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  • 特表-膜電解槽からの最適な液体流出 図1
  • 特表-膜電解槽からの最適な液体流出 図2a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】膜電解槽からの最適な液体流出
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/08 20060101AFI20240719BHJP
   C25B 9/70 20210101ALI20240719BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20240719BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20240719BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240719BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C25B15/08 302
C25B9/70
C25B15/00 303
C25B15/023
C25B9/00 C
C25B1/26 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502610
(86)(22)【出願日】2022-07-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022069970
(87)【国際公開番号】W WO2023001723
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】21186388.1
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ライディッヒ,トーステン
(72)【発明者】
【氏名】オーバーマイヤー,マルセル
(72)【発明者】
【氏名】カーン,トルステン
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA03
4K021BB04
4K021BC01
4K021BC04
4K021BC06
4K021CA09
4K021CA11
(57)【要約】
本発明は、膜電解槽から選択される複数の電解槽を有する電解デバイスを動作させるための方法であって、少なくとも各電解槽は、アノード側において、少なくとも1つの液体流出部と、少なくとも1つのガス放出部とを有し、これらとは別々にカソード側において、少なくとも1つの液体流出部と、少なくとも1つのガス放出部とを有し、前記電解槽のアノード空間は、いずれの場合も少なくとも液体入口(2.2)、ガス出口(2.4)、および液体出口(2.5)を介して互いに接続され、これらとは別々に、前記電解槽のカソード空間は、いずれの場合も少なくとも液体入口(2.2)、ガス出口(2.4)、および液体出口(2.5)を介して互いに接続される、方法に関する。方法は、少なくとも1つの液体出口(2.5)の作動圧力が、電解槽の作動圧力よりも低く設定され、a.電解槽のアノード空間もしくはカソード空間、またはこれらの空間の両方からの液体流出が、電解槽ごとに、パイプサイフォン(2.14)を介して液体出口(2.5)のパイプシステムに行われ、その結果、電解槽の作動圧力が、各パイプサイフォン(2.14)により液体流出部側の液体出口(2.5)の隣接するパイプシステムの低い作動圧力から分離され、b.パイプサイフォン(2.14)により分離された電解槽の各ガス放出が、電解槽ごとに個々の制御弁(2.16)を介して各電解槽に対して共通のガス出口(2.4)に個々に行なわれることを特徴とする。この方法および対応して構成された電解デバイスによって、液体出口(2.5)を電解槽の作動圧力から分離することができ、始動から作動パイプシステムへの切り替えをより容易に実行することができる。
【選択図】図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電解槽から選択される複数の電解槽を備える電解装置を動作させるための方法であって、アノード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインを有し、いずれの場合も少なくとも1つのガス出口を有し、これらとは別々に、カソード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインを有し、いずれの場合も少なくとも1つのガス出口を有し、これらの電解槽のアノード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部(2.2)、ガス放出部(2.4)、および液体放出部(2.5)を介して互いに接続され、これらとは別々に、これらの電解槽のカソード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部(2.2)、ガス放出部(2.4)、および液体放出部(2.5)を介して互いに接続され、少なくとも1つの液体放出部(2.5)の作動圧力は、前記電解槽の作動圧力よりも低く設定され、
a.前記電解槽の前記アノード空間もしくは前記カソード空間、またはこれらの空間の両方からの液体ドレインは、電解槽ごとに、パイプラインサイフォン(2.14)を介して前記液体放出部(2.5)のパイプラインシステムにもたらされ、その結果、液体ドレイン側では、前記電解槽の前記作動圧力は、各パイプラインサイフォン(2.14)によって前記液体放出部(2.5)の隣接するパイプラインシステムの低い作動圧力から分離され、
b.パイプラインサイフォン(2.14)によって分離された前記電解槽の各ガス出口は、電解槽ごとに個々の制御弁(2.16)を介して各電解槽に対して共通のガス放出部(2.4)に個々にもたらされる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
動作される前記電解装置は、ガス拡散電極、特に酸素脱分極カソードを有する膜電解槽から選択される複数の電解槽を含み、これらの電解槽は、少なくともガス拡散電極側ガス供給部(2.1)、液体供給部(2.2)としてのガス拡散電極側液体供給部、ガス放出部(2.4)としてのガス拡散電極側残留ガス放出部、および液体放出部(2.5)としてのガス拡散電極側液体放出部を介して互いに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜電解槽は、アルカリ金属塩化物膜電解槽から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
使用される前記アルカリ金属塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電解槽は、ガス拡散電極として酸素脱分極カソードを有する膜電解槽から選択され、前記ガス拡散電極側ガス供給部(2.1)は、酸素ガス含有ガス流のための供給源に接続されることを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電解槽は、ガス拡散電極を有する膜電解槽から選択され、前記ガス拡散電極側ガス供給部(2.1)は、二酸化炭素含有ガス流、特に二酸化炭素のガス流のための供給源に接続されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記電解槽の前記作動圧力は、大気圧と1barの正圧との間、好ましくは100~500mbarの正圧の範囲であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記パイプラインサイフォンのドレイン側の作動圧力は、入口側の作動圧力よりも低く、好ましくは大気圧と100mbarの正圧との間であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(i)生成ガス、残留ガス、生成ガスと残留ガスの混合物から選択されたガス、および
(ii)液体は、
まず、各個々の電解槽の排出マニホールド内の混合物として一緒に前記電解槽から導出され、次いでこの混合物が気液分離され、分離が行われた後、前記ガスがステップbに従って前記ガス出口を介してもたらされ、前記液体がステップaに従って前記液体ドレインを介してもたらされる
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記液体放出部(2.5)は、前記電解装置のすべての動作モードにおいて、特に前記電解装置の始動時、停止時、および動作中にステップaに従ってもたらされることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
膜電解槽から選択される複数の電解槽を含む、特に塩素の製造のための電解装置であって、アノード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインと、少なくとも1つのガス出口とを有し、これらとは別々に、カソード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインと、少なくとも1つのガス出口とを有し、これらの電解槽のアノード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部(2.2)、ガス放出部(2.4)、および液体放出部(2.5)を介して互いに接続され、これらとは別々に、これらの電解槽のカソード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部(2.2)、ガス放出部(2.4)、および液体放出部(2.5)を介して互いに接続され、
a.液体ドレイン側において、前記液体放出部(2.5)のうちの少なくとも1つのパイプラインシステムの作動圧力から前記電解槽の作動圧力を分離するために、前記電解槽の前記アノード空間もしくは前記カソード空間、またはこれらの空間の両方からの前記液体ドレインは、電解槽ごとに、パイプラインサイフォン(2.14)を介して前記液体放出部(2.5)の前記パイプラインシステムと流体接続され、
b.前述のパイプラインサイフォン(2.14)を備えたすべての電解槽の前記ガス出口は、電解槽ごとに個々の制御弁(2.16)を介して対応する共通のガス放出部(2.4)と流体接続される
ことを特徴とする、電解装置。
【請求項12】
前記電解槽は、好ましくはカソード側にガス拡散電極を含み、前記電解槽は、少なくともガス拡散電極側のガス供給部(2.1)を介して互いにさらに接続されることを特徴とする、請求項11に記載の特に塩素の製造のための電解装置。
【請求項13】
複数の膜電解槽を含む電解装置の電解槽の液体ドレインにおけるパイプラインサイフォンの使用であって、前記電解槽は、液体ドレイン側において、液体放出部(2.5)の隣接するパイプラインシステムの作動圧力から前記電解槽の作動圧力を分離するために、少なくとも液体供給部(2.2)、ガス放出部(2.4)、および液体放出部(2.5)を介して互いに接続される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適な液体ドレインを有する膜電解槽を備える電解装置の提供、およびこれらの電解装置を動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用化学品の製造のための電解プロセスは、大規模な工業規模(数1000t/a)での製造のために開発されなければならない。電解プロセスによって工業規模の量の生成物を製造するためには、大面積の電解セルおよび多数の電解セルを有する電解槽が必要である。
【0003】
クロルアルカリ電解で知られているように、電解セル当たり2mを超える電極面積を有する電解セルが通常使用される。電解セルは、電解フレーム内で最大100個のグループに組み合わされる。次いで、複数のフレームが電解槽を形成する。例えば塩素製造のための工業用電解槽の容量は、現在、最大30000t/aの塩素、およびそれぞれの当量の水酸化ナトリウム溶液または水素である。
【0004】
いくつかの電解プロセスを行う場合、電極半反応の少なくとも1つは、ガス状生成物、例えば水電解中の酸素および水素、またはクロルアルカリ電解中の塩素および場合によっては水素を遊離させる。このガスの形成は、多くの場合、電解槽の作動圧力と電解槽からの液体出口の作動圧力との間に圧力差をもたらす。例えば、従来のクロルアルカリ膜電解では、アルカリ金属塩水溶液の電解により、塩素、アルカリ金属水酸化物水溶液(アルカリ液(lye))、および水素の生成物が生成される。水酸化ナトリウム溶液の製造のための反応式を、ここに例として与える:
2NaCl+2HO→Cl+2NaOH+H
上述の圧力差は、ガス拡散電極を有する電解槽を動作させる場合にも観察され、電解槽の作動圧力は、導入された反応ガスまたは除去された残留ガス(例えば、酸素脱分極カソードを動作させる場合は酸素、または例えば、ガス拡散電極を用いてCO電解を動作させる場合は二酸化炭素である)によって、場合によっては電解中に形成された生成ガスと組み合わせて、少なくとも影響を受ける。
【0005】
選択される電極のタイプにかかわらず、複数の電解装置(電解槽)は、典型的には、対応する電解プラントで並行して動作される。例えば独国特許出願公開第19641125号明細書に記載されているように、電解槽は各々、並列に液圧で接続された複数の個々の電解セルを備え、これを通して電流は、電気直列回路(「バイポーラ電解槽」)または電気並列回路(「単極電解槽」)を流れる。
【0006】
電解槽への作動媒体の供給(例えば、アノード側に塩水、カソード側にアルカリ液)、および生成物の放出(例えば、アノード側から塩素ガスおよび枯渇した塩水「アノード液」、ならびにカソード側から水素および富化したアルカリ液「カソード液」)は、一般に、電解槽を適切な処理プラントに接続し、電解槽が並列に接続される動作パイプラインシステムを介して行われる。電解セルホールにおける電解槽およびパイプラインシステムの典型的な配置は、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,chapter「Chlorine」に見出すことができる。
【0007】
電解槽は、典型的には、高温および高圧で動作され、典型的な値は、約40~90℃であり、およそ大気圧から200~500mbarの正圧の作動圧力である。電解セル内の動作正圧は、特に電解槽のアノード液側で、例えば塩素および水素などのガス状生成物の下流処理ステップ(水分の凝縮)がより簡単に進行し、下流圧縮がより良好な開始条件を有し、必要とされ得る任意の中間圧縮機を省略することができるという利点を提供する。しかし、以下に説明する追加の手段は、始動/停止動作を介した非加圧動作不能状態と、高圧/高温での通常動作との間を通過するために必要である。
【0008】
作動媒体は通常、下から電解セルに供給され、生成物は、オーバーフロー中に電解セルを残す。その結果、電解セルは、始動/停止中は常に液体で満たされ、または生成されたガスのために通常動作中は液体/ガス混合物で満たされる。
【0009】
膜電解セルおよび電解槽の典型的な設計ならびに典型的な動作データは、例えば、Handbook of Chlor-Alkali Technology,Chapter 5「Chlor-Alkali Technologies」に記載されている。
【0010】
始動のためには、電解槽を作動温度まで加熱し、周囲条件(大気圧、室温)から開始して作動圧力まで加圧しなければならず、停止のためには、これに対応して冷却し、減圧しなければならない。始動および停止のための例示的な手順は、例えば、Handbook of Chlor-Alkali Technology,Chapter 13「Plant Commissioning and Operation」に記載されている。
【0011】
これらの始動プロセスのための広範な技術的解決策は、別々の始動パイプラインシステムを介して電解槽を始動回路に接続することであり、それにより個々の電解槽は、動作中の他の電解槽とは独立して動作および停止することができる。
【0012】
典型的な始動プロセスは、以下のように進行する。
【0013】
電解槽は、別々の始動回路を介して作動媒体で満たされる。その後、作動媒体は循環され、動作のための目標温度に達するまで加熱される。そして、始動回路を介した循環を停止する。電解槽のアノード側およびカソード側は、(例えば、窒素を添加することによって)作動圧力まで加圧される。動作パイプラインシステムへの接続が開かれ、これらの動作パイプラインシステムを介した循環が再開された後、電流(以下、電解電流と呼ばれる)をオンに切り替えることができ、したがって電解槽を動作させることができる。
【0014】
典型的な停止プロセスは始動と同様に進行するが、逆の様式である。
【0015】
電解電流がオフに切り替えられた後、動作パイプラインシステムを介した循環は停止され、電解槽はこれらの動作パイプラインシステムから切り離される。アノード空間およびカソード空間は、減圧される。アノード空間とカソード空間との間の差圧は、所定の動作パラメータ内に留まることに留意されたい。循環は始動パイプラインシステムを介して再開され、電解槽は冷却される。
【0016】
使用される技術の仕様(例えば、電極コーティングのタイプ)に応じて、特定の温度から始まる始動中に補助整流器を介して低分極電流(数十アンペア程度の大きさ)が印加され、この電流は電極コーティングを損傷から保護し、停止するとき、これに対応して、特定の温度を下回り、かつアノード空間が塩素を含まずにフラッシングされるとすぐに再びオフに切り替えられる。分極整流器は、始動中に始動回路から動作回路に切り替わり、かつ停止中にその逆に切り替わるとき、循環の短時間の中断中にオンに切り替えたままにすることができる。従来の設計の電解セルはこれらのプロセス中に液体で満たされるため、分極電流によって損傷を引き起こすことはない。
【0017】
電解槽の一般的な動作モードおよび電解装置の構造に関して上述したパラメータは、水電解と同様に適用することができる。アルカリ水電解ならびにPEM電解として知られるポリマー電解質ベースの電解のための工業用プラントが知られており、市販されている。水電解の原理は、例えばVolkmar M.Schmidtの「Elektrochemische Verfahrenstechnik」(2003 Wiley-VCH-Verlag;ISBN 3-527-29958-0)のchapter6.3.4に記載されている。
【0018】
新しい開発、例えばクロルアルカリ電解では、通常ガス拡散電極(GDE)と呼ばれる、電解セルの電極側電流分配器に配置された追加の触媒による。反応ガスとして酸素を使用する場合、ガス拡散電極は、酸素脱分極カソード(ODC)とも呼ばれる。これは、例えばクロルアルカリ電解で使用され、酸素を添加した改質カソード反応では、水素(H)の代わりにアルカリ液(OH)が生成される。この改質カソード反応は、より低い電解電圧および対応するエネルギー節約に関連する。水酸化ナトリウムアルカリ液の製造の例について、以下の反応式が得られる:
4NaCl+O+2HO→2Cl+4NaOH
クロルアルカリ電解に加えて、ガス拡散電極の用途としては、例えば公開明細書、独国特許出願公開第102020207186号明細書に記載されているCO/COの電解、独国特許出願公開第102020207186号明細書に記載されているギ酸の電解生成の中間ステップによるCOからのCOの生成、または独国特許出願公開第102020207186号明細書に記載されているCO還元用のガス拡散電極を有する電解セルが挙げられる。
【0019】
ガス拡散電極の使用は、クロルアルカリ電解の例として以下に記載される。例では、酸素脱分極カソードがガス拡散電極として使用される。酸素脱分極反応を維持するために必要な電解槽への酸素の供給は、例えば独国特許出願公開第102013011298号明細書に記載されているように、電解セルを通る単純な流れによって行うことができ、または独国特許出願公開第10149779号明細書に提供されているように、追加の再循環ステップを含むことができる。
【0020】
しかし、いずれの場合でも、この技術を既存の電解槽技術に統合するために、作動液体、触媒、および酸素ガスの間の三相反応を解決するという追加のタスクがある。
【0021】
現在の好ましい工業的実施形態では、これは、例えば公開明細書、欧州特許第2746429号明細書に記載されているようなクロルアルカリ電解の場面において、アルカリ金属水酸化物アルカリ液が触媒層の前に液膜として滴下し、底部の電解セルから排出される一方で、酸素ガスが裏側から触媒層に搬送されるように行われる。
【0022】
その結果、電解セルのカソード側の液体の体積は、従来のクロルアルカリ膜電解と比較して非常に小さく、従来の電解とは対照的に、液体はもはやオーバーフローを介して排出されるのではなく、電解セルの底部の出口を通して直接排出されるため、液体循環が中断された場合、内容液は非常に短時間でセルから排出される。
【0023】
始動/停止中に電極コーティングおよび酸素脱分極カソードの触媒を保護するために印加される分極電流は、例えば、カソード側で乾燥した電解セルにおける短絡を回避するために、液体循環の中断の場合に直ちにオフに切り替える必要がある。
【0024】
酸素脱分極カソード技術で動作する新たに設計されたクロルアルカリ電解プラントでは、電解槽は、従来の電解技術と同様に、動作および始動パイプラインシステムに並列に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】独国特許出願公開第19641125号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102020207186号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102013011298号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10149779号明細書
【特許文献5】欧州特許第2746429号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,chapter「Chlorine」
【非特許文献2】Handbook of Chlor-Alkali Technology,Chapter 5「Chlor-Alkali Technologies」
【非特許文献3】Handbook of Chlor-Alkali Technology,Chapter 13「Plant Commissioning and Operation」
【非特許文献4】Volkmar M.Schmidt,「Elektrochemische Verfahrenstechnik」(2003 Wiley-VCH-Verlag;ISBN 3-527-29958-0),chapter6.3.4
【発明の概要】
【0027】
しかし、従来の電解技術とは対照的に、個々の電解槽を動作パイプラインシステムに接続する際、または動作パイプラインシステムから個々の電解槽を切り離す際の(この場合はカソード側の)液体循環の中断は回避されるべきである。液体循環の中断および結果として生じる分極電流のスイッチオフは、酸素脱分極カソードへの損傷をもたらす。
【0028】
これまでの慣習的な設備(手動およびプロセス制御作動弁を介したシステムの分離)では、このタスクは、この場合、可変速駆動装置を介して以前に手動で動作された様々な弁(DN400までの大きな公称直径を有するものもある)を自動化することによって、多大な労力をかけてのみ達成することができ、この弁には、液体循環を中断することなく、電解槽のカソード側を始動パイプラインシステムから動作パイプラインシステムに切り替え、同時に圧力を作動圧力に上昇させる制御システムを設ける必要がある。これに対応して、オフに切り替えるときに逆も当てはまる。
【0029】
ここで、電解槽の電極側、特にガス拡散電極側についての切り替えプロセスは、動作パイプラインシステムからの電解槽の液体側の分離がもはや弁を介してではなく、液体充填サイフォンを介して行われ、電極側、特にガス拡散電極側のガス圧力制御が、もはやすべての電解槽に対してまとめて中心的に実施されるのではなく、個々に各電解槽に対して実施される場合に大幅に単純化され得ることが分かった。
【0030】
したがって、本発明の1つの主題は、膜電解槽から選択される複数の電解槽を備える電解装置を動作させるための方法であって、アノード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインを有し、いずれの場合も少なくとも1つのガス出口を有し、これらとは別々に、カソード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインを有し、いずれの場合も少なくとも1つのガス出口を有し、これらの電解槽のアノード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部、ガス放出部、および液体放出部を介して互いに接続され、これらとは別々に、これらの電解槽のカソード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部、ガス放出部、および液体放出部を介して互いに接続され、少なくとも1つの液体放出部の作動圧力は、電解槽の作動圧力よりも低く設定され、
a.電解槽のアノード空間もしくはカソード空間、またはこれらの空間の両方からの液体ドレインは、電解槽ごとに、パイプラインサイフォンを介して液体放出部のパイプラインシステムにもたらされ、その結果、液体ドレイン側では、電解槽の作動圧力は、各パイプラインサイフォンによって液体放出部の隣接するパイプラインシステムの低い作動圧力から分離され、
b.パイプラインサイフォンによって分離された電解槽の各ガス出口は、電解槽ごとに個々の制御弁を介して各電解槽に対して共通のガス放出部に個々にもたらされる
ことを特徴とする、方法である。
【0031】
前記電解装置の電解槽は、従来の電極で動作することができる。動作中、少なくとも1つの液体放出部の作動圧力が電解槽の作動圧力よりも低く設定されることが重要である。本発明によれば、方法によって動作される電解装置が、この目的のために提供されるガス拡散電極およびガス供給部を用いてアノード側および/またはカソード側で動作されることが好ましいことが分かった。この目的のために、動作される電解装置は、ガス拡散電極、特に酸素脱分極カソードを有する膜電解槽から選択される複数の電解槽を含み、これらの電解槽は、少なくともガス拡散電極側ガス供給部、液体供給部としてのガス拡散電極側液体供給部、ガス放出部としてのガス拡散電極側残留ガス放出部、および液体放出部としてのガス拡散電極側液体放出部を介して互いに接続される。
【0032】
方法の好ましい実施形態では、電解槽は、ガス拡散電極として酸素脱分極カソードを有するアルカリ金属塩化物膜電解槽から選択される。この実施形態に使用することができる適切なアルカリ金属塩化物は、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムから選択される少なくとも1つのアルカリ金属塩化物であり、塩化ナトリウムが好ましい。
【0033】
パイプラインサイフォンの結果として、電極側、好ましくはガス拡散電極側の液体循環は、電解槽が始動されているときに連続的に動作し続けることができ、一方、電極側、好ましくはガス拡散電極側のガス圧力は、圧力制御手段を介して動作値に調整される。
【0034】
電解槽の電解質ドレインに面するパイプラインサイフォンの脚部における液面は、サイフォンのドレイン側がより低い作動圧力を有するパイプラインシステムに排出を行うとき、電解槽の変更された作動圧力に自動的に適応する。
【0035】
本発明による方法の一実施形態では、電解槽の電極側、好ましくはガス拡散電極側の作動圧力が大気圧と1barの正圧との間、好ましくは100~500mbarの正圧の範囲であると有利であることが判明している。
【0036】
本発明によれば、正圧の仕様に対する基準圧力は、特に明記しない限り、大気圧である。
【0037】
本発明によれば、電極側、好ましくはガス拡散電極側の作動圧力は、電解セルの電極側、好ましくはガス拡散電極側のガス空間内のガス圧力を意味する。
【0038】
本発明によれば、
(i)生成ガス、残留ガス、生成ガスと残留ガスの混合物から選択されたガス、および
(ii)液体は、
まず、各個々の電解槽の排出マニホールド内の混合物として一緒に電解槽から導出され、次いでこの混合物が気液分離され、分離が行われた後、ガスがステップbに従ってガス出口を介してもたらされ、液体がステップaに従って液体ドレインを介してもたらされる
ことが好ましい。ガス拡散電極を使用する場合、電解槽の前記排出マニホールドがガス拡散電極側で動作することが好ましいことが判明している。
【0039】
方法の気液分離の好ましい実施形態では、ガスおよび液体は、排出マニホールドに隣接し、好ましくは±15°の公差で垂直に導かれるパイプライン内でそれらの密度差によって分離され、別々に誘導される。ガスは、各電解槽に割り当てられた圧力制御手段の方向に上方に流れ、液体は、パイプラインサイフォン内に排出される。
【0040】
本発明による方法のさらなる実施形態では、パイプラインサイフォンのドレイン側の作動圧力が、このパイプラインサイフォンの入口側の作動圧力よりも低く、好ましくは大気圧と100mbarの正圧との間であることが有利である。
【0041】
本発明によれば、パイプラインサイフォンのドレイン側の作動圧力は、ドレイン側のサイフォンに続くプラント構成要素のガス空間内のガス圧力を意味する。
【0042】
本発明によれば、パイプラインサイフォンの入口側の作動圧力は、一方では電解セルのガス空間に、他方ではサイフォンの入口に接続された電解槽の排出マニホールド内のガス圧力を意味する。
【0043】
特に好ましくは、
(i)電解槽の電極側、好ましくはガス拡散電極側の作動圧力は、大気圧と1barの正圧との間、好ましくは100~500mbarの正圧の範囲であり、
(ii)パイプラインサイフォンのドレイン側の作動圧力は、このパイプラインサイフォンの入口側の作動圧力よりも低く、好ましくは大気圧と100mbarの正圧との間である、
本発明による方法の一実施形態が適切である。
【0044】
始動パイプラインシステムから動作パイプラインシステムへの切り替えを自動化するための複雑な制御手段は、本発明によって回避される。始動時に液体およびガスを放出するための別々のパイプラインシステムは、もはや必要とされない。残りの必要な弁は、パイプラインサイフォンでの液体の流れのみが調整/遮断される必要があり、電解槽の排出ヘッダでの液体およびガスの二相流はもはや調整/遮断される必要がないため、より小さく寸法決めすることができる。排出ヘッダでの手動切り替えの場合に起こり得る動作エラーおよび電解槽への結果として生じる損傷は、排除される。本発明によれば、液体放出部は、電解装置のすべての動作モードにおいて、特に電解装置の始動時、停止時、および動作中に本発明による方法のステップaに従ってもたらされる。
【0045】
始動パイプラインシステムから動作パイプラインシステムへの電解槽に対する電解質の供給の潜在的に必要な切り替えは、ドレイン側の変化による影響を受けず、液体流のみを切り替える必要があるため、切り替えは中断することなく手動でまたは自動的に行うことができる。
【0046】
さらに、ガス拡散電極を用いて動作される電解槽の実施形態において、これらの電解槽が独国特許出願公開第10149779号明細書の意味の範囲内でガス拡散電極側にガス再循環を備えているか、または、ガス再循環がガス供給部および放出圧力制御によって規定された限界内で有効にされるので、ガスが例えば独国特許出願公開第102013011298号明細書に記載されているような単純な貫流で供給されるかは、変更には関係しない。
【0047】
本発明のさらなる主題は、膜電解槽から選択される複数の電解槽を含む、特に塩素の製造のための電解装置であって、アノード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインと、少なくとも1つのガス出口とを有し、これらとは別々に、カソード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインと、少なくとも1つのガス出口とを有し、これらの電解槽のアノード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部、ガス放出部、および液体放出部を介して互いに接続され、これらとは別々に、これらの電解槽のカソード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部、ガス放出部、および液体放出部を介して互いに接続され、
a.液体ドレイン側において、液体放出部のうちの少なくとも1つのパイプラインシステムの作動圧力から電解槽の作動圧力を分離するために、電解槽のアノード空間もしくはカソード空間、またはこれらの空間の両方からの液体ドレインは、電解槽ごとに、パイプラインサイフォンを介して液体放出部のパイプラインシステムと流体接続され、
b.前述のパイプラインサイフォンを備えたすべての電解槽のガス出口は、電解槽ごとに個々の制御弁を介して対応する共通のガス放出部と流体接続される、
電解装置である。
【0048】
「流体接続」は、少なくとも2つのプラント構成要素間の接続を意味すると当業者によって理解され、それを通して、任意の物質状態にあり得る物質を、1つのプラント構成要素(例えば、パイプラインサイフォン)から別のプラント構成要素(例えば、残留ガス放出部)、例えばパイプラインに材料流として搬送することができる。
【0049】
好ましい実施形態では、電解装置は、アノード側および/またはカソード側、特に好ましくはカソード側のガス拡散電極を有し、少なくとも1つのガス拡散電極側排出マニホールドが電解槽ごとに存在し、ガス空間およびガス拡散電極側液体と流体接続し、制御弁を有する少なくとも1つのガス拡散電極側ガス出口とパイプラインサイフォンを有する少なくとも1つのガス拡散電極側液体ドレインに分岐する。この分岐は、特に非常に好ましくは、±15°の公差で垂直に導かれるパイプラインによって実施することができる。
【0050】
本発明による方法のさらなる実施形態では、電解装置の電解槽が各々、正圧が存在するように、好ましくはパイプラインサイフォンのドレイン側の作動圧力がパイプラインサイフォンの入口側の作動圧力よりも低くなるように、好ましくは大気圧と100mbarの正圧との間であるように、好ましくはガス拡散電極側のガス出口の個々の制御弁を介してパイプラインサイフォンの入口側の作動圧力を制御する圧力制御装置を有する場合に有利であると考えられる。
【0051】
パイプラインサイフォンの必要な寸法決めは、本発明による使用のために当業者によって容易に決定することができる。パイプラインサイフォンの高さは、圧力が好ましくは0mbar~100mbarの正圧であるパイプラインサイフォンのドレイン側と、作動圧力が好ましくは0mbar~1barの正圧であり、特に好ましくは0mbar~500mbarの正圧であるパイプラインサイフォンの入口側との間の最大圧力差、およびパイプラインサイフォンを介して電極側に放出される循環液体の最小密度に起因する。サイフォンの直径は、サイフォンで生じる圧力損失を無視することができることを特徴とする。
【0052】
本発明のさらなる主題は、膜電解槽(好ましくはガス拡散電極、特に酸素脱分極カソードを有する)の形態の複数の電解槽を含む電解装置の膜電解槽の電極側、好ましくはガス拡散電極側の液体ドレインにおけるパイプラインサイフォンの使用であって、アノード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインを有し、いずれの場合も少なくとも1つのガス出口を有し、これらとは別々に、カソード側の少なくとも各電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインを有し、いずれの場合も少なくとも1つのガス出口を有し、これらの電解槽のアノード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部、ガス放出部、および液体放出部を介して互いに接続され、これらとは別々に、これらの電解槽のカソード空間は、いずれの場合も少なくとも液体供給部、ガス放出部、および液体放出部を介して互いに接続され、液体ドレイン側において、隣接するパイプラインシステムの作動圧力から電解槽の作動圧力を分離する、使用である。
【0053】
パイプラインサイフォンのガス空間は、電解装置のガス放出部と流体接続する(制御弁によって制御可能である)ことが好ましい。
【0054】
使用が、ガス拡散電極、特に酸素脱分極カソードを有する膜電解槽の形態の複数の電解槽を含む電解装置を伴う場合、少なくともアノード側の電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインを有し、いずれの場合も少なくとも1つのガス出口を有し、これらとは別々に、カソード側の電解槽は、少なくとも1つの液体ドレインを有し、いずれの場合も少なくとも1つのガス出口を有し、ガス拡散電極側の電解槽は、ガス入口を有し、これらの電解槽のアノード空間は、いずれの場合も少なくとも前記ガス供給部、液体供給部、ガス放出部、および液体放出部を介して互いに接続され、これらとは別々に、これらの電解槽のカソード空間は、いずれの場合も少なくとも前記ガス供給部、液体供給部、ガス放出部、および液体放出部を介して互いに接続される。
【0055】
本発明による使用では、少なくとも1つの液体放出部の作動圧力が電解槽の作動圧力よりも低いことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】従来技術の電解装置の一例を示す図である。
図2a】いずれの場合も従来の電極(図示せず)をカソード側に備え、カソードハーフセル反応のためのガス供給部を必要としない電解装置を示す図である。
図2b】ガス拡散電極(図示せず)をカソード側に備え、そこで進行するカソードハーフセル反応のためのガス供給部を必要とする電解装置を示す図である。
図3】本発明による電解装置におけるパイプラインサイフォンの設置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
従来技術の電解装置の一例が、図1に示される。明確にするために、本発明をこれに限定することなく、本発明による可能な電解装置が、図2aおよび図2bの各々に一例として示されている。図2aは、いずれの場合も従来の電極(図示せず)をカソード側に備え、カソードハーフセル反応のためのガス供給部を必要としない電解装置を示す。図2bは、ガス拡散電極(図示せず)をカソード側に備え、そこで進行するカソードハーフセル反応のためのガス供給部を必要とする電解装置を示す。本発明による電解装置におけるパイプラインサイフォンの設置の一例が、図3に図示される。単純化のために、カソード側の液体およびガスの供給部および放出部のみが例として示されている。アノード側の接続は、同様である。図では、以下の参照符号が使用されている。
【0058】
1.1 ガス拡散電極用のガス供給、例えば酸素脱分極カソード用の酸素含有ガス
1.11 ガス供給用の弁
1.12 通常動作時の液体供給用の弁
1.13 始動/停止システム用の弁
1.14 通常動作時の生成物放出のドレイン側パイプラインシステム用の弁
1.15 始動/停止動作時の生成物放出のドレイン側パイプラインシステム用の弁
1.2 通常動作中のカソード側用の作動媒体流入、例えば希釈水酸化ナトリウム溶液
1.21 ガス供給部に配置されたガスジェットポンプ
1.22 ガス供給用の弁
1.3 始動および停止プロセス中のカソード側用の作動媒体流入、例えば希釈水酸化ナトリウム溶液
1.4 通常動作時のガス拡散電極反応の残留ガスの流出
1.5 通常動作時の電解槽からの生成物含有液体、例えば、水酸化ナトリウム溶液の流出
1.6 始動/停止プロセス中のガス拡散電極反応の残留ガスの流出
1.7 始動/停止プロセス中の電解槽からの生成物含有液体、例えば、水酸化ナトリウム溶液の流出
1.8 残留ガス(オフガス)用の圧力制御手段
2.1 ガス拡散電極用のガス供給、例えば酸素脱分極カソード用の酸素含有ガス
2.11 ガス供給用の弁
2.12 通常動作中の作動媒体流入用の弁
2.13 始動/停止中の作動媒体流入用の弁
2.14 パイプラインサイフォン
2.15 例えば、装置のメンテナンス作業に使用される遮断弁
2.16 電解槽の残留ガス放出部のオフガスシステムにおける制御弁
2.2 通常動作中のカソード側用の作動媒体流入、例えば希釈水酸化ナトリウム溶液
2.21 ガス供給部に配置されたガスジェットポンプ
2.22 ガス供給用の制御弁
2.3 始動/停止中のカソード側用の作動媒体流入、例えば希釈水酸化ナトリウム溶液
2.4 通常動作および始動/停止用の生成ガスおよび/または残留ガスのガス放出部
2.5 電解槽(例えば、濃縮水酸化ナトリウム溶液)および関連するパイプラインシステムからの液体の液体放出部
3.1 ガス、例えば、残留ガス、および液体の共同放出用の電解槽の排出マニホールド
3.2 重力によってガス、例えば、残留ガスから分離された後の液体用の流出導管の形態の電解槽の液体排出
3.3 重力によって液体から分離された後のガス用の流出導管の形態の電解槽のガス出口
3.4 電解槽(例えば、濃縮水酸化ナトリウム溶液)および関連するパイプラインシステムからの液体の液体放出部
3.5 始動/停止動作中のパイプラインサイフォン内の液面(電解槽内およびドレイン側パイプラインシステム内において同じ圧力)
3.6 通常動作中のパイプラインサイフォン内の異なる液面(ドレイン側パイプラインシステムと比較して電解槽内の圧力が高い)
3.7 通気
3.8 パイプラインサイフォン
図2aは、本発明による電解装置の一例を示しており、「電解槽1」~「電解槽2…n」として示すn個の膜電解槽を含み、その各々はアノード側およびカソード側に標準電極(図示せず)を備え、すなわち、ガス拡散電極を備えていない。単純化のために、カソード側のガスおよび液体接続のみが図2aに示される。ここで、電解槽は、少なくとも液体供給部2.2、ガス放出部2.4、および液体放出部2.5を介して互いにさらに接続される。液体ドレインは、電解槽ごとに、液体放出部2.5の隣接するパイプラインシステムの作動圧力から電解槽の作動圧力を液体ドレイン側で分離するためのパイプラインサイフォン2.14を介してカソード側でもたらされる。上述のパイプラインサイフォン2.14を備えたすべての電解槽のガス出口は、個々の電解槽ごとに存在する個々の制御弁2.16を介して共通のガス放出部2.4にさらにもたらされる。アノード側では、電解槽は同様に、少なくとも液体供給部、ガス放出部、および液体放出部(図示せず)を介して互いに接続される。
【0059】
図2bは、本発明の意味における電解装置の一例を示し、「電解槽1」~「電解槽2…n」として示すn個の膜電解槽を含み、ガス拡散電極(図示せず)は、カソード側に接続され、電解槽は、少なくともガス拡散電極側ガス供給部2.1、ガス拡散電極側液体供給部2.2、ガス拡散電極側残留ガス放出部2.4、およびガス拡散電極側液体放出部2.5を介して互いに接続される。単純化のために、2つの電解槽のみが示されている。さらに単純化するために、ガス拡散電極側(すなわち、カソード側)のガスおよび液体接続のみが図2bに示される。電解槽のガス拡散電極側液体ドレインは、隣接するパイプラインシステム2.5の作動圧力から電解槽の作動圧力を液体ドレイン側で分離するためのパイプラインサイフォン2.14を介してもたらされる。上述のパイプラインサイフォン2.14を備えたすべての電解槽のガス拡散電極側ガス出口は、個々の電解槽ごとに存在する個々の制御弁2.16を介して共通のガス拡散電極側残留ガス放出部2.4にさらにもたらされる。アノード側では、電解槽は同様に、少なくとも液体供給部、ガス放出部、および液体放出部(図示せず)を介して互いに接続される。
【0060】
図2aおよび図2bの各々において、図3に示すように、ドレイン側では、最初に、ガス(生成ガスまたは残留ガス)および液体が、電解槽の水平に延伸する排出マニホールド3.1内で、さらに連続するパイプラインシステムの方向に一緒に導かれる。次いで、ガスおよび液体は、実質的に垂直なパイプライン延伸(好ましくは±15°)を伴う隣接する分岐におけるそれらの密度差のために分離し、ガスは、残留ガスの出口3.3を通って、各電解槽に割り当てられた圧力制御手段2.16の方向に上方に流れる。液体は、液体のための出口3.2に下方に放出される。
【0061】
[実施例]
[例1](図1参照):
ODCを用いた塩化ナトリウム電解、ODCを用いない従来のクロルアルカリ電解と同様に従来技術に対応する実施形態
各々がガス拡散電極としてカソード側に接続された酸素脱分極カソードを有する複数の電解槽(電解槽1、電解槽2…n)を、並行して動作した。単純化のために、2つの電解槽のみが図1に示される。使用した製造現場では、最大10個以上の電解槽を並行して動作した。さらに単純化するために、カソード側のガスおよび液体接続のみが図1に示される。
【0062】
原料酸素(1.1)および希釈水酸化ナトリウム溶液(1.2、1.3)を上流ユニットからパイプラインシステムを介して電解槽に分配した。液体側では、始動/停止プロセスは通常動作とは異なる圧力/温度プロファイルに一般的に従うため、通常動作(1.2)と始動/停止(1.3)に対して別々のシステムがあった。
【0063】
電解プロセスの生成物、酸素脱分極カソード反応の残留ガス(1.4、1.6)、および電解槽で濃縮された水酸化ナトリウム溶液(1.5、1.7)を、生成物供給と同様にパイプラインシステムに収集し、下流ユニットに誘導した。通常動作における、および始動/停止中の圧力レベルが異なるため、ここでは通常動作(1.4、1.5)と始動/停止(1.6、1.7)には別々のパイプラインシステムが必要であった。
【0064】
通常動作では、作動圧力は、一般に、オフガス用の中央圧力制御手段(1.8)を介して制御された。通常動作中の液体放出のためのパイプラインシステムは、電解槽と同じ作動圧力下にあった。始動/停止動作は、一般に、大気圧で非加圧的に行われた。
【0065】
電解槽への供給量およびそれぞれの経路は、電解槽への入口にある弁(1.11、1.12、1.13)を介して調整/制御された。
【0066】
生成物の放出のための経路は、電解槽に配置された弁(1.14、1.15)を介して同様に調整した。ガスおよび液体は最初に電解槽のドレイン内の同じ導管を通って放出されたので、ガスおよび液体は、これに対応して上方および下方に通じるパイプラインによってドレイン側弁(1.14、1.15)の下流で分離された。
【0067】
ガス側動作には2つの代替の動作モードがあった。酸素の単純な貫流およびその後の残留ガスの放出が、図1の「電解槽1」に示される。独国特許出願公開第10149779号明細書に記載されているような、場合によっては追加の制御弁(1.22)を有するガス供給部に配置されたガスジェットポンプ(1.21)を介した供給側への酸素富化残留ガスの再循環が、図1の「電解槽2…n」に示される。
【0068】
電解槽は、従来のクロルアルカリ電解と同様に、最初に始動/停止システムへの弁(1.11、1.13、1.15)を閉じることによって液体およびガスの循環を停止することによって、始動から通常動作に切り替えた。次いで、例えばガス供給部1.11または追加の補助ガス供給源を介して、圧力を作動圧力まで上昇させた。その後、動作中のシステム(1.11、1.12、1.14)上での液体およびガスの循環を再び開始することができた。停止は、逆の順序で同様に行った。
【0069】
上述したように、この動作モードは、酸素脱分極カソードへの損傷のリスクを有する。手動切り替えの場合、動作エラーのリスクがあり、機械的に駆動される弁を用いた代替の自動化は、電解槽ごとに別々に必要とされるために費用がかかる。
【0070】
[例2](図2b参照):
ODCを用いた塩化ナトリウム電解、ドレインサイフォンを用いた本発明による実施形態
図2bで上述した変形例と同様に、原料酸素(2.1)および希釈水酸化ナトリウム溶液(2.2、2.3)を上流ユニットからパイプラインシステムを介して電解槽に分配した。液体側では、始動/停止プロセスは通常動作とは異なる圧力/温度プロファイルに一般的に従っていたため、通常動作(2.2)と始動/停止(2.3)に対して別々のシステムがあった。単純化のために、カソード側のガスおよび液体接続のみが図2bに順に示される。
【0071】
電解プロセスの生成物、酸素脱分極カソード反応の残留ガス(2.4)、および電解槽で濃縮された水酸化ナトリウム溶液(2.5)を、生成物供給と同様にパイプラインシステムに収集し、下流ユニットに誘導した。
【0072】
電解槽での圧力分離のための本発明による解決策により、前の例(図1:1.6、1.7参照)のような始動/停止動作のための別々のドレインパイプラインシステムの必要はない。ガス側の圧力は、ここでは各電解槽に割り当てられた、オフガスシステムへの導管内の制御弁(2.16)を介して制御された。液体側では、それぞれの作動圧力に関係なく、濃縮水酸化ナトリウム溶液は、サイフォン(2.14)を介して、周囲圧力で動作された下流パイプラインシステム(2.5)に自由に排出することができた。弁(2.15)を用いて、電解槽をメンテナンス作業のためにパイプラインシステムから依然として切り離すことができた。
【0073】
図1で上述した変形例と同様に、ガス側動作には2つの代替の動作モードが現在存在する。酸素の単純な貫流およびその後の残留ガスの放出が、電解槽1に示される。独国特許出願公開第10149779号明細書に記載されているような、場合によっては追加の制御弁(2.22)を有するガス供給部に配置されたガスジェットポンプ(2.21)を介した供給側への酸素富化残留ガスの再循環が、「電解槽2…n」に示される。本明細書に記載の本発明の意味の範囲内で、両方の代替物が等しく使用可能である。
【0074】
記載された実施形態の結果として、電解槽のドレイン側では、弁を始動/停止動作と通常動作との間で切り替える必要がもはやなかった。したがって、液体供給における中断および関連する分極整流器のスイッチオフが回避された。動作エラーの可能性が低減され、始動プロセスが単純化された。さらに、始動プロセスおよび停止プロセスのためのドレイン側パイプラインシステムを省略することができる。入口側で依然として必要とされた切り替えは重要ではなく、入口側は作動圧力に大きな影響を及ぼさないため、切り替えは連続的な移行で行うことができた。
【0075】
[例3](図3参照):
サイフォンを有する本発明による実施形態における電解槽のドレイン側
電解槽の排出マニホールド(3.1)内では、ガスおよび液体は、最初に、さらに連続するパイプラインシステムの方向に一緒に流れた。次いで、ガスおよび液体を隣接する垂直パイプライン内のそれらの密度差によって分離し、ガスを各電解槽に割り当てられた圧力制御手段(図面2aおよび図面2b、2.16)の方向に上方に流し(3.3)、液体を排出した(3.2)。
【0076】
サイフォンとしての放出液体導管の本発明による実施形態の結果として、液体は、各場合に設定された作動圧力にかかわらず、放出パイプラインシステム(3.4)の方向に常に自由に排出することができた。非加圧始動/停止動作中、サイフォンの入口側における液面は、ドレイン側と同じレベル(3.5)に確立された。正の作動ゲージ圧での通常動作中、サイフォンの入口側における液面は、作動圧力対液体密度の比に従って低かった(3.6)。作動圧力が始動動作から通常動作に上昇しているとき、または停止の際にその逆となるとき、中間状態は自由に発生する可能性がある。
【0077】
ガス圧力を円滑に制御することを可能にするために、サイフォンの高さは、可能な最大作動圧力であっても、ガスが下端を通過することができないように選択されなければならなかった。
【0078】
さらに連続するパイプラインシステム(3.4)は、液体が自由に排出することができるように寸法決めされた。例えば、サイフォン効果から生じ得る負圧と同様に、正圧は回避された。重力導管または負圧を回避する追加の通気口(3.7)として放出導管を構成することが、有利である。
図1
図2a
図2b
図3
【国際調査報告】