(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】拡張可能構造を有する腹膜透析カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61M1/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502638
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2022021039
(87)【国際公開番号】W WO2023003602
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524022106
【氏名又は名称】グラハム ブラスウェル バイオテクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】GRAHAM BRASWELL BIOTECHNOLOGIES INC.
【住所又は居所原語表記】150 Rivington Street, Apartment 3G, New York, New York, 10002 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】グラハム、 ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB01
4C077CC02
4C077DD19
4C077KK30
(57)【要約】
穿孔部分を含む遠位領域と、患者の腹膜腔内の透析液にカテーテルを浮かせるように構成された1または複数の拡張可能部材とを備える腹膜透析カテーテル、および前記カテーテルを使用するための方法が開示される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位領域と、遠位領域と、第1の管腔を画定する壁と、近位領域から遠位領域まで延在する第2の管腔とを備える長尺管状部材であって、前記遠位領域に配置される壁の一部が、第1の管腔と流体連通する穿孔を含む、長尺管状部材、および
前記第2の管腔と流体連通する前記管状部材に配置される拡張可能部材、
を備える、装置であって、
前記第1の管腔は流体管腔であり、第2の管腔は膨張管腔である、装置。
【請求項2】
前記拡張可能部材は、前記遠位領域の一部に沿って長手方向に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記拡張可能部材が、前記長尺管状部材の少なくとも一部分の円周の少なくとも一部分を封入するように寸法決めされる、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記拡張可能部材が、前記長尺管状部材の少なくとも一部を完全に封入する、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記拡張可能部材が、前記管状部材の前記遠位端に配置され、前記複数の穿孔を備える前記壁部分が前記拡張可能部材の近位側に配置される、請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の穿孔を備える前記壁部分が、前記拡張可能部材の遠位の前記長尺管状部材に沿って配置される、請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の穿孔を含む前記壁が、湾曲した構成を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記湾曲形状が螺旋形状を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記拡張可能部材が、ナイロン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、エラストマー、シリコーン、ならびにそれらの混合物およびコポリマーからなる群から選択される材料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記長尺管状部材が、前記近位領域において前記長尺管状部材の前記壁に配置された少なくとも1つのカフをさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのカフが、第1および第2のカフを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記拡張可能部材がバルーンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記拡張可能部材が、空洞および連続気泡発泡体をその中に画定するエラストマーシースを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記長尺管状部材の前記壁が、前記近位領域から前記遠位領域まで延在する放射線不透過性ストライプをさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記長尺管状部材が、格納式シースをさらに備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記長尺管状部材が前記長尺管状部材の前記近位領域に動作可能に係合される継手機構をさらに備え、前記継手機構が前記第1の管腔を通る流体の流れを制御することができる、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記継手機構は、前記第1の管腔と流体連通する通路を備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記継手機構は、前記第2の管腔と流体連通する通路を備える、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
近位領域と、遠位領域と、前記近位領域から前記遠位領域まで延在する放射線不透過性ストライプを含む壁とを備える長尺管状部材であって、前記壁は前記近位領域から前記遠位領域まで延在する第1の管腔および第2の管腔を画定し、前記第1の管腔は流体管腔であり、前記第2の管腔は膨張管腔であり、前記遠位領域の遠位端に配置された前記壁部分は、螺旋形状に構成され、前記第1の管腔と流体連通する複数の穿孔を含む長尺管状部材と、
前記壁の穿孔部分の近位側に配置された前記遠位領域の一部に沿って、前記長尺管状部材の少なくとも一部を完全に封入するように、前記管状部材の長手方向に配置された拡張可能部材であって、前記拡張可能部材は、第2の管腔と流体連通する連続気泡発泡体を含む空洞を画定するシースを備える拡張可能部材と、
前記近位領域で前記長尺管状部材の壁上に離間して配置された第1のカフおよび第2のカフと、
を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記長尺管状部材が、前記長尺管状部材の前記近位端に動作可能に係合される継手機構をさらに備え、前記継手機構が前記第1の管腔と流体連通する第1の通路、および前記第2の管腔と流体連通する第2の通路を備え、前記第1の管腔を通る流体の流れを制御することが可能である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか一項に記載の装置と、前記装置に係合するように構成された継手機構とを備え、前記継手機構は前記装置に係合されたときに、前記第1の管腔を通る流体の流れを制御することができる、キット。
【請求項22】
前記継手機構が、前記第1の管腔と流体連通するように構成された通路を備える、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記継手機構は、前記第2の管腔と流体連通するように構成された通路を備える、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
長尺管状部材と、拡張可能部材と、第1のカフおよび第2のカフとを備える装置であって、前記長尺管状部材は、近位領域と、遠位領域と、前記近位領域から前記遠位領域まで延在する放射線不透過性ストライプを含む壁と、を備え、前記壁は、近位領域から遠位領域まで延在する第1の管腔および第2の管腔を画定し、前記第1の管腔が流体管腔であり、前記第2の管腔が膨張管腔であり、前記遠位領域の遠位端に配置された壁部分は螺旋形状であり、前記遠位領域の遠位端に配置された壁部分は螺旋形状であり、前記第1の管腔と流体連通する複数の穿孔を含み、前記拡張可能部材は、前記壁の穿孔部分の近位側に配置された前記遠位領域の一部に沿って、前記長尺管状部材の少なくとも一部を完全に封入するように、前記管状部材の長手方向に配置され、この拡張可能部材は、第2の管腔と流体連通する連続気泡発泡体を含む空洞を画定するシースを備え、および前記第1のカフおよび第2のカフは、近位領域で長尺管状部材の壁上に離間して配置されている装置と、
前記長尺管状部材の近位端に動作可能に係合するように構成された継手機構であって、前記継手機構は第1の管腔と流体連通するように構成された第1の通路および第2の通路を備え、この継手機構は、継手機構が近位端に係合されるとき、第1の管腔を通る流体の流れを制御することができ、継手機構が近位端に係合されるとき、第2の管腔と流体連通するように構成される、継手機構と、
を備える、請求項21に記載のキット。
【請求項25】
対象の腹膜腔内へのカテーテルの挿入をガイドするためのスタイレットをさらに含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のキット。
【請求項26】
前記カテーテルを挿入するために、前記腹膜腔内に開口部を形成するための切削ツールをさらに含む、請求項21~25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
腹膜透析を行う方法であって、
透析を必要とする対象の腹壁の開口部を通して、請求項1~20のいずれかに記載の装置の遠位領域を挿入する工程、
第2の管腔を通して拡張可能部材を膨張させる工程、
第1の管腔を介した腹腔内への流体を導入する工程、
老廃物が腹部の周囲の血管から体液中に拡散するのに十分な時間、腹腔内の体液を維持する工程、および、
第1の管腔を通して腹腔から体液を除去する工程、を備える、方法。
【請求項28】
前記流体が前記腹部から除去された後に、前記拡張可能部材を収縮させる工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記装置が格納式シースをさらに含み、前記方法が前記拡張可能構造を拡張する前に、前記格納式シースを引き込む工程をさらに含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
腹膜透析を必要とする対象を治療するための方法であって、
対象の腹壁の開口部を通して請求項1~20のいずれかに記載の装置の遠位領域を挿入する工程、
第2の管腔を通して拡張可能部材を膨張させる工程、
第1の管腔を介した腹腔内への流体を導入する工程、
老廃物が腹部の周囲の血管から体液中に拡散するのに十分な時間、腹腔内の体液を維持する工程、および
第1の管腔を通して腹腔から体液を除去する工程、を備える、方法。
【請求項31】
前記装置は格納式シースをさらに含み、前記方法は前記拡張可能部材を拡張する前に、前記格納式シースを格納することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記流体が前記腹部から除去された後に、前記拡張可能部材を収縮または圧縮することをさらに含む、請求項30または31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2021年7月19日に出願された米国特許出願第63/223,452号、2021年11月23日に出願された米国特許出願第63/282,558号、および2022年2月22日に出願された米国特許出願第63/312,739号の優先権の利益を主張し、それぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、腹膜透析に使用するための医療装置、およびそのような装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
末期腎疾患(ESRD)は、慢性腎疾患(CKD)の最終段階で、腎臓が身体の要求をサポートできない場合に生じる。これが起こると、血液から不純物および老廃物を除去するのを助けるために透析が必要とされる。最も一般的に実施される透析のタイプは、血液透析および腹膜透析である。
【0004】
血液透析患者にとっては、動静脈瘻(AVF)または動静脈グラフト(AVG)の形態での血管アクセスの形成が重要である。しかしながら、これらの血管アクセスポイントは、成熟までに時間(6週間~4ヶ月)を要する。この間、患者は透析を実施するための出口(outlet)を依然として必要とし、これは、通常、血液透析のための初期透析アクセスとして中心静脈カテーテル(CVC)を利用することによって達成される。このタイプのカテーテルは、感染率が高く、患者の生活の質に悪影響を及ぼすため問題がある。CVC感染は危険であり、高価であるとともに、敗血症および死亡につながり得る合併症を引き起こし得る。CVCによって引き起こされるカテーテル関連血流感染(CRESI)もまた、米国における院内感染の主要な原因である。
【0005】
CVCはまた、急性腎損傷(AKI)または急性早期慢性腎疾患(ACKD)を有する患者にも使用される。この場合、CVCの欠点は推定糸球体濾過率(eGFR)の低下であり、AVFを使用する血液透析と比較しても、前記低下はさらに迅速である。
【0006】
血液透析と比較して、腹膜透析は、残存腎機能(RRF)をより良好に保存することができる。腹膜透析を開始すると、腎臓を治癒させ、その機能を回復させるのに有利である。
【0007】
腹膜透析は透析溶液および透析液(dialysis solution and dialysate)を利用し、患者の腹膜腔に注入される。透析液は、腹腔内で患者の腹膜に接触する。老廃物(waste)、毒素、および過剰な水は、患者の血流から腹膜を通って透析液中に入る。血流から透析液への老廃物、毒素および水の移動は、拡散および浸透により起こる。使用済み透析液は患者の腹膜腔から排出されて、患者から老廃物、毒素、および水を除去し、その後、追加の透析サイクルで交換され得る。
【0008】
腹膜透析の現在の方法では、腹膜透析カテーテル(PDC)が血液透析の代替として使用される。腹膜透析カテーテルは新鮮な透析液を腹膜腔内に移送し、空洞から使用済み透析液を除去するために使用される。PDCは腹腔内に配置され、腹膜を老廃物の交換媒体として使用する。PDCは、皮膚、皮下脂肪、直筋、および壁側腹膜を通して腹腔内に挿入される。周囲組織へのより良好な付着を促進するために、ダクロンカフ(DACRON cuffs)を直筋と接触するように配置してもよい。出口部位およびトンネル領域の炎症および感染を予防するためには、2~3週間の治癒期間が必要である。流体(透析液)は、PDCを通して腹腔内に導入され、次いで、流体の流出を防止するためにカテーテルの近位端を閉じることによって、腔内に保持される。身体の老廃物は、腹膜を通って腹膜腔に引き込まれ、透析液に吸収される。いくらかの滞留時間の後、PDCの近位端が開かれ、腹膜腔から流体が排出される。
【0009】
典型的には、腹膜カテーテルが腹膜腔に埋め込まれ、長期間埋め込まれたままである。例えば、平均的なカテーテルは約18~24ヶ月間埋め込まれたままであってもよいが、カテーテルが2年を超えて留置されたままであることは珍しくない。
【0010】
PDCに関連する多くの合併症が存在しているが、緩慢な排液は特に不快である。透析液の液位が低下して、腸がPDCの遠位端の小さい穴を覆うときに、緩慢な排液が生じる。一般に、1~3リットルの透析液が患者の腹部に導入される。正しい体液および電解質バランスのために、患者は、この全量を排出する必要がある。しかし、流体が排出されるときに、腸がPDCの穴を一時的に塞がないようにするのに十分な量で透析液の流体がない場合、排液は妨げられ得る。現在のPDCはシリコーンゴムで構成され、身体の最も下の部分(the most dependent portion)に沈み込み、これにより、腸が穴を塞ぐ可能性が高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
より完全な流体の排出を提供するために、改善された腹膜透析カテーテルを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様は、近位領域と、遠位領域と、近位領域から遠位領域まで延在する第1の管腔および第2の管腔を画定する壁と、を備える長尺管状部材であって、遠位領域に配置される壁部分が、第1の管腔と流体連通する穿孔と、第2の管腔と流体連通する管状部材に配置される拡張可能部材と、を備え、前記第1の管腔が流体管腔であり、前記第2の管腔が膨張管腔である、長尺管状部材を提供する。
【0013】
複数の実施形態では、拡張可能部材が遠位領域の一部に沿って長手方向に配置されてもよい。拡張可能部材は、長尺管状部材の少なくとも一部分を完全に封入するように寸法決めされてもよく、例えば、拡張可能部材は、長尺管状部材の少なくとも一部分の円周の少なくとも一部分を封入するように寸法決めされてもよい。
【0014】
複数の実施形態では、拡張可能部材が管状部材の遠位端(distalmost end)に配置されてもよく、複数の穿孔を含む壁部分は、拡張可能部材の近位側に配置される。他の実施形態では、複数の穿孔を含む壁部分が、拡張可能部材の遠位の長尺管状部材に沿って配置される。
【0015】
複数の実施形態では、複数の穿孔を含む壁が、螺旋形状などの湾曲の形状を有する。
【0016】
拡張可能部材は、ナイロン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、エラストマー、シリコーン、ならびにそれらの混合物およびコポリマーからなる群から選択される材料を含んでもよい。
【0017】
複数の実施形態では、長尺管状部材が第1および第2のカフなど、近位領域において長尺管状部材の壁に配置された少なくとも1つのカフをさらに備える。
【0018】
複数の実施形態では、拡張可能部材がバルーンを含むか、または拡張可能部材は内部に空洞および連続気泡発泡体を画定するエラストマーシースを含む。
【0019】
複数の実施形態では、長尺管状部材の壁が、近位領域から遠位領域まで延在する放射線不透過性ストライプをさらに備える。長尺管状部材は、格納式シース(retractable sheath)をさらに備えてもよい。
【0020】
複数の実施形態では、長尺管状部材が、長尺管状部材の近位領域に動作可能に係合される継手機構(fitting mechanism)をさらに備えてもよく、前記継手機構は第1の管腔を通る流体の流れを制御することが可能である。継手機構は、第1の管腔と流体連通する通路、および/または第2の管腔と流体連通する通路を備えてもよい。
【0021】
特定の実施形態では、装置は、長尺管状部材と、拡張可能部材と、第1のカフおよび第2のカフとを備えており、前記長尺管状部材は、近位領域と、遠位領域と、前記近位領域から前記遠位領域まで延在する放射線不透過性ストライプを含む壁と、を備え、前記壁は、前記近位領域から前記遠位領域まで延在する第1の管腔および第2の管腔を画定し、前記第1の管腔は流体管腔であり、前記第2の管腔は膨張管腔であり、前記遠位領域の遠位端に配置された壁部分は螺旋形状であり、前記第1の管腔と流体連通する複数の穿孔を含み、前記拡張可能部材は、前記壁の穿孔部分の近位側に配置された前記遠位領域の一部に沿って、前記長尺管状部材の少なくとも一部を完全に封入するように、前記管状部材の長手方向に配置され、この拡張可能部材は、第2の管腔と流体連通する連続気泡発泡体を含む空洞を画定するシースを備え、および前記第1のカフおよび第2のカフは、前記近位領域で前記長尺管状部材の壁上に離間して配置されている。
【0022】
この実施形態では、長尺管状部材が、長尺管状部材の近位端に動作可能に係合される継手機構をさらに備えてもよく、前記継手機構は、第1の管腔と流体連通する第1の通路を備え、第1の管腔を通る流体の流れを制御することが可能であり、第2の管腔と流体連通する第2の通路を備える。
【0023】
別の態様はその実施形態を含む、上記の装置と、装置に係合するように構成されたフィッティング機構とを含むキットを提供し、フィッティング機構は装置に係合されたときに、第1の管腔を通る流体の流れを制御することができる。継手機構は、第1の管腔と流体連通するように構成された通路、および/または第2の管腔と流体連通するように構成された通路を備えてもよい。
【0024】
キットの特定の実施形態では、装置は、長尺管状部材と、拡張可能部材と、第1のカフおよび第2のカフとを備えており、前記長尺管状部材は、近位領域と、遠位領域と、近位領域から遠位領域まで延在する放射線不透過性ストライプを含む壁と、を備え、前記壁は、近位領域から遠位領域まで延在する第1の管腔および第2の管腔を画定し、前記第1の管腔が流体管腔であり、前記第2の管腔が膨張管腔であり、前記遠位領域の遠位端に配置された壁部分は螺旋形状であり、前記第1の管腔と流体連通する複数の穿孔を含み、前記拡張可能部材は、前記壁の穿孔部分の近位側に配置された前記遠位領域の一部に沿って、前記長尺管状部材の少なくとも一部を完全に封入するように、前記管状部材の長手方向に配置され、この拡張可能部材は、第2の管腔と流体連通する連続気泡発泡体を含む空洞を画定するシースを備え、および前記第1のカフおよび第2のカフは、近位領域で長尺管状部材の壁上に離間して配置されている。前記継手機構は長尺管状部材の近位端に動作可能に係合するように構成され、前記継手機構は第1の管腔と流体連通するように構成された第1の通路および第2の通路を備え、この継手機構は、継手機構が近位端に係合されるとき、第1の管腔を通る流体の流れを制御することができ、継手機構が近位端に係合されるとき、第2の管腔と流体連通するように構成される。
【0025】
キットの実施形態は、対象の腹膜腔内へのカテーテルの挿入を案内するスタイレット、および/またはカテーテルを挿入するための腹膜腔内への開口部を作り出すための切削ツールをさらに備えてもよい。
【0026】
別の態様は、腹膜透析を実施するための方法であって、透析を必要とする対象の腹壁の開口部を通して、任意の実施形態を含む上述した装置の遠位領域を挿入する工程と、第2の管腔を通して拡張可能部材を膨張させる工程と、第1の管腔を通して腹部内に流体を導入する工程と、老廃物が腹部を囲む血管から流体中に拡散するのに十分な時間、腹部内に前記流体を維持する工程と、第1の管腔を通して腹部から前記流体を除去する工程とを含む、方法を提供する。
【0027】
さらに別の態様は、腹膜透析を必要とする対象を治療するための方法であって、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置の遠位領域を、対象の腹壁の開口部を通して挿入する工程と、第2の管腔を通して拡張可能部材を膨張させる工程と、第1の管腔を通して腹部内に流体を導入する工程と、老廃物が腹部を囲む血管から流体中に拡散するのに十分な時間、腹部内に前記流体を維持する工程と、第1の管腔を通して腹部から前記流体を除去する工程とを含む方法を提供する。
【0028】
これらの方法のいずれかの実施形態では、装置が格納式シースをさらに備えてもよく、前記方法は拡張可能構造を拡張する前に、格納式シースを引き込む(retracting)工程をさらに含む。
【0029】
これらの方法のいずれかの実施形態では、方法が、流体が腹部から除去された後に、拡張可能部材を収縮させる工程をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、図面と併せて以下の説明を読むことによって、より完全に理解することができる。
【
図1A】
図1Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの一実施形態の概略図を示す。
【
図1B】
図1Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの一実施形態の概略図を示す。
【
図2A】
図2Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態の概略図を示す。
【
図2B】
図2Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態の概略図を示す。
【
図3A】
図3Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態の概略断面図を示す。
【
図3B】
図3Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態の概略断面図を示す。
【
図4A】
図4Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態の概略側面図を示す。
【
図4B】
図4Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態の概略側面図を示す。
【
図5A】
図5Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの湾曲した実施形態の概略図を示す。
【
図5B】
図5Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの湾曲した実施形態の概略図を示す。
【
図5C】
図5Cは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの湾曲した実施形態の概略図を示す。
【
図6A】
図6Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の湾曲した実施形態の概略図を示す。
【
図6B】
図6Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の湾曲した実施形態の概略図を示す。
【
図7A】
図7Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態の概略断面図を示す。
【
図7B】
図7Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態の概略断面図を示す。
【
図8A】
図8Aは、開示される主題の例示的な実施形態による、PDCの遠位領域上の2つの拡張可能構造を備えるカテーテルの代替の実施形態を描写する。
【
図8B】
図8Bは、開示される主題の例示的な実施形態による、PDCの遠位領域上の2つの拡張可能構造を備えるカテーテルの代替の実施形態を描写する。
【
図9A】
図9Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図9B】
図9Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図9C】
図9Cは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10A】
図10Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10B】
図10Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10C】
図10Cは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10D】
図10Dは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10E】
図10Eは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10F】
図10Fは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10G】
図10Gは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10H】
図10Hは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10I】
図10Iは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10J】
図10Jは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10K】
図10Kは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10L】
図10Lは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10M】
図10Mは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10O】
図10Oは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10P】
図10Pは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10Q】
図10Qは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図10R】
図10Rは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図11A】
図11Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図11B】
図11Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図11C】
図11Cは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図11D】
図11Dは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図11E】
図11Eは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図11F】
図11Fは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの別の実施形態を示す。
【
図12A】
図12Aは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの実施形態を示す。
【
図12B】
図12Bは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの実施形態を示す。
【
図12C】
図12Cは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの実施形態を示す。
【
図12D】
図12Dは、開示される主題の例示的な実施形態によるカテーテルの実施形態を示す。
【
図13】
図13は、腹膜透析のために患者の腹膜腔に挿入される、開示される主題の例示的な実施形態によるPDCの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含めて、本文書が優先する。好ましい方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができる。本明細書に開示される材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「可能な(can)」、「含む(contain)」、およびそれらの変形した用語は、追加の行為または構造の可能性を排除しない、オープンエンドの移行句、用語、または単語であることが意図される。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示される実施形態または要素を「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」他の実施形態を企図する。
【0033】
留置カテーテルシステムの利点には、在宅治療の選択肢、血液透析と比較して低いコスト、および臨床効率が含まれる。
【0034】
従来の腹膜透析(PD)カテーテル製品は、腹腔への、および腹腔からの透析液の一貫した双方向の流れを可能にするためのシングル管腔カテーテルである。カテーテルの配置を維持するために組織の内部成長を可能にする1つ以上のカフがカテーテルチューブ上に結合される。カテーテルは、直線状、カール状、およびスワンネック状のカテーテルスタイルを含む、様々な長さおよびカフ構成であってもよい。カテーテルは、フェルトカフとともに、放射線不透過性のストライプを含む半透明のシリコーンゴムチューブから作製され、前記フェルトカフは組織の内部成長によってカテーテルの安定化を行うために利用可能である。留置カテーテルシステムに対する現在の課題は、腸による閉塞、疼痛、および不完全な排液を含む。
【0035】
本明細書では、カテーテルが腸によって閉塞される可能性を最小限に抑えるために、カテーテルの位置決めを容易にする浮力のあるカテーテルを備えた腹膜透析システムが提供される。本明細書に記載のカテーテルシステムは、急性および慢性腹膜透析に適応される。腹膜透析カテーテルは、開腹、腹腔鏡、または経皮外科的技術を使用して挿入され得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「近位」および「遠位」という用語は、装置において対向する軸方向の端部、ならびに装置の様々な構成要素特徴の軸方向の端部を説明するために使用される。用語「近位」は、その従来の意味で、装置の使用中に医療専門家に近接する装置(または装置の構成要素)の端部を指すために使用される。「遠位」という用語は、その従来の意味で使用され、最初に患者に挿入される装置(または装置の構成要素)の端部、または装置の使用中に医療専門家からより遠い端部を指す。例示のために、本明細書に記載されるカテーテルの遠位領域は、患者の腹膜腔内に挿入され、流体は近位端を介して腹膜腔の内外に移送される。
【0037】
本明細書で使用される場合、本明細書で互換的に使用される「拡張可能部材(expandable member)」または「拡張可能構造(expandable structure)」という用語は、小さい体積を有する圧縮状態から、より大きい体積を有する拡張状態に伸張または拡張され得る、可撓性またはエラストマーのシースを指す。その結果、拡張状態の拡張可能構造は、その圧縮状態の構造よりも密度が低く、拡張可能構造が体液で満たされた体腔内に浮くことを可能にする。特に、シースは構造体内への流体の漏出または構造体からの気体の漏出を防止するために、流体密封および気密である。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「バルーン」は、膨張性の、可撓性の、又はエラストマー性の袋又はシースを含む膨張可能な部材又は構造体を指し、その膨張状態で、ヘリウム、水素、亜酸化窒素、酸素、又は空気などの気体で充填することができる内部空洞を画定する。具体的にはシースの内部は材料を含有せず、シースの内部はその拡張状態にあるときに気体のみを含有する。複数の実施形態では、バルーンは、平らな、ひだ状、しわ状、または折り畳まれた状態に構成され、まず、対象の体腔内への挿入のために空洞が最小限に抑えられ、次いで、例えば、カテーテル内の膨張管腔を介して導入される空気などの気体を使用して膨張させられる。
【0039】
あるいは、拡張可能部材は、空洞内に連続気泡発泡体(open cell foam)を含む空洞を画定する拡張可能シースを備えることができる。複数の実施形態では、連続気泡発泡体が対象の体腔内への挿入のために圧縮状態に保持され、次いで、挿入後に膨張または拡張される。複数の実施形態では、連続気泡の拡張可能構造体(open cell expandable structure)を、膨張管腔を介して導入される気体を使用してバルーンのように膨張させることができる。他の実施形態では、前記連続気泡構造体(the open cell structure)は、膨張管腔を通して真空引きによって圧縮される。真空が解放されると、空気が膨張管腔内に入り、そして連続気泡構造体内に入る。それによって連続気泡構造体が拡張する。他の実施形態では、連続気泡構造体が自己膨張式であってもよく、この場合、連続気泡発泡体は、圧縮が解放されるまで、圧縮形態が維持される。例えば、弁を開くことによって連続気泡発泡体の急速な膨張を可能にしたり、膨張管腔から膨張する連続気泡内に気体を引き込む真空を生成したりする。
【0040】
前述の実施形態のいずれかでは、カテーテルが、格納式の非エラストマーまたは非拡張性シースをさらに備えてもよく、これらは、拡張可能部材の周囲に半径方向に配置され、拡張可能部材が膨張するよう望まれるまで、拡張可能部材の拡張を防止する。例えば、非拡張性シースは、対象への挿入後、拡張可能部材の周囲から引き込まれていてもよい。非拡張性シースが格納される(引き込まれる)と、膨張管腔を介して導入されたガスによるバルーンまたは連続気泡発泡体の膨張を可能にする。自己膨張式の実施形態では、非拡張性シースの格納は、圧縮された連続気泡発泡体が膨張することを可能にする「弁」として機能することができる。
【0041】
本明細書に記載の拡張可能構造は、密度が低減されたカテーテルの遠位領域にカテーテルの一部を提供し、カテーテルの遠位領域が、腹腔内の腹膜液の上部付近で浮遊して排液を容易にすることを可能にする。
【0042】
カテーテルおよびその使用方法の原理および特徴の理解を促進する目的で、特定の用語は、図面に示される実施形態を説明する。それにもかかわらず、装置の範囲は、使用される特定の言語に限定されず、図示された装置における変更および修正、ならびに本発明が関連する技術分野の当業者が通常想起するのであろう、本明細書に図示されるカテーテルの特徴のさらなる適用が企図される。
【0043】
本明細書に記載の装置は多くの異なる形態をとることができるが、好ましい実施形態は本開示に記載され、添付の図面に示される。本開示は開示された装置の原理を例示し、その使用のための装置および方法の広範な態様を、例示された実施形態のみに限定するものではない。
【0044】
本開示の態様は、腹膜透析を実施するための医療装置またはカテーテルを提供する。
【0045】
ここで
図1Aおよび1Bを参照すると、そのような装置の第1の実施形態が示されている。カテーテル10は、近位領域12から遠位領域13まで延在する第1の内部管腔(図示せず)を有する可撓性の長尺管状部材11を含む。セクション11、12、および13の長さおよび形状は、カテーテルの実施形態に応じて変更することができる。提示を容易にするために、長尺管状部材の長さはその長さに沿った破断を伴って示され、管状部材の長さは患者の腹腔内に適合するように寸法決めされ得る。近位領域および遠位領域の一部の長尺管状部材11の壁には、以下でさらに説明する遠位領域の穿孔セグメントを除いて、第1の管腔と装置の外部との間に流体経路を提供する開口がない。カテーテル10は、患者の体内に埋め込むのに適した可撓性の医療グレードのチューブで作られる。様々な実施形態において、長尺管状部材の少なくとも一部に沿った壁の厚さは、2mm~0.25mm、または2mm~0.5mm、または1.5mm~0.5mm、または1.0mm~0.5mm、または2mm~1.0mm、または0.25mm~0.5mm、または0.25mm~0.4mm、または0.25mm~0.3mmである。
【0046】
カテーテル10の近位領域12は、自動腹膜透析システム(図示せず)などの透析液供給および除去システムにカテーテル10を接続する機能を提供する。近位領域12は端部14を備え、前記端部は、コネクタ継手(connector fitting)およびチューブ(tubing)を介して透析液供給・除去システムに取り付けられるように構成されている。そして、前記管腔は、腹膜腔と透析液供給・除去システムとの間で流体を移送することができる。外部チューブまたは管腔(図示せず)は、患者の外部に配置され、自動腹膜透析システムおよび近位領域12に接続され、それらの間における流体連通を提供する。カテーテル10は、腹膜腔の上部領域に向かって遠位領域13が上方に配置された状態で患者に埋め込まれたとき、概して垂直な向きを有していてもよい。近位領域12は、腹膜腔の底部に向かって下方に位置決めされてもよい。
【0047】
近位領域12はまた、カテーテル10を患者に固定することを提供してもよい。近位領域12における長尺管状部材の壁上に配設された1つ以上のインプラントカフ15、16により、カテーテル10が患者に固定される。カテーテル10は、カフ15が患者の皮膚のすぐ下に配置され、カフ16が患者の直筋に埋め込まれた状態で、患者に埋め込まれる。
【0048】
カフは、カテーテル入口の開口部の封止を改善することができる。カフは例えば、ポリエチレンテレフタレート(例えば、DACRON)または別の生体適合性ポリマー材料を含む材料から形成されてもよい。インプラントカフ15、16は、カフ内への組織の内部成長を可能にする、ポリエステルフェルト、または他の材料とすることができる。皮下組織は、カテーテル10を患者に固定するために、インプラントカフ15、16内に成長することができる。
【0049】
他の実施形態では、カフが再構築可能な材料(remodelable material)を含む。そのような再構築可能な材料は、細胞成長を再構築または促進することができ、および/または損傷組織構造の再成長および治癒を促進することができる。そのような再構築可能な材料の存在は、細胞の内部成長およびカテーテルの直腸鞘への固定を促進し得る。これは、カテーテルを安定させ、開口部の改善された封止を提供するのに役立ち得る。他の実施形態では、再構築可能な材料が長尺部材の表面上に存在するか、または長尺部材の構造に組み込まれる。
【0050】
再構築可能な材料は、例えば、細胞外材料(ECM)、小腸粘膜下組織(SIS)、再構築可能な発泡体またはコラーゲン発泡体、発泡ECM、凍結乾燥SISまたは真空プレスSISであってもよい。適切な再構築可能な材料の非限定的な一例は、Cook Incorporated、Bloomington、Ind.から市販されているSURGISIS(商標)、BIODESIGN(商標)である。別の適切な再構築可能な材料は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,206,931号に記載されるグラフトプロテーゼ材料である。
【0051】
カテーテル10が患者の内部に埋め込まれるとき、カフ15に近い近位端14からのカテーテル10の部分は患者の外部にあり、外部の患者部分とみなすことができる。カテーテル10の残りの部分は、患者の内部に埋め込まれ、埋め込み可能な部分と見なすことができる。
図1Aおよび1Bに示されるように、移植可能部分はほぼ非線形の形状を有する可能性があるが、移植可能部分の部位は実質的に線状であってもよい。チューブは可撓性であるため、腹膜腔内に嵌合(fit)する構成を採用してもよい。
【0052】
複数の実施形態では、放射線不透過性ストライプ(線条)がカテーテル10の長さに沿って延在してもよい。x線下では、放射線不透過性ストライプが患者内部のカテーテル10の位置を示す。
【0053】
遠位領域13は、第1の管腔と流体連通する複数の穿孔または穴17と、拡張可能部材または拡張可能構造とを備える。穿孔17の数およびサイズは限定されないが、細胞外液を第1の管腔内に通過させるが、細胞物質を通過させないように構成されてもよい。
【0054】
複数の実施形態では、拡張可能部材がバルーンなどの拡張可能構造を備える。したがって、装置はまた、拡張可能構造の膨張を行うために、第2の管腔(図示せず)内に少なくとも1つの膨張チューブを含む。膨張チューブは典型的には装置の近位領域12から拡張可能構造まで延在し、拡張可能構造の内部と流体同士が接触する(in fluid contact)。例えば、長尺管状部材11は、透析流体が通過するための、より大きな第1の管腔と、拡張可能構造の膨張を提供するための、より小さな第2の管腔と、の少なくとも2つの管腔を有していてもよい。上述のように、拡張可能構造は、バルーン又は連続気泡発泡体構造を含むことができる。
【0055】
図1Aおよび
図1Bに示される実施形態では複数の穿孔が遠位領域13の遠位端に配置され、拡張可能部材は複数の穿孔の近位側に配置される。
【0056】
図1Aでは、拡張可能構造が収縮または圧縮された状態18aで示され、複数の穿孔17の近位側に配置される。拡張可能構造18aの周囲に格納式シース(図示せず)を使用すると、患者の腹部へのカテーテルの挿入中に、収縮した拡張可能構造を保護することができる。
図1Bは、拡張された状態18bにおける拡張可能構造を示す。膨張後、拡張可能構造は患者の腹部内の流体の上位レベル付近にカテーテル10の遠位領域13を保持するためのフロートとして機能し、その結果、カテーテルは、沈下せず、患者の腸によって遮断されない。拡張可能構造はまた、腸が穿孔領域をブロックする可能性をさらに低減するために、シースの遠位部分を腸の表面から離して保持してもよい。
【0057】
複数の実施形態では、拡張可能構造が遠位領域13の長さに沿って長手方向に配置される。
【0058】
装置の拡張可能構造は、拡張可能構造の製造に典型的に使用される任意の材料から製造され得る。例えば、拡張可能構造は、ナイロン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、エラストマー、シリコーンまたはこれらの材料の混合物およびコポリマーまたはこれらの材料のうちの2つ以上などの材料を含み得る。
【0059】
発泡体は、液体または固体中に気体を捕捉することによって形成される材料である。連続気泡発泡体の拡張および硬化の間、その製造に使用される気泡は、独立気泡発泡体のように所定の位置に固定されるのではなく、大気中に放出される。連続気泡発泡体は、材料内の区画が破壊され、空気が内部の空間を占めることを可能にした発泡体である。連続気泡発泡体は、互いに接続され、スポンジ状の外観を有する比較的軟らかい相互接続ネットワークを形成する細孔を含んでいる。通常、連続気泡発泡体は、独立気泡発泡体と比較して軽量で密度が低く、独立気泡発泡体よりも膨張性が高い。連続気泡発泡体材料のアレイ(array)があるが、一般に、それらはポリウレタン、網状ポリウレタン、PVC/ニトリル、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムなどから作製される。注目すべき材料は、医療グレードのシリコーン連続気泡発泡体である。
【0060】
図1Aおよび
図1Bに示されるように、カテーテルの遠位領域13はカテーテルの安定化を行うために、らせんまたは「ピッグテール」の形状などに湾曲していてもよい。そのような湾曲した実施形態では、湾曲が製造中にカテーテル内に構成された形状記憶の結果であり得る。挿入中、湾曲部分は、カテーテルを直線状のスタイレット(stylet)に通すことによって「直線状にする(straightened)」ことができる。挿入後、直線状のスタイレットがカテーテル10から取り外されるか、または引き込まれる(retracted)と、遠位領域13は、その湾曲された形状を再開することができる。あるいは、格納式シースにより、挿入のための直線状の構成でカテーテルを保持することができる。
【0061】
図2A~
図6Bは、本明細書に示されるカテーテル10の他の実施形態の態様を示す。これらの実施形態では、長尺管状部材11および近位領域12が
図1Aおよび1Bに示されるものと実質的に同様であり、したがって、提示を簡単にするために、
図2A~6Bには示されていない。
【0062】
図2Aおよび2Bに示される実施形態では、遠位領域23が、遠位領域23の遠位端に配置された拡張可能構造と、前記拡張可能構造の近位側に配置され、長尺管状部材11の穿孔されていない領域に隣接する複数の穿孔27とを備える。
図2Aでは、拡張可能構造28aが収縮または圧縮状態にある。
図2Aでは、拡張可能構造28bが膨張または拡張状態にある。
【0063】
他の実施形態では、拡張可能構造および穿孔が、遠位領域の実質的に同じ長さに沿って別々のセクションを占有し、拡張可能構造は遠位領域の円周の第1の部分に配置され、複数の穿孔は遠位領域の円周の第2の部分に配置される。これらの実施形態では、拡張可能構造がPDCの遠位領域の穿孔部分の全長に沿って配置されてもよい。これらの実施形態によるカテーテル10の概略断面を
図3Aおよび3Bに示す。
図3Aでは、遠位領域33が隔壁34を備え、この隔壁により、管状部材11が第1の管腔35と第2の管腔36とに分割され、これらの管腔はそれぞれ、カテーテル10の長さである近位領域12から遠位領域33まで延びる。第1の管腔35は、
図1Aに示される穿孔17に類似する、複数の穿孔を含む穿孔領域37と流体連通している。第2の管腔36は、
図3Aの収縮構成38aに示される拡張可能構造と流体連通している。ガスが第2の管腔36を通過すると、
図3Bの膨張した状態38bに示されるように、拡張可能構造が膨張する。
【0064】
図4Aおよび
図4Bは、
図3Aおよび
図3Bに示される遠位領域33の、
図3Aに示される線Aに沿って見た側面図を示す。これらの図では遠位領域33が単純な「直線状」の構成を備えるが、留意されるように、カテーテルは可撓性であり、直線状の構成は、患者に展開されるときに実際に曲がり、湾曲し得る。穿孔領域37は遠位領域33の第1の円周方向部分を占め、拡張可能構造は
図4Aの収縮構成38aおよび
図4Bの膨張構成38bにおいて、遠位領域33の第2の円周方向部分を占める。
【0065】
図5A~5Cは、
図3Aに示される線Aに沿って見たカテーテルの湾曲した実施形態の概略図を示す。
図5Aでは、遠位領域33が湾曲構成を備え、この湾曲構成では、遠位領域33の穿孔部分37が湾曲構成の内側(より小さい)半径を占め、収縮拡張可能構造38aが湾曲構成の外側(より大きい)半径を占める。
図5Bは、拡張可能構造がその膨張状態38bにある同じカテーテルを示す。
図5Cは、拡張可能構造が膨張状態で示されている、遠位領域33の螺旋形状を示している。上述のように、
図5A~5Cに示される曲率は限定されず、カテーテルは可撓性材料を含むため曲率は固定されず、患者への挿入のために直線状にされ、次いで挿入後に形状を変形(reformed)され得る。
【0066】
図示されていない他の実施形態では、拡張可能構造が湾曲した遠位領域の内半径を占めることができる。
【0067】
図6Aおよび6Bは、湾曲した遠位領域の別の実施形態を示す。この実施形態では、遠位領域が
図3Aの線Bに沿って観覧された図であり、
図3Aおよび
図3Bに示される断面による断面を含む。この実施形態では拡張可能構造がカテーテルの曲線の軸に対してカテーテルの「上部(top)」を占め、穿孔領域はカテーテルの曲線の軸に対してカテーテルの「底部(bottom)」を占める。
図6Aでは、カテーテルが曲率軸に平行な線Bに沿って底部から観覧されている。
図6Aの拡張可能構造は、収縮状態にあるので、穿孔部分37の後ろには見えない。
図6Bでは、拡張可能構造が膨張状態38bにあり、穿孔部分37の後ろに見える。
【0068】
図7Aおよび7Bは、PDCの遠位領域上に直径方向に対向して配置された2つの拡張可能構造を備えるカテーテルの別の実施形態の概略断面図を示す。カテーテルは、管状部材70をより大きい(第1の)管腔73と2つのより小さい管腔74および75とに分割する2つの隔壁71および72を備える管状部材70を備える。管腔73は、管状部材70で直径方向に対向する2つの穿孔部分76および77と流体連通している。管腔73は管状部材の長さ方向にわたって延び、カテーテルの近位領域12と図示の遠位部分との間で透析液を運ぶように構成される。管腔64および75はまた、管状部材の長さに延在し、カテーテルの近位領域12から拡張可能構造に膨張ガスを運ぶように構成される。
図7Aでは、拡張可能構造が収縮状態または圧縮状態78aおよび79aで示されている。
図7Bでは、拡張可能構造が膨張状態または拡張状態78bおよび79bで示されている。
【0069】
図8Aおよび8Bは、PDCの遠位領域上に2つの拡張可能構造を備えるカテーテルの代替実施形態を示している。
図8Aに示されるこの実施形態では、PDCが穿孔領域87に対して遠位側に配置された圧縮状態の第1の拡張可能構造86aと、穿孔領域87に対して近位側に配置された圧縮状態の第2の拡張可能構造88aとを有する遠位領域83を備える。
図8Bは拡張可能構造が拡張状態86bおよび88bにあり、「バーベル」構成をもたらす、同じ遠位領域83を示す。
【0070】
図7A、7B、8Aおよび8Bには2つの拡張可能構造が示されているが、これらに限定されるものではない。複数の実施形態では、PDCが複数の拡張可能構造を備えてもよい。
【0071】
図9A、9B、および9Cは腹膜透析カテーテルの一実施形態の態様を示し、その遠位端が直線的に延在して示されている。カテーテル90の一実施形態は、2つの主要な特徴を含む。まず、
図9Bに詳細に示されるように、カテーテル90は、デュアル管腔シリコーンチューブ91を備え、デュアル管腔シリコーンチューブ91は、透析液の注入および排出のための1つの管腔92と、発泡体インサートを用いてシリコーンバルーンまたはシースを畳むため、(collapse)または拡張するために真空または空気を伝達または搬送する別の管腔93とを備える。第2に、カテーテル90は、カテーテルの遠位端付近に取り付けられた圧縮性発泡体インサート(図示せず)を有するシリコーンバルーンまたはシース94を含み、これは挿入後に腹膜腔の内側に置かれる。バルーン内部の発泡体インサートは空気と共に膨張し、透析中に浮力を提供し、透析液の排出を改善する。カテーテルの遠位端95は、カテーテルの穿孔領域に沿って配置された複数のレーザアブレーションされた穴を含む、流体管腔内の穿孔を有するレーザアブレーションされたバッフルを含む。穿孔は、腹膜腔からカテーテルの流体管腔92への流体連通を提供する。遠位端95は対象の腹膜腔内への挿入などのために、延在された線形(linear)の構成で示されているが、遠位端95は前述のように、挿入後に湾曲または螺旋の構成を採用することができる。
【0072】
複数の実施形態では、カテーテルの遠位先端96がカテーテルの遠位の作業端と腸、膀胱または腹膜の表面との接触を最小限に抑えるように構成される。詳細な
図9Cに示されるように、遠位端は、複数の交互の長手方向突出部または山部96aおよび長手方向窪みまたは谷部96bを有するクレネル状先端部96を備える。図示の実施形態では先端部が直径方向に配置された2つの突起または山と、直径方向に配置された2つの窪みまたは谷とを備えるが、これに限定されない。
【0073】
また、
図9Aに示されるように、カテーテルは、カテーテルの近位端付近に1または複数の内部成長用カフ97を備えている。このカフにより、組織の内部成長のための基材が提供され、対象の腹膜壁付近にカテーテル90の近位端を固定することを容易にする。カフはポリエチレンテレフタレート(DACRON)繊維から調製することができ、カテーテルの周囲に配置される。
【0074】
圧縮性発泡体インサートを有するシリコーンバルーンまたはシース94は、剥離可能スリーブまたは格納式スリーブを通して腹膜腔内に配置されてもよい。最初に、バルーンは、腹部に挿入するために畳まれる。移植中、システムは、浮力バルーンを圧縮状態に保つために真空下に保たれる。管腔93を通る大気への曝露は、バルーンを拡張させる。負圧が除去されると、空気は発泡体インサートに入り、バルーンを拡張することができる。
【0075】
カテーテルの別の実施形態が
図10A~10Rに示されている。
図10Aおよび10Bは、それぞれ、組み立てられた状態および分解された状態のカテーテル1000を示す。カテーテル1000は、遠位端1005の近くに配置されたシリコーンバルーンまたはシース1004を有するデュアル管腔カテーテル本体1001を備える。バルーン1004の内部には発泡体インサート1008がある。2つの内部成長用カフ1007がカテーテル本体の周りに配置される。カテーテルの近位端には真空アダプタ1100が配置され、真空アダプタ1100は、カテーテル本体1001の近位端1009に係合し、透析液を腹膜腔内外に移動させるための流体ハンドリングシステムへの結合を提供するように構成される。
図10Cは、示される部品の代表的な寸法を有する、カテーテル1000の非コイル状(非渦巻き状)の図を示す。図示の実施形態では、カテーテルが巻いていない状態の長さは625mmであり、カテーテルの外径は4.75mmであり、壁厚は1.0mmである。空気管腔を考慮すると、これは流体が通過するための5.4mmの断面積をもたらす。シリコーンバルーン1004は、その拡張状態または非圧縮状態において、12.5mmの外径を有する。移植中、システムは、浮力バルーンを圧縮状態に保つために真空下(under vacuum)に保たれる。
図10Dに示すように、対象の腹膜腔内への挿入のために空気管腔の近位端に真空が適用されると、バルーン1004の外径は約8mmに圧縮される。カテーテルの遠位端1005は挿入のために非コイル状で配置され、取り外し可能なスリーブ内に保持される。
図10Eは、腹腔内に留置された後のカテーテルを示す。陰圧が取り除かれると、バルーンは膨張し、空気は発泡体インサートに入ることができる。遠位端1005は、そのコイル状(渦巻き状)の状態で示されている。
【0076】
図10Fは、カテーテルが、
図10Eに示されるA-Aにおけるカテーテルの断面を有する押出部を備えることを示す。断面は、流体管腔1002および真空/空気管腔1003を示す。デュアル管腔と共押出された放射線不透過性ストライプ1010も示されている。
図10Gは、発泡体インサート1008が拡張された、
図10Eに示されるB-Bでのカテーテルの断面を示す。発泡体は、連続気泡発泡体(open cell foam)を含む。カテーテルの周りに配置された複数のより大きな直径の孔は、管腔1003を介して真空が適用されるときに畳まれ得る、または空気が管腔1003を介して適用されるときに拡張され得る、開放空間を提供する。図示されていないが、管腔1003は、管腔1003と発泡体1008との間に流体(空気)連通を提供するために、発泡体インサート1008に対して接触するカテーテルの領域で穿孔される。
【0077】
複数の実施形態では、カテーテルの先端がカテーテルの遠位の作業端と、腸、膀胱、または腹膜の表面との接触を最小限に抑えるように構成される。この実施形態では、先端部が、端部開口部と、カテーテルの周囲に配置された複数の開口部とを備える。
図10Hに示すように、遠位先端部1006は、先端部の両側において直径方向に配置された2つの細長い開口部1006aと、端部開口部1006bとを備えるが、これに限定されない。遠位端1005は、その長さに沿って配置された複数のレーザアブレーションされた穴1005aを含む。
【0078】
図10Iは、
図10Cに示される線C-Cに沿ったバルーン部におけるカテーテル1000の切り欠き側面図を示す。発泡体1008は、カテーテル1001の周囲およびバルーン1004の内側に配置される。バルーン1004は、溶媒接着(solvent bond)または接着剤を使用してカテーテルの外側に取り付けられる。真空管腔1003内へのVカット1012は、管腔1003から発泡体1008への流体連通を提供する。また、遠位先端1006も示されている。
【0079】
図10Jは、カテーテルの他の構成要素を伴わないカテーテル管腔1001を示す。遠位端は約330mmの長さを有し、約50mmの外径を有する螺旋コイルで示される。遠位端は、約10mmの間隔をあけて配置された複数のレーザアブレーションされた穴を備える。
図10Kは、
図10Jの線E-Eにおける管腔の断面を示す。
図10Lは、バルーン1004の側面図および斜視図を示す。
図10Mは、発泡体インサート1008の側面図および斜視図を示す。発泡体1008は、カテーテルの周りに構成された複数のより短いサイドバイサイドセグメントから組み立てることができる。これは、異なる長さの拡張可能構造を有するカテーテルの調製を可能にする。
図10Nはバルーン1004の正面図を示し、
図10Oは、発泡体インサート1008の正面図を示す。
図10P、10Q、および10Rは、それぞれ、内部成長カフ1007の正面図、側面図、および斜視図を示す。
【0080】
図11A~11Fは、カテーテルの近位端と係合されて、カテーテル1000を介して、対象の腹膜腔から対象の腹膜外の他の流体ハンドリング構造に、流体での連通を提供する真空アダプタ1100の態様を示す。
図11Aは、真空アダプタ1100の側面図を示す。真空アダプタは、シリンジまたは他の流体ハンドリングシステムを取り付けるために、その近位端1101上に雄ルアー継手1102を備える。アダプタの中央セクション1103は、真空逆止弁を備える。アダプタ1100の遠位端1104は、デュアル管腔カテーテル1000の近位端と係合するように構成される。
図11Bは、
図11Aの線W-Wに沿ったアダプタ1100の断面図を示す。
図11Bに示すように、前記近位端1101および遠位端1104は、透析液の流体が通過することを可能にする流体通路1005を画定するように互いに係合する。それらは、真空逆止弁1103を提供するために係合される。近位端1101の通路1105aの直径は外部チューブに係合するように寸法決めされ、それにより、雌ルアー継手を用いて雄ルアー継手1102上に係止するように構成され得る。遠位端1104の通路1105bの直径は、カテーテル1000の外径に係合するように寸法決めされる。小通路1006は、カテーテル1000の管腔1003内に挿入されて、カテーテルの外側から管腔1003内に空気または真空を伝達するように構成される。
図11Cおよび11Dは、真空アダプタ1100の斜視図を示す。
図11Eは、アダプタ1100の近位端の図を示す。
図11Fは、アダプタ1100の遠位端の図を示す。
【0081】
図12A~12Dは、カテーテル1000およびアダプタ1100の態様の写真を示す。
図12Aは、カテーテル1000の近位端および真空アダプタ1100の遠位端を並べて示す。空気通路1105bはカテーテル1000の外径と係合するように寸法決めされ、それにより、流体管腔1002と流体連通することができることが分かる。空気通路1106は、管腔1003内に挿入されるようなサイズであることも分かる。
【0082】
図12Bは、バルーン1004が圧縮された状態のカテーテル1000の遠位端1005およびバルーン1004を示す。バルーン1004の表皮は、しわ状またはひだ状であり、拡張していないことを示していることが分かる。遠位端1005の長さに延在する放射線不透過性ストライプ1010も示されている。
図12Cは、バルーン1004が拡張された状態のカテーテル1000の遠位端1005およびバルーン1004を示す。バルーン1004の表皮は
図12Bよりも滑らかであり、バルーン内部の発泡体インサートがバルーン1004を拡張および膨張させたことを示すことが分かる。
図12Dは、水のプール内でのカテーテル1000を示す。拡張されたバルーン1004は水の表面上に浮いており、一方、遠位端1005および近位端1009は、水没していることが分かる。これは、拡張可能構造(例えば、バルーン1004)がカテーテル1000を配向するのに十分な浮揚を提供することを実証しており、それによって、遠位端が対象の腹膜腔内の流体の上方の近くに配置され得るようできる。
【0083】
拡張可能構造は、カテーテルシステムの標準的な腹腔鏡下、開腹、または経皮的埋め込み後に、医師によって膨張させることができる。腹膜透析は、ヘルスケアプロバイダーおよび/または患者によって、標準的な技術を介して実施することができる。透析液は、透析液バッグをカテーテルに接続することによって腹膜腔に注入される。装置は、6L/hrの現在の標準流量を達成する。このカテーテルシステムは、APDまたはCAPDに使用することができる。バルーンは、拡張する連続/独立気泡発泡体インサート(足場)に起因して膨張した状態を維持する。複数の実施形態では、カテーテルが、フェルトカフとともに、放射線不透過性ストライプを含む半透明シリコーンゴムチューブから作製され、前記フェルトカフは組織の内部成長によってカテーテルの安定化を行うために利用可能である。
【0084】
また、本明細書に記載されるカテーテルと、本明細書に記載される移送継手または真空アダプタとを含むキットが提供され、任意選択で、対象の腹膜腔内へのカテーテルの挿入を誘導するためのスタイレットをさらに含み、任意選択で、カテーテルを挿入するための腹膜腔内への開口部を作り出すために、メスなどの切断ツールをさらに含む。キットは、カテーテルの使用説明書をさらに含んでもよい。
【0085】
本発明の別の態様は、腹膜透析を実施するための方法を提供する。
図13に全体的に示されるように、上記で開示されるカテーテル装置の遠位端は、透析を必要とする患者の腹壁の壁の開口部を通して挿入される。この間の処置の段階では、拡張可能構造を含む拡張可能部材は、典型的には収縮または圧縮された構成である。例えば、拡張可能構造は、送達シースの管腔内に閉じ込められてもよい。
【0086】
使用時には、最初に、装置の遠位端は、拡張可能構造を含む遠位領域および複数の穿孔が腹腔内に配置されるように、腹腔壁の開口部を通して挿入される。拡張可能構造は、通常、処置のこの段階の間、収縮または圧縮された状態にある。複数の実施形態では、拡張可能構造が空気管腔を通して真空を適用することによって圧縮される。長尺部材を所望の長さに挿入した後、拡張可能構造を膨張させることができる。例えば、膨張可能な構造は、空気またはヘリウムなどの気体を用いて、膨張チューブ(単数または複数)を通して膨張させることができる。
【0087】
透析液は長尺部材11の近位端12から装置の遠位端に、次いで第1の管腔を介して腹腔に送達される。したがって、第1の管腔は、外部から患者の腹部への漏れのない経路を提供する。
【0088】
カテーテルの遠位領域が湾曲部分を含む実施形態では、カテーテルが直線状のスタイレットを利用して腹部内に通され、スタイレットが除去されると、カテーテルは湾曲または湾曲する。
【0089】
拡張可能構造は、続いて、第2の管腔内の膨張チューブを介して、装置内の近位領域から拡張可能構造に輸送されるガスによる膨張によって拡張され得る。拡張可能構造の膨張のための気体は自動腹膜透析システムから、またはカテーテルの近位領域で第2の管腔に接続された別の装置、通常はシリンジから供給され得る。一実施形態では、拡張可能構造は、腹部への挿入後および透析液の導入前に膨張させることができる。あるいは、拡張可能構造は、透析液の導入後に膨張させることができる。拡張可能構造は、透析液導入の前または後に膨張させて、排液期間中の排出を最大にすることができる。あるいは、拡張可能構造は、留置PDCの寿命(最長数年)にわたって膨張したままであり得る。
【0090】
一定量の透析液が、長尺部材の第1の管腔を通って腹部に導入される。典型的には導入される流体の体積は約1~3リットルであり、流体は約10~15分間にわたって導入される。流体は腹腔内に残存し、老廃物は、下にある血管から腹膜を横切って、腹膜腔内の流体中に拡散する。治療に応じた可変期間、典型的には4~6時間後、拡張可能構造が膨張されている間に、流体が装置の管腔を通して除去される。この空気で満たされた拡張可能構造システムは、PDCを透析液の上部に浮かせるために、遠位領域においてPDCの穿孔部分に隣接して配置される。これは、排出によってレベルが低下する際に、PDCが(腸から離れて)透析液と接触することを最大にする。本明細書に記載の拡張可能構造-PDCは、流体が完全に除去されるまで浮遊する。
【0091】
このプロセスは患者が眠っている間(自動腹膜透析)、または1日に1~3リットルの体液を常に腹腔内に保持し、体液を1日に4~6回交換することによって(連続携帯型腹膜透析)、自動的に行うことができる。
【0092】
自動腹膜透析は、透析治療が少なくとも1つのドレーン、充填、および滞留サイクルを含むという点で、連続腹膜透析と同様である。しかしながら、透析装置は、典型的には患者が睡眠中に一晩、腹膜透析治療の3~5サイクルなどの1~5サイクルを自動的に実施する。滞留時間は、透析治療中に想定されるサイクル数に応じて可変であることが理解され得る。透析装置は、埋め込まれたカテーテルに流体的に接続される。透析装置はまた、透析液溶液のバッグなどの新鮮な透析液の供給源、および流体ドレーンに流体的に接続される。透析機は、使用済み透析液を腹膜腔からカテーテルを通ってドレーンに送り出す。次いで、透析機は、透析液源からカテーテルを通って患者の腹腔内に新鮮な透析液を圧送する。透析装置は患者の血流からの老廃物、毒素、および過剰な水を透析液溶液に移すために、透析液が空洞内に滞留することを可能にする。透析装置は患者が透析装置に接続されたとき、例えば一晩、透析治療が自動的に行われるようにコンピュータ制御される。複数のドレーン、充填、および滞留サイクルが治療中に生じる。また、自動化された透析治療の終わりには通常、最後の充填物が使用され、それにより、患者は透析装置から切り離され、透析液が腹膜腔内に残っている間、毎日の機能を継続することができる。自動腹膜透析は患者が手動でドレーン、滞留、および充填工程を実行することを解放し、患者の透析治療および生活の質を改善することができる。本明細書に記載されるPDCを使用するさらなるラウンドの透析治療は、長期間にわたって実施され得る。
【0093】
カテーテルは血液ホメオスタシスを維持するための透析を提供するための一時的な手段として、別の形態の透析治療が始まるのを待つ間、腎臓が外傷から回復するのを可能にするために、または血液透析アクセスポイントが治癒するのを待つ間に使用され得る。他の実施形態では、カテーテルが腹膜透析のために永久的に使用されてもよい。
【0094】
代替的な透析治療が開始されたとき、または腎臓が対象に移植されたときなど、腹膜透析の必要性が終了したとき、拡張可能構造を収縮させ、カテーテルを対象から取り出すことができる。
【0095】
使用される流体は典型的には高浸透圧を確実にするために、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、または重炭酸ナトリウムなどのナトリウム塩と、高いパーセンテージのグルコースとを含有する。発生する透析の量は、流体の体積、交換の規則性、および流体の濃度に依存する。カテーテルの存在は、腹部に細菌を導入する可能性があるため、腹膜炎のリスクを提示する。腹膜炎は、液体を介して腹腔内に抗生物質を直接注入することによって治療することができる。
【0096】
開示される主題の態様は以下を含む。
【0097】
開示される主題の一態様は、長尺管状部材を備える装置であって、前記長尺感情部材は、近位領域と、遠位領域と、前記近位領域から前記遠位領域に延在して前記第1の管腔と外部との間に流体経路を提供する開口を有していない壁を備える第1の管腔と、第2の管腔とを備え、ここで、前記近位領域は、前記第1の管腔を通る流体の流れを制御するための移送継手に係合されるように構成され、前記遠位領域は、前記第1の管腔と流体連通する複数の穿孔と、拡張可能構造を備える拡張可能部材とを備え、前記第2の管腔は、前記装置の前記近位領域から前記拡張可能構造に延在する膨張管を備える、装置を提供する。
【0098】
装置の複数の実施形態は、単独で、または任意の組合せで、以下を含む。
【0099】
複数の穿孔が遠位領域の遠位端に配置され、拡張可能構造が複数の穿孔の近位側に配置される、装置。
【0100】
複数の穿孔を含む遠位端が湾曲している装置。
【0101】
複数の穿孔を含む遠位端が螺旋状に構成されている装置。
【0102】
拡張可能構造が遠位領域の遠位端に配置され、穿孔が拡張可能構造の近位側に配置される、装置。
【0103】
拡張可能構造が遠位領域の一部に沿って長手方向に配置される、装置。
【0104】
拡張可能構造が遠位領域の外周の第1の部分に配置され、複数の穿孔が遠位領域の外周の第2の部分に配置される、装置。
【0105】
遠位領域が湾曲している装置。
【0106】
遠位領域が螺旋として構成される、装置。
【0107】
拡張可能構造が、ナイロン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、エラストマー、シリコーン、ならびにそれらの混合物およびコポリマーからなる群から選択される材料を含む、装置。
【0108】
装置は、近位領域において長尺管状部材の壁上に配置されたカフをさらに備える。
【0109】
装置は、近位領域において長尺管状部材の壁上に配置された第2のカフをさらに備える。
【0110】
拡張可能構造がバルーンを含む、装置。
【0111】
拡張可能構造が、その中に連続気泡発泡体を含む空洞を画定するシースを含む、装置。
【0112】
拡張可能構造の半径方向外側に配置された格納式非拡張可能シースをさらに備える、装置。
【0113】
別の態様は、腹膜透析を実施するための方法であって、透析を必要とする対象の腹壁の開口部を通して上述の装置の遠位領域を挿入する工程と、第1の管腔を通して腹部内に流体を導入する工程と、老廃物が腹部を囲む血管から流体中に拡散するのに十分な時間、腹部内に流体を維持する工程と、拡張可能構造を拡張する工程と、第1の管腔を通して腹部から流体を除去する工程とを含む方法である。
【0114】
本方法は、以下の実施形態を単独で、または組み合わせてさらに含む。
【0115】
流体が腹部から除去された後に、拡張可能構造を収縮させる工程を含む、方法。
【0116】
前記装置が拡張可能構造の周りに配置された格納式シースをさらに含み、前記方法が、拡張可能構造を拡張する前に格納式シースを格納することをさらに含む、方法。
【0117】
また、腹膜透析を必要とする対象を治療するための方法であって、上述した装置の遠位領域を、対象の腹壁の開口部を通して挿入する工程と、第2の管腔を通して拡張可能構造を膨張させる工程と、第1の管腔を通して腹部内に流体を導入する工程と、腹部内の流体を、老廃物が腹部を囲む血管から流体中に拡散するのに十分な時間維持する工程と、第1の管腔を通して腹部から流体を除去する工程とを含む、方法が提供される。
【0118】
本方法は、以下の実施形態を単独で、または組み合わせてさらに含む。
【0119】
流体が腹部から除去された後に、拡張可能構造を収縮させる工程を含む、方法。
【0120】
前記装置が拡張可能構造の周りに配置された格納式シースをさらに含み、前記方法が、拡張可能構造を拡張する前に格納式シースを格納することをさらに含む、方法。
【0121】
本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、本発明はそのように限定されるものではなく、本発明から逸脱することなく修正を加えることができることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の意味に含まれる全ての装置は文字通りまたは同等であるかのいずれかで、その中に包含されることが意図される。さらに、上述の利点は、必ずしも本発明の唯一の利点ではなく、記載された利点のすべてが本発明のすべての実施形態で達成されることは必ずしも期待されない。
【国際調査報告】