(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
C08J3/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502649
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 KR2022011218
(87)【国際公開番号】W WO2023008959
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0101052
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center, 330, Dongho-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シム, ユ‐キョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ソユン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジュン イル
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジン ス
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB22
4F070AB23
4F070AC12
4F070AC50
4F070AC80
4F070AE14
4F070AE28
4F070CA07
4F070CB02
4F070CB15
(57)【要約】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液及びその調製方法に関する。具体的には、本発明の一実施形態によれば、PHA分散液の調製方法は、粒子分散、融解分散又は溶媒抽出を使用することによってPHAを溶媒に分散させるステップを含むので、平均粒径0.5~5μm、粒径偏差±0.3μmを有するPHA粒子を含むPHA分散液を調製することができ、分散性、分散安定性及び加工性を向上させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子を含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液であって、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子の平均粒径は0.5μm~5μmであり、粒径偏差は±0.3μm以内である、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が10,000g/モル~1,200,000g/モルの重量平均分子量及び2.5未満の多分散指数(PDI)を有する、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が、示差走査熱量計(DSC)で測定した90%以下の結晶化度と、-45℃~80℃のガラス転移温度(Tg)とを有する、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)、3-ヒドロキシヘキサノエート(3-HH)、3-ヒドロキシバレレート(3-HV)、4-ヒドロキシバレレート(4-HV)、5-ヒドロキシバレレート(5-HV)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(6-HH)から成る群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)コポリマーである、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項5】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)コポリマーが、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)コポリマーの総重量に基づいて0.1重量%~60重量%の量で4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む、請求項4に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液が、生分解性ポリマーをさらに含み、
前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、熱可塑性デンプン(TPS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びポリカプロラクトン(PCL)から成る群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項7】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液が、10重量%~60重量%の固形分を有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~10重量%の量で界面活性剤を含む、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項8】
前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、リン酸系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、ウレタン系界面活性剤、エポキシ系界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から成る群から選択される少なくとも1つ、又はカルボン酸、アミン、イソシアネート及びそれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1つを含む高分子界面活性剤である、請求項7に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項9】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液が、100%~400%のヘイズ及び5~20のイエローインデックス(Y.I.)を有する、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項10】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液が、40以上のL*、0.44未満のa*、及び6以下のb*を有する、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項11】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液が-10mV以下のゼータ電位を有する、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項12】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液が、3~11のpH及び10%~99%の光透過率を有する、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液。
【請求項13】
粒子分散法、融解分散法、又は溶媒抽出法を使用してポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶媒中に分散させるステップを含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法であって、
前記分散されたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子の平均粒径は0.5μm~5μmであり、粒径偏差は±0.3μm以内である、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項14】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法が、撹拌機、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、及びコロイドミルから成る群から選択される少なくとも1つの装置を使用して行われる、又は高せん断、超音波処理、及び膜乳化から成る群から選択される少なくとも1つの方法によって行われる、請求項13に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項15】
(1-1)物理的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得られる前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を調製するステップと;(1-2)粒子分散法を使用して前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶媒中に分散させるステップとを含む、請求項13に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項16】
ステップ(1-2)が、分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~10重量%の量で界面活性剤を添加するステップを含む、請求項15に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項17】
前記分散ステップが、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%の割合で、10分~60分間の高速分散処理により行われる、請求項15に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項18】
前記分散ステップが、第1の分散処理を行うステップと;第2の分散処理を行うステップとを含み、
前記分散ステップが、前記第1の分散処理が行われた前記第1の水性分散液の濾過、洗浄、及び前記第2の分散処理により行われる、請求項15に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項19】
(2-1)前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を調製するステップと;(2-2)融解分散法を使用して、溶媒中に前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を分散させるステップとを含み、
前記分散ステップが、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を融解するステップと;前記融解したポリヒドロキシアルカノエートと界面活性剤を混合するステップと;溶媒中に前記融解したポリヒドロキシアルカノエートと界面活性剤との混合物を高圧で分散させるステップとを含む、請求項13に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項20】
前記融解ステップが100℃~220℃で行われる、請求項19に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項21】
(3-1)前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を調製するステップと;(3-2)溶媒抽出法を使用して、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶媒中に分散させるステップとを含み、
前記分散ステップが、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と第1の溶媒を混合して第1の溶液を調製するステップと;界面活性剤と第2の溶媒を混合して第2の溶液を調製するステップと;前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合するステップと;前記混合物に超音波分散処理を行うステップとを含む、請求項13に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項22】
前記第1の溶媒が、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸エチル、イソ酪酸イソブチル、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン、及びアセトンから成る群から選択される少なくとも1つであり、前記第2の溶媒が水又はアルコール系溶媒である、請求項21に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【請求項23】
前記超音波分散処理を20Hz以上のエネルギーレベルで1時間以下の間行う、請求項21に記載のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液及び同分散液の調製方法に関する。
【0002】
[背景技術]
近年では、環境問題に関する懸念が増すにつれて、様々な家庭廃棄物の処理及びリサイクルに関する研究が活発に行われてきた。具体的には、安価であり優れた加工性を有するポリマー材料は、紙、フィルム、繊維、包装材料、ボトル、及び容器などの様々な製品を製造するのに広く使用されるが、これらの製品の寿命が尽きると、それらの製品が焼却される際に有害物質が排出されることがあり、自然に完全分解するのに製品のタイプに応じて数百年を要する。
【0003】
したがって、機械的特性、耐油性、耐水性、及び加工性を向上させ、製品自体の寿命を延ばし、それにより廃棄物の量を削減しながら又は製品のリサイクル性を向上させながら、短時間のうちに分解されて環境適合性を向上させることが可能である、生分解性ポリマーに関する研究が継続する。
【0004】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、多数の微生物により産生され細胞内貯蔵物質として使用される、数種類のヒドロキシルカルボン酸で構成される生分解性ポリマーである。ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの従来の石油由来の合成ポリマーの物理特性と同様の物理特性を有し、完全な生分解性を示し、生体適合性に優れる。
【0005】
その一方で、紙、フィルム、繊維、包装材料、ボトル、容器などの様々な製品の耐用期間及びリサイクル性を向上させるために、強度、耐水性、及び耐油性などの機械的特性を向上させることが重要である。物性を向上させるために、製品の表面にコーティング層の形成方法が使用されることがあるが;コーティング層により生分解性及びリサイクル性が損なわれるという問題がある。したがって、分散性、コーティング性、加工性に優れ、優れた生分解性及び生体適合性により、環境適合性の生分解性分散液、並びにその調製方法の開発が必要とされている。
【0006】
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]韓国公開特許第2012-0103158号
【0007】
[発明の詳細な説明]
[技術課題]
したがって、本発明は、優れた生分解性及び生体適合性のおかげで環境適合性でありながら分散性、コーティング性、生産性、及び加工性を向上させることが可能なポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液、同分散液の調製方法を提供することを目的とする。
【0008】
[課題に対する解決策]
本発明の実施形態によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子を含み、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子の平均粒径は0.5μm~5μmであり、粒径偏差は±0.3μm以内である。
【0009】
本発明の別の実施形態による、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法は、粒子分散法、融解分散法、又は溶媒抽出法を使用してポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶媒中に分散させるステップを含み、分散されたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子の平均粒径は0.5μm~5μmであり、粒径偏差が±0.3μm以内である。
【0010】
[発明の有利な効果]
本発明の実施形態によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を、粒子分散法、融解分散法又は溶媒抽出法を使用して、溶媒中に分散させるステップを含む場合、分散性及び加工性に優れたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液を効果的に調製することができる。
【0011】
具体的には、このポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法により、平均粒径0.5μm~5μm、粒径偏差±0.3μm以内のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子を含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液を調製することができるため、分散性、分散安定性、加工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1~10のステップ(1)で調製されたPHAの写真である。
【
図2】実施例1~10で調製されたPHA分散液の写真である。
【
図3】比較例1~3で調製されたPHA分散液の写真である。
【
図4】本発明の実施形態による生分解性物品の図である。
【
図5】本発明の別の実施形態による生分解性物品の図である。
【0013】
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明を詳細に説明することにする。本発明は以下に示される開示に限定されず、本発明の趣旨が変更されない限り様々な形態に改変されてもよい。
【0014】
本明細書全体を通して、ある部材がある要素を「含む」ことに言及する場合、具体的に別段の記載がない限り、他の要素が排除されるのではなくむしろ他の要素が含まれてもよいことが理解される。
【0015】
本明細書において使用される成分の量、反応条件などに関するあらゆる数字及び表現は、別段の指定がない限り、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。
【0016】
本明細書において、ある要素が別の要素の「上」又は「下」に形成されることが述べられる場合、1つの要素が別の要素の「上」又は「下」に直接形成されることだけでなく、他の要素(複数可)を間に挟んで1つの要素が別の要素の上又は下に間接的に形成されることも意味する。
【0017】
本明細書全体を通して、第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するのに使用される。しかし構成要素はその用語によって制限されるべきではない。その用語は1つの構成要素を別のものと区別する目的のみのために使用される。
【0018】
本明細書において、各構成要素の「一方」及び「他方」又は「上」及び「下」の言及は、図面に基づいて説明される。これらの用語は単に構成要素を区別するためのものであり、実際の使用においては互いに入れ替えてもよい。
【0019】
さらに、説明のために、添付の図面における個々の要素のサイズは誇張して図示されることがあり、実際のサイズを示していない。さらに、同じ参照番号は明細書全体をとして同じ要素を指す。
【0020】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液
本発明の実施形態によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子を含んでおり、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子の平均粒径は0.5μm~5μmであり、粒径偏差は±0.3μm以内である。
【0021】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、10重量%~60重量%の固形分を有してもよい。例えば、PHA分散液の固形分は、10重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~50重量%、30重量%~45重量%、又は35重量%~45重量%であってもよい。
【0022】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、100mPa・s~1,000mPa・sの粘度を有していてもよい。例えば、PHA分散液の粘度は、100mPa・s~1,000mPa・s、100mPa・s~900mPa・s、100mPa・s~650mPa・s、105mPa・s~500mPa・s、105mPa・s~400mPa・s、110mPa・s~350mPa・s、又は115mPa・s~315mPa・sであってもよい。
【0023】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、100%~400%のヘイズを有してもよい。例えば、PHA分散液のヘイズは、100%~400%、150%~380%、180%~360%、200%~350%、215%~345%、233%~338%、235%~335%、又は236%~331%であってもよい。
【0024】
さらに、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、40以上のL*、0.44未満のa*、6以下のb*を有してもよい。例えば、PHA分散液のL*は、40以上、42以上、45以上、48以上、40~60、42~58、45~55又は48~55であってもよく、a*は、0.44未満、0.43以下、0.42以下、0.4以下、0.01~0.44未満、0.05~0.42、又は0.08~0.4であってもよく、また、b*は、6以下、5.8以下、5.6以下、3~6、3.3~5.8、3.5~5.6又は3.7~5.6であってもよい。
【0025】
L*、a*及びb*は、国際照明委員会(CIE)によって定められた色座標であり、色をL(明度)、a(緑~赤の補色)、b(黄~青の補色)で表す。L*、a*及びb*は、分光光度計CM-5(製造業者:Konica Minolta)を使用して測定されてもよい。
【0026】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、ASTM E313規格に準拠して測定することができる5~20のイエローインデックス(Y.I.)を有してもよい。例えば、PHA分散液のイエローインデックス(Y.I.)は、5~20、6~18、7~15、9~13、9.1~12.99又は9.1~12.95であってもよい。
【0027】
PHA分散液のヘイズ、L*、a*、及びb*などの色特性、並びにイエローインデックスが上記範囲を満たす場合、PHA分散液は優れた色特性を有し、黄変防止効果を向上させることができる。
【0028】
さらに、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、-10mV以下のゼータ電位を有してもよい。例えば、PHA分散液のゼータ電位は、-10mV以下、-15mV以下、-20mV以下、-25mV以下、又は-30mV以下であってもよく、-150mV以上、-125mV以上、-100mV以上、又は-80mV以上であってもよい。PHA分散液のゼータ電位が上記範囲を満たす場合、PHA分散液内の粒子間分散安定性、高含量のPHA分散液の分散性をさらに向上させることができる。
【0029】
ゼータ電位(又は界面動電位)とは、粒子を取り囲むイオンの電荷と分散液の電荷との間の電位差を指す。具体的には、粒子の周囲に存在する液層には2つのタイプがある。イオンが強い境界を形成している内部領域(ステム層:電子層)と、イオンが比較的弱い結合を形成している外部領域(ディフューズ)である。外部領域(ディフューズ)は、イオンと粒子が安定に存在する理論上の境界内の領域である。例えば、粒子が移動するとき、内部領域のイオンは所定の境界内で移動する。他方では、所定の境界の外側に存在するイオンは、粒子に関係なく、巨大な分散媒のように独立して移動する。この境界の電位がゼータ電位である。
【0030】
ゼータ電位は、ZetaPlus Zeta Potential Analyzer(製造業者:Brookhaven Instruments)、Zeta Sizer(製造業者:Melbourne Instrument)などにより測定されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、3~11又は4~10のpHを有してもよい。
【0032】
さらに、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液は、10%~99%の光透過率を有してもよい。例えば、PHA分散液の光透過率は、PHA分散液から形成される生分解性コーティング層の光透過率であってもよく、10%~99%、10%~90%、15%~95%、20%~90%、又は25%~85%であってもよい。
【0033】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、従来の石油由来の合成ポリマー、例えばポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの物理特性と同様の物理特性を有し、完全な生分解性を示し、生体適合性に優れている。
【0034】
具体的には、PHAは、微生物細胞内に蓄積する天然熱可塑性ポリエステルポリマーである。PHAは生分解性物質であるので、分解させることができ、最終的には毒性廃棄物を生じることなく二酸化炭素、水、及び有機廃棄物に分解させることができる。特に、PHAは土壌中及び海中であっても生分解性であるので、PHAを含む分散液、及びPHAを使用して調製された生分解性物品は環境適合性の特性を有し得る。このように、PHAを含む分散液及びPHAを含む分散液を使用して調製された生分解性物品は、生分解性で環境適合性であるので、様々な分野で利用できるという大きな利点を有する。
【0035】
本発明の実施形態によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子を含む場合、機械的特性を低下させずに生分解性を向上させることができる。
【0036】
PHAは、生細胞内での1種又は複数のモノマー繰り返し単位の酵素触媒重合により形成され得る。
【0037】
PHAは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)コポリマー(以下、PHAコポリマーと呼ぶ)、具体的には、異なる繰り返し単位がポリマー鎖にランダムに分散しているコポリマーであってもよい。
【0038】
PHAに含有され得る繰り返し単位の例としては、2-ヒドロキシブチレート、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブチレート(以下、3-HBと呼ぶ)、3-ヒドロキシプロピオネート(以下、3-HPと呼ぶ)、3-ヒドロキシバレレート(以下、3-HVと呼ぶ)、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3-HHと呼ぶ)、3-ヒドロキシヘプタノエート(以下、3-HHepと呼ぶ)、3-ヒドロキシオクタノエート(以下、3-HOと呼ぶ)、3-ヒドロキシノナノエート(以下、3-HNと呼ぶ)、3-ヒドロキシデカノエート(以下、3-HDと呼ぶ)、3-ヒドロキシドデカノエート(以下、3-HDdと呼ぶ)、4-ヒドロキシブチレート(以下、4-HBと呼ぶ)、4-ヒドロキシバレレート(以下、4-HVと呼ぶ)、5-ヒドロキシバレレート(以下、5-HVと呼ぶ)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(以下、6-HHと呼ぶ)が挙げられる。PHAは、上記から選択される1種又は複数の繰り返し単位を含んでもよい。
【0039】
具体的には、PHAは、3-HB、4-HB、3-HP、3-HH、3-HV、4-HV、5-HV、及び6-HHから成る群から選択される1種又は複数の繰り返し単位を含んでもよい。
【0040】
より具体的には、PHAは4-HB繰り返し単位を含んでもよい。すなわち、PHAは4-HB繰り返し単位を含有するPHAコポリマーであってもよい。
【0041】
さらに、PHAは異性体を含んでもよい。例えば、PHAは、構造異性体、エナンチオマー、又は幾何異性体を含んでもよい。具体的には、PHAは構造異性体を含んでもよい。
【0042】
さらに、PHAは、4-HB繰り返し単位を含み、4-HB繰り返し単位とは異なる1種の繰り返し単位、又は互いに異なる2、3、4、5、6種、若しくはそれを超える繰り返し単位をさらに含む、PHAコポリマーであってもよい。例えば、PHAは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート(以下、3HB-co-4HBと呼ぶ)であってもよい。
【0043】
本発明の実施形態によれば、PHAコポリマー中に含有される4-HB繰り返し単位の含量を調整することが重要である。
【0044】
具体的には、本発明において望まれる物理特性を実現するために、特に、土壌中及び海中における生分解性を高め、機械的特性を低下させずに優れた分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、耐水性、加工性、及び生産性を実現するために、PHAコポリマー中に含有される4-HB繰り返し単位の含量を調整することが非常に重要である。
【0045】
より具体的には、PHAコポリマーは、PHAコポリマーの総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。例えば、4-HB繰り返し単位の含量は、PHAコポリマーの総重量を基準として0.1重量%~60重量%、0.1重量%~55重量%、0.5重量%~60重量%、0.5重量%~55重量%、1重量%~60重量%、1重量%~55重量%、1重量%~50重量%、2重量%~55重量%、3重量%~55重量%、3重量%~50重量%、5重量%~55重量%、5重量%~50重量%、10重量%~55重量%、10重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~29重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、2重量%~20重量%、2重量%~23重量%、3重量%~20重量%、3重量%~15重量%、4重量%~18重量%、5重量%~15重量%、8重量%~12重量%、9重量%~12重量%、15重量%~55重量%、15重量%~50重量%、20重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~55重量%、25重量%~50重量%、35重量%~60重量%、40重量%~55重量%、又は45重量%~55重量%であってもよい。
【0046】
4-HB繰り返し単位の含量が上記の範囲を満たす場合に、土壌中及び海中における生分解性を高め、機械的特性を低下させずに分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、加工性、及び生産性などの特性をさらに向上させることが可能である。
【0047】
本発明の実施形態によれば、PHAは、結晶化度が調整されるPHAコポリマーであってもよい。具体的には、PHAは1つ又は複数の4-HB繰り返し単位を含み、4-HB繰り返し単位の含量はPHAの結晶化度を調整するために制御されてもよい。
【0048】
さらに、PHAは、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)、3-ヒドロキシヘキサノエート(3-HH)、3-ヒドロキシバレレート(3-HV)、4-ヒドロキシバレレート(4-HV)、5-ヒドロキシバレレート(5-HV)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(6-HH)から成る群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含む、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)コポリマーであってもよい。
【0049】
具体的には、PHAコポリマーは4-HB繰り返し単位を含んでもよく、3-HB繰り返し単位、3-HP繰り返し単位、3-HH繰り返し単位、3-HV繰り返し単位、4-HV繰り返し単位、5-HV繰り返し単位、及び6-HH繰り返し単位から成る群から選択される1種又は複数の繰り返し単位をさらに含んでもよい。より具体的には、PHAコポリマーは、4-HB繰り返し単位及び3-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0050】
例えば、PHAコポリマーは、PHAコポリマーの総重量を基準として20重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、又は75重量%以上、及び99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、91重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は55重量%以下の量の3-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0051】
結晶化度が調整されているPHAは、その分子構造内で不規則性が増加する場合にその結晶化度及びアモルファス性が調整されるものであってもよい。具体的には、モノマーの種類若しくは比率、又は異性体の種類若しくは含量が調整されてもよい。
【0052】
本発明の実施形態によれば、PHAは、異なる結晶化度を有する2種以上のPHAを含んでもよい。具体的には、PHAは、特定の範囲内の4-HB繰り返し単位の含量を有するように、異なる結晶化度を有する2種以上のPHAを混合することにより調製されてもよい。
【0053】
具体的には、PHAは半結晶性PHAである第1のPHAを含んでもよい。
【0054】
結晶化度が制御された半結晶性PHA(以下、scPHAと呼ぶ)として、第1のPHAは、0.1重量%~30重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。例えば、第1のPHAは、0.1重量%~30重量%、0.5重量%~30重量%、1重量%~30重量%、3重量%~30重量%、1重量%~28重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、1重量%~15重量%、2重量%~25重量%、3重量%~25重量%、3重量%~24重量%、5重量%~24重量%、7重量%~20重量%、10重量%~20重量%、15重量%~25重量%、又は15重量%~24重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0055】
第1のPHAのガラス転移温度(Tg)は、-30℃~80℃、-30℃~10℃、-25℃~5℃、-25℃~0℃、-20℃~0℃、又は-15℃~0℃であってもよい。第1のPHAの結晶化温度(Tc)は、70℃~120℃、75℃~120℃、又は75℃~115℃であってもよい。第1のPHAの融点(Tm)は、105℃~165℃、110℃~160℃、115℃~155℃、又は120℃~150℃であってもよい。
【0056】
第1のPHAは、10,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,100,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~600,000g/モル、又は200,000g/モル~400,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。
【0057】
さらに、PHAは、結晶化度が制御されたアモルファスPHA樹脂である、第2のPHAを含んでもよい。
【0058】
結晶化度が制御されたアモルファスPHA(以下、aPHAと呼ぶ)として、第2のPHAは、15重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~50重量%、30重量%~50重量%、35重量%~50重量%、又は20重量%~40重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0059】
第2のPHA樹のガラス転移温度(Tg)は、-45℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、又は-30℃~-20℃であってもよい。
【0060】
さらに、第2のPHAの結晶化温度(Tc)は、測定されなくてもよく、又は60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、若しくは75℃~115℃であってもよい。第2のPHAの融点(Tm)は、測定されてなくてもよく、又は100℃~170℃、100℃~160℃、110℃~160℃、若しくは120℃~150℃であってもよい。
【0061】
第2のPHA樹脂は、10,000g/モル~1,200,000g/モル、10,000g/モル~1,000,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、300,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、500,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、又は200,000g/モル~400,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。
【0062】
第1のPHA及び第2のPHAは、4-HB繰り返し単位の含量に関して区別することができ、上記のガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、及び融点(Tm)から成る群から選択される少なくとも1つの特性を有してもよい。具体的には、第1のPHA及び第2のPHAは、4-HB繰り返し単位の含量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tg)、融点(Tm)などに関して区別することができる。
【0063】
本発明の実施形態によれば、PHAは、第1のPHAを含んでもよいか、又は第1のPHAと第2のPHAの両方を含んでもよい。
【0064】
具体的には、PHAが、半結晶性PHAである第1のPHA、又は半結晶性PHAである第1のPHA及びアモルファスPHAである第2のPHAの両方を含む場合、より具体的には、第1のPHA及び第2のPHAの含量が調整される場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、及び加工性をさらに向上させることが可能である。
【0065】
さらに、PHAのガラス転移温度(Tg)は、-45℃~80℃、-35℃~80℃、-30℃~80℃、-25℃~75℃、-20℃~70℃、-35℃~5℃、-25℃~5℃、-35℃~0℃、-25℃~0℃、-30℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、-20℃~0℃、-15℃~0℃、又は-15℃~-5℃であってもよい。
【0066】
PHAの結晶化温度(Tc)は、測定されなくてもよく、又は60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、75℃~120℃、75℃~115℃、75℃~110℃、若しくは90℃~110℃であってもよい。
【0067】
PHAの融点(Tm)は、測定されなくてもよく、又は100℃~170℃、105℃~170℃、105℃~165℃、110℃~160℃、115℃~155℃、110℃~150℃、120℃~150℃、若しくは120℃~140℃であってもよい。
【0068】
さらに、PHAは、10,000g/モル~1,200,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。例えば、PHA樹脂の重量平均分子量は、50,000g/モル~1,200,000g/モル、100,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、250,000g/モル~1,150,000g/モル、300,000g/モル~1,100,000g/モル、350,000g/モル~1,000,000g/モル、350,000g/モル~950,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~700,000g/モル、250,000g/モル~650,000g/モル、200,000g/モル~400,000g/モル、300,000g/モル~800,000g/モル、300,000g/モル~600,000g/モル、500,000g/モル~1,200,000g/モル、500,000g/モル~1,000,000g/モル、550,000g/モル~1,050,000g/モル、550,000g/モル~900,000g/モル,600,000g/モル~900,000g/モル、又は500,000g/モル~900,000g/モルであってもよい。
【0069】
PHAは、示差走査熱量計(DSC)により測定される、90%以下の結晶化度を有してもよい。例えば、PHAの結晶化度は示差走査熱量測定法により測定されてもよく、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、又は70%以下であってもよい。
【0070】
本発明の実施形態によれば、PHA分散液はPHA粒子を含む。具体的には、PHA分散液は、PHAから得られたPHA粒子を含んでもよい。
【0071】
PHA粒子は、0.5μm~5μmの平均粒径を有してもよい。例えば、PHA粒子の平均粒径は、0.5μm~5μm、0.5μm~4.5μm、0.7μm~4μm、1μm~3.5μm、又は1.2μm~3.5μmであってもよい。
【0072】
さらに、PHA粒子は、±0.3μm以内の粒径偏差を有してもよい。例えば、PHA粒子の粒径偏差は、±0.2μm以内、±0.15μm以内、±0.1μm以内、又は±0.05μm以内であってもよい。
【0073】
PHA粒子の平均粒径及び粒径偏差は、ナノ粒度分析計(例えば、Zetasizer Nano ZS)により測定されてもよい。具体的には、PHA粒子は、25℃の温度及び175°の測定角度においてZetasizer Nano ZS(製造業者:Marven)を使用した動的光散乱(DLS)による平均粒径及び粒径偏差の測定が行われる。ここで、0.5の信頼区間における多分散指数(PDI)により得られるピークの値を粒径と見なす。
【0074】
PHAは3未満の多分散指数(PDI)を有してもよい。例えば、PHAの多分散指数は、3未満、2.8以下、2.5以下、2.5未満、2.1以下又は2以下であってもよい。
【0075】
PHAの平均粒径、粒径偏差、多分散指数が上記範囲を満たす場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、加工性をさらに向上させることができる。
【0076】
さらに、PHAは、機械的又は物理的な方法を使用した細胞破壊により得ることができるか、又は非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得ることができる。具体的には、PHAは微生物細胞内に蓄積する天然熱可塑性ポリエステルポリマーであり比較的大きい平均粒径を有するので、分散性、コーティング性、及び加工性を向上させるために破壊プロセスによってPHAを得てもよい。
【0077】
本発明の別の実施形態によれば、PHA分散液は生分解性ポリマーをさらに含んでもよい。
【0078】
具体的には、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、熱可塑性デンプン(TPS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びポリカプロラクトン(PCL)から成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。PHA分散液が生分解性ポリマーをさらに含む場合、機械的特性などの特性を制御するのにより有利となり得る。
【0079】
本発明の別の実施形態によれば、PHA分散液は界面活性剤を含んでもよい。PHA分散液が界面活性剤を含む場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、及び加工性をさらに向上させることができる。
【0080】
具体的に、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、リン酸系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、ウレタン系界面活性剤、エポキシ系界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤、又はカルボン酸、アミン、イソシアネート、及びそれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1つを含む高分子界面活性剤であってもよい。
【0081】
例えば、界面活性剤は、ポリビニルアルコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルポリエチレンアルキルエーテル、アルキルベンゼンスルホネート、ノニルフェノールエーテルスルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、アルキルホスフェート、グリセリルエステル、及びポリプロピレングリコールエステルから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0082】
PHA分散液は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~10重量%の量で界面活性剤を含んでもよい。例えば、界面活性剤の含量は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.05重量%~5重量%、0.07重量%~3.5重量%、0.1重量%~5重量%、1重量%~5重量%、1.5重量%~5重量%、0.1重量%~2.5重量%、又は0.01重量%~3重量%であってもよい。
【0083】
PHA分散液が従来のものよりも少量の界面活性剤しか含まないにもかかわらず、優れた分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、及び加工性を有する。
【0084】
PHA分散液は、レオロジー改質剤、抗酸化剤、安定化剤、抗菌剤、消泡剤、防腐剤、及びpH調整剤から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含んでもよい。
【0085】
レオロジー改質剤は、ガム、粘土鉱物、セルロース誘導体、セルロース系改質剤、アクリル系改質剤、及びウレタン系改質剤から成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。例えば、レオロジー改質剤は、ガム、粘土鉱物、若しくはセルロース系改質剤のうちの1つであってもよく、又は2種類の混合物、例えばガム及び粘土鉱物、若しくはガム及びセルロース系改質剤などであってもよい。
【0086】
ガムは、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストガム、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、ガティガム、タラガム、タマリンドガム、及びトラガカントガムから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。粘土鉱物は、ベントナイト、スメクタイト、エーテルパルジャイト、モンモリロナイト、カオリナイト、セリサイト、及びイライトから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0087】
セルロース誘導体は、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウムから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。セルロース系改質剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びメチルヒドロキシプロピルセルロースから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0088】
さらに、レオロジー改質剤は、分岐状、直線状、板状、不規則、球状、又は棒状の形状を有してもよい。レオロジー改質剤が上記の形状を有する場合、コーティング性、加工性、及び生産性をさらに向上させることができる。
【0089】
レオロジー改質剤は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.01重量%~4重量%、0.01重量%~3重量%、0.02重量%~2重量%、0.02重量%~1.5重量%、又は0.03重量%~1重量%の量で使用されてもよい。
【0090】
抗酸化剤は、オゾン又は酸素による分解を防ぐため、保存中の酸化を防ぐため、及び物理特性の低下を防ぐための添加剤である。本発明の効果が損なわれない限り、任意の一般的に使用される抗酸化剤を使用してもよい。
【0091】
具体的には、抗酸化剤は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤及びホスファイト系(リン系)抗酸化剤から成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0092】
例えば、ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、例えば、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、及び3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンから成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0093】
さらに、ホスファイト系(リン系)抗酸化剤は、例えば、トリス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトール-ジホスファイト、ビス-(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトール-ジホスファイト、ジステアリル-ペンタエリトリトール-ジホスファイト、[ビス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニル、及びN,N-ビス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキシホスフェピン-6-イル]オキシ]-エチル]エタンアミンから成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0094】
抗酸化剤は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.2重量%~4.5重量%、0.2重量%~4重量%、又は0.5重量%~3重量%の量で使用されてもよい。
【0095】
安定化剤は、酸化及び熱から保護するため、並びに色変化を防ぐための添加剤である。本発明の効果が損なわれない限り、任意の一般的に使用される安定化剤を安定化剤として使用してもよい。
【0096】
具体的には、安定化剤は、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフィン、リン酸、及び亜リン酸から成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0097】
安定化剤は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.2重量%~4.5重量%、0.2重量%~4重量%、又は0.5重量%~3重量%の量で使用されてもよい。
【0098】
抗菌剤は、有機酸、バクテリオシン、及びカルシウム剤若しくはコロイド、又は銀などの元素を含有する化合物から成る群から選択される少なくとも1つの天然抗菌剤であってもよい。抗菌剤は、ポリリジン、ベンゾイソチアゾリノン、酢粉末、キトオリゴ糖、過酸化水素、エチレンジアミン四酢酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、プロピオン酸、プロピオン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、1,2-ヘキサンジオール、及び1,2-オクタンジオールから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0099】
抗菌剤は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~5重量%、0.01重量%~3重量%、0.01重量%~1重量%、0.1重量%~1重量%、0.2重量%~1重量%、又は0.3重量%~1重量%の量で使用されてもよい。
【0100】
さらに、消泡剤は、発泡を防ぐ又は低減するための添加剤である。本発明の効果が損なわれない限り、任意の一般的に使用される消泡剤を消泡剤として使用してもよい。
【0101】
例えば、消泡剤は、アルコール系消泡剤、極性化合物系消泡剤、無機粒子系消泡剤、及びシリコーン系消泡剤から成る群から選択される少なくとも1つであってもよく、又はエチルアルコール、2-エチルヘキサノール、ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、シリコーンペースト、シリコーンエマルション、シリコーン処理粉末、フルオロシリコーン、ジステアリン酸、エチレングリコール、及び天然ワックスから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0102】
消泡剤は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.0001重量%~5重量%、0.0001重量%~3重量%、0.0001重量%~1重量%、0.001重量%~1重量%、又は0.001重量%~0.5重量%の量で使用されてもよい。
【0103】
さらに、保存料は、ヒドロキシアセトフェノン、ツボクサ抽出物、1,2-ヘキサンジオール、及び1,3-ブタンジオールから成る群から選択される少なくとも1つの天然保存料であってもよく、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及び安息香酸カリウムから成る群から選択される少なくとも1つの保存料であってもよいが、それらに限定されない。
【0104】
保存料は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.2重量%~4.5重量%、0.2重量%~4重量%、又は0.5重量%~3重量%の量で使用されてもよい。
【0105】
さらに、pH調整剤は、pHを調整するために溶液へ添加される物質を指す。pH調整剤は、pHを低下させるためのpH低下剤及びpHを上昇させるためのpH上昇剤の両方を含んでもよい。具体的には、pH低下剤は、硫酸及び塩酸などの強酸性物質又はアンモニウム塩水溶液であってもよく、pH上昇剤は、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及び水酸化カリウム、又は酢酸塩水溶液などの塩基性物質であってもよいが、それらに限定されない。
【0106】
例えば、pH上昇剤は、酢酸、乳酸、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムから成る群から選択される少なくとも1つのであってもよい。
【0107】
pH調整剤は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.2重量%~4.5重量%、0.2重量%~4重量%、又は0.5重量%~3重量%の量で使用されてもよい。
【0108】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法
本発明の別の実施形態によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法は、粒子分散法、融解分散法、又は溶媒抽出法を使用してポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶媒中に分散させるステップを含み、分散されたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子の平均粒径が0.5μm~5μmであり、粒径偏差が±0.3μm以内である。
【0109】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、機械的又は物理的な方法を使用した細胞破壊により得ることができる。或いは、非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得ることができる。
【0110】
機械的又は物理的な方法を使用した細胞破壊における破壊されたPHAの平均粒径は、非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊における破壊されたPHAの平均粒径よりも大きく、したがって分散性は低くなる。しかしながら、本発明によるPHA分散液の調製方法は、機械的又は物理的な方法を使用して細胞を破壊した場合でも、優れた分散性を有することができる。
【0111】
さらに、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法は、撹拌機、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、及びコロイドミルから成る群から選択される少なくとも1つの装置を使用して、又は高せん断、超音波処理、及び膜乳化から成る群から選択される少なくとも1つの方法により行われてもよい。
【0112】
粒子分散法
本発明の別の実施形態によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法は、(1-1)物理的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を調製するステップと;(1-2)粒子分散法を使用して、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶媒中に分散させるステップとを含んでもよい。
【0113】
最初に、物理的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が調製されてもよい(ステップ(1-1))。
【0114】
細胞破壊とPHAについての詳細は上述された通りである。
【0115】
さらに、ステップ(1-1)で調製されたPHAは、微粒子の形態であってもよい。具体的には、ステップ(1-1)で機械的又は化学的方法を使用した細胞破壊により得られたPHAは、微粒子の形態の粉末であってもよい。
【0116】
その後、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、粒子分散法(ステップ(1-2))を使用して、溶媒に分散させることができる。
【0117】
具体的には、ステップ(1-2)は、界面活性剤をステップ(1-1)で調製されたPHAに添加することを含んでもよい。例えば、ステップ(1-2)は、界面活性剤を、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.05重量%~5重量%、0.07重量%~3.5重量%、0.1重量%~5重量%、1重量%~5重量%、1.5重量%~5重量%、0.1重量%~2.5重量%、又は0.01重量%~3重量%の量で添加することを含んでもよい。
【0118】
界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、リン酸系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、ウレタン系界面活性剤、エポキシ系界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から成る群から選択される少なくとも1つ、又はカルボン酸、アミン、イソシアネート及びそれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1つを含む高分子界面活性剤であってもよい。
【0119】
例えば、界面活性剤は、ポリビニルアルコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルポリエチレンアルキルエーテル、アルキルベンゼンスルホネート、ノニルフェノールエーテルスルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、アルキルホスフェート、グリセリルエステル、及びポリプロピレングリコールエステルから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。粒子分散法において、ポリビニルアルコール界面活性剤は、高い溶解性を有し、速い反応速度を有し、有害性を低減でき、生産性及び加工性を向上できるため好ましいが、これに限定されるものではない。
【0120】
さらに、分散ステップは、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%の割合で20分~60分間の高速分散処理により行われてもよい。例えば、分散ステップは、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%、65%~75%、又は60%~70%の割合で、20分~60分間、25分~55分間、25分~45分間、又は25分~40分間の高速分散処理により行われてもよい。
【0121】
或いは、分散ステップは、20Hz以上のエネルギーレベルで1時間以下の間の超音波処理により行われてもよい。例えば、分散ステップは、20Hz以上、25Hz以上、30Hz以上、40Hz以上、又は50Hz以上のエネルギーレベルで、1時間以下、55分以下、50分以下、又は45分以下、又は5分以上、10分以上、15分以上、又は20分以上の間の超音波処理により行われてもよい。
【0122】
分散ステップが上記条件で行われる場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、及び加工性をさらに向上させることができる。
【0123】
本発明の別の実施形態によれば、分散ステップは第1の分散処理を行うステップと;第2の分散処理を行うステップとを含んでもよい。
【0124】
具体的には、分散ステップは、第1の分散処理が行われた第1の水性分散液の濾過、洗浄及び第2の分散処理により行われてもよい。
【0125】
より具体的には、分散ステップでは、ステップ(1-1)で物理的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHA、PHAと界面活性剤との混合物、又はPHAと界面活性剤と溶媒との混合物は第1の分散処理が行われて第1の水性分散液を産生してもよく;第1の水性分散液は濾過され洗浄され、さらにこれに溶媒が添加され、第2の分散処理が行われて、PHA分散液を調製してもよい。
【0126】
濾過ステップは、紙、織布、不織布、スクリーン、ポリマー膜、又はウェッジワイヤーなどの濾材を使用して行われてもよく、吸引フィルター、加圧フィルター、膜分離器、真空フィルター、減圧真空フィルター、工業用フィルタープレス、チューブプレス、プレートプレス、ゲージプレス、ベルトプレス、スクリュープレス、ディスクプレス、加圧機能プレス、又は遠心分離機を使用して行われてもよい。
【0127】
洗浄ステップは、溶媒を使用して行われてもよい。具体的には、洗浄ステップで使用される溶媒は、水、蒸留水、又は親水性溶媒、又は水と蒸留水と親水性溶媒との混合物であってもよい。例えば、親水性溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、及びシクロヘキサノールから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0128】
さらに、濾過され洗浄された第1の水性分散液に添加された溶媒は、水、蒸留水又は親水性溶剤であってもよい。例えば、第1の水性分散液に添加された溶媒は、洗浄ステップで使用される溶媒と同じであってもよい。
【0129】
第1の分散ステップ及び第2の分散ステップは、最大回転速度毎分(rpm)の60%から80%の割合でホモジナイザーを使用して、20分~60分間の分散処理により行われてもよい。例えば、第1の分散ステップ及び第2の分散ステップはそれぞれ、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%、65%~75%、又は60%~70%の割合で、20分~60分間、25分~55分間、25分~45分間、又は25分~40分間の分散処理により行われてもよい。
【0130】
また、分散ステップは、化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAを分散させることにより行われてもよい。具体的には、分散ステップでは、ステップ(1-1)で化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHA、このPHAと界面活性剤との混合物、又はこのPHAと界面活性剤と溶媒との混合物は、分散処理が行われて、PHA分散液が調製されてもよい。
【0131】
より具体的には、機械的又は物理的な方法を使用した細胞破壊における破壊されたPHAの平均粒径は、非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊における破壊されたPHAの平均粒径よりも大きく、分散性が低いため、濾過、洗浄、及び第2の分散処理をさらに行うことが好ましい場合がある。しかしながら、ステップ(1-1)で非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAの平均粒径は比較的小さく、分散性が高いため、濾過、洗浄、及び第2の分散処理は、任意に行われてもよい。
【0132】
融解分散法
本発明の別の実施形態によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法は、(2-1)ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を調製するステップと;(2-2)融解分散法を使用して、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶媒中に分散させるステップとを含んでもよい。
【0133】
最初に、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が調製されてもよい(ステップ(2-1))。
【0134】
PHAについての詳細は、上述の通りである。
【0135】
融解分散法では、粒子分散法と異なり、ステップ(2-1)で調製されたPHAは、非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAでなくてもよい。具体的には、融解分散法はPHAを融解するステップを含むので、非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAの平均粒径よりも相対的に大きい平均粒径を有する、機械的又は物理的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAを使用する場合であっても、分散性をさらに向上させることができる。
【0136】
例えば、ステップ(2-1)で機械的又は物理的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAが、顆粒又はペレットなどの平均粒径の大きな形態であっても、分散性をさらに向上させることができる。
【0137】
その後、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、融解分散法(ステップ(2-2))を使用して、溶媒に分散されてもよい。
【0138】
具体的には、分散ステップは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を融解するステップと;融解したポリヒドロキシアルカノエートを界面活性剤と混合するステップと;溶媒中に融解したポリヒドロキシアルカノエートと界面活性剤の混合物を、高圧で分散させるステップとを含む。
【0139】
より具体的には、ステップ(2-1)で調製されたPHAが融解され、融解物又は融解物と界面活性剤との混合物は、第1の分散処理が行われて第1の水性分散液が産生されてもよく、さらに第1の水性分散液は溶媒中で高圧の第2の分散処理が行われてPHA分散液が調製されてもよい。
【0140】
融解ステップは、100℃~220℃で行われてもよい。例えば、融解ステップは、100℃~220℃、110℃~200℃、120℃~170℃、又は130℃~160℃で行われてもよい。
【0141】
さらに、融解物と混合される界面活性剤の含量は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.05重量%~5重量%、0.07重量%~3.5重量%、0.1重量%~5重量%、1重量%~5重量%、1.5重量%~5重量%、0.1重量%~2.5重量%、又は0.01重量%~3重量%であってもよい。
【0142】
具体的には、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、リン酸系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、ウレタン系界面活性剤、エポキシ系界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から成る群から選択される少なくとも1つ、又はカルボン酸、アミン、イソシアネート及びそれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1つを含む高分子界面活性剤であってもよい。
【0143】
例えば、界面活性剤は、ポリビニルアルコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルポリエチレンアルキルエーテル、アルキルベンゼンスルホネート、ノニルフェノールエーテルスルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、アルキルホスフェート、グリセリルエステル、及びポリプロピレングリコールエステルから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。融解分散法では、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤は、効率よくコア-シェルを形成し、ゼータ電位を望ましい範囲に制御できるので好ましい場合があるが、これに限定されるものではない。
【0144】
第1の分散処理は、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%の割合で、20分~60分間の分散処理により行われてもよい。例えば、第1の分散ステップは、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%、65%~75%、又は60%~70%の割合で、20分~60分間、25分~55分間、25分~45分間、又は25分~40分間の分散処理により行われてもよい。
【0145】
また、高圧での第2の分散処理は、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%の割合で20分~60分間の高圧分散処理により行われてもよい。例えば、高圧での第2の分散ステップは、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%、65%~75%、又は60%~70%の割合で、20分~60分間、25分~55分間、25分~45分間、又は25分~40分間の高圧分散処理により行われてもよい。
【0146】
高圧での第2の分散処理に使用する溶媒は、水、蒸留水又は親水性溶剤であってもよい。具体的には、溶媒は、水、蒸留水、又は親水性溶媒、又は水と蒸留水と親水性溶媒との混合物であってもよい。例えば、親水性溶剤は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、及びシクロヘキサノールから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0147】
溶媒抽出法
本発明の別の実施形態によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液の調製方法は、(3-1)ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を調製するステップと;(3-2)溶媒抽出法を使用して、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶媒中に分散させるステップとを含んでもよい。
【0148】
最初に、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が調製されてもよい(ステップ(3-1))。
【0149】
PHAについての詳細は、上述の通りである。
【0150】
溶媒抽出法では、粒子分散法とは異なり、ステップ(3-1)で調製されるPHAは、非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAでなくてもよい。具体的には、溶媒抽出法は、PHAを特定の第1の溶媒と混合して第1の溶液を調製するステップを含むので、非機械的又は化学的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAの平均粒径よりも相対的に大きい平均粒径を有する、機械的又は物理的な方法を使用した細胞破壊により得られたPHAを使用する場合であっても、分散性をさらに向上させることができる。
【0151】
例えば、機械的又は物理的な方法を使用した細胞破壊によりステップ(3-1)で得られたPHAが、顆粒又はペレットなどの平均粒径の大きな形態であっても、分散性をさらに向上させることができる。
【0152】
その後、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、溶媒抽出法(ステップ(3-2))を使用して、溶媒に分散されてもよい。
【0153】
具体的には、分散ステップは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と第1の溶媒を混合して第1の溶液を調製するステップと;界面活性剤と第2の溶媒を混合して第2の溶液を調製するステップと;第1の溶液と第2の溶液を混合するステップと;混合物に超音波分散処理を行うステップとを含んでもよい。
【0154】
第1の溶媒は、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸エチル、イソ酪酸イソブチル、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン、及びアセトンから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0155】
第1の溶媒としてPHAとの溶解性が高い溶媒を使用することで、分散性を高めることができる。PHAの溶解性が高いので、クロロホルムが好ましい場合があるが、これに限定されるものではない。
【0156】
第1の溶液の調製ステップでは、第1の溶媒とPHAの重量比は、1:9、1.5:8.5、2:8又は3:7であってもよい。
【0157】
第2の溶媒は、水、蒸留水又は親水性溶剤であってもよい。具体的には、溶媒は、水、蒸留水、又は親水性溶媒、又は水と蒸留水と親水性溶媒との混合物であってもよい。例えば、親水性溶剤は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、及びシクロヘキサノールから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0158】
第2の溶液の調製ステップで混合される界面活性剤の含量は、PHA分散液の総重量を基準として固形分ベースで0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.05重量%~5重量%、0.07重量%~3.5重量%、0.1重量%~5重量%、1重量%~5重量%、1.5重量%~5重量%、0.1重量%~2.5重量%、又は0.01重量%~3重量%であってもよい。
【0159】
具体的には、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、リン酸系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、ウレタン系界面活性剤、エポキシ系界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から成る群から選択される少なくとも1つ、又はカルボン酸、アミン、イソシアネート及びそれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1つを含む高分子界面活性剤であってもよい。
【0160】
例えば、界面活性剤は、ポリビニルアルコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルポリエチレンアルキルエーテル、アルキルベンゼンスルホネート、ノニルフェノールエーテルスルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、アルキルホスフェート、グリセリルエステル、及びポリプロピレングリコールエステルから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。溶媒抽出法において、ポリビニルアルコール界面活性剤は、第2の溶媒、特に水又は蒸留水と迅速且つ高い溶解性を有するので、混合性を高めることができるので好ましい場合があるが、これに限定されるものではない。
【0161】
さらに、第2の溶液を調製するステップは、分散処理ステップをさらに含んでもよい。例えば、分散ステップは、ホモジナイザーを使用して、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%、65%~75%、又は60%~70%の割合で、20分~60分間、25分~55分間、25分~45分間、又は25分~40分間の分散処理により行われてもよい。
【0162】
その後、第1の溶液と第2の溶液との混合溶液は、20Hz以上のエネルギーレベルで1時間以下の間の超音波分散処理が行われてもよい。例えば、超音波分散処理は、20Hz以上、25Hz以上、30Hz以上、40Hz以上、又は50Hz以上のエネルギーレベルで、1時間以下、55分以下、50分以下、若しくは45分以下、又は5分以上、10分以上、15分以上、若しくは20分以上の超音波処理により行われてもよい。
【0163】
さらに、超音波分散処理ステップの後に、第1の溶液と第2の溶液との混合溶液を減圧蒸留するステップは、追加して行われてもよい。例えば、残留溶媒は、減圧蒸留を使用して、60℃以下、50℃以下、又は40℃以下で混合溶液から除去されてもよい。
【0164】
さらに、超音波分散処理ステップの後に、第1の溶液と第2の溶液の混合溶液を濾過、洗浄、再分散するステップが、追加して行われてもよい。具体的には、減圧蒸留により残留溶媒を除去した混合物は、濾過され洗浄された後、再分散するステップが、追加して行われてもよい。
【0165】
濾過ステップは、紙、織布、不織布、スクリーン、ポリマー膜、又はウェッジワイヤーなどの濾材を使用して行われてもよく、吸引フィルター、加圧フィルター、膜分離器、真空フィルター、減圧真空フィルター、工業用フィルタープレス、チューブプレス、プレートプレス、ゲージプレス、ベルトプレス、スクリュープレス、ディスクプレス、加圧機能プレス、又は遠心分離機を使用して行われてもよい。
【0166】
洗浄ステップ及び再分散ステップは、第2の溶媒を使用して行われてもよい。具体的には、洗浄ステップで使用される溶媒は、水、蒸留水、又は親水性溶媒、又は水と蒸留水と親水性溶媒との混合物であってもよい。
【0167】
さらに、ホモジナイザーを使用して、再分散は、最大回転速度毎分(rpm)の60%~80%、65%~75%、又は60%~70%の割合で、20分~60分間、25分~55分間、25分~45分間、又は25分~40分間の分散処理により行われてもよい。
【0168】
生分解性物品の調製方法
本発明の別の実施形態による生分解性物品の調製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液を調製するステップと;ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)分散液から生分解性コーティング層を形成するステップとを含む。
【0169】
PHA分散液の調製についての詳細は上記に記載される通りである。
【0170】
その後、生分解性コーティング層は、PHA分散液を使用して基材の一方の面に形成される。
【0171】
本発明の実施形態によれば、生分解性コーティング層を形成するステップは、PHA分散液を基材にコーティングし乾燥させることにより行われてもよい。
【0172】
基材は、基材の表面上に生分解性コーティング層を形成させることができる限り、限定されない。例えば、基材は、紙、クラフト紙、布、不織布、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエステルフィルム、例えばポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)など、並びにポリイミド(PI)フィルムから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0173】
具体的には、基材のコーティング性を高める観点から、基材は好ましくは単一材料の基材であってもよい。基材は、紙、クラフト紙、布、又は不織布であってもよいが、それらに限定されない。さらに、基材が紙又はクラフト紙を含む場合、他のプラスチック材料よりも良好な生分解性を有するので、環境適合性の包装材料を提供するのにより有利となり得る。
【0174】
基材は20μm以上の厚さを有してもよい。例えば、基材の厚さは、20μm以上、50μm以上、70μm以上、100μm以上、130μm以上、150μm以上、200μm以上、300μm以上、又は500μm以上であってもよい。
【0175】
さらに、基材は30g/m2~500g/m2の坪量を有してもよい。例えば、基材が紙、クラフト紙、織布、編み生地、又は不織布である場合、基材の坪量は、30g/m2~500g/m2、30g/m2~350g/m2、30g/m2~200g/m2、50g/m2~200g/m2、80g/m2~200g/m2、100g/m2~200g/m2、130g/m2~190g/m2、150g/m2~185g/m2、又は120g/m2~320g/m2であってもよい。
【0176】
一方で、バリア層が基材の少なくとも一方の面に配置されてもよい。水分バリア及び/又は酸素バリア特性を有するように、環境適合性のバリアフィルムが基材の表面にコーティングされてもよく、又は帯電防止特性又は接着特性を有する機能性コーティング層がさらに形成されてもよい。機能性コーティング層は、プライマーコーティング層及び接着コーティング層を含んでもよく、これらは本発明に望まれる効果を損なわない限り一般的に使用される物質及び物理特性を有してもよい。
【0177】
さらに、PHA分散液は5g/m2~100g/m2のコーティング量で基材上に塗布されてもよい。例えば、コーティング量は、5g/m2~100g/m2、5g/m2~85g/m2、5g/m2~70g/m2、8g/m2~60g/m2、9g/m2~50g/m2、又は10g/m2~40g/m2であってもよい。コーティング量が上記の範囲を満たす場合、コーティング性、生産性、及び加工性をさらに向上させることができる。
【0178】
さらに、コーティングを1回行って1層のコーティング層を形成させてもよく、又は2回以上行って複数のコーティング層を形成させてもよい。コーティング量は、コーティング層の所望の数に応じて上記の範囲内で調整することができる。具体的には、コーティング量は複数のコーティング層に使用される総量であってもよい。
【0179】
PHA分散液が基材上に塗布されたら、100℃~200℃において5秒~30分間乾燥させてもよい。例えば、乾燥は100℃~200℃、110℃~185℃、120℃~180℃、又は130℃~175℃において、5秒~30分間、10秒~25分間、20秒~20分間、30秒~15分間、又は40秒~10分間行われてもよい。
【0180】
生分解性コーティング層の形成は、当技術分野において一般に使用されるコーティングプロセスである限りにおいて、特に制限なく行われてもよい。例えば、生分解性コーティング層の形成は、グラビア印刷コーティング、スロットコーティング、ドクターブレードコーティング、スプレーコーティング、バーコーティング、スピンコーティング、又はインラインコーティングにより行われてもよいが、それらに限定されない。
【0181】
生分解性物品
本発明の別の実施形態による生分解性物品は、基材と;生分解性コーティング層とを含み、生分解性コーティング層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子を含み、分散されたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粒子の平均粒径は0.5μm~5μmであり、粒径偏差は±0.3μm以内である。
【0182】
図4は本発明の実施形態による生分解性物品を示す。
図5は本発明の別の実施形態による生分解性物品を示す。
【0183】
具体的には、
図4は、生分解性コーティング層(200)が基材(100)の一方の面に形成されている生分解性物品(1)を示す。
図5は、生分解性コーティング層(200)が基材(100)の両面に形成されている生分解性物品(1)を示す。
【0184】
生分解性物品が、基材の片面又は両面に生分解性コーティング層を含み、生分解性コーティング層が平均粒径0.5μm~5μm、粒度偏差±0.3μm以内のPHA粒子を含む場合、生分解性物品は優れた生分解性と生体適合性により環境適合性であり、優れた分散性、コーティング性、生産性、及び加工性を有することができる。
【0185】
基材についての詳細は上記に記載される通りである。
【0186】
さらに、生分解性コーティング層は、5μm~50μm、5μm~40μm、又は6μm~30μmの厚さを有してもよいが、これに限定されるものではない。
【0187】
生分解性コーティング層を含む生分解性物品は、包装材料、厚紙ボックス、ショッピングバッグ、使い捨ての食卓用品、包装容器、又は紙ストローであってもよいが、それらに限定されない。
【0188】
[発明を実施するための実施形態]
以下、以下の実施例を参照して本発明をより詳細に説明することにする。しかし以下の実施例は本発明を例証することを意図しており、実施例の範囲はそれらのみに限定されない。
【0189】
[実施例]
PHA分散液の調製
<粒子分散法>
【0190】
実施例1
(1)PHAの調製
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):800,000g/モル、多分散指数(PDI):2.0、製造業者:CJ)を調製した。ホモジナイザー(製品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix)を使用した物理粉砕によりPHA粉末を得た。
【0191】
(2)PHA分散液の調製
1-リットルガラスビーカーに30重量部のPHA粉末、界面活性剤として10%の濃度を有する20重量部のポリビニルアルコール(PVA、製造業者:Kuraray、加水分解率:80%)、及び50重量部の蒸留水(DI水)を装入し、ホモジナイザー(線速:1,250cm/秒、商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix、最大回転速度毎分:12,000rpm)を使用してこれに最大回転速度毎分の70%の速度で30分間の第1の分散処理を行って、第1の水性分散液を調製した。
【0192】
その後、第1の水性分散液を、加圧フィルターを使用して濾過し、水で洗浄し、さらに蒸留水を加え、ホモジナイザー(商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix)を使用して水性系で第2の分散処理を行い、40重量%の固形分を有するPHA分散液を調製した。
【0193】
実施例2
ステップ(1)において、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):380,000g/モル、多分散指数(PDI):1.9、製造業者:CJ)を調製したこと以外は、実施例1と同じ方法でPHA分散液を調製した。
【0194】
実施例3
(1)PHAの調製
5重量%の固形分を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):800,000g/モル、多分散指数(PDI):1.9、製造業者:CJ)を調製した。ホモジナイザー(製品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix)を使用した物理粉砕によりPHAを得た。
【0195】
(2)PHA分散液の調製
1-リットルガラスビーカーに600重量部のPHA及び界面活性剤として10%の濃度を有する20重量部のポリビニルアルコール(PVA、製造業者:Kuraray、加水分解率:80%)を装入し、ホモジナイザー(線速:1,250cm/秒、商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix、最大回転速度毎分:12,000rpm)を使用してこれに最大回転速度毎分の70%の速度で30分間の第1の分散処理を行って、第1の水性分散液を調製した。
【0196】
その後、第1の水性分散液を、加圧フィルターを使用して濾過し、水で洗浄し、さらに蒸留水を加え、ホモジナイザー(商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix)を使用して水性系で第2の分散処理を行って、40重量%の固形分を有するPHA分散液を調製した。
【0197】
実施例4
ステップ(1)において、10重量%の固形分を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):900,000g/モル、多分散指数(PDI):1.6、製造業者:CJ)を調製したこと、及び、ステップ(2)において、400重量部のPHAを使用したこと以外は、実施例3と同じ方法でPHA分散液を調製した。
【0198】
実施例5
(1)PHAの調製
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):600,000g/モル、多分散指数(PDI):1.92、製造業者:CJ)を調製した。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した化学粉砕によりPHA粉末を得た。
【0199】
(2)PHA分散液の調製
1-リットルガラスビーカーに40重量部のPHA粉末、界面活性剤として10%の濃度を有する1重量部のポリビニルアルコール(PVA、製造業者:Kuraray、加水分解率:80%)、及び60重量部の蒸留水(DI水)を装入し、ホモジナイザー(線速:1,250cm/秒、商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix、最大回転速度毎分:12,000rpm)を使用してこれに最大回転速度毎分の70%の速度で30分間の第1の分散処理を行って、第1の水性分散液を調製した。
【0200】
その後、第1の水性分散液を、加圧フィルターを使用して濾過し、水で洗浄し、さらに蒸留水を加え、ホモジナイザー(商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix)を使用して水性系で第2の分散処理を行って、40.1重量%の固形分を有するPHA分散液を調製した。
【0201】
実施例6
実施例5のステップ(1)で調製したPHA粉末を使用して、実施例1と同じ方法でPHA分散液を調製した。
【0202】
実施例7
ステップ(1)において、10重量%の固形分を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):600,000g/モル、多分散指数(PDI):1.92、製造業者:CJ)を調製したこと以外は、実施例3と同じ方法でPHA分散液を調製した。
【0203】
<融解分散法>
実施例8
(1)PHAの調製
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)顆粒(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):800,000g/モル、多分散指数(PDI):1.9、製造業者:CJ)を調製した。ホモジナイザー(商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix)を使用した物理粉砕によりPHA微粒を得た。
【0204】
(2)PHA分散液の調製
30重量部のPHA顆粒を170℃で融解した後、2重量部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDS)と混合し、ホモジナイザー(線速:1,250cm/秒、商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix、最大回転速度毎分:12,000rpm)を使用して、最大回転速度毎分の70%の速度で30分間の第1の分散処理を行って、第1の水性分散液を調製した。
【0205】
その後、第1の水性分散液を、高圧ホモジナイザー(商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Premix、最大回転速度毎分:8,000rpm)を使用して溶媒中で30分間の第2の高圧分散処理を行って、40重量%の固形分を有するPHA分散液を調製した。
【0206】
<溶媒抽出法>
実施例9
(1)PHA及び第1の溶液の調製
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)ペレット(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):800,000g/モル、多分散指数(PDI):2.0、製造業者:CJ)を調製した。ホモジナイザー(製品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix)を使用した物理粉砕によりPHAペレットを得た。
【0207】
さらに、10重量部のPHAペレットを90重量部のクロロホルムと混合して第1の溶液を調製した。
【0208】
(2)第2の溶液の調製
1-リットルガラスビーカーに界面活性剤として2%の濃度を有する20重量部のポリビニルアルコール(PVA、製造業者:Kuraray、加水分解率:80%)を装入し、次いで第2の溶媒として蒸留水を加え、ホモジナイザー(線速:1,250cm/秒、商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix、最大回転速度毎分:12,000rpm)を使用してこれに最大回転速度毎分の10%の速度で5分間の分散処理を行って、第2の溶液を調製した。
【0209】
(3)PHA分散液の調製
第1の溶液と第2の溶液の混合溶液に、35Hz以上のエネルギーレベルで30分間の超音波分散処理を行った。
【0210】
減圧蒸留機(商品名:N-21000、製造業者:Eyela)を使用して、超音波分散処理を行った混合溶液から40℃で残留溶媒を除去し、加圧フィルターを使用して濾過し、水で洗浄した後、これを水系に再分散させ、40重量%の固形分を有するPHA分散液を調製した。
【0211】
実施例10
ステップ(1)において、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)ペレット(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:50重量%、重量平均分子量(Mw):900,000g/モル、多分散指数(PDI):1.6、製造業者:CJ)を調製したこと以外は、実施例9と同じ方法でPHA分散液を調製した。
【0212】
比較例1
(1)PHAの調製
実施例1のステップ(1)と同じPHA粉末を調製した。
【0213】
(2)PHA分散液の調製
1-リットルガラスビーカーに30重量部のPHA粉末及び70重量部の蒸留水(DI水)を装入し、ホモジナイザー(線速:1,250cm/秒、商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix、最大回転速度毎分:12,000rpm)を使用してこれに最大回転速度毎分の70%の速度で30分間の第1の分散処理を行って、30重量%の固形分を有するPHA分散液を調製した。
【0214】
比較例2
ステップ(2)で界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例5と同じ方法でPHA分散液を調製した。
【0215】
比較例3
実施例10のステップ(1)と同じPHAペレットを使用して、比較例1のステップ(2)と同じ方法でPHA分散液を調製した。
【0216】
比較例4
ステップ(2)において、ホモジナイザー(線速:1,250cm/秒、商品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix、最大回転速度毎分:12,000rpm)を使用して、最大回転速度毎分の40%の速度で30分間の分散処理を行ったこと以外は実施例1と同じ方法でPHA分散液を調製した。
【0217】
[試験実施例]
試験実施例1:ヘイズ
ヘイズメーター(CM-5、Konica Minolta製)を使用して、実施例1~10及び比較例1~4のPHA分散液をそれぞれヘイズについて測定した。
【0218】
試験実施例2:色
分光光度計CM-5(製造業者:Konica Minolta)を使用して、実施例1~10及び比較例1~4のPHA分散液をそれぞれ色特性L*、a*及びb*について測定した。
【0219】
試験実施例3:イエローインデックス(Y.I.)
ASTM E313に準拠して分光光度計CM-5(製造業者:Konica Minolta)を使用して、実施例1~10及び比較例1~4のPHA分散液をそれぞれイエローインデックスについて測定した。
【0220】
試験実施例4:ゼータ電位
ZetaPlus Zeta Potential Analyzer(製造業者:Brookhaven Instruments)を使用して、実施例1~10及び比較例1~4のPHA分散液をそれぞれゼータ電位について測定した。
【0221】
試験実施例5:平均粒径及び粒径偏差
Zetasizer Nano ZS(製造業者:Marven)を使用して、実施例1~10及び比較例1~4のPHA分散液のそれぞれに含有されるPHA粒子を25℃の温度及び175°の測定角度において動的光散乱(DLS)による平均粒径及び粒径偏差について測定した。ここで、信頼区間0.5における多分散指数(PDI)から導かれるピークの値を粒子径とした。
【0222】
試験実施例6:分散安定性
実施例1~10及び比較例1~4のPHA分散液をそれぞれ試験管に入れ、50℃で2週間放置した。次いで以下の評価基準にしたがって分散安定性について目視で評価した。
◎:相分離も析出も起きなかった
〇:わずかな相分離が起きたが析出は起きなかった
△:いくらかの相分離及び析出が起きた
×:著しい相分離及び析出が起きた
【0223】
試験実施例7:粘度
約23℃、12rpmでのせん断速度でせん断応力を使用して粘度を測定する粘度計(製造業者:Brookfield)により、実施例1~10及び比較例1~4のPHA分散液をそれぞれ粘度について測定した。
【0224】
【0225】
【0226】
上記の表1及び表2からわかるように、実施例1~10のPHA分散液は、比較例1~4の分散液と比較して、非常に優れた分散性及び加工性を有していた。
【0227】
具体的には、本発明の実施形態による粒子分散法、融解分散法、又は溶媒抽出法により、実施例1~10のPHA分散液を調製し、PHA分散液に含有されるPHA粒子の平均粒径及び粒径偏差が特定の範囲を満たしていたので、望ましい範囲を満たすゼータ電位、分散安定性及び粘度を有しており、その結果、優れた分散性及び加工性をもたらした。
【0228】
対照的に、比較例1~4のPHA分散液では、含有されているPHA粒子の平均粒径及び粒子偏差が特定の範囲を満たさず、望ましい範囲を満たさないゼータ電位、分散安定性、及び粘度を有しており、その結果、不十分な分散性、分散安定性、及び加工性をもたらした。特に、比較例3では、PHAは全く溶解も分散もしなかった。
【0229】
[参照番号の説明]
1 生分解性物品
100 基材
200 生分解性コーティング層
【国際調査報告】