(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】マルチセル電池の充電回路、マルチセル電池および電子装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240719BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H01M10/44 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503507
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2022088501
(87)【国際公開番号】W WO2023000739
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110834181.8
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516227559
【氏名又は名称】オッポ広東移動通信有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG OPPO MOBILE TELECOMMUNICATIONS CORP., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 18 Haibin Road,Wusha, Chang’an,Dongguan, Guangdong 523860 China
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【氏名又は名称】吉田 昌司
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100220630
【氏名又は名称】河崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ホンピン
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA11
5G503FA19
5H030AA01
5H030AS20
5H030BB01
(57)【要約】
マルチセル電池の充電方法、マルチセル電池の充電回路、マルチセル電池、端末装置及び電子装置を提供し、電池技術分野に関する。前記マルチセル電池の充電方法は、マルチセル電池における各セルの負極電位を取得することと、各セルの負極電位を比較し、最小負極電位を決定することと、最小負極電位が安全電位以上である場合、マルチセル電池を第1モードで充電するように制御することと、最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することと、を含む。この方法により、リチウムの析出の発生を抑えながら、高い充電率が確保される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチセル電池における各セルの負極電位を取得することと、
各前記セルの負極電位を比較し、最小負極電位を決定することと、
前記最小負極電位が安全電位以上である場合、前記マルチセル電池を第1モードで充電するように制御することと、
前記最小負極電位が前記安全電位より小さい場合、前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することと、
を含む、マルチセル電池の充電方法。
【請求項2】
前記マルチセル電池における各セルの負極電位を取得することは、絶縁測定構造体と隣接する前記コアの負極タブとの間の電位差を通じて前記セルの負極電位を取得することを含み、
絶縁測定構造体は2つの隣接する前記コアの間に配置される、請求項1に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項3】
前記絶縁測定構造体は、絶縁層、測定層、および隔離層を含み、
前記絶縁測定構造体と隣接する前記コアの負極タブとの間の電位差を通じて前記セルの負極電位を取得することは、前記測定層と隣接する前記コアの負極タブとの間の電位差によって前記セルの負極電位を取得することを含み、
前記絶縁層は隣接する2つの前記コアの間に配置され、前記測定層は前記コアに近い前記絶縁層の側に配置され、前記隔離層は前記測定層と前記コアとの間に配置される、請求項2に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項4】
前記安全電位は-100mV~0.05V間の任意の値又は任意の範囲である、請求項1のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項5】
前記マルチセル電池を第1モードで充電するように制御することは、前記マルチセル電池を第1予め設定された電流で充電するように制御することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項6】
前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することは、前記マルチセル電池を第2予め設定された電流で充電するように制御することを含み、
前記第2予め設定された電流は前記第1予め設定された電流より小さい、請求項5に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項7】
前記第1予め設定された電流は1C~2Cである、請求項6に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項8】
前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することは、前記最小負極電位が安全電位以上になるまで、前記マルチセル電池を静置状態に留まるように制御することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項9】
前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することは、前記最小負極電位が安全電位以上になるまで、前記マルチセル電池を放電状態に留まるように制御することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項10】
前記マルチセル電池における各セルの負極電位を取得することは、
各前記セルの前記負極電位をリアルタイムで取得することと、
または前記マルチセル電池が前記第1予め設定された充電電流で予め設定された時間充電された後、予め設定された周期に従って負極電位を取得することと、を含む、請求項5に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項11】
前記マルチセル電池の充電方法はさらに、
前記マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧を取得し、前記マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧に基づいて、前記マルチセル電池が満充電されるかどうかを判断することと、
前記マルチセル電池が満充電される場合、前記マルチセル電池の充電を停止することと、
を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電方法。
【請求項12】
検出回路及び制御回路を含むマルチセル電池の充電回路であって、
前記検出回路はマルチセル電池における各セルの負極電位を取得することに用いられ、
前記制御回路は、各前記セルの前記負極電位を比較し、最小負極電位を決定し;前記最小負極電位が安全電位以上である場合、前記マルチセル電池を第一モードで充電するように制御し;前記最小負極電位が安全電位より小さい場合、前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することに用いられる、マルチセル電池の充電回路。
【請求項13】
前記検出回路は絶縁測定構造体及び複数の接続線を含み、
前記絶縁測定構造体は前記マルチセル電池の隣接する2つの前記セルの間に設置され、
前記接続線の一端は、前記セルの正極タブ、負極タブ又は前記絶縁測定構造体の基準タブのうちの一つと電気的に接続され、前記接続線の他端は、前記制御回路と電気的に接続される、請求項12に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項14】
前記絶縁測定構造体は絶縁層、測定層及び隔離層を含み、
前記絶縁層は前記マルチセル電池の隣接する2つの前記セルの間に設置され、
前記測定層は前記セルに近接する少なくとも一部の前記絶縁層の側に配置され、一つの前記測定層は1つの前記セルに対応し、前記測定層は前記セルの負極電位を測定することに用いられ、
前記隔離層は前記測定層と前記セルとの間に設けられ、前記隔離層は前記測定層と前記セルを絶縁することに用いられる、請求項13に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項15】
前記制御回路は、前記最小負極電位が安全電位以上である場合、第1予め設定された電流で充電するように前記マルチセル電池を制御することに用いられる、請求項12~14のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項16】
前記制御回路は、前記最小負極電位が安全電位より小さい場合に、第2予め設定された電流で充電するように前記マルチセル電池を制御することに用いられ、前記第2予め設定された電流は前記第1予め設定された電流より小さい、請求項15に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項17】
前記制御回路は、前記最小負極電位が安全電位より小さい場合、前記最小負極電位が安全電位以上になるまで、前記マルチセル電池を静置状態に留まるように制御することに用いられる、請求項12~14のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項18】
前記制御回路は、前記最小負極電位が安全電位より小さい場合、前記最小負極電位が安全電位以上になるまで、前記マルチセル電池を放電状態に留まるように制御することに用いられる、請求項12~14のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項19】
前記検出回路は、各前記セルの前記負極電位をリアルタイムに取得するために用いられ、又は前記マルチセル電池が前記第1予め設定された充電電流で予め設定された時間充電された後に予め設定された周期に基づいて負極電位を取得するために用いられる、請求項15に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項20】
前記制御回路はさらに、前記マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧を取得し、前記マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧に基づいて前記マルチセル電池が満充電されているか否かを決定し;前記マルチセル電池が満充電されている場合、前記マルチセル電池の充電を停止することに用いられる、請求項12~14のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項21】
複数のセルと、絶縁測定構造体と、ハウジングと、を含むマルチセル電池であって、
複数の前記セルは並列又は直列に接続され、
前記絶縁測定構造体は隣接する2つの前記セルの間に設置され、前記絶縁測定構造体は隣接する前記セルを隔離し、且つ前記セルの負極電位を測定することに用いられ、
前記ハウジングは、複数の前記セル及び前記絶縁測定構造体を被覆することに用いられる、マルチセル電池。
【請求項22】
前記絶縁測定構造体は絶縁層、測定層及び隔離層を含み、
前記絶縁層は前記マルチセル電池の隣接する2つの前記セルの間に設置され、
前記測定層は前記セルに近接する少なくとも一部の前記絶縁層の側に配置され、一つの前記測定層は1つの前記セルに対応し、前記測定層は前記セルの負極電位を測定することに用いられ、
前記隔離層は前記測定層と前記セルとの間に設けられ、前記隔離層は前記測定層と前記セルを絶縁することに用いられる、請求項21に記載のマルチセル電池。
【請求項23】
前記セルは正極タブ及び負極タブを含み、前記正極タブ及び前記負極タブは前記ハウジングを貫通して前記ハウジングの外部に露出され、
前記測定層に基準タブが設置され、前記負極電位は前記負極タブと前記基準タブとの間の電位差である、請求項22に記載のマルチセル電池。
【請求項24】
前記マルチセル電池は、さらに制御アセンブリを含み、
前記制御アセンブリは前記正極タブ、前記負極タブ及び前記基準タブに接続され、
前記制御アセンブリは前記負極タブと前記基準タブとの電位差を前記マルチセル電池の各前記セルの負極電位として収集し、前記マルチセル電池の充電状態を制御することに用いられる、請求項23に記載のマルチセル電池。
【請求項25】
2つの隣接する前記コアが並列に接続される場合、前記コアに近い前記絶縁層の側面の表面積は、前記コアの側面積と一致する、請求項21に記載のマルチセル電池。
【請求項26】
2つの隣接する前記コアが直列に接続される場合、前記絶縁層および前記ハウジングは、複数の単セル収容空間を形成するように包装され、前記単セル収容空間が単一の前記セルを収容することに用いられる、請求項21に記載のマルチセル電池。
【請求項27】
前記絶縁層は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、スパンデックスまたはアラミドフィルムのうちの少なくとも1つからなる複合材料層である、請求項21に記載のマルチセル電池。
【請求項28】
前記絶縁層の厚さは0.1μm~1000μmの任意の値である、請求項22または27に記載のマルチセル電池。
【請求項29】
前記測定層は金属リチウムおよびチタン酸リチウムの少なくとも一つである、請求項21に記載のマルチセル電池。
【請求項30】
前記測定層の厚さは1μm~100μmの任意の値である、請求項22または27に記載のマルチセル電池。
【請求項31】
請求項21~30のいずれか一項に記載のマルチセル電池を備える、端末装置。
【請求項32】
プロセッサと、メモリと、を含む電子装置であって、
前記メモリは前記プロセッサの実行可能な命令を記憶するために使用され、
前記プロセッサは、前記実行可能な命令を実行することによって、請求項1~11のいずれか一項に記載の前記マルチセル電池の充電方法を実行するように構成される、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2021年7月20日に提出された202110834181.8という出願号及び「電池充電方法及び回路、マルチセル電池、端末装置および電子装置」という名称である中国特許出願による優先権を請求し、この中国特許出願の全体内容がここに引用することにより本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、充電技術分野に関し、特にマルチセル電池の充電方法、マルチセル電池の充電回路、マルチセル電池、端末装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯端末装置的機能が絶えず強化されるにつれて、電池容量への要求も高まっている。マルチセル電池の使用は従来の電池全体の容量を向上させ、航続時間を増加させるための主な方法の1つになる。
【0004】
従来のマルチセル電池を急速に充電する過程において、一般的に固定の充電速度を用いて充電を行う。充電環境が急速充電条件に適合している限り、最速の速度で急速充電が行わる。
【0005】
しかし、一つのマルチセル電池のライフサイクル全体で最速の速度で充電すると、電池がリチウム析出現象を発生させ、電池の劣化を加速させる。
【発明の概要】
【0006】
本出願の第1態様では、マルチセル電池の充電方法を提供する。マルチセル電池の充電方法は、マルチセル電池における各セルの負極電位を取得することと、各前記セルの負極電位を比較し、最小負極電位を決定することと、前記最小負極電位が安全電位以上である場合、前記マルチセル電池を第1モードで充電するように制御することと、前記最小負極電位が前記安全電位より小さい場合、前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することと、を含む。
【0007】
本出願の第2態様では、マルチセル電池の充電回路を提供する。マルチセル電池の充電回路は、検出回路と、制御回路と、を含む。検出回路は、マルチセル電池における各セルの負極電位を取得することに用いられる。制御回路は、各セルの前記負極電位を比較し、最小負極電位を決定すること、前記最小負極電位が安全電位以上である場合、前記マルチセル電池を第1モードで充電するように制御すること、前記最小負極電位が前記安全電位より小さい場合、前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することに用いられる。
【0008】
本出願の第3態様では、マルチセル電池を提供する。マルチセル電池は、複数のセルと、絶縁測定構造体と、ハウジングと、を含む。複数の前記セルは並列または直列に接続される。絶縁測定構造体は、隣接する2つの前記セルの間に設置される。前記絶縁測定構造体は隣接する前記セルを隔離し、且つ前記セルの負極電位を測定することに用いられる。ハウジングは、前記複数のセルと前記絶縁測定構造体を被覆するために用いられる。
【0009】
本出願の第4態様にでは、端末装置が提供される。端末装置は上述のマルチセル電池を含む。
【0010】
本出願の第5態様では、電子装置が提供される。電子装置は、プロセッサと、メモリと、を含む。メモリは前記プロセッサの実行可能な命令を記憶することに用いられる。ここで、前記プロセッサは前記実行可能な命令を実行することによって前記第1態様のマルチセル電池の充電方法及びその可能な実施形態を実行するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態におけるマルチセル電池の構造模式図を示す図である。
【
図2】本実施形態におけるマルチセル電池の充電方法のフローチャートである。
【
図3】本実施形態におけるマルチセル電池の充電放電過程における負極電位と時間との変化関係を示す図である。
【
図4】本実施形態におけるマルチセル電池の充電回路の概略図である。
【
図5】本実施形態における他のマルチセル電池の正面図である。
【
図6】
図5に示すマルチセル電池の横断面概略図である。
【
図7】
図5に示すマルチセル電池の縦断面概略図である。
【
図8】本実施形態における絶縁測定構造体の構造模式図である。
【
図9】本実施形態における電子装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付された図面を参照して例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、例示的な実施形態は、様々な形態で実施することができ、本明細書で説明される例に制限されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本出願が徹底的かつ完全なものとなり、例示的な実施形態の概念を当業者に完全に伝えるために提供される。記載された特徴、構造又は特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本出願の実施形態を十分に理解するために、多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者であれば、本出願の技術的解決手段は、特定の詳細な説明の1つまたは複数を省略しても実施できること、あるいは他の方法、構成要素、装置、ステップなどを採用することができることを理解するであろう。他の場合には、本出願の態様を不明瞭にすることを避けるために、周知の技術的解決手段は詳細には示されず、または説明されない。
【0013】
さらに、図面は、本出願の単なる概略図であり、必ずしも同一縮尺描かれているわけではない。なお、図中、同一の符号は同一または相当部分を示し、重複する説明は省略する。図に示されるブロック図のいくつかは、機能エンティティであり、必ずしも物理的にまたは論理的に独立したエンティティに対応する必要はない。これらの機能エンティティは、ソフトウェアの形態で実現されてもよく、或いは1つまたは複数のハードウェアモジュールまたは集積回路において実現されてもよいし、あるいは異なるネットワークおよび/またはプロセッサデバイスおよび/またはマイクロコントローラデバイスにおいて実現されてもよい。
【0014】
図面に示されたフローチャートは例示的なものに過ぎず、必ずしもすべてのステップを含むものではない。例えば、一部のステップを分解することができ、一部のステップを合併するか又は部分的に組み合わせることができるため、実際に実行される順序が実際の状況に応じて変化する可能性がある。さらに、以下の用語「第1」、「第2」は、区別のためだけのものであり、本出願を制限するために使用されるべきではない。
【0015】
リチウムイオン電池の充電過程において、リチウムイオンLi+は正極から放出され且つ負極に埋め込まれる。しかし、いくつかの異常状況、例えば、Li+が負極に埋め込まれるスペースが不足すること、Li+の負極に埋め込む抵抗が大きすぎること、正極からLi+の放出が早すぎて、負極に同じ量のLi+が埋め込まれないことなどの異常は発生する際、負極に埋め込まれないLi+が負極の表面上のみに析出し、銀白色のリチウム単体が形成され、これをリチウム析出と呼ぶ。
【0016】
リチウム析出は、リチウムイオン電池の損失状態である。リチウム析出によって電池性能を低下させ、サイクル寿命を大幅に短縮させるだけでなく、電池の急速充電容量を制限し、且つ燃焼、爆発等の壊滅的な結果を引き起こす可能性がある。負極がリチウムを析出しないように制御することができれば、充電過程には電池の劣化を最大限に低下させることができる。
【0017】
本出願人は、研究中で、一般にわずかなリチウム析出が可逆的なプロセスを有することを見出し、すなわち新たに生成されたリチウム金属単体がLi+に再変換されて負極に埋め込まれる可能性があることを発見した。これにより、負極のリチウム析出を抑制するだけでなく、高い充電速度を確保することができ、充電の効率を向上させることができる。
【0018】
これに基づいて、本出願の例示的な実施形態はマルチセル電池の充電方法を提供する。マルチセル電池の充電方法はリチウム電池に応用できる。リチウム電池はリチウムイオン電池及びリチウム金属電池等を含み、本出願の例示的な実施形態はこれに対して特に制限されるものではない。
【0019】
上記マルチセル電池の充電方法を説明する前に、さらに上記充電方法を適用するマルチセル電池について簡単に説明する必要がある。
【0020】
本出願の例示的な実施形態では、
図1を参照すると、マルチセル電池が提供される。該マルチセル電池は、複数のセル110と、絶縁測定構造体120と、を含む。
【0021】
複数のセル110は並列または直列接続される。本出願の実施形態における複数は2つ及び2つ以上である。複数のセル110のうち、2つのセル110は並列に接続されてもよく、直列に接続されてもよい。また、セル110が2つより多い場合には、混合接続を実現することができる。すなわち、本出願の実施形態はマルチセル電池におけるセル110の接続方式は特別に制限されない。
【0022】
セル110はさらに正極タブ及び負極タブ111を含む。ここで、上記セル110の正極と負極はリチウムイオンが可逆的に放出され且つ埋め込まれる化合物で製造される。正極は通常、リチウムに対して電位が3Vより大きく且つ空気中でリチウムが安定に埋め込まれた遷移金属酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO4などが選択される。負極は、一般に電位がリチウム電位にできるだけ近く、かつリチウムが埋め込まれることができる化合物を選択し、例えば、様々な炭素材料、金属酸化物などが選択される。炭素材料は、天然黒鉛、合成黒鉛、炭素繊維、中間相球炭素等を含む。金属酸化物は、SnO、SnO2、スズ複合酸化物等を含む。
【0023】
絶縁測定構造体は、隣接する2つのセル110の間に設置される。絶縁測定構造体120が隣接するセル110を隔離し、且つセル110の負極電位を測定することに用いられる。即ち、該絶縁測定構造体120はセル110の負極電位を測定する同時に、さらにセル110の間に隔離作用を果たし、それによってセル110間の電気的な接触によって短絡を引き起こすことを回避することができる。ここで、絶縁測定構造体120の具体的な構造については後の実施形態で詳細に説明する。
【0024】
該絶縁測定構造体120は絶縁層121及び測定層を含む。絶縁層121がマルチセル電池内の隣接する2つのセル110の間に設置され、測定層がセル110に近い絶縁層121の側に設置される。測定層にさらに基準タブ122が設置され、基準タブ122と負極タブ111との間の電位差を測定することにより、セル110の負極電位を得ることができる。
【0025】
本出願の例示的実施形態では、測定層とセルとの接触によって導電して、測定された負極電位の正確性に影響をあけることを回避するために、測定層とセルとの間に隔離層を配置することが必要である。隔離層は、測定層をセルから絶縁するために使用することができる。
【0026】
実際の応用において、上記マルチセル電池は電気装置に用いることができる。例えば、該電気装置は携帯電話機、コンピュータ、無人機、自動車等であってもよく、本出願の実施形態はこれに制限されない。
【0027】
以下に
図2を参照しながら本出願の例示的な実施形態のマルチセル電池の充電方法について具体的に説明する。
図2に示すとおり、該マルチセル電池の充電方法は以下を含むことができる。
【0028】
ステップS210、マルチセル電池における各セルの負極電位を取得する。
【0029】
本出願の例示的な実施形態では、マルチセル電池は複数のセルを含む電池であり、ここでは複数が2以上である。マルチセル電池では複数のセルは並列に接続されてもよく、直列に接続されてもよいし、混合接続されてもよい。
【0030】
負極電位は負極のリチウム析出の1つの重要な指標であり、負極電位が0Vより小さい場合、負極のリチウム析出現象が発生する。実際の応用において、負極電位を取得する方法は様々である。本出願の実施形態では、上述した絶縁測定構造体を用いて負極電位を取得することができる。
【0031】
上記方法により負極電位を測定する絶縁測定構造体を得た後、マルチセル電池内に設置された該絶縁測定構造体によって各セルの負極電位を直接に取得することができ、負極電位の取得利便性及び精度を向上させる。
【0032】
本出願の例示的な実施形態において、負極におけるリチウムイオンの堆積状況をタイムリーに把握するために、各セルの負極電位をリアルタイムに取得する方式を採用することができ、それにより負極電位を介してリチウムイオンが各セルの負極に堆積する状況をリアルタイムに取得し、後続の充電プロセスを効果的に管理する。充電の開始時に、負極電位はまだ低くない。これにより、マルチセル電池が第1予め設定された充電電流に基づいて予め設定された時間充電された後、予め設定された周期に基づいて負極電位を取得することができる。具体的な予め設定された時間及び予め設定された周期は実際の状況に基づいて決定することができ、希望な負極電位をタイムリーに取得できることを確保すればよく、本出願の例示的な実施形態はこれに制限されない。
【0033】
ステップS220、各セルの負極電位を比較し、最小負極電位を決定する。
【0034】
本出願の例示的な実施形態において、マルチセル電池における各セルの負極電位を取得した後、各セルの負極電位を比較する必要があり、それにより複数の負極電位のうちの最小負極電位を決定する。
【0035】
実際の応用において、各セルの負極電位を比較して最小負極電位を決定する方法は、複数がある。例えば、2つセルの負極電位を比較して最小負極電位を段階的に決定することができる。本出願の例示的な実施形態は、最小負極電位を決定する方法に限定されない。
【0036】
ステップS230、最小負極電位が安全電位の以上である場合、マルチセル電池を第1モードで充電するように制御する。
【0037】
本出願の例示的な実施形態では、安全電位とはマルチセル電池のセルが第1モードに従って充電できる臨界電位である。(最小負極電位が)安全電位より低く、セル内で不可逆的なリチウム析出現象が発生する可能性がある。複数の電極の負極電位のうち、最小負極電位が安全電位の以上である場合、全てのセルは第1モードで充電することができ、リチウム析出現象が発生せず、たとえリチウム析出が発生したとしても、該リチウム析出プロセスは可逆的である。
【0038】
リチウム析出の発生が可逆範囲内であることを保証しながら、充電速度、すなわち充電に使用される電流を可能な限り低減するために、本発明の例示的な実施形態では、安全電位は、-100mV~-0.05Vの間の任意の値または任意の範囲であってもよい。例えば、安全電位が-10mVである場合、マルチセル電池の各セルの最小負極電位が-10mV以上であれば、該マルチセル電池を第1モード、例えば、急速充電モードで充電するように制御することができる。
【0039】
本出願の一つの実施形態において、第1モード充電は急速充電モードであってもよく、該第1モードでは、マルチセル電池が第1予め設定された電流で充電することができる。第1予め設定された電流は、より速い充電のために、セルが耐えることができるより大きな電流を使用することができる。この電流では、セルは副反応を起こさず、セルの寿命や性能に悪影響を及ぼすことなく、かつ急速充電を最大限に実現することができる。
【0040】
実際の応用において、第1予め設定された電流の大きさは実際の状況に応じて決定することができる。例えば、該第1予め設定された電流の電流範囲は2C~10Cであってもよい。ここで、Cは複数のセルの総容量である。複数のセルの総容量が1000mAhであると仮定すると、第1予め設定された電流の電流範囲は2000mA~10Aであってもよい。
【0041】
急速充電モードでは、セル内で負極のリチウム析出現象が発生するため、本出願の例示的な実施形態は安全電位を提供することによって、最小負極電位が安全電位以上である場合にのみ、マルチセル電池が急速充電モードを用いて充電することができ、それにより可逆的なリチウム析出が確保すると同時に、急速充電に可能な最大電流が使用される。リチウム析出を抑制することによって充電速度の低下の確率を低減し、ユーザ体験を向上させる。
【0042】
本出願の例示的な実施形態はセルの最小負極電位を取得し、かつ最小負極電位が安全電位の以上である場合、第1モードで充電するようにマルチセル電池を制御する。急速充電中、各電池セルがすべて安全な電位範囲内で動作することを確保することができる。最小負極電位に対応する電池セルが急速に充電できる際、他のセルにはリチウム析出は当然ありませんし、たとえ存在したとしても可逆的な範囲内に収まる。これにより、すべてのセルでの不可逆的なリチウム析出を回避でき、高い充電率を確保しながらマルチセル電池の劣化率を低減することができる。
【0043】
ステップS240、最小負極電位が安全電位より小さい場合には、マルチセル電池を第2モードで動作するように制御する。
【0044】
本出願の例示的な実施形態において、最小負極電位が安全電位より小さい場合、第1モードで充電し続けると、例えば、急速充電方式で充電する場合、セル内で不可逆的なリチウム析出を引き起こす可能性があり、それにより電池の劣化を加速し、電池全体の寿命に影響を与える。これにより、最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を別のモード、即ち第2モードで動作するように制御することによって、不可逆なリチウム析出の発生を回避することができ、且つ第1モードでの充電時に生成された可逆なリチウム析出中のリチウム金属単体をLi+に変換して負極に埋め込むことができ、それにより不活性なリチウム金属単体の生成を回避することができる。
【0045】
本出願の例示的な実施形態では、第2モードで動作するようにマルチセル電池を制御するための複数の実装方法が存在する。
【0046】
第一種方式に、最小負極電位が安全な電位以上になるまでマルチセル電池を放電状態に留まるように制御することができる。
【0047】
大電流での充電により、リチウム金属単体が負極表面に堆積する可能性があり、負極電位を低下し、さらにリチウム析出問題を発生させる。これにより、本出願の例示的な実施形態において、最小負極電位が安全電位より小さい場合、放電、即ち逆充電プロセスを利用して、堆積されたリチウム金属単体の少なくとも一部を正極に戻すことができ、それによりリチウム析出を可逆化することで負極電位を上昇させ、負極電位がリチウム析出の電位より大きくする場合、リチウム析出現象が発生することを回避することができる。
【0048】
本出願の例示的な実施形態において、安全電位を基準として、マルチセル電池が一定期間放電状態になった後、複数のセルにおける最小負極電位が安全電位以上である場合、放電を停止し、さらに第1モードで充電することができる。電池が満充電されているまで、上記のプロセスを繰り返される。
【0049】
充電中に、あるセルの負極電位が最小負極電位であると決定し、必ずしも放電後の最小負極電位が該セルの負極電位であるとは限らないことに留意されたい。即ち、最小負極電位がリアルタイムに更新する必要があり、必ずしも特定のセルの負極電位とは限らない。
【0050】
図3を参照すると、本出願の例示的な実施形態におけるマルチセル電池の充電放電過程における負極電位の時間変化関係を示す図である。
図3において、まず、該マルチセル電池は大きな第1予め設定された電流で充電し、充電の進行に伴って、負極電位が低下し、安全電位、即ちT1時点まで低下すると、マルチセル電池は小さい電流(例えば、0.01C~1C)で放電し、放電の進行に伴って、負極電位が上昇し、T2時点で最小負極電位が上昇し、第1予め設定された電流に従って電池を充電することができ、マルチセル電池が満充電されるまで上記のプロセスが繰り返される。
【0051】
本出願の例示的な実施形態は第1モード及び第2モードを提供し、大きな第1予め設定された電流を用いてマルチセル電池が充電され、最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を放電するように制御し、負極電位を上昇させ、最小負極電位が安全電位より大きくなった後にマルチセル電池が再度充電され、それによって可逆的なリチウム析出を確保しながら最大の急速充電を達成できる充放電サイクルプロセスが実現される。
【0052】
本出願の例示的な実施形態では、マルチセル電池が満充電されているか否かを判断することは以下を含むことができる。マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧を取得し、マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧に基づいてマルチセル電池が満充電されているか否かを決定する;正極端子と負極端子との間の電圧がマルチセル電池に設定されたフルセル電圧に達すると、該マルチセル電池が満充電されていることを示す。マルチセル電池が満充電されると、マルチセル電池の充電が停止される。
【0053】
第2種方式に、最小負極電位が安全電位以上になるまで、マルチセル電池を静置状態に留まるように制御することができる。
【0054】
第1種方式に比べて、第2種方式は放電状態を静置状態に切り替え、充電も放電もせず、リチウムイオンが負極に完全に入ることを待ち、静置プロセスによって堆積されたリチウム金属単体の少なくとも一部を正極に戻し、リチウム析出を可逆的にする目的を達成することができる。最小負極電位が安全電位より大きいことが検出されるまで、さらに第1予め設定された電流で急速充電が継続され、マルチセル電池が満充電されるまで上記過程が繰り返される。
【0055】
第1種方式と異なり、静置状態がT1時点からT2時点にかけて最小負極電位が安全電圧以上に上昇するまでの時間は長くなり、それによって全体の充電時間も長くなるが、リチウム析出を可逆的にしながら、最大限の急速充電を実現することを保証できる。
【0056】
第3種方式に、該マルチセル電池を第2予め設定された電流で充電するように制御することができ、且つ該第2予め設定された電流は第1予め設定された電流より小さい。
【0057】
本出願の例示的な実施形態において、最小負極電位が安全電位より小さくなるように第1予め設定された電流に従って急速充電する場合、より小さな第2予め設定された電流を用いて低速充電を行うことができ、該低速充電プロセスにはリチウム析出が発生せず、且つリチウムイオンがマルチセル電池の負極に入るのに十分な時間を提供できるため、急速充電中に析出したリチウム金属元素が正極に戻ることを確保し、リチウム析出が可逆化する目的を達成できる。最小負極電位が安全電位より大きいことが検出されるまで、さらに第1予め設定された電流で急速充電が継続され、マルチセル電池が満充電されるまで上記過程が繰り返される。
【0058】
第1種方式及び第2種方式と比較して、この方式では、安全電位をより高く、たとえば、-10mV~0.05Vの間の任意の値に設定する必要がある。これは、第2予め設定された電流で充電されるときに、負極電位が上昇しにくくなるのを防ぐためである。
【0059】
本出願の例示的な実施形態が提供するマルチセル電池の充電方法は、各セルにおける最小負極電位に基づいてマルチセル電池の充電過程を制御し、急速充電を実現すると同時にリチウム析出現象の発生を回避することができ、それによりマルチセル電池の安全性を保証すると同時に、充電効率を向上させる。
【0060】
上記マルチセル電池の充電方法に基づいて、本出願の例示的な実施形態はさらにマルチセル電池の充電回路を提供する。
図4は、本出願の例示的な実施形態のマルチセル充電回路の概略図である。
図4に示すように、該マルチセル充電回路300は、検出回路及び制御回路310を含む。
【0061】
ここで、検出回路はマルチセル電池400における各セルの負極電位を取得するために用いることができる。
【0062】
検出回路がマルチセル電池の各セルの負極電位を取得することを容易にするために、本出願の例示的な実施形態において、検出回路は絶縁測定構造体410及び複数の接続線420を含むことができる。ここで、絶縁測定構造体410はマルチセル電池400の隣接する2つのセルの間に設置されてもよい。複数の接続線420のうち、各接続線420の一端は、セルの正極タブ、負極タブ又は絶縁測定構造体410の基準タブのうちの一つと電気的に接続され、接続線420の他端は、制御回路310と電気的に接続される。負極タブと基準タブとの間の電位差を収集することにより、セルの負極電位を得ることができる。
【0063】
本出願の例示的な実施形態において、絶縁測定構造体410は絶縁層、測定層及び隔離層を含むことができる。ここで、絶縁層はマルチセル電池の隣接する2つのセルの間に設置される。測定層はセルに近接する少なくとも一部の絶縁層の側に配置される。一つの測定層は1つのセルに対応し、測定層はセルの負極電位を測定することに用いられる。隔離層は測定層とセルとの間に設けられ、隔離層は測定層とセルを絶縁するために用いられる。そのうち具体的な配置方式は後続のマルチセル電池の実施形態において詳細に説明され、ここでは詳細な説明を省略する。
【0064】
具体的に検出過程において、検出回路は各セルの負極電位をリアルタイムに取得するために用いられ、又はマルチセル電池が第1予め設定された充電電流に基づいて予め設定された時間充電された後に予め設定された周期に基づいて負極電位を取得するために用いられる。実際の必要に応じて検出回路の検出周波数及び検出開始時間を設定することができ、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
本出願の例示的な実施形態において、検出回路と制御回路310との間で通信接続が形成されることができ、検出回路は検出された各セルの負極電位を制御回路310に送信することができる。検出回路と制御回路310との間の通信接続方式は有線接続であってもよく、無線接続であってもよく、本出願の実施形態はこれに制限されない。
【0066】
検出回路によって検出された各セルの負極電位を受信した後、制御回路310は各セルの負極電位を比較し、最小負極電位を決定すること、最小負極電位が安全電位以上である場合、マルチセル電池を第1モードで充電するように制御すること、最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することに用いられる。
【0067】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310は、最小負極電位が安全電位以上である場合、第1予め設定された電流で充電するようにマルチセル電池を制御することに用いられる。
【0068】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310は、最小負極電位が安全電位より小さい場合に、第2予め設定された電流で充電するようにマルチセル電池を制御することに用いられる。また、第2予め設定された電流は第1予め設定された電流よりも小さい。
【0069】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310は最小負極電位が安全電位より小さい場合、最小負極電位が安全電位以上になるまで、マルチセル電池を静置状態に留まるように制御することに用いられる。
【0070】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310は最小負極電位が安全電位より小さい場合、最小負極電位が安全電位以上になるまで、マルチセル電池を放電状態に留まるように制御することに用いられる。
【0071】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310はさらに、マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧を取得し、マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧に基づいてマルチセル電池が満充電されているか否かを決定すること、マルチセル電池が満充電されている場合、マルチセル電池の充電を停止することに用いられる。
【0072】
本出願における方法の様々なステップは、図面において特定の順序で記載されているが、ステップをその特定の順序で実行する必要があること、または望ましい結果を達成するために示されているすべてのステップを実行する必要があることは、必須または暗示されない。追加的または代替的に、いくつかのステップを省略することができ、複数のステップを1つのステップに結合して実行することができ、および/または1つのステップを複数のステップに分割することなどができる。
【0073】
本出願の実施形態におけるマルチセル電池の充電方法及び充電回路に適用されるマルチセル電池について説明する。該マルチセル電池は、複数のセルと、絶縁測定構造体と、ハウジングと、を含む。
【0074】
複数のセルは並列又は直列に接続される。本出願の実施形態における複数は2つ及び2つ以上を指す。複数のセルのうち、2つセルは並列に接続されてもよく、直列接続されてもよい。セルが2つより多い場合には、さらに混合接続を実現することができる。すなわち、本出願の例示的な実施形態はマルチセル電池におけるセルの接続方式に対して特に制限されない。
【0075】
絶縁測定構造体は隣接する2つの前記セルの間に設置される。絶縁測定構造体は隣接するセルを隔離し、且つセルの負極電位を測定することに用いられる。すなわち、該絶縁測定構造体はセルの負極電位を測定すると同時に、さらにセル間の隔離作用を果たし、セル間の電気的接触により短絡することを防ぐことができる。
【0076】
ハウジングは、複数のセル及び絶縁測定構造体を被覆し、それにより一体的な電池構造を形成することに用いられる。
【0077】
以下では3つのセルを含む電池を例として、上記のマルチセル電池を例示的に説明する。
【0078】
図5~
図7に示すように、該マルチセル電池400は第1セル401、第2セル402及び第3セル403を含む。ここで第1セル401、第2セル402及び第3セル403はいずれも正極タブ404及び負極タブ405を含み、且つ正極タブ404及び負極タブ405はいずれもハウジング406を貫通して外部に露出される。第1セル401と第2セル402とは直列または並列に接続されもよく、第2セル402と第3セル403とは直列または並列に接続されもよく、ここでは制限されない。
【0079】
本出願の例示的な実施形態では、絶縁測定構造体410は第1セル401と第2セル402との間に設置され、第2セル402と第3セル403との間にも絶縁測定構造体410が設置される。
図8を参照すると、絶縁測定構造体の構造模式図が示される。絶縁測定構造体410は絶縁層411と、測定層412と、隔離層413と、を含む。
【0080】
絶縁層411はマルチセル電池における隣接する2つのセルの間に設置され、即ち本実施形態において、絶縁層411は、第1セル401と第2セル402との間に設置され、または第2セル402と第3セル403との間に設置される。
【0081】
測定層412は、セルに近接する少なくとも一部の絶縁層411の側に配置され、一つの測定層412は一つのセルに対応し、測定層412はセルの負極電位を測定するために使用される。2つのセルのみを含む電池の場合、絶縁測定構造体410は1つしかなく、絶縁層411の両側にいずれも測定層412が設置される。しかしながら、セルの数が2つより多い場合、例えば、
図7に示すように、セルの数が3である場合、2つの絶縁測定構造体410が必要であり、絶縁測定構造体410のうちの1つの絶縁層411の両側に測定層412に設置される必要があり、絶縁測定構造体410の他方の絶縁層411の片側のみに測定層412に設置されてもよい。これにより、一つのセルが一つの測定層412に対応することを確保し、該測定層412が該セルの負極電位の検出を行うことができることを保証できる。ここで、測定層412はリチウム金属及びチタン酸リチウムのうちの少なくとも1つであってもよく、主に基準電圧を提供することに用いられ、セルに対して、接地接続に相当する。また、測定層412の厚さは1μm~100μmのいずれかの値であってもよく、具体的にはセルの実際の状況に基づいて決定することができる。
【0082】
すなわち、測定層412の設置される数がセルの数より多いことを回避するために、セルに近い少なくとも一部の絶縁層411の側に測定層412が設置されてもよく、且つ一つの測定層412が一つのセルに対応する。一つのセルに一つの測定層412を設置することにより、マルチセル電池における各セル412の負極電位を測定することができ、マルチセル電池の充電制御に関する技術サポートを提供できる。
【0083】
隔離層413は測定層412とセルとの間に設置され、隔離層413は測定層412とセルを絶縁することに用いられ、測定層412とセルとの間に電気的接続が発生し、測定結果に影響を与えることを回避する。ここで、該隔離層412は、隔離効果を果たす限り、薄い隔離膜であってもよい。
【0084】
隔離層413とは異なり、絶縁層411は、隔離の役割を果たすだけでなく、測定層412を支持する役割を果たすこともできる。実際の応用において、該絶縁層411は耐電解質腐食性および非導電性を有する複合材料層であってもよい。例えば、絶縁層411はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリテレフタル酸ポリエチレン、スパンデックス又はアラミドフィルムのうちの少なくとも一種で製造された複合材料層であってもよい。また、該絶縁層411の厚さは0.1~1000μmの任意の値であってもよく、セルの実際の状況に応じて絶縁層411の具体的な厚さを決定することができる。
【0085】
本出願の例示的な実施形態では、負極電位の測定を容易にするために、測定層412に基準タブ414を配置する必要があり、それにより負極タブ405と基準タブ414との電位差を測定することによって負極電位を測定する。ここで、基準タブ414の材料及び負極タブ405の材料は同じであってもよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、タングステン、スズ、鉛、鉄、銀、金、白金又はその合金のうちの少なくとも一種で構成される。本出願の実施形態は、これに特に制限されない。
【0086】
本出願の実施形態において、
図4に示されるように、負極電位の配線測定を容易にするために、基準タブ414及び負極タブ405は、マルチセル電池400の同じ側に配置されることができる。
【0087】
本出願の例示的な実施形態において、セル間の異なる接続方式に対して、絶縁層411は異なる寸法を有するように設定されてもよい。具体的には、隣接する2つのセルが並列接続される場合、セルに接近する絶縁層411の側の表面積はセルの側面積と一致することができる。
【0088】
しかし、隣接する2つのセルが直列接続される場合、
図5に示すように、絶縁層411の側面積がセルの側面積よりも大きく、且つ絶縁層411およびハウジング406は、複数の単セル収容空間を形成するように包装される。該単セル収容空間が一つのセルを収容することに用いられ、各セルを完全に隔離する目的を達成し、セル間の導通を回避する。
【0089】
実際の設置において、ヒートシールプロセスによって絶縁層411とハウジング406を包装することができる。絶縁層411の周囲はいずれもハウジング406とシール処理を行う必要がある。
【0090】
本出願の例示的な実施形態において、測定層412の寸法は特に制限されない。測定層412の側面積は、コアの側面積と同じ大きさに設定することができ、またセルの側面積より小さくすることができ、実際の状況に応じて決定することができ、本出願の例示的な実施形態はこれに制限されない。
【0091】
さらに、隔離層413の側面積は、測定層412及びセルを絶縁するために、測定層412の側面積と同一である必要がある。
【0092】
本出願の例示的な実施形態において、上記マルチセル電池の充電制御を実現するために、マルチセル電池400はさらに制御アセンブリを含むことができる。該制御アセンブリは正極タブ404、負極タブ405及び基準タブ414に接続されることができ、マルチセル電池400における各セルの負極電位を収集し、且つマルチセル電池400の充電状態を制御することに用いられる。
【0093】
実際の応用において、該制御アセンブリはマルチセル電池400のハウジング406の内部に設置されてもよく、ハウジング406の外部の他の装置、例えば、多マルチセル電池を充電するための充電器に設置されてもよい。本出願の実施形態は、これに制限されない。
【0094】
本出願の例示的な実施形態はさらに端末装置を提供する。該端末装置は上述のマルチセル電池を含み、ここでマルチセル電池の具体的な構造形態は既に上記実施形態で詳細に説明されたので、ここでは説明を省略する。
【0095】
本出願の例示的な実施形態はまたコンピュータ可読記憶媒体を提供し、コンピュータ可読記憶媒体には本明細書の上述の方法を実施することができるプログラム製品を格納される。いくつかの可能な実施形態において、本出願の様々な態様はまた、プログラムコードを含むプログラム製品の形で実現することもできる。プログラム製品が端末装置で実行するとき、プログラムコードは、本明細書で上述した「例示的な方法」部分で説明した本出願の様々な例示的な実施形態のステップを端末装置に実行させるために使用され、例えば、
図1のいずれか1つまたは複数のステップを実行することができる。
【0096】
プログラム製品は、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)を使用することができ、且つプログラムコードを含み、パーソナルコンピュータ等の端末装置で実行することができる。しかし、本出願のプログラム製品はこれに制限されず、本明細書においては、読み取り可能な記憶媒体は、プログラムを含む、または記憶する任意の有形媒体であってもよい。該プログラムは、命令実行システム、装置、またはデバイスによって使用される、またはそれらに関連して使用される。
【0097】
プログラム製品は、1つまたは複数の読み取り可能な媒体の任意の組み合わせを採用することができる。読み取り可能な媒体は、読み取り可能な信号媒体または読み取り可能な記憶媒体であってもよい。読み取り可能な記憶媒体は、電気的、磁気的、光学的、電磁気的、赤外線、あるいは半導体のシステムまたはデバイス、またはそれらの任意の組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。読み取り可能な記憶媒体のより具体的な例(網羅的なリストではない)には、1つ或いは複数のワイヤを有する電気的接続、ポータブルディスク、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、光記憶デバイス、磁気記憶デバイス、または上述した任意の適切な組合せが挙げられる。
【0098】
コンピュータ読み取り可能な信号媒体は、ベースバンドで伝播されるデータ信号、または搬送波の一部とするデータ信号を含み、コンピュータ読み取り可能な信号媒体には読み取り可能なプログラムコードが含まれる。このような伝播データ信号は、電磁信号、光信号、または上述の任意の適切な組合せを含むが、これらに制限されず、様々な形態をとることができる。読み取り可能な信号媒体は読み取り可能な記憶媒体以外の任意の読み取り可能な媒体であってもよい。該読み取り可能な媒体は、命令実行システムまたはデバイスによって使用される、またはそれに関連して使用されるプログラムを送信、伝播、または伝送することができる。
【0099】
読み取り可能な媒体に含まれるプログラムコードは、任意の適切な媒体を用いて伝送されてもよく、無線、有線、光ケーブル、RF等、またはそれらの任意の適切な組み合わせを含むが、これらに制限されない。
【0100】
本出願の操作を実行するためのプログラムコードは、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで書くことができる。プログラミング言語は、Java(登録商標)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語を含み、「C」言語または類似のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含むことができる。プログラムコードは、ユーザコンピューティングデバイスで完全に実行することができ、ユーザデバイスで部分的に実行することができ、別個のソフトウェアパッケージとして実行することができ、ユーザコンピューティングデバイスで部分的に実行し且つリモートコンピューティングデバイスで部分的に実行することができ、またはリモートコンピューティングデバイスまたはサーバ上で完全に実行することができる。リモートコンピューティングデバイスが関与する場合、リモートコンピューティングデバイスは、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを介してユーザコンピューティングデバイスに接続されることができ、または外部コンピューティングデバイスに接続される(たとえば、インターネット サービス プロバイダーを使用してインターネットを介して接続される)ことができる。
【0101】
本出願の例示的な実施形態はさらに電子装置を提供し、以下では
図9を参照して該電子装置について説明する。なお、
図9に示す電子装置800は一つの例に過ぎず、本出願の実施形態の機能及び使用範囲に制限されない。
【0102】
図9に示すように、電子装置800は、一般的なコンピューティングデバイスの形式で表現される。電子装置800の構成要素は、少なくとも1つの処理ユニット810と、少なくとも1つの記憶ユニット820と、異なるシステムコンポーネント(記憶ユニット820及び処理ユニット810を含む)を接続するバス830、表示ユニット840と、を含むが、これに制限されない。
【0103】
ここで、記憶ユニットにプログラムコードが記憶され、プログラムコードが処理ユニット810によって実行されることができ、処理ユニット810が本明細書の上記「例示的な方法」部分に記述された本出願の様々な例示的な実施形態に係るステップを実行する。例えば、処理部810は、
図2に示される方法ステップ等を実行することができる。
【0104】
記憶セル820は、ランダムアクセス記憶ユニット(RAM)8201および/またはキャッシュストレージユニット8202などの揮発性記憶ユニットを含むことができ、さらに読み取り専用記憶ユニット(ROM)8203を含むことができる。
【0105】
記憶ユニット820はまた、1組(少なくとも1つ)のプログラムモジュール8205を有するプログラム/ユーティリティ8204を含むことができ、そのようなプログラムモジュール8205は、ペレーティング・システム、1つまたは複数のアプリケーション・プログラム、他のプログラム・モジュール、およびプログラム・データを含むが、これらに制限されず、これらの例のそれぞれまたはいくつかの組み合わせには、ネットワーク環境の実装が含まれることができる。
【0106】
バス830は、データバス、アドレスバスおよび制御バスを含むことができる。
【0107】
電子装置800はまた1つまたは複数の外部装置870(例え、キーボード、ポインティングデバイス、ブルートゥース(登録商標)デバイスなど)と通信することができ、そのような通信は、入出力(I/O)インターフェース850を介して実行することができる。電子装置800はまた、表示ユニット840を含み、入出力(I/O)インターフェース850に接続され、表示に用いられる。また、電子装置800はまた、ネットワークアダプタ860を介して、1つまたは複数のネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、および/またはインターネットなどの公衆ネットワーク)と通信することができる。図示されるように、ネットワークアダプタ860は、バス830を介して電子装置800の他のモジュールと通信される。図には示されていないが、他のハードウェアおよび/またはソフトウェアモジュールが電子装置800と結合して使用されてもよく、マイクロコード、デバイスドライバ、冗長処理ユニット、外部ディスクドライブアレイ、RAIDシステム、テープドライブおよびデータバックアップストレージシステムなどを含むが、これらに制限されない。
【0108】
当業者は、本出願の様々な態様が、システム、方法またはプログラム製品として実施されることができることを理解するであろう。これにより、本出願の様々な態様は、以下の形式、すなわち、完全なハードウェア実施形態、完全なソフトウェア実装形態(ファームウェア、マイクロコードなどを含む)、またはハードウェアとソフトウェアの組合せの実施形態で具体的に実現することができ、本明細書ではまとめて「回路」、「モジュール」または「システム」と呼ぶことができる。
【0109】
当業者は、本明細書を考慮し且つ開示された発明を実施する際に、本出願の他の実施形態を容易に想到するであろう。本出願は、本出願の一般的な原理に従い、本出願では開示されていない技術分野における常識または慣用の技術的手段を含む、本出願の任意の変形、使用または適応の変更を包含することを意図する。本明細書および実施形態は例示的なものとみなされるべきであり、本出願の真の範囲および精神は、特許請求の範囲によって示される。
【0110】
なお、本出願は上で説明し、添付の図面に示した正確な構造に制限されるものではなく、本出願の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更を行うことができることを理解されたい。本出願の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2021年7月20日に提出された202110834181.8という出願号及び「電池充電方法及び回路、マルチセル電池、端末装置および電子装置」という名称である中国特許出願による優先権を請求し、この中国特許出願の全体内容がここに引用することにより本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、充電技術分野に関し、特にマルチセル電池の充電回路、マルチセル電池及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯端末装置的機能が絶えず強化されるにつれて、電池容量への要求も高まっている。マルチセル電池の使用は従来の電池全体の容量を向上させ、航続時間を増加させるための主な方法の1つになる。
【0004】
従来のマルチセル電池を急速に充電する過程において、一般的に固定の充電速度を用いて充電を行う。充電環境が急速充電条件に適合している限り、最速の速度で急速充電が行わる。
【0005】
しかし、一つのマルチセル電池のライフサイクル全体で最速の速度で充電すると、電池がリチウム析出現象を発生させ、電池の劣化を加速させる。
【発明の概要】
【0006】
本出願の第1態様では、マルチセル電池の充電回路を提供する。マルチセル電池の充電回路は、検出回路と、制御回路と、を含む。検出回路は、マルチセル電池における各セルの負極電位を取得することに用いられる。制御回路は、各セルの前記負極電位を比較し、最小負極電位を決定すること、前記最小負極電位が安全電位以上である場合、前記マルチセル電池を第1モードで充電するように制御すること、前記最小負極電位が前記安全電位より小さい場合、前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することに用いられる。
【0007】
本出願の第2態様では、マルチセル電池を提供する。少なくとも1つの絶縁測定構造体及び制御回路を含むマルチセル電池の充電回路であって、マルチセル電池は複数のセルを含み、各絶縁測定構造体は隣接する2つの前記セルの間に設置され且つ2つの隣接するセルを隔離するために使用され、マルチセル電池の前記セルの負極電位を測定するために使用され、制御回路は、少なくとも1つの絶縁測定構造体に接続され、少なくとも1つの絶縁測定構造体から負極電位を取得するために使用され;セルの負極電位から最小負極電位を決定し;最小負極電位が安全電位以上である場合、マルチセル電池を第1モードで充電するように制御し;最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することに用いられる。
【0008】
本出願の第3態様では、電子装置が提供される。マルチセル電池と、プロセッサと、メモリと、を含む電子装置であって、メモリは前記プロセッサの実行可能な命令を記憶するために使用され、実行可能な命令を実行することによって、プロセッサは、マルチセル電池の少なくとも1つの絶縁測定構造から負極電位を取得し;セルの負極電位から最小負極電位を決定し;最小負極電位が安全電位以上である場合、マルチセル電池を第1モードで充電するように制御し;最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を第2モードで動作するように制御するように構成される、電子装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態におけるマルチセル電池の構造模式図を示す図である。
【
図2】本実施形態におけるマルチセル電池の充電方法のフローチャートである。
【
図3】本実施形態におけるマルチセル電池の充電放電過程における負極電位と時間との変化関係を示す図である。
【
図4】本実施形態におけるマルチセル電池の充電回路の概略図である。
【
図5】本実施形態における他のマルチセル電池の正面図である。
【
図6】
図5に示すマルチセル電池の横断面概略図である。
【
図7】
図5に示すマルチセル電池の縦断面概略図である。
【
図8】本実施形態における絶縁測定構造体の構造模式図である。
【
図9】本実施形態における電子装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照して例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、例示的な実施形態は、様々な形態で実施することができ、本明細書で説明される例に制限されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本出願が徹底的かつ完全なものとなり、例示的な実施形態の概念を当業者に完全に伝えるために提供される。記載された特徴、構造又は特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本出願の実施形態を十分に理解するために、多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者であれば、本出願の技術的解決手段は、特定の詳細な説明の1つまたは複数を省略しても実施できること、あるいは他の方法、構成要素、装置、ステップなどを採用することができることを理解するであろう。他の場合には、本出願の態様を不明瞭にすることを避けるために、周知の技術的解決手段は詳細には示されず、または説明されない。
【0011】
さらに、図面は、本出願の単なる概略図であり、必ずしも同一縮尺描かれているわけではない。なお、図中、同一の符号は同一または相当部分を示し、重複する説明は省略する。図に示されるブロック図のいくつかは、機能エンティティであり、必ずしも物理的にまたは論理的に独立したエンティティに対応する必要はない。これらの機能エンティティは、ソフトウェアの形態で実現されてもよく、或いは1つまたは複数のハードウェアモジュールまたは集積回路において実現されてもよいし、あるいは異なるネットワークおよび/またはプロセッサデバイスおよび/またはマイクロコントローラデバイスにおいて実現されてもよい。
【0012】
図面に示されたフローチャートは例示的なものに過ぎず、必ずしもすべてのステップを含むものではない。例えば、一部のステップを分解することができ、一部のステップを合併するか又は部分的に組み合わせることができるため、実際に実行される順序が実際の状況に応じて変化する可能性がある。さらに、以下の用語「第1」、「第2」は、区別のためだけのものであり、本出願を制限するために使用されるべきではない。
【0013】
リチウムイオン電池の充電過程において、リチウムイオンLi+は正極から放出され且つ負極に埋め込まれる。しかし、いくつかの異常状況、例えば、Li+が負極に埋め込まれるスペースが不足すること、Li+の負極に埋め込む抵抗が大きすぎること、正極からLi+の放出が早すぎて、負極に同じ量のLi+が埋め込まれないことなどの異常は発生する際、負極に埋め込まれないLi+が負極の表面上のみに析出し、銀白色のリチウム単体が形成され、これをリチウム析出と呼ぶ。
【0014】
リチウム析出は、リチウムイオン電池の損失状態である。リチウム析出によって電池性能を低下させ、サイクル寿命を大幅に短縮させるだけでなく、電池の急速充電容量を制限し、且つ燃焼、爆発等の壊滅的な結果を引き起こす可能性がある。負極がリチウムを析出しないように制御することができれば、充電過程には電池の劣化を最大限に低下させることができる。
【0015】
本出願人は、研究中で、一般にわずかなリチウム析出が可逆的なプロセスを有することを見出し、すなわち新たに生成されたリチウム金属単体がLi+に再変換されて負極に埋め込まれる可能性があることを発見した。これにより、負極のリチウム析出を抑制するだけでなく、高い充電速度を確保することができ、充電の効率を向上させることができる。
【0016】
これに基づいて、本出願の例示的な実施形態はマルチセル電池の充電方法を提供する。マルチセル電池の充電方法はリチウム電池に応用できる。リチウム電池はリチウムイオン電池及びリチウム金属電池等を含み、本出願の例示的な実施形態はこれに対して特に制限されるものではない。
【0017】
上記マルチセル電池の充電方法を説明する前に、さらに上記充電方法を適用するマルチセル電池について簡単に説明する必要がある。
【0018】
本出願の例示的な実施形態では、
図1を参照すると、マルチセル電池が提供される。該マルチセル電池は、複数のセル110と、絶縁測定構造体120と、を含む。
【0019】
複数のセル110は並列または直列接続される。本出願の実施形態における複数は2つ或いは2つ以上である。複数のセル110のうち、2つのセル110は並列に接続されてもよく、直列に接続されてもよい。また、セル110が2つより多い場合には、混合接続を実現することができる。すなわち、本出願の実施形態はマルチセル電池におけるセル110の接続方式は特別に制限されない。
【0020】
セル110はさらに正極タブ及び負極タブ111を含む。ここで、上記セル110の正極と負極はリチウムイオンが可逆的に放出され且つ埋め込まれる化合物で製造される。正極は通常、リチウムに対して電位が3Vより大きく且つ空気中でリチウムが安定に埋め込まれた遷移金属酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO4などが選択される。負極は、一般に電位がリチウム電位にできるだけ近く、かつリチウムが埋め込まれることができる化合物を選択し、例えば、様々な炭素材料、金属酸化物などが選択される。炭素材料は、天然黒鉛、合成黒鉛、炭素繊維、中間相球炭素等を含む。金属酸化物は、SnO、SnO2、スズ複合酸化物等を含む。
【0021】
絶縁測定構造体は、隣接する2つのセル110の間に設置される。一つの例において、各隣接する2つのセル110の間に一つの絶縁測定構造体が設置される。絶縁測定構造体120が隣接するセル110を隔離し、且つセル110の負極電位を測定することに用いられる。即ち、該絶縁測定構造体120はセル110の負極電位を測定する同時に、さらにセル110の間に隔離作用を果たし、それによってセル110間の電気的な接触によって短絡を引き起こすことを回避することができる。ここで、絶縁測定構造体120の具体的な構造については後の実施形態で詳細に説明する。
【0022】
該絶縁測定構造体120は絶縁層121及び測定層を含む。絶縁層121がマルチセル電池内の隣接する2つのセル110の間に設置され、測定層がセル110に近い絶縁層121の側に設置される。測定層にさらに基準タブ122が設置され、基準タブ122と負極タブ111との間の電位差を測定することにより、セル110の負極電位を得ることができる。
【0023】
本出願の例示的実施形態では、測定層とセルとの接触によって導電して、測定された負極電位の正確性に影響をあけることを回避するために、測定層とセルとの間に隔離層を配置することが必要である。隔離層は、測定層をセルから絶縁するために使用することができる。
【0024】
実際の応用において、上記マルチセル電池は電気装置に用いることができる。例えば、該電気装置は携帯電話機、コンピュータ、無人機、自動車等であってもよく、本出願の実施形態はこれに制限されない。
【0025】
以下に
図2を参照しながら本出願の例示的な実施形態のマルチセル電池の充電方法について具体的に説明する。
図2に示すとおり、該マルチセル電池の充電方法は以下を含むことができる。
【0026】
ステップS210、マルチセル電池における各セルの負極電位を取得する。
【0027】
本出願の例示的な実施形態では、マルチセル電池は複数のセルを含む電池であり、ここでは複数が2以上である。マルチセル電池では複数のセルは並列に接続されてもよく、直列に接続されてもよいし、混合接続されてもよい。
【0028】
負極電位は負極のリチウム析出の1つの重要な指標であり、負極電位が0Vより小さい場合、負極のリチウム析出現象が発生する。実際の応用において、負極電位を取得する方法は様々である。本出願の実施形態では、上述した絶縁測定構造体を用いて負極電位を取得することができる。
【0029】
上記方法により負極電位を測定する絶縁測定構造体を得た後、マルチセル電池内に設置された該絶縁測定構造体によって各セルの負極電位を直接に取得することができ、負極電位の取得利便性及び精度を向上させる。
【0030】
本出願の例示的な実施形態において、負極におけるリチウムイオンの堆積状況をタイムリーに把握するために、各セルの負極電位をリアルタイムに取得する方式を採用することができ、それにより負極電位を介してリチウムイオンが各セルの負極に堆積する状況をリアルタイムに取得し、後続の充電プロセスを効果的に管理する。充電の開始時に、負極電位はまだ低くない。これにより、マルチセル電池が第1予め設定された電流に基づいて予め設定された時間充電された後、予め設定された周期に基づいて負極電位を取得することができる。具体的な予め設定された時間及び予め設定された周期は実際の状況に基づいて決定することができ、希望な負極電位をタイムリーに取得できることを確保すればよく、本出願の例示的な実施形態はこれに制限されない。
【0031】
ステップS220、各セルの負極電位を比較し、最小負極電位を決定する。
【0032】
本出願の例示的な実施形態において、マルチセル電池における各セルの負極電位を取得した後、各セルの負極電位を比較する必要があり、それにより複数の負極電位のうちの最小負極電位を決定する。
【0033】
実際の応用において、各セルの負極電位を比較して最小負極電位を決定する方法は、複数がある。例えば、2つセルの負極電位を比較して最小負極電位を段階的に決定することができる。本出願の例示的な実施形態は、最小負極電位を決定する方法に限定されない。
【0034】
ステップS230、最小負極電位が安全電位の以上である場合、マルチセル電池を第1モードで充電するように制御する。
【0035】
本出願の例示的な実施形態では、安全電位とはマルチセル電池のセルが第1モードに従って充電できる臨界電位である。最小負極電位が安全電位より低く、セル内で不可逆的なリチウム析出現象が発生する可能性がある。複数の電極の負極電位のうち、最小負極電位が安全電位の以上である場合、全てのセルは第1モードで充電することができ、リチウム析出現象が発生せず、たとえリチウム析出が発生したとしても、該リチウム析出プロセスは可逆的である。
【0036】
リチウム析出の発生が可逆範囲内であることを保証しながら、充電速度、すなわち充電に使用される電流を可能な限り低減するために、本発明の例示的な実施形態では、安全電位は、-100mV~-0.05Vの間の任意の値または任意の範囲であってもよい。例えば、安全電位が-10mVである場合、マルチセル電池の各セルの最小負極電位が-10mV以上であれば、該マルチセル電池を第1モード、例えば、急速充電モードで充電するように制御することができる。
【0037】
本出願の一つの実施形態において、第1モード充電は急速充電モードであってもよく、該第1モードでは、マルチセル電池が第1予め設定された電流で充電することができる。第1予め設定された電流は、より速い充電のために、セルが耐えることができるより大きな電流を使用することができる。この電流では、セルは副反応を起こさず、セルの寿命や性能に悪影響を及ぼすことなく、かつ急速充電を最大限に実現することができる。
【0038】
実際の応用において、第1予め設定された電流の大きさは実際の状況に応じて決定することができる。例えば、該第1予め設定された電流の電流範囲は2C~10Cであってもよい。ここで、Cは複数のセルの総容量である。複数のセルの総容量が1000mAhであると仮定すると、第1予め設定された電流の電流範囲は2000mA~10Aであってもよい。
【0039】
急速充電モードでは、セル内で負極のリチウム析出現象が発生するため、本出願の例示的な実施形態は安全電位を提供することによって、最小負極電位が安全電位以上である場合にのみ、マルチセル電池が急速充電モードを用いて充電することができ、それにより可逆的なリチウム析出が確保すると同時に、急速充電に可能な最大電流が使用される。リチウム析出を抑制することによって充電速度の低下の確率を低減し、ユーザ体験を向上させる。
【0040】
本出願の例示的な実施形態はセルの最小負極電位を取得し、かつ最小負極電位が安全電位の以上である場合、第1モードで充電するようにマルチセル電池を制御する。急速充電中、各電池セルがすべて安全な電位範囲内で動作することを確保することができる。最小負極電位に対応する電池セルが急速に充電できる際、他のセルにはリチウム析出は当然ありませんし、たとえ存在したとしても可逆的な範囲内に収まる。これにより、すべてのセルでの不可逆的なリチウム析出を回避でき、高い充電率を確保しながらマルチセル電池の劣化率を低減することができる。
【0041】
ステップS240、最小負極電位が安全電位より小さい場合には、マルチセル電池を第2モードで動作するように制御する。
【0042】
本出願の例示的な実施形態において、最小負極電位が安全電位より小さい場合、第1モードで充電し続けると、例えば、急速充電方式で充電する場合、セル内で不可逆的なリチウム析出を引き起こす可能性があり、それにより電池の劣化を加速し、電池全体の寿命に影響を与える。これにより、最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を別のモード、即ち第2モードで動作するように制御することによって、不可逆なリチウム析出の発生を回避することができ、且つ第1モードでの充電時に生成された可逆なリチウム析出中のリチウム金属単体をLi+に変換して負極に埋め込むことができ、それにより不活性なリチウム金属単体の生成を回避することができる。
【0043】
本出願の例示的な実施形態では、第2モードで動作するようにマルチセル電池を制御するための複数の実装方法が存在する。
【0044】
第一種方式に、最小負極電位が安全な電位以上になるまでマルチセル電池を放電状態に留まるように制御することができる。
【0045】
大電流での充電により、リチウム金属単体が負極表面に堆積する可能性があり、負極電位を低下し、さらにリチウム析出問題を発生させる。これにより、本出願の例示的な実施形態において、最小負極電位が安全電位より小さい場合、放電、即ち逆充電プロセスを利用して、堆積されたリチウム金属単体の少なくとも一部を正極に戻すことができ、それによりリチウム析出を可逆化することで負極電位を上昇させ、負極電位がリチウム析出の電位より大きくする場合、リチウム析出現象が発生することを回避することができる。
【0046】
本出願の例示的な実施形態において、安全電位を基準として、マルチセル電池が一定期間放電状態になった後、複数のセルにおける最小負極電位が安全電位以上である場合、放電を停止し、さらに第1モードで充電することができる。電池が満充電されているまで、上記のプロセスを繰り返される。
【0047】
充電中に、あるセルの負極電位が最小負極電位であると決定し、必ずしも放電後の最小負極電位が該セルの負極電位であるとは限らないことに留意されたい。即ち、最小負極電位がリアルタイムに更新する必要があり、必ずしも特定のセルの負極電位とは限らない。
【0048】
図3を参照すると、本出願の例示的な実施形態におけるマルチセル電池の充電放電過程における負極電位の時間変化関係を示す図である。
図3において、まず、該マルチセル電池は大きな第1予め設定された電流で充電し、充電の進行に伴って、負極電位が低下し、安全電位、即ちT1時点まで低下すると、マルチセル電池は小さい電流(例えば、0.01C~1C)で放電し、放電の進行に伴って、負極電位が上昇し、T2時点で最小負極電位が上昇し、第1予め設定された電流に従って電池を充電することができ、マルチセル電池が満充電されるまで上記のプロセスが繰り返される。
【0049】
本出願の例示的な実施形態は第1モード及び第2モードを提供し、大きな第1予め設定された電流を用いてマルチセル電池が充電され、最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を放電するように制御し、負極電位を上昇させ、最小負極電位が安全電位より大きくなった後にマルチセル電池が再度充電され、それによって可逆的なリチウム析出を確保しながら最大の急速充電を達成できる充放電サイクルプロセスが実現される。
【0050】
本出願の例示的な実施形態では、マルチセル電池が満充電されているか否かを判断することは以下を含むことができる。マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧を取得し、マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧に基づいてマルチセル電池が満充電されているか否かを決定する;正極端子と負極端子との間の電圧がマルチセル電池に設定されたフル電圧(full voltage)に達すると、該マルチセル電池が満充電されていることを示す。マルチセル電池が満充電されると、マルチセル電池の充電が停止される。
【0051】
第2種方式に、最小負極電位が安全電位以上になるまで、マルチセル電池を静置状態に留まるように制御することができる。
【0052】
第1種方式に比べて、第2種方式は放電状態を静置状態に切り替え、充電も放電もせず、リチウムイオンが負極に完全に入ることを待ち、静置プロセスによって堆積されたリチウム金属単体の少なくとも一部を正極に戻し、リチウム析出を可逆的にする目的を達成することができる。最小負極電位が安全電位より大きいことが検出されるまで、さらに第1予め設定された電流で急速充電が継続され、マルチセル電池が満充電されるまで上記過程が繰り返される。
【0053】
第1種方式と異なり、静置状態がT1時点からT2時点にかけて最小負極電位が安全電圧以上に上昇するまでの時間は長くなり、それによって全体の充電時間も長くなるが、リチウム析出を可逆的にしながら、最大限の急速充電を実現することを保証できる。
【0054】
第3種方式に、該マルチセル電池を第2予め設定された電流で充電するように制御することができ、且つ該第2予め設定された電流は第1予め設定された電流より小さい。
【0055】
本出願の例示的な実施形態において、最小負極電位が安全電位より小さくなるように第1予め設定された電流に従って急速充電する場合、より小さな第2予め設定された電流を用いて低速充電を行うことができ、該低速充電プロセスにはリチウム析出が発生せず、且つリチウムイオンがマルチセル電池の負極に入るのに十分な時間を提供できるため、急速充電中に析出したリチウム金属元素が正極に戻ることを確保し、リチウム析出が可逆化する目的を達成できる。最小負極電位が安全電位より大きいことが検出されるまで、さらに第1予め設定された電流で急速充電が継続され、マルチセル電池が満充電されるまで上記過程が繰り返される。
【0056】
第1種方式及び第2種方式と比較して、この方式では、安全電位をより高く、たとえば、-10mV~0.05Vの間の任意の値に設定する必要がある。これは、第2予め設定された電流で充電されるときに、負極電位が上昇しにくくなるのを防ぐためである。
【0057】
本出願の例示的な実施形態が提供するマルチセル電池の充電方法は、各セルにおける最小負極電位に基づいてマルチセル電池の充電過程を制御し、急速充電を実現すると同時にリチウム析出現象の発生を回避することができ、それによりマルチセル電池の安全性を保証すると同時に、充電効率を向上させる。
【0058】
上記マルチセル電池の充電方法に基づいて、本出願の例示的な実施形態はさらにマルチセル電池の充電回路を提供する。
図4は、本出願の例示的な実施形態のマルチセル充電回路の概略図である。
図4に示すように、該マルチセル充電回路300は、検出回路及び制御回路310を含む。
【0059】
ここで、検出回路はマルチセル電池400における各セルの負極電位を取得するために用いることができる。
【0060】
検出回路がマルチセル電池の各セルの負極電位を取得することを容易にするために、本出願の例示的な実施形態において、検出回路は絶縁測定構造体410及び複数の接続線420を含むことができる。ここで、絶縁測定構造体410はマルチセル電池400の隣接する2つのセルの間に設置されてもよい。複数の接続線420のうち、各接続線420の一端は、セルの正極タブ、負極タブ又は絶縁測定構造体410の基準タブのうちの一つと電気的に接続され、接続線420の他端は、制御回路310と電気的に接続される。負極タブと基準タブとの間の電位差を収集することにより、セルの負極電位を得ることができる。
【0061】
本出願の例示的な実施形態において、絶縁測定構造体410は絶縁層、測定層及び隔離層を含むことができる。ここで、絶縁層はマルチセル電池の隣接する2つのセルの間に設置される。セルに近い絶縁層の少なくとも片側には測定層が配置されていてもよい。一つの測定層は1つのセルに対応し、測定層はセルの負極電位を測定することに用いられる。隔離層は測定層とセルとの間に設けられ、隔離層は測定層とセルを絶縁するために用いられる。そのうち具体的な配置方式は後続のマルチセル電池の実施形態において詳細に説明され、ここでは詳細な説明を省略する。
【0062】
具体的に検出過程において、検出回路は各セルの負極電位をリアルタイムに取得するために用いられ、又はマルチセル電池が第1予め設定された電流に基づいて予め設定された時間充電された後に予め設定された周期に基づいて負極電位を取得するために用いられる。実際の必要に応じて検出回路の検出周波数及び検出開始時間を設定することができ、ここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
本出願の例示的な実施形態において、検出回路と制御回路310との間で通信接続が形成されることができ、検出回路は検出された各セルの負極電位を制御回路310に送信することができる。検出回路と制御回路310との間の通信接続方式は有線接続であってもよく、無線接続であってもよく、本出願の実施形態はこれに制限されない。
【0064】
検出回路によって検出された各セルの負極電位を受信した後、制御回路310は各セルの負極電位を比較し、最小負極電位を決定すること、最小負極電位が安全電位以上である場合、マルチセル電池を第1モードで充電するように制御すること、最小負極電位が安全電位より小さい場合、マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することに用いられる。
【0065】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310は、最小負極電位が安全電位以上である場合、第1予め設定された電流で充電するようにマルチセル電池を制御することに用いられる。
【0066】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310は、最小負極電位が安全電位より小さい場合に、第2予め設定された電流で充電するようにマルチセル電池を制御することに用いられる。また、第2予め設定された電流は第1予め設定された電流よりも小さい。
【0067】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310は最小負極電位が安全電位より小さい場合、最小負極電位が安全電位以上になるまで、マルチセル電池を静置状態に留まるように制御することに用いられる。
【0068】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310は最小負極電位が安全電位より小さい場合、最小負極電位が安全電位以上になるまで、マルチセル電池を放電状態に留まるように制御することに用いられる。
【0069】
本出願の例示的な実施形態の一つの実施方式において、制御回路310はさらに、マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧を取得し、マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧に基づいてマルチセル電池が満充電されているか否かを決定すること、マルチセル電池が満充電されている場合、マルチセル電池の充電を停止することに用いられる。
【0070】
本出願における方法の様々なステップは、図面において特定の順序で記載されているが、ステップをその特定の順序で実行する必要があること、または望ましい結果を達成するために示されているすべてのステップを実行する必要があることは、必須または暗示されない。追加的または代替的に、いくつかのステップを省略することができ、複数のステップを1つのステップに結合して実行することができ、および/または1つのステップを複数のステップに分割することなどができる。
【0071】
本出願の実施形態におけるマルチセル電池の充電方法及び充電回路に適用されるマルチセル電池について説明する。該マルチセル電池は、複数のセルと、絶縁測定構造体と、ハウジングと、を含む。
【0072】
複数のセルは並列又は直列に接続される。本出願の実施形態における複数は2つ或いは2つ以上を指す。複数のセルのうち、2つセルは並列に接続されてもよく、直列接続されてもよい。セルが2つより多い場合には、さらに混合接続を実現することができる。すなわち、本出願の例示的な実施形態はマルチセル電池におけるセルの接続方式に対して特に制限されない。
【0073】
絶縁測定構造体は隣接する2つの前記セルの間に設置される。絶縁測定構造体は隣接するセルを隔離し、且つセルの負極電位を測定することに用いられる。すなわち、該絶縁測定構造体はセルの負極電位を測定すると同時に、さらにセル間の隔離作用を果たし、セル間の電気的接触により短絡することを防ぐことができる。
【0074】
ハウジングは、複数のセル及び絶縁測定構造体を被覆し、それにより一体的な電池構造を形成することに用いられる。
【0075】
以下では3つのセルを含む電池を例として、上記のマルチセル電池を例示的に説明する。
【0076】
図5~
図7に示すように、該マルチセル電池400は第1セル401、第2セル402及び第3セル403を含む。ここで第1セル401、第2セル402及び第3セル403はいずれも正極タブ404及び負極タブ405を含み、且つ正極タブ404及び負極タブ405はいずれもハウジング406を貫通して外部に露出される。第1セル401と第2セル402とは直列または並列に接続されもよく、第2セル402と第3セル403とは直列または並列に接続されもよく、ここでは制限されない。
【0077】
本出願の例示的な実施形態では、絶縁測定構造体410は第1セル401と第2セル402との間に設置され、第2セル402と第3セル403との間にも絶縁測定構造体410が設置される。
図8を参照すると、絶縁測定構造体の構造模式図が示される。絶縁測定構造体410は絶縁層411と、測定層412と、隔離層413と、を含む。
【0078】
絶縁層411はマルチセル電池における隣接する2つのセルの間に設置され、即ち本実施形態において、絶縁層411は、第1セル401と第2セル402との間に設置され、または第2セル402と第3セル403との間に設置される。
【0079】
セルに近い絶縁層411の少なくとも片側には測定層412が配置され、一つの測定層412は一つのセルに対応し、測定層412はセルの負極電位を測定するために使用される。2つのセルのみを含む電池の場合、絶縁測定構造体410は1つしかなく、絶縁層411の両側にいずれも測定層412が設置される。しかしながら、セルの数が2つより多い場合、例えば、
図7に示すように、セルの数が3である場合、2つの絶縁測定構造体410が必要であり、絶縁測定構造体410のうちの1つの絶縁層411の両側に測定層412に設置される必要があり、絶縁測定構造体410の他方の絶縁層411の片側のみに測定層412に設置されてもよい。これにより、一つのセルが一つの測定層412に対応することを確保し、該測定層412が該セルの負極電位の検出を行うことができることを保証できる。ここで、測定層412はリチウム金属及びチタン酸リチウムのうちの少なくとも1つであってもよく、主に基準電圧を提供することに用いられ、セルに対して、接地接続に相当する。また、測定層412の厚さは1μm~100μmのいずれかの値であってもよく、具体的にはセルの実際の状況に基づいて決定することができる。
【0080】
すなわち、測定層412の設置される数がセルの数より多いことを回避するために、セルに近い絶縁層411の少なくとも片側には測定層412が配置されてもよく、且つ一つの測定層412が一つのセルに対応する。一つのセルに一つの測定層412を設置することにより、マルチセル電池における各セル412の負極電位を測定することができ、マルチセル電池の充電制御に関する技術サポートを提供できる。
【0081】
隔離層413は測定層412とセルとの間に設置され、隔離層413は測定層412とセルを絶縁することに用いられ、測定層412とセルとの間に電気的接続が発生し、測定結果に影響を与えることを回避する。ここで、該隔離層412は、隔離効果を果たす限り、薄い隔離膜であってもよい。
【0082】
隔離層413とは異なり、絶縁層411は、隔離の役割を果たすだけでなく、測定層412を支持する役割を果たすこともできる。実際の応用において、該絶縁層411は耐電解質腐食性および非導電性を有する複合材料層であってもよい。例えば、絶縁層411はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリテレフタル酸ポリエチレン、スパンデックス又はアラミドフィルム(aramid film)のうちの少なくとも一種で製造された複合材料層であってもよい。また、該絶縁層411の厚さは0.1~1000μmの任意の値であってもよく、セルの実際の状況に応じて絶縁層411の具体的な厚さを決定することができる。
【0083】
本出願の例示的な実施形態では、負極電位の測定を容易にするために、測定層412に基準タブ414を配置する必要があり、それにより負極タブ405と基準タブ414との電位差を測定することによって負極電位を測定する。ここで、基準タブ414の材料及び負極タブ405の材料は同じであってもよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、タングステン、スズ、鉛、鉄、銀、金、白金又はその合金のうちの少なくとも一種で構成される。本出願の実施形態は、これに特に制限されない。
【0084】
本出願の実施形態において、図5に示されるように、負極電位の配線測定を容易にするために、基準タブ414及び負極タブ405は、マルチセル電池400の同じ側に配置されることができる。
【0085】
本出願の例示的な実施形態において、セル間の異なる接続方式に対して、絶縁層411は異なる寸法を有するように設定されてもよい。具体的には、隣接する2つのセルが並列接続される場合、セルに接近する絶縁層411の側の表面積はセルの側面の表面積と一致することができる。
【0086】
しかし、隣接する2つのセルが直列接続される場合、図6に示すように、絶縁層411の側面積がセルの側面積よりも大きく、且つ絶縁層411およびハウジング406は、複数の単セル収容空間を形成するように包装される。該単セル収容空間が一つのセルを収容することに用いられ、各セルを完全に隔離する目的を達成し、セル間の導通を回避する。
【0087】
実際の設置において、ヒートシールプロセスによって絶縁層411とハウジング406を包装することができる。絶縁層411の周囲はいずれもハウジング406とシール処理を行う必要がある。
【0088】
本出願の例示的な実施形態において、測定層412の寸法は特に制限されない。測定層412の側面積は、コアの側面積と同じ大きさに設定することができ、またセルの側面積より小さくすることができ、実際の状況に応じて決定することができ、本出願の例示的な実施形態はこれに制限されない。
【0089】
さらに、隔離層413の側面積は、測定層412及びセルを絶縁するために、測定層412の側面積と同一である必要がある。
【0090】
本出願の例示的な実施形態において、上記マルチセル電池の充電制御を実現するために、マルチセル電池400はさらに制御アセンブリを含むことができる。該制御アセンブリは正極タブ404、負極タブ405及び基準タブ414に接続されることができ、マルチセル電池400における各セルの負極電位を収集し、且つマルチセル電池400の充電状態を制御することに用いられる。
【0091】
実際の応用において、該制御アセンブリはマルチセル電池400のハウジング406の内部に設置されてもよく、ハウジング406の外部の他の装置、例えば、多マルチセル電池を充電するための充電器に設置されてもよい。本出願の実施形態は、これに制限されない。
【0092】
本出願の例示的な実施形態はさらに端末装置を提供する。該端末装置は上述のマルチセル電池を含み、ここでマルチセル電池の具体的な構造形態は既に上記実施形態で詳細に説明されたので、ここでは説明を省略する。
【0093】
本出願の例示的な実施形態はまたコンピュータ可読記憶媒体を提供し、コンピュータ可読記憶媒体には本明細書の上述の方法を実施することができるプログラム製品を格納される。いくつかの可能な実施形態において、本出願の様々な態様はまた、プログラムコードを含むプログラム製品の形で実現することもできる。プログラム製品が端末装置で実行するとき、プログラムコードは、本明細書で上述した「例示的な方法」部分で説明した本出願の様々な例示的な実施形態のステップを端末装置に実行させるために使用され、例えば、
図1のいずれか1つまたは複数のステップを実行することができる。
【0094】
プログラム製品は、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)を使用することができ、且つプログラムコードを含み、パーソナルコンピュータ等の端末装置で実行することができる。しかし、本出願のプログラム製品はこれに制限されず、本明細書においては、読み取り可能な記憶媒体は、プログラムを含む、または記憶する任意の有形媒体であってもよい。該プログラムは、命令実行システム、装置、またはデバイスによって使用される、またはそれらに関連して使用される。
【0095】
プログラム製品は、1つまたは複数の読み取り可能な媒体の任意の組み合わせを採用することができる。読み取り可能な媒体は、読み取り可能な信号媒体または読み取り可能な記憶媒体であってもよい。読み取り可能な記憶媒体は、電気的、磁気的、光学的、電磁気的、赤外線、あるいは半導体のシステムまたはデバイス、またはそれらの任意の組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。読み取り可能な記憶媒体のより具体的な例(網羅的なリストではない)には、1つ或いは複数のワイヤを有する電気的接続、ポータブルディスク、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、光記憶デバイス、磁気記憶デバイス、または上述した任意の適切な組合せが挙げられる。
【0096】
コンピュータ読み取り可能な信号媒体は、ベースバンドで伝播されるデータ信号、または搬送波の一部とするデータ信号を含み、コンピュータ読み取り可能な信号媒体には読み取り可能なプログラムコードが含まれる。このような伝播データ信号は、電磁信号、光信号、または上述の任意の適切な組合せを含むが、これらに制限されず、様々な形態をとることができる。読み取り可能な信号媒体は読み取り可能な記憶媒体以外の任意の読み取り可能な媒体であってもよい。該読み取り可能な媒体は、命令実行システムまたはデバイスによって使用される、またはそれに関連して使用されるプログラムを送信、伝播、または伝送することができる。
【0097】
読み取り可能な媒体に含まれるプログラムコードは、任意の適切な媒体を用いて伝送されてもよく、無線、有線、光ケーブル、RF等、またはそれらの任意の適切な組み合わせを含むが、これらに制限されない。
【0098】
本出願の操作を実行するためのプログラムコードは、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで書くことができる。プログラミング言語は、Java(登録商標)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語を含み、「C」言語または類似のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含むことができる。プログラムコードは、ユーザコンピューティングデバイスで完全に実行することができ、ユーザデバイスで部分的に実行することができ、別個のソフトウェアパッケージとして実行することができ、ユーザコンピューティングデバイスで部分的に実行し且つリモートコンピューティングデバイスで部分的に実行することができ、またはリモートコンピューティングデバイスまたはサーバ上で完全に実行することができる。リモートコンピューティングデバイスが関与する場合、リモートコンピューティングデバイスは、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを介してユーザコンピューティングデバイスに接続されることができ、または外部コンピューティングデバイスに接続される(たとえば、インターネット サービス プロバイダーを使用してインターネットを介して接続される)ことができる。
【0099】
本出願の例示的な実施形態はさらに電子装置を提供し、以下では
図9を参照して該電子装置について説明する。なお、
図9に示す電子装置800は一つの例に過ぎず、本出願の実施形態の機能及び使用範囲に制限されない。
【0100】
図9に示すように、電子装置800は、一般的なコンピューティングデバイスの形式で表現される。電子装置800の構成要素は、少なくとも1つの処理ユニット810と、少なくとも1つの記憶ユニット820と、異なるシステムコンポーネント(記憶ユニット820及び処理ユニット810を含む)を接続するバス830、表示ユニット840と、を含むが、これに制限されない。
【0101】
ここで、記憶ユニットにプログラムコードが記憶され、プログラムコードが処理ユニット810によって実行されることができ、処理ユニット810が本明細書の上記「例示的な方法」部分に記述された本出願の様々な例示的な実施形態に係るステップを実行する。例えば、処理部810は、
図2に示される方法ステップ等を実行することができる。
【0102】
記憶セル820は、ランダムアクセス記憶ユニット(RAM)8201および/またはキャッシュストレージユニット8202などの揮発性記憶ユニットを含むことができ、さらに読み取り専用記憶ユニット(ROM)8203を含むことができる。
【0103】
記憶ユニット820はまた、1組(少なくとも1つ)のプログラムモジュール8205を有するプログラム/ユーティリティ8204を含むことができ、そのようなプログラムモジュール8205は、ペレーティング・システム、1つまたは複数のアプリケーション・プログラム、他のプログラム・モジュール、およびプログラム・データを含むが、これらに制限されず、これらの例のそれぞれまたはいくつかの組み合わせには、ネットワーク環境の実装が含まれることができる。
【0104】
バス830は、データバス、アドレスバスおよび制御バスを含むことができる。
【0105】
電子装置800はまた1つまたは複数の外部装置870(例え、キーボード、ポインティングデバイス、ブルートゥース(登録商標)デバイスなど)と通信することができ、そのような通信は、入出力(I/O)インターフェース850を介して実行することができる。電子装置800はまた、表示ユニット840を含み、入出力(I/O)インターフェース850に接続され、表示に用いられる。また、電子装置800はまた、ネットワークアダプタ860を介して、1つまたは複数のネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、および/またはインターネットなどの公衆ネットワーク)と通信することができる。図示されるように、ネットワークアダプタ860は、バス830を介して電子装置800の他のモジュールと通信される。図には示されていないが、他のハードウェアおよび/またはソフトウェアモジュールが電子装置800と結合して使用されてもよく、マイクロコード、デバイスドライバ、冗長処理ユニット、外部ディスクドライブアレイ、RAIDシステム、テープドライブおよびデータバックアップストレージシステムなどを含むが、これらに制限されない。
【0106】
当業者は、本出願の様々な態様が、システム、方法またはプログラム製品として実施されることができることを理解するであろう。これにより、本出願の様々な態様は、以下の形式、すなわち、完全なハードウェア実施形態、完全なソフトウェア実装形態(ファームウェア、マイクロコードなどを含む)、またはハードウェアとソフトウェアの組合せの実施形態で具体的に実現することができ、本明細書ではまとめて「回路」、「モジュール」または「システム」と呼ぶことができる。
【0107】
当業者は、本明細書を考慮し且つ開示された発明を実施する際に、本出願の他の実施形態を容易に想到するであろう。本出願は、本出願の一般的な原理に従い、本出願では開示されていない技術分野における常識または慣用の技術的手段を含む、本出願の任意の変形、使用または適応の変更を包含することを意図する。本明細書および実施形態は例示的なものとみなされるべきであり、本出願の真の範囲および精神は、特許請求の範囲によって示される。
【0108】
なお、本出願は上で説明し、添付の図面に示した正確な構造に制限されるものではなく、本出願の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更を行うことができることを理解されたい。本出願の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの絶縁測定構造体及び制御回路を含むマルチセル電池の充電回路であって、
前記マルチセル電池は複数のセルを含み、
前記少なくとも1つの絶縁測定構造体の各前記絶縁測定構造体は隣接する2つの前記セルの間に設置され且つ2つの隣接する前記セルを隔離するために使用され、前記マルチセル電池の前記セルの負極電位を測定するために使用され、
前記制御回路は、
前記少なくとも1つの絶縁測定構造体に接続され、前記少なくとも1つの絶縁測定構造体から前記負極電位を取得するために使用され;前記セルの前記負極電位から最小負極電位を決定し;前記最小負極電位が安全電位以上である場合、前記マルチセル電池を第1モードで充電するように制御し;前記最小負極電位が前記安全電位より小さい場合、前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御することに用いられる、マルチセル電池の充電回路。
【請求項2】
前記絶縁測定構造体は絶縁層、測定層及び隔離層を含み、
前記絶縁層は前記マルチセル電池の隣接する2つの前記セルの間に設置され、
前記測定層は前記セルに近接する前記絶縁層の側の少なくとも一部に配置され、一つの前記測定層は1つの前記セルに対応し、前記測定層は前記セルの負極電位を測定することに用いられ、
前記隔離層は前記測定層と前記セルとの間に設けられ、前記隔離層は前記測定層と前記セルを絶縁することに用いられる、請求項
1に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記最小負極電位が安全電位以上である場合、第1予め設定された電流で充電するように前記マルチセル電池を制御することに用いられる、請求項
1~
2のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項4】
前記制御回路は、前記最小負極電位が安全電位より小さい場合に、第2予め設定された電流で充電するように前記マルチセル電池を制御することに用いられ、前記第2予め設定された電流は前記第1予め設定された電流より小さい、請求項
3に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項5】
前記制御回路は、前記最小負極電位が安全電位より小さい場合、前記最小負極電位が安全電位以上になるまで、前記マルチセル電池を静置状態に留まるように制御することに用いられる、請求項
1~
2のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項6】
前記制御回路は、前記最小負極電位が安全電位より小さい場合、前記最小負極電位が安全電位以上になるまで、前記マルチセル電池を放電状態に留まるように制御することに用いられる、請求項
1~
2のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項7】
前記少なくとも1つの絶縁測定構造体は、各前記セルの前記負極電位をリアルタイムに取得するために用いられ、又は前記マルチセル電池が前記第1予め設定され
た電流で予め設定された時間充電された後に予め設定された周期に基づいて負極電位を取得するために用いられる、請求項
3に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項8】
前記制御回路はさらに、前記マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧を取得し、前記マルチセル電池の正極端子と負極端子との間の電圧に基づいて前記マルチセル電池が満充電されているか否かを決定し;前記マルチセル電池が満充電されている場合、前記マルチセル電池の充電を停止することに用いられる、請求項
1~
2のいずれか一項に記載のマルチセル電池の充電回路。
【請求項9】
複数のセルと、絶縁測定構造体と、ハウジングと、を含むマルチセル電池であって、
複数の前記セルは並列又は直列に接続され、
前記絶縁測定構造体は隣接する2つの前記セルの間に設置され、前記絶縁測定構造体は隣接する前記セルを隔離し、且つ前記セルの負極電位を測定することに用いられ、
前記ハウジングは、複数の前記セル及び前記絶縁測定構造体を被覆することに用いられる、マルチセル電池。
【請求項10】
前記絶縁測定構造体は絶縁層、測定層及び隔離層を含み、
前記絶縁層は前記マルチセル電池の隣接する2つの前記セルの間に設置され、
前記測定層は前記セルに近接する前記絶縁層の側の少なくとも一部に配置され、一つの前記測定層は1つの前記セルに対応し、前記測定層は前記セルの負極電位を測定することに用いられ、
前記隔離層は前記測定層と前記セルとの間に設けられ、前記隔離層は前記測定層と前記セルを絶縁することに用いられる、請求項
9に記載のマルチセル電池。
【請求項11】
前記セルは正極タブ及び負極タブを含み、前記正極タブ及び前記負極タブは前記ハウジングを貫通して前記ハウジングの外部に露出され、
前記測定層に基準タブが設置され、前記負極電位は前記負極タブと前記基準タブとの間の電位差である、請求項
9に記載のマルチセル電池。
【請求項12】
前記マルチセル電池は、さらに制御アセンブリを含み、
前記制御アセンブリは前記正極タブ、前記負極タブ及び前記基準タブに接続され、
前記制御アセンブリは前記負極タブと前記基準タブとの電位差を前記マルチセル電池の各前記セルの負極電位として収集し、前記マルチセル電池の充電状態を制御することに用いられる、請求項
11に記載のマルチセル電池。
【請求項13】
2つの隣接する前記コアが並列に接続される場合、前記コアに近い前記絶縁層の側面の表面積は、前記コアの側面
の表面積と一致する、請求項
9に記載のマルチセル電池。
【請求項14】
2つの隣接する前記コアが直列に接続される場合、前記絶縁層および前記ハウジングは、複数の単セル収容空間を形成するように包装され、前記単セル収容空間が単一の前記セルを収容することに用いられる、請求項
10に記載のマルチセル電池。
【請求項15】
請求項
9~
14のいずれか一項に記載のマルチセル電池
と、プロセッサと、メモリと、を含む電子装置であって、
前記メモリは前記プロセッサの実行可能な命令を記憶するために使用され、
前記実行可能な命令を実行することによって、前記プロセッサは、前記マルチセル電池の前記少なくとも1つの絶縁測定構造から前記負極電位を取得し;前記セルの前記負極電位から前記最小負極電位を決定し;前記最小負極電位が安全電位以上である場合、前記マルチセル電池を第1モードで充電するように制御し;前記最小負極電位が前記安全電位より小さい場合、前記マルチセル電池を第2モードで動作するように制御するように構成される、
電子装置。
【国際調査報告】