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特表2024-527813没食子酸エステルを含有する酸化安定性ジアンヒドロヘキシトール組成物
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  • 特表-没食子酸エステルを含有する酸化安定性ジアンヒドロヘキシトール組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】没食子酸エステルを含有する酸化安定性ジアンヒドロヘキシトール組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240719BHJP
   A23L 3/3481 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/34 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C07D493/04 101D
A61K8/49
A61K8/37
A61K8/24
A61K8/41
A61K47/14
A61K47/02
A61K47/18
A23L3/3481
C08L101/00
A61K31/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503406
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022025358
(87)【国際公開番号】W WO2023006250
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】2108221
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サン-ルー、レネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンベシアン、テオドール
【テーマコード(参考)】
4B021
4C076
4C083
4C086
4J002
【Fターム(参考)】
4B021MC03
4B021MK08
4B021MK21
4B021MK22
4B021MK25
4B021MK28
4B021MP01
4C076BB31
4C076DD26Q
4C076DD45Q
4C076DD50Q
4C076FF36
4C076FF63
4C083AB281
4C083AC471
4C083AC541
4C083AC841
4C083CC01
4C083EE01
4C083FF01
4C086AA01
4C086BA03
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA03
4J002AA001
4J002BE021
4J002CF001
4J002CG001
4J002CK021
4J002EL076
4J002GB00
(57)【要約】
本発明は、水素化糖の内部脱水生成物の組成物、特にイソソルビド組成物の酸化安定性を改善するための方法に関し、当該方法は、没食子酸エステルの使用に基づく。本発明はまた、本方法に従って得られる組成物及びその様々な使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化糖の内部脱水生成物組成物を調製するための方法であって、
a)前記内部脱水生成物を含有する媒体を蒸留して、前記生成物が濃縮された留出物を得る工程と、
b)任意選択的に、このようにして得られた前記留出物を精製する少なくとも1つの後続工程と、
c)工程a)の間に得られ、次いで任意選択的に工程b)に供された前記留出物を、少なくとも1つの没食子酸エステルの存在下に置く後続工程と、
d)任意選択的に、水素化糖の内部脱水生成物の得られた組成物を成形する後続の工程と、を含む、方法。
【請求項2】
工程c)で実施される前記没食子酸エステルが、没食子酸エチル及び没食子酸プロピル並びにそれらの混合物から選択され、最も好ましくは没食子酸プロピルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)がまた、リン酸化合物、優先的にはリン酸二ナトリウムを実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)がまた、好ましくはジエタノールアミン及びトリエタノールアミンから選択されるアミンであって、非常に優先的にはジエタノールアミンである、アミンを実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程c)で実施される前記没食子酸エステルが、0.0001~2%、好ましくは0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%で使用され、これらのパーセンテージが、そのとき前記留出物中に主に存在する前記水素化糖の内部脱水生成物の乾燥重量に対する没食子酸エステルの乾燥重量によって表されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)において実施される前記リン酸化合物が、0.0001~2%、好ましくは0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%で使用され、これらのパーセンテージが、そのとき前記留出物中に主に存在する前記水素化糖の内部脱水生成物に対する前記リン酸化合物の乾燥重量によって表されることを特徴とする、請求項1~3及び5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程c)で実施される前記アミンが、0.0001~2%、好ましくは0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%で使用され、これらのパーセンテージが、そのとき前記留出物中に主に存在する前記水素化糖の内部脱水生成物の前記乾燥重量に対する前記アミンの乾燥重量によって表されることを特徴とする、請求項1~2、4及び5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水素化糖の内部脱水生成物がイソソルビドであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
水素化糖の少なくとも1つの内部脱水生成物を含有する、組成物であって、少なくとも1つの没食子酸エステルを含有することを特徴とする、組成物。
【請求項10】
前記没食子酸エステルが、没食子酸エチル及び没食子酸プロピルから選択され、好ましくは没食子酸プロピルであることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
0.0001~2%、優先的には0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%の没食子酸エステルを含有し、これらのパーセンテージが、前記水素化糖の内部脱水生成物の乾燥重量に対する没食子酸エステルの乾燥重量によって表されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
0.0001~2%、優先的には0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%のリン酸化合物も含有し、前記リン酸化合物が、優先的にはリン酸二ナトリウムであり、これらのパーセンテージが、前記水素化糖の内部脱水生成物の前記乾燥重量に対するリン酸化合物の乾燥重量によって表されることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
0.0001~2%、優先的には0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%のアミンも含有し、前記アミンが、優先的にはジエタノールアミン又はトリエタノールアミン、非常に優先的にはジエタノールアミンであり、これらのパーセンテージが、前記水素化糖の内部脱水生成物の前記乾燥重量に対するアミンの乾燥重量によって表されることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
糖の内部脱水生成物がイソソルビドであることを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
化学、製薬、化粧品又は食品産業を対象としたポリマー若しくは非ポリマー、生分解性若しくは非生分解性製品又は混合物の調製のための、請求項9~14のいずれか一項に記載の組成物の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化糖の内部脱水生成物の組成物、特にイソソルビド組成物の酸化安定性を改善するための方法に関し、当該方法は、没食子酸エステルの使用に基づく。本発明はまた、本方法に従って得られる組成物及びその様々な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能な生物学的資源を利用することは、それらの枯渇及び石油などの化石燃料の価格上昇に直面して、主要な生態学的及び経済的な必須要件となっている。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの開発が数年間にわたって進んでいる。
【0003】
イソヘキシドとも呼ばれるこのような生成物は、ソルビトール、マンニトール、及びイジトールなどのC6水素化糖(ヘキシトール)の内部脱水によって得られる。本出願において、「ジアンヒドロヘキシトール」という用語は、以下の式のイソソルビド(1,4-3,6-ジアンヒドロ-ソルビトール)、イソマンニド(1,4-3,6-ジアンヒドロ-マンニトール)、イソイジド(1,4-3,6-ジアンヒドロ-イジトール)、及びこれらの生成物の混合物を包含する。
【0004】
【化1】
【0005】
今日、イソヘキシド、特にイソソルビドの産業開発に対する高い可能性があり、その使用は以下のものの調製のために想定される:
-疾患、特に心臓及び/又は血管疾患の治療的処置に有用なイソソルビド2-ニトレート、5-ニトレート又は2,5-ジニトレート、特に医薬組成物又は美容組成物の調製における溶媒として有用なアルキル化、特にジメチル化されたイソソルビド誘導体、
-燃料用洗浄剤組成物における使用のためのイソソルビド誘導体、
-ポリマー、接着剤又はインクにおいて可塑剤として使用することができるアルキル化又はアルケニル化誘導体、
-ポリマー又は潤滑剤安定剤として使用可能な特定のビホスフィット(biphosphite)、
-ポリビニルアルコール、ポリウレタン、又はポリエステル及びポリカーボネートなどのポリマー及びコポリマーをベースとする物品、
-生分解性重縮合物、
-表面をコーティング及び/又は着色するための水性ラッカー又は組成物。
【0006】
しかしながら、ヘキシトールなどのポリオールは、脱水工程(例えばソルビトール)に供されると、所望の脱水生成物(例えばイソソルビド)に加えて、以下のような様々な共生成物に変換され得ることがよく知られている:
-当該所望の生成物の異性体、例えば、イソマンニド及びイソイジドなどのイソソルビド異性体、
-所望の生成物又はその異性体よりも脱水が少ない生成物、例えばソルビタン、マンニタン又はイディタン、
-前述の生成物の酸化又はより一般的には分解から生じる誘導体であって、これらの誘導体は、例えば、所望の生成物がイソソルビドである場合、デオキシモノアンヒドロヘキシトール、モノアンヒドロペンチトール、モノアンヒドロテトリトール、アンヒドロヘキソース、ヒドロキシメチルフルフラール、又はグリセリンタイプの共生成物を含むことができる、
-上記生成物の重合から得られる誘導体、及び/又は不明確な性質の強く着色した種。
【0007】
また、当該脱水工程中の反応条件を変更することによって、又は当該工程後に1つ以上の精製処理を適用することによって、又はこれらの異なる手段を組み合わせることによってさえ、純度又は安定性に関して改善された、当該工程から組成物を得ることを目的とした技術に向けられた文献全体もある。
【0008】
この第1のカテゴリーでは、特に比較的高い温度及び反応時間が想定される場合に、酸化反応を回避するために不活性ガス雰囲気下で脱水反応を行うことを推奨しているカナダ特許第1178288号(14頁、3~8行)を挙げることができる。同様に、米国特許第4,861,513号には、不活性ガス(窒素)及び還元剤(次亜リン酸ナトリウム)の同時存在下でソルビトール脱水反応を実施して、低含有量(固形分10~26重量%)のジアンヒドロソルビトールを有する特定のポリオールの混合物を調製することが記載されている。
【0009】
第2のカテゴリーでは、米国特許第4564692号を参照することができ、これは、イソソルビド又はイソマンニド組成物のイオン交換体及び/又は活性炭上での予備精製、次いで、蒸発による濃縮及び所望のイソヘキシドの結晶の播種後の、水中でのその結晶化を記載しているが、いかなる点でも詳細ではない。本発明者らはまた、国際公開第01/94352号を参照することができ、これは、イオン交換手段、続いて脱色手段による処理による精製を教示している。
【0010】
最後に、第3のカテゴリーにおいて、英国特許第613,444号は、水/キシレン媒体中でキシレン媒体中での脱水によってイソソルビド組成物を得、これを続いて蒸留処理にかけ、次いでアルコール/エーテル混合物中で再結晶化させることが記載されている。一方、欧州特許第0323994号は、有利には共触媒としてのカルボン酸と組み合わされた特定の脱水触媒(それぞれガス状ハロゲン化水素及び液状フッ化水素)の使用、次いでこのようにして得られた粗イソソルビド又はイソマンニド組成物の蒸留を想定している。
【0011】
この先行技術とは対照的に、本出願人は、イソヘキシド組成物の安定性のレベルがその純度のレベルと相関しないだけでなく、先行技術に記載されるような窒素ガス又は水素化ホウ素ナトリウムなどの薬剤の使用(遅くとも蒸留工程の時点で)がこの安定性を有意に改善しないという二重の観察を行っている。
【0012】
更なる研究の過程で、本出願人は、驚くべきことにかつ予想外に、1)特定の安定剤(この場合、非気体形態)、2)調製方法の特定の時点で(この場合、実際の蒸留段階の後に)適用されたもののみが、少なくとも室温又は適度な温度で、改善された貯蔵挙動を有するイソヘキシド組成物の調製を可能にすることを見出した。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、欧州特許第1446373号の主題であり、水素化糖の内部脱水生成物を少なくとも含有する組成物を調製するための方法であって、
a)内部脱水生成物を含有する媒体を蒸留して、この生成物が濃縮された留出物を得る工程と、
b)任意選択的に、このようにして得られた留出物を精製する少なくとも1つの後続工程と、
c)工程a)の間に得られ、次いで任意選択的に工程b)に供された留出物を、留出物中に主に含有される内部脱水生成物の安定性を改善することができる薬剤と接触させる後続工程であって、当該薬剤が気体形態ではない、後続工程と、
d)任意選択的に、水素化糖の内部脱水生成物の得られた組成物を成形する後続の工程と、を含む、方法を保護する。
【0014】
この文献は、工程c)で実施される改良剤についてのいくつかの可能性に関するものであり、改良剤は、以下から選択することができる:
-還元剤、特にホウ素又はアルミニウム系化合物、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)又はリチウムアルミンヒドリド(lithium aluminhydride)(LiAlH4)、
-ホスフィン又はホスフェートなどのリン系化合物、
-抗酸化剤、特に窒素系化合物、特に少なくとも1つのアルコール官能基を含有するか又は含有しない芳香族又は非芳香族アミン、例えばヒドロキシルアミン、モルホリン、及びそれらの誘導体、
-少なくとも1つのアルコール官能基を含有するか又は含有しない芳香族、窒素含有又は非窒素含有化合物、例えば、ヒドロキノン、フェノール、トコフェロール及びそれらのそれぞれの誘導体、
-亜リン酸塩、亜ホスホン酸塩、亜硫酸塩、チオジプロピオン酸のエステルの塩及びそれらの混合物、
-制酸剤、
-天然起源の金属の錯化剤又はキレート剤などの金属不活性化剤、
-食品添加物として認可された製品、特に、アスコルビン酸(ビタミンC)、エリソルビン酸、乳酸、クエン酸、没食子酸、トコフェロール、これら全ての製品の誘導体(特に塩)、BHT、ブチル化ヒドロキシアニソール(butylated hydroxyanisole、BHA)及びこれらの製品の任意の混合物などの、欧州規制の意味の範囲内で抗酸化剤、酸度補正剤又は金属イオン封鎖剤として認定されたもの。
【0015】
したがって、本出願人は、そのような方法を実施することによって、特に安定な組成物が接合されることを実証した。欧州特許第1446373号の意味における安定な組成物は、非不活性雰囲気中で少なくとも1ヶ月間、40℃の温度で保存された、0.0005%未満のギ酸含有量及び0.005%未満の全モノアンヒドロヘキソース含有量の両方を有する組成物を指し、これらのパーセンテージは、当該組成物の乾燥重量に対する乾燥重量によって表される。
【0016】
この安定性は、上述の方法を使用して得られる組成物について、1ヶ月より長く、少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月、更により優先的には少なくとも1年に達し得る。工程C)の間に使用される改良剤として、欧州特許第1446373号は、例として、水素化ホウ素ナトリウム、モルホリン、BHT、ビタミンC、ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びリン酸二ナトリウムを列挙しており、最良の結果(6ヶ月の安定性)は、水素化ホウ素ナトリウム及びモルホリンについて得られている。
【0017】
後者の方法の改良に取り組むことで、本出願人は、方法の工程c)で導入される薬剤の性質の影響、及びモノエタノールアミン、ジエタノールアミン(diethanolamine、DEA)、トリエタノールアミン(triethanolamine、TEA)又はそれらの混合物の特定の選択が特に有利な結果をもたらす(この事項は特に欧州特許第2991991号の主題を形成する)ことを示すことができる。これらの結果は、このようにして安定化された組成物の経時的なpHモニタリングによって支持される。欧州特許第2991991号の意味における安定な組成物は、そのpHが50℃で少なくとも1ヶ月間著しく変化しない組成物を指す。
【0018】
より安定な水素化糖内部脱水生成物組成物を得るための研究を続けたところ、本出願人は、酸化が優勢な現象であるという結論に達した。換言すれば、当該組成物の安定性は、とりわけそれらの酸化に対する耐性によって支配される。その際に、本出願人は、酸化安定性を改善するのに特に有効である特定のクラスの化学化合物:ガレートとしても知られる没食子酸エステルを同定した。
【0019】
これらの化合物の有効性を実証するために独自の機構、いわゆる「PetroOxy」試験を使用することを考えたことも、本出願人の功績である。この試験は、留出燃料の耐酸化性を評価するために一般的に使用される、Anton Paar GmbHによって市販されている同名の(namesake)デバイスを使用する。この実験は、予め固定された圧力まで酸素で満たされ、所与の温度まで上昇する密封チャンバ内に配置された試料の加速酸化に基づく。これらの条件により、試料の酸化が加速され、その結果、チャンバ内の圧力が低下する。次いで、酸素圧力差がセル内で測定される。誘導時間は、経時的な酸素消費速度の評価によって決定される。
【0020】
誘導の期間は、反応中間体の濃度が低いために反応が遅い酸化プロセスの開始時の期間である。この期間が経過すると、反応はより急速になり、酸素圧の急激な変化をもたらす。これは、この初期誘導期間の持続時間に対応する誘導時間を決定する。「PetroOxy」試験の使用及びその結果の解釈については、本出願の実施例の章を参照されたい。
【0021】
有利なことに、本方法により、pH安定性に関して有効であると言われている先行技術におけるある特定の化合物が酸化現象に影響を及ぼさないことを実証することが可能になった。これは、リン酸二ナトリウムの場合である。本方法はまた、耐酸化性を改善するための薬剤としてのDEA及びTEAの価値を実証した。しかしとりわけ、これは、驚くべきことにイソソルビドに対して負の効果を有する以前から知られている抗酸化剤を除外することによって、及びイソソルビドに対するそれらの抗酸化力に関して特に有効であった化合物のクラスである没食子酸エステルを同定することによって、特に際立っていることを証明した。これまでに知られている化合物はいずれも、DEA及びTEAでさえも、イソソルビドに対するそのような抗酸化力を達成していない。
【0022】
従来技術において、水素化糖の内部脱水生成物組成物を調製するための方法において使用される没食子酸エステルが、当該組成物の酸化に対するそのような耐性をもたらすことを示唆したものはない。同様に、当業者がいわゆる「PetroOxy」デバイスを試験して、水素化糖の内部脱水生成物組成物について、酸化に関して有効な化合物を同定することを可能にする要素はなかった。そのような結果を達成したのは本出願人の功績である。
【0023】
したがって、本発明の第1の主題は、水素化糖の内部脱水生成物組成物を調製するための方法であって、
a)内部脱水生成物を含有する媒体を蒸留して、この生成物が濃縮された留出物を得る工程と、
b)任意選択的に、このようにして得られた留出物を精製する少なくとも1つの後続工程と、
c)工程a)の間に得られ、次いで任意選択的に工程b)に供された留出物を、少なくとも1つの没食子酸エステルの存在下に置く後続工程と、
d)任意選択的に、水素化糖の内部脱水生成物の得られた組成物を成形する後続の工程と、を含む、方法からなる。
【0024】
好ましくは、工程c)で実施される没食子酸エステルは、アルキルエステルから、より好ましくは没食子酸エチル及び没食子酸プロピル並びにそれらの混合物から選択される。更により好ましくは、工程c)で実施される没食子酸エステルは、没食子酸プロピルである。
【0025】
第1の好ましい変形形態では、工程c)はまた、リン酸化合物、優先的にはリン酸二ナトリウムを実施する。
【0026】
第2の好ましい変形形態では、工程c)はまた、好ましくはアルキルアミンから、より好ましくはジエタノールアミン及びトリエタノールアミンから選択されるアミンであって、非常に優先的にはジエタノールアミンである、アミンを実施する。
【0027】
本発明による方法は、有利には、工程c)で実施される没食子酸エステルは、0.0001~2%、好ましくは0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%、更により好ましくは0.002~0.1%で使用されることを特徴とし、これらのパーセンテージは、そのとき留出物中に主に存在する水素化糖の内部脱水生成物、例えばそのときこの媒体中に存在するイソソルビドの乾燥重量に対する没食子酸エステルの乾燥重量によって表される。
【0028】
上記の第1の好ましい変形形態では、工程c)で使用されるリン酸化合物は、有利には、0.0001~2%、好ましくは0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%、更により好ましくは0.002~0.1%の割合で使用され、これらのパーセンテージは、そのとき留出物中に主に存在する水素化糖の内部脱水生成物、例えば、そのときこの媒体中に存在するイソソルビドの乾燥重量に対する当該リン酸化合物の乾燥重量によって表される。
【0029】
上記の第2の好ましい変形形態では、工程c)で使用されるアミンは、有利には、0.0001~2%、好ましくは0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%、更により好ましくは0.002~0.1%の割合で使用され、これらのパーセンテージは、そのとき留出物中に主に存在する水素化糖の内部脱水生成物、例えば、そのときこの媒体中に存在するイソソルビドの乾燥重量に対する当該アミンの乾燥重量によって表される。
【0030】
本発明による方法の文脈において、蒸留工程a)に供される媒体は、乾燥物質、温度及び/又は所望の脱水生成物における純度の点を含む非常に多様な性質のものであり得ることに留意すべきである。このようにして、所望の生成物、例えばイソソルビドに関する工程a)に供される媒体の純度は、50~80%、又は更に80%超(工程a)に供される媒体の総質量に対して表される質量パーセンテージ)であり得る。それは、第1の変形形態によれば、実際の脱水反応から直接誘導された媒体からなり、例えば50~80%程度の所望の生成物純度(例えば、イソソルビド)を有するイソソルビド組成物であってもよい。別の可能性によれば、当該組成物は、特に蒸留及び/又は結晶化による1つ以上の事前の精製操作から既に得られており、例えば、80%を超える所望の生成物純度(例えば、イソソルビド)を有する。
【0031】
有利には、蒸留工程a)の後に、得られた留出物を精製するための工程b)が続く。第1の変形形態によれば、工程b)は、一般に溶液中に入れられた留出物が、変色手段及びイオン交換手段から選択される少なくとも1つの精製手段で処理される精製工程からなる。
【0032】
変色手段は、特に、粒状又は粉末状の活性炭及び吸着樹脂を意味すると理解される。例として、CECA DC 50製品などの粒状活性炭、NORIT SX+製品などの粉末状活性炭、及び/又はDUOLITE XAD 761、MACRONET MN-600若しくはMACRONET MN-400と呼ばれるものなどの樹脂を単独で又は組み合わせて使用することが可能である。イオン交換手段は、特に、アニオン性、弱若しくは強樹脂、及びカチオン性又は強カチオン性樹脂を意味すると理解される。例として、AMBERLITE IRA 910樹脂などの強アニオン性樹脂、又はPUROLITE C 150 S樹脂などの強カチオン性樹脂を単独で又は組み合わせて使用することが可能である。イオン交換手段は、有利には、少なくとも1つのアニオン性樹脂及び少なくとも1つのカチオン性樹脂を含むことができる。好ましくは、この手段は、アニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の混合床、又は一連のカチオン性樹脂及び次にアニオン性樹脂の混合床、又は一連のアニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の混合床から構成される。
【0033】
好ましくは、本発明による方法の工程b)の間、工程a)の間に得られた留出物は、少なくとも1つの活性炭及び少なくとも1つのイオン性又は非イオン性樹脂によって任意の順序で処理される。非常に有利には、当該留出物は最初に活性炭で処理され、次いで少なくとも1つの樹脂で処理され、次いで再び活性炭で処理される。本発明による方法の別の変形形態によれば、本出願人は、精製工程b)に供される組成物が、特定の不純物、例えばギ酸及びモノアンヒドロヘキソース型の種の最大含有量に関してある特定の特徴を既に有することが特に有利であることを見出した。更に、そのような含有量は、特に、工程a)の間に得られた留出物を当該精製工程b)に直接供することによって保証され得ることが見出された。
【0034】
したがって、本発明による方法は、当該工程b)に供される留出物が0.002%未満のギ酸含有量及び0.02%未満のモノアンヒドロヘキソース含有量を有するという事実を特徴とすることができ、これらのパーセンテージは、そのとき当該留出物中に主に存在する水素化糖の内部脱水生成物の乾燥重量、例えば当該留出物中に存在するイソソルビドの乾燥重量に対する乾燥重量によって表される。留出物は、特に、0.0005%未満のギ酸含有量及び0.005%未満のモノアンヒドロヘキソース含有量を有し得る。
【0035】
有利には、精製工程b)が実施され、没食子酸エステル、及び任意選択的に第1の変形形態のリン酸化合物又は第2の変形形態のアミンは、この工程b)の後に実施され、特に、工程b)から得られた内部脱水生成物の精製された水溶液に直接導入され、この水溶液は、一般に多くても60℃に等しい温度を有する。
【0036】
工程c)の後、上述したように、本発明に従って得られた水素化糖の内部脱水生成物組成物は、後続工程d)中に成形することができる。この工程は、工程c)から得られた組成物の、特に冷たい表面上での接触による冷却から得られた結晶化又は塊状塊をペレット化又はフレーク化する操作からなってもよい。
【0037】
所望であれば、成形工程d)の後に粉砕及び/又は篩い分けの工程を行うことができ、これは、このようにして得られた組成物を貯蔵及び/又は袋詰めする任意の工程の前である。
【0038】
別の変形形態によれば、本発明に従って得られた水素化糖の内部脱水生成物組成物は、工程c)の後、その後のいかなる特定の成形工程もなしに、そのまま、特に液体又はペースト状態で保存することができる。本発明による方法から得られる組成物はまた、任意の時点で、濃縮工程、特に真空蒸発工程を受けていてもよく、当該工程は、特に持続時間及び温度に関して、可能な限り低い条件下で行われる。次いで、この工程は、当該組成物を液体形態に維持しながら、特に50~90%、優先的には75~88%の乾物含有量に濃縮することからなる。それはまた、乾燥形態の最終生成物を得るために当該組成物を濃縮することからなってもよい。
【0039】
好ましくは、工程c)の直後に当該濃縮工程を実施することが最も有利である。
【0040】
本発明の特徴である工程c)及び/又は任意の後続の工程、特に成形、貯蔵又は袋詰めを含む、上記の方法の全ての工程は、必須であるか任意選択的であるかにかかわらず、必要に応じて不活性雰囲気中で実施することもできる。
【0041】
「水素化糖の内部脱水生成物」という表現は、特に、ソルビトール、マンニトール及びイジトールなどのC6水素化糖(ヘキシトール)の内部脱水生成物を含み、したがって、イソソルビド(1,4-3,6-ジアンヒドロ-ソルビトール)、イソマンニド(1,4-3,6-ジアンヒドロ-マンニトール)、イソイジド(1,4-3,6-ジアンヒドロ-イジトール)を包含する。好ましい変形形態では、本発明による方法は、水素化糖の内部脱水生成物がイソソルビドであることを特徴とする。
【0042】
結果として、改善された酸化安定性を有する、水素化糖の内部脱水生成物の組成物、例えばイソソルビド組成物を提供するための新しい手段が利用可能であり、そのような安定性は、当該組成物の意図される用途が何であれ、及び当該組成物の純度が何であれ必要とされる。
【0043】
したがって、本発明の別の主題は、少なくとも1つの没食子酸エステルを含有することを特徴とする、水素化糖の少なくとも1つの内部脱水生成物を含有する組成物に関する。
【0044】
好ましくは、この没食子酸エステルは、アルキルエステルから、より好ましくは没食子酸エチル及び没食子酸プロピルから選択され、好ましくは没食子酸プロピルでもある。
【0045】
この組成物はまた、0.0001~2%、優先的には0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%、更により優先的には0.002~0.1%の没食子酸エステルも含有することを特徴とし、これらのパーセンテージは、水素化糖の内部脱水生成物の乾燥重量に対する没食子酸エステルの乾燥重量によって表される。
【0046】
第1の変形形態では、この組成物はまた、優先的にはリン酸二ナトリウムであるリン酸化合物も含有することを特徴とする。好ましくは、この第1の変形形態によれば、組成物は、0.0001~2%、優先的には0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%、更により優先的には0.002~0.1%の当該リン酸化合物を含有し、これらのパーセンテージは、水素化糖の内部脱水生成物の乾燥重量に対するリン酸化合物の乾燥重量によって表される。
【0047】
第2の変形形態では、この組成物はまた、好ましくはジエタノールアミン又はトリエタノールアミン、非常に優先的にはジエタノールアミンである、アミンも含有することを特徴とする。好ましくは、この第2の変形形態によれば、組成物は、0.0001~2%、優先的には0.001~2%、より好ましくは0.002~1.5%、更により優先的には0.002~0.1%の当該アミンを含有し、これらのパーセンテージは、水素化糖の内部脱水生成物の乾燥重量に対するアミンの乾燥重量によって表される。
【0048】
好ましい変形形態におけるこの組成物は、糖の内部脱水生成物がイソソルビドであることを特徴とする。
【0049】
組成物が液体形態である第1の変形形態では、組成物は、50~90%、好ましくは75~88%の乾物含有量を有することを特徴とする。
【0050】
第2の変形形態では、当該組成物は固体形態である(したがって、当該組成物は99~100%の乾物含有量を有する)。
【0051】
このような組成物は、特に、化学、製薬、化粧品又は食品産業を対象としたポリマー若しくは非ポリマー、生分解性若しくは非生分解性製品又は混合物の調製のために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
他の特徴、詳細、及び利点は、以下の実施例及び添付の図面を読むことによって明らかになるであろう。
図1】PetroOxy試験により得られた酸素消費曲線を用いた誘導時間の決定を示す。
【実施例
【0053】
以下の化学薬品を以下の実施例で使用した。
リン酸二ナトリウム(参照番号:Sigma Aldrich製S9763)
ジエタノールアミン(参照番号:398179、Sigma Aldrich)
マルトール(参照:W265624、Sigma Aldrich)
Trolox(参照番号:238813、Sigma Aldrich)
没食子酸(参照番号:398225、Sigma Aldrich)
没食子酸エチル(参照番号:48640、Sigma Aldrich)
没食子酸プロピル(参照番号:48710、Sigma Aldrich)
【0054】
PetroOxy試験による抗酸化添加剤の有効性を決定することに関連する方法論
3gの精製されたイソソルビドの蒸留水溶液(50%DM)を、安定剤を添加して又は添加せずに、ガラス皿に正確に秤量し、次いで、測定装置(Petrotest(現在はAnton Paar GmbH)製PetroOxyモデル13-3002)の密封チャンバに入れる。セル中の空気を、加圧シリンダー(Alphagaz、純度:>99.5%)を介して純酸素で室温で3回パージする。セル内の純酸素の圧力を700kPa(7barの酸素)に上昇させ、その後セルの温度を100℃に固定し、酸素圧力を自由に変動させる。実験の間、圧力を連続的にモニターする。安定化段階(温度の上昇による圧力上昇)の後、試験チャンバのチャンバ内の圧力の低下は、調査される試料の酸化反応中の酸素の消費によるものである。実験中の相対圧力変化は、試験条件下で試料がその分解を開始する時間(誘導時間、OIT(induction time)として知られる)を決定することを可能にする。
【0055】
溶液誘導時間は以下のように決定する。
【0056】
酸素消費を示すエンクロージャ内の酸素圧力の相対変動は、関係(Pt-Pmax)/Pmaxによって与えられ、Pmaxは、経時的なシステムの最大圧力であり、安定化段階中の最大圧力に対応し、Ptは、酸素が消費される時間の関数としての圧力である。試料誘導時間は、酸素消費曲線の変曲点;2つの線形領域の交点のいずれかによって与えられる(図1参照)。
【0057】
誘導時間が長いほど、試料の耐酸化性が大きい。このパラメータを正確に計算するために、変曲点の前後の2つの線分の間で線形回帰法が使用される。
【0058】
抗酸化力に関する添加剤の有効性(Eで示される)は、安定剤を含むイソソルビドの溶液と安定剤を含まない溶液(添加剤を含まないイソソルビド、tref)との間の誘導時間(t)の差によって決定され、E=t-trefである。正の有効性Eを有する添加剤iは有益な効果を有するが、負の有効性Eは有害な影響を示す。添加剤の混合物の相乗作用は、同じ濃度の添加剤を使用して、独立して得られる混合物中の添加剤の有効性Eの合計よりも大きい有効性E混合物をもたらす。
【0059】
参考例:非安定化イソソルビド組成物の調製及びその誘導時間の研究。
イソソルビド溶液を以下のように調製する。
【0060】
1kgの70%乾燥物質(dry matter、DM)ソルビトール溶液(本出願人によってNEOSORB70/02として市販されている)及び7gの濃硫酸を、撹拌ジャケット付き反応器に導入する。得られた混合物を真空下(100mbar)で5時間加熱して、反応媒体中に含まれる水及びソルビトール脱水反応からの水を除去する。
【0061】
次いで、粗反応生成物を100℃に冷却し、次いで11.4gの50%水酸化ナトリウム溶液で中和する。イソソルビド組成物を真空下(50mbar未満の圧力)で蒸留する。
【0062】
次いで、わずかに着色した(淡黄色)イソソルビド留出物を60℃の温度でイソプロパノールに溶解して、75%DMを有する均質な溶液を得る。次いで、この溶液を、この場合は5時間かけて、10℃の温度までゆっくりと冷却する。再結晶したイソソルビドプライマーを40℃で添加する。
【0063】
次に結晶を絞り器で絞り、イソプロパノールで洗浄する。真空下で乾燥させた後、結晶を水に溶解して、50%DMを有する水溶液を得る。
【0064】
次いで、この溶液を、粒状活性炭(GC12-40のカラム上で、相対速度0.5V/V/h(生成物の体積/樹脂の体積及び1時間当たり)で濾過する。このようにして得られた変色したイソソルビド組成物を、2V/V/hの速度で、強カチオン性樹脂(PUROLITE C150 S)のカラムに、次いで強アニオン性樹脂(AMBERLITE IRA910)に連続的に通す。次に、この溶液を粉末活性炭(NORIT SX+)で20℃で1時間処理する。使用される炭素の量yは、溶液の乾燥重量に対して0.5重量%である。
【0065】
活性炭の濾過後、イソソルビド溶液を回収し、上記の方法に従って分析する。
【0066】
添加剤を含まないイソソルビド溶液の誘導時間は5.0時間である。この値を、添加剤の有効性を決定するための基準として使用する。
【0067】
非発明例1-1:リン酸二ナトリウムを50ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同一であるが、この場合、使用される添加剤はリン酸二ナトリウムである。次いで、50mgのリン酸二ナトリウム(50ppm)を2kgの精製イソソルビド溶液(50%DM)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0068】
リン酸二ナトリウムを50ppmで添加した溶液について得られた誘導時間は5.0時間であるか、又は有効性Eは0である。この添加剤の効果は、この用量では、イソソルビドの抗酸化特性に対して0である。
【0069】
非発明例1-2:リン酸二ナトリウムを100ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同一であるが、この場合、使用される添加剤はリン酸二ナトリウムである。次いで、100mgのリン酸二ナトリウム(100ppm)を2kgの精製イソソルビド溶液(50%DM)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0070】
リン酸二ナトリウムを100ppmで含む溶液について得られた誘導時間は5時間であるか、又は有効性Eは0である。この添加剤の効果は、この用量では、イソソルビドの抗酸化特性に対して0である。
【0071】
非発明例1-3:リン酸二ナトリウムを200ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同一であるが、この場合、使用される添加剤はリン酸二ナトリウムである。次いで、200mgのリン酸二ナトリウム(200ppm)を2kgの精製イソソルビド溶液(50%DM)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0072】
リン酸二ナトリウムを200ppmで含む溶液について得られた誘導時間は5.1時間であるか、又は有効性Eは0.1である。イソソルビドの抗酸化性質に対するこの添加剤の効果は、200ppmの用量で0に近い。
【0073】
比較例1-1、1-2、及び1-3の比較は、リン酸ナトリウムが、より高い用量であっても、イソソルビドの抗酸化性質に正の影響を与えないようであることを示す。
【0074】
非発明例2-1:ジエタノールアミンを50ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同一であるが、この場合、使用される添加剤はジエタノールアミンであり、50mgのジエタノールアミン(50ppm)の用量を2kgの精製イソソルビド溶液(50%DM)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0075】
ジエタノールアミンを50ppmで添加した溶液について得られた誘導時間は6.2時間であり、有効度Eは1.2である。
【0076】
非発明例2-2:ジエタノールアミンを100ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同一であるが、この場合、使用される添加剤はジエタノールアミンであり、100mgのジエタノールアミン(100ppm)の用量を2kgの精製イソソルビド溶液(50%DM)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0077】
ジエタノールアミンを100ppmで添加した溶液について得られた誘導時間は7.2時間であるか、又は有効性Eは2.3である。
【0078】
非発明例2-3:ジエタノールアミンを200ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同一であるが、この場合、使用される添加剤はジエタノールアミンであり、200mgのジエタノールアミン(200ppm)の用量を2kgの精製イソソルビド溶液(50%DM)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0079】
ジエタノールアミンを200ppmで含む溶液について得られた誘導時間は7.3時間であるか、又は有効性Eは2.3である。
【0080】
本発明外の実施例2-1、2-2及び2-3の比較は、ジエタノールアミンの使用によってプラトーに迅速に到達することを示し、これはジエタノールアミンの抗酸化効果に対する閾値効果を示す。
【0081】
非発明例3:マルトールを100ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同一であるが、この場合、使用される添加剤はマルトールである。次いで、100mgのマルトールを2kgの精製イソソルビド溶液(100ppm)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0082】
マルトールを100ppmで含む溶液について得られた誘導時間は3.9時間であるか、又は有効性Eは-1.1である。
【0083】
マルトールの抗酸化力は、イソソルビドに有害である。
【0084】
非発明例4:Trolox(6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマ(tetramethylchrom)-2-カルボン酸)を100ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同じであるが、この場合、使用される添加剤はTroloxである。次いで、100mgのTroloxを2kgの精製イソソルビド溶液(100ppm)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0085】
100ppmのTroloxを含む溶液について得られた誘導時間は2.9時間であるか、又は有効性Eは-2.1時間である。
【0086】
Troloxは、これらの抗酸化特性で知られているが、イソソルビドの抗酸化性質に悪影響を及ぼす。
【0087】
非発明例5:没食子酸を100ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同じであるが、この場合、使用される添加剤は没食子酸である。次いで、100mgの没食子酸を2kgの精製イソソルビド溶液(100ppm)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0088】
没食子酸を100ppmで含む溶液について得られた誘導時間は3.4時間であるか、又は有効性Eは-1.6時間である。
【0089】
没食子酸は、その構造が没食子酸エチル/プロピルに近いが、イソソルビドの抗酸化性質に悪影響を及ぼす。
【0090】
本発明による実施例1:没食子酸エチルを50ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例0と同じであるが、この場合、50mgの没食子酸エチルを、活性炭の濾過後の2kgのイソソルビド溶液に添加する(用量50ppm)。媒体を30分間撹拌して完全に溶解させ、溶液の均質性を保証する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0091】
没食子酸エチルを50ppmで含む溶液について得られた誘導時間は7.3時間であるか、又は有効性Eは2.3である。
【0092】
本発明による実施例2-1:没食子酸プロピルを50ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同じであるが、この場合、使用される添加剤は没食子酸プロピルである。次いで、50mgの没食子酸プロピルを2kgの精製イソソルビド溶液(50ppm用量)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0093】
没食子酸プロピルを50ppmで含む溶液について得られた誘導時間は7.5時間であるか、又は有効性Eは2.5である。
【0094】
本発明による実施例2-2:没食子酸プロピルを100ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同じであるが、この場合、使用される添加剤は没食子酸プロピルである。次いで、100mgの没食子酸プロピルを2kgの精製イソソルビド溶液(100ppm用量)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0095】
100ppmの没食子酸プロピルを含む溶液について得られた誘導時間は8.8時間であるか、又は有効性Eは3.8である。
【0096】
本発明による実施例2-3:没食子酸プロピルを200ppmで添加したイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同じであるが、この場合、使用される安定剤は没食子酸プロピルである。次いで、200mgの没食子酸プロピルを2kgの精製イソソルビド溶液(200ppm用量)に添加する。この溶液を、上記で引用した方法論を用いて分析する。
【0097】
没食子酸プロピルを200ppmで含む溶液について得られた誘導時間は11.6時間であるか、又は有効性Eは6.6である。
【0098】
実施例1、2-1、2-2及び2-3は、没食子酸エチル及びとりわけ没食子酸プロピルがイソソルビドの抗酸化特性に対して非常に顕著な効果を有することを示す。
【0099】
本発明による実施例3:リン酸二ナトリウム(50ppm)を添加した没食子酸プロピル(100ppm)で安定化されたイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同じであるが、この場合、100mgの没食子酸プロピル(100ppm)及び50mgのリン酸二ナトリウム(50ppm)を2kgの精製イソソルビド溶液に添加する。
【0100】
この混合物によって安定化された溶液の誘導時間は11.6時間であるか、又は有効性Eは6.6である。この値は、50ppmにおけるリン酸ナトリウムの有効性(0)と100ppmにおける没食子酸プロピルの有効性(3.8)との合計よりも大きい。これは、イソソルビドの抗酸化特性に関して、試験した2つの添加剤間の相乗作用の場合である。
【0101】
本発明による実施例4:没食子酸プロピル(100ppm)及びジエタノールアミン(50ppm)を含むイソソルビド組成物の調製。
合成方法は実施例1と同じであるが、この場合、100mgの没食子酸プロピル(100ppm)及び50mgのジエタノールアミン(50ppm)を2kgの精製イソソルビド溶液に添加する。
【0102】
この混合物によって安定化された溶液の誘導時間は13.8時間であるか、又は有効性Eは8.8である。この値は、50ppmにおけるジエタノールアミンの有効性(1.2)と100ppmにおける没食子酸プロピルの有効性(3.8)との合計よりも大きい。いかなる理論にも束縛されるものではないが、これは、この組成物における強力な相乗効果を示すようである。
図1
【国際調査報告】