキストランカップリングであった。
【0031】
4種類のベースマトリックスにカップリングされたデキストランの量を、乾燥質量、すなわち乾燥状態の樹脂の質量のデキストラン導入前後における増加を測定することにより決定した。値をTable 1(表1)に要約する。表からわかるように、12~22mg/mLの間の値を得た。
【0032】
【0033】
デキストランがカップリングされた樹脂を、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)で官能化させた。デキストラン鎖上の水酸基は、塩基性条件下で、求核置換によりGMACのエポキシ官能基と反応していく。GMACは望ましいQリガンドを含有しており、樹脂は、アデノウイルス精製のための陰イオン交換体として官能化された。以下の反応スキームを参照されたい。
【0034】
【0035】
得られたイオン容量をTable 2(表2)に示す。2%アガロースをベースにしたプロトタイプが示すリガンド密度(53及び92μmol/ゲル1mL)は、4%アガロースをベースにしたプロトタイプ(175及び160μmol/ゲル1mL)より低い。これはおそらく、2%プロトタイプではアガロース量がより少ない(すなわち、付加の際に利用可能な水酸基が少ない)ことによる。しかし、どちらのプロトタイプも、アデノウイルス用途での陰イオン交換体の候補となるのにふさわしい。
【0036】
Table 2(表2)には、「樹脂乾燥質量1グラム」に対するイオン容量も示してある。これは、樹脂を正確に1mL得ることが困難であったことによる。但し、2%プロトタイプについて値を得ることができなかったのは、利用可能な樹脂量が限られていたからである。
【0037】
【0038】
2. DxS官能化MagSepharoseビーズ
DxS官能化を、磁鉄鉱粒子が埋め込まれている3種類の異なるアガロース樹脂に対して行った:
1) 4% MagSepharose 0~37μm、
2) 4% MagSepharose 37~100μm、及び
3) 2% MagSepharose 0~100μm。
【0039】
2% MagSepharoseの2つの異なる粒径画分を得るために、樹脂をふるい分けして2% MagSepharose DxS 0~37μm及び2% MagSepharose DxS 37~100μmという2つの画分としてから、ウイルス適用テストを行った。
【0040】
アリル化
ベースマトリックスへのアリル基の導入を、塩基性環境においてAGEのエポキシ官能基との求核置換により行った。
【0041】
アリル量はTable 3(表3)に示してあり、4%プロトタイプのアリル値の方が2%プロトタイプより高いことを示しているが、これはおそらく、アガロース量がより多いことでもたらされた結果であろう。Table 3(表3)には単位「μmol(樹脂乾燥質量1グラム当たり)」でのアリル量も示してあり、4% MagSepharose 37μmプロトタイプについては値が存在しないが、これは機械エラーによるものである。
【0042】
【0043】
臭素化
アリル基は、臭素ラジカルによりアリル臭素化を受ける。臭素ラジカルは、1電子過程でアリル型水素(すなわち、炭素-炭素二重結合に付加された炭素の位置にある水素)と反応して、電子1個をアリル型炭素上に残し、等価な共鳴構造を有するアリルラジカルを形成する。水素は、アリル型炭素の位置で臭素により結果的に置換される。この中間体が更に水と反応してエポキシドを生じる。
【0044】
硫酸デキストランカップリング
DxQプロトタイプについて先述したとおり、塩基性環境における求核攻撃により、樹脂のエポキシド基に硫酸デキストラン鎖を導入した。
【0045】
固定化された硫酸デキストラン量をTable 4(表4)に示す。2%プロトタイプについては体積測定による試料調製が困難であったことにより、「μmol(樹脂乾燥質量1グラム当たり)」単位でのイオン容量のみを得ることができた。
【0046】
【0047】
8種類のプロトタイプ、すなわち、DxQを有するもの4種類及びDxSを有するもの4種類を調製することに成功した。これらのプロトタイプをTable 5(表5)に示す。
【0048】
【0049】
DxQプロトタイプでのアデノウイルス結合
定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を用い、開始フィード液(start feed)のアデノウイルス濃度を、1mL当たりのウイルス粒子数6.40×1011(VP/mL)に決定した。このフィード液を10倍希釈した。
【0050】
まず、分析的方法を用い、陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX-HPLC)に異なる注入体積の開始材料を使用してアデノウイルスの検量線を設定した。この方法を、全ての試料においてアデノウイルス力価を迅速に決定するために用いた。
【0051】
アデノウイルス結合を、以下に概略するプロセスのとおりに行った:
【0052】
【0053】
実験値としての容量(Q*)及びインキュベーション後のアデノウイルス上清濃度(c*)を、特定のビーズ体積ごとに決定した。実験値としての解離定数(Kd)及び最大容量(Qmax)は、以下の式で与えられるLangmuir等温線を用いて各プロトタイプについて推定されうる。
【0054】
各プロトタイプのK
d及びQ
maxを棒図表として
図1に示す。「Q MagSepharose 4FF」と表示された参照プロトタイプについても分析したことに留意されたい。この参照プロトタイプは、Q官能化4% MagSepharoseで、粒径分布が37~100μmでありデキストランを含有しないものである。
【0055】
【0056】
図1は、ビーズにおけるアガロース含有量が高いほど容量が高くなり、ビーズの大きさが小さいほど解離定数が低くなることを示すものである。結果として、4% MagSepharose DxQ 0~37μmプロトタイプが、最も高い容量と最も低い解離定数との組合せを有する(Q
maxはビーズ1mL当たり1.36×10
13VPであり、K
dは1mL当たり6.70×10
8VPである)。
【0057】
更に、デキストランの使用は、粒径又はアガロースのパーセンテージにかかわらず容量を高める結果を実際にもたらすが、解離定数への影響については明確ではない。全ての新規のDxQプロトタイプは、アデノウイルス精製について高い容量を示す。本実験におけるインキュベーション時間は、アデノウイルス結合については1時間であった。
【0058】
4% MagSepharose DxQ 0~37μmプロトタイプのQmaxはビーズ1mL当たり1.36×1013VPであったが、これは、解離定数を無視すれば、濃度が1mL当たり4.05×1010VPであるフィード液1mL中のウイルスを全て捕捉するのに必要となるビーズはわずか2.98μLである(本実験に関しては)ことを意味する。
【0059】
4% MagSepharose DxQ 0~37μmプロトタイプについての実験値としての収率の計算を、4% MagSepharose DxQ 37~100μmプロトタイプと対比させてTable 6[表6]に示す。どちらのプロトタイプもほぼ同じQmaxを有するが、37~100μmプロトタイプでは解離定数がより高く、そのため収率が99.3%から92.5%に低下している。
【0060】
【0061】
【0062】
4% MagSepharose DxQ 0~37μmプロトタイプによりアデノウイルスが捕捉される速さを調べるために結合動態試験を実施した。インキュベーション実施中の異なる時点で上清試料を採取することにより未結合のウイルス含有量を決定し、続いてHPLC分析を行った。試料は、インキュベーション時間t=[1分、5分、15分、30分]を経過した時点で採取した。ビーズのローディング量を最適化して、収率100%(4.05×10
10VP/mLであるアデノウイルスフィード液1mLにつきビーズ15μL)を得た。時間tを経過した時点でのウイルス取込み率(%)については
図2を参照されたい。
【0063】
図2は、インキュベーション30分経過時点でアデノウイルスが全て捕捉され、86.7%は1分経過時点で既に捕捉されていたことを示すものである。この結果は、アデノウイルス結合の大半は最初の1分が経過しないうちに起こることを示している。
【0064】
DxSプロトタイプによるインフルエンザウイルス結合
DxS MagSepharoseプロトタイプについて、他の宿主細胞断片と競合することなく細胞ライセートから直接インフルエンザウイルスを捕捉する能力を調べた。インフルエンザウイルス適用テストを、以下に概説するとおりに行った。
【0065】
【0066】
インフルエンザ量を、試料中のインフルエンザ表面タンパク質ヘマグルチニン(HA)の測定により決定した。特定のビーズ体積ごとに、実験値としての容量(Q
*)及びインキュベーション後のHA上清濃度(c
*)を
図3に示す。
【0067】
図3は、ビーズ径がより小さい(37μm未満)プロトタイプは、対応する37~100μmのプロトタイプより高い結合容量を示したことを示すものである。37μm未満のプロトタイプ同士を比較すると、4%の物は2%の物より低い解離定数を有する(4%プロトタイプの方が左に寄っていた、すなわち、インキュベーション後の上清中のHA量がより少なかった)。
【0068】
4% MagSepharose DxS 0~37μmは、最も高い結合容量及び最も低い解離定数を示しており、インフルエンザウイルス用として最良の候補であった。
【0069】
官能化させた磁鉄鉱樹脂を用いることの主な利点、すなわち、時間のかかる中流段階でのろ過工程を省略することが可能になり、且つ、同程度のウイルス全収率が保たれることが、インフルエンザウイルスについて明確に示された。
【0070】
実験部
実験1
DxQプロトタイプの調製
エポキシ活性化
脱水されたMagSepharose(1~5μmの磁鉄鉱粒子が埋め込まれている官能化されていないアガロースビーズ)をSF P3中にてDW10×1GVで洗浄した。この樹脂を、DWと一緒に250mL 3N-RBFフラスコに移し、27℃の水浴中に配置し、オーバーヘッドスターラーを取り付けた。均質なスラリーが得られるまで約300rpmで撹拌を加えた。NaOHペレットをスラリーに添加し、更に15分間撹拌を加えた。ECHを添加し、反応物を2時間撹拌させながら放置した。樹脂をSF P3中にてDWで洗浄して中性pHとし(pHスティックにより測定した)、次いで真空脱水させ、質量を記録した。
【0071】
デキストランカップリング
DxT40及びDWを250mL 3N-RBFフラスコに添加し、低rpm(約80rpm)で少なくとも4時間オーバーヘッド撹拌を行った。
エポキシ活性化された樹脂を、3N-RBF中の溶解したデキストランに直接添加した。低速(約120rpm)でのオーバーヘッド撹拌下、フラスコを40℃の水浴中に配置した。蒸発を最小限にするために還流冷却器を用いた。DWを添加して、粘稠性が比較的低いスラリーを得た。
溶液中で窒素ガスを泡立たせて、20分間酸素を追い出した。50% NaOH及び水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を添加し反応物を18時間放置し、その後、DW及び60%酢酸(HAc)を添加して反応を停止させた。樹脂をSF P3上で洗浄して中性pHとした。
【0072】
GMACカップリング
デキストランがカップリングされた樹脂をSF P3中にて2M NaOH3×1GVで洗浄し、脱水させ、質量を記録した。この樹脂を250mL 3N-RBFに移し、ここにGMACを添加した。約300rpmでオーバーヘッド撹拌させながら室温で18時間、カップリングを実施した。
中性pHになるまで(pH試験紙を用いて測定した)、樹脂をSF P3中にてDWで洗浄した。
樹脂を脱水させ、20% EtOH中、スラリー濃度65%で冷蔵庫に保存した。
【0073】
DxQ 4% MagSepharose 粒径0~37μm
工程1 - エポキシ活性化
112.5gの4% MagSepharose 0~37μm及び33.6mLのDWを10.9gのNaOH及び21.3mLのECHで処理した。109.9gの樹脂を得た。
乾燥質量測定を三連で実施したところ、樹脂1mL当たり98mgの平均値を得た。
【0074】
工程2 - デキストランカップリング
26mLのDW及び41gのDxT40を用いてデキストランを溶解した。90gのエポキシ活性化された樹脂に、3mLのDW、続いて4.9mLの50% NaOH及び0.19gのNaBH4を添加した。
40mLのDW及び15mLの60% HAcを添加することにより反応を停止させた。
乾燥質量測定を三連で実施したところ、樹脂1mL当たり120mgの平均値を得た。
【0075】
工程3 - GMACカップリング:
樹脂を脱水させると質量は89.5gになり、これに108mLのGMACを添加した。反応後:樹脂を洗浄し脱水させると質量は77.8gになり、そのうちの66.2gを保存した。
イオン容量の体積滴定を三連で実施したところ、樹脂1mL当たり175μmolの平均値を得た。イオン容量の質量滴定を二連で実施したところ、樹脂乾燥質量1グラム当たり803μmolの平均値を得た。
【0076】
DxQ 4% MagSepharose 粒径37~100μm
工程1 - エポキシ活性化
112.7gの4% MagSepharose 37~100μm及び33.6mLのDWを10.9gのNaOH及び21.3mLのECHで処理した。108.9gの樹脂を得た。
乾燥質量測定を二連で実施したところ、樹脂1mL当たり117mgの平均値を得た。
【0077】
工程2 - デキストランカップリング
22mLのDW及び38.9gのDxT40を用いてデキストランを溶解した。90gのエポキシ活性化された樹脂に、3mLのDW、続いて4.9mLの50% NaOH及び0.194gのNaBH4を添加した。
40mLのDW及び15mLの60% HAcを添加することにより反応を停止させた。
乾燥質量測定を二連で実施したところ、樹脂1mL当たり129mgの平均値を得た。
【0078】
工程3 - GMACカップリング:
樹脂を脱水させると質量は85.41gになり、これに103mLのGMACを添加した。反応後:樹脂を洗浄し脱水させると質量は73.7gになり、そのうちの59.6gを保存した。
イオン容量の体積滴定を二連で実施したところ、樹脂1mL当たり160μmolの平均値を得た。イオン容量の質量滴定を二連で実施したところ、樹脂乾燥質量1グラム当たり977μmolの平均値を得た。
【0079】
DxQ 2% MagSepharose 粒径0~37μm
工程1 - エポキシ活性化
22gの2% MagSepharose 0~37μm及び6.6mLのDWを2.1gのNaOH及び4.2mLのECHで処理した。21gの樹脂を得た。
乾燥質量測定は実施しなかったが、その理由は、利用可能な樹脂量が限られていたからである。
【0080】
工程2 - デキストランカップリング
6mLのDW及び10.8gのDxT40を用いてデキストランを溶解した。15gのエポキシ活性化された樹脂に、1mLのDW、続いて0.80mLの50% NaOH及び0.030gのNaBH4を添加した。注:デキストランの質量は樹脂25gに用いるものであったが、ここで使用した樹脂は15gのみであった。
20mLのDW及び10mLの60% HAcを添加することにより反応を停止させた。
乾燥質量測定は実施しなかったが、その理由は、利用可能な樹脂量が限られていたからである。
【0081】
工程3 - GMACカップリング:
樹脂を脱水させると質量は10.2gになり、これに12.2mLのGMACを添加した。反応後:樹脂を脱水させると質量は10.6gになり、そのうちの7.5gを保存した。
イオン容量の体積滴定を二連で行ったところ、樹脂1mL当たり53μmolの平均値を得た。イオン容量の質量滴定は行わなかったが、その理由は、利用可能な樹脂量が限られていたことによる。
【0082】
DxQ 2% MagSepharose 粒径37~100μm
工程1 - エポキシ活性化
57.7gの2% MagSepharose 37~100μm及び17.3mLのDWを5.7gのNaOH及び11mLのECHで処理した。51.0gの樹脂を得た。
乾燥質量測定を三連で実施したところ、樹脂1mL当たり94mgの平均値を得た。
【0083】
工程2 - デキストランカップリング
110mLのDW及び26.1gのDxT40を用いてデキストランを溶解した。48gのエポキシ活性化された樹脂に、1mLのDW、続いて2.6mLの50% NaOH及び0.10gのNaBH4を添加した。注:デキストランの質量は樹脂60gに用いるものであったが、ここで使用した樹脂は48gであった。
40mLのDW及び13mLの60% HAcを添加することにより反応を停止させた。
乾燥質量測定を二連で実施したところ、樹脂1mL当たり108mgの平均値を得た。
【0084】
工程3 - GMACカップリング:
樹脂を脱水させると質量は50.5gになり、これに61mLのGMACを添加した。反応後:樹脂を脱水させると質量は47.1gになり、そのうちの44.0gを保存した。
イオン容量の体積滴定を二連で実施したところ、樹脂1mL当たり92μmolの平均値を得た。イオン容量の質量滴定は行わなかったが、その理由は、利用可能な樹脂量が限られていたことによる。
【0085】
実験2
DxSプロトタイプの調製
アリル化
脱水されたMagSepharose(1~5μmの磁鉄鉱粒子が埋め込まれている官能化されていないアガロースビーズ)をSF P3中にてDW10×1GVで洗浄し、脱水させ、質量を記録した。この樹脂を、等量の50% NaOHと一緒に250mL 3N-RBFに移した。撹拌は、50℃の水浴中で30分間行った(約150rpm)。蒸発を最小限にするために還流冷却器を用いた。次いでAGEを添加し、反応物を18時間撹拌下(約300rpm)に放置した。
この樹脂をSF P3中にてDW10×1GVで洗浄し、真空脱水させ、質量を測定した。
【0086】
臭素化
活性化されたアリル樹脂を、DW及び酢酸ナトリウム三水和物(C2H9NaO5)と共に250mL 3N-RBFに移した。このスラリーを40分間撹拌した(約150rpm、室温)。臭素を添加し、撹拌スピードを15分間、約500rpmに増加させた。ギ酸ナトリウム(HCOONa)を高速撹拌下で少しずつ添加し、15分間更に撹拌した。次いで、この樹脂をSF P3中にてDW10×1GVで洗浄し、脱水させ、質量を記録した。
【0087】
硫酸デキストランカップリング
臭素化された樹脂を、DWと一緒に250mL 3N-RBFに移し、低速での撹拌下(約150rpm、室温)で50-50スラリーを創出させた。DxS-ABを添加し、反応物を1時間撹拌下に放置した。フラスコを33℃の水浴中に浸漬させ、50% NaOHを添加し、この混合物を18時間撹拌下に放置した。DWを添加することによりカップリングを停止させ、樹脂をSF P3中にてDW10×1GVで洗浄した。樹脂を脱水させ、20% EtOH中、スラリー濃度65%で冷蔵庫に保存した。
【0088】
DxS 4% MagSepharose 粒径0~37μm
工程1 - アリル化:
脱水された質量41.6gの樹脂を41.6mLの50% NaOH及び10mLのAGEで処理した。35gの樹脂を得た。
乾燥質量測定を二連で実施したところ、樹脂1mL当たり125mgの平均値を得た。アリルの体積滴定及びアリルの質量滴定を二連で実施したところ、それぞれ、樹脂1mL当たり214μmol、及び、樹脂乾燥質量1グラム当たり1721μmolの平均値を得た。
【0089】
工程2 - 臭素化:
35mLのDW、1.25gの酢酸ナトリウム三水和物、1mLの臭素及び1.8のギ酸ナトリウムを添加することにより臭素化を行った。33gの樹脂を得た。
【0090】
工程3 - 硫酸デキストランカップリング:
62mLのDW、33gのDxS-AB及び3mLの50% NaOHを添加することにより硫酸デキストランカップリングを行った。100mLのDWを添加することにより反応を停止させ、樹脂を洗浄し脱水させると質量は27gになり、そのうちの20gを保存した。
乾燥質量測定を二連で実施したところ、樹脂1mL当たり153mgの平均値を得た。
イオン容量の体積滴定及びイオン容量の質量滴定を二連で実施したところ、それぞれ、樹脂1mL当たり100μmol、及び、樹脂乾燥質量1グラム当たり650μmolの平均値を得た。
【0091】
DxS 2% MagSepharose 粒径0~100μm
工程1 - 2% MagSepharose樹脂の2つの画分の混合:
2つの画分、すなわち15mLの2% MagSepharose 0~37μmと30mLの2% MagSepharose 37~100μmとを、45mLのDWを含有する250mL 3N-RBF中で混合して均質なスラリーとした。この樹脂をSF P3中にてDW10×1GVで洗浄し脱水させると、質量は44gになった。
【0092】
工程2 - アリル化
脱水された質量44gの樹脂を45mLの50% NaOH及び10mLのAGEで処理した。38gの樹脂を得た。
乾燥質量測定を二連で実施したところ、樹脂1mL当たり100mgの平均値を得た。アリルの体積滴定及びアリルの質量滴定を二連で実施したところ、それぞれ、樹脂1mL当たり125μmol、及び、樹脂乾燥質量1グラム当たり1242μmolの平均値を得た。
【0093】
工程3 - 臭素化:
35mLのDW、1.37gの酢酸ナトリウム三水和物、1mLの臭素及び1.8のギ酸ナトリウムを添加することにより臭素化を行った。35gの樹脂を得た。
【0094】
工程4 - 硫酸デキストランカップリング:
45mLのDW、33gのDxS-AB及び3mLの50% NaOHを添加することにより硫酸デキストランカップリングを行った。100mLのDWを添加することにより反応を停止させた。SF P3中での洗浄の代わりに、500mL Duran(商標)フラスコに適合するMagRackを用いた。洗浄手順は、
図3.1に示すものと同じであった。樹脂をSF P3中で脱水させると、質量は33gになった。注:樹脂は保存を経ずにふるい分けに供した。
乾燥質量測定は実施しなかったが、その理由は、測定により体積を求める作業(volumetric cubing)が複雑困難であったことによる。イオン容量の体積滴定も実施できなかった。イオン容量の質量滴定を二連で実施したところ、樹脂乾燥質量1グラム当たり730μmolの平均値を得た。
【0095】
工程6 - ふるい分け:
上記の樹脂を、Sweco(商標)分離器(モデル番号S18S)及びふるい布37C(18A8A、M6370、37μm)を用いて37μmでふるい分けし、2つの画分、すなわち0~37μm及び37~100μmを得た。沈降後の体積は、0~37μm画分が約9mLであり、37~100μm画分が約28mLであった。
【0096】
実験3
DxQプロトタイプのアデノウイルス結合
保存しておいたDxQ官能化プロトタイプ、並びに、参照プロトタイプであるQ MagSepharose 4FFの全てについて、体積10、7、5及び2μLずつ個別の2mL Eppendorf(登録商標)チューブにピペットで取った。
洗浄のために1mLの20mMトリス+300mM NaCl pH8.0を各Eppendorfチューブに添加し、MagRack 6を用いて各試料を洗浄した。洗浄を3サイクル繰り返し、Eppendorfチューブの底に最後に残った分量の上清廃液をピペットで取り去った。
【0097】
1mLのアデノウイルスフィード液(AdV 5-GFP;濃度:4.05×1010VP/mL)をピペットで各Eppendorfチューブに取った。振とう台(約300rpm)を用いてインキュベーションを1時間行った。
【0098】
インキュベートされたビーズを、MagRack 6を用いて全て捕捉し、ビーズが捕捉されているうちに、500μLの上清試料を個別の2mL HPLCバイアル(Agilent Technologies社)にピペットで取った。
【0099】
HPLCバイアルを、アデノウイルス含有量のクロマトグラフィー分析のためにAgilent Technologies社、1260 Infinity Bioinertシステムに配置した。分析には以下のクロマトグラフィー設定を用いた。
UV検出:260nm
注入体積:100μL
試料温度:8℃
Aバッファー:20mMトリス pH7.5
Bバッファー:20mMトリス+1M NaCl pH7.5
流速:1.5mL/分
カラム:Q Sepharose XL(商標) 1.0mL、Tricorn(商標)5カラム中
グラジエント:100% Aバッファー/0% Bバッファー:3分
30% Aバッファー/70% Bバッファー:3~13分
30% Aバッファー/70% Bバッファー:13~14分
0% Aバッファー/100% Bバッファー:14~16分
0% Aバッファー/100% Bバッファー:16~23分
上清試料について、以下Table 7(表7)に記載のピーク面積を得た。
【0100】
【0101】
実験4
DxSプロトタイプへのインフルエンザウイルス結合
DxS官能化プロトタイプから、体積50、100、200及び500μL分のビーズを個別の10mL Falconチューブ中にピペットで取った。10mL 20mMトリス pH7.5+150mM NaClを添加することによる洗浄を、合計3回行った。Falconチューブの底に最後に残った分量の上清廃液をピペットで取り去った。
【0102】
10mLの未精製インフルエンザフィード液(H1N1インフルエンザAウイルス/ソロモン諸島/03/06)を各Falconチューブ中にピペットで取り、ヘッドオーバーヘッド回転(head-over-head rotation)(約60rpm)を用いてインキュベーションを1時間行った。
【0103】
インキュベーションの後、試料チューブ中の全てのビーズをMagRack Maxiにより個別に捕捉し、HA分析用に、2mLの上清試料を個別の2mL Eppendorfチューブ中に確保した。残ったインキュベーション上清をデカントして廃棄した。
【0104】
ビーズを、MagRack Maxiにて10mL 20mMトリス pH7.5+150mM NaClで3回洗浄した。Falconチューブの底に最後に残った分量の上清廃液をピペットで取り去った。
【0105】
インフルエンザウイルスの溶出は、1mL 20mMトリス pH7.5+0.75M NaClを各系に添加しFalconチューブを手動で10分間撹拌することにより行った。次いで、MagRack Maxiによりビーズを捕捉し、各系由来の溶出試料2mLを別々の2mL Eppendorfチューブ中に確保した。残った溶出上清をデカントして廃棄した。
【0106】
この手順を合計3回繰り返し、分析用の溶出試料を3点得た。
【0107】
DxQプロトタイプについての結果
DxQプロトタイプを用いたアデノウイルス直接捕捉についての実験結果を本項に示す。Table 8(表9)~Table 13(表14)を参照されたい。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
アデノウイルス結合動態試験
【0116】
【0117】
DxSプロトタイプについての結果
DxSプロトタイプを用いたインフルエンザウイルス直接捕捉についての実験結果を本項に示す。以下のTable 14(表17)~Table 17(表20)を参照されたい。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【国際調査報告】