(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】シリコーン感圧接着剤のための硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240719BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20240719BHJP
C09J 183/06 20060101ALI20240719BHJP
C09J 183/02 20060101ALI20240719BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20240719BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240719BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240719BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240719BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08L83/04
C09J183/07
C09J183/06
C09J183/02
C09J183/05
C09J11/06
C08L83/07
C08L83/06
C08L83/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502702
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 CN2022084013
(87)【国際公開番号】W WO2023184222
(87)【国際公開日】2023-10-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、チン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シェンラン
(72)【発明者】
【氏名】マー、チャオ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP044
4J002CP063
4J002CP122
4J002FD146
4J002GJ01
4J040EK022
4J040EK042
4J040EK062
4J040EK091
4J040HD32
4J040HD35
4J040JB04
4J040JB09
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA17
4J040KA23
4J040LA01
4J040NA19
(57)【要約】
硬化性組成物が、(A)ポリジオルガノシロキサン成分であって、(A1)3.1重量%超~20重量%の脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーと、(A3)単位式(A-III)のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムと、を含む、ポリジオルガノシロキサン成分と、(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分であって、(B1)キャップされた樹脂と、(B2)18.53重量%超~54.3重量%のキャップされていない樹脂と、を含み、キャップされていない樹脂(B2)のキャップされた樹脂(B1)に対する重量比が、0.51超~58.82であり、成分(A)及び成分(B)が、1.2:1~1.62:1未満の、(B):(A)の重量比を提供する量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂成分と、(C)5~50の、硬化性組成物に関してケイ素結合水素原子のアルケニル基に対するモル比を提供する量で存在する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(D)1~1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、(E)縮合反応触媒と、を含み、硬化性組成物中のアルケニル基の含有量が、0.017重量%~0.089重量%であり、重量%の値が、特に明記しない限り、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量に対するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
(A)ポリジオルガノシロキサン成分であって、
(A1)3.1重量パーセント超~20重量パーセントの、式(A-I)の脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーであって、
R
M
(3-c)R
U
cSiO-(R
UR
MSiO)
a-(R
M
2SiO)
b-SiR
U
dR
M
(3-d) (A-I)
式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各R
Uは、独立して、アルケニル基であり、下付き文字a、b、c及びdはa≧0、b>0、cは0又は1であり、dは0又は1であり、量(a+b)は、100~2000であり、かつ量(a+c+d)≧2であるように平均値を有する、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーと、
(A3)単位式(A-III)のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムであって、
{(HO)R
M
2SiO
1/2}
2(R
M
2SiO
2/2)
e (A-III)
式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、下付き文字eは、(A3)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに、20ミル(0.51mm)~80ミル(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、可塑性は、ASTM D926に基づいて、重量4.2グラム(g)の球状試料に、25℃で3分間、1キログラム(kg)の荷重を適用することによって測定され、結果は、1000分の1インチ(ミル)で測定され、手順は、ASTM D926に基づいており、それは、0.89:1~9.33:1の、前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)の前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)に対する重量比を提供する量で存在する、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムと、を含む、ポリジオルガノシロキサン成分と、
(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分であって、
(B1)単位式(B-I):(R
M
3SiO
1/2)
z(SiO
4/2)
oZ
fのキャップされた樹脂であって、式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各Zは、独立して、加水分解性基であり、下付き文字fは、0から、前記キャップされた樹脂に、最大2%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値までであり、下付き文字z及びoは、o>1、z>4、かつ量(o+z)は、500g/mol~7,000g/mol未満の数平均分子量を有する前記キャップされた樹脂を提供するのに十分な値を有するように値を有する、キャップされた樹脂と、
(B2)18.53重量パーセント超~54.3重量パーセントの、単位式(B-II):(R
M
3SiO
1/2)
z’(SiO
4/2)
o’Z
f’のキャップされていない樹脂であって、式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各Zは、独立して、加水分解性基であり、下付き文字f’は、キャップされていない樹脂に、3%超~10%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、下付き文字z’及びo’は、o’>1、z’>4、かつ量(o’+z’)は、500g/mol~7,000g/mol未満の数平均分子量を有する前記キャップされていない樹脂を提供するのに十分な値を有するように値を有する、キャップされていない樹脂と、を含み、
前記キャップされていない樹脂(B2)の前記キャップされた樹脂(B1)に対する重量比は、0.51超~58.82であり、
(A)前記ポリジオルガノシロキサン成分及び(B)前記ポリオルガノシリケート樹脂成分は、1.2:1~1.62:1未満の、前記ポリオルガノシリケート樹脂成分(B)の前記ポリジオルガノシロキサン成分(A)に対する重量比を提供する量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂成分と、
(C)単位式(C-I)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
(R
M
3SiO
1/2)
p(R
M
2SiO
2/2)
q(R
MSiO
3/2)
r(SiO
4/2)
s(R
MHSiO
2/2)
t(R
M
2HSiO
1/2)
u (C-I)
式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、下付き文字p、q、r、s、t、及びuは、p≧0、q≧0、r≧0、s≧0、t≧0、u≧0、(t+u)≧2、かつ量(p+q+r+s+t+u)は、5~100の重合度を有する前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを提供するのに十分であるように値を有し、それは、5~50の、ケイ素結合水素原子のアルケニル基に対するモル比を前記硬化性組成物に提供する量で存在する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(D)1~1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)
前記硬化性組成物中のアルケニル基の含有量が0.017重量パーセント~0.089重量パーセントの範囲にある、縮合反応触媒と、を含み、
重量百分率は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に対するものである、硬化性組成物。
【請求項2】
(F)0.001重量パーセント~5重量パーセントのヒドロシリル化反応阻害剤、及び(G)0.01重量パーセント~5重量パーセントの定着添加剤、又はこれらの混合物を更に含み、重量百分率は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づく、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
式(A-I)において、各R
Mが、独立して、1~6個の炭素原子のアルキル基から選択され、各R
Uが、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択され、量(a+b)が、前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーに300ミリパスカル
*秒~100,000ミリパスカル
*秒の粘度を付与するのに十分な値を有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
単位式(A-III)において、各R
Mが、独立して、1~6個の炭素原子のアルキル基であり、各R
Uが、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択され、下付き文字eが、30ミル(0.76mm)~70ミル(1.78mm)の可塑性を有する前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムを提供するのに十分である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
単位式(B-II)において、各R
Mが、独立して、1~6個の炭素原子のアルキル基であり、各Zが、OHであり、量(z+o)が、2,900g/mol~5,000g/molの数平均分子量を有する前記キャップされていない樹脂(B2)を提供するのに十分な値を有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)が、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、17.67重量パーセント~36.2重量パーセントの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記ポリジオルガノシロキサン成分(A)が、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に対する重量百分率で、5重量パーセント~16重量パーセントの前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)と、20重量パーセント~30重量パーセントの前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)と、を含み、前記硬化性組成物中のビニル基の含有量が、0.03重量パーセント~0.08重量パーセントであり、前記キャップされていない樹脂(B2)の前記キャップされた樹脂(B1)に対する前記重量比が0.55~5であり、ケイ素結合水素原子のビニル基に対するモル比が10~30である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物を調製するためのプロセスであって、
i)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)、前記キャップされていない樹脂(B2)、及び前記縮合反応触媒(E)を混合することと、
ii)工程i)から得られた結果として生じる混合物を、前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)、前記キャップされた樹脂(B1)、前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(C)、及び前記ヒドロシリル化反応触媒(D)と更に混合し、それによって前記硬化性組成物を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項9】
基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上のシリコーン感圧接着剤と、を含む接着剤物品であって、前記シリコーン感圧接着剤が、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化生成物である、接着剤物品。
【請求項10】
接着剤物品を作製する方法であって、
任意選択的に、(1)基材の表面を処理することと、
(2)前記基材の少なくとも1つの表面上に、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物をコーティングすることと、
(3)前記硬化性組成物を硬化させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物と、硬化性組成物を調製する方法とに関する。特に、本発明は、硬化してシリコーン感圧接着剤を形成するヒドロシリル化及び縮合硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
保護フィルム及びキャリアテープは、シリコーン感圧接着剤のエレクトロニクス製造業界における2つの主な用途である。典型的には、電子機器の製作中に、保護フィルム及びキャリアテープの様々な構成要素が被着体と一緒に積層されて複数の層を形成し、層は、互いに接着し、構成要素の故障を引き起こす損傷を受けないことが重要である。複数の層は、典型的には、加工及び/又は輸送中に被着体をスクラッチ及び他の損傷から保護するために、電子デバイスの製造に使用される被着体(例えば、グラファイトシート、銅箔、又は極薄両面テープ)に接着している保護フィルムを含む。そのような保護フィルムは、例えば、電子デバイスのエンドユーザに認識可能な残留物を残さずに、被着体からきれいに剥離することが望まれており、これには、典型的には、被着体への低い接着、例えば、ASTM D3330に従って10グラム毎インチ未満のステンレス鋼への接着を有する保護フィルムが必要である。しかしながら、そのような低接着シリコーン保護フィルムは、家電の製造において、他の層への迅速かつ強力な接着を形成することが困難であるという欠点に悩まされる場合がある。
【0003】
したがって、望ましい接着特性を有する低接着シリコーン保護フィルムに接着することができるシリコーン感圧接着剤が業界で必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、低接着シリコーン保護フィルムに対して高い接着(すなわち、400グラム毎インチ(grams per inch、g/in)以上)を達成する硬化生成物に硬化することができる新規な硬化性組成物を提供する。「低接着シリコーン保護フィルム」は、本発明のシリコーン感圧接着剤以外のものであり、ステンレス鋼に対して10g/インチ未満の接着を有する低接着シリコーン感圧接着剤を有する保護フィルムを指す。接着特性は、ASTM D3330に従ってAR 1500の接着/剥離試験機を使用して測定される。本発明の硬化性組成物は、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム、キャップされたポリオルガノシリケート樹脂、キャップされていないポリオルガノシリケート樹脂、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、ヒドロシリル化反応触媒、及び縮合反応触媒の新規な組み合わせを、特定の濃度で含む。本発明の硬化性組成物は、シリコーン感圧接着剤を形成するのに特に有用である。硬化性組成物は、ヒドロシリル化反応及び縮合反応の両方(すなわち、ヒドロシリル化反応及び縮合反応硬化性組成物)によって硬化されて、感圧接着剤(「ヒドロシリル化/縮合二重硬化PSA」とも呼ばれる)を調製することができる。
【0005】
第1の態様では、本発明は、硬化性組成物であって、
(A)ポリジオルガノシロキサン成分であって、
(A1)3.1重量パーセント超~20重量パーセントの、式(A-I)の脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーであって、
RM
(3-c)RU
cSiO-(RURMSiO)a-(RM
2SiO)b-SiRU
dRM
(3-d) (A-I)
式中、各RMは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各RUは、独立して、アルケニル基であり、下付き文字a、b、c及びdはa≧0、b>0、cは0又は1であり、dは0又は1であり、量(a+b)は、100~2000であり、かつ量(a+c+d)≧2であるように平均値を有する、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーと、
(A3)単位式(A-III)のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムであって、
{(HO)RM
2SiO1/2}2(RM
2SiO2/2)e (A-III)
式中、各RMは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、下付き文字eは、(A3)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに、20ミル(0.51mm)~80ミル(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、可塑性は、ASTM D926に基づいて、重量4.2gの球状試料に、25℃で3分間、1kgの荷重を適用することによって測定され、結果は、1000分の1インチ(ミル)で測定され、その手順は、ASTM D926に基づいており、それは、0.89:1~9.33:1の、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)の脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)に対する重量比を提供する量で存在する、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムと、を含む、ポリジオルガノシロキサン成分と、
(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分であって、
(B1)単位式(B-I):(RM
3SiO1/2)z(SiO4/2)oZfのキャップされた樹脂であって、式中、RMは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各Zは、独立して、加水分解性基であり、下付き文字fは、0から、キャップされた樹脂に、最大2%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値までであり、下付き文字z及びoは、o>1、z>4、かつ量(o+z)は、500g/mol~7,000g/mol未満の数平均分子量を有するキャップされた樹脂を提供するのに十分な値を有するように値を有する、キャップされた樹脂と、
(B2)18.53重量パーセント超~54.3重量パーセントの、単位式(B-II):(RM
3SiO1/2)z’(SiO4/2)o’Zf’のキャップされていない樹脂であって、式中、RMは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各Zは、独立して、加水分解性基であり、下付き文字f’は、キャップされていない樹脂に、3%超~10%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、下付き文字z’及びo’は、o’>1、z’>4、かつ量(o’+z’)は、500g/mol~7,000g/mol未満の数平均分子量を有するキャップされていない樹脂を提供するのに十分な値を有するように値を有する、キャップされていない樹脂と、を含み、
キャップされていない樹脂(B2)のキャップされた樹脂(B1)に対する重量比は、0.51超~58.82であり、
(A)ポリジオルガノシロキサン成分及び(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分は、1.2:1~1.62:1未満の、(B):(A)の重量比を提供する量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂成分と、
(C)単位式(C-I)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
(RM
3SiO1/2)p(RM
2SiO2/2)q(RMSiO3/2)r(SiO4/2)s(RMHSiO2/2)t(RM
2HSiO1/2)u (C-I)
式中、RMは、式(A-I)において上記したとおりであり、下付き文字p、q、r、s、t、及びuは、p≧0、q≧0、r≧0、s≧0、t≧0、u≧0、(t+u)≧2、かつ量(p+q+r+s+t+u)は、5~100の重合度を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを提供するのに十分であるように値を有し、それは、5~50の、ケイ素結合水素原子のアルケニル基に対するモル比を硬化性組成物に提供する量で存在する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(D)1~1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)
硬化性組成物中のアルケニル基の含有量が0.017重量パーセント~0.089重量パーセントの範囲にある縮合反応触媒と、を含む、硬化性組成物であり、
重量百分率は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に対するものである。
【0006】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の硬化性組成物を調製するためのプロセスである。このプロセスは、
i)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)、キャップされていない樹脂(B2)、及び縮合反応触媒(E)を混合することと、ii)工程i)から得られた結果として生じる混合物を、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)、キャップされた樹脂(B1)、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(C)、及びヒドロシリル化反応触媒(D)と更に混合し、それによって硬化性組成物を形成することと、を含む。
【0007】
第3の態様では、本発明は、基材と、基材の少なくとも1つの表面上のシリコーン感圧接着剤と、を含む接着剤物品であり、そのシリコーン感圧接着剤は、第1の態様の硬化性組成物の硬化生成物である。
【0008】
第4の態様では、本発明は、接着剤物品を作製する方法である。その方法は、任意選択的に、(1)基材の表面を処理することと、(2)基材の少なくとも1つの表面上に、第1の態様の硬化性組成物をコーティングすることと、(3)硬化性組成物を硬化させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】接着剤物品100の部分断面図を示している。接着剤物品は、本明細書に記載される硬化性組成物を、フィルム基材101の表面101上で硬化させることによって調製された感圧接着剤102を含む。物品100は、感圧接着剤102の反対側の表面(opposing surface)に接着された低接着シリコーン保護フィルム200を更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子を適用する。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)。
【0011】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0012】
「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0013】
ポリジオルガノシロキサン(例えば、以下の成分(A1))に関する「粘度」は、特に明記しない限り、ASTM 1084に従って、ブルックフィールド粘度計DV-IIによる回転粘度測定法を使用して、摂氏25度(℃)で測定されている。
【0014】
ポリジオルガノシロキサンガムの「可塑性」は、ASTM D926に基づいて、25℃で3分(minutes、min)間、4.2グラム(gram、g)の重量の球状試料に1キログラム(kilogram、kg)の荷重を適用することによって測定され、結果は、1000分の1インチ(ミル)で測定され、手順は、特に明記しない限り、ASTM D926に基づいている。
【0015】
ポリジオルガノシロキサン、ポリオルガノシリケート樹脂、又はポリオルガノハイドロジェンシロキサンの化学構造は、標準的な1H、13C及び29Si核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分析によって決定される。
【0016】
「接着」特性は、特に明記しない限り、ASTM D3330に従ってAR 1500の接着/剥離試験機を使用して測定される。
【0017】
特に明記しない限り、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)を使用して測定される数平均分子量を指し、重量平均分子量(Mw)は、GPCを使用して測定される重量平均分子量を指す。例えば、Mn及びMwを測定するための好適なGPC試験方法は、米国特許第9,593,209号第31欄の参考例1にて開示されている。
【0018】
本発明の硬化性組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)、並びに以下に記載される任意選択の成分を含む。硬化性組成物は、(A)ポリジオルガノシロキサン成分(成分(A))を含む。ポリジオルガノシロキサン成分(A)は、(A1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(「Viポリマー」とも呼ばれる)及び(A3)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(「OHガム」とも呼ばれる)、並びに任意選択的に(A2)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム(「Viガム」とも呼ばれる)を含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0019】
脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)(成分(A1))は、式(A-I):
RM
(3-c)RU
cSiO-(RURMSiO)a-(RM
2SiO)b-SiRU
dRM
(3-d) (A-I)
を有し、式中、各RMは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない炭素原子1~30個の炭素原子の一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各RUは、独立して、アルケニル基であり、下付き文字a、b、c及びdはa≧0、b>0、cは0又は1であり、dは0又は1であり、量(a+b)は、100~2000であり、かつ量(a+c+d)≧2であるように平均値を有する。RMに好適な一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基は、以下において定義するとおりである。各RMは、1~30個の炭素原子を有していてもよく、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~2個の炭素原子、又は更には1個の炭素原子であることができる。各RMは、以下に定義するアルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり得る。望ましくは、各RMは、1~6個の炭素原子のアルキル基、又は、アリール基、例えば、フェニルである。より望ましくは、各RMはメチルである。各RUは、独立して、以下に定義するように、アルケニル基であり得る。各RUは、2~12個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~6個の炭素原子、2~4個の炭素原子、又は更には2個の炭素原子を有し得る。望ましくは、各RUは、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択される。代替的に、量(a+b)は、300ミリパスカル*秒(milliPascal*seconds、mPa・s)~100,000mPa・sの粘度を脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーに付与するのに十分な値を有してもよく、350mPa・s~90,000mPa・s、400mPa・s~80,000mPa・s、又は450mPa・s~70,000mPa・sであることができる。望ましくは、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)は450~40,000mPa.sの粘度を有する。代替的に、量(a+b)は、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーに、1モル当たり5,000グラム(g/mol)~100,000g/mol、10,000g/mol~100,000g/mol、11,000g/mol~90,000g/mol、又は11,500g/mol~90,000g/molのMnを与えるのに十分な値を有してもよく、望ましくは、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーは、GPCによって測定したときに10,000g/mol~40,000g/molのMnを有する。望ましくは、式(A-I)において、各RMは、独立して、メチルなどの1~6個の炭素原子のアルキル基であり、各RUは、独立して、ビニル、アリル及びヘキセニルからなる群から選択され、量(a+b)は、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーに300mPa・s~100,000mPa・sの粘度を付与するのに十分な値を有する。
【0020】
「アルキル」は、環状、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキルは、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル、並びに6個以上の炭素原子の分岐状アルキル基と、シクロペンチル及びシクロヘキシルなどの環状アルキル基と、によって例示されるが、これらに限定されない。アルキル基は、1~12個の炭素原子を有し、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~2個の炭素原子、又は更には1個の炭素原子であることができる。「アリール」は、完全に不飽和の環状炭化水素基を意味する。アリールとしては、シクロペンタジエニル、フェニル、アントラセニル、及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。単環式アリール基は、炭素原子5~9個の炭素原子、代替的に炭素原子6~7個の炭素原子、代替的に炭素原子5~6個の炭素原子を有し得る。多環式アリール基は、10~17個の炭素原子、代替的に10~14個の炭素原子、代替的に12~14個の炭素原子を有し得る。「アラルキル」とは、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を意味する。例示的なアラルキル基としては、トリル、キシリル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル及びフェニルブチルが挙げられる。
【0021】
「アルケニル」とは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する分岐状又は非分岐状の一価の炭化水素基を意味する。好適なアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びヘプテニル(3~7個の炭素原子の分岐状及び直鎖状異性体を含む);並びにシクロヘキセニルによって例示される。望ましくは、アルケニル基は、ビニル、アリル、又はヘキセニルからなる群から選択される。
【0022】
「一価炭化水素基」は、水素原子及び炭素原子からなる一価の基を意味する。一価炭化水素基としては、上で定義したアルキル、アラルキル、アルケニル、及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0023】
「一価ハロゲン化炭化水素基」とは、炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、式としてはハロゲン原子で置換されている一価炭化水素基を意味する。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロアルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロアルケニル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、フッ素化アルキル基及びフッ素化シクロアルキル基、例えば、トリフルオロメチル(CF3)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル;並びに塩素化アルキル基及び塩素化シクロアルキル基、例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、2,2-ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチルが挙げられる。ハロアルケニル基としては、クロロアリル基が挙げられる。
【0024】
脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)は、式(A-I)の1つのポリジオルガノシロキサン、又は粘度、分子量、構造、シロキサン単位及び配列などの1つ以上の特性が異なっていてもよい式(A-I)の2つ以上のポリジオルガノシロキサンの組み合わせを含み得る。硬化性組成物中で成分(A1)として使用するのに好適な脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーは、以下のポリジオルガノシロキサン:i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、iv)フェニル、メチル、ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、v)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、iv)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、及びvii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ビニルメチルハイドロジェンシロキサン)のうちの任意の1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含み得る。望ましくは、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーは、ビス-ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ビス-ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ビス-ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ビニルメチルハイドロジェンシロキサン)、又はこれらの混合物からなる群から選択される。脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンを調製する方法、例えば、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡は、当該技術分野において既知である。
【0025】
脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、3.1超(>3.1)重量パーセント(重量%)の濃度で存在してもよく、3.3重量%以上、3.5重量%以上、3.7重量%以上、3.9重量%以上、4.0重量%以上、4.1重量%以上、4.2重量%以上、4.3重量%以上、4.4重量%以上、4.5重量%以上、4.6重量%以上、4.7重量%以上、4.8重量%以上、4.9重量%以上、又は更には5%以上であることができるが、同時に、一般に、20重量%以下であり、19.8重量%以下、19.5重量%以下、19.1重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16.4重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9.1重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、又は更には4.9重量%以下であることができ、望ましくは、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーは、5重量%~16重量%の濃度で存在する。
【0026】
ポリジオルガノシロキサン成分(A)は、(A2)式(A-II)の脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム(成分(A2))を、含んでもよく、又は含まなくてもよく、
RM
(3-c’)RU
c’SiO-(RURMSiO)a’-(RM
2SiO)b’-SiRU
d’RM
(3-d’) (A-II)
式中、各RMは、式(A-I)において上記したとおりであり、各RUは、式(A-I)において上記したとおりであり、下付き文字a’、b’、c’及びd’は、a’≧0、下付き文字b’>0、下付き文字c’は0又は1であり、下付き文字d’は0又は1であり、(a’+c’+d)≧2、かつ量(a’+b’)は、(A-2)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムに20ミル(0.51ミリメートル(mm))~80ミル(2.03mm)、30ミル(0.76mm)~70ミル(1.78mm)、50ミル(1.27mm)~65ミル(1.65mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有するように平均値を有し、可塑性は、ASTM D926に従って測定される(更なる詳細は上で提供した)。典型的には、量(a’+b’)は、2000超の値を有してもよく、3000以上、4000以上、又は更には5000以上であってもよい。
【0027】
脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムは、当該技術分野において既知であり、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化などの方法によって調製され得る。脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム(A2)は、可塑性、構造、シロキサン単位及び配列などの1つ以上の特性が異なっていてもよい単位式(A-II)の2つ以上のポリジオルガノシロキサンガムの組み合わせを含み得る。硬化性組成物中で成分(A2)として使用するのに好適な脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムは、以下のポリジオルガノシロキサンガムのうちの任意の1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含み得る:
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニル)シロキサン、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニル)シロキサン、
iv)フェニル、メチル、ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
v)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
vi)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニル)シロキサン、及び
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニル)シロキサン。
【0028】
望ましくは、ポリジオルガノシロキサンガムは、i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、v)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム(A2)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、ゼロ以上の濃度で存在してよく、またゼロを超える(0超)こともできるが、同時に、一般に7重量%以下であり、6重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、1.1重量%以下、1重量%以下、又は更には0.1重量%以下であることができる。代替的に、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム(A2)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)と脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム(A2)との合計濃度が3.1重量%超を提供する量で存在してよく、3.3重量%以上、3.5重量%以上、3.7重量%以上、3.9重量%以上、4.0重量%以上、4.1重量%以上、4.2重量%以上、4.3重量%以上、4.4重量%以上、4.5重量%以上、4.6重量%以上、4.7重量%以上、4.8重量%以上、又は更には4.9重量%以上であることができるが、同時に、一般に20重量%以下であり、19.8重量%以下、19.5重量%以下、19.1重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16.4重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9.1重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、又は更には4.9重量%以下であることができる。
【0030】
ポリジオルガノシロキサン成分(A)はまた、(A3)単位式(A-III)のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(「OHガム」、成分(A3))を含み、
{(HO)RM
2SiO1/2}2(RM
2SiO2/2)e (A-III)
式中、各RMは、式(A-I)において上記したとおりであり、下付き文字eは、(A3)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに、20ミル(0.51mm)~80ミル(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、30ミル(0.76mm)以上、50ミル(1.27mm)以上、又は更には53ミル(1.27mm)以上であることができるが、同時に、70ミル(1.78mm)以下、65ミル(1.65mm)以下、又は更には60mil(1.65mm)であることができ、可塑性は、ASTM D926に従って測定される(更なる詳細は上に提供した)。代替的に、下付き文字eは、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに、GPCによって測定したときに200,000g/mol以上のMnを与えるのに十分な値を有し得る。望ましくは、単位式(A-III)において、各RMは、独立して、メチルなどの1~6個の炭素原子のアルキル基であり、各RUは、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から独立して選択され、下付き文字eは、30ミル(0.76mm)~70ミル(1.78mm)の可塑性を有するヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムを提供するのに十分である。
【0031】
本発明に好適なヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムは、当該技術分野で既知であり、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化などの方法によって調製され得る。ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)は、単位式(A-III)の1つのポリジオルガノシロキサンガム、又は可塑性、構造、及び配列などの特性が異なっていてもよい2つ以上のポリジオルガノシロキサンガムの組み合わせ、を含み得る。成分(A3)として使用するのに好適なヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムは、以下のポリジオルガノシロキサン:i)ビス-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン、ii)ビス-ヒドロキシル末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、iii)ビス-ヒドロキシル末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、及びiv)フェニル、メチル、ヒドロキシル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサンの、任意の1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含み得る。望ましくは、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)は、ビス-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを含む。
【0032】
ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、硬化性組成物中に17.67重量%以上の濃度で存在し、18重量%以上、19重量%以上、20重量%以上、21重量%以上、22重量%以上、22.5重量%以上、23重量%以上、23.5重量%以上、24重量%以上、又は更には24.5重量%以上であることができるが、同時に、一般に36.2重量%以下であり、36重量%以下、35.5重量%以下、35.1重量%以下、35重量%以下、34.6重量%以下、34.5重量%以下、34重量%以下、33.5重量%以下、33重量%以下、32.5重量%以下、32重量%以下、31.5重量%以下、31重量%以下、30重量%以下、又は更には29.5重量%以下、望ましくは17.67重量%~36.2重量%、より望ましくは20重量%~30重量%であることができる。
【0033】
脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)及びヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)は、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)の脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)に対する重量比(「A3:A1比」)が、0.89:1以上であり得、1:1以上、1.1:1以上、1.2:1以上、1.3:1以上、1.5:1以上、1.8:1以上、2.0:1以上、2.5:1以上、3.0:1以上、3.5:1以上、又は更には7.2:1以上であることができるが、同時に、一般に9.33:1以下であり、9.0:1以下、8.5:1以下、8.0:1以下、7.5:1以下、7.3:1以下、6:1以下、5:1以下、4.0:1以下、又は更には3.6:1以下であることができ、望ましくは、A3:A1比が1:1~5:1の範囲にあるような量で、存在し得る。
【0034】
硬化性組成物は、(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分(成分(B))を更に含み、これは、(B1)キャップされた樹脂と、(B2)キャップされていない樹脂と、を含むか、又はそれらからなる。式RM
3SiO1/2(式中、各RMは、式(A-I)において上記したとおりである)の一官能性単位(「M」単位)、及び式SiO4/2の四官能性シリケート単位(「Q」単位)を含む、ポリオルガノシリケート樹脂。例えば、RM基の少なくとも3分の1又は少なくとも3分の2が、アルキル基、例えば、メチル基である。M単位は、(Me3SiO1/2)及び(Me2PhSiO1/2)によって例示され得、式中、Meはメチルを表し、Phはフェニルを表している。ポリオルガノシリケート樹脂は、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びヘプタンなどの液体炭化水素によって例示される下記のものなどの溶剤に、又は低粘度の直鎖状及び環状ポリジオルガノシロキサンなどの液体有機ケイ素化合物に可溶性である。
【0035】
調製された場合、ポリオルガノシリケート樹脂は、上記のM単位及びQ単位を含み、ポリオルガノシロキサンはケイ素結合ヒドロキシル基を有する単位を更に含み、式Si(OSiRM
3)4[式中、RMは上記のとおりである。]を含んでもよく、例えば、ネオペンタマーはテトラキス(トリメチルシロキシ)シランであってもよい。29Si NMR分光法を使用して、ヒドロキシル(OH)含有量並びにM及びQ単位のモル比を測定することができ、当該比は、ネオペンタマーからのM及びQ単位を除いて、{M(樹脂)}/{Q(樹脂)}として表される。「M:Q比」は、ポリオルガノシリケート樹脂における樹脂性部分のトリオルガノシロキシ基(M単位)の総数の、樹脂性部分中のシリケート基(Q単位)の総数に対するモル比を表す。M:Q比は、0.5:1~1.5:1であってもよい。
【0036】
ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、存在するRMによって表される炭化水素基の種類などの様々な要因によって異なる。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、ネオペンタマーを表すピークが測定値から除外されるとき、GPCを使用して測定される数平均分子量を指す。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、500グラム毎モル(g/mol)~5,000g/molであり、2,500g/mol~5,000g/mol、2,700g/mol~4,900g/mol、又は2,700g/mol~4,700g/molであることができる。Mnを測定するための好適なGPC試験方法は、米国特許第9,593,209号第31欄の参考例1にて開示されている。
【0037】
米国特許第8,580,073号(第3欄5行目~第4欄31行目)、及び米国特許出願公開第2016/0376482号(段落[0023]~[0026])は、MQ樹脂を開示するために参照により本明細書に組み込まれ、このMQ樹脂は、本明細書に記載のヒドロシリル化反応硬化性組成物での使用に好適なポリオルガノシリケート樹脂である。ポリオルガノシリケート樹脂は、対応するシランの共加水分解又はシリカヒドロゾルキャッピング法などの任意の好適な方法によって調製することができる。ポリオルガノシリケート樹脂は、Daudtらの米国特許第2,676,182号、Rivers-Farrellらの同第4,611,042号、及びButlerらの米国特許第4,774,310号に開示されるものなどのシリカヒドロゾルキャッピングプロセスによって調製され得る。上記のDaudtらの方法は、酸性条件下でシリカヒドロゾルを、トリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン又はこれらの混合物と反応させることと、M単位及びQ単位を有するコポリマーを回収することと、を伴う。得られたコポリマーは概ね、2~5重量パーセントのヒドロキシル基を含有する。
【0038】
ポリオルガノシリケート樹脂を調製するために使用される中間体は、トリオルガノシラン及び4つの加水分解性置換基を含むシラン又はアルカリ金属シリケートであることができる。トリオルガノシランは、式RM
3SiX1(式中、RMは上記のとおりであり、X1は、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシル、オキシモ、又はケトキシモなどの加水分解性置換基、代替的に、ハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルなどの加水分解性置換基を表す)を有し得る。4つの加水分解性置換基を有するシランは、式SiX2
4を有し得、式中、各X2は、ハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルである。好適なアルカリ金属シリケートとしては、ナトリウムシリケートが挙げられる。
【0039】
上記のように調製されたポリオルガノシリケート樹脂はキャップされていない樹脂(B2)であり、この樹脂は、典型的には、ケイ素結合ヒドロキシル基、例えば、式HOSi3/2及び/又はHORM
2SiO1/2のものを含有する。キャップされていない樹脂は、NMR分光法によって測定すると、3%超~10%のケイ素結合ヒドロキシル基(シラノール基とも)を含み得る。ある特定の用途では、ケイ素結合ヒドロキシル基の量は、2%≦、代替的に0.7%未満、代替的に0.3%未満、代替的に1%未満、代替的に0.3%~2%であることが望ましい場合があり、これはキャップされた樹脂(B1)を形成する。ポリオルガノシリケート樹脂の調製中に形成されるケイ素結合ヒドロキシル基は、キャッピングと呼ばれるプロセスにおいて、シリコーン樹脂と、適切な末端基を含有するシラン、ジシロキサン又はジシラザンとを反応させることによって、トリ炭化水素シロキサン基又は異なる加水分解性基に変換することができる。加水分解性基を含有するシランは、ポリオルガノシリケート樹脂におけるケイ素結合ヒドロキシル基と反応するのに必要な量よりもモル過剰で添加され得る。
【0040】
ポリオルガノシリケート樹脂がキャップされた樹脂である場合、キャップされた樹脂は、式HOSiO3/2及び/又はHORM
2SiO1/2(式中、RMは上記したとおりである)によって表される単位を2%以下含んでもよく、0.7%以下又は0.3%以下であることができ、また0.3%~0.8%であることができる。ポリオルガノシロキサン中に存在するシラノール基の濃度は、上記のようにNMR分光法を使用して測定することができる。
【0041】
キャップされた樹脂(B1)(「キャップされたMQ樹脂」とも、成分(B1))は、単位式(B-I):(RM
3SiO1/2)z(SiO4/2)oZfを有してもよく、式中、各RMは、式(A-I)において上記したとおりであり、各Zは、独立して、アルコキシ、ヒドロキシル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択することができる加水分解性基であり;下付き文字z及びoは、o>1、z>4、かつ量(o+z)は、500g/mol~7,000g/mol未満のMnを有するキャップされた樹脂を提供するのに十分な値を有するように値を有し、500g/mol以上、1,000g/mol以上、又は更には2900g/mol以上であることができるが、同時に、7,000g/mol未満、5,000g/mol以下、4,700g/mol以下、又は更には4,100g/mol以下であることができ、下付き文字fは、キャップされた樹脂に0~2%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、0以上、0.3%以上、0.7%以上、又は更には0.8%以上であることができるが、同時に、2%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、又は更には1%以下である。本発明における樹脂中の加水分解性基の百分率は、フーリエ変換赤外(Fourier Transfer Infra-Red、FTIR)分光法によって決定されるように、樹脂重量に対する加水分解性基の重量百分率を指す。典型的には、各Zはヒドロキシル(OH)である。
【0042】
キャップされた樹脂(B1)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、0.9重量%以上の濃度で存在してもよく、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、27重量%以上、29重量%以上、又は更には30重量%以上であることができるが、同時に、一般に35.9重量%以下であり、35重量%以下、34重量%以下、33重量%以下、32重量%以下、31重量%以下、又は更には30.5重量%以下であることができる。
【0043】
キャップされていない樹脂(B2)(「キャップされていないMQ樹脂」、成分(B2))は、単位式(B-II):(RM
3SiO1/2)z’(SiO4/2)o’Zf’(B-II)を有してもよく、式中、各RMは、式(A-I)において上記したとおりであり、各Zは、上記したとおり、例えば、ヒドロキシルであり、下付き文字z’及びo’は、o’>1、z’>4であるように値を有し、量(o’+z’)は、キャップされていない樹脂に500g/mol~7,000g/mol未満のMnを与えるのに十分な値を有し、500g/mol以上、1,000g/mol以上、2,700g/mol以上、又は更には2,900g/mol以上であることができるが、同時に、一般に7,000g/mol未満であり、5,000g/mol以下、4,700g/mol以下、又は更には4,300g/mol以下であることができ、下付き文字f’は、キャップされていない樹脂に3%超(すなわち、3%超)の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、3.1%以上、3.2%以上、又は更には3.4%以上であることができるが、同時に、一般に10%以下であり、5%以下、又は更には4%以下であることができる。望ましくは、単位式(B-II)において、各RMは、メチルなどの1~6個の炭素原子を有する独立して選択されたアルキル基であり、各Zは、OHであり、量(z+o)は、2,900g/mol~5,000g/molのMnを有するキャップされていない樹脂を提供するのに十分な値を有する。
【0044】
キャップされていない樹脂(B2)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、18.53重量%超(>18.53重量%)の量で存在してもよく、18.8重量%以上、19.0重量%以上、19.2重量%以上、19.5重量%以上、19.9重量%以上、22重量%以上、24重量%以上、24.5重量%以上、25重量%以上、28重量%以上、30重量%以上、又は更には32重量%以上であることができるが、同時に、一般に54.3重量%以下であり、54重量%以下、53重量%以下、52重量%以下、51重量%以下、50重量%以下、49重量%以下、48重量%以下、47重量%以下、46.5重量%以下、又は更には46.3重量%以下であることができる。
【0045】
ポリオルガノシリケート樹脂成分中のキャップされた樹脂及びキャップされていない樹脂の量は、キャップされていない樹脂(B2)のキャップされた樹脂(B1)に対する重量比、すなわち、(B2):(B1)比0.51超(>0.51)を提供するのに十分な量であってもよく、0.55以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、1.0以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.8以上、2.0以上、又は更には2.2以上であることができるが、同時に、一般に58.82以下であり、40以下、30以下、20以下、10以下、5以下、4.9以下、又は更には4.85以下であることができ、望ましくは、(B2):(B1)比は、0.55~5であり、より望ましくは0.8~~5.0である。
【0046】
ポリジオルガノシロキサン成分(A)及びポリオルガノシリケート樹脂成分(B)は、硬化性組成物中に、ポリオルガノシリケート樹脂成分(B)のポリジオルガノシロキサン成分(A)に対する重量比、すなわち、(B):(A)比又はR/P比1.2:1以上を提供するのに十分な量で存在してもよく、1.25:1以上、1.28:1以上、1.29:1以上、1.30:1以上、1.31:1以上、又は更には1.4:1以上であることができるが、同時に、一般に1.62:1未満(<1.62:1)であり、1.60:1以下、1.58:1以下、1.56:1以下、1.54:1以下、1.53:1以下、1.52:1以下、1.50:1以下、1.49:1以下、1.45:1以下、1.44:1以下、1.42:1以下、又は更には1.4:1以下であることができ、望ましくは、R/P比は1.2:1~1.5:1である。例えば、上記のR/P比は、成分(B1)及び(B2)の合計重量対成分(A1)及び(A3)、並びに存在する場合には(A2)の合計重量の比であることができる。
【0047】
本発明の硬化性組成物はまた、(C)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(「SiH架橋剤」、成分(C))を含む。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、硬化性組成物中で架橋剤として作用する。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子当たり2個以上又は少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有し得る。
【0048】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(C-I)を含んでもよく、
(RM
3SiO1/2)p(RM
2SiO2/2)q(RMSiO3/2)r(SiO4/2)s(RMHSiO2/2)t(RM
2HSiO1/2)u (C-I)
式中、RMは、式(A-I)において上記したとおりであり、下付き文字p、q、r、s、t、及びuは、p≧0、q≧0、r≧0、s≧0、t≧0、u≧0、(t+u)≧2、かつ量(p+q+r+s+t+u)は、5~100、又は10~60の重合度を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを提供するのに十分であるように値を有する。重合度は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの化学構造及び/又はMnに従って決定することができる。代替的に、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(C-2)を含んでもよく、
(RM
3SiO1/2)2(RM
2SiO2/2)aa(RMHSiO2/2)bb (C-2)
式中、各RMは、独立して、メチル及びフェニルからなる群から選択され、下付き文字aaは0~30であり、下付き文字bbは5~50である。
【0049】
代替的に、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、式(C-3)、式(C-4)、又は(C-3)及び(C-4)の両方のポリオルガノハイドロジェンシロキサンである:
RM
3SiO(RM
2SiO)g(RMHSiO)hSiRM
3 (C-3)、
RM
2HSiO(RM
2SiO)i(RMHSiO)jSiRM
2H (C-4)、
【0050】
上記の式(C-3)及び式(C-4)では、RMは上記のとおりである。下付き文字gは、0~2000の平均値を有し、下付き文字hは、2~2000の平均値を有し、下付き文字iは、0~2000の平均値を有し、下付き文字jは、0~2000の平均値を有する。
【0051】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(C)は、0.5%~2%又は0.6%~1.5%のケイ素結合水素含有量を含んでいてもよく、ケイ素結合水素(SiH)含有量(「SiH含有量」)は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン重量に対するケイ素結合水素の重量百分率を指し、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用して決定することができる。
【0052】
成分(C)として使用するのに好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、以下のポリオルガノハイドロジェンシロキサン:i)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサン、ii)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、iii)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサン、及びiv)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサンのうちの任意の1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含み得る。
【0053】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの調製方法、例えば、オルガノヒドリドハロシランの加水分解及び縮合は、当該技術分野において既知であり、例えば、Jeramらの米国特許第3,957,713号及びHardmanらの米国特許第4,329,273号を参照されたい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンはまた、例えば、Speierらの米国特許第2,823,218号に記載されるように調製することもでき、これは、オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマー及び直鎖状ポリマー、例えば、1,1,1,3,3-ペンタメチルジシロキサン、ビス-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサンホモポリマー、ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、及び環状ポリメチルハイドロジェンシロキサンを開示している。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンも市販されており、例えば、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から入手可能なものなど、例えば、HMS-H271、HMS-071、HMS-993、HMS-301、HMS-301R、HMS-031、HMS-991、HMS-992、HMS-993、HMS-082、HMS-151、HMS-013、HMS-053、HAM-301、HPM-502、及びHMS-HM271が挙げられる。
【0054】
典型的には、硬化性組成物中のポリオルガノハイドロジェンシロキサンの量は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、0.1重量%以上であってもよく、0.25重量%以上であることができ、0.3重量%以上、又は更には0.4重量%以上であることができるが、同時に、一般に10.0重量%以下であり、5重量%以下、4.8重量%以下、4.5重量%以下、4.2重量%以下、4.1重量%以下、4.04重量%以下、又は更には1重量%以下であることができる。
【0055】
硬化性組成物中のケイ素結合水素対アルケニル基の比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合に重要である。一般に、これは、組成物中のアルケニル基の総重量%、例えば、ビニル[V]と、組成物中のケイ素結合水素[H]の総重量%とを計算することによって決定され、ここで、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27として、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサン成分及びポリオルガノハイドロジェンシロキサン(C)は、5以上、5.1以上、5.5以上、5.8以上、6.1以上、6.5以上、6.8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、又は更には14以上の、硬化性組成物におけるアルケニル基に対するケイ素結合水素原子のモル比を提供するのに十分な量で、硬化性組成物中に存在してもよいが、同時に、一般に50以下であり、35.2以下、35以下、34以下、30以下、25以下、22.5以下、22以下、15以下、又は更には14.9以下、望ましくは10~30であることができる。
【0056】
本発明の硬化性組成物中の成分は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、0.017重量%以上のアルケニル基(例えば、ビニル基)の含有量を硬化性組成物に提供する量で存在し、また、0.020重量%以上、0.022重量%以上であることができるが、同時に、一般に0.089重量%以下であり、0.085重量%以下、0.08重量%以下、0.075重量%以下、0.07重量%以下、0.06重量%以下、0.05重量%以下、0.045重量%以下、0.041重量%以下、0.03重量%以下、又は更には0.022重量%以下、望ましくは0.03重量%~0.08重量%であることができる。アルケニル基の含有量(例えば、ビニル含有量)は、29Si NMRによって決定することができる。
【0057】
本発明の硬化性組成物はまた、(D)ヒドロシリル化反応触媒(成分(D))も含む。ヒドロシリル化反応触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が挙げられる。このようなヒドロシリル化反応触媒は、(D-1)白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される金属であり得る;代替的に、白金、ルテニウム及びイリジウム、望ましくは金属は白金である。代替的に、ヒドロシリル化反応触媒は、(D-2)そのような金属の化合物、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinsonの触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム若しくは[1,2-ビス(ジエチルホスピノ(diethylphospino))エタン]ジクロロジロジウムなどのロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speierの触媒)、塩化白金酸六水和物、又は二塩化白金であってもよい。代替的に、ヒドロシリル化反応触媒は、(D-3)白金族金属化合物とアルケニル官能性オルガノポリシロキサンオリゴマーとの錯体、又は(D-4)マトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金族金属化合物であってもよい。白金アルケニル官能性オルガノポリシロキサンオリゴマーの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体(Karstedt触媒)が挙げられる。代替的に、ヒドロシリル化触媒は、(D-5)樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化された錯体を含んでもよい。例示的なヒドロシリル化反応触媒は、Speierの米国特許第2,823,218号、Ashbyの同第3,159,601号、Lamoreauxの同第3,220,972号、Chalkらの同第3,296,291号、Willingの同第3,419,593号、Modicの同第3,516,946号、Karstedtの同第3,715,334号、Karstedtの同第3,814,730号、Chandraの同第3,928,629号、Leeらの同第3,989,668号、Leeらの同第4,766,176号、Leeらの同第4,784,879号、Togashiの同第5,017,654号、Chungらの同第5,036,117号、及びBrownの同第5,175,325号、並びにTogashiらの欧州特許第0347895(A)号に記載されている。ヒドロシリル化反応触媒は、市販されており、例えば、SYL-OFF(商標)4000 Catalyst、SYL-OFF 4500 Catalyst、及びSYL-OFF 2700 Catalystは、Dow Silicones Corporationから入手可能である(SYL-OFFはDow Silicones Corporationの商標である)。
【0058】
使用されるヒドロシリル化反応触媒の量は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサン成分の選択、並びにケイ素結合水素原子(SiH)及び脂肪族不飽和基のそれらのそれぞれの含有量、並びに選択された触媒中の白金族金属の含有量を含む様々な要因に依存し、例えば、ヒドロシリル化反応触媒の量は、SiH及び脂肪族不飽和基のヒドロシリル化反応を触媒するのに十分であり、代替的に、触媒の量は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、白金族金属の1百万分率(part per million、ppm)以上を提供するのに十分であり、5ppm以上、10ppm以上、20ppm以上、又は更には30ppm以上であることができるが、同時に、一般に1,000ppm以下であり、500ppm以下、300ppm以下、130ppm以下、又は更には100ppm以下であることができる。代替的に、ヒドロシリル化反応触媒が白金-オルガノシロキサン錯体を含む場合、ヒドロシリル化反応触媒の量は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、0.01重量%~5重量%、0.1重量%~4.0重量%、0.3重量%~3.0重量%、又は0.4重量%~2.0重量%であり得る。
【0059】
本発明の硬化性組成物は、(E)縮合反応触媒(成分(E))を、含んでもよく、又は含まなくてもよい。縮合反応触媒は、当該技術分野において既知であって、市販されており、例えば、米国特許出願公開第20210277187(A1)号に記載されている縮合反応触媒である。好適な縮合反応触媒の具体例としては、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。縮合反応触媒は、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム及びキャップされていないMQ樹脂中のヒドロキシル基の縮合反応を触媒するのに十分な量で存在し、例えば、縮合反応触媒は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、0.001重量%以上の濃度で存在してもよく、0.01重量%以上、0.03重量%以上、0.05重量%以上、0.08重量%以上、0.09重量%以上、又は更には0.10重量%以上であることができるが、同時に、一般に0.5重量%以下であり、0.25重量%以下、0.20重量%以下、0.15重量%以下、0.13重量%以下、0.12重量%以下、又は更には0.11重量%以下であることができる。
【0060】
望ましくは、本発明の硬化性組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、5重量%~16重量%の脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)及び20重量%~30重量%のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)を含み、硬化性組成物中のビニル基の含有量(「Vi含有量」)は0.03重量%~0.08重量%であり、(B2):(B1)比は0.55~5であり、ケイ素結合水素原子のビニル基に対するモル比は10~30であり、より望ましくは、(A3):(A1)比は1~5であり、かつ/又はR/P比は1.2~1.5である。
【0061】
本発明の硬化性組成物は、(F)ヒドロシリル化反応阻害剤(成分(F))を含んでもよく又は含まなくてもよく、これは、同じ組成物であるが阻害剤が省略された組成物の反応速度と比較して、ヒドロシリル化反応の速度を変えるのに有用である。好適な阻害剤の例としては、アセチレンアルコール、例えば、2-メチル-3-ブチン-2-オール、ジメチルヘキシノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH);シリル化アセチレンアルコール、例えば、当該技術分野で既知の方法によって調製されるもの(例えば、Bilgrienらの米国特許第6,677,407号は、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることによって、上記のアセチレンアルコールをシリル化することを開示している);シクロアルケニルシロキサン、例えば、メチルビニルシクロシロキサン、例えば、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン:3-メチル-3-ペンテン-1-イン、及び3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなどのエンイン化合物;ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、及び1-エチニルシクロヘキシルアミン;フマル酸ジエチルなどのフマル酸ジアルキル、フマル酸ジアリルなどのフマル酸ジアルケニル、フマル酸ジアルコキシアルキルを含むフマラート;マレアート、例えば、マレイン酸ジアリル及びマレイン酸ジエチル;ニトリル;エーテル;又はこれらの混合物が挙げられる。望ましくは、阻害剤はETCHである。阻害剤は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、ゼロ以上の濃度で存在してもよく、ゼロ超、0.001重量%以上、0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.04重量%以上、0.05重量%以上、又は更には0.1重量%以上であることができるが、同時に、一般に5重量%以下であり、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は更には0.25重量%以下であることができ、0.001重量%~5重量%であることができる。
【0062】
本発明の硬化性組成物は、(G)定着添加剤(anchorage additive)(成分(G))を、含んでもよく、又は含まなくてもよい。成分(G)用の好適な定着添加剤としては、シランカップリング剤、例えば、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、及びビス(トリメトキシシリルヘキサン;並びに当該シランカップリング剤の混合物又は反応混合物が挙げられ得る。代替的に、定着添加剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、又は3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランであってもよい。
【0063】
他の好適な定着添加剤は、ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;並びに1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和炭化水素基及び少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの組み合わせ(例えば、物理的なブレンド及び/又は反応生成物)(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせ)により例示される。
【0064】
例示的な定着添加剤は、当技術分野において既知であり、例えば、米国特許第9,562,149号、米国特許出願公開第2003/0088042号、米国特許出願公開第2004/0254274号、米国特許出願公開第2005/0038188号、米国特許出願公開第2012/0328863号の段落[0091]、及び米国特許出願公開第2017/0233612号の段落[0041]、並びに欧州特許第0 556 023号に開示されている。定着添加剤は、市販されている。例えば、SYL-OFF(商標)9250、SYL-OFF 9176、SYL-OFF 297、及びSYL-OFF 397は、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。他の例示的な定着添加剤としては、(G-1)ビニルトリアセトキシシラン、(G-2)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、並びに(G-3)(G-1)及び(G-2)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせ(G-3)は、混合物及び/又は反応生成物であってもよい。
【0065】
定着添加剤の量は、硬化性組成物が適用される基材のタイプを含む様々な要因に依存する。例えば、定着添加剤(G)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、0以上の濃度で存在してもよく、0.01重量%以上、0.1%以上、0.5%以上、又は更には0.6%以上であることができるが、同時に、一般に5%以下であり、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、又は更には1%以下であることができ、0.01重量%~5重量%であることができる。
【0066】
硬化性組成物は、(H)オレフィン反応性希釈剤(成分(H))を、含んでもよく、又は含まなくてもよい。オレフィン反応性希釈剤(「反応性希釈剤」とも)は、1分子当たり8~18個の炭素原子及び少なくとも1つの脂肪族不飽和の炭化水素化合物を含む。オレフィン反応性希釈剤は、直鎖状であってもよい。反応性希釈剤は、12~16個の炭素原子、又は14~16個の炭素原子を含み得る。反応性希釈剤は直鎖状であっても分枝状であってもよい。脂肪族不飽和はペンダントでも末端でもよい。成分(H)に好適な反応性希釈剤は、以下の任意の1つ又は2つ以上の任意の組み合わせであり得る:(H-1)n-ドデセン;(H-2)n-テトラデセン(H-3)n-ヘキサデセン;(H-4)n-オクタデセン;(H-5)(H-1)、(H-2)、(H-3)、及び/又は(H-4)のうちの任意の分岐状異性体;並びに(H-6)(H-1)、(H-2)、(H-3)、(H-4)、及び/又は(H-5)のうちの2つ以上の組み合わせ。反応性希釈剤は、末端位置に二重結合を有してもよい。望ましくは、反応性希釈剤は、n-テトラデセン、n-ヘキサデセン、又はこれらの混合物から選択される。オレフィン反応性希釈剤の量は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、ゼロ以上であってもよく、ゼロ超、0.5%以上、0.7%以上、1%以上、1.2%以上、1.5%以上、1.75%以上、又は更には1.9%以上であることができるが、同時に、一般に10%未満であり、8%以下、6%以下、4%以下、2%以下、又は更には1.8%以下であることができる。
【0067】
硬化性組成物は、(I)溶剤(成分(I))を、含んでもよく、又は含まなくてもよい。溶剤は、炭化水素、ケトン、酢酸エステル、エーテル、及び/又は平均重合度が3~10の環状シロキサンなどの有機溶剤であってもよい。溶剤に好適な炭化水素は、ベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、若しくはイソ-パラフィンなどの脂肪族炭化水素;又はこれらの組み合わせであることができる。望ましくは、溶剤は、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテルであり得る。好適なケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。好適な酢酸エステルとしては、酢酸エチル又は酢酸イソブチルが挙げられる。好適なエーテルとしては、ジイソプロピルエーテル又は1,4-ジオキサンが挙げられる。重合度が、3~10、あるいは3~6である好適な環状シロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。望ましくは、溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、エチルベンゼン、酢酸エチル、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択することができる。
【0068】
溶剤の量は、選択される溶剤のタイプ並びに硬化性組成物のために選択される他の成分の量及びタイプといった様々な要因に依存する。しかしながら、溶剤の量は、硬化性組成物中の全成分の合計重量に基づいて、0~90%の範囲であってもよく、0~70%、20%~70%、又は30%~70%であることができる。溶剤は、例えば、上記の1つ以上の成分の混合及び送達を補助するために、硬化性組成物の調製中に添加することができる。溶剤の全て又は一部分を、他の成分のうちの1つ以上と共に添加してもよい。例えば、ポリオルガノシリケート樹脂を、硬化性組成物中の他の成分と組み合わせる前に、溶剤に溶解させてもよい。得られる硬化性組成物が無溶剤である、すなわち、溶剤を含有しないように、又は上記の硬化性組成物中の成分の送達からの微量の残留溶剤を含有し得るように、硬化性組成物が調製された後に、溶剤の全て又は一部を任意選択的に除去してもよい。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、縮合反応を促進するのに有用であることができる(J)中和剤(成分(J))を、含んでもよく、又は含まなくてもよい。好適な中和剤としては、シリルホスホネート、シリルホスフェート、又はこれらの混合物を挙げ得る。例示的な中和剤は、ビス(トリメチルシリル)ホスホネート、例えば、ビス(トリメチルシリル)ビニルホスホネート、ビス(トリメチルシリル)ホスフェート、又はこれらの混合物である。中和剤の濃度は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、ゼロ以上であってもよく、ゼロ超、0.001重量%~0.020重量%、0.005重量%~0.019重量%、0.01重量%~0.018重量%、0.012重量%~0.017重量%であることができる。
【0070】
本発明はまた、上記の硬化性組成物を調製するためのプロセスにも関する。プロセスは、以下の工程を含み得る:工程i)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)、キャップされていない樹脂(B2)、及び縮合反応触媒(E)を混合し、それによって、混合物、すなわち、縮合硬化性配合物を形成する工程、並びに工程ii)工程i)から得られた結果として生じる混合物を、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)、キャップされた樹脂(B1)、SiH架橋剤(C)、及びヒドロシリル化反応触媒(D)と更に混合する工程。ヒドロシリル化反応阻害剤(F)、定着添加剤(G)、オレフィン反応性希釈剤(H)、溶剤(I)、及び/又は中和剤(J)などの任意選択の成分は、工程i)、工程ii)、又は工程i)とii)との両方で添加することができる。
【0071】
プロセスの工程i)では、溶剤(I)及び存在する場合には中和剤(J)などの任意選択の成分を、典型的には縮合反応触媒(E)を添加する前に、添加してもよい。例えば、縮合硬化性配合物の調製のための工程i)は、室温又は125~155℃の範囲のような高温でのブレンドによって、例えば、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)及びキャップされていない樹脂(B2)、並びに任意選択的に、溶剤(I)及び/又は中和剤(J)を混合し、続いて縮合反応触媒(E)を添加し、次いで縮合反応が部分的に起こるような温度、例えば、125~155℃又は145~155℃の範囲の温度で、30秒~30時間加熱することによって、行うことができる。代替的に、工程i)は、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)と、キャップされていない樹脂(B2)と、任意選択的に溶剤と、を室温で混合し、続いて縮合反応触媒を添加することを含む、低温ブレンドプロセスによって、行うことができる。
【0072】
工程i)の完了後、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)、キャップされた樹脂(B1)、SiH架橋剤(C)、及びヒドロシリル化反応触媒(D)を含む硬化性組成物の残りの成分(すなわち、ヒドロシリル化硬化性配合物)は、工程i)からの混合物と更に混合されて、本発明の硬化性組成物を形成する。望ましくは、工程ii)では、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)及びキャップされた樹脂(B1)は、最初に、工程i)から得られた混合物と混合され、続いてSiH架橋剤(C)、次いでヒドロシリル化反応触媒(D)が添加される。阻害剤、定着添加剤、オレフィン反応性希釈剤、及び溶剤などの他の任意選択の成分は、望ましくは、SiH架橋剤を添加する前に添加することができる。阻害剤は、ヒドロシリル化反応触媒の前に添加してもよい。硬化性組成物を調製するためのプロセスの工程i)及びii)における混合は、均質になるまで十分な時間、室温で従来の手段によって行うことができる。
【0073】
上記の硬化性組成物又は上記のプロセスから調製される硬化性組成物は、硬化性組成物の硬化生成物を含むシリコーン感圧接着剤、すなわち、ヒドロシリル化反応及び縮合反応を同時に介して硬化性組成物を硬化させることによって形成される感圧接着剤を形成する際の使用に好適である。本発明の硬化性組成物は、ヒドロシリル化反応及び縮合反応硬化性組成物である。
【0074】
本発明はまた、基材の少なくとも1つの表面上に存在するシリコーン感圧接着剤を含む接着剤物品にも関する。接着剤物品は、(i)硬化性組成物を基材の少なくとも1つの表面に適用することと、(ii)硬化性組成物を硬化させて基材の表面上にシリコーン感圧接着剤(「硬化PSA」とも)を形成し、それによって接着剤物品を形成することと、を含む方法によって調製することができる。硬化性組成物は、基材の両面に適用することができる。硬化性組成物の基材への適用は、グラビアコーター、コンマコーター、オフセットコーター、オフセットグラビアコーター、ローラーコーター、リバースローラーコーター、エアナイフコーター、スロットダイ、又はカーテンコーターなどの任意の好都合な手段によって実施することができる。基材は、硬化性組成物を硬化させて基材上にシリコーン感圧接着剤を形成するために使用される下記の硬化条件に耐えることができる任意の材料であることができる。例えば、120摂氏度(℃)以上、代替的に150℃の温度での熱処理に耐えることができる任意の基材が好適である。そのような基材に好適な材料の例は、ポリマーフィルム及び/又は発泡体を含み、これらは、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)、液晶ポリアクリレート、ポリアミドイミド(polyamideimide、PAI)、ポリエーテルスルフィド(polyether sulfide、PES)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、又はポリプロピレン(polypropylene、PP)を含み得る。基材の厚さは重要ではないが、厚さは、5マイクロメートル(μm)~300μm、代替的に10μm~200μmであり得る。望ましくは、基材は、PET、PE、PU、PI、TPE、及びTPUからなる群から選択される。
【0075】
硬化性組成物を硬化させることは、任意の従来の手段によって、例えば、同時のヒドロシリル化反応及び縮合反応によって、硬化性組成物を硬化させるのに十分な時間、使用されるコーティングラインに応じた温度での加熱、典型的には100~240℃、110~160℃、又は120~150℃の範囲における加熱によって、実施され得る。望ましくは、硬化は120~160℃で行うことができ、硬化時間は1秒~20分、2秒~5分、又は5秒~2分とすることができる。上記の加熱工程及び硬化工程は、オーブン中で、例えば、空気循環オーブン又はトンネル炉中で、又はコーティングされたフィルムを加熱シリンダーの周囲に通すことによって、実施することができる。
【0076】
上記のシリコーン感圧接着剤の基材への結合を向上させるために、接着剤物品を作製する方法は、硬化性組成物を適用する前に基材を処理することを任意選択的に更に含んでもよい。基材の処理は、硬化性組成物又はシリコーン感圧接着剤を基材に適用する前に、プライマーを適用すること、又は基材をコロナ放電処理、エッチング、若しくはプラズマ処理に供することなどの任意の都合のよい手法によって実施され得る。
【0077】
接着剤物品を作製する方法は、任意選択的に、(iii)低接着シリコーン保護フィルム(「低接着Si-PF」)を基材と向かい合っている(opposite the substrate)シリコーン感圧接着剤(上記の硬化性組成物を硬化させることによって得られる)に適用して、例えば、シリコーン感圧接着剤が基材と低接着Si-PFの低接着シリコーン感圧接着剤(「低接着PSA」)との間にあって、かつそれらと接触するように、接着剤物品の使用前にシリコーン感圧接着剤を保護することを更に含み得る。低接着Si-PFは、典型的には、上記の基材と同じか又は異なっていることができる第2の基材と、上記の本発明のシリコーン感圧接着剤以外であり、かつASTM D3330に従ってAR 1500の接着/剥離試験機を使用して測定した場合に10g/in未満のステンレス鋼(SUS)に対する接着を有する低接着Si-PSAと、を含む保護フィルムを指す。低接着Si-PFは、電子用途におけるダイカット保護又はマスキング保護用途などの製造プロセス中に、本発明のシリコーン感圧接着剤上に直接積層されてもよい。低接着Si-PF中の低接着Si-PSAは、(a)低接着シリコーンPSA組成物、又は低接着シリコーンPSA組成物(a)の(b)中接着から高接着のシリコーンPSA組成物との混合物を硬化させることによって調製することができ、得られる低接着PSAは、10g/in未満のSUSに対する接着を有する。「低接着シリコーンPSA組成物」は、10g/in未満のSUSに対する接着の硬化生成物を提供することができる、シリコーンPSA組成物を指す。「中~高接着シリコーンPSA組成物」は、10g/in超のSUSに対する接着性を有する硬化生成物を提供することができるシリコーンPSA組成物を指す。好適な低接着シリコーンPSA組成物としては、例えば、DOWSIL(商標)7626接着剤、DOWSIL 7636接着剤、DOWSIL 7646接着剤、DOWSIL 7666接着剤、DOWSIL 7647接着剤、DOWSIL 7660接着剤、DOWSIL 7645接着剤、DOWSIL 7651接着剤、又はこれらの混合物を挙げ得る。好適な中~高接着シリコーンPSA組成物としては、例えば、DOWSIL 7652接着剤、DOWSIL 7667接着剤、DOWSIL 7657接着剤、DOWSIL 7685接着剤、DOWSIL 7663接着剤、DOWSIL 7695接着剤、DOWSIL 7687接着剤、又はこれらの混合物を挙げ得る。上記の低接着シリコーンPSA組成物又は上記の中~高接着シリコーンPSA組成物の1つ以上とのその組み合わせのコーティング重量は、1~100μm、5~50μm、又は9~11μmの低接着Si-PSAの厚さを提供するのに十分であることができる。
【0078】
本発明の硬化性組成物のコーティング重量は、1~100μm、5~50μm、10~20μm、又は14~17μmの硬化PSA(すなわち、シリコーン感圧接着剤)の厚さを提供するのに十分であることができる。本発明の硬化性組成物は、例えば、室温で20分後、又は70℃及び80%相対湿度(relative humidity、RH)で3日間、低接着Si-PF上のシリコーン感圧接着剤をエージングした後、300ミリメートル/分(mm/分)の速度において180°の角度で、低接着Si-PFを剥離することによる、400g/in以上の上記の低接着Si-PFに対する接着、又は400g/in以上のSUSに対する接着を含む、望ましい接着特性を有するシリコーン感圧接着剤を提供することができる(以下の剥離接着試験の下で更なる詳細が提供される)。高い接着により、シリコーン感圧接着剤と基材(被着体)との間の界面を、マスキング又は保護などの製造プロセス後の層間剥離に抵抗するのに十分な強度になる。
【0079】
図1は、接着剤物品(100)の部分断面図を示している。物品(100)は、表面(102a)及び反対側の表面(102b)を有するシリコーン感圧接着剤(Si-PSA)(102)を含む。Si-PSA(102)は、本発明のシリコーン感圧接着剤について上記したとおりであり得る。シリコーン感圧接着剤(102)の反対側の表面(102b)は、低接着シリコーンPSA(103)の表面(103a)に対して、以下の実施例に記載した試験方法によって測定した場合、400g/in以上の剥離力で接着する。Si-PSA(102)は、10μm~200μmの厚さを有し得る。Si-PSA(102)は、表面(101a)と反対側の表面(101b)とを有する第1の基材(101)に接着する。Si-PSA(102)の表面(102a)は、第1の基材(101)の反対側の表面(101b)に接触している。Si-PSA(102)は、表面(103a)と反対側の表面(103b)とを有する低接着Si-PSA(103)に接着している。低接着Si-PSA(103)は、10μm~200μmの厚さを有し得る。Si-PSA(102)の反対側の表面(102b)は、低接着Si-PSA(103)の反対側の表面(103b)と接触している。低接着Si-PSA(103)は、表面(104a)と反対側の表面(104b)とを有する第2の基材(104)に接着している。低接着Si-PSA(103)の表面(103b)は、第2の基材(104)の反対側の表面(104a)に接触している。低接着シリコーン保護フィルム(Si-PF)(200)は、低接着Si-PSA(103)及び第2の基材(104)からなる。低接着Si-PF(200)は、上記のとおりであり得る。第1の基材(101)及び第2の基材(104)は、上記したものと同じであっても異なっていてもよく、各々独立して、10μm~200μmの厚さを有し得る。
【実施例】
【0080】
次に、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例において説明する。本明細書における全ての量、割合、及び百分率は、特に明示されない限り、重量に基づいている。表1には、本明細書で以下に記載した試料の硬化性組成物で使用するための材料を列記している。注:「Vi」はビニルを表し、「Me」はメチルを表し、DはMe2SiO2/2を表す。MOHは、式((HO)Me2SiO1/2)の単官能性シロキサン単位を表し、MViは、式(Me2ViSiO1/2)の単官能性シロキサン単位を表している。DOWSIL(商標)、SILASTIC(商標)、及びXIAMETER(商標)は、Dow Silicones Corporationの商標である。
【0081】
【0082】
【表1-2】
*低接着Si-PFは、ASTM D3330に従ってAR-1500の接着/剥離試験機を使用して測定すると、1g/inのSUSに対する接着を有する。
【0083】
硬化性組成物試料の配合は、表2及び表3に示してあり、各成分の量はグラム(g)で報告している。硬化性組成物を以下の工程により調製した。
【0084】
工程1):「コールドブレンディング」又は「増粘」プロセスによる縮合硬化性配合物の調製。CE-A、CE-F、IE-7及びIE-8は、「増粘」プロセスによって調製し、他のCE及びIEは、以下に記載した「コールドブレンディング」プロセスによって調製した。
【0085】
「増粘」プロセス:(A3)OHガム、(B2)キャップされていないMQ樹脂、(I)溶剤、及び(J)中和剤を一緒に500mLの三つ口丸底反応フラスコに室温で加えた。結果として生じる混合物を、中口においてステンレス鋼撹拌パドルを用いて250回転/分(revolutions per minute、rpm)で20分間撹拌し、続いて、撹拌中に(E)縮合反応触媒を添加した。別の口をディーン-スタークトラップに接続し、次いで、水道水冷却能力を有する凝縮器に接続する。最後の口は、システムを閉じる温度計及び窒素掃引アダプターを含む。最後に、内部に混合物を有する三つ口フラスコを、145℃の反応温度に達するように温度制御を有する加熱マントル上に取り付けた。還流開始から始めて3時間反応を続けた。次いで、得られた配合物を、後で使用するために室温まで冷却した。
【0086】
「コールドブレンディング」プロセス:(A3)OHガム、(B2)キャップされていないMQ樹脂、及び(I)溶剤を、室温で500mLの三つ口丸底反応フラスコに一緒に加え、均質になるまで3500rpmで30秒間混合した。次いで、(E)縮合反応触媒を更に加え、均質になるまで3500rpmで30秒間混合した。得られた配合物は後で使用するためのものであった。
【0087】
工程2):上記工程1)から得られた縮合硬化性配合物に、(A1)Viポリマー及び(B1)キャップされたMQ樹脂を添加し、均質になるまで混合した。次に、(F)阻害剤、(G)定着添加剤、(H)オレフィン反応性希釈剤及び(I)溶剤を、更に添加し、均一になるまで混合した。次いで、(C)SiH架橋剤を更に添加し、均一になるまで混合し、続いて(D)Pt触媒を添加し、同様に均一になるまで混合して硬化性組成物試料を得た。工程i)及び工程ii)における成分の混合は、室温で300秒間、500rpmで行った。
【0088】
上で得られた各硬化性組成物試料を、厚さ50μmのPET基材に適用し、150℃のオーブンで2分間硬化させると、15.5±1.5μmの厚さを有する生成したシリコーン感圧接着剤(すなわち、硬化性組成物の硬化生成物)が得られた。硬化後、得られたテープ試料を、以下に記載した剥離接着試験に従って、接着特性について特性評価した。特性評価の結果は、以下の表4及び表5に示してある。
【0089】
【0090】
【0091】
データ分析及び特性評価
剥離接着試験
剥離接着試験は、ASTM D3330に従って実施した。
【0092】
上記のようにして調製した各テープ試料について、被着体に対する接着を試験した。被着体は、SUS及び上で調製した低接着Si-PFであった。SUSプレートは、使用前にまず溶剤で洗浄した。上で得られたテープ試料を幅1インチに切断し、次いで、標準2kg試験ローラーを使用して10ミリメートル毎秒(millimeters per second、mm/s)の速度で各方向に2回回転させることによって、シリコーン感圧接着剤が被着体に接触するように被着体に適用した。接着/剥離試験機モデルAR-1500を使用して、300mm/分の剥離速度及び180度の角度で剥離試験を実施した。低接着Si-PFの被着体について剥離試験を行ったところ、低接着Si-PFはテープから剥がれた。SUSの被着体に対して剥離試験を行ったところ、テープはSUSから剥がれた。単位はグラム/inであった。
【0093】
「SUSへの接着(RT-20分)」試験は、シリコーン感圧接着剤をSUSと室温(RT(room temperature)、25℃)で20分間接触させた後の試料について実施した。
【0094】
「Si-PFへの接着(RT-20分)」試験は、シリコーン感圧接着剤を低接着Si-PFとRTで20分間接触させた後の試料について実施した。「Si-PFに対するエージングされた接着(70℃及び80%RH-3d)」試験は、試料を70℃及び80%RHで3日間エージングさせた後、上記のようにして実施した。
【0095】
注目すべきことに、いくつかの試料は、シリコーン感圧接着剤が被着体に部分的に又は完全に移動したので、それらは凝集破壊(「cohesion failure、C.F.」)として報告され、いくつかの試料は、上記の試験条件下で検出することができないほど低い接着値を有していたため(すなわち、接着/剥離試験機の検出下限よりも低い1g/cm2)、それらは「N.A.」として報告される。
【0096】
プローブタック試験
プローブ試験は、ASTM D2979に従って、Polyken(商標)プローブタック試験機/PT-1000を使用して、実施した。
【0097】
表4は、IE試料の特性評価結果を含む。表4に示したように、全てのIE1~9硬化性組成物は、硬化して、室温で20分間の400g/in以上の低接着Si-PFに対する初期接着、並びに70℃及び80%RHで3日間のエージング後の400g/in以上のSi-PFに対するエージングされた接着を含む、望ましい接着特性を有するシリコーン感圧接着剤を形成することができる。更に、IE1~3、5、及び7~9試料は、SUSに対して400g/in以上の接着も提供した。
【0098】
表5は、CE試料の特性評価結果を含む。表5に示したように、CE-I(Vi-ポリマー又はViガムなし)、CE-A(Vi-ポリマーの代わりにViガム)、及びCE-C(3.08重量%のVi-ポリマー)は全て、Si-PFからの剥離中にC.F.が起こった。0.74のOHガム対Viポリマーの重量比を有するViポリマーを22.1重量%含むCE-Dは、400g/in未満のSi-PFへの接着をもたらした。OHガム及びキャップされていないMQ樹脂を含まないCE-Jは、Si-PFに対して400g/in未満の接着を示した。OHガムを含有していないCE-Bは、400g/in以上のSi-PFへの接着を達成することができなかった。キャップされていないMQ樹脂を、特許請求の範囲に記載の含有量よりも少ない量で有するCE-Fは、望ましくないほど少ない量のキャップされていないMQ樹脂及び/又はキャップされていないMQ樹脂/キャップされたMQ樹脂に関する0.51という低い比の結果として、Si-PFに対する望ましくない低い初期接着を示した。キャップされたMQ樹脂を含有していないCE-Eは、Si-PFとの接着は低かった。特許請求の範囲外のR/P比を有するCE-G及びCE-H試料は、それぞれ、Si-PFへの400g/in未満の接着、及び凝集破壊を示した。
【0099】
【表4】
重量%の値は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量に対するものである。
【0100】
【表5】
重量%の値は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量に対するものである。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(原出願)硬化性組成物であって、
(A)ポリジオルガノシロキサン成分であって、
(A1)3.1重量パーセント超~20重量パーセントの、式(A-I)の脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーであって、
R
M
(3-c)R
U
cSiO-(R
UR
MSiO)
a-(R
M
2SiO)
b-SiR
U
dR
M
(3-d) (A-I)
式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各R
Uは、独立して、アルケニル基であり、下付き文字a、b、c及びdはa≧0、b>0、cは0又は1であり、dは0又は1であり、量(a+b)は、100~2000であり、かつ量(a+c+d)≧2であるように平均値を有する、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーと、
(A3)単位式(A-III)のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムであって、
{(HO)R
M
2SiO
1/2}
2(R
M
2SiO
2/2)
e (A-III)
式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、下付き文字eは、(A3)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに、20ミル(0.51mm)~80ミル(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、可塑性は、ASTM D926に基づいて、重量4.2グラム(g)の球状試料に、25℃で3分間、1キログラム(kg)の荷重を適用することによって測定され、結果は、1000分の1インチ(ミル)で測定され、手順は、ASTM D926に基づいており、それは、0.89:1~9.33:1の、前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)の前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)に対する重量比を提供する量で存在する、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムと、を含む、ポリジオルガノシロキサン成分と、
(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分であって、
(B1)単位式(B-I):(R
M
3SiO
1/2)
z(SiO
4/2)
oZ
fのキャップされた樹脂であって、式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各Zは、独立して、加水分解性基であり、下付き文字fは、0から、前記キャップされた樹脂に、最大2%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値までであり、下付き文字z及びoは、o>1、z>4、かつ量(o+z)は、500g/mol~7,000g/mol未満の数平均分子量を有する前記キャップされた樹脂を提供するのに十分な値を有するように値を有する、キャップされた樹脂と、
(B2)18.53重量パーセント超~54.3重量パーセントの、単位式(B-II):(R
M
3SiO
1/2)
z’(SiO
4/2)
o’Z
f’のキャップされていない樹脂であって、式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、各Zは、独立して、加水分解性基であり、下付き文字f’は、キャップされていない樹脂に、3%超~10%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、下付き文字z’及びo’は、o’>1、z’>4、かつ量(o’+z’)は、500g/mol~7,000g/mol未満の数平均分子量を有する前記キャップされていない樹脂を提供するのに十分な値を有するように値を有する、キャップされていない樹脂と、を含み、
前記キャップされていない樹脂(B2)の前記キャップされた樹脂(B1)に対する重量比は、0.51超~58.82であり、
(A)前記ポリジオルガノシロキサン成分及び(B)前記ポリオルガノシリケート樹脂成分は、1.2:1~1.62:1未満の、前記ポリオルガノシリケート樹脂成分(B)の前記ポリジオルガノシロキサン成分(A)に対する重量比を提供する量で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂成分と、
(C)単位式(C-I)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
(R
M
3SiO
1/2)
p(R
M
2SiO
2/2)
q(R
MSiO
3/2)
r(SiO
4/2)
s(R
MHSiO
2/2)
t(R
M
2HSiO
1/2)
u (C-I)
式中、各R
Mは、独立して、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の一価炭化水素基と、脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基とからなる群から選択され、下付き文字p、q、r、s、t、及びuは、p≧0、q≧0、r≧0、s≧0、t≧0、u≧0、(t+u)≧2、かつ量(p+q+r+s+t+u)は、5~100の重合度を有する前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを提供するのに十分であるように値を有し、それは、5~50の、ケイ素結合水素原子のアルケニル基に対するモル比を前記硬化性組成物に提供する量で存在する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(D)1~1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)
前記硬化性組成物中のアルケニル基の含有量が0.017重量パーセント~0.089重量パーセントの範囲にある、縮合反応触媒と、を含み、
重量百分率は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に対するものである、硬化性組成物。
【請求項2】
(原出願)(F)0.001重量パーセント~5重量パーセントのヒドロシリル化反応阻害剤、及び(G)0.01重量パーセント~5重量パーセントの定着添加剤、又はこれらの混合物を更に含み、重量百分率は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づく、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
(今回補正された)式(A-I)において、各R
Mが、独立して、1~6個の炭素原子のアルキル基から選択され、各R
Uが、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択され、量(a+b)が、前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマーに300ミリパスカル*秒~100,000ミリパスカル*秒の粘度を付与するのに十分な値を有する、請求項1[[又は2]]に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(今回補正された)単位式(A-III)において、各R
Mが、独立して、1~6個の炭素原子のアルキル基であり、各R
Uが、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択され、下付き文字eが、30ミル(0.76mm)~70ミル(1.78mm)の可塑性を有する前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムを提供するのに十分である、請求項1[[又は2]]に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(今回補正された)単位式(B-II)において、各R
Mが、独立して、1~6個の炭素原子のアルキル基であり、各Zが、OHであり、量(z+o)が、2,900g/mol~5,000g/molの数平均分子量を有する前記キャップされていない樹脂(B2)を提供するのに十分な値を有する、請求項1[[又は2]]に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(今回補正された)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)が、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に基づいて、17.67重量パーセント~36.2重量パーセントの濃度で存在する、請求項1[[又は2]]に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
(今回補正された)前記ポリジオルガノシロキサン成分(A)が、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量に対する重量百分率で、5重量パーセント~16重量パーセントの前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)と、20重量パーセント~30重量パーセントの前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)と、を含み、前記硬化性組成物中のビニル基の含有量が、0.03重量パーセント~0.08重量パーセントであり、前記キャップされていない樹脂(B2)の前記キャップされた樹脂(B1)に対する前記重量比が0.55~5であり、ケイ素結合水素原子のビニル基に対するモル比が10~30である、請求項1[[又は2]]に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
(原出願)請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物を調製するためのプロセスであって、
i)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム(A3)、前記キャップされていない樹脂(B2)、及び前記縮合反応触媒(E)を混合することと、
ii)工程i)から得られた結果として生じる混合物を、前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンポリマー(A1)、前記キャップされた樹脂(B1)、前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(C)、及び前記ヒドロシリル化反応触媒(D)と更に混合し、それによって前記硬化性組成物を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項9】
(原出願)基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上のシリコーン感圧接着剤と、を含む接着剤物品であって、前記シリコーン感圧接着剤が、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化生成物である、接着剤物品。
【請求項10】
(原出願)接着剤物品を作製する方法であって、
任意選択的に、(1)基材の表面を処理することと、
(2)前記基材の少なくとも1つの表面上に、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物をコーティングすることと、
(3)前記硬化性組成物を硬化させることと、を含む、方法。
【国際調査報告】