(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】アデノ随伴ウイルス粒子及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20240719BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240719BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240719BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240719BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240719BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/12 ZNA
A61K35/76
A61K48/00
A61K38/17
A61P21/04
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501135
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 US2022074622
(87)【国際公開番号】W WO2023015304
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カスパー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】カスパー,アラン
(72)【発明者】
【氏名】トムセン,グレッチェン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA35
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA94
4C084ZC51
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA94
4C087ZC51
(57)【要約】
本発明は、AAV粒子を含む髄腔内組成物、及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーを含むジストロフィノパチーなどの単一遺伝子筋肉障害を治療するためのそれらの使用を提供する。
【選択図】
図11A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子と、薬学的に許容可能な担体と、を含む、髄腔内組成物であって、前記AAV粒子が、ベクターゲノムをカプシド封入するカプシドを含み、前記ベクターゲノムが、5’から3’まで、
5’逆位末端反復(ITR)と、
プロモーターと、
SV40イントロンと、
マイクロジストロフィン(μDys)導入遺伝子と、
SV40ポリ(A)テールと、
3’ITRと、を含み、
前記有効量の前記AAV粒子が、静脈内組成物中のμDys導入遺伝子をカプシド封入する有効量のAAV粒子よりも約90%以下のベクターゲノムを含む、髄腔内組成物。
【請求項2】
有効量のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子と、薬学的に許容可能な担体と、を含む、髄腔内組成物であって、前記AAV粒子が、ベクターゲノムをカプシド封入するカプシドを含み、前記ベクターゲノムが、5’から3’まで、
5’ITRと、
エンハンサーと、
プロモーターと、
マイクロジストロフィン(μDys)導入遺伝子と、
SV40ポリ(A)テールと、
3’ITRと、を含み、
前記有効量の前記AAV粒子が、静脈内組成物中のμDys導入遺伝子をカプシド封入する有効量のAAV粒子よりも約90%以下のベクターゲノムを含む、髄腔内組成物。
【請求項3】
前記エンハンサーが、SK-CRM4エンハンサーである、請求項2に記載の髄腔内組成物。
【請求項4】
前記SK-CRM4エンハンサーが、配列番号8を含む配列を有する、請求項3に記載の髄腔内組成物。
【請求項5】
前記エンハンサーが、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーである、請求項2に記載の髄腔内組成物。
【請求項6】
前記サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーが、配列番号9を含む配列を有する、請求項5に記載の髄腔内組成物。
【請求項7】
前記ベクターゲノムが、前記マイクロジストロフィン導入遺伝子の5’(上流)及び前記プロモーターの3’(下流)にSV40イントロンを更に含む、請求項2に記載の髄腔内組成物。
【請求項8】
前記ベクターゲノムが、(i)アクチン結合部位を含むN末端領域(NTD)と、(ii)2~4個のヒンジ領域及び4~6個のスペクトリン反復を含む中央ロッドドメインと、(iii)システイン豊富ドメインと、を含む、μDysタンパク質をコードするマイクロジストロフィン(μDys)導入遺伝子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項9】
前記ベクターゲノム静脈内組成物が、(i)アクチン結合部位を含むN末端領域(NTD)と、(ii)3個のヒンジ領域及び4個のスペクトリン反復を含む中央ロッドドメインと、(iii)システイン豊富ドメインと、を含む、μDysタンパク質をコードするマイクロジストロフィン(μDys)導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項10】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復16及び17を含む、請求項8又は9に記載の髄腔内組成物。
【請求項11】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復1及び24を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項12】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復2を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項13】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復22を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項14】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復23を含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項15】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復1、16、17、23、及び24を含む、請求項8に記載の髄腔内組成物。
【請求項16】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復1、2、3、及び24を含む、請求項8に記載の髄腔内組成物。
【請求項17】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復1、2、22、23、及び24を含む、請求項8に記載の髄腔内組成物。
【請求項18】
前記ヒンジ領域が、ジストロフィンヒンジ領域1及び4を含む、請求項8~17のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項19】
前記ヒンジ領域が、ヒンジ領域1、3、及び4を含む、請求項8~17のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項20】
前記マイクロジストロフィン導入遺伝子が、配列番号5を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項21】
前記マイクロジストロフィン導入遺伝子が、配列番号5からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項22】
前記5’ITRが、AAV2 ITRである、請求項1~21のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項23】
前記5’AAV2 ITRが、配列番号1を含む配列を有する、請求項22に記載の髄腔内組成物。
【請求項24】
前記5’AAV2 ITRが、配列番号1からなる配列を有する、請求項22又は23に記載の髄腔内組成物。
【請求項25】
前記3’ITRが、AAV2 ITRである、請求項1~24のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項26】
前記3’AAV2 ITRが、配列番号7を含む配列を有する、請求項25に記載の髄腔内組成物。
【請求項27】
前記3’AAV2 ITRが、配列番号7からなる配列を有する、請求項25又は26に記載の髄腔内組成物。
【請求項28】
前記プロモーターが、MHCK7プロモーターである、請求項1~27のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項29】
前記プロモーターが、ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターである、請求項1~27のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項30】
前記ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターが、配列番号3に記載される配列を含む、請求項29に記載の髄腔内組成物。
【請求項31】
前記MHCK7プロモーターが、配列番号2に記載される配列を含む、請求項28に記載の髄腔内組成物。
【請求項32】
前記MHCK7プロモーターが、配列番号2に記載される配列からなる、請求項28に記載の髄腔内組成物。
【請求項33】
前記SV40イントロンが、配列番号4に記載される核酸配列を含む、請求項1及び3~32のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項34】
前記SV40イントロンが、配列番号4に記載される核酸配列からなる、請求項1及び3~32のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項35】
前記SV40ポリ(A)テールが、配列番号6に記載される核酸配列を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項36】
前記SV40ポリ(A)テールが、配列番号6に記載される核酸配列からなる、請求項1~35のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項37】
前記カプシドが、1つ以上のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh.74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV13カプシドタンパク質を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項38】
前記AAV粒子が、AAV9粒子であり、前記カプシドが、AAV9カプシドタンパク質からなる、請求項1~36のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項39】
前記AAV粒子が、AAV9粒子であり、前記カプシドが、AAV9カプシドタンパク質からなる、請求項1~36のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項40】
前記カプシドが、1つ以上のAAV9カプシドタンパク質を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項41】
前記1つ以上のAAV9カプシドタンパク質が、AAV9カプシドタンパク質VP1を含む、請求項40に記載の髄腔内組成物。
【請求項42】
前記1つ以上のAAV9カプシドタンパク質が、AAV9カプシドタンパク質VP2を含む、請求項40又は41に記載の髄腔内組成物。
【請求項43】
前記1つ以上のAAV9カプシドタンパク質が、AAV9カプシドタンパク質VP3を含む、請求項40~42のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項44】
前記AAV粒子が、AAV9粒子である、請求項1~43のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項45】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、前記静脈内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子よりも約80%以下のベクターゲノムを含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項46】
前記有効量の前記AAV粒子が、前記静脈内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子よりも約70%以下のベクターゲノムを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項47】
前記有効量の前記AAV粒子が、前記有効量の前記静脈内組成物よりも約10~40倍少ないベクターゲノムを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の髄腔内組成物。
【請求項48】
ジストロフィノパチーの治療を必要とする対象においてジストロフィノパチーを治療する方法であって、請求項1~47のいずれか一項に記載の髄腔内組成物を単回用量で前記対象に髄腔内投与することを含む、方法。
【請求項49】
前記対象が、約6ヶ月~約7歳の男性対象である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が、約1歳~約7歳の男性対象である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、約2歳~約7歳の男性対象である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、約3歳~約7歳の男性対象である、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が、約4歳~約7歳の男性対象である、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が、約5歳~約7歳の男性対象である、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記対象が、約2歳~約6歳の男性対象である、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記対象が、約2歳~約5歳の男性対象である、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記ジストロフィノパチーが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である、請求項48~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記ジストロフィノパチーが、ベッカー型筋ジストロフィーである、請求項48~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ジストロフィノパチーが、DMD関連拡張型心筋症(DCM)である、請求項48~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記対象が、前記治療中にトレンデレンブルグ位に配置される、請求項48~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記髄腔内組成物が、非イオン性低浸透圧造影剤の非存在下で投与される、請求項48~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、静脈内投与される同一のベクターゲノム用量の同じAAV粒子よりも優れた治療応答を提供する、請求項45~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、静脈内投与されたときの前記静脈内組成物中の同一のベクターゲノム用量の前記AAV粒子よりも優れた治療応答を提供する、請求項48~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記髄腔内組成物が、前記静脈内組成物中の有効ベクターゲノム用量の前記AAV粒子よりも約90%、約90%以下、約75%、約75%以下、約50%、約50%以下、約25%、又は約25%以下の有効ベクターゲノム用量を含む、請求項48~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
髄腔内組成物が、前記静脈内組成物中の前記有効ベクターゲノム用量の前記AAV粒子よりも約90%以下の有効ベクターゲノム用量を含む、請求項48~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
髄腔内組成物が、前記静脈内組成物中の前記有効ベクターゲノム用量の前記AAV粒子よりも約80%以下の有効ベクターゲノム用量を含む、請求項48~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
髄腔内組成物が、前記静脈内組成物中の前記有効ベクターゲノム用量の前記AAV粒子よりも約75%以下の有効ベクターゲノム用量を含む、請求項48~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
髄腔内組成物が、前記静脈内組成物中の前記有効ベクターゲノム用量の前記AAV粒子よりも約50%以下の有効ベクターゲノム用量を含む、請求項48~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
髄腔内組成物が、前記静脈内組成物中の前記有効ベクターゲノム用量の前記AAV粒子よりも約25%以下の有効ベクターゲノム用量を含む、請求項48~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
治療することが、前記対象のベースラインノーススター歩行評価(NSAA)スコアと比較して、治療後の前記対象のNSAAスコアを増加させることを含む、請求項48~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記スコアを増加させることが、前記スコアを約5~約25、又は約5~約20、約5~約15、又は約5~約10だけ増加させることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記スコアを増加させることが、前記スコアを約2~約12点増加させることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記スコアを増加させることが、前記スコアを約2~約10点増加させることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
前記スコアを増加させることが、前記スコアを約3~約10点増加させることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記スコアを増加させることが、前記スコアを約4~約10点増加させることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項76】
前記スコアを増加させることが、前記スコアを約2~約8点増加させることを含む、請求項0に記載の方法。
【請求項77】
前記スコアを増加させることが、前記スコアを約2~約6点増加させることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項78】
前記対象の前記ベースラインNSAAスコアが、前記対象が前記治療方法を受ける前に測定される、請求項70~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
治療後の前記NSAAスコアが、前記組成物の髄腔内投与の6ヶ月後に測定される、請求項70~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
治療後の前記NSAAスコアが、前記組成物の髄腔内投与の12ヶ月後に測定される、請求項70~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
治療後の前記NSAAスコアが、前記組成物の髄腔内投与の18ヶ月後に測定される、請求項70~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
治療後の前記NSAAスコアが、前記組成物の髄腔内投与の24ヶ月後に測定される、請求項70~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
治療することが、6分間歩行試験(6MWT)において前記対象が歩くベースラインメートル数と比較して、治療後の前記6MWTにおいて前記対象が歩くメートル数を増加させることを含む、請求項48~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記6MWTにおいて前記対象が歩く前記ベースラインメートル数が、前記対象が前記治療方法を受ける前に測定される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
治療後の前記6分間歩行試験(6MWT)が、前記組成物の髄腔内投与の6ヶ月後に評価される、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項86】
治療後の前記6分間歩行試験(6MWT)が、前記組成物の髄腔内投与の12ヶ月後に評価される、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項87】
治療後の前記6分間歩行試験(6MWT)が、前記組成物の髄腔内投与の18ヶ月後に評価される、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項88】
治療後の前記6分間歩行試験(6MWT)が、前記組成物の髄腔内投与の24ヶ月後に評価される、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項89】
治療後の前記6分間歩行試験(6MWT)が、前記組成物の髄腔内投与の36ヶ月後に評価される、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項90】
治療後の前記6分間歩行試験(6MWT)が、前記組成物の髄腔内投与の48ヶ月後に評価される、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項91】
治療後の前記6分間歩行試験(6MWT)が、前記組成物の髄腔内投与の60ヶ月後に評価される、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項92】
前記6MWTにおいて前記対象が歩くメートル数を増加させることが、約5メートル~約50メートル、約5メートル~約45メートル、約5メートル~約40メートル、約5メートル~約35メートル、約5メートル~約30メートル、約5メートル~約25メートル、約5メートル~約20メートル、約5メートル~約15メートル、又は約5メートル~約10メートル増加させることを含む、請求項83~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記有効量の髄腔内に投与された前記AAV粒子が、有効用量で静脈内投与されるμDys導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子と比較して、副作用の数の減少、又は1つ以上の副作用の重症度の低減をもたらす、請求項48~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記髄腔内組成物が、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、骨格筋及び心筋においてより優れたμDys導入遺伝子発現を提供する、請求項48~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記有効量の前記髄腔内組成物が、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、骨格筋又は心筋においてより優れたμDys導入遺伝子発現を提供する、請求項48~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記有効量の前記髄腔内組成物が、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、骨格筋においてより優れたμDys導入遺伝子発現を提供する、請求項48~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記有効量の前記髄腔内組成物が、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、心筋においてより優れたμDys導入遺伝子発現を提供する、請求項48~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記より優れたμDys導入遺伝子発現が、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%優れた発現である、請求項94~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記髄腔内組成物の投与の18ヶ月後に測定された前記治療応答が、前記髄腔内組成物の投与の12ヶ月後に測定された前記治療応答と実質的に同じであるか、又はそれよりも良好である、請求項48~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記髄腔内組成物の投与の24ヶ月後に測定された前記治療応答が、前記髄腔内組成物の投与の12ヶ月後に測定された前記治療応答と実質的に同じであるか、又はそれよりも良好である、請求項48~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
対象の骨格筋及び/又は心筋にマイクロジストロフィン(μDys)導入遺伝子を優先的に送達するための方法であって、
有効量のアデノ随伴ウイルス血清型9(AAV9)粒子と、薬学的に許容可能な担体と、を含む、髄腔内組成物を、単回用量で対象に髄腔内投与することを含み、前記AAV9粒子が、ベクターゲノムをカプシド封入するAAV9カプシドを含み、前記ベクターゲノムが、5’から3’まで、
5’ITRと、
プロモーターと、
μDys導入遺伝子と、
SV40ポリ(A)テールと、
3’ITRと、を含み、
投与後、前記μDys導入遺伝子が、前記対象の肝組織における導入遺伝子発現と比較して、前記対象の骨格筋又は心筋においてより高いレベルで発現される、方法。
【請求項102】
投与後、前記μDys導入遺伝子が、前記対象の肝組織におけるμDys導入遺伝子発現と比較して、前記対象の骨格筋においてより高いレベルで発現される、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
投与後、前記μDys導入遺伝子が、前記対象の肝組織におけるμDys導入遺伝子発現と比較して、前記対象の心筋においてより高いレベルで発現される、請求項101又は102に記載の方法。
【請求項104】
投与後、前記μDys導入遺伝子が、前記対象の肝組織におけるμDys導入遺伝子発現と比較して、前記対象の骨格筋及び心筋においてより高いレベルで発現される、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
前記より高いレベルが、肝組織における導入遺伝子発現の量と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%高い、請求項101~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記5’ITRが、AAV2 ITRである、請求項101~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記5’AAV2 ITRが、配列番号1の配列を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記5’AAV2 ITRが、配列番号1からなる配列を有する、請求項106又は107に記載の方法。
【請求項109】
前記3’ITRが、AAV2 ITRである、請求項101~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記3’AAV2 ITRが、配列番号7を含む配列を有する、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記プロモーターが、MHCK7プロモーターである、請求項101~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記MHCK7プロモーターが、配列番号2を含む配列を有する、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記プロモーターが、ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターである、請求項101~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターが、配列番号3を含む配列を有する、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記ベクターゲノムが、前記導入遺伝子の5’(上流)及び前記プロモーターの3’(下流)にSV40イントロンを更に含む、請求項101~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記SV40イントロンが、配列番号4を含む配列を有する、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記SV40イントロンが、配列番号4からなる配列を有する、請求項115又は116に記載の方法。
【請求項118】
前記SV40ポリ(A)テールが、配列番号6を含む配列を有する、請求項101~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記ベクターゲノムが、エンハンサーが前記5’ITRの3’(下流)及び前記プロモーターの5’(上流)にあることを更に含む、請求項101~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記エンハンサーが、SK-CRM4エンハンサーである、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記SK-CRM4エンハンサーが、配列番号8を含む配列を有する、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記エンハンサーが、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーである、請求項119に記載の方法。
【請求項123】
前記サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーが、配列番号9を含む配列を有する、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記対象が、前記投与中にトレンデレンブルグ位に配置される、請求項101~123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記髄腔内組成物が、非イオン性低浸透圧造影剤の非存在下で投与される、請求項101~124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
髄腔内投与された前記AAV9粒子の用量が、静脈内投与される同一用量の同じAAV9粒子と比較して、骨格筋及び/又は心筋においてより優れた導入遺伝子発現を提供する、請求項101~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記髄腔内投与されたAAV9粒子によって提供される[(骨格筋及び/又は心筋導入遺伝子発現)]/(肝臓導入遺伝子発現)]の比が、同一用量の同じAAV9粒子が静脈内投与されるときの同じ比よりも大きい、請求項101~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
前記導入遺伝子が、(i)アクチン結合部位を含むNTDと、(ii)2~4個のヒンジ領域及び4~6個のスペクトリン反復を含む中央ロッドドメインと、(iii)システイン豊富ドメインと、を含む、マイクロジストロフィンタンパク質をコードするマイクロジストロフィン導入遺伝子である、請求項101~127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復16及び17を含む、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復1及び24を含む、請求項128又は129に記載の方法。
【請求項131】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復2を含む、請求項128~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復22を含む、請求項128~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復23を含む、請求項128~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復16及び17を含む、請求項128に記載の方法。
【請求項135】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復1、16、17、23、及び24を含む、請求項128に記載の方法。
【請求項136】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復1、2、3、及び24を含む、請求項128に記載の方法。
【請求項137】
前記スペクトリン反復が、スペクトリン反復1、2、22、23、及び24を含む、請求項128に記載の方法。
【請求項138】
前記ヒンジ領域が、ジストロフィンヒンジ領域1及び4を含む、請求項128~137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記ヒンジ領域が、ヒンジ領域1、3、及び4を含む、請求項128~137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記マイクロジストロフィン導入遺伝子が、配列番号5を含む、請求項128に記載の方法。
【請求項141】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1.0×10
9~約1×10
16ベクターゲノムである、請求項48~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1.0×10
9~約1×10
15ベクターゲノムである、請求項48~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1.0×10
9~約1×10
14ベクターゲノムである、請求項48~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1.0×10
9~約1×10
13ベクターゲノムである、請求項48~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1.0×10
9~約1×10
12ベクターゲノムである、請求項48~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1.0×10
9~約1×10
11ベクターゲノムである、請求項48~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1.0×10
9~約1×10
10ベクターゲノムである、請求項48~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
10~約1×10
16ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項149】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
10~約1×10
15ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項150】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
10~約1×10
14ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項151】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
10~約1×10
13ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項152】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
10~約1×10
12ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項153】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
10~約1×10
11ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項154】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
11~約1×10
16ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項155】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
12~約1×10
16ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項156】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
13~約1×10
16ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項157】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
14~約1×10
16ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項158】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約1×10
15~約1×10
16ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項159】
前記髄腔内組成物中の前記有効量の前記AAV粒子が、約2.5×10
13~約1×10
14ベクターゲノムである、請求項141に記載の方法。
【請求項160】
治療応答を提供するために十分な髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物のベクターゲノム用量よりも約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、約65倍、約70倍、約75倍、約80倍、約85倍、約90倍、約95倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍低い、請求項48~159のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも約10倍~40倍低い、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも約20倍低い、請求項160に記載の方法。
【請求項163】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも約40倍低い、請求項160に記載の方法。
【請求項164】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも約100倍低い、請求項160に記載の方法。
【請求項165】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約55倍、少なくとも約60倍、少なくとも約65倍、少なくとも約70倍、少なくとも約75倍、少なくとも約80倍、少なくとも約85倍、少なくとも約90倍、少なくとも約95倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約250倍低い、請求項48~159のいずれか一項に記載の方。
【請求項166】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも約10倍低い、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも約20倍低い、請求項165に記載の方法。
【請求項168】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも約40倍低い、請求項165に記載の方法。
【請求項169】
治療応答を提供するために十分な前記髄腔内ベクターゲノム用量が、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な前記静脈内組成物の前記ベクターゲノム用量よりも約100倍低い、請求項165に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月5日に出願された米国仮特許出願第63/229,936号、及び2021年9月1日に出願された米国仮特許出願第63/239,881号の優先権を主張するものであり、その各々の内容は、参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、概して、マイクロジストロフィン導入遺伝子を送達するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、AAV粒子を産生する方法、AAV粒子を産生する細胞、並びにジストロフィノパチー、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療のための骨格筋及び/又は心筋へのマイクロジストロフィン導入遺伝子の送達のためにAAV粒子を使用する方法に関する。
【0003】
配列表の組み込み
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにXML形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むXMLファイルの名称は、INMD_166_02WO_SeqList_ST26.xmlである。XMLファイルは、約40,532バイトであり、2022年8月3日に作成され、USPTO特許センターを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0004】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、X連鎖劣性パターンで遺伝し、筋肉が適切に機能するために必要とするタンパク質であるジストロフィンを身体が産生することを妨げる、遺伝子変異によって引き起こされる。DMDは、部分的に進行性筋肉変性を特徴とする。疾患が進行するにつれて、最初は大腿、骨盤、及び腕の筋肉に影響を及ぼし、DMDは、最終的に全ての随意筋に影響を及ぼし、後の段階では心筋及び呼吸筋に関与する。欧州及び北米では、DMDの有病率は、3,600件の男性の出生に約1件である。DMDは、最も高頻度の小児型筋ジストロフィーであり、ほぼ独占的に男性に影響を及ぼす。DMDの既知の治療法はなく、現在の治療基準は、主に、ステロイド、免疫抑制剤、抗痙攣薬、ブレース、矯正手術、及び補助換気を含む、症状の管理を目的としている。DMDに関連する拡張型心筋症の積極的な管理には、重度の症例における抗うっ血薬及び心臓移植が含まれる。
【0005】
遺伝子療法は、核酸が変異遺伝子又は非機能的遺伝子を保有する細胞に送達されて、変異細胞の欠陥を補正する、急速に加速している治療アプローチである。ある特定の遺伝子療法では、核酸は、核酸を細胞に送達するアデノ随伴ウイルス(AAV)内にパッケージ化される。細胞核の内側に入ると、次いで、核酸は、適切なタンパク質産生を誘導し、ウイルスは、安全に分解される。DMDの治療のための遺伝子療法が提案されているが、患者の毒性につながる高い全身ウイルス価の送達を必要とし、患者当たり必要とされる大量のウイルスに起因する高い製造コストを有する。
【0006】
動物モデル及びヒトにおける、修飾されているが機能的な短縮ジストロフィン核酸配列である、マイクロジストロフィン(μDys)の送達は、筋機能を促進することが報告されている。μDys導入遺伝子は、427kDaのジストロフィンタンパク質の固有の機能ドメインの様々な組み合わせをコードするように設計されている。概して、長さが5キロベース未満である、μDys配列は、DMD研究のための最も広く使用されている動物モデルであるmdxマウスを使用して、DMDのマウスモデルにおいてμDys導入遺伝子を送達するためにAAVを使用して試験されている。mdxマウスにおける変異は、完全長ジストロフィン発現を中止したエクソン23におけるナンセンス点変異(CからTへの移行)である(参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Sicinski et al.(1989)Science 244,pp.1578-1580)。μDysの送達が示している有望性にもかかわらず、新規の治療法が、DMDの治療のために必要とされる。本発明は、この必要性及び他の必要性に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、部分的に、マイクロジストロフィン(μDys)導入遺伝子をパッケージ化する(すなわち、カプシド封入する)カプシドを含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、及び例えば、髄腔内投与によって、同粒子を用いて様々なジストロフィノパチーを治療するための方法に関する。一実施形態では、μDys導入遺伝子は、(i)アクチン結合部位を含むN末端領域(NTD)と、(ii)3個のヒンジ領域及び4個のスペクトリン反復を含むドメインと、(iii)システイン豊富ドメインと、を含む、μDysポリペプチドをコードする。μDys導入遺伝子は、一実施形態では、配列番号5に記載される核酸配列を含む。
【0008】
一態様では、ベクターゲノムをカプシド封入するカプシドを含む、AAV粒子が提供される。ベクターゲノムは、一実施形態では、5’から3’まで、5’逆位末端反復(ITR)と、プロモーターと、μDys導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、3’ITRと、を含む。μDys導入遺伝子は、一実施形態では、(i)アクチン結合部位を含むN末端領域(NTD)と、(ii)2~4個のヒンジ領域及び4~6個のスペクトリン反復を含む中央ロッドドメインと、(iii)システイン豊富ドメインと、を含む、ポリペプチドをコードする。更なる実施形態では、μDys導入遺伝子は、NTDと、ヒンジ領域1、2、及び4と、スペクトリン反復1、2、3、及び24と、システイン豊富ドメインと、を含む、μDysポリペプチドをコードする。その上更なる実施形態では、μDys導入遺伝子は、配列番号5に記載される核酸配列を含む。AAV粒子は、一実施形態では、AAV9粒子であり、髄腔内組成物中に有効量で存在する。有効量のAAV粒子は、一実施形態では、μDys導入遺伝子、例えば、髄腔内組成物中に存在する同じμDys導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含む静脈内(IV)組成物の有効ベクターゲノム量よりも約90%以下のベクターゲノムを含む。
【0009】
一実施形態では、ベクターゲノムは、μDys導入遺伝子の5’(上流)及びプロモーターの3’(下流)にSV40イントロンを更に含む。別の実施形態では、ベクターゲノムは、エンハンサーが5’ITRの3’(下流)及びプロモーターの5’(上流)にあることを更に含む。
【0010】
プロモーターは、一実施形態では、MHCK7又はニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターである。
【0011】
好ましい実施形態では、AAV粒子は、AAV9粒子であり、すなわち、AAV粒子は、1つ以上のAAV9カプシドタンパク質を含む。AAV9粒子のカプシドは、一実施形態では、AAV9カプシドタンパク質からなる。更に別の実施形態では、AAV粒子は、AAVrh74粒子である。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明の組み換えAAVベクターゲノムは、5’から3’まで、5’ITRと、SK-CRM4エンハンサーと、プロモーターと、μDys導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、3’ITRと、を含む。いくつかの実施形態では、SK-CRM4エンハンサーは、配列番号8を含むか、又はそれからなる配列を有する。いくつかの実施形態では、μDysコード配列は、アクチン結合ドメインと、少なくとも4個のスペクトリン反復、例えば、4~6個のスペクトリン反復と、を含む、μDysタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、μDys導入遺伝子は、配列番号5の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明のカプシド封入ベクターゲノムは、5’AAV2 ITR及び3’AAV2 ITRを含む。いくつかの実施形態では、5’AAV2 ITRは、配列番号1を含むか、又はそれからなる配列を有する。いくつかの実施形態では、3’AAV2 ITRは、配列番号7を含むか、又はそれからなる配列を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、カプシド封入ベクターゲノムは、MHCK7プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、MHCK7プロモーターは、配列番号2を含むか、又はそれからなる配列を有する。別の実施形態では、プロモーターは、ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターである。更なる実施形態では、ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターは、配列番号3に記載される核酸配列を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明のカプシド封入ベクターゲノムは、配列番号4を含むか、又はそれからなる配列を有するSV40イントロンを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、カプシド封入ベクターゲノムは、配列番号6を含むか、又はそれからなる配列を有するSV40ポリ(A)テールを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、AAV粒子のカプシドは、1つ以上のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh.74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV13カプシドタンパク質を含む。好ましい実施形態では、カプシドは、AAV9カプシドであり、AAV9カプシドは、AAV9カプシドタンパク質からなる。
【0018】
別の態様では、本発明は、ジストロフィノパチーの治療を必要とする対象においてジストロフィノパチーを治療する方法であって、本明細書に更に記載されるように、μDys導入遺伝子を含むベクターゲノムをカプシド封入する有効量のAAV粒子のうちの1つを含む組成物を、単回用量で対象に髄腔内投与することを含む、方法に関する。一実施形態では、ジストロフィノパチーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、又はDMD関連拡張型心筋症(DCM)である。その上更なる実施形態では、ジストロフィノパチーは、DMDである。有効量のAAV粒子は、更なる実施形態では、μDys導入遺伝子、例えば、髄腔内投与された組成物中に存在する同じμDys導入遺伝子を含むベクターゲノムをカプシド封入するAAV粒子を含む、有効量の対応するIV組成物(例えば、静脈内投与された組成物)よりも約90%以下のベクターゲノムを含む。
【0019】
一実施形態では、対象は、トレンデンブルク位にあるときに組成物を投与される。更なる実施形態では、投与は、非イオン性低浸透圧造影剤の非存在下にある。
【0020】
本明細書に記載されるジストロフィノパチーを治療する方法の一実施形態では、有効用量の髄腔内投与されたAAV粒子は、μDys導入遺伝子、例えば、髄腔内投与されたAAV粒子中に存在する同じμDys導入遺伝子を含むベクターゲノムをカプシド封入する同一用量の静脈内投与されたAAV粒子よりも優れた治療応答を提供する。治療応答は、一実施形態では、ノーススター歩行評価(NSAA)上のベースラインからの増加である。
【0021】
本明細書に記載されるジストロフィノパチーを治療する方法の別の実施形態では、μDys導入遺伝子を含むベクターゲノムをカプシド封入する有効量のAAV粒子の髄腔内投与は、第2の対象が、μDys導入遺伝子を含むベクターゲノムをカプシド封入する有効量の対応するAAV粒子を静脈内投与されるときに、第2の対象によって体験される副作用の数又は副作用の重症度と比較して、対象において副作用の数の減少、又は1つ以上の副作用の重症度の低減をもたらす。更なる実施形態では、ジストロフィノパチーは、DMDである。その上更なる実施形態では、AAV粒子は、AAV9粒子である。
【0022】
ジストロフィノパチーを治療する方法の更に別の実施形態では、有効量の髄腔内投与されたAAV粒子は、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、骨格筋及び/又は心筋においてより優れたμDys導入遺伝子発現を提供する。更なる実施形態では、ジストロフィノパチーは、DMDである。その上更なる実施形態では、AAV粒子は、AAV9粒子である。なおもその上更なる実施形態では、AAV粒子は、配列番号5に記載される核酸配列を有するμDys導入遺伝子をカプシド封入する。
【0023】
本発明の別の態様では、μDys導入遺伝子を対象の骨格筋及び/又は心筋に優先的に送達するための方法が提供される。本方法は、AAV9カプシドを含む有効量のAAV9粒子と、AAV9カプシドによってカプシド封入されたμDys導入遺伝子を含むベクターゲノムと、を含む、組成物を、単回用量で対象に髄腔内投与することを伴う。カプシド封入ゲノムは、5’から3’まで、5’ITRと、プロモーターと、μDys導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、3’ITRと、を含む。投与後、μDys導入遺伝子は、対象の肝組織における導入遺伝子発現と比較して、対象の骨格筋及び/又は心筋においてより高いレベルで発現される。
【0024】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、対象において本明細書に記載されるAAV粒子によって送達されるμDys導入遺伝子の発現は、対象の骨格筋及び/又は心筋と比較して、対象の肝組織では著しく少ない。更なる実施形態では、μDys導入遺伝子発現は、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、対象の骨格筋及び/又は心筋では少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%優れている。別の実施形態では、μDys導入遺伝子発現は、骨格筋及び/又は心筋におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、対象の肝臓では少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%少ない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】例示的なμDysコード遺伝子構築物(INS1201)の概略図を示す。
【
図1B】代替的なμDysコード遺伝子構築物(INS1212)の概略図を示す。
【
図1C】HindIII/BsaI及びSmaIで消化された(それぞれ、レーン1及び2)psZ01ベクター骨格(pSZ01-INS1201)制限部にクローニングされたINS1201遺伝子構築物、並びにHindIII/BsaI及びSmaIで消化された(それぞれ、レーン3及び4)psZ01ベクター骨格(pSZ01-INS1212)制限部にクローニングされたINS1212遺伝子構築物のアガロースゲル電気泳動を示す。
【
図2】1μlのINS1201-AAV9調製物(レーン1)、1μlのINS1212-AAV9調製物(レーン2)、並びに0.5μl、1μl、2μl、及び4μlの1×10
13vg/ml AAV2標準(それぞれ、レーン3、4、5、及び6)の銀染色SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を示す。
【
図3A】2.7×10
11vgのINS1201-AAV9(iii)又はINS1212-AAV9(iv)を用いた筋肉内注射の21日後にmdxマウスから取得され、ジストロフィンについて免疫蛍光染色された腓腹筋切片を示す。非注射mdxマウス(i)及び野生型C57/Blマウス(ii)から取得され、ジストロフィンについて免疫蛍光染色された腓腹筋切片が、比較のために示される。
【
図3B】2.7×10
11ベクターゲノム(vg)のINS1212-AAV9を用いた筋肉内注射の21日後にmdxマウスから取得され、DAPI(i)で、及びジストロフィン(ii)について染色された腓腹筋切片を示す。マージされた画像が、(iii)に示される。
【
図4A】2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の21日後にmdxマウスから取得され、ジストロフィンについて免疫蛍光染色された、腓腹筋(i)、前脛骨筋(ii)、大腿四頭筋(iii)、臀筋(iv)、三頭筋(v)、横隔膜(vi)、心臓(vii)、及び肝臓(viii)切片を示す。
【
図4B】9×10
10vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の21日後にmdxマウスから取得され、ジストロフィンについて免疫蛍光染色された、腓腹筋(i)、前脛骨筋(ii)、大腿四頭筋(iii)、臀筋(iv)、三頭筋(v)、横隔膜(vi)、心臓(vii)、及び肝臓(viii)切片を示す。
【
図5】9×10
10vgのINS1212-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の21日後にmdxマウスから取得され、ジストロフィンについて免疫蛍光染色された、腓腹筋(i)、前脛骨筋(ii)、大腿四頭筋(iii)、臀筋(iv)、三頭筋(v)、横隔膜(vi)、心臓(vii)、及び肝臓(viii)切片を示す。
【
図6A】9×10
10vg(ii)又は2.7×10
11vg(iii)のINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後にmdxマウスから取得され、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色された腓腹筋切片を示す。野生型C57/Blマウス(i)及び非注射mdxマウス(iv)から取得され、H&E染色された腓腹筋切片が、比較のために示される。
【
図6B】9×10
10vg(ii)又は2.7×10
11vg(iii)のINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後にmdxマウスから取得され、ジストロフィンについて染色された腓腹筋切片を示す。野生型C57/Blマウス(i)及び非注射mdxマウス(iv)から取得され、ジストロフィンについて染色された腓腹筋切片が、比較のために示される。
【
図7A】9×10
10vg(ii)のINS1212-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後にmdxマウスから取得され、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色された腓腹筋切片を示す。野生型C57/Blマウス(i)及び非注射mdxマウス(iii)から取得され、H&E染色された腓腹筋切片が、比較のために示される。
【
図7B】9×10
10vg(ii)のINS1212-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後にmdxマウスから取得され、ジストロフィンについて染色された腓腹筋切片を示す。野生型C57/Blマウス(i)及び非注射mdxマウス(iii)から取得され、ジストロフィンについて染色された腓腹筋切片が、比較のために示される。
【
図8A】9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける腓腹筋細胞の平均線維直径(μm)の棒グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける腓腹筋細胞の平均線維直径(μm)が、比較のために示される。
【
図8B】9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける腓腹筋細胞の細胞直径(μm)の相対頻度(%)の折れ線グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける腓腹筋細胞の細胞直径の相対頻度が、比較のために示される。
【
図8C】9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける三頭筋細胞の平均線維直径(μm)の棒グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける三頭筋細胞の平均線維直径(μm)が、比較のために示される。
【
図8D】9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける三頭筋細胞の細胞直径(μm)の相対頻度(%)の折れ線グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける三頭筋細胞の細胞直径の相対頻度が、比較のために示される。
【
図8E】9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける前脛骨筋細胞の平均線維直径(μm)の棒グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける前脛骨筋細胞の平均線維直径(μm)が、比較のために示される。
【
図8F】9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける前脛骨筋細胞の細胞直径(μm)の相対頻度(%)の折れ線グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける前脛骨筋細胞の細胞直径の相対頻度が、比較のために示される。
【
図8G】9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける横隔膜筋細胞の平均線維直径(μm)の棒グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける横隔膜筋細胞の平均線維直径(μm)が、比較のために示される。
【
図8H】9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける横隔膜筋細胞の細胞直径(μm)の相対頻度(%)の折れ線グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける横隔膜筋細胞の細胞直径の相対頻度が、比較のために示される。
【
図9A】9×10
10vgのINS1212-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける腓腹筋細胞の平均線維直径(μm)の棒グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける横隔膜筋細胞の平均線維直径(μm)が、比較のために示される。
【
図9B】9×10
10vgのINS1212-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射の80日後のmdxマウスにおける腓腹筋細胞の細胞直径(μm)の相対頻度(%)の折れ線グラフを示す。野生型C57/Blマウス及び非注射mdxマウスにおける横隔膜筋細胞の細胞直径の相対頻度が、比較のために示される。
【
図10A】野生型C57/Blマウス、生後1日目(p1)にビヒクルを用いた脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウス、生後1日目p1に2.7×10
11vgのINS1201-AAV9のICV注射を受けたmdxマウス、及びp1に9×10
10vgのINS1201-AAV9のICV注射を受けたmdxマウスにおける偏心収縮(EC)から生じるEDL筋の収縮力の割合の折れ線グラフである。
【
図10B】(i)野生型C57/Blマウス、及び生後1日目(p1)に(ii)9×10
9vgのINS1201-AAV9、(iii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iv)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、又は(v)ビヒクル対照を用いた脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおける偏心収縮(EC)前応力に対するEDL筋のEC後応力の割合の折れ線グラフである。
【
図10C】(i)野生型C57/Blマウス、及び生後28日目(p28)に(ii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iii)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(iv)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9、又は(vi)ビヒクル対照のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおける偏心収縮(EC)数の関数としてのEDL筋の収縮力の割合(偏心収縮1(EC1)%)を示すグラフである。
【
図10D】(i)野生型C57/Blマウス、及び生後28日目(p28)に(ii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iii)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(iv)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9、又は(vi)ビヒクル対照のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおけるEDL筋の力の割合([EC5後/EC1後])を示す棒グラフである。
【
図10E】(i)野生型C57/Blマウス、及び生後28日目(p28)に(ii)9×10
9vgのINS1201-AAV9、(iii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iv)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、(vi)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9、又は(vii)ビヒクル対照のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおける偏心収縮(EC)から生じるEDL筋の最大張力(kPa)のグラフである。
【
図10F】(i)野生型C57/Blマウス、及び生後28日目(p28)に(ii)9×10
9vgのINS1201-AAV9、(iii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iv)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、(vi)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9、又は(vii)ビヒクル対照のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおける様々な周波数(Hz)での偏心収縮(EC)から生じるピーク応力(kPa)のグラフである。
【
図11A】非注射カニクイザル(i)、5×10
13vg(ii)若しくは1×10
14vg(iii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iv)、5×10
13vg(v)、若しくは1×10
14vg(vi)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された腓腹筋切片を示す。
【
図11B】非注射カニクイザル(i)、5×10
13vg(ii)若しくは1×10
14vg(iii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iv)、5×10
13vg(v)、若しくは1×10
14vg(vi)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された大腿四頭筋切片を示す。
【
図11C】非注射カニクイザル(i)、5×10
13vg(ii)若しくは1×10
14vg(iii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iv)、5×10
13vg(v)、若しくは1×10
14vg(vi)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された三角筋切片を示す。
【
図11D】非注射カニクイザル(i)、5×10
13vg(ii)若しくは1×10
14vg(iii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iv)、5×10
13vg(v)、若しくは1×10
14vg(vi)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された三頭筋切片を示す。
【
図11E】非注射カニクイザル(i)、5×10
13vg(ii)若しくは1×10
14vg(iii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iv)、5×10
13vg(v)、若しくは1×10
14vg(vi)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された二頭筋切片を示す。
【
図11F】5×10
13vg(i)若しくは1×10
14vg(ii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iii)、5×10
13vg(iv)、若しくは1×10
14vg(v)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された前脛骨筋切片を示す。
【
図11G】5×10
13vg(i)若しくは1×10
14vg(ii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iii)、5×10
13vg(iv)、若しくは1×10
14vg(v)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された横隔膜筋切片を示す。
【
図11H】5×10
13vg(i)若しくは1×10
14vg(ii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iii)、5×10
13vg(iv)、若しくは1×10
14vg(v)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された心筋切片を示す。
【
図11I】5×10
13vg(i)若しくは1×10
14vg(ii)のAAV9 CBA-GFPを用いた静脈内(IV)注射の21日後のカニクイザル、又は2.5×10
13vg(iii)、5×10
13vg(iv)、若しくは1×10
14vg(v)のAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後のカニクイザルから取得され、GFP発現の検出のためにNovaRed(商標)で免疫染色された肝臓切片を示す。
【
図12A】2.5×10
13vgのAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後にカニクイザルから取得され、抗GFP抗体でプローブされた、二頭筋(1)、三頭筋(2)、三角筋(3)、大腿四頭筋(4)、腓腹筋(5)、前脛骨筋(6)、横隔膜(7)、及び心臓(8)の筋タンパク質試料のポンソー染色(上のパネル)又はウェスタンブロット(下のパネル)を示す。
【
図12B】5×10
13vgのAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後にカニクイザルから取得され、抗GFP抗体でプローブされた、二頭筋(1)、三頭筋(2)、三角筋(3)、大腿四頭筋(4)、腓腹筋(5)、前脛骨筋(6)、横隔膜(7)、及び心臓(8)の筋タンパク質試料のポンソー染色(上のパネル)又はウェスタンブロット(下のパネル)を示す。
【
図12C】1×10
14vgのAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後にカニクイザルから取得され、抗GFP抗体でプローブされた、二頭筋(1)、三頭筋(2)、三角筋(3)、大腿四頭筋(4)、腓腹筋(5)、前脛骨筋(6)、横隔膜(7)、及び心臓(8)の筋タンパク質試料のポンソー染色(上のパネル)又はウェスタンブロット(下のパネル)を示す。
【
図12D】非注射カニクイザルから取得され、抗GFP抗体でプローブされた、二頭筋(1)及び三頭筋(2)のポンソー染色(上のパネル)又はウェスタンブロットを示す。
【
図13】2.5×10
13vgのAAV9 CBA-GFPを用いた髄腔内(IT)注射の21日後にカニクイザルから取得され、逆転写酵素の存在下(+)又は非存在下(-)でRT-PCRを受けた、二頭筋(1)、三頭筋(2)、三角筋(3)、前脛骨筋(4)、腓腹筋(5)、大腿四頭筋の外側広筋(6)、横隔膜筋(7)、及び心筋(8)、並びに肝臓(9)組織試料のアガロースゲル電気泳動を示す。非注射カニクイザルから取得され、逆転写酵素の存在下(+)又は非存在下(-)でRT-PCRを受けた、二頭筋(10)、三頭筋(11)、三角筋(12)、及び大腿四頭筋(13)の筋組織試料が、比較のために示される。
【
図14】本明細書で提供されるμDys導入遺伝子によってコードされる様々なμDysタンパク質ドメインを示す。
【
図15】生後28日目(p28)に(ii)9×10
9vgのINS1201-AAV9、(iii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iv)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、(vi)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9、又は(vii)ビヒクル対照のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおける2倍体ゲノム当たりのINS1201 DNAコピーの数を示すグラフである。
【
図16】生後28日目(p28)に(ii)9×10
9vgのINS1201-AAV9、(iii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iv)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、(vi)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9、又は(vii)ビヒクル対照のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおけるRPP30のコピー数に対して正規化されたINS1201 RNA転写物コピーの数を示すグラフである。
【
図17】(i)野生型C57/Blマウス、及び生後28日目(p28)に(ii)9×10
9vgのINS1201-AAV9、(iii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iv)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、(vi)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9、又は(vii)ビヒクル対照のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおける生後120日目(p120)でのEDL筋細胞の平均線維直径(μm)のグラフである。
【
図18】(i)野生型C57/Blマウス、及び生後28日目(p28)に(ii)9×10
9vgのINS1201-AAV9、(iii)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(iv)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、(vi)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9、又は(vii)ビヒクル対照のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおける生後120日目(p120)での前脛骨筋の平均線維直径(μm)のグラフである。
【
図19】様々な用量のINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射後のピクロシリウスレッドで染色された横隔膜筋切片を示す。野生型C57/Blマウス及びビヒクルを投与されたmdxマウスから取得された横隔膜切片が、上部セクションに比較のために示される。
【
図20】(i)野生型C57/Blマウス、及び生後28日目(p28)に(ii)ビヒクル対照、(iii)9×10
9vgのINS1201-AAV9、(iv)9×10
10vgのINS1201-AAV9、(v)2.7×10
11vgのINS1201-AAV9、(v)5.4×10
11vgのINS1201-AAV9、又は(vi)1.2×10
12vgのINS1201-AAV9のいずれかの脳室内(ICV)注射を受けたmdxマウスにおける生後120日目(p120)での横隔膜筋のコラーゲン率を示すグラフである。
【
図21】上部は、生後28日目(p28)での5.4×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射後のp120にmdxマウスから取得され、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)(左端)、ラミニン/dapi(左から2番目)、ジストロフィン(右から2番目)で染色された長趾伸(EDL)筋切片、及びマージされた画像(右端)を示す。
図21の下部は、生後28日目(p28)での5ビヒクル対照を用いた脳室内(ICV)注射後のp120にmdxマウスから取得され、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)(左端)、ラミニン/dapi(左から2番目)、ジストロフィン(右から2番目)で染色されたEDL筋切片、及びマージされた画像(右端)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、部分的には、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、並びに単一遺伝子筋肉疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、又はDMD関連拡張型心筋症(DCM)などのジストロフィノパチーの治療を必要とする対象に、同粒子を心筋及び/又は骨格筋に優先的に送達するための方法に関する。理論に束縛されることを所望することなく、粒子、及び例えば、ジストロフィノパチーなどの単一遺伝子筋肉疾患を治療するために、同粒子の送達を必要とする対象に同粒子を送達するための方法は、少なくとも本発明が、(i)実質的に同じ又はより良好な治療利益を達成するために、IV送達よりも著しく低い投与量を可能にし、それによって、ウイルス負荷及び毒性並びに他の副作用を低減し、かつ/又は(ii)肝組織と比較して、心筋及び/又は骨格筋組織における優先的な導入遺伝子標的化及び発現を可能にし、それによって、導入遺伝子を目的の細胞に標的化し、静脈内送達されるAAVベクターと比較して、より優れた治療利益を提供し、(iii)製造負担の減少に対応する、必要とされる低投与量により、IV製剤と比較して、より大きな患者集団に利益をもたらすことができるため、既知のAAV粒子及び治療方法よりも優れた利益を提供する。
【0027】
本発明の態様は、AAV粒子、同粒子を産生するための方法、及び治療を必要とする対象にAAV粒子を送達するための方法に関する。AAV粒子、例えば、AAV9粒子は、1つ以上のAAV9カプシドタンパク質を含むカプシドと、AAV9カプシドによってカプシド封入されたベクターゲノムと、を含む。ベクターゲノムは、導入遺伝子と、筋細胞、例えば、骨格筋及び/又は心筋細胞内に送達されると導入遺伝子の遺伝子発現を促進する、調節エレメントと、を含む。一実施形態では、導入遺伝子は、マイクロジストロフィン(μDys)導入遺伝子である。
【0028】
本明細書に記載される方法は、ジストロフィノパチーの治療を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載されるAAV粒子を含む組成物を単回用量で髄腔内投与することを含む。一実施形態におけるジストロフィノパチーは、DMD、ベッカー型筋ジストロフィー、又はDCMである。好ましい実施形態では、ジストロフィノパチーは、DMDである。本明細書に記載される実施形態では、筋細胞への本発明のAAV粒子の髄腔内送達は、μDysの堅調な発現をもたらすことができ、筋肉の健康及び機能を著しく改善することができる。本発明はまた、本明細書に記載されるAAV粒子を産生するための方法及び細胞も提供する。本明細書に記載される方法の一実施形態では、AAV粒子の髄腔内投与後に、導入遺伝子は、対象の肝組織における導入遺伝子発現と比較して、対象の骨格筋及び/又は心筋においてより高いレベルで発現される。
【0029】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句が以下に定義される。
【0030】
本明細書で使用される場合の「a」及び「an」という用語は、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0031】
「核酸」、「ヌクレオチド」、又は「オリゴヌクレオチド」という用語は、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかのデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)及びそのポリマーを指す。具体的に限定されない限り、本用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様に代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。別段の指示がない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的配列、並びに明示的に示された配列を暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換される、配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991)、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985)、及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。
【0032】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖を産生又はコードすることに関与するDNAのセグメントを指し得る。これは、コーディング領域(リーダー及びトレーラー)並びに個々のコーディングセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)の前後の領域を含み得る。代替的に、「遺伝子」という用語は、rRNA、tRNA、ガイドRNA(gRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、又はマイクロRNA(miRNA)などの非翻訳RNAを産生又はコードすることに関与するDNAのセグメントを指し得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、細胞のゲノムに人工的に導入される、ベクターゲノム中に存在する外因性遺伝子、又は細胞のゲノム中の非天然遺伝子座に人工的に導入される内因性遺伝子を指す。導入遺伝子は、ポリペプチド鎖を産生又はコードすることに関与するDNAのセグメントを指し得る。導入遺伝子は、コーディング領域(リーダー及びトレーラー)並びに個々のコーディングセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)の前後の領域を含み得る。本明細書に記載される実施形態による導入遺伝子は、μDysである。μDys導入遺伝子は、一実施形態では、N末端領域、約2~3個のヒンジ領域、約4~6個のスペクトリン反復、及びシステイン豊富ドメインを含む、μDysポリペプチドをコードする。
【0034】
本明細書で使用される場合の「ベクターゲノム」は、1つ以上の異種核酸配列を含む核酸ゲノムである。1つ以上の異種核酸配列は、導入遺伝子を含む。本発明のいくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、少なくとも1つのITR配列(例えば、AAV ITR配列)、任意選択的に、2つのITR(例えば、2つのAAV ITR)を含み、これらは典型的には、ベクターゲノムの5’末端及び3’末端にあり、1つ以上の異種核酸に隣接するであろう。ITRは、互いに同じであるか、又は異なり得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、核酸、例えば、遺伝子、又は細胞中のタンパク質に関する「内因性」という用語は、例えば、その天然遺伝子位置又は遺伝子座において自然界で見出されるように、その特定の細胞で生じる核酸又はタンパク質である。更に、核酸又はタンパク質を「内因的に発現する」細胞は、自然界で見出されるように、その核酸又はタンパク質を発現する。
【0036】
「プロモーター」は、核酸、例えば、導入遺伝子の転写を誘導し、ベクターゲノム内に存在し得る、1つ以上の核酸制御配列として定義される。本明細書で使用される場合、プロモーターは、転写の開始部位の付近に核酸配列を含む。プロモーターはまた、任意選択的に、転写の開始部位から数千個もの塩基対に位置し得る、遠位エンハンサー又はリプレッサー要素を含む。
【0037】
本明細書で使用される場合の「調節エレメント」は、遺伝子(例えば、導入遺伝子)の転写を調節し、かつ/又は転写されたmRNA産物の安定性若しくは翻訳を調節することが可能な核酸配列を指し、ベクターゲノム内に存在し得る。いくつかの実施形態では、調節エレメントは、遺伝子の組織特異的転写を調節することができる。調節エレメントは、少なくとも1つの転写因子結合部位、例えば、筋肉特異的転写因子のための転写因子結合部位を含むことができる。本明細書で使用される場合の調節エレメントは、調節エレメントの非存在下でのプロモーター単独からの遺伝子の転写と比較すると、プロモーター駆動型遺伝子発現を増加させるか、又は増強する。本明細書で使用される場合の調節エレメントは、それらが調節する導入遺伝子まで任意の距離(すなわち、近位又は遠位)に生じ得る。本明細書で使用される場合の調節エレメントは、転写制御に関与するより大きな配列の一部、例えば、プロモーター配列の一部を含み得る。しかしながら、調節エレメント単独は、典型的には、独力で転写を開始するためには十分ではなく、プロモーターの存在を必要とする。
【0038】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれるときに、「動作可能に連結される」。例えば、プロモーター若しくはエンハンサーが、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に動作可能に連結されるか、又はリボソーム結合部位が、翻訳を促進するように位置付けられる場合、コード配列に動作可能に連結される。
【0039】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では互換的に使用される。本明細書で使用される場合、本用語は、全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖、及びその機能的断片を包含し、アミノ酸残基は、共有ペプチド結合によって連結される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「相補的」又は「相補性」という用語は、ヌクレオチド又は核酸間の具体的な塩基対合を指す。相補的ヌクレオチドは、概して、A及びT(又はA及びU)、並びにG及びCである。本明細書に記載されるガイドRNA(gRNA)は、ゲノム配列に対して完全に相補的又は実質的に相補的である(例えば、ほんのわずかなミスマッチ塩基を有する)配列、例えば、DNA標的化配列を含むことができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、核酸、例えば、AAVベクターとの関連での「導入すること」又は「送達すること」という用語は、細胞の外側から細胞の内側、例えば、筋細胞への核酸の転座を指す。いくつかの場合では、導入することは、細胞の外側から細胞の核の内側への核酸の転座を指す。エレクトロポレーション、ナノワイヤ又はナノチューブとの接触、受容体媒介性内部化、細胞透過性ペプチドを介した転座、リポソーム媒介性転座、及び同等物を含むがこれらに限定されない、そのような転座の様々な方法が企図される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「パッケージ化される」又は「カプシド封入される」という用語は、AAV粒子を形成するためのウイルスカプシドタンパク質を含むカプシド内のベクターゲノムの包含を指す。
【0043】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列との関連で使用される場合の「実質的な同一性」又は「実質的に同一」という用語は、参照配列と少なくとも60%の配列同一性を有する配列を指す。代替的には、同一性率は、60%~100%の任意の整数であり得る。例示的な実施形態は、本明細書に記載されるプログラム、好ましくは、以下に記載される標準パラメータを使用するBLASTを使用して、参照配列と比較すると、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含む。当業者は、これらの値が、コドン縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレーム位置付け、及び同等物を考慮することによって、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するように適切に調整され得ることを認識するであろう。
【0044】
配列比較については、典型的には、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列及び参照配列がコンピュータに入力され、必要である場合、サブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトプログラムパラメータを使用することができるか、又は代替的パラメータを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性率を計算する。
【0045】
配列同一性率及び配列類似性を決定するため好適であるアルゴリズムは、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410、及びAltschul et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトを通して公的に利用可能である。アルゴリズムは、最初に、データベース配列内の同じ長さのワードと整列されたときに、ある正の値の閾値スコアTに一致するか、又はそれを満たすかのいずれかである、クエリ配列内の長さWの短いワードを識別することによって、高スコア配列対(HSP)を識別することを伴う。Tは、近接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al、上記)。これらの初期隣接ワードヒットは、検索を開始して、それらを含むより長いHSPを見出すためのシードとして作用する。次いで、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、ワードヒットは、各配列に沿って両方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメータM(一対の一致残基に対する報酬スコア、常に>0)及びN(ミスマッチ残基に対するペナルティスコア、常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスが、累積スコアを計算するために使用される。各方向におけるワードヒットの拡張は、累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ低下するか、累積スコアが、1つ以上の負のスコアの残基アラインメントの蓄積に起因してゼロ以下になるか、又はいずれか一方の配列の終端に達するときに、停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、28のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、M=1、N=-2、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
【0046】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析も実施する(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指示を提供する、最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約0.01未満、より好ましくは約10-5未満、最も好ましくは約10-20未満である場合、核酸は、参照配列と類似するとみなされる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書に記載される方法及び組成物によって治療される生物を指す。そのような生物には、ヒト、サル、マウス、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、及び同等物などの哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象又は患者は、ヒトである。本明細書で提供される治療の方法における対象は、一実施形態では、男性対象である。
【0048】
対象が男性のヒトである実施形態では、男性ヒト対象は、約4歳~約7歳、新生児、約1歳~約7歳、約2歳~約7歳、約2歳~約6歳、約2歳~約5歳、約2歳~約4歳、約3歳~約7歳、約3歳~約6歳、約1ヵ月~約6歳、約1ヵ月~約5歳、約1ヵ月~約4歳、約1ヵ月~約3歳、約1ヵ月~約2歳、又は約1ヵ月~約12ヵ月である。
【0049】
一実施形態では、対象は、約4歳~約7歳の男性ヒト患者である。一実施形態では、対象は、約3歳~約7歳の男性ヒト患者である。一実施形態では、対象は、約2歳~約7歳の男性ヒト患者である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「効率的な送達」又は「効率的に送達すること」という用語は、所望の細胞又は組織において導入遺伝子の発現をもたらす導入遺伝子をコードするベクターゲノムをカプシド封入するAAVカプシドを含む、AAV粒子の投与を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「有効用量」という用語は、有益な又は所望の結果(例えば、タンパク質の発現、又は所望の予防若しくは治療効果)をもたらすために十分な物質(例えば、本発明のAAV粒子)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、適用、又は投与量で投与することができ、特定の処方又は投与経路に限定されることを意図していない。用量が「ベクターゲノム」で提供される場合、「有効用量」は、本明細書では、「有効ベクターゲノム用量」と称され得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、状態、疾患、障害、若しくは同等物の改善をもたらす、任意の効果、例えば、低減すること、軽減すること、調節すること、改善すること、若しくは排除すること、又はその症状を改善することを含む。
【0053】
説明の全体を通して、組成物が、具体的な成分を有する、含む(including)、若しくは含む(comprising)ものとして説明される場合、又はプロセス及び方法が、具体的なステップを有する、含む(including)、若しくは含む(comprising)ものとして説明される場合、加えて、記載された成分から本質的になるか、又はそれらからなる本発明の組成物が存在し、記載された処理ステップから本質的になるか、又はそれらからなる本発明によるプロセス及び方法が存在することが企図される。
【0054】
アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子
本明細書に記載されるように、本発明の一態様は、1つ以上のAAVカプシドタンパク質と、1つ以上のカプシドタンパク質によってカプシド封入されたベクターゲノムと、を含む、AAV粒子、及び同粒子を含む髄腔内組成物に関する。ゲノムは、5’から3’まで、5’逆位末端反復(ITR)と、プロモーターと、導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、3’ITRと、を含む。治療を必要とする対象に髄腔内投与されると、一実施形態では、導入遺伝子は、対象の肝組織における導入遺伝子発現と比較して、対象の骨格筋及び/又は心筋においてより高いレベルで発現される。別の実施形態では、本明細書に記載されるAAV粒子によって提供される[(骨格筋及び/又は心筋導入遺伝子発現)]/(肝臓導入遺伝子発現)]の比は、同一用量の同じAAV粒子が静脈内投与されるときの同じ比よりも大きい。1つの好ましい実施形態では、AAV粒子は、1つ以上のAAV9カプシドタンパク質を含むAAV9粒子である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子」は、AAVカプシドと、AAVカプシドによって封入されたベクターゲノムと、を含む、AAVビリオンを指す。ベクターゲノムは、典型的には、プロモーターと、AAV ITR配列に隣接している1つ以上の導入遺伝子と、を含む。AAVカプシドは、1つ以上のAAVカプシドタンパク質を含む。AAVカプシドタンパク質は、同じ又は異なるAAV血清型に由来し得、野生型であるか、又は操作され得る。本明細書に記載されるベクターゲノムは、複製され、rep及びcap遺伝子産物をコードする1つ以上のプラスミドも含む宿主細胞に導入されたときにウイルスベクター(粒子)にパッケージ化され得る。一実施形態では、ヘルパープラスミドも宿主細胞にトランスフェクトされて、宿主細胞によるベクター産生を補助する。一実施形態では、本明細書で使用されるAAVベクターは、例えば、その開示があらゆる目的のために参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、米国特許第7,906,111号に記載されるAAV9ベクターである。一実施形態では、AAVカプシドは、AAV9カプシドである。
【0056】
「空のカプシド」、「空のバイアル粒子」、及び「空のAAV」という用語は、その中にパッケージ化されたベクターゲノムを欠くAAVカプシドシェルを指す。
【0057】
本明細書に記載されるカプシド封入ベクターゲノムは、1つ以上の調節エレメント、例えば、導入遺伝子の上流に1つ以上の調節エレメントを含むことができる。カプシド封入ゲノムは、一実施形態では、5’から3’まで、5’ITRと、プロモーターと、導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、3’ITRと、を含む。別の実施形態では、封入ゲノムは、5’から3’まで、5’ITRと、エンハンサーと、プロモーターと、導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、3’ITRと、を含む。カプシド封入ゲノムは、更に別の実施形態では、5’から3’まで、5’ITRと、プロモーターと、SV40イントロンと、導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、3’ITRと、を含む。その上更に別の実施形態では、カプシド封入ゲノムは、5’から3’まで、5’ITRと、エンハンサーと、プロモーターと、SV40イントロンと、導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、3’ITRと、を含む。
【0058】
逆位末端反復
逆位末端反復(ITR)は、導入遺伝子に隣接するパリンドローム145ヌクレオチド配列である。AAVベクターゲノムの5’及び3’ITRは、宿主細胞ゲノム(例えば、ヒトにおける19番染色体)への導入遺伝子の統合及びAAV粒子への導入遺伝子のカプシド封入の両方のために必要である。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、いずれか1つのAAV血清型、例えば、AAVrh.74、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV13由来のITR配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるAAVベクターゲノムは、5’AAV2 ITR配列及び3’AAV2 ITR配列を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAAVベクターゲノムは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する5’AAV2 ITRを含む(表1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、5’AAV2 ITRは、配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、5’AAV2 ITRは、配列番号1からなる。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAAVベクターゲノムは、配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する3’AAV2 ITRを含む(表1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、3’AAV2 ITRは、配列番号7を含む。いくつかの実施形態では、3’AAV2 ITRは、配列番号7からなる。
【0062】
プロモーター
プロモーターは、導入遺伝子の発現を駆動し、典型的には、それらが発現を調節する導入遺伝子の上流(又は5’)に位置する。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、哺乳動物プロモーター、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、マウス、ウマ、ウシ、ブタ、ネコ、及びイヌプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換えAAVベクターゲノムは、導入遺伝子の高レベル発現を駆動するための強力で構成的に活性なプロモーターを含む。例えば、いくつかの実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター/エンハンサー、伸長因子1α(EF1α)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーター、又はCAGプロモーターである。
【0064】
プロモーターは、一実施形態では、MHCK7又はニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターである。
【0065】
ある特定の実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、導入遺伝子に動作可能に連結されて、筋細胞において高レベルかつ組織特異的な発現をもたらす、筋肉特異的プロモーターを含む。例えば、本発明の筋肉特異的プロモーターには、デスミン(DES、CSM1又はCSM2としても知られる)プロモーター、アルファ2アクチニン(ACTN2、CMD1AAとしても知られる)プロモーター、フィラミン-C(FLNC、アクチン結合様タンパク質(ABLP)、フィラミン-2(FLN2)、ABP-280、ABP280A、ABPA、ABPL、MFM5、又はMPD4としても知られる)プロモーター、筋形質/小胞体カルシウムATPase 1(ATP2A1、ATP2A又はSERCA1としても知られる)プロモーター、トロポニンI型1(TNNI1、SSTNI又は25TTNIとしても知られる)プロモーター、ミオシン-1(MYH1)プロモーター、リン酸化可能な高速骨格筋ミオシン軽鎖(MYLPF)プロモーター、ミオシン1(MYH1、MYHSA1、MYHa、MyC-2X/D、又はMyHC-2xとしても知られる)プロモーター、アルファ-3鎖トロポミオシン(TPM3、CFTD、NEM1、OK/Scl.5、TM-5、TM3、TM30、TM30nm、TM5、TPMsk3、TRK、h TM5、又はhscp30としても知られる)プロモーター、アンキリン反復ドメイン含有タンパク質2(ANKRD2、ARPPとしても知られる)プロモーター、ミオシン重鎖(MHC)プロモーター、ミオシン軽鎖(MLC)プロモーター、筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、Li et al.(1999.Nat Biotechnol.17:241-245)に記載される合成筋プロモーター、例えば、SPc5-12プロモーター、筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、dMCKプロモーター(それぞれ、Wang et al.(2008.Gene Ther.15:1489-1499)に記載されるように、MCK基礎プロモーターへのMCKエンハンサーの二重又は三重タンデムからなる)、及びハイブリッドプロモーター、例えば、ハイブリッドアルファ-ミオシン重鎖エンハンサー/MCKエンハンサー(MHCK7、770bp)、Wang et al.(2008.Gene Ther.15:1489-1499)に記載されるMCK-C5-12プロモーター、並びにRudeck S et al.(2016,Genesis.54(8):431-8)に記載される心筋及び骨格筋特異的ミオシンシャペロンUnc45b(195bp)プロモーターから選択されるプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。心臓特異的プロモーターの非限定的な例としては、カルセクエストリン2(PDIB2、FLJ26321、FLJ93514、又はCASQ2(ヒト遺伝子についてはGeneID 845)としても知られる)プロモーター、アンキリン反復ドメイン1(心臓アンキリン反復タンパク質としても知られる)プロモーター、サイトカイン誘導性核タンパク質プロモーター、肝臓アンキリン反復ドメイン1(ANKRD1、ヒト遺伝子についてはGeneID 27063)、ミオシン、軽鎖2、調節性、心臓、低速(MYL2、ヒト遺伝子についてはGeneID 4633)プロモーター、ミオシン、軽鎖3、アルカリ、脳室、骨格10低速(MYL3、ヒト遺伝子についてはGeneID 4634)プロモーター、ブロモドメイン含有7(BP75、CELTIX1、NAG4(BRD7、ヒト遺伝子についてはGeneID 29117としても知られる))プロモーター、アルファミオシン重鎖(αMHC)プロモーター、心臓トロポニンCプロモーター、及び心臓特異性を付与する心臓ナトリウム-カルシウム交換体(NCX1)のプロモーターが挙げられる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAAVベクターゲノムは、MHCK7プロモーターを含む。例えば、いくつかの実施形態では、MHCK7プロモーターは、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する(表1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、MHCK7プロモーターは、配列番号2を含む。いくつかの実施形態では、MHCK7プロモーターは、配列番号2からなる。
【0067】
SV40イントロン
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、SV40イントロンを含む。SV40イントロンは、遺伝子療法ベクターにおける一般的に使用されている調節エレメントであり、発現されたRNA転写物の翻訳及び安定性を増強する。
【0068】
ある特定の実施形態では、SV40イントロンは、プロモーターの下流(すなわち、3’)及び導入遺伝子の上流(すなわち、5’)にある。他の実施形態では、SV40イントロンは、導入遺伝子の下流(すなわち、3’)にあり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、SV40イントロンは、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する(表1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、SV40イントロンは、配列番号4を含む。いくつかの実施形態では、SV40イントロンは、配列番号4からなる。
【0070】
SV40-ポリ(A)テール
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、SV40ポリ(A)テールをコードする核酸配列を含む。SV40-ポリ(A)テール配列は、核からのRNA輸出、RNAの翻訳、及びRNA安定性を支援する、遺伝子療法ベクターにおける一般的に使用されている核酸要素である。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、配列番号6と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するSV40ポリ(A)テールをコードする配列を含む(表1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、SV40ポリ(A)テールをコードする配列は、配列番号6を含む。いくつかの実施形態では、SV40ポリ(A)テールをコードする配列は、配列番号6からなる。
【0072】
エンハンサー
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、1つ以上のエンハンサー配列を含む。エンハンサー配列は、一実施形態では、例えば、DNAループ形成及びプロモーターへの転写機構の動員を支援する転写因子及び共調節因子のための結合部位として機能することによって、導入遺伝子の転写レベルを増加させることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、エンハンサーは、5’ITRの下流(すなわち、3’)及びプロモーターの上流(すなわち、5’)にある。いくつかの実施形態では、エンハンサーは、プロモーターの下流(すなわち、3’)及び導入遺伝子の上流(すなわち、5’)にある。いくつかの実施形態では、エンハンサーは、導入遺伝子の下流(すなわち、3’)及び3’UTRの上流(すなわち、5’)にある。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の組換えAAVベクターゲノムは、筋細胞、例えば、骨格筋及び/又は心筋細胞における導入遺伝子の転写を著しく促進するエンハンサーを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組換えAAVベクターは、骨格シス調節モジュール4(SK-CRM4)エンハンサーを含む。例えば、いくつかの実施形態では、SK-CRM4エンハンサーは、配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する(表1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、SK-CRM4エンハンサーは、配列番号8を含む。いくつかの実施形態では、SK-CRM4エンハンサーは、配列番号8からなる。
【0076】
更に別の実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー核酸配列を含む。更なる実施形態では、CMVエンハンサーは、プロモーター配列の上流にある。例えば、一実施形態では、CMVエンハンサーは、配列番号9の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、CMVエンハンサーは、配列番号9と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する(表1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、CMVエンハンサーは、配列番号9を含む。いくつかの実施形態では、CMVエンハンサーは、配列番号9からなる。
【0077】
導入遺伝子
本発明とともに使用するための導入遺伝子は、導入遺伝子が送達される細胞(例えば、筋細胞)において発現されるポリペプチド又はその機能断片をコードする核酸配列である。
【0078】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、それが送達される宿主細胞のゲノムに組み込まれ得るか、又はエピソーム的に発現され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、導入遺伝子が送達される細胞によって内因的に発現されないポリペプチド又はその機能断片をコードすることができる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、導入遺伝子が送達される細胞によって内因的に発現されるポリペプチド又はその機能断片の変異型をコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、導入遺伝子が送達される細胞によって内因的に発現されるが、低レベルで発現されるタンパク質又はその機能断片をコードし、導入遺伝子の発現は、タンパク質又はその機能断片のより高い発現レベルをもたらす。いくつかの実施形態では、導入遺伝子が送達される細胞は、内因性タンパク質及び/又は機能的欠陥タンパク質の発現レベルの低下をもたらす1つ以上の変異を保有し、導入遺伝子の発現は、内因性タンパク質の発現の回復及び/又は欠陥タンパク質の機能的補充をもたらす。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、導入遺伝子が送達され、発現が誘導され得る細胞に導入されたときにサイレントである。
【0080】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、本明細書に記載される組換えAAVベクター中に存在するプロモーター及び/又は他の調節エレメントに対して異種(すなわち、異なる種に由来する)又は同種(すなわち、同じ種に由来する)であり得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、導入遺伝子が送達される細胞に対して異種又は同種であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、全長cDNA若しくはゲノムDNA配列、又は機能的活性を有するその断片若しくは変異体であり得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、ミニ遺伝子、すなわち、そのイントロン配列の一部、大部分、若しくは全てを欠く遺伝子配列であり得るか、又はそのイントロン配列の全てを含み得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、同種及び/又は異種cDNA断片並びに/若しくはゲノムDNA断片を含む、ハイブリッド核酸配列であり得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、野生型配列と比較して、1つ以上のヌクレオチド置換、欠失、及び/又は挿入を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明の導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子は、構造タンパク質をコードし得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、μDysポリペプチドをコードするマイクロジストロフィン(μDys)導入遺伝子である。更なる実施形態では、導入遺伝子によってコードされるμDysポリペプチドは、(i)アクチン結合部位を含むN末端領域(NTD)と、(ii)2~4個のヒンジ領域及び4~6個のスペクトリン反復を含む中央ロッドドメインと、を含む。更なる実施形態では、μDys導入遺伝子は、配列番号5に記載される核酸配列を含む。その上更なる実施形態では、μDys導入遺伝子は、配列番号5に記載される核酸配列からなる。別の実施形態では、μDysタンパク質をコードする配列は、配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0084】
一実施形態におけるμDys導入遺伝子は、あらゆる目的のために参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、米国特許第10,351,611号の配列番号4に記載される核酸配列を含む。別の実施形態では、μDysタンパク質をコードする配列は、米国特許第10,351,611号の配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0085】
一実施形態では、μDys導入遺伝子は、(i)アクチン結合部位を含むN末端領域(NTD)と、(ii)3個のヒンジ領域及び4個のスペクトリン反復を含むドメインと、(iii)システイン豊富ドメインと、を含む、μDysポリペプチドをコードする。μDys導入遺伝子は、更なる実施形態では、アクチン結合部位を含むN末端領域(NTD)と、(ii)ヒンジ領域1、2、及び4、並びにスペクトリン反復1、2、3、及び24を含む中央ロッドドメインと、(iii)システイン豊富ドメインと、を含む、μDysポリペプチドをコードする。
【0086】
μDys導入遺伝子は、一実施形態では、筋線維鞘神経一酸化窒素合成酵素(nNOS)標的化のための足場として報告されている、ジストロフィンスペクトリン反復16及び17をコードする。更なる実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復1及び24をコードする。別の実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復1、16及び17、23並びに24をコードする。更に別の実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復1、2、3及び24をコードする。その上更に別の実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復1、2、22、23及び24をコードする。
【0087】
μDys導入遺伝子は、一実施形態では、ジストロフィンヒンジ領域1及び4をコードする。別の実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンヒンジ領域1、3及び4をコードする。
【0088】
一実施形態では、μDys導入遺伝子は、
図14に記載されるμDysドメインの組み合わせのうちの1つを含む、μDysタンパク質をコードする。
【0089】
本明細書に記載されるAAVベクターゲノムは、(i)アクチン結合部位を含むNTDと、(ii)2~4個のヒンジ領域及び4~6個のスペクトリン反復を含む中央ロッドドメインと、(iii)システイン豊富ドメインと、を含む、μDysタンパク質をコードするμDys導入遺伝子を含む。例えば、一実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復16及び17をコードする。更なる実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復1及び24をコードする。別の実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復1、16及び17、23及び24をコードする。更に別の実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復1、2、3及び24をコードする。その上更に別の実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンスペクトリン反復1、2、22、23及び24をコードする。
【0090】
一実施形態におけるμDys導入遺伝子は、ジストロフィンヒンジ領域1及び4をコードする。別の実施形態では、μDys導入遺伝子は、ジストロフィンヒンジ領域1、3及び4をコードする。
【0091】
本明細書に記載されるAAV粒子は、一実施形態では、μDysタンパク質をコードするカプシド封入導入遺伝子を含む。例えば、いくつかの実施形態では、μDysタンパク質をコードする配列は、配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する(表1を参照されたい)。いくつかの実施形態では、μDysタンパク質をコードする配列は、配列番号5を含む。いくつかの実施形態では、μDysタンパク質をコードする配列は、配列番号5からなる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0092】
本明細書に開示される核酸要素は、標準的な分子生物学技術を使用してともにライゲーションされて、遺伝子構築物を形成することができる(例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.”(Sambrook et al.,1989)、“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel et al.,1987)を参照されたい)。
【0093】
本明細書に記載される遺伝子構築物は、最小限に(5’から3’まで)、(i)プロモーターと、(ii)導入遺伝子と、を含む。例えば、いくつかの実施形態では、プロモーターは、MHCK7プロモーターである。ある特定の実施形態では、導入遺伝子は、μDysをコードする核酸を含む。更なる実施形態では、当該遺伝子構築物は、1つ以上の追加の調節エレメントを含むことができる。一実施形態では、遺伝子構築物は、5’から3’まで、プロモーターと、導入遺伝子と、SV40ポリ(A)テールと、を含む。別の実施形態では、遺伝子構築物は、5’から3’まで、エンハンサーと、プロモーターと、導入遺伝子と、SV40イントロンと、SV40ポリ(A)テールと、を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、遺伝子構築物は、(5’から3’まで)、(i)プロモーターと、(ii)SV40イントロンと、(iii)導入遺伝子と、を含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、MHCK7プロモーターである。ある特定の実施形態では、導入遺伝子は、μDysをコードする核酸である。更なる実施形態では、当該遺伝子構築物は、1つ以上の追加の調節エレメントを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子構築物は、配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する連続核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子構築物は、配列番号10を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子構築物は、配列番号10からなる。
【化4】
【化5】
【0095】
いくつかの実施形態では、遺伝子構築物は、(5’から3’まで)(i)エンハンサーと、(ii)プロモーターと、(iii)導入遺伝子と、(iv)SV40ポリ(A)テールをコードする配列と、を含む。ある特定の実施形態では、エンハンサーは、SK-CRM4エンハンサーである。ある特定の実施形態では、プロモーターは、MHCK7プロモーターである。ある特定の実施形態では、導入遺伝子は、μDysをコードする核酸である。更なる実施形態では、当該遺伝子構築物は、1つ以上の追加の調節エレメントを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子構築物は、配列番号11と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する連続核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子構築物は、配列番号11の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子構築物は、配列番号11の核酸配列からなる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるベクターゲノムは、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子構築物は、配列番号12からなる。いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号12の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号12の核酸配列からなる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0097】
AAVベクター骨格
いくつかの実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、標準的な分子生物学技術を使用して、本明細書に記載される遺伝子構築物を適切なアデノウイルスプラスミド骨格に挿入することによって組み立てることができる(例えば、Sambrook et al.(1989).“Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.”、Ausubel et al.(1987).“Current Protocols in Molecular Biology”を参照されたい)。アデノウイルスプラスミド骨格は、一実施形態では、本明細書に記載される5’ITR配列及び3’ITR配列を含む。遺伝子構築物は、ITR配列間、5’ITR配列の下流、及び3’ITR配列の上流で、アデノウイルスプラスミド骨格に挿入される。
【0098】
例えば、一実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、配列番号10の配列を含む遺伝子構築物を、配列番号13の配列を含むアデノウイルスプラスミド骨格に挿入することによって組み立てることができる。
【0099】
別の実施形態では、本発明のAAVベクターゲノムは、配列番号11の配列を含む遺伝子構築物を、配列番号13の配列を含むアデノウイルスプラスミド骨格に挿入することによって組み立てることができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明のアデノウイルスプラスミド骨格は、配列番号13と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アデノウイルスプラスミド骨格は、配列番号13の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アデノウイルスプラスミド骨格は、以下に提供される配列番号13の核酸配列からなる。
【化10】
【化11】
【化12】
【0101】
アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子産生
AAV粒子は、任意の標準的な方法によって産生することができる(例えば、参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、WO2001/083692、Masic et al.2014.Molecular Therapy,22(11):1900-1909、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539、Muzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial,and Immunol.,158:97-129)、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984)、Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984)、Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251(1985)、McLaughlin et al,J.Virol,62:1963(1988)、及びLebkowski et al,Mol.Cell.Biol,7:349(1988).Samulski et al,J.Virol.,63:3822-3828(1989)、米国特許第5,173,414号、WO95/13365、米国特許第5,658.776号、WO95/13392、WO96/17947、PCT/US98/18600、WO97/09441(PCT/US96/14423)、WO97/08298(PCT/US96/13872)、WO97/21825(PCT/US96/20777)、WO97/06243(PCT/FR96/01064)、WO99/11764、Perrin et al.Vaccine 13:1244-1250(1995)、Paul et al.Human Gene Therapy 4:609-615(1993)、Clark et al.Gene Therapy 3:1124-1132(1996)、米国特許 第5,786,211号、米国特許第5,871,982号、及び米国特許 第6,258,595号を参照されたい)。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAAVベクターゲノムは、DNA産生を拡張するためにEscherichia coliに形質転換し、任意の標準的な方法(例えば、Maxi-Prep K、Thermo Scientific)を使用して精製し、制限消化又は配列決定によって検証することができる。次いで、精製されたAAVベクターゲノムは、AAV rep及びAAV cap遺伝子を含むプラスミド、並びにAAVヘルパープラスミドと組み合わせて、標準的な方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリエチレンイミン、エレクトロポレーション、及び同等物)を使用して、適切なパッケージング細胞株(例えば、HEK293、HeLa、又はPerC.6、MRC-5、WI-38、Vera、及びFRhL-2細胞)にトランスフェクトすることができる。AAV rep遺伝子及びcap遺伝子は、任意のAAV血清型に由来し得、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh.74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びAAV13を含むがこれらに限定されない、組換えAAVベクターITRのものと同じであるか、又は異なり得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるAAV粒子は、それぞれ、AAV2及びAAV9に由来するAAV rep及びcap遺伝子を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAAV粒子は、パッケージング細胞から採取され、塩化セシウム超遠心分離勾配又はカラムクロマトグラフィーなどによる、当該技術分野において標準的な方法(例えば、参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、Clark et al,Hum.Gene Ther.,10(6):1031-1039(1999)、Schenpp and Clark,Methods Mol.Med.,69 427-443(2002)、米国特許第6,566,118号及びWO98/09657)によって精製することができる。
【0103】
医薬組成物
本明細書で提供される医薬組成物は、髄腔内医薬組成物であり、すなわち、髄腔内経路を介した送達のために意図される。髄腔内組成物は、本明細書に記載されるように、μDys導入遺伝子をカプシド封入する有効量のAAV粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、本発明のAAV粒子と、薬学的に許容可能な担体と、任意選択的に、他の薬剤、医薬品、安定剤、緩衝剤、担体、アジュバント、希釈剤などを含む。「薬学的に許容可能な」とは、有毒ではないか、又は別様に有害ではない材料を意味し、すなわち、材料は、いずれの望ましくない生物学的効果も引き起こすことなく対象に投与され得る。医薬組成物は、髄腔内医薬組成物である。有効量のAAV粒子は、同じベクターゲノム成分、又は同じ導入遺伝子を含むIV AAV医薬組成物と比較して、より低用量のベクターゲノムを含む。例えば、一実施形態では、有効量の本明細書に記載されるAAV粒子は、同じAAV粒子又は同じマイクロジストロフィン導入遺伝子を含む有効量のIV組成物のよりも約90%以下のベクターゲノムである。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、任意選択的に、医薬組成物が送達される対象の血液と等張である、滅菌水性及び非水性注射溶液を含む。医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び組成物を投与される意図された対象の血液と等張にする溶質を含有することができる。水性及び非水性滅菌懸濁液、溶液、並びにエマルションは、懸濁剤及び増粘剤を含むことができる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール溶液/水溶液、エマルション、又は懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝媒体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能なビヒクルを含み、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、又は固定油を含むことができる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガス、並びに同等物などの防腐剤及び他の添加剤も存在し得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単位/用量又は複数回用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアル中で提示することができ、使用の直前に、滅菌液体担体、例えば、生理食塩水又は注射用蒸留水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、IV、筋肉内、又は脳室内(ICV)投与のために代替的に処方することができる。
【0107】
治療の方法
本発明の一態様は、有効量の本明細書に記載されるAAV粒子を含む髄腔内組成物を単回用量で髄腔内投与することを含む、ジストロフィノパチーの治療を必要とする対象においてジストロフィノパチーを治療する方法に関する。本方法は、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、又はDMD関連拡張型心筋症(DCM)などのジストロフィノパチーを治療するために、AAV粒子を対象の心臓及び/又は骨格に優先的に送達するために採用することができる。理論に束縛されることを所望することなく、AAV粒子、及びジストロフィノパチーを治療するために、同粒子の送達を必要とする対象に同粒子を送達するための方法は、少なくとも本発明が、(i)実質的に同じ又はより良好な治療利益を達成するために、IV送達よりも著しく低い投与量を可能にし、それによって、ウイルス負荷及び毒性並びに他の副作用を低減し、かつ/又は(ii)肝組織と比較して、心筋及び/又は骨格筋組織における優先的な導入遺伝子標的化及び発現を可能にし、それによって、導入遺伝子を目的の細胞に標的化し、静脈内送達されるAAVベクターと比較して、より優れた治療利益を提供し、(iii)製造負担の減少に対応する、必要とされる低投与量により、IV製剤と比較して、より大きな患者集団に利益をもたらすことができるため、既知のAAV粒子及び治療方法よりも優れた利益を提供する。
【0108】
一実施形態では、治療を必要とする対象を治療する方法であって、μDys導入遺伝子を含むベクターゲノムをカプシド封入するAAVカプシドを含む有効量のAAV粒子を含む組成物を、単回用量で対象に髄腔内投与することを含む、方法が提供される。更なる実施形態では、対象は、髄腔内投与の前にトレンデレンブルク位に位置付けられる。一実施形態では、組成物の髄腔内投与は、非イオン性低浸透圧造影剤の非存在下にある。別の実施形態では、髄腔内投与は、非イオン性低浸透圧造影剤の存在下にある。
【0109】
本発明は、部分的に、有効量の本明細書に記載されるAAV粒子の髄腔内投与が、対象の肝組織における導入遺伝子発現と比較して、対象の骨格筋及び/又は心筋においてより高いレベルでμDys導入遺伝子発現を可能にするという所見に基づく。例えば、一実施形態では、有効量のAAV粒子、例えば、AAV9粒子の投与後に、μDys導入遺伝子は、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現のレベルと比較して、対象の骨格筋においてより高いレベルで発現される。別の実施形態では、有効量のAAV粒子、例えば、組換えAAV9粒子の投与後に、μDys導入遺伝子は、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現のレベルと比較して、対象の心筋においてより高いレベルで発現される。更に別の実施形態では、有効量のAAV粒子、例えば、組換えAAV9粒子の投与後に、μDys導入遺伝子は、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現のレベルと比較して、対象の骨格筋及び心筋においてより高いレベルで発現される。
【0110】
本明細書に記載される実施形態によれば、導入遺伝子発現は、遺伝子発現(すなわち、mRNAレベルを測定することによる)又は対応するタンパク質の発現を指し得る。異なる組織型における導入遺伝子発現のレベルを決定するために、実質的に同じ量の組織、又は実質的に同じ数の細胞が、遺伝子発現レベルについて比較されるべきであることが当業者によって理解されるであろう。骨格筋及び/又は心筋におけるより高いレベルのμDys導入遺伝子発現は、一実施形態では、肝組織におけるμDys導入遺伝子発現の量と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%高い。更なる実施形態では、μDys導入遺伝子は、配列番号5に記載される核酸配列を含む。
【0111】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、μDys導入遺伝子をカプシド封入する有効用量のAAV粒子を送達する方法は、静脈内投与されるμDys導入遺伝子をカプシド封入する実質的に同一用量のAAV粒子と比較して、骨格筋及び/又は心筋においてより優れたμ導入遺伝子発現を提供する。別の実施形態では、有効用量のAAV粒子を送達する方法は、μDys導入遺伝子をカプシド封入する有効用量のAAV粒子が静脈内送達されるときと比較して、骨格筋及び/又は心筋においてより優れたμDys導入遺伝子発現を提供する。導入遺伝子発現は、一実施形態では、有効量のAAV粒子を含む組成物の投与の約1週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約18ヶ月、又は約24ヶ月後に測定される。導入遺伝子は、一実施形態では、配列番号5に示される核酸配列を含む。
【0112】
別の実施形態では、本発明のμDys導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子は、髄腔内投与されると、同一のベクターゲノム用量が静脈内投与されるときの同じ組織型における導入遺伝子発現と比較して、骨格筋及び/又は心筋において少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%優れた導入遺伝子発現を提供する。同一のベクターゲノムは、同じ調節エレメント及び/又は同一の導入遺伝子配列若しくは同じAAVカプシドを含む必要はない。しかしながら、髄腔内及び静脈内投与される導入遺伝子は、μDysポリペプチドをコードする。
【0113】
更に別の実施形態では、髄腔内投与されたAAV粒子の投与後に測定される[(骨格筋及び/又は心筋μDys導入遺伝子発現)]/(肝臓μDys導入遺伝子発現)]の比は、μDys導入遺伝子をカプシド封入する同一用量のAAV粒子が静脈内投与されるときの同じ比よりも大きい。導入遺伝子発現は、一実施形態では、有効量のAAV粒子を含む組成物の投与の約1週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約18ヶ月、約24ヶ月、約36ヶ月、約48ヶ月、又は約60ヶ月後に測定される。
【0114】
一実施形態では、μDys導入遺伝子をカプシド封入する有効量のAAV粒子は、髄腔内投与されると、同じ用量で静脈内投与されるμDys導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子と比較して、より優れた有効性又はより優れた治療利益を提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分な髄腔内(IT)ベクターゲノム(vg)用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なμDys導入遺伝子をコードするベクターゲノムの静脈内(IV)vg用量の約90%、約90%以下、約85%、約85%以下、約80%、約80%以下、約75%、約75%以下、約70%、約70%以下、約60%、約60%以下、約50%、約50%以下、約40%、約40%以下、約30%、約30%以下、約25%、約25%以下、約10%、又は約10%以下である。ITベクターゲノムは、μDys導入遺伝子を含む。IT及びIV μDys導入遺伝子は、同じ核酸配列を含む必要はない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約90%以下である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約75%以下である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約50%以下である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約25%以下である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約10%以下である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約10~40倍少ない。一実施形態における治療応答は、筋組織、例えば、心筋及び/又は骨格筋組織におけるμDys導入遺伝子発現である。別の実施形態では、治療応答は、ノーススター歩行評価(NSAA)におけるベースライン(すなわち、治療前)からの対象のスコアの増加である。更なる実施形態では、導入遺伝子は、μDysポリペプチドをコードする。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分な髄腔内(IT)ベクターゲノム(vg)用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分な静脈内(IV)vg用量よりも低く、ITベクターゲノム及びIVベクターゲノムは各々、μDysポリペプチドをコードする導入遺伝子を含む。しかしながら、それぞれの導入遺伝子は、同じ核酸配列を含む必要はない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、約65倍、約70倍、約75倍、約80倍、約85倍、約90倍、約95倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約500倍、又は約1000倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約10倍~約20倍、約10倍~約30倍、約10倍~約40倍、約10倍~約50倍、約10倍~約75倍、約10倍~約100倍、又は約10倍~約1000倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約25倍~約30倍、約25倍~約40倍、約25倍~約50倍、約25倍~約75倍、約25倍~約100倍、約25倍~約500倍、又は約25倍~約1000倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約50倍~約75倍、約50倍~約100倍、約50倍~約250倍、約50倍~約500倍、又は約50倍~約1000倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約100倍~約200倍、約100倍~約250倍、約100倍~約500倍、又は約100倍~約1000倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約10~40倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約25~40倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約10倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約25倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約40倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約50倍低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療方法のうちの1つについて治療応答を提供するために十分なIT vg用量は、同じ又は実質的に同じ治療応答を提供するために十分なIV vg用量よりも約100倍低い。一実施形態における治療応答は、筋組織、例えば、心筋及び/又は骨格筋組織における導入遺伝子発現である。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるμDys導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含む、髄腔内(IT)組成物の有効用量は、μDys導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含む、静脈内(IV)組成物の有効用量よりも低い。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効用量は、IV組成物の有効量よりも約90%、約90%以下、約85%、約85%以下、約80%、約80%以下、約75%、約75%以下、約70%、約70%以下、約60%、約60%以下、約50%、約50%以下、約40%、約40%以下、約30%、約30%以下、約25%、約25%以下、約10%、又は約10%以下のベクターゲノムである。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、IV組成物の有効量よりも約90%以下のベクターゲノムである。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、IV組成物の有効量よりも約75%以下のベクターゲノムである。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、IV組成物の有効量よりも約50%以下のベクターゲノムである。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、IV組成物の有効量よりも約25%以下のベクターゲノムである。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、IV組成物の有効量よりも約10%以下のベクターゲノムである。
【0118】
いくつかの実施形態では、IT組成物中のAAV粒子の有効用量は、IV組成物中のAAV粒子の有効用量よりも低用量であり、各AAV粒子は、μDys導入遺伝子をカプシド封入する。いくつかの実施形態では、IT組成物中のAAV粒子の有効用量は、IV組成物中のAAV粒子の有効用量よりも約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、約65倍、約70倍、約75倍、約80倍、約85倍、約90倍、約95倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約500倍、又は約1000倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量(有効用量)は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量(有効用量)よりも約10倍~約20倍、約10倍~約30倍、約10倍~約40倍、約10倍~約50倍、約10倍~約75倍、約10倍~約100倍、又は約10倍~約1000倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含む髄腔内組成物の有効量は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約25倍~約30倍、約25倍~約40倍、約25倍~約50倍、約25倍~約75倍、約25倍~約100倍、約25倍~約500倍、又は約25倍~約1000倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含む髄腔内組成物の有効量は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約50倍~約75倍、約50倍~約100倍、約50倍~約250倍、約50倍~約500倍、又は約50倍~約1000倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、同じAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約100倍~約200倍、約100倍~約250倍、約100倍~約500倍、又は約100倍~約1000倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約25倍~約40倍低い。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約10倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約25倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約40倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約50倍低い用量である。いくつかの実施形態では、AAV粒子を含むIT組成物の有効量は、同じAAV粒子、又はIT組成物中のAAV粒子によってカプシド封入された導入遺伝子と同じポリペプチドをコードする導入遺伝子をカプシド封入するAAV粒子を含むIV組成物の有効量よりも約100倍低い用量である。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、μDys導入遺伝子である。
【0119】
本明細書で提供される治療方法の一実施形態では、治療することは、治療前の血清CKレベルと比較して、対象における血清クレアチンキナーゼ(CK)レベルを減少させることを含む。いくつかの実施形態では、血清CKレベルは、治療前の血清CKレベルと比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上減少する。更なる実施形態では、血清CKレベルは、AAV粒子を用いた治療の前に、及びAAV粒子の投与後約12ヶ月、約18ヶ月、約24ヶ月、又は約30ヶ月で評価される。更なる実施形態では、AAV粒子は、μDys導入遺伝子をカプシド封入するAAV9カプシドを含む。
【0120】
本明細書で提供される髄腔内治療方法の別の実施形態では、治療することは、有効量の同じAAV粒子、又はμDys導入遺伝子をカプシド封入する異なるAAV粒子のIV投与を介して治療される対象と比較して、治療されている対象における副作用の数を減少させること、又は1つ以上の副作用の重症度を減少させることを含む。髄腔内投与されるAAV粒子は、一実施形態では、AAV9粒子である。
【0121】
いくつかの実施形態では、本発明のAAV粒子、又は同粒子を含む医薬組成物を使用して、DMD、ベッカー型筋ジストロフィー、及びDCMを含むがこれらに限定されない、ジストロフィノパチーを治療することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明のAAV粒子は、治療を必要とする対象、例えば、DMDを有する対象に、1回又は複数回投与される。いくつかの実施形態では、AAV粒子は、治療を必要とする対象に、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、又はそれ以上投与される。好ましい実施形態では、AAV粒子を含む本明細書で提供される髄腔内組成物は、治療を必要とする対象に1回投与される。更なる実施形態では、AAV粒子は、AAV9粒子である。
【0123】
一実施形態では、本明細書に記載されるμDys導入遺伝子をカプシド封入するAAVカプシドを含む、有効量のAAV粒子が、治療を必要とする対象においてDMDを治療するための方法で使用される。更なる実施形態では、対象は、AAV粒子を含む組成物を単回用量で髄腔内投与される。更なる実施形態では、AAV粒子は、AAV9粒子である。その上更なる実施形態では、対象は、投与前にトレンデレンブルク位に位置付けられる。
【0124】
DMDを治療するための方法の一実施形態では、治療を必要とする対象は、μDys導入遺伝子をカプシド封入するAAVカプシドを含む有効量のAAV粒子を含む組成物を、単回用量で髄腔内投与される。μDys導入遺伝子は、一実施形態では、
図14に記載されるジストロフィン要素の組み合わせを含む。一実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号5、10、11、又は12に記載される核酸配列を含む。
【0125】
DMDを治療するための方法の一実施形態では、治療することは、ノーススター歩行評価(NSAA)におけるベースライン(すなわち、治療前)から対象のスコアを増加させることを含む。NSAAは、歩行可能なDMD対象における機能的運動能力を測定するために使用される17項目の評定尺度である。本尺度は、完全に独立した機能を示す最大スコアとして34を含む、序数である。各活動は、0(独立して達成することができない)、1(修正された方法であるが、別の人からの身体的支援を受けずに目標を達成する)、又は2(正常-活動の明らかな修正なし)のいずれかとして等級分けされる。例えば、各々の開示が、あらゆる目的のために参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Mazonne et al.(2009).Neuromuscular Disorders 19,pp.458-461、及びresearchrom.com/masterlist/view/18#form2を参照されたい。ベースラインからの変化は、一実施形態では、髄腔内組成物の投与の12ヶ月後に測定される。別の実施形態では、ベースラインからの変化は、髄腔内組成物の投与の18ヶ月後に測定される。別の実施形態では、ベースラインからの変化は、髄腔内組成物の投与の24ヶ月後に測定される。更に別の実施形態では、投与の12ヶ月後に測定されるNSAAにおけるベースラインからの対象のスコアの増加は、投与後18ヶ月で実質的に変化していないか、又は増加する。その上更に別の実施形態では、投与の12ヶ月後に測定されるNSAAにおけるベースラインからの対象のスコアの増加は、投与後24ヶ月で実質的に変化していないか、又は増加する。その上更に別の実施形態では、投与の12ヶ月後に測定されるNSAAにおけるベースラインからの対象のスコアの増加は、投与後60ヶ月で実質的に変化していないか、又は増加する。
【0126】
NSAAスコアを増加させることは、一実施形態では、NSAAスコアを約5~約25、約5~約20、約5~約15、又は約5~約10だけ増加させることを含む。別の実施形態では、NSAAスコアを増加させることは、NSAAスコアを約2点~約12点増加させることを含む。別の実施形態では、NSAAスコアを増加させることは、NSAAスコアを約2点~約10点増加させることを含む。更に別の実施形態では、NSAAスコアを増加させることは、NSAAスコアを約3点~約10点増加させることを含む。更に別の実施形態では、NSAAスコアを増加させることは、スコアを約4点~約10点増加させることを含む。その上更に別の実施形態では、NSAAスコアを増加させることは、スコアを約2点~約8点増加させることを含む。別の実施形態では、NSAAスコアを増加させることは、NSAAスコアを約2点~約6点増加させることを含む。
【0127】
DMDを治療するための方法の一実施形態では、治療を必要とする対象は、μDys導入遺伝子をカプシド封入する有効量のAAVベクターを、単回用量で髄腔内投与される。μDys導入遺伝子は、一実施形態では、
図14に記載されるジストロフィン要素の組み合わせを含む。一実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号5、10、11、又は12に記載される核酸配列を含む。μDys導入遺伝子をカプシド封入するAAVベクターの有効量は、一実施形態では、治療前に歩行したメートル数と比較して、6分間歩行試験(6MWT)において歩行したメートル数を増加させるために十分な量である。
【0128】
本発明のAAV粒子、又は同粒子を含む医薬組成物は、単回用量として、又は分割用量として投与される。いくつかの実施形態では、用量は、単回投与として、又は分割投与として送達される、1×109~1×1016ベクターゲノム(vg)、2.5×1013~1×1015vg、5×1013~1×1015vg、7.5×1013~1×1015vg、1×1014~1×1015vg、2.5×1014~1×1015vg、5×1014~1×1015vg、7.5×1014~1×1015vg、1×1013~7.5×1014vg、2.5×1013~7.5×1014vg、5×1013~7.5×1014vg、7.5×1013~7.5×1014vg、1×1013~5.0×1014vg、2.5×1013~5.0×1014vg、5×1013~5.0×1014vg、7.5×1013~5.0×1014vg、1×1013~2.5×1014vg、2.5×1013~2.5×1014vg、5×1013~2.5×1014vg、7.5×1013~2.5×1014vg、1×1013~1×1014vg、2.5×1013~1×1014vg、5×1013~1×1014vg、7.5×1013~1×1014vgである。例えば、いくつかの実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、2.5×1013vgの単回用量として投与される。別の実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、5×1013vgの単回用量として投与される。更に別の実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、1×1014vgの単回用量として投与される。
【0129】
本発明のAAV粒子、又は同粒子を含む医薬組成物は、単回髄腔内用量として投与される。いくつかの実施形態では、髄腔内送達のための用量は、単回用量又は分割用量として送達される、1×109~1×1016ベクターゲノム(vg)、1×1010~1×1016vg、1×1011~1×1016vg、1×1012~1×1016vg、1×1013~1×1016vg、1×1014~1×1016vg、1×1015~1×1016vg、1×109~1×1015vg、1×109~1×1014vg、1×109~1×1013vg、1×109~1×1012vg、1×109~1×1011vg、1×109~1×1010vg、1×1013~1×1015ベクターvg、2.5×1013~1×1015vg、5×1013~1×1015vg、7.5×1013~1×1015vg、1×1014~1×1015vg、2.5×1014~1×1015vg、5×1014~1×1015vg、7.5×1014~1×1015vg、1×1013~7.5×1014vg、2.5×1013~7.5×1014vg、5×1013~7.5×1014vg、7.5×1013~7.5×1014vg、1×1013~5.0×1014vg、2.5×1013~5.0×1014vg、5×1013~5.0×1014vg、7.5×1013~5.0×1014vg、1×1013~2.5×1014vg、2.5×1013~2.5×1014vg、5×1013~2.5×1014vg、7.5×1013~2.5×1014vg、1×1013~1×1014vg、2.5×1013~1×1014vg、5×1013~1×1014vg、7.5×1013~1×1014vgであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、2.5×1013vgの単回髄腔内用量として投与することができる。別の実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、5×1013vgの単回髄腔内用量として投与することができる。更に別の実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、1×1014vgの単回髄腔内用量として投与することができる。
【0130】
他の実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、単回又は分割脳室内用量として投与することができる。いくつかの実施形態では、脳室内送達のための用量は、1×1013~1×1015vg、2.5×1013~1×1015vg、5×1013~1×1015vg、7.5×1013~1×1015vg、1×1014~1×1015vg、2.5×1014~1×1015vg、5×1014~1×1015vg、7.5×1014~1×1015vg、1×1013~7.5×1014vg、2.5×1013~7.5×1014vg、5×1013~7.5×1014vg、7.5×1013~7.5×1014vg、1×1013~5.0×1014vg、2.5×1013~5.0×1014vg、5×1013~5.0×1014vg、7.5×1013~5.0×1014vg、1×1013~2.5×1014vg、2.5×1013~2.5×1014vg、5×1013~2.5×1014vg、7.5×1013~2.5×1014vg、1×1013~1×1014vg、2.5×1013~1×1014vg、5×1013~1×1014vg、7.5×1013~1×1014vgであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、2.5×1013vgの単回脳室内用量として投与することができる。別の実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、5×1013vgの単回脳室内用量として投与することができる。更に別の実施形態では、本発明のAAV粒子又は同粒子を含む医薬組成物は、1×1014vgの単回脳室内用量として投与することができる。
【実施例】
【0131】
ここで一般的に記載されている本発明は、本発明のある特定の態様及び実施形態の例証の目的のためのみに含まれる、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解され、本発明を限定することを意図していない。
【0132】
厳選した方法
生後1日目(p1)での脳室内(ICV)注射
大脳半球を介して新生子マウス(p1)の脳室内注射(ICV)を実施する。新生マウスは、完全に覚醒して注射される。針が2mmの注射深度について印付けられていることを確認する。注射部位は、耳と眼との間の中間点である(場所は、矢状縫合の約0.7~1.0mm外側、及び新生前項から0.7~1.0mm尾側である)。P0が、マウスの出生日(DoB)として指定される。動物は、同腹の子の発見の36時間以内に注射され得る。
【0133】
過剰な量の投薬溶液が、注射部位から漏出していると判定されるか、又は注射部位が完全に見失われた場合、動物は研究から除外される。
【0134】
生後28日目(p28)での脳室内(ICV)注射
ハミルトンシリンジが、所望の体積の投薬溶液を装填される。標準体積は、注射部位当たり8μlである。動物が、ケージから個々に取り出され、麻酔チャンバーに入れられる。チャンバーに入ると、動物は、麻酔される。管類が、注射中の継続的な麻酔を可能にするために、麻酔器から定位固定装置に接続される。それぞれの動物は、取り出されて定位固定装置上に配置される前に、約2分間チャンバー内に留まる。動物が定位固定装置上に置かれると、注射のための座標は、内側/外側(M/L):+/-1.00mm、前方/後方(A/P):-0.5~-0.8mm、背側/腹側(D/F):-2.5mmに設定される。
【0135】
ヨードスワブが、滅菌目的のために動物の頭皮上の切開部位に適用される。メスを使用して、小切開が動物の頭皮に加えられ、頭皮が穏やかに剥がされて、頭蓋領域を露出させる。針が所望の場所に来ると、シリンジプランジャーが、ゆっくりと押し下げられ、投薬溶液を頭蓋腔に注入する。注射部位は、注射の品質を確認するために注射中及び注射直後に監視される。
【0136】
筋肉の準備
動物が適切な年齢に達すると、計量され、腹腔内(i.p.)注射を介して麻酔される(ケタミン[80mg/kg]、アセプロマジン[0.5mg/kg]、及びキシラジン[16mg/kg])。次いで、組織の切開が実行される。鋏が、足首の皮膚を切断するために使用され、次いで、両方の下腿の皮膚が後方に引かれて、下腿筋及び上腿筋を露出させる。片側の前脛骨筋が、その挿入点の近くで解離され、最も近い0.1mgまで計量され、次いで、廃棄される。次いで、4.0縫合糸が、長趾伸筋(EDL)の近位端及び遠位端の筋腱間接合部において結ばれ、次いで、解離され、リンゲル溶液(137mmのNaCl、5mmのKCl、2mmのCaCl2、1mmのMgSO4、1mmのNaH2PO4、24mmのNaHCO3、10mg/リットルのクラーレを含む11mmのグルコース)に入れられ、これが、室温で保たれる。
【0137】
EDLを解離した後、腹部が開かれ、1ccシリンジを使用して、下大静脈から採血される(約300~500μL)。血液は、室温で25~35分間静置し、次いで、4℃において3,500×gで10分間遠心分離される。上清を回転させた後、血清が単離され、微小遠心管に入れられ、-80℃で凍結される。
【0138】
次いで、アキレス腱が切断され、後方に引かれて、ヒラメ筋、足底筋、及び腓腹筋を露出させる。ヒラメ筋が、解離され、管に入れられ、液体窒素冷却イソペンタン中で凍結される。足底筋が、腓腹筋がない状態で鈍的解離され、次いで、可能な限り近位に切断され、管に入れられ、液体窒素冷却イソペンタン中で凍結され、-80℃で保管される。
【0139】
腓腹筋が、可能な限り近位に切断され、最も近い0.1mgまで計量され、管に入れられ、凍結される。反対側からの前脛骨筋が、遊離した状態で解離され、最も近い0.1mgまで計量され、静止長においてコルク上でピン留めされる。同じ側からのEDLもまた、遊離した状態で解離され、静止長において同じコルク上でピン留めされる。次いで、コルクは、液体窒素冷却イソペンタンに浸漬される。約30~約45秒後、コルクは、ドライアイス上に置かれ、箔に包まれ、-80℃で保管される。大腿四頭筋が、解離され、管に入れられ、液体窒素冷却イソペンタン中で凍結され、-80℃で保管される。肝臓の小片が、解離され、管に入れられ、液体窒素冷却イソペンタン中で凍結され、-80℃で保管される。横隔膜が、解離され、半分に折り畳まれ、次いで、再び折り畳まれ、次いで、コルクの上に置かれ、ピン留めされる。次いで、コルクは、液体窒素冷却イソペンタンに浸漬される。30~45秒後、コルクは、ドライアイス上に置かれ、箔に包まれ、-80℃で保管される。
【0140】
心臓全体が、解離され、最も近い0.1mgまで計量され、管に入れられ、液体窒素冷却イソペンタン中で凍結される。管は、キャップを付けられ、-80℃で保管するまで液体窒素に入れられる。
【0141】
実施例1:組換えアデノ随伴ウイルス粒子の生成
マイクロジストロフィン遺伝子構築物の分子クローニング
MHCK7プロモーター及びSV40イントロンを、μDys及びSV40ポリ(A)シグナルをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結することによって、本明細書ではINS1201と称され、以前はMTS-001として知られていた、マイクロジストロフィン(μDys)をコードする遺伝子構築物を合成した(
図1A)。MHCK7プロモーターを含むSK-CRM4エンハンサーを、SV40ポリ(A)シグナルをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結することによって、代替的なμDysをコードする遺伝子構築物(本明細書ではINS1212と称され、以前はMTS-003として知られていた)を合成した(
図1B)。INS1201及びINS1212遺伝子構築物を、Puc57ベクター骨格において生成した。INS1201及びINS1212構築物を、DNA配列決定法によって確認し、4542bp及び4714構築物を、それぞれ、NruI制限消化によって単離し、適切なAAV骨格への後続のクローニングのためにゲル精製した。
【0142】
単離されたINS1201及びINS1212遺伝子構築物を各々、独立して、ITR部位を含むゲル精製されたpSZ01ベクター骨格、及びNruI制限消化によって線形化/単離されたカナマイシン耐性遺伝子に鈍的クローニングした。pSZ01ベクター骨格を有するINS1212構築物及びpSZ01ベクター骨格を有するINS1212構築物のT4ライゲーション後、NEB Monarch(登録商標)Plasmid Miniprepキットを使用して、DNAをE.coliに形質転換し、増殖させ、精製した。完全なpSZ01-INS1201又はpsZ01-INS1212プラスミドクローンを産生するためにライゲーションに成功した遺伝子構築物を、HindIII/BsaI制限消化によって識別した。
【0143】
Maxi-Prepキット(GeneJET Endo-free Plasmid Maxiprep Kit、ThermoScientific)を使用した、E.coliにおける細菌形質転換によって、pSZ01-INS1201及びpsZ01-INS1212クローンを拡張した。正しいプラスミド配列を、BsaI/HindIII消化によって再確認した(
図1C、レーン1及び3)。加えて、pSZ01ベクター骨格内にINS1201及びINS1212を含むITR部位の正しい組み込みの更なる確認として、SmaIを使用した制限消化(
図1C、レーン2及び4)を実施した。
一過性のトランスフェクション及びウイルスパッケージング
【0144】
標準的なリン酸カルシムトランスフェクション法(例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Vandendriessche et al.(2007.J Thromb Haemost 5:16-24)に記載される)を使用して、アデノウイルスヘルパープラスミド、及びAAV9 cap遺伝子とともにAAV2 rep遺伝子を送達するキメラパッケージング構築物と組み合わせて、確認されたpSZ01-INS1201及びpsZ01-INS1212 AAVベクターをHEK293細胞に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、AAV粒子を採取し、連続2回の塩化セシウム密度勾配超遠心分離を使用して精製した。SDS-PAGEによって分解され、銀染色された1×10
13vg AAV2標準(
図2、レーン3(0.5μl)、レーン4(1μl)、レーン5(2μl)、レーン6(4μl))と比較することによって、各1μlの精製されたINS1201-AAV9(
図2、レーン1)及びINS1212-AAV9(
図2、レーン2)を滴定した。
【0145】
実施例2:AAV9 μDys(INS1201-AAV9及びINS1212-AAV9)の筋肉内送達が、MTXマウスにおけるμDys発現の増加をもたらす。
INS1201-AAV9及びINS1212-AAV9を、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの一般的なマウスモデルであるmdxマウスの腓腹筋に筋肉内注射した(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Rodino-Klapac et al.(2013)Hum Mol Genet.22(24):4929-37を参照されたい)。
図3Aに示されるように、筋肉内注射の21日後、2.7×10
11vgのINS1201-AAV9(iii)又はINS1212-AAV9(iv)を注射された腓腹筋は、非注射mdxマウスよりも著しく高いレベルで(i)、及び野生型C57/Blマウスと同等のレベルで(ii)、μDyの広範な発現を示した。
図3Bは同様に、2.7×10
11vgのINS1212-AAV9を用いた筋肉内注射の21日後にmdxマウスにおいてμDysの高レベル発現を示す。
【0146】
実施例3:AAV9 μDys(INS1201-AAV9及びINS1212-AAV9)の脳室内送達が、MDXマウスにおいてμDys発現の増加をもたらす。
INS1201-AAV9を、生後1日目(p1)にmdxマウスに脳室内注射し、組織試料を収集し、ジストロフィンについて分析した。
図4Aに示されるように、1.8×10
11vgのAAVを用いた脳室内(ICV)注射の21日後、INS1201-AAV9は、mdx動物の腓腹筋(i)、前脛骨筋(ii)、大腿四頭筋(iii)、臀筋(iv)、三頭筋(v)、横隔膜(vi)、及び心臓(vii)の筋細胞におけるμDysの発現を効率的に標的化してもたらし、肝臓(viii)では発現がほとんど又は全くなかった。同様に、
図4Bに示されるように、9×10
10vgのAAVを用いたICV注射の21日後、INS1201-AAV9は、腓腹筋(i)、前脛骨筋(ii)、大腿四頭筋(iii)、臀筋(iv)、三頭筋(v)、横隔膜(vi)、及び心臓(vii)の筋細胞におけるμDysの発現を効率的に標的化してもたらし、肝臓(viii)では発現がほとんど又は全くなかった。
【0147】
INS1212-AAV9も、p1でmdxマウスに脳室内注射し、組織試料を収集し、ジストロフィンについて免疫蛍光染色した。
図5に示されるように、9×10
10vgのAAVを用いたICV注射の21日後、INS1212-AAV9は、腓腹筋(i)、前脛骨筋(ii)、大腿四頭筋(iii)、臀筋(iv)、三頭筋(v)、横隔膜(vi)、及び心臓(vii)の筋細胞におけるμDysの発現を効率的に標的化してもたらし、肝臓(viii)では発現がほとんど又は全くなかった。
【0148】
図6Aのヘマトキシリン及びエオシン染色試料に示されるように、9×10
10vg(ii)及び2.7×10
11vg(iii)のINS1201-AAV9を用いたICV注射の80日後、腓腹筋組織は、野生型C57/Bl(i)及び非注射mdxマウス対照(iv)と比較して、正常な組織構造の回復及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーの組織病理学的特徴の補正を示した。
図6Bに示されるように、9×10
10vg(ii)及び2.7×10
11vg(iii)のINS1201-AAV9を用いたICV注射後80日目に、腓腹筋組織は、野生型C57/Blマウス(i)におけるジストロフィンレベルに匹敵し、非注射mdxマウス(iv)におけるジストロフィンレベルよりも著しく高いμDysのレベルを示した。
【0149】
同様に、
図7A(ii)のヘマトキシリン及びエオシン染色試料に示されるように、9×10
10vgのINS1212-AAV9を用いたICV注射の80日後、腓腹筋組織は、野生型C57/Bl(
図7A(i))及び非注射mdxマウス対照(
図7A(iii))と比較して、正常な組織構造の回復及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーの組織病理学的特徴の補正を示した。
図7B(ii)に示されるように、9×10
10vgのINS1212-AAV9を用いたICV注射後80日目に、腓腹筋組織は、野生型C57/Blマウス(
図7B(i))におけるジストロフィンレベルに匹敵し、非注射mdxマウス(
図7A(iii))におけるジストロフィンレベルよりも著しく高いμDysのレベルを示した。
【0150】
図8に示されるように、9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を用いたICV注射の80日後のmdxマウスにおける腓腹筋(
図8A)、三頭筋(
図8C)、前脛骨筋(
図8E)、及び横隔膜(
図8F)の筋組織は、非注射mdxマウスと比較して平均線維直径の増加を示した。9×10
10vg又は2.7×10
11vgのINS1201-AAV9を脳室内注射されたmdxマウスはまた、非注射マウスと比較して、腓腹筋(
図8B)、三頭筋(
図8D)、前脛骨筋(
図8F)、及び横隔膜(
図8H)において、注射の80日後に、より大きな直径(例えば、25μm~60μm)を有する細胞の頻度の増加を示した。
【0151】
同様に、
図9Aに示されるように、腓腹筋組織は、9×10
10vgのINS1212-AAV9を用いたICV注射の80日後のmdxマウスにおける腓腹筋組織は、より大きな直径(例えば、25μm~60μm)を有する細胞の頻度の同時増加(
図9B)とともに、非注射mdxマウスと比較して平均線維直径の増加を示した。
【0152】
実施例4:INS1201-AAV9の脳室内送達が、mdxマウスにおけるμDys発現の増加、筋組織学の改善、及び線維化の低減をもたらす。
生後28日目(p28)のmdxマウス(注射時にいずれの動物もP27未満ではなく、いずれの動物もP35を超えないように、-1日及び+7日の時間帯を有する)に、脳室内(ICV)注射を介して、以下の治療のうちの1つを投与した:(i)9×109vgのINS1201-AAV9(n=6)、(ii)9×1010vgのINS1201-AAV9(n=7)、(iii)2.7×1011vgのINS1201-AAV9(n=10)、(iv)5.4×1011vgのINS1201-AAV9(n=7)、(v)1.2×1012vgのINS1201-AAV9(n=8)、又は(vi)ビヒクル対照(TFF製剤緩衝液、n=11)。C57/BL1同齢マウスを、野生型(WT)比較対象(n=10)として使用した。
【0153】
組織を、生後約120日目に上記に記載されるように解離した。
【0154】
INS1201導入遺伝子に特異的なプライマーを使用した液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)を介して、2倍体ゲノム当たりのINS1201コピーを測定した。INS1201のDNAコピーが、
図15で提供される。RNA転写物コピーが、
図16で提供される。TA:前脛骨筋、EDL:長趾伸筋、GAS:腓腹筋、DIA:横隔膜。RPP30:リボヌクレアーゼP/MRPサブユニットP30。
【0155】
図17に示されるように、試験された全ての用量でINS1201-AAV9を投与されたmdxマウスは、非注射mdxマウスと比較して、平均EDL線維直径の増加を示した。これらの所見と一致して、全ての用量でINS1201-AAV9を脳室内注射されたmdxマウスはまた、非注射マウスと比較して、EDL筋においてより大きな直径(例えば、25μm~60μm)を有する細胞の頻度の増加を示した。
【0156】
図18に示されるように、試験された4回の最高用量でINS1201-AAV9を投与されたmdxマウスは、非注射mdxマウスと比較して、平均TA線維直径の増加を示した。これらの所見と一致して、試験された4回の最高用量(9×10
10vg、2.7×10
11vg、5.4×10
11vg、1.2×10
12vg)でINS1201-AAV9を脳室内注射されたmdxマウスは、非注射マウスと比較して、TA筋においてより大きな直径を有する細胞の頻度の増加を示した。
【0157】
図19は、様々な用量のINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射後のピクロシリウスレッドで染色された横隔膜筋切片を示す。ピクロシリウスレッドが、コラーゲン含有量を可視化するために使用される。野生型C57/Blマウス及びビヒクルを投与されたmdxマウスから取得された横隔膜切片が、比較のために示される(上部パネル)。
図19の下部パネルに示されるように、試験された5回の用量(9×10
9vg、9×10
10vg、2.7×10
11vg、5.4×10
11vg、1.2×10
12vg)でINS1201-AAV9を投与されたmdxマウスは、コラーゲン含有量によって測定されると、ビヒクルを投与されたmdxマウスと比較して線維化の減少を示した。横隔膜筋におけるコラーゲン率も、
図20で提供される。
【0158】
図21の上部は、生後28日目(p28)での5.4×10
11vgのINS1201-AAV9を用いた脳室内(ICV)注射後のp120にmdxマウスから取得され、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)(左端)、ラミニン/dapi(左から2番目)、ジストロフィン(右から2番目)で染色されたEDL切片、及びマージされた画像(右端)を示す。
図21の下部は、生後28日目(p28)でのビヒクル対照を用いた脳室内(ICV)注射後のp120にmdxマウスから取得され、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)(左端)、ラミニン/dapi(左から2番目)、ジストロフィン(右から2番目)で染色されたEDL筋切片、及びマージされた画像(右端)を示す。染色は、対照マウスから採取された試料と比較して、INS1201-AAV9で処置されたマウスから取得された試料において、より優れたジストロフィン発現を示す。INS1201-AAV9処置マウス由来の筋肉も、H&E及びラミニン/dapi染色から明白であるように、より健康に見える。
【0159】
実施例5:INS-1201 AAV9のICV送達が、mdxマウスにおいて筋肉生理学の改善をもたらす。
生後1日目(p1)のmdxマウスに、脳室内(ICV)注射を介して以下の治療のうちの1つを投与した:(i)9×109vgのINS1201-AAV9、(ii)9×1010vgのINS-1201-AAV9、(iii)2.7×1011vgのINS1201-AAV9、(iv)ビヒクル対照(TFF製剤緩衝液)。C57/BL10同齢マウス(WT)を比較対象として使用した。
【0160】
生後28日目(p28)のmdxマウス(注射時にいずれの動物もP27未満ではなく、いずれの動物もP35を超えないように、-1日及び+7日の時間帯を有する)に、脳室内(ICV)注射を介して、以下の治療のうちの1つを投与した:(i)9×109vgのINS1201-AAV9、(ii)9×1010vgのINS1201-AAV9、(iii)2.7×1011vgのINS1201-AAV9、(iv)5.4×1011vgのINS1201-AAV9、(v)1.2×1012vgのINS1201-AAV9、又は(vi)ビヒクル対照(TFF製剤緩衝液)。C57/BL1同齢マウスを、野生型(WT)比較対象として使用した。
【0161】
動物が120~135日齢であったときに、筋肉の解離及び準備を上記に記載されるように実行した。
【0162】
筋生理学実験設計
EDLにおける筋力学
EDLが、室温でリンゲル溶液(137mmのNaCl、5mmのKCl、2mmのCaCl2、1mmのMgSO4、1mmのNaH2PO4、24mmのNaHCO3、10mg/リットルのクラーレを含む11mmのグルコース)を含む特殊チャンバー内に搭載される。筋起始が、剛性支柱に縛られ、付着部が、筋肉長の正確な制御を可能にする、デュアルモードエルゴメーター(モデル300B、Aurora Scientific、ON,Canada)のアームに固定される。
【0163】
筋肉の活性化が、筋肉の長さを延長させる平行白金平板電極を使用した電気刺激装置を介して提供される。最大上刺激条件は、力が実験的試験について水平状態に達した値よりも+50%大きい値を使用して、増加する電圧の単一の0.3ミリ秒収縮パルスによって各実験について確立される。力の特性を評価するための最適な筋肉長は、筋肉長を漸進的に増加させながら(弛緩長から10%増分)一連の収縮を使用して決定され、最大上刺激が最大収縮力を生じさせる長さとして定義される。最適な長さを確立した後、筋線維長(Lf)が測定され、筋肉が2分間休止される。
【0164】
次いで、筋肉は、収縮特性(収縮張力、半弛緩時間、及びピーク張力までの時間)を評価するために、60秒間隔(0.3ミリ秒のパルス持続時間)の2回の収縮で刺激される。
【0165】
筋肉は、力-周波数(F-F)関係を決定するために、収縮間に120秒間隔で増加する周波数(400ミリ秒のパルス列持続時間及び0.3ミリ秒のパルス持続時間、(i)EDL:1Hz、10Hz、30Hz、50Hz、70Hz、120Hz、(ii)ヒラメ筋:1Hz、5Hz、10Hz、20Hz、40Hz、60Hz、80Hz、及び100Hz)において刺激される。
【0166】
F-F試験後に、最大収縮力を試験終了時の長さの最大±20%まで実験的に試験することによって、最適な長さが再検証される。
【0167】
偏心収縮
F-F曲線を完成させた後、全ての伸張又は収縮が、2分間隔で実施され、刺激が、等角及び偏心収縮について400ミリ秒のパルス列持続時間及び0.3ミリ秒のパルス持続時間で100Hzにおいて実施される。具体的には、F-F評価の終了から2分間の休止期間後に、開始筋肉長に戻る前に500ミリ秒の保留を伴って0.7Lf/秒で10%Lf伸張を2回付与することによって、筋肉の受動的な機械的特性が測定される。次いで、2回の等角収縮が、偏心収縮(EC)前の最大等角力の測定として取得される。
【0168】
次いで、各筋肉は、10回の収縮のEC発作を受け、その間に、筋肉は、最初の200ミリ秒間等角的に刺激され、その後、15%Lf長変化が、2Lf/秒の速度で付与される。次いで、筋肉は、開始筋肉長に戻る前に、この長さで500ミリ秒間保持される。10回のEC収縮後、2回の等角収縮が、EC後の最大等角力を決定するために取得される。最終的な等角測定の完了時に、2回の追加の受動的伸張が、EC後の受動的な機械的測定を決定するために取得される。
【0169】
収縮試験後、筋肉が、外腱から切り取られ、乾燥状態でブロットされ、最も近い0.01mgまで計量される。筋肉の生理学的断面積が、線維長及び筋肉量の関数として計算される。全ての分析について、力が、筋肉の生理学的断面積に対して正規化され、応力として報告される。
【0170】
生後1日目(p1)に試験された全ての用量(9×10
9vg、9×10
10vg、2.7×10
11vg)でINS1201-AAV9のICV注射を受けたmdxマウスは、ビヒクルで処置されたmdxマウスと比較して、ECから生じる収縮力率の減弱した減少を示した(
図10A)。
図10Bは同様に、p1に試験された3回の用量(9×10
9vg、9×10
10vg、2.7×10
11vg)でINS1201-AAV9のICV注射を受けたマウスが、ビヒクル処置マウスと比較して、偏心収縮前応力に対する偏心収縮後応力率の増加によって示される、筋生理学の増加を示した。
【0171】
生後28日目(p28)に試験された3回の最高用量(2.7×10
11vg、5.4×10
11vg、1.2×10
12vg)でINS1201-AAV9のICV注射を受けたmdxマウスは、ビヒクルで処置されたmdxマウスと比較して、ECから生じる収縮力率の減弱した減少を示した(
図10C、10D)。
【0172】
生後28日目(p28)に試験された3回の最高用量(2.7×10
11vg、5.4×10
11vg、1.2×10
12vg)でINS1201-AAV9のICV注射を受けたmdxマウスは、ビヒクルで処置されたmdxマウスと比較して、様々な周波数における刺激後にピーク筋力の増加によって示される筋機能の改善及び安定化を示した(
図10E、10F)。
【0173】
実施例6:AAV9の1回用量髄腔内投与が、骨格筋及び心筋組織への導入遺伝子送達を標的化する
AAV9-CBA-GFPを、高度に特異的な抗AAV9 ELISAを使用して抗AAV9抗体についてスクリーニングされたカニクイザルに髄腔内投与した。カニクイザル対象を、単回髄腔内用量を介して2.5×1013vg、5×1013vg、又は1×1014vgのAAV9-CBA-GFPで処置し、GFP発現を、NovaRed GFP免疫染色及びVector(登録商標)HRP基質を用いた免疫組織化学分析、RT-PCR、並びにウェスタンブロット分析によって決定した。
【0174】
図11に示されるように、2.5×10
13vg(iv)、5×10
13vg(v)、又は1×10
14vg(vi)でAAV9-CBA-GFPの単回髄腔内用量を受けたカニクイザルは、静脈内投与された5×10
13vg(ii)又は1×10
14vg(iii)のAAV9-CBA-GFPを受けたカニクイザル対象と比較して、腓腹筋(
図11A)、大腿四頭筋(
図11B)、三角筋(
図11C)、三頭筋(
図11D)、及び二頭筋(
図11E)の筋組織においてGFPの染色の増加を示した。同様に、2.5×10
13vg(iii)、5×10
13vg(iv)、又は1×10
14vg(v)でAAV9-CBA-GFPの単回髄腔内投与を受けたカニクイザルは、静脈内投与された5×10
13vg(i)又は1×10
14vg(ii)のAAV9-CBA-GFPを受けたカニクイザル対象と比較して、横隔膜(
図11F)、前脛骨筋(
図11G)、及び心臓(
図11H)の筋組織においてGFPの染色の増加を示した。
図11A~E(i)に示されるように、非注射カニクイザル対象は、GFP染色をほとんど又は全く示さなかった。
【0175】
図11Iに示されるように、5×10
13vg(i)、又は1×10
14vg(ii)でAAV9-CBA-GFPの単回静脈内用量を受けたカニクイザルが、肝組織において高レベルのGFP染色を示した一方で、2.5×10
13vg(iii)、5×10
13vg(iv)、又は1×10
14vg(v)でAAV9-CBA-GFPの単回髄腔内用量を受けた対象は、著しく低いGFP染色を示した。
【0176】
図12に示されるように、
図11に示されるGFPの免疫組織化学染色は、抗GFPウェスタンブロットによって検出されるタンパク質レベルに対応した。2.5×10
13vg(
図12A)、5×10
13vg(
図12B)、又は1×10
14vg(
図12C)でAAV9-CBA-GFPの単回髄腔内投与を受けたカニクイザルが、二頭筋(1)、三頭筋(2)、三角筋(3)、大腿四頭筋(4)、腓腹筋(5)、前脛骨筋(6)、横隔膜(7)、及び心臓(8)の筋組織においてGFPレベルの増加を示した一方で、非注射対象の二頭筋(
図12D、1)又は三頭筋(
図12D、2)ではウエスタンブロットによってGFPタンパク質が検出されなかった。
【0177】
図13に示されるように、
図11及び12に示されるGFPタンパク質レベルは、GFP mRNAレベルに対応し、AAV9-CBA-GFPの単回髄腔内用量を受けたカニクイザルは、RT-PCRによって分析される、二頭筋(1)、三頭筋(2)、三角筋(3)、前脛骨筋(4)、腓腹筋(5)、大腿四頭筋の外側広筋(6)、横隔膜(7)、及び心臓(8)の筋組織において検出可能なGFP mRNA発現を示した。最小GFP mRNAが、肝組織(9)で検出され、GFP mRNAは、非注射対象から収集された二頭筋(10)、三頭筋(11)、三角筋(12)、及び大腿四頭筋(13)の筋組織では検出可能ではなかった。
【0178】
実施例7:若年C57BL/6Jマウスにおける脳室内注射の単回投与後のINS1201-AAV9の毒性及び生体内分布研究
試験システム
・ 種:ハツカネズミ
・ 株:C57BL/6J
・ 性別:オス
・ 年齢:1日目に約4週齢
・ 体重:年齢に相応する
・ 数:192匹(+60匹余分)
・ ケージング:ASC SOPに準拠
・ 最小順化:5日
【0179】
種/株、数、性別。研究開始時に約4週齢の最大252匹のオスC57BL/6J(株番号000664)マウスが、この研究のために入手される。意図された患者集団がオスのみであるため、オスのマウスのみが研究で使用される。
【0180】
開始年齢及び体重範囲。この研究で使用するために選択される動物は、研究の開始時に可能な限り年齢及び体重が均一であろう。動物は、納入時に約3週齢であり、研究の1日目に約4週齢であろう。
【0181】
動物は、種特異的な食事を給餌され、自由に給餌されるであろう。いずれの汚染物質も、この研究の結果を妨げるレベルで食事中に存在しないことが知られている。照射水が、各動物に自由に利用可能であろう。
【0182】
本研究で使用される被験物質及び対照物質が、それぞれ、表2及び表3で提供される。
【表1】
【表2】
【0183】
実験設計
研究設計
本研究は、3つのコホートからなる:コホート1に割り当てられた動物は、注射手技後85±10日目に殺処分され、コホート2に割り当てられた動物は、注射手技後43±7日目に殺処分され、コホート3は、注射手技後22±3日目に殺処分される。全体的な研究設計が、表4に提示される。余分な動物が投薬され、手技活動(すなわち、注射、拘束、並びに注射及び/又は採血中の取扱)の直接的な結果として生じる研究群動物の任意の予定外の死亡に取って代わるために使用され得る。被験物質投与手技を生き延びないか、死亡するか、又は4日目の前に(注射の3日後に)早期終了を必要とする動物は、交代され得る。これらの動物は、肉眼的剖検を受けない。年齢の包含基準を満たさない動物は、必要に応じて交代され得る。全ての動物の死亡は、注射後の死亡のタイミングにかかわらず報告される。各所与の時点における第1~4群については、5匹の動物が、血液学、血液ddPCR、及び組織ddPCRに使用され、5匹の動物が、臨床化学及び組織病理学に使用され、5匹の動物が、凝固検査及び組織病理学に使用される(n=15/群/時点)。全ての第5群の動物が、血液学、臨床化学、及び凝固のために12週目に安楽死させられる(各試験についてn=4)。第5群からの5匹の動物が、組織病理学に使用される一方で、残りの動物からの組織は、収集及び保存される。
【表3】
【0184】
コホート1-85±10日目の終了。本研究のコホート1については、第1~4群に指定された60匹の動物が、その群割り当てに基づいて、1日目に脳室内(ICV)注射を受ける(表1)。コホート1の追加の12匹の動物は、注射されない第5群の動物(「ナイーブ/未処置」、表1)の一部である。研究の85±10日目に、全ての第1~5群内の動物が殺処分され、血液及び組織試料が表5に記載されるように収集される。
【表4】
【0185】
コホート2-43±7日目の終了。コホート2については、60匹の動物が、その群割り当てに基づいて、1日目にICV注射を受ける(表1)。研究の43±7日目に、動物が殺処分され、血液及び組織試料が表6に記載されるように収集される。
【表5】
【0186】
コホート3-22±3日目の終了。コホート3については、60匹の動物が、その群割り当てに基づいて、1日目にICV注射を受ける(表1)。研究の22±3日目に、動物が殺処分され、血液及び組織試料が表7に記載されるように収集される。
【表6】
【0187】
群割り当て。動物が、表5、6、及び7によって、順序付けされ、3つの別個のコホートにおける試験群に割り当てられる。1群当たり最大12匹の余分な動物を含む動物の各コホートが、計量され、体重に従って減少順で1~Xの数値ランクを割り当てられる(最も重い動物はランク=1を割り当てられる)。次いで、動物は、研究設計によって、終了コホートに基づいて各試験群に順次割り当てられる(表5、6、7を参照)。
【0188】
バイアスのための対照。全ての試行は、(a)適切な対照群の包含、(b)研究群への動物の無作為化された割り当て、及び(c)群にわたる動物の適切な交互投薬を含む、潜在的な研究バイアスを最小限にするために行われる。
【0189】
被験物質の投与及び研究手順
麻酔及び外科的準備。動物は、吸入麻酔を使用して麻酔される(誘導のための100%の酸素を含む1~5%のイソフルラン、外科手技中の維持のための1~3%)。代替的に、動物は、腹腔内投与されるケタミン(最大80mg/kg)及びキシラジン(最大12mg/kg)カクテルで麻酔される。
【0190】
被験物質の調製及び送達。全ての被験物質の調製及び投与は、スポンサーが指定した人員によって実施される。1日目に、各コホート(表5~7)について、ビヒクル及び被験物質は、その群割り当てに基づいて、脳室内への定位固定注射を介して全ての動物に投与される。被験物質及び対照物質は、使用の準備ができるまで氷上又は2~8℃で保持される。
【0191】
コホート注射方略。各終了日コホートのための注射は、3~4日間にわたって行われる。各個々の注射日に、約15~30匹のマウスが注射される。被験物質用量製剤を考慮すると、各コホートの第1日目に、用量1の全てのマウスの注射が完了し、続いて、時間が許す限り、第1群の動物のサブセットへのビヒクル注射が行われる。各コホートの第2日目に、全ての用量2マウスの注射が完了し、続いて、注射チームに時間が許す限り、動物の第2のサブセットへのビヒクル注射が行われる。各コホートの第3日目に、全ての用量3マウスの注射が完了し、続いて、注射チームに時間が許す限り、動物の第3のサブセットへのビヒクル注射が行われる。全てのビヒクル注射マウスが最初の3日間にわたって注射されているわけではない場合、残りのビヒクル注射は、第4日目に行われる。
【0192】
治療。治療が、表5、6、及び7に従って、側脳室内への治療の直接注射によって動物に投与される。各動物は、投薬群に応じて、単一の外科手技において、1回の片側注射、又は2回の注射(両側/側面当たり1回の注射)のいずれかを受ける。外科手技が、定位固定器具を使用して実施される。注射装置、手術器具、ドレープ、及びガウンが、適切な場合に滅菌されている。以下に記載される手順の修正が、外科医の裁量で実施され得る。単回用量のメロキシカム(1mg/kg、SC/IM)及び/又はブプレノルフィン(0.01~0.05mg/kg SC)が、頭蓋骨切開前の麻酔の誘導後に手術からの痛みを緩和することに役立つために投与される。動物が麻酔されると、頭蓋上の皮膚が(必要に応じて)削られ、動物が定位固定フレームに搭載され、適宜、耳棒及び切歯棒の使用によって頭部が位置付けられた状態で麻酔のためにノーズコーン上で動物を維持する。無菌技術が、全ての外科手技に使用される。皮膚が、ベタジン溶液、続いて、70%アルコールワイプ又は同等物で消毒される。
【0193】
約2cmの切開が、頭蓋骨上の正中線に加えられる。電気焼灼が、切開部位からの任意のわずかな出血の止血を達成するために使用され得る。ハミルトン2インチ、26ゲージ(又はそれより小さい)、12度ベベルステンレス鋼針を有するハミルトンシリンジが、定位固定装置のZ軸に取り付けられる。前項に基づく以下の近似定位固定座標が、片側又は両側のいずれかで側脳室を標的とするために使用される。
・ 注射座標:
o 前後(AP):-0.5~-0.8mm
o 内外側(ML):+/-1.0mm*
o 片側注射を投与するとき、注射は脳の右側である。両側注射を投与するとき、第1の注射は右側であり、第2の注射は左側である。
o 背腹側(DV):-2.5mm
【0194】
注射の実際の場所は、必要に応じて外科医によって調整され得る。座標が上記に記載されるものと異なる場合、未加工データの外科記録内に記録される。
【0195】
針が所望の場所に来ると、シリンジプランジャーが、ゆっくりと押し下げられて、投薬溶液を頭蓋腔に注射する。注射部位は、注射の品質を確認するために、注射中及び注射直後に監視される。
【0196】
所望の注射体積は、注射部位当たり8μLである。注射は、側脳室を標的とし、合計1回又は2回の注射を含む。針は、逆流を防止するために、治療を送達した後に約1分間定位置に残される。任意の注射異常(漏出、逆流など)が、注射されている動物の注射用紙上に記述される。注射及び針の除去の完了後、VetBond(商標)外科用接着剤を使用して切開が閉鎖され、縫合糸で補強され得る。動物のリアルタイム状態に基づく外科手技のわずかな変更が行われてもよく、研究プロトコルの逸脱とみなされない。
【0197】
術後のケア。外科手技後に、動物は、回復を通して熱支持体上で維持され、必要に応じて交互に横向きに寝た状態で配置される。マウスに、滅菌生理食塩水が皮下投与される(約0.5~1mL)。動物はまた、その外科的回復中に補足飼料としてケージ床上でその飼料及びDiet-Gelを提供され得る。
生存中の観察及び測定
【0198】
日常的な全般的健康観察。動物が、飼育スタッフによって、順化期間中の全身外観、行動、及び疾病の兆候の変化について観察され、記録が、施設記録の一部としてファイルに保持される。毎日の観察が、1日目に開始して、その指定された終了日まで研究の過程の全体を通して記録される。1日目の前に非正常臨床兆候を示す任意の動物が、研究から除外される。
【0199】
研究前臨床観察 全ての動物が、1日目の前に臨床兆候について詳細な検査を受ける。健康不良、ストレス、又は他の異常を示す臨床兆候が注目され、動物は、研究責任者/担当獣医及びスポンサー代表の裁量で研究から除外され得る。
【0200】
臨床観察。全ての研究動物は、予定された終了まで、術後6~10日間、次いで、その後週に1回、体重と併せて詳細な臨床観察を受ける。予定された観察外で注目された観察は、予定外として入力される。評価には、自発運動、神経学的観察、姿勢、呼吸、水分補給状態、外科手術部位、常同行動、膀胱及び腸(便)観察、並びに全体的身体状態の評価が含まれるが、これらに限定されない。
【0201】
予定された臨床観察中の所見の非存在又は存在が記録される。健康不良、ストレス、及び疼痛を示す臨床兆候が注目され、担当獣医に報告される。最終的な詳細な検査が、切迫安楽死させた任意の動物について担当獣医によって行われる。
【0202】
体重。個々の体重が、動物の到着の直後に初期群割り当てのために記録される。ベースライン体重が、投薬前4日以内に得られる。体重が、予定された終了まで週に1回実施され(臨床観察と同時に起こる)、最終的な体重が、予定された終了前に測定される。研究責任者の裁量により、有害な健康又は体重減少の兆候(すなわち、前週の体重の10%以上)が観察される場合、体重は、より頻繁に測定され得る。
【0203】
予定された犠牲。その予定された終了日、研究の22±3日目、43±7日目、85±10日目まで生存する動物が、人道的に安楽死させられ、剖検され、血液及び組織試料が、以下に記載されるように収集される。動物は、AVMA Guidelines for Euthanasia of Animals:2020 Editionに従って安楽死させられる。
【0204】
試料/検体収集
採血。剖検前に、動物は、麻酔ボックスに移され、血液学及び液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)、血清化学、並びに凝固のための採血のために、イソフルラン(1~2%)を使用して麻酔され得る。適切な量の全血が、心臓穿刺又は他の適切な血管を介して、各動物から25g針及び1ccシリンジ、又は類似物を使用して収集される。血液試料が、その予定された終了日に全ての研究動物から収集される。血液が、ASC SOPによって処理され、分析のためにQVLに送られる。
【0205】
血液学及びddPCRのための試料
血液学については、約250~500μLの全血が、抗凝固剤としてK2EDTAを含むバイアルに入れられ、混合するために数回穏やかに反転され、2℃~8℃を維持するように設定された冷蔵庫内で保管するまで湿潤氷上に置かれる。
【0206】
血液学
収集量:約250~500μL
抗凝固剤:K2EDTA
【0207】
分析される血液学パラメータが、表8で提供される。
【表7】
【0208】
デジタル液滴ポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)による生体内分布。加えて、約250~500μLの全血が、ddPCR分析による生体内分布のために収集される。全血が、抗凝固剤としてのK2EDTAに入れられ、混合するために数回穏やかに反転され、-80℃±10℃で保管するまでドライアイス上に置かれる。
【0209】
臨床化学のための試料。臨床化学については、約500~1000μLの全血が、抗凝固剤を含まない管の中に収集され、遠心分離前に室温で少なくとも30分間凝固させられる。凝固した全血が、4℃の温度において約3000×gで5分間遠心分離されて、血清を生じさせる。血清試料が、遠心分離後に分離され、収集直後にドライアイス上で凍結され、-80℃±10℃で凍結して保管される。
【0210】
分析される血清化学パラメータが、表9で提供される。
【表8】
【0211】
凝固のための試料。血漿試料が、遠心分離後に分離され、-10℃~-30℃を維持するように設定された冷凍庫内に保管される。
【0212】
凝固。収集量:約300~800μL、抗凝固剤:3.2%クエン酸ナトリウム、処理:血漿まで。分析されるパラメータ:プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノゲン。
【0213】
肉眼的剖検。剖検は、動物の全般的身体状態及び組織(呼吸器系、心血管系、消化系、及び泌尿生殖器系)の系統的な巨視的外部及び内部検査からなる。これは、全ての予定された犠牲及び予定外の犠牲について実施される。任意の肉眼的病変が、文書記録され、温存される。組織収集についての詳細が、以下に詳細に記載される。訓練を受けた適任の研究人員が、肉眼的剖検及び組織収集を行う。
【0214】
組織収集。終了時に収集され、組織病理学又はddPCRのいずれかによって分析される組織が、表10に提示される。
【表9】
【0215】
組織収集:組織病理学。組織病理学のための組織が、表2、3、及び4により、その指定された終了日に動物から収集される。肉眼的病変/異常組織を含む、組織病理学のために表6にマークされた全ての組織(眼球を除く)が収集され、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中で固定される。眼球が、Davidson溶液中で24~48時間固定され、次いで、70%エタノールに移される。
【0216】
組織が、切り取られ、処理され、パラフィンに包埋され、ミクロトームで切断され、H&Eで染色され、カバースリップで覆われる。可能な場合、筋肉は、横方向及び縦方向の両方で切片化される。結果として得られるスライドは、顕微鏡によって品質チェックされる。全ての調製されたスライドは、ACVP獣医病理学者によって評価される。表集計された顕微鏡データ及び注目に値する変化の考察からなる、病理報告書草案が発行される。顕微鏡写真が撮影され、注釈を付けられる。
【0217】
ddPCR分析。表10に列挙される組織の代表的な試料が、ddPCR分析のために収集され、保持される。1つの大きな部分として収集された検体が、管に入れられ、液体窒素中で急速凍結され、-60℃~80℃を維持するように設定された冷凍庫に入れられるまで、ドライアイスを含む冷却器に入れられる。
【0218】
実施例8:非ヒト霊長類(NHP)における髄腔内送達後のINS1201-AAV9の生体内分布
試験システム
・ 属:マカク属
・ 種:カニクイザル
・ 性別:オス
・ 体重:約2~5kg
【0219】
末梢及び骨格筋におけるINS1201-AAV9生体内分布が、髄腔内投与に応答して測定される。
【0220】
全ての注射が、脊髄の腰椎腔内へ髄腔内に実施される。合計12匹の動物が、表11で提供されるように使用される。
【表10】
【0221】
研究のために選択される動物は、体重が約3kgである2ヶ月~5歳の若年又は成体サルである。動物は、事前にスクリーニングされ、AAV9抗体について陰性である。スクリーニング前の採血が、注射手技前2ヶ月以内に行われる。スクリーニングのための動物が鎮静状態にされ、血液試料が収集される。
【0222】
選択された動物が、注入の数週間前に病院エリアに運ばれる。注入日(d0)に、対象が鎮静状態にされ、血液試料が化学分析及び細胞血球計数(CBC)のために収集される。次いで、対象は、上記の投薬表に従って単回用量のINS1201--AAV9を注射される。9ヵ月未満の全ての動物は、堰堤を用いて収容される。9ヶ月を超える動物は、小さい群で収容される。
【0223】
注射は、腰部鞘嚢のくも膜下腔内への腰椎穿刺によって実施される。髄腔内(IT)注射については、対象が側臥位に配置され、約L4/5レベルにおける(脊髄の円錐の下方の)後正中線注射部位が識別される。滅菌条件下では、スタイレットを有する脊髄針が挿入され、針からの明瞭なCSFの流れ、並びに少量のイオヘキソールの注射、続いて、手技中脊髄造影法により、くも膜下挿管が確認される。約1mlのCSFが、ベースライン試料として排出され、収集され、凍結される。これは、後続の被験物質の注射によって生成される圧力の増加を軽減するものである。被験物質の吻側流分布を改善するために、次いで、対象は、トレンデンベルグ位(軽く頭部を下げた位置)で傾転される。これは、ヒト対象においてCT骨髄造影を実施するときの日常的な手順である。CSFタップ/IT注入については、皮下注射針(22G 3/4又は1 1/2”)も、この目的のために使用することができる。
【0224】
生存中の観察:処置されたNHPは、交絡毒性源への曝露を低減するために孤立状態で保たれる。対象は、獣医スタッフによって、活動、相対的な皮膚の色、及び全般的健康について、1日2回観察される。動物は、注射後約21日間保持される。生体内分布及び臨床化学検査が、安楽死時に収集された試料に実施される。
【0225】
以下のセグメントが、生体内分布研究のために脊髄から収集される:頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、後根神経節(DRG)根頸部レベル、DRG根胸部レベル、DRG根腰部レベル。各脊髄セグメントについて、合計2つの断片が収集される。1つの断片が4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で保管され、1つが瞬間凍結される。
【0226】
筋肉及び器官については、各々の4つの試料が収集される。2つが4%PFAに入れられ、2つが瞬間凍結される。以下の筋肉の試料が収集される:横隔膜、肋間筋及び神経を含む第6/第7肋骨、腰筋、三角筋、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大腿直筋、内側広筋、外側広筋、腓腹筋、前脛骨筋、ヒラメ筋、舌、咬筋、指伸筋、腹直筋。以下の器官の試料が収集される:心臓、肝臓、肺、腎臓、脾臓。
【0227】
臨床化学検査は、以下の通りである:AST、ALT、GGT、Alk Phos、カリウム、ナトリウム、塩化物、クレアチニン、血中尿素窒素、CBC。
【0228】
脳試料が、以下のように収集される。小脳が、脳の残りの部分から分離される。小脳が4つの四分円に切断され、右の2つの四分円が4%PFA中に保管され、左の2つの四分円が瞬間凍結される。脳が、右半球及び左半球に分割される。次いで、脳が4つの四分円に切断され(冠状切断)、右の2つの四分円が4%PFA中に保管され、左の2つの四分円が瞬間凍結される。
【0229】
6つの試料が、後続の筋肉生検のために大腿四頭筋から採取される。3つが4%PFA中に保管され、3つが瞬間冷凍される。
【0230】
脳脊髄液(CSF)及び血清も、生体内分布研究のために収集される。
【0231】
生体内分布研究が、液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)によって前述の試料に実行される。
【0232】
参照による組み込み
本明細書で言及される特許文献及び科学論文の各々の開示全体は、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0233】
同等物
本発明は、その趣旨又は本質的な特性から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される本発明を限定するのではなく、あらゆる点に関して例証的とみなされるものである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の同等性の意味及び範囲内にある全ての変更は、その中に包含されることを意図している。
【配列表】
【国際調査報告】