(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】付加的金属鋳造のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/22 20210101AFI20240719BHJP
B22F 10/362 20210101ALI20240719BHJP
B22F 10/64 20210101ALI20240719BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20240719BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20240719BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240719BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240719BHJP
【FI】
B22F10/22
B22F10/362
B22F10/64
B22F10/80
B22F12/90
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502641
(86)(22)【出願日】2022-05-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 IL2022050506
(87)【国際公開番号】W WO2023002468
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523432612
【氏名又は名称】マグナス メタル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Magnus Metal Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィ,ギル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィノグラードフ,ボアズ
(72)【発明者】
【氏名】サンディク,シモン
(72)【発明者】
【氏名】レヴィンソーン,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ホルクマン,イド
(72)【発明者】
【氏名】ガーツマン,オーレン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス,エミール
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA03
4K018AA07
4K018AA14
(57)【要約】
金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造方法であって、現在の生成層の物体領域を生成する前に現在の生成層の鋳型領域を構成することと、構築計画に従って、現在の生成層の物体領域において作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積することと、堆積経路にわたって1つまたは複数の加熱器を動かし、作業エリアを加熱することとを含む。加熱することは、(1)溶融金属の作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、作業エリア上に金属を堆積する前に、作業エリアを堆積前目標物温度まで加熱すること、および/または(2)作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、作業エリア上に金属を堆積した後に、作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することを含み、加熱することはまた、現在の生成層を通じた熱伝導によって、先行する生成層にアニーリング加熱を提供することも含む。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型領域および前記鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、最上生成層まで、1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造方法であって、
前記現在の生成層の前記物体領域を生成する前に前記現在の生成層の鋳型領域を構成することと、
堆積経路にわたって溶融金属堆積装置を動かし、構築計画に従って、前記現在の生成層の前記物体領域において複数の作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積することと、
前記堆積経路にわたって1つまたは複数の加熱器を動かし、前記複数の作業エリアを加熱することと
を含み、
前記複数の作業エリアを加熱することは、(1)前記溶融金属の前記複数の作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、前記複数の作業エリア上に金属を堆積する前に、前記複数の作業エリアを、目標物堆積前温度まで加熱すること、および、(2)前記複数の作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、前記複数の作業エリア上に金属を堆積した後に、前記複数の作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することのうちの少なくとも一方を含み、
前記複数の作業エリアを加熱することは、前記現在の生成層を通じた熱伝導によって、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することをさらに含む、鋳造方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することは、前記最上生成層を生成した後に、前記最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することを含む、請求項1に記載の鋳造方法。
【請求項3】
前記最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することは、1つまたは複数の連続したアニーリング加熱サイクルにわたって、前記最上生成層の前記複数の作業エリアにわたって前記1つまたは複数の加熱器を動かすことを含む、請求項2に記載の鋳造方法。
【請求項4】
前記連続したアニーリング加熱サイクルの各々の後に、前記最上生成層の上方で前記1つまたは複数の加熱器の高さを変更することをさらに含む、請求項3に記載の鋳造方法。
【請求項5】
前記堆積前目標物温度は、前記金属性物体の溶融温度以上である、請求項1に記載の鋳造方法。
【請求項6】
前記堆積前目標物温度は、所定の温度差以下だけ、前記所定の堆積温度と異なる、請求項1に記載の鋳造方法。
【請求項7】
ベース層の上方の各現在の生成層において、前記鋳型領域は、前記先行する生成層とともに、少なくとも1つの穴を構成し、前記溶融金属は、前記穴の中に堆積される、請求項1に記載の鋳造方法。
【請求項8】
鋳型領域および前記鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、最上生成層まで、可動ビルドテーブル上で1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造システムであって、
現在の生成層の鋳型領域を構成するように動作可能な可動鋳型構成装置と、
前記現在の生成層の前記物体領域において複数の作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積するように動作可能な可動溶融金属堆積装置と、
前記複数の作業エリアを加熱するように動作可能な少なくとも1つの加熱器と、
前記可動ビルドテーブル、前記可動鋳型構成装置、可動溶融金属堆積装置および前記1つまたは複数の加熱器に結合されている少なくとも1つの運動ユニットと、
所定の構築計画に従って前記金属物体を生成するように、少なくとも前記ビルドテーブル、鋳型構成装置、溶融金属堆積装置、少なくとも1つの加熱器および前記少なくとも1つの運動ユニットを反復的に制御するように動作可能なコントローラと
を備え、
前記複数の作業エリアを加熱することは、(1)前記溶融金属の前記作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、前記作業エリア上に金属を堆積する前に、前記作業エリアを、目標物堆積前温度まで加熱すること、および、(2)前記作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、前記作業エリア上に金属を堆積した後に、前記作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することのうちの少なくとも一方を含み、
前記作業エリアを加熱することは、前記現在の生成層を通じた熱伝導によって、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することをさらに含む、鋳造システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記最上生成層を生成した後に、前記最上生成層を通じた熱伝導によって前記1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供するように動作可能である、請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記最上生成層を通じた熱伝導によって前記1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供するために、1つまたは複数の連続したアニーリング加熱サイクルにわたって、前記最上生成層の前記作業エリアにわたって前記1つまたは複数の加熱器を動かすように動作可能である、請求項9に記載の鋳造システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記連続したアニーリング加熱サイクルの各々の後に、前記最上生成層の上方で前記1つまたは複数の加熱器の高さを変更するように動作可能である、請求項10に記載の鋳造システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記堆積温度と前記堆積前温度との間の差を、所定の温度差よりも小さく維持するようにさらに動作可能である、請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項13】
前記コントローラに通信可能に接続されている作業エリア温度センサをさらに備える、請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項14】
前記鋳造システムは、不活性ガスユニットをさらに備え、前記システムの少なくとも一部分は、物体領域生成中に不活性雰囲気環境内に維持される、請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項15】
前記堆積前目標物温度は、溶融温度である、請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項16】
前記加熱器は、金属堆積の前に前記作業エリア内に溶融金属の溶融プールを作成するように動作可能である、請求項15に記載の鋳造システム。
【請求項17】
前記可動鋳型構成装置は、鋳型材料リザーバと、前記構築計画に従って前記現在の生成層内に前記鋳型領域を形成するために所定のロケーションにおいて鋳型材料を付加的に分配するための、前記鋳型材料リザーバと接続されている鋳型材料分配アセンブリとを備える、請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項18】
前記可動鋳型構成装置は、複数の遠隔的に生成されている鋳型構造を含み、前記構築計画に従って前記現在の生成層内に前記鋳型領域を形成するために、遠隔的に生成されている鋳型構造を所定のロケーションに転移するように動作可能な鋳型転移ユニットを備える、請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項19】
前記鋳造システムは、少なくとも前記可動ビルドテーブルを包含し、1つまたは複数のチャンバ加熱器を備える生成チャンバをさらに備え、前記コントローラは、前記生成チャンバを、鋳型領域構成のための第1のチャンバ温度、および、物体領域生成のための、前記第1のチャンバ温度とは異なる第2のチャンバ温度まで加熱するようにさらに動作可能である、請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項20】
前記鋳造システムは、1つまたは複数のビルドテーブル加熱器をさらに備え、前記コントローラは、前記ビルドテーブルを、第1のビルドテーブル温度まで加熱するようにさらに動作可能である、請求項8に記載の鋳造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、ともに参照により本明細書に組み込まれる、2021年7月22日に出願された米国仮特許出願第63/224,658号、および、2021年11月29日に出願された米国仮特許出願第63/283,980号に由来する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に金属鋳造に関し、特に、付加的金属鋳造に対する改善のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
鋳造金属製品、特に鉄および鋼に対する需要のほとんどは、現在、鋳型全体を製造し、その後、型穴を溶融金属で充填することを含む従来の鋳造技法によって満たされている。場合によっては、鋳型の製造は、そこから鋳型が作成される鋳造パターンを作製することを含む。
【0004】
鋳造パターンおよび鋳型の製造および管理は、従来の鋳造のコストおよびターンアラウンドタイムに大きく寄与するいくつかの要因を導入する。作製パターンおよび鋳型は両方とも、高価で時間がかかり、進行中の鋳造動作においてそれらを使用することによって、洗浄、メンテナンス、修復、および再調整が必要になる。
【0005】
加えて、パターンおよび鋳型の長期保管および目録作成は、さらなる多大な費用および管理負担を招く可能性がある。この労力は、特定の鋳造金属部品の大規模生産については正当化される場合があるが、アフターマーケット状況においては、その特定の部品に対する市場需要が減少したとき、その部品の生産のために鋳型およびパターンを維持する進行中の諸経費を正当化するのは困難であり得る。部品の製造を継続するのに法外に費用がかかるようになったとき、部品交換の可用性は、典型的には、既存の在庫に限られるようになる。
【0006】
要求に応じて個別にパターンおよび鋳型を作製するために、付加製造技法が使用され得、以て、長期にわたってパターンおよび鋳型を保管する負担が軽減または排除される。
【0007】
従来の鋳型に基づく鋳造には、他の欠点がある。大きいかまたは複雑な鋳造は、複数の注入カップ、湯道、押し湯、および拡張部を有する鋳型を必要とすることが多く、これは、余分な鋳型体積の相当な割合を占める。多くの場合は、これは、鋳造に必要とされる溶融金属の量を50%程度増大させる可能性がある。余分な金属は、通常、再溶融および再使用することができるが、余分な金属を溶融するのに消費されるエネルギーは無駄になる。従来の鋳造の別の欠点は、特に大きいまたは複雑な部品は、常に単一片で鋳造することができるとは限らず、以て、より小さい部品を鋳造後にともに溶接および/またはボルト留めする必要があることである。
【0008】
従来の鋳造のさらなる欠点は、大量の溶融金属を取り扱い、操作する過程に固有の産業安全上の危険、関連する高温、および、その過程に典型的に付随する有毒ガスに関連する。製造人員に対する差し迫った安全上の危険とともに、汚染および他の有害な環境への影響の問題も存在し、これらはすべて、広範囲に広がり、長期に及ぶ結果をもたらし得る。
【0009】
これらの考慮事項は、直接付加的金属鋳造のための様々な技法の開発を動機付けしてきた。付加的金属鋳造は、前述したような、パターンおよび鋳型と関連付けられる問題および制約を緩和する可能性を有し、溶融金属を、収容された局所環境内でより容易に管理される量および範囲に限定して、安全性を向上させ、環境上の危険の影響を最小限に抑える見込みがある。
【0010】
付加的金属鋳造は、従来の鋳造の鋳型およびパターンに関連する問題を解決することができる可能性があるが、それ自体の制約および制限を導入する。生産フローに関して、現行の付加的金属鋳造技法は、典型的には、スループットが制限されており、より大きい部品サイズおよび質量にスケーリングすることが困難であることが証明されている。
【0011】
付加的金属鋳造過程は、一般的に、相対的に少量の金属を既存の進行中の鋳造物に繰り返し付加することによって動作する。進行中の鋳造物は、予め選択された金属から形成され、金属固体状態にある、前から存在する表面を有する少なくとも1つの領域を有し、そこに、さらなる量の金属が増分的に付加される。金属は溶融状態で付加され、その後、急速に凝固する。この手順は、進行中の鋳造物が金属の所定のサイズ、形状、および質量に達し、したがって、必要に応じて表面仕上げ手順の準備ができている完成した鋳造物になるまで、反復的に実施される。
【0012】
付加製造システムは、Merz他による論文“Shape Deposition Manufacturing”(L.E.Weiss,R.Merz,F.B.Prinz,G.Neplotnik,P.Padmanabhan,L.Schultz,K.Ramaswami,“Shape deposition manufacturing of heterogeneous structures”Journal of Manufacturing Systems,16巻,4号,1997,239-248頁,ISSN 0278-6125,https://doi.org/10.1016/S0278-6125(97)89095-4,https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278612597890954)にさらに記載されている。
【0013】
液滴の過熱および基板温度を制御することによる従来の過加熱(または過熱)技法において、衝突する液滴が下にある材料を表面的に再溶融するような条件を達成することができる。溶融液滴と犠牲支持構造内に埋め込まれた基板粒子との間の温度勾配は、犠牲支持構造の溶融を防止するために一定レベルまで基板温度を増大させることによる溶融液滴堆積中に、最小限に抑えられる。しかしながら、熱および応力緩和は解決されない。
【0014】
金属を高温に暴露する有害な結果の1つは酸化であり、付加的鋳造は、金属が溶融状態にあるときに大きい表面積に累積するという理由で、酸化に対して特に脆弱である。付加的鋳造は、好ましくは、無酸素環境内で行われるべきである。酸化問題が解決される場合であっても、下記に論じるような追加の金属学的因子が残る。
【0015】
物体を付加的に鋳造するときに所望のサイズ、形状、寸法、および仕上げを達成するために相当の注意が払われても、付加的鋳造過程自体の金属学的一貫性および品質に向けられる注意が十分でなければ、付加的に鋳造された金属部品は、高い引張強度および応力耐性を要求する用途には最適化されないという結果になる。
【0016】
結果として、付加的金属製造の潜在的な利点にもかかわらず、高コスト、低スループット、スケーリングの困難さ、および金属学的課題が、幅広い産業使用、特に高性能金属構成要素の製造のために付加的技法を採用する妨げとなる。
【0017】
したがって、低減されたコスト、増大したスループット、ならびに高い金属学的品質および一貫性で大量製造を容易にする付加的金属鋳造方法および装置が必要とされている。これらの目標は、本発明の実施形態によって満たされる。
【発明の概要】
【0018】
本発明の実施形態は、型穴が堆積された溶融金属によって充填される組立鋳型領域によって画定される、順次接合された生成層の反復的処理に基づく金属の付加的鋳造のための方法、装置、およびシステムを提供し、従来の鋳造のように、型穴の内壁が、物体領域の形状、したがって、鋳造物体の形状を規定する。
【0019】
本発明の一態様によれば、鋳型領域および鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、最上生成層まで、1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造方法であって、現在の生成層の物体領域を生成する前に現在の生成層の鋳型領域を構成することと、堆積経路にわたって溶融金属堆積装置を動かし、構築計画に従って、現在の生成層の物体領域において複数の作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積することと、堆積経路にわたって1つまたは複数の加熱器を動かし、複数の作業エリアを加熱することとを含み、複数の作業エリアを加熱することは、(1)溶融金属の複数の作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、複数の作業エリア上に金属を堆積する前に、複数の作業エリアを堆積前目標物温度まで加熱すること、および(2)複数の作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、複数の作業エリア上に金属を堆積した後に、複数の作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することのうちの少なくとも一方を含み、複数の作業エリアを加熱することは、現在の生成層を通じた熱伝導によって、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することをさらに含む、方法が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することは、最上生成層を生成した後に、最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することは、1つまたは複数の連続したアニーリング加熱サイクルにわたって、最上生成層の複数の作業エリアにわたって1つまたは複数の加熱器を動かすことを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、連続したアニーリング加熱サイクルの各々の後に、最上生成層の上方で1つまたは複数の加熱器の高さを変更することをさらに含む。
【0023】
堆積前目標物温度は、金属性物体の溶融温度以上であってもよい。堆積前目標物温度は、所定の温度差以下だけ、所定の堆積温度と異なってもよい。
【0024】
ベース層の上方の各現在の生成層において、鋳型領域は、先行する生成層とともに、少なくとも1つの穴を構成することができ、溶融金属は、穴の中に堆積される。
【0025】
本発明の一態様によれば、鋳型領域および鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、最上生成層まで、可動ビルドテーブル上で1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造システムであって、現在の生成層の鋳型領域を構成するように動作可能な可動鋳型構成装置と、現在の生成層の物体領域において複数の作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積するように動作可能な可動溶融金属堆積装置と、複数の作業エリアを加熱するように動作可能な少なくとも1つの加熱器と、可動ビルドテーブル、可動鋳型構成装置、可動溶融金属堆積装置および1つまたは複数の加熱器に結合されている少なくとも1つの運動ユニットと、所定の構築計画に従って金属物体を生成するように、少なくともビルドテーブル、鋳型構成装置、溶融金属堆積装置、少なくとも1つの加熱器および少なくとも1つの運動ユニットを反復的に制御するように動作可能なコントローラとを備え、複数の作業エリアを加熱することは、(1)溶融金属の作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、作業エリア上に金属を堆積する前に、作業エリアを堆積前目標物温度まで加熱すること、および(2)作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、作業エリア上に金属を堆積した後に、作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することのうちの少なくとも一方を含み、作業エリアを加熱することは、現在の生成層を通じた熱伝導によって、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することをさらに含む、鋳造システムが提供される。
【0026】
コントローラは、最上生成層を生成した後に、最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供するように動作可能とすることができる。コントローラは、最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供するために、1つまたは複数の連続したアニーリング加熱サイクルにわたって、最上生成層の作業エリアにわたって1つまたは複数の加熱器を動かすように動作可能とすることができる。コントローラは、連続したアニーリング加熱サイクルの各々の後に、最上生成層の上方で1つまたは複数の加熱器の高さを変更するように動作可能とすることができる。コントローラは、堆積温度と堆積前温度との間の差を、所定の温度差よりも小さく維持するようにさらに動作可能とすることができる。
【0027】
鋳造システムは、コントローラに通信可能に接続されている作業エリア温度センサをさらに備えることができる。作業エリア温度センサは、高温計、およびサーマルカメラから成る群から選択される。
【0028】
堆積前目標物温度は、溶融温度であってもよく、加熱器は、金属堆積の前に作業エリア内に溶融金属の溶融プールを作成するように動作可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1aは、本発明の実施形態による付加的金属鋳造方法を示す図である。
図1b-
図1eは、従来技術の付加的鋳造金属製品内に金属学的非一貫性および脆弱性をもたらす、従来技術の付加的金属鋳造技法の欠点を概念的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の特定の実施形態による、付加的金属鋳造の特徴および態様を概念的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明のさらなる実施形態による、付加的鋳造のさらなる特徴および態様を概念的に示す図である。
【
図4】
図4a及び
図4bは、本発明の関連する実施形態による、付加的金属堆積を概念的に示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による付加的金属鋳造のための方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による付加的鋳造のためのシステムの機能ユニットおよび機能的処理組織化のブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の様々な実施形態による、付加的金属鋳造のための包含されるシステムの生産現場見取り図を概念的に示す図である。
【
図8】
図8a-
図8fは、本発明の一実施形態に従って作製される鋳造物体のクーポンに対して行われる金属学的評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の詳細な説明において、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明はこれらの具体的な詳細なしに実施されることができることは当業者には理解されよう。他の例において、本発明を不明瞭にしないように、既知の方法、手順および構成要素は説明されていない。
【0031】
本発明の一態様によれば、鋳型領域および鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって付加的に物体を鋳造するための金属堆積方法およびそのシステムが提供される。
【0032】
図1aは、本発明の実施形態による付加的金属鋳造方法10を示す。
図1b~
図1eは、
図1aに示す方法によって解決される、従来技術の付加的鋳造金属製品内に金属学的非一貫性および脆弱性をもたらす、従来技術の付加的金属鋳造技法の欠点を概念的に示す。
【0033】
方法10に従った付加的金属鋳造は、構築計画100に基づいて、1つの生成層を別の生成層の上にして垂直に積み重ねられた生成層のセットを反復的に作製すること(動作110)によって行われ、生成層のセットは、最後の生成層が完成すると、鋳型除去(動作120)の前の、その鋳型の内部の鋳造物体全体を形成する。生成層の作製は、ビルドテーブル上でベース層(i=0)を作製すること(動作1102)によって開始することができる。連続した生成層i(i=l,...N)は、鋳型領域が完成した後に溶融金属がその中に堆積される(動作1108)少なくとも1つの鋳型領域穴を有する所定の鋳型領域(動作1106において現場内でまたは現場外で作製される)を有する。
【0034】
生成層の物体領域は、動作1108において作製される。堆積前に、溶融金属に熱が与えられる。熱は、任意選択的に、現在の生成層の物体領域を堆積する前に、以前に生成された層の物体領域に与えられる(堆積前加熱または事前加熱(動作1110))。任意選択的に、熱は、現在の生成層の物体領域が堆積された後に、現在の生成層の物体領域に与えられる(堆積後加熱または事後加熱(動作1112))。
【0035】
様々な生成層の物体領域に与えられる熱は、以下の影響を達成することを目標とする。
【0036】
(1)これから堆積される溶融金属と以前に堆積された溶融金属との間の接合を改善すること。本発明のいくつかの実施形態では、接合改善は、堆積前加熱に基づいて実現される。
【0037】
(2)付加的堆積の前、最中、および後に局所的熱サイクリングプロファイルを制御することによって、粒状微細構造レベルで金属学的一貫性および等方性に影響を及ぼすこと。いくつかの実施形態では、金属学的一貫性および等方性に影響を及ぼすことは、堆積後加熱に基づいて実現される。
【0038】
(3)以前に堆積された溶融金属をアニーリングすること。
【0039】
アニーリングは、同時アニーリングおよび上部アニーリングとして実現される(動作1114)。同時アニーリングは、堆積された溶融金属によって前の生成層に与えられる熱を利用すること、ならびに、堆積前加熱および堆積後加熱のいずれかまたは両方を伴う。上部アニーリング(動作1114)は、鋳型生成動作および金属堆積動作なしに、1つまたは複数の加熱サイクルにおいて最上生成層に熱を与えることを伴う。いくつかの実施形態において、同時アニーリングと上部アニーリングの両方が制御可能である。
【0040】
したがって、付加的鋳造過程の各層生成反復は、2つの主な動作、すなわち、まず、現在の生成層の鋳型領域を作製すること(動作1106)、および、次いで、現在の生成層と関連付けられる鋳型領域穴に溶融金属を堆積すること(動作1108)を含む。次いで、各層生成反復の後、最上(または最終)生成層が完成するまで、次の生成層が付加的に生成される連続した反復が行われる。その度に、現在の生成層の堆積された溶融金属が凝固したときに、連続した生成層の鋳型領域が作製され、次いで、現在の生成層の上に溶融金属が堆積される。
【0041】
いくつかの実施形態において、3回、5回、10回、20回、30回、40回、およびそれを超える層生成反復が実施される。いくつかの実施形態において、層高さは、2ミリメートル~12、15、または20ミリメートルに及んでもよい。したがって、先行する層は、同時アニーリングを受ける。すべての層生成反復が完了すると、1回または複数回の上部アニーリング反復が実施される。
【0042】
主な鋳型作製動作は、鋳型領域硬化および鋳型内壁仕上げなどの追加の動作を含んでもよい。
【0043】
主な鋳型作製動作は、堆積前加熱および堆積後加熱などの追加の動作を含んでもよい。
【0044】
1つの生成層が完成した後で、かつ、次の生成層の作製を開始する前に、生成層表面処理などの、追加の動作が実施されてもよい。
【0045】
反復的に付加された生成層は、ともに緊密に適合し、結果、鋳型領域は、鋳造物体の周りの連続的なおよび/または密接した鋳型を形成する。鋳型領域は、鋳型インサートおよび鋳型支持構造をさらに含んでもよい。第1の生成層またはベース層は、物体領域なしで生成され得る。本明細書に詳細に記載されているように、本発明による付加的過程は、鋳造金属の連続して堆積される物体領域が、金属学的にともに接合され、継目なしに単一の金属学的に均質な物体に一体化されることを保証する。
【0046】
本明細書における「生成層」という用語は、本発明による造形される生成物の付加的鋳造の過程の一部としての、反復的に作製される層を示す。生成層は、典型的には溶融金属が中に堆積される少なくとも1つの鋳型領域穴を有する鋳型領域と、各鋳型領域穴に対応する物体堆積領域とを組み込んでおり、物体堆積領域は、鋳型領域によって画定され、溶融金属を鋳型領域穴の中に堆積した後に存在する。第1の(最低)生成層は、本明細書においては「ベース生成層」(または単純に「ベース層」)として示されており、最終(最高)生成層は、本明細書においては「最上生成層」(または単純に「最上層」)として示されている。
【0047】
「鋳型作製」、「鋳型領域を作製すること」などの用語は、以下の任意の組み合わせを示す。
【0048】
鋳型領域を構成すること(その後、硬化するかまたは構成過程によって硬化される鋳型材料の堆積、および/または、鋳型領域の以前に作成された硬化構成部分を組み立てることなどによって)、および
【0049】
任意選択的に、フライス加工、研削、平滑化、研磨などによって、鋳型領域の型穴の1つまたは複数の内面を仕上げること。
【0050】
「生成層作製」、「層作製」、「生成層を作製すること」などの用語は、以下の組み合わせを示す。(1)以前に生成された層と組み合わせて型穴を構成する鋳型領域を作製すること、(2)任意選択的に、例えば、フライス加工、研削、平滑化、研磨などによって、型穴の内壁を仕上げること、(3)物体堆積領域を生成するために鋳型領域の鋳型領域穴内に溶融金属を堆積すること、ならびに、(4)任意選択的に、例えば、フライス加工、研削、平滑化、研磨などによって、鋳型領域と物体領域の両方を含む、生成層の上面を仕上げ、および/または、水平化すること。
【0051】
「堆積すること」という用語は、堆積の速度を限定することなく、その一般的な意味において使用される。したがって、「堆積すること」という用語は、溶融金属液滴の配置および溶融金属の流れをカバーする。型穴内の溶融金属の堆積は、溶融金属を注ぐことによって型穴を充填し、生成層の鋳型領域内で物体領域を鋳造することとして等しく参照することができる。
【0052】
型穴の内面(壁)の任意選択の仕上げは、型穴内の金属の堆積の前に行われ、一方、生成層の上面の任意選択の仕上げおよび/または水平化は金属の堆積後に行われることに留意されたい。すなわち、型穴の内面の仕上げは、生成層の作製中、鋳型領域作製後、および、溶融金属堆積に実施される。しかしながら、生成層の上面の仕上げおよび/または水平化は、2つの連続した生成層の作製動作の間に行われる。
【0053】
いくつかの実施形態において、数回の溶融金属堆積反復は、特定の生成層の物体領域が完成する前に実施される。
【0054】
いくつかの実施形態において、数回の鋳型作製反復は、特定の生成層の鋳型領域が完成する前に実施される。
【0055】
いくつかの実施形態において、物体領域の作製(動作1110および1112のいずれかまたは両方を伴う動作1108)が、物体領域を構成する複数の作業エリアに対して実行される複数回の堆積および加熱反復として、付加的に実施される。
【0056】
構築計画100は、少なくとも、溶融金属堆積温度1002、溶融金属堆積速度1004、目標物堆積前温度1006、目標物堆積後温度1008および上部アニーリング距離、アニーリングサイクル繰り返しの回数M、ならびにアニーリング温度1010に関係するデータ値を含む。
【0057】
鋳型除去後、完全アニーリング熱処理、最終機械加工、および検査などの、当該技術分野において知られているような、追加の鋳造処理動作が実行されてもよい。
【0058】
従来技術にまさる改善
本発明の実施形態によって提供されるような金属層の事前加熱および事後加熱は、付加的堆積の前、最中、および後に局所的熱サイクリングプロファイルを制御することによって、粒状微細構造レベルで金属学的一貫性および等方性を確保する。さらに、本発明の実施形態によって提供されるような様々な層内の金属物体領域の事前加熱および事後加熱は、堆積された溶融金属のアニーリングを保証する。いくつかの実施形態において、鋳造物(物体)に専用のアニーリング過程を提供する必要性を除去して完全なアニーリングを達成することができ、以て、全体的な鋳造持続時間が短縮される。
【0059】
本発明の実施形態は、従来技術の付加的金属作製技法に付随する金属学的非一貫性および不連続性を克服するだけでなく、鋳造物の機能的要件に従って、鋳造物体の金属学的特性の点ごとの望ましい変更のために局所的熱プロファイルおよびアニーリングを制御する能力も提供する。
【0060】
非限定的な例において、鋳造物のすべての区画が、鋳型に対するそれらの位置付けとは無関係に、生成を受けた同様の熱処理を受ける。本発明の実施形態は、再現可能で制御可能な接合、熱サイクリングプロファイルおよびアニーリングを提供し、構造的均質性を保証する。
【0061】
別の非限定的な例において、鋳造物体の1つの区画は、最適化された硬さを必要とし、一方、別の区画は、最適化された延性を必要とする。本発明の実施形態は、物体の異なる区画において異なる特性を達成するための局所化された制御可能な熱処理を提供する。
【0062】
本発明の実施形態はまた、付加的鋳造過程のスループットを増大させるために、高い金属堆積速度も提供する。加えて、本発明の実施形態は、酸化に対抗し、安全性を増大し、有害物質および留出物に対する暴露を防止するために、生産設備のための封じ込められた環境を提供する。
【0063】
図1b~
図1e。
図1bは、金属を増分的に付加する前で、固体表面103aを有する状態および延在範囲にある金属の固体バルク体102aを有する、初期状態100aにある進行中の鋳造物の従来技術の作業エリア101を概念的に示す。
【0064】
図1cは、所定の少付加量104a(本明細書においては「少付加量」として示す)の、溶融または液体状態にある金属を作業エリア101上に選択的に堆積することによって、複数量の金属を増分的に付加した後の、進行中の鋳造物の従来技術の結果状態100bを概念的に示す。溶融金属104aの熱が、前から存在する固体表面103a(
図1b)の温度を上昇させ、前から存在する表面を部分的に溶融した局所境界103bに変換し、結果、この時点で、バルク体はわずかに変更された延在範囲102bにある。
【0065】
溶融金属104aと固体本体102bとの間の部分的に溶融した局所境界103bは、前から存在する固体表面103a(
図1b)のものと実質的に同じ形状を有する。多くの事例において、固体表面103aは、水平表面(
図1bに示すように)であるが、この例は非限定的であり、他の形状および向きが可能である。
【0066】
固体本体102bは、局所境界103bおよび溶融金属104aから熱を取り出すためのヒートシンクを提供し、局所境界103bおよび溶融金属104aから熱が除去されると、それらのそれぞれの温度が低減し、最終的に、溶融金属104aと局所境界103bの両方が完全に凝固させられる。
図1dは、完全に凝固した局所境界103cおよび付加された金属の凝固した層104bを有する、凝固後の結果状態100cを示す。追加の処理を適用することなく、局所境界103cは、元の凝固した金属から金属学的に区別される状態にある熱影響部(HAZ)と考えることができる。
【0067】
図1eは、従来技術の過加熱付加的金属鋳造によって生成される鋳造物体の異方性を示す。液滴の過熱および基板温度を制御することによって、衝突する液滴が下にある材料を表面的に再溶融するような条件を達成することができる。溶融液滴と犠牲支持構造内に埋め込まれた基板粒子との間の温度勾配は、犠牲支持構造の溶融を防止するために一定レベルまで基板温度を増大させることによる溶融液滴堆積中に、最小限に抑えられる。しかしながら、熱および応力緩和は解決されない。
【0068】
図1eは、従来技術の増分的付加ステップの後に採取される、領域状態100dから採取された従来技術の金属学的試料(一般に「クーポン」として知られる)113の側面図を示す。クーポン113は、垂直に、すなわち、z方向122に沿って採取される。クーポン113の平面
図114は、2つの異なるゾーン、すなわち、(1)状態102a(
図1b)にある金属の通常通り鋳造された本体に対応する、第1の微細構造を有するゾーン125、および(2)熱影響部境界103c(
図1d)と関連付けられる、第2の微細構造を有するゾーン126の繰り返される層として表される、不均一な微細構造を示す。
【0069】
要約すると、クーポン113は、従来技術の付加的金属鋳造過程の層の上に層を堆積する手順によって生じるバイモーダル微細構造を明らかにする。
【0070】
示されている異方性は、完成した製品に鋳造欠陥を導入するため、従来技術の付加的金属鋳造過程の深刻な欠点である。そのような欠陥は、鋳造物体の材料強度、構造的完全性、および他の機械的特性に悪影響を及ぼし、したがって、従来技術の付加的金属鋳造過程によって製造される製品の品質および信頼性を減じる。
【0071】
本発明の実施形態は、
図1a、
図2~
図7を参照して本明細書に説明されており、
図8a~
図8fにおいて、本発明の一実施形態に従って作製される鋳造物体のクーポンに対して行われる金属学的評価の結果によって例示されているように、異方性欠点を克服する。
【0072】
連続生成層のレイアウトおよび作製
図2は、本発明の特定の実施形態に従って付加的に鋳造されたその鋳型の内部の(鋳型除去前の)鋳造金属物体200の特徴および態様を概念的に示す断面図である。この非限定的な例において、物体200は、鋳型インサート211の存在によって形成される中空内部特徴を有するバルブ本体である。鋳型インサート211の鋳型領域は、下記に説明するように、他の鋳型領域と同じように形成される。
【0073】
図2は9つの別個の物体区画202を示しているが、これらはすべてともに接続されて、単一の物体である物体200を形成することに留意されたい。
図2は、その鋳型内部の物体200の二次元断面であり、9つの別個の物体区画の間の接続は、
図2には見られない三次元特徴である。
【0074】
本明細書における「鋳型材料」という用語は、硬化されると溶融金属を中属するのに適する、鋳型に成形することができる物質または物質の混合物を示す。鋳型材料の非限定的な例は、セラミックおよび砂を含む。
【0075】
本明細書における「物体領域」という用語は、付加的鋳造過程中に生成層の鋳型領域またはその任意の部分に鋳込まれている、生成層内の金属の領域を示す。本明細書における「物体材料」という用語は、鋳造前の生の形態にあるか、鋳造中の溶融形態にあるか、または、鋳造後の凝固形態にあるかを問わず、溶融され、鋳造に使用され金属を示す。
【0076】
本明細書における「金属」という用語は、溶融および鋳造に適した任意の金属元素または金属合金を示し、その非限定的な例は、鉄合金、アルミニウム合金、銅合金、ニッケル合金、マグネシウム合金などを含む。本発明に関して特に対象となる金属の非限定的な例は、ねずみ鋳鉄、ダクタイル鉄、および鋼を含む。対照的に、従来技術の付加的金属鋳造は、典型的には、アルミニウム合金に制約され、典型的には、鉄および鋼を除外する。本発明の実施形態は、ねずみ鋳鉄、ダクタイル鉄、および鋼の付加的金属鋳造の低コストおよび高スループット率に対する必要性に応答する。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、物体200は、水平ビルドテーブル216上で一連の連続した生成層201内で鋳造される。本発明の実施形態によれば、複数の連続した生成層201が、垂直に積み重なって反復的に作製される。本発明のいくつかの実施形態において、1つまたは複数の底層(または「ベース層」)2010は、完全に鋳型材料専用であり、上方の生成層の1つまたは複数の型穴の下側表面のみを形成する。これらの実施形態において、上方の生成層の鋳型領域が作製された後まで、金属は堆積されない。そのようなベース層2010を除いて、生成層201i(i=1,...N)は、物体領域204を作製するために溶融金属を受け入れるための1つまたは複数の型穴を画定する1つまたは複数の鋳型領域221i(i=1,...N)を含む。生成層201は、層iの少なくとも1つの鋳型領域221iが、(ベース層の上方の生成層の)下方の層(i-1)内の少なくとも1つの鋳型領域と緊密に接触し、接着したままであり、また、(最上層の下方の生成層の)上方の層(i+1)内の少なくとも1つの鋳型領域と緊密に接触し、接着したままであるように、連続して作成される。
【0078】
図2において、生成層201の鋳型領域221は、それらの間の共通の表面を表す点線によって示されている。これは、生成層の鋳型領域が異なる生成サイクルにおいて作製されており、互いに緊密に接触して接着していることを示すためのものである。図解を明確かつ単純にするために、後続の図において、異なる生成層の鋳型領域の間の境界は、単純に実線として示されている。
【0079】
溶融金属は、生成層の反復的作製の経過の間に別個の動作において堆積されるが、本発明は、生成層に対応する一切の認識できる境界なしに、その微視的粒状構造において金属学的に均質かつ等方性である完成した鋳造金属物体の生成を保証するための新規の製造動作を提供することを強調することが重要である。実際には、「生成層」は、本発明の反復的過程のみの特徴であり、その完成した鋳造金属製品の特徴ではない。
【0080】
いくつかの実施形態において、生成層は、典型的には、約2ミリメートル~12、15および20ミリメートルの厚さに及ぶ。(添付の図面では、生成層の厚さは必ずしも原寸に比例せず、図解を明確にするために誇張されている場合がある。)
【0081】
本発明の実施形態によれば、連続した生成層201およびそれらの構成要素領域(鋳型領域221、物体領域204)の作成は、所定の構築計画に従って行われる。構築計画は、少なくとも、種々の生成層および構成要素領域ならびに包含される材料の幾何学的レイアウト、実施される動作過程、作成に使用されるパラメータ(限定ではないが、持続時間、温度、堆積速度、および特徴の位置を含む)、ならびに、本発明による付加的鋳造過程中に必要または有用になる任意の他の関連する情報およびデータを指定する。
【0082】
図2において、各生成層201は、鋳型領域(最上生成層201
Nに対して示されている鋳型領域221
Nなど)を作成することによって開始されている。関連する実施形態において、鋳型領域221
i(n=i,...N)は、形成可能な鋳型マテリアルから現場で作製されており、鋳型材料は、その後、生成層を開始するために硬化されている。別の関連する実施形態において、予め作成された硬化鋳型領域221
i(i=1,...N)が、生成層を開始するために適所に配置されるかまたは組み立てられている。
【0083】
図2に示す事例において、生成層201
iの1つまたは複数の鋳型領域を作製した後、その特定の生成層201
iの鋳型領域221
iによって画定される鋳型領域穴202
i内に溶融金属を堆積することによって、物体領域204iが作製されている。
【0084】
物体領域204iは、現在の層iの上に後続の生成層i+1を付加的に作製する前に、現在の生成層i内で冷却および/または凝固することを可能にされている。生成層の鋳型領域を作製し、次いで、型穴内に溶融金属を堆積し、次いで、金属が凝固することを可能にすることである、この増分的付加過程は、金属物体200全体の鋳造を完了するのに必要とされるような多くの回数Nだけ反復されている。いくつかの実施形態において、生成層の数Nは、3~20、30、40、50およびより多くに及んでもよい。
【0085】
生成層の鋳型領域は、典型的には、型穴の内壁を画定する。関連する実施形態において、型穴の下側表面は、鋳型部分と金属部分の両方を含み得る、下にある前の生成層によって画定される。別の関連する実施形態において、型穴の下側表面の少なくとも一部分は、現在の生成層の鋳型領域によって画定される。
【0086】
鋳型領域221は、鋳造過程の溶融金属と関連付けられる高温に耐えることが可能である。加えて、本発明の様々な実施形態によれば、型穴を画定する鋳型領域の表面(型穴の内壁)は、鋳造物体の精密に成形され、仕上げられた表面を提供するように成形および処理される。
図2の区画203は、物体200のそのような表面を強調している。区画203は、鋳造されたバルブ本体の内側作業面の精密で平滑な球面を提供するように成形および処理されている。関連する実施形態において、型穴表面の成形および処理の少なくとも一部は、鋳型領域が硬化される前に実施され、別の関連する実施形態において、型穴表面の成形および処理の少なくとも一部は、フライス加工、研削、および/または研磨などによって、鋳型領域が硬化された後に実施される。
【0087】
いくつかの実施形態において、鋳型領域221は、例えば、鋳型材料を堆積することによって、現場で作製される。いくつかの実施形態において、過剰な鋳型材料が堆積され、形が崩れた鋳型構造がもたらされる(例えば、鋳型材料の粘度に起因して)。過剰な鋳型材料はその後、除去され、穴の内壁がさらに処理および平滑化される。物体領域204の外面は、対応する鋳型領域221の側面(内壁)の形状および表面平滑性によって成形されることに留意されたい。
【0088】
例えば、型穴の内壁(上述したような)などの、鋳型領域の側面の精密な成形、処理、および仕上げは、
図2のみに示されている。他の図面では、単純かつ明瞭にするために、また、生成層形成の境界を明確に示すために、他の図面内の型穴の側面は、単純に垂直として表されている。
【0089】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、本発明のいくつかの実施形態によれば、生成層i(鋳型領域221iおよび凝固した物体領域204iを含むが作製された後、次の生成層i+1を作製する前に、生成層iの上側表面が処理され、仕上げられる。生成層の上側表面の処理および仕上げは、層が水平になり、適切な厚さを有すること、過剰な鋳型および/または凝固金属が除去されること、ならびに、層の上側表面が平滑で平らになることを保証する。処理および仕上げは、限定ではないが、物理的および化学的手段によるフライス加工、研削、および/または研磨などの過程を含む。
【0090】
鋳型および物体領域の処理および仕上げが、残留物を生成する切除過程(切断、フライス加工、研削、研磨、レーザトリミングなどのような)によって実施される事例において、望ましくない残留物は、後続の動作(溶融金属の堆積、次の生成層の作製など)の前に除去される。除去方法は、真空洗浄動作、加圧ガス吹き付け(例えば、不活性ガスを使用した)などを含むことができる。
【0091】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、本発明のいくつかの実施形態によれば、1つの生成層の処理を完了した後で、かつ、次の生成層の作製に移る前に、高さ調整が提供される。例えば、ビルドテーブル216が、生成層の高さに対応する増分的距離だけ下げられてもよい。
【0092】
図2は、依然として鋳型領域201の内部にある鋳造物体200の断面を示す。物体200の付加製造の過程を完了するために、鋳型領域221
iから構成される鋳型構造221が除去される。いくつかの実施形態において、鋳型領域201の少なくとも一部分は機械的に除去され、いくつかの実施形態において、鋳型領域201の少なくとも一部分は、溶解および/または化学的手段などの、他の手段によって除去される。本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、本発明のいくつかの実施形態によれば、物体200は、鋳型除去後にさらに処理され、仕上げられる。
【0093】
物体200の作製は、複数の作製層を生成することによって、付加的に実行される。本発明の付加的性質は、各生成層の作製の一部として実行される反復的かつ任意選択的に付加的な動作を包含する。いくつかの実施形態において、数回の鋳型作製反復が、特定の生成層の鋳型領域を作製するために必要とされる。いくつかの実施形態において、数回の金属堆積反復が、特定の生成層の物体領域を作製するために必要とされる。
【0094】
いくつかの実施形態において、鋳型領域作製の主な動作は、鋳型作製システムをビルドテーブル216の上で進行させ、鋳型材料を付加的に分配して鋳型領域221
iを形成することによって、複数のロケーション(
図2には示されていない)上で、生成層i内で反復的に実行される。いくつかの実施形態において、追加の鋳型作製動作(例えば、鋳型硬化、鋳型表面処理)が、ロケーションごとに反復的に実行される。いくつかの実施形態において、追加の鋳型作成動作(例えば、鋳型硬化、鋳型表面処理)が、層の鋳型領域全体にわたって実施される。
【0095】
いくつかの実施形態において、物体領域作製の主な動作は、溶融金属堆積システムをビルドテーブル216の上で進行させ、溶融金属を付加的に堆積して(注いで)物体領域204
iを形成することによって、複数の作業エリア(
図2には示されていない)上で、作業エリアごとに、生成層i内で繰り返し、反復的に実行される。いくつかの実施形態において、追加の物体作製動作(例えば、堆積前加熱、堆積後加熱)のうちの1つまたは複数が作業エリアごとに反復的に実行される。いくつかの実施形態において、追加の物体作製動作(例えば、堆積前加熱、堆積後加熱)は、層の物体領域全体にわたって実施される。
【0096】
金属学的処理
本発明の様々な実施形態による付加的鋳造過程はまた、溶融金属の堆積の前、最中、および後の特定の熱処理および熱サイクリング動作も含む。本発明の実施形態による付加的鋳造のための装置は、特定の熱処理動作を実行するための適切な加熱器およびコントローラを含む。これらの実施形態およびそれらの特徴は、従来技術の付加的金属鋳造技法の前述した欠点を克服するだけでなく、先進的な金属学的製造機能も提供する特別な改善を提供し、下記に詳細に開示されている。本発明の実施形態の方法および装置は、付加的金属層形成の痕跡を呈しない造形金属物体を提供する。代わりに、本発明の実施形態は、均質な、等方性の、かつ完全に制御された金属学的および機械的特性を有するアニーリングされた金属物体を提供する。
【0097】
図3は、本発明の特定の実施形態に従ってビルドテーブル316上で付加的に鋳造されている過程にあるその鋳型の内部の金属物体300の特徴および態様を概念的に示す断面図である。物体300は、一般的または比特異的な鋳造物体として単純化されており、前述したように、
図3において、生成層321の鋳型領域は、単純な垂直側面を有して図解されており、誇張された厚さを有し得る。
【0098】
図3において、生成層321dは、製造過程にあるが、鋳型インサートとしての役割を果たす鋳型領域311を含み、以て型穴312を有する鋳型領域324のみがこれまでに作製されている。この点において、生成層321dは、「現在の生成層」(または単純に「現在の層」)として示されており、直下にある層321cは、「前の生成層」(または単純に「前の層」)として示されている。ベース生成層321aが、ビルドテーブル316上で最初に作製されており、次いで、生成層321bが付加されている。簡便にするために、ベース層と前の層との間の生成層は、「先行する生成層」(または単純に「先行する層」)として示されている。
【0099】
関連する実施形態によれば、ビルドテーブル316と、物体300の作製に使用される生成システムの要素(
図3には示されていない)との間に相対的な動きが提供される。例えば、相対的な動きは、電子コントローラ(
図3には示されていない)からのコマンド上で提供され、座標系360に対して左右に(x方向361において)、前後に(y方向において)、上下に(z方向363において)ならびに時計回りおよび反時計回り365に回転して実現することができる。
【0100】
様々な作成動作は、相対的な動きを伴い得る。いくつかの実施形態において、ビルドテーブル316は、生成層が完成した後にz方向363に沿って動かすことができる。生成層内で、複数の作業エリアにわたって進行することによって物体領域および任意選択的に鋳型領域を作製することを伴ういくつかの実施形態において、相対的な動きは、ビルドテーブル316上で、x方向361、y方向、および回転365に沿って提供される。
【0101】
図3において、型穴312の下側表面313が示されている。下側表面313は、前の層321cの上側表面の一部分であることが見てとれる。下側表面313の一部は、前の層321cの鋳型領域の上側表面であり、下側表面313の一部は、前の層321cの物体領域の上側表面である。
【0102】
いくつかの事例において、生成層iの鋳型領域は、前の生成層i-1の鋳型領域を被覆する。いくつかの事例において、生成層iの鋳型領域の一部または全部が、前の生成層i-1の物体領域を被覆する(「物体上の鋳型(mold over object)」)。いくつかの事例において、生成層iの物体領域の一部または全部が、前の生成層i-1の鋳型領域の一部または全部を被覆する(「鋳型上の物体(object over mold)」)。
【0103】
本発明の一実施形態に従って依然として付加的に鋳造されている物体300に関して、この実施形態ではベース層321aは注がれた溶融金属をビルドテーブル316から分離する役割を果たすため、物体300の物体領域のいずれの部分もベース層321a内にはないことに留意されたい。
【0104】
説明を容易にするために、前の層321cおよび先行する層321bに対して実行される動作は、
図3において、前の生成層321cの下側表面に対応する例示的な下側表面332を有する例示的な前の物体領域331を示すことによって図解されている。実際には、本発明のいくつかの実施形態において、本発明の実施形態による付加的鋳造過程は、実行されており、堆積された溶融金属を先行する金属領域と完璧に接合している局所加熱および熱サイクリング動作を提供するため、先行する物体領域333内に識別可能な生成層境界は存在しない。いくつかの実施形態において、付加的鋳造過程は、実行されており、均質かつ等方性になるように先行する物体領域を完全に(または部分的に)アニーリングしている局所加熱および熱サイクリング動作を提供し、結果、先行する生成層321bに対応する金属学的境界は残らない。実際には、アニーリングは、いくつかの連続的な熱サイクルの後に達成され得、様々な生成層間の金属学的差は
図3には示されていない。上述した特定の局所加熱熱サイクリング動作は、下記に詳細に開示されている。
【0105】
説明を単純にするために、生成層の鋳型領域324は、それらの別個の同一性を維持するものとして示されているが、これは必ずしもそうであるとは限らない。
【0106】
目標物堆積前加熱
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、本発明のいくつかの実施形態によれば、前の層の金属物体領域(
図3の物体領域333)の表面が存在する、型穴312(
図3)内への新たな溶融金属の堆積の前に、前の層の物体領域の上側表面が、型穴312を充填することになる新たな溶融金属と金属学的に接合するように準備される。この準備は、物体領域333の上側表面を「目標物堆積前温度」において十分な熱エネルギーで事前に加熱するための、堆積前加熱動作(本明細書において「目標物堆積前加熱」および「事前加熱」としても示される)およびプレヒータ(
図3には示されていない)を提供する、本発明の実施形態に従って行われる。加熱器は、堆積装置(
図3には示されていない)が型穴312を動かす前に、型穴312の上で動く。
【0107】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、本発明のいくつかの実施形態(本明細書において「溶融プール実施形態」として示される)において、目標物堆積前温度は、ちょうど上側表面を溶融し、以て溶融プールを形成するのに適切な温度である。関連する実施形態において、目標物堆積前温度は、特定の金属のための所定の一定の温度である。別の関連する実施形態において、目標物堆積前温度は関数(鋳造物体における物体領域の位置の関数など)である。さらなる関連する実施形態において、目標物堆積前温度は、構築マップによって提供されるデータ値(
図5の構築計画530内の目標物堆積前温度データ値533など)である。
【0108】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態(本明細書において「過加熱実施形態」として示される)において、目標物堆積前温度は、所定の過溶融温度にある溶融金属が加熱されたゾーンと接合するように、上側表面を十分に加熱するのに適切な温度である。関連する実施形態において、目標物堆積前温度は、特定の金属のための所定の一定の温度である。別の関連する実施形態において、目標物堆積前温度は関数(鋳造物体における物体領域の位置の関数など)である。さらなる関連する実施形態において、目標物堆積前温度は、構築マップによって提供されるデータ値(
図5の構築計画530内の目標物堆積前温度データ値533など)である。
【0109】
この動作において、「目標物」という用語は、新たな溶融金属が堆積される、前の生成層の物体領域の上側表面を指す。事前加熱後、新たな溶融金属が、下記に説明するように堆積動作において型穴312内に堆積される。
【0110】
溶融金属の堆積
図4aおよび
図4bは、本発明の関連する実施形態による、付加的金属堆積の動作を概念的に示す。
図4aと
図4bは両方とも、現在の生成層421d内の鋳型領域424内の型穴425内への溶融金属堆積を示す。前の生成層421c、先行する生成層421b、および前の物体領域430も示されている。
【0111】
前述したように、前の生成層421cと先行する生成層421bとの間の境界線は、例示的な性質のものである。いくつかの実施形態において、層421bおよび421cの鋳型領域は、完全に接合され得る。いくつかの実施形態において、層421bおよび421cの物体領域は、アニーリングが完全に実施されない場合であっても、完璧に接合され得る。
【0112】
図4aは、型穴425内へと落下している別個の重なり合う液滴440aを提供する、本発明の1つの実施形態を開示する。
図4bは、型穴425内へと注ぐ連続的な流れ440bを提供する、別の実施形態を開示する。
【0113】
図4aおよび
図4bに示す実施形態において、溶融金属は、別個の液滴440aであるか、または、連続的な流れ440bであるかにかかわらず、型穴425内へと強制的に注入されることは一切なく、重力のみの影響下で鋳型内へと落下する。
【0114】
図4aおよび
図4bに示す実施形態において、溶融金属は、堆積経路(
図4aの矢印442および
図4bの矢印443)に沿って複数の作業エリア内に提供される。1つのそのような作業エリア460が
図4aおよび
図4bに描写されている。
【0115】
本発明の溶融プール実施形態によれば、溶融金属堆積の目標位置は、溶融プール450を含む作業エリア460である。溶融プール450は、前の生成層421cの物体領域の表面の小部分を溶融することによって形成される。上記で言及したように、事前加熱は、前の層の物体領域の表面において金属の薄い層を液化するために、必要に応じて目標物堆積前温度において供給される。溶融プールは、実際には約1ミリメートル~約30ミリメートルに及ぶ表面寸法を有する。
【0116】
本発明の実施形態によれば、溶融金属が堆積されるときに堆積経路442に沿って穴425にわたって溶融金属堆積装置を動かすこと(および、溶融金属堆積装置が動かされるときに、堆積された溶融金属の下に留まるように、必要に応じて溶融プール450を動かすことおよび/または拡張することを確実にすること)によって、溶融金属は、型穴425全体を通じて均一に分散されるべきである。
【0117】
型穴全体を均一に充填するために、通常は、穴のxおよびy延在範囲の両方をカバーするように溶融金属堆積装置を走査する必要がある。いくつかの実施形態において、堆積装置および加熱器は、作業エリアWAの上で可動である。典型的な走査スタイルは、ラスタ走査である。長い側面がx軸に平衡である矩形型穴の非限定的な例において、ラスタ走査は、穴のコーナにおいて開始し、溶融金属堆積装置を一定のy位置に保持しながら、穴の長さにわたってx軸に沿って金属を堆積し、次いで、十分な重なり(連続的な流れ440bおよび液滴440aについて)を保証するためにyをわずかに増分させ、重なり合う溶融金属を堆積するために溶融金属堆積装置のx軸運動を逆転させ、型穴のエリア全体がカバーされるまで同様にすることによって行われてもよい。この走査、その後、型穴が最上部まで充填されるまで繰り返される。走査の間、溶融プールは、堆積点の下での事前加熱によって維持される。ラスタ走査は、他の形状の型穴を取り扱うように容易に適合させることができるが、特殊な形状については、他の走査がより効率的である場合がある。例えば、円形型穴を充填するには、らせん状走査がより良好に適し得る。関連する実施形態において、走査経路のための精密なデータが、構築計画によって提供される。
【0118】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、本発明のいくつかの実施形態によれば、加熱器および堆積装置は、型穴425の上で連続的に動く。したがって、溶融プール実施形態において、連続的な溶融プールトレールおよび連続的な溶融金属フローが作成され得る。各作業エリアにおいて、溶融プールは、堆積装置が作業エリアに近付き、作業エリアの上方で動いている間に、加熱器の背後で冷却される。いくつかの実施形態において、加熱器の通過と堆積装置の通過との間の作業エリアの冷却を補償するために、過溶融加熱が提供される。
【0119】
典型的には、溶融ねずみ鋳鉄溶融プールの温度と同等の温度にある溶融ねずみ鋳鉄の液滴は、6ミリメートル~8ミリメートルの直径を有する。溶融プール450内へと落下するように液滴を解放するとき、液滴は、溶融金属を隙間なく均等に堆積させるために、重ね合わされ得る。50%の重なり合い(すなわち、液滴はそれらの直径の半分だけ重なり合う)について、溶融金属堆積装置は、
【0120】
の最大速度において動くべきであり、dは液滴の直径であり、nは1秒あたりの液滴の数である。非限定的な例において、液滴直径d=8ミリメートルであり、n=2液滴/秒である場合、溶融金属堆積装置の最大速度は8ミリメートル/秒である。
【0121】
溶融金属堆積の速度は、本明細書においては「溶融金属堆積速度」として示されるパラメータである。いくつかの実施形態において、堆積速度は、固定される。いくつかの実施形態において、堆積速度は、例えば、構築計画に従って変化してもよい。
【0122】
いくつかの実施形態において、別個の重なり合う溶融金属液滴のみが提供される。いくつかの実施形態において、連続する溶融金属の流れが提供される。いくつかの実施形態において、溶融金属は、一部の作業エリア上には重なり合う液滴として堆積され、他の作業エリア内には連続流として堆積されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、連続流は、約3ミリメートルのより小さい直径を有し、約4cm3毎秒の溶融ねずみ鋳鉄を堆積させることができる。そのような実施形態において、より小さい直径の連続流は、より微細な寸法および詳細の金属の堆積を可能にする。
【0124】
溶融金属堆積速度は、その時点で実施されている特定の溶融金属堆積の詳細に従って(例えば、
図6の溶融金属堆積装置620の走査速度に応じて)変化してもよい。関連する実施形態において、溶融金属堆積速度は、構築マップによって提供されるデータ値(
図5の構築計画530内の溶融金属堆積速度データ値532など)である。
【0125】
本発明の様々な実施形態は、約10キログラム毎時、20キログラム毎時、50キログラム毎時、100キログラム毎時、最大300キログラム毎時およびそれを超える鋳造速度を達成することができる。
【0126】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、本発明のいくつかの実施形態において、前の層の物体領域に対する現在の層の物体領域の接合の最適化は、熱衝撃を最小限に抑えるかまたは排除すること、および、現在の層内の新たに付加される金属と前の層内の既存の金属との間の金属学的不均衡を最小限に抑えるかまたは排除することによって達成される。本発明のいくつかの実施形態は、熱接合エネルギーを供給するのに、付加される溶融金属には依拠せず、付加される溶融金属を過熱状態に置かない。これらの理由から、本発明の様々な実施形態は、付加される溶融金属440aおよび440bの温度を、高温計および/またはサーマルカメラ、赤外線カメラなどを介した温度検知によって決定されるものとして、溶融プール450の温度に可能な限り近くなるように、好ましくは互いの摂氏30度以内になるように、調整する。堆積のための溶融金属の温度は、本明細書において、「溶融金属堆積温度」として示される。関連する実施形態によれば、このパラメータの値は、
図5の構築計画530の溶融金属堆積温度データ値531によって提供される)。
【0127】
目標物堆積後加熱
溶融金属は、上述したように型穴内に堆積されると、凝固した金属の大きいヒートシンク(
図3に示す、先行する層の物体領域から構成されるバルク333)と熱的に接触し、急速に冷却され始める。しかしながら、制御されていない急速な冷却は、鋳造金属の微細粒状構造を、望ましくない様式で改変する可能性がある。作業エリア(新たに付加される溶融金属を含み、例えば、溶融プールの材料などの、前の材料を伴う)の冷却および凝固が制御された速度で進行することを確実にするために、本発明の実施形態は、新たに鋳造される金属の冷却および凝固が適切な速度で進行することを保証するのに必要であるような熱エネルギーを付加するための事後加熱動作(本明細書において「目標物堆積後加熱」および「事後加熱」としても示される)およびポストヒータを提供する。この温度は、本明細書において「目標物堆積後温度」として示される。関連する実施形態において、事後加熱のための「目標物堆積後温度」は、特定の金属のための所定の一定の温度である。別の関連する実施形態において、目標物堆積後温度は関数(時間および/または鋳造物体における物体領域の位置の関数など)である。さらなる関連する実施形態において、目標物堆積後温度は、構築マップによって提供されるデータ値(
図5の構築計画530内の目標物堆積後温度データ値533など)である。
【0128】
関連する実施形態によれば、このパラメータの値は、
図5の構築計画530のデータ値534によって提供される)。
【0129】
同時アニーリング
熱衝撃からの応力を受ける金属は、金属の機械的特性を劣化させる内部歪みを得る可能性がある。特に、前述したような、従来技術の付加的金属鋳造技法によって作製される金属物体内の熱影響部の存在は、そのような内部歪みの存在を指示する。しかしながら、本発明による付加的鋳造は、鋳造物体の先行する物体領域内の歪みの同時アニーリングを提供する。
【0130】
アニーリングは、歪みを軽減し、金属の特性を復元する。アニーリングは、加熱およびその後の漸進的な冷却などの、制御された温度サイクリングによって実施することができる。本は積み柄の実施形態によれば、新たな溶融金属が鋳造されている物体に付加されるとき(上記で開示したように)、包含される様々な過程は、現在の生成層内に熱を導入し、この熱は、熱伝導によって、先行する物体領域内へと流出する。すなわち、先行する物体領域は、付加される溶融金属から、およびまた、堆積前動作および事後加熱動作のいずれかまたは両方からの、両方の熱の導入のための主なヒートシンクとなる結果として、制御された熱サイクリングを経験する。この熱サイクリングは、新たな生成層が付加されるときに継続し、ただし、現在の生成層が先行する層から遠く離れて動くときは減衰する。事前加熱、溶融金属付加および事後加熱のうちの2つまたは3つの効果は、先行する物体領域の熱影響部歪みおよび異方性(前述)に対する同時アニーリング軽減を提供する。
【0131】
関連する実施形態において、例えば、「金属状の鋳型(mold over metal)」シナリオについて、追加の加熱動作が実施され、同時アニーリングを容易にする。いくつかの「金属状の鋳型」シナリオが
図2に描写されている。複数の異なる生成層において、1つの層における物体領域のいくつかの作業エリアが、別の層(上方または下方)における物体領域の作業エリアと直接的に接触していることが分かる。他の層における物体領域のいくつかの作業エリアが、別の層(上方または下方)における鋳型領域と直接的に接触している。鋳型領域の熱伝導率は、物体領域の熱伝導率とは異なる。したがって、同時アニーリングのために、追加の加熱は有益であり得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、目標物堆積後温度が調整される(例えば、高くされる)。いくつかの実施形態において、ポストヒータの進行速度が調整される(例えば、遅くされる)。いくつかの実施形態において、物体領域の堆積後加熱に並行して、追加の加熱が提供される。追加の加熱は、(1)ビルドテーブルを選択された温度に加熱および維持すること、(2)少なくともビルドテーブルを包含する生成チャンバを加熱し、生成チャンバを選択された温度に維持することのうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0133】
別の関連する実施形態において、アニーリング過程の熱サイクリングは、鋳造金属物体の選択された物体領域の特定の金属学的特性を調整するように制御される。
【0134】
例えば、鋳造物体のすべての区画が、鋳型領域に対するそれらの位置付けとは無関係に、生成を受けた同様の熱処理を受ける。本発明の実施形態は、再現可能で制御可能な熱サイクルプロファイルを提供し、鋳造物全体にわたる構造的均質性を保証する。
【0135】
別の非限定的な例において、鉱業に使用される掘削機バケットなどの、その硬さが領域ごとに変化される必要がある金属物体の鋳造を実施することができる。バケット歯の先端および外面は、効率的に機能するために硬い必要があるが、歯の内部本体およびシャフトは、破断に抗するために弾性かつ可撓性であるべきである。これらの目標は、鋳造物体の物体領域の異なる作業エリアに異なる熱サイクリングプロファイルを提供して、鋳造物体の特定の機能性要件に従ってそれらの領域に適した金属学的特性を達成する本発明の実施形態によって達成される。
【0136】
いくつかの実施形態において、異なる熱サイクリングプロファイルが、特定の生成層の同じ物体領域内の異なる作業エリアに提供されてもよい。
【0137】
いくつかの実施形態において、異なる熱サイクリングプロファイルが、異なる生成層に提供されてもよい。
【0138】
上部アニーリング
本発明の一実施形態によれば、上記で言及したように、先行する物体領域のアニーリングが、現在の生成層の型穴内への新たな溶融金属の堆積の過程および付随するアニーリング熱サイクリングと同時に行われる。しかしながら、溶融金属の堆積が完了したとき、溶融金属のさらなる層は堆積されないため、最終的な現在の生成層(
図2に示す最上生成層201
N)は、下方の最終的な前の生成層および近傍の物体領域とともに、同時アニーリングを経験しない。本発明のいくつかの実施形態は、上側生成層の物体領域のための「上部アニーリング」を提供する。
【0139】
上部アニーリング実施形態において、さらなる鋳型領域が作製されず、さらなる溶融金属が堆積されないことを除いて、追加の生成層が付加されていたかのように、事前加熱および事後加熱のいずれかまたは両方の熱サイクルが実施される。
【0140】
関連する実施形態において、1つまたは複数の可動加熱器が、最上生成層にわたって走査される。いくつかの実施形態において、1つの上部アニーリングサイクルが実施される。いくつかの実施形態において、一連の連続的な上部アニーリング加熱サイクルが実施される。連続的な上部アニーリング加熱サイクルの数は、1、2、3、5、10またはそれ以上の範囲内であってもよい。
【0141】
別の関連する実施形態において、1つまたは複数の可動加熱器が、最上層の上方の漸進的に増大する距離を置いて、2つ以上の連続的なアニーリング加熱サイクルにおいて、最上生成層にわたって走査される。いくつかの実施形態において、ビルドテーブル(
図3に示す要素316)が、生成層高さに等しい距離を置いてz方向363に下げられる。いくつかの実施形態において、可動加熱器が、生成層高さに等しい距離を置いてz方向363に上昇される。いくつかの実施形態において、この距離は、2ミリメートル~12ミリメートルの範囲内である。
【0142】
付加的金属鋳造のための方法
図5は、溶融プール作製のための堆積前加熱および堆積後加熱を利用した、本発明の一実施形態による付加的金属鋳造のための方法を示すフローチャートである。本方法の動作は、システムコントローラ525によって、所定の構築計画530に従って制御される。構築計画530については、それぞれ溶融金属堆積、溶融金属堆積速度、事前加熱、事後加熱および上部アニーリングのデータ値531、532、533、534および536の提供に関連して、上記ですでに言及した。
【0143】
動作501において、ベース層が作製される(
図3のベース層321aなど)。ループ開始点502は、システムコントローラ525の制御下での生成層(
図3の現在の生成層321dなど)の作製の始まりを指示する。
【0144】
動作503において、現在の層の1つまたは複数の鋳型領域が、構築計画530に従って作製される(
図3の層321dの鋳型領域324および311など)。次いで、決定点504において、システムコントローラ525は、前の生成層が型穴内に金属物体領域を有するか否かに関して、構築計画530をチェックする。Noの場合(
図3のベース層321aの直上の生成層の場合など)、システムコントローラ525は、直接的に動作506に進み、物体領域を画定する型穴内に溶融金属を堆積する。いくつかの実施形態において、複数の作業エリア(
図4a~
図4bに示す作業エリア460)にわたって移動しながら、溶融金属が堆積される。一方、Yesの場合(
図3の前の層321cの金属物体領域331を有する現在の生成層321dの場合など)、システムコントローラ525は、動作505を実施し、加熱器に、「目標物堆積前加熱」に関する節において上記で開示したように、かつ、同じく前述したような目標物堆積前温度データ値533に従って、溶融プール(
図4aおよび
図4bの溶融プール450のような)を形成するために、物体領域表面を事前加熱する(作業エリアを加熱する)ように指示する。
【0145】
例えば、ねずみ鋳鉄物体の生成について、溶融金属堆積温度は、摂氏1150度以上であってもよい。溶融金属堆積の直後の作業エリアの目標物堆積前温度は、摂氏1150度以上である。
【0146】
いくつかの実施形態において、堆積温度および堆積前温度が検知され、堆積前目標物温度が所定の温度差以下だけ、所定の堆積温度と異なるように制御される。いくつかの溶融プール作成実施形態において、受容エリア(作業エリア)の溶融金属堆積温度および堆積前温度は理想的には同一である(所定の温度差=0)。
【0147】
いくつかの実施形態において、所定の温度差は、摂氏10~50度の範囲内である。いくつかの実施形態において、例えば、不可避のシステム変動および他の温度変動(例えば、物体領域にわたる堆積装置および加熱器の動きに起因するを補償するためには、所定の温度差は摂氏30度である。
【0148】
いくつかの実施形態において、例えば、5ミリメートルなどの、3~10ミリメートルの深さを提供する、例えば、17ミリメートルなどの、15~25ミリメートル幅の溶融プールが、約1cm3の体積の溶融金属を受け入れるのに充足し、完璧な接合を達成することができる。
【0149】
動作506において、システムコントローラ525は、溶融金属堆積装置を、前述したように、溶融金属堆積温度データ値531および溶融金属堆積速度データ値532に従って型穴(
図4aおよび
図4bに示すような)内に溶融金属を堆積するように制御する。
【0150】
動作507において、システムコントローラ525は、加熱器に、「目標物堆積後加熱」および「同時アニーリング」に関する節において上記で開示したように、かつ、同じ前述したような目標物堆積後温度データ値534に従って、堆積された金属を事後加熱し、溶融金属の冷却速度を制御し、同時アニーリングに影響を及ぼすように指示する。
【0151】
ループ終了点508において、システムコントローラ525は、任意のさらなる生成層が存在するか否かに関して、構築計画530をチェックする。存在する場合、システムコントローラ525は、次の生成層について、ループ開始点502から繰り返す。そうでない場合、システムコントローラ525は、動作509へと継続し、「上部アニーリング」に関する節において上記で開示したように、最終生成層に対して上部アニーリングを実施する。
【0152】
上部アニーリングの後、本方法は、鋳型が除去される動作510において完結する。
【0153】
前述のように、鋳造金属物体は、必要に応じて処理および仕上げされてもよい。
【0154】
本発明の別の実施例において、上記方法およびその変形例は、システムによって、自動コントローラによって指示されるように実施される。
【0155】
いくつかの実施形態において、動作505(溶融プールを形成するための事前加熱)、506(溶融金属の堆積)および507(事後加熱)は、現在の生成層の物体領域を構成する複数の作業エリアに対して付加的に実行される。いくつかの実施形態において、作業エリアは順次、物体領域を走査する、進行している堆積装置および1つまたは複数の加熱器によって、事前加熱、金属堆積および事後加熱を受ける。
【0156】
いくつかの実施形態において、作業エリアは、不活性環境内に維持され、以て、溶融プールの酸化が低減または排除される。いくつかの実施形態において、不活性環境内に維持されるのに加えて、堆積される溶融金属および溶融プールは、同じ温度(または実質的に同じ、例えば、最大摂氏30度差)に維持される。同時アニーリングおよび上部アニーリングと組み合わせて、堆積される溶融金属および溶融プールは、同じ(または実質的に同じ)レオロジー条件下に維持される。結果として、完全に(または部分的に)アニーリングされた、生成層間の完璧な接合を有し、高度に均質な構造を有する金属性物体を達成することができる。実験結果は、付録において、
図8a~
図8fを参照して論じる。
【0157】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態において、堆積後加熱は提供されず、熱は、金属堆積の前にのみ与えられる。
【0158】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態において、堆積前加熱は提供されない。例えば、堆積される溶融金属は過熱され、熱は金属堆積後にのみ作業エリアに与えられる。
【0159】
説明を容易にするために、本発明の実施形態は、生成層のスタック全体に適用される一定の加熱レジームを参照して説明されたが、これは必ずしもそうであるとは限らない。いくつかの実施形態において、異なる生成層は、異なる加熱レジームを経験してもよい。
【0160】
説明を容易にするために、本発明の実施形態は、生成層内の物体領域の複数の作業エリアに適用される一定の過熱レジームを参照して説明されたが、これは必ずしもそうであるとは限らない。いくつかの実施形態において、異なる作業エリアは、同じ生成層の物体領域の他の作業エリアと比較して、異なる加熱レジームを経験してもよい。
【0161】
図5は、本発明の溶融プール実施形態に焦点を当てているが、本発明はそれに限定されない。本発明の他の実施形態(本明細書において過加熱(または過熱)実施形態として参照される)によれば、堆積される溶融金属は、作業エリアに伝達されるエネルギーの一部を担持し得る(例えば、堆積される溶融金属を金属溶融温度を上回って過加熱することによって)。これらの実施形態において、堆積前加熱は、物体領域内の作業エリアを、融点未満の状態まで加熱することを含んでもよい。
【0162】
付加的金属鋳造のためのシステム
図6は、本発明の一実施形態による付加的鋳造のためのシステム600の機能ユニットおよび機能的処理組織化のブロック図である。
【0163】
可動鋳型構成装置622、可動溶融金属堆積装置620、および1つまたは複数の可動加熱器624が、前述したような本発明の重要な動作を実施し、物理的に、ビルドテーブル316上に位置付けられた進行中の鋳造物630に近接して位置する。加熱器624は、前述した事前加熱および事後加熱のためのデバイスを含む。1つまたは複数のロボットアーム651(または任意の他の運動デバイス)も、加熱器624、堆積装置620、鋳型構成装置622ならびに表面処理および仕上げ要素(
図6には示されていない)などのデバイスを動かすことが可能である。
【0164】
本発明による付加的鋳造過程中、上述した可動ユニットは、進行中の鋳造物630に対する運動を実施する。相対的な動きは、x-y平面およびz方向(座標系360による)における動きを含み、水平運動361、垂直運動363、および回転365における自由度を有する。本発明によれば、相対運動は、ビルドテーブル316を動かすこと、可動ユニット620、622、624のうちの1つもしくは複数を動かすこと、および/または、ビルドテーブル316の動きと可動ユニット620、622、624の動きとの組み合わせによって達成することができる。典型的には、大きくて扱いにくく、重い物体を鋳造するためには、ビルドテーブル316は、z方向における相対運動を提供するように制限され得る。いくつかの実施形態において、ビルドテーブル316は、生成層の間で動かされる。いくつかの実施形態において、ビルドテーブル316は、鋳型領域の構成と現在の生成層の物体領域の生成との間で動かされる。いくつかの実施形態において、x-y相対運動は、ビルドテーブル316ではなく、ユニット620、622、および624を動かすことによって達成されてもよい。関連する実施形態において、進行中の鋳造物に対する様々なユニットの動きは、1つまたは複数のロボットアーム651の支援を受けて行われる。
【0165】
本発明の一実施形態によれば、1つまたは2つの加熱器624が、可動溶融金属堆積装置620に物理的に結合され、共通の運動モジュール(図示せず)を共有することができる。共通の運動ユニットは、物理的に結合された要素620、624に、現在の生成層の上方の要素620、624の作動距離を変化させるために、ビルドテーブル316にわたるX軸およびY軸に沿った、および、Z軸に沿った、共有される並進運動を提供することができる。いくつかの実施形態において、現在の生成層の上方の要素620、624の作動距離は、2ミリメートル~20ミリメートルの範囲内である。
【0166】
様々な実施形態において、加熱器624は、限定ではないが、誘導加熱器、プラズマ加熱器、電気抵抗加熱器、およびトーチ加熱器を含む。
【0167】
様々な実施形態において、溶融金属堆積装置620は、るつぼ、遠隔湯溜まり、溶融のための線材もしくは棒材、溶融のための粉末またはそれらの組み合わせを含む。
【0168】
様々な実施形態において、鋳型構成装置622は、鋳型材料リザーバおよび鋳型堆積装置(
図6には示されていない)を含む。他の実施形態において、鋳型構成装置622は、遠隔貯蔵部から鋳型材料を受け取る。さらなる実施形態において、鋳型構成装置622は、複数の生成層を与えられている、遠隔供給源からの組立鋳型領域および/または鋳型アセンブリを受け取る。
【0169】
本発明の実施形態によれば、鋳型材料は、ペースト形態、粉末形態、粒状形態、スラリ形態の鋳型材料、ならびに、鋳型作製および使用を容易にするために結合剤、解除剤、活性化剤、UV吸収粒子、架橋剤、吸熱粒子、または他の添加剤と混合された鋳型材料を含む。本発明の実施形態によれば、鋳型材料は、限定ではないが、セラミック(例えば、ジルコニア、アルミナ、マグネシアなど)、砂、粘度、金属粉、およびそれらの任意の組み合わせを含む。
【0170】
いくつかの実施形態において、システム600は、金属堆積の前に鋳型領域を半硬化または硬化するための、例えば、金属堆積の前に型穴の内壁を仕上げるための、限定ではないが、フライス加工、研削、および研磨構成要素を含む、鋳型表面処理ユニットをさらに備える。
【0171】
いくつかの実施形態において、鋳型表面処理ユニットは、例えば、連続的な生成層の鋳型領域を構成する前に現在の生成層の鋳型領域の上側表面を処理することが可能である。
【0172】
いくつかの実施形態において、システム600は、鋳型表面処理ユニットは、例えば、連続的な生成層の鋳型領域を構成する前に、現在の生成層の鋳型領域の上側表面を水平化するかまたは他の様態で処理するための、限定ではないが、フライス加工、研削、および研磨構成要素を含む、層表面処理ユニットをさらに備える。
【0173】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態において、システム600は、1つまたは複数のビルドテーブル加熱器を備えてもよく、コントローラは、ビルドテーブルを一定のテーブル温度に加熱および維持するように動作可能であってもよい。例えば、ねずみ鋳鉄物体の生成について、一定のテーブル温度は、摂氏500~750度の範囲にあってもよい。いくつかの実施形態において、ビルドテーブル加熱は、同時アニーリングのための熱を提供する。
【0174】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態において、コントローラは、ビルドテーブルを、鋳型領域構成のための第1のビルドテーブル温度、および、物体領域生成のための、第1のビルドテーブル温度とは異なる第2のビルドテーブル温度まで加熱するようにさらに動作可能である。
【0175】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態において、システム600は、少なくとも可動ビルドテーブル316を包含する生成チャンバ(
図6には示されていない)をさらに備える。生成チャンバは、1つまたは複数のチャンバ加熱器を備えてもよく、コントローラ525は、ビルドテーブルの環境を一定のチャンバ温度に加熱および維持するように動作可能であってもよい。例えば、ねずみ鋳鉄について、一定のチャンバ温度は、摂氏500~750度の範囲にあってもよい。いくつかの実施形態において、生成チャンバ加熱は同時アニーリングのための熱を提供する。
【0176】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態において、コントローラ525は、生成チャンバを、鋳型領域構成のための第1のチャンバ温度、および、物体領域生成のための、第1のチャンバ温度とは異なる第2のチャンバ温度まで加熱するようにさらに動作可能であってもよい。
【0177】
システムコントローラ525は、
図6にも示されている。システムコントローラ525は、デジタル的にまた1つもしくは複数のアナログ制御システムを介して実装されてもよい。システムコントローラ525は、ユニット624、620、および622ならびにロボットアーム651を制御するための実行可能モジュールを有するプロセッサを含むことができる。実行可能モジュールは、ロボットアーム651の制御を含む、事前加熱606、事後加熱610、溶融金属堆積608、上部アニーリング612、鋳型作成602、および鋳型仕上げ604をカバーする。実行可能コードは、本発明による付加的金属鋳造の特定の動作を実行するために必要なアルゴリズムおよびルーチンを含む。
【0178】
システムコントローラ525はまた、様々なセンサおよび検出器640からセンサおよびフィードバックデータを受信する。センサ640は、温度、流速、位置、速度、圧力、累積質量のためのセンサを含んでもよい。センサ640は、可視波長カメラ、重量センサ(例えば、棒重量センサおよび/またはビルドテーブル重量センサ)、立体視センサ(例えば、層厚を測定するための)、距離センサなどのような他のセンサを含んでもよい。システムコントローラ525はまた、本発明による付加的金属鋳造過程を精密にセットアップおよび制御するために、オペレータ入力(図示せず)も受信してもよい。
図5に示すように、システムコントローラ525は、付加的鋳造動作を統制するデータ、詳細、およびパラメータについて、構築計画530に依拠する。
【0179】
図6において明瞭にするために、ユニット624、620、および622、ならびにロボットアーム651は、単一かつ別個のものとして示されているが、本発明は、動作ユニットのタイプおよび各タイプの動作ユニットの数によって限定されない。
【0180】
例えば、2つ以上の溶融金属材料が使用されるいくつかの実施形態において、複数の溶融金属堆積装置が提供される。2つ以上の鋳型材料が使用される他の実施形態において、複数の鋳型構成装置が提供される。
【0181】
2つ以上のビルドテーブル、ビルドテーブルあたり2つ以上の堆積装置、ビルドテーブルあたり2つ以上の鋳型構成ユニットなどによって、総生産スループットを増大させることができる。いくつかの実施形態において、同じタイプのいくつかのユニットが、進行中の鋳造物の異なるエリアを取り扱うために、ビルドテーブル316に対して異なる位置において同時に動作する。特に、ビルドテーブル316の複数のインスタンスが存在する場合に、他のそのような構成が可能である。
【0182】
本発明の実施形態は、単一のビルドテーブル上で、かつ、共通の構築計画下で、いくつかの金属性物体の生成に同時に利用されてもよい。本発明の実施形態は、例えば、40cm~200cmの範囲内の幅(または長さ)を有する、大きい金属性物体および非常に大きい金属性物体の生成のために利用されてもよい。
【0183】
図7は、本発明の様々な実施形態による、付加的金属鋳造のための包含されるシステム700の生産現場見取り図を概念的に示す。これらの実施形態の目標は、産業効率および安全性の向上、環境保護の改善、生産監督および制御の強化、ならびにこうスループットかつコスト効率的な付加的金属鋳造の提供を含む。
【0184】
システム700は、例えば、
図6を参照して説明したように、それぞれの生成要素によってアクセス可能な、第1のビルドテーブル701および第2のビルドテーブル702を含む。ビルドテーブル701、702は、スループット、容量、エネルギー消費、材料利用などのような性能要因を最適化するために、同時並行と順次の両方で動作することが可能である。第1のローディング/アンローディングドック731および第2のローディング/アンローディングドック732は、材料および完成品を導入および取り出しするための制御されたアクセスを提供する。
【0185】
システム700は、気体、液体および上記ならびに高温を制御された空間内に閉じ込めるための環境障壁を提供する閉じ込め筐体740を含む。外部サポート設備は、メンテナンスおよびサポートを容易にするための外部アクセスを有する電気キャビネット711、冷却装置713、セラミック供給タンク712、およびリフトローダ/アンローダ733などのアイテムを含む。関連する実施形態において、特定のアイテム(供給タンク712および冷却装置713)は、システムフットプリントを低減するために閉じ込め筐体740の屋根に位置することができる。
【0186】
いくつかの実施形態において、ビルドテーブル701、702の各々は、40cm~200cmの範囲内の長さまたは幅を有してもよい。いくつかの実施形態において、枠組み筐体740内のシステム700のフットプリントは、約145平方メートルの床面積および約720立方メートルの容積に対して、約5メートルのクリアランス高さをもって、約17メートル×約8.5メートルである。
【0187】
筐体740は、可動構成要素、高温、および特殊化大気環境などの、システム700の有害な材料、要素、および構成要素を取り囲む。関連する実施形態において、筐体740は、環境避難システム、電源、水およびガス供給などを含む、外部設備サポートインフラストラクチャ(図示せず)に接続されている。
【0188】
特定の実施形態において、システム700は、大気環境内で動作する。他の実施形態によれば、生成エリアは、生成動作のうちの少なくともいくつかの間に、不活性環境として維持される。
【0189】
いくつかの実施形態において、閉じ込め筐体740は、特に高温が有益である場合に、より小さい閉じ込めゾーンに分割される。関連する実施形態において、筐体740内のビルドテーブルは、進行中の鋳造物を高温(ただし、事前加熱および事後加熱温度を下回る)に維持するために、炉内にさらに封入される。
【0190】
特定の実施形態において、システムコントローラ650(
図6)の制御下にある第1の自動生成アセンブリ722および第2の自動生成アセンブリ726が、ロボットアーム651の特徴を提供し、可動ユニット624、620、および622の機能を組み込む。自動生成アセンブリ722は、加熱器624と溶融金属堆積620の両方を提供する、組み込みヘッドアセンブリ750と組み合わせて示されている。自動生成アセンブリ722は、トラック724を有するリニアベッド723上に搭載され、自動生成アセンブリ726はトラック728を有するリニアベッド727上に搭載され、それらがビルドテーブル701とビルドテーブル702の両方にアクセスすることができるようになる。
【0191】
図7にはまた、限定ではないが、フライス加工、研削、および研磨などの機械的動作、ならびに鋳型除去と関連付けられる動作を含む、特殊化鋳型仕上げ動作を実行するための単一の鋳型生成ロボット操作アセンブリ729も示されている。
【0192】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態において、鋳型領域および鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、最上生成層まで、1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造方法であって、現在の生成層の物体領域を生成する前に現在の生成層の鋳型領域を構成することと、堆積経路にわたって溶融金属堆積装置を動かし、構築計画に従って、現在の生成層の物体領域において複数の作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積することと、堆積経路にわたって1つまたは複数の加熱器を動かし、複数の作業エリアを加熱することとを含み、複数の作業エリアを加熱することは、溶融金属の複数の作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、複数の作業エリア上に金属を堆積する前に、複数の作業エリアを、金属性物体の溶融温度以上の目標物堆積前温度まで加熱し、以て、作業エリア内に溶融金属の溶融プールを作成することを含み、作業エリアの各々は、少なくとも加熱および堆積中に不活性環境に維持され、複数の作業エリアを加熱することは、現在の生成層を通じた熱伝導によって、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することをさらに含む、方法が提供される。
【0193】
本鋳造方法は、複数の作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、複数の作業エリア上に金属を堆積した後に、複数の作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することをさらに含むことができる。
【0194】
1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することは、最上生成層を生成した後に、最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することを含むことができる。最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することは、1つまたは複数の連続したアニーリング加熱サイクルにわたって、最上生成層の複数の作業エリアにわたって1つまたは複数の加熱器を動かすことを含むことができる。
【0195】
本鋳造方法は、連続したアニーリング加熱サイクルの各々の後に、最上生成層の上方で1つまたは複数の加熱器の高さを変更することをさらに含むことができる。
【0196】
堆積前目標物温度は、所定の温度差以下だけ、所定の堆積温度と異なってもよい。
【0197】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態において、鋳型領域および鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、最上生成層まで、可動ビルドテーブル上で1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造システムであって、現在の生成層の鋳型領域を構成するように動作可能な可動鋳型構成装置と、現在の生成層の物体領域において複数の作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積するように動作可能な可動溶融金属堆積装置と、複数の作業エリアを加熱するように動作可能な少なくとも1つの加熱器と、可動ビルドテーブル、可動鋳型構成装置、可動溶融金属堆積装置および1つまたは複数の加熱器に結合されている少なくとも1つの運動ユニットと、少なくとも複数の作業エリアを不活性雰囲気中に維持するための不活性ガスユニットと、所定の構築計画に従って金属物体を生成するように、少なくとも可動ビルドテーブル、可動鋳型構成装置、可動溶融金属堆積装置、少なくとも1つの加熱器、少なくとも1つの運動ユニットおよび少なくとも1つの不活性ガスユニットを反復的に制御するように動作可能なコントローラとを備え、複数の作業エリアを加熱することは、溶融金属の作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、作業エリア上に金属を堆積する前に、作業エリアを、金属性物体の溶融温度以上の堆積前目標物温度まで加熱し、以て、作業エリア内に溶融金属の溶融プールを作成することを含み、作業エリアの各々は、少なくとも加熱および堆積中に不活性環境に維持され、複数の作業エリアを加熱することは、現在の生成層を通じた熱伝導によって、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することをさらに含む、鋳造システムが提供される。
【0198】
複数の作業エリアを加熱することは、複数の作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、作業エリア上に金属を堆積した後に、複数の作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することをさらに含むことができる。
【0199】
コントローラは、最上生成層を生成した後に、最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供するように動作可能とすることができる。コントローラは、最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供するために、1つまたは複数の連続したアニーリング加熱サイクルにわたって、最上生成層の作業エリアにわたって1つまたは複数の加熱器を動かすように動作可能とすることができる。コントローラは、連続したアニーリング加熱サイクルの各々の後に、最上生成層の上方で1つまたは複数の加熱器の高さを変更するように動作可能とすることができる。コントローラは、堆積温度と堆積前温度との間の差を、所定の温度差よりも小さく維持するようにさらに動作可能とすることができる。
【0200】
鋳造システムは、コントローラに通信可能に接続されている作業エリア温度センサをさらに備えることができる。作業エリア温度センサは、高温計またはサーマルカメラであってもよい。
【0201】
鋳型領域は、2ミリメートル~12ミリメートルの範囲内の、構築計画による現在の生成層の高さを有してもよい。可動鋳型構成装置は、鋳型材料リザーバと、構築計画に従って現在の生成層内に鋳型領域を形成するために所定のロケーションにおいて鋳型材料を付加的に分配するための、鋳型材料リザーバと接続されている鋳型材料分配アセンブリとを備えることができる。可動鋳型構成装置は、複数の遠隔的に生成されている鋳型構造を含むことができ、構築計画に従って現在の生成層内に鋳型領域を形成するために、遠隔的に生成されている鋳型構造を所定のロケーションに転移するように動作可能な鋳型転移ユニットを備える。
【0202】
鋳造システムは、少なくとも可動ビルドテーブルを包含し、1つまたは複数のチャンバ加熱器を備える生成チャンバをさらに備えることができ、コントローラは、生成チャンバを、鋳型領域構成のための第1のチャンバ温度、および、物体領域生成のための、第1のチャンバ温度とは異なる第2のチャンバ温度まで加熱するようにさらに動作可能である。
【0203】
鋳造システムは、1つまたは複数のビルドテーブル加熱器をさらに備えることができ、コントローラは、ビルドテーブルを、第1のビルドテーブル温度まで加熱するようにさらに動作可能である。コントローラは、ビルドテーブルを、鋳型領域構成のための第1のビルドテーブル温度、および、物体領域生成のための、第1のビルドテーブル温度とは異なる第2のビルドテーブル温度まで加熱するようにさらに動作可能であってもよい。
【0204】
本発明の実施形態を、ねずみ鋳鉄の付加的鋳造に関連して説明した。本発明は鋳造材料のタイプによって限定されるものではない。本発明は、適切な修正を伴って、ダクタイル鉄、鋼、および他の金属を含む、他の金属の付加的鋳造に適用可能である。
【0205】
本発明の実施形態を、溶融プール実施形態に関連して説明した。本発明は、適切な修正を伴って、過加熱実施形態に適用可能である。
【0206】
特に別途記載しない限り、上記の説明から諒解されるように、本明細書全体を通じて、「処理」、「演算」、「計算」、「決定」などのような用語を利用した説明は、コンピュータシステムのレジスタおよび/またはメモリ内のデータを操作および/または変換して、コンピュータシステムのメモリ、レジスタ、または、他のそのような情報記憶、送信または表示デバイス内の他のデータに変換する、クライアント/サーバシステム、モバイルコンピューティングデバイス、スマート家電、クラウドコンピューティングユニットまたは同様の電子コンピューティングデバイスのような任意のタイプの汎用コンピュータの動作および/またはプロセスを指すことが諒解される。
【0207】
本発明の実施形態は、本明細書における動作を実施するための装置を含むことができる。この装置は、特に、所望の目的のために構成することができ、または、コンピュータ内に記憶されているコンピュータプログラムによって選択的に起動または再構成される、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを典型的に有するコンピューティングデバイスまたはシステムを含んでもよい。結果もたらされる装置は、ソフトウェアによって命令されると、汎用コンピュータを、本明細書において論じられている発明的要素にすることができる。この命令は、それが所望されるコンピュータプラットフォームとともに動作するときに、発明的装置を定義し得る。そのようなコンピュータプログラムは、限定ではないが、光ディスク、磁気光ディスクを含む任意のタイプのディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、揮発性および不揮発性メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、磁気もしくは光学式カード、フラッシュメモリ、ディスクオンキー、または、電子命令を記憶するのに適しており、コンピュータシステムバスに結合されることが可能な任意のタイプの媒体のような、コンピュータ可読記憶媒体内に記憶することができる。コンピュータ可読記憶媒体はまた、クラウドストレージ内に実装されてもよい。
【0208】
いくつかの汎用コンピュータは、データネットワークおよび/またはモバイル通信ネットワークとの通信を可能にするための少なくとも1つの通信要素を備えることができる。
【0209】
本明細書において提示されているプロセスおよび表示は本質的に、任意の特定のコンピュータまたは他の装置に関係するものではない。様々な汎用システムが、本明細書における教示によるプログラムによって使用されてもよく、または、所望の方法を実施するのにより特化した装置を構築することが好都合と分かる場合もある。様々なこれらのシステムのための所望の構造が、下記の記載から諒解されよう。加えて、本発明の実施形態は、いかなる特定のプログラミング言語を参照しても説明されていない。本明細書に記載されいてるような本発明の教示を実装するために様々なプログラミング言語が使用されてもよいことは諒解されよう。
【0210】
本発明の特定の特徴が本明細書において例示および説明されているが、ここで、多くの修正、置換、変更、および均等物が、当業者には想起されよう。それゆえ、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神に入るすべてのそのような修正および変更を包含するように意図されていることが理解されるべきである。
【0211】
付録-金属学的評価
図8a~
図8fは、本発明の一実施形態に従って生成される鋳造物体のクーポンに対して行われる金属学的評価の結果を示す。
【0212】
それぞれ1、2、および3とラベル付けされた3つの鋳造金属物体が、評価のために生成された。3つの鋳造金属物体は、各辺が15cmの金属の鋳造立方体から垂直スライスとして切り出された。立方体の鋳造は、酸素含有量が制御された雰囲気中で実行された。ベース層は、厚さが0.5cmである、15cm×15cmの正方形の焼結アルミナセラミックであった。金属は、焼結アルミナセラミックの15cm×15cmの中空正方形枠鋳型によって形成されている型穴の内部で連続層のスタック内に付加的に堆積された。堆積および加熱は、可動加熱および堆積ユニットによって、ラスタ走査パターンにおいて実施された。
【0213】
図8aは、スライス2の写真である。この面は元々、鋳造立方体の外面であり(x-z平面)、この表面にはいかなる表面処理も与えられなかった。
図8aに見える薄い水平線は、鋳型によってつけられた跡である。
【0214】
図8bは、スライス2の裏面を示す写真である。これは、スライス2の内面であり、立方体からスライスされた後に研磨された。
図8cは、スライス2の写真斜視図である。研磨面の平滑性が、このビューに見える。
【0215】
物体1および3が、複数の金属クーポン、すなわち、水平下部クーポン(左、中央、右)、水平状部クーポン(左、中央、右)、および垂直クーポン(左、中央、右)に切り分けられた。これらのクーポンは、32ミリメートルのゲージ長、65~70ミリメートルの合計長さ、1.8~2.45ミリメートルの範囲内の厚さ、および、4.9~5.5ミリメートルの範囲内の幅を有する。
【0216】
1とラベル付けされた鋳造物からの18個のクーポン、および3とラベル付けされた鋳造物からの17個のクーポンの元素分析、機械的、および強度試験が行われた。
【0217】
元素分析は、蛍光X線分光分析法を用いて実施された。1つの鋳造物中の異なるクーポンの、および、鋳造物1と3との間の差または類似性を検証するために、主合金化成分のみが分析された。
図8dの表は、代表的なクーポンの元素分析を示す。元素分析は、上側および下部クーポン、左、中央および右クーポン、ならびに鋳造物1および3クーポン間の類似性を検証した。
【0218】
サーボ油圧引張試験機MTS370.10上で機械的および強度試験を実施した。加えられた歪み速度は0.14min-1であった。基線長25ミリメートルの伸縮計が、歪みデータを測定するために使用され、破壊までクーポン上に取り付けたままにされた。
【0219】
図8eおよび
図8fは、すべてのクーポンの応力-歪みグラフである。応力-歪みグラフは、典型的には鋳鉄については、同様の見た目を有する。機械的強度試験は、上側および下部クーポン、左、中央および右クーポン、ならびに鋳造物1および3クーポン間の類似性を検証した。
【0220】
全体的に、分析された部品1と3との間の有意な差は明らかにならなかった。これは、鋳造部品の機械的特性における高レベルの均一性を示している。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型領域および前記鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、最上生成層まで、1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造方法であって、
前記現在の生成層の前記物体領域を生成する前に前記現在の生成層の鋳型領域を構成することと、
堆積経路にわたって溶融金属堆積装置を動かし、構築計画に従って、前記現在の生成層の前記物体領域において複数の作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積することと、
前記堆積経路にわたって1つまたは複数の加熱器を動かし、前記複数の作業エリアを加熱することと
を含み、
前記複数の作業エリアを加熱することは、(1)前記溶融金属の前記複数の作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、前記複数の作業エリア上に金属を堆積する前に、前記複数の作業エリアを、目標物堆積前温度まで加熱すること、および、(2)前記複数の作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、前記複数の作業エリア上に金属を堆積した後に、前記複数の作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することのうちの少なくとも一方を含み、
前記複数の作業エリアを加熱することは、前記現在の生成層を通じた熱伝導によって、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することをさらに含む、鋳造方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することは、前記最上生成層を生成した後に、前記最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することを含む、請求項1に記載の鋳造方法。
【請求項3】
前記最上生成層を通じた熱伝導によって1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することは、1つまたは複数の連続したアニーリング加熱サイクルにわたって、前記最上生成層の前記複数の作業エリアにわたって前記1つまたは複数の加熱器を動かすことを含む、請求項2に記載の鋳造方法。
【請求項4】
前記連続したアニーリング加熱サイクルの各々の後に、前記最上生成層の上方で前記1つまたは複数の加熱器の高さを変更することをさらに含む、請求項3に記載の鋳造方法。
【請求項5】
前記堆積前目標物温度は、前記金属性物体の溶融温度以上である、請求項1に記載の鋳造方法。
【請求項6】
鋳型領域および前記鋳型領域によって規定される物体領域を有する複数の生成層を、最上生成層まで、可動ビルドテーブル上で1つの現在の生成層が他の生成層の後になるように生成することによって金属性物体を付加的に鋳造するための鋳造システムであって、
現在の生成層の鋳型領域を構成するように動作可能な可動鋳型構成装置と、
前記現在の生成層の前記物体領域において複数の作業エリア内で所定の堆積温度において溶融金属を堆積するように動作可能な可動溶融金属堆積装置と、
前記複数の作業エリアを加熱するように動作可能な少なくとも1つの加熱器と、
前記可動ビルドテーブル、前記可動鋳型構成装置、可動溶融金属堆積装置および前記1つまたは複数の加熱器に結合されている少なくとも1つの運動ユニットと、
所定の構築計画に従って前記金属物体を生成するように、少なくとも前記ビルドテーブル、鋳型構成装置、溶融金属堆積装置、少なくとも1つの加熱器および前記少なくとも1つの運動ユニットを反復的に制御するように動作可能なコントローラと
を備え、
前記複数の作業エリアを加熱することは、(1)前記溶融金属の前記作業エリアとの接合に影響を及ぼすために、前記作業エリア上に金属を堆積する前に、前記作業エリアを、目標物堆積前温度まで加熱すること、および、(2)前記作業エリアの熱冷却プロファイルに影響を及ぼすために、前記作業エリア上に金属を堆積した後に、前記作業エリアを堆積後目標物温度まで加熱することのうちの少なくとも一方を含み、
前記作業エリアを加熱することは、前記現在の生成層を通じた熱伝導によって、1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供することをさらに含む、鋳造システム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記最上生成層を生成した後に、前記最上生成層を通じた熱伝導によって前記1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供するように動作可能である、
請求項6に記載の鋳造システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記最上生成層を通じた熱伝導によって前記1つまたは複数の先行する生成層にアニーリング加熱を提供するために、1つまたは複数の連続したアニーリング加熱サイクルにわたって、前記最上生成層の前記作業エリアにわたって前記1つまたは複数の加熱器を動かすように動作可能である、
請求項7に記載の鋳造システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記連続したアニーリング加熱サイクルの各々の後に、前記最上生成層の上方で前記1つまたは複数の加熱器の高さを変更するように動作可能である、
請求項8に記載の鋳造システム。
【請求項10】
前記コントローラに通信可能に接続されている作業エリア温度センサをさらに備える、
請求項6に記載の鋳造システム。
【請求項11】
前記鋳造システムは、不活性ガスユニットをさらに備え、前記システムの少なくとも一部分は、物体領域生成中に不活性雰囲気環境内に維持される、
請求項6に記載の鋳造システム。
【請求項12】
前記堆積前目標物温度は、溶融温度である、
請求項6に記載の鋳造システム。
【請求項13】
前記加熱器は、金属堆積の前に前記作業エリア内に溶融金属の溶融プールを作成するように動作可能である、
請求項12に記載の鋳造システム。
【請求項14】
前記可動鋳型構成装置は、鋳型材料リザーバと、前記構築計画に従って前記現在の生成層内に前記鋳型領域を形成するために所定のロケーションにおいて鋳型材料を付加的に分配するための、前記鋳型材料リザーバと接続されている鋳型材料分配アセンブリとを備える、
請求項6に記載の鋳造システム。
【請求項15】
前記可動鋳型構成装置は、複数の遠隔的に生成されている鋳型構造を含み、前記構築計画に従って前記現在の生成層内に前記鋳型領域を形成するために、遠隔的に生成されている鋳型構造を所定のロケーションに転移するように動作可能な鋳型転移ユニットを備える、
請求項6に記載の鋳造システム。
【国際調査報告】