(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ケイ素前駆体化合物、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物、及びケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して膜を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240719BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240719BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240719BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240719BHJP
C07F 7/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
C23C16/455
C23C16/42
C07F7/10 S CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501185
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2022010198
(87)【国際公開番号】W WO2023287192
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093732
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0097389
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514183215
【氏名又は名称】ユーピー ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ビョン クァン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン シク
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ダ ソム
【テーマコード(参考)】
4H049
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP03
4H049VQ59
4H049VR11
4H049VR22
4H049VR51
4H049VR52
4H049VU24
4H049VW02
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA29
4K030BA42
4K030BA44
4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030LA15
5F058BA06
5F058BA08
5F058BA09
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC08
5F058BC09
5F058BF02
5F058BF06
5F058BF22
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF36
5F058BF37
(57)【要約】
本発明は、ケイ素前駆体化合物;その化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物;及びケイ素含有膜を形成するための組成物を使用することによって、ケイ素含有膜を形成するための方法に関する。ケイ素含有膜を形成するための組成物は、特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含むため、150℃~850℃の広い温度範囲にわたるALDの自己制御的な膜成長を達成することができ、ケイ素含有膜の厚さが極めて薄く均一となるように制御することができ、複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジ及び均一性を有する膜を形成することができ、その上、半導体装置の特性をさらに改善することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物。
【化1】
[式1中、
Cyは、N、R
1、及びR
2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C
4~C
8複素環式環を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
R
3~R
7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C
1~C
4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C
2~C
6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R
5~R
7のうちの少なくとも1つは水素ではない。]
【請求項2】
前記ケイ素前駆体化合物が、下記式によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための組成物。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項3】
SiO
2膜が、ケイ素含有膜を形成するための前記組成物を使用して原子層堆積(ALD)法によって形成される場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)が、150℃~850℃の温度範囲において、0.08~4.5Å/サイクルである、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための組成物。
【請求項4】
SiO
2膜が、ケイ素含有膜を形成するための前記組成物を使用して原子層堆積(ALD)法によって形成される場合、
ALDガス供給の成膜速度が、150℃~400℃の温度範囲において、0.08~0.35Å/サイクルであるか、
ALDガス供給の成膜速度が、400℃超~600℃未満の温度範囲において、0.20~2.5Å/サイクルであるか、又は
ALDガス供給の成膜速度が、600℃~850℃の温度範囲において、1.5~4.5Å/サイクルである、
請求項3に記載のケイ素含有膜を形成するための組成物。
【請求項5】
式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ケイ素含有膜を堆積させることを含む、ケイ素含有膜を形成するための方法。
【化10】
[式1中、
Cyは、N、R
1、及びR
2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C
4~C
8複素環式環を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
R
3~R
7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C
1~C
4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C
2~C
6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R
5~R
7のうちの少なくとも1つは水素ではない。]
【請求項6】
前記ケイ素前駆体化合物が、下記式によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項5に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【請求項7】
前記ケイ素含有膜が、化学的気相成長(CVD)又は原子層堆積(ALD)によって、150℃~850℃の温度で形成される、請求項5に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項8】
バブリング法、液体送達システム(LDS)法、蒸気流制御(VFC)法、及びバイパス法からなる群から選択される少なくとも1つの方法を使用して、前記ケイ素前駆体化合物を反応チャンバに供給することを含む、請求項5に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項9】
前記ケイ素前駆体化合物を反応チャンバに供給することが、搬送ガス又は希釈ガスを使用して、室温~150℃の温度範囲、且つ0.1~10Torrで行われる、請求項8に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項10】
前記堆積中に、熱エネルギー若しくはプラズマが使用されるか、又は、バイアスが基材に適用される、請求項5に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項11】
前記ケイ素含有膜が、ケイ素含有酸化物膜又はケイ素含有複合金属酸化物膜を含み、
前記堆積中に、水蒸気(H
2O)、酸素(O
2)、酸素プラズマ(O
2プラズマ)、酸化窒素(NO、N
2O)、酸化窒素プラズマ(N
2Oプラズマ)、硝酸酸素(N
2O
2)、過酸化水素(H
2O
2)、及びオゾン(O
3)からなる群から選択される少なくとも1つが使用される、
請求項5に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項12】
前記ケイ素含有膜が、ケイ素含有窒化物膜又はケイ素含有複合金属窒化物膜を含み、
前記堆積中に、アンモニア(NH
3)、アンモニアプラズマ(HN
3プラズマ)、ヒドラジン(N
2H
4)、及び窒素プラズマ(N
2プラズマ)からなる群から選択される少なくとも1つが使用される、
請求項5に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項13】
前記ケイ素含有膜が、1nm~500nmの厚さ範囲内に形成される、請求項5に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項14】
前記ケイ素含有膜が、1以上のアスペクト比及び1μm以下の幅を有する少なくとも1つの凹凸を有する基材上に形成される、請求項5に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項15】
式1によって表されるケイ素前駆体化合物。
【化19】
[式1中、
Cyは、N、R
1、及びR
2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C
4~C
8複素環式環を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
R
3~R
7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C
1~C
4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C
2~C
6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R
5~R
7のうちの少なくとも1つは水素ではない。]
【請求項16】
下記式のうちのいずれか1つによって表される、請求項15に記載のケイ素前駆体化合物。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【請求項17】
式1によって表されるケイ素前駆体化合物を調製するための方法であって、
式Aによって表されるアルキルジシラザン金属塩を、トリエチルアミン、式Bによって表される二ハロゲン化ケイ素前駆体化合物、及び式Cよって表される、複素環式アミン又は複素環式アミン金属塩とのハロゲン化物-アミン置換反応に供することを含む、方法。
【化28】
[式1中、
Cyは、N、R
1、及びR
2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C
4~C
8複素環式環を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
R
3~R
7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C
1~C
4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C
2~C
6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R
5~R
7のうちの少なくとも1つは水素ではない。]
【化29】
[式A中、
M
1は、アルカリ金属及びLi又はNaであり、
R
5~R
7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C
1~C
4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C
2~C
6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R
5~R
7のうちの少なくとも1つは水素ではない。]
【化30】
[式B中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、ハロゲン元素及びCl、Br又はIであり、
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C
1~C
4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C
2~C
6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは水素ではない。]
【化31】
[式C中、
Cyは、N、R
1、及びR
2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C
4~C
8複素環式環を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
M
2は、水素、Li、及びNaからなる群から選択される。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素前駆体化合物、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物、及びケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して膜を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化ジルコニウム膜(ZrO2)等の高k誘電体材料に少量のケイ素(Si)をドーピングすることによってリーク電流を低減させる、誘電体膜を半導体装置に適用する技術が、活発に研究されている。誘電体膜に過剰なケイ素が含まれると、誘電率が減少するため、ケイ素含有膜のケイ素含有量を、低レベルに調整する必要がある。
【0003】
これに関して、DRAMの誘電体膜への適用を目的として、酸化ジルコニウム膜(ZrO2)を形成するための原子層堆積(ALD)サイクルと、ケイ素含有酸化物膜(SiO2)を形成するためのALDサイクルとを組み合わせて、ケイ素含有量が1~4原子%であるケイ素含有膜を形成する方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、0.1~0.2nmの厚さを有するSiO2膜を適用することによって、リーク電流が低減された誘電体膜スタックを用いた半導体装置も開示されている(特許文献2)。
【0005】
これらの特許文献は、ケイ素含有量を制御するための、又は、SiO2膜の厚さを制御するための技法を開示しているが、SiO2膜におけるガス供給の成膜速度は、0.6Å/サイクル以上の単位でしか制御できず、SiO2膜の厚さをより正確に制御するためには、依然として限界がある。
【0006】
一方、メモリ分野及び非メモリ分野において、高アスペクト比、三次元構造等の複雑な形状を有する製品が様々に開発されている。そのため、600℃以上の高温でも600℃以未満の低温でも自己制御的な膜成長特性を有するケイ素前駆体化合物を含み、均一で非常に薄いケイ素含有膜を実現できる、薄膜を形成するための組成物を開発すること、及び、このような組成物を使用したケイ素含有膜を形成するための方法を開発することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0035439号
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0020780号
【特許文献3】韓国特許第10-0734393号
【発明の開示】
【技術的課題】
【0008】
本発明の目的は、600℃以上の高温及び600℃未満の低温の広い温度範囲において、自己制御的な膜成長特性を有するケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、上記特性を達成することができるケイ素含有膜を形成するための組成物に含まれる、新規ケイ素前駆体化合物、及び新規ケイ素前駆体化合物を調製するための方法を提供することである。
【0010】
しかしながら、本出願によって解決される課題は、上記で言及したものに限定されず、言及していない他の課題は、以下の記載から当業者には明らかに理解されるであろう。
【課題に対する解決】
【0011】
本発明は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を提供する。
【0012】
【0013】
式1中、
Cyは、N、R1、及びR2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C4~C8複素環式環を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
R3~R7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C1~C4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C2~C6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R5~R7のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0014】
また、本発明は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ケイ素含有膜を堆積させることを含む、ケイ素含有膜を形成するための方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して形成されるケイ素含有膜を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、ケイ素前駆体化合物を調製するための方法であって、式Aによって表されるアルキルジシラザン金属塩を、トリエチルアミン、式Bによって表される二ハロゲン化ケイ素前駆体化合物、及び式Cよって表される、複素環式アミン又は複素環式アミン金属塩とのハロゲン化物-アミン置換反応に供することを含む、方法を提供する。
【0017】
【0018】
式A中、
M1は、アルカリ金属及びLi又はNaであり、
R5~R7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C1~C4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C2~C6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R5~R7のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0019】
【0020】
式B中、
X1及びX2は、それぞれ独立して、ハロゲン元素及びCl、Br又はIであり、
R3及びR4は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C1~C4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C2~C6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0021】
【0022】
式C中、
Cyは、N、R1、及びR2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C4~C8複素環式環を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
M2は、水素、Li、及びNaからなる群から選択される。
【発明の有利な効果】
【0023】
本発明の実施形態によるケイ素含有膜を形成するための組成物は、特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含むため、600℃以上の高温及び600℃未満の低温の広い温度範囲において、自己制御的な膜成長特性を有する。特に、原子層堆積(ALD)によって、ケイ素含有膜の厚さが非常に薄く、均一となるように制御することができる。このように形成され、薄く均一な厚さを有するケイ素含有膜は、誘電体膜スタック等に有利に適用することができる。
【0024】
また、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用してケイ素含有膜を形成するためのALDサイクルと、別の金属を含む膜を形成するためのALDサイクルとを組み合わせて、ケイ素と別の金属とを含むケイ素含有複合膜を形成してもよい。このような状況で、ケイ素含有複合膜のケイ素含有量は、狭い範囲内で精密に調整され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1~3におけるケイ素化合物の熱重量分析(TGA)測定の結果を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施例1及び3並びに比較例1及び2のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ALDによってケイ素含有膜を堆積させた場合の、150℃~450℃の温度に対する、ケイ素含有酸化物膜の堆積特性を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施例1、2、3、4、5及び8、並びに比較例1のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ALDによってケイ素含有膜を堆積させた場合の、600℃~850℃の温度に対するケイ素含有酸化物膜の堆積特性を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例1及び3並びに比較例1のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、750℃の温度で堆積させたケイ素含有酸化物膜の二次イオン質量分析法(SIMS)の結果を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施例1及び3並びに比較例1のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を堆積させるための組成物を使用して、750℃でパターン化ウェハに堆積させることによるステップカバレッジを確認するための透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明を詳細に記載する。
【0027】
また、本明細書において、要素が別の要素「上(on)」に形成されると言及される場合、ある要素が別の要素「上」に直接形成されることだけでなく、他の要素(複数可)がそれらの間に介在していることも意味する。
【0028】
本明細書において、別段の指示がない限り、ある部分がある要素を「含む(comprising)」と称される場合、その部分は、他の要素を除外するのではなく、他の部分も含んでもよいことを理解されるべきである。
【0029】
別段の指示がない限り、ここで使用される成分及び反応条件等の数量に関するすべての数及び表現は、「約」という用語によって修飾されているものと理解されるべきである。
【0030】
本明細書において、別段の特定がない限り、「膜」及び「薄膜」という用語のそれぞれは、「膜」と「薄膜」との両方を表す。
【0031】
本明細書において、「アルキル」又は「アルキル基」という用語は、直鎖又は分枝状アルキル基と、その可能なすべての異性体とを範囲に含む。例えば、アルキル又はアルキル基は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、ノルマルプロピル基(nPr)、イソプロピル基(iPr)、ノルマルブチル基(nBu)、イソブチル基(iBu)、tert-ブチル基(tert-Bu、tBu)及びsec-ブチル基(secBu)等だけでなく、その異性体等も範囲に含むが、アルキル又はアルキル基はこれらに限定されない。
【0032】
本明細書において、別段の指定がない限り、化学式の「実線」符号は、原子間の直接的な接続を示し、「点線」符号は、原子間の間接的な接続と、原子間の直接的な接続とを表す。
【0033】
[ケイ素含有膜を形成するための組成物]
本発明の実施形態は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を提供する。
【0034】
【0035】
式1中、
Cyは、N、R1、及びR2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C4~C8複素環式環を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
R3~R7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C1~C4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C2~C6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R5~R7のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0036】
ここで、Cyは、N、R1、及びR2が互いに直接接続している環、又は、N、R1及びR2が、別の原子を介して互いに間接的に接続している環を含み得る。詳細には、N、R1及びR2が別の原子を介して互いに間接的に接続している環を、Cyが含む場合、例えば、Cyは、N、R1、及びR2が炭素原子を介して互いに間接的に連結している環、例えば、N-C-R1-R2、N-C-C-R1-R2、及びN-C-C-R1-C-R2を含み得る。
【0037】
本発明の実施形態によるケイ素含有膜を形成するための組成物は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むため、原子層堆積(ALD)及び化学的気相成長(CVD)によって、ケイ素含有膜の厚さが、非常に薄く、均一となるように制御することができ、例えば、150℃~850℃の広い温度範囲において、ケイ素含有膜の厚さが、非常に薄く均一となるように制御することができる。
【0038】
詳細には、上記特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物は、600℃未満の低温ではALDガス供給の成膜速度(サイクルあたりの成長量)(GPC)が小さいため、ALDによって極めて薄いケイ素含有膜を形成することができる。
【0039】
例えば、従来公知のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用する場合、ALDによって形成されるSiO2膜の、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、150℃~450℃の堆積温度において、0.05nmを超える(GPC>0.05nm/サイクル)。その一方で、本発明のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用する場合、SiO2膜の、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、0.5nm以下(GPC≦0.05nm/サイクル)、例えば、約0.1~0.2nm/サイクルであるため、極めて薄い厚さを有するSiO2膜を形成するのに有利である。高アスペクト比プロセスにおいて、例えば、精密な厚さ制御を要するDRAMキャパシタなどのプロセスにおいて、極めて薄い厚さとともに、優れたステップカバレッジを有するケイ素含有薄膜を達成できるという、大きな利点もある。
【0040】
また、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用してケイ素含有膜を形成するためのALDサイクルと、別の金属を含む膜を形成するためのALDサイクルとを組み合わせて、ケイ素と別の金属とを含むケイ素含有複合膜を形成する場合、ケイ素含有複合膜のケイ素含有量を精密に制御することができる。
【0041】
詳細には、HfO2、ZrO2等の高k誘電性の膜を形成するためのALDガス供給サイクルと、SiO2膜を形成するためのALDガス供給サイクルとを組み合わせて、高k誘電性材料の膜に少量のSiを含む複合膜を形成する目的のためには、低SiO2 GPCが有利であり得る。例えば、ケイ素含有複合膜のケイ素含有量を1~4元素%に調整する場合、そのステップは精密に制御され得る。
【0042】
また、ケイ素前駆体化合物は非常に揮発性であり、室温では液体状態で存在し、様々な方法で高品質のケイ素含有膜を提供することができるため、製品の多様性、優れた品質及び製造プロセスの観点で有利となり得る。
【0043】
本発明の実施形態による、ケイ素含有膜を形成するための組成物に含まれるケイ素前駆体化合物は、様々なタイプのアミン及びアルキル基がSiに結合している構造を有するため、高温及び低温においてさえ安定で緻密な膜を形成するのに非常に有利である。ケイ素前駆体化合物は、150℃以上、200℃以上、250℃以上、且つ850℃以下又は800℃以下、例えば、150℃~850℃、150℃~800℃、150℃~750℃、150℃~700℃、150℃~600℃、150℃~500℃、150℃~450℃、200℃~450℃、250℃~450℃、250℃~400℃、400℃超~600℃未満、500℃~850℃、600℃~850℃、又は650℃~800℃という様々な温度範囲において、安定なケイ素含有膜を形成することができる。
【0044】
すなわち、式1によって表されるケイ素前駆体化合物では、第1に、上記構造において、N、R1、及びR2が互いに直接又は間接的に接続している環(Cy)に含まれるアミンは、優れた表面反応性を有し、ケイ素含有酸化物膜を形成するのに有利であり、第2に、上記構造において、R3-Si-R4によって表される部分のR3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではないため、すなわち、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、アルキル基又はアルケニル基を有するため、好ましくは、R3及びR4のうちの少なくとも1つはアルキル基を有するため、SiとCとの熱的に安定な結合によって、高温でケイ素前駆体が急速に分解せず、安定な膜を形成することができ、その結果、高温でケイ素含有膜の特性を要する三次元NANDフラッシュメモリプロセスに好適でありえ、第3に、構造が3個のSi元素を含み、SiO2 ALDにおいて、従来公知のケイ素前駆体化合物よりも著しく大きなGPCを有し、その結果、高温で緻密なSiO2膜が形成される、三次元NANDフラッシュメモリプロセスに好適であり得る。
【0045】
さらに、ケイ素前駆体化合物は熱安定性に優れるため、室温では液体状態で存在する。特に、ケイ素含有膜、例えば、ケイ素含有酸化物膜、ケイ素含有窒化物膜、ケイ素含有炭化物膜、及びケイ素含有複合金属膜を、ALDによって形成するのに有利である。
【0046】
詳細には、式1において、Cyは、置換若しくは非置換ピロリジン基、置換若しくは非置換ピペリジン基、置換若しくは非置換ピペラジン基、又は置換若しくは非置換モルホリン基を含み得る。詳細には、Cyは、ピロリジン基、ピペリジン基、2-メチルピペリジン基、ピペラジン基、1-メチルピペラジン基、又はモルホリン基を含み得る。
【0047】
R1及びR2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択される。例えば、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素(C)であり得る。また、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素(C)及び酸素(O)からなる群から選択され得る。また、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素(C)及び窒素(N)からなる群から選択され得る。
【0048】
また、式1において、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、及びイソブチル基からなる群から選択され得る。
【0049】
例えば、-SiR3R4は、-SiHMe、-SiHEt、-SiH(nPr)、-SiH(iPr)、-SiH(nBu)、-SiMe2、-SiEt2、-Si(nPr)2、-Si(iPr)2、及び-Si(nBu)2からなる群から選択され得る。
【0050】
また、式1において、R5~R7は、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基からなる群から選択され得る。
【0051】
例えば、-SiR5R6R7は、-SiHMe2、-SiH2Me、-SiHMeEt、-SiHMe(nPr)、-SiHMe(iPr)、-SiHEt2、-SiHEt(nPr)、-SiHEt(iPr)、-SiH(nPr)2、-SiH(nPr)(iPr)、-SiH(iPr)2、-SiMe3、-SiEt3、及び-Si(nPr)3からなる群から選択され得る。
【0052】
ここで、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「nPr」はノルマルプロピル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表し、「nBu」はノルマルブチル基を表す。
【0053】
例えば、ケイ素前駆体化合物は、式1-1~1-16によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
本発明の実施形態によれば、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、150℃~850℃の温度範囲において、0.08~4.5Å/サイクルであり得る。
【0071】
詳細には、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、様々な温度範囲において、様々なALDガス供給の成膜速度(GPC)値を達成することができる。
【0072】
例えば、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、150℃~400℃、詳細には250℃~400℃又は250℃~350℃の温度範囲において、0.08~0.35Å/サイクル、例えば、0.1~0.35Å/サイクル、又は、例えば、0.1~0.25Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)を達成することができる。特に、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、約300℃において、例えば、0.1~0.35Å/サイクル、例えば、0.1~0.3Å/サイクル、例えば、0.1~0.25Å/サイクル、又は、例えば、0.1~0.2Å/サイクルであり得る。
【0073】
SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)が、150℃~400℃、詳細には250℃~400℃又は250℃~350℃、例えば、300℃において上記範囲を満足するならば、薄いケイ素含有膜を形成することができ、半導体装置の誘電体膜に使用される極めて薄い膜を形成するのにより有利であり得る。例えば、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、ALDによって、約0.5nm以下、例えば、0.1~0.2nmの厚さを有するSiO2膜を形成するのに有利であり得る。
【0074】
また、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、400℃超~600℃未満の温度範囲において、例えば、0.20~2.5Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)値を達成することができる。
【0075】
詳細には、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、400℃超~600℃未満又は400℃超~500℃の温度範囲において、例えば、0.2~2.3Å/サイクル、0.2~2.0Å/サイクル、0.22~2.0Å/サイクル、0.22~1.8Å/サイクル、0.22~1.5Å/サイクル、0.24~1.0Å/サイクル、0.24~0.8Å/サイクル、又は0.24~0.5Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)値を達成することができる。
【0076】
また、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、600℃~850℃の温度範囲において、例えば、1.5~4.5Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)値を達成することができる。
【0077】
詳細には、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、600℃~850℃の温度範囲において、1.5~3.5Å/サイクル、1.7~3.0Å/サイクル、又は1.75~2.5Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)値を達成することができる。また、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、600℃~800℃の温度範囲において、1.5~2.5Å/サイクル、1.7~2.5Å/サイクル、又は1.75~2Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)値を達成することができる。また、SiO2膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって形成される場合、例えば、600℃~750℃の温度範囲において、1.5~2.5Å/サイクル、1.7~2.5Å/サイクル、1.75~2.5Å/サイクル、1.75~2.49Å/サイクル、1.75~2.4Å/サイクル、又は1.75~2.0Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)値を達成することができる。
【0078】
ケイ素含有膜が、本発明の実施形態によるケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して形成される場合、所望の膜厚さ及び所望のケイ素含有量を達成し、表面にパターン(溝)を有する基材、多孔質基材、プラスチック基材又は三次元構造の複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジ及び均一な厚さを有する膜が形成されるように組成物を制御することができ、これによって、高品質のケイ素含有膜を提供することができる。
【0079】
[ケイ素前駆体化合物を調製するための方法]
一方、式1によって表されるケイ素前駆体化合物は、様々な方法によって調製され得る。
【0080】
本発明の実施形態によるケイ素前駆体化合物を調製するための方法は、式Aによって表されるアルキルジシラザン金属塩を、トリエチルアミン、式Bによって表される二ハロゲン化ケイ素前駆体化合物、及び式Cよって表される、複素環式アミン又は複素環式アミン金属塩とのハロゲン化物-アミン置換反応に供することを含む。
【0081】
【0082】
式A中、
M1は、アルカリ金属及びLi又はNaであり、
R5~R7は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C1~C4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C2~C6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R5~R7のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0083】
【0084】
式B中、
X1及びX2は、それぞれ独立して、ハロゲン元素であり、Cl、Br又はIであり、
R3及びR4は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C1~C4アルキル基、及び直鎖又は分枝状C2~C6アルケニル基からなる群から選択され、ただし、R3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0085】
【0086】
式C中、
Cyは、N、R1、及びR2が直接又は間接的に互いに連結している環であり、置換又は非置換C4~C8複素環式環を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立して、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)からなる群から選択され、
M2は、水素、Li、及びNaからなる群から選択される。
【0087】
詳細には、反応スキーム1から分かるように、式Aによって表されるアルキルジシラザン金属塩、トリエチルアミン(TEA)、式Bによって表される二ハロゲン化ケイ素前駆体化合物、及び式Cによって表される、複素環式アミン又は複素環式アミン金属塩を、非極性溶媒中で選択的アミン配位子置換に供し、続いてこれを精製して、式1の化合物を得る。
【0088】
【0089】
反応スキーム1中、Cy、R1~R7、M1、M2、X1、及びX2は、上記で定義したとおりである。
【0090】
上記反応スキーム1を参照すると、1~3モルのトリエチルアミン及び0.5~2モルの二ハロゲン化ケイ素前駆体化合物(式B)を、低温のアルキルジシラザン金属塩(式A)に加えて、ハロゲン化物とアミンとの置換反応を室温で行い、0.5~2モルの複素環式アミン又は複素環式アミン金属塩(式C)を低温の反応系に加えて、ハロゲン化物とアミンとの置換反応を室温で行い、金属ハロゲン化物塩又はトリエチルアミンハロゲン化物塩の形態の反応副生成物を、濾紙を通じて除去し、得られたものを精製して、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を得る。
【0091】
ハロゲン化物-アミン置換反応は、-5℃~-30℃の溶媒中で行われ得る。
【0092】
また、溶媒は、5~8個の炭素原子を有するアルカン、トルエン、エーテル、テトラヒドロフラン、及びモノ-~テトラ-エチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択される1つ又は複数を含んでもよい。
【0093】
例えば、式1-1によって表されるケイ素前駆体化合物の場合、反応スキーム2から分かるように、Clとアミンとの置換反応のために、リチウム(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)塩を、約-10℃~-30℃、例えば、約-10℃~約-20℃の低温で、トリエチルアミン及びジクロロジメチルシランと約5~30時間にわたって反応させ、Clとアミンとの置換反応のために、ピロリジンを約-10℃~-30℃、例えば、約-10℃~-20℃の低温で、約5~30時間にわたって反応させて、式1-1の化合物を得る。
【0094】
【0095】
反応スキーム2では、リチウム(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)塩は、無極性溶媒としてヘキサン中、低温で、ノルマルブチルリチウム(n-BuLi)と1,1,3,3-テトラメチルジシラザンとを反応させることによって調製され得る。
【0096】
反応スキーム2では、反応生成物としての塩(LiCl、TEA・HCl)及び未反応ジクロロジメチルシランを安全に除去するため、並びに水分又は酸素によって反応中に起こる分解反応を抑制するために、窒素(N2)又はアルゴン(Ar)のフロー下で反応を行うことが好ましい。
【0097】
本発明の実施形態によれば、ケイ素前駆体化合物を使用して、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物が得られ得る。
【0098】
[ケイ素含有膜を形成するための方法]
本発明の実施形態によれば、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ケイ素含有膜を堆積させることを含む、ケイ素含有膜を形成するための方法が提供され得る。
【0099】
詳細には、ケイ素含有膜を形成するための方法は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、CVD又はALDによって、基材にケイ素含有膜を堆積させることを含む。
【0100】
本発明の実施形態によるケイ素含有膜を形成するための方法によれば、式1によって表される特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用するため、複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジ及び均一な厚さを有する膜を形成することができる。
【0101】
詳細には、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物は、ガス状態で反応チャンバに供給してもよく、ケイ素含有酸化物膜、ケイ素含有窒化物膜、ケイ素含有炭化物膜及びケイ素含有複合金属膜からなる群から選択される少なくとも1つを、CVD又はALDによって基材上に形成する。
【0102】
基材は、ケイ素半導体ウェハ、化合物半導体ウェハ及びプラスチック基材(PI、PET又はPES)であってもよいが、これらに限定されない。また、穴又は溝を有する基材を使用してもよく、大きな表面積を有する多孔質基材を使用してもよい。
【0103】
特に、数ナノメートル(nm)~数マイクロメートル(μm)の厚さを有するケイ素含有膜を、150℃~850℃の温度範囲において、表面にパターン(溝)を有する基材上、多孔質基材上又はプラスチック基材上でも、均一に形成することができる。基材上に均一な厚さを有するケイ素含有膜を形成すること、1以上、例えば、約1~50以上のアスペクト比、及び1μm以下、例えば、約1μm~10nm以下の幅を有する、微細パターン(溝)の最も深い表面及び微細な凹凸(溝)の上面を覆うことという、優れた効果を生じることができる。
【0104】
ケイ素含有膜の堆積方法は、任意の方法及び本発明が属する技術分野で公知の機器を使用してもよく、必要な場合、1種又は複数の追加の反応物質ガス等を使用して行ってもよい。
【0105】
ケイ素含有膜の堆積方法は、CVD、例えば、有機金属気相成長(MOCVD)又はALDによって行ってもよい。MOCVD又はALDは、当技術分野において公知の堆積機器、堆積条件及び反応性ガスを使用して行うことができる。
【0106】
詳細には、基材を反応チャンバに収容し、次いで、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を、搬送ガス又は希釈ガスを使用して基材上に搬送し、150℃~850℃の堆積温度、例えば、150℃~450℃若しくは150℃~400℃の低温、400℃超~600℃未満の中温、又は600℃~850℃の高温で、ケイ素含有膜を堆積させる。
【0107】
ここで、150℃~850℃の堆積温度によって、メモリ装置、論理装置及び表示装置に適用されるようになる。プロセス温度は幅広いため、様々な分野に適用することができる。特に、応力に耐性があり、600℃~850℃の高温で緻密な膜を形成することができる、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用するため、上記堆積温度範囲で容易に堆積を行うことができる。
【0108】
また、搬送ガス又は希釈ガスとして、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、及び水素(H2)からなる群から選択される少なくとも1種の混合ガスを使用することが好ましい。
【0109】
また、ケイ素前駆体化合物を反応チャンバに送達する方法は、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を、搬送ガス又は希釈ガスを使用して強制的に揮発させるバブリング法、室温で組成物を液相に供給して、蒸発器を通じて揮発させるための液体送達システム(LDS)法、蒸気圧を使用して前駆体を直接供給するための蒸気流制御(VFC)法、及び加熱によって揮発させるためのバイパス法からなる群から選択される少なくとも1つの方法であり得る。
【0110】
例えば、蒸気圧が高い場合、蒸気流制御法が使用され得る。蒸気圧が低い場合、容器を加熱することによって揮発させるバイパス法、又はアルゴン(Ar)若しくは窒素(N2)ガスを使用したバブリング法を使用して、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を、反応チャンバに供給してもよい。
【0111】
より詳細には、送達方法はバブリング法又はバイパス法を含み、バブリング法は、搬送ガス又は希釈ガスを使用して、室温~150℃の温度範囲、且つ0.1Torr~10Torrで行ってもよく、バイパス法は、0.1Torr~1.5Torrの蒸気圧を使用して、室温~100℃の温度範囲で行ってもよい。例えば、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物の、反応チャンバへの供給は、搬送ガス又は希釈ガスを使用して、室温~100℃の温度範囲、且つ0.1Torr~10Torrで行われ得る。
【0112】
また、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を揮発させるために、例えば、アルゴン(Ar)又は窒素(N2)ガスが搬送のために使用されてもよく、堆積中に熱エネルギー又はプラズマが使用されてもよく、バイアスが基材に適用されてもよい。
【0113】
一方、ケイ素含有膜を形成する方法によれば、ケイ素含有酸化物膜又はケイ素含有複合金属酸化物膜を堆積させるために、堆積中に、水蒸気(H2O)、酸素(O2)、酸素プラズマ(O2プラズマ)、酸化窒素(NO、N2O)、酸化窒素プラズマ(N2Oプラズマ)、硝酸酸素(oxygen nitrate)(N2O2)、過酸化水素(H2O2)、及びオゾン(O3)からなる群から選択される少なくとも1つが使用され得る。
【0114】
ケイ素含有酸化物膜又はケイ素含有複合金属酸化物膜は、例えば、HfSiOx、ZrSiOx、TiSiOx、HfAlOx、ZrAlSiOx、TiAlSiOx、ZrHfSiOx、ZrHfAlSiOx、SiC、SiCO及びSiONからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。ここで、xは1~3であり得る。
【0115】
また、ケイ素含有窒化物膜又はケイ素含有複合金属窒化物膜を堆積させるために、堆積中に、アンモニア(NH3)、アンモニアプラズマ(HN3プラズマ)、ヒドラジン(N2H4)及び窒素プラズマ(N2プラズマ)からなる群から選択される少なくとも1つが使用され得る。
【0116】
ケイ素含有窒化物膜又はケイ素含有複合金属窒化物膜は、例えば、HfSiNx、ZrSiNx、TiSiNx、AlSiNx、HfAlSiNx、ZrAlSiNx、TiAlSiNx、HfZrAlSiNx、HfZrTiSiNx、TiAlSiNx、SiCN、SiOCN及びSiBNからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。ここで、xは1~3であり得る。
【0117】
[ケイ素含有膜]
本発明の実施形態によれば、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して形成される、ケイ素含有膜が提供される。
【0118】
ケイ素含有膜は、数ナノメートル(nm)~数マイクロメートル(μm)の厚さを有してもよく、適用目的に応じて、様々に適用され得る。詳細には、ケイ素含有膜は、1nm~500nmの厚さ範囲内に形成され得る。
【0119】
ケイ素含有膜は、基材(基板)上に形成され得る。
【0120】
基材は、上記のとおりである。
【0121】
本発明の実施形態によるケイ素含有膜は、熱安定性に優れる特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用することによって調製されるため、CVD又はALDによって、高温においても低温においても、薄く均一な厚さでケイ素含有膜を形成するという優れた効果を生じる。
【0122】
ケイ素含有膜は、ケイ素含有酸化物膜、ケイ素含有複合金属酸化物膜、ケイ素含有窒化物膜及びケイ素含有複合金属窒化物膜からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。詳細には、ケイ素含有膜は、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0123】
また、ケイ素含有膜は、優れた熱安定性を有する、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用することによって調製されるため、ケイ素含有膜は、150℃~850℃、特に600℃~850℃の高温においてさえ小さな収縮率と、低いウェットエッチング速度(Å/s)とを有することを特徴とする。
【0124】
詳細には、ケイ素含有膜は、次の式1によって表される、5.0%以下の収縮率(S750)を有し得る。
収縮率(S750、%)=(A-B)/A×100 (式1)
【0125】
式1中、Aは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、Bは、750℃でALDによって形成され、アルゴン(Ar)雰囲気中に750℃で60分にわたって静置された後の、ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。
【0126】
式1によって表されるケイ素含有膜の収縮率(S750)は、例えば、3.9%以下、3.8%以下、3.5%以下、3.3%以下、3.2%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下又は1.0%以下であり得る。
【0127】
ケイ素含有膜が、上記範囲を満足する収縮率(S750)を有する場合、均一で緻密なケイ素含有膜を形成するのに有利であり得る。
【0128】
一方、ケイ素含有膜が、750℃における堆積によって約500Åの厚さに形成される場合、且つケイ素含有膜を、1%希釈フッ化水素酸のエッチング溶液に曝露した前後に、ケイ素含有膜の厚さを、楕円偏光計を用いて測定する場合、次の式2によって表されるケイ素前駆体化合物のウェットエッチング速度(Å/s)は、4.0Å/s以下であり得る。
ウェットエッチング速度(Å/s)=エッチング厚さ変化(ΔE,Å)/30s (式2)
【0129】
エッチング厚さ変化(ΔE)は、次の式2-1によって表され得る。
エッチング厚さ変化(ΔE,Å)=EA-EB (式2-1)
【0130】
式2-1中、EAは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、EBは、750℃でALDによって形成され、1%希釈HF溶液中で30秒にわたってエッチングされた後の、ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。
【0131】
式2中、「s」は秒を意味する。
【0132】
式2によって表されるケイ素含有膜のウェットエッチング速度(Å/s)は、例えば、3.8Å/s以下、3.5Å/s以下、3.2Å/s以下、3.0Å/s以下、2.8Å/s以下、2.5Å/s以下、2.2Å/s以下、2.0Å/s以下、1.5Å/s以下、1.0Å/s以下、0.5Å/s以下、0.1Å/s以下、0.05Å/s以下又は0.03Å/s以下であり得る。詳細には、式2によって表されるケイ素含有膜のウェットエッチング速度(Å/s)は、3.8Å/s~0.5Å/s、3.5Å/s~0.5Å/s、3.0Å/s~1.0Å/s、2.5Å/s~1.0Å/s、又は2.1Å/s~1.0Å/sであり得る。
【0133】
ケイ素含有膜が、上記範囲を満足するウェットエッチング速度(Å/s)を有する場合、均一で緻密なケイ素含有膜を形成するのに有利であり得る。
【0134】
また、ケイ素含有膜は、ステップカバレッジに非常に優れることがある。
【0135】
詳細には、ケイ素含有膜を、
図5に示すようなステップ付き穴パターンを有する基材に堆積させ、次いで、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して分析する場合、ケイ素含有膜は、例えば、80%以上、例えば、82%以上、例えば、85%以上、例えば、90%以上、例えば、92%以上、例えば、93%以上、例えば、95%以上、又は、例えば、96%以上のステップカバレッジ(%)を有する。
【0136】
ケイ素含有膜が、上記範囲を満足するステップカバレッジ(%)を有する場合、高ステップ比及び精密な厚さ制御が可能であり、様々な半導体装置、例えば、DRAM及び3D NANDフラッシュメモリを製造するために有利に使用することができる。
【実施例】
【0137】
以下に、実施例を参照しながら、本発明を詳細に記載する。以下の実施例は、本発明の説明のためのものに過ぎず、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0138】
<実施例1>ピロリジニル-(テトラメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン([(CH
2CH
2CH
2CH
2N)Si(CH
3)
2{N(SiHMe
2)
2}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化27】
【0139】
約118.69g(2.5M、約0.426モル)のn-ブチルリチウムヘキサン溶液(n-ヘキサン中n-BuLi)を、2リットル丸底フラスコ中で、約1,000mlの無水ヘキサンと混合した。約61.99g(約0.4649モル)のテトラメチルジシラザン(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)を、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。約78.41g(約0.775モル)のトリエチルアミンを、このようにして形成したリチウム(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)塩に加えた。約50g(約0.387モル)のジクロロジメチルシランを、-20℃~-10℃の反応系にゆっくりと加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。4時間後、約33.06g(約0.465モル)のピロリジンを、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、17時間撹拌した。反応が完了したら、反応中に形成した塩を濾過によって除去し、減圧下で溶媒及び揮発性副反応物質を除去して、75g(収率74.29%)のピロリジニル-(テトラメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン[(CH2CH2CH2CH2N)Si(CH3)2{N(SiHMe2)2}]を、式1-1によって表される無色液体化合物として得て、膜を形成するための組成物に使用した。
【0140】
沸点:0.3Torrにおいて40℃(760Torrにおいて223.4℃)
1H-NMR(C6D6):δ0.263(Si-CH*
3,s,6H),δ0.279,0.271(N-SiH-CH*
3,d,12H),δ1.571(N-CH2-CH*
2,m,4H),δ2.955(N-CH*
2-CH2,m,4H),δ4.751(N-Si-H*,m,2H)
【0141】
<実施例2>ピペリジニル-(テトラメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン([(CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2N)Si(CH
3)
2{N(SiHMe
2)
2}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化28】
【0142】
約77.6g(収率約73%)のピペリジニル-(テトラメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン[(CH2CH2CH2CH2CH2N)Si(CH3)2{N(SiHMe2)2}]を、式1-2によって表される無色液体化合物として、ピロリジンの代わりにピペリジンを使用したこと以外は実施例1と同じ方法で得て、これを膜形成のための組成物に使用した。
【0143】
沸点:0.3Torrにおいて50℃(760Torrにおいて237.5℃)
1H-NMR(C6D6):δ0.240(Si-CH*
3,s,6H),δ0.269,0.260(N-Si-CH*
3,d,12H),δ1.341(N-CH2-CH*
2-CH2,m,4H),δ1.488(N-CH2-CH2-CH*
2,m,2H),δ2.823(N-CH*
2-CH2-CH2,m,4H),δ4.747(N-Si-H*,m,2H)
【0144】
<実施例3>ピロリジニル-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン([(CH
2CH
2CH
2CH
2N)Si(CH
3)
2{N(SiMe
3)
2}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化29】
【0145】
約94.96g(2.5M、0.341モル)のn-ブチルリチウムヘキサン溶液(n-ヘキサン中n-BuLi)を、2リットル丸底フラスコ中で、約500mlの無水ヘキサンと混合した。約60.03g(約0.372モル)のヘキサメチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)を、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。約37.63g(約0.372モル)のトリエチルアミンを、このようにして形成したリチウム(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)溶液に加えた。約50g(約0.387モル)のジクロロジメチルシランを、約-20℃~-10℃の反応系にゆっくりと加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、17時間撹拌した。
【0146】
約94.96g(2.5M、約0.341モル)のn-ブチルリチウムヘキサン溶液(n-ヘキサン中n-BuLi)を、1リットル丸底フラスコ中で、約500mlの無水ヘキサンと混合した。約26.45g(約0.372モル)のピロリジンを、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。このようにして形成したリチウム(ピロリジン)塩溶液を、約-20℃で2リットル丸底フラスコに加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、17時間撹拌した。反応が完了したら、反応中に形成した塩を濾過によって除去し、減圧下で溶媒及び揮発性副反応物質を除去して、約77.48g(収率69.29%)のピロリジニル-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン[(CH2CH2CH2CH2N)Si(Me)2{N(SiMe3)2}]を、式1-3によって表される無色液体化合物として得て、膜を形成するための組成物に使用した。
【0147】
沸点:0.3Torrにおいて55℃(760Torrにおいて244.5℃)
1H-NMR(C6D6):δ0.255(Si-CH*
3,s,6H),δ0.290(N-Si-CH*
3,s,18H),δ1.543(N-CH2-CH*
2,m,4H),δ2.871(N-CH*
2-CH2,m,4H)
【0148】
<実施例4>ピペリジニル-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン([(CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2N)Si(CH
3)
2{N(SiMe
3)
2}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化30】
【0149】
約77.51g(収率約66.1%)のピペリジニル-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン[(CH2CH2CH2CH2CH2N)Si(CH3)2{N(SiMe3)2}]を、式1-4によって表される無色液体化合物として、ピロリジンの代わりにピペリジンを使用したこと以外は実施例3と同じ方法で得て、これを膜形成のための組成物に使用した。
【0150】
沸点:0.3Torrにおいて65℃(760Torrにおいて258.6℃)
1H-NMR(C6D6):δ0.239(Si-CH*
3,s,6H),δ0.285(N-Si-CH*
3,s,18H),δ1.343(N-CH2-CH*
2-CH2,m,4H),δ1.491(N-CH2-CH2-CH*
2,m,2H),δ2.765(N-CH*
2-CH2-CH2,m,4H)
【0151】
<実施例5>ピロリジニル-(テトラメチルジシリル)アミノ-メチルシラン([(CH
2CH
2CH
2CH
2N)SiH(CH
3){N(SiHMe
2)
2}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化31】
【0152】
約121.05g(2.5M、約0.434モル)のn-ブチルリチウムヘキサン溶液(n-ヘキサン中n-BuLi)を、3リットル丸底フラスコ中で、約1,000mlの無水ヘキサンと混合した。約57.95g(約0.434モル)のテトラメチルジシラザン(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)を、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。4時間後、約50g(約0.434モル)のジクロロメチルシランを、約-20℃~-10℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。4時間後、約74.18g(約1.043モル)のピロリジンを、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、17時間撹拌した。反応が完了したら、反応中に形成した塩を濾過によって除去し、減圧下で溶媒及び揮発性副反応物質を除去して、82.52g(収率77%)のピロリジニル-(テトラメチルジシリル)アミノ-メチルシラン[(CH2CH2CH2CH2N)SiH(CH3){N(SiHMe2)2}]を、式1-5によって表される無色液体化合物として得て、膜を形成するための組成物に使用した。
【0153】
沸点:0.3Torrにおいて30℃(760Torrにおいて209.3℃)
1H-NMR(C6D6):δ0.309,0.302(Si-CH*
3,d,3H),δ0.279,0.274(N-Si-CH*
3,q,12H),δ1.547(N-CH2-CH*
2,m,4H),δ2.963(N-CH*
2-CH2,m,4H),δ4.786(N-Si-H*,m,2H),δ4.990(Si-H*,m,1H)
【0154】
<実施例6>ピペリジニル-(テトラメチルジシリル)アミノ-メチルシラン([(CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2N)SiH(CH
3){N(SiHMe
2)
2}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化32】
【0155】
約84.65g(収率約74.71%)のピペリジニル-(テトラメチルジシリル)アミノ-メチルシラン[(CH2CH2CH2CH2CH2N)SiH(CH3){N(SiHMe2)2}]を、式1-6によって表される無色液体化合物として、ピロリジンの代わりにピペリジンを使用したこと以外は実施例5と同じ方法で得て、これを膜形成のための組成物に使用した。
【0156】
沸点:0.3Torrにおいて40℃(760Torrにおいて223.4℃)
1H-NMR(C6D6):δ0.290,0.282(Si-CH*
3,d,3H),δ0.269,0.261(N-Si-CH*
3,d,12H),δ1.362(N-CH2-CH*
2-CH2,m,4H),δ1.474(N-CH2-CH2-CH*
2,m,2H),δ2.860(N-CH*
2-CH2-CH2,m,4H),δ4.788(N-Si-H*,m,2H),δ4.893(Si-H*,m,1H)
【0157】
<実施例7>ピロリジニル-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-メチルシラン([(CH
2CH
2CH
2CH
2N)SiH(CH
3){N(SiMe
3)
2}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化33】
【0158】
約84.98g(収率約71.19%)のピロリジニル-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-メチルシラン[(CH2CH2CH2CH2N)SiH(CH3){N(SiHMe3)2}]を、式1-7によって表される無色液体化合物として、テトラメチルジシラザン(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)の代わりにヘキサメチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)を使用したこと以外は実施例5と同じ方法で得て、これを膜形成のための組成物に使用した。
【0159】
沸点:0.3Torrにおいて50℃(760Torrにおいて237.5℃)
1H-NMR(C6D6):δ0.298,0.291(Si-CH*
3,d,3H),δ0.279(N-Si-CH*
3,s,18H),δ2.921(N-CH*
2-CH2,m,4H),δ1.533(N-CH2-CH*
2,m,4H),δ5.076(Si-H*,m,1H)
【0160】
<実施例8>ピペリジニル-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-メチルシラン([(CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2N)SiH(CH
3){N(SiMe
3)
2}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化34】
【0161】
約85.32g(収率約68%)のピペリジニル-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-メチルシラン[(CH2CH2CH2CH2CH2N)SiH(CH3){N(SiMe3)2}]を、式1-8によって表される無色液体化合物として、ピロリジンの代わりにピペリジンを使用し、テトラメチルジシラザン(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)の代わりにヘキサメチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)を使用したこと以外は実施例5と同じ方法で得て、これを膜形成のための組成物に使用した。
【0162】
沸点:0.3Torrにおいて60℃(760Torrにおいて251.6℃)
1H-NMR(C6D6):δ0.239,0.232(Si-CH*
3,d,3H),δ0.268(N-Si-CH*
3,s,18H),δ1.364(N-CH2-CH*
2-CH2,m,4H),δ1.478(N-CH2-CH2-CH*
2,m,2H),δ2.819(N-CH*
2-CH2-CH2,m,4H),δ5.001(Si-H*,m,1H)
【0163】
比較例1
トリス(ジメチルアミド)シラン(3DMAS又はTDMAS)[SiH(NMe2)3](UP Chemical Co.,Ltd.製)を使用した。
【0164】
比較例2
ジメチルアミンの代わりに環状アミンピロリジンが置換されている、トリス(ピロリジノ)シラン(TPYS)[SiH[N(CH2)4]3(UP Chemical Co.,Ltd.製)を使用した。
【0165】
[試験実施例]
<試験実施例1>ケイ素前駆体化合物の熱的特性の分析
上記実施例の中の実施例1及び3において調製したケイ素前駆体化合物について、熱重量分析(TGA)を行い、結果を
図1に示す。
【0166】
図1から分かるように、実施例1及び3において調製したケイ素前駆体化合物は、残留物を残さずに揮発するため、化学的気相成長法又は原子層堆積法によってケイ素含有膜を形成する目的に適している。
【0167】
<試験実施例2>低温及び高温における、ケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物の堆積特性の分析
実施例及び比較例のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物と、反応ガスとしてのオゾン(O3)とを使用して、ALDによってケイ素含有膜を形成した。
【0168】
まず、ケイ素基材を、硫酸(H2SO4)と過酸化水素(H2O2)とが4:1の比で混合されているピラニア溶液に、10分にわたって浸漬した後、取り出した。次いで、希釈水性HF溶液に2分にわたって浸漬して、新規の表面を形成した。次いで、ケイ素含有酸化物膜を、ALDによってケイ素基材上に形成した。
【0169】
ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を、ステンレス鋼で作製された容器に入れた。アルゴン(Ar)キャリアガスを約200sccmの流量で流して、膜を堆積させるための組成物をガス状態で、室温の反応チャンバに供給し、このとき、反応器のプロセス圧力を4Torrに設定した。
【0170】
各ケイ素含有酸化物膜の堆積特性を確認するため、ガス供給サイクルを100回繰り返した。このサイクルでは、膜を形成するための組成物を、ガス状態で約3秒にわたって供給し;アルゴン(Ar)ガスを約10秒にわたって供給して、反応器内に残存する膜を形成するための組成物(ガス)を除去し;オゾン(O3)を反応ガスとして約5秒にわたって供給し;アルゴン(Ar)ガスを約10秒にわたって供給して、反応器内に残存するオゾン(O3)を除去した。
【0171】
実施例及び比較例の方法によって調製したケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して形成した、各酸化物膜の厚さを、楕円偏光計(M-2000,J.A.Woollam)を使用して測定した。
【0172】
その後、測定された厚さをガス供給サイクルの数(100回)で除算して、ALDガス供給の成膜速度(GPC)を計算した。
【0173】
詳細には、150℃~450℃及び600℃~850℃の温度(プロセス温度)に対するALDガス供給の成膜速度(GPC)を、それぞれ測定した。結果を
図2及び3、並びに表1及び2に示す。
【0174】
【0175】
【0176】
表1及び
図2から分かるように、実施例1及び3のケイ素化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、150~450℃の低温でALD堆積を行った場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、比較例1及び2よりも著しく低かった。特に、本発明のケイ素含有膜を形成するための組成物を、DRAMのキャパシタ誘電体膜を形成するための温度である約300℃で使用した、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、約0.16~0.20Å/サイクルと非常に低かった。
【0177】
対照的に、比較例1のケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、0.48Å/サイクルであった。比較例2のケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、0.51Å/サイクルであった。これらは、本発明の実施例のシリコーン含有膜を形成するための組成物を使用した場合と比較して、2倍以上に上昇した。
【0178】
また、比較例1又は2のケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した場合、SiO2膜は、0.5Å/サイクルの単位で、例えば、0.5、1.0及び1.5Å/サイクルでのみ調整することができる。対照的に、本発明のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用する場合、膜厚さを、0.2Å/サイクル以下の単位で調整することができ、SiO2膜厚さを2倍以上正確に調整することができる。
【0179】
一方、表2及び
図3から分かるように、600℃以上の高温でALDを行うとき、実施例1、2、3、4、5及び8のそれぞれのシリコーン化合物を含むシリコーン含有膜を形成するための組成物を使用する場合、比較例1のシリコーン化合物を含むシリコーン含有膜を形成するための組成物を使用した場合と比較して、600℃~850℃という比較的高温で一定のGPCが達成された。
【0180】
詳細には、比較例1のケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、約700℃から上昇した。対照的に、実施例1、2、3及び4のそれぞれのケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、850℃の高温においてさえ一定であった。上記から、本発明の実施例のシリコーン化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物は、600℃~850℃の高温で一定のGPCを達成し、自己制御的な膜成長特性を示し、したがって、高温におけるALDプロセスに好適な前駆体であることが確認された。
【0181】
<試験実施例3>高温で堆積させたケイ素含有酸化物膜の物理的特性の分析
実施例1及び3並びに比較例1のそれぞれのケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ALDガス供給サイクルを調整しながら、同じ厚さを有するSiO2膜を、平坦なウェハ上に750℃で形成した。物理的及び化学的特性を分析した。
【0182】
詳細には、SiO2膜の収縮率とウェットエッチング速度(WER、Å/s)を測定した。SiO2膜の厚さを、楕円偏光計(M-2000,J.A.Woollam)を用いて測定した。
【0183】
表3に示す、ALDガス供給サイクルを調整することによって、750℃で平坦なウェハ上に形成した、約100Åの初期厚さを有するケイ素含有膜(SiO2膜)の厚さを、アルゴン(Ar)雰囲気中、750℃で60分アニーリングしたケイ素含有膜(SiO2膜)の厚さと比較して、式1による収縮率を計算した。
収縮率(S750、%)=(A-B)/A×100 (式1)
【0184】
式1中、Aは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、Bは、750℃でALDによって形成され、アルゴン(Ar)雰囲気中に750℃で60分にわたって静置された後の、ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。
【0185】
結果を表3に示す。
【0186】
【0187】
上記表3から分かるように、実施例1及び3のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜(SiO2膜)の収縮率は、それぞれ、3.15%及び2.17%であった。対照的に、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜の収縮率は、6.40%であった。以上のように、実施例1及び3のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜は、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜よりも、小さな収縮率を有していた。
【0188】
一方、下記の表4に示す、ALDガス供給サイクルを調整することによって、750℃で平坦なウェハ上に形成した、約500Åの初期厚さを有するケイ素含有膜(SiO2膜)を、1%希釈HF溶液中で30秒にわたってエッチングした。厚さの変化を測定して、式2によってウェットエッチング速度(WER、Å/s)を計算した。
ウェットエッチング速度(Å/s)=エッチング厚さ変化(ΔE,Å)/30s (式2)
【0189】
エッチング厚さ変化(ΔE)は、式2-1によって表され得る。
エッチング厚さ変化(ΔE,Å)=EA-EB (式2-1)
【0190】
式2-1中、EAは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、EBは、750℃でALDによって形成され、1%希釈HF溶液中で30秒にわたってエッチングされた後の、ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。
【0191】
式2中、「s」は秒を意味する。
【0192】
結果を表4に示す。
【0193】
【0194】
上記表4から分かるように、実施例1及び3のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜(SiO2膜)のウェットエッチング速度は、それぞれ、2.10Å/s及び1.45Å/sであった。対照的に、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜のウェットエッチング速度は、2.90Å/sであった。実施例1及び3のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜は、著しく減少した。
【0195】
一方、ケイ素含有酸化物層内の不純物を確認するため、ケイ素含有酸化物膜について、二次イオン質量分析法(SIMS)を行った。
【0196】
図4は、本発明の実施例1及び3並びに比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物のそれぞれを使用して、750℃の温度で堆積させた、ケイ素含有酸化物膜の二次イオン質量分析法(SIMS)の結果を示すグラフである。
【0197】
比較例1並びに実施例1及び3のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物層内の不純物を確認するため、約100Åの厚さに堆積させたケイ素含有酸化物膜を、SIMSによって炭素(C)含有量について分析した。
【0198】
結果として、炭素含有量は、比較例1と比較して、実施例1では約63%、実施例3では約55%低減しており、100カウント未満の炭素含有量を有する、純粋なケイ素含有酸化物膜が形成されたことを示している。
【0199】
図5は、750℃で、本発明の実施例1及び3並びに比較例1のケイ素含有膜を堆積させるための組成物のそれぞれと、オゾンとを使用したALDによって、深いパターンを有するウェハ上に形成された、ケイ素含有酸化物膜の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。表5は、
図5に示す部分において測定した、ケイ素含有酸化物膜の厚さを示す。
【0200】
【0201】
表5から分かるように、実施例1及び3並びに比較例1のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を、ステップを有する基材に堆積させ、次いで、TEMを使用して分析した場合、実施例1及び3のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜のステップカバレッジは、それぞれ95.9%及び96.7%であった。対照的に、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜のステップカバレッジは、78.1%であった。実施例1及び3のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜は、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜と比較して、顕著に優れたステップカバレッジを有していた。
【0202】
要するに、本発明の実施形態によるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した、ケイ素含有膜を形成するための方法によれば、ALDによって容易にケイ素含有膜を堆積させること、膜の厚さ及び組成を正確に制御すること、並びに複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジで均一な膜を形成することができた。
【0203】
特に、本発明によるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した、ケイ素含有膜を形成するための方法によれば、堆積中に、600℃~850℃の高温でも、150℃~450℃の低温でも、所望の厚さの膜を得ることができる。このようにして得たケイ素含有酸化物膜は、比較例1のケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したケイ素含有酸化物膜と比較して、著しく改善された物理的特性、例えば、ステップカバレッジ、収縮率及びウェットエッチング速度を有していた。
【国際調査報告】