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特表2024-527832生分解性コーティング組成物、同組成物の製造方法、及び同組成物を使用した生分解性物品
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  • 特表-生分解性コーティング組成物、同組成物の製造方法、及び同組成物を使用した生分解性物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】生分解性コーティング組成物、同組成物の製造方法、及び同組成物を使用した生分解性物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20240719BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C08L67/04
C08K5/521
C08L33/00
C08L29/04 S
C08L75/04
C08L63/00 A
B32B27/36
B32B27/18 Z
C08L101/16 ZBP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503580
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2022011219
(87)【国際公開番号】W WO2023008960
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0101050
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center, 330, Dongho-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】パク, ソユン
(72)【発明者】
【氏名】シム, ユ-キョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジュン イル
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジン ス
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F100AK21
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA18
4F100CA18A
4F100DE01A
4F100DG10
4F100EH46
4F100GB15
4F100JA06
4F100JA07
4F100JA07A
4F100JC00
4F100JC00A
4F100JD05
4F100JD05A
4F100YY00A
4J002AB013
4J002AE034
4J002BB202
4J002BE022
4J002BG023
4J002BJ002
4J002CF181
4J002CH022
4J002CK023
4J002CP034
4J002DJ037
4J002EC019
4J002EF059
4J002EF069
4J002EH006
4J002EJ008
4J002EV186
4J002EV236
4J002EW049
4J002EW068
4J002EW126
4J002FD039
4J002FD078
4J002FD203
4J002FD206
4J002FD207
4J002GG01
4J002GG02
4J002HA06
4J200AA04
4J200AA06
4J200AA21
4J200BA01
4J200BA12
4J200BA15
4J200BA16
4J200CA01
4J200DA17
4J200DA18
4J200EA10
4J200EA11
(57)【要約】
本発明は、生分解性コーティング組成物、同組成物の製造方法、及び同組成物を使用した生分解性物品に関する。具体的には、本発明の一実施形態によれば、生分解性コーティング組成物は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と少なくとも42mol%のけん化度を有する分散剤とを含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む。共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量に対して0.1wt%~60wt%の4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含むことによって、生分解性コーティング組成物は優れた生分解性及び生体適合性を有し、そのため環境適合性がありがながら、分散性、コーティング特性、耐水性、及び加工性を改善することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と、42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを含む、生分解性コーティング組成物であって、
前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂が、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、前記共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で前記4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む、生分解性コーティング組成物。
【請求項2】
前記分散剤の平均重合度が200以下である、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項3】
前記分散剤が80モル%~98モル%のけん化度及び100~200の平均重合度を有する、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項4】
前記生分解性コーティング組成物が、固形分ベースで前記生分解性コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%~10重量%の量で前記分散剤を含む、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項5】
前記分散剤が、リン酸系分散剤、脂肪酸系分散剤、アクリル系分散剤、ウレタン系分散剤、及びエポキシ系分散剤からなる群から選択される少なくとも1つ、又はカルボン酸、アミン、イソシアネート、及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含む高分子分散剤である、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂が、150μm未満の平均粒径及び3未満の多分散指数(PDI)を有する、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項7】
前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂が、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)、3-ヒドロキシヘキサノエート(3-HH)、3-ヒドロキシバレレート(3-HV)、4-ヒドロキシバレレート(4-HV)、5-ヒドロキシバレレート(5-HV)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(6-HH)からなる群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含む、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項8】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、10,000g/モル~1,200,000g/モルの平均分子量を有する、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項9】
前記生分解性コーティング組成物が、レオロジー改質剤、抗酸化剤、安定化剤、抗菌剤、消泡剤、保存料、及びpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項10】
前記生分解性コーティング組成物が、3~11の酸性度及び100mPa・s~1,000mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載の生分解性コーティング組成物。
【請求項11】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを混合及び撹拌するステップを含む、生分解性コーティング組成物の調製方法であって、
前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂が、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、前記共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で前記4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む、調製方法。
【請求項12】
前記撹拌ステップが、750rpm~10,000rpmで15分~60分間行われる、請求項11に記載の生分解性コーティング組成物の調製方法。
【請求項13】
前記撹拌ステップの後にろ過ステップ及び洗浄ステップをさらに含む、請求項11に記載の生分解性コーティング組成物の調製方法。
【請求項14】
前記ろ過ステップ及び前記洗浄ステップの後に再分散ステップをさらに含む、請求項13に記載の生分解性コーティング組成物の調製方法。
【請求項15】
基材と、生分解性コーティング層とを含む、生分解性物品であって、
前記生分解性コーティング層が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを含み、前記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂が、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、前記共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で前記4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む、生分解性物品。
【請求項16】
前記生分解性コーティング層が35g/m未満の耐水性を有する、請求項15に記載の生分解性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性コーティング組成物、同組成物の調製方法、及び同組成物を使用した生分解性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、環境問題に関する懸念が増すにつれて、様々な家庭廃棄物の処理及びリサイクルに関する研究が活発に行われてきた。具体的には、安価であり優れた加工性を有するポリマー材料は、紙、フィルム、繊維、包装材料、ボトル、及び容器などの様々な製品を製造するのに広く使用されるが、これらの製品の寿命が尽きると、それらの製品が焼却される際に有害物質が排出されることがあり、自然に完全分解するのに製品のタイプに応じて数百年を要する。
【0003】
したがって、機械的特性、耐油性、耐水性、及び加工性を向上させ、製品自体の寿命を延ばし、それにより廃棄物の量を削減しながら又は製品のリサイクル性を向上させながら、短時間のうちに分解されて環境適合性を向上させることが可能である、生分解性ポリマーに関する研究が継続する。
【0004】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、多数の微生物により産生され細胞内貯蔵物質として使用される、数種類のヒドロキシルカルボン酸で構成される生分解性ポリマーである。ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの従来の石油由来の合成ポリマーの物理特性と同様の物理特性を有し、完全な生分解性を示し、生体適合性に優れる。
【0005】
その一方で、紙、フィルム、繊維、包装材料、ボトル、容器などの様々な製品の耐用期間及びリサイクル性を向上させるために、強度、耐水性、及び耐油性などの機械的特性を向上させることが重要である。特に、水分又は油の多い食品、例えば果物、野菜、パン、クッキー、アイスクリームなどを包装するための食品包装材料は、包装材料が食品からの水分又は油によって破れ、それにより食品を汚染する又は耐用期間が短いという点において問題がある。
【0006】
機械的特性、耐水性、及び耐油性を向上させるために、製品の表面上にコーティング層を形成する方法が使用される。しかし、コーティング層に起因して生分解性及びリサイクル性が損なわれるという点で問題がある。具体的には、コーティング層を除去するのにさらなるステップが必要とされる場合がある、又はコーティング層に起因して製品の生分解性及びリサイクル性が損なわれる場合がある。したがって、優れた生分解性及び生体適合性のおかげで環境適合性でありながら分散性、コーティング性、耐水性、及び加工性に優れている生分解性コーティング組成物の開発が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2012-0103158号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、優れた生分解性及び生体適合性のおかげで環境適合性でありながら分散性、コーティング性、耐水性、及び加工性を向上させることが可能な生分解性コーティング組成物、同組成物の調製方法、及び同組成物を使用した生分解性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態による生分解性コーティング組成物は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と;42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを含み、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態による生分解性コーティング組成物の調製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを混合及び撹拌するステップを含み、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む。
【0011】
本発明の別の実施形態による生分解性物品は、基材と;生分解性コーティング層とを含み、生分解性コーティング層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と、42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを含み、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態による生分解性コーティング組成物が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と、42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを含む場合、分散性、コーティング性、耐水性、及び加工性を向上させることができる。
【0013】
特に、生分解性コーティング組成物は、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂との優れた適合性を有する特定の分散剤と共に、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を特定の量で含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂をポリヒドロキシアルカノエート樹脂として特定の量で含み、分散剤を少量しか含有しないにもかかわらず、優れた分散性を有する。
【0014】
したがって、生分解性コーティング組成物を使用して形成されるコーティング層は、優れた生分解性及び生体適合性を有し、環境適合性があり、優れた分散性及びコーティング性を有する。特に、コーティング層を含む生分解性物品は優れた耐水性を有するので、耐水性を必要とする物品として、例えば水分含量が高い食品を包装するための食品包装材料などとして利用されると、優れた特性を示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による生分解性物品の図である。
図2】本発明の別の実施形態による生分解性物品の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明することにする。本発明は以下に示される開示に限定されず、本発明の趣旨が変更されない限り様々な形態に改変されてもよい。
【0017】
本明細書全体を通して、ある部材がある要素を「含む」ことに言及する場合、具体的に別段の記載がない限り、他の要素が排除されるのではなくむしろ他の要素が含まれてもよいことが理解される。
【0018】
本明細書において使用される成分の量、反応条件などに関するあらゆる数字及び表現は、別段の指定がない限り、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。
【0019】
本明細書において、ある要素が別の要素の「上」又は「下」に形成されることが述べられる場合、1つの要素が別の要素の「上」又は「下」に直接形成されることだけでなく、他の要素(複数可)を間に挟んで1つの要素が別の要素の上又は下に間接的に形成されることも意味する。
【0020】
本明細書全体を通して、第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するのに使用される。しかし構成要素はその用語によって制限されるべきではない。その用語は1つの構成要素を別のものと区別する目的のみのために使用される。
【0021】
本明細書において、各構成要素の「一方」及び「他方」又は「上」及び「下」の言及は、図面に基づいて説明される。これらの用語は単に構成要素を区別するためのものであり、実際の使用においては互いに入れ替えてもよい。
【0022】
さらに、説明のために、添付の図面における個々の要素のサイズは誇張して図示されることがあり、実際のサイズを示していない。さらに、同じ符号は明細書全体をとして同じ要素を指す。
【0023】
生分解性コーティング組成物
本発明の実施形態による生分解性コーティング組成物は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と;42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを含み、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む。
【0024】
生分解性コーティング組成物の固形分は、10重量%~60重量%であってもよい。例えば、生分解性コーティング組成物の固形分は、10重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~50重量%、30重量%~45重量%、又は35重量%~45重量%であってもよい。
【0025】
生分解性コーティング組成物は3~11の酸性度を有してもよい。例えば、生分解性コーティング組成物の酸性度は、3~11、3~8、3~6、3~5、7~11、7.5~11、又は8~11であってもよい。
【0026】
さらに、生分解性コーティング組成物は、100mPa・s~1,000mPa・sの粘度を有していてもよい。例えば、生分解性コーティング組成物の粘度は、100Pa・s~1,000Pa・s、115Pa・s~1,000mPa・s、130mPa・s~1,000mPa・s、155mPa・s~1,000mPa・s、155mPa・s~850mPa・s、155mPa・s~600mPa・s、160mPa・s~450mPa・s、160mPa・s~300mPa・s、165mPa・s~250mPa・s、又は165mPa・s~230mPa・sであってもよい。
【0027】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂は、従来の石油由来の合成ポリマー、例えばポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの物理特性と同様の物理特性を有し、完全な生分解性を示し、生体適合性に優れている。
【0028】
具体的には、PHA樹脂は、微生物細胞内に蓄積する天然熱可塑性ポリエステルポリマーである。PHA樹脂は生分解性物質であるので、分解させることができ、最終的には毒性廃棄物を生じることなく二酸化炭素、水、及び有機廃棄物に分解させることができる。特に、PHAは土壌中及び海中であっても生分解性であるので、生分解性コーティング組成物及び同組成物を使用して調製される生分解性物品がPHA樹脂を含む場合、環境適合性の特性を有し得る。したがって、生分解性コーティング組成物及び同組成物を使用した生分解性物品は、生分解性及び環境適合性であるので様々な分野で使用できるという点において大きな利点を有する。
【0029】
本発明の実施形態による生分解性コーティング組成物がポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む場合、機械的特性を低下させずに生分解性を向上させることができる。
【0030】
PHA樹脂は、生細胞内での1種又は複数のモノマー繰り返し単位の酵素触媒重合により形成され得る。
【0031】
PHA樹脂は、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(以下、共重合PHA樹脂と呼ぶ)、具体的には、異なる繰り返し単位がポリマー鎖にランダムに分布しているコポリマーであってもよい。
【0032】
PHA樹脂に含有され得る繰り返し単位の例としては、2-ヒドロキシブチレート、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブチレート(以下、3-HBと呼ぶ)、3-ヒドロキシプロピオネート(以下、3-HPと呼ぶ)、3-ヒドロキシバレレート(以下、3-HVと呼ぶ)、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3-HHと呼ぶ)、3-ヒドロキシヘプタノエート(以下、3-HHepと呼ぶ)、3-ヒドロキシオクタノエート(以下、3-HOと呼ぶ)、3-ヒドロキシノナノエート(以下、3-HNと呼ぶ)、3-ヒドロキシデカノエート(以下、3-HDと呼ぶ)、3-ヒドロキシドデカノエート(以下、3-HDdと呼ぶ)、4-ヒドロキシブチレート(以下、4-HBと呼ぶ)、4-ヒドロキシバレレート(以下、4-HVと呼ぶ)、5-ヒドロキシバレレート(以下、5-HVと呼ぶ)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(以下、6-HHと呼ぶ)が挙げられる。PHA樹脂は、上記から選択される1種又は複数の繰り返し単位を含んでもよい。
【0033】
具体的には、PHA樹脂は、3-HB、4-HB、3-HP、3-HH、3-HV、4-HV、5-HV、及び6-HHからなる群から選択される1種又は複数の繰り返し単位を含んでもよい。
【0034】
より具体的には、PHA樹脂は4-HB繰り返し単位を含んでもよい。すなわち、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位を含む共重合PHA樹脂であってもよい。
【0035】
さらに、PHA樹脂は異性体を含んでもよい。例えば、PHA樹脂は、構造異性体、エナンチオマー、又は幾何異性体を含んでもよい。具体的には、PHA樹脂は構造異性体を含んでもよい。
【0036】
さらに、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位を含み、4-HB繰り返し単位とは異なる1種の繰り返し単位、又は互いに異なる2、3、4、5、6種、若しくはそれを超える繰り返し単位をさらに含む、共重合PHA樹脂であってもよい。例えば、PHA樹脂は、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート(以下、3HB-co-4HBと呼ぶ)であってもよい。
【0037】
本発明の実施形態によれば、共重合PHA樹脂中の4-HB繰り返し単位の含量を調整することが重要である。
【0038】
具体的には、本発明において望まれる物理特性を実現するために、特に、土壌中及び海中における生分解性を高め、機械的特性を低下させずに優れた分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、耐水性、加工性、及び生産性を実現するために、共重合PHA樹脂中に含有される4-HB繰り返し単位の含量を調整することが非常に重要である。
【0039】
より具体的には、共重合PHA樹脂は、共重合PHA樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。例えば、4-HB繰り返し単位の含量は、共重合PHA樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%、0.1重量%~55重量%、0.5重量%~60重量%、0.5重量%~55重量%、1重量%~60重量%、1重量%~55重量%、1重量%~50重量%、2重量%~55重量%、3重量%~55重量%、3重量%~50重量%、5重量%~55重量%、5重量%~50重量%、10重量%~55重量%、10重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~29重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、2重量%~20重量%、2重量%~23重量%、3重量%~20重量%、3重量%~15重量%、4重量%~18重量%、5重量%~15重量%、8重量%~12重量%、9重量%~12重量%、15重量%~55重量%、15重量%~50重量%、20重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~55重量%、25重量%~50重量%、35重量%~60重量%、40重量%~55重量%、又は45重量%~55重量%であってもよい。
【0040】
4-HB繰り返し単位の含量が上記の範囲を満たす場合に、土壌中及び海中における生分解性を高め、機械的特性を低下させずに分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、耐油性、加工性、及び生産性などの特性をさらに向上させることが可能である。
【0041】
本発明の実施形態によれば、PHA樹脂は、結晶化度が調整された共重合PHA樹脂であってもよい。具体的には、PHA樹脂は1つ又は複数の4-HB繰り返し単位を含み、4-HB繰り返し単位の含量はPHA樹脂の結晶化度を調整するために制御されてもよい。
【0042】
さらに、PHA樹脂は、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)、3-ヒドロキシヘキサノエート(3-HH)、3-ヒドロキシバレレート(3-HV)、4-ヒドロキシバレレート(4-HV)、5-ヒドロキシバレレート(5-HV)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(6-HH)からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含む、共重合ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂であってもよい。
【0043】
具体的には、共重合PHA樹脂は4-HB繰り返し単位を含んでもよく、3-HB繰り返し単位、3-HP繰り返し単位、3-HH繰り返し単位、3-HV繰り返し単位、4-HV繰り返し単位、5-HV繰り返し単位、及び6-HH繰り返し単位からなる群から選択される1種又は複数の繰り返し単位をさらに含んでもよい。より具体的には、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位及び3-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0044】
例えば、共重合PHA樹脂は、共重合PHA樹脂の総重量を基準として20重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、又は75重量%以上、及び99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、91重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は55重量%以下の量の3-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0045】
結晶化度が調整されているPHA樹脂は、その分子構造内で不規則性が増加する場合にその結晶化度及びアモルファス性が調整されるものであってもよい。具体的には、モノマーの種類若しくは比率、又は異性体の種類若しくは含量が調整されてもよい。
【0046】
本発明の実施形態によれば、PHA樹脂は、異なる結晶化度を有する2種以上のPHA樹脂を含んでもよい。具体的には、PHA樹脂は、特定の範囲内の4-HB繰り返し単位の含量を有するように、異なる結晶化度を有する2種以上のPHA樹脂を混合することにより調製されてもよい。
【0047】
具体的には、PHA樹脂は半結晶性PHA樹脂である第1のPHA樹脂を含んでもよい。
【0048】
結晶化度が制御された半結晶性PHA(以下、scPHAと呼ぶ)樹脂として、第1のPHA樹脂は、0.1重量%~30重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。例えば、第1のPHA樹脂は、0.1重量%~30重量%、0.5重量%~30重量%、1重量%~30重量%、3重量%~30重量%、1重量%~28重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、1重量%~15重量%、2重量%~25重量%、3重量%~25重量%、3重量%~24重量%、5重量%~24重量%、7重量%~20重量%、10重量%~20重量%、15重量%~25重量%、又は15重量%~24重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0049】
第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30℃~80℃、-30℃~10℃、-25℃~5℃、-25℃~0℃、-20℃~0℃、又は-15℃~0℃であってもよい。第1のPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、70℃~120℃、75℃~120℃、又は75℃~115℃であってもよい。第1のPHA樹脂の融点(Tm)は、105℃~165℃、110℃~160℃、115℃~155℃、又は120℃~150℃であってもよい。
【0050】
第1のPHA樹脂は、10,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,100,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~600,000g/モル、又は200,000g/モル~400,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。
【0051】
さらに、PHA樹脂は、結晶化度が制御されたアモルファスPHA樹脂である、第2のPHAを含んでもよい。
【0052】
結晶化度が制御されたアモルファスPHA(以下、aPHAと呼ぶ)樹脂として、第2のPHA樹脂は、15重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~50重量%、30重量%~50重量%、35重量%~50重量%、又は20重量%~40重量%の量の4-HB繰り返し単位を含んでもよい。
【0053】
第2のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-45℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、又は-30℃~-20℃であってもよい。
【0054】
さらに、第2のPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、測定されなくてもよく、又は60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、若しくは75℃~115℃であってもよい。第2のPHA樹脂の融点(Tm)は、測定されてなくてもよく、又は100℃~170℃、100℃~160℃、110℃~160℃、若しくは120℃~150℃であってもよい。
【0055】
第2のPHA樹脂は、10,000g/モル~1,200,000g/モル、10,000g/モル~1,000,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、300,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、500,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、又は200,000g/モル~400,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。
【0056】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含量に関して区別することができ、上記のガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、及び融点(Tm)からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有してもよい。具体的には、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tg)、融点(Tm)などに関して区別することができる。
【0057】
本発明の実施形態によれば、PHA樹脂は、第1のPHA樹脂、又は第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂の両方を含んでもよい。
【0058】
具体的には、PHA樹脂が、半結晶性PHA樹脂である第1のPHA樹脂、又は半結晶性PHA樹脂である第1のPHA樹脂及びアモルファスPHA樹脂である第2のPHA樹脂の両方を含む場合、より具体的には、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂の含量が調整される場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、及び加工性をさらに向上させることが可能である。
【0059】
さらに、PHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-45℃~80℃、-35℃~80℃、-30℃~80℃、-25℃~75℃、-20℃~70℃、-35℃~5℃、-25℃~5℃、-35℃~0℃、-25℃~0℃、-30℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、-20℃~0℃、-15℃~0℃、又は-15℃~-5℃であってもよい。
【0060】
さらに、PHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、測定されなくてもよく、又は60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、75℃~120℃、75℃~115℃、75℃~110℃、若しくは90℃~110℃であってもよい。
【0061】
PHA樹脂の融点(Tm)は、測定されなくてもよく、又は100℃~170℃、105℃~170℃、105℃~165℃、110℃~160℃、115℃~155℃、110℃~150℃、120℃~150℃、若しくは120℃~140℃であってもよい。
【0062】
さらに、PHA樹脂は、10,000g/モル~1,200,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。例えば、PHA樹脂の重量平均分子量は、50,000g/モル~1,200,000g/モル、100,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、250,000g/モル~1,150,000g/モル、300,000g/モル~1,100,000g/モル、350,000g/モル~1,000,000g/モル、350,000g/モル~950,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~700,000g/モル、250,000g/モル~650,000g/モル、200,000g/モル~400,000g/モル、300,000g/モル~800,000g/モル、300,000g/モル~600,000g/モル、500,000g/モル~1,200,000g/モル、500,000g/モル~1,000,000g/モル、550,000g/モル~1,050,000g/モル、550,000g/モル~900,000g/モル,600,000g/モル~900,000g/モル、又は500,000g/モル~900,000g/モルであってもよい。
【0063】
PHA樹脂は、示差走査熱量計(DSC)により測定される、90%以下の結晶化度を有してもよい。例えば、PHA樹脂の結晶化度は示差走査熱量測定法により測定されてもよく、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、又は70%以下であってもよい。
【0064】
さらに、PHA樹脂は150μm未満の平均粒径を有してもよい。例えば、PHA樹脂の平均粒径は、150μm未満、140μm以下、130μm以下、120μm以下、100μm以下、90μm以下、85μm以下、50μm以下、又は35μm以下であってもよく、25μm~150μm未満、25μm~120μm、25μm~85μm、25μm~50μm、25μm~40μm、60μm~135μm、65μm~110μm、70μm~100μm、又は75μm~95μmであってもよい。
【0065】
PHA樹脂の平均粒径は、ナノ粒度分析計(例えば、Zetasizer Nano ZS)により測定されてもよい。具体的には、PHA樹脂は、25℃の温度及び175°の測定角度においてZetasizer Nano ZS(製造業者:Marven)を使用した動的光散乱(DLS)による平均粒径の測定が行われる。そのような場合、0.5の信頼区間における多分散指数(PDI)により得られるピークの値を粒径と見なした。
【0066】
PHA樹脂は3未満の多分散指数(PDI)を有してもよい。例えば、PHA樹脂の多分散指数は、3未満、2.9以下、2.7以下、又は2.65以下であってもよい。
【0067】
PHA樹脂の平均粒径及び多分散指数が上記の範囲を満たす場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、及び加工性をさらに向上させることができる。
【0068】
さらに、PHA樹脂は、機械的方法又は物理的方法を使用した細胞破壊により得ることができる。具体的には、PHA樹脂は微生物細胞内に蓄積する天然熱可塑性ポリエステルポリマーであり比較的大きい平均粒径を有するので、分散性、コーティング性、及び加工性を向上させるために破壊プロセスによってPHA樹脂を得てもよい。
【0069】
例えば、PHA樹脂は微粒子の形態であってもよい。具体的には、機械的方法又は物理的方法を使用した細胞破壊により得られるPHA樹脂は、微粒子の形態の粉末であってもよい。
【0070】
本発明の別の実施形態によれば、生分解性コーティング組成物は生分解性ポリマーをさらに含んでもよい。
【0071】
具体的には、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、熱可塑性デンプン(TPS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びポリカプロラクトン(PCL)からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。生分解性コーティング組成物が生分解性ポリマーをさらに含む場合、機械的特性などの特性を制御するのにより有利となり得る。
【0072】
さらに、生分解性コーティング組成物は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として10重量%~70重量%の量のPHA樹脂を含んでもよい。例えば、PHA樹脂の含量は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として10重量%~70重量%、20重量%~65重量%、25重量%~55重量%、30重量%~45重量%、又は35重量%~45重量%であってもよい。
【0073】
分散剤
本発明の実施形態によれば、生分解性コーティング組成物は42モル%以上のけん化度を有する分散剤を含む。生分解性コーティング組成物が分散剤を含む場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、耐水性、及び加工性を向上させることができる。
【0074】
具体的に、分散剤は、リン酸系分散剤、脂肪酸系分散剤、アクリル系分散剤、ウレタン系分散剤、及びエポキシ系分散剤からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。分散剤は、カルボン酸、アミン、イソシアネート、及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含む高分子分散剤であってもよい。
【0075】
例えば、分散剤は、ポリビニルアルコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルポリエチレンアルキルエーテル、アルキルベンゼンスルホネート、ノニルフェノールエーテルスルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、アルキルホスフェート、グリセリルエステル、及びポリプロピレングリコールエステルからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0076】
本発明の実施形態によれば、分散剤はポリビニルアルコールであってもよい。
【0077】
ポリビニルアルコールは、酢酸ポリビニル(PVA)を重合させ、次いで疎水性のCHCOO-を加水分解反応によって親水性の-OHで置換することにより得ることができる。そのような場合、全体に対する-OHによる置換度、すなわちCH3COO-対-OHの比がけん化度又は加水分解度である。けん化度は、ポリビニルアルコールの分子量又は-OH置換反応におけるその分布特性に応じて様々であってもよく、最終的な樹脂の物理特性に影響を与え得る。
【0078】
例えば、分散剤のけん化度は、42モル%以上、55モル%以上、65モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、又は90モル%以上であってもよく、42モル%~99モル%、75モル%~99モル%、又は80モル%~98モル%であってもよい。
【0079】
けん化度が上記の範囲を満たす場合、分散性、分散安定性、及び保存安定性を向上させることができる。コーティングのための適切な粘度を有し得るので、コーティング性、生産性、及び加工性を向上させることができる。具体的には、けん化度が上記の範囲外である場合、分散剤の溶解性又は分散性は非常に低く、そのため生分解性コーティング組成物を使用してコーティング層を形成させることが不可能となり得る。
【0080】
さらに、重合度はポリマーの1本の鎖に結合したモノマーの数を指す。分散剤の平均重合度は200以下であってもよい。例えば、分散剤の平均重合度は、200以下、180以下、又は150以下であってもよく、80~200、90~200、又は100~200であってもよい。平均重合度が上記の範囲を満たす場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、耐水性、及び加工性を向上させることができる。
【0081】
分散剤のけん化度及び重合度がそれぞれ上記の範囲を満たす場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、耐水性、及び加工性を向上させることができる。特に、けん化度及び重合度が上記の範囲を満たす分散剤は、上記の特性を有するPHA樹脂との適合性が非常に良好であるので、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、耐水性、及び加工性をさらに向上させることができる。
【0082】
さらに、生分解性コーティング組成物は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として0.01重量%~10重量%の量で分散剤を含んでもよい。例えば、分散剤の含量は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.05重量%~7重量%、0.1重量%~6重量%、0.1重量%~5重量%、1重量%~5重量%、1.5重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、0.5重量%~3.5重量%、1重量%~3重量%、又は1.5重量%~3重量%であってもよい。
【0083】
生分解性コーティング組成物が従来のものよりも少量の分散剤しか含まないにもかかわらず、優れた分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、及び加工性を有する。
【0084】
生分解性コーティング組成物は、レオロジー改質剤、抗酸化剤、安定化剤、抗菌剤、消泡剤、保存料、及びpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含んでもよい。
【0085】
レオロジー改質剤は、ガム、粘土鉱物、セルロース誘導体、セルロース系改質剤、アクリル系改質剤、及びウレタン系改質剤からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。例えば、レオロジー改質剤は、ガム、粘土鉱物、若しくはセルロース系改質剤のうちの1つであってもよく、又は2種類の混合物、例えばガム及び粘土鉱物、若しくはガム及びセルロース系改質剤などであってもよい。
【0086】
ガムは、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストガム、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、ガティガム、タラガム、タマリンドガム、及びトラガカントガムからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。粘土鉱物は、ベントナイト、スメクタイト、エーテルパルジャイト、モンモリロナイト、カオリナイト、セリサイト、及びイライトからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0087】
セルロース誘導体は、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。セルロース系改質剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びメチルヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0088】
さらに、レオロジー改質剤は、分岐状、直線状、板状、不規則、球状、又は棒状の形状を有してもよい。レオロジー改質剤が上記の形状を有する場合、コーティング性、加工性、及び生産性をさらに向上させることができる。
【0089】
レオロジー改質剤は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.01重量%~4重量%、0.01重量%~3重量%、0.02重量%~2重量%、0.02重量%~1.5重量%、又は0.03重量%~1重量%の量で使用されてもよい。
【0090】
抗酸化剤は、オゾン又は酸素による分解を防ぐため、保存中の酸化を防ぐため、及び物理特性の低下を防ぐための添加剤である。本発明の効果が損なわれない限り、任意の一般的に使用される抗酸化剤を使用してもよい。
【0091】
具体的には、抗酸化剤は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤及びホスファイト系(リン系)抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0092】
例えば、ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、例えば、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、及び3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0093】
さらに、ホスファイト系(リン系)抗酸化剤は、例えば、トリス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトール-ジホスファイト、ビス-(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトール-ジホスファイト、ジステアリル-ペンタエリトリトール-ジホスファイト、[ビス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニル、及びN,N-ビス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキシホスフェピン-6-イル]オキシ]-エチル]エタンアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0094】
抗酸化剤は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.2重量%~4.5重量%、0.2重量%~4重量%、又は0.5重量%~3重量%の量で使用されてもよい。
【0095】
安定化剤は、酸化及び熱から保護するため、並びに色変化を防ぐための添加剤である。本発明の効果が損なわれない限り、任意の一般的に使用される安定化剤を安定化剤として使用してもよい。
【0096】
具体的には、安定化剤は、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフィン、リン酸、及び亜リン酸からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0097】
安定化剤は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.2重量%~4.5重量%、0.2重量%~4重量%、又は0.5重量%~3重量%の量で使用されてもよい。
【0098】
抗菌剤は、有機酸、バクテリオシン、及びカルシウム剤若しくはコロイド、又は銀などの元素を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つの天然抗菌剤であってもよい。抗菌剤は、ポリリジン、ベンゾイソチアゾリノン、酢粉末、キトオリゴ糖、過酸化水素、エチレンジアミン四酢酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、プロピオン酸、プロピオン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、1,2-ヘキサンジオール、及び1,2-オクタンジオールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0099】
抗菌剤は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%~5重量%、0.01重量%~3重量%、0.01重量%~1重量%、0.1重量%~1重量%、0.2重量%~1重量%、又は0.3重量%~1重量%の量で使用されてもよい。
【0100】
さらに、消泡剤は、発泡を防ぐ又は低減するための添加剤である。本発明の効果が損なわれない限り、任意の一般的に使用される消泡剤を消泡剤として使用してもよい。
【0101】
例えば、消泡剤は、アルコール系消泡剤、極性化合物系消泡剤、無機粒子系消泡剤、及びシリコーン系消泡剤からなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、又はエチルアルコール、2-エチルヘキサノール、ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、シリコーンペースト、シリコーンエマルション、シリコーン処理粉末、フルオロシリコーン、ジステアリン酸、エチレングリコール、及び天然ワックスからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0102】
消泡剤は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として、0.0001重量%~5重量%、0.0001重量%~3重量%、0.0001重量%~1重量%、0.001重量%~1重量%、又は0.001重量%~0.5重量%の量で使用されてもよい。
【0103】
さらに、保存料は、ヒドロキシアセトフェノン、ツボクサ抽出物、1,2-ヘキサンジオール、及び1,3-ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1つの天然保存料であってもよく、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及び安息香酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1つの保存料であってもよいが、それらに限定されない。
【0104】
保存料は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.2重量%~4.5重量%、0.2重量%~4重量%、又は0.5重量%~3重量%の量で使用されてもよい。
【0105】
さらに、pH調整剤は、pHを調整するために溶液へ添加される物質を指す。pH調整剤は、pHを低下させるためのpH低下剤及びpHを上昇させるためのpH上昇剤の両方を含んでもよい。具体的には、pH低下剤は、硫酸及び塩酸などの強酸性物質又はアンモニウム塩水溶液であってもよく、pH上昇剤は、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及び水酸化カリウム、又は酢酸塩水溶液などの塩基性物質であってもよいが、それらに限定されない。
【0106】
例えば、pH上昇剤は、酢酸、乳酸、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つのであってもよい。
【0107】
pH調整剤は、固形分ベースで生分解性コーティング組成物の総重量を基準として、0.01重量%~20重量%、0.01重量%~15重量%、0.01重量%~12重量%、0.01重量%~10重量%、0.01重量%~8重量%、0.01重量%~5重量%、0.2重量%~4.5重量%、0.2重量%~4重量%、又は0.5重量%~3重量%の量で使用されてもよい。
【0108】
生分解性コーティング組成物の調製方法
本発明の別の実施形態による生分解性コーティング組成物の調製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを混合及び撹拌するステップを含み、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む。
【0109】
PHA樹脂及び分散剤についての詳細は上記に記載される通りである。
【0110】
具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを混合及び撹拌して生分解性コーティング組成物を調製することができる。
【0111】
さらに、PHA樹脂及び分散剤の混合の際に溶媒をさらに加えてもよい。例えば、溶媒は、水、蒸留水、又は親水性溶媒であってもよい。具体的には、溶媒は、水、若しくは蒸留水、又は水、若しくは蒸留水、及び親水性溶媒の混合物であってもよい。例えば、親水性溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、及びシクロヘキサノールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0112】
撹拌ステップは、最大回転速度毎分(rpm)の10%~80%の速度でホモジナイザーを使用して10分~60分間行われてもよい。例えば、撹拌ステップは、最大回転速度毎分(rpm)の10%~80%、15%~75%、20%~60%、20%~50%、40%~80%、45%~70%、60%~80%、65%~75%、又は60%~70%の速度でホモジナイザーを使用して、10分~60分、20分~60分間、25分~55分間、25分~45分間、又は25分~40分間行われてもよい。
【0113】
さらに、撹拌ステップは、750rpm~10,000rpmで15分~60分間行われてもよい。例えば、撹拌ステップは、750rpm~10,000rpm、1,000rpm~10,000rpm、2,000rpm~10,000rpm、4,000rpm~10,000rpm、750rpm~8,000rpm、900rpm~7,000rpm、1,000rpm~5,000rpm、1,500rpm~4,000rpm、1,500rpm~3,000rpm、6,000rpm~10,000rpm、6,500rpm~9,500rpm、7,000rpm~9,000rpm、又は7,500rpm~8,500rpmで、遠心分離機、撹拌機、又はホモジナイザーを使用して、15分~60分間、20分~50分間、20分~40分間、又は25分~35分間行われてもよい。
【0114】
撹拌ステップが上記の条件下で行われる場合、分散性、分散安定性、保存安定性、コーティング性、及び加工性をさらに向上させることができる。
【0115】
本発明の別の実施形態によれば、混合及び撹拌ステップの後にろ過ステップ及び洗浄ステップがさらに行われてもよい。
【0116】
さらに、ろ過ステップ及び洗浄ステップの後に再分散ステップがさらに行われてもよい。
【0117】
より具体的には、PHA及び分散剤を混合及び撹拌して第1の水性PHA分散液を調製することができ、第1の水性PHA分散液をろ過及び洗浄して第2の水性PHA分散液を調製することができ、第2の水性PHA分散液を溶媒中で再分散させて最終的な生分解性コーティング組成物を調製することができる。
【0118】
第2の水性分散液の固形分は10重量%~60重量%であってもよい。例えば、第2の水性分散液の固形分は10重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~50重量%、30重量%~45重量%、又は35重量%~45重量%であってもよい。
【0119】
ろ過ステップは、紙、織布、不織布、スクリーン、ポリマー膜、又はウェッジワイヤーなどのろ過材を使用して行われてもよく、吸引フィルター、加圧フィルター、膜セパレーター、真空フィルター、減圧真空フィルター、工業用フィルタープレス、チューブプレス、プレートプレス、ゲージプレス、ベルトプレス、スクリュープレス、ディスクプレス、加圧機能プレス、又は遠心分離機を使用して行われてもよい。
【0120】
洗浄ステップ及び再分散ステップは、上記の溶媒を使用して行われてもよい。具体的には、洗浄ステップ及び再分散ステップにおいて使用される溶媒は、水若しくは蒸留水、又は水若しくは蒸留水と親水性溶媒との混合物であってもよい。
【0121】
再分散ステップは、最大回転速度(rpm)の10%~80%、15%~75%、20%~60%、20%~50%、40%~80%、45%~70%、60%~80%、65%~75%、又は60%~70%の速度でホモジナイザーを使用して、10分~60分間、20分~60分間、25分~55分間、25分~45分間、又は25分~40分間行われてもよい。
【0122】
生分解性物品の調製方法
本発明の別の実施形態による生分解性物品の調製方法は、生分解性コーティング組成物を調製するステップと;生分解性コーティング組成物から生分解性コーティング層を形成するステップとを含む。
【0123】
生分解性コーティング組成物の調製についての詳細は上記に記載される通りである。
【0124】
その後、生分解性コーティング層は、生分解性コーティング組成物を使用して基材の一方の面に形成される。
【0125】
本発明の実施形態によれば、生分解性コーティング層を形成するステップは、生分解性コーティング組成物を基材にコーティングし乾燥させることにより行われてもよい。
【0126】
基材は、基材の表面上に生分解性コーティング層を形成させることができる限り、限定されない。例えば、基材は、紙、クラフト紙、布、不織布、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエステルフィルム、例えばポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)など、並びにポリイミド(PI)フィルムからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0127】
具体的には、基材のコーティング性を高める観点から、基材は好ましくは単一材料の基材であってもよい。基材は、紙、クラフト紙、布、又は不織布であってもよいが、それらに限定されない。さらに、基材が紙又はクラフト紙を含む場合、他のプラスチック材料よりも良好な生分解性を有するので、環境適合性の包装材料を提供するのにより有利となり得る。
【0128】
基材は15μm以上の厚さを有してもよい。例えば、基材の厚さは、15μm以上、20μm以上、50μm以上、70μm以上、100μm以上、130μm以上、150μm以上、200μm以上、300μm以上、又は500μm以上であってもよい。
【0129】
さらに、基材は30g/m~500g/mの坪量を有してもよい。例えば、基材が紙、クラフト紙、織布、編み生地、又は不織布である場合、基材の坪量は、30g/m~500g/m、30g/m~350g/m、30g/m~200g/m、50g/m~200g/m、80g/m~200g/m、100g/m~200g/m、130g/m~190g/m、150g/m~185g/m、又は120g/m~320g/mであってもよい。
【0130】
一方で、バリア層が基材の少なくとも一方の面に配置されてもよい。水分バリア及び/又は酸素バリア特性を有するように、環境適合性のバリアフィルムが基材の表面にコーティングされてもよく、又は帯電防止特性又は接着特性を有する機能性コーティング層がさらに形成されてもよい。機能性コーティング層は、プライマーコーティング層及び接着コーティング層を含んでもよく、これらは本発明に望まれる効果を損なわない限り一般的に使用される物質及び物理特性を有してもよい。
【0131】
さらに、生分解性コーティング組成物は5g/m~100g/mのコーティング量で基材上に塗布されてもよい。例えば、コーティング量は、5g/m~100g/m、5g/m~85g/m、5g/m~70g/m、8g/m~60g/m、9g/m~50g/m、5g/m~50g/m、6g/m~40g/m、7g/m~30g/m、8g/m~20g/m、又は10g/m~40g/mであってもよい。コーティング量が上記の範囲を満たす場合、コーティング性、生産性、及び加工性をさらに向上させることができる。
【0132】
さらに、コーティングを1回行って1層のコーティング層を形成させてもよく、又は2回以上行って複数のコーティング層を形成させてもよい。コーティング量は、コーティング層の所望の数に応じて上記の範囲内で調整することができる。具体的には、コーティング量は複数のコーティング層に使用される総量であってもよい。
【0133】
生分解性コーティング組成物が基材上に塗布されたら、100℃~200℃において5秒~30分間乾燥させてもよい。例えば、乾燥は100℃~200℃、110℃~185℃、120℃~180℃、又は130℃~175℃において、5秒~30分間、10秒~25分間、20秒~20分間、30秒~15分間、又は40秒~10分間行われてもよい。
【0134】
生分解性コーティング層の形成は、当技術分野において一般に使用されるコーティングプロセスである限りにおいて、特に制限なく行われてもよい。例えば、生分解性コーティング層の形成は、グラビア印刷コーティング、スロットコーティング、ドクターブレードコーティング、スプレーコーティング、バーコーティング、スピンコーティング、又はインラインコーティングにより行われてもよいが、それらに限定されない。
【0135】
生分解性物品
本発明の別の実施形態による生分解性物品は、基材と;生分解性コーティング層とを含み、生分解性コーティング層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂と、42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを含み、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の総重量を基準として0.1重量%~60重量%の量で4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を含む。
【0136】
図1は本発明の実施形態による生分解性物品を示す。図2は本発明の別の実施形態による生分解性物品を示す。
【0137】
具体的には、図1は、生分解性コーティング層(200)が基材(100)の一方の面に形成されている生分解性物品(1)を示す。図2は、生分解性コーティング層(200)が基材(100)の両面に形成されている生分解性物品(1)を示す。
【0138】
生分解性物品が基材の一方の面又は両面に生分解性コーティング層を含み、生分解性コーティング層がPHA樹脂と42モル%以上のけん化度を有する分散剤とを含む場合、優れた生分解性及び生体適合性のおかげで環境適合性があり、優れた分散性、コーティング性、生産性、及び加工性を有し得る。特に、コーティング層を含む生分解性物品は優れた耐水性を有するので、耐水性を必要とする物品として、例えば水分含量が高い食品を包装するための食品包装材料などとして利用されると、優れた特性を示し得る。
【0139】
基材についての詳細は上記に記載される通りである。
【0140】
生分解性コーティング層は、35g/m未満の耐水性を有し得る。例えば、コーティング層の耐水性は、35g/m未満、34g/m未満、30g/m未満、28g/m未満、又は27g/m未満である。
【0141】
耐水性は、TAPPI T441規格に準拠したコッブ吸水試験(試験時間:10分)により測定することができる。
【0142】
生分解性コーティング層を含む生分解性物品は、包装材料、厚紙ボックス、ショッピングバッグ、使い捨ての食卓用品、包装容器、又は紙ストローであってもよいが、それらに限定されない。
【0143】
以下、以下の実施例を参照して本発明をより詳細に説明することにする。しかし以下の実施例は本発明を例証することを意図しており、実施例の範囲はそれらのみに限定されない。
【実施例
【0144】
生分解性コーティング組成物の調製
実施例1-1
(1)PHA樹脂の調製
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:10重量%、重量平均分子量(Mw):800,000g/モル、平均粒径:80μm、多分散指数(PDI):2.6、製造業者:CJ)を調製した。PHA粉末は、ホモジナイザー(製品名:Homomixer Mark II、製造業者:Primix)を使用して物理的粉砕により得られた。
【0145】
(2)生分解性コーティング組成物の調製
1-リットルのガラスビーカーに、40重量部のPHA粉末、分散剤としての10%の濃度を有する26重量部のポリビニルアルコール(PVA、けん化度:80モル%、平均重合度:200、製造業者:Kuraray)、及び34重量部の蒸留水(DI水)を装入し、撹拌機を(製品名:Homomixer Mark II、製造業者:Premix)使用してこれを8,000rpmで30分間撹拌して第1の水性分散液を調製した。
【0146】
その後、ろ紙を使用して第1の水性分散液をろ過し、水で洗浄し、さらに蒸留水を加えて40重量%の固形分を有する第2の水性分散液を調製した。
【0147】
その後、撹拌機を(製品名:Homomixer Mark II、製造業者:Premix)使用して第2の水性分散液を水性系に再分散させて40重量%の固形分を有する生分解性コーティング組成物を調製した。
【0148】
実施例1-2
ステップ(2)において、10%の濃度を有するポリビニルアルコール(PVA、けん化度:98モル%、平均重合度:200、製造業者:Kuraray)を分散剤として使用したこと以外は、実施例1-1と同じ方法で生分解性コーティング組成物を調製した。
【0149】
実施例1-3
ステップ(1)において、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末(4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含量:8重量%、重量平均分子量(Mw):330,000g/モル、平均粒径:30μm、多分散指数(PDI):2.6、製造業者:CJ)を調製したこと以外は、実施例1-1と同じ方法で生分解性コーティング組成物を調製した。
【0150】
比較例1-1
ステップ(2)において、分散剤の添加を行わなかったこと以外は、実施例1-1と同じ方法で生分解性コーティング組成物を調製した。
【0151】
比較例1-2
ステップ(2)において、10%の濃度を有するポリビニルアルコール(PVA、けん化度:30モル%、平均重合度:200、製造業者:Kuraray)を分散剤として使用したこと以外は、実施例1-1と同じ方法で生分解性コーティング組成物を調製した。
【0152】
比較例1-3
ステップ(2)において、10%の濃度を有するポリビニルアルコール(PVA、けん化度:99.5モル%、平均重合度:200、製造業者:Kuraray)を分散剤として使用したこと以外は、実施例1-1と同じ方法で生分解性コーティング組成物を調製した。
【0153】
比較例1-4
ステップ(2)において、10%の濃度を有するポリビニルアルコール(PVA、けん化度:70モル%、平均重合度:300、製造業者:Kuraray)を分散剤として使用したこと以外は、実施例1-1と同じ方法で生分解性コーティング組成物を調製した。
【0154】
比較例1-5
ステップ(2)において、分散剤を200重量部の量で使用したこと以外は、実施例1-1と同じ方法で生分解性コーティング組成物を調製した。
【0155】
【表1】
【0156】
生分解性物品の調製
実施例2-1
Mayerバーコーター(製造業者:RDS)を使用して20g/mのコーティング量で、実施例1-1において調製された生分解性コーティング組成物を基材上に塗布し、170℃で10分間乾燥させて生分解性コーティング層を有する生分解性物品を調製した。ここで、180g/mの坪量を有する非コーティングクラフト紙(製造業者:Hansol Paper)を基材として使用した。
【0157】
実施例2-2及び2-3並びに比較例2-1~2-5
実施例1-2及び1-3並びに比較例1-1~1-5において調製された生分解性コーティング組成物をそれぞれ使用したこと以外は、実施例2-1と同じ方法で生分解性物品をそれぞれ調製した。ここで、生分解性コーティング組成物のコーティング量は以下の表2に示すように変動させた。
【0158】
[試験実施例]
試験実施例1:分散安定性
実施例1-1~1-3及び比較例1-1~1-5において調製された生分解性コーティング組成物をそれぞれ試験管に入れ、50℃で2週間放置した。次いで以下の評価基準にしたがって分散安定性について目視で評価した。
◎:相分離も析出も起きなかった
○:わずかな相分離が起きたが析出は起きなかった
△:いくらかの相分離及び析出が起きた
×:著しい相分離及び析出が起きた
【0159】
試験実施例2:粘度
DV1MLVTJ0粘度計(製造業者:Brookfield)により12rpmの回転速度でスピンドル数3を使用して60秒間、実施例1-1~1-3及び比較例1-1~1-5において調製された生分解性コーティング組成物をそれぞれ粘度について測定した。
【0160】
試験実施例3:耐水性
TAPPI T441規格に準拠したコッブ給水試験(試験時間:10分)により、実施例2-1~2-3及び比較例2-1~2-5において調製された生分解性物品をそれぞれ耐水性について測定した。
【0161】
【表2】
【0162】
上記の表2から分かるように、実施例2-1~2-3の生分解性物品は、比較例2-1~2-5の物品と比較して非常に優れたコーティング性及び耐水性を有していた。
【0163】
具体的には、実施例2-1~2-3の生分解性物品が、優れた分散安定性及び粘度特性を有する実施例1-1~1-3の生分解性コーティング組成物の各々を使用して調製されたコーティング層を含んでいたので、実施例2-1~2-3の生分解性物品はすべて、コッブ吸水試験の結果として30g/m未満の優れた耐水性を有していた。したがって、生分解性物品が、耐水性を必要とする物品として、例えば水分含量が高い食品を包装するための食品包装材料などとして利用されると、優れた特性を示し得る。
【0164】
対照的に、比較例2-1~2-5の生分解性物品が、不十分な分散安定性及び粘度特性に起因してコーティング性が不十分である比較例1-1~1-5の生分解性コーティング組成物の各々を使用して調製されたコーティング層を含んでいたので、比較例2-1~2-5の生分解性物品はすべて非常に乏しい耐水性を有していた。特に、比較例2-1、2-2、2-3、及び2-5において、コッブ吸水試験は不十分なコーティング性及び粘度特性に起因して測定することができず、コーティング組成物を塗布することができず、そのためコーティング層を形成させることが不可能であった。
【0165】
さらに、比較例2-4において、平均重合度が所望の範囲を満たしていない分散剤が使用された。したがって、不十分な分散安定性及び粘度特性に起因してコーティング性が非常に劣り、耐水性も不十分であり、30g/m以上、具体的には43g/mというコッブ吸水試験の結果であった。
【符号の説明】
【0166】
1・・・生分解性物品、100・・・基材、200・・・生分解性コーティング層。
図1
図2
【国際調査報告】